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1969-07-02 第61回国会 衆議院 商工委員会 第38号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年七月二日(水曜日)     午前十時五十八分開議  出席委員    委員長 大久保武雄君    理事 宇野 宗佑君 理事 浦野 幸男君   理事 小宮山重四郎君 理事 藤井 勝志君    理事 武藤 嘉文君 理事 中村 重光君    理事 堀  昌雄君 理事 玉置 一徳君       遠藤 三郎君    小笠 公韶君       大橋 武夫君    海部 俊樹君       神田  博君    鴨田 宗一君       小峯 柳多君    島村 一郎君       丹羽 久章君    橋口  隆君       福永 健司君    増岡 博之君       石川 次夫君    岡田 利春君       加藤 清二君    勝澤 芳雄君       千葉 佳男君    中谷 鉄也君       古川 喜一君    武藤 山治君       塚本 三郎君    近江巳記夫君       岡本 富夫君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         通商産業大臣  大平 正芳君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      保利  茂君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      荒木萬壽夫君  出席政府委員         内閣法制局第四         部長      角田礼次郎君         人事院総裁   佐藤 達夫君         人事院事務総局         職員局長    島 四男雄君         総理府人事局長 栗山 廉平君         特許庁長官   荒玉 義人君  委員外出席者         労働省労働基準         局長      和田 勝美君         特許庁総務部資         料整備課長   城下 武文君         専  門  員 椎野 幸雄君     ————————————— 七月二日  委員栗林三郎辞任につき、その補欠として中  谷鉄也君が議長指名委員に選任された。 同日  委員中谷鉄也辞任につき、その補欠として栗  林三郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 七月一日  中小企業等協同組合法の一部改正に関する請願  (大原亨紹介)(第九五七一号)  同(菅太郎紹介)(第九五七二号)  同(久保田円次紹介)(第九五九九号)  同(坪川信三紹介)(第九六九一号)  同(山村新治郎君紹介)(第九六九二号)  同(大久保武雄紹介)(第九八三〇号)  電気工事業業務適正化に関する法律案反対  に関する請願江田三郎紹介)(第九六三七  号)  同(岡本隆一紹介)(第九六三八号)  同外九件(川崎寛治紹介)(第九六三九号)  同(河野正紹介)(第九六四〇号)  同(島上善五郎紹介)(第九六四一号)  同(田原春次紹介)(第九六四二号)  同(松前重義紹介)(第九六四三号)  同(井手以誠君紹介)(第九六九三号)  同(村山喜一紹介)(第九六九四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  特許法等の一部を改正する法律案内閣提出第  七四号)      ————◇—————
  2. 大久保武雄

    ○大久保委員長 これより会議を開きます。  特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  この際、政府から発言を求められておりますので、これを許します。荒玉特許庁長官
  3. 荒玉義人

    荒玉政府委員 昨日、本委員会におきましての武藤委員の質問、すなわち公開公報の収支の根拠でございます。手元資料不備のために失礼いたしましたが、正確な数字を、配付いたしました資料に基づきまして簡単に御説明いたします。  収入は、ここにございますように、四十四年度、これは一応予算で確定しております。四十五年度以降は一応の予想でございます。収入は、特許は四百五十三回、これは昨日申し上げましたように出願の百件を一冊にして、それを一回としています。それを六百五十部売れます。単価が四百六十円でございますので、トータルが一億三千五百、以下省略します。実用新案は五百七十六回で三百五十部売れます。単価は二百五十円でございますので五千万、合わせて一億八千六百万となります。それに見合います支出のほうは、これは細部は省略いたしますが、三億二千二百万、約半分を民間に払い下げる。四十五年度以下は大体冊数によって収入支出が影響されます。  はなはだ恐縮でございますが、支出面で少し訂正させていただきますが、支出面が、正確に言いますと四十四年度が三億二千二百万、四十五年度が十二億八千七百万、四十六年度が七億一千五百万、四十七年度が六億九千二百万、四十八年度が七億七百万、以上でございます。     —————————————
  4. 大久保武雄

    ○大久保委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村重光君。
  5. 中村重光

    中村(重)委員 実は通産大臣に、特許法の目的が変化しておるのではないかというような点についてただしてみたいと思っております。また特許行政国際経済との関連等について、基本的な問題についてお尋ねをいたしたかったわけでございます。  実はきょうは大蔵大臣あるいは行管庁長官人事院総裁等に御出席を願う、そういった関係から時間の制約があるわけなんです。三十分ずれ込みましたので、そうした基本的な問題についてきょうお尋ねできないことをたいへん残念に思います。しかし、いずれまた適当な機会におきまして、そうした基本的な問題についてはお尋ねをすることにいたしまして、今回の改正関連をいたしまして、これからお尋ねを進めてまいりたいと思います。  まず、各委員質疑応答が繰り返された中におきまして、今回の法律案改正に対して、通産大臣特許庁長官答弁が必ずしも統一しておる答弁であるとは考えていないのであります。端的に申し上げますと、通産大臣は、今回の改正につきまして、いわゆる制度改正であるから抜本改正であるというお答えがありましたが、荒玉長官は、まあ審査主義なのだから、抜本改正と言われるならば、そうでないとは言えないけれども、むしろこれは交通整理的な改正であるというような答弁があるわけでありまして、その点私どもがこの法案を審議する上におきまして、きわめて重要な問題点となるわけであります。したがいまして、この際あらためて大臣から今回の改正抜本改正なのか、そうではなくて滞貨六十万以上をこえておるわけでありますが、これをなくするための交通整理的なものであるのか、明確にその点を明らかにしておいていただきたいと思います。
  6. 大平正芳

    大平国務大臣 今度の早期公開制度、それから審査請求制度を導入するという改正は相当な改正であると思います。御指摘のように、いまのような未処理案件滞積状況に対しまして、何らかの措置を講じなければならないというためにとられた措置でございますから、そういう角度から申しますと、抜本的な改正でないという考え方も成り立つのではないかと思いますけれども、少なくとも権利保護という観点から、二つの制度を導入したというのは、私は抜本的な改正ではなかろうか、そういうように自分も観念いたしまして、御審議を願っておる次第でございます。
  7. 中村重光

    中村(重)委員 お答えに対しましての理論の展開ということになってまいりましょうから、その点は避けまして、そのままずばりお尋ねをしてまいりますが、大臣は毎年の出願件数が約二十一万件、それに対しまして処理件数が十五万件程度という現状におきまして、毎年約六万件程度の未処理というものが実はあるわけであります。累積しておりますところの滞貨が六十万件以上、約七十万件に達するということになっているわけですが、この滞貨原因大臣はどのようにお考えになっておられるか。私どもは、この特許法の問題に対しまして、いろいろと過去においても質疑を重ねてまいりました。問題点指摘してまいったのでありますが、あるいはそれに基づきまして附帯決議等もつけてまいりました。しかしながら、滞貨をなくするために最大努力をしたいというような言明は行なわれてまいりましたけれども現実におきましては大臣承知のとおり、なかなか滞貨をなくするということになっていない。そこで通産大臣も、この点真剣にお考えになっていらっしゃることだと思うのでありますが、この滞貨原因大臣はどのように受けとめていらしゃるのか、その点をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  8. 大平正芳

    大平国務大臣 最大原因は、戦後の権利思想が普及いたしまして、権利保護を法律的に求めるという風潮が高まってまいったことが一つと、技術革新期に際しまして、各技術分野におきまして新たなくふう、創造の意欲が高まってまいったことが最大原因でございまして、これはわれわれとしても歓迎すべきことであると思います。こういう民間側におけるほうはいたる申請の意欲高まりに対処いたしまして、政府側はこれを受けとめる対応姿勢が十分でなかった。予算において、あるいは要員におきまして、極力確保をはかりましたけれども、これを十分こなし切るだけの要員充足することができなかったということに、滞貨の未処理案件の累増を来たした原因があると思います。
  9. 中村重光

    中村(重)委員 大臣お答えになったようなことが滞貨原因であろうというように私も実は考えるわけであります。いままでそうした特許制度というものを、権利を確保するという立場から、発明者がそうした制度によってこれを守っていこうというような点が確かに高まってまいりましたし、技術革新技術開発というような、そういう意欲というものも高まってまいったことは事実であります。ところが一方、そうした発明者意欲高まり出願となってあらわれた。いろいろと処理のための体制を整えてきたけれども、それが十分でなかったのだ、こう言われるわけであります。私どもが今日までいろいろとこの問題に関心を払って対処してまいりました点から率直に申し上げさせていただきますならば、なるほど要員充足という点に対して全く意を用いてこられなかったとは私は申し上げません。だがしかし、特にそうした出願件数というものが非常にふえておる、特に出願を早く処理しなければならないのだという、そうした認識と申しましょうか、それに欠けておったのではないかということが私は指摘できると思うのであります。  そこで大臣は、具体的にこのいわゆる要員充足というものは必要を痛感してこられた、それに対してそれなりの対策というものは講じてきたと言われるのでありますが、ただ要員充足だけによって事足りるということにはならないのじゃないか。やはり機構の問題はどうなのであろうか、あるいは特許庁というものが、昨日も同僚武藤委員からいろいろ指摘をされておりましたし、また加藤委員からもこれまた重要な指摘が実はあったわけでありますが、そうした特許庁の悪い環境というものを直していかなければならない。それから審査官中心とするところの特許庁職員待遇をひとつ改善をしていかなければならない。そうした関心というものをどの程度持っておられたか。そうした環境をよくするために、待遇改善をするために、特に今日まで考慮を払われて、そして意を用いてこれが改善につとめられたという実績大臣はお持ちになっておられるかどうか。その点についてひとつお聞かせ願いたいと思います。
  10. 大平正芳

    大平国務大臣 まず要員充足の問題でございますけれども、きのうも御答弁申し上げましたように、各方面における技術者不足は深刻なものがございまして、なかなか思うように有為な人材をお願いできないという客観的な需給状況にありますことは、中村先生の御案内のとおりでございます。特許庁という高度の判断を要する頭脳的なお仕事でございますから、ただ頭数を集めただけではいけないわけでございまして、一定の水準以上の能力を持った方に来ていただかなければならぬわけで、したがってそういう特局庁の必要とする技術水準判断能力に恵まれた方々を鋭意求めたわけでございますけれども、そういう需給状況にはばまれまして、思うように充足ができなかったということは御指摘のとおりでございます。今後も、しかしながら、この困難な状況にありましても、この充足につとめてまいる決意でございます。  それから第二の点といたしまして、特許庁というものを行政組織の中でどのように位置づけていくか、この重要な任務を持つものをどのような処遇を行政府としてやるべきかという問題はこれからの大きな課題であろうと思います。たびたび申し上げておりますように、いまの日本産業政策から申しましても、一番中心的な課題は、何といっても技術水準の向上をはかってまいることであると思います。大きくいえば、日本の運命をきめるものも技術であろうと考えられるわけでございまして、従来のように特許庁が通産省の外局として、平穏無事な仕事を十年一日のごとくやってまいるというような行き方ではとうていいけないと思うのでございまして、産業行政の中核的な機能をになった、責任をになった役所として、それにふさわしい処遇考えていかなければならぬと思います。その意味におきまして、長官をはじめといたしまして、特許庁職員の身分にふさわしい処遇と誇りをどうして保障してまいるか、これは産業政策といたしましても、あるいは行政運営といたしましても、非常に重大な課題になったと思うのでございます。そういう基本的な認識に立ちまして、これからの運営につきましてはもとよりでございますけれども、この特許庁という役所をどのようないすにすわっていただくかということについて、私といたしましても、特段の配慮をしなければならぬと思っておる次第でございます。  それから第三の、したがって、待遇の問題でございます。待遇の問題につきましては、きのうからもずいぶん御議論をちょうだいいたしておるわけでございますが、これはいまの全体の給与体系の中で、私どもとして特別な足場をつくっていただきたい、その業務責任重要性に照応した処遇を確保したいというのが変わらない意図でございまして、人事院当局と終始連絡をとってきておるわけでございますけれども、いまは御案内のように、調整手当ということで、若干の配慮が行なわれておる程度でございまして、大きな前進をまだ見ていないことは非常に遺憾に思っておりますが、今後とも精力的にその分野につきましての努力を怠らないでがんばってまいるつもりです。
  11. 中村重光

    中村(重)委員 いまの大臣お答え、それは答弁のための答弁でない、真剣に対処していこうという熱意を持っておられるということを、私は率直にそれは認めてまいりたい、こう思います。ただ、冒頭にお答えになりました審査処理というものが非常におくれてきている、滞貨が六十万件以上になっている、それに対して特許行政というものの重要性にかんがみてどうあらねばならないのかということに対しましては、いま大臣からるるお答えになりましたようなことを、歴代大臣も実は答えてこられました。ニュアンスの違いはありますけれども、大体基本的な考え方というものは同じであったのであります。ところが現実には、先ほど来私が指摘いたしましたような結果になってきている。私は、そのことはいわゆる発明奨励という観点からいたしまして、発明者意欲というものを非常に阻害してきた、そのことは、発明者に対するところの大きな損害を与えてきた、またそれは国益に反した、その責任というものはきわめて大きいものだ、厳粛に反省をしなければならないのだろう、こう思います。ところが、大臣のそれらのお答え等から考えてみますと、やるべきことをやったならば、いわゆる審査処理というものはもっと促進されてきたのだ、そして滞貨というものは、今日のような膨大な滞貨にならなかったのだというお答えに通じてくるのだろうと私は思います。それならば、やるべきことをまずやるということが必要ではなかったのか、それをやることなく今回の制度改正ということを一挙に踏み切ったということ、それ自体に大きな問題があるのではないか。もちろんこの制度改正に対しましては、通産大臣としましては、これは審査を促進していく上において、特許行政というものを高度に発展をさせていく上について非常に重要なことなんだ、必要なことなんだ、そういう認識の上に立っておるのだろうと、こう私は好意的に見てみるといたしましても、いろいろと問題点があるということを指摘しなければならないのであります。  そこで、お尋ねをしなければなりませんが、この現行制度の中において、処理件数というようなものが、審査官一人につきまして三百三十二件ということになっている。アメリカにおきましては八十件、西ドイツにおきまして八十五件という実績が実は出ておるわけなんです。もちろん、それに対しまして特許庁からそれに対する反論と申しましょうか、あるいは解説と申しますか、その条件の違いというものも指摘をいたしておられるようであります。私も全く条件が同じだとは申しません。だがしかし、その条件の違いがあるといたしましても、三百三十二件に対するにアメリカの八十件、西ドイツの八十五件というのは非常に格差があり過ぎる。そのことはいわゆる審査官に対する労働強化という形になってあらわれてきただろう。環境が非常に悪いという中で肉体的に精神的に、審査官というものは率直に言ってまいってしまう。ノイローゼになる人もある。そしてついにはとうとい生命をみずから断つというような悲惨な結果まで起こってきた。そのことに対して通産大臣はこれをどうお考えになっておられるだろうか。その点を深刻にお考えになり反省をされるならば、まずそれを先に着手すべきだ。そして今度御承知のとおり、大臣の耳にも入っておると思いますが、今回の改正に対して反対というものは非常に強い。特許庁におきましては、審査官中心とする労働組合人たちばかりではありません、いわゆる管理職を含めた技術懇話会あげて今回の法律案審議に対しまして批判をしておる。反対であるということを強く言えなくて、国会において慎重審議をしてもらいたい、逐条審議をしてもらいたい、そういう表現ではありますけれども、実際は反対なんだ、今回の改正は見送らなければならないんだという気持ちのあらわれであるということは、私は率直にこれを認めなければならないと思います。それらの点に対して私は非常に心配をしているのです。私どもはこれに対しまして、原案どおり成立をさせるということは問題がある、やはりこれは修正をするか、一応政府はそれらの多くの人たち反対に謙虚に耳をかして、もう一度出直そう、こういうことでこれを撤回をして、再検討を加えて提案されるべきだ、このように私ども考えておるのであります。だがしかし、私どものそのような主張あるいはそうしたあげて関係者反対というものを押し切ってこれを成立させました場合に、大臣は、この特許法というものは安定をするだろうか、制度改正が有効に活用されるであろうか、その点をどのようにお考えになっておられるのか、率直にひとつお聞かせを願いたいと私は思います。
  12. 大平正芳

    大平国務大臣 実務の密度が高くなる、あるいは労働強化になるとかならないとか、つまりこの改正案のもたらす執務体制についての問題でございますが、この問題は、新しい制度を導入して審査の手続を変えていくということでございまして、これによって労働強化を激化するとか、そういうようなものでは決してないと私は思っております。執務管理の問題はこういう改正を行なおうと行なうまいと変わらない課題としてわれわれのもとにあると思うのでございまして、その点につきましては、終始周到な不断の注意が必要でございますし、それに対する対策を講じてまいることは、改正があろうとなかろうと当然のことであると心得ております。  それから懇話会から御意見があったということは私も承知いたしておりまして、慎重審議要望がなされたということは承っております。それは現に国会におきまして十分の時間をおかけいただいて、御審議をいただいておりますし、この審議を通じまして特許行政というもの、技術行政というものが大きく国政の上で新たな光をもたらすだけの地位をだんだんこの審議を通じて得つつありますことを私は喜んでおります。その意味で、慎重審議を願うことはたいへん重要な問題であるだけにけっこうであると思っておりますが、それが直ちに反対に結びついておるというように私は承知していないのでございまして、この問題はたびたび私も申し上げておりますように、この改正に必ずしも得心がいかない方々も、やはりいま特許庁の置かれた立場から申しまして、建設的な代案があればどんどんほしい、われわれも十分それについて耳を傾ける用意があるんだということを、私も長官もそういう立場をとってきておるわけでございますが、慎重審議をという要望は無理からぬ要求でございまするし、この審議を通じまして特許問題というものがいろいろ世論に訴えるところが多くありましたことは非常な成果であったと私は評価いたしておる次第であります。  第三に、しからばこの改正ができたあと行政責任が持てるかということでございますが、私は特許庁長官以下各職員の皆さんを御信頼申し上げておるわけでございまして、与えられた職責を懈怠されるというようなことは一人もないと思っておるわけでございます。国会でおきめいただきましたことにつきましては、忠実に執行の責任を負っていただけるものと思うております。そういう忠実に職務を御担当いただく方々に対しまして、執務管理の面から、私どもは当然いろいろの配慮をしてまいらなければならないと心得ております。
  13. 中村重光

    中村(重)委員 審査官中心とする特許庁職員人たちはきわめて悪い環境の中に、そして悪い待遇の中に三百三十二件という件数処理してきておる、この事実からいたしまして、非常に責任を感じて勤勉に業務遂行に当たっておられるる、その点は私率直に評価しなければならないと思うのであります。したがいまして、今回の改正に対していろいろと問題点指摘してこれに反対をしておるということに対しましても、謙虚に耳をかさなければならないのではないか、そう思います。また技術懇話会人たち慎重審議をしてもらいたいんだ、こう言っている、そのことは必ずしも反対に結びつかないんだと大臣はおっしゃいました。なるほど決議として出しておりますその内容をただ文字だけ見ますと、大臣お答えになったとおりであります。しかし表面的にそれを考えてはならぬ。管理職であるから、それはだめなんだ、反対なんだということを懇話会はどうして言えましょうか。逐条審議をしてくれ、慎重に審議をしてもらいたいんだ、そしてこういう点が問題なんだと言っておることは、これはやはりいけないのだ、この原案のままこれが成立をするということは審査の促進にならないのだ、そういう技術懇話会人たち考え方であると私は考えなければならぬと思う。なるほど慎重審議をするということは問題が浮き彫りにされてまいりますから、それは必要になってまいります。そうしなければならないから、私どもは時間をかけて実は審議に当たっております。与党の諸君にいたしましても、やはり問題が非常に重要なものだから、十分審議をしなければならないのだという考え方の上に立って審議に当たっておると私は思います。いま私が申し上げましたように、審査官諸君問題点指摘しておるということに対して、いま大臣お答えになりましたように、この制度が変わっても労働強化にはならないのだという考え方は、私は大臣のほんとうの気持ちを表現したのじゃないだろう、提案者という立場からそういうお答えをしなければならないからそういうお答えをされたのではなかろうか、こう思います。昨日も同僚委員からいろいろ申し上げておりましたが、参考人意見あるいは公聴会における公述人意見は、賛成、反対、両方出されましたが、そのほとんどは反対である、賛成の場合も条件つき賛成であるというようなことでありました。原案がこのまま通るということは、そうした条件つき賛成の諸君考え方がここで取り入れられたことにはならないのであります。  労働強化の問題にいたしましても、昨日も荒玉長官からお答えがございましたが、六十万、七十万という滞貨をここで公開をすることについて、公開公報も出していかなければならない。その公報は今度は分類をしていかなければならない。百三十六件に分類し、今度は六千五百件に選科する。その六千五百件をさらに二万件に選開しなければならないのですよ。簡単なものじゃないのです。審査前置制度もいままでと変わってまいります。補正も非常にきびしくなってまいりました。そういうことが労働強化という形になってあらわれずして、どうしてこれがいわゆる滞貨処理審査の促進ということになりましょうか。大臣のこの制度改正というものはいわゆるデメリットは全然ないのだという考え方は、少なくとも慎重審議という形において問題が浮き彫りされた、それなりに非常に効果があったというようなことは、私はすなおな大臣の受け取り方であり答弁であると思いますが、ほんとうにまじめな大臣として、この制度改正というものをほんとうに効果あらしめるためにはどうしなければならないのか、どの点がデメリットか、そのデメリットを解消していわゆる制度改正をメリットの方向に進めていくためにはこういう点が足りないのだということを謙虚に反省をして、その対策を打ち出していくということでなければなりません。労働強化にならないのだ、そういうふうに言うことは、今日までまじめに働いてまいりました審査官中心とする特許庁職員に、大臣、大きな反発を感じさせるのではないでしょうか。それらのことは、私が先ほど申し上げましたように、この制度がいわゆる効果を発揮することにならない。この改正される法律案は安定しないという指摘は単なる指摘に終わらないと思います。もう一度大臣の率直な考え方をお聞かせ願いたい。
  14. 大平正芳

    大平国務大臣 重ねて恐縮でございますが、労働強化になると思いませんけれども労働強化にしてはいけないと思います。制度改正に伴いまして、新しい仕事がそれに付随して出てまいりますことは御指摘のとおりでございますが、同時にそれは、制度改正によって整備される執務が別にあるわけでございまして、その間で仕事のバランスをとってまいりまして、労働強化にならぬように十分配慮してまいらなければならぬと思うのでございます。私どもといたしましては、職員方々にほんとうに仕事をやっていただくわけでございますから、この人たちがそっぽを向くというような事態があっては一大事でございまして、そういうことのないように鋭意懇談を遂げまして、御理解を得て、納得ずくでものごとをやってまいることは当然のことで、むしろそういうことが私の任務であると心得ております。
  15. 中村重光

    中村(重)委員 行管の長官がお入りになりましたから、ちょうど労働の問題についてお尋ねをしておりますので、この際、長官お尋ねをしたいと思います。  時間の関係がありますから、また十分御承知でございましょうから、いろいろな前置きは申し上げません。ともかく特許庁は、御承知のとおりに技術中心でありますから、いわゆるエンジニア中心特許の行政が進められているということは長官も十分御承知であろうと思います。ところが、そうした特許庁業務を推進していく上において、その中心であるべき技術屋というものが下積みになっている、いまの傾向からはですね。これではいけないと思うのです。長官にいたしましても、歴代長官の中で技術屋の長官はいままで一人なんです。これはもちろん通産大臣の守備範囲に入ることでございますから、そのことで長官お答えを聞こうとは思いません。ですけれども、機構面においてもう少し技術屋を活用する方法を考えていくべきじゃないかと私は思う。いま特許庁のほうでもいろいろ検討をしておるようにも伺っているのでありますが、長官も、事務系統とか技術系統とかを問わず、かつて佐藤総理が本会議答弁をされたように、人材をどんどん登用していく、こういうことを言っております。かつてただ一人の技術系統の長官が約五年間在籍をされて、りっぱな業績をあげられたという実績があるわけです。したがってこの点は通産大臣としてもひとつ真剣にお考えにならなければならないだろう。またいままでのように平均二年というようなことであってもならないのだ。これも昨日同僚から指摘されたとおりでございますから、その点も通産大臣はお考えにならなければならぬと思う。  いまの技術屋は部長どまりなんです。ですから、かりに次長制をとるということになってまいりますと、これは機構上の問題でありますから、荒木長官のほうではやはり問題にされるだろう。だからこれは制度改正ということではどうにもならないのだ、メリット、デメリットがある。私も、これは問題点である、決してこれは審査の促進にならぬのだというようなことを指摘しておるのでありますが、かりにその制度改正通産大臣お答えのとおりメリットが多いといたしましても、それだけではどうにもならぬ。やはり環境を整備しなければならぬ。機構を検討していかなければならない。同時に、審査官も非常に不足をいたしておりますから、審査官をふやしていかなければならぬ。ところが、いま審査官のワクをいわゆる事務系統で食ってしまっている。百四十三名——これは私がここで言っていいのかどうか、事実かどうか知りませんが、私が聞いておるところでは審査官のワクを事務系統のほうに貸している。さらに滞貨を多くしていくというような原因もそこにある。そういうことはだめじゃないか。そのことがいけないのだ。私は平面的にいえば、やはり事務職員が少ない、それを充足しなければ十分な機能を発揮することはできない、ところが事務職員は認めてくれない、審査官は比較的よく認めてくれるから、そういうことで苦肉の策をとったのだと思う。こういうことも改めなければいかぬ。  そこで長官といたしましては、今回の制度改正、これと並行するというよりも、むしろそのことを前提に、機構の問題、それから審査官中心とする特許庁要員の増員の問題、それから待遇の問題、それらの点に対して、いわゆる総定員法というものは、これは必要なところにどんどんふやしていく、そういう弾力的な運営をするために総定員法というものを考えていくのだというお答えであったのでありますから、この特許庁に対して、長官としてはどのような考え方で対処していこうとされるのか、まずお答えを願いたいと思います。
  16. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答えを申し上げます。  総定員法の運用との関連におきまして、特許庁仕事の特殊性と申しますか、一種の現業的な要素が多分にあると理解をいたしますけれども、そういう意味で、一般に少数精鋭主義で、行政サービスを低下しないでやっていこうという考えではございますけれども、従来とても特許庁につきましては、定員の問題については、ほかの省庁の部局等とは全然違った考え方に立って、毎年相当数を増員しておることは御承知のとおりでございます。今回の総定員法の運用上も、むろんいままでと同じ考え方に立ちまして、よく特許庁、通産省とも御相談しながら、善処していきたいと思っております。  それから、次長制をしいたらというような意味のお話がございましたが、これは一般論として申し上げますれば、一種の機構の増大を意味する立場から言いますと、にわかに賛成しがたい、こういうことじゃなかろうかと思います。ただし、人事政策上の問題もございましょうし、御指摘のとおり、事務官、技官が特別に区別さるべき扱い方ではございませんけれども技術系統の職員がたくさんいらっしゃる、そのほうの系統のことも念頭に置きながら何かを考えてしかるべしという特許庁当局の一つの願望としてはわからぬではございません。いずれにしましても、そういう具体案が出ましたとき相談もしてみたいとは思いますが、繰り返し申し上げれば、原則として、できれば認めないで済めば望ましいんじゃないかという気分はございます。よく相談したいと思います。
  17. 中村重光

