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荒玉政府委員 特許関係の国際化というのは、
先生御指摘のように一年一年急速に進んでおりますと同時に、もはや思想の段階でなくて、実行の段階というわけでございます。それに対しまして大体
三つの角度からわれわれは考えていくべきではないか。
第一にPCTを中心といたします相互の
審査協力、この問題でございます。御
承知のように
審査をいたしまして
——各国ともやはり
審査主義はとらなければいけないけれども、その負担に耐えかねておるというのが、これは
日本だけでございません世界的共通な現象でございます。その場合に、どうしてその負担を軽減すべきか。御
承知のように、
一つの
発明につきまして、
日本でもそうでございますが、大体数カ国同じ
発明について
出願をするわけでございます。
日本でいえば、
日本、
アメリカ、西独あるいは場合によりますとソビエトあるいはオランダ等々、こういった形のそれぞれの
出願をどうしたら合理的に
処理できるかというのが、いわゆるPCTのねらいでございます。具体的に申しますと、まず一国がサーチ機関になりまして、これがいわゆる下ふるいの
審査いわゆるサーチをやる。それをもとにいたしまして、
出願人は各国に
出願するかどうかをきめていく。そうしますと、現在はそういったものがございませんから、同じものを数カ国に出していく。各国は二重に
審査していく。これでは能率が悪いから、
先ほど言いましたようなPCTをつくりまして、そして効率のよい
審査をやっていく。これは当然わが国といたしましても重大な関心を持つと同時に、やはり国際化の波に乗って国際的な協調もはかると同時に、われわれの負担も軽減していきたい。これは当然われわれとして前向きに
処理したいと思います。アイシレパットというのは御
承知のようにお互いの
審査資料を最も合理的に共通に使っていくということでございますので、当然われわれとしては進んでいくべきだと思います。
それからその次はEECの
特許という問題でございます。これは御
承知のように現在の
特許はそれぞれの国が主権を持っております。したがって、
特許はそれぞれの国で別な
特許でございます。特にEECの場合は御
承知のような長年の方向づけがございます。したがいまして、できるだけ一本化していこう、こういう態度でございます。ただ、
日本の場合にEECの中に飛び込むとどれだけのメリットがあるかという問題がございまして、やはり国際化はPCTを中心に今後を考えていけばいい。EECに飛び込むというメリット、デメリットはあるのかないのかという
意味では、直ちにそちらに入っていく必要はない。
最後に、アジアの問題でございます。端的に申しますと、やはりアジアは一本、特に工業所有権の面で一本だというにはやはり今後時間がかかると思います。御
承知のように、アジアの国は工業的に申しまして
日本と比べますと相当の開きがございます。それと、それぞれの国内の事情がございます。したがいまして、おそらく一本化していくということは近き将来にあるとは私考えておりません。また、
日本といたしましては、これはやはり何といいましてもその面におきましてはアジアの先達でございます。毎年われわれは数多くの留学生を受け入れまして、そしてできるだけ
日本の歩んだ姿をアジア地域に広げていく、そういう努力が現在としては一番効果的だと思います。それと同時に、御
承知のように一番近隣の韓国との間におきましても、昨年商標の保護が終わったばかりでございます。
特許等の保護は依然としてそう保護されていないという状況でございますので、その地域におきましては、お互いの事情を理解しながら、われわれとしては、
先ほど言いますように
日本の歩んだ姿をたびたび実際の目で見ていただき、それを広げることによりましてできるだけ工業化が進んでいく、ひいては、遠い将来にはお互いに工業所有権を保護し合って、できるだけ効率のいい
制度にするということを、将来の問題として考えていくという方向でありますのが現在の状況かと思います。