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田口参考人 ただいま岡田
委員から
石炭問題について非常に大きな問題に関する御質問がございました。この問題につきまして特に私に名ざしをされたということに対して、私はまことに光栄の至りでございまして、こういう機会に私の所見を述べさしていただくことに対しまして、心から厚くお礼を申し上げます。
ただいま御質問の要旨は四点ございましたが、この四点の御質問に
関係する個々の問題について申し上げる前に、私は、いま日本の
石炭業界並びに一般国民の間で案外忘れられておる
石炭に関する二点があることを、この際指摘しておきたいと思うのであります。
その第一は、日本の
石炭産業は、最近目ざましい
努力を払いまして、これはいろいろスクラップ・アンド・ビルドのようなことを長年やってまいりましたし、炭価も据え置きというようなまことに過酷な
状態に置かれておりました
関係もあるかと思いまするが、日本の
石炭産業の一人一カ月当たりの能率というものは、アメリカを除いては最大の能率にのし上がってきておる。ドイツを抜き、ソ連をも抜いて、日本は第一位になっておる。ただアメリカにつきましては、露天掘りあるいは賦存
状況が全く違いまするので、アメリカを除いては日本が世界第一の能率にのし上がってきたということが
一つ。
第二点は、日本の
石炭は品質が悪いとかいろいろいわれておりまするが、これが一体どういうような炭であるかということについては案外御存じのない方が多いんじゃないかと思います。一言に申しますると、日本の
石炭は非常に流動性に富んでおる。この日本の
石炭が流動性に富んでおるということは、外国のいかなる炭を持ってきても、これとのコンビネーションがまことにスムーズにいく。言うなれば非常に多情だということがいえるわけであります。あんまり多情なものには安心ができないのでありますけれども、
石炭に関する限りにおいては、この日本の
石炭が非常に流動性に富んでおるということ、これは案外日本の人たちが、また
炭鉱の人たちでさえも気がつかない点だろうと思うのであります。
この二点を一応前提といたしましてこれから岡田
委員の御質問の第一点から申し上げてみたいと思うわけであります。
第一点は機械化の問題でございまするが、この機械化の問題につきましては、先生御
承知のとおり四年ほど前に
合理化事業団に、
石炭産業の特殊性にかんがみてまっ先に機械化を
推進しなければならぬというので、
炭鉱機械化
推進懇談会というものをつくったわけであります。この
懇談会の朝野の人々の非常な御勉強によりまして、その後、
機械貸与の問題、あるいは新鋭機械の導入、あるいは貸与の問題にいたしましても、ことしの四月から機械短期貸与制度というようなものまで実施されるようなことになりました。ただいま機械センターもできた。こういうような昨年の月から機械センターの仕事を始めるに至ったわけでございます。
そこで、この機械センターを中心として、この能率の問題にも言及してみたいと思うのであります。この機械センターの仕事は、御
承知のように
合理化事業団が
近代化資金並びに
機械貸与で新鋭機械を各国から導入する、そういう新鋭機械を今後どういうふうに使いこなしていくかというために、機械センターにおいて
炭鉱の
従業員を集めまして、そしてそれに短期教育を施す。これは新鋭機械の分解掃除あるいは運転はもとよりのこと、それのスケッチそれから管理というような多
方面にわたっての機械全体についてのマスターをさせるということが
一つであります。と同時に、大学の先生あたりにも来てもらいまして、機械工学の一般から教育を施していくというような短期技能養成生徒でございまするけれども、昨年の七月一日から始めまして、
北海道、常磐、
九州におきまして四百二十名の講習生を送り出したというのが昨
年度の実績でございます。ことしはさらにこれを十分に活用いたしまして、人数におきましても一千人
程度の短期技能養成者を養成していこう。あくまでもこれは
炭鉱で使う特別な新鋭機械でございまするので、こういう点につきましてはやはり前もってその機械の性能を十分知悉させなければならぬという考え方から、これを実行しておるのでありまするが、この成績が非常によろしいということでございます。
そこでただいま御指摘ございましたように、この機械センターというようなものが今度の新