    中村(重)委員 長官答弁、まともな答弁ですから、ことさらそれはだめなんだという反論をするということはどんなものだろうかと思うのです。ところが、総定員法というものは、ただ人の数だけの問題じゃないと終始繰り返してお答えになってきた。いわゆる必要なところにふやしていく、剰員があるというところは減らしていく、そうして行政能率というものをもっと向上さしていくのだ、こういうことでございます。そのことは、やはり機構の場合だって私は当てはまると思うのですよ。これは屋上屋みたいな形になって、機構が非常に複雑であるために能率が低下しておるというところだってあるでしょう。同時に、画一的にいきますと、もっと機構を充足していかなければならないところがそうなっていないために、十二分の機能を発揮していくことができない。また、具体的な特許庁の例から申しますと、いま大臣お答えになりましたが、ともかく技術系統が中心でなければならない。それがどうも頭打ちになって、希望を持たせるということにはなっていない。ただ仕事をしろ仕事をしろと言って、研究の機会も与えない。閉鎖的な仕事でございますが、レクリエーション設備すらない。こういうような今日の環境というものを打破していくということでなければならない。そうしてまいりますと、機構上の問題も、具体的に、今後行管のほうにどういうことを通産当局から持ち込んでくるのか、その点は私も承知はいたしておりませんけれども、やはり機構の問題も何とかしなければならぬのだということだけは、これは事実だろうと思います。そういう点は、いまお答えのとおりに、弾力的な運営ということをしていかなければならない。いわゆる、ほんとうに機能を発揮する、有効に制度というものを確立していく、運用していくということでなければならないと思います。  それから、特許庁に対しましては、これをふやすために十分配慮してきたとおっしゃるわけでございますが、六十万滞貨してきていることは現実です。しかも、アメリカでは、審査官一人の処理件数が八十件、西ドイツでは八十五件、日本は三百三十二件です。数字だけでは条件が違うのだから何とも言えないのだと言いながら、これは非常に無理であるということ、無理な量を要求しているということだけは避け得られません。しかも条件が悪い、待遇が悪い。そのことを考えてみますと、やはりいまでも無理なことでありますから、この審査処理件数をふやしていくとか、滞貨をなくしていくというためには、これはやはり審査官をもっとふやしていかなければならぬ。それから、先ほど申し上げましたように、事務職員もふやしていかなければならぬということになりますが、審査官の、四十四年七十名の要求に対して、三十一名を認められたにすぎない。制度改正を抜本的にやるというけれども、むしろ、その増員は、これを減らされつつあるという、このことはいまの大臣答弁とは矛盾をするわけであります。したがいまして、もっとこれを大幅にふやしていくということでなければならないと思いますから、その点に対して、ひとつ再度お答え願いたいと思います。
  18. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 先ほどお答え申したことを出ないが、その基本的な受けとめ方としまして、御質問の趣旨はよくわかります。具体問題として十分相談をして善処をいたしたいと思います。  なお、待遇の問題から次長制等が考えられるということだと、これは私の守備範囲外のことでございますが、これは給与体系課題として十分別途考えらるべきことかと思います。ただ、相当膨大な特許庁の組織、機構、定員を擁しております実態から見て、その全体の運営上必要であるかどうかというふうな課題かと思いますが、その意味では、先刻申し上げましたように、抽象論としては免れたいと思いますけれども、具体問題としてとくと相談をしてみたいと思います。  以上お答えを申し上げます。
  19. 中村重光

    中村(重)委員 まだいろいろお尋ねしたいこともありますけれども、後刻同僚委員からの質疑もあるわけでありますから、長官に対しましてはこの程度で質問は打ち切りたいと思います。  ただ、私は、待遇面から機構の問題だけを申し上げたのではありません。機構もやはり特許庁運営強化していくためには必要なのだ、こういうことで申し上げたわけですから、ひとつ、そのつもりで受けとめて検討をしていただきたいということを要望いたしておきます。  次に、通産大臣に単刀直入にお尋ねをいたしますが、今回の制度が二本立てになっておりますね。早期公開と審査請求、これは不可分の関係でしょうか。二本の柱として、一方を倒したならば、一方は、これはそういう制度をつくっても意味はないのだ、こういうことになりましょうか。
  20. 大平正芳

    大平国務大臣 御指摘のとおり、両制度は不可分の関係にあると私は承知しています。
  21. 中村重光

    中村(重)委員 具体的にはどういう点で不可分でございましょうか。私は不可分ではないと思っているのですが、一応伺ってみましょう。
  22. 荒玉義人

    荒玉政府委員 制度の面から言いますと、現行法と比較していいか悪いかということになるかと思います。いまの中村先生の御趣旨は、早期公開制度をやめる、審査請求制度だけ残すといった場合に、現行法とどういう関係になるかということかと思います。  結論を先に言いますと、現行法より悪い方向にいくのではないか。なぜならば、第一点は、御承知のように現行法では、出願がありますと、出願順序に審査をいたしまして、おおむねよろしいというところで出願公告をするわけでございます。そうしますと、もちろん、審査の遅速によって、いつ公開になるか、厳密に言って出願公告になるかということだと思いますが、かりに五年といたしますと、大体出願公告は四年ぐらいでございます。四年で一応出願されたものが公告され、世の中に中身がわかる。今度、そういたしまして、請求制度だけでございますと、御承知のように請求制度といいますのは、出願から一定期間——原案では七年でございます、七年間よく考えて請求するかどうかを出願人がきめる、いわば審査を繰り延べるということでございます。そうしますと、審査に着手する時期が出願人の自主的な判断によるわけでございます。出願人は必ずしも出願と同時に請求するわけではございません。たとえば七年間ぎりぎりにかりに請求するといたしますと、それから審査を開始する。かりに三年たって出願公告になるといいますと、七年プラス三年でございますから十年間で初めて出願公告になる。現行法では、先ほどの審査は五年といたしますと、四年で一応公開になる。そういうことを比較いたしますと、むしろ技術の公開という面から見ると非常におくれてくる。御承知のように早期公開といいますのは、技術テンポが激しい、それに即応した一つの体制でございますので、公開がおくれるということは非常に弊害が出てくる。それをカバーするために、かりに、かりに請求期間を短くいたします。そうしますと、請求期間を短くするということになりますと、それは請求制度意味がないと思います。といいますのは、請求期間というのは、その出願の当時には発明の経済性が判断できないから、一定の期間猶予をするわけでございます。これを短くすればするほど出願と同時に請求するということになりますと、請求制度の趣旨には合ってこないということでございます。  それから一般的にもちろん審査を早くする。今度の制度でございますと、先ほどいろいろ御質問があったかと思いますが、やらぬよりかやったほうが一年半以上短くなるということで長期計画を考えておるわけでございますが、やはりそれは一応平均的でございます。そうしますと、どうしてもある部門によりますといろいろな関係で長くなるということになりますと、先ほど申し上げた趣旨から見まして、請求制度をとるとやはり公開がおそくなるという問題がございまして、現行よりむしろ技術の公開という面から見れば弊害が出てくるのではないか、私はかように考えております。
  23. 中村重光

    中村(重)委員 あまりむずかしく言うとわけがわからぬようになるので、単刀直入に尋ねますが、実は雑談みたいに宇野委員から、特許は秘伝だ、これは確かに秘伝ですよ。秘伝はなるべく人に知られたくないのですよ。だから公開はだれのためにするのかというのですよ。出願人のためにするのか、あるいは産業界のためにするのかということによって変わってくるのですよ。あなたは産業界のために公開をしようと考えておられるのだと私は思う。いいですか、審査請求は、防衛出願をする人もあるのだから、したがって防衛出願をする人は審査請求をする必要はないのですよ。七年間は審査請求をする期間があるのだから、そのままそっとしておいてもいいわけです。権利はあるのです、そのまま。そうすると、八千円という金を今度はあなた方は取ろうとしておるのだから、だから防衛出願をする人は八千円出すよりも黙って出願をして七年間そっとしておいたほうがいいということになってしまう。だからして審査請求はしません。外国の出願が四割減る、あなたはこう言っておられる。これは公開があって、公開公報によってそれを見て、こういうものが出ておるからやめようといってやめるのじゃない。これはオランダの例をあなたは引き合いに出されておることによっても明らかなんだが、それは審査請求をする必要がないから、だからして黙って出願をしたままにしておるのですよ。そこで審査請求は、出願をしたものを全部審査する必要がないという形において審査する件数が減ってくるから、それなりの効果があるでしょうと私は思う。しかし一方公開するわけです。効果があるのですか。何もないでしょう、公開は。秘伝を守るという点から言えば、特許制度そのものはいわゆるみずからの権利を確保するというために出願をするわけですから、また特許制度はそれを守ってやろう、権制を守ってやろうというところに意味があるでありましょうから、それならば、公開というものは模倣を奨励するためにおやりになるのではないということになってまいりますならば、それでは公開というようなものは何のメリットがあるのか、こういうことになってまいります。あなたはノーハウというようなものがこれは盗用されるのだ、ところが出願の場合はノーハウなんというものを明らかにする者はだれもいないのだ、こう言っているのですよ。そうするとそういうものから模倣する者がないのだとあなたが自信を持っていらっしゃるならば、公開というものの意味はないではありませんか。おっしゃるとおり出願がそのときはいわゆる経済性がどうあるかということはわからないのですよ。しかし試行錯誤を重ねていく上において、これは経済性があるかどうかということは、その本人が判断をするのです。経済性がないなということになれば審査請求はしません。防衛という立場からそれをほっておきます。それならば公開というものと審査請求は結びつかぬではありませんか。そしてその公開というものが、先ほど来私が指摘をいたしましたように、公開公報を発送しなければなりません、これは分類しなければなりません。それからいまは出願順で審査をしてまいりましたが、審査請求制度ということになってまいりますと、今度は審査請求の順序によってしていかなければなりません。七年間でございますから、いつ審査請求があるかわかりませんから、順番は変わってしまいます。系統的な仕事審査官はできません。頭は散漫になります。仕事は複雑になってまいります。非常に混乱をしてくるではありませんか。若干のメリットがかりにあるといたしましても、デメリットのためにすべてそれは相殺されてしまうではありませんか。そうして公述人であるとかあるいは参考人指摘いたしておりますように、どろぼう市場に公開することになるのだという。あの女性の公述人は涙を流さぬばかりにして、深刻にこの制度をやめてもらいたいということを訴えておりました。そのことは、肝心かなめの秘伝を守る、権利を確保しようとする特許制度そのものを、公開によってじゅうりんしてしまうことになるではありませんか。それならば、そういう制度は百害あって一利なしということになってしまいます。これは完全に結びつきません。だから私はそういう制度はおやめになったほうがよろしい。あとでお尋ねをいたしますが、もしこの制度をおやりになるのであったら、私があげましたもろもろの条件を、そういう弊害を食いとめるための制度を確立しなければなりません。それからそういう制度考えていく、検討していくということが筋でなければならぬと思います。どうですか。
  24. 荒玉義人

    荒玉政府委員 特許制度の目的は、いまさら申し上げることもございませんが、個人に独占権を与える半面、公開、これは車の両輪かと思います。いわゆる家伝というのはそこは非常に違うのでございます。近代的な特許制度といいますのは——家伝といいますのは、これはあくまで命をかけても守っていく、公開というのは本来ないわけです。特許制度といいますのは、やはり独占権を与える半面その技術を公開して、そうして第三者の技術の発展をはかっていく。私はこれは車の両輪だと思います。決して一方に偏することが特許制度ではないと思います。そういった意味では明らかに家伝とは違うわけでございますので、やはり制度自身が新しい時代に対処するためには、技術を公開していく、それがやはり第三者の技術レベルに合った時期に公開していくということでないと、車の片一方の目的が達せられない。そういう意味では、だれのためにとおっしゃいますが、私は制度そのものがそういうふうなことをねらったのだと考えます。
  25. 中村重光

    中村(重)委員 いまあなたのお答えは、公告によってそれは公開される。おっしゃるように、秘伝は家伝、その点は若干違うということは認めます。しかし、それは公告によって明らかになってまいります。公開においてそれを明らかにしようとすることは、いま多くの人たちが言っているように、模倣の道を開きます。どろぼう市場に公開をするという形につながってまいります。それでは何の魅力があって特許の申請をするのでございましょうか、出願をするのでございましょうか。御承知のとおり、いまの出願は一千万円以上の資本金の人たち出願が六、七〇%を占めております。その中でも大企業が中心であります。公開そのものは、公開公報に記してあるものは抽象的なものであります。それではわかりません。しかし、閲覧をしましょう、詳細に調べます。大企業は十分な技術陣を持っております。資本力もあります。その内容を詳細に知ることができるのです。そうすると、模倣をして資本力にものをいわせて、公告決定の前にどんどん市場価値を発揮することになってまいります。あなたは記憶がございましょう。典型的な例として例の坂本三郎さんのポータブルサーチライト、あなたの耳にも入って、あなたはこの問題を持ち込まれたときに、頭を上げられないで下げっぱなしであった、こういうことを実は伺っていますが、これはピストル式でしょう。乾電池は四個でいい。六百メートルの光達距離。   〔委員長退席、小宮山委員長代理着席〕 ところがナショナルが類似品をつくっておりますね。ナショナルのは肩かけ式でボタン、光達距離は短い、乾電池は六個。ところがナショナルは資本力にものをいわせて、どんどん宣伝をして市場性を出してしまっている。より優秀な坂本さんの一中小企業の発明というものは、これはいいなといって防衛庁も使っている、あるいは外国から引き合いがあるけれども、残急ながら二、三人でやっているから、資本力がないから、どうすることもできない。それでナショナルに持ち込んだ。なるほど優秀なんだけれども、自分のほうは市場性が非常に強く出てきているんだから、どうにもならないんだといって、その優秀なものを押えてしまって受け入れない。いわゆる良貨を悪貨が駆逐するという結果があらわれているんです。こういうことが具体的な実例です。大企業を中心とする産業界が公開というものをアイデアを利用するためにいかに期待しているかというこの事実を、あなたは否定することができないと思う。それがなければ、あの専門家の発明家の人たちが、どろぼう市場に公開をされるようなものだといって、悲痛な声をあげて反対をしないのです。こういうような弊害のある制度をお考えになるときに、問題の公知例調査機関、同じような意味ですが新規制調査機関であるとか、あるいはいろいろ弊害をかもし出すかもしれませんが緊急審査制度の問題であるとか、あるいは慣用技術の十分な調査をやるとか、文献の整理をやるとか、いろいろなことをどうしてお考えにならないのですか。そういう制度をまず先行させないのですか。あなた方は産業界の圧力によってこういう制度をお考えになったのかは知りませんけれども、あまりにもこの特許制度というものを軽視しておる。真剣に発明者の発明を奨励していこうというような方向をじゅうりんしてしまって、むしろそれを低下させるという方向に進んでおることがいかに誤った考え方かということにお気づきになりませんか。   〔小宮山委員長代理退席、委員長着席〕 これは技術的な問題でありますけれども、あなたにお尋ねしてもしようがないといえばこれは失礼でございますけれども、政治的な問題が関連をいたしますので、この点はひとつ通産大臣からお答えを願いましょう。
  26. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど長官からも御答弁申し上げましたように、権利者の保護技術の公開という二つの要素をバランスをとって特許制度ができておると承知いたしております。中村さんの御指摘のように、早期公開によりましていろいろのデメリットがあることもよく理解ができるのでございますが、反面、長きにわたって権利の卵が眠っておる。一方、国民経済全体では至るところで同じような研究が行なわれておる。これは国民的なエネルギーから申しまして大きなロスでございまして、早期公開されることによって、いまどういうことが行なわれておるかということをみんなに承知していただくことによって、そういった二重投資的な何重ものエネルギーのロスが救われてくるのではないかと思うのでございます。しかし、その場合の権利者の保護につきましては、補償請求の制度をもってこれを救っていくというように配慮することによりまして、この運営のバランスを守っていこうというわけでございます。われわれが大企業の圧力に屈して云々ということでは決してないのでございまして、公正な特許制度のあり方として、こういうことは許されていいのではないか。技術のテンポが非常に激しい変革期にあるだけに、ここまで踏み切る必要があるのではないか、私は感覚としてはそのようにとらえておるわけでございます。問題の権利者の保護についていろいろのデメリットが出てくるということにつきましては、克明にいろいろ究明いたしまして、これに対する措置は、仰せのとおり、各般の措置を法制的にとるものも行政的にとるものもございましょうが、これは今後いろいろくふうしてまいらなければならぬわけでございますし、その若干のものにつきましては、すでに発明協会その他といろいろ協議を進めておりますことも御案内のとおりでございます。
  27. 中村重光

    中村(重)委員 それでは大蔵大臣もお入りになりましたから、関連がございますから、いまからお尋ねすることに対して御方針をずっと明らかにしていただいて、そしてその後に私は法律案の内容に入りますが、堀委員大蔵大臣に対する質問等もあるわけでございますから、法律そのものに対する重要な問題、逐条審議の形になるわけでありますが、憲法上の問題があります。それから法制上の問題があります。いろいろたいへんな問題を含んでおると私は思いますから、法律案の問題に対しましての質疑を適当な時間で調整をすることによりまして、これから端的にお尋ねすることにひとつお答えを願います。  私が申し上げましたように、いろいろ問題が、早期公開制度に伴って出てまいります。いわゆる特許権の侵害という形、特許権というのはもちろん公告後に発生するわけでございますけれども、補償請求は公開と同時にさかのぼって補償請求の対象にしようとしておるわけでありますから、その間侵害行為が出てくる。紛争が起こる。したがって、そういった紛争を一々裁判所に持ち込んだのでは、資本力のない中小企業、個人発明家はどうにもなりませんから、少なくとも紛争調停を考えなければなりません。これは法的に措置しなければならぬ問題であると思いますが、紛争調停に対してはどのような対策を講じられますか。
  28. 大平正芳

    大平国務大臣 これは、われわれがいま考えておりますのは、発明協会の中に紛争処理委員会を設けまして、そこで専門の方々を委嘱いたしまして、具体的な案件の御審議をいただいて、そう時間とか経費を食うことなく、紛争解決のめどがついていくように、行政面で対処したいということで、よりより相談をいたしておるところでございます。
  29. 中村重光

    中村(重)委員 紛争調停機関というのはどこにおつくりになるのかわかりませんが、これは法的措置としておやりになる必要があろうと思うのですが、権威あるものでないといけないと思う。ですから、紛争調停機関をつくるとおっしゃるならば、これはいわゆる法的の機関としておつくになる御意思なのかどうか。
  30. 大平正芳

    大平国務大臣 法的に最終的に決着をつけるのは裁判所でございますけれども、仰せのようにたくさんの案件で、しかも資力の乏しい方々に具体的な処理を事実上やってまいる必要が行政的にもあると思いますので、こういう方法によりましてどれだけの実績があがるか十分見きわめまして、どうしても法的な装いを持った機関にしなければならぬというようなことになりますならば、その場合に考えたいと思いますけれども、私どもといたしましては、行政的な措置で万全な措置を一ぺん講じさせてもらいたい、その成り行き、実績をよく吟味した上でこれを法制化するかどうかというような点は、その際にあらためて考えさしていただきたいと思います。
  31. 中村重光

    中村(重)委員 大臣、いまあなたがお答えになられたのは、これまで特許庁で構想したものがあるのですね。いわゆる発明協会というものがあるのです。この発明協会というものに公告公報を一手に払い下げをやって、これは相当もうかっている機関ですよ。膨大な公告公報をその発明協会に全部払い下げるのですよ。発明協会が今度はそれを全部に売るわけですね。そしてそこでピンハネということばを申し上げると語弊があるかもしれませんけれども、そこでもうかっているのですよ。その発明協会の中に、いわゆる権威のある者を委嘱して、そこであっせん、調停をやらせたい、それは五百万円ぐらいの金がかかるだろう、それはもうかっておるのだから、そのもうかっておる金から使わせようというのであるかもしれません。しかし、そこはつまびらかではないのですが、私は、そういうことではだめなんだということです。やはり紛争調停機関というものは法的に権威あるものにしなければならぬ。そうせぬと、これはいろいろな弊害が出てまいります。ですから、このことはあとでまたお答えを願いますが、ともかくこの紛争調停機関というものは、ひとつ真剣にお考えにならなければいけないと思います。  それからこの新規性調査機関。中小企業、特に個人の発明家というものは、なかなか、どういうものがいままで特許になっておったのか、あるいは拒絶になっておったのか、はたして新規性があるのかどうかということがわからないですよ。これは、大企業は十二分な資本力と技術陣を擁しておりますから、簡単にできます。それができないで非常に困っておる。そこへ今度は公開制度によってますます大きな弊害が出てまいりますから、この新規性調査機関というものは、公開制度に先んじて、先ほど申し上げたように、これを先につくっていくということでなければなりません。だから新規性調査機関というものを、これは法的措置としておやりになるのか、あるいはその他、また財団法人か何か別の方法でお考えになるのか、その点はどのようにお考えになっておられるか。
  32. 荒玉義人

    荒玉政府委員 制度との相関関係は、本委員会でたびたび申し上げたかと思いますが、私自身は必要ではあると思います。しかし、なければ請求制度が成り立たぬというものではございませんという趣旨を申し上げたかと思います。ただ、われわれといたしましても、そういった機関が特に最近民間から強い要望がございます。それで民間の場合ですと、出願がされたのを特許性があるかどうかという判断より、むしろ実際に開発をする場合に、こういった類似のものがあるかどうかということがまず必要になってまいります。そういったものをつくるということは企業それ自身が従来やっておりますけれども、なかなか十分でございません。自分の持っておる分野以外の分野も逐次一つの企業について関心のある情報を集めていくということはますます必要になってまいります。そういった需要を考えまして、われわれといたしましては、本年度いま計画中でございますが、新しい構想でそういった機関を発足いたすべく準備中でございます。中身につきまして、どういうものが一体業界の要望に合ってくるかといったことが先決でございますが、そういった問題を詰めると同時に——機構の問題から申し上げて恐縮でございますが、いまわれわれ事務当局で構想中のことを簡単に申し上げますと、やはり国の機関でなくて、民間の機関を中心にいたしまして私はやっていきたい。といいますのは、国の機関ということになりますと、政府全体の方針はさることながら、特許庁の人員拡充を将来われわれはばかってまいりたいと思いますので、そういった面からの制約、もう一つは、こういった査察関係といいますのは、特許庁的な、いわば行政処分的な考え方でやる必要はないし、むしろきわめて迅速をとうとぶ。特許庁は、御承知のように審査といいますのは、最終的にそれが特許権に該当するかどうかといういわば厳格な手続を経てやるわけでございますが、民間の場合ですと、こういうことをやりたいけれども大体どういったものがあるかという非常に大ざっぱなことを早くやってもらいたい、こういうことでございます。したがいまして、民間の需要と直結した形ということになりますと、やはり民間的な運営が望ましいし、産業界もそういった意味の強い要望がございますから、産業界の協力を得て、役に立つものを民間主導型の形でやっていきたい、かように考えております。
  33. 中村重光

    中村(重)委員 緊急審査制度考えなければならない、昨日もそういう構想を明らかにされましたが、武藤委員指摘のように、どうもこれは汚職の温床になる可能性もあるのではないか。強いものがどんどん緊急審査を要求してくるということになってくると、この出願順序が今度は審査請求順序という形に変わる。緊急審査というものを申し立てると、またそのほうで大混乱をしていくことになるのではないか。私は、こういう緊急審査制度というものはそれなりの問題をはらんでくると思う。ところがやはり緊急審査をしなければならぬという問題も出てくるであろう、こう思うのです。この緊急審査制度ということに対して、もちろんすでにあなたは頭に置いておられると思いますが、その点は昨日の武藤委員指摘もあったわけでございますから、一晩お考えになっておられるので、さらにいい構想が生まれておるのではないかと思いますが、この緊急審査制度をどうお考えになりますか。
  34. 大久保武雄

    ○大久保委員長 なるべく答弁を簡潔に。
  35. 荒玉義人

    荒玉政府委員 緊急審査制度は、御心配な点は、どういう場合にやるか、それが公正を保たれるかどうかという問題だと思います。むしろこれは今後われわれが運用してまいるわけでございますが、公正を保てるということなら実際やるつもりはございません。そのあたりのことをはっきりした基準のもとで、そうして弊害がないという確信のもとに運用基準をつくってやりたい、かように思っております。
  36. 中村重光

