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1969-06-06 第61回国会 衆議院 商工委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年六月六日(金曜日)     午前十一時二十九分開議  出席委員    委員長 大久保武雄君    理事 宇野 宗佑君 理事 浦野 幸男君   理事 小宮山重四郎君 理事 藤井 勝志君    理事 武藤 嘉文君 理事 中村 重光君    理事 堀  昌雄君 理事 玉置 一徳君       阿部 喜元君    天野 公義君       内田 常雄君    遠藤 三郎君       小笠 公韶君    大橋 武夫君       海部 俊樹君    神田  博君       鴨田 宗一君    黒金 泰美君       小峯 柳多君    齋藤 憲三君       田澤 吉郎君    竹下  登君       渡海元三郎君    中川 一郎君       二階堂 進君    西岡 武夫君       橋口  隆君    松澤 雄藏君       湊  徹郎君    渡辺美智雄君       石川 次夫君    岡田 利春君       加藤 清二君    勝澤 芳雄君       佐野  進君    古川 喜一君       武藤 山治君    塚本 三郎君       吉田 之久君    近江巳記夫君       岡本 富夫君  出席国務大臣         通商産業大臣  大平 正芳君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     山田 精一君         公正取引委員会         事務局長    柿沼幸一郎君         科学技術庁振興         局長      佐々木 学君         通商産業省企業         局長      大慈彌嘉久君         通商産業省重工         業局長     吉光  久君  委員外出席者         運輸省自動車局         整備部長    堀山  健君         専  門  員 椎野 幸雄君     ————————————— 六月五日  委員勝澤芳雄辞任につき、その補欠として稻  村隆一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員稻村隆一君辞任につき、その補欠として勝  澤芳雄君が議長指名委員に選任された。 同月六日  委員天野公義君、小川平二君、大橋武夫君、鴨  田宗一君、小峯柳多君、島村一郎君、田中榮一  君、丹羽久章君、橋口隆君、増岡博之君及び吉  田泰造辞任につき、その補欠として湊徹郎君、  西岡武夫君、渡辺美智雄君、中川一郎君、阿部  喜元君、田澤吉郎君、渡海元三郎君、松澤雄藏  君、二階堂進君、齋藤憲三君及び吉田之久君が  議長指名委員に選任された。 同日  委員阿部喜元君、齋藤憲三君、田澤吉郎君、渡  海元三郎君、中川一郎君、二階堂進君、西岡武  夫君、松澤雄藏君、湊徹郎君、渡辺美智雄君及  び吉田之久君辞任につき、その補欠として小峯  柳多君、増岡博之君、島村一郎君、田中榮一君、  鴨田宗一君、橋口隆君、小川平二君、丹羽久章  君、天野公義君、大橋武夫君及び吉田泰造君が  議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 大久保武雄

    ○大久保委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済総合計画に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。宇野宗佑君。
  3. 宇野宗佑

    宇野委員 時間の関係もございますので、ごく素朴な質問をきわめて簡単に次々とやっていきたいと思いますので、大臣並びに委員長の明確なる御答弁をお願いする次第であります。  わが国経済が、今日、非常に重大な危機を迎えておるということは、われわれがひとしく認識しておるところでありますが、それだけに日本経済を取り巻く環境に順応し得る政策を次々ととらなくては世界の大勢におくれるということも、またひとしくみなが考えておることでございましょう。そこで、産業界におきましても、そうした事態に対処するために、構造改善であるとかあるいは産業編成であるとか、いろいろな問題が今日大きく論議されておるわけでありまするが、要は技術革新によってさらにわが国経済が国際的にも競争力を持つようにすることが肝要なことである。それがためには、設備投資も勢い世界競争に対処し得るような大型化に転換さすことも必要である。それがためには、さらには資源の乏しいわが国としては海外に資源を確保しなければならない。いろいろな重大な問題を今後私たちは解決していかなくてはならないのであります。  そうした意味合いにおいて、この目まぐるしい経済に対処するわが国産業界も大きく動き出したわけでございまするが、そうした再編成なりあるいは構造改善を具体的に実施しようといたしました場合に、当然従来の慣例に従いまして、いわゆる独禁法精神に照らしていろいろと審議を仰がなければならないというのが今日ただいまのわが国の姿でありましょう。独禁法そのもの自体は戦後に誕生いたしまして、今日までそれを経過的にながめますると、こんとんたる経済事態から今日非常に躍進を遂げておりまする日本経済の新しい段階に至るまで、それはそれなりに実に貴重な役割りを果たしてきたものである、私はこう思うのであります。しかしながら、何ぶんにも戦後にできた法律自体であるということ、またそれが制定されましたその当時のいろいろの環境等々を勘案いたしまして、私は、もう二十数年たった今日の日本経済にそれは一つの確かに重要な法律ではあるけれども、やはりわが国としては国際競争力を持たなくてはならない、だから産業編成が叫ばれ、構造改善が叫ばれておるという時代におきましては、そのもの自体をはかるに際しまして、法の運用そのものにはやはり私はある程度弾力性がそこにあることが必要ではないかと思うのでございます。しかも、この独禁法解釈し運営をするのは公正取引委員会であるということ等を私は考えますると、本質的な問題として、独禁法制定当時の国際情勢なりわが国経済情勢と今日は違うから、ひとつ法自体運用に関しましてもわれわれといたしましては弾力性を持っていただきたい、そして日本産業躍進ためにも、国民生活の安定のためにも、そうした意味合いにおける法の運用をしていただいたほうがいいのではないか、これは素朴な私の気持ちでございまするが、これに対しまして、ひとつ通産大臣並びに山田委員長の御所見を伺っておきたいと思うのであります。
  4. 大平正芳

    大平国務大臣 宇野委員指摘されますように、いま経済それ自体が大きな変革期にある、それから日本経済はとりわけ大型化の過程にある、そういう意味で振幅の激しい変革期にあるという御指摘は私も同感でございます。したがって、こういう事態に対応いたしまして、われわれ産業政策を受け持っておる者から申しますと、それに柔軟な対応力を示さなければならない。技術開発面におきましてもあるいは資源の確保におきましても、さらには産業の体制の問題といたしましても、御指摘のような点に十分の配慮を加えてまいることは私どもの任務でございまして、あとう限り、能力の許す限りそのように考えてきましたし、今後もそういう方針でやってまいるつもりでございます。  それから独禁法の問題でございますが、これは戦後わが国経済秩序基本法規として働いてまいりました法律でございまして、間々問題になる案件はございますけれども、たくさんの案件がこの秩序の中で処理されて、これまでは適応力を持ってきた法律であると私は評価いたしておるわけでございます。この運用は、公正取引委員会がその権限と良識において運用されておるわけでございまして、私は、公正取引委員長はじめ公正取引委員会の方々の御良識に十分の敬意と期待を持っておる次第でございます。
  5. 山田精一

    山田政府委員 ただいまお尋ねのございました、現在世界経済の中に置かれましたわが国経済の位置から申しまして、国際競争力をすみやかに強化する、これはもうあらゆる政策をその方向に集中しなければならないもの、かように考えております。ただ、国際競争力を強化いたします上において、公正にして自由な競争が行なわれる、これは不可欠の要件の一つである、かように考えております。したがいまして、私どもといたしましては、わが国経済が、法の定めておりますように、公正にして自由な競争を通じて民主的な健全な経済発展をはかる、これにあらゆる政策を集結いたしていくべきもの、かように考えております。したがいまして、その置かれました経済的条件のもとにおいて独禁法目的また独禁法精神を十分に生かしていくように政策を進めていくべきもの、かように考えております。
  6. 宇野宗佑

    宇野委員 いま公取委員長の御答弁を伺っておりますと、法律精神との関係においてはそのとおりであろうと思われまするが、しかし私が質問いたしましたのは、いわゆる移り変わりの激しい経済に対応するため産業界ではいろいろな方法をとっておるのであるが、その方法をとらんとするときには当然独禁法のごやっかいにならなければならないが、その独禁法運用をし解釈をされるのは公正取引委員会だけであるので、公正取引委員会といたされましても、解釈運用においてはやはり柔軟性があってしかるべきではなかろうか、こう申し上げておるのであります。いかがでございましょう。
  7. 山田精一

    山田政府委員 法律解釈運用は、むろんこれは一般論といたしまして法律の字句にリジッドであってはならないと存じます。ただ、その法律の全編を通じて示されておりますところの目的ないし精神、これはどこまでも尊重していくべきもの、かように考えております。
  8. 宇野宗佑

    宇野委員 しからば、大ざっぱにこの法律を把握いたしまして、私は独禁法というものは原則的には合併そのもの自体を否認するものではないと考えておるのでございまするが、いかがでございましょう。
  9. 山田精一

    山田政府委員 御指摘のとおりでございまして、現に公正取引委員会といたしましては、昨年中におきまして、実に一千二十件にのぼる合併を認めておるわけでございます。
  10. 宇野宗佑

    宇野委員 そこで問題になるのは、合併の場合には、第十五条でございましょうが、この第十五条の示すところによりましていろいろと審査を願うわけでありますが、やはりこの法律にも一つ期間というものが置かれておりますと、非常に多岐多様にわたっておる産業界の実態を把握せんがためには、単に法律で定められておるとおりに、届け出があってから一定の期間内に審査を行なうということは、私は技術的にもなかなか御苦労を願わなくちゃならない点ではなかろうかと思うのでございます。したがいまして、勢い富士八幡という大型合併に関しましては事前審査というものがなされたのでありますが、私は、この事前審査性格そのものに関しましては、すでにこの委員会におきましても再三議論がなされておりますので、あえてここで再びお尋ねいたそうとは思いませんが、原則的には独禁法合併を否認し否定するものではないとはっきり申されました。そのとおりでございましょう。ただ十五条の条文にひっかかる点があった場合は別であるということになるのでございますから、そこで事前審査というものがなされました。しかしながら、その経過を私が静かに考えてみますと、なるほど大型合併で非常に慎重審議をしていただいたわけではございましょうが、今日の経済が目まぐるしく動いておる、非常にスピーディーに動いておるということを考えますと、この事前審査に一年有余かけていただいたことは慎重審議であったと申せましょうが、反面におきましては、何かこう非常に時間がかかったような感じもするのでございますが、この点、私は事前審査性格そのものをもう一度委員長から解明をしていただきまして、また、一年有余かからざるを得ないのが現状であるならば、そうであるということをひとつ体験上からの御苦心のほどを一言でお聞かせ願えればけっこうだと思うのでございます。
  11. 山田精一

    山田政府委員 内相談性格につきましては、私は、一種行政相談といたしまして、行政官庁といたしてこれに応じるべきものと、かように考えまして、八幡富士の内相談を受けた次第でございます。かなり長期間を要しましたことは遺憾でございますが、もちろん行政根本原則といたしましてスピーディーに処理いたす、これはもう申すまでもないことでございます。ただし、問題がきわめて大きい問題であり、また一つの法益からだけ判断をいたすのではございませんで、言いかえれば、八幡富士当事者だけの利害ということから判断いたすだけではございませんで、独禁法性質上、競争事業者あるいは需要者あるいは最終消費者、これの利害の調整をいかにはかってまいるかという判断をいたします事柄の性質上、ある程度の時間を必要とするのではないか。一例を引きますと、イギリスの独占委員会におきましては、事案が付託されましたら六カ月以内に処理しなければならない、かようになっておるわけでございますが、六カ月程度はどうしてもかかる、かようなことが普通ではないかと存じます。むろん簡単なケースにつきましては、先ほど一千二十件にのぼる合併処理いたしたということを申し上げたわけでございますが、これはもうきわめて短時日の間に処理をいたしておるわけでございます。  それから一言申し添えますが、八幡富士審査につきまして、何かはっておいて期間を空費したような御想像もあるかと存じますけれども、さようなことは絶対にございませんで、事務局担当者はほとんど不眠不休と言っても言い過ぎではないくらいに非常に集中的に努力をいたしまして、なおかつそれだけの期間を要した、かようなことでありますことを一言申し添えておきたいと存じます。
  12. 宇野宗佑

    宇野委員 非常に長期の期間にわたりまして御苦労なさったことはわれわれも認めるにやぶさかではございません。しかし、私が申し上げましたとおり、なるほどいろいろな角度から検討しなければならないからそう短期間にはできない、これはもう十分わかるのでございますが、事前審査そのもの自体が、今日は一応委員長解釈として国民行政窓口で応待することは必要なことだから、いわゆる行政相談として行なわれたというのでございますが、はっきり申し上げて、法の定めるところではございません。したがいまして、そういうふうにせっかく苦労されましても、いろいろと時間がかかったじゃないか、何か粗雑じゃなかっただろうかと、そういうふうな想像を生むのであるならば、私はむしろこれからたいへんないろいろな問題がどんどんとわが国経済発展につれまして続出すると思いますので、この一年有余体験を通じまして、事前審査そのもの自体を何か法的に明らかにするとか、そうしたほうが便利であるのかないのか、その辺の御感想いかがでございましょうか。
  13. 山田精一

    山田政府委員 事前審査は、ただいまも申し上げましたごとく、一種行政相談でございますので、これを法律上明らかにいたすということはいかがなものか、かように考えるわけでございます。むろん行政相談におきまして問題点がなければ、これはもう一週間かそこらでもって問題はございませんということを答えるに違いないのでございますが、問題点がございますと、ある程度の日数を要するということになるかと思うのでございます。またそれによって当事者利益が不当に害されることになるかどうかと申しますと、もしも非常に急がれる場合におきましては、届け出をなさいますれば、最長九十日以内に何らかの処置をしなければならない、かような規定があるわけでございますから、当事者利益が不当に害されるということはまずない、かように考えるわけでございます。
  14. 宇野宗佑

    宇野委員 この辺はいろいろと議論発展するところでございましょうが、いまのようなお考え方で、事前審査そのもの自体行政相談であるから、いうなれば行政府に属する公取としても国民に対するサービスをしておるのであるから、あえて法的に規制する必要はあるまい、もし急ぐのならば法的にきちっと定められたとおりの届け出をすればいいじゃないかというのは、私は何か紋切り型的なお考えではなかろうかと思うのでございます。産業界は何とかして国際競争力をつけようというので、あらゆる犠牲を払ってでも前向きの姿勢をとりたいと考えておるのである。そうしたことにおいて新しい技術開発をしたいと考えておるのである。そうした中には国民の創意くふうという自由主義に基づいた問題をも含めて推進しようと考えておるのである。こうしたときに、合併を急ぐのだったら届け出をしろよとおっしゃいましても、届け出をいたしました場合には、三十日以内において、特別の事由あるときにはプラス六十日でございますね。いま英国の例を引いて六カ月でもむずかしいんだよとおっしゃった委員長が、法律に従えばもっとスピーディーに解決できるじゃないかと言うのは、私はちょっと何か行政相談窓口において国民の御相談に応じましょうという御趣旨と反するのじゃないかと思います。もちろん私は何もこれによって法改正をせよ云々と言うておるのじゃございませんよ。少しもそういうような気持ちで本日申し上げておるのじゃございません。われわれが素朴に考えた場合に、法的に規制されておらない事前審査であったがために、いろいろな疑問を発し、いろいろな批判がある。そしてまた公取そのものにつきましても賛否両論議論が猛烈にわき上がっておる。こう考えますと、今後公正取引委員会というものの存在は、これはたいへんな存在なんで、独禁法の民主主義的な経済発展させなければならないという精神に基づいた大切な委員会だと私は思うのです。その委員会が大切なればこそ、私は事前審査というものも、これから複雑多岐にわたるところの産業界と十二分に話し合ってもらわなければならないのだから、それならば、過去一年間いろいろな議論があったであろうけれども、どこかにおいて事前審査の手続を明らかにしてみようとか、あるいははなはだむずかしいことではあるが、事前審査の期限も明確にしたほうが、時と場合によっては便利じゃなかろうかというようなことが私は言い得るのじゃなかろうかと思って実はお尋ねしたような次第でございます。通産大臣、いかがでございましょうか。ただいまの事前審査につきましていろいろお話が出ておりまするが、大臣として、今後産業界のいろいろな問題に、経済政策としては弾力性をもって、同時に、スピーディーに対処していかなくちゃならない、こういう立場に立ったときに、やはり何か明らかにしたほうが、今後の産業編成ためにも、また公正取引委員会存在ためにも、公正な審判をしてもらうためにもいいんじゃないかと私は思いますが、御所見を承りたいと思います。
  15. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど委員長からもお話がありましたように、合併は多数の案件短期間にスピーディーに処理されておるわけであって、八幡富士のような問題は大型なるがゆえにという意味よりは、大型であるから非常にたくさん検討しなければならぬ対象が大きいという問題もありますけれども、同時に、これは従来前例のない事案でありまして、公取さんのほうで相当長く時間をかけられざるを得なかった事情は、私には理解できるわけでございます。ただ、事前審査という問題について意見はどうかと問われますならば、これを制度的にどうするとかいうようなことについて、私はそんなに権威ある意見をはくほどの用意はないわけでございますが、ただ一点、今度の御審査を客観的に拝見しておりまして感じましたことは、事前審査行政相談を通じまして事態を明らかにしてまいるということは大切なことだと思いますし、また非常に親切ないいやり方だと思います。が、これは一つの予防的な措置と申しますか、公取法に違反する、抵触するようなことがないようにするという意味合いも含めておるとすれば、当事者公取当局との間での事前相談というのは、何かもう少し打ち割ったものであってほしいんじゃないかというふうな感じが実はするんです。山田さんがここにおられて非常に言いにくいんだけれども、これ以上応じませんよとか、一々これはどうだ、これはどうだというてきた場合に、そういうことを一々私のほうで事前相談に応じませんという、公取当局としては非常にきびしい、厳正な態度で臨まれたのでございますけれども事前相談という制度は一体そういうものなのかどうなのかというふうな点で一まつの疑問を持つというのは率直な心境でございます。
  16. 山田精一

    山田政府委員 富士八幡の場合は、先ほど来申し上げましたごとく、非常に例外的なケースでございまして、一千二十の合併案件の中で何件が内相談がございましたか、私はっきりは記憶いたしておらないのでございますけれども、これらはすべて数日間のうちに処理されておるわけでございます。もとより、先ほども申し上げましたごとく、行政根本原則といたしまして、今後ともできるだけスピーディーに処理をいたしていく、これははっきりと方針といたしてまいりたいと存じます。  それから内相談でございますから、これは十分に親切に相談に応じるのが私ども趣旨とするところでございますが、ただ、何と申しますか、表現が必ずしも適切ではないかもしれませんが、商取引の折衝をいたすように、非常に小出しに少しずつ出しまして、これで値段はこのくらいにまからないかというような——これは多少表現は悪いかもしれませんけれども、それは行政相談の域を越えるものではないか、かような感想を持っております。
  17. 宇野宗佑

    宇野委員 率直に申し上げまして、行政相談であるところの事前審査においていろいろと一年有余もかけられたのであるが、結論は、はなはだ残念にして両社合併そのもの自体に対してノーというお答えを出されたわけであります。  そこで私は、第十五条について委員長にこの問題と関連してお伺いをいたしておきたいのでございます。第十五条第一項の「競争を実質的に制限することとなる場合」ということでございますが、この場合、たとえばこの両社大型合併を事例にとりますと、第一問として先に簡単に尋ねておきたいと思いますが、これにひっかかるのは四品目であると聞いておりまするが、そうでございますか。
  18. 山田精一

    山田政府委員 現在の具体的なケースにつきましては、近く第一回の審判を開く段階でございますので、具体的な案件につきましてどこが法律に抵触する問題点であるかということを詳しくただいまの段階において申し上げますことは、審判の上にも支障があるかと存じます。ただ、すでに勧告なりあるいは審判開始決定なりでもってごらんいただきましたように、四つの品目につきまして十五条に抵触いたすおそれが非常に濃厚であるということでございます。
  19. 宇野宗佑

    宇野委員 おそれがあるということですが、もちろん審判がこれから開始されるわけでございますから、勧告書に基づいて私も御質問申し上げたいと存じますが、その場合に非常に膨大な幾つかの分野においてこれが検討されたのでありまするが、両社にとりまして合併された暁に占めるこの四品目パーセンテージは、委員長は当然御承知だと思いますが、何%でございましょうか。
  20. 山田精一

    山田政府委員 大体パーセンテージといたしましては、両社の総売り上げ高に占める割合を合計いたしまして一割程度でございます。ただ、品目の国内総出荷額は、鉄道用レールが百四十億円、食かん用ブリキが二百億円、鋳物用銑が四百億円、鋼矢板が二百億円、合計いたしまして約千億円に相なる、かようになっております。
  21. 宇野宗佑

    宇野委員 額は第二の問題といたしまして、一応両社の総生産量に占めるパーセンテージは、いま委員長が申されたとおり一〇%である。われわれの聞いておりますのは、量の問題から申し上げると二・八%というような数字を聞いておるのですが、通産大臣いかがですか。
  22. 大平正芳

    大平国務大臣 公取当局から御答弁をお願いすることにいたします。
  23. 山田精一

    山田政府委員 ただいま御指摘のございました二・八%と申しますのは、あるいは違うかもしれませんけれども、私の手元の資料によりますと、鋼矢板だけで二・八%になっております。かようでございます。  なお申し上げますと鉄道用レールが一・九%、食かん用ブリキが三・八%、鋳物用銑が二・六%、鋼矢板が二・八%、かようになっております。
  24. 宇野宗佑

    宇野委員 いまの公取パーセンテージ、それをそのままわれわれが了承するといたしまして、それに対しましてやはり両社からは何らかの対応策が出されておるはずでございます。それが引っかかるのであるから、引っかからないように、こういう対応策がございますということでございます。そこで再び事前審査ということになるのですが、やはり私は原則的に独禁法合併を阻止するものにあらずという委員長のお考えどおりものを考えるとするのならば、このパーセンテージから考えましても一〇%そこそこで、いや、これに対しましてはこういうような方法がある、解消すれば、いわゆる競争制限をもたらされないような状態にすれば、やはり合併というものは推し進めてもよいという観点から、私は、当然行政相談としての事前審査がなされたものであると信じたいのでございますが、いろいろとその点におきまして問題があったように承るのであります。  そこで、私は、この問題につきましての第一点として、たとえば一割なら一割といたしましても、第十五条の精神から申し上げて、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合、残り九〇%にメリットがございましても、一割のデメリットのためにそうした産業の再編成はできないのであるのかどうか。われわれといたしましては、この点を直すというのですから、直せばいいと思うのでございますが、たとえばこの独禁法に示されておりますとおり、民主的な経済発展に資する、それがためわが国国際競争力をつけなくちゃならぬ、だからこういうふうに再編成をしたい、そしてその九〇%は国民経済発展に対しましてもメリットがある、ただ残り一〇%だけがいうならばデメリットである、こうした場合に、メリットのほうが大きいのです。メリットのほうが大きいならば、あとの一〇%はこういうふうに変えればメリットになるじゃないかというふうに、私は公正取引委員会は指導されるのが当然であろうかと存じます。ただその点十五条によりまして、一割が引っかかっておるからあとの九割もだめだ、その点をひとつ明確にお答え賜わりたいと思います。  (発言する者あり)
  25. 大久保武雄

    ○大久保委員長 御静粛に願います。
  26. 山田精一

    山田政府委員 第十五条に抵触するという指摘をいたしました品目につきまして、ただいま御指摘のございましたように、問題点を完全に解消いたす措置、これがとられれば、これはもう当然問題がないのでございまして、合併は大いに歓迎いたして認めて差しつかえない、かように存じます。結局、要は問題点を解消いたす道があるのかないのか、こういうところに尽きると思うのでございまして、おそらく当事者において鋭意研究しておられるのではないかと考えます。
  27. 宇野宗佑

    宇野委員 そうした形においていよいよ審判が始まるわけでございますが、法律の上におきましては審判はいうならばエンドレスでございます。しかし、すでに一年有余事前審査をなされ、またいま問題点をあげたが、これが解明せられれば、いま私が申し上げたとおり当然何の問題もないのである、こういうふうにおっしゃいました。これもまた非常にむずかしい質問であるかもしれませんが、この審判は、すでにして十二分の事前審査がなされておりますし、また同時にその裁判官とも申し上げるべき人には、公正取引委員会委員がなられる場合もあるわけでありますし、そうしたことを考えますと、この期限が、大体どのくらいにおいて審決を下すことができるであろうか。いままでの経緯から考えまして、どのくらいの期間があれば審決を下すことができるか、持っていくことができるか、委員長はいかがにお考えでありましょう。
  28. 山田精一