対策に対処して、はたしてこれでよろしいかどうかという問題でございまするが、私どもは決して機械センターの現在の仕事の
状況では満足していないわけであります。今後
合理化事業団において考えておりまする点をごく簡単に申し上げますると、
炭鉱機械センターにおいては以下申し上げまする七つの点を今後さらに
推進してまいりたいということでございます。
その第一は、
炭鉱機械化の重要性にかんがみまして、この
近代化資金制度並びに
機械貸与制度の効果をもっと拡充するために、また
炭鉱のますます
人員不足に対処いたしまして、教育制度のただいま申しました点を特に重視いたしまして、まず第一は教育対象者の
拡大ということを
推進しようというのでございます。この点は、いままで
炭鉱機械を買っておった
炭鉱の
従業員を主体としたのでありまするが、そういう機械を買わない
炭鉱あるいは借りない
炭鉱でも、希望者全部に対して受講できるようにするということが教育対象者の
拡大であります。第二が教育機種の
拡大であります。いままでは近代化機械、新鋭機械に限られておりましたが、これをもっと一般に使われるような汎用機械についてもこの教育をしていくということが第二点。この第二点は、いわゆる多能化と申しますか、これからは、あまりに
炭鉱の労務者の不足が著しいために、仕事を細分化されないで、もっと業種を広くする、これが多能化でございます。こういう多能化教育に貢献したいということがこの第二点であるわけであります。
第三点は、このごろはやりのようになってきておりますけれども、電子計算機の教育をこの機械センターにおいてもう少し進めてまいりたい。これは
炭鉱の坑内の機械化あるいは坑外の機械化ばかりでなく、
事務能率の画期的な飛躍的な
合理化、上昇を考えまして、こういう電子計算機の教育のほうを、この機械センターにおいても十分実施するという余力があるんじゃないかという考えを持っておるわけでありまして、これをできるだけ
推進したい。
第四点は、さらにこの機械管理技術教育の実施でございますが、特に管理技術の教育をもう少し徹底していきたい。これはいわゆるIEとかあるいはORとかいうような運動がございますが、そういうような点を十分取り入れまして、いわゆる管理技術の養成ということに力を入れてまいりたい。
第五点が、若手技能者の教育でございますが、こういう点につきましては、もっと今後、御当局のほうとも連絡をとってまいらなければならぬと思いますけれども、ぜひその
炭鉱の子弟を短期間に技能者に育て上げるというようなことに持っていく。これで、さっき申しましたように、
機械貸与の面におきましても、ただ機械を
炭鉱に貸すばかりでなく、トレーナーとして、ここで養成した者をその機械につけて
炭鉱に貸してやる。いわゆるドライバーあるいは管理者づきの
機械貸与ということにいたしたいわけでございます。
六番が、保安教育との連携でございますが、これは保安センターがございまするので、保安センターのほうの保安教育とも十分密接な
関係を持って、お互いに知識の交換あるいは設備の共同利用、あるいは講師の共同援助というようなことも考えているわけでございます。
それから、
最後の七番目でございますが、どうしてもこの
炭鉱の機械化が進めば進むほど、機械の修理、損耗ということが激しくなることは当然でございまするので、やはり修理工場の完備と申しますか、それから部品の倉庫というものを十分つくりまして、そうしてこの
炭鉱機械センターをつくりまして、これの機能を飛躍的にこれから伸ばしていかないと、
炭鉱がますます労務者不足に対処して十分でないという、先生御指摘の、今度の新
対策に処しての機械センターに対する所感いかんということについて一応お答え申し上げたわけでございます。
ただ、先ほど申しましたように、過去のように、私どもは
炭鉱の機械化
推進にできる限りの、こん身の
努力を傾けてまいりましたが、先ほど申しましたように、能率が諸外国の能率と比較してどうであるかということをちょっとここで触れてみたいと思います。
日本と、西ドイツと、フランスと、イギリスと、ベルギー、オランダ、ソ連、アメリカ、これについて四十二
年度のデータで申し上げますと、これは一九六七年、四十二
年度でございますが、日本が四二・七、これは一人一月当たりの能率でございます。西ドイツが三九・八、フランスが二九・六、イギリスが、これは四十一年の
