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1969-02-28 第61回国会 衆議院 大蔵委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年二月二十八日(金曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 田中 正巳君    理事 金子 一平君 理事 倉成  正君    理事 毛利 松平君 理事 山下 元利君    理事 渡辺美智雄君 理事 只松 祐治君    理事 村山 喜一君 理事 竹本 孫一君       大村 襄治君    奧野 誠亮君       河野 洋平君    笹山茂太郎君       田村  元君    地崎宇三郎君       西岡 武夫君    坊  秀男君       本名  武君    村上信二郎君       山中 貞則君    阿部 助哉君       久保田鶴松君    中嶋 英夫君       平林  剛君    広沢 賢一君       広瀬 秀吉君    春日 一幸君       河村  勝君    田中 昭二君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         大蔵政務次官  上村千一郎君         大蔵省主税局長 吉國 二郎君         大蔵省銀行局長 澄田  智君         大蔵省国際金融         局長      村井 七郎君         文化庁長官   今 日出海君         文化庁次長   安達 健二君  委員外出席者         法務省刑事局刑         事課長     石原 一彦君         大蔵省銀行局保         険部長     新保 實生君         国税庁直税部長 川村博太郎君         農林省農政局参         事官      中澤 三郎君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 二月二十七日  委員広瀬秀吉辞任につき、その補欠として久  保三郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員久保三郎辞任につき、その補欠として広  瀬秀吉君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 二月二十七日  関税定率法等の一部を改正する法律案内閣提  出第五一号) 同日  音楽等入場税撤廃に関する請願山下榮二君  紹介)(第一一二八号)  入場税減免に関する請願外二件(中嶋英夫君紹  介)(第一一五三号)  同外四件(仮谷忠男紹介)(第一一七九号)  減税及び税務行政民主化に関する請願(加藤  清二君紹介)(第一一七四号)  同(島上善五郎紹介)(第一一七五号)  同(中嶋英夫紹介)(第一一七六号)  同(野間千代三君紹介)(第一一七七号)  同(田代文久紹介)(第一二〇七号)  同(林百郎君紹介)(第一二〇八号)  同(松本善明紹介)(第一二〇九号)  同(岡本隆一紹介)(第一三一三号)  同(田中武夫紹介)(第一三一四号)  税制改正等による中小企業擁護に関する請願(  山本政弘紹介)(第一一七八号)  減税及び税務行政民主化等に関する請願(谷  口善太郎紹介)(第一二〇六号)  バナナの輸入関税据置きに関する請願(林百郎  君紹介)(第一二七九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十三年産米穀についての所得税及び法人  税の臨時特例に関する法律案起草の件  国の会計に関する件  税制に関する件  金融に関する件      ————◇—————
  2. 田中正巳

    田中委員長 これより会議を開きます。  昭和四十三年産米穀についての所得税及び法人税臨時特例に関する法律案起草の件について議事を進めます。  本問題につきましては、過般来の各党間における協議の結果、その案文が委員長手元に提出され、委員各位のお手元に配付いたしてあります。     —————————————
  3. 田中正巳

    田中委員長 いわゆる予約米減税については、昭和三十年以来毎年単独特例法を制定して、これを実施してきたところでありますが、昨今の米をめぐる情勢は著しい変化を遂げ、配給米確保の心配の消滅したことはもちろんのこと、余剰米対策が真剣に議論されることとなり、米麦中心から脱却した総合農政の新しい展開を検討せざるを得ない事態に立ち至ったのであります。  したがって、予約米減税は今後はこれを打ち切らざるを得ないものと思われますが、当面、昭和四十三年産米については経過的に農業所得者負担激変を緩和して、農村の動揺と不安を不必要にもたらすことがないよう配慮を加える必要があると考えますので、次のような法的措置を講じようとするものであります。  すなわち、第一に、出荷調整対策の円滑な実施に資するため、いわゆるおそ出し奨励金について、その支給対象となる米穀生産者に対して奨励金の額に見合う所得非課税とする特例を設けることといたしております。なお、この特例はいわゆるおそ出し奨励期間中に政府に売り渡した米穀の全部について予約の有無にかかわらず適用されることになっております。  第二に、税負担激変を緩和するため、昭和四十三年産米穀について個人及び農業生産法人事前売り渡し申し込みに基づいて生産区域の別に応じ一定時期までに政府に対し売り渡した場合、その米穀にかかる所得税及び法人税について百五十キログラムすなわち一石当たり七百円を非課税とする経過的特例を設けることといたしております。  本件につきまして、御発言はありませんか。——別に御発言もなければ、この際、本案は歳入の減少を伴うこととなりますので、衆議院規則第四十八条の二の規定により、内閣において御意見があればお述べ願います。福田大蔵大臣
  4. 福田赳夫

    福田国務大臣 本法律案につきましては、直ちに賛成しがたいところでありますが、この法律案による減税趣旨は、昭和四十四年度以降の産米についてはこの種の特例措置は講じないことを前提として、農業所得者税負担激変を緩和するために、本年限り経過的に措置を講ずるものであるので、あえて反対はいたしません。     —————————————
  5. 田中正巳

    田中委員長 おはかりいたします。  この起草原案委員会の成案として決定し、これを委員会提出法律案として決定するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 田中正巳

    田中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、本法律案提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 田中正巳

    田中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  8. 田中正巳

    田中委員長 次に、国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。中嶋英夫君。
  9. 中嶋英夫

    中嶋委員 入場税に関して大蔵大臣並びに文化庁長官に御質問します。  昭和四十四年度予算案によれば、入場税は百三十七億三千四百万円を歳入として見積もっていますが、これから競輪競馬関係、いわゆるギャンブル的な関係の分を除いた額は幾らになるのか、まずこれを主税局長のほうから……。
  10. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 御承知のように、入場税の算定にあたりましては、おもなものにつきましては個別に積み上げております。ギャンブル等についてはスポーツ等と合算して計算をいたしておりますので、実績等から勘案いたしますと、約三億と計算しております。これを除いた税収は百三十四億とお考え願ってけっこうであります。
  11. 中嶋英夫

    中嶋委員 各種税関係は、御存じのように毎年毎年自然増収が増加をしていく一方のわけです。しかし、入場税に関しては、ギャンブル関係を除いた映画演劇関係、いわゆる劇場芸術関係入場税というものがほとんど伸びがないと申しますか、増収がない。いわば映画演劇関係はマスコミその他では一見はなやかではあるけれども劇場芸術に関する限りは非常に沈滞しておるということをあらわしておると思うのです。そういう面から、たとえば三十七年一律一〇%になりましてから、競馬競輪その他ギャンブル関係のものは三十七年には六千七百万円、歴年ふえまして四十二年度においては二億六千八百万円ほどになっておるわけですね。しかし、映画演劇関係は、いわゆる劇場芸術関係は三十七年度で九十億円、四十二年度で約九十億円、ほとんど同額なわけでございます。こういう実態から私は、入場税わが国劇場芸術関係の中に幾つかの問題があるのじゃなかろうか、そういう問題を掘り下げることによって入場税について再検討段階に入ったことを認めざるを得ない、こう考えるわけであります。そういう立場から質問を続けていきたいと思います。  御存じのように、入場税昭和十三年、シナ事変を契機として、いわば戦費調達のために新しく設けられた制度であります。もちろん、当時としては緊迫した戦時下でありますから、観劇などというものは、いわゆるこういう芸術文化に接することがすでに奢侈である、ぜいたくであるという風潮があって、その風潮の中で是認された、やむを得ず是認された、こういう背景の中で生まれたものでありますが、今日、戦争終了後二十数年、なおこれが存続するというのはどういうわけで存続しておるのか、こういう点をまず大蔵大臣から伺いたいと思います。
  12. 福田赳夫

    福田国務大臣 御説のように、映画演劇についての入場税は大体横ばいです。伸びがない。経済成長の非常に急激に進行しておる状態からいたしますと、まあ、実質的には減っておるようなかっこうになるわけです。しかし、この税というもの、まあ、いろいろの見方がありましょうが、私どもといたしますと、いわゆる間接税、これはなるべく残していきたいという感じを持っておるのです。わずかな額ではございますけれども、わりあい負担感というものに響かない、そういう形の入場税、こういうものは保存しておきたい、こういうような考えに基づくものであります。
  13. 中嶋英夫

    中嶋委員 負担感が非常に薄いということなんですが、私は、大衆が劇場芸術に親しむ機会の持ち方がいまあまりにも不自然だと思うのです。たとえば、歌舞伎とかああいう大劇場が、まあ、赤字の月もあるが、黒字の月もある。何とかとんとんでやっておる。実際はもうほとんど無配状態。しかし、観客は、真に日本の古典伝統的な芸能に触れたい、その中にひそんでおる、人間として味わい、そうして人間として向上できるものをつかみとろう、こういう意識で行く、観客だけかというと、そうではない。たとえば、非常に最近多いのは団体であります。ある日あるとき、ある労働者歌舞伎を見たいと思って、その日一日も借り切り。その借り切りというのは、いわゆる商品の宣伝あるいはその販売を拡張するためのサービス、こういうようなことから、歌舞伎がいい悪いじゃなくて、とにかくただで見られるから、みないらっしゃい、行けば、おみやげが出るんだ。まあ相撲の帰りみたいな大きなふろしき包みを持って帰る。それを含めて、いわばただだから見ようかということで行くお客さん、そこには、何か芸術の追求とかそういうようなものはあまりない。こういう状態の中でいま現に維持されつつあるわけです。とすれば、そういう機会でない限りは、真にその劇場芸術というものに触れたいという人には、その道はあまり開かれていない。しかも、それが相当高額な入場税ということで、その機会が非常に少なくなっておる。負担感が乏しいということは私はないと思うのです。映画の場合においても、入場税というものの存在が相当障害になっておることは、これは後ほど、あと質問で詳しく触れたいと思うけれども、少なくとも負担感がないとは思えない。  そこで私は、まず第一に今文化庁長官にお伺いしたいのは、大蔵当局は、入場税というのを、いま大臣がおっしゃったように、いまあるものをなくしたくない、まあ間接税のようなものである、こう考えてほしいという考えでおられるが、文化庁発足以来、たいへん努力なすっておる今長官として、こういう考え方がもうずっと続いていいかどうか、文化担当の責任ある立場からのお考えがあったならばお聞かせ願いたいと思います。
  14. 今日出海

    ○今政府委員 私のほうは、芸術文化の向上をはかっており、国民に容易にこれを鑑賞させ、より広く鑑賞させていこうというたてまえでございますから、入場税軽減というものは、私は、望ましいと考えておるのであります。
  15. 中嶋英夫

    中嶋委員 失礼ですが、ちょっと聞き取りにくかったのですけれども、こういう状態のまま入場税というものが、いわば固定化していいとおっしゃったのか、やはり観客劇場芸術に親しむ機会を多く与えるほうがいいというお考えなのか、もう一度、失礼ですが、伺いたい。
  16. 今日出海

    ○今政府委員 より広く、より多く親しませるという考えでございます。
  17. 中嶋英夫

    中嶋委員 そこで、大臣にもう一度この点伺いたいのですが、まあ、負担感がないからかけるということですが、先ほどお伺いしましたように、戦争——あのころは事変ですが、戦争戦争です。どんどん戦争が拡大するというたいへんな時代だったわけですね。したがって、みんながとにかく命がけで戦場に行っておるというときに、一人劇場におさまって芝居を楽しむということがぜいたくではないか、奢侈ではないか、こういう考え方が当時あったろうと思うのです。こういう考え方は、いまではもう否定されておられるのですか。要するに、生活必需の問題でない余分なものだ、だからいいじゃないかというお考えなのか。生活には芸術というものは絶対必要なものだ、劇場芸術というものは必要なものだ、しかし、税金をかけるというのか。必要でないから、まあ余分の楽しみだからかけるということなのか。特に最近、美術展など展覧会ですね、こういう関係無税になったわけです。それとなぜ差がつくのかということに焦点を当ててもらったらけっこうです。
  18. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま主税局長が前に御説明いたします。
  19. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいまの点でありますが、この入場税戦時中に1戦時中と申しますか、シナ事変の際に起こされたということは御指摘のとおりでございまして、当時、物品税とか現在の間接税相当部分戦時中に立法されまして、戦後に引き続いたわけでございます。入場税も、一時は、百分の二百という税率までまいりましたが、その後御承知のように、地方税に移管します際に五〇%になり、それがまた再び国税に移管になる場合に、五〇%から一〇%の段階税率になりまして、その後、いわゆるなまもの、映画でないものにつきましては、二〇%の軽減税率を使うというような経過を経て、三十七年に一律に一〇%に変わったわけでございます。  この考え方は、現在のわが国消費税体系は、西欧諸国と違いまして、一律に、全体の消費に対して課税するということではなくて、一種の、奢侈品はもちろんでございますけれども、娯楽的、趣味的要素というものをできるだけ選択して課税をするという趣旨課税物件を選んだわけでございます。そういう意味で、物品税あるいはその他の税を通じまして、大体一般的にいま大衆化しているようなものにつきましては、製造過程の場合は二〇%、それから小売り課税あるいは消費段階課税におきましては一〇%を標準に考えまして、それよりもやや程度の高いものを加重税率を使うというような思想で統一をしたわけであります。  そういう意味では、戦時中の奢侈抑制という考え方ではなくて、一般的な消費税の形として修正し直したというものであると私どもは理解しておりますし、そういう意味では、地方税娯楽施設利用税とか、あるいは料理飲食等消費税とか、そういうものと大体権衡のとれた税体系を形成していると思います。西欧諸国では、御承知のように、売り上げ税もそのままかけている例もございますし、入場税をかけた場合には売り上げ税をやめるというような形をとっているところもございますけれども、いまの日本税率が、西欧諸国でイギリスを除きまして、大体最高税率としては一番低いのではないかと思います。  そういう意味では、一般消費税体系の中に組み込まれたものであって、戦時中につくられた特別な税としての性格を、三十七年の際に全部払拭したと私ども考えているわけであります。
  20. 中嶋英夫

    中嶋委員 いま美術展関係入場税はなくなりましたね。それとの関係はどうですか。いわゆる有形文化財に接する場合と無形文化財に接する場合に差があるわけです。それがなぜなのかということです。
  21. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 これはそういう一つ接点だと思いますが、御承知のように、入場税の中から博物館とかあるいは遊園地というものを除いたわけであります。これは積極的の意味よりも、さっき申し上げたような趣味娯楽的なものをできるだけ選択するという意味遊園地等をはずしましたが、それと接続しているような意味博物館美術館というものがはずれたという意味に御理解願いたいと思います。
  22. 中嶋英夫

    中嶋委員 いまの主税局長の答弁の中で、無形文化財のほうは税金——もちろん無形文化財として保護委員会で指定された文楽その他は無税です。しかし、特殊なものを除いては無形文化財税金がかかる。有形文化財のほうは、これは庶民は実際持てないわけです。相当高価なものですから、とかく退蔵されておる。それがあるときかいま間見ることができる。それが税金は要らない。無形文化財というのはしまっておいたのでは意味がないわけです。有形の場合はしまっておいても、ある日表に出せば、そのまま価値がある。持って楽しむ場合もある。無形文化財というのは持っておって本人が楽しむものでもなければ、しまっておるとカビがはえてむしろだめになってしまう、伝承されない等があるので、むしろ無形文化財こそ大きく国が力を入れて、そうして保存するだけでなく、むしろ発展さしていくという、こういう性質のものだろうと思うのです。  そこになぜ差があるのかということ、接点ということばですが、私は何の接点かわからないのです。もうちょっとそこを伺いたいと思うのです。
  23. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 いまのお考えのような点があるかと思いますが、御承知のように、これも消費税の一環であるだけに、その内容というよりは消費者の態様を考え課税をしておるわけです。そういう意味で、もちろん美術品を見るということも映画を見るということも共通な要素があるわけでございますが、やはり税の一つカテゴリーをつくります場合に、美術館博物館という系統は一つカテゴリーになると思います。それと遊園地というもの、大体遊園地の中に博物館存在するということがよくあるわけで、一つカテゴリーとしてはずす場合に、遊園地等と一緒にこれらのものははずれた、そういう意味接点と申し上げた。そういう意味で、内容的にごらんになると連続しておるわけでございますが、課税技術としてのカテゴリーからどの点ではずすかということになると、そこが接点になる、そういう意味でございます。
  24. 中嶋英夫

