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1969-02-25 第61回国会 衆議院 商工委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年二月二十五日(火曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 大久保武雄君    理事 宇野 宗佑君 理事 浦野 幸男君   理事 小宮山重四郎君 理事 藤井 勝志君    理事 武藤 嘉文君 理事 中村 重光君    理事 堀  昌雄君 理事 玉置 一徳君       天野 公義君    内田 常雄君       小笠 公韶君    大橋 武夫君       海部 俊樹君    神田  博君       鴨田 宗一君    黒金 泰美君       小峯 柳多君    坂本三十次君       田中 榮一君    丹羽 久章君       橋口  隆君    増岡 博之君       石川 次夫君    岡田 利春君       加藤 清二君    勝澤 芳雄君       佐野  進君    中谷 鉄也君       武藤 山治君    塚本 三郎君       近江巳記夫君  出席国務大臣         通商産業大臣  大平 正芳君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      菅野和太郎君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     山田 精一君         経済企画庁長官         官房長     岩尾  一君         経済企画庁長官         官房会計課長  財前 直方君         経済企画庁調整         局長      赤澤 璋一君         経済企画庁国民         生活局長    八塚 陽介君         経済企画庁総合         計画局長    鹿野 義夫君         通商産業政務次         官       藤尾 正行君         通商産業大臣官         房長      両角 良彦君         通商産業大臣官         房会計課長   進   淳君         通商産業省通商         局長      宮沢 鉄蔵君         通商産業省貿易         振興局長    原田  明君         通商産業省企業         局長      大慈彌嘉久君         通商産業省重工         業局長     吉光  久君         通商産業繊維         雑貨局長    高橋 淑郎君         通商産業省公益         事業局長    本田 早苗君         中小企業庁長官 乙竹 虔三君  委員外出席者         通商産業大臣官         房審議官    成田 寿治君         通商産業省重工         業局次長    山下 英明君         通商産業省重工         業局鉄鋼業務課         長       左近友三郎君         専  門  員 椎野 幸雄君     ――――――――――――― 二月十三日  委員勝澤芳雄辞任につき、その補欠として山  内広君が議長指名委員に選任された。 同日  委員山内広辞任につき、その補欠として勝澤  芳雄君が議長指名委員に選任された。 同月十四日  委員石川次夫辞任につき、その補欠として山  中吾郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員山中吾郎辞任につき、その補欠として石  川次夫君が議長指名委員に選任された。 同月十七日  委員勝澤芳雄辞任につき、その補欠として久  保三郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員久保三郎辞任につき、その補欠として勝  澤芳雄君が議長指名委員に選任された。 同月十八日  委員中谷鉄也辞任につき、その補欠として柳  田秀一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員柳田秀一辞任につき、その補欠として中  谷鉄也君が議長指名委員に選任された。 同月二十一日  委員近江巳記夫辞任につき、その補欠として  田中昭二君が議長指名委員に選任された。 同日  委員田中昭二辞任につき、その補欠として近  江巳記夫君が議長指名委員に選任された。 同月二十四日  委員勝澤芳雄君、佐野進君及び田原春次辞任  につき、その補欠として阪上安太郎君、川崎寛  治君及び楢崎弥之助君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員川崎寛治君、阪上安太郎君及び楢崎弥之助  君辞任につき、その補欠として佐野進君、勝澤  芳雄君及び田原春次君が議長指名委員に選  任された。 同月二十五日  委員勝澤芳雄君及び佐野進辞任につき、その  補欠として楯兼次郎君及び久保三郎君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員久保三郎君及び楯兼次郎辞任につき、そ  の補欠として佐野進君及び勝澤芳雄君が議長の  指名委員に選任された。     ――――――――――――― 二月十五日  特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正  する法律案内閣提出第二五号) 同月二十二日  硫黄業安定法案田中武夫君外十四名提出、衆  法第八号) 同月十二日  化粧品再販契約制度に関する請願坪川信三  君紹介)(第四八九号)  豪雪地帯対策に関する請願大野市郎紹介)  (第六五一号)  発明、発見等奨励バッジ交付に関する請願(  大野市郎紹介)(第六五三号) 同月十八日  淀川水系水資源開発に関する請願宇野宗佑  君紹介)(第八二五号)  畜犬飼料輸入制限解除に関する請願小峯柳  多君紹介)(第八五七号) 同月二十一日  特許出願に対する審査迅速化に関する請願(  井出一太郎紹介)(第九四四号)  同(小川平二紹介)(第九四五号)  同(小沢貞孝紹介)(第九四六号)  同(吉川久衛紹介)(第九四七号)  同(倉石忠雄紹介)(第九四八号)  同(小坂善太郎紹介)(第九四九号)  同(下平正一紹介)(第九五〇号)  同(中澤茂一紹介)(第九五一号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第九五二号)  同(原茂紹介)(第九五三号)  同(平等文成紹介)(第九五四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 二月二十日  染色及びメリヤス業構造改善対策に関する陳  情書  (第五三号)  公正取引委員会事務局札幌地方事務所強化に  関する陳情書  (第五五号)  鉱業対策強化充実に関する陳情書  (第五六号)  中小企業対策強化に関する陳情書  (第五七号)  残存輸入制限品目自由化に関する陳情書  (第五八号)  淀川水系水資源開発に関する陳情書外一件  (第七五号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正  する法律案内閣提出第二五号)  通商産業基本施策に関する件  経済総合計画に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ――――◇―――――
  2. 大久保武雄

    大久保委員長 これより会議を開きます。  去る十五日付託になりました内閣提出特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
  3. 大久保武雄

  4. 大平正芳

    大平国務大臣 特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  現行特定繊維工業構造改善臨時措置法は、わが国繊維工業を取り巻く内外経済環境がきびしくなりつつある情勢の中で、その構造的脆弱性を克服し国際競争力強化するため、紡績業及び織布業につきまして総合的な構造改善をはかることを目的として、昭和四十二年に制定され、今日に至っております。  しかしながら、繊維工業全体の構造改善を達成するためには、繊維工業の他の部門につきましても所要の対策を講ずる必要があり、この点につきましては本法制定に際し、当委員会において附帯決議をいただいたところであります。  政府といたしましては、この趣旨から、繊維製品多様化高級化の要請にこたえていくために重要であり繊維工業におけるキー・インダストリーともいうべき染色業と、織布業に匹敵する規模を持ち、世界的なニット化傾向趨勢下にあってその成長が期待されますメリヤス製造業構造改善対象として取り上げることとし、通商産業大臣諮問機関である繊維工業審議会及び産業構造審議会の答申を得て予算措置を含む総合的な施策を実施することといたしました。  これにあわせ、この施策を実施するのに必要な法律的裏づけを得るため、特定繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案を作成し、提案することといたした次第でございます。  次に改正要旨につきまして、御説明申し上げます。  第一は、本法対象業種といたしまして、メリヤス製造業すなわちメリヤス生地及び製品製造業特定染色業すなわち綿スフ絹人繊等の織物の機械染色整理業を追加することであります。  第二は、メリヤス製造業及び特定染色業構造改善について、メリヤス製造業においてはメリヤス製造業商工組合連合会が、特定染色業においては民法上の法人であります特定染色業団体が、それぞれ、設備近代化及びこれに伴う設備の処理、生産または経営規模適正化等構造改善に関する事業の実施のための構造改善事業計画を作成し、通商産業大臣承認を受けることができるものとしていることであります。  そして、政府は、承認を受けた計画に従って実施される事業について資金の確保と融通のあっせんにつとめ、関連労働者の職業の安定につき配慮することといたしております。  第三は、繊維工業構造改善事業協会業務を拡充し、メリヤス製造業及び特定染色業構造改善事業に必要な資金の調達の円滑化をはかるための融資及び保証業務を行ない得ることとし、この業務のための信用基金メリヤス製造業商工組合連合会及び特定染色業団体が出損し得ることとしていることであります。  第四は、この法律の廃止時期につきましては、構造改善事業が五年間にわたって実施されることと関連して昭和四十九年六月三十日まで延長することとする一方、紡績業及び織布業にかかる規定につきましては、従来どおり昭和四十七年六月三十日といたしていることであります。  以上が今回の改正主要点であります。  何とぞ慎重御審議の上、御賛同賜わりますようお願い申し上げます。
  5. 大久保武雄

    大久保委員長 本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  6. 大久保武雄

    大久保委員長 次に、通商産業基本施策に関する件、経済総合計画に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  まず、菅野経済企画庁長官から経済総合計画に関する件について所信を承ることといたします。菅野経済企画庁長官
  7. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 まず、最近の経済情勢と今後の見通しについて申し上げたいと存じます。  最近の経済動きを見ますると、個人消費民間設備投資等の根強い増勢を中心に引き続き堅調な拡大を示し、一方、国際収支は、輸出の増大と長期資本収支改善にささえられて好調を続けております。  しかしながら、このように好調な経済動きの中にあって、消費者物価上昇基調には依然として根強いものが見られるとともに、国際経済面においても、米国等海外諸国景気鈍化による世界貿易の伸びの低下が見込まれるほか、国際通貨情勢もなお流動的であるなど、必ずしも楽観を許さないものがあります。  今後の経済運営にあたりましては、まず物価の安定を最重点施策とし、経済拡大が過度にわたることのないよう慎重な態度で臨み、内外情勢の変化に応じて経済政策機動的運用をはかるとともに、長期的観点に立って、均衡のとれた持続的な経済成長基盤整備をはかってまいる所存であります。このような経済運営のもとにおいて、四十四年度のわが国経済は、実質成長率九・八%程度と、四十三年度の一二・六%程度に対し控え目な姿となる見込みであります。  次に物価の安定について申し上げます。  当面問題となっている消費者物価につきましては、依然として根強い上昇基調がうかがわれ、四十三年度の上昇率は、当初の政府見通しの四・八%を上回り、五・四%程度になるものと見込まれております。このような消費者物価上昇は、国民生活面に大きな負担となるのみならず、経済の健全な発展を阻害するものであります。政府としては、今後、物価の安定のため、各般施策を強力に推進してまいりたいと考えております。  まず、公共料金につきましては、その引き上げにより、政府物価上昇を主導することのないよう、国鉄運賃を除き、極力抑制することにいたしました。  もとより、消費者物価上昇は、わが国経済に内在する構造的な要因によるところが大きいと考えられますので、引き続き、中小企業等生産性部門合理化近代化流通機構改善、公正な競争条件整備輸入政策弾力的活用など各般政策を地道に推進するとともに、生産性上昇部門の成果の一部を消費者に還元する環境整備してまいる所存であります。  このような諸施策国民各位協力によって、四十四年度の消費者物価上昇率を五・〇%程度におさめたいと考えております。  次に国民生活行政推進について申し上げます。  国民生活を脅かしているのは、物価上昇のみではありません。  近年、経済の著しい発展により、国民所得水準は大幅に向上し、消費生活の内容も高度化し、多様化してまいりましたが、その反面において、公害交通事故有害商品の増加など各種の障害が表面化してきております。  これらの問題を解決し、真に豊かな国民生活を実現するためには、人間尊重生活優先の原則が、各方面に広く浸透していくことが不可欠であります。政府といたしましては、昨年制定されました消費者保護基本法の精神に沿って、今後とも国民福祉向上のための諸施策充実強化につとめてまいります。  もとより、消費者保護の問題は、地域住民に直接結びつく地方公共団体行政充実がなければ十分な効果を期することはできないと考えられますので、政府としては、従来から進めてきた施策に加え、消費生活センターの機能の強化など地方公共団体消費者行政の一そうの促進をはかってまいる所存であります。  次に経済社会発展計画について申し上げます。  一昨年策定を見ました経済社会発展計画は、物価の安定、経済効率化及び社会開発推進の三つを最重点政策課題とする五カ年計画でありますが、その後のわが国経済の目ざましい成長により、現段階において、経済実勢計画の想定との間には少なからぬ乖離が生じてきております。  私としては、上記の政策課題は、依然として堅持されるべきものであると考えますが、本計画政府のみならず民間経済活動の指針として重要な役割りを果たしつつあることにかんがみ、この際、総合的な政策効果の発揮を期するため、計画策定後に生じてきた新しい政策課題について検討するとともに、実勢を踏まえて望ましい経済発展の姿を明らかにすることが必要ではないかと考えている次第であります。  先般開かれました経済審議会においても、本計画の取り扱いについて同様の方針が了解されているところであり、今後、政府としても、各方面の英知を集めつつ、この問題に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。  次に、国土総合開発推進について申し上げます。  近年における急速な経済成長都市化の進展に伴って、地域経済社会は急激に変貌し、この過程でいわゆる過密・過疎現象と、これに伴う各種の弊害が目立ってきております。  このような事態に対処して、都市、農村を通じて、国民のための豊かな社会を創造するためには、全国にわたって情報・通信網高速交通体系整備して、国土利用可能性拡大し、その基礎の上に、地域の特性に応じた開発事業推進し、魅力ある広域生活圏を形成するなど新しい国土経営基盤をつくり上げることが必要であります。  このような観点に立って、政府は、現在、新しい全国総合開発計画策定に取り組んでおりますが、今後、国民各位の深い理解協力を得て、この計画を実効あるものとし、計画的かつ均衡のとれた国土総合開発推進してまいりたいと考えております。  最後に、日本万国博覧会開催について、担当大臣としての所信を申し述べたいと存じます。  万国博覧会は、わが国が永年招致を意図し、ようやく実現にこぎつけた一大国際行事であり、わが国の文化、経済産業の姿と歩みについて、国際的な理解を深める絶好の機会であると考えます。  本年は開催準備最後の年でありますので、会場建設関連事業政府出展等促進をはかるとともに、博覧会運営についても万全を期する覚悟であります。  私は、日本万国博覧会が、各方面の御協力を得て、歴史に残るりっぱな成功をおさめるよう期待いたしております。  以上、主要な施策について申し述べました。本委員会及び委員各位の御支援と御鞭撻をお願い申し上げて、私のあいさつといたします。
  8. 大久保武雄

    大久保委員長 次に、大平通商産業大臣並びに菅野経済企画庁長官所信に対する質疑の申し出がありますので、これを許します。堀昌雄君。
  9. 堀昌雄

    堀委員 実はきょうは本来ならば公害の問題とかエネルギーの問題等について伺う予定にいたしておりましたけれども、昨夜公正取引委員会において八幡、富士合併問題についての事前審査結論が発表されましたので、とりあえずこの問題にしぼって本日はお伺いをいたしたいと思います。  ちょっと通産省事務当局にお伺いをいたしますが、私がけさ午前九時半にお願いした資料は一体何時ごろ私の手元に入るでしょうか。
  10. 両角良彦

    両角政府委員 いま手配中でございますので、できるだけ早く持参いたします。
  11. 堀昌雄

    堀委員 公正取引委員長が十一時ごろには入られるということでありますから、まず先に通産大臣企画庁長官から伺ってまいりたいと思いますが、実はけさ新聞を拝見いたしますと、経済企画庁長官語るというので、こういうふうに菅野長官見解記者会見で発表されております。「一、公取が三品種問題品種に指定し条件付き合併を認めたことは妥当な結論だと思う。」「一、大型合併により寡占価格を心配し、監視機構を設けるべきだという声があるが、私はとくに設ける必要はないと思う。国会でも今後鉄鋼価格が議論されるだろうし、社会全体が監視するのだから寡占価格は生じないと思う。」「一、国民生活審議会消費者保護部会大型合併消費者のためにならないという批判的見解をまとめたが、私は消費者保護部会見解一般論であって、今度の八幡・富士の合併消費者マイナスとはならないと思う。」長官新聞の記事でございますから、正確は期しがたい点もございますが、おおむねこのような見解をお述べになったことに間違いございませんね。
  12. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 間違いありません。
  13. 堀昌雄

    堀委員 そこで私どもはこれまで、公取事前審査とはいえ審査を行なっておりました際には、できるだけ外部からのいろいろな発言は差し控えたいと思って今日までに至ったわけでありますけれども、方向が一応定まった以上、私どもとしては、われわれの考えておることを明らかにしながら、政府は一体真剣にこの問題に対処し得る能力があるのかどうか、この点を少し明らかにしてまいりたいと考えております。  そこで、菅野さんがここでお触れになった二つの問題、特にうしろ部分二つはいずれも鉄の価格に関した部分についてお話しになっておると思います。  一つは、寡占体制になっても寡占価格管理価格は生じないという判断をしておられるということ、それから物価面消費者に迷惑を与えることはないということ、きわめて断定的な意見でありますが、長官は何をもってこれだけ断定的な意見をお出しになったのか、ちょっとお答えをいただきたいと思います。
  14. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 鉄鋼国際商品でありますので、したがって国際的な競争がいま盛んであります。そういう意味国際競争にうちかつためには大型化する必要をわれわれも認めておるのでありますが、したがいまして、国際的な競争上において価格はできるだけ低廉な価格にして外国競争しなければならぬというような観点からして盤鉄鋼価格は上がるものじゃないという私考えを持っていましたのです。  それからもう一つは、国内においてというお考えだと思いますが、国内においても、ほかに有名な製鉄会社がありますので、みな相当競争意識の強い会社でありますので、また従来とも激甚な競争をやってきた会社でありますからして、国内においても相当な自由競争が行なわれるというように私考えておりますから、鉄鋼については、私は寡占価格というものは生じ得ないというように考えておる次第であります。
  15. 堀昌雄

