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1969-04-11 第61回国会 衆議院 商工委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年四月十一日(金曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長代理 理事 浦野 幸男君   理事 宇野 宗佑君 理事 小宮山重四郎君    理事 藤井 勝志君 理事 武藤 嘉文君    理事 中村 重光君 理事 堀  昌雄君    理事 玉置 一徳君       天野 公義君    内田 常雄君       遠藤 三郎君    小川 平二君       大橋 武夫君    海部 俊樹君       神田  博君    黒金 泰美君       小峯 柳多君    坂本三十次君       田中 榮一君    橋口  隆君       増岡 博之君    石川 次夫君       加藤 清二君    佐野  進君       田原 春次君    千葉 佳男君       中谷 鉄也君    古川 喜一君       武藤 山治君    塚本 三郎君       近江巳記夫君  出席国務大臣         通商産業大臣  大平 正芳君         労 働 大 臣 原 健三郎君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      菅野和太郎君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      赤澤 璋一君         経済企画庁総合         計画局長    鹿野 義夫君         外務省アジア局         長       須之部量三君         大蔵省主計局次         長       海堀 洋平君         食糧庁次長   馬場 二葉君         水産庁次長   森沢 基吉君         通商産業政務次         官       藤尾 正行君         通商産業省通商         局長      宮沢 鉄蔵君         通商産業省貿易         振興局長    原田  明君         通商産業省企業         局長      大慈彌嘉久君         通商産業省重工         業局長     吉光  久君         通商産業省繊維         雑貨局長    高橋 淑郎君         通商産業省鉱山         石炭局長    中川理一郎君         通商産業省鉱山         保安局長    橋本 徳男君         通商産業省公益         事業局長    本田 早苗君         中小企業庁長官 乙竹 虔三君         労働省労政局長 松永 正男君  委員外出席者         公正取引委員会         事務局取引部長 吉田 文剛君         経済企画庁国民         生活局参事官  宮内  宏君         科学技術庁原子         力局次長    田中 好雄君         文部省大学学術         局学生課長   石川 智亮君         厚生省環境衛生         局公害部公害課         長       橋本 道夫君         水産庁漁政部長 安福 数夫君         通商産業省通商         局次長     楠岡  豪君         労働省職業安定         局業務指導課長 保科 真一君         建設省河川局治         水課長     西川  喬君         日本国有鉄道常         務理事     長瀬 恒雄君         日本電信電話公         社副総裁    秋草 篤二君         専  門  員 椎野 幸雄君     ――――――――――――― 四月十一日  委員田原春次君及び中谷鉄也辞任につき、そ  の補欠として下平正一君及び栗林三郎君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員下平正一辞任につき、その補欠として田  原春次君が議長指名委員に選任された。 四月四日  中小企業者事業分野の確保に関する法律案(  中村重光君外十名提出、衆法第二七号) 同日  電気工事業法制定に関する請願外一件(中垣國  男君紹介)(第三一四〇号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月七日  中小企業高度化対策の強化に関する陳情書  (第二四五号)  新全国総合開発計画に関する陳情書  (第二四六号)  中国地方総合開発に関する陳情書  (第二四七号)  山村振興対策に関する陳情書  (第二六八  号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済総合計画に関する件  通商に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ――――◇―――――
  2. 浦野幸男

    浦野委員長代理 これより会議を開きます。  本日は、委員長が都合により出席できませんので、その指名により、私が委員長の職務を行ないます。  通商産業基本施策に関する件、経済総合計画に関する件、通商に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中谷鉄也君。
  3. 中谷鉄也

    中谷委員 本日、私は二つの問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  最初にお尋ねをいたしたい問題は、全国至るところで見られる都市河川汚濁及びそれに対するところの対策はどのようにあるべきかという問題を、担当省であるところの経済企画庁及び農林、建設の各関係政府委員の方にお尋ねをいたしたいと思います。  公害問題でございますので、具体的な例を引いてお尋ねをいたしたいと思います。都市河川汚濁については、それぞれの都市において、自分のところの都市河川が一番よごれている、日本一きたない川なんだ、非常に残念なことなんだというところの嘆きを持っておりまするけれども、和歌山市を流れておりますところの和歌川、この和歌川につきましても、非常に残念なことでありまするけれども、和歌山市民人たちは、日本で一番きたない川なんだ、何とかならないものかという嘆きを持っているわけであります。そこで、この和歌川汚濁をした原因は一体何なんだろうか。終戦直後はこの和歌川で水泳さえもできたといわれているわけであります。この点については、すでに経済企画庁等においてお調べをいただいておりまするけれども、木材係留につきましては、河川使用許可についての知事の許可権限がありまして許されておりまするけれども、許可された以上の木材係留されているというこの事実、それともう一つ工場廃液、さらにいま一つ汚物の投棄、そうしてさらに悪臭を発しておるところの、悪臭どころか頭痛さえも市民に与えておるところのヘドロの存在、こういうふうなものが和歌川汚濁原因であり、現状である。ある新聞の報道によりますると、和歌川というのはすでにもう生きた川ではなしに、死んだ川なんだ。各省においては、あるいは県においては、和歌川については浄化をいたします、きれいにいたしますということを十年来市民に対して約束をしておるけれども、一向に和歌川浄化されるどころか、さらに一そう和歌川汚濁というものが進んでおる、こういうふうな状態であります。  まず経済企画庁に私はお尋ねをいたしたいと思いまするけれども、和歌山市内、特に和歌川河川汚濁原因というのは一体何なのか、この点についてひとつお答えいただきたいと思います。
  4. 宮内宏

    宮内説明員 いま先生がおっしゃいましたように、皮革とかその他の化学工業等々の工場廃液と、それから非常に汚泥がたまっております。これについてはそれぞれ対策を講じなければならないのでございますけれども、やはり下水道整備、これも非常におくれておるという現状が相重なりまして、あのようにきたなくなったというふうに考えております。
  5. 中谷鉄也

    中谷委員 和歌川河川汚濁防止については実情に即した対策というものをあげて望んでいる。これは、こういうふうな都市河川といわれる河川の周辺の住民はことごとくそうであろうかと思いまするけれども、いま一度明確にお答えをいただきたいと思います。経済企画庁として、この和歌川、こういうふうな悪臭汚物が浮かんでいる、まっ黒な油が至るところにぎらぎら光っている、こういう川を浄化するための実情に即した具体的な対策は何か。先ほども若干お答えをいただきましたけれども、いま一度お答をいただきたいと思います。
  6. 宮内宏

    宮内説明員 経済企画庁といたしましては、水質保全法に基づく浄化対策というものがあるわけでございまして、その一環として、とりあえず規制をしなければならぬという処置をいたしまして、とりあえず海草橋から仮せきの間を指定水域といたしまして、昨日の官報をごらんになるとわかりますけれども、水質規制を実施いたしました。従来から御承知のように非常に汚濁が進行しておりまして、河川浄化対策としては、もちろん保全法による規制だけでは十分ではないと思っております。したがいまして、あるいは浄化用水の導入であるとか、あるいはヘドロしゅんせつ、仮せき撤去下水道整備、それから木材系留、そういうふうなものを整理して、各方面の施策によりまして、きれいにするという対策が必要であろうというふうに考えております。
  7. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、経済企画庁のほうからの御答弁の中に、直ちに具体的な問題に入っていきますが、仮せき撤去という問題が一つございましたね。これは非常に重大な問題なんでございます。この仮せきというものの現在果たしている効用は、この和歌川下流和歌川和歌浦湾流れ込んでおるその和歌浦においては、有名な和歌ノリ養殖いたしておる。そういたしますと、この仮せき撤去などということは、容易にこの時点において行なうなどということは、全く私は考えられないと思うのです。そういうふうなことをいたしますと、自動車に十万台分といわれておりますが、このヘドロが全部この湾のところへ流入してまいる。そこで仮せき撤去というふうなことは、ヘドロしゅんせつが完全に行なわれる、こういうことがない限りはあり得ないことだ。実は仮せき撤去されるとかいうことについて、非常に地元住民心配いたしておる。これはひとつ経済企画庁としても、仮せきは、ある条件のもとにおいてのみ撤去されるのだということは、ひとつ明確にお答えをいただきたいと思います。
  8. 宮内宏

    宮内説明員 先生のおっしゃるとおりでございまして、少なくともいま申し上げたようないろいろの方策の中で、これは当然建設省所管でございますけれども、経済企画庁といたしましても、ノリの保護の観点から考えましても、最後になるというふうに考えております。
  9. 中谷鉄也

    中谷委員 水産庁お尋ねをいたしたいと思います。この和歌ノリ生産量生産高というものの推移を調べてみますと、昭和三十五年ごろから今日に至るまで、ほぼ半分ぐらいになっているのではないかと思われるわけなんです。これは昨日も水産庁の専門の方にいろいろな点についてのお話を伺いましたけれども、作付面積減少であるとか、いろいろなファクターがあろうかと思いますが、何と申しましても、ノリ業者が非常に嘆いておるのは、工場廃液など、ノリ養殖にふさわしくないところの、阻害するところの汚水が流れ込んでくる、このことが和歌ノリを非常に衰微さしておるのだということであります。水産庁といたしましてはこれらの点にどういうふうな御見解とさらに対策をお持ちいただいているか、この点についてひとつお答えをいただきたいと思います。
  10. 森沢基吉

    森沢政府委員 いま先生指摘ございましたように、この和歌川下流におきますノリ生産枚数昭和三十五年ごろからずっと統計で見てみますと、確かに最近減少の傾向にございます。これは経営体はそう減っておりませんが、作付面積減少等もから見まして、減産は御指摘のとおりでございます。  その原因につきましては、私たちは、二つ考えられるのではないか、そういうふうに思っております。一つは、いま話題になっております工場排水による和歌川の非常に悪い水質の水がこの漁場に出る、こういう工場排水によるノリに対する悪影響、それが第一点。それから第二点は、地元で例の和歌山県の貯木港の埋め立て工事でございますが、これが最近行なわれまして、工事中のどろによる被害等よりも、工事の完了によって地形が変わりますので、潮流状況等もある程度変わっているのではないか、そういうことも原因一つとして考えられると思います。  いずれにいたしましても、こういう事態でございますので、私たちは、やはり多くの漁民生活を依存しております事業でございますので、水産庁といたしましては、いま参事官からお答えのように、ここの水質基準というものをきめていただいて水質浄化をはかっていただくという水質保全経済企画庁と一緒に進めていくほかに、水産庁といたしましては、いま申し上げましたような理由でございますので、いろいろノリ生産性を上げていきますために、沖合い漁場への転換でございますとか、あるいは海の中のしゅんせつを行ないまして、潮通しを多くしてノリ生産性を上げていくとか、あるいはノリに肥料をやっていくことによって生産性を上げていくというような、いわゆる沿岸漁業構造改善事業一環といたしまして、漁場改良事業、それから経営近代化のための事業について、従来からも三十六年以来助成をいたしておりますが、こういう状況でございますので、今後も水産庁といたしましては、水質保全をお願いすると同時に、そういう面から沿岸対策で考えていきたい、そういうふうに思っております。
  11. 中谷鉄也

    中谷委員 通産省にあわせて、いま一度私は水産庁次長さんにお尋ねいたしたいことがあるのです。  と申しますのは、この和歌浦湾の一角を、海南市に埋め立てをいたしました。そこに関西電力火力発電所が現在建設されております。一号機、二号機はもうすでに稼働しようとしている。三号機、四号機の建設も、いろいろ地元との話し合いがつきましたならば建設に着手する見通しが非常に濃厚であります。  そこで、地元漁民心配をいたしているものは次の点なんです。火力発電所からとにかく冷却水が出てまいりますですね。この冷却水が湾内を、潮の流れに基づいてノリ養殖場のところに流れてくる。その冷却水ノリ養殖に非常に悪い影響を与えるのではないか、こういうことを地元住民が非常に心配をいたしております。この点について実は私自身いろいろなデータを調べてみましたけれども、必ずしもそういうふうなレポート等は見当たりませんでしたけれども、地元住民が非常に心配いたしておる。私は、これは新しい公害問題として紛争の種にもなりかねない。したがいまして、この地元漁民それから大企業としての企業責任立場から見て、通産省お尋ねいたしたいのですけれども、そういう冷却水影響というようなものについてひとつ十分な調査をされることを行政指導していただきたい。また私は、この問題は通産省としてもきわめて豊富な資料等をお持ちですし、ましていわゆる水産庁としては、何と申しましても漁民を守るという立場に立っておられるのですから、この冷却水影響ありやいなや、これらの点についてひとつ十分な調査をしていただいて、早急に結論を出していただきたい。結論が出ましたならば、それについての対策もおのずから講じられるだろうと思うのですが、この点について水産庁からお答えをいただきたいと思います。
  12. 森沢基吉

    森沢政府委員 いま海南市の火力発電所温排水お話が出ましたが、御指摘のとおり火力発電所、それから原子力発電所も同じでございますが、タービンの冷却のために海水を使用いたしますので、出力によっても違いますけれども、普通の海水よりも高い温度の水が出るということは御指摘のとおりでございます。  これにつきまして、どの程度水産業影響があるかというのは、実は局部的に地形とか潮流とかによって私は非常に違うと思います。というのは、一直線の沿岸である場合、入り込んだ内湾である場合、外洋である場合、いろいろ海況とのからみ合いが異なりますが、おのおの立地条件に従いまして、いま御指摘のように、県の水産試験場それから私のほうの水産研究所とともどもこれは調査をしていかなければならぬ問題だ、そういうふうに考えておりますが、一般論で申し上げますと、大体私たち調査によりますと、五度から十度くらい高い水が出ます。これが海にどういうふうに拡散をしていくかという場合には、さっき申し上げたように海の状況によって違いますが、ごく平たんな海岸を考えました場合に、大体摂氏一度くらい高い水が排水口から二千メートルくらいまで拡散をするというのが、従来私たち研究所等でやりました一般論としての調査でございます。  水産庁といたしましては、全国にかなり火力発電所がございますが、過去におきまして若干温排水などで相当に問題が起こりました例もありますが、一般的に言いましてそう大きな問題はいままでございません。むしろ私たちは、この温排水水産業のために前向きに利用する、というのは温度の高い水を使って魚類養殖を行なえば短期間に生産性を上げ得る。それから冬、温度が下がりまして越冬できないたとえばハマチの養殖などに温排水を使用すれば越冬ができる。こういうようなことで、研究所を中心にしまして、予算もとりまして、火力発電所あるいは原子力発電所温排水前向き利用という方向をむしろ現在進めております。火力発電所につきましては、東北電力の仙台の火力発電所、それから関西電力尾鷲発電所温排水を利用して魚類養殖を試験している実例があることを申し上げておきたいと思います。
  13. 浦野幸男

    浦野委員長代理 ちょっと申し上げます。  雑音が多くて速記がとりにくいそうでございますから、御静粛にお願いいたしたいと思います。
  14. 中谷鉄也

    中谷委員 通産に御答弁いただきます。
  15. 大慈彌嘉久

    大慈政府委員 御指摘海南市の火力冷却排水影響でございますが、発電所排水一般につきましては、水産庁から詳細なお話がございましたとおりでございますが、海南市につきまして地元心配もあるようでございますので、会社のほうでは、慎重を期しまして、排水口付近排水流れ調査しまして、排温水の広がりがどういうことになるかというような計算もいろいろやっているようでございます。模型実験をいたしましたりしまして検討いたしているようでありますが、今後の三号機、四号機に関します計画につきましても、排水口付近温水の分散をよくするようにという施設をつくることも検討しているようでございます。消波堤と申しますかテトラポットを使いましたり、そういう施設であるとか、排水口の向きを検討するとか、いろいろそういった計画をしているようでございます。このように、これまで会社が自主的に調査研究を行なって対策を講じているようでございますけれども、通産省といたしましても、このような態勢を今後とも続けるように、十分調査研究を行なうように留意してまいりたいと思います。
  16. 中谷鉄也

    中谷委員 次に、建設省お尋ねをいたしたいと思うのですが、先ほど、都市河川等和歌川汚濁原因木材係留一つ原因であるということを、原因分析の中で御答弁がありましたが、われわれが調査したところによりますと、木材係留許可水面の約三倍が係留されているわけです。これは当然いわゆる不法係留といわざるを得ないと思うのです。業者の人にはまたいろいろな言い分もあるでしょうけれども、先ほど水産庁次長のほうからお話があった、海水浴場をわざわざつぶして木材港というのをつくったのです。漁民もずいぶんこのことによって迷惑をこうむった、そういうふうな木材港をつくったけれども、相変わらず——都市河川には木材係留許可がいいかどうか、まず問題もあると思うのです。しかし、いずれにいたしましても、使用許可面積の三倍以上の木材係留されている。何か木材業者の人に聞いてみますと、河川汚濁してきて油まみれになっているので、とにかくここへ係留しておくと、かえって虫がつかないのだ、木材が腐らないのだというようなお話なんですけれども、市民立場からいいますと、これは非常に迷惑なことなんです。そういうようなことについての建設省としての行政指導はどのようにおやりになっているか、この点をひとつ御答弁いただきたい。
  17. 西川喬

    西川説明員 先生のおっしゃいましたように、木材係留が非常に悪いということははっきりいたしておりますのですけれども、やはり現在あの付近製材所が立地しておりまして、一ぺんにとめることはできない。ただし、先生のおっしゃいましたように、正式の占用許可を受けている以外に相当な不法占拠がございます。これにつきましては、河川管理者といたしましての県のほうも、四十四年度から厳重に取り締まろうということで、現在、四十三年度には、下のほうから、出入り口のところに見張り所を設けまして、少なくとも不法係留だけはまずなくすように、その次におきましては、占用の形態におきましても、相当前からのいろいろな実績がございまして非常にアンバランスもあるようでございます。それらにつきまして公平なあれに直すように、そういう方向で指導してまいりたいと思っております。
  18. 中谷鉄也

    中谷委員 建設省の方に別にそう詰めて質問をするわけでありませんけれども、では今日現在、たとえば、今月は四月ですから、三月、県がそういうように指導しているというけれども、私が先ほど発言したような占用許可の何倍か不法係留されているような事実が改まっているかどうかというようなことについて、建設省としては、ほんとうに詳しくお調べいただいているのかどうか、これはひとつ実態を御調査いただかなければならぬと思いますが、いかがでしょうか。
  19. 西川喬

    西川説明員 現在、私どものほうでわかっておりますのは、正式に占用許可をいたしておりますのが約四万一千平米でございます。この四万一千平米のうち、仮せきから上のほうが約半分、下のほうが約半分という実態がございます。これに対しまして、現在不法占用いたしておりますのは、係留しておりますのが全部で約十二万六千平米、そうなりますと、約三倍でございます。ですから、そのうちの三分の二が不法状況でございます。特に市堀川のほうは全然許可をいたしておりませんのに、そちらのほうにも存在するというような状況でございます。実情はそういう状況でございますので、早急に是正の措置を講じたいと思っております。
  20. 中谷鉄也

    中谷委員 それから、経済企画庁にもう一点だけお尋ねをいたしたいと思います。  大体はわかっておりますが、やはり御答弁をいただきたいのは、下水道整備計画について、こういうふうに下水道整備計画については考えているのだというようなことを、御所管だと思いますので、御答弁をいただきたい。簡潔でけっこうでございます。
  21. 宮内宏

    宮内説明員 実は、下水道事業はやはり建設省でやっておられるわけでございますけれども、一応、先ほど申し上げました告示の内容では、いわゆる規制が発効いたしまして、昭和四十四年度一ぱいでもって現在計画されております区域については完了いたします。  以上でございます。
  22. 中谷鉄也

    中谷委員 次に、やはり建設省に対するお尋ねです。  実は宇治取水口でございますが、この取水口ができたときに非常に市民は喜んだのです。地元先輩国会議員なども各省に非常に交渉されてできた。とにかく宇治取水口ができたので、いよいよこれで和歌川浄化されるということだった。ところが、私きのう写真をずいぶんたくさんとってまいりましたが、短い間の質問ですから、ちょっとこれをごらんいただきたいと思うのです。   〔中谷委員写真を示す〕 紀ノ川からきれいな水が出てくるという取水口のところにそもそもごみがたまっているわけでございます。これは秒八トンというようなことをいっていますが、一体この取水口は効果を発揮しているのかどうか、これはもうわれわれ非常に失望しているのです。この取水口はずいぶんたくさんの金をつぎ込んでやっていただいたわけです。この取水口の問題について今後どういう対策をお持ちいただけるのか、この点についてひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  23. 西川喬

    西川説明員 宇治のポンプ場は、昭和三十九年に完成したのでございますが、いま先生がおっしゃいましたように、能力は毎秒八トンでございます。ところが、実は宇治のポンプ場から入ってまいります真田堀川が完全に改修されておりませんでした。それによりまして、八トン全部運転いたしますと、一部浸水するところが生じてくるわけでございます。そのために、真田堀川の局部改良を実施いたしておりまして、これが四十三年度に完了いたしまして、現在では、八トンは河道としては通るようになったわけでございます。ところが、まだ下水道が完備いたしておりませんで、真田堀川は満水状態にしておきますと、下水道の堤内の排水ができなくなる。それが全部下水道が完備いたしまして外へ出してしまいますと、よろしくなるわけでございますが、現在のところ、自然排水が真田堀川に出ているものでございますので、やはり二十四時間フルに運転して、常にこれを満水にしていくということができないわけでございます。その辺のあれがございますので、やはり現在のところ分割運転せざるを得ないということになっておりますが、でき得る限り早く一〇〇%の効果を発揮するようにいたしたいというふうに考えております。  それからもう一点は、真田堀川から入りました水が、やはり和歌川のほうが河道にヘドロ排水するわけでございまして、仮せきの関係もございまして、結局全部市堀川のほうに流れていってしまうという状況でございますので、完全な効果をあげておりませんが、これを総合的に、和歌川しゅんせつその他の進捗状況とあわせて、できるだけ早く一〇〇%の効果をあげるようにつとめてまいりたい、こういうように考えております。
  24. 中谷鉄也

    中谷委員 そうすると、取水口が効果を発揮するというのは、和歌川ヘドロしゅんせつということが条件にかかってくるわけですね。そういう全体の和歌川浄化対策というものの一環としてでなければ、きょうはいつまでに一〇〇%というようなお答えはいただけないのですか。
  25. 西川喬

    西川説明員 現在のところ八時間程度しか運転していない、これは下水道整備の問題、真田堀川の整備の問題があったわけでございます。その点につきましては、二十四時間運転は下水道の問題から無理でございますけれども、八トンをある時間運転するということは、ことしからは真田堀川が改修されたことによりまして可能になったわけでございます。ただ、その水が和歌川のほうの浄化に役に立つということにつきましては、これは和歌川しゅんせつが進みませんと、水の導入は可能でございますけれども効果が発揮ができないということでございます。
  26. 中谷鉄也

    中谷委員 この問題についての質問はあと一、二点だけですが、そうすると、ヘドロしゅんせつ、これはダンプカーで十万台分を上回るだろう、こういわれているわけです。たいへんなものなんです。そこで、このヘドロしゅんせつ計画についてはどういうふうな計画をお持ちいただいているか、これをひとつお答えをいただきたいと思います。それと、いつまでにこのヘドロしゅんせつということについて建設省としてはお考えになっているか。  それからいま一つ、重大な問題といいますか、地元にとって非常に驚いた問題があるんです。というのは、このヘドロの捨て場所なんですね。景勝地である片男波をこのヘドロ埋め立てようというふうな話も一部には出ているらしい。これは私は非常に検討を要することだと思う。私、個人としても十分検討いたしたいと考えますね、現在の立場において反対なんです。そういう点については、建設省としてはどのようにお考えでしょうか。河口十六万五千平方メートルを和歌川浄化計画の中で埋め立てる、こういう計画についてはいかがでございましょうか。
  27. 西川喬

    西川説明員 ヘドロしゅんせつ計画につきましては、全体計画といたしましては和歌山の市内河川和歌川市堀川、それからその上流の大門川、これは全部しゅんせつするように考えております。当面の緊急計画といたしましては、昭和四十六年の国体開催までに和歌川筋のしゅんせつを完了いたしたい。四十四、四十五、四十六の三年間で和歌川筋だけについてしゅんせつを完了いたしたい、こういうふうに考えております。  それからヘドロの捨て場所でございますが、これはいま先生のおっしゃいましたように、それならばヘドロをどこへ持っていくかということが非常に問題になっております。先生のおっしゃいました片男波も一応候補地にはあがっておりますが、決定はいたしておりません。やはり捨てましたあとの問題がございますので、十分県のほうで現在検討中でございます。
  28. 中谷鉄也

    中谷委員 次に質問が変わります。お待ちかねをいただきました国鉄のほうへお尋ねいたしますから、この都市河川の汚染対策の問題はこれで終わります。  国鉄の理事の方おいでいただいているでしょうか。  実は、この問題については、国鉄運賃が上がるというふうなことの中で、お尋ねする問題は小さそうな問題なんですけれども、非常に私自身気にかかる問題なんです。そこでお尋ねをいたしますが、要するに新幹線でございますね。これはとにかく「ひかり」であるならば、東京、名古屋、京都、大阪、こういう駅だけしか停車いたしません。これはあたりまえのことなんですね。そういうことになってまいりますと、新幹線に乗車したところの乗客というのは、結局新幹線のビュッフェあるいは車内販売以外に利用することができない。逆に言いますと、そこには全く競争原理というものは働いていないわけですね。利用者の立場からいうと、選択の自由というものは働いていない。市内で、たとえば新宿に行ってそば屋へ入るとかどこかへ入るとかというふうな問題については、まず選択の自由があるけれども、そういうものはない。こういう問題についてきょうはお尋ねしたいんです。それで、この問題については、昭和四十一年に商工委員会において田中武夫委員のほうからかなり詳細に質問がありました。要するに独禁法上の問題として質問があった。当時の会議録を見てみますると、公正取引委員会のほうでは次のような答弁をいたしております。昭和四十一年の三月二十九日の会議録、竹中政府委員答弁でありまするけれども、こうなっている。要するに「独占禁止法の立場から申しますと、国鉄が承認する場合も、」この販売については、承認の場合と届け出の場合がありますね。「承認する場合も、できるだけ競争の要素を取り入れて旅客の便益をはかるような承認のしかたをされることが望ましいんじゃなかろうかとわれわれは考えております。」ということになっている。——これは運輸委員会の問題の範囲ではないのですね。その点では公取の問題なんです。——というふうに答弁をしているのです。  そこで、きょうは公取の公聴会があってたいへんなんですけれども、公取の事務局の方おいでいただいていますから、こういうふうに独占禁止法上の立場から見て、非常に望ましいのではないかとわれわれは考えているということですが、まず公取にお尋ねいたします。公取として、昭和四十一年からすでに足かけ三年たちましたが、この問題についてその後どのような調査をおやりになったか、この点をまずお答えをいただきたいと思います。
  29. 吉田文剛

    ○吉田説明員 この問題は、本来なら事務局長あるいは経済部長の問題でありますが、きょうちょっと差しつかえがございますので、かわって出てまいりましたが、私の聞いております範囲では、経済部としてはその後特別の調査はいたしていないようでございます。ただ、その当時、昭和四十一年の三月二十九日の当時の竹中事務局長答弁のあった直後に、国鉄のほうに口頭で申し入れをした。それは国鉄が承認をする場合に、この答弁にも書いてございますように、できるだけ競争的な要素を取り入れて承認をするほうが望ましい、こういう営業のしかたが直ちに独占禁止法に違反するかどうか、これは問題ございますけれども、やはり独禁法のねらいとしますところは、自由競争の促進ということでございます。競争的要素はいかなる場合においても望ましいということで、そういう申し入れをしたということを聞いております。
  30. 中谷鉄也

    中谷委員 独禁法上の問題ということですけれども、これは一体独禁法の何条との関係において問題になるのだろうか。そういうような点について公取のほうは御専門だけれども、国鉄として、独禁法上の問題としてこれは問題があります。たとえば新幹線の「ひかり」何号というものについては、結局会社が三つほどあって、その会社のうち一つ会社だけがそのビュッフェに入っておる、こういう状態ですね。国鉄のほうとしては、かりにそういう触れる触れないは別として、一体独禁法上の何条の問題になり得るとして、四十一年のこの商工委員会における質疑以来今日まで御検討になったか、この点をひとつ国鉄のほうからお答えをいただきたい。
  31. 長瀬恒雄

    ○長瀬説明員 私、独禁法につきまして実は詳しくは存じておりませんので、お答えできませんが、ただいま公取委員会のほうから御答弁がございましたように、私どもとしては、独禁法に関係はない、こういうふうに考えております。しかし、競争原理を生かしてサービスをはかれというような申し入れがございましたので、その後競争原理につきましては、十分サービスの向上をはかるという点について私どもとして努力いたしておるわけでございます。独禁法の何条に該当するかどうかは私ども存じておりません。
  32. 中谷鉄也

