運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1969-04-01 第61回国会 衆議院 商工委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年四月一日(火曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 大久保武雄君    理事 宇野 宗佑君 理事 浦野 幸男君   理事 小宮山重四郎君 理事 藤井 勝志君    理事 武藤 嘉文君 理事 中村 重光君    理事 堀  昌雄君 理事 玉置 一徳君       天野 公義君    内田 常雄君       遠藤 三郎君    小笠 公韶君       小川 平二君    大橋 武夫君       海部 俊樹君    鴨田 宗一君       黒金 泰美君    小峯 柳多君       坂本三十次君    島村 一郎君       田中 榮一君    橋口  隆君       増岡 博之君    石川 次夫君       加藤 清二君    勝澤 芳雄君       佐野  進君    千葉 佳男君       中谷 鉄也君    古川 喜一君       武藤 山治君    塚本 三郎君       吉田 泰造君    近江巳記夫君       岡本 富夫君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     山田 精一君         公正取引委員会         事務局長    柿沼幸一郎君         法務省人権擁護         局長      上田 明信君         通商産業政務次         官       藤尾 正行君         通商産業省企業         局長      大慈彌嘉久君         通商産業省企業         局立地公害部長 矢島 嗣郎君         通商産業省重工         業局長     吉光  久君         通商産業省鉱山         石炭局長    中川理一郎君         特許庁長官   荒玉 義人君         運輸省港湾局長 宮崎 茂一君         運輸省鉄道監督         局長      町田  直君  委員外出席者         警察庁警備局警         備課長     丸山  昂君         法務大臣官房訟         務部参事官   河津 圭一君         文部省社会教育         局青少年教育課         長       山中 昌裕君         厚生省環境衛生         局公害課長   橋本 道夫君         厚生省社会局施         設課長     大和田 潔君         通商産業省重工         業局次長    山下 英明君         労働省労働基準         局監督課長   細野  正君         労働省労働基準         局安全衛生部長 山口 武雄君         自治省財政局地         方債課長    山本 成美君         日本国有鉄道常         務理事     小林 正知君         専  門  員 椎野 幸雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  小委員会設置に関する件  通商産業基本施策に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 大久保武雄

    ○大久保委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済総合計画に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。中谷鉄也君。
  3. 中谷鉄也

    中谷委員 本日、私は数点の質問の通告をさしていただきましたが、ただいまからお尋ねをいたします住友金属和歌山製鉄所埋め立てに伴う問題一点にしぼりまして、あとの問題については質問をいたさないことにいたします。私がこの問題一点だけにしぼって、特に理事会お願いをいたしまして、問題としてはいわゆる地元問題ではございますが、最初質問機会を与えていただきましたのは、次のような点からであります。  公害対策基本法の中には、経済の健全な発展生活環境保全については十分な調和がはかられなければならないということが明定されているわけであります。そこで、そのような基本的な立場に立ちまして、私がきょう各省の御答弁をいただきたいと思います住友金属和歌山製鉄所埋め立て問題と申しますのは、住友金属企業拡張に伴いまして埋め立て申請昭和三十二年以来いたしまして、次々と海岸の公有水面埋め立ててまいりました。ここに和歌山市と海南市の地図を持ってまいりましたけれども、すでに北部臨海工業地帯発展に伴いまして、和歌山市には非常にきれいな海水浴場がありましたけれども、いまは磯ノ浦海水浴場といわれているただ一つ海水浴場が残っているわけであります。そうして、住友金属立場から申しますと、いわゆる第二工区なるものの埋め立てが完了いたしまして、現在埋め立てについての是否、可否が論ぜられておるのはいわゆる第三工区の埋め立て問題であります。そこで、地元住民は、その第三工区が埋め立てをされたならば、ただ一つ最後海水浴場和歌山にはなくなってしまう、こういう悲痛な叫びをあげているわけであります。御承知のとおり、経済発展工場拡張に伴いまして、堺臨海工業地帯の造成により、大阪府から和歌山県に至るいわゆる泉南地方におけるところの海水浴場というものはすでにその機能を麻輝いたしております。さらにまた、聞くところによりますると、兵庫県の須磨、明石等海水浴場もかなり汚濁しているということがいわれております。ですから、大阪和歌山の何百万という人たちで利用できる海水浴場はこの磯ノ浦海水浴場だけでしかない、こういう問題であります。だから、問題は、生活環境保全経済の健全な発展、まさにこのような海水浴場を保存していくということは生活環境保全という、公害対策基本法公害というものに直接当たらないといたしましても、私は一番大事な問題であろうかと思うのです。  そこで、そういう埋め立てをすべきでないという人たちの集団の中で、昨月の四日にハンガーストライキに入った人がおります。名前は宇治田一也君というのでありますけれども、すでにきょうは四月の一日でありますけれども、いまなおハンガーストライキを続けております。体重が一五%低下をいたしましたならば生命に危険があるということをわれわれは医師から聞いておりまするけれども、当然ドクターストップがかけられているわけでありまするけれども、この問題については、先祖伝来伝わってきたきれいな海をどうしても守りたいということで、ハンガーストライキに入っておる西庄といわれておるこの宇治田一也君の地元住民人たちは、昼御飯を食べたり晩御飯を食べたりするときに、はしをとる場合にもったいない気がすると言って涙を流して私に訴える、こういう状態であります。したがいまして、私は、本日この委員会においてお尋ねをして、政府からいただきました御答弁をただちに宇治田一也君に伝えて、こういうふうな答弁があった、政府はこういうふうに処理されようとしておる、したがって、人命尊重観点から少なくともハンガーストライキだけは解くべきだ、こういうことを私は勧告しようと考えております。そういうふうな意味で、私は、さっそくお尋ねをいたしたいと思いますが、まず最初通産省お尋ねをいたします。  いわゆる住友金属和歌山製鉄所埋め立て問題というのは、すでに地元では数年越しの紛争でありますけれども、この問題について、和歌山県当局あるいはまた住友金属和歌山製鉄所などから通産省に対して行政指導を求めてきたというふうな事実はあるのでしょうかどうか、この点についてお答えをいただきたいと思います。
  4. 藤尾正行

    藤尾政府委員 お答えをいたします。  まことに事人命に関するような問題につきまして、中谷委員が悲壮な覚悟でごあっせんを願っております御努力に対しましては、ほんとうに心から感謝をし、敬意を払いたいと思います。  お尋ねでございますけれども通産省行政指導をしてもらいたいという会社側並びに地元側の要請はいまだございません。御案内のとおり、ただいまはまだ県の議長が委員長となっておりますあっせん委員会といいまするものがこの問題の処理に当っておるという段階でございまして、さようお答えをさしていただきたいと思います。
  5. 中谷鉄也

    中谷委員 紛争一つの焦点は、はたして住友金属和歌山製鉄所にとって第二工区——すでに埋め立てされた第二工区でございますね。この第二工区が企業のためにどうしても必要欠くべからざるものであったかどうか。すでにこの第二工区の上は建物が建っておりますが、さらにまた第三工区がはたしてどのようなものであるのかというふうな点について、これは当然通産省に対して県などは、会社言い分を聞くだけではなしに、行政指導を仰ぐことが適切であったと私は思うのです。この点について、重工業局のほうからひとつお答えをいただきたいと思います。そういうふうなことについての指導を求めてきた事実があるかどうか、いかがでございましょうか。
  6. 山下英明

    山下説明員 お答えいたします。第二工区には現在ビレット工場と称する丸棒加工工場建設中でございます。この工事計画につきましては、特に通産省のほうに連絡はございませんが、私どもとしては設備計画全般として地元の問題を解決して進めておるものと了解しておった次第でございます。
  7. 中谷鉄也

    中谷委員 埋め立て申請によりますると、本件埋め立てがどのように利用されるかということについては、そのつど変更が行なわれているようでございます。したがいまして、地元住民がどうしても納得できない、非常に不満に思っている。これはあと運輸省にもお尋ねいたしまするけれども、いまを去る十二年前、昭和三十二年ごろから住友金属埋め立て工事というものは始まっているわけでありますけれども、たとえば昭和三十六年には、松江地先護岸工事なしの埋め立て工事を始めたとか、あるいはまた第二工区の埋め立てについては、免許がないのにすでに埋め立てに着手をしたとか、そういうふうな問題が次々と続発をしている。地元住民住友金属和歌山製鉄所に対して、埋め立て問題を通じまして不信感を持つのはやむを得なかった仕儀であると私は思うのです。そういうことで現在住友金属和歌山製鉄所と、そして関係自治会全部で十三自治会ございますけれども、どうしてもこの埋め立てについては納得ができないといっている自治会が八自治会。念のためにこの機会に申し上げておきますけれども、これは海水浴場業者とか、補償をもらうところの漁業者ではないのです。サラリーマンであるとか、あるいはお医者さんであるとか、もと市役所の課長さんであるとかいう人たちなんです。こういうふうな埋め立てがいけないんだという運動を起こすことによりまして、ある人のごときは、何百万という自分私財をほうり出しておっても、自分利益には一銭にもなっていない。一銭の補償金というものを目当にしての運動ではございません。そういうふうな中で、そういう八自治会、あえて反対派と申しますけれども、この人との対話ということが私は大事だと思う。住友金属和歌山製鉄所が、ことにその和歌山製鉄所首脳部会社幹部の人が、これら地元住民と会って対話をして、正式に交渉して、何といっても和歌山という地域におけるところの最大企業でありまするから、そこで話し合いをする、そうして埋め立て問題についても話を詰めていく、こういう態度が私は大事であろうかと思いますけれども、なかなか会社幹部においては、この地元反対派人たち話し合いをしようとばしない、こういう状態であります。もちろん会社言い分といたしましては、先ほど政務次官のほうから御答弁がありましたように、県の議会のあっせん委員会のほうに一任しているんだ、こういうことでありますけれども、こういうふうな地元最大企業と、そうして地元住民との間に意思が、疎通しないということはきわめて残念なことだと思うのです。この問題について意思を疎通させるために、ぜひとも住友金属会社幹部地元住民との対話、交渉、会談が必要だと私は思いますけれども、この点について通産省として何らかの措置を私はお願いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  8. 藤尾正行

    藤尾政府委員 まことにごもっともで、かつ御熱心な中谷先生の御意見でございます。ただいま仰せのとおり、県のあっせん委員会がやっておるわけでありまするけれども、県のあっせん委員会頼みつばなしにしておるということ自体が、意思の疎通を欠いておる、欠く原因になっておるということは、私どもが考えましても、わかるような気がいたします。したがいまして、こういった長い間の紛争をできるだけ早く解決をし、地元方々にも十二分に御納得をいただく。会社側にいたしましても、その御納得をいただいた上で仕事をやっていくということが利益だと思いますので、せっかくこういった機会でございますから、こういった機会をとらえまして、私どものほうからも会社側によく言い含めまして、県のあっせん委員会だけにたよることなく、できれば県委員会の立ち会い、地元方々の御要望に沿って、私どももできれば仲立ちをさしていただいて、そして会社側地元側との直接の話し合いができまするような機会を設けまするように説得をいたしたい、かように考えます。
  9. 中谷鉄也

    中谷委員 宇治田一也君という三十日を過ぎるハンストをしておる人の一つの願いも、住友金属和歌山製鉄所会社幹部の人と話をしたい、この点であります。いま政務次官からお話がありましたが、私は宇治田一也君にこの話をさっそく伝えたいと思いますけれども、この点についてはひとつ強力なあっせんを私は希望してやみません。   〔委員長退席小宮山委員長代理着席〕  次に、次のようなことをお尋ねいたしたいと思います。要するに問題は第三工区、すなわち三百六十一メートル磯ノ浦海水浴場寄りに突き出していく、その幅は五百十八メートル、これが第三工区の埋め立て計画になっておるところの範囲でございますね。問題は、すでに会社が言明をいたしておりますのは、この磯ノ浦海水浴場保全をするんだ、こういうことでありまするけれども、まず最初お尋ねいたしたいのですけれども住友金属和歌山製鉄所が、第三工区の埋め立て希望して申請をしておる。しかし磯ノ浦海水浴場という和歌山ただ一つというよりは京阪神で一番りっぱだといわれておったこの海水浴場については保全をします、こういうふうに会社確約をしておるということについては、昨日から通産省に私はいろいろなことをお願いしましたが、そういう確約会社側にあるということについては、御承知いただいておるのでしょうか。この点はいかがでありましょうか。
  10. 山下英明

    山下説明員 海水浴場保全する約束をしていると聞いております。私どもが拝見した契約書では、小中学校のプールの建設、その他児童施設について、住友金属側契約約束しておりますので、文言はございませんけれども約束しておると思っております。
  11. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、これは全く常識問題でありますけれども、念のために申し上げておきますが、海水浴場保全するということは、ただその海水浴場の場所が埋め立てられないなどということではないと思うのです。要するに、海水浴場として非常にきれいな海です。白い砂浜なんです。遠浅のところなんです。そういう状態保全されることというふうに住民は理解するし、何といってもこれは日本の大企業なのですから、私はそういうふうなお約束があったと思う。そういたしますと、先ほど次長のほうから御答弁がありましたように、この第二工区を埋め立てをするときに、はたして第二工区が必要なのかどうかについて慎重な検討をすべきだったと私は思う。しかしそれにしても、第二工区というものを埋め立てをして、そこに建物を建てて第一期工事が進んでいる、こういう状態であります。しかし問題は、会社側のそういう約束というのは、第三工区の埋め立てというのは、海水浴場保全ということとかかわってくる。そうすると、現在第三工区の埋め立てによる海水浴場への影響というものについて、会社のほうは潮流等関係調査をしておるようでありまするけれども、この調査の結果、海水浴場機能を果たさないような影響を与えるということになってまいりますならば、ひとつ第三工区の埋め立て権放棄を含めてあらためて再検討されることが、約束を守る会社側立場だというふうに私は思いますが、そういうふうに通産省としては御理解いただけるかどうか、またそのような点について住友金属和歌山製鉄所に、大企業としての社会的な責任、住民に対する一つの奉仕という観点において行政指導をいただけるかどうか。これはぜひとも私はお願いいたしたい。この点についてお尋ねをいたしたいと思います。   〔小宮山委員長代理退席委員長着席
  12. 藤尾正行

    藤尾政府委員 ただいま重工業局次長から申し上げましたように、会社側では、仰せのとおり海水浴場保全をするということをお約束申し上げておるということでございます。したがいまして、たとえ直接その海水浴場に御迷惑をかけるということでなくて、潮流その他の関係海水浴場状態が変わってくるということになりましても、それは海水浴場に対しまして御迷惑をかけることでございますから、会社のお約束といいまするものに触れていくだろう、私はかように解釈すべきだと思います。したがいまして、そういう事実が調査の上に出てまいりましたならば、当然私は、こういう海区と申しますか、そういったところの埋め立て権利許可等は私どもの権限ではございませんけれども、しかしながら製鉄事業といいまするものは私ども所管でございますから、私ども所管下にあります住友金属がそういうお約束をして、そうして調査の結果、ほんとうにそれがお約束にたがうのだということが明白になりましたならば、その埋め立て権利を取得しておられようとも、そういったお約束を守らないで工事を進めていくということにつきましては、私どもはこれを見過ごすわけにはいかないだろう、かように思いまするので、そういった事実が出てまいりましたならば、会社側に申しまして、そうしてその計画を変更させるなり何なり適切な措置をとらせたい、かように考えます。
  13. 中谷鉄也

    中谷委員 政務次官の御答弁で、一点だけいまの点について追加をしてお尋ねをさせていただきたいと思います。  要するに、通産省に私たちお願いをし、行政指導を求めたいのは、もう海水浴場に対してそういう約束があるのだから、海水浴場にそういう影響があるということであるならば、住友金属としては第三工区の埋め立て権放棄ということをも含んで、そこまでも含んで大企業立場に立って検討をすることを行政指導していただく、こういうふうな趣旨として私はお伺いいたしたいのでありますが、いかがでありましょうか。
  14. 藤尾正行

    藤尾政府委員 中谷先生の御希望が、埋め立て権全体を一〇〇といたしましたときに、それがどの程度影響いたしますかという事実調査の結果にもよりますけれども、一〇〇%にこれがいけないのだということになりますれば、もちろんその一〇〇の埋め立て権利といいまするものまでを含めまして考えさせなければならぬ、かように考えます。しかしながら、事態が、調査によりましてそれが一〇影響するんだということであれば、当然その一〇〇の埋め立て権の中の一〇なり二〇なりといいまするものをやめろというような勧告のしかたもございましょうし、指導の方法もあると私は思います。したがいまして、オール・オア・ナッシングであるというものの考え方でなくて、その間に適切な、しかも実情に沿って地元民の御納得を得られるような解決策といいまするものを御指導申し上げるということが私どもに与えられました仕事ではないか、かように考えます。
  15. 中谷鉄也

    中谷委員 重工業局のほうにお尋ねをいたしておきますが、県のほうも入りまして、とにかく現在のところは第三工区の工事については進めないということについての話に相なっているということは、事情御聴取いただいていると思います。だから、問題は政務次官のほうから御答弁をいただきました問題の調査でございますが、先ほどから私何べんも申し上げておりますように、一銭の利益を求めようとして埋め立て反対をしている人たちではないのです。自分の持っておるたんぼなどを売って、一人の人のごときは三百万近くの私財をなげうって、そうして先祖伝来の、自分親代々住んできたここの村のきれいな松を守りたい、海水浴場を守りたい、きれいな砂を守りたいと、全くわれわれのような人間から考えましたならば考えられないほどの純粋なこれは運動なのです。  そこで調査の件でございまするけれども、そういう人たちでございまするから、これまたみずからの私財をなげうって、適当な研究者であるとか、大学なり、そういうところへ地元住民としてでも調査の依頼をする機会を私は求めたいだろうと思うのです。したがいましてその影響調査というのは、単に会社調査だけではなしに、これは現に会社住民との間に非常な不信感があるわけですから、会社調査をされて、はいけっこうです、よかったです、影響ありませんということだけではいかぬと私は思うのです。そういうふうな調査をする機会も私は当然あってしかるべきだと思うのですが、次長さんいかがでしょうか。
  16. 山下英明

    山下説明員 私どもが聞いております現在の調査は、会社側大阪市立大学にお願いしていると聞いております。県のあっせん委がその調査を依頼したものか、どれだけの公証力といいますか、そういう公の求めに応じてやっておる調査か、まだ私どもも詳細を聞いておりませんが、潮流影響についての調査であり、その結果もまた大きな効果を持ちますので、その大学の調べはもとより、ほかの方から調査をなさる場合も、その妥当性公証力について十分注意を払う必要があるだろう、こう思っております。
  17. 中谷鉄也

    中谷委員 政務次官に私は最後に一点だけお尋ねをいたしたいと思います。お尋ねというよりも、これは要望を申し上げたいと思うのです。と申しますのは、こういうふうな紛争は非常にふしあわせなことでありまするけれども、こじれにこじれました。そういうようなことで、先ほど申しましたようなドクターストップがかかっているけれども、なおハンストをしている、こういうような状況であります。私は、先ほどからの次官の御答弁については、正確に地元住民と本人に伝えまして、紛争正常化というものをはかるために努力をいたしたいと思いますが、地元住民のいま一つ希望は、これは非常に大きな希望でありまするけれども、こういう問題について、先ほどから申しておりますように、当事者である住友金属和歌山製鉄所などが会おうともしない。またいろいろな問題について、県との関係も若干こじれました。そういうふうな中で、ぜひ通産大臣、そうしてまた御出席をいただいている政務次官、これらの方々に、地元代表と申しましても、大ぜい押しかけてくるわけではございません。ひとつ切々たる気持ちと実情とをお聞きとりいただきたい。こういうようなことを希望いたしているわけです。この点については、いろいろなむずかしい問題もあろうと思いまするけれども、ぜひともそういうようなことについての御所見を、私はこの機会に承りたいと思います。
  18. 藤尾正行

    藤尾政府委員 ただいま先生仰せのとおり、もし地元方々が、大臣に会って話を聞きたいということでございましたならば、私は万難を排して、大臣にそのことを伝えまして、大臣に会わせる時間をつくります。したがいまして、どうか先生におかれましても、地元方々に、通産省は、大臣であろうと、私以下係の者も、常に、地元方々がおいでになられるということでありましたならば、十二分に御意見を承る機会をつくりますということをお伝えをいただきたいと思います。
  19. 中谷鉄也

    中谷委員 私自身、こういうふうな一人の人が生命の危険にさらされているということではありまするが、こういう問題について、いろいろな点の要望なり措置お願いをいたしまして、非常に恐縮をいたしておりますが、あと運輸省お尋ねをいたしたいと思います。  この西脇地先の埋め立て問題年次表なるものの資料は差し上げましたが、これを見ておりまして、公有水面埋立法というのは大正十年に制定された法律であって、かなり現状に沿わないものがあるのではないか、こういう感じがいたしました。こういうふうなことも、私は今度の紛争一つの遠因をなしているというふうに思うわけですけれども、この点についての御所見を承りたい点が一点。  いま一つは、純然たる法律問題としてお聞きをいたしますが、要するに、公有水面埋立法によって、漁業権者に対しては漁業補償をしなければなりません。漁業補償するその場合に、その埋め立ての範囲についての錯誤があった。漁業補償したその対象たる埋め立ての範囲はここなんですと言ったその範囲に錯誤があった。逆にいうと、埋め立て地をかりにA、Bといたしますると、Aだけしか埋め立てないんだということを説明をした。こういうふうな場合は、これはいわゆる民法にいう重大な錯誤に当たると思うのですが、本日、もうあまりそういうことを、詳しいことは申し上げませんけれども、自由裁量の問題であるとか、行政行為の無効とか、取り消し問題などについて、昨日から運輸省の方ともいろいろなお話をいたしましたが、要するに、埋め立ての範囲について重大な錯誤があった。ここの地区は埋め立てませんですよと言った、そこが埋め立てされておるというようなこと、それが重大な錯誤だということが証明されたというふうな場合には、行政行為としての免許そのものも取り消しあるいは無効、少なくとも取り消しの対象になるということも公有水面埋立法の解釈としてあり得ると思いますが、現実のこの問題はどうだこうだということになってまいりますと、非常に長く議論をしなければなりません。地元における一つの問題点でもありました。この点についての法律問題として、港湾局長さん御出席いただいておるようでございますからお答えをいただきたい。
  20. 宮崎茂一

    ○宮崎(茂)政府委員 お答えいたします。公有水面埋立法というのは、御承知のように、大正十年にできた法律でございまして、かたかなの非常にわかりにくい法律であります。御承知のように、この法律は、地方公共団体の長に埋め立ての免許権をゆだねておるわけでございます。つまり機関委任の事務でございまして、私ども国の機関は背後にございまして、消極的にこの地方公共団体の長を監督するという立場にあるわけでございます。したがいまして、いろいろいまお話がございましたが、時代に即しないのではないか、そういうような御意見でございましたが、現在のところ、私ども、この法律の疑義と申しますか、いろいろな問題点があるわけでございまして、その点につきましては局長通達その他で補完をいたしております。お話しのように、かたかなの法律でもある、あるいはまた非常にわかりにくい法律でございますので、私どもは、これは建設省が主管になりますが、建設省と一緒にこれから検討をいたしたい、そういう改正の必要があるということであればこれから検討いたしたい、かように考えておるわけでございます。  それから第二点の埋め立ての出願のときに漁業補償について、その範囲について非常な錯誤があった場合にはどうするのかという問題でございます。公有水面埋立法によりますと、補償とかいうことではなしに、そこの水面に対して権利を持つ人の了解があれば埋め立ての条件が成り立つわけでございます。したがいまして、補償の額とか、そういうことではございません。また、補償といいましても、その影響するところがどのくらいになるか、現実にその埋め立てをする範囲とそれから影響する範囲というものもございますし、そこらあたり、先生の御質問の内容を理解しかねますが、そういう点でございますれば具体的な問題になってまいるわけでございますが、埋め立てのそういう権利を持っている人が賛成をすれば、それで条件は満たされる、かように考える次第でございます。
  21. 中谷鉄也

    中谷委員 こういうことです、私がお尋ねしましたのは。要するに、埋め立ての範囲について錯誤があった場合——補償の額を言っておるのじゃないのです。埋め立ての範囲について錯誤があったということになれば、その範囲が倍も違ったとかいうふうなことになれば、それは重大な錯誤ということになるだろうと私は思う。そういうことは間違いでございますね、思い違いですね。それで、そういうふうなことで重大な錯誤だ、あるいは欺罔されたというふうな場合には、そういうふうなことに基づいて公有水面埋立法にそういうことの取りきめがあるわけだから、そういうことを条件として申請をしていくわけですから、その免許そのものの効力も取り消しの対象になるのではないかという問題。本件の問題についてそこが一つの争点であったわけですが、事実問題についてどうだということば私はきょうは申しません。法律問題として取り消しの対象になると私は思いますが、いかがでしょうか、こう聞いているのです。
  22. 宮崎茂一

    ○宮崎(茂)政府委員 埋め立ての面積につきまして重大な錯誤があった場合に、行政庁がこれを認可した場合、つまり県知事が公有水面埋め立てを認可した場合、それがすぐ公有水面埋立法によって取り消せるかどうか、こういう問題だと思いますが、これはやはり一たん行政庁が認可したものでございますから、私は法律的な知識は多少欠けておりますけれども、行政裁判所とか——行政裁判所はいまございませんけれども、やはり行政庁の認可を無効にするような訴え、そういったものを起こして裁判で争うべきではないか、かように考えております。
  23. 中谷鉄也

    中谷委員 これで局長さんに対する質問はございません。  そこで、この機会お尋ねをいたしておきます。厚生省と労働省と、それから文部省にお尋ねをいたしたいと思うのです。通産省の立地公害部長さんにもお尋ねをいたします。先ほどから私が何べんも申し上げておりますように、何といっても住友金属和歌山製鉄所というのは和歌山における最大企業であるし、この企業和歌山の地域社会に与えておるところの影響というものははかり知れないものがある。そうしてそういうふうな影響、プラスの影響というものを無視するということは絶対にできない。ただしかし、最近聞くところによりますると、静岡県の三島と岡山県の水島、そうして和歌山市、この三つがいわゆる三大公害地になっていくだろうというふうなことを言う人もいる、そういう状態であります。要するに、本件の埋め立て問題が非常にこじれにこじれたのも、従来、住友金属住民との間に公害をめぐってのいろんな問題があったと思うし、労働災害をめぐっていろんな問題があったと思うのです。  そこで、まず通産省の矢島立地公害部長さんにお尋ねをいたしまするけれども、特に注目をしなければならない住友金属公害というのは一体どんなものがあるのか、この点をお尋ねをいたしたい。特に、最近亜硫酸ガスではなしに硫化水素による被害を訴えている人がかなりおります。地域住民の中でも、頭が痛い、目まいがする、いらいらする、どうも亜硫酸ガスではなしに硫化水素だということをみな言っている。この硫化水素はノロに水をかけたときに発生をするようでありますけれども、この硫化水素の発生を防ぐために千二百トン程度の水をかけるということを住友金属計画をしているということでありまするけれども、一体そんなことで硫化水素の発生が防げるんだろうかどうだろうか。この点ひとついかがなものでございましょうか、お答えをいただきたいと思います。
  24. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 こういう大きな工業地帯につきましては、公害問題といたしましては、亜硫酸ガスもしくは粉じんというか、ばい煙問題、これが第一であります。それから次が、当然のこととして、相当の工場排水がありますから、それの水質汚濁の対策、それから三番目に騒音、こういうふうな煙の関係、水の関係、騒音、こういうものが一般的に起こるわけでございますが、この点については詳細な説明は省略いたしますけれども、おおむね諸般の対策が講ぜられておりまして、それほど大きな問題は私はないのではないかと思います。  しかし、先生御指摘のとおり、住友金属和歌山につきまして、最近注目すべき公害問題といたしましてはやはり硫化水素の問題だ、こういうふうに思うわけです。先生全部御存じですから、こまかい点は省略いたしますけれども、高炉から出る鉱滓が一日三千トンもあるわけで、それは熱いから水をかける、そういたしますと、鉱滓の中の硫黄分と水とが化合して硫化水素ができる、こういうことでございますが、従来、夏場におきましてこの硫化水素について住民の苦情が相当あるわけでございまして、県としても五カ地点において調査をいたしているわけです。もちろん県の条例の基準がございまして、条例の基準から見ますればはるかに低いわけでございますが、いずれにしても、これは健康に直接被害があるかないか別として、悪臭を伴うわけで、これは生活環境保全という関係からいっても何らかの対策を講じなければならぬ。そこで、先生の御質問の水の量をふやすという話で、いままで一時間百五十トンの水をかけておったのですが、これを千二百トンの散水量にするというために、千八百万円の資金をかけて設備工事中でございまして、五月末には完成いたします。ちょうど六月ごろから南風が吹きまして、これが市内に影響を与えるわけでございますので、この五月末までに完成いたしまして、ことしは去年起こったような苦情がないようにいたしたいと思っているわけでございます。なお、そのために、必要に応じて通産省としては公害防止事業団からの融資の対象にして融資することも検討しているわけです。  結論から申し上げまして、御質問の千二百トンにすればほんとうに防げるのかどうか、こういうことでございますが、私どもとしては、去年のような苦情はないことになるというふうに思っております。
  25. 中谷鉄也