数字でございまして、四十二年がございませんが、四十一年は三四・二になっております。それからベルギーでありますが、これは二四・八。オランダが二五・一、ソ連が四一・三、アメリカが二六六、こういうことになっております。アメリカは推定値でございます。
特に日本に戻って日本の二、三の
炭鉱について申し上げてみますると、三池と、高島と、池島の三
炭鉱は、機械化の
推進によりまして、四十八
年度は百トンをこす見込みとなっておる、こういうことであります。これを四十三年の実績で申しますると、三池は七一・七、日炭の高松は九二・五、池島が八六・七。これが、計画では、四十八
年度が、一〇二・四が三池であります。百トンをこしております。高松が一三七・八、池島が一〇一・五、こういうような——まあこの間の
年度にも能率のあれはありまするけれども、ごく概略にこれを申し上げてみますると、こういう
状況である。いまや日本の
炭鉱の能率は世界各国の驚異の的となった。
いまライオンズクラブで来ておる人らしいのです、インドのタタ製鉄のジャマドバ
炭鉱というのがございますそうでございますが、ここのシャルマという技師長が、三池と、三作と、太平洋と、南大夕張を見たいというような、最近の話もある様子でございました。
特に、日本の
炭鉱は、最近離山ムードあるいは何かが横溢いたしまして、特に
企業ぐるみの閉山というようなことが打ち出されたために、
炭鉱の将来というものに全く希望を失っておるというときに——まあ一部には
炭鉱の人たちはもう逃げじたくだ、足元の明るいうちにもうやめたほうがいいんじゃないかというような声も聞かないわけではございませんが、ただいまの能率の示すとおり、現場においては、あらゆる苦悩と戦いながら、また低炭価にあえぎながら、そしていままでは非常な赤字をかかえて、そしてこういう能率を涙ぐましくも上げてきたという点は、私は、やはりこれは、
一つの、日本の
炭鉱人に対する、一般の人々の認識を改めていただかなければならぬ問題じゃないかと思っておる。
この問題が、いずれは、あとで申し上げまする海外原料炭の問題にもつながることだろうと思うのでありまするので、まず、第一点の御質問に対しましてはこの
程度にいたしまして、第二点の問題に移りたいと思います。
第二点は、
石炭の利用についてということのようでございまして、特に重点的にしぼる必要がありはせぬかという点でございます。私も全く先生の御
意見には同感でございまして、この日本の
石炭産業、これは、世界的に
石炭産業は斜陽化しておるというのでございまするから、一面やむを得ない点もあるかと思いますけれども、アメリカのごときは異常な勢いで増産に拍車をかけておる。決して
石炭は斜陽産業でない。またポーランドあたりにおきましても、非常な勇気をもって
炭鉱マンが働いておるということでございますが、特に最近ドイツのエッセンにあるBF、これはドイツの石
炭鉱業中央研究所でありますが、ここは各
方面からの援助あるいは基金、これによって非常な
石炭の多
方面の研究をしておるようであります。非常にこれが実績をあげておる。ありとあらゆる
石炭の利用
方面について非常な学者がクモのごとく集まって、それぞれ懸命の研究を進めておるということでございますが、日本はなかなかそういうようなわけに急にはまいらぬと思いまするが、しかし何と申しましても、
石炭を
一つの今後絶対に必要欠くべからざる資源であるということを再認識してもらうためにも、ここにやはり
石炭の利用ということについては重点的にしぼる必要がある。それは何と申しましても、第一は一般炭の加熱成型乾留によります製鉄用コークス炭にこれを使うということが大事だろうと思うのであります。これにつきましては、先ほど技研のほうからお話がありましたように、この点は室蘭の設備のほうとタイアップして二トン・パーアワーの中間試験をやるということは私はけっこうだろうと思うのであります。また工業技術院におかれまして、あと二、三年ぐらいしますと、五トン・パーアワーくらいの大型——まあ中型と申しますか、中型プロジェクトに移行したい、これに要する金が十億だというようなことも言っておるようでありますが、私はいまの資源技術試験所の技術と、いまの技研の室蘭とタイアップしてのこれからの技術を十分ひとつ
推進していただく、これに必要な
