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1969-07-04 第61回国会 衆議院 商工委員会 第39号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年七月四日(金曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 大久保武雄君    理事 宇野 宗佑君 理事 浦野 幸男君   理事 小宮山重四郎君 理事 藤井 勝志君    理事 武藤 嘉文君 理事 中村 重光君    理事 堀  昌雄君 理事 玉置 一徳君       内田 常雄君    遠藤 三郎君       小笠 公韶君    大橋 武夫君       海部 俊樹君    神田  博君       鴨田 宗一君    黒金 泰美君       小峯 柳多君    島村 一郎君       田澤 吉郎君    渡海元三郎君       中川 一郎君    丹羽 久章君       橋口  隆君    福永 健司君       増岡 博之君    石川 次夫君       岡田 利春君    加藤 清二君       勝澤 芳雄君    佐野  進君       田中 武夫君    中谷 鉄也君       古川 喜一君    武藤 山治君       塚本 三郎君    吉田 泰造君       近江巳記夫君  出席国務大臣         通商産業大臣  大平 正芳君  出席政府委員         内閣法制局第四         部長      角田礼次郎君         人事院事務総局         給与局長    尾崎 朝夷君         科学技術庁原子         力局長     梅澤 邦臣君         文部大臣官房会         計課長     安養寺重夫君         特許庁長官   荒玉 義人君  委員外出席者         法務省民事局参         事官      宮脇 幸彦君         特許庁総務部秘         書課長     京本 善治君         特許庁総務部資         料整備課長   城下 武文君         特許庁審査第二         部調整課長   竹内 尚恒君         専  門  員 椎野 幸雄君     ————————————— 七月四日  委員天野公義君、小川平二君、田中榮一君、栗  林三郎君及び田原春次辞任につき、その補欠  として渡海元三郎君、中川一郎君、田澤吉郎君、  中谷鉄也君及び田中武夫君が議長指名委員  に選任された。 同日  委員田澤吉郎君、渡海元三郎君、中川一郎君、  田中武夫君及び中谷鉄也辞任につき、その補  欠として田中榮一君、天野公義君、小川平二君、  田原春次君及び栗林三郎君が議長指名委員  に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  特許法等の一部を改正する法律案内閣提出第  七四号)      ————◇—————
  2. 大久保武雄

    大久保委員長 これより会議を開きます。  特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。田中武夫君。
  3. 田中武夫

    田中(武)委員 特許法改正法案について若干の質問をいたしたいと思いますが、すでに当委員会において同僚各委員が詳細にわたって慎重な審議をしておられますので、私の質問はそれらの点とあるいは触れるといいますか、あるいは重なる、同じようなことを聞くこともあろうかと思いますが、それはできるだけ簡単にお答え願ってけっこうです。と申しますのは、やはりむだなことを聞くのでなくて、そのことがあとで私の質問関連いたしますので、そのことをまず最初に申し上げて質問に入りたいと思います。  先日当委員会参考人を呼んで審議をしておられましたときに、武藤委員であったかと思いますが、参考人に対して、今回の改正は単なる手続上の改正なのか、それとも根本的な改正か——根本的ということばには疑問がありますが、制度上の改正であるのかどうか、こういうことに対しまして、大体改正に賛成の人は手続面改正であると答え、反対態度を表明した人は根本的改正である——根本的ということばは当たらないと思いますが、制度上の改正である、こう答えたと思います。  そこでまず、この改正特許の単なる手続上の改正なのか、特許制度それ自体改正なのか、答えはわかっておりますが、まずお伺いいたします。
  4. 荒玉義人

    荒玉政府委員 制度改正だと思います。御承知のように手続それ自身制度でございますから、そういう意味においては私は制度そのもの改正だと思います。
  5. 田中武夫

    田中(武)委員 特許制度についての改正は三十四年に大改正法案が成立いたしました。そうして四十一年ですか、改正案提出せられましたが、これは審議未了廃案となりました。それで今回の改正案提出でございます。その間、手続上の若干の改正は何べんかありました。しかし、制度それ自体改正は過去十年の間に三回出ております。特許制度工業所有権というようなものはある程度安定性を持つべきものだと思うのです。それを十年に三回の改正、こういうことはどういう理由によるのか。滞貨処理のため、こういうことだと思います。  そこでお伺いをいたしますが、特許の本質とは排他権を持つ一つ権利財産権といいますか無形財産権無体財産権あるいは工業所有権ともいわれている。これは安定性ということが一つの要件ではなかろうかと私は思うのです。  それから滞貨処理ということをにしきの御旗にしておりますが、この改正において滞貨処理に直接どのようにしてつながるものかということ。さらに私疑問に思いますのは、四十一年に法案提出いたしておりまして、一国会審議未了廃案となったら、それはそれっきり姿を消してしまったわけです。もちろんこれは新案特許を中心とした改正であります。とにもかくにも法改正国会に提案した。もし自信を持ち、これがなくては目的が達せられないということであるならば、一回くらい国会審議未了となっても、引き続き信念をもって提出をすべきである。それが出てこなかったということ、これはあまりにも法案自信がなかったのか、それともおざなりに出してきたのか。そこで四十一年法案がかりに成立しておるとするならば、この改正案は出さなかったのかどうか。聞くところによると、四十一年法案作成過程において、すでに審議会においては早期公開制度について論議がなされておった、しかしそれは時期尚早というか、だめだということで法案に盛らなかった、こういうことも聞いております。  それから滞貨が多過ぎて、出願から権利取得までに、四年七カ月もかかるということ、これは日進月歩の技術革新の今日、あまりにものろ過ぎる。その原因ははたしてどこにあるのか。制度にあるのか、それとも運用にあったのか。法の運営ないし特許庁仕事の全体としての運営、これにあったのか、制度にあったのか、そのいずれか。滞貨処理は相当前からの問題です。それに対してはたして大臣長官がどのように滞貨処理のために努力してきたか。そういう点に対してもわれわれ疑問を持っております。たとえば特許庁長官地位が安定していない。現荒玉長官になってからは相当じっくりやられておるようでありますが、それまでは次官へのコースの腰だめ、あるいは腰かけ程度にしか考えられていなかった。審査官あるいは審判官、この人たちに対しても欠員が多過ぎる等々の、法改正制度改正以前にまず責任者として考えるべき点があった。それをやったのかどうか疑問に思います。  だいぶ多く尋ねましたが、御答弁をお願いします。
  6. 荒玉義人

    荒玉政府委員 第一点、制度改正であれば法的安定性を害するのじゃないか。御承知のように、今度の改正背景といいますのは、やはり技術革新テンポの急激化、こういうようなものを背景としております。したがいまして、もちろん特許制度は御承知のように権利として重大な権利でございますが、それを維持するためには新しい技術革新状態に応じた衣がえをする必要があるというのが基本でございます。早期公開制度にいたしましても、やはりテンポの激しいものに追いつくための一つ対応策だと考えまして、新しい技術革新に応じては、ある程度そういった安定性というものに対することを考えながらも、やはり新しい衣がえをする必要があるということで考えた次第でございます。  それから第二点は、今度の改正滞貨処理とすればどの点か。柱は大体早期公開制度審査請求制度の二本でございますが、主として審査に直接関係ありますのは後者の審査請求制度でございます。御承知のように、出願を全部審査するという必要はないんではなかろうか、発明それ自身出願段階ではなかなか価値が判明しない、その後のいろんな状況を勘案いたしまして、出願人がもう一回考えて必要なものだけを請求をしていただければ、その結果、余力をあげてほかの審査に回していくということにすれば、絶対的に見ればそれが審査促進になるということでございます。  それから第三点の、四十一年度の改正自信があればもう一ぺんやったらどうか。四十一年に廃案になりました後、いろいろ各界の御批判があったわけでございますが、各界の御批判は、御承知のように、実用新案について簡易に審査をいたしますと、むしろ権利者自身の面から見れば権利価値が少ないし、第三者から見れば非常にあぶないといったところが前回民間側における最大の御批判だと思いますが、そういった御批判は率直に受けまして、そのためにはやはり普通に審査をしていくという原則が世の要望に該当する、かように思いまして、新たなる構想でスタートしたわけでございます。もし今回の改正が成立すればどうかということがありますが、前回改正が一応所期の目的を達しまして、おおむね二年程度審査がなったといたしますれば、今日直ちにこういった改正をするということにはならないのではないか、私はかように考えております。
  7. 田中武夫

    田中(武)委員 まだ落ちています。滞貨が山積しておるのは制度にあるのか、運営にあるのか。滞貨解消のために大臣長官は今日までどのような努力をしてきたのかということ。  それから、さっきの答弁ですが、四十一年法案が成立しておるならば今度出さなくてもいい、そういうことであるならば、早期公開制は絶対的に必要であるということではないのですね。
  8. 荒玉義人

    荒玉政府委員 落としました点からお答え申し上げます。  私は、滞貨原因はどこにあるか、これは運営面制度面と両者あるかと思います。この前からたびたび本委員会議論ございましたが、絶対的に運用でやれないか、そういうこともございますが、やはり運用には一応の限界がありまして、制度自身と並列的に考えていくべきではないか、かよに考えております。  それで、何をやったか。御承知のように人員は逐年ふえております。あるいは環境そのものも、もちろん現在十分ではございませんが、一年一年よくなっております。あるいは運用基準その他を定めて民間出願人判断を容易にすると同時に、われわれの運用上の考え方を統一するということによりまして審査促進をはかっていくということで従来努力してまいった次第でございます。
  9. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣、どのような努力を今日までしてきたのかということ。
  10. 大平正芳

    大平国務大臣 予算要員の確保に、与えられた制約のもとで最善を尽くしてまいったわけでございますが、運用面の、要員充実予算充実だけでは問題を十分処理できないと判断いたしまして、審議会の御答申を得て、制度改正というものもあわせてお願いをいたしまして、いち早くこの未処理案件処理を実現いたしたいと念願しておる次第でございます。
  11. 田中武夫

    田中(武)委員 四十一年改正法案がかりに成立をしておったならば今度の改正は出さなかったであろうということ、重要な発言でございます。与党諸君もよく聞いておいてもらいたい。そのことは早期公開制度絶対必要である、こういうことにはつながりませんので、あとで明らかにいたします。  次に、今回の改正についての改正要望といいますか、機運はどこから起こってきたのか、いわゆる特許制度を利用するといいますか、国民の側から起こったのかあるいはこれに関連するところの人たちの間から起こったのか、いわゆる民間から起こったのか、それとも特許庁内部、現に実際の仕事をしておる審査審判をやる人たちの間から起こったのか、それとも特許庁の幹部の間から起こったのか、この点についてはいかがですか。
  12. 荒玉義人

    荒玉政府委員 産業界をはじめとした一般の実際家からの要望と考えております。
  13. 田中武夫

    田中(武)委員 産業界、なるほど大手の企業にはそれぞれ特許部とか特許室とかいうのがあってやっております。こういうところはどうやらこの法案反対ではないようです。しかし、いわゆる民間、大衆、これは必ずしもこの法案に対して双手をあげての歓迎の態度ではございません。ことにこの法案が通過するならば、この改正法によって仕事をするところの、審査審判の実際の仕事をする人たちから反対機運が上がっておるということは、大臣長官承知だろうと思います。たとえば四月二十二日に特許庁審査二、三、四、五部の審査官反対決議、さらに六月三十日、これは特許庁技術懇話会、これには特許庁内のいわゆる管理職にある人も含まれておる。そこで、与党諸君も聞いてもらいたい。現に、この法案が成立したならば、その法律によって仕事をする人たちがいままでのような審議ではその改正後の運営について十分に自信がない。したがって、「法律案逐条審議を行うこと」「早期公開関連する諸問題」これはいろいろこまかくあげておりますが、「について充分審議すること」外二件、こういう決議をいたしております。これは関係委員にも陳情の形式でお願いしておると思うのです。  そこで委員長にお願いいたします。  こうして質問をさしてもらっておるのですが、私は、こういう決議があるからいまから逐条審議をやろうとは申しません。しかしながら、実際仕事をする人が今日までの審議程度では法律運営にあたって自信がない、こういうことを現に六月三十日に決議しておる上に立ちまして、私は十分な法案内容にわたっての質問をいたしたいと思います。したがいまして、私は現在では当委員会委員外の者です。そこで、当委員会理事会において約束をせられていることに対してどうとも私は申しません。しかし、理事会約束によってきょうは何時に採決するのだ、おまえの質問の時間は一時間だとか一時間半だとか、こういうことであるならば、十分なる法律論議は展開できませんので、十分な時間が与えられるかどうか。与えられぬとするならば、私はこの場において質問を中止いたします。いかがでしょう。
  14. 大久保武雄

    大久保委員長 田中君に申し上げます。  しかるべく御質問を願いたいと思っております。
  15. 田中武夫

    田中(武)委員 私はあえて時間かせぎの質問はいたしません。しかし必要なる論議は重ねます。それに対して制限がましい意見があったらその場で中止いたします。そのことを宣言して質問に入ります。  まず、内容に入る前に一般的な問題について簡単にお伺いいたします。  滞貨がたまり、四年七カ月以上も日月を要するというこの状態は、先ほどの答弁によると、運営制度にある。運営面については審査官の増員、質の向上とかあるいは審判官の待遇問題とか、いろいろな問題があろうと思います。  そこで人事院にお伺いいたします。  現在若干の手当がほかにあると聞いておりますが、これらの人たちはいわゆる一般職公務員給与適用になっております。しかし、いわゆる一般職公務員事務レベルにおいて考えるべきものでなく、特別な技術、特別な技能を要するものであります。したがって、これに対して特別な俸給表等を考える用意はあるのかないのか。  かためてお伺いします。次に、これはもう結論が出ておりますが、次の質問関連いたしますから特許庁長官にお伺いいたします。  化学物質特許は現在認めていない。しかし将来化学物質物質自体——製法じゃないです。製法は現在認めておりますね。それをどうするのかということ。  それから科学技術庁にお伺いいたしますが、これはあわせて長官にもお伺いいたします。  原子力平和利用関連する発明、発見、これは現在認めておりません。そうですね。しかしこれからはそういうものが出てくると思います。そこで原子力、すなわち同位原素の核反応において出てくるところの物質ないしその製造過程、そういういわゆる平和利用関連したところの発明等については特許関連してどう考えておるのか。特許はある程度秘密主義をとります。原子力基本法のいわゆる平和利用についての三原則自主民主公開原則からいって、秘密主義をとる特許公開原則に立つ原子力等平和利用についてどう考えるか。もう一つは、原子力平和利用等についての管理等々は、私は国ないしは公営でやるべきである。特許はすなわち個人、これが対象になります。これは法人を含む個人です。そういうような点について科学技術庁はどう考えているのか。それから文部省には、これはかつて糸川教授の問題で科技特で問題になりました。いわゆる大学等国費をもって研究開発をしたもの、それをそのまま一企業企業化する。具体的に言うならばカッパー8型、これがインドネシアへ輸出をせられた。その問題に関連をいたしまして黒い霧があるのではなかろうか、そういうことが科技特で問題になったことは御承知のとおりと思います。そしてそのときに私も指摘いたしましたが、国費をもって——大学だけではございません。国費をもって開発したところの新しい特許、これの所属をどう考えるのか。今日まちまちだと思っております。そういうことについてどのようにすべきなのか。こういう点について時間の関係で一括してお伺いいたします。
  16. 尾崎朝夷

    尾崎政府委員 特許庁審査官等につきまして一般公務員とは特別な処遇体系にすべきではないかというお話でございますけれども、私どもといたしましてはほんとうに同感でございます。現在私どもといたしまして、ここで何度も御説明申し上げておりますように、(田中(武)委員「それは聞いておらぬ」と呼ぶ)失礼しました。特許庁審査官につきましては、いわばその独立的なやり方、それから職務のしかた、それから専門性ということで、先ほどお話しのように調整額をつけているわけでございます。その調整額は、手当とおっしゃいましたけれども手当じゃないのでございまして、本俸なんでございます。つまり一般俸給表適用しておりますけれども、その一般俸給表体系制度では職務責任その他に特殊性があるということで調整額をつける、別の俸給体系ということで現在適用をしているわけでございまして、そういうような意味合いにおいて先生のおっしゃる方向に一応適応さしておるというつもりでございます。  なお、特別の俸給表をつくるかどうかという点につきましては、職務段階の問題、それから適用人数の問題、その他行政上の能率の問題、そういったものもございますので、なお私どもとしては慎重に検討をいたしたいというふうに考えております。
  17. 田中武夫

    田中(武)委員 人事院にお伺いします。  手当であるのかないのか、手当とは何ぞや、俸給とは何ぞや、そういう議論はきょうはいたしません。しかし、あなたのおっしゃっておるような趣旨であるならば、一般職公務員給与表でなくて、別の給与表をつくっていいじゃないですか。そのことを要望いたします。答弁があるなら伺います。
  18. 尾崎朝夷

    尾崎政府委員 俸給表をつくるか調整額処理するかという点は一つ技術問題でございまして、どちらにいたしましても、職務特殊性に応ずる特殊な処遇体系というふうに技術的に私どもは考えているわけでございます。
  19. 田中武夫

    田中(武)委員 俸給表は恒久的なものだと思うのです。本給に入らぬ調整云々というものはやはり基本的なものではないと思うのです。議論はいたしません。特別な給与表を考えてほしい、そのことだけ申し上げておきます。——けっこうです。もうお帰りください。
  20. 荒玉義人

    荒玉政府委員 化学物質特許の問題と原子核変換の方法により製造される物質特許、これは大体同じ考え方でございますので、あわせて御答弁いたします。(田中(武)委員化学物理現象は違うよ」と呼ぶ)考え方の面から見れば同じでございますから……。  これはなぜ現行法物自体特許されないかは、(田中(武)委員結論だけでけっこう」と呼ぶ)一にかかって産業政策といいますか、化学物質でいえば、化学工業水準あるいは外国との、どういう地位にあるかという問題でございます。私たちとしてはこれを前向きに処理していきたいと思います。よく産業界の実情を踏まえて、産業政策の見地から前向きに処理していきたい、かように考えております。
  21. 梅澤邦臣

    梅澤政府委員 お答え申し上げます。原子力につきましては、ただいま大体国が主体となって研究を進めております。動燃、原研等、それから原子力平和利用委託費なんというのを使っておりまして、それから出る特許につきましてはすべて長官指示事項になっております。しかし、当然民間特許を出しております。しかしその特許につきましても、まだ国のほうが主体という考え方、進み方からいきますと、現在民間特許が独占でどうのこうのということは起こらないのではないか、こう思っております。  それから公開との関係でありますが、公開につきましては、やはり特許公開の一部の任務を果たすと思います。しかし研究成果公開というふうに規定してございますが、成果というところをどこで考えるかというのが一つございます。しかし、できるだけ広く平和利用に使ってもらうというのが原則でございまして、そのための公開でございます。したがいまして、特許の問題についても、現在のところは、先ほど申し上げましたように、国がやっている国の分についてはすべて公開してまいります。民間についても、それとの関連で、できるだけ行政指導でつながって進めていくという考え方で進めております。  それから化学物質の問題でございますが、原子力関係につきましては、これは先ほど長官が御答弁になられましたが、これから先慎重にほかのものと化学物質関連と一緒にして検討させていただきたい、こう思っております。
  22. 田中武夫

    田中(武)委員 文部省あとにします。  長官に、いまここでケミカルアトミックスがどう違うのか、そういう論争は避けます。しかしながら、同じようなものだという感覚は間違いです。一方は先ほど指摘したように原子力平和利用に関する基本法があるのです。自主民主公開原則がある。そういう点において特許庁長官ケミカルアトミックスが同じようだという感覚は誤りである。それだけ申し上げておきます。  次に、文部省……。
  23. 安養寺重夫

    安養寺政府委員 お答えいたします。大学におきまして職務遂行に当たって、すなわち国費の裏づけによりまして研究をいたしました結果特許権利を生ずるというような場合におきましては、個々の大学の学長の判断によりまして、国にその権利を属せしめるかどうかということを判定させておるわけでございます。大筋は、国費によりまして職務遂行によって生じましたものは国に帰属させるのが適当であろうかというような判断をいたしておるわけでございますが、現実に研究者研究過程におきますそういった権利の発生というものが、全くそういった条件に該当しますかどうか困難な面もございまして、これはかねてから各国立大学関係者を呼びまして検討いたしております。特に最近の自宅研究取り扱い等とも関連いたしまして、その一部の問題であるということで鋭意検討を進めておるという実態でございます。
  24. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣、いわゆる国費をもって国の保護のもとに研究をし、そうして得たところの発明、これは大学あり、国立研究所あり、いろいろあるわけなんです。これが必ずしも同じような方向をとっていないわけなんです。これははっきりさせる必要がある、私はこういうことを申し上げておるのですが、文部省の一課長を相手に論争してもつまりませんので、国務大臣たる大平大臣にこのことを要望いたしておきます。かつて、御承知かどうか知りませんが、カッパー8型のインドネシア輸出の問題について相当論議になったこともあります。通産省自体も工業技術院等もあるわけなんです。そういう点で、ひとつ閣議において、国費あるいは国の保護のもとに開発、研究したところの発明、これの特許の帰属について扱い方については統一した見解を出して、必要ならば法規制をする、そういう方向でやってもらうことを要望します。いかがですか。
  25. 大平正芳

    大平国務大臣 文部大臣ともよく相談をいたしまして、善処いたします。
  26. 田中武夫

    田中(武)委員 文部省けっこうです。  いままではいわゆる前段質問で、時間の関係もあり、あえて私は審議のじゃまをするつもりはありませんので、かけ足でまいりました。これからは本題に入ります。  今回の改正は、言うまでもなく早期公開制度審査請求制度を中心とする改正でございます。早期公開制度について、そのことに基づく請求権、補償金請求権の本質等々について憲法二十九条三項ですか、財産権という上に立って論議をなされているようでありますが、特許財産権として成立するのは登録を受けた権利、登録を受けた特許権だと思うのです。それまでは、いわゆる財産権ではない。したがって、憲法二十九条の論議より先にやるべき論議がございます。そこでお伺いいたしますが、人類はみずから考え、みずからものをつくり出し、それを発表するとか発表しないとか、こういうことはいわゆる天賦の人権である。いうならば、世界人権宣言十九条にいうところの権利であり、日本国憲法前文でいう人類普遍の原理であり、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を——そのころですから詔勅ということばを使っておりますが、これを政令と読み直してもいいと思いますが、排除するところの天賦の人権であると私は考えております。長官大臣の御意見はいかがでしょうか。
  27. 荒玉義人

    荒玉政府委員 今回の早期公開に関する点に関しまして、発明をいたしますと、出願をするわけでございます。その出願をする場合に、特許になる前の段階をどういうふうに考えていくか。提案者といたしましては、出願人は国に対してもちろん特許審査をしてくれという請求権を持つと同時にやはりその前に一つ発明者としての利益というものは考えられるわけです。その利益が最終的には特許要件が該当すれば特許権になるという意味では、やはり先生のおっしゃった天賦人権ということでなくて、出願者が持っている一つの利益、これは憲法二十九条にいう財産権の一種ではないか。したがいまして、憲法の前文ということじゃなくて、やはり二十九条の第一項にいう、いわゆる財産的利益というのが出願人の持つ一つ地位をあらわしているのではないか、かように考えております。
  28. 田中武夫

    田中(武)委員 少し次元が違うようなんですね。私の申し上げているのは、人は考える動物である、したがって、みずからが考え、みずからものをつくり、それを発表するとかしないとか、これは法律をもっても制限できないところの天賦の人権ではなかろうか、こう言っておるのです。先日の公聴会のときにも、ある公述人は、この早期公開制によって自分の発明したところのものがどろぼう市場に公開せられる、そういうような意見を公述した人があったと思います。もちろん特許出願するにあたって、一年半すれば自分の意思にかかわらず公開せられるということは、出願時において了承した、こういうことが言えないではない、こう思いますけれども、とにもかくにも本人の意思にかかわらず、一年半たてば自動的に公開するということ、そのことが、天賦の人権である考えること、つくること、これを発表すること、これは私は何人をもってしても侵害することのできない権利ではないか、こういうように申し上げておるのです。そこで、いわゆる出願時において、それは一年半すれば公開せられるんだということでそこで放棄したんだ、こういう考え方も出ると思うのです。それならそれでけっこうです。あとで私はその上に立って議論を進めますが、まずその辺のところを長官なり大臣はどう理解しているのか、それを伺っておきましょう。
  29. 荒玉義人

    荒玉政府委員 ものを考えるということは、先生のおっしゃったような、あるいは天賦人権ということかと思いますが、特許法で考えていますのは、出願して以後どういうふうな権利であるかということでございますので、やはり一つ出願という行為によって、ものの考え方は区切りがあってしかるべきではないかと考えられます。
  30. 田中武夫

    田中(武)委員 いや、特許法でこう考えているという前提なんですね。前提の問題をやっているのですよ。そのことを発表するとかしないとか、公開するとかしないとかということは自由である。天賦の人権である。それが法律によって本人の意思いかんにかかわらず、一年半たてば公開せられるんでしょう。そこで、特許出願のときには、そのことをすでに了承して、すなわちそこで権利を放棄しておるんだ、こう解釈するなら、それならそれでいいと言うんですよ。あとへ問題は続きますが、それならそれでいいと言っているのです。しかし、早期公開というのは、そういう天賦の人権ともいうべきものを、一年半たてば出願人の意思いかんにかかわらず、法によって公開してしまうというのです。それに対して公聴会においては、どろぼう市場に公開するのだ、こう言っておるのです。その辺のところをどうけじめをつけて判断するのかということです。特許出願以後の問題よりもっとそれ以前の権利についてどう把握しているのか。もしそうであるとするならば、いかなる憲法、法をもってしてもこれを制限することを排除するということが憲法の精神である。世界人権宣言においても十九条にはっきりとうたっている問題である。それをどのような時点で、たとえば出願時においてその権利はもう本人が放棄したとみなすんだ、それはもう一年半たてば公開せられることを承知の上で出願するのだからということなら、それでもいいとぼくは言っているんですよ。その辺のところをきっちりしないと、次の論議が違ってくるのですよ。いかがでしょう。
  31. 荒玉義人

    荒玉政府委員 最後におっしゃった点でございます。つまり、出願すれば、そういったものは公開という前提で出願してくれという意味で、むしろあと考え方に立っております。
  32. 田中武夫

    田中(武)委員 だから、出願という意味の中に、天賦の人権の制限を受けるということは、もう本人は了承して放棄したんだ、そのような解釈を持っておられるのかと聞いておるのです。
  33. 荒玉義人

    荒玉政府委員 特許法でとらえますのは、そういった天賦の人権ということではなくて、発明者が出願をしていくということが一つの財産的な利益で、それが特許法というものによって、そういう財産権の中身が公共の福祉に適合するように定められている。したがいまして、先ほどどろぼう市場という話が出ましたが、その場合に、何の保障もなしにそういった利益を奪うということがあれば、場合によれば憲法第二十九条の公共の福祉に適合しないというおそれがありますから、補償金請求権で担保するというふうな構成になっておると考えています。
  34. 田中武夫

