○大平国務大臣 御
質問の肯綮に当たるかどうかわかりませんが、私はこう考えております。いまの
日本は、
技術的に見ると中進国家の域をまだ出ていないと思うのでございます。いわば
模倣技術で、けさほどからも問題になっておりました大きな創造的な
技術が生まれない。先進国の型を見て、今日、形の上では非常に巨大な
生産力を発揮してきたわけでございますけれ
ども、中身に入ればやはり
模倣技術からそう大きく出ていない国じゃないかと思うのです。そういう
意味で、資源の乏しい国といたしまして、それから平和国家として、いまから生存権を主張してまいる上から申しまして、やはり
技術国家的な道標を持っていかなければならないという
意味におきまして、
技術行政は佐野さんの御
指摘のとおり大きな転換点に立っておると思います。
それから第二といたしまして、
世界全体が大きな
技術革新期にあるということでございます。こういう大きな波の中にさおさしておるわけでございますから、その
意味におきましてさらに
技術行政の適応力というものが問われておると思います。したがって、あなたが御
指摘のとおり、過去、明治、大正、
昭和にかけて守株してまいりました
特許行政のやり方というものがそれでいいとは思いません。大きな転換が要請されておると思います。そういう認識においては、私は佐野さんと認識をともにできると思います。ただ問題は、それではそれに対して、そういう転換点に立っておるわけでございますから、
特許行政のあり方として、この時点で、この条件のもとでどうするかという
方法論になりますと、あなたと若干私は所見を異にするわけでございます。と申しますのは、私がいまこの時点で、この条件のもとでと申し上げたのは、この条件というのは、
特許行政というのは、これは政府の一機関であるという、そういう
制約を持っておるわけでございます。政府の全体の行政組織から遊離したものではあり得ない。
一つの行政組織の中でどのように位づけるかという問題はありますけれ
ども、行政組織から離れるわけにはまいらない。したがって、全体の行政組織上の
制約を、これはどなたがやっても受けるのではないかと思うのでございます。あなたの言われる御
趣旨が、そういうことからも脱皮したらどうだということだったら、話は論外でございますけれ
ども、この
制約は容易に、革命でもない限りは、これは自由になり得ない。どなたが
長官になっても、どなたが通産大臣を拝命いたしましても同じことではないかと思うのです。そういう条件が
一つあると思うのでございます。そういう条件のもとで適応力をどれだけ発揮できるかというところが、現実のわれわれの
課題であろうと思います。いままで、歴代の
長官、歴代の大臣はいままでの仕組みの中で、できるだけ
審査要員を充実いたしまして、山積する
案件に立ち向かっていただくということで、鋭意要員の充実に努力をいたしてまいったのでございます。これは私も経験を持っておりますけれ
ども、毎年毎年の予算編成の最後に残る
一つの問題として
特許庁の人員は相当高いレベルにおいてやりとりが行なわれたわけでございまして、それは
特許庁の収入がどれだけであるからというような考慮は全然別にいたしまして、いかにしてそれだけの要員を充足すべきかというようなことで、相当真剣に論議をしてきたと思うのでございます。そういう対処のしかたでやってまいりましたけれ
ども、依然として六十八万件の未
処理案件が滞積しておるということでございます。この事態は、こういう私のいま第二に申し上げました
技術革新期にある今日、中進国家である
日本が、これから駿足を伸ばそうとするときに、せっかく知識の成果であります
権利の卵を空しく倉庫の中に入れておいたのでは、これはたいへんいけないことでございまするし、といってそれを全部一定の期間のうちにこなし切るだけの要員の確保ができないということで、非常に苦悶したし、審議会といたしましても、いろいろ御審議をいただいたことと拝察するのでございますが、ここでひとつ思い切った措置として早期
公開ということに踏み切ってみようじゃないか、
審査請求
制度を採択してみようじゃないか、こういう
一つの新しいもくろみが提案されて御審議をいただいておるのでありますが、これはこういう変革期で、そうして
日本の置かれた
立場において、また与えられた状況のもとでは、これは非常に苦心した善意の提案である、したがってこのことについては御理解を願いたいということは、たびたび本
委員会で私は皆さまにお願いをいたしたわけでございます。しかしながらこれとても、こういうことで問題がすべて解決するのでございますならば、私はもう政治も行政も楽なものだと思いますが、なかなかそういうわけにいかぬだろうと思います。しかし現状よりどれだけの改善になるかということを着実に踏まえて刈り取っていくのがわれわれの任務であるとすれば、今度の提案のメリットの面は相当買っていただいていいんじゃないかと思うわけでございます。私は
特許行政のあり方といたしまして、いま与えられた状況のようなあなたの言われる今日的
課題といたしましては、どなたが考えてみてもまずこういうところではなかろうか。なるほど
特許制度の中には
先ほどからも御
指摘になっておるようないろいろな問題がありまするけれ
ども、当面火急の問題としてこのぐらいの
改正はぜひ御理解をいただいて実行さしていただきたいというのが私の悲願でございます。