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1969-07-09 第61回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年七月九日(水曜日)    午前十時二十三分開議  出席委員    委員長 平岡忠次郎君    理事 神田  博君 理事 篠田 弘作君    理事 菅波  茂君 理事 三原 朝雄君    理事 岡田 利春君 理事 八木  昇君       齋藤 憲三君    進藤 一馬君       廣瀬 正雄君    三池  信君       井手 以誠君    細谷 治嘉君       渡辺 惣蔵君    池田 禎治君       斎藤  実君  出席政府委員         通商産業省鉱山         石炭局長    中川理一郎君         通商産業省鉱山         石炭局石炭部長 長橋  尚君         通商産業省鉱山         保安局長    橋本 徳男君  委員外出席者         農林省農地局建         設部長     梶木 又三君         通商産業省鉱山         保安局石炭課長 高木 俊介君         労働省職業安定         局失業対策部企         画課長     関  英夫君         自治省財政局財         政課長     首藤  堯君         参  考  人         (石炭鉱業合理         化事業団理事         長)      田口 良明君         参  考  人         (石炭鉱害事業         団理事長)   天日 光一君         参  考  人         (産炭地域振興         事業団理事)  有馬 駿二君         参  考  人         (雇用促進事業         団理事長)   堀  秀夫君         参  考  人         (電力用炭販売         株式会社副社         長)      稲葉 五郎君         参  考  人         (石炭技術研究         所副理事長)  水田 準一君         参  考  人         (電源開発株式         会社副総裁)  大堀  弘君     ――――――――――――― 七月九日  委員金子岩三君、中村重光君及び大橋敏雄君辞  任につき、その補欠として齋藤憲三君、細谷治  嘉君及び斎藤実君が議長指名委員に選任さ  れた。 同日  委員齋藤憲三君辞任につき、その補欠として金  子岩三君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 七月八日  石炭縮小政策反対等に関する陳情書  (第五八七号)  新田川炭鉱閉山に伴う対策に関する陳情書  (第五八八号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  石炭対策に関する件      ――――◇―――――
  2. 平岡忠次郎

    平岡委員長 これより会議を開きます。  参考人出席要求に関する件についておはかりをいたします。  石炭対策に関する件について、来たる十六日水曜日、参考人として富士製鉄株式会社日本鋼管株式会社東京電力株式会社関西電力株式会社北海道電力株式会社及び東京瓦斯株式会社の各代表者に、それぞれ出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 平岡忠次郎

    平岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお参考人人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 平岡忠次郎

    平岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  5. 平岡忠次郎

    平岡委員長 石炭対策に関する件について調査を進めます。  本日は、お手元に配付してございます参考人名簿のとおり、石炭関係事業団等の各代表参考人として御出席をいただいております。  この際一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ、本委員会に御出席を賜わり、まことにありがとうございました。  新石炭政策に基づく事業計画及び問題点等について、参考人各位にはそれぞれの立場から、忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  それでは最初十分程度意見をお述べいただき、そのあとで質疑を行なうことといたします。  まず田口参考人にお願いいたします。
  6. 田口良明

    田口参考人 石炭鉱業合理化事業団田口でございます。  本日、本委員会出席いたす機会を与えられましたことに対しまして、まことに光栄に存ずる次第でございます。  最近における合理化事業団業務のおもなものにつきまして御説明申し上げます。  まず第一に、特別閉山交付金業務についてでございますが、諸先生方御高承のとおり、麻生、明治、杵島の三社から特別閉山交付金交付申請がございましたので、慎重に検討いたしました結果、三社いずれも特別閉山交付金交付する資格要件、すなわち会社の解散及び当該会社が保有するすべての鉱業権の消滅がその要件でございますが、この要件に適合いたしますので、特別交付金交付する旨の決定をいたしました。その旨各会社通知するとともに、七月一日付官報及び新聞紙上に公示を行ない、上記三社に対して賃金債権鉱害賠償債権一般債権金融債権を有する者は、所定の手続きにより、合理化事業団申し出るよう公示いたしました。目下その申し出を待っている状況でございます。  申し出の期限は、賃金債権につきましては七月二十二日まで、その他の債権につきましては八月三十日までといたし、申し出書送付場所は本団及び福岡、札幌に設置いたしました私書函のいずれでもよいことといたしました。  このうち特に賃金債権につきましては、当事業団としても早期に支払いを完了させるべく、すでに通産省とも密接に連絡をとり、おそくとも八月十五日、でき得れば一日でも二日でも早くということで事務処理について万全を期しておりますが、この債権は約一万人に近い従業員に対する賃金及び貯蓄金に関することでありますので、いささかでも間違いがあってはなりません関係上、正確を期し、取い扱いも慎重にいたさせております。  次に、一般閉山交付金関係でございますが、本日現在申請炭鉱数は三十一炭鉱生産トン数三百七万トンで、すでに本年度予算で見込んだ数量を相当上回る申請状況にありますが、今後においても、なお、ある程度申請があるものと予想せられます。  他方事務処理につきましては、早急に交付決定いたすべく努力中でありまして、すでに、八炭鉱に対して交付金通知を行ない、さらに六炭鉱についても近日中に通知を行なう予定でございます。  なお、この一般閉山にかかわりまする予算につきましては、お手元資料の一ページにございますように、約百五十四万トン、五十四億円でございますが、ただいま申し述べました状況から相当程度の不足を生ずることは確実でございますので、この閉山業務を円滑に実施するため、いずれ予算措置についてお願いいたさなければならぬことと存じますので、その節はよろしくお願い申し上げます。  最後に、融資関係についてでございますが、御高承のとおり、ビルド鉱関係設備資金供給源として昨年度まで大きな役割りを果たしておりました開銀資金が大幅に後退し、かわって合理化事業団融資が大きな部分を占めることとなりましたが、四十四年度設備関係資金といたしまして供給し得る資金量といたしましては、お手元配付資料の二ページから三ページに示しておきましたとおり、近代化資金開発資金及び機械貸与を含め約百五十三億円を予定いたし、このうち、すでに機械貸与を中心に十八億円貸し付け済みでございます。さらに近日中に五十億程度近代化資金先行融資を実施するよう諸般準備を進めつつある状況でございます。  次に、資料の三ページの六にございますが、本年度から無利子の貸し付けになりました整備資金でございますが、これは従来は年利六分五厘の有利子貸し付けでございましたが、この整備資金につきましてもすでに一部について貸し付けを行ない、残りにつきましても今月中に貸し付けるべく、目下準備を進めている状況でございます。  また、炭鉱労務者用住宅改善についてでございますが、前々からその必要性について強く叫ばれていたのでありますが、本年度から当事業団近代化資金融資対象とされることとなりました。現在、炭鉱労務者確保は焦眉の急の問題でございまして、したがって環境改善を早急に実施することが必要でありますので、今回労務者住宅改善のための融資制度が実現を見ましたことは大きな前進であると考えます。合理化事業団といたしましても、炭鉱労務者確保対策の一環として、炭住改善を含め、さらに広く環境改善のための方策を全般的に検討するための懇談会を設置し、目下種々勉強をいたしておりますので、いずれまとまり次第関係方面とも御相談申し上げたいと考えております。さらに、最近におきます金融情勢から、今後合理化事業団に対する融資期待は、ますます増大するものと考えられます関係上、設備資金の量の増大融資保証制度拡大強化等に関し格段の御配慮をお願い申し上げます。  以上、合理化事業団業務のうち、おもなものにつきましてその進捗状況と今後の問題点を御報告申し上げましたが、全般的に見まして、おおむね順調に推移しているものと申し上げられようかと存じます。  また、事務処理体制につきましては、特別閉山関係業務処理のため新たに一課を新設いたしましたほかは、おおむね現組織のままとし、もっぱら事務能率の向上と合理化により対処いたすこととしておりますが、いずれにいたしましても、今回の新政策の実施にあたりましては、合理化事業団の果たします役割りがいよいよ重かつ大となった次第でございますので、役職員一同、より一そう自戒自重いたしまして業務処理に万全を期し、職務の遂行に邁進いたす覚悟でございます。  以上、簡単でございますが御報告申し上げます。
  7. 平岡忠次郎

    平岡委員長 次に天日参考人にお願いいたします。
  8. 天日光一

    天日参考人 ただいま御指名を賜わりました天日でございます。  天日理事長を拝名いたしておりまするところの石炭鉱害事業団、これはすでに御承知の方もおられるようでございまするが、一応申し上げますると、昨年の七月一日付をもちまして、従来ありましたところの石炭鉱害賠償担保等臨時措置法及び臨時石炭鉱害復旧法、この二法律国会において御改正になりました結果、この改正法律に基づきまして、従来ありますところの九州、中国、東海、常磐の四つの鉱害復旧事業団と、またすでに存在しておりましたところの鉱害基金、この五つの団体が統合されまして、いま申し上げた石炭鉱害事業団が新たに発足いたしたのでございます。ちょうど、この七月一日をもちまして、新発足以来満一周年をけみしたわけでございまするが、幸いにいたしまして、関係方面の御指導、御支援によりまして、内部体制整備はほぼ完了いたしたに近いと申し上げる状態に達したのであります。  その問におきましては、法律の御改正の際に衆議院及び参議院の両院におかれまして統合に際しての心がまえとしての諸般の御注意あるいは附帯決議等もあったのでありますが、よくその趣旨を体しまして、たとえば一例といたしましては、従来の団体に属しておりましたところの職員諸君処遇等につきましても、可及的方法を講じてまいったと存じております。関係方面理解に対しまして深く感謝いたす次第であります。  今後の業務関係の展望を申し上げるにあたりまして、まず一応既往の復旧業務等の実績について一、二のことばを費やさしていただきたいと思うのでありますが、まずその前に一言申し上げておくことが適当と思いますのは、本事業団の三大業務といたすものを申し上げておきたいと思います。  その第一は、申すまでもなく鉱害復旧業務でございます。第二は、鉱害賠償及び防止のための資金貸し出し融資でございます。第三は、鉱害担保のための積み立て金の管理でございます。この三つが主要な三つ業務でございますが、以上申し上げた業務につきまして数字的に一応申し上げておきたいと思うのでありますが、鉱害復旧事業量は、当四十四年度におきましては、概数で申し上げますが、百十億円を予定されておるわけであります。お手元に差し上げました業務概要の九ぺ−ジでございます。  それから鉱害賠償及び防止のための融資でございますが、これを当四十四年度におきましては二十五億円を想定いたしておるわけであります。  また鉱害担保のための積み立て金受け入れ、これは当年度におきましては約二億円を想定いたしておるわけであります。一二ぺ−ジであります。  なお、当四十四年度末の事業量をもちまして従来からの数字等を累積をいたしますると、鉱害復旧業務におきましては累計いたしまして五百四十五億円に該当する復旧事業量を達成したことになるわけであります。これは二十七年以来のことでございます。九ページであります。  それから賠償及び防止のための貸し付け金融資でありまするが、これは百四十億円に達するわけであります。また担保のための積み立て金受け入れば、受け入れを払い戻したものもございますが、当年度末をもちまして約二十億円を管理いたすということであります。この辺一二ページに記載してあるわけであります。  なお、以下の細目数字につきましては、業務報告をごらん願うことにいたしまして、この際省略させていただきたいと思うのであります。  なお、石炭政策抜本対策といわれておりまするが、これらの一連の法律、政令あるいは省令等は逐次施行されつつありますので、それらの細目につきましては漸次具体化されつつあるのであります。これに対応いたしまして私のほうの業務関係のほうでも細心の注意を払いつつあるのは申すまでもないのであります。  以下、主要な今後の問題について申し上げておきたいと思うのであります。  まず第一は、鉱害復旧のあるいは鉱害処理推進という点でございまするが、御承知のごとく政府筋の御発表によりますると、四十二年度末におきまするところのいわゆる残存鉱害量が八百四億円ということになっておりますので、四十三年、四十四年度復旧業務量を差し引きますると、なおかつ六百億円ほどの残存鉱害量が存することになるわけであります。なお六百億という数字は、相当巨大な数字でありまするし、かつ年々復旧事業量が値上がりを来たしますからして、その点を考え合わせいたしますると、単に六百億円の数字を目途に考えるわけにはまいらぬわけであります。いずれにいたしましても法律の精神にうたわれておりまするとおり、民生の安定、国土の保全という見地をさらに推し進めてまいりますならば、できる限りすみやかに鉱害復旧推進いたさねばならぬことは申すまでもないのであります。そのためには年々の復旧事業量をさらに拡大増大いたすことが必要であろうと存ずるわけであります。  次には、第二の項目といたしましては、復旧計画総合性確保することでございます。鉱害復旧事業推進いたしてまいりますためには、今後の残存鉱害量を的確に把握することが第一義の当然の前提でありまするが、これを長期的にまた総合的のビジョンを持ちまして、各復旧計画相互の問における総合性整合性というものを確保してまいらねば、有効適切な復旧とはならないわけでありますが、この点につきましては、政府の御指示のもとに目下事業団におきまして現存鉱害基本調査というものを実施いたしておるのでありまして、おおむね今年度末をもちましてその取りまとめの段階に到達いたすことを期待いたしておるのであります。残存鉱害量の的確な把握ができましたならば、それに基づいて今後の復旧計画の年数なり年間の事業量等想定が勘案し得る段階に達するかと思うのであります。  次に第三点といたしましては、いわゆる無資力鉱害増大でありまするが、御承知のごとく四十一年度あたり以後から終閉山が続出いたしまして、これに伴いましていわゆる無資力鉱害というものが急速に増大してまいっておるのであります。この無資力鉱害増大ということは、すなわちわが事業団直営工事増大を来たすのであります。従来のごとく炭鉱が存在したりせぱその炭鉱復旧施行者となった事例が多いのでありますが、炭鉱が存在しなくなりました以上は、復旧事業団がその復旧事業施行者にならざるを得ない事態が当然多くなってまいっておるわけであります。われわれ団営事業あるいは直営事業と申しておりますが、この増加の趨勢は非常に急速でございまして、ごく最近、近年を例にとりましても、四十年度におきましては十二億円程度でございましたのが四十一年度には二十二億円、四十二年度には三十七億円、四十三年度には四十二億円というふうに急速に伸びておりまして、当四十四年度におきましては団営工事は四十五億円に達すると想定をいたしておるわけであります。かような趨勢でありますので、いわゆる山ぐるみ終閉山という事象が起きてまいりました結果、ますますこの団営工事に任ずべき量が多くなってまいっておる、かように考えておるわけであります。  ただ団営工事増大に対応いたしまするためには、あるいは現行法律の上におきましてある程度改正をお願いしたほうが適切であるかとも検討いたしておる点もありまするし、また所要の人員確保につきまして、ことに技術陣容確保につきまして一段の努力方法を案出いたさねばならぬか、かように考えておるわけでございますが、これらの点につきましてはまたいわゆる臨鉱法、臨時石炭鉱害復旧法存続年限の問題とも至大の関係があるわけでありまして、おそらく他日これらの点の法律改正等の点につきまして国会の御支援御協力をお願いいたしたい次第になろうかと思うのでありますが、よろしくお含みを願いたいと思うのであります。  防止資金貸し出し等業務につきましては、融資の金利の低減でございます。これが非常に要請されておりました結果、政府方面等の御支援をいただきまして年三分五厘という低利の資金供給することに相なったわけであります。  なお従来当事業団鉱害賠償または防止のために貸し出しまする資金財源といたしましては、その大部分政府からの融資額に仰いでおったのでありまするが、今年度から特に事態にかんがみまして政府出資をもって貸し出し財源に充てることが非常に多くなったわけであります。それは本年度政府出資が十五億円というふうに計上予定されておるということであります。この現象は、この必要は単に本年度のみならず、今後ますます貸し出し財源として政府出資に依存せねばならぬことが必然であり、かつより増強されねばならぬと思うのでありますが、この辺につきましても御関係方面の十分な御理解をいただきたいと思うのであります。  なお最後にはなはだ恐縮でありますが、一言つけ加えさせていただきますのは、われわれの事業団としての業務推進体制で、心がまえでありまするが、実は昨年七月一日発足の際に、私は理事長といたしまして全役職員一つの訓示を与えたのです。第一は融和団結であります。第二は綱紀の厳正であります。その他規律及び品位の保持誠実懇切、また健康の保持というようなことを訓辞いたしておったのでありますが、最近の世情にかんがみまして、特に綱紀の問題でございまするが、これにつきましては今年度の訓辞におきましてもさらに強調いたしただけでなく、部内にはそれぞれの措置を講ずる、事を未然に防ぐ用意をもちまして、諸般の段取りをきめておりまして、十分業務推進にあたりましては戒慎いたして、誤りなきを期したい、かように考えております。  お尋ねがありましたら申し上げます。
  9. 平岡忠次郎