予算を十分組んでもらうということが絶体に必要であり、また日本の一般炭が——この場合はいままでの一般炭が一五%から二〇%を使うということの研究であったのが、一躍一般炭を七〇%くらいを使うということになって、あとの三割はいわゆる流動性の高い弱粘結炭を配して、それでりっぱなコークスができる。これはもうドイツでも五トン・パーアワーで何千トンかの製品を試験して、少しも製錬に差しつかえがあるどころじゃなく、むしろ通気
関係で好転したというようなデータも最近はあるようです。そういうようなことから、この日本炭の流動性を利用して一般炭のコークス化ということにぜひこれを早めるというためには、ドイツのBF方式のノーハウを場合によっては購入してもいいんじゃないか。それと日本の技研がいまやっているのと両方相まって、これが一日でも早く実用化するということをぜひこの際
推進する必要があるんじゃないかというふうに考える次第でございます。
第二は活性炭の問題でございますが、この活性炭の問題にいたしましても、これは
方法としてはそうむずかしい
方法じゃなく、資源技術試験所におきまして非常に好結果を得ておるように聞いておりますが、亜硫酸ガスの吸着率が九〇%以上であるというような非常な高成績のデータもあがっているようであります。そういうふうなことから、いま五井の発電所におきまして排煙脱硫でございますが、ここでこの活性炭の試験をやっているようでございます。この成績につきましては、また専門的な
方面からデータその他が得られると思いますが、この
石炭の用途というものをただいたずらに燃料として済ませないで、これからは
石炭は貴重な原料であるということで、いま世界をあげての製鉄用粘結炭の不足をこういう一般炭によってカバーする、しかも流動性の高い日本炭が非常な貢献の役をこれによってするということは、私は日本炭の特性を生かす最もいい機会ではないかと思うのであります。と同時に、また一般炭につきましても、これを活性化いたしまして、いま日本の産業も今後どうなるか、日本人の生活もどうなるかといわれておりまする公害問題、大気汚染の問題あるいは汚濁水の問題、そのほかいろいろありまするが、何とかして、いま何十万というような高価な活性炭ではなしに、やはりもっと安い
石炭を大量に活性化して活性炭にして、そしていまの公害
防止、産業公害
防止にこれを役立てるというには絶好のチャンス、これを一日でも早く実現するということに対して、やはりドイツあたりの中央試験所でやっておるように、もっと
政府機関におかれましても、あるいはまた
国会の諸
先生方におかれましても、ぜひこういう
方面の
予算の拡充と申しますか
予算を十分につけていただくということに特段の御協力を願うことが、結局において日本の
石炭を救う道である、また日本の産業を救う道であり、日本の国益に連なる道であると私は断定しても差しつかえないと思うのです。そういうようなことで、第二点の
石炭の利用につきましては以上二点にとにかくしぼって、重点的にこの際やることが必要ではないか、そしてそういう二つの試験も、大型プロジェクトに一年でも早く繰り上げることが絶対に必要であり、外国のノーハウを取得してでもこれを促進するということが絶対に必要であると考えております。
第三点は、海外原料炭の開発の問題でございます。この海外原料炭の開発の問題につきましては、ここにおられます井出先生もたいへん御熱心であることを私も前から存じ上げておりまするが、やはりちょうどいまから二年ばかり前でございますが、
昭和四十二年の、いまでも日を覚えておりますけれども、七月十三日、時の石
炭鉱業審議会の経理審査会の
委員として私は列席しておりまして、植村会長以下有澤先生その他圓城寺さんとか皆さんのおるところで、
石炭の海外原料炭開発
株式会社案なるものをそこで説明したわけでありますが、当時はまだそういうような
状態でなかったのか、これにはあまり共感を呼ばないで済んだということでございました。しかしその後におきましては、最近の
新聞紙上あるいはテレビその他においてもいわれておりますように、やはり日本の製鉄業として、これから世界の第一位第二位を争うような今後の大製鉄生産国として最も隘路は製鉄用原料炭であるというときに、私はまず
石炭人が考えなければならぬ問題は何かということは、まず国内炭一千万トンの再認識をしなければいかぬということ。製鉄用原料炭に向けられておりまする——いま一千万トンの製鉄用炭が国内から出ておりまするが、いま製鉄に使っておりまする国内炭の割合は外国炭が九割で日本炭が一割くらいにしかすぎないのであります。今後一億何千万トンの粘結炭を必要とするという、将来四十八
