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1969-04-03 第61回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年四月三日(木曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 平岡忠次郎君    理事 神田  博君 理事 藏内 修治君    理事 篠田 弘作君 理事 菅波  茂君    理事 三原 朝雄君 理事 岡田 利春君    理事 八木  昇君 理事 田畑 金光君       佐々木秀世君    西岡 武夫君       三池  信君    井手 以誠君       石野 久男君    多賀谷真稔君       中村 重光君    細谷 治嘉君       渡辺 惣蔵君    大橋 敏雄君  出席国務大臣         労 働 大 臣 原 健三郎君  出席政府委員         通商産業政務次         官       藤尾 正行君         通商産業省鉱山         石炭局長    中川理一郎君         通商産業省鉱山         石炭局石炭部長 長橋  尚君         労働政務次官  小山 省二君         労働省労働基準         局長      和田 勝美君         労働省職業訓練         局長      石黒 拓爾君  委員外出席者         通商産業省鉱山         保安局石炭課長 高木 俊介君         労働省労働基準         局安全衛生部長 山口 武雄君         労働省職業安定         局長      住  栄作君         労働省職業安定         局失業対策部長 上原誠之輔君     ————————————— 四月三日 四月三日  委員中村重光君及び細谷治嘉辞任につき、そ  の補欠として井手以誠君及び石野久男君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員井手以誠君辞任につき、その補欠として中  村重光君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  委員派遣承認申請に関する件  炭鉱離職者臨時措置法の一部を改正する法律  案(内閣提出第四〇号)  石炭対策に関する件(雄別炭鉱株式会社茂尻鉱  業所爆発事故に関する問題)      ————◇—————
  2. 平岡忠次郎

    平岡委員長 これより会議を開きます。  昨二日、茂尻炭鉱事故により犠牲者が出ましたことは、まことに痛哭のきわみであります。  本委員会といたしましては、この際、議事に入るに先立ちまして、犠牲者の御冥福を祈り、一分間黙祷をささげたいと存じます。各員御起立をお願いいたします。     〔総員起立黙祷
  3. 平岡忠次郎

    平岡委員長 黙祷を終わります。      ————◇—————
  4. 平岡忠次郎

    平岡委員長 石炭対策に関する件について調査を進めます。  昨二日、北海道赤平市において発生いたしました茂尻炭鉱災害について、政府報告を聴取いたします。藤尾通商産業政務次官
  5. 藤尾正行

    藤尾政府委員 御報告さしていただきます。昨二日、十三時二十分ごろ雄別炭鉱茂尻鉱業所におきまして、ガス爆発災害発生をいたしました。  作業中の労務者四十四名が罹災をいたしました。まことに残念しごくなことでございます。  原因につきましては、目下調査中でございます。現地では直ちに鉱山救護隊中心にいたしまして救出作業に全力をあげましたが、罹災者中二十六名が救出されたのみで、残り十八名の方々全員死亡が確認をせられ、昨二日、二十一時十分までに御遺体を全部搬出を完了いたしました。  なお、救出をされました罹災者一酸化炭素によりまする影響を受けているおそれもございまするので、現在一酸化炭素中毒の検診が実施されておるところでございます。  現地では災害報告を受けまして、直ちに鉱山保安監督局長以下十四名の鉱務監督官が急行いたしまして罹災者救出及び原因究明に当たり、また本省からは鉱山保安局長が昨夕現地に急行いたしまして、目下対策の推進を指揮をいたしております。また本日は、私が十一時から現地に飛びまして、災害対策連絡会議を編成をいたしまして、罹災者方々救護及び御遺族に対しまする補償を中心といたしました対策を講じたい、かように考えておる次第でございます。  災害の概況について申し上げれば、災害発生個所は、茂尻炭鉱桂本坑柏斜坑の七片第三立て入れ十一番層払い付近でありまして、茂尻立て坑坑口から約三千六百メートルの距離にございます。七片上層第三立て入れ十一番層払いは、三月十四日に五片十一番層盤上坑道に貫通をいたしております。三十一日一番方から採炭に着手をいたしまして、採炭払いは偽傾斜によるハッパ採炭でございます。  災害発生当日、一番方には五百十六名が入坑をいたし、柏区域には百二十六名が配番をせられ、災害発生個所付近では三十七名が採炭あるいは仕繰り等の作業を行なっておりました。  十三時二十分ごろガス爆発発生をいたし、直ちに入坑者全員退避命令が発動をせられました。また同時に鉱山救護隊が招集をせられ、十四時四十分ごろ入坑をせられ、罹災者救出作業に当たったのでございまするが、その結果、二十一時十分に最後の御遺体を収容いたしました。なお、災害発生個所付近配番をせられた三十七名のうち十八名の方々死亡をせられ、残り十九名の方々救出をされたのでありまするけれども、そのうち十七名の方々が負傷をせられ、二名の方々は無傷で出てこられておられます。その他、排気側作業をしておりました十八名のうち九名が一酸化炭素中毒疑い入院をしておられます。合計二十六名が手当てを受けておるわけでございます。  札幌鉱山保安監督局では、災害報告を受け、直ちに監督局長のほか十四名の監督官を急派をいたしました。また、鉱山保安局では橋本局長外山石炭課長補佐現地に急行をさせ、罹災者救出及び原因究明に当たらしております。なお、災害原因につきましては、目下調査中でございまするので、確かにハッパによりますガス爆発であるということは、いまの段階では申し上げ切れません。  災害発生個所付近破壊状態は、災害発生払いの上部のワクが飛ばされておりまして、払い中央部が小さく崩落をしておる程度で、その程度はわりあいに軽度であるようでございます。  以上御報告を申し上げます。
  6. 平岡忠次郎

  7. 山口武雄

    山口説明員 労働省といたしましては、今回の災害にあたりまして、現地の局の衛生課長を急派いたしまするとともに、美唄労災病院から加圧タンクを急派いたしまして、その応急措置に当たらせておるところでございます。  現在の状況を申し上げますと、COガス中毒関係で、当時坑内におられました二百五名の方々あるいは救護隊として中に入られました二十七名の方々に対しまして、合計二百三十二名の方々採血検査をやっております。その結果は今夕になりませんとわかりませんが、その症状その他から判断いたしまして、十六名の方々COガス中毒疑いがありというような関係から、直ちに美唄労災病院に収容いたしまして、現在加療中でございます。それからもう一人やけどと一酸化炭素中毒二つ症状がある方がございますが、これは現在鉱山病院に収容、加療中でございます。そのほか九名の方々が現在鉱山病院赤平市立病院杉本病院の各所に分散して収容されておりまして、現在入院中の方々は二十四名という状況でございます。      ————◇—————
  8. 平岡忠次郎

    平岡委員長 委員派遣承認申請に関する件についておはかりいたします。  昨二日の雄別炭鉱株式会社茂尻炭鉱災害につきまして、本委員会から現地委員を派遣し、その実情を調査するため、議長に対し、委員派遣承認申請をいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 平岡忠次郎

    平岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  また、派遣委員の人選、派遣期間等につきましては、すべて委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 平岡忠次郎

    平岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、今回の委員派遣に際しましては、往復とも航空機の使用について、議長申請をいたしたいと存じますので、御了承願います。      ————◇—————
  11. 平岡忠次郎

    平岡委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。岡田利春君。
  12. 岡田利春

    岡田(利)委員 今回の茂尻災害の質問に入る前に、最近の、昭和四十四年一月から以降でけっこうですが、炭鉱災害傾向についてお伺いしたいと思います。
  13. 高木俊介

    高木説明員 茂尻炭鉱の過去における災害発生状況でございますけれども、御存じのように三十年の十一月一日に六十名というような大きなガス炭じん爆発発生しております。ただし、その後大きな災害は、幸いにしてございません。三十九年から四十四年までの数字を簡単に申し上げますと、三十九年は死亡者二名、四十年は五名、四十一年は六名、四十二年は二名、四十三年は二名、四十四年のことしに入りましてから、一月から三月までは、幸いにして死亡者は全然出しておりません。今度の罹災四十四名を出しましたのが、本年度に入りましての初めての大きな災害でございます。
  14. 岡田利春

    岡田(利)委員 災害発生個所の七片上層第三立て入れ十一番層払いは、三十一日から操業いたしておりますから、いわば操業開始三日目に災害発生したということになるわけです。特に、この偽傾斜採炭現場は、ハッパ採炭であるということでありますが、北空知各炭鉱とも非常にガスの多い地帯で、過去においても赤平ガス突出爆発とか、あるいはまた茂尻でもいま述べられたような爆発が起きておるわけです。したがって、当然このハッパ採炭に対しては、何らかの規制をとっておるもの、こう理解されるわけですが、現場におけるハッパ採炭の場合、ハッパについての安全装置その他についてはどういう状態でありますか。
  15. 高木俊介

    高木説明員 本切り羽出炭を開始いたしましたのは、先ほど御説明いたしましたように、先月の三十一日からでございます。本茂尻鉱におきましては、約五〇%が原料炭を産出しておりまして、大体ガスの多い山であるということは十分注意いたしております。  それで、巡回検査の点でございますけれども、四十三年九月から例をとってみますと、九月、十月、十一月、十二月、なお一月、二月と各月監督官現地に二名または三名派遣いたしておりまして、厳重に保安確保をしていただくように注意しておるところでございます。  なお、今度災害発生しました切り羽に対しまして自動警報装置があったかどうかというのは、いまのところ確認しておりませんけれども、二月の巡回検査のときの報告によりますと、災害発生した切り羽じゃございませんけれども、近くの他の切り羽につきましては、警報装置を備えていたということは確認いたしております。
  16. 岡田利春

    岡田(利)委員 問題は、このきょう出されました報告は、一応ガス爆発、こういわれておるわけです。したがって、ガス爆発の条件は、爆発可能性ガス存在をしたということと火源があったということに尽きるわけですが、まだ時間がたっておりませんが、この点はガス爆発であるということは断定できるのですか。あるいは炭じん等に引火して、それがガスに誘発するという間接的な炭じん爆発からとか、そういう点については確認できているのですか。
  17. 高木俊介

    高木説明員 一応推定されるのは、ガス爆発ではなかろうかといわれておりますけれども、火源ハッパによる火源、あるいはここに、約十五ボルトであったと思いますけれども、信号線が入っております。まだ現地状況をはっきり確認しておりませんので、ガス爆発が起きたということは事実でございますけれども、火源ハッパからきたものか、あるいは信号線その他からきたものかということは、言明は現在のところではいたしかねるところでございます。
  18. 岡田利春

    岡田(利)委員 その場合、それ以外の火源というものは想定できないのかどうか。たとえば一つには、新しい切り羽ですから自然発火という点は考えられない、常識的な推定はできるわけです。あるいはまた、人為的な火源というものも、こういう炭鉱ですから、ないだろうという推定はできるわけです。したがって、いま課長の答弁は、いわば電気の電線のショートによるものか、あるいはハッパ採炭を行なっているわけですから、ハッパによって引火したのではないか、こういう推定をされているのですが、その他の火源というものは全然推定はされていないわけですか。
  19. 高木俊介

    高木説明員 現在のところはいたしておりません。
  20. 岡田利春

    岡田(利)委員 大体この報告判断いたしますと、いわば爆発基本といいますか、この面からいうと、その後の坑内自然発火坑内火災が起きたとも報告されておりませんし、多少崩落があったのじゃないかと思うのですが、そういうことであるならば、規模としては比較的小さかった。ただ、坑道の展開、それに伴う人員配置、そういう面からこれだけの災害が出たのではないか、こう私は判断をするわけですが、その点についてはどういう見解ですか。
  21. 高木俊介

    高木説明員 本切り羽は急傾斜、大体傾斜七十数度であったと思いますけれども、急傾斜層を偽傾斜で採掘しておるような切り羽であります。面長が百三十メートル前後だったと思いますけれども、その切り羽配番されておるという状態から見まして、なお坑内災害発生後の破壊状況というものから見ましても、いま先生の御指摘のとおり、そう大きな爆発ではなかったのではなかろうかということは推定されます。
  22. 岡田利春

    岡田(利)委員 いま言われた二つ推定からいえば、第一のハッパということになりますと、これは発破係員ガス検定をしてハッパをかける義務があるわけです。したがって、ガスを測定できなかったとすれば——測定しなければ全然らち外でございますけれども、測定し得なかったと仮定いたしますと、当然そこにガスがあれば、ハッパをかければ爆発をするということになるわけです。それから電気の場合には、坑内電気線が通っておってこれがショートする、いつでも火源になり得るわけです。ガスがなければ、これは送電線がパンクをしても別に引火はしないわけです。問題は、ガスというものが存在したということ自体が問題になるわけです。二つの問題でいえば、いわば火源ガス関連性が実は問題点になってくるわけです。したがって、まだ詳しいことはわからないと思いますけれども、ハッパであるか、あるいはまた電灯線であるか、いわばケーブル線であるかということは非常に重要な問題になるのではないか、こう私は判断せざるを得ないわけです。  そこで、この切り羽は、炭質からいえば非常に炭じんが多い炭層ではないかということが考えられるわけですが、この点については、従来の検査からいえば、炭じん関係については良好なのか、あるいは普通なのか、その点の報告はいかがですか。
  23. 高木俊介