    中村(重)委員 ちょうど大蔵大臣もお見えでございますから、大蔵大臣にもお聞き願いたいのですが、先ほど申し上げたように、制度改正があって公開制度というものをやろうというのですね。これは権利を確定する前に一年六カ月で全部公開してしまうのです。そうするとそのアイデアを盗まれるというので、たいへんこれに対する反対があるわけです。そういったような反対に対して、これは弊害があるから反対しているのだから、弊害をなくすることを考えなければならぬ、そのためにはいまの紛争調停機関というものを考えなければならぬ、これは機関をつくるのだから銭が要ることになるのですね。これは行管も実は関係があるのですが、いまの紛争処理、これはどこへつくるかということによって変わってまいりましょうが、これも予算を伴うであろうということ。同時に、日本特許庁で一番欠けているのは、あまりにも審査官労働過重なものだから、勉強をする機会を持てないのですよ。これは外国の審査官の例を調べてみたのですが、まず判例の勉強をさせているのですよ。それから文献も十二分に精査させているのです。それからこの間公聴会で、見学に行った人の話を公述人から御説明を願ったのですが、直ちに必要な文献をさっとベルトコンベアで送ってきて、すぐ見ることができる。それから庁舎も、日本のように二つあって連絡がとれぬような形になっていないんですね。それから審査官は文献でやるのです。ところが現実にはその文献と違ったことが、いわゆる慣用技術という形で現場ではどんどん行なわれている。そういうこともひとつ勉強させなければならぬが、そういう機会はないのですよ。ですから、その慣用技術をどう取り入れていくかということも、それなりの対策を講じなければいかぬ。これも銭が伴う。それから審査官に対してはもっと勉強をさせなければならぬ。外国なんかにやるべきだと私は思う。それから現場にも行って研究をさせる、勉強をさせる。そういうことで文献と現実に把握した技術というものによって審査をなめらかにやっていく、そういうことをやらなければいかぬ。ところが、福田大蔵大臣にこのことを申し上げたら、あなたがけちって金を出さぬのだということになって、前の責任まであなたに負わせることになるから悪いのだけれども、しかしこれは大蔵大臣だからやむを得ないが、あえて甘受してもらわなければならぬのですが、どうも大蔵省が大切な仕事に対して銭を出さないのです。だから六十万件なんという滞貨になっている。発明者は三年も四年もそのまま黙って押えられているのですよ。それで技術のテンポというものは非常に早いでしょう。だから特許してもらったときにはもう間に合わないという状態になるのです。こんなばかな話はないですよ。だからして、ともかくこれは銭を惜しまないでやってもらわなければいかぬ。しかもいままで特許庁は、歳入が歳出を上回っておるのですよ。大平通産大臣は、きのうはもうかっていないとおっしゃったけれども、これはもうかっている。これは通産大臣が間違っているのです。庁舎をつくったから減価償却をしろというのかもしれないけれども、そんなばかな話はない。それならば、公告公報を出すのに減価償却をしますか。今度の公開公報は減価償却をしなければならぬですよ。建物の減価償却まで入れろとおっしゃるなんて、そんなばかなことはない。これはもうかっていることは間違いない。そうして今度はさらに審査請求に対して八千円とろうといっているのですよ。それから登録料を五割上げようといっておるのですよ。私が非常に重大な問題として指摘したいのは、さらに発明者から収奪しようと考えておるということです。大臣、よく聞いてくださいよ。審査請求は、いままで五〇%ぐらいは、この出願に対して審査したら拒絶されておるのですよ。拒絶された人はいままでは出願料の二千円だけでよかったけれども審査請求料を八千円出すのですよ、そして拒絶されるのですよ。そうでしょう。これは収奪じゃありませんか。だからこの審査請求制度というものは金もうけも考えておる。福田大蔵大臣がそういうことをしろと御指示になったのかどうか知りませんけれども、たいへんなこれは悪どいやり方です。こんなばかな話はありません。だから、審査官もどんどんふやしてもらう、それから事務職員を百四十三人、これをけちっているものだから、審査官のワクからこれを貸している。こんな不経済な話はないですよ。だからそういうものをふやしていく、それから文献その他の整備、それから私が申し上げましたいろいろな制度、こういうものをつくらなければだめなんです。そうしなければほんとうのこの審査制度改正の有効な働きはしません。弊害のみが残るということになってまいりますから、そういうことに対して思い切ってこの際お金を出す考え方がおありなのかどうか。その点をひとつあなたからお答えを願って、それから通産大臣に一、二点質問をして、それから法律案の問題に入りますから、その間堀委員に一つ一つ質問をしていただく、私はこういうことにしたいと思いますから、ひとつ簡潔に——簡潔にといっても簡単に言われたんじゃ困るのです。ひとつ誠意のあるととろを……。
  37. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私は日本一のけちんぼうをもって任じておるのであります。またそうなければならぬと思っております。しかし、けちんぼうであるという意味は、必要なところに金を回す、そのために不要不急のものに対してけちんぼうである、こういうことでございます。  いまの特許の問題でありますが、これからの日本の将来ということを考えてみまするときに、やはり日本人の頭脳開発、これは非常に重大な問題になってくると思いますので、この予算措置につきましては、通産省ともよく相談をいたしまして、ひとつ支障のないようにいたしていきたい、かように考えております。いまいろいろの御指摘がありましたが、そういう気持ちであるということだけをひとつ申し上げさせていただきます。
  38. 中村重光

    中村(重)委員 簡潔な答弁ですけれども、その答弁にはすべてが含まっておる、私が指摘いたしましたようなことがなるほどな、そういうことが必要なのだから、そういう制度をつくったら、必要な場合には銭の手当てをしなければならぬ、そういうお気持ちであることには間違いないでしょうね。どうですか。
  39. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 国政全般に最も有効に金を回さなければならぬが、通産省ともよく相談いたしまして、これはどうしてもしなければならぬという支出につきましては、決して消極的な態度はとりませんです。
  40. 中村重光

    中村(重)委員 人事院の総裁も入られたが、人をふやすと同時に、審査官は非常に閉鎖的な仕事ですね、それから独立した権限、そういう職にあるのですから、これは特別職、だから裁判官と同じような特別職手当というもの、いわゆる特別職としての手当制度というものに切りかえていかなければならぬのだと思うのです。西ドイツなんかでも日本の五倍くらい高いのです。銭はけちったわ、環境は悪くしているわ、そうして自殺にまで追い込むようにしているわ、そうして三百三十二件なんというべらぼうな処理を要求しているわ、そういうことではだめなんです。やはりこの際人もふやす、手当も増額をする、こういう形でやってもらわなければならぬと思います。  なお、通産大臣、この実用新案の問題は再検討しなければならぬ——これもやめるといったらたいへんな反対がありますが、かといって、実用新案は十年間、西ドイツは無審査権利期間三年間、モデルチェンジを保護しなければなりませんから、そういったような期間だけでいいのかどうかということ、むしろアメリカのように、特許と統合するということも考えていいのではないかというようなこと、また現行法を維持していくことが適当なのかどうか。これは意匠もそうなんです。意匠の権利は十五年間ですよ。私は、そういうことがそれほど必要かどうか、勉強不足ですから確信を持っては申し上げません。しかし検討しなければなりません。ですから実用新案の問題、それから意匠登録の問題、商標の問題、これを避けて通ることはできません。したがって抜本改正というようなこと等、これらの問題を十分検討してやらなければならぬ問題だろう。それからPCTに対する参加の問題ですね。これは、このごろ日本が経済的に世界で、自由主義国で二番目ですけれども、どの国にも特許申請をしなければならぬというような、こんないまのようなことではどうにもだめなんです。やはり出願は一国、それから指定を全部要求すればよろしい、こういうことにならなければ、ほんとうの日本が海外経済協力、それから技術協力というものはできない。いまのように技術をどんどん導入する銭を払うというような、そういうことでは世界で二番目の経済力を持っているなんていばれないと私は思う。ですからこのPCTに対する参加、これは当然五年、七年なんて言わないで、すみやかにやらなければならぬと思います。これらの点に対して通産大臣どのようにお考えになるか、ひとつお答えを願いたい。
  41. 大平正芳

    大平国務大臣 実用新案につきましては、いま御指摘のようないろいろな問題がございます。さればこそ審議会におきましてもいろいろな御審議をいただきましたけれども、まだ自信のある御答申をいただくまでに至っていかないのでございまして、十分審議をお願いいたしまして、自信のある答申が得られますならば、この処理考えたいと思います。  それからPCT加盟の問題は、御指摘のように、基本的には賛成でございます。ただ、これの加盟につきまして、これは各界の意見を十分聴取、消化いたしまして、対処せなければならぬと思っておりますが、御指摘のように、基本的には参加の方向で万々の処理をしてまいらなければならぬと考えております。
  42. 中村重光

    中村(重)委員 大蔵大臣人事院総裁も入っていただく時間を合わせて十二時半までということにいたしておりましたが、通産大臣が二十分おくれてこられたために、私の法律案の内容についての質疑の時間をあとに繰り延べなければなりません。堀委員に、いまから私の質問したいことと大体同じであろうと思いますから、バトンタッチをいたしまして、あとで私は質問したいと思います。
  43. 大久保武雄

    ○大久保委員長 堀昌雄君。
  44. 堀昌雄

    ○堀委員 中村委員がすでに質問をいたしておりますが、引き続きお伺いをいたします。  工業所有権制度に関する答申というのが四十三年十一月十一日に出されておりますが、その中でこういうふうに書かれております。「特に技術革新の進展の著しい今日、研究成果たる発明等の内容を迅速に公開しなければならない必要性はますます強まりつつある。しかるに出願の激増、内容の高度化及び審査処理能力の不足により、特許庁における審査処理期間は著しく遅延し、特許実用新案に関しては出願から公告まで三年程度を経過している状態であり、発明等の内容を適時に公開するという工業所有権制度の目的は著しく減殺されている。そのため重複研究、重複投資が行なわれ、国民経済全体からみても大きな損失となっているばかりでなく、それが重要技術である場合には、わが国経済の発展に致命的な悪影響を与えることにもなる。」こう書いてあるわけです。通産大臣に最初にお伺いしたいのは、ここで「国民経済全体から見ても大きな損失となっている」ということを答申が書いております。一体、これを金に評価したら、現在のこの遅延はどのくらいの価格になると思われますか。これは計数的な問題ではありませんが、一体単位は億円の単位なのか、十億円の単位なのか、百億円の単位なのか、あなたはどのくらいの損害が今日審査能力の不足によってもたらされておるとお考えになるか、最初にお答え願いたいのであります。
  45. 大平正芳

    大平国務大臣 きのうもお話がありましたように、技術日本が買っておりますのは二億三千万ドル、日本が輸出をいたしておりますのが二千四百万ドルというような十対一ぐらいのひどいアンバランスの状態にあるという悲しむべき事実が報告されたのでございまして、これは何としてもわが国がいままで模倣技術で今日まで産業の運営をやってまいったわけでございますが、これから自前の技術を身につけて、これをバランスのある状態、さらには日本立場といたしましては、知識、技術を売るというような立場にならなければならぬわけでございますから、せっかくの頭脳の成功というようなものがむなしく眠っているということにおいて生ずる損害というようなものは、はかり知れないものがあるのでございまして、それは一億台とか十億台とかいうような感覚でとらえるには、もっと大きいものがあるのではなかろうかというような感じがいたします。
  46. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの大臣の御答弁で一億台、十億台ではないとなれば、ラウンドは百億台だろうと私も感じるわけでございます。大蔵大臣よろしゅうございますか。要するにいま審査能力が不足しているために、わが国は年間大体、ラウンドナンバーですが、百億なのか、三百億か、五百億かわかりません。まあ百億台の損害があると通産大臣考えているようです。  そこで、もう一つ通産大臣に伺っておきたいのですが、いま審査官審査をいたしておりますね。私一生懸命やってくれていることだと思います。ですから審査官能力は現状ならばこの程度しか処理はできない。審査官にいろいろなメリットを与えたとしても、私は審査官審査能力はこれが大体限界だろうと思いますが、その点通産大臣はいかがでしょうか。
  47. 大平正芳

    大平国務大臣 みんなせっかく一生懸命にやっていただいてこういう処理案件の累増を見ているわけでございまして、能力的な限界というものが如実に事実となってあらわれている。したがって制度改正というようなことに踏み切らざるを得なかったのでございます。
  48. 堀昌雄

    ○堀委員 大蔵大臣、そこで少しこれは具体的に話をいたしませんとおわかりにならないでしょうから。実はまずたくさん残っておりますから、これをはかしたいというためには、審査官をふやさなければ、いま通産大臣お答えになったように限界にきている。じゃこれを能率的にはかしていこうとすれば、当然審査官をふやすということがものごとの筋道として考えられますね。そこで四十年、四十一年、四十二年、四十三年に要求されたのは、四十年が二百三名を要求をいたしまして大蔵省は百四十四名認めた。四十一年二百四十名要求して百三十人しか認めなかった。四十二年、要するに四十三年度のことでございますが、二百四十五名要求して九十九名、半分以下。四十四年度、四十三年に要求したのは二百三名で百一名、こういうことで半分以下とか半分しか大蔵省は認めていないわけですね。大臣は大いにけちだとおっしゃった。私も関西の出身者ですが、けちというのは美徳だとわれわれ考えている。ということは、けちけちするというのはどっかに使うためにけちけちしているのであって、何も使うところがなければけちけちすることはないのですよ。だから私は、国政全般について大蔵大臣がけちけちすることはたいへんけっこうだと思う。しかしそれは、ある一つの目的に向かって使うためだ。その使うことがペイするかどうかということも国家財政的に見たら重要な問題だと思いますね。いま通産大臣が、この損害はどのくらいでしょうかとラウンドナンバーで聞いたら、百億円台だとおっしゃった。毎年百億円ずつ国民的損害が継続しておって、一体職員の二百名を百名に削っているということは、これはロスをふやしているのであって、要するに人件費をけちったために国家的損害、国民的損害を与えている。これでは私は大蔵大臣のおっしゃったけちとは話が違うと思うのですね。どうでしょうか。少なくともこの定員要求に対しては、大蔵省はこの程度は満度に見て、満度に見られてなおかつだめだったら、私どもは通産省にものを言いたいのだけれども、残念ながら、通産省は二百四十五名要求しておる、大蔵省が半分にけちっておるということになって、その結果損害がふえておるというのでは、私もどっちかというと大蔵びいきなんだけれども、大蔵びいきというわけにいかぬようになるわけですね。大臣、この点について、やはり一番の根本は人間なんですよ。この仕事は機械ではできないのです。人間ですね。だから、人間に対しての今後の予算要求については、向こう当分の間、通産省の特許庁の要求だけはひとつ満度に見てもらいたいと思うのです、あなたがほんとうのけちなら。いかがでしょう。
  49. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 各省の要求に対しまして、大蔵省はそれを査定減額をする、こういうことになっておりますが、特許庁の人員につきましては、特に慎重な配慮をしておるのです。ことしあたりも、定員はふやさない、こういうのでありますが、その中において特許庁だけはというか、他にも多少の例外はありますが、特に特許庁におきましては定員の増加を承認をする、こういうことです。  そこで、定員をなぜふやすか、こういうことになりますと、あなたがいま御指摘のような問題があるからなんです。しかし、ただ頭だけをそろえてそれでいいかという問題があるわけなんで、その辺を大蔵省の査定当局は通産省と十分討議し打ち合わせておると思うのです。その意見の合致したところが御指摘のような人員になっている、こういうことなんですが、今後も特許庁仕事の渋滞をなくす、こういう方向で私ども努力はいたしていきますが、そういう事情もあるので、それもひとつ御了承を願います。
  50. 堀昌雄

    ○堀委員 いや、私は一般的にいって行政職員をふやしたらいいということを言っているわけではございません。よろしゅうございますか。国家的な損失が片一方にあるわけですね。現実に起きておる。これはさらに拡大をする傾向にある。さっきからお聞きのように、日本は今後は頭で勝負をする以外に勝負するものはないのですよ。そうでございましょう。労働力はだんだんと完全雇用になってくれば高くなってきます。だから、あと国際競争力のあるのは頭の勝負ですね。頭で勝負するために、ともかく産業に一番関係のあるものは、現実には特許じゃないでしょうか。これは非常に重要です。ですから、今後いまのままでいけば法律を改正してもなおかつ百億円の損失が日本は起こるとするならば、それを最小限に食いとめるために百人や二百人の職員をふやすことは、私はそんなにたいした問題ではないと思います。特に特許庁の場合は、おそらくアメリカでもそうですから日本もそうだと思いますけれども、古い人がかなりやめますから、ある時期に来て増員をしなければたちまち収縮をするようになるのです。だから、一ぺんうんと増員して、いまのたまっておるやつを処理していけるというめどが立ったら、そこで増員をやめたらいいんですよ。とりあえずいま緊急避難的に増員しなければならぬというのが私は現状だと思うのです。どうかその点をひとつよくお考えをいただきたい。これが第一点です。  第二点に、通産省としては特許庁の建物を建てるという計画を立てたわけですね。一体最初に新庁舎の計画を立てたのはいつですか。
  51. 荒玉義人

    荒玉政府委員 話があったのはずいぶん前でございますが、具体的に設計その他の準備段階というのは約三年前と考えます。もちろんいろいろ構想はあったと思いますが、準備段階は三年前からでございます。
  52. 堀昌雄

    ○堀委員 三年前に準備をして、それですでにもう新館が建った、こういうことですね。
  53. 荒玉義人

    荒玉政府委員 いまの準備といいますのは、現在はまだ一期工事が完成しただけでございますから。一期は建っております。
  54. 堀昌雄

    ○堀委員 三年前というと、すでにもう相当な滞貨ができておるわけです。その時期に一体、西ドイツでは今日さっきからお話のあるように、コンベアシステムでコの字型になって、きわめて合理的な施設をつくっておるのを知らなかったわけではないでしょうね。知らなかったのでしょうか。
  55. 荒玉義人

    荒玉政府委員 もちろん西独の建物自身はわかっております。したがいまして、あのあたりに特許庁にふさわしい建物をつくるという当初の構想でスタートいたしたわけでございます。
  56. 堀昌雄

    ○堀委員 通産大臣大蔵大臣、お聞きを願いたいのですが、いま通産省の横に第一期工事ができておるのですが、これは建てても、事実はいまのように合理的な建物にならないようになっておるわけです。よろしゅうございますか。西独方式にはできないのです。コンベアのようなシステムはつくれない。第一、私は特許庁を何も東京のどまん中に建てる必要はないと思うのです。この業務は日常非常にたくさんの人が常時入らなければならぬサービス業務ではないと思います。だから、多少離れたところでもいいから、要するに、交通の便利な離れたところに宿舎を含めて新しくどんと建てたっていいと思うのです。まずそこの角にある特許庁は、りっぱなところにありますから、あれを売却すればかなりの利益も出るでしょう。そこで西独方式の理想的な条件でいまから新しいものを建てるとしたら、特許庁長官、内容、設備を含めて一体幾らかかりますか。
  57. 荒玉義人

    荒玉政府委員 大体現在総定員が千八百名でございます。われわれといたしましてはもちろん今後増員を希望しておりますが、かりに算定といった意味で申し上げますと、千八百人をかりにドイツ並みの施設、たとえば審査官は個室にするとか、あるいは必要な設備を完備するということにしますと、これは日本流の概算でございますが、約百一億程度の試算になるかと思います。
  58. 堀昌雄

    ○堀委員 大蔵大臣通産大臣、よろしゅうございますか、いま一番大事なのは法律改正も皆さん方の考え方としては必要な点があると思うのです。あると思いますが、どうやったって、これはやはり人間が審査をしなければならぬ。これには合理的な背景をつくらなければだめなんですね。少なくとも西ドイツが同じような法律体系をとりながらそういう合理的な体制をしておるならば、西ドイツをGNPで凌駕して、要するに工業生産でも西ドイツを追い抜こうという日本が、一体西ドイツに劣るようなそういう設備でいいかどうか。今日、国家予算から見て、百一億というのは、これは金額としては大きいと思うのです。しかし、これは一ぺん建てればあと三十年くらいいけるものですから、たいした金額ではありません。大蔵大臣、どうですか。ここで通産大臣大蔵大臣も腹をくくってもらいたいと思うのは、私は総理大臣出席を要求したけれども、それはなぜ要求していたかといえば、特許庁というものの位置づけが政府の中にできていないということですよ、はっきり言えば。特許庁長官というのは、きのうも議論がありました、これは人事院総裁にもお聞きを願いたいのでありますけれども、大体最近一年半くらいですね。ところが長官が盛んに見本にしておりますオランダは、現在の特許庁長官はいま何年つとめておりますか。特許庁長官ちょっと答えてください。
  59. 荒玉義人

    荒玉政府委員 残念ながら、オランダの長官が在職何年か、いまのところ存じません。
  60. 堀昌雄

    ○堀委員 あなたのところの工業所有権制度に関する調査団の報告によれば、オランダの現在の長官は、この調査団が行ったときすでに二十年在職をしておる。よろしゅうございますか、オランダの長官は二十年在職しておると報告されておる。アメリカ特許庁長官はそれでは一体何年くらい在職ですか。
  61. 荒玉義人

    荒玉政府委員 最近かわりましたのですが、前のミスター・ブレンナーは、ちょっと正確であるかどうかわかりませんが、ジョンソン政権と運命をともにしておりますので、六年くらいじゃないかと思います。
  62. 堀昌雄

    ○堀委員 六年くらいいるわけです。よろしゅうございますか。第一、特許のような仕事というものは非常に複雑な仕組みですから、そこへ一年半ずつ腰かけに長官が行ったり総務課長が行って、ちょこちょこと何かやろうったって、これはそうはならないですね。やはりここに腰を据えた人間がいて、そしてこれは全部一体で処理をしなければならぬということの一つのあらわれだと私は思っておるわけです。  そこで、実は非常に興味のある問題を私はこの間聞いたわけです。ソ連の保健省の副大臣日本に参りまして、私ずっと案内をして歩きました。厚生省へ行って厚生省の人といろいろ話をしているときに、彼らが非常に驚いたのは、厚生省の大臣をはじめ局長たちに事務官がいる、文官がいるということでありました。ソ連の保健省の職員は全員医師であるということですね。日本の保健行政がうまくいかないのはここに問題があるわけです。大蔵大臣、あなたもそのうちに、まあ大平さんも総理大臣になる可能性のある人だから、これはひとつ十分腹に入れておいてもらいたい。日本の厚生行政をまともにしようと思ったら、厚生大臣以下全職員がもし医者であるならば今日のような問題は起きていないであろうということをソ連の人が言うぐらいだから、間違いない。  そこで、特許庁の問題について、さっき中村委員が触れましたけれども特許庁長官技術者にするかどうかは、これは問題がありましょう。オランダの場合は特許庁長官というのは女王が任命しています。アメリカ長官というのは上院の推薦によって大統領が任命しています。よろしゅうございますか、いかに特許庁長官というものが高い位置を立証されているかということがわかりますね。そういう高い位置にある者の下には技術を担当する次長がずらっとそろっておる。こういう体制をまずつくらなければ、私は特許行政というものは十分いかないと思うのです。そういう体制になっていたら、いまのように職員全体が反対をしておるというようなときに、一部の事務機構、通産省から出向したようなかっこうで来たような事務機構の諸君だけがものを考えて新しい行政の方向を出そうということに私はならぬと思う。特許庁における政策を決定するのは、上部にくる文官であるところの通産省出向者がやるのではなくて、特許庁にいる技術者全体が考える方向をとることなくして、私は問題の解決にならぬと思うのです。これは重要な問題です。これは行管長官との関係、あるいは官房長官が入られてからもう一ぺんやらなければならぬ問題ですが、重要な問題です。  そこで、いまの特許庁の問題でどうしてもやっておかなければならぬ問題は、さっき申し上げたように、そういう機構を含めた施設をちゃんとせねばならぬということだと思うのです。大蔵大臣、百一億ですがね。しかし、いまのあそこの特許庁のあの土地、あれは特許庁長官、坪幾らぐらいしますか。
  63. 荒玉義人

    荒玉政府委員 残念ながら存じません。
  64. 堀昌雄

    ○堀委員 あそこだったら、どうでしょうね、坪当たり百万円ぐらいはするのじゃないですか。もっとしますかな。(「もっとするよ」と呼ぶ者あり)もっとするか。そこで何坪ぐらいありますか、あの土地面積は。
  65. 荒玉義人

    荒玉政府委員 いまの古い庁舎は三千坪でございます。
  66. 堀昌雄

    ○堀委員 まあ百万じゃないでしょうな。二百万でしょうな。そうすると、かりに二百万円として三千坪だというと、売ったら幾らですか、長官
  67. 荒玉義人

    荒玉政府委員 六十億でございます。
  68. 堀昌雄

    ○堀委員 どうでしょう、大蔵大臣、まるまる百億出せと言うのじゃないですよ。六十億は見返りがありますからね。ひとつぜひ、いまのはいろいろあれですが、まじめな問題として、いまのドイツ式のコの字型になって、コンベアベルトがついて、審査官一人が独立した部屋で仕事が落ちついてできるような条件、当然のことですね、非常に重要な仕事をやっているわけですから。特にこの仕事が私は問題があると思うのですよ。私は人間が働くインセンティブがあるのは一体何だろうか、こう考えますと、一番大きなインセンティブは、新しくものをつくり出すということが働くということの中の最大のインセンティブだと思っているのです。農民がともかくあの辛酸をなめながら要するに米をつくり農産物をつくっておりますのは、ただ収入を得たいだけじゃないと思うのですよ。やはりものをまいて、そこから実が実るという姿の中に喜びがあり、それがインセンティブになって農民は働いている。もちろん収入もありますけれどもね。あらゆる仕事というのはやはりそういうつくり出す喜びがあるということが非常に重要であります。しかし、いまの審査官仕事というのは何かといえば、学校の先生が答案を採点しているにすぎないわけですね、現実の問題としては。そこにはつくり出すものも何もないわけです。同じような極端な例をあげれば、単純な、きわめて単純な頭脳の反復作業をやらしておるわけですね。私はこういうようなことを聞いたことがあるのですが、一番重い刑罰というのは何だといえば、要するに片一方にあるれんがを片一方へ一回運ばせる、その運んだれんがをまたこっちへ運ばせる、その運んだれんがをまたあっちへ運ばせる、何の目的もないことを継続して反復やらせるというのは最大の刑罰だということを私は聞いたことがあるのです。ところが、それとは違いますけれども、やっている仕事は反復して、きまったことだけを資料を追うて取り寄せて、これがどうだったかこうだったか、どれが新しか古いかということを調べるだけが業務であるという仕事に、高度の教育を受けた技術者が実はまた必要なわけですね。しかしその技術者がその他の世界に行けばものをつくり出す、オリジナルにつくり出す仕事にすべての者が参加しているわけですよ。オリジナルにつくり出すものに参加して、人間としての喜びを感じながら、仕事にインセンティブを与えながらやっておる諸君は、高い給与で働いておる。そのようなおもしろくない仕事を徹底してやらされている者が低い給与で働かなければいかぬということになれば、資本主義社会の今日、そんなところへはやがてはだれ一人、人が来なくなりますよ。これは常識だと思いますが、通産大臣どうでしょうか。
  69. 大平正芳

    大平国務大臣 どのようにお答えしたらいいのか、その特許庁に誇りを持って働いていてくれる方々ばかりだと私は思いますけれども、あなたが御指摘のように比較的反復的な仕事、創造的な仕事でないということからくる心理的な影響というようなものは十分頭に置いて、執務管理に当たらなければならぬと思います。
  70. 堀昌雄