年度にそういう必要のあるときにあたって、日本の
石炭産業もただ便々としておるわけには相ならぬと思うのであります。いまの一千万トンの製鉄用原料炭をやはりこの際再認識してみる。それはいま申し上げましたように九対一の割合でありまするから、あまり国内炭にアッシュ分が六%だとか、硫黄分がどうのこうの、燐分がどうのというような手かせ足かせをしなくとも、外国炭と合わせることによって、日本の
石炭は非常に流動性が高いのでありますから、そういう点を生かして使うということに配慮しなければならぬと同時に、われわれ
合理化事業団におきましても、ビルド
炭鉱に対しては十分
近代化資金の
貸し付けあるいは
機械貸与の援助あるいは技術の指導の面において低硫黄の
石炭を大いに増産すると同時に、やはり原料炭に向くような
石炭、ビルド
炭鉱の今後の増産に向かってわれわれも大いに
努力をいたさなければならぬと思うのであります。
その海外原料炭の開発についての問題に返りますが、二年前に私が海外原料炭開発
株式会社案なるものを説明いたしました内容は、いまも
資料がございまするけれども、その制度は先ほど岡田先生御指摘のように、何らか強靱な
体制のもとにやっていくことが必要ではないかというようなお話でございまするが、私もまた同感でございます。二年前の私の申し上げたときの案におきましても、いわゆるコンソーシアム、これは共同体と申しますか、共同で
一つの共同体をつくってそこで海外原料炭の開発のいろいろな事務をやるという
関係でございまして、このいわゆるジョイントベンチャーというような
一つのこういう共同
体制、このコンソーシアムの利点は、まず
融資力の
増大とか危険の分散とか技術の拡充強化、あるいは経験の応用、
増大、あるいは見積もりのチェックだとか工場施工の確実性、投資と
工事入手の機会の供与というようなお題目はいろいろ並べてみましたものの、その後二年間の私の海外原料炭の開発にいま向かっておる二、三の
会社の動向を見てみますと、それはまことに血みどろな
努力を払っておるわけであります。オーストラリアの炭田について見ましてもあるいはカナダのバルマあるいはその他の地区についても、やはりこの問題については非常な熱意を持って
会社の浮沈をかけてやっておるということの実態を見るときに、こういういわゆるコンソーシアムというものも必要ではあるが、まず第一に
資金の獲得、いわゆる国家のバックアップとそれから出
資金あるいは
融資金の手当てをまずしてやるということが急務ではないのだろうか。そうしないと、これはいま世界をあげてのこういう原料炭のソースをさがし歩いておる世界の人たちに伍して日本がおくれをとる。これは将来の日本の産業にとって非常にマイナスになる、悔いを千載に残すということを考えるときに、一日も早くいま手をつけ始めておるような
会社の外国との提携に対して十分これを検討し、そしてこれに対しての
融資をとにかく考えてみる。そのときに
融資の
方法としてはいろいろあると思うのです。
合理化事業団としては、いままで保証というものをやっておりましたが、
融資保証制度——
融資保証制度は経営
改善資金の
融資保証制度、整理
資金の
融資保証、その他いろいろな
融資保証の制度を
事業団は実際に国内の
炭鉱に対してやってまいりました経験から徴しまして、これはむしろ国内の
融資保証よりも、外国のしっかりしたいわゆる合弁
会社なり共同経営なりの
炭鉱に対する
融資保証のほうがもっと確実であるというふうに私は考えるわけです。こういうような
融資保証とあるいは財投の金の出資ということをあわせ用いて、海外原料炭の開発に一日でも早く日本の民族資本で、さっき申しました世界に冠たる日本の
炭鉱技術をアプライするということによって、非常に安く、しかも日本に将来原料炭の——これは原料炭と私特に申し上げておりまするのは、粘結炭のみに限らなくてもよろしいのでありますが、要するに原料に向く
石炭を
確保しておくということが将来の日本の産業にとって最も大切なことじゃないか。これはやはり
石炭サイドでやらないと、他の産業はそれぞれの専門がありまするのでなかなか容易なことではないと思う。ただ決して他の産業を排除するものじゃないのです。他の産業とも十分仲よく話し合って、ひとつそういう
方面を今後切り開いていくということが絶対必要であろうと思うのです。
海外原料炭につきましてはその
