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1969-09-10 第61回国会 衆議院 社会労働委員会 第40号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年九月十日(水曜日)     午前十一時十五分開議  出席委員    委員長代理 理事 田川 誠一君    理事 橋本龍太郎君 理事 渡辺  肇君    理事 河野  正君 理事 田畑 金光君       高橋清一郎君    竹内 黎一君       中山 マサ君    枝村 要作君       加藤 万吉君    後藤 俊男君       西風  勲君    八木 一男君       山田 耻目君    山本 政弘君       本島百合子君    和田 耕作君       大橋 敏雄君    岡本 富夫君       谷口善太郎君    關谷 勝利君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         労 働 大 臣 原 健三郎君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部保安課長  小野島嗣男君         法務省人権擁護         局長      上田 明信君         厚生大臣官房長 戸沢 政方君         厚生省公衆衛生         局長      村中 俊明君         厚生省環境衛生         局長      金光 克己君         厚生省医務局長 松尾 正雄君         厚生省児童家庭         局長      坂元貞一郎君         厚生省年金局長 廣瀬 治郎君         郵政政務次官  木村 睦男君         郵政省人事局長 山本  博君         労働省労政局長 松永 正男君         労働省労働基準         局長      和田 勝美君         専  門  員 濱中雄太郎君     ————————————— 八月八日  委員阿部喜元君、中川一郎君及び福井勇辞任  につき、その補欠として田中角榮君、広川シズ  エ君及び早川崇君が議長指名委員に選任さ  れた。 九月十日  委員伏木和雄辞任につき、その補欠として岡  本富夫君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 八月五日  一、厚生関係及び労働関係基本施策に関する    件  二、社会保障制度、医療、公衆衛生社会福祉    及び人口問題に関する件  三、労使関係労働基準及び雇用・失業対策に    関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  厚生関係及び労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 田川誠一

    田川委員長代理 これより会議を開きます。  委員長海外旅行中でありますので、委員長の指定により私が委員長職務を行ないます。  厚生関係及び労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。河野正君。
  3. 河野正

    河野(正)委員 きょうは、労使関係の問題について、若干質疑を行ないたいと思います。  元来、労使関係というものは、労使双方間の信頼性というものが確立されなければならぬ。そして初めて、企業企業、あるいは国の機関は国の機関としての職務というものが円滑に運営できるわけですから、そういう意味で私どもは、やはりこの労使関係というものはきわめて重視をしなければなりませんし、また労働組合法を見てまいりましても、その点は明らかに明記をされておるところでございます。  そこでまず、基本的な問題として労働大臣にお伺いをしておきたいと思いますが、この労使関係というものは、お互いに正しい意味での協調というものが行なわれなければならぬ。そして労使双方信頼感というものを確立していかなければならぬ。単に労務管理をきびしくするということが、この労使関係慣行というものを樹立する道ではない。私どもは、そういうことをかねがね感じながら、今日まで当委員会においても論議をいたしてまいりました。そこで、いずれ具体的な問題に触れてまいるわけですけれども、この際、この労使慣行というものがいかにすればうまくいくのかという点について、ひとつ労働大臣の御見解を承っておきたいと思います。
  4. 原健三郎

    原国務大臣 労使関係が正常化されていくことは、まことに望むところでございますし、お説のごとく、労使関係信頼感の上に立って進んでいくべきものであることも、言うまでもございません。それで、そういう線に沿うて話し合いをよくし、双方納得してその関係をスムーズに進めていかれるよう私どもは期待いたしておるところでございます。
  5. 河野正

    河野(正)委員 きょうは時間の制約もございますから、さっそくここで具体的な点について触れてまいりたいと思います。  いま労働大臣としては、労使慣行というものはどうすればうまくいくか、それにまずお互い双方信頼性というものが確立されなければならぬ、こういう御見解でございました。国の労働行政最高責任者でございます労働大臣は、いまのような見解をお示しになったわけでございますけれども、ところが現実には、いま大臣お答えになったこととは全く逆な実態というものがあることを、私ども指摘することを非常に残念に思います。  その一例として、私はきょう取り上げてまいりたいと思うわけですが、昨年も当委員会で問題となりました具体的な事件の中で、福岡中央郵便局で、病弱の局員に無理な仕事を強制をして、そのためにその局員胃出血を起こしまして、大量の吐血を行なって重体に瀕した、こういう大賀事件というものがございました。当時私どもも、この問題は、まことに労務管理のきびしさがむしろ人権を侵害するというような形で行なわれておるというようなことで、当委員会においても指摘をいたしたところでございます。こういった郵政に関しまする労務管理というものは、人権無視、むしろ常識はずれだ、こういう批判もあるところでございます。やはり改善すべきものがあるならばすみやかに改善すべきであって、こういう事態が年々繰り返されるということは、私ども労使のためにもまことに不幸といわなければならぬと思います。そういう意味で、この郵政労務管理現状について郵政省はどうお考えになっておるのか。この際、いまの労働大臣見解を踏まえながらひとつお答えを願いたい、かように思います。
  6. 山本博

    山本説明員 ただいま労働大臣お話しになりました内容、私もそのとおり、毎日の私のほうの労務行政においても、その基本線をそのまま実施をいたしておるというふうに考えております。ただ労使間、ただいまいろいろお話がございました点は、確かに理想といたしましてそうあるべきだと思い、またわれわれもその方向に努力をいたしておりますが、一万数千の局所がございまして、その中でそれぞれ独特のいろいろな問題というものをかかえておりまして、すべてがうまくいっていないことは事実でございます。しかし基本線としては、そういう基本線を踏まえて問題解決に当たっていきたいと思いますが、個々別々の局でいろいろな問題が起こって、そこでお互い信頼感というものがそこなわれておるということも事実としてございます。これはやはりそれぞれの局の問題として、基本線に立ちかえってどう解決していくべきかということを考えて処理していきたい、こういうふうに考えております。
  7. 河野正

    河野(正)委員 いまの局長の話によりますと、労働大臣がお述べになった基本線郵政労務管理というものを実施されておるということでございました。そこで、それならば私はひとつ具体的な問題に触れてまいりたいと思うわけですけれども、いま私は、福岡中央郵便局におきまするこの大賀事件といわれる吐血事件を取り上げたわけでございますが、ことしの八月の六日にも、博多郵便局におきましては、小包作業をいたしておりましたアルバイト中田博君というのが、これまた大量の吐血をいたしております。こういうように、昨年も、健康を無視した業務優先、こういう労務管理についてきびしく批判をされたにもかかわらず、また福岡中央郵便局と同じような事件が出てきたことについて、ほんとうにいま局長がおっしゃったような反省というものがあるのか、むしろ反省というものはみじんも見られぬではないか、私はこういう見解を持つものでございますが、こういう事件について一体どうお考えになっておるのか、この際ひとつ明快にお答えを願いたい。
  8. 山本博