    高木説明員 監督官巡視のときの改善事項指示事項というものがあるのでございますけれども、それから見ますと、炭じん処理という問題につきましては、散水を実施するようにということで、現在まで、四十三年四月からでございますけれども、数回指示はしたことがございます。これは切り羽方々違いますので、その切り羽切り羽において、たとえば昨年の五月二十七日でございますけれども、これは九片の五番層、あるいは六月でございますが、六月は五片の八番層というようなところに、岩粉散布あるいは散水処理ということで指示はいたしたことがございます。そういう点から見ますと、いま先生の御指摘のように、ある程度坑内炭じんが立っていたということは推定されるところでございます。
  24. 岡田利春

    岡田(利)委員 保安監督立場から見て、いまの報告によれば、九月、十月、十一月、十二月に二名ないし三名の監督官坑内巡視をした、こういう報告を受けたわけです。この所管は滝川だと思うのですが、滝川ですか。
  25. 高木俊介

    高木説明員 滝川でございます。
  26. 岡田利春

    岡田(利)委員 この滝川の場合、今日の監督官配置は何名ですか。
  27. 高木俊介

    高木説明員 ここに資料の手持ちがございませんので、はっきり記憶がございませんけれども、六名ないし八名くらいではないかと思います。
  28. 岡田利春

    岡田(利)委員 炭鉱保安というのは、基本的には自主保安体制を築いて保安を守るということが基本でありますけれども、わが国の炭鉱状態というのは普通一般ヨーロッパ炭鉱と違って、炭鉱坑内構造が非常にその山々によって違うわけですね。その原因は、やはり何といっても褶曲によって、炭層が緩傾斜であり、急傾斜である。この場合は七十度といいますから、巻き立て炭層である。あるいは平層炭層がある。こういうような状態で、非常に炭鉱構造自体が、いわば比較をしますと、ヨーロッパと違って、単位炭鉱ごとにずいぶん相違がある。こういう面で保安対策なり保安監督というものが特に強化が望まれる一つのゆえんではないか、こう私は考えるわけです。  それとまた、炭鉱開発が非常に浅いために、安易に石炭を掘ることができる。ドイツのように、四百メートルないし六百メートルくらいの地下に炭層がある場合には、当然骨格構造は近代的に、合理的に、しかも相当資本をかけて掘るので、それによって出炭計画なり採掘計画なりをきめますから、大資本でなければ石炭はやり得ないというのがヨーロッパ一般常識でありますから、そういう面から考えても、この保安監督官というのは、はたして充実されておるかどうか、妥当なのであるかどうか、こういう問題が、私はやはりこの際検討しなければならぬ問題ではないか。いわば石炭は私企業とはいえ、国民経済立場から政府相当政策助成によって、石炭企業というものが経営されておる、こういう現状にかんがみますと、少なくとも保安監督管理というものは、もう少し国のほうで統一的に管理をするというくらいのかまえがあっていいのではないか。もちろん石炭答申に付随して保安答申がなされておりますけれども、私は第三者的にチェックする体制は、むしろこれはほんとうに少なく、自主的な保安をやるのであるけれども、チェックするのには統一的なチェック方法を考えていいのではないか。そうでなければ、やはりいろいろ問題が起きるのではないか、こう思うわけです。この最大の要因は、新しい石炭政策のもとに、非常に炭鉱自体金融に苦しみ、出炭をしなければその山の金融が成り立たないという現実的な問題があるわけです。ですから一定量石炭を出さなければ、いわば金融面でストップしてしまう。黒字のあるところでも、金融がとまれば破産をするわけですから、そういう問題がやはり非常に強く、傾向として今日あらわれておるわけです。  こういう現状にかんがみ、今後の石炭を展望する場合に、保安の第三者的なチェックというような——もちろん内部チェックもあるでしょうけれども、統一的な管理方式によるチェックを強化するということが、どうしても必要ではないか、こう考えるわけですが、この点について、保安局内部議論されたことがあるかどうか。答申をする場合に中央保安協議会でそういうことが議論されたことがあるかどうか。またそういう点についての見解があれば承っておきたい。
  29. 高木俊介

    高木説明員 いま一つ監督官の質の問題でもあろうかと思います。なお一つは統一的な管理方式という問題じゃなかろうかと思います。それに対しまして、御承知のように、昨年の暮れ、保安のほうで答申になっております答申の内容に、いわゆる監督官の質の向上という点もうたわれておるところでございまして、今後質の向上という問題につきましては、御存じのように監督官研修制度という制度をとりまして、できるだけ山の現状あるいは広い知識を持った上で、監督指導ができるという体制の方向に、いろいろと研究しておる状況でございます。  なお、次の統一的な管理方式という問題につきましては、これは議論といいますか、一応石炭保安答申をやります前の段階では、いろいろと委員会の中で検討されたところでございます。それにつきましては、現在の制度のもとではあくまでも自主保安ということをたてまえにし、それをチェックするというのが監督官の仕事というようなたてまえをとりまして、チェックするにしても監督官の質の向上という点が問題になりますので、第一番目は、まず監督官の質の向上というほうにいくべきではないかという話があったことは事実でございます。
  30. 岡田利春

    岡田(利)委員 内部チェック方法として、現在の保安法規で、いわば保安監督官というものが存在をいたしておるわけですが、特に炭鉱災害の頻発の現状にかんがみて、労働者側の推薦の保安監督員補佐員という制度があるわけです。しかし新しい石炭政策なり、今後の炭鉱保安を考える場合に、保安に関する労働者のもう少し積極的な参加を考えるべきではないか、いわば保安監督員補佐員ではなくて、労働者側保安監督員もしくは副保安監督員、こういうような積極的な方法で受けとめるべきではなかったか、こういう判断を実は持っておるわけです。そういう点については議論をされたのかどうか、労働者側からそういう意見が出たかどうか、また保安監督員補佐員制度を設ける場合には、学識経験者及び政府でも、この際、保安監督官ないし副保安監督官を置きたいという意向もあったことは事実でありまして、そういう面については議論をされておるのか、それともそういう制度について見解があれば、この際、承っておきます。
  31. 高木俊介

    高木説明員 補佐員制度あるいはいま炭鉱御存じのように保安委員会というのがございます。これは労使両方からの各山での委員会でございまして、この活用というものを十分はかるべきであるということで保安答申を出します前の委員会では十分検討されたところでございます。  なお、補佐員制度についても、組合側のほうから補佐員制度の拡充という点で要望が出ております。しかし現在の補佐員制度がはたして十分機能を果たしておるかどうかという点にも疑問がございますので、現在石炭委員会のほうで引き続き検討するという段階になっております。
  32. 岡田利春

    岡田(利)委員 労働者側保安監督員補佐員が、保安監督官にいわば意見具申をする。保安管理者に勧告する権限が保安監督官にはあるが、監督員補佐員にはないわけです。しかし保安監督員補佐員監督官に対して、労働者側立場から監督官にこういう点について改善を要請すべきである、こういう意見を出した場合に、それを把握いたしておりますか。
  33. 高木俊介

    高木説明員 現在の制度上からまいりますと、監督員補佐員ではございませんで、監督員が直接監督官のほうに意見具申をするという制度になっております。補佐員監督員を補佐するというたてまえで、事実鉱務監督官のほうに直接意見具申制度上は認められてはおりませんけれども、おそらく現場のほうでは補佐員のほうから意見が出ることもあるのではなかろうかというふうに想像をされます。その場合監督官が、補佐員だから意見を全然聞かないというようなことはないものと信じております。
  34. 岡田利春

    岡田(利)委員 この議論はまたいずれいたしますけれども、私はやはり労働者側保安監督員補佐員を設けたということは、その意見が非常に大事にされなければならない、こういう意味で設けられたと思うのです。それが監督官を通じて管理者に言う場合に、それは言う場合もあるでしょうし、言わない場合もあるかもしれない。そうなると問題があると思うのです。ですからそういう場合に、積極的に労働者側監督員補佐員がどういうことを意見具申しているか、監督員に言っているかという点の把握も保安監督行政として、きわめて制度上新しい制度を設けたのですから、重要ではないか。この点について特に注意を払って検討しておいていただきたい、こう思います。  次の問題は、炭鉱保安の展望の問題でありますけれども、日々技術革新が行なわれておる今日の炭鉱では、保安対策常識というものも大きく変わりつつあるのではないかと思うのです。いわば集中化された採炭方式、もしくは非常にスピードアップされた採炭方式、こういう形でいかなければ、これに対応する機械を配置しなければ、生産能率が上がらない。したがって生産を集中化するか、集中化しなくてもスピードによって一定の量を確保するか、こういう方式になっていくわけです。それをやり得るものは、すべて電動機によるものである。新しい機械みなその方法なんです。昔はガスの多いところはコンプレッサー・エアで、これを動力としてやる機械等でやっておりましたけれども、今日の場合にはプロセス等も大きく変わっておると思うのです。これはいわば坑内はどこでも可燃物というものが存在しておる。これが最近の合理化されて、技術革新がされてきつつある炭鉱坑内現状だと思うのです。それが配置機械台数も 常に増加する、それだけに電気量もふえる、したがって送電ケーブルも大型化する、こういう傾向に非常に急速度に私は進んでおると思うのです。そういうこれからの技術革新に基づく保安対策石炭技術革新の展望に対応する保安対策、こういうものが新しい機械の配置、新しい採炭方式の採用に相対応して検討されなければならぬ問題ではないのか、こう私は思うのですが、この点についてはいかがですか。
  35. 高木俊介

    高木説明員 いま炭鉱の大型化、近代化に対しまして、それに対応する保安体制をしくということは、先生の御指摘のとおりでございまして、当然その方向に進めなければならぬというふうに考えております。  ただし保安局といたしまして、これに対応すべき処置といたしまして、四十四年度からは、炭鉱保安機器整備拡充費というもので、一応補助金が出ますれば、炭鉱で入れる機器に対しまして、補助金を支給するという制度をとって、できるだけ人手のぬかるようなところのあぶないというようなところに対する機器に対しましては、まだ規則でははっきりしぼっていない機種もございますけれども、行政面上、奨励するという意味で、補助金をとっておるような次第でございます。なお大型化に伴いまして、切り羽展開のスピードアップというようなことも考えられます。これに対しましては、ガス抜きというものに対しまして、四十四年度から新たに補助金制度を採用していただくということになっておりまして、あるいは坑内自然発火予防という見地から、密閉に対する補助金というようなことで、近代化に対する保安面からも、一応補助金あるいは事業団を通じての融資ということで対応していきたいというように考えております。
  36. 岡田利春

    岡田(利)委員 今日の新しい石炭政策を審議している最中でありまして、本院ではまだ四つの法律案が当委員会にも付託をされ、審議をされて曲るわけです。この情勢下において、このような災害を起こしたということは、雄別炭鉱当該会社の責任もきわめて重大ですし、社会的な影響もまたきわめて大きいと思うわけです。原因推定でありますから、その問題について詳しく突っ込むことはできませんけれども、しかしながら、この災害を契機にして、やはり石炭政策は、もう個別資本だけにまかしておくということでは、災害というものは防ぎ得ないんじゃないか、こういうわれわれの主張というものは、やはりあらためて思い返されるのではないか、こういう感じを私は非常に強くするわけです。しかもこういう災害一般的に炭鉱の労働力の確保に響いてまいりますし、当該会社の損失のみならず、石炭産業全体として大きな影響があることは、従来の災害傾向、その後の労務者の動向等から見ても容易に判断できるわけです。こういう点について、政府石炭政策というものは、そういう意味でむしろ私どもの主張を十分聞いて、石炭政策は個別企業ではなくして、産業全体として把握をするという方向に考え方を向けていかなければならないのではないか。特に保安の場合は最もそういう考え方が急を要する、こう思うのでありますが、この際石炭局長見解を承っておきます。
  37. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 新しい石炭対策につきましての岡田委員をはじめとする再編成的なと申しますか、そういう御意見はたびたび私ども承っておるわけでございまして、私どもは審議会の答申を受けまして、しかも政府部内での答申を受けた後の閣議決定に従いまして、法制、制度、予算の準備をいたしておるわけでございます。ただいま御指摘保安問題が、何がしか一元的な体制のもとでないと、保安の確保ができないのかどうかということには、保安局そのもので考えていただくべき事柄だとは思いますけれども、私自身保安の問題というのは、そういった体制問題だけで解決できるものであるかどうかということには疑問を持っておりまして、必ずしもこの点では、先生の御意見に御賛成いたしかねるものを持っておる次第でございます。
  38. 岡田利春