    ○堀委員 人事院総裁にお伺いしたいのは、人事院でいろいろな給与制度をお考えになるときには、確かに他との権衡もあります。他との権衡もありますけれども、その職種の内容と、その職種が果たす国家的利益、国民に対する奉仕の内容、こういうものが基準にならないといけないのじゃないかと私は思うのです。特にそれは長期的な展望を持ってやりませんと、御承知のように審査官というのは、なって、それじゃあしたから仕事ができるかというと、そうではございません。少なくとも三年なり四年なりの経験を積まなければなかなか仕事ができない。そうすれば計画は少なくとも五、六年早く考えないと、いよいよどうにもならなくなって給与改定をやったのではもう間に合わないわけですね。少なくとも私は、今日ならまだ審査官にいい条件があればなってもいいという方はあると思うのです。それはどこに問題があるかといえば、審査官を何年かやられた経験を将来生かしてまた他でも働ける余地があるという問題に私は実はつなぎたいと思うのです。審査官だけではこれは無理だと思いますからね。一部の方は、審査官の中から、次長制をつくって、次長になってもらうということも必要だと思います。これは給与体系の問題として考えられることだと思いますけれどもね。だから一部はそうでしょうけれども、次長というのは何十人というわけにはまいりませんから、一度に百人なり二百人なり審査官が入られて、しかし最終的に部長なり次長に一人か二人なられるにしても、あとの方は永久に審査官でおるわけにもいかないでしょう。そういう方は適当な時期に新陳代謝して企業その他においでになって、その能力を生かして働いていただければたいへんけっこうだと思いますけれども、少なくともそのバランスのとれた条件をいまのうちに考えておかなければいけないのじゃないか、私はこう考えておるわけです。この点についての人事院の総裁のお考えを承りたい。
  71. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 大体お話しの根本の御趣旨は、私全く同感であります。ただ、ある時期に企業その他へ転出されるというお話があったのですが、これは天下りの名において非常に苦労しておりますので、そこだけはのけて、大体基本的なお考えには同感で、さればこそ、かねがね局長からもお答え申し上げたと思いますけれども、昭和三十五年に調整額といいますか、客観的にはおそらくわずかであるとごらんになりましょうけれども、われわれの事務的な感覚からいえば大体四%だろうというところを、倍の八%にした、その他級別定数などにおいても年々考慮しているというような意味では、大体御趣旨に沿った努力はしておるつもりでございます。
  72. 堀昌雄

    ○堀委員 大蔵大臣、これは人事院総裁にも関係ありますが、あなたのほうにもまた関係がある。要するに、制度を抜本的に変えようというなら、やはりそういう内容ももう少し抜本的に考えないと、手おくれになるだろう。ほんとうに私心配しておるわけです。ここで勝負しなければ、将来勝負するところはない。日本は資源はないのですから、われわれの労働力と頭脳をもって勝負する以外に国際競争に太刀打ちできません。せっかく今日までは進歩してきました。これは外国のロイアルティーで勝負してきたわけですね。今後は外国だってそう簡単にロイアルティーを売ってくれるかどうかわかりません、強大な日本は彼らにとって強敵になってきているわけですから。そうなれば、日本で独自に開発しなければなりません。独自に開発するのに何年もかかる。私は、今度の新制度になったら一体何年に短縮できるのか、大きな疑問を持っているのです。ここで何年になるかといってもわからないことでしょうから、そういうことは聞きませんけれども、しかし、できるだけ短縮するための努力が金によって解決がつく、要するに費用によって解決がつく部分は、大蔵大臣、これは真剣に費用で考えなければいかぬ、人的部分に対しても、施設に対しても、機構に対しても。どうですか、大蔵大臣
  73. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、特許仕事は非常に大事な仕事でありますし、また日本の今後の頭脳開発という問題とも大きくつながっている問題ですから、財政当局としては積極的に対処いたします。
  74. 堀昌雄

    ○堀委員 大蔵大臣、さっきもあれしましたが、具体的にちょっと歳入、歳出のギャップを申し上げますと、三十九年二億八千百万円、四十年七千百万円、四十一年六千七百万円、四十二年六千九百万円、四十三年一億二千万円、四十四年二億六千八百万円、これだけ実は歳入超になっているんですよ、このいまの事態で。よろしゅうございますか、少なくとも来年からは歳入超じゃなくて、二十億やそこらの歳出超になるようにしてもらわなければ困る、全体のいまの問題から見まして。ですから、建物もいまから計画をして準備するとしても、一年ではできないでしょうから、二年なりいろいろな計画でしょうから、どうか建物を整備して、通産省で考えて、そして大蔵省に協力を求める。それから人事院のほうでは、ひとつ特別な給与体制を、思い切って、事務ペースの話じゃなくて、政治ベースの話として出してもらって、これを大蔵大臣と協議してもらう。今日もしここで手間どっていたら、先へいって必ず皆さん後悔するときがあるだろうと思う。いま日本はたいへんいい状態にありますが、いまわれわれがやっておることは、歴史的に必ずわれわれの世代のものが評価をされる時期がくると思う。あのときああしておくべきだったにもかかわらず、あのときの関係者は一体何をしておったのか、あのときの通産大臣は何をしておったのか、大蔵大臣は何をしておったのか、議会は一体何をしておったのかという責任を後代の国民にわれわれは問われる立場に現在立っておるので、その点について最後にもう一言ずつ、今後のあり方について大蔵大臣人事院総裁からお答えをいただきたいと思います。それで御退席いただいてけっこうです。
  75. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 特許問題につきましては、今後といえども前向き、積極的に対処いたします。
  76. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 先ほど申しましたような趣旨に基づきまして、今後もさらにいろいろと考慮、努力をいたしてまいりたいと思います。
  77. 堀昌雄

    ○堀委員 いろいろ中身の問題は、きょうは時間がありませんので、またゆっくりお越しいただいてやりますから、どうぞお二人は御退席ください。  官房長官、実はきょうは総理大臣に御出席をいただいてと思ったのですが、総理はなかなか御出席がいただけない。そこで官房長官に、私は総理大臣のかわりにいろいろとお伺いをしたりします。ただ、むずかしいことは聞きません。お答えいただける範囲のことしか聞きませんから、その点は御安心ください。  そこで、実はこういう問題が一つあるのです。官房長官も御存じだろうと思うのですけれども、ロシアにパブロフという有名な生理学者がありました。この人が、犬の胃に穴をあけて、ゴム管で外へ引き出した。そしてうまいごちそうをその犬の前に置いて、かねをかんかんかんと鳴らすのです。そうすると、犬はそのうまいごちそうを食べようと思って、そこで胃液が出るわけですね。われわれでも腹が減っているときにうまいものがあれば、つばが出ますね。胃液が出てくる。ところが、そうやっているうちに、今度はごちそうを出さなくても、かねだけかんかんかんとやりますと、胃液が出てくることになる。これを生理学上有名な条件反射といっておるわけです。生物というものはそういう性格を持っておる。ということは何を意味しておるかといいますと、自分たちが好ましいことだというふうに考えた場合には、全体がそれに反応するように実は人間のからだはなっているわけです。逆に、いやなことをさせながら今度はどちらでもたたきますね。そうすると、しまいには、どらをたたくだけで胃液の分泌が出ているやつまでとまってしまう。そのくらい生物というものは精神的に敏感に働く動物なんですね。  今度特許法改正というのが行なわれるのですが、その特許法改正については、実はこれの当事者である審査官の大部分の諸君が強く反対しておる。しかし自民党と特許庁に出向しておる通産省の方とは、どうしてもこれはやるんだということなんです、残念ながら。私どもいろいろ話を聞いておりますが、私が非常に心配するのは、実際の実務をする人がいやがる仕事を、いやがる改正を無理に押しつけて、条件反射の生理学からいうと、能率は上がるんじゃなくて下がる。能率を上げたいと思って制度改正する。しかし中の人が反対をして、よそからちょいちょい一年半ずつぐらい来る人だけの案で、いうなれば机上のプランで問題が処理されようとしているということがいま起きようとしているのです。これはたいへん比喩的な話なんですけれども、しかし、ものごととしてはそういうようにいまなっていると思うのです。たいへんむずかしい問題だと思うのです。官房長官、どうお考えになりますか。
  78. 保利茂

    ○保利国務大臣 たいへんお教えをいただきましたけれども、なるほど私ども生物といいますか、私どもお互いにそうだと思いますが、愉快なときはからだ全体が軽くなる、不愉快なときには重くなる。条件反射というのでございましょう、それはよくわかります。しかし、この特許法改正は、私は内容は、あなたからもお教えをいただくぐらいのことでございますから、わかりませんけれども通産大臣も相当自信を持って、何せ、いますべて切りかえるというか改革というか、とにかくものごとの改正に対しては相当勇気の要る時代じゃないかと思うのでございます。そういう一環としてやっぱりお考えになったものだと思いますから、私はお説はお説として十分わかりますけれども、この特許法改正案に御高説が直ちにマッチするかどうか、これは私、しばらく留保させていただきます。
  79. 堀昌雄

    ○堀委員 これは、あなたも政府の大番頭だから、まさか政府の機構がやっていることをうまくないと言いにくいと思うのですね。それはわかります。しかし私の言うことはわかりますでしょう。  そこで、それがおわかりいただければ、この特許庁のあり方というものを少し考えてみる必要があるんじゃないだろうか。というのは、さっきからずっと話をしておるのですが、日本は今後技術革新をしながら技術で世界の産業と貿易上で競争しなければならぬ、こういうところへきていると思います。その場合に、技術を新たに占有権を認めるとかいろいろなことをする非常に重要な制度特許制度でございますから、この特許制度がスムーズに運営されるのでなければ日本は今後非常に損になりますね。確かに損になります。そうしたときに、一体特許庁というのはいまのような姿でいいかどうかという点に私は実は非常に疑問があるのです。たとえば北海道の開発というのはたいへん重要なことだと思います。思いますが、しかし一体北海道の開発といまの特許庁の置かれている状態を考えますと、北海道開発というのは日本の国内の一部の問題ですね。特許庁の問題というのは、日本の全産業、日本の国全体の問題ですね。私は、北海道開発庁と特許庁というのは、まあ特許庁が上だとは言わないにしても、少なくとも同列のものでなければならぬ、こう思いますが、官房長官、どうでしょうか。
  80. 保利茂

    ○保利国務大臣 これはもののとりょうだと思います。北海道開発庁が設けられたその趣意は、それなりに高い意義があると思うわけでございます。特許行政が時代に即応して充実されていかなければならぬということは、私どももしろうとながらよくわかります。と申しますのは、日本特許制度がそれなりに日本の産業発展のために大きな貢献をしてきておる。いよいよ技術革新時代の今日にあたって特許行政重要性ということは、これはよくわかるわけでございます。しかし、機構を、肩をどの辺に並べればそれでいいという考えも即断はできないんじゃないか。ただしかし政府として考えなければならぬことは、いまだんだん御指摘のように、特許制度の持つ産業界における役割り、そういうものを十分しっかり認識して行政を充実していかなければならぬのじゃないかというような考えは全然同感に存じます。
  81. 堀昌雄

    ○堀委員 実は私、いま北海道開発庁と並べましたのは、北海道開発庁でもいいし、科学技術庁でもいいのですけれども、要するに、特許庁という役所は、通産省の一部局であるにしてはもう今日ちょっと重要性が大きくなり過ぎたという感じがしておるのです。中小企業庁というなら、これは当然通産省プロパーの部局だと私は思うのです。しかし特許行政というものは必ずしも通産行政とは直接の関係はないのですね。独立した権能、機能が、審判その他についてもかなり与えられておるわけです。ですから、この際、これは今後の課題でありますけれども、ひとつ特許庁を独立した庁として内閣に設けて、特許庁長官は国務大臣をもって充てるという程度の発想があってしかるべきではないか。科学技術長官なり北海道開発庁長官なり、これと同様に特許庁長官を国務大臣に持っていく。そうなりましたら、特許庁というものに対する全体の姿勢も変わり、そうして同時にいろいろな人的な問題についても、そこで骨を埋める人たち特許庁でずっと仕事をしていくという形になってきて、今回のような、全職員反対をしておるにもかかわらず、要するに上部機構が通産省から来ておるために、その人たちだけの考えで問題を処理されたりするようなことがなくなるんじゃないだろうか。さっき私、官房長官がおいでになる前にちょっと話をしておったのですが、日本で、行政の世界で非常に問題が一つあるのは、文官優位といいますか、要するに、技術者が正当な評価がされていないということです。今日、産業界では情勢が非常に変わってきました。これまでは確かに経済学部出身者がほとんど主要なポストを占めておりましたけれども、今日、相当な大会社における社長は、エンジニア出身者が社長になっておる例が非常にふえてまいりました。同様に、政府の官庁機構の中でも、そういう技術的なものが主たる部分を占める部署は技術者がもっと優遇されて、その技術者の声がもっと生かされてくるのでなければ、今後の日本の近代的な行政というものは十分いかないんじゃないか、こういう考えを持っておるのです。基本的な考え方ですが、官房長官いかがですか。
  82. 保利茂

    ○保利国務大臣 堀さんの広い分野にわたっていろいろな構想、提案が行なわれる、これもその一つだと思います。その御構想は御構想なりに、たいへんに傾聴に値することだと私も思います。しかし、これは行政機構の問題でございますから、行政管理庁という主務官庁もありますし、通産大臣も、特許行政の充実については力を入れておられますから、それらといまの御構想とあわせまして、よくひとつ検討さしていただくということに御理解を願いたいと思います。
  83. 堀昌雄

    ○堀委員 後刻行政管理庁長官にも入っていただくのですが、しかし行政管理庁長官とか通産大臣とかいう立場を離れて、きょう総理に出席を願いたかったわけですから、総理に私の考えをお伝えを願いたいわけです。要するに、内閣の責任において、特許庁をあるべき特許庁にするためにはどうしたらいいのかという、やはりここではっきりしたビジョンをかいていただく必要があるのではないかと私は思うのです。あるべき特許庁という機構ですね、人的な仕組み、それから建物のあり方。長官、お入りになる前に、大蔵大臣にも皆さんにもお願いしたのですが、新しい庁舎をどこか離れたところでいいから十分な、西ドイツがやっているような——よその国でやれることですからこっちもやれる。費用も百億くらいだ。すぐそこの庁舎を売れば六十億も金が出るというようなお話もしたのですが、そういう建物から、人的な条件、給与の体系、あらゆるものを、あるべき特許庁というのはどういうものかということを内閣で一ぺんお考えを願いたいと思うのです。そうしてそのあるべき特許庁として、国務大臣のいる特許庁、それから技術者が次長その他で優遇をされる特許庁、そうして同時に建物は整備をされ、それからそういう審査官が特別職の扱いを受け——この審査官というのは非常にたいへんな仕事をしておられますから、私はこういう提案があるのです。普通の公務員は十二カ月勤務するわけですが、審査官はやはり海外の技術なりその他も調べなければなりませんから、少なくとも一年十二カ月のうち二カ月ぐらいは、あるいは国内に留学するなり、あるいは海外に留学をするなりして、新しい技術その他について十分研修を積んでもらう時間を与える。こういう形にして、審査官になることは自分たちとしても非常に名誉である、そして待遇も十分である、研究の機会も与えられる。こういう、少なくとも進んで技術出身者が審査官になろうではないか、審査官になることが多少とも狭き門になる程度待遇考えていただかなければ、要するになり手がないから、門戸を広げて、だれでも来てくださいというようなことにしておいたのでは、日本特許行政というものは、将来に非常に大きな禍根を残すことになる、こう私は考えるわけです。官房長官、いかがでございましょうか。
  84. 保利茂

    ○保利国務大臣 この委員会で御構想を承りましたことは総理にもお伝えいたしておきます。後刻また行管長官も御出席であれば、議題に供し得るように、慎重に検討ができるように、十分御論議を願えればたいへんけっこうだと思います。  ただいまの審査官の、そういうふうにいけば全く理想的なことでございましょうし、そういう点は聞き流しでなしに、やはり考えていかなければならないかと思っております。
  85. 堀昌雄

    ○堀委員 通産大臣、後半のこと、いまでも私はできると思うのです。審査官は、さっき私大蔵大臣に申し上げたように、十分に、二百名要求したのを百名に削らないで二百名にしてもらえば、十人でも二十人でもそういうふうに毎年何人かが行けるということで、現在でもその程度の優遇措置ということは私はそんなに機構上の問題でもなしに行ない得ることだと思いますが、通産大臣どうでしょうか。
  86. 大平正芳

    大平国務大臣 事実について検討させていただきます。
  87. 堀昌雄

    ○堀委員 時間があと十分ありますけれども、大体私の官房長官にお願いする点は以上でございますから、どうかひとつ、総理大臣出席ではありませんでしたが、総理ともお話しいただき、あとで行管長官等にも申し上げますが、一回この問題を閣議の議題として、特許庁のあるべき姿ということを閣議の議題にしていただきたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。
  88. 保利茂

    ○保利国務大臣 そういうふうにいたしましょう。
  89. 堀昌雄

    ○堀委員 午前中の質疑はこれで終わります。午後また質疑を行ないます。
  90. 大久保武雄

    ○大久保委員長 午後二時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。    午後一時二十二分休憩      ————◇—————    午後二時四十二分開議
  91. 大久保武雄

    ○大久保委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。堀昌雄君。
  92. 堀昌雄

    ○堀委員 行政管理庁長官にお伺いをいたします。午前中の委員会で同僚の中村委員からお伺いをいたしましたが、私は午前中も官房長官以下の皆さんに少しお話しを申し上げたわけですが、所管の行政管理庁長官に少し私の考えを申し上げて、御意見を承りたいと思います。  午前中の委員会で、すでに長官特許行政重要性については十分御認識をいただいておると私は判断いたしております。  そこで、今後のあるべき特許行政なり特許庁のあり方ということについて、実は私少し各国の情勢を調べてみたわけでありますけれどもアメリカ特許庁の場合には、特許庁長官は上院の推薦のもとに大統領がこれを任命する、このようになっております。それから西ドイツの場合には、連邦の司法省の中に実は特許庁が置かれております。オランダではやはり財務省ですかの中に置かれておりますけれども、その長官は女王の任命になっておる。ドイツの場合には、御承知のように特許裁判所その他司法的な部分に非常に比重がかかっておりますから、ある一つの行き方だと考えられますし、アメリカなりオランダの場合には、少なくともその国の最高の責任者が任命をするということから見ましても、特許庁長官の位置というものはきわめて高い位置である、こういうふうに認識をいたしておるわけであります。ところが、現在の特許庁長官というのは、行管長官も御存じかと思いますけれども、通産省の一部局でございますために、通産省の職員が一般的異動に基づいて特許庁長官になる。長官になりましても、大体最近は一年半程度の在任で次々と人がかわっておるというのが実情でございます。ところが、たとえばオランダの特許庁長官のごときは二十年在職をしておる、こういうことでございますし、アメリカも六年くらいはやはり在職をしておる、大体大統領の任期に伴っておるというような感じがしておるわけであります。  そこで私は、特許行政を充実させるためには、まず第一点としては、特許庁というものの仕組みを再検討してみる必要はないのか、こう考えておるわけです。そこで、午前中も申し上げたのでありますけれども、ひとつ特許庁を通産省から分離をいたしまして、内閣に直属する特許庁をまず設けて、科学技術庁と同じように特許庁長官には国務大臣をもって充てる、そうしてちょっと午前中も出ましたけれども、次長制のようなものを設けて、仕事がほとんど技術的な部分でございますから、そういう技術の出身者をもって次長以下の主要スタッフを充てる。こういうことになりますと、非常に行政上もスムースな運営が行なわれるし、長期的展望に立っていろいろと政策その他の立案等についても時宜に適した処置ができるのではないだろうか、こういうふうに考えて、実は官房長官にもこれを閣議の議題にしていただきたいというふうにもお願いしたわけでございますが、行管長官としてはどのようにお考えでございましょうか。
  93. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答え申し上げます。  外国のことは存じませんが、特許行政なるものの重要性、今日日本は世界が驚く経済の発展といわれておりますけれども、これとても特許庁だけのせいではむろんございませんが、発明、考案について百年間の先輩の関心が高かったせいでもあろうかというふうに通俗に受けとめるわけであります。  戦前から特許庁長官というものは相当高い位置づけをされて、評価をされておった。戦後の今日におきましても、ほぼ同様の趣旨が一応は貫かれていると思います。例示されました外国ほどではないにいたしましても、通産省におきましても、まあ次官か特許庁長官かというぐらいには評価されておると私は理解いたしております。そこで、いま通産省の外局という形でございますものを内閣に置いたらどうかという一つの御提案でございますが、一つの考え方ではあろうかとは私も理解できます。それからさらに一種の司法機関的な機能が中心機能として受けとめられる、その意味で何か人事についても特別の考慮をしたらどうだ、公正取引委員会ないしは国家公安委員会というがごとき性格もなしとしない、そういう意味でのまた御提案でもあったかと思いますが、これも一つの検討課題とは存じます。ただ、直ちに検討して御意向に具体的に沿い得るのだということまでは申し上げかねますけれども、一つの課題であると受けとめておる次第でございます。
  94. 堀昌雄

    ○堀委員 もちろん、いまある一つの方向を申し上げただけでありますから、ひとつこれは閣議の議題として、あるべき将来の——日本の将来はいまお話しのようにまさに科学技術の競争でございますから、これをきちんとしませんと、たいへんな損失を国全体としても国民全体としても受けるわけでありますから、それは私はやはり今日の時点に立って、少なくとも十年なり十五年なりの将来を展望して、その時期においてものをやるためには今日からある程度のビジョンを描いていきませんと、そのときになって急にやろうと思っても、こういう機構なり人間なりは一日や一年でできるわけではございませんから、その点私は、これまでややこの特許庁のあり方なり特許行政の位置づけなりについて論議が不十分であったのではないかという感じがいまいたしておるわけです。そのことが今日六十万件にのぼるところの出願が停滞しておるということを招いた最大原因であろう。やはり一番肝心なのは、私どもは、ものごとをいたします場合には、まず姿勢が大事ではないのか。姿勢を整えずして、小手先の技術だけでものを処理しようとしたら、これはなかなか根本的な解決にならない。これが私はものごとの筋道ではないか、こう考えるわけであります。  そこで、実は先ほど大蔵大臣、官房長官通産大臣人事院総裁と皆さんいらっしゃるところで、ひとつぜひこれを閣議の議題にしていただいて、あるべき特許庁特許行政、それは機構なり建物なり人間のあり方なり、給与のあり方なり、待遇、いろんなものを含めて、そういうビジョンをかいていただいて、その中で内閣としての意思を方向づけていただきたい。こういう提案をしたわけでございます。官房長官もお約束をいただきましたので、その際は、行政管理庁としてもぜひひとつ前向きに新しい考え方というものを出していただきたいと思うのですが、それはいま私が申し上げたとおりである必要はちっともございません。行政管理庁として、あるべき特許庁というのはどういうふうにあるべきか、それと司法との関係はいかにあるべきか、それはすべてに関連のあることでございますから、それらを含めてひとつ御検討をいただいて、閣議の際に十分皆さんに御理解がいただけるような形でひとつ提案をしていただけないだろうか、こう思うわけでありますが、いかがでございましょうか。
  95. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 問題に関しての意識は堀さんと似たような意識は持っているつもりでございます。行管のほうから提案するということはお約束は申し上げませんが、いずれは通産大臣から問題提起があろうかと思います。そういう場合に、よく御相談も申し上げたい、かように存じます。
  96. 堀昌雄

    ○堀委員 実はこれは、機構なり人員の問題なり、いろいろ関係がございます。けさもすでにお話がございましたが、これは人間がやらなければなりません。機械でやれることなら非常に簡単でございますけれども、どうしても人間がやらなければなりません。その人間というのは、ある程度技術に精通した者がやらなければなりません。そうすると、人員をふやすといいましても、定員がふえたから直ちに人があるかというと、そうはいかないという問題もございます。ですから、ここはやはりかなり長期的な展望に立って、待遇改善なり給与の状態なり、あらゆるものを総合的にして、そうしてこれだけの条件が整えばこういう人間を定員としたときには定員が直ちに充足できるということにならなければ、ただ単に定員だけを切り離して議論のできない官庁でもございますから、どうかひとつ、そういうもろもろの面について十分配慮をいただいて、私は行政管理庁は行政管理庁としてひとつビジョンをお考えいただくことはきわめて重要だと思います。そのビジョンを、行政管理庁、あるいは通産省でもつくっていただいて、そういうビジョン等を合わせて、要するにあるべき特許行政において瑕疵のない行政が運営されるようになるということが、私は行政府としての国民に対する責任ではないか、こう考えますので、ぜひひとつその点を十分お考えを願うということを要望いたしまして、長官に対する質問を終わります。  最初に、少しアメリカのことを伺いたいのですが、実はアメリカではこの前やはり日本と非常に似たような決算改正案が出されて、この中には多少違う要素もあったようであります。先願に関する問題等、日本とは多少違う問題もあったようでありますけれども、おおむね似たような法案が提出をされて、議会で否決をされた、こういうことでありますが、アメリカの議会で否決をされた状態というのは、一体どういうところがどういうことによって否決をされたのか、最初に長官から承りたいと思います。
  97. 荒玉義人

    荒玉政府委員 アメリカ国会審議、詳細に存じませんが、議論の前提から申し上げますと、アメリカの場合は、現在審査が約二年、これは一般でございます。特殊な部面は三年だといっておりますが、そういった事態ならば、特に現在われわれが考えておりますような、あるいは公開制度審査請求制度ということはむしろ不必要ではないかというふうな議論が多数だと私は聞いております。
  98. 堀昌雄

    ○堀委員 アメリカでは大体二年でできる。日本ではいま非常にかかるわけですね。この前もたしかだれか質問があったと思うのですけれども、それじゃ、アメリカはいま急に二年になったんでしょうか。かつてはもっと長い時期があったんじゃないでしょうか。
  99. 荒玉義人

    荒玉政府委員 アメリカの場合の審査期間がどの程度あったか、かりにわれわれが現在年度末の未処理案件を当該年度の処理期間で割って幾ら、こういうことしか可能ではないかと思いますが、大体アメリカの場合は、この前からたびたび議論になっておりますが、その前は大体いまの二年に該当する期間が半年ないし七、八カ月、そのくらいの期間だと思います。それを新しいやり方、これはこの前からしばしば御説明しておりますが、そういうことによって、半年以上を短縮した、こういう状況でございます。
  100. 堀昌雄

    ○堀委員 要するに、私はアメリカで可能なことは日本で不可能だということはないんじゃないか。確かに案件その他の数の相違、内容の相違、いろいろな問題があると思うのですけれども、もしかりに現在の未処理案件を横にさっとのけて、そうして今後出てまいります案件に対処すると考えたならば、私は、いまの滞貨があるからこれは一つ問題がありますが、かりに滞貨がないということで考えるならば、人員を増加し、いろいろなシステムを補強することによって、大体二年半くらいで処理が可能なのではないだろうか、こう私は思いますけれども長官、どうでございましょうか。
  101. 荒玉義人

    荒玉政府委員 絶対的に不可能だということはないと思います。御承知のように、いまの状態は、出願を一〇〇といたしますと、年度によって違いますが、最近同じ傾向でございますが、約六割七、八分、七割はなかなかいかない、三割以上はキャリーオーバー、こういうことでございます。したがいまして、かりに審査能力をあげる——これは何といっても、先ほどから言いますように、機械化といいましても、当分機械検索が実用になる時期はまだ先だと思います。そういうことになりますれば、必要な人員を充足して処理をあげるということは、私は絶対的に不可能だということを申し上げているわけではございません。ただ現実の問題といたしまして、たとえばことし七十四名採用しておりますが、年々むずかしくなってまいります。もちろん総定員、定員全体と同時に、やはりそういった採用状況から考えますと、この手段だけで無限に問題を解決するというわけにもまいらないかと思います。そういう意味では、実際上はどうしても一つの限界としては、恐縮でございますが、そういう問題があります。一方、御承知のように、審査件数は毎年資料増その他によって長期的にはダウンするわけでございます。そういった意味で実際上の見地から立ちますと、そういった人間だけであらゆる問題が解決するということは私不可能だとは思いませんが、実際上困難を伴ってまいる、かように思っております。
  102. 堀昌雄