    中谷委員 当時の議事録によると、構内販売の問題については、独禁法上の問題になるのではないかということで、相当詳しく質疑応答がされておりますね。独禁法の十九条、「不公正取引方法の禁止」に触れるかどうかはともかくとして、十九条の問題として検討の余地があるのではないか、こういう点については国鉄としてはその後の研究あるいは改善対策の中で御検討になった事実はないのですか。全然その独禁法の条文については興味がないんだというふうにおっしゃれば、これはもう私何のためにきょう出ていただいたかさっぱりわけがわからぬ。突然の質問じゃないのですね。すでに三年前にこういう質問が出ている。独禁法上の問題ということで相当詳しい質問が出ているのですから、十九条の関係については御検討があったのかどうか、この点いかがでしょうか。
  33. 長瀬恒雄

    ○長瀬説明員 公取のほうからも先ほど申しましたとおり、独禁法に直接関係ないと思われるというような申し入れがありましたので、私どものほうとしましては、この点について十分検討いたしておりません。しかし、ただいま申しましたとおり、当時の議事録におきまして相当議論があった。当時私自身が担当いたしておりませんので、詳細につきましては当時の模様につきましては私承知いたしておりませんが、そういうような前提で、むしろサービスの問題であるという点について私どもとして当時の模様を聞いておるわけであります。したがいまして、法律の問題につきましては、それらにつきましては検討いたしておりません。
  34. 中谷鉄也

    中谷委員 公取についてお尋ねいたしたいと思いまするけれども、問題になるとすれば、独禁法に触れる触れないということは別として、独禁法上の問題になり得るとすれば、独禁法の三条とそして十九条の問題の対象として検討を従来からされておったし、また検討さるべき問題である、こういうふうに私は思いますけれども、公取いかがでしょうか。
  35. 吉田文剛

    ○吉田説明員 仰せのとおりだと思います。私は、むしろ第三条の私的独禁のほうに、これがすぐ違反になるかどうかは別といたしまして、該当するところがあるのではないかと思います。ただ列車食堂の問題は、われわれとしては競争原理をできるだけ取り入れていただきたいというふうにその当時の竹中局長答弁しておられるわけであります。ただ列車の場合、非常に問題がございまして、一つの列車にそれでは複数の食堂をはたしてつけられるかどうか。これは競争上の問題もございましょうと思いますけれども、そういう問題、あるいはまた「一定の取引分野」に列車の中がはたしてなるかどうかという問題もございまして、この点について、直ちにこれが違反するかどうかはもう少し——私どもとしてはいま責任をもってお答えはできないのではないかと思いますけれども、少なくとも問題になり得るとすれば第三条じゃないかと思います。
  36. 中谷鉄也

    中谷委員 なるほど、十九条ではなしに、むしろ第三条の問題になり得るということでありますれば、公正取引委員会の事務局きょうは御出席になっているわけですけれども、結局そうすると、公正取引委員会事務局として、この問題については現在違反になるとも言えないし違反にならないとも言えないということであれば、あらためて実態を御調査いただくということをお約束いただけますか。
  37. 吉田文剛

    ○吉田説明員 公正取引委員会としては、この点について調査をいたしますということは申し上げられます。
  38. 中谷鉄也

    中谷委員 どうですか、国鉄さん。この点についてやはり公正取引委員会のほうとしては、三条の問題について違反であるかないかはいま即断はできないけれどもということです。要するにそういうことで、問題は日本国有鉄道旅客構内営業規則とかいうものがあって、そうして国鉄が承認をして——価格等については承認と届け出があるのでしょうか、そういうようなことで実際に営業が行なわれているわけですね。事実上競争原理を取り入れるとあなたはおっしゃいますけれども、サービスをするということと競争原理ということとは別ですよ。「ひかり」何号に乗ったということになれば、もうそれはその列車食堂を経営しているその業者以外を選択する余地がないわけでしょう。サービスの問題とは私若干違うと思うのですよ。この点については、国鉄としてはサービスの問題に振りかえるべきではないと思うのですが、こういうふうに競争原理が働いていないと私は思うんですけれども、この点いかがでしょうかむ
  39. 長瀬恒雄

    ○長瀬説明員 競争原理の問題につきまして、法律の問題とそれから実質的な問題とを分けなければならぬと考えます。現在、先ほど御指摘のとおり、全国の列車食堂は七社で行なっております。新幹線につきましても現在三社で、列車別にそれぞれ業者を選定いたしております。したがいまして、その面からは個々の列車の中におきましては競争の原理はないというふうに考えられますが、しかしながら、競争原理というものにつきましては、私どもの実態としましては、むしろ味とか食堂のサービスというような点が問題ではないかというふうに考えるわけでありまして、現在の複数になっているという点で競争原理が働いているというふうに考えるわけであります。
  40. 中谷鉄也

    中谷委員 それは競争原理が働いているとおっしゃいますけれども、とにかくどの業者が営業しておるビュッフェに行きたいからといって車に乗る人は一人もいないでしょう、そんなことで車に乗る人は一人もいない。そんなことでどうして競争原理が働いているのですか。もう少し具体的に言ってください。競争原理が働いているとおっしゃいますけれども、競争原理ということばでなしに、では独禁法三条に触れるおそれがあるかもしれないという公取のお話ですね。その点について、公取は調査しましょうと言っておる。じゃ、あなたの独禁法三条に触れないというその点についての法律的な見解を承りたい。
  41. 長瀬恒雄

    ○長瀬説明員 私ども、法律の問題につきましては、公取のほうの御見解に従うほかはないわけであります。御承知のとおり、列車内の食堂……(中谷委員「三条との関係について」と呼ぶ)につきましては、ただいま公取のほうから御指摘ございましたように、三条に該当するということにつきましては、今後研究いたしたいと考えております。
  42. 中谷鉄也

    中谷委員 ですから、公取は公取で調査をすると言っているのですよ。あなたのほうは三条の問題に触れるのか触れないのか、触れないとあなたのほうはおっしゃるけれども、競争原理が働いているということをおっしゃるから、三条の法律見解をあなたのほうで言ってください、こう質問しているのです。
  43. 長瀬恒雄

    ○長瀬説明員 法律の問題につきましては、ただいま申しましたとおり、公取の法律解釈といいますか、法律の考え方というものを私どもまだ聞いておりませんので、したがいまして、現在三条に触れるか触れないかという点については私どもお答えすることができないわけであります。しかし先生指摘のような点につきましては、国鉄内部におきまして今後十分研究いたしたいと思います。
  44. 中谷鉄也

    中谷委員 そうすると、もう一度聞きますけれども、三条に触れる、競争原理が動いているとか動いていないとかいうことは、これは独禁法上の問題でしょう、そうですね、独禁法上の問題として問題を提起しているわけでしょう。競争原理があるとかないとかいうことをこの委員会において論議をするのは独禁法上の問題として論議をするわけなんですね。これで、それについてあなたのほうも先ほどから競争原理が動いているとあなたはおっしゃった。けれども、三条については御存じないわけなんでしょう、率直に言って、独禁法三条について。私は独禁法の担当じゃないので、この点については十分に答えられないと非常に率直なお答えがあったわけですが、突然の質問ではないのです。独禁法上の質問をする、こういうことは当然四十一年からの続きの質問をきょうはすると言って、お調べをしていただいて、私はこうして聞いているのだけれども。そうすると、あなたのほうとしても、競争原理が働いているとおっしゃったけれども、競争原理が働いているとか働いていないとかいうことは、独禁法三条の違反になるかならないかの問題に限ってくるわけなんですね。そういうことですから、あなたのほうも先ほどから競争原理が働いているという御答弁は、三条との関係においての問題なんですから、働いておるというふうに断定されることは納得できない。三条の違反の疑いがあれば競争原理は働いていないことになるわけです。その点についてはあなたのほうとしてもそういう疑いを提起されているわけだから、独禁法の問題として、あなたのほうも国鉄としてこの問題については調査をする、検討しますということは、当然お答えになってしかるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  45. 長瀬恒雄

    ○長瀬説明員 先ほど申しましたとおり、現在は、列車の食堂といたしましては、それぞれ個々の業者が行なっておりますので、その面からは表面的な独占であるというふうに考えられますが、私どもといたしましては、複数業者でやっておる、しかも全体として複数であるという点から、事実上競争原理が働いている、こう申し上げたわけであります。しかし、これが法律的にどうであるかという点につきましては、今後検討いたしたいと考えております。
  46. 中谷鉄也

    中谷委員 同じことの繰り返しをあまりしたくはありませんが、事実上どうのこうのという問題ではなしに、そういう事実の認定が法律的にどう評価されるかという問題がございましょう。ですから、そういうふうな、あなたの言っている言い分の事実を法律的に見てどうなのかという問題としてこれは検討されねばならない。公取にまかせきりにするというのですか、それともあなたのほうもこの問題については慎重に御検討になるのかどうか。この点いかがですか。
  47. 長瀬恒雄

    ○長瀬説明員 私どもも公取と十分打ち合わせをいたしまして調査いたしたいと思います。
  48. 中谷鉄也

    中谷委員 なぜ私がこんな質問をしたかということを申し上げますと、A、B、C三社が入っていると言うのでしょう。そのA、B、Cの三社のうちの一社というのは、元の国鉄の古手の方がずいぶんたくさん役員を占めておられる、そういう会社なんでしょう。そういう会社一つございますね。  そこで私は、その写真をとにかくとってまいりましたが、ひとつ見てください。(写真を示す)要するに、同じ価格の同じ品物ですよ、サラダです。ずいぶん大きさも違うし、それからあなたのほうで、こういうふうなことで届け出があるんだと言われておるところの品物が入ってないのがあるんですよ。入っておりません。そういうようなことについて、まさに実態はそういうふうな非サービス的なことが行なわれているというのは、独占的で競争が働いていない。逆にいうと、新幹線に乗った乗客は全くビュッフェのとりこになってしまう。とにかくそのビュッフェが気に入らなければ、三時間十分、東京から大阪の間までは絶食していなければならないという、そういう選択の自由がないところに、そういうふうな各食堂によってそれだけのアンバランスが出てきているわけです。そういうような問題について国鉄としてはどういうふうにお考えになりますか。
  49. 長瀬恒雄

    ○長瀬説明員 ただいま拝見いたしました写真によりますと、これはハムサラダと思いますが、私ども調査いたしました結果におきましては、確かに形態は違っております。しかし味その他につきましては、私どもといたしましては十分指導監督いたしておりまして、旅客のサービス上遺憾のないようにいたしております。また価格につきましても、原価を計算いたしてみまして、それが適正であるかどうかという点については十分監査をいたしまして、それによって旅客に対する供食サービスというものを維持していくということにつきましては努力いたしております。これ自体は、ある店においてこれが非常にうまいかまずいかという点につきましては、今後味その他につきましても十分指導監督いたしたいと考えております。
  50. 中谷鉄也

    中谷委員 私は、そういうふうにあまりがんばられないほうがいいと思うのですよ。  じゃひとつ、私が先ほど国鉄の元古手の方が多いと言った会社の、その写真を見てください。競争原理が働いてないと、そういうことになるのですよ。その写真によりますと、そこの会社は特にアスパラガスを入れてあるんだということになっているでしょう。どこから見てもそんなものは入っていませんよ。写真を見てくだすっていますね。入ってないでしょう。会社の名前を出すのは私はいやだから出しませんが、国鉄の古手がたくさん入っている会社といえば、あなたはわかるでしょう。その会社については、いわゆる量は少ないけれども、そのかわりアスパラガスをとにかく入れてあるんだということを自慢にしているというのですよ、国鉄の説明では。その写真を調べてみましたら——そんな食堂車に行って写真をとるなんていうのはずいぶん勇気の要ることですよ。それを写真をとってきた。科学警察研究所に頼んだって、そんなもの入ってませんよ。あなたの目から見たって入ってないでしょう。あなたは、国鉄運賃だけ上げて、指導監督しているんだとおっしゃるが、何が指導監督ですか。入ってないじゃないですか。そんなことが自由に行なわれる、公然と行なわれる、平然と行なわれているということが、競争原理が働いてないということの実態のあらわれじゃないですか。  もう一度、あなたは指導監督していると言われますけれども、そんなことで——私は写真を持ってきてよかったと思う。写真を持ってこなければあなたのほうの答弁で通ったかもしれません。指導監督していると言えますか。
  51. 長瀬恒雄

    ○長瀬説明員 食堂の問題につきましては、常々旅客の面からのアンケートその他いろいろと御苦情もございますので、私どもといたしましては常に細心の注意を払って、これらの材料あるいは味その他については、それぞれの列車におきましては車掌なりあるいはそれぞれの管理局におきまして十分指導監督していると思っております。(「思っているじゃだめだ」と呼ぶ者あり)また足らなければ、私どもといたしましては、さらにこれらにつきまして指導を強化いたしたいと考えております。
  52. 中谷鉄也

    中谷委員 持ち時間が来たようですから、一言だけ質問します。きょうはこういう質問であなたもあまりぱっとしないだろうけれども、私は、これはほんとうに乗客としては、何十万の乗客は迷惑していると思うのですよ、競争原理が働かなくて、こういうことになったら。そこで、その写真を見たら——あなたのところから出た資料によると、ちゃんとこういうものを入れてますと書いてあるのです。入れてますと書いたものを、私はほんとうに善意で、入っているのか入ってないのかと思って何人にも見せましたけれども、入ってないじゃないですか。だから細心の注意をしてますとか十分監督をしてますとか、そういうような公式の答弁じゃなしに、もっと率直に、そういうことについての監督が不十分だった、それはやはり競争原理が働いてないということに原因があると思われるという答弁がない限りは、私は納得できませんね。いかがですか。
  53. 長瀬恒雄

    ○長瀬説明員 国鉄といたしましては、先ほど申しましたとおり、料理の問題につきましては専門的ではございませんので、それぞれの業者が入っておりまして、それらを信頼いたしておりますが、しかし御指摘のような材料の点につきましては、私どものところに届けておりますので、それらがなければ、私どもとしてさらにそれらの点について十分監督をしていくという以外には方法はないと思うのであります。しかし、競争の原理という面につきましては——ここにございますような点から、確かにそれぞれの基地等におきまして私ども十分監督をすることができるというふうに考えておりますが、競争の原理につきましては、事実上の問題としては三社がそれぞれあるという点については、私先ほど申し上げましたとおりであります。法律的に云々という点につきましては、私どもさらに調査をいたしたいと考えております。
  54. 中谷鉄也

    中谷委員 競争の原理というのは独禁法上の問題なんですから、三社が入っておってお互いにサービスをしているんだといったって、何もこの業者の車に乗るといって乗る者はおらないのだから、幾らおっしゃっても、あなたがどこかで勘違いをしているか、私自身が何かこじつけをしているか、どちらかなんでしょうけれども、おかしいですね。  もう一つ申し上げておきますけれども、あなたのほうでいろいろな点について、品物についての規格等を監督することができるとしても、そもそも競争の原理が働いておらないのだから、監督の目をくぐってそういうことをするという人がずいぶん出てきますよ、ということだけは私申し上げておきます。  持ち時間が来たようですし、この問題については公取も調べていただくようだし、あなたのほうも調べていただくようだから、私はあらためてこの質問をもう一度別の機会にやりたい、こういうことで質問を終わりたいと思います。
  55. 中村重光

    中村(重)委員 関連で私は質問するのだけれども、三社が入ってサービスをやっているといまあなたがお答えになった。ところが、食堂に行って交代のときあるのですね。こちらはまだ食事中なんだ。食事中に、私たちは交代をいたしますからお金を払いなさい。いいですか。今度はまたその食堂に入って、何か注文すると、しばらくいたしましたら、交代をいたしますから、交代が来てから注文はしてください、こう言うのであります。それがサービスをしているということになるのだろうか。どういう指導をしているのですか。
  56. 長瀬恒雄

    ○長瀬説明員 そのような事実がございますれば、これは確かに旅客のサービスといたしましてはまことに不都合でございますので、私どもとして十分注意させます。
  57. 中村重光

    中村(重)委員 そういう事実がございますればと言うが、あなた方でも列車に乗っている人がたくさんあるのだろう。ぼくはいつもそういうことを自分自身で何回も体験しているのだ。たとえば「さくら」、ぼくは長崎に行くのだけれども、下関で乗りかえる。そのときにいつもそういうことをやる。食事をしているときに、交代でございますからお金を払ってください。そんなでたらめな話があるだろうか。そういう事実があればなんということをあなたが答弁するということは、いかに国鉄が、いまサービスしていると言うのだけれども、その監督をしていないか、明らかな事実なんだ。だから、もっとほんとうに監督しなさい。そうしなければ、この委員会で、三社が入ってサービスをいたしておりますなんというようなことをあなたは言う資格はない。さっそく、それじゃ改めなさい。
  58. 長瀬恒雄

    ○長瀬説明員 そのような点がございます点につきましては、まことに遺憾でございますので、今後十分監督いたしまして善処いたします。
  59. 浦野幸男

    浦野委員長代理 石川次夫君。
  60. 石川次夫

    石川委員 私がきょう御質問したいと思ったことは、端的に言ってウラン鉱の探鉱の問題であります。しかしこの問題は、実を言うと、予算の委員会でもある程度の質問を通産大臣に行なっておりまして、相当詰めた議論をしなければならないし、また現在の体制は政府にとって非常な責任問題になるのではないかという問題点をたくさんはらんでおるわけであります。したがって、実を言うと、通産大臣あるいは総理大臣のいるところできちっと政府の態度をきめてもらわなければならない、こういう重要な質問をしたいと思ったわけでありますけれども、残念ながら通産大臣がお見えになっておりません。やむを得ませんので、きょう質問したことをきょう御列席の皆さん方から十分内閣に反映していただいて、どういう対策をとるかということをあらためてこの委員会でまた再質問したいと思っておりますので、その点は御了承願いたいと思います。  御承知のように、将来のエネルギー源として石油あるいは石炭というものはそう長くを期待できないということで、ウラン、原子力発電でなければならないということに相なっておるわけであります。現在の計画によりますと、昭和六十年に三千万キロワットないしは四千万キロワット、これは現在持っておる全発電量に匹敵するような非常なスピードで原子力発電が行なわれようとしておるわけでありますけれども、しかし、それでもなおかつ足りぬ。これは一つは、石油によるところの発電というものが公害が多いということ、あるいはまた日本の経済成長というものが予想以上に非常に早いというようなことから、計画自体を繰り上げなければならないというような状態になっておることは、想像にかたくないわけであります。こういうふうに非常に急いでやるということ自体については、私個人としては非常に意見がございます。たとえば大熊あたりに現在のところ二つしか発電機は原子炉としては許可になっておりませんけれども、これが四つということになれば、明らかに国際基準、ICRPの基準を、ある種の放射能、アルゴンなんかは抜くのではないか。したがって石油によるところの公害を避けながら、それよりおそろしい新しい放射能の危険という公害がまた生じる可能性があるというような点で、あるいはまた日本の自主独立の技術をもって原子力発電を行なうのじゃなくて、外国からいたずらに導入した技術をもってまかなっていくというようなことについても相当問題が多いという点で、いろいろな意見はあるにいたしましても、将来の日本のエネルギー源というものは原子力に依存するところ非常に大きいということ、これは否定はできないと思うのです。  そこで伺いたいのでありますけれども、現在の計画中の原子力発電に対してアメリカと原子力協定を行なって、三十年間のウランというものは供給をされるということになっておるわけでありますけれども、最近はその計画がまたスピードアップされておることは、先ほど申し上げたとおりでありますけれども、この三十年間のウランの供給という内容であります、実体であります。これは濃縮ウランを供給する、となっておりますけれども、この原鉱石はどうなっておりますか。その点をまず原子力局の、局長いらっしゃいませんから次長に伺いたいと思います。
  61. 田中好雄

    田中説明員 協定によりますれば、百六十一トンのウラン二三五を米側から供給を受けることになっておりますが、これの協定によりますれば、これに必要な天然ウランは日本側において準備いたしまして、アメリカの濃縮工場に供給する、こういう形になっているわけございます。
  62. 石川次夫

    石川委員 これは田中さん、たいへんこの前の科学技術対策特別委員会答弁と違うのですよ。この前はウランは全部心配なく供給されるのでございます、こういう答弁だった。私はそれでどうも疑問にたえないので、いろいろ向こうの資料を調べてみました。調べてみましたところが、一九六七年十一月のAEC、アメリカの原子力委員会の発表は、「購入希望者が賃濃縮のために民間市場で天然ウランを入手するための十分な努力をした上のことであることを期待する」。原鉱石は供給するとは書いてありません。それでAEC所有ウランの放出可能な量いかんに依存する、これはアメリカで持っている放出できるものだけを出すということになっておるわけです。現在日本に供給いたします百五十四トン、これをウラン二三五ですから、天然ウランに換算すると、大体三万四千トンぐらいになります。この中でほんとうに長期契約になっているのは、このうちのわずか半分ぐらいです。そうすると、二十万トンぐらいは、日本で独自の力でもって原鉱石を開発をしなければならぬ、こういう義務をしょわされているという事実を、実は原子力局あるいは科学技術庁自体が知らないのです。通産省もおそらく知らないのだろうと思うのです。何となく、原子力協定が済んでおるから、これでもって三十年間はだいじょうぶなんだという非常な安易な考え方があるのではなかろうか。その証拠には、しからばその足りない分の原鉱石を一体どう解決するのだ、どう埋めていくのだという体制は全然なっておらぬと言っても過言ではない。これは私はたいへんな政府の責任ではないかと思うのです。  そういうことで聞きたいのでありますけれども、現在、御承知のように民間のほうに依存をして、電力会社が八割、大手の鉱山会社が二割、これが資金を出し、アメリカのカーマギー社が同じだけ出して、それでカナダのエリオット・レークでもって探鉱をやっておる、これが一つあります。それからあと一つは、電力会社が一〇〇%出し、同額をカナダのデニソン社が出して、それでアメリカのコロラド州とカナダのブリティッシュコロンビア州、ここでやっております。一応有望だということにはなっておりますけれども、これは鉱山局にちょっと伺いたい。あるいは公益事業局でもけっこうでありますけれども、一体現在探鉱の事情はどういうふうになっておりますか。
  63. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 御指摘のように、原子力発電の進展に伴いまして、昭和六十年までに必要となるウラン量は約十万トン見込まれておりまして、これは低廉かつ安定的に確保することが緊急な問題となっておるわけであります。それまでに電力業界におきましては、カナダのウラン鉱山会社との長期契約等によりまして、昭和五十三年までの十年間で約一万七千トンのウランを手当て済みでございます。これによって当面、昭和四十八年までの需要はまかない得るという見通しを持っております。御質問は探鉱についての現状いかんということであると存じますが、ただいま御指摘ございましたように、昭和四十九年以降の必要量を確保するという意味合いにおきまして、わが国の企業による海外ウランの資源開発につきましては、目下電力業界と鉱山業界が協力をして仕事を行なっておるわけでございますが、御指摘のカナダのエリオット・レークで電力の九社とこちらの鉱山会社六社、カーマギーという形での探鉱事業が四十三年四月から共同探鉱という形で行なわれておりまして、四十四年度予定をいたしておりますこれの探鉱費は大体七億一千三百万円というふうに聞いております。  もう一つ指摘のございましたアメリカのコロラド州における電力九社がデニソンと共同してやろうとしております仕事は、四十三年十一月から開始ということで、これも共同探鉱を行なっておりまして、四十四年度の探鉱費は大体一億五千七百万円という想定に相なっておるようでございます。このほかに、御指摘はございませんでしたが、アメリカのワイオミングにおきまして三菱金属がリオアルゴムと共同探鉱を四十一年九月から進めておりまして、四十四年度の探鉱費といたしましては九千四百万円ということを想定いたしておる状況でございます。
  64. 石川次夫

    石川委員 そういう作文的なお答えは、私聞かなくてもわかっておるのですよ。なぜ私はこういうことを心配するかというと、大体いまお話しがあったように、昭和六十年までに十万トンは要る、それから今世紀では大体三十六万トン要るということは原産会議で発表しておる。世界の埋蔵量は幾らかというと、現在のところ八十万トンです。そのうち三十万トンを日本でほしいという。アメリカの生産量は一体いま幾らかというと一万トン、将来の生産量は幾らかというと一万六千トン。ところがアメリカは一九七五年になると、二万トンの必要性が出てくるのです。アメリカは自体がもう原鉱石が足りない。日本にどうやって供給するのですか。日本はアメリカに完全に濃縮ウランを依存する、原鉱石まで依存するという体制自体に私は非常な疑問を感じている。将来のエネルギー源をがっちり一つの国に押えられたら、とうてい自主独立の外交なんかできっこないというのが厳然たる事実です。将来の日本のエネルギー源の安定性を確保するという点からいってもたいへんな問題になってくるのじゃないかということを私は非常に懸念をしているわけです。この趣旨からいえば、アメリカが賃濃縮だけは責任を持つでしょう。しかし原鉱石は責任を持てない。しかも原子力局では、この前科学技術特別委員会で、何か全部責任を持ってくださるのだという答弁であったけれども、よく調べたら、向こうはそういう約束はしていないのです。賃濃縮だけは約束している、原鉱石は皆さん自分の国でお探しなさい、こういう状態で、現在のやり方をしますと、電力会社は相手に金を出しっぱなしですね、自分で探鉱をやっているわけじゃないのです。それから日本には金属鉱物探鉱促進事業団というのがありますけれども、目の前の採算がとれる銅、鉛、すず、こういったものが主体ですね。ウランなんという冒険は民間会社はやろうなんてしません。電力会社は、将来発電機をつくって、そこの原料となるウランの問題でありますから、わりあいに熱心でありますけれども、電力会社は自分で掘るなんという能力はないのです。金を出しっぱなしですよ。こういうふうな非常にあやふやな状態で、はたして将来原子力発電所をこんなにたくさんつくって、その原料のウランは一体どうするのだ、これは私は重大な責任問題だと思うのです。この点に対する体制は、いまの答弁の限りでは十分にできておりません。一万七千トンとかなんとか言っておりますけれども、将来は三十六万トンも必要だということに対して一万とか二万とかいう数字しか出ておらぬじゃないですか。世界の埋蔵量が八十万トンしかないところを日本が三十六万トン必要だという状態です。これを政府が、何かアメリカと原子力協定を結んだから、もうそれで三十年間は安泰でございますというような体制で、将来原鉱石が足りない、アメリカでもよこさないというふうなことがわかっておるときに、一体どうやって対処するのですか。この点の決意を実は通産大臣に聞きたかったわけですが、かわって政務次官から伺いたい。
  65. 藤尾正行

    ○藤尾政府委員 石川先生指摘のウランの問題につきまして私どもも十分の勉強をいたしておりませんが、今世紀三十六万トンの必要量に対して一万七千トンしか手当てをしておらぬというようないまの状態で、今後ともこれが続いてまいるということであれば、これはたいへんなことであると考えます。したがいまして、私どもといたしましては、この問題についてそれではアメリカとの協定以外にどのような手、があり得るのか、そういった点について十二分の検討をいたし、将来のわが国のエネルギー源というものに関する重大問題でございますから、こういった問題には政府をあげて取り組まなければならぬことである、かように考えます。
  66. 田中好雄

    田中説明員 ちょっと先ほどの答弁の中で一つ落としておりましたが、天然ウランをアメリカの濃縮ウラン工場に供給して濃縮してもらうという賃濃縮でございますけれども、日米協定の第七条のAの(1)のあとのほうに書いてございますように、「U−二三五の濃縮ウランの特定の引渡しのために必要とされる天然ウランを合理的に入手することができない旨」を米側に通知をいたしますときは、「合意される条件により、必要とされる天然ウランを供給する用意がある。」こういうふうになっておりまして、賃濃縮を当方も非常に希望した点がございまして、この天然ウランの供給の用意というのをあとのカッコ書きの中に入れて示してあるわけでございます。したがいまして、百六十一トンにつきましてはこういう約束になっておりますが、先生の御指摘は、なお将来をながめた場合にどうなるかということかと存じます。お話しのとおり推定八十何万トンくらいしかウランの資源がない、こういうお話でございますが、これは十ドル以下のものでございまして、十ドル以下のものにつきまして確度の高い埋蔵量は御指摘がありましたような八十三万トンくらいでございますが、推定追加埋蔵量というのを調べたのがございますけれども、これによりますれば七十四万トンぐらいの可能性が見込まれておりますし、それから十ドルから十五ドルの範囲内で確度の高い埋蔵量といたしましては七十八万トンぐらいが予想されておりますし、推定追加の埋蔵量といたしましては八十八万トンぐらいになっております。ただし、この十ドルないし十五ドルという高いものに手をつけますと、発電コストも自然上がりますので、そこで新型転換炉とかあるいは増殖炉というものを早目につくり上げまして、これでウランの需要効率を大いに高めて必要な所要量を減らしてまいりたい、こういうのが現在当方でとっております方針でございます。
  67. 石川次夫