    田中(武)委員 特許法だから特許法だけの議論をしておったらいいというのじゃないのですよ。この天賦の人権をどう解釈をするかということがなければ、それいかんによっては特許法自体が違憲立法だともいえるし、憲法の精神からいう、いかなる憲法、法令、詔勅をもこれを排除する、これに関係してくる。この問題がはっきりしなければ、私は次の質問をしませんよ。したがって、天賦の人権を認めるなら、天賦の人権は、出願人においては、性質を変えられたものになるという観点をとるのかとらないのか。それでなくては、この特許法において——私は、特許法で財産とかどうとか聞いているのじゃないのです。天賦の人権をどう処理して、どう把握して、そしてやっておるかということでなければ——その法律が、憲法に照らして違憲立法なりやいなやというようなことが論議せられなければならないわけです。法律審査につきましては、私は法の条文の中身だけではなくて、もっと国会は、憲法という上に立ち、広い視野に立って論議すべきだと思うのです。いまのような御答弁であるならば、これは問題があり過ぎます。だから、私は、私の解釈を出しておるじゃないですか。だから、もう法律で一年半たてば公開するのだ、したがって、そこで出願人の持つ天賦の人権というものは制限を受けることを本人も了承しているのだ、こういう解釈を通すならば、次の質問にいけるわけですよ。それを、ただ特許法だけということであるなら、天賦の人権をどうしてくれるのだ、憲法の精神からいってどうなるのだという議論を展開しなければならないのですよ。いかがですか。
  35. 荒玉義人

    荒玉政府委員 あらゆる発明も、一つの想像的な創造物でございます。それを全部出願をして、全部公開するということになりますと、おそらく先生の議論が私は出てくると思います。出願をするかどうかということは、あくまで発明者の選択でございます。それが特許法のルートで入ってくる、出願すれば、特許法に基づいた手続を経て権利公開がされるということでございますので、その点、私、矛盾しないんじゃないか、かように考えております。
  36. 田中武夫

    田中(武)委員 ここは議論が詰まっておりませんので、おいておきまして、次に入ります。  そこで、改正法六十五条の三を中心とした質問になるわけですが、出願人早期公開によって一体どのような権利を取得するのですか。警告とか何かいろいろ手続があります。そして公告になったときに、補償金請求権があるわけですね。そこで早期公開、このことによって受けるところの出願人権利、保護せられるものは一体何なのですか。そのことの解釈いかんが、六十五条の三等々に関連をもって補償金請求権の性格につながるわけなのです。むだな議論はしていないわけなんです。いかがでしょうか。
  37. 荒玉義人

    荒玉政府委員 出願によって発明者は一つの利益を持っておるはずです。国に対しては特許を受ける権利といいますか、特許してくれという請求権があると同時に、発明者が、その発明を自分が使っていけるという一つの利益状態があると思います。その利益状態が、一年半という公開で出てきた場合に、発明者の利益はそこなわれます。したがいまして、補償金請求権、こちらのほうは、私、この前の答弁でも申し上げました損害賠償請求権と同じように一種の債権でございますが、その権利公開から発生していく、出願人の有する一種の利益状態から由来するというふうに考えております。
  38. 田中武夫

    田中(武)委員 もうすでに、あなたは補償金請求権の本質にいま触れられましたね。それはあとでやるつもりだったのです。私は、早期公開によって害されるところの本人の利益、あなたは不利益ということばを使ったのですが、その本体は何なのか、こう聞いておるのです。これがいわゆる財産権なのか何なのか聞いておるわけです。そこで、いまあなたは、そのことによって警告という要件を経た上で、公開後行使するところの補償金請求権は債権だとおっしゃった。この債権というのは、特定の人に行為または不行為、作為または不作為を要求するところの権利なんです。現在の民法の観念で言うならば、契約事務管理、不当利得、違法行為、これによって出てくる権利なんですよ。そういたしますと、これを債権だと解するならば、それでは業務として営む者云々というのがありますが、それに対して補償金を請求するのだというのが六十五条の条文ですね。そういたしますと、まず民法七百九条を考えてみましょう。故意または過失ということになっている。しかし警告書が出されるのだから、過失はないのですね。過失の起こりようがないと思うのです。そうすると故意ですよ。そうすると権利侵害ということになる。その侵害に対する賠償という意味じゃないですか。そこで一体、出願人の持つ権利、先ほど私が言った早期公開によって侵される権利は何なのかがまず問題になってくるんですよ。そうじゃないですか。いかがですか。
  39. 荒玉義人

    荒玉政府委員 先ほども申し上げましたように、出願すれば、一つ出願人の持っている利益状態、一種の地位というものが、強制的に公開されることによって失なわれるというのが、この法律によって補償金請求権を与えている原因だ、かように考えております。
  40. 田中武夫

    田中(武)委員 あなたは、地位という表現、不利益を受けるという表現をいたしましたね。しかし、それらの権原といいますか、源は何ですか。何によってその地位が発生し、何によって不利益が発生するのですか。その不利益ということばをとるならば、これは一つ財産権的なものだと言えると思うのです。しかし早期公開によって、それでは財産権が発生するのですか、発生しないのですか。そこで発生してくるところの権利は一体何なのか。そして警告、公告という行為を経て補償金請求権が起こる、これをあなたは債権だと言うのですが、債権にもいろいろあります。しかし、その論議は、またあとでやりましょう。しかし早期公開によって、あなたの言う地位が侵される、あるいは不利益を受ける、その本体は一体何なのかと言っているんですよ。言いかえるならば、早期公開によって発生する、あるいはその手続を経た後に、法によって守られるもの、これは一体何なのか、そういうことなんですよ。私の聞いていることはわかりますか。
  41. 荒玉義人

    荒玉政府委員 それは発明者がございまして、発明者も発明しただけでは何らの権利は発生しないわけです。出願をいたしますと、それによって、先ほどから繰り返しましたような一つ出願地位——利益と言ってもいいと思いますが、そういうものが生じてくる、こう申し上げているわけです。
  42. 田中武夫

    田中(武)委員 その地位というのは早期公開によって発生するのですか、出願ということによって発生するのですか。その出願をするところの権利といいますか、出願によって守ろうとする利益は一体何なのか。やはり人権でしょう。天賦の人権に戻ってくるでしょう。そうじゃないですか。だからこの問題を詰めなくては——早期公開によって法が守ろうとしているところのもの、一体その本質は何なのか。それがあなたの言うような不利益である、こういうことであるならば、なぜ補償金請求権というようなことをいうのか。損害賠償でいいじゃありませんか。民法七百九条の損害賠償でいいじゃありませんか。そうでしょう。財産的なものだというならそうでしょう。補償金ということばは一体どういう意味なんです。補償金ということは今日まであまり私法上では使われておりませんですね。補償ということばから浮かぶイメージは人権です。それはもちろん財産権を含みます。しかし補償金請求権とそして今度は登録によって生じるところの権利、損害賠償権とはどう違うのか。そのことは、早期公開、警告そして公告という手続を経て発生するところのものと、公開を経て現実に登録せられた権利、これが特許権ですよね。本来無体財産権といい工業所有権という財産権は、この登録せられたときに発生するのじゃないですか。それをさかのぼって——東大出ですから東大的ことばを使うならば、遡及して、公告のときにやる。請求権は公開のときにさかのぼる、遡及する、こう言うのです。そうするなら早期公開なりあるいは公告なりのときにすでに権利を発生し、それが公告、あるいはあとの場合は登録ということが要件となる、いわゆる停止条件つき権利の発生なのかどうか。そういたしますと、七百九条を片や適用し、片や適用していないという問題にも関連してくるわけですね。その点どうなんです。権利はどの時点に発生するのか。早期公開制の時点でいかなる権利が発生するのか。それとも公開のときに、警告という手続を経て公開したときに発生するのか。その権利は一体何なのか。早期公開のときに発生するとするならば、いわゆる停止条件つき権利の発生ということになりますね。そうじゃないですか。あとの場合もそうでしょう。公告によって発生するのか、あるいは登録によって発生するのか。登録なり公告によって発生したものが公開の時期あるいはまた公告の時期にまで遡及するのかどうか。これによって権利の性質が違ってくるでしょう。したがってまず最初に問題にしておるのは、早期公開によって発生する、あるいは公告によって発生する権利は何なのか。それが守ろうとするものは何なのか。言いかえるならば、そのときに発生する権利の権原、源は一体何なのか、こういうことなんです。
  43. 荒玉義人

    荒玉政府委員 源は、先ほどから申しました出願の行為の生ずる出願の利益、ただ問題はどの程度法律的保護を与えるべき利益かということだと思います。これはさっき民法七百九条のいわゆる損害賠償問題でございます。その場合にはいわば独占排他的な、いわゆる違法行為に基づいた一つの絶対権というものが中心になっておるかと思いますが、この場合まだ御承知のように全然審査をしてない状況でございます。したがって、特許権と全く同じような権利を与えるということになりますと、もちろん利益が害されるわけですから権利が与えられるわけですが、やはり同じ権利を与えますと非常に弊害が起きます。といいますのは、第三者から見ましてもまだ無審査のままでございますので、そのバランスをとりまして一つ権利をこの法律によって与えていくということでございますので、権利ならすべて七百九条に該当しなければならぬということには私はまいらぬかと思いますが、制度自身のバランスをとってきめていってしかるべきじゃないか、かように考えます。
  44. 田中武夫

    田中(武)委員 権利のバランスとか何か言っておるのですが、実態が合っていはしないのですね。早期公開によって生ずるいわゆる公告の時期に発生するところの補償金請求権は、何を守ろうとしておるか。あなたは特許出願による地位だとか不利益だとか言っているのですよ。そんなばく然とした——一体何なのか、財産権なのか人権なのか。これをかりに財産権的なものとするならば、私は何も補償金請求権ということでなくて、民法七百九条によるところの不法行為によって侵される権利。もし前者とすれば七百十条のほうになるのですね。七百九条じゃないわけですよ。したがって損害賠償と補償金請求権といったようなものとを区別する、しかもこの補償金請求権は損害賠償請求権を排除するものではないということになるのでしょう。両方使えることになっているのでしょう、後に。そうすと別個の権利だということになるのですね。損害賠償請求権と補償金請求権とは別個の権利である。ここらあたりは法案作成のときに相当議論になったように聞いておりますね。損害賠償一本でいいじゃないか。これが先ほど来言っているところの、守ろうとする地位は一体何なのか。あなたは地位ということばを言っておる。その地位というのは一体どんな地位なのか。受ける不利益というか、不利益を受けるならば、その不利益となるもとがなくちゃいけない、そのもとは一体何なのかと言っているのです。それがはっきりしなければ、いわゆる補償金請求権と損害賠償権を区別した意味がなくなるのです。その点いかがです。
  45. 荒玉義人

    荒玉政府委員 あくまで財産権でございます。
  46. 田中武夫

    田中(武)委員 それじゃ財産権といたしましょう。では財産権に対して、この場合は警告ということがあるから、先ほど言ったように不法行為による侵害ですね。それならば損害賠償ですよ。そうでしょう。損害賠償でいいじゃないですか。答えを出しましょう。
  47. 荒玉義人

    荒玉政府委員 どの権利を与えるかということによりますと、やはり公開の場合には審査をしないで公開するわけでございます。その場合に特許権と同じような排他的独占権を与えるにはふさわしくないということでございます。いわゆる適法行為ということで、それはいずれを構成するかは、制度自身目的考え方によると思いますが、この場合には、やはり審査をしないままで独占権を与えるようなことがあった場合には損害賠償ということにはふさわしくないという意味で、いわゆる損失補償的な意味の補償請求ということで考えておるわけでございます。
  48. 田中武夫

    田中(武)委員 はっきりしませんね。損失補償なら損害賠償でないのですか。財産権ならそうなるのじゃないですか。財産権に甲乙をつけるのですか。少しヒントを出していきましょうか。それとも、登録せられた特許権ははっきりした無体財産権です、これに対する期待可能というかそれを期待する権利、何かあるわけですね。したがって、それを守るのだ、こういうことにでも考えなければ、解釈がつかないじゃないですか。どうでしょう、与党諸君、この辺のところに問題がありますよ。いかがでしょう。こんなことばかりやっていてもしようがないから、これは一応問題を不明確のまま——私はあなたの答弁法律的な解明がなされたとは思いません。しかしこれだけやっておってもしようがないですから、このままにして次に進みますが、どうでしょう、まだおやりになるなら、受けて立ちますが、いかがでしょう。(「きのうもそれでひっかかった」と呼ぶ者あり)きのうもひっかかったと言っているけれども、ぼくの言っているのは違うのですよ。憲法二十九条を言っているのじゃないですよ、私は財産権とは言わないのですよ。それだけ、はっきり言っておきます。それではここでペンディングが二点出ましたね。委員長覚えておいてくださいよ。  次に六十五条の三の四項で民法七百十九条を準用していますね。しかし五十二条、いわゆる公告後の権利侵害規定、これは七百十九条を準用していないのはどういうわけなんです。
  49. 荒玉義人

    荒玉政府委員 第四項の場合はいわゆる民法七百九条そのものが適用になりますので、当然ここに準用する必要はない、いわゆる公告後の権利でございますから、全部民法の規定でいく、こういう趣旨でございます。
  50. 田中武夫

    田中(武)委員 この問題が次にいくのですが、そうしますと、公開、公告の間の侵害と、公告、登録の間に起こるところの侵害とは違うのですね。したがって、先ほど来論議しておるところの保護を受けるべき権原、これが違う。いいですね。したがって、公開、警告、公告によって発する権利、登録によって発する権利とが違うということがここで出てくるわけですね。そうでしょう。そうしてなおかつ一方は七百十九条の準用があり、他方は準用でないということ、そのことは、いわゆる守るべき権利も違う、そういうことになる。またその間に起こるところのいわゆる公開、公告の間の侵害と公告、登録の間に起こる侵害とは性質が違う、言いかえるなら、公開、公告のときのものはいわゆる不法行為ではないという解釈になってくるわけですね。不法行為ではない。じゃ正当行為かというと、それはどうなのか。そうするとそれに対しての請求権、いわゆる補償金請求権を発生さすことは法源としてどうなのか、疑問が出てきはしませんか。  それからもう一つは、その行使が公告後でないとできないというのは、民法百二十八条の条件付権利であるのかどうか、いわば停止条件付権利になるのかならないのかということも詰めなければ出てこないわけです。   〔委員長退席、宇野委員長代理着席〕 百二十八条は、御承知のように、条件付権利の侵害の禁止なんですね。したがって、その間においてなぜこれが行使できないのか、そういう問題も出てくるわけなんですがね。その辺のところ、どうですかね、わかるように言ってくれませんかね。
  51. 荒玉義人

    荒玉政府委員 補償金請求権の行使の時期を、公開後直ちにやる場合と、あるいは原案のように、出願公告からやる場合、あるいは特許権が完全に発生した登録後にする場合があり、これはそれぞれ制度の立て方が違うと思います。われわれが原案で考えておりますのは、先ほど来言いましたように、審査をしない形で公開するわけでございますので、公開後直ちに権利行使ということにいたしますと、むしろ権利乱用という弊害が起こる。  それともう一つは、御承知のように、請求権行使は、当事者が話がつかなければ裁判所にいくわけでございます。したがいまして、そういった場合に、先決問題として特許性ありやなしやということを裁判所で判断するといいますのは、いまの制度は、そういう専門的事項は特許庁判断をするというたてまえになっております。そういった問題を勘案いたしまして、請求権の行使はあくまで出願公告からということにしたわけでございます。これはそれぞれの制度の利害得失を判断してそういうことにしたわけでございます。
  52. 田中武夫

    田中(武)委員 どうもよくわかりませんが、結論は、補償金の考え方法律的には一体どうなのか、現在の出願公告とどの程度違うのか、それが明確になっておりません。したがって、この後の解釈において混乱が起こります。これが現実に起きたときに、裁判所が判断すればいいじゃないか、法律ができたならば解釈論は法律学者にまかせておけばいいじゃないかというような無責任審議ではいけないわけです。  委員長、これも一つ問題が残りました。覚えておいてください。  何かありましたら、ひとつ承りましょう。  次に、早期公開制と補正の問題に入っていきたいと思います。  改正法の四十一条ただし書きというのは何とむずかしい条文でしょう。これは妥協の産物であるからこのようなことになったのでしょう。と申しますのは、いわゆるあなたが意見を聞いたという特許協会、この改正の起こってきた源だという特許協会、これは六十四条を基礎としておるところの意見を吐いておる。特許法ですよ。弁理士会は出願権利化を主張した意見、いわゆる現行四十一条に基礎を置くところの意見を吐いた。それをミックスしたところに四十一条ただし書きができたわけです。その四十一条ただし書きは、そういことであるから矛盾に満ちておる。難解である。それを一つ一つあげてみたいと思います。  まず、早期公開は強制公開である。出願人にとって不利益であることは、いままで申し上げたとおり。したがって、一応の保護を考えた。ところが、四十一条ただし書きにおいて補正の制限があるのですね。したがって、早期公開に基づく補正制限によって、二重の不利益あるいは二重の権利侵害を出願人が受けることになる。その点いかがでしょうか。
  53. 荒玉義人

    荒玉政府委員 理行法と比べますと、今度の場合不利益を受けるという面はございます。
  54. 田中武夫

    田中(武)委員 不利益を受ける面はございます、ですね。あるということを肯定するのですね。  そこでこの補正制限の規定ですが、不明確であるわけなんです。そうするなら、実質的に審査官が一方的に判断をする、そういうことになるのじゃなかろうか。補正の可否の判断ですね。そこで特許法四十一条ただし書きに運用基準をおつくりになっているわけです。これと法律とを対象してまいりますときに、いろいろな問題が出てまいります。まず、発明目的あるいは構成について明確な定義が法律的にはございませんね。発明目的については三十六条四項、三十八条ただし書き一号、改正案四十一条ただし書き、これに出てくるわけですね。発明目的ということばがいま申し上げました条文にそれぞれ出てくるが、これは同一であると解釈してよろしいか。
  55. 荒玉義人

    荒玉政府委員 すべて同一でございます。
  56. 田中武夫

    田中(武)委員 そういたしますと、三十八条ただし書き、四十一条ただし書きでいう発明目的の同一ということ、これはどういうことをいっていますか。発明目的とは何か、それが同一というのは何か。これは補正の可否を判断する場合の請求権の範囲と関連し、それを構成する、いわゆる構成を記載するということになっておるのですね。目的が記載されないが、実質上発明目的はどう解釈するのか、こういう問題になるわけなんです。   〔宇野委員長代理退席、委員長着席〕 出願にあたって、いわゆる発明目的は書かないのでしょう。そして請求権の範囲というのは構成を書くのでしょう。そうすると、発明目的ということは構成ということなのか、いわゆる目的の同一性ということは構成の同一性というのか、こういうことになるのじゃないですか。
  57. 荒玉義人

    荒玉政府委員 抽象的にお答えいたしますが、目的は詳細な説明の中に必ずあるはずでございます。構成要素といいますのは、その目的を達成するためのいろいろな技術的な手段、こういうのが構成要素でございます。そういう関係になると思っております。
  58. 田中武夫

    田中(武)委員 補正をする場合に目的あるいは効果の記載の補正というのがあるのですね。そういうのは追加できるのですか。目的あるいは効果について追加補正はできますか。
  59. 荒玉義人

    荒玉政府委員 ですから、全然異なった——目的ということが変われば、これは発明それ自身が変わるということになると思いますが、ただきわめて軽微な場合には、場合によれば変わり得る。それぞれの発明によって私異なると思います。
  60. 田中武夫

    田中(武)委員 発明目的ということがまだ明確に答弁せられていないわけですね。発明目的とは何かというと、その発明目的が同一性を持つ場合云々という規定があるのです。そこで、このただし書を見ると、結局発明目的の共通性ということ、条文でいうところの「同一の目的」いわゆる同一性ということは目的の共通性ということになっておるのですね。目的の同一性と共通性ということはどうなんです。同じなのですか、違うのですか。
  61. 荒玉義人

    荒玉政府委員 ですから、この基準の中で「目的の共通性あるものは、同一の目的を達するものと」考えておるということでございます。
  62. 田中武夫

    田中(武)委員 いま言っているように、発明目的の共通ということ、いわゆる共通性ということはこの運用基準に出ておるわけですね。それから条文には目的の同一と出ておるのですね。そこで、これは同じかと聞いたら同じだと、こう言う。それじゃ、運用基準目的の共通性というなら、目的の同一とは共通だということであるならば、それをなぜ法で明確にしないのか。あるいはまた、目的の同一ということば目的の共通と条文をなぜしないのか。ここで私が言わんとするのは、法律の文言をこの運用基準によってすりかえておるということなんです。またあとでも問題にしますが、同一である、同じだということなら、なぜこれでいう共通ということばを使わないのか。同一性と共通とは一緒だというのなら、なぜ法文自体をそうしないのか、こういうことです。
  63. 荒玉義人

    荒玉政府委員 法制審議でいろいろ問題になったようでございますが、共通ということはあまり使ってないで同一の目的ということにした、そういう次第でございます。
  64. 田中武夫

    田中(武)委員 それは預けておきましょう。先ほどちょっと私勘違いして、目的は書かないと言ったのは違ってます。目的は書くのです。  発明を明細書に記載する場合には、目的と構成と効果を記載するんですね。三十六条四項ですね。そして三十六条五項では、発明の効果が発明の特定要素となっておる。このことは正確に言うと、発明の効果の共通というのです。そういうことになります。先ほど、目的は共通だ、こう言ったですね。そうすると、三十六条五項で「発明の構成に欠くことができない事項のみを記載」する、こういうことになっていますね。三十六条四項で、目的、構成、効果を記載する。三十六条五項で「発明の構成に欠くことができない事項のみを記載」する。事項のみに限るのですか。そういう規定になっていますね。それを言いかえるなら、発明の効果の共通ということですね。そういうことにならないのですか。
  65. 荒玉義人

    荒玉政府委員 はなはだ恐縮でございますが、御質問の趣旨をよく承知しませんので……。
  66. 田中武夫

    田中(武)委員 三十六条の四項では、「その発明目的、構成及び効果を記載しなければならない。」そういうことになっておるんですね。それから三十六条の五項で「発明の詳細な説明に記載した発明の構成に欠くことができない事項のみを記載しなければならない。」こうなっておるんですね。四項と五項の関係ですよ。それを言いかえるならば、結局は「発明の構成に欠くことができない事項」そういうことにしぼるのか。まず四項と五項との関係を伺いましょう。
  67. 荒玉義人

    荒玉政府委員 四項といいますのは、発明の中身を全部開示して書くわけでございます。いわば理想的な明細書でございますと、公知の技術はこうでございます、自分はこういう目的のためにこういう発明をということを書くわけでございます。ところが第五項は、いわゆる権利の実体、これがおれの権利だという実体でございます。したがって、目的を書きましても、目的を達成するためにはたくさんの方法が、手段があるわけであります。それを全部書いてもらう必要はありません。要するに、発明目的を達成するための一つの構成要素、あらゆる手段、それの中核になるものを書いてくださいというのが第五項の趣旨でございます。
  68. 田中武夫

    田中(武)委員 そこで三十六条の五項のほうですが、発明の効果が発明の特定要素となっておるんですね。効果というのは特定要素、重要な部分だというのでしょう。そうすると、この規定は正確に言うならば、発明の効果の共通とすべきではないのかということです。いいですか。目的と構成と効果を書く。そして五項で、効果が発明の特定要素となっておるわけでしょう。重要な部門というのはそうなんでしょう。そうすると、補正にあたって発明の効果の共通ということにつながってくるのじゃないですか。
  69. 荒玉義人

    荒玉政府委員 恐縮でございますが、もし許していただけますならば、専門家にそこらあたり厳格な定義を御説明させていただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  70. 田中武夫

    田中(武)委員 それではあらためて質問します。  それでは発明の構成とはどんなものです。これは法律に規定はないのでしょう。どうでも解釈できる。そうしてしかも、これは本文でなくて、様式十六の備考ですかにその定義らしいものが掲げられておるのですね。言わんとするのは、まず定義を明確に法律にすべきじゃないかということですよ。発明目的とはどういうことなのか、発明の構成とはどういうことなのか、発明の効果とはどういうことなのか。いうならば本法で目的とはこれこれ、構成とはこれこれ、効果とはこういうものであるということを明確にする必要があるのではないか、こういうことなんです。それを、私が言わんとするところは、施行規則によって、しかも本文でなくて様式十六の備考の十三かどっかにそんなこと書いてあるのでしょう。その点はいいですか。法律に明確にすべきではないか、こういうことを言っておるわけです。実際仕事をするにあたって、そういうことが明確になっていなければ仕事ができにくい。そういうことがあるのじゃなかろうかと言うのです。それから聞きましょう。発明の構成とはどんなことか。
  71. 荒玉義人

    荒玉政府委員 簡単に定義的に申します。発明目的といいますのは、出願人がいろいろの技術上の問題点がございます。たとえばもっといろいろな精度をあげる、そういった技術上の問題点がございます。そうして客観的には当時の技術水準ではまだ解決されていないという一つのテーマといいますか、そういうのを通常目的と称しております。  それから、そういった技術上の課題がございますと、いろいろな方法、手段でもって解決するわけでございます。そういった手段すべてを含めてそれが構成。  それから、そういった目的と手段との相関関係でどの程度効果をあげているか、目的を達しておるかという度合い、これが効果だと考えております。
  72. 田中武夫

    田中(武)委員 そこで、そういう解釈を、たいてい法律というものは、本法でいう目的とはこれこれという定義を下しているのです。それをどうでも解釈できるというような法になっておる。それが規定らしきものをさがすと、施行規則の様式十六の備考にそれらしきものがあるということです。そういうことで法律としていいのかどうかという疑問を言っているわけです。  そこで次にお伺いしますが、現行法では三十八条ただし書きによって発明の構成に欠くことができない事項を区分して全部と主要部分ということばがありますね。ところが、その一部ということばはないわけなんですね。今度四十一条ただし書きには同じ「構成に欠くことができない事項の全部又は一部」とこうなっておるんですね。そうすると現行法の三十八条ただし書きでいう発明の構成に欠くことのできない主要なる部分ということと改正法四十一条ただし書きで使われている「発明の構成に欠くことができない全部又は一部」ということば——そうすると同じ発明の構成に欠くことのできない事項を、片や主要部分という分け方をしている、片やそれをさらに「全部又は一部」とこういうのですね。いわゆる発明の構成に欠くことのできない事項をこま切れにしておる、より細分化したといいますかね、そういう規定になっておるわけですね。いかがです。そうですか。
  73. 荒玉義人

    荒玉政府委員 表現を変えておりますのは、それぞれの制度の趣旨が違うわけでございます。御承知のように現行法の三十八条といいますのは、発明の単位としては二つ以上でございます、二つ以上のものだが技術的にいろいろ関連がある、出願人一つの願書で書けるいわば別の発明でございます。今度補正といいますのはあくまで一発明の範囲内でございますので、表現が変わっていますのは、おのずから制度が変わるからでございます。で、発明の構成要素のうちで今度の四十一条の場合は、したがいまして現行法の三十八条よりは広い範囲で認めていく、それがむしろそれぞれの制度の趣旨に合うわけですから、広くしたという趣旨でございます。
  74. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、発明は二個以上、AとBを持っておるというのを出してきた、そして、実はAは特許性のある発明、Bは特許性のないものだ、補正を今度Bでやった場合、そうしたら今度はA、特許性のあるやつは補正を拒否せられますね。そうなりますか。その点どうです。
  75. 荒玉義人

    荒玉政府委員 はなはだ恐縮でございますが、その設例では理解できかねるのでございますが、もうちょっと何かお話し願えませんか。
  76. 田中武夫

    田中(武)委員 発明の明細書の記載に発明AとBを書いておる。そうしてAは特許性がある、Bは特許性がない、しかし請求範囲の記載には発明Bを書いておる。公開のときの請求範囲の補正制限というのを受けて、発明Bは特許性がないので、拒絶理由になりますね。拒絶理由になるでしょう。そうすると特許性あるAは、この請求範囲を今度Aに補正しようとした場合、いわゆる二つの事項を書いておる、Bでやった、これは特許性がないので拒絶せられた、今度Aでやろうとする場合に、補正制限を受けるんでしょう。そうじゃないんですか。そうしますと、それは結局はノーハウにいってしまうということなんですね。それで結局この申請、出願は拒絶せられるということになる。そうじゃないんですか。
  77. 荒玉義人