    ○堀委員 ですから肝心なことは、不可能でないということは可能である、可能であるけれども、簡単にいかない、大体こういうことですね。ここに私がいまお伺いをしておることは、これは発明者権利にかかわる問題ですから、発明者権利にかかわる問題を行政能力の不足のために、要するに権利を縮小するということになっていいかどうかということを、実はこれから伺いたいわけです。ですから、行政能力としては要するに可能性はある。ただ国がそれをしないというだけであって、可能性があることをしない。それは私に言わせれば、本来的には国側における責任なのではないか。そういう国側における責任を早期公開という形で発明者側に転嫁をして、発明者権利が少なくとも縮小される。本来もし順調な審査が行なわれるということならば、いまのアメリカのように、もしかりにこれを平均して二年半といたしましても、そういう審査が行なわれるというペースになるならば、出願公告というものは一年半以内に行なえるということになるのではないか、こう思いますが、長官いかがですか。
  103. 荒玉義人

    荒玉政府委員 アメリカの場合は御承知のように異議制度がございませんから、アメリカの場合は二年といえば二年で公開になるということでございます。
  104. 堀昌雄

    ○堀委員 いや、日本アメリカのように二年なり二年半ということで審査ができる、期間だけを見て、ということになれば、少なくとも出願公告ができる時期は一年半、日本の場合は一年半くらいのところで出願公告には至るのではないか、こういうことを伺っておるわけです。
  105. 荒玉義人

    荒玉政府委員 平均的にはそういうことが言えるかと思います。
  106. 堀昌雄

    ○堀委員 そうしますと、要するに、あなたもさっきから何回か言っておられますけれども、確かに特許というものは公開しなければ意味がありません。公開しなければ意味がありませんが、本来の特許法考え方からすれば、出願公告をもって公開は足りると私は思うのです。出願公告をもって公開が足りるのを、早期に公開しなければならないということは、必然的に出願公告がおくれてきたということではないですか。
  107. 荒玉義人

    荒玉政府委員 これは特に技術革新というのが非常に影響しております。もちろんアメリカでも技術革新はございますが、日本の場合におきましては、御承知のようにアメリカは大体年率が、せいぜい出願が伸びましても一%か二%、ほとんどその程度だと思います。日本は御承知のように、たびたび申し上げましたように急増してまいっております。したがいまして、それに応ずる処理体制がどこまで可能か、いま先生おっしゃいますように、全部可能ならば、これは別な制度といいますか現行法でもやり得ると私は思っています。したがいまして、そういう意味では、もちろんおそいからこういった方向でもって技術革新に即応していく体制をつくるということにはなるかと思いますが、これは御承知のように、アメリカは格別でございますが、世界的にもやはり審査能力というものは、これは国の力をもってすればもちろん解決できるかもしれませんが、大体各国そういった審査負担というものは、日本だけでなく、そういう傾向にございます。特に日本がそういう意味で最も大きな困難な事態にある。そういう事態を踏まえて、ということがやはり今度の制度改正意味であり、早期公開の意義の基礎になっておる事実か、かように考えております。
  108. 堀昌雄

    ○堀委員 いや、私がいま聞いていますのは、実態論を聞いているのじゃないので、理論的に聞いているわけです。あとから法律論争をやりますから、法律論争をやるためには少し理論的に詰めて話をしていかなければなりませんから、要するに出願公告が一年半以内に行なえる条件にあるならば早期公開という制度は必要がない、こういうことでしょう。そうなると、それは確かに技術革新という問題もありましょう。しかしあなたが前段で触れたように、要するにそれを行政によって処理することは不可能ではない、可能だという前提がある限り、国がやるべきことをやらないことによって早期公開を行なう。本来なら一年半で出願公告が行なわれれば、少なくともその時点では仮保護権利がきちんと守られて、いろいろな権利は、少なくとも今度の早期公開に伴って発明者に与えられる権利よりもより大きな権利が実は出願公告の際には与えられておるわけですね。さらに登録をされれば、もっと大きな権利が与えられておる。今度のこの法律の体系を見れば、結局出願、公開、公告、登録、こう四つの段階に分かれてきますね。その四つの段階について、それではその特許権となったものの価格に対する評価といいますか、これが一番高いのはいつでしょうか。
  109. 荒玉義人

    荒玉政府委員 一般的に言えば、特許権になったのが一番高いはずでございます。というのは、たとえばその前の出願公告の時期でございますと、リスクがございます。そういう意味では特許権になった後が一番高い権利だと思います。
  110. 堀昌雄

    ○堀委員 それは確かに特許権ができたときが、確定をしますから、一番高い。しかし実際には出願からここまで継続しておる、この間に少なくとも今度幾ら合理化をしてもかなりな年数がかかるとなれば、そのもの自身は少なくともその時期までには陳腐化していますね。そうすると、出願から公開までの時期、このあたりにもしそれが特許になるものであるならば、これは継続しているわけですから、特許にならないものの話はしません、特許になるものならば、ここで要するに実施化をして得る利益は、この特許権確定してから実施化して得る利益よりは、単位当たりは私は高いのじゃないかと思うのです、陳腐化のこの時間的な経過から見れば。どうでしょうか。
  111. 荒玉義人

    荒玉政府委員 先ほどは一般論で申し上げたわけでございますが、私は発明の性質によって千差万別だろうと思います。といいますのは、たとえば基本発明になればなるほど、御承知のように発明というのは、あくまで初歩の段階でございます。ある人は発明をするのに一の労力とすれば、その後の技術開発が十の労力、それをマーケットで商業的成功を博するのは百の労力、それは金も全部含めて、そういう意味では出願の段階といいますのは、技術としてはやはり素朴な段階でございます。素朴といいますのは、具体的例で言いますと、たとえば化学のほうでございますと、実験室の段階で特許発明が完成するわけでございます。それではマスプロにももちろん乗りません、コストもどうなるかわからぬという意味では、基本発明になればなるほど、むしろ年月が開発の場合にかかるわけでございます。あるいは、もっと逆に、今度は極端な例を言いますと、あしたからでも実施できる、しかもそれが非常によく売れるというものと、そういう意味ではいまおっしゃいましたことは、私は発明の性質そのもの、むしろそちらのほうが関係あるのじゃないか、かように思っております。
  112. 堀昌雄

    ○堀委員 もちろん実施するためのあとのいろいろなものがついてきますからね、それはあなたの言われることも私はわからぬではありません。わからぬではありませんけれども、要するに、新しいものの発想というものは、そのときには他にない点ではやはり価値があると思うのです。だんだん時間がたってきて、そういうものの応用の問題の段階に入れば、応用すること自身はこれはもう非常に段が違うわけですから、あなたがいつも言うように、外国の特許に対して日本特許が四の割合だとかという言い方をしていることは、そこに関係があると思いますね。ロイアルティーの払い方から見てもそうだと思うのです。日本にこれだけ特許ができながら外国の特許と十対一ということは、中身の問題でしょう。しかしそれはそれとして、結局少なくともこのいまの考え方からすると、出願がされて公開をされる、そこで公開したものに対しては補償金請求権というものができる。その次に今度は出願公告になる。今度はここでは差しとめ請求権も出てくるし、それから損害賠償も行なえるし、不当利得返還訴訟も行なえる、こうなる。これと特許権の場合とは多少の量的な差があるけれども、仮保護権利は、かなり今度は差しとめ請求権も認められて、拡大をされてきた。ところが、ここと公開の補償金請求権の間にはかなり問題が残されておると私は思うのです。  そこでまずお聞きしたいのは、この間中谷委員の質問に対して長官は、いまの補償金請求権という考え方は、民法七百九条を排除するという意味ではないのだ、こう答えておられますね。ちょっとそこのところをもう一ぺんはっきり答えていただきたい。
  113. 荒玉義人

    荒玉政府委員 まず条文で申します。  六十五条の三、これがいわゆる補償金請求権のもとの規定でございます。で、三項でございます。第一項の規定による請求権の行使は、これは補償金請求と申します、補償金請求権の行使は、五十二条第一項、これは現行法の出願公告の仮保護、あとは省略いたしますが、それからもちろん特許権となったあとの権利及び特許権の行使を妨げない、これが条文の根拠でございます。で、これは要するに二つございますが、ちょっと先生の質問の趣旨を拡大するかもしれませんが、これは公開から公告の間の補償金請求権はこのあとの権利の行使を妨げないというのが一つございます。それからずばり御質問のものは、公開から公告の間に、これは解釈は残るかと思いますが、民法七百九条の——法務省といろいろ相談いたしましたところ、加害の意思があった、そうして権利者の一つの利益、権利に該当するものでございますから、そういった加害の意思があって、利益を害された場合には、どういう場合かということはいろいろあるかと思いますが、民法七百九条を排除するものではない、これは解釈で、そういう形で考えております。
  114. 堀昌雄

    ○堀委員 そうするとよくわからないのは、補償金請求権というのは一体それは何なんだろうかということですね。もしいまのような言い方で補償金請求権が一つある。そうすると補償金請求権というものは、これは違法ではないのだ、要するに公開されたものを使うことは悪意のある侵害ではないのだ、よろしいのだ、公開されたものは大いに使いなさい、あなたの発想はこういう前提になるわけですね。請求金さえ払えばかまいませんよ、どうぞひとつ御自由にお使いくださいという発想ですか、これは。
  115. 荒玉義人

    荒玉政府委員 違法行為、適法行為、違法行為は御承知のように特許法の場合でございますと独占排他的な権利、それが国の審査を通じた行政処分によって排他的な独占権が与えられる。したがって、それを他人が使えば違法性が出る。今度の公開の場合でございますと、それは適法というのは、何も使うのが自由だということではないのでございますが、法律構成から見て、適法、違法という厳密な意味の適法ということでございますが、その場合には、やはり通常の状態で使った場合には、ロイアルティーを払えば、逆にいえば使えるということだと思います。そういう意味で、厳密な意味の違法性はない、違法性というのはあくまで国の処分で権利が発生しないと違法性は出てこない。そういう厳密な違法性、適法性の問題かと思います。
  116. 堀昌雄

    ○堀委員 これは実は非常に重大な問題なんです。いまの長官の発言からすれば、早期公開のされたものを、すみやかにまず私が使いますね、補償請求金を払うつもりでこれを使う。そうして公告がされて、請求金を払いなさいときますね。私はどうぞと請求金を払います。そうしたら、よろしゅうございますか、一つの例をとって言いたいわけですけれども、私がある機械を、これはいいということでつくります、そうしてこれをだあっと売りますね。要するに、まだかなり公告まで時間があるわけですから、ずいぶん売った。その行き先までは、もう何年かたつうちにわからなくなります。帳簿を保管しておかなければならぬ責任はありませんから、私はどこへ機械を売ったかということについては、帳簿をなくしたってこれはかまわぬ。そうして、私のほうは帳簿は一つも持っていません、機械だけはずいぶん売りました。そこで公告がされました。補償金請求権がきました。あなたはこれは一体幾らつくったのですか。それはあなたのほうでお調べくださいということになると、発明権者は、ここでいわゆる一切の事情を勘案した通常の支払われる金額というものをどういう形できめるかという点にまず第一点問題が出てくると私は思いますよ。しかし、一応それは話がついて私は払いますね。そうすると、ここでこの行為はパテントフライになります。金を払っちゃったのだから、あなたの言うロイアルティーを払えばいいというのだから、ロイアルティーを払ったのだから、私がやったこの行為は、ここでもう、たとえあとで特許がどう動こうとそれは合法的になる、適法なんだ、そこは。
  117. 荒玉義人

    荒玉政府委員 先ほど六十五条の三項を、ちょっと前に説明したので恐縮でございますが、その問題と関連いたしますが、要するにいまの一項で規定いたします補償金というのは、あくまで公開から公告の間の問題でございます。したがって、そのロイアルティーというものは、つまり補償金請求権の額なのかあるいは出願公告まで効果のある額なのかということに私は差があるかと思います。といいますのは、補償金を払えばあとは全部関係ないとは構成してないわけであります。あくまで三項によりまして出願公告の権利あるいは特許権の行使を妨げないということは、したがって一項、ものによりましては額とか期間とか、いろいろの関係によって具体的に定まるかと思いますが、少なくとも公開から公告の補償金を払ったから、あとはフリーだというのは、先ほど言いましたような六十五条の三項の趣旨からは、  一応提案側といたしましては考えてございません。
  118. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、ちょっとよくわからなくなってきたわけですよ。いいですか、公開から公告までの間に、将来パテントになるであろうものをそのまま私が使いますね、そしてもうけますね。そして、前段でも触れたように、機械は分散しているとしましょう、私はどこに行っているかわからない。そこで請求権が出てきますね。私が払います。それでは、そこで伺いたいのは、今度はたとえば古川君が日本のどこかでその機械を買った。この機械を買ってどんどん生産すれば、要するに物はできますね。しかし発明者側としては、さっき私が言ったように、もし帳簿がなければ一体機械がどこにあるか調査できますか。大体調査できないです。第一調査ができないし、その機械そのものはそのときに補償請求金を払われて、当然その対価の中に入って処理されているものだから、それを買った人はそれによって生産を続けて利益をあげられると思うのですよ、事実は。その機械の使用者と、あとのいまのあなたの言う権利及び特許権の行使を妨げないという関係はどうなるのですか。
  119. 荒玉義人

    荒玉政府委員 御承知のように特許権は製作、使用、販売全部に及ぶ行為でございます。したがいまして、製作者は、それは一応製作段階では補償金を支払ったわけでございますから、それはもちろん適法行為になります。ただ、あと使用者それ自身はたとえば出願公告後に使用するという事態になるかと思います。つまり請求権の行使を妨げないといいますのは、出願公告以後の仮保護権利特許権に違反した場合には権利行使ができるという意味が三項の意味だと思います。したがいまして、そうなりますと、今度は使用者はもとの製作者に対する公告後の対抗すべき、かりに使用者が支払った場合には、もとの権利者の求償関係でそういう権利関係がきまってくる。したがって、将来出願公告後にもあらゆるそういう問題が起こるという場合には慎重に出願公告後のことも考えてやはりやらなければいかぬという問題になるかと私は思います。
  120. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、ちょっと分けて考えましょう。機械をつくって私がたくさん売った。売ったものたちが一体どれだけの広がりになっておるかわからないが、それが、公告までにその機械を使ってあげた利益は補償金請求権の中に全部含まれておると理解するわけですね、あなたのほうは。答弁してください。
  121. 荒玉義人

    荒玉政府委員 ですから、行為が公開から出願公告の間、したがってその範囲内のものは補償金請求権ということによってそれが適法化されるということでございますから、行為の時点によって差があるかと思います。
  122. 堀昌雄

    ○堀委員 だから、行為の時点に差があるということは、補償金さえ払えば公告までには何でもできる、こういうことですね。要するに、そのことは発明者側にとって有利だと思いますか。
  123. 荒玉義人

    荒玉政府委員 有利といいますのは何と比較してかということかと思いますが、現行制度は、御承知のように出願公告からではないと何もございません。それは一般論とそれから個別的にいろいろ問題があるかと思います。問題といいますのは、たとえば御承知のように出願者は出願公告になるまで実施を待つという場合は、待てない場合が多うございます。といいますのは、先ほど言いましたように発明の実施といいますのはそう簡単にできない。試作段階その他いろいろ続けていくわけでございます。そうすると、その見本ができてユーザー側に持っていく、そうして買ってくれるかどうか、そういうことが、いわゆるマーケットのサーチが可能になって初めて生産段階に入る。現行法はその前には何の保護もないわけでございます。したがって出願公告までの期間がかかれば、ある面においては企業者は現行法より得になると私は思います。ただ反面、そういったことは一切やらないという場合には現行より不利になる。したがって私は、一がいに発明者という面から見て不利だとばかりは言えないと思います。
  124. 堀昌雄

    ○堀委員 いまですと、発明者と発明を利用する者とに分けなければいけませんからね。要するに発明者と発明を利用する者というのは同一人の場合もあるでしょうけれども、それが同一人でない場合にはおおむね利害が対立しているというのが常識じゃないですか。
  125. 荒玉義人

    荒玉政府委員 私が申しておりますのは、あくまで出願人、発明者の側から申し上げておるのです。先般公述人の話がございましたかと思いますが、出願公告になるまで何もしないという場合はむしろ少ない。これは少ないか多いかは別にしまして、要するに企業者といたしましては……。
  126. 堀昌雄

    ○堀委員 企業者じゃないのです。
  127. 荒玉義人

    荒玉政府委員 企業者というのは発明者という意味です。発明者が発明したとき、自分で発明をすぐあしたからでも実施できるという発明はむしろ少のうございます。やはり発明といいますのは、先ほどから言いましたように非常に初歩の段階でございますので、次から次へ試作をして、そしてこれが生産段階になっていくかということを研究して、本格的な生産に移る場合がある。もちろん工場でやる場合には秘密にいたしますが、そのできたものをユーザー側に持っていって買ってくれるかどうか、そういう意味で自然に公開になっていく。したがって現行法の場合にはそれは保護はない。今度は保護があるという意味のプラスもあると私は思います。もちろん全部がそういうプラスだとは思いません。
  128. 堀昌雄

    ○堀委員 どうも長官は少し私の言っていることを混同しておる。私がいま発明者と発明を利用する者と言ったのは、発明者と発明を利用する者が同一人の場合もあります。たとえばそれは人格との関係は別ですけれども、日立製作が発明を出願をしてそうして日立製作がつくるという場合、これは同一の場合ですけれども、かりにいま町の発明家というような単位においてある一人の個人の発明家が発明をするという場合には、彼自身がそれを企業化することはできないわけです。だからそれは発明そのものにとどまる。そうするとその発明を、今度は利用する者にロイアルティーを売るなり何なりしなければ、この人の発明というものは次の段階に行かない、こういう場合だってあるわけですからね。私はいま理論的に話をしているのです。あなたはすぐそれを実態面に持ってきて実態面で話をしようとするけれども、私は理論的に話を続けているわけです。  そこで私が言いたいことは、そういう意味では発明をした者と発明を利用する者というのは、基本的には理論的には利害が対立するんだ、こういうことだと思うのですが、どうですか。
  129. 荒玉義人

    荒玉政府委員 大部分の発明といいますのは、発明者と利用者が兼ねたのが大部分でございます。その場合はさておきまして、個人の発明者、自分は実施しない、だれかにやってもらうという場合におきましても、やはり発明というのは、明細書を持っていって、こんなものがいいから買ってくれと言うだけではなかなか相手にされない。たとえば試作をしてこういうものはどうかという形で評価してもらう。もちろん文献だけでその発明はいいから買おうという場合もあるわけですが、個人発明の場合でも、やはりある程度そういう試作段階を経ていく。そうなりますと、秘密性といいますものはおのずからある時期においては自然に喪失される場合もございます。そういった場合にもやはり現行より得な場合がある。ただし、おっしゃいますように、それがどちらがいいかという問題でございませんが、そういう意味のプラスもあり得る、こういうことを私は申し上げた次第でございます。
  130. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと長官、時間がかかりますからビジネスライクにやってください。私は発明者と発明を利用する者との利害は対立するのではないかと聞いているのです。するかしないかだけ答えてください。
  131. 荒玉義人

    荒玉政府委員 一般論からいえば、そういうお説でございましたら、対立すると思います。
  132. 堀昌雄

    ○堀委員 発明者と発明の利用者の利害は対立するというのは原則だと私は思う。いろいろな事情があるから例外はありますけれども、理論的には対立する。そこで私はいま言いたいことは、現行法ならばよろしいです。現行ならば、出願公告がされた場合、差しとめ請求権もあるし、損害賠償の請求権も当然あるし、不当利得返還訴訟もできるし、あらゆる手だてが実はされておる。ところがまず第一に、いまの早期公開になったら、要するに補償請求金を払いさえすればそれは自由に使えるんだということになるということをあなたはここで認めたわけだ。そうなれば、私が機械の例をとったように、使用者のほうはその出願公告になるまでの間にたくさんの機械を売り払っても、発明者のほうはどこでどれだけ売られているかわからないし、それを挙証しない限りは裁判所に持っていって補償金請求権の争いをやってみたところで限界がある。そうすると、私がいま言いたいことは、その売られた機械がその期間内にあげた収益というものは、発明者の本来の利益でしょう。通常受けるべき利益です。だから、それが全部補償請求金の中に入らなければならないのが、どれだけ入るかという点について何らの保証がない。これが第一点。これは発明者にとって非常な不利な条件です。発明を利用する者にとってはきわめて有利な条件をいまの補償金請求権制度というものは第一点として認めることになるのではないか。  第二点は、公告をされ、特許権がもし確定をしたにしても、補償請求金を請求するときにわからなかったものが、それから以後はわかるかもしれない。公告後につくったものは、まだ差しとめ請求権その他もあるから処置ができるかもしれない。その以前につくった機械で、補償請求金の中にもはいれなかったようなものを、一体損害賠償その他でとれるのかどうか。とれっこないではないか。そうすれば発明者は、要するに最初の補償請求金はこれだけしかないですよと言ってこられたらそれっきりで、あとはいまの、事前につくられたものから出る収益——通常得べかりし金とか、いろいろ推定をしてどうだとかこうだとか法律が書いてあったって、実際には受け取ることができない。要するにあなたの言っている日立製作所や東芝なら、早期公開になって、そしてあとのいろいろの手続があったって現実には損をすることはないですよ。しかし、そうではない、要するに力の弱い発明者の場合は、一体どれだけのことを調査をして補償請求金がとれますか。あなたはとれるという何かの証明ができますか。裁判所が一々それについて、それも中央の裁判所ではなく、補償請求金はこの間の中谷君の質問においてもありましたが、全国どこの裁判所でもやれる。その裁判所が、全国に散らばった機械なんかの場合にどうやって評価できるのですか。何か保証があれば言ってもらいたい。
  133. 荒玉義人

    荒玉政府委員 第一点はロイアルティーがどういう基準できまるかということかと思いますが、実施料といいますものは機械的に何%だというものではないと思います。やはりその機械をつくって販売して、どういった利益があるかということも一つの基準でございます。あるいは技術の陳腐化はどうかとか、そういうものを総合して通常受くるべきロイアルティー、したがって、画一的に一%、二%という性質のものではないと思います。ただ問題は、そんなロイアルテーが簡単にきまるのかという問題と、証拠が一体集まるのかどうかという点にあるかと私は思います。   〔委員長退席、武藤(嘉)委員長代理着席〕 もちろんロイアルティーといいますのはそう簡単に右から左に——有体物と違いますから、土地の評価と違いますから、そういった意味ではむずかしいと思いますが、現にいろいろなものにつきましてロイアルティーの基準というのがございます。そういった標準をわれわれは公にいたしまして、よるべき標準にして、当事者の話し合いはもちろんのこと、あるいは裁判所にも参考にしてもらって、そういった面の具体的な解決に資したいと考えておるわけでございます。  それから証拠の問題をおっしゃいますのは、おそらく請求権の行使が出願公告後になる。そうすると、いざかりに公権的にやろうとしても、公開から出願公告までの間行使ができないから、そのあたりの証拠集めその他はどうかということかと思います。そういう意味では、かりに裁判を起こす場合におきましても、それは証拠をそろえて請求権を行使するわけでございます。そういう意味では、日がたてばたつほどそういう証拠隠滅のおそれありということでございますので、それはわれわれといたしましては、たびたび申し上げましたように、そういった事態の審査はイエスかノーか早くやっていって、そういった権利者の不便を救済していきたいという一つの運用によりまして手助けをしたい、かように思っておるわけでございます。
  134. 堀昌雄

    ○堀委員 運用によってやりたいといっても、ともかく片一方は意図的にやるわけでしょう。あなたがここではっきり言ったように、公告前においてその特許権を使うことは——特許権になっていないけれども特許権になるであろうものを使うことは、補補請求金さえ払えばいいんだということが明らかになっておる以上、補償請求金をいかに小さくするかということを事前に考えてその企業者はその特許になるものを自分が使用して、まず利益を得よう、そうなれば、当然当初から証拠は隠滅されておると考えてしかるべきではないですか。しかし、公告になるまでは違法性はないんだから、何をしようとそこは自由ですよ。帳簿を残しておかなければならぬこともなければ、何もない。悪いことはしていない。補償請求金を払えばいいんだ。だから、その限りでは何をしてもいいんだということになっている。要するに、公告になってから初めて補償請求金の訴えをして、何をやってみたところで、片一方は意図的に適法だという考えで、金さえ払えばいい。   〔武藤(嘉)委員長代理退席、委員長着席〕 こっちは挙証しなければならぬといっても、挙証する何ものもない。結局、その場合にはそれを利用した側、使用した側の言いなりの範囲しか金はとれないということになって、結論的には弱い発明者は泣き寝入りになる、こういうことになりませんか。
  135. 荒玉義人

    荒玉政府委員 ロイアルティーといいますのは、一方的にぽんと払えばそれでいいというものではないことは御承知かと思います。おれはそんなのはいやだということで争う道があるわけであります。だから、そういう意味では、適法といいましても、権利者のほうがそれは通常のロイアルティーでないということになれば、おのずから相当の額がきまっていくではないか。  ただ、そういうことと、結局大きなものが使って小さなものが挙証といってもなかなかできぬじゃないかという問題でございますれば、一般的にそういった問題は補償金請求権と同時に、後の場合も私は似たような現象が起こり得るかと思います。ただ、そういった面でやはりある程度訴訟にいかなくても当事者の紛争解決に資するというので、この前御説明したかと思いますが、あっせん機関というものをつくりまして、これはもちろん法律に基づかない事実上の行為でございますが、そういったところで訴訟にいかずに両当事者の紛争解決に資するような措置をあわせ講ずることによりまして、いま申し上げました小企業者の利益に資したい、かように考えております。
  136. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、やはりあなたは提案者の側ですから、何とかして発明者権利がそこなわれないんだということをここで強弁をしたいと思っているように思うのです。しかし、こういう審議のやりとりというのは、あなたの願望をここで幾ら言われても、法律が成立したらそんな温情のある扱いにならないのですよ。これはきわめてシビアなもので処理をされるのですから、そうなった場合に、私がいま言っておるような片方は意図的にやって、そしてあなたはあっせん機関というけれども、あっせん機関であろうと裁判所がきめようと、挙証のないもののきめようがないでしょう。どうですか。たとえば私がある機械を発明した、その機械をどこかの会社がたくさん国内に五万も十万も売った、しかし一体幾らつくって売ったのか私にはわからない。しかし私のわかっている範囲としてはそれはかりに千売ったのだとしましょう、千売ったから幾らだ、こう言っていけば、向こうはけっこうです、こうなるでしょう、それを私がたとえば百万個売ったのではないかと言えば、向こうは挙証しなさい、こうくるでしょう。ともかく挙証ができなければどこへ行ったって補償請求金はとれないじゃないですか。実際には三十万なら三十万売られているものを、私たちがその三十万がどこに売られているかということが挙証ができない限り、正常な当然通常支払われるべきものを受け取れないということは明らかじゃないですか。大臣どうですか。いまの私と特許庁長官の論議を聞いてもらって、補償金請求権は金さえ払えば適法なんだということになっておるということは、たいへんこれは私は重大な問題だと思っているのですよ。どうですか、大臣
  137. 大平正芳