    中谷委員 立地部長さんに私もう一点だけお尋ねをいたしますが、被害の実情と申しますか、訴え方は、春と夏でございますね。この地図でいいますと、南から吹いている風の非常に強いとき、このときにとにかく非常な硫化水素の被害を受けるわけなんです。ですから、私は率直に申しまして、ある日時をきめて測定をして基準以下であったというようなことについては、あまり意味がないわけなんで——測定そのものが全然意味がないというわけではありませんけれども、たとえば四月の何日かの何時にたいへんな硫化水素というものが吹いてきたということになれば、そこで一ぺんに急性的な中毒でも起こすわけでございますね。そういうふうな状態というものについて測定はされておらないと思うのです。この点についてはいかがでございましょうか。
  26. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 私の手元にある資料は去年の八月二十三日の資料でございまして、それによれば基準以下ということでございますが、御指摘のように、四月なら四月のある特定の時期に非常に濃い硫化水素が出た、そのために非常に住民から苦情があったということがあるとすれば、そのときのデータは手元にございません。
  27. 中谷鉄也

    中谷委員 厚生省の公害課部さんにお尋ねいたします。  住友金属の所在の地区は河西地区といわれているのですが、その河西地区の学校の、全くお医者さんでもないのでしょうけれども、養護関係先生たちが一生懸命に河西ブロック小学校八校のぜんそく児童の実態というふうな調査をいたしておるわけなんです。この調査をいたしますと、やはり四日市ぜんそくといわれることばと同じような河西地区ぜんそくといわれているような、われわれも最近地元で言っていますけれども、そういう状態があらわれているわけです。そこでこの和歌山の場合は、公害発生源は主として住友金属和歌山製鉄所——海南へいけば海南火力発電所が今後将来の公害発生源であるとか、精油工場等もありますけれども、これ一本なんです。だから、この住友金属和歌山製鉄所公害防止について万全の措置をすれば、赤い煙だとか黒い粉じんだとかそういうふうなものは防げる。騒音の被害もたいへんなものです。こういうような点について厚生省のほうで公害の実態について御調査がありましたならば、そうしてそれの対策、これについて、私地元のことですのでよく知っておりますので、ひとつ簡潔に御答弁いただきたい。同時に、いま非常に興味を持っているのは、先ほど立地公害部長さんに御答弁いただいた硫化水素の問題です。この点について厚生省はどのようにお考えになっているか。これはいかがでございましょうか。
  28. 橋本道夫

    ○橋本説明員 学校の養護教員が調査をしているという件については、残念でございますが私その点について直接は聞いておりません。ただ、ある病院の先生方が非常に興味を持って調査をしておられまして、その結果を日本公衆衛生学会に発表しておられたときのことについては、私その席におりまして聞いております。そういう点につきまして県の衛生部長にも、もしも県で調査をするということがあれば私どももできるだけ援助はしたいという考え方を申しております。  それから第二番目は、当地域につきましての汚染をどう見ておるかということでございますが、この点につきましては、大気汚染防止法の指定地域にいたしますために調査をいたしました。その結果によりますと、市内の十四測定点がございまして、その中で亜硫酸ガスの濃度につきましては平均〇・八〇七ミリグラム百平方センチ一日ということでございまして、これですと中濃度にはちょっと及びかねる程度の汚染程度でございます。最高は一・七ミリグラム程度ということでございます。私どもの判断といたしましては、ごく局地的に汚染があるのではないかということでございます。そういうことでございますので、私自身も和歌山には三度ほど参りまして、昨年の夏も参りまして、拡大に伴って問題を起こさないようにということで、現地でも工場をはじめ県の衛生部、企画部を指導いたしております。本年三月に地域指定になりまして、大気汚染防止法のC地域としての基準で一時間値最悪の場合でも〇・〇五PPMをこえてはならないという基準をかけて現在規制に入っております。  降下ばいじんにつきましては、平均が六・九トンでございまして、工業地帯があるにしてはわりあい少ないほうでございます。そういう形でございますので、大気汚染防止法の規制が進行するに従って降下ばいじん、亜硫酸ガスにつきましての対策は進むものと思っております。  それから第二番目の硫化水素の問題でありますが、硫化水素の問題につきましては、取り出しました鉱滓に水をかける場所を、私は現地に行って見ました。そこに行って一回測定しろということをお話しまして、発生源の場所でどれだけの濃度があるかということが汚染のポテンシャルとしての一番の評価のポイントになるかと思います。その数字を見ますと、発生源の場所の濃度が幾つかございまして、五PPM、七PPM、一三PPM、四三PPM、そのような数字が直接ガスの出る場所であるということでございます。それに対しまして、百六十メートル、三百メートル、六百メートル、七百五十メートル、九百五十メートルというスポットで全部はかってみましたところが、数字としましては、いずれも小数点二位以下という数字でございます。この点につきましては、県の条例では三PPMということを言っておりますし、住居地域では一PPMということを言っております。労働衛生基準は日本産業衛生学会では一〇PPMを採用し、アメリカにおきましては二〇PPMというものを採用しておりますが、これらの基準ということから見ますと、においは感ぜられるだろうと思いますが、その濃度で直接問題を起こすものではないというように考えております。そういう意味で硫化水素の問題はむしろ生活妨害上の問題ということで、においを全然感じないようにしろということは私は至難かと思っております。これは鼻のほうが鋭敏でありますので、そこはむずかしいかと思いますが、できるだけ押えるということによってこれに対処していくということで対応するということが現在できる最良の手段ではないかと思います。そういうことで生活妨害上の問題としてはなおさらに改善する余地があるかと思いますが、完全ににおいを解消しろということにつきましては、どこまで改善できるかということはさらに調査した上で判明することかと思っております。
  29. 中谷鉄也

    中谷委員 労働省の安全衛生部長さんにお尋ねをいたしたいと思いますが、住友金属の死亡事故について、これも非常に県民が注目をしているし、住友金属さんともあろうものがという、こういう評価をするわけなんです。昭和三十五年に六名、昭和三十六年に七名、昭和三十七年に十五名というふうなことであって、昭和四十三年二十二名というふうな死亡者を出し、いわゆる最高の死亡者が出たわけでございますね。そこで、この問題について、これは非常にいろいろなむずかしい問題があると思いますけれども、労働省で詳しくお調べいただきましたけれども、なくなっている人というのが、まず下請の人がほとんどでございますね。あぶない仕事というのは下請の人がしているんじゃないかという点が一点。これはひどいじゃないかという不満の声が起こってくるのは当然です。  いま一つ先ほどの硫化水素の問題なんですけれども、ノロの現場付近に働いておってそうしてその硫化水素を吸うて、そのことによって機能麻痺といいますか、いわゆる神経が麻痺をして、そして直接の原因が転落だとかなんとかそういうようなかっこうで死亡するというふうなことがあるのではないか。これはひとつ労働省などで徹底的に御調査をいただかなければならぬということでございますが、この点については御調査いただけるかどうか。またそういう点について、われわれそういう一つの推定をしているわけですが、こういう点についての御所見はいかがでございましょうか。
  30. 山口武雄

    ○山口説明員 和歌山製鉄所の下請の災害については、先生御指摘のとおり、四十三年には二十二名の死亡者を含めまして七十七名の休業を要する負傷者を出しております。これは御承知のように高炉の建設というような特別な作業もございましたけれども、とにかく非常にたくさんの死亡者を出しておる。まことに遺憾だと思っております。それで、その原因を調べてみますと、大体クレーン関係、それから墜落事故というのがおもになってございます。これらをよく検討いたしますと、連絡の接点において起こっておるというようなことがございますので、私のほうといたしましては、総合安全特別指導集団というようなのに指定いたしまして、局、省をあげて監督を強化いたしますと同時に、特別駐在制度も設けてやっております。そんなぐあいで一生懸命に監督指導をやりまして、ことしは若干よくなってきておるように存じております。  それから先ほどのお話の硫化水素の関係でございますが、現在のところ私のほうで把握しています上におきましては、和歌山をはじめといたしまして、各製鉄所関係で硫化水素がもとで墜落をしたとか、そういうようなのは把握いたしておりません。しかし御指摘のとおり、製鉄所では高炉がございますし、高炉の中には一酸化炭素も出てまいります。それから先ほどの水処理におきまして硫化水素が出てくる、これらの問題につきましては、常に注目を払っておりまして、いろいろ調べておりますけれども、現在のところ、そういうような患者は出ておりません。しかしそのおそれが多分にありますので、今後も十分に注意いたしまして調査を徹底してまいりますし、その予防策対も十分に立ててまいりたい。それから防護関係の使用につきましても十分注意を払ってまいりたい、かように存じております。
  31. 中谷鉄也

    中谷委員 法務省と文部省、警察庁に、私がいただいた時間がもう若干過ぎておりますので、ひとつ続けて質問をさしていただきます。  法務省の人権擁護局長さんに私御答弁をいただきたいのは、次の点なんです。要するに、非常な気の重い深刻なハンストという状態が起こっているわけですけれども、このハンストが三十日以上継続されて、いまなお続行されている一つの原因の中に、何か、真意については私も慎重に調査をいたしたいと思いますが、県議会における知事の答弁が非常に地元住民人たちを刺激をしたようであります。そういうふうなことで、こういうハンストということが、ハンストをしている人自身の生命、身体に対する危険を及ぼすと同時に、またこういうふうな闘争の手段として軽々しく用いらるべきではないと私は思う。そういうようなことも考えますが、ましていわんや、そういうふうなハンストをしている人間も、もう二十日以上もたってまいりますと、かなり体力も、神経もいら立ってまいるだろうと思うのですけれども、そういうような状態の中で、その人がハンストに一そう追い込まれていくような発言というふうなものは、私は人権擁護上非常に問題があるだろうと思うのです。こういうような点については、今後、先ほどの問題は政務次官のほうからも御答弁をいただきましたけれども地元をあげてこの問題は解決しなくちゃいけないのであって、知事発言をとらえてどうこうというようなことをこの機会に言うことは、私はおかしい——おかしいといいますか、適当ではないと思いますけれども、人権擁護上の観点から、いわゆる知事発言、その内容は、私はこの場所ではもう申しませんが、というような点についてはひとつ人権擁護局としても適当な調査をされてしかるべきではなかろうか、こういうように思いますが、いかがでございましょうか。
  32. 上田明信

    ○上田(明)政府委員 ハンストは、人の生命にかかわる重要な問題でございます。これは御指摘のとおりでございまして、知事の発言につきまして、その具体的な発言の内容だとか発言するに至ったいきさつ、ハンガーストライキの発生原因、実情、状況、そういうふうな状況を至急調査したいと思います。なおハンガーストライキにつきましては、地元の人権擁護委員などをして宇治田さんに説得させて、こういうことをなるべく中止していただきたいというふうに努力してみたいと思っております。
  33. 中谷鉄也

    中谷委員 警察庁にお尋ねをいたします。  警察庁の過剰警備の問題については、もう二年越し私は指摘してまいりましたけれども、きょうはそういうふうな指摘のしかたではないんです。と申しますのは、何と申しましても、先ほども言っているように、反対運動というのをしておる人たちといっても、ほんとうに家庭の奥さんだとか、元市役所の課長さんだとか、それから純朴な農家の人だとかで、県庁へお願いに上がるのもほとんどが女の方なんです。そこでいろいろなふうに感情も激してまいります。あっせんがうまくいかないというようなことで議長さんの部屋へ押しかけていくというようなこともありました。そういうことを私率直に認めているんです。ところが、私が参議院議員の田中寿美子議員と一緒に地元へ行ったときに、一体、いろいろ君たちの頼みたいことを一ぺん言ってごらんなさい、こう言ったら、十ばかり出た要求のうちで六までが県庁へ一お伺いということばを使うんですね、お伺いをしたときに、とにかく私たちを取り巻く警察官の方の数が私たちの数よりも多い、そのことについて私たちは全く心外だ。これは警察は敵だなんということを言う人じゃないんですよ。この問題についてはあらためて別の委員会でやりますけれども、そういうふうに言って、警察というものを自分たちほんとうに信用しておったけれども、その信頼はくずれてきた、こう言うんです。警察比例の原則というようなむずかしいことの話をするわけではありませんけれども、全く純朴なそれらの人たちについて、いやしくも警察がこれらの運動に対して片一方の側に立って押えつけているというふうな印象を与えるということは、私は、もう警察にとってもきわめて遺憾なことだし、残念なことだと思うのです。住民運動として一そうこれを激化させます。ひとつそういうような点について十分配慮をする——私は具体的にいつどうあったということをきょうお聞きいたしません、十分に配慮するということのお答えをひとついただきたい。
  34. 丸山昂

    ○丸山説明員 ただいま先生からの御指摘がございましたが、現地の県警の本部長は、在来とも警察比例の原則に基づきまして、特に本件の事案につきましては、二十七日に六十人ほどの陳情団があったわけでございますが、そのうちの四十人は御婦人である、あるいは御老人であるというようなことで、現地にはわずか二人の警察官しか配置をしておらなかった。そこで議長さんの車をとめて守衛をなぐるという不測の事態が出たわけでございますが、その日の夕刻に知事さんのほうから、県庁内の警備についてひとつ万全を期してもらいたいという要請がございまして、私服の警察官二人一組にいたしまして、大体十人程度の者を配置してございます。それから、まあ万一を期しまして事務局に約十名ということで、全体では二十名程度の配置をしておるわけでございます。重ねて申し上げるわけでございますが、御婦人、御老人という方が比較的多いわけで、それについて十分慎重に取り扱うようにということで、本部長としては非常に神経を使ってやっておるということでございます。  それからなお、県庁の職員その他の方々が比較的現場に多くおられたということで、あるいは当方の私服の警察官と混同して見られておるのではないかということもございますので、その点もお含みおきいただきたいと思うわけでございます。
  35. 中谷鉄也

    中谷委員 最後に、文部省にお尋ねをいたしたいと思います。  昭和三十五年であったと思いますが、文部省のほうからの補助を受けて、先ほどからだんだん私が質問をいたしております磯ノ浦海水浴場には青年の家を和歌山市が建設をいたしました。そこで、和歌山市といたしましても、この海水浴場の運命については、青年の家をもり立てるということで非常な注目をしているわけです。  ひとつお尋ねいたしますが、この青年の家の海水浴シーズン、七月、八月だろうと思いますが、利用者は一体年間の何%に当たるかどうか。それと同時に、やはり青年の家のあり方という点からいきましても、こういうふうな海辺に建てられた青年の家、海水浴場というものは非常に大事なものだというふうに私は思います。  それから、課長さんの御担当ではございませんけれども先ほど私が質問をいたしました河西地区の小学生児童のぜんそくの問題等については、文部省としてひとつ十分に配慮し、調査をしていただきたい。このことだけをひとつ簡単にお答えいただきたいと思います。
  36. 山中昌裕

    ○山中説明員 御指摘の点についてお答えを申し上げます。青年の家は、青年の団体宿泊研修の場として、いま全国的に整備しておりますが、お尋ねのございました和歌山市の青年の家、これにつきましては、山の研修それから海の研修と多角的に使うということでございまして、夏期のシーズンにおいて約二五%の学生生徒が利用しております。これは一般的に申しますと、より多くの青年が手近に利用できるという問題と、研修にふさわしい環境を選ぶという問題は実際上非常にむずかしい問題がございますが、これにつきましては、各県市町村の教育委員会関係者に最善の努力を払ってもらうように指導しておりますので、今後ともそのようにいたしたいと思っております。  なお御指摘の小学生児童のぜんそく云々の問題でございますが、これにつきましては、私所管外でございますので、担当の局課に先生の御指示をお伝え申し上げたいと思います。
  37. 中谷鉄也

    中谷委員 これで私の質問を終わりたいと思います。  いずれにいたしましても非常に深刻な問題でありまして、この問題につきましては、先ほど藤尾政務次官のほうから非常に私は適切な御答弁をいただいたと思います。この問題についてはまさに人の命の問題でありますので、他の先輩、同僚の選出委員ともひとつ協力をして、何としてでも、地元の問題ではありますけれども経済の健全な発展と、そして生活環境の整備、保全という問題についての大眼目に従いまして、この埋め立て問題については解決することに努力いたしたい。それがためには一そうの適切な行政指導お願いいたしたいということを申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。      ————◇—————
  38. 大久保武雄

    ○大久保委員長 この際、小委員会設置の件についておはかりをいたします。  すなわち、先ほど理事会で協議いたしましたとおり、小委員十一名よりなる産業構造並びに貿易対策に関する小委員会、産業金融に関する小委員会、鉱業政策に関する小委員会及び日本万国博覧会に関する小委員会をそれぞれ設置することにいたしたいと存じます。これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  39. 大久保武雄

    ○大久保委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、各小委員及び小委員長の選任につきましては、委員長において指名いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 大久保武雄

    ○大久保委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  小委員並びに小委員長は追って指名いたします。  次に、小委員会において参考人より意見を聴取する必要が生じた場合の参考人の出席を求める日時、人選、手続等並びに小委員及び小委員長の辞任、補欠選任等に関しましては、あらかじめ委員長に一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  41. 大久保武雄

    ○大久保委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  午後一時から再開することとし、この際休憩いたします。    午前十一時五十五分休憩      ————◇—————    午後一時二十五分開議
  42. 大久保武雄

    ○大久保委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。堀昌雄君。
  43. 堀昌雄

    ○堀委員 本日は、かねてから当委員会でも議題としておりました八幡、富士の合併問題についてお伺いをいたすわけでありますが、御承知のように、公正取引委員会ではこの案件を審査部に付託をされて、現在調査を進められておる段階でありますので、私は、その審査に影響を与えるという意図のもとに本日これを取り上げておるわけではございません。逆に、審査が静かに、外部からの各種の影響のない形で行なわれることを期待をいたしておりますので、その点に関連をして本日は少しお伺いをいたしたいと思います。  最初に、ちょっと確認をしておきたいと思うのでありますけれども、三月五日に藤尾政務次官が当委員会で、私の質問に答えて「通産省といたしましては、事前に行政的に介入をいたしまして、公正取引委員会の判断、そういったものを狂わせるというような意図もございませんし、そういった事実もございません。」そこで私が「意図も事実もないということは、これからもしないということですね。」とこうお伺いをいたしましたら、政務次官は「もちろん、今後もその事態が公正取引委員会において正式に処理されるまで何らのステップもとりません。」こうお答えをいただいておるわけですが、そのことに変わりはないのかどうか。少なくとも政府政務次官が当委員会で答えられたことは、公式の発言でありますから、いささかでもその事実に違反したことがあるとするならば、私どもは当委員会において通産省の発言を信用することはできない、こうなりますし、そのことは今後の通産省提案の法案の審議についても、われわれとしては同様の判断に基づいて対処しなければならぬという、きわめて重要な意義を含んでおりますので、その点も含めてひとつ藤尾政務次官から、この三月五日の御発言について御確認をいただきたいと思いますが、お願いいたします。
  44. 藤尾正行

    藤尾政府委員 お答えをいたします。  堀先生からの御指摘でございまするが、私どもといたしましては、この問題に関しまする限り、公正取引委員会が現に審査中であり、これに影響を及ぼすような意図をもって行動をすることは厳に慎めということを言われておりますし、また大臣のそういった御方針に従いまして、通産省の一同の者にもさようなことのないようにということで厳に戒めてございます。そういったことは間違いがない、それ以降もそういった事実はあり得ない、かように考えております。
  45. 堀昌雄

    ○堀委員 実は三月二十五日の新聞は、「鉄鋼合併レール対応策」という見出しで、「価格は届け出制に通産・運輸省が覚え書き」こういう表題を掲げまして、「八幡、富士両社合併に伴う鉄道用レールについて、通産、運輸両省の覚え書きは次の通り。一、通産省は、レールメーカーに、国鉄、私鉄とレールの納入契約を結んだときはその価格とその他の取り引き条件を通産省に届け出させることとする。二、通産省は前項の届け出を受けたときは、直ちにその内容を運輸省に通知するものとする。三、運輸省通産省の協力のもとに、届け出の内容について審査する。四、審査の結果、価格その他の取り引き条件を是正することが必要であると認めたときは、運輸省の要請に基づき、通産省は当該レールメーカーに対して、その是正を求めることとする。五、運輸省は国鉄または私鉄からレールメーカーの納入する鉄道用レールに関し、苦情の申し出があったときは、通産省の協力のもとに調査を行なう。六、調査の結果、当該レールメーカーに必要な是正措置をとらせることが適当であると認めたときは運輸省の要請に基づき、通産省は当該レールメーカーに対して所要の措置をとることを求めることとする。七、通産省が当該レールメーカーに対して第四項の是正または前項の措置を求めた場合において、さらに必要があると認めるときは運輸省通産省は協議の上、公正取引委員会に通知して、所要の法的措置をとることを要請する。」こういうふうにきわめて具体的に通産省運輸省の覚え書きの問題が実は報道されておりますが、この事実について、通産省の側からお答えをいただきたいと思います。
  46. 吉光久

    ○吉光政府委員 ただいま読み上げられました新聞記事でございますが、私も拝見いたしました。そこに書かれておりますように、何日付でこういう覚え書きを結んだというふうなことが書いてございますけれども、そういう事実はないわけでございます。で、内容といたしまして、先般も堀委員の御質問に対してお答え申し上げましたように、合併が認められました後におきまして利用者、国鉄でございますとか私鉄でございますとか、そういう利用者の不利益になるようなことが出ては困るというふうな意味から、そういうところに主眼を置きまして、私どものほうでも内々の勉強はいたしております。同時に、運輸省におきましても、そういう国鉄、私鉄を監督される立場から内々の御検討は進んでいるように聞いております。ただ、そこの記事に載ったようなそういう具体的な形で両省の間に覚え書きが成立した、こういう事実はございません。
  47. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、この覚え書きがかわされたということは事実無根である、この報道は完全な誤報である、こういうことですね。
  48. 吉光久

    ○吉光政府委員 ただいまお答え申し上げましたとおり、内々の勉強はいたしておりますけれども、両省の間で覚え書きが交換されたということは事実無根でございます。
  49. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、いまの問題は覚え書きは交換されてないことが明らかになりました。両省でこの問題について協議は行なわれておるわけですか。
  50. 吉光久

    ○吉光政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、両省でそれぞれ研究をいたしております。同時に、内容につきまして一部連絡をし合っておることも事実でございます。ただ、これをどういう段階でどういうふうに処理してまいるかというふうな処理方針あるいはまた細部の詰めと申しましょうか、そういうふうな問題については全然まだ決定をいたしていないわけでございます。
  51. 堀昌雄

    ○堀委員 前回局長は、いまもお話しになりましたけれども、合併は公正取引委員会でどうなるかわからないですが、仮定の問題として、もしかりに合併が行なわれた場合には、その事後の措置としていろいろな利用者、需要家に不利益を与えないような措置を講ずる、こういうことであったわけでありますが、通産省が合併後需要家や利用者に不利益な状況を与えないような措置を講じなければならないということは、その合併が需要家のためにならないということになった場合でありますから、もし公正取引委員会が適正な措置を講じられるならば、そういうことは起こらないのが大体たてまえなのではないのか。公正取引委員会措置が不十分であったという結果、そういうことが起こるということになったときに、初めて対応策というか、そういう措置が必要となるということであると私は考えるわけですけれども、その点についての考え方は通産省はどうなんですか。
  52. 藤尾正行

    藤尾政府委員 お答えをいたします。  私どもは、公正取引委員会がおやりになる仕事でありまするから、それは間違いないことが帰結されるであろう、かように信じ期待をいたすのでございます。堀先生御指摘のとおりでございまして、ほんとうに間違いなく御結論いただけばそういうことは起こらないはずでございましょうけれども、何と申しましてもこれは蓋然性を持った問題でございます。これから先の公正取引委員会のお取り扱いに万間違いはないと思いますけれども、万々一でも間違いが起こりましたときには、私どもといたしましては、需要家の立場を守るという意味合いにおいて、これに備える十二分の勉強があってしかるべきである、かように考えております。ただいま重工業局長からお答えを申し上げました私どもの勉強といいまするものは、万々一ないであろうけれども、なおかつそれに対して十二分の勉強をしておかなければならぬ、かような意味合いにおいて勉強をいたしておる、かように理解をいたしております。
  53. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、昨年の十月でございましたか、当委員会で王子製紙の合併問題の取り扱いについて通産省に対して何回か意見を申し上げましたけれども、実はいま、特にこういう段階でこういう記事か出ることは——もちろん私は、こういう記事が出たからといって公正取引委員会がそれに影響されるものとは思いませんけれども、何かどうも政府公正取引委員会に対して企業側の合併を促進するのに有利な条件をつくり上げるために努力をしておるという印象を国民に与えておると思うのです。そこで、その御勉強はけっこうでございますけれども、勉強の内容については、いまのお話のように、公正取引委員会が何らかの結論をお出しになって、あなたのおっしゃる、万一ないとは思うけれども、その万一ないと思う需要家や利用者に対する不利益が生じることが明らかとなるまでは、通産省は、たとえその研究内容といえども、これは秘匿をしておいていただく必要があるのじゃないか。これで国民の誤解を招くことは、私どもとしてはどうも承知できないという感じがいたすのであります。そういう新聞の皆さんの取材もたいへん御熱心でありましょうけれども、少なくともこの問題について、まず通産省としては、いろいろ勉強されることば当該通産省の業務として当然でありますけれども、今後表には出ないような何らかの責任ある措置をとっていただきたい。ここに出ておることを私ども読みますと、これは覚え書きが交換されたかどうかは別としても、事務当局の諸君が何らかメモを書いた、それが新聞記者諸君の目にとまったか何かでないと、私がいま読み上げたような仕組みにはならないと判断をするわけです。私も長年大蔵、商工委員会におりまして、大体政府の諸君がこういうものを書く場合における文体なり文の構成のあり方なりその文脈の流れなりというものは、一定の姿をあらわすものでありますから、研究をしておられることを新聞記者諸君が単なる憶測でお書きになるにしては、実はやや精緻な表現なり内容を持っておるわけであります。いま覚え書きについては事実無根と御否定になったけれども、どうも感じとしてはこういうことが行なわれていたのではないかと考えざるを得ないような感じがいたすほど、内容はそのものに近いような姿をとっておりますので、今後こういうことの起きないような措置をひとつとっていただきたい。それでないと、あなたが前段でお答えになったことと事実は相反してくることになると考えますので、その点についてここでひとつはっきりした確認をお願いしたいのです。
  54. 藤尾正行