    山本説明員 ことしの八月に確かに博多郵便局において非常勤職員吐血をした事件がございました。現在郵政省におきまして、毎日一万人ぐらいは日々雇い入れる非常勤職員というものを雇用いたしておりまして、全国にこの人と同じような仕事をしてもらっておる人が相当おるわけでございます。ただ、これは日々雇い入れる職員でございますので、一般職員と同じような行き届いた健康管理というものが不十分であることは事実でございます。と申しますのは、郵便局として、急に職員休暇をとって休んだ、そこに穴ができ、早急に穴を埋めなければならないので、学生アルバイトがあれば、きょう一日だけそれを雇用してその穴埋めをしたいというような、いろいろな事情がございます。したがいまして、急に職員が休んだ、朝、学生アルバイトを募集する、あるいはもと来てくれた経験のある人に当たって来てもらうということが間々ございますが、その際に、その日その日に起こってまいります仕事内容というものが必ずしも一定いたしておりません。デスクにすわってする仕事もありますれば、現場においていろいろな重い荷物をかつぐというものもございます。しかしながら、その日に来たアルバイト人たち健康状態とその仕事とを必ず常にマッチさせるということについての完全な配意というものは、現状においてはなかなか困難でございますので、本人郵便局に参りましたときに、その健康状態については、過去の病状その他について十分本人と打ち合わせしたり、あるいはそれを聴取いたしたりしまして、できるだけ健康管理といいますか、ほんとう意味の十分な健康管理ではございませんが、配置その他については十分な配慮を払いながら雇用するということをいたしております。博多局におきましては、この人が過去において胃かいようの病歴を持っておって、過玄においても吐血をした事情があったということについて、管理者がどの程度まで配意したかということにつきまして、まだ私のほうで現在調査中でございますので、そこの点を十分実態調査いたしまして、今後非常勤職員配置その他については十分な配意をするように指導を強めていきたい、こういうふうに考えております。
  9. 河野正

    河野(正)委員 いま局長お答えを聞いてみても、また現地責任者の声を聞いてみても、みじん反省の色がない。遺憾だという点はみじんも述べられておらない。いま局長からも、八月六日の事件をなお調査中だ——もうすでに一月以上たっている。しかも人命の問題です。また現地における佐方庶務課長新聞談話を見てみても、労務管理手落ちがあったとは思わない、こういう談話を発表されておる。それは、一万人も非常勤職員がおる、そこで急に採用しなければならぬというような事情はわかります。わかりますが、結果的に見てこういう事態が起こったことについては、私はやはり手落ちがあったということは表明せざるを得ぬと思うのです。手落ちがないんだ、こういう抗弁をされておる。こういう郵政側姿勢に非常に大きな問題がある。要するに臨時雇いだから、本人吐血しようが死のうが、それはどうでもいいんだというような、人命を軽視した、人権を無視した、そういう姿勢に私は問題があると思うのです。この点はどうですか。
  10. 山本博

    山本説明員 私も、こういう事態が起こったということについては非常に遺憾に思います。したがいまして、こういう事態が再び起こらないように、実態というものをよく見きわめまして、調査をいたしまして、管理者側にどういう手落ちがあったのか、もっと尽くすべき手があったのかなかったのか、そういう点も調べた上、なおこういうことが起こらないように努力をしたいと思います。
  11. 河野正

    河野(正)委員 そこで、私はもう少し突っ込んで御指摘を申し上げておきたいと思いますが、この中田君は、八月六日の朝、大量の吐血をした。ところが午前三時ごろから、からだに異常を訴えておったわけですね。午前三時ごろからだに異常を訴えて休んでおったにもかかわらず、吐血まで医者にも見せず、ほったらかしておる。  それからいま一つは、時間もございませんから申し上げますが、昨年末にも数人のアルバイト職員が過労で倒れておる。こういう事実がある。そういう過去における体験があるわけですから、なぜ、夜半といえどもからだに異常を認めたならば、医師に見せて万全の処置を加えなかったか。過去に胃かいようの既往症があったとかないということは別として、本人高校時代はラグビーの選手をしておった非常に頑健な人らしい。ですから、そういうことは別として、本人が異常を訴えたならばなぜ処置しなかったか、この点について具体的な処置があることはもう当然のことだと思います。  私がなぜこの点を指摘するかと申し上げますと、後ほど申し上げまするけれども、もろもろの事件があるわけです。一日病気で休んでも医者診断書を持ってこい、もし薬を飲んだら薬袋を持ってこい、そうしなければ無断欠勤賃金カットをするぞ、こういう締めつけがあるわけです。一般局員に対してはそういう締めつけをしておいて、なぜ午前三時、大量吐血するような患者については医者受診を請わなかったか、きわめて私は一方的だと思う。そこで、これは局長が直接現地事情をお知りになっておるわけではないでしょうから、そういう実態を踏まえて現地における指導をしていただかないと、むしろ労務管理をきびしくするとかえってその人が出世をする、こういう傾向がないでもないと私は思う。そういう意味で私は、いま十分調査をして処置をするというお話がございましたけれども、あえていまその実情を申し述べて、厳重に反省を求めたいと思うのです。これは人道的立場です。私も医師です。人道的立場から私は厳重にあなたに警告を発したいと思う。これはいま申し上げますように、現地においても、佐方庶務課長談話を御披露申しましたけれども一つ反省がない。  そこで、いま触れてまいりましたから、この際若干具体的な点についても触れてみたいと思いますが、大量の胃出血をするような患者が出ても、当局側医師に対して診断を求めない。そうして結局処置を怠ったから、大量の出血をして重体におちいった。ところが、いまも私が申し上げましたが、一般職員に対しては、一日の病気欠勤に対しても医師診断書を持ってこい、飲んだ薬の薬袋を提出しなさい。ところが現実には、一日ぐらいの病気医師診断書を持ってくることは、これはなかなかできそうでできないんです。私も医師ですけれども、開業している経験がございますから、いろいろこういう問題には遭遇いたしておりますけれども、なかなかできそうでできない。そこで、そういうことを強制されますると、つい職員のほうは無理をして、そんなことをしなければならぬなら、少しぐらいからだぐあいが悪くてもこの際勤務についていこうということで、そのことが原因になって倒れるような事態というものが起こってくる、こういう実情だと思います。そこで、医事評論家大渡順二氏のごときも、一日や二日の病気診断書をとるなどということは常識はずれだ、こういう非難をいたしておりますることを、この際はっきりここで披露申し上げておきたいと思います。したがって私はやはり、いま私が指摘いたしました中田君の不幸な事態というものも、こういった非常識な労務管理というものがそういう事態を引き起こした原因だ、こういうように指摘をせざるを得ぬと思いますが、こういう労務管理について一体どうお考えになっておるのか、この際御見解を承りたい。
  12. 山本博

    山本説明員 非常勤の場合は、労働組合が直接私たち協約を結んでどうこうというようなことではございませんので、これはその日その日の労働力といたしまして、全体の作業を円滑に進めるために雇用するということでございまして、これは先ほど申し上げましたように、一般従業員とは違いまして、私も、健康管理その他について十分の配意をするということにおいて完全であるとは、ちょっと申し上げかねる点がやはり残ります。今後も十分注意はいたしますけれども、なおそういう点について、一般職員とは違った要素があるという点について、それをどう穴埋めをしていくか、どういう点においてそれを補っていくかということは、もう少し研究をいたしてみたいと思います。ただ、吐血をいたしましたということが直ちに郵政省の非常に非情な労務管理というようなことと結びつけてお考えいただくということは、私は直接は関係がないと思います。  ただ、後ほどお触れになりました病気休暇の問題でございます。これは、先ほど私が冒頭に申し上げましたように、確かに郵政省の職場というのは、全国で一万数千ございますから、そこで起こってくる問題、問題というのは、それぞれの郵便局でみな違った労使間の問題というものをかかえておりまして、一律にきめるわけにまいりません。博多病気休暇の問題が起こりましたのも、実は一般的にこういう問題が起こっておるわけではございませんで、この局特有事情でこういう問題が起こっておるということでございます。したがいまして、なおそういう個々の問題につきまして、私は一般的に管理者側行き過ぎがないとは申しません。行き過ぎがある場合もあると思います。同時に、これは相互信頼関係ででき上がっておる制度でございますので、病気休暇というものをとる側も、やはり信頼にこたえるというような形でとっていく、またそれを認める側も、信頼ということを基礎にして認めていく、そういういわば制度以前の労使間の信頼関係というものを打ち立てるのが一番実は大事な要素ではないかと私は考えておりまして、いま起こりました病気休暇の問題も、そのことと同時に、その局の労使間の信頼感というものを立てて、そういう相互不信というもののないようにしていきたいというように考えております。
  13. 河野正