    岡田(利)委員 必ずしも賛成できる意見ではないということで、非常に残念でありますけれども、保安的見地に立てば、少しでも保安の問題が改善されるという道があるならば、それにまじめに取り組んで、その方向を指向していく、こういうことがいま石炭政策の場合に非常に大事だと思うのです。ここで議論しても、きわめて基本問題でありまして、時間がかかって議論し尽くされないと思うのです。ただ、だれが考えても、その企業が成り立っていくためには、それに伴うだけの能率を上げなければ採算ベースに合わない。だから鉱命だとかはある程度無視しても、石炭の出るような設計をする。こういう基本問題はどうしても避けられないと思うのです。余裕があれば保安体制を固めて、逐次それに対応して前進をするということになりますけれども、遺憾ながら今日の石炭個々の内容というものを検討するというと、私はそうなっていないと思うわけです。ですから体制問題ですべて解決されるのではなくして、体制問題と保安基本的な対策というものは表裏一体の関係にある。その上にいわゆる自主保安体制という形で、個々の問題について保安教育なり、また自主的な体制を強化することによって、いわば炭鉱保安の万全が期せられるのだ。この二つが相まって、炭鉱保安というものは私はできると思うわけです。局長は大体知っているんだろうと思いますけれども、なかなか体制関係しますと、意見をはっきり言わないようですが、今後この問題については、基本的にやはり検討されなければならぬ問題だと思います。同時に、本茂尻炭鉱は去る三十一日、会社、労働者側の集まった席上において、雄別炭鉱としては茂尻炭鉱は分離をしたいという考え方を提示をいたしましたことは、新聞紙上でも報道されておるわけです。いわば茂尻炭鉱はそういう意味で、一つの会社の考え方が示されて分離の会社にする。そして鉱区の調整なり全体の長期的な開発、展望の一翼をになわせる、こういう状態に置かれておりますから、山の状態もこれをめぐって非常に不安動揺の状態であったと思うのです。現在では閉山反対だとか、町民大会が開かれるということもございましたし、その上の災害でありますから、私は調査に行く前に、もうすでにその山の状態というものは想像にかたくないと思うのです。いわばこの災害の問題に対して、われわれは徹底的に調査をする。責任の所在あるいは原因究明をする。このことがもちろん重大な問題であると同時に、今日の石炭政策下における茂尻炭鉱の位置、この答申に示されている茂尻炭鉱の問題というものは総合的に把握をしなければならないのではないか、こう私は考えざるを得ないわけです。こういう点について会社がそういう提案をいたしておるわけですが、石炭局としての、一連のそういう動きと今度の災害というものに関連しての局長見解を承っておきたい。
  39. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 私どもが承知しておりますところによりましても、本茂尻炭鉱での採算というものが必ずしも十分なものでないことは、かなりはっきりいたしておると思います。先ほど御指摘のございました、ごく最近時点において雄別炭鉱株式会社の経営責任者が労働組合との話しの場で茂尻鉱の分離ということについての考え方の一端を示したようであるということは、私も間接的に聞いております。ただこれは、その日、いわば私どもとしても突如としてそういう話があったということを承知している程度でございまして、分離についての具体的な構想、考え方というようなものにつきましては、私どもが正式に会社側から提案を受けておるということではなくて、経営者と労働組合との、今後どうもっていくかということに対するディスカスの中で、そういう考え方もあるというようなことを経営者側が話しておったという事柄ではなかろうかと思っております。  いずれにいたしましても、冒頭申しましたように、茂尻鉱の採算そのものは客観的に申しまして必ずしも満足すべき状況にはございませんので、いま一つの案として、新聞等に報道されましたものの是非はともかくといたしまして、何らか茂尻鉱について措置をとる必要がある、何らかの考え方のもとに、どのようにもっていくかということの見きわめをつけるべき状況にあるということは、私もそうであろうと思います。これはまず第一義的には経営者のほんとうの判断、その判断労働者諸君との意見の交換の結果における結論の出かたというものを私どもは見守りたいわけでございますが、どちらかの提案でございましても、実行不可能あるいはどちらか側に非常に問題が残る、経営者側にもあるいは労働者側にも非常に問題が残るというようなことでは、今後の茂尻鉱のあり方についてのはっきりした見通しを持てるということには相ならないと思いますので、やはりこれはかなりの時間をかけましても、的確に見通しをつけるべきだ。御指摘にございましたように、何がしかそういう悪い状況にあることが今回の事故の間接的なと申しますか、あるいは心理的な動揺というものが目に見えない形で事故原因につながっておるということがないとはいえないという感じもいたしますので、やはり炭鉱の存廃あるいは存続の場合のあり方というものについては、明確な見通しを労使ともしっかり見きわめてもらうということが、今回の経験に関しましても大切なことでございまして、どうしたらいいか気迷いの中で心配ばかりしておるということがいいことだとは私も考えませんので、岡田委員等からも承っておりますようないろいろな考え方があり得ると思います。この際具体的な問題としてどちらか側にこだわることく、できるだけ広くかつ長期の見通しが持てるような判断というものを、まず労使間で持ってもらうということを私は期待しておりますし、そのために私どもが相談に乗れることがございましたりあるいは指導を加える必要がございますれば、十分にこれに対処いたしたいと考えます。
  40. 岡田利春

    岡田(利)委員 この災害を契機にして各報道関係の報道をずっと見ますと、石炭政策とこの災害との関連というものについて、それぞれの立場で詳しく報道されておるわけです。いわばそういういままでの石炭政策の中における茂尻鉱の位置、それと今度の災害、こういう中で、現地の情勢というものは相当な不安、動揺、災害の悲しみと動揺というものが入りまじって非常に複雑な状態のるつぼに置かれておる、こう私は想像せざるを得ないわけです。特に答申の場合に、鉱区の統合あるいはまた企業の分離統合、共同行為、こういう表現のしかたで答申が書かれておるわけですが、いまの石炭政策をこのまま進めるとすれば、その意味は、北空知炭田の総合開発を展望して茂尻の問題をどうするかということを、答申は、個別企業の名前はあげていないけれども、端的に書いているんだと理解しているわけです。そういたしますと、これは単に労使だけの問題ではなくて、そういう答申の趣旨に基づいた把握のしかた、こういうものもある程度——他の場合と違って答申が方向を呈しておるわけですから、当然政府自体も積極的な姿勢で把握しなければならぬのではないか、こう思うわけです。  そこで当面は、災害に対しては原因を徹底的に究明する、原因に対応して責任を明確にさせるということは当然のことでありますが、それと同時に、この災害原因究明され、それに対応する責任というものが明らかにされたあとには、本件の茂尻炭鉱については、鉱区のいろいろな関係もあるわけですから、むしろ積極的な調査を徹底的に行なう、その後の調査、展望を行なうという程度の姿勢はやはりないと、災害のそういう問題と山の問題とが入りまじって、混乱は長期的にずっと続いていくのではないか。そのために、機を逸すれば結局はタイミングをはずして、適切な施策というものも時間が経過したために成り立たないという可能性があると理解せざるを得ない炭鉱ではないか、私はこう思うわけです。そういう点について、特に本院から調査団も出ますので、局長見解を承っておきたいと思います。
  41. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 茂尻鉱に限定して申し上げますならば、茂尻鉱の所在しております空知地区の諸炭鉱の鉱区関係というものが鉱区調整的な考え方で将来展望を立てる必要性がある個所といたしましては、全国を通じましておそらく一番緊要度の高い個所であろうということは、私どもも御説のとおりだと思います。したがいまして、これら地区の具体的な今後の展望につきまして、他地区にも増して積極的にかつなるべく早くそういう結論を持ちたいという気持ちにおきましては、岡田先生の御意見と私は変わりません。ただ、検討されますと、おそらくいろんな案があり得ると思いますが、その際の一般論と申しますか、原則論として私は先ほど申し上げたのでございますが、ある案が出ましたときに、経営者側に難色が出てくることもあります。それから労働組合側に難色が出てくることも起こり得るわけであります。それを指導と懇談によって解決する努力は私どもとして逃げる気はございません。避けないで積極的にやろうと思いますけれども、あくまでこれを強制するたてまえにはございません。その意味において、どのような案であれ、労使がぴったり呼吸をそろえてこういうことでいこうではないか、これが複数以上の企業に関します場合でも、それぞれの企業の経営者あるいは労働組合というものの呼吸がそろってないものを無理に強行いたしまして、かりにもし事故のようなものが出ましたときに、それがその無理の結果だといわれて、あらゆる責任が政府に返ってくるというようなことが、私どもの積極的な呼びかけなり努力なりの障害になるということになりますならば、これはかえって私どもの、あるいは先生の御指摘の気持ちにそぐわないことに相なろうかと思いますので、事柄の性質上、第一義的には労使間でほんとうの腹がまえができなければいけないのだ、しかもその考え方というものが双方でしばしば非常に食い違った答え、対案が出てきがちなものであるということを申し上げたつもりでございます。ただ、不安定な状態でぐずぐずやっておったことがこういうことにつながらないかという御心配は、私も同様でございまして、もしそのことを優先して考えるのであれば、事柄の見きわめというものがそう違ったことには相ならないと思いますので、相なるべくは双方の意見が一致して、これしかないじゃないか、これに努力していこうじゃないかということになることを期待したいのでございまして、そういう意味での積極的な指導というものは、私どものほうも労を惜しむつもりはございません。
  42. 岡田利春

    岡田(利)委員 要は、本日は原因その他についてもまだ確定されておるわけではありませんから、いずれ政府並びに本院からも調査団が出ますので、その報告に基づいてまた具体的な問題は質問いたしたいと思います。ただ、私はいま申し上げましたように、きょう政務次官も現地にいかれるわけですが、私どもは現地の情勢というものは、災害を見ておりませんけれども、一つの経過からかんがみて、いま申し上げましたような状態に置かれておるだろう。また山にいる従業員、家族、地域社会の人々もそういう気持ち、非常に不安な、災害と同時にそれに輪をかけた別な不安も織りまざっておるだろうという、こういう理解は容易にできるわけであります。したがって、とにかく原因究明と遺家族の救護対策立て、それにはそれに対応する責任を明確にさしていく、そうして今後の災害に対して対処するということが第一であると同町に、第二の問題、いま局長が言われたように、労使の意見が一致をする、そういう中で一体どうこれに対応するか、こういう点については、この災害とは別な問題として冷静に処理しなければならないというき然とした、びしっと整理された態度というものが、特に私はこの茂尻炭鉱の視察調査政府が行なうにあたっても大事ではないか、こう思いますので、その方向でひとつ政府として対処されますことを強く要望いたしまして、本件についての質問を終わりたいと思います。
  43. 平岡忠次郎

    平岡委員長 田畑金光君。
  44. 田畑金光

    ○田畑委員 詳しいことは、いずれきょうからあすにかけて現地調査をやりますので、その結果に基づいてまたやりたいと思っておりますが、いまの質疑応答をお聞きして感じたことでありますが、昨年の十二月に中央鉱山保安協議会から答申が出ておるわけであります。その趣旨は、生産と保安というものがあくし駅でも均衡を確保して、石炭産業の安定を目ざさなければならない、こういうことになっておるわけであります。これに応じて、今年度の予算措置の中におきましても、保安確保の面ではいろいろ積極的な方向に予算措置がなされておることもお見受けするわけでありますが、そういうさなかに、今回のこの重大災害発生した、まことに遺憾のきわみでありますが、中央鉱山保安協議会が出したこういう権威ある答申というものは、これが下部末端にどのように具体化されてきておるのか。これは法律となり予算となり初めて具体化するのであるか、あるいはこのような保安協議会の答申に基づいて下部末端における、特に第一線に立つ保安監督署なりあるいは保安監督官等においては、この意を体し、どのような鉱山保安監督上の努力を払ってこられておるのか、この点について承りたいと思います。
  45. 高木俊介

    高木説明員 昨年の十二月末に中央鉱山保安協議会で受けました答申につきまして、要はこれの実施でございますけれども、その答申を受けまして規則改正をやったのは、前に局長も説明したとおりでございます。それで、その後どういうように地方に反映さすべく実施しておるかという問題につきましては、三月の末、各局ともでございますけれども、地方鉱山保安協議会というものが地方にございまして、その地方鉱山保安協議会で昨年度の答申に対する今後の持っていき方ということで十分検討されておるところでございます。  なお、地方の保安監督局あるいは監督部におきましては、統括者会議というのを実施しております。この統括者会議におきまして保安答申の意図するところを十分局部のほうで各社の統括者、いわゆる所長方でございますけれども、お伝えし、山におきましては、まず経営の中に保安というものを入れて、バランスをとったところで仕事をしていただきたいのだということを強く要望いたしております。  なお、二月は保安局長が北海道のほうに参りまして、北海道の各山の統括者を全員招集いたし、同じような趣旨で強い姿勢で今後臨むということを説明いたしております。  なお、東京におきましては、石炭協会の中に大手六社で保安対策委員会というのをおつくりになっておりますけれども、この保安対策委員会は社長あるいは副社長、重役クラスの方でおつくりになっておる委員会でございまして、その委員会に、三月の中ほどであったと思いますけれども、同じく保安の今後の持っていき方ということに対しまして十分な注意を払っていただくということを局長から強く要望しておるところでございます。
  46. 田畑金光