    藤尾政府委員 ただいま先生がおっしゃいましたように、私どもといたしましてはそういったものが外に出る——勉強の内容がどのようなものであるか私は実は知りませんけれども、しかしながら、もしかりにそれがお読み上げになりましたとおりであるといたしましたならば、それがそのままの形で出るというようなことは、私どもは絶対にさせないように、事前に十二分に注意をしてございます。ただ、私も長い間、二十年ぐらい新聞記者をやっておりましたから、私の経験から申し上げましたならば、私どもといたしましては一切のことをそのままの形で出すということは厳にとめておりますけれども、しかしながらそうかといっていま現に流れつつある重大な日本の産業の流れ、こういったことを御取材になられまする新聞記者の皆さま方に対しまして、もし国民に対する誤った報道が行なわれるというようなことでございますると、それによって引き起こされる非常な不利益といいまするものが出てくるわけであります。したがいまして、リードと申しますか、ミスリードをするということがあっては、これもまた絶対にいけない。でございまするから、勉強の内容その他、通産行政に関するすべてがそうでございまするけれども、こちらで発表をさしていただくということ以外には、できるだけ大臣なり私なりの目を通したものを発表してもらいたい。しかしながらすべてそれでもって籍口令をしくというわけにはまいりませんから、新聞記者の諸君が御取材においでになられましたときには、差しつかえのない範囲で、ミスリードしないように注意をするようにという指導をいたしております。したがいまして、私もかって、昔話でございまするけれども、安全保障条約後におきます日米の駐留に関しまする覚え書き内容を全文すっぱ抜いたことがございます。しかしながらこれも決して当局からそのまま手に入れたわけじゃございませんので、一条一条私どもがそれをつくりまして、それを法制局なりあるいは外務当局なり、そういったそれぞれの担当者に示しまして、ミスリードをしない限りで訂正する個所があったら言ってくれということで、それを直させまして、それをさらに法文化いたしましたものを出したのでございます。ところがそれが結果ふたをあけてみますると、発表せられました法文自体とそう大きな径庭のないものになっておるというような事実もございまするから、私は、決して通産省のそれぞれの事務当局がただいま勉強いたしておりますることをそのままの形で新聞記者の皆さま方にお伝えを申したものでないということを確信をいたしておりますし、またその間の新聞の皆さま方の御取材に対しまして、ミスリードをしないようにという私どもの趣旨もそこで生かされておる、かように考えておるわけでございます。
  55. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの政務次官の御発言は非常に重大なんですがね。前段で話されておることとミスリードをしないための発言というのは全然反対になるんじゃないですか。要するに私が言っておることは、影響を与えるようなことはやめてもらいたいという以上は、あなた方のほうがミスリードをするかもわからないから事実を伝えるんだということになれば、あなたが前段に言ったことと全然逆になる。だから、ミスリードをされるかどうか、新聞が憶測なり何かで書かれることについて通産省が関知をする必要はないんじゃないですか。それをミスリードをしないように通産省の考えを述べるのなら、前段であなたはそういうことをしないと言ったことと、うしろのほうではミスリードをするといけないからコメントをするんだということになれば、一体どこにその差があるんですかね。私がこの前から言っておることは、必要のないことは出さないということが原則なのであって、出すのなら正式に文書か何かで、要するに通産省として責任のあることを出してもらうということにならないと、国民の側に不測のいろいろな不安や何かを与えることになる。新聞社だけが独自でおやりになったことについて、私は何も通産省を責める意思もないし、それは新聞社の責任である。それをミスリードされたからそれによってどうこうといって、そこへ通産省が介入して出てくるというのなら、あなたの前段の話と後段の話は全然逆に食い違うじゃないですか。もう少し論理的な答弁をしてもらわないと私は納得できません。
  56. 藤尾正行

    藤尾政府委員 私の申し上げましたことは、私は論理的に別に間違っておるとは思いません。と申しまするのは、私のほうは、ただいま申し上げました後段の問題も前段の問題も一般論として申し上げたのでございまして、この問題に関しましては、公正取引委員会の判断に影響をするということがいささかもあってはいけないのでございますから、これにつきましてはミスリードも何もないわけで、一切いかぬ、こういうことでございます。
  57. 堀昌雄

    ○堀委員 はい、わかりました。事務当局に伺いますけれども、その覚え書きの問題はいいですが、ここの一番目の、私が読み上げた中に、「通産省は、レールメーカーに、国鉄、私鉄とレールの納入契約を結んだときはその価格とその他の取り引き条件を通産省に届け出させることとする。」とこうあるのですが、それではこういう考え方は持っておるわけなんですか。
  58. 吉光久

    ○吉光政府委員 レールの問題につきましての対応策を、現在会社でさらにまだ具体的な詰めをやっておるようでございまして、いろいろと新規参入の問題等の話題も出ておるようでございます。具体的にどういう形で会社のほうで対応策を出すか、抽象的なことは出ておりますけれども、具体的な形としてどういう形でどうというふうな、そういう最後の詰めがいま行なわれているように伺っておるわけでございます。したがいまして、会社の出します対応策がどういうふうなものとして公正取引委員会のほうに届け出られておるか、そういう内容がきまりませんと、先ほど来私どもが勉強しておりますと申し上げましたことにつきましても、そういう内容が全然きまらないうちに、あるいは価格を届け出させるとかどうとかいうふうなことはすぐには出てまいらないわけでございます。したがいまして、いま御指摘になりましたような価格制度の問題等につきましても、もちろん研究なり勉強なりいたしております。いたしておりますけれども、はっきりとこういう形でこうするのが一番いいではないかというふうな意味での最終的な詰めというふうなものはまだ行なっていないわけでございまして、研究の中の一つの素材と申しますか、そういうものとして価格の体系についてどのようにあったらいいかというふうなことも勉強いたしておる、こういうわけでございます。
  59. 堀昌雄

    ○堀委員 それならば、いまの問題についてはこれ以上触れませんけれども、やがて公正取引委員会としては、審査部の審査を進めておられる中では、勧告をなさるのか、審判に付されるのか、あるいはそうたいしたことがなかったということになるのかわかりませんけれども、そういう結果が出て一応問題が明らかになるまでは、私が前段で申し上げましたように、以後こういうことが新聞紙上にあまり具体的に出るようなことのないようにということだけは、通産省としてはひとつ十分注意をしてもらいたいと思います。私も藤尾政務次官がいま、何かミスリードの問題はそれは一般論であって、当該八幡、富士問題については、これはその問題にかかわりなく一切やらない、こうお話しでありましたから、それを私も認めますので、ひとつその点だけはきちんとしてもらいたいと思います。  運輸省鉄道監督局長にお伺いをいたします。  いま通産省の側の問題についてはそのようにはっきりいたしましたが、ここには「通産、運輸両省」という形で実は報道がされていて、その報道のあり方も八幡製鉄、富士製鉄両社の合併可否に関係する鉄道用レールについて、通産、運輸両省は二十四日政府機関の行政措置を目的とした七項目から成る二省間の覚え書きを作成した。」そしてその後段にきまして、「所要の法的措置をとるよう要請するなどが骨子で「価格監視機構」といった強権的な手段は避け、行政指導の範囲内にとどめる方針であり、両省の協議の場としては連絡協議会を設ける意向である。」ここまで具体的な報道がされておるわけです。運輸省の側として、いま私が通産省と論議をしてまいった問題との関係で、ひとつ運輸省側における解明を求めたいと思います。
  60. 町田直

    ○町田政府委員 お答えいたします。ただいま通産省のほうからお答えになりましたことと大体同じでございまして、まず、その新聞記事の、覚え書きを交換したというような事実は全然ございません。  それから、最後に御指摘になりました協議会を設けるというようなことを通産省と話し合った事実も全くございません。  私どもといたしましては、需要者の監督官庁の立場といたしまして、今度の合併が実施された場合にはどうなるかということを非常に関心を持っていることは事実でございます。それにつきまして、先ほどお話しございましたように、合併が公正取引上適正であるかどうかという問題については、当然公正取引委員会のほうで御検討になることでございますけれども、やはり合併された場合に価格なり取引に何らかの影響があるのじゃないかということは非常に関心を持っておりますので、それにつきまして、もし合併が実現した場合には何らかの方法を講じる必要があるのじゃないかという一つ立場から勉強をいたしておるということは事実でございます。その勉強の過程におきまして、これは何と申しましても、合併をされる業者の監督官庁は通産省でございますから、通産省のほうにいろいろお話をお伺いしたりというようなことの意味では連絡はございます。しかし、その新聞記事に出ていましたような事実を通産省と相談してつくり上げたと、こういうことはございません。内容について大体同じようなことを考えておりますけれども、これはまだほんとうに事務的な勉強の段階でございまして、もちろん上のほうに、少なくとも政務次官大臣のほうに上げて、こういうことでやりましょうとか、こういうふうに相談がまとまりましたとか、そういうことも、御報告も申し上げてない段階でございます。
  61. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの局長の御答弁を聞いておりますと、少し何かはっきりしてきて、上のほうには上げていないけれども、事務当局段階では、どうやら七項目的なことについてはかなり詰まっているような感じの答弁に私はいま受け取れたのですが、通産省側の答弁を聞いていると、勉強をしていて、詰まってはいません、まだ合併の様態なり対応の状態が明らかになっていないから、まだ詰まったことになっていないということで、私は、そうかなと、こう思ったのですが、いまのあなたのほうの話を聞くと、どうやらだいぶ煮詰まっているけれども政務次官大臣のところまではいっていないというように聞こえるのですがね。その点はちょっと食い違いがあるようなふうに聞き取れるわけですが、どうでしょうか。
  62. 町田直

    ○町田政府委員 表現の問題かと思いますけれども、要するに大臣、次官に上げてないということは、私の段階では、そこまで成案ができたということではございませんので、内部的に検討をしているということでございまして、先ほど御指摘がございました、たとえば事業者から価格を届け出させるというようなことにつきましても、はたしてそういうことができるのかできないのか、こういう問題もございますし、ということでございますから、そういう意味では、まだほんとうに勉強中ということで、決して具体的にきまったとか、あるいは鉄道監督局内部で最終的にきまったとか、そういうことではございません。
  63. 堀昌雄

    ○堀委員 この問題については大体の様子がわかりましたから、念のために、今後そういう誤解を与えるような発言なりその他は十分ひとつ通産、運輸両省事務当局を含めて、厳重に気をつけてもらいたい。この点についてもう一ぺん、両省代表というわけにいかぬけれども政府の側としての発言として確認をもう一回して、この部分を終わります。
  64. 藤尾正行

    藤尾政府委員 今後とも、この問題が公正取引委員会である種の判定が下りますまでの間、両省当局者に厳重に申し渡しまして、誤解のあるようなことが外に出るようなことのないようにいたします。
  65. 堀昌雄

    ○堀委員 国鉄にお伺いをいたしますが、いろいろな問題の中で、今度日本鋼管が新規参入をするという意思を表明されておる。ところで、新規参入をするということは伝えられておりますが、私どもの理解では、新規参入をした鋼管の技術なるもので、これまでの富士や八幡の技術と同じような製品がはたしてできるのかどうかもきわめて疑問がありますし、同じ製品ができるまでには相当な時間もかかるだろう、まあ常識的にこういうふうに考えられるわけでありますから、レールのように人命に関するきわめて重要な資材について、そのような不確定である商品を責任のある国鉄として買いますなどというようなことを表現といいますか発言といいますか、あらわして、そのことによって、公正取引委員会に対して、この問題についての心証に何らかの影響を与えておるのではないかという、これも新聞報道があるわけですが、国鉄側について、この問題についての経緯なり、その事実なりについてお答えをいただきたいと思います。
  66. 小林正知

    ○小林説明員 お答えをいたします。ただいま堀先生御指摘になりました問題でございますが、最初に、ただいまお話のございました新聞記事のほうの問題から申し上げますと、あの記事は確かに日刊工業新聞等に出ておりました。私も拝見をしております。あの記事に述べておりますのは、湯川常務理事でございます。これは保安担当をいたしております理事でございます。それも、新聞の皆さん方とのお話の過程の中での座談の一こまであったというふうに私は聞いております。その席に私おりませんでしたので、具体的にこまかいことは承知いたしておりませんが、保安の立場というものから、一般論といたしまして先ほど先生御指摘のように、レールというものは、鉄道資材の基幹資材の中でも特にその品質にもし間違いがございましたときには人命に直ちに影響するというファイナルなものでございますので、そういった観点から、特に輸送の安全という点を担当いたします者といたしまして、それは品質の確保という観点から慎重に扱うべきだ、かような一般論を述べたというふうに私聞いております。  それから二番目の問題といたしまして、国鉄は、たとえばああいう新聞記事に載っておりますような、鋼管が進出してくるというような意思表明があって、そういう事態になったときに一体どういう考え方かというお尋ねかと思いますが、これにつきましては、ただいまも申し上げましたとおり、レールは国鉄の列車運行上の一番の足といいますか土台になるものでございまして、私どもといたしまして、最も厳重なる品質管理と品質確保という点を重点にしていままで調達をしてまいっております。こういった意味におきまして、日本鋼管がどの程度そういった勉強をされておるか、そういうことは私どもつまびらかにいたしません。また、鋼管から国鉄に対しましてレールを製作したいというような意思についても、何ら具体的な表示は受けておりません。  しかし、一般論といたしまして、先ほど来申し上げておりますような考え方に基づきまして、国鉄といたしましては、かりにそういった事態が具体的に起きてきたという場合におきましては、いかなる形でそのレールというものが生産をせられ、生産をせられてくるレールがいかなる品質であるかということを十二分にチェックする、こういう態度で臨みたい、かように考えております。
  67. 堀昌雄

    ○堀委員 ですから、国鉄としては、いま私が中心で考えておりますことは、いろいろなこれらの問題について、公正取引委員会に何らかの心証上の影響を与えるようなことは今後もおやりになる意思はない、こういうふうに確認をしたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  68. 小林正知

    ○小林説明員 お答えいたします。国鉄といたしましても、このレールの問題に関します考え方なり姿勢は、ただいま申し上げましたとおりでございまして、合併問題そのものは、これはあくまでも公正取引委員会において厳正に御判断になる問題だと思います。国鉄は単なる一需要家にすぎないわけでございまして、こういった合併問題そのものにつきまして御相談を受ける立場でももちろんございませんし、また差し出がましく意見を申し述べる立場にもございません。かようなことで、ただいま先生御指摘のような、御懸念になるような、御質問がありましたようなことをやる意思は毛頭ございません。
  69. 堀昌雄

    ○堀委員 大体私どもが最近新聞で承知をしてまいりましたことは、どうやら全体としては事実でなかったようでありますから、一応そのように認識をいたしまして、今後の問題としては、先ほど政務次官の御答弁といまの国鉄の答弁をもって、今後はそういうことばないものと理解をいたします。  そこでもう一つ、これは私、産業政策上の問題として通産省に伺いたいわけでありますが、今度日本鋼管がレールに進出をされるという問題については、この合併問題という問題を離れて見ますと、産業政策上非常にむだな問題が起きてくるのではないかという感じがいたしてならないわけであります。  最初に、通産省の事務当局にお伺いをいたしますが、いま八幡製鉄は新鋭のレール工場をたしか八幡につくっておられるというふうに報道は伝えておるのでありますが、この新鋭レール工場というのは一体その生産能力はどの程度あるのか、報道によれば、現在の国内需要の二倍の生産能力を持つレール工場が目下建設中であるというふうに伝えられておるわけですが、その点について通産事務当局の御答弁を承りたいと思います。
  70. 吉光久

    ○吉光政府委員 現在八幡製鉄のほうでつくっております大型ミルでございますが、年間能力八十四万トン程度のものでございまして、この八十四万トンのミルを使いまして、現在の事前の八幡製鉄の計画では、三十数万トンのレールを生産するというふうな予定になっておったと伺っております。ただこれは大型ミルでございますので、特にユニバーサル、一般的なミルを建設いたしておりますので、この仕上がりの形におきましては、あるいはレールあるいは大型の形鋼でございますとかその他の製品も全部これで製造することができるような、そういう施設でございます。
  71. 堀昌雄

    ○堀委員 そういたしますと、たしか現在レールの需要というのは年間五十万トンくらいじゃないですか。
  72. 吉光久

    ○吉光政府委員 年によりまして少々の違いはございますけれども、大体五十万トン弱、四十八万八千、四十八万一千あるいは四十三万七千、大体五十万トン弱のところで上下いたしているようでございます。
  73. 堀昌雄

    ○堀委員 八幡がいま確かにユニバーサルの大型ミルでありますから、レールだけを生産するというわけではありませんけれども、しかし少なくともその大型ミルによって三十数万トンは予定をしておる。富士のレールの問題は釜石なんだろうと思いますけれども、旧型の設備を譲って、そうしてそのレール生産に入らせて、おそらく鋼管が本気でやるのならば福山でやはり大型ミルを備えてやらなければならぬということになるのだと思うのでありますけれども、どうも私は産業政策として純粋に見るならば、このやり方は過剰投資になるのではないか。過去におけるレールの需要の増加というものは大体きまっておるわけでありまして、需要がどんどん伸びるであろう製品に対して新規参入が行なわれるというのならば、これは私は産業政策上も望ましい姿だと思いますけれども、このような形で実は新規参入が問題になっていて、おまけに私は鋼管の社長が新聞でお話しになっております点を読んで非常に驚いておりますのは、いろいろおっしゃっておりますけれども、「八幡、富士合併問題と関連してのレール進出であるだけに、現在の状況がかりに変化した場合(合併が否認された場合)などこの進出計画は白紙の状態に戻ることになろう。」これは経済行為として新規参入というものは、当然新規参入によってその企業経済的な利益がもたらされるということが新規参入に対する経済的条件であるにもかかわらず、新規参入という問題が政治的判断に基づいて決定をされておるから、そこでその前提となる条件が変わった場合には、これはもう白紙にして行なわない。前提条件に基づいて行なわれるような新規参入などというものは、経済条件としては私はまことに不適当な処置であろう、こういう判断をするので、本来的に通産省がニュートラルな立場、この八幡、富士合併問題にニュートラルな立場で産業政策を論じるならば、そのような新規参入は日本の投資の現状からしても、不効率な投資をもたらすからやめるべきであるという行政指導が行なわれるべき性格のものではないのか、こういうふうに私は考えるわけでありますが、この問題について通産省はニュートラルでないから黙っておるということなのかどうか、そこらをひとつ明らかにしてもらいたい。
  74. 吉光久

    ○吉光政府委員 産業政策上の観点からながめました場合、いろいろのながめ方があるかと思うわけでございます。設備大型化に対応いたしまして、一社集中生産をやってまいる、こういう行き方が一つあると思います。と同時に、また一社独占体制というものから起こってくる弊害と申しますか、これもまたあり得ると思うわけでございまして、したがいまして、その場合に有効な競争者になるべき人というふうなものが出てまいる、特に独占形態の供給形態につきまして、それに競争者が存在するというふうなことも、また一つの有効な、何と申しましょうか、競争を通じてのいろいろな努力というふうなものが行なわれるわけでございまして、したがいまして、一がいに産業政策の観点からいずれかでなければならないというふうにきめるわけにはまいらないのではないかと思うわけでございます。ただいま経済性の判断を離れて、というふうな社長の御発言の記事があるようでございますが、私、直接お話を伺ったわけでございませんので、よくわからないわけでございますけれども、おそらくそういう意味で現在の状況で新規参入するとすれば、富士の釜石製鉄所でつくっております設備について、富士側から設備譲渡いたします、専門設備については譲渡いたしますというふうな意思表示が公にすでにされております。おそらくそれを前提として踏まえられた上で次の計画をお考えになったのではないだろうか、このように考えるわけでございます。
  75. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの局長の後段の話を聞きますと、そうすると、そのことは、合併がもしだめになった場合には富士は譲渡をしないということになるから白紙になる、こういうことなんでしょうか。
  76. 吉光久

    ○吉光政府委員 先ほどお答え申しましたように、私、直接社長からそういうお話を伺っておりませんので、真意を私なりに了解してみればというふうな意味でございまして、それ以上深い意味はないわけでございます。
  77. 堀昌雄

    ○堀委員 これもやはり報道のことでありますから、これだけで私は論議をしようと思いませんけれども、このレール進出の問題についておそれておる考え方は、どうもそういう固有の経済利益よりもややその他の何らかの利益ということのほうが比重があるような感じがして、どうも私は経済的問題でないような気がいたしましたから、実はちょっと取り上げたわけでありますが、ここで公正取引委員長にお伺いをしておきたいと思うのは、これまでもいろいろ議論のありました蓋然性ということの中における期間の問題でございます。十年たったらそうなるというような場合と、一、二年でそうなるという場合といろんな場合、これはこの問題を離れて一般論としてひとつお答えをいただきたいと思います。  一般論として、ある競争条件というものが、現在はないけれども出てくるという場合に、それは蓋然性があるという判断が起こり得るかと思いますが、それもごく短期間に、一、二年のうちにそういう競争条件が明らかに出てくるというような場合と、五年も十年も先に出てくるという場合と、これは連続した問題と理解をしてみますと、蓋然性ということばの範囲で皆さんのお考えになる時間的な限界ですね、何日などということはございませんが、何年くらいというものがやはりあっていいんじゃないかなという感じを私いたしておるわけでございますが、その点については、これはほんとうに一般論としてお答え願いたいのですが、委員長、どういうふうに御理解になっておるんでございましょうか。
  78. 山田精一

    ○山田政府委員 将来の予測に対する蓋然性でございますけれども、私の考えますところでは、事柄の性質によりましてかなり違いがあるのではないかと存じます。と申しますのは、いま十年先というお話がございましたが、事柄の性質によりまして、十年先までの間に経済与件が非常に変ってまいる場合、それに著しく左右されるような事柄でございますれば、それほど長い期間にわたって蓋然性を判断することは不可能であろうと思いますが、ただ事柄の性質上、経済与件が相当変わりましても、出てくるであろう蓋然性、これはかなり長期間についても判定ができるのではないか、こういうように考えております。
  79. 堀昌雄

    ○堀委員 この問題は、一般論としては、おっしゃるようにちょっと適切な判断ができないことでありますから、ここで終わっておきまして、もう一つだけお伺いをしておきたいと思います。  私ども、実はいま皆さんのほうの審査部で審査をしておられますから、外的な要因をできるだけ遮断をしたいということについての真意はおわかりをいただいたと思いますが、逆に、公正取引委員会として、通産省とか運輸省とか国鉄に対して、この審査の途中でいろいろとその後における私がいま触れたようなことについて意見をお聞きになるようなことがあるのでしょうか。あるということは、そういう必要があればお聞きになるのでしょうけれども、そういうお考えがあるのかどうか。ちょっとそこだけは伺っておきませんと、せっかく私どものほうでかなりそういう処置をいたしておりましても、皆さんのほうが別の角度にお立ちになっておれば、あまり意味のないことかもしれないという気もいたしますので、その点をひとつ伺っておきたいと思うのです。
  80. 山田精一

    ○山田政府委員 私どものほうの審査部で審査をいたしますのは、まず事実の認定が先決問題だと思います。したがいまして、私ども運輸とかあるいは通産関係につきましてくろうとではございませんわけですから、事実の認定上必要な事項につきまして、関係の官庁にお尋ねをいたしお知恵を拝借するということは当然あり得ることであろうと存じます。
  81. 堀昌雄

    ○堀委員 そうしますと、それは当然いま委員長お答えになった事実の認定の範囲ということでございますね。私が心配いたしますのは、これから運輸省はこうします、通産省はこうします、新規参入ができた場合には国鉄はこういう条件でここからも買いますとか、いろんなことを、これは私ども事実の問題ではなくて、今後における蓋然性の中に影響を与える問題だと思うわけですから、それは私は公取の独自の判断でおやりいただけるものだという考えをいたしておりましたので、そういう質問をいたしましたので、事実については、確かに必要ないろいろな資料その他は当然これらの関係各省が持っておるわけでありますから、その事実の認定について問い合わされることは当然だと思うのでありますが、ちょっと心配をいたしますのは、その後段のほうのことで、いろいろそれを、何と申しますか影響を与えないようにというかっこうでものを考えておるわけでございますね。しかし、そこのところに逆に公正取引委員会が入ってこられるのでは、私、本日論議をいたしましたことがあまり効果のないことかなという感じがちょっといたしましたものですから、そこのところをあわせてもう一回お答えを願いたいと思います。
  82. 山田精一

    ○山田政府委員 審査の進みぐあいで具体的にどういうことになりますか、まだ予見はできないわけでございますが、ただいま御指摘のございました蓋然性を判断いたしますのには、現在全然ゼロの状態から蓋然性を判断するということはきわめてむずかしいと存じます。何か萌芽がありまして、その萌芽がどの程度のスピードでどの程度太く育っていくかということが私どもの判断するところかと存じますので、その萌芽が現在どのくらいの大きさなのか、どの程度伸びる可能性があるのか、蓋然性があるのか、こういうことについてお尋ねすることはあるかと存じます。
  83. 堀昌雄

    ○堀委員 大体私が伺いたいことはお答えをいただきましたから、私の質問はこれで終わりますけれども、どうか公正取引委員会におかれては、私どもの真意を体して、ひとつ公正な審議を行なっていただいて、国民のすべてが納得をするような手だてを十分慎重に行なっていただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  84. 大久保武雄

    ○大久保委員長 中村重光君。
  85. 中村重光

    ○中村(重)委員 公取委員長お尋ねをいたしますが、公取としましては正式に審査をすることを決定をされて、いま作業を進めておられるところだろうと思うのですが、新聞紙の伝うるところによりますと、正式審査と公聴会と並行してやるというように伝えられておるのですが、そうだといたしますと、第八章の一節と二節を同時にやるということになるのではないかと思うのです。正式審査を行なうことになった、そのことに対して手続をおとりになった理由について伺いたいということと、それからいま私が申し上げました手続上の問題、一節と、二節は実質的な面と、この二つになろうと思うのですが、それを同時に行なうことになった理由についてひとつお聞かせ願いたいと思います。
  86. 山田精一

    ○山田政府委員 正式の審査の手続をとりました理由でございますが、これは独禁法の第四十五条の第三項に「公正取引委員会は、この法律の規定に違反する事実があると思料するときは、職権を以て適当な措置をとることができる。」かようにございますので、これに基づきまして立件手続をとって、正式の審査をいたした、かようなことでございます。  それから公聴会につきましてお尋ねがございましたが、公聴会のほうは第四十二条におきまして「公正取引委員会は、その職務を行うために必要があるときは、公聴会を開いて一般の意見を求めることができる。」とございます。従来過去の例では、第十五条に関係いたしました合併の事件につきまして公聴会を開いたケースが三つか四つございますけれども、これはいずれも正式な届け出がございまして、それを認めたケースでございまして、いかにも、公聴会を開くということは、何か認めることを前提にしているような誤解を与えておる節がございますが、公聴会というものはさような趣旨のものではございませんで、私どもが職務を行ないますために必要があるときに一般の御意見を伺うということが必要であると考えました場合には、何どきでも公聴会を開いて一般の方々からオープンな御意見を伺って、決定の資料といたす、こういうことができるものと考えておりますので、それが今回正式な審査手続をとりましたけれども、同時に公聴会も開く、こういうことになりました理由でございまして、いままでの例から申しますと、新しい例を開いた、またそれが正しい解釈であろう、かように考えておる次第でございます。
  87. 中村重光