    河野(正)委員 それならば私も、非常勤ですから協約があるわけではございませんし、いま言われる一部分については理解することにやぶさかではございませんが、午前三時にからだに異常がある、こういうふうに訴えたならば、そこでなぜ医者を呼ぶとかなんとかして処置をなさらなかったわけですか。そういう点についても手落ちがなかったというようにお考えになるならば、これは私は人道上たいへんなことだと思うのです。そういう点についてはいかがお考えでございますか。
  14. 山本博

    山本説明員 ただいま御指摘になりました内容が、私のほうが知りました内容と少し違っております。私のほうが調べました内容によりますと、午前三時には本人鼻血を出したことは確かでございます。鼻血を出しまして、しかも、その時間にちょうどこの郵便局では入浴させる慣行がございまして、本人がそこで入浴をいたしております。入浴をした後に本人がまた鼻血を出しまして、それから七時過ぎまでずっといすの上で寝ておりまして、そこで本人はしばらく眠っております。そうして七時過ぎに初めて吐血をいたしておりますので、そこで直ちに救急車を呼びまして、病院に収容し、家族にも直ちに連絡をして病院に行ってもらった、私のほうの報告はそういうことになっております。
  15. 河野正

    河野(正)委員 そういうことでいいのです、報告は。ところが、鼻血を出して異常を訴えたときになぜ医師受診を請わなかったのですか、こう言っておるのです。要するに経過はそのとおりなんです。何も食い違いはございません。私の言っておる経過とあなたのおっしゃっておる経過は同じです。ただ、午前三時に鼻血を二度出したその節に、なぜ医師の診察を請うとかなんとかという適切な処置をおやりになりませんでしたか、こういうことを言っておるのです。
  16. 山本博

    山本説明員 結果論でございますけれども、そのときにお医者さんに見せたほうがよかったと思っております。
  17. 河野正

    河野(正)委員 結果論ですけれども——どもは、そういうことを言いますと、何もかも対策というのは立たないのです。それは交通事故でもそうでしょう。やはり交通事故が起こっている現実があるわけですから、そこで交通事故を防止するためには一体どういう措置をするのかといういろいろな措置があると思うのです。ですから、吐血をしたから救急車を呼んで病院に送り込みましたということは、これはだれでもするのですよ。やはり私は、温情ある血と涙のある労務管理というもの——夜中職員、か二度も鼻血を出したならば、おまえどうだ、お医者さんに見せたらどうだというくらいのあたたかい処置管理者には必要ではなかったか。それを現地佐方課長は、何ら手落ちがなかった、鼻血ではなかったか、こういうことを言われる姿勢に私は問題があると思う。ですから私は、やはり夜中鼻血を二度も出したのならば、これはお医者さんに見せたほうがよかったのではないか。本人がそれを拒否したなら別ですよ。そういうあたたかい措置がとらるべきではなかったか、それがほんとうに血の通った管理者労務管理ではないかということを私は言いたいわけです。ですから経過は、あなたと私と一つも食い違っておるわけでも何でもないわけです。その間やられた処置というものがどうも冷酷であった。もう少し労使双互の信頼感を回復するためには、確立するためには、そういうあたたかい処置というものを当局側がおやりになれば、そこから新しい労使関係の芽というものが出てくるんじゃないか、こういうことを私は特に建設的に申し上げているのです。しかしあなたが、ここで変なことを言うとどうも管理者として困るということでなくて、ひとつ人道的な立場で、しかも今後郵政全進との労使関係というものをどううまくやっていくかという、そういう建設的な立場で、謙虚にお答えを願いたいと思う。
  18. 山本博

    山本説明員 管理者のとりました手続その他について反省すべきところは十分反省をいたしまして、こういう事態が二度と起こらないように指導していきたいと思います。
  19. 河野正

    河野(正)委員 いまのところ反省するということですから、そこでもう一つ申し上げておきたいと思いまする点は、全逓郵政との間には、約十年前に締結された協約がございますね。これによりますと、病欠の扱いというものは、一つには、できるだけ事前に所属長に届ける。それから第二として、七日以上の病欠診断書を出す。第三として、必要ある場合、所属長証明書の提出を求めることができる。こういう取りきめが行なわれておるわけです。そこで私は、そういう取りきめがそのまま実施されることについては、これは労使双方言い分はなかろうと思います。もしそれに問題があれば、団体交渉でおきめになればいいことであります。ところが、今日私が取り上げてまいりましたいろいろな問題から見てまいりますると、どうもここ数年前から、このいま私が指摘いたしました労働協約が非常にきびしく解釈をされて処理されてきた、こういう傾向というものが出てまいっております。たとえば七日以上の病欠のときには診断書を出すことになっておりますね。それが、一日でも診断書を持ってこないと無断欠勤賃金カットだ、こういう事態というものが新しく出てまいっておる。そこで私は、協約に無理があるならば、労使双方でお話し合いになったらいいと思うのです。ところが、そういう協約をきめておきながら、それをじゅうりんをして、あるいは拡大解釈をして、いまのような、一日でも診断書をとるというようなことは、それは拡大解釈とおっしゃるかもしらぬけれども、私どもから言わせると、むしろ協約違反ではないか、こういうことを言いたいわけです。そこで、普通、腹ぐあいが悪い、頭が重い、からだの調子が悪い、ところが医者にかかるほどでない、薬を飲むほどのことはないというようなケースが非常に多いわけです。私は、この郵政全逓との間に締結されました協約というものは非常に順当なところだろうと思います。それを、いま申し上げるように、一日でも診断書をとる、あるいは薬袋を持ってこい、そうしないと無断欠勤として賃金カットする、こういう点は私は、むしろ労務管理から健康の締めつけになっておるんじゃないかというふうに指摘せざるを得ぬと思います。そこで一体、労働協約というものをどうお考えになっておるのか、この際ひとつ御見解をお聞きいたしたいと思います。
  20. 山本博

    山本説明員 ただいまお触れになりました協約解釈を、文字づらだけからいたしますと、現在御指摘になりましたいろいろな問題というものは、私は協約違反ではないと思っております。ただ、こういう運用をするのが妥当であるかどうかということになりますと、いろいろ御意見があろうかと思いますし、私も私なりの意見を持っておりますが、字づらだけからいいますと、管理者側がとった措置というものは、協約違反はいたしておらないというふうに考えております。  なお、こういうような事態一般的な現象としておとらえになっておられますると、必ずしもそうじゃございませんで、これはごく限られたケースでございまして、たとえば基本的に、病気休暇というものは、とるほうもとられるほうも、これは制度のあり方そのものが相互信頼の上にできていて、お互いにこれを乱用するというようなことを前提にしないでできておる制度でございます。したがって、病気でないのに病気であるということで休むということも前提にいたしておりませんし、また管理者のほうも、病気であるものを病気でないんじゃないかと疑うことも本来してはいけないということを前提にして、いわばほんとう意味相互信頼ということでできておる制度だと思います。  これは他の年次有給休暇なんかとはだいぶ趣も違っておる特別休暇制度というものでございます。したがいまして、管理者側が、こういう字づらの問題ではなくて、運用上において、御指摘のような行き過ぎではないかとお考えになるようなやり方をやっておりますのは、従来私たちが知っておりますのでは、いわゆるわれわれが俗に使いますポカ休戦術としまして、いわば争議行為の一方法として病気休暇を使った例が最近間々ございます。それで、あすは病気休暇をとれという組合側の指示が出まして、今度の春闘におきましても、佐賀の郵便局でしたか、郵便局のうち約八割の人間が病気休暇ということで休んだというようなときには、管理者が、それは病気じゃないんじゃないかということで病気休暇の承認をしないということで、証明書をとるというようなことをした例がございます。それから、これはその郵便局の中でも一般的ではなくて、ごく特定の人物につきまして、これを悪用したという証拠がしばしばあがっているような人間については、非常にきびしくこういうものについての証明書を求める。しかし一般的にはそういうことはしておらないというのが大体の実情でございます。
  21. 河野正