    荒玉政府委員 私、わかりにくいと申しますのは、Aが特許性、Bが特許でないというだけでは、本件の判断の基準——むしろAとBがどういうことで関連しておるかということでございませんと、ちょっとその設例でどうなるのか御返答困難じゃないか、さように申し上げたわけでございます。
  78. 田中武夫

    田中(武)委員 ぼくは実際の仕事よくわからぬのじゃけれども、明細書の記載にAとBと記載したというんですね。そして実際は発明Aについては特許性があるわけです。Bは一般的に知られておるというか、特許性があまりなかったという。そこで発明Bはいわゆる拒絶理由になりますね。拒絶せられますね。そして発明Aにおいて補正しようとした場合に、これは補正できるんですか、できないんですか。これはやはり補正制限にあって却下せられる、そうすると、この出願全体が拒絶せられるという結果になるのではないか、こう言っているんです。
  79. 荒玉義人

    荒玉政府委員 AとBが全く無関係の場合と、どの程度AとBが関係があるかということでございませんと、ちょっとどちらになるか御返答困難だ、かように申し上げておるわけでございます。
  80. 田中武夫

    田中(武)委員 結局言わんとするのは、目的、構成、効果、これが運営というかあるいは基準等によってだんだんとすりかわるというか、どうも解釈がわからなくなる。一点だけあげても、はっきりしておるでしょう。目的の同一性、それを共通性に直しておるでしょう。それと同じように構成のことについても、先ほど来言っておるようなことで、はっきりとしないわけですよね。権利を取得するにおいて明確な規定を欠くということ。効果においてまたしかり。そこにずっと解釈のズレが出てくる。そこで私の結論は、法解釈をいわゆる行政の範囲において欠いておるということなんです。現に四十一条ただし書きでいう発明目的運用基準によって、目的の同一性が共通性に変わっておる。そうでしょう。いわゆる主要部分ということで現行法にあるやつをさらに「全部又は一部」というようにこま切れにしていく。あなたは制度が違うからこうだということですが、これはあまりこまかいことは別として、目的の問題だけにしぼってもそういうことが言えるでしょう。法律には目的の同一性ということをうたっておるわけです。それを解釈基準によって目的の共通ということにすりかわっておるわけなんですよ。それが何か、ここあまりこまかくなりますが、構成、効果等においても、ずっと行政的な規定解釈によって法の定めが曲げられておるといいますか、解釈が法律と違ったものになってきておる。そういうことは言えるでしょう。もうはっきりしておる。ひとつ、目的の同一性と共通性だけでもよろしいですわね、とらえるとそうでしょう。もしここで、目的の同一性ということは目的の共通性だということであるならば、条文をなぜそうしないのですか。同一の目的目的の共通ということはどう違うのか。結局目的の同一ということは目的の共通ということです、同じだ、こう言うておるのです。ならば、なぜ条文それ自体をそうしないのかということ。この考え方は、法律の定めを運用基準だとかあるいは施行規則、様式十六、備考十三とかいうところできめようとしておる。そこに疑問を持つということですよ。これを言いかえるならば、私が常にいかなる場所でも言っておる、法の規定を行政によって曲げておる。言いかえるならば、行政権が立法権を侵しておる、そういうこと。これは私、予算委員会等でも事あるごとに申し上げておるわけです。ここにもそういうことが出てきておるということを証明しようとしてこまかいことを言ったわけなんですが、そうじゃないのですか。どうでしょう。
  81. 荒玉義人

    荒玉政府委員 確かに、先生のおっしゃいますように、詳細に書ければ、そういった問題はある程度解決するかと思います。ただし、特許法の場合、御承知のように、大体各国そうでございますが、こういった問題はいわゆるデリゲーションになっておるのが普通でございます。といいますのは、やはり普通の法律の背後にあるのは発明でございます。発明については技術分野ごとにいろんな考え方の相違がございます。したがって、普通の場合と違いまして、同じ事実をどう法律で示すかというのと違いまして、発明の態様、性質、その他によりまして表現自身が非常に異なっておるのが現実です。したがいまして、そういったのをすべて法律で構成していくというのは、私、特許の場合は、ほかの場合と違いまして、実際上きわめてむずかしいという特色はあるかと思いますが、できれば法律であらわすのは私は望ましいと思いますが、そういう特性があることは御了解願いたいと思います。
  82. 田中武夫

    田中(武)委員 そのこまかい枝葉末節はともかくとして、いわゆる今度の早期公開制度によって二重に権利を侵されるというか不利益をこうむることはあなたも認めたわけですね。そこで、その補正ということが重要になってくるわけですよ。ところが、その補正でいう発明目的の同一性というのが、解釈基準では共通である、こういうように変わるのですね。それから、これは制度が違うのかどうか、その点私もよくわからぬのですが、いままでは構成に欠くことのできない主要部分でしたかね、それを今度また、その全部または一部についてというと、こま切れにするのですね、そういう点。どうも私は、やはり特許法という法律の中で、目的と構成と効果ということは申請書に書くわけです。それなら、少なくともこの三つはどういうものなのか、はっきりしておく必要がある。それを、解釈基準やあるいは施行規則の本文ならともかくも——いいとは言いませんが、まだともかくも、様式十六、いわゆる様式、書くところの注意事項の中に、こういうものだという解釈を加えておる。そういうことはいかがなものであろうか。  このことをもっと大きく言うならば、いわゆる法が定むべきものを行政内部において書いておる、かってに解釈をする、そういうことにはならないか、私はなっておると言うのです。それは行政の立法への挑戦である。いうならば、まあこんないやらしいことばは使いたくないが、行政府の国会軽視のあらわれである。したがって、もっとこまかに、いま私が言わんとしたところと、条文で照らし合わせた場合に、まだ十分のやり取りがあります。一体効果とは何なのか、構成ということと目的とはどういうようにつながるのか。目的と構成というものは不可分でしょう。逆に言うなら、構成がむしろ目的じゃないのですか。そして最終的な特許目的は、その効果といいますか、そう考えたときに、どうも私、理解に苦しむ。その結果得た結論は、どうも法律にはあいまいな点があるままにしておいて、それを解釈を解釈基準だとか施行規則等々によってやっていこうということ、したがってそこに審査官の独自の見解が出てくる、これはけっこうだと思う。しかし、それに対する的確なる指針がないではないか、そういうことを言いたいわけなんです。いかがなんでしょう。
  83. 荒玉義人

    荒玉政府委員 先生のおっしゃるような御心配を、われわれはできるだけいわゆる審査基準というものをこまかく規定いたしまして、われわれ内部の思想統一をはかりますと同時に、これは同時に出願人がものを考える場合の基準でございますので、両々相まって特許制度運用してまいりたい、こういうことでございます。
  84. 田中武夫

    田中(武)委員 だから、出願人法律の規定を見て、一体何を目的にし、何を構成主要部分にし、何を公開するのか、そういうことが法律だけではよくわからない。その法律目的を、いわゆる施行規則なり解釈基準なりによって解釈がズレているというか、ごまかしておるというか、すりかえておるというか、そういうことがあるということなのです。これもひとつ預けておきましょう。委員長、いいですね。  改正案は、この補正という点について相当問題があるわけです。そこで、この補正の期間は、いわゆる出願してから一年三カ月ですね。十七条の二ですね。一年三カ月経たところで補正するのでしょう。そうですね。この制限に違反して提出せられた、いわゆるおくれたとかなんとかいう補正書を誤って採用し審査して特許になった場合、こういうことはあり得ると思うのですね。この場合、考えられることは、一体そういうときにはどう処置するのか。それについて明確な規定がない。そこで補正を当然無効とするのか。そうしたら特許自体はどうなるのか。補正せられないものについては審査出願公告もなされていないので、これは当然無効だ、こういうことになるだろうか。あるいはまた補正せられた状態特許になるとすれば、当該規定というのが一年三カ月、これはどういうことなのか。そこで審査官がかってに補正書を採用したとするならばどうなるのか、これは汚職の原因にはならないかというような疑問もあるのですが、これらについては明確なるなにがありますか。
  85. 荒玉義人

    荒玉政府委員 法律の定める補正の制限に違反して確定した場合には、その補正はなかりしものになるということで考えております。
  86. 田中武夫

    田中(武)委員 それは頭から無効だ、そうなんですね。じゃ、いまのような状態ではっきりやっていけますか。やる自信がおありでしょうか。そういう時期を失したとかなんとかいったような補正書を誤って審査せられるというようなことは……。
  87. 荒玉義人

    荒玉政府委員 要するに、補正というのは成規の手続を経てやってくるわけです。いま先生がおっしゃったのは、かりに、いろいろ制限がございます、そういう制限に違反した場合でございます。それは先ほど言いました法律効果で、その次に、むずかしいからそんなことは簡単に判断できるか。これはいろいろ、補正の問題は非常にむずかしい場合とやさしい場合、むしろむずかしい場合は少ないというふうに実務者から聞いておりますから、それは先ほど言いましたように、運用基準を明らかにすることによって運用していきたい、かように思っております。
  88. 田中武夫

    田中(武)委員 いや、その運用基準というのが、いわゆる法律運用基準との間にどうも法律とはかけ離れたかってな解釈をしておるというのが、いま目的だけでぼくはしぼって申し上げたのですが、これを詳細にあまり専門でもないので検討をいたしておりませんが、検討すればまだまだあると思うのです。少なくとも目的のところだけでも、これは法の規定を運用基準によってすりかえておる、このことだけははっきりしておるのですよ。ほかにいわゆる構成、効果等についてもいろいろ問題がある。そこでいままでいろいろ議論になったと思うのですが、私は早期公開制度審査請求制度とは必ずしも両立させねばならないものではないではないかという考え方なんですね。たとえば早期公開制度ということを前提としなくとも審査請求制度ということはできるわけですね。できますね。
  89. 荒玉義人

    荒玉政府委員 その判断現行法と比べてどうかという問題かと思います。先般の委員会で申し上げたかと思いますが、私、結論から申しますと、むしろ特許制度目的から見て、現行法よりむしろよくない、かように考えております。理由は第一には、特許制度発明を保護すると同時に、利用をはかる第三者にそれを公開することによって次の技術進歩を促進する。これは先生御承知かと思いますが、かりに請求制度だけで公開制度をやめますと、むしろ公開はおそくなるわけです。といいますのは、現行法ですと、出願があれば全部審査します。一応先願順序によってやりますと、審査の遅速によって期間はきまるかと思います。現在ですと、おおむね三年ないし四年で出願公告になるわけです。今度請求制度をとるといいますのは、出願と同時に全部請求するわけでございます。それなら請求制度の意味がないわけでありますから、出願から一定の期間出願人は考慮して、そうして審査するかどうかをきめるわけです。そういう意味の請求期間がございます。そうすると、請求期間は七年です。七年間よく考えて請求するわけです。もちろんすべてのものが七年待つわけではございませんが、少なくとも審査に着手するまでは出願人の自発的な意思によって左右されるわけです。そうしますと、むしろ現行法よりか公開がおくれてくるという弊害がございます。つまり請求期間というのはあくまで出願人の自発的意思に待つわけでございます。それなら請求期間を短くすればいいのではないかという問題がございます。短くすればむしろ請求制度自身の実効があがらない。これは出願というのは、出願した当時は発明の中身といいますか経済価値がわからないから、審査を引き延ばしていこう、こういうことでございますから、そういった意味の点から考えますと、むしろ現行法よりは技術公開という面はおそくなる。あと事務的に二、三ございますが、主要な点はそういうことだと考えています。
  90. 田中武夫

    田中(武)委員 早期公開で、とにもかくにも他人の新しい技術が早目にわかる、それがプラスだ、こういう点もあるでしょう。その点を強調しておられるようですが、今度は、それを見て、それのいいところを模造して出願してくるという弊害もむしろあると思いますね。したがって、これによって出願件数は減らないと思うのですね。  それから早期公開ということと審査請求ということとは必ずしも私は一つでなければならないことはない、いわゆる早期公開制度をとらなければ審査請求制度はとれないというものではないと思うのです。ただ早いかおそいかということについては、これは立法論として議論はあると思います。しかし少なくとも早期公開制度、それに伴う補償金請求権等については、あるいは補正の問題、四十一条ただし書きの問題等については、まだまだ明確にせられていない部分が多過ぎる。言いかえるならば、早期公開制度には問題が多過ぎる。いま直ちにこれを実施するには多過ぎる。これは学者等の意見等もありますが、時期尚早という意見がある。あるいはまたこの早期公開制を採用するならば、その前にやるべきことがあるのではなかろうか。いわゆる出願人がものすごい調査能力を持たなければならない。そのことが、大企業はともかくとして、中小企業なり個人発明家には大きな負担になる。そこで、そういうことを軽減するために新規性の調査機関を設置する必要があるのではなかろうか。あるいはこれも問題を展開すれば大きな問題になるだろうと思うのですが、出願人の便宜、発明者の保護のために多項制を実施してはどうか。すなわち、三十八条の併合出願の範囲を拡大してはどうかという議論がある。あまり長くてこのままでするならば、パンクをする。しかも早期に公開をして、一年半に公開をしておいて、実際の権利獲得まで——それは権利ということばにも、先ほど来の疑問がありますが、ともかく登録を受けるというところまでいくには、相当期間がかかる。そこで早期公開を一年半とするならば、それと見合って審査期間を法定化したらどうなのか、こういう学者の意見もあることは御承知だと思います。早期公開制度を採用するにあたっての地ならしというか、前提問題として新規性調査機関の設置、多項別の採用、そして審査期間の法定化、これらについてはどう考えておられるのか、明らかにしていただきたい。
  91. 荒玉義人

    荒玉政府委員 まず新規性調査機関でございますが、われわれといたしましては、何らかの形で、できるだけ早い機会に実現をはかってまいりたい、かように考えております。ただ法案の前提とするかどうかは、たびたび本委員会でも先生方御指摘がございましたが、私は望ましいとは思いますが、これがなければ制度が成り立たない、こういうふうには考えておりません。といいますのは、請求制度というのは、発明価値判断するわけでございます。特許性があるかどうかというだけではございません。発明として独占権を得ることがふさわしいかどうかということは、それは出願人がそれぞれの企業目的等から判断するわけでございます。そういう意味では、これがなければ制度は成り立たないとは思わない。ただし私は望ましいことだとは思います。したがいまして、実は何らかの形と申しましたのは、国の機関でなくして、やはり民間の需要に応じられるような新規性の調査機関が一日も早く実現するように、通産省全体としていま努力していきたい、かように思っています。したがいまして、そういった機関を国の機関でなくして、民間主導型の機関にして推進してまいりたいと思っております。  それから第二点、多項制の問題でございます。御承知のように多項制といいますのは、先ほどからいわゆる請求範囲の問題いろいろございましたけれども、その請求範囲を一つの項で書くというのは、現行法でございますが、それを複数の項で記載するという問題は、われわれとしてぜひ検討しなければならぬかと思いますが、御承知のようにPCTに加盟する場合には、それが先決問題となってまいります。ただし、この多項といいますのは、いわば特許法の中ではきわめて専門的でございます。またあるいは一番大事な問題でございます。なぜなら権利範囲をどうするかという、いわば基礎になるわけでございます。それだけに権利範囲をどう解釈していくか、あるいは多項になった場合には、従来のような審査で足るのかどうか、あるいは資料整備がどういうふうに変わってくるのか、いわばきわめて重大な影響を特許庁のみならず、出願人側に与える事項でございます。したがいまして、われわれとしては、ぜひそういう方向で進みたいと思いますが、何ぶん先ほど申しましたような、いろいろ解決をすべき問題がございますので、PCT加盟の目標と同時にわれわれとしては解決してまいりたい、かように思っております。  最後の法定期間でございますが、法定期間につきましては、これは残念ながら一定の期間で何らかの処分をするという訓示規定にしろ設けるということは、私は適当ではないと思います。なぜなら、御承知のように、出願審査の期間といいますのは、必ずしも全部門一律ではございません。出願の状況なり、あるいはそれをやる審査官の状況等によりまして、必ずしも一律でない。その場合に、一律に何年で区切ってやれということになりますと、これは実情には合いませんし、むしろ審査官に無用な負担をかけるという新しい結果が生ずると思うのでありまして、これは残念ながら採用できがたいと考えております。
  92. 田中武夫

    田中(武)委員 とにもかくにも先ほど来の質問で、早期公開制にはまだ問題が多い。さらにそのことに関連をして、そういうことでこまかくやりとりをやることを避けて、ペンディングになった点が数点ございます。さらに三十八条ただし書きと四十一条ただし書きとの関連ということになると、実はよく私も実態がわからないために、どうもつかまえられない。率直に申し上げまして、実例をあげてみないとよくわからない。そういう問題もあります。それから四十一条ただし書きの運用基準というようなものも先ほど来言っておりますように、いろいろな疑問が残ります。  そこで、委員長あるいは各党理事に提案をし、お願いをいたしたいのですが、これ以上質問をやっても、こまかいことになるだろうと思います。しかし多くの同僚委員が問題点を指摘しておるし、その上にきょう私は何点かの問題点を指摘したのです。まだ明確なる答弁は得られていない点もございますし、ことにこまかい三十八条ただし書きと四十一条のただし書きの関係等については、私自体もまだ実態がつかめない点もございます。そういうことでございますので、理事会において、もうあとは採決するといったようなことがきめられておるやに伺っておりますが、そういうことにこだわらず、もう一度各自の質問で明確になっていない点等を整理する。そして明確にしなければならない点もあろうと思います。さらに、これは専門的でないとよくわからないけれども、私の感じとすれば早期公開制度を前提としなければ審査請求制度というものは採用できないというしろものではない。したがって、滞貨処理という一つの大きな目的を果たすためには、早期公開制度は問題があるから、しばらく検討期間を置くことにし、まず審査請求制度を先に取り入れて、それが七年で長いか短いかは立法論として理事会等で協議をしていただく必要もあろうと思います。  要は、きょうはだれそれの質問が終わったあとで何が何でも採決をするのだ、こういうことではなくて、委員長を中心に、預けております問題等々も考えていただいて、事後の取り扱いをひとつ理事会等で御検討していただくように——まだありますが、二時間以上もたちましたし、大体二時間以上も質問をすると、だれるものです。したがってこの辺で終わりますが、最後にこのことを私は委員各位及び委員長にお願いをしておいて終わりたいと思います。なお強行してでも採決というならば、まだ問題を掘り返す用意のあることを申し添えておきます。  以上で質問を終わります。
  93. 大久保武雄

    大久保委員長 石川次夫君。
  94. 石川次夫

    ○石川委員 この特許法の問題につきましては、たいへん慎重な審議を重ねて今日に至っておるわけでありますけれども、まだまだどうしても納得のいかない点があまりにも多過ぎると思うわけであります。  最初に申し上げておきたいのでありますが、この問題は弁理士の諸君反対が相当大きい。いわゆる特許庁分会という組合の反対もかなり大きい。しかしわれわれは、この組合が反対をするから、社会党と組合との関係は不離一体であるから、これに同調して反対をするというような狭い量見でこの問題に対処しているのではないということはぜひ御理解を願いたいのです。ただ組合とすれば、当然労働強化になるということは組合員を守る立場から声を大にして言わなければならぬでしょうし、また労働強化ということになれば、職場環境を整備をするという関連からしても、あるいはまたその労働強化という事実が強くあらわれてくるということになれば事務の渋滞を来たすという点で、われわれとしても等閑視しておるわけにはいかぬわけでありますけれども、この法案を実施をする段階になったと仮定いたしまして、これに携わる審査官諸君がこれに対し心理的な抵抗が相当多いのではなかろうか。このことがひいては、この特許法をせっかく当局のほうで希望されるような状態で実施をされるとしても、事務の渋滞を来たすおそれがあるのではなかろうかという点は、どうしても不安でならないのであります。その点大臣はどうお考えになっておりますか。
  95. 大平正芳

    大平国務大臣 この前にもお答え申し上げましたように、私は特許庁の職員が誇りと自信を持って執務に当たっていただいておるものと承知しておるのでございまして、今後もそういう姿勢であられることを確信いたしております。法律改正それ自体は労働強化をねらったものではないのでありまして、そのことにつきましてはこの間からるる申し上げておるとおりでございます。
  96. 石川次夫

    ○石川委員 それからこの特許法改正になった直接の原因は、言うまでもなく、滞貨が非常に多過ぎるので、何とかこれを解決しなければならぬということから出発をしておることは、いまさら繰り返すまでもないのでありますけれども、その前提として、日本の政府が、この特許庁という問題、特許法という問題、それ以前に科学政策というものに取り組む姿勢というものが非常におくれておるということを指摘しなければならぬと私は思っておるわけであります。たとえばこの特許法の問題に関しましても、これは通産行政の一環として考えることが正しいのか、あるいは科学政策の一環として考えるのが正しいのかという点については、これはこの前一回質問をいたしましたから繰り返しませんけれども、これは通産行政の一環ではなくてほんとうに科学行政の一環なんだということで、独立した権威というものを認め、それをまた高めてやるということを通じて、初めて特許法の問題というものは解決に近づくのだと思うのでありますけれども、どうも日本の政府それ自体が科学政策に対して非常に立ちおくれるという面もあるし、それから国会自体も同じような責任を負わなければならぬと思うのであります。たとえば科学技術振興対策特別委員会というのがあって、この特許法の問題については連合審査を申し入れ、科学政策の一環として特許法に対して取り組みたいという熱意を示したのでありますけれども、連合審査の実現も見るに至らなかったわけであります。  委員長に伺いますけれども、この連合審査を拒否した理由をひとつお聞かせ願いたいと思うのです。
  97. 大久保武雄

    大久保委員長 石川君にお答えいたしますが、拒否したことはございません。連合審査の申し込みも委員長にはございません。お答え申し上げます。
  98. 石川次夫

    ○石川委員 どうもよくわからないのですけれども、科学技術振興対策委員会のほうでは、これは正式に申し入れて拒否をされるということになればいろいろメンツの問題もあるだろうということでありますけれども決議はいたしませんでしたけれども、とにかくこれをやりたいという意向だけは伝わっておるはずです。
  99. 大久保武雄

    大久保委員長 意向も委員長には伝わっておりません。
  100. 石川次夫

    ○石川委員 どうも話が食い違っておかしいのです。私は科学技術振興対策委員会のほうの理事をやっておりまして、それをはっきり話をまとめて申し入れをすることになっておったわけなんです。それを聞いておらないということになれば話が全然食い違っておる。それではここで議論をしても始まりませんけれども、しかし少なくともこれは単なる通産行政の一環としてだけこれをとらえるという考え方は間違いだ、科学振興の中核としての特許行政をどう考えるかという視点からの考え方というものはぜひ必要ではなかったのかと思っておるわけであります。  それで、たとえば日本でよく言われております科学技術といえばサイエンス・アンド・テクノロジーと言われておりますけれども、どうも日本はテクノロジーのほうへばかり走ってサイエンスを忘れる。リサーチ・アンド・デベロップメントといえば、リサーチを忘れてデベロップメントばかりに走る。したがって基本的な科学に対する考え方というものは非常な立ちおくれを示しておるという点で、一つ私具体的な例を申し上げたいと思います。このことを申し上げるとたいへん時間がかかりますので、いずれあらためて一般質問の場で通産行政に関する面についてだけ質問したいと思っておりますけれども、たとえば日本は海洋国だと言われておりますけれども、海洋開発は非常な勢いでムードとしては日本でも高まってまいりましたけれども、世界じゅうどこも必死になって取り組んでおる。日本の近海のたとえば日本海あるいは瀬戸内海の海底の賦存資源の調査とか地形の調査、これは日本でほとんど行なわれておりませんけれども、アメリカ並びにソビエトは日本の近海をことごとく調べてある。日本は全然手をつけておらぬ。こういうようなていたらくであります。そこで、おくればせながら大陸だなの開発というものを含めて立ち上がらなければならぬという実態になっているわけでありますけれども、たとえば鳥取沖から五島列島にかけて一万五千キロ、これに対する海底資源、石油資源、これを開発するために、シェル石油と日本の三菱グループが合弁会社をつくって、六十億円の予算で試掘にかかるという段取りになっておる。これは日本がやるのではないわけです。アメリカがやるわけであります。こういうようなていたらくになっている。これは早く何とかしなければならぬ。それに対する日本の海洋開発の予算は、去年よりは相当進んだと思うのでありますが、一体どのくらいだと大臣御記憶になっておりますか。——よろしい。わからなければわからぬでけっこうです。これは三十一億円であります。シェル会社が単独でやる予算だけで六十億円であります。海洋開発というものを何とか日本も追いついていかなければならぬという、これは絶対的な至上命令的な使命があると思うのでありますけれども、わずかに三十億円であります。おそらくアメリカはアポロ計画でもって二百四十億ドル使いましたけれども、この海洋開発にそれと同じくらいの費用を、アポロ計画の一段落と同時につぎ込んでくることは、火を見るよりも明らかであります。  このように、どうも科学技術の政策というものは日本は格段のおくれを示しておる。情報産業は将来の日本の産業じゃなくて世界の産業です。あるいは全産業の情報関係でもって三割から五割を占めるであろうということが予測をされておる。しかるにこの情報産業に対しても、ハードウェアのほうはともかくとして、ソフトウェアのほうは完全な立ちおくれになっているというようなことで、どうも科学に関する政府のかまえというものは非常に立ちおくれておるし、また国民自体も関心が薄いのだということが言えると思うのであります。  一つの例として申し上げますけれども、日本では国会でもって交通安全特別委員会、災害対策あるいは産業公害、こういう特別委員会を設けておりますが、OECDではどういう部門でこういう問題を扱っているのか、通産大臣、御存じですか。
  101. 大平正芳

    大平国務大臣 OECDの中のメカニズムはよく承知しておりません。
  102. 石川次夫

    ○石川委員 これはOECDではこういう問題は全部科学政策委員会の中で扱っておる。日本では行政的な手段として特別委員会をつくって、法律をつくれば事足れりという考え方になっている。ところが、先進国の考え方はそうではなくて、科学でこれを解決しよう、こういう発想のしかたは、日本人とそういうほかの国々とはだいぶずれているんではないか。したがって、日本では官僚王国になる。行政ですべて処分するという考え方になる。そうじゃなくて、それ以前の科学の分野として対処していく、こういう考え方ができないと、正しい政治は生まれてこないんじゃないか、こういうことを私は常々痛感をしておるわけです。たいへん僣越のようなことでありますが、一言申し上げるわけであります。その一つの例として、今度の特許法改正の問題に関連をして、政府の研究機関における特許の扱い方はどうなっているかということを、この前この場で質問をしたことがございます。そのときに、この政府の国立研究機関の中で、特許の専任係を設けているのは、わずかに五つしかございません。その五つの機関の専任係を調べてみますというと、一人当たり研究員を百五十八人かかえておる。民間はどのくらいかというと、専任係一人当たりというのは、研究者は十四名しか扱っておらぬというような計算で、特許というものを非常に重視しておる。したがって、国立研究機関の足元の政府それ自体が、特許に対してこういう無関心な状態であったということが、今日の滞貨をもたらした最大の原因だと私は思っております。  そこで、ついでながらお伺いいたしますけれども、この工業技術院をはじめとする国立研究機関の中で、特許専任係というものをこれから充足をしていく、こういう方向をまず政府自体が確立をしないというと、特許庁だけを直すというふうなはんぱな考え方では解決にはならない。特許法とは直接の関係じゃございませんが、そういうかまえになってもらわなければ、特許庁だけいま法案が出て関心を持たれているから何とかするというようなことを言っても、基本的な姿勢がそれでは直らないんじゃないかということで、民間並みに一人当たり十四名ということにはならないにしても、とにかく研究機関で、あるものはわずかに二〇%、五つの機関だけで、それが百五十八人も研究者をかかえて特許事務を扱っているというのですが、これは不可能です。したがって、技術屋が貴重な時間をさいて特許の申請事務をみずからやらなければならぬという状態になっておりますことは、この前の工業技術院の総裁が参りましたときの答弁でも明らかであったわけです。これは通産省だけの関係ではございません。むしろ、ほかの関係もありますけれども、少なくとも特許庁を預かる通産大臣としては、自分の傘下の国立研究機関の特許関係要員、これは充足をする、十分にこれに対応できるような、民間とまでいかなくても、充実をさせていくという決意をまず示してもらいたいと思うのです。いかがですか。
  103. 大平正芳