    ○中村(重)委員 私ども委員会で八幡、富士の合併を重視いたしまして、あらゆる角度から委員長の見解をただしてまいったわけであります。近代経済学者であるとか、あるいはその他各界、各層、各方面から賛否両論と申しますか、非常な関心をもってそれぞれの意見も出てまいりましたし、また新聞の世論なんかにも、この合併は認むべきではないというような強い意見も出てまいりましたことは御承知のとおりでありますが、公正取引委員会が審査手続を、正式審査を行なうことになったということに対しましては、私どもも実は敬意を表しておりますし、ただいま堀委員からも言われましたように、公正なる審査が行なわれる、そのことを期待いたしておるわけでありますけれども、実は公聴会を開くということになってまいりますと、いままでの質疑の中で、特に委員長並びに各委員の方々が、公聴会だけは開かなければならないのだというような、そうした答弁が実はなされてきておった。そこで、正式審査という形をとったけれども、これは公聴会だけをやって、合併を認めていくのだというような受け取り方をしている向きもないとは言えないと思うのであります。それとまた、正式審査と公聴会と並行してやるということになってまいりますと、非常にうがった見方かもしれませんが、両社が六月一日合併という一つのスケジュールを立てておるわけですが、それに合わせるというようなことにしているのではないかというような、そうした考え方も出てくるわけであります。そうした点から、特に正式審査とそれから公聴会というものと、第八章の一節、二節と並行してやったのはどういう意味なのかということも実はただしたかったわけです。  前段になるわけですけれども、対応策については不十分であるということを、公正取引委員会としてはこれを決定され、もう事前の相談には応じないという態度も同時になさったようでありますが、対応策が不十分であるということについてはどういう点なのか、ひとつ差しつかえない範囲においてお聞かせ願いたいと思います。
  88. 山田精一

    ○山田政府委員 第一点の公聴会をいたすことにしました理由は、先ほども申し上げましたごとく、公聴会は私どもの職務を行なう参考にいたすために、広く一般の方々の御意見をオープンなところで拝聴する、こういう趣旨でございまして、したがって、合併を認めるか認めないかということとは関係のない問題である、こういうふうに考えております。  それから、いわゆる対応策なるものについて、どういう点がというお尋ねでございましたが、これは現在審査中の事件に属しますので、申し上げることは差し控えさせていただきたい、かように考える次第でございます。
  89. 中村重光

    ○中村(重)委員 私も公正取引委員会を信頼いたしまして、実は疑い深く質問をするということは避けたい、そのようには考えておるわけであります。ですけれども、いままで私が一つの懸念を持っておりましたことは、単に手続的にこうやるのだというようなことになったのでは、これはたいへんだと実は思っていたわけです。ですから、公聴会をやるということと合併を認めるとか認めないということは全く別なんだ、したがって、その御答弁の中から引き出せるものは、公聴会をやった、そうして正式審査、同時に審判という形に、内容ある手続というのが、そうした審査が行なわれるだろうということを期待をするわけでございますが、そのことから、この四十五条にありますところの「職権を以て適当な措置をとることができる。」という、この点に対する解釈でございますが、これは委員長としてどのようにその点を解釈をしていらっしゃるのでございましょうか。
  90. 山田精一

    ○山田政府委員 直接は、この四十五条の第三項の「適当な措置」というのは、四十六条がこれを受けておりまして、「事件について必要な調査をするため、左の各号に掲げる処分をすることができる。」かように相なっております。関係人または参考人に出頭を命じまして審訊をいたすとか、それから鑑定人あるいは帳簿書類等の提出、それから営業所その他必要な場所への臨検その他を含んでおるもの、かように理解いたしております。
  91. 中村重光

    ○中村(重)委員 それから、いま堀委員の質問に対してお答えになった点でございますが、蓋然性ということについては、ゼロから蓋然性というものは生まれてこない、私の聞き違いであったかもしれないが、一つの萌芽がある、そういう中からこの蓋然性というものが生まれてくるのだということでございました。そのことと関連をしてまいりますが、対応策ということについて委員長がどうお考えになっていらっしゃるのか。いま鋼矢板に対しまして、日本鋼管でございますか、その他もこれに参加するというようなことを言っているわけですが、新規参入ということが、競争というものがはたして期待できるかどうかという点は一つの問題点であろうと私は思うわけであります。そういう中からこの蓋然性というものがほんとうにあるのかどうかということでございますね。  さらに新聞で報道されておりますように、協調的寡占それから競争的寡占、その点が非常に問題になってくると私は思うのですが、先般当委員会におきまして参考人に来ていただきまして、いろいろ意見を聞きましたが、その中で正田参考人と内田参考人の意見は、合併の禁止期間中に具体的な市場構造の変化があらわれて、競争的市場構造へと移行することが必要である、こういうような意見を実は伺ったわけであります。  そこで、対応策ということになってまいりましても、いろいろとそれは出てくるでありましょうが、このレールの生産に対しまして、かりに他の会社がこれに参入をしてきたというような場合に、はたして市場構造というものの変化が具体的にあらわれてくるのかどうか。これが新規参入をやったということだけで、山田委員長がいつも言われるいわゆる蓋然性というようなものがほんとうにあるというように考えられるのかどうか。このことはレールだけではなくては、鋼矢板の場合においても言えると思いますし、その他の品目の生産の場合においても私は言えると思います。ですから抽象的ではなくて、委員長が言われる蓋然性というような問題が、こうした具体的な問題の場合にどう当てはまるのかという点について、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  92. 山田精一

    ○山田政府委員 一般論としてお答えをさせていただきたいと存じますが、新規参入の蓋然性は、これは抽象的にはなかなかむずかしいことであると存じます。やはりそれらの品目につきましては、具体的に、将来の需要の伸びがいかほどであるか、あるいは技術の難易がどうであるか、また新規参入をしようとしております企業企業力がいかがであるか、これらを総合的に判断いたしまして、参入の蓋然性というものをはかることができる、かように考えておるわけでございます。  それから、市場構造が合併の届け出期間のうちに変わってしまわなければいけないという御意見があることも承知いたしておりますけれども、これはしょせんはやはり合理的蓋然性ということで判断をいたすべきものではないか、かように考えておる次第でございます。
  93. 中村重光

    ○中村(重)委員 あなたが参議院の商工委員会で、対応策について合理的蓋然性が認められればよいという、いまのお答えと同じような趣旨の答弁をしておられるわけですが、合理的蓋然性ということはどういうことからいえるのかという点ですね。私が申し上げましたように、具体的に市場構造が協調的な面から競争的な市場構造に変わったということがそこではっきり認められなければ、私は合理的蓋然性ということにはならないのではないかというように思うのですが、合理的蓋然性ということをどのように判断をしていらっしゃるのでございましょうか。
  94. 山田精一

    ○山田政府委員 ただいまも申し上げましたごとく、需要の伸びでございますとか、あるいは技術の難易、あるいは競争企業企業力とか、そういうようなところから判断をいたしまして、それが相当の蓋然性をもって新規参入をいたしてまいるのかどうかということを判断をいたすのでございまして、もう具体的、現実的に市場構造が変わってしまっておるのでございますならば、これはもう判断は至ってやさしいことであろうと存じますが、それが市場構造が変わる方向に向かうのかいなか、これを合理的蓋然性として判断をいたすのが私どもの役目ではないか、かように考えております。
  95. 中村重光

    ○中村(重)委員 具体的にどの程度需要が伸びるかどうかということを、会社から、いわゆる当事者から出してまいりますところの資料、あるいは独自で公聴会を開いたり、あるいは必要な人の意見を聞くとか、これから先正式審査を進めていかれる上において、いまあなたが言われるいわゆる合理的蓋然性とはこういうことだという判断を下されるのだろうと思うのです。その点、将来の予見ということが、単に合併当事者が出してきた資料だけをもとにするのではない、それでは合理的な蓋然性とはいえないというので、いまのようなお答えになったのでございましょうし、大体どういうことをするのだということは、いまのお答えの中からも判断ができるようには思いますけれども、どうも実際問題として、それがほんとうにそのとおりになるのかどうかということについては、どうしても予見になると思うのですね。だから具体的に市場構造というものが変わってくるということが把握されなければならないと私は思うのです。いつも申し上げるように、合併がなされた、ところがいま合理的蓋然性とお考えになったようなことが、そのとおりにならなかったということになりましても、この分割命令が実は出せない。そのことからいろいろと犠牲を受けるものが出てくるということになってまいりますと、私はこれはたいへんな問題であると思うわけです。そういう点から公正取引委員会としましても、ほんとうに間違いないという確信の上に立って対処していただかなければならない、こう実は思うわけです。  レールの問題であるとか、あるいはブリキにいたしましても、あるいは鋳物用銑鉄にいたしましても、いまいろいろ伝えられることについて私なりに考えてみたわけですが、レールでも釜石のレール生産を縮小停止をする、これは当てにならないのではないか、だから将来の問題になっていくという感じがいたします。それから釜石工場の設備を利用する、これにいたしましてもトンネル会社をつくるという形であっては、これもどうにもならない、そういうことになりかねない。これも市場構造の変化ということにはならないのではないか。政府の指示に従うということにいたしましても、いま堀委員からいろいろ指摘されましたように、伝えられているようにレールを国鉄が購入することは、これは私的独占というものではなくて公的独占であるから、独占禁止法の対象にならないというような考え方等も出ておるようでありますけれども、これはあくまでこの独占禁止法の対象となるものであって、適用除外ということはあり得ない、この点は委員長も同じような考え方であろうと思うのであります。その他私なりに考えてまいりました具体的な問題一つ一つについて、これはこうなのではないかというようなことについて、私の考え方を申し上げて御意見を伺いたいとも思いますけれども、時間の関係等もありますし、いま公正な審査を行なわれておる段階でもございますから、立ち入って一つ一つについて私から申し上げることは遠慮いたしたい、このように実は考えます。  冒頭に私が申し上げましたように、いま進めようとしておられるところの公聴会等を、これは世論の一つの批判というものに対してあらゆる努力をしたのだという単なる申しわけ的なことにならないように、正式審査からやはり審判という形で公の場において議論するものは議論をする、そしてやはり意見を聞くものは意見を聞く、こういう形でやるべきであると私は考えるのでありますけれども、いまお答えできる範囲においてひとつ委員長の御答弁をお聞かせ願いたいと思います。
  96. 山田精一

    ○山田政府委員 初めに一つ御了解いただきたいのでありますが、将来の蓋然性をはかるにつきまして、当事者から提出された資料に基づいてというようなおことばがございました。これは私ども、当事者からも資料を求めておりますけれども、競争業者または需要者からも相当大部の資料を求めておりまして、決して当事者から提出される資料だけで判断をいたすことはございませんことを、御了解いただきたいと思います。  それから第二番目の問題といたしましては、将来の予測でございますから、これは間違ってはたいへんなのでございまして、私どもといたしましては最善を尽くして蓋然性の判断に当たりたい、かような決意でございます。  そのほかは法律の定めるところに従いまして正しい手続をとってまいりたい、かような考えでございます。
  97. 中村重光

    ○中村(重)委員 審判については現段階ではどのようにお考えになっていらっしゃいますか。   〔委員長退席武藤(嘉)委員長代理着席〕
  98. 山田精一

    ○山田政府委員 これは現在審査中でございまして、その審査の結果を見ませんと、何とも現在予見を持ってはおらないわけでございます。
  99. 中村重光

    ○中村(重)委員 この点はお答えできるのだろうと思うのですが、問題点として指摘された三・五品目だけではなくて、全般的な品目を対象にして審査を進める、そういうことであろうと思うのですが、その点はいかがでございますか。
  100. 山田精一

    ○山田政府委員 これは、合併の届け出全部につきまして審査をいたすわけでございます。
  101. 中村重光

    ○中村(重)委員 この辺で山田委員長に対する質疑を終わりたいと思います。  競輪の問題についてお尋ねをいたしますが、けさの新聞報道で私は初めてその内容を知って実は驚いておるわけですが、各紙がこれは取り上げているのでございますけれども、「公営ギャンブルやめられぬ」「十七団体がふえる」「新たに中津川など」、こういうような報道でございます。  この競輪にしましても、あるいはオートレースにいたしましても、あるいは競艇にいたしましても、これは答申がなされて、現状においていまやっていることを直ちにやめさせるということは、地方自治体の財政上の問題もあって、これは無理であろうが、現在以上にこれをふやさない、縮小の方向にいくことが好ましいという意味の答申がなされておったはずでございますが、どうして十七団体も新たにこれを認めることになったのか、その経緯についてひとつお尋ねいたしたいと思います。
  102. 山本成美

    ○山本説明員 ただいまの御質問にございましたように、四月一日付をもちまして、競輪につきましては百十二団体の指定をいたしたわけでございます。これは昨年度すなわち四十三年度におきまして競輪をやりました市町村がちょうど二百三団体ございますので、十五団体の市町村においての増加と相なっております。  これにつきましては、過般来からギャンブル問題全体の中でいろいろ御議論がございましたように、この際思い切って廃止をするか、あるいは若干自粛をするか、いろいろ問題がございました。自治省といたしましては、市町村が競輪を廃止するかどうか、あるいは続けるかどうかという点につきましては、これは自治団体の住民の判断、あるいは議会なり長の判断におまかせをせざるを得ない、かような態度でまいっておる次第でございます。また、市町村につきまして指定を受けるべきかどうかということにつきましても、これは都道府県知事の御判断にまかせる、副申をいただく、かようなやり方をやってまいっております。  かような経過に基づきまして、法律にございますように、人口でありますとか、あるいは財政の状況等を拝見いたしまして、これは当該当事者であります市町村におきましてもどうしてもやりたい、また知事のほうにおきましても妥当であろう、また資料によって拝見しましてもやることが妥当であるという判断をいたしました結果、先ほども申し上げましたような数字になったわけでございます。このような制度に基づきましてやっておりますが、結果につきましては、私どもとしては、昭和三十六年の七月の公営競技調査会の考え方に基づいておるものと考えております。  むろん、大幅に回数をふやしますとか、あるいは競技場の数をふやしますとかいうふうなことになりますというと、これは問題が出てまいろうかと思いますけれども、現行制度上、自治団体におきましてどうしてもやりたいというものにつきまして、以上のような判断に基づいてやったものにつきましては、公営競技調査会の答申の線にも沿っておるものと、かように考えております。
  103. 中村重光

    ○中村(重)委員 説明員である山本課長では責任ある答弁はできないと私は思うのだけれども政務次官、公営ギャンブルは東京都にいたしましてもやめる方向にあるわけですね。佐藤総理が、参議院の予算委員会であったと思うのですけれども、いま直ちにやめるということについては、地方自治体の財政上の問題から無理もあるだろう、弊害の起こらないような方法でこれを運営させるということであればやむを得ないのではないか、そういう意味の答弁をしておられる。大平通産大臣も大体同様な答弁をしておられます。ところが、新たに十七団体ふやしたということは、少なくとも、昭和三十六年七月二十五日のこの公営競技調査会の答申の趣旨には沿っていない。これはむしろあなたのほうで読み上げていただきたいと思うのだけれども、まあ私が読み上げますが、「本調査会としては現行公営競技の存続を認め、少くとも現状以上にこれを奨励しないことを基本的態度とし、その弊害を出来得る限り除去する方策を考慮した。」そういう答申が出ておりますね。私どもも、当委員会におきまして、この答申の趣旨に沿って運営をしていくのでなければならない、いわゆる縮小の方向にこれを進めるべきであるという意見をもって議論を展開してきたわけです。ところが、相当時間がたった、すると、これを忘れたかのように、そうして申し上げたように、東京都をはじめその他の道府県においてこれをやめるということと全く逆の方向を認めることにしたということに対してどのようにお考えになりますか。
  104. 藤尾正行

    藤尾政府委員 お答えをいたします。私どもといたしましては、総理大臣あるいは通産大臣が国会におきまして答弁をいたしましたように、長い将来にわたっては当然だんだんと縮小をされていくべきである、かように考えます。しかしながら、私も、いまの説明員のお話を承っておりまして考えさせられたのでございますけれども、私どもといたしましても、別にこれを奨励をするということではないと思うのでございます。できるだけそういう方法によらないで地方財政が保っていけるならば、それのほうがもちろん望ましいと思います。しかしながら、東京都その他におかれましても、縮小の方向にいこうと言っておられます事態があると同時に、その反面におきまして、そういった方法で地方財政の充実をはかりたいという申し出が非常に多くある、またそういった方向を都道府県で認めておるという事実、この事実を見せられまして、私どもとしても、考えなければならぬのではないかという気がいたします。
  105. 中村重光

    ○中村(重)委員 いま、あなたの答弁はどういう答弁をなすったのかわからないのだけれども、どういう意味ですか。十七団体新たにふえたのですよ。答申には新たにふやすということは好ましくないとあるのですよ。少なくとも通産省はこの答申の趣旨にのっとって、これをふやさないという方向で対処してこられたと私は思うのだ。ところが十七団体も一挙にふえたということについて、やむを得ないという根拠というものがどこにあるのでしょう。御承知のとおり、日本経済は非常に発展をしてきた、生産性は世界で二番目、三番目に伸びてきているということを強調しておられる。地方自治体の財政状態にいたしましても、むしろ国が融通を受けなければならぬようなゆとりが出てきたということは大蔵大臣が強調しておられるとおりであります。ならば、地方自治体の財政状態というものは、この公営ギャンブルを時代に逆行してふやさなければならぬというような状態ではないと私は思う。だから、どうしてこれを認めたのか、認めなければならないような積極的な理由というものはどこにあるのかということを明快にお答え願いたい。
  106. 藤尾正行

    藤尾政府委員 まことに不明快で申しわけがないのでございますけれども、私は、地方の財政状態がよくなっておることば全般的には大蔵大臣の申されるとおりだと思います。ところが、その間にもいろいろと不均衡があるのではないか。そうして、でこぼこがございまして、その引っ込んでおる方面にある地方団体、これが余裕の出てきた地方団体にできるだけ追いついていきたい、そうして公平を期したいというような感情を強く持っておられるのではないかという気がいたします。しかしながら、道義的に言いまして、公営競技をやって、そのあがりで地方財政というものを埋めていくというのはすでに過去の、戦争直後の地方財政の充実のためにとられました措置であろう、かように考えますし、これが将来にわたってふえ続けていくというようなことではいけないのではないかという感じがいたします。公営競技調査会の御答申の趣旨もそこにあると思いますし、私どもといたしましては、できるだけそうあってほしいと思いまして、できればそういう方向で指導してまいりたい、かように考えるわけでございます。
  107. 吉光久

    ○吉光政府委員 ちょっと補足してお答えさしていただきたいと思います。先ほど、自治省のほうからお答えがございましたように、市町村の指定は、自治大臣がその市町村の人口あるいは財政等を勘案して指定するということになっておるわけでございまして、その経緯について自治省のほうから御説明があったわけでございます。全体の考え方といたしまして、私ども競輪場をふやすというふうな意思は全然ございませんし、あるいはまた競輪開催回数等につきましても、これをふやす意図は全然ないわけでございます。したがいまして、指定市町村のふえましたことと、この競輪を奨励と申しますか、実際の実施業務について競輪の事業をいま以上に応援する、そういうような気持ちは全然ないわけでございまして、競輪場の数あるいはまた競輪の施行回数は従前どおりでございまして、これを指定市町村のふえたことによってふやすつもりは毛頭ないわけでございます。そういたしますと、結局指定市町村の数がふえますと、一面におきましては、財政的な意味での均てん化の一部が行なわれると申しましょうか、そういうふうな感じで御了承いただきたいと思うわけでございます。
  108. 中村重光

    ○中村(重)委員 いまあなたがお答えになった点からして、競輪場そのものは新たに開設を認めたわけではない、ただ開設を認めているところがやめる、そうして新たなところにやらせる、あるいは一市町村でやったところが、今度は連合みたいなことでやる、こういうことですね。だから純粋に財政上の問題だ、こう言われるのですが、それにいたしましても、そういうことをやることが好ましいのかどうかという点、これはやはり別の角度から検討してみなければならないであろう。これは自治省がやったんだ、そういうことで通産省は全く関知していないということではないのだろうと私は思うのです。これらの点についてはやはり合い議ということだってあるのではないか。それから重工業局長、答申の線をどう理解するか。できるだけ縮小の方向にこれを進めていくということ、それはこの競輪によって財政上均てんをするのだというような、これに期待を多く持たせるということ、そういうことも広い意味において答申の趣旨に反しておると思うのです。縮小という方向、こういったギャンブルによって財政上の安定をはかっていく、そういうような期待ではなくて、もっと健全な姿において公共団体の運営をやることを期待をしておるから、だからこういうことが問題となり、答申というものも出てきた、こう思うのです。けれども、できるだけこれをやめさせるということではなくて、ここがやめたから今度は別の市町村にやらせるという方向に、積極的な取り組みをやっているというところに問題があるわけです。それらの点に対してはどのようにお考えになりますか。答申の趣旨に沿っているのだ、新たに認可をしていないからそれでいいのだ、どんなに競輪に財政上依存をするという団体がふえてきたっていいではないか、不健全な財政収入でもかまわないんだ、そういう考え方を持っているのですか。
  109. 吉光久

    ○吉光政府委員 先ほどもこの答申の一部について中村先生のほうからお読み上げがあったわけでございます。少なくとも現状以上にこれを奨励しないことを基本的態度とするということでありました。したがいまして、私どももこの答申の線に沿いまして、競輪につきまして、これを現状以上に奨励しない基本的な方針で対処いたしておるわけでございます。  今回の市町村の指定につきましては、これは自治省のほうにおかれまして、先ほど申し上げましたような諸事情を勘案された上で御指定になったと思うわけでございますけれども、これが財源的な問題として、基本的に財源の独立化をはかってまいりたい、地方財政の独立化をはかってまいるとかどうとか、こういう観点につきましては、実はすべて自治大臣の御判断でおやりになることでありますし、私どもとやかく申し上げるべき筋のものではないと思います。   〔武藤(嘉)委員長代理退席、宇野委員長代理着席〕  ただ、基本的なかまえといたしまして、私ども実は市町村の数がふえましても、それによって競輪の回数をふやす、あるいはまた競輪場をふやしてまいる、こういうふうなことは全然考えておらないことを補足して御説明申し上げたわけでございます。
  110. 中村重光

    ○中村(重)委員 山本さんに自治省の考え方をお尋ねいたしますが、特定の都道府県の市町村がやっておりますね。それで、かりにある市町村がやめて、別の市町村に新たに今度はやらせるというようなやり方は、従来ともやってきておるわけですが、この後はそれについて、この競輪を新たに開設させないということであれば、特定の都道府県の下において甲の町村から乙の町村へと、あるいは連合へと、そうした形で財政収入をはかっていく、これは均てんということばを使うのでしょうが、競輪とか競艇によるところの収入というものを均てんさせる、これは好ましい方向であるという考え方の上に自治省は立っているのでしょうか。
  111. 山本成美

    ○山本説明員 ただいまの御指摘の点でございますが、私どもとしては、先生御指摘の公営競技調査会の答申の中で、主務大臣関係各省と協議をして、交代させる制度を採用するといったようなことも実はお述べになっております。私どもとしては、先ほども申し上げたような経過がございまして——特に競輪につきましては、岐阜県において相当出入りがございます。やめたものも多いし、入ってまいりましたものも非常に多いというふうな事情が岐阜県においては顕著に見られます。これは昨年度生じました例の飛騨川の災害でございますとか、あるいはこれに連続いたしました雨の災害でございますとか、かようないろいろな災害で非常に市町村で疲弊しているところが出てまいりましたので、こういうふうな点も考えまして、また岐阜、大垣、これらの近隣の市町村におきましても、相当人口の増加等によって財政需要が新しく生じておる、しかも画一的なと申しては語弊もございますけれども、われわれがいままでやっております財政対策ではなかなか追っつかない、いわばコブのような財政需要が新たに出てまいっております。こういうふうなものを考えまして、岐阜県におきましては、知事の手元で新しく指定することについて多くなることもやむを得ぬということで、副知事も参った、かような状況でございます。私どもとしては、交代制度というものは、答申の中にあります制度の考え方でもございますので、これを効率的に適用してやる限りはなるべくりっぱなやり方をやりたい、かような思想でやってまいっておる次第でございます。
  112. 中村重光

    ○中村(重)委員 政務次官、お聞きのとおりなのだけれども、岐阜県の例を引用して山本課長答弁された。そういう特殊の場合は、特に新たに開設をするわけではない、ただ市町村がその中でふえたのだ、そういうようないまの答弁であったわけですね。だから、そういった特殊の場合以外は、できるだけ市町村も——甲の市町村がやめたから、今度は乙のところにやらせるとか、あるいは連合でやることにしたとかいうことで、この開催する市町村というのがたくさんふえてきたということは、競輪で甲の町村は財政収入をあげて潤っているのだ、自分のほうもやらなければ損だ、こういうことなんですが、これは新たに競輪を開設することを通産省は認めていないけれども、ふえていないからいいではないか、開催するところが何ぼふえたって、市町村の認可そのもの、開設そのものがふえていないのだからいいじゃないかというようには、答申の趣旨からは受け取れない。むしろ趣旨に反する。いま山本課長は、できるだけ交代させることが好ましいことだと書いてあるし、そういう考え方だというように、岐阜という特定の場合を引用してお答えがあったわけです。だが、通産省として、いまのような場合であったにしても、十七市町村がふえたということは——岐阜県の場合のような例ばかりではない。私が指摘しましたように、もうできるだけ自分のほうも自分のほうもというふうな形で市町村は知事に働きかけをやって開催をしているのだろうと思うが、好ましいことだとお考えになりますか。好ましくないと考えるならば、この後はどうするのか。現実に十七の市町村がふえているということは、これはおおうべくもない事実だから、こういうことを好ましくないとするならば、この後はどうするのか。
  113. 藤尾正行

    藤尾政府委員 まことに中村先生の御指摘のとおりでございまして、私どもといたしましても、決して好ましいことであるとは思っておりません。しかしながら、とにかく開催団体がふえたことは事実でございます。まことに御指摘のとおりでございますから、今後はできるだけそういった開催団体も少なくなり、したがって開催回数も少なくなるように指導してまいりたい、かように考えます。
  114. 中村重光

    ○中村(重)委員 次に、具体的な問題についてお尋ねをしてまいりますが、競輪の場合だけを取り上げてお尋ねするわけですが、御承知のとおりに、二五%が第一号交付金、第二号交付金、第三号交付金としてそれぞれ公的に、あるいは機械産業の振興に、あるいはまた日本自転車振興会等々の運営にこれが振り向けられているが、この第一号交付金、第二号交付金の配分、これは具体的にどのようになされているのか、そのことをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  115. 吉光久

    ○吉光政府委員 第一号というのが、いわゆる機械工業振興資金でございまして、この配分の基本方針でございますけれども、まずその振興事業をやりますところの主体が公益法人であること、これが第一の条件でございます。そういたしまして、さらに自転車、自動車その他機械工業の振興あるいは機械工業の合理化、そういうことに寄与すると認められる事業に配分をいたすことになっているわけでございます。  それから次に、いわゆる公益事業振興資金、こう言っておりますが、それにつきましての配分の基本方針でございますけれども、これも実施主体は公益法人でございまして、実際の問題といたしましては、体育事業でございますとか、社会福祉事業でございますとか、文教関係の事業でございますとか、そういう一般的に公益の増進を目的とする事業の振興に寄与すると認められるものに対してこれを配分してまいるというのが、この機械工業振興資金及び公益事業振興資金の基本的な方針でございます。
  116. 中村重光