    中嶋委員 遊園地のことはよくわかるのです。いわゆる無形文化有形文化の間に税制上に差があるということは、これはやはりもう少しお考えただかなければならぬだろうと思うのです。  特に、無形文化財関係が順調に伸びておるかというと、実際伸びてないわけです。しかも私、非常に大事だと思うのは、本来、音楽なんかの場合は、それぞれ独立した芸術として価値あるものが、最近は総合化され立体化されて、よりわれわれの耳目をそばだたせるし、注目を受けるわけです。そういう総合された芸術として展開することは非常にいいことだと思うのですが、それがどんなに伸びようとしても、その組み立てておる一つ一つ要素である芸術、これが伸びないことにはやはり総合された場合に貧弱になるだろうと思うのです。ところが、どうもはなやかな面だけが伸びて、それをささえている底辺がだんだんだんだん沈滞していく。たとえば器楽ども、これは和楽でも洋楽でもそうですけれども、最近ではむしろ伴奏という位置のほうが多くなって、独立したものとしてわれわれに訴えていく、われわれに接してくるということが非常に少なくなってきているわけです。もちろん組み立てられたものとして劇場ではやっておる。最近はミュージカルなんかも相当盛んになってきました。それも一つ一つパートを担当しておるものが停滞していけば、いつの日か総合したものもだんだん低下していくにきまっておるわけですね。こういう面から、一つ一つパートをささえておるものが独立して価値あるものとして国民に知られ、それが支持され、それがまた高まっていくということに、入場税の問題が非常にブレーキになっておる。  たとえば邦楽でいうならば、素で見る機会というものはほとんどない。これは難解だというけれども、ゴーゴーやオペラと比べて義太夫というものは難解だとは私は思わない。落語やなんかで難解だということになっておるから、義太夫というものはわからないものだという先入観があるから、なおわからない。これは日本語ですから、翻訳は要らぬですよ。こういう面からいえば、こういうものはどんどん伸びていいわけです。それは素では、単独ではもうほとんど興行する力がなくなっておる。それと今度は、太夫と語りと人形と組み合わせて総合したものでというが、これも国家がたいへん力を入れていただいておるので、文楽もつないでいるわけですけれども、その中でも、みんなは人形を使っておる人が主人公だと思っておる、一番はなやかですから。その次には太夫、語っておるのが二番目で、三味線が一番あとだと思っておる。伴奏が一番あとだと思っておる。実際は、あの芸術というものは三味線に引きずられて語られるし、それに合わせて人形が動いているわけですよ。それが、一番根幹のものがいわば伴食みたいな、つけたりみたいな存在になっておる。そういうものが独立した芸術として尊重されない風潮というものは、私、入場税などの存在が非常に大きいと思う。たとえば、器楽関係の場合もそうです。いろいろテレビその他の関係で、最近では東京都でも美濃部さんが力を入れて、オーケストラとしていろいろな方面で活動が多くなってきておる。それぞれのパート単独のものは、来朝した外国の芸術家の場合は採算がとれるけれども日本の場合は採算がとれない。せめて入場税がなければ興行が何とかしてやっていける。同時に、技術も進歩していく機会が多い。ところが、入場税がじゃまになってこれができないという実態があるわけです。  こういう実態に対して、入場税というものは私は再検討されていいと思うのですが、こういう面から、まず文化庁長官のほうから御見解を承った上で、また大蔵省当局見解を伺いたい。
  25. 今日出海

    ○今政府委員 ただいまのお話を承っておりますと、総合されたものが営業として松竹であるとか東宝であるとかいうようなところで、営利の目的をもってやられたものについては私の権限ではございませんが、それが研究的なものであったり、純粋ないまの器楽であるとか音楽の試演的なもの、あるいは研究の発表的なものについては、できるものならば無税とかあるいは軽減というような措置を講じていただきたいということを私は望んでおります。
  26. 中嶋英夫

    中嶋委員 文化庁としては、そういう御期待を大蔵省に対して持っておられると思うのですが、いま言ったような観点吉國さん、私、野党だからいびるのだというのではなくて、お互い再検討の時期が来ておると思うので、その検討を深める意味立場からお答え願いたい。
  27. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいまのお説、非常にごもっとものところがあると思うのですが、先ほど御説明申し上げましたように、この入場税につきましては、各国でもそうでございますけれども、従来から高い料金のものには高い税率を課するということが公平じゃないかという感じがあったわけでございます。現に日本でも五〇%から一〇%に最終的には分かれておりましたが、この五〇%という税率が全部なまものに適用になってしまうということが非常に問題になりまして、そういう観点から申しますと、確かに伝統芸術とかなんとかいうのは不利になるのではないかということが非常に強く言われました。そのため五〇%時代になまものについては三〇%という税率を使い、さらに純音楽とかいわゆる純芸術については二〇%、一〇%という税率を使ったのであります。  ところが、いまの御指摘のとおりの問題があるのでありますけれども、その純というのと純以外のものとの区別というものが非常にむずかしい。実は末端で非常なトラブルを起こしまして、これもいつぞやここで御紹介いたしたことがございますが、非常な混乱を起こしましたために、思い切って、入場料が高くても高い税率を使わない。諸外国と違って思い切って一律にしてしまおうという制度が実は三十七年にとられたわけでございます。二千円の入場料であっても一割、百円の映画であっても一割。これは見方によってはあるいは不公平ではないかという見方もございますけれども、いま御指摘がございましたように、伝統芸術であるとか、あるいは芸術の発表というものは非常に単価がかかりますので、そういう意味では、そういう入場料金でなければできない。それが高い税率が課せられているということになると、これは抑圧的になるという観点から、すべてこれを一律に一〇%にしたわけでございます。そういう意味では、そういうことを配慮して、いまの入場税に到達したという面はあるわけでございます。  なお、そういう意味でははっきり限定のできるもの、つまり、文化財保護法で人間無形文化財に指定された方が主となってやられる場合とか、国立劇場伝統芸術を行なう場合については、法律ではっきり規定をいたして非課税にしております。そういう意味ではかなりはっきり限定のできるものをそういう形で保護していくという形は将来も考えられると思いますけれども、一般的に、純音楽をどうするかというやり方は実行上非常に困難であって、かってやったけれどもそれは不可能であったために、現在は入場料金の多寡にかかわらず一律の税率ということで、その点を考えておるというふうに御理解願えるかと思うのでございます。
  28. 中嶋英夫

    中嶋委員 私も前に聞いたのです。純芸術かどうかという線の引き方がむずかしい。これは実は私らもうっかりひっかかったのですね。それで私は考えてみたのですよ。それは必要ないと思うのです。私は、入場税の問題を考えるときは、純なるものだから無税にするとか、純ならざる——と言うと不純みたいで悪いけれども、そういうものにはかけてもいいんだという考え方は、一見非常に正義的であり、きめこまかなようであって、実はそのことがブレーキになって、純なるものが伸びないというのであれば、そんな線を引くことはない。これは裏を返すと、金さえ出せば不純なものでもよろしいことになるわけですね、ことばとして裏を返せば。ですから、そういう考え方がまた新たな問題になるだろうと思うのですね。ですから、なまじっか線を引きにくい、引きにくいといって、極端にいうと、映画の場合ではエロダクションのようなものは税金をかけたり、それから芸術性の高いものには税をかけたくない、こう言われると聞いたほうもそう思う。しかし、実際は、そういう理由で芸術価値の高い映画に対する入場税が残っていくならば、それはことばの上の慰めであって、具体的には何の意味もない。同時にそのことは、その考え方の基本にあるものは、芸術価値のないものから税金を取りたいということになると、それをもう一歩掘り下げると、金さえ出せばいいということになるわけです。金があれば不純なものでもよろしいということの裏づけになるわけです。  ですから、むしろそういう芸術価値の高いもの、いまの局長のことばで純なるというか、純芸術というものを伸ばしたいということであるならば、一切なくしたほうがいい。伸びるか伸びないかということは、入場税などを除いた外で、これこそ文化庁の活躍の場面だと思う。あるいはその他のポジションにおいても、不純なものはなくしていくという努力は、大蔵省税制でなくてもできると思うのです。そういうことはむしろお考えにならないほうがいい。ですから、従来、私どもはその辺の話からなるほどむずかしいかなと納得した形だったけれども、その手はもう古い。そういう考え方はおやめになったほうがいいと思うのですが、この点いかがでしょうか。
  29. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 御指摘のとおりなんでございます。それで私どもは、これはいかぬというのでやめたわけでございます。一律にしてしまったのもその趣旨でございますが、さっき申し上げたのは、入場税の性格としては、これは見る人、聞く人にかけるわけでありますから、純音楽を聞いていてもくだらないことを考えて聞いている人もあるわけでございますから、そういう意味ではほんとうは区別ができない性質のもの、だと思います。ただ入場税を免除されることによって入場動員ができるから、非常に高いコストがかかって、しかも純粋なものが困るという点を救済できるかどうかということでかつて試みたわけでございますが、結局それは無理であったということで、最低の税率に統一をしてしまって、聴視者の立場からいえば、他の消費物品との権衡上一〇%くらいの税率はやむを得ない、しかし、それをコストのかかる高いものに特に高い税率を使うということはやらないということで解決をしたように考えておるわけでございます。
  30. 中嶋英夫

    中嶋委員 先ほど申し上げました伝統芸能の場合には保護される、税制面でも特別の待遇を受けているわけですね。しかし、おっしゃるとおり、純芸術という面からいうと、伝統芸能以外にもあるわけです。伝統芸術以外にもあるわけです。こういうものは保護も受けなければ、それは国立劇場を使って機会を与えられるようでありますけれども、実際は国立劇場の補助金の大半は伝統芸能に使われているのです。これは歌舞伎文楽がいかぬというのではない。それはぜひ今後も続けてやっていただきたいと思うのですけれども、伝統芸能以外の芸術というものは税制で特別待遇を受けていないし、国の特別の保護も受けていない、ここは私、問題になるだろうと思う。ですから、それを解くのに税制面で解いてやる。解いてやるときに、そうでないものまでも解くのは惜しいというか、何かそんな気持ちがおありになるのじゃないかと思うのですが、そういう点はどうなんですか。それとも、伝統芸能以外のものはどんな芸術性の高いものであっても、その芸能関係は特別税制考えなくていいのだというお考えなのか。
  31. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 先ほど申し上げたのは第九条の非課税規定の問題でございますが、最初これは、文化財保護法の規定により助成の措置を講じられた文化財のみを演ずる場合というふうにきまっておりましたが、その趣旨を拡張いたしまして、国立劇場伝統芸術を実演するという場合には、文化財保護法の一つのコロラリーとして加えてほしいということで、これが加わったというような経緯でございますので、それで伝統芸能にしぼられたという経緯があるかと思います。  一般的には、私どもはさっき申し上げたように、あくまで消費税でございますから、消費者、入場者が負担すべきものと考えておりますので、そういう意味では本来芸術性があるという催しものであろうとそうでなかろうと、見る者の立場から見た場合、必ずしも一律な区別はできないのではないかというたてまえをとっているわけでございます。
  32. 中嶋英夫

    中嶋委員 ですから、いまの問題の帰結点は、その税制日本のそういう芸術を伸長させ、発展させることにじゃまになっておるようになっていないだろうかと思うのです。税金は取りました、芸術はだんだん下がっていく、粗末になっていく、粗雑になっていくということでは、私は大蔵省としては本意じゃないと思う。その辺のところを次の観点から深めていきたいと思います。  たとえば先ほど申し上げた、はなやかな面はいまのところ大衆の支持でささえられている。その底辺のほうは非常に置き去りになっているという状態、しかも国立劇場で非常にごめんどうを見ていただいても、伝統芸能は、歌舞伎の場合でこういう現象があるわけです。昨年の歌舞伎座十二カ月間の興行の実態を見ると、一月が歌舞伎でこれは赤字です。二月はこれは歌舞伎で、珍しいことですが、特別の出しものがあったせいかとんとんであった。三月は長谷川一夫を呼んでこれは黒字、四月、五月が歌舞伎でこれは赤字です。六月が錦之助が来て黒字、七月歌舞伎座、これは大赤字です。昔から二八といって、八月夏枯れといいますが、この八月は三波春夫が出演してこれは黒字です。九月は劇場を改装して、これは休みましたが、十月、十一月、二カ月間とも歌舞伎でこれは赤字、十二月が大川橋蔵でこれが黒字、今年になりまして、一月が、お正月やっととんとんで、二月は大赤字です。三月から、これは長谷川一夫だから、また黒字だろうと思います。そうすると、日本歌舞伎の殿堂といわれておる歌舞伎座にして、長谷川一夫、錦之助、三波春夫、橋蔵でやっとささえられる、こういう現象ですね。しかも、その観客層はどうかというと、先ほど申し上げたように、何々会社の慰安、あるいは販売合戦なんかでの招待、こういうものにささえられている。実ははなやかな裏を一皮むくとまさに斜陽芸術になっているのです。幸い国立劇場でいろいろめんどうを見ていただいておりますが、この国立劇場の補助金四億二百万円、これも営業で見るならば赤字埋めでもあるわけですよ。この大半はやはり伝統芸能である歌舞伎文楽へ取られている。歌舞伎でも開場以来黒字になったのは一度か二度しかない。文楽は赤字を覚悟でやっていただいているわけであります。こういう状態がいいのか。できれば保護はするが、しょせんこれはだめだというのか。斜陽から保護するのがいいのか、斜陽から立ち直らせたほうがいいのかという問題があると思うのです。その斜陽から立ち直らせることがいま必要なときだと思うのです。  そういう意味で、この補助金などという制度も必要でありましょうけれども、私はむしろ税制面で解放して伸びる力にしていったらどうか、こういう考え方を持つわけです。たとえば伝統芸能以外のものでも、外国では伝統芸能になっているでしょうけれども、オペラの場合仕込み費が高いわけです。この仕込み費が明らかに高いとわかったものは——たとえば産業界の関係では輸出のためということで、税金でも特別措置をやるとか非常な特例がたくさんあるわけです。それならば、やはり芸術の面でもこういう仕込み費の高いオペラとか、絶えず創造的な演目を追求していく新劇とか、こういうものに対して税制面でも考えられてしかるべきではないですか。ただそう言うと、こういうものだけ下げろ、こうとられると、先ほどのお話の繰り返しで、線の引き方がむずかしいというのですが、こういうオペラでも、それは確かになまめかしいオペラもあれば、あるいは陰惨なオペラもありますし、いろいろなオペラがありますから、そういう線が引きにくいのでもやもやになってしまうが、私はその線は引かなくていいと言うのです。大事なものが伸びるためには副作用なんかが起きてもいいのじゃないか、小さな副作用のほうを重視して本体のほうがあと回しになることのほうがむしろ悪じゃなかろうか、こういう考え方ですから、そういう点から考えた場合に、入場税というのはどうしても障害になっている、こう認識せざるを得ないと思うのです。  こういう点について大臣いかがですか。先ほど来吉國さんと私との応酬の中で、大臣は初めは入場税というのは額も少ないことだし、額が少ないからやめろというのではなしに、あまり重要に大蔵大臣考えなくていいところなのですよ。日本の最近の芸能界あるいは諸芸術のあり方、非常にはなやかに伸びているようで実際には停滞している。たとえば歌舞伎の現象のように完全に斜陽化している。何かのはずみでこれはもうだめになるかもしれぬ、後継者も出てこない、こういう状態、これはもうやむを得ないのだと、たとえば石炭産業なんか同じような考え方で見るのか。そうでなくてこれは別の問題、国民の精神文化の問題につながることで大事だというお考えに立つか。その立脚点を、大蔵大臣考え方をひとつお示しを願いたい。
  33. 福田赳夫

    福田国務大臣 伝統芸術をどう見ていきますか、これには政府としても一貫した考え方を持っておるわけです。つまり、これは保存しなければならぬ、こういう考えですね。そういうことから国立劇場も特にできておる。まあ文楽なんというのはほっておくとなかなか残っていくのがむずかしい。しかし、国立劇場ということでこれが保存される可能性を見出しておる。こういうようなことで、あなたのおっしゃられることは私もよくわかりますし、基本的な考え方においてちっとも違いはないように思います。  ただ、それが税の問題とひっからまってきますと、これはまたやや見解を異にするのでありますが、入場税につきまして学生なんかに例外を設けております。これははっきりした基準でいきますからよろしゅうございますけれども、さてその興行の価値判断をして、この興行は価値が高いのだから税は取らないのだとか軽減するのだとか、そういうようなことはこれはまたなかなかむずかしい問題じゃあるまいか。ですから、中嶋さんの御議論を進めていくと、全廃論というところに発展していくのではなかろうか、そういうように思いますが、そうなりますと、また私ども財政論からいってむずかしいと思うのです。いまほっておくと、どうしても直接税、これがだんだんだんだんとシェアが大きくなっていく、この形は私はあまりよくないと思うのです。何とかして間接税的なものはこれを保存したい、こういう考え方を持っておるわけで、そういう点でまたあなたのお考え方とぶつかるので、まあこれは非常にむずかしい問題でありますね。ただ私が考えまして、免税点の問題というのは、これは三十円という免税点がいいかどうかというようなことはあると思います。しかし、これを動かすこともどうもなかなかむずかしい問題でございます。そういう問題はあると思うが、どうも全廃をすべしという議論につきましては、財政をあずかる私としてはにわかに賛成はいたしかねる、こういう結論でございます。
  34. 中嶋英夫

    中嶋委員 その財政面から問題を掘り下げてみたいと思うのですが、日本の諸芸術が高まってくれば、私は財政面に大きなプラスになると思うのです。入場税などと比較にならないほど財政にプラスになると思うのです。たとえば、近年というよりもずっと二十年ぐらい前からですけれども、高度なものとされておる来朝芸術家の公演というものはほとんど黒字なんですね。ですから呼び屋ということばがあるでしょう。外国の有名な芸術家日本に呼んでくる、そして収益を上げているけれども、ときにはそれがはずれてもうからぬ公演をすることもありますが、日本芸術が高まれば海外に大いに進出する要素を持っておると思う。外来のスポーツ、外来の芸術を短期間でマスターするというのは、日本人ぐらいすばらしく、早くマスターする者はないと思うのです。現にわれわれ戦前においても三浦環さんのような例もあるのですね。ですから、私は呼び屋があるならば、日本に呼ばれ屋があっていいと思うのです。日本にはそれだけのものがあると思う。しかもつまらない少しばかりの、百億ばかりの税金を押えておくよりは、むしろこれをどんどん発達させれば、これはまた外貨獲得になると思うのです。  現にビートルズの場合、イギリスでは女王みずからが勲章をくださった。これは芸術性の高さに対する勲章ではないと私は思うのです。これは外貨獲得の功績であの子供たちに——子供といってももう青年でしょうけれども、青年たちに女王みずからが勲章をくれた。メンバーの一人一人の人については新聞をにぎわすようなスキャンダルがあったり何かいたしましても、とにかくかせいだ金がたいへんだということです。それで勲章をくれたのだろうと思うのです。  そういうことを考えると、私はむしろ入場税などのようなものにこだわらないで、日本人の持っておる、本来潜在的にある高い芸術性をむしろ高揚させていく、こういうことが私は財政面にもプラスになると思うのです。少なくともこれだけ産業の伸長に成功した日本人が、芸術の面で劣るはずがない。これはもうかりそうだといって、よそから高いギャラを払って呼んできて、ヘビみたいに長い行列をつくり、三千円、五千円という切符がなくなって手に入らぬ、プレミアムがつくというくらい大騒ぎをしているが、なぜ日本に呼ばれ屋ができないのか。こういう点を考えると、私は財政面の問題はまああなたたち考えたら新たな考え方が立つだろうと思う。ビートルズに女王みずから勲章をくれたというイギリスの例から考えた場合、私はいままでの大蔵大臣のお考え方というものは、きょう、あすに変わらなくつたっていいんですよ。なるほどもう少し考えてみようというくらいの変化があっていいと思うのですよ。この点いかがですか。
  35. 福田赳夫