    大平国務大臣 どんなりっぱな制度をつくりましても、それをうまく利用するという奸知にたけた者がおるケースを全然なくすわけにはいかぬだろうと思うのです。堀さんの言われたこと、公告までの間補償金請求権の支払いに応じておけば一応その行為が適法化されるのではないかということに伴うデメリットというものがあって、非常にそういう風潮が一般的になるのか、ごく限られたものになるのか、これは事実問題として私にはよくわからないのでありますけれども、一面こういう制度を設けることによってどういう利益が発明者にも享受されるかという点、これもまた一般的にそう言えるのか、ごく例外的なケースなのか、それはしかし事実、問題だろうと思うのでございます。したがって、私どもとしては、そういう利益の公平をはかる上から申しまして、せっかく補償金請求権なるものが新しく権利として設けられますならば、それをできるだけ実のあるものにしていくような行政的な補強をできるだけやって公平をはかってまいるという行政的努力が裏づけにならないといけないのでないか、本源的に人間の奸知というものを法律の制度によってうまく封殺してしまうというようなことはなかなかできないことではないか、そういう感じがします。
  138. 堀昌雄

    ○堀委員 いま大臣は、何か公開されたものをつくって請求金を払う場合、奸知にたけたとおっしゃいますが、全然奸知にたける必要はないのです。資本主義社会というものはおおむねもうけるためには手段を選ばないというのは通常でありますからね。だから資本主義社会で金もうけをしておる者はみんな奸知にたけておる、そんなことはありませんよ。要するに、もうけるために手段を選ばないだけの話で、奸知にたけておる問題ではない。それが違法であるならば、奸知にたけた者がその違法なところを適法のように処理するのならば奸知にたけておるのです。初めから適法だとここで特許庁長官の答えたことをやることが何が奸知にたけておるものですか。利益を得るためにやるんなら大々的にみながやりますよ。大臣、これは重大な問題ですよ。これに対しての対抗手段がいま何にもないじゃないですか、私がいま言ったところでは。それはあっせん機関を設ける、支払いの請求権のモデルをつくる、いろいろなことがあるでしょう。ところが、いま行政的に何とかこれは補完したいとおっしゃるけれども、理論的にこれは補完することができないですよ。全然補完できないですよ。そこで私は憲法第二十九条に返ってくると思うのです。要するに憲法第二十九条で、この前中谷君も議論いたしました、「財産権は、これを侵してはならない。財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」こういうふうになっておる。いまの話によっては正当な補償の見通しが全然ないのです。出願における正当な補償の見通しがないのに、それも公開というあれをそれじゃどうしてやるのか。さっき長官は、ともかく適当な行政措置が完全に講ぜられる限り出願公告を一年半でやることは不可能ではないと言ったのです。片方で行政能力によって不可能でないということが明らかになっておることを、そのことによって自分たちが行政能力を完全に行なうということを怠って、その結果のしりを国民の側へ持っていって、国民が正当に補償されないかっこうで国民の権利が守れない、財産権が守れないというなら、これなら明らかに憲法第二十九条違反じゃないですか。これは問題は重大ですよ。大臣、どうですか。
  139. 大平正芳

    大平国務大臣 私が申し上げたのは、あなたが証拠がない、自分でつくった機械がどれだけ売れておるのかわからないじゃないか、そういう証拠のないものは幾ら裁判所でも立証の余地がないじゃないかということでございました。そのとおりだと思うのです。そういう自分はこれだけ売って、これだけの利益を得て、これだけのコストがかかったというようなことですなおに話ができればいいのですけれども、そうでなくて、もうそういう帳簿も何もないというようなのは一つの奸知じゃないかと私が申し上げたわけでございまして、一般的に資本主義社会に行なわれておる商活動というようなものが、そういうものだというわけでは決してないのであります。  それからたいへん憲法論ということに拡大されてきましたけれども、正当な補償がなければ云々ということ、そのとおりでございまして、そういう補償を具体化するようにわれわれがやるのは憲法的な努力なんでございまして、現実にあらゆる場合にそういうことが間然するところなく行なわれているかというと、人間の社会でございますから、なかなかそうはいけないので、それをどうしてより完全なものにしてまいるかという努力をわれわれは一生懸命に考えておるわけでございまして、頭から憲法違反というおしかりは、やや権衡を失するおしかりじゃないかと思います。
  140. 堀昌雄

    ○堀委員 私はあまり人をしかったりするたちではないのですから、しかったつもりは全然ないのです。ただ、ものごとの筋道を言っておるわけです。よろしゅうございますか。特許については、製造、販売、使用、全部特許権がひっかかるようになっておりますね。ところが、いま私が例示したのは、帳簿をなくしたというのは一つの例示ですけれども、あるかなりの大企業がそれを利用して、そしてこれを商社に卸した、商社はこれを問屋に卸した、問屋はこれを小売りに売った、この小売りから機械を買った。こういうかっこうで実はいまの状態ですから広がってきたときに、一体その補償請求金をどういう形でどこまで捕捉できるかというのは、私は大体もう初めから無理なことだと実は思っているのですよ。だからそこで、差しとめ請求権というのは、おかしいと思ったら、公告されてから出るのなら、他人がやっているなということがわかれば、すぐそこで差しとめ請求権ができるから、それが広がらない範囲でブレーキをかけられますよ、いまの制度ならば。しかし公開になってから公告になったときは、公開になってから人がつくっていることはどんどんわかっているわけだ。そこでつくっていることがどんどんわかっていたって何もできないのですよ。公告になるまでは。よろしいか、そうでしょう。公告になるまでは、じっと手をくわえて見ておらなければいけないわけです。公告になったところで初めて私は補償金の請求をする。そうしたときに、もうそれはずっと広がって、差しとめ請求権がなければどうにもならなくなっている。そこへいって補償金の請求をやるんだ。そうなったときには、帳簿があるないの問題は別として、実際にどこまでその機械がいっておるかもわからなければ、その機械が一体どれだけの商品を生産をして、それから利益をあげたかも実はわからない。そういうようなことをじっと見ておらなければならぬというのがいまの日本の法律ですよ。ドイツの場合には公開に際して差しとめ請求権もあるのじゃないですか、同時に。どうなんですか、長官
  141. 荒玉義人

    荒玉政府委員 ドイツの場合は差しとめ請求はございません。差しとめ請求というのは、あくまで審査をいたしまして、日本と同じように出願公告をして初めて差しとめ請求権が出るというのがドイツの法制でございます。
  142. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、ドイツの場合には、公開になって、しかしそれについては出願公告を待たずして損害賠償の訴えが起こせるのですが、請求権も同時にこれは起こせるのですか。補償金請求が公開後にいつでも問題があるとわかったら起こせる、こういうことでしょう、ドイツのは。
  143. 荒玉義人

    荒玉政府委員 ドイツの場合は、補償金請求権は日本と同じでございますが、行使の時期が、公開から直ちに行使ができる。ただし、裁判所に行きまして、裁判所がこれは特許性がないと判断すれば中止するというのがドイツの制度でございます。
  144. 堀昌雄

    ○堀委員 だから要するに、私ちょっと差しとめ請求権と一緒にしていたからだけれども、補償金請求権は公開後直ちにあるわけだから、いま私が言ったように、日本の場合には公告になるまでは権利もないのですからね。じっと見ている、こうなるわけでしょう。しかし向こうの場合には補償金請求権が——もちろんそれは特許性のないものは日本だってどこだって同じことで、補償金請求権さえないわけだから、そんなものは初めから私は議論するわけはない。特許性のあるものについては、裁判所がそれを認めれば補償金請求権は早く出る。だから、少なくともそれだけドイツの場合にはいまの救済手段というものは十分認められておるわけですよ。日本の場合には、出願公告されるまでは手をくわえて見ておらなければならぬ。その間は適法だという問題が残るところに私はこの問題があると思っているのです。この問題は大臣どう思いますか。
  145. 大平正芳

    大平国務大臣 まあ事業者というのは信用を基礎にいたしておるわけでございまして、あなたの言われるようなケースはレアケースとしては私はあるかもしれぬと思います。しかし、それを必ず補償金請求権の行くえはそういう姿のものになるのだというふうに一般的に論断されることはやや行き過ぎでないかと思うわけでございます。いずれにせよ、あとだんだんトレースしてまいりまして、その企業の信用において処理していかれるわでございますから、実際上あなたが懸念されるようなケースは非常に少ないのではないかと私は思います。
  146. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣が少ないのじゃないかと思われること自体は、今後の客観的事実にあまり関係がないんですね。これはあなたがそう思われるだけのことでしょう。事実はどうなるかわかないのです。しかし私は、いまさっき申し上げように、資本主義制度の仕組みは、もうけるためには手段を選ばないことである。それが違法な行為だというのならば控えるでしょう。しかしさっきから長官が言うように、この間は違法の行為ではありません。要するに出願公告をされるまでは特許性があるのかないのかわからないから、それがもしあるとするならば、請求金を払えばそれで大手を振ってやれますということになっているのですから、それがレアケースなんということをあなたがここで判断されることは重大ですよ。やってみてたくさん出てきたら大臣どうしますか。実際にはあなたは責任のとりょうがないでしょう。だから私は、ここにひっかかる何かがあるならば、たとえばその補償金請求権というものだけでなしに、何らかその証拠を隠滅するとか、逆に、それを行使したものが、挙証責任でこれを全部出さなかったら刑事罰がくっつくとかなんとかいうようなことがうしろについているのなら、これは話はまた別なんです。しかし行為者に対しては現在のところこの期間については何もないのですよ。そのあとは別ですよ。そのあと、公告以後特許権になってからあとは、いまの六十五条の三の二項、三項等でいけばあとは別かもしれない。しかしそこまでの間だけについては、ここはもう空白地帯がはっきりあるわけですから、それがどういう形で起こるかについては、これはそんなにレアケースということになるかならないかだれも予測のできる問題ではない。これは大臣どうでしょうか、それでもあなたはレアケースといわれますか。
  147. 荒玉義人

    荒玉政府委員 論点を先生のおっしゃいます証拠の問題に限りますと、出願公告後の損害賠償も私は同じ問題が起こるかと思います。といいますのは、権利者は絶えず第三者が何をやっておるかということをフォローして、もし相手が応じなければ、いつでも補償金請求権なりあるいは損害賠償請求権を行使する、そういう材料を集めるという問題につきましては、損害賠償の普通の場合と証拠の上におきましては同じじゃないか。つまりそういった相手方に対して権利行使するためには絶えず証拠を集めなければいけないという意味では、補償金請求権と損害賠償請求権の場合と差はない。行使の時期云々は、たびたび本委員会で説明した問題でございますが、行使の時期とは直接関連があるとは思いませんが。
  148. 堀昌雄

    ○堀委員 損害賠償請求権と補償金請求権は変わりがないのなら、補償金請求権というのは要らないのじゃないですか、そういう言い方をするならば。あなたは、証拠に限ってとこういう言い方だろうけれども。だからそれはものの単位が実は違うのでしょう。補償金請求権の話を私はいましているわけだから、損害賠償だって証拠を集めるのは同じじゃないか、同じであろうかないかは実はここでは関係ないのですよ。要するに補償金請求権というものが正当な補償ができるかどうかということを私は議論しているのだから、損害賠償で証拠が集めにくかろうが集めやすかろうが関係ない。私は補償金請求権の話をしている。だから補償金請求権で、おまけにその行使の時期が公告まで拘束をされているということで、補償金請求権という制度が必ずしも満度にあなた方が考えているようには使えない制度だ、そのことは発明者に不利をもたらす、こういうことを私は言っているわけですよ。発明者に不利をもたらすというのは発明を使用する者に有利に働く、こういうことになるわけじゃないですか。だから私は、少なくとも本来の特許というものはまず発明者権利考えてやるということから始まっているのじゃないですか。特許制度というのは発明を利用する側の権利から始まった制度じゃないのでしょう。発明者権利を要するにそれに国がオーソライズすることによって公開をして独占を認めるということになる。たてまえはこれはやはり発明者権利が先へ来ているのじゃないですか。使用者の権利のほうが優先するのがこれはあたりまえだということですか。これは常識論ですから、大臣ひとつ答えてください。
  149. 大平正芳

    大平国務大臣 発明者権利と公益をどう調和していくかという問題だと思います。
  150. 堀昌雄

    ○堀委員 それならば、いまお話をしたように重大な問題が補償金請求権の中にあるということはおわかりになりましたね。大臣どうですか。——それならば、これは何らかのこの補償金請求権を確実に担保するための対策がなければもうたいへんですよ。これはさっき言ったように私は何も憲法二十九条で大騒ぎしているわけじゃなしに、そういうような補償金請求権という制度をつくりながら、それを取るだけの担保がないようなものをつくっておいて、訓示規定でこれを処理するわけにはいかないのですから、その点何らかきちんとしたものをひとつ出してください。補償金請求権というものは公告後に請求をしても必ず取れますよ。どういうふうにしたら取れるのですか。取れる方法を私が納得するように説明してください。
  151. 荒玉義人

    荒玉政府委員 取れる方法といいますのは、これは当事者同士の関係でございます。権利者は必要な証拠をそろえて、そうしてまず話し合ってやる。それを相手方がどうしてもいやだと言えば、出願公告後に訴訟する。先ほど言いましたように、それでは小発明者の場合になかなか訴訟が——それはもちろん出願公告の場合も同じだと私は思いますが、特にやはりそういう問題を考えなければいかぬということで、そういった第三者のあっせんによりまして、そうして公正妥当な結論で紛争解決——もちろん相手方がいやだと言えばこれは効果はございませんが、そういった方法を講ずることによりましてさらに有利な解決を促進するということには、先ほど言いましたように権利は相対的なものでございますから、やはり権利者が行使する体制考えるということしか本筋はないか、かように思います。
  152. 堀昌雄

    ○堀委員 それじゃ全然私の期待しているようなことは何ら担保されていないですよ。要するに第三者的機関でまるまる話をしなさいということになれば、これは力関係ですから、弱いほうが負けるにきまっているのですよ。弱いほうがもしがんばって、だめだと言う。この間ここへ来られた公聴人もいろんな方が言っておられたけれども、結局ひどい場合にはともかくドスをもっておどかされている、発明者はこれだけ危険にさらされているということをこの前公聴会で発言がありましたね。その発明も、ともかく集魚灯をはじめとして、日本国民に重大な影響を与えて、数々の褒章も受けておられるという人がそういう状態にある。その人たちが一体対等で処理ができますか。権利対等とかいろいろ言っておられるけれども、全然そうなってないという実情を踏まえて、私はこの制度はどうしたって問題があると思うのですよ。だから、少なくとも、その憲法論であろうとないとは別として、私は一歩を譲って、まず早期公開、補償金請求権制度を認めるとすれば、それが完全に取れるようにどうしたらするのか。あなたのいま言うような第三者機関のあっせんというようなもので絶対取れませんよ。それを取れるだけの要するに法律的な背景、何かをここへ書き足すことなくしては、補償金請求権制度は紙に書いた程度の効力しかない。それは決して発明者権利を守り切れない。私はそう思うのです。だから、その点については、ひとつあなたのほうから、いまの第三者あっせん機関だとか、出願公告をできるだけ早くするために処理をするとか、いろいろあろうと思います。あろうと思いますけれども、しかし、出願公告までは盗用されておるかどうかわからないのだから、一般的な時間の経過しか処置がないわけで、これを縮めることはできないのだから。そうでしょう、盗用されておるかどうかは出願公告が出るまではともかくわかっておったって処置がないのですから、だから先願順序でやるのでしょうから、そうなれば、要するに発明者側に立っていまの補償金を確実に取り得る方法を何らかひとつ通産省のほうから提示をしていただきたい。それからもう一ぺん質問をさせていただきたいと思います。  私はこれで終わります。
  153. 大久保武雄

    ○大久保委員 中村重光君。
  154. 中村重光

    中村(重)委員 いま堀委員との間に補償金請求権の問題について論議されたのですが、大臣は憲法違反だということでしからないでくれ、こうおっしゃった。ところが、しかるとかしからないという問題じゃないのじゃないでしょうか。憲法違反になるようなことをやってはいけないのですよ。だから問題になるようなケースはそうたくさんないのじゃないか。私は一件でもいけないのだというのです。憲法違反になります。これは量の問題ではない。  それから荒玉長官が、取れる方法は相手方同士の関係だというお答えがありましたね。そういう無責任なことがあなたは言えるのですか。補償金、要するに早期公開制度というものをあなたのほうで制度化するところに問題が起こってくるのです。取れるか取れないかわからない、受けるべき利益が事実上捕捉できない、特許権は財産権なんだから、憲法二十九条によって財産権の侵害が生じてくるのだから、そういう制度をつくることがいけないということになるじゃありませんか。重大な憲法違反になりましょう。憲法違反だとしからないでくれとおっしゃるのだけれども、いまの質疑応答の中で、明確に憲法違反ではないという答弁が出ない。出ないような、そういう法律をつくることができましょうか。だから憲法違反でないというその点をひとつ明確にしていただかなければ、これは私ども審議を進めるわけにはまいらない。大臣ひとつその点明確にしていただけませんか。——憲法論を長官答弁するというのはおかしいじゃないですか。
  155. 荒玉義人

    荒玉政府委員 かわって立案者が——もちろん憲法論は法制局かもしれませんが、立案者側としての憲法的な考え方を申し上げますと、やはり発明者の有する利益というものが中心になって問題が起こってくるわけでございます。これはやはり憲法二十九条にいう財産権だろうと思います。そうしてその財産権というのは、二項で財産の内容は公共の福祉に適合するように定める、こういうことに関連してくると思います。発明者の利益は、かりに発明者は法律制度によりまして当初公開されるという状態を含んで出願してまいります。そうしますと、ある程度出願公告前に公開されますと、利益がそこなわれるという面がございます。したがいまして、そういう利益をあまりに失わせますと、やはり公共の福祉に全体として適合しないということになって、やはり補償金というリーズナブルな一つの保護を与えていくということが全体として憲法二十九条二項に適合する一つの制度だと思います。問題は、いま御議論のありますのは、法律的には補償金請求権があるけれども、それは実際動かぬじゃないか、こういう御議論かと思います。その意味は、私当事者と申し上げましたのは、これは私人の相対的な権利でございます。発明者と第三者との当事者の問題でございます。したがいまして、それは当事者といいますのは、あくまで両者がいろいろネゴシエーションをしてきめるという権利を構成しているその場合に、かりに先ほど言いましたような、そういう権利を与えても証拠がないじゃないかという堀先生の御質問がありましたが、それは私は証拠という問題は、先ほどから言いましたように、特許の全体を通じて、権利を主張する側は証拠を集めて、そうして権利を行使していくという体系だろうと思います。そういう意味では一つの保護であることは間違いない。保護であるけれども、事実上ナンセンスじゃないかという問題、これはたびたび私申し上げましたように、これはそういうふうな制度、もちろん運用に問題があるかと思いますが、そういう制度として権利を与えていくということでございますので、これはやはり憲法違反という問題は私はもともと起こらぬじゃないか、かように考えます。
  156. 中村重光

    中村(重)委員 出願者は一年六カ月たったら公開されるということを知ってやるのだと思うのです。私どもはいま法律を審議しているのですよ。いいですか、この法律が制定されてしまった暁においてどういう形に運営されるかという問題は、また別固な問題です。いま議論をしているのは、提案されているところの法律案が憲法違反になるのかならないのか、そこの議論なんだから、成立させてしまったあとの方法論を私はいまあなたに聞いているのじゃないのです。それと、その出てくる問題は早期公開制度というものができた、そこで特許権の侵害というものが起こることをあなたがたは予見をしているのだ。いいですか、予見をしておるから補償金請求の道を開こうとしている。その権利を与えようとしておる。そうすると、憲法二十九条にいう財産権の侵害が行なわれるであろうということを予見をしながらこういう制度をつくること自体が、私は憲法違反であると考えるのです。しかも堀委員のいまの質疑の中において、受けるべき利益というものは何か、しかも侵害はされたのだけれども、その市場価値というものがはたして幾らあるのかわからないです。市場価値もわからずして受けるべきいわゆる損害というものはどういう方法でこれを把握し、これを算定するのかわからぬじゃありませんか。あいまいにしておいて、こういう救済の道を講じたのだから、それは憲法違反にならないのだということは、これは議論になりません。憲法二十九条一項二項に基づいての財産権というものを侵してはならないという制度があるし、そうしてまた正当な価格をもってその財産権というものを公共の用に供することができるという道もある。そうすると、この補償金請求権の制度というものは、憲法にいうところのいわゆる公共の用に供するために、こういう制度によってこれが正当な財産権を保障する道につながるのだという考え方でございましょうが、それならば、そのことを明確にしておかなければならない。あいまいにしておいてはなりません。そうすると、私は申し上げましたように、いわゆる財産権の侵害という形になってまいりますから、こういう制度をつくってはいけないということになるのです。少なくとも憲法違反になるような問題として指摘されるようなことについては、平行線であってはなりません。明確な答弁ができないようなことであってはなりません。これは重大な問題ですから、少なくともこれらの問題については、大臣答弁ができるのでなければなりません。これを起案したという立場から長官答弁をするのだったら、運営上の問題ならば、技術論であるならば、私はあなたの答弁でもよろしいと思う。しかし、事憲法違反かどうかという重大な基本的な問題であります以上は、少なくとも明確になっておらなければならぬと思います。その点は大臣から、絶対にこれは憲法違反じゃないのだ、財産権の保障というものは明確にこういう形で捕捉をし、算定をし、そうしてその損害を補償することができるのだ、そういう答弁がなされなければならぬと思います。
  157. 大平正芳

    大平国務大臣 私は憲法違反であるなどとはゆめゆめ思っていないわけでございます。  堀委員お答えいたしましたのは、憲法違反というような均衡を失した御表現で責めないでくださいと申し上げましただけでございまして、これは憲法違反の疑いがありますなんと言うたのではないのでございます。政府は憲法を守る厳粛な責任を持っておりまするし、起案者ばかりでなく、内閣全体を通じまして法務省、法制局を通じまして十分スクリーンをいたしまして、この御提案申し上げた法案をつくり上げたわけでございまして、私ども法律の専門家ではございませんけれども、これに全幅の信頼をおいておるわけでございます。補償金請求制度を法定化いたしますゆえんのものも、そういう配慮で行なわれておるわけでございます。ただ問題は、これが現実に実のあるものになるかどうかということが中村委員の御指摘だと思うのでございまして、そのためには憲法的な努力をみながやらねばいかぬと思うのでございまして、けさほども答弁申し上げましたようないろいろなくふうを私どもは補完的に考えておるのでございます。基本的には発明者権利行使の問題にかかるわけでございますけれども、仰せのような御心配もありまするから、できるだけこれを行政的に補完して十全のものにするように努力をしてまいろうという趣旨でございます。しかし、これは紛争のあっせんを行政的に考えることでは食い足りないじゃないか、最終的な補償にならないじゃないか、御指摘のとおりでございます。最終的な補償はどうしても裁判所に求めなければならぬわけでございましょうけれども、いろいろ、費用の少ない人、時間の少ない人もありましょうから、事実の問題として、解決ができるものがあれば、そういう道をいろいろくふうして差し上げることが行政の愛情だと思うのでございまして、こういうあっせん制度を発明協会の中に設けましてやってみまして、これはやはりもっとこういうくふうをすべきじゃないかというような建設的な改善意見が出てまいりますならば、それも漸次取り入れていくようにする用意があるのだということは私けさほど御答弁申し上げたとおりでございます。
  158. 中村重光

    中村(重)委員 財産権の侵害が起こったのですね、そして裁判になる。ところが裁判というものも力関係、それから資金力のある者とない者ということによってなかなか時間もかかりますから、裁判というものはそうだれでもできるものじゃないですよ。だから、紛争が起こったという場合、紛争を調停するための機関をつくっていきたい、その方法論としてはわかるのです。私は、そういう紛争が起こるような制度をつくるということ、そのことが憲法違反になるのかならないのかということをまず議論しなければならぬと思います。この補償金、早期公開制度というもので公告によって権利を発生をいたしますけれども、もうその公開によって権利侵害が起こることが予見される。にもかかわらずこういう制度をつくるということ、そしてしかも、そういう侵害がなされたが、あなた方が言う通常受けるべき金銭の額というものがどういう形で把握され算定をされるのかということが明確ではないということです。そこに問題があります。そのこと自体が憲法違反であると言うことは、私は飛躍ではないと思う。だから、そういうあいまいな制度をつくるということは問題なんだから、この制度をぜひつくろうとするならば、憲法違反でないということを感じではなくて明確にここで立証をしていただかなければならないと言うのです。  ただいま私が申し上げたことは二点あります。どういう方法でこれを把握するのか、通常受けるべき金額というものはどういう方法でこれを算定をするのか。申し上げたように、私は市場性がまだ十分把握できないのであろうと思います。その点についてはっきりしたところをひとつお聞かせ願いたい。
  159. 荒玉義人