    ○中村(重)委員 たてまえは、いまお答えになったようなことになっているようでありますが、この配分がどのような団体になされているのかということについて、あなたのほうから実は資料をいただいております。ところが、その内容を見ると、このような団体に配分をすることが、いま御指摘になりましたように公益事業の振興ということになるのかどうか疑問を実は持つような団体に対しても配分がなされている。かつて、私が、割賦団体の海外旅行に対して金を出しておられたという事実についてお尋ねしたことがある。ところが、その割賦販売の団体というのはヨーロッパ諸国に団体旅行したんだけれども、実際は旅費としてそれが扱われていない。どこへその金がいったのかさっぱりわからない。私の追及に対して、重工業局調査をやって、これはどうも好ましくなかったというので還付さしたという事実があるわけです。全部が全部そのとおりだとは私は申しませんけれども、はたしてこういう団体に出して機械工業の振興になるのだろうかということを感じる団体に相当出しておるようであります。たとえば一つ一つ具体的に申し上げると説明を聞かなければなりませんから、時間が幾らあっても足りませんが、中央発明センターの設備拡充ということは具体的にどういうことだろうか。新機械の普及促進事業、あるいは自動車の事故原因の分析調査、あるいは機械類の輸出市場調査、あるいはまた機械輸入の統計的分析調査、あるいは中古自動車の価格の適正化調査、あるいは機械類の割賦制度の合理化対策、一つ一つ取り上げてみると、名称だけから見ると、これも確かに機械工業の振興になるじゃないかということがいえるかもしらない。内容的には、私がいま指摘をしましたように、かつて問題点として取り上げましたような割賦販売団体のヨーロッパ観光旅行に、ここにも割賦販売というような項目が出てきたのでありますが、その名称だけを見ると、なるほどとうなずかれるのだけれども、内容はそうでないというようなことがあるのではないか。私がいま指摘いたしました二、三の団体の問題について私も調査した点があるのでございますけれども、的確に機械工業の振興に役立っておるということがいえるのかどうかということをひとつお答え願いたいということと、それから配分に対してはどのような手続をもって配分がなされておるのか。その点ひとつ御説明を願いたい。
  117. 吉光久

    ○吉光政府委員 ただいま例をあげて御指摘があったわけでございます。昨年御指摘をいただきました割賦販売協会に対する海外調査のための補助金につきましては、御指摘いただきました後に、日本自転車振興会のほうで具体的な監査をやりまして、不当に使用されておると思われるものにつきましては全部返還命令を出しまして返納していただいたわけでございます。したがいまして、その点につきましては現在は問題は解消いたしておるかと思うわけでございます。  なお、いま御指摘いただきましたいろいろな団体についてでございますけれども、実は私詳細な資料を持ってまいっておりませんので、詳細にお答えすることはちょっとむずかしいわけでございますけれども先ほどのたとえば自動車の関係につきまして、事故原因の分析調査というのがございますが、これは結局安全、公害に関する研究をやっておりますので、それに対して新しく補助金がつけられたものというふうに考えておりますが、実際問題といたしまして自動車の安全、公害等につきましては、事業者自身もそれぞれの研究施設、研究費を使って安全、公害についての検討をいたしておるわけでございますけれども、さらにまたこういう協会、団体活動を通じましてそういう意味での調査研究というふうなことも実際問題といたしましていたしておるわけでございます。いまお話がございましたように、私どもとしましては非常に厳正な手続を経ました上でこの配分等をきめておりますので、したがいましていま御懸念されたような点は万々ないものと私どもは思っております。残念ながらただいま詳細なそれぞれの団体についての説明書を手持ちいたしておりませんので、いずれまた御報告をさせていただきたいと思います。
  118. 中村重光

    ○中村(重)委員 それでは、中古自動車の価格の適正化調査というのは、これは局長、どういうことです。
  119. 吉光久

    ○吉光政府委員 ここに書いてございます団体の日本自動車査定協会でございますけれども、これは自動車の取引の場合に一番問題になりますのは下取り価格でございます。前の中古車を下取りいたしまして、そして新車を販売いたしますその場合に、販売競争が非常に過当になりますと、実はその中古車の値段を相当オーバーエスティメートと申しますか、現実には三十万円ぐらいのもの、それを四十万円で引き取るというふうなことで、実際の新車の値引きをやるというふうな状況が横行いたしておったわけでございます。したがいまして、割賦販売法に基づきまして、自動車につきましては御承知のとおり割賦の販売の標準条件というものが告示されておるわけでございます。ところが現実には、そういうふうな中古車の下取りをめぐりまして実際にはもぐり行為が行なわれるというふうなことがございます。したがいまして、ここに書いてございますような日本自動車査定協会というものが先年設立されまして、この査定協会の査定価格というものが下取り価格の基準になるというふうなことで、それがまたひるがえって消費者のほうの利益にもつながる問題であるというふうなことから設立された協会でございまして、この自動車査定協会は以上のような仕事をやっておりますけれども、これを自動車業界の会費負担でまかないますと、あまりにもメーカーサイドの見方をし過ぎるようなにおいも出てまいりますし、また現実の活動がそういうことになっては困るという点もあるわけでございます。したがいまして、何と申しましょうか、色に染まらないこういう資金を一部援助いたしまして、できるだけこの協会の機能というものが中立的な立場を確保できるように、こういうことからこの配分が行なわれたものと考えます。
  120. 中村重光

    ○中村(重)委員 いまお答えになったようなことが、どれほどの効果が発揮されているとお考えになりますか。たとえばトヨタにいたしましてもあるいは日産にいたしましても、代表的なメーカーがこの下取りについてこの特殊な団体の指示に基づいてやっているというように、あなたは確信を持っておられますか。私は、中古車の問題については、いまあなたが言われるような趣旨がほんとうに生かされていて、そしてそうしたメーカーサイドでやられないようにその団体は、そうしたメーカーから全然金をもらっていないのかもらっているのか知りませんが、おそらくこの自転車振興会の益金の配分を受けると同時に、いわゆるメーカーからの援助というものも受けるということが現実に行なわれているのであろうと私は思う。いま自転車振興会の益金からやっているから、いわゆるメーカーサイドからの影響というものはないのだ、公正に適正に行なわれてきているという確信があるのかどうかということをお尋ねをするわけですが、中古車もさることながら、新車の場合だって、東京都で新車の販売をする場合、あるいはまた地方で販売をする場合に、同じ新車の価格が同一でない。どうしてか。それは運賃がかさむからだ。そういうことで、地方で販売する新車の値段が高い。そういうことについては関心は持っておられないのであろうか。製作所にあるいは販売所に近いところであろうとも遠いところであろうとも運賃の問題等々は、登録をして販売をしていく、地方民に特別の負担をさせないというようなそういう指導こそおやりにならなければならないのではなかろうか。とにかく御答弁を聞いておると、まともな答弁をされるのだけれども、現実には、この益金の配分をするためにいろいろな団体をつくり、そうしてその団体が適当な名目でもってその配分を受けておる。私はそういうことが現実の姿ではなかろうか、こう思うのです。いまあなたは、厳正な審査の上に配分をしておるとおっしゃるんだけれども、それでは、具体的にどういうことをやっておるのか、ひとつそれもあわせてお答えを願いたいと思います。
  121. 吉光久

    ○吉光政府委員 手続的な面からお答え申し上げますと、まず、この機械工業振興資金にいたしましても公益事業振興資金にいたしましても、受付の窓口は日本自転車振興会でございます。と同時に、いろいろとそれぞれの事業に関連いたしましたそれぞれの関係官庁というものもございまして、公益事業資金で申し上げますならば、スポーツ関係は文部省、あるいは医療、社会福祉等につきましては厚生省というふうに、それぞれの所管省庁からの御推薦もいただいておるわけでございます。と同時に、いまの機械振興資金になりますと、主として通産省所管いたしております団体が多うございますので、したがいましてこれは重工業局の各課の意見というものをそれぞれ聴取いたしております。また同時に、日本自転車振興会は振興会独自の調査活動をしておられます。それらのものが総合され、そしてまた、最終的にはこのための審議会が実は設けられておるわけでございまして、これの配分先を決定いたします場合には、車両競技審議会という審議会がございまして、ここに詳細に御説明いたしまして、その御了解を得た上で交付先を決定するというふうに、手続的にいたしましても非常にいろいろの関門があるというふうな形で、相当慎重な配慮を加えながら交付金の配分先をきめておるというのが実情でございます。
  122. 中村重光

    ○中村(重)委員 そうした配分をやりまして、追跡調査なんかやっておりますか。この前も、割賦販売の海外旅行の問題は、私が取り上げたからあとで返還をさせるということになったのですが、私が一つ取り上げたのがそうした具体的な形になってあらわれてきたのですよ。ところが実際はこのたくさんの団体に対してばく大な資金が流れておる。競艇なんかの場合においては右翼団体に対する資金源になっているとか、公然の秘密として言われておるのですよ。公的機関がギャンブルをやって、その益金がどう配分をされているのか。しょせんこれはギャンブルでもうかった金なんだから、そうやかましく調査なんかする必要はないという考え方でおるのでしょうか。ただ配分をするときだけ特定の機関によって審査をしてやった、あとでどう使われておるかわからぬということではどうにもならないでしょう。ギャンブルの益金によって配分をしておることであるから、世間の非難もきびしいから、特に配分にあたっても慎重に、それから現実にこれがどう使われておるかということについても追跡調査ぐらいはやる、立ち入り検査をやるというような、そういうような私は厳正な態度をおとりになる必要があると思う。その点に対してどのようにお考えになりますか。  時間の関係がございますから、私は厚生省にも自治省にもこれをお尋ねするのですが、社会福祉団体の場合にだって同じようなことが言えるのではないでしょうか。特定の地方自治体の長の選挙地盤固めにこの金が使われておるというような事実はないかどうか。あるいは競輪等に関係するような政治家が顔をきかして、適当に、ハゲタカがこれをむさぼり取るように、そういうような配分がなされておるという事実はないかどうか。さらにまた、たとえば精薄施設に対しまして、あるいは保育所に対しまして、あるいは老人ホーム等に対しまして、特定の団体には出したが——これは社会福祉法人に出すわけですから、この保育所なんかの場合は、これの配分を受けない団体とは公平を欠くことになるのではないか。これは交付税の算定の問題、少なくとも地方自治体というものはこれを受けるものと受けないものと私は不平等な扱いというものがなされてはならぬと思う。それらについてどのようにお考えになっておられるのか、それぞれひとつお答えを願いたいと思う。
  123. 吉光久

    ○吉光政府委員 いま御指摘いただきましたように、こういう金でございますだけに、事後のトレースと申しますか事後監査というものは厳重にやらるべきものであるというふうに考えるわけでございまして、現在の仕組みを申し上げますと、現在は補助金が交付されまして、補助事業者がその事業を完成いたしました後二カ月以内に事業の完了報告書を提出いたすことになっております。その完了報告書が出てまいりますと、これは自転車振興会が実地監査をいたしておるわけでございますけれども、振興会は事業の実施状況及び事業の実施にかかる代金の支払い状況等を、それぞれ伝票等に基づきまして、それが適正に行なわれておるかどうかを、実地でいろいろの書類を調べました上で監査を行なっておるわけでございまして、その事業の実施内容あるいは収支決算、それらが適正である、こう認めた場合に初めて補助金の額を確定するというふうな制度をとっておるわけでございます。  なお、自転車振興会のほうにおきましては、こういう監査業務が非常に重要であるという意識のもとに、最近、中の機構を改めまして、従来公益事業資金については公益事業資金を担当している部局で、機械資金につきましては機械振興資金を担当している部局で監査をしておったわけでございますけれども、それでは監査が厳正を欠くことになりはしないかというふうな配慮もございまして、この四月から副会長直属の監査室を設けまして、この監査室がそういう従来の経緯と関係なしに監査をしてまいるという制度を打ち立てたわけでございまして、将来ともこういう問題につきまして、いまお示しいただきましたように、ますます監査業務を拡充してまいるという方向で対処してまいりたいと考えるわけでございます。
  124. 大和田潔

    ○大和田説明員 社会福祉施設に対します益金の配分が適正に行なわれているかどうか、こういう御質問でございますが、私ども、社会福祉施設に対しますこの益金の配分のしかたでございますが、実は社会福祉に対しますところの資金といたしましては、国庫補助がございます。それから民間資金といたしましても、この競輪の益金のほかに、共同募金の金であるとか、あるいはお年玉の金であるとかといったような幾つかの民間資金がございまして、これらの民間資金を有効適切に使用する、こういうたてまえから、県におきましては県の共同募金会がその適正な配分につきましての調整を行なっておる、こういうたてまえになっておるわけでございます。共同募金会が調整決定を、つまり配分対象並びに配分の額につきまして決定を行ないます際には、推薦委員会というのが設けられておりまして、共同募金の関係者それから社会福祉協議会の関係者あるいは学識経験者等から組織されました推薦委員会が持たれまして、そこで資金の配分をいかがするかということにつきまして十分な検討が行なわれまして、その結果、地方の共同募金会から中央を通じまして、これは自転車振興会の場合は自転車振興会、それから共同募金会の場合あるいはお年玉等ありますが、それぞれの方面に申請をする、こういうようなたてまえになっておるわけでございます。したがいまして、こういった推薦委員会の推薦は、ただいま申しましたように構成メンバーから申しましても適正な推薦が行なわれておるというふうに私ども考えておりまして、これら益金の配分につきましては、適正に行なわているというふうに考えておるわけでございます。
  125. 山本成美

    ○山本説明員 地方団体の歳入は、御承知のように税から始まりましていろいろございます。中に公営競技の収入も入ってくるわけでございますが、これらいずれを問わず、地方団体の歳入の使途につきましては、これは適切妥当でなければなりませんし、適法でなければならないと存じます。ただ、いま御指摘の公営競技収入の使途につきましては、昭和四十一年度の決算の数字から見てみますと、大体三八・五%は教育費に使っている、あと二六・六%程度は土木費に使っておる、あと、民生、衛生等といろいろなものに使っておりますけれども、私どもとしては、これらの適切なまた適法な収益の使途についての担保は、これは監査委員の監査もございますし、また県議会あるいは市町村議会の決算の際の監査でありますとか、いろいろな方法でその担保がなされるというふうに考えております。
  126. 中村重光

    ○中村(重)委員 これは最終的には通産省が決定するんだろうと思うのですが、社会福祉法人に対するところの配分にいたしましても、私どもはその配分の方法に問題なきやということに一つ疑念を持っておるということ。もう一つは、同じ社会福祉法人が、たとえば精薄施設なら精薄施設をやる場合、甲の精薄施設はこの配分を受けた、乙の精薄施設は配分を受けなかったということがあり得るのでしょう、どうですか。
  127. 大和田潔

    ○大和田説明員 これにつきましては、先ほど申しましたようにいろいろな資金がございます。したがいまして、いろいろな資金を効率的に配分をいたすというたてまえになっておりまして、たとえば、Aの精薄施設であればこれは競輪益金でいこうじゃないか、Bはお年玉でいこうじゃないか、あるいはCは国庫補助でいこうといったような、そういう資金の配分がございます。したがいまして、特に、AとBあるいはCという施設がございまして、それに対して資金が行かないということがあったといたしますならば、その施設の計画が不備であるというようなことによりまして資金の行かない場合はあるわけでございますが、同じような条件であって、計画がよいというのであれば、民間資金なりあるいは国庫補助なりでもって整備を進めていくというたてまえになります。ただ、その場合でも優先度合いがございます。したがいまして、資金のワクの範囲内で優先度合いをきめていく、その優先度合いにつきましては、やはり計画性の問題、緊急性の問題といったようなものが考慮されるというたてまえになるわけでございます。
  128. 中村重光

    ○中村(重)委員 いま申し上げるように、社会福祉施設に対してそれぞれ申請書が出ますね。不備ということは書類上の不備がある。書類上から見ていろいろ設備の不備がある、そういう場合は、そのことが満たされなければ書類の受理がないわけですね。その場合、その書類が整備され、書類を通してそれぞれの計画が完全である、こういうことになって書類が受理される。その場合は、国の助成が幾ら、都道府県が幾ら、それから交付団体からのいわゆる助成というのか配分が幾ら、いろいろな種類がある。それはわかる。どの種類のものであろうと、その比率は同じでなければ私は不公平である、こう言っておるのです。それは大きい施設に対しては大きい助成があるでしょう、配分があるでしょう。小さい施設はそれなりの助成があるでしょう。その規模には応ずるけれども、比率は同じでなければ不合理であり、不公正である、こう申し上げている。そのとおりになっておると思っておられるのかということです。
  129. 大和田潔

    ○大和田説明員 お答え申し上げます。この施設に対します補助につきましては、各制度とも補助基準に補助率がございます。国庫補助につきましては、二分の一というのが国庫補助の補助率、残りの二分の一のうちのまた半分を県が負担する、こういうたてまえになっております。競輪の場合はこれが四分の三という補助率になっております。したがいまして、この交付基準に従いまして、ただいまのような競輪の場合は、一般の場合、四分の三の補助、それから重症心身障害児施設、この場合は六分の五、災害復旧は六分の五、こういう基準がございまして、これに基づきまして補助いたしておる、こういう形になっております。
  130. 中村重光

    ○中村(重)委員 私の大体の時間が参りましたから、具体的な問題をもってあらためてお尋ねをすることにしたいと思います。機械工業振興の場合もそうなんです。先般の割賦販売の問題等々から判断をいたしまして、いま吉光局長が御答弁になったようなことであれば間違いは少しも起こらないのです。ところが現実に間違いが起こってきておるというところに問題があるのです。そうした具体的な事実をもって、あらためて時間をかけてお尋ねをしてみたいと思います。  最後になりますが、職員と競輪の選手の給与の仕組みについてお尋ねをいたしますが、競輪の仕組みは基準法の対象になるのかどうか。それから役職員の給与について、これは通産省がどの程度までこれにタッチをしておるのか。競輪の競技会あるいは日本自転車振興会と労働者との間に、いわゆる団体交渉等によって給与をきめることが可能なのかどうか。当事者能力というものが与えられておるのか。それぞれお答えを願います。
  131. 吉光久

    ○吉光政府委員 労働条件の問題でございますので、したがいまして、これは労使間の交渉によってきめられるというのが基本的な態度であろうと思うわけでございます。具体的に申し上げますれば、その競技会の職員と競技会の役員と申しますか理事長との間の交渉によってきめられてまいるというのが筋道であろうと思うわけでございます。ただ現実の問題といたしまして、自転車競技会のすべての経費は、施行者でございますところの都道府県あるいは市町村からの交付金によってその経費がまかなわれておるわけでございます。財源が普通の一般収益金と違いまして、そういう公共団体からの交付金によってまかなわれておるという特徴があるわけでございますけれども、その交付金の額につきましては、実は長期的な観点から見まして、車券売り上げ高等に応じまして、通商産業省令できめることになっておるわけでございます。したがいまして、そういう面から見ますと、そういう長期的な財源全般の問題につきましては省令できめるというふうなことになっておりまして、これが長期的に、そこらの一般的な職員給与を含めまして、すべての支出に相当する分がその収入金の一定の比率でまかなわれるということを前提といたしておるわけでございます。したがいまして、この省令を制定いたします場合、これは競技会の経費、とりわけその大きな部分を占めております職員の給与、その水準がある程度適正な水準と申しますか、ある程度の水準を維持するということが前提になっておるわけでございまして、そのために毎年各競技会の予算あるいは事業計画というふうなものにつきまして、これは通商産業大臣の認可事項となっておりまして、この認可事項の内容につきまして、事前にこういうふうな態度で、あるいはこういうふうな基本方針で給与についての考え方を統一されると申しますか、方針を確定されたらどうであろうかというふうな意味での事前の指導を実はいままで行なっているわけでございます。したがいまして、そういう事前の通産省指導と、いま御指摘になりました労働基準法上の、あるいはまたその他の労働法令に基づきました団体交渉権というふうなものが、どういうふうになるのかという点、いささか不分明な点が従来あったかと思うわけでございますけれども、私どもやり方等につきましては、将来さらに検討を加えてみたいと思っているわけでございますが、基本的には、こういう問題につきましては、労使間の交渉によってきめらるべきものである、こういう前提を踏んまえました上で、さらに実際のやり方等につきまして検討を加えてまいりたい、こう考えるわけでございます。
  132. 細野正

    ○細野説明員 お答え申し上げます。ただいま一般的な御指摘でございましたので、ちょっとばく然としかお答え申し上げられませんけれども、たとえば競輪の競技会の職員については競輪競技会との間、あるいは同一の競輪場における切符もぎり等については当該地方公共団体との間に、それぞれ雇用関係があり、基準法が適用されるというふうに考えております。
  133. 中村重光

    ○中村(重)委員 よくわからなかったのだけれども、競輪選手の雇用主はだれになるのですか。
  134. 細野正

    ○細野説明員 競輪の選手につきましては、雇用関係があるかどうかというのは一つ問題がございまして、雇用関係があり、基準法の適用を直ちに受ける、こういうことになるためには、使用従属関係があり、かつ賃金が支払われておる、こういう要件が基準法の九条における要件になっておるわけです。その観点から見まして、調査いたしました結果によりますと、自転車競技の施行者でございますが、これは参加者に競走の場を提供するというかっこうでしかないのじゃなかろうか。それから支給される日当とか宿泊料、これは実費弁償としての性格のものではなかろうか。それから賞金、これは競走参加の目的物であって、労務に対する代償とはちょっと認めがたいのではなかろうか。こういうふうな理由で、いずれにしても使用従属関係もそれから賃金の支払い関係も認められぬのじゃなかろうか、こういう角度から競輪の選手そのものは基準法の九条でいっている労働者ではない、こういう結論になっているわけでございます。
  135. 中村重光

    ○中村(重)委員 いわゆる基準法上の労働者ではない。そうすると、競輪選手とはどういう性格のものかということですね。それと、もし競輪選手が負傷をした場合、これは労災法の対象にはならない。労働者ではないからですね。待遇改善というようなことはだれとの交渉になるのか。当該市町村、いわゆる開設者、施行者は、ただ施設を貸与しているにすぎない、こういうことでしょう。そうすると競技会にしても雇い主ではない。日本自転車振興会も雇い主ではない。いわんや政府は雇い主ではない。そうすると、競輪選手の性格というものはどうもはっきりしないということになってくるのですが、そうした負傷が起こった場合等の関係等もありますが、そういう場合はどういうことになるのでしょうか。
  136. 吉光久

    ○吉光政府委員 競輪の選手——職員じゃなくて選手のほうの身分につきまして、実はいま労働省のほうからお答えがあったわけでございますが、この選手は、それぞれ日本自転車振興会、これが検定をやっておりまして、この検定に合格した人が振興会に登録をされます。この登録を受けた選手が、実際問題として、それぞれの競輪場で行なわれます競輪に参加するというふうな形になっておるわけでございまして、そういう登録を受けた選手の地位というものは、その地位それ自身が一つの職業である、こういうふうな観念で受け取っておるわけでございます。したがいまして、競輪選手につきましては月給というふうなものは実はございませんで、むしろ先ほど御説明がございましたように、賞金によりまして、その賞金をたくさんとるということによってその報酬が出てまいるというふうなことになっておるわけでございます。  いま御指摘がございました共済等の問題につきましては、実は全国競輪選手共済会という財団法人が設けられておりまして、これは選手会それから施行者団体、施設者——これは競輪場の施設者でございます。それから日本自転車振興会、それから各ブロックにございます自転車競技会、それがそれぞれ拠出いたしまして、こういう選手共済会というふうなものをつくっておりまして、この共済会で選手の共済として先ほどのような場合に一定の資金を出す、こういうふうな制度が別に設けられておるわけでございます。
  137. 中村重光

    ○中村(重)委員 まあ労働基準法上の労働者ではないということはわかったわけですが、これが是か非かということはおのずから別になってこようと思うのですね。実際問題として、それであっていいのかどうかということ。それから競輪選手を当該競走に参加させるかさせないかという権限というのはだれが持っておるのか、特定の支部長がそういう権限を持っているのか、あるいは日本自転車振興会が持っておるのか、あるいはその施行者なのか。施行者ではないでしょう、施設を貸与するだけだから。その点はどうなのか。
  138. 吉光久

    ○吉光政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、競輪選手はすべて日本自転車振興会に登録されておるわけでございます。したがいまして、この登録された名簿に従いまして日本自転車振興会が各地の施行者のほうに連絡いたしまして、施行者のほうでいわゆる割り振りと言っておりますけどれも、いろいろの月間の行事等の割り振りをやるわけでございまして、施行者のほうでその割り振り、要するに、自転車振興会から示されました割り振りに賛成であればそのままきまりますし、あるいはまた、日取りあるいはその競走の範囲等によりまして割り振りの変更方を求められれば、また自転車振興会はそれに応じまして、それぞれの施行者のほうに具体的な他の割り振りを示す、こういうふうなことできまっております。
  139. 中村重光

    ○中村(重)委員 その問題はまた適当な機会お尋ねをいたします。  このベースアップの点ですが、吉光局長は、これは団体交渉によってきめるべきものである、こうおっしゃったんだが、あなたは省令云々というようなこともあわせてお答えになったわけです。ところが、現実には当事者能力は与えていないんでしょう。あなたのほうでワクをきちっときめてあるでしょう。そのきめられた範囲において、これは労使の間には話し合いができる、こういうことじゃありませんか。
  140. 吉光久

    ○吉光政府委員 当事者能力の点につきましては、当然与えらるべきものであるというふうに考えておるわけでございます。いままでやっておりましたのも、ワクぎめと申しますよりか、ある一つの最高基準と申しますか、こういうふうなことを示すことによって、全国的に給与が大きなアンバランスのないような、そういうことを考えたわけでございます。ただ、いろいろと、いろいろの現実に起こっている問題等から反省いたしますと、ここらの点につきまして、さらにそういう当事者能力がはっきりと出てくる仕組みと申しますか、そういう点につきまして、これは長年現行制度でやっておるようでございますけれども、この際もう一度白紙に戻してみまして、基本的なそこらの制度のあり方等につきまして研究をさしていただきたいと思うわけでございます。
  141. 中村重光

    ○中村(重)委員 まあ、あなたの態度が明らかになりましたから、具体的な事実をもっていろいろお尋ねをすることは、これはきょうはいたしません。  その白紙に戻して検討するというのは、じゃ、いつごろからお始めになりますか。
  142. 吉光久

    ○吉光政府委員 すでに新しい年度に入りました。できるだけ早く検討を開始いたしたいと思います。
  143. 中村重光

    ○中村(重)委員 同時に、その場合、大蔵省と話し合いをして解決をされなければならぬのは、退職金の積み立ての問題であると私は思う。退職金は二分の一しか積み立てを認めていないのでしょう。これでは職員も非常に不安であると思う。だから、それらの点についても、合理的に問題を解決していかなければならぬと思うのです。その点はどうお考えになりますか。
  144. 吉光久

    ○吉光政府委員 御指摘のとおりでございまして、実は、この団体が非課税団体ということに指定されまして、その非課税団体としての性格の問題といたしまして、現在、二分の一というふうなことで制度上きまっておるわけでございます。ただ、この問題につきましては、さらに私どもも国税当局と折衝いたしまして、できるだけいい結果が出るよう、さらに折衝を重ねてまいりたいと考えます。
  145. 中村重光

    ○中村(重)委員 非課税団体である。大蔵省は、ところが、その二分の一だけを積み立てを認める。もしこれが解散をするという場合においては、退職金の二分の一はもらえるのかもらえぬのかこれはわからぬ、そういう結果が生じてまいりましょう。だからして、その点は、十分実情調査をし、また、労使の意見を聞いて、国税庁当局と話し合いをするということでなければならぬと思います。  最後に、通産省その他関係省からこの日本自転車振興会に、あるいはまた各種の競技会にどの程度の人が——いわゆる天下り人事でありますが、どの程度の人がこれに入っているのでございますか。
  146. 吉光久

    ○吉光政府委員 お答え申し上げます。日本自転車振興会役員の総数十二名でございますが、そのうち二名でございます。それから、自転車競技会、全国八団体、五十五名の役員でございますが、そのうち十二名でございます。
  147. 中村重光

