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1969-04-10 第61回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年四月十日(木曜日)     午後五時二十分開議  出席委員    委員長 平岡忠次郎君    理事 神田  博君 理事 藏内 修治君    理事 菅波  茂君 理事 三原 朝雄君    理事 田畑 金光君       金子 岩三君    進藤 一馬君       西岡 武夫君    廣瀬 正雄君       三池  信君    石野 久男君       中村 重光君    細谷 治嘉君       大橋 敏雄君  出席国務大臣         通商産業大臣  大平 正芳君  出席政府委員         通商産業政務次         官       藤尾 正行君         通商産業省鉱山         石炭局長    中川理一郎君         通商産業省鉱山         石炭局石炭部長 長橋  尚君         通商産業省鉱山         保安局長    橋本 徳男君     ――――――――――――― 四月十日  委員石野久男君辞任につき、その補欠として細  谷治嘉君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 四月七日  産炭地町村の振興に関する陳情書  (第三一〇号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  石炭対策に関する件(雄別炭鉱株式会社茂尻鉱  業所爆発事故に関する問題)  派遣委員からの報告聴取      ――――◇―――――
  2. 平岡忠次郎

    平岡委員長 これより会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を進めます。  雄別炭鉱株式会社茂尻鉱業所爆発事故実情調査を行ないました派遣委員から、報告を聴取いたします。藏内修治君。
  3. 藏内修治

    藏内委員 去る四月二日、雄別炭鉱株式会社茂尻鉱発生いたしました爆発事故について、現地調査の結果を御報告申し上げます。  派遣委員は、平岡忠次郎委員長石野久男君、用畑金光君、大橋敏雄君及び私、藏内修治の五名でありますが、このほか、現地において岡田利春君、渡辺惣蔵君が参加されました。  私ども一行は、四月三日夜、羽田空港を出発して現地に向かい、千歳を経て札幌の宿舎に到着、直ちに先行いたしておりました橋本鉱山保安局長より説明を聴取し、同夜は札幌に一泊、翌四日早朝、札幌を出発して災害地茂尻炭鉱に向かいました。  途中、赤平市役所におきまして、約二時間余にわたり北海道労働基準局札幌鉱山保安監督局より災害状況等につきましてそれぞれ説明を聴取し、また、赤平市長より陳情を受けた後、茂尻鉱業所到着会社側労働組合及び職員組合より説明並びに要望を聴取いたしました。さらに地元有志より茂尻炭鉱存続についての要望を受けた後、災害地を出発、同夜半、羽田空港に帰着いたしました。  雄別炭鉱茂尻鉱業所は、大正七年大倉鉱業株式会社として事業を開始し、昭和六年茂尻炭鉱株式会社と改称、同十年雄別炭鉱株式会社事業が継承されました。なお、資本的には三菱系であります。  現在、茂尻鉱は、桂本坑柏露頭坑、桂第三露頭坑の三坑からなっております。このうち、桂本坑は、美唄、若鍋、夕張、登川來炭層群を稼行しており、大別して一の沢区域、鴨の沢区域柏区域の三稼行区域に分かれておりますが、今回災害発生を見たのは柏区域であります。  茂尻鉱は、ガス湧出量が多いため甲種炭坑に指定されており、昭和十年、二十五年、三十年と過去三回にわたりガス爆発を起こしております。  生産状況は、良質の原料炭一般炭を約半々の比率で出炭しており、昭和四十二年には四十五万八千五百トン、四十三年には五十一万二千九百トン、本年三月には四万八千八百トンの生産を見ております。  なお、出炭能率は、四十二年が三十八・七トン、四十三年が四十一・七トンとなっております。  労働者数は、二月末現在で千五百七十人、うち二百二十八人が請負組夫であります。なお、保安技術職員は、直轄、請負合わせて二百三十一人が置かれていました。  茂尻鉱は、去る昭和四十二年、年産百万トンを目標に立て坑の完成を見たのでありますが、炭層が急傾斜のため採炭面機械化がむずかしく、やむを得ずハッパによる独特の採炭方式がとられているなどの事情で、生産は所期の目標を下回っております。  次に災害状況について申し上げます。  災害当日、一番方として桂木坑全域に五百十六人が配番されておりましたが、このうち、災害発生区域である柏区域には、請負組夫六人を含め、百三十二人が入坑していました。  災害発生は、四月二日十三時二十分ころ七片運搬坑道作業中の運搬係員が圧風を感じ、急いで連絡がとられたのが災害発見の端緒となっておりますが、その約十分後には全坑内就業者退避命令が発せられ、同時に三班からなる救護隊が編成されて、十四時四十分より逐次救護活動に移り、その救出作業の結果、十八名のとうとい人命が失われたことが判明したほか、二十有余人重軽傷者が病院に収容されたのであります。なお、五日に至り重傷者一人が死亡いたしましたので、今次災害による犠牲者は十九人となりました。  災害発生原因としては、いまだ断定できがたい状況でありますが、倒ワク崩落等状態から爆源地は七片十一番層払山型切替昇付近と推定され、その火源につきましては、現在までの調査ではおおむねハッパによるものと推定されております。  なお、罹災者に対する労災補償については、遺族補償として最高九十一万六千円、最低四十万二千円、総額にして一時金で千二百万円、年金にして四百三十六万円が、ほかに葬祭料が百五十三万円支払われることになっており、これを平均すると、一人当たり約七十五万三千円となります。なお、会社からとりあえず各遺族に対し葬祭料十万円が贈られました。  次に、現地におきまして関係者より、それぞれ要望等がありましたが、以下その概要を申し上げます。  まず会社側より、去る昭和三十年の災害後、保安対策を強化し、労使によるガス爆発防止委員会の設置、保安駐在員常駐化ガス抜きの強化、保安教育徹底等につとめてきたが、この災害を契機にさらに保安対策費等助成を受けながら、長期計画作成実施により災害絶滅を期したいこと。  遺家族対策として、未亡人等関連部門への受け入れを考えていること。弔慰金は、労組との協定では百三十万円であるが、労組と協議して増額方向で解決したいこと。企業経理は困難の状況であるが、事故を克服して合理化を推進し、労使一丸となって新たな再建の方途を見出したい等の発言があり、さらに次のごとき要望がありました。  一、今次災害復旧に約二億円の財源を必要とするので、特段配慮を願いたい。  一、安定補給金の交付にあたっては、特例として増額要望する。  次に、茂尻炭鉱労働組合からは、再建には前向きで対処したい旨の発言の後、次のごとき要望がありました。  一、災害原因徹底的究明により責任の所在を明らかにすること。  一、CO中毒患者医療と援護の万全及び炭鉱関係医師の充足をはかってもらいたい。  一、災害復旧資金及び特別弔慰金支払い資金確保に対する特別の助成をお願いする。  一、特に災害に伴う山元の不安を解消するため、茂尻を含む新石炭政策に基づく雄別の将来展望を明らかにし、その再建の位置づけをしてもらいたい等であります。  次に、茂尻炭鉱職員組合からは、この災害に伴う危機を克服して再建協力したい旨の発言があった後、次のごとき要望がありました。  一、再建の根拠をすみやかに具体的に示し、労働力の流出を防止すべきである。  一、石炭鉱業審議会合理化体制部会早期発足により鉱区統合を推進してもらいたい。  一、新鉱区開発資金確保について特段配慮を願いたい等であります。  次に、茂尻鉱が所在する赤平市の陳情について申し上げます。  山元は、茂尻鉱の分離問題から深刻な不安と危機ムードに包まれ動揺の状況にありますが、山元の市、町として  一、茂尻鉱存続は、労働者のみでなく、地域住民はもちろんのこと、全市民の渇望するところで、その存続については特段配慮をお願いする。  一、合理化体制部会により、鉱区調整を推進し、茂尻鉱存続、恒久安定に特段の御尽力を願いたい。  一、遺族補償について、特段配慮を願いたい。  一、今次災害復旧資金の融資について特段配慮を願いたい。  一、自治体の財政に対する援助についても特段配慮を願いたい等であります。  最後に、新石炭政策国会において審議されている際に、今次災害発生を見たことは、さなきだに不安の渦中にある石炭鉱業全般に与える影響はすこぶる大であり、適切にしてすみやかなる終息を見るにあらざれば、新石炭政策実施に支障を生ずるおそれがあることを心から憂えるものであります。  石炭鉱業労使並びに監督官庁は、この際、保安確保重要性を再認識し、災害絶滅を期すべきであります。われわれといたしましても、原因のすみやかな究明を期待するとともに、今後、委員会審議を通じて保安確保に関して十分に検討すべきであると存ずる次第であります。  以上、御報告を終わります。
  4. 平岡忠次郎