    石川委員 いまの次官の答弁も、それから原子力局次長答弁も、それからいろいろ問題が出てくるわけです。あまりこまかいことは言いたくはないのですけれども、原子力協定の中でそういうことは書いてありますけれども、AECの原料部長フォークナーの言明は御承知だろうと思いますけれども、あくまでも賃濃縮が原則なんです。それで、その原料の天然ウランは需要者が調達するのが原則である、たてまえである、こういうことをはっきり言っておりますね。それから放出可能な量はアメリカ政府の裁量にかかっておるけれども、天然ウランとして四万トンから五万トンの間である、こういうことをはっきり明言しているわけですよ。それからおのずから出てくる答えというのは、全面的に依存することは不可能だという答えが当然そこから引き出される。それじゃそのときに相談しましょうといって相談しても、責任をもって可能な限りというだけであって、全面的に責任をもって支給をいたしますということは、向こうは言明をしていないわけです。この放出可能は全部で四万トンから五万トンということになれば、日本だけで半分以上もほしいということになりかねない。これは、ちょっとこういうことを考えても不可能であります。そういう点を考えないで、何か原子力協定があればだいじょうぶだというふうに安心をしきっているような状態だと、これは将来とんでもないことになるのではないかということを私は逆に懸念をするわけです。何協定があるからだいじょうぶなんだという安心感がいまのお答えの中からも出てくるのですよ。ですから、絶対にそうではないんだ、もっときびしい状態にあるということを十分考えてもらいたいと思うのです。  それから、十ドル以内でなければ採算が合わないわけですね。現在でも、アメリカの原子力発電所は非常に安いといわれておるけれども、いろんな事故があったり運転休止があったりするような状態で、実際はアメリカで公表するように安くないのです。日本の石油発電よりも若干高い程度、決して安くなっていない。それをいたずらに導入するということは、私は逆に、別に問題ではありますけれども、それはここで言うことではないですから省略いたします。そういう点で、いま次官のほうでは、政府でもって十分対処する、こういうお話でありましたけれども、探鉱会社は先ほど申し上げましたように銅、鉛というようなことで、それだけで手一ぱいなんです。それで、将来採算がとれるかどうかわからぬ。まして日本では濃縮ウランの濃縮技術というものについてはまだ全然見通しがついていないという状態では、鉱山会社がほんとうに危険負担を覚悟して乗り込んでいくというような余裕は私は毛頭ないと思うのです。若干はやっております。それから、世界の石油会社で、有名なガルフとかエッソが、いまウラン鉱の探鉱に積極的になっております。御承知のように、インドとかラテンアメリカ、オーストラリアは、原則として輸出は禁止している。そうすると、可能性のあるのは、いまはとにかくカナダと南アフリカだけだ。オーストラリアのほうは、自分で発見すれば、そのうち半分は持っていってもよろしいということになっておるようでありますけれども、原則としてこれは輸出禁止。しかも、その半分持っていってよろしいといわれておるオーストラリアのほうに、世界の大探鉱会社がどっさり乗り込んでいるわけですね。それで、われ勝ちに、いまのうちに原鉱石を確保しなければたいへんだというようなことで、必死の勢いでいま海外探鉱をどこでもやっておるわけです。のんびりしているのは日本だけです。こういう体制では、将来原子力発電所ばかりつくったってどうするつもりなんだ、原料なしに形ばかり、容器ばかりつくってもどうするつもりなんだ、こういう心配をすることは、私は決して根拠のないことではないだろうと思うのです。これは当然皆さま方もお考えいただけるだろうと思うのです。いまのような体制だったら、とんでもないことだ。いまのような体制でいけば、政府の重大な責任問題になりかねない。  そこで、先ほど申し上げましたように、探鉱会社が自分の危険負担でもってやれるようなそういう仕事ではないというようなことで、政務次官のおっしゃったように、政府みずからが乗り出さなければならぬという性格を持っておる仕事ではないんだろうかということを痛感をするわけです。その場合に、いまはどこがやっておるかというと、御承知のように動力炉・核燃料開発事業団がやっておるわけでありますけれども、ここはやはり研究会社的な色彩が強い。科学技術庁の配下といいますか管轄下にありまして、そう積極的にやれる体制ではないのです。しかし、幾ぶんか効果は出ておりまして、あまり発表することはどうかと私は考えておるのでございますけれども、実は先駆的な調査というのは、これは当然動燃事業団でよろしい。しかし、それを実際に着手をして、そうしてほんとうに、掘っていくという体制は、これは科学技術ではちょっと不可能ではないか。やはり通産省が乗り出していってやらなければ、とうてい本格的な取り組みはできないんじゃないかということを痛感をしておるわけです。たとえばカナダのブリティッシュコロンビア州において非常にいいものが発見されておるようです。これはちょっと公表できないようでありますから、あまり言いたくありませんけれども、しかし動燃団のほうの予算はわずかに一千万円、こんなものでは何にもできやしません。そうなると、そういうものが発見をされたというときに、それに取り組んでやるという体制をつくるのは一体どこかというと、私はやはり通産省だと思うのです。  これは一つの例でありますけれども、そういうふうな海外探鉱の本格的な体制を一体どういうふうにつくり上げていくつもりなのか。いまの動燃団がやるとしても、やっと、総理大臣の許可を得てやれるというような細々とした体制で、しかも研究開発、先駆的な技術——技術として日本の核燃料の開発の技術、選鉱の技術というものは、これはりっぱなものだと思うのです。これはいま申し上げると時間がかかりますから、省略をいたしますけれども、選鉱分級だとか、水力採鉱法だとか、一貫製錬法、これは世界にないものです。日本だけのものです。これは非常に貧弱な日本の人形峠を対象としてやったために、世界でないような製錬法を確立したという功績は認めなければならぬと思うのです。そういうものはあるのですけれども、その腕のふるい場所が全然ない。そういうことで、通産省のほうは、将来のエネルギー源としての原子力をアメリカ一国に握られてしまうということは避けなければならぬ。しかし、アメリカが握るというより以前の問題として、アメリカだけでは足りない。そういうことになると、一体どう対処するのだということをいまのうちから相当真剣に取り組まなければとんでもないことになります。そういう点で、政府が取り組むというのですが、政府は一体どういう体制で取り組むか。私の意見としては、通産省が中心になって、もちろんこの海外探鉱を盛んに動燃団にやらせなければなりませんけれども、それは民間資本を導入する、そして積極的にやらせるという体制は、政府全体の問題ではあるけれども、その中の中核としてはむしろ通産省が当たるべきではなかろうか、こう思っておりますが、その点の御意見を伺いたいと思う。
  68. 藤尾正行

    ○藤尾政府委員 御案内のとおり、私ども、四十四年度予算につきましては、海外におきまする私どもの将来におけるエネルギー源を確保いたさなければならぬという大平大臣のお考えのもとにおきまして、油に対しまする探鉱あるいは非鉄金属に対しまする探鉱、こういったことについて、非常に予算自体といたしまして満足であるというわけにはまいりませんけれども、これに一歩を踏み出したということは私は言えると思うのであります。したがいまして、ただいま石川先生指摘のとおり、ウラン鉱というものの需給、特にこれに対しまする御指摘のような不安がこれにつきまとっておるということになりますれば、こういったものを十二分に自分の手で確保していくという努力はいたさなければならぬのでございまして、政府がこの海外探鉱にいままで取り組んでまいりました大平構想といいますものに、さらにこのウランというものを加えまして、もっと大規模にやれる体制になりましたらいつでもやり得るような予算措置、こういったものを本年度中におきましてももし必要ならばとっていくというような姿勢が必要ではないか、またそのような努力をいたさなければならぬのではないか、かように考えております。  しかしながら、現在、石川先生指摘のとおり、動力炉燃料事業団でございますか、こういったものが探鉱に従事されておりまして、確実にこの辺のところにこれだけの金をつぎ込めという御指摘があり、それについての政府内部の相談ができ上がりましたなれば、私どもといたしましては、そういった面についての手当てをいたしていくのは当然のことでございまして、これに対しまする努力を傾注するにいささかもちゅうちょするところはございません。ただ、先ほども科学技術庁のほうからも申し上げましたとおりでございまして、私どもは、原料の確保ということはもちろんでございまするけれども、同時に、この炉自体、原料をさらに復元をいたしていく炉自体に対しまする研究も、これはともに並行して進めていかなければならないわけでございまして、この辺につきましても十二分に科学技術庁のほうでもお考えをいただいておると思いまするし、私どもといたしましても密接に政府部内の連絡をとりながら、あやまちなきを期していきたいということを申し上げてみたいと思います。
  69. 石川次夫

    石川委員 炉の問題は、御承知のように新型転換炉あるいは高速増殖炉という非常に能率のいいものをつくらなければならないということでやっておりますけれども、これは海のものとも山のものともまだ見通しがつかない。これが完成すれば、より効率のいい熱源が得られるということは言えるのでありますけれども、それをいま期待するのは時期尚早だ。ことに高速増殖炉というものは世界じゅうどこでも取り組んでおりますけれども、まだ完成の域に達するのはほど遠いわけです。したがいまして、現状をもとにしてものを考えていかなければ取り返しのつかないことになるのではないかということを前提にしてお話を申し上げているのでありますけれども、そこで私のお伺いしたかったのは、何といいますか、責任感とかなんとかということではなくて、体制をどうするかということが問題なんです。政府が全体としてこれと取り組まなければならない。そういうことで、たとえば金属鉱物探鉱促進事業団というようなものが一応やることになっておるけれども、しかし、ここでは銅、鉛、亜鉛ということでもって手一ぱいというような実態ですね。したがって、これは動燃団だって全面的にやるといっても、ことしはわずかに一千万円しか予算がついておらないわけです。ほんの一千万ではとてもだめです。動燃団のやり得るのは、いろんな特殊の技術を持っておりますから、資料、情報の収集をしたり、あるいは技術的な援助をする、特に先駆的に探鉱をやってみるというふうなことはいいと思うのですけれども、それ以上のことを期待するのは非常にむずかしいのではないか。そうなれば、その中核になって責任をもってそれを推進するというのは、やはり通産省でなければならぬのじゃないかと私は思うのです。そういうふうな体制についてどうお考えになっておるか、この点をひとつお聞きしたいのです。
  70. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 御指摘の点は今後のウラン鉱開発についてのきわめて大切な事柄だと思います。私どもといたしましては、昨年三月の総合エネルギー調査会の原子力部会の中間報告に沿いまして、民間企業による探鉱開発というものを一そう促進するために、ウラン鉱を、ただいま御指摘のございました金属鉱物探鉱促進事業団の海外探鉱の融資対象鉱種に加えるということについて目下検討を加えておるところでございます。率直に申しまして、御指摘のように日本の鉱山会社並びに政府機関であります金属鉱物探鉱促進事業団、ともに銅その他の主要非鉄金属の自主開発の問題あるいは融資買鉱の関連等につきまして手一ぱいという感じのところはあるのでございます。具体的に申しますと、銅で申しますと、昭和五十年度に百万トンくらいのものが必要であるという需給想定に対しまして、安定的に確保できる見通しのついているものがまだ六割くらいしかないというようなことでございまして、この辺も先ほど次官から御答弁いただきましたように、今年以降私どもとしては精力的にやりたい、こう考えておる問題でございます。ウラン鉱につきましても、長期展望から申しまして、いまからやはり積極的な着手に乗り出したいという感じでございますが、鉱山会社自身が必ずしもまだ力がない、金属鉱物探鉱促進事業団の予算規模もまだ十分でないというところは御指摘のとおりでございますけれども、探鉱につきまして精一ぱいの施策を今後検討しますと同時に、その後に起きております開発問題につきましては、従来の非鉄金属も輸銀の資金を大幅に活用する、ウラン鉱につきましても、探鉱段階におきましては、金属鉱物探鉱促進事業団の開発段階では、輸銀あるいは場合によりましては経済協力基金というものを十二分に活用いたしまして、鉱山会社の海外におけるウラン鉱開発というものを支援いたしたいと考えております。その場合、銅でもそうでございますけれども、やはり最終的なユーザーとしての電力会社——鉱山会社はいまのところ非常にに非力でございますけれども、電力会社の資金量というようなものもその際十二分にひとつ活用さしていただくということで考えてまいりたい。ごく卑近なことでございますが、最近電気事業連合会のほうにもウラン鉱の専門家を私のほうであっせんいたしまして、担当として繰り込んでおります。そういうようなことで鉱山業界、電力業界の共同動作によりまして、いま御指摘のような大切な長期的な資源確保という問題に積極的に取り組みたいという所存でございます。
  71. 石川次夫

    石川委員 実は原子力協定のときに外務委員会で私も言ったことがあるのですけれども、これは決して荒唐無稽ではないと思うのです。世界の鉱業生産量は相当上がっているけれども、金の生産はそれに伴わない。したがって、金をキーカレンシーの基本とすることは間違いではないが、将来は濃縮ウランにすべきではないか、こういうふうな意見も一部に出ておるのです。私は、濃縮ウランを制するものは世界を制すると言っても決して過言ではないし、したがってこれは荒唐無稽の意見とは聞き流しができない重要性を持っておると思う。そういうようにウランというものは将来のきわめて重要な資源になっておる。  それから、いまおっしゃいました金属鉱物探鉱促進事業団は、銅、鉛、亜鉛で手一ぱいですよ。これだけで自給できない。そこでウランをやるといっても、なかなかそこまでは手が出ないというのが実態だと思う。しかし将来は、銅も鉛も亜鉛もなくてはなりませんから、きわめて重要でありますが、それ以上にウランだというのが世界の定説です。したがって、これは同じ事業団の中に突っ込んで、同じような性格でやって成功するようなものではないのではないか。たとえばオーストラリアあたりはゴールドラッシュに全部が殺到して、探鉱事業というものを各国ともやっておる。日本はきわめて立ちおくれておるというような状態なんで、この金属鉱物探鉱促進事業団の中に一つの項目としてつけ加えるという程度のことで問題の解決になるかという点は、私は非常に疑問だと思う。これは特別にユーザーとしての電力会社があるわけですから、そういうものを含めての別な組織をやはりつくっていかなければならぬようなところに来ておるのではなかろうか。これは私個人の考えです。それがどういう形でいいかということは検討はいたしておりませんけれども、この中の一項目にするということではなしにひとつお考えを願いたい、こういう気がいたします。それで、このまま放置しておけばとんでもないことになる。政府として重大な問題でありますから、よほど腹を据えて積極的に乗り出さなければならぬ、こういう性格を持っておるのではないかということを申し上げておく。  最後に、ドイツあたりはやはり自分のところでウラン鉱を持っておりません。持っておりませんので、将来の計画を一〇〇%にした場合に、四〇%は自分で探鉱して確保する、あとの四〇%は何とか長期安定購入契約というもので外国から入れるようにする、あとの二〇%はスポット購入でもってそのつど何とか入れるようにするということで、少なくとも四割は将来の目標として自分で確保するという体制をつくろうということで非常に真剣に取り組んでおるわけです。日本は全然それがない。まるであなたにおまかせ、原子力協定があるからアメリカで何とかしてくれるだろうということで終わっておる。きわめて自主性のない体制なんです。したがって将来は、日本の需要量に適応して、そのうち何割までは日本で探鉱する、こういう目標を確立しないと政府としての体制が出てこないのではないか、こう思うのですが、この点どうお考えになりますか。
  72. 藤尾正行

    ○藤尾政府委員 仰せのとおりだと思いますし、また私どもといたしましてはそういう目標を掲げてやってまいりたい。必ずやらせていただきたい。
  73. 石川次夫

    石川委員 これは大臣が出ておらないので、これ以上の詰めた質問を取りやめにいたしますけれども、いま私が申し上げましたように、現在の進捗状況というものはきわめて微々たるものであって、将来の需要にとうてい追いつかないということが一つ。アメリカでは完全に日本に対して供給をするという責任体制にはないということ、そして日本の体制が一体どうなっておるのかというこの体制が全然できておらないし、決意もまだ全然きまっておらない。したがって将来については、目標を確立して、必ずこれだけは日本の国で原鉱石は確保する、こういう体制をつくらなければ、とんでもない悔いを千載に残すことになるのではないかという点で、よほど意欲的な政策転換をここではかってもらわなければならないということをお願いをして、その上に、きょうのお話は私はきわめて重要な問題だと思うので、これは緊急を要する課題だと思うので、来年度の予算というものを待たずに、いまからでもすぐ始められるものは始めるというような気魄でやってもらわぬととんでもないことになると思うので、通産大臣によくお話しいただいて、また日をあらためて通産大臣からまとめた答弁を願いたい、こう思いますから、よろしくお願いいたします。
  74. 浦野幸男

    浦野委員長代理 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  75. 浦野幸男

    浦野委員長代理 速記を始めて。中村重光君。
  76. 中村重光

    中村(重)委員 厚生省にお尋ねをいたしますが、三月二十七日付で「カドミウムによる環境汚染に関する厚生省の見解と今後の対策」という資料を配っていただきましたですね。いままでの調査の結果、カドミウムによるところの汚染というのはないという結論に達したということになりますか。いわゆる人体に対する影響はなかったということですか。それから農作物その他、この資料によると、川であるとか井戸であるとか、その他相当多岐にわたった調査をやっておるようですが、その結果はどういうことであるか。
  77. 橋本道夫

    橋本説明員 三月二十七日に厚生省が発表いたしました「カドミウムによる環境汚染に関する見解と今後の対策」ということの要約を申し上げますと、私どもの研究班が三つございまして、一つは環境汚染についての研究班であります。その研究班におきましては、三つの県にわたりまして河川流域のカドミウムの汚染ということについての調査をいたしました。もう一つの研究班は、食品につきましての研究班でございます。もう一つの研究班は、水道の水につきましての研究班でございます。  厚生省はこの三つの結果を総括いたしまして出したわけでございますが、そのほか厚生省といたしまして、二つの県につきましてはすでに県におきましてその取りまとめた健康調査の結果というのを一応承知をしながらやっておったという状態でございます。  汚染があったという点につきましては、この三つにつきましては、普通の場所以上にカドミウムの汚染はあったということでございますが、汚染につきましては、一々この中でこまかく水、土壌、あるいは農作物に分けて出してございます。  それから人体についての影響はどうであるかという点でございますが、この点につきましては、私どもの研究班の成績を基礎にいたしまして、そしてどれほどこのカドミウムを食べておるかということを私どもが推定をいたしたわけでございます。推定のしかたにつきましては、食品の研究班の先生方に目を通していただいておりますが、それによりますと、一般のカドミウムの汚染のない地域よりも相当多量にカドミウムを食べておるという事実ははっきりしております。そういうことでございまして、この影響という点につきましては、現在の段階で直ちに骨に障害を生じてくるようなイタイイタイ病の発病がすぐあるというようには考えられないが、ただ、これはそういうことだけでは放置できませんので、要観察といたしまして、継続的に観察をして、なるべく早期にカドミウムの環境汚染による人体の影響の鑑別をいたして、もしもあるとすればこれに対する措置をとる、そういうようなやり方をいたしております。
  78. 中村重光

    中村(重)委員 この資料によると、すべて県費で実施したということになっておるのですね。これほど重大な問題を県費でもって、また県の責任で調査をやらせたということについては、厚生省は適当だというふうに考えておられますか。
  79. 橋本道夫

    橋本説明員 厚生省の見解といたしましては、公害調査研究委託費の研究費のワクがございまして、その中で、非常に不十分な研究費の中でいろいろのことをやるわけでございます。  そこで、私どもは四十三年度の段階におきましては、もっぱら環境汚染と食品と水に集中するということでございまして、人体影響の面におきましては、この三つの地域で私どもの研究費でやるというところまでの研究ができませんでしたので、県のほうで積極的にみずから調査をするということをおやりになったわけでございます。  ただ、すでに問題の起こっておりますイタイイタイ病の地域の富山県におきましては、私ども相当多額の研究費を入れまして、医療あるいは予防上の研究をいたしておるという事実はございます。
  80. 中村重光

    中村(重)委員 人の生命に関する問題は、私は量の問題ではないと思うのです。なるほど富山のイタイイタイ病の発生状況というものは、対馬あるいはその他の県と比較をいたしました場合に、非常に規模が大きい、被害も大きいわけですね。しかし冨山のイタイイタイ病のそうした状況から考えてみましても、長崎県の対馬にいたしましても、あるいは群馬にいたしましても、宮城にいたしましても、それが量的に富山ほどなかったにいたしましても、生命に及ぼす影響ということを考えてみるならば、厚生省がただ手が伸びなかった、したがって県独自で調査をやる、それに期待をし、その結果を待つということについては、責任ある態度だと私は考えないのだが、その点はどうですか。
  81. 橋本道夫

    橋本説明員 いま先生のおっしゃいますように、厚生省が十分に研究費を持って自由にどんどん大幅にできるということが一番理想的だとは思っております。ただ私どもは経費のほうで制約がございます。  それからもう一点は、やはりどういう観点から人体の影響につきましてのこまかな精査をするかということの問題もございますが、四十三年度におきましては、全くこの公害調査研究委託費のワクの中でやらざるを得ない、こういうことに原因しております。
  82. 中村重光

    中村(重)委員 あなたは説明員だから、それ以上の答弁をあなたに求めることはまあ無理だろうと思うのだけれども、それにしても私はあなたに出席を要求したのではないのであって、十分な責任をもって答弁し得る者に出席してもらいたいという要求をしたところが、あなたが出て来られた。そうした事務的な答弁以外にはできないだろうと思っておりますが、だれが見ても、十分な研究費というものがあって、それを使ってやるならば、厚生省としても独自の責任のある調査ができるのだけれども、どうも限られた研究費の中ではいまやっていること以上にできない、関係県の調査に依存する以外にないということでは、これは私は納得できないのですよ。しかも私はこのことについていま初めて申し上げているのではないのです。いままでも、県が機械を買う、そういう場合に三分の一の補助をやっているのではだめだ、もっと研究費を投じて積極的におやりなさいという私の質問指摘に対しては、厚生大臣といたしましてもあるいは関係局長にいたしましても、御指摘ごもっともだ、そういうことでやりますということを言っているのですよ。ところが、いまあなたの率直な実際やっていることについてのお答えを聞いて、私どもがいままで要求をし、それに対してそのとおりやるといったような答弁が単なる答弁であったということがここで明らかになったわけです。きわめて重大な問題であると思うのです。これに対してあなたにまた答えろといっても同じような答え以外に得られないから、あなたは担当課長ですから、私どもたとえば予算委員会の分科会等において質問した際に御出席になっておられたんだから、そのときの政府答弁というものをあなたもお聞きになっておられたんだと思うのだけれども、どうなんですか、そのままになっているのですか。
  83. 橋本道夫

    橋本説明員 いまの御指摘のありました点は、私ども全く先生のおっしゃるとおりの問題であると思います。私どもも、もっともっと拡大するという努力をさらにいたして、これに対して対応いたしたいと思いますが、公害の問題は非常に急速にどんどん広がってまいりまして、カドミウムとか水銀とかいいますものは非常に金のかかることでございまして、そういうところで、予算の制約のワクの中で一挙にその理想どおり進めなかったというような事情があったという点だけは、私どもの事務的な言いわけになりますが、ひとつ御了承をお願いいたします。
  84. 中村重光

    中村(重)委員 これは、いまのような答弁を国民が聞いたら、ほんとうに非常な憤りを感ずるだろうと私は思うのですよ。金がないからできないということで済まされますか。しかもいまあなたは、調査の結果、県の報告によってお答えになったと思うのだけれども、具体的には対馬の問題一つを取り上げてみるのですが、県で審査委員会をつくって、そして四十四人の精密検査をやった、その結果は、骨の変化を調べたところが、重金属障害の疑いが持たれている。さらにそれをしぼって三十八人に対して検査をしてみたわけですね。ところが、なるほど尿その他に異常はあるのだけれども、これが富山のイタイイタイ病というものとは同じようなものではないのではないか、だが、しかし、さらに調査を進めていかなければならないということで、お答えもそうであったのですね。新聞報道等もそのとおりになっておるわけです。ところが県の結論というものが出た。その結果は、これはカドミウムに侵されているいわゆるイタイイタイ病ということはいえないのだということ、そういう結論が出ているのですね。しかしこれも最終結論ではない。なおこれからも調査を進めていこうということを言っておるわけなんです。しかしあなたのほうでは一応ここで、現段階においては最終結論みたいなことをこの資料の中では言っているのですが、ただ現行法のもとではやはり不十分だという考え方であろうと思うのです。   〔浦野委員長代理退席、宇野委員長代理着席〕 恒久対策を確立するように努力をしなければならない、その一環としてカドミウムなど特定有毒物質による環境汚染防止に制度化を必要とすると考えられるので、その実現のため所要の検討を進めたい、こういうことを言っているのですが、これは具体的にどうしようと考えておられるのか。
  85. 橋本道夫

    橋本説明員 いま先生から御質問のございましたこの特定有毒物質の環境汚染の防止に関する法律をつくるには具体的にどういうことを考えているかということにつきましては、私どもは昨年の夏、水銀についての暫定対策を出しまして、また今回カドミウムについての暫定対策の考え方というものを出しております。ここにございます暫定対策の考え方というものをどのような形で法律的な条項としてつくっていくかということが基本であると考えております。ただ、その中には、すでに現在の法規で一部は実施可能なものもございまして、水質保全法であるとか鉱山保安法であるとか、そういうものもございますので、そういうもので対処すべき点と新しい法律とをどういうぐあいに調整をするかという点は、今後法制化の問題ではいろいろ論議を重ねる必要があるように思っておりますが、従来の規制法だけではどうしても対処のできない面があるということを私どもは考えて、このような法律の制度化が将来必要であるということを申しているわけでございます。またそれをいたしますには、相当かちっとした知識がなければむずかしい点がいろいろございますので、その点は本格対策を確立するということのためにできるだけ早期にそれを固めようということで、四十四年度は従来以上そのカドミウムの問題に、ほかのものを切ってまでも集中して、対策の制度化ということに最大の努力をしたい、かように考えておる次第でございます。
  86. 中村重光

    中村(重)委員 そうすると、これはそうした考え方だけではなくて、鉱山保安法は通産省の関係になる。水質保全法経済企画庁の関係になりますね。これらの法律では不十分であるということで、厚生省独自にいわゆる恒久対策という形で立法措置を考えていこうとしておるのか、あるいは従来とも通産省あるいは経済企画庁その他の関係省とカドミウムの調査については相協力してやってきたのでございましょうから、やはりそれらの点に対して通産省あるいは経済企画庁その他関係省との話し合いということを進めておられるのかどうか、その点はどうですか。
  87. 橋本道夫

    橋本説明員 法案をつくるという観点からはまだ進めておりません。ただ、水銀暫定対策という問題と、先ほど申しましたカドミウムの環境汚染暫定対策及び私どもの調査結果のすべてにつきましては、先生の御指摘のあった経済企画庁水質保全の関係のほうにも、こちらから持参し、話もしております。またそれに対して経済企画庁のほうでも、すでにメチル水銀などの問題について、経企庁としてとれる範囲の措置をとられたというふうに私ども存じております。また通産省のほうに対しましても、私ども鉱山局に出向きまして、私どもの資料をすべて差し上げまして、そして両省でいろいろ共同して検討を進めるということをいたしております。また農林省とも私どものデータを交換をして、そして今後協力してやっていくということになっております。法案をどのようにするかということは、まだそこの段階まで各省と論議ができるというところまでは入っておりません。
  88. 中村重光

    中村(重)委員 橋本鉱山保安局長お尋ねいたしますが、あなたも長崎県の対馬の問題だけではなくて、鉱山の保安の問題については熱意をもって取り組んできておられるわけですが、現行法のもとでは十分な対策を立て得ないというようにお考えになっておられるわけですか。
  89. 橋本徳男

    橋本政府委員 現在の鉱山保安法のたてまえは、一つにはいわゆる災害予防という問題があり、もう一つはこういった公害の予防、この二つの柱で仕組まれておりまして、おそらく二つを共通いたしまして必要なる指示あるいは必要なる命令あるいは施設の改善、こういったものがあらゆる角度からできるようになっておりますし、これを聞かない場合のいろいろな罰則措置というふうなものも仕組まれておりますので、現在予想されますいろいろカドミウムなり水銀なりといったような問題に対処するいわゆる予防的見地からの法的手段としては充足されておるというふうには考えております。
  90. 中村重光