    ○田畑委員 この答申を読んでみますと、三十二年から四十二年までの十年間に、災害率は七二%の上昇率を示しておる。石炭以外の鉱業を含めて他産業の災害率はすべて下降傾向を示しておるが、石炭鉱山の災害率は、昭和四十二年を見ると、全産業平均に比べて十三倍にのぼっておる。こういうような状況であることを指摘しておるわけです。したがって、いかに強弁しようとも、やはり斜陽化あるいは合理化の過程において保安がお留守になってきたということは、数字がはっきり示しておると考えるわけであります。また、鉱山保安局の資料を見ましても、なるほど災害の件数とかあるいは死亡者の数であるとか、そういう表面的な件数なり数字は減っておるが、稼働延べ百万人当たりの災害率を見ますると、これが非常にふえてきておるという事実、特に昭和四十二年度は九八八・六二、こういう数字を示しておるわけであります。こういうことを考えてみたとき、今日までの長い合理化の過程において保安というものが非常におろそかになされてきた。なるほど自主保安体制というのが今日の保安を確保する中心であるにいたしましても、政府立場からいうならば、指導監督行政等の面において十分反省すべき点があったであろう。このことは、いま申し上げた数字が明確に示しておると考えるわけであります。なるほど今度の予算措置を見ましても、先ほど申し上げたように十四億二千六百四十二万という新しい鉱山保安の確保のための予算措置がとられた。あるいはガス爆発あるいはガス突出防止のためのいろいろな措置であるとか、あるいはまたいろいろ採掘個所の密閉を促進する経費についての補助措置であるとか、いろい予算措置はとられたわけでありまするが、私は、今日までの合理化の過程において、生産と保安というものがこの中央鉱山保安協議会の答申指摘するとおりに、非常にアンバランスになっていた、こういうことは率直に政府当局としても認めるべきである、このように考えるわけでありますが、この点について石炭課長見解並びに石炭局長の考え方をひとつ明確に承っておきたいと思います。
  47. 高木俊介

    高木説明員 いまの問題につきましては、先生の御指摘のとおりでございます。保安局といたしましては、年々保安計画というのを各山から提出さしております。保安計画の中にいわゆる掘進と採炭というもののバランスをとらすという意味で、本年度からは強くその点を指摘した表にして各分局のほうで現在ヒヤリング中でございます。いわゆる掘進、採炭というもののバランスということが、保安上一番問題があるんじゃなかろうかというように考えられますので、掘進面におきましては、いま申し上げますように、いわゆる採炭保安あるいは掘進というもののバランスをとった上で山の採掘を実施していただくように、強い要望を出しているところでございます。
  48. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 新しい石炭対策を策定しますのに、保安問題から出てまいります要請というものは、私どもといたしましても一〇〇%これを尊重して対策の中に組み入れるという方針で、鉱山保安局にはその趣旨で考えていただくということを連絡いたしまして、御承知のように、予算の中でもガス抜き、密閉についての新しい補助制度、それから私どものほうでいまやっております再建交付金の交付にあたりましても、この再建整備計画の中に、生産に関する計画と別個に保安確保に関する計画を新しく取り入れさせるということも、前回と異なりまして追加をいたしておるわけであります。鉱山石炭局といたしましても、保安局の、保安上これが必要であるという結論に対しましては、最高限にこれを尊重してまいりたいということで取り組んだつもりでございます。したがいまして、先ほど石炭課長は生産と保安のバランス、こう言っておりましたけれども、私のほうは、極論すれば、保安が成り立たないのであるならばやめてもらってもかまわないというくらいの気持ちで考えておりますので、その点では決して無理なことを企業に求めるというつもりは毛頭ございません。
  49. 田畑金光

    ○田畑委員 先ほどの質問にもございましたが、私もけさの新聞を見て初めて承知をしたわけでありますが、茂尻炭鉱は、雄別鉱業所としてはこれを分離会社に移していく、そうしてまたその他の三山についても縮小せざるを得なくなっておる。ことに昭和四十二年の立て坑の開発が会社に非常に大きな経理上の圧迫を加えておる。この開発に二十億以上の資金を投下したけれども、実は開発をしてみたが、鉱内の条件がこれに伴わない、そういう事態に直面して分離問題が出ておるということ、分離は即縮小であり閉山に通ずるということで、赤平においては市長を先頭に閉山反対運動が巻き起こり、その三日後に今回の事故だというようなことを見たわけでありまするが、今回のこの災害発生というのは、経営の苦しい、経理の圧迫されておる、そうして斜陽化の典型的な山に起きた事故である、こういうような印象を私は強く受けるわけでありますが、この点はまさに今回の中央鉱山保安協議会の昨年の十二月の答申にありますように、生産に重点がかかり過ぎて保安という面が非常におろそかになってきた、そういう山ではないかという感じを強く受けるわけであります。ことにいま石炭局長の答弁がありましたが、ことしの新政策から、初めて再建整備計画の中で保安計画も同様に生産計画その他の計画と同じレベルで考慮するというようなことに取り上げられたわけで、私は、そういう面ではいまの中川局長の御答弁は保安を最重要視して今日に来ておるということでありますが、しかし現に今回の新政策のもとにおいては、ようやく保安計画が他の諸計画と同じレベルに引き上げられたという、そういう面から申しますと、政府保安に対する取り組み方も非常に消極的だった、私はこういうことを指摘せざるを得ないと考えるわけでありまするが、この点についての御見解を承りますと同時に、雄別鉱業所の今日の経営は一体どういう状況になっておるのか、この点もあわせてひとつ局長から御答弁を願っておきたいと思います。
  50. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 私ども先ほどお答えいたしましたのは、再建交付金の交付によります再建整備計画というものは、むしろ経理的な見通しというものでとっておったわけでございます。従来は保安についての長期的な考え方というものは、毎年度の個別実施計画の策定の際に、私のほうと鉱山保安局との両者で協議をしてやってきたということでございまして、取り扱いそのものは、実態はさように変わってはおりませんけれども、少なくとも今回の場合は五カ年間に相当するところはむしろ保安確保の点をはっきりしてくれ、収支上の問題などは五年先のことだから、そう明らかでなければ、多少はっきりしないまま問題があるのならあると返ってきてもよろしい。しかし保安についてははっきりしてくれということでこれを最重点的に取り上げたということでございます。だからといって従来保安の要請を検討していなかったか、こうおっしゃるのでございますならば、それはそういうことではなくして、毎年協議をしてやってまいりました。しかしこの際、本来制度といたしましては異質のものであるかしれないけれども、保安を優先させるという考え方を気持ちの上でもはっきりわかるような制度にしておいたほうが、気持ちの上での引き締まりというものがはっきりするではないかということで出したつもりでございます。これを前との比較で、今回のことでようやくそうなったのかというお受け取り方をされますとはなはだ残念なのでございまして、より明確にし、はっきりしようという気持ちであったというふうに御理解をいただきたいわけでございます。  なお、雄別炭鉱につきましての経理的な状況はどうなのかという御質問でございますが、これは本来でございますと、自由なる企業の経理内容を監督者である役所の立場からいろいろ言うということは許されないことだと思います。したがって具体的な数字でございますとか、そういうものを公式の場で私が申し上げることは適当ではないと思いますが、概括的に申し上げますならば、石炭企業全体が苦しくて、今回の新しい石炭対策というものを考えざるを得なかったという状況でございますから、全体が苦しいのでございますけれども、雄別炭鉱はその中でも苦しいほうに属しておることは間違いのない事実でございます。これだけは、せっかくの御発言でございますからお答えをしなければいかぬと思いますが、個々の内容等につきましては、公の立場での発言はひとつ差し控えさせていただいてお許しをいただきたいと思います。
  51. 田畑金光

    ○田畑委員 いまの局長の答弁で、苦しいほうの山のクラスであったという一言で私は尽きると思うのです。そういうわけで、特にいま分離が起きておるあるいは縮小が起きておる、こういう山に今回このような事故が起きたということは、われわれ第三者の立場から見ますと、起こるべくして起きた災害であるという一面もいなめないことだと見るわけであります。先ほど鉱山保安局石炭課長からいろいろ御答弁がございましたが、われわれは、詳しいことは現地調査を待たなければ、あなた方の責任だとかどうとかいうようなことはやめますが、ただこれまた新聞で拝見いたしますと、たまたま当日この茂尻炭鉱には滝川鉱山保安監督署の署長以下が詰めていた、こういうわけであります。この山については、先ほどのお話を聞いておりましても、ガスの多い甲種炭鉱として注意されてきた山である。そしてまた監督官についても、常時一ないし二名現地に派遣をされていた。こういう山で、火源が何であるか知らぬがとにかくガス爆発が起きたということは、これは皆さんとしてもいろいろ反省をし考えてもらわなければならぬ点があると思うわけでありまするが、この現地にたまたま当日署長が行っていたというのは、これはどういう目的で行っていたのか、そこらあたりをひとつ御説明願いたいと考えております。  なお、私は災害原因その他爆発の問題等については、調査の結果を待ってさらに質問をしたいと思いまするが、いま指摘した点をひとつ御説明願いたいと思います。
  52. 高木俊介

    高木説明員 滝川の事務所から現地に行っていたということは、実はけさ方連絡を受けたのでございますけれども、巡回検査で行っていたのかあるいは総合検査かあるいは性能検査か、どういう目的で行っていたかというのは実はまだ調べておりませんので、至急調査いたしまして先生のほうに御連絡いたしたいと考えます。
  53. 平岡忠次郎

    平岡委員長 大橋君。
  54. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 関連して二問だけお尋ねしてみたいと思います。  今度また炭鉱事故が起こりまして、ほんとうに痛ましい限りでありますが、私は今度の事故報告を聞いておりまして、その原因はいわゆるハッパ採炭のそのハッパのときの引火であろう、大体そのように推測されるという話を聞きましたけれども、このハッパ採炭というのは、従来の採炭のあり方からいけばごく常識的なといいますか、通例的なやり方であろうと私は思う。このような方法をとりながら今回の事故になったということは重大問題だ。  そこでお尋ねしたいことは、現在このようないわゆるハッパ採炭というふうな方法をとっている山というのは全体でどのくらいあるのでしょうか。
  55. 高木俊介

    高木説明員 資料を持ち合わせておりませんので申しわけございませんけど、後ほど先生のほうに御報告させていただきます。
  56. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 大体のところでわかりませんか。大まかでけっこうですがね。
  57. 高木俊介

    高木説明員 出炭量から見ますと大体八〇%ぐらいが機械出炭ということになっておりますので、その比率からいけば約二〇%ぐらいということになりますけれども、今度の災害を起こしました切り羽は、これは急傾斜の層でございまして、機械採炭をすぐ適用するというような切り羽ではございません。ただし、急傾斜につきましても事実上いろいろな機械採炭ができないかということは現在研究しておりますので、そういうものが完成しましたらおそらく適用になるというふうに考えております。  なお、いま先生指摘の点のハッパだけの切り羽というのは案外少ないんじゃなかろうかと思われます。これは機械で下をコールカッターあるいはホーベル、そういうものですかしまして、それと同町にハッパを併用しておるという炭鉱相当ございますので、ハッパだけの切り羽あるいは機械だけの切り羽あるいは併用している切り羽というものにつきましては、資料を調べた上で御連結いたします。
  58. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いまの説明で大体わかりますが、ほとんど機械化されていて、ハッパ採炭はごく一部分であるというお話でございますけれども、一部分といえども事故が起こればこのような重大な事故になるわけであります。いまのお話のように徹底的にその実情を掌握して、保安の再教育といいますか、これをやるべきであろう、こう私は思います。  次にお尋ねしたいことは、ハッパをかける場合、保安技術職員がその現場にいて、ガスの有無を測定し、安全を確認した上でその作業が進められる、こういうことだろうと思いますが、その場合ガスを測定する保安技術職員といいますか、これは一人でもよろしいのですか、それとも複数になっているのですか、この点ちょっとお尋ねしたいのですが……。
  59. 高木俊介

    高木説明員 これはハッパ前には測定しなければならぬという規則がございますので、この事故を起こしました災害個所におきましても測定しておると思います。いま御指摘の一人あるいは二人というようなことでございますが、これは別に三名いなければならぬとか四名いなければならぬというような規則はございません。一人でもけっこうでございます。なお災害を起こしました切り羽の中には係員が五名入っていたということは報告を受けておりますけれども、その五名の係員が全部発破係員だったと思われませんので、普通の坑内保安係員、発破係員を含めて五名入っていたというように報告を受けております。
  60. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 一人でもよろしいし、二人でもよろしい。これはまだ規定がないというお話しでございますが、やはりこういう重大な事故につながる作業でございますので、やはり測定する責任者というのは一人では私はだめだと思うのです。必ず複数ということを義務づけて、お互いに確認し合った上で、その作業に入る。でないと、単独で判断しますと、あるいはその人自身の心理状態等も関係いたしまして、思いがけない間違った判断や、何といいますかとるべき責任をとらないで自分の気持ちだけでだいじょうぶだろうというようなことで作業が進められるような不安も感ずるわけです。私はやはりこれは一人でなくて必ず二人以上の者が確認し合うという義務づけが必要ではないかと感ずるのですが、その点はどう思われますか。
  61. 高木俊介