    福田国務大臣 一〇%という非常に低率な一律の課税が、この興行の盛衰に私はそう影響するとは思いません。むしろそれだけの素質を持っていてこれを伸ばしたいというようなものがありますれば、これはもう補助金を出してやるというほうが的確で、少ない金で目的を達成し得るというふうに考えます。  現に、歌舞伎にいたしましても、これは外務省の予算で世界を回らせる、ことし四十四年度もまたやります。——四十三年度におきましてもやっておるわけであります。そういうふうに集中的にやる、そのほうが私ははるかに効率的だと思うのです。何かそういう、そう効果の少ない方法、つまり一〇%課税を全部やめてしまう、この方法であなたの期待されるような効果は出てこないのじゃないか、私はそんな感じがいたしますが、しかし、芸術の育成、ことにわが国固有の芸術を大いに激励するということについては、私は非常にあなたに共感を覚えます。しかし、方法論としては、税からこれをいくということについては、どうもその目的は達成できないのじゃないか、そんな感じがいたします。
  36. 中嶋英夫

    中嶋委員 海外に日本の伝統芸能を持っていく、確かに成功しているのですよ。しかし、これはやはり珍しさがまだ多いのです。たとえば、この前文楽がヨーロッパをずっと公演して回りましたが、行く前から切符が売れているのです。なぜかというと、へたな宣伝をしなかったのです。ただ、ヨーロッパに昔からある人形があるのですが、それなんか問題にならないたいへんなものだというこの一言だけで、見てみようということで切符が前売りでどんどん売れていた。成功しました。しかし、これは日本でもそうでしょう、初めは珍しいから何でも見たものです。しかし、だんだん二度目、三度目になると、その中のじょうずなものとへたなものの区分けがつきます。これは成長しなければ歌舞伎にしてもだめになるのです。底辺をささえるところが、たとえば文楽の場合でも、芸術を行なう者が切符を売って歩いているのです。新劇でもそうです。劇団から何枚売ってこいといって切符を何枚も割り当てられるのです。売れなければそれを自分で負担しなければならない。それで月に満足な給料をもらわない。それは昔から、芸術の道は険しいといって、食うものも食わない中で辛酸をなめて一つの成長を見るという見方もあるでしょう。しかし、そういうことで成長する大スターもあるでしょうが、一生涯スターの座に立たない、わきで暮らす人がいなければ、スターだけでは成り立ちませんからね。そういうところに私は案外——あなたが見れば何とかなっているのじゃなかろうかと思うかもしれないが、実態は何とかなってない。むしろ非常にあぶない。現に歌舞伎が非常にあぶないです。国立劇場では補助金をいただいているから興行が成り立っていますよ。しかし、国立劇場以外はだめだ。大体昔は歌舞伎なんていなかの町で見られたものです。私が子供のころには来たものですよ。いま地方都市に行ったら、歌舞伎なんか接する機会はほとんどないでしょう。そういうような実態からいって、大衆から離れて衰微していくという現象を救うのに、営業収入の一割というのは大きいですよ。絶対かかる仕込み費その他を取ってしまった残りに比べると、ほとんど利益になるかならぬかのボーダーライン、給料を払えるかどうかのボーダーラインがその一割です。かりにとんとんのところに一割が入ったら、これは大きな役割りをするでしょうね。ですから、低率であったらということではないと思うのです。  その点で、私は次の問題で一番それがはっきりしてきますから申し上げますが、映画関係です。映画関係は、十年前の昭和三十三年には入場者の数が十一億二千七百四十五万人あったのです。それが四十三年になりますと三億二千三百万人。たいへん少なくなってきた。四分の一と言っていいこの激減ぶりです。この激しい、著しい減少というものは、もちろんテレビの影響が最たるものです。しかし、この中に一つ問題があるのは、これほど入場者数が減っておるにかかわらず、成人向けの映画あるいはエロダクション、こういうものが年々ふえているのです。たとえば、三十六年に成人指定の映画は十三であったものが、歴年ふえまして現在は二百六十五、エロダクションものが、三十六年に五つしがなかったものが、四十三年には二百四十四という爆発的な伸び方をしているのですね。こうなると、よけいに健全な映画というものが大衆から隔絶されてくる、こういう非常に危機的な現象がいま起きているわけです。  ですから、こういうような状態は、テレビの影響は確かにそうでしょう。しかし、その影響を受けた映画界が、テレビが伸びたからやめるというわけにはいかない。同時に、これは今さんからも伺いたいのですが、映画文化というものが、いまここではテレビが伸びたから否定されていいかというと、そうではなくて、テレビ自体がやはり映画文化を下地にしていま成長しているのですから、映画文化がだめになればやはりテレビもだめになる。これは否定できないと思う。今後好転して伸びていかなければならないというようなものが、いま言ったような現象の中にあえいでおる。とするならば、入場税の圧力が苦しい、その苦しみに耐えかねて、やむを得ず成人指定とかエロダクションとか、そういうようなもので何とか生き続けようとしておる。本来的な発展の運動というものがなされない状態を起こしておるのは、私は、入場税の問題が非常に大きいと思うのです。こういう面で、私は、入場税の問題を一〇%の低率云々ということで片づけてはいかぬと思うのです。この点はひとつ大臣からも、吉國さんからもあるいは今文化庁長官からも御意見を承りたいところです。時間もないようですから、その点お答えいただきたいと思います。
  37. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 お話しのとおり、映画の入場人員は非常に減っております。しかし、お話がありましたが、これが入場税の影響があるためにということは非常に問題があると思います。御指摘になりました三十四年ごろは、御承知のとおり五〇%から一〇%の重い税率でございます。映画がいんしんをきわめたころは、実は一律に五〇%の時代で、それから考えますと、入場税は五分の一になっておるわけで、その期間に、むしろ税率を下げるにつれて実は入場料は上がっております。それにもかかわらず入場人員が減ってきておるということは、やはり大衆の嗜好の変遷ではなかろうかという感じもいたしますし、また、レコードの発売状況を見ましても、器楽——われわれがかって戦前は一番中心だと思っておったレコードの中心をなす器楽が、ほとんど何千枚という単位でしか出ない。ところが、あのドーナツ盤のいろいろな新しいものは何十万枚というような単位で売れておる。こういう社会的現象が下にあるのではないだろうか。入場税が全然影響なしとは申しませんが、入場税がこういう事態を来たしたとは私ども考えてないわけでございます。
  38. 中嶋英夫

    中嶋委員 ちょっと、途中ですけれども、私は、入場税が衰微さしたとは言っていない。この衰微した現況の中で、成人向けの映画とかエロダクションのほうだけは逆に伸びておる。この実態、この現実を打破するために入場税の撤廃が必要なんだ。入場税があるから映画がこうなったとは私は言っていないのです。——お答えがなければないでけっこうですし、あればあるで……。答えたくないものを無理に質問しません。
  39. 田中正巳

    田中委員長 関連で広瀬君。
  40. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 入場税の問題は、本委員会においても毎国会といっていいくらいにずっと取り上げられてきたわけでありますが、どうしても入場税法の一、二、三条あたりのところで、たとえば課税範囲の問題、あるいは主催者あるいは興行場、こういうような定義等、どうも入場税を取られている現実の場面で、こういうものは予定したものと違うではないかというものにまで入場税がかかっているという問題を、私どもどうしても疑問を持たざるを得ない点があるのです。  それは、ある地区の一つの小さな町、人口二万くらいの町で、地区労働組合というのがある。そこで青年労働者、婦人労働者、若い人たちが、地区労の中に青婦人部というものを設け、そうして地区労の会費の中から予算も幾らかもらっておるというのでそれもつぎ込みながら、そうしてダンスパーティを年に一ぺんやろうというような場合があるわけであります。来る人、来ない人があるから、会員券を回して二百円くらい会費を徴収して、そうして地元における個人の同好者のバンドくらいを頼んで、これには当然若干の謝礼を出すわけです。そうして、その所在の地域の工場の食堂を借りまして、みんなでそこへ行って、役員の人たちや何かが行って、飾りつけや何かやって、若干モールを張ったり何かしてきらびやかにしてムードをつくって、そうしてその中でダンスパーティをやるわけです。どうもこの課税範囲の映画演劇だとかあるいは音楽だとか、そういうようなものと——タンスをやることが主体なんですね。しかし、それにはバンドの伴奏というものがなければならぬというので、その町にある個人の同好グループでつくっている五人くらいのバンドを頼んで、それを伴奏にしてみんなで踊ろうというのです。そうしてその二百円の会費の中には、牛乳一本あるいはコーラ一本くらいのものまで含めてやっているわけです。ところが、会員券を二百円で売ったというので、その二百円に対して一割ぽんと、断じてこれは見のがしませんぞということでかかるわけです。こういうようなものが入場税の対象になっているということくらいは、何らかの配慮をもって無税にしていくというような——現地の税務署はこういう点、労音問題以来非常にきびしくやっているんですね。これはもうほんとうにここまでやられると、たとえば正月休みで部落の人たちがみんな集まって新年会をやろう、それで地元の青年たちが、それじゃじいさん、ばあさん集まってやるのならばわれわれが友情出演でバンドの一つもやってやろうということでやったところだって、本来ならばこれはやらなければならないことになるだろうと思うのです。そのときにはお酒も飲むことだからというので会員券も出す。百円の会費なり二百円の会費なりでやるという場合だったら、その入場という行為に対して課税対象にしてやるのだということに発展せざるを得ないだろうと思うのですね。労働組合がそういうことをやるというようなことに対して、年に一ぺんのクリスマスパーティをダンスパーティにしようというようなことに対して、会員券を出したからということで、二百円に対して二十円ずつみんな徴収する。しかもその地区労は、収支決算をして余ったものは全部役場の、いわゆる助け合い運動に寄付しているのです。これは慣例になっている。それが頭からびしびし取られている。断じて見のがすことはしませんぞというようなことですから、ちゃんと届け出て、何枚会員券を出しましたということで判こを押してやっているのです。  こういうようなものに対して入場税が適用されていることに対して、大臣に政策的な判断として、税法の本来の趣旨からいって、こういうものに対してそこまできびしくやる必要があるのかどうか。そうして、そういうものに対してもっと配慮をしたいというような、何といいますか、ほんとうに大臣らしい答弁を聞きたいわけです。
  41. 福田赳夫

    福田国務大臣 先ほど中嶋さんから入場税につきましてるる御意見を拝聴したわけです。お気持ちは通ずるものがありますが、意見の合わないところもあります。入場税の問題、これはなかなかいろいろ問題を含んでおるとは思います。中嶋さんのうんちくのこもった御意見につきましては、今後税制考えていく上に貴重な材料にしていきたい、かように考えます。  なお、広瀬さんの御質問でございますが、入場税の適用につきましては、私ども気をつけていかなければならぬ、適切にやっていかなければならぬというふうに考えます。気をつけてまいります。ただ、いま御指摘の具体的事例がいいのか悪いのか、そういう問題になりますると、いま承っただけでは所見を申し述べるということはできません。ただ繰り返しますが、この運用につきましては、これが適正に行なわれるようにやってまいりたい、かように考えます。
  42. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 いずれこの問題はまたやる機会があると思いますから、きょうのところはその程度にしておきますが、この問題は、いま申し上げたような事態だとするならば、おそらく大臣の心もそういうものまで入場税を課するのはおかしいじゃないかという気持ちになっておられると思います。事は税制ですからそう簡単にお答えになれなかった、そういうように私は理解して、きょうはこれでやめておきますけれども、主税局に対しても国税局に対しても、その問題についてほんとうに情けのあるといいますか、血の通った税制のあり方というものを十分この問題についてとられるようにひとつ御指示をいただきたいと思います。  以上です。
  43. 田中正巳

    田中委員長 関連で春日君。
  44. 春日一幸

    ○春日委員 関連。返り新参でちょっと伺っておきたいのですが、いま中嶋君、広瀬君の非常に研究された御質問を伺いまして、これは本委員会としても真剣に取り組まねばならない差し迫った問題であるように痛感をいたしました。  そこで、お伺いをいたしておきたいが、いま入場税のうち映画演劇入場税収入は年間幾らか、それから映画演劇、特に映画についてイギリス、フランス、西ドイツ、アメリカあたりは入場税をどのようなぐあいに徴収しておるか、参考のためにこの点ひとつ伺っておきたいと思います。
  45. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 映画演劇関係入場税収入は四十二年度の実績で申し上げますと九十億円ということになっております。
  46. 春日一幸

    ○春日委員 映画だけは。
  47. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 七十九億。それから各国の例でございますが、西ドイツにおきましては地方税法において入場税を課しております。それからフランスにおきましても市町村税で興行税でございます。それからイタリアが、これは興行税でございますが国税でございます。アメリカでは州で課税をしているところといないところがございます。いずれも大体段階税率最高税率が二〇%程度、現在入場税を課しておらないのはイギリスが典型だと思います。イギリスは数年前に廃止をいたしました。
  48. 春日一幸

    ○春日委員 いまお述べになりましたように、特にイギリスなんかではテレビの普及と、それから映画演劇の持つ文化性を高く評価されまして、これに税の負担をかけるのは適当ではない、こういう意味でたしか昭和三十五、六年ごろに全廃されたのではないかと承知いたしております。いま指摘されましたように、現実の問題として、この文化生活の水準を高めていかなければならぬというような国民的要請があるわけでございまして、そのためには、この六兆何千億という膨大な予算スケールの中で、映画演劇に賦課しておりまする六、七十億というものが相当な重荷になりあるいはブレーキになっておる面があるとするならば、これはやはりイギリスの前例等に徴して、十分検討を試みるべき重大な問題でないかと思われるわけでございます。  関連質問でございますから、いずれわれわれも十分検討いたしまして、後日その意見を述べたいと思っておりますが、大臣におかれまして、なお文化庁長官におかれまして、この問題について独自の御判断の上適切な御意見を、再検討をいただきますことを要望いたして終わります。
  49. 田中正巳

    田中委員長 次に只松祐治君。
  50. 只松祐治

    ○只松委員 政府は物価を上げないと言っておりますが、ことし国鉄運賃を上げる予定であります。そこで、一つだけちょっと聞いておきたいのです。  四月一日から国鉄運賃が一五%上がるといたしますれば、すぐ庶民の足に影響してまいります。当然これは、運輸大臣も言っているように、私鉄関係も上がるだろう。そうしますと、現在通勤費の非課税というのは三千六百円まででございます。いつもこれが問題になるのですが、特にことしはこうやって運賃が値上げになりますと、庶民には大きな問題になってまいります。通常この三千六百円に一五%上がるわけですから、近距離の場合には実際上定期なんかもっと上がってくるわけであります。ところが、国税庁が非課税措置としてこれを取り扱う場合には、人事院の給与勧告がなされた後でないとそれを適用しないというか認めない、こういうことでございます。人事院の給与勧告は大体八月十五日を中心に行なわれておりますから、四月一日から実施になっても当分これは認めない。会社側も困るでしょうし、通勤者はたいへんに困る、こういう事態になってまいります。  したがって、政府がこの値上げを認める以上、当然にやはりその値上げに対応して、大蔵当局、税務当局は率先して非課税措置に対して適当な措置をとるべきだと思う。運賃は上げるけれども非課税措置はそのままだというのでは、ある意味では血も涙もない政治ということになる。この点について、本年は政府が引き上げるわけですから、引き上げに適応した措置をとるかどうか、ひとつ大臣から伺いたいと思います。
  51. 福田赳夫

    福田国務大臣 運賃が上がったからすぐそのまま個人の負担軽減しなければならないという完全連動性はないと私は思っております。しかし、運賃が上がるから、家計の状況等も考慮してしかるべき措置を講ずる、これはまたそう考えたほうがいい、こういうふうに考えます。  いま只松さんお話しのように、従来そういう考え方がとられておるわけです。ところが、運賃が上がった、それに対する響きは各個人によってそれぞれ違うわけです。ですから、これはどうしても平均的な数値を求めて、これに基づいて措置するほかはない。そういうようなことから人事院勧告の通勤手当というものが権威ある標準だ、こういうふうにされてきたわけでありますが、この考え方は妥当な考え方である、私はこういうふうに考えます。したがいまして、ことしもまた人事院の勧告がおそらくあるでしょう。ありますれば、それに伴いましてまたしかるべき措置を講ずる、こういうふうにいまはしたいと考えます。
  52. 只松祐治

