○
村井政府委員 イギリスでございますが、おととしの十一月十八日に一四・三%
切り下げをいたしましたあとは、輸出の伸び、輸入の抑制ということが期待されたわけでございますが、なかなかその
切り下げ効果というものが出てまいりませんで、現在までのところ推移いたしております。これは率直な
感じでございますが、問題はやはり
国内物価、ことに賃金の
関係でございますので、それがいわゆる所得政策をとっておりますが、なかなか十分な効果を発揮しない。そのうらはらの
関係で
国際収支もややもたつき気味というのが実情かと存じます。
その一番の指標は
貿易収支でございますが、昨年の第一・四半期が六億
ドルの赤字、第二・四半期が五億
ドルちょっとの赤字、第三・四半期もやはり相変らず五億
ドルちょっとの赤字ということでございます。それからことしの一月には
貿易収支が一千万ポンド相当の赤字ということで、これはかなり好転しておるのではないかという
見方も一部にはございますが、いまだ賃金、物価の抑制という見通しが十分に立っておりませんので、的確なあるいは楽観的な見通しをその一月の数字からするのはまだ早いという
感じでございまして、むしろ今後は政治、
経済のあり方いかん、その強さいかんということが問題ではなかろうか、これが
国際収支の問題だというふうにいわれておるわけでございます。
次に
アメリカでございますが、
アメリカは、御
承知のように、一昨年
流動性ベースで三十六億
ドルの赤字を出したわけであります。昨年は正月早々から
国際収支対策というものをとったわけでございまして、そのうち三十億
ドルを改善するのだということで施策をとったわけでございますが、前半は主として、どういたしましても対外的な
措置、つまり
国際面におきまして、
国内と
国際の接触点においてのいろいろの
措置、たとえば国境調整税を取ろうとするとか、あるいは海外渡航を制限しようとするとか、あるいは投資を制限しようとするとか、そういう水ぎわでの
措置がおも立ったものでございますので、なかなかうまくいかなかったのでございますが、御
承知のように、六月になりまして増税
措置をとったのが一つの転機になりまして、
国際収支にもいい
影響を持つように予想されたわけでございますが、その
影響は確かにあることはあるわけでございますが、
影響のあらわれが非常におくれておる。当初の予想よりもおくれて出てきておるというのが実情ではなかろうかと思います。現に昨年の
貿易収支は、従来の三、四十億
ドルの黒字というものから見まして、わずか九千万
ドルという
アメリカといたしましては未曽有の小さな黒字幅ということでございまして、あとは海外からの資本流入ということで、これは四十億
ドルが外債とか
アメリカの社債とか株とかを
外国人が取得するというようなかっこうで入ってきたわけでございます。しかし、先ほども
お話にございました中期債というようなものも二十億
ドルばかりございますし、そういったものを合計いたしましてやっと一億八千万
ドルという黒字を出したということでございますが、いまだにそういうことで実体面、ことに経常収支中の
貿易収支というものが完全によくなっていない。
これが今後どういうふうな推移になってくるかということは、私
たちといたしましても重大な関心事ではございますが、
SDRのほうの
関係から申しましても、これが十分改善の徴候が出るということでないと、先ほどからの御
議論にもございましたように、
発動の要件が満たされないということでございますが、最近の、きわめて最近のいろいろの連絡によりますと、在庫あるいは自動車の生産高、あるいは住宅の新規需要、あるいは個人消費、あるいは貯蓄率というような面におきまして、どうも
経済の過熱の鎮静化が見られるのではないかというふうにいわれておりますので、今後さらにこの推移を見ました上で、
国際収支が改善するという
可能性は十分あるわけでございますし、現にニクソン政権自体は、政策の最重点にこの
インフレ抑制、
国際収支改善というものを織り込んでいるというふうに
承知いたしているわけでございます。