    河野(正)委員 それは解釈の相違ですから、ここで議論しても時間を食うばかりですから私どもは問いませんが、やはり協約というものはお互いに順守しなければならぬと思うのですね。それにもし不都合な点があれば、もう一度話し合いをされて協約の改正をされるかどうかすればいい。ところが私は、協約を少し拡大してと先ほど申し上げたわけですから、その点つけ加えおきたいと思いますが、そういう意味では、運用でいろいろゆがめられるということは、大きい解釈からいえば、私はやはり協約違反とすれすれだと思うのです。ですから、この協約というものはお互いに順守していくというのが労使関係信頼感を増していく道ですから、一方が破れば、なぜ破ったんだというようなことにもなりましょうし、そういう点からだんだんと信頼感というのが薄れていく、それがもとで労使紛争は激化する、こういう傾向を大体たどっているのですね。そういう意味では私は、この協約を互いに尊重していくというたてまえはぜひとってもらわなければならぬと思うし、その点についてはこの際労働大臣から御見解を承っておきたいと思います。
  22. 原健三郎

    原国務大臣 お説のごとく、労働協約相互信頼の上に成立し、その労働協約をすなおに労使とも実行していく、こういうのが正常な姿であろうと存じております。
  23. 河野正

    河野(正)委員 そういう見解でなくて、そういう立場郵政労使に対しても指導をしてもらわなければならぬと思うのです。そういう意味で御見解を聞いたわけですから、もう一度ひとつ登壇を願いたいと思います。
  24. 原健三郎

    原国務大臣 実情をよく調査し把握して、必要があれば指導してもよろしいと思っております。
  25. 河野正

    河野(正)委員 そこで、もう少し核心に触れてまいりたいと思いますが、からだぐあいが悪い、休みたい、こういう場合は、普通、家族が局に電話その他で連絡することになっていると思うのです。ところがそうしますと、実査と称して、どんなに遠くても当該課長や労務課長が病気欠勤者の自宅におもむいて、病気実情を見て歩く、こういう実情がございます。しかし医者でもあるまいし、実際行ってみてほんとうのことがわかるかわからぬか、別問題だと思うのです。こういうように、管理者がどんなに遠くても病気欠勤者の自宅に行って、ほんとうに寝ておるのか寝てないのか、こういう実情調査をやる。この話を聞いて新聞記者が、郵便局には滞貨が非常に多いと聞いておるけれども管理者のほうはそんなにひまなのか、こういう話も実ははね返ってまいっております。非常に滞貨が多くて国民からいろいろ声が出ております。ところが管理者のほうは、どんなに遠くても、病気で一人でも休むと、自宅へのこのこ出ていって、実査と称していろいろ調査をする。全くおとなげない話だと思うのです。しかも、家庭まで出てまいりまして管理者が根掘り葉掘り聞くということは、家族に対しても非常に心理的な圧迫を加えると思うのです。大体、うちの主人はこんなに局に対して信頼がないのか、そんなに信用がないのかというような意味で、家族に対しても精神的な圧迫を加えることは私はきわめて大きいと思うのです。ですから、労務課長やら当該課長が来て根掘り葉掘り聞くなら、少々ぐあいが悪いけれども出勤しておこうか、こういうことがだんだん蓄積して命を縮める、こういう経過は私は当然あり得ると思うのです。私は、これは一つは議員として、一つ医師立場から、この点はもうはっきり申し上げておきたいと思う。診察をとりますと、長年のそういう無理がたたって、そうしてどうにもならぬような状況に追い込まれたというケースは非常に多いわけです。ですから私はそういう意味で、こういう労務管理というものが、結果的には局員の命を縮め健康をむしばむ、こういう事態に追い込んでおる、こういうふうに指摘せざるを得ないと思います。  そこで、この際申し上げますが、これは朝日新聞の論説ですけれども、この論説によりますと、当局のやり口は病気病気として認めない、こういう前提に立っている、こういうことでこの博多郵便局事件について出ております。これは、博多郵便局だけならけっこうですけれども、さきには地方の郵便局にもあった。全国的にこういう事件が頻発するのではないかと思いますけれども、そういうふうに、病気であっても当局は病気として認めてくれない、そういうことを前提としての労務管理を強行しておる。しかも、いま申し上げますように、実査で課長が自宅に出てくると家族に対しても非常に精神的圧迫を与える。こういう意味で、八月八日には組合側が法務省に対して、このような病欠の場合、あるいは年休を申請しても認めない、また年休を申請して逆に訓告処分を受けたというようなケース。後ほど私は具体的に例をあげて申し上げますが、こういうことは職権乱用であり人権侵害であるということで申告がなされております。そこで、私はこの際法務省に対して、この点についての経過と今日の処置と、将来どういうふうに処置をおとりになるのか、ひとつ御見解を承りたい。
  26. 上田明信

    ○上田説明員 お答えいたします。  本件については、全逓博多支部長から福岡法務局に申し立てがあって、現在同局において調査検討中であるという報告がございました。なお、いままでやりました調査では、博多郵便局長、次長、庶務課長の三名について事情聴取したのであります。なお先ほどから問題になっております労働協約及びその運用について一体どうなのかということは、一生懸命研究しているという段階でございます。で、われわれといたしましては、本委員会におけるいろいろの議論のこの議事録を送りまして、なお検討するようにというふうに指示したいと考えております。
  27. 河野正

    河野(正)委員 申告をいたしましたのは八月の八日ですね。ですからもう一月からたっておるわけです。しかも人権問題でしょう。これがこのまま調査調査ということで日にちをじんぜんと延ばされるということは、これは非常に問題があるんですね。その間も、もし人権侵害となれば、人権侵害が引き続き行なわれるわけですからね。これはもう早急にその間の結論を出してもらわぬと、延びれば延びる期間、やはりもしそのことが人権侵害であるならば、人権侵害というものが続いていくわけですね。人権侵害の上積みが行なわれるわけですから、私はこれはもっと早く結論を出してもらわなければいかぬと思うのです。  そこで、いま私がいろいろ申し上げましたが、この朝日の論説にも、その末尾に「不信を招くような権利の乱用は大いに慎まねばならないが、それにしても博多郵便局のやり方は〃ポカ休〃におびえるあまりのノイローゼ症状ともいえそうだ。名医の診断書がいるのではないか。」当局は組合に対して診断書を持ってこい、持ってこいと言われますけれども、この朝日によりますと、むしろ博多郵便局が名医の診断を受けなければならない、博多郵便局のほうが診断書が要るんだと書いてありますよ。ですから私は、法務省は調査の途中ですから遠慮された御見解の発表があったと思いますけれども、もう少し突っ込んで重ねてひとつお答えを願いたいと思います。
  28. 上田明信

    ○上田説明員 お説ごもっともだと思いますけれども人権の問題につきましては、人権を侵害した、あるいはされたというほうの名誉の問題もございますので、どうしても慎重になりがちでございます。  それからもう一つは、私のほうは郵政省に対して決して遠慮はしておりません。遠慮しておりますと、どうしたって仕事ができませんので、そういうことはございません。一切遠慮せずに、自分独自の見解で発表するように従来からもやっておりますし、今後もやっていくつもりであります。お説のように人権の問題でありますので、できるだけ早くやれというのはごもっともだと思います。本件につきましても早急に検討は十分しなきゃいかぬけれども労働協約だとかその運用ということになりますと、何ぶん私のほうはしろうとでございますので非常にむずかしいらしいのでございますけれども、それをできるだけ克服して早く処理するように指示したいと思います。
  29. 河野正