    中村(重)委員 調査の結果、現在のところ富山のイタイイタイ病と同一のものではないという結論を出しておるようでございますけれども、九日の参議院における参考人の意見を聞いておられるようでございますが、その中で、出席された参考人からは、患者はすでに発生をしておるということを警告をしておるようでございます。この点に対しては、いままでの調査結果ということからかんがみて、厚生省はどのようにお考えになっておられますか。
  91. 橋本道夫

    橋本説明員 参議院の参考人の証言を、私もずっと初めから終わりまで出席いたしまして詳細に伺いました。その問題について二つございます。  一つは、厚生省が調査をする以前において、昭和三十六、七年だと思うのですが、萩野先生と小林先生と、お二人の先生が現地に行かれたときに、一人の患者さんについては萩野さんが見られた。それからもう一人の患者さんについてはレントゲンのフィルムを、その人の主治医の人に、死んでから見せてもらって、いろいろな話を聞いて、あれは患者だったんだろうという、この二人については、萩野先生は、自分は臨床家としてそのようなイタイイタイ病で死んだのだと言えるということをおっしゃっておられる問題があるということでございます。この点につきましては、現在の段階では、その患者さんはすでに死亡して、いないわけでございまして、私どもも参議院のときに申し上げましたが、一人の人が何の病気で死んだのかという点につきましては、やはり医師としての診断という行為と、それに基づくカルテと、それに対する死亡診断書というものがそろって、そして初めてどういうぐあいにそれをまた扱うかという問題が次の問題として出てくることだというように考えております。私どものほうには、現在の段階では、それだけのすべてのものがそろえられておりません。萩野先生にお伺いしましたところ、自分の手帳にメモがあるという程度のものでございまして、これは医師法によって、やはり患者を診断し、患者がある病気であるということを言い切るには、それだけのものがそろっていなければならない、こういうように考えております。私どもの今回の判断は、イタイイタイ病の専門の方が、そのような患者がいたということをおっしゃっておられるということを私どもの判断の中に含めております。その意味におきまして、継続的に観察するということを言っておるわけでございます。  それからもう一つの問題点といたしましては、そこの地域に腎臓障害の所見のある者が見られるという点でございます。これは糖とたん白の両方陽性の者がいるということでございますが、この段階におきましては、はたしてこれがカドミウムの汚染によるものかどうかという点につきましては、現在の鑑別診断の段階では、まだ完全にそうだと言い切ることは非常にむずかしい問題がいろいろあるやに私どもは伺っております。  この二つの問題につきましては、本年五月の、純粋の医学研究集会を開いて、そこで大方の専門家の合意がどこまで達するかということを基本にして私どもは厚生省としての考え方を整理いたしたいと思っておりまして、これにつきましては、本年五月中旬ごろの医学研究集会の中で、それらの主張される先生方がみずからの責任においてお持ちになった資料を、多くの専門家と論議をしながら、どの辺の合意に達するかということを基本にして厚生省としては最終的な判断、本年の段階における判断を下したい、そういうふうに思っております。
  92. 中村重光

    中村(重)委員 そうすると、あなたのほうで調査結果という形で、完全な結論ではない——いま続いて調査しようというのですが、一応の結論ということには言えると思うのですよ。そして、将来は関係各省と協議をして、そうして恒久的な立法措置を講じていこうということですね。それはカドミウムの対策としてのことですね。ところが、現在の長崎県であるとかあるいは群馬であるとか宮城であるとかという、ここにおける調査というものは一応これでもう打ち切りという形をとるわけですか。あるいは当該の県だけがやったんだが、これではやはり十分とは言えないからということで、あらためて予算要求等をやり、あるいはその他いまお答えになりましたような、そうした患者に直接接した人たちが持っている貴重な資料等をもらって、さらに当該の地域における調査研究を進めていこうとする考え方を持っておられるのか、その点はどうですか。
  93. 橋本道夫

    橋本説明員 厚生省としましては、継続観察ということを申しておるわけでございまして、私どもは県と密接に協力をしながら、国としてもできるだけのことをいたしたいと思っております。特に国としての一番やるべきことは、鑑別診断の基準を確立するということだと思っておりますので、この三つの地域につきましてのそのような点につきまして、この鑑別診断の基準等の問題につきましては全く国として責任を持ってやらなければならないことだ、そういうように思っております。  ただ、この問題は、地元のいまの判断を疑っているということではございません。現在までのものを、三つの領域のデータを全部集めてみて、大方の専門家がどの辺の合意に達するかということで一応のケリをつけたいということでございまして、調査につきましては私ども極力バックアップをしたいと思っております。
  94. 中村重光

    中村(重)委員 継続観察をやるということですが、それは四十四年度はおやりになりますか。
  95. 橋本道夫

    橋本説明員 四十四年度にいたします。
  96. 中村重光

    中村(重)委員 そこで、橋本鉱山保安局長お尋ねをいたしますが、この原因が何かということです。これはこの間、正式な委員会でなかったと思うのですが、長崎県の東邦亜鉛対州鉱業所の保安設備は完全だという見解をあなたは持っていらっしゃるようです。ところが、私どもこれは調査をいたしたわけでございますが、経営者、鉱業所といたしましても非常に真剣にこの問題に対処していこうという熱意は見受けられたわけです。だがしかし、見ただけでこれが完全であるか完全でないかということは言えない。あなたが設備は全く完全だという確信を持っておられるところは、どういうところにあるのでございますか。
  97. 橋本徳男

    橋本政府委員 私が完全だと申しますのは、過去の問題はいろいろあると思いますが、一昨年以来、この鉱業所に対しまして、保安法によりましていろいろ設備の改善を指示してまいりました。その結果、昨年八月、厚生省でお調べいただきましたデータによりましても、鉱山の鉱業所から出るものは〇・〇〇三ないし〇・〇〇五という、いわゆる一般的基準といわれます〇・〇一をはるかに下回った排水になっておるというふうなことでございまして、現段階におきましてはこの三地域におきまして最も改善された状態になっておるという点からいたしまして完全である。しかもまたいろいろ調査を進めました結果、単なる鉱山からの廃液だけではなしに、その周辺に積まれておりまするいろいろな堆積場、これは現在の鉱業権者の責任に帰するものでありますが、堆積場から出ますいろんないわゆる浸透水、こういったものにつきましても、これを処理施設に導入するというふうな施設をつくりまして、外に漏れないような状態にいたしたわけでございます。そういった結果から、いろんな自動添加の装置をつくるとかといったようなこともいたしまして、〇・〇〇三ないし〇・〇〇五というふうなところまで到達いたしましたので、万全であるというふうに考えております。
  98. 中村重光

    中村(重)委員 この問題が発生いたしましてから、特に保安設備として国として講じられた施策、あるいは当該鉱業所がこの保安設備のために投じた費用、それらの点はどういうことになっていますか。
  99. 橋本徳男

    橋本政府委員 施設につきましては、ここで一番問題になりますのは、いろんなところからの廃液が流れるということがこういったものの処理上きわめて不完全であるということから、基本的にはそういったものを集中処理をするというふうな指示をいたしまして、その施設を完成いたし、それからまたいわゆる中和装置というふうなものをもっと完ぺきを期したいというふうなことでございまして、この会社が講じましたこういった施設に要した資金というものは、四十二年度で五千八百万円、それから四十三年度で四千九百万円、さらに本四十四年度におきまして一応予定されておるものといたしましては三千万円というふうになっております。これは現段階において十分ではございますが、あとの管理その他の関係もございますので、本年度も引き続いてそういった管理体制をさらに強化していくというふうなことで三千万円を予定しております。
  100. 中村重光

    中村(重)委員 引き続いて管理体制を強化していこうということですが、具体的にどういうことを考えておりますか。
  101. 橋本徳男

    橋本政府委員 こういったいろいろな施設関係といたしましては、たとえてみますれば、石灰の投入装置というふうな自動的に行なわれる装置はつくっておりますが、それが万一故障した場合に直ちにそれが切りかえられるといったようなことを含めまして、施設をこれからさらに改善していく。それからさらに残されておる堆積場、いわゆる現在の鉱業権者がやっておりまする堆積場は一応処理はできておりまするが、さらにそういった堆積場につきまして、具体的にはより補強をするというような形においての補強工事をやっていくということを予定しておるようでございます。
  102. 中村重光

    中村(重)委員 いまあなたのお答えの中で、現在における設備というものは完全であると言い切ることができるかどうか、ともかくさらに管理体制を強めていこうということで具体的な考え方としてのことをお述べになったわけですが、ところが過去の堆積からみということがお答えの中に出ましたね。それは御承知のとおりに、現在は東邦亜鉛ですが、現在生産している鉱物というのは、かつての徳川時代からのものですから、堆積されておるからみであろうと思うのです。ところがその上には住宅が建ち並んでいるわけですが、それに原因があるということになってくると、私はたいへんな問題だと思うのです。どういう方法でやるか。現在の鉱業所側には責任というものがあるとは言えない、そうなってくると、国がその責任を負わなければ責任を負うものはいないのではないか。予算委員会の分科会で、私は厚生大臣にそのことについてお尋ねをいたしたわけですが、国として確かにこれは責任を負わなければならないという点があるのではないか、十分研究し善処してまいりたい——ちょっとニュアンスは違うかもしれませんが、申し上げるような意味のお答えがあったわけです。ともかく被害者に迷惑をかけないようにしなければならぬというお答えがあったわけです。それらに対する研究というものを進められておるのではないか、他にもそれらの例もあろうと思うのでございますが、この場合の国の責任はどういう形でとられるのか、お答え願いたいと思います。
  103. 橋本徳男

    橋本政府委員 先生おっしゃいますように、この部落におきましては、ものの本によりますれば一三〇〇年から一四八六年ないし一六五〇年から一七三〇年という、いわゆる徳川時代ないしはそれより前に操業をやっておりまして、それの鉱滓やズリというものが点々と存在しております。そして一部におきましては、先生おっしゃいますように、その上に家が建っておる、それに雨水が浸透する、その結果いろいろな障害が生ずるというふうなことも当然予想されることでございますが、いずれにいたしましても、現在の鉱業権のとうてい及ばない問題でございまして、これを直ちに東邦亜鉛に責任を転嫁するということは困難でございます。したがいまして、先般来そういった徳川時代ないしはそれ以前のものにつきましては、いかにしてやっていくかということを研究して、監督局、長崎県でまず一応討議をしていただきまして、長崎県がひとつ中心になって、これに対していかなる施設をやることが適当であるか、また場合によりますれば、そこにおる住民の方の移転等を考える必要があるのではないかというふうなことを含めまして案をつくってほしい、おっしゃいますように、とうてい長崎県だけでは処理のできない問題もあるであろうから、案ができれば、当然それは建設省とか、そういったほうに上がってくると思いますので、そういう際にはわれわれも十分建設省のほうにその旨を伝える、側面的協力は惜しまないというふうな態度で、いま現地におきましてどうすることが最も適当であるかというふうな案を考えていただくことにしておる次第でございます。
  104. 中村重光

    中村(重)委員 それじゃ大臣がお見えでございますから……。  実は大臣、私はいま長崎県あるいは群馬、宮城、富山のイタイイタイ病と同じではないかと考えられるカドミウムの汚染の問題についてお尋ねをしておったわけですが、一応の結論は出たようでございますけれども、これは将来において継続観察をやらなければならないという性質のものだということは、厚生省もはっきりお認めになっておる。それから長崎県の対馬の場合におきましては、現在の鉱業所の保安設備というものは完全であると言い切れるかどうかは別でございますが、引き続き管理体制を強めていこうということについて局長からもお話があったわけです。ところが、過去千年あるいは千数百年前からのからみの堆積というものにもこれは原因があるのではないかという問題等がある。そうなってまいりますと、国の責任というようなものが当然出てこなければいけない。予算委員会の分科会で斎藤厚生大臣にもお尋ねをし、見解を伺ったのですが、厚生大臣としても、確かにこれは国として責任をとるべきものはとるということで、被害者には迷惑をかけないようにしなければならない、十分善処していくという意味の答弁があったわけですから、厚生大臣その他関係大臣ともお話し合いをしていただきたい。調査も現段階ではともかく県まかせということなんですよ。そういう無責任なことであってはならぬと思うのです。富山の場合は非常に患者も多かった、規模も大きかったので、影響も大きいので国としては全力を傾けた。その他のところは患者も少ないし規模も小さいということで、その関係県まかせということであってはいかぬと私はいま言っておるのです。時間の関係もありますから簡単でけっこうでございますけれども、十分ひとつ関係大臣と話し合って強力に対策を講じていくということをしていただきたいと思うのですが、その点に対する大臣のお答えを聞かせていただきたい。
  105. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私どもの管轄に属する鉱業所の公害防止施設につきましては、引き続き厳重に措置をしてまいっておりますけれども、なお若干強化をする必要があるところもありますので、それらは十分配意してまいりたいと思います。ただ、いま御指摘のように、通産省だけではできないで関係各省の御協力を得なければならない部面につきまして、第一次的に地元の県の御調査ないしは御計画をお願いしてありますけれども、仰せのようにそれにまかせきるということはいけないわけでございまして、関係各省と緊密な連絡をとりまして、御要望に沿うように措置してまいる所存でございます。
  106. 中村重光

    中村(重)委員 日中の覚書貿易の調印に関連してお尋ねをいたしますが、御承知のとおり古井団長が中心になりまして、どうにか調印にこぎつけた。だが、四十三年度は一億一千万ドル程度の貿易実績であった、それが四十四年度は七千万ドル前後であろう、こういわれ、大きく前進をしていかなければならないのに後退をするということになってまいりました。共同コミュニケを発表いたしておるのでございますが、時間の関係がございますから、私から多く申し上げませんが、いずれにいたしましても、いままでのような政経分離であるという考え方はもう通用しない。これは古井さんが帰ってまいりまして、談話の中にも痛烈に現在の政府の、佐藤内閣の施策というものを批判をいたしておるわけであります。それに対するところの自民党内における批判というものも出ておるようでございますけれども、古井団長は、コミュニケに対するところの批判をするということ自体が、これはもう政経分離ではなくて不分離である、政経不可分であるということを裏書きしておるのではないかということ等も実は言っているわけであります。これから先の日中貿易ということに対して通産大臣はどのような姿勢をもって対処していこうとお考えになっておられるか。また、古井団長によって調印されたこの覚書貿易調印の中身について大臣としての考え方をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  107. 大平正芳

    ○大平国務大臣 覚書貿易交渉が、古井先生はじめといたしましてミッションのメンバーの皆さんの御努力によりまして、どうにか継続の命脈を保つことができたこと、御一行の御労苦に対しまして深厚な謝意を表したいと思います。この交渉の経緯、内容等につきまして、私も私の立場で交渉の実際に当たられた方々から御聴取申し上げる機会を持ちたいと思っておるのでございますけれども、御案内のように、政府のほうは、最近外国の公賓が多く参りまして、まだその時間を持ち得ていないのでございますが、なるべく近い機会にお話を伺いたいと思っております。  それから御指摘のように、今度の覚書方式による貿易量が減少したと伝えられておりますが、それがどういう原因によるのか、そのあたりは十分究明してみようと思っておりますが、御案内のように、この方式は限定された品目の取引でございます。この方式で取り上げられた物資の中国の需給事情、それから日本の需給事情、そういったものから、当初からある程度の減額を見るのでないかという予想は一応持っておったわけでございますけれども、なお詳細のことにつきましては当事者から十分お話を聞いてみたいと考えております。  それから今後の対処の方針でございますが、新聞に出ておりまするコミュニケを読みましても、政経分離の原則というものに対してきびしい批判が見られるようでございます。政治と経済はもともと可分のものであるなどということは世界に通用しないことであると思います。もともと不可分のものだと思うのでございまして、ただ慣用的に政経分離の原則と言うておりますゆえんのものは、私の理解をもってすれば、国交のない国といえども貿易はするのだという政治的な態度を言っておるものと私は理解しておるのでございまして、私といえども政治と経済が可分であるなどという幼稚なことを考えておるわけでは決してございませんで、これは用語上の問題であり、そういう慣用語の使用がいたずらに論議を呼んでおるということではないかと心配をいたしておるのでございますが、政経分離の原則というのは、そういう国交のない地域、国との間も貿易関係は持ちます、そういうことを表現した用語上の選択であったと理解をいたしております。  それから今後の方針でございますが、たびたび申し上げておりますように、いろいろの制約が具体的な政策を実行する場合には伴うのが例でございますけれども、日中間の貿易におきましては、国交が回復されていないという越えがたい制約があるわけでございます。しかしながら、そういう制約にもかかわりませず、私どもとしては貿易を拡大の方向に持っていくという意欲は十分持っておるわけでございまして、今後も日中間の貿易の拡大には与えられた条件のもとでベストを尽くしていくという基本的な姿勢は変えないつもりでございます。それから同時に、そういう制約された条件のもとにあればあるほど、私どもとしては、より一そう熱心に問題の処理に真実性を持って当たらなければならないと考えておる次第でございます。
  108. 中村重光

    中村(重)委員 いま大臣のお答えになった理念というのですか、そういうことで進めていくことになってまいりますと、これは中国封じ込め政策ということが具体的には改められてこなければならない。同時にいまのお答えをどう実行面で具現していくかということが一番重要な問題点になってくるのではないでしょうか。いま大臣が熱意を持っておる、こうおっしゃる。ところが現実には、貿易の量にいたしましても、一九六六年をピークにいたしまして、ずっと減退をしてきておるわけですね。そうしてせっかく調印はしたけれども、七千万ドル程度だということになる、これはピーク時の端数という程度にしかならないということになってまいります。だからこれを大臣のお答えのようなことで実際面で具現をしていくということになってまいりますれば、障害を除去していく、それは具体的には輸銀の使用ということを認めることにおいての延べ払い輸出をしていかなければならないということ、その他いろいろ問題はあるわけですけれども、何回も申し上げるより、時間の関係もございますから、一つ一つ例証をあげて私は申し上げませんが、この障害になっておるものを取り除くのか取り除かないのかということです。いま大臣が、いままでの方針を変えないのだ、ともかく国交のない国といえども貿易は進めていかなければならないのだ、いわゆる政経分離というのはそういうようなことであったので、ともかくそうした実績をずっと積み重ねていくことにおいて日中友好親善をはかっていこうというような考え方、そして国交回復までいかなければならないのだということがおそらく大臣の理念であろう、私はこう思うわけですが、それならばやはり勇断をもって現在の障害を除去していかなければなりません。そのことに対しては、大臣はどのようにお考えになりますか。
  109. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほど申しましたように、日中間の貿易には越えがたい障壁、政治的な障壁があるのでございます。この政治的な障壁を取り除くという問題は、政府全体の仕事でございまして、私の所管をこえた問題でございます。私といたしましては、先ほど御答弁申し上げたとおり、そういう制約のもとにありながらも、積極的に貿易拡大の道を探求していくという姿勢をとる責任があると考えておるわけでございます。それで、いま御指摘の、国交の回復というような問題は非常に高次元の政治問題になるわけでございますが、輸出入銀行の信用を供与するということについてどうかということになりますと、輸出入金融は確かに私どもが管掌しておることでございますから、形の上では私どもの影響力が及び得る政策領域でございます。ところが、この日中貿易に輸出入銀行の信用を供与するという問題は、この前にも中村委員の御質疑に私がお答え申し上げましたように、多分に政治的な性格を持った問題と深く関連をしておるということをお答え申し上げたのでございまして、政府はそういう状況を踏まえて、諸般の事情を考慮しながらケース・バイ・ケースで対処してまいりますということをお答えする以外に、適切なことばが見当たらない、そういう状況でございます。したがって、いま直ちに輸出入銀行の信用供与の道を切り開いてまいりますというような、非常に明快な御答弁ができないのを私は非常に残念に思うのでございます。しかしながら、先ほど申しましたように、ものごとは何事によらず誠心誠意やらなければならぬわけでございますから、政治的な理由で曲げるというようなことは、私のほうから進んでやっちゃいけないと思うのでございます。したがって、問題の食肉輸入の問題にいたしましても、また中国における展示会の問題にいたしましても、いろんな問題がございましたけれども、何とかそれを軌道に乗せて、貿易拡大につながるような状況にしなければならぬと、精一ぱい努力いたしたつもりでございます。したがって、食肉輸入問題も、話が断絶したわけではなくて、これからさらに引き続いて打開の道を探求する道があると私は考えておるのでございまして、いろんな制約があり、しかもそれは政治的な性格のものであるという状況ではございますけれども、そういうふうにいたしまして、できるだけ拡大の道を探求することにおいて懸命に今後とも実践してまいる決意でございます。
  110. 中村重光

    中村(重)委員 それでは時間が参りましたからあと一問でやめますが、いずれにいたしましても、大臣、あなたがみずからの分野の中で努力をしてこられた、また今後とも最大限に努力をしていこうという熱意を持ってきている。食肉輸入の問題も、これはいまお答えのとおりですね。そういうことがはっきりしておる中で、今度古井団長の覚書貿易というものの調印がなされた。そして政経不可分ということを共同コミュニケの中ではっきり確認をしてきているわけです。だから、いままでのようなあり方ではだめなんだということです。だから、いまのあなたの熱意で、あなたの分野の中でも最大限に改善されていかなければならない。いま直ちに輸銀の使用によるところの延べ払い輸出をすることはできないのだ、こう言っても、それではもう日中間の貿易を促進する、改善をするということにはならないと思う。しかも輸銀というものは民間ベースであるということははっきりしていることです。ケース・バイ・ケースの問題にいたしましても、いままで言ってこられた。ところが、ケース・バイ・ケースと言うけれども、これを言い出してからもうおそらく三、四年になります。一件だって延べ払い輸出が輸銀使用においてなされた実績がないわけです。それではいけない。そういう答弁では委員会においても十分納得させることにはならぬと思う。政経分離の問題にいたしましても、いまあなたは政経分離とはこういうことだとおっしゃるけれども、あなたがそう考えることだけでは問題の解決にならないのですね、具体的なものが出てこないと。そのことについていま一度、これからどう対処していくのかということについて、お答えを願いたいと思います。
  111. 大平正芳

    ○大平国務大臣 御指摘のように、足踏みをした状態がここ何年も続いておるわけでございまして、まだ一向に根本的な打開の曙光が見えていないという状況でございます。あなたがもどかしく思われるのもよく理解できます。しかし、日中間の問題は、たいへん奥行きが広くて、根が深くて、簡単に割り切るにはあまりにもウエーティな問題でございますので、いまの段階で、御要請がございましたように、具体的にここはこうするということができるような熟した状態でないことを、私はたいへん申しわけなく存ずるのでございますが、事は国会のやり取りでございますから、非常に責任のあることを申し上げねばならぬわけでございます。そういう立場において、再度の御要求でございますけれども、先ほどの御答弁を繰り返すようになって恐縮でございますけれども、与えられた条件の中で最善を尽くします。そして与えられた条件をどうほぐしていくかという政府全体の背負った問題につきましては、一政治家といたしまして、また一閣僚といたしまして、私は私なりの努力を傾ける決意でございます。
  112. 中村重光

    中村(重)委員 外務省にせっかく見えていただきましたが、時間がありませんから、通産省も同じですが、あとで文書で御回答願いたいと存じます。  長崎県の厳原において、韓国との小型船による貿易が行なわれている。ところが、福岡駐在の韓国領事がこれを妨害して、合法的に行なわれている貿易が事実上断絶状態におちいっているという陳情書も実は私はもらっているのですが、これは通産省その他関係省にもこの陳情書がきているのです。合法的に船員手帳にいたしましても出港証明にいたしましても出ているものが、どうして当該領事によって妨害をされるのか、これをひとつ調査して御報告願いたい。私は決算委員会でこの問題を取り上げたことがあるのですが、そのようなことのないように努力をするというお答えも、実は当時の三木外務大臣からなされているわけです。ところが依然としてこういう状態である。これを改善されなければならぬと思いますから、あとで文書で御回答願います。
  113. 宇野宗佑

    ○宇野委員長代理 堀昌雄君。
  114. 堀昌雄

    ○堀委員 本日は、いまだいぶ問題になってきておりますところの公労協の賃金の問題についてお伺いをいたしますけれども、これは何も賃金の中身の話をしようというのではございません。経済企画庁長官と労働大臣に御出席をいただきまして、ものの考え方を少し私は論じておきたい、こう考えておるわけであります。  そこで、最初にお断りしておきますけれども、抽象論では問題がはっきりいたしませんし、私はやはり計数的にきちんとしなければものを納得しないたちでございますので、例証として国鉄と電電公社を引例します。場合によっては何か——国鉄の賃金に悪い影響を与える意思はないのでありますから、そういうようなことに御理解をならぬように、これは一つの例証として引例をすることでございますから、最初にお断りをしておきたいと思います。  そこで、最初に経済企画庁長官にお伺いをいたしますが、時間がありませんから簡単にいきますが、皆さんのほうの熊谷報告といわれる物価、賃金、所得、生産性研究会の報告書にこういう文章がございます。「いかなる場合においても、経済全体についていえば、平均実質所得の上昇率=平均生産性上昇率という関係は恒等的に成立せざるをえないところのものである。」こういわれておるわけです。日本は、御承知のようにたいへん成長が高いわけですが、この成長というものの実質的な成長は、いうなれば国民全体の生産性の実質的な上昇を意味しておる、こう考えるわけでありますが、その点、経済企画庁長官、いかがでございましょうか。
  115. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 お説のとおりであります。
  116. 堀昌雄

    ○堀委員 実は、先般私は経済社会発展計画に触れて、今後五、六年というのは、一〇%程度の成長ということが至当ではないか、こう申し上げたところが、企画庁長官はたいへん消極的で、まあ経済審議会との関係もあったでしょうが、たいへんことばを濁しておられたところが、本来の所管省でないところの大蔵省の大蔵大臣及び総理大臣が、最近は一〇%の実質成長が至当である。私はたいへん順序がおかしいのではないかと思うのですが、経済企画庁長官は、あれをどう受けとめておられるのか、ちょっと最初に、その一〇%問題についてのあなたの御見解を聞いておきたい。
  117. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 五年間一〇%ということは、大蔵大臣が最初言われたことであって、大蔵大臣は一二、三%では高過ぎる、七、八%ではちょっと低い、まあ間をとって一〇%ぐらいいくんじゃないかということを言われたので、そう根拠があって言われたのではなくて、そういう勘で言われたわけです。それで、それに対してまた総理に質問があったから、総理はまたそれに応じてそういう返事をされたわけです。私は、いまのような状態がずっと続けば、五年間一〇%ということにいくかもしれぬが、しかし私は一〇%になるという確言はようできません、いま私のほうでいろいろ調査しております、そういう返事をしたわけです。何も否定したわけではありません。確言をようせぬということであります。
  118. 堀昌雄

    ○堀委員 専門の立場で責任があるから確言をしないということのようですが、私も一〇%という話は、なるだろうということで、だれだって、こんなものは確言はできませんね、推測のことですからいいのですが。そうしますと、今後一〇%もの高度成長が五年間続くという前提に立ってものを考えますと、やはりいまのいろいろな問題の中では物価の問題というのが非常に重要なファクターになってくる。これはもう間違いがございません。まずそういう情勢が続けば、日本の消費者物価が五%を下回るようなことにはなかなかならない。大体五%くらいの物価上昇が続くという前提もまた考えなければならぬ、こういうふうに考えるわけです。そういう物価上昇の中における賃金決定のあり方というものも、これはなかなかむずかしい問題がありますが、かつて日本は敗戦のあとで非常に苦しい状態にありましたから、まず食える賃金ということが第一だったと思うのです。だから、食える賃金ということになれば、非常に格差が少なくて、ある一定の幅の中でスタートがあったと思うのです。ところが、その後成長がだいぶ続いてきて、いろいろと賃金の伸び方は変化をしてきたと思います。  ちょっと労働省の労政局長のほうにお伺いをしたいのですが、大体昭和三十三年ごろ——三十三年としたほうがいいでしょう。いま例を電電と国鉄にしぼってちょっとお伺いしたいと思うのですけれども、このときの基準内賃金は三十三年に一体幾らだったでしょうか。
  119. 松永正男

    ○松永政府委員 ただいまの御指摘は三十二年でございますが、手元に三十三年がございませんで、三十二年を持っておりますが……。
  120. 堀昌雄

    ○堀委員 それでけっこうです。
  121. 松永正男

    ○松永政府委員 三十二年の国鉄の基準内賃金が、これは職員ベースでございますが、一万九千三百円でございます。それから電電が一万八千七百円でございます。
  122. 堀昌雄