    平岡委員長 これにて派遣委員報告は終わりました。     —————————————
  5. 平岡忠次郎

    平岡委員長 大平通商産業大臣から発言を求めておられますので、これを許します。大平君。
  6. 大平正芳

    大平国務大臣 去る二日、北海道茂尻炭鉱におきましてガス爆発事故を起こし、多くの死傷者を出しましたのでございます。そして、国会をはじめ国民の方々に多大の御心配をかけまして、責任の衝にある者といたしまして、まことに申しわけなく存じております。  茂尻炭鉱災害でなくなられた方々の御冥福を、この際つつしんでお祈り申し上げる次第であります。  通産省は、本災害の知らせに接しまして、直ちに鉱山保安局長以下担当官現地に派遣して、罹災者救出原因究明に当たりました。  三日には、藤尾政務次官を団長とする調査団現地に派遣いたしまして、会社組合等からの事情聴取を行ないますとともに、災害対策連絡会議を設け、遺家族対策及び医療対策を含めた善後措置について万全の措置を行なったのでございます。  このような重大災害発生にかんがみまして、去る七日、私は石炭業界の首脳を集めまして、炭鉱保安確保について厳重に警告し、重大災害の撲滅について業界の姿勢の確立を求めたのでございます。  また八日には、日本の全炭鉱に対しまして、労使協力して坑内保安総点検を実施するよう指示いたしました。  私としては、このような事態を繰り返さぬよう、鉱山保安確保に今後とも尽力してまいる所存でございます。  なお、七日には空知炭鉱において出水災害発生いたしましたが、労使一体となりました適切な救助活動の結果、幸いに八日午前零時十五分、全員無事救出されたとの報告を受け、安堵いたしておる次第でございます。  なお、茂尻炭鉱再建策につきましては、いろいろな角度から目下検討中でございますが、その前提といたしまして、何をおきましてもこういう事故を起こしました会社側保安責任体制確立が一番大事だと存じまして、通産省中央鉱山保安協議会の御答申の線に沿いまして、鉱山保安法によるきびしい態度でその措置に臨む方針をきめまして、その旨会社側に通告いたしましたところ、会社側もその責任重大性を痛感して、昨日社長名をもって当鉱山保安統括看たる所長を解任する旨連絡を受けました。通産省といたしましては、会社社会的責任の自覚の上に立ってこのような措置をとったのでございますので、これを了承することにいたしたいと存じております。     —————————————
  7. 平岡忠次郎

    平岡委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。石野久男君。
  8. 石野久男

    石野委員 私は、質問をする前に、この茂尻炭鉱災害調査団で参りまして、その被害実情あるいは罹災者、すでにとうとい生命をなくされた方々実情を見てまいりましたが、心からなくなられた十九柱の御冥福を祈るとともに、遺族の方や、なお現在病床で悩んでおられる方々に、一日も早く回復されるようにお祈りしたいと思います。  調査に当たったときに、いろいろ先ほど同僚議員から御報告がありましたような実情を私たちは見てまいったわけですが、そのときに、ハッパ災害であることは大体わかっておりましたけれども、なぜ、どこで、どういう形で引火したかということについては、わからないままに帰りました。その後、調査の結果としてはどんな火源があったか、おわかりでしたら、先にひとつ聞かせていただきたいと思います。
  9. 橋本徳男

    橋本政府委員 火源等につきましては、おそらくは、推定ではございますけれどもハッパをかける瞬間におきまして、ガス測定が十分ではなかったのであろうというふうに推定しておるのであります。ここの場合におきまするハッパは、三回かけまして、三回目にどうも爆発した形跡がございます。したがいまして、おそらくは、第一回、第二回はもちろんガス測定もやったのであろうと思うのであります。その第三回目において、場合によればガス測定が行なわれていなかった、そのために、ハッパをかけた瞬間におきまして、ガスの存在がこういう事故を誘発したというふうに、現段階においては推定しております。いずれにいたしましてもこのハッパをかけたハッパ係員が現在入院しておりまして、まだ医者の許可が出ませんので、事情聴取ができません。したがいましてその辺は、もうしばらく時間をかしていただきたいと思うのでございます。
  10. 石野久男

    石野委員 これはやはり将来のこともありますし、ことにこの鉱はガスの非常に多いところでありますから、ガス探知等が十分行き渡っていなかったということについては、厳重にこれは皆さんのほうで監督指導しなくちゃいけないと思うし、それからなお何が火源であったかということも、これはやはり厳重に調査、研究しなければ、将来また同じような災害が起きる危険が出るので、これはそういうことをとにかく取り急ぎ的確な調査が行なわれるように希望したいと思います。  大臣から、いまいろいろなこの問題についての話があって、特に会社はその社会的責任の重大さを感じて保安係所長さんを解任した、それを了とした、こういうお話でありましたが、私はやはり将来の炭鉱における保安の問題を考えますと、ただ単なるそれだけではまずいような気がするんです。やはりこれは監督官庁として会社社会的責任というものをきびしく追及しなくちゃいけないし、そしてまた同時に、今後の当局側処置というものをこういう問題について明確にしませんと、審議会が出しております生産保安とはフィフティー・フィフティーでやらなくちゃいけないんだという、この精神がなかなか企業の側に徹底しないと思うんです。そういう点でいま大臣考えておられる点がありましたら、ひとつ聞かせていただきたい。
  11. 大平正芳

    大平国務大臣 本会議におきましてもお答え申し上げましたとおり、鉱山保安法に基づく処分というものは、いささかの温情味に制約を受けることなく、厳重に処分いたしたいと思います。ただ、目下この会社再建がなるかならぬか、非常に微妙な段階にございます。したがいまして、最高責任者社長でございますが、当面の大災害を結果いたしました責任者を処分するという形においてこの際処置いたしますことが、一番適当だと考えまして、そういたしたのでございますが、この場合ばかりでなく、今後の私どもの気持といたしましても、法規の命ずるところ、厳正に処断してまいる決意でおります。
  12. 石野久男

    石野委員 私は、まあ起きてしまったことについてあれこれ言いませんけれども、こういうことが二度、三度あちらこちらで起きちゃいけないと思うので、そういう意味保安行政上その監督管理というものは非常にきびしく行なわるべきであるということを、特にこの際お互いに銘記しなくちゃいけないと思います。そういう意味では、たとえば保安行政機構の問題について、労働大臣参議院で、この問題については労働省所管業務としてやりたいというような発言もしておられました。こういう点については、通産省関係ではどういうふうにお考えになっておりますか。
  13. 橋本徳男

    橋本政府委員 こういった石炭産業、これは生産をすることが即保安の問題でございます。たとえて言いますれば、一定の地域採炭をいたします場合に、これを後退式でやるかあるいは前進式でやるか、これはすべて生産につながるが、同時にそれ自体保安の問題でございます。それからまたハッパ自体におきましても、これは即生産でございます。またハッパのかけ方自体が、これまた保安の問題である。それからたとえば坑道にいたしましても、坑道自体は、これは荷物も運搬すれば石炭も運ぶという生産のサイドもございますが、通風といったような面で非常に大きく保安に役立っておるわけでございます。したがいまして、生産保安という問題からいきますれば、こういった問題を別の役所でやることがほんとうに一体となって行なわれるかどうかということには非常に大きな疑問を私持っておるわけでございます。そういった観点からいきまして、現在フランス、イギリス、ドイツ、アメリカにおきましても、こういった地下産業生産保安というものは不可分の関係から同一の生産官庁で扱っておるというふうなことでございまして、こういった観点から不可分の行政として取り扱っていくのが一番いいのではないかというふうに考えております。
  14. 石野久男