    ○只松委員 私は、ほかに本来の質問がありますから、こまかく論議しようとは思わない。ほかの通行税や何かの問題のときにこれはやりますからあれですが、中央線では大体三十六キロで国立、東海道線で保土ケ谷、京浜東北線で東大宮、このくらいまでしか非課税措置が認められないのです。ところが、御承知のように政府の方針によっても、たとえば埼玉県あたりはもっと遠い蓮田、久喜あるいは上尾、北本というところに公団住宅がどんどん建っております。当然にこの人たちは非課税措置が完全に認められたとしても十分ではないわけですね。しかもその上に四月一日から上がれば、雇用者側としても困るけれども、何カ月間か非課税措置が認められないからといって通勤手当をなかなか上げない。そこで自腹で払わなければならぬ。私たち社会党がいま埼玉県でいろいろ調査をいたしております。大企業だけでなく中少企業全部含んでおりますが、自分で通勤費を出しておるのが約五〇%に及んでおります。要するに、会社側で通勤費を出しておらないところがまだ相当あるということなんです。あるいは完全に出しておらない。  そういうことはきょうは論議しませんけれども、そういうようなことをいろいろにおもんぱかって一言だけ質問に入る前に、ぜひことしは、政府が国鉄運賃を上げないと言って上げるわけですから、そういう点はあたたかい配慮をしてほしいという観点から聞いておるわけです。これは通行税や何か三月の終わりごろになってしても間に合いませんから、四月一日の運賃改定と同時にできるならば何らかの配慮をしてもらいたい、こういう意味を含んで私は御質問をしておるわけです。
  53. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 御指摘の点よくわかりますが、御承知のようにこの通勤費の非課税の問題は、企業が通勤費を出した場合に、それが合理的な範囲内である限り免税にするという制度でございます。したがいまして、通勤費がどの程度出ておるか、それが実際の問題になると思います。そういう意味で、政府実態調査をして最も合理的と認めた通勤手当の勧告が出たときに、これに従っていくということにしているわけでございますが、従来は御承知のとおり勧告が出てから引き上げておりましたが、去年は勧告が五月にさかのぼりましたので、五月にさかのぼりまして、そして従来払ったものについてもさかのぼって年末調整等で還付するように配慮してあるわけであります。その点は今後も同じように考えております。やはり一応通勤手当というものを基準にしたいという気持ちは変わらないわけでございます。時期についてはそのように去年から改めております。
  54. 只松祐治

    ○只松委員 ひとつぜひ一そうの御努力を要望いたしまして、その話は終わりたいと思います。  次に、税金の問題について少しお尋ねいたします。これも間もなく所得税あるいは租税特別措置質問を来週から行ないますので、こまかくはそのときに譲りたいと思います。きょうはせっかくの大臣に対する一般質問でございますから、大まかな点について、特に前から私が、ことしに入っても質問いたしました、所得税がたいへん重い、さらに重くなってきつつある、それに対して不労所得税金というものは軽い上に多くの脱税が行なわれておる、あるいは国税庁それ自体で把握がなされておらない、こういう問題について二、三指摘をしてみたいと思います。  その一つは、私が昨年来言っております不動産関係のものであります。そのうちでさらに分類いたしますと、一つ法人関係、不動産会社関係の脱税があります。この点についてはたびたび指摘をいたしました。いま一つは、不動産の中で個人関係の脱漏でございます。私は昨年、東京都内をほぼ推定いたしましても額にして一兆円をこす脱税あるいは捕捉漏れがあるということを言いました。当時はまあ一笑に付されるという、表面上はそうでありませんが、ナンセンスというような受け取り方を国税当局にされました。しかし、実際上幾つかの税務署がこれを熱心に取り組み始めますと、末端においてはほぼ私の指摘しておることが間違いでない、こういう状態の捕捉ができたりあるいは脱漏が発見されたりいたしております。  昨年度、豊島税務署において池袋中心に何件か調査しただけで三億からの脱税が捕捉をされました。あるいは四、五日前に中野税務署に行ったわけでございますけれども、中野税務署においていろいろ推計をしたりあるいは実際上ある程度調査をしてみたところ、大体私が言っておるのにそう遠くない推計というものなりあるいは実態というものが明らかになってきております。国税庁長官がきょうはいませんから、直税部長かだれかになると思いますが、国税当局はそういうことをお認めになりますかどうか、ひとつお答えをいただきます。
  55. 川村博太郎

    ○川村説明員 ただいま只松委員の御指摘のとおり、不動産所得は最近かなり所得の増加を見ております。昭和二十年あるいはそれから四、五年の間に賃貸契約を結びましたものが、ちょうど二十年を経過することになりまして、この二、三年来その契約更新に伴います権利金の授受がかなり多いのは事実でございます。  国税庁といたしましても各税務署に指揮いたしまして、種々調査台帳等の整備を努力させておったわけでございますが、確かに只松委員が御指摘のように、従来必ずしも十分に行なわれておったとは言いかねるものがございます。御指摘の点をも十分考慮に入れまして、具体的に昨年あるいは一昨年以来、いろいろな方法でその充実をはかっております。第一には、固定資産税の課税台帳から全国的に組織的にそういった課税資料を整備する。それから第二には、家屋の新築あるいは増築、改築というような際に得られます種々の資料を整備する方法、あるいはいま御指摘になりましたような豊島の税務署における例のように、一つの地図に基づきまして戸押し的に賃貸実例を洗っていくという方法、こういった方法を駆使いたしまして、できるだけその不動産所得の把握の充実につとめたいと考えておる次第であります。
  56. 只松祐治

    ○只松委員 私がこういうものを提案し、提起するのは、特にわれわれは野党ですから、与党に財源を提示する必要はないわけです。ただいつも言いますように、所得税が非常に重い。特に源泉所得税が重くなってきておる。こういうふうに勤労する者は非常に重い税金を一〇〇%捕捉されるけれども、勤労しない不労者は、あるいは資産所得者というものは、一向に税金が捕捉されない。少し前に私は、家庭内職は取り上げてもホステスは取らないという問題を提起いたしました。同じように、私は去年酒やたばこを上げなくても、こういう財源があるではないかということの代償として、この問題を多少勉強したわけなんです。  さらにこの問題は、私が突っ込んでまいりますと、私が提起したことは決して無理なものでも架空なものでもないということが明らかになってきた。あとでいま一つの問題をまた提起いたしますけれども、きょうはこれも時間の関係である程度にとどめますが、たとえば大臣このカード、これはいままで税務署において不動産の関係を調べる台帳たったわけです。これが各税務署の——小さいだけじゃなくて非常に簡単なものです。これで各不動産所得者の台帳というものがつくられて、これによって調査が行なわれておるわけです。何なら下々のことをごらんになりたいならなってけっこうであります。   〔只松委員福田国務大臣に書類を示す〕 ところが、新しいのは私きょう持ってきておりませんが、これでは不十分だということで、今度は新しいのが、これの大体四倍くらい大きいのが、しかも相当綿密になったのがつくられております。おそらく私の提案に基づいてつくられたことだと思いますけれども、要するに、いままでの捕捉され、把握されておるものでも、こういうずさんなものだった。ところが、土地の場合は、私の推定からいきますと、約半分以上は捕捉されておらなかった、こういうふうに見ております。家屋の賃貸その他は七、八〇%捕捉されておったでしょうね。しかし、土地の場合は五〇%捕捉されておる。捕捉されておってもたいへんずさんなものであったということであります。ある意味では私は大蔵当局、税務当局の責任を追及しなければならないわけですが、きょうはいまさらそう言ってもしようがないので、今後ひとつ十分にこういう問題に取り組んでもらいたいということを、基本的にお願いをいたしておきたいと思います。私がいままでやってきておりましたこと、あるいは今後やることもそういう観点からでございまして、こういうものはたくさん取るけれども所得税は一向にまけないというのでは、私が提案いたしました趣旨に一向に沿わないし、国民をさらに苦しめるだけでございますから、その点は十分御理解をいただきたいと思います。  そこで、若干だけ説明をいたしておきますが、私は東京都で一億二千万坪からの土地があり、その中の三分の一、四千万坪ぐらいが借地である、そういうものを推計いたしまして、一兆二千億円ぐらいの更新料や何かを取っておるだろう。これを現在の把握率やいろいろなものを換算いたしますと、大体二千四百億円ぐらい脱漏がありはしないか、こういうことです。これを、私が中野税務署に行きまして税務署の側の人の御説明あるいはいろいろ計算された数字、そういうものと、私のまた推測、推計というもので計算いたしますと——東京都内に四十二の税務署があるわけでございますが、中野税務署は申告所得で二・二%、不動産所得で二・三%でございますから、ほぼ全都の平均と見て間違いない。そういう形で推計をいたしてまいりますと、やはり一千八百億から二千億近いものになる。税務署の説明によりますと、これは五カ年間です。私は年間三百七十八億円とほぼ推計をしておりますが、中野税務署側からいくとこれはもっと下がってまいります。しかし、私はほんとうに確実にやれば、これよりもっと取れるだろう。しかし、これをいまから更新が約五カ年あるといたしまして、そういう推計をいたしましても千八百九十億になるわけでございますけれども、こういうものが東京都だけでも出てくる。さらに関東やその他ずっと広がりますと膨大なものになってくる。そういうことの具体的な裏づけとして、中野の地主さんで権利更新料だけで七百万円の脱税、あるいは同じく地主さんで五カ年間で一千百万円の脱税、また同じく地主で三百七十五万円の脱税、あるいは三年間で四百三十万円の過小申告に基づく脱税、調べればほとんどの人がこういう脱税をしておるという状態が出てきておる。ひとつこの問題につきまして国税庁当局もさることながら、税体系として大蔵大臣においても十分ひとつ心して、ぜひこういう面に対する課税の捕捉をしていただきたいということをお願いしたいと思いますが、いかがでありますか。
  57. 福田赳夫

    福田国務大臣 たいへん貴重な御意見であります。十分さような方向で努力をいたしたいと存じます。
  58. 只松祐治

    ○只松委員 ぜひひとつ、この次の所得税やなんかのときにこの問題は論議したいと思いますので、そういう基本的な方向でお願いをしたい。  それからいま一つ、不労所得の中で大きな脱漏になっておると目されておるものに証券の譲渡に基づく課税、これは年間五十回二十万株までは非課税に現在なっておりますけれども、実際上これに課税されたというのはきわめて少ないわけです。これもまた詳細には他日論議をいたしたいと思いますが、国税庁でも主税局でもけっこうですが、証券譲渡に基づくいわゆる売買利益に基づく課税額は幾らぐらいあると推計されるか、お答えをいただきたい。
  59. 川村博太郎

    ○川村説明員 御質問の証券譲渡によりまする課税額、実は税務統計にそういう細分がございませんので、明らかにはしてございません。
  60. 只松祐治

    ○只松委員 それはわかっておりますが、推計した場合にどのくらいになりますか。
  61. 川村博太郎

    ○川村説明員 株式の譲渡に対しまして課税をいたします場合には、いまの年五十回二十万株以上という場合と、それからその他買い占めによる利得を得る場合、あるいは事業譲渡類似行為による場合の三つがございます。実は、これは個々に非常に特殊なケースでございますので、各税務署にある程度の感触を聞いてみませんことには、現在ちょっと推計することも困難かと存じます。
  62. 只松祐治

    ○只松委員 私が去年、いま申しました不動産所得の場合でも税務当局は問題にされなかった、また捕捉することがきわめて困難だ、こういう考えでありました。しかし、私はそのときも、一般の商店の売り上げや何かを捕捉するよりも、一ぺん調査をしておくと簡単なはずだ、決して困難ではない、こういうことを言いました。事実、そのようになってきております。この証券から出てくる売買利益の場合でも、米国や英国はたぶん大体取っておるわけでしょう。どうです、吉國さん、あなた博学だけれども……。
  63. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 英国におきましては、御承知のとおり従来短期のものを除いてキャピタルゲインに課税をいたしておりませんでしたが、一九六五年から短期、長期の株式売買による譲渡に対する課税を開始いたしました。いわゆるキャピタルゲインに相当するもの、それを課税するようになったわけでございます。  それからアメリカにおきましては、長期のものにつきましては一般の譲渡と同じく二分の一課税か、あるいは二五%課税特例の選択が認められております。一応、課税所得になっておるわけでございます。
  64. 只松祐治

    ○只松委員 そこで大臣、諸外国では課税をいたしておる国もあります。また、できるわけであります。わが国においても五十回であるやら二十万株であるやらさだかでない。事実、課税対象になっていない、こういうことだと思います。来年度は利子所得やあるいは株の配当所得等に対するそういう措置も、当然問題になってくるわけであります。したがいまして、四月一日から間に合わせるといっても無理でございますけれども、明年度を期して株の譲渡所得に対する課税について研究をする、対策を立てるというお考えがおありであるかどうか、私はぜひひとつ御検討ただきたいと思いますが、いかがですか。
  65. 福田赳夫

    福田国務大臣 これはなかなかむずかしい問題ですが、特例が来年の三月一ぱいで切れるというチャンスでもありますし、慎重に検討するというふうにお答え申し上げます。
  66. 只松祐治

    ○只松委員 ひとつ慎重に前向きに御検討ただきたいと思います。  そこで、主税局でも国税庁でもけっこうでございますが、もし実施した場合に、幾ら譲渡益なり課税が出るか、ひとつ推計資料をいただきたいと思いますが、委員長、資料要求をいたしておきます。
  67. 田中正巳

    田中委員長 心得ました。
  68. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 たいへんむずかしい資料でございますので、極力勉強いたしてみまして、御趣旨に沿うようなことにいたしたいと思いますが……(只松委員「電子計算機」と呼ぶ)御指摘のように電子計算機を使いましても、もとがわからないものでございますから、非常にむずかしいということだけ申し上げておきまして、ひとつ努力してみたいと思います。
  69. 只松祐治

    ○只松委員 次に保険業務について、特に生命保険の問題について少し質疑をいたしたいと思います。  保険というのは、申すまでもなく私たちの生命や財産の安全を守るためにかけている金であります、財産であります。さらに老後の生活安定等のために、いわば社会保障、日本では社会保障制度がたいへん立ちおくれておりますので、この民間の保険業務によって補われている面がきわめて大きいわけです。それだけに私は、わが国の社会において非常に重要な面を受け持っておると思う。重要な面を受け持っておるということは、きわめて社会性を持つわけですから、私は、この会社のあり方あるいは保険業務というものが民主的であらねばならぬ、こういうふうに思っております。ところが、保険業務が民主的であるかといいますと、一言でいうならば、きわめて非近代的1あとで私はそのデータを多少発表いたしますけれども、封建的といいますか、あるいは昔ながらといいますか、全く言語道断の限りの状態でございます。大臣は、概括的にそういう実態を知っておるかと言えば、お答えにくいかと思いますので、順次私はそういうことを指摘してお尋ねをしてまいりたいと思います。  たとえば、いまの保険会社ほとんどが相互保険でありますから、総代というのがあります。私は、ここに大きな会社の保険の総代全員の名簿を持っております。これに全部載っております。総代は、新聞をお読みになるとおわかりのように、これだけ総代を推薦いたしますと新聞に公告をして、たしか二十分の一ですか、二十分の一以上の反対があればなんですが、反対がなければ決定したものと認めます。だれが全契約者の二十分の一も、知りもしないし、反対も賛成もあるものですか。おそらく反対もないでしょうが、賛成もないでしょう。あったらひとつお答えをいただきたい。  そこで、私はその中でおもな人々を、この膨大な中からチェックしてみました。そうすると、一人で幾つもの総代を兼ねておる者があります。たとえば岩手県の雫石さんというのは朝日生命、住友、安田、第一、宮城県の一力さんは朝日、第一、三井、栃木県の藤松さんは第一、第百、明治、安田、必要ならば提示をいたしますけれども、こういうふうに一人の方でたくさんの保険会社に名を連ねて、おそらく本人も知っているかどうかわからないでしょう、こういう状態でございます。私は、総代制度をやめて、もっと民主的にすべきである、あるいは株式会社にするか、何かこの会社の経営管理者の選び方、あり方について抜本的な改正をすべきであるということを何年か前に言ったことがあります。ところが、全然改めないで、依然としてこういうところにあらわれてきておりますように、あるいは選出方法にありますように、全く会社側の役員が適当に総代の人を名ざしで選ぶ。そして新聞にちょいと公告を出して、それで異議がなかったということで総代になる。そして総代が役員を選ぶ。こういうインチキきわまりない制度というものがほかの社会に通用いたしますか。全くこれはその辺の八百長よりもまだひどいですよ。どこにチェックする方法があるのです。二十分の一、この総代が悪いからということをどうしてチェックするのです。それから会社の役員から選ばれた総代の人が、何で会社の役員をチェックいたします。株式会社の場合には、曲がりなりにも総会をやります。ところが、あれだけの公共性を持ち、しかも会社の一年間の収益ではない、恒久的な安泰企業をやっておらなければならない企業の中から、こういうぶざまな状態といいますか、たいへんな状態、これを大臣はどうお考えになりますか。
  70. 新保實生

    ○新保説明員 これは数年前、当大蔵委員会でも御注意、御指摘がございました。大蔵省といたしましては、その後、保険審議会にこの問題をどういうふうに解決したらよろしいかということで諮問をいたしまして、その答申をいただきました。それがただいま先生がおっしゃった総代の選考委員会というものをつくりまして、そして総代を選考し、それを新聞公告をする。また別途、評議員会というものをつくりまして、これは会社の経営全般につきまして意見を申し述べる。こういう制度をとって現在実行中でございます。それが完全に機能しておるかどうかという点につきましては、まさに先生御指摘のような遺憾な点がまだ残っておりますので、私どもはほんとうにその制度の趣旨に沿う運用をするように、今後指導してまいりたいと考えております。  生命保険会社は、御承知のように相互組織をとる会社が多うございまして契約者が全部社員である。契約者ということになりますと、数が何千万、こういうことになりますので、どうしても全員代表というのは物理的にとりがたいという面もございます。そんな意味で社員総代という制度が考えられたわけでございますけれども、これも名目的なものに堕さないように、ほんとうにその制度の趣旨に沿うように今後改善に努力をいたしたいと考えております。
  71. 只松祐治

    ○只松委員 具体的にどういうふうにおやりになるか、きょうは大臣質問が中心でございますから詰めの質問はできませんが、あなたは当面の責任者ですが、大臣のほうから抜本的にこの問題は解決していただく。本来、もっとわが国で社会保障制度が前進されるということになれば、この民間の保険や何かの部門は多少変わってきますね。だから、その面も必要なわけですけれども、きょうはそこまでの関連は私は論議いたしません。現在ある姿の保険業務として、私は抜本的な改正が必要だとこう思いますが、大臣のお考えを聞きたい。
  72. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、その問題についていままであまり考えたことがございませんが、御指摘を伺っておりますと、これはひとつ考えてみなければならぬ問題だというような感じがいたします。十分検討しておきます。
  73. 只松祐治