    ○堀委員 四十三年はわかりますか。二年ですか、どちらでもけっこうです。
  123. 松永正男

    ○松永政府委員 四十三年はわかります。四十三年は、国鉄が四万七千七百六十九円でございます。それから電電が三万八千三百四十五円でございます。
  124. 堀昌雄

    ○堀委員 いま皆さんお聞きになりましたように、昭和三十二年には、電電と国鉄の賃金の開きは六百円しかなかったんですね。それから十年間に日本はたいへんな高度成長をいたしました。その高度成長をした中で電電の賃金は三万八千三百四十五円、国鉄は四万七千七百六十九円、約九千円近い賃金の開きがこの二つの中に出てきている、こういうふうになったわけです。  そこで、ちょっと大蔵省に伺いますが、大体この間における国鉄と電電の生産性の上昇というのは一体どのくらいあったのか。三十二年でも三年でも、そこらを大体の見当でいいですから、ちょっとお伺いしたいと思います。
  125. 海堀洋平

    海堀政府委員 労働生産性の上昇がどの程度であるかという御質問のようでございますが、実はそういった労働生産性を正確に把握するような作業をしておりませんので、たとえば電電公社がある時期の仲裁裁定のときにある仮定のもとで計算しましたものは、本来あれは間違いでございます。ああいう形で労働生産性が論じられるということは全く間違いなのでありまして、ただ、労働生産性をどういうふうに把握していくかということにつきましては、正確なものがございませんので非常に取りにくいわけでございます。国鉄もまたある仮定の労働生産性の計算をしておりますが、これとてもいろいろな点で正確なものではないというふうに考えられます。ただ、電電公社が計算をいたしておりますいわゆる物的な生産性というものは、三十二年と四十二年では二・六六程度の上昇というふうに計算しているのじゃなかろうかと存じます。  それから国鉄のほうでございますが、国鉄のほうはやはり車キロといいますか、そういうものをそのまま単純にとっておりますので、あまり正確なものではございませんが、四十二年はちょっと出ておりませんけれども、三十二年度から四十一年度まで一・四八倍という程度に一応の数字はなっております。
  126. 堀昌雄

    ○堀委員 いま大蔵省からお答えになったように、これは正確なものではないと思いますけれども、まあラウンドナンバーぐらいのところを見るならばそんなに著しい相違はないのじゃないか。そうしてみますと、大体三十二年から四十二年まで片一方は二・六六倍ということは、二倍よりは多いだろうということはいえると思いますね。それから片一方の国鉄のほうは一・四八倍ということですから、大体二倍よりは以下である。その乖離のしかたというものは、やはりあと五〇%近くぐらいずつ乖離があるのだというふうな判断が成り立つと思うのですが、労働大臣、いま私が申し上げたように、もとはほぼ同じだったものが、生産性のほうは片一方は非常に高い、片一方はやや低い。ところが賃金のほうは、その低いほうがうんと上がってしまって、生産性の高いほうがうんと低いということは、経済的な合理性から見ればやや矛盾があるような気がしてしかたがない。特にここで触れておきたいのは、この約十年間における雇用者一人当たりの所得の伸び率ですね。これは経済企画庁の資料を労働省の雇用者数で分解をしたわけですが、これで見ますと三十二年—四十二年で二・七四倍になっている。国家公務員は大体二・五倍ぐらいになっている。ところがさっきちょうだいした資料からいけば、電電はこれらのベースから平均して見たときには、あるいは国家公務員の平均ベースよりも著しく低いのですよ。いま日本企業の中で最も生産性の高い部分に属するこの電電公社の賃金が、国民全般の雇用所得よりも低い、国家公務員のペースよりも低い、どこと比べてもみな低いというのは、それは年齢構成の問題もさることながら、私はちょっと問題があるような気がしてしかたがないのです。  そこで、労働大臣お急ぎのようですから、私が申し上げたいのは、賃金の決定にはなるほど食える賃金を出さなければなりませんし、年齢構成による賃金も必要でありましょう。ありましょうが、さっき私が前段にも触れたように、これから一〇%ずつも成長する中で、生産性の上がったものが労働者に還元されないような賃金体系などというものでは、今後の生産性の向上に非常にマイナスになるのじゃないか。一〇%ずつも実質成長を続けようという場合には、これは非常に問題があると思う。そこで労働大臣に伺いたいのは、こういう賃金決定を頭に置くときには、やはりこういう生産性の問題も考慮しなければならぬのじゃないかということを伺いたいのですが、労働大臣どうでしょうか。
  127. 原健三郎

    ○原国務大臣 ずばり申し上げたいのですが、ずばりやると非常に誤解を招くと困りますので……。  三公社五現業、この賃金は労使が自主的にやっていただく、これはもう御存じのとおりでございます。実際は毎年公労委の調停、仲裁によって解決を見ておりますが、一昨年と昨年は調停でまとまって仲裁もそのようになった。こういう調停での決着がついておる。そこで、ことしの場合でございますが、いよいよ三公社五現業の今次の春闘での賃金要求については、現在すでに大部分の組合が公労委の調停にかかっております。それで政府としてもとやかくあまり申し上げることはできないのでございますが、現行法では、三公社五現業の職員の給与とか生活費は、国家公務員の給与、民間の給与その他の条件を考慮して決定されるものである。これは法律上にも規定してあるように思います。  そこで結論的に申し上げますと、いま電電公社は非常に生産性が上がっておるし、しかも賃金が低い。私は、おそらくそういう生産性が上がって賃金が低いというような点も、この公労委の調停の場合に考慮されるであろうということを期待いたしております。
  128. 堀昌雄

    ○堀委員 もう一問だけ。そこで実際なぜこういう乖離が起きてきたかといいますと、これはパーセンテージによる仲裁なり調停がずっと長く連続して行なわれてきたからなんです。簡単に言いますと、三十七年に六%、林野だけが八%、三十八年六・五%、林野が八・五%、三十九年は国鉄、林野が九・五、郵政、印刷、造幣、アル専が七・五、電電、専売六・五、四十年は六・二五、四十一年六・五、四十二年が六・五%プラス三百円、四十三年七%プラス四百円。率だけでこういうような問題が解決されるということになれば、高いところは幾らでもどんどん大きくなって、低いところはいつまでたってもいかなくて乖離するにきまっておるわけですね。だから私は、賃金なんというものはやはり個別問題だから、こんな率で回答するなんというあり方は、経済原則から見たら、いまの生産性を完全に無視したきわめて経済非合理的なやり方だ、こう思うのです。労働大臣その点はどう思いますか。
  129. 松永正男

    ○松永政府委員 ただいま労働大臣が御答弁申し上げましたものの補足も兼ねまして申し上げたいと思うのでございますが、先ほど大臣が申しましたのは、最近におきましては、一方的仲裁できまらないで、調停段階で煮詰まってくる、調停段階で煮詰まってくるという意味は、労使の意見や主張がそれぞれ主張されて、そしてその意見が交換された中におきまして結論が見出される。そういう意味におきましては、電電に例をとりますと、電電の組合がこういう状況だということで生産性向上を主張されれば、それも調停委員長としては当然お聞きになった上で、それを踏まえて調停案が出される、こういう意味でございます。  それからいま言われました率と額の問題でございますが、これは賃金問題が合理的かどうかというふうに割り切れるかどうかということでございまして、概して申しますれば昭和三十年代におきましては、やはり率という観念が相当民間賃金を支配しておった。しかし四十年代になりましてから額という考え方が非常に強くなった。これは物価上昇といったようなものと関連があると思うのでありますが、大勢としてはそういうことです。そこで、公労委におきましても、額ということが、民間で一般的に考えられるように、賃金決定の中に非常に強い。そこで一昨年の調停委員長意見から率と額と併用するということになりました。昨年もそうでございます。ことしはわかりませんけれども、仲裁裁定書によりますと、そういう一般の賃金の傾向を反映して考えるということになりました。そこで、それがどう影響するかと申しますと、ますます格差が開くじゃないかということに対しましては、額でいったほうが格差は拡大しない、縮小するという傾向になってくるかと思います。
  130. 堀昌雄

    ○堀委員 それでは労働大臣、お約束ですから出ていただきますが、これは個別的な賃金の問題なので、これを一律的な処置をするということは、いまの生産性が著しく違うものを一律的な処置をするというのは問題があるんじゃないか。私は何も国鉄を安くしろなんて言っているんじゃないんです。いいですか、要するに、その企業企業実態に応じて個々別々に調停なり、裁定が出るのが当然ではないか、こう考えておりますので、それだけお答えいただいて御退席ください。
  131. 原健三郎

    ○原国務大臣 お説よくわかりました。それで、その調停の段階において、電電公社はいまのような生産性その他に比べて低いことをよく主張されることを望んで、そうした場合において委員長が善処される、こう思っております。
  132. 堀昌雄

    ○堀委員 では電電公社にちょっとお伺いをいたしますが、公社法ができたときにいまのあなた方がこれまでの国の状態から公社に移ってきたゆえんは、公社法の一条のところに、「公衆電気通信事業の合理的且つ能率的な経営の体制を確立し、」とこうなっているわけですね。国有鉄道もそれから専売公社もみな第一条で「能率的な運営により、」とか「専売事業の健全にして能率的な実施に当ることを目的とする。」とある。公社になったことは、国の企業と違って能率的にやれということが公社になった一番の大きなもとなんですね。能率的にやるということは何かというと、生産性を上げるということです。生産性を上げるためには、やはりその生産性の配分の問題を適正に考えなければ非常に問題がある。特に今後電電公社の場合には、データ通信を含めて、高度の技術と知識を必要とする労働者を確保していかなければならぬということになりますと、単に年齢が低いから賃金が安くていいなんということにはならないんじゃないか。特にこれから技術進歩が日進月歩で起こるときには、これに対応できるのは若い者でなければ対応はできません。四十歳、五十歳になった者に新しい技術革新の技術を覚えさせようと思っても、なかなかそうはいかない。やはりそういう成長性のある産業、これは技術革新が大きく取り入れられなければならない産業である。そういう産業というものを踏まえて考えるときには、その生産性の分配、これについては、公社としても、当初高能率高賃金という話をした時代があるわけですが、十分考えていかないと、生産性の障害を起こしてくる時期が来るのではないか、こう考えるので、その点についてひとつ公社側の見解を聞いておきたいと思います。
  133. 秋草篤二

    ○秋草説明員 先ほどから先生の御所見を承っておりますと、公社当局にとりましては非常に弁護していただくような御発言で、感謝しなければならぬと思う点が多々あるのでございますが、ただいまの御質問にしぼって私の所見を申し述べさせていただきますれば、確かに、いま公社法三十条にございます給与に関する基本的な憲法と申しますか原則は、給与というものの質を職務の内容とその責任の度合いによってきめろという一つの形があり、一方またこの額といいますか量といいますか、賃金というものは公務員なり民間賃金のベースに大体その調和をとってやれ、こういう精神が書かれておる。したがいまして、能率をあげて、もう少し近代的な意味から給与というものを見れば、いささかもの足らぬというような点もあろうかと思いますが、そうはいうものの、私ども長い経験で、毎年賃金問題をやります者からの体験から申しますと、公社発足以来十二、三年の間というものは、全くそういう問題に波及する前に、公社の賃金に関する自主的な発言というものに対してはきわめてむずかしく、苦労してまいったわけです。しかるにここ二、三年、労働省、大蔵省の理解と協力のもとに、いまだかつてない調停段階における有額回答というものがようやく芽をふいて、私ども体験してきた者から見れば、非常に隔世の感があるわけでございます。そういう意味では、このよき慣行を一歩一歩と持続して、こういう労使間の正常化と近代化をはかることにもっとつとめなければならぬ。また過去においては、これにずいぶん精力をつぎまして、給与の内容、理論に走るという点はまだなかなかできなかったと思います。そこで、今後を展望しますと、確かに私ども事業の激しい成長と、機械化、近代化の波にあおられていますところの従業員の内容、質というものも、これはそういう技術革新なり近代化を行ない得る背景を持っているのは非常に恵まれておるわけですが、さらばといって金さえあればできるものではなくて、労働者にはやはり相当な配置転換、訓練、それから採用人員につきましても、量ばかり入れないで、かなり質の問題も、学歴等も、高い月給の者を雇わなければならない。また国鉄さんは、私たちから見れば、そういうことをやろうとしましても、電電のように恵まれた背景を持っておりませんので、私は、先ほど先生がおっしゃったような御意見には必ずしも全面的に賛成できないのでございます。非常に同情しなければならない立場にございます。しかし全体論としますれば、企業の内容あるいは生産性、そうした近代的な角度から給与問題を論議するのはこれからではなかろうか、こういうふうに思うのでございます。
  134. 堀昌雄

    ○堀委員 長官、私いままで述べてきたことは、個別的なことを言うつもりはないのですけれども、賃金とかそういうものはやはり経済合理性のワクの中でものを考えていかないと、ただ過去における慣習とかそれだけでは、私はこの経済問題というのは片づかないと思うのです。きょうは時間がありませんから非常にはしょってものを言いましたけれども、私はやはりそういうものは個別賃金で企業に見合った——それは全部生産性の中へ入れろなんということを言っているわけじゃないんですよ、いまの情勢ですからね。しかし、にもかかわらず、そういうものも考えていかないと、今後一〇%が五年も続く中では経済上の矛盾が拡大をするのじゃないだろうかということを心配するので、その点についてだけ経済企画庁長官のお答えを伺って、本会議ですから終わります。
  135. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 お説のとおり、やはり合理性ということを今後考えていかなければならぬというように考えております。
  136. 宇野宗佑

    ○宇野委員長代理 本会議散会後再開することとし、この際休憩いたします。    午後一時五十九分休憩      ————◇—————    午後三時二十六分開議
  137. 浦野幸男

    浦野委員長代理 休憩前に引き続き、会議を開きます。  質疑を続行いたします。塚本三郎君。
  138. 塚本三郎

    ○塚本委員 最初大臣にお尋ねいたしますが、最近の産業界、特に今日中小企業の業界におきまして一番問題になるものは何か、こう聞きますると、すぐ返ってきますのは人手不足ということでございます。もはや人手不足という問題は、これはもう天然の現象として特に中小企業界においてはあきらめなければならぬ問題なのかどうなのか、あるいは施策さえよろしきを得るならばこんな形にならずに済むのではないかと業者は考えております。全体的な立場から見ますと、かつてのような無限の労働力の中で日本経済が発展をしてきた過去十年間の歴史とこれからの産業界とが全く違っておる一番大きなファクターは、やはり人手不足、こんなことがあらゆるところで論ぜられております。これとどう対処するのか、処置のしかたが具体的にないものなのかどうなのか。労働省として、小さい個々の政策につきましては手が打たれておるようでありますが、もっともっと大きなところで何かしら抜けておるものがあるような感じがいたすわけでございます。これに対してどんなお気持ちで見えるのか、具体的なことよりも基本的な考え方について最初に大臣にお尋ねしてみたいと思います。
  139. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せのとおりでございまして、ただいま産業界の当面しておる最大の問題は労働力不足である、私も同様な認識を持っております。しかも、わが国の出生率が依然として低水準に低迷しておるということからいたしまして、また最近の新しい卒業生に対する求人の率の高さ、充足率の低さが急速に解消するような気配は全然なくて、長期にわたって深刻な影響を産業界に及ぼす課題であると思います。したがいまして、一時的な現象としてではなくて、恒久的な圧力として受けとめて、腰を落ちつけてこれに対処していかなければならぬと思います。  そのために、一つは、どういたしましても省力化の問題であろうと思います。設備、経営の近代化によりまして労働力を省く場合の近代化を急ぐ、そのためには膨大な投資が要りまするし、その資金の充足と、それに伴うもろもろの税制上その他の助成措置もあわせて講じながらやってまいることでございますが、特定の業態によりましては、繊維のように、政府の力によりまして、計画的な構造改善というような密度の高い施策を遂行してまいる必要のあるものもあると思いますし、そういった業態をさらに拡大していく必要を痛感しております。  それから第二の問題は、わずかに得られた労働力の質の向上、生産性の向上の問題であると思います。そのためには、再教育を十分充実して、資質の向上をはかってまいらなければなりません。そういう教育施設の充実が緊切な課題になっておると思います。  それから第三の問題といたしまして、若年労働者に代替する中高年齢層、婦人等の労働力をどのように組織して生産力の部面に役立たせるか、その他労働市場の円滑な運営を全国的に整備してまいるということが要求されておると思います。政府もそれに対応していろいろな施策を講じておるところでございます。  第四の問題といたしましては、労働の場をして魅力のあるものにせなければなりません。それは処遇の面において適正な処遇が与えられなければなりませんし、それは在職中ばかりじゃなく、退職後の処遇につきましても配慮がなければならぬと思いまするし、住宅、レクリエーションその他の福祉施設の充実というようなものにも十分配慮してまいらなければならぬ。いろいろな施策、まだほかにいろいろあると思いますけれども、そういった施策を掘り下げて探究して、これを組み合わせた上で、着実な展開をはかってまいるということでなければならぬと考えております。
  140. 塚本三郎

    ○塚本委員 私、かつて予算委員会でもこの問題を各大臣にお聞きしたところでございますが、はね返ってきますその第一の御答弁は、出生率の低下、これがいわれております。私は、これはおかしいと思うのですね。といいますのは、いまのいわゆる労働力になりつつあるのは、空前のベビーブーム当時生まれた子供たちが、若年労働者として一番働き盛りでいま産業界に入ってこなければならぬ時代でございまして、実は、出生率の低下ということは、おそらくこれから十年先に深刻な問題となってくる要素でございます。したがって、私どもの大ざっぱないまの感じからいたしますと、出生率の低下ではないというふうに、この問題は、もっと深刻にこれから先にあらわれてくる問題だというふうに見ておるわけでございます。最近実は、このままにしておきますると、これから五年さらに十年たったときに、出生率の低下というものが現在の上にさらに加重されてくるという事態を予測いたしまして、いまこの事態を深刻だといいましてもまだぜいたくな悩みなんだというふうな感じも実は私たちは受け取れないわけじゃございません。しかしさらにこれから十年先には、全く深刻な状態になってくると見るわけです。  ついこの間も報道しておりましたが、ある若い子が就職をするため新聞広告に応じてまいりました。そうすると、前金をもらい、また移転の費用等二、三万円もらって、そして二、三日で姿を消してしまう、こんなことをいたしまして、百数十万円の金をとにかく詐欺した。これがつかまった。どういうことか、同じところに二回やってきたらしいので、これはつかまった。三重県だと記憶いたしておりますが、出ておりました。やられるほうもやられるほうでございますが、やるほうもやるほうだという感じがいたしまするが、笑えないですね。だから、前金一カ月分を出してでも、そして引っ越しに対する支度金まで出してでも、そのような身元のわからない人でも、雇用者は実は雇用しなければならないという形になっております。その額が百数十万円、おそらくその期間わずか一年以内だと記憶いたしておりますが、そういう事件が出てきております。  実は私が東京に出てきております近々のうちからこういう相談を受けました。中小企業者で、産業労働者用の住宅資金を住宅金融公庫から借りて、小さな中小企業者が十数名の宿泊のできる産労の住宅をこしらえました。ところが、次々といなくなってしまうわけでございます。そうしてわずか男一名、女一名という二名の従業員になってしまった。がらんとしたその中に、若いしかも男と女一人ずつを置いておくのは、風紀上からもよくないということで、自分の事務所の隣の一室を区切って、そこに泊めておるんだ。だからせっかく政府施策によるところの産労住宅はあき家だから、もったいないから他人さまに貸した、それが実は使用目的違反だということでいま問題にされておるわけでございます。そのいわゆる借りた業者にしてみまするならば、何もあけておいてそんな貸し家業をするなんという不届きな考え方はみじんもございません。その方はその地域における社会教育の協力委員長というような相当の地位の人であり、声望のある人でございますから、そんなこりこうなことをするつもりはございません。しかし遺憾ながら、小さな商店におきまする店員さんたちは、次々とどっかに引っこ抜かれてしまったりして、そしていなくなってしまう。そうかといって、これをぶっこわすわけにいきません。あけておくのはもったいないから他人さまを入れておいたところ、使用目的違反である、結果としてそういう形になって、会計検査院のほうからわざわざ調査まで受けたといって、どうなるのか、おそらく借りた金七百万円返せと言ってこられるであろうというようなことで悲鳴をあげておりました。こんな事態が次々に出てまいります。  中小企業施策は相当にきめのこまかい施策がとられて、金融、税制等におきましては、当委員会におきまする御努力によって、相当の成果をあげてきていると私どもは喜んでおります。しかしながら、この労働力の問題は、もういまの状態からさらに深刻の度を増すばかりだということでございまするが、これの抜本的な施策は何かないか。実は私は、出生率の問題や人が少ないというんじゃなくして、絶対量はいまはたいへんあるんだ。これから十年先にはずっと少なくなってまいりまするが、いまのところ労働力に仕立て上げるならば、そして産業界にじょうずに迎え入れるならば、あり得べき人がいまの時点ではまだずいぶんあると私たちは見ておるわけでございます。たとえば第三次産業において、あるいは大学において、もちろんそれは次元は違います。しかし私は、当委員会が商工委員会だから、このことを申し上げるわけでございまするが、労働力たり得べき人が実はたいへんいまはあるはずでございます。それが、自由経済なるがために、産業界の中に強制的に導入するわけにいかないという悩みがございます。しかし何らかの形で、水が下に流れていくように誘い込む方法を考えていかなければいけない。いまにしてこの手を打たなかったならば、十年先にはたいへんな事態になると予測をいたすわけでございます。長官、これに対しておそらく同じような悩みを持っておいでになると思いますが、そのお考えを承りたいと思います。
  141. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 先刻大臣が出生率も次第に低下をしてくるということを答弁いたしましたのは、先生の御質問、すなわち労働力の不足はいま相当深刻になっておるけれども、将来どうであるかという御質問に対しまして、将来は実は出生率がだんだん下がってくる。——私たちの調べでも、昭和二十五年に千人当たり二八・一人、それから三十年に一九・四人、三十五年には一七・二人という数字になっておるわけでございまして、昭和二十五年当時、先生指摘のように、現在よりもはるかに出生率の高い時代の人がいま労働力、生産力化しつつある状態でございますから、御指摘のように、これから年々人が足らなくなるということをわれわれ覚悟をいたしております。それにつきまして、実は大臣からもそういう方向を指示されておりますのは、現在の中小企業政策の大黒柱というかポイントは何かというと、結局いわば中進国経済から先進国経済へ脱皮していくことであるという、それについての方策を考えろという指示をわれわれ受けておるわけでありますが、それは一言で申すならば、労働力が足らなくなるから、人をいかに高能率に使っていくかということであると思います。人をいかに高能率に使っていくかということは二つの方向があるわけでございます。一つは省力化という方向でございましょうし、一つはその労働力がいかに高い価値を生むかという二つの方向であると思います。したがいまして、私たち、いまの中小企業政策は経済合理性にのっとってやらなければいかぬというふうに考えておりまするが、この経済合理性というのは、一面におきましては労働生産性を高める、いわゆる省力化でございまするし、一面においては付加価値生産性を高める、高い労賃を払っても十分合うような商品をつくっていく、こういう方向であるというふうに私たち方向をきめまして、四十四年度におきまして、そういういわゆる構造改善政策を中心とする中小企業政策を進めていっておるわけであります。  問題は、先ほど大臣のお話もございましたが、いまちょうど不足しつつある段階でございます。日本の産業、特に中小企業が、豊富な労働力の上にいままで乗って、豊富な労働力を踏まえた構造、構成をとっておったわけでございまするので、これが先進国になると、少ない労働、高い賃金の労働を踏んまえざるを得ない。この過渡期の苦しみをいま受けつつあるというふうに考えておるわけであります。したがいまして、この過渡期の苦しみを一面において極力少なからしめるために、いかにして労働力を有効に活用するか、動員するかということが必要でございまするので、パートタイマーでございまするとか、先生から御指摘のございましたような、労働省にもいろいろ頼みまして、二次産業のほうへ必要な労働力を極力職業紹介等——ただ、これは憲法のあれがあるわけでございますけれども、職業紹介等の制度を通じまして、二次の、一番窮乏しております分野への労働力の確保をはかる、こういう手でございますとか、また、日本じゅうを見ますると、まだとにかく比較的労働力は余っておって、そして他の地方へ流出するような現象があるわけでございまして、これがまた、一面ではいわゆる過疎問題も引き起こしておるわけでございますので、地域的な中小企業の配分でございますとか、そういうものを金融を通じて推進するというふうなことを、いませっかく努力をしておる次第でございます。
  142. 塚本三郎

    ○塚本委員 確かに大企業対中小企業のいわゆる問題の中で、できるだけ中小企業に人を誘い込もうとするときには、生産性を高めていく、付加価値性を高めていくということによって相当に労働力を受け入れることができると私も信じております。しかし、私が当委員会でただいま御質問申し上げてみたいといたします意図は、労働力の対象となるいわゆる青年はたくさんいるのだ、にもかかわらず産業界に入ってこないという状態になっておる。ましてこれから絶対数が足らなくなると、さらにこの問題が圧力となって産業界に加わってくるでございましょう。現在はなおあるのだという私は前提に立って、いわゆる同じ産業界の中における大企業から中小企業へ流すという方法についてはずいぶん苦労がされておりました。私たちの党も、そのことではずいぶんいろいろな施策を考えて、御提示もしてみたわけでございます。私はきょうはそうでなくして、いわゆる第三次産業や、あるいはまた、ほんとうならばその気さえあれば産業界に働いてくれる人、それが実は働いていないというところに問題があると思うわけでございます。  これは私は大臣にお尋ねしたいと思いますが、第一は、やはり何といいましても税制の問題で、ずいぶん私はこの点に矛盾があるというふうに思うわけであります。本会議のいわゆる予算のときにも各党が論ぜられましたように、不労所得の利子やあるいはまた株の配当等が二百数十万円まで税の対象となっていない、にもかかわらず、勤労者は働きますと、これが残業等を重ねれば重ねるほど所得がふえて逆に税率が上がってくるというようなことでもって、実は働くこと自身が何かしら最近の若い人にとっては損だという気持ちが一面においてしておるわけです。逆にまた、若年労働者の中で、けなげに働こうといたします。そうすると、若い諸君に対しては、これがいわゆる労働法違反に問われてしまって、実は本人もそのつもりであり、そうしてまた事業者もそのつもりで、うんと歩合を大きくして能率をあげてやろうといたしますと、これがいわゆる基準法違反だといって、小さいところの業者がそれでもってやり玉に上げられてしまうというようなことも、いわゆるかつての過酷な、何といいますか、労働行政の手が届かないところで、そういうかつての女工哀史のようなことを防止したいためにやったその法自身が、逆に、本人も積極的に若いうちに働いて、うんと金を用意して住宅の対策に充てよう、こう思いまして、事業者も幸い人手不足なんだ、こういうことでもって従業員に積極的な意思があるならばということで働かせますね。そうすると、それが基準法の違反に問われてしまう、あるいはうんと税の率がふえてきてしまって、そうして残業の意欲さえも奪ってしまうような形になってきてしまう。かつてこしらえた法律といまの社会とは違った形にあらわれてきてしまっておる。逆に片一方におきましては、配当所得等におきましては税の対象の最低基準が相当に上げられてきておる。こういうような不均衡等を考えてみますと、ますます働かずにもうかる方法は何かという頭だけ働かせまして、産業界における労働力というものに教育を受けた人になればなるほど入ってこないという政治的な矛盾、人口の、いわゆる出生率の低下ではなくして、今日はまさに政治的な矛盾というものの中に労働力不足というものが浮かび上がってきておる、こんな感じが一面においてするわけでございますが、大臣どうでしょうか。
  143. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せのとおりであると思います。
  144. 塚本三郎