    平岡委員長 次に、有馬参考人にお願いいたします。
  10. 有馬駿二

    有馬参考人 産炭地域振興事業団有馬でございます。平素事業団業務に関しまして多大の御支援を賜わりまして、たいへんありがとうございます。本日は、産炭地域振興事業団の今年度事業計画などにつきまして御説明させていただきたいと存じます。  お手元に説明の資料を差し上げてありますが、当事業団発足以来ちょうど七年を迎えることになったわけでございます。発足当初は私どもの事業が非常に先行投資的な性格が強いという事業であります関係上、この事業の運営が軌道に乗ってまいりますまでに多少の時間を要したわけでございます。しかしながら、最近になりまして当団事業につきましてようやく一般的に知れてまいりましたということ、また産炭地域におきますところの道路網などがかなり改善されてまいりまして、立地条件がよくなってきたということ、さらに大きく申しますと、特に太平洋ベルト地帯というようなところの労働の需給事情が非常に逼迫してまいっております。これがやはり各地方へ工場が分散する一つの誘因になっているのかと思うのでありますが、当団造成地の売れ行きも急速に上昇いたしますとともに、進出企業融資申し込み額におきましても飛躍的に増大してまいっておる状況でございます。  このような情勢を反映いたしまして、特に昭和四十四年度当団予算につきましては、先生方のたいへんなお力によりまして、予算額におきまして百七億五千七百万円、総事業規模におきまして百二十八億七千六百万円というふうに、昨年度に比べますると非常に大幅に増大さしていただいたわけでございます。このような事業規模拡大とあわせまして、特に今年度北海道閉山対策に即応いたしますために、北海道の支所を九州と同じように支部に昇格させますとともに、企業誘致の実効をあげるための機構の拡充と、増大する業務処理をはかるための人員の充実というようなことを行なうことになっておるわけでございます。  事業の現況を簡単に申し上げますと、土地造成につきましては三十七年から四十四年まで、これは数年間にわたる工事が大半でございますので、通年で申し上げますと予算が百九十七億でございますが、現在六月末までにそのうち百六十億円を支出する見込みでございまして、このうち完成いたしましたものが六十三団地、八百七十九万平米、金額にいたしますと約百十億円になっております。またそのうちでもって土地売却済みのものが約百九十件でありまして、四百四十万平米、金額にいたしますると五十七億円となっておるわけでございます。さらに現時点におきまして約三十八件、五十七万平米ほどの申し込みを受けておるような状況でございます。  次に融資関係でございますが、融資関係は、当団発足以来今年に至りますまで二百九十一億円の予算をいただいておるわけでございますが、六月末までに約八百件、会社にいたしますと六百五十数社で、約二百三十一億円ほどの融資をいたしております。  なお、これらの融資企業によるこれまでの設備投資額は約七百億円、また炭鉱離職者雇用は、これまでに約一万八千人ほどをこの会社でもって新たに雇用いたしておるわけでございます。二百三十一億円と申し上げましたが、このうち今年度におきましては予算が七十一億円でございまして、六月末現在ですでに二十二億円の融資が決定されまして、なお現在時点におきまして約六十八件、二十八億円の融資申し込みを受けております。こういう状態でもって推移いたしますると、四十四年度予算が七十一億円、このほかに債務負担が十一億円ございますので、八十二億円の契約をすることになるかと思いますが、とてもそれでは足りないで、資金需要のほうが上回ることが十分予想されているような状態でございます。なお、工業用水道事業につきましては、すでに昨年の七月に福岡県の鞍手の工業用水道が完成いたしまして、現在その周辺の団地に進出いたしました九企業に対しまして一日三千五百トンの給水を行なっておりまして、まだ能力は十分ございますので、逐次この供給を増加していくことになっております。また筑豊の田川地区におきましては、中元寺川の開発による工業用水の導入、また北海道の美唄川の開発、そういうものを鋭意実施いたしておるわけでございます。  工場貸与事業につきましては、直方地区でかねて当団の明神池団地におきまして鉄鋼関係六社の協業化によるところの共同工場を着工中でございましたが、このほど完成いたしまして、近く操業開始の予定となっております。  それから出資の関係でございますが、出資事業につきましては、筑豊のボタを使いました人工軽量骨材事業がことしの秋ぐらいには試運転も終わりまして営業に入ってくるという見込みになっております。このほか、今年度におきましては新たにわらを加工いたしまして建材をつくりますところのストラミット製造業とか、あるいはてん菜糖の糖化を促進いたしますところの酵素メリビアーゼの製造企業というようなものの計画をいたしておりまして、ただいま関係のところと鋭意折衝中であるところであります。  また、本年度当団の施策の重点でございますが、まず第一は、閉山に関する緊急対策であります。終閉山対策といたしましては、当団といたしまして融資対象あるいは融資比率などにつきまして特別な配慮を行なっておるところでありまして、一例を申し上げますと、佐賀県の杵島炭鉱閉山対策といたしましては、現在杵島炭鉱のあと地及びその周辺に数社すでに企業の進出の話が進んでおります。こういうような企業に対しましては、特に終閉山対策といたしまして優先的に融資をいたす方向で検討しておるところでございます。また筑豊におきましては田川の閉山がございますので、この田川の閉山対策といたしまして大型団地を田川の南のほうに造成するようにただいま進行中でございます。このほか、各地の閉山に即応いたしまして、極力その対策の実をあげるように努力をいたしておるわけでございます。  第二に北海道対策であります。北海道は従来原料炭を中心といたしましたビルド地帯でありましたために、炭鉱の閉山もほかの地域に比べますと比較的少なかったというような事情もありまして、私どもの事業におきましてもなお筑豊地区などに比べますとやや立ちおくれていた感がございます。ところが最近の情勢では、北海道の産炭地域におきましても炭鉱終閉山が相当出てまいりまして、産炭地域振興対策も思い切ってこれを拡大していくという必要が出てまいっております。このため、当団といたしましても団地造成と並行いたしまして誘致活動を積極的に行なう必要がございます。そこで、本年度におきましては、石狩地区などの拠点となる団地造成に着手いたしますとともに、積極的な企業誘致を進めてまいることにしております。  なおその際、北海道は、御高承のとおり、内地と比べまして、立地条件あるいは商品の需給、輸送手段などの点でハンディキャップが非常に多いので、造成土地の分譲あるいは進出企業に対する融資等につきまして、返済条件を緩和することなども検討したいと考えておるわけであります。  それから第三に、産炭地域振興のかなめとなりますところの中核企業の誘致であります。何と申しましても、非常に疲弊の激しい産炭地域を恒久的に振興させまするためには、地域の中核となる優良大企業を誘致いたしまして、大企業を誘致することによりまして、関連企業がそこに自動的に誘致される。そういうことで、閉山によるところの地域経済の陥没と申しますか、というものを、一挙に回復、発展させることがどうしても必要であると考えられます。特にことしは、この面での誘致、広報活動に意を注ぐことにしておるわけでございます。  以上、事業団事業概要と今年度事業運営につきまして、私どもの考え方を申し上げたわけでございますが、最後に一言申し上げたいと存じます。  私どもの事業は、基本的には昨年の十二月に出されました産炭地域振興審議会の建議の趣旨にのっとりまして、産炭地域振興実施計画に即応いたしまして進めていくべきものでありますが、その具体的な展開にあたりましては、筑豊再開発調査委員会、これは福岡県がやっておる委員会でございますが、そのような場で各地域の特性に応じた開発ビジョンが検討、策定されつつあります。また先般設立されました産炭地域振興各省連絡会というものも各地で行なわれるわけでございます。その個々の終閉山地域につきましてのきめこまかな振興対策ということがそこで検討されておりますので、これらと十分連絡をとりつつ、私どもの仕事を進めてまいりたいと考えております。  このように、振興事業団事業は、今後一そう地域開発という観点を取り入れまして、計画的に推進していかなければならないのでありますが、このような要請に応じて、たとえば団地造成につきましても、中核的な大規模のものを手がける必要も強くなっているわけでございます。これに伴って、勢い道路だとか用排水施設という団地の関連施設の重要性が高まっております。このために私どもといたしましては、本年度創設されました産炭地域開発就労事業というものをはじめ、いろいろな制度をできるだけ活用していきたいと考えておる次第であります。その際、こういうわけでございますので、関係各省庁の御理解と御援助がなければ、なかなか事業がうまく運ばないのが実情でございますので、前に申し述べました連絡会その他いろいろな機会にその御支援をお願いいたしまして、私どもの仕事が満足なようにまいりますようにいたしたいと存じますので、ひとつよろしくお願いしたいと存じます。  どうもありがとうございました。
  11. 平岡忠次郎

    平岡委員長 次に、堀参考人にお願いいたします。
  12. 堀秀夫

    ○堀参考人 堀でございます。  今回は、雇用促進事業団の業務につきまして御指導をいただきまして、ありがとうございました。  本日は、当事業団の主要業務一つであります炭鉱離職者援護事業につきまして、御説明を申し上げます。  昭和三十六年七月一日に雇用促進事業団が設立されました。それまで炭鉱離職者援護会が行なっておりました諸業務を引き継ぎましてから今日まで、八年間にわたり当事業団は、その主要業務一つとして炭鉱離職者援護の業務を行なってきておることは御承知のとおりでございます。援護会時代を含めまして、昭和三十四年度から昭和四十三年度までの炭鉱離職者援護業務の実績を若干申し上げますと、移住資金につきましては、認定人員にして八万五千余人、金額にして六十二億六千余万円、職業訓練手当につきましては、認定人員にして約三千五百人、金額にして一億七千余万円、雇用奨励金につきましては、本制度の創立されました昭和三十六年度から昭和四十三年度までに認定人員にして約四万人、支給決定金額にして二十三億八千余万円に達しております。  いろいろ困難な諸情勢のもとにおきまして、関係者の方々の御指導、御協力によりまして、比較的順調に業務を遂行してまいることができたと考えております。次に、本年度事業計画についてでございますが、まず本事業年度において、昨年末の石炭鉱業審議会の答申及び本年一月の閣議決定の趣旨に基づき、改善を加えました諸点につきまして申し上げます。  その第一点は、第二種移住資金の支給額の引き上げであります。これまで、第二種移住資金、すなわちいわゆる山から山へ再就職するために移住する離職者に対しまして支給いたします移住資金の支給額は、第一種移住資金の支給額の二分の一に相当する額でありましたが、今回その支給額を第一種移住資金の支給額と同額といたしたのであります。  第二点は同じく第二種移住資金調整額の新設であります。第一点の改正と関連いたしましてすでに第二種移住資金の支給を受けた者が、今後炭鉱合理化解雇を受け再就職をするために移住する場合には、第一種、第二種移住資金の二分の一に相当する額を第二種移住資金調整額として支給することといたしました。  第三点は、雇用奨励金の支給額の引き上げであります。その月額を四十歳未満七千円、四十歳以上五十歳未満八千円、五十歳以上九千円として、それぞれ一千円の引き上げを行なっております。  第四点は、職業訓練に関する諸手当額の引き上げであります。職業訓練に関する手当のうち、基本手当の日額と受講手当の日額をそれぞれ引き上げております。  次に、昭和四十四事業年度事業計画の概要について申し上げます。労働大臣及び通商産業大臣の認可を受けました事業計画の大綱は、お手元にお配りした資料のとおりでございますが、労働省の策定いたしました合理化解雇炭鉱離職者再就職計画を基礎といたしまして、移住資金雇用奨励金、職業訓練手当、労働者住宅確保奨励金、再就職奨励金等につきまして、それぞれ支給人員を予定いたしまして、事業計画を作成いたしました。  なお、当事業団の一般会計予算をもって現在全国に合計四万六千七百九十戸の雇用促進住宅を設置、運営いたしておりますが、その入居者の方々のうち三五%は、炭鉱離職者であって、移転就職された方々となっております。  次に、当事業団が設置、運営しております総合職業訓練所の転職訓練の実施計画といたしましては、炭鉱離職者訓練を含め、所内約六千、所外約一万のワクを設定いたしておりますが、在現の入所状況、あるいはこのほか、一般職業訓練所においても転職訓練を実施していること等から見まして、炭鉱離職者で転職訓練を希望される方々をお引き受けするのに大きな支障はないものと考えております。  以上が、炭鉱離職者にかかる当事業団事業計画の概要でございますが、本年度に入りましてからの離職者発生状況の推移等から今後の見通しを考えますと、援護業務にかかる実際の支給対象人員が、この計画による支給予定人員を上回ると予想されるのであります。このような場合におきましても、当事業団炭鉱離職者援護事業特別会計の予備費の使用等によりまして、援護業務の遂行に支障を来たさないように万全を期したいと考えております。  私といたしましては、今後見込まれる炭鉱離職者の発生に対しまして当事業団設立以来、八年の経験を生かし、合理化離職を余儀なくされた炭鉱離職者の方々の身になって、迅速、的確に援護業務を遂行し、その再就職の援助に万全を期する所存でありますので、よろしくお願いいたします。
  13. 平岡忠次郎

    平岡委員長 次に、稲葉参考人にお願いします。
  14. 稲葉五郎

    ○稲葉参考人 私、ただいま御指名を受けました電力用炭販売株式会社の稲葉でございます。  かねてより石炭対策につきまして、御熱心な御検討を賜わっておりまして、まことにありがたく敬意を表するものでございます。本日はまた、石炭対策に関連いたしまして、弊社の営んでおります事業の今後の見通しと問題点につきまして、意見を申し述べます機会を与えられましたことを厚くお礼申し上げます。  当社は、諸先生方つとに御高承のとおり、去る三十八年第一次石炭鉱調査団の答申を受けまして、電力用炭代金精算株式会社として発足、その後、四十年六月に、第二次調査団の答申に基づきまして、炭価の引き上げを含む一連の施策の実効を期す一環としまして、電力用炭の価格の安定、引き取り数量の確保をはかるため、社名を電力用炭販売株式会社と改めまして、業務内容を強化拡大いたしまして今日に至っておる次第でございます。  当社の担当しております業務は、大ざっぱに申しまして、次に述べます三つの柱を中心にしまして、それぞれに付帯している業務を、日々処理いたしておるわけでございます。以下、その三つの柱のそれぞれにつきまして、業務の現状と見通し、及び問題点と考えられます事項を申し上げまして、諸先生の格段の御理解と御応援を仰ぎたいと存ずる次第でございます。  まず、電力用炭の購入、販売の業務であります。御承知のとおり、去る四十年より電力用炭の売買契約というものは、すべて当社に集中されまして、当社が石炭業者より購入いたしまして、電力会社に販売する形をとることとされたのでありますが、当社は石炭と電力の問に介在する立場といたしまして、与えられた主目的でございます安定価格による取引の確保をはかるとともに、電力石炭双方の売買自由選択の原則までは曲げるわけにはまいりませんが、全体として両者問にスムーズな合意が成り立ちますように、若干の寄与を行なっておりますし、また、今後とも努力を重ねてまいりたいと存じておる次第であります。今後の見通しでありますが、御承知のように、今後石炭の産炭事情は、現状より相当の構造変化があるものと考えられます。その中で問題は、産出炭が産炭地別に、品位別に、うまく需要にミートするであろうかということにあると思います。ことに最近、消費者側から供給石炭の品質の面での御注文が多くなってきておりますし、いわゆる、需給結合にくふうをこらす要がある点に問題があると考えられます。この辺は、石炭需給調整の必要性ということで取り上げられておりますが、私どものほうとしても、需給双方の問に円満な話し合いが成立することを期待しておりまして、そのため何かあっせん的なお役に立つ役割りがあれば果たしていきたいものと考えております。その他、電力用炭の取引条件の面等で、電力、石炭の間で話し合う案件がおりおりございますようで、この面での両者の問の橋渡しの仕事を誠意をもってやっておる次第でございます。  それから第二の問題でございますが、第二は、当社の行なっております専用船運用事業でございます。御高承のとおり、石炭の流通合理化に資するため、近代化資金の投入を得まして、低コストの石炭専用船が現在二十九隻、デッドウエートで十五万四千トンの船腹量で、昨四十三年度は七百三十万トンの石炭を運びまして、大きな運賃節約効果をあげておりますが、この専用船の効率的な運用、荷主の公平な船腹の使用の面から、当社がその運用の衝に当たっております。今後の専用船運用業務、並びにその付帯業務問題点でありますが、先ほど申し述べましたごとく、出炭縮小の方向に進むことでもありまして、特に今後船腹を大幅に増強するというわけにはまいらぬかと存じます。問題は、賃金とか物価の上昇に伴い、船員費その他が今後相当に高騰するおそれがあり、これらをいかに運賃面にはね返らぬようにするかを考えることにあると思います。石炭の流通経費はこのほかに、陸上運賃、港頭積み込み賃等、すべて値上がり要素を含んでおり、これらをどのように克服していくか、なかなかむずかしい問題であります。当面私どもの考えておりますことは次の二点でございまして、まだ夢のようなことを申し上げて恐縮ですが、まず現有の二十八隻の近代化専用船の一そうの高能率化であります。現有船にくふうをこらして、船員費その他を節減して仕上がりコストを安くする方策はないものか、たとえば初期建造の自動化の十分でない船を自動化、省力化を推し進める余地はないか、あるいは船型をさらに大型船にスケールアップする方策とか、石炭側、船主側、御当局各方面とお打ち合わせ、研究してまいりたいと考えております。  次の点は、専用船の運航能率をさらに向上させる問題でございまして、専用船が効率よく走るためには、まずもって石炭の流れがスムーズ、かつ平均的である必要性は当然ですが、積み出し港の整備、増強が果たす役割りが非常に大きいことに注目したいと思います。たとえば、北海道における高能率、低コストで、立地条件のすぐれているところと申しますと苫小牧港でございますが、苫小牧港の積み出し設備の増強ということが現在石炭業界において検討されているようでございますが、これが増強される暁には、専用船の運航効率向上に寄与し、海上運賃の低減にも資すると大いに期待されると存じます。この辺の検討を今後とも大いに進めてまいりたい、かように存じておる次第であります。  第三の点は、石炭鉱業の短期運転資金に関連する問題でございます。当社は、去る四十一年以降、石炭業者の資金繰り対策の一環として、市中十四銀行から月額五十億円限度の協調融資を受けまして、電力用炭代金の支払いを一カ月繰り上げて、石炭が荷渡された月の当月末に支払いを行なっておりまして、石炭業者から感謝されております。ところで、銀行団との融資約定は、毎月借り入れ、毎月返済の短期借り入れ契約でありまして、去る四十一年より毎年契約を更新いたしまして、現在に至っておりますが、その間、金融情勢の逼迫もございますし、もともと当社の預貸率は極端に低く、融資する五十億円は当月末支払いに充当されまして、銀行での歩どまりはほとんどない。さらには、将来預金の大幅増加の見通しは全くないということでありまして、幸い銀行側の御理解と御好意と、御当局の御支援にすがりまして今日まで継続させていただいております。今後の継続につきましても、私どもといたしましては、この繰り上げ払いが、石炭業者にとって不可欠のものとなっていること、すなわち、当月掘って、当月納入した電力用炭の大部分の代金が、当月末には現金で炭鉱に還流するということでありまして、いまこの五十億円の繰り上げ支払いをとめることは、炭鉱資金繰りに大打撃を与えるおそれがあることを考えまして、銀行各位にぜひとも融資継続のお願いの努力を重ねる所存であります。  以上、当社のやっております事業三つの範囲に分類しまして、今後の見通しの御説明を申し上げました。  これをもって終わります。
  15. 平岡忠次郎

    平岡委員長 次に水田参考人にお願いいたします。
  16. 水田準一

    ○水田参考人 私御指名を受けました水田でございます。  私ども石炭技術研究所は創立以来ちょうど十年目になりますが、その問諸先生方の一方ならぬ御指導、御援助を賜わりまして現在に至っておりますことをこの機会をかりまして厚くお礼を申し上げます。  研究所では研究課題の選定というのが最も大切なものでございますが、私どもの研究所では、第一に石炭の生産原価の低減に役立つような課題、第二に石炭需要の維持拡大に役立つ、この二つを柱として従来研究テーマを選んでまいりました。  事業規模資金的に申し上げますと、年間約一億円程度政府補助金を土台にいたしまして、大手石炭各社から会費約三億円を出してもらいまして、合わせて年間おおよそ四億円を使いまして研究を行なっております。  さて、第一の石炭の生産原価の低減に対しましては、日本の炭鉱事情も考えまして、狭い坑内からの大量生産をねらいまして、一つには採炭の機械化、特に強力採炭機などの開発、第二には掘進の機械化強化なども第一線の坑内作業の徹底的機械化、近代化を重点的に取り上げてまいりました。  創立第一年から石炭技研といたしましては、自走支保の開発を取り上げ、以来年々自走支保、ドラムカッターの試作改良、高速コンベヤの開発等につとめてまいりました。さらにそれらの組み合わせによる高性能切り羽の造成努力してまいりました。  また創立以来水力採炭、水力輸送などの炭鉱水力化方式の開発に力を入れてまいりましたし、岩石坑道や沿層坑道の高性能掘進機の開発、選炭自動化方式の開発など多方面にわたって努力してまいりました。  一方保安技術の分野でも、四十二年度以来保安専用機器開発補助金の交付を受けまして、機器メーカーと共同開発を行なっております。それらの成果やこれに投じました開発費用の推移はお手元に差し上げました資料をごらんいただきたいと思います。  第二の石炭の加工利用の分野でありますが、昭和三十六年以来国内炭活用による製鉄用コークスの製造研究に取り組んでまいりました。幸い研究は順調に発展しまして、当所が開発しました予熱乾燥炭装入法は四十二年に新技術開発事業団の開発課題と選ばれました。現在日本鋼管福山製鉄所で企業化が進められております。この方法は現在世界的に採用されておる水平室炉によるコークス製造法を改良し、生産性の向上と一般炭の使用を可能ならしめるものでありますが、さらにコークス用炭の配合炭種の最大限に拡張し、かつ連続製造を可能ならしめるものとして成型コークス製造法を本年度から開発に着手いたしております。もちろんこの新製造法は期待する効果が大きいものがあるだけに解決を要する技術も範囲も広く、条件も複雑であります。したがいまして、富士鉄室蘭製鉄所の協力を得て実施いたしますが、同時に資源技術試験所、北海道工業開発試験所等の国立の試験所とも一体となって開発に努力しなければならぬと考えております。開発のスケジュールとしまして、本年度は毎時二トンの規模で加熱成型炭製造のプロセスに取り組みます。来四十五年度はやはり毎時ニトンの規模の成型炭乾留装置を建設し、四十六年度中には企業化に対するめどを得るように考えております。もちろんさらにスケールアップした企業化試験を必要としましょうが、これは大型プロジェクトあるいは新技術開発事業団の出資など、国の強力なバックアップをお願いいたさなければならぬかと存じております。  このほか機械化が進むにつれてややともすれば増加する微粉炭の問題がございます。この微粉炭の有効利用としていままでに含油炭の製造、微粉炭ぺレットの製造などの開発を行なってまいりました。昨年から、近年都市で問題となっております下水処理、ごみ処理に微粉炭を活用する研究を開始いたしております。下水処理に微粉炭を利用しますと、下水汚泥の沈降促進に役立ちますし、また脱水率の向上などに効果があります上に、燃焼性も改善されますので、完全処理が可能となるわけであります。またごみにつきましても、微粉炭添加圧搾工程を利用することによりましてごみの燃焼性状が著しく改善され、完全燃焼が可能となりますので、都市廃棄物による公害防止に対して貢献することと存じております。  このように、石炭技研としましては、現在の炭鉱が直面しております石炭採掘事業の生産性向上、原価低減を強力に推進するとともに、石炭の需要を確保するため新規加工利用技術を開発したいと努力しておる次第でありますので、一そうの政府方面の御理解、御助成を賜わりますようお願い申し上げます。  以上であります。
  17. 平岡忠次郎