    ○只松委員 ぜひひとつこの相互保険会社のあり方について、管理運営について御検討ただきたい。  次に、若干その内容に入ってみたいと思います。現在の日本の契約高、件数、金額、それから年間の契約高、金額、一年間の解約の件数、金額、そういうものをひとつデータがありましたら御説明をいただきたい。一番新しいものをひとつ……。
  74. 新保實生

    ○新保説明員 一番新しい四十二年度の実績を申し上げます。  四十二年度の年度初めにおける保有契約高は二十六兆一千九百六十一億でございます。これに対しまして四十二年度中の新契約でございますが、これが十兆三千二百四十七億でございます。合計いたしまして、四十二年度末における保有契約高は三十六兆五千二百八億、こういう数字になっております。  それから解約の件数、金額でございますが、四十二年度中における解約件数は百九十九万一千件、金額にいたしまして七千八億でございます。それから失効の件数は三百四十八万四千件、金額にいたしまして、保険金額でございますが、二兆九千五百二十三億、復活が件数にしまして四十六万九千件、金額にしまして二千四百三十七億円。解約と失効の合計は、件数にしまして五百万件、金額にしまして三兆四千九十四億円、こういう数字でございます。
  75. 只松祐治

    ○只松委員 いずれにしても膨大な数字ですね。ここでちょっと計算をしましても出てくる問題は、四十二年度一年間の新契約高に対しまして解約、失効が五〇%、新しく契約がなされても半分は解約するか失効をいたしております。それから失効だけを見ましても三分の一、四十二年度に出ております。一年間新しく契約をとりましても三分の一以上のものが効力をなくしておる。これは一体どういうことですか。ほかのいろいろな仕事の中に、一年間で失効、解約を含めて、そういうだめになるものが二分の一以上、それから失効するものが三分の一以上、でたらめというか、保険業界としてはこれがあたりまえになっておるわけですね。何かこれと類似のものでこういうものがありますかどうか。これを当然とお考えになりますか、いかがですか、大臣
  76. 福田赳夫

    福田国務大臣 それは長年のしきたりもあるようですが、やはりその長年のしきたりを反省してみる必要があるような感じがいたします。こういう失効が多額にのぼり、解約がそう多額にのぼるということは、これは会社にとりましても、また契約者にとりましても、決していいことではないのでございますから、これは何か合理化をする必要がある点じゃあるまいか、さように考えます。
  77. 只松祐治

    ○只松委員 ここの中で失効に基づく一年間の実際の失効金は幾らです。
  78. 新保實生

    ○新保説明員 私どものほうの説明不足の点がございましたので、ちょっと補足させていただきますが、解約ということばと失効ということばを使っておりますが、解約と申しますのは、保険契約成立後、五年なり十年たって本人の希望なりによりまして、その意思によりまして解約をいたすものでございます。これは最近の情勢によりまして、新しい保険種類などが開発されておりますので、従来の保険よりもこちらのほうがよろしいという本人の希望がございますので、そういう乗りかえなどが含まれておるわけでございます。したがいまして、その契約の成立年度は新契約よりもはるかにさかのぼりまして、三年なり、あるいはものによりますと十年くらい前にさかのぼっております。  それから失効の金額でございますが、これは四十二年度で申し上げますと、保険金額にいたしまして、二兆九千五百二十三億円でございます。いま申し上げましたのは保険金額でございまして、それに対応する払い込み済みの保険料の累積は、四十二年度が五百四十四億円でございます。それから四十一年度は四百九十二億円でございます。四十年度は四百七十七億円でございます。それから三十九年は三百七十九億円、三十八年度は三百二十七億円でございます。
  79. 只松祐治

    ○只松委員 いまお聞きのように、四十二年度は五百四十四億円、これがかけ捨てになっておるわけです。失効といえば、何か聞こえがいいようですが、かけ捨てになっているわけです。国民が被害を受けている。これはたいへんな額ですよ。いままでこういう実態はほとんど明らかにされていなかった。四十一年が四百九十二億円、四十年が四百七十七億円、三年間を合わせただけで軽く一千五百億をこしますね。こういう膨大なものが、保険会社のいわばただ取りになっておる。ただ取りが、どういうふうに流れていくかはまた別ですよ。要するに、国民が被害を受けている。こういうことが明らかになった。  そこで、今度はこういうものとうらはらをなす外務員の状態を少しお聞きいたします。外務員が一年間にどの程度新規登録されて、そしてどれだけやめていくか、数字があったらお答えいただきたい。
  80. 新保實生

    ○新保説明員 四十一年度から申し上げますと、新規に四十一年度に登録されましたのが三十五万人、業務を廃止しましたのが三十三万人、四十二年度は新規に登録されましたのが三十八万五千人、業務廃止が三十三万八千人、これはその年に登録された人がその年にやめるという数字でございませんで、累積された登録外務員の中でやめた者が三十三万人、あるいは業務廃止をした者が三十三万八千人、こういう数字でございます。
  81. 只松祐治

    ○只松委員 若干数字が違っております。これは外務員の労働組合の数字ですが、これによりますと、三十九年度は三十九万人の新規登録に対して三十四万一千人がやめていっております。四十年度は五十万人の登録に対して三十六万人がやめていっております。四十一年は五十四万八千人の登録に対して三十九万七千人がやめていっております。皆さん方の数字とだいぶ違いますね。これは労働組合が自分で調査してつくった数字です。登録は、直ちにあなた方のところに提出されているわけですが、要するに、これだけ毎年新しい人が、主としてこれは御婦人が多いですね、おかあさん方がお入りになって、保険会社に採用される。しかし、これだけたくさんやめていく。その間に、わずかな間ですから、いわゆる義理募集、縁故募集といって、皆さん方も経験が——少しえらくなってくると顔が広くなりますから、知った人から入ってくれ、入ってくれということで、あちこちから攻め立てられる。そして入る。しばらくして取る口がなくなってくると、もうやめていかれる。おかあさん方のこういう無理な犠牲の上に、しかもそういう義理や縁故で、それでは顔立てにちょっと入っておきましょうということで入っておいて、そして一年以内で大体やめる。これが失効になるわけですね。これが年間五百億をこす膨大な金になる。これはたいへんなことですよ。そう言ってはなんだけれども、その辺で何か起こって五百万円もらったとかもらわぬとかで、収賄でたいへんな問題になる、あるいは脱税だって百万だ一千万だといって大騒ぎになります。ところが、こうやって五百億からの金がどこかに消えてしまっている。そうして日生劇場とかビルディングがどんどん建つし、また郊外に疎開していく、そういういろいろな現象が起こってきております。  それで新しく入ってこられる男と女の比率も全部出ておりますが、その八割以上が御婦人方です。そしてその人たちは、どうやって登録するかというと、よほどのことがないと、ほとんどチェックするということがないんですね。こういう採用のしかた、登録のしかたに問題がある。契約のしかた、契約をとりにいく労働者の採用のしかた、使用のしかた、賃金形態、こういうものを、一体監督官庁である皆さん方は放置しておいていい、きわめて近代的な保険業務である、こういうふうにお思いですか。  時間がだんだんなくなるから、どうせこれはこの次にやらなければならぬでしょうが、諸外国の採用条件やら登録、むしろ免許といっていいんですが、外務員の方々のあれとは、もう雲泥の差ですよ。こういうものに、あなたたちはなぜ抜本的にメスを入れないのですか。
  82. 新保實生

    ○新保説明員 先生おっしゃった点は、まさに生保業界の体質的な欠陥でございます。私どもは年次計画を立ててこれを改善するということで、いろいろな施策を推進しているところでございます。  まず数字の違いでございますが、これは外務員と登録代理店と二つございますが、おそらくその登録代理店が入っているか入っていないかの違いじゃないかと思います。いずれにいたしましても、非常にターンオーバーが激しいということは事実でございます。それで私どもとしましては、こういう施策をいま考えて実行中でございます。  その一つは、専業外務員というものを多くしていく。これは副業的な家庭婦人によるものと、それから専業的なセールスマンというものを養成する、その二本立てでいく。そうして生産性の高い専業外務員というもののウエートを高めていく。日本の労働事情等から申しまして、家庭婦人のパートタイマー的なもの、これを全く否定するということも現実的ではないと考えておりますが、しかし、専業外務員の地位あるいはウエートというものが非常に少ない。これを年次計画的に引き上げていく、そういう施策を推進いたしております。  それから義理募集あるいは無理募集と申しますか、そういうことに起因するところの契約の継続率が七割程度である。これも一つの問題でございますので、私どもは会社から年次改善計画というものの提出を求めまして、また会社は、それをそれぞれの地方の支社なり支部に、ブレークダウンによります継続率の改善目標というものを設定してやっているわけでございまして、その効果が漸次あらわれてまいっております。  しかし、これも決して現状でよろしいと満足しているわけではございません。大いに各社を督励しまして、御指摘の点の改善に努力いたしたいと考えております。
  83. 只松祐治

    ○只松委員 大蔵大臣もめしということでございますから、人道問題でございますから、きょうは突っ込んだ質問はこのくらいで終わって、また他日いたします。ただ、ここで若干の要望をいたしておきますから、大臣からお答えをいただきたい。  管理運営のあり方について、株式会社なり、あるいは役員をもっと指名じゃなくて公募するとかなんとか、そういういろんなことを民主的な方向に改善するために、ひとつ抜本的な方策をとっていただきたい。  それから次に、内勤と外勤の勤務条件というのが天と地ほど違う。特に、外勤の場合は、諸外国と日本とはたいへんに違っております。したがって、いわゆる採用、雇用条件あるいは給与のあり方、こういう問題についても、いまみたいな相撲部屋の徒弟制度の給与体系みたいな形ではなくて、もっと給与体系から改める。とにかく五十万人新しく入ってきて三十六万からやめるというような、こういうようなでたらめな、めちゃくちゃなことがなくなっていくように、ひとつもっと——諸外国では大体男の勧誘員が中心で、もっと勧誘員というものは権威あるものになっている。一つの免許制になっておる。したがって、日本の場合はそれを一挙におかあさん方のパートタイム式なこういうものをやめるということはなかなかむずかしい点もあるかと思いますが、しかし、決してそれは私は不可能ではないと思う。いまみたいに、寄せ集めてきてはこき使って追っ放していく、そうしてまたかわった者を連れてくる。こういうことの上にいかにも近代化したようなビルディングを建てて装いをした保険業というものに、われわれの生命や財産やいろいろなものを恒久的に委託していく、これは私はお粗末きわまりないことだと思う。ぜひこれは、そういうものの一つの基本をなす外務員や何かの採用から雇用から給与体系から、いろいろな問題についても、これは労働省あたり等とも御連絡の上で、ぜひお考えをいただきたい。改善をしていただきたい。  そういうものの一つとして、保険審議会に労働組合の代表なり外務員の代表を一人くらいお入れになったほうがいいだろうと私は思います。そういたしますと、多少そういう実態というものは明らかになってくると思いますから、審議会のあり方そのものにも、業界代表だけではなくて、私たちは不十分でいろいろ文句を言っておりますが、税調でもやはり労組代表が入っておりますから、ひとつそういう形でぜひお考えをいただきたいと思うわけです。  それから私は、これが一番最後に論議しようと思って、しかも若干皆さん方から資料をいただいておりますが、これも大蔵大臣にこの前、こういう保険のような長期的な貯蓄のもの——私はいまインフレだと思うが、大蔵大臣は、いや、インフレじゃなくて物価高だとおっしゃったと思いますけれども、いずれにいたしましても、こういう貨幣価値が下落していく現状では、スライド保険というものをもっと重視しなければならない。保険そのものが私は、全般的にこの貨幣価値にスライドをしていかなければならない、こういうふうに考えております。漸次そういうものができつつありますね、御説明を受けましたけれども。私は、ひとつこの問題をもっと抜本的に、恩給やあるいはその他のものも、これはずっとスライドをいたしておるわけですから、いま新契約としてスライドのやつに入れば別ですけれども、いままでの、ずっと前に、百万円も入ったら一生食えると思っていた人が、百万円じゃとうてい食えっこない。昔は高い金を払っていた。会社の含み資産やその他をずっと見ましても、これは表面上発表している総資産だけでも、この十年間で十倍以上になっておるわけです。含み資産等を見れば、これは膨大なものになるわけです。そういう点もひとつ総合的にお考えただきまして、このインフレ経済下における保険業務というものが、やはり貨幣価値にスライドするように、これもやはり直接の指揮監督じゃありませんからなかなかむずかしいと思いますけれども、できるだけそういう方向にいくようにひとつ御尽力をいただきたいと思います。  ほんとうはこういう問題をこまかく論議したいと思いますが、他日に譲りまして、一応きょうは大綱だけの質疑、意見を述べることにとどめまして、私の質問は終わりたいと思います。大臣の御所見を伺いたいと思います。
  84. 福田赳夫

    福田国務大臣 たいへん建設的ないろいろの御意見を承りまして、たいへんありがとうございました。なお、御趣旨の点には、十分私も検討してみよう、かような考えでございます。
  85. 田中正巳

    田中委員長 暫時休憩いたします。本会議散会後再開いたします。    午後零時四十五分休憩      ————◇—————    午後二時五十八分開議
  86. 田中正巳

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。河村勝君。
  87. 河村勝

    ○河村委員 SDRとIDAの関係は一応質疑が終わった形でありますが、ちょっと質問機会がございませんでしたので若干伺いたい。それとIDAの関係で経済援助の関係を少し……。  一昨年の秋十一月にポンド危機があって以来今日まで、相次いで各主要国でいろいろな形で通貨不安が起こってまいりました。それにはいろいろ事情はございますが、その原因は流動性ジレンマももちろんありますけれども、一方で固定レート制の矛盾があって、それがからみ合っていろいろな形であらわれておるのだろうと思います。そういう意味でSDRを創設することによって、どの程度かわかりませんが、何がしか流動性の増加と一いう面の効果はあると思いますけれども、今日いつまた再燃しないとも限らない通貨不安というものに対してSDRの創設がどれだけの効果を持つものであるか、そういう点についての御見解を伺いたい。
  88. 福田赳夫

    福田国務大臣 この間も申し上げたわけですが、いま通貨不安の根源は、これは流動性の不足という問題よりはむしろ主要国の一部における国際収支の不均衡、これが根源をなしておると思うのです。SDRの問題は、これはそういう問題とは別に、世界経済を全体として成長発展させるために、新しい第三の決済手段を必要とする、こういう長い目の大きい問題として検討され、実現されるという段階に来たわけですが、たまたまそれが通貨不安の時期と一緒になってきた。ですから、このことが不安解消策として立案されたわけではございませんけれども、しかし、これが実施されるということになりますれば、これがちょうどただいま際会している通貨不安、これにかなり大きな影響、いい役割りを演ずるであろう、こういうふうに思います。
  89. 河村勝

    ○河村委員 通貨不安の原因は、むしろ国際収支の問題にあるので、SDRはそれに関係ないのだとおっしゃりながら、しかもなお通貨不安に対していい効果をもたらすであろうという意味は、どういう意味でございますか。
  90. 福田赳夫

    福田国務大臣 SDRは、危機対策——通貨不安に対する対策として考案されたのではないのです。そうではなくて、長い目で見て、世界経済を全体として成長発展させよう、こういうところから見ると、いまの国際決済手段では不足ではないか、新しい通貨を考えよう、こういうことから創案をされたのです。しかし、時あたかも通貨不安のこの際でありまするから、これが発動されるということは、この通貨不安の問題に対しましても、これが積極的な役割りを演ずるであろう、こういうふうに見ておるのです。   〔委員長退席、倉成委員長代理着席〕
  91. 河村勝

    ○河村委員 これも前に議論になりましたけれども、SDRの発動については、アメリカの国際収支の改善が一つの条件になっているということでありますが、それが条約の条文的には、国際通貨基金協定の二十四条の第一項の(b)、これが根拠規定になっているわけですか。
  92. 村井七郎

    ○村井政府委員 さようでございます。
  93. 河村勝

    ○河村委員 この条文は常非にわかりにくいので、御説明をいただきたいのですが、「特別の考慮事項として、準備資産を補充する全体的な必要があることについての共同の判断、」というのがございますね。これは初めから共同なんていうのがなければ、もともとこの協定ができないにもかかわらず、こういう規定が入っているのはなぜであるか。  それから「よりよい国際収支の均衡の達成及び将来における調整過程の機能の改善の可能性を考慮したものでなければならない。」という、非常にわかりにくいことばで表現されておりますが、実質的に一体どういうことを意味しておるのか。それを伺いたいと思います。
  94. 村井七郎