    山田政府委員 私どもといたしましては、審判はできるだけ短い期間のうちに決着をつけたい、かように念願をいたしておるのでございまして、現にまだ第一回の審判は開いておりませんけれども、すでに準備手続を始めておるわけでございまして、極力期間の短縮をはかりたいと念願をいたしておるのでございます。ただ、どのくらいかかるであろうかというお尋ねでございますと、これは先方の代理人の弁護士さんがどの程度の争点とどれだけの証拠をあげて提出されるのか、その辺の見通しがつきませんと、ただいまにわかに、どのくらいで済むであろうということは申し上げかねます。実情を御理解いただきたいと存じます。
  29. 宇野宗佑

    宇野委員 いまおっしゃったとおりに、こうした合併問題は、非常に流動の激しい経済環境に対処しなくちゃならないのでございますから、極力審判は早急になさったほうがよいとわれわれも考えるのであります。  そこでお尋ねいたしたいことがございますが、今日までの経緯を考えますと、内示のときの内容と勧告書の内容と、やや、ニュアンスというよりも事実の上において、文言の上において差があることは、これは委員長もお認めであろうと思われます。すると、その勧告書をお出しになられました公正取引委員会が、今度は行政府的な立場から司法的な立場におかわりになって審判を開始されるわけでございますので、われわれが常識で考えますと、きのうまで検事であった人がきょうからは判事になるというような考え方もありまして、そこら辺に非常に私は、この公取性格のむずかしさというもの、これは十分わかるのであります、十分わかりますが、極力スピーディーに審判を開始して審決を得たい、この気持ちの上からいたしまして、これは私は、あえて立法府がそのような問題に介入するわけじゃございませんが、こうした場合に、でき得るのならば、いままで委員長が非常に行政相談をやって、窓口国民の声にこたえるのだというそうした気持ちでながめてこられたこの事案であるだけに、私はできたらその審判の結果は同意審決というふうな形においてなされるのが望ましいことではないか、こういうふうに考える次第でございますが、これは感想であってもけっこうでございますから、一言御所見を承っておきたいと思います。
  30. 山田精一

    山田政府委員 先ほども申し上げましたごとく、まだ審判廷におきます争点がどこになりますのか、これもきまっておらないわけでございまして、したがってどういう形になるか、予想の限りではないのでございます。ただいまの御意見は御意見といたしまして、ありがたく拝聴いたしておきます。
  31. 宇野宗佑

    宇野委員 いま委員長は、私は希望的意見として申し述べた同意審決に対して、まあそれは御意見は御意見なりに尊重する、こう言っていただきましたので、(「承るだ」と呼ぶ者あり)ひとついろいろの立場において、これは今後大いにやっていただきたいと思います。いまそこら辺で承ると言われたが、私は尊重するというふうに聞いたと思うのですが、じゃもう一言念を押しておきましょう。念を押しておいたほうがいいと思いますから。  この五十三条の三の同意審決というものに関しましては、一部承るところによると、今度のこの合併問題はそんな問題じゃないんだ、こんな問題は同意審決に持っていくべきじゃないんだというような声があるわけでございます。しかし、なるほど今日まで、この審判がなされましたその対象となったのは全部違反事例であったわけでございますね。しかし今回出されておるのは、その審決の結果はいざ知らず、出されておる事案そのものはわが国産業にとっても将来重要な意味を持つであろうところの産業編成一つの形である、こういうふうに考えました場合に、私は、やはり公正取引委員会は司法的な性格も十二分に帯びてはおられるが、何回も申し上げたとおり、行政相談的な、その気持ちにおいてですよ、できるならばそういう形をとられたほうがいいと思うのでありますが、まあとれるかとれないかということを聞いておきましょう。この事案についてはとれないとおっしゃるのであろうか。違反の事例でございましても、その違反を犯した人が率直に認めて計画書を出したら自然と同意審決というような立場をとれるわけでございますから、ましてや、四つの品目に関してどのような対応策が出てくるかわからないけれども、それが十五条に抵触しないのならば当然合併は認められる、そういうふうな非常に柔軟性のある態度でいままで答弁なさったその経緯を考えると、私は、結論においてどのような方法があるかはしれないけれども、その審決の方法として同意審決もそのうちの一つであるということぐらいは申されていいのじゃないかと思うのです。いかがでございましょうか。
  32. 山田精一

    山田政府委員 同意審決という形式をとりますかいかがか、これは多分に法律技術的な構成の問題でございまして、したがいまして、抽象論といたしてはなかなかむずかしいと思います。具体的な審判の過程を通じまして、いかなる形の審決にいたすか、これからその検討を進めてまいる段階である、かように存じます。
  33. 藤井勝志

    ○藤井委員 ちょっと関連。いまの問題、私は今後の進め方について重大な問題でありますから、一言簡単に関連質問さしていただきます。  独禁法五十三条の三に御承知のごとく同意審決が出ております。民事訴訟でいえば和解制度というのがある。私は今度の合併が、先ほどから指摘されておるごとく、これから結論が出て、これが違法かどうかという問題が確定するわけで、カルテル違反とか、すでに違反事項が起こった事案とは合併事案は違う。こういうことから言えば、むしろもう十カ月以上も事前審査をずっとやっておるのだから、激しく移り変わる国際情勢に対処して、基本的には規模の拡大ということがいいことは冒頭に述べられたとおりなんですから、早く決着をつけるという意味において五十三条の三は大いに活用すべきだ、こういう考え方を私は持っておる。あたかも民事訴訟における和解制度のごとくこれを運用していいではないか、こういうように思いますので、関連して重ねて御質問いたします。
  34. 山田精一

    山田政府委員 審判の結論をできるだけすみやかにつけたいという点においては、先ほども申し上げましたごとく、私どもの深く念願いたしておるところでございます。ただ、同意審決の形でつけますか、あるいは問題点が解消いたしてしまうものであるのか、その辺は今後の審判の進みぐあい、あるいは争点がどこに出てまいるか、こういう点にかかるところであろうと存じます。御趣旨の早く決着をつける、この点については十分それを念願、目的といたしまして努力をいたしたい、かように考えております。
  35. 藤井勝志

    ○藤井委員 まことに何だか……。私が聞きたいことは、この制度をそういう運営に持っていく解釈ができるかできないか、これをひとつお答え願いたい。
  36. 山田精一

    山田政府委員 従来における解釈といたしましては、かなりむずかしい、かように考えます。
  37. 藤井勝志

    ○藤井委員 それじゃ、あとまたいたしますからこれで……。納得して下がるわけじゃございません。
  38. 宇野宗佑

    宇野委員 いまの五十三条の解釈、なかなかむずかしい問題ではございましょうが、重ねて私は、いま藤井君が関連質問いたしましたとおりの観点でやられるほうが、今後のわが国産業の推進のために、また国民経済ためにもよいと考えます。その点だけ念を押して申し上げておきます。  ただ、私は最後にはなはだ残念なことを御質問申し上げなくちゃなりませんが、こうした批判に対して委員長はどういうふうにお考えであるかという問題についてであります。  それは、先ほど来私が事前審査で申し上げましたが、事前審査においては、行政窓口であるのならば、相談であるのならば、もっともっと専門家の意見も聞き、あるいは率直に所管官庁の意見も聞き、そして公正たるべき委員会は当然公正な審決をなされたらいいわけでございますが、ところがその間におきまして、あたかも当事者を被疑者のごとく扱われたというふうな批判の声が非常に高いのです。被疑者と検事が出会ってなれなれしくしゃべってはいけないとお思いになったのかはしれませんが、そのような意味合いにおいて、だから対話もなかったし協議もなかったといわれておる。そうした結果、いかなる条件が整おうとも、この合併については最初から答えはノーであるというふうに——われわれはそこまでは考えません。これから私たちはもっともっといろいろな観点で御意見を承り、最終的な結論を見ないことには結果は出ないわけでございますが、今日ただいまの批判といたしましては、そのようなことがいわれておるのであります。現に内示書をお出しになられましたときには、何かしら条件つき賛成のようなニュアンスというものが非常に濃かった。それが勧告書においてがらりと変わった。その当時の話では、いかなる条件がつこうとも、あるいはいかなる対応策が出ようとも、一年かかろうが二年かかろうが、これはノーなのであるという最初から答えがきまってなされたというような批判がございますが、この批判に対して委員長はどういうふうにお考えになりますか。
  39. 山田精一

    山田政府委員 ただいま御指摘のございました当事者との間に対話がなかったではないかという、これは一部の批判かもしれませんが、お話がございましたが、私ども決してさようには考えておりません。当事者側の代表者に委員会の席に出ていただきまして十分に御説明を承ったこともございますし、また先方が書面の形で私ども意見を開陳された機会も数回ございまして、十分に行なわれた。まあ先方さんのお気持ちとしては、毎日でもいらっしゃって御説明をなさりたかったかもしれませんけれども、これはやはり程度があるのではないか、かように考えております。  それから、初めから何年かかってもこれはノーということであったのではないかというような一部の御批判についても御指摘がございましたが、私どもといたしましては、この合併をぜひ成立させたいとか、あるいはぜひ成立させたくないとか、そういうような予断は一切持っておらないのでございまして、法律に照らしまして問題点がなければオーケー、問題点が残ればこれはノー、こういうつもりで審判を進めてまいるつもりでございます。
  40. 宇野宗佑

    宇野委員 いまの批判に対しまして、委員長がそのような厳正公正なる立場をとっていらっしゃるのならば、私たちははなはだけっこうなことである、こういうふうに考えておりますが、ただ具体的に申し上げますと、今日に至るまでに職員組合の委員長への審判開始方申し入れがあったやに承りますが、いかがでございましょうか。
  41. 山田精一

    山田政府委員 さような事実は全くございません。
  42. 宇野宗佑

    宇野委員 では、職員による委員の過激なつるし上げがあったとも承りますが、これはいかがでございましょう。
  43. 山田精一

    山田政府委員 全然ございません。
  44. 宇野宗佑

    宇野委員 しからば、昭和四十四年五月十三日付日本経済新聞社「鉄鋼合併審判に望む」という社説において——全部読んでみましょう。「審判段階を迎えるに当たっては、公取委の事務局職員に対しても、その言動を慎むように望みたい。合併問題の取り扱いはいまや実質的な裁判段階へと移行したことを十分に考慮してほしいのである。これまでの稚移を振り返ってみると、事務局職員の言動には公務員の服務規律の点から判断して不可解な面があった。いま実質的な裁判段階を迎えてなおそれが改まらないとすると、問題はいっそう重大になる。きびしい自省を求めておく。」この日経の論説に対しまして、委員長は、こうしたことは全くなかったのであるか、なかったのであるとするならば、日経はどこからこのような種を仕入れてきておるのであるか。この辺の社説に対しましての御批判をお願いいたします。
  45. 山田精一

    山田政府委員 ただいまお読み上げになりました社説の前段の、事務局の職員が固定した意見を主張したようなことが書いてございましたが、それは事務局といたしましてそういうことは全然ございません。ただ、これは事務局といえども人間の集まりでございますから、あるいは個人が友人などに自分の感想を漏らしたことはあるかもしれません。しかしこれは事実の存否とか、そういうことについてあれしたわけではございませんで、自分の考えはこうあってほしいと思っているがというようなことを漏らした事実が絶無とは私保証いたしませんけれども、不当なものであったとは考えない次第でございます。  それから社説の後段の主張、これは全く同感でございます。
  46. 宇野宗佑

    宇野委員 もう一つお伺いしておきたいと思いますが、いままでは全くそういう事実はない、しかも委員長は公正厳格に対処していらっしゃいますから、われわれといたしましても非常に御信頼申し上げるゆえんでございます。ただ、私たちに入っている情報に、職員組合の声明文というものがある。これが委員長に手交されたかされなかったかは、これは全然ないとおっしゃいました。手交されたとするならば、これは一つの干渉であるかもしれません。そういう事実はないと言われるのでございますが、声明文というものがある。「公正取引委員会が達した事前審査の結論は条件付承認ではあり得ない。独禁法によれば、当事者からの正式な届け出により公取委が調査し、違反する事実があれば、その排除のため審判開始手続をとることになっている。したがってわれわれは法に基づく調査を行ない、その結果、違反事実があると認められるならば審判手続を開始し、審決をもって委員会判断を示すべきだと主張する。」これは法の精神をただせばそのとおりではございましょう。どこも法を犯したところはない。しかしながら、これは条件付承認ではないかといわれた段階がございましたが、そうした段階と関連して出されておるということを考えますと、職員組合そのもの自体がこういう声明文を出すということは、公正を期さなければならない事前審査でありあるいは審判である、そのことについて、日経の社説が指摘したごとく行き過ぎではないかと思うのであります。こうした問題に対しましては、裁判所の職員が今度の裁判についてはその結果はこういうふうなほうがよかろうというような声明文を出してみたりいろいろなことをするのにひとしいと思う。そこには分限というものがなくちゃならないと思いますが、もしこの声明文がそうした時点において出された声明文、委員長は御存じないが、そうしたものであるといたしました場合に、こうした行為を職員組合がとられることがいいか悪いか。今後国際競争力をつけなくちゃなりませんから、あらゆる問題についていろいろと、次から次へと産業編成が出てくると私たちは思う。そうしたときに、予断を許さないといわれながらも——この声明文そのものはなるほど法に照らした声明文であるかもしれぬが、この背後に隠れたものの中にはすでに予断を許しておる。あらかじめ予断を有し、あるいはその予断を招くように、何か工作的になされておるというような印象を私は強く受けるのでございます。そうした私のこの声明文に関する印象に関して、委員長はどういうふうにお考えになりましょうか。もしこれが事実なれば、どういうふうな態度をおとりになりましょうか。重要な問題でございますので、この際ひとつ御所見を伺っておきます。
  47. 山田精一

    山田政府委員 ただいまお読み上げになりましたところを拝聴いたしますと、おそらくその趣旨は、法律に従って法律どおりの処置をしてほしい、こういうことではないかと存じます。やや筆が過ぎておるところもあるかと存じますが、結局事務局は、個々の事実を調査いたしまして、それを整理して委員会に提出いたすという役割りを持っておるのでございまして、判断なり事実の評価はどこまでも委員会がいたすのでございますから、御心配のようなことはない、かように申し上げてよろしいかと存じます。
  48. 宇野宗佑

    宇野委員 いま委員長がおっしゃったとおり、法律のとおりやってくれという声明、これは言わずもがなです。ではいままで公取はいろいろなことにつきましては法律どおりおやりにならなかったのでしょうか。(「いままでどおり」と呼ぶ者あり)いままでどおりなら言わずもがなのことじゃございませんか。公取委員会自体がよろめかれたとか、別の方向へ走り出した、自分たちの思惑とは違うようなかっこうがとり出されたものだからこれは出たのじゃないでしょうか。いかがでしょうか。
  49. 山田精一

    山田政府委員 おそらく、その当時におきまして各種の新聞とか経済雑誌にいろいろな推測記事に属する記事が出ておりましたので、そういうのが動機になったのではないか、これは私の想像でございますが、そう考えておるわけでございます。
  50. 宇野宗佑

    宇野委員 時間も参りましたので、私は野党の方々とのお約束どおり、理事会できまったとおり、きちっと一時間でここにその質問を終了させていただきます。ただし、一時間の間においていろいろと問答がございましたが、なおかつわれわれの疑義が十二分に解明されたとは私は考えておりません。中には委員長との間で、はなはだ残念でございますが、すれ違いの意見もあったようでございますので、いずれまた日をあらためまして——こうした問題は、将来お互いにりっぱな国の産業を育成するためには、当然公取公取で、厳正中立、公正にやっていただきたい、こうしたことをお願い申し上げまして、本日の私の質問を終了いたします。
  51. 大久保武雄

    ○大久保委員長 佐野進君。
  52. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私はきょう自動車産業関係して質問をすることにしておりましたが、いま鉄鋼合併の問題についてお話がありましたので、冒頭ちょっとこの問題で、質問をしてみたいと思います。  いまいろいろの御議論答弁等を聞いておりまして、結局、鉄鋼合併、いわゆる八幡富士合併に関して公正取引委員会のとりつつある処置が前段と後段においてだいぶ変化があった、その変化のことについていま少しく柔軟性を持って対処したらどうかというような意味における御質問であったと思うわけであります。しかし私どもは、公正取引委員会が、いわゆる私的独占禁止法に関係した公正な取り扱いが実際上あらゆる圧力に抗して行なわれるのかどうかということについて、非常に深い関心を持ちつつ、今日までその行動を見守ってきておるわけであります。そういうような経過の中で、今日、審判の行為に入ろうとする現時点において、非常に大きな政治的圧力をはね返しながら公正取引委員会としての使命を果たそうとしておるそのことについては、いわゆる日本経済を公正なる競争のもとに発展さしていこう、さらにまたその形の中で国民生活を守ろう、こういうような原則的な立場を貫こうとするその態度のあらわれだと、こういうぐあいに解釈しておるわけでありますが、そういう点についての公正取引委員会委員長の今後の態度もおそらく変わりがないと思うわけでありますが、この際御所見を聞いておきたいことが一つであります。  それからもう一つは、これは通産大臣にお伺いしたいのでありますが、近時、八幡富士合併問題に関して、当初の六月一日発足ということが延期されたというような経過の中で、両社においてそれぞれ独自の計画を立てて、合併が不可能になった場合においての対策ということが株主総会その他において公然と論議せられ、具体的な対策がもう立てられつつあるということをそれぞれの社の責任者が発表しつつあるわけであります。このことは、合併が行なわれない場合においても、両社がそれぞれの独自の立場に立って企業の運営をはかり発展をはかることが不可能でないということを示唆しておると思うのであります。したがって、そういうような形の中において公正なる競争を確保する意味において、両社のそれぞれ独自の努力というものは尊重してやらなければいけないと私ども思うのでありますが、通産当局は一体それらについてどうお考えになっておるかということが一つであります。  それからもう一つは、仄聞するに、財界方面においては、この合併問題の取り扱いの経過との関連の中で、独禁法の改正を行ない、実質上いわゆる私的独占禁止法の精神をなくして、骨抜きにして、事実上あらゆる企業の自由なる競争をなくし、いわゆる寡占体制を確立しよう、それが国際競争に勝ち抜けるただ一つ方法だという、こういうような形の中において公々然とした論議が行なわれ、通産当局もこれに迎合するがごとき言動というか取り組みがなされておるやにお聞きしておるわけでありますが、これについて通産大臣の見解をこの際お伺いしておきたいと思うわけであります。
  53. 山田精一

    山田政府委員 私に対するお尋ねでございましたが、先ほどもお答え申し上げましたごとく、私どもは何らの予断を持たずに、独禁法の条文及び精神、これを十分厳正に忠実に運用してまいりたい、かような覚悟でございます。
  54. 大平正芳

    大平国務大臣 私に対する御質問は二つあったと思いますが、八幡富士におきましては、この合併が当初もくろんでおったより時間的にズレが出てきた。職制、人事、それから設備調整その他でいろいろ不都合が出てきた。したがってこれが長引く場合に対処いたしまして、合併についての結論が出るまで放置できない問題についてそれぞれ自主的に処理しなければならないという事情があったのではないかと思うのでございまして、合併が長引く場合の対策というように私どもは受け取っておるのでございます。その合併の結論が出る時点が長引いた場合に応ずる措置は、当然これは当事者の問題でございます。また設備の問題につきましては、業者間でいろいろ自主調整をやられておることでございますから、私どもはとやかくそれについて介入はいたしておりません。  それから第二点の財界における御意見云々でございますが、財界と一口に申しましても、たいへんこれはとらえにくい客体でございますが、財界の一部に独占禁止法についての論議があることは承知いたしておるわけでございますが、私どもがこれに声援を与えるとか介入しておるとか、そういうことはございません。私はたびたび本委員会を通じて申し上げておりますように、独占禁止法的秩序のもとで産業政策を進めてまいる任務を持っておるわけでございまして、私といたしまして、いま独占禁止法を変えなければにっちもさっちもいかぬというような、そういう心境にないことは私はたびたび本委員会を通じて申し上げたところでございます。
  55. 佐野進

    ○佐野(進)委員 公取委員長のいまの答弁で私はいいと思いますが、これからもいろいろな角度におけるいわゆる雑音といいますか、公正なる審理に対しての圧力もかかってくることと思いますので、公正取引委員会委員長のいまの言明のごとく、ひとつ御努力を続けていただきたいと思います。  さらに通産大臣につきましては、いわゆる八幡富士合併でそれぞれ取り組みしている、これはもうすでに計画の内容等は通産当局でよくおわかりの内容でありますが、いずれにしろ両社合併をせざる状況の中においてそれぞれの分野におけるシェアを拡大する努力をはかりつつあるということで、この計画が実践されるという経過になれば合併条件がますますむずかしくなる要件も含まれながら、それを行ないつつあるという現実、いわゆる合併というものが、その提起したということが一つの便宜的な事情の上にもあったように私ども感ぜられる面でありますので、これらの点につきましては通産当局としても慎重な態度というか配慮をもって取り組んでいただきたいということを要望して、この問題についての質問を終わりたいと思います。  そこで私は、自動車工業の問題について御質問申し上げるわけですが、今日自動車産業全体に対する問題は、日本経済の上に非常に大きな影響を与えつつあるわけでありまして、特に日米間における経済問題の中心的な位置づけがいま行なわれつつあるわけであります。そこで、この問題については通産大臣もたびたび、ここしばらくの閣議あるいは新聞記者発表、さらにはその他の機会を通じてこの問題について発言をせられておりますので、この際私は、要点が非常に多いので、十分時間をとりたいと思っておったのですが、きょうはそう時間がありませんので、問題点だけを指摘いたしますので、具体的にひとつできるだけ短く御答弁をお願いしたいと思うわけであります。  その一つは、資本自由化に関係した問題であります。昨日も通産大臣はお答えになっておられるようでありますが、いわゆる自由化の時期及びこの自動車の自由化をいつやるのかという時期とその決定するとき、その時期はいつなのか、この二つについて、去年の八月、日米交渉をはじめとしてたびたび言明されたその内容が、ここ一カ月ばかりの間に大幅に変化せられたように私ども通産大臣のそれぞれの場における発言を通じて感じられますので、その変化した事情並びにその時期、二つですね。自由化をいつごろするのか、あるいは自由化をいつごろするのかということをいつ決定するのか、という点についてひとつお尋ねしたいと思います。
  56. 大平正芳

    大平国務大臣 結論から申し上げますと、自由化の時期をいつにするかということはきめておりません。自由化時期を明示する時期をいつにするかということは、この秋をめどにいろいろ検討いたしまして、秋には自由化時期を明示したいという考えでおります。
  57. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そうすると、七月に日米経済閣僚会議があるわけですが、この七月の日米経済閣僚会議の席上においては、このような問題は具体的な議題として上程されない、いわゆる時期と発表の時期、そういうものは討議の対象にならない、こう解釈してよろしいですか。
  58. 大平正芳

    大平国務大臣 いろいろ自動車業界に内在する問題がたくさんございます。部品業界の整備の問題、販売面の問題等、いろいろ検討いたしまして、自由化時期の見当をつけたいと思っておるのでございますが、そういう見当が、七月末に予定されておる日米合同委員会までにできるという自信はございませんので、私どもとしては、どうしても秋までかかるんじゃないかという見当でございます。
  59. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そういたしますと、この自由化については、当初いろいろな議論があるわけでありますが、いわゆる五〇%、第一類の範囲内においてこれをとどめるべきだという議論あるいは第二類の中にこれは入れるべきだという議論等々、いろいろあるわけですが、通産大臣の近ごろの発言は、新聞を通じてのわれわれのあれですが、非常に大幅に前進しておる。いわゆる第一類よりも第二類に近い考え方でこれの取り組みをすべきだというような、こういうニュアンスに私ども聞き取れる面もあるわけでありますが、これらについては通産大臣どのようにお考えになっておられますか。
  60. 大平正芳