    ○塚本委員 どういうふうにしてこれを解決するかということについて、お考えはどうでしょうか。
  145. 大平正芳

    ○大平国務大臣 塚本さんは前提として、先々は別にして、当面はベビーブームのときに出生した者が生産力化しつつある時期である、だから労働力はないのではない、あるのだ、しかしそれが労働力を最も必要としておる部門に配置されないで、たとえば第三次産業にとうとうと流れていくということをもたらしたのは政治力の貧困じゃないかというような御指摘でございますが、一面確かにそういう点が私は言えると思うのでございます。しかし第三次産業というものの成長、これも一つの新しい時代のカレントだと思うのです。われわれがいま生活実態に即して物の消費というものを中心に組み立てておったのでございますが、実際は娯楽とか教養とか、あるいは旅行とかレジャーの消費とか、いろいろな意味の生活の内容が非常に変わってきておる。経済が高度化すればするほどその度合いが大きくなってくる。したがって、第三次産業というもののウエートが、先進国においては国民所得から申しましても、もうすでに半分以上も占めておる。日本も半分程度になってきておるというような状況を見ますと、第三次産業に相当の労働力を吸収していく傾向は今後も続くのじゃないかと思います。ただあなたが御指摘になられました、労働力が豊かにあって、労働力の保護というような、労働者の保護というような立場から立法された法律が、ある意味において逆用されて、かえってそれが就労のチャンスをはばむようなブレーキになっておるというような点につきましては、これは私どもの管轄の問題ではございませんけれども、深刻な政治的課題として取り組まなければならぬと思うのでございます。ただ、これに対しまして、賃金を上げるとか、あるいはいろいろ福利厚生施設を充実するとかいうことだけで対処するには限界があるんじゃないか。やはり物を生産する、あるいは一つの規律の中で規則正しい生活の喜びを感ずる、あるいは自分が縁があって就職をいたしました企業、組織に対する忠誠心というようなものを持つことが人間的にとうといことである、そういういろいろなモラルの問題が一方において非常に高揚されなければならないと思いますが、それだけでもいけないので、もう少し大きな政治が動いて、もう少し適正な労働力の配分、配置が可能なことを考えるべきじゃないかというサゼスチョンでございますが、これは非常にむずかしい問題点を提示されておると思うのでございまして、にわかに御答弁はできないわけでございますが、そういうところに問題があるという問題性は、御指摘のとおり、私どもも頭に置いて検討を重ねなければならない課題であると思います。
  146. 塚本三郎

    ○塚本委員 あくまで自由経済ですから、規制するわけにはいかない問題だと思いますが、私どもときたまキャバレー等へ案内されてみますると、何と盛況なことか。まさに数百人なんという人がよくもそろったものだと思うところにときたま驚嘆することがございます。こういうふうな姿を見てみまするとき、ほんとうに人が足りないということがうそのような感じがいたすわけでございます。いま私は、これを悪だとかどうとかいう意思はございません。だから、実はこんなに人はいるのだというその認識だけを強めてまいるわけでございます。  一方、どうでしょうか、たとえば奥さまがパートタイマーで働きますね。そうすると所得となります。だんなさまは扶養控除からそれが除外されてまいります。結局のところ、わずかなお金をいただいたために、税との関係からしてみるとたいして所得にならないというような形だから、せっかく努力をなさっていろいろとそういう雇用の施策をなさっていただいても、そのことが本人には実収入においてそんなに影響がない。とするならば、もう少し子供の教育に妻を専念させるのだという形にサラリーマンの諸君はいってしまっておる、ほんとうは働きたいのだけれども、という人もずいぶんあると思うのです。ここで私は、もはやこういう問題を解決する道は、税の問題からとらえるということが、そこへ働く人を向けていく一つの大きな道ではないかというふうに考えるわけでございます。いま一律に所得の金額によって税がかけられておりますから、その働くことの内容についての問題ではございませんから、こんな形が出てまいりますので、この問題は税の問題として大蔵大臣と通産大臣御相談いただいて、そして労働力の中にほんとに人が入ってくる、そういう方法のための税はもう一度検討すべきではなかろうか。  もう一つ、たとえば港湾労務者、これはもう時間でもって荷を積んだりおろしたりしなければなりません。ところが、やはり野天における作業、夜間の作業等で、入港いたしますと容赦なく彼らは働かされるわけでございますね。とにかく滞船料のほうがずいぶんお金がかかりますから、労賃を相当に払ってでも、そして無理をしてでも、あるいは眠らずにでも働かせて、早く船を出港させよう、こういうのが荷主、船主の立場でございます。したがって、食事をするひまもなければ、睡眠をとるひまもなく作業をしておるというのが港湾労務者の今日の姿でございます。このこと自身は労働省の問題でございましょうけれども、私が申し上げたいのは、せっかくそういうふうにして働きながら一だから、ずっと所得がふえてくるわけですね。それがもう全部税の対象になってきてしまう。せめて深夜の、あるいは残業や作業の特別の手当を受けられたものに対しては税の対象外にするわけにはいかないであろうか、それでなければ、おれたちはほんとにそういう睡眠のことを実は考えて苦しい中でもやってきているのだから、特別の栄養をとらなければいけません、そういうことを彼らは言うのです。そうだろうと思うのです。普通の人よりいわば経費として余分に要るのだから、余分に向こうからも出しておってくれるのだから、こんな者に対しては特別に税の方法で検討すべきではないか、こういうことを港湾労務者は強く言っておるわけでございます。だから結局のところ楽なほうへということで、そういう人たちが一たびは港に集まりまするが、すぐこういう人たちが最近は、住居の問題、住まいの問題といわれておりますが、もう住まいの問題は徐々に解決されつつございますけれども、やはりこういう人たちはもっと楽なほうへ、手取りは少ない、少なければ税も安いし、だからそんなにほかの方面で配慮する必要がないからということで、一たびは入ってきた人たちが第三次産業のほうへ逃げていってしまう。こういうようなことも港湾労務者にとっては非常に深刻な悩みになっておるということでございます。ですから私は、一つの解決の方策として、いわゆる不労所得の例を出しましたけれども、不労といかないまでも、よりからだを使わない楽な部面やそういうところの人を第二次産業に流し込む方法としては、いま今日の日本の政治体制の中で考えられる手っとり早い話は、税の問題が一番私はその手っとり早い方法ではないかと思いますので、この点について再検討をなさっていただく必要があると思いますが、いかがでしょう。
  147. 大平正芳

    ○大平国務大臣 税制の根本に触れる問題でございまして、私が御答弁申し上げるのが適切かどうかわかりませんが、常識的に考えまして、あなたが言われるように、現在の税制で張りめぐらされた網が労働力の配置というものを相当狂わしておるということは隠れもない事実だと思います。正直に申しましてそうだと思います。そこで、個人的な見解としては、私も大体方向においてあなたと同様に賛成でございまして、いまの税制はもう申告所得税、このごろサラリーマン・ユニオンの問題なんかやかましくなっておりますけれども、一口に言うと、申告所得税のはらんでおる問題をいろいろついておると思うのでございます。税制というのは、もっと風通しのいい、もっと徴税費がかからない、徴税費とか徴税技術というようなものをもう少し——応能課税というような理念、そういう原則がありますけれども、一面いまの申告所得税にからまる問題はあまりやっかいなので、やはりもっと肩の荷の軽い税制がよろしいのじゃないかというような常識的な感じがいたします。しかしこれは、一つの制度ができると、それは非常に歴史的なものでございまして、利害がそれぞれみんなからんでおりますので、これを改正するということはたいへんむずかしいし、とりわけあなたが言われるような問題は税制の根本理念にかかわる問題でございまして、それをひとつ改定するなんということはたいへん革命的な大きなできごとじゃないかと思うのです。したがって、現実の課題としては、そういう方向に若干なりともどう引っぱっていくかということがわれわれができる限界の問題じゃないかというふうな感じがいたしますが、仰せの問題につきましては、ひとり産業政策という立場からだけでなくて、政府の立場から十分検討に値する問題だと思います。
  148. 塚本三郎

    ○塚本委員 私はきょうは徴税制度やそういうことについての、あるいはこまかい個々の問題をお聞きしようとは思っておりませんので、何とかしていわゆる労働力として、これだけ深刻な労働力不足が今日続き、これからさらに見通しとしてはたいへんな事態だ、そのときに私は、こまかい問題よりも、一番しろうとしてぴんとまいりますことは、不労所得のほうは税が少なくて、そうして労働力を一生懸命重ねることによって得たものは、いわゆる捕捉しやすいから、どうしてもそこにかかってきてしまうというようなことから、港湾労務者が深夜作業までして、そうして得たところのものにがっぽりと税金をかけてしまうというようなことをしておるという、これは一つの例でございますけれども、不労所得は大目に見られて、そうしてほんとうに強力な重労働の中の諸君が、とらえやすいからということでかけられてしまっております。だからこそ、いま人は足りなくないのだけれども、実際にそういういわゆる重労働の世界においては、あるいは中小企業の世界においては足りないという政治的な現象を起こしておるのだというふうなことから、何とかこれを、私はいい悪いの問題ではなくて、こちらに労働力が入ってくる方法を御検討いただきたい。第三次産業は、ひとり日本だけではなくして、欧米先進諸国においてはますますこの分野は広がっていきます。日本もその道は免れぬだろうと思っております。それはそれで日本の国家あるいは産業界にとって大きな役割りを果たしておると思いまするから、否定しようとも何とも思っておりません。しかし、あくまで私どもの考えておりますることは、労働そのものにもう少し価値を見出し、そうして労働そのものに、いわゆるこれからの若い人たちに意義を国家的に見つけてやらなければいけない。いま許される道は、税の道が一つのいわゆる隘路打開の道となっておるというふうなことを申し上げたかったわけでございます。  次に私は文部省にお尋ねしてみたいと思いまするが、昭和五十年になりますると、二十歳以下の若年労働者の率は四%になると労働省では発表しておるようでございます。おそらくそんな程度になってくる。百人のうちわずか四人が二十歳未満の若年労働者、こういう形は日本の将来にとって喜ぶべきことであろうかどうかということであります。これが全部まじめに勉強してくれる学生になっておるということなら、私は喜ぶべきことだと思いまするけれども、現実のいまの大学の問題そのものは、中身は別にいたしまして、はたして大学といういわゆる門があるために、労働力からこれがシャットアウトされてしまっておるという感じを受けるわけでございます。いまの若年労働者の不足というものは、何といってもいわゆる進学率が高まってきておるということが決定的な影響力を与えておると思うわけでございます。進学率が高くなってきておるが、しかしながら進学をしておりながら、一面においてその人たちが実はたいへんなアルバイトをしておるわけでございます。予算委員会お尋ねいたしましたときに、たしか五三・何%というアルバイトの数の報告がありました。百六十万といわれておりまする大学生の数から申しますると、何と八十万人に当たるわけでございます。この八十万人がもう少し生きた形で労働力に、そうして学問、授業に差しつかえのないような形で、現に働いておるのですから、学問に差しつかえのないような形で、産業界にこれを導入するような便宜を計らうことができないものであろうか。こういうことを当面にとっての問題として私どもは思い浮かべるわけでございます。文部省、どうでしょう。
  149. 石川智亮

    石川説明員 この問題は、先般の予算委員会で大臣から一応申し上げたと思いますが、文部省の立場として、毎年学生の生活調査をやりまして、生活調査の結果に基づいて、さっき先生がいわれました五三・三%というのは、学生の中でアルバイトの経験のあるパーセントでございまして、これが継続的に定期的に働いているかどうかはつまびらかでございません。ただし学生の生活の中でも、ほんとうにアルバイトしなければ進学ができないというのは五・九%で、非常に少ない数でございます。ですからこれは私ども考え方をどういうふうに詰めていくかという問題になりますと、最近の世相の反映と申しますか、アルバイトが学生のレジャーのための資金かせぎであるか、これは私個人の見解になるかもしれませんけれども、そういったものを考えました場合に、現在の大学紛争を踏まえまして、ともかく学生が学問の研究なり修学に専念できるような体制をつくらなければならぬし、また先生がいわれるとおり、現実の大学がそうであってはならない面もたくさん持っておりますから、いま中央教育審議会で、新しい国民のための大学というテーマのもとに、新しい大学像をつくっておりますので、そういった関連の中から、いわゆるアルバイトを計画的にできるかどうか、こういった問題は多少残るかと思いますが、とりあえず大臣がこの前申し上げましたように、とにかくまずは学生が学問研究なり修学が十分できる体制を私ども考慮しなければならぬし、そういった意味で、少なくともアルバイトをしないでも修学ができるという体制は、私どもの立場では奨学資金を充実するとか、そういった面でつとめてまいりたいというのが現在の考え方でございます。
  150. 塚本三郎

    ○塚本委員 いま産業界で人手不足がやかましく深刻に言われておりますのは、大体大都会でございます。幸い人手不足が叫ばれておる大都会には、たいてい五つや六つの大学があるわけでございます。だから中小企業、そういうところ、おもに中小企業の人手不足と大学のアルバイトをしたいと希望する学生との間に、地域的によく似合うわけでございます。それからもう一つ、中小企業は就業規則についてきわめて自由な体制をとっております。だから、これもアルバイトを希望する大学とは共通の点がございます。私は、現にすぐ人が必要なときには、大学へ行きまして、アルバイトを明日十人と言うと、つっと来てくれるわけであります。明日二十人と前日に話してもすっと来てくれるのでございます。だから私ども中小企業の諸君と懇談をいたしますと、人手不足がやかましく言われると、あなた方中卒や高卒を頼むからいけないのだ、大学生を頼んでごらんなさい、二十人も三十人も、一週間前に手はずをとっておけばすっと来てくれると話すのです。現にここにおられる同僚議員の皆さんでも、選挙準備に一番重宝なのは大学のアルバイトでございます。しかし彼らに聞いてみると、土方でも大学生はやるのです。それはいま言われたとおり、生活に困っておるか、あるいはレジャーを楽しむための資金であるか、さらにまた、彼らは社会の勉強だと考えておる分野に行くこともあります。だから、ことさらに文部省が肩怒らして勉強するところでございますなんということを言わなくてもいいと私は思うのでございます。ありのままの姿で、現在希望しておる諸君に、いま産業界はたいへんに労働力を必要としておるのだ、ひとつお互いに、社会の勉強もいわゆるプラスを兼ね備えるのだ、だからもう少し便宜を計らうようなことを考えてやっていただいたらどうであろうか。かつて旧制大学のときの全大学生数は九万人、ところが今日は百五十万から百六十万というふうなことが、何度も委員会の中で、予算委員会では大学問題として、総理の口からも文部大臣の口からも説明があったはずでございます。僅々十年や十五年の間に十五倍も勉強する日本国民ができたとするならば、たいへんしあわせでございますが、中身はそうではない。現に大学へ行ってみますと、出席率はわずかに三割程度でございますね。専門課程に行きますと大体三割でございますね。ひどいときには二割でございます。私立のごときは、半分の学生が来たならば、廊下に立っても立ち切れないというのが、いまの私立の学生数でございます。これが実態だと私は信じております。しかし、それが悪いと申し上げるわけではなくして、今日の社会体制が、どうしても大学という肩書きを必要とする。結婚するにいたしましても、あるいはまた就職をいたすにしましても、何かする場合でも、人物を見る前にどこの大学をと、まずその紹介から始まってくるわけです。これはもう、社会自身もそうだからそういう形になっている。だから私は、三割の諸君が勉強したといたしましても、百六十万人の三割ということになりますならば、五十万人ぐらいの学生が勉学にいそしんでも、わずか十五年前、旧制大学に比べて五倍から七倍の勉学者がふえてきたことになると思う。それで、あとの七割はどうしておるのだということでございます。実態から言いますならば、肩書きを必要とする学生であって、勉学そのものが本命ではないという、私は悪い表現を使いますけれども、そういう実態にありますから、アルバイトといっても、最低の卒業に必要な単位さえとるならば、あとはそんなに必要でない、こんな諸君が実はいまの大学の中に多いのでございます。私はそれは今日の社会の責任だというふうに思っておるわけです。だから、これをいま端的にどうこうする問題は、大学問題として別の舞台で論ぜられることでございましょう。いま産業界に必要としておりますのは若き労働力であり、これは学生諸君にとっても、わずかのそのアルバイトというものは、人生経験の中でも、学問に決してマイナスになるとは思っておりません。だから、この就労を希望する諸君に大学として便宜を与えるような、そういう、もっと本格的な処置をすることが、私は雇用政策上必要だというふうに感じております。労働省どうでしょうか。
  151. 保科真一

    ○保科説明員 ただいま文部省からも御答弁がございましたけれども、学生アルバイトにつきましては、労働力問題という観点からだけではなくて、勉学という立場もやはり考えなければいけない問題だと思います。ただ労働省といたしましては、アルバイトを希望する学生さんも多数おりますし、受け入れようという企業もございますので、できるだけ御希望に応じまして、職業安定機関を通じてあっせんするようにしてまいりたい。また受け入れる企業に対しましても、就業状況等の問題につきまして指導いたしまして受け入れさせたいというふうに考えております。
  152. 塚本三郎

    ○塚本委員 いわゆる働きたい人たちが個々ばらばらに行きますと、友だちを通じてやっておりますから、おつとめをしておるという意識がありますから、つい心ならずも授業を欠席してしまうというような形にもなってまいるわけでございます。これを、たとえば大学において五人ぐらいのグループをつくっておきまして、午前中だとか午後だとか、あるいはまた夜間だとか、こういうふうな一つのグループをつくっておいて、あるいは曜日ごとに——大学も三年以上になりますと、毎日授業に出てくる学生は少ないのです。だから、こういう諸君に、何曜日はどの組、何の組と編成しておきますれば、常時雇用のような形でこれができるわけです。そうしてまた、これだけ人手が不足であり、若年労働者が不足しておるときに、幸いにも教養高き学生の諸君だということになるならば、その工場から車ですっと学校に幾らでも迎えに出てくるのです。そうして、一人や二人ではあれですが、四人、五人ときちっと単位がまとまれば、それは車でどこの企業だって迎えにきて、そうして、出るときには飯を食べて、さあ授業だぞ、学校へ昼から行けよ、こういうことは幾らでも産業界は応じてくれる。大企業はだめですが、中小企業においては簡単にこのことができるわけです。だからもっと親切に——しかも、いまの数字から言いますならば、どこの都会においても万を数えるところの——私は、これが五〇何%ということは、希望者の数でありますから、全体として八十万と把握したわけでございますが、半分にいたしましても、どこの都会へ行っても万を数えるところの若き労働力というものが実は中小企業の中に入ってくる。私は、今日の中小企業の人手不足にとって、これが決定打になるというふうにさえも見ておるわけでございます。そのとき文部省が肩を張って、勉強する者がと言っておられたのでは問題の解決にならない。だからあえて勉強のためにも、いまアルバイトしておる諸君は、実はそういうことで一度つとめてしまうと、試験以外のときには授業を休んでしまって、おいノートを貸せ、こういうことになってくるのでございます。だから、専門課程になりますと、月曜日から土曜日まできちっとの授業はほとんどないのでございます、ほとんど週に二日か三日しかないのでございます。ですから、ないところをよって班編成してやればいい。あるいは午前なり午後なりあるいは夜間なり、こうして五人くらいずつまとめて、大学がそんな親切な施策さえ講じてやるならば、これは学生の諸君だってもっと希望者が出てくるかもしれない。これは終身常用じゃなくて短期でけっこう、このことは中小企業の世界においては幾らでも受け入れられる問題だというふうに思うわけでございます。だから、もう少しその点は親切な配慮があってしかるべきだし、学校長は職業紹介のことができることにたしかなっておったはずでございます。だから、そういうことをもう少し御協力をなさったらどうか。たしか労働大臣は、大いに賛成です、十分検討いたしてみますというようなことを予算委員会で御答弁なさったはずでございますが、おたくのほうでその後どういうふうに御検討なさっておられるのですか。いまの話を聞いてみると、文部省があまりいい顔をなさらぬから、私どもも寄らずさわらずだというような見解にしか聞こえませんけれども、大臣からは、予算委員会で、大いにけっこうでございます、具体的に検討いたしますという御答弁があったはずでございますが、どうでしょう。
  153. 保科真一

    ○保科説明員 学生のアルバイトの場合には、学生個人個人におきましてもいろいろ事情があるかと存じます。それからまた、夏休み、冬休み、そういうときに働く、こういうことは社会勉強の意味でもけっこうだと思います。やはり時期の問題その他等を勘案いたしまして、働く希望者があります場合には、できるだけそういう方が社会勉強になるように、また企業側も受け入れやすいような配慮をいたしまして職業あっせんをしたいと考えます。
  154. 塚本三郎

    ○塚本委員 中小企業庁長官、どうでしょうか。その問題は現に行なわれているのですから、それの便宜さえ計らってやるならば、もっともっと希望者がふえてまいりますし、雇用者においてもスケジュールが組まれて、そしてつまらぬ、いってみれば流れ者のごとき諸君をつかまえて、金を先に払って、また逃げられてしまうというようなことがなくて済むし、これは、いま不足しておるところの大都会の、中小企業者と、そしてまた労働を希望しておるところの学生アルバイトとは条件が合致しておると思うのでございます。だから、もう少し親切な施策があるならば、これは両方にとっていいことだと思うのでございますけれども、どうでしょうか。
  155. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 文部省には、学生としての本分についてのお考えがございます。ごもっともだと思うのであります。われわれ中小企業所管者といたしましては、現に夏休みあたりは非常に多数の学生のアルバイトが産業の第一線に働いておられるわけであります。それからまた、採用を予定されている方が見習いというようなかっこうで卒業前に事実上相当第一線に働いておる方もあるわけであります。ただ、企業側で考えますと、やはりこれはほんとうに純粋に労働者としての労働力というよりも、やはり学生であるということを常に念頭に置いて、それに適した労働に従事していただくという配慮は非常に必要であると思いますとともに、なお、これは若干余分なことかもしれませんけれども、私といたしまして個人的な考え方が若干入りますけれども、できるならば、早く学校を出していただいて、そして本職の勤労者として中小企業に就職していただくというふうにほんとうはなっていただきたいという感じがいたします。それがためには、先生最初に御指摘になりました、日本の賃金体系が大学卒と高校卒、中卒との間に非常に大きな差があるということ自身に実はやはり問題があるのではなかろうか。この点は、私たち産業所管者といたしましても責任があるのでございまして、この辺の賃金体系はむしろ改められてしかるべきではなかろうか。とにかく、できるならばもっと短期に学業を終えて、勤労者として、その全身全霊をあげて就業をしていただくということが望ましいというような感じがいたしております。
  156. 塚本三郎

    ○塚本委員 時間がございませんから、私、希望だけ申し上げておきます。おそらく人の問題は、さっきから申し上げておりますように、出生率が低下するのがあらわれてまいります十年先には、たいへんな事態になろうと思っております。いまにしてこの問題を解決しておかないと、この問題の深刻な事態は産業への重圧となってくるだろうと私は見ております。しかも大企業そのものと言いましても、何といってもやはり生産の七割は中小企業が背負っております。大企業は設計でありあるいはまた組み立てであり板金であり販売であって、実際のほとんどの生産は中小企業が請けておるのが日本経済の実態でございます。しかも、これがまた一番能率がいいような体制になってしまっておるわけでございます。だからこういう事態を迎えて、私はいまにしてもっと率直にその問題は解決していかなければならぬ問題だと思いますので、実は中小企業者にとって、いままでのことは急に来たんだからこれはしかたがないという言い方もできますけれども、しかしもう二、三年この問題がすでに続きかけております。だから私は、この問題の一つとして、やはり特に世にいう労働というものが逆に虐待されておって、不労のほうにいわゆる寛大な措置がとられておる今日の税体系の問題を御検討いただくこと。もう一つは、大学の問題をやはり学内の教育の問題というより社会の問題としてこれをとらえていただくとき、特に産業界からの希望としては、学問の本質を失わずして、もっと生きた学問の道へも通ずるためにも、私は労働力の問題をこの若い人たちにいわゆる検討の光を当てていただきたい。希望だけ申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
  157. 浦野幸男

    浦野委員長代理 加藤清二君。
  158. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私は、先般本委員会を通過いたしました繊維構造改善、これについての質問の残りと申しましょうか、画竜点睛と申しましょうか、それを、与えられた短かい時間にきょうは仕上げの仕事をしてみたい、こう思うわけでございます。  本委員会は、ここしばらくの間に、事日本の繊維業界に対しては、あるいは繊維の歴史に対しては一ページを飾る仕事、言いかえればエポックメーキングをしたではないかと思われるわけでございます。ところが、まだその画竜点睛が行なわれておらないように思います。したがって、大臣ひとつそのおつもりでお答えを願いたいと思います。幸い春はひねもすのたりのたりでございまして、いびきも伴奏に聞こえるようでございますし、マイクもございませんので、安心して勇み足ができるではないかと思います。ひざ突きまぜたつもりでお答え願いたい。  一番歴史的な仕事と申し上げましたが、中小企業の融資に対して金利が三分とか二分七厘で行なわれるというのは、まさに日本の歴史始まって以来ないことでございます。これはまことに歓迎さるべきことなんです。業界もこれを見て非常に喜びました。しかしせっかく喜ばれたもつかの間、一年たってみまするというと、そのせっかくの融資が十分に使われていない。その上なおこのたびはメリヤス、染色整理がこれに加わった。ますます仕事が複雑になってきた。なぜ融資が十分に消化されないであろうか、用意された予算がなぜ消化されないであろうかについては、いろいろ原因がありますが、そのうちの一番ポイントになるのが、いわゆる振興事業団の指導法です。この振興事業団の指導並びに施策について、万遺憾なきやいなや、大臣にまずお尋ねする。
  159. 大平正芳

    ○大平国務大臣 振興事業団の融資が予定どおり消化できなかった事例が確かに御指摘のようにございました。これは融資を受ける側からの融資申請が予算のときに予想いたしましたようにまいらなかったのでございますが、それはその当時の客観的な経済情勢というものが一つには作用しておったと思うのでございまして、ひとり振興事業団だけの責に帰すべきものではないと思います。しかし振興事業団の運営に遺憾な点があったか、なかったか、私といたしましては、十分吟味いたしまして、改善しなければならないと思います。
  160. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 大臣が傘下の振興事業団をかばわれる気持ちはよくわかります。しかし、なおかばってもらいたいのは構造改善をしなければならぬ関係の業界だと思います。その意味において、いま検討するとおっしゃられましたのですが、じゃ私が実例を申し上げましょう。先般私はこの問題についてすでに申し上げた。もう一度申し上げます。振興事業団から政府融資を受けるにあたって、本人の担保はもちろんのこと、担保を提供してなおそのあと親企業の保証を要求している。これは一体なぜそうしなければならないのか。その保証を要求された場合、親は銀行か紡績か商社でございます。その保証を受ければ、その系列に入らざるを得ません。結果、そのことはやがてそろばん系列となり、振興事業団の目的である、同時に構造改善の目的である地場産業の地場における協業化、共同化は、縦のそろばん系列によってずたずたにされてしまっている。どうせそうなら、そんな金は借りる必要ございません、私は一匹オオカミで、原料買いの製品売りをやったほうが得でございます、こういうところに原因がある。なぜかならば、資本系列、そろばん系列に余儀なく入れさせられてしまった場合には、糸の選択買いができなくなってくる。これはやがて、さなきだにいわれているところの原料高の製品安に拍車をかけるものである。独立をさせようと思っているところの企業、協業化によって外国との対比力を強めようとしていることとは逆行してくるわけなんです。協業化によって一体それでは残るものは何があるでございましょう。原料を共同して買う、選択して買う、そのうまみによってよき製品も生まれ、値段も安うなる、競争力も強くなる、これが中小企業実態なんです。そのうまみをそろばん系列によって奪われるならば、もはや振興事業団の目的は喪失したものといわなければならない。一体この点について大臣はどうお考えでございますか、簡潔に。もうこれだけ説明すればおわかりでございましょうから。
  161. 高橋淑郎