    堀委員 実は二つの問題にあなたお触れになったわけですが、一つ国際商品だから高くはならないだろうということ。国際商品であって高くならないというためには、少なくとも諸外国製品わが国製品に対して競争力がある、いうなれば生産性が高いということが前提にならないと、いまの話は通らないと思いますね、どうでしょうか。要するに、諸外国生産性が低くて向こうの価格が高いときに、いま日本が低位な価格であるときに、国際価格までの間では外国のものに対して競争力がこっちがある間、価格がもし上がっていっても、外国商品があるから、値段が上がるのを阻止するということにならないのじゃないのですか。なりますか。
  16. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 日本鉄鋼が安いから売れるのでありますからして、それだけ競争力が盛んなのであります。したがいまして、安く売るがためには生産性を高めなければならぬということで、みんな生産に非常な苦心をいたしておるのであります。そういう意味生産性を高めるということからしておのずから価格上昇は来たさない、私はこう考えております。
  17. 堀昌雄

    堀委員 ちょっと話を区別をして二つにしましょう。いま国際商品という場合には国際価格国内価格二つあるわけです。そこで国際価格については、やはり競争して外で売るためには高くできないでしょう。これは何も鉄に限ったことではなくて、私は当委員会でしばしばやってきたように、たとえばカラーテレビ一つをとっても、自動車一つをとっても、国内価格国際価格にいずれも一対二ぐらいの開きがあることはあなたも御承知じゃないですか。だから国際価格が安くなるから国内価格はそれと同じように高くならないという保証は、鉄以外のカラーテレビでも自動車でもないのだから、そういう意味ではあなたのいまの論理は、第一点としては筋が通らないと思いますが、どうですか。
  18. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 国際競争に勝つがために、したがって生産性を高めていかなければならぬというので、生産性を高めることはおのずからコストを安くするということになる、そういう一般論を私は言うておるのです。
  19. 堀昌雄

    堀委員 コストが安くなったら製品価格はいつでも下がるのですか。下がらない事実を私が提起している。あなたはそれに対してどうお答えになるのですか。
  20. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 コストが安くなっても価格が安くならない場合はたくさんあります。それはもう堀先生から聞かなくとも私承知いたしております。
  21. 堀昌雄

    堀委員 いまの論理と違うじゃないですか。
  22. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 いや、生産性が高くなればコストが安くなるということを申し上げておる。販売価格が安くなるということとはまた別です。しかしやっぱり外国競争する以上は、コストを安くすることが先決条件だということを申し上げておる。
  23. 堀昌雄

    堀委員 あなたはここで価格の話をなすっているのですよ。よろしいですか。寡占価格にはならない、それから消費者マイナスにはならないという。消費者マイナスになるかならないか、寡占価格になるかならないかは、コストの問題ではなくて、流通する価格の問題なのですよ。私はいま価格の話をしているのですよ。それをあなたはコストが下がるという。生産性が上がればコストは下がるでしょう。しかしコストの話をしているのじゃないのですよ。価格はどうなるのですか。
  24. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 価格の構成部分コストであるからして、したがって、コストが安くなればおのずから価格が安くなるというのが自然の勢いであります。しかし実際上においては価格を安くしてない商品はあります。しかし前提条件としては、コストを安くするということが生産の必須条件ですからして、それを私は言っている。だが販売価格が安くならない場合は、物価としてはまた別に考えなければならぬ、こう考えております。
  25. 堀昌雄

    堀委員 きわめて重要なところへきたわけですが、コストが安いにもかかわらず製品価格が下がらないのはどういう場合ですか。
  26. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 それはメーカーがことさら下げないとか、コストが安くなってもその余剰価値を労使の間で分けて、販売価格はそれを安くしない、消費者に安く売るということをしない場合に、そういう場合が起こるわけです。
  27. 堀昌雄

    堀委員 そういうことは望ましいですか。
  28. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 その点において私はしばしば望ましくないということを申し上げておるのです。
  29. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、あなたのおっしゃったこととやや矛盾が出てきたのは、要するに、いまのお話でコストが下がっておるにもかかわらず価格が下がらないことは、あなたがここで言われた八幡、富士の合併消費者マイナスにはならない、こう特定されているわけですけれども、この特定をはずして、いまの論理からいけば、コストが下がっておるにもかかわらず価格が下がらないのは消費者のためにならない——よろしいですね。それと同時に、そういうことが起こるとすればそれは寡占価格である、こういうふうに、いまの話につながったらなるのではないですか、寡占でなくてもなるかもしれないが。
  30. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 それは必ずしも寡占の場合じゃなくても起こります。
  31. 堀昌雄

    堀委員 寡占の場合にも起こりますね。
  32. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 それはもちろん寡占の場合にも起こります。
  33. 堀昌雄

    堀委員 私がいま通産省に対して資料を要求しておりますのは、今度の問題品種でございますね、御承知のように鉱物用銑鉄、レール、それから製カン用のブリキ、鋼矢板、この四品目について昭和三十三年から四十三年までの十年間について、生産量とその価格及びフラクチュエーションの大きいもの等を資料として提出をしてもらいたい、こう要求をしておるのですが、朝九時半に要求したのだけれども、一時間半以上たったけれどもまだこないということだが、私はちょっと現実の問題についてデータについて申し上げておきたい。  先に現在の日本生産性の問題について世界のいろいろな主要国との関係で申し上げておきますと、「わが国は諸外国との比較において、最も高い生産性上昇を示し、従業員一人当たり年間粗鋼生産量は、一九六六年にアメリカの一六七トンを抜いて、一八七トンと世界一に達したと推定される。鉄鋼に固有の指標である銑鉄トン当たりのコークス比をみても、一九六〇年には六二〇キログラム、一九六六年には五〇四キログラムと、たとえば同年アメリカの七七一キログラム、六四七キログラムと比較して、わが国は最も有利な比率を実現してきている。またしばしば問題にされるLD転炉の生産比率も、一九六六年にわが国で六三%と、アメリカや西ドイツの二五%をはるかにしのぐ導入率であり、」大体こういうように生産性一つの指標をずっと比べてみても、日本生産性は現在非常に高いのです。だからいまあなたのおっしゃった国際的な商品だから安くなるというのは、すでに安いのであって、要するに輸入その他によって価格上昇を防ぐ力は少なくとも鉄についてはない、こう思いますがどうですか。
  34. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 お話のとおり日本鉄鋼は今日ドイツ、フランスにも輸出しておりますからして、要するに日本鉄鋼価格は国際的に見て安い。したがって外国鉄鋼が入るということは大体考えられない。
  35. 堀昌雄

    堀委員 日本鉄鋼価格上昇に対しては、国際商品であるといいながらも、外国鉄鋼を輸入してその価格を抑制することは困難だ、こういうことをいまお答えになったわけであります。そこで、いま私がちょっと触れておる価格の問題について、価格の変動の正確なデー夕をいま私は要求しておりますけれども、たとえばトップ企業が三〇%以上のシェアを持っているような品種については、昭和四十二年の一年間における価格の変動を平均をしてみると、これは大体三%くらいの価格変動しかない。次に二〇%から三〇%の間のシェアを持つ五品種については、これは変動率がだいぶふえてきて二七%、シェアが二〇%以下の六品種では四〇%の変動率がある。よろしゅうございますか。要するに現在の鉄の価格というものは、生産シェアの大きいところがそのシェアを押えておるものは非常に価格の下方硬直性が強い。そしてたくさんの者が分散的に生産しておるものはフラクチュエーションが大きいというのが現在の鉄鋼価格の実態じゃないですか。通産省どうですか。その点について通産省側の見解を求めます。
  36. 山下英明

    ○山下説明員 山下でございますが、お答え申し上げます。  その前に、重工業局長はただいま法案の審議で、間もなく参りますが、その間私から御質問にお答えいたします。  いまおっしゃいましたが、小さいたくさんの生産業者のものは競争がありますので、競争によって値段が低くなる。ものによっては、大きなメーカーで少数の場合でも、競争がありますと値段は低くなる。それが鉄鋼の現状でございます。
  37. 堀昌雄

    堀委員 何を言ったのか、ちっともよくわかっていないですね。私は具体的に例をあげて、トップのシェアが三〇%以上ある品目について、これは三%しかフラクチュエーションがない。二〇から三〇%の間にくると、これは二七%フラクチュエーションがある。トップ企業が二〇%以下のシェアしか持っていないようなものについては四〇%のフラクチュエーションがある。四十二年度の実績についてみてもこれだけの変化があるということは、要するにコストは品目別によって実際出るんじゃないですよ。これは全体の企業としてのコストが出るだけで、鉄のような装置産業で品目別コストはないわけですから。コストは下がっておるにもかかわらず、シェアを大きく持っておるものは値段を下げない下方硬直性がある。ここに、現在でもすでに鉄鋼価格が高位安定をしておるという事実があるにもかかわらず、いまのような菅野さんの発言は、これはその方向を加速するだけのことであって、いまのこの問題から見ては論理が通らないんじゃないですか。  通産大臣、私がいま申し上げたことは資料で要求していますから、これは資料を急がしてください。ともかく私の質問が終わるまでにちゃんと届けてください。はっきり出てくると思うのですよ。そしておまけにこの間に生産量はものすごくふえておるわけですよ。よろしいですか。ものすごく生産量がふえておるにもかかわらず、一体価格はこう固定しておるというようなことは、これは一体何を物語っておるのか。ほかの品種がどんどん下がり得るのに下方硬直しておることは、高位安定しておるという証拠じゃないですか。通産大臣、どう考えますか。
  38. 大平正芳

    大平国務大臣 きょうは八幡、富士の合併についての事前審査について一つの判断が公取からもたらされたという段階での御質疑と思いますが、この公取の判断は、私の承知しておるところでは、一定の取引分野において合併によって競争が実質的な制限を受けることになるかならないか、それが公取当局の審査の焦点であったと承知しております。  国際価格云々のお話がありましたけれども、直接には私はそういうように承知をしているのでございます。それで主力商品につきましてはそういった懸念もなさそうだ。いま問題の三品目ですか四品目について公取の問題点の指摘があったということでございまして、私どもといたしましては、公取の判断は、指摘された問題点にからむ品目について、その一定の取引分野というのはおそらく日本という領域だと思います。で、その領域において競争を実質的に制限するおそれがあるという判断だと思いますから、そういうものとして受け取りまして、それでそれに対して実際上そういう懸念が解消するような対応策を会社考えるべきじゃないか、そういうように判断しておるのでございます。  そこで、しからばいま御指摘の八幡、富士が生産をしておりまする各品目につきまして、あなたがおっしゃるように、シェアが大きいものあるいは大きくないもの、そういうものの価格の変動率というようなものがどういう状態であったかということ、これは一応この問題との直接の関連というよりも、日本鉄鋼価格形成についての問題点の指摘であろうと思いまして、私も堀さんの御要請でございますから検討してみたいと思いますけれども、あなたがいま指摘されたようにフラクチュエーションの幅がそういう状態になっておるというのなら、それは間違いがないだろうと思います。それが実質的に競争が制限された結果なのか、またその他の要因が働いておるのか、そういった点はなお吟味を要する問題じゃないかと思いますけれども、一応御指摘になった問題は、私どもとしても十分吟味はしてみたいと思います。
  39. 堀昌雄

    堀委員 私も無責任な発言を形式的にしておるわけではないわけです。専門の経済をやっておる人たちが資料として示表をしたものでものを言っておるわけですから、私は間違いはないと思うのですが、ただそれを確認する意味で実は通産省にデータを要求しておるわけであります。ですから菅野さん、通産大臣もそういういま私が言っておるあり方は間違いがないと思うと言っておられるわけですが、あなたもそう理解されるでしょうね、その事実についてはどうですか。
  40. 大平正芳

    大平国務大臣 ちょっと補足しますが、あなたが言うその価格のフラクチュエーションの幅と、それにとられた値ですね、それは一体実際の価格なのかあるいは建て値なのか、そのあたり私はちょっとはっきりしないのでございますけれども、実際上鉄鋼には建て値がありますけれども、現実の価格動きはずっとそれを下回ったところをはっておりますから、それを把握しないといけないが、これはどうも企業の秘密がございまして、いまあなたに差し上げました通産省の資料も、ちょっとそこまでは示し得ないのを非常に遺憾にいたしておりますけれども、そのあたりについてもひとつ御勘考いただいたらどうでしょうかと思います。
  41. 堀昌雄

    堀委員 いま私が申し上げた価格は、これはスタンダードは市中価格のを中心にして大体計算されておりますから、市中価格の変動は、いわゆるひもつき価格に比べればやや大きくは出ておりまし、よう。大きくは出ておりましょうけれども、私はこれまで鉄の価格論というものはずいぶんこの委員会でも大蔵委員会でもやってきたわけですが、体それじゃその鉄のひもつき価格というのは恣意的な価格かというと、そうではなくて、市中価格に対してある程度リンクをして、市中価格は非常に安いのにひもつき価格だけは高位にずっと置くということについては、これはやはりユーザーとの関係ではなりませんから、それはストレートには出ていないかもしれませんけれども、これはある程度比例的に動くものがやはりひもつき価格だろうと思います。大体私は昨年商工委員会に来て以来、この価格問題について非常に重要な問題があると思って各般の問題提起をしておるわけです。ただ残念ながら、いま通産大臣がおっしゃるように、実態の価格を通産省が把握しておらぬという問題は、これは私は、もう少し必要があれば立法をしてでも実態の価格だけは通産省は承知できるということにしてもらわないと、国際的なダンピング問題がしょっちゅう出てくるさなかで、ダンピング問題が出て初めて企業に対してほんとうの価格を言えなんというようなことで一体これからの国際経済に対処していけるかどうか、きわめて疑問があるのです。ちょっと話が横道にそれますけれども通産大臣、企業の実質的な価格ですね、流通、ひもつきとかいろいろなかっこう、こういう各段階における価格について通産省が、みだりに何も全部知らなければならぬということもないでしょうが、少なくとも必要のある範囲においては承知できることにすべきではないか。国内的な問題もありますけれども、国際的な問題としてこう思いますが、通産大臣どうですか。
  42. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのように、法律的な権限を持っているわけじゃございませんけれども、実際は私どもは承知いたしておるわけです。
  43. 堀昌雄

    堀委員 承知しているけれどもただ公表だけしないということですね。そうすると、私がいま提起しておる問題も、価格は承知しておられるのだろうから、その価格の中身はともかくとして、要するに実態は、私の言ったこと、これは市中価格から見ておるけれども、あるいはいまの変動幅が四〇%ということに対して片一方の三〇%というのはちょっと差が小さいかもしれない。それはわからないけれども、しかしそういう事実があるということですよ。要するにトップ企業のシェアが三〇%をこえたものの変動幅とそれが二〇%以下のものの変動幅とは著しく差があるであろうということは事実認識として間違いないでしょうね、通産大臣
  44. 大平正芳

    大平国務大臣 それは実態の解明の問題ですから、私もよく勉強してみます。そしてあなたの言うような傾向が歴然と読み取れるかどうか勉強してみます。
  45. 堀昌雄

    堀委員 大臣は勉強だけれども、それじゃ次長はどうですか。あなたは所管局の次長だから、次長としてはいまの実態を知っているのですか、知らないのですか。知らないならもうあなたに聞かないから……。
  46. 山下英明

    ○山下説明員 市中価格が容易に手に入る品物、たとえば棒鋼とか型鋼とかそういうものもございますし、また先ほど先生御指摘の今度の問題三品種のように市中価格が容易に手に入らないものもございますが、それらについても私どものほうではできるだけ価格の把握につとめております。したがってわかっておるつもりでございます。
  47. 堀昌雄

    堀委員 いや、わかっておるというが、あなたが知っているかというのです。それじゃ鉄鋼業務課長に聞きましょう。鉄鋼業務課長、あなた全部価格を知っていますね、どうですか。
  48. 左近友三郎

    ○左近説明員 お答え申し上げます。全部と申しますとなんでございますが、主要な品種については承知しておるつもりでございます。
  49. 堀昌雄

    堀委員 いまあなたのほうにデータを要求しているのだけれども、まだ出てこないのだが——これがそれですか。これは価格はたとえば鋳物用銑鉄のは三十四年、三十五年、三十六年までしか書いてない。あと全部鋼矢板についても三十四年、三十五年、三十六年までで、それから食カン用のブリキについては三十三年と三十四年しか書いてないじゃないですか。私は四十三年まで要求しているわけだ。三十六年や三十五年の価格をあなた承知しておって、一体この重要な独禁法の問題についてこれで承知していると思うと言えるのですか。冗談じゃないですよ、これは。
  50. 左近友三郎