    石野委員 通産省所見は一応聞いておきます。  大臣が非常にお急ぎのようですから、大臣関係することで一つだけお伺いしたいのです。大臣は、先ほどこの会社社会的責任の問題についてお尋ねしましたときに、この会社再建について非常に微妙な段階にあるということでございました。先ほど報告書にもありましたように、地元における市または市民方々あるいはまた労働組合の諸君、それから会社の側もともどもにやはり会社存続という問題について非常に関心のある陳情があったわけです。この鉱の持っている炭質などが日本産業において占める非常に特異な、有利な点、いい炭質のものが原料炭として出ているというようなことなど考えますると、いろいろな問題がありましてもやはり炭鉱存続ということは、これは考えてしかるべきじゃないかというのが、われわれも大体の考えを持ってきたのですが、しかし、これについては鉱区の問題とかいろいろ問題が多いようでございます。そういう問題について、原則としては相当程度当局側がそれに対して関心のある態度指導しませんと、やはりなかなかこの再建と結びつく方向が出ないというようにも見受けられる点がございました。そういう点について、この鉱の存続問題についてはいま直ちにどうと言えないでしょうけれども、しかし当局としてはそういう問題について、積極的に地元民あるいは当事者としての労働者側または会社側の意向に対して即応するような指導なりあるいは援助というようなことなどする用意があるかどうか、そういう点についての考え方だけをひとつ大臣から聞かしていただきたいと思います。
  15. 大平正芳

    大平国務大臣 この事故前から会社再建について真剣に検討が行なわれておったと聞いております。ところが不幸にしてこういう大災害を起こしたわけでございますが、私として申し上げられますことは、この災害追い打ちをかけるような仕打ちはしてはいけないと思います。したがいまして、災害発生前までの状態になるべくすみやかに復旧を急ぐように御協力を申し上げなければならぬのじゃないか。それから先、そういう状態を踏まえて将来どうするかということにつきましては、御指摘のようにいろいろな角度から検討せねばならぬ問題がたくさんございますので、それは十分会社側検討するし、私どもも親身に検討いたしたいと思いますが、ただいまの段階で申し上げられますことは、少なくとも追い打ちをかけるようなことはしたくないという気持ちでございます。
  16. 石野久男

    石野委員 これはやはり災害が再度発生しないようにする厳粛な管理監督側面会社当局に対して行なわれなくちゃならぬと同時に、やはり今後この鉱を存続させるかどうかについては、ほうりっぱなしではとてもだめだという状態にあることはもうはっきりしていますから、だから行政面におけるところの鉱区問題等処置と同時に、企業自体が持っている金融の側面とか、そういうような面についても積極的に存続されるようにしてもらったほうがわれわれとしてもいいのじゃないかというふうに考えておりますので、特段配慮がひとつ望ましいと思います。そういう点でやはり大臣指導と積極的なそれに対する協力を要請したいと思っておりますので、もう一度大臣からひとつその所見を聞かしておいてもらいたい。
  17. 大平正芳

    大平国務大臣 再建問題につきましては、労使の間で真剣に御討議、検討が行なわれて私どもに御相談段階に参りますならば、親身に相談に乗りたいと思います。ただそれがどういう結果になるかということは、ただいまの段階で断定的に言えないことは遺憾といたしますけれども、できるだけ親身に相談に乗るつもりです。
  18. 石野久男

    石野委員 では局長にもう一つだけちょっと聞いておきますが、先ほどの保安行政機構の問題について労働大臣参議院で言っていることと、あなたの言っていることとの間には違いがあるわけです。政府部内におけるところの保安行政上の問題についての考え方の相違がここにはっきりしているということになりますと、これは相当程度やはり私も開かなければならぬ点があるのですが、しかし、ただこのように災害が頻発するということになってくると、やはり保安の——その災害の直接被害を受けるのが行政機構の上では労働省担当部門になってくるわけですから、だから労働省のほうとしては当然その部門通産省から切り離して管理しようというような意欲も出るし、また災害を受ける側からすれば、そうでもしてもらわなければどうにもならぬじゃないかという考え方もあるわけですよ。そういう意味で、生産保安一体化される側面を、通産省がただ企業の側とかあるいは産業側面だけで見ておったら、いつまでたっても解決しないと思う。だからいま局長が言われたような面も生産側面から見ればわかりますけれども、しかしフィフティー・フィフティー生産保安という問題を考えていくということになると、もっと機構上の、行政機構の上からいえば考えなければならぬ問題があるではないか、こういうように私ども思うわけです。これはいますぐに私はここでその論判をするということじゃございません。この問題は、当然やはり将来通産、労働、両方の連合委員会か何か持つことによって討議しなければならぬことだと思いますけれども局長がいま言われるように、これはおれのほうでやらなければ生産がうまくいかないのだという側面だけではだめじゃないかというように思いますから、こういう点はひとつあとで政府部内においてもっと検討を加えてもらって、われわれも委員会としてこの問題をもう少し深めていかなければならないのじゃないか、こう私は思います。局長はどういうふうに考えますか。
  19. 橋本徳男

    橋本政府委員 こういった地下産業というものは非常に産業自体が困難な条件下に行なわれる問題でございます。したがいまして、いずれがやりましてもなかなか困難である。地下産業に限らず同じような地下資源採掘というものを見てまいりますと、たとえば石灰石採掘それから砕石採掘、これは非常に似たような産業でございますが、やはり地下産業一つだと思うのでございます。それが現在いろいろな法定鉱物という特殊な関係で、石灰石関係につきましてはわれわれのほうでこれの保安をあずかってやっておりますし、砕石関係につきましては、これは労働省で担当してやってもらっておる。労働省もその辺非常にむずかしい、困難な保安状態になっております。あまり労働省がいいとか悪いとか申し上げる筋合いではございませんが、こういう二つの類似産業をとりましても、労働省自体としても保安上非常に困難な状態に立ち至っております。したがいまして、それから考えますれば、より以上いわゆる生産保安との科学的な結合をやり、かつまた特に石炭といったような、こういう特殊な経営下に置かれておる産業という点につきましては、これの分離をしたやり方というのは必ずしもいい結果を生むとは私は考えておりません。ただしかし、労働省保安法上もいろいろ労働省としての一般的な産業保安というものをあずかっておるたてまえから、そういった経験をいろいろわれわれのほうに連絡をしていただく、また向こうからいろいろな勧告も受けるというふうな体制にはなっておりますが、こういった地下産業というものは、ほかに例をとりましても非常に保安の困難性が伴っておるのです。そういった、いわゆる分離しての行政がうまくいくかどうかということでは、非常に大きな疑問を持っております。ただ、これは私だけの問題ではなく、かねがね事務的には労働省ともいろいろそういった点についての話し合いはやり、議論もし、いろいろ問題点を相互に指摘し合うというふうな体制でやっております。現段階としては、私としては生産保安分離の体制ということは不可能だろうと思っております。  それから特に保安の問題といたしましては、これは生産のサイドからという形での行政というよりは、保安法ができましてから、その保安というものをまず生産の前段階として、基本的な前提として考え、それが生産といかに結合されるかという考え方の上に立ってやっておりますので、ものの考え方としてはヒフティ・ヒフティ以上に大前提であるという考え方で進めてきております。
  20. 石野久男

    石野委員 この生産保安の分離不可能という局長の所説は、一応私はあなたの所説だということで聞きますが、しかし労働省のほうではこの機構を分離しようということを大臣参議院の本会議で答弁しておるわけだから、この問題は政府の中でやはり調整する必要があると思うし、それからわれわれとしても、委員会で、これは委員長、あとあとひとつ論議しなくちゃならぬ問題だと思うのです。  きょうは私はこの点にあまり深くは入りません。ただ一つだけお聞きしておきますが、生産保安との分離不可能ということを言われるにあたって、保安問題については重要視しなくちゃならぬことは局長自身もわかっておるわけだ。そのとき、生産保安が分離不可能という論を立てておられる局長は、そういう論説の中で、特に保安について注意すべき重要な点はどういうことになります、この論のもとで。
  21. 橋本徳男

