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橋本説明員 お配りいたしました「
下山田炭鉱ガス爆発災害概況」、これに基づきまして
災害の概略を御
説明申し上げたいと思います。
この
資料の
最後から二枚目に
災害現場を拡大いたしました図が入っておりますので、この
資料も御参考にしていただきながら聞いていただきますれば非常におわかりやすいかと思うのでございます。
まず一ページでございますが、御
承知のように
古河鉱業株式会社の
下山田炭鉱、これは
甲種炭鉱でございます。
災害の起きましたのは九月二十二日の夕方の七時五十分ころでございまして、
更新坑の五尺
中間卸左一片
付近でございます。先ほどの表でございますが、九−一〇ページの表で
右下のところに左一片というのがございますが、ここに
罹災者の名前も入っておりますが、この辺が
災害の
現場でございます。
災害といたしましては
ガス爆発ということで、
死亡が十四名、
重傷一名、
軽傷二名で、全部の
罹災者十七名ということであります。
二ページへまいりまして、
操業の
概況でございますが、この
炭鉱は御
承知のように飯塚市の南十三キロのところにございます。
更新坑、これは固有名詞でございますが、新しくつくった坑でございます。それから
大平露天坑、
五反田露天坑という
ぐあいに坑内掘りの坑のほかには
二つの露天掘りを持っておりまして、三坑持っております。今回の
災害の
発生いたしましたのは、この
更新坑でございます。
更新坑は本
層群、大
焼層群ということになっておりまして、
稼行区域は四
区域に大別されております。この
災害の起きました
地域は西区というところでございます。
生産状況でございますが、全体の約七五%
程度原料炭を
生産しております。
年間の
生産は二ページの下にございますように、大体
年間二十万トン
程度の
生産でございまして、最近におきましては、四十四年一月から八月までの
実績数字といたしましても、大体その辺の
数字、二十万トン
程度のペースで進んでおるという
状況でございます。
三ページにまいりまして、
労務状況でございます。九月二十二日、
災害の起きました現在におきます
従業員は、
在籍員四百二十一名のほか、
臨時員、
職員、請負入れまして、全体で六百六十名ということでございます。
それから
災害の
概況でございますが、
災害の起きましたこの左一片というところは、ことしの八月から掘進にかかっておりまして、大体九月の八日ごろからこの第一
昇りの
採炭を開始しております。それで
災害の起きましたときには、左一片の一
号昇り、二
号昇りの
採炭を終わりまして、その奥の三
号昇り、四
号昇り、五
号昇りの三つの
昇りを
採炭中でございます。
採炭個所の
概況は、三ページから四ページの上に書いてあるとおりでございます。
それから
災害当日の
入坑者でございますが、二十二日の二番方でございまして、
更新坑全域といたしましては、百七名が
配番されておりまして、このうちこの
災害が起きました五尺
中間卸左一片
関係の
配番は、四ページから五ページにございますように、
全員十七名の
配番でございます。
災害発見の端緒並びに
措置でありますが、二十二日の八時ころに、
罹災者——重傷、
軽傷、生き残っております
負傷者からの依頼によりまして
運搬係員が
災害の
状況をキャッチいたしまして、さっそく所定の
連絡をそれぞれとりまして、
所長の
判断によりまして、八時十五分に
救護隊の
招集が行なわれ、八時三十分ないし四十分の間に
救護隊の編成が行なわれております。それで二十一時四十分、一時間
強たちまして
救護隊の
活動が開始されておる。もちろんこの間におきましては、
所長がこの
災害の
坑内に入りまして、
状況判断をしておる時間がこの
程度かかったというふうに見ております。そういう形で、
救護隊の
活動を開始したわけでございまして、二十三時十五分から
遺体の収容が始まったわけでございますが、特にこの左一片の人気と
排気がクロスしている点がございますが、この辺に非常に大きな
倒ワクあるいは
高落ちがございまして、非常に難航を重ねまして、最終的に実質完了いたしましたのは、この六ページにございますように、二十五日の三時四十五分、このときに、この
地図でいいますと五尺
払跡のところに長谷川さんという方が死んでおりますが、この人の
救出が
最後でございまして、非常に離れた
場所にあったためになかなか
発見が困難であったようでございます。
それで、
災害が
発生いたしましてからさっそく、
鉱山保安監督局はもちろんのこと、
本省からも私参り、また二十六日には
藤尾政務次官が
現地に参りまして、
会社の幹部、
労働組合、
職員組合、
地元の
人たちとこの問題につきましていろいろ
話し合いをしたわけでございます。特に、
政務次官が参りまして
会社側に強く要請いたしました点は、
遺族に対する手厚い
措置をとってほしい、これについては通産省としても先々心していく、
会社が
誠意をもってそれに臨んでいるかどうかは
自分としても十分それを見きわめていきたいというふうなことで当たっております。さらに、
原因につきましては徹底的に
究明し、あらゆる面において