    ○左近説明員 それは、先ほど申し上げましたように建て値を出したものでございますが、そのあとは建て値を変更しておらないのでございます。
  51. 堀昌雄

    堀委員 変更しておらない。わかりました。そうすると、三十六年以来これらの四品目については生産量が著しく増加しておるにもかかわらず建て値が全然変更されていない。通産大臣、さっき菅野さんは、要するにコストが下がれば価格が下がるのがあたりまえだ、価格を下げないのは消費者のためにならぬと言われたですね。通産大臣企画庁長官そう言われたでしょう。そうしてそのことは寡占価格を含めて問題がある、よろしくない。あなた言ったじゃないですか。これは一体どう解明するのですか。
  52. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 私は先ほどの所信表明の中にも、生産性を高めて、それを消費者に還元するようにしたいということを述べております。したがって、生産性を高めるにつれて余剰価値が生ずれば、労使の間に分けるのみならず、消費者も恩典に浴するように、そういう指導をしたいということを私は申しておるのであります。  そこで、いまお話しのシェアと価格の硬直化の問題については、それは多少その点において、いま承ったのでありますが、それはひとつ研究して検討してみたいと思います。ただそこで問題は、御承知のとおり、価格は供給ばかりでなく需要によってきまりますから、需要の側から価格をどう見るかということも検討してみなければならぬ、それとあわせて検討すべき問題だ、こう思います。
  53. 堀昌雄

    堀委員 冗談じゃないですよ。あなたは経済学博士でしょう。いいですか。生産量がふえてきているということは、需要もふえているということですよ。需要もふえておる。だから本来なら、あなたのさっきの論理からいって、生産量がふえてきて、生産性はこの十年間に鉄の場合には上がっておる。上がっていないなんという人間は、経済をやっている者の中には一人もいないと思うのです。生産性は上がっているんでしょう。コストも下がっていいはずでしょう。長官、どうですか。
  54. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 生産がふえるのは需要がふえるからということでありますが、ところが価格生産と需要との均衡の問題でありまして生産が一時にふえたときには価格は安くなるし、また需要がにわかにふえたときには価格は高くなるということでありますから、したがって価格の問題については、そのときの需要がどうであったかということも調べてみなければならぬということを申し上げておる次第であります。
  55. 堀昌雄

    堀委員 それはいいですよ。それはあとで言います。しかし少なくとも鉄の場合には十年間に生産性が上がっている、コストは下がるべきである、それは間違いないでしょう。どうですか。——お答えください。正式に会議録に載らなければわからぬ。首を振ったって、会議録に載らないから。
  56. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 それは間違いありません。下がるべきだと思うのです。
  57. 堀昌雄

    堀委員 そこで、いま私がちょうだいをした資料の中で、たとえば食カン用のブリキ、これは昭和三十三年にトン当たり十万七千円、それから三十四年に十万一千八百円、三十四年から今日まで建て値が全然動いていない。じゃ生産量はどうかというと、昭和三十三年に十六万トンであった、それが今日は六十九万一千トン、だから約四倍に生産量がふえた。四倍に生産量がふえて、価格は一円も動かない。よろしゅうございますか。そしてあなたは需要と供給の関係とこう言われますけれども、あなたの言われるように、需要と供給がバランスをとっておったら値段が下がらないということだったら——生産性が上がってコストを下げることが価格を下げることだと言っている。コストが下がったということで、あなたの言うようなことだったら、価格は下がらなければおかしいじゃないですか。どうですか。
  58. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 それは一応価格が下がるのがほんとうでありますが、しかし需要がそれ以上にふえておる場合には、価格は下がらない場合があります。
  59. 堀昌雄

    堀委員 そこに問題があるのです。だってこれらの、たとえばブリキのシェアは幾らですか。通産省、ブリキの鉄、要するに食カン用ブリキに対するいまの二社のシェアというのは幾らですか。
  60. 山下英明

    ○山下説明員 八幡、富士一社のシェアは六三%強でございます。
  61. 堀昌雄

    堀委員 だから八幡と富士で六三%くらいつくっておって、もし需要がふえてくれば、これだけ生産しているところで需要をふやせばいいんですよ。もし需要をふやさないで建て値を固定しているというのなら、これこそまさにカルテルをやっているんじゃないですか。現状でカルテルをやっているんじゃないですか。企画庁長官どうですか。——あなたにお願いしておきますが、経済企画庁というのは国民のためにある役所ですからね。企業のためにある役所じゃないのですから、国民の側に立って答弁してくださいよ。
  62. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 企画庁のみならず、各省は国民のための役所であります。経済企画庁ばかりお責めになるのはどうかと思います。  そこで、いまの問題ですが、私は申し上げましたとおり、生産性が高くなれば、そこで余剰価値が生まれてくるから、余剰価値は消費者もそれから経営者も労務者もみな分けるべきだという原則を私は述べておるのであります。実際にはたしてそうであるかどうかというような問題については、これは公正取引委のほうでもお調べになっておられることと思いますから、その点は、実際にはこれをどうする、こうするということでなくして、全体として経済政策としてそういうふうにあるべきだということを私のほうでは示しておるわけであります。
  63. 堀昌雄

    堀委員 いや、私が言っているのは、きのうのあなたの談話についてずっと言っているわけですよ。よろしいですか。八幡と富士の合併は、消費者マイナスにならない、国民生活審議会の消費者保護部会大型合併というのは消費者の利益にならぬといったのは一般論であって、八幡、富士の合併は当たらないとあなたはきのう言ったじゃないですか。それを最初に確認したじゃないですか。
  64. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 公正取引委員会でそういうふうにおきめになったのであるし、私も同じ意見であるということを申し上げたのであります。
  65. 堀昌雄

    堀委員 いや、あなたはそういう意見だと言われたけれども、最初に私が、消費者のためにならないと言ったら、いや、これはそうではないと言った。はっきりあなたはお答えになったじゃないですか。だから、もういいですよ。——待ってください。公取公取で聞きますよ。しかしあなたが、国民生活審議会の消費者部会が大型合併消費者のためにならないといったことは一般論で、少なくとも八幡、富士には適用されないと言われても、私が言っているのはいま事実関係を言っているわけだから、事実関係から来て、今日まで、合併しなくて二社のままであってすら、すでに国民のために消費者のためになっていないということを、私はいまここで事実をあげて立証しているわけでしょう。だから、あなたの言われたことは間違っています、今日までにおける事実関係においても、事実は二社であってすら国民消費者のためになっておらぬという事実があるということを私が言っているのに対して、あなたは、じゃ、どう答えるのですか。
  66. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 今日までにおいて、私は鉄鋼の値段というものは上がってないと思っております。最近においては下がっております。
  67. 堀昌雄

    堀委員 いま、私は、通産省の資料で動いてないということを言ったんです。
  68. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 動いてないということは上がってないということです。
  69. 堀昌雄

    堀委員 あなたは経済学の専門家でありながら、全然そらぞらしいことを言ってもらったら困るですよ。特に私が相手だったら、ごまかそうといったってごまかせないですよ。絶対にごまかせない。だから私がいま言っていることは、事実に基づいて、二社の現状であってすら生産性があがって生産量が四倍にもなって、そうしてあなたは、生産性があがってコストが下がっておる、こう言われたんだから、コストが下がっているのなら、建て値も当然下がって、そうして消費者に還元するというのはあなたの論理じゃないですか。そうなっていないということは、二社においてすら問題があるということじゃないのですか。それじゃどうですか。
  70. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 その点は、私なんかは、そういう事実があれば、それは検討するということは申し上げておるのでありまして、そこには需要という問題もあるから、それをもあわせて検討すべきだ、こう私は申し上げておる次第であります。
  71. 堀昌雄

    堀委員 その需要側の問題はおかしいじゃないですか。供給側は、価格を安定させ硬直させるのではなくて、需要に見合った生産をして、やはりコストに見合った価格を、同じにしろとは言わないが、徐々にでも下がるべきが当然なんじゃないですか。それをもしあなたの論理からいけば、需要に見合って価格が硬直するようにしか生産してないというのなら、これは生産に対するカルテルをやっているということじゃないですか。
  72. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 ブリキでありますと、おそらくそれはかん詰めだと思いますが、最近におけるかん詰めというものの製造は非常にふえておりますからして、したがって、その需要がふえたと思います。したがって、その需要に応ずべく生産拡大されてきた、こう思っておるのでありますからして、そのブリキを安く販売することによってまたかん詰めが安くなることになるのでありますからして、問題はかん詰めの点においてもどうなるかということを調べてみたい、私はこう考えている次第であります。だから、あなたの言うことを何も否定しておるわけじゃない。そういう事実があるとすれば、これはひとつ検討してみたい。だから、需要側においても需要をひとつ検討したい。一がいにシェア関係ですぐ売り値が硬直するというように即断することについては、もう少し検討したいということを申し上げている。何もあなたの言うことを否定しておるわけじゃありませんから……。
  73. 堀昌雄

    堀委員 かん詰め用ブリキだけなら、私はあまりこんな大きな声をしてやりたくないのですよ。しかし、少なくともここで提起されております問題は——公取委員長は途中でお入りになったからあれでしょうけれども、皆さんのほうで競争を制限するおそれがある、あるいはにわかに競争を制限するおそれがないとは言えないという、まことに回りくどい条件がついた四品目について私はものを申しているのですけれども、鋼矢板についても昭和三十六年以来今日まで建て値は一円も動いていないのですよ。よろしゅうございますか。だから、これは単に製かん用ブリキだけというならともかくも、鋳物用銑鉄、鋼矢板、ブリキ、それからレール、これは全部三十六年から今日まで一円も建て値が動かないということは、これらの品種が二社によって、いうなればやみカルテルによって価格が固定をされてきたという事実をあらわしている以外の何ものでもないと思うのですが、公取委員長、この価格の定着してきた理由についてはどうお考えになりますか。
  74. 山田精一

    ○山田政府委員 建て値はまさに御指摘のとおり変わっておりませんが、私どもの調査いたしましたところでは、実際の取引価格、これはある程度の変化があったように認められます。しかし、その動き方が比較的少なかったということは事実でございます。
  75. 堀昌雄

    堀委員 大体中の価格まで伺いませんけれども、建て値は一本にして、一体フラクチュエーションの幅というものはどの程度の幅があるのでしょうか。この建て値が一本の場合における幅——幅だけは、比率ですからおっしゃっていただきたい。
  76. 山田精一

    ○山田政府委員 ただいま品目別の幅ははっきり記憶いたしておりませんけれども、グラフでもって描きました限りにおきましては、ある程度のアップ・アンド・ダウンがございます。
  77. 堀昌雄

    堀委員 事務当局を呼んで、その幅について公式にここでひとつ御報告をいただきたいのですが、公取委員長
  78. 山田精一

    ○山田政府委員 それじゃ資料としてお目にかけることにいたしたいと思います。
  79. 堀昌雄

    堀委員 私の持ち時間は十二時半まででございますので、できるだけすみやかにひとつ御連絡をとって御提出をいただきたいと思います。  公取委員長がお入りになりましたから、すでに予算の分科会等でも議論が少しあったと思うのでありますけれども、昨日の発表は一応評価しております。そこで、今後おそらくこの企業は、公取で指摘をされた点について、何らかの対応策を講じた上、これはこうします、これはこうしますと紙に書いたものをもって正式の手続をするんだろうと私は思っておるわけです。その紙に書いた手続を公正取引委員会はお受けになって、どういうふうな手続をされるのか、最初にちょっと手続についてだけ承りたいと思います。
  80. 山田精一

    ○山田政府委員 昨日は、内相談に対する一応の回答を与えましたので、したがいまして、当事者が今後正式の届け出をいたしてまいるかあるいはまいらないか、これは私の存ずるところでないのでございます。もしも、かりに正式の届け出書が提出されまして、従来と全く内容が同じものでございまするならば、これは認められないということははっきりいたしております。ただ、届け出番の内容が変わっておりまして、問題点がかりに全部なくなっておるということになりまするならば、これは十五条に抵触しないということになると考えます。手続的に申しますと、こちらといたしましては、届け出書の提出がありましたのをまちまして、それを見て審査をいたすという形になるわけでございます。
  81. 堀昌雄

    堀委員 そこで、まずその入り口のところだけで伺いたいんですが、私が紙に書いて届けると言いましたことは、このことはこういたします、このことはこういたします、これはこうします。ですから、紙に書いた限りでは要するにいま皆さんのほうでお考えになっておる独禁法に違反しておるという問題は取り除かれた。紙には書いてあるわけですよ。その紙に書いてあれば公正取引委員会はそれを信用して、それを土台にしていまの処置をおとりになる、こういうことですか。
  82. 山田精一

    ○山田政府委員 紙に書いてとおっしゃいますのが、どういう意味でございますか、ちょっとわかりかねるのでございますけれども、どこまでも正式の手続といたしましては、先方からもし届け出をいたすならば、届け出書という書面資料をつけましたものを提出してくると思います。それを正式の手続の対象といたしまして私ども審議をいたすということでございます。
  83. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、その資料の中で、たとえばいまの製かん用のブリキの問題については、この会社の株はたとえばその他に譲りますとかというふうに書くわけですね。書くということだけでは悪いんですけれども、ちょっとこの場合ですから、一応紙に書くわけですね。私は、なぜ紙に書くという表現をとっているかといいますと、事実行為が完了をしておりますならば、判断はきわめて明確になるわけでありますから、たとえば一例をとって、株式を他に譲ります——事実上それが他に譲られたということは、事実関係を調べれば、公正取引委員会は立ち入り権もあるわけですから、おわかりになることだから非常にはっきりします。だから、私が言っておりますことは、独禁法十五条に違反をしておる部分について事実関係として確認ができるという状態に基づいて問題が出されるということであるのか、こうやりますと紙に書いてやってきたものについても事実関係ができたものとみなして処理するのかどうかという点を伺っておるわけです。
  84. 山田精一

    ○山田政府委員 まだどういう届け出書が出てまいりますのか、全然わかりませんので、仮定の問題で何とも申し上げかねるわけでございますが、届け出書が出ました段階において確認されるものであれば当然これは審理の対象になるわけでございます。蓋然性がはっきりいたせば審理の対象になるということでございます。
  85. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、そのことは客観的事実をもって挙証するのではなくて、あなた方の恣意的な主観によって判断をするということになるわけですね。
  86. 山田精一

    ○山田政府委員 決して恣意的、主観的ではございません。客観的、合理的に判断をいたします。
  87. 堀昌雄

    堀委員 客観的、合理的に判断をされるということは、要するに、あるこれこれのことをいたしますと言っていることが事実として客観的に判断をされることになりますれば、私もこれは問題はないと思っておるんですよ。ただ、こうしますといって届け出てその結果はできない場合があるかもしれないが、そのときはたいへんな問題が起こるわけです。あなた方が主観的にこれはこれでできると判断したけれども、できなかったならば問題があとに残ってくると思いますから、その点については、要するに届け出が一週間やそこらでできるはずはないと思っておるんです。その限りにおいては、あなたの言われた客観的、合理的に判断ができるという客観情勢ができるまでには相当の時間を要する。でなければおかしいと思っておるわけですから、その点について、いま私が申し上げたように、要するに将来こうなるという予測その他は伴わないで、その届け出の時点において客観的にそれらのものが十五条に違反しないという確認のもとに届け出が行なわれたとすれば、それはそういう形の事務手続をするということでよろしいわけですね。
  88. 山田精一

    ○山田政府委員 その時点におきまして、先ほど来申し上げましたように、客観的、合理的に判断をいたしまして、そういうことが確実であるという心証を得れば、それを採用いたすわけでございます。
  89. 堀昌雄

    堀委員 いまの表現を伺っておると、確実であるという心証という表現でありますが、私は御承知のように自然科学をやっておりますから、社会科学の皆さんとは発想なりものの考え方がやや違うところがある。私どもはやはり、事実というものは実験によって確認をするということでなければ事実として確認をしないというのが、私ども自然科学をやってきた者の発想の土台になるわけでございますから、客観的、合理的に判断をするということは、実験の結果、具体的にデータとして出てきたときに初めて私どもはそれが客観的、合理的に判断をしたということになるのであって、何らかのデータをもとにして推計をしたり予測をしたり、要するに彼らのことばだけを信用したりということは、社会科学の場合には実験ができませんから、そういう意味で、そういう慣習が社会科学の場合にはある程度一般的に行なわれていると理解するわけですが、このような事実に関しては、そういうような社会科学的な客観性、合理性の問題では取り返しのつかないことが起こる可能性が非常に多いと私は考えておるわけです。ですから、そういう意味で、私どものような自然科学的な具体的、実証的判断というものがこういう経済行為の中ではきわめて重要だと考えますが、この点について公取委員長見解はどうですか。
  90. 山田精一

    ○山田政府委員 ただいま御指摘のとおり、社会科学と自然科学ではかなり違いがあるのではないかと思います。自然科学のほうであれば、はっきりと実験ができるわけでありますが、社会科学のほうは、遺憾ながら試験管の中で試験をするというわけにまいりませんので、ある程度合理的、客観的な将来に対する判断というものがどうしても出てまいる。かりに現在においてカルテル行為をやっているものを摘発して審査をするということなら、それはもう事実がはっきりあらわれておるわけでございますから、それは自然科学と同じように分析していくことができると思う。しかし、この合併に関する限りは、将来経済合理的に考えてどういうふうに動いていくかという予測でございます。したがって、それが一人の人間の判断であってはいけないために、わざわざ五名の行政委員会で判断をする、法律の精神がそういうふうに定めておるのではないか、かように心得ております。
  91. 堀昌雄