    橋本政府委員 これは実はたび重なる災害を経験いたしまして、保安協議会におきまして十分検討したわけでございますが、何といいましても一番大きな問題は、やはり石炭産業自体の経営の安定をはかるということが大前提でございます。それなくしては、いわゆる労使ともに不安な状態で、精神的な不安、動揺というものがありますれば、今回の例がその大きな背景になっているかとも思われますが、非常に災害には大きな影響を与える。したがって、まず産業全体の安定感というものが基本的に必要でございます。それからもう一つは、経営者が経営の中に保安の位置づけをいかようにやっていくか、そういうことがいわゆる、これは先ほど申しましたように生産保安という面が非常に多うございます。したがいまして、同じ坑道一つをとりましても、保安のサイドと生産のサイドが必ずしも一致しない場合もございます。こういった点を技術的に解明しながら、能率をあげる点と保安確保するという点の調整をはかり、両者を両立させていくというふうな考え方でやっているわけでございます。したがいまして、何といいましても、そういったような意味から、保安というものに経営者の取り組む姿勢の確立ということがまた産業全体の安定と並んで大きな二つの柱になるわけでございます。  その次には、技術的な問題にはなりますが、坑内の骨格構造という点が非常に大きな問題でございます。すなわち坑内の骨格構造といいますのは、いわゆる坑道をいかような形において掘進していき、またどの時点においてどういうふうな掘進のしかたをしていくか、これによっていわゆる通風関係がいかにとられるかというふうなことになりまして、これがいわゆるガス爆発、炭じん爆発、坑内火災、こういったいわゆる集団的罹災を免れるための基本的な大前提でございます。こういった点になりますれば、ほんとに生産保安というものが不可分の関係にありまして、双方一致した形においてこれをやっていかなければならない。しかも、保安のサイドからいいますれば、採炭に先行いたしまして相当な広範囲にわたる骨格構造ができ上がっていなければならないというふうな状況もございますので、こういった点はどうしても保安上また生産とからみながら重要な点であろうかと思うのでございます。それ以外には、いろんな専門的な保安機器の開発、同時にまた生産機器の開発、この二つを、いわゆる石炭生産合理化以上に、保安の機器の開発というものが先行しなければ、ここには当然災害というものが発生するわけでございますので、そういった保安機器の開発促進というふうなことが、やはりこれは石炭というものをほんとにになっておる、たとえていいますれば石炭技術研究所といったようなところで研究をさせるというふうな体制をとっておりますが、そういったことが非常に大きな要素であろう。その他、保安教育とかあるいはいろいろな啓蒙指導、こういったものもございますが、大きく分けますればそういった点が主たる点だと思うのでございます。
  22. 石野久男

    石野委員 最後に、今度茂尻鉱での災害を受けられた方々に対する、いわゆる援助なり今後のいろいろなごめんどうを見ていくということについては、会社労働組合がそれぞれやっておることも聞いておりますけれども、しかし一家の支柱なくして、それで子供さんをかかえておる方々も非常に多いし、そういう方々に対する手当てとしては、会社労働組合だけで話し合いしているような額では、とてもこれは将来の安定感が出てこないと思うのです。そういう点について、就職の問題もあるし、あるいは弔慰金とか、いろいろな問題があると思う。そういう点について国はどのように考えているかということをひとつこの際教えてもらいたい。
  23. 藤尾正行

    藤尾政府委員 たいへんに重大な問題でございますので、私が調査団長として参りましたから、私からお答えをいたしておきます。  私ども、通産大臣の命令によりまして参りました際に、まず第一に命令をされましたのは、御被害にあわれた方々に対しまして十二分に弔意を徹底する。鉱山保安原因を探究する。第三に、再建をする可能性がありやいなやを探究する。こういうことでございます。したがいまして、いま石野委員の御質問は、第一の最も重大な点に関連をしておるわけでございます。  先ほど来、労災関係の問題につきましては、これは当委員会におきまする調査団の御報告のとおりでございまするけれども、私どもといたしましては、そういうことでは御遺族に対する将来にわたって十二分の弔慰を尽くすことにならぬではないか、かように考えましたので、特に、会社側会社側と関連のございます金融機関、そういったものを全部呼び集めまして、そして尋常一様のことでこの問題を考えられたのでは困る、大臣の強い御意向がそこにあるのであるから、今次災害にあたっては、いかなることが起ころうとも、金融機関として会社が十二分の弔慰を尽くせるような特別金融をしてもらいたいということで、この場合は三菱銀行並びに三菱信託銀行でございましたけれども、それぞれの責任者を集めまして、通産大臣代理といたしまして厳重に申し入れをいたしたわけでございます。その結果、いままで炭労と会社側とのそれぞれのお取りかわしになっておりました弔慰の基準百三十万円といいまするものではとうてい時代に沿わないから、こういうことでごあっせんを申し上げまして、結論といたしましては、お一人について会社側はほんとうに、先ほど大臣が言われましたとおり、立つか立たぬかわからぬというような重大な局面にございますけれども、従来の百三十万円というような弔慰ではいかぬのだ、こういうことで金融機関の御援助を得てこれを御遺族に対しまして二百三十万円、百万円アップをさせております。したがいまして、これと平均の労災を加えました約三百万円余りのものが今回の場合には御遺族にお支払いができるということでございまして、私どもといたしましても、今回のこういった金融機関その他の非常事態に対しまする協力に対しましては、非常に御苦労なことでございましたということが言えると思っております。  以上でございます。
  24. 石野久男

    石野委員 政府が特段配慮をしてそういうことになっているということについては、私もそれは了としたいと思うのです。ただ人間の生命がこのくらいだということになると非常に問題がある。これは、しかしあとあと考えなければならぬ問題だと思います。  そこで今度の事件にかんがみまして政府当局に、特に関係する通産省に私希望しておきたいことは、先ほど来申し上げておりますように、特にまた協議会等で出しておりまする方針が明確に示しているように、保安問題については、これはもう何よりも先に考えませんといけない。斜陽産業とはいいながらあまりにも事件が多過ぎるということが問題だと思うのです。こういう点を監督行政上やはりどこかにふん詰まりしているものがあるのじゃないかと思う点がありますから、こういう点はひとつとくと注意をしていただきたい。これは北海道だけじゃない。南のほうにもありましょうし、各地に地下産業があるのですから、こういうことのないように努力してもらうことを希望して私の質問を終わらしていただきます。
  25. 平岡忠次郎

    平岡委員長 田畑金光君。
  26. 田畑金光

    ○田畑委員 私は、いまの石野委員の質問にも関連してまいるわけでありますが、特に第一の問題として私が質問いたしたいのは、保安行政についていまの姿がいいか、労働省のほうに移したほうがいいか、この点を少しくお尋ねしたいと思いまするが、これは労働大臣に御出席を願って次の機会に譲りたいと思っております。  ただ、いまのお話の中にありました生産保安、あるいは生産施設と保安施設、生産技術と保安技術を切り離しては考えられないということは大前提だと思うわけです。したがって、結論的になりますけれども保安行政というものが一体いまの労働省にできるのかできないのか、こういう問題はおのずから明らかであろう、こう思うわけで、最近の労働災害の頻発ということを見たときに、基準法上の安全衛生行政というものがほとんどなおざりにされておるということを見たときに、労働省のやるべきことは、まず基準法に基づく労働災害の防止に全力をあげることが大事なことで、力のないところで大きな地下産業鉱山保安行政を担当するということになってくれば、これはゆゆしいことであろうと思っておるわけであります。したがって前者と私は意見を異にしますが、この問題についてはこの次労働大臣に出席を願って、いろいろ参議院委員会や本会議労働大臣の見解が出ておりますからこれは追及したい、こう思っております。  そこで、きょうはこの問題はまずやめまして、今度の災害にあたりまして政府の団長として藤尾政務次官がおいでになったわけであります。われわれ衆議院の調査団と相前後いたしましたので、政務次官の今回の災害に対する見解なり、意見なりは、北海道の新聞でよく拝見をいたしたわけであります。したがいまして、ずばりものを言っておる政務次官の見解には、われわれも現地を見ただけに多く共鳴するものを感じたわけであります。  そこで、先ほど大臣の答弁によれば、保安統括者としての鉱業所長をやめてもらった、これで責任をきちんととらしめた、こういうようなお話でございまするが、なるほど保安法上の保安の統括責任者として鉱業所長責任をとるのが当然だと思うわけでありますけれども、やはり鉱業所長の権限になるものがその会社の中においてどういう位置にあるのか、特にまた雄別炭鉱のように、いまやいろいろな問題をかかえておるところにおいて鉱業所長だけの責任一体済むのかどうか、私はこういう疑問を持つわけであります。やはり鉱業権者の最高責任者である社長みずからがまたこれは当然責任を感ずべきであるし、とるべきだと思うし、あるいはまた単にやめたからどうというのでなくて、今後検察庁その他を通じ、あるいは現地鉱山保安監督局等の政府の出先機関の捜査等を通じ、当然これは刑事上の責任の問題も出てくることとは考えるわけでありますが、私は先ほどの大臣のあの答弁だけで、何かしら責任の問題が片づいたような印象を受けるということは遺憾だと思います。ことに昨年の十二月の中央鉱山保安協議会の答申を見ましても、自主保安体制の確立ということを政府も強く要求し、また今回の予算措置の中でもいろいろ講じられておるわけでありまするが、それだけに鉱業権者としての責任の問題、こういうことも政府としては深く追求すべきではないか、私はこういう感じを持っておるわけであります。雄別炭鉱のような経営が非常にうまくいかないで、経理上の問題、金融上の問題、鉱区の調整の問題その他坑内の条件が非常に悪いという、ああいう山のもとにおいていろいろな制約というものが今回のあのような災害になったと考えております。災害自体についてはすでに先ほど局長からも報告がありましたように、また私も痛感いたしましたが、そういう感じを持ちましたが、やはりあの火源ハッパによるものであろう。おそらくそうであろう。してみるならば、明らかにこれは人災といっても間違いない災害だったと考えておるわけです。こういうようなところにまた追及すべき責任の問題が出てくると考えております。先ほどの大臣の答弁だけで済まされる問題ではないと思いますので、いま私が感じた点について調査団長として現地に臨まれた政務次官の御見解をひとつ承っておきたいと思います。
  27. 藤尾正行