    ○高橋(淑)政府委員 事業団全般の関係は中小企業庁長官もいらしゃいますけれども、繊維についてのお尋ねでございますから、お答えをさせていただきます。簡潔に申し上げまして、一部の産地組合におきまして、確かにそういういわゆる親保証が要求されておるケースが、たくさんとは申しませんが、ございます。これは組合で自主的判断に基づいてやっておることとは申しながら、もし御指摘のように、その結果系列化を強制するというようなことになりますことは問題だと考えますので、組合員が自主的申し出を行なう場合はともかくといたしまして、もし組合員の意に反して保証がいわゆる強制されるというようなことは、これはないように私どもとしても十分これから念頭に置いて監督指導してまいりたい、このように考えます。
  162. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 一部その存在を認められましたので、私はここでこだわらずに先へ進めたいと思いますが、絶対黙視しがたい問題がある。それは振興事業団の理事長に先般来ていただいて、そのことを尋ねましたところ、われらの関知せざるところであるという答弁であった。そこで、この指導監督の任に当たっていらっしゃる通産大臣、振興事業団法の第一条をはたして理事長は認識しているかいないかを私は疑わざるを得ない。少なくともこの振興事業団は、行政管理庁が、余った公団、任務の終った公団、いやそれのみならず、現在まだ任務を帯びておる公団までも廃止、統合、吸収、合併をしようというので命令を出した。おかげで愛知用水公団などは水資源に合併されたことは御案内のとおりなんです。そういうやさきに、繊維産業をより振興させなければならぬという無上命法のためには、これはやむなくつくらなければならないということで、社会党はこれに基本的には反対であった、しかし、その基本論よりは繊維産業の振興のほうがなお優先するというたてまえからこの成立を認めたわけなんです。にもかかわらず、それが任務を忘れて、目的と違って、しかも指導、育成、強化を忘れて、このような融資が行なわれていることに対して関知しないことは一体何事であるか。大臣、関知しないような理事長は第一条を没却しておるではないか。こんなことで次にメリヤス、染色整理が入ってきた場合には、メリヤス、染色整理の指導、育成、強化ができるとお考えでございますか。なぜかならば、紡績よりもより小さいのが機場であり、機場よりもより小さいのが染色整理であり、それよりもなお零細なのがメリヤスだからであります。一体これで任務が全うできると思われますか。  私が申し上げるまでもなく、第一条には「経済的社会的存立基盤の変化に対処し、」指導し、資金の貸し付けをしなければならぬとある。そうでしょう。これは去年つくったばかりですが、中小企業の経営管理の合理化、技術の向上をはかるために必要な研修や指導をせなければならぬとある。一体振興事業団は一年間何をやられたか。まず事業から承りたい。
  163. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 振興事業団は私の所管でございますので、すでに御承知と思いますけれども、簡単に御説明をいたします。  振興事業団は、繊維の構造改善対策に対して融資をいたしております。繊維事業のほかに、あと一般案件と申しまして、工場団地それから商業団地等のいわゆる高度化事業に対します融資と、それから公害事業等に対します融資をいたしております。
  164. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私は事業を聞いておるのではない。第一条の任務を踏まえてそれを実現しているかどうかということを聞いておる。業界を集めて指導、研修を一度でも行なったことがあるのか。この事業団は、事業団を廃止、吸収、合併のやさきに、それに反して、政府の二律背反をあえておかしてつくったものである。しかも資本金は百四億余は入っておるはずだ。理事長、副理事長、理事三名、監事二名は一体何をやっておるのですか。この人たちの給与を聞きたい。この人たちの任務を聞きたい。関知しないとは一体何事だ。本務ではないか。
  165. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 給与は直ちに調べまして、後刻御報告申し上げます。  なお、関知せぬという理事長のことばでございまするが、私の承知しておる限りにおきましては、事業団は、繊維の構造改善対策につきましては、産地の組合に構造改善資金の融資をいたすわけでございます。この融資につきましては、組合の役員の保証をとっておるだけでございます。ただ、親事業者の保証、裏判につきまして調べましたところによりますと、産地の組合が事業団から金を借りまして、その借りた金をおもなる原資として織機を買いまして、その買った織機を組合員にリースいたすわけでございますけれども、その産地の組合から組合員にリースをいたしますときに親事業者つまり原糸メーカー等の裏判をとっておる例がある、こういうことがわかったわけでございます。
  166. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 時間がないから簡単にいきますが、この中小企業の構造の高度化、それを促進するために指導、資金の貸し付け等が任務になっているわけなんです。その資金の貸し付けについて振興事業団の目的、第一条とは違った貸し方が行なわれ、その結果に、いわゆるこの繊維業界の発展を阻害するような結果が生じてきている。これについて理事長は認識しているのか、どのように指導しているのかという質問に対して、関知しないと言った。私はあの日は、大ぜいほかの方も見えましたので、しかも年配の方であるがゆえに、敬意を表してそのまま黙って引き下がった。しかし、自分の任務を尋ねられて、それを関知しないなんて言って、その場だけをのがれればいいような、そんな者が理事長の資格がありますか。理事長とは何ぞ。この振興事業団のすべての事務を総理すとある。掌握していなければならないはずだ。副理事長も事務を掌理すとある。掌握すると同時に管理していなければならぬはずだ。これは、私があえて声を大にするのは、ほうはいとして地場産業でこの声が起こっているからなんです。ただその人たちは、へたなことをおおそれながらと訴えようものならば、江戸のかたきを長崎でとられることをおそれるがゆえに訴えて出ないだけなんだ。うそだと思いなさるならば、現地に行って座談会をやってごらんなさい。この声が幾らでも出てくるのですから。大臣、かかる理事長に高給をはまして、これでよろしいですか。  私はここにして思い起こします。中小企業金融公庫ができた当時、過去の金融機関が融資するを困難とする対象に融資するをもって本旨とするという、この中小企業金融公庫の本旨、それにもとった指導をした坂口君に対して、忘れもしませんが、首藤新八議員が——皆さんの先輩なんだ、何と言ったか。君らを雇うためにつくった金融機関ではない、君らのうば捨て山のためにつくった金融機関ではない。——いまここに内田議員は見えませんが、神田大先輩がいらっしゃる。そこでさんざん坂口君はやられた。なぜやられたか。それは、興銀ベースで貸しておったからです。指導が興銀方式だったからです。中小零細企業に百万や二百万貸すにあたって、何億貸すような、そういうむずかしい形式を整えろといっても、できっこない。だから、カンフル注射に間に合わない。そんなことは目的に反するということで、本委員会で与野党一致していろいろ論議をし、中小企業金融公庫に猛反省を促した結果は、ついに今日では、まことにありがたい金融機関でございますということになってきた。だから、第一歩を踏み出したばかりの振興事業団に百点満点を求めようと私はしているのではない。しかし、理事長みずからが、自分の本務を尋ねられた場合に、ちょっと調子が悪かったから関知しませんとは一体何事であるか。そんな感覚の者ならばやめてもらう以外に手はない。それこそ私は、首藤新八さんのあのときのことばをそっくりそのまま献上したい。大臣、所見を承りたい。
  167. 大平正芳

    ○大平国務大臣 理事長があなたに答弁されたことそれ自体は、確かに不穏当であると思います。関知しないということはよくないことでございます。  ただ、政府関係の金融機関全体について言えることでございますけれども、これは金融機関の一つでございますから、でき得れば非常に深い信用調査、行き届いた信用調査、前提にそれだけ信用調査能力を持っていなければならないわけでございますし、企業それ自体は非常に歴史的な、また個性的な組織体でございまするから、そういったことも十分のみ込んで金融に当たらなければならぬわけでございますが、政府関係の金融機関は総じて御指摘のように歴史が浅うございまするし、要員が乏しゅうございますから、その能力から申しまして十分じゃございません。そういった不十分さが確かにあるのでございまして、そういった事情を深いところまで商社その他との関係を十分調査するだけの要員、能力を備えていない実情を踏まえてそのようなことを言われたのではないかと思いますけれども、しかし御答弁それ自体は、確かに穏当を欠くわけでございまして、政府から与えられた要員、予算、定員の中で最善を尽くして、いかにして親身であるべきかということにせっかく薄身の努力を傾けるべきが当然の任務であろうと思います。
  168. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 これ以上深追いはいたしません。そのまた振興事業団の指導監督をするのが通産大臣でございまするので、今度は大臣がその指導監督の任務を忘れておったとか怠慢であったとか言われないように、至急対処していただきいと存じます。  次に、金融で最も問題になりまするのは、中小企業にとってのガン、すなわち歩積み・両建てを市中銀行が強要している問題でございます。これは別の機会に譲るといたします。  もう一つ、繊維産業改善構造で最も大切であり、それが欠けている点は、構造改善の法律の定める日程と、構造改善に不可欠な機械設備、この機械の研究とが並行をしていない、すなわち機械のほうがずっとおくれているという点でございます。したがって今日、構造改善を予定どおり行なおうとすれば、諸外国から優秀な機械を買わなければならないということになる。諸外国からナス、キャス、バスを初めとする近代設備の機械を購入せんとすれば、政府の予定したところの予算ではまかない切れないという問題でございます。したがって構造改善が遅々として進まない。これが一つのネックでございます。これに対して通産省重工業局としては、先般あなたはすでに工業化されているとの答弁がございましたが、それはわずか一万錘の話で、試験研究でございます。ナス、キャス、バスが完成を見るのはどうしても概略三年はかかるようでございます。これは各企業会社の機密に属する問題でございますので、私は何会社の機械が何年かかるかということは申しません。同時に杼を使わないところの織機、これが世界的な最新の織機でございます。この完成とは工業化することであります。試験研究ではございません。これもまた三年は十二分にかかるということでございます。しかしこの構造改善は、紡績と機はことしを入れてあと四年しかないのです。機械が完成した暁となりますと一年しかない。五年間かかってやるのが一年しかなかったらできますか。この矛盾撞着にどう対処するか。これによって、かつて行なわれました磯野発言も、いまここにいらっしゃる乙竹発言も有名無実とならざるを得ないことになります。重工業局長、どうする。
  169. 吉光久

    ○吉光政府委員 御指摘いただきましたように、織機その他の繊維機械の開発の成果が出てまいります時期と繊維の構造改善の時期、織機の開発が現状におきましては相当おくれておるということはきわめて遺憾でございます。いま御質問の中にございましたような、いろいろな近代的な織機その他の繊維機械も、現在研究開発を続け、あるいは開発にいたしましてもまだ初歩の段階であるというようなものも非常に多いわけでございまして、関係業界のほうでも実はいまその開発をしきりに促進いたしておるわけでございます。ただ、何ぶんにも、こういうふうな新鋭機械の開発には、いまお話のございましたように、ある程度の経過期間を要するわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、ただ単に重工業局のみならず、需要業界の関係でございます繊維雑貨局あるいは中小企業庁、工業技術院等すべての関係官庁と密接な連絡をとりながら、ユーザーあるいはメーカーあるいは公式の試験研究機関を構成員といたします共同開発のためのグルーピングというふうなものの設置を促進いたしまして、そこらを中核にいたしまして、いまのような研究開発に対して積極的に取っ組んでいく姿勢と同時に現にございます鉱工業技術に対します補助金等の積極的な利用策につきまして、さらに研究を進めてまいりたいと考えるわけでございます。
  170. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 機械メーカー一人がさか立ちしても、これはできることではありません。由来、繊維機械の発展の歴史は、常に紡績と機屋と機械部門とが共同研究、グルーピングでやっていたわけなんです。だからこの問題は、いまさらグルーピングするの何のという必要はない。いえば機械メーカーは紡績の機械部分だったのです。資本も重役もこれはみんな共通のものなんです。にもかかわりませず、戦後二十年、同じ会社がつくっている自動車は世界的になったけれども、その本家である繊維機械のほうが世界におくれをとってしまったというこの原因は一体那辺にあるか。頭が悪いのか。そうじゃないのです。通産省の指導育成の密度と濃度と度数によるのです。もっとはっきり言えば予算によるのです。  そこでお尋ねする。世界じゅう、先進国では繊維機械の近代設備の研究開発が行なわれております。アメリカ、イギリス、チェコ、スイス、すべて行なわれている。日本は、この研究開発のための予算をあなたはつけるとおっしゃったが、ことしどれだけ積算してございますか。一厘ないでしょう。ないですよ。
  171. 吉光久

    ○吉光政府委員 積算として幾らということの計算は、いまお話にございましたように、ございません。ただ重要技術の研究開発補助金が、四十三年度でございますと十二億円あったわけでございますけれども、実際に申請が出てまいりましたのは、四十二年度におきまして二件でございます。それから四十三年度につきましては、機械メーカーに対してはございませんで、繊維工業に対しまして五件というふうなものが出ておるわけでございます。したがいまして、この補助金制度自身が申請を待って交付するという状況になっておりますので、申請の段階を見ました上で、この補助金の適用対象になるものがあれば積極的に推薦をしてまいりたいと考えます。
  172. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 振興事業団の金と同じようにこれも使い手がない。なぜそうなるかを考えなければいけない。そこで、私は先般高碕先生のときはそうでなかったということを申し上げた。ちょうど先ほども文部省の方が来てみえましたが、研究指定校をつくったのです。重工業局において。あなたのところは紡績をせい、あなたのところは織機をせい、あなたのところは成型機をせい、あなたのところは経編みメリヤスをせいと分けたのです。そうして指定したのです。そこへ文句なしに研究費、補助金を持って行ったのです。うそだとお思いなさるなら、当時の佐橋重工業局次長に聞いてみてください。同時に、転向するものは、あなたのところはこの自動車へ、あなたのところはこの鋳物の系統へというて余ったものを仕分けをして、それぞれ失業のないようにしむけたのです。それが行なわれていないところに問題がある。おわかりですか、重工業局長。そこで、あなたはいまグルーピング化して研究してどうこうとおっしゃったが、それはこちらから持っていってやらなければ、へたな予算を少々もらったくらいでは、外国からパテントを買ったほうが早いのですよ。したがって、すでに今日その予算を相手にせずに、ほとんどの会社が外国からパテントを買っておるでしょう。研究を怠っているわけじゃないでしょう。どうです、重工業局長
  173. 吉光久

    ○吉光政府委員 現実の問題といたしましては、いまお話しのございましたように、技術導入によって新しい織機を開発しているという方式、あるいは現実にできております織機をそのまま購入するというふうなことで現在は補充をいたしております。こういう状況でございます。
  174. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 しかるがゆえに、おととし、去年、ことしと年を追うに従ってこの関係の機械輸入の外貨は増加の一途をたどり、同時にパテントの料金はますます上昇の一途をたどっておる、こういう状況なんです。通産大臣、喜ばしい現象ですか。これは喜ばしいとは言えませんですね。これはまことに遺憾である、だれしもそう思っている。したがってこの際私は、画竜点睛が必要である。幸い、将来あなたは総理を目標としていらっしゃる実力大臣だ。通産大臣にして実力ある人は必ず総理になっておるというジンクスがここにはある。したがって、大いにひとつがんばって画竜点睛をしていただきたいが、御所見を承りたい。
  175. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せのように固有の技術が乏しくて、模倣技術の衣をまとって産業を運営をしておるというような状態からどうして脱却するかということが、通商産業政策として当面する最大の課題だと思います。きわめて遺憾な事態であると私も思います。したがいまして、御指摘のように、申請をまって吟味して御相談するというような消極的なことではなくて、われわれの先輩がすでにとられたといま御指摘がございましたけれども、積極的に技術の開発という点については配慮いたしたいと思います。
  176. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 次に、構造改善のもう一つの柱がございます。それは言うまでもなく輸出のシェアが拡大されるか縮小されるかという問題でございます。どんなに設備を制限し整備し近代化したとしても、製品の輸出市場が縮小された日には、この計画は瓦解するよりほかに手はございません。それが今日いま目前に迫っていることは、先般来の本委員会の審議並びに参考人の陳述、あるいはその後御熱心に政府が行なわれました業界代表との懇談会等々でよくおわかりのことと存じます。十七億の繊維製品の輸出のうちで、その約三割はアメリカ市場でございます。そのアメリカ市場は、綿をはじめとするLTAの制限、五十八品目にわたるところの自主規制と称する脅迫的な制限、それだけでなお足りなくてこのたびは議員立法によるところの百品目になんなんとする制限が行なわれようとしております。しかもなお大統領から通産大臣から、下院の歳入委員長から、こぞってアメリカはこのことに血道を上げておるというても過言ではない。いまやこの問題は経済問題を通り越えて政治問題でございます。しかるがゆえに、わが国の業界においても、じっとしておれない、いても立ってもおれないというのがいまの業界の焦燥感でございます。そのときにあたって、アメリカではこのことを行なうにあたって常に恒常的な委員会が持たれていることは、賢明な大臣よく御存じのとおりであります。すなわちパストー委員会でございます。それだけで足りなくて、上院と下院と糾合したところの協議会、ミルズ議長の音頭とりで両院協議会までできておる。自由貿易主義、ケネディラウンドを唱えたケネディでさえもなおアメリカの繊維業界の抗議には抗しかねて、七つの約束を立候補のときにされたわけでございます。南部諸州の繊維産業地帯が、大統領の当選か落選かのキャスチングボードを握っているからでございます。このたび新しくなられました大統領またしかりでございます。大統領指揮のもと、このことが行なわれてくることはもはや明かな事実となってあらわれてくる。日本へ五月には通産大臣が専門家のニーマーを引き連れて乗り込んでくる、こういうことになっている。このときに及んで、日本が業界と政界とばらばらになっていて、はたして対抗ができるであろうか。政府だけでもってこの押し寄せる大波を防ぎ切ることができるであろうかの心配は、われわれだけではございません、最も心配しているのは欧州諸国でございます。なぜならば、綿の自主規制はやがて二国間の協定になり、連合国の協定になり、これは手かせ足かせの結果になり、日本はついにアメリカ市場一位のシェアを香港に譲らなければならぬという結果に相なる。日本のシェアは半分以下に減っちゃう。この現実をながめてみても、欧州は、シルクからコットン、コットンからウールに至ったこの間の歴史的な日本の軟弱外交、約束だけはするけれども、ひとりアメリカと交渉するというと、すぐにそれにやられてしまう過去の実績、これを見て欧州諸国も、このたびの日本の態度を非常に懸念している。このことは先日の参考人四人のうち三人まで述べておられるところでございます。専門紙またそのように報じております。  さて日本の政策いかん。通産大臣一人で押し切れるというなら、そんなけっこうなことはございません。外務大臣がこのたびアメリカへ行かれる。それで一人で押し切れるというなら、これもけっこう。次いで佐藤総理がアメリカへ行って、一発でけっからかしてこれるというなら何をか言わんやでございます。通産大臣の政策を承りたい。
  177. 大平正芳

    ○大平国務大臣 わが国におきましては、たびたび申し上げておりますように、政府部内におきまして意見の違いというようなものは一切ございませんで、完全に一致いたしておりますことは、たびたび御答弁申し上げているとおりでございます。また、加藤先生よく御承知のとおり、国会におきましても、与党、野党を通じて一致した御声援をちょうだいいたしておるのでございます。それから業界におきましても、各繊維のメーカー、商社を通じましてよくよくたたいてみたのでございますが、間然するところなく一致した姿勢がとられておるわけでございまして、日本といたしましては、いま懸念するような足並みの乱れは一切ございません。  それから、いまあなたが御指摘になりましたように、アメリカにおいては、この繊維に対する輸入規制の問題が深く政治問題とからんでおるという御指摘でございますが、私もさような認識を持っております。これは過去の経緯から申しましても、大きな選挙があるたびごとにこの問題が取り上げられて、その公約に対して何らかの措置をとらざるを得ない羽目になってまいりました経緯がございます。しかしながら、アメリカ合衆国はガット体制のいわばリーダー格でありますし、世界に、より自由な貿易体制を確立することに一番熱心な国でもございます。したがって、今度の輸入規制問題の動きは、そういったアメリカの本来の姿勢と何かそぐわないものがあるのでございます。したがって私どもとしては、国内の一致した姿勢をもちまして、アメリカの政府に十分事態の認識を求めて、くれぐれも自重を求めなければなりませんし、そのことはアメリカ政府としても十分理解できる論理の筋道であろうと考えておるわけでございます。五月十日にスタンス長官がお見えになるということでございまして、いま言った一致した声援を受けておりますのでございますが、話し合いのテーマといたしましては、日米間の経済関係一般ということが触れ込みでございます。そこで、この問題ばかりでなく、いろいろな問題が話題になると思いますけれども、御想像されるとおり、本問題がやはりメーンテーマになるであろうということは想像にかたからぬところでございます。したがって、その場合にどういう応酬をいたしますか、目下鋭意準備をいたしておる最中でございます。こういった幸い一致した体制がしかれておるのでございますけれども、加藤先生言われるように、何か新たな国会と政府と業界をつなぐような大きな仕組みをつくり上げて対応策を固めてまいらないと、通産省だけの、あるいは政府だけのかまえでは十分でないじゃないかという御心配がありますことは、ごもっともだと思うのでございます。アメリカにおきましても、御指摘のように、この種の政府と国会をブリッジしたようないろいろな仕組みがありますことは、私も承知いたしております。ただ、アメリカの憲政の仕組み、慣行というようなものと日本のそれとは相当の相違がございまして、いま示唆されたような仕組みをどういう姿でつくっていくか、効果的に機能するか、そういうようなことにつきましてはもう少し考えさせていただきたいと思います。
  178. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 押し寄せるアメリカの日本品制限の問題について徹底的に拒否する、この考え方は、政府も業界も、また与党も野党も一致したところでございます。ただ、しからば具体的にこの際何をするかという問題でお尋ねしているわけでございまするが、すでに本委員会において議決が行なわれております。かつて絹を攻められたときには、本会議議決を行ない、それを日本の政府からアメリカのガバメントオフィスへ手交するということで行なわれました。その結果、可燃性繊維は無事に双方傷つくことなく、めでたしめでたしになりました。綿のときには、もののはずみでそれができなくて押し切られたのでございます。ウールの場合は、予算委員会で総理をはじめとする関係経済閣僚が一致した意見でもってこれに当たり、その趣旨がアメリカの上院フルブライト外交委員長の席へ取り上げられまして、このウールもまた事なきを得たという過去の実例があります。しかし、このたびだけはそれでは私は不十分だと思います。したがって、アメリカにパストーレ委員会があるように、日本にもこれをつくって足場固めをする必要があるではないか。なぜかならば、本件は一年や二年で終わるものでないからでございます。ぜひこの点を十分御検討願いたい。  時間がありませんので、ほんとうは私は逐条審議で超党派的な議員団の交流であるとか、財界人、ロビーストなどの動員であるとか、あるいは弁護士団の動員であるとか、いろいろ申し上げたいことがございますが、これはいずれまた別な機会にいたします。  次に、本日の最後に一つだけお尋ねしておきたいことは、後進国といっては先礼ですから発展途上の国、そこから日本へ物が輸入されること、これはもう自由貿易主義でいけば当然でございます。断わるわけにもいかぬでしょう。しかし、入ってきた品物が日本品に化けて、日本の値段と同じような値段でごまかして売られるということは、国民にとっては迷惑しごくの話でございます。したがって、本件はすでに日本の婦人会議あたり、いわゆるしゃもじ族とわれる方々から相当問題にされている点でございます。そこで、あと時間がございませんので急いで申し上げますが、例を韓国にとりますと、すでに有償、無償の賠償が行なわれるに先立って予算委員会で時の大臣との約束がございます。買うことはやむを得ないけれども、せめて品質表示をしてもらいたい、せめて産国を表示してもらいたいということについて、三木通産大臣がこれの検討を約束されているわけでございます。時の外務大臣の椎名外務大臣も確約されているわけでございます。その際、いまそこにいらっしゃる原田さんも御列席でございましたから、よく御記憶のことと存じます。それ以来、この問題に対して政府は一体どのような対策を立てられたでございましょうか。たとえば朝鮮から入るノリでございます。先般ここで御披露申し上げましたしぼりでございます。次いでまたあらわれようとしているあられでございます。一体これはどうなっておるんでございましょうか。
  179. 高橋淑郎

    ○高橋(淑)政府委員 いま例示で出されましたしぼりにつきまして、所管でございますので答えさせていただきたいと思います。  本件につきましては、かねがね関係者の間で検討いたしてまいりました。その前提といたしまして、何といっても国内の業界が組織をつくって結束をするということが一番大事であるということの認識のもとに、特に加藤先生の御指摘あるいは肝いりで、愛知県のしぼりの工業組合が四十三年の十一月に設立されまして、その組合を中心にいたしまして、品質表示をどうやって行なうかという具体的な案について検討を進めてまいっております。その具体案に基づきまして、組合、県、公正取引委員会、それから通産省といった関係者の間でいろいろ話を詰めてまいりまして、法律としましては不当景品類及び不当表示防止法、この法律に基づいて、しぼりの表示に関する公正競争規約を締結しよう、こういう筋道で、現在取引委員会と組合との間で事務的な打ち合わせを行なっておる段階でございます。私たちとしては、この方向をぜひバックアップしてまいりたい、このように思います。
  180. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 この際、公正取引委員会から現状の御説明をお願いしたいと思います。
  181. 吉田文剛

    ○吉田説明員 公正取引委員会といたしましても、愛知県しぼり工業組合から公正競争規約の設定につきまして相談を受けまして、ことしの三月二十四日名古屋市において表示連絡会を開催いたしました。その同工業組合が作成した原案をもとにいたしまして、消費者の代表、関係業者及び関係官庁等の意見を聴取いたしました。これらの意見を入れまして原案をいま修正しつつあるところでございまして、当委員会といたしましては、消費者側の意見をできるだけ取り入れながら、できるだけ早い機会に公正競争規約の認定をやりたい、こういうふうに考えております。
  182. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 その場合に、不当景品類及び不当表示防止法でもって、アウトサイダー並びに朝鮮しぼりは表示を規制することができますか。
  183. 吉田文剛

    ○吉田説明員 アウトサイダーにつきましては、たとえば現在いま表示規約の案の中に入っておりますが、原布の種類を書け、あるいは幅及び長さを書けということは、これはインサイダーだけ拘束されるというふうに考えております。ただ、不当表示の禁止という項目が入っておりまして、これについては、たとえば輸入しぼりに国産しぼりと誤認されるような表示をしてはいけないという規定でございまして、この点はアウトサイダーも規制を受けるわけであります。
  184. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 与えられた時間がまいりましたので結論にしたいと思いますが、これは当然行なってしかるべきだと思います。たとえば一本のネクタイ、一足のくつ下でも、どこの国も全部表示をしておるわけです。しかもこんな安いものさえも——安いといっては失礼ですが、交換価値が非常に小額なものでもなお表示をしておるわけです。しぼりのごとき何百万円とか何十万円とか、ネクタイ一本でも一万円も二万円もするようなもののにせものが横行しては困るわけです。ノリのごときはもうすでに十億枚になんなんとしている。朝鮮ノリと称するものは輸入が十億枚も行なわれていても、店には一枚も並んでいない。なぜか。全部化けているからだ。値段も二円や三円のものが二十円以上に売られているからだ。損をするのは国民なんだ朝鮮だけこれを許されるという手はない。朝鮮製のものでも有名商品はちゃんと朝鮮という字を書いている。しかも、これは(「人参酒」を示す)種をとって山梨県で栽培して、同じようなマークをつけると、それはにせものだからけしからぬといわれておるんでしょう、公取。始末に困ったでしょう。自分のところの得意消費先だけはちゃんとそれを書いている。なぜにせものだけはもぐって入ってくるのか。このことは、韓国自体がこのことでクレームをつけてきておりますから、なぜ日本はそれ以上に交換価値のあるものに対してクレームをつけることができないのか。私は輸入を禁止せよとは言っていない。国民にあまねく実質を知らせて、その価値と等価で交換できるようにしてやりたいということなんです。  次に、韓国あられは当然禁止すべきであると思うのですが、禁止できないのか。なぜかならば、私が言いたいのは、韓国は食糧不足だという。だから日本から三十万トンの米を輸入している。その米を加工して日本へ敵前上陸してくるという。しかもけさの新聞で見れば、日本の米にクレームをつけておる。なぜ食糧不足のところが、日本から米を購入して、そうしてそれを加工して、敵前上陸してこなければならぬのか。よくもまあこんなところへ農林省としては米を輸出なさる。一体どういうことなんです。しかもこのことがもし行なわれたとすれば、向こうの要求は一万トンだということなんです。日本ノリあられの総生産量は一・五万トンなんです。千七百軒の業者ノリあられは一・五万トンなんです。そこへ一万トン入ってきたらどうなるんですか。日本の中小零細企業は倒産してもいいですか。なぜ倒産するか。それは、米の代金が三分の一である、ノリの代金は七分の一以下である。すべての日本の工業生産品は、工業原料に対しては税はかけられていないけれども、あいにくノリあられについては食料なるがゆえに日本ではたいへん高いものを買わされておる。これでもって諸外国から入ってきたら公正な取引ができるでございましょうか。もしそれ、国際上どうしても入れなければならぬというならば、公正な取引、公正な競争ができるように、日本の加工業者に対しても、朝鮮と同じような価格にしてやるか、あるいはアメリカ政府がアメリカの紡績業者に行なったように、その価格の差益だけは政府が補助金として与えるか、すなわち公正競争ができるようにしてやらなければならぬと思いまするが、この点、農林省と通産大臣、両方から御意見を承って私は結論にいたします。
  185. 楠岡豪

    ○楠岡説明員 韓国あられの件でございますが、確かに先生指摘のように、彼我の生産コストの差は現実に存するようでございます。それからまた国内のあられの業者は非常に零細業者が多うございます。韓国側のあられを輸出したいという要望は非常に強いわけでございます。また通産省といえども、やはり国内の事情も十分考えなければいけないということで、ただいま両方の問題を勘案しながら、農省林と慎重に御相談をしている段階でございます。
  186. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 農林省と通産大臣の御意見を承りたいんですが、先に農林省のほうの本件に対する態度を承りたい。あとで、万々譲ったとしても、絶対これは不公正な競争でなしに公正な競争ができるようにすることと、今回からこれにはぜひ品質表示を絶対行なうよう。同時にまた輸入権が、ほうっておきますると、バナナの輸入権と同じように全部台湾に取られてしまう。いま六割の上を取られているでしょう。これもまたそうなるのです。したがって輸入権の割り当ては絶対日本の加工業者に許すように、これが歯どめだと思います。以上。
  187. 大平正芳