    堀委員 ちょっといまの問題を整理したいと思いますが、いま公取委員長がおっしゃったように、現在すでにカルテルが行なわれて、そのために価格が硬直しておるということならば、これは自然科学と同じように実証的に検証ができる。しかし、今後の問題については実証ができない部分があるとおっしゃるが、そのことは私も事実だと思います。しかし、いま私が例示をいたしましたように、たとえばブリキの問題等は、系列なり、そこのところに非常に集中している関係で、たとえばこれをシェアの関係から見ても、この持ち株は当然他に譲ってそういう系列関係を遮断をするとかいうようなことを実証的にやろうと思えばできることですから、紙に書いて、こうやりますといって、しかしできなかったというようなことでは済まないわけですから、それは先にやってから出してくださいということは言えるじゃないでしょうかね。それは客観的、合理的な判断をするためにも、できることはやらせるということが私はやはり独禁法の十五条の精神を守るために必要なんじゃないか——できないことですよ。たとえばニューエントリーが出てきたらどうなるかというような問題は、これはどうしようもありませんからね。ニューエントリーが出てきた場合のことを考えるしか手がない思いますね。しかし、そういうことは別として、できることとできないことがこの問題に関連してあると思うのですが、公取委員長どうでしょうか。
  92. 山田精一

    ○山田政府委員 お説のとおりでございます。できることは当然させなければならないと思います。
  93. 堀昌雄

    堀委員 そこで、私はいまちょっとニューエントリーの問題に触れましたけれども、これはひとつ通産省、もう鉄鋼業務課長一番よく知っているのだからあなたに聞きますが、御承知のように、このかん詰め用のブリキ、これにはニューエントリーが途中で入ってきましたね。川崎製鉄というニューエントリーが入ってきた。シェア一〇%くらいだと思いますが、これはいつごろ入ってきたのですか。
  94. 左近友三郎

    ○左近説明員 川崎製鉄につきましては、一昨年の暮れにたしか設備ができまして、昨年から生産を開始しておるというふうに承知しております。
  95. 堀昌雄

    堀委員 そこで、このシェア一〇%のニューエントリーが入ってきて、いまの食カン用ブリキは、価格は少しは動いていますか。ニューエントリーがあったということが競争条件によって価格に影響があったがどうかという点について、あとで資料でいただきますけれども、どうですか、その事実は。
  96. 左近友三郎

    ○左近説明員 昨年の川崎製鉄の生産は食カン用ではございませんので、いわゆる雑カン用と申しまして、五ガロン・カンだとか、そういうものの生産に入ったわけでございます。本年から本格的に食カン用に入りたいということでございます。そこで雑カン用のブリキの値段につきましては、われわれはやはり、ニューエントリーが入りましたので値段が若干変動したというふうに承知いたしております。
  97. 堀昌雄

    堀委員 若干という表現はどうも経済学的表現じゃないですね。経済学的にひとつ若干というのはどの程度の幅か、きっちり言わなくてもいいですけれども、五%台とか一〇%くらいとか、少しやはりここでものを言うときには科学的にやってもらいたい。
  98. 左近友三郎

    ○左近説明員 その点につきましては、正確に申し上げることはちょっと困難だと思います。といいますのは、ブリキにつきましては、市中価格が変動いたしますと、その場合にやはり取引先によっても、また数量によっても変動いたしますので、正確なことは申し上げられないと思いますが、大体数千円程度でございますので、パーセントにいたしますと五%くらいの範囲内ではなかろうかという感じでございます。
  99. 堀昌雄

    堀委員 ここが私今後のニューエントリーの入ってくる場合における一つの例証になっておると思うのですね。これはほかにもあるかもわかりまんが、比較的この四品目については、過去においてはニューエントリーが入った例がいまのブリキくらいではないかと思うのです。鉄鋼業務課長どうでしょうか。
  100. 左近友三郎

    ○左近説明員 いま問題になっております品種につきましては、ニューエントリーと申しますのは、実は富士製鉄がすべてニューエントリーをやったわけであります。といいますのは、戦後日本製鉄が分離して八幡、富士になりましたときに、鋼矢板とかブリキとかレールとかいうものは大体八幡製鉄のほうに残ったわけでございます。ところが三十年初頭に富士製鉄が新規参入をもくろみましてそれを果たしたというのが現段階でございます。そのあと鋼矢板については、ごく最近、川崎製鉄なり日本鋼管なりが設備をつくりまして、新規参入を志しておるという段階でございます。それからブリキにつきましては、御承知のとおり、そういう形になっております。
  101. 堀昌雄

    堀委員 御承知のように、これらの品目についてはいまのようにまだ事実をもって検証するに足るデータがきわめて不十分でありますから、これこそまさに予測の問題になってくると思うのです。しかし、私は少なくともいままで議論をしてまいりましたように、シェアが著しく高いものについては価格の下方硬直性がある。通産大臣、経企庁長官ともよくこれから——私とものいただいた資料というのは外に出してもいい資料、たいして役に立たぬ資料です。だから、もうちょっとあなた方内部では真実に近いもので御検討をいただきたいわけですけれども、私は何もここでいやがらせを言っているわけでも何でもないのですよ。この問題の中で私は今度非常に問題が見落とされている気がしてならないのは、公正取引委員会は確かに公正にいろいろ手続をなすったと思いますけれども新聞その他にも伝えられておりますように、要するに独禁法という法律の適用という問題と、それから国民経済という問題と、問題は実は二つあるわけですね。そうして独禁法というのは何のためにあるかといえば、独禁法第一条に書いてあるように、国民経済を維持するために実はこの法律はあるわけですね。だから、独禁法の運用というものは法律に忠実でなければならないけれども、それを忠実に行なう思想的な背景というのは、私は何といっても独禁法第一条の精神を生かしながら法律を運用するということでなければ、ただ法律法律のために運用するということでは、私は重要な問題があろうかと思っておるわけです。公取委員長、その点について、あなたも日本銀行に長くいらして、経済について長い御経験をお持ちだから、私はあなたについて信頼をして今日まできておるわけですが、しかし今度の取り扱いについては、やや不安を持たざるを得ない感じがしてならないのです。それはなぜかといえば、そういう特定四品目だけの問題としてこれがすりかえられてはならないのではないかということですね。このことは学者の諸君もいろいろ問題を提起しておりますし、各般にわたってこの合併問題についてはいろいろ意見があることは御承知のとおりです。しかし、その意見ですね、要するに合併に反対の意見というのは、いかにして競争条件を確保して、そのためによりよきものがより安くという資本主義のメリットを国民に与えるかどうかというところにかかっておると思うのです。しかし、現実に私がいままで例証してきたところでは、二社であったときでも、なおかつそうなっていないという事実を、私は本日の委員会で明らかにしておるわけです。二社であってもそうでなかったものが、一社になったらそれが逆によくなるなどということはあり得ないと思いますけれども公取委員長はどういうふうに判断をしておられますか。
  102. 山田精一

    ○山田政府委員 第一段で御指摘になりました、独占禁止法を解釈いたすにあたりまして第一条の法の目的、これに沿いまして解釈いたしていくべきということは、全く同感でございます。その方向で努力をいたしておるわけでございます。  それから第二段の、合併をいたすと価格が硬直化するのではないかというお尋ねでございましたが、経済政策として合併がいいか悪いかということ、これは別の角度からいろいろの御批判があると思います。私どもの立場といたしましては、競争を維持する上において支障があるかないか、こういうことでございまして、これは法律の条文に「一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合」と書いてございますので、第一条の目的に照らして解釈いたすことはもちろんでございますけれども、第十五条に忠実に従っていかなければならない、かように考えておるわけでございます。
  103. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、第一条の目的に沿わなければならないのは当然であるけれども、比重としては十五条に規定したこまかい部分のほうが比重が高いということですか。
  104. 山田精一

    ○山田政府委員 第一条で法の目的を書いておるのでございますから、そのほうが重要であることは申し上げるまでもないことでございます。ただ第十五条を拡張解釈いたすといっても、これには限界がある。法律は国会の定めてくださいましたものでございますから、これをたとえば改正前の当初の法律のように、競争を制限することとなるおそれがある場合、こういうふうにまで広げるということは、これはできないことだと考えております。
  105. 堀昌雄

    堀委員 公取委員長のこれまでの御見解を聞いておりますと、「当該合併によって一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合」ということですが、これまでは、シェアについては三〇%をこえるものはそういう可能性があるということを前の公取委員長が発言をなすって、そのことは私もこの前に確認をさしていただいたことがあると思うのですが、それといまのお話とはどういう関係にあるのでしょうか。
  106. 山田精一

    ○山田政府委員 三〇%云々の数字はおそらく元の横田委員長時代に国会で御発言があったと記憶いたしております。そのときの速記録を拝見いたしましても、一応三〇%を警戒ラインとして、ということでございます。私も先般の委員会において、一応三〇%を警戒ラインとするというふうに申し上げました。三〇%を機械的に、三〇%ならいいけれども三一%になったらいけない、かように運用する気持ちは全然持っておらないわけでございます。
  107. 堀昌雄

    堀委員 私もそんなふうに考えておりません。考えておりませんけれども、この八幡、富士の場合は、三〇%とか三五%という問題ではなくて、各品目について相当にシェアが高いわけですね。単にシェアが高いだけではなくて——要するに、このシェアの大きい八幡、富士の次、第二番目にある企業のシェアというものが相当に高ければ、これはまた話は別だと思うのです。御承知のように、寡占の状態というものの中には、並列的寡占というものもありますけれども、ガリバー式の巨人的なやつがいて、その周辺に小さいのがパラパラといるという寡占もあるわけです。まさに今度のこの問題はそのガリバー的寡占状態になるということですね。非常に巨大なものがあって、あとは非常に小さい状態です。この状態は、この前の紙ときわめて同じような条件が出てくると私は思うのです。王子三社が合併をしたら、それに次いでいる大昭和製紙のシェアというものは著しく低いということは申し上げるまでもなかった過去の経緯でございますね。  そこで、私はちょっとここで申し上げておきますけれども、たとえば主要品目の中の、いまの例外分でなしに、大型形鋼では、合併会社の比率は六〇・二%になりますが、二位の川鉄のシェアは九・七%しかないのですね。それから、一番大きい主要製品である冷延鋼板コイルの場合は、合併会社の三九・三%に対して二位の日本鋼管は一三・八%、厚板では、合併会社の三一・六%に対して二位の川鉄は一七・八%ですから、いずれもこの主力商品については、合併会社のシェアと二位との間の格差が相当著しいものがある。このことは、私は結果として管理価格を生みやすい条件がある、こう判断をしておるわけですが、こういう角度については公取委員長はどういうふうに御判断をしておられますか。
  108. 山田精一

    ○山田政府委員 第一位の会社と第二位の会社との間の格差が著しく離れるという御指摘でございましたが、これも改正前の法律には、御承知のように集中排除法もございまして、それから独禁法の中の条文にも、的確には記憶しておりませんけれども、企業間の格差が著しく大きくなる場合というのがはっきりと十五条に入っておったわけでございます。これはその後改正によって削除されている。ですから、その企業間の格差ということは一つの要素としてむろん考慮いたしますけれども、私どもの立場といたしましては、その合併による企業構造の変化、また需要業界の模様、それから同業競争者の牽制力、これらの点を、あるいは代替品でございますとか輸入の可能性でございますとか、これらを総合的に判断をいたしまして、実質的な競争の制限になるのかならないのか、そういう判断をいたした次第でございます。  それから先刻お尋ねのございましたブリキの価格でございますが、三十六年から四十二年までの間におきまして約一割五分の変動がございます。最高値と最安値では一割五分の変動がございます。絶対数は……。これは個々の会社のことでございます。
  109. 堀昌雄

    堀委員 それでは絶対数は伺いませんが、その三十六年と四十二年の両端は一体どのくらい差があるのでございましょうか。
  110. 山田精一

    ○山田政府委員 三十六年と四十二年の間で約九%下がっております。
  111. 堀昌雄

    堀委員 実はさっき私が申し上げた各種生産性上昇コストの低下から見ますと、三十六年から四十二年までの間に九%しか下がっていないということは、他の品種の下がり方に比べると、これはやはり下方硬直性があると見るべきではないかと思いますが、公取委員長、いかがでございますか。
  112. 山田精一

    ○山田政府委員 これは先ほど申し上げましたように、高いところと安いところとでは相当の開きがございます。一割五分近い開きがございまして、その間においてあるいは一高一低いたしておりますので、たまたま三十六年と四十二年だけを比べましてどうこう判断をするというわけにはいかないと思います。グラフでこの趨勢線を描きますと、下のほうに向かっておるということは事実でございます。
  113. 堀昌雄

    堀委員 私は、下のほうに向かっていないと言っているのじゃないですよ。下のほうに向かっていますけれども、それは要するに全体のコストの下がり方のカーブ、あるいは他の主力商品品種のカーブ、それは当然、さっき菅野さんのおっしゃったように、特にトップ企業のシェアが二〇%以下のものは、ちょっとここで申し上げたように四〇%から一年間フラクチュエーションが市中価格ですけれどもあるわけですから、それだけあるということと同時に、そういうものは私はこれもやはり下方に下がってくるべきですが、この傾向線あるいはコストの傾向線と、いまのブリキのような——ブリキでなくても、このいま問題になっておる品種はおおむね条件は同じだろうと思う、建て値が同じになっておるところを見ますと同じだろうと思いますが、これはやはりカーブがだいふ違うのじゃないでしょうか。やはり水平に近い方向にこれらのいまの四品目というものはあるじゃないか、こう思いますが、いかがでしょうか。
  114. 山田精一

    ○山田政府委員 おおむね似たような傾向にございます。ほかの品目についてもでございますね。
  115. 堀昌雄

    堀委員 それはいまの四品目がおおむねということでございますね。——それはけっこうです。おそらくそうだろうと思います。そうではなくて、要するにコストの下降線、いまの品種別じゃないですよ、今度は全体のコストですね。鉄のコストという製品コストは、品種別には、いまは鉄はなかなかむずかしくて出せないと思いますから、トータルとしてのコストで見る線が一つあるだろうと思いますね、三十六年から四十三年くらいまで。同時にまたその他の主要製品、さっき私が申し上げたシェアが二〇%くらい以下で、要するに競争が最も激しく行なわれておるというふうに見られる品目というものは、私は一番コストに近い下降線をたどるだろうと思うのですね。コストをあまり割ったのではこれは商売になりませんから、コストぎりぎりでくるのじゃないかと思いますから、そういう品目のカーブと、いまの四品目のカーブは、片方は水平に近く下がってはおりましょうが、片方はもっと下がってきているのじゃないかということを伺ったのですが、その点はいかがでしょうか。
  116. 山田精一

    ○山田政府委員 コストは私どものほうでは調査をいたしておりませんので、私どものほうはどこまでも競争条件があるかないかという点に着目しておるものですから、個々の企業のコストの調査はいたしておりませんわけです。
  117. 堀昌雄

    堀委員 ですから、コストを最も近く反映していると思われる競争品目の下降線とはどうだろうかということを伺っているわけです。
  118. 山田精一

    ○山田政府委員 ほかの品目の下降線を、ちょっとはっきり記憶いたしておりませんけれども、多少の差はあるかもしれません。品目によりましていろいろであろうと思います。
  119. 堀昌雄

    堀委員 次回までに、あなたのほうではそういう調査をなさったのでしょうから、品目別でけっこうですから、ひとつ委員会提出していただきたいと思うのです。要するに、主要品目といまの四品目、これについて昭和三十三年くらいから、いわゆるフラクチュエーションを修正して、一つの傾向線として出してくださればけっこうですから、委員会提出していただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  120. 山田精一

    ○山田政府委員 それは差し上げることにいたしたいと存じますが、コストはございませんから、その点はどうぞ……。
  121. 堀昌雄

    堀委員 そこで、分科会のほうで法律的な議論はされておると思いますけれども、これは仮定の事実になってきますけれども、届け出がされた場合には、法律に基づいて当然審判を行なうという成規の手続を踏まれるということだと思いますが、いかがでございましょうか。
  122. 山田精一

    ○山田政府委員 法律に定めてございます成規の手続をとりたいと考えております。審判を開くか開かないかは、そのときに委員会において決定をいたすわけでございます。
  123. 堀昌雄

    堀委員 審判を開かない場合は、それはどういう場合でございますか。
  124. 山田精一

    ○山田政府委員 審判を開きませんでも、委員会において判断が明白であったという場合には、従来審判を開かないようになっております。
  125. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、事実が明白であるということは、さっきお話しになったように、できることは全部やってきて、その上で出されたという前提があるということの場合でございますね。
  126. 山田精一

    ○山田政府委員 くどいようでございますけれども、できることは全部できていなければいけないと思います。それから、さしあたりすぐにはできないということでありましても、合理的蓋然性がありまして、何らかの保証があって、これが実現されるということが確実だということでございますれば、それも当然考慮されると思います。
  127. 堀昌雄

    堀委員 いま、将来に蓋然性があって確実だと見込まれると、こうおっしゃったわけですが、そこが非常に気になるところなんですね。確実に見込まれるという判断がそこでなされていたけれども、将来的に蓋然性があったけれどもそうならなかった、見込んだけれどもそうならなかったということが起きる可能性がないという、何らかの保証がある場合ということになりますか。
  128. 山田精一