    藤尾政府委員 ただいま大臣から申し上げましたのは、これはそれだけで済むという意味合いで申し上げたのではございませんので、もちろん一切の災害をなくさせるということでなければ責任はとり切らぬのではないかということは私ども一同、大臣をはじめといたしまして痛感をいたしておるところでございます。しかしながら、今日鉱山保安法に基づきまして私どもができますいろいろの責任のとらせ方はございます。当面の責任者である鉱業所長を罷免するとか、あるいは鉱業権者を叱責するとか、あるいは鉱業権を取り上げるとか、やり方はいろいろありますけれども、今日、この雄別炭鉱の現状、茂尻鉱の現状というものを見ましたときに、その責任のとらせよういかんでは、これは炭鉱自体が閉山せざるを得ない、あるいは鉱業所自体が閉山せざるを得ないというような事態を、必然的に招来すると思うのでございまして、私どもといたしましては、こういった不幸が起こりまして、その不幸を起こしました責任というものを厳重に追及はいたしますけれども、それによりまして雄別炭鉱自体が閉山せざるを得ない、あるいは鉱業権をわれわれのほうで接収せざるを得ない、あるいは茂尻鉱自体一つをとりましても、これは閉鎖せざるを得ないということになりますと、そのこと自体が、この被害を受けられました茂尻方々はもとよりのこと、雄別関係をいたしておられます関係者方々の御意思に沿うかどうかということも十二分に考えてみなければならぬわけでございます。したがいまして、こういった一つの環境の中におきまして、どのような責任をとらしたらいいか、こういうことが当然われわれといたしまして考えていかなければならないことでございます。ここに会社側が進んで茂尻炭鉱の鉱業責任者といいまする者の罷免ということを申し出てまいりましたということにつきましても、私どもはそれも一つ責任のとり方である、かように考えるのでございます。しかしながら、これをもちましてすべて責任が終わったというものではございませんので、茂尻鉱再建をどうするか、雄別再建をどうするかという時点におきまして、また変わった意味におきます責任のとり方というものもあるいは出てくるかもしれません。こういったことを合わせ考えまして、私どもといたしましては、鉱業権者がこういう事故を起こしましたときにどのような姿勢であるべきかということを天下に示していただきたい、かような意味合いにおきまして厳重に会社側責任を追及いたし、今後もまたその責任について見守っていきたい、かように考えているわけであります。  とりあえず当面会社側がとられました茂尻鉱業所所長の解任ということを私どもは認めたということにすぎませんので、これでもってすべての責任、能事終われりということではないというように御理解いただきたいと思います。
  28. 田畑金光

    ○田畑委員 その御答弁よくわかりましたが、そこでそれはそれとして、いまの政務次官の答弁の中にも出ておりましたが、私たちも現地に行ってみまして、今度の災害によって雄別炭鉱はどうなるであろうか、こういう実は関心を持ち、また不安を持ちながら現地を見たわけでありますが、私たちが意外に感じたと申しますか、それは、要すれば会社労働組合も職員も、とにかく炭鉱再建していこう、そうして雄別炭鉱の四山をとにかく維持していこう、ことにその主力である茂尻鉱についてはどう再建するかという具体的な内容について、相当程度、それは成規の話し合いであったかどうかは別にいたしまして、一つの案が具体化されてきているわけです。すなわち茂尻は分離してもこれを維持するのだ、維持したい、こういう強い希望意見、政府国家に対する要望が三者から同じように出された、このことです。だんだん聞いてみますと、しかしこの災害から立ち直っていくためには、これは相当政府の協力なりあるいは需要先である鉄鋼会社なり金融機関なり等々の協力がなければ立ち直りは容易でない、こういうことをわれわれは見るわけであります。特に今回の災害によって直接的な損害が二億円、こう言われておるが、この二億円をどう捻出するか、当面、いま政務次官から、遺家族の方々にかくかくの協定上の措置がとられた、これはわれわれとしても非常に歓迎することでありますが、さてそのような協定あるいは協定プラスアルファが遺家族に支給されるについても、この災害のための資金が円滑に調達できるかどうか、この問題が一つ出てきょうかと考えておるわけであります。  第二の問題といたしまして、雄別がなぜあのようなことになったかというと、昭和四十二年に完成いたしました立て坑、あの立て坑の建設のために約三十億の金を投下した。そして年産百万トンの出炭目標を立て、当面八十万トンは出そうという計画であったが、現実は、百万トンに対する半分の五十万トン前後の出炭しかできていない。四十三年度の赤字は四億の赤字である。そこで、この赤字をどう消しながら立て直していくかというところにあの山の大きな問題があると見受けたわけです。聞くところによれば、原料炭でありますから、需要先である日本鋼管においては、あの災害のない段階においては、およその話し合いがついて、日本鋼管は日本鋼管なりに原料炭の山であるから援助協力しよう、こういう話ができていたということです。  さらにまた、茂尻鉱業所を分離することによって、いわば大手から中小になるわけでありまするから、中小のメリットによって、また赤字の埋め合わせを考えていこう、こういうこともいわれていたわけです。今度の政府の新石炭政策によって相当のプラス要因は出てくるけれども、いま言ったようなもろもろの問題点の解決がなければ、あの山の立て直しはできないということ、これを私たちは見つけたわけであります。特に茂尻炭鉱の分離ということも、あるいはまた立て坑をつくったが、そのメリットが十分に発揮できないということも、要すれば鉱区の調整の問題があるということです。この鉱区の調整の問題については、お隣の北炭の赤間鉱でございましたか、それとの話し合い、これについてはもうすでに下層については話し合いがついておるが等々の話もございましたが、今回の茂尻炭鉱を見まして、この新石炭政策の中にある鉱区の調整の問題等が緊急の課題であるというような感じを受けたわけであります。そういうようなことなどを考えてみますと、結局先ほど大臣の答弁、またいま政務次官の答弁を通じ、私が知り得たことは、何とか災害を克服して、あの山が再建できる方向にもっていこう、こういう前提に立って、政府はこれからそれなりの援助なり支援、協力をとっていこう、こういうことであろうと承ったわけでありますが、それがためには、いま申し上げたように当面は金融の面から、あるいは今後の需要先との関係から、あるいは合理化事業団との関係、あるいはまた鉱区の調整等々、いろいろな問題にわたってくるわけでありまするが、これらの問題に処して、今後雄別炭鉱再建についてどういう順序で、どういうタイミングで協力されていこうとする予定なのか、このあたりをひとつ聞かしていただければありがたいと思います。
  29. 藤尾正行

