○猪崎
参考人 毛麻
輸出組合の猪崎でございます。
私が申し上げる中にはすでに三名の
参考人から
お話がありました点と多少重複する点もあると思うのですが、その点は御了承願いたいと思います。
米国における
毛製品の
輸入制限運動というものは、一九六一年の十一月に当時のホッジス
商務長官が羊毛諮問
委員会というものを組織いたしまして、ケネディ
政府に対しまして
輸入の
毛製品に対するクォータを勧告したときから問題になっておりますので、それからこの問題がくすぶりまして、
機会あるたびに表面化しておるのであります。そのつどわれわれは強硬に
反対をいたしまして今日まで来ておるというのが現状でございます。特に今回の
アメリカにおきます
繊維品の
輸出自主規制問題につきましては、すでに過般の参議院予算
委員会並びに衆議院予算
委員会におきましてこの問題が取り上げられ、佐藤総理はじめ大平通産大臣、それから愛知外務大臣から、
米国側のこの問題に対する
動きに関しまして強く
反対をし、たとえ
米国側から
繊維品の
輸出国に対する
自主規制の要求があってもこれを拒否するということを確答され、
日本政府の
反対の態度を明確に示されているのでございます。またこの
日本政府の態度は、下田大使が最近
スタンス米
商務長官を訪れられましたときに、本問題に関しまして
日本政府の
反対態度につき強い申し入れをされたことも皆さん御
承知のとおりでございます。
この問題につきましては、欧州
各国におきましても、
日本と同様に強く
反対をしておるのでございますが、
米国側におきましては、
繊維品の
輸出自主規制提案を断念せずに、さきには
ニクソン大統領が欧州を訪問する、それに引き続きまして、今度はいわゆる大型ミッションとして
スタンス商務長官をはじめ
アメリカの
政府関係首脳、各省の要人が四月の十一日から四月の二十六日の間に
ヨーロッパを訪れまして、貿易
拡大の
目的をもって、貿易障害の撤廃ないしは緩和につきまして、欧州
各国の首脳並びにEEC、
ガット、OECDのトップと会談をいたし、これらの問題の
解決をはかろうとされておるのであります。特に今度のミッションの中に、先ほどから
お話のあります
LTAすなわち
国際綿製品長期協定に関する問題以来ずっと
繊維問題と取り組んできておられるベテランのニーマー、商務次官補代理なんですが、この方が今度のミッションに加わっておられます。このことは、
米国側がこのたびの訪欧を
機会に
繊維品の
輸出自主規制の地ならしをはかろうとしている意図を持っていることを明らかに示しているんじゃないかと考えられます。常に世界の平和と繁栄を唱え、自由貿易の理念のもとに、ケネディラウンドによる関税一括引き下げを通じて世界貿易の
拡大を強力に推進してきたこの
米国が、こういう
措置に訴えるということはまことに遺憾でありまして、われわれは了解に苦しむのでございます。特に
米国の
繊維産業は、先ほどからも御指摘がございましたように、売り上げ、
利益率、生産、いずれをとってみましても、昨年は過去の記録的年でございました一九六六年を上回っております。そうして今年もまたさらに成長を示すであろうと指摘されております。したがいまして、
米国が
輸入制限を必要とする正当なる経済的
理由は全く認められないのであります。
皆さんも御
承知のとおり、
ニクソン氏が今度
大統領に当選されましたのは、南部の北南のカロライナ州における特別の協力により
ニクソン票がふえたということであり、これが決定的な要因になったと私は聞いておるのでございます。その
ニクソンさんが
選挙中に国内
繊維産業の
保護ということを公約されておるのであります。
米国における
繊維業者保護の問題につきましては、これは
ニクソン大統領のみならず、ケネディ
大統領、ジョンソン
大統領も
選挙中に何らかの公約をしたのでございます。
ニクソン大統領は就任後初めて二月の記者会見におきまして、本問題を取り上げたのであります。これにより
繊維の
自主規制問題が表面化してまいったのでございます。特に
繊維品の
輸出自主規制につきましては、先ほど申し上げましたニーマーさんを同席させまして、
スタンス商務長官は欧州並びに
米国に対して極東、すなわち
日本、
香港、韓国その他の低価格国からの
繊維品の
輸入が増加しているので、これを抑制したい。これを検討するために、ジュネーブに
ガットの加盟国を招集し、そこでこの問題を検討してもらいたいと申しておるのでございます。
日本製の毛織物は、先ほど御指摘ございましたように、すでに
米国の
関税委員会の
報告書の中で、
日本製の毛織物の平均ランデッド価格は一アール当たり四ドルであって、
米国製の毛織物の平均卸売り価格を上回っておると証明されているのでございます。また、