    ○中村(重)委員 私も、天下りした人の氏名の一覧表をここへ持っているのだけれども、ずいぶんたくさんの人がこのそれぞれの地区の競技会に、それから日本自転車振興会に役員として入り、また職員として入っている。この職員というのは、支部長あるいは本部の次長であるとか、その他課長であるとか、いまあなたが言われたいわゆる役員の中には入っていないと思う。そうして入ったらば、給与もものすごく高いでしょう。最高三十二万円、それから二十六万円、十三万円、十二万円というように相当高い給料を取っている。しかも、退職時にはこれは退職金を取っておるわけであります。そうして高給でもってこれに入っている。そういうことがこの労使の間にいわゆる自主性を与えていない。一切通産省がワクの中にはめ込んで自由にこれを支配しておるというようなこと、そういうことも、こうした天下り人事というものがしやすいようにそういう道を開いているのだと言われてもしかたがないでしょう。そうして支部長なら支部長にいたしましても、この競輪開始以来もう二十年間もやっているような人であっても、それから、通産省から天下りをしたそのとたんに支部長になった人でも、二十年やった支部長も通産省から入った支部長も同じ給料でしょう。すべてがそういうことですよ。この天下り人事について政務次官、どういうようにお考えになりますか。それから、待遇の面においても、私がいま指摘したとおりでありますが、いかがでしょう。
  148. 藤尾正行

    藤尾政府委員 天下り人事でございまするけれども、一般的に申しまして、私は、この天下り人事といいまするものの中にもいろいろあると思います。たとえば非常にその人の能力といいまするものをむしろ欲しておりまして、どうしても引っぱると申しますか、来てくれ来てくれということで民間にその能力を買われていくような型の天下りというものもございますし、ただいま中村委員御指摘のような、官製団体と申しますか、半官製団体と申しますか、そういった団体に入っていくというような天下りもあるわけであります。  ただいま御指摘の自転車振興会でありますとか、あるいはその競技会でありますとかいうところに非常な高給をもって行くというようなことは、決して好ましいことでございませんから、これは今後とも調査をいたしまして、十二分に気をつけてまいりたい、かように考えます。
  149. 中村重光

    ○中村(重)委員 佐藤総理大臣は、このギャンブルについて、かけごとを好むは人の性、でも、節度が必要だ、こう言っているんですね。ともかく、こんなたくさんの役人が競輪の中に入っていって、そうして退職金を取ったあとで高給を取る、そうしてここでまたやめるときは退職金をもらう、そういうようなやり方、このようにすべて役職に対して天下っていって、そのいすを占めてしまうということになってくると、もう下の人は全く下積みですよ。何ぼ経験があっても、その経験を生かせない。この競輪は非常に不合理な面もあるでしょう。あるいはいろいろと開催上の秩序を守っていかなければならぬとか、あるいは危険を防止していかなければならぬとかという経験を生かさなければならぬような点が、私はたくさんあると思う。そういう点が、天下っている人はしろうとですよ。そういうしろうとが厳としてこの席を占める。そうして経験者はそのまま下積みされておる。そういう不合理なことを、これは節度をちっとも守っておらぬということになると思う。こういうことだから、競輪をやめるような方向ではなくて、何だかんだ、いろんなあの手この手で競輪の開催回数をふやしていくとか、いろんなことをやっておるのじゃありませんか。問題はこういうところにある。だから節度を守るというようなことは、私はそういう面にこそ節度を守っていくということでなければならぬと思う。声を大にして、あなたはここぞと思う場合は強調されるのだから、きょうもそのとおりだと思うならば、声を大にしてひとつやってもらう。そうして迫力を節度を守る面に生かしていくということでなければならぬと思う。どうですか。
  150. 藤尾正行

    藤尾政府委員 まことに仰せのとおりでございまするから、私のあらん限りの声を出しまして、御趣旨のように指導をいたします。
  151. 宇野宗佑

    ○宇野委員長代理 玉置一徳君。
  152. 玉置一徳

    ○玉置委員 まず重油の需給の状況についてお伺いをいたしたいと思います。  御案内のとおり、公害問題の非常にやかましい今日でありまして、低硫黄重油の確保というものがこのうらはらに非常に重要でございますが、現在の重油の需要量、したがって海外からの輸入量はどれくらいであって、そのうちいわゆる厚生省の規格に合う低硫黄分というものがどのくらいあるか、この点についてまずお答えをいただきたいと思います。
  153. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 昭和四十二年度のC重油の需要量は大体五千万キロリットルでございます。これに対しまして製品としての昭和四十二年度における低硫黄の重油の輸入量は四百五十七万キロリットルでございます。
  154. 玉置一徳

    ○玉置委員 ちょうど一割弱、こういうことになりますが、現在において公害対策にこたえるために低硫黄を確保する方策はどのようにお考えになっていますか。
  155. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 ただいまお答えいたしましたのは、全体の重油の需要量に対しまして製品としての低硫黄の重油の輸入量を申し上げたわけでございますが、基本的には、まず重油の大部分を国内で生産をいたしておるわけでございますので、まずもとになります原油につきまして、なるべくは原油そのものとして硫黄分の少ない原油を輸入いたしまして、これを精製して硫黄分の少ない重油にするということが第一番目の事柄であろうと思います。   〔宇野委員長代理退席、委員長着席〕 しかしながら、ローサル原油というものをわが国が確保いたしますには非常に制約が多うございまして、主として中東の硫黄分の高い原油を入れて精製をいたしているという現状からいたしますと、いま申しました一番目のやり方には限界があるわけでございますので、次いでは、高い硫黄分の原油を入れまして精製をいたします場合には、脱硫装置によりまして硫黄分の少ない重油を精製するということが非常に重要な課題となってまいります。それでなおかつ足りないものを、先ほど申しましたように外国で生産されます硫黄分の少ない製品を重油として輸入をする、この三つに相なろうかと思うわけでございます。
  156. 玉置一徳

    ○玉置委員 方法はわかっていますが、どのようにして確保しようとしているか、現状はどうなのか、数字をあげてお答えいただきたい。
  157. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 昭和四十五年度時点でいま建設にかかっております各種の製油所の脱硫設備というものを準備いたしますので、四十五年度時点で大体三十七万バーレルの低硫黄重油ができるような脱硫設備を現在措置をいたしているわけでございます。これによりますと、大体四十五年度で五〇%ぐらいのものが一・七%という硫黄含有率になることを目ざしているわけでございます。  先ほどお答えいたしましたローサル原油の手配につきましては、いまいろいろと考究をいたしておるわけでございまして、どれぐらいのものが入り得るか、価格との関連もございまして、現在ただいま明確なる数字を用意しておるというわけではございません。
  158. 玉置一徳

    ○玉置委員 脱硫装置は、わが国の技術が一番進んでおるといわれておりますけれども、相当な費用がかかりまして、しかく簡単なものじゃないと聞いておるのですが、いまのお話ですと、約一・七%のやつを五〇%近く四十五年度に確保できる、こういういとも簡単にできるようなお返事です。脱硫装置の技術というものが、そこまであなたが確実に明言できるような域に達しておるのかどうか、私はさように承っておらないのですが、その間の明言できる理由を明らかにしてもらいたい。
  159. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 先生御承知のとおり、脱硫設備というものにつきまして、技術的な安定さというものはまだございません。先ほど申しましたのは、低硫黄原油を入れることも含めまして、脱硫設備をいたすことを考えまして、私どもが四十五年時点における環境基準充足上の目標として目ざしておる数字でございます。私どもは設備許可という段階におきまして脱硫設備をいわば強制的につくらしておるわけでございまして、これには御指摘のように資金上の問題もございます。それから何と申しましても直脱方式で動いておりますものが現在ようやく一カ所ということでございまして、これの操業状態も必ずしも安定的ではないという状況でございますので、つくられました脱硫設備が完全に動くという前提でのいわば目標数値でございます。
  160. 玉置一徳

    ○玉置委員 低硫黄の輸入をどれくらいの分量の予想をしておって、どこで確保できるのか、具体的に示していただきたい。
  161. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 C重油の製品輸入という形におきまして、四百五十万くらいのローサル重油が入っておりますが、これらは北米、南米、東南アジア、オーストラリア、西欧、アフリカ、ナイジェリア、ソ連、ルーマニアといったところでございます。これはそのほかに硫黄分の高い重油が約四百十万キロリットル入っておりますので、製品輸入のうちでの半分強のものがローサル重油ということで入っておるわけでございます。  なお原油についてサルファ分の低い原油の入る可能性のあるところはどこであるかという御質問でございますが、現在日本に入っております原油でかなり確実なソースとして確保されておるものであって、硫黄分の少ない原油というものは、御承知のようにインドネシアのミナスの原油でございますが、世界的に申しますと、いまアフリカ産の原油その他についてかなりローサルのものが入手できるのじゃないかというような期待も出ておりますけれども、これらは輸送距離にからみましての運賃問題、産油地における価格問題といったものがございまして、経済的に入手し得るかどうかということには多大の不安がございます。  なお、日本会社によりまして、近年海外石油の開発をいたしておりますが、この際インドネシアでございますとかアブダビでございますとかやっておりますものにつきましても、可能な限り低い硫黄分の原油があると想定されておる地帯の開発にも、いまつとめておる次第でございます。
  162. 玉置一徳

    ○玉置委員 低硫黄の原油の輸入というのはなかなか窮屈であるということでありますが、私が聞いておりますところによりますと、脱硫装置でもって多大の費用を加えて、しかもその技術が定かでないというところへだいぶ大きな投資をしながら、しかも低硫黄に対する需要は非常に旺盛にかかわらず、それだけのもとを加えた金額で買ってもらえないという状況があるというように承っておりますが、そのことは事実でありますか。
  163. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 残念ながら、ただいま御指摘ございましたように、重油の市況というものは非常に低迷いたしております。ただしかし、これは石油製品の中で重油の価格だけがひどくさえないということではございませんで、実はナフサ、軽灯油、ガソリン、おしなべて価格の状況が悪うございます。これは石油精製業界と申しますか、元売り業界全体にございます一種のシェア意識に基づいた過当競争が非常に大きな原因をなしておりますが、少なくとも公害対策上の要請にこたえて硫黄分の少ない重油を供給するということを、私どもも政策的な理念といたしておりますので、このことが投資額から見て回復できないようなものでございますと、公害対策上、硫黄分の少ない重油を供給するという事柄自身が長続きしない、息切れしてくるということに相なるわけでございまして、玉置先生の御心配なさるのはまさにそこだと思います。  そこで、私どものほうでは、エネルギー調査会の石油部会を昨年来やっておりまして、全体の需給バランス、これは石油製品の構成比、ナフサというものについての需要が非常にふえておりますので、これと公害対策上の重油の問題とからみ合わせまして、どういう生産のしかたが適当なのであるか、またその場合にどのような価格体系が望ましいのであるかということをいま鋭意審議をしてもらっております。この事柄によりまして、石油製品価格のあるべき姿と申しますか、このことについての大まかな方向を出していただきまして、場合によっては、それらの中立委員のごあっせんその他によりまして、私どもも職掌柄ある程度その責任もございますので、需要業界に対しても協力を要請したい。しかしそのためには、石油業界にございます姿勢の悪さというものを基本的にはみずから直すことが必要である。これはいま業界に私のほうから強く要請をいたしておる状況でございます。
  164. 玉置一徳

    ○玉置委員 そのことは法的に何かでき得るような根拠があるのでありますか。
  165. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 これは実際上の措置とお考え願ったほうがよろしいかと思います。したがって、学識経験者なり財界長老なりのごあっせんというようなことを期待いたしておるわけでございまして、石油業法そのものには、コストを割るようなひどい価格になりましたときの標準価格の設定という制度がございますけれども、事柄の性質上、こういうものに直ちに手をつけることはただいま通産省では差し控えたいと思っておるわけでございます。
  166. 玉置一徳

    ○玉置委員 石油業法をこしらえましたときのいきさつによりましても、いずれも海外の大きな資本に左右されておるような場合が多うございますから、国内産業だけの問題ではございませんから、法的にはもとよりのこと、調停そのものもなかなかむずかしいところがあるのじゃなかろうか。というようなことでもう一回考え直してみますと、需要はとみに旺盛になっておる。しかも供給はにわかにはそういう原油をさがしあてるということはむずかしい。そこで脱硫装置にたよらなければいかぬ。技術は不安である。しかもそれは一基百億に近いような投資が要るように聞いております。それだけの投資をしましても、それだけの値打ちに買ってもらえないというような現状で放置されておるということは、石油の所管の局としてはいささか怠慢じゃないかということをいわざるを得ないと思うのです。  一つは、海外の資源開発に思い切った力を持っていかなければいかぬ。それは五年後であり十年後の花を咲かすことだ。現在でも五千万キロの需要があるのですから、五年後、十年後を考えれば、もっと低硫黄の叫びは大きくなるのじゃないだろうか。これに対して、調査会も必要でありますけれども、思い切った手を打っていかなければ、厚生省のほうとしては規制はどんどん強まってまいります。これはまた天下の世論でもあるわけでありますから、これに対する産油のほうの措置をしなければならない通産当局としては、今度はまた一歩前進をした姿でなければいけないと思うのです。したがって脱硫装置を、とりあえずここ五年間ぐらいはやらなければならないのだと思うのですが、値段の格づけをいたしまして、これの行政指導ということも必要と思いますけれども、いま一歩脱硫装置に対する技術開発あるいは研究助成あるいはその他の——こういう不安定な技術というものは日進月歩だと思います。いまつくった脱硫装置に百億かけまして、それのまた半分で効率のあがるようなものが一年後にできれば、その百億円は飛んでしまうというのが一つの現実じゃないか。こういうところで打つ手はもっとほかに考えなければならないと思うのですが、それについて考えられたことがあるかどうか。
  167. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 全く御意見のとおりでございまして、石油精製業界と申しますものが、石油製品の需要が非常に高い成長率で毎年伸びておりますので、見かけは非常に繁栄したかのごとき産業、こうとられておりますけれども、近年きわ立って収益力が弱くなっておりまして、いわば実のない繁栄というような形になりかねないのでございます。いずれの意味におきましても、エネルギーの基本、しかもエネルギー全体の中で非常にウエートの高いエネルギーとして、今後基礎的にその安定的なかつ低廉な供給ということが要請される品物でございますので、この産業について適切なる指導を加えていくということは常に考えておかなければならぬことでございますが、ここ数年私どもも意外なくらいに悪くなってきております。この点は少し手ぬるかったではないかという御指摘に対しては、私どもも率直にそうだと申し上げざるを得ない感じでございます。いわんやそこに脱硫問題という大きな問題が登場してまいりまして、これの投資負担というものが大きくかかってくる状況でございますので、需要者がコストの高くなった分だけ応分高い値打ちのある品物として買い取っていただくということのほかに、何がしか助成政策を考える必要があるのじゃなかろうか。ことに技術的に不安定な状況にあるということは先生御指摘のとおりで、いま私ども公害対策上の要請にこたえまして、実は数年後になると陳腐化するかもしれないものをいま急いでやっておるという状況でございますので、御指摘のような技術開発上の助成というようなもので何か手がございましたならば、貴重な御意見といたして承りまして、少なくとも四十五年時点に何らかの案が立て得るようにいまから精一ぱいやってみようかと、実は内々中で相談をいたしておるような状況でございます。
  168. 玉置一徳

    ○玉置委員 私はたとえばこういうことこそ幾ら金を出したってしかられることはないと思うのです。ほんとうに時代の緊急な要請でございますので、まず重油関税の金を与えるべきであり、あるいはまたその分は高く買っていただくことによってできますから、脱硫装置という技術、施設に対して助成を思い切ってする、もしくはそれを電力会社や重油会社や国なんというものが三分の一ずつほど持ちまして、それこそ事業団方式のような形でもってそれを年の経費幾らで貸し与えるというようなことをやらなければ、この問題にわずかの金でしり込みをしておるような時期じゃないと思うのです。これはほんとうに抜本的な考え方でこの問題に対処していただきたい。いままでのことは怠慢のそしりを免れぬのではないか、厚生省に押されておるんじゃなしに、先に一歩一歩こちらのほうが前進していくという姿がなければならないと思うのですが、これにつきまして通産大臣代理の政務次官から一言所信を承っておきたいと思います。
  169. 藤尾正行

    藤尾政府委員 お答えをいたします。まことに仰せのとおりでございまして、私どもといたしましても、四十四年度予算におきましても、この問題についてかなり考えさしていただいたわけであります。しかしながら、そんなことではとうてい問題の解決になかなかまいりません。したがいまして、今後とも技術開発につきましては工業技術院が中心になりまして、あるいは民間の各研究にいたしましてもいろいろな助成が与えられるように、またそういった脱硫装置といいますものに対しますいまの三分の一ずつの貸与方式というような思い切った考え方を今後とも進めさせていただきまして、少なくとも四十五年度予算からは、先生からもよくやったと言われるような施策をいたしてみたい。これがまた大臣の考えでもあるわけであります。
  170. 玉置一徳

    ○玉置委員 局長、あなたは石炭が共管ですね。石炭にうしろ向きに用いているこの重油関税の使い方を、やはりこういう前向きにもうんととられて、これは何ぼやったってやり過ぎということはないのですから、思い切った政策を立てるべきだと私は思います。これはひとつ重ねて要望をしておきたい、こう思います。  そこで次は、銅、鉛、亜鉛、その他の海外の探鉱事業についてお伺いすることにいたします。  わが国の銅、鉛、亜鉛その他の非鉄金属の需要は、年とともに産業の高度成長に伴いまして拡大してまいります。したがって、昭和三十八年ごろ五〇%を国内資源によっておりました銅でも、四十一年度には二五%に下がっております。このことは私はますます拡大していくのだと思います。  そこで、日本経済の安定的な供給という点から考えまして、このますますばく大になってまいります海外の鉱物資源への依存度、その依存度の高まっていくものを安定して供給するということがはかられなければ、私は日本経済ストップするんじゃないかということを非常におそれます。そこで、海外の探鉱の実態と、しかもそれが国際企業と伍して勝負をしていかなければいけませんので、探鉱にどのくらいの費用がかかり、開発にどのくらいの資金が要るようになりますか、その展望をお示しいただきたいと思います。
  171. 藤尾正行

    藤尾政府委員 詳しいことは担当の中川局長からお答えをさせますけれども、その前に一言先生お答えをさしていただきたいと思います。  と申しますのは、先生御指摘のとおりでございまして、私ども、石油にいたしましても非鉄金属にいたしましても、将来とも、私どものただいままでやってまいりました経済発展といいますものを、今後さらに伸ばしていくという経済的基本態度と申しますか、姿勢と申しますか、そういったものを貫いてまいりますためには、どういたしましても、他から首を押えられた原料依存ということではやっていけないわけでございます。したがいまして、どんなことがありましても、私ども自体の手で、油なりあるいは非鉄金属なりの供給源を押えなければならぬ、これが大平大臣のお考えでございまして、四十四年度予算におきましても、この問題につきましては、油に対しましては海外油田の開発、あるいは非鉄金属につきましても海外探鉱ということにつきまして大いに努力をしていこうということで手をつけ始めたわけでございます。したがいまして、今後ともこの姿勢は強化をされるわけでございまして、私どもは年とともにその対策をより厚くし、そうして私どもの将来にわたります原料源をみずからの手で確保いたしたい、この一つの悲願と申しますか目的を達成いたしますために、あらゆる努力を傾けてみたい、かように考えておるわけでございます。  ただ、御案内のように、東南アジアなら東南アジアといいますものと一方におきましては経済協力をしていかなければならぬという国際的な要請もございます。こういったところにおきまして、どのようなところにどのような資源があるのかということが的確にわかっておりません。したがいまして、その予算の使用にあたりましても、その効率といいますものがそれほどあがるものとも思われませんので、とりあえず手をつけました初年度におきましては、きわめて慎重に、かつ、まだ規模もあまり大きくないということで発足をさしていただいたわけでございます。しかしながら、今後ともこういった目的の完遂のために、より以上の的確さと規模をもちまして、いかなる犠牲を払いましてもその目的を達成いたしたいというのが私どもの考え方でございます。詳しいことにつきましては係より答弁をいたさせます。
  172. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 御指摘のように、日本経済の成長に伴いまして、基礎的物質としての鉱物資源の必要量というものは逐年伸びてまいります。非鉄金属、いろいろ鉱物がございますけれども、最も代表的なものであります銅に例をとりますと、私どもの試算では、昭和五十年度における需要量を大体百二万トンと考えております。これに対しまして、国内の鉱山から産出されます量が約三十三万トン、海外の鉱山から産出されますもので入ってまいりますものが六十三万トン、地金で輸入せざるを得ないと見込んでおりますものが六万トンでございますが、この海外鉱からの六十三万トンと申しますもののうちで、私どもの観測で手当て済みと考えてよろしいものは約二十一万トンでございます。したがって、五十年度時点において不安定であるという銅の量が、四十万トンということに相なります。百二万トンのうちで四十万トン目下のところ手がかりがない、かような状況でございます。  この不足量につきまして、もし理想的なことを申し上げるならば、四十万トン全量を日本企業の力によって海外で開発する、いわゆる自主開発という方向で国内に持ってくることができれば一番よろしいわけでございますけれども、探鉱から始めまして開発をいたしまして、そして五十年度時点で四十万トンのものを確実に持ってくるというようなことは絵そらごとでございまして、必ずしもそうはまいりません。  そこで、当分の間の過渡的措置といたしましては、この理想的な方向である自主開発を進めると同時に、片方におきまして、海外の会社が開発をいたしました鉱山につきまして融資買鉱という形で、融資をいたすことによって確定的な鉱石の量を長期的に約束してもらうという形を併用せざるを得ないかと考えておるわけでございます。  そういう意味で自主開発を五〇%、それから融資買鉱方式によるものを五〇%ということでこの四十万トンを生み出そうと考えますならば、昭和四十九年度までの間に、大ざっぱな見積もりでございますけれども、地質構造の調査費に約七十六億円、探鉱費に百九十億円、開発費に千百四十億円、合計いたしまして千四百六億円という資金が要るのではなかろうか、いまいろいろなものを考えます前提として、かような試算を頭の中に置いておる次第でございます。
  173. 玉置一徳

    ○玉置委員 それだけばく大な費用が要るわけでありますが、金属鉱物探鉱促進事業団法は去年改正したわけでありますが、昨年はその海外で使いました金が、地質構造調査費一億二千八百万円、今年度は二億二千百万円、それから海外関係の探鉱資金の融資のあれが、去年が一億円、ことしは二億円というような数字にしかなっておりません。政務次官も声を大にして——これは声を大にしてというより、普通の声で言われてあのくらいに聞こえるんだろうと思いますが、おっしゃいました熱意はよくわかるのですが、一日おくれればそれだけ場所が狭くなるんじゃないだろうか。おそらく日本がこういうようにしてあわてていることは、あの鉱山国であるアメリカ自体でもこのことを非常に思っているんじゃないかと思います。したがって、この伸び率ではほんとうはどうともならぬのじゃないだろうか。もう一つは、将来にわたっての日本経済、国民経済の安定を確保することでありますので、いわば道路の国債のような思想で充ててもいいんじゃないだろうかという考え方をいたします。で、いかに需要が、必要さが緊急でありましても、国の財政の中から取り出そうと思えば、その他社会福祉の施設等々もございまして、その他の平均伸び率よりは二倍にしていただき、三倍にしていただいても、この数字には追っつくはずはございません。ここに私はくふうが要るんじゃなかろうかということを局長並びに政務次官お願いをしたいと思うのですが、これだけの大きな供給がなければ、先々日本経済の成長は、こういったものの安定供給の面からストップを食らわざるを得ない、足踏みせざるを得ないというところに、事実上好むと好まざるとにかかわらずくるわけであります。しかもこのばく大な費用、初年度からこのような費用を充てろったって、それだけの人的資源もなければいろいろなことがございませんでしょう。だから、ことしはことしでやむを得なかったと思います。しかしながらこうやって緒につき出して一年、二年たてば、もっと思い切った金が出やすいような——しかもその恩恵はあとあと日本の産業か受け得るわけでありますから、先ほど申しましたような国債というような観念と同じような意味で、あと方々のしあわせのためにこういったものを見つけ出すということが絶対に必要だ、こう思います。これにつきましてお答えをいただきたいと思います。
  174. 藤尾正行

    藤尾政府委員 これまた詳しいことは局長からも申し上げますけれども、本年度の私どもがこの非鉄金属の海外開発につけました予算は五億でございます。しかしながら、この五億で事足れりというものじゃございません。しかし、これはとにかく探鉱段階でございますから、とりあえず五億円で出発させまして、足らなければそれを補充するという道もございます。来年度からは、もちろんこれは初年度でございますから、これに必要な、探鉱の目標といいますものがふえていきますに従いましてこの金額を増す、当然のことでございます。私どもはそういう約束のもとに五億円という初年度の予算を承知いたしたわけでございますから、これにつきましては、決して将来にわたって悔いのないような探鉱予算を十二分に用意をいたしたいと考えまするし、また仰せのとおりそのくふうにいたしましても、たとえばただいまの石油の差益というようなものも、いつまでも石炭にのみそそがれるというものでもございませんし、また必要があればそういった意味合いの国債という考え方もございましょうし、場合によりましては、探鉱が当たればこれはこれで事業として成り立つわけでございますから、そのときに返してもらうというような方法で融資というような方法もあるかと思います。いずれにいたしましても、この重大な問題に対しまして悔いのないような措置を十二分に考えまして、それに対する手当てをいたしてみたい、かように考えております。
  175. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 ただいま政務次官からお答えいたしましたように、予算に計上いたしましたのは非常に基礎的な探鉱段階の費用でございますが、実は先ほど申しました数字との関連で申し上げますならば、ばく大な探鉱資金あるいは開発資金が要るというものにつきましては、私どもが当面一番期待をいたしておりますのは海外経済協力基金並びに日本輸出入銀行の融資の問題でございます。融資買鉱もいろいろございますけれども、自主開発がいま緒につきかけて、かなり有望であるという客観的な評価に相なっておりますコンゴの鉱山とマレーシアのマムートの鉱山、この二つの銅鉱床につきましては、いまその両機関から融資並びに出資の形のものを受けることにつきまして、鋭意両機関と相談をいたしておる状況でございます。これは幸いなことに二つのプロジェクト、ともに日本の産銅会社の大部分が共同して参加をしておるという形でございますので、輸銀の金を引き出すに際しましても、これらの会社の全資産を、余力がございましたならば担保に充てて借りるというようなことができるわけでございますが、なかなかいまのところ担保余力がないというところでひとつぶつかっておりまして、この問題をどう解決するか、先月以来両機関の責任者と私どものほうでいろいろと相談をしておるところでございます。  なお今後の問題といたしましては、基礎的な予算でやりますものにつきましては、政務次官お答えになりましたように、通産省の方針といたしまして、この問題はひとつ大切なものとして取り組んでいこう、かように考えておる次第でございます。
  176. 玉置一徳