    藤尾政府委員 田畑先生の御心配が、そのまま私どもの心配であるわけでございます。私どもといたしましては、この災害によりましてすべての雄別四山がつぶれてしまうというようなことになりましたのでは、せっかくの石炭再建を、これから国会の積極的な御協力を得て、させていただきたいというやさきに、非常に悪い現象がここに起こってまいるわけでございますから、何といたしましてもそれは避けたい、かように大臣はじめ考えておるわけであります。しかしながら、何といいましても、この雄別炭鉱四山自体再建あるいは茂尻自体再建ということにつきましては、会社側がどのような具体的な再建案をお立てになるか、またその再建案といいまするものの具体的な裏づけが、金融機関あるいは鉱区調整をいたすといたしますると、その相手会社といいまするものとの間にどのようにやられるか、あるいは需要先でありまする日本鋼管あるいは富士製鉄というような方面においてどのような具体的な積極策をお持ちになられるかというような、すべてに関連したことを全部裏づけてみませんと、これについてどうとかいう結論はなかなかつかないわけでございまして、私どもといたしましては、当面この災害ということについて、災害を克服させるということに主力を置いたわけでございまするが、この面につきましては、先ほども大臣はじめ申し上げましたように、どうにかこうにか関係各機関の御協力のもとにこの災害を何とか克服いたそう、またいたしたいという具体的な措置ができそうであるという希望を持っておるわけでございます。  なお茂尻鉱自体がこの災害によって、たちまちそこに離山ムードが起こってくるというようなことになりますと、これは石炭業界全体に対しまする士気の問題とも関係をいたしまするので、私どもといたしましては、いろいろ相談をいたしました結果、大臣の裁定によりまして、この茂尻鉱の場合は、当面危険区域である七番片あるいは九番片というところを除きまして、とりあえず危険がないとされるところにおきまして操業を開始させてはどうかという大臣の御意図でございます。したがいまして、その炭鉱の採鉱業務の再開ということが、何といたしましても、この地帯あるいは雄別全体の炭鉱関係者方々に非常な勇気づけを与えるのではないかというように私ども考えておりますし、そういった大臣の御決意に対しまして、私どもといたしましても心から御賛成を申し上げ、そうして積極的にこういった方向に鋭意一日でも一時間でも早くまいりたい。そういう指導をいたしたい、かように考えておるわけでございます。したがいまして、この問題と、田畑委員御指摘の雄別四山の再建策、あるいは雄別を分離いたしまして、雄別、尺別、上茶路というものを一つの固まりとし、茂尻一つの固まりといたしまして、これを中小にしてやっていきたいというような考え方は、一応の考え方として会社側にあるやに承っておりますけれども、そういった考え方がはたして今後どのような裏づけをされるかということが確認をされませんと、私どもといたしまして、ただいまの段階で、この雄別はかく相なるであろうということを申し上げるわけにいかないのでございまして、この点は重々お察しをいただきまして、ひとつ御了察をいただきたい。かように考えるわけでございます。  以上でございます。
  30. 田畑金光

    ○田畑委員 いまの政務次官の御答弁の中にありましたように、不幸中の幸いということになるかもしれませんが、操業中の切り羽でなかったということはせめてものという感じもあるわけでありますが、そうしますと、保安の面等々から検討なされて、あの山の操業というものがいつごろをめどにして認められるのか、これが一つ。それからもう一つ具体的にお尋ねしたいのは、政務次官のいまのお話の中にありました当面の問題、この災害をどう乗り切るかという問題、これは大臣もお答えになりましたが、やはり結局は資金繰りの問題だと思いますが、それは私たちが現地調査した限りにおいては、政務次官もよく御存じのとおり、三菱銀行とか三菱信託銀行とかいうお話がございましたが、これはもうなかなか相手にしないわけですね。しかも、これは最大の資金なんです。一体それはどこからそれだけの資金のめどがつくようになったのか、あるいはなる見通しなのか、この点ですね。それから、これは私は石炭局長一つお尋ねしておきたいと思うのですが、今度私もあの地域へ初めて行って初めて知ったわけでありますが、あの地域鉱区の調整、統合というものは、確かにこれは緊急の問題だという感じを強く受けたわけです。ことに、これは地域の社会の人々がこの問題を強く要望されておるということ、山自体がそれを希望しておることはもちろんでありまするが、あの空知炭田一帯の統合化の問題等々、将来はそういう構想を描きながら、当面雄別再建のためにはやはり鉱区の調整、再編ということが一番の問題だということを感じたわけでありますが、こういうような点については、従来とも石炭局長を中心に話を進めてこられたと思いますが、この点はどのような進行ぐあいに今日までなっておるのか、その点もあわせてひとつお答えをいただきたいと思っております。
  31. 橋本徳男

    橋本政府委員 操業の問題、資金の問題、鉱区調整の問題、そのうちで操業開始の問題につきましては、実は本日会社自体といたしまして総点検をされております。それで、あす鉱山監督局のほうで相当多数の監督官が入りまして、それで保安上支障ないということが確認されれば、もうすぐにでも生産を再開していただく。ただ問題は、災害の起きました七片の十一番層のごく一部についてはあと若干時間はかかるかと思いますが、それ以外の点については、まずあすの監督局の検査後生産再開するという運びになると思っております。
  32. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 先ほど大臣、政務次官からお答え願いましたように、この不幸な災害のあとの問題といたしまして、茂尻鉱災害のあった以前の状態に引き戻すということの努力は、いま関係者が一生懸命やっておりまして、その点での最大の問題は、御指摘のように、この事故によりまして新たに発生した資金需要というものにどう対処するかという問題でございます。先生御案内のように、この事柄を政府の制度そのものでやるという制度はいまございません。したがって、非常に困難性はございますけれども、三菱銀行、三菱信託という雄別炭鉱株式会社の取引銀行との間でいま鋭意話を進めておる状況でございます。  なお第二点の鉱区調整のことでございますが、私ども鉱区調整についての問題意識といたしまして、具体例として一番急がなければいかぬのは、御指摘のとおり、ただいまの空地の炭田の鉱区調整だというふうに考えております。この問題につきましては、いままでもいろいろな形で検討を加えてきたところだと思いますが、石炭鉱業審議会に新しく設けられます体制部会の第一号議題というふうにして詰めたいという感じを私どもはいま持っております。ただ、しかしながら、空知炭田の鉱区というものを合理的に利用するには、どういう鉱区調整が必要であるかということは、一つ考え方として出てまいりますけれども、先ほど政務次官もお答えになりましたように、それぞれに参画しております企業体の内容、実質というものは非常に違うわけでございまして、むしろ理論的にと申しますか、北空知の炭田開発を今後どのようにやっていくかということに答えを求めますことのたやすさよりも、関係者を全体としてどんなふうに組み合わせていくかということのほうがむずかしい問題になろうかと考えております。
  33. 田畑金光

    ○田畑委員 私はこれで質問を終わりますが、ひとつ政務次官、現地を見られて一番おわかりのことですから、今後事故を早く克服して山が再建できるような方向へ、また地域社会の不安を少しでもやわらげるように政府としても努力されることを強く要望して私の質問を終わります。
  34. 平岡忠次郎

  35. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 私も現地調査しました一人でございますので、そういう立場から二、三お尋ねしてみたいと思います。  とにかく、私が石炭特別委員会に所属しまして、北海道に数度災害が起こりました。そのたびに私は現地調査団として行ってきたわけですけれども、今回参りました茂尻炭鉱災害調査にあたって、非常にいままでと違った感じを受けたことは、原因究明についての問題なんです。とにかく調査団として行くからには、二度と同じような災害を起こしてはならない、そのためには原因を徹底的に追及していくことである。このようなことで、いままで何回も行ってきたわけですが、今度の現地調査ではその原因があまりにも明瞭であり、先ほど言われたようないわゆる人災的なものであるということからなのかもしれませんけれども、むしろ茂尻炭鉱をどうするかという、閉山になるかならぬかというそちらのほうが重視されて、原因究明のほうはほとんど軽視されたような感じを受けてきたわけです。私は、これは非常に奇異な感じで帰ってきたわけでありますが、政務次官も現地へ行かれたわけですけれども、こういう原因究明についてどのように感じられたか。そしてまた正直言って、その原因がいままでいわれておるようなことでおさまりそうなのかどうか、そういう点をあわせてお答え願いたいと思います。
  36. 藤尾正行