    ○村井政府委員 この(b)項に書いてありますのは、言うまでもなく(a)項を受けましての項でございますが、(a)項は、全体的なインフレにもならず、デフレにもならず、よく考えて発動すべきであるという大前提を打ち立てまして、それを受けまして(b)項におきましては、まず最初の発動のときに特別に注意を要する、歴史始まって以来の発動であるものですから、スタートは十分慎重の上にも慎重であるべきであるということで、特別の考慮事項として次の三つを考えなければいかぬということで、第一が「準備資産を補充する全体的な必要があることについての共同の判断、」ということになっておるわけでございますが、これはそもそも協定をつくりますときに、協定の成立というものと発動というものとは別個に考えよう、協定成立即発動ではなくて、発動はまた別個に考えようということがあったわけでございます。最初はいわゆる対処案というふうに呼んでおったわけでございますが、一応案をつくっておいて、そうしてそういう環境にまさに適合するというような状況になったときに引き金を引くということで、二挙動の動作を必要とするということになったわけでございます。その最初の挙動は、この協定全体の仕組みでございますし、第二番目のいよいよ発動するというときには、そのときの環境、つまり、準備資産を補充する流動性不足というものがあるかどうか、一体そのときに流動性が不足しているのか不足していないのかということをもう一度全体的に集まって判断しようというのがこの趣旨でございます。  二番目の「よりよい国際収支の均衡の達成」と申しますのは、先ほど河村委員も御指摘になりましたように、主要国のよりよい国際収支の均衡の達成ということでございまして、アメリカというような国が国際収支が非常に赤字であるというときに、やはりこれが均衡過程にはっきり向かっているということが判断されないとぐあいが悪い。つまり、逆に申しますと、赤字がずっと続いているというなら、ドルの価値についての問題はあるにいたしましても、流動性自体はそういうかっこうで供給される。アメリカの国際収支の赤字ということは、流動性の不足ということにはなるわけですが、それだけでは、ただ国際的なインフレになるだけで、全体の仕組みをこわしてしまう。したがって、アメリカの国際収支が改善に向かうということがやはり一つの要件であるということが——アメリカだけではございませんで、主要国の国際収支というものがよりよい改善に向かっているという判断をする、これが第二番目の事項でございます。  第三番目の「将来における調整過程の機能の改善の可能性」と申しますのは、これは国際収支の赤字とか黒字とか申しますのは、各国がやはりそれ.それまず国内措置によりまして、自己ができる限りのことを経済運営の節度として達成する、これがまず第一番目である。そうではなくて、各国がいわばいいかげんな経済運営をやっている、その結果、国際流動性が不足するというような場合に、これにSDRを配分するというようなことがあっては、これまた世界的なインフレにもなりかねない。したがって、各国の節度というものが十分に働いているかどうか、この調整過程の努力というものが実際あるかどうかということを見ようとするというのが第三の要件であるというふうに考えております。
  95. 河村勝

    ○河村委員 よくわかりました。そうしますと、実際の問題を判断する場合に、昨年度アメリカの国際収支は一応改善されました。中身は必ずしもよくないけれども、だいぶ改善された。それから金の二重価格制のもとで、一応何とか通貨不安も小康を得ている。今日のこの状態をもとにして考えた場合には、大体これでもって新しくSDRを創設し得るという状態考えられるのかどうか、その辺のところをちょっとお聞かせ願います。
  96. 村井七郎

    ○村井政府委員 アメリカの国際収支がまず改善されておるかどうかの判断でございますが、これは私たちも、もう一歩突き詰めまして、よくアメリカの人たちあるいは世界各国の人たちとも意見をかわさなければならないというふうに考えております。と申しますのは、なるほど昨年は、総合収支的ないわゆる流動性ベースというもので一億八千万ドルの黒字を出しましたけれども、これはたびたびここでも御議論になりましたように、資本収支の改善、つまり、外国からの資本流入ということによる部分が多くて、貿易収支面での改善というものがどうも十分でなかったということがございますので、総合的に見て、なるほど帳面づらは黒字であるかもしれないが、ほんとうの意味で改善に向かっておるかどうか、あるいは努力があるかどうかということは、もう一度判断をするということでないとぐあいが悪いと思います。ことにアメリカの新政権の発足以来、インフレ抑圧というような努力をかなり重要視してスタートしておる、また、いろいろな施策もそういう方向に向かって進んでおるという、一つの改善の努力ということは私たちは感じるわけでございますが、これをもう一度各国が集まって検討することが必要ではないかというように考えております。
  97. 河村勝

    ○河村委員 そうしますと、わが国としても今日の状態ぐらいのところを前提にすれば、SDRの発動について賛成するかしないかという態度はまだきまっておらない、そういうふうに考えてよろしいのですか。
  98. 福田赳夫

    福田国務大臣 わが国政府はもうこれに賛成するという腹をきめているのです。そして賛成していただきたい、御承認を得たいとお願いをしておるわけです。
  99. 河村勝

    ○河村委員 私が申し上げておるのは、制度そのものではなしに、現実に第一回のSDRの配分をやる、このことについての態度、そういうことでお伺いしているわけでございます。
  100. 福田赳夫

    福田国務大臣 なるべく早く配分行動までできるようになるように願っております。
  101. 河村勝

    ○河村委員 やや仮定の質問みたいになりますけれども、これが現在程度の状態で発動されたとしまして、かなり主要国間でも経済力格差というか、購買力格差といってもいいかもしれませんが、現実にあるわけでありますから、これが発動された場合に、この協定の内容によりますと、純累積配分額の年平均の三〇%以下に下がらぬ限りは、引き出したものは返済——返済というか復元する義務はないわけですね。そういう意味である程度通貨的なものになってくるわけですが、そうしますと、やはり経済力が強いところにSDRがどんどんたまっていってしまう。吹きだまるようなかっこうになってしまって、SDRそのものは、金と完全に縁は切れてないにもかかわらず、金と交換性はないということでありますから、そういうようにだんだん片寄っていきますと、通貨的な、通貨性としての信用がだんだんなくなって、SDRそのものが行き詰まってしまうのじゃないか、そういうことが考えられないか、その点についてのお考えをお伺いしたい。
  102. 村井七郎

    ○村井政府委員 SDRがとにかく一方に偏しない、あるいは焦げつかないということは、基本的に重要な事項であるということで、所々方々にそうならないようにうたってございます。これが全体を通ずる精神でもあるかと思います。先ほどお話しいたしましたように、配分量すらもインフレにもならずデフレにもならずということでございますし、また、先ほど委員が御指摘になりましたように、復元の原則ということでもって、必ず借りたものは返すという趣旨の原則というものも樹立されておりますので、これは運営自体がそういうことで一方に偏するということは厳に避けるという思想がこの協定を貫いておる原則であるというふうに私たちは承知しております。
  103. 河村勝

    ○河村委員 私が一番疑わしく思っておりますことは、現にアメリカの場合でも、単に一時的な海外への出費が多いということだけでなしに、ベトナム戦争以来財政赤字がずっと続いて物価もどんどん上がっております。去年なんか四・八%の消費者物価の上昇、アメリカとしては非常に異例でありますね。アメリカの場合、これぐらい上がるというのはたいへんなことだと思うのです。  そういう意味で、ある程度こういった体質が構造的になってしまって、少なくとも西ドイツあたりと比べたら購買力格差が恒常的にかなりの差がついてしまって、このままでは何らか平価を調整するということがない限り落ちつかないのじゃないかというふうな懸念を持っておりますが、そういう点についてお考えをお聞かせ願いたい。
  104. 村井七郎

    ○村井政府委員 ある時点、ある時点という時点を限ってとってみますと、なるほど各国間のバランスというものが失するということがございます。ただ、この固定為替相場制のもとあるいはIMF体制のもとにおきましては、なるべくならば固定した一定の相場のもとに、各国間は赤字のときにはその回復に努力する、黒字のときにはそうでないように資本輸出なりその他の適当な処置をとるということで、均衡回復ということを非常に重視しておるわけでございますので、その趣旨からいきまして、アメリカが赤字回復ということを絶えず念願しておるということも、これまた事実でございますし、たとえばドイツはドイツで先般の国境税調整というようなことをやりまして、経済の回復あるいは資本流出を促進するという措置によりまして、総合収支のバランスをなるべく黒字幅を少なくしていく、そして赤字国に資本が向かうという措置を積極的にとっておりますので、これが必ずしも平価改定ということに結びつくかどうか、これはもう少し時日をかして、また、各国の努力というものを見た上でないと、一がいにきめられない。また、経済節度を働かすという意味において十分に作用をさせるということが、現在の体制、IMF体制の一つの利点ではないかというふうに考えておる次第でございます。
  105. 河村勝

    ○河村委員 私がお伺いしたがったのは、なるほど黒字国は黒字国でなるべくよその国に金を出すように努力をする、赤字国は赤字国で努力をする、そういった国際協力ですね。そういうものはやはり限界があって、構造的に格差が、購買力格差ができてしまうと、もうそういうやり方では解決をしない状態になっているのではないか、そういう意味であったのですが、その点について重ねてお伺いした。
  106. 村井七郎

    ○村井政府委員 現在IMF体制におきましても、経済に基礎的な不均衡がある場合はやはり平価の改定というものはあり得るのだということでございますし、現に一昨年のイギリスの場合に見られましたように、改定が起こったわけでございます。ただまあ何が経済の基礎的な部面か、あるいは臨時的な部面かという見分けはなかなかむずかしいと同時に、かなり各国の政策努力というものにもかかっておるわけでございまして、どうしてもそういう努力にもかかわらず構造的にアンバランスが生じてきたという場合は、これはまたその是正の方法ということが現体制でも認められておりますし、現にそういう事態がたびたび過去にも起こっておるわけでございます。
  107. 河村勝

    ○河村委員 それじゃ一つ伺いますが、いまのIMFクォータですね、これは、いつどういう基準でできておるのですか。
  108. 村井七郎

    ○村井政府委員 現在のわが国のクォータは七億二千五百万ドルでございますが、これは六五年、いまから三年半前でございますけれども、六五年に決定したわけでございます。御質問は、そのときのいろいろな指標というかそういったことかと思いますが、それはやや古くて、一九六二年のときのデータを使用しておるわけでございます。
  109. 河村勝

    ○河村委員 そのデータは貿易量ですか。
  110. 村井七郎

    ○村井政府委員 これはブレトン・ウッズ方式といいますか、一定のフォーミュラがございまして、国民所得、それから貿易量——貿易量と申しますと輸出も輸入もでございますが、それから外貨準備というものを総合勘案いたしまして、一定の方式ではじき出しておるわけでございます。
  111. 河村勝

    ○河村委員 現在の日本国民所得あるいは貿易量、そういうものを当てはめて、かりにもう一ぺんクォータの計算をし直したら、いまどのくらいになるのですか。
  112. 村井七郎

    ○村井政府委員 これは実は私たちなかなか……(河村委員「大ざっぱな見当で」と呼ぶ)大ざっぱな見当でございますが、これはなかなか私たちも算出しにくいのでございますが、ほかの国との相対的な関係もございます。このブレトン・ウッズ方式というもので出しますときに、一応それでやりましても結局各国とのバランスということを考える。のみならず、いろいろな要素考えまして結局きめるわけでございますので、単なる方式だけともいえないわけでございますが、感じといたしましては、現在の七億数千万ドルよりも、これは数字がなくてまことに申しわけないのですが、相当上回るというふうに思うわけでございます。
  113. 河村勝

    ○河村委員 それで実は、いろんな問題がありながら、大臣もさっきおっしゃったように、積極的にこれの創設に邁進をしていくのだというようなお答えでありましたが、それはおそらく全体の国際通貨不安の中で、国際流動性をふやすのに協力すると一緒に日本の流動性を増す、準備資産を増すということとあわせてお考えになっているのだろうと思うのですが、積極的に参加をするからには、いままでのクォータをそのまま使うのではなしに、これだけ日本も国力が大きくなって当然発言するだけの理由があるわけですから、これでもってかりに年に二十億ドルSDRを創出するとしても、日本の割合というものはわずかに六千何百万ドルというようなことでありまして、実際に日本にとってもメリットがあまりないように思われますが、その点、IMFの場においてもっと積極的にこれを利用価値があるようにやっていくというお考えはございませんか。
  114. 村井七郎

    ○村井政府委員 これは、私たちはほとんどあらゆる機会にそのことを申しております。大臣も、IMF総会の演説その他でも、クォータの見直しということはやはり必要である。のみならず、それが全体の調和なり福祉をもたらすという趣旨発言をし、また、IMFの専務理事その他にも機会あるごとに言っておるわけでございます。従来は五年ごとにこういう機会が一般的にやってまいるということでもありましたし、それからまたほかの国との関係、また、たとえば日本ほど経済成長伸びてないという国との関係等がございますので、IMFとしてはなかなかそうかといって、すぐそれを決定しかねる状況にあるようでございますが、私たちとしてはこれをかなり執拗にかつ強く主張しているわけでございます。
  115. 河村勝

    ○河村委員 ちょうどSDRを創設するという時期になりまして、日本としても一つの選択権があるわけですね。そういう時期にやれないようではとうていできぬだろうと思います。そういう意味でその可能性についてどう判断をしておられるか。
  116. 村井七郎

    ○村井政府委員 この協定の成立が日建に迫っておりますし、また、発動も近い将来に行なわれるということでございますので、今度のたとえばIMF総会、ことしの九月というような時期にはあるいはむずかしいのではないかというふうに思いますが、なるべく近い将来にそれが実現できるように私たちもなお努力を続けてまいりたいというふうに考えております。
  117. 河村勝

    ○河村委員 それでは、SDR関係はそれで終わりまして、IDAの関係を伺います。  IDAの問題は、これは単なる増資であって新しい問題ではございませんが、IDAの実際の貸し付け対象国を見ますと、インド、パキスタン、アフリカ、ラテンアメリカとかというように非常に片寄っております。ことにインドのように、経済自立体制がほとんどないのではないかと思われるような国に対する貸し付けが五〇%というような状況でございます。こういう性格のものに対して、日本のこれからの経済協力、経済援助というものを考えた場合に、今後とも積極的に協力する意義があるのかないのかという疑問が生ずるわけですが、その点はいかがお考えでございますか。
  118. 村井七郎

    ○村井政府委員 仰せのように、従来はIDAの融資というものがかなり偏在していることは事実でございます。しかしながら、これは一つには、たとえばいまおっしゃいましたインドとかいうような国は一人当たりの国民所得が低いとか貧困度がかなり高いとか、そのほか必要とするようなプロジェクトが目に見えているというようなこともございました。しかし、やはり何といいましても、そういう偏在は是正すべきであるという声がやはり日増しに高くなってきておりますし、一般的にそう感じられておるわけでございますので、最近は、と申しましてもことに新総裁マクナマラが就任いたして以来、かなりその方針を是正するということでございまして、今後の方針としては、先ほどおっしゃいましたような、たとえば五〇%というものはかなり低い率になるように私たちは承知しております。
  119. 河村勝

    ○河村委員 修正されるかもしれませんが、それにしても大勢はこういうかっこうであります。  それで、これから経済援助を日本は大いにやっていかなければならぬ時期になっておりますけれども、そう手広くやることは無理でもあるし、効果が薄いわけですね。そういう意味からいって、いま対象になっているような国々に今後も積極的におやりになるという御意思は、大臣としては一体どう考えられますか。
  120. 福田赳夫

    福田国務大臣 IDAはどっちかといえば融資が片寄っておりまして、特にわれわれとしてはアジアを除外しておるという傾向がありまして不満に思っておったのですが、最近はインド、パキスタンというものにも出ている、こういうので何とかしてアジアのほうにもう少し伸ばしていただきたいと考えておるのですが、アジア開発銀行ができましたから、これと相まってアジアの安定に協力してもらいたい、こんな感じを持っております。
  121. 河村勝

    ○河村委員 IDAの融資対象国がこんな状態であるなら、無理にそういつまでもつき合ってばかりおらないで、IDAへの増資はお断わりといってもいいと思うのですが、そのくらいのことをおやりになるお考えはないですか。
  122. 福田赳夫

    福田国務大臣 これがなかなかそうも簡単にいかないのですね。つまり、わが国はIMF体制の中では重要な国になっておるわけです。やはり国際協力ということには思いをいたさなければならないわけです。ただ、それが国益にマッチするという形でなければなりませんけれども、それが何が何でも一〇〇%国益だというわけでもまたいきません面もありまして、そうこだわるわけにもまいらぬケースとしてこのIDAの問題なんかあると思うのです。どうもいろいろ考えると、それは不満な点もあるのです。あるのですが、まあ国際的なおつき合いということもしなければならぬ。また、することが、それが大きな目でいうと国益だというようなケースも間々あるのであります。
  123. 河村勝

    ○河村委員 どうも経済援助一般に対して政治的な配慮できめられることが多くて、ほんとうの意味での経済協力の計画、政策としての一貫性がないというような気が非常にするわけであります。そういう意味で、たとえばいまインドネシアなどに対しても非常に大きな援助をやっております。やっておりますが、そのきまり方を見ましても、たとえば去年のインドネシア援助、これなども四十二年十一月、アムステルダム会議で事実上何となく——といったら語弊があるかもしれませんが、何らかの政治的配慮できまってしまって、それも三億二千五百万ドルの総額のうち三分の一は日本が引き受ける。しかも、その中で六千五百万ドルも商品援助が入っておるということが事実上きまってしまって、それを国会の審議の場では、全然きまっておらぬのだという御答弁ばかりで、事実上しりぬぐいみたいなかっこうで、最後は海外経済協力基金法を改正してまでしりぬぐいをしなければならぬというようなかっこうになってしまうわけですね。ことしについても、すでに昨年の秋にもうインドネシアの援助を、総額が事実上きまって、しかもまた同じように三分の一の援助を引き受けてしまっておるというようなうわさもございますが、その辺は事実はどうなっておりますか。
  124. 福田赳夫

    福田国務大臣 それは全く間違った情報であります。さようなことはありませんです。
  125. 河村勝

    ○河村委員 ことしの海外経済協力基金の予算は五百七十億円ありますね。その中に事実上インドネシア援助の分がすでに計上されておるというふうに聞いておりますが、それも事実はないわけですか。
  126. 福田赳夫

    福田国務大臣 まああれやこれやということで全体の数字五百七十億ということになっておりますが、その中でどこが幾らというようなかたいものというものはないのです。まあこのくらいは必要ではあるまいかというようなことであります。しかし、その中にインドネシアに対して協力をするという考え方はあるわけでございます。
  127. 河村勝

    ○河村委員 あれやこれやでなしに、インドネシアの場合は額が非常に大きいわけですね。一億ドルといいますと三百六十億円ですから、協力基金の予算の過半数を占めてしまうくらいの大きなものですね。だから、あれやこれやではいけないので、こういった種類のものは、あらかじめ相談があったならあったでよろしいから、もっと正直にお出しになって、そこで検討さるべきものだと思いますが、その点はどうお考えですか。   〔「ごまかしちゃだめだよ」と呼ぶ者あり〕
  128. 福田赳夫