    高木説明員 一人でやったがいいか、あるいは二人でやったがいいかというような問題でございますけれども、ハッパをかけます前に測定したという記録は必ず残すように、保安日誌という制度がございまして、日誌のほうに、これはハッパだけではございませんけれども、確認の結果を日誌に明確に記載するようにさしておりますので、一人だからどうだという問題にすぐつながる問題ではないのではなかろうかと思います。いま先生の御指摘の点につきましては十分検討はいたしてみたいと思います。
  62. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 他の用件がありまして時間がございませんので、きょうはこれで終わりますが、現地調査しました上で、再び質問をさしていただきたいと思います。  これで終わります。      ————◇—————
  63. 平岡忠次郎

    平岡委員長 炭鉱離職者臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑の通告がありますので、これを許します。岡田利春君。
  64. 岡田利春

    岡田(利)委員 ただいま雄別茂尻炭鉱災害について政府から説明を受け、質問をいたしておったのです。この際、この災害に関して労働大臣の所見を伺っておきたい。
  65. 原健三郎

    ○原国務大臣 雄別炭鉱茂尻鉱業所におけるこのたびの災害に対し、多数の犠牲者が出ましたことはまことに遺憾千万に存ずるところでございまして、犠牲者方々に対しては衷心御冥福を祈りたいと思います。またこの機会に災いを転じて福となすと申しますか、労働災害の起こらないように、ことに炭鉱におきましては非常に大きな災害が起きますので、この防止については今後一そう尽力をしていきたい。またいわゆる災害の補償につきましても、請求があり次第直ちにこれの万全を期したい。さらにきのうから労働省で検討したのでございますが、このような事故発生に伴い、労災保険の給付等についても、その内容をもう少し改善されるべきものであろうというようなことで、この労災保険給付の改善について現在労災保険審議会に答申を求めて鋭意検討をしていただいておりますので、その審議の結果が出ましたら労災保険の給付の内容も改めたい、こう思っております。  それからただいまの災害につきまして、労働省といたしましても、現地北海道労働基準局において直ちに災害対策本部を設置いたしまして、ガス爆発とのことでございましたので、美唄労災病院から高圧酸素タンクを携行の上、医師及び看護婦を派遣させるとともに、衛生課長現場に急行させております。  それからまた、労働省本省からも補償課長を急派し、現地局長とともに一酸化炭素中毒症に関する健康診断の実施、災害補償対策等の推進に当たらせ、さらに本日、安全衛生部長を現地に派遣いたしまして、それら労働基準関係並びに安全衛生関係等々総合的対策の指揮に当たらせることにいたしております。  これから労働省といたしましても、人命尊重の見地から、こういう災害の再び起こらないよう通産省とも密接な連絡をとり、災害防止に全力をあげていきたいと思っております。
  66. 岡田利春

    岡田(利)委員 この際、特に労災関係の審議会でいま労災保険の改正についてその答申を求めているわけですが、これは昨年私はこの問題について質問もいたしておりますけれども、非常に審議がおそいのではないか、こういう感じを私は非常に強く持つわけです。特に最近の災害の頻発の傾向がかんがみて、たとえば自動車関係については、運輸省では近く三百万から五百万に、もちろんこれは保険の性質は違いますけれども、その補償額を引き上げたい、こういう積極的な態度を示しておりますし、また各民間の状態を私どもが調査をいたしますと、いまの労災法ではとても遺族補償はできない、そこで結局労使で特に交渉して、高いところでは六百万から八百万、炭鉱のような場合でも八十万、非常に低いわけですが、メタル関係では百二十万程度、いずれにしてもほぼ百万円程度から八百万程度上積みをして労使間で協定をする、こういう実績すらも各労使間では出てきているわけですね。また最近の所得の向上の面からいっても、これらの問題は、労働省としても、切り離しても早急にこの面については答申を得るべきではないか、労働災害の頻発に対応するこれらの問題の対処のしかたは、審議会で審議をしているのだから、こう言われますけれども、諮問者としてやはり早急にこれは積極的に答申を求めていくという姿勢が大事ではないか、こう思うのですが、この見通しはどうなのか、またそういう点に対する態度は一体どうなっているのか、この際承っておきます。
  67. 原健三郎

    ○原国務大臣 御説ごもっともでございまして、こういう労働災害の頻発でございますので、早く答申をいただくよう審議会のほうへ要請もいたしたいと思っております。  それから、御説のごとく、労災保険給付の内容ももう少し改善して額もふやしたい、こういう方針で審議会へ答申を求めております。  重ねて申しますが、急いで答申いただきたい。非常にのんきなことを言うようですが、年内には答申は必ずあることだと考えております。
  68. 岡田利春

    岡田(利)委員 私はこの際特に要望いたしておきますけれども、ただいま大臣の答弁では年内——昨年質問をいたしましたときには来春早々は見込みがあるのではないかというような話を聞いておるわけです。ただいま聞きますと年内というので、ありますから、政府が年内というのはぎりぎり年末だろう、実はこう受け取らざるを得ないわけです。年内といっても、年度といえばいま四月が始まったばかりですから、どういう目途になるのですか。
  69. 和田勝美

    ○和田政府委員 私からお答えを申します。  昨年、約半年くらいかけまして審議会においていろいろの関係方面の意見を整理されました。されました結果、ことしの一月から小委員会で具体的な審議に入られました。その中身を見てみますると、労災保険制度としては画期的な全面的な制度の見直しをするという心積りでスタートなさっておりますので、非常にむずかしい自動車賠償責任の問題だとか、現行行なわれているいろいろの他の保険あるいは民間の実績、これらについてひとつ十分審議を尽くそうというようなお気持ちでございますので、審議会においてはそういう大問題だけれども大体四十四年のうちには結論を出そう、こういうお心組みのようでありますし、こういうことがわかりましてからなおいろいろの御意見が各方面から寄せられております。それらのものも全部取り込んでの審議であり、外国諸法令あるいはILOの条約、非常に広い観点で考えていらっしゃる関係で、いま大臣から申し上げましたように年内くらいかかるのじゃないかというようなことでございますが、小委員会としてはたいへん御勉強でございまして、毎月大体二回くらいの会合をお開きいただいておるという事情であり、私どもも相当膨大な資料も提出をいたさねばならないように思いますので、それらのことを勘案いたしますと大体年内一ぱいくらいはかかるのじゃなかろうか、こういうことでございますので御了解いただきたいと思います。
  70. 岡田利春

    岡田(利)委員 基準局長はおそらく審議会の事務務局メンバーに入っていると思うのですから、審議の経過についてはよく承知されておると思うのです。そこで目標は、基礎額は、もちろんこれはたとえばドイツやイギリスやヨーロッパの諸国に比べてわが国の労働賃金が基礎額として違うわけですから基礎額は別にして、算出する計算の率といいますか、この目標は大体現在のヨーロッパ諸国並みの方向を目ざしておるのかいないのか、この点についてお漏らしいただけませんか。
  71. 和田勝美

    ○和田政府委員 審議会では各国の例その他、あるいは民間が現実に行なっておりますもの等の資料も、いまそれぞれ整理をいたしておる段階でございまして、ただ先生御存じのように労災保険は原則としては基準法の使用者の無過失賠償責任の裏打ちというかっこうにになっております。したがいまして、たとえば休業補償等にいたしますと平均賃金の六割という問題がございまして、これは世界的に見ましても一応その六割というめどにつきましては大体共通的なものがあるようであります。これらのものを、組合側の要求では八割にしたらどうかというような御意見も出ておりますが、理論的にもいろいいと非常に問題のあるところのようでございます。しかしそういう基礎的なパーセントのほかに、いろいろの付加的なものもございますが、あるいは遺族補償なんかの年金あるいは障害年金、この率につきましてはもう少し上げたほうがいいじゃないかという御意見相当強うございます。したがいまして、基本的なものの変更はなくても付加的なものでカバーし得るもの、あるいは基本的なもので上げなければならないもの、こういうようなものを総合勘案して新しい制度をつくっていきたい、こういうのが委員の皆さん方の大方の御意見のようでございますので、いま直ちにここでどのくらい払いますということを申し上げるのは差し控えさせていただきますが、そういうような意味合いで審議が進められておることを申し上げておきます。
  72. 岡田利春

    岡田(利)委員 この際特に私は希望いたしておきますけれども、今日わが国の労働力の供給事情といいますか、需給事情といいますか、こういう面から考えて、特にこれらの保険はいわばブルーカラー、筋肉労働者、危険作業に従事する者、この面に特に裏打ちとして保障として大事な役割りを果たしているのではないか。最近特にホワイトカラーに就職希望が多いですけれども、こういう危険作業や肉体労働面では非常に労働力が枯渇をしているという若年労働力にはきわめてきびしい傾向が出てまいっておるわけです。こういう点を十分展望してひとつこの面の検討を願いたいということをこの際希望いたしておきたいと思います。  次に労働省提出の法案に関連してお伺いしますけれども、今回の予算の中で、すでに説明されております。中で、産炭地域開発就労事業関係の予算が二十五億二千三百万計上されておるわけです。私どもが説明を受けておりますのは、その事業費単価は三千六百円であり、吸収人員は三千二百人、補助率は三分の二、吸収率は七〇%、こういう点の説明を受けておるわけですが、これでは実態を認識、把握することはなかなか困難であるわけです。具体的にひとつ、この開発雇用対策の内容というものについてどうなっておるのか、この際説明願たいと思うのです。
  73. 住栄作

    ○住説明員 産炭地開発就労事業の具体的な内容についてでございますが、まずどこの地域に実施するかということでございますが、これは産炭地域のうちで現在失業者が滞留しておる、さらに今後炭鉱の終閉山に伴いまして多数の失業者が見込まれるというところで地域の振興開発が特に必要とされる、そういう地域に実施してはどうだろうかというように考えております。  次に事業の内容でございますが、これはいま申し上げましたように、産炭地域の開発に資するということが目的になっておりますので、現在開発地域において実施されております公共事業の拡大等の産炭地域の振興事業との関連も十分考えながら当該地域の生活基盤の育成に必要な事業を実施していきたい。たとえば土地整備だとか道路整備、河川整備、プール等の福祉施設あるいは営造物の整備事業というようなものを考えていきたいということでございます。  この事業を実施する目的でございますが、一つはいま申し上げましたように、その地域の再開発に寄与する。と同時にそれによって当該地域に産業が振興されることになれば、そこにおのずから雇用の機会も増進される、そういうことも期待しながら失業者を臨時的にその事業に働いていただくということを目的として考えておるわけでございます。  以上、ごく大まかなことを申し上げたのでございますが、必ずしもまだ細部については明確にきまっておりません。いま申しましたような方針に即して具体的に内容を決定してまいりたいというように考えております。
  74. 岡田利春

    岡田(利)委員 事業の客体はどうなんですか。
  75. 住栄作

    ○住説明員 特に炭鉱離職者については御承知のように手帳を発給いたしまして、いろいろの就職促進措置を講じておりますが、そういう方ではなくして、炭鉱離職者手帳の発給の対象にならない炭鉱離職者とか、あるいは炭鉱関連産業からの離職者で労働能力の高い者というように考えております。
  76. 岡田利春

    岡田(利)委員 そうじゃなくて、私の質問しているのは事業をやる主体はどうなのか。
  77. 住栄作

    ○住説明員 これは都道府県または市町村を予定しております。
  78. 岡田利春

    岡田(利)委員 従来の失対事業とはどういう関連がありますか。失業対策事業というものは、各市町村にあるわけです。これとの関連はどうなんですか。
  79. 住栄作

    ○住説明員 この就労事業はいま申しましたような趣旨で実施するわけでございまして、事業主体から見ますと失業対策事業も御指摘のとおり県、市町村が事業主体となって国の補助を受けてやる。この就労事業も県、市町村が事業主体でございますが、国がそれに対して三分の二の補助をする。その点におきましては失対事業との差はございません。ただ失対業は御承知のように、自主的には事業の単価の問題とかで、この就労事業と比べますと非常に資材費その他の単価が低いということで、この事業はより高度な事業ができる。それから失対事業の失業者の吸収率につきましても、失対事業は失業者の吸収を主たる目的とするわけでございますから吸収率は一〇〇%でございますが、この就労事業は吸収率、これは吸収率と言っていいかどうか問題があるかと思うのでございますが、七〇%の離職者を吸収して事業を実施する。それから事業の内容も先ほど申し上げましたように、単価の関係もございまして、高度の部門をやる。そういうことで、事業の内容面においてかなりの相違があるというように考えております。
  80. 岡田利春

