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吉國(二)
委員 給与所得者に対して源泉徴収を実施し、その他の
所得者については原則として申告納税であるという形、これはおそらく世界ほとんどの国で実施していると思います。もちろん申告納税をとっているのは日本とアメリカだけでありまして、賦課
課税ということがイギリス、西独等では行なわれていると思いますが、この
給与所得の源泉徴収というものは、一応世界的な
制度であるということを前提にいたしました場合に、
給与所得者とその他の
所得者との間の不公平という問題は、税制上の面といたしましては、具体的な必要経費
控除が行なわれていないという点が
一つと、第二の点は、申告納税の
所得者についてはその申告納税があった後に十分な調査が行なわれていないのではないか、したがって、中に不適正な申告があっても放置されているのではないかということ、いわば把握の差があるということが第二の不満であるかと思います。
第一の必要経費の
控除の点につきましては、これは実際問題として、税制上、必要経費を個別に引くことを選択として認めている
制度も、これは事実、世界的に見てございます。わが国の場合は伝統的に給与
所得控除という特別な
控除をもって概算的な経費
控除にかえるという体制をとっておりますが、これが問題になる点は、どうも給与
所得控除では足りないのではないかという点にあるかと思います。ただ事業
所得者の場合と
給与所得者の場合を比べていただきます場合に、たとえば、よく言われることでございますが、この間も質問がございました、開業医であると七二%の経費
控除が行なわれる。ところが、医局につとめている医者は給与
所得控除しかない。この不公平が大きいために医者がみな自立常業をやるようになってしまうのだという御批判がございました。ただ、この場合に注意していただきたいと思いますのは、まず七二%というのは、これは確かに問題のある特別
措置でございますけれ
ども、その七二%の
内容をなすものは、開業している医者はその開業に必要な設備、家屋の減価償却とか、あるいは薬の仕入れがあり、注射液の仕入れがあるというような、収入を得るための直接必要な経費が
内容をなしているわけでございます。それが大
部分の経費であるわけでございます。単純に同じ収入があるのに対して、七二%の経費
控除があるということではないのでございまして、給与
所得控除に相当するようなものは、医者においては必要経費として実際上はほとんど家事関連費として
控除されていないという
実情が見落とされているように思います。普通の販売業者の場合も、三百万も売り上げがあるのに、税がかからぬというようなことがよく言われますけれ
ども、この売り上げを得るための必要経費の大
部分は仕入れ代金でございまして、これは
給与所得者にはない特殊な――特殊と申しますか、必要経費の中でも、重要であるけれ
ども、
給与所得者には本来ないものである。この仕入れ代金を引いて販売経費を引いた残り、つまり、事業
所得者が自分で着る洋服であるとか、あるいは自分の
個人生活の洗たく代とか、こういったものは事業
所得者においても必要経費
控除を認められていないものでございます。そういう
意味から、
給与所得者の必要経費というものをいろいろ洗ってみますと、収入を得るために必要な経費という
所得税の定義からして、これに該当する経費というのはなかなか判定がむずかしいし、また、なかなか得られないということがあるわけでございます。試みに家計調査等を見てみますと、家事関連的な生計費とかその他を除いてしまった費目というのは、ほとんど数%にすぎないという
実情でございます。
そういう点から税制上、この給与
所得控除が不足かどうかという観点でいろいろ議論がございますけれ
ども、いまの給与
所得控除の一番の大きな問題は、やはり定額
控除を十万円をしたあとの定率
控除に問題があると認めざるを得ないかと思います。そういう
意味では、ことし定率
控除をさらに引き上げるという
措置をとって権衡をとったわけでございまして、必要経費の点についてはいろいろ議論はございますけれ
ども、給与
所得控除というものが相当にこれをカバーしておるものと私
ども考えておるわけでございます。
それから、
課税上の把握の問題でございますが、これは確かに五万の税務署員をあげて努力をいたしておりますけれ
ども、基本的には申告納税というものは、国民が国民としての国家の経費の
負担に参与するという
意味で、適正な申告が出るという前提をとらなければ税法というものができないと思うわけでございます。したがって、税務署の活動も、
田中先生御
指摘のように、できるだけ信頼に基づいて指導行政ということで努力していくべきだ。正しい申告がなされるということ、これが源泉徴収との間の公平を保つ第一義的なものだと私は思うのです。税務署が不当な脱税を摘発するということは、これはもとより必要でございますが、それだけで申告納税の完ぺきを期し得るものではない。基本的にはやはり源泉徴収義務者と同じような把握の
程度の申告をするという国民的な気風が成立して、はじめて最後的な満足が得られるものだと私は思うわけでございます。
もちろんそのためには、
税率があまり過酷な
税負担ではこれは無理であるというところで、毎年のように、源泉徴収ももちろんでございますが、申告納税につきましても
減税を続けてまいりまして、
負担の適正化をはかり、それを通じて、さらに税務行政上の適正申告の
制度を、青色申告をできる限り助長をするという形で努力を続けてきたわけでございます。私はやはり、時間がかかるにしても、正しい申告がなされる雰囲気が醸成されるということが必要であると思います。
国税庁等におきましては、ことしは、小学校、中学校のカリキュラムにも、税の必要なるゆえん等を織り込みまして、国民的な納税意識というものを高めるという方向をさらに努力していかなければならない、かように考えておるわけでございます。