    福田国務大臣 別にごまかしているわけじゃないのであります。これはいつでしたか、アムステルダムのインドネシア債権国会議の場におきまして、インドネシアから五億ドルほしいのだ、こういう要請があったわけであります。それで、それに対してわが国は、意見というか、イエスという返事はいたしておりません。よく検討しようということになっておるのです。事実上いまよく検討し、それからだんだんと話を具体化していこう、こういう段階にいまなっておるのであります。
  129. 河村勝

    ○河村委員 去年は経済協力基金法の改正をしなければならぬというような問題がありましたから、なかなかイエスと言いにくいような事情もより多かったかと思うのですけれども、ことしはそういう問題はございません。しかも、経済協力基金の予算には五百七十億円が計上してあるのですから、私はおそらくこの会議で、イエスとは言えぬけれども、イエスだというくらいの返事をされているのじゃないかと想像するのですけれども、そうならそうで、そういう問題をはっきりさせて国会で審議をすべきが至当なのであって、これでまた知らぬ存ぜぬで、きまっておりませんというようなことで、結局はやはり国会が済んで閉会中かなんかにすっときまって、経済協力基金からおのずから出されてしまうというかっこうになるであろうというふうに想像するのです。その点は、結局はそうなるであろうと私は考えておるのですが、大臣、どうお考えですか。
  130. 福田赳夫

    福田国務大臣 五億ドルというので、その中で日本に対する期待額一億二千万ドル、こういうことまで言っているのです。言っているのだけれどもわが国としては、五億ドルに対しましても、また一億二千万ドルに対しましても了承を与えておりません。これはほんとうにそうなんです。何か内々イエスと言っているんだろうなんというような感じのおことばですが、さようなことは全然ありません。
  131. 河村勝

    ○河村委員 商品援助、今度のボーナスエクスポートの商品による援助というものは、従来の実績からいうとあまり成功した例は少ないわけです。それにもかかわらず、今回インドネシアのインフレを収束するためということで出されたのでありましょうけれども、現実にもう一年経過をいたしまして、この商品援助をやった以後、インドネシアの経済というのはどの程度に変化をし、またよくなっている傾向があるか、その点の実績はわかりますか。
  132. 村井七郎

    ○村井政府委員 四十三年度の八千万ドルの中にそのうちの六千五百万ドルは、いわゆるボーナスエクスポートというかっこうで消費財の提供ということをしたわけでございます。そういったことをわが国からもやり、各国からもかなりの援助をやっているということで、たとえば一昨年でございましたか、物価を一例にとりますと、六倍とか八倍とかというような上がり方であったわけでございますが、それが去年の一月以降は非常に落ちついてきております。たとえば、そのいまのBEの操作というようなこともわりに各国が協力して、いろいろ忠告も与えておる関係もございましょう。消費者物価は二月以降はかなり落ちついてきておる。従来のインドネシアにしてみれば、非常に珍しいのではないかというような感じがいたしております。もちろん、全体の生産なりその他の経済指標というものは必ずしも十分好転してはおりません。しかしながら、まずとりあえず安定すべきものはインフレであるというような見地から、このインフレの抑圧ということを最大眼目といたしまして、これがまあ今後近い将来におさまってくるということがございますれば経済再建に向かい得る、そういった意味でめどが立ち始めたというふうに一般にいわれておるわけでございます。たとえば去年のそういう物価上昇をとりますと、従来の六倍とかあるいは八倍とかというベースに比べまして、八十数%、八四%という数字がございますが、その程度の物価上昇になってきておるということでございます。これも一月の四〇%ぐらいの上昇を入れて八十数%ということでございます。
  133. 河村勝

    ○河村委員 ある程度効果があるにいたしましても、もともと商品援助というのは、発展途上国の経済自立のための努力を補充するのだという、経済協力のたてまえからいうとあまり望ましいものではないはずです。  そこで、昨年のインドネシア側との合意の際も、これからボーナスエクスポートの削減、減らしていくことについて、インドネシア側も十分考えるのだというような合意の内容があったと記憶しておりますが、それはことしもうきまってしまっておればだめですけれども、まだきまらないという大臣のお返事でありますから、これから一体そういうインドネシア側との合意は生かされていくのであるかどうか、その点を伺います。
  134. 村井七郎

    ○村井政府委員 仰せのように、昨年の八千万ドルがきまりましたときには、私たちはこれからBEの金額というものは減らしていくということを申しましたのに対しまして、インドネシア側もそういうふうに努力していきたいということを言っておりました。これも事実でございます。  ただ、これをすぐこの次の四十四年度の場合にどうするという点につきましては、大きな方向としてはそうでございますけれども、やはりそのときの国際収支の状況とか物価の動向とかいろいろな要素考えて、結局インドネシア経済にとって一番いい方法というものを考えなければなりませんので、結局私たちは、そういう大原則があるにいたしましても、その年度、年度の具体的な金額にあまりにもこだわり過ぎるということよりも、もっと全体的な方法で、有効効率的な援助をしていくということのほうがやはり主体であっていいんではないかというばく然たる感じを持っております。何せまだ交渉が十分始まっておりませんので、今後のことでございますので、ひとつそういう点を十分注意しながらやってまいりたいというふうに思っております。
  135. 河村勝

    ○河村委員 時間になりましたのでやめますが、ぜひ商品援助、これだけの合意があるのですから、それは何も遠い先のことを言っているのじゃなしに、あまりいいものではないから減らそうという合意に相違ないので、ぜひことしから生かしてほしいということ。  それから大臣にお願い申し上げますが、いままで伺っておりましても、決して私ども納得できる御返事とは思いません。経済協力全体としてほんとうに政策としての一貫性、統一性がないということは、私だけが申し上げるのでなしに、一般的に認識されていることだろうと私は思うのです。これから日本の一番大事な仕事の一つでありますから、福田大蔵大臣は単なる大蔵大臣でなしにもつと偉いはずでありますから、ぜひリーダーシップをとって、この辺でほんとうの経済援助の体制をおつくりをいただきたい。これをお願いをいたしまして質問を終わります。
  136. 倉成正

    ○倉成委員長代理 田中昭二君。
  137. 田中昭二

    田中(昭)委員 現在土地問題がたいへん問題になっておりますが、それに関連する問題でございますから、ここに一地方のものでございますが取り上げていきましてお話を聞いていただきたい、こう思うのでございます。  文化庁のほうが、きょう急に来ていただいておりまして時間もないようでございますので、そちらのほうから入らしていただきますが、福岡県の筑紫郡に太宰府という古い史跡がございます。これにつきましていま地元の陳情もいろいろあっておりますが、この問題が土地税制の問題とも関係があるし、また文化庁の方針なりもあわせてお聞かせ願いたい、こう思うわけでございます。  まず、太宰府の史跡の指定につきまして、聞くところによりますと、大正十年に指定して、その後その指定された土地が、まだ何か問題が残っておる、このように聞いておりますが、その辺からお話しいただきたいと思います。
  138. 安達健二

    ○安達政府委員 太宰府関係の史跡といたしまして、大きく分けまして、太宰府の府庁跡、すなわち都府楼跡、それから学校院跡、観世音寺跡及び子院跡、このような形になっておるわけでございますが、そのうち中心になりますところの都府楼の跡の約三万六千坪につきましては、いまお話しのございました大正十年に太宰府跡として史跡に指定されたのでございますが、その後文化財保護法が制定されまして、昭和二十八年に特別史跡ということで昇格と申しますか、そういうふうな指定があったわけでございます。さらにその後の調査等からいたしまして、昭和四十一年の十一月に文化庁の前身でございまする文化財保護委員会におきまして、先ほど申し上げました地域を含めた追加指定をしたい、そしてまた新しい観世音寺跡とか子院跡とか学校院跡とかなどの指定を内定をいたしたわけでございます。内定いたしましたけれども、指定の効力は告示することによって発生するわけでございます。告示に先立ちまして十分地元の方の了解を得るということで、現在はまだその了解が完全にとれておりませんので、現在は告示するには至っていない、こういう状況でございます。
  139. 田中昭二

    田中(昭)委員 そこで、日本では京都、奈良に同じような問題があると聞いておりますが、そちらのほうの国の指定並びに地元の負担といいますか、そういうものはどのようになっておりましょうか。
  140. 安達健二

    ○安達政府委員 一般的には、指定につきましては、所有権との調整と申しますか、所有権を尊重するたてまえではございますけれども、所有者の承諾を得なければ指定ができないというたてまえではなくて、国家として必要な場所についてはこれを指定をする。しかしながら、こういう時代でございますので、所有権を尊重する意味におきまして、十分地元の了解を得てやる、こういうたてまえでございます。したがいまして、従来から、旧史蹟名勝保存法時代からの系統で古くから指定されているものもございますし、その後新しく指定するのもございまするが、同様な方向でやっておるわけでございます。ただいまお触れになりました土地の買い上げの問題とは別に、指定は指定として進めておるということでございます。
  141. 田中昭二

    田中(昭)委員 京都とか奈良ですね、そういう方面ではそういう問題、何か聞きますところによれば、全額国庫負担がなされておる、そういうことでございますか。
  142. 安達健二

    ○安達政府委員 現在文化財保護法によって指定をいたしますると、指定地につきましては、文化庁長官の認可を得なければ現状を変更することはできない、こういうことになっておるわけでございます。したがいまして、たんぼとか畑でございますれば、そのままつくっておいてもいいわけでございますが、新しい大きな鉄筋の建物を建てるというふうなことになりますと許可を得なければならない、こういうことになっておるわけでございます。  そこで、そういう所有権の制限等が出てまいりますと、いろいろ問題を生じますので、現在はそういう史跡等の土地につきましては、問題の生ずるようなところはできるだけ公有化する、こういうたてまえで一般的には所在の市町村が買い上げをする。その場合に国から半額の補助をする、こういうたてまえになっておるわけでございます。ただし、奈良県にございまする平城宮跡は特別な例外といたしまして、これは国において買い上げをいたしておる、こういう例外がございます。補助率につきましては、原則は一般的には五〇%でございますが、その史跡の重要性、それから広さ、それから地元市町村の財政力というようなことを勘案いたしまして、最高八割というような例外がございますが、この七割、八割のようなものは非常に例外でございまして、太宰府はその例外の一つといたしまして八割で土地の買い上げを促進しておる、こういう状況でございます。
  143. 田中昭二

    田中(昭)委員 その八割を京都と奈良と同じようにはできませんか。
  144. 安達健二

    ○安達政府委員 先ほど申し上げましたように、現在史跡につきましての原則は、所在の市町村が買い上げをして、それについて国が半額の補助をする、こういうたてまえでございます。と申しますのは、これは市町村有のものにするたてまえでございます。史跡は国の史跡であると同時に、その地域の重要な記念でございまして、これは同時にそれを公園化するとか、あるいはまたそこに緑地的なものを考えるとか、そういう地元の市町村にも大いに利するところがあるという考え方でございますので、特別な例外として七割、八割ということがあり、全くの例外といたしまして、平城宮のような特に史跡の性格等から勘案いたしまして国で買い上げをする、こういう状況でございます。
  145. 田中昭二

    田中(昭)委員 そこで、最初にお話聞きましたいわゆる太宰府の都府楼跡ほか二カ所の指定でございますが、これは大正十年から現在までまだ全部終わっていないというようなことは、やはり地元住民としましては、地価は年々値上がりしておりますし、そういう問題でかえって問題を残すのではなかろうか、このように思いますが、その特別史跡の指定がどのくらい終わって、あとの残った部分はどのように市町村に対しても御指導なさるのか、それをお聞かせ願いたいと思います。
  146. 安達健二

    ○安達政府委員 現在都府楼跡の三万六千坪の指定をいたしておるわけでございまして、その新しい地域が相当膨大にのぼるわけでございます。そこで、これらの地域を指定するについて地元の方々の御了解なり御賛成を得るためには、まず一つは、その地域についての重要性というようなことについて認識を深めていただきたいということで、都府楼跡につきましての調査を地元の方々の御協力を得ましていたしたわけでございます。そうすると、都府楼跡の下にまたさらに古い遺跡が出てくるというようなことで、この史跡に対する地元の方々の認識をさらに深めていただく、こういうことが一つでございます。  それから、先ほど申し上げましたように、史跡に指定いたしましても、これは現状変更についての許可でございます。したがって、それはそれぞれの地域の状況に応じて違うわけでございまして、たとえば、地域によって、木造の建物を簡単に建てるというような場合はよろしいでしょうし、鉄筋を建てるというような場合は困るというような段階の差もございます。それからまた、その地域によっておのずからなる下の段階もございます。したがって、広い地域でございますので、これをA、B、Cというような三つの区域に分けまして、A地区は特に重要であるから原則としては現状変更は認められない、B地区は軽微なものならいい、それからCのほうはもう少し、建物でもよろしいというふうにして、史跡の広い意味においての保存を全体的にはかっていきたいということで、A、B、Cの地区に分ける等の配慮をいたしまして、そういう先ほどの試みに掘るということ、そして見ていただいて認識を新たにするということ、そしてまた、現状変更についての程度等を明らかにして、地元の方々の了解を得て、その指定を促進してまいりたい、かように考えております。
  147. 田中昭二

    田中(昭)委員 私がお聞きしたのは、大正十年以降、二十八年にいわゆる決定した分が、地元で聞きますと四割三分ぐらいしかまだ終わってない、かように聞いておるのですが、その点でございます。
  148. 安達健二

    ○安達政府委員 ただいま御指摘になりました太宰府地区の都府楼跡につきましては、全体の面積が三万六千坪でございます。その中に国有地が三千七百坪ございます。それからすでに買い上げを終わって公有いたしておるのが一万七千坪ほどございます。残る民有地が一万五千坪ほどございますので、したがって、この残ったものの買い上げをさらに促進してまいりたい、こういうことでございます。
  149. 田中昭二

    田中(昭)委員 その残った分の見通しはどういうようになっておりますか。
  150. 安達健二

    ○安達政府委員 四十三年度は全体の買い上げ経費六千万円でございまして、それに対して八割の四千八百万円を支出いたしました。明年度はさらにこれを増加いたしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  151. 田中昭二

    田中(昭)委員 そこで最後に、内定しております面積でございますけれども、その中のいろいろ聞きましたところの実情を申し上げるわけでございますが、ある農家の方は一町二反ぐらいのたんぼを持っておりまして全部それにかかるわけですね。そうしますと、そのために、道をはさんでこっちのかかってないところは坪五万も六万もで売買されておる、それが内定を受けておるばかりに半分以下三分の一くらいの価格しかしない、そういう現況なんだ。また、いま言いましたように、農家が一町二反のたんぼを全部内定されまして、木一つ切ることもできない、そういうような苦情を聞いておるわけですが、その点はどういうふうなことになっているのか。
  152. 安達健二

    ○安達政府委員 現状変更の認可が要ると申しましても、軽微な変更等については許可を要しないわけでありまして、木を一本切る、そういうことについてまで許可を要するわけではございません。  それから、土地の買い上げの価格でございますが、これは別に、史跡だから安くするということではなくて、たとえば最近そのところに道路の問題が出ておりますが、その道路を買い上げましたと同じ価格で買い上げをいたしておりますので、特に史跡だから安く買い上げる、こういうことは毛頭ございません。
  153. 田中昭二

    田中(昭)委員 そこで、土地税制の問題でございますが、いまそのような現地ではいろいろな問題——土地を政府から内定を受けたために、土地の値段というものは毎年毎年上がっていきますものですから、そういう問題でいろいろな問題を残しておるわけでございますが、ことし税制改正で予定されておるいわゆる土地税制の適用から見ましても、また、いままで収用対象事業なんかでは一応土地の譲渡については千二百万円の控除がある、こういうこともありまして、なかなか不公平を来たすのではないか。また、実際にそのように太宰府町の現地の人たちは、売買した場合でもその規定の適用も受けられない、いわゆる千二百万円の控除も受けられない、こういう問題があるのですが、このことについて大臣から一言……。
  154. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいま御指摘のように、文化財保護法によって史跡の指定を受けたもの、現在実際上予算を出して買い上げるということになっておりますけれども、これに対しては特別の控除が従来なかったわけでございます。今回、土地税制の改正にあたりまして、これらのもの、あるいは古都保存法のように買い取り制限のあるものも、その買い取り制限に基づく譲渡所得については特別の手当てがございませんでしたので、今回、文化財保護法については買い取り請求の規定はございませんが、性質も同じであるということから、従来ございます三百万控除の中にこれを含み入れまして、新たに三百万円の控除を実施するということで立案をいたしております。
  155. 田中昭二

    田中(昭)委員 次は、金融機関の不正融資問題、具体的に申し上げれば、福岡県の一単位農協が限度をこえて多額なる融資をしたという問題について、大蔵省見解を聞いておきたいと思うわけでございます。  それで、まず事件の概要のことを知ってもらわなければならぬと思いますが、農林省のほうから概略説明いただきたいと思います。
  156. 中澤三郎

    ○中澤説明員 福岡県の仲原という単協につきまして、昨年福岡県庁が検査をいたしましたところ、組合員に貸し付けすることができる限度をオーバーいたしまして貸し付けた金額が約二億五百万円、それから単協の場合は定款で員外貸し付けをすることができないことになっておるわけでございますが、組合員外に貸し付けたものが約六千四百万円ほどあるということが判明いたしましたので、県におきましては、この法令・定款をこえた貸し付け状態を是正するよう、農協法に基づき是正処置命令を出して、その是正方につきまして現在指導に当たっておる、こういう状況でございます。
  157. 田中昭二