    荒玉政府委員 まず、通常受くるべき金銭の額というのは具体的にどうかという問題でございますが、これは、現行法の百二条、いわゆる損害賠償の規定の中で同じ条文がございます。それで、ある場合は、損害が立証できなくても最低限いわゆるロイアルティーは取れるという規定でございます。問題は、その通常受くるべき金銭の額、ロイアルティーというのは、先ほど言いましたように、発明の性質あるいは当事者、特に実施者がどういう態様で実施する、あるいは実施の期間、受けた利益、そういったものを総合的な判断をいたしまして具体的にきまるわけでございます。で、それは全く特許権の場合と同じだと私思います。理論的には全く同じだと思います。ただ問題は、第三者のほうは少なくとも実施しておるわけです、あるいは場合によれば将来実施しようということもあろうかと思いますが、それは通常、やはります当事者がいろいろな条項を勘案してきめることでございますので、法律としては別に新しい文句ではございませんので、それは具体的には私きまっていく問題かと思います。ただ、先ほど言いましたのは、具体的にきまるにしても、それは当事者なり訴訟できるわけですが、それでは当事者が非常に不便な場合もありますから、われわれが行政的に、一般的なこういうものについてはこういう基準でいわゆるロイアルティーは考えていくということを参考に提供いたしまして便益に資したいというのが第一点でございます。  第二点は、要するに、私は、制度的には補償金請求権ということ、これはドイツでも、御承知のように当初はドイツの原案は何もなかったわけでございます。やはり憲法問題がございまして、一応補償金請求権ということになったのは御承知と思いますが、大体私、日本でも同じようなふうに憲法論は考えるべきではないのかと思います。問題は、そういう形式ではなくて、実質的にそうなのかという判断かと思いますが、これはわれわれが考えますのは、やはり当初、全く出願公告と同じような構成になるかならぬかという問題がございまして、いろいろ論議をいたしたわけでございますが、やはり無審査のままで公開をするという場合に、特許権と同じような排他的独占権というわけにはどうも構成はできないということでございます。それで一応補償金請求権という制度になったわけでございますが、これは先ほど言いましたように、もちろん当事者の力関係とかいろいろあるかと思いますが、これは制度的には特許権侵害の普通の場合とそう大差はない。したがって、もちろん、先ほどから言いますように、できるだけわれわれとしては制度だけでなくて、運用面でそういった不利益をカバーするということは当然でございますが、制度として見た場合には一つの権利でございます。したがいまして、そういうことを与えるということによって私は憲法違反という問題は起こり得ない、かように考えております。
  160. 中村重光

    中村(重)委員 そんなに御都合主義、便宜主義で、いわゆる財産権が侵害されるというようなことをあいまいにした形でやってはいけないです。はっきりとつかめないでしょう。はっきりと捕捉ができないのでしょう。それからいまの通常受けるべき金額なんというものは、実は現在の制度の中にもあるのだ。それは公開制度なんというような、人の財産権というものを侵害されるようなことを大っぴらにしてしまうというような、そういうようなものから出てきておるものじゃない、現行法の中においては。公告後におきましてもいろいろとそういったような問題が起こってくるのですね。それは捕捉できる。そういう場合はそれと違う、公開制度というものはそれとは違う。はっきりと捕捉できない。それから事実上これは算定ができないという問題も起こってくる。それからもう一つ、権利は公告後に発生するわけですから、公開をしても直ちにそのときは権利は発生をしていない。これは間違いない。公告されて、正確には登録されてから初めて権利は発生をするということになるんだろうと思うのですが、ところが公開がなされなかったならば、そういういわゆる侵害行為なんというものは起こらなかったであろう。公開制度というものがここで設けられたことにおいてそういうようなことになったんだから、これは何とか救済する道を考えていかなければならない、こういうことで補償金請求権の制度というものを考えておる、こういうことに実はなるんだろうと思うのであります。しかしそれならば、はっきり侵害をした事実、それからそのこうむったところの損害というものがあいまいでなく十分算定されるということでなければならないと私は思うのです。ですけれども、これは平行線になってまいりますから、あとでまたお尋ねをするといたしまして、この補償金というもの、その定義というものがどういうことかということです。従来補償ということは、公法人の関係においては用語として用いられてまいりました。しかし私法人の間においては、この補償というような用語というのは実は使われてこなかった。現行法の中におきましても損害賠償という形に実はなっている。いわゆる私人の間に起こったそういう侵犯、侵害関係において特に補償ということがあり得るのかどうか、適当なのかどうか、その点をひとつ明確にしていただきたいと思います。
  161. 荒玉義人

    荒玉政府委員 ただいま中村先生おっしゃいましたように、通常補償金といいますものは、こういった私人間の場合には使わないというのが最近の例のようでございます。ただ、これは実は私が適当かどうか——法制局審議を経てまいったわけでございますので、その点、私は、法制局審議を経たので適当だということでございまして、ちょっと私、適当かどうか、厳密に、正確にお答えできないのは残念でございますが、御了承願いたいと思います。
  162. 中村重光

    中村(重)委員 そうなればここへ法制局を呼ばなければならぬということになるのですが、大臣、あなたもいままで長い政治生活、しかも閣僚をおやりになって、いわゆる私人間の関係で補償金というような、そういう用語が使われてきたということはないだろうと思うのですね。それで、いままで旧法では補償請求ができるということになっておったのを対価ということに実は変えてきたわけですよ。補償は適当でないから対価ということにいままでは変えてきた。それでなければならぬということであるにもかかわらず、今度また損害賠償ではなくて補償金を請求することができるというように——国自身が補償をしない。個人間の事実上損害賠償の関係であるのに、それを補償金ということにしたということについては、これはそれなりにはっきりした概念、定義というものが明らかにされなければならないのじゃないでしょうか。どうも起案者が、さっきの憲法の問題については、起案者という立場から私が答弁をいたしましょうと言って憲法論に立った荒玉長官が、実は補償金については確信ある答弁ができないということは、これは問題であると私は思います。だから、その点ははっきりしてもらわなければならぬ。
  163. 荒玉義人

    荒玉政府委員 私、聞くところによりますと、新憲法のもとでは、そういった場合には補償金というのは使わないのが慣例だとこれは承知しております。ただ法制局の段階でのいろいろ審議の過程で、私が理解した点は、第一には、ドイツにしろオランダにしろ、大体補償請求権ということばが——もちろんこれは日本ではございませんが、通常そういうことでこの問題を、補償請求権という形で法文化しておるというのが第一点。それから第二は、先ほど申し上げたかと思いますが、違法行為ということで構成してございません。したがいまして、そういった違法行為でない場合には、やはり補償金請求権を使ってもそうおかしくないんじゃないかというような理由から、この原案のような補償金請求権という用語ができたというように考えております。
  164. 中村重光

    中村(重)委員 そういうことでは答弁にならないのです。大臣、これは審議が続けられません。補償金というのは、いままで補償金という制度であったのをずっと対価という形に個人間では変えてきたのです。にもかかわらず、今度補償金という形をここで特に取り上げてきた。ドイツの例とかなんとかおっしゃいましたが、日本国憲法はドイツに通用しておるわけではありません。日本国憲法の中においてやはり抵触しないような形で法律というものはつくっていかなければならない。明確な答弁ができない以上は、ここで審議は続けられないではございませんか。だからしばらく休憩をしていただいて、その点統一解釈ということになるのですか、明確なお答えを願わなければならぬということになると私は思いますよ。審議できないでしょう。
  165. 大平正芳

    大平国務大臣 早期公開制度をとりまして、公告までの期間、公告された技術を使用した方が、発明者に対して支払う対価というものをどういう表現で使うかということでございますが、特許権として完全にまだ権利になっていないものでございますけれども発明者保護する意味で、補償金請求権というものを今度の改正法で国会を通していただきますと、初めてそういう権利がここで形成されるわけでございます。したがって、そういう早期公開制度に伴う発明者の利益を擁護する措置としてとられた措置でございまするから、そういう補償金請求権というものは、今度の法律案成立によりまして有権的に形成されてくるというように私は理解するわけでございまして、これは補償金請求権ということばを——補償金ということばが適切かどうか、それは専門外の私にはわかりませんけれども、こういう実体を持った権利として新しく形成されるというように御理解をいただきたいと思うのです。
  166. 中村重光

    中村(重)委員 その点は大臣わかるのですよ。それを言っているのじゃないのです。確かにそこに有権的な権利が形成された。それを侵害される場合は、これは憲法に基づいて損害賠償という道が開かれておるわけです。ことさらにこれを損害賠償ということでなくて、国が補償しないのにかかわらず、補償金請求というような制度をここで開こうとされるのだから、だからその点については、はっきりした、これで差しつかえないということを確立されなければならないのじゃないでしょうか。
  167. 角田礼次郎

    ○角田政府委員 法律上の問題でございますので、私から若干補足的にお答えいたしたいと思います。  すでに御説明申し上げたかとも思いますが、普通の法律上の用例といたしましては、違法行為、つまり違法に相手方の権利を侵したという場合に対しては、損害賠償ということばを普通使うわけでございます。それから適法な行為によって相手方に損失を与えたという場合には、普通、損失の補償ということばを使うわけでございます。今回の早期公開という制度につきましては、改正案の仕組みといたしましては、これは一応適法行為という法律上の構成をとっております。ただその場合に、発明者といいますか出願者に対して、第三者がそれを模倣し利用することによる損失が実際上発生するであろう、したがいまして、そういう適法行為による損失を補う、てん補する場合には損失の補償ということばを使うというのが一般の用例でございますので、それに準じて補償金ということばを使ったわけでございます。
  168. 中村重光

    中村(重)委員 特許権というのは、これは個人の権利であります。それを侵すことは適法な行為でしょうか。やってはならないことをやることは適法でしょうか。違法行為をやって適法ということはございますか。
  169. 角田礼次郎

    ○角田政府委員 個人の権利を違法に侵害すれば、これは違法でありますけれども、ただいまの改正案の構成はそういうふうにはいたしておりません。結局、これはいろいろ過去においても議論があったんじゃないかと思いますが、いわゆる発明者特許権という権利を受けるまでの一定の法律上保障された地位というものを持っておると思います。それを法律上どう評価するか、それを権利として評価するか、あるいは単なる法律上の地位として評価するか、これは法律制度の上でいろいろな仕組みがあろうかと思います。いま御指摘の点に関連して申し上げるならば、大体特許法では、従来この種の出願者が持っておる地位というものは、特許を受ける権利に完全にカバーされるとは思いませんが、早期公開された時点における出願者が持っておる法律上の地位というものは、大体特許を受ける権利というふうに考えていいんじゃないかと思います。その特許を受ける権利というものを今回の早期公開によって侵害したかどうかということだろうと思います。特許を受ける権利の性質につきましては、いろいろ学説もございまして、必ずしも一ではございませんけれども、大きく分けて公権的と申しますか、国家に対して特許を請求し得る権利としての一つの実体があるんじゃないかと思います。この点は、今回の早期公開によって何ら変革が加えられていないと思います。したがいまして、その点は侵害という問題は初めから起こらないと思います。  それからもう一つ、いまの御指摘の点がまさにそうであろうと思いますが、私権的な面と申しますか、結局発明者として自分の発明に対する完全な支配を目的とする一つの権利、こういう面につきましては、今回の早期公開によって、それが国家の行為によって確かに公開されて、第三者によって模倣をされる、こういうことになって従来の状態に何らかの変化が加えられる、こういうことは事実でございます。したがいまして、その点がまさに問題になろうかと思います。それは結局、先ほど御指摘になりましたけれども、憲法との関係からいえば、二十九条の財産権を侵してはならないという規定との関連において問題になろうかと思います。そこで、いま申し上げたような意味権利を二十九条の財産権と考えるかどうかということになるわけでございます。これもまたいろいろな考え方があると思いますが、かりに財産権と考えるならば、二十九条一項の財産権を侵害してはならないという規定と一応問題が生ずると思います。それから財産権でないと考えてみても、それが若干の経済的価値を持つことは確かでございます。また日本の国法といたしましても、厳密な意味の財産権でないものなら無視してよいということにはなっていないと思います。そういう意味において、私は、財産権であろうがなかろうが、一応二十九条一項の問題として考えていいと思います。ただ、二十九条一項は御承知のようにこれまたいろいろな解釈のしかたがあると思いますが、結局二十九条一項というものを一項だけ切り離して考えるわけにはいかないのだと思います。と申しますのは、二十九条二項には、御承知のように「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに法律でこれを定める。」と書いてあります。法律で定めた結果、形式的には二十九条一項でいう財産権について何らかの意味の侵害が行なわれていても、それは公共の福祉に適合する限りにおいては二十九条一項違反にはならないというのが憲法解釈としては通説であろうと思うのであります。  そこで問題は、確かに形式的に申し上げれば、今回の早期公開制度によって公開されることによって、何らかの経済的側面において発明者の地位というか権利、どちらでいっても同じだと思いますが、それが不利益に変更されたということは事実であります。そういう意味においては、形式的に財産権が侵されたのじゃないかということになろうかと思いますが、いま御説明申し上げたように、結局早期公開制を定めたということが公共の福祉に適合しているかどうかということによって、いまの結論は変わってくるのだと思います。  そこで、私は行政当局でございませんから、公共の福祉に適合するということを実体的に御説明申し上げる能力はあまりございませんけれども、結局二十九条二項の公共の福祉に適合するということの実証的な説明ができるかどうかということだろうと思います。ただ、この際ちょっとつけ加えさしていただきますと、私から申し上げるのも何でございますが、財産権については、日本国憲法というものがいわゆる社会国家の理念と申しますか、そういう意味において、財産権に対する制限というものについてはかなり政策的考慮と申しますか、そういういろいろな意味において、その内容を規制するような立法というものが行なわれていることは事実でございます。これは経済統制立法はもとより公共の福祉ということで、食品衛生法もそうでありましょうし。文化財保護法もそうだと思います。あるいは食糧管理法もそうかと思います。そういうふうに非常に多くの立法がされております。それらについては、結局二十九条二項で財産権の内容は公共の福祉に適合するように定められた結果、ある人は自由な営業ができないとか、ある人は財産権の行使を規制されるとか、そういうふうな立法が非常に多く行なわれているわけであります。これはまさに日本国憲法の社会国家的な——かつて財産権というものを天賦人権、絶対不可侵のものと考えた理念と違ったそういう憲法の姿であろうと思います。  ただ、先ほどの問題に返りますが、今回の早期公開制度というものについては、やはりそういう意味で公共の福祉に適合するということが立証されれば、これは二十九条一項違反の問題ではないということを申し上げておきたいと思います。
  170. 中村重光

    中村(重)委員 特許権というものは財産権であるということは、これは荒玉長官、公の場所においてもあるいは非公式の場においても言っておるわけですから、特許権が財産権であるかどうかということについては、財産権であるということは、これはもう間違いないところだろうと思う。長官、それは間違いないでしょう。あなたは公の場所においてもあるいはお互いの話し合いの場でも言っているのだから、その点間違いないですね。——頭を下げただけじゃわからぬ。
  171. 角田礼次郎

    ○角田政府委員 ちょっとことばの使い方でございますが、私は特許を受ける権利が財産権であると申し上げたので、特許権として確実な権利になったものが財産権であることはもう疑いないことであります。私はいま特許権か財産権ということを申し上げたわけではございません。早期公開で問題になるのは、特許を受ける権利であります。
  172. 中村重光

    中村(重)委員 荒玉長官特許権というものは利益という表現をあなたはお使いになったんだ。いわゆる発明して、その特許を受ける、それによってもたらされる利益そのものが権利である、そういうことを言ってきたんですが、その点は間違いないですね。
  173. 荒玉義人

    荒玉政府委員 中村先生どういう表現かと思いますが、私は、要するに先ほど四部長の話がありました発明者の持つ地位の私権的な側面、これが発明者の持つ利益ということばと思います。したがいまして、これは特許権から見ればいわば前の段階でございます。特許権になれば、それは当然特許権というものでございまして、ただ特許権が生まれる前の段階というものは、これは発明者の持っておる一つの利益といいますか、地位というか、そういう表現ではないか。厳密に申し上げれば、私はそういうことかと思います。
  174. 中村重光

    中村(重)委員 それから「公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」という問題ですね、元来——元来というか本来的に特許法というものは、個人の権利を守るというためにこの制度はつくられてきたんですね。産業政策というものは、この特許法の目的の主たるものではない。いわゆる発明を奨励する、そして特許権というものを与えて、その特許権という権利を確保する、それを通して産業の発展に寄与するということをもって目的とすると、こうなっているんですよ。特許権というものは、これはいわゆる発明者権利なんだから、その権利は国は守ってやる義務がある。そこで今度は、いまいう公開制度というものを公の「福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」——早期公開制度というものがいわゆる公の福祉のために必要なのかどうか、この点が根本的な問題になってくると私は思う。私は、今回のこの法律は交通整理的なものか抜本改正なのか、目的、性格はずっと変わってきたのかどうかということを基本的な問題として大臣にただしたい。だがしかし、大臣が三十分間時間をおくれて来られたので、実はそれをただすことができずして具体的な問題に入った、こういうことになっているんです。だからもとに戻ってきたんです。だから、特許法というものはどういう法律なのか、この目的は何なのかというところからさかのぼって議論をしていかなければ、いまいう早期公開制度というものは何のためにやるのか。公の福祉に適合する、そのためにこういう早期公開制度というものを法律で定めるのだ、こういうことになってまいりますると、ともすればいまいう特許権侵害というものが起こって模倣されるということで悲痛な声が上がっておる。それはもう大多数の声である。早期公開制度けっこうではないかというのは、きわめて少数の人の声なんだ。これらのことを考えてみると、これは重大な問題としてわれわれも対処していかなければならない、こう思います。私は、この早期公開制度という制度をつくること自体が憲法違反であるという考え方の上に立っております。それから、あとで質問いたしますが、補正の問題も憲法違反であると考えておるわけです。補正というものは、当初発明をいたしまして申請をいたします、その構成に対する全部であるとか、あるいは一部をふやしたりあるいは減らしたり、これを変更したりということは、実は現行法において認められておる。ところが早期公開制度において制約を加えられておる。本来的に補正というものは、みずから出願をやって、これの自由な補正というものは認められなければならない。ところがそれが補正という形において制限が加えられてくるということ自体が、私は憲法違反であると考えておるわけです。きょうはもうこの根本問題によってひっかかって先に進みませんから、私はあらためて質問いたします。  そこでこの補正の問題に対する憲法論議、このことに対しても、憲法違反でないということを明確に御答弁できるのかどうか、この点も検討していただかなければなりません。  さらにもう一つは、実は今回この補正を非常にきびしくいたしました。そうして審査請求後におきまして補正をやったということになってまいりますと、そのことが実はきびしくなったために公知例によって拒絶をされる。ということは、実は補正をいたしますと、補正をしたときが出願日という形になってまいります。当初出願をいたしましてそこで公開がなされた、公開後補正をしたために前の出願が、公知例という形によってついにこれが権利を喪失してしまう、拒絶されるという結果を招くことになってくるのであります。いかに早期公開制度のもたらす弊害というものが大きいか、このことを考えてみますとき、これは法律上問題であるということよりも、基本的な問題として憲法上の問題であると考えておるわけであります、個人の権利を抑圧していくことだから。これらの点に対して明確に憲法違反ではない——あとで補正をしたために後願という形においてその権利を喪失してしまう、拒絶されるというような制度をつくる、そのことがはたして妥当なのかどうか、それらの点等に対しましてもあとでお尋ねをいたしますが、実は非常に重大な問題でございますから、大臣から明確にお答えができますように十分ひとつ検討をしておいていただきたい。そのことを申し上げて、私は質問を保留いたしまして、きょうはこれで終わりたいと思います。一歩も進みません。
  175. 大久保武雄

    ○大久保委員長 岡本富夫君。
  176. 岡本富夫

    岡本(富)委員 特許法改正に対する質問について、最初に二点ほど確かめておきたいことがございます。  それは早期公開が行なわれると、当然外部に全部公表されることになりますが、国内の場合は何かそれを権利保護するというようなことができるというのでありますが、これは完全ではありませんけれども、まだ特許になっていない場合に、外国、特に低開発国がこの権利侵害をした場合、これはどういうような制裁があるのか、これをひとつ長官からお伺いしたいのです。
  177. 荒玉義人

    荒玉政府委員 低開発国、それぞれございますが、一般的に日本保護を約しておるという国もございます。あるいは公開の発明のみならず、一般的に何も保護がない、いろいろございますが、外国の場合ですと、御承知のように特許権といいましても、その国に出願しなければ全く効果がないというのがたてまえでございますので、一にかかってその国の保護内容によるかと思いますが、大体公開されたのでかりに向こうの国に出願しておって権利になれば、これはもちろん保護はございますが、そういう場合以外は保護はございません。
  178. 岡本富夫

    岡本(富)委員 そうすると、早期公開をするということは、これはわが国にとって非常に不利益であるというように考えられるわけでありますが、それが一点と、それからもう一点は、町の発明家たちがいま心配しておりますのは、これが早期公開された場合に、非常に膨大な七十何万件というものが出てくる。それに対してそれを一々全部チェックしていくということはなかなかむずかしいことでありますけれども、大企業ですと、大体スタッフがそろっておりまして、自分のところに必要なものはそれをどんどんまねることができる。こうした大きなギャップがあるように思うのですが、この二点について長官からお伺いいたします。
  179. 荒玉義人

    荒玉政府委員 第一点は、早期公開になったら大企業は調べることが可能であるけれども、小規模業者はできないということでありますが、私はそういう大小の関係は、それはもちろん全然ないとは言いませんけれども、大企業は大きな人数をかかえておりまして分野が多うございます。そうして町の発明家あるいは中小企業の場合は分野が狭いわけであります。そういう意味公開公報を調べるかどうかは、一にかかって調べることがその企業のためになるかどうかという観点から考えるべきじゃないかと思います。御承知のように現行法でございますと、出願公告にならなければ公開されないわけです。そうしますと、たびたび申し上げますように、新しいものを開発する場合でも、隣は何をするということがわかりませんから、せっかく開発してもむだになるわけです。そういう意味では中小企業といえどもやはり開発をやる人は調べるでしょうし、そういうことに無関心な人は調べなくてもいいという意味では、サーチの面から見た大企業、中小企業という差はそう私はお考えにならなくてもいいのじゃないかというのが第一点でございます。  第二点は、公開されたものをいわば模倣して、そして損か得かという問題でございますが、これは私は小さい人がいつも損するということはないと思います。したがいまして、いつも中小企業か被害者であって大企業が利益を受けるという問題ではない、私はかように思っております。
  180. 岡本富夫

    岡本(富)委員 現実を見ますと、大体いままでの現行法で公開されるのは、すでに出願の中からセレクトされて、そしてこれは特許に登録してよろしいか、こういうふうにして公開される。そのときにいろいろ異議申し立てができるわけであります。かりに七十万件を全部やりまして、大体無価値のものを引いていきますと、今度は非常に限定されるわけでありまして、そこからさらに分類されると、調べる範囲というものは非常に限定されてまいります。だから調査は非常に手間がかからずに済むのです。しかし全部を公開するということになりますと、これは相当な量になりますから、これは無価値で捨ててしまった分までも今度は中小企業あるいはまた町の発明家は調べなければならぬというところに大企業との格差がある、こういうふうに思うのですが、どうでございますか。
  181. 荒玉義人

    荒玉政府委員 一般的に言いますれば、多いものをサーチするよりか少ないものをサーチしたほうがよろしい、これは当然かと思います。ただ、出願公告といいますのは一応審査をしてないとわからない、それには時間がかかる、それには弊害があるということで、一年半たったら公開ということになるわけでございます。それで、先ほどから言いますように、私は公開公報が出たから全部サーチすべきだというふうには考えられない。というのは、現行法でも出願公告がございます。これは私は全部の企業が見ておるとは思いません。もちろん熱心な企業は見ておる。特許に企業の生存をかけているところは見るわけでございます。そういう場合には、先ほど言いましたように、中小企業というのは分野が非常に狭うございます。七十万件全部見る必要はないわけでございます。自分がこれなら他人に負けないという分野は、中小企業というものは、そうたくさんやっておれば中小企業のよさがないのであります。だから私は、分野としては狭いし、この分野では他人に負けないという中小企業は、むしろ大企業以上に見て開発に従事するという形になると思っています。
  182. 岡本富夫

    岡本(富)委員 これで時間をとっておれませんので、先ほどの外国のやつは答えがなかったけれども、あとへ残します。社労委員会との関係がありますので。  電算機を使用することによりまして起こりましたキーパンチャーの作業管理、これをすることについて労働省から通達が出ておりますけれども、その「騒音」というところに「騒音は、作業者の耳の位置において、七十五フォン以下とすることが望ましい」、こういうようなことが書いてあります。それから私どもが産業公害で審議しました騒音規制法、この中には、同じ工場の中になりますけれども、六十ホン以上六十五ホン以下、一番大きな第四種区域でも七十ホン以下、こういうような規定になっておりますが、労働省の通達とこれとはどういう関係にあるのか。これはひとつ基準局長からお答えをいただきたい。
  183. 和田勝美

    ○和田政府委員 労働省は昭和三十九年九月十五日に地方労働基準審議会からキーパンチャーの作業管理に関する答申をいただきましたが、その中でいま先生からお話のありました、耳元においては七十五ホン以下にすることが望ましい、こういうことで規制いたしております。それを基礎にいたしまして行政指導をやっておりますが、騒音規制法の関係は、これは工場と外部との境界線においての規制でございまして、工場の中での発生音を必ずしも規制しているとは思わないわけでございます。そういう点で私どもが七十五ホンということを労働衛生分科会からの基準審議会を通しての答申で受けましたのは、これは職場におきまして働く人が難聴にならないように、こういうことでございまして、現在では大体八十五ホン以上のところに常時おるということになりますと難聴にかかりやすいといわれておりますので、それより十ホン下げましたところで作業環境をつくるように、こういう考えであるわけでございます。
  184. 岡本富夫

    岡本(富)委員 それでは人事院のほうにお聞きいたしますけれども、人事院は、この状態が特許庁のキーパンチャーの作業しておるところできちんと守られておるかどうか、この検討をなさったことはございますか。
  185. 島四男雄

    ○島政府委員 人事院におきましても、その関係につきましては、労働省の定めておりますものと同様の定めをしておるわけでございます。昭和四十年の三月五日付をもちまして各省庁の長に対しまして、事務総長通達をもって、キーパンチャーの障害の防止についてという通達を出したわけでございます。  具体的に特許庁のその種の作業について調査、監査しておるかということでございますが、これは私どもは、直接やっておる特許庁に対してそのようなことを行なったことはございません。
  186. 岡本富夫

    岡本(富)委員 労働省にお聞きいたしますけれども、あなたのほうは、この通達を出して、そうして普通の工場ですと労働基準局が直接介入いたしまして、病気にならないように、あるいはまた安全管理のために相当なあれをするわけですけれども、ここはあなたのほうから通達を出しただけであって、いまも人事院の職員局長に聞きましても、全然その通達を出しっぱなし。どちらが——労働省のほうでやるのですか、それとも人事院でこれをするのですか。これをはっきりしてもらいたいのです。そうじゃないと、ここに働いている人が気の毒じゃありませんか。
  187. 島四男雄

    ○島政府委員 一般職の国家公務員につきましては、直接的には人事院が所管しております。したがって、そのような通達をした場合には、人事院がその点について十分監査し調査する責めはございますが、現実問題として、各省庁でその種の作業に従事しております職員は相当数ございますし、現に私どもでそれをくまなく調査するということは事実上不可能でございます。ただし、そういった方々の健康管理につきましては、専門機関による健康診断を行なうように、特に昭和四十三年度から特別定期健康診断をすることを義務づけて、その種の予算も各省庁についておるわけでございまして、そのような指導を行なっております。
  188. 和田勝美