    大平国務大臣 これは自動車の自由化というよりは、資本の自由化の進め方の基本の問題にかかわるわけでありまして、御承知のように、私どもは第一次、第二次を通じまして、フィフティ・フィフティというものを軸にいたしまして、できるだけ多くの業種をその軸に合わせて自由化のラインに持っていきたいという考えでおるわけでございまして、その中で条件が熟したものは一〇〇%に持っていく、現に三月にやりました第二次の自由化におきましても、一部業種は五〇%から一〇〇%に位取りを変えたものもございます。今後、来年予定されておる第三次、再来年予定されておる第四次におきましても、この基本的な考え方は変えないつもりでおるわけでございます。自動車につきまして、それじゃどういうところに位づけるかということは、まだそこまでの検討が進んでいないわけでございますけれどもわが国の資本自由化の段取りというものの基本的考え方は、いま申したようなことで進めておるということからひとつ御判断をちょうだいいたしたいと思います。
  61. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そうすると、結局第三次資本自由化、いま言われた答弁を聞きますと、五〇%か一〇〇%かまだ明確でないような、ただ判断してくれということですから、判断が、私の質問の中から判断をしてくれということなのかどうかちょっとむずかしいのですが、いずれにしろ、そこで明確にできないということであっても、ニュアンスとしては聞き取ることはできたわけでありますが、そうすると、そういうような形で作業が非常に進んでおるわけですが、問題はいま大臣が言われたように、第三次、第四次とあるわけですが、自動車の自由化は第三次に入る可能性が非常に強いのかどうか。さらにこれはネガリストのほうに入るのか。入るというような働きかけも相当強いわけですね。業界の中においても、そうしようというような一部の動きもあるわけですが、これは全然問題にならないと思うわけですが、これらについてはどうなんですか。この際、第三次の問題とネガリストの問題について……。
  62. 大平正芳

    大平国務大臣 自由化時期を秋をめどに見当をつけろ、そしてきちんときめたいということが、いま言える全部でございまして、これは第三次にするとか第四次にするとか、あるいはネガにせざるを得ないというようなところまでは検討が進んでおりませんので、たいへん申しわけございませんけれども、御了承いただきます。
  63. 佐野進

    ○佐野(進)委員 大臣は非常に抽象的な御答弁をなされておるわけですが、いままで自動車の自由化に対してとられてきた通産当局の態度が、総理大臣の言明、その他あなたの言明もずっと出ておりますが、早まった、早くする——以前の取り組みに比べれば時期を早めるのだということは、そう判断して間違いないわけですね。
  64. 大平正芳

    大平国務大臣 いままでにつけ加えて新しく申し上げておりますことは、秋には自由化時期を明示したいというだけでありまして、早いとかおそいとかいうところには全然触れていないのでございます。
  65. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そうすると、きのう参議院の商工委員会の席上、大臣が言明なされたということは、あれは単なる新聞記事であって、大臣の言明ということではないのですか。自動車の自由化について四十六年においてこれを実施する、こういうような発言をきのうなされておるということが、けさの新聞に出ておったのですが、では、そういうことは全然言っておらないわけですね。
  66. 大平正芳

    大平国務大臣 そういうことは全然申し上げてはございません。
  67. 佐野進

    ○佐野(進)委員 それでは商工委員会の記事が、言っていないことが書いてあったということで、私もどうも言いようがありませんが、それでは次に進みます。  こういうような形の中で、御承知のとおり、クライスラーと三菱とが合弁会社の構想を発表いたしておるわけですね。そうすると、合弁会社の構想が発表されておるということは、合弁会社ができ上がる時期は、いわゆる個別審査、その他いろいろ具体的なあれはありますけれども、実際上、資本の自由化が行なわれる時期とほぼ軌を一にしなければ発足しない、こういうぐあいに考えられるわけですが、そういうことについては資本の自由化の問題とは関係なく、この両社の合弁会社の設立については個別審査の中でこれを処理する、そういうお考えで、この時期等については何らいまだ明言をしない、こういうようなことなのかどうか、ちょっとお伺いしたいと思うのです。
  68. 大平正芳

    大平国務大臣 三菱重工業とクライスラーとの間のお話し合いの内容を承りますと、二段がまえになっておるようです。一つは、販売面で提携をするという考え方があるわけでございます。それから第二段のほうで、生産面での提携、こう二つを考えておるようでございます。しかし、いずれの面も早急に申請を出して政府の審査を求めるということは取り急がれていないようでございますから、いわばまだそういう内話があったということが事実のようでございます。だから個別審査云々の問題というのはまだ出ないわけです、いま急に申請を出そうというわけでもないようでございますから。  それから第二の問題といたしまして、しかしながら、佐野さんが御指摘のように、自由化時期が明示されるという、その明示された時期から自由化体制に入るわけでございますから、当然のことといたしまして、それにかかわる案件はそこからスタートするわけでございます。それ以前にこの案件だけを別に云々ということは考えていないわけでございます。きのうも参議院の御質問で、これは通産省のほうで反対であるとかいうことのように世上とられましたけれども、そんなことは全くないのでございまして、まだ申請も出ていないし、申請が出てそれを処理する場合は、自由化時期が明示されて、かまえがちゃんと十分できてからこれが処理にかかるということに手順はなると私は考えております。
  69. 佐野進

    ○佐野(進)委員 休憩後引き続き質問することにいたしまして、一応ここで質問を保留しておきます。
  70. 大久保武雄

    ○大久保委員長 午後二時から再開することとし、この際休憩いたします。    午後零時五十四分休憩      ————◇—————    午後二時三十六分開議
  71. 大久保武雄

    ○大久保委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。佐野進君。
  72. 佐野進

    ○佐野(進)委員 それでは質問を続けさせていただきます。先ほど三菱とクライスラーの問題についての質問をいたしましたので、引き続きその問題について質問を続けてみたいと思います。  いま自動車産業においてこれからの問題として最も重要視されているのがこの両社の合弁会社をつくるということですが、これについては先ほどいろいろの点から質問を続けてみたわけですが、いわゆる持ち株比率は三五対六五、こういうことで合弁会社を設立するということにしておるようでありますが、この三五対六五ということは、先ほどもちょっと質問して、明確な答弁がないわけです。これはやむを得ないとしても、いわゆる五〇%以下であるという、この合弁会社について大臣答弁では、資本の自由化が行なわれる時期と認可の時期が大体合致するのではないかというようなニュアンスの答弁があったわけでありますが、この三五対六五という比率というのは、三菱なら三菱側からいわせるならば、現在の日本の自動車の自由化を受入れる状態に対して、ややこれは認可されるのではないかという予想を持って三五%ということにしたのではないか。あるいはまた、乗っ取られる、外資によってこの新しい合弁会社が完全に支配される、そういうことを防ぐためにも三五%としたのだ、いろいろな説があるわけですが、これについて大臣はどういうように御理解になっておられるのか、この際ちょっとお聞きいたしておきたいと思うのです。
  73. 大平正芳

    大平国務大臣 政府として申し上げられますことは、先ほども申し上げましたように、自由化を進めてまいる方針として五〇%外資、五〇%内資という組み合わせのしかた、それを本則と申しますか、そういうものを軸にして一応進めていきます。そして、その中で一〇〇%までいいというものは一〇〇%に格上げをしてまいるというような行き方をとっておるわけでございます。そういうことを踏まえて、三菱さんとクライスラーさんのほうで考えられたのかどうか、それは私はよく存じません。ただ、資本比率に関する限り、われわれがいまとっておるフォーミュラから申しまして特別に問題はないと思います。
  74. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そこで、重工業局長にちょっとここで聞いておきたいのですが、いわゆる合弁会社をつくるということが出てきた直後、通産当局として、これもまた新聞記事を通じての発表でありますから、その真意がどこにあるかどうかわかりませんけれども、いろいろな発表がなされておるわけです。そういう中で、局長の話あるいはまた次官の発言ということもあるのですが、これをこれから私の聞くことについて通産当局としてはどう受けとめておるかということを聞いておきたいと思うのです。三菱とクライスラーの合弁会社がいつ設立されるか、たとえばまだ認可の申請が出されていないということでありますが、これは当然早期に申請が出てくるということを予想して、設立の時期ということについていつごろを予測しておるのか。そしてまた、そのことが結局輸出入業務——お互いにそれぞれクライスラーはアメリカにおける三菱のコルトならコルトの販路を提供する、あるいはまたクライスラーはこちらへ持ってきていわゆるノックダウンを開始する、そういうようなことがいろいろの形の中で報道されておるわけですが、通産当局として、その業務をいつごろから開始したいというように会社側、三菱なら三菱のほうから申し出があり、これをどういうような形の中で受けとめているのか、これをひとつ重工業局長から聞きたいと思うのです。
  75. 吉光久

    ○吉光政府委員 いつ設立されるかということにつきましての問題でございますけれども、実はこの両当事者で現在進めております事項は、いつから始めますというふうなこと、仕事の内容をどこまでやりますというふうなことにつきましては、現在すべて今後両当事会社が協議をしてきめるというふうなことになっておるわけでございまして、会社側の公表したことばの中にもございましたように、業務の詳細及びその可能性につきましては今後検討するというふうにうたっておるわけでございます。したがいまして、いまから両当事者のほうで仕事の内容につきましても、たとえば輸出入会社といっておりますけれども、その仕事の内容をどこまでやっていくかというふうなことはまだきまっていないわけでございます。それからまた、その次の第二段階で合弁会社をつくるというふうな話、これは生産会社であるという抽象的なところだけがきまっておりまして、あとそれをどういう内容のものにしてまいるか、またいつ設立するかというふうなことにつきましては、両当事会社ともまだ意思決定をいたしておらないわけでございます。したがいまして、私のほうで、それをいつごろ設立されるであろうかということにつきましては、現在判断しかねておる状況でございます。  それから第二に、この件につきましてどういうふうに受けとめているかという御質問であったかと思うわけでございますけれども、午前中大臣からお答えがございましたように、やはりこのケースをこのケースだけの個別的な問題として処理してまいると申しますよりか、むしろ自動車の資本自由化の全体の体系の中でどう処理してまいるかというふうに考えるべきではないかというふうに考えております。
  76. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そこで、局長にもう一回聞いておきますけれども、通産当局はいわゆるノックダウンは認めないのだ、この合弁会社が設立されるという形の中においてもこれは認めないのだということを次官発言でしている。あるいはこれはたいへんだ、いわゆる資本の自由化におけるクライスラーと三菱の合弁会社はたいへんなことだ、こういうことで非常に大きなショックを受けたというようなことがいわれているわけですが、これについてひとつ答弁を願いたいと思うのです。認めるのか認めないのか、業務の内容にまで入ってこの見解が表明されておりますので、その点をひとつお聞きしたいと思うのです。
  77. 吉光久

    ○吉光政府委員 すでに御承知のように、昨年の八月三十日に妥結を見ました日米政府間の自動車交渉におきまして、エンジン等の部品の輸入自由化問題と関連いたしまして、エンジン等の輸入が自由化されるまでの間のノックダウン、組み立て生産の件につきましては、自動車製造会社以外のものとのフィフティー・フィフティーのものであれば、これは好意的に受けとめるというふうな意味のお約束を日米間でいたしておるわけでございます。もちろんこれは政府間の問題でございますけれども、この基本原則は現在生きているわけでございます。したがって、この基本原則から判断いたします限り、現状においてノックダウンは認められないということになるわけでございます。したがいまして、この問題を自動車の資本自由化全体の中で扱わなければならない。その資本自由化の体制の段階におきまして、ノックダウンあるいはまた同業者との五〇・五〇というふうなものがどういうふうに決定されてまいるかということと関連してこの問題を判断せざるを得ないというふうに考えておるわけでございます。
  78. 佐野進

    ○佐野(進)委員 大臣、いま局長答弁があったわけですが、通産当局の見解は一貫してそのような形できているようです。これもまた新聞記事から私どもは予測するのですが、きょう初めてこういう問題で委員会で発言するわけですから、新聞記事から予測する以外にないわけですが、大臣は閣議に報告し、総理大臣はこの問題について前向きで積極的にこれを取り上げるべきだ、大蔵大臣もそういうことについて非常に積極的な賛意を示した、こういうことがいわれているわけです。そういう形の中で、このクライスラーとの合弁会社設立については早期に認可すべきではないか——早期ということは、いわゆる個別審査によって認可を与えるべきではないか、こういうようなことにも受け取れることが強調されているわけですが、この考えはいまどういうような形になっているかということは先ほど聞いておりますけれども、いま少しくこの際明確にひとつお示し願いたいと思うのです。早期に個別審査をもって認可するというような取り組みを政府としてはするお考えであるのかどうかということをお聞かせ願いたいと思うわけであります。  それからこれに関連をして、自動車の自由化の中で、これを進展させる形の中で、大臣が物品税あるいは関税の引き下げ、こういうようなことについて提言、提案しておられる、こういうことを言われているのですが、この物品税ないし関税というものが、一体どの程度のものを想定せられて提言せられたのか、この点ひとつお聞かせを願いたいと思うのです。
  79. 大平正芳

    大平国務大臣 三菱・クライスラーの問題が新聞報道を通じまして表に出てまいりましたので、その直後の閣議におきまして、三菱側から政府側が聴取いたしました経緯というものを御報告をいたしましたことは事実でございます。そのときにあわせて私が報告をいたしましたことは、この問題は、先ほどからも申し上げておりますとおり、独立した一つ案件というのではなくて、自動車行政全体の問題として受けとめて検討させてもらいたい、そういうことをつけ加えて申したのでございます。総理大臣から自由化促進についての発言があったことは事実でございますが、しかしこれは本件にからんだ問題ではなくて、輸入並びに資本の自由化全体について、各省が前向きに取り上げて、鋭意促進するようにという一般的な御要請があったわけでございます。そこで私は、これは本件に直接からんだ御発言ですか。そういうわけではない、自由化の促進について全体として前向きに鋭意進めるという一般的なものである、ということでございました。  それから個別審査云々の問題でございますが、この問題の処理は、自動車行政全体の問題の一環として受けとめるのだという表現によって御理解をいただけるかと思いますけれども、そういう全体の検討が未済のままで、本件を独立の案件として取り上げる、そういうつもりはありません。  それからそのときに、もう一つ自由化問題が出てまいりましたので、実はわが国の税制の問題から申しまして、諸外国との比較におきまして、たとえば自動車課税というようなものは相当過重なものになっておる。海外からもいろいろ注文がある。したがって、こういう自由化問題全体を考える場合におきましては、税制のあり方という問題についても、関係大臣の御注意を喚起しておきたいということを申し述べたのでございます。
  80. 佐野進

    ○佐野(進)委員 時間が少ないので、あれも聞きたい、これも聞きたいと思っても、なかなか突っ込んだ質問ができないでたいへん残念なんですが、これは局長にお尋ねしたいのですが、大臣の言われた税制の面その他ということは、結局、いわゆる日本へ入ってくる車、こういうものに対してを前提として考えられたと思うのですが、日本から外国に輸出する車、こういうものに対しての関税、あるいはアメリカならアメリカに対する税金、物品税その他、こういうものはどのような状況になっておるのか。いわゆる輸出の障害として存在しておるのではないかと考えられるのですが、その状態について、これは簡単でいいですからひとつ説明してください。
  81. 吉光久

    ○吉光政府委員 相手国におきます関税につきましては、それぞれの国によって異なっておるわけでございますけれども、自動車に関しまして、これはアメリカが一番低うございます。アメリカの場合におきましては、乗用車、千ドル以上の貨物車、バスというふうに分けておりまして、乗用車はすべて一本でございます。その乗用車の関税は、本年一月一日現在で五・一%でございますが、KRが完了いたします四十七年一月一日現在で、三%まで下げるということが、米国側のいままでの計画でございます。それから日本の場合でございますと、これはKR前三五%であったわけでございますけれども、その後下げておりまして、ことしの四月一日からちょうど半分の一七・五%というところまで下げたわけでございます。これは昨年の日米交渉に基づきます約束を履行したということになっておるわけでございます。関税につきまして、これまたEEC諸国でございますと、これはKR前二二%でございます。乗用車につきまして、KR完了後の四十七年におきましては一一%ということになっております。イギリスでございますが、これは現在がちょうど日本と同じくらいの一七・六%でございますけれども、これがKR完了後におきまして四十七年一月一日には一一%まで下げる、こういう状況でございます。したがいまして、現状におきましてはイギリス並みというくらいのところが日本の関税であります。物品税につきましては、これは国によって違っております。特に日本の場合のほうが大型車、超大型車にとりましては一番高い率がかかっておるという状況でございます。
  82. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そこで、あとの質問に関連するので局長に聞いておきたいと思うのですが、日本の日産なら日産の六四年度のブルーバードならブルーバード、ありますね。外国に輸出する車があるわけです。これはアメリカでいま一体幾らで売られておるか、日本の国内では幾らで売られておるか、生産原価は大体どのくらいなのか、これをひとつ六四年のブルーバードについて御説明を願いたい。
  83. 吉光久

    ○吉光政府委員 ブルーバード一六〇〇を前提に置いてお答え申し上げますが、わが国からの輸出はFOB価格で三十六万ないし四十万程度でございます。これがアメリカにおきまして、小売り価格が大体七十万から七十二万ということでございます。また、いま御説明申し上げました一六〇〇クラスの国内の小売り価格でございますが、大体五十万から五十五万でございます。
  84. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私はこのいままでの質問を通じて、大臣局長答弁との関連の中で思うのは、いわゆる自動車工業に対する資本の自由化ということについては、世論は非常に自由化をしろという方向に高まりつつある。これは政府の中においても、総理をはじめ他の各大臣の見解もそこに統一されておる。通産大臣もその面については非常に積極的に取り組みされておるけれども、通産当局がこの面においては非常に消極的であるというのが、いまや一般的なあらゆる報道機関、マスコミ等を通じてわれわれの目に入り、耳に入っておるわけです。それでは、どうして通産当局が自動車工業に対する資本の自由化に対して消極的な態度をとり続けてきておるのか。こういうことについては、いままでの通産行政が自動車工業に対して、いわゆる業界の再編成を求める、こういうことに視点を向けておるのだというようにわれわれは考えぜるを得ないわけですが、この自由化を前に控えて、通産当局は今後もこの業界の再編成ということを推し進めていくお考えであるかどうか。現時点におけるお考えをひとつお知らせ願いたい。
  85. 大平正芳

    大平国務大臣 私と通産当局が別な考えのような御質問でございますが、そういうことはないのでございまして、通産当局と私との間には寸分のすきもございません。自動車産業というのはいま日本の基幹産業発展いたしまして、関連従業員は百二十万ぐらいを擁する、もう基幹産業にまでなっておるわけでございまして、非常に日本の中でもひずみのひどい産業部門でございます。したがって、この自動車産業の健全な育成をはかってまいらなければならぬということは、どなたが考えられましても当然の道行きであろうと思います。しかるところ、その他の産業の部門においても、先進諸国との間にわが国は遺憾ながらまだ相当の、技術において金融において経営力におきまして格差がございますけれども、自動車産業に関しては特に格差がひどいのでございます。もともと終戦直後、自動車産業というものは日本ではたして成長できるものかどうかということが問われたような時代がございましたことは御案内のとおりでございます。こういう非常にいわば先進諸国に比べまして落差のひどい産業部門でございますから、当然のこととして、産業政策当局といたしましても、この自由化の措置につきましては非常に慎重であったわけでございます。で、これは世間から見て、保護に過ぎるではないかとか、保守的に過ぎるではないかというような御批判があるいはあったかもしれませんけれども、実はそういう考え方の問題じゃなくて、実態の問題として、どなたが通産行政をあずかってみましても、私は当然そういう道行きをとったであろうと思うのでございます。したがって、そういうある種の偏見を持って自動車行政をやっておるものではないということをまず御理解をいただきたいと思います。しかし、そういうことは日本国内の家庭の事情でございまして、世界にいつまでも通用する道理ではないと思うのでございまして、できるだけ早く自由化へ踏み切らねばならぬことは、これは当然だと思うのでございます。そのためには、メーカー段階ばかりじゃなく、何千という部品の業界、それから、メーンディーラーだけで千八百会社もあるわけでございまして、たくさんの販売網がしかれておるわけでございますから、そういった点も十分点検いたしまして自由化にみんなが努力していけば、どうにかたえられるだけの用意をして、なるべく早くそういう体制をつくり上げて自由化に踏み切らねばならぬということは、通産当局の一致した意見でございます。その日の早からんことを希求するゆえに一生懸命勉強を進めておるわけでございまして、そういう考え方には微動だに狂いはないのでございます。
  86. 佐野進

    ○佐野(進)委員 その考え方には私も賛成するわけでありますが、ただ、その考え方が片寄った形の中で、私はいつも強調しておるのですが、日本経済がともすれば国際競争力を強化するという名目のもとに、中小企業切り捨て、大企業育成、ひいてはそれを寡占体制へまで発展さしていく、多くの企業を特定の少ない企業のグループに集約さしていく、そういう点が非常に心配されるわけです。そういう点についていま自動車工業の動向を見ると、通産当局の指導もそういう形で行なわれておると思うのでありますが、いわゆるトヨタ、日産、こういうような二大系列に集約していくような政策を推し進める。そういう政策を推し進める経過の中で三菱とクライスラーの合弁、提携というような話も出てくるし、いろいろみずからの道を求めようとする、そういうような動きが出てくることはこれは必然的だと思う。それに対して政府がいまとりつつある形は、やはり何といっても過保護に類する。いわゆる二大系列を育成するという、寡占体制をつくり上げるという形の中に没入して他を顧みるいとまがない。いや、他をむしろ弱化させることが必要であるかのごとき印象を与える政策、そういうのがいまの自動車工業に対する日本政府、特に通産行政のあり方じゃないかというような気がするわけです。私もいろいろ調べてまいりまして、その寡占体制にいきつつある経過というものもいろいろ資料を持っておりますが、時間がなくなりますのでそこまで触れませんが、この点について通産大臣は、日本の自動車工業の寡占体制、いわゆるトヨタ、日産の二つの系統において国際競争力を強化させようという政策、いまの通産省の政策は何といってもそうなんでありますから、そういうことをやろうとしておるのかどうか、今後も続けていこうとしておるのかどうかということ、いわゆる過保護政策を続けていこうとしておるのかどうかということを、この際ひとつ聞いておきたいと思うのです。  それからついでですが、けさのあらゆる新聞に、こういうような一つの通産行政に対して非常に明快なる処置を運輸大臣がとったということが載っておるわけです。それは「トヨタ・日産の欠陥車」「回収・総点検急げ」「公表・届け出も義務に」こういうような形の中で内容がいろいろ書いてあるわけです。これは結局、わが国の中においてそういうことがわかっておったのだけれどもわが国の中における問題としてこれが出たのではなく、アメリカにおけるところの問題としてこれが出、その結果、日本において当然通産行政の中で指摘するべきにもかかわらず、この問題が運輸行政の中で指摘され、積極的に取り組まざるを得ないという形になってきたということになっておるわけですが、これは国民経済の立場から、あるいは公害をなくする、こういうような立場から見て通産行政の一大失点である、こう言っても過言ではないと思うのであります。そこで、この問題について通産大臣の見解を求めるとともに、運輸省からおいでを願っておりますので、運輸当局にお聞きしたいのでありますが、私は、いま日本における公害問題の中で相当大きなウエートを占めておるのが自動車から出る排気ガス、その中に含まれる一酸化炭素の量、これが公害問題として、特に過密都市の中における公害の問題として非常に大きな問題になりつつあるわけですが、これについて、日本において排気するガスの許容量と輸出車の排気ガスの中に含まれるこれらの許容量、これは同じ生産される自動車であっても違うということを私どもは聞いておるのですが、一体どの程度違うのか。それから、こういうような措置を今後も積極的にとり続けられていくのかどうか。これは、いいという意味において私は御質問申し上げたいのです、これは国民の安全を守るためにたいへんいいことだということで御質問するわけですが、その点も含めてひとつ御答弁願いたいと思います。
  87. 大平正芳