    大平国務大臣 石川先生おっしゃるように、日本全体が、私どものお役所を含めまして、テクノロジーとかデベロップメントに走って、手間のかかる、時間のかかる、金のかかる基礎の科学の分野の開拓に懈怠ぎみであったということは、まことに御指摘のとおりでございまして、私もそういう欠陥をあなたと同様に感じておるのでございます。したがって、足元からそういう特許権の取り扱いの事務について手薄な状態にあるという御指摘でございますが、これにつきまして、可能な限り充員をいたしまして対応してまいらなければならないと決意をいたしております。
  104. 石川次夫

    ○石川委員 それで、こういう滞貨を生んだ最大の原因は一体何かということは前々から議論が出ておりますから、私は省略をいたしますけれども、単純に人数の関係だけで申し上げますと、定員と実員の差が大体百四十六名現在あるわけです。この百四十六名が十年間にまたがっておったといたしますと、一人当たりの扱い件数から見まして、三十五万件は、大体いままでの十年間でこの滞貨はそれだけ減っておるという計算が出てまいります。一人当たりの取り扱い件数とその定員まで満たなかった員数をかけ合わせますと、そういう数字が単純に出てくる、したがって、こういう点でも人間を充足しなかった、このこと自体がすでに問題であったのでありますが、そのほかにも制度の問題もあり、あるいは環境の問題、待遇の問題、そういういろいろな問題があるでありましょうけれども、なかなか適当な人が採れなかったのだという御答弁があったようでありますが、それに相違ないですか。ちょっと伺います。
  105. 荒玉義人

    荒玉政府委員 確かに充員の面で審査官が傾斜的にふえましたので、やむを得ず一部定員を借りて、事務系の職員を充当したという事実がございます。これはたびたび本委員会で申し上げましたように、われわれといたしましては、バランスのとれた増員ということが望ましいわけでございますが、いままでこれもたびたび申し上げたことで恐縮でございますが、そういう事態になっておることは、われわれとしても遺憾に思っております。これは各省それぞれとの折衝を今後も強力に進めることによりまして、名実ともな定員にしたい、かように考えております。
  106. 石川次夫

    ○石川委員 この前から、どうも適当な人がおらなくて採用困難である、審査官の欠員を埋められないのだというふうな答弁がありましたけれども、この新聞は長官大臣も御存じだろうと思うのでありますけれども、四十四年三月七日、「面接五カ月後に不採用通知」というのがございます。これはさる大学卒業生のおかあさんから——昨年夏国家公務員の上級試験に合格をしたので、特許庁を希望して、九月に面接試験を受け、その結果は十月の中ごろに文書で、採用候補者と決定をした、こういう通知があったわけです。ところが候補者というのは、どうもよくわからなかったけれども、このおかあさんは、まあ予算関係で、官庁はものの考え方が非常にかたいので、内定ということと同じことじゃないかということで、安心しておったところが、急にことしの二月ごろになって、定員の都合により不採用、あしからず、こういう通知が来たときには、もう就職のほうは手おくれになって、非常に迷惑をした、こういう投書がある。これは事実だろうと思う。この採用候補者——候補者ということになれば、大体民間では採用内定と思うわけですよ。ところが、五カ月もたってから不採用通知が出るというようなことでは、その本人に対して非常な迷惑をかけたという一面と同時に、何か人がいなくて採れないのだといういままでの答弁とだいぶ食い違うのじゃないですか。これはどういうわけですか。
  107. 荒玉義人

    荒玉政府委員 いま先生おあげになりましたケースは、やはり総定員法の関係がございまして、われわれとしては、総定員法が早期に成立しておりましたならば、あるいはそういう事態はなかったと思いますが、一応留保づきで、いまのところは定員がないということの留保条件を申し上げた次第でございます。あるいはわれわれが面接いたしまして、書面でなくして、その間の事情をもう少し本人に詳細にお話し申し上げれば、そういう事態は避け得たかと思いますが、そういった関係の文書だけだという意味では、やはりもう少し事情を説明すればよかった、かように考えておる事例だと思います。
  108. 石川次夫

    ○石川委員 これはそうすると、留保条件だというのですが、それじゃ、不採用、あしからずということは、通知は行っているわけですね。本人が言っておるのだから間違いないと思うが、不採用ということになっておるのですね。留保じゃありませんね。
  109. 荒玉義人

    荒玉政府委員 ちょっと、事実関係を秘書課長承知しておりますから、かわって答弁をお許し願いたいと思います。
  110. 京本善治

    ○京本説明員 お答え申し上げます。昨年の九月に採用試験をしたわけでございます。それでその方は一応合格線上にあったわけでございますが、定員の関係でそのときはきめるわけにはいかなかったわけです。それでその方に出した手紙の内容は、定員の関係で採用できません、ただし将来もし定員に余裕が出ればあらためてまた御連絡を申し上げます、それが十月の話でございます。それで、ことしの二月に大体予算定員——定員法は通っていないのですが、大体予算定員がわかったので、それで、どうしてもやはり定員の関係でだめです。それで、本人から連絡がありまして、どうも役所の文書の文言ははっきりしないという話だったので、私のほうで、本人並びにおかあさんに会いましていろいろ御説明して、そして誤解も解けたという状況でございます。いずれにしましても、本件責任者としましては、そういう誤解があって、本人並びに各方面にたいへん御迷惑をおかけしたので、私自身としてもたいへん責任を感じておる次第でございます。本件は、本人並びにおかあさんにもお話ししまして、本人の自宅へも行きましてよく御説明して解決をした、こういうぐあいに考えております。
  111. 石川次夫

    ○石川委員 私、どうも合点がいかないのですけれども、人数が足りない、人数が足りないということが盛んに言われておって、特許庁というところは、いま定員まで充足をされておるのですか。
  112. 荒玉義人

    荒玉政府委員 四月一日現在で、総定員法は御承知のように千八百名でございます。欠員は二十四名ございます。現在、審査官はもうすでに七十四名採用しておりまして、あと残りは事務系職員を目下採用中でございます。したがって将来は充足するつもりでございます。
  113. 石川次夫

    ○石川委員 何かいままでの答弁は、いい人がいなくて、なかなか採れなくて、それで滞貨がふえたのだというような御説明に終始一貫しておったわけです。すると、定員だけでは足りないということが、そのことばの裏から出てまいりますね。どうもいまのところは審査官は定員を満たしておるような御答弁なんで、そうなると、いままで滞貨になったというのは、定員を満たしてもなおかつ足りなかったということになると、定員それ自体に問題がある、こういう結果になりませんか。
  114. 荒玉義人

    荒玉政府委員 問題は二つございまして、一つは、われわれといたしましては、審査官の定員を借りて事務系職員をやっておりますが、そういう意味では定員をもっとふやしていただきましてそういうことのないようにするという問題、これは全体の総定員法の問題がございます。それから審査官の場合は、われわれとしても、これは非常に定員その他に余力がありますと、計画的にもっと増員ができるという問題がございます。したがいまして、それは定員をもっとふやしていただいて、そうして的確な時期に適格な人が採用できるような体制にいたしますれば、充員は、——いまは大体年間七十名くらい、これは全国でございますが、そういった範囲の増員を、われわれとしてはさらにもう少しふやしていただきたい、かように思っておりますが、それはやはり全部の定員とも関係がございます。ただ問題は、極端に言いまして、それじゃ百名以上そんなに容易に採用できるか、こんな問題になりますと、実際問題といたしまして、なかなかそういう程度にはいかないということ、二面あるかと思います。
  115. 石川次夫

    ○石川委員 あとたくさんあるのですけれども、時間があまりありませんが、早期公開の問題で、これはいろいろ先ほど来、また先日来からの質問がありますから、重複は避けますけれども特許庁のほうから、早期公開というものを必要とする理由の中で、産業界の要請が非常に強いのだということを強調しておられますけれども、このことは、裏返しをすると、特許関係の専任係官を置くことのできるような大産業は、これは早期公開によっていろいろな技術というものを、悪いことばでいえば盗用することもできる、こういうようなメリットはあると思うのであります。逆にいえばノーハウを考案者が盗み取られるという危険性がきわめて濃い、これは権利の侵害である、憲法違反ではないか、こういう議論もいままでさんざん繰り返されてきたわけでありますけれども、そこで早期公開によって情報が一ぺんに公開をされる。しかも整理をしない。いままでは一応きちっと整理したものが一定の線で公開をされたわけでありますけれども、今度は出てきたものそのままどんどん、どんどん出ていくという、そういう傾向が非常に強くなると思うのでありますが、そういうふうな権威のない情報、これは半分以上は拒絶されるわけでありますから、権威のない情報というものがはんらんするということで、はたして早期公開のメリットが十分に果たされるのかどうかという問題、それだけ一応聞いておきましょう。
  116. 荒玉義人

    荒玉政府委員 情報が必要なのは、私は大企業だけではないと思います。先般の公述人でも、御承知の中小企業、中堅企業の方々で、とにかく自分で他にないものを開発したいということは大企業、中小企業を問わず情報が必要だというふうに皆さんの意見を聞いておる次第でございます。その場合に、能力がない云々の問題でございますが、それも私、大企業必ずしもほんとうに技術開発をやっておる、中小企業あるいは中堅企業よりすぐれているとは思いません。これも繰り返し申し上げますが、要するに分野が多うございますので、したがって人数と関心分野を比べてみますと、必ずしも大企業有利だというものではないと思います。むしろ、ほんとうに自分で独特な技術開発をしておる分野の企業は、これは大企業、中小企業関係なく、サーチもするし、またする必要性も持っておる、かように思っております。
  117. 石川次夫

    ○石川委員 これは意見が並行したまま今日まできていますからそれ以上申し上げませんけれども、しかし特許として重要なものに属するようなものについては、学界の発表なりあるいはいろいろな機関誌なりということで大体は一年六カ月の間には出るべきものは出ると思うのです。したがって、この早期公開によって一ぺんに未整理のものがどんどんちまたにあふれるという状態にならなくても、そういう方面での関心を持っておるものはそういうもので情報をとれるのではないか。早期公開というものによっていまは中堅企業個人も大企業も同じだと言いますけれども、それは違います。中堅企業というのはどの程度のことをいうかわかりませんけれども、大企業の整然と整備された特許専任係がだっと一つの部をつくる、あるいは局をつくるというような力を持っておるところと、それから民間の中小企業の細々と一人、二人でやっておるようなところとは、これは全然処理能力が違うのです。これは長官がいかに強弁しましても、その点は私は身近にわかります。それはどうしたって大企業本位といわれても、これは弁駁の余地はないだろうと思います。よく早期公開制度あるいは審査請求制度というものをとったモデルとしてオランダのことが出てまいりますので、オランダの特許申請の件数、それからオランダの国民総生産は日本に直すと一体どのくらいになるのか、あるいはまたオランダの経済成長率はどのくらいか、それから技術革新によって生産の増加した分に対する寄与率は一体どのくらいになっているか。オランダを何かにつけて引き合いに出されるようでありますから、その点ひとつ伺いたいと思うのです。
  118. 荒玉義人

    荒玉政府委員 実は出願件数だけしか手元に資料がございませんですが、大体一九六八年が出願で一万七千百九十八件、六七年が一万七千八百七十二件、六六年が一万八千四百八十九件、大体一万七、八千という出願件数でございます。
  119. 石川次夫

    ○石川委員 問題は二つあります。一万七千くらいの少ない数を処理しているところと、日本のように膨大に出ているところを、同じような形でオランダが成功したからこちらもやってみようというような比較にはならないのではないか、これが一つであります。  それから、いまオランダの国民総生産や成長率あるいはまた年々成長している、生産が増加している中で技術革新というものの寄与している寄与率というもの、これを全然あなたはお調べになっておらぬわけですね。ところが経済成長とその中に技術革新が寄与している貢献率、こういうようなものと特許というものは無関係ではないわけなんですよ。きわめて低い成長率で、しかも技術革新がその生産増加に寄与している率が少ないというようなところで扱う特許のあり方、それから日本のように非常な工業生産、国民生産が伸び、その中で技術革新の寄与している率は大体四〇%、こういうふうなところでは特許というものは何でもかんでも中核になって相当の力をなし、また出願件数もきわめて多くなる。こういうところとオランダを比較して、オランダができたから日本でも早期公開をやり審査請求をやればそれで成功するのだと考えること自体に、私は前提として非常な誤りがあったのではなかろうか。おまけに御承知のように、何回も言われておりますように、新規性調査機関というものはオランダでは完備をしておる。件数が少ないから完備をすることもできる。日本の場合はなかなか困難であろうという事情はわかりますけれども、そういう前提条件が満たされて、件数がきわめて低く、国民総生産も低くて、経済成長もそう高くなくて、技術革新あるいは特許というものの役はそう大きくない、そういうところの制度を日本に持ってきて、そのまま成功するのだとお考えになるところに、私はたいへん前提として誤りをおかしているのではないか、こういう気がしてならないわけであります。ドイツにしてもそうでありますが、そういうところの経済状態あるいは経済政策の中で特許の占める比重、貢献度、そういったものがわかった上でやはり向こうの制度を取り入れるということでなければ、私は前提として誤りをおかしておるということを指摘をしないわけにはまいりません。  次に移ります。それで、オランダの審査請求率は一体どのくらいですか。
  120. 荒玉義人

    荒玉政府委員 これは五年度でございますから、五年度の実績で申しますと、請求率は四四・五%でございます。
  121. 石川次夫

    ○石川委員 オランダの請求率はきわめて低いのですよ。その低いオランダの審査請求率の中で、外国の特許というものはかなりのパーセントを占めて、その外国の特許審査請求率はきわめて低い。したがって、その比率を日本に当てはめて、日本における特許の中で、外国の特許というものは日本の特許に比べて大体四倍の比重がある、したがってその外国の特許がオランダ並みにきわめて低い請求率になるであろうから、日本の全体としての審査請求率というものは八五%とか八〇%になるであろう、こういうわけでありますけれども、いま申し上げたようにオランダでは審査請求自体が四四%です。したがって外国の特許審査請求率も非常に低い。しかし日本の場合は、オランダとは先ほど来から申し上げておるように全然事情が違う。外国では、日本に対して技術を譲るよりは、日本に資本をもって向こうの技術を持って上陸をしたい、いわば資本の自由化ということで熾烈に日本に攻勢になってきておるわけです。こういうところではオランダと同じように外国の特許が四〇%くらいに落ちるであろうというような考え方はきわめて甘過ぎるのではないか。したがって、外国の特許というものは日本の特許に比べて四倍の負担をかけておるわけでありますから、その請求率は非常に下がるから、したがって審査請求率は非常に下がるであろうという見方自体に私は大きな誤りがあったのではなかろうか、こういう気がしてならないわけなんです。その点はどうなんですか。
  122. 荒玉義人

    荒玉政府委員 長期計画の場合で申し上げました請求率はすべてオランダのとおり考えているわけではございません。おっしゃいましたように、確かにオランダと日本の場合は国内事情も違います。あるいは外国人の出願の状況も違うと思います。しかし、請求率に関しては少なくとも外国人の請求率は同じだと思います。これはもちろんです。といいますのは、日本の場合はマーケットが多うございます。大体オランダの場合ですと外国人の出願は一万三千くらいです。年度によってあれですが、大体一万三千くらい。日本の場合は二万八千件くらいですから、出願そのものは、オランダに対する出願と日本の場合は倍以上でございます。そういった意味でマーケットは出願にあらわれてくるわけです。しかし、外国人の請求率のビヘービアはやはり価値あるものを出してくるという意味では、全く一緒かどうかは知りませんが、そう大差はないのではないか。しかもその場合に外国人出願のロードというものは、先生御承知のように、われわれは相当外国人のロードに四割以上かけているわけでございます。その面からいえば、まず外国出願については私、やや似たことかと考えてしかるべきではないか。日本の国内につきましては、これもたびたび申し上げましたように、これはやはり一つの業界調査に基づいて、そして実用新案請求率七割、特許は八割、こういう傾向でございまして、ずばりオランダの四十何%を持ってきてわれわれは計画を立ててない。その間の事情は御了承願いたいと思います。
  123. 石川次夫

    ○石川委員 これはもう見通しの問題ですから、そちらは専門なんで、ある程度自信をもって答弁されておるのだろうと思うのですけれども、私たちの常識的な判断としては、オランダと同じような外国特許の申請率にはなり得ないであろう。オランダに対してはそれほど資本の自由化を迫り、そして上陸をしようというかまえはないわけなんで、日本の場合にはもうウの目タカの目でとにかく上陸をしたがっているわけです。そういう関係から言いまして、私は特許の申請率はオランダ並みに低くなるとは考えられない。どうしてもこの請求率は相当高いものだ、こう私は推測をしておるのです。これが高いということになれば、この八五%の請求率なんてがらっと変わってきちゃうわけですね。そういう点での見通しに誤りがなかったかどうかという点についてわれわれはまだ非常に釈然と納得ができない。こういう点をまず申し上げておきたいと思うのです。  それから、いろいろ話せばたくさんあるのでありますけれども一つだけ聞いておきたいのでありますけれども、この新しい制度になって「制度改正に伴う審査負担について」ということで特許庁のほうから出ております。これは全文について申し上げるとたいへん時間がかかりますので申し上げませんけれども、しかし最初の分を見ただけで、こういう数字は一体どこから出たのだろうかという疑問が残らないわけにはまいらない。  一つ申し上げます。この「先後願の審査(1)旧法分」というものが一つありますが、これは全体として結局一・八%の増である、こういうことになっております。全体を八%にして、その八%におさめなければどうしてもつじつまが合わなくなるというようなことで逆算をしたのかもしれませんけれども、ここに一・八%という数字が出てくる。ところが、そのほかに、この中にはサーチ分しか出てないですね。サーチ分しか出てないのですよ。そのほかに公開公報というのが毎月三万以上も配付をされる。それを読まなければならぬ。読んで理解をする。理解をするということになると、これは全体の四割もかかるのです。明細書の内容理解というものに四〇%かかる。しかし、四〇%でなくて、一応目を通して理解をするだけでありますから、いままでのような内容理解とは若干形が変ってくることはわかります。そこで、この公開公報を読んで、ある程度理解をする、それから公開公報を整理する、そのための資料整備の負担というものもこれにはほとんど入っておらない。これはどういうかっこうか、この計算をしてみますというと、一人当たりのノルマを二百五十件にした場合に、一人で大体月五十七件。五十七件が四時間かかると見るとあるいは見過ぎになるので、半分の二時間と見る。二時間と見ただけで大体現在の負担の五割に相当するという数字が出てくる。五〇%です。非常に単純な計算で、全部正しいとは私申し上げませんよ。しかしながら一・八%とは何とかけ離れた数字であるかということだけは指摘したいのです。それから別な方法でやってまいりますというと、公開公報を読むためには、二〇%と仮定をして一月でもって大体五十七件でありますから、その二割、そうすると二時間と仮定した場合一年間百四十四件という数字になる。一年間百四十四件ということになれば、一年間に扱うのは大体三百件くらいでありますから、大ざっぱにいっても、ここからも五〇%という数字が出てくる。そのほかに資料整備に要する負担というものも、われわれのほうで計算すると二〇%から二五%という数字が出てくる。そういうことで、早期公開制度では資料を出し、それを読ませ整理させる、そういうことの負担がわずか一・八%とは一体どういうことなのか。これはまことにつくられた数字である。八%ということで押えなければ、早期公開制度をやり、そうして早期公開制度によって負担が八%ふえても、審査請求率——それ自体問題ですよ。さっきいろいろ私が申し上げましたように、外国の特許審査請求率の見方なんというのはあなたと私のほうではたいへん見解の相違がある。それをさておいても、八五%であると一応仮定しても、そこまでしなければ八%の差で滞貨分が埋まってこないわけですから、そういう数字を八%と押えて逆算をすると、この先後願の審査、旧法分というのは大体一・八%という数字が出るけれども、われわれのほうでいうと、将来にわたってずっとそうだとは言いませんけれども、当面少なくとも五割くらいの負担にはなる。非常な負担になる。これは一・八%と計算をし、八%の中にそれをずっと埋め合わせをして逆算をして出した数字のとおりにこの改正法を実施した場合になるかというと、絶対にならない。これはたいへんな負担と混乱が起こる。私は当初申し上げたように、労働組合が労働強化になるから反対をするということで反対をするのではなくて、特許滞貨をいかに処理するかということでこれをやった場合に、逆効果と混乱があるだけではないか。こういう点で私はこの特許法改正法というものにはどうしても納得しにくいのです。決してわれわれは、反対をせんがために反対しようという気持ちは毛頭ないことは御理解願えると思うのでありますが、そういう点で計算のしかたがだいぶ違うようであります。一・八%というのは、これは大臣ちょっとお考えになって、こんな程度で済むとお考えになりますか。早期公開によって、資料を読んで、とにかく一応理解をしなければならない。前のを一々整理する必要はない、そのまま出していくようなかっこうにはなるでしょうけれども、こういうことをどんどん、月に何件になりますか知りませんが、一人当たり五十七件も与えていって、それがわずか一・八%とか——あるいは審査前置の問題についても私言いたいことがたくさんあるのです。あるのですけれども、そういったことで、この数字に出てくるような八%から逆算をして一・八%とか、あるいは審査前置が幾らになりますか、一・八%ですか、それもそういったふうなことで、新しい制度になってもほんのちょっぴりふえるのだという計算になっているのです。ところが、ほんのちょっぴりどころか、常識的に考えても五、六万からの滞貨処理をしなければ、めくらめっぽうに出すわけにいかない、分類をする、一応内容を理解する、こういう作業がどうしても必要なんです。ただ機械的にずっと流すわけではないわけです。それで、こういうふうなものを一ぺんに預けて、そうして内容を一応読ませて、分類をさせて——分類の誤りも四割五分くらいいままであったそうですけれども、いつも審査担当官が間違いを切りかえていくというふうなことをやっておったようでありますけれども、そういった混乱、それを含めて八%から逆算をした数字のとおりに行くとはどうしても考えられない。そういう点でたいへんな混乱があると大臣お考えになりませんか。
  124. 大平正芳

    大平国務大臣 私としては、荒玉君以下特許庁諸君を信頼いたしまして、それが出しました数字によって計画を立てておるわけでございます。しかし、これとてもいろいろ御批判があろうかと思いますけれども、私の意見はと聞かれれば、特許庁当局を信頼しておりますとお答え申し上げざるを得ないと思います。
  125. 石川次夫

    ○石川委員 大臣のことですから、長官や局長を信頼しないでは行政はできないから、そう言われるのは当然でございましょうけれども、冷静に判断をしてみて、先後願の準備審査、それからまた審査前置制度、これはいままで審判官のところに行ったやつが審査官のところに行く、審査官は前に一回見たやつだから簡単にいくだろう、こういうふうなことですけれども、六カ月たったら前のやつを忘れますよ。あとからあとから来ていますから、初めから見るとの同じだ。それから審判というのは、大体これは二倍になっております。普通のノルマの二倍かかるというふうな計算になっておりますけれども、件数の計算でいくと五倍なんですね。審判というのは審査の五倍かかっているのです。そういうことを見落としている。だから実にこの数字はつくられた数字である。したがって、これをやることによって審査がスムーズにいってというふうなことにはとうていならない。そういう点で、もう本会議が始まりますから、一応これで質問を保留してやめますけれどもあと一回冷静に判断をしてもらって、それは委員長も中心になって——これは悪法だと私は思うのです、これを実施をすれば。ですからよほどこれは慎重に考え直してもらわないと、このままうのみに通して悔いを千載に残すようなことがあってはならないと思うし、それから先ほど来多項制の問題と新規性調査機関の問題がございましたけれども、まだ残された問題としては、実用新案をどう扱うかという問題も残されているわけです。それから化学物質特許の問題、これはリスボン会議でもって決議をされておって、これは重大な課題であるということになっておる。こういう問題も含めた抜本的な——今度のようなやっつけ仕事、大幅な改正ではございますが、いわばやっつけ仕事のような感じがするのです。したがって、こういうものを全部含めての抜本的な改正というものをPCTの昭和四十八年の改正に向けてじっくりと考え直す。ただしその間人的の資源の充実、それから特許というものに対する政府全体の取り組む姿勢というものは抜本的にこの際変えてもらう。新規性調査機関は何としてもつくるのだという前提で研究をしてもらう。そうしてPCTへ加入するときは、当然多項制の問題も入らなければならぬし、実用新案をどう処理しなければならぬかという問題も残る。それから、これは世界的に問題になっておりますけれども化学物質特許という問題をどうするか。こういうふうな抜本的な問題に備えて、まず陣容と環境の整備をはかる。こういうことで出発するのがほんとうに正しい特許法に対する取り組み方ではないかと私は痛感をしておるわけなんです。そういう点で、われわれは何も反対をしようという気持ちでなくて、ほんとうに特許というものは科学行政の中での中核であるという重要性を認めればこそ、こういうふうな考え方でもって再検討する必要があるのではなかろうか。こういうことだけを申し上げて、質問を保留いたします。
  126. 大久保武雄

    大久保委員長 中村重光君。
  127. 中村重光

    ○中村(重)委員 本法律案は五月六日から審議に入りまして、月数にいたしまして二カ月間、十二回の審議を行なってまいったのでありますが、その間与野党の協定に基づきまして、審議を尽くす、定足数を守る、さらに公聴会あるいは参考人の招致等、十分に審議を尽くすために与野党ともに誠意を持って対処する、そうした申し合わせに基づきまして、今日まで与党もそうした努力を続けてまいったことは率直に認めたいと思います。だがしかし、その十二回に及ぶ私どもの質疑に対しまして、残念ながら政府の答弁は不明確でございます。さらに昨日の堀委員質問あるいは私の質問、本日の田中委員質問に対しましても、基本的な問題である憲法に違反する疑いがある。いわゆる財産権に対する侵害の問題、あるいはまた補正のきびしい制限がある。これもまた憲法に違反する疑いありという点が大きく問題になったことは御承知のとおりであります。だが、それに対しましても明確な答弁が行なわれておりません。私どもは、本日までの審議の間において、きわめて重大な問題点を持っておる本法律案に対しましては、今期国会においてこれを議了するのではなくて、継続審議、あるいはまたこれを政府において撤回をして、慎重に検討を加えた上あらためて提案することが必要であるということを指摘してまいりました。だがしかし、政府は最善の案であるとしてその審議を求めてまいりました。私どもといたしましては、百歩譲って、問題点である早期公開制度、さらに審査請求料、今日まで二千円の出願料でございましたが、その五〇%は拒絶されておる。だがしかし審査請求を行なうことにおいて八千円を徴収するということは五倍の値上げになる。拒絶は依然としてありますから、まさしくこれは収奪であるということを指摘してまいりました。したがいまして、審査請求料をなくするための修正、もう一度申し上げますならば、早期公開制度審査請求制度とは二本の柱ではあるけれども、必ずしも結びつくものではない、不可分の関係ではない。そういうことで修正を主張してまいり、与党と折衝をしてまいりましたが、与党早期公開制度を倒すことはできない、修正に応ずることはできないという態度でございました。  そういった十二回の審議の中におきまして慎重審議を行なってきたとして、与党といたしましては七月一日をめどにして議了するという態度をとってまいりましたし、私どもも、審議が終わるならば、その間私どもといたしましての修正の問題点等々を提示して、あるいはまた廃案を要求して戦うという態度で、一応めどは七月一日にいたしておりましたが、本日質問をいたしました田中委員質問予定日に、与党の出席が悪くしてついに流会ということになりました経緯等もございましたし、また問題点の指摘等をしなければならぬということから本日まで延びてまいりました。  もし政府・与党がこのまま私どもの修正に応ずることなく、原案のままこれを採決するということになって参議院にまいりますならば、参議院の自主性はございましょうけれども、私ども社会党といたしましては、これを廃案に追い込むという決定をいたしておるところであります。したがいまして、政府・与党がどうしてもこの法律案の成立を衆参両院を通じて期したいと考えられるならば、きょうの午後に私どももまだ質疑を続けていくところでございますから、ひとつ慎重に配慮されて、修正に応ずる態度を決定されるならば——私どもはその要求をいたしておるところでございますから、政府・与党と話し合う用意ありということを申し上げまして、警告と配慮を求めて議事進行の発言といたしたいと思います。
  128. 大久保武雄