問題点をクローズアップさせ、十分な
措置をとっていきたいというふうなことを言っております。
それからさらに、
災害と同時に全山を休止さしたわけでございます。
災害の起きないところにおきましても総点検をやるというふうなことから全山を休止し、特に今回の
災害において巷間いろいろなことが伝えられておりますので、そういった
保安上の諸問題が完全解消するまでの間は
災害発生外の
場所においても
生産の
再開は困難であるというふうなことをきつく言い渡しておるわけでございます。
そういたしましたところが、実はその
災害の翌日の二十三日の夕方、六時過ぎでございますが、
小石中間卸連絡坑道奥部付近、この
地図で見ていただきますれば、まん中のところにいろいろ
坑道のクロスしたところがございまして、そこに
風門が三つございますが、その
付近でございます。その
付近に実は
坑内火災が
発生したわけでございます。それで、
坑内火災を
発生いたしました
段階におきましては、
全員の
救出ができていなくて、その
全員の
救出と
坑内火災の
消火という
二つの問題が実は同
時点に起きたような次第でございまして、この
坑内火災が二次
災害のおそれなしやというふうなことで
十分検討をいたしたわけでございますが、いずれにいたしましても、
消火作業を継続いたしましてもとうてい消えない。もちろん、御
承知のように
坑内火災は水の
消火だけで消えないことは常識ではございますが、しかし何とか
救出作業を完了するまでの間二次
災害をでき得る限り防止したいということで、全力をあげて
消火に当たり、
片方救出に当たったわけでございます。
幸いにして
最後の
遺体を収容する
段階まで特に二次
災害の
発生はございませんでしたが、その間常時、いろいろ
発生する
ガス等を化学的に
検討し、それを時系列的に
検討いたしましたけれども、悪化はすれ、なかなか
消火はできないというふうな
状態で、このまま放置しておきますれば、実はこの
自然発火の
場所が古い昔の
坑道につながっているところがございまして、もしそこの地点における
ガスと接触をいたしますれば、再度
爆発のおそれが強いというふうな
状態にまで至りましたので、やむを得ず二十八日の二十時に
密閉したわけでございます。もちろん、
密閉をいたしますれば、
原因の
究明等につきまして時間的にもまた実質的にも若干の支障は生ずるかと思うのでございますが、しかし
遺体を
救出し終わった
あとにおいては、
原因究明を変更して、むしろこれ以上の第二次
災害を避けるべきであるというふうな
判断のもとに、
密閉を実施したわけでございます。この
密閉は二十八日から行なわれ、現在
強制注水をやって、大体一カ月
程度で浸水いたしますので、おそらく浸水いたしますれば、その
状況によりまして
完全消火を見きわめた
段階で再度これを取り明け、もう一度中の
状況につきまして精細な
原因究明をやるというふうな方針をとっておりまして、この点につきましては
会社側にも強く言い渡しておる次第でございます。
それからお手元の七ページに参りまして、この
ガス爆発の起きました
原因でございます。
原因につきましては、先ほどのように
坑内火災が起きてやむを得ず
密閉措置をとりました
関係で、最終的にこれだというふうな
判断は、それを取り明けてみなければ実はわからないわけでございますけれども、その後
従業員等の聞き込み、それから
密閉するまでの
監督局における
坑内調査というものを総合
判断いたしますれば、
原因としては、もちろんここには
ガスがあったことは事実ではございますが、その
ガスがどうしてここで
爆発限界にまでなったかということにつきまして、最終的にはなかなかわからないのではございますが、その後の詳細な
事情聴取等によりますれば、この左一片
付近におきまするいわゆる
風量が
不足しておったのではないか。その
風量の
不足の
原因はどこにあるかということが、その後
会社、それから
労働者等からの
事情聴取によりますれば、実はこの
地図におきまして五尺
払跡のすぐ左のところに三角じるしをつけておりますが、これは
排気サイドでございまして、ここに
災害前に
崩落があったということが実は
発見されております。そうしますれば、
排気側からのコントロールによりまして、左一片
付近における
風量に
不足を来たしておったのではないかというふうなことが、現
段階におきましては有力なる
推定要素になるわけでございまして、それを科学的にいろいろ計算いたしましても、ただそれだけではどうしても
爆発限界にはなってこない。したがっておそらくは、そういった全体としての
親風の
風量不足のほかに、むしろ三
号昇り、四
号昇り、五
号昇り、こういったところにおける、もちろん
ガス突出というほど大げさなものではないにいたしましても、若干異常な
ガスの噴出があったのではないか。その両者が相まったということが
想像されるわけでございます。この辺は現
段階における一応の
想像でございまして、まだ確証はつかめておりませんが、現
段階といたしましてはそういう
判断が妥当ではなかろうかと思っております。
それからもう
一つ、
火源につきましては、これは当初から
ハッパ説とそれから
電気器具の
ショート説と
二つあるわけでございます。
ハッパ説というのは御