    藤尾政府委員 私どもといたしましても、こういう炭鉱災害を二度と起こさせないという意味合いにおきまして、その原因は忠実にかつ十二分に究明をいたさなければならぬ、かように考えております。しかも、今回の場合には、不幸中の幸いと申しますか、救護隊が非常に早く編成せられまして、そうして非常な御努力の結果被害者の救出が非常に早かったというようなこともございまして、私ども保安担当者あるいは北海道におります通産局の保安担当者あるいはその総指揮にあたりました鉱山保安局長をはじめ十二分に中に入りまして勉強をいたしたはずでございます。なお、労働基準局におかれましても、私どもと一緒になりまして十二分の御調査をなすったことであろうと思います。ただ先ほど保安局長が申し上げましたように、百人にいたしますると九五%までが山におきますハッパ事故であるということであり、それを裏づけるに足る坑木の倒伏状態その他を見ましてもほぼ間違いがないと思いまするが、何と申しましても、当のハッパ係をやっておられました方が重傷を負われまして、現に入院中であり、医師の御許可を得てお話を承るというわけにもまいりませんので、最終的な段階として一〇〇%この茂尻における災害はかくかくの原因によってこのようにして起こったということを申し上げられない。なお多分そうであろうという推定にとどまっておるところがあるわけでございます。しかしながら、私どもといたしましては、当然そのハッパ事故ということであろうと思いまするけれども、しかしながら、それにいたしましてもハッパをかけまするときに全然ガスの探知をいたさなかったのか。あるいは初め第一回目をおやりになって第二回目をやられなかったのか、あるいは第二回目もやって第三回目をおやりにならなかったのか、あるいは第三回目もおやりになったんだけれどもその探知場所が非常に違っておったのか。そういった点につきまして、なお究明が足りないということはございまするけれども災害発生場所はほぼ間違いなくここであるということが言えますし、またそこにございますまだ未発のハッパを見ましても、その中心点をまず抜くという段階において事故が起こっておる。またその坑木の焦げ方その他を見ましても、ほぼ私ども考え方は間違いがないものであるかように考えております。しかしながら、仰せのとおりでございまして、私どもがこの原因究明というところに重点を置いておらないということでありましたならばたいへんなことでございまして、私どもはまず第一にこの災害被害者の方々に対しまする十二分の措置をいたしますと同時に、この災害がどのようにして起こったか、それを徹底的に究明をするということがこの災害に対しまする私どもの基本的な態度であるということは間違いはございません。今後ともこの災害原因究明につきまして、ありとあらゆる素材を組み合わせましてその真相を突きとめていきたい、かように思っておるわけでございます。
  37. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 現場でガス測定をしていた係員の方が重傷でまだ入院中、それでほんとうの原因を聞くわけにはいかないということのようでございますが、現地で専門官の話を聞きますと、今度の事故は確かに事前にガスを検定しさえすれば、こういう事故考えられないのだ、ほとんどの人の意見がそうでありました。したがいまして、今度の茂尻鉱業所事故というものは、ほとんど人災だといっても過言ではなかろう、そこまで大体推測されますので、今後これに対する手当てといいますか、対策というものは必然的に内容もきまってくると思いますけれども、この前の委員会のときの質問に対する答えにもありましたように、ハッパ採炭がまだ全体で二〇%ほどはあるのだということですので、これに対してはほんとうに二度と起こらないだけの手を打つべきである。同時に四月の七日の日に空知炭鉱の出水事故が起こっているわけですね。これもハッパ作業原因で、事故の内容は全然違いますけれども起こっているわけです。あぶなく五名の方がまた犠牲者になるのではないか——幸いに奇跡的に助けられて非常にうれしく思っておりますが、ハッパ作業について何か大きな教訓がここにあるのではないか。いままでのようにただ単なるハッパ作業だ、ハッパの問題だというふうに安易なことでこれを済まさないで、何といいますか、深い配慮の必要があって、また何かを見つけられて、徹底した指導が必要ではないか、こう思うわけであります。そういう点について保安局長さんからお願いします。
  38. 橋本徳男

    橋本政府委員 確かに現在の制度といたしまして、ハッパをかける場合におきましては、そのつどガス測定をしなければならないというふうなことで、きつく規則でも制約し、かつまたそれを毎回、毎年度のいろいろな監督指導の面におきましてもそういうことを徹底さしておりますし、また監督官の巡回指導におきましても注意はしてございますが、しかし今度の事故で非常に考えさせられる問題は、単なる一回の試験だけでは防ぎ得ない何ものかがあるのではないかということは、確かに先生のおっしゃるとおりでございます。これはやはりそういった一つの制度の上に組み立てられたようないろいろな作業の過程において、やはりその作業をやる者が人間でございますので、やはり人間の錯覚といいますか、人間の気持ちのゆるみといいますか、そういった問題があるのではないか。しかし現在のこういったものについての保安の体系は、要するに保安の技術者というものは、国家試験を通り、一定の経験を経た上でそういう行為を責任をもってやる、そのかわりに不十分な場合におきましては検察庁へ送り、司法上の処置も受けなければならぬというふうな仕組みになっておりますが、それ以上に、やはり社会的に、いろいろな人間でございますので、環境の問題あるいは家庭の問題、そういったことからくるいろいろな正常の作業を阻害するような要因がその中に介在しておるのではないかということが深く感ぜられるわけでございます。したがいまして、そういった人間のいわゆる落ち度といいますか、そういったものを何とかこれでなくすために近く保安協議会を開きまして、たとえていいますれば、働く人たち相互間におけるチェックといったような形においてもちろん責任の問題はやはり国家試験を通り、一定の経験を持った人にとらさざるを得ないと思いますが、その間に労働者相互におけるいろいろな相互のチェック関係を設けて一人の不注意あるいは一人のこういった錯覚といったようなことからくる大きな事故のないようにする調査をしたいと思っております。  次に空知の問題でございますが、この空知の問題の場合は、まだいまのところ二百三メートルに及びますいわゆる空洞の中にヘドロがたまっておりまして、これを全部取り分けてしまわないとほんとうの内容はわかりません。目下監督局がこの原因調査に当たっておりますが、かなり内容は違うのではないか。これはこの場合は、むしろそういうハッパをかける前にいかなる作業環境にあり、それがいかなるその地図関係にあるか、またハッパをかけた結果、その地層がどういうふうに変化するかといったいわゆる事前調査といいますか、そういった事前調査自体が必ずしも十分ではなかったんではないかと思うのです。しかし、ただいろいろ検討してみますと、事前調査というものはボーリングとか、あるいは過去におけるいろんな地図とか、こういったもので検討していくわけでございますが、監督局から受けておりまするいろんな報告書によりますれば、地図にも載っていないような姿がどうも出てきそうでございます。したがいまして、そうなりますれば、防止というものは非常にむずかしいかと思うのでございます。地図にも載ってないというのは、途中の段階で坑木がちょろちょろ出てくるということで、これは昔だれかがそこらで石炭拙りをしておったというふうな事実がありはしないか。しかしそういったものは、現在の段階でどの地図にも載っていない、記録がないというふうなことも現段階において推測されるのでございます。しかしいずれにしましても、つまるところは一つ作業をやった場合に、周辺の状況が、地層がどう変化するかというところの徹底した調査というもの、そういった点に私は問題があったんではないかというようなことで、その点を中心にして現在監督局のほうで鋭意調べておる次第でございます。  それから先ほどの点で、政務次官からいろいろ答弁していただきまして、実態はそのとおりでございますが、こういった原因究明というものは、予想されるあらゆる諸要素というものを一応全部並べ立てます。そしてその並べ立てた諸要素を監督官が全部その実地検証にあたりまして一つ一つ消していく。そして消していって最後に残ったものと、それから現場とを検証するというふうな仕組みをとっておるわけでございます。  今回の場合、政務次官が御説明いたしましたように、搬出が非常に迅速に行なわれ、若干落盤その他の問題はあるにしましても、一応とにかくすべての坑道に検査に入れたというふうなことで、そういった諸要素を抹殺していくのにかなり短時間に行なわれたということが、どちらかといいますれば、比較的これではなかろうかという原因が最後に残ったというふうなことでございますので、われわれは原因究明を決しておろそかにしたというものではございません。
  39. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 いま空知炭鉱事故の場合は、いろいろお話がありましたけれども、突き詰めると、事前調査が不十分であることも十分考えられた。ということになりますと、やはり人災的な要素がもう十分含まれているんだというふうに理解していいですか。
  40. 橋本徳男