    大久保委員長 午後二時三十分から再会することとし、この際休憩いたします。    午後一時五十五分休憩      ————◇—————    午後二時五十一分開議
  129. 大久保武雄

    大久保委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。堀昌雄君。
  130. 堀昌雄

    ○堀委員 一昨日の私の質問で、補償金請求というものが制度としては設けられているけれども、実体的に発明者が補償金請求を行使をして通常受け取るべき利益をそれによって満たし得るかどうかという点については非常に疑問があるということで、補償金請求権というものを発明者が行使するために、発明者の利益を守るために、何か担保になるような処置を考えてもらいたいということをお願いをしておきましたが、それについての特許庁の見解を伺いたいと思います。
  131. 荒玉義人

    荒玉政府委員 主として証拠不備のために後日請求権を行使しても取れないということかと思いますが、法律的に申しますと、補償金請求権の場合は六十五条の三の第四項によりまして現行法の百五条を準用しております。百五条は御承知のように「裁判所は、特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟においては、当事者の申立により、当事者に対し、当該侵害の行為による損害の計算をするため必要な書類の提出を命ずることができる。ただし、その書類の所持者においてその提出を拒むことについて正当な理由があるときは、この限りでない。」、一応訴訟の場でこれこれの書類を出せということになります。もし出さない場合には民事訴訟法の三百十六条に返ってまいりまして、相手方の主張を真実と認めることができるということになりますと、当然権利者のほうから一応概算でこのくらいというその主張が正当に認められるということによってその間の救済をはかっていくという制度になっておるかと思います。
  132. 堀昌雄

    ○堀委員 実はいまの答弁によって、なるほど書類の提出を裁判所が命ずることができる、しかし書類は提出をしない、しかし発明者は行使後に、第三者が行使をしておる行為そのものの範囲を、書類が提出されたのを発明者が見ればわかるかもしれませんけれども、見ない限りは、一昨日設例をしたように、機械を幾らつくって、その機械によってどれだけの利益を得ておるかというようなことは、私はわからないと思うのですよ。そうすると、片一方は書類を出さない、そして片一方は請求金をたとえばかりに自分の感じとして一千万円だということで出してみる。実際には第三者はそれによって一億も十億ももうけているという場合だってある。そうだからといって、逆に今度はそれを十億円というようなところを出してみたって、それが一体どうなるかという点についても、じゃ何かひとつ積算の基礎を出しなさい。裁判所もおそらく原告に対してただ何となく補償金をふっかけてくるというようなことを認ることにもならないだろう。そうすると、あくまで補償金を請求するためには、原告の側としてはそれを挙証しなければならぬという責任があることになっている。いまの特許庁の六十五条の三の第四項を援用した答弁は、私の言っていることについてはあまり役に立たないのですね。それはもし書類を提出しなければならぬということになっておれば、これは話は別です。しかし書類を提出しなかったら次はいまの民訴の三百十六条にいったのでは、これはもうにっちもさっちもいかない、こう思います。だからそこのところはやはり発明者の権利が縮小されることは間違いがないのだから、その権利の縮小に見合うものをやはり発明者側に与えるというものの考え方でこれは処理をされてこなければ、この制度によって発明者は失うものが大きい。だからやはり私は権利対等でなければいかぬと思うわけです。どうしたってこういう問題では発明者と利用者はおおむね権利対等になる。だからこれまでの特許制度ならば、少なくとも公告までには外に出ないから、公告になれば同時に仮保護の権利が発生する、差しとめ請求権も出てくる。こういうのでありますから、私は補償金請求権というものは、形は違うけれども、やはり特許権に見合う一つ権利じゃないのか、こう思うのですけれども長官、そこはどうですか。
  133. 荒玉義人

    荒玉政府委員 手続面から見ますと、いまおっしゃった点は、普通の公告の場合も実は起こり得るケースではないかと思います。それで、ただ差しとめ請求がございませんですが、あと法務省から話があるかと思いますが、仮差し押えによりまして、そこらの証拠固め等に対する一つの措置によりまして補償金が取れるような措置を考えていくべきじゃないか、かように思っております。
  134. 堀昌雄

    ○堀委員 実はいまあなたの答弁で民訴による仮差し押えはできるということになるでしょう。しかし仮差し押えでは、相手がその請求に対して十分支払い能力があると認められれば、その仮差し押えは無効になる、認められないということに第一点なるんじゃないですか。そこはどうですか。
  135. 荒玉義人

    荒玉政府委員 その点は全く特許権と同じ構成をしなければ先生のおっしゃるように最終的には解決しないと思いますが……。
  136. 堀昌雄

    ○堀委員 私の聞いておるのは仮差し押えです。
  137. 荒玉義人

    荒玉政府委員 それはそういうことになるかと思います。
  138. 堀昌雄

    ○堀委員 だから少なくとも、私がある発明をした、そしてそれが公開をされた、そしてたとえば松下電器がそれを使ってどんどん製品をつくっておる。私はそれではというので仮差し押えを出します。仮差し押えを出すとしても、要するに相手は松下電器で十分支払い能力があるから、私の補償金請求権くらいは幾らあっても払えるだろうということで、これは却下されれば、仮差し押えは第一できないというわけです。こういう場合にはできないんでしょう。だからできない。それでは第一点、いまあなたが言ったそういう措置ができるだろうということにならぬわけです。大体私が言っておるのは、要するに弱い者と強い者との関係で言っておるわけですから、力が対等ならこんなことは問題にならないのです。発明者のほうの力が弱くて使用者の力が強い場合を前提として私はものを言っておるから、その場合には弱い発明者は仮差し押えを実は民訴によってできないということになってくるわけですからね。そうすると一体あと何が残ってくるかというと、何にも残らない。じっと指をくわえて、要するに松下なら松下がどんどん製品をつくっておるのを見ている以外に手がない。一体ここで幾らつくられるかということは、むしろ発明者にとっては会社の中のことだから全然わからない。どういうように販売されて、どれだけの利益をあげているかわからない。そこでいよいよ公告になった。そこで私が補償金を請求しようという場合に、一体何を目安にして補償金を請求できるのですか。その場合に何も目安がないじゃないですか、何となく損害を受けたという以外に。原告は挙証責任を求めておきながら、その原告は挙証するための材料が何もない。こんなロジックの合わない制度はないんじゃないか。補償金を請求できるといいながら中身のない補償金請求制度だと私は思うのですよ。だからそのところがきちんと何かならない限り、補償金請求制度というものは紙に書いたけれども、実行ができないということになる。だから、この二点を解明してもらって、少なくとも補償金請求をするためには、材料が補償金を請求する側に手に入る何らかの保証がない限り、請求する土台がないのですよ。それを裁判所が認めるはずはないですよ。私が百億円と言ったところで、そんなものは認めるはずはない。しかし、それの証拠によるものは、全部相手方の第三者の使用者側にあるんだということになってきたら、一体補償金請求権というものは、これは要するに紙に書いてあるだけで、原告として私が訴訟を起こそうにも事実上は起こせないと同じような程度権利しか与えられておらない。これでは私がさっき言う発明者と使用者の権利対等どころの騒ぎじゃない。発明者の権利がないとひとしいと私は思うのです。大臣、どうですか。私も法律家じゃないですから、常識論を話しておるわけですが、大臣、どうですか。いまの私が申し上げている点で、大臣もそう考えませんか。発明者の権利と使用者の権利というのは本来対等であるべきであると思うけれども、片一方はいいですよ。発明者の権利は証拠を出して請求しなければならぬ。証拠は私のほうには一つもない。そして挙証しなければならぬ。挙証する材料がないというものに挙証させるということ自体が無理なんだから、この補償金請求制度そのものが無理なのです。だから私が言うのは、どうしてもそういうことが無理だとすれば、公開をされて、そうして第三者の行為が行なわれておると知ったら、やはりそこで差しとめ請求ができるということにする以外には手がないんじゃないか。だから、そういうことになれば、いまの制度のたてまえは、特許権というのは公告後になっておるけれども、やはり私は補償金請求権に見合うものというものは、特許権にはなっていないかもしれませんけれども特許権に継続性を持つものとして権利とみなすのでないと筋が通ってこないんじゃないか。だから、特許権というものの始まりというのは公開のところから始まるということに考えないと、——これは経過としてはいいですよ。だから差しとめ請求だけをしておいて、補償金請求権というのは公告後であってもかまわないけれども、少なくともその程度権利を保護してやらなければ、私はこの問題は、ただ制度を書いただけで、発明者の利益は全然守られない、こう思いますが、大臣、どうですか。
  139. 大平正芳

    大平国務大臣 公告前の発明者の利益侵害事実というものに対しまして、発明自身が、自分の権利の行使でございますから、侵害の事実をサーチしなければならぬ、まずそういう責任権利を行使する以上あると思うのでございます。現にそれは客観的に使用者のほうで隠微の間に行なわれて全然わからないというものなのか、事実は、客観的に侵害の事実があらわれてくるという過程をフォローしてまいりまして、みずからの権利の侵害に対して権利を行使する以上は、自分のほうで証拠を固めていかれるという努力がまず要ると思うのでございます。一方、使用者のほうでございますが、これはなるほど適法でございますけれども、そういう請求権の問題が出てきた場合に、使用者は、極端に悪い人間でございますれば別でございますけれども、まあ社会的な信用というものが商売、営業の場合の生命でございますから、そんなに無法なことが野方図に、無限にできるわけじゃない。したがって実際の場合は、堀さんがおっしゃるように、全部が全部そういうようなケースにはならないので、現実の実効は私はあげていかれるのではないかと思います。しかし論理的にいろいろ詰めてみますと、極端な場合はあなたが言われるようなケースがないとはいえない、私はそう思います。
  140. 堀昌雄

    ○堀委員 私は法律なり制度というものは、確かに実態的な問題は一つありますけれども、その前にやはり理論的に筋道が立っていなければいかぬと思うのです。国民の権利を拘束するわけですからね。国民の権利を国が法律という制度によって拘束する以上、どこから見ても理論的に筋道が立っていなければならない。しかし、確かに理論的にはそういうことはわかるが、それは起こる率が少ないであろうということでは、立法府として国民に責任を果たしておるということにならぬと思うのです。ですから、私がいま言っていることは、理論的にそこはちっとも解明されてこないと思うのです。  そうすると、補償金請求権という権利は一体何なのかということ、やはりここに戻ってくると思うのです。これは長官何ですか。この補償金請求権という権利ですね。これはただ単に失った利益、こう言いますけれども、失った利益というのは、何らかの権利があるからそこで失った利益が出てくるはずです。権利のないところに失う利益はないと思うのです。だからその権利というのは一体何ですか。
  141. 荒玉義人

    荒玉政府委員 発明者が出願いたしますと、まず利益といたしましては、秘密にしておればそれだけですが、先駆者としての利益を受けるわけでございます。そういう一つの先駆者としての地位、利益というものがございます。それを今度公開いたしますと、そういう地位を失うわけでございます。したがいまして、そういったものに対する、全く失わすということではかえって発明者と第三者のバランス上から考えて、やはり適当な補償金請求権というものを与えることによって、そういった地位の喪失に対する一つの補償をしていく、こういうことかと思います。
  142. 堀昌雄

    ○堀委員 では地位というのは一体何ですか。ちょっとそこが私はよくわからない。要するに私は権利の話をしているのです。権利というものが何によって基因するのかということです。だから権利というのは、ただ出願したということだけでこの前あなたも言っておられるように権利があるわけじゃない、それは特許権にならぬかもわからぬからというのですね。それはわかるのですけれども、そういうわからぬものに対し、あなた方は一応補償金請求権というものを事実上設けたわけでしょう。だから設けたということになれば、何かあなた方としてはそこらに権利というものを考えたのではないですか。だからその権利はただ単にいまの地位ということでは、ちょっと権利内容としては不十分だと私は思うのです。少しこの権利内容を言ってください。
  143. 荒玉義人

    荒玉政府委員 これは地位といいましても、要するに何々権とつかない前の一種の利益状態だろうと思います。ですから、それは何々権ということじゃないのだけれども、先ほどから言いましたような発明者の先駆者的な利益、それを地位と言っても利益と言っても、それは同じじゃないか、こういう意味で何々権ということではないという意味を申し上げているわけでございます。
  144. 堀昌雄

    ○堀委員 それではもう一つ特許権というものの中身はどういうことですか。それを教えてください。
  145. 荒玉義人

    荒玉政府委員 特許権といいますのは、国の設定行為によって生じた独占権であります。
  146. 堀昌雄

    ○堀委員 国がなぜそれを設定するのですか。独占権を国が何らかの目的によって設定するのでしょう。その前にもう一つ何かがあるんじゃないですか。
  147. 荒玉義人

    荒玉政府委員 国が独占権を設定いたしますのは、その独占権を与えることによりまして、そして次の技術発達を促進する、こういうことから与えた権利でございます。
  148. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、あなたの話によると、発明者としての権利じゃないみたいですね。次のものの技術促進するために国が与えているのなら、それじゃ発明者固有の権利関係ないじゃないですか。
  149. 荒玉義人

    荒玉政府委員 それは特許制度目的でございまして、その前にはもちろん、発明者がかりに出願いたしますと、特許を受ける権利で、国に対して正当な手続をして、審査をして特許にしてくれという、一つの国に対する手続上の意味の請求権、その結果審査をして特許権になる。それから補償請求権の場合は、先ほど言いました利益状態がございまして、それに対する一つの保護をしていく、補償請求権を与えて保護していく。もし御質問特許権の前の権利状態はどうかという御質問でしたら、そういうことかと思います。
  150. 堀昌雄

    ○堀委員 いまのあなたの答弁を聞いておりますと、要するに特許権の手続の問題をあなたは特許権の前提として話をしておる。手続権利に結びつくわけじゃないのですよ。よろしゅうございますか、何か実体があるのでしょう。ある実体があって、その実体を国に対して保証してくれ、確認をしてくれということを発明者が言って、それに基づいて国がその実体があるかないかを判断して、その実体があるということで特許権を付与されるので、ものごとの始まりはそういうある一つの実体じゃないのですか。あなたの話は、手続とかそういうことにしか話はなっていないけれども発明者が何か出してくる実体に根拠があるのでしょう。これはどうですか、そこは。
  151. 荒玉義人

    荒玉政府委員 それは発明者が発明したということからあらゆることが出てくるわけです。そういう意味では、発明者の発明ということからでございます。
  152. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、発明者の発明という限りにおいては、その発明者の発明であるその特許権の土台になった実体というものは、出願をしたときにすでに実はあるはずですね。しかしそれが特許庁の中で秘匿されておる間は、これは特許庁内部にあるんだから発明者は安心しているけれども公開されたときには、それは特許になろうと、特許を登録しようと、公告をしようと、公開をしようと、いまの私の言う発明者の発明という実体に変わりはないのじゃないですか。変わりはありますか、その時期的の相違の中で。
  153. 荒玉義人

    荒玉政府委員 変わりございません。
  154. 堀昌雄

    ○堀委員 変わりがないときに、特許権という権と、補償請求権という権との違いは、それではどれだけの違いですか。最初は一つですよ。いいですか、実体は一つですよ。
  155. 荒玉義人

    荒玉政府委員 卵の段階一つでございます。ただそのとき、比喩的で恐縮でございますが、どの程度権利を与えるかということは、要するに国の審査をするかしないか、そういったことと相関関係で私きまるんだろうと特許権の場合は思います。ですから権利としては、そういう意味では、公開からの権利出願からの権利と、それから登録になってからの権利というのは、それぞれ実体は一つでございますが、国の手続との相関関係においてどの程度の効力を持ってくるかがきまるということになるんだろうと思います。それで、御承知のようにまず公開の場合は無審査公開するわけでございますから、そういう権利からいえば弱いものである。出願公告の場合は一応仮公告でございますから、そのかわりあとで異議を申し立ててくればつぶれる場合もありますから、特許権になれば一番強力な権利、これはそれぞれの手続過程において権利の強弱がきまってくるという関係になろうかと思います。
  156. 堀昌雄

    ○堀委員 私は一昨日、前段で、要するにあなたは公開までの期間を一年半ときめた、公告も一年半でできないことはない。そうすると、それは国が国民に対してやるべきことをやらないでおいて、そうして国民の権利を拘束するということになりますよ、ということを言いましたね。よろしいですか。ですから、国と国民とは、私はその意味では対等だと思っている。国と国民が対等であるならば、国が当然行なうべきことを行なわずしてなら、国民の側に権利がたくさんいくのがあたりまえなんだ。それを逆にあなた方のほうは、国がやるべきことをやらないで無審査公開をするというのは、実は国の側に責任があるわけだ。これは発明者の側に責任があるわけじゃない。国の側に責任があるのに十分にやらないでおいて、そうして発明者の権利を縮小する、それはおかしいですよ。だからその考え方を、あなたが言うように、実体が一つだ。あなたは卵だという表現をするけれども、卵でも何でもないのだ。実体はずっと同じだ。卵でも何でもない。初めからあるのだ。ただこれをどう評価するか、国がオーソライズするかどうかという、それだけのことがあるので、実体はずっと同じだ。この実体は同じであるから、それに伴うところの利益関係は最初から最後までずっと同じですよ。実体がずっと同じなら権利がそれに伴って同じでなければおかしいのだ。国の側で処置をしないでおいて、国民からその部分だけ権利を剥奪するというようなことは、これは国民と国の対等の原則からいったらおかしいじゃないか。国民に対して国がかってなことをやってもよろしいということになっておりますか。民主主義の立場から国民と国は対等だ。だからその発想のどこに誤りがあるかといえば、少なくとも公開というのは国がある一つの強制権をもって発明者の権利を縮小するのだから、それに見合うものを与えるということであるならば、同時に、私は公開というのは公告と同様にみなすということにするのが当然であるのではないか。公開というのは国側の責任でやる以上は公告と同様の権利とみなして、そこでやって、しかし特許にならないものもあるでしょう。それは異議申し立てその他で処理をすればいいのであって、だから問題の発想そのものの土台にこれは非常に重大な問題がある。だから制度としては、少なくともいまの実体は初めからずっと同じ実体で、それに伴う利益も同じということなら、国としてそれに与える権利というものは同じであってしかるべきものなんですよ。それを補償金請求制度のようなかっこうにしてあるために、それだけさっきのように理論的には利益が保障されない、そういうことになってくるのではないですか。だから私は少なくとも、通産大臣、この問題は非常に重要なところなんですよ。軽々にいまここだけで三十分や一時間の議論をしたら済むことではなくて、何も私は憲法とかなんとかそういう大げさなことを言わなくても、いまの論理の構成というものはだれが聞いてもわかると思うのですよ。だからその限りでは、これはちょっとこの部分だけでも再検討の余地があると思う。どうですか、通産大臣。私は単なる言いがかりか何かでこれを処理しようと思っていないのですよ。国民の利益を守るのがわれわれ国会議員の任務ですから、国と対等に国民の権利をどうやって守っていくかということがわれわれの任務である限り、国と国民との権利が対等になっていない、国民の権利が、要するに国の側の行政を十分施行せざる結果として縮小されるということは、私は国民にとって重大な権利の侵害だと思うのです。どうでしょうね、これは再検討の余地はありませんか。
  157. 大平正芳

    大平国務大臣 ぼくはこのようにきわめて常識的に考えるのです。あなたがおっしゃるように、発明者の発明というのは、出願いたしましてから、それ自体変わらぬと思うのです。またそれに伴う利益も変わらない。あなたがいみじくも言われたように、その各段階に応じてそれをどう評価するかということだと思うのです。われわれのやっておることもその筋道にのっとってやっておるわけです。早期公開という段階において、その状態においてその実体的な利益というものをどういうように評価するか、われわれはこれは補償金請求権という評価をしたということです。あなたは、まだそれを使用しても適法なんだという状態だし、またその補償金請求権の現実の行使にいろいろな制約があって、十分発明者の利益が守れないじゃないか、これはもう少し強い保護を与えるべきじゃないかという御意見のようでございまして、私はそこで見解が分かれてきておると思うのでございます。それは本質的な差でなくて程度の差だと思うのです。  それからあなたの言われる、国が早期公開制度をとって無事の発明者の利益を侵害することになるのだから、これはよほど慎重にやらないといけない、これは私も全く同感でございます。こういう状態でございますれば実は問題はないのでございます、出願がありまして、丁寧に調べることができて、それで特許権が形成されて登録されるという過程が非常に短い時間の間に行なわれれば、その状態が一番いい状態だ、またそうあるのがほんとうなのでございますけれども、これが一年半とか二年とかの間で片づくのでございますれば、常識的に国として一応その責任を果たしておるといわれると思いますが、現実にはこれが三年半も四年もかかっておる。その間に重複の研究とか投資というようなものがまた行なわれておる。それから発明者の特許権になるものも長い間眠った状態において放置してあるというようなことが現実なのでございます。これは国の責任であるといえばぼくはそのとおりだと思うのです。国がそれだけのフルな行政能力を持たないで特許法運用をやっておるわけでございますから。しかし、これは具体的な国家の場合にはいろいろなケースがあると思うのでございます。警察で治安を維持して、みんなの生命財産を守らなければならぬ。現実にあるのは十三万ですか十四万ですかの警察。それでものをとられた、あるいは危害を受けた。これは国が十分それを守らなければならぬ責任があるのに守らぬじゃないか。国は一人について十人も二十人も警官をつけるわけにいかないということと同じでございまして、現実の実在国家というのは、この前にも私申し上げたと思うのですけれども、なかなか思うように保護に十全を期することができないという姿であろうと思うのでございます。したがって、いまのように国の行政能力が限られた状態において、しかも特許法を可及的に円滑に時代の要請に沿うて運営してまいりますためにはどういうくふうを加えるかというようなことがわれわれの問題でもあり、また国会の御審議の問題でもあろうと思う。  そこで、早期公開ということはいろいろな欠陥があるけれども、ともかくこういう制度を導入することによって、この事態の改善をはかろうといたしたわけでございます。そうすると、あなたの言われるように、発明者の利益をそこなうおそれがあるから、それに見合った、均衡のとれた制度として補償金請求制度というものを今度設定して、対応策を講じておくということ、これを次善の策として、これもこういう客観的な制約のもとに置かれた行政といたしましてやむを得ない措置でございまして、堀さんの言われるように非常に厳密に申しますならば、まことに国としてはふがいない話なのでございますけれども、現実はそういう境の中でわれわれは苦心いたしておるわけでございます。そういう点、たびたび御理解を願うように私も申し上げているつもりでございますけれども、私の理解が足らないせいか、なかなか十分御了解いただけないのは残念に思うのでございますが、きわめて常識的に考えまして、私はそのように見ております。
  158. 堀昌雄

    ○堀委員 私はいま一歩も二歩も引き下がってものを言っているわけです。要するに、早期公開制度はある程度しようがないだろう、やむを得ぬだろう、それと補償金請求制度も認めよう。しかしそれを認めるなら、内容のある補償金請求制度でなければ困りますよと言っているわけです。ただ制度を紙に書いただけで、発明者の侵害された権利が守られないのなら、それは補償金請求制度というのを設けた意味がない。だから、補償金請求制度——あなたは求めてその段階における発明者の利益を評価しようというんでしょう。そこまでは共通なんですよ。ただ、あなたも評価したいんだけれども、いまの制度の範囲では実態は評価できませんよ。それを何回か私はここで言ってきているわけです。だから、もしほんとうにその権利を保障してやろうとするならば、差しとめ請求権があって、公開されて第三者がそれを行使しておると私が気がついたら、まず差しとめ請求をして差しとめておいて、そしてすみやかに公告を繰り上げて次の段階の処置をしてもらうということなら私は話はわかると思うのです。そうならないと、三年間も公告が先へいくまでどうにも手がつかないのでしょう、いま発明者の側は。第三者が行使していることがわかっても、公告は依然として先願順序で公告されてくるのならば、二年かかるのだか三年かかるのだかわからぬではないか。しかしそれは、少なくとも今日国民は権利対等ということなら、もうちょっと考えてやらなければならぬ。模倣がなければいいですよ。第三者が行使をしていなければ補償金を請求する必要はないのです。知らない場合もあるでしょう。残念ながら知らない場合はしかたがないですね。しかし、知って、なおかつ指をくわえて公告まで見ておりなさい、そして公告になって初めて補償金を請求しなさい、その補償金はあなたが自分で計算して出してきなさい——あなたはいまサーチして持ってこいと言いましたね。それは二十日や一月、三カ月というならわかりますよ。一体公開をされて模倣されておると知ってから二年も三年も、ただじっとそれを見てどうなりますか。だから私が言っているのは、補償金請求制度を認めるところまで私はおりてきているわけだ。しかし補償金請求制度が生きるようにしておいてもらわなければ困るじゃないか。あなた方もそうなんでしょう。さっきからの話ならば、発明者の発明もずっと同じだ。大臣もいま言われました。どの時点でも同じだ、その利益も同じだ、評価が違う。確かに評価が違うでしょう。評価が違ったとしても、あなた方が正当と考える評価、私も正当と考える評価が要するに補償金によって支払われるかどうかというところが何ら保障されておらぬという、そこをきちんとしてくれというわけですよ。きちんとする方法があるか。だから要するに差しとめをしないとしても、ともかく承知をしたら、公開されておることがわかったら、それを一つ届け出ればそれからともかく一カ月以内に公告します、そういう制度をつくるということをあなた方がここで約束されれば、それは差しとめでなくたっていいでしょう。一カ月かそこらに出てくる問題はたいしたことはない。  大臣、私の言っていることがわかりますか。わかったかわからぬかだけちょっと先に答えてください。
  159. 大平正芳

    大平国務大臣 わかったようなわからぬような状態でございますが、堀さんと私の意見の違いは、私の申し上げているのは、こういう民主主義社会において発明者は権利主体なんですから、権利主体としてそれだけ自分の権利を擁護するためにいろいろ努力してもらわなければいかぬわけなんです。それはもうじっとしておっても、国のほうの制度がうまくできておってちっとも差しつかえないというようになかなか国として手が回らぬから、発明者のほうも御努力を願うという前提で、それからまた使用者のほうも悪者ばかりじゃないので、やっぱり信用が土台なんだから、実際上の問題は、あなたが言われるようにそんなに極端なケースがそんなにたくさん起こらぬのではないかとぼくは常識的に考えるわけです。そこで私は、補償金請求制度というものを今度つくり上げていくということになりましたならば、それはこの段階における利益の状態はこういう対応策で一応了解できるのではないかという判断でこの案ができておると思うのでございます。あなたはそれじゃ弱いということでございますが、しからばそれをもう少し強める方法はどういう方法なのか、手続的にいってどうしたらいいか、そういった点は私よくわからぬことでございますから、専門家に答えさせます。
  160. 堀昌雄

