○大平国務
大臣 補償金請求権の問題につきましては、
あとから
長官から
答弁させますが、ちょうど
改正法案の重要な論点でございまする
早期公開制度の説得性、効用、メリット、デメリットについての御質疑が先ほどから続けられておったわけでございますので、私の理解を申し上げて、さらに御批判をいただきたいと思います。
たいへん初歩的なことを申し上げて恐縮ですけれども、国はその能力におきまして、国民の
権利、財産、安全、健康、しあわせ、そういったものを守る責任があります。欲を言えば、これが完ぺきでありたいと思うのでございますけれども、現実の国家という場合を具体的に考えてみますと、おのずからその
政府の適応能力に限界がございますことは、御理解いただけると思うのでございます。この
特許制度の問題について申し上げますと、
中谷先生のおっしゃることを聞いておりますと、それなりに私は理解できると思うのです、あなたのお考えは。それは、国は
発明者の
権利の
保護について非常に厳格で、かつ周到な配慮がなければならぬという思想が根底にあると思います。それは私はとうといことであると思います。そうあらねばならぬと思います。しかし、冒頭に申しましたように、国が現実に持ち得る
特許制度の能力から申しまして、どこまで国がその責任にこたえ得るかという具体的な限界があると思います。今日、御案内のように、未処理の案件が数十万ある。
権利がむなしく五年間も未処理のまま眠っておるということは、一面、国にとりましても耐えられないことでございます。あなたの論法をもってすれば、国の適応能力を拡大充実いたしまして、
権利の保全ということに対して万全の措置をとる、こうすればこういう
改正案は要らないのでございまして、
特許庁の能力を何倍もに拡充いたしまして、間然するところなく適応力を発揮して、国民の
権利を保全してまいれば、それでいいわけでございます。今日ただいまわれわれに与えられておる能力というのは、
行政組織全体から申しまして、
特許庁はこれだけの能力である、これだけの範囲において与えられた責任を果たせ、こういうことでございまして、せっかくいろいろなくふうをこらしましてやりましても、今日ずいぶん未処理の案件が長い間未処理のままで滞積されておるという悲しい現実でございます。そこで、完全に
特許庁の能力を充実させるかというと、それも相対的な問題といたしまして、
特許庁だけに強大な能力を付与するということ、国全体の能力の配分から申しましてそれが期待できないということでございますれば、次善の策といたしまして、この事態に対してどう対応するかという次善の策を私どもは考えなければいかぬ。そこで何年間も
権利になるべき卵が眠っておるというようなことでは申しわけないから、
一つの方法として、いま問題の
早期公開制度というようなものを考えておるわけでございます。これはまことにあなたから言うと穴だらけだという。穴だらけでございましょう。しかしながら、現在このままの状態で推移していくよりは改善になるということで私どもは
改正に踏み切ったわけでございます。四年も五年も
権利が眠っておる状態でございますれば、いまあなたが御
指摘の
重複研究というようなものも、それだけの期間において、それだけの分量において行なわれる蓋然性があるわけでございます。一年半で
早期公開に踏み切るということによって、その
早期公開で
公報に掲載して周知徹底がどこまできくかの具体的な事実問題はございますけれども、そこでいまの事態をかなり改善できるという予想を持ちまして、私どもはこういう
制度改正というものを考えたわけでございます。したがいまして、先ほど
長官が
答弁いたしまして、どのぐらいの
重複研究が避けられるかの予想も立たぬでというような御
指摘でございますけれども、それはどれだけのメリットをこれが生産いたしますか、それはまさに予想の問題でございまして、いまかりに
特許庁長官が、何割ぐらいは予想できますなんと言うたら、今度は逆にあなたのほうからおしかりを受けるだろうと思うのです、そういう大ざっぱなことではだめじゃないかと。事は国会でございますから、議論は正確でなければいかぬ。そういう
意味で予想について何%でございますなんということはどうも申し上げられませんというのが私は正直な
答弁じゃないか、そう考えておるのでございます。繰り返して申し上げますけれども、これは私があなたに申し上げるまでもないことでございますけれども、先ほどから拝聴いたしておりますと、われわれの苦悶のありかはそういうところにあるのだということでございまして、百点満点とれるなんということは考えていないのでございまして、五十点とか六十点とか、そのあたりの境のところで、現在よりどれだけ改善できるかというところで大平以下みな苦心しておるのだということに対しまして御理解をいただきたいと思います。