    大平国務大臣 通産省のこれまでの政策が二大メーカーにだんだんと集中してまとめていくというものであるという御理解であるとすれば、それはそうではなかったのであります。二大メーカーがそれぞれ自由な契約に基づきまして、他のメーカーと一緒になりまして体制を整備、強化していくことは望ましいと考えておりましたが、しかしそれが二大系列でなければならぬとか、それに対して行政権が介入していくようなものでは決してなかったのでございます。ただ、御指摘のように今度の三菱・クライスラー問題が起きましたことは、これは一億の魅力ある市場に対しまして有力な外資メーカーが黙っておるはずはないので、そういうこともいずれの日か来るものであろうという予想はわれわれも持っておったのでございます。しかし、これがいよいよ現実の問題となってまいりますと、これまでわれわれの日本国内における自主的なそういう体制整備というスケジュールは、正直に申しまして希望するような方向になかなかいかないこともはっきりしてまいったわけでございますから、私どもとしては、外資と提携の話をしてはならぬとか、そんなことをしても認めないんだとか、そういうやぼなことは申すつもりはないのでございまして、先ほど申しましたように、先進諸国との間にはこの産業に関して特に落差が激しいということを憂慮いたしまして、可能な限りの措置を講じながら、この基幹産業の健全な維持と発展をはかってまいるように鋭意努力してまいるということで、特に予定された、型にはまった考え方をもってごり押しをしていくというような考えは毛頭ございません。  それから第二点の運輸省の問題、運輸大臣がきのうとられた措置でございますが、これは交通安全の主管御当局としてとられた措置でございまして、当然の御措置であったと思います。事前に私どもも御相談をちょうだいいたしまして、運輸大臣がきっぱりとした措置をとられたわけでございます。  もともとこのことは、三十九年から四十二年くらいまでにつくられた車につきまして、トヨタ系統の車ではブレーキのオイルを送るパイプに問題があったようでございます。日産系統のものでは、たしかキャブレターでガソリンを気化してエンジンに送るところに若干の弱点があったということでございます。御承知のようにアメリカは寒いところで、道路が凍りますので、よく塩をまくのでございますが、それがからみつきまして機能障害を起こすというようなことがあったようでございます。そういうことでございますので、四十三年からの新車は全部改善をいたしまして、そういうことがないようになっておるのでございまして、問題はいま町の中を走っておる古い車にある問題でございます。日本では幸いにいたしましてそういう事故はいままでなかったのでございますけれども、交通安全の立場から、運輸省のほうにおきまして報告をさせて十分の行政指導をとられますことは当然の御配慮であったと思います。私どもは、いま御指摘のように、そういう欠陥があったということについて、これは自動車行政当局として怠慢じゃなかったかという御指摘でございますが、確かに仰せのとおりでございます。われわれといたしましても、品質の管理と申しますか、そういった点に一段のくふうをこらしていかなければならぬし、近くメーカー関係の各社長を招致いたしまして、意のあるところを十分伝達をいたしまして、善処を求めるつもりでおります。
  88. 堀山健

    ○堀山説明員 本日発表になりました総点検でございますけれども、これは先ほど通産大臣からお話がございましたように、従来事故がございますと、私ども事故の内容を解析いたしまして、当然設計上のミスがあるという場合には、メーカーに設計の変更を命ずる、整備のミスであれば、整備のしかたについて一般の改善を求める、こういう方法をとっておるわけでございます。いろいろな事故がございまして、そういうものをそれぞれ私ども確認しておるわけでございますが、たまたま今度の件につきましては、メーカーとしてはよりよくするという努力はあったと思います。ただ、この問題につきましては手続上私どもに承認を求めるという制度の外にある問題でございましたので、それがたまたま今度の問題でわかりましたので、そういう制度上、私どもに設計を変更してそれが安全であるということの確認を求めてからやるということがぬかっておった面があったのではないかというふうに考えまして、今後は、現在の制度の不備を補って改良するのは非常にけっこうであるけれども、それも私どもの承認を求めてからはっきりした形でやってほしい、こういうことを希望する次第でございます。これはトヨタ、日産だけでなくて、ほかに私ども従来設計変更を命じたものもございます。したがいまして、そういうことも含めて監査あるいは点検、そういうことで今後ますます事故の防止に努力いたしたい、かように思っておるわけでございます。  第二点の排気ガスの問題でございますが、現在排気ガスにつきまして国として規制しておりますのは、アメリカと日本とドイツの三つの国でございます。アメリカはエンジンの大きさによりまして三つのクラスに分けております。大きいほうから一・五%、二%、二・三%、こういう分け方をしております。日本は、三百六十CC以上の車につきまして一律に三%という規制を現在しております。これはことしの二月に私ども大臣が声明したと思いますが、これを近く二・五%に下げる準備をしております。日本とアメリカははかり方が大体似ておりますが、しかし道路通行条件が違いますので、試験方法の一部が違っております。そういうこともございますので、数字が一方では非常に小さい。片方は高い。比べてみますと非常に悪いという印象を受けるわけでありますが、私どもいろいろな比較試験をしまして、日本は大体千二百CCから千五百CCが大部分の車でございます。アメリカは四千CCから七千CC、大体大きうございます。平均したら五千CCくらいになるのではないかと思います。それで一・五%というのと日本の千二百CCから千五百CCの車で三%——今度二・五%にいたしますが、はかり方も違いますし、実際の吐き出す量、これについては日本が著しく悪いとは思いませんし、それから今後技術開発とともにますますこのレベルを下げてまいりたい。ドイツは全然はかり方が違いますけれども、五・五%という規制をしております。いま申し上げたのは新車でございます。中古車いわゆるすでに走っている車をどうするかということでございますが、これは昨年から定期点検、特に排気ガスに関係する部分、関連する部分についてよく点検整備をいたしますと、新車のときよりも、車でございますから、使っているうちに性能が劣化する、しかしその点検をやりますと劣化のしかたがある歩どまりの中に入るということがわかりましたので、これは行政指導でやっております。それからこれはことしの予算で成立したのでございますが、東京、大阪、名古屋、ここで検査場で排気ガスの点検をしたい。ただこれは私どもラインである時間にどんどん流しておりますので、機械そのものは最近開発してまいりましたけれども、検査場用に使う、いわゆる何といいますか工場用でなくて検査場でどんどん車を流しながらしかも見るというそのくふうが要りますので、おそらくこの秋か暮れになると思いますけれども、東京、大阪、名古屋でその準備を始める。私どもの心づもりでは、四十五年度から全国の検査場にそれを配置していく方法をとりたい。そのときに、新車のときと中古車のときは、新車の場合ですといろいろな機械を使って現場の検査場でやりますけれども、何分ヘッドかで車を流すので、したがって短時間の間にはからなければいけない。したがって、はかり方が全然変わるわけでございますから、そのはかり方に従った数値をきめまして、それで工場で整備をする場合、検査場で検査をする場合、これをチェックをする、こういうふうに準備をことしから進めておるということでございます。
  89. 佐野進

    ○佐野(進)委員 時間が来たようですから、まだいろいろ聞きたいことが一ぱいあるのですが、また質問するといたしまして、われわれもこの問題についてはもっと突っ込んで検討してみたいと思います。大臣の見解を聞きたいこともありますが、時間をあまり超過するとかえって今度言うとき言えなくなりますから、一応これで質問を終わります。
  90. 大久保武雄

    ○大久保委員長 藤井勝志君。
  91. 藤井勝志

    ○藤井委員 私は国際化時代に対応するため日本産業編成の大きな試金石、こういった受け取り方から富士八幡合併問題について質問を申し上げたいと思うのでございます。  質問に先立ちまして答弁側にお願いしておきますが、制約された一時間、これは答弁者の所要時間を入れております。したがって、私もそのものずばりの質問をいたしますが、答弁者もそのものずばりのお答えを願いたい。ただし重複する点はできるだけ避けたいと思いますけれども、重複をあえていたしました個所は、先ほど宇野委員から質問がございました答弁に対して私は再質問をする、こういう意味で、したがいましてきわめて明確に具体的にお答えを願わなければならぬ、ひとつこういうお願いをまず申し上げて質問に入りたいと思うのでございます。  大臣せっかく見えておりますので、一つだけ大臣にお尋ねをして、あとはどうぞ御自由に願いますが、このいわゆる独占禁止法は、私は、日本経済社会の秩序ある発展を求め、健全な成長をこいねがう、こういうねらいのため法律であろうと思うのでございます。そういう意味におきましては、いわば広い意味において産業政策の一環であり、経済政策の一環である、こういう認識を持つものでございますが、大臣はいかにお考えでございましょうか。あわせて委員長のお答えを願います。
  92. 大平正芳

    大平国務大臣 藤井委員と全然同感でございます。産業政策の問題であると思います。ただ、これが、日本の現在の行政組織の中におきましては、私どものほうと公正取引委員会とがいわば分担してやっておるという仕組みになっております。それぞれの立場におきましてベストを尽くしておるわけでございます。結局いろいろな道行きは通りますけれども日本産業政策という意味において最後は帰一しなければならぬものと考えております。
  93. 山田精一

    山田政府委員 独禁法精神は、法律に書いてございますとおり、公正にして自由な競争を促進することによりましてわが国経済の民主的で健全な発達を目的といたすところでございます。したがいまして、産業政策ということばの定義いかんによりましては、広い意味における産業政策に入るかと存じます。ただ私どもの立場は、どこまでも産業と申しますか企業の立場だけではございませんで、消費者あるいは需要者、その方面から総合的に判断をいたす、こういう違いはあるかと思うのでございます。
  94. 藤井勝志

    ○藤井委員 そこで五月の八日、「新転機に立つ八幡富士合併」という、これは日本経済新聞でございますが、この中にあるこういう記事が非常に私の注意を引いたのでございます。「これまでの経過を振り返ってみると、現行独占禁止法の規定のあり方、その運用、さらには公正取引委員会、特に事務局の動向などあらためて多くの問題点を浮き彫りにした観を呈している。」これに関連いたしまして、公取委員長のほうにお尋ねをいたしますが、独禁法ができたのは、私が申し上げるまでもなく昭和二十二年、終戦間もないころのアメリカの占領政策の一環としてわれわれは受けとめたわけでございます。もちろん形の上は国会を通したのですから、われわれできめたという形式は踏んでおりますけれども、あの当時の舞台背景、こういったことを考えながら私はいろいろ思いめぐらしておるわけでございまして、まず私は、独禁法が消費者の保護や物価あるいは中小企業対策の上で果たした役割りについて高く評価するものでございます。しかしながら、同法は、私も質問にあたりましてずっと通読をいたしましたけれども、きわめて抽象的なことばが多い。ことばをかえて申しますならば、同法の運用は端的に申しますと公取委の完全な自由裁量にまかされておる、こういった面が分量として非常に多いわけでございます。したがいまして、この具体的な基準というものがはっきり示されておらない。したがって日本経済の国際化に対応した明確な運用基準を設ける必要があるというふうに私は考えざるを得ない。これはもう現に公取が統一見解というものを出されているのも、そういう必要性に迫られて出されたに違いないと思いますが、これについては委員長いかなる御見解を持っておられますか。
  95. 山田精一

    山田政府委員 独禁法の制定当時における事情は御指摘のとおりであると存じます。ただ、その後たしか通算九回にわたる改正が行なわれておりまして、中でも昭和二十四年及び二十八年の両度相当の改正が行なわれておりまして、制定当時におけるやや行き過ぎた面というものは完全に修正を加えられておる、かように存じておる次第でございます。したがいまして、その運用は、先ほど申し上げましたごとく、現在のわが国経済の健全な発展ために十分適切に運用をいたしてまいれるものと考えております。  それから、ただ第二点といたしまして、法律の規定がきわめて抽象的であるので、また大まかでございますので、全く公正取引委員会の自由裁量にまかされておるという御発言でございましたが、そのために、私の考えますところでは、一人の長官が判断をいたすのでなく、行政委員会という組織をもちまして五名の委員法律または経済について学識経験のある者の中から国会の御承認を得て任命されました委員が合議をして決定する、こういうことになっておるものと私は了解をいたしておるわけでございます。  それから具体的な適用の基準というおことばでございましたが、これは取り扱います対象の性質上、機械的にあるいは計量的に具体的な基準をつくるということはきわめてむずかしい性格のものであるかと存じます。しかし、それを何らの基準なしに運用いたすということでは決してございませんで、過去における判例でございますとか審決例、これらに準拠して運用いたしてまいっておるわけでございます。
  96. 藤井勝志

    ○藤井委員 これは繰り返しませんが、今度の八幡富士について統一見解を出されたというこの事実は、やはりそういう具体的な運用基準というものの必要性を感じておられないか。従来はなにですが、この経験を通じて感じておられないかどうか、一言だけお答えを願います。
  97. 山田精一

    山田政府委員 統一見解ということばが世上で伝えられておりますけれども、私どもといたしましては、具体的な当面のケース処理するにつきまして、従来における判例その他を勘案して解釈の確認をいたした、こういうことでございます。
  98. 藤井勝志

    ○藤井委員 これはことばじりをとらえて言っても前へ進みませんから、私はちょっとまだ納得がいきませんけれども、次へ進ましていただきますが、先ほど広い意味産業政策、こういった点については委員長もそうだというお答えでございます。私は独禁法というものはまさに準司法的な面もあると思う。なるほどカルテルの違反行為の摘発、こういったことは司法的な、できた事柄に対して不当の摘発をしていく。しかし、同時に合併事案のようなものは、これはまさしく行政事案であって、いわゆる国の産業政策あるいは経済政策と一体に、政府の政策と一体に考えられてしかるべきではないか、このように私は思うのでありますが、決して私はこういう意見を述べる前提として公取の中立性というものを忘れて言っておるのではございません。現在公取の内閣との関係あるいはまた国家行政組織法との関係における公取の位置というものがどういうものであるかということはよく承知して御質問を申し上げておるわけでございますが、私が前段に申しました前提の上に立って委員長のひとつお答えを願いたい。
  99. 山田精一

    山田政府委員 先ほども申し上げましたごとく、独禁法精神わが国経済の民主的で健全な発達をはかるというところにあるのでございますから、広い意味におきましての産業政策目的は少しもその間に矛盾はない、かように考えておるわけでございます。ただ、判断の基準を考える場合には、独禁法独禁法の立場、すなわち公正にして自由な競争を促進するという立場から考えますので、当面さしむきの問題としてはあたかも矛盾しておるように見えることもございますかもしれませんけれども、究極の目標において何ら矛盾があるものではございませんから、狭い意味における産業政策との間で十分お話し合いをいたせば、必ずその間における調和はとれるものと、かように考えております。
  100. 藤井勝志

    ○藤井委員 多少横にそれますが、関係がございますから念のためお尋ねをいたしておきますが、昭和四十一年の十一月初旬だったと思いますが、産業構造審議会の重工業部会から「今後の鉄鋼業の在り方」ということについて答申が出ておる。この答申の内容なりは当然こういった問題をさばかれる公取委員長としては十分把握されておると思うのですが、どういうふうに把握されておるかお答えを願いたいと思います。
  101. 山田精一

    山田政府委員 むろんその答申は十分に拝読いたしております。ただ、鉄鋼業における構造改善と申しましても、いろいろな姿、またいろいろな方式があり得ることと思うのでございまして、そのときの答申においては、別に具体的にどういう形ということはございませんで、抽象的な御意見であったかと私存じておるのでございます。私どもの立場といたしましては、その大きな御趣旨に従いまして、個々のケースにつきましては、それが競争の実質的制限になるかならないか、この辺をとくと検討いたしてまいりたい、こういうことでございます。
  102. 藤井勝志

    ○藤井委員 私、意地悪に質問するわけじゃないのですが、答申ぐらいは少なくとも委員長としては宙で御答弁ができるくらい血肉になっておらなければならぬと思う。一応抽象的だと言われておりますけれども、相当具体的な提案がなされておると私は確認している。ひとつ重ねて御答弁を願いたい。
  103. 山田精一

    山田政府委員 ただいま私が抽象的と申し上げましたのは、抽象的という表現は適切でないかもしれませんけれども、A社とB社とを一緒にする、こういうような御指摘は別になかった、こういうつもりで申し上げたわけでございます。
  104. 藤井勝志

    ○藤井委員 ではどんなようなものですか。
  105. 山田精一

    山田政府委員 大体において、効率を発揮させるためにある程度の——ある程度ということばが入っておりましたかどうか的確には記憶いたしませんが、ある程度構造改善を進めることが必要であろう、こういうことであったと存じます。
  106. 藤井勝志

    ○藤井委員 ちょっとこれは私から念のために申し上げておきます。ある程度構造改善というようなそうしたばく然としたものじゃないのです。答申は「投資主体乃至経営主体を集約化することによって新鋭製鉄所の建設を効率的に進め将来における国際競争力を確保することが必要であり、このために今後企業の合併等が望まれる。」というように具体的に合併を差し示しておる。現在こそ国際競争力は鉄鋼はございましょう。あります。しかし、日進月歩、まさに一日も予断を許さない激しい国際競争において、現在日本の製鉄というのは原理原則的なものはすべて導入技術であることは御案内のとおりなんです。また、急激に廃墟の中に立ち上がった日本の鉄鋼業界は、融資を銀行から受けておりますから、財務比率はきわめて悪い。二%から二・八%ぐらいでしょう。そういった企業が国際競争下にこれから対処しようというこのことを考えたときに、私はあえて広い意味経済政策と背を向けては相ならぬ、こういった点で申し上げたわけでございまして、こういうことはさらっとお経を読むように公取委員長はお答えを願わないと、私は非常に不安を感ぜざるを得ないのです。  そこで、ひとつ具体的に事実を指摘してこれからお尋ねをいたしますが、事前審査という性格、これはどういうふうにお受けとめになっておるか、お答えを願いたいと思います。
  107. 山田精一

    山田政府委員 ただいまの事前審査の問題に入ります前に、一言御了解おきいただきたいのでございますが、この構造改善の答申でございますが、これはそういう場合、一つの投資単位、経済的にきわめて有効、能率的な単位に合併をする、こういうことの御指摘であると私は心得ております。さような場合が当然あり得ると考えるわけでございます。  それから、ただいまの事前審査の問題でございますが、事前審査というのは俗語でございますけれども、私どもといたしましては、どこまでも行政相談一種であるというふうに考えておるわけでございます。
  108. 藤井勝志

    ○藤井委員 まさしく行政相談といいますか、こういった点で、特に今度の合併事案というのは、行政事案として親切に十分協議をして迅速に事を運ばなければならぬ、こういったことではないか。独禁法の第一条の精神、まさに「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。」という線からいうと、かくあってしかるべきだ、このように思うのでございます。ところが、そういうような御認識を持っておられる公取として、私は記録をちょっと調べてございますが、この十月の末から一月にかけて、両社関係者から、私の記録が間違いでないとすれば、三回事情聴取をされておるという程度と承っておるのですが、これは違いましょうか。
  109. 山田精一

    山田政府委員 直接両社の代表の方に来ていただきまして、委員会としてお話を承りましたのは、たしか御指摘のとおり三回、はっきりは記憶いたしませんけれども三回程度と心得ております。ただし、その間におきまして、当事者側から書面をもって、各委員に対して直接御意見をいただいたことがございまして、これは相当多うございまして、それを私どもは拝見をいたしておるわけでございます。
  110. 藤井勝志

    ○藤井委員 私はこの質問をする前に、一応事前に調査するために、通産当局並びに直接両社関係者からも聞いたのですけれども、この十月末から一月にわたって三回、公的というときわめてことばがいいわけですけれども、一応聞き取り、聞きおくということで、再々関係者は説明がいたしたいということで申し入れたにかかわらず、公取のほうでは全然受け付けておられない、こういう事実を私は通産省並びに直接両社関係者から聞いたのです。これは通産省もうそを言い、両社もうそを言っておるというふうに委員長はお考えですか。
  111. 山田精一

    山田政府委員 私ども委員会といたしましては、富士八幡の事件だけをやっておるわけではございませんで、そのほかのケースもたくさん処理をいたしておりますので、あるいは時間の関係上、先方から御希望がありました場合に応じかねたこともあったかと存じます。しかし、書面等で十分に拝見をいたしておりますし、あるいはそれについて疑問のございました場合には、その点について伺っておるのでございまして、当事者側の御希望を十分一〇〇%というわけにはまいらないと思いますけれども、相当程度伺っておる、かように考えております。
  112. 藤井勝志

    ○藤井委員 これは水かけ論になってしまいますので、これ以上突き詰めることはやめますが、ただはっきりした事実は、三月十二日に内示をされましたね。その内示をされた翌日の十三日に一方的に事前審査の打ち切りということをやられた。ところが両社は、対応策の積み増しをしたい、相談に乗ってもらえないか、こういう提案を十三日にしている。ところが、これはもうだめだとストップをかけられた。これがはたしていわゆる行政相談という委員長が言われたようなことばどおりの行為としてすなおに受け取っていいかどうか、私は、あなたが適当に御答弁されているとしか受け取れない。そういう事実をもって私はお尋ねをしておるのですから、これはこういう事情だという、はっきりひとつその事情を解明していただきたいと思います。
  113. 山田精一

    山田政府委員 一つには、午前中もお答え申し上げたのでございますけれども、いわゆる対応策なるものにつきまして、非常に少しずつ、あたかも商品取引の折衝のような形でもって御相談に応ずることはいたしかねるということを私は申し上げたのでございまして、別に全然そういうことの御相談に応じないと言うたわけではないのでございます。  それから第二の点といたしましては、そういうようなことであまりネゴシエーションと申しますか、続いておりますと、先方が予定しておられますところの期日にますます余裕がなくなるわけでございまして、できるだけすみやかに正式の手続にいたしましたほうがものごとの処理を促進できる、かように考えたわけとのその二つでございます。
  114. 藤井勝志

    ○藤井委員 これまたどうも納得しかねる。十カ月もかかったこの大きな案件合併が、十二日に一応内示をして、十三日にはもう一日も待てぬのだという。これではあなたの言われたようないまの御答弁では、単なる言いわけにしか藤井勝志の耳には響かない。まことにこれは残念なんですけれども、次に進ませていただきます。  ところで、第十五条第二項に、「当該合併によって一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合」には合併してはならぬという文句があるのです。だからこの文句は、ここで統一見解といいますか、一定の明確な運用基準が必要だということです。これは昭和二十二年から数回改正されましたけれども、ごく最近の技術革新、国際化時代というのは、もうごく最近の大きな移り変わりでございますから、この必要性を私は指摘したわけでございます。これは一ぺん確認をしておきたいのですが、先ほど宇野君からも御質問が出たようでございますが、第十五条の第一項は、違反のないような合併をさすということが法の趣旨である、合併を合法的に実現させる予防規定だ、こういったことで解釈していいのであって、違反行為の摘発をするようなことも同じように公取もやられますけれども、仕事の内容が全然違う。したがって、合併事案事前審査というのは親切な行政相談としてやるべきであったというふうに考えるわけでございまして、合併はいけないものだというような前提で、いかにも被疑者に会うような対話というものはきわめて不適当であるというふうに考えておる。一連の事実をずっと振り返って、通産省の窓口あるいはまた両社窓口から見ると、そういう受け取り方がきわめて明確にわれわれに尋ねた答えとして反映してくるのです。この法律の第十五条の精神というものは、合併禁止するわけではなくて、前向きで考えている規定であるというふうに理解すべきであると思うが、委員長はどうですか。
  115. 山田精一