    ○堀委員 それでは特許庁長官に伺いますけれども、要するに出願公告というのは一応内容審査する。これはいまは先願の順序でやっているのでしょう。ですからそれを、いま公開になって第三者が模倣しておることが明らかだということがわかったら、その事実をもって一々届け出をする。そうしたらいまの公告だけのことですから、直ちに内容審査をしてそのものに限って短期間に公告をしてやれば、そうすれば今度はそこに基づいて公告されたんだから差しとめ請求権ができてくるし、それと同時に補償金請求権も出てくる。だからそこのところを私は運営上の問題だけじゃないのかと思うのです。実際上は特許庁業務の運営上の問題だけじゃないのか。ここでその問題を明らかにしておけば、何も法律にどうこう書かなくても、あなた方はそうします、大臣もそうさせますということが約束されれば、それを公開後模倣されたという事実をあなた方は調べることができるわけだから調べて、それがそうだったらそれはひとつ直ちに内容審査して、すぐ公告をするということができれば、問題はいまの問題のところへ出願公告が近づくから、それだけ権利は保護されるわけですよ。それができさえすれば私はこの質問を終わりたいと思います。
  161. 荒玉義人

    荒玉政府委員 それが、たびたび本委員会で言いました緊急審査制度運用でやりたいということでございますので、御趣旨に従うようにやるつもりでおります。
  162. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、いまの緊急審査の問題を含め、その公開があったという事実を確認をしたときには、私が言ったようなかっこうで運営できるということですか。
  163. 荒玉義人

    荒玉政府委員 われわれが特に考えていますのは、いま先生がおっしゃったようにいわゆる広い意味の侵害行為が起こったという場合でございます。その場合には権利者からあるいは第三者から請求があった場合には、イエス・ノーはほかのものと優先して処理したい、こういう意味でございます。
  164. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、ほかのものと優先してということは、いま私が言ったようにたとえばやろうと思えば二、三カ月でもできないことはないですな。さっと一番最初に持ってくればできるのでしょう。どうでしょうか。私実務はよくわからないですけれども、どうですか。
  165. 荒玉義人

    荒玉政府委員 一カ月、二カ月という問題、できるだけ早い機会でございますので、つまり権利行使の前提でございますから、それの実効があがるような期間でやる、こういう意味でございます。
  166. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっとはっきりしませんが、時間がどんどん過ぎますから、一応それでは大臣のほうで、いま私の言ったような形で、要するに第三者の使用を発明者が知った場合には、直ちにそれをいまの緊急審査で、少なくとも出願公告の時期を物理的な範囲で——これは物理的な条件がありますから、それ以内には縮められないが、物理的な範囲で可能な限り短縮をして公告が行なえるのだということをひとつ御答弁いただければ、私この質問をこれで終わります。
  167. 大平正芳

    大平国務大臣 そのようにいたします。
  168. 大久保武雄

  169. 中谷鉄也

    中谷委員 きょうは簡単に質問を終わろうと思いまして六法を持ってきただけですけれども、先ほどの堀委員との質疑応答を聞いておりまして、どうも準備をしなかった問題点についても、二点だけは非常に残念ですがお聞きしなければならないのではないかと思います。  そこで、実は私が五月の十四日に補償金請求権について質問いたしましたね。そのときは、特許権の卵だというふうなきわめて比喩的な表現で、また審議も初期の段階であるから、そういうことで長官の御答弁をそのままお聞きして今日に至ったわけです。  そこでお尋ねいたしますけれども、補償金請求権というのは一体何かという一番基本の問題がいまなお明確でないなんというようなことで審議が最終段階に行くということについて私は困ると思うのです。請求権という以上、それは損害賠償請求権であり、補償金請求権であり、金銭返還請求権でございましょう。損害賠償請求権の基本にあるところの実体的な権利というのは何か、それは生命権であり財産権である。金銭返還請求権の基本にある権利は一体何か、それは消費貸借に基づくところの債権であるかもしれない。ところが利益状態なんというところの苦心の作のおことばをお使いになりましたね。利益状態なんというものは、権利からにじみ出てくるところの果実が利益なんであって、それは決して権利そのものではありません。そうすると、いまひとつたいへん御苦労になって権利状態というおことばをお使いになった。要するに長官のお年ごろであれば末川博さんの「権利侵害論」なんかはずいぶん御勉強になったと思うのでありますけれども、いまなお、補償金請求権というものとそのうらはらをなすところの実体権は一体何か、この点について解明されていないような状態で補償金請求権というものを強引に押しつけようとされたって、これは承知できない。だからひとつ私は冒頭お尋ねいたしたいのですけれども、補償金請求権とは一体何か、一番最初に質問しなければならないような質問をあらためていたします。それはどのような権利実体から生ずるものか、先ほどの答弁では承知できかねます。請求権なんですから、権利の実体から生ずるものが請求権なんだから、請求権と実体権を分けて、どのような権利の実体から生ずるものがこの補償金請求権なのか。権利状態権利ではありません。この点について御答弁をいただきたい。
  170. 荒玉義人

    荒玉政府委員 先ほど言いましたように、請求権の背後にありますのは発明者権といっても発明者の持つ利益といっても私は同じじゃないかと思います。
  171. 中谷鉄也

    中谷委員 ですから結局損害賠償請求権。交通事故を起こしてけがをしたという場合のその実体は生命権なんですよね。そうしてその人の手が飛んだとか足が飛んだという事実関係があるわけなんですよ。ですから、補償金請求権の背後にあるものは、発明者というものがあって出願者という地位主体の人がいる。そこまではあなたの答弁でわかったのですよ。その出願者という主体的な地位を持っている者が持っているところの一体権利というのは利益じゃないわけです。利益というのは権利からにじみ出てくるものでございましょう。権利とうらはらの問題にあるものでしょう。そうじゃないですか。私はそうだと思うのですよ。権利状態というふうなことばで説明されちゃいけないと思うのですよ。地位ということばで説明されちゃいけないと思うのです。実体は一体何権なんですか。実体的な権利は一体何なのか、この点なんです。実体的な権利がないけれども、実体的な権利は欠いておるんだけれども補償金請求権というものを認めたんだということになるのですか。そういうことになるのでしょうか。そういう論理構成ならそういう論理構成であらためて憲法論へ戻りますよ。
  172. 荒玉義人

    荒玉政府委員 要するに、特許を受ける権利というのは、御承知のようにございます。それは発明者権という一つのあらわれでございますが、そういったものがやはり補償金請求権の背後にあるというふうに考えております。
  173. 中谷鉄也

    中谷委員 背後にあっちゃ困るのですよ。実体権があって請求権があるのですから、委員長、私はまさにこういうように思うのですけれども、とにかく法案審議で、しかも権利、義務に関する法案なんですから、私はこれはあくまできれいなものでなければならぬ、美しいものでなければならぬ。美しいものというのは、権利体系としての整合性を持っていなければならぬ、法律体系としての整合性を持っていなければならぬ。ある法律学者は言っておりますね。いわゆる権利の体系というのは、空にきらめいている星座のようなものだというふうなことを言った法律学者もいますよ。ですから、その背後にあるなんて黒幕みたいな言い方をされると、私は困るのですよ。請求権なんだから、実体権は何なんですか。背後にある状態を聞いているのじゃないのですよ。その実体権というものをお台に出せるような答弁をしておいてください、そうでないと説明に困りますよ。補償金請求権の基礎をなすところの実体権というものは一体何か。これは背後にあるものというのじゃなしに、実体は一体何か、実体権は何か。これをひとつ説明してください。定義を言ってください。
  174. 荒玉義人

    荒玉政府委員 自分の発明を保護して、そしてそういった発明を支配する権利、それを前から私、発明権と申し上げておるわけですが、そういう権利だ、そういう実体権だ、発明者権というのはそういう意味で前から申し上げておるわけです。そういうふうに考えております。
  175. 中谷鉄也

    中谷委員 御専門の方にひとつお伺いいたしましょう。  長官のほうの御答弁、いまなおわれわれ法律実務家から見ますと、どこかにやはり行政的な感じ、においがしてしようがないのですよ。法律論争なんですから、論争というほどの程度の高いものじゃありませんけれども法律の問題をやっているのですから、ひとつ御専門の方から、補償金請求権の背後にあるものはこういうものだということをいま一度整理をして言ってください。私、いまのお話では納得しませんよ。一応特許庁としてはこう考えるんだということを御専門の方が言ってください。
  176. 角田礼次郎

    ○角田政府委員 お答え申し上げます。  先日の委員会で、中谷委員がいみじくも御指摘になったわけですが、特許権の卵というおことばをお使いになりました。これはむろん比喩的に仰せになったと思いますが、これは一応法律的に理解いたしますと、現在の特許法の上では大体これに相当するものとしては特許を受ける権利という概念が一つございます。御承知だと思いますが、三十三条には、「特許を受ける権利は、移転することができる。」あるいは「質権の目的とすることができない。」とかいうようなことで、明らかにそういう一つ法律上の権利としての扱いを受けておると思います。その実体は何かということになろうかと思います。それについては、私なりに理解いたしますところでは、二つの実体があると思います。一つは、国家に対して、最終的には特許として認めてほしいといういわゆる特許請求する権利というものがあると思います。これは出願によりまして、一応そういう地位につくわけでございます。出願公告なり、あるいは異議申し立て、漸次そういう一定の手続を経て、最終的には無体財産権としてりっぱに認められておる特許権にしてほしい、こういうことを請求する権利一つあると思います。それからもう一つは、ただいま引用いたしました三十三条の規定にもありますように、その財産的な、経済的な価値の面が一つあると思います。これをいかに理解するかということでございますが、これは先ほど特許庁長官からもちょっと申し上げましたように、結局、自己の発明、つまり自己の頭脳的所産、特許法では、発明というものを「技術的思想の創作のうち高度のもの」と規定しておりますが、そういう一つの頭脳的所産であろうと思います。それは、私が一つ発明をすれば、それは一つの財産だと、ごく常識的に言うのと同じことだと思いますが、そういう発明の支配といいますか、そういう自己の頭脳的所産に対して自己の完全な自由な支配、そういうことを目的とする権利というものがあると思います。これは著作権とかあるいは特許権とか、将来、権利として成熟した段階においてはまさにそれが認められるものだと思います。先ほど堀委員の御指摘にもありましたように、そういう権利の成熟はしておりませんけれども早期公開当時における権利の性格としては、まさに自己の発明の支配を目的とする権利の実体としては同じだろうと思います。そういう実体をとらえますと、それはまさに、先ほど中谷委員が御指摘になりましたように、財産的利益の源泉になろうかと思います。そういう意味で、それを一応財産権として評価もすることができるであろう、こういうふうに私は考えております。
  177. 中谷鉄也

    中谷委員 法制局の御答弁が長いときには、いつもどうもあまりはっきりしない場合が多いのですが、では、いまのことを前提にして質疑をいたしますよ。いまの答弁は、私の見解とは違うのですけれども長官にお尋ねします。  政府の見解は、だから一種の財産権だというわけですね。実体は財産権だとおっしゃるのでしょう。いまさら憲法論をやりたくはないのですけれども、憲法二十九条の三項「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる。」、そして第二項は、前回私が質疑をいたしましたように「財産権内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。」とありますね。  そうすると、三項の関係については、そもそも補償金請求権という問題が起こってきたというのは、強制公開をするから補償金請求権というような問題が起こる可能性があるのでしょう。結局、公共のために用いるとおっしゃるのでしょう。情報提供のために、公共のために用いるのでしょう。そうすると、財産権だとすると、補償しなければいけませんね。補償を府政はなぜしないのですか。公開をしたことについての補償を出願人に対してしなくてもいいという理論構成はどこにあるのですか。財産権だとおっしゃるから、実体は財産権だとすれば、憲法二十九条の三項との関係における、公開されることによる補償は国がしなくてもいいという理論構成は、一体どこからくるのでしょうか。
  178. 荒玉義人

    荒玉政府委員 特許公開は、国が用いるということではない。そういう意味では、三項の問題でございませんで、「財産権内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。」という二項だろうと私は思います。つまり、私人が持っておる支配的な状態が第三者の模倣によってかりに利益が害されるわけでございますから、国が直接三項によって使用するというのは、私は公開制度ではないと思います。
  179. 中谷鉄也

    中谷委員 申し上げておきます。要するに、そういう財産権は取得しておきたいという、一つの必然的な発明者の心理と動機によってそれは保護されている。それをはずしてしまうわけですね。それは国がすべての国民に対して情報の早期提供をするというふうにあなたのほうはおっしゃる。だから、国が国の技術の進歩、情報の早期提供のために用いるのだということになります。ですから、それは結局模倣のところまでいかないのですよ。早期公開というときに、応ずることについて補償しなくてもいいという論理構成は一体何ですか。要するに、模倣のところまで飛んでいるのじゃないのです。早期公開で補償しなくてもいいというあなたの論理構成をしていただきたい。
  180. 荒玉義人

    荒玉政府委員 その意味ではあくまでも三項とは考えてないのでございます。といいますのは、公開するから国がそれを用いるのではなくて、御承知のように特許法といいますのは、やはり出願すれば公開されるという前提で現行法としてはなっております。今度の公開もあるいは出願公告にしても、やはり一種の特許権をつくる、財産権内容として、それが公開を含めた意味で公共の福祉により適合するように法律で定める、こういう意味であくまでも私は二項の問題かと思います。
  181. 中谷鉄也

    中谷委員 二項の問題もありますが、今度私は三項の問題を提起したのですよ。二項についてはもう前回お聞きしたから、きょうは三項のお話をお聞きしますよといって聞いたのです。そうしますと、要するに特許というのは将来とにかく公開されるというようなことはあたりまえのことですよ。しかし、全然裸のかっこうで補償金請求権というふうな制度をひっつけたままで公開をするということだから、これはそこに補償しなければならないという憲法論が生じてまいりますよということを申し上げておるのです。これはひとつ憲法論について検討していただきたいというのもおかしいが、やはり私は、あなたのほうの答弁が、私が先ほどから何べんも言っているような、きれいな答弁になっていないと思うのです。何というか答弁に正当性がないと思うのです。これはひとつその点も御検討いただきたいと思います。  そこで、次に質問を続けますが、こういうことをお尋ねいたしたい。あなたは、前回の私の質問に対して、公開から公告までの間、損害賠償請求権を否定するものではない、こういうようにおっしゃいましたね。ちょっとこの質問はむずかしいですよ。民訴の二百三十二条を見てください。そこで私はこう思うのです。損害賠償請求権を否定するものではないのだから、公開の前後から損害賠償請求権訴訟を起こしていきまして、公告の後に補償金請求権に切りかえていく。二百三十二条の訴えの変更、要するに、請求の基礎に私はこの場合は変更がないと思うのです。私は民訴については全く初歩的な知識しかないですけれども、私はそう考える。長官、この点はどうですか。
  182. 荒玉義人

    荒玉政府委員 現行法におきまして、特許権の訴訟、つまり設定登録のあとと、それから仮保護の権利は、それぞれ別な構成で考えています。そういった意味では、別の訴訟というふうに考えたほうがいいのではないかと思います。
  183. 中谷鉄也

    中谷委員 私はむずかしいと申しましたが、損害賠償請求権と補償金請求権の請求の基礎というのは一体何ですか。請求の基礎が違うとなればどこが違うか。率直にいって長官、突然聞かれてもわからないでしょう。これはむずかしいんですよ。しかし私は調べたのです。この問題は、私の理解によれば、損害賠償請求権の訴訟を起こしておいて補償金請求権に切りかえることができるのです。もしできるという前提に立つと、今度の法案の補償金請求制度についてはどんな矛盾が出てまいりますか。どんな混乱が生ずると長官はお考えになりますか。御答弁いただきたい。
  184. 荒玉義人

    荒玉政府委員 残念ながら御質問の趣旨を了解しかねますが……。
  185. 中谷鉄也

    中谷委員 結局、公開の時期から公告の時期まで補償金請求権の行使はできないのだ、こうなっていますね。そうでございましょう。要するに、民法百二十八条の条件つき権利だということでしょう。ところが、損害賠償請求権の訴訟を起こしておいて、公告になったら補償金請求権に切りかえれば、何も公告のときからしか行なえないのだということを麗々しく書いておっても意味がないということだ。だから私が発明者の代理人ならどんどん損害賠償請求権の訴訟を起こしていきますよ。そうしてどんどん特許庁のしりをたたいて、とにかく公告をさせて補償金請求権に切りかえていきます。だから公告のときに補償金請求権の行使というのはおかしいのだ、早期公開はおかしいのだ、誤りだということをわれわれは口をきわめて指摘してきた。補償金請求権の行使の時期が公告からということについて問題があることを指摘してきたが、どんなに言っても皆さんのほうは、説明はうまくないし、そのことについてはあまり柔軟な態度をお示しにならない。しかし、法律実務家としての私は、こんなものについて公告のときからなどということの条件つき権利行使の時期をきめておるけれども、問題点は合法的にぶち破りますよ。こういう混乱が起こってくるということについて予想しておられますか。この点いかがですかと聞いておるんです。
  186. 荒玉義人

    荒玉政府委員 制度から言いますと、御承知のように、通常の実施態様である場合、適法行為としての補償請求権、ただし、加害の意思があってやる場合、きわめて限られた場合に、それは民法七百九条を否定するものではない、こういう構成であります。
  187. 中谷鉄也

    中谷委員 請求の趣旨に変更がないのだから、あなたのほうは公告までは訴訟を起こしてはいかぬというのだけれども権利を守る発明者の身になってごらんなさい。一日も早く訴訟を起こしたいのです。損害補償請求の訟訴を起こしていって、補償金請求権につないでいく。請求の趣旨に変更がないから、合法的な行為で公告のときからなどということは一朝にして砕けていってしまいますよ。私が言ったような質問の問題点については、この法案を作成されるときに予想されましたか。
  188. 荒玉義人

    荒玉政府委員 きわめて限られた場合でございますので、御承知のように、一般特許を受ける権利はございましても、民法七百九条はございません。そういう通常の場合には七百九条というものは適用しないわけでございます。
  189. 中谷鉄也

    中谷委員 長官、やはり実務家じゃないから、私の言っていることがわからないのですね。こうなんですよ、要するに補償金請求権の行使の時期を早めるために、法廷テクニックとしてそういうことがどんどん用いられますよと言っているのですよ。だから、とにかく損害賠償請求権を否定する趣旨じゃないのだから、ともかくもまずは出してしまう。そうしておいて、最後は補償金請求権を一日も早くとりたいというふうなことになってしまいますよ。損害賠償請求権を認められるつもりで出すのじゃないのですよ。請求の趣旨に変更でいけるのだからというふうなことがどんどん行なわれますよ。そんなことはまれなんだということで、何か法律実務といいますか、裁判実務として問題を考えてみたら、問題ははっきりするのです。だからこれは問題点を指摘しておきます。これは全く長官、率直に言いましてこの点問題がありますよ。ですから、私はこんなふうな問題をかかえているのだったら、この補償金請求権の行使の時期を公告のときからというふうなことにするそれは、結局、補償金請求制度というものは早期公開から出てきた、早期公開というものが、そもそも混乱を生じているということを私は申し上げたいのです。しかしこれ以上詰めても何だから、この問題はこれにいたします。  次に、もう一点お尋ねをいたしますが、紛争処理委員会とか、調停委員会というのをおつくりになるというようにおっしゃいましたね、中村委員質問に対して……。そこで、お尋ねいたしますが、一体公開から公告までの間、民事調停法の調停の対象にはなりますか。
  190. 荒玉義人

    荒玉政府委員 なり得ると思います。
  191. 中谷鉄也

    中谷委員 そうすると、民事調停という調停において実質的な審理がそこで行なわれることを長官としては期待するわけですか。
  192. 荒玉義人

    荒玉政府委員 普通の民事調停はおそらく特許性がまだあるかないかわからない前提でございますので、おそらくなじまない、形式的には適用がありますが、なじまないことじゃないかと思います。
  193. 中谷鉄也

    中谷委員 そうすると、行政指導としては紛争処理委員会と民事調停、調停の申し立てができるとおっしゃるのですね。紛争処理委員会の和解、どちらを長官としては期待されますか、これが一点。  もう一つ、紛争処理委員会における和解ができた場合、あるいはその紛争処理委員会における和解の内容として差しとめ請求権を認めることはできますか。違反した場合には差しとめできるというふうな、差しとめ請求権を和解の内容にすることはできるでしょうか。先ほどの堀委員質問の継続です。
  194. 荒玉義人

    荒玉政府委員 第一点でございますが、これはあっせん機関といいましても、御承知のように事実上やるわけでございます。裁判所の調停機関もありますが、われわれのほうが、事実上やるにしましても、特許関係の専門家を集めてやるわけでございますので、その意味では一般の調停というより利用価値があるのじゃないか、かように考えております。  それから第二点でございますが、かりにあっせんといいましても、これは両当事者があっせんを受けるということでないと初めから成り立ちませんので、したがってあくまでこれは事実上の全く裁判外の一般の和解でございまして、その結果、当事者が契約すれば契約の効力になるでしょうし、それだけのものでございます。したがいまして、差しとめ請求は御承知のように出願後でないと出てまいりませんので、それは和解の内容に書きましても、法律的には出願公告後の問題、ただしおれはやめると言ってしまえば、これは普通の契約でございますから、そういう形で結局働くんじゃないかと思います。
  195. 中谷鉄也

    中谷委員 仮の地位を定める仮処分の中で、その紛争処理委員会における和解の内容としていま長官のおことばをそのままどおり言えば、おれがやめると言ったことを和解の内容とすれば、その和解の内容を理由として仮処分は行なえますかと、では質問をかえましょうか。
  196. 荒玉義人

    荒玉政府委員 通常の契約違反と同じように考えていただけばいいかと思います。
  197. 中谷鉄也

    中谷委員 通常の契約違反なんですよ。その契約違反を実体として、違反を法根拠として、違反を請求理由として、違反を請求原因とする差しとめの仮処分というのは打てるはずなんです。あたりまえなんですよ。打てるのですよ。仮処分はできるのですよ。しかし、できますよと言うけれども、あなたの答弁がなければ、私ができると言ったって、これは有権解釈になりませんから、できますかと聞いているのですよ。できるのですよ。
  198. 大久保武雄

    大久保委員長 荒玉長官に申し上げますが、法制局から説明さしたほうがよろしい場合は、法制局にお譲りになってよろしゅうございますよ。
  199. 荒玉義人

    荒玉政府委員 法務省にかわってお答えしますが、当然できると思います。
  200. 中谷鉄也

    中谷委員 大臣に最後にお尋ねをいたします。  実は率直に言いまして、特許法というわれわれにとっては非常になじまない法律であったと思うのです。しかし、委員長のもとで少なくともわれわれは誠実にこの法案に取り組んできたと思います。ところが、最後の私に与えられた時間は三十分、これは三十分でけっこうですと言ったのです。というのは、きょうの私の質問というのは、この点とこの点と質問しますよというふうなことですが、お尋ねをしておりますと、文字どおり疑問百出、かなりまだ問題は多いと思うのです。だから、私は率直に申し上げますけれども権利の体系、国民の権利、義務を規定するところの法案というものについては、一点の疑義を残してはならない。制度というものはあと戻りしないというのが私の考え方なんですけれども、先ほどからの田中委員、あるいは石川委員、堀委員、そうして私の質問は何もあげ足とりの質問をしているつもりはないのです。かなり問題の本質に迫るような問題を私は列挙してお尋ねしている。それについて、とにかく毛筋ほどの非論理性を持たないような明確な答弁というのを、私たち権利、義務を守る法案審議ですから、期待をする。そのことを国民も期待していると思うのですが、どうも私はそうではなかったと思う。こういう状態の中で、はたしてこのままこの法案が法になってひとり歩きしていいものだろうかどうか。この点についての大臣の御所見を承って私の質問を終わりたいと思います。
  201. 大平正芳

    大平国務大臣 本改正案の御審議を通じまして、あなたの言われるなじまない法律というものがいろいろな角度から論議された、また特許庁の立場、特許庁の職員の立場、処遇、日本の技術、産業の政策からいって、この技術政策の占めるウエートというようなものが浮き彫りにされましたことは、私も、政府にとりましてもたいへん有益な経験であったと思いまするし、国民にとりましても益するところが多かったと思います。しかし、御指摘のように、この論議を通じまして、われわれの側の答弁が毛筋ほどのあいまいさを残さないような明快さにおいて行なわれなかったという御評価に対しましては、まことに痛み入るのでありまして、私どもの能力の足らぬところでございますが、私どもも大事な特許法でございまするし、国民の厳粛な権利と義務にかかわる境の問題でございまするので、この法案が御審議を通じまして成立を許されますならば、えりを正して厳密に運営してまいりまして、御懸念のないようにできるだけの努力をするつもりです。
  202. 中谷鉄也

    中谷委員 お約束ですので、質問を終わりたいと思います。
  203. 大久保武雄

  204. 近江巳記夫

    ○近江委員 各委員より相当種々の問題点が出ておるわけでございますが、私はきょう限られた時間の中でありますが、特に情報管理の問題についてお聞きしたいと思います。  科学技術情報が年ごとに非常にはんらんしていくということについては、もうすでに御承知のとおりでありますが、特に特許情報というものにつきましては、技術情報あるいは権利情報、そういうものが含まれているわけです。現在公告されているものだけでも各企業においても処理をされておらないという現状であります。ましてや個人あるいは一般の大衆においては、もう言うまでもないわけです。そこでお聞きしましたところが、現在の特許公報というのは一年間に六万件発行されておる。しかし今回の法改正が行なわれた場合においては約二十一万件、そういう飛躍的な量になってくる。しかもその二十一万件のうち六割近くは重複するであろう、このようにもいわれています。現在の六万件ですら手に負えないというような状態の中で、そういう情報のはんらんということについて、政府としては今後どのように基本的に考えていこうとしているのか。その辺のところが何か部分的に話はあるのですが、基本的な話がまだ出ていないわけです。その辺のところをひとつお聞きしたいと思うわけです。
  205. 荒玉義人

    荒玉政府委員 情報につきましては、われわれといたしましては、できるだけ適正な機関によりまして一般の便益に資したい、いわゆる新規性調査機関というものを来年度からでも発足していきたいと基本的には考えております。といいますのは、御承知のように情報というのは開発をする場合の前提条件でございます。学問的興味でやるわけでなくて、開発する場合にどういうものを開発したらいいか、権利があるのかないのか、こういうことでございますので、もちろん民間それ自身もやりますが、国としても何らかの形でそういった機関を樹立してまいりたい、かように思っております。
  206. 近江巳記夫

    ○近江委員 「エコノミスト」の六月二十四日号に情報管理の問題について政府の方針が出ておりますが、この政府の方針は当然お読みになっておられますね。どうなんですか。まずお聞きします。
  207. 荒玉義人

    荒玉政府委員 その「エコノミスト」残念ながら読んでおりません。
  208. 近江巳記夫

    ○近江委員 これは「エコノミスト」を読んでないというよりも、政府がもうすでに基本的な方針を発表しておるわけです。この情報という問題については特許庁は最もそのかなめになってくるところです。したがって政府の根本的な方針は了解されるのがあたりまえでしょう。その辺どうですか。まず政府の出した方針についてのあなたの考えをお伺いしたい。
  209. 荒玉義人

    荒玉政府委員 それは産業構造部会における答申かどうかちょっとお聞きしたいと思います。
  210. 近江巳記夫

    ○近江委員 政府が根本的な情報管理の問題について方針を出しておる。これはもう通産大臣も御承知だと思いますが、もし知っておられたら、それについての感想をまずお聞きしたいと思います。政府が出したその方針をどのように思われるか。現実に特許庁はこれだけの改正をしようとしておられる。これからの膨大な情報管理の問題について種々の問題点が出てくる。重大な関係があるわけですよ。その点をどのように把握され、また今回の法改正に関してどのようにお考えになっておるか。その点をお聞きしたいと思うのです。
  211. 大平正芳