    ○山田政府委員 これは全く仮定の問題でございますので、事柄の内容によりましていろいろと違ってくると思います。事柄の内容によりましては、それが実行されなかった場合にその処分の排除命令を出すとか、そういうことが考えられる場合も当然あると思います。
  129. 堀昌雄

    堀委員 そこで、時間の関係で通産大臣にお伺いをいたしますが、まだいろいろな問題が残っておりますから、今日これで合併がそのまますっと予定どおりいくかどうかについては、私まだやや疑問が残っておると思います。残っておると思いますけれども、しかし、一般的な、新聞その他の感触からすると、どうもそういう方向にいくのじゃないかという感じがしております。あなたの新聞記者会見を拝見して、あなたのおっしゃっておる独禁法は独禁法、産業政策産業政策ということでやるべきだ、おっしゃる考えは私はたいへんいいと思いますが、あなたも池田さんの、何といいますか仲間というのですか、後継者の一人ですね。私は、要するに競争に基づく成長促進するということが池田さんは国民のためになる、国民経済的にいいという判断できておられたと思うのですが、通産大臣はどうですか。池田さんのそういう考え方は、あなたも大体そうだという立場に立っていらっしゃいますか。
  130. 大平正芳

    大平国務大臣 公正な競争状態が保証されておるということが経済の健全な発展の原動力であるという認識をかたく持っております。
  131. 堀昌雄

    堀委員 それは一般論としてそうでしょうが、池田さんの発想というのは、やはり成長させるということは非常に重要だ、そのためには、しかしやはり競争も必要だということだったろうと思うのです。成長というものは競争がなければ大体においてとまるから、そういうことだと思いますが、その点の考え方は池田さんの考えておられたこととあなたとあまり変わりはないだろうと私は思っておりますから、どうですかと伺ったのです。
  132. 大平正芳

    大平国務大臣 別に変わりはありません。
  133. 堀昌雄

    堀委員 私は前段で少し触れてきたように、少なくともいまの四品目については、資料が必ずしも私も明確なものをちょうだいしておりませんから、隔靴掻痒の感がありますけれども、やはり下方硬直性が強いという判断をしておるわけです。しかしこれも、これまでの二社というのは、八幡、富士といって、いまは合併のあれが出ておりますが、かなり激しい競争を行なっておったのですね。激しい競争を行なっておってなおかつそういう状態があったという事実がある。これが一社になった場合における将来の予想という問題については、象徴的に私は四品目を出しておりますけれども、さっき独禁法の前の法律では企業間格差の問題もあったし、いろいろあったということをいま公取委員長お触れになったように、それがなぜあったかというと、そのことはやはりそういう競争制限になるという判断があったからそういう法律があったわけですからね。それをこの前改めた。改めたというのは、そのときの情勢でしかたがありませんけれども、やはりそういうところに問題があることは間違いないと私は思う。御承知のように、アメリカのベスレヘムとヤングスタウンの一九五八年における合併がだめになったいろいろな経緯は、日本の場合に比べると著しく違うのですね。当時、USスチールという二九%のシェアのあるものがあって、この二つ合併されても二一%くらいにしかならないということでああったにもかかわらず、アメリカ司法省はこれを却下したという事実がある。そういうことで却下したけれども、なおかつアメリカでは実は鉄鋼問題はなかなかはかばかしい状態になっていないという先例があるわけです。アメリカでは、もしこれを認めれば、クレートン法の七条というものは無効になるということがこのときに言われておる。その点では私は今度の八幡、富士の合併問題とこの十五条の二項という問題は、このベスレヘムとヤングスタウンの例にやや近くて、しかしより重要な問題をはらんでおる、こういうふうに実は判断したわけです。そこで、これまでしばしば私はここの委員会でもやってきたわけですが、これまで通産省は、特に鉄については過保護の状態で来たと私は見ておるわけです。要するに、少し生産過剰になれば、粗鋼減産などという少なくとも独禁法からいえば不適当な処置をとったり、きわめて過保護で今日になってきたと思うのですが、かりにもしその合併が成立をしたという場合においては、これらの過保護の処置は取り払わなければならぬ。いま過保護をやっておれば国際的にも問題が起きる時期でもありますから、当然こういう過保護状態を取りはずして−いろいろ平電炉メーカーの問題を出されるけれども設備調整等の問題、価格問題については、いよいよこれからは競争をはっきりやらせるということにならなければならぬ段階になったと思いますけれども通産大臣、これに対してどう考えておられるかお伺いいたしたい。
  134. 大平正芳

    大平国務大臣 きょう堀さんの御質疑を拝聴しておりますと、ぼくはこの富士、八幡合併問題が起きてからの論調をずっと新聞や雑誌のものをちらほら見ておりましての感じとやや違いまして、あなたは自然科学の素養を持たれておるせいもありますが、非常に実証的なアプローチを実証的な角度から問題にされたことに敬意を表します。それで私は、こういう問題は成心をまじえずに、事実を事実としてしんぼう強く解明していくべきことだと思います。それで、その点について私は通産省へ参りましてからいろいろ勉強をしてみたのですが、この間も予算委員会でこの合併に関連しての御質問でございましたけれども社会党の同僚の方から管理価格論が出て、きょうのあなたの論調の底にもやはり管理価格に対する警戒、それがにじみ出ておるように思うのでございます。その問題もやはり日本経済の実態で一ぺん実証的な研究が要るのじゃないかというように私自身思うのです。たとえば、私どものほうで調べたところによりますと、非常に競争の激しい業態、それから寡占形態をとるもの、超寡占形態になったもの、そういう市場構造別に粗鋼の製品価格の推移を調べてみますと、皮肉にも競争が非常に激しいものほど高くなっているのです。それで超寡占のほうが下がっておるのです。これは一般の寡占形態ならば価格は硬直化するあるいは上がる傾向を持つということに対する何か違った傾向が出てきておると思うのです。しかしこれは、一体それでは本来寡占理論を否定したものかというと、私はどうも、先ほど成長論が出ましたけれども日本経済成長が非常に早い、生産性上昇も非常に早い、とりわけここ数年のように大型の投資が非常にたくましく行なわれておるというような状況の中で、その成長性がそういう傾向を消してまいりまして、それで価格が下降しておるのじゃないかとも思うのですが、このあたりはやはりこういう問題を扱う場合に、あなたの言われる実証的な精神で見なければならぬのじゃないかと思うのです。つまり観念論でなくて、成心を持たずに、こういう問題は真剣に論議をして真実を究明していくべきじゃないか、そういう基本的な考え方で臨んでおるわけでございます。  それから第二段で言われた鉄鋼業に対する保護政策、これは公販制度なんかについての言及じゃないかと思います。それで、いま公販制度というのは一体機能しておるのかというと、ほとんど機能していないのでございます。それから先ほどあなたから議論されましたが建て値問題、これも富士とか八幡の標準価格でございまして、実際の市場価格はそれから何割か下回っておるとか、ほかのメーカーが必ずしも追随していないとか、こういうわけのわからぬ制度があるわけでございます。それで、これはやはりあなたがおっしゃるようにすっきりとせなければいかぬのじゃないか。何もこういう機能が退化したものを残しておく必要はないのじゃないか。もっとも、私のほうもいろいろ御検討をお願いする審議会や部会がございまして、こういった問題も御検討をいただいておるわけでございますから、これは私は別にどうしても維持しなければならぬとかというように片意地には考えないのでございまして、皆さんがごくリベラルに議論していただきまして、それでもうこういうものはやめようじゃないかということであれば、私は別にそれに対して抵抗なくやめることに異存はないのです。
  135. 堀昌雄

    堀委員 ちょっと時間がもうあれですから簡単にひとつお答えをいただきたいのですけれども、もう一ついまの過保護の問題の中には設備調整の問題があるのです。なるほど、それは産業全体の問題として、設備調整というのはある程度やむを得ない点もあります。しかしそうでなしの設備調整——産業全体というのは、景気動向に対する調整という面ではある程度やむを得ないでしょうけれども、要するに鉄鋼内部でいろいろシェアやなんかのためにだっと出てきたということについて、これまでもいろいろ問題があったわけですよ。ですから通産省は少なくともこの点についての介入はしない。要するに、ここでかなり自由に設備をやらせるというたてまえにならなければ、一つ問題が出てくると思うのです。しかし、それだからといって、これは何も必要にして十分なあれじゃなくて、私はその程度競争条件を維持するために必要だという判断です。そこまで規制をすればこれはもう競争はとまってしまいますからね。だからその点に問題が一つあるので、設備調整については、いまの産業全体に対する問題は別として、要するに鉄鋼業そのもののプロパーの設備調整問題というものは、それは平炉、電炉の問題もありましょうけれども、これまでのようなことでなくて、やはりこれは自由化をしていくということであるべきだと思うのですが、どうでしょう。
  136. 大平正芳

    大平国務大臣 これは従来も自主調整というかっこうで民間側の判断にゆだねておるわけでございます。それがいよいよきまらぬ場合には通産省に持ち上げてくれというような議論も一部にあるわけでございますけれども、私どもとしては、そういうことでなくて、あなた方でよく協議しておやりなさいという態度で突っぱねております。
  137. 堀昌雄

    堀委員 終わりにひとつ菅野長官、あなたに言っておかなければいけないのですが、あなたが長官に就任される前、昨年、実は経済企画庁はビールの値上げは反対だ、こう言ってがんばったんですけれども、実際ビールは一方的に上がってしまったわけです。宮澤長官は切歯扼腕したけれどもどうにもならなかったという先例が実はあるのです。これは私は非常に象徴的な例だと思っているのです。いま寡占状態における価格というものは、どこかプライスリーダーが価格を上げれば、それに追随して上がってきて、それについては政府は何ら介入権がない。ビールが高いのはけしからぬとわれわれも国会で言ったし、国民も言っても、企業は上げる。これがごく近い一つの例なんです。だから私は、少なくとも、これはどっちかといったら、通産大臣がもっと産業の方向で発言をして、経済企画庁長官は慎重を要するというなら話はわかると思ったんだけれども、全然逆なんです、この新聞記者会見がですね。私が国民のため国民のためと言っているのは、あなたのところに物価の問題が与えられているのですよ。いまあなたの仕事の一番重要なのは物価じゃないですか。そうでしょう。だからもう少ししゃんとしてもらわぬと、実際、国民のためにすべての官庁があるなんというなまぬるいことを言ってもらっては困るのです。どうですか。ビールの問題を考えながら、今後の鉄の価格問題にはどう対処するのか、簡単にちょっとお答え願いたい。もう一つ私は公取委員長に聞かなければならぬ。
  138. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 今度の合併問題に関連して寡占価格というようなことがもしも実現するようなことであれば、そういう危険があれば、われわれももちろん賛成しなかったわけであります。しかし、先ほど来の寡占価格というようなものについては心配ないということで今度の合併については私は賛成したのであって、もしもそういうようなおそれがあれば、これはまた公取のほうの活動も促すし、またわれわれとしても、そういう点についてはできるだけ業者にも注意するというようなことをやるべきだ、こう考えております。
  139. 堀昌雄

    堀委員 公取委員長に、実は私はこの前衆議院から海外に派遣をされておりまして、王子の合併問題のときにはこちらにおりませんでしたから、帰ってきて委員会で、公正取引委員会の内部の実情が外部に漏れ過ぎておる、これについては厳格な処置をお願いいたしたと思うのです。ところが、今回の経緯についても、実はきのうの朝には「八幡・富士合併公取委、きょう結論通告」、これはいいですけれども、「条件付きで承認へ、問題点指摘は三品種」、「鋼矢板にも疑念表明」、こう出ておるわけです。どうして外にこれがわかるのでしょうかね。「公取筋によると」というのがしばしば出てくるわけですね。私があれだけあなたにあのとき念を押しておきながら、あなたは責任を持つと言われながら、これでは公取の規律なんというのはなっておらぬということになりはしませんか、どうですか。
  140. 山田精一

    ○山田政府委員 私どもの内部から漏れたとは考えておりません。これは新聞記者諸君がいろいろな活動をいたしまして、観測と申してはなんでありますが、したがって、各紙によりまして、いろいろまちまちなものが出ております。大体の想像、観測に属することと思います。
  141. 堀昌雄

    堀委員 幾らあなたがそうおっしゃっても、国民はそうは思いません。私は、山田さんという方は非常にきちんとした方だと思っておりましたから、前回は、そういう意味でそういう発言をいたしまして、そのかわり私たちも委員会における取り扱いは遠慮をしよう、非常に私は紳士的に問題提起をしてきたつもりです。しかし、今度の経過をずっと見て、ときどきあなたがおいでになって、それは見込み記事でございますとおっしゃっても、見込みがこれほどきっちり出るはずはありませんよ。これはあなたはお漏らしになっていないでしょう。しかし、どこかにそれを漏らしておる人間がいなければ、こういう事態にはならぬと私は思うのですよ。私は、今度の経過を見ながら、王子が取り下げたのは実際もっともだと思うのですよ、これだけつうつうで抜けているのですから。どこから抜けているかは別として、私は、公取がもういまのようなああいう秘密のあれでなしに、今後は、こういう事前審査のようなことをやめて、やはり公開のもとに処理をして、そういう秘密工作によってやるという表の処理をしながら裏では全部ニュースが抜けて、特定の者だけが事実を知っておるなどというような不適当なことは今後やめていただきたいと思うのです。よろしゅうございますか。どうでしょう。
  142. 山田精一

    ○山田政府委員 むろんその方針でいたしたいと思います。私どもの内部から漏れたとは全く信じておりませんけれども、今後とも十分綱紀を厳正にいたしてまいりたいと思います。
  143. 堀昌雄

    堀委員 終わります。
  144. 中村重光

    ○中村(重)委員 関連で二、三質問いたします。  いまの堀委員と通産、経企両大臣並びに公取委員長との質疑応答を聞いておりまして、どうも理解に苦しむような点が多々あるわけであります。  公取委員長にお尋ねをするわけですが、八幡、富士の合併について、公取事前審査の中でどのような態度をおきめになるだろうか、実はかたずをのんで見守っていたわけであります。私ども新聞を通じて知る以外にはない。確かにいま委員長が言われたように、新聞の報道がずっと変わってまいりました。想像記事だというようなことを実は感じておったわけです。ところが、私がどうも理解に苦しんでおりましたのは、こうした大きい合併の問題を事前審査という扱いをされた、そのことがどうもわからないのですが、たくさん小さい件数がある場合に事前審査ということもあるいは必要であるかもわかりません。この前の王子のときに、事前審査をおやりになった、そのことで引くに引かれないという結果に実はなったんじゃなかろうかというふうに私なりに判断をしておったわけです。法的にも別にこの事前審査ということが制度としてはないわけですね。特に、この八幡、富士の場合に、あるいは王子の場合に事前審査という扱いをなさった、そのことはどういうことなんでしょう。
  145. 山田精一

    ○山田政府委員 第一の点といたしましては、事前審査と申しますのは、行政相談と心得ております。したがいまして、こういうことをしようと思うものから事前に、これではどんなものでしょうか、法律に触れるものでしょうか、あるいは触れないものでしょうかという相談を受けました場合、行政機関としてはそれに親切に答える必要があると考えます。  それから第二点といたしましては、私どものほうでは独禁法に違反する疑いがあるという事実を探知いたしました場合には、こちらから積極的に調査をする権限及び義務があるわけでございます。したがって、合併するということが新聞紙上に報道され、また当事者からそういうことを聞きますれば、それを調査する義務があるわけでございます。これが内審査の実態であると心得ております。
  146. 中村重光

    ○中村(重)委員 いまの御答弁でも明らかのように、事前審査というのは、公取の任務をきわめて有効適切に、しかも効果的に発揮するというところに意味がある。ところが、私は結果が逆に出たんではないかというように判断をしておるわけです。ですから、いま堀委員からも指摘されたように、事前審査という問題はきわめて慎重にこの後は扱われる必要があるだろうと思います。  それから、問題点の指摘ということでございますから、これに対応策が出まして、どういう結論をお出しになるか、これからの問題であります。しかし、私は、結果的には同じであろう、問題は、今回の事前審査による態度決定というものが最終的な結論になるというように実は考えておるわけです。  そこで、独禁法の十五条に、「当該合併によって一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合」——いまあげておられます三品目について、さらにはまた鋼矢板の問題についても疑念なきにあらずということで、警告みたいなことを言っていらっしゃるのですが、これはもう確かに一定の取引の分野における競争を制限したというこのことを明らかに公取はお認めになっていらっしゃるのですね。それならば、これはもう当然合併を認めてはいけないという結論にならなければいけなかったんではないかと私は思うのです。この解釈をどうとっていらっしゃるのですか。
  147. 山田精一

    ○山田政府委員 昨日内示をいたしましたのは、合併してよろしいということは一言も言っておりませんので、こういう点が法律に抵触するおそれがある、したがって、いままでに内相談として出されました内容そのものがかりに届け出がございますれば、これは認めることはできない、こういうことでございます。
  148. 中村重光