    岡田(利)委員 そういたしますと、事業単価は三千六百円ですが、労働賃金の日額はこのうちどうなるのですかというのが第一点。第二点は、補助率は三分の二でありますけれども、いまお聞きしますと、事業主体は県並びに市町村である。こうなりますと失対の関係とは若干違うのではないかという受け取り方もできるわけです。たとえば残る二分の一は都道府県、この中に市町村があるわけですから、そうしますと残る六分の一は都道府県で負担をし、六分の一は当該市町村で負担をするのかどうか。そういう制度になりますと結局事業の客体というのは、補助率はそうでありますけれども、市町村になるのではないか、こういう感じがするのでありますけれども、その点はいかがですか。
  81. 住栄作

    ○住説明員 この事業は性格的には公共事業と同一と考えておりますし、それから事業のやり方はこれは請負でやりますので、失対事業と違いまして賃金日額幾ら、こういうことでは実施する予定になっておりません。ですから賃金が幾らだということは、これは現在のところ考えておりません。  それから補助の関係でございますが、事業主体は先ほど申し上げましたように県、市町村でございます。それで国としましてはその事業主体に対して三分の二の補助金を交付するわけでございます。したがいまして、事業主体は県か市町村ということになると思います。県と市町村が共同して事業主体になるということはあり得ないと思います。  そこで、ただその県が事業主体、あるいは市町村が事業主体の場合に、その市町村に県なり道が負担金のような形式でその三分の一の一部を負担するかどうか、こういうことにつきましては、これは県と市町村あるいは市町村と県との関係になると思います。補助の対象としましてはあくまで県なり市町村で両者同時に対象になるということはないと考えております。
  82. 岡田利春

    岡田(利)委員 そういたしますと、県も市町村も事業主体となり得るということになりますと、その市町村の場合には三分の二の補助で三分の一は自分で負担をしなきゃならぬということになるわけですね。つまり県が主体となってやる場合は県の行政範囲はすべて市町村の行政範囲です。そうですね。市町村の行政範囲を総括したものが県の行政範囲ですから。そうですね。県がやる場合には必ずどこかの市町村をやるわけです。そうしますと、そこに地域の恩恵があるからといって県としては六分の一は県で見る、地元としては、市町村としては六分の一を見てくれということになりますと、アンバランスができるのではないか、こういう問題が必ず出てくると思うのですよ。そうだとすると、県だけが主体であるということになれば、またそれですっきりするわけですね。この点がもう少し詰めて明確でないと問題が残るのではないか、こう判断をするのですが、いかがですか。
  83. 住栄作

    ○住説明員 これは御指摘のとおり、たしか県がある地域で事業を実施する場合、それは地域住民に非常に関連しておる、当然のことだと思います。その場合に、ある地域で事業を実施する場合に事業主体になるのは県がいいのか、市町村がいいのかということがまず問題になると思います。それは事業の種類によりまして、たとえば道路でも、町村道もございますでしょうし、県道もございますでしょうし、そういうような事業の中身によっておのずから事業主体というものがきまる。ですからその地域にどういう事業を実施するかということがきまれば、それに基づいてその事業主体が市町村になるか県になるか、あるいはその事業が県も市町村も同様にやられるという場合には、県と市町村の調整の問題になると思いますが、大体そういう形式で事業主体としてはあくまでも県なり市町村がなる、こういうようにして実施してまいらないと、補助金の施行等につきましていろいろ問題も起こるかと思うのであります。
  84. 岡田利春

    岡田(利)委員 これは労働省石炭特会で同じでありますが、一応労働省の予算、通産省は通産省の予算があるわけですね。通産省の予算について今年度新しくつけられた予算は十億の産炭地の特別交付金という制度があるわけです。十億ですね。これを出すわけですよ。これはいわゆる産炭地域に出すわけですね。市町村に出すわけです。しかもこれは、大体今年度と前年度の閉山を中心にして逓減をする、こういう構想で出すわけですね。しかも市町村の議会ではまだこれは未確定でありますから、額がきまってませんから、いずれもまだ予算には計上されていないわけです。こういう一つのものが通産省のほうである。この関連性は、負担が伴うわけですから。当然あるのではないか。県にはないわけですね。市町村単位に行なわれるわけです。そういう面との事業の調整というものを当然考えられていかなければならぬのではないか、こういう判断をいたすわけですが、そこまで労働省は考えられておるかどうか。
  85. 住栄作

    ○住説明員 補助率は三分の二でございまして、三分の一が地元負担になるわけでございます。それでその三分の一の市町村ないしは県の負担をどう軽くするか、こういう問題でございますが、労働省のほうのこの事業に関連しましては、通産省の関係とは別に、たとえば三分の一負担額の六〇%については起債を認めてもらう、四〇%については、たとえば特別交付税で見ていただく、あるいはその起債につきましては自治省を介さぬといかぬわけですが、その元利償還に対しても特別交付税等によりまして地方の財政に過度の負担を与えるようなことが考えられないかということで、現在、この点につきましては自治省と折衝をしておるのです。地元負担になります三分の一ができるだけ軽減されるようにはかってまいりたいと考えております。
  86. 岡田利春

    岡田(利)委員 この事業は産炭地振興法の二条地域ですか六条地域ですか。
  87. 住栄作

    ○住説明員 先ほど申し上げました地域でやろうと考えておりますので、六条地域の一部——一部と申しますか、六条地域の中というようにお考えいただきたいと思います。
  88. 岡田利春

    岡田(利)委員 それでできますか。六条地域でいいのですか。たとえば九州、北海道、六条と二条では相当違うですよ。むしろいま産炭地振興というのは六条にない、二条地域のほうに片寄っている傾向があるわけですね。そういう点の支障はありませんか。
  89. 住栄作

    ○住説明員 先ほど申し上げましたように、この事業は、一つの産炭地域の開発、地域振興ということと同時に、もう一つの目的は、失業者の吸収ということを考えておりますので、あくまでも六条地域の中のそれにふさわしい地域、そういうことの必要な地域ということで、現在検討をいたしておるわけでございます。
  90. 岡田利春

    岡田(利)委員 私の立場からすれば、六条地域でけっこうなわけです。ただここで六条地域に限定してはたしてどうかという問題があるわけですね。六条地域よりも二条地域のほうが近いという面もあるわけですから。九州筑豊炭田付近をずっと見ますと、むしろ企業誘致というほうはそちらのほうにいっている場合もあるわけですね。それに伴う団地あるいは環境整備の問題もありますから、この点特に事業とあわせて検討してもらいたいと思うのです。  それで、先ほど賃金については請負と言われましたけれども、請負制度であっても、いわば保障部分のない賃金ということはあり得ないのです。ということは、そういう答弁をされるということは、主体は市町村であるけれども、一つの会社に請け負わせるとか、こういう意味ですか。オールそういう意味で理解していいのですか。
  91. 住栄作

    ○住説明員 そのとおりでございます。業者に請け負わせるということでございます。
  92. 岡田利春

    岡田(利)委員 そうすると、公共事業といいますけれども、全然性格が違うわけですね。金は国並びに公共団体から出るけれども、その事業をやるのは全然離れて、いわば民間の会社が請け負うのだということになりますと、それはたとえばその離職者が一つの組合をつくるとか企業組合をつくるとか、すでに九州でもありますわね。そういうものが主体になるのか、普通一般のものが主体になるのか。もちろん工事によってできるできないという問題もあるでしょうけれども、そういう考え方についてはいかがですか。
  93. 住栄作

    ○住説明員 民間業者が請け負うわけでございますが、それには先ほど申し上げましたように、たとえば手帳の発給を受けることができない炭鉱離職者とかあるいは終閉山に伴う石炭関連企業からの離職者、これを七〇%雇いなさい、こういう条件をつけた事業になるわけでございます。
  94. 岡田利春

    岡田(利)委員 黒い手帳を受けない炭鉱離職者並びに関連企業のどの範囲をさすのですか。
  95. 住栄作

    ○住説明員 結局関連企業の離職者というものをどの範囲にするか、こういうことだと思いますけれども、たとえば石炭山が閉山する、それに関連した企業が倒産なりあるいは店をしまう、こういうことになろうかと思います。それに伴って離職者が出てくる。現在産炭地域においてはそういった離職対策について必ずしも十分でないということも考えまして、そういった意味での離職者も吸収するということで事業をやりたい。ただ、どの範囲までかということについては、まだ必ずしも具体的にこれ以上はいけないということは検討しておりません。
  96. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、炭鉱労働者あるいはその事業所のありますそこに存在する関連企業をやめた者に限って七〇%である、しかし全部というわけにいかぬでしょうから、三〇%はそれ以外を認めるというなら理解ができるわけですよ。しかし、七〇%の中で、関連企業の——いまいろいろなことがいわれておりますから、そうすると、実質炭鉱労働者と大体すなおに認められるものが五〇%、四〇%、三〇%になる可能性がある、こう理解せざるを得ないわけです。非常に大きな問題点だと思うのです。この予算は石炭特会から出ておるわけですからね。そういう意味では非常に大事なポイントだと思うのです。いかがですか。
  97. 住栄作

    ○住説明員 優先順位の問題だと思うのですが、まだはっきりした検討は終えておりませんが、当然のことだと思いますけれども、まず炭鉱離職者を重点にして考えていくのが筋だと思います。
  98. 岡田利春

    岡田(利)委員 その点は特に注意を喚起しておきたいと思いますし、いろいろいままでの政策の中で、あまり言いたくないから言いませんけれども、問題点はやっぱりあるわけですから、新制度として発足するときには特にその点は留意願いたいということを強く指摘しておきたいと思います。  それと同時に、たとえばいかなる会社あるいは企業組合に仕事をさせるとしても、一定の労働賃金の目安がないというのであれば、事業が主であって、失業者を吸収するというほうがぼけてくるのじゃないかと思うのです。当然政府が金を出してやるわけですから、一定の保障は、大体この程度というものはあるのだと思うのです。賃金は  一日この程度、それにいろいろな管理費とか資材費とかありますね。そういうものを全部入れてこの事業費というものが計算されると思うのです。その場合の労働賃金というものはある程度固定化されているんじゃないか。川の改修に行こうが道路に行こうが、請負とはいえ大体一日当たりの働く労働者の賃金水準というものはどの程度になるか、こういう想定がなくして予算が要求されたはずがないと思う。この点はいかがですか。
  99. 住栄作

    ○住説明員 先生御承知のように、公共事業につきまして事業費をはじく場合に労務費を積算いたします。それは、大体地域別にプリベールしている賃金というものを見まして積算しておるわけでございますが、この事業の事業費をはじく場合においても、全く公共聖業と同じ考え方でそれを計算していきたいと思います。ただ、民間事業者が事業を実施するわけでございますから、賃金というものはその民間の労使の関係において、一般公共事業もきまっておるわけでございますから、賃金のきまり方というものは一般公共事業と全く同様にしたいというように考えております。
  100. 岡田利春

    岡田(利)委員 その場合といえども——請負制度で会社が払うんだ。しかし、失業対策ですから、大体指示をするわけでしょう。大体賃金を積算して、仕事のさせ方によっては、ある程度弾力的なものもあるわけでしょう。だからまる請負ということは、私はあり得ないのだと思うのですよ。公共的に失業救済をするわけですから、いわばその労働に対応する固定——これは保障されて、そして仕事の請負度合いによって賃金が流動する、これすらないとするならば、まことに理解に苦しむわけですね、こういう事業の性格からいって。その点の立て方はどうなっているんですか。
  101. 住栄作

    ○住説明員 それは全く公共事業と同じやり方でありまして、御承知のように失業対策事業につきましては、支払うべき賃金は労働大臣がきめる。これは完全な失業者の吸収をはかるという事業で、これは賃金は労働大臣がきめておる、こういうことになっておりますが、その他の失業者吸収をはかる事業、たとえば石炭につきましては緊急就労対策事業がございますけれども、これも大体請負でやっておるわけです。そういうような関係から請負でやる事業につきましての賃金の考え方あるいは労務費の計算のしかたというのは全く公共事業方式でやっております。この事業についてもその例外ではないということを申し上げておるわけでございます。
  102. 岡田利春

    岡田(利)委員 この予算要求をするにあたって、大体概算的な、事業の積算的な根拠というものがないで、つかみ取りで二十五億、事務費を足して二十五億二千三百万ですか、これを要求したはずがないと思うのです。しかしこれは、伝え聞くところによればきわめて政治的にきまった予算である、こういわれておるわけです。したがってその根拠があるのかないのか、あるとするならば、どういう根拠があるのか、この点はいかがですか。
  103. 上原誠之輔

