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大平国務大臣 佐野さんに前提として申し上げておきたいのでございますけれ
ども、
わが国は、いまあなたも中小企業の問題に言及されましたが、昔から二重構造を持っておる。高
生産部門と低
生産部門の混在した形になっておる。そういう国柄でありますし、それから企業の数から申しましてもむやみに多いわけです。近く中小企業白書を国会のほうに御
提出申し上げますけれ
ども、最近十年間ずっと見てみましても、中小企業の数がだんだんふえてきておるわけです。つまり、企業の数が先進国に比べまして大体多いということがある。それから第二は、たいへん
競争が激しいという国柄なんでございます。
それで、あなたがまたいみじくも御指摘になったように、
合併をするといっても、企業者の意識の問題がありまして、利益だから
合併しようかという簡単なものではなくて、人的な関係、歴史的な関係、いろいろな沿革もありまして、なかなか容易に
合併の決意はつかぬと私は思うのです。それで、今度
八幡、富士がたまたま合意いたしましたのも、これは
政府が慫慂したとか命令したわけではないのです。あの
二つの
会社が合意して
合併に踏み切られたということでございます。それで、私
どもの立場では、これによりまして企業の体制は
強化されるだろうと思います。それからまた、技術の開発力あるいは
設備の効率あるいは管理
コストの軽減、そういった
意味におきまして、
合併の
効果はそれなりにあるだろうと思います。しかし、あなたが御指摘のように、そういうことが
国民経済に悪影響を及ぼすということがあってはならない。その歯どめとして独禁法というものが現存しておるわけでございます。独禁法のワク内におきまして
八幡、富士は
合併する権利が私はあるだろうと思うのです。それを阻止することはできぬと私は思うのです。
そこで、問題は、そういうことが条件に合っているか合っていないか。これは
公取さんのほうでいま御
審議中でございます。そういうことを前提にして、私は、この問題が非常に大きな事件である、
日本の
産業政策を左右する大きな事件であるとは評価しておりません。きわめてあたりまえのできごとであると
考えております。
それから、中小企業の問題でございますけれ
ども、先ほど申しましたように、中小企業の
成長力、繁殖力と申しますか、これは依然として根強いものがございます。また、
経済に対するウエートもそう落ちておりません。
生産性もだんだん上がっております。しかしながら、
規模から申しまして、また
生産性の水準から申しまして、技術の水準から申しまして、なお依然としてパッドワークであることは認めます。したがって
政策は中小企業
政策に傾斜すべきものでございまして、大企業の
合併はそれなりのメリットはありますけれ
ども、しかし私
どもの
政策のアクセントはあくまでも中小企業の体質の
改善というところに置くべきである。そうすることによって
経済の体質を変えなければならぬ。ただ、非常に
競争が激しくて、非常に
成長力が高いものでございますから、
政府の
政策がいまカバーしておる範囲とか深さとかいうことになりますと、いろいろ御批判があろうと思いますけれ
ども、私
どもの
産業体制の
政策的なアクセントはどうしても中小企業の
強化に置かなければならない。そうしないと、先ほど
菅野長官も指摘されましたように、国際的な水準から比較いたしまして、どうしてもそこを埋めてかからなければならぬわけでございますから、そういうことはこういう
合併があろうがなかろうが変わらないことでございまして、くれぐれも申しますけれ
ども、この
合併ということが特に重大なイシューであるというような評価は私は別にいたしておりません。