    平岡委員長 次に大堀参考人にお願いいたします。
  18. 大堀弘

    ○大堀参考人 御指名をいただきました電源開発株式会社の大堀でございます。  本日は、当社の揚げ地石炭火力について御説明申し上げる機会をいただきましてまことにありがとうございます。  当社は設立以来現在まで約十七年間に水火力合計約四百四十八万キロワットの電源とこれに付帯する送変電設備の建設を行ないまして、本四十四年度の販売電力量は約百六十八億キロワットアワーに達する見込みでございます。また引き続き約百四十五万キロワットの電源開発並びに関連工事を進めております。当社が、このような成果をあげ得ましたことは、ひとえに諸先生をはじめ、関係御当局の日ごろの御指導のたまものでございます。この席を借りまして厚く御礼を申し上げます。  中でも石炭政策に基づきまして格別の御配慮を賜わりました揚げ地石炭火力三地点五基の建設につきましては、おかげさまをもちまして順調に進捗いたしまして、この四十二年五月に横浜の磯子一号機、これは最大出力二十六万五千キロワットでございますが、第一号が運転開始したのに引き続いて、四十二年の七月に広島県の竹原の二十五万キロワットが完成いたしました。四十三年七月兵庫県の高砂一号機、二十五万キロワット、引き続いて四十四年一月に高砂二号機、二十五万キロワットがそれぞれ竣工いたしまして、残る磯子二号機、二十六万五千キロワットでございますが、これも先般火入れを行ないまして、試運転に入り、本年十月に完成する運びとなっております。以上によりまして五基合計百二十八万キロワット全部の建設が完了することとなります。  諸先生方にはすでに御高承のとおりでございますが、当社の揚げ地石炭火力着工の経緯を振り返ってみますと、去る三十七年十一月政府におかれまして石炭政策大綱を閣議決定され、その中において石炭の長期安定需要を確保するため、電力業界の石炭引き取り量を計画的に増加することを要請されました。電力業界としては、基本的にこの要請に協力することとなりましたが、石炭火力は建設費、燃料費両面において重油火力に比して相当割り高となりますので、国の財政措置と電力会社の協力を得まして、当社が電力会社にかわって揚げ地石炭火力の建設を担当することになった次第でございます。これによりまして、昭和三十九年五月の電源開発調整審議会において磯子、高砂、竹原三地点各一基の計画が決定し、さらにその後磯子及び高砂各一基の追加建設が決定されました。  当社は当時すでに北九州市若松に低品位炭を燃料とする若松火力、これは七万五千キロワット二基でありますが、若松火力を完成させておりましたので、この建設経験をもとに、関係電力会社の協力を得て、建設に着手し、工期の短縮、工事費の節減、公害防除措置等に十分の成果をあげて工事を完遂することができました。  これらの点につきまして若干具体的に申し上げますと、まず工期につきましては、このクラスの火力発電所は、通常の場合着工から運転開始まで、二十六、七カ月を要するのでありますが、当社の場合は各地点とも合理的な工事管理によって二十二ないし二十四カ月と数カ月短縮することができました。  また建設にあたりましては、極力経済性の確保に意を用い、設計並びに施工の合理化関係業界の協力等によって建設費の低廉化をはかり、発電原価の低減につとめました。もちろん建設費の節減にかかわらず、設備の性能は十分確保されており、運転開始後の稼働状況もきわめて良好であります。  発電原価につきましては、諸先生及び政府の御配慮によりまして三十九年以来総額百五億円の政府出資と炭価改定に見合うトン当たり三百円の石炭引き取り交付金を得ましたので、五基平均の料金は発電端キロワット・アワー当たり約三円程度におさめることができました。  なお公害防除につきましては、前向きの姿勢をもって積極的に取り組みまして、着工前に地元住民あるいは県、市当局と十分の意見交換を行ないまして、公害防止に関する協定を結ぶなど誠意ある措置を講じ、市民の理解と協力を得てまいっております。  具体的に申しますと、新鋭高能率の集じん装置や高煙突をはじめ、騒音防止、水質汚濁防止施設等、各種の公害防止施設を整備しております。運転開始後も、公害防止に特に留意して運営しておりますが、市民の皆さんの協力を得て地元関係もきわめて円満に保たれております。  次に揚げ地石炭火力竣工後の運転状況について一言申し上げますと、三地点が逐次運転に入りました四十二、三年度——今年度もそうでありますが、日本経済の高度成長を反映いたしまして、電力需要が急増し、これに加えて西日本を中心として異常渇水が続きましたため、電力需給は、全国的に逼迫をいたしたのであります。このような状況下におきまして、当社の三火力の竣工は、きわめて時宜に適したものとなり、いずれも運転開始以来計画発電量を上回る発電を行ないまして、電力の安定供給に大きく寄与してまいっております。  またその結果、石炭引き取りも、所期どおり行なわれておりまして、四十三年度の引き取り実績は、三地点合計で二百八万トンに達し、四十四年度、本年度の計画は二百八十二万トン、五基完成してフル運転します四十五年度以降は、年間約三百十万トンと相なります。  なお四十四年度当社が引き取りを予定しております揚げ地火力用炭の産地別内訳を申しますと、北海道が九十万トン、三二%、常磐が十四万トン、五%、九州が百七十八万トン、六三%、合計二百八十二万トンであります。  このほか若松火力用低品位炭、これは九州でありますが、六十二万トン使う予定になっておりますので、当社の本年度の引き取り量は総計三百四十四万トンの予定であります。  以上申し上げましたように、当社の揚げ地石炭火力につきましてはちょうど五年前の国会で建設の御方針を承認していただきまして、ちょうど五年目でございますが、今年度をもって五基が完成するという状態でございます。申し上げましたように、運営の点につきましても円滑に運営されておりまして、石炭も現状におきましては必要な量を確保いたしております。  ただこの機会に若干私どもの気持ちを申し上げますと、将来の長期的な出炭見通し等について若干不安を感じておるというのが率直な気持ちでございまして、この意味におきまして、今後の当社火力用炭につきましては、量的にも質的にも価格的にも安定性が得られますよう御支援をいただきたいと存じます。特に低硫黄のものの確保について御配慮を賜わればしあわせだと存じます。  簡単でございますが、以上をもって御説明を終わりといたします。ありがとうございました。
  19. 平岡忠次郎

    平岡委員長 これにて参考人各位の御意見の陳述は終わりました。     —————————————
  20. 平岡忠次郎

    平岡委員長 これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、これを許します。井手以誠君。
  21. 井手以誠

    ○井手委員 各事業団、国策関係会社業務運営の概要をただいま承りましたが、事業量がだんだんふえておりますので、各事業団等もたいへん御苦労であろうと存じます。ただ、一言感じを申しますと、お役所ではできない炭鉱関係の仕事を機動的にやろうというので発足いたした事業団なのでございますから、各役所からの幹部の受け入れ等の関係もございましょうが、なるべく機構は簡素にしていただきたい。そしてなるべく現場の職員をふやして、待遇も改善して、機動的に能率的に仕事が促進されるように御配慮を願いたい。一言申し上げておきたいと思います。  本日は、石炭の基本政策などについては一切抜きにいたしまして、閉山計画、鉱害対策、産炭地振興などの実務関係について若干承りたいと思っております。今度の新政策の中の一つの柱である事業ぐるみの閉山ですが、これは石炭関係従業員をはじめ、鉱害被害者、周辺地域民の受ける重大な影響にかんがみて、閉山交付金を増額して対策を充実するというふうに閣議決定はなっているようであります。従来の一般閉山よりも各方面にわたってその対策は充実されると理解してよろしゅうございますか。中川局長にお伺いします。
  22. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 御質問のとおり、私どものほうもさように考えております。
  23. 井手以誠

    ○井手委員 それを前提にして逐次お伺いをしていきたいと思っております。  鉱害対策は閣議決定にも、またこの間の局長の御説明にもあったように、復旧規模の拡大復旧制度の改善がはっきりうたわれておるわけでありますが、具体的にいかなるものでしょうか。
  24. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 お答えいたします。  前回、新対策発足に伴いまして四十四年度の全体の予算関係について御説明申し上げましたが、鉱害対策に関して申し上げますならば、復旧規模といたしまして、四十三年度約九十五億円という状況でございましたものに対しまして、四十四年度百十億円という規模に増高いたしております。これだけから申しますと、他の政策に比べましてしかくそれほど大幅な増額ではございません。しかしながら、四十四年から四十八年までの五カ年間における関税収入財源というものを大きく分類いたしまして、その中で今回の政策によるそれぞれの所要原資を割り振りいたしていきまする中で、鉱害対策に対しましては毎年少なくもこの程度の増額をしていく必要があるのではなかろうか、こう考えておるわけでございます。  なお、制度的な問題といたしまして、従来から当委員会でいろいろ御意見の出ております無資力鉱害復旧その他についての制度的な改善というようなことは、この五カ年間になるべく御要望に沿えるように今後検討事項といたしまして、鋭意いまそれぞれの項目についての検討をいたしておる次第でございます。
  25. 井手以誠

    ○井手委員 わざわざ閣議でそういう字句まで書かれた問題ですから聞いたわけです。実情はさほど拡大もされてないし、改善もされてないようです。  そこで一言申し上げたいのは、石炭対策で最初に鉱害の問題はかなり論議されますが、どうしても需給関係とか退職金の問題であるとかいうことに、いままでの石炭政策ではそこに重点が移って、とかく鉱害問題がすみっこに押しやられるといういきさつがございましたが、その点はいろいろ改善すべき点、予算拡大等なさなければならぬことがたくさんありますので、特に配慮を願っておきたいと思います。  その次に、従来炭鉱が閉山してからその復旧は五年間で行なうことが基本でございました。それはさきの石炭鉱業審議会の答申でもありましたし、歴代大臣並びに石炭局長の言明でもございました。そうしますと、杵島のように百億円にものぼる鉱害あるいは明治、麻生のように膨大な鉱害量を持っている企業ぐるみの閉山に対して、従来の一般閉山よりも改善されるということであるならば、どういうふうに復旧なさる御計画でありますか、簡単に方針だけを伺いたいと思います。
  26. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 ただいま御指摘がございましたように、杵島炭鉱、麻生産業、明治鉱業、従来大手と称されておりました石炭会社が、ある時点に三社相並んで閉山をするというようなことはいままでの石炭情勢の中でなかった事態であります。新しい対策の中でこのような事態想定というものを基本に織り込まざるを得ないという状況にございまして、このため特別閉山交付金制度その他従来になかった、前例を見ない制度をくふうせざるを得なかったのはこのような大きな閉山が同時に出てくるという状況にかんがみてのことでございます。鉱害について申しましても、四十二年度末の当省調査によりますと、杵島炭鉱で五十六億円、明治鉱業で四十八億円、麻生鉱業で二十八億円という、三社で約百三十二億円の鉱害を今後に残しておるわけでございます。これらの処理につきましては、このような前例のない状況でございますので、閉山後、できるだけ早い時点で閉山鉱害処理を行なうという気持ちには変わりございませんけれども、従来のように、五年間で処理できるかどうかというところには非常に大きな問題があろうかと考えるわけでございます。そのために、この処理につきまして、当面、特別閉山交付金交付によりまして、復旧を促進していくことにいたしまして、交付金交付の後は無資力鉱害としてできるだけこの鉱害復旧の促進に当たるということにいたしたいと考えておる次第でございます。できるだけ早くという御意見については、私どもも同様に考えます。従来のとおりのスピードでできるとは、この鉱害の大きさから見まして、率直に申し上げて、いきかねる。その中で、できるだけのスピードアップをいたしたいという所存でございます。
  27. 井手以誠

    ○井手委員 従来、長期復旧計画と申しますか、五年で完了することを、答申も、政府の方針も決定いたしております。なるほど、鉱害の量が多うございますから、鉱害事業団の技術陣のこともございます。そう一ぺんにやれるものじゃありませんが、しかし原則は原則、方針は方針として明らかにしておかねば、被害者にとっては困るわけです。いつごろ復旧していただけるだろうか。五年じゃむずかしそうだが十年も二十年もかかるんじゃないだろうかというようなことでは困る。企業ぐるみの場合はやむを得ない、八年なら八年と、一応の目安というものをやはり示すべきであろうと思います。そうすることが減収補償の問題、いろいろな問題にかかってくるんですから、たとえ無資力で調整交付金交付するというたてまえであっても、いろんな場面にこの計画というものがかかってくるわけです。一応の方針をひとつ示してほしい。それとともに、いま企業ぐるみ、三社の鉱害量が百三十二億円だとおっしゃいましたが、従来の実績からまいりますと、おそらく五割増しあるいは炭鉱によっては倍になるかもしれません。復旧時になりますと、さらに五割からもっとでも増額するでありましょう。そのことをあらかじめきめておかなくては、先刻局長もお答えになった復旧規模の拡大ということにも関連してくるんです。支障が出てくるわけです。ひとつ話し合って、もしきょう方針がきまるならば、お答えをいただきたい。
  28. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 ただいま井手委員からお話がございましたように、先ほど申し述べました数字は四十二年度の通産省調査数字でございます。私どもの鉱害処理のいままでの経験と実績から見ますならば、実際の鉱害というものはある時点で調査をいたしましたものより必ず大きく出てくるというのが一般的でございます。これだけの大手会社所属の炭鉱が、杵島と麻生の場合は一炭鉱でございますけれども、明治の場合はまた数が多いわけであります。これだけのものの鉱害量というものを正確に把握し、それに対する復旧計画を考えるということになりますと、とにかく閉山という異例の事態でいろいろ残務の整理をしておる状況でございますので、いまおっしゃいましたような形での実際の要復旧量というものの確定というものには時間がかかろうかと思います。そういう状態において、おおよそ何年ぐらいで復旧できるかということは、このもともとの要復旧量の把握そのものにいましばらく私どもは時間をいただきたいと思っておる状況でございますので、おおよそのめどを立てました状況下におきまして、復旧計画についてのめどを持ってみたい。ただいまのところは残念ながら従来どおり五年程度のスピードではやれないだろうということを率直に申し上げると同時に、ではありますけれども、できるだけ早くこの処理をいたしたいという抽象的にお答えする以外、現状がいまようやく閉山処理の第一歩にかかっておるというところでございますので、御理解をいただきたいと思う次第でございます。
  29. 井手以誠

    ○井手委員 鉱害の問題は毎年論議しておることでございますから、あまり多くは申し上げませんが、長い間当委員会の論議の末に、四十一年度の審議会の答申では、鉱害復旧長期計画の策定の中に、計画期間は四十二年度から四十六年度までの五年間とし、すべての安定鉱害はおおむね五年の期間内にその処理を完了するということがうたわれておる。これは御存じのとおりです。それほど必要性があってそういう答申が生まれておるわけですから、ひとつどうも、この長期計画というものがなかなかうまくいっていない現状でございますから、きょう突き詰めて、これ以上は申し上げませんが、すみやかに長期計画を各炭鉱ごとにつくられることを特に要望いたしておきます。  その次に、産炭地振興の中の財政対策です。これも従来の一般閉山よりも改善されたという前提から申し上げておるわけです。企業ぐるみの閉山の場合、市町村のいわゆる地方税の滞納については五〇%だけ国が見てやろうというのです。従来一般閉山の場合はほとんど一〇〇%あるいは抵当権を行使して、それに近い滞納分を回収した町村がたくさんございます。一般閉山ですらそういう実態であるのに、今回は五〇%ということではどう見ても改善とは言い得ないのです。そこで、通産省も事情をお考えになって、自治省に交渉されたやに承っておりますが、どうなっておりますかお伺いをいたします。
  30. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 閉山に伴いまして当該炭鉱の所在地の市町村、これらが、いま御指摘のような公租公課の未払いというようなものもその一つではございますが、あらゆる面で財政収入の減少、逆に言えば、産炭地事業でございますとかあるいは社会保障の点というような面で財政需要がうんと逆に増大をするという結果、ダブルで地方財政というものが苦しくなるという実態は私どももよく承知をいたしておるわけでございます。  これに対しまして、当該市町村にどういった地方財政の補てん措置を講ずべきであるかということは、全体的、総合的に把握しなければならない問題でございます。今回私のほうで、従来なかった、市町村に対する直接財源補てん的な助成の予算を、四十四年度におきますと、十億円の予算を計上した際に、それぞれの状況に対しまして、総合的にどういう形で考えたほうがよろしいかということにつきましては、ある程度の検討をし、かつ、直接市町村の財政について所管をなさっております自治省のほうの御意見を伺い、御相談もしながら進めてきたわけでございます。  そこで、御質問のようなケースにつきましては、財政収入の減少あるいは財政需要の増大に伴う地方財政の補てん措置というものについて、最も現行制度で的確にこれを予定しておるのは、特別交付税の制度であるという感じでございまして、できるだけこの五〇%の公租公課未払い分につきましては、特別交付税制度の運用によって補てんされるように期待しておるのでございます。その趣旨に基づきまして、自治省のほうにもこの点についての相談を進めておる状況でございます。  詳しいことは、私のほうがいま決定をする立場ではございませんで、御相談を申し上げておる状況でございますので、自治省のほうにもお考えがあろうかと思いますが、本筋においてそうむずかしい問題ではないんではないかという期待を持ちながら、御相談を申し上げておる状況でございます。
  31. 首藤堯

    ○首藤説明員 ただいま御指摘の、税の不納欠損になるであろう額の減収についての問題でございますが、御承知のように、従前から産炭地の地方団体につきましては、非常に財政需要が増高し、収入が減少をいたしますので、各方面にわたりまして、その所要の財源の補てんをいたしますために、特別交付税の配分をいたしておるわけでございます。四十三年度では、県及び市町村合わせまして、約三十九億円ほどの特別交付税の配分をいたしておるわけでございます。この中には、炭鉱離職者対策、失業対策、生活保護関係鉱害関係、まあ、いろいろ要素がございますが、従前からも、税の減収あるいは一部の不納欠損等の状況もございますので、鉱産税のたとえば一割分といったような額を積算の基礎にいたしまして、特交の配分をしておるような実績がございます。  今回、この措置によりまして、税の大きな不納欠損が出てまいります場合、その団体の財政状況と照らし合わせまして、所要の措置を講ずる必要があろうかと思いますが、ただいまその額あるいはその措置方法等につきましては、前向きに検討をいたしておる状況でございます。
  32. 井手以誠