    ○上原説明員 この産炭地域の就労事業の積算の根拠は何かというお尋ねでございます。本来の積算をやります場合には、やはりどういう事業をするかということを先にきめまして、そのためにはどういうふうな経費が必要であるかということを積み上げて、本来予算要求をするというのが、あるいはたてまえかと思うわけでございます。今回の開発就労事業の場合にはそこまでのめどを私どもとしてはつけるまでに至っておりません。したがいまして、先ほど局長から説明いたしましたように、道路工事あるいは河川工事あるいはその他御説明申し上げましたような工事内容でやる場合に、大体どのくらいの単価ならいいかというふうに考えまして、現在私どもでやっております事業といたしましては緊就事業というものがございます。これは一人当たりの単価が二千五百円、それからもう一つ一般の公共事業の場合には機械使用なんかが普及しておりますので、必ずしも的確にこの単価を援用することはどうかと思うのでありますが、公共事業の場合には大体四千円から五千円というふうな目算がございます。この緊就と特失というものの大体間の単価というふうに御理解いただいたらいいと思います。
  104. 岡田利春

    岡田(利)委員 風聞でありますけれども、大臣、覚えておいていただきたいと思うのですが、この予算は——かつて労働省の次官であった亀井さんがたまたまいま福岡県の知事をされておりまして、福岡県は非常に失業者も滞留しておるし、疲弊しておる産炭地域であるということは、これはもう当然のことでございまして、そのことに疑義をさしはさむわけではないのです。したがってこれは、福岡県がこの予算の個所づけの対象になっているのだということが風聞として流れておるわけでありまして、その点についてはそうでないだろうとは思いながら、いろいろ私どもに陳情に来る意見を聞きますと、その裏づけをするようなことがそういう人々から述べられているわけです。しかし御承知のように、いま閉山提案で佐賀県の問題もありますし、あるいはまた北海道の問題もありますし、常磐地帯もあるわけです。ただ、いま述べた要件に合わない、また失業者もいない、そういう対象になる者がいないという場合は、これは別でしょうけれども、少なくともおる限りにおいては、これは全国的に産炭地域が対象になるのだ、こう思うわけです。私は少なくとも労働省はそういうことはないと思うのですけれども、今年度の予算の組み立て方によっては、風聞を裏づけるような結果になるのではないかと思いますけれども、その辺はそういう風聞がありますので、この際ひとつ明確に御答弁願いたい。
  105. 原健三郎

    ○原国務大臣 いろいろ風聞があるそうでございますが、私どもといたしましてはそれはそれとして、非常にけっこうな事業で、産炭地域開発をやるためであるし、失業される方々に対しても非常に効果のある事業だと思って喜んでおります。いろいろどこにやるかという場所についてはこれから検討してきめたいと思っております。また来年からのこともありますので、何も一カ所にきまったわけでもございませんので、だんだん拡大していきたい、こういうふうに考えております。
  106. 岡田利春

    岡田(利)委員 どうも最後の大臣の答弁は、今年はもうきまっておるのだ、来年も予算はつくのだから次は考えていきましょうというふうに受け取らざるを得ないのですね、最後のほうの答弁は。そういうことなんですか。
  107. 原健三郎

    ○原国務大臣 本年のものはまだこれから決定いたします。こういうなかなか有効な事業でございますから、ことしはそうたくさん、予算が二十五億くらいしか——方々に希望者が非常に多いのですが、そう方々にできませんが、だんだん来年からこの事業を拡大強化していきたい、こう思っております。
  108. 岡田利春

    岡田(利)委員 本年は二十五億程度、こう言いますけれども、前向きの石炭政策で今度ふえた予算は五十億です。ですから二十五億の金というものは相当大きな比重ですよ。私どもはそう理解をするわけです。したがってそういう意味で、新しい制度ができた場合には、いままで政策上、大体北海道とか常磐とか九州各県、福岡とか佐賀ですね、そういう面で、もちろん滞留した比率もありますけれども、閉山の度合いとか計画、こういうものをにらみ合わせて出発しておるというのがいままでの政策の傾向なわけです。少なくともそういう点については私がいま言った趣旨で理解していいかどうか、はっきり答弁願いたいと思います。
  109. 原健三郎

    ○原国務大臣 趣旨としてはお説のとおりでございます。
  110. 岡田利春

    岡田(利)委員 趣旨はそのとおりであり、今年度も大体そうなるでしょう、なると思うということですか。
  111. 原健三郎

    ○原国務大臣 御趣旨はよくわかりましたので、まだきまっておりませんから、これからよく検討いたしたいと思います。
  112. 田畑金光

    ○田畑委員 ちょっと大臣に、その点を明確に関連質問で念を押しておきたいと思いますが、いま岡田委員から指摘されたように、今回の二十五億二千三百万円にのぼる産炭地域開発就労事業費補助金というものは、福岡県がほとんどだということですが、二十五億余の予算というのは、いま指摘されたように石炭特別会計の中で新規の政策費としては非常に大きな額ですよ。このことをまず念頭に置いてもらいたいと思うのです。労働省の今日までやってきた仕事の内容というのは常に政治的なにおいが非常に強過ぎるのです。しかも世間の伝えるとおり、労働省の先輩であったから、次官をやったから亀井知事の福岡県だけにこれを回すなどというような——最近党略ということばがはやっておりますが、省のセクト主義というか、そういうような考え方を労働省は清算すべきだと思うのです。今度事務官も交代されて、有馬事務次官は今度鹿児島県から衆議院に出馬される。私もよく知っておるから大いに健闘されて御当選を祈るわけですが、今度またかわって登場された新次官もいずれ北海道のほうから出るだろう。それは大いにけっこうだが、労働省関係の出身は最近議員に出てきたり知事に出てきたり大いにけっこうだが、しかし大臣、あなたは兵庫県だから、大臣としてはものごとをわりあい公平に処理できると思うのですが、そういう国家予算、しかも行き詰まってもはやどうにもならぬ石炭をどうするかということで、大事な財源から石炭特別会計というものができたのですよ。それに労働省の諸君が便乗して、そういう先輩に対するとか、あるいは労働省出身のためにこういうくだらぬ、およそ行政を汚すようなことはやめてもらいたいと思う。政治の冒濱もそれに過ぎるものはないと思うのです。いままでの石炭予算というものが特定の地域だけに回っている予算がありますか。これは産炭地域全体を対象として予算が組まれているわけでしょう。労働省関係の諸君に話をすると、この二十五億の予算運用についても来年からはということばをよくはいておるわけです。大臣がいまいみじくも来年からまたふやしていくと言われたけれども、これはふやせるほどないですよ。私は後日また質問をいたしますが、七〇%の炭鉱離職者あるいは関連産業の離職者を吸収するなどと言っているが、一体その労働者の把握はどういう方法で把握されるのか、これはいいかげんなものですよ。しかし七〇%の吸収率というワクを設けることは、何らかの意味においてとにかく石炭関係ある失業者ということを考えておることであろうから、これは後日そのあたりを私は質問したいと思っておりますが、この予算運用については大臣特に厳正公正に産炭地振興にほんとうに寄与する予算として運用するのか、運用するとするならば、それは産炭地域全体の振興のために予算というものがあるべきであって、それが政治的な意図によって由げられるようなことは断じて許すべからざることだ、こう考えております。きょうは関連質問ですから、ちょっといま聞いておると、実は大事な点において非常に慨嘆にたえない、大臣の答弁は大臣らしくない答弁、あなたは衆議院副議長もやられ、とにかく将来さらに大成される大臣だから、労働大臣として予算の運用についてはもっと公正に配慮を願いたいと思うので、大臣の所見をこの際ひとつ明確に聞かしていただきます。
  113. 原健三郎

    ○原国務大臣 御説は全く同感であります。決して政治的意図を持ったり等のことを排除して、産炭地域の開発、失業者救済等々、すばらしい事業をやっていきたい。お説のように、厳正に公平に心がけて、どこにやるかという場所はそういう点をも考慮して考えていきたいと考えております。
  114. 井手以誠

    井手委員 関連して一言お伺いをいたします。  私は地域の問題についてはあまり申し上げたくないのですが、ただいま岡田委員なり田畑委員の話を聞いておりますと、いままで大臣その他の答弁に不十分な点があったように承りましたので、念を押しておきたいと思います。−三十五億の予算の問題については私もいきさつは承知をいたしておりますけれども、法のもとに平等であらねばならぬことは当然でありますし、また離職者が滞留するという問題も、ところによっては、滞留のひどいところは同時にまた流動性がひどいことも事実であります。基準においてしぼるという手も役所ではありがちなことですが、私は各地域ごとにそれなりの特性なり滞留の特性があると考えております。したがって、特にはなはだしいという基準だけできめられる問題ではないと思うし、政治というものがその率ばかりで決定すべきものではないと私は長い体験から信じておるわけであります。田畑委員もおっしゃったように、原さんは副議長であったし、私は非常に公平な人柄と今日まで信じてまいりました。住さんも新たに局長になられ、その人柄を私は信じております。一言でいいですから、私の質問の趣旨に沿うような答弁がいただけますならば承っておきたいと存じます。
  115. 原健三郎

    ○原国務大臣 三人の先生からいろいろ御説を拝聴いたしまして、そういう点もよく参酌して、いまお話しになった各地域の特色、特性を生かせ、こういうことも勘案して善処いたしたいと思っております。
  116. 住栄作