    河野(正)委員 そこで、時間の問題もございますからはしょって申し上げたいと思いますけれども、いまできるだけすみやかに結論を出したいということのようでございますが、二、三私具体的な例をここで指摘いたします。それについてひとつ見解でけっこうですから、お述べ願いたいと思います。  それは、時間の関係で一、二にとどめたいと思いますが、その一つは、高田康彦君という集配課の二十七歳の局員がおります。この人は頭が痛くて出勤できないので電話で連絡して休んだ。そして古田医師の感冒という診断書をとっておるわけです。ところがこれは無届け欠勤ということで、現在処理がされております。ちゃんとこれは医師診断書、その写しを持っておりますが、こういう診断書が出ておるにもかかわらず無届け欠勤になっておる。  それから、中川信夫という集配課の二十七歳の局員ですが、この人も頭痛のため出勤ができないということで局に連絡をした。ここに安永医師診断書がございますが、気管支カタル性アンギーナ、三日間の安静加療を要するというようなことで診断書が出ておりますが、これまた無届け欠勤で処理されております。  それから、年次有給休暇に関する事例として、一、二出しておきたいと思います。  広重末男君という二十九歳の郵便課の局員でございます。この人は引っ越しで、福岡市から久留米に引っ越しをした。その引っ越しが交通事情等で非常に渋滞をして夜中までかかった。そうしていろいろなことがございまして、その翌日休んだ。ところが、この年休は許可されないのみか、訓告処分を受けております。  それから、武内君という小包郵便課の二十三歳の職員は、これはおかあさんが急病で入院して、そうして八十余りになるおばあさんではどうにもなりませんので、そこで局を休んで看病に当たった。ところが小包郵便課からは、年休は承認しない、直ちに出局しなさい、こういうケースがございます。  こういうように、ずる休みかどうかという議論も先ほどございましたが、医師診断書がちゃんと出ておれば、それはやはり、局の言うがの正しいか、本人が言うのが正しいかという、その判断をするものさしは、私は医師診断書以外にないと思うのです。ところが、その医師診断書があるにもかかわらず無届け欠勤だというのは、いわゆるずる休みだということだろうと思うのです。こういうことが許されていいのかどうか。私は、どっちが正しいかということになると、やはりそれを判断するためには、医師診断書というものが重要な判定のきめ手になると思うのです。それを無視した場合一体どういうふうになるのか。医師が休みなさいと診断書を出しても、それはずる休みというようなことが正しいのかどうか。私は、そんなことをしたら全く人権じゅうりんだと思いますが、そういう具体的なケースについては一体どういう御見解をお持ちですか。
  30. 上田明信

    ○上田説明員 当該具体事件については調査いたしておりませんので、何とも申し上げかねますが、いま先生がおっしゃった限度で回答申し上げますと、この健康状態に関しては、おっしゃるとおり、医師の判断に従うべきであるというふうに考えます。
  31. 河野正

    河野(正)委員 こういうように、一方的な判断に基づいて労務管理が行なわれる。そういうことがほんとう労使間の信頼性を深める要因になり得るのかどうか。これは明らかに、信頼性を回復するというよりも、信頼性を破壊するというようなことになることは当然であって、いまいろいろ全国的にたくさんあるそうですが、今日の郵政省内におきまする労使のいろんなトラブル、紛争、そういうものの要因というものが、いま申し上げるようないわゆる人権無視労務管理である。これは、それがすべてではないですけれども、少なくともその一部においては、人権無視労務管理というものがそういう紛争の要因をなしておる、こういうことを私は断定せざるを得ぬと思います。  そこで、この点については大体最終的な議論でございますので、次官のほうからひとつ見解お答え願いたいと思います。
  32. 木村睦男

    ○木村説明員 郵政のような現場の仕事を持っております職場におきましては、勤務の厳正、ことに出勤、欠勤の規律は厳重にやらなければ業務の完全な遂行はできない、かように考えております。そこで適切なる労務管理ということは当然必要でございます。しかし、それが行き過ぎて、人権無視というようなことがありとすれば、これはあってはいけないことでございます。その点につきましては、従来とも十分指導をいたしておりますが、今後ともそういうことのないように、しかし適切な人事管理は十分やっていくという体制を続けていきたいと思っております。
  33. 河野正

    河野(正)委員 その適切な労務管理というものは、それは国の機関でもございますし、私ども否定するものではございません。ただ、そのことが、いまいろいろ私は具体的な例を申し上げましたが、健康も締めつけ、あるいはそれがまた人種を侵すような形で労務管理が行なわれることについては、これはもう非常に人道上許しがたい問題があると思うのです。  特に、もう時間もございませんから多く申し上げませんが、たとえば、メーデーに参加しますと、まず労務担当者がメーデーの会場に出てまいりまして、だれが参加しておったというようなことを一々チェックしておるというような話も聞いております。それからまた、日勤、昼勤、夜勤とありますが、第一組合、第二組合の組合員に対して、この日勤、昼勤、夜勤の配置について非常に差別が行なわれておるというようなことも聞いております。  それから、作業着手時間、これは勤務を厳正にする意味において、私どもも全然否定するものではございませんが、作業衣と更衣をする、そのために一分おくれても賃金カットをする。もう現実にその職場に来ておるわけですね。ところが、その更衣はもう着手時間の前にやっておくべきであって、着手時間にわたって更衣をしておれば、その時間は賃金カットをする。こういう血も涙もない労務管理。今度は生命すら軽視するような労務管理ですから、私はそういうことが行なわれておると思うのですが、こういう実情があることをきょうはひとつ次官に御指摘を申し上げて、そして今後の労務管理についてひとつ大いに反省をしてもらいたい。  せっかく貴重な時間を費やしてやっておるわけですから、それだけにやっぱり成果があがらぬとお互い意味がないと思うのです。ここで単にやりとりしたって意味がないと思う。そういう意味で、ひとつ今晩の労務管理については十分反省すべき点は反省をして、そして労使間の慣行というものを確立してもらいたい、こういうふうに考えるわけですが、その点次官のあらためての御見解を承りたい。
  34. 木村睦男

    ○木村説明員 ただいまお示しになりました例示でございますが、お話しのとおりだといたしますと、人権無視あるいはそれに近い措置ではないかという節もございます。ただ、例示されました事態につきましては、双方実情をよく調べませんと、ほんとう実態は把握しておりませんので何とも言えませんが、先ほど来申し上げておりますように、あくまでも適切なる労務管理をやる、いやしくも人権じゅうりんにわたるようなことはやらないという線ははっきり示して、今後の労務管理をやらしていくつもりでおります。
  35. 河野正

    河野(正)委員 そこで、実は五月十二日の福岡中央郵便局におけるいわゆる読み取り区分機搬入をめぐっての紛争事件についての論議を当委員会で行ないました。その当時、木村次官から非常に適切なお答えをいただいておるわけです。ところがなお私ども、次官がこの国会の席上でお答えになった方向でこの労務管理が改善されておるのかどうか、この点については一まつの疑問を持っております。当時私ども指摘いたしました、責任者に対しまして厳重な処置を行なうというお約束をいただきましたが、その点について厳重な措置が行なわれておるのかどうか、この点についても多少私どもは疑問を持っております。いずれにしてもお互いに国会で国民に約束するわけですから、約束した以上はやはりそれ相応の実績をあげていただかなければならぬと私は思うのです。そういう意味で、いろいろ次官のほうから御努力なさった面について、私どもは全然否定するものではございません。そのはね返りもございますから。ですが、それが十分だというふうには私は考えない。労務管理責任者がその後人事異動で出世をしたという話も聞いておりますし、どうも納得いかぬ点がございます。特にこの博多郵便局の問題にいたしましても、非常に締めつけがあった、そのために木戸次長のごときはこの博多郵便局から中央郵便局の次長に栄転をしたという話を聞いております。それから、問題が起こりました当時の集配課長だった馬場健三郎という人は、中間の局長に昇格されたということも聞いております。こういうように、どうも労務管理締めつけをやればやるだけ、何か点数をかせぐような印象を与える人事管理について、私どもは問題があると思うのです。やはり不信感、不信感といいますけれども、不信感を助長する要因になっておると思うのです。そういう意味で私は、そういうことがあってはならぬことと思うわけでございますが、この点は前回の委員会において次官からも適切なお答えをいただいておりますので、今後に対処する次官の方針、腹づもりというものをこの際ひとつあらためて伺っておきたいと思います。
  36. 木村睦男