程度にいたしまするが、いま申しました第一から第二、第三の問題にわたって、これはいみじくも岡田先生が御質問になられましたが、日本の
石炭産業がいまや
企業ぐるみの崩壊の危機に瀕しておる
会社もあり、またそういう日本の
炭鉱が、一部にはもう無用の長物である、よけいな税金をたくさん使ってどうにもしようがない、経営者もまたどうもなっておらぬというようないろいろな声も聞きますけれども、やはり何と申しましても明治の前から百年の日本の
石炭産業というものの歩みということをいま静かに振り返ってみるときに、日本の
石炭産業が日本のいままでの勃興して飛躍してまいりました産業に寄与した功績は、けだしはかり知れないのでありまするが、先ほど申しましたように日本の
石炭というものの特性と、いかなる逆境に対してもくじけないという勇猛心いわゆる
炭鉱のマイニングスピリットを発揮して、そうしていまやドイツも抜きソ連も抜いて、坑内掘りにおいては世界の第一位の能率をあげるようにまでなったということに対しての再認識と、それからこれからの
石炭産業の歩みに対して御
理解を賜わりたいと思うのであります。
今度の新
対策によってこれで日本の
石炭産業は今後やっていけるのかという問題に逢着すると思いまするが、その問題についてはあとから第四の問題が控えておりまするけれども、ここで一言申し上げておきたいのは、やはり
法律はでき、政省令はきまり、
業務方法書が決定いたし、これはあくまでも骨格であります。これからの
業務はあくまでもこの趣旨に沿って、運営の面においていかにして足らざるを補ない、長所をもっと伸ばしていくかということが要諦であると思うのでありますが、やはりこれからできるだけひとつこの
法律の趣旨にのっとって、そしていろいろな面において足らざるところを補ない、長所を伸ばす。それについては今度の
企業ぐるみ閉山
交付金というものはやはり確かに私は救いの神であったと思うのです。でありますから、先ほど来、井出先生からもいろいろ
鉱害問題について御質問がございましたが、こういう
一つの新しい仕事に対しては十分ひとつ各自が自重自戒し、そして能率向上に向かってこん身の力をいたすということが絶対に必要であり、ただ人ばかりをふやすのが能ではないと思うのであります。要は制度の問題よりも人間の問題である。やはり一人五役、三役をやる人もあります。またいたずらにその日その日を酔生夢死に過ごしている人もあります。したがいまして、人をただ集めたからよいというわけのものじゃないのでありまして、こういうときこそ
合理化を徹底させることが絶対に必要であると思うのであります。これはひとり
炭鉱ばかりじゃない。そこで第四の最終の案ではないということを大臣も申されておりまするし、それはまたいまの流動的なこういう経済界において、一ぺんきめたことがそういつまでもそれでもってやっていけるとは私も思っておりません。しかし、やはりきめた以上は少なくとも二、三年でもあるいは四、五年でもそれにのっとってできるだけのペストを尽くすということが絶対に必要であると思います。
結局
関係機関というものがどうなのかということのお話がございましたが、私はこれは毛利元就の昔のお話にありましたように、三本の矢も一本一本は弱いが、一束にすれば強いということわざを思い出す
程度にいたしまして、あまり深くは申し上げたくはないのでありまするが、要は私はそういう問題も確かにあると思うのでございまするけれども、ただいま申しましたように、人間がほんとうに
石炭を愛し、そして日本のこれだけの伝統ある唯一の国産資源をいかにして伸ばしていくか、これがあってこそ海外原料炭に進出する基地ともなるわけで、これが全然ないイタリアのような国であったならば、
石炭産業も海外に進出する余地はない。これだけの
石炭があるから、四千万トン、五千万トンの
石炭の出炭があるからこそ、世界に日本の
石炭産業が誇示し、自信を持って世界を濶歩することができるわけです。また幸いなるかな、日本はソ連の機械でもあるいはアメリカの機械でもポーランドの機械でもどんどん買って、いいものは入れる。そして日本の
炭鉱に合うようにこれを
改善し、そういうふうにしていくことによって日本の機械化
推進はますます世界に冠たるものになるという確信を得た次第でございます。
時間もあまりないようでございますので、また御質問がございますれば申し上げることにいたしまして、不十分ながら岡田先生の四つの御質問に一応お答え申し上げましたわけでございます。