    ○住説明員 いま大臣がおっしゃいました趣旨に従いまして実施地域を検討したいと思っております。
  117. 岡田利春

    岡田(利)委員 いずれまたこの問題は質問できると思うのですが、いわば産炭地域というのはいろいろ特性があるわけですね。たとえば北海道ですと、北九州のような地帯ではないわけですから、企業を誘致するといっても非常にむずかしいわけです。閉山が行なわれる。特に産炭地振興事業団で美唄団地をつくっても企業が来ない。夕張地区でも団地があるけれども来ない。そうすると、そういうところほど高年齢層といいますか、そういう炭鉱労働者に対してはこういう事業のほうが非常に的確なんですよ。むしろ北九州は、部分的にはもう理解してますが、ある程度企業が進出もしている。もちろんそれでも足りませんよ。ですから、むしろ積極的な産炭地振興のほうでこの対策をやる、やはりこういう理解のしかたがないとおかしいのではないか、こう思いますので、この点も含めて検討していただきたいと思います。  ただ私は、特にこの機会に申し上げておきますが、労働省のいままでの雇用政策ですね、労働力の流動化、こういう政策は石炭政策の中における労働対策からすべて出発をして発展をしているわけです、歴史的に見ますと。いままでの労働省全体の予算からしても、雇用政策に限って労働力の流動化の問題、この対策石炭でやった経験を発展さしているわけですよ。源は石炭政策の中にあるのだという理解を私はしておりますし、間違いがないと思うんですね。そういう点でこれらの問題も石炭特会で生まれたけれども、やはり将来の発展する可能性すら持っている、こう思うわけです。石炭特会のほうは当面そういう産炭地にとりましたけれども、こういう問題というものはいまの失対事業との関連から見ても当然発展的に将来は解消されていくんだと思うんですね。そういう意味を踏んまえてこの問題についてはひとつ十分対処してもらいたい、こう思います。  一時間までの時間で予定時間にきてしまったのですが、この機会に、きょうこれは問題提起をしておきますが、懇談会でも出ておるわけですが、黒い手帳の期限の問題です。  たとえば、今度新たに閉山する炭鉱があります。ところが前の炭鉱が閉山してその雇用対策として一つの会社をつくった。その原料は石炭であった。ところが今度炭鉱がつぶれると、原料供給が値段として合いませんからその企業がつぶれる。しかしそれは雇用政策上やりましたから、炭鉱からまっすぐ企業に入ったわけですね。そして一年以上経過いたしておりますから、一度もその権利を行使しないで、その企業に来て、今度は炭鉱の関連企業でつぶれる。しかしこれは炭鉱企業でつぶれる。しかしこれは炭鉱労働者ではありませんから、黒い手帳の恩恵に浴さないという問題が一つあるわけです。しかし石炭と直接関連を持っている企業でもある、こういう点については一体どう考えられているか。炭鉱労働者でないから、機械的に法律上切ってしまう、こう考えられておるのかどうか。それと同時に、炭鉱から閉山になって黒い手帳を受給を受けた。受給を受けたけれども、新たな職場があったのでそこに就職をした。一年経過して労働条件その他が違うので、再度また炭鉱に入ったという場合にも、これは今度黒い手帳の対象にはならないわけです。それから炭鉱から直接新しい会社に行って一年経過した、一度も権利は行使していないわけです。そして炭鉱に入った、これも安定職場を通じたからというので、その場合に新たに炭鉱閉山でやめても対象にはならないわけです。あるいは黒い手帳を当時就職が困難で適用を受けておった。そこで次に約三年近くなってどうにもならない。黒い手帳も切れた。しかし、炭鉱は労働力が不足になってきたという事態の変化に対処して炭鉱に就職したという者も、今度閉山になっても黒い手帳の対象にはならないわけです。  それ以外のケースも労働省で私どもに説明したケースがいろいろあるわけですが、とにかくこういうケースがいろいろ出てまいるわけです。この点についてやはりこの炭鉱離職者臨時措置法の適用について当然考えるべきではないか、くふうすべきではないか、適用すべきではないのか、こういう見解を私どもは持っておるわけです。そういたしますと、これはいまの臨時措置法の改正だけでは処置できませんから、当然この臨時措置法の改正に伴って一部法律を変えなければならないという問題になるわけです。この点特に十分議論されて、そして詰まらないとなかなか法律案の審議も進まないのではないか、こう私は、この法律の審議にあたって一つの大きな問題があると思っているわけです。  それから第二の問題は、炭鉱労働者であったという期限は本年の十二月三十一日において炭鉱労働者であった者とこの法律に規定しておるわけです。そうすると、この炭鉱がつぶれるかどうかわからないで一月に入った。そこで炭鉱災害もありますし、炭鉱は閉山せざるを得なかったという場合には、本人の意思に関係なく山が閉山になってほうり出されるという場合に、炭鉱労働者として認められない、この法律の適用を受けられないという問題があるわけです。この点についてはどうもこの立法の精神とたてまえからいって私どもは納得ができないわけです。  さらに離職者対策というものは、どうも法律の出し方が機械的ではないか。これも期限は今度の新政策の昭和四十九年三月三十一日ですか、附則ですね。こういう形で大体合わして出しておるわけですね。三年延長という形で出しているわけです。しかしその政策が終わっても、離職者の場合は黒い手帳を受けておる者があれば三年間法律の適用を受けなければならぬわけですよ。また、一年、半年休んでまた三年であれば、その期間もこの法律の適用を受けるか受けられないかわからないという形で改正案を出すというのは、ほかの合理化法と違って、この法案の性質からいっても納得ができないわけです。  この三点は、この法案の審議にあたってどうしてもこの点については修正をしてもらわなければならないという意見を実は持っておるわけでありまして、この点おそらくこの質問だけでは、論議のやりとりだけではなかなか解明できないのじゃないかというような気がするのですが、一応問題提起と同時に、何かあればこの際答弁を承っておきたいと思いますし、十分その点の問題点もこの法案審議にあたってポイントになるということを特に検討してもらわなければならぬと思います。  それから付随的な問題として申し上げますと、企業ぐるみ閉山として新しい制度が合理化臨時措置法で生まれたのにかかわらず、それに対応する法律改正というものが出されていないわけです。いままでは企業ぐるみ閉山というのはないわけなんで、五山あっても一つずつ山がつぶれていく。今度は五山あると五山が一ぺんにつぶれる企業ぐるみという方式をとりました。本社から何から一切会社がやめてしまうわけですから、こういう制度が新しい政策で出たのにこれに対応する労働省としての受け方、この法律の受け方というものが考えられていないという点でまた一つ問題です。たとえば、いままでここの山が閉山になる場合には他の山に行くということがあるわけです。炭鉱は特に技術屋として三十年間も——三十年がオーバーであれば十年でも十五年でもけっこうですが、炭鉱技術屋として働いておった。ところが一時本店の設計、最近特に届け出がありますから、技術屋が移動するわけなんですね。そのとき企業ぐるみ閉山になれば、十年も二十年も炭鉱に働いておった社員であっても本社にいるがゆえにこの法律の適用を受けないわけですね。その点は、企業ぐるみ閉山の場合は同時に山も本社もつぶれるわけですから、これに対応する受け方というものが必要ではないのか、こういう問題が一つあります。  さらにもう一つの問題は、産炭地の私鉄、いわば炭鉱合理化以前は炭鉱の中であったわけですよ。ところが炭鉱合理化に伴ってこれを切り離した、あるいはまた特に工作部門というのを切り離した、こういうのがあるわけです。大きな問題は私鉄の問題でありますけれども、この問題といえば、結局そういう歴史的に見て同じだったけれども、地域開発の状況で切り離したということで、いまこの私鉄の労働者、いわゆる坑口から選炭機まで運搬する労働者と、選炭機からいわば国鉄ないし港頭まで輸送する労働者とは変わりがないのではないか。三池炭鉱でいえば、従来三池炭鉱労働者であったけれども、今度は港まで輸送する部門は切り離した。全く同じであったわけですね。そして企業ぐるみ閉山という形で山がつぶれるとその鉄道もろともにつぶれてしまう。いわば新しい政策に基づいて、労働省としてこれに新しく対応するという観点が全然ない。付随して、関連していえばこの二点が問題なんです。  以上、五点私は述べたわけですけれども、この点の感触程度について聞いておいて、この点はひとつ十分詰めていただきたいと思うのですが、見解だけをきょうは承っておきたいと思います。
  118. 住栄作

    ○住説明員 どうも第一点の手帳の、就職、炭鉱就職、再離職、この関係は後ほど失対部長のほうから御説明を申し上げたいと思います。  まず、一つはこの法律の有効期間が四十九年の三月末になっておるということでございますが、これは従来も石炭答申に基づきます閣議決定の石炭合理化政策の最終年度の末日ということで臨時措置法の有効期限を限っておるいきさつがあるということが一つでございます。  それからもう一つは、現在の臨時措置法の中では、この措置法を廃止する場合において、廃止法を提出して廃止に伴ういろんな措置を考えるというような法律のたてまえになっております。したがいまして、御指摘のような問題につきましては、一つはこの法律の予定しておりますところでは、廃止法をつくる場合に廃止にあたっての暫定措置をどのように考えるか、こういうことで処理できるのではないかというように考えております。  それから次の問題の、要するに企業ぐるみの閉山が行なわれるようになった、特に本社職員等の離職者対策の問題でございますが、これも先生よく御承知のように、石炭離職者に対して特に臨時措置法に考えておりますような手厚い措置をとったというのは、申すまでもなく石炭労働者の従事する作業環境が地下労働である、あるいは日本の場合はとにかく工業地域とは離れたいわば僻地にあるというようなこと、そういうような従事する作業の内容とか作業の環境等を考えたということ、そしてもう一つは、政府石炭政策の遂行によってやむを得ず離職した、離職を余儀なくされた、こういうことに着目いたしまして、他の失業者あるいは離職者と違った特別の手厚い対策をしておるのでございます。そこで本社の職員等の離職問題を考えてみますと、なるほど石炭政策の遂行に伴いまして離職を余儀なくされたということではございますけれども、その従来の職業の経歴なりあるいはさらに再就職のあっせん、あるいは再就職の促進ということにつきまして、必ずしも一般産業からのそういった種類の離職者よりも手厚くする必要はないのではないかというようなことから現在もはずされておるのでございますが、やはりそういった臨時措置法の立法の趣旨から考えましても、本社職員ということまで範囲を広げますと他の同種の離職者との均衡から考えていかがかというように考えておる次第でございます。  それから次の産炭地の閉山に伴う特に私鉄との関係の問題でございますが、御承知のように、これも臨時措置法には、この措置法の対象になる石炭労働者という定義がございまして、これによりますと、石炭の掘採あるいはこれに付随して行なわれる送炭その他の作業に従事する労働者ということになっておるわけでございまして、当然鉱業権者なり粗鉱権者が私鉄事業を石炭の事業の中で一体として行なっておる場合であれば、適切な措置がとり得るかと思うのでございますが、全然別会社であるというような場合に、御指摘のように現在の離職者法からは対象にはならないということになりますので、そういう意味で御指摘のような問題点があることは承知しておるのでございますが、現在の臨時措置法の体制からはそれははずれるのはやむを得ない、こういうことになるかと思っております。
  119. 上原誠之輔

    ○上原説明員 最初の御質問の手帳制度の有効無効の問題でございますが、この黒い手帳制度は先ほど局長からお話し申し上げたように、炭鉱労働者の特殊性からいたしまして非常に手厚い措置になっておるわけでございます。一般の離職者と違って非常に手厚い措置をいたしておりますだけに、この適用につきましてはきわめて厳格な制限を設けておるわけでございまして、その制限の一つが手帳の有効期限の問題であります。お話しのございました炭鉱を離職いたしまして民間に就職をして、さらに炭鉱に行って離職をするという場合もあるわけでございます。炭鉱をやめまして民間に再就職をして、相当程度の期間を経過したものにつきましては、すでに一般産業における労働の適応性ができたというような見地に立ちまして手帳の失効措置をとっておるわけでございます。これはそういうふうな趣旨で、要するにすでに民間において相当期間就労したということで炭鉱労働者としての適性がそこでなくなって、一般労働者としての資質ができたというふうに私ども考えまして手帳の失効の措置をとっておるわけでございます。  それから第二に、しからば炭鉱から炭鉱に行った場合の労働者の場合には、いまの場合と違いまして炭鉱に就職しております期間を三年の中からはずしまして期間を長く見て適用していく、こういう措置をとっておりますので、その点につきましては炭鉱労働者、山から山に行った者につきましては特別の措置を現在の法律制度のもとにおきましても、とっておるということを御理解いただきたいと思っております。それから法律で、先ほど御意見がございましたように、昨年の十二月三十一日の在職者というふうに限定をいたしておりますのは、これも先ほど申し上げましたように、この法律の援護措置というものが、ほかの場合と違いまして、非常に手厚い措置でございますので、炭鉱がこれから政府一つ石炭政策によって合理化をされていくということが明らかになった以後におきまして、そういう事情を知りながら炭鉱に就職したという者につきましてまでこの手厚い措置を与えるということはいかがなものであろうかということで、従来からもそういう在職経験というものを、政府の新しい石炭政策をきめます時点に近い時点できめてまいっておるというのが今日までの実情でございます。
  120. 岡田利春

    岡田(利)委員 労働省の解釈は、いま言われたとおりでしょう。私は解釈は知っているわけですよ。問題は、その実態が変わってきているわけです。いまの炭鉱と法律をつくったときでは実態が変わってきている。実態が変われば、当然考え方も変わらなければならないということを私は言っているわけです。前の法律をつくったときには、炭鉱から人があふれていて、生きている山でも人がどんどん余るという当時につくったものです。どうしても炭鉱以外に就職させなければならぬ、そういうときにできたのがこの法律なのです。だから、あの当時としては、たてまえも実態も即応しておったわけですが、ところがいまは逆なわけです。人が、足りないわけです。そこで炭鉱から炭鉱へ移ることを歓迎するということで移住資金もつけたし、またいまでは炭鉱労働者は不足であるという実態なわけです。だから、一年であろうが二年であろうが、十二月三十一日以降いつつぶれるかわからなくても、とにかく人を採用しなければならぬ、労働力を確保しなければならぬという問題があるわけです。それが一年たたないでつぶれるかもしれないから、この恩典が受けられないということになると、そこには行けないわけですね。ですから、むしろ炭鉱の経験のある者が炭鉱でも不足しているわけだから、その経験を生かしてそこに就職をさせて、安定させるということで、実態が変わってきているのだから、この法律も受け方が変わらなければいかぬのじゃないかということです。もしこの点の実態把握が違うとすれば、労働省は何をしておりますかということになりますよ。この法律を出す以上、固執されるということはわかりますけれども、きょう上げるわけではありませんが、早急に上げるためには、もう一度つとめて検討すべきではないかということを、特に黒い手帳の問題と期限の問題に関連して申し上げているわけです。ですから、法律をつくったときであれば問題はなかったわけです。それが変わってきたのだということについて特に考えてもらいたい。  それから企業ぐるみでない場合は、炭鉱技術者のような場合は非常にむずかしいのです。そこの山に派遣される、そして、そこが閉山になったので、次の炭鉱に行く、そしてそこで最後を終わっていく、そういうふうに他の山に移る、またもとの地域に戻るということなんですが、これは企業ぐるみでないために、なかなかその恩典に浴せない。私はこの全部を適用しろとは言わないのですが、少なくとも帰る、あるいは次に就職をする、特に職員の就職はむずかしいのです。職員であっても、今度はそれを下げて、一般工員的な形で再就職するという人が炭鉱技術者の場合には相当出ますが、つぶしがなかなかきかない。電気とかそういうものはいいのですが、ほとんど採鉱関係はそうです。ですから、そういう点でも、やはりその実態に合わせて、全部を適用しないでも、そういう便法といいますか、そういうものがとれぬだろうか。  それから鉄道の問題でも、これは一緒にまた戻すといっても、この法律ではそのまま戻れぬわけです。残念ながら住さんが村上さんにかわって新しい局長になったわけですが、これは大臣はおられませんでしたが、新しく発令された事務次官には、私たちは法律の審議にあたっての問題点として申し入れてありますので、よく理解をされていると思いますから、この点は立ち入りませんけれども、もう一度検討してみてもらいたい。私どもも、また非公式の面からいろいろ意見を交換したいと思っておりますから、そのことを特に指摘をしておいて、きょうは時間が過ぎましたので、質問を終わりたいと思います。
  121. 平岡忠次郎

    平岡委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時二十六分散会