    ○木村説明員 ただいまの問題につきましては、通常国会におきまして、当委員会あるいは理事懇談会でいろいろと河野先生から御指摘がございまして、その措置につきましてはすでにお聞き及びかとも思いますけれども、出先の責任者であります熊本郵政局長を通じまして、あの事件のありました郵便局、あるいは当時応援に来ました関係郵便局等につきまして、十分注意を伝達さしております。なおそのときの話で、今後当局と組合側とつとめて対話の機会をつくるようにということでございましたが、この点も当時さっそく指導いたしまして、私の聞き及んでおりますところでは、当時二回にわたって懇談の機会を持ったようでございますが、これは私は非常にいいことであると思いますので、今後ともそういう対話の機会はさらにつくっていくようにしたいと思っております。  なお、ただいま、それに関連いたしまして、当時関係したものの人事異動等について御不満のようなお話がございましたが、人事のことにつきましては、現地郵政局長が、当時の事態、あるいはそれぞれの人のやりましたこと等も十分に調べました上で、誤りのない人事をやっておる、私どもはさように考えておりますので、御了承願いたいと思います。
  37. 河野正

    河野(正)委員 約束の時間がだんだん近づいておりますので、ここで結論的なことを申し上げておきたいと思いますが、いま次官がお答えになった中で、私ども、そのとおりだといって納得がいき、またその配慮について敬意を表する点もございます。ございますが、一部においては、正直にいって納得しがたい点がございます。ですから、これは通常国会におきます委員会の締めくくりとしても、適正な措置が行なわれなければ現地責任者を当委員会に招致をして審議を続行するというのが、委員会理事会の決定でございます。ですから、ここでいろいろやりとりしますと時間がございませんから、あらためて経過は聞きますが、この点は前国会の中で、理事会、委員会において確認された事項でございますので、あらためて委員長に対して要望をいたします。  この労務管理、人事管理の問題について、いろいろ次官から方針が述べられましたが、それに対してなお疑念が消えない場合は、当委員会において現地関係者を呼んで審議を続行するということを、ひとつ委員長において再確認を願いたい、こういうふうに思います。
  38. 田川誠一

    田川委員長代理 ただいまの河野君の御提案の問題につきましては、なおこの問題についての疑念がさらにある場合には、理事会で検討させていただくということで御了承願いたいと思います。
  39. 河野正

    河野(正)委員 それじゃ不満で、前回の理事会と委員会では、いま申し上げましたことを決定をしておるわけです。しかし、いま次官からいろいろ御報告がございましたような経過で、なおどうするかという結論には到達していないわけです。しかし、前国会で理事会、委員会において決定をしておるわけですから、それをもう一度この委員会で再確認してほしい、こういうことです。検討するのじゃないですよ。再確認してもらいたい。
  40. 田川誠一

    田川委員長代理 ちょっと速記をやめてください。   〔速記中止〕
  41. 田川誠一

    田川委員長代理 速記を始めてください。  私、前の通常国会の委員会のときには出ておりませんのでわかりませんが、ただいま河野委員の提案につきましては、この問題についてさらに疑義がある場合には、委員会でもう一度継続してやるというようなお話が前にきめられてあったそうでございますから、そういう意味で、さらに問題がある場合にはこの委員会でやるということに確認されたらいかがと思います。
  42. 河野正

    河野(正)委員 それは全く見当違いもはなはだしいので、審議することは国会としていつでも審議できるわけですよ。そうでなくて、現地責任者を当委員会に招致をして審議をするということをもう一度再確認してほしい、こう言っている。審議することはいつでもできますよ。ですから、現地責任者を当委員会に呼んでその間の究明をすることをもう一度ここで再確認してほしい、こう言っているわけです。
  43. 田川誠一

    田川委員長代理 前の委員会でこういう話があったからということがありましたので、私は聞いてないですから、新たに……。
  44. 河野正

    河野(正)委員 前のことが、結局、理事会に出ておらぬ、委員会に出ておらぬからわからぬ、委員長がそうおっしゃるならば、あらためてこちらは提案をいたします。  いまいろいろ指摘いたしましたような諸問題について、もし納得がいかなければ、あらためて当委員会において現地責任者を招致をして審議を続行するということを、ひとつこの際御決定を願いたい。
  45. 田川誠一

    田川委員長代理 ただいま新たに、この問題にさらに疑義が生じた場合にはこの委員会現地責任者を呼んで審議をする、こういう御提案かと思いますので、これはけっこうだと思います。
  46. 河野正

    河野(正)委員 それでは最後に関連して一点だけお尋ねをして、私は時間が参りましたので終わりたいと思います。  それは電機労連関係の問題でございますが、西部電機という会社で、四月二十九日、天皇誕生日の問題をめぐって、賃金カットのトラブルが出ております。これについて、時間がございませんので、詳しく申し上げるよりも、もうすでに電機労連から、労働省、それから現地の監督署についてもいろいろ折衝が持たれておりますので、十分経過については御承知だと思いますから、いま申し上げた点について一点だけお尋ねをしておきたいと思います。  それは、この組合側の言い分は、協約の二十一条によって公休日と指定をされておるわけですね、国民の祝日に対しては。それに対して賃金カットをやった。それに対して不当だということがトラブルの焦点でございます。そこで、協約としてはあるわけですから、当然私どもは、協約違反だ、こういうたてまえをとっておるわけですが、どうも現地の監督署の方針というものがはっきりしないということで、このトラブルが長引いておるようです。そこで、こういう協定に定めらことを一方的にじゅうりんをして賃金カットをするということは協約違反かどうかということについて、御見解を一点だけ承っておきたいと思います。
  47. 和田勝美

    和田説明員 お答えいたします。  協約に定められた条項に明らかに違反するような賃金カットはすべきでない、かように考えております。ただ、いま御指摘の西部電機の問題につきましては、いろいろの慣行もあるようでございますので、にわかに断定的なことは申し上げられませんが、先ほど申しましたように、明らかな問題であれば、先生の言われるとおりだと考えております。
  48. 河野正

    河野(正)委員 明らかな問題であればとおっしゃるけれども、これはすでに労働省とも電機労連が交渉しているわけですよ。ですから、その結果についてこの国会で報告されることは、これは容易だと思うのです。ですから、明らかであるとかないとかいうことは、もうすでに交渉の過程の中ではっきりしておるわけですから、この際明らかにしてもらいたい。それだから現地の監督署が言を左右にするわけですよ。そのことがトラブルを助長しておるから、私はこの際はっきりしてもらいたい、こういうことを言っておるわけですから。
  49. 和田勝美

    和田説明員 西部電機の場合につきましては、国民の祝日を有給休日とするという規定が協約の二十一条にございます。それに対しまして、同じ協約の二十三条に、会社は業務上の都合により必要があるときは組合と協定して休日に就業させることができる、こういう規定がございまして、この二十三条の協定について、現地の監督署としては当時確認をいたしていないということでございまして、これは労使紛争の問題でございますので、まず労使話し合いをされたらどうでしょうかということを申し上げておる、こういうことでございまして、この協定の存在の問題と、協定がないような場合においてこういう問題について従来どういう話し合いをしておられるかどうかということを確認しておりませんので、先ほどのようなお答えを申し上げたわけでございます。現在はそういう段階でございます。
  50. 河野正