    ○井手委員 通産省の話では、すでに自治省とは話し合いがついておるということでございました。具体的にお伺いをいたしますが、前年度に収入に見込んでおったのが、滞納になって繰り越しになって、その分が、佐賀県だけでも四十三年分の滞納が四千五百万円、そのうち半分国のほうから交付されるとして、閉山交付金のほうで処理されるとして、二千二百五十万円の欠損、歳入欠陥については、自治省は具体的にどういうふうな補てんをなさることになるのですか。一般がわかるように説明を願いたい。私じゃなくて、市町村のもの、住民のわかるようにひとつ御説明を願いたい。二千二百五十万円の欠陥であれば幾らぐらい補てんになりますか、その点についてだけ御説明願いたい。
  33. 首藤堯

    ○首藤説明員 ただいまも申し上げましたように、従前からもやはり状況によりましては、不納欠損になったり滞納になったりした分があったわけでございます。その状況は、各市町村別に県から状況を承りまして、当該市町村の財政状況等見比べまして所要の措置をしてまいっております。一般的には、全般的なそのような市町村の収入面の減収をまかないますために、鉱産税の一割程度のものを積算の基礎に入れるという措置をいたしますほかに、そのような具体的な減収状況等よく事情を聴取いたしまして、しかるべき算定をいたしておるわけでございます。  今回の四十四年度につきましての減収分は、ただいまこれから調査に入る時点でございますので、まだ金額をつまびらかにいたしておりませんが、そのような状況、それから閉山交付金で補てんをされたものの状況、それから財政全般の状況、これを勘案をして額の決定をしてまいりたい、こう考えております。
  34. 井手以誠

    ○井手委員 四十三年度分の歳入欠陥についてどうなるんですか、欠陥が繰り越しになったものについて。過年度収入で取れるであろうと思われたものが企業ぐるみの閉山でだめになった分はどうなるか。
  35. 首藤堯

    ○首藤説明員 税収につきましては、滞納繰り越し分が生じまして、それが翌年度ないしは翌々年度にころがっていって徴収ができる、こういう事態が御承知のようにあるわけでございます。この点につきましては、完全に減収にはなってしまいませんので、従前は補てんという対象には一応考えていないわけでございます。ただいま御指摘なのは、四十三年度から繰り越されたものが明らかに取れなくなるだろう、こういう御指摘だろうと思いますので、これは四十四年度の減収額というかっこうになるわけでございます。  そこで、その額は幾ら出てきて、当該市町村なり県なりの財政状況にどういう影響を及ぼしておるか、こういう測定をする必要があろうかと思っておるわけでございます。御承知のように、普通交付税のほうで、標準税収入で収入をされますものの、県では八割分、市町村では七割五分分と申しますものは、基準収入というかっこうで基準財政需要から差し引かれて普通交付税が交付されておりますが、それとの関連もあわせ考えて判断をする必要があると思います。
  36. 井手以誠

    ○井手委員 私にはわからぬでもないが、一般的にはなかなかわかりにくいですな、そういう答弁では。  ことしに繰り越された歳入欠陥、たとえば佐賀県の場合に、五〇%に当たる二千二百五十万円が幾らぐらい特交で補てんされるのか。
  37. 首藤堯

    ○首藤説明員 はっきり不納欠損となる事態におきまして減収が確定をしてくるのだろうと思います。したがいまして、その減収の状況、それから当該の県なり市町村なりの財政の状況、もちろん産炭地対策の中には、それだけでございませんで、各種の需要がございますし、またルールによって算入されます特交の算定額もございますので、そういったものとの関連をかみ合わせて所要の額を措置をする、こういうように申し上げるほかないわけでございます。具体的にケース、ケースによって算定をいたすことになっております。
  38. 井手以誠

    ○井手委員 それでは、繰り越された歳入の欠陥が明らかになった場合には、市町村の財政需要によって、内容によって特交で補てんをされる、こういうことですか。
  39. 首藤堯

    ○首藤説明員 当該団体の産炭のためによります需要の増加、収入の減少、いずれもこれは当該団体の財政に影響を及ぼしますので、そのような状況をあわせて考えまして特交の算定の基礎にする、このように申し上げた次第でございます。
  40. 井手以誠

    ○井手委員 次に、坑内水の供給のことでお伺いします。  炭鉱の採掘によって鉱害を与えた住民並びに農民に対して飲料水、かんがい水の、必要な水を従来坑内水から供給しておる。この坑内水の問題で、各地ともかなり深刻な紛争が起こっておりましたが、この点については、さきに長橋石炭部長と何回も打ち合わせまして、通産省としては、新たな水源が得られるまで引き続き坑内水を供給するよう、地元に不安、負担のかからないよう措置いたしますという約束ができ上がっておりました。お互いの約束ですから、ここで確認しようとは思いませんが、そういうお互いの約束が、必ずしも順調に炭鉱なり下部に浸透しておるとは思われないのです。その後いろいろ折衝いたしました結果、特別の措置によって杵島炭鉱については、今年度分のかんがい水については大体見通しが立ちました。また一方、理論的には、新たな水源が得られるまで何年かかっても坑内水を供給すべきであるという筋はございます。しかし、実際問題として、いつまでも長年坑内水を供給するというわけにはまいりませんけれども、新たな水源、ため池などの新設を急がねばならぬことは、申し上げるまでもございませんので、県と打ち合わせた結果、大体昭和四十五年一ぱいには新たな水源が得られるであろう。ただ、ごく一部だけについては四十六年度まで坑内水が必要であるという結論に達しております。その点について、当然これは炭鉱に責任のあることは申すまでもありませんし、これを採掘させた国に責任があることは申すまでもございません。来年度、一部は再来年度までかかる坑内水の供給について、地元民はあげて引き続き供給を熱望いたしておるのであります。これは、国がさきの約束のとおり、地元に不安、負担のないよう措置なさるおつもりであるかどうか、簡単でけっこうですから、お答え願いたい。お互いの約束だけではなくて、やはりみんなに知らせる必要もありますので、ここで確約をいただきたいと思います。
  41. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 考え方の問題といたしまして、農地の鉱害によります代替かんがい用水の確保、このために必要な費用というものは、特別開山交付金の弁済対象として考え得るものというふうに考えております。杵島地区の鉱害見合いのかんがい用水の賠償方法につきましては、新たな水源が得られるまで引き続き坑内水を供給するということが、このかんがい用水の関係だけでなくて、全体の申し出被害者の御意見でありますならば、特別閉山交付金制度の対象として考えていきたいというふうに考えております。
  42. 井手以誠

    ○井手委員 杵島並びに明治鉱業、この企業ぐるみ閉山のものについて、先刻もお話があったように、膨大な鉱害がございます。水田の被害が非常に多うございますので、減収補償も膨大な金額になると思います。  そこで問題になりますのは、調整交付金の最高限度でございます。従来の最高限度は反当三万三千円であると承っております。この制度は、当委員会の要望もあって、審議会の答申にも記録されておるわけであります。これは四十年の十二月六日、石炭鉱業審議会、その結論は、賠償の十分な弁済を受け得ない無資力鉱害被害者には毎年賠償調整交付金交付すべきだという答申があり、政府も決定されたものであります。交付金が少額であるために、被害者が当然受くべき鉱害復旧までの毎年の減収補償金、これが復旧までには五年も十年もかかるのに二、三年しかもらえない。あるいは政府が約束した五年間で復旧するといわれておるのが、実は予算の都合で七年も八年もかかる。その復旧までの減収補償をいかにすべきかということで生まれたものでございますから、これは、閉山については、被害者に対して、国は当然実情に沿う調整交付金を約束すべきであると私は信じております。私は、なぜそういうことを申し上げるかと申しますと、たとえば杵島炭鉱鉱害被害者、あれは日本一の米づくりも生まれた佐賀の穀倉地帯であって、大体反当十二、三俵とれるのです。少なく見ても一俵八千円の米として十二俵で大体十万円、十万円の所得があれば、普通三分の二の六万五千円の所得は保障しなくてはならぬはずです。しかも農林省の統計はそうなっておるし、税務署もまた所得は六万何千円を課税標準としてきておるわけです。私の山間部でも、私も反当五万円で税金を取られております。私も農業をやっております。山間部で、八俵しかできないところで五万円で取られております。そういう事情でございますから、そういう多収穫の地帯においてはすみやかに調整交付金を引き上げねばならぬ。それが過日の当委員会においても附帯決議として政府に要望されたところであると考えております。この調整交付金の引き上げについて、先刻鉱害事業団理事長の説明によりますと、八月一ぱいには申告が終わるわけです。少なくともそれまでには調整交付金が幾らになるかということのめどをつけておかねば、被害者として受け取るわけにまいらないのです。従来政府は、五年間の補償を指導してまいり、われわれもそのつもりで指導してまいりました。閉山する場合には、大体五年間予算の都合を見て、復旧が三年でできれば、減収補償はその中間をとって二年分であろう。五年をとれば、その中間をとって二年半くらいでいいであろう。こういう減収補償の問題でございますから、調整交付金をいや引き上げますということだけでは、これは承知できないわけです。したがって、私は、結論的にお伺いをしたいのは、この調整交付金について当委員会へも被害者からも非常に強い修正、是正の要望がありますが、この調整交付金を実情に即するように近く、できれば八月一ぱいまでに改正なさる御意思があるかどうか、その点をお伺いしておきたいと思います。
  43. 長橋尚

    ○長橋説明員 お答え申し上げます。  現行の無資力調整交付金制度につきましては、御指摘のように本委員会の附帯決議の経緯もございますし、その趣旨を尊重いたしまして、最近の実情に照らしまして、その交付金の頭打ちの問題も含めまして見直し検討をはかることにいたしたいと考えております。  なお、その時期につきまして、ただいま井手委員から御意見があったのでございますが、できるだけ早くこの結論を得るように見直しをいたしたいと考えております。
  44. 井手以誠

    ○井手委員 ただいまのは、実情に即するように早く見直したい、こういうことでございますか。
  45. 長橋尚

    ○長橋説明員 最近の実情に照らしまして、それに即するようにできるだけ早く見直しをいたしたい、かように考えております。
  46. 井手以誠

    ○井手委員 農林省からどなたかお見えになっておりますか。  お答えをいただく前に、減収補償については、あなたのほうに権威ある統計があるはずです。どの市町村は反収幾らであるという権威のあるものがあるはずです。そういう国の施策に、国の方針に、税金を取る場合には幾らにする。農林省は幾らだ、通産省は幾らだ、同じたんぼの反収が変わるはずはないのです。特に農村の反収について非常に関係のある農林省は、そういう調整交付金などについても専門家ですから、通産省に協力なさる必要があると考えますが、いかがでございますか。
  47. 梶木又三

    ○梶木説明員 農林省としましても鉱害農地の減収の実情に照らしまして統計調査のほうでやっております。反収の実態、これに合わない点がございましたら、これの改善方につきましては通産省ともよく連絡をとりまして、改善努力いたしたい、このように考えております。
  48. 井手以誠

    ○井手委員 農林省についでにお伺いいたします。  今回の企業ぐるみ閉山、これは各炭鉱とも明治以来続けてきた由緒ある炭鉱であるし、採掘の関係地域も非常に広範にわたっております。その地域内は、最近は果樹園が拡大をしておるようです。ブドウであるとかミカンであるとかあるいはビワであるとかいう果樹園地帯が、その下を採掘されたためにほとんど雨水が流れないのです。全部吸い込んでしまう、どうにもならぬ事態です。したがって果樹園の鉱害復旧については、やはりため池などの水源を見つけて、そして県あたりが中心になって、果樹園としての機能が発揮できるように計画的に復旧を進めるべきであると考えておりますが、農林省もひとつ積極的にそういうことを指導してほしいと思います。農林省のお考えを承っておきます。
  49. 梶木又三

    ○梶木説明員 お答えいたします。  御承知のように、臨鉱復旧は効用回復を原則としてやっておりますので、いままでやりました事業でも、効用回復ということを原則にいたしまして、その限度で水源施設とかあるいはかんがい施設、こういうようなものを実施いたしておりますし、われわれもそういうふうに解釈いたしておるわけでありますが、いま御質問の果樹園につきましても、水源の散水施設、これが鉱害を受けます前の効用、これを回復するに必要な限度におきましては、臨鉱事業としての対象になるものと解釈いたしております。ただ先ほど申し上げました鉱害を受ける前の効用以上の改良工事と申しますか、これに含まれる分は別途の対象、こういうふうに農林省では考えておるわけでございます。
  50. 井手以誠

    ○井手委員 続いて農林省にお伺いいたします。  農地その他の鉱害復旧の反当所要額、従来これはある程度の限度がございまして、逐次引き上げられてまいりましたが、その点について通産省、農林省それぞれ意見もあるようであります。それは、たとえば先刻来問題になっております杵島の鉱害については、十センチ引き上げるのに大体十万円、あそこは平均して一メートル五十ですから、反当百五十万円の復旧費が要るわけです。それを直ちに百五十万円までとは申し上げませんが、やはり実情に応じて復旧が完全に遂行されるように計画すべきではないかと考えておりますが、いかがでありますか。ここで私はもう反当復旧費について従来制限が幾らであったということは聞きません。話によりますと青天井という話も聞きますが、そういうことはお伺いいたしません。実情に応じて復旧計画を立てるべきである、こういうふうに考えますが、どうですか。
  51. 梶木又三

    ○梶木説明員 鉱害復旧につきましても、普通の一般の事業と同じように効率的な投下という限界がございますので、御指摘のように反当限度額をきめておりますが、いままでも先生御承知のように、物価の値上がりあるいは資材の値上がり等で年々大体上げてきたような経緯がございます。ただいまのところは四十二年に一応六十万、こういうことできめておりますが、そういう物価の推移を考えまして、必要であるということであれば、この問題につきましては基本計画との関連もございますので、農林省としましては通産省ともよく協議をいたしたい、努力いたしたい、こういうふうに考えております。
  52. 井手以誠

    ○井手委員 この点について長くは申し上げませんが、結論だけもう一回通産省と農林省にお伺いいたします。反当復旧費についてはもう申し上げません。実情に即しておやりになるかどうか、その点だけ通産省と農林省にお伺いいたします。
  53. 長橋尚

    ○長橋説明員 ただいま農林省のほうからもお答えがございましたように、通産省といたしましてその必要が認められますれば、改定という点についても対処いたしたいと考えております。十分検討をいたしたいと考えております。
  54. 井手以誠

    ○井手委員 この問題もいろいろ実情を知っておりますから、結論だけ聞いておるわけです。反当百万円以上にのぼるところがたくさんございますから、それに復旧に支障があると困りますので、その点はひとつくれぐれもそういうことのないように、実情に即して農林省も通産省もやってほしい、強く要求しておきます。  この機会に田口さんにちょっとお伺いしておきます。  この前でしたか、炭鉱の閉山には、炭鉱側から、あなたのほうが念書をとって地元に不安のないように、飲料水、ボタ山等については不安のないようにいたします、こういう念書のことをあなたも約束なさったし、私もはっきり記憶しておりますが、いまも変わりございませんか、それだけでいいです。
  55. 田口良明

    田口参考人 ただいまも変わりございません。
  56. 井手以誠

    ○井手委員 それではそのことでお伺いいたしますが、従来炭鉱のほとんどは、差はございますが、鉱害によって井戸の水が枯渇した。そのかわりとして非常に不十分、まあ端的に申しますと谷川をどろでせきとめて、それでそれにパイプを炭鉱からやって飲料水に使う。雨が降ると濁って御飯もたけぬというのが実態です。この閉山の水道については本委員会で論議の末に閉山水道という特別措置も生まれて、すでに実行されつつあります。しかし、この閉山水道ができるまでにはどうしても四、五年かかるわけですから、その四、五年間だけは閉山する炭鉱は閉山交付金交付される以前に、十分とは申し上げませんが、濁らない水ぐらいは飲ませるように既設の鉱害水道を整備させる必要があると考えております。  目の前に困った問題がございます。きのうも電話がかかってまいりましたが、佐賀県の多久市の西多久町は全町あげてといっていいほどに濁り水で水が使えないそうです。長雨ですから困っております。すみやかにこの閉山水道ができるまで市町村に移管されて、閉山水道ができ上がるまでの四、五年間の措置として既設の炭鉱が設備しておった水道を整備すべきだと思いますが、早急にそれができますか、田口さんにお伺いいたします。
  57. 田口良明

    田口参考人 ただいまの御質問につきましては、まずこれはケース・バイ・ケースの問題が多多あると思いますが、社会問題でございますので、事業団といたしましては鉱業権者のほうとも十分話し合って、できる限りそういうことについて住民の方々の飲料水の用について差しつかえがないように指導するように努力したいというふうに考えております。
  58. 井手以誠

    ○井手委員 指導というが、その交付金交付なさるときには責任のある人が事態を確認してやってほしいと思うのです。やります、やります、やりましたといって、その炭鉱側の報告だけでは困るわけです。そんなことはなさらぬ事業団だとは信じております。それが確認できましょうか。
  59. 田口良明

    田口参考人 今回の特に特別閉山問題、こういう問題につきましても新しい事態でございますので、事業団といたしましては支部の職員あたりを十分現地の調査にあるいは連絡に向かわせて、現地の実情の把握ということにできる限りの努力をいたしたいと考えます。
  60. 井手以誠

    ○井手委員 実際被害者は困っておりますから——金をやってしまえばあとは実際どこの炭鉱もやりませんよ。これは古賀山炭鉱のボタ山のことでよく御承知であると思います。あなたのほうも組織ですから、あなたはそう約束なさっても、下のほうでどんどん事業事務が進んでいっては困るのです。念書のこともありますので、それは交付金交付ということが歯どめですから、ぜひ交付なさるまでには地元に迷惑がかからぬようにひとつ確認をして進めてほしいと思います。要望しておきます。  次に、通産省に請負夫のことでお伺いします。  少し前、合理化臨時措置法を改正して請負夫の使用の承認という一項が挿入されました。これは当然常用夫がなさねばならぬ重要な仕事を、炭鉱が経費を減らすために請負させる。しかしそれをかってにさせられては支障があるというので、承認の規定が設けられたわけです。それは採掘、採炭、運搬、仕繰りという四つの作業ですが、これは厳格に励行されておるでしょうか、ひとつその資料をこの次の委員会に提出を願いたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  61. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 組夫の使用承認につきましては、御意見のとおり制度が七きておりまして、通産局長の承認を厳格にやっておるものと私どもは承知しておりますけれども、具体的にどうなっておるか、ただいまの御要求の資料は次回までに整備をいたしたいと思います。
  62. 井手以誠