日本から
米国へ
輸出されております毛織物は絹入りの毛織物か、薄手の高級品がおもでございまして、現在
米国で生産されていない品種で、
米国の国産品との競合はほとんど起きていないのでございます。また
日本の
米国向け毛織物の
輸出は増加しておりますが、これは
日本製品が優秀であって、関係
業界の絶えざる努力と研究の結果、
米国における流行をリードして
需要の増加をはかったということの結果でございます。
特に私はここで申し上げたいのは、
米国はベトナム戦争以来膨大な戦費の
拡大、内需の旺盛、そうしてインフレという傾向になっておりますが、
日本からのこういう
輸出があればこそ、その
需要は満足された、ここまで申し上げても、私は決してわれわれとしてはいばっておるのではないと考えているのであります。私はこの点におきまして、
アメリカがしょっちゅういう、
日本がイコール・グッド・パートナーとしての責任を果たし得るのではないか、まあこういうふうに考えておる次第でございます。
わが国の羊毛関係三団体は、
米国の
毛製品の
輸入制限問題に対処をいたしまして、先ほどから申し上げておりますように、ずっと
反対を続けてきたのでございますが、一九六〇年以来、この問題に強く
反対を続けております。特に一九六五年一月、皆さんも御記憶があると思うのですが、佐藤総理がジョンソンと会談をおやりになるために訪米をされました。その前にも、
毛製品の
国際協定反対ということにつきまして、総理に特別陳情をいたしたのでございますが、結局、五月には日米会談ということになりまして、当時のクリストファーを団長にいたしまして、労働省のブラックマン、それから先ほど申し上げました商務省のニーマーさん、それから
業界代表のダーマンさん、こういうお歴々の方が東京へ来られまして、われわれと激論をやりまして、その結果、話はまとまらずに決裂と相なったのでございますが、われわれの
主張が正しかったがために、今日まで毛の対
米輸出は成果をあげてきたと考えております。羊毛
産業界では、この問題につきましては引き続き
反対の態度を続けております。過般三団体が連名で陳情を申し上げたのは、何も新しい
反対の陳情ではなくして、従来の
反対の再確認でございます。そしてわれわれは、
政府首脳並びに通産、外務、企画庁の各担当首脳に対しまして、この点を強く陳情いたしておる次第でございます。先ほ
ども御指摘ございましたように、
米国の意図する
自主規制方式といいますのは、実質的には
政府の
規制の導入が必要でございまして、明らかな
輸入制限でございます。これは
国際綿製品長期協定の歴史的事実にかんがみても明らかなことと私は考えております。特に
国際綿製品長期協定の第一条には、この
規制は
綿製品以外の商品には及ぼさないということを明示しているのでございます。したがいまして、このたびの
米国が意図するような
輸入制限方式が
ガット違反となることは明確でございます。
日本も
米国もともに真剣に世界貿易の自由
拡大をはかることが、世界の平和と繁栄につながることになるわけであります。そして
ガットの
精神に徹してこそ、世界貿易が
発展するのであると私は考えております。したがいまして、
アメリカ側におけるこういう構想の実現を阻止するためには、われわれ
業界は一丸となって
反対することはもちろんのこと、
政府におかれましては、関係
各国と密接な連携をとっていただきまして、
米国側で考えておられる、こういう理不尽な構想というものを断念させるように、強力な経済外交を展開していただきたいと考えております。それには本問題と真剣に取り組んでおられますこの商工
委員長はじめ諸
先生方の特別の御協力を
お願いしたいと考えておる次第でございます。
なお
ニクソン大統領が
ヨーロッパに参りました後に、われわれの顧問弁護士であるダニエル氏が
ヨーロッパを回りましたが、彼の得た印象では、
ヨーロッパ側も、
アメリカから
スタンス大型ミッションが来ても、こういう
交渉には応じられないという大体の見通しを得たと言っています。しかしながら、特別に私に宛てた電報で
主張いたしておりますのは、エニイ・サイン・オブ・ジャパニーズ・ウイークネス・クッド・ビー・ペリー・デインジャース、もしここで
日本が腰砕けになったらあぶないよ、ということを特に私のほうに電報を打ってきておりますので、どうかこの
アメリカの
自主規制問題につきましては、徹底的に
反対していただきたいということを
お願い申し上げまして、私の
意見を終わりたいと思います。ありがとうございました。(
拍手)
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