    ○大平国務大臣 農林省とも協議いたしまして、慎重に検討いたします。   〔浦野委員長代理退席、小宮山委員長代理着   席〕
  188. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長代理 近江君。
  189. 近江巳記夫

    ○近江委員 大臣の出席される時間の制限があるようでございますので、私もできるだけ御協力をしたいと思います。  わが国の経済は世界の第三位というような総生産を誇るまでの成長を示しました。しかしながら、国民一人当たりの所得は二十数位というような非常なアンバランスの中に国民生活というものは苦しい状態に追い込まれておるわけであります。そういう苦しい中から、わが国は海外援助も精一ぱいのことをやってきた、このように政府の皆さんはおっしゃっておるわけであります。そこで私は、きょうは海外経済協力のことについてお聞きしたいと思うのであります。戦後足かけ二十五年といいましょうか、四分の一世紀を迎えた今日、私はここでこの海外援助というものをもう一度あらためて見直して、そうしてわが国として今後どうあるべきか、この点を考えなければならない時点に来たのではないかと思います。一九六七年度におきましても八億五千五百万ドルですか、これだけの援助をいたしております。この間、愛知外務大臣もバンコクで、七〇年代の終わりには日本の国民総生産は年間五千億ドルにも達するであろう、これに応じた非常に大規模な援助を考えておる、このようにもおっしゃっております。そうすれば年間五十億ドルというような巨額にも達するわけであります。そういうわけで、いままで行なわれたそうした海外援助の実態をチェックし、反省すべき点は反省をする、 そうして今後こうあるべきだという明確な方針のもとに進んでいかなければならない、私はこのように思うわけです。この間行なわれましたインドネシアの追跡調査でございますが、私はきわめて有意義であったと思うのです。北島さんを団長となさった調査団と聞いておりますが、そこでいろいろと調査をされて、やはり相当痛切な反省があっと思うのです。その辺のところをまずお聞きしたいと思います。
  190. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 海外経済援助の問題については、私も、いま転換期にきておると思います。それは、従来は開発途上国からこういうことについて援助してくれとかいうようなことで、向こうから申し出があって、それに応じてこちらが援助しておったと思いますが、私は、これからも日本自体でこういうものを資源開発をしたらいいじゃないか、これがその国のためになるし、同時に日本のためになるというようなことをわれわれのほうで考えて、そうして資金の援助をして、またあるいは答弁でもよろしいが、お互いが協力してやるというような転換期に来ておる、私はこう思って、その点について日本は積極的に海外経済協力をやるべきだ、こういう考えをしております。
  191. 近江巳記夫

    ○近江委員 それはわかりました。インドネシアの調査団の報告を当然聞かれておると思うのです。詳しいことがわからなければ、政府委員の方が知っておられるらしいですから、お聞きしたいと思うのです。
  192. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 北島さんを団長といたしますインドネシア経済協力のいわゆる追跡調査といっておりますが、約一カ月、現地でいろいろな角度で調査をしてきております。報告書は相当膨大なものになるようでございまして、私ども、お帰りになった調査団長以下からごく概要のお話を承っております。大体主要な点を申し上げますと、従来、賠償以来日本がインドネシアと経済協力をいろいろな形でやっておりますが、結論的に申しますと、賠償を主体として行ないました経済援助、経済協力の中には、まことに遺憾なことではありますけれども、その効果を十分発揮してないと申しますか、まだ機械が現地に積まれたままである、あるいは設備はできておっても、十分な稼働をしていないというようなものもあるということであります。しかし同時に、最近の時点におきまして協力いたしました数件のプロジェクトにつきましては、非常に効果をあげているというものも見受けられる。要するに、こういった経済協力をいたしますときには、まず、十分現地の事情に即応したフィージビリティー調査といいますか、そういうことを綿密に行なうこと、それからこちらからの協力のみならず、現地における資金、労務、そういった全般の体制について、十分なる保証を得た上で進出をしていくといいますか、協力をしていく、こういうことが今後とも絶対に必要であるというふうな結論のように伺っております。
  193. 近江巳記夫

    ○近江委員 その点、今後の国の方向としてこれから生かされると思うのですが、海外援助を全般的に見まして、いままで特にインドネシアに対しては非常に多額な援助が行なわれておりまして、そういう点で特に重点的に調査をされたと思うのですけれども、全般的に東南アジアが中心になっておりますが、いままでこうした効果があがっておらないという原因をどのようにとらえていらっしゃるか。いまのはもちろん当然でありますが、全体的にこうこうこういう点がまずかったというべき点はあろうと思うのです。その辺のところをお聞きしたいと思います。
  194. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 ただいまも申し上げましたように、効果があがらなかったということの中には、一つは賠償という問題が従来あったように思います。賠償と申しますのは、もちろん性格上、日本の戦争中のいろいろな問題を賠償で片づけるということでありまして、相手国政府からいえば、これはわがほうにもらったものであって、いってみればどういうふうに使おうが、それはもらったものだからわがほうの自由だというような一部の観念も、これについていろいろな形で原因をなしておるのじゃないかと思います。もちろん賠償で行ないましたものにつきましても、非常に有益で、現在りっぱに経済協力を果たしておるものもあるわけであります。それ以外のいわゆる民間ベースの協力、あるいは政府の借款による協力でございますが、やはり一番の問題点は、気候、風土、経済状態その他、非常に違うところで仕事をするわけでありまするので、そういった現地の事情というものが十分のみ込めないままにそういう経済行為が行なわれるということが、何と申しましても基本的に最大の問題であろうと思います。  それから第二の問題は、いかに申しましても、やはり現地が開発途上国でございますから、経済的に貧しい、そういったことから現地の開発に要する現地資金、この調達が非常に問題でございます。  第三には、開発途上国の関係もありますが、やはりインフレという問題がどうしてもございます。こういうことから、当初に見積もっておりましたような金額では完成ができない、途中でインフレがどんどん進行してまいりますために工事が中途はんぱになる、こういったような事情もあると思います。  総じて、いま申し上げましたような発展途上国に特異の経済情勢というものにこちらの体制がなかなか機動的に追いついていけないということが、やはりその基本にあるように考えております。
  195. 近江巳記夫

    ○近江委員 いまいろいろとおっしゃった中に、確かに適切なことも非常に多かったと思うのです。しかし、それは確かに賠償ということもあったかもしれませんが、やはりわれわれの血税をもって充てておる。したがって、それが今後そうした後進国の経済行為のいろいろな点に生きてもらいたい、これは国民の願いですよ。ですから、相手がそういうふうな気持ちでとるからしかたがないじゃないか、そういう惰性というか、いままでそういう形で海外援助というものが行なわれてきた。基本的にいまあなたがおっしゃったそれに政府の考え方がにじみ出ておると私は思うのです。だからそういう政商との結びつき——前回にも私はそれを指摘したことがありますけれども、総理が東南アジアを回られて、そこで話をきめるとか、そういう場当たり的なことが行なわれておった。こういう点の考え方というものを根本的に改めなければいかぬ、このように思うのです。大臣、その点はどうですか。
  196. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 いまおっしゃるとおりでありまして、その点については私が転換期に来ておるというのは、そういう意味も含んでおるわけなのです。そこで、先般もインドネシアから使いの人が来たときに、まずあなたの国でみずから開発するという気を起こしなさい、もう日本にたよって、お金さえもらったらいいというような考え方では、私どもは援助いたしませんよ、まずあなた方自身でひとつ資源開発するという決意をしなさい、そういう決意があれば、日本はできるだけの援助をいたしましょう、ということを申し入れたのであります。そこで今度のインドネシアの問題でも、資源開発ということで若干資金を出すことにいたしておりますが、そういう意味で向こうがほんとうにやる気があるのかどうか。そしてまた、その資源開発することによって、向こうの国の利益になるかどうか、同時に日本に利益になるかどうかということを、よく見きわめてやっていきたいということで、従来政治的なような意味での海外援助というものは、この際一切払拭したい、こういう私考えでおります。
  197. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 先ほど私が御答弁申し上げた中に、賠償云々の件がございましたが、若干ことばが足らざるところがございました。日本政府がそういう考えであったと私は申し上げておるわけでではございませんので、いままで実は非効率であるというふうに北島調査団その他が指摘いたしております点等につきましては、相手国政府の一部にそういう考えもあり、また賠償というものの性質上、あまり日本政府が突っ込んでまいりますと、内政干渉と申しますか、そういったような感じもあって、おのずからそこにやむにやまれぬ限度というものもあったというふうな感じも、非効率になったもののうちには、一つある程度の原因があったのではないか、こういうふうに考えたわけでございます。
  198. 近江巳記夫

    ○近江委員 そこで、いまのこと大体了解できましたが、要するに、いままでのそうした海外援助というのは、結局基本的な理念がなかったと私は思うのです。ただ単なる貿易を拡大すればいいとか、あるいはもう特定の民間業者のそれを潤せばいい、あるいは相手の政治家なり業者を潤せばいいとか、そういう考え方が非常に濃厚であったように思うのです。ですからこの際、理念というか、それを確立しなければならない、このように私は思うのです。その点政府はどのように考えていらっしゃいますか。大臣にお聞きしたい。
  199. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 その点は、いま申し上げましたとおり、政治的な意味あるいは利権的な意味、そういうようなことではもう援助はしない。援助することによって向こうの国も利益するし、日本も利益するということで、純経済的な意味で援助したい、こういう考えをしております。
  200. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから先ほどの政府委員の方答えられたのですが、いままで効果をあげられなかった原因をいろいろお聞きしたわけです。現地資金の不足とか、あるいはインフレの問題とか、いろいろなことを言われたわけです。しかし私が思うのは、何か向こうが非常に悪いような、悪いというか、結局向こうが足らなかった、至らなかったというニュアンスが非常に強いように思うのです。ですからやはりこれだけの資金を投じて援助をやっていく、したがってあらゆる総合的なそういう施策をもってやっていかなければ、私は成功しないと思うのですよ。そういう点でいろいろと思うのでありますが、一つは、先ほどあなたがおっしゃった、相手国のそうした国情を非常に無視しておった、調査できておらなかった。私思うのは、そうした技術援助、この点に対してほんとうにきめこまかにどれだけ配慮されておったか、この辺も問題だと思うのです。あるいはまた、相手国は、ただ何かのプラントをしてもらえばそれでいい、そういうことではなくして、やはり貿易の拡大などを非常に望んでいるわけですよ。その辺のところの総合的な配慮に欠けておった、私はこのように思うのですが、その辺はどうですか。
  201. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 まあ開発途上国ですからして、いろいろな意味で、日本に比べると、技術的な点その他経営の能力というようなことは劣っておると見てよいと思うのです。したがいまして、せっかく日本でいろいろ技術的な援助をしましても、向こうではそれをよう運営しないというような場合——これは、私が昭和三十四年にインドネシアに行ったときに、発電所をつくったのでありますが、向こうの人ではそれをよう運転しないということを言っておりましたから、それはひとつアフターケアとして日本のほうから技師を派遣するようにいたしましょうということをなにしたのですが、そういう点においてうまくいかなかった場合もあると思います。だからして、技術援助をすると同時に、やはり日本人が行って指導するということ、これが私必要じゃないかと思うのです。で、とかくいままでは、日本人が来ると一つの経済侵略のような、そういう妄想を向こうの人は持っておりますが、われわれのほうはそんな考えはいま全然ないし、最近におきましては、向こうの人もそういう誤解もないようでありますが、以前私が十年前行ったときには、やはり日本の軍国主義というような考え方がありましたから、多少そういう警戒的な考えを持っておったと思いますが、いまではそういう考えは向こうの人にないと思います。あくまで日本に経済援助をしてもらいたいという考えをしておりますからして、これは、アフターケアについても十分考えて、そして日本は向こうにできるだけ協力して、そうして彼らがみずからの力でほんとうに開発のできるように指導する、技術援助をする、同時に必要な資金も援助をするし、あるいは経営方法についても指導するということで今後進んでいきたい、こう考えております。
  202. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま技術の問題が出ましたから、もうちょっとお聞きしますが、それじゃ、その技術協力の、たとえば研修生の受け入れとか、もう少し具体的に、わが国としてどれだけの力を入れてきたか。結局フランスやあるいはイギリス等のそういうような規模から見れば十分の一ぐらいですね、最近はだいぶよくなってきておるとは思いますけれども。その辺のところを、いま現状はどうなって、今後どうやっていくか、技術の問題が出ましたので、その点をお聞きしたいと思います。
  203. 原田明

    ○原田政府委員 先生指摘のとおり、わが国は経済協力につきましてはたいへん力を入れているわけではございますけれども、その中で特に技術協力の分野におきましては、世界の先進諸国が行なっている援助のレベルに比べますと、まだかなりおくれておるようでございます。したがいまして、日本といたしましては、今後この技術協力の分野におきましてできるだけ活発な活動をいたしまして、少なくとも世界の先進諸国が行なっている程度のレベルにはこれを上げなければならないというのが基本的な考え方でございます。  こういう考え方に基づきまして、技術協力につきましては、外務省と通産省とで、技術協力事業団の活動その他を中心にしまして、技術者の受け入れ研修、経営専門家の派遣、海外開発計画調査、海外の投資を行います場合の事前の各種の調査、それからコンサルティング活動に関します助成等々といったようなものを中心にして活動を行なっております。通産省関係で、四十三年度でございますが、ラウンドナンバーで申し上げますと、受け入れ研修だけで約五億円、経営専門家の派遣で千百万、開発計画調査八千八百万、投資等調査五千三百万、コンサルティング活動四千四百万、その他プラント協会とか商工会議所、アジア生産性本部等の活動に対します助成一億七千万といったようなものを通じまして、合計八億六千万円ばかりの予算を計上いたしております。このうち、受け入れ研修だけでも約八百人という多数にのぼっております。ただ各国と比べましたレベルでは、先生指摘のとおり、まだはるかにおくれております。この面の拡充というものを今後ますます続けてまいりたい、かように考えます。
  204. 近江巳記夫

    ○近江委員 あなた、八百人で多いと言われて、そのあと他国から比べれば低い、それで了承はしますけれども、もう一度具体的に私は明らかにしておきたいと思うのです。  たとえばフランスとかあるいはイギリスとか、その辺のところの受け入れの数はどのくらいになっておるのですか。それから派遣は、同じ年度でデータがあれば言ってください。なければ一年おくれてもよろしい。それが終わってから、通産大臣も退席されるそうですから、そのいままでの問題点、大臣としてまとめて御答弁してください。
  205. 原田明

    ○原田政府委員 受け入れの員数というような形での発表を各国は行なっておりませんので、いま直ちにここへ資料を持っておりませんが、レベルにおいてはまだはるかにおくれているという状態でございます。
  206. 大平正芳

    ○大平国務大臣 菅野大臣からお話しがありましたように、いまのわが国が行なっておる海外経済援助の問題は非常に転換期に来ていると思います。従来は賠償が主力でございまして、ぼつぼつ民間レベルの経済協力あるいは政府ベースの経済協力が並行して行なわれておりましたけれども、賠償が大半終わりつつあるわけでございまして、これから本格的な経済協力の体制を立てていかなければならない時期が来た、したがって、仰せのように、経済協力の基本的な構想というものを打ち立てなければならぬという御指摘は、まことにそのとおりであると思います。  それから、今日までうまくいかなかった原因につきましては、企画庁当局からお話がございましたそのとおりだと思いますが、なお私は、現地の政情の不安あるいは行政能力の不足というようなものを追加して申し上げなければならぬのじゃないかと思います。このことは、いま先生が御指摘の、技術援助と非常に深く関連を持っておると思います。われわれは、後進国を、私どもが概念する国、政府というようなものを頭に置いて考えておりますけれども、実際はそうではなくて、いわばまだ青写真段階の政権でございまして、行政の能力、統計の能力、それから政策を計画する能力、そういったものが不足いたしておるのでございまして、りっぱな計画ができるようになれば、その国の経済政策も実効ある実りを期待できると思うのでございまして、そういう意味で、いま御指摘の留学生あるいは研修員の受け入れ、あるいはわれわれのほうから進んで人を派遣いたしまして、そういう能力の欠陥を補っていくということに力点の一つが置かれなければならぬ、こう思います。  それから第二の点といたしまして、後進国、とりわけ東南アジアは農業圏でございます。台湾とか韓国は、工業化というようなことがやや緒についておる感がいたしますけれども、それとても、基本的には農業経済というものの基盤がしっかりしていなければ、その上に工業化を行ないましてもうまくいかないと思います。ソ連や中共が数々の失敗を重ねたというのは、結局農業問題であったと思うのでございます。したがいまして、技術協力の力点は、どうしても農業、第一次産業の基盤を造成するというところに重点を置いていくべきじゃないか。したがいまして、農業技術センターから漁業等に至るまで、いろいろわが国が予算額こそ少ないけれども、そういうパイロット的なセンターを現地につくりまして、それで現地の開発途上国を助けておりますことは、本格的な政策の趣旨にのった行き方でございまして、これをますます拡大していく必要があると思います。  それから第三の点は、教育とか衛生とか、そういう問題でございまするけれども、これまた技術協力の重点にならなければならぬ、こう考えております。しかしながら、そういうことをいろいろ考えましても、わが国の体制をどうするかという問題はしょっちゅうつきまとうと思うのでございます。わが国としては、今後、先ほど先生も御指摘のように、生産力がだんだん伸びていく、国民の所得もふえていくということになるわけでございまして、応分の海外援助を国の基本の計画として打ち立てていかなければならぬと思いますが、それは民間の企業が自発的にやるというものではなくて、政府がそれを買い上げて、それでまた政府の資金によってやるわけでございますから、政府の計画的な円資金の調達ということが勝負になるのじゃないかと思います。現在われわれが経済計画を考える場合に、輸出でありますとか、あるいは国内の消費であるとか、投資であるとか、在庫投資であるとか、財政の消費であるとか、政府の消費であるとか、そういうようなカテゴリーで分けておりましたけれども、もう一つ、やはり海外協力というようなものが一つのいすを占めるようなぐあいに、日本の経済計画もだんだん持っていかなければならないのじゃないか。そうしないと、なかなか、計画的に実のある経済協力を実行してまいるということにはいけないのじゃないか。そういう意味で、菅野大臣が言われますように、まさに非常に大きな転換期を迎えておると思うのでございまして、まさに仕事はこれからだと思うのでございます。いろいろ十分勉強いたしまして、これからの武力を持たない国といたしまして、応分の海外協力をいたす場合におきまして、過誤ないように期さねばならぬと思っております。
  207. 近江巳記夫

    ○近江委員 通産大臣、時間がなかったら退席されてけっこうです。  結局、援助行政もわが国の体制というのは非常にばらばらだと思うのですね。政府の借款にしろ、あるいは海外経済協力基金にしろ、あるいは海外技術協力事業団にしろ、あるいは民間投資にしろ、いろいろ非常にばらばらだと思うのです。そういう点、一元化はどうしてもはかっていかなければならない。しかもそういう海外援助のあり方について、国会審議には全然あがっておらぬ。それは一部、確かに賠償とかそういうような問題は当然審議になっておりますけれども、ほとんど国会の審議にあがっておらない。先日の愛知さんの話によれば、一九七〇年代の終わりには、年間五十億ドルの援助額になってくる。それは結局、名目一四%くらいの成長率を見込んでおると思いますけれども、それは皮算用になるかどうかわかりませんけれども、一応あの人の話をそのままとして、そうなってくるとすれば、そういうようなばらばらな体系じゃならない。いまこの時点でそういう一元化をはかって、やはりかなめというものをはっきりとしなければならない。そうしなければほんとうに死に金になってしまうと思う。その点、一元化についてどのようにお考えになっていますか。
  208. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 これはいわゆる役所のセクショナリズムと申しますか、海外経済協力の問題についても、外務省なり通産省なり大蔵省、それから経済企画庁がそれぞれ所管しておるのでありまして、それが日本の行政の一つの欠陥だと思いますが、しかし、また見ようによっては、各方面の知恵を集めることによってまた一つの行き方があるのではないかというようにも考えられるのでありまして、私自身はこの問題についてはそれほど神経質になっておらぬのであって、ひとつみなと協力して、そしていい知恵をしぼってやるということでいま当分は行くべきではないか、こう考えております。しかし御説のとおり、ある意味ではばらばらというような感じがしないでもない。しかし、みなよく打ち合わせをしてやっておることであるからして、みなそれぞれ単独でいろいろ行動はとっておりません。みな四者が話し合うて、その上で行動をとっておりますからして、その点の御心配はないと私は考えております。
  209. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは私らと全然違いますね。私はあまり気にしておらぬなんて大臣おっしゃっておりますけれども、よく話し合っていけば片がつくことだ、私たちはそうは見ておりません。ここでやはり一元化への強い意欲を持っておらなければならない。そんな気にしておらぬというような感覚では問題ですよ。これは先ほどおっしゃった各官庁のセクト、そういうようなことで、そんな話し合うだとか何だとか言っておったって、結局はもうまとまりのないそういうことが行なわれている。事実いままでそのような効果を出しておらないというのは、わが国の体制がばらばら行政だからです。ですからそういう点、大臣は最高長官ですから、その人がそんな気にしておらぬというような行き方では問題だと思います。その辺、ほんとうにあなたのことばどおり、そういう状態で行きますれば、私は問題だと思う。その辺のことが一つと、それから国会審議にのせるのかのせないのか。当然その一元化からくる問題ですけれども、そういう国会審議の問題。それから私、ばらばらな根本は、やはりここで立法化しなければいけない、それは仮称でありますが援助法というようなものも私は考えるべきである、このように思うのですが、いかがですか。
  210. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 ばらばらであるということについては、私自身その体験がないから、私どもが総合調整するのですから、みんながいろいろ意見を出すということはいいのです。それを私ども経済企画庁で総合調整して、それでまとめるわけです。でありますからして、ばらばらで行動しておることはないと思います。その点は御心配ないように、私のほうで総合調整するという役目を持っておりますから、外務省の意見なり大蔵省の意見なり、みないろいろ意見も違いますが、それを総合してまとめていくわけでありますから、さようひとつ御了承願いたいと思います。
  211. 近江巳記夫

    ○近江委員 それが私がいま申し上げたように、将来、愛知さんの話からいけば、一九七〇年代には五十億ドルになる。これだけの巨額の援助になってくれば、当然ここで立法化するなり何なりして、やはりかなめというものはしていかなければならない。そういう点で、仮称でありますが援助法等をここで制定するあれがあるか。あるいはこのままで、いまあなたがおっしゃるように、まだ小さな段階だから、ある程度話し合いをし、掌握もできる一われわれとしては現状はそう見ておらぬ。結局何の連携もない。ああ、君のところそんなことやっていたかということがよくあるわけですよ。これからの将来という時点において、そういう立法化あるいは国会審議に当然それを乗せて国民の前に明らかにしていくべきである。また根本的な計画をそこで立てて、そしてこちらの意向も十分に一ただ相手の言うがままになっておるようなことではまずいと思うのです。その点をまず政府委員から聞いて、それから長官に聞いて終わりたいと思います。答弁がいいかげんだったら続けますよ。
  212. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 援助の一元化問題につきまして、二つの観点から御質問があったと思います。  機構問題でありますがこれにつきましては、従来から政府部内の一部にも、たとえば経済協力庁というようなものをつくったらどうかという意見があることは先生御存じのとおりだと思います。ただ、この問題は、経済協力という分野が非常に広範でございまして、関係省庁といっても、主力はいま大臣から申し上げましたように四省庁でございますが、そのほかにも多数の官庁が関与いたしております。これらを全部一つにまとめると申しましても、それぞれの行政がバックグラウンドになっております国内の行政とまた不可分につながっております。また海外の問題もございまするので、当然貿易問題あるいは為替収支の問題、こういった問題とも不可分でございます。したがって、そういったものをかりに一カ所に集めた場合に、今度は逆に関連の行政とうまく密着したことが行なわれるかどうか、その点についての批判がやはりあるわけです。そういったことから、政府部内の一部にもそういう意見がありながらも、なおその点について今度とも十分な検討をしてみたい。そういうことでないと、ただ機構を集めただけでは、かえって関連行政が宙に浮いてしまうのではないかという批判もございますので、その点等につきましては、私どもも慎重に今後検討していく必要があると思います。  それから第二点の国会審議にかけるという問題、この点につきましてはいろいろと御批判があろうかと思います。  一つは、海外援助関係の予算を、たとえば援助関係費というようなことで一項目にくくりまして、全部が一覧としてわかるというようなことにして、予算委員会その他で審議してはどうかというような御意見もあります。この点につきましては、従来から大蔵省のほうでいろいろ検討いたしまして、今度提出いたしております予算の中には、比較的そういうことがわかりやすいようなくふうもいたしておりまして、一歩前進をいたしておるかと思います。  さらに、個々の相手国に対します協力協定と申しますか、取りきめ等について事前に国会の御承認を得るかどうか、こういう問題でございますが、この点につきましては、私ども内閣法制局等とも十分検討いたしてみたのでございますが、従来の援助の体制から申しますと、これは予算法令の範囲内で行なっておる取りきめであり、協定であるわけでございますので、特別のもの、たとえば条約というようなものを除きましては、その範囲内で行政官庁に実施をまかしていただいておる、こういう形で行なっておるわけであります。  なお、そういったことに関連をいたしまして、私どもは法律的な問題は別といたしましても、今後の海外経済協力につきましては、いままでよりも一段とこれを計画的に実施をし、また計画を総合的につくるという過程において、各省庁の間に意見のそごがないように努力を続けてまいるべきであります。また、やっていきたいと考えておるわけでございます。
  213. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 いま局長が言うたとおりの方針でいきたいと思っております。
  214. 近江巳記夫

    ○近江委員 あと一問で終わりますが、要するに、いままでの行き方として、特に大統領がかわって、日本にアジアのそうした援助を肩がわりしてくる、こういう傾向が非常に顕著でありますけれども、アメリカの行き方なんというものは、実際見ておれば、向こうの余った産物を持ってきたり、あるいは商品援助に非常にウエートをかけておる。結局それがどれだけ各国の開発に役立っておるか、こういう点が非常に問題だと思うのです。アメリカと同じようなそういう行き方をしていくのかどうか、これは重大な問題だと思う。その点、アメリカと同じような行き方をやるのかどうか、新しいそういう観点でやっていくのかどうか、それが一点。  それから、貿易の面において当然特恵関税の問題等も入ってくるけれども、わが国としては、中小企業等が非常に脅威にさらされている。その辺の調整をどうしていくか。  その二点を最後にお聞きして、終わりたいと思います。
  215. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 アメリカと同じようなやり方をやること自体、私はあまり賛成しません。アメリカのやることについて、各国ともに決して喜んでいないのであります。アメリカが援助するくらいなら日本から援助を受けるというのが、私が東南アジアを回ってきて、各国の大臣の意見です。でありますからして、アメリカのとおりやるということはどうかと思うのでありまして、われわれは、あくまで東南アジアの諸国の人はわれわれと全く対等の国民だということで、お互いがひとつ利益になるようにやりたいという考えでいきたいと思います。アメリカのやり方は多少その点は違うと思うのでありまして、ベトナムの問題などがその一例だと思うのであります。また、アメリカあたりは御承知のとおり物資が余っておる国ですから、それはまたそれで出しておりますが、日本はまだそこまでいっておりませんからして、日本としては、国民総生産の一%という申し合わせになっておりますけれども、今後は国民総生産の増加に従って海外の援助力もできるだけ増していきたいということで、これはやはり日本独特の考え方で、ほんとうに相手の国のためになるという考え方でいきたい、こう私は考えている次第であります。  それからもう一つ、貿易の面で特恵関税の問題があるし、それからたとえば韓国の進出にしても、台湾の進出にしても、軽工業で進出しておりますから、日本と競合します。そこで、私は一昨年韓国に行ったときも、向こうの副総理や何かと話して、お互いの利益になるような輸出産業を考えようじゃないかということで、いま通産省のほうでそういうように向こうとも打ち合わせしてやっておるはずであります。でありますからして、どの産業は韓国がやったほうがいい、どの産業は日本がやったほうがいいというようなことで、お互いが利益を受けるような方法をひとつやろうじゃないかということを私が提案いたしまして、日韓貿易合同委員会という名前で話し合ってやっておりますからして、これは向こうも利益を受けるようにひとつ積極的に進んでいきたい、こう考えております。
  216. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長代理 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時十九分散会