    山田政府委員 もとより第十五条は、合併禁止しようという規定ではございません。また、私ども公正取引委員会の者といたしまして、合併ということについて拒否反応を何ら持っておるわけではございません。それは午前中も申し上げましたごとく、昨年中に一千二十件にのぼる合併処理いたしておるのでございまして、まず大部分、ほとんど全部の合併ケース独禁法精神に沿うものとしてことごとく処理をいたしておるわけでございます。ただ、きわめて例外的に、競争維持政策に抵触すると認められるものにつきましては、第十五条に準拠いたしまして、私どもとしてはその抵触する部分を排除しなければならない義務を持っておるわけでございます。私どもといたしましては、決してカルテルなりあるいは違法の再販売価格維持契約をいたしたものを摘発するというような気持ちをもって合併の問題を処理いたしておらないのでございます。あるいは当事者なり通産省の方にとりましてそういうような御印象があったかもしれませんけれども、それはおそらく当事者なりが希望しておられます方向と食い違うためにそういう御印象を得られたのではないか。私ども法律に抵触する部分があると考えておりますが、先方さんはそうは考えておられない、こういう点からの感情の行き違いではないか、かように考えます。
  116. 藤井勝志

    ○藤井委員 念のためにお尋ねしておきますが、公取委員長、公正にして自由なる競争というのは一体だれのためか、これをひとつお答えを願いたい。
  117. 山田精一

    山田政府委員 公正にして自由な競争と申しますのは、何も競争自体目的ではございません。どこまでも国民経済全般が自由経済の原則によりまして——これは完全な自由経済というわけではございませんが、現在の混合経済のもとにおきまして、有効適切な、また健全な発達を遂げるためには、やはり競争原理があって、それが市場において作用して適切な価格形成が行なわれ、また適切な生産が行なわれまして、資源の一番有効な活用がはかられる、これを実現してまいるのが私どもの役目であろう、かように考えます。
  118. 藤井勝志

    ○藤井委員 そこで、この公取から出された勧告書、それの対応策という四品目の中で一応問題は解消したやに聞くのですが、事の経緯を耳にして意外に感じておることは、鉄道用のレールの場合、これは国鉄がほとんどの消費者であることは御案内のとおりなんです。私は国鉄の総裁——当時の副総裁に会ったのです。彼は合併は大賛成なんです。われわれは人命尊重のため安全なレールを使わなければ困るので、やはりぜひそういう線は前進さすように考えてもらわなければ困る、こういう話があったのです。独禁法の一条の消費者の立場も考え、同時に国の民主的な健全な発展独禁法は確保したいのだというようなところからいくと、消費者である、しかも国鉄という何ら劣等な立場に立たない、対等な立場で取引できる条件を備えたものが、消費者自身もそれを希望しておる、こういうことに対して公取はそれはいかぬのだという、こういうことはどうも形式的な観念論のような感じがしてならぬ。これは私の間違いであれば蒙をひらいていただきたい。
  119. 山田精一

    山田政府委員 たしか鉄道用レールの需要の七割見当は国鉄でございます。それから残りの三割見当が民鉄であったわけでありまして、したがいまして私どもといたしましては、大口の需要者でありまするところの国鉄のたしか資材局長でございましたか、委員会の席においでを願いまして、十分御説明を承りまして、それを参考にいたしたわけでございます。
  120. 藤井勝志

    ○藤井委員 ひとつ話題を変えますが、委員長がかつて、あるいは二月の下旬ごろですか商工委員会で、対応策として現在実現しておらなくても蓋然性があるならば認めるという、この蓋然性ということばは、私も無学にして商工委員会で初めて耳にしたわけでございまして、この蓋然性というのはあなたはその当時具体的にどういう内容でお答えになったのか。と申しますのは、私はこれは新聞紙上でその後見たのですが、勧告しようとする時点においてあなたは対応策として確実性を要求しておられるというような記事が載っておった。蓋然性というのと確実性というのはどういうように違うのか。確実性ということは、これはもうはっきり結論が出るという、これが裏づけられなければならない。こういうことになると、これは、対応策をいろいろ見てみますと、合併後でなければ実現できないような対応策もありますね。二十万トン減産するというのがどこかに出ておりますね。鋳物用銑鉄で三年間に二十万トン、他社が増産して使いなれをする、移行をやる、こういうことは、やはり確実性ということを勧告時点ではっきり言われるならばこれはとてもできっこない。だからそこら辺どうしても、かつて委員会で御発言になったのと、新聞ですからこれは新聞が違うのだといえばなんですが、これは一体どういうふうに理解したらいいのか。
  121. 山田精一

    山田政府委員 私の考えといたしましては、たびたびこの委員会で御説明申し上げましたごとく、合理的蓋然性があればよろしかろう、こういう趣旨で申し上げたのでございます。蓋然性というと何%のプロバビリティーがあったらいいかというお尋ねがもしございますと、それは何十%ということをはっきり申し上げるわけにはまいらないと存じますが、可能性だけであってはいけない、また確実性は必要としない、合理的蓋然性、プロバビリティーという意味でお答えを申し上げておるのでございます。   〔委員長退席、武藤(嘉)委員長代理着席〕 ただ、内示の段階において確実性というような単語が新聞記事の一部に載っておったかと私も思うのでございますが、それは決して合理的蓋然性とは矛盾するものではないのでありまして、いわゆる対応策の全部につきまして確実性ということを私申しました覚えは全然ございません。対応策の中にもいろいろなものがございます。たとえば将来競争業者が進出するであろうとか、そういうものもございますし、特定のある業者が当事者のある設備を買い取るというようなこともございましょう。具体的に非常に特定いたしました業者がこれこれの設備を買い取るというような場合には、これは合理的蓋然性と、第三者の目から見まして、経済法則に照らし、また経験に照らして、おそらくはそうなるであろう、十分そうなるであろうということではなくて、これはやはり確実性がなくてはなるまい、かように考えるわけでございます。
  122. 藤井勝志

    ○藤井委員 鋳物用銑鉄ですが、勧告書には、需要家の使いなれを重視する傾向が著しい——使いなれということばについても質問が出ておりますが、これはきわめて一般的な常識語であって、何ら科学性もない一種の惰性というか、少なくとも合理的蓋然性を求める公取の立場においてこういうことばが飛び出すということはいかがなものであろうか。こう考えざるを得ない。使いなれが解消せぬ限り対応策もむだである、こういうふうなことを言っておる。これは法律概念上から考えても、法律をたてに準司法的な立場でもある公取の使うことばとしてはきわめて遺憾な、不十分といいますか、理解に苦しむことばである。同時に消費者、需要者というものは嗜好といいますか、通俗にいえば好みですね、は変わる。いわゆる消費者の嗜好の進歩性を否定したことばではないかとさえいえる。これに対しては公取はいかなる考え方でこの使いなれということばを使われたのか、お答えを願いたいと思います。
  123. 山田精一

    山田政府委員 いわゆる使いなれの問題は、たしか勧告文の中にも書いてあると存じますが、私どもが考えましても、どこまで科学的の根拠があるのか、これは十分にはわからないわけでございます。ただ、使いなれというものが、私どもは合理的蓋然性からしてあるであろうという判断をいたしたのでは決してないわけでございます。幾多の需要者また需要者の団体から聴取いたしましたところが、ほとんど軒並みに使いなれという意見が出てまいっておるわけでございます。私ども鋳物用銑の取引市場における制限があるかどうかということを判断いたします場合には、その取引において、根拠はないかもしれませんけれども、実際に取引関係者の間に意識されておるという事実、これはそれを踏まえて判断をせざるを得ないのではないか、かように考えるわけでございます。
  124. 藤井勝志

    ○藤井委員 この鋳物用銑に対して対応策としては、合併会社は生産水準を毎年逐次少なくして、三年間で二十万トン減らすという。これに対しては、新規参入を進めるため合併会社の減産は需要者利益を不当に害する、こういう指摘のしかたをされている。こういうふうにシェアが大きいから減産をするのだということでやろうと思えば、減産してはいけない、前へ進んではいけぬとか、あるいは左を向けというから左を向けば右へ向け。右へ向けというから右を向けば左へ向け。これは前にもうしろにも進まないような、こういった結論としか私には受け取れないです。これは一体どこでつじつまが合っているのか、私の単純な脳細胞としては割り切れない。ひとつお答えを願いたい。
  125. 山田精一

    山田政府委員 減産をいたすということは、これは企業の経営の自由であろうと存じますけれども、これを意識的に自分の計画に従って減産してまいりますというと、需要との間の均衡がそこなわれるおそれがございます。もしも需要がそれほど減らないのにどんどん減産をしていく、また新規に参入してきたものがその減産分を補うに足るだけ十分に供給されれば、これはよろしいわけでございますけれどもわが国経済は計画経済ではございませんので、その間にギャップを生じて、鋳物用銑の非常な供給不足というようなことが起こったといたしますと、これを使いますところの業界に中小企業が多いだけに、これは需要業者に非常な迷惑を及ぼすのではないか、こういうふうに考えているわけでございます。
  126. 藤井勝志

    ○藤井委員 どうもこれだけはもう一ぺん問いただしておかなければならないと思うのですが、まず勧告では、需要家が使いなれを重視する傾向があるから合併はいかぬ、ということは、使いなれたものをどんどん使うから合併はいけないとこういう。したがって対応策としては、自分たちで新規に別会社をつくり、それに進出させて、自分たちは徐々に減らしていこう、こういう考えでしょう。だから使いなれを持っていてどんどんいこうというものに対して、対応策として少のうしようという、まさに勧告の線に沿うて右へ向こうとしたら、今度は左向けという、こういうふうななには、全く机の上で生きた経済を適当にあなたらでもみくちゃにしておるとしか思えない。まことに遺憾な指摘のしかただと私は考えざるを得ないのです。これを言っておると時間がございませんから、次に進みますが、まことに無理難題、右向け左という、こういうことを一ぺんにやるような手品師がおったら見せてもらいたい。  そこで次は、この使いなれの問題と関連して、鋳物銑の各社の製品について優劣の格差をつけておられる。勧告書にはっきり出ている。これは新聞の報道にもちゃんと明示されておる。これが銑鉄、鋳物業界にはたいへんな混乱を起こして、私も鋳物関係の業者からいろいろ陳情書の写しをもらったが、あなたあてのもの、通産大臣あてのもの、いろいろ出ておるのです。これは名前は省略しますが、具体的に勧告書の中に示してあるのですから、公取として特定の他社の製品を著しく低く評価するということが、はたして——公正で自由な取引関係を確保するのだというその公取が、みずからねらう目的とまるで逆の、格差をつけて、公正にして自由な取引のできないようなこういう勧告をするというのは、一体これは正気のさたであるのかどうか。私をして率直に言わせてもらうならば、とんでもハップンだといわざるを得ない。これはどのようにお考えですか。
  127. 山田精一

    山田政府委員 私どもといたしましては、勧告において各社の製品の品質の優劣を指摘いたしました覚えは全然ないのでございます。またその必要もないし、また優劣を、商品を試験をいたして判断する設備もないのであります。ただ現実に需要者の間で評価に差がある。これは各需要者の側からそういう証言が多数出ておるわけでございまして、先ほど申し上げました使いなれと同様に、取引市場において実際の取引が行なわれておる、その取引当事者がそういう評価をいたしておるということは、これを踏まえて判断せざるを得ない、こういうことでございます。どこまでも需要者の側における評価に差があるという事実があるということでございまして、品質に優劣があるということではないのでございます。
  128. 藤井勝志

    ○藤井委員 まことに遺憾ながら、公取委員長の御答弁、率直に言わしてもらうと、単なる論弁にすぎないと私は思う。ちゃんと書いてあるのです。きのうですか、お宅からいただいた勧告書の四一ページごろからずっと四三ページ、私は省略しますけれども、ちゃんと具体的に会社の名前を入れてあるのです。委員長、これはたての半面ですよ。需要者が使いなれということを言う、それは需要者はそういうことを言うたかもしれません。同時にあなたは鋳物用銑の製造メーカーのほうの意見を一緒に聞かれたのですか。そういう点について需要者だけのなにで格づけをする、そういうことが片一方のなにだけですから、鋳物用業界からは多くの陳情書——公取というところはおそろしいところだから、ことばづかいはきわめて丁寧に書いてあるけれども、たいへんな混乱を起こしている。クレームをつけてくるとか価格の値引きを迫られるとか、こういう事態が起こっている。公取委員長としてどういう受けとめ方をされますか。私はまことに遺憾だと思う。
  129. 山田精一

    山田政府委員 使いなれの事実につきましては、需要者のみならず製造業者の意見も聞いておるわけでございます。それから値引きの交渉がそれ以来出たというお話でございましたが、もしそういうふうに需要者が受け取られたとするならば、非常に遺憾なことでございまして、私どもはただいまも申し上げましたごとく、品質に優劣があるというようなことは決して申しておらないのでございまして、ただ需要業界における評価には差がある、したがって、新規に参入するといっても、使いなれもあるし評価も違うし、容易なことでは進出をしてくるという合理的蓋然性は考えにくい、こういうことを申しただけでございます。
  130. 藤井勝志

    ○藤井委員 これは、私が主観的に言っておるだけじゃなくて、少なくともこの経済関係では客観的な論説を載っけておる。先ほど引きました日本経済の五月八日の中にもこれを指摘しておることはすでにお読みになったと思うのです。先ほどから需要者側の使いなれというようなこと、だからこうやったんだ、こういうお話ですけれども、それが結果する波紋はどうかというと、事実格づけになっておるという、これは経済の実態からいって、常識的に私はすなおに考えたらそうだというふうに理解できると思う。そこら辺が机上でただ、あなたはいろいろ説明、弁解して、使いなれが需要者側からこれだけ出たんだから、そういう意味でやったにすぎない、こういうお答えですけれども、使いなれの評価というものが即それぞれのメーカーの格づけになるということは子供でもわかる常識だと思う。まことにそういう御答弁では私は納得をしません。  時間がないから次に進みます。まことに遺憾なお答えです。  ところでもう一つ、これはこまかい問題ですけれどもちょっと調べてみたら、内示の段階で、鋼矢板の場合はきわめて抽象的に指摘がされておった。ところが、勧告書になると、具体的に指摘されて問題が急に飛び出してきた。これはちょっと前の話に逆戻りするわけでありますけれども、これは親切なやり方じゃないということをこういったことでも私は印象づけられるのですが、これは私の誤解でしょうか。
  131. 山田精一

    山田政府委員 内示の段階勧告段階程度の差があるという御指摘でございましたが、これは調査をいたしました時点が、内示の段階においてはまだ必ずしも十分に調査が終わっておらなかった状況において一つ判断を示したわけでございまして、いずれにいたせ、鋼矢板に問題がないと言ったわけではございませんで、これは問題があるということを指摘いたしておるわけでございまして、勧告段階においてはそれがさらにその後の調査によって具体的になった、こういうことでございます。
  132. 藤井勝志

    ○藤井委員 これもまた満足なお答えではなかったのですが、「鋼矢板はにわかに抵触しないとはいえない。」これだけたった一行書いてあるのですよ。ほかの三品目については詳しく書いてある。これが十カ月かかってやったいわゆる親切な行政相談と言えるかどうか。まことに突如として出てきておる。これは、まことに片手落ちといいますか、やはり適切を欠いておった、こういわざるを得ない。  次へ進みます。  済んだことを幾ら繰り返してもしようがないのですが、ただ、私が済んだことを申し上げることは、これは制度上そうなっておるので、公取は、先ほど宇野君から話が出ておりましたように、検事のような立場と今度は審判という判事のような立場、両方を兼ねられるのですから、ひとつ公正な——決して私は不公正な結論、間違った結論を要望しているものではさらさらございません。いままでが、私の見るところ、ずうっと調べられた十数カ月のものの運び方、いま指摘した具体的な事例から考えてみても、どうも合点がいかぬという自分の常識です。この庶民の常識を背景に考えて、何よりも常識としておかしく思うのは、これはちょっと横にそれますけれども生産量においては四品目においてたった二・八%、それで全体の合併を否認するということは庶民の常識に合わないという気がしてならない。これは問わないことにいたしまして、少なくとも一年近く扇前調査に時間を費やされた以上は、私は、公取としてはすみやかにこの円満な事態の収拾をされ、結論を出される責任があると思う。これが第一条の目的に沿うゆえんだというふうに思います。したがって、この関係において二つばかり質問をして結論に急ぎたいと思うのでございます。  これは関連質問で私が午前中にやりました独禁法五十三条の三の同意審決の事柄についてでございます。念のために私は条文を抜き書きしてきておりますが、「公正取引委員会は、審判開始決定をした後、被審人」この場合は八幡富士ですね。「被審人が、審判開始決定書記載の事実及び法律の適用を認めて、公正取引委員会に対し、その後の審判手続を経ないで審決を受ける旨を文書を以て申し出て、且つ、当該違反行為を排除するために自ら採るべき具体的措置に関する計画書を提出した場合において、適当と認めたときは、その後の審判手続を経ないで当該計画書記載の具体的措置と同趣旨の審決をすることができる。」これは私が指摘したたとえて言えば民事訴訟の和解、こういった制度をこれに期待をしているというふうに私は理解いたしたい。これに対して委員長はどうお考えですか。これは具体的な案件とは別に、とりあえず一般論としてでけっこうです。
  133. 山田精一

    山田政府委員 初めに、ただいま御指摘のございました四品目で二・八%という話でございましたが、これは午前中も申し上げましたが、総生産額の中で生産金額で申しますと、四品目で一割余り、一〇%以上になるのでございます。生産金額でございます。(藤井委員「私は量で言っておるのです」と呼ぶ)生産量とおっしゃいますと、トン数ですか。(藤井委員「そうです」と呼ぶ)これはまあトン数でまいりますのと金額と、経済的に評価いたします場合には金額のほうが適切のような気がいたします。一言御答弁を申し上げておきます。  それから同意審決の問題でございますが、これは先ほど指摘のございましたように、おそらく同意審決の制度は、違反事件、たとえばカルテルでございますとか、違法の再販売価格維持契約とか、こういう場合を想定して定められておる規定ではないか。なるほどそういうような公取から指摘されておるようなカルテルはいままでいたしておりました、しかし、これからこういう点でもって改善をはかりますから、こういうことを予想してつくられた規定ではないかと、かように考えるわけでございます。  和解というお話でございましたが、なるほど違反事件の場合にそういうことがあり得るかと思うのでございます。それを今回のような一般的に申しまして合併の場合に適用いたし得るかどうか、これは法律の構成上、けさほども申し上げましたように、かなりむずかしいのではないかと考えますけれども、これは御意見を拝聴いたしまして、十分委員会として検討いたしてみたい、かように考えております。
  134. 藤井勝志

    ○藤井委員 十分検討という、初めて私の質問に対してやや前向きというか、そういうお答えでございますから、私も念を押す必要はないと思いますけれども、最初のお答えのとき、この五十三条の三の同意審決は、違反事項のみを予定をしておったんだというふうに私は思うと、これは委員長、あなたの一つのお考えではあるかもしらぬけれども、この法律をすなおに考えてみれば、まさに公取の使命である準司法的使命と行政相談の両方の立場という、いわゆる両刃の剣のようなものだ。私は少なくとも今度の合併事案の場合は、十数カ月事前審査がずっと行なわれてきているのですから、その線に沿うて具体的な答えが出ればそこで手打ちをするという、これは何も違反事項だけでなくて、お互いけんかしているのが家庭裁判所で仲直りするということもありましょうし、ともかくそういう点において、今度のこの問題に関連して、合併してはいけないんだという前提で議論を進めていくと、審判の前例としては通常長期を要しておりますね。したがって本件の審判の短縮は、これははかるべきではないという理屈も立つと私は思うのです。合併は違反がなければできるだけしたほうがいいんだという前提に立てば、いままでの審判は違反行為のものであって、いわゆる摘発事案であったのに対して、今度の場合は合併の事前届け出による審判であるから、前に長くかかっておったのですから、問題が解消すれば、ずばりそこで結論を出していいのではないか。この五十三条の三はそういう意味の救済措置として大いに活用すべきである、こう私は積極的に進言を申しておきます。  ところで最後に、この五月十三日に両社合併ため答弁書を出しておりますね。それからもうすでに相当の日時がたっておる。しかるにいまだ審判官が決定しておらないという。これは一体いかなる事情にあるのか、その辺の関係をひとつお知らせを願いたい。
  135. 山田精一

    山田政府委員 前段は同意審決のお話でございましたが、これは和解というおことばがございましたが、私どもは決して当事者と争いをいたしておるわけではございません。民事訴訟の場合でございますと、原告、被告の間に利害の対立がございまして、いわば俗なことばで申せばけんかをしておるのでございますから、和解ということがちょうどぴったり当てはまるかと思うのでありますが、私どもといたしましては、法律に違反する点がなくなればこれは問題がないのでございまして、それ相応の終結の方法があると考えるのでございます。  それから後段にお尋ねのございました審判官の問題でございますが、これは現在答弁書が出されまして、私どもの手元において事務的に準備手続をいたしております。どこを争点とし、また当事者側はどういう主張、どういう証人を出されるかということを現在相談いたしておる段階でございます。一回準備手続をいたしまして、さらに引き続いて準備手続をいたすことになっております。したがって実質上においては審判が進行しておるわけでございまして、それとにらみ合わせて審判官を決定いたしたい。そのほかに何らの理由はないわけでございます。
  136. 藤井勝志

    ○藤井委員 それでは最後にいたしますが、先ほども言ったように、ひとつできるだけ結論を急いでいただきたい、このように重ねてお願いをします。  なお、私は先ほどからしばしば率直にものを言わせていただいておるわけですが、あなたのお答えに納得する節が十分出なかった。したがって、また機会を見て——決して私は審判の公正を害する意味でなくて、採用するせぬはあなたの御判断ですから、また機会を見て、必要があれば質問をさせていただくということで、この質問を終わらせていただきます。  最後に、通産大臣おいでになったので、一言だけ所見を承っておきますが、公取はちゃんと行政組織法においても独立機関である。影響は受けないということになっておるのです。したがって通産省としては、先ほど指摘したように、産業構造審議会の重工業部会において、今後の鉄鋼業のあり方については一つの答申を受けておられるのですね。したがって、ときどき野党の諸君は、通産省がものを言うといかにも牽制しているような受け取り方をするけれども、私は公取はそういう権威のないものではないと思う。き然としていると思う。したがって通産省としては、この問題については積極的に国民にも訴え、意見を開陳すべきである。私は先ほども冒頭に述べましたように、この国際化時代に対応して、日本産業の再編成の大きな試金石でございます。一八幡、一富士がどうなるという問題ではなくして、そういう試金石としてこの問題を受け取るとき、通産省としてはあまりにも沈黙が長過ぎる。これから大いに発言をしてもらいたいと思いますが、あなたの御所見はいかがでございますか。
  137. 大平正芳

    大平国務大臣 全体の産業政策といたしましては、機会あるごとに積極的に発言をさしていただいておるわけでございます。問題は八幡富士合併という具体的なケースでございますので、しかもそれが公正取引委員会の審理にかかっておるということでございますから、私どもといたしましては、この案件の一連の審理が終わりまして、問題が客観化された段階におきまして私どもの立場からいろいろ申し上げることがあるかもしれませんけれども、それまでは行政のマナーとしてできるだけ御遠慮申し上げておったのでございます。ただ公取の御審理の途中におきまして、勧告という形で天下に公表されたのでございますから、その勧告につきましてどういう対応策を講ずるとか、それからまた勧告が内包しておるいろいろな問題につきましては、公正取引委員会に遠慮なく意見を申し述べたり御意見を聴取したりすることは十分やっておるつもりで、ございます。
  138. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員長代理 石川君。
  139. 石川次夫