承知のように、この三
号昇り、四
号昇り、五
号昇りのどれかにおいて
ハッパをかけた瞬間に
ガスに引火したというようなことでございまして、それからもう
一つの
電気器具説でまいりますれば、どうも爆源地が左一片にあるような
感じでございますので、左一片のところに五十ボルト
程度の
スイッチがございますが、その
スイッチのところにやや問題があるのではないかというふうな
感触を実は持っておるわけでございますが、その左一片のクロスした近所に実は
スイッチがございますが、そのところまで
爆発限界のメタン
ガスがたまるということは非常に異常な
状態でございますので、それはちょっと
想像にむずかしいのではないか。したがいまして、現
段階におきましては、どうも
ハッパ説が、人の
遺体の
状況その他から見まして必ずしも妥当とは考えませんけれども、やや有力な
感じを持っておるわけでございます。こういった点は、たとえばこれを取り明けまして、
点火器と
点火の電線とがつなげておりますれば、これはもうはっきりとわかるわけでございます。したがいまして、取り明けいたしました
段階でその点を
究明していきたいというふうに考えておるわけでございます。
いずれにいたしましても、
ガスの
管理、それからもう
一つは
作業慣行といいますか、もし
ハッパ説をとるということになりますれば、
ハッパ前における
ガス測定の不備というものが、これはもう明らかに指摘されるわけでございますし、それからまた、
電気器具説をとるといたしますれば、いわゆる
電気器具に対する
管理の問題というふうなことでおよその
原因がしぼられてまいりますれば、そういった点について、先ほど申しましたように、他
地域におきましてもそういった点を
十分検査をいたしまして、これならば完全であるという
状態にならなければ
操業再開はできないというふうな考え方で、現
段階といたしましてはそういう観点から全
地域につきましての
改善計画を
会社側に求めておるような
段階でございます。
一応
災害の
状況としては以上のとおりではございますが、特にこの
会社の
災害につきまして、
現地等におきます一般的な
感触と申しますか、そういったものは、いわゆるこの山が従来から
閉山を考えておったというために、
閉山を前提にして
保安に手抜かりが強かったのではないか、あるいは
電気器具について非常に不備なものがあった、あるいは
労働者並びに
保安係員すべてについて、
作業慣行上、
保安として本来守らなければならない
事項が守られていないというふうなことから、非常にきびしい批判を受けておるわけでございます。そういった点につきましては、われわれとしまして現在いろいろな
事情聴取、それから
遺体その他からのいろいろな
証拠物件等を集めまして、いろいろ
検討はしておりますが、われわれの
感触といたしましても、この山が
昭和四十年以降、こういった
坑内におけるいわゆる
災害事故が
発生していなかったというふうなこと、それからこの山が、従来から定期的な
ガス測定をやっておりましても、九州全体の率、あるいは全国はもちろんのことでございますが、非常に
ガスの
キャッチ量が少ないというふうなこと、すなわち
ガスとしての
危険性が非常に少ないというふうな
感触があたのではないか、そういったところから、われわれとしては
保安について十分な
措置が行なわれておったというふうな
感じは持っていないわけでございます。しかもまた、これは
経営者サイドに対してそういうことも言えますし、また、
職員並びに
労働者サイドにおきましても必ずしもそういう認識が徹底していなかったという
感じき持っておるようなケースも見受けられるわけでございます。山全体が、
自分の山は非常に
災害の少ない山であり、かつまた非常に
ガスの問題についておそれの少ない山であるというふうな
感触にあったということは否定できないだろうと思うのでございます。
監督局といたしましても、この山につきましては、六月、七月、八月、九月、いずれも
調査をやっておりまして、特にその
調査の
段階におきましては
ガス問題は、要するに
ガスの
測定結果は非常に少ないというふうなことから、むしろこの山でおそるべき問題は、
ガス以上に
炭じん爆発、それからこのほかの
地域、これに隣接している
地域からの古洞からの
坑内出水というものに非常に
危険性を持っており、かつまた過去における
災害というものに、多くは
落盤でございますが、
落盤事故が多いというところから、特にそういった点については重点的な
監督をやっておったような次第でございます。もちろん、かといって、
ガスの問題につきまして全然ノータッチではございません。その
監督した
段階においては、この部分のところはまだ採掘前でございましたが、ほかのところにおきましても、
風管の整備をやれとか、あるいは
風量についてさらに
確保するために
坑道の仕繰りを直せといったような指示もやっておりますので、とにかくそういった点におきましての一応の
監督はやってはおりますが、いずれにいたしましても、
会社全体もちろんのこと、われわれとしましても、今回の
災害につきまして十分反省しなければならないところを
感じておるような次第でございます。
簡単でございますが、一応
概況の
説明を終わらせていただきます。