    ○中村(重)委員 あなたは合併してよろしいということは言ってないとおっしゃる。私はそういう形式論を聞こうとは思わないのです。対応策が出る——現に稲山さんにいたしましても、永野さんにいたしましても、対応策には自信あると言っているんですよ。これはただ新聞に報道されたということよりも、内部的には八幡、富士と一つのルートがあって、事前に十分連絡をとって、その対応策について検討さしておったということが明らかではございませんか。あなたは否定されるでしょう。しかし結果はそう出ますよ。国民はばかではない。あなたに求めたいのは、そういったような形式論を国民の前にあなたがいかに展開されても、そういうことでは私は国民を瞞着するという結果になるだろうと思う。  さらに鋼矢板の問題に対しまして、私が疑念なきにあらずというようなことについてどうも納得がいかないのは、シェアにいたしましても、両社で九六%でしょう。ブリキは六〇%、レールは一〇〇%、鋳物用銑鉄は五四・二%ですね。鋼矢板九六%、これを問題点として指摘したのではなくて、対応策を求めておられるのではなくて、ただ疑念なきにあらずと、こういうような警告だけでどうしてお済ましになったのであろうか。   〔委員長退席、武藤(嘉)委員長代理着席〕 稲山さんが昨日の記者会見かあるいはどこか知りませんけれども、そこでこう言っている。鋼矢板は大型形鋼ミルで他の関連品目とともに生産するため、生産分離がやりにくいので対策に苦慮していたが、きびしい対応策がない、一種の警告であったのでほっとした、こう言っている。これを読みまして感じ取っているのは、要するに、もう合併ということをさせようというような前提の上に立って公取は問題点を指摘されておる。いままでもそういうことで審査をしてこられたし、だから対応策を求めたというより問題点を指摘された。だから八幡、富士の合併に対して都合の悪いことは警告にとどめておいたということです。対応策が出しやすいものだけを問題点として指摘されたということです。これは明らかでございましょう。あなたの答弁を求めずとも、どういう答弁が出るかということは、私もばかではありませんから、大体わかりますよ。国民はそういうことでは納得しませんよ。あなたも公取委員長としてそこにおすわりになって、内心じくじたるものがあるんじゃありませんか。どうですか。
  149. 山田精一

    ○山田政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、私どもが初めから先入観を持ってこれを認めようとか認めまいとか、そういうような角度で検討いたしたという事実は毛頭ございません。  それから問題点を事前に漏らしたのではないかというようなお尋ねでございましたが、そういう事実は絶対にございません。ただ、先方においても相当法律家をかかえておりまして、独禁法の研究をしておる人もおるのでございますから、先方で自分で研究した結果、この辺が問題点になるのでなかろうかという想像、これはでき得たと思います。それから、昨日内示いたしました問題点と先方が考えておりました問題点と相当食い違っておったということも事実であろうと私は想像いたしております。これはどこまでも想像ではございますが、そういう感じを抱いております。  この合併審査にあたりまして私に内心じくじたるものがないかというお話でございましたが、私は俯仰天地に恥じることは全然ございません。
  150. 中村重光

    ○中村(重)委員 鋼矢板の問題について建設省筋からいわれているように、十年間価格は少しも動いてない。この点は堀委員から強く指摘されました。私がこの合併にあたって一番関心を持っておりましたのは、いわゆる管理価格というものがさらに強く出て蘇るということです。国民もそのことを一番心配をしたはずです。いいですか。ところが、この合併にあたっては、肝心の管理価格の問題はどうも中心的な議題にならなくて、ただ国際競争力とかなんとか、そういう面だけが中心になって議論されたのではないかということです。いわゆる管理価格の形成ということがなければ、この合併というものは別に問題にはならないのですよ、お互いの業者間は別でありましょうけれども国民的には。ところが生産は非常に伸びてきている、シェアも九六%であるという鋼矢板がどうして指摘事項の中に入らないで、単なる警告ということだけでおとどめになったのか。これであなたは国民を納得させることができますか。俯仰天地に恥じないなんてあなたはおっしゃるんだけれども、どうですか。
  151. 山田精一

    ○山田政府委員 管理価格のお話がございましたが、私再三申し上げておりますように、管理価格という概念はまだ非常にはっきりしておらない、しかも多義的で、人によりまして概念が違っておるものと心得ております。御承知のように、数年前アメリカの上下両院の反トラスト委員会でもって相当の期間をかけて管理価格の問題について研究をいたしまして、こんな厚い報告書が出ておるわけでございます。私はこれを読みましたけれども、内容は、定着した意見一つもなくて、ばらばらな意見でございます。このようなわけで、管理価格というものは非常に範囲の広い概念であると思います。むろん私どもといたしましては、管理価格競争維持政策の上においてきわめて重要な問題でございますから、今後これに全面的に取り組みまして、基本的の調査あるいはそれにどう対処するかというようなことは十分検討しなければならぬ問題であると思います。そのために、昨年の末から独占禁止懇話会をつくりまして、各方面消費者代表あるいは財界、学者、学識経験者、いろいろな方々にお集まりをいただきまして、その御意見を拝聴して調査研究を進めてまいりたい、かように思っておるわけでございます。現在の段階では、管理価格の中で、法律もいっております一定の取引分野において競争を実質的に制限した価格であるかどうか、これをとらえて対象としておるわけでございます。
  152. 中村重光

    ○中村(重)委員 関連質問でございますから、佐野委員の持ち時間の関係もございますからこれでやめますが、今度問題点を指摘なさって、対応策が出ますね。堀委員は紙に書いたものが出ると言われたが、私も確かにそうだと思います。紙に書いたものを検討なさって、いわゆる科学的、客観的、合理的な結論をあなたなりにお出しになるのだろうと思います。ところが結果的にはそのとおりにならなかったという場合、これは天気予報のようなことならば、測定の結果、科学的に分析をして、あすはあらしになる、雨になると言った、それは良心的にそのとおり言った、ところがそうならなかった、これはしかたないのだ、こういうことになるのだろうと思いますが、あなたの場合はそういうことでは国民は納得をしない、こういうように思うのです。そういうことにならなかった場合、どうなるのですか。
  153. 山田精一

    ○山田政府委員 私の判断というふうに仰せになりましたけれども、先ほども申し上げましたごとく、それほど判断のむずかしい、大切な、また国民経済に及ぼす影響の大きい問題を判断いたしますがために、ほかの官庁には例の少ない数名の委員をもって構成する行政委員会という制度が置かれておるものと私は考えております。したがいまして、五人の委員が全知全能をしぼった判断、それにおまかせいただくのが適当である、私どもも適当な判断をしたいと思います。
  154. 中村重光

    ○中村(重)委員 私があなたと申し上げているのは、あなたは公取委員長ですから、公取委員会の代表というようなことで申し上げているのですよ。おっしゃるとおり五人でいろいろ議論をしたでしょう。あるいは五人必ずしも同じようなことじゃなかったかもしれません。しかし五人でいろいろ意見があったにしても、一応まとまった考え方の上に立って問題点を指摘なさったわけだから、あなたに一人名ざして言うことがいけなければ、適当な機会に五人出てもらうことにいたしますが、ともかくそういうことにならなかった場合は公取委員会としてはどうなさるのか、こういうのです。
  155. 山田精一

    ○山田政府委員 これは非常に責任を感じます。
  156. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員長代理 佐野進君。
  157. 佐野進

    佐野(進)委員 私は通産大臣通商産業政策重点菅野経済企画庁長官の方針について質問する予定でありましたが、当面しておる鉄鋼合併の問題について、非常にまだ内容が明らかにされていない点等もございますので、若干この問題について質問し、時間の経過を見ながら本題に入れれば入ってみたいと思います。  いままで堀、中村両委員から、昨日の公取の山田委員長の発表の内容についていろいろの角度から質問があったわけであります。これはきょうの各紙が日本における経済政策の一大転換、いわゆる新しい紀元を画する重大事件である、このように一斉に報じておることから見ても、この決定が非常に重要な意味を持つものと思うのであります。したがって、この重要な意味を持つ山田公取委員長の発表した通告の内容、こういうものについては私ども幾多の問題点があると思うのであります。これについては昨年来この委員会においてもたびたび取り上げられ、私どももたびたび意見を発表し、あるいは参考人等の意見を徴し、さらにこれに対する質問を続けてきたわけであります。しかしこれらの経過の中で私どもは、少なくとも公取の適正なる判断というものは、公取という立場に立って、日本経済の現状と将来の国民生活の安定、経済の繁栄のために正しい結論を出してくださるものと、そういうような確信を持って見守ってきたというのが偽らざる気持ちだと思うのであります。しかるに、ここ一カ月間の公取動き、これを日を追って見るに従い、何か政治的な動きに左右せられ、的確なる判断をなすという名目のもとに日一日と公取委員長の発言がその内容に微妙さを加え、今日の結論が出ることはすでに十日ほど前の公取委員長の発言の中で予測される、こういうような状況の中で微妙なる変化を続けてきておったわけであります。したがって私は、そこに公取として独占禁止法に基づいて設置される委員会として、先ほどお話しございました独占禁止法の第一条の精神をどのように守り抜くかということについて、的確なる判断を下されたのではなくして、政治的な、あるいは外因的な要因によってこの結論が下されたというように判断せざるを得ないのであります。私、ことしの一月からずっと合併関係に関するある一つ新聞の切り抜きをいたしました。ところがそれが毎日のように、しかも相当大きなスペースをもって書かれておるわけであります。したがって非常に重要な問題だということはこれをもってしても明らかであります。そこで、公取委員長は今日のこういうような結論を出すに際して、委員会の決定はもちろんとして、なぜ昨日の結論を一般的に発表するに際して、公取委員会として国会に対して、かくまでも深い関心を有する国会に対して適切なる連絡の措置を講じなかったかということについて、まず第一点、質問に入る前にお伺いしておきたいと思うのであります。
  158. 山田精一

    ○山田政府委員 ただいまのお話の前段にございました何か政治的、外因的の要素によって私どもが判断を動かされたというようなおことばがございましたが、さような事実は絶対にございません。  それから国会に事前に御連絡を申し上げなかったということについてのお尋ねでございましたが、これは先ほど来申し上げておりますように、いわば行政相談、窓口相談でございまして、最終的な決定でも何でもないわけであります。今後届け出書がかりに出るといたしますならば、その上で法律に基づく成規の取り扱いを、審理をいたすわけであります。いままでのものは要するに内相談、かような性質のものでございますので、ただいま申し上げましたように処理をいたした次第でございます。
  159. 佐野進

    佐野(進)委員 そこまで聞いて、あと企画庁長官通産大臣にそれぞれ聞きまして、さらに公取委員長に質問を続けてみたいと思います。  私は、合併問題で一番問題になることは、これらの問題について、いわゆる管理価格、これに対する物価へのはね返り、あるいはこれら企業におけるところの今回の合併寡占体制を実質的に決定するものである、こういうようなことにおいて日本経済しかも当面する物価問題に対して非常に大きな影響を与えるものだ、こう考えておるわけですが、先ほど来の質問にもありましたが、経済企画庁は、この寡占体制下における寡占体制というものに対して、あるいは物価問題との関連の中で、先ほど来のお話にあるように、菅野さんは大いに賛成だ、合併コストを下げ、コストを下げれば価格が安定する、こういうような形の中で非常に積極的な意思表示をされておりまするが、日本経済の今後の運営をはかるために経済企画庁としては寡占体制を強力に推進する、こういうような意図あるいはそういうような指導をなされるお考えであるのかどうか。この点をひとつお聞きしておきたいと思います。
  160. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 寡占体制ということ自体についても、まあいろいろ問題があると思いますが、まず第一に考えなければならないことは、日本の企業が今日国際的な企業になってきておる。そこで国際競争に耐え得るような日本の企業を育てなければ、日本の企業は成立しないということがあります。   〔武藤(嘉)委員長代理退席、委員長着席〕 そこで、この鉄鋼という問題は、国際市場の商品でありますからして、したがって国際競争に耐え得るような企業にしなければならぬ。それにはやはり外国が大企業であるがゆえに、それに対抗するようにしなければならぬ。また、ことに最近においては外国では生産性の向上ということについて非常に設備改善をやっております。したがってそれに対抗できるためには、やはりこちら側も大型化していかなければならぬというようなことで、そういう意味でまず私は今度の場合は賛成ということを申したのです。  そこで問題は、国内における価格が上がりはせぬかという心配、それについては公取からいろいろ問題点を指示されておるのであって、それに対して対応策を講じた場合には考えるというように公取は言っておるのでありますからして、したがって私は、国内価格においてもそれほどの問題はまあ起こらないというように考えておりますからして、そういう点において今度の企業の合併、富士と八幡合併というものは賛成すべきではないか、こう考えた次第であります。これが国内価格を高める、寡占価格を支配するというような問題を心配されれば、もちろん私どものほうでは賛成をいたしません。
  161. 佐野進

    佐野(進)委員 長官鉄鋼の問題については、もちろん近代化し、それぞれ国際競争力に対応しなければならないということになることは、これは当然考えられることですが、しかし、現実の問題として、わが国鉄鋼生産力はいまや非常な勢いで伸びており、この伸びに対してアメリカ等においては鉄鋼の輸入制限をしようとし、これに対する自主制限をもうすでに協定が終わっておる段階ですよ。そうすると、これらの状態の中における外国とのいわゆる競争というのは、一体どういうようなことなのか。結局、これは外国との競争ということでなくして、日本は輸出国としての巨大なる地歩を占めておる段階において、名目は外国との競争とはいいながら、実質的には国内産業におけるところの競争、それに対応するための合併、いわゆる住金の追い上げであるとか、その他の形の中におけるところのそういう追い上げに対応するために合併が行なわれるのだ、したがって、その合併という形の中におきましては、非常に巨大なるシェアを占める部門があるのだ、これは明らかに、鋼矢板のごときにおいては九十数%のシェアを占めるということになれば、この一会社におけるところの価格というものがすべて日本におけるところの流通価格を決定するのであるからたいへんだというような議論があったわけですよ。そうなってくると、いま言われたような、鉄鋼に関する、ほかの問題は別として、鉄鋼に関する限り、外国との競争に対応するためにこの合併が賛成だといわれることはちょっとふに落ちないと思うわけです。これらについてどうお考えになりますか。
  162. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 製鉄業は今日世界的に非常に競争の企業になっておりますが、いま現在の時点においては日本生産性が一番高いのです。したがって、日本鉄鋼が海外に輸出されております。しかし、それに対してアメリカも英国も相当の設備の拡張をやって、生産性を高めることをやっております。したがって、それらの競争に将来勝つがためには、やはりいまから準備をする必要がある。そういう意味において、私は、この際合併して、そして生産性を高めるようにやってもらいたいということで、これは生産性を高めぬような合併なら初めから反対です。合併することによって生産性を高めるということの前提の上においてわれわれは合併に賛成しておるわけです。そういう将来の国際競争に勝てるようにしたいということでやっておるわけでありますから、現在の時点においてはもちろん日本生産性は高いでしょうが、これに甘んじていていいというものでは決してないと思っております。まだまだ、もっと生産性を高めるようにくふうしなければならぬ、こう考えておりますから、そういう意味において、私は国際競争上の立場から合併に賛成をしておる次第であります。
  163. 佐野進

    佐野(進)委員 国際競争に耐え得る企業ということになるならば、いま鉄鋼を除いた日本における各種産業の中に数多く存在すると思うのです。特に資本の自由化を控え、あるいは低開発国の追い上げ等を控えて、そういう企業は非常に多いと思う。したがって、これらの企業の中に合併の機運がそれぞれあることは事実でありますが、しかし、内部的に、その他いろいろな条件の中で、合併をせずしてもその競争力を十分発揮する形の中において、国民経済の健全なる発展と即応しながら、今日日本経済はある程度前進し、大をなしてきていると思うのです。だから今回の八幡、富士の合併問題が感情的にいいとか悪いとか私は言っているのじゃないのですよ。今日の合併ということが行なわれる諸条件が、大臣がよく口を開けば言われる国際競争力に対抗するために国内企業の合併が必要だということは、この鉄鋼合併の今回の問題についてはそう当てはまらないのではないか。むしろ国内企業の競争にうちかつために企業合併を行なうということであるのではないか。そうなると、国内企業間における競争、あるいは自由なる競争を制約する手段として合併が行なわれるような形になるならば、日本経済の健全なる発展を阻害する幾多の要因がこれに関連して出てくると思う。しかも日本における最大の企業の合併に対して、いま政策的に外国勢力との国際競争力にうちかつために賛成だということ、しかも管理価格をはじめとして、日本経済の企画をなさんとする経済企画庁が、これらの問題についていま少しく掘り下げた議論を展開せずして、通産大臣と違うのですから、ただ単にこの際国際競争力にうちかつためには賛成だと、軽々にそういうことをお話しになられるということは、佐藤内閣全体がそうなんだからおれはそれで言っているのだ、こう言われれば別だけれども経済企画庁長官としては少しお粗末ではないかという気がするわけですが、これについては私ははっきり言っていただきたいのです。国内競争力にいまの八幡、富士の合併で対抗していくため、この際これを認める形の中において企業の競争力を存続させるために必要であって、あえて国際競争力については現在それほど必要ないのだ——むしろ大臣のことばをもってすれば、国際競争力にうちかつために日本企業全体、鉄鋼企業全体を統合しなければならない、合併することが必要だということにもうかがわれるわけですが、基本的な政策の面としてその点をひとつお伺いしておきたいと思います。
  164. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 御承知のとおり、八幡、富士はもともと一つ会社であったのでありますから、したがって、これが合併することによって、私は生産性が高まるという考えをいたしております。そこで、現在の時点で、先ほども申し上げましたとおり、幸い日本の製鉄業というものは生産性が高い。したがって鉄鋼は売れておりますが、しかし、これもみんなやはり外国へ売りたいというところから、みなそれぞれ生産性を高めてまいったのであります。問題はやはり国際競争です。外国市場というものが目当てで日本の製鉄というものはこれほど発展してきて、最近においては英国やフランスへも輸出するという状態になってきたのですが、しかし相手方は脅威を感じておりますから、したがって日本鉄鋼に対抗するような企業にしたいということで、向こうでも合併並びに生産性の向上ということについていろいろ画策しておりますけれども、われわれはやはり将来ということを考えて、目先のことばかり考えてはいかぬ、今後の製鉄業あるいは鉄鋼というものは将来どうあるべきかということで、やはり長期的な視野でわれわれは考えていかなければならぬ、こう考えておりますから、したがっていま申しましたとおり、現在の時点の立場を見て賛成、不賛成を言っているわけではありません。将来の日本ということを考えて私は賛成だ、こう言っているわけです。
  165. 佐野進