    ○井手委員 その中で掘進などというものについては、国がその必要を認めて補助金まで交付しておる性格のものでございまして、はたして厳に励行されておるかどうかについてはやや疑わしい点もありますので、次回それでは資料をちょうだいさしていただくことにいたします。  次には保安のことでお伺いいたします。  炭鉱の爆発その他のものは別にいたしまして、ボタ山の保安の問題、これはこの委員会でも何回も論議された事柄でございます。九州地区だけでもボタ山は約一千、三億立米近いといわれておりますが、一部のボタ山は工業用その他に利用されるとしても、長崎、佐賀両地区を中心として山の中腹に捨てられたボタ山の保安というものは非常に重要性があるわけです。ところがこのボタ山は動産だというので最近売買されるおそれが出てまいりました。あるいは水洗炭業者が思惑買いをするということも出てまいりました。そういうことではいつ危険な鉱害が起こるかもしれないのでございます。このボタ山というのは、なるほど土地の所有者から炭鉱が買い上げたものではありますが、地方公共団体や住民はその実態は知らないのであります。被害だけは地方が受けるわけです。この点について、動産であるがためのいろんな困難な事情もございますが、売買を禁止するとか、あるいは一たん閉山したあとでボタ山をどうしようと、五年間は保安監督局長の命令権があるとはいえ、何も実行される裏づけはないのであります。こういうことをいろいろ考えてまいりますと、本来なら、合理化事業団には少し迷惑かもしれませんが、事業団がボタ山を譲り受けて国土保全に万全を期するという、そういう立法措置あたりを講ずるべきではないか。そうすると水洗炭の問題も売買の問題も、すべては解決することになるわけです。こういうことについてかねがね鉱山保安局では研究をされておりますが、残念ながら、その研究も久しきにわたりますがなかなか具体的な対策がむずかしいようであります。近く立法をされる御用意があるかどうか、この機会にお伺いをしておきたいと思います。
  63. 高木俊介

    ○高木説明員 ただいま先生御指摘のボタ山の防災工事でございますけれども、ボタ山の防災工事につきましては当鉱山保安局といたしましては、昭和三十年の佐世保のボタ山による災害あるいは三十七年の七月に発生いたしました江迎炭鉱のボタ山の災害、これらを考えまして、三十七年度から佐賀、長崎の地すべり地帯に集積してございますボタ山の危険状態の実態調査をいたしまして、この調査の結果に基づきまして昭和三十九年度から昨年の四十三年度までで、工事額といたしまして二十五ボタ山に対しまして九億四千万、補助金額で六億一千万、これは県が防災工事をいたしますものに対しまして三分の二の補助を交付するという制度を新たに設けまして、防災につとめておるところでございます。ただし、いま先生御指摘になりましたように、このボタ山が動産でございますために所有者の主体を確立することが困難でございます。そのため防災工事の着手前に監督局長と知事が所有者と相談いたしまして、工事に対する同意書を提出させた後に所有権の移転があったり、真の所有者と自称する者が工事の途上においてあらわれてきた実績もございます。なお、所有者の反対意見にあいまして、防災工事ができなかったという実例もございます。なお防災工事が完成いたしました後におきまして、ボタ山の管理という問題がスムーズにいきませんという点もございまして、いわゆる管理責任の不明確という点もございますので、今回ボタ山の防災工事に対しまして立法措置を考えるということで、現在作業を進めておるところでございます。内容といたしましては、ただいま申し上げましたいわゆる動産であるための所有者の問題ということと、防災工事ができたあとの管理という二つを目標にしまして、現在立法に着手しているところでございます。
  64. 井手以誠

    ○井手委員 だいぶ時間がたってまいりましたので、この程度で終わりたいと思います。ボタ山については、炭鉱が閉山をすれば残るものは失業者とボタ山だとよくいわれておりましたが、失業者のほうは人手不足の今日かなり好転してまいりました。問題はボタ山になるわけで、現在の動産の実態ではなかなかむずかしい。有力な炭鉱であっても責任を回避するために、資力のない者に売買して公正証書を取るという悪らつな手段を講じようとする者もあると聞き及んでおります。すみやかに立法されるように強く要望しておきます。  なお、鉱害対策についてはいままでいろいろお聞きいたしましたが、必ずしも十分ではありませんし、満足な答弁も得られませんでした。私は今日の鉱害は少なくとも千五百億円あると踏んでおります。私はこの足で見ておりますから、大体狂わないつもりです。役所の見積もった大体二倍半が今日までの実情です。閉山するときに鉱害量は幾らか、五億だ。大体鉱害復旧完成近くになりますと、五億のものが十二、三億になっておるのが実情です。しかも、杵島の鉱害などに至っては、通産省でも五十八億と申しておりますが、かりにそれが正しいとしても、復旧するときにはばく大な金額になるでしょう。この鉱害について、たとえばいまの杵島の問題にいたしましても、江北町だけでも未認定が百五十町歩ある。そういうものをどうしてすみやかに認定して復旧を早めていくかということだけでもたいへんな問題で、あるいは破断角内のものについては一括して認定をするとか、やはり事務的にももっとさばかすくふうはないものか。私は、鉱害の事務に当たる通産局の陣容なりあるいは復旧に当たる事業団の陣容なりについて、事業団の先刻の人事のなにを見ましたけれども、なるほど組織はりっぱだけれども、復旧にあたって、あの陣容で、いまの人員ではたしてどれだけできるであろうか。四十五、五十近くで役所を退職された人が事業団に入られる。しかし将来いつまでかわからぬ暫定的な規定であるから身分が保障されないという不安感があるようですけれども、鉱害復旧というものは今後十年、十五年でなくなるものじゃないのです。やはりほんとうに鉱害復旧をやろうと思えば、そういう通産局の鉱害部の陣容なり復旧の陣容なりというものを、もっと現場の人を充実すべきである。また、なるべく事務も簡単にして、一つの事案が起こった場合に、一年も二年もなかなか進まないということでは困るのです。何とかもっと根本的な促進策がないものかということを、私はひとつ御研究いただきたいと思っております。いまのような事態では、これはたいへんなことになるんではなかろうか。結局困るのは鉱害の被害者です。また、中川局長にこの前若干お約束もいただいたのですが、買い上げられない炭鉱鉱害の被害者がそのままになっておる。ここにも私資料を持っております。私のところに近い幼稚園なんかでも十年間ほったらかし。床は、子供の遊ぶところは波のようになっておる。それが鉱害認定ができない。無資力認定もできない。無権者にもされない。そういうものもやはりもっとさばかしていける方法はないのか。もう御相談申し上げて何件にもなりますが、まださばけない。一々こまかい問題申し上げませんが、炭鉱を採掘するときには、地元民は、地元農民その他は自分の家が一メートルも一メートル五十も下がる。採掘はいやだといってずいぶん反対したものを、炭鉱が困るじゃないかといって口説いて、いやだいやだというものを口説き落として石炭を採掘して、その条件としては、鉱害復旧その他については心配かけませんと言って、一札入れておきながら、現実にはそれが実行されていない。罪な話ですよ。そういう今回の企業ぐるみの閉山の鉱害の実態ですから、事務の面においても、すべての面において、ひとつすみやかに鉱害復旧対策が確立されますように、特に関係者の御努力を要望いたしまして、私の質問を終わります。
  65. 平岡忠次郎

    平岡委員長 ちょっと速記をやめてください。     〔速記中止〕
  66. 平岡忠次郎

    平岡委員長 速記を始めて。  次に、渡辺惣蔵君。
  67. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 参考人の皆さんには長時間にわたってたいへん恐縮でございますが、私、参考人の方々に直接質問を申し上げるのではないのですが、ひとつ参考までにお聞き取りを願いたいと思います。  ただし、あとで岡田利春君が質問されるそうで、簡単に私の質問を終えたいと思います。  きょうは、労働者の職安局企画課長さんも見えておりますが、これは、六月三十日に北海道の道議会の石炭対策特別委員会で、道の浅井労働部長が述べておるのでありますが、十二月の第四次答申以後、六月の末まで、北海道の道内で閉山をした山の数は十四、離職者の数は三千八百四十九人、そのうち就職を決定いたした者が千百七十六名、就職を希望しながらまだ未就職の状態にある者が千七百九十五人である、こう道議会で発表しておるわけであります。この数が的確であるかどうかをここで質問を申し上げるわけではないのです。この直後に、御承知のように、雄別の茂尻炭鉱が、新会社のスタートを放棄しまして、実質上崩壊してしまったわけですね。この茂尻炭鉱従業員の総数は、いわゆる直接の労働者が千三十名、関連しております事業、下請その他を加えますと約四百名以上になりますので、総数千五百人という、相当大がかりな失業者、大量な失業者がここで出てくるわけです。このような状態の中で、ついに七月二日の労使の団交で閉山やむなしと態度を決定せざるを得なかった。閉山やむなしと決定せざるを得なかった諸般の事情については、御承知のように、山を残すというたてまえで、当初計画人員三百七十五名、二十万トン規模の山として存続するということでありましたけれども、最終段階で一いろいろな予想が全く混乱をして、残留希望者がわずかに百八十六人という、計画人員をはるかに下回る状態ですから、企業として成り立ち得ないので、ついに労使双方ともここで一応の区切りをつけざるを得ないという段階にきたわけです。ここで問題になってまいりますのは、これらの予測もしない山が残るという前提で、いままで過去数カ月就職あっせんその他をしてまいりましたが、その山が残るという前提で出たことが、急にこういうふうな事態が発生いたしましたために、ここで膨大な人々が就職が全く困難な状況にぶっつけられてまいったわけですね。これは会社の側が私どもに報告しております一つの例ですけれども、道内の炭鉱に就職する者は、大体二百三十名はきまっておる、しかし、この数は三百二十名ぐらいまでに伸びるはずだ、こう会社側は私に説明した。しかし、閉山決定の直後に労働組合を呼んで意見を聞いてみますと、いや二百三十名などというのは確定的な数字ではない。百四十三名くらい、せいぜい百五十名前後しか道内の炭鉱に行く者がない。といいますと、その他の大部分の数が、これはまだ流動すると思いますけれども、とても会社側が考えているような甘い考え方で炭鉱労働者の就労状況は進まないと判断する。この三つ数字をあげてもこれだけの見込み数が違うのですからね。そういたしますと、膨大な人員がこれから就職の方向をつかみ切れないで、いままで職安にかかっておる人もあるのです。山が残るという前提で、失業保険のこと以外に職安に顔を出していない人も相当いたわけです。それがここで全部ストップになってしまいます。そこで企画課長さんに特に要望するものですが、労働省が地元の職安に号令をかけて、六月九日から十七日まで道内の各職安から総動員をしまして、三十五名の係官が現地に出向いて、そしていわゆる職業あっせんの努力をされた。これは第一次でストップしておりますが、全面閉山という異常な事態が出てまいったので、もう一ぺんやり直してもらわなければならない。いわば第二次の全面的職業あっせんを現地でやってもらわなければ事態の収拾がつかない。非常に混乱が出てくるという状況になっておりますので、この際特に職安局において、現地に対してそういう指示と督励をして、第二次職業あっせんの実施を早急にやっていただきたい。それについてひとつそちらの御意見を承りたいと思います。
  68. 関英夫

    ○関説明員 お答申し上げます。  茂尻炭鉱の閉山につきましては先生のお話しのとおり、七月二日に閉山やむなしということを私ども聞きまして、すぐその翌日だったと思いますが、北海道庁のほうに、第一次と同じように今度新しく離職せざるを得なくなったそういった人々に対しても、就職あっせん態勢をとるように指示をいたしたところでございますが、いままた重ねて先生からいろいろ御心配の点について御指摘ございましたので、そういう点を含めて、また重ねて北海道庁のほうに十分な態勢をもってこの就職あっせんに当たるように指示したいと思います。
  69. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 関課長に重ねてお尋ねいたしますが、四月三十日に同じ道内の明治の昭和鉱が閉山になりました。その際問題になりましたのは、道内の炭鉱に付随して、炭鉱と同一資本であり、あるいは人事が交流して、炭鉱に完全に付随的な条件にある幾つかの炭鉱鉄道会社の場合、あるいは完全に企業が分離して、そういう状況にない状態にある留萌鉄道会社の問題がたいへん重要な問題になってまいりました。この際、留萌鉄道については、明治の昭和鉱とは関連がないけれども、炭鉱がつぶれるという状況の中で、私企業が崩壊するという緊急の事態にかんがみて、この留萌鉄道の従業員に対して黒い手帳が発行されたわけです。これの総数、状況等についてお知らせを願いたいと思います。
  70. 関英夫

    ○関説明員 お答え申し上げます。  産炭地の石炭の輸送を主たる業務とします鉄道につきましては、御承知のように本委員会におきまして炭鉱離職者臨時措置法の一部を改正する法律案で附帯決議をいただいております。「鉱区又は租鉱区において石炭の輸送業務に従事する産炭地の地方鉄道の労働者が、炭鉱合理化の直接的影響により離職を余儀なくされた場合には、その者の再就職の促進及びその援護措置に万全を期すること。」こういった附帯決議でございます。この附帯決議の趣旨に即しまして、留萌鉄道の場合につきましては、やはり炭鉱合理化の直接的影響によって労働者が離職を余儀なくされたというふうに考えられますので、私ども、この附帯決議の趣旨に沿って措置するように指示をいたしました。その結果は、留萌鉄道の在籍者六十八名中、公共職業安定所に求職申し込みをした者は五十七人でございます。うち五十五人について手帳を発給いたしております。二人手帳を発給しておりません。この理由は現在のところまだ私はっきり承知しておりませんが、想像するのに、手帳発給の種々の要件に該当しない、たとえば働いた期間がごく短いとか、あるいは鉱区や租鉱区から非常に離れたところの駅長さんであるとかいうような方ではなかろうかというふうに、私、想像いたしますが、ともかく五十七人の求職者のうち、五十五人について手帳を発給いたして、就職促進につとめておるところでございます。なお、現在までに聞いておりますところでは、五十五人中三十九人が就職決定を見ておりまして、残り十六名でございますが、そのうち十一名の者は撤収作業にいま従事しているということでございますので、あと五人の方について早急に就職あっせんにつとめねばならぬというふうに私ども承知しております。  以上でございます。
  71. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 この留萌鉄道会社の取り扱いは、まことに新しい一つの例として、また全く僻地の陸の孤島を結ぶ鉄道として、事実において炭鉱の専用列車の役割りをしてきておったので、労働省も黒い手帳の発行に踏み切って、労働者の援護に当たっていただいたことは敬意を表しております。  そこで関連して、こういう問題についてお伺いをいたしたいのは、茂尻の炭鉱の中でこれと同じ状況が実は出てきておるわけです。それは、いまの留鉄のような、全然炭鉱企業が別であるという状況と違いまして、事実においては茂尻炭鉱会社の構内で、あるいは事務所も同じであって、そうしてかつては炭鉱の労働者であり職員であった者が、炭鉱合理化関係上、形式上関連企業に分離した。実質的には炭鉱の資本であり、炭鉱の構内であり、事務所も同じであり、その中から特に出向を命じられた形で別会社に派遣されているのが、留鉄の場合においては何にも関連がないのに黒い手帳が発行されておって、同一の資本、同一の構内で、しかも長年炭鉱で働いて、いわゆる炭業に従事していた者が、合理化によって別会社に籍が移ったというだけで黒い手帳の適用を受けないという事態が出てきたわけです。これはもう内部でたいへんな問題になってきておるわけです。会社の都合で転任をさせられたのに、しかも、会社が閉山になって、黒い手帳が出ない。これはこの七月二日以前にはそれほど問題ではなかったわけです。かなりこの種のうちの残存する企業に残り得るという状況がありましたから、それほど深刻じゃなかった。ところが、七月二日の閉山以降になりますと、この人々は完全にほうり出される結果になりますので、ここであらためて、その黒い手帳の交付を受けられないのは不公平ではないか、不合理ではないか、こういう論議が巻き起こってきたわけです。  ここで、炭鉱の構内にあります企業は四つあるわけです。一つは茂尻鉄工所、これは約八十名、これは特にいままでの段階で、労働省のほうでも、この茂尻鉄工の従業員については、炭鉱の修理工場でありますから、八十名というものについては黒い手帳が出されたはずでございます。  そこで、残った三つ企業一つは商事会社ですね。これは、実際は、このうちの相当数は、この炭鉱のかつて資材課に勤務していた者がこっちに配置がえをされて、形式上商事会社という別会社に籍が置かれている。これは構内のどまん中にある。いわば売店で、従業員の日常生活をまかなうことは御存じのとおりです。この現業従事員が、三十三名のうち十二名はかつて炭鉱の資材課から配置がえをされた人です。あとの残りの人々は、その後地元で雇い入れた女の子であるとかその他で、いわゆる炭鉱の従事者、かつて炭鉱に従事して、合理化によって配置がえされたというのとは若干の身分上の差があると思います。  もう一つ、雄別鉱山会社という、これは純然たる資材担当の会社です。これも構内にあるわけです。これの八名が、配置がえをされた、炭鉱夫と同一の条件のものです。  それから、雄別林業というのがありますが、これは坑木専門の事業です。これは四名です。そこで、この四名全部、これは本社が雄別の本社にあって、その出張所として茂尻の構内にあるわけです。  そこで、これを拾ってみますと、三つの構内にあります会社で、総数四十五名のうち、最低二十名の者は、当然、身分上からいっても、会社直営の、事実上会社が経営している企業であって、しかも構内に存在し、事務所も会社の中にある。かつては炭鉱に直接従事したものである。この二十名に関しては、当然、黒い手帳が発行されてしかるべきである、こう私は判断するのです。  なぜ私が冒頭でこういう留萌鉄道の問題を引用したかと申しますと、留萌鉄道については、やはり国の政治の力がこれらの気の毒な鉄道従業員にも及んだわけです。しかし、原理的に見れば、これは身分的な関係からいけば、炭鉱と直接関係のないことは明らかです。国の政策で、鉄道に働いている者が石炭政策の犠牲として失業するという意味で、黒い手帳を発行したわけです。ここの私が指摘する場合は、これはまるごと炭鉱会社から配置転換を命ぜられて、本人の好むと好まざるとにかかわらず、長い間炭鉱に籍を持っていた者が、たまたまいわゆるこの系統会社に籍を置いて、しかも構内で、同じ作業の中で、一貫の体制の中にいながら、この者は黒い手帳を発行しないということは、どう考えてみても、特にこの留萌鉄道の場合と対比してみても、これはもう当然のこと、私が指摘する最小限度四十五名のうち二十名は処置されてしかるべきだと考える。ひとつ労働者としては、いろいろ御意見があるようです。あなたは非常に同情的な発言をしておられると承っておるのですが、この際、勇断をもって、問題の処理のために、この人々の救済について前向きの姿勢で検討し、決定していただきたいと思います。御所見をお伺いします。
  72. 関英夫