    ○和田政府委員 ただいま島局長お答えを申し上げましたように、国家公務員関係につきましては、労働省の権限外でございますので、全面的に人事院のほうにおまかせをいたしております。  一般事業場につきましては、私どもの所管でございますので、各出先の監督署、基準局におきまして、先ほど申し上げましたような基準に該当するように当該事業場の行政指導を行なっておりまして、この通牒を出しまして以降非常に改善をされておる、こういう報告を聞いております。
  189. 岡本富夫

    岡本(富)委員 人事院の島職員局長に伺いますが、では、特許庁内において、キーパンチャーによるところのパンチャー病というのですか、これは何人がなったか、何人が配置転換されたか、こういうような調査を行なわれたことがございますか、また特許庁から聞いたことがございますか。
  190. 島四男雄

    ○島政府委員 現在私どものほうにその種の訴えが一件ございまして、現在その内容について審査中でございます。その内容と申しますのは、公務上の災害になるかならぬかという点について現在審査しております。
  191. 岡本富夫

    岡本(富)委員 いつごろなったのか知りませんが、病気になって配置転換の人を見ますと、相当な数がなっているわけですが、もしもこれが町工場あるいはまた普通の一般産業をやっている企業でしたら、労働省から強力な指導がある、また立ち入り検査もある。ところが、官庁でこういうことが行なわれておると、全然タッチをしてない。健康管理に対してのその姿勢というものは非常に弱いと申しますか、これではならないと思うのですが、島局長、どうですか。
  192. 島四男雄

    ○島政府委員 確かに、仰せのとおり、その点について私どもが必ずしも万全の指導をしておらないということは認めざるを得ませんが、ただ、健康管理、安全管理等を含めまして、その種の管理は一応は各省庁の長におまかせしているわけでございまして、各省の長においてその種の管理は十分行なわれているものというふうに信じております。ただ私のほうは、現実としてはそのようなことは、そこまでは手が回らないというのが率直なところでございます。
  193. 岡本富夫

    岡本(富)委員 では、その省の長がこれを責任を持つということでございますので、通産省の一番長は通産大臣であります。通産大臣、何人病気になって、どういうようになったかということを御存じでございますか。
  194. 大平正芳

    大平国務大臣 人事院のほうの通達に基づきまして、定期的に健康診断をいたしておりまして、健康上問題がありはしないかと思われる方が六名あったと記憶をしておりまして、そのうち一名は公務災害の申請を人事院当局に出しておると承知しております。
  195. 岡本富夫

    岡本(富)委員 長官は、その作業内容、あるいはまた、もっと詳しく御存じだと思うのですが、長官から答弁願いたいと思います。
  196. 荒玉義人

    荒玉政府委員 頸腕症の診断を受けた者が六名、四十二年度に一名、四十三年度に五名、合わせて六名でございます。一名は、先ほどからお話がございましたように、人事院と協議を続けておりまして、あとは配転をいたしましてその後の経過を見ておりますが、新しい仕事によりまして経過は良好でございます。したがいまして、悪化するという問題はございません。
  197. 岡本富夫

    岡本(富)委員 案外いいかげんな答弁をなさっているように思うのです。私どもが中の調査をしますと、時間がありませんから押し合いしてもしかたがないが、四十一年に入って二十六人中十三名がパンチャー病になって、その人たちは全部配置転換されておる。その後二年たってさらに十三名が配置転換されておるのです。しかもまだこの労働省通達より騒音がもっともっと高い。八十ホンあるいは八十五ホン、こういうような環境の中で現在仕事をしておる。人命尊重の上からも、いままでの処置はめちゃくちゃだということは言える。それが一つと、もう一つ、現在のこの特許行政がずるずるおくれておるのは、電算機を入れて、この電算機のところが非常にネックになっている。これは事実だと私は思います。だからこの電算機のところにいる人たち、特にキーパンチャーの人たちは健康管理を大事にする、それがまた同時に事務がどんどんスムーズに流れていくことになるわけでありますので、その点についていままでの管理はめちゃくちゃだといわざるを得ないのでありますが、大臣どうですか。
  198. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのとおりでございまして、電算機がせっかく入りまして、それが仕事のネックになるというようなことは許せないことでございますので、運営上十分配意してまいらなければならぬと思います。  それから、罹病者の員数について私が申し上げたことと違った御発言でございましたが、ただいま申し上げましたように私は報告を受けておるのでございますが、なお念査をしてみます。
  199. 岡本富夫

    岡本(富)委員 大臣がもっとあたたかい配慮をして、一ぺんあなたがじかにはだで感じて現場をよく見て、そして現在のような環境の悪いところで働いている人たちを激励もし、また給与の面もいろいろ考えてやらなければならない。それが特許行政の大きなネックになっているということをあなたはもう一度よく検討していただきたい。必ずこれはやっていただけますかどうか、御答弁願いたい。
  200. 大平正芳

    大平国務大臣 十分配意をいたします。
  201. 岡本富夫

    岡本(富)委員 労働省はもうありません。帰ってください。  それから人事院の局長さんにも言っておきますけれども、ただ通達だけではなくして、もっと報告もきちっととって、できれば立ち入り検査くらいするという強力な管理をやってもらいたいと思います。これは要望しておきます。  次は、今度早期公開をいたしますと、特許行政というものが迅速にならなくなって、ますます滞貨が大きくなってくるのじゃないか、こういう懸念のもとにただしたいのであります。これは現長官には責任のないことで、まことに気の毒だと思うのですが、いままで調査いたしましたところによりますと、滞貨の増大はこの電算機にあるのだ。倉八長官のときは、電算機を使用することによって画期的な事務促進となり、滞貨は一掃される、こういう発言を三十九年十二月にしております。三十九年九月に電算機を導入して、三十九年十一月に業務開始、四十年一月登録開始、こういうような予定を立てておりますけれども、現在このとおりうまくいっておるのかどうか。予算はちゃんと編成されておりますけれども、きちんと予算どおりいっておるのかどうか。これは長官からお聞きしたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  202. 荒玉義人

    荒玉政府委員 出願のほうは現在実施中でございますので、新しい問題は登録にまで拡充するかどうかという、こういう問題でございます。それで、もちろん出願の場合もミスは困るのですが、しかしさらに登録の場合ですと、権利の得喪変更ということになりますともっと事柄は重大であるという面がございます。それで意匠を中心にいたしまして試験してみて、はたしてうまくいくかどうかということのテスト中でございまして、これが非常に精度が高いというのなら踏み切りますし、将来やはりテストしてみて問題があるというのなら考えるという段階でございます。
  203. 岡本富夫

    岡本(富)委員 そうすると、前長官が言ったことは全部でたらめである、こういうふうに解してよろしゅうございますか。なぜかならば、当委員会におけるところの長官の発言を全部とりますと、現在あなたの言っていることとずいぶん違うのです。私はあなたを責めておるのではないのですけれども、きのうまでの審議を見ておりましても、非常に苦しい御答弁をなさっておる。したがってこの際、間違いを間違いであった、改めてこういうようにやっていくのだ、こういうように率直に間違いを正し、さらに前向きにやっていくというのならまだ話がわかるのですけれども、その点についてひとつ明らかにしていただきたい、こう思うのです。
  204. 荒玉義人

    荒玉政府委員 もとの計画との関係でございますが、われわれはやはり安全度を見て、これが有効だという実験の結果登録をやっていきたい、こういう意味でございますが、ただいまのところ、実は権利を設定する、それから一番メリットがありますのは、御承知のように毎年それぞれ年金を納めないと消滅するわけでございます。これは権利者に一々予納通知があればいいのですが、なかなか人員の関係でできないのです。それをかりに電子計算機で全部やれれば、おのずから機械的に予納通知が出てくるという意味では、むしろ年金のほうは非常にメリットがある。ただし移転等につきましてまだ実験を重ねませんと、その点のメリット、デメリットがはっきりしないという段階でございますので、われわれはむしろ実施を慎重に考えておるということでございます。したがいまして、そういった意味の計画はずれておることは現実でございますが、そういう実験の結果うまくいくという確信が持てれば、いつの時期か、私としては実施に移していきたい、そういう意味で、むしろ計画がずれておる。ただ先ほど言いましたように、いろいろ移転その他でどうしてもいかぬということになれば、あるいは場合によれば計画変更ということになるかと思います。さような状態であります。
  205. 岡本富夫

    岡本(富)委員 そうすると、前倉八長官のときに、この電算機をもっともっと検討し、もっともっと研究をしてから使用すべきであった。これは足かけ十年たつのです。ところが調べますと、まだ実験段階である。国民の税金を何千万も使っていつまでも実験しておる。しかも予算をとっておる。こういうことで許されるのかどうか。だから私がいま言っておりますのは、これは何か役人仲間では武士道があって、前の人の悪口は言わないというようなこともありますけれども、それはそれとして、これは率直に、私はあなたの立場を気の毒だと思いながら言っておるわけですが、だから改むべきことは改めるべきである、そうしてやっていかなければならない、こういうように思うのです。そこで、過去十年間にこの電算機でもって仕事した内容、たとえば三十四年以降審査の機械化を研究しているというようなことを言っておりますけれども、十年間に何ぼの開発ができたのか、実際可能なテーマはどのくらいテーマができたのか、これは通産ジャーナルを読みますと、非常に少ない。科学技術の開発によってどんどんと情報検索しなければならぬのに、この現状に照らして、この電算機によって事務処理が促進になっていないのじゃないか、この点についていかがでございましょうか。
  206. 荒玉義人

    荒玉政府委員 電子計算機の場合に、ちょっと利用分野から見まして御承知のように二つございます。一つは、現在は出願事務、これが第一でございます。それから第二はいわゆる機械検索、情報検索、これは全然要素が違うと思います。   〔委員長退席、浦野委員長代理着席〕 出願の場合でございますと、確かに先生の御指摘のように問題があったと思います。その場合に実は私たちが一番考えねばいけないのは、計算機を入れるということは内部の事務体制を、流れをどうするか、もっと先には出願人がどういう書類を出すのか、あとが非常に楽かといったような総合的な見地が欠けておると私率直に反省しております。したがいまして、実はそういった総合的な見地から、先ほど言いましたように、出願人の願書も電子計算機に合うようにやはりやってもらう必要があるし、われわれの内部の仕事の流れも電子計算機に合うような形の具体策によりましてこれをカバーしていきたい、かように考えています。ただ、現在までのところ、昨日の加藤委員の御質問にも私答えたかと思いますが、これは二つの見方があると思います。一つは、御承知のように出願数に見合う一般事務の増員というものを、ある面で電子計算機でかえておる面がございます。そういう面では一つのメリットでございますが、デメリットは、やはり中間の書類が審査官出願に届くのに時間がかかっておる。もちろんそういうデメリットもございます。そういったものを総合判断いたしまして、先ほど申し上げました。やはりもう少し先生がおっしゃったように、確かに初めからやればよかったという意味がございますが、われわれといたしましては、内部の事務の流れ、出願人の書類の出し方、形式、そういったものを含めて電子計算機に合うような体制で進めてまいりたい、かように思っています。  それから第二の機械検索、これはむしろ将来のわれわれの審査を早くするための一つの方法でございます。現在まで七品目につきまして、いろいろシステムを、一部は電子計算機に入れて使っております。ほかのものについてはまだ開発中でございますが、これは国際的な協力によりまして逐時利用度が高まってまいると思いますが、当然将来われわれ大いに使っていきたい、基本的にはさように考えております。
  207. 岡本富夫

    岡本(富)委員 もっといまの二つについて論議さしてもらいますけれども、一つは、きのうあなたのお答えによりますと、こういうことをおっしゃったですね。電子計算機導入によって三十九年以来五十六人分を減員することができた、こういうメリットがあった、こういうお答えでございましたですね。それで、それを勘定いたしますと、三十八年の十二月には、おそらく出願課の話だと思うが、ここの職員数は七十一人、きのうあなたは百二十四人という話があったけれども、私のほうで全部調べますと百四十一人おる。これ以外にアルバイトがだいぶんおる。だから長官きのうも加藤さんにお答えになっていたのはどうも事実と相違しているのではないか、こういうふうに思われるわけですが、これが一点。  それからもう一つは、あなたは六テーマあるとおっしゃったけれども、過去十年間に七テーマ、そのうちの一テーマはアメリカのものですから、六テーマです。それで使用可能なのは四テーマ、現在の調べによりますと百三十六種類、二万種目という大きな種目がある。これで十年間で六テーマ、七テーマ、こんなことで事務の促進になるかどうか、ちょっとこの点について非常に疑問を抱く。よろしいか。
  208. 荒玉義人

    荒玉政府委員 第一点は、これは要するに比較の対象を四十三年度にとりましたので、四十三年度の出願課の人員が百二十四、こういうことでございます。現在はとってございません。その差だと思います。  それから第二点でございますが、御承知のように電子計算機を使っておりますのは、われわれ日本で開発したものだけをあそこの電子計算機に入れるつもりは毛頭ないわけであります。そのために国際的に協力いたしまして、アメリカで開発されたものも使っていく、そうしてそれぞれの国が同じシステムで、たとえばアメリカアメリカの明細書を、ドイツはドイツの明細書を入れるということによりまして、それを使うわけでございますから、どこが開発しようが、事電子計算機に関する限りは私問題ではございません。ただテンポがおそいじゃないか、こういう問題だと思います。これはいまのようなシステムでやりまして審査に役に立つという場合には、これは非常に未解決の問題があるからおそいのでございますが、そういった問題を国際的にお互いに分業で相互に使っていくという方向でございます。ただ、私自身ももう少しテンポは早くならなければいかぬと思いますが、これはむしろ将来としてぜひこういう方向でやらなければいかぬ。しばらく成り行きをあたたかい見方で見ていただきたい、かように考えております。
  209. 岡本富夫

    岡本(富)委員 長官、四十三年の十二月、あなたのほうの職員の数が、全部住所録に出ておる。これを調べたら百四十一人おりますね。あとやめてですか、百二十四名、こんなことでぼくはあげ足はとりたくないけれども、これはよく出願課のほうに聞いて下さい。課長が一人、あとそれ以下百四十一名、こういう一つの例を見まして、私、御答弁が非常に信用できなくなったんですね。だから、それじゃ質問せぬでもいいじゃないかと、こういうことになりますが、それは国民のためにならぬ。この問題ではいつまで論議しておってもしかたがないのですけれども、これが一点。それから、十年間で百三十六種、二万種目もあるうちで、わずか六テーマ、そして使用可能なのか四テーマ、これはあまりにもテンポがおそ過ぎますね。だから、あたたかい目で見ておるのもよろしいのですけれども、相当な国費を使いまして、この間見ますと、七億ですか、レンタルされておりまして、こういうものを使用するよりももっともっと審査官をふやす。これを見ますと、あなたもよく御存知のように、これを入れたために今度は事務員を減らさなければならないようになってきた。そうじゃないと大蔵省のほうが許可せぬということになったので、事務処理する人を減らしておる。そのかわりに審査官という名目でとってそっちへ回しておる。これはあなたのときじゃない、前かもわかりませんけれども、こういうことを見ますと、審査官の人数をもっとふやして、たとえば一人の審査官の一年の費用が大体六年間つとめた方で九十何万円、百万円になりません。そうしますと、七億の金を使用すれば、七百人の人を使える。七百人にノルマといたしまして、大体三百件、六年たった人で大体三百六十件というのが一年間のノルマらしい。そうすると、三百件としても二十一万件はさっと回る。だから、電算機が非常に大きなネックになっておる。これをあなた認めて、そしてさらに今度は前向きの検討をしなければ、いつまでたってもこれは解決しない。  なお、もう一つ申し上げますけれども、今度早期公開になりまして、七十万件を全部早期公開するにつきましては、普通でありますと、一応出願して、それから審査して、そのうち半分くらいは無価値にするから、いよいよ公告するのは五〇%、そうして、電算機を通っていくのが、出願と公告で大体一五〇となります。今度早期公開になりますと、二回やらなければならぬことになる。だから一〇〇が二〇〇になりまして、しかももう一ぺんそのうちの無価値なものを取りますから二五〇というふうに、約三倍近く電算機のロードがかかる。いままで見ておりますと、出願を受けつけてから帳簿にすっすっと書いて、ずっと回せばよかった。今度はメモに書いて渡して、それでこれをキーパンチャーのところに行ってやって、それが戻ってくるということになりますので、二重の手間がかかっておる。こういうことを考えますと、今度早期公開にすればもっともっと滞貨してくる。要するに電算機のおかげでもっともっと滞貨してくる。しろうと考えですけれども現実を見ているとそういうことになってくる。この点について、長官は確信があるのかどうか。はっきりと現状を把握した上のお答えを願いたいと私は思うのです。どうでございましょう。
  210. 荒玉義人

    荒玉政府委員 私の理解が不十分なのか、三倍かどうかということはちょっと理解しかねますが、現行法の場合ですと、出願がありまして全部審査するわけでございます。全部審査するということは、もちろん出願認定の往復で、一回だけで済むのもあります。何回もかかるのもあります。だから、現在中間的な処分は全部電子計算機を通っていくわけでございますので、そういった意味で特に公開したから三倍というふうにはわれわれ考えておりません。ただ、公開という新たな手続がふえることは事実でございます。そういった意味で、それぞれのデータシートをつくって、そうしてパンチャーに回していく、パンチャーもわれわれは外注でやるつもりでございまして、プラスアルファを中の労働強化でする意味は毛頭ございません。そういった形でございますので、公開したから格別に問題があるというふうには、私は考えられない次第でございます。
  211. 岡本富夫

    岡本(富)委員 大体電算機を使い出してから、普通なら帳簿に書いたらそれでおしまいのやつを、メモにして同じように書いているわけです。それを電算機に渡している。パンチャーが打って戻ってくるんですね。ですから同じことを二回やっておる。今度早期公開にすれば、あなたはいま外注ということを言いましたが、この外注の計画は全部できておるのですか。どうですか。
  212. 荒玉義人

    荒玉政府委員 準備はできております。
  213. 岡本富夫

    岡本(富)委員 じゃ、その外注計画を、私は資料要求をしたいと思います。  次に、電算機などで蓄積しているところの、現在庁内で相当書類が動いておるわけでありますけれども、情報検索は総計何件電算機にかかって蓄積されたか、これをちょっとお聞きしたいのです。
  214. 城下武文

    ○城下説明員 御説明いたします。いま先生の御質問で、コンピューターに何件ぐらい蓄積されているか、こういうことでございます。コンピューターに蓄積しておりますのは、ものによって、つまり技術分野によってだいぶ件数が違っております。そのうちでさらに違っておりますことは、内容によりましては、アメリカから送ってきた資料もそのままコンピューターに入れているものもございますので、いろいろ違っておりますが、概数を申し上げますと、たとえば合金の場合は約二千五百件……。(岡本(富)委員「総計だけでいい。」と呼ぶ)合計で大体三千件から四千件とお考えいただいてよろしいかと思います。
  215. 岡本富夫

    岡本(富)委員 私の時間はもうございませんが、現在蓄積している情報検索は、いま答えたよりもっと多い。大体三万五千件ぐらいやっているらしい。ところが、技術革新でどんどん必要ができてきまして、二百万件から三百万件、あるいはもっと多く八百万件ぐらいやらなければならないようになってくる。過去十年でわずかこのくらいのことで、はたして電算機の使用によって処理促進になるのか、これはわれわれ非常に疑問を抱くわけです。ひとつその点についてお聞きしたいのですが、どうですか。
  216. 城下武文

    ○城下説明員 御説明いたします。従来、過去数年間にわたります機械検索という部門の開発状況を申し上げますと、まず一番初めに、どういうような様式でそういう機械検索を進めるかという問題が一番大きな問題になります。そういうことで、一応日本をはじめアメリカ、ドイツ、そういう各国が一応はそういう開発に努力いたしまして、数十件の分野が一応開発されました。その数十件の分野に基づきまして、そういうある方式がきまった上で実際の資料の蓄積が始まっていくわけでございます。そういうわけでございますので、現在でき上がったシステムについていま蓄積を開始している、そういう状況でございますので、いま先生のおっしゃいましたとおり、全体の件数は確かに約八百万件でございますけれども、そういうものはシステムができ上がれば、その開発蓄積は急速に進むものとわれわれは考えております。
  217. 岡本富夫

    岡本(富)委員 先ほど七千件とか八千件とか言われましたが、これは三万五千件できております。そうですね。それからもう一つ、話がもとに戻りますけれども、早期公開するためには外注をすると言っている。この登録は、この前長官がエラーデータが非常に多くて実施できない、これは大事なところだからロールバックできない、仕様別にこれをお答えになった。それをさらに外注してどこかで間違えたら、これは登録ではありませんけれども出願でもたいへんなことになる。これはだれがチェックして、だれが責任を持つのか。そういう面の計画もきちっとできているのか。これをひとつお聞きしたいのですが、どうですか。
  218. 荒玉義人

    荒玉政府委員 公開公報の発行に伴いますのは数字だけでございまして、データが簡単でございますので、そういった間違いは絶無とは申しませんが、少ない。ただ登録の場合は、先ほど言いましたように中身が複雑でございますし、権利の得喪そのものにずばり影響するという面がございます、という意味で差があるというふうに考えております。
  219. 岡本富夫

    岡本(富)委員 だいぶ手かげんしてものを言っておるのですね。それで四十年の五月に倉八長官が、登録も入れ始めている、こういうふうに発言している。いま長官は、登録はエラーデータがあって、エラーがたくさんできおるし、これはほんとうに大事なところだから使用できない。そうすると前長官と——あなたのほうが正直だと思うのですけれども、前長官はこの電算機を使用するについては非常にごまかした発言をしているのじゃないか、こういうふうに思われるのですが、これはひとつ正しいお答えをいただきたい。
  220. 荒玉義人

    荒玉政府委員 入れ始めたというのは、おそらく試験段階のことを言ったのじゃないか、これは想像でございますから、間違ったらお許しいただきたいと思います。
  221. 岡本富夫

    岡本(富)委員 これはここであまり言うてもしようがないですね。そんなに正直に、間違うたらお許しくださいと言われたら、間違うておると言うわけにいかぬし、これはこのくらいにしておきましょう。  それで、長官、一つ一つ私いままでお答え願ったことを整理してあれしますと、ずいぶん相違があるのですよ。だからばっぱっと洗ってきたのですけれども、あとで一つ一つ検討していただいて、それで正直なお答えを願いたいと思うのです。ここでは言いにくいこともございましょうし、またほんとうにこれを審議するにつきまして、もっともっと詳しくお聞きしたいことをざっとあらかた言ったわけですが、時間もありませんし、だから、一つ一つについて検討して、そうしてこの法改正がいかに現在よりも進まないか、あるいはまた過去を振り返ってみまして、どこにネックがあって、どういうところがぐあいが悪いかということももっと解明いたしまして、そうして改正するところは改正しなければならぬ。これをきょう私は特に要求したいと思うのです。その点も、大臣、私の質問はこれで終わったのではないのです。時間は六時までにしてくれ、こういうことですからあれですが、そこで次の機会にそれをもとといたしまして解明していきたい、こういうように思うのですが、はっきりした数字あるいはまたはっきりした答えを出していただけるかどうか。これを最後にひとつ長官に念を押したいと思うのですが、いかがですか。
  222. 荒玉義人

    荒玉政府委員 これは、私といたしましては、先ほどから申し上げますように、改むべきことは改めるにやぶさかではございませんし、同時に、全体を考えまして前向きで進めてまいりたい。御批判の点われわれも整理いたしまして、必要なデータを提出いたしたいと思っております。御了承願いたいと思います。
  223. 岡本富夫

    岡本(富)委員 なぜかといいますと、一つだけ申し上げておきますけれども、未処理案件がいま七十万件ある。これは早期公開によって減ってくる。こういうような話でありますけれども、いま特許庁内のキーパンチャーの姿を見ましても、きのうだいぶふらふらした人数を答えておりましたが、現在機械が三十何台ですかあるのですね。それでキーパンチャーの定員が三十四人。ところがきのうお答えになったのをみますと、そうではないのですね。人数がだいぶ不足しておる。機械が遊んでおる。そうして電算機のところでネックになって滞貨して、あとの人たち仕事ができない。こういうような例も見まして、この電算機については相当問題があるということももう一ぺん検討していただきたいし、またさらに、この作業場へ入ってキーパンチャーの人たち仕事をするのがほんとうにもう苦痛なんですね。この問題もここらで解決しておきませんと、あるいは人数をふやして交代をするようにするとか、これは言い出したら切りがない。調整まで、ずっと徹夜でもありませんけれども、すごい勤務時間で限界にきておる。これは私がくどくど説明するよりもあなたのほうがよく知っておると思います。したがいまして、これももっと詳しくあなたのほうから資料を出していただき、そして改めるべきことは改めていただきたい。そして、さらにこの健康管理特許行政の促進になる、要するに、いま滞貨しているのが、もっともっと流れるようになるんだという面と、両面からひとつ検討して、私どもは決して長官責任を追及して、そして何だかんだ言っているのではないのです。少しでも国民の皆さんが滞貨をなくして、早く事務ができて、そしてこの特許に登録したいというのが町の声でありますし、また国民の皆さんが要望していることであります。したがいまして、私は、この今度の早期公開が完全に事務促進にならないという見地ももっと強調したいと思ったんですけれども、きょうはこれぐらいでおきますから、あとで詳しいデータとお答えをはっきりしていただきたい。これをひとつさらに要求いたしましてきょうは質問を終わります。  大臣から最後にそれに対して答弁をいただきたい。
  224. 大平正芳

    大平国務大臣 正確なデータを出すようにということでございますので、その点につきましては御要望に沿って善処いたします。それから定員の点、その他われわれの答弁があいまいであるという御指摘でございますが、これは実員とか定員とか役所の定員の仕組みがありまして、あるいは御理解がいただけなかった点があると思いますが、私ども国会に対して決して——間違ったことを申し上げたりしたらたいへんだという意味で戦々恐々としてやっておるつもりでございます。今後も十分その点は気をつけて配慮するつもりでございます。  また、きょうは岡本さんから電算機の利用につきまして、これがネックになってきはしないかという貴重な御指摘がございまして、これは運営上私自身も十分配慮せねばならぬ重大な課題だと思いますので、一そうの検討を遂げて、御期待の線に沿いたいと思います。
  225. 岡本富夫

    岡本(富)委員 ではこれで終わりますが、法制局のほうは、この早期公開に関係ありませんので、あとで別のところでもう一度法律の問題ですから論争したいと思います。  きょうはこれで終わります。
  226. 浦野幸男

    ○浦野委員長代理 本日の議事はこの程度にとどめます。  次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時三分散会