○近江委員 これから私が
お尋ねしようとするのは特許の問題でございますが、当然これからの世界の趨勢、またわが国の現状を考えるならば、国産技術の開発ということは非常に大きな課題になってこようかと思います。諸外国とわが国との特許に関する
実情を調べてまいりますと、対価支払い額に対する受け取り額の比率というのは、日銀の為替統計を見ましても、
昭和三十五年から三十六年には二・五%、三十七年、三十八年が大体四・一%台、さらに
昭和四十一年度になりますと、八・一%、五十六億六千万円と、このように技術貿易の収支というものは完全に赤字である。大部分が先進国に払われておるわけでありますが、そのうち四十二年度末の累計で、アメリカでは五九%、西ドイツでは一一%。技術の輸出先というのはほとんどアジアである。こういうような現状から考えても、今後国産技術の開発というのは非常に大事な問題だと思うのです。
国産技術を開発していく上においても、この特許という問題は非常に大きな問題でありますし、特許法の第一条においても、「この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的とする。」、このようにはっきりと出ておるわけです。したがって、すべて技術の開発に携わる者は
希望を持って、またその特許等の権益の保護といいましょうか、そういうものが確立されなければ、その体制というものは非常に弱くなるんじゃないか、私はこのように思います。
前に、八月九日の本
委員会におきまして私が特許の
質問をしたわけでございますが、その問題をひとつさらに掘り下げてみたいと思うわけです。御参考のために、もう一度この間の事情というものを簡単に申し上げておきたいと思いますが、特許権者と非特許権者との
関係について、いま特許権者を甲、非特許権者を乙といたします。甲は
昭和二十四年の十一月三十日に特許庁より特許権を獲得いたしました。甲は乙の製造する製品が甲の特許権に抵触するとして、その旨を乙に通告をいたしました。乙は抵触せずとする
立場で特許法に定められた判定請求を特許庁に
昭和三十六年八月三日に手続を踏みました。特許庁は甲の特許権と乙の製品との技術審査をして、
昭和三十八年二月十八日に、判定請求を起こした乙に対して、乙の製品が甲の技術的範囲に属する旨の審決を下しました。甲は、甲乙間におりた特許庁の審決を甲の
利益に援用して民事訴訟を起こしました。乙の裁判地における仮処分審理の長野地裁では、甲は特許庁の審決を全面的に採用されて勝訴をすることができました。その後、
昭和三十九年東京地裁に甲は損害賠償の請求の訴えを起こしました。東京地裁の審理過程で、再び特許庁に鑑定を依頼することが甲乙両者間の協議の上で決定し、裁判所より鑑定依頼が出ました。それで鑑定が特許庁から出たわけであります。これがずっとした経過でございます。
そこで、私が八月九日の本商工
委員会の質疑におきまして、現状あるいは将来の特許行政全般にわたる概要を
荒玉長官からお聞きしたわけでありますが、その
答弁内容というものを鋭意吟味
検討いたしました。ところが、特許庁の威信にかかわる重大な事実誤認があるということが判明したわけです。私の
質問事項中の判定制度とこの鑑定について、
先ほど申し上げたある特許権者の実例をもってお伺いしましたが、その裏に、特許行政の誤りが非常に重大であると指摘し、特許庁へ事実の
調査を私は依頼をいたしました。かつ本
委員会の
委員長のお許しを願って
調査の結果を私にお知らせいただくことになっていたわけでありますが、その後その結果の出たような報告はもたらされておりません。特許行政一般が、その全分野にわたりおのおの切り離すことのできない密接な
関係を保ちつつ構成、運営されておる以上、行政上のそうした不可解な操作が国民に及ぼす
影響を考えるとき、それがいかに重大であり暴挙であるか、これを認識していただく必要があると思います。工業権という
企業の利害あるいは国民の利害が絶えずついて回るものにおいては、絶対に不信、疑惑を招くことがあってはならないと思います。
そこで、長官から、私がいまお聞きしました件につきまして、報告されることがあれば承りたいと思います。