    ○関説明員 ただいまの茂尻鉱の関連する企業の個々の問題につきましては、私、詳細十分に知悉しているわけではございませんので、まず一般的な考え方としてお答えを申し上げたいと思いますが、産炭地私鉄につきまして今度黒い手帳を発給いたしましたのも、炭鉱離職者臨時措置法の第二条の定義、手帳発給の対象となる「炭鉱労働者」という定義の中で私ども読み込めるという判断をしたわけでございます。炭鉱離職者臨時措置法の二条には「「炭鉱労働者」とは、石炭を目的とする鉱業権又は租鉱権の鉱区又は租鉱区における石炭の掘採又はこれに附属する選炭その他の業務に従事する労働者をいう。」こういうことになっておりまして、必ずしも鉱業権者との間の雇用関係のある労働者に限定するということにはなっておりません。したがいまして、下請企業、つまり鉱業権者とは違う企業でありましても、こういった業務に従事しておる労働者については、私ども、炭鉱労働者と読めるのではないかということで措置をしたわけでございます。しかし、ここに書いてあります業務は、石炭の掘採あるいはそれに付属する業務でございますので、付属する業務というものをどこまで広げていくかという問題があろうかと思いますが、私どもとしては、石炭の掘採に直接関連する非常に基本的な工程、これに従事する労働者、これを炭鉱労働者として従来から読んできているという状態にあるわけでございます。今度の産炭地私鉄につきましても、石炭の運搬ということは、これは石炭の掘採に直接関連する基本的工程であるというふうに考えまして、そうして手帳の発給を行なったわけでございます。  先生お話しの茂尻鉱に付属します四つばかりの関連企業のうち、鉄工所につきましては、基本的工程であるということで、たとえば組夫の場合と同様に手帳を発給し措置したのではないかと思います。そのほかの商事会社なりあるいは資材関係会社になってきますと、石炭の掘採との関連からいいますと、基本的とは言いかねる、やや間接的な関連企業になってまいります。どこまでで手帳発給対象を打ち切るかということになりますので、これは広げていけば際限のない問題でございますので、どうしてもある点で区切りをつけなければならない。その点で私ども区切りをしておりましたのが、掘採に基本的に関連する業務、こういうことでいまやってまいったわけでございます。そういった考え方の具体的な適用問題が茂尻鉱であるわけだろう、こういうふうに考えておりますが、先生お話しのいろいろの過去の人事関係等につきましては、私まだよく承知しておりません。そういった点は相当よく内容を調査してみたいと思いますが、基本的にはいま申し上げましたような考え方で対処していきたい、こういうふうに思っております。
  73. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 悪いことで法の拡大解釈をされると迷惑なんですが、ためになる、人々を救えることなら、法に反しない限り拡大解釈をされることがいいと思うのです。たとえば留鉄の問題にしてもその一つの例だと思います。私は、留萌鉄道の場合でいま課長さんがおっしゃっている中で、先ほど、五十七名の求職者のうち五十五名に黒い手帳を発給したが、二名は入っていない。たとえば五十五名の発給者のうちで女子が二名含まれている。残された二名というのは、先ほどのお話では、へんぴの駅長かあるいは雇用年数の少ない者ではあるまいかというお話。しかし、ここでは、炭鉱における場合と同じように、鉄道の場合でも濃淡があると思うのです。たとえば駅で切符を切っておる者も適用を受けておりますし、車掌も適用を受けております。何も石炭を荷積みしたりなんかする者ばかりではないのです。駅長を控除しただけで、鉄道の現業に従事している者はすべて、切符を切っている者でも一この鉄道は一般乗客も乗せているのですから。保線区の者も電線の修理工もすべての者が入っているのですよ。もともと人数がこれしかないのですから。私は地元ですから状況に詳しいから申し上げるので、せっかく善意でやってくれているあなたを、ここでいやがらせをやろうなんて気持ちはみじんもない。しかし、あなたの解釈というものはとらわれておる。だから、私がわざわざここで言っておるのは、四十何名全部まるごと処置してもらいたいとは言ってない、あなたの立場を尊重するがゆえに、法のきびしさを理解するがゆえに。したがってその限界において、私は特にその中から、何年前までかつて炭鉱に長年つとめて生産関係に直接、間接従事してきた、合理化によって配置転換されて、泣き泣きそこへ行ったら、今度は閉山、黒い手帳は適用しないというのでは、法の精神に反する。駅の車掌や切符切りまで適用してありがたいあなたの配慮が、これでは仏つくって魂入れず。せっかく留鉄に対してとられた処置というものが、こっちでは全くあべこべになってしまう。本来炭鉱自身の中に生き抜いた人にこそ適用されるべきである。ひとつそういう意味で、この問題についてはもう一ぺん前向きで検討し直していただきたい。まるごと全部してくれといっているのではないのです。内輪を、率直にすなおに腹を割って話をしておるわけですから、その点もう一ぺん再検討するというお約束を得たいと思うわけです。
  74. 関英夫

    ○関説明員 お答えいたします。  先ほども申し上げましたように、私、この関連企業の実態なりあるいはそこへ出向した者の実態、たとえば出向後の茂尻鉱のいろいろな福祉施設の利用状況は、出向後もとの鉱員と同じような状態にあったかどうか、いろいろなことがあろうかと思います。そういった事情についてつまびらかにしておりませんので、もう一ぺんその辺をよく調査いたしまして、検討いたしたい、こういうふうに思います。
  75. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 最後に、企業誘致、産炭地振興の問題につきまして意見を承りたいと存じます。  ここで、いま雇用の問題につきましていろいろ承ったのですが、先ほど申し上げました未就職者、北海道全体の総数の千七百九十五名という数字の中で、高齢者、身障者、未亡人というものは大体七百三十五人という数字北海道の労働部長は発表しておるわけです。そして、おそらく茂尻炭鉱はこのうちの二割をこえるのではあるまいか。相当の数が、高齢者、未亡人、身障者であるわけです。われわれは高齢者というよりも特に身障者、未亡人に問題をしぼっていますから少ないのですが、高齢者ということになりますと相当の数が出てくるのではあるまいかと思うわけです。ここで率直に申しまして、企業誘致、産炭地振興と申しましても、先ほどもお話しがありましたが、立地条件によっていろいろ問題があると思います。しかし、先ほど指摘されました工場誘致等の問題につきましては、私がいま質問する茂尻、赤平地区と申しますのは、これは北海道の道央地帯の中心でありまして、札幌から帯広、釧路、根室に抜ける国道三十八号線が炭鉱の鉱区のまん中を突き抜いて走っていて、両脇に社宅があり施設があるわけです。したがって、三十八号線が鉱業所のまん中を突き抜いて走っているという点で、交通輸送の上で条件がすばらしくいいところです。しかも会社の敷地内に国鉄の駅が存在している。ですから石炭等は、引き込み線とかなんとかいう状態ではなくて、そのまま一発で国鉄の留萌本線の駅を利用して輸送ができる。こういう意味において、先ほど指摘されたような立地条件及び輸送状況等については非常によい状態である。北海道における内陸地帯の非常にすぐれた場所である。しかも、この地帯は空知川をまん中にはさんだ平たんの地帯、山岳地帯ではございませんから、工場等の施設も非常に条件がいいのです。ことに二年前に閉山いたしました豊里炭鉱は、その敷地約六万坪が広ぼうたる原野になってまだ残っております。茂尻炭鉱の場合においても、今度露天掘りをする一角を除きますと、おそらく同様な広大な地積を含むことになると思います。したがってこの地帯に、労働対策の上から見ましても、あるいはまた産炭地振興の上からも、工場誘致、ことに中核になり得るような企業の誘致をぜひ進めていただきたいということを積極的に要望いたすわけであります。  先般も特に地元から未亡人や身障者その他の代表が参りまして、環境も非常にいいところだから、自分たちがここで住みついて働きたいので、ぜひ工場誘致をお願いしたいということで産炭地振興課長さんにも話し、ことに大平大臣とも会見しまして、ぜひひとつ現地を産炭地振興課長さん自身あるいは産炭地振興事業団としても見て、そそいう企業誘致の条件等についてももう一ぺん検討していただきたい。産炭地振興事業団ですか、一月ほど前に北海道の産炭地を視察されたが、美唄まで来て引き返されて、肝心の問題の地帯にまで入っておらないという状況で、この際ひとつ、きょうは産炭地振興事業団の幹部も見えておるのですから、中川局長勇断をもって、もう一ぺんこの地帯の視察団を派遣して、現地に希望を持たせ、そしてまた着実に可能である道を切り開いていただきたいということを、この際特に希望するわけです。特に雄別といたしましてはもともとが三菱系の会社で、発足がそうでありますから、三菱系の会社企業誘致につとめておるのですが、北海道に来ようということで大体調査が進行しております東洋サッシという会社があるわけです。これは相当な会社だそうでありまして、北海道に三百名程度の大工場をつくりたいということでいま用地を選考中であって、いまそこへ茂尻の問題を持ち込んでおるわけですが、この点等につきまして行政当局としての格段の協力方を特に要望するわけであります。こういう状況にありますので、もう一息というところでありますし、現地に十分これに協力する体制を築かせたいと思います。  もう一つ問題は、非常にこの地帯では、身障者や未亡人、中高年齢層に対する社会施設的な企業が幾つか成功しておるわけです。先般も就任早々の雇用促進事業団の堀理事長に要請をして御協力を願っておるわけでありますが、ここでは全く身障者を中心にしまして光生舎というクリーニングの仕事が、二百五十人も使って赤平を中心にして成功しておりますし、それから豊里炭鉱の失業者が中心になりまして割りばし工場を誘致して、全部炭鉱労働者で四、五十名の工場をつくって成績をあげておりますし、それからラーメン会社も、七、八十名のものをつくりまして、これもりっぱな社屋で成功しております。現地でそういう高年者、未亡人、身障者を中心にした企業が成功しているものですから、それだけに現地の希望は熾烈なものがあるわけであります。この際、特にこういう異常な状態で閉山になりました茂尻炭鉱のあと始末につきまして、石炭局並びに雇用促進事業団、産炭地振興事業団関係各位の特に積極的な御協力を要望しまして、私の質問を終わります。
  76. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 道地区の産炭地について多年いろいろ御心配をしていただいておる渡辺委員のお話でございますので、現地の知識に関しましては、東京におります私どもでは、とても足元にも及ばないわけでございます。通産局、それから産炭地振興事業団の出先、これらが十分先生の御期待にこたえれるような努力を傾けるべきだと思いますし、またそれを指導監督しておる立場といたしまして、通産省本省、産炭地振興事業団本部におきましても、ただいまの御意見を念頭に置きましてできるだけ努力いたしたいと思います。
  77. 渡辺惣蔵

    ○渡辺(惣)委員 これをもって終わります。
  78. 平岡忠次郎

    平岡委員長 岡田利春君。
  79. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 石炭対策特別委員会が最近あまり開かれぬものですから、参考人の方に御出席を願って質問が逆になりましたが、私は参考人の方だけに御質問いたしますので、時間がございませんから、ひとつ端的に意見をお聞かせ願いたいと思います。  初めに田口参考人にお聞きいたしますが、私も当委員会で、炭鉱の機械化の趨勢にかんがみて機械センターの設立という問題をいままで強く主張してまいりました。この点についてはいま事業団がそれぞれの支所に機械センターを設けて機械の効率的な利用、こういう方向で努力をされておるということに敬意を表しておるわけです。しかし、私は最近の炭鉱の機械化の動向並びに新しい石炭政策に対応する機械の効率的な活用あるいはまた開発、こういう面についてはやはり一元化されていくべきではないか。いわば研究自体は技術研究所で、それぞれの山元でやっておるわけですから、やはり必要な機械はそこへ貸し付けをするわけですから、そういう意味で当然一元化されていく方向というものが今日検討されなければならないのではないか、こういう意見を持っておるわけです。この点が第一点として意見をお聞きいたしたいところです。  第二点は、これまた技術研究所その他の関連がございますが、今日の石炭利用の問題は多年にわたって多面的な研究が行なわれ、相当な資金も投入してまいりました。しかしいずれも今日あまり見るべきものがございません。たとえば産炭地振興と並行した軽量骨材がようやく今日日の目を見るという段階でございまして、無煙燃料につきましても活性炭につきましても予算がつきましたけれども、一体いつこれが産炭地振興と並行して実用されるのか、皆目見当がつかぬというのが今日の現状であるわけです。しかし今日の石炭の置かれておる情勢を考えますと、石炭利用問題というものはもうしぼって重点的に研究を進めるべきではないか、こういう意見を私は持っているわけです。  その第一点は、今日の国際的な原料炭の供給不足、こういう現状にかんがみて、国内炭の原料炭への活用を積極的に進める、これをまず第一点として強力に進めるべきではないか。  それから第二点としては、先ほど技術研究所からも話がございましたけれども、微粉炭の吸着性を利用する吸着材としての活用やあるいはまた、もし将来排煙脱硫が行なわれるとすれば、大量な活性炭による排煙脱硫というものが考えられてくるのじゃないか。むしろマンガン酸よりもこの方向のほうが強いのではなかろうかという一つの見方もあるわけです。そういう意味で広範な量、質的な活性炭、この二つの方向に、先ほど私の言った微粉の問題も含めてしぼって重点的に投資をし、重点的な研究をするのが妥当ではなかろうか、こういう意見を持つわけですが、この点についてどういう御所見を持たれておるか、お聞きいたしたいと思います。  それから第三点は、今日の海外原料炭の動向からかんがみて、わが国の鉄鋼生産の伸びがもし産構審の答申である昭和四十八年、一億トン台に乗るとすれば、八千万トンの原料炭が必要でありますから、当然先ほど申し上げました原料炭価の問題と同時に海外開発という問題が今日考えられなければならないのではなかろうか。特にわが国が開発してまいりました水力採炭の技術、こういうものが当然活用されてまいらなければならないのではないか。その場合に、海外開発を行なう場合には、個々の会社がやるという時代はもう過ぎ去ったのではないか。いわばユーザー側と技術を持っておる炭鉱側が一つの国策の線に従って大同団結をしてそういう方向に一歩踏み出す、こういう体制以外に海外開発は考えられないのではないか、私はこういう判断を持っておるのですが、特にこの点について所見を承っておきたいと思うのです。  第四点目としては、新しい石炭政策は最終的なものではないわけです。いわゆる大臣回答にもございますように、体制委員会をつくってさらにこれに諮問する、来年の八日を目途にして一応答申を得るということが前提にございます。そういたしますと、私はそういう石炭政策の動向と相関連して、今日石炭関係機関、きょうそれぞれ関係機関が御出席でございますけれども、関係機関においても当然いまの形のままでいいのかどうかという点については、私は多くの疑問があると思うわけです。たとえば技術研究所のような場合には、五割の補助をもらって、五割の金をつけてやっておるという面もございますし、あるいはまた流通の面から考えれば、電力用炭株式会社の問題等もございますから、これも今日石炭供給構造の変化と特に一般炭のサルファ問題、こういう一つの質的な変化に対応する能力というものは、電力用炭は今日機能として持っていないと私は判断するわけです。そういう総合性を考えますと、私は当然、関係機関のあり方についても、やはりこの場合に考えなければならぬのではないか、検討を十分していく必要があるのではないか、あるいはまたそういう方向がいますぐとれないとしても、より有機的な協調関係というものが確立される方向が望ましいのではないか、こういう意見を実は持っておるわけです。田口参考人石炭問題の先輩でもございますので、この機会にこの四点について御所見を承っておきたいと思います。
  80. 田口良明