    大平国務大臣 近江委員が言われる政府の方針というのは何をさして言われるのか、私は寡聞にして「エコノミスト」の六月二十四日号を読んでおりませんので、判明いたさないのでございますが、案ずるに、この間私どもが諮問をいたしました産業構造審議会の情報部会におきまして、情報問題について官民がどのようなアプローチを試みるべきかというような点につきまして、ハードウエアはもとより、ソフトウエアの開発につきましても、北川会長の名において私に答申が寄せられたのでございます。私としては、これは通産省だけでこなせない部分も相当ございますが、とりあえず通産省で各アイテムにつきましていま鋭意検討させておるところでございます。当然各省との間にまたがる問題も次々に出てまいるわけでございまして、そういった検討を終えて、政府に持ち上げて、政府の方針として研究を進めてまいるつもりでございます。また情報管理につきましての政府の統一的な方針が確立して、それを世間に発表したということは、私はまだ伺っておりません。  それから特許庁の問題でございますが、特許庁の情報の処理迅速化、能率化の問題につきましては、いませっかくコンピューターを入れまして、登録以外の仕事をコンピュータライズするために現に実行に移しておるわけでございます。しかし多くの部門のうち実行に着手いたしました部門はまだ限られておるのでございますが、漸次これをシステムに乗せる努力をいまいたしておるわけでございます。今後さらにハードウエアの充実をはかるとともに、ソフトウエアの開発も進めまして、画期的な情報管理充実を期したいという基本の方針をもちまして鋭意努力をいたしておる最中でございます。
  212. 近江巳記夫

    ○近江委員 情報処理、情報産業施策に関する答申を産業構造審議会情報産業部会が出しておるわけです。だから政府の基本方針もここに出ているわけですよ。政府のとるべき施策——私はコピーして持ってきたわけです。あなた方は特許庁の今回のこれだけ膨大な情報をどうさばいていくかということは私も前回、分類という点までお聞きしたのですが、これが一番大きな問題点になっているわけですよ。政府の根本的な施策も的確に把握をしておらない。その中でこの特許庁の情報管理というものをどのようにやっていくか。この辺のところを——これはもうこれだけの法改正を、すでにこれだけ長時間かけて審議してきている。その辺のところをまだ具体的に考えておらない。この政府の方針からいけば、もう長期的な計画が、大体方向は記載されておりますけれども、要するに、特に今回の法改正に伴ってどうしていくか、そのようなところは一行も触れていないわけですね。ですからそういう一つの姿を見ても、一体この特許行政というものが、わが国の産業界において、今後科学技術の発展にどのように寄与していくか、その辺の位置づけというものが非常に軽視されておるのじゃないかと私は思うのです。当然本改正においては、特にいま出ておるから、こういうようにやりたいというところが政府の発表においても出てこなければうそなんです。当然この方針に基づいて、特許庁としては具体的にかくかくしかじかやっていきますというものがあってしかるべきなんです。先ほどから言っているけれども、まだばく然としているでしょう。もう少しきめこまかく、考えていることがあればお聞きしたいと思うのです。その点はどうです。
  213. 大平正芳

    大平国務大臣 誤解ないようにお願いしたいのですけれども、それは産業構造審議会のほうの答申が政府に寄せられたということでございまして、政府の方針がきまったというわけではない。その点は誤解ないようにお願いしたいと思います。政府はそれを受けまして、そこにあげられたいろいろな問題点をいま検討吟味しておるわけでございまして、その検討を経て政府の方針をきめるわけでございます。私が申し上げたのは、そういう情報産業全体の育成方針というようなものと別に、あなたの御指摘の、特許庁仕事の迅速能率化、情報管理充実というような点につきましては、鋭意やっておるわけでございます。一日も怠っていないつもりでございます。したがって計算機器の整備充実というようなことと同時に、ソフトウエアの開発というようなことを一日もゆるがせにしないで努力をして、漸次コンピュータライズするラインに乗せているわけでございます。コンピューターを入れて所期の目的が十分達成されておるかというと、それはこの間岡本先生からもいろいろな御指摘がありました中にございますが、必ずしも十全でない部面を自覚いたしておるのでございまして、その改善に鋭意努力いたしておるわけでございます。
  214. 近江巳記夫

    ○近江委員 この答申と政府の基本方針と違う、これはなるほどそうかもしれませんが、いままで情報の問題についても私も商工委員会等でもいろいろ質問しておりますけれども、こうしたそれぞれの部会から答申案が出ますが、政府はいつも答申を尊重して、そのように言っておりますし、いままでほぼその線がそのまま政府の基本方針となっておるわけです。このように一般にも発表されておりますし、それだけの答申案も掲げておられれば当然そう思います。その中にあって今回の法が出されたわけですから、具体的にこの特許行政における情報管理という点において、この間からコンピューターの問題等出ておりますけれども、コンピューターの持つそういう欠陥といいますか、運用面において非常にまずいという点がしばしば指摘されておるわけです。したがって今後そうした問題をどうしていくかという点において、われわれとしてはまだまだ納得できる答弁をいただいていないわけですね。だから申し上げておるわけです。  それから、この公開制度がさきにドイツなんかにおいて施行されておりますけれども、このドキュメンテーションの側面について、ドイツの場合、わが国の場合、どういう相違があるか、その辺のところ、ひとつお伺いしたいと思うのです。私はこの辺が問題だと思うのです。
  215. 荒玉義人

    荒玉政府委員 御質問の趣旨がドキュメントをどうするかということになりますと、そう日本の特許庁とドイツの特許庁が差があるとは思いません。
  216. 近江巳記夫

    ○近江委員 ドイツの場合は充実しておることについては、あなたもすでに御承知と思いますが、要するに国家のそうした施策あるいは各企業においても、情報管理というものは、公開に対処できるだけの、そういう充実したものを持っているわけですよ。わが国にはたしてそれだけのものがあるのですか。それは制度をこうしていくのだ、いまから急速に数年間で充実していくとおっしゃるかもしれませんが、当然そういうものは先行しなければうそじゃないですか。そうでしょう。それがあとから行って、こんな制度が生きるはずはないじゃありませんか。その辺のことを言っているのです。
  217. 荒玉義人

    荒玉政府委員 先ほどはドキュメントのやり方ということでお答えしたつもりでございますが、それは施設等につきましては、この前参考人の話もございましたが、確かに向こうはいろいろ完備されておると思います。少なくとも情報の問題は、むしろ制度改正しようがすまいが、われわれとしては当然やらなければならない問題でございます。したがいまして、先ほど産構審の話がございましたが、政府部内でも、われわれとしては将来的には長期的な展望に立ってそういう情報管理をやっていきたい。むしろ政府内部のほうはこれから具体的に詰めていく段階ではないか、かように思っています。
  218. 近江巳記夫

    ○近江委員 だから、そういう体制であるからおそいと言っておるのです。そういう準備体制もできずして法改正だけやっていけばいい、そういう考えが誤りであると言っているのです。対処できるようなそういう体制をつくって、PCTの根本的なものが出るまで待つべきだと私は思う。それを私は申し上げているのです。それじゃ大混乱が起きますよ。分類の問題一つにしたって、あれだけのいろいろな点が出てきたわけです。非常に膨大な情報量、これはますますこれから激増してくると思いますが、現在種々の機械検索の方法が研究されておる。これは長官も何回もお答えになっておられますが、特許文献をこれに乗せるためには、当然一定のパターンのものにしなければならない。ところが、現在の特許公報の状態を見てみますと、この間からずっと質問が出ておりますが、非常に遅々として進まない。非常に困難を来たしておる、そういうことが明らかになったわけです。そういう状態の中で審査官審査が終わらない。またそういうような不完全なものが出されてくる。そうしたものを一体整理、管理なりがはたしてうまくいくのかどうか非常に心配なわけです。この辺のところはどのように思われますか。
  219. 城下武文

    ○城下説明員 お答えいたします。いま先生のおっしゃいました現在の特許情報の処理をどうするかという大きな問題でございますが、まず先ほどの機械検索の問題から入ってまいりたいと思います。一つの問題は、つまりコンピューターを使って人手をあまり要しないような方式が十分確立されていないのに、一体十分な審査ができるか、こういうような一つの論点はございますけれども、その問題は現在の機械検索の何といいますか一つの方式をつくり上げることが非常にむずかしい問題でありまして、これは日本だけの力ではとてもできませんので、各国が共同してそういうシステムの開発を現在行なっておる、こういう状態であります。そういうシステムができますと、各国がお互いに分担して、お互いの資料を蓄積していこうじゃないか、こういう手はずになっているわけでございます。それで基本的な考え方といたしましては、今度の制度改正に伴って、そういうような機械検索システム開発のスピードを上げる必要はあると思いますけれども、それが完全にでき上がっていないからといって、そういうことに直接には結びつかないのではないか、こういう考え方であります。
  220. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういうようにパターンの問題にしても非常に戸惑っておるという点がいまここでまた明らかにされたわけであります。PCTの加入ということは、これはもう何回も長官も話されておりますが、これは確実にされておるわけです。そうしますと、これに加入しますと、当然その時点で明細書の記載形式というものは変更になるということも考えられるわけです。多項制等の問題が来るわけでありますから、そういうことになるということは確実に予想されるわけです。そうなってきますと、いままでのそうした形式のもとにおいての機械検索のそうした資料というものは水のあわにならないか、こういう心配があるわけです。また新しい形式のもとにこれを作成しなければならない、機械も当然入れ直しをしなければならない。そういう二重投資というか、情報の面一つを考えてみても、そのような混乱また二重投資、いうならば、むだ使いですよ。それでやるならば、もっと現在の審査官をふやすとか、あらゆるそうした点にもっと費用をかけて、そうしてPCTのところに来る時点においてそうした迎え入れの準備体制、情報管理のそういう問題にも力を入れて、あらゆる体制を整えた上でやっていくべきである。今回は非常に時期尚早である。その点を申し上げておるわけです。だから、私が申し上げたように、具体的に技術的にそういうような形になりませんか。これは改正しなければならぬでしょう。   〔委員長退席、武藤(嘉)委員長代理着席〕
  221. 城下武文

    ○城下説明員 いま制度改正をやっていろいろ情報が出てきた、PCTに参加したときにまた別の情報が出てきた、いま積め込んだものはむだになりはしないかといういまの先生のお話でございますけれども、情報といたしましては、PCTが実現しても全く同じでございます。その点御心配の点は全然なかろうと考えております。というのは、PCTの問題は日本だけの問題ではございません。PCTの問題は世界の主要国が寄って論議しております。同時に情報検索というものも、諸国が寄って同じ場で論議しておりまして、したがって、日本のみならず各国ともその点については全く同じと考えております。
  222. 近江巳記夫

    ○近江委員 パターンの問題にしても当然そこに変更のいろいろな点が出てくるはずですよ。それをあなたはいまそのようにおっしゃっているけれども、現時点において、早い話が七十万件の滞貨がある。これから毎年二十一万件というような膨大な量になってくる。現在の体制ではあなた自信がありますか、正直言って。いまのようなそういう管理のしかたをしておって自信がありますか。自信があるならば、納得できるそれだけの根拠を示してください。
  223. 城下武文

    ○城下説明員 お答えいたします。いまの先生の御質問は、結局、機械検索システムの中に、たとえば二十一万件なり、あるいは現在出ておる毎年六万件というものは現在ぶち込めないではないか、したがってその点大きな問題になるのではないかということでございますけれども、現在各国特許庁も大体そうでございますが、機械検索のシステムというものがまだほんとうに一%——国によっては三%、四%の国もございますけれども、非常に微々たるものでございます。大体の国の情報検索と申しますのは従来の分類中心の情報検索ということでまいっております。したがって、二十一万件の公開公告が出ました場合に、当然われわれを含めて特許分類によって整理された情報を見る、こういうことになると思います。そこで一番問題になりますのは、六万件に比べまして二十一万件というような膨大なる数である。したがって従来と同じような分類方式で一般の人が従来より三倍か四倍ロードがかかるのではないか、こういう問題が起きます。その問題に対する私どもの考えといたしましては、従来の特許公報というのがございますけれども、あれは一般の方が手に入れる場合には全部の産業の部門を七つに分けております。したがって七つに区分けしたものを、そういう公報を買って読んでおります。したがって、もしある人が読もうと思う場合には、全産業分野の七分の一に相当する分野をいつも読んでおる、こういう勘定になるわけでございます。それを、今度の制度改正を控えまして、私どものほうでは十四の部門に広げまして、広げるというよりはむしろこまかくしたわけであります。十四の部門にこまかくして、つまりある情報を得たいという人が従来の半分以下のロードでもってそういう情報をサーチできるような体制をつくろうじゃないか、こういうようなことを現在考えております。
  224. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうなってくれば、この前私がやった分類のそうした問題の質問を、これからさらに続けなければならぬわけですよ。それは時間が許しませんからそれ以上に入りませんけれども庁内で分類のそうした精度の調査をされた、このように私も聞いておるわけですが、この特許については機械で四五%、化学で二二%、電気三九%、平均三四%という非常に驚くべき誤りがあった、こうしたことを聞いておりますけれども、ほんとうなんですか。どういうような調査方法をやったのですか。ほんとうであれば、現実に問題はそのように不正確になっているんじゃないか。
  225. 竹内尚恒

    ○竹内説明員 お答えいたします。先生いま御指摘になりましたパーセンテージは、どういう根拠かわかりませんけれども、今回の制度改正にからみまして、公開公報をつけます作業といたしまして、いろいろな人間に実験的にやらせました、そのときのパーセンテージじゃないかと思います。察しますのに、若い、経験の少ない審査官補を使いまして実験をしたときのデータじゃないかと存じております。
  226. 近江巳記夫

    ○近江委員 そのように一つの事実を見ても、こういうような精度の問題にしても、そういうような問題がある。だからこれだけの膨大な情報が出るわけでありますし、まだまだそういう体制としてはがたがたですよ。法律だけ改正して進むものじゃないでしょう、この一つを見ても。それを言うのです。だからPCTのところに焦点を合わして、それまであらゆる体制を整えて待ちなさいということを言っているわけですよ。待てませんか、長官、この点は。
  227. 荒玉義人

    荒玉政府委員 PCTは御承知のように五年後でございます。一番大きな問題は多項の問題でございます。多項の問題といいますのは、今度の改正に匹敵するあるいはそれ以上いろいろな問題を含んでおるわけでございます。したがいまして、われわれといたしましては一つ一つこなしていくという体制で基本的に考えております。むしろ一つ制度をこなして次の多項をこなしていくということが望ましいのではないか。同時にむずかしいことを二つやるよりか、一つ一つ片づけていくほうが私は適切じゃないと思っております。五年たちますと、いまの状態でいきますと、御承知のようにそれまでに相当の未処理案件が累増するというおそれがあるならば、この際一つ一つ片づけていくのが適切な方策である、私はかように考えております。
  228. 近江巳記夫

    ○近江委員 法の改正だけで片づく問題じゃないわけですよ。それでこの法案が通って、そうしてそれが実際に実行されたとき、これはもう相当な混乱があることは間違いない。その間相当な空白ができるわけですよ。それよりも、人員をふやすとか、内容的にまだまだ充実しなければならないところがたくさんあるわけだ。ですから、その辺のところをまずやることが先決であるわけです。それはいまのままの審査官の数であり状態でやっていけば、未処理案件が山積をしていくのはさまっております。それを迎え撃つ審査官の数を増員するとか、あらゆる体制をやっていくならわかる。それのほうが効果的である。それはメリットもあればデメリットもある。それはわかりますけれども、それをあなたは見解の相違であるといわれればそうかもしれませんけれども、私たち判断としては、あらゆるそういう判断の上で、これはPCTのときまで待つべきだ、そうしてあらゆる内部体制を充実したものにしていくべきである。これはいつまで言っても押し問答ですから、これでおきます。  それから、長官は、きのうNHKの教育テレビにお出になっておられましたね。そのときに、研究開発について、日本は小さい企業のほうが進んでいます、大企業にしかられるかもしれないが、大企業は資本の安全を求めるから、市場ができてからさあ技術を買っていこうというような体質が残っている、中堅企業は独自の開発をやっている、こういう発言をされましたか。もう一度確認をとります。
  229. 荒玉義人

    荒玉政府委員 いたしました。
  230. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうしますと、今回のこの法改正という影響は、中小企業、零細企業あるいは町の発明家、そういう山で言うならすそ野、その辺の層というものを非常に意欲を喪失さしていくし、非常に苦しめる、そういう制度になっておる。   〔武藤(嘉)委員長代理退席、委員長着席〕 すべて大事なことは土台である。すそ野が大事なんじゃないですか。そこで初めていいものが生まれていく。それを喪失さして、すそ野をずっとすぼめていくようなことをやる。これからわが国が立っていくのには、いつも言っておるように、技術開発でぐんぐんこれから先進諸国に対抗しなければならない。それを芽をつみ取っていくようなやり方は、これからの日本のあるべき立場を考えたときに、これは大きな影響があるわけですよ。長官も、こうした小企業あいるは中堅企業の立場というものが技術開発というものにどれほど大きな力と功績を残しておるかということをお認めになっておるわけですよ。それを、そういう苦しめるような今回の法改正をしていいのですか。どうですか、その点は。
  231. 荒玉義人

    荒玉政府委員 苦しめるとおっしゃるのは、私あまりに断定的だと思います。たとえば先般の公述人の水沢化学の社長の発言、あれこそまさしく、小規模小規模といいましても普通の中小企業で、小規模ではございませんで、いわゆる中堅企業としてりっぱに世界にやっている企業でございます。独特な技術開発をやるためにはそういう規模の企業も早く情報を得たい。したがいまして、そういう意味では、もちろんそれぞれの立場で両方あると思いますが、私は、今回の制度改正発明意欲を喪失されるというふうには考えておりません。
  232. 近江巳記夫

    ○近江委員 これはもう何回も出ておる議論ですけれども、それは大企業などはそれだけの、公報に目を通す調査機関というものも充実していますよ。中小企業、零細企業あるいは個人発明家に至っては、そういう膨大な文献だってなかなか目を通すことはできませんよ。そうでしょう、そうしていけば、結局はそういうところに模倣の機会というものをどんどん与えてしまう。そして、いざ模倣されて、さあ裁判だ——私も前に権利侵害の問題で質問したことがありますが、それだって、裁判では逆の判定をされているし、非常に苦しい状態に追い込まれておる。そういうような状態になってくれば、ほんとうに中小企業、零細企業は苦しい立場に追い込まれるわけです。しかも出願の料金にしても、審査請求料は、特許八千円、実用新案は四千五百円、そのようになってきています。あるいはそういう権利の侵害という権利の不安定を招いてくる、また損害賠償にしても非常に困難な大きな問題も残している。ただ、あなたがおっしゃったそれは若干のメリットもあるかもしらぬけれども、それを相殺してメリット、デメリットをやったときに、あまりにもその中小企業、零細企業の受ける負担の損害のほうが大きいわけですよ。ですから、長官も、これだけのすそ野の中小企業、零細企業のそういう研究開発という点についての功績というのは認めておられるわけだから、その人たちもさらに権利の面においても安心できる、やはりそういう制度をしがなければならぬと思うのです。ですから、これはあらゆる中小企業団体はみな反対ですよ。それをあえてなぜ押し切っていくか。あなたはすそ野を重大視していないのですか。これは大企業だけがずっと伸びていけばいいのですか。その辺の根本的なことを一ぺん長官大臣にお聞きしたい。
  233. 荒玉義人

    荒玉政府委員 たびたび申し上げたと思いますが、特許の周辺から見ますと、いわゆる中小企業施策における大企業、中小企業という概念とは、私は実態を異にすると思います。特許マインドのある企業は、小規模といえども企業に対抗して情報も利用し、それを企業化する、こういう姿勢である企業が伸び、現に伸びておるわけでございます。したがいまして、そういう意味では、私、特許関係だけのサイドから見ますと、そう大企業、中小企業という対立でものを考えるということではないのじゃないかと、私は基本的にも思います。
  234. 大平正芳

    大平国務大臣 長官と同様な見解を持っております。
  235. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう時間がないそうで、非常に残念でありますが、いずれにしても、本法案がもしもこのまま強引に成立の段階に持っていかれるとなると、これはほんとうに日本の特許行政というものは空前の大混乱におちいる。われわれとしてはその点を非常に心配をしております。したがって、ここでどうしてもあなた方はこれで押し切ろうという態度でおられるのか、それで私たちも、せめてそれじゃ修正でもやって、それで政府もまた考え直すか、こう思って社会党さんとも話をしました。われわれとしても早期公開、これはもう一番大きな問題である、あるいは料金の問題とか、大体意見が一致しましたので、その辺のところをいろいろ折衝もしてもらった。だけれども、それを受け入れる意思もないわけですよ。このまま強引にいってしまおうとしている。これはもうたいへんな問題です。これだけの大問題でありますから、私としては慎重審議——何もいまここできめてしまうこともないわけです。ほかの法案があるならば、一緒にその審査を並行してこれからまだ続けてもいいわけです。ですから、そういう点で私は慎重審議、これからまだまだ続行していくべきである。もしもこのままで通してしまうなら、参議院の段階においてもわが党はこの法案についてはもう徹底的に反対します。その点、あなた方としてももう一回ここで考え直して、政府としてももう一度慎重審議いたします、こういう考えはあるんですか。長官大臣
  236. 大平正芳

    大平国務大臣 御審議の問題は国会の問題でございまして、私は差し出がましいことを申し上げる立場にありません。
  237. 荒玉義人

    荒玉政府委員 大臣と同様でございます。
  238. 近江巳記夫

    ○近江委員 それじゃ、もう時間がないからやめます。
  239. 大久保武雄

    大久保委員長 中村重光君。
  240. 中村重光

    ○中村(重)委員 一昨日の質問に対してペンディングになっておった点を中心にしてお尋ねをいたしますが、その前に、大臣承知のとおりに、大蔵大臣あるいは人事院総裁、行政管理長官等出席を求めまして、特許庁の機構改革の問題あるいは審査官の増員の問題、待遇改善の問題、さらには文献その他整備の問題、いろいろその必要性について指摘をし、その見解をただしてまいりました。大臣もそれぞれお答えはございましたが、この際、通産大臣から、それらの問題に対してどのような態度をもって対処していこうとするのか、この機会にあらためて見解を明らかにしていただきたいと存じます。
  241. 大平正芳

    大平国務大臣 本委員会の長い間の御論議を通じまして特許行政の問題が非常に国民の関心をひき、その重要性について認識が高まったことに対して感謝しております。  本委員会論議を通じて鮮明にされました第一の点、すなわち、特許庁組織、その要員予算充実、機械化その他事務能率の向上、そういった点につきましては、この改正の有無にかかわらず、不断に私どもが追求すべき道標でございまするから、これから以後も弛緩することなく努力してまいるつもりでございます。  それから第二の産業政策との関連でございますが、これは、従来わが国の産業はいわば外国の技術を模倣した模倣技術の上に繁栄を誇っておる姿でございます。そういう傾向はたびたび御指摘をいただいたわけで、私も全く同感でございます。したがって、わが国独自の、自前の技術の開発を促進する上から申しまして、特許庁の持っておる任務は非常に重大でございますし、その重大さはいよいよますます度合いを加えてきたことに対して責任を覚えておるわけでございます。したがって、通商産業省の一外局というようなわき役的な存在でなくて、産業行政の中核的な使命をになった機関であるという認識に立ちまして、新しい産業政策技術政策の展開と歩調を合わせまして、特許庁の機能の充実にはこれから一そうつとめてまいらなければならぬと思っております。  それから、この改正法案によってもたらされるであろういろいろな問題点が指摘されたのでございますが、これはまだ国会の御審議中でございますので、とやかく申し上げる段階ではないのでございますが、事国民の権利の問題でありまするばかりでなく、わが国の命運をになう創造的な活動、すなわち発明のにない手である方々の立場を十分配慮した周到な愛情のある行政をやらなければならぬということにおきましては、全く責任を感じておるわけでございまして、同僚を督励いたしまして、遺憾のないようにやってまいるつもりであります。
  242. 中村重光

    ○中村(重)委員 待遇改善の問題といたしましては、もちろん環境整備の問題があります。同時に、給与の体系といたしましても、裁判官と同じような特別職としてこれを待遇をするということも私たちは主張してまいりました。さらに、機構改革の問題に対しましては、次長制の採用であるとか、その他技術系統に十分希望を持たして対処していくということでなければならないと存じます。そうした考え方でもって対処していこうとされるのか、あらためてお答えを願いたいと存じます。
  243. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せの方向に鋭意努力するつもりです。
  244. 中村重光

    ○中村(重)委員 ここであらためて確認をいたしますが、紛争調停機関を法律事項として設置しようとお考えになるか。
  245. 大平正芳

    大平国務大臣 出願公開中の他人の模倣による補償金の請求についての紛争につきましては、小発明家など資力の乏しい当事者が訴訟によって解決することが困難である場合も予想されますので、実情に即した解決をはかるため、その紛争処理の機関をつくることを考えております。現在のところ、この機関といたしましては、政府機関ではなく、社団法人発明協会に特許紛争あっせん委員会を設けて、各界の学識経験者によってその委員会を構成して、特許庁もこれに協力して処理をしてまいることを一応考えております。この具体案は、発明協会などともすでに話し合いをいたしておるのでございますが、今後、関係者の意見も聞き、改正法施行までには発足させるつもりであります。  なお、この機関の運営状況にもよりますが、将来特許紛争処理のため、法律上の制度としてあっせんまたは調停の特別機関をつくることも考える必要があろうかと思っております。制度の円滑な運用のために、実績を見て、御論議の経過を見まして必要な処置を講ずるつもりです。
  246. 中村重光

    ○中村(重)委員 私は前段のような消極的なものであってはならないと思います。後段の制度をすみやかに確立することを強く要請をいたしておきたいと思います。  それから新規性調査機関の問題に対しましては、各同僚委員からるるその設置の必要性を強調してまいりました。ここであらためて、すみやかに新規性調査機関を設置される御意思があるかどうか、明確にお答え願いたいと存じます。
  247. 大平正芳

    大平国務大臣 御趣旨のとおりに考えております。
  248. 中村重光

    ○中村(重)委員 緊急審査制度の問題に対しましても、これも同僚委員からその必要性を強調してまいりました。さらにまた、この制度が、運営を誤りますと、さらに混乱を増すことも考えられるのであります。したがいまして、この緊急審査制度に対しましては慎重に検討し、最も適切な方策をもって対処されることが必要であろうと思うのであります。あらためてお答えを願います。
  249. 大平正芳

    大平国務大臣 御趣旨に沿うようにいたすつもりでございます。
  250. 中村重光

    ○中村(重)委員 次に公開方法についてお尋ねをいたしますが、公開方法といたしましては、リスト公開、要部公開、全文公開の方法があろうと思います。私ども公開制度そのものを否定するのでございますから、その三つの方法いずれをとろうといたしましても、もちろんそれを肯定するものではありません。だがしかし、政府といたしましては、この公開制度を採用します場合、当然その三つのいずれの公開方法をとるのかということに対しましては、全文公開の場合、それの及ぼす影響が、いわゆる模倣されるということにおいて、権利の侵害という形において非常に大きいものもあろうかと思うのであります。十二回の審議の中におきまして、公開制度の問題が一番憲法上の問題その他発明侵害、特許権侵害の問題、発明者の意欲を阻喪させるといったような問題等から議論されたのでございますから、この公開方法としていずれの道を選ぼうとされるのか。この点も、この際考え方だけは明らかにしておいていただきたいと存じます。
  251. 荒玉義人