    佐野(進)委員 もちろん将来を見通して政治をやることは必要でしょうけれども、やはり現実も見なければならぬと思うのですよ。いわゆる合併による効果というものがいろいろあることは、それはもう新聞を見ているのだから、あるいは話を聞いているのだから、だれだってわかるわけですね。しかし、その合併によって起こるであろう弊害ないしそれに基づいて発生する日本経済全体に与える悪い影響、こういうものをどう考えるかということが政治だと思うのです。そういう面からすれば、いま鉄鋼はアメリカとの関係においては自主調整をしなければならない段階でしょう。あるいはそれが進んでくれば生産調整しなければならぬ段階になると思うのです。そうした場合、いま八幡なり富士なりが合併することによって生産力をあげて、そうして他の同業との競争をどんどん激化するということよりも、むしろそれらに対して優位な地位に立って支配力を固める、こういうふうな発想になっていくとすると、これはたいへんなことになると思う。これはこの合併だけの問題でなく、日本経済全体に与える、いわゆる寡占体制というものが独占形態へ進んでいく一つの道順として、いまの政府のおとりになっている、特に経済企画庁という立場に立っておとりになっていることについては、これは少しまずいのじゃないか、こういうことを私は申し上げておるのであります。
  166. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 そういう国内的な悪影響を及ぼす場合であれば、われわれはもちろん賛成しないのであります。その点については、公取のほうからちゃんと問題点を指摘されておるのでありますから、したがって、それについては両会社が対応策を講ずると思います。管理価格というものは、私の考えではそこで生じない、生じないということによって公取合併承認されることだ、私はこう考えておりますから、そういう点において、私も、国内的に悪影響を及ぼすような、鉄の値段を上げる、一般消費者が困るというような場合には、これはもちろんわれわれとしては絶対に賛成するわけにはいかない、こう考えております。
  167. 佐野進

    佐野(進)委員 ですから、私、公取委員長に申し上げておるように、公取委員長は最初のころからだんだんよろめいてきたのですね。よろめいてきたということは、新聞記事における一連の発言の経過を見るとわかるのです。これはあとで質問しますけれども、そういう言い方に対して、日本経済の原則を確立する経済企画庁が、いま大臣のお話しのような形からすると、国際競争力強化のためにはやれやれとけしかけている。それが、独禁法という法律を解釈し、運用について厳密なる立場に立つべき公取委員長が、経済政策上の面から今日の八幡、富士の合併を認める方向の中で事前審査、事前調査もして結論を出した、こういうように考えられるからいま申し上げたわけです。  そこで、これをいつまでもやっていても時間がたつばかりですから、あとは通産大臣にこれに関連して私は質問してみたいと思います。  私は八幡、富士の合併というものは、いわゆるこの合併が行なわれるという形になるならば、日本におけるあらゆる企業は、合併をすることのできない条件というものは全然ない。少なくとも二社間の合併ということになるならば、ほとんど合併を食いとめるというか合併してはならないという条件は一つもなくなると思うのです。そういう意味において、今回の合併問題というものは非常に歴史的な意味を有すると思うのです。そうすると、合併によって利益を得るのは——その合併して一つになった会社そのものが利益を得ないならば合併しておるわけがございませんから、利益があるから合併しておるわけです。その反対に、寡占化された企業に対して、合併に取り残された企業が不当なる圧迫を受けることは当然火を見るよりも明らかです。今日、大企業の圧迫の中で中小企業が受けつつある幾多の不利な条件、これらについてはもうすでに通産省としても中小企業庁等を通じて、いわゆる下請企業に対する保護策であるとか、いろいろな一連の中小企業対策を打ち出す形の中において対策を立てておりますが、しかし、今日なおこれらの問題については重大な社会問題として論議されておる段階です。対策を打ち立てる段階ですが、この両社の合併がもたらす関連する企業なかんずく中小企業等に対する対策はどのようにお考えになっておられるか、通産大臣見解をこの際聞いておきたいと思います。
  168. 大平正芳

    大平国務大臣 佐野さんに前提として申し上げておきたいのでございますけれどもわが国は、いまあなたも中小企業の問題に言及されましたが、昔から二重構造を持っておる。高生産部門と低生産部門の混在した形になっておる。そういう国柄でありますし、それから企業の数から申しましてもむやみに多いわけです。近く中小企業白書を国会のほうに御提出申し上げますけれども、最近十年間ずっと見てみましても、中小企業の数がだんだんふえてきておるわけです。つまり、企業の数が先進国に比べまして大体多いということがある。それから第二は、たいへん競争が激しいという国柄なんでございます。  それで、あなたがまたいみじくも御指摘になったように、合併をするといっても、企業者の意識の問題がありまして、利益だから合併しようかという簡単なものではなくて、人的な関係、歴史的な関係、いろいろな沿革もありまして、なかなか容易に合併の決意はつかぬと私は思うのです。それで、今度八幡、富士がたまたま合意いたしましたのも、これは政府が慫慂したとか命令したわけではないのです。あの二つ会社が合意して合併に踏み切られたということでございます。それで、私どもの立場では、これによりまして企業の体制は強化されるだろうと思います。それからまた、技術の開発力あるいは設備の効率あるいは管理コストの軽減、そういった意味におきまして、合併効果はそれなりにあるだろうと思います。しかし、あなたが御指摘のように、そういうことが国民経済に悪影響を及ぼすということがあってはならない。その歯どめとして独禁法というものが現存しておるわけでございます。独禁法のワク内におきまして八幡、富士は合併する権利が私はあるだろうと思うのです。それを阻止することはできぬと私は思うのです。  そこで、問題は、そういうことが条件に合っているか合っていないか。これは公取さんのほうでいま御審議中でございます。そういうことを前提にして、私は、この問題が非常に大きな事件である、日本産業政策を左右する大きな事件であるとは評価しておりません。きわめてあたりまえのできごとであると考えております。  それから、中小企業の問題でございますけれども、先ほど申しましたように、中小企業の成長力、繁殖力と申しますか、これは依然として根強いものがございます。また、経済に対するウエートもそう落ちておりません。生産性もだんだん上がっております。しかしながら、規模から申しまして、また生産性の水準から申しまして、技術の水準から申しまして、なお依然としてパッドワークであることは認めます。したがって政策は中小企業政策に傾斜すべきものでございまして、大企業の合併はそれなりのメリットはありますけれども、しかし私ども政策のアクセントはあくまでも中小企業の体質の改善というところに置くべきである。そうすることによって経済の体質を変えなければならぬ。ただ、非常に競争が激しくて、非常に成長力が高いものでございますから、政府政策がいまカバーしておる範囲とか深さとかいうことになりますと、いろいろ御批判があろうと思いますけれども、私ども産業体制の政策的なアクセントはどうしても中小企業の強化に置かなければならない。そうしないと、先ほど菅野長官も指摘されましたように、国際的な水準から比較いたしまして、どうしてもそこを埋めてかからなければならぬわけでございますから、そういうことはこういう合併があろうがなかろうが変わらないことでございまして、くれぐれも申しますけれども、この合併ということが特に重大なイシューであるというような評価は私は別にいたしておりません。
  169. 佐野進

    佐野(進)委員 大臣が、今度の合併はたいしたことはないんだ、日常起き得る一つのできごとにしかすぎないんだ、こういうように言われておるとすると、大臣の時代感覚というか——通産大臣として、通産行政を担当する大臣として、ことばの表現としてそう言われたのであれば別として、同じ表現であったとしても私はちょっと不謹慎ではないかと思うのです。ということは、今日日本において企業が数多くあるけれども、その企業は千差万別であって、その企業がどう維持し発展していくかということについては、みな骨身を削るような苦労をして、それぞれ対策を立てておるわけです。その骨身を削るような対策一つとして、いわゆる大型合併というものも出てきたと思うし、小型の合併というものはもうすでにそれこそ日常茶飯事のように出てくると思う。しかし私は、合併についても、いわゆる独禁法に指定されているように、その経済発展に即応して必然的に起き得る合併、これが独禁法の自由なる競争を阻害しないという形の中において行なわれることについて、われわれは何も反対しているわけではないのです。ここでそれがいけないということの議論をしておるわけじゃないのです。そういうことが起きたことについて、日常茶飯事のできごとの一つだと言われることについて、私どもはそれは違いますと言うわけじゃない。ただ、八幡と富士という巨大なる産業日本においても最高の資本金を有する二つ会社が結合することによって、いわゆる最大規模寡占体制ができ上がるということなんです。だから、こういうようなことは日常茶飯事の一つでございますよということになってくれば、通産行政としては大型合併けっこう、どんどん寡占体制強化していけ、こういうようなことばにわれわれは理解せざるを得ないわけです。そうすると、そういう政策が佐藤内閣の政策であり通産行政の基本だ、日常茶飯事の一つのできごとだということに私は解釈します、と大臣が言われるならば、今日置かれている中堅企業ないし小企業の方々は一体どうして浮かばれることができるかということです。今日あなたも御存じのとおり、これは重工業局長がいれば答えられると思うのですが、八幡系列の鉄鋼業と称する中において末端の荷扱いをする、いわゆる直接消費者に手渡す問屋に至るまで、八幡という会社一つの系列に属するのがどれだけあるんです。これはもう相当大きなウエートを占めて、いわゆる八幡会社ですよということで何十億の会社がある、八幡系の会社だけで何億の会社がある、あるいは何千万の会社がある。それらがいわゆる系列会社として現存するのが日本経済、いわゆる鉄鋼業界における現実ではございませんか。これは富士もそうでしょう。二つ会社合併するということは、二つ会社の役員が何人になるとかどうかとかいうことではなくして、末端中小零細の業界に与える影響、さらに直接消費する人たちに与える影響というものはきわめて大きいのです。これはもう通産大臣よくおわかりだと思うのです、そういういろいろな条件については。そういう形からすれば、合併問題というものは単なる日常におけるところの一つのできごとでなくして、それらのいわゆる大きな会社——さっきは経企庁長官に対しては企業間の競争について申し上げましたけれども通産大臣としてはいま少しくきめのこまかな、中小というか、大の会社も入りますが、そういうような関係企業ないし関連企業に対する対策、これが一般中小企業者、関係する人たち全部に与える影響に対する対応策を当然この際考えておかなければならないのじゃないか、こう思うのですが、そういう点については全然日常茶飯事のできごとだから私はたいして気にしていません。こういうことなのか、この際お聞きしておきたいと思うのです。
  170. 大平正芳

    大平国務大臣 私が申し上げたのは、こういう合併がかりに認められるという事態になって、合併ムードが出て、とうとうたる合併になるのじゃないかという御懸念は私ないだろうと思う。というのは、合併にはそれぞれの個々の事情がございます。それから現に、先ほど申しましたように、もう企業意欲は旺盛でございまして、雨後のタケノコのようにたくさんの企業がふえてきまして、少し企業数が多過ぎるのじゃないかと思うくらい成長が旺盛だということを申し上げたわけでございます。  それから第二点で、今度はあなたのしぼられた御質問ですが、八幡と富士の合併によって、その系列の下請、親子の企業関係、こういったものは、私ども産業政策の問題といたしまして、過渡期の摩擦は避けるように、賢明にきめこまかく指導していかなければならぬ、これは当然でございます。  それから中小企業の問題は、今度の白書でも一応の展望を出すつもりでおりますけれども、やはり後進国もだんだん追い上げてきておりまするし、したがってできるだけ高加工度のものにだんだん進化させていかなければなりませんので、底上げをやらなければなりませんので、そういう点に力点を置いた政策を着実に実行していかなければいけない。先ほど申しましたように、政策の力点はそこに置かなければならぬ、こう考えております。
  171. 佐野進

    佐野(進)委員 それでは通産大臣にいまの点、両方の系列会社の数と資本金、それに与える影響等もありますので、どの程度なのか、ひとつあとでもいいですから、この質問が終わるまでの間にちょっと調べて御返事をいただきたいと思います。  それからもう一つ通産大臣に聞いておきたいことは、いわゆる八幡と富士の合併が行なわれれば、いま私が申し上げている経過からいえば、当然もう独禁法というものはあってもなきがごときものだ、あと残されたものは弱い者いじめであって、いわゆる零細か中小かわからぬけれども、何か営業上のミスその他があったりなんかするとき、ときどき独禁法に基づいて対処すれば公取の役目は終わったのだ、企業合併とかいわゆる自由なる競争を阻害するという大の部面におけるところの対策は必要ないんだ、おそらくこういうような解釈に通産大臣も経企庁長官考えて、独禁法はもうわが意のままなり、こうお考えになっておられると思うのですが、そういうような形の中において、独禁法をもっと強化したらいいじゃないか、もっと独禁法というもののあり方をこの際改めて、日本経済の今日の状態に即応するように改正したらどうかとか、あるいはもう少しゆるくしたらどうかとか、いろいろ意見が出ておるのです。そういう点について通産大臣は、現在のこの時点の中で独禁法改正についてどうお考えになっておるか、この際ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  172. 大平正芳

    大平国務大臣 独禁法は骨抜きになっておるということは、私は毛頭考えておりません。現に生きて非常にきびしく働いておると思います。公正取引委員会が事案として審理される案件が多いか少ないかということ以外に、この法律があるという存在自体が、産業家の意識の中に独禁法は生きておると思うのでございまして、日本経済秩序の中の根幹的な法律だと私は考えておりまして、これは高く評価しておるのであります。これがもう骨抜きになって薬籠中のものに入ったなどという大それた考えは、私は気が小さいのかもしれませんけれども、そんなことは全然考えておりませんから、誤解のないようにお願いいたします。  それから第二といたしまして、いままでいろいろな合併案件が審理されて、あるいはおやめになったの本あるし、認められたのもあるようでございまして、私は、現在の状態でもうこの法律は絶対変えなければ産業政策をやれないじゃないかとかいうような考えは毛頭ございません。この法律の示す秩序の中で私ども産業政策を鋭意行なっていけばいいし、足を踏みはずしていけば独禁法に触れるという場合は、公正取引委員会のほうで厳正に処置されるということでよろしいんじゃないかと私は考えるのでございまして、この法律について、ひとつこれをいじってみようなんという考え方はみじんもございません。
  173. 佐野進

    佐野(進)委員 それでは公取委員長にこれから質問しますが、いまの問題に関連して、今日の合併問題を取り扱ってこられた、あるいはいろいろな問題についてお取り扱いをなさってこられた経過から、独禁法の改正問題について公取委員長はどうお考えになっておるか、ひとつお聞かせいただきたい。
  174. 山田精一

    ○山田政府委員 初めに第一の点といたしまして、何か今回の合併がかりに認められるようなことがございますると、独禁法は骨抜きになるような御発言がございましたが、私は決してさようなことはないと確信をいたしております。くどく申し上げるようでございますが、合併の認否にあたりましては、法律を形式的に適用するということではございませんで、各種の要因、先ほど来くどく申し上げておりますように、業界の特に競争者の牽制、需要者側の地位、その他新規参入でございますとか、繰り返しませんけれども各種の要因、またはその特殊性を勘案いたしまして判断をいたしておりますので、独禁法十五条というものが死文になるというようなことは全然ないわけでございます。  それから、ただいま通産大臣もおっしゃってくださいましたが、次第におかげさまで財界においても独禁政策というものが意義のあるものであるという御理解は、徐々にではございますが、広がっておるように私は感じておるのでございます。一般の御理解、御支持を次第にいただいてきておる、かように考えております。  法律改正ということでございましたが、緩和論もあり、あるいは強化論もあるのでございます。先般来申し上げましたように、独占禁止懇話会を通じまして各方面の御意向を十分拝聴いたしてまいりたい、かように考えておる次第であります。
  175. 佐野進