    田口参考人 ただいま岡田委員から石炭問題について非常に大きな問題に関する御質問がございました。この問題につきまして特に私に名ざしをされたということに対して、私はまことに光栄の至りでございまして、こういう機会に私の所見を述べさしていただくことに対しまして、心から厚くお礼を申し上げます。  ただいま御質問の要旨は四点ございましたが、この四点の御質問に関係する個々の問題について申し上げる前に、私は、いま日本の石炭業界並びに一般国民の間で案外忘れられておる石炭に関する二点があることを、この際指摘しておきたいと思うのであります。  その第一は、日本の石炭産業は、最近目ざましい努力を払いまして、これはいろいろスクラップ・アンド・ビルドのようなことを長年やってまいりましたし、炭価も据え置きというようなまことに過酷な状態に置かれておりました関係もあるかと思いまするが、日本の石炭産業の一人一カ月当たりの能率というものは、アメリカを除いては最大の能率にのし上がってきておる。ドイツを抜き、ソ連をも抜いて、日本は第一位になっておる。ただアメリカにつきましては、露天掘りあるいは賦存状況が全く違いまするので、アメリカを除いては日本が世界第一の能率にのし上がってきたということが一つ。  第二点は、日本の石炭は品質が悪いとかいろいろいわれておりまするが、これが一体どういうような炭であるかということについては案外御存じのない方が多いんじゃないかと思います。一言に申しますると、日本の石炭は非常に流動性に富んでおる。この日本の石炭が流動性に富んでおるということは、外国のいかなる炭を持ってきても、これとのコンビネーションがまことにスムーズにいく。言うなれば非常に多情だということがいえるわけであります。あんまり多情なものには安心ができないのでありますけれども、石炭に関する限りにおいては、この日本の石炭が非常に流動性に富んでおるということ、これは案外日本の人たちが、また炭鉱の人たちでさえも気がつかない点だろうと思うのであります。  この二点を一応前提といたしましてこれから岡田委員の御質問の第一点から申し上げてみたいと思うわけであります。  第一点は機械化の問題でございまするが、この機械化の問題につきましては、先生御承知のとおり四年ほど前に合理化事業団に、石炭産業の特殊性にかんがみてまっ先に機械化を推進しなければならぬというので、炭鉱機械化推進懇談会というものをつくったわけであります。この懇談会の朝野の人々の非常な御勉強によりまして、その後、 機械貸与の問題、あるいは新鋭機械の導入、あるいは貸与の問題にいたしましても、ことしの四月から機械短期貸与制度というようなものまで実施されるようなことになりました。ただいま機械センターもできた。こういうような昨年の月から機械センターの仕事を始めるに至ったわけでございます。  そこで、この機械センターを中心として、この能率の問題にも言及してみたいと思うのであります。この機械センターの仕事は、御承知のように合理化事業団近代化資金並びに機械貸与で新鋭機械を各国から導入する、そういう新鋭機械を今後どういうふうに使いこなしていくかというために、機械センターにおいて炭鉱従業員を集めまして、そしてそれに短期教育を施す。これは新鋭機械の分解掃除あるいは運転はもとよりのこと、それのスケッチそれから管理というような多方面にわたっての機械全体についてのマスターをさせるということが一つであります。と同時に、大学の先生あたりにも来てもらいまして、機械工学の一般から教育を施していくというような短期技能養成生徒でございまするけれども、昨年の七月一日から始めまして、北海道、常磐、九州におきまして四百二十名の講習生を送り出したというのが昨年度の実績でございます。ことしはさらにこれを十分に活用いたしまして、人数におきましても一千人程度の短期技能養成者を養成していこう。あくまでもこれは炭鉱で使う特別な新鋭機械でございまするので、こういう点につきましてはやはり前もってその機械の性能を十分知悉させなければならぬという考え方から、これを実行しておるのでありまするが、この成績が非常によろしいということでございます。  そこでただいま御指摘ございましたように、この機械センターというようなものが今度の新対策に対処して、はたしてこれでよろしいかどうかという問題でございまするが、私どもは決して機械センターの現在の仕事の状況では満足していないわけであります。今後合理化事業団において考えておりまする点をごく簡単に申し上げますると、炭鉱機械センターにおいては以下申し上げまする七つの点を今後さらに推進してまいりたいということでございます。  その第一は、炭鉱機械化の重要性にかんがみまして、この近代化資金制度並びに機械貸与制度の効果をもっと拡充するために、また炭鉱のますます人員不足に対処いたしまして、教育制度のただいま申しました点を特に重視いたしまして、まず第一は教育対象者の拡大ということを推進しようというのでございます。この点は、いままで炭鉱機械を買っておった炭鉱従業員を主体としたのでありまするが、そういう機械を買わない炭鉱あるいは借りない炭鉱でも、希望者全部に対して受講できるようにするということが教育対象者の拡大であります。第二が教育機種の拡大であります。いままでは近代化機械、新鋭機械に限られておりましたが、これをもっと一般に使われるような汎用機械についてもこの教育をしていくということが第二点。この第二点は、いわゆる多能化と申しますか、これからは、あまりに炭鉱の労務者の不足が著しいために、仕事を細分化されないで、もっと業種を広くする、これが多能化でございます。こういう多能化教育に貢献したいということがこの第二点であるわけであります。  第三点は、このごろはやりのようになってきておりますけれども、電子計算機の教育をこの機械センターにおいてもう少し進めてまいりたい。これは炭鉱の坑内の機械化あるいは坑外の機械化ばかりでなく、事務能率の画期的な飛躍的な合理化、上昇を考えまして、こういう電子計算機の教育のほうを、この機械センターにおいても十分実施するという余力があるんじゃないかという考えを持っておるわけでありまして、これをできるだけ推進したい。  第四点は、さらにこの機械管理技術教育の実施でございますが、特に管理技術の教育をもう少し徹底していきたい。これはいわゆるIEとかあるいはORとかいうような運動がございますが、そういうような点を十分取り入れまして、いわゆる管理技術の養成ということに力を入れてまいりたい。  第五点が、若手技能者の教育でございますが、こういう点につきましては、もっと今後、御当局のほうとも連絡をとってまいらなければならぬと思いますけれども、ぜひその炭鉱の子弟を短期間に技能者に育て上げるというようなことに持っていく。これで、さっき申しましたように、機械貸与の面におきましても、ただ機械を炭鉱に貸すばかりでなく、トレーナーとして、ここで養成した者をその機械につけて炭鉱に貸してやる。いわゆるドライバーあるいは管理者づきの機械貸与ということにいたしたいわけでございます。  六番が、保安教育との連携でございますが、これは保安センターがございまするので、保安センターのほうの保安教育とも十分密接な関係を持って、お互いに知識の交換あるいは設備の共同利用、あるいは講師の共同援助というようなことも考えているわけでございます。  それから、最後の七番目でございますが、どうしてもこの炭鉱の機械化が進めば進むほど、機械の修理、損耗ということが激しくなることは当然でございまするので、やはり修理工場の完備と申しますか、それから部品の倉庫というものを十分つくりまして、そうしてこの炭鉱機械センターをつくりまして、これの機能を飛躍的にこれから伸ばしていかないと、炭鉱がますます労務者不足に対処して十分でないという、先生御指摘の、今度の新対策に処しての機械センターに対する所感いかんということについて一応お答え申し上げたわけでございます。  ただ、先ほど申しましたように、過去のように、私どもは炭鉱の機械化推進にできる限りの、こん身の努力を傾けてまいりましたが、先ほど申しましたように、能率が諸外国の能率と比較してどうであるかということをちょっとここで触れてみたいと思います。  日本と、西ドイツと、フランスと、イギリスと、ベルギー、オランダ、ソ連、アメリカ、これについて四十二年度のデータで申し上げますと、これは一九六七年、四十二年度でございますが、日本が四二・七、これは一人一月当たりの能率でございます。西ドイツが三九・八、フランスが二九・六、イギリスが、これは四十一年の数字でございまして、四十二年がございませんが、四十一年は三四・二になっております。それからベルギーでありますが、これは二四・八。オランダが二五・一、ソ連が四一・三、アメリカが二六六、こういうことになっております。アメリカは推定値でございます。  特に日本に戻って日本の二、三の炭鉱について申し上げてみますると、三池と、高島と、池島の三炭鉱は、機械化の推進によりまして、四十八年度は百トンをこす見込みとなっておる、こういうことであります。これを四十三年の実績で申しますると、三池は七一・七、日炭の高松は九二・五、池島が八六・七。これが、計画では、四十八年度が、一〇二・四が三池であります。百トンをこしております。高松が一三七・八、池島が一〇一・五、こういうような——まあこの間の年度にも能率のあれはありまするけれども、ごく概略にこれを申し上げてみますると、こういう状況である。いまや日本の炭鉱の能率は世界各国の驚異の的となった。  いまライオンズクラブで来ておる人らしいのです、インドのタタ製鉄のジャマドバ炭鉱というのがございますそうでございますが、ここのシャルマという技師長が、三池と、三作と、太平洋と、南大夕張を見たいというような、最近の話もある様子でございました。  特に、日本の炭鉱は、最近離山ムードあるいは何かが横溢いたしまして、特に企業ぐるみの閉山というようなことが打ち出されたために、炭鉱の将来というものに全く希望を失っておるというときに——まあ一部には炭鉱の人たちはもう逃げじたくだ、足元の明るいうちにもうやめたほうがいいんじゃないかというような声も聞かないわけではございませんが、ただいまの能率の示すとおり、現場においては、あらゆる苦悩と戦いながら、また低炭価にあえぎながら、そしていままでは非常な赤字をかかえて、そしてこういう能率を涙ぐましくも上げてきたという点は、私は、やはりこれは、一つの、日本の炭鉱人に対する、一般の人々の認識を改めていただかなければならぬ問題じゃないかと思っておる。  この問題が、いずれは、あとで申し上げまする海外原料炭の問題にもつながることだろうと思うのでありまするので、まず、第一点の御質問に対しましてはこの程度にいたしまして、第二点の問題に移りたいと思います。  第二点は、石炭の利用についてということのようでございまして、特に重点的にしぼる必要がありはせぬかという点でございます。私も全く先生の御意見には同感でございまして、この日本の石炭産業、これは、世界的に石炭産業は斜陽化しておるというのでございまするから、一面やむを得ない点もあるかと思いますけれども、アメリカのごときは異常な勢いで増産に拍車をかけておる。決して石炭は斜陽産業でない。またポーランドあたりにおきましても、非常な勇気をもって炭鉱マンが働いておるということでございますが、特に最近ドイツのエッセンにあるBF、これはドイツの石炭鉱業中央研究所でありますが、ここは各方面からの援助あるいは基金、これによって非常な石炭の多方面の研究をしておるようであります。非常にこれが実績をあげておる。ありとあらゆる石炭の利用方面について非常な学者がクモのごとく集まって、それぞれ懸命の研究を進めておるということでございますが、日本はなかなかそういうようなわけに急にはまいらぬと思いまするが、しかし何と申しましても、石炭一つの今後絶対に必要欠くべからざる資源であるということを再認識してもらうためにも、ここにやはり石炭の利用ということについては重点的にしぼる必要がある。それは何と申しましても、第一は一般炭の加熱成型乾留によります製鉄用コークス炭にこれを使うということが大事だろうと思うのであります。これにつきましては、先ほど技研のほうからお話がありましたように、この点は室蘭の設備のほうとタイアップして二トン・パーアワーの中間試験をやるということは私はけっこうだろうと思うのであります。また工業技術院におかれまして、あと二、三年ぐらいしますと、五トン・パーアワーくらいの大型——まあ中型と申しますか、中型プロジェクトに移行したい、これに要する金が十億だというようなことも言っておるようでありますが、私はいまの資源技術試験所の技術と、いまの技研の室蘭とタイアップしてのこれからの技術を十分ひとつ推進していただく、これに必要な予算を十分組んでもらうということが絶体に必要であり、また日本の一般炭が——この場合はいままでの一般炭が一五%から二〇%を使うということの研究であったのが、一躍一般炭を七〇%くらいを使うということになって、あとの三割はいわゆる流動性の高い弱粘結炭を配して、それでりっぱなコークスができる。これはもうドイツでも五トン・パーアワーで何千トンかの製品を試験して、少しも製錬に差しつかえがあるどころじゃなく、むしろ通気関係で好転したというようなデータも最近はあるようです。そういうようなことから、この日本炭の流動性を利用して一般炭のコークス化ということにぜひこれを早めるというためには、ドイツのBF方式のノーハウを場合によっては購入してもいいんじゃないか。それと日本の技研がいまやっているのと両方相まって、これが一日でも早く実用化するということをぜひこの際推進する必要があるんじゃないかというふうに考える次第でございます。  第二は活性炭の問題でございますが、この活性炭の問題にいたしましても、これは方法としてはそうむずかしい方法じゃなく、資源技術試験所におきまして非常に好結果を得ておるように聞いておりますが、亜硫酸ガスの吸着率が九〇%以上であるというような非常な高成績のデータもあがっているようであります。そういうふうなことから、いま五井の発電所におきまして排煙脱硫でございますが、ここでこの活性炭の試験をやっているようでございます。この成績につきましては、また専門的な方面からデータその他が得られると思いますが、この石炭の用途というものをただいたずらに燃料として済ませないで、これからは石炭は貴重な原料であるということで、いま世界をあげての製鉄用粘結炭の不足をこういう一般炭によってカバーする、しかも流動性の高い日本炭が非常な貢献の役をこれによってするということは、私は日本炭の特性を生かす最もいい機会ではないかと思うのであります。と同時に、また一般炭につきましても、これを活性化いたしまして、いま日本の産業も今後どうなるか、日本人の生活もどうなるかといわれておりまする公害問題、大気汚染の問題あるいは汚濁水の問題、そのほかいろいろありまするが、何とかして、いま何十万というような高価な活性炭ではなしに、やはりもっと安い石炭を大量に活性化して活性炭にして、そしていまの公害防止、産業公害防止にこれを役立てるというには絶好のチャンス、これを一日でも早く実現するということに対して、やはりドイツあたりの中央試験所でやっておるように、もっと政府機関におかれましても、あるいはまた国会の諸先生方におかれましても、ぜひこういう方面予算の拡充と申しますか予算を十分につけていただくということに特段の御協力を願うことが、結局において日本の石炭を救う道である、また日本の産業を救う道であり、日本の国益に連なる道であると私は断定しても差しつかえないと思うのです。そういうようなことで、第二点の石炭の利用につきましては以上二点にとにかくしぼって、重点的にこの際やることが必要ではないか、そしてそういう二つの試験も、大型プロジェクトに一年でも早く繰り上げることが絶対に必要であり、外国のノーハウを取得してでもこれを促進するということが絶対に必要であると考えております。  第三点は、海外原料炭の開発の問題でございます。この海外原料炭の開発の問題につきましては、ここにおられます井出先生もたいへん御熱心であることを私も前から存じ上げておりまするが、やはりちょうどいまから二年ばかり前でございますが、昭和四十二年の、いまでも日を覚えておりますけれども、七月十三日、時の石炭鉱業審議会の経理審査会の委員として私は列席しておりまして、植村会長以下有澤先生その他圓城寺さんとか皆さんのおるところで、石炭の海外原料炭開発株式会社案なるものをそこで説明したわけでありますが、当時はまだそういうような状態でなかったのか、これにはあまり共感を呼ばないで済んだということでございました。しかしその後におきましては、最近の新聞紙上あるいはテレビその他においてもいわれておりますように、やはり日本の製鉄業として、これから世界の第一位第二位を争うような今後の大製鉄生産国として最も隘路は製鉄用原料炭であるというときに、私はまず石炭人が考えなければならぬ問題は何かということは、まず国内炭一千万トンの再認識をしなければいかぬということ。製鉄用原料炭に向けられておりまする——いま一千万トンの製鉄用炭が国内から出ておりまするが、いま製鉄に使っておりまする国内炭の割合は外国炭が九割で日本炭が一割くらいにしかすぎないのであります。今後一億何千万トンの粘結炭を必要とするという、将来四十八年度にそういう必要のあるときにあたって、日本の石炭産業もただ便々としておるわけには相ならぬと思うのであります。いまの一千万トンの製鉄用原料炭をやはりこの際再認識してみる。それはいま申し上げましたように九対一の割合でありまするから、あまり国内炭にアッシュ分が六%だとか、硫黄分がどうのこうの、燐分がどうのというような手かせ足かせをしなくとも、外国炭と合わせることによって、日本の石炭は非常に流動性が高いのでありますから、そういう点を生かして使うということに配慮しなければならぬと同時に、われわれ合理化事業団におきましても、ビルド炭鉱に対しては十分近代化資金貸し付けあるいは機械貸与の援助あるいは技術の指導の面において低硫黄の石炭を大いに増産すると同時に、やはり原料炭に向くような石炭、ビルド炭鉱の今後の増産に向かってわれわれも大いに努力をいたさなければならぬと思うのであります。  その海外原料炭の開発についての問題に返りますが、二年前に私が海外原料炭開発株式会社案なるものを説明いたしました内容は、いまも資料がございまするけれども、その制度は先ほど岡田先生御指摘のように、何らか強靱な体制のもとにやっていくことが必要ではないかというようなお話でございまするが、私もまた同感でございます。二年前の私の申し上げたときの案におきましても、いわゆるコンソーシアム、これは共同体と申しますか、共同で一つの共同体をつくってそこで海外原料炭の開発のいろいろな事務をやるという関係でございまして、このいわゆるジョイントベンチャーというような一つのこういう共同体制、このコンソーシアムの利点は、まず融資力の増大とか危険の分散とか技術の拡充強化、あるいは経験の応用、増大、あるいは見積もりのチェックだとか工場施工の確実性、投資と工事入手の機会の供与というようなお題目はいろいろ並べてみましたものの、その後二年間の私の海外原料炭の開発にいま向かっておる二、三の会社の動向を見てみますと、それはまことに血みどろな努力を払っておるわけであります。オーストラリアの炭田について見ましてもあるいはカナダのバルマあるいはその他の地区についても、やはりこの問題については非常な熱意を持って会社の浮沈をかけてやっておるということの実態を見るときに、こういういわゆるコンソーシアムというものも必要ではあるが、まず第一に資金の獲得、いわゆる国家のバックアップとそれから出資金あるいは融資金の手当てをまずしてやるということが急務ではないのだろうか。そうしないと、これはいま世界をあげてのこういう原料炭のソースをさがし歩いておる世界の人たちに伍して日本がおくれをとる。これは将来の日本の産業にとって非常にマイナスになる、悔いを千載に残すということを考えるときに、一日も早くいま手をつけ始めておるような会社の外国との提携に対して十分これを検討し、そしてこれに対しての融資をとにかく考えてみる。そのときに融資方法としてはいろいろあると思うのです。合理化事業団としては、いままで保証というものをやっておりましたが、融資保証制度——融資保証制度は経営改善資金融資保証制度、整理資金融資保証、その他いろいろな融資保証の制度を事業団は実際に国内の炭鉱に対してやってまいりました経験から徴しまして、これはむしろ国内の融資保証よりも、外国のしっかりしたいわゆる合弁会社なり共同経営なりの炭鉱に対する融資保証のほうがもっと確実であるというふうに私は考えるわけです。こういうような融資保証とあるいは財投の金の出資ということをあわせ用いて、海外原料炭の開発に一日でも早く日本の民族資本で、さっき申しました世界に冠たる日本の炭鉱技術をアプライするということによって、非常に安く、しかも日本に将来原料炭の——これは原料炭と私特に申し上げておりまするのは、粘結炭のみに限らなくてもよろしいのでありますが、要するに原料に向く石炭確保しておくということが将来の日本の産業にとって最も大切なことじゃないか。これはやはり石炭サイドでやらないと、他の産業はそれぞれの専門がありまするのでなかなか容易なことではないと思う。ただ決して他の産業を排除するものじゃないのです。他の産業とも十分仲よく話し合って、ひとつそういう方面を今後切り開いていくということが絶対必要であろうと思うのです。  海外原料炭につきましてはその程度にいたしまするが、いま申しました第一から第二、第三の問題にわたって、これはいみじくも岡田先生が御質問になられましたが、日本の石炭産業がいまや企業ぐるみの崩壊の危機に瀕しておる会社もあり、またそういう日本の炭鉱が、一部にはもう無用の長物である、よけいな税金をたくさん使ってどうにもしようがない、経営者もまたどうもなっておらぬというようないろいろな声も聞きますけれども、やはり何と申しましても明治の前から百年の日本の石炭産業というものの歩みということをいま静かに振り返ってみるときに、日本の石炭産業が日本のいままでの勃興して飛躍してまいりました産業に寄与した功績は、けだしはかり知れないのでありまするが、先ほど申しましたように日本の石炭というものの特性と、いかなる逆境に対してもくじけないという勇猛心いわゆる炭鉱のマイニングスピリットを発揮して、そうしていまやドイツも抜きソ連も抜いて、坑内掘りにおいては世界の第一位の能率をあげるようにまでなったということに対しての再認識と、それからこれからの石炭産業の歩みに対して御理解を賜わりたいと思うのであります。  今度の新対策によってこれで日本の石炭産業は今後やっていけるのかという問題に逢着すると思いまするが、その問題についてはあとから第四の問題が控えておりまするけれども、ここで一言申し上げておきたいのは、やはり法律はでき、政省令はきまり、業務方法書が決定いたし、これはあくまでも骨格であります。これからの業務はあくまでもこの趣旨に沿って、運営の面においていかにして足らざるを補ない、長所をもっと伸ばしていくかということが要諦であると思うのでありますが、やはりこれからできるだけひとつこの法律の趣旨にのっとって、そしていろいろな面において足らざるところを補ない、長所を伸ばす。それについては今度の企業ぐるみ閉山交付金というものはやはり確かに私は救いの神であったと思うのです。でありますから、先ほど来、井出先生からもいろいろ鉱害問題について御質問がございましたが、こういう一つの新しい仕事に対しては十分ひとつ各自が自重自戒し、そして能率向上に向かってこん身の力をいたすということが絶対に必要であり、ただ人ばかりをふやすのが能ではないと思うのであります。要は制度の問題よりも人間の問題である。やはり一人五役、三役をやる人もあります。またいたずらにその日その日を酔生夢死に過ごしている人もあります。したがいまして、人をただ集めたからよいというわけのものじゃないのでありまして、こういうときこそ合理化を徹底させることが絶対に必要であると思うのであります。これはひとり炭鉱ばかりじゃない。そこで第四の最終の案ではないということを大臣も申されておりまするし、それはまたいまの流動的なこういう経済界において、一ぺんきめたことがそういつまでもそれでもってやっていけるとは私も思っておりません。しかし、やはりきめた以上は少なくとも二、三年でもあるいは四、五年でもそれにのっとってできるだけのペストを尽くすということが絶対に必要であると思います。  結局関係機関というものがどうなのかということのお話がございましたが、私はこれは毛利元就の昔のお話にありましたように、三本の矢も一本一本は弱いが、一束にすれば強いということわざを思い出す程度にいたしまして、あまり深くは申し上げたくはないのでありまするが、要は私はそういう問題も確かにあると思うのでございまするけれども、ただいま申しましたように、人間がほんとうに石炭を愛し、そして日本のこれだけの伝統ある唯一の国産資源をいかにして伸ばしていくか、これがあってこそ海外原料炭に進出する基地ともなるわけで、これが全然ないイタリアのような国であったならば、石炭産業も海外に進出する余地はない。これだけの石炭があるから、四千万トン、五千万トンの石炭の出炭があるからこそ、世界に日本の石炭産業が誇示し、自信を持って世界を濶歩することができるわけです。また幸いなるかな、日本はソ連の機械でもあるいはアメリカの機械でもポーランドの機械でもどんどん買って、いいものは入れる。そして日本の炭鉱に合うようにこれを改善し、そういうふうにしていくことによって日本の機械化推進はますます世界に冠たるものになるという確信を得た次第でございます。  時間もあまりないようでございますので、また御質問がございますれば申し上げることにいたしまして、不十分ながら岡田先生の四つの御質問に一応お答え申し上げましたわけでございます。
  81. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 第一点から第三点まで私の質問に対する御意見は私も全く同感であります。ここに重点を設けてこれから進めなければならぬと思うわけです。  ただ第四点については、述べられる限界があろうと思いますからこれ以上質問しても無理かと思いますが、私はやはりここまで来た石炭産業というものは石炭資本、石炭経営者自体がまず自己改革を要求されておるのではなかろうか、そういう点が労働者の共感を呼び、石炭産業のほんとうにかくあるべきだというすなおなものを生み出してくるものではなかろうか、こういう気持ちを実は持っておるわけです。  そこで時間がございませんので私の質問に関連して石炭技術研究所の水田さんに御質問いたしますが、いま述べられた特に一般炭のコークス化、あるいはまたいま俗にいわれている砂乾留方式、この技術導入の問題をめぐっていわばいまやっているのは自己技術開発を進めていくという姿勢でありますけれども、しかしドイツの中央研究所では特許を持っておりますし、また西ドイツのブル二ー社ではこの装置を持っておるわけですが、この研究を進めるにあたって当然特許関係の問題が起きてくるのではないかと思うのです。したがって、いまの場合にはまだ研究に入った段階ですからいいのでありますけれども、今後さらに発展してきますと当然これらの問題が出てくると思うわけです。そういたしますと、田口参考人意見もありましたけれども、この際思い切って技術導入をはかる、こういう姿勢を確立することがむしろ大事ではないか、そういう姿勢をまずきちんとすべきではなかろうか、こういう見解を持っているわけです。  すでに御承知のように、三井鉱山は単独で技術導入をはかるという姿勢でいま具体的に折衝を開始しております。一方技術研究所のほうは業界全体として政府の補助金も受けてこの研究に入っているのだから、そういう姿勢の中で受けとめていきたいというふうな意向のように実は聞いておるわけです。しかし、本件は、実は本委員会で二年前から私は問題にしまして、この問題はどうしても着手すべきだということを再三主張してきた経過もあるわけです。こういう意味からもこの技術導入についてはどういう見解を持っておるのか、まして技術研究所の場合には民間構成で、理事長石炭協会の大槻会長でありますし、そういう点からいっても、この問題についてはやはり業界自体が協調してぴしっとした姿勢を出さなくてはいけないのではなかろうか。少なくともこれらをめぐっていろいろなことが報道されるという傾向は芳しくないという見解を私は持っているわけです。この点について見解を承っておきたい。
  82. 水田準一