    河野(正)委員 この二十一条では、協約の中に、国民の祝日は有給休暇とすると書いてあるのですね。二十三条は必要があれば協定というけれども、協定がないから組合は、けしからぬ、不当だと言っておるわけです。それをいまここで、いままで電機労連がいろいろ中央で折衝されておる、組合課と法規課でやっておるといわれておる。それをいまさらここで、その点が明らかでないからはっきり答えられぬということは、それは聞こえませんよ。  それから、団体交渉で言われておることばをここで取り上げておるわけですけれども、会社側が言っておるのは、労働省の解釈といえども絶対的なものとは思わない。元中労委の会長であった中山伊知郎氏なら、労使で一緒に行って話をし意見を聞くことができる、この人ならば経験も豊富であるし、中立的な意見も聞けるので、中山さんの言うことなら聞けるけれども、労働省のいうことが絶対的なものではない、こういう否定のことばを使っておるわけですね。ですからこれは、労働省がき然たる態度をとらぬからいまのようなことになっておるのですから、これはいまさらここで二十三条の、必要な場合の協定があるとかないとかいうような議論の段階は過ぎておるのであって、この問題については、もう二十一条違反だということで明確な見解を示していただかぬと、いつまでたっても紛争は収拾できないと思うのですよ。いまさらここで、まだその点が明らかでないなんという見解を聞こうとは、私どもは夢にも考えてないんですよ。これはここで初めて私は提案するのではないんですよ。もう電機労連がすでに労働省と交渉しておるのですからね。ですから、いまさらここで、二十三条の点が明らかでないなんということは承るわけにはまいらぬ。ですから、二十一条違反であるなら二十一条違反であるということを、ここで明確にしてもらいたい。
  51. 和田勝美

    和田説明員 電機労連の方が本省の監督課に来られまして、協定がないということをお話しになったことは事実でございます。それにつきまして、私どものほうから現地の局に照会をしましたところ、その点が必ずしもはっきり監督署としては確認をしておりませんので、先ほど申し上げました電機労連の方の御主張は、いま先生の言われたような主張で、協定はないということでございます。なお、会社側につきましては、いま中山先生云々の話がございましたが、それは別にいたしまして、明らかに違法な行為であるということであればいつでも訂正をいたしますというようなことも会社側は言っておるようでございますので、本件につきましては、大体私どもが聞いておる限りにおきましては、間もなく解決をする。それは、大体組合のほうの内容を認めた解決になりそうに現在承知しておりますので、明らかに解決したとは聞いておりませんが、そういう状態であることをお含みいただきたいと思います。
  52. 河野正

    河野(正)委員 その経過は承知しておるわけですよ。ところが、労働省の見解が明らかにならないのでひっかかっておるので、この際労働省の見解というものを明確にしょう、そのことが解決を促進することなんですよ。ですから、二十三条の協定がないとするならば、二十一条違反だということをここではっきり言ってもらえばいいわけです。その際、二十三条があればこれは別でしょうけれども、それは加藤さんからまた別な意見が出ておりますよ。ですから、二十三条の協定がない限りは、明らかに西部電機については二十一条違反です。当然賃金カットは撤回すべきだということをここで明確にしてもらえばいいわけです。
  53. 和田勝美

    和田説明員 先ほど申しましたように、事実関係につきましては、私どもとしては厳格な調査がまだ終わってないということを前提にいたしまして、先生のおっしゃいますように、二十三条の協定がない、だから、そのほかに労使の間における話し合い慣行の実際が、そういうものについて否定的であるということであれば、二十一条のほうが生きてまいりますので、賃金カットは適法ではない、かように申し上げておきます。
  54. 田川誠一

    田川委員長代理 八木一男君。
  55. 八木一男

    ○八木(一)委員 厚生大臣並びに関係政府委員に御質問を申し上げたいと思います。  まず厚生大臣に御質問を申し上げますが、先国会の自由民主党の議会民主主義をじゅうりんしたやり方に政府も加担をいたしました。そのような結果で、国民生活の法案の大部分が廃案になってしまった。特にそこで、厚生省関係、社会保障関係の法律が多いことについて、厚生大臣としては重大な反省をせられなければならないと思うのです。それとともに、反省の実を示すための根限りの努力をされなければならないと思います。具体的に国民年金法の改正法案、あるいはまた厚生年金法の改正案、あるいは社会福祉振興会法の一部改正案その他の法律案について、これが廃案になってしまって、その法律案あるいは改正案ができ上がったときに給付がふえるとかその他の事情で、国民が待望をしておられた法律案が廃案になって、国民の期待を裏切ったことについて、いまできる最大の努力をせられなければならないと思います。  時間の関係がありますから、一間一答を避けて少し続けて申し上げたいと思いますが、特に国民年金法の改正案は、中に所得比例制と称するものの非常に不合理性がございましたけれども、その他の部分については、たとえば拠出制年金では六割方の給付がふえる。あるいは福祉年金では、老齢百円、あるいはまた母子、準母子、障害が二百円方月額引き上あがるということで、その問題については九月分から給付がふえるということであります。また所得制限については、それより早くから、五月分から緩和をされるというような内容でございました。それが廃案になって期待を裏切ったことを、しばらくの期間心配をかけたことは、いまさらどうならないにしても、実損のないように、完全にその期待どおりできるように、国民年金法の改正案を直ちに臨時国会で提案をされて、そしてそれを早く成立することを国会に要請されるということが必要であろうと思う。このことについてひとつ明確な御答弁をいただきたいと思います。
  56. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 さきの国会で、本委員会におきましては、各法案について熱心な御審議をいただきましたにもかかわらず、結局多数の法案が廃案と相なりました。私のほうといたしましても、非常に遺憾に存じているわけであります。このために、国民の皆さま方に御期待を裏切ったような結果にもなっておることをおそれているわけでありますので、できるだけ早い機会に、要すれば臨時国会でも開いていただいて、そしてその法案を直ちに御審議をいただいて、成立をさせていただきたいということを、私は心から念願いたしております。おそらく与野党とも同じようにお考えくだすっていることだろうと思いますので、これは私の私見でございますが、一日も早く臨時国会が開かれて、国会が正常に運営のできることも進めていただいて、そうしてもうすでに御審議をいただいたものは、もう即日でも通していただくというくらいにやっていただきたいと実は熱望いたしております。その際に、施行期日が延期いたしますことによって、もし当初の法案どおり通っておれば適用されるであろうという利益の点が適用されないということになることもおそれるわけでございますので、可能な最大限度におきまして、当初予定の施行期日にさかのぼって施行のできるようにお願いをいたしたい、こういうように考えているわけでございます。
  57. 八木一男

    ○八木(一)委員 そこで、国民年金法については、厚生大臣かなり熱意を持って答えられていいのですが、きっぱりしておきたいと思うのですが、この前提出された改正案のとおりに次の提出された法案が成立をした場合に、期待したものに対する実損が一つもない、すべてのものがさかのぼって適用されるのだ、そのような法律を即時準備をされて臨時国会に提出をされる、そのことについてはっきりと確約を願いたいと思います。
  58. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 さかのぼれないものがあるかどうか、私まだ具体的に検討いたしておりませんが、さかのぼることの可能なものは全部さかのぼるようにいたしたい、かように考えております。具体的に可能でないものはどうか、あるかという選別を、実はまだ私怠っておりますが、臨時国会が開かれるというめどがつきましたならば、さっそくその点は作業をいたしまして、さかのぼれることのできるものは——法律的に不可能だ、事実上不可能だ、なくなった人に対してはあるいは不可能なものも生じてくるだろうと思います。そういうものを除きまして、可能な限りさかのぼっていきたい、かように考えます。
  59. 八木一男