    ○石川委員 実は私はきょうは情報産業のことに関して、当面する問題点だけを質問したいと思っておったのでありますけれども、ただいま午前午後にわたりまして合併問題が出ております。私は合併問題を若干私なりに勉強はしておったのでありますけれども、残念ながら通産大臣のおられるとき、あるいは公正取引委員長のおられる場所での質問をする機会がなかったわけであります。しかし、きょうは予定ではございませんので、簡単に所見の一、二点だけを申し上げて、御質問にかえたいと思っております。  午前中の御質問並びにいまの藤井さんの御質問を聞きますと、かなり感情的な面があるのではないかと思われる点が多々あるわけでありますが、その点にはあえて触れません。ただ私がおそれるのは、独禁政策というのは産業政策の中の一環だというふうにお考えになっておるようでありますが、私はそうは思わないので、経済政策におよそ三つの柱がある。その一つの柱としての独禁政策があり、一つの柱として産業政策であり、金融政策である。こういうおのおの独立の関係で、三つの柱が相まって経済政策を形成をする。したがって、産業政策という意味をどう理解するかわかりませんけれども、その広い意味の中に組み入れて独禁政策を考えることは不当ではないか、こういう理解を私は持っておるわけであります。  それはともかくといたしまして、いま一番問題になっておりますのは、国民生活に一番密接な関係のある物価問題でありますけれども、物価問題を政策の面へ移しますと、独禁法の強化という問題がある。あるいはまた、所得政策というようないろいろな批判はありますけれども政策が提示をされておるわけであります。しかしながら、物価問題を申し上げますとたいへん時間がかかるわけでありますが、設備の合理化という問題が一つ、それから金融政策一つ、財政政策一つ、それから同時に、独禁法に盛られておるところの、公正にして自由な競争市場が存在をするということ、しかもこの物価問題の中の中核としては、やはり公正にして自由な市場というものが存在をするということが一番肝心なところではないか。そういう点で、私は公正取引委員会の任務というものはきわめて重要である、こう思っておるわけであります。しかもこの独禁法は、御承知のように昭和二十二年に制定をされましてから、ずっと引き続き新聞に報ぜられているように敗退の歴史であります。どんどん骨抜きになっておるわけであります。これは、経済情勢に順応したというふうな理解のしかたもあろうかもしれませんが、私どもから言わせますと、これはまさに敗退の歴史だった。これ以上独禁法が緩和されたら一体どうなるのかという疑問を私は持っておるわけであります。  そこで、今度の場合でありますが、御承知のようによく引き合いに出されますところの十五条「一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合」、これは以前は「こととなる場合」ではなくて「虞がある場合」こうなっておったのが「こととなる場合」というふうに変えられて今日に至っておるわけでありますけれども、「一定の取引分野」とは一体何だ、「競争を実質的に制限する」とは一体何だ、それから「こととなる」とは一体どういうことなんだ。ということは、東宝、新東宝の合併問題にからんで判例が出て、その判例というのは、リーダー企業のきめた価格に右へならえという程度のものでは違反ではない、これは実におそろしく狭い見解だというふうに私は理解しております。こんなことで一体ほんとうに独禁法が守り得るものかどうか、こういう点の疑念を持っておりますが、公正取引委員会のメンバーはほとんど法律家出身の方ばかりでありまして、私は法律は寡聞にして知識が乏しいのであります。しかしながら経済学的に見ると、この見解は非常に狭過ぎるのではないか。したがって、この見解を法律解釈でもってきちっと守っていこうとすると、非常に狭いワクで、非常に不十分な思いで、法律解釈だけの、法律の番頭としてだけの公正取引委員会存在ではないのかという感じを私はずっと持ち続けておるわけであります。そういう点で、山田公取委員長句か御所見があれば伺いたいと思います。私は端的に言いますと、この問題は、第一条の精神にあるように、ほんとうに国民経済の立場、それから産業の立場、いろいろな問題を考えてこの法律が生かされておるのでありますけれども、実際問題としては法律の狭いワクに追い込まれてしまって、ほんとうの本質的な精神は、経済的な意味での精神というものは生かされておらないのではないか、こういう疑念を持ち続けておるわけでありますが、その点の所見を一応伺いたいと思うのです。
  140. 山田精一

    山田政府委員 ただいまのお尋ねの第一点の、独禁政策産業政策の中に包摂されるのはいけないではないかという御指摘でございましたが、これは先ほど私も申し上げましたごとく、産業政策という定義をどういうふうにいたすか、これによっていろいろ違ってくると思います。私は先ほど広い意味における産業政策には入るでございましょうと申し上げたのでございまして、狭い意味産業政策とは違う、このことをはっきり申し上げてよろしいと思うのでございます。  それから、独禁政策における独禁法役割りというものを非常に高く御評価をいただきまして、まことにありがたいのでございます。ただし物価政策は、先ごろまで続きましたところの物価、安定推進会議においてもいろいろ問題が指摘されましたごとく、あるいは総需要対策あるいは構造対策、いろいろな面がございます。独禁法といたしましては、どこまでも公正にして自由な競争を通じて適切な価格形成が行なわれる、価格が幾らが適当だと数字を示すわけではございませんで、適切な価格形成が行なわれることを確保していく法律であると存じますので、そういうように私どもは極力努力をいたしておる次第でございます。  それから十五条の問題でございますが、なるほど最初にできました法律におきましては「虞がある」ということがございましたのが、途中の改正において「こととなる」というふうに改正されたわけでございまして、これは「虞がある場合」には可能性でよかったのでございましょうが、現在では合理的蓋然性になっておる、かようなわけでございます。したがいまして、現在の法律第十五条に忠実に従いましてわれわれはものごとを処理してまいりたい、決して故意に狭く解釈しておる、こういうわけではございませんことを御理解いただきたいと存じます。
  141. 石川次夫

    ○石川委員 この問題はまた議論をすれば際限がないのでありますけれども、私どもの見解によりますと、非常に狭い範囲でこの法律のワクを縛っておいて、その中にだけ当てはまるものだけを違反として適用するというような、活動の分野を非常に狭められておるという点が私は非常に残念でありまして、この第一条にあるように、公正かつ自由な競争を促進して、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにするという任務があるわけです。そういう点から言いますと、もっと広い意味での適用が必要なのではないか。でありますから、たとえば今度の場合で言いますと、珪素鋼板なども六四・六%、あるいは大型形鋼その他相当問題になるべき品種が多かったのではないか。しかし、この狭い法律解釈のワクに縛られたがためにわずか四品目にしぼらざるを得なかったという窮状は私はよく理解ができるのです。特に粗鋼なんというものは、御承知のように特定の取引分野というものを持っておらない。一定の取引分野は持っておらないということで、実はこの問題が一番生産量も多いし、影響力も大きいと思われるのにかかわらず、この問題を除外をされておるというような点は、法律的にはどうか知りませんが、経済的に見れば何としても合点がいかない面が多々あるという率直な意見が相当多いということを、まず公正取引委員会としては御理解を願いたいと思うのです。そういう法の精神を生かしていただいて今度の合併問題に対処してもらいたいと思うのでありますけれども先ほど来の御質問によりますと、たいへん合併を阻止するような前提でこの八幡富士合併に臨んでおる、こういうのでありますけれども、御承知のようにアメリカでは、ベスレヘムとヤングスタウンの合併公正取引委員会で安全に拒否をされておるという実例もあるわけであります。これは二位と六位の合併で、日本のように世界で第一流の、一位と二位の合併ではなかった。これすらアメリカにおいては拒否されたという実例もあるくらいであります。ところが日本では、いまだかつて合併に対して否定の結論を出したことがないというくらい、私はどうもこの公正取引委員会のやり方が手ぬるいのではないかという気持ちを持ったわけでありますけれども、念のために伺いますけれども、この前に、合併を認めるか認めないかという場合一応公聴会という制度があるのですが、いままでに公聴会をおやりになったことが何回ぐらいございますか。
  142. 山田精一

    山田政府委員 合併案件につきまして公聴会を開きました例は四回、今回をもって四回目でございます。ただし合併以外の案件につきましては、公聴会はほとんど数え切れないほどしばしば開いております。
  143. 石川次夫

    ○石川委員 四回。そのうちの雪印、クローバー乳業なんというものは、日本の生産分野からいうと相当の割合を占める。これは公聴会だけで合併を認めておる。それから中央繊維と帝国製麻、あるいは三菱三重工というものは相当問題が多いわけでありますけれども、これも公聴会だけで合併を認めておるというようなことで、自民党からの御質問によりますと、合併を阻止する前提でやっておるんじゃないかという批判的な御意見が多かったわけでありますが、私どもから言わせると、無条件的に合併を認めて今日に至っておるというのが実態ではなかったか。しかし今度という今度は、非常に狭い法律解釈に従ってワクにはめてみても、なおかつこの四品目は抵触せざるを得ないんだというようなところの結論にきている。まだはっきり合併を認めないという結論が出たわけではございませんけれども、そうならざるを得なかったという衷情は私はよく理解できると思うのであります。大きいことがいいことだということをよく言われますけれども、よく言われますように、一九〇一年にUSスチールが合併してできましたときは七〇%のシェアが、現在では二四%に落ちてしまっておる、したがって大きく合併することがはたしていいかどうかということは、産業自体の立場からも考え直すべき時期にきておるのではないか。その証拠には稲山社長がこういうことを言っております。これは朝日新聞に出ておりますから間違いのないことだと思うのでありますけれども、むだな競争をやめて利益を蓄積するためであって、国際競争力を強めるためだと言ったことはない、国際競争力は十分にあるのだ、こういうことを言明しております。しかし合併の申請書には歴然と国際競争力を強めるためであるということが出ておる。これはまことに矛盾をしておる。それからなおこういうことを言っております。カルテルによるコスト・プラス適正利潤の線で鉄鋼価格の安定をはかることは、需要業界のためである。国のためである。鉄は国なりということかもしれませんけれども、こういうことも言っておる。これは完全に競争的寡占ではなくて協調的寡占をねらった発言以外の何ものでもないんじゃないかとわれわれは理解せざるを得ない。そういう点で今度の合併は、いままでありとあらゆる合併を全部認めたけれども、どうしてもこれは業界のためにもならぬし、国民の立場に立っても好ましいことではないという判断にわれわれは立たざるを得ない。しかも、今度の合併で問題になったのは四品目だけでありますけれども、珪素鋼板だって当然問題です。あるいは大型形鋼だって問題です。特に粗鋼は、経済的には問題であるが、法律的には問題にならぬということでありますけれども、本質的には私は非常に大きな問題であろうと思っておるわけであります。これが全部公正取引委員会の今度の対象からはずれてしまったということについてもわれわれは非常に不満を持っている。こういう点で、公正取引委員会の方々がたいへん苦労に苦労を重ねられておることはよくわかるのでありますけれども、残念ながら、その視野として、法律的な見解に局限をされて、ほんとうに独禁法の出た基本となる経済面の精神を生かすという努力がまだ十分ではないのではないかという気持ちが私はしておるわけでありますけれども、しかし、いろいろな事情があってここまでに努力をされたことに関しましては、心から敬意を表するのにやぶさかではございません。したがって、いろいろな雑音と言ってはたいへん語弊があるかもしれませんが、いろいろな意見がいくでありましょうけれども、やはり法の番人という立場で、公正取引委員会の任務というものを十分に理解をして、き然として所信を貫いてもらいたい。ということは、もしこの八幡富士鉄というような世界的な会社、国際競争力も十分に持った会社、これらの会社が無条件に合併できるということになりますと、公取の任務は一体何が残るだろう。たくさんあるでしょう。たくさんありますけれども、私は任務は一つある。レモン水と書いてある中にレモンが入っているかどうか、かん詰めで牛のかん詰めといったけれども、中には牛ではなくて鯨が入っているじゃないか、そういう幼稚園的な任務は残るかもしれませんけれども、この富士鉄と八幡合併などというような大規模な合併、しかも業界の競争力をうんと鈍らせる、そして競争的寡占から協調的寡占に当然なる、管理価格を生む危険もある、国民経済にも影響がある、こういうものが無条件で認められるということは断じてわれわれは認めるわけにはいかぬ。これは私は、別に社会党の立場とか自民党の立場というものをこえて、国民的な立場で、それを痛感をするわけでございます。したがって、この点について公正取引委員会は、今後とも十分良心を貫いていただきたい。このことを強くお願いを申し上げておきます。  では、次の質問に入ります。  実は情報産業のことでございますけれども、御承知のように、情報産業といいましても、いわゆるコンピューター、ハードウエアとソフトウエアが混合した情報産業であります。これは御承知のように、宇宙開発という膨大な科学実験の結果、ますますこれが普及をし、アメリカにおいては発展をいたしまして、世界とはたいへんな差がついてしまったわけであります。その科学的な知識を持って日本にもヨーロッパにも上陸をし、席巻をするというかまえになっております。それで、日本におきましては、新聞に報ぜられるところによりますと、レアスコ・SRC、レアスコ・システムズ・アンド・リサーチ社といいますか、そこが調査会社の日本リサーチセンターに合弁を申し入れてきておるという事実が一つございます。それからCSC、これはアメリカ最大のソフトウエアの会社でありますけれども、コンピューター・サイエンシス社という会社ですか、これが日本のコンサルティング会社のビジネス・コンサルタソート、ここに合弁を申し込んできております。SRCのほうからいいますと、これは有名なコングロマリットのレアスコ・DPEの子会社になっております。CSCは先ほど申し上げたように、アメリカ最大のソフトウエアの会社であります。それからなお一つ伝えられるところによりますと、エンサイクロペディア・ブリタニカ、これは世界五十四カ国に子会社を持ち、支店を持っている非常に大きな百科事典の会社でありますけれども、その支店網を駆使して、これからソフトウエアに乗り出すということで、東京放送と凸版印刷に合弁を申し込んで、TBSブリタニカという会社ができようとしておる。なるほど情報産業の中で、ハードウエアはともかくといたしまして、特にソフトウエアは非常に日本は立ちおくれております。したがってアメリカの知識も入れざるを得ないし、入れたほうが早いということになるのでありますけれども、一体この三つの合弁の申請が正式に出ておるかどうか、もし申請があればこれをお認めになるという意思があるのかどうか、これをまず通産大臣に伺っておきたいと思うのです。
  144. 吉光久

    ○吉光政府委員 ただいまお話のありました三つのケースでございますが、CSCの関係につきましては、書類は出ておりませんけれども、内々そういう打ち合わせと申しますか、希望が伝えられておるという状況でございます。それからレアスコでございますが、これにつきましては内々のお話も全然来ておりません。新聞紙上に出ておるだけでございます。それからブリタニカの関係でございますが、これは内々のお話は来ておるようでございまして、現在内容をどういうものとしてやるかということについて相談が行なわれておるという状況でございます。  こういう基本的な考え方の問題でございますけれども先ほどの御指摘の中にもございましたように、日本の情報産業はいまからの産業でございます。したがいまして、そういういまからの産業でございますだけに、現実にこういう申請が出てまいります段階では、やはり日本の情報産業の将来のあり方というふうなものと関連いたしまして、慎重に判断せざるを得ないのではないだろうかと考えるわけでございます。
  145. 石川次夫

    ○石川委員 実はアメリカの経済成長は年率四%、五%ということでありますけれども、このソフトウエアの関係、情報産業の分につきましては大体二五%くらい、非常な勢いで伸びております。したがって日本あるいはヨーロッパとの格差はどんどん広がっておる。しかし当面はアメリカとしては自分の国内の情報産業が手一ぱいでありますから、そこだけで相当の販路を見つけることができますから、まだまだ外国に出ていく余力は乏しい。ちょっと日本のほうにもちょっかいをかけるというと語弊がありますけれども、様子を見に来る、打診をするという程度にすぎないのではなかろうかと思うのでありますけれども、将来アメリカがほんとうに自分の国の中である程度販路が狭まって、どうしても外へ出ていかなければならぬということになって出てきたときには、日本との格差は、現在でも相当開いておりますけれども、はかり知れないほどこのソフトウエアの分については——ハードウエアについても相当ありますけれども、特にソフトウエアの分については大きな格差が開いてくる、こういう点を私は非常に憂慮しておるわけであります。したがって、今後そういう合弁の申し入れがあったという場合には、そういうふうなアメリカのソフトウエアの産業界日本が席巻されてしまうということのないような体制を整えるという内面的な問題と、あるいは資本の自由化に即応してどういうものをケース・バイ・ケースでもって認めていくかというふうなそういう対策、こういう両々相まっての対策が必要ではなかろうか、こう思っておるわけです。その点通産大臣、どうお考えになっておりますか。
  146. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのとおりでございまして、せんだって産業構造審議会のほうから御答申をちょうだいいたしまして、いろいろの対応策が献策されております。中には相当斬新なアイデアも盛られておるようでありまして、いま私どもの内部でこれを検討いたしておる段階でございます。しかし問題は、仰せのとおり、わが国のこれからの未来産業であります情報産業の擁護と育成ということに遺憾なからしめたいという一念でございまして、仰せの御趣旨を十分体して善処してまいりたいと思います。
  147. 石川次夫

    ○石川委員 きょうは科学技術庁長官来ておりませんね。実は私が情報産業の面で非常に不安にたえなかったことは科学技術の情報なんです。と申しますのは、具体的に科学技術関係は向こうから提携を申し込んできておるわけでございます。それは、たとえばアメリカは日本のようにちゃちな情報網ではございませんで、情報がメディカルとかあるいはケミカルとか各部門に全部独立をして、相当内容の充実した情報網を持っておるわけであります。その中でメドラースというメディカルの関係、アメリカの政府がやっておるのでありますが、メディカルの関係で情報を日本に提供し、日本もそれに情報を提供するという関係の関連を持ちたいという申し入れが来ておるわけであります。そうしますと、向こうからの情報はなるほど入りやすくなるということはあるかもしれませんが、考えようによっては、この対策いかんによっては、完全にアメリカの科学技術のメディカルならメディカルのその網の中に日本が入ってしまう。日本が完全にアメリカの出店になる。こういうかっこうになった場合に、日本の将来の科学技術は一体どうなるのだという非常な不安があるわけです。これはメディカルだけではなくて、日本ではわりあい程度が高いと思われるケミカルの問題、これはケミカル・ソサイエティという向こうの化学学会でありますけれども、そこから日本に提携を申し入れてきております。それからメディカルの関係ではメドラースという医学文献の分折、検索をやるシステムのところがどざいまして、そこが日本に提携を申し込んできておるという事実があるわけです。こういうふうに申し込まれると、それに入れば確かにアメリカのそういう科学情報というものは得られるという魅力はありますけれども、将来の展望に立った場合に、アメリカの出店的な形でもってこちらの情報が向こうに全部吸い取られるということになると、これはたいへんなことになるのではないか。日本の科学技術の自主性というものは一体どうなるのだ、こういう不安から私はこの情報産業というものに多少関心を持ち始めたわけでありますけれども、その点についての実態、それから現在どうそれに対処しようとしているか、科学技術庁のほうでひとつ御答弁願いたいと思います。
  148. 佐々木学

    ○佐々木(学)政府委員 現在日本科学技術情報センターとアメリカとの間で若干の接触が持たれておりますのは、第一に、いま先生御指摘の米国国立医学図書館の医学文献機械検索システムでございますメドラースといわれるものと、それからいま御指摘のございました「ケミカル・アブストラクト」、アメリカの化学会で編さんしております「ケミカル・アブストラクト」の問題でございます。こういう機械検索システムの中でメドラースが現在世界で最も進んだ機械検索情報システムであるところから、わが国におきましても将来、今後発達いたします科学技術情報検索システムを実験、研究するためにこのメドラースを使いたいという希望を確かに持っておるわけでございます。現在このメドラースは、一九六四年にデータのインプットが開始されまして、年間十八万五千件の情報が入っております。そうして現在までに累積七十一万件というような蓄積でございまして、このメドラースを採用いたしまして情報検索技術の検討、研究開発をいたしておりますのはイギリス、スウェーデン、オーストラリア、ブラジル等が行なっております。そういたしましてOECDの科学政策委員会におきましても、このメドラースを中心にして技術文献の検討をしたらどうかという話が進んでおるわけでございます。  御承知のように、技術情報の検索につきましては、その入力、インプットにばく大な経費と人員を必要といたしますところから、現在では世界各国におきましてそれぞれの国が分野をきめまして、その分担をする範囲内におきまして情報をマイクロ化いたしまして、そのマイクロ化を相互に交換していこうではないかという国際協力が進みつつあるわけでございます。科学技術庁といたしましても、わが国の自主性をそこなわない限りにおきまして、技術文献の迅速かつ適正な検索を進めるために、できるだけこういう国際協力には参加してまいりたいと思っております。もちろんわが国の自主性をそこなわないという前提に立って考えておるわけでございます。  それから「ケミカル・アブストラクト」のほうでございますけれども、昨年の十一月ごろでございましたか、「ケミカル・アブストラクト」の会長が日本に来られまして、そして日本の科学技術情報センター及び日本の化学界の人たちと話し合いをなさったのでありますけれども、これはほんの感触をサウンドしたという程度で、まだ交渉といったようなそういう段階では全くないように考えております。そういう経緯並びに考え方でございます。
  149. 石川次夫

    ○石川委員 ケミカルの問題とメディシンの問題は私も一応話は聞いておるわけでございますけれども、科学技術庁が考えているように、海外の情報が得られるからそれでいいとだけ考え得るものかどうかという点については、非常に問題が多いのではないか。なぜなら、向こうはいろんな分野の科学技術情報のセンターをつくって、日本みたいに日本科学技術情報センターみたいに狭いところに一緒くたに集めているのではなくて、一つ一つが独立をして相当豊富な資料を持っておる。それが呼びかけてくることはたいへんありがたいようなかっこうではあるけれども、その運用いかんによっては——向こうがなぜケミカルとメディシンのほうに進んできたかというと、日本で一番進んでいるのはケミカルとメディシンだという考え方だろうと思うのです。したがって、向こうから情報を提供してやるぞということでなくて、日本の情報がほしいのだという意図が多分にそこには含まれているのだということも考えなければならないし、また向こうの情報網の中に組み込まれた場合に、もう完全に向こうのとりこになってしまうという危険性もあるわけなんで、その点は今後相当慎重に対処していかなければならぬ重要な課題ではないかというふうに私は考えております。この点は科学技術のほうの委員会でまた別にこの問題をとらえて討議しなければならぬと考えておりますから、科学技術関係はそのくらいに一応とどめておきます。  それから、いま御承知のように日本では日電、富士通、日立、東芝、三菱、沖の六社が合併をし日本電子計算機株式会社というものをつくっておる。これはJECCと普通言っておりますけれども、昭和四十三年では年間六百六十六億、非常に成長度が早くて、ことに昭和四十四年度には九百四十億円という年商になるのではないか、こういわれておりますけれども、これは御承知のようにレンタル制度になっております。四十四カ月のレンタル制度ではメーカーのほうではとても持ちこたえることができないということでこういう会社ができ、出資はいま百八十九億円にすぎませんけれども、開銀が九十億円を出し、以下いろんなところから融資を受けて、レンタルで四十四カ月かかる分をまとめて融資をするという制度をとっておることは通産大臣も御承知だろうと思うのです。ところで昭和四十四年の見通しは、JECCそれ自体の収支を見ますと、大体三百九十億円ばかり赤字になります。来年になるとこれまた五百億円をこすでしょう。毎年毎年ものすごい赤字が累積をされていくのではないかということで、JECCそれ自体が経営がもうこれ以上続けられないという状態になるのではないか。残念なことに、ハードウエアの分でありますと、機械が本体がありますから、それを担保にするという形もとれるかもしれませんが、ソフトウエアになると人間の頭脳です。したがって、これを担保にして金を借りるとか貸すとかいうわけにはいかぬということで、たいへん困難な融資上の問題が出てくる。しかし、このままこういう状態を続けたのでは、先ほど申し上げたようにアメリカとどんどん格差が開いていくような状態で、何とか追いつこうというのに追いつき得ないような状態がますます大きくなっていくのではないか。こういう点で今後一体このJECCに対してどういう方策で臨もうとするか。これは大会社でありますからそれぞれ適当にやるのではないかというふうな見方も一面は成り立つかもしれませんが、こういうふうな状態を続けると情報産業は足踏みになってしまう。しかもこのソフトウエアの関係は特に人手がたくさん要る産業だということで、日本の今後の産業政策の面としてもやはり重要視していかなければならぬし、日本には、特にソフトウエアの問題は、非常に知能の優秀な日本の労働人口を集約していくという上においても、やはりゆるがぜにできないと思うのです。そういう点で今後このままいったのでは、情報産業は行き詰まる、融資の面で行き詰まる。こういう点でいままでとはよほど違った産業政策、融資対策というものを考えていかなければ、将来相当大きな分野に発展するであろうこの産業部門というものは渋滞をする危険があるのではないか。こういう点で通産大臣はお考えになっておられると思うのでありますが、ひとつ御意見を伺いたいと思うのです。
  150. 吉光久