    ○玉置委員 そこで局長に私が申し上げようとしておりますのは、国際競争にたえられるようなものはいずれも一億ドル近く開発資金が要るだろうと想定される。日本の鉱山会社ではそれだけの担保力がない、そこに問題があるのではないかと思うのです。そういう意味では違った何かの保険をするような方法が国として考えられるのではないだろうか。あるいはアメリカ、カナダ等におきまして、政情不安な国々に対する海外投資につきましては、政府が保険をしておるというような構想もこういうところに入れまして、それでやっていかなければ、数百億の投資をしましていつ没収を受けるやもわからず、そういった基礎的な条件を整えてあげなければいかぬのではないかというのがまず第一点。  それから第二点は、海外へのそういう危険度のあるところの投資に対しては、税制措置でいまどういうように見ておいでになりますか。またそれはどうあらねばならぬとお思いになりますか。  三番目は、担保力が少ないのをどうするか。  四番目は、十に一つ当たれば——当たればということばはおかしいですが、経営の成り立つようなものをつかめば、それで非常に幸福だと私は思うのです。したがって、自分で投資した分だけをお返しになるのではなしに——私は探鉱の話をしておるのです。助成の話ではなしに探鉱の場合に、十に一つ当たれば、当たったものは経営が成り立つわけでありますから、その当たったものでその他の九の補充をするような方策を考えられれば、大蔵省との折衝は非常にしやすいのではないだろうか。そういうようなくふうも込めて、ひとつ四点についてお返事をいただきたいと思います。
  177. 中川理一郎

    ○中川(理)政府委員 先ほどお答えの中でちょっと触れまして、実はいま御指摘をいただいたわけでございますが、鉱山会社が海外開発をやります上で、輸銀その他から金を借りる、このことでいま一番の問題点は担保力の問題でございまして、これは通産省の政策であるというだけではなくて、できれば国の政策ということでオーソライズしていただいて、できれば担保徴求その他についてむずかしいことを言わないというようなことにいたすか、あるいは何がしかの形で銀行保証のようなもので担保にかえてもらうか、いま内々私どもで輸銀当局と相談しながら考えておるところでございます。  それから海外投資につきましての政治的なリスク、これは確かに、非常に遠いところで、政情その他もこちらで判断しておるとおりに動くかどうかわからないというところを相手にするわけでございますので、おっしゃるように問題があろうかと思います。そこで海外の投資保険でどこまでカバーできるか、できないものについてはどういうことを考えたらよろしいのか、これについても並行して、実は業界自身それを問題点として提示いたしておりますので、私どももこれについて真剣な取り組み方をいたしたいと考えております。  それからもう一つの点は、石油の場合と違いまして鉱山の場合、わりあい探鉱の結果というものがすぐ開発に連なる可能性のほうが若干高いかと思います。しかしながら、探鉱のリスクと申しますものは、もうあらゆる場合につきまとうわけでございまして、成功するものとしないものとの関係を何らか調節することが必要であろうということは御指摘のとおりだと思います。国内におきましては、たとえば減耗控除制度というような税制がこれに役立っておるわけでございますが、海外の場合、私先ほど申しましたように、とりあえずのところ、一社単位のベースで海外進出をされますと、そういった意味でのリスク分散というものができない。のみならず、一つ会社の力では資金調達力その他にも限界がある。この二つの面から申しますならば、先ほどあげました二つの例のように、業界全体で組んで出るという組織のほうが、的中率が一定だといたしました場合の危険分散には役立つんじゃなかろうか。したがって、融資買鉱につきましては、すでに見きわめのついたものについて融資をするわけでございますから、これは各社ベースでやむを得ないと考えておりますけれども、自主開発のものにつきましては、できるだけ日本の業界全体が一本になってもらう、場合によってはユーザーにも参加してもらうというくらいの気かまえで取り組むべきだ、こういう角度で指導いたしておるつもりでございます。
  178. 玉置一徳

    ○玉置委員 残り、石炭の問題について若干質問を申し上げたいのですが、石特でまだやってないそうですから、かってなことを申し上げたら仁義にはずれると思いますので、またの機会に譲りたいと思います。近江さんのほう、お待ちかねですから、これで終わりたいと思います。
  179. 大久保武雄

    ○大久保委員長 近江巳記夫君。
  180. 近江巳記夫

    ○近江委員 これから私がお尋ねしようとするのは特許の問題でございますが、当然これからの世界の趨勢、またわが国の現状を考えるならば、国産技術の開発ということは非常に大きな課題になってこようかと思います。諸外国とわが国との特許に関する実情を調べてまいりますと、対価支払い額に対する受け取り額の比率というのは、日銀の為替統計を見ましても、昭和三十五年から三十六年には二・五%、三十七年、三十八年が大体四・一%台、さらに昭和四十一年度になりますと、八・一%、五十六億六千万円と、このように技術貿易の収支というものは完全に赤字である。大部分が先進国に払われておるわけでありますが、そのうち四十二年度末の累計で、アメリカでは五九%、西ドイツでは一一%。技術の輸出先というのはほとんどアジアである。こういうような現状から考えても、今後国産技術の開発というのは非常に大事な問題だと思うのです。  国産技術を開発していく上においても、この特許という問題は非常に大きな問題でありますし、特許法の第一条においても、「この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的とする。」、このようにはっきりと出ておるわけです。したがって、すべて技術の開発に携わる者は希望を持って、またその特許等の権益の保護といいましょうか、そういうものが確立されなければ、その体制というものは非常に弱くなるんじゃないか、私はこのように思います。  前に、八月九日の本委員会におきまして私が特許の質問をしたわけでございますが、その問題をひとつさらに掘り下げてみたいと思うわけです。御参考のために、もう一度この間の事情というものを簡単に申し上げておきたいと思いますが、特許権者と非特許権者との関係について、いま特許権者を甲、非特許権者を乙といたします。甲は昭和二十四年の十一月三十日に特許庁より特許権を獲得いたしました。甲は乙の製造する製品が甲の特許権に抵触するとして、その旨を乙に通告をいたしました。乙は抵触せずとする立場で特許法に定められた判定請求を特許庁に昭和三十六年八月三日に手続を踏みました。特許庁は甲の特許権と乙の製品との技術審査をして、昭和三十八年二月十八日に、判定請求を起こした乙に対して、乙の製品が甲の技術的範囲に属する旨の審決を下しました。甲は、甲乙間におりた特許庁の審決を甲の利益に援用して民事訴訟を起こしました。乙の裁判地における仮処分審理の長野地裁では、甲は特許庁の審決を全面的に採用されて勝訴をすることができました。その後、昭和三十九年東京地裁に甲は損害賠償の請求の訴えを起こしました。東京地裁の審理過程で、再び特許庁に鑑定を依頼することが甲乙両者間の協議の上で決定し、裁判所より鑑定依頼が出ました。それで鑑定が特許庁から出たわけであります。これがずっとした経過でございます。  そこで、私が八月九日の本商工委員会の質疑におきまして、現状あるいは将来の特許行政全般にわたる概要を荒玉長官からお聞きしたわけでありますが、その答弁内容というものを鋭意吟味検討いたしました。ところが、特許庁の威信にかかわる重大な事実誤認があるということが判明したわけです。私の質問事項中の判定制度とこの鑑定について、先ほど申し上げたある特許権者の実例をもってお伺いしましたが、その裏に、特許行政の誤りが非常に重大であると指摘し、特許庁へ事実の調査を私は依頼をいたしました。かつ本委員会委員長のお許しを願って調査の結果を私にお知らせいただくことになっていたわけでありますが、その後その結果の出たような報告はもたらされておりません。特許行政一般が、その全分野にわたりおのおの切り離すことのできない密接な関係を保ちつつ構成、運営されておる以上、行政上のそうした不可解な操作が国民に及ぼす影響を考えるとき、それがいかに重大であり暴挙であるか、これを認識していただく必要があると思います。工業権という企業の利害あるいは国民の利害が絶えずついて回るものにおいては、絶対に不信、疑惑を招くことがあってはならないと思います。  そこで、長官から、私がいまお聞きしました件につきまして、報告されることがあれば承りたいと思います。
  181. 荒玉義人

    荒玉政府委員 先般御審議のとき私申し上げました点がございます。いま先生おっしゃった設例で申し上げますと、判定の結論と特許庁の職員が裁判所の依頼に応じていたしました鑑定の意見が相違する、これはどうかという問題でございます。私そのとき申し上げましたのは、私は、もし裁判所で問題のあった事項と特許庁で判定の対象になった事項が同一であれば適当でない、今後はそういう措置はいたしません、過去において、同じものについて特許庁が二重な意見を出すということは適当でない、というふうに申し上げたかと思います。ただ、この同一かどうかという点につきまして、非常に差が小さいという意見と全く同じだという意見があるようでございますが、いずれにいたしましても、同じ件につきまして二つの意見を特許庁が出すということは適当でないし、今後一切いたしませんというお答えを私は申し上げたつもりでございます。
  182. 近江巳記夫

    ○近江委員 しかし、残念ながら、私が再度詳細に具体的にこれからお伺いすることは、疑惑と不信を免れることはできないと私は思います。したがって私は、特許行政の重大な操作に触れる問題である、このように思います。したがって責任ある答弁を承りたいと思うのです。ここで私は、事実関係に曲解があってはならない、このように思いまして、関係書類は私が調査の上で、事件そのものの文書を私はここに持ってきております。このことをあらかじめお断わりしておきます。  昨年八月九日の本委員会の席上における荒玉長官のこの答弁は、私の質問事項中の判定と鑑定について次のように明言されております。この議事録からその要旨をまとめました。それは、特許庁に請求された判定時のいわゆるイ号図面の対象物と、裁判により具体的に争われ鑑定依頼された対象物が往々にして違う場合があって、判定後の鑑定についても、特許庁は必要に応じて出すことになっている。しかし判定と鑑定の対象物が同一ということになれば、判定後に鑑定を出すということは、これはもう当然適当でなく、そのような場合は特許庁として鑑定の要求に応じていないし、その操作手順としても、内容の重複する判断を特許庁が出すような立場はとらない。このことについては十分指導徹底されていることで、そのようなことは一切あり得ず、さらに個人でやったということも、特許庁の審査官、審判官である以上、そのようなことはあり得ない。私はこのような要旨であったと思います。  特許庁長官にお伺いをいたしますが、昨年の八月九日の本委員会の席上の御答弁は、趣旨としてこのように解釈して間違いないかどうか、これを確認をとりたいと思います。
  183. 荒玉義人

    荒玉政府委員 先般私が申し上げましたのは、今後そういう事態は、鑑定は依頼に応じませんということを申し上げたつもりでございます。いま先生の指摘された事件について、これは実は過去のことでございまして、その点われわれといたしまして適当でないというふうに感じておりますが、私が申し上げましたのは、あくまで、今後そういうことは一切いたしません、現に最近も二、三断わっておりますが、そういうことを申し上げたつもりでございます。
  184. 近江巳記夫

    ○近江委員 さらにもう一度、これを整理上要約をしたいと思うのですが、そうしますと、一つは、判定時の対象物と鑑定時の対象物が往々にして違う場合があって、その場合は必要に応じて鑑定をしている。二、内容の同一、つまり対象物が同一ということになれば、特許庁としては判定後に異なった見解の鑑定を出すことは不適当で、このような場合、裁判所の鑑定要求に応じていない。三、判定後に同一の内容を重複して異なった鑑定を出している事実は一切ない。四、特許庁の審査官、審判官である以上、個人の立場はあり得ない。というこの四点に基本的に集約される、私はこのように思うのですが、いかがですか。
  185. 荒玉義人

    荒玉政府委員 ただいまの要件の中で、先生の御指摘の当該事件が同一かどうかということは、私いろいろ議論があり得るかと思いますが、少なくともその事件が同一であったのにわれわれが出したというふうな過去のことにつきましては、確かにわれわれとして適当でない面がございます。したがって、あくまで将来私としてはそういうことはさせませんという意味でございまして、過去のいまの事件につきまして確かにそういうふうな事実という点は、これはわれわれとして反省いたしておる次第でございます。
  186. 近江巳記夫

    ○近江委員 問題をずっとまた戻すようでありますが、ある技術について特許権を有した発明者に対して、特許庁が特許法第七十一条によって定められた判定の結果の文書、私はここに事実を持っておりますが、これはこの特許権者が判定を請求したのではなく、先ほど私は概要を話したのでおわかりと思いますが、侵害と見られる会社がこの特許権者より技術に抵触すると通告されて、あわてて判断を特許庁に請求したものです。特許庁は、その判断を審決によって、特許権の技術範囲に属するということを特許権者及び判定請求人に通告をいたしました。そこで長官にお伺いいたしますが、昭和三十六年この判定請求第八十六号の審決が特許庁より出ておりますが、長官はこれは御存じですか。
  187. 荒玉義人

    荒玉政府委員 承知いたしております。
  188. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうしますと、この審決の内容をお読みになっておられると思うわけですが、この審決の過程で、判定請求人の判定理由の趣旨を特許庁が全く採用せず、特許権者の技術に触れる旨通告しておる、このことを御存じかどうか。  次にもう一通、特許庁の某審査長の鑑定結果の文書、これはここにあります。ここに存在しているわけです。ここでさらに長官にお伺いいたしますが、これは審査長の審査した鑑定書なんです。この事実が存在しておることを御存じであるかどうか、これが一つです。  それから、内容についても詳しく検討されたと思いますが、鑑定の過程で、この審査長の鑑定趣旨というものが、さきに特許庁が審決で理由成立せずとした判定請求人の理由をもって構成されている、このことを御存じですか。二点お伺いします。
  189. 荒玉義人

    荒玉政府委員 鑑定の事実は承知いたしております。ただしこれは御承知のように、裁判所の依頼によって鑑定を出したわけでございます。聞くところによりますと、三人の鑑定意見が出ております。そのうちの一つとして特許庁の鑑定が出されたと思いますが、そういう事実を承知しております。
  190. 近江巳記夫

    ○近江委員 この鑑定につきましては、これは技術裁判の性質上、技術の抵触の有無を鑑定人に依頼することになるわけでありますが、両者はこの結果をもって互いに利益に援用する証拠として位置づけることになるわけです。とかくこういう有利な鑑定をとることで全く結果が相反する質のものであるということはいえるわけです。判定においておのおのの立場で原告、被告の立てる鑑定人は、利害が反する以上、その鑑定結果はどこまでいってもおよそ平行である。したがって、そのようなことを避ける意味と、から回りする論理、主張の打開をはかるために、原告である特許権者は法廷で両者の合意を得て、裁判所より最も信頼を得る技術の権威であるところの特許庁に対して、重複はするが、審決趣旨と同一の内容をもって鑑定の依頼をしたというわけです。  そこで特許庁長官お尋ねいたしますが、本来の特許庁のあり方なら、私は先ほどずっと要約をいたしましたが、この第二の点、つまりこの同一の内容については判定後に鑑定の請求に応じられない、そういうたてまえでこれを拒否すべきである、このように言っておられるわけですが「なぜそのことを応じたか、その理由をお聞きしたいと思うのです。
  191. 荒玉義人

    荒玉政府委員 同一の事件に対しまして、特許庁といたしまして、二つの意見を出すことは適当でないわけでございます。したがって、すでに判定という一つの——もちろんこれは事実行為でございます。裁判所を法律的に拘束する効力はございませんですが、いやしくも、事実行為であれ、一つの特許庁の意見が出された以上ば、たとえ鑑定人といえども、専門家ではありますが、しかし完全な私人ではございません。そういう意味で二重に特許庁から意見を出すということが適当でないという趣旨で申し上げておるつもりでございます。
  192. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういう適当でないことが現実に起こっているわけですよ。だから、同一の内容でないならばともかく、こういう判定時と鑑定時の対象物の事件、内容ともに同一である、そうして結局こうした結果を出してしまっている。ですから、私はそこに、鑑定に対して大きな疑惑があるんじゃないかと思うのです。  それで、裁判所から鑑定の依頼があったということでありますが、それじゃこの某審査長が鑑定書を法廷に提出する前に、特許庁としてはその手順的な操作をどうやったのか、これは特許庁が知っておってやったのか、その辺のところ——知らないでぼっと出してしまったというような問題なのか。これはもう非常に特許庁の内幕というか、それを決定する大事なそういう段階じゃないかと私は思うのです。その辺のいきさつはどうであったのですか。
  193. 荒玉義人

    荒玉政府委員 鑑定人の依頼で裁判所に出す場合には一応チェックしております。したがって、許可をいたしまして、よろしいということで出してあります。したがっていまのケースは、私先ほど言いましたように、私たちとしては適当でないことであったということで、先ほどから申し上げておるように、反省している次第でございます。ですから、本来同一事件については出すべきではないわけでございます。ですから、いまの場合はきわめて遺憾なケースだったと私思いますが、普通鑑定意見を出す場合には、これは依頼を受けた鑑定人が出すかどうかは許可いたしますが、中身につきましては、専門官としての鑑定意見を提出させますので、中身はわれわれとしてはチェックしておりません。先ほどから言いますように、あくまで同一事件については本来出すべきでない、かように思っております。
  194. 近江巳記夫

    ○近江委員 同一事件では出すべきでないとあなたおっしゃいますが、しかし、同一事件においてそういう判定書と鑑定書が異なった意見を出した。それによって相手は鑑定書を援用して裁判で勝っているわけです、特許庁のそういうミスによって。そういうことがあってはならないということを特許庁がやってしまって、そして特許権者は、この特許法第一条によって特許は守らなければならないのに、それがむざんにもそこで敗訴しておる。現実にいままでそれこそ血と汗と涙で築いてきた、そうした自分のいままで積み上げてきたものが、その裁判で負けたということによって一切くつがえされてしまったり、業界からの信用もなくなるし、大打撃をこうむった。このことを特許庁として、そういうようなあってはならない——長官も先ほどから何回もそのことをおっしゃっておるあってはならないことの結果によって、そのような犠牲者が出ておる。特許法第一条によって特許権者を保護することになっておるが、それじゃ特許権者は安心して発明に打ち込むこともできない。また事業に打ち込むこともできない。これは重大な問題だと私は思うのですよ。ですから、ただ間違いましただけで済むべき問題でない。特許庁が間違いであるということをはっきり認めた以上は、どうするのですか。これによって犠牲者が出ておる。それじゃ特許法第一条違反じゃないですか。それはどうしますか。
  195. 荒玉義人

    荒玉政府委員 先ほどから申し上げておりますように、適当でないと思います。したがって、われわれといたしましてはこういうことのないように厳にやってまいりたいと思います。  ただし、特許庁としてどうするかという問題でございますが、御承知のように、鑑定を採用するかどうかということにつきましては、これは裁判所の裁判官の自由なる心証の結果でございます。鑑定そのものにつきましては、もちろん原告、被告それぞれ相互尋問いたしまして、真実の発見につとめるのが裁判でございます。したがいまして、鑑定ということはあくまでそういう意味の一つの単なる意見でございます。ただし、先ほどから言いますように、私たちといたしましては、やはりこういうことは今後ないようにいたしたいと思いますが、確定した裁判それ自身、これはもう再審事由がない限りは裁判は確定するわけでございます。そのこと自身は法律的には一つのピリオドを打ったわけでございますが、今後こういうことのないようにわれわれとしては厳に注意をしていく、戒めていくということで御了承願いたいと思います。
  196. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうしますと、たとえばこれは非常に極端な例かもしれないけれども、無実の者が有罪ということで、もしもそれがそういうような取り返しのつかない事態にその本人を追い込んでしまったあとで、これは失敗でした、すみませんでした、そんなずさんなことでいいのですか。それじゃ特許権者は泣き寝入りですか。こういうような裁判の結果になってきたのは、それは裁判所は公平にやったとあなたは言うかもしらぬけれども、結局あなた方が、判定書と鑑定書と、同じものでありながら違う意見を出した。しかも相手は権威のある審査長ですよ。裁判所だってこれは当然それを重視しますよ。しかも相手は小踊りして審査長の出した鑑定書を援用しているわけです。そういういいかげんなことがあってはならないことをやっておることによって、そういう不可解な操作によって、こういう技術裁判を非常に混乱さした。これはもう重大な特許庁の私は責任だと思う。そんなものを、すみませんでした、それだけで済む問題じゃないですよ。私はこれからのことを聞いておる。それによって非常に大きな痛手を受けておる特許権者にどうしてやるのですか。ここで長官に頭を下げてもらっても、これは解決する問題と違う。それはこれから派生する問題についてはあなたは十分留意されるでしょう。これからの問題に対する大きな戒めというかくさびというか、それは私は認めます。だけれども、現実のこの犠牲者をどうするのですか。すみませんでしただけでは終わりませんよ。その点これはどうなんですか。
  197. 荒玉義人

    荒玉政府委員 はなはだ理論的なお答えで恐縮でございますが、鑑定それ自身に再審の事由があるような鑑定の結果、裁判がどうなったかというのは、これは裁判制度の問題になるかと思いますが、われわれといたしましては、正式な救済措置というのは少なくとも現行制度のもとではございません。しからばおまえどうするかという問題でございますが、具体的に本人を救済するということはあくまで訴訟の場で決着をきめることでございますので、はなはだ恐縮でございますが、格別な救済措置とかいうのを制度的に現在のところどうするかという点は残念ながらございません。あしからず御了承願いたいと思います。
  198. 近江巳記夫

    ○近江委員 それじゃあなた、泣き寝入りをしろとおっしゃるのですか。この鑑定書によって乙は非常に有利な、結論的には勝訴をしているわけですよ。じゃ、裁判のときに争えばいい、上告すればいいじゃないか。本人は精神的な打撃と金銭的な打撃、会社は倒産している。上告する金もない。負けたとなれば弁護人も応援してくれない。それだけのどろにまみれた人を、じゃ、そのとき上告すればいいじゃないか。できない客観情勢ですよ。それじゃあなたは、どろだらけにして、踏みくちゃにして、特許庁の失敗によって、あり得べきことではない、そういうようなことによって判定書と鑑定書を出した、全然違ったものを出した。それによって本人はこのような被害を受けておる。じゃ、裁判やればいいじゃないか。本人は上告すらできなかった。それをただすみませんでしたで済むべき問題でないですよ。これはまだ表面に出た氷山の一角だと私は思う。そういうものが次々に出て、何も救済する措置がありません、そんなことを法を守るべき政府が、失敗を全部そのような犠牲者に、特許庁の失敗、そんなものを背負わして、それじゃ特許庁は悪人じゃないですか。失敗は失敗と認めて、それは行政のことであり得ることだ、何ごとも完全というようなことはないのですから。失敗は失敗として、それじゃそれに対してどうしてあげるか、これがほんとうに人間性のある政治じゃないですか。どうしようもありません、そんな薄情なことが言えるのですか。特許庁長官政務次官に私はお聞きしたい。
  199. 荒玉義人

    荒玉政府委員 私事にわたって恐縮でございますが、私、御本人に二、三回お会いいたしまして、いろいろお話を聞きました次第でございます。ただ、いま私理論的にという話で恐縮なんですが、制度的にそれを救済できる手段は残念ながらございませんという話を申し上げたわけです。ただいろいろ御本人に私お会いいたしまして、事実上私個人としてやり得る道があるかどうかということを再三お聞きしたわけでございますが、残念ながらいまのところそういう手段を持ち合わせてないというのでございまして、私も責任を感じておるわけでございますが、ただ制度の面でどうやっていくということは、先ほどから言いますように、手だてはない。個人的にいろいろ事情を聞いて御相談に応じておるという段階でございます。
  200. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは個人的に聞いて相談に応じているかしれない。しかし精神的なそんなことだけで解決できる問題と違いますよ。本人は経済的にも精神的にも大打撃を受けておる。精神的なことだけでそんな傷はいやされません、制度的にそれがないなら。あなた長官じゃないですか。そういうようなケースは幾らでもこれから出てきますよ。そういうようなことについてはどうしていくか。それで初めてほんとうに行き届いた政治じゃないのですか。いまの制度上ではできない。それではできるような制度をあなた考えるべきじゃないですか。その点はどうですか。長官と政務次官お願いします。
  201. 荒玉義人

    荒玉政府委員 制度的に、いま申し上げました鑑定なり判定というものはあくまで一つ意見でございます。それを採用するかどうかということは、少なくとも自由なる裁判、裁判官の自由なる心証に基づくということでございます。したがって、特許庁は裁判をやる権限はございません。また憲法上それは許されぬことでございますが、そういったやはりあくまで一つの裁判の中のどう採用するかという問題でございまして、特許庁の意見が裁判をしばるということは現在憲法上できないわけでございます。したがって、これはやはり裁判の場でお互いに自由に論議して白黒をつけるということでございます。したがって、いまおっしゃったような点を制度的に改正するという手段は、少なくともこれは裁判制度そのものの大変革でございまして、私たち軽々にそういう改正というものを考えるという意見はございません。あくまでやはり裁判制度そのものではないか、かように考えております。
  202. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは最終結論は裁判かもしれないけれども、裁判の過程において、その鑑定書というものがどれほど大きな比重をもってそれがきめ手になっておるかわからない。それだけの決定的なきめ手がその鑑定書できまったわけですよ。それを最終は裁判所の責任だ。しかし裁判官が裁定を下すまでに、いうならば九分九厘まではこの鑑定書で裁判官の腹はきまっておる。しかも審査長が出しておる。最終は裁判の責任だからと、あなたは責任を押しつけるつもりですか。しかも審査長が出したその鑑定書というのは、それを見てみると、私は問題があると思う。なぜなら、一つ最初に出した特許庁の判定書で、判定請求人の理由を成立しないとして審決しておる。ところがこの鑑定書は、鑑定に添付されたこの図面からとうてい引き出し得ない論拠をもって構成されておる。それはあなたもちゃんと御調査になったはずだ。それが書いてある。その図面とはその鑑定文の中で符合しない結果を呈しておる。なぜそのようないいかげんな結果が出ておるのか検討をしたところが、その内容に合致するものが判定を請求した会社の理由の中に見られておる。鑑定依頼には両者の法定上の主張を添付されずに、判定審決のときと同様特許権者の特許公報と、侵害したと見られる会社の製品の図面とが添付されただけである。そうであるのに、この鑑定書を提出した某審査長がいかなる方法で被告会社のこの判定請求理由を入手したか、また判定で理由は成立しないと判断を下したものをなぜ採用したか、その辺のところが非常に私は疑いがある。そうでしょう。出した図面あるいはその出した理由の中にない、しかも相手会社が言っておるそれを援用してある。あなたこれに疑い持ちませんか。そういうわけで、これは私は全面的に一〇〇%とは言いません、仮定でありますが、もしもそういうような疑いがそのまま当てはまったとした場合、結局鑑定料を支払って正当な鑑定を依頼したその裁判所をだまし、あわせて特許権者をだまし、そういう結果になっておることは私は明白だと思うのです。その辺のところを特許庁長官はきめこまかに調査をしましたか。
  203. 荒玉義人

    荒玉政府委員 再三本人に、いま御指摘のような事実ありやなしやということを私調査いたしました。本人は会社自身を知らないという事実でございます。したがいまして、たびたび私も御指摘の点十分に調査したつもりでございますが、本人自身が先ほど言いましたように会社自身を知らない、もちろん特許権者自身も知らないということで、あくまで裁判所の依頼に応じた示されたものに対する意見だというふうに私承知しております。
  204. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは本人のそういうことばでありますから……。しかし、そのまますなおに受け取ったとしても、それでは少なくとも判定書については、この判定制度というのは首席審判官一名と審判官二名の三名によって構成されておる。それだけの権威をもってやっておるわけですよ。鑑定書だって審査長がやっておる。われわれが一番信頼しなければならない特許庁、その審査官、審査長が、全然違うようなそういう意見を出す。それじゃわれわれ国民はどこを信用したらいいのですか。極端にいえば白を黒、黒を白と同じじゃないですか。  そこで犠牲者は——結局裁判所に責任があるのだから、そんな逃げるようなひきょうな態度はないと私は思うのです。本人は人生の半ばを過ぎて、もう立ち上がれない年齢ですよ。私は何も一つのことを申し上げておるのと違う。この一つのケースを通して、どれほど多くの人がまた同じようなことで苦しんでおるかわからない。だからこそ私はこの一つのケースを出しておる。これを一つの事件だなんて思ってもらったらとんでもないですよ。ほんとうに真剣に発明に打ち込んでおるそういう発明家たちが、結局大資本のあるところにやられていくんじゃないか。そんなことで解決しませんよ。だからこのケースについては、いまの制度がそうでない。それじゃピンチヒッターの何らかの方法を考えて、本人のその申し出を解決するのがほんとうじゃないですか。何でもかんでもそんな官僚的な、いまはそういう制度がないから救えない、そんなばかなことがありますか。制度がないならないで、そこにやはり人道的な——明らかに特許庁長官も私は間違ったということを認めておる、特許庁として重大なミスをしたとあなたは言っておる。それじゃ、そのミスを認めるなら、その責任を負うべきじゃないですか。それが国民の信頼を得る政府立場だと私は思う。失敗はだれだってあるのです。だからピンチヒッターとして、どういうような対策をもってこの問題解決をするのか。そんな押し問答のようなことばかり言ってもらったら困る。少なくとも何らかのことを考えますとかなんとか言うべきじゃないですか。これは長官と政務次官お願いしたいと思うのです。
  205. 荒玉義人