    佐野(進)委員 具体的に緩和論あるいは強化論がある、これについては各方面の御意見を聞きたい、こういうことか。——そうすると、改正については白紙で出あって、改正問題については、取り組む意思もあり、あるいは取り組まないことになるかもわからない、こういうような考えなんですか。あるいはいまの状態においては改正する必要がない、あるいは改正する必要がある、これのいずれなのか、それをひとつはっきり言っていただきたい。
  176. 山田精一

    ○山田政府委員 各方面の御意向を拝聴いたしままして、要すればそういう問題も起こるかもしれない、かように考えております。
  177. 佐野進

    佐野(進)委員 だから、起こるかもしれないということは、公取委員長としてはいまの段階では、各方面方面として、あなた自身としてどうなのかということを聞いておる。各方面の御意見は御意見でもちろんあるでしょう。
  178. 山田精一

    ○山田政府委員 ただいまの段階におきましては、私どもといたしましては白紙という状態でございます。
  179. 佐野進

    佐野(進)委員 近ごろ何かというと白紙白紙というので白紙論が多くて、答弁がはぐらかされてしまうわけですが、少なくとも公取委員長は、今日の状態の中で非常に苦労されておるわけでしょう。この十カ月というものは苦労されておるわけですね。苦労されただけでなく、財界をはじめこれは財界も理解してきたんじゃなくて、国民全体が非常に独禁法というものに対して、公取の存在というものに対して深い関心を示してきておるわけですね。こんなに毎日公取委員長の発言が出てくるというのは、これはもう時代の趨勢なんということだけでは言い切れない。日本経済の中における委員会の占めるウエートというものは非常に高くなってきておると思うのです。そういう状態だったら、私、白紙ですということだけではなくて、やはりもう少し突っ込んだ見解が出てきてしかるべきだと思うのであります。その点を聞きますが、そればかりを言っていると時間がありませんので、答弁に立ったときもう一回ひとつ言ってください。  それから私、先ほど来いろいろ、いま私どもの立場からするとまだ釈然としない面が一ぱいあるという点を前提にして質問しているわけですから、詰問的な質問になってたいへん恐縮ですが、しかし、しっかりやってくれということがその背景にあるということを忘れないでひとつ答弁してもらいたいと思います。  そこで、二月十四日、もうついこの前ですね、山田公取委員長合併について弾力的な発言をした。それまでの新聞記事その他の山田委員長の発言に対して、非常に変化している発言が出ているわけです。その内容は、いわゆる競争的寡占なら独禁法に触れぬ、こういうことなんです。競争的寡占なら独禁法に触れぬという見解は、さっき通産大臣が言われたお答えは私はよくわかる、通産行政の立場から言っておられるのだから。しかし、競争的寡占ということなら独禁法に触れないということは——競争的独占ということは私はないと思うのです。独占だから競争はないけれども、いわゆる競争の存在するところという意味が、寡占という意味と関連してどの程度に限界を置いておるのか、これが一つです。たとえば、鋼矢板について疑いがあるということになって通告を出した。それと重大な関連があるように私は感ずるわけですね。あとブリキとかそういうものについては問題はそうないとしても、いわゆる九六%のシェアを持つ鋼矢板が疑いがあって、独禁法には触れないというような形は、この競争的寡占なりということばに関連し、この段階の中においてすでに公取委員長は今日の事態を当然意思表示しておる、こういうぐあいに感ずるわけですが、これについてその見解を、どういう心境でこういう見解になったのか、それをお聞かせ願いたい。
  180. 山田精一

    ○山田政府委員 新聞に出ましたのは、ただいま二月十四日でございますかどうか私記憶しておりませんけれども、寡占の中に協調的寡占と競争的寡占とあって、それは実態に即して勘案していかなければならないであろうということはたしか数回、国会のどの委員会でございましたか、申し上げておるところでございまして、初めからそれは変わっておらないのでございます。ただ、寡占という形式的な、数が少ないというだけでこれはもう当然競争がなくなってしまうんだと断定はできない。当該商品の特質、それから業界の力関係あるいは需要者側の事情、これらを十分勘案いたしませんと、ただ形式的な寡占というだけで競争がなくなると即断することはできない。どこまでも実質的な判断で競争的寡占と強調的寡占とこれは区別していかなければならないだろう、こういう考えを持っているわけでございます。  それから先ほどの御質問ですが、現在の段階においては考えておりません。懇話会の御意見等も十分拝聴いたしまして、必要があればそういうふうにいたしたいと考えております。
  181. 佐野進

    佐野(進)委員 そこで、いま公取委員長が今日の通告を予見するような発言を新聞記者の皆さんに発表したということが、鋼矢板問題をはじめとして、今日の通告の根底になってきた、そういうぐあいに感ずるわけです。そういうことについて、先ほど堀さんあるいは中村さんの御質問に対する答弁で、そういうことはありませんというようなことを言っておられたのですが、私は必然的にこういうような合併問題の取り扱い、特に公取委員長が軟化したというような空気の中で、各方面が非常に心配をいたしました。その中においても、特に公取事務局の職員組合のほうで、これを認めることは独禁法の弱体化になるのであるから、鉄鋼合併には反対であるという決議をして、決議文をつくって各方面に配付したということがこれまた報道されているわけです。こういうことになると、いま言われたように、独禁法を弱体化したり独禁法を骨抜きにしたりすることでなくて、現存する独禁法の中でその権威を守りながら今日の結論を出したというのと、実際に仕事をやっておる職員組合の方々がそういうようなことを発表されたということについては、重大な矛盾がここにあるように考えられるわけですが、これについては先ほどの質問また御答弁ではまだ十分ではないので、これらの問題についてどのように職員組合、いわゆるそこに働く人たちと委員長との間における見解の調整をされておるのか、あるいは全然していないのかどうか、あるいはその考え方はどういう考え方の差があるのか、この際ひとつ明らかにしてもらいたい。
  182. 山田精一

    ○山田政府委員 事務局の職員は、今回の合併審査にあたりましては、実に全精力を傾けてよく働いてくれたのでございます。とても考えられないような膨大な資料を連日、夜おそくまで残り、場合によっては徹夜までいたしてつくってくれたのでございます。委員会と事務局との間の協力関係というものはきわめて緊密であったのでございます。それから今回の合併を認めるようなことがあるというふうなことをおっしゃいましたけれども、事務局の職員は、合併を認めよとか認めるなとか、そういうことではございませんで、どこまでも独禁法の精神を貫くようにがんばってくれ、委員会もたいへんだろうけれどもがんばってくれというふうに私どもを激励してくれた、こういうふうに理解をいたしております。
  183. 佐野進

    佐野(進)委員 だから、それに対してどうしたかということについては何の御返答もないわけですが、委員長はそう言われるから、先ほどもそういう答弁がありましたが、ここでこれが誤りなら誤りだということを言っていただけばいいのですが、独禁法を守るべき実際の仕事をやっておる職員の方々が、こういうことを決議文で書いておるというのです。決議文のあらましは、独禁法はいままでも困難な道を進んできたが、良識ある人々の支援で着実に経済活動の中に浸透してきた。しかし今度の大型合併審議は、独禁法の将来に重大な影響を与えるとみられる。ところが昨年からの審議各種の不当な圧力があり、公取委の公正な判断が妨害されるおそれが生じている。職員組合は公取委が従来の公正な態度を守ることを確信し、独禁法に対する圧力を排除して独禁法の弱体化に断固反対する。こういうことをいっておるのですね。これといまのあなたの答弁とはだいぶ違うんじゃないですか。
  184. 山田精一

    ○山田政府委員 私から、いずれの方面からも圧力をかけられたという事実は全然ない、ということで了解をしてもらったわけでございます。
  185. 佐野進

    佐野(進)委員 それではいずれの方面も圧力をかけてないということを——もっとも圧力をかけられましたからそうなりましたなどということは答弁できないから、それはそうだろうと思うのですが、しかし職員組合がこのような決議文を委員長に出し、あるいは新聞に報道されておるということは、この委員会というか委員会事務局内部においても非常に重大な意見の相違が存在しておる、全体を含めた形の中においてもこの問題については相当重大な意見の対立がある、こういうように私は判断せざるを得ないわけです。そこで事前審査に対する通告はしましたけれども結論はまだ出ていないわけです。  そこで私、二、三これからの問題として質問してみたいと思うのですが、公取委員長が昨日の結論を発表するについては、委員会の中で四時間近くも激論を戦わせてこの結論になった、こういうことですね。それは事実ですか。
  186. 山田精一

    ○山田政府委員 ここのところもう連日夜分おそくまで審議を続けていたわけでございます。ひとり昨日だけではございませんで、ここのところ、何日でございますかちょっと忘れましたけれども、十日ほどの間は日曜も返上いたしまして討議をいたしたわけでございます。それは各委員が十分自分の意見を吐露し、それをまとめてきたわけでございまして、激論云々ということはございませんが、活発に討議をいたした、こういうことでございます。
  187. 佐野進

    佐野(進)委員 十カ月にわたって審査をしてきたわけですから、活発であったか、激論であったか、よくわかりませんが、何もきのうだけが問題点であったとは思いません。ただしかし、きのう発表する直前に至るまで四時間にわたってなお活発な意見の発表が行なわれたということは、私はよそから見て、公取委員会内部においてまだ相当程度調整を要する内部的な条件があるように判断をせざるを得ないと思うのです。委員長はこのきのう通告を出した問題については、公取委員会の内部における意見あるいはこれに関連する独禁懇話会等の意見についてはもう十分なる調整が済んだ、こうお考えになっておられるかどうか、この点ひとつ聞いておきたいと思います。
  188. 山田精一

    ○山田政府委員 それは人間がたくさんおりますというと、各人によって判断が違うケースはたくさんあると思うのでございます。したがいまして、委員会及び事務局全員が全く同じ考えである、それから結論が同じでも論理構成が全く同じということはないと思います。しかし、それはどこまでも法律の定めるところに従って民主的に委員会の意思が決定せられた、こういうことでございます。
  189. 佐野進

    佐野(進)委員 それでは、民主的に委員会の意思がきのうは発表できる段階までなったというぐあいに解釈いたします。  この民主的に手続が進められたということは、もちろん民主的な手段、方法はいろいろなやり方がありますけれども、少なくとも日本経済の将来を決定する重大な事項、この鉄鋼合併のような問題について全く委員長一人の判断ではないでしょうけれども、しかし新聞記者の皆さんとの会見、その他この場所における質疑応答ということになると、遺憾ながら委員長一人の御判断ということになるわけですね。したがって、そういう点ではいうなればむしろ独禁法という法律のたてまえからしても、企業の公正なる競争を守り、不当なるいろいろな条件を排除するというそういう面からいっても、いまの全く外部に知らされない、知らされないでいながら現実にはわかる、わかったことが実際上そのままになる、こういうような不明朗な形の中における取り扱いというものは、現在の情勢には即応しない。どうせやるならガラス張りで、不当なる圧迫があってもなんでもガラス張りで全部やれば、不当なる圧迫があったとか、なかったということはないのじゃないですか。今後の審査においても、これらの事前審査についてはもちろんでありますが、委員会審査についていま少し明朗なる進行というか、公開の原則を尊重するような方法の中において審査というか合併の取り扱いを進められる御意思があるかどうか、この際お聞きしておきたいと思います。
  190. 山田精一

    ○山田政府委員 初めに、何か私がここに伺いまして申し上げます意見ないしは新聞記者諸君に会いましたときに言います意見が、私一人の考えであるというふうな御発言がございましたが、それは決してそうではございません。私は五人の中の一人でありますから、委員会のスポークスマンといたしまして、委員会の意向を代弁いたしております。たまに私個人の意見としてはという注釈をつけて申し上げましたときは、それは私の意見でございますけれども、普通その注釈をつけないで申し上げておりますときは、これは委員会意見でございます。  それから、委員会の議事を公開したらどうかというようなお話がございましたけれども、これは残念ながら法律の明文で委員会の議事は公開しないということに定められておりますので、その議事は公開いたすわけにいきません。しかし、その内容の概要は、事あるごとに新聞記者諸君に会見したおりとか何かに私がスポークスマンとして発表をいたしておるわけでございます。
  191. 佐野進

    佐野(進)委員 私も何も委員長が個人でやったということで聞いているわけじゃない。ただ、そういうように受け取られる可能性が十分あるではないか。しかもこの問題については政治的な圧力がかかったとか、不当なる圧迫があったとか、さらに委員長の発言のニュアンスもだんだん変化してきておる。こういうような形の中で職員組合の反対とかいろいろな条件が出てくる。そういう形の中でいまのような問題を取り扱っていくことについてはとかくの弊害があるのではないか。そういうような面において、いま少しこれらの問題については公取委員会でも断固たる——と言っては語弊がありますけれども、外部の圧力云々ということに惑わされるというような印象を与えることのないような運営をなさってはいかがか、こう言っておるわけですから、その点はひとつそういう意味で御答弁を願いたいと思います。  もう本会議も始まる時間になりましたし、私もまだまだお聞きしておきたいことがたくさんあるわけですが、この辺で締めくくりをしなければならない状態になってきたと思うのです。  そこで私は、この合併問題については、きのう通告をなされたということで、さらにその通告に対応して両社のほうでいろいろな取り組みをせられ、さらに最終的な判断が出される、こういうことになるわけですが、最後に締めくくりとして公取委員長と二大臣に御見解をお伺いして質問を終わりたいと思うわけです。  公取委員長はこの問題について先ほど来いろいろ言われておりますが、私は職員組合の方々が、あるいはまた独禁法を守ってもらいたいという多くの素朴な感情を持つ庶民の方々が、公取のきのうの発表に対しては非常に重大な危惧というか心配をしているわけです。その心配にこたえて、独禁法を権威あらしめるために、これからの取り扱いについても、十分ひとつ、先ほど来私が申し上げているような、外部その他いろいろの形のものでなく、あなたを取り巻く人たちとしても独禁懇話会その他いろいろありますが、その人たちの意見を聞くと、今回の合併については相当批判的な意見が多いということを私いろいろな面から聞いているわけですけれども、そういういわゆる常識ある一つの条件の中で、独禁法の運用の責任者として対処していただきたいと思うのですが、このことについての決意をお聞きしたいと思います。  それから通産大臣については、先ほど来申し上げておるとおり、もう時間がなくなりましたけれども、それからさっきの資料も間に合いませんでしたけれども、いわゆる大型合併が与える中小企業をはじめとするそういう関連産業に対する対応策というものは、合併が出てきたという時点の中で、ただこれを認めて、競争のできる寡占ならばいいんだということで放置することなく、それに関連するそういう問題について十分なる慎重なる配慮と取り組みを、それらの動きの中で、独禁法——公取審査の過程の中においても、これをした場合においてはこういうことが発生する、それに対してはわれわれとしてはこういう対策が現に考えられておるというような慎重なる配慮をしてもらいたいと思う。特に中小企業対策についてはしてもらいたいと思うのですが、これに対する見解をひとつお聞かせ願いたいと思います。  それから菅野さんは、前通産大臣だから、自分が通産大臣のときにこういう問題が出てくることを大いに希望していたということだから、企画庁長官になってもやはり同じような形でお考えになっておられるようですが、企画庁長官としての立場に立って、管理価格をはじめ、寡占体制という面について、経済企画庁という立場に立って、いま少しくこれらの問題については慎重な配慮と具体的な対策をお立て願い、合併問題をどうしてこれほどまでわれわれが心配して議論するか、それにはそういう問題があるんだということを前提にして、ただいいんだいいんだということだけでなく、そういう一面に対する対策も忘れないで取り組んでいただきたいと思うのです。こういうことについてひとつ御答弁をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  192. 山田精一

    ○山田政府委員 従来とも、私どもは何らかの圧力に押されたというようなことは決してございませんことをここに申し上げまして、今後ともその精神は少しも変わりません。今後とも、独禁法の権威と申しますと、何か権力主義のように聞こえて語弊があると思いますが、独禁法の精神を十分に活用いたしてまいりたい決意でございます。
  193. 大平正芳

    大平国務大臣 これはまだ合併になるかならぬかわからぬ段階でありまして、合併について公取一つの判断が示されておるわけでございますから、会社側が誠心誠意その対応策を講じられると思います。また私どものやらなければならぬことは私どものほうでやらなければならぬと考えております。かりに合併が認められるということになった暁におきましては、いま御指摘の下請企業、関連企業の問題につきましては、摩擦が起きないように、第一義的には会社側がまず対応策を考えるべきであると思いますけれども産業政策の立場から、私どもも細心の注意と配慮を加えてまいるつもりであります。
  194. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 従来から経済企画庁といたしましては、会社合併については、国際競争力を強め、なおかつ一般消費者に不利益をもたらさない場合に限って合併を認めるという方針できております。したがいまして、今度の場合は、国際競争力を強め、また一般消費者には悪影響がないということを認めた上で、われわれは反対しないということを言明したわけであります。弊害をもたらすような問題については公取のほうから指摘されておりますから、それの解消の上でこれに賛成をしたわけであります。
  195. 佐野進

    佐野(進)委員 わかりました。
  196. 大久保武雄

    大久保委員長 本日の議事はこの程度にとどめます。  次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後一時五十四分散会