    ○吉光政府委員 お話しのように、日本電子計算機の現在の支払い金の支払い状況は非常に悪くなっております。いま御指摘ございましたように、四十三年度の購入額が六百六十六億、これは実は当初資金計画をいたしておりました数字をはるかに上回る需要があったためであったわけでございますけれども、このために四十三年度末におきますところの未払い残額は、二百八十九億円というふうに非常に大きな額になったわけでございます。したがいまして、いまもお話しの中にございましたように、本年度におきましては、開銀資金につきまして、九十億を準備いたしておるわけでございますけれども、何らかの形で開銀資金に、さらに援助できないかどうか、現在相談をいたしておるところでございます。  なお、そのほか増資でございますとか、あるいはまたインパクトローン、あるいは外債の発行というふうなことで、さしあたりの資金手当てはいたしたいというふうに考えておるわけでございますけれども、ただ現在の電子計算機の需要の伸びが非常に予想外に早いテンポで伸びております。したがいまして、やはり根本的にこの資金関係について、従前のような確保対策を講じますことは当然でございますけれども、同時にまたJECC金融のあり方と申しますか、こういうものにつきましても根本的に考え直してみまして、そこで同時にIBMその他とも対等な条件で貸すだけのレンタル制度を維持していくべきであるというふうに考えておるわけでございまして、現在その具体的なあり方につきまして、JECC及びJECCを構成しておりますコンピューター関係の会社と協議を進めておるところでございます。
  151. 石川次夫

    ○石川委員 いま直ちに具体的な方策をどうこうということは、なかなか困難な問題だとは思いますけれども、従来と観点を変えた立場でこの情報産業には対処していかなければならぬ。非常にむずかしい問題ではあるけれども、しかしこれほど飛躍的に発展をする産業は少ないし、またアメリカとの格差が広がっていくのに追いついていかなければならぬという使命をあわせ考えていきますと、相当思い切った対策を立てる必要がある。こういうことだけを申し上げて、いろいろ意見はありますけれども、なるべく簡単に質問を済ませたいと思いますから、この辺で前に進みたいと思います。  それから、現在工業技術院で超高性能の電子計算機の研究開発をやっておりまして、なかなか世界にも非常に目をみはらせるようないろいろな開発も行なわれているようであります。SBC使用の高速集積回路とか、電子露光装置の集積回路、露光装置の開発というものは世界じゅうで刮目をして注視しておるというようなこともございまして、たいへんみごとな成果をあげておるわけでございますけれども、工業技術院で通産省が主体となって産業用の大型計算機のプロジェクトを開発をしている。一方では電電公社が同じような形でハードとソフトと両方を含めて開発を進めておる。民間のほうから見ますと、両方が同じことをやっているのではないか、重複投資ということでたいへんもったいないではないか、しかもその出た結果が、もし通産省と電電公社が違った結果が出たということで、違った結果に基づいてメーカーのほうにいろいろな要求をしてくるということになると、メーカーのほうにも非常な混乱が出てくるのではないか、こういう懸念をしておる向きが多いようであります。そういうことで、この両方はお互いに協力をし、連絡をし合いながらやっているとは思うのでありますけれども、どう見ても重複投資、重複研究というような懸念が解消しない。この点はどういうふうに御理解になり、どういうふうに対処しようとしておるのか、その点を伺いたいと思うのです。
  152. 吉光久

    ○吉光政府委員 工業技術院のほうでやっております超高性能の電子計算機の開発につきましての、いわゆる大型プロジェクトでございますけれども、昭和四十一年からスタートいたしまして四十六年までで完成するという予定でやっておるわけでございます。これと、ただいま御指摘ございましたように、電電公社の計画との関係でございますが、この工業技術院でやっております大型プロジェクトは、あくまでもプロトタイプの、試作するという段階のものでございまして、さらにこの成果を実用化いたしますためには、メーカーなどでそれぞれ商品化のための努力というものがいまから必要になってまいるわけでございます。伺っておるところによりますと、電電公社の計画はこのような実用化の一環として計画されておるようでございまして、現在も工業技術院のほうに御連絡があって、工業技術院のほうで現在までに出ておりますノーハウその他につきましても、常に電電のほうにこれに協力をいたしておるようでございまして、そこらの成果を利用いたしまして、オンライン用の電子計算機の製作を進めておるというふうに、私ども電電公社から伺っておるわけでございまして、両者の計画の中に現在重複するものはないというふうに伺っております。
  153. 石川次夫

    ○石川委員 その点についても意見がありますけれども、あとに譲ります。  それで、結論的に言って、性能は同じだけれども方式が違うのだ。現在あるところのコンピューターはほとんど小型化して、将来は工業技術院が開発しようとしている非常に大型のものに移行することにならざるを得ないのでありますが、その場合に、方式が違って性能が同じだというようなものができ上がって、それで民間を非常に混乱をさせるということがないような配慮というか、連絡、調整、これは十分にやってもらわぬといかぬ。これは将来たいへんな混乱を起こすもとになると思うので、ひとつ御忠告しておきたいと思うのです。  それから、これは電電公社の関係でございますから、一応申し上げておくだけにとめますけれども、オンライン・リアルタイム、これは遠距離即時通信方式ということになりますが、これが、公衆電気通信法というものによって、企業体の違う異質体のものについてのオンライン・システムがとれないかっこうになっているのです。最近の答申にもその点が指摘されておりますけれども、たとえばトヨタ、日産は、自動車会社というものが一つございます。それから販売会社というものがございます。しかしながら、これは販売と製作というものはおのずから機能が違うから分けたほうがいいというので、便宜的に会社を分けているだけであって、実際は同じ根から出ている一つの幹にすぎない。ところが、この二つは異質体である、企業が違うのだということで、これをつなぐことに対しては相当高い権利金を払うということで、公衆電気通信法によってこれが阻止されるような状態になっている。これは、どう考えても常識的に納得がいかないわけであります。   〔武藤(嘉)委員長代理退席、委員長着席〕 これは東芝にしても、三菱にしても、自分のところの企業の中で、この品種は独立させたほうがいいということで、子会社、系列会社というような形で製品を分離して独立させ、独立採算をすることによって能率をあげるということがありますけれども、持ち株はほとんど一〇〇%親会社が持っているという例が多い。しかしながら、会社が別だから、それはオンライン・システムをとってはならぬのだ、こういうようなことに現在なっているわけです。これはどう考えても理不尽ではないか、私はこういう感じがしてならないわけであります。そういう点で、今後これをこのまま公衆電気通信法によって、異質体であるからこれはやむを得ないというふうに考えていくのかどうか。これは郵政省の関係にはなると思いますけれども、通産省としても無関係の事柄ではないので、この点についての通産大臣の御意見を伺いたいと思うのです。
  154. 大平正芳

    大平国務大臣 電電公社の通信回線の利用につきましては、御指摘のように公衆電気通信法において、公衆交換回線網を利用して情報処理を行なうことはできない。それから第二番目は、専用回線を御指摘の異質体間において利用することは一部の例外を除いてはできないということになっております。この例外規定というようなものが厳格に適用されておるように聞いております。これらの点につきましては、この間の答申におきましても、今後の情報化の進展に対応いたしまして、通信回線の利用の自由化を御提案になっております。したがって、通産省におきましては、所管省である郵政省との話し合いを通じまして、答申の趣旨の実現に今後鋭意つとめてまいりたいと考えております。
  155. 石川次夫

    ○石川委員 これは、通産省の直接の管轄じゃございませんから、ここで追及してもしかたありませんけれども、どう考えても、どうも理屈が合わないんですね。実態に沿わない。したがって、異質体だからということでもって非常に高い料金を払わなければならぬというふうなことになって、ちゃんと高い料金を払うということが、外国から上陸をしてくる情報産業をチェックすることにもなるんだ、こういうようなことも言っておるようでありますが、これはおのずから次元の違う問題ではないか。外国から資本の自由化によって情報産業が入ってくるというものは、それはそれなりに別な次元においてひとつ対処していかなければならぬ問題ではないか。それの口実にはならない、こうわれわれは理解をしておりますので、この点をひとつ十分のみ込んでいただいて、政府の立場で、ひとつ高い立場で御解決をお願いしたいと思います。要望申し上げておきます。  それから、産業構造審議会の情報部会の答申の内容を一応読んでみましたけれども、この中で、人材が非常に不足をしておるという問題があるわけです。この人材は、際限なくこれから必要になってくる。アメリカあたりでは、高等学校から実際には末端組織というものを使わせて、このコンピューターというものの実習をさせるというようなこともやっておるようでありますけれども日本では、高等学校はおろか大学においてもそういったことは全然経験のないという人も多い。そういうことで、人材の養成が非常な立ちおくれを占めるんではないかという心配をしておるのでありますが、まずこの問題は、実はハードウエアの部分につきましては、通産省の管轄ではないか、こう思うのでありますが、ハードウエアとソフトウエアというものは密接不可分であるという点では、通産省がそういう問題もやはり一元的にめんどうを見るほうがいいのではないかという見方もあるし、ソフトウエアというものは純然たる科学技術分野に属するものであるから、これは科学技術庁でもって見たほうがいいのではないかという見方もある。それで、この辺の思想の統一というものは、議論の余地が起きると思っておりますけれども、それはともかくといたしまして、この答申案によりますというと、昭和四十七年に必要とされる技術者については、四十三年を基準に、システムエンジニアが六倍、プログラマーが五・三倍必要だ、こう書いてあるのですが、これは人数にしてどのくらいになりますか。
  156. 吉光久

    ○吉光政府委員 システムエンジニアが四十三年三月、七千五百人でございます。これが四十七年三月、四万五千人でございます。それからプログラマーでございますが、四十三年三月、一万二百四十人でございます。これが五万四千二百人で五・三倍、こういう計算でございます。
  157. 石川次夫

    ○石川委員 実は、アメリカでは、御承知のようにソフトウエア二十万人、これは一九七〇年の目標四十一万人、それからヨーロッパあたりにおきましても、ヨーロッパの人口は大体日本の倍でありますけれども、一九七五年までに四十六万人、こういう目標であります。電気工業審議会のほうで昨年つくった予定によりますというと、一九七一年までにソフト関係が九千二百人、これは主としてシステムエンジニアの場合でありますけれども、プログラマーが一万六千三百人、オペレーターが二万三千百人、四万八千六百人というようなこの計画になっておるわけであります。これはこれからどんどんどんどん拡張していくというソフトウェアあるいはハードウェアの分に対しましてはあまりにも少ない見通しではないのか。ヨーロッパあたりでは御承知のように、いま申し上げたように一九七五年には全部を含めまして四十六万人という見通しをもって養成するということを言っている。この人材養成というものについては、取り組み方が非常におくれていると思います。したがって、いま始まったばかりの産業であり、新しい技術でありますから、いきなりこれを養成するといっても非常な困難はありますけれども、思い切って情報大学というようなものをつくって、これは民間でやろうと思ってもできる仕事ではありません。御承知のように相当金がかかります。経費が要ります。したがって、思い切って情報大学のようなものを政府の力によって設立をするという踏み切りがなければ、この人材の養成を各個ばらばらに各大学にまかせておくというようなことでは、とうていこの需要に追いつかないのではないかという気がしてならないわけです。これは通産省だけできまる問題じゃありませんから、よほど真剣に考えてもらはないと、産業だけは発展しても人が全然伴わないということになることは火を見るよりも明らかであります。これは思い切った対策を何か考えなければならぬと思うのでありますけれども、その点どうお考えになっておりますか。
  158. 吉光久

    ○吉光政府委員 最初にシステムエンジニアその他プログラマー等の技術者養成の数があまりにも少ない、ヨーロッパ並びにアメリカに比べまして、非常に少な過ぎる数字であるという御指摘でございました。私ども実は、ほんとうに最小限度現在計算したわけでございますけれども、非常に少ないのではないかという気持ちもあるわけでございます。ただ、御承知のとおり、人口一人当たりの現在のコンピューターの設置台数、金額でながめました場合に、アメリカが六十八ドルに対しまして、西独二十一ドル、日本が八・四ドル、それからイギリスで十六ドル、フランスが十七・八ドルというふうな度合いでございまして、現在の日本のコンピューターの人口一人当たりの設置台数——総設置台数では相当のところにきておるわけでありますけれども、人口一人当たりの設置台数から見ました金額で見ました場合には、まだまだ非常に弱いところにいるというふうなことが基本的な要因になっておるのだと思うわけでございますけれども、さらにこの人員を計算いたしましたのは、こういう基礎を前提にいたしまして、将来のコンピューターの伸び率というものを中心にして描いた予想でございます。したがいまして、これはどちらかといえば最小限度の数字というふうに御理解いただきたいと思うわけでございます。それから、特にいまシステムエンジニアの養成の問題につきまして、上級システムエンジニアの養成の学校教育施設等について思い切った措置が必要ではないか、こういう御指摘をいただきました。この答申におきましても、特にこの教育の問題につきましては、非常に大きなウエートを置いておるわけでございまして、同時にまた、特にいま御指摘ございましたような部門につきましては、上級情報処理技術者研修センターというふうなものを積極的につくったらどうだという意味の提案がなされております。私どもも、この線に沿いまして、できるだけ実現に努力をいたしたいと考えます。
  159. 石川次夫

    ○石川委員 時間がないようでありますから、後日にまた譲りたいと思うのですが、日本は一人当たりはなるほど少ないのです。少ないということは非常に小型のものを使っておるということですが、将来は必然的に大型化せざるを得ない、高性能のものに移っていくということは当然の成り行きだと思います。その場合を考えますと、現在のような人材養成のやり方では非常に立ちおくれざるを得ない。また、これは情報セーターというふうなもので何か人材を養成するというようなこそくな手段では、とうてい追いつかないのではないか、こういう気持ちがしてならないのです。やはり思い切った政府の手によるところの大学をつくるなり何なりの手を打たなければ、非常に、異常に成長するところの情報産業にはついていけないという実態になると思いますので、ぜひその点は政府のベースでもってよく検討していただいて、思い切った対策を立ててもらいたい。  そのほか申し上げたいことは、こまかい点たくさんございますけれども、時間がございませんから、きょうはこれで終わります。   〔退場する者あり〕
  160. 大久保武雄

    ○大久保委員長 塚本三郎君。
  161. 塚本三郎

    ○塚本委員 山田公取委員長にお尋ねいたします。  実は、鉄鋼の合併審判が間もなく始まりまするので、おくらされますると、またこれは、来週は一般質問がない時間になっておりますので、間に合わないのでございます。だから、私は、どうしてもきょうは質問をしてみなければならぬと思ってお待ちをいたしたようなところでございます。  あらためて御質問申し上げますが、この鉄鋼合併審判に際しまして、私は、委員長に、私的独占禁止及び公正取引の確保に関する法律第十五条「国内の会社は、左の各号の一に該当する場合には、合併をしてはならない。」この第一号に「当該合併によって一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合」と、厳格に、合併を否認する場合は「実質的に制限する」場合と、こういうふうに明文化されておるはずです。したがいまして、自由競争に対するその蓋然性を予見されればいいというふうなことを委員長みずから当委員会において御説明があったはずでございます。きょうも宇野、藤井両委員の不満の意を表したような質問があったのでございまするが、私も、やはりこの合併中止に関する勧告の文書等を読んでみまするとき、蓋然性に対する予見がされればいいという御説明に対して、あまりにも具体的な確実性を要求しておるかに見えるわけでございます。したがいまして、この合併審判に対する当委員会審議というものが、最初とそうして最近の委員長の御判断とが違うやに受け取られるわけでございます。したがいまして、この第十五条第一号に対する御見解をもう一度承りたいと思います。
  162. 山田精一

    山田政府委員 かつて当委員会におきまして御説明申し上げましたところと少しも変化はいたしておらないわけでございます。私どもといたしましては、十五条の「一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合」、これはどこまでも合理的蓋然性としてそういうことが予見される場合と、こういうふうに解しておるわけでございます。   〔委員長退席、宇野委員長代理着席〕
  163. 塚本三郎

    ○塚本委員 ところが、合併中止の勧告書を読んでみますると、私は、そのようには実は解釈がされないことを残念に思っております。しかし、そのことをあとで触れてみたいと思いますが、もう一度、最初にこの合併がこの委員会で論議せられたときのことをけさから私は振り返っておったわけでございます。この合併に対する審議が進んでいきまするうちに、いわゆる値段に対する高下があること、このことが何かしら自由なる競争であって——安定してくるということも、私は、今日の日本経済の要求せられておる一つの希望でもあろうと思っております。特に、私ども民社党の立場から申し上げてみまするならば、乱高下することによって、実は、鉄屋さんたちはそれに対する投機的なうまみはあるいはあるでございましょう。しかし、中小企業者の立場に立ちまするとき、やはりその資材というものの価格が安定していること、このことが最も大きな要件とされておる、このことを私は強く御要望申し上げておったはずでございます。小さな鍛冶屋さんたちに会いまして、おい、もうかるかい、こう言いますと、いま鉄が安いからもうかるよ、こう言うのでございまして、工賃の問題じゃない、材料が安いからもうかると言うんです。損しましたよ、材料が上がったからですよ、こういうふうな形でもって、実は、今日、日本産業界における最も大きな問題は、やはり基礎資材の価格が安定をすること、望むらくは低位で安定すること、ここに一つの大きな期待せられた経済価格というものがあると思うわけでございます。ところが、自由競争を制限すること制限することを言っておりまするうちに、実は、値段の動くこと自身がいいことだということに受け取られておるのではなかろうか。まさかそうじゃないと思いまするが、そういうふうに受け取らざるを得ないようないわゆる雰囲気というものがかもし出されてきておる、その点私はきわめて残念だと思うわけです。おそらくそういうことはないと思いますが、もう一度、やはり低位において価格が安定すること、ここにこそ私は最も自由経済下におけるこの基礎資材としての使命がある、かように思っておりまするが、いかがでしょうか。   〔宇野委員長代理退席、委員長着席〕
  164. 山田精一

    山田政府委員 独禁法の立場から申しまして、価格の乱高下を希望いたしておるわけでは毛頭ございません。低位で、そのときの需給の状況に即した適切な価格形成が行なわれることが独禁法目的と考えておるわけでございます。ただ、それが競争を通じませんで安定させられるというところにおいては、これは競争原理が働かないのでありますから、どこまでもこれを排除しなければならないと考えるのでございます。もしもかりに、完全競争があるところにおいては、価格はさほど変動いたすことはないと存じます。
  165. 塚本三郎

    ○塚本委員 全くそうだと思います。私もそういう答弁を聞いて安心いたしました。ところが、出発にあたりまして、やはり蓋然性の問題が議論されておったのでございまするが、私は、これを私から委員長に最初にお尋ねしたことだと思います。合理的かつ客観的にいわゆる自由の競争が予見できればいいということであったはずでございます。ところが、この勧告文の説明文を見ますると、全く現実性を実は要求をしておるということに受け取らざるを得ないわけでございます。それで、委員長が、そういうことを言っていないんだ、だから、これから、そういういわゆる中止勧告という文書にとらわれていないと言われるなら、私は、それでこれ以上のことを論及しようとは思っておりません。しかし、あの中止の勧告書を読みます限りでは、やはり合理的にしてかつ客観的にいわゆる自由競争を予見できさえすればいいというふうに受け取っていきたいと思うのです。その点どうでしょうか。
  166. 山田精一

    山田政府委員 私といたしましては、どこまでも合理的蓋然性ということで判断をいたしておるわけでございます。ただ、午前中にも申し上げましたごとく、いわゆる対応策の中で、ある企業に設備の一部を譲渡するというようなことにつきましては、これは合理的蓋然性——あの企業はおそらく設備を引き取るであろうというようなことでは、判断いたすわけにまいりませんのでありまして、具体的な項目につきましては、ある程度の確実性が立証されなければならない、こういうことはあると思います。
  167. 塚本三郎

    ○塚本委員 わかりました。たしかその部面については、私は、それで対応策が出ておるから、いいと思うわけでございます。ところが、いわゆる鋳物銑におきまして、あるいは鋼矢板におきまするおたくのほうの勧告書を読んでみますると、どこにその株を渡したとか、どこにその設備を一部渡したということに対しては、どこという確実性がなければならぬと思うわけでございます。しかしそのほかの問題につきましては、客観的に予見し得るいわゆる蓋然性というものがあればいいというのでございまするが、先ほどから再三藤井先輩のごときは抗議的な発言までなさっておったのでありますが、私もこの勧告文を読んでみますると、全くそれは蓋然性ではなくして現実性、しかもまた不可能であるといういわゆる予見性まで触れてみえるというふうに思わざるを得ないわけでございます。たとえば鋼矢板のごとき、富士鉄は三十四年に製造を開始いたしました。そして四十三年にはすでに、御承知のとおりわずか十年足らずしてシェアも四二・五%まで伸びておるのでございますね。生産開始をいたしましてから十年を経ずして四三%まで実は伸びていっておる。こういう伸び率を示しておるといたしまするならば、そのほかの企業が、たとえば鋼管であるとか川鉄が始めてみたとて、そういうところにいくということがなぜ予見できないのでございましょうか、どうでしょう。
  168. 山田精一

    山田政府委員 それはやはりそのときの与えられました時点における経済諸与件に照らしまして、合理的蓋然性が判断できるかどうか、その辺を検討いたすべきところと考えます。
  169. 塚本三郎

    ○塚本委員 これからまだ検討なさるということですから、私も安心いたしておりまするが、あの中止の勧告文ではこれは、競争者と認めることは困難であるというふうな考え方、だからこそあなたは、合併してはなりませんぞ、やるならばいわゆる中止命令だと、こういうふうないきり立ったような態勢をとっておいでになる。だから私どもは、委員長の御説明と今日の時点と少し違っておるのではなかろうか。確かにその時点におきまする経済的の、あるいは市場の状態によって、その参入がいわゆる自由競争に持っていくだけの力があるかどうかということはそのとおりです。しかし、少なくとも三十四年に富士鉄がゼロから出発したときと考えてみまするとき、今日の時点では、すでに鋼管やあるいは川鉄は製造したこともあり、いま懸命に増設をしておる最中、さらにこの合併両社が製造を控えようといっておる、さらにまた特許さえも、期待するならばこれは公開しようとさえも言っておる。これでいけないということになると、一体あとはどういたしましょうか。もはや合併を中止させるための材料だけを一生懸命かき集めてきておる、というふうに会社側が受け取ったとしても、私は同情に値するというふうに思うわけでございます。しかし、それもあの時点でのことであって、今日はその点を参考にして検討してみようとおっしゃられるならば、私はこれ以上深入りすることははずしてみたいと思いまするが、どうでしょう。
  170. 山田精一

    山田政府委員 先ほど私がその当該時点においてと申し上げましたのは、かつて富士製鉄が新規に参入いたしました時点と最近の時点とで、それぞれ経済的諸与件が違うであろうということを申し上げたのでございまして、勧告をいたしました時点と審判に入ります時点という意味で申し上げたのではございませんので、御了解いただきたいと存じます。  それから、ただいま御指摘の点につきましては、私どもは、新規参入は、諸般の状況、また各方面からの証言によりまして、困難であろうという判断をいたしておるのでございますが、これから先審判が開始されまして、当事者の側からどういう主張、またどういう証拠が出ますのか、それらを十分にとらえまして、私どもは先刻から申し上げましたごとく、これだけはぜひ合併させたいとか、あるいはこれはぜひ合併させたくないというような予断は持ちませんで十分に判断をいたしたい、こういうつもりでおります。
  171. 塚本三郎