    荒玉政府委員 将来そういう同一事件につきましては、二度と同じあやまちをしないような方法でやっていきたいと思います。  ただそれでなくて、先生、制度的にどうかという御意見でございますが、制度としてそういった問題を解決するという方法につきましては、いろいろな問題がございますが、いますぐどういう方向がいいかちょっと私自身わかりかねますが、御趣旨の線に沿ったやり方ありやなしやということで、将来にわたって考えていきたいと思います。
  206. 藤尾正行

    藤尾政府委員 お答えをいたします。先ほど来、近江先生特許庁長官のいろいろのお話を伺っておりまして、何か特許庁で取り返しのつかぬ大きな誤まりがあったように承っております。将来そういったあやまちを再び繰り返さない、これはあたりまえの話でございまして、そういうことは絶対に繰り返すことはないと私は信じます。  しかしながら、そうだからといいまして、先生が御指摘になられました事件の被害者の方々に対しまして、それがどのように結果するか。それはそういった制度がないとか、あるいはもう一ぺん裁判で結論を見ればいいといったような考え方もございましょうけれども、それはあくまでも事務的な考え方でございまして、私どもといたしましては、これは政治的に判断を要する重大な問題であるとも考えますので、大臣とも相談をいたしまして、事態をよく究明をいたしまして、私どものとり得ますことはとらしていただいて、そして先生の御納得のいかれるような結果を来たしてみたい、かように思います。
  207. 近江巳記夫

    ○近江委員 そこで、特許庁長官は将来にわたってこれを検討していきたい、こう言われたわけですが、本人はその裁判に負けたということによって、もうどん底に落ちているわけですよ。将来なんて言いますと何年先かわからない。この事件を私が話をしてからもうすでに半年は経過をしておる。そういう事実からして、いつごろまでに特許庁として——いま政務次官も前向きの答弁をいただいて私も納得をいたしますが、いつまでもいつまでも将来というような問題でやっていったのではうやむやになってしまう。いつごろまでに本件に関して特許庁として一応の結論を出して本人を救済するか、大体のめどをここで言ってもらいたい。そうでなければ、納得できません。
  208. 藤尾正行

    藤尾政府委員 いろいろな問題もあると思いますけれども、十二分に調査もいたさなければなりませんので、きょうあすというわけにもまいらないと思います。したがいまして、どうか私どもに一カ月くらいの余裕をいただきたいと思います。
  209. 近江巳記夫

    ○近江委員 政務次官の御答弁を、私もそのままお受けしたいと思います。そのように、一カ月をめどとして、何らかのその結論を出していただきたいと思うのです。  それで、ここでまた一つ大きな問題は、鑑定と判定が裁判上同等に扱われて、技術の見解として非常に不明朗にして有名無実になっておる。つまり判定の審決というものは鑑定によって全くその効力を出すことなく相殺されておる。この点に関してどう思うか。  また、鑑定というものは私は法的根拠の薄い慣行ではないかと思うのです。そのために本来の判定制度の影を小さくするということは、私は間違いではないかと思う。ですからここで二つ目として、技術上の特許庁の鑑定のあり方をどのように見ていらっしゃるか、この点をお聞きしたいと思うのです。
  210. 荒玉義人

    荒玉政府委員 判定制度といいますのは、法律的にいいますと、現行の場合、裁判所を拘束する効力はございません。もちろん特許庁は技術的には専門官庁でございますが、制度自身といたしましては裁判所を拘束する効力は持っておりません。あくまで事実上の有力な意見ということでございます。大体判定がございまして、裁判はそれで事件にならずに終わっております。したがいまして事実行為としてできるだけ簡易な、裁判制度より簡易な方法によりまして紛争解決するというのが判定制度の意味でございます。あくまで法律効果はございません。
  211. 近江巳記夫

    ○近江委員 これだけ技術裁判というものを大混乱さしたその審査長の立場というものは問題だと思うのです。ですから、審査長がこの慣行ともいうべき操作を破り、あまつさえこの特許裁判を混乱におとしいれしめたこの当人に対して、特許庁長官はいかなる処置をお考えになっておりますか。いま結論は出ないかどうかわかりませんが、どのようにお考えになっていられますか。
  212. 荒玉義人

    荒玉政府委員 本人には厳重に注意してまいったつもりでございます。
  213. 近江巳記夫

    ○近江委員 ここでまた一つ問題になってくるのは、この裁判という問題になってくる。ここでお聞きしたいのですが、こうした特許行政と、そうしたものが簡単に受け入れられてしまう特許裁判は、確かに私は矛盾していると思う。だから現行法に照らして行なわれているこの技術に関する裁判は、現状にはたして即応しておるかどうかということが一つ問題があると思うのです。  さらに、特許庁が技術指導をしておるとはいいながら、数多い技術の専門分野を審理することは非常に無理であると私は思うのです。これでは裁判官も超能力のスーパーマンでなければならないし、審理するすべての技術分野のエキスパートでなくてはならない。かかることは技術裁判の転換を私は意味しておるんではないかと思うのです。科学技術に関する法廷を、新しいそういう構想のもとで今後考えていく必要があるのではないか、私はこのように思います。これに対して長官それから法務省の両者からお聞きしたいと思うのです。
  214. 荒玉義人

    荒玉政府委員 具体的解決手段としてはいろいろあると思いますが、事は何も特許法だけではございませんので、また裁判制度全体にわたる問題かと思いますが、われわれといたしましては、そういう制度的な面は、先ほど言いましたような裁判制度全体と思いますが、運用面では、実は調査官制度が裁判所にございまして、われわれのほうでも優秀な人をおもなところには調査官として派遣して、裁判官の技術的な判断に対する有力なアドバイスを現にやっておりますが、そういうことでカバーしていきたいと思います。いまおっしゃった抜本的な問題につきましては、裁判制度の基本に触れる問題でございますので、早計には私自身簡単に御意見を申し上げられないのは残念でございます。お許し願いたいと思います。
  215. 河津圭一

    ○河津説明員 私法務省のほうで訟務のほうをやっておりまして、したがいまして、ただいまの制度論のことにつきましてお答えし得る立場にないのでございますが、ただいまのお話を承っておりまして感じたことを簡単に申し上げさしていただきますと、裁判所で鑑定によって判断をする特殊技術的なことにつきましては、もとより裁判所として十分な知識を持っていない場合が多々あるわけでありますが、そういうような場合、裁判所といたしましては、医術に関する場合もそうでありますけれども、鑑定人に鑑定をさせる、一人で足らないと思いますれば数人に鑑定をさせまして、その鑑定人にそれぞれその理由とするところを述べてもらって、そしてそのうちのどれが最も妥当であるか、その点についての判断を下すというふうに扱っておられると思うのであります。その場合に、実際に本件のような特許の問題について、裁判所にそれでもなお判断する能力がないのかどうかというようなことになりますと、私どもこの特許の事件でも、特にただいまのように特許権の範囲の問題になるような私人間で争われます訴訟につきましては、その実態をよく存じませんので、ただいま何とも申し上げることができないと思っております。不完全でありますが、そういうことで御了承いただきます。
  216. 近江巳記夫

    ○近江委員 現行制度は確かにそれは三権分立でわかりますが、あなた方として矛盾を感じているのでしょう。それではこうあるべきであるという意見というものは、私は大胆に表明すべきだと思うのですよ。あなた方は行政官じゃないですか。まずいと思えばこのようにしていきたいという意見を言うべきじゃないですか。技術指導を受けながら裁判する、そんなばかなことがありますか。技術的に相当な知識のある裁判官しかつとまりませんよ。だからこの件については、裁判所自体のあり方も問題があるし、一番大きいのはそういう大混乱を起こさしめた特許庁にある。だからそういう一連のことを含めて、このようにしていきたい——長官だって、特許庁の最高長官をしておられるのじゃないですか。それをただ自分立場を守るだけの意味においていまは言えないというような消極的なことで、日本の特許行政がよくなりますか。私はこう思うのです。どうなんですか。ここで何かまだ新たに言うことがありますか。
  217. 藤尾正行

    藤尾政府委員 お答えいたします。特許行政に関しますことであります限りは、これは私ども全責任を持ちましてその行政に誤りなきを期するというように全精力を傾けたいと思います。しかしながら、事裁判ということになりますと、これは私どもの領域ではございません。裁判所の裁判の運びあるいはその結果につきまして、私どもはいまあれこれ言うべきではないと思います。もちろん御指摘のように裁判官とてもこれは神様ではございませんから、重要な見落としがあったり、あるいは判決違いがあったりというようなことはないとは私は申せないと思います。私ども承知いたしておりますことにいたしましても、私どもの選挙区にございました一例を申し上げますと、巌窟王事件というのがございまして、これは死刑になった方が、事実誤認があって、それが間違いであったという判決を得られておるというような実例もございます。したがいまして、人間のやる裁判でございますから、必ずしも全部が全部正しい、誤りなしということは私はいえないと思いますけれども、しかしながら、それはあくまでも私どもの言及すべきことでございませんので、どうかその点は御区別をいただいて、私どもに対しましては特許行政に関しまする誤り、この点についてだけひとつ御叱正をいただきたい、かように思います。
  218. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは誤審ということはあってはならないことであるけれども、人間がやることであるから——そうしたいまあなたがおっしゃったケース、それも当人は非常にお気の毒だと私は思うのです。ただすまなかったと少々の賠償金をもらっても、そんなことで済むべき問題じゃない。しかし、この特許裁判という件については、われわれや国民がそれを審理してもらって、こまかい技術上のことを一々特許庁の長官とかそういう人に指導を受けながら裁判するというあり方、それ自体に私たちは非常に不信感というか不安感を持っておる。これは歴然とした事実じゃないか。いま次官のおっしゃったそれは、この特許裁判とはちょっとケースを異にしておると私は思うのです。ですからそういう点において、次官も閣議なんかに出られるわけですから、こういう一つのケースがあったことについて、今後こういう特許裁判というものについて、また何らかの前向きの改善の方法がとられるなら、私はひとつそれを閣議においても提案をしてもらいたいと思うのです。その点は次官約束していただけますか。
  219. 藤尾正行

    藤尾政府委員 大臣に申し上げまして、できるだけそういったことについて法務大臣との間に相談をしていただくようにお願いはいたします。
  220. 近江巳記夫

    ○近江委員 特許庁は今後特許法を一部改正する、このようにいわれておりますが、この特許権を擁護する積極的な行政姿勢というものが私は一番大事だと思うのです、いろいろな問題点はあろうかと思いますが、今回のようにみずからの手につばする結果が特許庁自身の中にあるのは、そういう問題がまだよく認識されておらない証拠である、私はこのように思うのです。国民すべてに享有できる権利を預かる府がそんなことでは、われわれとしては非常に心もとない。こういう観点から、この特許法の一部改正と庁内の行政指導の接点がどこにあるか、それをひとつ大局的に述べていただきたいと思うのです。
  221. 荒玉義人

    荒玉政府委員 先ほどから問題になっております件につきましては、改正とは関係ございません。われわれといたしましては、改正に関係なくそういった問題を二度とやらないようにすべきだ、かように思っております。したがいまして、直接改正それ自身とは私は関係ない問題かと思います。
  222. 近江巳記夫

    ○近江委員 項目的に特に聞きたいと思う数点を私はお聞きしたいと思うのですが、産業界は非常に早いテンポで進んでおります。こういう行政の手続及び司法手続の間のギャップが非常に大きなものになってきているわけです。これは私は非常に大きな問題だと思うのです。たとえば裁判においても、係争中のものについて特許庁のほうのそういうものの照合がなかなかおそいという大きな不満があるわけですよ。これについても特許庁はどのように考えておられるのですか。このままでいいと思っていらっしゃるのですか。
  223. 荒玉義人

    荒玉政府委員 御指摘のように、訴訟事件と特許庁の処分が相関関係になっておる事件はございます。たとえば出願公告がある。片や訴訟がある。そうしますと、特許になるかどうかということは訴訟自身の結果を左右するという問題、したがってそういった場合には、ほかのものに優先して片をつけていくというふうにわれわれとしては考えてございます。いま近江先生御指摘の司法と行政処分のギャップということですが、そういった点につきましては、特に他のものに優先して片づけていきたい、かように考えております。
  224. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから特許庁でいろいろな検索をすることがおくれることがそういう点の非常に大きな原因だと担当官などからも聞いておりますけれども、これだけの技術革新の時代です。したがって私は、特許庁としてもコンピューター等の機械検索等のやり方もどんどん入れて、そして近代化していく必要がある、このように思うのですが、長官としてどのように考えておられますか。
  225. 荒玉義人

    荒玉政府委員 御指摘のとおりに、将来とも機械検索を拡大してまいりたいと思います。御承知のように審査といいますのは、出願の中身を読みまして、そして過去にそれと似た文献があるかどうか、こういうことでございます。そういう文献を電子計算機へ入れまして、そしてこういうものがあったかということで呼び出すということでございますが、御指摘のように将来拡大してまいりたい。といいますのは、現在一部ございます。たとえば合金あるいはステロイド化合物、原子炉等々につきましては現に実施しております。ただ日本だけでなくて、将来同じシステムで各国が協力してやる。たとえば同じシステムでタームリストをつくりまして、日本日本語の文献を入れる、アメリカは英語の文献を入れる、ドイツはドイツ語の文献を入れる、そしてお互いにそのタームリストを交換するということによりまして、各国が同時に利用できる、こういうことで国際的にも進めておりますが、ただ残念ながら現在のところ文献のカバレージが約一%でございます。逐次そういう方式が確立し次第直ちに利用してまいりたい、かように思っております。
  226. 近江巳記夫

    ○近江委員 時間の関係で項目的に聞いていきますので、一貫したものはございませんが、承知してもらいたいと思うのです。  次は判定のことにもう一ぺん戻りたいのですが、不服の申し立ての制度がない、それが結局判定の権威を低め、利用することをちゅうちょさせておる、こういうようなことが言われておるのですが、こういうことについてはどのように思っていらっしゃいますか。
  227. 荒玉義人

    荒玉政府委員 御承知のように、不服が認められますのは、その行為自身が法律的な効力があるということに限られております。いわゆる行政処分でございます。判定は、先ほど申し上げましたように特許庁の意見でございます。いわば事実行為でございます。事実行為に対して不服を認めるという制度は現行法の全体の体系にございませんので、さようになっておるかと思います。
  228. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、いま韓国がこの特許の問題について受け入れをしない。韓国はほんとう日本に一番近い隣国でありますし、また今後どんどんプラント輸出等も行なわれていくわけでございますし、これからいろいろな点で私は特許の問題が非常にかかってくると思う。この韓国の特許という問題に関して、長官としてどのように前向きに考えていらっしゃるのか。これは私は非常に大きな問題だと思うのです。この点をお聞きしたいと思います。
  229. 荒玉義人

    荒玉政府委員 国交回復以来、日韓相互の工業所有権保護に関しましては、日本側といたしましては、閣僚レベルで再三事あるごとに交渉してまいったわけでございます。昨年の十一月まず商標権の保護が発効いたしました。これは昨年八月の閣僚会談の結果でございます。したがいまして、特許庁といいますより、むしろ大きな政治問題として両国で考えられております。私といたしましては、商標は先ほど申し上げましたように、昨年妥結を見たわけでございますが、ほかの特許、実用新案、意匠につきましても、できるだけ早い機会に相互保護ができますように希望いたしますと同時に、先ほど言いましたように、これは閣僚レベルで必要な交渉を現にやっております。御指摘のように、経済協力あるいは合併会社その他が続々あらわれてくる段階でございますので、商標のみならず特許につきましても、早い機会に妥結いたしまして保護ができるように、現在鋭意努力中でございます。
  230. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、この特許に関してノーハウの問題が非常に大きな問題になってきておるわけです。ところが、特許庁に聞けば、これは企業局だ、そんな無責任なことじゃ私はだめだと思うのです。ですから、このノーハウの法的な保護を今後いかに考えていくか、非常に複雑な問題であることもわかっております。しかし全然白紙であるということは特許庁としてはあり得ないと私は思うのです。この辺のことを政府関係各省各局でどのような話し合いが現時点で行なわれておるのか、そこのところをひとつ簡明にお答え願いたいと思うのです。
  231. 荒玉義人

    荒玉政府委員 御承知のように、ノーハウというのと特許権の保護というものは相いれない面がございます。といいますのは、特許法といいますのはあくまで公開の代償として独占権が与えられる、こういうわけでございますが、ノーハウといいますのは、公開されればノーハウがなくなるわけです。そういった意味で特許法の中で保護するということは私適当でないと思います。  しからばどういう方法があるかといいますと、私二つあると思います。一つは刑事罰で、聞くところによりますと、現に法務省の法制審議会で一つの提案で研究されておるかと思います。もう一つは、刑法の体系でございますと刑事罰だけでございます。ただ損害賠償、いわゆる民事の問題がございますので、そういった問題になりますと、あるいは不正競争防止法という法律が現在ございますが。そういったワクの中で解決をはかっていくというやり方でございます。現にドイツあたりは不正競争防止法の中でいまおっしゃる点を保護していくということになっておるかと思います。したがいまして、各省間でいいますと、いま法務省はそういう刑事罰という中心、あるいは不正競争防止法は企業局でございますが、その中でどういう構成要件でそれを保護していくかということをやっておるというふうに私聞いております。
  232. 近江巳記夫

    ○近江委員 そればまた管轄が違うとかそういうことじゃなくして、これからの技術革新の時代に突入しておるわけですから、特許庁長官としても真剣に十分に検討願いたい、このことを強く要望しておきます。  それから、これは時間がありませんので最後にお聞きしますが、特許庁は御承知のようにいままで非常に汚職を発生せしめてきました。これについては、国民としても一番信頼をおかなければならない特許庁がそういう黒い霧のうわさにおおわれておるということは、われわれとしても非常に残念なわけです。そこで、その後にあの汚職問題についてどのような処置、また今後の発生の危険等を考えて長官としてどのような対策を講じていらっしゃるか、この辺を納得できる答弁をいただきたいと思うのです。同じ件について最後政務次官の締めくくりをお願いしたいと思います。
  233. 荒玉義人

    荒玉政府委員 四十一年の初めに先生御指摘の事件がございました。われわれといたしまして非常に残念に思って、いろいろ処分をいたしました。休職者五名、懲戒免職五名、退職四名、訓告八名、配置転換七名、こういうふうな大量処分を出しましたことにつきましては、われわれとして今後こういうことのないような方向で考えるべきかと思います。  具体的に申しますと、審査官は御承知のように独立して権限を行使しております。普通の行政処分と違いまして、一人一人がいわば独立官庁でございます。そういった点をやはりどう変えていくか。御承知のように特許するかどうかといいますと、非常にデリケートな判断を要します。したがいまして、われわれといたしましては、できるだけ審査基準といいますか、ものの考え方を統一をしていく。もちろん最終判断は審査官の職責上独立して権限を行使するわけでございますから、そういう場合のものの考え方、審査基準、これは一般的な審査基準のみならず、産業別のいろいろこまかい基準につきましても、できるだけ統一いたしまして、それを外部にも公表するということによりまして、そういった個人の判断はできるだけ狭くして、そうして一般的に、特許庁のみならず外部にもやはりそういったものの考え方を統一していくということをまず基本的に考えております。その他、たとえば外部との接触とか、あるいは出張その他の場合のものの考え方とか、これはむしろ一般の役所とそう変わりませんが、私が申しました要するにできるだけ審査のものの考え方を統一していくということによりまして、特許庁として先ほど言いましたような審査官の独立からくる一つの問題を排除していきたい、かように考えております。
  234. 藤尾正行

    藤尾政府委員 お答えをいたします。通産省の綱紀の乱れというようなことは、これは通産省だけでございませんで、どこにありましても認められないよろしからざることであります。したがいまして、そういった乱れにつきまして、その乱れを正すというのは当然のことでございまして、私ども大臣の御命令のもとに、そういった事件を起こさないように——この間もそういった非常に恥ずかしい行為がございまして、私どもも人事の停滞というようなところからくるそういった問題を起こしては相ならぬ、かりに多少の能率が落ちてもそういった乱れは防がなければならぬということで、同一個所に人間を五年以上とめておいちゃいかぬということを現に通達を出しまして、厳守をいたさせたところでございますけれども、特許行政といいまするものは、いま長官から申し上げましたように、私どもの一般行政と異なりました一種独特の行政でございます。しかも審判員一人一人がその責任の全部を持つ、こういうことでございまするし、またこういったものをみだりにかえるということもなかなか困難であろう、かように考えます。したがいまして、こういったところにおきます綱紀の粛正に対しましては、一人一人の審判員にそれだけの覚悟を持ってもらわなければならぬということでありますと同時に、これを総括をいたしております長官の責務といいまするものもまたきわめて重大である、かように考えます。したがいまして、今後とも一人一人の審判員に対しまして間違いが起こらないように十二分の注意をさせるということに徹していきたい、かように考えるわけでございます。
  235. 近江巳記夫

    ○近江委員 これで終わります。
  236. 中村重光

    ○中村(重)委員 関連して政務次官お尋ねするのだが、いま近江委員から特許権侵害という事件であろうと思うのですが、きわめて重大な問題であると思うのです。それに対する政務次官答弁並びに荒玉長官の答弁を聞いて、近江委員の質問の趣旨、私が問題点としてお尋ねする点ですけれども、裁判に負けた、そして非常に物質的、精神的な損害というものを受けて、窮迫のどん底におちいっている、これの救済を考えなければならぬのじゃないか、そういうことであったわけです。そして近江委員の真意は、おそらく、そうした状態におちいっているのだから、国の責任、いわゆる特許庁の責任がそういう結果を来たらしめたんだから、それを補償せよという真意であろうと私は思う。それに対して政務次官が、大臣話し合いをやってそれに対する措置をする、重大な問題だから、というお答えであったわけです。責任をお感じになることは当然だろうし、そういうことはけっこうなんです。しかし答弁はきわめて慎重でなければなりませんよ。そしてその答弁をしたことは必ず実行されなければなりません。ただ近江委員の質問に対して、感情でもって、あなたがそう感じたから、その感じをことばの上で表現をして答弁をしたということではなりませんよ。事件が、国を相手に訴訟が起こって、国が敗訴をしたという事件であるならば、当然その損害の補償というのは明らかになるでしょう。この事件というものはまだそこに至っていない。だから、それをどう物質的にその損害を国は補償することができるのですか。同時に、それほど重大な問題を、荒玉長官は、審査官に対しては厳重に注意している、それほどの程度で済みますか。だから答弁というものはもっと責任をもって答弁をしなければだめですよ、そんな無責任な軽々な答弁をしては。一体どういう責任を果たし得るのです。
  237. 藤尾正行

    藤尾政府委員 私が申し上げましたのは、補償をいたしますということを申し上げたのではございません。私が申し上げましたのは、大臣と相談をいたしまして、十二分の政治的な行為をとりたいということを申し上げましたわけで、ここに具体的に一つの案があるわけでもございませんけれども、たとえばもしこれが、裁判でございまするからさらに裁判によって決をとらなければならぬということでございましたならば、その裁判費用その他はひとつ十二分に国で考えさしていただいて、あらためてその原告であられる方に対しまして、さらに上告の機会をお与えすることがはたしてできないものかどうか、こういったことについて政治的な配慮をする余地があるかないか、こういうことを十二分に考えてみたい、こういうことでございまして、直ちにそれをもって原告者に対しまする補償をするというようなことで私は申し上げたのではない、ということを申し上げておきます。
  238. 中村重光

    ○中村(重)委員 なるほど補償ということばは使わなかった。しかし近江委員がどういう気持ちで質問をしているか、言わんとしておるところは何かということを、あなたは聞いておられるのだから、くみとっておるのだろう。私もきわめて重大な問題であると思って質疑応答を聞いておった。したがって、あなたの答弁を、これもまた重大な答弁である、そう思って受け取ったのです。補償ということばを使っていないからそれは補償ではない、そういうことでは済まされません。近江委員の真意というものは、やはり物質的に何か救済措置を講じなければならぬという、そうした意図の質問であったわけですよ。だから、救済ということばがはっきり近江委員から出ているのだから、そのことに対しては、あなたは政治家なんだから、お役人的に、質問に対して適当にかわして答弁をするということは、私はいいことではないと思う。誠意をもって答弁される、そのことは私は政治家としては当然だと思うのですよ。同時に、その答弁は実行でき得る可能性のあるものでないとだめなんです。だから、大臣と話し合って政治的にこれを何とかするのだ——あとで速記録を見てみると、あなたはもっと的確にお答えになっておると思う。補償ということばを使わなかっただけなんです。だから私は答弁がけしからぬというのではない。それほどの決意をもってあなたは答弁されたのだから、その答弁は責任をもって実行しなさいということを申し上げるのです。大臣話し合いをしたのだけれども、これはどうにもだめだったという、そんな無責任なことであってはならない。同時に、それほど重大な答弁をしなければならない事件に対しては、その責任者に対する処分をどうするかということについては、厳重に注意をしているということだけでは済まない問題であろうと思う。それらのことについても十分調査をして、適切な措置をとらなければいけないと私は思う。
  239. 藤尾正行

    藤尾政府委員 仰せのとおりでございまして、私ども大臣に御相談を申し上げるということは、大臣の責任においてやっていただく、こういう意味でございます。したがいまして、大臣がそれはだめだと言ったからというようなことで私は申し上げたのではないのでございまして、決してさようなことはいたしません。  それから処分の件でございますけれども、これにつきましても、よく事情を調査をしてみませんと、一体どれがどうなっておるのかということを私は十二分に承知しておらないわけであります。ただいまの長官の話を聞きましても、厳重に訓戒を与えておいたということでございます。それが一体どういうことに値するのかという判断は、これはさらに上級職とも重々相談をいたしまして、その上で決すべきことであろう、かように考えております。
  240. 中村重光

    ○中村(重)委員 それでいいですが、あなたは私の質問に対して腹が立ちましたか。
  241. 藤尾正行

    藤尾政府委員 いや、そんなことはありません。
  242. 中村重光

    ○中村(重)委員 立ちませんね。重大な質問に対する答弁なんだから、あなたの答弁内容というものは、簡単な内容ではなかった。ある場合は国が物質的な責任を負わなければならないという内容を持った答弁であったから、われわれとしてはそれは重大な関心をもってその質疑応答を聞いているのですよ。だから私があなたに対して関連してこのことについて申し上げるのは、答弁をしたことは責任を持ってもらわなければならぬという点を強調しているのです。ただ質問に対して自分の感情のままに答弁をするというような態度であってはなりません。だから、答弁自体が悪いというのではない。その答弁したことは実行しなければならないのだということを私は申し上げておる。それで、もう答弁は必要ありません、同じことでしょうから。私のいま申し上げたことも同じようなことを繰り返したのであります。
  243. 大久保武雄

    ○大久保委員長 本日の議事はこの程度にとどめます。  次回は、明二日火曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時十九分散会