    荒玉政府委員 御承知のように三つの方法がございます。それぞれ利害得失がございます。それで原案は、御承知のように特許の場合は全文公開実用新案の場合は要部公開、こういうことにしておりますが、それぞれ利害得失を勘案して原案で提出した次第でございます。
  252. 中村重光

    ○中村(重)委員 きわめてあいまいな答弁でありますが、そういうことであってはならぬと思います。この重要な問題点に対しまして、最も弊害の少ない方法はどういう方法なのかということに対しましては、見解の統一したものがなければならぬと思います。あらためてお答えを願います。
  253. 荒玉義人

    荒玉政府委員 それでは、まずそれぞれの利害得失を申し上げたいと思います。  リスト公開だけいたしますと、もちろん特許庁へ来れば見せる、あるいは全部マイクロその他を配って見せるということでございますが、その場合に一々見るという不便さと、先ほど先生がおっしゃいましたように、いきなり全部全文公開されるとすぐ模倣が始まるというように、それぞれ利害得失がございます。一々見る煩ということから言いますと、どうもリスト公開ではなかなか実効があがらぬというのがリスト公開を否定した理由でございます。  第二は要部公開でございます。ちょうどまん中でございます。実用新案の場合、御承知のように要部公開といたしましたのは、発明の中身が比較的軽易でございますから、図面と請求範囲でもって必要にしてかつ十分である。ところが特許の場合でございますと、やはり全文を見なければ発明の詳細な内容はなかなかわからぬという分野が多々ございます。もちろんものによりましては実用新案と同じものもございますが、やはり発明内容承知するためには全文がないと利用者の側が非常に不便であると同時に、実は特許庁内部でもいろいろ経費を試算してみますと、そう変わりません。むしろ経費の面からいえば、要部公開のほうが高くなる面もございます。それから、利用者は一々特許庁で全文を見なければいかぬ。同時に、場合によれば、コピーを買う場合には、公報でございますと数百円で手に入りますが、それを一々ハードコピーその他にしますと相当な金額になる。そういう利用者の便とわれわれの便をいろいろ考えまして、特許は全文公開にしたわけでございます。もちろんそれに対しまして、先ほども言いましたように、全文なら非常に模倣がしやすいという面もございますが、そういう利用者その他を一応考えまして原案になっておるわけでございます。もちろんそれぞれには利害得失がございますが、一応そう判断いたしております。
  254. 中村重光

    ○中村(重)委員 私はその利害得失をお尋ねしたのではない。もちろんそれの説明を伺うことはけっこうなのでありますが、いずれの方法を選ぶのかということを尋ねたのであります。  次にお尋ねをいたしますが、審査請求料に対しましては、これも昨日の委員会におきまして私は指摘をいたしました。大臣承知のとおり、出願料は二千円であります。そして全部審査の対象になりましたが、その五〇%程度は拒絶されたのであります。ところが、今回は審査請求をいたします場合は八千円の審査請求料を徴取しようとされております。審査請求をいたしまして八千円、出願料と合わせて一万円でありますが、その一万円納入した人が拒絶されることは言うまでもありません。私はあえてこのことを発明者からの収奪であると指摘したのであります。この点、大臣としても反省をされる必要があろうと私は思います。そこで、請求料の減免規定がございます。これまでの質疑におきまして荒玉長官がお答えになりましたのは、確定的な答弁ではございませんでしたが、一応生活保護法による対象者というようなことも答弁の中に出たことがあるのであります。そういうことであってはならない。この減免規定というものは、中小企業者、婦人、児童その他個人発明者のすべてを対象としていくということでなければならないと思います。この減免規定の対象範囲をどのようにお考えになるのか、この際明らかにしておいていただきたいと存じます。
  255. 大平正芳

    大平国務大臣 審査請求料の減免対象をどのようにしてまいるかという基準は政令で定めることにいたしておりますが、その具体的基準はまだきめておりません。今回の改正がもし成立いたしますならば、審査請求料が負担となり、発明意欲が阻害されはしないかという御心配でございますので、できるだけ幅広く考えてまいりたいと思います。したがって、生活保護程度の者ばかりでなく、出願人の所得額等も考慮いたしまして定めてまいりたいと考えます。
  256. 中村重光

    ○中村(重)委員 早期公開制度に伴いまして、この補正の制限が非常にきびしくなってまいりました。私は発明者の権利の保障というものがいかに重要であるかということを昨日も申し上げましたが、この権利の範囲を一方的に制限をする、そのことは憲法違反であるということを申し上げたのであります。しかも、今回きびしくなってまいりましたために、田中委員からるるこの点は指摘されたのでありますけれども、いわゆる発明の構成に欠くことができない事項の全部または一部、あるいは同一の目的、そういったものが、非常にきびしくなってまいりますと、これが公開制度がございませんでしたら、現行法におきましては、公告後はこれを減少させるだけでございますけれども、それまではこれをふやしたり減らしたり、あるいは変更したりすることが可能でありました。ところが、公開制度がここでできましたために、公開後におきましては、ただいま私が申し上げましたように、いろいろきびしい制約が加えられてまいりましたから、もしこれで補正を公開後にいたしますと、公開そのものはいわゆる公知例でございますから、みずからの出願によって、補正後は、いわゆる補正申請をいたしましたときが出願の日となってまいりますから、その公開即公知例、公知によりましてこの権利が喪失される。拒絶の対象になることがあり得るのであります。憲法侵害であるばかりではなく、法体系からしてもおかしいのではないか。発明者の権利をここであまりにも抑圧するこのやり方というものは改めなければならないと考えておるのでありますが、この点は合法的であるのかどうか。それを妥当とされる点について、この際ひとつ考え方を明らかにしておいていただきたいと存じます。
  257. 荒玉義人

    荒玉政府委員 一般的に補正を制限するかどうかといいますのは、発明者だけの立場でなくて、第三者を含めた意味で総合的に判断すべきものかと思います。たとえば現行法におきましても出願公告後はきわめて厳格な制限を受けています。そういう意味では発明者の利益と同時に第三者の利益を調整するという面があるかと思います。今回公開制度の導入によりまして、そういう意味の一種の制限をかけたわけでございます。その結果、先ほど先生のおっしゃったような点があることはございますが、それはやはり公開によって一つ権利を得るということの代償として私はやむを得ざる措置かと考えております。
  258. 中村重光

    ○中村(重)委員 現行法も第一条によってこの特許法目的というものが明らかにされておるのであります。今回の改正におきましても目的そのものは変えられておりません。ただいまのお答えによりますと、発明者本人だけではなくて、もっと端的なことばで申し上げますならば、いわゆる国民全体の利益というようなことになろうと思うのでありますが、そういうようにこの特許制度そのもの目的を変更するということになったのかどうか。それならば目的そのものを変えていかなければならないと思います。目的を変えないで、いわゆる公開制度ということを採用することにおいて、そうした発明者の権利を失わさせるというような行き方がはたして妥当なのかどうか。その辺たいへん重要な問題でございますから、この際ひとつ大臣からお答えを願いたと存じます。
  259. 大平正芳

    大平国務大臣 発明者の保護、それから公益の擁護、これの適正なバランスをとるという特許法全体のフレームの中で大ぜいの発明者の立場を保護してまいるためには、細心の注意を払ってまいらなければならぬと思います。
  260. 中村重光

    ○中村(重)委員 それから、いままでは公告公報だけでございましたが、今回は公開公報を発行されることになろうと思うのであります。滞貨審査官の手元にあります。今度新たに出願が出てまいりますと、審査請求があったものは、これは審査官の手元に来るのでございましょうが、いずれにいたしましても一年六カ月で公開されるものでありますから、審査官の手元に来ないもの、その分類はだれがするのか、どういう方法で分類をするのか、またどの程度の分類をしようとお考えになっておられるのか。現在の分類もあわせてひとつ明らかにしておいていただきたいと存じます。
  261. 竹内尚恒

    ○竹内説明員 お答え申し上げます。本委員会でも申し上げましたけれども、新法施行後の分類につきましては、審査官が現在のような状態でございませんので、分類審査室の陣容を強化いたしまして、その審査官公開分類表によりまして分類をいたします。
  262. 中村重光

    ○中村(重)委員 どうもいまのははっきりしませんでしたが、いわゆる出願された発明審査する審査官というのがありますね。別に分類審査官というのがあるわけでございますか。——そうするとその分類審査官はどの程度おられるのか、そしてその分類審査官によって分類されるものはどの程度あるのか。これは私は公報がエラーがあったらたいへんだと思うからお尋ねするのであります。いずれの公報をもってするかは別といたしまして、公開するのでありますから、それは公報に掲載される。そうすると、その公報を見る人は、その公報そのものを信頼をいたします。たまたまもしエラーがありますと、その間違ったそのものを信用することになってまいります。それはたいへんな混乱を起こしてまいりましょうし、出願者、発明者に対していろいろ迷惑を及ぼすことになってくるのではないか。したがいまして、その点ははっきりしておいていただかなければならぬと存じます。
  263. 竹内尚恒

    ○竹内説明員 いま先生の御指摘になりました分類審査官と申しますのも、それぞれ審査をやりました経験のあります者が分類室で審査をいたしますときに分類審査官という名前を使っておりますので、審査の実態については経験を持っている者でございます。その審査官が分類をいたすわけでございますけれども、公告公報におきましては審査が終わった状態でやりますので、こまかい種目までについての分類をいたします。ところが新法施行後の分類につきましては、審査官審査を経ておりませんので、この委員会でも申し上げましたように公開分類表、荒い分類表をつくりまして、分類審査官が分類審査をいたします。いま先生の御指摘になりましたようにエラーを防ぐために荒い分類をつけるということは精度が上がることでございます。それからまた、それによって精度を上げると同時に、副分類と申しますか、分類をつけますときになるたけ広い範囲で分類をつけますことによって、いま申し上げましたような誤りを少しでもなくすように考えて分類をすることにしております。
  264. 中村重光

    ○中村(重)委員 現在の分類は百三十六、それを選科して六千五百、さらにまたそれを選開いたしまして二万に分類されるということがいわれております。分類審査官の数は、いまあなたは明らかにされませんが、私が伺っておるところによりますと、八名程度ではないか。若干増員をいたしましてもこれが十四、五名になるのではないか。そうなってまいりますと、今度は審査請求をしないもの、それは全部分類審査官審査をすることになってまいりますから、いま私が申し上げましたように、現在の分類方法をとるといたしますならば、これはたいへんな作業になろうと思います。聞くところによりますと、現在でもベテランがやりましても二〇%から二五%のエラーがあるといわれます。今度は数少ない人によって分類がされるということになってまいりますと、これはたいへんな作業でありましょうし、またエラーが出てくるのではないか。したがいまして、慎重な態度、慎重な方法をおとりにならなければならないのではないか、そのように思うのでありますが、荒玉長官からひとつお答えを願いたいと思う。これは私ども議員がいろいろと勉強して質問をしておるのです。あなたは長官です。提案者なのです。いま私が質問をいたしました程度をあなたが答弁できないというような態度では、責任ある態度ではないではありませんか。お答えを願います。
  265. 荒玉義人

    荒玉政府委員 現在全部で二万種目ございますが、これをわれわれはできるだけこまかくしていきたいということと、こまかくすると、先ほど言いましたように審査終了しておりませんので、どうしても間違いが起こる、そのバランスをどこでとるかということで、大体六千五百ぐらいの——したがいまして、二万に対して六千五百程度のところでやむを得ないのじゃないか。これは業界ともいろいろ話しまして、できれば最終けたまでがよろしゅうございますが、六千五百というところでおおむね満足するというような形のもとにいろいろな計画を立ててまいっておる次第でございます。
  266. 中村重光

    ○中村(重)委員 十二回にわたりまして、私どもは、この法律案の重要性にかんがみまして、ほんとうに真剣に審議に当たってまいりました。だがしかし、提案者の答弁というものはきわめてあいまいであり、不明確でありました。しかも憲法を侵すおそれがあるのではないかという点に対しまして明確な答弁を聞くことができなかったことは、これは遺憾であるということよりも、きわめて重大な問題であろうと思うのであります。  私は、午前中の審議の終わりに、議事進行の形をもちまして、政府・与党に対してこれを白紙撤回をするとか、あるいは公開制度をこの際倒して弊害を除去することが必要ではないかという私どもの意見を受け入れる意思はないかどうか、でなければ参議院においておそらくこれが原案のまま日の目を見ることはできないであろうということを警告し、さらにまた慎重な配慮を促しましたが、残念ながら政府・与党は原案のとおりこれを成立させるという態度を変えるに至りませんでした。  あらためてここで警告をいたします。私どもは参議院の自主性は尊重いたしますが、党の立場に立ちまして、ただいま公明党の近江君からも発言がございましたように、この弊害がある、しかも憲法違反のおそれがある、良貨を悪貨が駆逐するような、いわゆる産業資本に従属するこのような法律案を断固粉砕するために戦うということを、ここにあらためて決意を表明いたしまして、私の質疑を終わりたいと存じます。
  267. 大久保武雄

    大久保委員長 これにて質疑は終局いたしました。     —————————————
  268. 大久保武雄

    大久保委員長 これより討論に入ります。  討論の通告がありますので、これを許します。丹羽久章君。   〔発言する者あり〕
  269. 大久保武雄

    大久保委員長 丹羽久章君、発言を願います。
  270. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、特許法等の一部を改正する法律案に対し、賛成の意を表明するものであります。  賛成の理由は、出願早期公開制及び審査請求制を柱とする本改正内容が、審査審判促進、累積する未処理案件の解消並びに技術情報流通の円滑化に役立ち、工業所有権制度の機能を発揮させる効果を持つものと判断するからであります。  御承知のとおり、今後のわが国経済の一そうの発展をはかっていくためには、従来の外国をまねた技術から脱皮し、独創的な技術の開発を推進していくことが必要でありますが、このためには、特許制度が果たすべき役割りもまた今後ますます重要なものとなっていくことが予想されるのであります。  しかるに、特許行政の現状を見るに、出願は年々激増し、審査処理促進しようとする特許庁当局の努力にもかかわらず、いまだ処理でき得ない案件は年を追って累積し、今日ではその平均処理期間は四年七カ月にも及ぶという状況になっております。  今回の改正案は、このような事態に対処して、早期公開制度審査請求制度を採用するものでありますが、早期公開制度は、現在の審査遅延による弊害を除去し、もって国民経済的損失が生ずることを防止するために有効であり、また審査請求制度は、審査処理促進し、もって累積した未処理案件の解消をはかり、迅速かつ適正な権利の付与という工業所有権制度本来の機能を回復せしめるために適切なものであると思われます。  改正案内容は、工業所有権審議会において約二年にわたり慎重に検討を重ねた結果作成された答申を基礎としたものであります。また海外においても審査主義をとる国々の間においては、このような趣旨の制度改正を行なうことにより事態の改善をはかろうとするのが、その大勢であると聞き及んでおります。  本改正案につきましては、五月六日に質疑を開始以来、二カ月にわたり、参考人招致を含み、委員会開会十一回、ほかに公聴会一回、質疑時間三十数時間という記録的審議をいたしました。この公聴会につきましては、公募してきた者九十七名、そのうち賛成者七十七名、反対者十九名、賛否不明一名であり、一般公募でも賛成者が多いのは、早く特許制度改正してもらいたいという願いだと思います。  このような審議の結果、改正の必要性、改正の効果、発明者の権利を守るための方策、改正法運用を円滑ならしめるための措置、その法改正関連する諸問題並びに特許行政のあり方、その改善充実策等の基本的問題がすべて明らかにされました。  技術革新の進展、開放経済体制への移行の情勢のもとに、頭脳をもって産業の振興と国際競争に対処すべきことが叫ばれている今日、頭脳開発の基盤たる特許制度に関しまして、このように熱心な論議が行なわれましたことは、商工委員としてまことに喜びにたえないところであります。  今回の審議を基礎といたしまして、本改正法の施行が円滑に行なわれ、憂うべき特許制度の現状が格段に改善されるよう切望するものであります。もちろん法改正のみによってすべてが解決されるものでないことは当然であります。法改正は解決策の一部にすぎず、大部分は今後における政府の行政責任にかかっていることは言うまでもありません。  政府におきましては一そうの熱意をもって、特許庁行政機能の拡充強化を通じ、発明の奨励による国民経済の発展を期するための努力を続けられんことを切望いたしまして、賛成討論を終わります。(拍手)
  271. 大久保武雄

  272. 中谷鉄也

    中谷委員 私は日本社会党を代表いたしまして、特許法等の一部を改正する法律案に対し反対の意見を表明するものであります。  反対の理由はあまりにも多く、一々項目をあげれば際限がなくなりますが、まず最初に、発明者の権利の侵害を問題として取り上げるべきでありましょう。この改正案にはいわゆる町の発明家の不満が集中しております。通産大臣特許庁長官がいかに説明しても、この発明者の被害者意識を消すことができないのは、発明者が汗と血のにじむ経験を通じて被害を予見できるからであります。すなわち被害、不利益の発生を目の前にして、すべての発明家がこぞって反対する理由がここにあることは明らかであります。発明者の権利が侵害されるとなれば、当然に憲法問題として受けとめなければなりません。憲法第二十九条は財産権の不可侵を宣言しております。早期公開制特許を受ける権利内容を強制的に公開し、しかもその模倣、盗用は適法とするものでありまして、このことは財産権侵害の放任にほかなりません。また、人の秘密保持の自由を奪うにあたって適切な法律手続がとられていないという憲法第三十一条抵触の問題もあります。  政府は憲法第二十九条第二項に早期公開制の根拠を求めておりますが、公開によって利益を受けるのは、発明者と利用者という当事者のうち一方の利用者だけであり、実際にはすべての発明に対して利用能力を持った一部の企業に限定されるのであります。一握りの大企業の利益がどうして公共の福祉に適合することになると言えましょうか。  早期公開制にからんで特許法体系に不平等が持ち込まれ、その被害をこうむる者が発明推進母体である中小企業個人発明家であることは、国民生活の発展の一翼をになう特許制度を荒廃の道に追いやることになりましょう。しかも審査請求にあたって一件八千円の請求料を徴収することとしておりますが、これは発明者からの手数料を一挙に五倍にしようとするものであり、大衆からの収奪であるとともに、発明奨励という法の目的に全く逆行する大きな矛盾であります。  強制公開に伴う補償金請求権なる正体不明の制度についても、種々追及いたしましたが、答弁は結局、馬車をして馬を引かせるたぐいの発展の見られないものばかりであり、疑問は深まる一方であります。  いま申し上げた点が、言い尽くせないながらも、本改正案反対する第一の理由であります。  次には、法改正の必要性ないしは効果が全く疑わしいという問題であります。  今日の特許庁における未処理案件の山積は、すべてこれ政府の責任であることは、質疑を通じてほぼ余すところなく明らかにされました。現行法制定の際の附帯決議を何一つ実行しようとしなかったこと、特に出願の増加の見通しと増員の無計画性、こそくな予算編成方針、長官責任不在等が指摘されました。これらはすべて政府の特許行政に対する一貫した行政努力の欠除を物語るだけでなく、今回の改正がなすべきことをなせば本来必要のないものであるのに、政府が責任のがれのために苦しまぎれに考え出した糊塗策であるということを遺憾なく物語っております。あらゆる角度から手段を尽くして特許庁審査機能の充実をはかること、これが最も有効かつオーソドックスな未処理出願の解消策であり、すべての点で疑問の多い本制度改正にまさるものと確信をいたします。  改正の効果については、これこそ全くないと断言せざるを得ません。特に、本改正案の成否の主目的である法改正による効果、処理見通しについての特許庁試算は、不確定要素ばかりであります。もはや法改正による効果は少しも望めない、何人に対しても説得力がないといわなければなりません。国民の発明意欲を喪失させ、発明者の権利を土足で踏みにじるような事態さえ予想される本改正案を、確たる根拠もなく提案したことはまことに遺憾であります。しかも、改正内容自体がそうであるのみならず、審査に当たる当事者がこぞって本改正反対の意思表示をしている客観的事実があります。労働組合の反対はもとより、最近におきましては、審査審判各部長、審査室長等の人たちを含む特許庁技術懇話会が慎重審議を強く望んでおります。これはまさに異常な事態といわなければなりません。政府はなぜにこのような無理とむだの多い改正案を提案したのか、私どもの理解の外であります。  以上の諸点のほか、委員会審議を通じまして、本改正は法及び制度安定性を害すること、その他数々の問題点が指摘されましたが、いずれも政府答弁によっては解明されるに至っておりません。  本委員会における三十数時間の審議をもってしてなお国民経済的な必要性と関係者の協力による効果が疑わしく、しかも発明者の権利を侵す等の弊害が明らかにされてまいりました。このような法案が八十余年に及ぶ特許制度の中で実施されたとき、制度はもはやあと戻りできなくなること、ひいてはこれがわが国の工業所有権制度を維持発展させるという本委員会におけるこれまでの審議努力は水泡に帰してしまうであろうことを申し上げて、本改正案に強く反対し、反対討論の結びといたします。(拍手)
  273. 大久保武雄

    大久保委員長 塚本三郎君。
  274. 塚本三郎

    ○塚本委員 私は、民主社会党を代表して賛成の討論をいたします。  本改正案は、本委員会においては、かつて類例を見ない慎重さと期間を費やして審議が行なわれました。  特許事務の停滞はいまや社会的非難ともなっており、これが改善方については、一刻も猶予できないことは言をまちません。政府がこの点に着目して、外国の事例等を参考としつつ、これが解決に努力を傾けつつある点を評価して賛成の意を表するものであります。  さればとて、本改正案が決して万全にあらざることは、しばしば通産大臣及び特許庁長官答弁されているところであります。したがって、政府は本法施行にあたり、少なくとも次の事項につき適切な措置を講ずべきであります。すなわち、  一、制度改正の裏づけとなるべき新規性調査機関について、政府みずからが積極的にその設立を期するよう努力すること。  二、審査請求料については、極力低い額を政令で定めること。  三、早期公開制度の実施が発明者に不利益をもたらすことのないよう、公平な緊急審査制度の確立及び実効ある紛争あっせん機関の設立を早急にはかるとともに、特許関係裁判機構の拡充対策を樹立すること。  四、審査審判促進するため、特許庁予算編成方針を抜本的に改めるとともに、審査処理の能率化のための機械及び近代設備の導入等を急速に進め、また特許庁職員については、技術系、事務系とも適切な増員を行なうための特別な対策の確立、待遇改善、執務環境整備及び研修促進等に万全を期すること。  以上の四点が誠実に実施されることを条件とし、さらにこれが早急に実現されることを期待して、賛成の討論といたします。(拍手)
  275. 大久保武雄

  276. 近江巳記夫

    ○近江委員 私は、特許法等の一部を改正する法律案に対する反対討論を公明党を代表して行ないたいと思います。  まず第一に、本法案は、個人発明家及び中小企業者の犠牲において、巨大企業並びに外国資本の技術的独占を強める結果を招来するものであります。  本法案は、未処理案件処理促進のために、早期公開審査請求制度の導入を企図するものであるが、特許文献の急増を誘発し、公開技術の模倣を奨励し、権利の不安定化を招来するものであり、その結果、中小企業個人の負担の急増と発明意欲の減退を招くものとなるのであります。さらに早期公開にともなう先願の地位の強化は、高生産性を持つ大企業技術独占に有利に働く反面、中小企業技術自主開発に新たな困難を引き起こすことになるのであります。  第二に、工業所有権は無形の財産権として十年ないし十五年の権利期間を有しており、特にその権利法的安定性の要請を満たすことが必要であります。しかるに現在、大正十一年法と昭和三十五年法による権利が併存し、さらに数年後には、特許協力協定の発効に先立つ法律改正が不可避であることを考慮に入れれば、近い将来に四個の法律体系に基づく権利の混在という事態も想定され、権利関係が不安定化するであろうことを深く心配するものであります。  特に右記条約の批准が確実視され、数年後に国内法も全面改正が予定されている以上、昭和四十一年七月二十九日の商工委員会決議にいう抜本的改正をその時期に向けて準備することが至当であると思うのであります。  第三に、府政は七十万件に及ぶ未処理案件を本法案の成立によって解消できると主張しておりますが、しかし、出願早期公開によって特許情報は早期に入手できるとしても、出願審査の迅速化の要請は、単に審査請求率の低下を期待するのみであって、その他の実効ある措置は考慮されていない。そして、請求率の低下の根拠として、オランダ及び西ドイツの例をあげているが、国民の法意識や法体系の差異、あるいは出願の構造の相違、企業競争の激烈さを反映した研究開発活動等の一切の条件を捨てた機械的な類推にすぎず、特許庁における審査及び事務の複雑化を考慮に入れれば、公開権利が付与されるまでの期間の長期化といった最悪の事態すら想定され、問題の解決にはほど遠いものであるのであります。  第四に、公開から権利の確定に至る期間の出願人の保護のために、本法案には補償金請求権という新しい権利概念が導入されたが、この権利の法的性格はきわめてあいまいであり、実務的にもその行使の態様と対価の算定基準の判断がきわめて困難であり、審理の長期化を招くおそれが大きいのであります。  また、出願審査期間の長期化を予想に入れれば、ロイアルティー程度の補償さえ支払えば事実上盗用が自由に行なわれる可能性も考えられ、権利の保護の面において重大な問題を引き起こすものとなるおそれがあるのであります。  第五に、特許庁は一方においては膨大な未処理案件をかかえつつ、予算額の絶対的過小に加えて、他方では長期にわたって歳入予算が歳出予算を上回るという、本来の行政需要からは考えがたい異常な事態が継続している。工業所有権制度基本審査主義に置く限り、増員と予算増による運用の抜本的改善をはかることが、未処理案件処理促進審査期間の短縮を確実にするものと考えられ、このような具体策は法律改正よりも先決であり、法律改正原則的には運用改善が保証されての上の問題と考えられる。このような原則的条件の整備を抜きにした法律改正は、制度の混乱を招来するのみであって、問題の解決にならないことは、従来の特許制度の経過から見ても明らかであります。  以上のおもなる理由によりまして、本法案廃案とすることが至当であると断じ、反対の意を表明するとともに、政府の翻意を強く促すものであります。  以上をもって反対討論を終わります。(拍手)
  277. 大久保武雄

    大久保委員長 これにて討論は終局いたしました。  特許法等の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  278. 大久保武雄

    大久保委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     —————————————
  279. 大久保武雄

    大久保委員長 この際、発言を求められておりますので、これを許します。石川次夫君。
  280. 石川次夫

    ○石川委員 ただいま特許法等の一部を改正する法律案が原案のとおり可決されたのでありますけれども、私どもは、先ほどの討論で申し上げましたとおり、本案についてはどうしても賛成することができません。  反対の理由については、討論の中で詳細に申し上げましたとおりでございますけれども審議促進をはかる意図が、逆に未整理特許情報のはんらんで混乱を招き、審査は渋滞するだけでなく、国民の重大な権利侵害のおそれがあり、違憲のおそれすら濃厚であるこの法案は、あくまで否決さるべきであるという意見であります。  よって、国会法第五十四条の規定に基づき、少数意見の報告をいたさんとするものでありますので、ここにこの意思を表明いたしておきます。
  281. 大久保武雄

    大久保委員長 ただいまの石川次夫君の御発言、承知いたしました。     —————————————   〔少数意見報告書は附録に掲載〕     —————————————
  282. 大久保武雄

    大久保委員長 おはかりいたします。  本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  283. 大久保武雄

    大久保委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  284. 大久保武雄

    大久保委員長 この際、委員長から申し上げます。  本日までに要求された資料で未提出のもの、また、答弁漏れのものにつきましては、文書をもって七日までに提出いたさせます。  次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十五分散会