    ○塚本委員 そのことは私も承知してお尋ねをいたしておるつもりでございます。私の申し上げたのは、三十四年に富士鋼矢板に新規参入した当時と、そしておたくのほうから五月合併の中止の勧告をなさった時点とを私は比較をいたしまして、私の心証からするならば、三十四年に富士鉄が新規参入したときの市場の状態よりも、今年の合併中止の勧告をなさった時点のほうが新規参入が可能であるという判断を私どもは持っておるわけでございます。なぜならば、この合併会社が製造を遠慮しよう、制限していこうとまで言っておるわけでございます。しかも三十四年当時は、富士は全くしろうととして新しく製造開始したのでございます。鋼管と川鉄はすでにそのことに経験を持ち、そして製造も続けておる——あるいは鋼管は一時中止したかもしれませんけれども、先に行なったこともある。こういうところで、最も強い競争制限のあるところが製造を遠慮しようとか制限していこうと言っておる。こちらは経騒者だ。さらにこの先輩が、必要があるならば特許まで公開しようとしておるではございませんか。そのことはあの三十四年と比べたならば、段違いに今年この時点のほうがいわゆる自由競争として新規参入の競争相手たり得るという判断が私どもはなされるわけでございます。まあこれからの判断でございまするから、私どもは強くこの点を御要望申し上げて、それが違うとおっしゃるならば、ことさらにけちをつけて初めから合併を中止させるための材料をそろえるだけにすぎないとしか私自身は少なくとも個人的には受け取らざるを得ないと、かように思うわけでございますが、どうでしょう。
  172. 山田精一

    山田政府委員 これから審判を近く開始する段階でございますので、個々の品目の内容につきまして、ここで勧告文に書いてございます以上のことを申し上げますことは差しさわりがございますので、控えさせていただきたいのでございます。ただ、いま鋼矢板について当事者が減産するということを言っておるという御指摘がございましたが、鋼矢板については、そのような主張は出ておりませんのでございます。
  173. 塚本三郎

    ○塚本委員 先ほど藤井議員のほうから、右向け左という実に珍妙な発言がございました。鋳物用銑に対する評価でございまするが、この問題は、まさに勧告を読んでみると、やはりそういう感じがいたすわけでございます。この点は、減産をして、そうして相手方の新規参入のしやすいようにしてあげようという道を開いておるはずでございますね。そのときに、そうすると需要に応じ切れなくなって困るから、それはいけないのだというふうな意向が伝えられておる。一体どうするのだということになると、もはやこれはどうしようもないではないか。それならば勇気を持っておたくのほうで、もはや両社合併は、これらの時点を見ただけでも無理でございますから、初めからこんなことはわかっておったことです、対応策は無理でございますとずばりとおっしゃったほうが私はいいような感じがするわけでございます。だから、そういうふうな私どもの受け取る感じからいたしますると、鋼矢板にいたしましても、さらにまた鋳物用銑にいたしましても、先ほどからるるいわゆる競争会社に対する門戸の批判の問題も出てまいりました。私のところへもたくさん、特に使っておるところの需要家からの不平、不満というものがきて、ぜひ公取に述べてもらいたい、こういうことを直接業者からも言ってきております。しかしそのことはすでに両先輩が述べられたので、私はこのことに触れようとは思いませんが、最も公取指摘をなさっておられるこの鋳物用銑鋼矢板に対しては、そういう意味で考えようによっては競争制限というものには全くならないという状態。ところが合併を否認するときには、実質的にいわゆる確実性を持って競争制限をするときでなければ否認できないのでございます。だから、両方に見解が分かれるがごときあいまいさ、これが私は蓋然性だろうと思うのです。そういう意味で、私どもはこんなきびしい勧告を出さなくてもいいというふうに感ずるのですが、どうでしょう。
  174. 山田精一

    山田政府委員 競争制限にならないという確実性というおことばがございましたが、その辺のところはどこまでも確実性ということではなしに、合理的蓋然性ということで判断をいたしてまいるつもりでございまして、その方針で進んでおります。
  175. 塚本三郎

    ○塚本委員 それから、これも先ほどから問題とせられておりましたが、公取の立場というものは、違反したものに対しては、違反事実として審判しなければならない、こういうことでございまするが、これから合併したいんだということは、どういう点が違反にかかりましょうか。初めから違反者ときめつけるように受け取られるという御意見がありましたが、扱われ方としては、全くそういうふうな扱われ方にひとしい経過をたどってきておると私ども判断しておるわけです。だから、公取の立場なら、こういう点は実は違反になりますよということをもっと大胆に、違反にならないように先に介入して、そして一々のことを指摘してあげて、これはどけなさい、こういうふうにしなさいというふうに——違反者に対してならば、そういうことははばかることでございましょう。しかしながら、違反する危険性があると思いますので、そういう点こういうふうにしたらどうでございましょうかといって、おたくのほうに相談を持ちかけておられるのだから、初めからこいつは違反ですという違反者をつくる前に——合併したいことはもう新聞等で十分御承知のとおりでございます。これとこれとこれは違反になりますから、ここまでしたらどうでしょうかということをもっと親切になさっても、違反者に対する審判と違うのでございますから、その点を勇気を出しておやりになることが必要ではないか。いわゆる自由競争と自由経済の今日では合併することは当然であり、ほとんど合併を認めておるとおっしゃったおたくの立場からするならば、これもまた合併したいんだ、しかし、うちはずうたいが大きいから、ともするとそういう危険性があるということの心配があって、何度も説明をさしていただきたいという依頼もあったはずでございます。ならば、もっと具体的にこれ、これ、これ、これ何かしらそれがおたくのほうでは、うしろを見てちょっと手を出しておるというような、うしろめたいような指摘のなさり方をしておると私どもは受け取っております。もっと大胆に、これではいけません、ここまでなさったらどうでしょうか。違反者に対する扱いじゃないのですから、初めから違反者を出さないようにおたくのほうでなさることが、おたくの大きな使命であると思いますが、その点がいままでなされておらなかったことが、両先輩の大きな不満となって出てきておる。私はこの問題について終始論じてきた経緯からすると、私もそのことを申し上げたいわけですが、どうでしょうか。
  176. 山田精一

    山田政府委員 私どもは、決して違反事件として処理をいたしておるわけではございません。十五条に即して取り扱っておるわけでございます。  それから、法律に抵触する問題点は、従来内示におきましても、あるいは勧告におきましても、十分詳細に指示いたしておるつもりでございます。ただ、ただいまのおことばの中で、こういう点が法律に触れるからこうしたらいいではないかということを言うべきだというおことばがございましたが、こうしたらいいだろうということは経営者が自己責任において判断いたすべきことでございまして、公正取引委員会として、やれ、どこをどうしろとか、ここをこうしろとか申すべき立場にもございませんし、また適当ではなかろうと存じます。要するに、法律に抵触する点を指摘をいたせば、それで私どもの使命は十分尽くしておるもの、かように考えます。
  177. 塚本三郎

    ○塚本委員 私は、その考え方は違うと思うのです。あなた自身は、裁判官であると同時に、やはり検事の立場もお持ちになっておられるのですよ。ならば、ここまでならばよろしい、ここはいけませんよというところまでぐらい、あなたは単なる裁判官じゃないと思うのですよ、検事の立場もお持ちになるのだから、そういう違反が予見されるならば、私はもっと親切に指摘をなさって——すでに違反者に対しては私はそういう形はいけないと思います。けれども、あなた自身は検事であるとともに、審判の舞台に立てば裁判官の立場をお持ちになること、それは先ほどから指摘されておるとおりです。であるならば、もちろん会社側は要らぬことをくちばしをいれるなというふうなことを言うかもしれません。しかし、御承知のとおり、会社は、これほど会社の運命をかけて、すでにあの新日本製鉄はりっぱなビルの建設にかかっておるところまで本気になっておられるのです。おたくたちもその辺のことをわかっておられるはずだから、具体的にそういうことのだめにならないようなところまで指摘をしてあげるということ、これは決して会社なども、要らぬことだ、経営のことだからくちばしをいれるなということを言うはずはないと思う。あなたは裁判官だけになってみたり検事になってみたり、二刀流の使い分けをしておられるから、私どもは振り回されてしまっておる。こんな状態ですから、会社側の立場というものは全くうろうろにされてしまっておる。彼らのこれに対する不満というものは、私ははかり知れないというふうに感ずるのでございます。だから、その点は、都合の悪いときには裁判官になってみたり、あるいはまた検事になってみたりという態度、そういうことはじょうずに——相手方がそういうふうにさらけ出して、合併したいんだからということで、少しも政治的な意図を加えずに裸になっておたくと相談した。だからこそ十カ月も相談をなさっておいでになるんだから、もう少し虚心たんかいに言ってあげてもいいことだと思います。それを、会社側のなさることでございますというふうな態度でやられたならば、検察官と裁判官と二刀流を使ったならば、日本の政治は何でもできるという形になりますよ。だから私は、そんなことを放置していきますならば、逆に独禁法を改正しなければならぬということを財界は言い出してくると思う。それはたいへんなことだと思うのです。こんな立場を許してはならないと私は思うのです。だから出発にあたっても申し上げておりますように、二十二年当時にこしらえられたこの独禁法精神というものと、いわゆる資本取引の自由化、開放経済体制下における日本経済の立場というものとは全く大きな違いを見せてきておる。だから、法改正をしなくても、運用の妙を得て判断をするとあなたはおっしゃった。そのことがなされないならば法改正をするよりしかたがない、こういう意見が出てきてしまったら、われわれ委員の立場というものは台なしになってしまう。何がために一年間ここでから回りの議論をしてきたかということになってしまうと思います。だから私は、そういう意味で親切に指摘をなさっていただくことが必要だと思いますが、重ねて御答弁を願います。
  178. 山田精一

    山田政府委員 先ほど来るる申し上げておりますごとく、私どもといたしましては、法律に抵触する点は十分親切に指示をいたしておるつもりでございます。またそれを受け取られました当事者が、それでは自己の責任においてこういうことをしたいと思うけれども、こういうことをしたらば問題点は消えるであろうかという御相談があれば、十分これはいつでも親切に応ずるつもりでございます。ただ、私どものほうから、ここのところをこうしたらいいだろう、これはどうしても自由経済のたてまえ、また私ども役割りから申しまして、やれ、どの株をどうしろとか、そういうようなことを申すことは適当ではない、かようなことを申し上げた次第でございます。
  179. 塚本三郎

    ○塚本委員 いまとなって委員長、もうそんなことは手おくれですよ。先ほどからこれも藤井委員から御説明がありましたように、とにかく会社は再三にわたって、説明申し上げたいし御意向も承りたいということで要望申し上げておったにかかわらず、忙しいではございましょうけれども、しかしながらわずか三回——御確認なさった三回という話がございましたけれども、しかも会社側にしてみると、それはほとんど話をそらされてしまって、言いたいことさえも十分に聞いていただけなかった。だから委員長はまさかつんぼさじきにあげられておるのではないかということを私ども判断するぐらいでございます。しかもそれはあとで書面審理。ところが書面審理は委員長が全部目を通すことができるか。御無礼な話でございますけれども、膨大な書面の審理をすることは私はむずかしいことだと思います。そうであるならば、事務局が整理をして、ポイントたるべきものを委員さんのほうに渡す。ところが、その事務局の諸君は、先ほどから指摘されておるとおり、職員組合の諸君の声明文をごらんいただいてもわかるとおりでございます。これはちょっと言い過ぎになるかもしれませんが、悪意に解釈いたしますならば、委員長は忙しいということで、できるだけ当事者の説明を聞かせないようにしておいて、そして反対の資料だけをより分けて委員さん、委員長のもとにそろえていっておる。対応策が出てきても、重要な力説したいところをできるだけうしろのほうにしてしまって、そしてでき得ないような資料だけを事務局がそろえてきておる。なぜならば、職員組合自身が反対の意向まで表明されておる事実からすると——これはあくまで私は悪意に解釈して、聞きずらいところを申し上げるのでございますから、恐縮でございますが、そういう形で委員長自身が、遺憾ながら、いわゆる会社の核心に触れた対応策やあるいは合併に対する本旨というものを十分おくみ取りいただけないまま今日に至ってしまったのではなかろうか。そのことは私どもとしてきわめて憂慮いたしておるところでございます。私は、私でさえも少なくともこれでお尋ねをいたしまする限りにおいては、八幡における堺であるとか、あるいは富士における東海製鉄所であるとか、現実に現場まで入れていただきまして、そして品質やその他の問題を調べてまいりました。委員長、一体現場をごらんになったことがありましょうか、どうでしょうか。
  180. 山田精一

    山田政府委員 何か当事会社の意向または説明を十分聞かなかったというようなおことばでございましたが、一番当初両社長そろってお見えになりましたときには、私も含めまして委員全員がお目にかかって、御趣旨のほどは直接承っておるわけでございます。それからあと、先方の代表の方がおいでになりまして、委員会の席において御説明を承りましたことが三回ございますことは御指摘のとおりであります。そのほか書面でもって直接委員あてで各種の説明書あるいは御意見をちょうだいしておりまして、それを私どもはことごとく拝見をいたしておるわけでございまして、決して先方の当事者の代表の方がいらっしゃった場合に発言を制限したとか、さような事実はございません。ただ先方の御希望になるほどの回数でなかったという点においては、あるいはある程度の御不満があるかもしれませんが、私どもといたしましては十分御意見を拝聴いたしたつもりでおるわけでございます。また、事務局の職員が都合の悪い資料を出さないで何かしたというようなおことばがございましたが、そのような事実は決してございません。どういう資料を取ったかということは全部報告を受けておるわけでございます。
  181. 塚本三郎

    ○塚本委員 この合併の問題はわが国における産業政策と密接な関係が持たれておりますること、これも構造改善審議会で御意見等の開陳がありました。この問題でもやはり相当に、藤井委員山田委員長とのやりとりを私は冷静に聞かしていただきまして、御無礼な表現かもしれませんけれども、もう少し突っ込んで委員長がこれらの御意見等に耳を傾けていただく必要がこれからあるのではないかというふうに考えるわけでございます。  このことは深く追及はしておりませんけれども両社合併するについては、産業政策の立場から、通産当局ともある程度相談をなさっておると私には想像されるわけでございます。おそらくこんな大きな問題は、公取に出される前に通産省や経済企画庁や、あるいは外務、大蔵等までそのことの意向が出されておらなければならぬはずだと思うわけでございます。こういうことを加味した上で合併に踏み切られた、そしてまたおたくに対して問題点はどうでございましょうか、こういう筋道がとられてきておると私には判断されるわけでございます。ならば、特に通産当局が賛意を表してみえるならば、そのことについても十分にこれからの御審判の中で御配慮があってしかるべきだと思いまするので、最初に通産大臣のほうから、事前にいかなる相談があったのか御説明いただきたいと思います。
  182. 大平正芳

    大平国務大臣 これは御承知のように公正取引委員会の御権限に属することでございまして、私ども公正取引委員会良識に期待いたしておるわけでございます。また事実、事は大きな意味産業政策の問題でございますので、可能な限りわれわれのほうと公取事務局との間におきましては連絡はとってまいったのでございます。ただ、判断はあくまでも公正取引委員会のほうの御判断でございまして、私どもはそれに介入するという性質のものではないと思っております。
  183. 塚本三郎

    ○塚本委員 委員長、どうですか。
  184. 山田精一

    山田政府委員 私どもといたしましても、鉄鋼の分野における取引の実情等につきましては、主務官庁からそれぞれお知恵を拝借いたしまして調査をいたしておるわけでございます。  それから産業政策のお立場から考えられました評価、これはむろん尊重いたすわけでございますけれども、ただ私どもといたしましては、どこまでも独禁法を公正に、厳正に運用いたしてまいる、これが私どもの職分でございますので、その見地から判断を進めてまいる、こういうように考えております。
  185. 塚本三郎

    ○塚本委員 合併に対するメリットとデメリットの問題が、これまた議論になりました。いずれにいたしましても、会社自身は合併に対して大きなメリットを見つけて、こういう困難な中で——普通ならばもうここでやめたということになろうかと思います。あるいはそういうことかもしれませんが、富士が大分に高炉を建設するというようなこと、これはどういう意味かは深くは聞いておりません。にもかかわらず、当事者としましては、実際には相当にかたい決意でもってすでに人事等のごときも決定されておるという段階までいっておるわけでございます。そのことは大きなメリットをこの合併の中で見出しておる、ところが公取当局の御判断では、三、四点につきましてデメリットを指摘なさっておられる。そういたしますると、この問題は、その両者をどのように調和をさせ、どのように指導していくかということも、やはり通産当局というよりも公取の任務であり、権限ではなかろうかというふうに考えるのですが、どうでしょうか。ただ十五条一項だけでいわゆる右か左かという問題よりは、この問題をいかに調和させていくか、こういうこともやはり公取一つの権限であり、使命ではないかというふうに判断をいたしますが、いかがでしょうか。
  186. 山田精一

    山田政府委員 合併に関しまして各種のメリット、デメリットがございますことは御指摘のとおりでございます。当事者といたしましては、それはメリットがあると思えばこそ合併を計画されたことと思うのでございますが、ただ私どもの立場といたしましては、当事者はもとよりのこと、当事者のみならず、競争業者あるいは取引の相手方、需要者あるいは最終消費者、これらに及ぼします影響、そこにメリットがどの程度、デメリットがどの程度あるかということを総合的に判断しなければならない立場にあるわけでございまして、その角度から検討をいたしております。
  187. 塚本三郎

    ○塚本委員 確かにおっしゃるとおりだと思います。  そこで、もう一つ私は突っ込んで申し上げてみたいと思いまするが、すでにこれも合併当事者両社の代表者だけではなくて、競争会社と目されるところの川鉄、住友あるいは鋼管等の代表者にも議会においでいただきまして、委員会審査の中で御意見を承りました。しかし競争会社といえども、このことに対しては賛意を表しておられたはずでございます。さらにまた、これを使っておりまするお得意先の業者の諸君といえども、これに対して強い反対の意向は幸か不幸か私どもの耳には届いておらない。公取にはどんな意見が届いておるかわかりませんが、需要家も、そして競争各社もともに反対の意見は私どもの耳には届いていない、こういう実情にあります。であるとするならば、やはりそのことは十分加味されてしかるべきじゃなかろうか。しかるに勧告文の中で、おたくが鋳物用銑鉄に対して、若干私は不用意な発言だと思いまするが、そういう文章が載せられた。それだけでもって需要者の中からもたいへんな抗議や不満の電報や、あるいはまた文書や電話等がかかってきております。そういう点を見ますると、ほんとうならば、そうだそうだと言ってくれなければならぬところを、実は逆の現象が出てきております。そういたしまするならば、おたくやあるいは一部の学者の人たちがデメリットを心配なさいまするが、実際の当事者たちはそれらの問題に対してのデメリットはそんなに問題にしていない。この一年間の中で、合併するとこういう問題で困るのだというようなことは私どもの耳にほとんど入っていません。そうであるとするならば、私はこれをそんなに深刻に受け取る必要はないのじゃなかろうか。本来、合併は普通は自由であるべきだ、しかし特別な事態であるからこういうことを注意して、いわゆる競争制限になりはしないかということで御心配になっておる。おたくのほうは御心配になっておられるだけで、法律の条文に忠実であれかしと御努力なさることには限りない敬意を表しまするが、競争者や需要者やそういう人たちは、そのことに対しては競争制限になって困るというようなことはそんなに言ってきていない。この事実は十分に踏んまえて御審判いただかなければならぬと私は思いまするが、いかがでしょうか。
  188. 山田精一

    山田政府委員 競争業者の方々の御意見それから需要者の方々の御意見、特に需要者の方々の御意見は非常に広範な範囲にわたりまして、書面または口頭でもって拝聴をいたしております。また先般二日間にわたりまして行ないました公聴会の席においても御意見を承っております。各種の御意見があること、おそらく新聞記事等でごらんになりましたとおりであると存じます。それらを十分踏まえまして公正な判断をいたしたい、かような考えでございます。
  189. 塚本三郎

    ○塚本委員 公聴会も三分の二ほどは賛成だというふうに新聞で読ましていただきました。それから確かに需要者のアンケート等、これは使いなれていないということ、しかしそのことは即品質に格差があるということとは違う。おそらくおたくのほうもそのことを十分わきまえて、品質の格差のあるもの、すなわち、中山製鋼のほうはずいぶんおこっております。しかしそれは格差があるとはっきり指摘して——川鉄のほうは品質の問題じゃない、使いなれの問題だとこまかい神経を使っておいでになります。そういう点を考えてみまするならば、この合併はそんなに、まあ中止勧告の文書を踏んまえて振りかざしたような大きな問題になるということ自身が、私は少し気負い立ったのではないかというふうな——だから私どもは、あまりここでがあがあ言うこともちょっと気負い立っておるかもしれませんが、冷静に判断していきますならば、おのずから合併に対してはそんなに妨げられるべき要素というものはないのじゃないかと、私どもはそういうふうに判断をいたしております。  そこで、時間も早く切り上げたほうが同僚委員の質問もありまするから、もう最後にしておきたいと思いまするが、同意審決に対しては、先ほど委員長のほうから、違反事件についての場合にいままで適用してきたのが多くの場合であったという御回答がございました。私もそうであろうと思います。で、この合併の問題につきましては、私は時間が長過ぎたからそのようないわゆる同意審決をしてくれというような議論ではなくして、いままでのいわゆる時間的な経過からながめてみますると、違反事件と同じような取り扱いがされてきた。御承知のとおり、いわゆる問題点指摘をされて、そして対応策を、こうしたらいいでしょうか、こうしたらいいでしょうかという、書面であれ、ともかく時間的な経過は違反事実と同じような経過をたどってきた。精神的に心理的にはおたくたちはそんな扱いはなさらなかったとおっしゃるでございましょう。それは公平な立場からそう扱ってはならないと私たちも考えております。しかし、客観的な時間的な経過と物理的なその動作というものは、まさに違反事実と同じような扱いがされてきたと私ども判断いたしております。ならば、同じペースでもって、この同意審決もまた違反事実と同じようなレベルでもって同意審決を下していただきまするほうが、受ける側にとっても快いのではないかというふうに私は考えておるわけでございます。長かったからどうかというのじゃなくて、あるいはまた違反事実のような扱いをされたから困るんだということではもういまごろ手おくれでございます。そういう歴史的な事実が起きてしまったんだから、それならこのことにもっと明快な御判断をいただくということは、やはり時間的な経過からいたしますると、同意審決をなさって、過去における例のごとく、違反事実と同じような取り扱いをしていただきまして、一刻も早く同意審決を下していただきますることを心から期待をいたすわけでございます。いかがでしょう。
  190. 山田精一

    山田政府委員 本件につきまして、できるだけ早く結論を出したい、これは午前中にも申し上げましたごとく、私どもが衷心念願いたしておるところでございます。ただ、同意審決の形式、これはもう法律技術上の問題で、ございますから、その形式をとりますことが適切であるかどうか、これはかなり困難ではないかと思うのでありますけれども、検討をいたしたい、こういうことでございます。
  191. 塚本三郎

    ○塚本委員 最後に、この公正取引委員会審査及び審判に関する規則の中で、どの形式をおとりになるか、二十五条でおやりになるかあるいは二十六条でおやりになるか。私どもは、二十五条によって、やはりいままでの経過から言いますると、委員長をはじめとする委員さんがお加わりになって御判断をなさるべきだというふうに、この場合二十五条をおとりになって、そしてその審判官をすみやかに設定なさるべきだというふうに考えまするが、いかがでしょうか。
  192. 山田精一

    山田委員長 現在、先ほども申し上げましたごとく、準備手続を実施中でございまして、第一回の審判期日までには、いずれによるか委員会において決定をいたすつもりでおります。
  193. 塚本三郎

    ○塚本委員 それでは、いろいろと極論も申し上げてみましたけれども、私は、終わりよければすべてよしということばがございまするので、これも両者の合併だけでなくて、日本経済の体質の構造改善の大きな指針となるということで産業界は注目をしておると思います。どうぞ期待される審決をいただきますることを期待いたしまして、私の質問を終わらしていただきます。(拍手)
  194. 大久保武雄

    ○大久保委員長 近江日記夫君。
  195. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほどは定足数が足らないということで社会党のほうが退場されました。しかしわれわれとしては、自民党さんのほうで定足数をそろえられる、こういうことでいままで待っておりました。まあ定足数さえそろえば何ら拒否すべき理由もありませんし、できるだけの御協力をしていきたい、こういうわけで待っておりました。いま御指名をいただいたわけでございますが、定足数が残念ながらそろっていないように思います。したがって、私は定足数がそろうまで質問に入るのを待たしていただきたいと思います。
  196. 大久保武雄

    ○大久保委員長 この際、暫時休憩いたします。    午後六時五十二分休憩      ————◇—————   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