    橋本政府委員 そこで申し上げたいことは、確かに事前調査をどの程度までやったかという段階の問題でございます。それで事前調査を完全にやっておりましても、いわゆるその辺の地形その他地図等において、どうにも全然記録がないという、そういう不可抗力に近いような要素が出るか出ないかということによって、その辺がきまるんじゃないかと思うのでございます。もうしばらくその点については、調査を進めさしていただきたいと思うのでございます。
  41. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 話はかわりますけれども、今度の石炭政策実施を見込んで、地元雄別、上茶路、尺別ですか、この三山で生産規模を縮小するということを中心に、再建合理化計画が立てられていた、こう聞いてまいりました。ところが今度の事故で一切が瓦解されてしまったというような、非常に不安な状態で皆さんがいまして、特に先ほども問題になっておりましたように、資金繰りの問題が取り上げられておりましたけれども、私が聞いてまいりました範囲からいっても、茂尻鉱業所は、昨年の九月の決算で三億五千万円の赤字であった。累積は約七十億にのぼっておるのだ。そういうことから経営上有利になるんだという判断に立って茂尻鉱を分離するという。会社側はそういう考えで分離するといっておったらしいのですが、従業員はそのことを逆にとっていたようですね。経営が悪化したから分離し、いよいよ閉山にすべり込むのだ、こういうところで非常な不安があったらしいのですが、そういうときの事故でありまして、いよいよ地元では閉山間違いないのじゃないかというほど落胆した空気でありました。けれども先ほど先輩の委員からお話がありましたように、地元では何とか再建してほしいという強い要望があったわけでございますが、現実問題としまして、災害のために操業も当分できないだろう、それから復旧にも数億円かかる、社長さんの話によれば復旧費だけでも二億円は見込んでおるという話でしたけれども、こういう資金面という立場から見た場合、ほんとうに致命傷的な災害である。これを一体再建できるのかな、私自身そういう感じを持って帰ってきたわけです。先ほどいろいろと説明がありましたけれども、一番問題になるのは、再建できるだけの要素があるならば、早く再建計画を立てないと、労働者のほうがじっとしておれない、不安で不安でならないということで逃げ出すのではないか。せっかく再建する内容が見つかったところでも、労働者がいなくなったらどうしようもない、このような意見も出ておりました。そういう点率直に政務次官ないしは石炭局長、いままでの経験から推察して、どういうふうに考えられるか、この点をお願いします。
  42. 藤尾正行

    藤尾政府委員 御指摘ではございますけれども、私、茂尻鉱の場合には、特殊な状態があると思います。と申しますのは、もうこれは当委員会におきまする調査団の先生方も、御同様にお聞き及びになったものと思いますし、はだでお感じになったと思うのでございますが、大体災害が起こりましたところにおきましては、そのあとの波動が非常に長く尾を引くというのが通例でございます。ところがこの茂尻鉱の場合に限りまして、労使諸君一体になりまして、一日でも一時間でも早く再開をさしてほしいということで一致をせられておりますし、そういった意味合いにおきまして、先ほども申し上げましたように、大臣の御指示によりまして、この災害以前の姿に一刻も早く戻したいということで、危険のない保証が得られれば、あすにでもとにかく採炭を開始させるという特別な措置がとられておるわけでございます。したがいまして、この災害ということによりまして、炭坑の労務者が離山をするというようなおそれは、現在のところないものと私どもはかように考えておるわけでございます。しかしながらそういったことと別個に、この雄別炭鉱あるいは茂尻鉱業所というものの再建をどうするかということにつきましては、当該の責任者でございます雄別炭鉱自体に、かくすればかくなるという詳細な再建計画をお立てになっていただくということがまず喫緊の問題でございまして、そのお立てになりました再建計画といいまするものを私どもの立場から詳細に検討さしていただいて、そしてこれはこのようにすべきものであるというような調査石炭局におきまして検討をされるものである、私どもはかように期待をいたしております。詳細につきましては石炭局長から答弁をいたさせます。
  43. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 ただいま政務次官からお答えくださいましたように、この災害の問題と切り離しまして雄別炭鉱株式会社あるいは茂尻の鉱業所というものにもとから問題があったことは先生の御指摘のとおりでございまして、石炭企業全体がおしなべて経営状態の不振に悩んでおるのでございますが、中でも雄別炭鉱株式会社は悪いほうに属しておったということは、率直に申し上げなければならないかと思うわけでございます。そういう環境の中で起こりました災害でございまするので、先ほど来お答えしておりますように事故の以前の状態に早く戻ってもらう、ただいまお話がございましたように操業の再開につきましても、普通のケースとは違いまして非常に早い時点で行なわれるということでございますので、金融上の問題その他はございますけれども、平常状態に戻るのが早いと考えております。  そこで、今後の雄別炭鉱なり茂尻炭鉱再建策をどのように考えていくかということは、政務次官もお答えになりましたように当該会社がまず真剣に考えなければならぬ、そしてそれは、ただこうしたいというようなことではなくて、政務次官もおっしゃいましたようにこうすればこうなるという具体的内容を持ち、第三者を納得させるような具体的な構想でなければいけない。その段階になれば私どもも当然のことですがそれにチェックを加え、はたして誤った観測、誤まったデータによって行なわれていないか、案ができ上がっていないかというようなことは十分検討をいたしますし、またこうすればもう少しよりよくなるじゃないかというようなことがございましたならば、積極的に申し上げるつもりでおりますけれども、一番肝心なことは、そういう具体的な案がなしに分離をするかもしれない、閉山になるかもしれないということを軽々しく経営者が口ばしるとか、労働組合がそれによって不安感をつのらせるというようなことが、今回の事故のバックグラウンドとして何らか関係がなかったかというようなことについて私どもは非常に心配をいたすわけでございまして、再建策というものはあらゆる吟味に耐え、具体的なものによって初めて行動を起こすということでなければいかぬのだと思いますので、この際は災害前の状態に一刻も早く戻って、基本的な将来構想というものについては別の問題として冷静な頭で処理をしていただくということにならなければいけないのじゃないかと考えております。
  44. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 最後にもう二点だけ聞きますが、簡単でけっこうです。  まず保安局長に、災害負傷者のその後の状態ですが、というのは、参りましたとき、一覧表が出ておったのです。その一覧表を見ますと、休業見込み日数という欄がありまして、重傷者はごくわずかで、ほとんどの人は二日とか三日でなおるというふうに表示されておりました。私は軽ければ軽いほどうれしいわけでございますが、労災保険等の関係もあることでありますので、これをひとつ聞いてみたいと思っていまお尋ねしたわけです。  それが一つと、それから会社からの強い要望だったのですが、安定補給金の交付について、今度の新政策が実施されたという立場からでしょうけれども、特例として増額をしてほしいという強い要望があっておりましたが、そういう点について……。
  45. 橋本徳男

    橋本政府委員 患者のその後の状況でございますが、私参りましたときには二十名入院しておりましたが、その後一名なくなりまして、それで現在十九名になったわけです。きのうの段階といたしまして、このうち四名退院したというふうなことを聞いております。しかし、非常に残念なことではございますが、全身に五〇%の負傷をした人が一名、これは非常にあぶないという現在までの情報を受けております。
  46. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 そのデータでは三日ないし四日ということだったのですけれども、きょうでもう八日になるわけですね。医者の診断ですからあれですけれども、何だかその一覧表から受けた感じは軽く見ておるのではないかというような感じも受けましたので、今後災害が、あってはなりませんけれども、あった場合は特にそうした面にも配慮をしてもらいたい、こういうことです。  政務次官から、先ほど言いました安定補給金について……。
  47. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 安定補給金につきましては前々から当委員会でお答えしておりますように、私ども原料炭一般炭に差をつける、それから再建交付金の交付を受ける社とそうでない社と区別をする、さらに大手と中小に差をつけるという制度を具体的に予算の関係資料で御説明いたしましたように、表にしてお示しした案をもっていま臨もうとしておるわけでございまして、災害があったからこの制度をどうするというわけにはまいらないと私は思います。いろいろと茂尻鉱の将来について具体的な構想が出ました場合にその以前に回答するかということは、そのときの形でおのずから明らかなことでございますので、あの制度にのっとりまして安定補給金を交付するということにいたしたいと思います。
  48. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 茂尻鉱の現状についてはとても再建がむずかしい感じも率直にいって受けるわけですが、地元は、会社にしろ組合にしろまた地域住民の代表の皆さまの声を聞いても、何としても再建してほしいということでしたので、前向きの姿勢といいますか、向こうから出てきた再建計画をチェックするというようなことでなしに、もっと積極的に再建できる方向指導していくべきじゃないか、私はこう思います。政務次官の所感を聞いて終わりたいと思います。
  49. 藤尾正行

    藤尾政府委員 御意見ごもっともでございます。私どももできればそういう方向でやらしていただきたい、かように考えております。
  50. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 では終わります。
  51. 平岡忠次郎

    平岡委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時九分散会