    ○水田参考人 御質問にお答えいたします。  私どもがこの加熱成型コークス化法というものを開発するようになったのですが、いま御指摘がございますように、石炭産業が一本になってこれを推進するので一番いいだろう、かつ関連使用者側である製鉄側とも相当密接な関連を持って進めたほうが、将来完成したときにこの技術のきき方がいいであろう、そういう見解のもとに、昨年度からいよいよこの研究を始めるにあたりまして関連各社と十分に検討いたしまして、その結果一本になってやるべきだという結論のもとに今日進捗いたしております。ただもう一つそこに入りましたドイツは相当に技術を検討しているのだ、しかも成功しているようだ、この技術を早く入れてしまったほうが勝負が早いであろう、こういう御意見も確かにあります。だけれども、私どもといたしましては、いま技術で相当一生懸命やっております。また日本でも資源技術試験所その他で相当基礎的な研究その他をやっておられますし、またわれわれと提携してやってもらう富士鉄室蘭でも相当な域まで達しております。こういうものは、せっかく補助金をいただきますので、できるだけ努力いたしまして、われわれの技術のレベルアップあるいは成果の達成ということをねらっております。いずれそのうちには必ずこちらの全く独自の、向こうに関係のないようなりっぱな方法が見つかればいいですけれども、やはり技術というものは相当関連性は出てくるだろうと思います。そのときにはやはり業界一本で開発をするという線に沿って、もし技術提携が必要になりましたら、こちらで開発しましたものも含めてその線で提携をしよう、こちらで全然研究もせずにおりまして、向こうといろいろ、やれノーハウを教えてくれ、やれ何をしてくれといいますと、たとえばの話ですけれども、こちらがかなり不利な条件にならないとも限りません。その点、われわれも一生懸命になりまして検討をしまして、ある部分では逆にこちらがそのヒントを向こうに与えるというようなところまでもいくことができますならば、その提携も比較的有利になるであろうということで、ただいま進めております。
  83. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 わが国の技術は応用技術、派生技術は非常に上手にこなす能力を持っておるわけです。石炭の今日置かれておる現状なり四十八年の展望を考える場合に、相当長期間の研究期間というものは、事石炭に限ってはあまり許されないのではないか。そういう意味で、いま述べられたように、もちろんいろんな関係はございますけれども、決断をする場合には、やはり技術を導入する、さらにまた先ほど述べられたような日本の石炭に合うようないろんな技術をそれに付帯して開発をしていく、こういう多様な弾力性のある態度で臨まれることが最も望ましいと私は思うわけであります。この点特に私の意見を述べて今後の研さんを期待いたしたいと思います。  次に電力用炭と電発にお聞きいたしたいのでありますけれども、実は先ほどそれぞれ述べられておる問題点の中に、炭価の問題、これはコストに当然関連があるわけです。それと同時にローサルファの石炭確保の問題、さらにまた供給の円滑な体制をとるために運転資金等の確保の問題、輸送装置の専用線の効率的な運用、こういう関連でいろいろ御意見を承ったわけですが、今年の電力用炭の供給計画を組むにあたっていろいろ問題が起きたことは御承知のとおりだと思うのです。それはいわば中部電力から分けて北と南、いわゆる北のほうはローサルファの石炭が容易に入手できる、南のほうの一般炭は三池を主体として高サルファである、こういうことで、南のほうは九州電力のほうにどうしても押しつけがちになる。公害問題もございますから、当然そういう問題が出てくる。北のほうは概してその点は問題がない。むしろ北海道炭の反転西下を要望する声すら強いと私は見ているわけです。この問題というのはこれから相当、来年も尾を引いてまいりますし、再来年も尾を引いてまいる、私は実はこういう理解をいたしておるわけです。聞くところによりますと、電発自体もやはり磯子にしましても公害問題でずいぶん苦労されましたし、竹原についても同様今度新しく運開すれば、そう大堀さんが見ているように、そういう問題があまり起きないというものではないというぐあいに理解をしているわけです。こういう点から考えて、いわゆる電力用炭株式会社自体が相当な調整機能というものを持たなければならないという事態に追い詰められている。ところが問題は、やはり炭価の問題がありますし、いわゆる東高西低で北のほうが高く西のほうが低いのでありますから、遠くて低いということになりますと、それは供給側がうんと言わない。したがって私はやはり今日実績においてきめられた基準炭価あるいは歴史的な炭価の傾向というものについて、やはり全体として取り組まなければならない事態になってくるのではないか。炭価の問題が解決すれば、ある程度供給の弾力的な運用というものは解決できますし、また三池と松島が高サルファの炭の主体を占めている限りは、どうしても片寄るわけですから、そういう弾力的な態度で臨まざるを得ない。そのネックが炭価の問題である、こう私は思うわけです。電発の場合も、磯子と竹原の場合はまさしく分かれているわけですから、この実情全く同じではないかという認識を持っておるのですが、この点について電力用炭と電発から御意見を承っておきたい。
  84. 大堀弘

    ○大堀参考人 ただいま岡田先生から御指摘がございましたように、私どもの五台の揚げ地火力のうち三台は西であります。高砂、竹原、この地帯につきましては、最近やはりサルファ問題がわれわれとしては一つの悩みでございます。私どもも当初から高サルファのものをたけますようにくふうもしてございますし、現地の公害問題等の関係で私ども非常な責任を負っておりますので、これに支障のない範囲ではできるだけ使うようにいたしておりますけれども、限界はございます。したがいまして今後の問題としては、やはりサルファ問題が一つの問題であろうかと思います。磯子のほうは御指摘のようにその点の心配は、炭の関係で比較的少ないわけでございます。しかしながら総対的に西に比べて磯子のほうの炭が値段が高いものでございますから、各電力会社売っております場合に、磯子の関係では、東地域で売っております電気の料金が非常に高くなっております。そういった関係で、これは悩みでございます。これはいま御指摘の点は北海道炭と西のほうをまぜてうまくいかないかという御意見もあろうかと思いますけれども、私どもとしましてもやはり発電原価に響くということは、せっかく電発を使っても、電発は、国策機関のつくるものは高いといわれるとわれわれも非常に困るわけなんでありまして、やはり少なくとも電力会社の買っております炭と同等、高くもございませんし、安くもございません、同等の値段で買い付けるような方針をとっておりますので、後日また電力会社の方が参考人として呼ばれておるようでございますから、その辺のところ、またお聞き願いたいと思います。私どもとしては、できるだけ御協力申し上げるつもりでおりますけれども、以上申し上げたような実情でございます。
  85. 稲葉五郎

    ○稲葉参考人 岡田先生には、流通問題でかねがねからいろいろ御指導を受けておりまして感謝いたしております。  いまお尋ねの点は非常にむずかしい点でございまして、その点を突いていらっしゃった御高見は、さすがに岡田先生だと思いますけれども、私ども四十年から現在の仕事をさせていただいておりまして、幸いにして四十年度、四十一年度、四十二年度と参りまして、その間、まず初めにきめられたワクに対しては大体おさまってまいったのであります。先ほどおっしゃいましたように四十三年度に入りまして、北海道炭の減産というような問題もございまして、それからまた北電の増加引き取りの問題がございまして、揚げ地のほうでショートするというような問題が起こってまいったのでございますが、それに関連しまして今度は四十四年度の問題でございますが、なるほど先生御指摘のとおりでございまして、非常に心配した問題に相なっておるわけでございます。  先ほど私概論的に申し上げましたけれども、そういう心配があるので申し上げたのでございますが、これをそれならばいかにするかという問題でございますが、私は私見で考えておるのですけれども、先ほどもお話がございましたように、新石炭政策というものがここに出まして、そしてその政策にのっとって各石炭会社はいかに自分の会社をやるべきかということで、いま経営者はほんとうに血みどろでそれに対処しておるだろうと思います。それでその体系ができまして初めて出炭の今後の方向がおぼろげながらきまってくるだろうと思うのです。その点において先生のおっしゃるように南のほうの炭が片寄る。というのはSの炭が増産になりまして、それに混炭が十分にいかないという問題が必ずや西のほうで起こってくるだろうと思います。それから東のほうについては増産がかけられますので、その東のほうの炭は必ずしも東京以東で使い切れずに、西のほうまで持ってこざるを得ないという状況、これはおぼろげながらそう考えられるわけでございますが、しからばそういう点について十分なる今後の検討が行なわれまして、品質別にどういう炭がどういうふうに出てくるかという事態をとらまえまして、そしてしからばこれは一社なり二社なりの混炭によってこれが克服できるものか、さもなければ三社、四社混炭をしなければならないものか、それとも根本的にこれを何とか考えなければならぬものかというようなことは、ここ一、二年の間に出炭のいろいろな傾向がきまってくるだろうと思いますので、それをつかまえましてどういうふうにいったらいいんだということを検討していくべきじゃないか、こういうふうに私は思っておるわけでございます。  なお、この点につきまして先生にいろいろ御意見がございますなら、ひとつお教えいただければ非常にしあわせだと思います。  以上、お答えといたします。
  86. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 確かにこれは非常にむずかしい問題だと思うのです。いまの体制でこれを解決できる人がおれば、それはたいへんな救世主的存在だ、こういう現状認識を私はしているわけです。したがって、いずれにしても九州炭の供給能力がそういう意味で弱体化してくるという問題にどう対応するのかということが、これからの石炭政策の非常に重要なポイントになってくると私は思うのです。これが解決できないとすれば、全体の体制一元化よりも販売関係体制一元化ということをやらなければ、もう不可能だという結論をすぐ導き出すと私は思うのです。現状でとにかく実績炭価で買い取って、あとは調整して負担増対策を出していますけれども、今度はそういう調整負担場対策といいますか、調整基金といいますか、需給調整基金というものを出してやらなければならない、こういう事態になるのだと私は思うのです。ですから案外流通関係ということが、今日の石炭政策でやるけれども、むずかしいから結局逃げているというのが私の偽らざる受けとめ方なわけです。しかしこれからは、この問題からは逃げることができない宿命なんだ。これをどう解決をするのか。これが解決できないで日本の石炭産業を論ずることはできないし、ユーザーに対しても責任を持つ供給を行なうということはできないんだという点で、これから私どもがまた通産省を相手にしていろいろまた議論を深めてまいりますから、率直な御意見を伺って、きょうこの点を終わっておきたいと思います。  最後に、時間がたいへん過ぎて恐縮なんですが、雇用促進事業団の堀さんにお伺いしますが、堀さんはいわば有沢調査団の生みの親の労働省の一員であったわけですから、石炭問題の出発当時から関心を持たれておったと思います。特に一つ問題点としては、今度法律が変わって、いままでは炭鉱労働者は分散して援護するのだという思想がずっときたわけです。ところが今度の法律改正を契機にして、いまの炭鉱についても考えなければならない。そういう意味ではちょうど質的な転換期にあると私は思うわけです。そしてそのことが労働確保の面からいえばより強まっても弱まる情勢にはない。もちろん本人の希望でありますから、炭鉱に残らぬ人は他に転職をさせなければならぬわけですが、この認識をしたから法律改正があったのだと思うわけです。そうすると、そういう意味で法律改正の趣旨の方向で前向きに対処をするということがこれから検討されなければならぬのではないか、私はこう思うわけです。その一例として、たとえば住宅資金などは分散する場合に貸す。しかしながら炭鉱の場合には、これは該当しない。雇用奨励金の場合はこれは問題にならないのでありまして、それは別に炭鉱に云々にならぬということは明らかでありますけれども、こういう制度なんかの場合は前向きに検討されていいのではないか、私はこういう気持ちを持ちますし、特に今日の炭鉱の住宅実情を考える場合にその感を非常に深くするわけです。  これ以外にもいろいろあろうかと思いますけれども、そういう姿勢の問題について、取り組み方について見解を承りたい。いわばわが国の雇用政策の出発点は石炭で実現をして、これが全産業に拡大していって、そして今日の雇用促進事業団の業務になっている。そのことが労働力の流動性を今日ずいぶんそれに対応してでき得る状態になっておるのだ。こういう認識が特にあるものですから、その生みの親のほうもぴしっと据えてかからなければいかぬのではないかという気持ちがあるわけです。その点堀さんにお聞きいたしたいと思います。  それから産炭地振興事業団有馬さんにお伺いいたしたいのは、先ほど北海道の問題について述べられましたけれども、確かに述べられるとおりなんです。とおりですけれども、いわば中身があまりないということを私は申し上げても差しつかえないと思うわけです。それはやはり無煙燃料炭が企業化できない。活性炭が企業化できないから、なお北海道の場合には北海道の特殊性を考えて、せっかくそういう予算をつけてやったのだけれどもそれすらもだめだから、なおおくれている、こう私は認識せざるを得ないわけです。事業団の方針が大型の団地造成ということで、これからの方針が出ておりますけれども、しかし北海道の現状からいえば大型の団地をつくるということは、特に内陸地帯の場合非常にむずかしいと思うわけです。美唄にしてようやく今度さらに造成をしなければならぬという時期を迎えた。また夕張団地については、余裕がある。こういう状況にあるわけです。そういう面から考えますと、やはり私は北海道の場合には適切な施策として中型小型のそういう適切な団地をつくる。そしてそこに企業配置をするという考え方をやはり進めなければいかぬのではないか。あるいは釧路炭田のように臨海工業地帯の場合にはこれは相当大型な団地造成ができるわけですが、これもなかなか今年度予算では手がつかない、こういう状況にあるわけです。これがさらに来年度に繰り越していくということなりますと、北海道は御存じのように冬できませんから、九州とは違って工期は相当おくれることになるわけです。こういう面で北海道の場合には内陸には小型、中型、しかも迅速に着手する。九州で一年でできるところは二年かかるわけですから、工期の関係で。そういう態度でやはり現実に着手しなければいかぬのではないか、私はこういう見解を持つわけです。特に北海道のああいうところの深いところでは、いま融資制度、いろいろ制度があるわけですが、北海道のそういう内陸について特に先進的に来る企業については、特別なやはり融資なりいろいろな面でめんどうを見る。もちろんこれを全部に適用することは困難でしょうから、先進的にとにかくそこに来る企業に限ってもう少し一歩進めた制度を考える、措置を考えるということがなければ、私はこの問題は言うべくしてなかなか解決しないという理解を持っているわけです。それぞれひとつ御意見を承って私の質問を終わりたいと思いますから、ひとつよろしくお願いします。
  87. 堀秀夫

    ○堀参考人 ただいまの御意見の趣旨は、私も非常によく了解できるわけでございます。ただもちろん先生も御承知のように、雇用促進事業団の行なっております雇用促進融資制度は、いわば移転就職者を企業が採用しようとする場合においてそれを収容する施設がない。それでは労働力の移動が促進できないので融資を行なうというたてまえからできた制度でございまして、労務者の定着等につきましてはたとえば住宅金融公庫による産業労働者住宅融資制度あるいはその他の諸制度に基づいて両々相まって運営していく、こういう運用をしてきておるわけでございます。ただ最近は、お話のごとく炭鉱におきましてもやはり新しく労働力が必要になってくるという面も出てまいりました。こういう情勢に即応いたしまして、雇用促進融資につきましても、炭鉱が新しく労務者を採用する、そのために金が要るという場合には私どものほうでも融資を行なう、こういうことにだんだんとしていきたいと思い、現に一部実行しておるところでございます。ただその原則をひっくり返しまして、一般的に労務者の住宅のために炭鉱地帯においても全部雇用促進融資を行なうかどうかということは、これは制度本来のたてまえを逆転するようなことにもなりますので、私どもは先生の御趣旨よく了解できますので今後の問題として検討したいと思いますが、さしあたりはいまのような雇用促進融資制度の運用のワク内におきまして弾力的運用をはかっていく、こういうことで措置してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  88. 有馬駿二

    有馬参考人 ただいま岡田先生からのお話しの点まことにごもっともでございまして、私どもも北海道対策ということをどういうふうにしていったらいいのかということにいま日夜頭を悩ましております。これは単に形式のことでございますが、ことしからは北海道の支所を支部に昇格させまして、大いにこの方面に力を注ごうというふうに考えておるわけでございます。お話のように大型の団地をすぐにつくりましても、直ちに北海道へ大型の企業が来るというわけにもまいりません。したがって、その実情に応じました型の団地をつくっていくということは当然考えられることでございますが、一面で申しますと、実は現在買おうとしましても土地が非常に値上がりをいたしまして買いにくいというような事態にも逢着いたしております。何とかそういうようなネックを乗り越えまして、北海道におけるところの団地造成ということを実現してまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  それで企業誘致につきましては、御承知のように奈井江には釜屋電機が出ましたし、ぼつぼつと企業進出が見られるようになっております。先ほど渡辺先生からお話しございましたが、私どもでも各工業会の専務理事の方々をお願いいたしまして先般北海道調査に行ってもらいまして、農業機械その他につきまして少しずつ企業進出の糸口をつかもう、こういうふうに努力をいたしておるわけでございます。何と申しましても、全般から申しまして北海道に本州、九州と同じような条件が出るということはなかなか困難でございます。したがいまして通産省のほうにもお願いいたしまして、何とか積極的な条件、もっと有利な条件でもって企業誘致できるようにするというようなことでただいま検討はいたしておるわけでございます。先ほどお話しの先発的な企業に対しましては、すでに出ております企業に対しましてはかなり優遇した措置もとっております。したがいまして私どもの与えられました条件の中では、できるだけ優遇した措置をとりまして企業の誘致につとめたい、こういうふうに考えております。よろしくお願いいたします。
  89. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 どうもありがとうございました。
  90. 平岡忠次郎

    平岡委員長 これにて参考人各位に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。本日は御多用中のところ、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきましてありがとうございました。厚くお礼申し上げます。  次回は来たる十六日水曜日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後二時五十六分散会