    田中(昭)委員 そこで、その単位農協のそういうふうなやり方でございますが、これはあくまでも農民の零細な貯金が集められて、それでそういう不始末を起こされた。それに対して、福岡信用農業協同組合連合会でございますか、こういう上部団体が当然その農協の責任を感じて、いろいろな手を打ってもらっておるわけでございますが、その上部団体の福岡県信用農業協同組合連合会ですか、これとの関係ですが、この上部団体に対する監督はどこにあるのか、銀行局のほうからお伺いいたします。
  158. 澄田智

    ○澄田政府委員 県段階の信用事業を営む農協連合会、これにつきましては、農林、大蔵両大臣共管ということになっております。したがいまして、大蔵省といたしましては、主として金融というような見地から見るわけでございます。たとえば検査というような場合には、これは両方それぞれ別個に検査ができるということになっておりますが、通常はこれは農林省が検査を行なっておる、こういうようなやり方になっております。
  159. 田中昭二

    田中(昭)委員 そうしますと、この問題に関係しまして、福岡の財務局なりがこの県信連を検査したということはあっておりますか、どうですか。
  160. 澄田智

    ○澄田政府委員 検査は、大蔵省も検査をする権限は持っておりますが、主としてこれは当面農林省が担当しているような形で現在検査が行なわれております。福岡県の信連につきましては、農林省が四十二年に検査をしたというふうに聞いております。
  161. 田中昭二

    田中(昭)委員 そうしますと、いまのは少しはっきりしないのですが、実際この問題について、福岡県の県信連について検査したのですか、しないのですか。
  162. 澄田智

    ○澄田政府委員 大蔵省としては、検査いたしておりません。
  163. 田中昭二

    田中(昭)委員 大臣、こういう問題は検査しなくていいのでしょうか。
  164. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは、第一次的には農林省がやっておるわけです。いま銀行局長からもお答えしたように、四十二年に農林省がやっておる。まあ農業協同組合について、原則として大蔵省が検査に当たることはないのであります。
  165. 田中昭二

    田中(昭)委員 そうすると、いま局長は、信連は大蔵省と農林省の共管事項だ、こういうことをおっしゃったわけですね。それに対して局長は検査してない、大臣はそれはやらない、こういうふうな返答ですが、これは当然やってもらわなければいけないのじゃないでしょうか、共管事項であるということは。
  166. 澄田智

    ○澄田政府委員 信連及び農中という段階については、金融的見地から大蔵省としては当然に監督する権限は持っておるわけでございますし、また検査も、たとえば農林中央金庫に対しては、これは全国的規模でもございますので、検査はもちろん随時いたしておるわけでございます。ただ、県信連につきましては、われわれの検査の重点というのはやはり一般の金融機関の銀行、相互銀行、信用金庫というようなところの検査が、検査の大部分の時間をとっている、こういうような関係もございまして、農林省のほうで随時検査を必要に応じてやっておる、こういうふうなやり方になっておる次第でございます。
  167. 田中昭二

    田中(昭)委員 どうもはっきりしないようです。もう一回農林省のほうにお聞きしますが、単位農協がかりにそういうような数億の不正融資をやったというような場合には、県信連はその単位農協に対して責任があるのですか、ないのですか。
  168. 中澤三郎

    ○中澤説明員 一般的には責任がないというふうに考えております。
  169. 田中昭二

    田中(昭)委員 責任はないということですね。私が二十五日、農林大臣にお聞きし、並びに局長にお聞きしたときには、その責任はあるという返答、だったのですよ。その辺をもう少しはっきりしていただきたいと思いますね。同じ農林省の中で責任があるとかないとかというようなことになりますと困りますから。
  170. 中澤三郎

    ○中澤説明員 私が責任がないと申し上げましたのは、義務としての責任でございますが、上部団体でございますので、指導上の責任までないということを申し上げたわけではございません。
  171. 田中昭二

    田中(昭)委員 上部団体ですから、ここではそういうことでいいのですけど、現地では、そういうことを言っておりましたら、もうほんとうにたいへんな問題ですよ。この場ですから責任があるとかないとかということで逃げられますけれども、これは農民の金が、二億近くも一つの小さい会社に融資して焦げついている。またそのやり方も、これはほんとうにひどいやり方なんですね。大蔵省のほうとしても、こういうことが一般に行なわれておるということは当然知ってもらわなければいけないと思うのです。   〔倉成委員長代理退席、委員長着席〕 いまの員外貸し付けについてもそうです。員外貸し付けというのが定款によって、協同組合法によって、ある限度まで許されておる。ところが、その員外貸し付けも、全然よその人がそこに住所を移してそしてぼんぼんなされておる。また、それの請求についても、ほんとうに考えられないようなことが行なわれておるのです。こういうことになりますと、金融というものが、一つの信用事業というものが、これは末端の問題でございますけれども、私は大きな問題になるんじゃないか、こう思うのです。  先ほどから何回もくどいように聞いておりますが、財務局も調べに行ってないということですけれども、私は調べに行った事実を持っております。それはだれの命令によって地方の財務局が県信連を調べに行ったのか、私の情報が間違いなのかどうか知りませんけれども、県信連に対して大蔵省が何の調査もしてない、検査報告も受けてないということは、これは常識的に考えてみて、そういう問題があっているのに考えられないということを私は申し添えておきます。  ところで、この問題はいま申し上げましたように、地元の黒瀬観光株式会社がゴルフ場をつくるということで始まったわけでございます。そして、その資金源を農協そのほかの金融機関に求めたわけでございますが、私は、ここでもう一つ別な立場から考えてみると、二億円も金を借り入れるというような会社に対して、今度は税務調査が行なわれてないのです。この黒瀬観光というのは法人登記をされただけでございますが、それの同列系統の親会社である黒瀬建設という会社がございます。この黒瀬建設に対して調査が行なわれていない。また、この数億円の金の融資については第三国人まで含まれる金融ブローカーが暗躍しているわけです。相当な不当利得をあげておるのですが、こういうことに対しては国税庁は目をつぶって——ほんとうはこういう問題はもう一昨年の終わりごろから昨年の四、五月ごろまでにはっきりしておるわけでございますから、当然そういういわゆる陰に隠れて不当な利得を得ておるものには調査がなされなければならないじゃないか、こう私は思うのです。それがいままでのところ、その調査もなされておりませんし、その反面、小さな営業者についてはちょっとした投書でも徹底的に調べる、そういういき方が私はどうも納得いかないわけです。  まず、黒瀬建設並びに黒瀬観光についての調査はどのようになっておるか、国税庁のほうからお聞かせ願いたい。
  172. 川村博太郎

    ○川村説明員 国税庁といたしましては、非常に限られた人員で膨大な調査事務を処理してまいります関係上、重点的、効率的な調査を行ない得ることを眼目としておるわけであります。言いかえますと、できるだけ調査対象をしぼりまして、大口かっ悪質なものに深度ある調査を行なうことにする一方、思い切って調査省略をしていくというような方針で、調査及び運営を行なっておるわけでございます。  御質問の中の仲原農協、それから黒瀬建設、黒瀬観光、これにつきましては、私どもで調査したところ、確かにこの一両年調査は行なっておらないようでありますが、おそらく税務署といたしましては、先ほど申し上げたような法人税の調査、運営の方針に沿って行なってきているのではないかと思います。問題は、この不正融資に関連いたしまして、この仲原農協、あるいは黒瀬建設、黒瀬観光が不正な利得を脱税しておるかどうかということでございますが、もし税務署のそうした調査対象の前提に誤りがあったといたしますれば、これはたいへんな問題でございますので、国税庁といたしましては、そこに脱税があるのかどうかということにつきまして、再検討を指示するつもりでございます。ただ、この三者につきましては、御承知のように警察あるいは検察当局の捜査を受けておりますので、現在帳簿が押収されておるということであります。したがいまして、その返還を受けた段階におきまして調査をしてみたいと考えておるわけでございます。
  173. 田中昭二

    田中(昭)委員 法務省の方が来ておりますが、この問題につきまして、昨年の十月並びに本年の二月に関係者が逮捕されておりますが、その辺の事情をできるだけお聞かせ願いたいと思います。
  174. 石原一彦

    ○石原説明員 この事件は、ただいま警察が捜査中でございまして、検察庁には、このうちの一部が送致されております。それから仲原農協につきましては、現在まで背任罪ということで千三百万の事件が起訴されておりまして、その後のものにつきましては警察と検察庁で目下取り調べ中ということでございます。それから黒瀬建設では、その取締役を私文書偽造及び詐欺ということで、二月の初めに逮捕いたしまして、目下取り調べ中でございます。処分はまだ決定されていないというぐあいに聞いております。
  175. 田中昭二

    田中(昭)委員 その後、ことしの二月に逮捕した人に対してはどのようになっておりますか。
  176. 石原一彦

    ○石原説明員 ただいま、あとで申し上げました黒瀬建設の常務という方の名前は矢山という方でございますが、この方を二月十六日に逮捕いたしまして、二月十九日から勾留の上取り調べておるわけでございます。その罪名は私文書偽造及び詐欺ということになっておるわけでございます。
  177. 田中昭二

    田中(昭)委員 この問題は、昨年の十月からずっと捜査当局のほうも丁寧に捜査し、調べておるようでございますが、地元の評判はほんとうにこれはたいへんなことだというようなことで、早く事件をはっきりしてもらいたい、こういう声も強いわけです。農民は、その二億、またそのほか、全体で四億円に近い金のはっきりした裏づけもいろいろ取りざたしておるわけです。そういうこともありまして、一日も早く解決してもらわなければならない、こう思うわけでございますが、いろいろな現地のうわさによりますと、一番初めに逮捕された農協の組合長さんはほんとうにお人よしで、近所の評判もほんとうにいい方なんです。そういうものが一つのうわさを生んで、警察というのはまじめな者だけを逮捕して、裏に回って不当利得を得たそういう金融ブローカーとか、悪いことをしたやつは保護するのか、こういう極端な話まで聞くわけです。どうかそういうことのないように、早く事件を解決していただきたい、こういうことをお願いするわけでございます。  最後に、この問題につきまして、いまいろいろお聞きしました中でも、県信連にしましても、いろいろな金融ブローカー等との金の出入り、そういうものもあるように聞いておるわけです。どうか大蔵省としてもそういうものの実情を一日も早く把握して、そして一般地域住民が安心するように持っていっていただきたい、こう思います。  以上でその問題を終わります。
  178. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま仲原農協の話を初めて伺うのですが、地元農民にはたいへん迷惑なことだと思います。こういうことの起こらないように、できるだけ大蔵省としても努力をいたします。
  179. 田中昭二

    田中(昭)委員 次でございますが、この前、予算の一般質問のときに大臣にお話ししまして、ありがたいおことばをいただいたわけです。というのは、大阪の東淀川税務署の件でございます。あのときは最後に、よく取り調べておく、こういうような話があったのですが、終わってないと思いますけれども、その後何か大臣から注意されたものがあるかどうか、お聞かせ願いたいと思います。
  180. 川村博太郎

    ○川村説明員 東淀川のことにつきまして、若干御説明をしておきたいと思います。  先ほど申しましたように、国税庁といたしまして、税務行政運営の考え方といたしまして、効率的あるいは重点的な方向で運営してまいっておるわけであります。したがいまして、思い切って調査省略をする、それからその反面、悪質大口の脱税者に対しては徹底的な調査をする、この二つの考え方で運営をしているわけであります。問題は、そのちょうど中間に位する納税者をどうするかという問題でございますが、それにつきましてはできるだけ指導ということでいく、数日を要する調査ということではなしに、一日ぐらい帳簿の検査をいたしまして、不審な点は納税者にそれを申し上げて、納税者に自主的に不正な経理あるいは間違った経理を直していただくということで、過小申告を是正していくというような方針をとっておるわけでございます。問題は、この指導と調査をどのような組み合わせで行なうかということでございますが、これはやはりその署の法人税の職員の充実という状況、それから納税者の業種別の分布状況、あるいは納税者の納税倫理と申しますか、そういったものによって当然組み合わせが個々に変わってくるものだろうと思います。  そこで、国税庁としましては、全般的にできるだけ指導のほうに重点を置いて、調査体制を組むということではございますが、その指導と調査との配分につきましては、個々の税務署、具体的に申し上げますと、税務署長の判断というものにゆだねておるわけでございます。東淀川の税務署の場合には、あそこの河手署長の判断によりまして、若干指導のほうに重点がいっていることは事実でございます。しかしながら、その基本は国税庁の全体の署に指示しております線と全然食い違っておるものではございません。  問題は、そういった配分あるいは組み合わせというものは、先ほど申し上げました各署の状況によって個々に違うべきものでありまして、東淀川の場合には、河手署長が自分の署の状況、あるいは法人税事務職員の状況だけでなしに、納税者の状況まで見まして、それが適当であるということできめておる指導と調査の配分の組み合わせの割合でございます。したがいまして、そういった基本的な考え方につきましては、国税庁はすでに税務運営方針のうちでも打ち出しておることでありますので、今後そういう方向で考えてまいりたい。しかしながら、個々の税務署におきますいまの指導と調査との配分組み合わせにつきましては、やはり個々の税務署ごとに判定していくということであろうと思います。
  181. 田中昭二

    田中(昭)委員 いま私がお聞きしたのは、大臣から取り調べるというお話があって、具体的にどういう指示というかどういう取り調べをなさったというようなこと、それに対して国税庁はどういうふうに対処したのか、こういうことをお聞きしたいわけでございます。
  182. 福田赳夫

    福田国務大臣 まだ私、報告を受けるまでに至っておらないわけでございます。報告が出ましたならば、いずれ機会を……。それから、報告に基づいてどういう処置をしますか、そういうようなことをまた機会を得まして申し上げます。
  183. 田中昭二

    田中(昭)委員 そういう大臣の処置に対するお考え——確定申告を控えて二、三日前には局長会議もあって、こういうことをいわれております。そういう際に、おそらくいいチャンスでありますから、いろいろ話されたことがいま国税庁のほうからお話しになったことではないかと思うのです。そうしますと、少しニュアンスが違うようなことをいま私は直税部長のお話から承るのですが、いわゆる東淀川税務署だけは署長の一存でやっておる。大体指導的方向でいっておる。ところが、ほかの税務署は、基本的な指導的立場税務行政を進めてやっていくというんであって、そこに明らかに東淀川税務署とほかの全国の税務署とは幾らか違うというふうないまの説明であった、こう私は聞いておりますが、直税部長、そうですね。
  184. 川村博太郎

    ○川村説明員 基本的なラインにつきましては、何も東淀川税務署が特に変わった行き方をしておるのではございません。ただ問題は、指導と調査との配分組み合わせをどうするかということは、今後税務署ごとに、それぞれの環境に応じてきめるべきものだろうと思いますが、東淀川税務署の場合には、かなり一般の平均よりは指導に重点が置かれておるということはいえるだろうと思います。
  185. 田中昭二

    田中(昭)委員 直税部長そうおっしゃいますが、それでは、あそこがモデルケースとしてやっていることが少し違うんじゃないですか。そういうことになると、東淀川の税務署の納税者または全国の納税者をだましたことになりはしませんか。東淀川税務署は、はっきり調査して脱税的なやつは加算税も取る、こう署長は言っております。そのほかは進んで、東淀川の署長さんは、調査に行ってもいろんな節税の方法も税務署のほうから教えてあげる。そうしていかなければ、いまの税務行政というものは、いつまでたっても同じです。いわゆる申告をして、それを調査をして差額が出れば更正決定をする、過少申告加算税をつける、こういう行き方になるのじゃないか、こういわれているのじゃないですか。大臣、そのように大体お考えになっているでしょう。
  186. 福田赳夫

    福田国務大臣 あなたからはそういうお話ですがね。私どものほうは調べてみて、それがいいのかどうか、そういう判断もしてみなければならぬ。そういうことで調べた上、その処置については御報告をしたいと思っているわけなんです。
  187. 田中昭二

    田中(昭)委員 そのとおりだと思います。ですけれども、動いておる現実は変わらないのですね。大臣が、その現実をよく調べて、そうしてそれを検討する、こういう意味でしょうけれども、その実際やってある現実は、それがたとえば調べてみて大臣の思われるようなことでないというた場合に、またもとに戻すというようなことになると大問題なんですね。そこを署長も心配するわけなんです。  それではもう少し煮詰めておきますが、署長さんはあの新しい署ができると同時に、その前からですが、大阪の国税局長にも相談をして、そうして署長のやり方を局長にお伺いして、それで局長から、それじゃそれでよろしい、そういう許可を受けた。それがいわゆるあの週刊誌に載っておりますように、大阪の国税局長からお墨つきをもらった、こういうふうに解釈されているのです。そういうふうに大阪の国税局長に内々の許可を受けた。これは大臣、そういうことをもうお調べになりましたか。
  188. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういうこともまだ報告を受けていないんですよ。そういうものも含めまして、一切調べてそれに対する処置も含めてまた申し上げよう、こういうことなんです。
  189. 田中昭二

    田中(昭)委員 主税局長、通則法の五十八条でしたかね、過少申告加算税の規定は。何条ですか。
  190. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 六十五条でございます。
  191. 田中昭二

    田中(昭)委員 大臣、通則法の六十五条によりますと、いわゆる申告額と調査額に相違がある場合は過少申告加算税をつける、こういうことになっているのですよ、私が言うまでもありませんが。そのいわゆる規定の適用について署長の判断によってそれを適用しないという、そういうことですね。それが問題になっておるわけですから、そこをよく知っておいてもらいたいと思います。  そのほかはもうあの予算委員会のときにお聞きしたことでいいと思うのですが、またここでいろいろお聞きしましたら、大臣はよく調査した上で、こういうように聞こえるんですが、大体いいことは、そういう指導をしていくといような立場は、これは全国的に進めていかなければならないと何回もおっしゃいましたし、その点は変わりございませんね。
  192. 福田赳夫

    福田国務大臣 いいことは大いに推進いたします。
  193. 田中昭二

    田中(昭)委員 終わります。
  194. 田中正巳

    田中委員長 次回は、来たる三月四日火曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時二十八分散会