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大平国務大臣 御
答弁申し上げる前に、先ほどの
長官並びに官
房長とあなたのやりとりを拝聴しておりまして
一つ感じたことを、恐縮でございますが申し上げさしていただきます。
あなたは、
審査官という独立的な
立場と責任を持たれた方々を、あるいは
裁判官あるいは公取の
委員、そういった
立場となぞらえられまして、その
人たちの
意見が
反対であるというようなことは重大なことでないか、そういう御指摘でございました。私はそれを拝聴しておりまして
感じたのは、もし
法律の解釈と運用、判断をされる独立の
立場におられる
裁判官が、こういう
法律ではとても自分たちが運用できないというようなことになれば、私は国家の組織はめちゃめちゃになるだろうと思います。やはりわれわれは立法と
行政と司法という分界は厳に守ってまいらなければなりませんし、したがって、独立の
立場を行
政府の中において持たれておる方々は、与えられた
法律の運用に万全を期していただきたいと思うのでございまして、もし、どうも
反対であるということで
特許行政がこわれるというようなことになると、これは重大な新たな問題が起こると思うのです。
特許庁内にいろいろな御
意見がありますことは私もかねがね聞いております。
荒玉君も聞いておるだろうと思います。したがいまして、
現実にお
仕事をされておる方々が
感じ取っておりますことに対しましては、私もできるだけ謙虚に聞きたいと思いますし、
荒玉君もまた聞かれておることと思うのでございまして、そういう御
意見を私
どもが聴取することは熱心にやらなければならぬことだと思うのでございますけれ
ども、だからといって、そういう
意見があるから法
改正云々というところまでまいりますと、若干今度は
抵抗を
感じるのでございます。いま
中谷さんのおっしゃったことは、そういう部内の
現実に
仕事をやっておる
諸君の
意見も十分聞けという意味におきまして、そのように私は受け取っておきたいと思います。
それからいまの第二の問題でございますが、未
処理案件が累増したことに対応して、
政府は機構、
人員の拡充によりまして
労働強化等を招来しないようにいたしますとたびたび言明したじゃないか、にもかかわらず、
現実の事態はだんだんと未
処理案件の累増という結果を来たして今日に至ったが、これに対しての責任はどう
感じておるかという御
質問でございます。私は、
わが国の
国民の
発明意欲、
技術開発
意欲というものはたいへん旺盛であるということは先ほど申し上げたとおりであり、
国民のバイタリティの
一つのあらわれと思いますが、われわれが驚くほどのバイタリティを示していただいておるわけでございまして、そのことはたいへん歓迎すべきことだと思っております。これが一定の
件数の
申請が行なわれるということでございますならば、
政府も見当がつくわけでございますけれ
ども、年々歳々異常な勢いで
申請件数がふえてまいるということは、当時の
政府としては十分予測がつかなかったのではないかと思うのでございます。しかし、常識的なふえ方でございますならば、機構と
人員の充実でもちまして対処してまいるということは、行
政府の責任者として、当然そうあるべきだとしてお答えになったことと推察するわけでございます。したがって、第一は、異常な
申請件数の累増を来たしたということに対してまでなかなか
政府は責任を負えないと思いますが、第二の問題として、しかしそれにいたしましても
人員と機構の充実が十分でなかったじゃないかという御指摘がございますならば、その御指摘はそのまま私
どもは受けとめたいと思います。おっしゃるとおりだと思います。これも行
政府の
一つの部局といたしまして、
特許庁にどういう機構と要員を付与すべきかというようなことは、
特許庁長官がきめるわけにはまいりませんで、国全体のバランスを見て、
政府でおきめいただいておるわけでございまして、まことに隔靴掻痒の感があったと思うのでございまして、その
あたりは御同情いただきたいと思います。しかし、そういうことをかこっておったのでは、
現実の未
処理案件の異常な累増に対しまして
行政責任が持てないということでございまして、何とかそこに道がないものかということで、必要な
審査官をはじめといたしまして、スタッフの充実を期してまいり、ようやく
政府側の
理解も深まりまして、全体として行
政府にある定員をふやすということが非常に困難な客観情勢にあるにもかかわりませず、去年もことしも
特許庁につきましては、かなり増員をお認めいただいておるわけでございます。しかし、それをもってしてもなお
現実の需要に対応することができないということで、この
改正ということを考えたものと思うのでございます。
しからば、この
改正によってそういった事態が解消できるかどうか、これは今後の問題でございますが、私は、ものごとの
改正に絶対的にいい、絶対的に悪いというようなものは実はないと思うのでありまして、どういう
改正点におきましても、メリットとデメリットはあるだろうと思います。また、
反対もあるし賛成もあると思います。ことにいま御指摘のような特許
案件につきましては賛否いろいろな御
意見がある
ことば当然だと思いますし、また、それは大いに歓迎すべきことだとさえ
感じます。しかし、これに対応してどういう
改正措置を講ずるかということになりますと、この
改正は満点であると自負するわけでは決してございません。いろいろな欠陥もございますし、いろいろな難点もあろうかと思いますが、現在よりは一歩前進できるという期待をもちまして、
荒玉長官以下非常な心血を注いでこの
改正案に挺身しておられるのであります。私はじっと見ておりまして非常な感動を覚えておるのでございます。行
政府の
長官といたしまして、できたら無難にある時期を自分の与えられた任務を終えるというのが普通イージーな行き方でございますが、異常な熱意をもって日夜もう非常に献身されているもので、私は実は非常に感動いたしておるのでございまして、この誠意というもの
——荒玉君も金をもうけたいためでは決してないと思いますし、また、高い地位につこうというような野心もないと思います。一生懸命にやっておられるわけでございまするので、そういった点は
中谷委員におかれましても十分おくみ取りいただきたいと思います。