    ○八木(一)委員 なくなってしまった方に対するということを除いて、全部さかのぼれるはずだと思います。これは法律上も行政上も事務上もできるはずです。する気があったら全部できることです。だから、なくなってしまった御本人に渡すということは不可能ですが、それ以外のことは全部さかのぼるということで、法案を即刻準備をされて、臨時国会に提出をされて、それの成立を各党に強力に要請をされる、そのことをしていただけますね。
  60. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 さようにお願いいたしたいと思っております。
  61. 八木一男

    ○八木(一)委員 それから国民年金法については、これは昭和四十四年度の通常国会で審議を衆議院ではされて、そこで成立が期待をされておったわけでございますが、その審議の過程で、それが通ったとして、それが不十分であるので、昭和四十五年度、四十四年の十二月からでありますけれども、次回の通常国会でさらに積極的な国民年金法の改正案を出されることを、この前、社会労働委員会で厚生大臣から確約をいただいているわけであります。これは一年さかのぼるから、効果的に四十四年の通常国会で成立したと同じになるわけですが、それで四十五年の国民年金法の改正案がずれては困る。ですからこれはこれとして、おくれたことをさかのぼって解決をする。次の通常国会に、当然さらに積極的に国民年金法の改正を出すことが約束されているわけでございますから、時間的に、この臨時国会に出される際にまとめて出されるのだったら、それでよろしいのですが、それができない場合には、臨時国会等であがったあとで、通常国会に当然、次年度において年金をよくする国民年金法の改正案が提出されることでなければならないと思います。それについての厚生大臣の明確な、前向きなお約束をいただきたいと思います。
  62. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 先般の国会で国民年金法御審議の過程においていろいろ御指摘があり、私も答弁をいたしたものもございます。それらにつきましては、十分検討の上、前向きの姿勢で、これは現在廃案になった法案とは別個に、もし臨時国会その他次の国会の機会に、廃案になったものを特にまとめてやる。先ほどおっしゃいますようなことができますなら、それはそれとして、それから次にさらに、今後改正を重ねていくというものは、また別のものとして提案をいたしたい、かように考えます。   〔田川委員長代理退席、橋本(龍)委員長代理着席〕
  63. 八木一男

    ○八木(一)委員 この流れたものを、早くこれから通してさかのぼらすほかに、積極的な国民年金法の提出について確約をいただいて、その点、厚生大臣の誠意については私どもも認めたいと思います。確約でございますから。もちろんその確約をなさっていただくのはあたりまえでございますが、そこで一般的に問題点がございます。  まず、いろいろの問題をこの前の社会労働委員会で私申し上げました。前向きに取り組むというお約束をいただきましたから、そこでお約束いただいたことはお約束どおりやられる。それから、積極的に検討を願う問題については積極的に検討を願って、その改正案に入られるということをぜひやっていただきたいと思いますが、ひとつ総括的にお答えをいただきたい。
  64. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 ただいま八木委員のおっしゃいましたとおり、この前にいろいろと御指摘になり、私からも所見を申し述べました。それはそれとして、またそうでない部分につきましても、改正する要のあるものは検討いたしまして、次の通常国会にできるだけ御審議いただけるようにしたいと、かように思います。
  65. 八木一男

    ○八木(一)委員 時間がありませんから、速記録をもってあとで全部お読みいただきたいと思います。また、私の申し上げたこと以外に、積極的に改正されることは、ぜひ専門の厚生省年金局でさらに積極的に加えて、いいものを出していただきたいと思います。  柱だけ、復習といいますか、ちょっと申し上げておきたいと思いますが、拠出制年金については、今度も改正案にありますけれども、とにかく国庫負担をよけいにして、そしてまた修正賦課方式を入れて、保険料をあまり上げずに給付をどんどんふやす必要があるという原則的な問題と、それからもう一つは、いまの所得比例制と称するものについて、非常に問題点がございますけれども、これを直す。これは臨時国会に出されるところでもちろん不合理な点は直していただくことを希望しますが、それを直すということについても御検討をいただきたい。その直す内容はどれがいいかということは私は提起を申し上げておきます。  それからもう一つは、これは確約をいただいたことでございますが、拠出制の障害年金に関して、障害及び障害の原因になる疾病の発生の時期いかんを問わず、その対象者に、障害福祉年金ではなしに障害年金を支給するようにするのが社会保障の道であるということで、このことについては厚生大臣は確約をされたわけでございます。これはもうほんとうに大切なことでございますから、ぜひ今度のところに入れておいていただくことを確認しておきたいと思います。  それからもう一つ、昭和四十六年に十年年金が開始をされる。そのときに、その年齢の一歳上の人は老齢福祉年金しかもらえないということでございますから、ほかの人が十五年年金で、六十五歳で所得制限なしに、かなりの——全体的に低いですが、福祉年金に比べればかなりの額になる額をもらっておられるときに、一歳多いだけで、あと五年間待って福祉年金しか、それも所得制限つきの金額の少ないものしかもらえない。この断層を四十六年までに必ず埋めないと非常な政治のへっこみができるということについて、これもひとつその中に入れておいていただくことを強く要求をいたしておきたいというふうに思います。  それからもう一つ、いろいろな問題がありましたので、全部取り上げていただきたいと思います。子供がたくさんあるときの加算が、これは厚生年金にも関係ありますけれども、長い間据え置きになっております。年金自体がいろいろな問題で伸び方が少のうございますが、幾ぶんずつ進んでいるときに、子供の加算が伸びないということは、関係者の子供のある家庭についてはそういう対処が十二分にされないということでありますので、こういう問題についてもひとつ取り上げておいていただきたいというふうに思うわけでございます。確認されていることでございますし、厚生大臣は慎重ではありますけれども、お約束をされたことはやられる御性格のように、その点私は信頼をいたしたいと思いますので、その点についてりっぱな法案を出していただくということを確認をいたしておきたいと思います。  時間がありませんので先に進みたいと思いますが、この国民年金法の改正案は、衆議院でかなり審議をされました。厚生年金保険法については、まだ審議をされないうちに廃案になってしまいました。厚生年金の方々も、これはこの法案が通れば、十一月分からの給付金、来年二月に支給を予定されるものが、既裁定年金の人は、特にこれを引き上げることを期待を持っておったわけでございますが、これも残念ながら廃案になりましたので、同様にこれについてよいものを出される。急速に臨時国会に出されて、国民の期待にこたえられるということは当然なされてしかるべきだと思います。その点についての厚生大臣の前向きのひとつ明確な御答弁を願いたいと思います。
  66. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 厚生年金関係におきましても、先ほど国民年金について申し述べましたと同様に、できるだけ可能なものはさかのぼってやれるようにいたしたい、かように考えます。
  67. 八木一男

    ○八木(一)委員 可能な分ということばに引っかかるのですが、厚生大臣は慎重な性格ですから、その間になくなった方自体にお金を持っていくことはできないということを例として申し上げました。その点は実際上さかのぼっても不可能なことはないはずであります。厚生年金保険法改正案は十一月分から支給のやつを二月支給でございますから、実際同じなんです。なくなった方というのも該当しないわけです。ですから、全部に期待どおりいけるという法案を出していただけるものとお答え解釈いたしたいと思いますが、それでよろしゅうございますか。
  68. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 実はまだ事務当局に、精細に、法律的にこれは可能か可能でないかという検討の結果を聞いておりません。したがいまして、私の気持ちは先ほど申し上げたとおりの気持ちであります。事務当局の検討の結果を聞きまして、その検討の際におきましても、私みずからも検討して、できる限り可能な場合には、不便に——不便というよりは不利益にならないようにいたしたい、こういう方針でございます。
  69. 八木一男

    ○八木(一)委員 まあ精密に調査しないとわかりませんが、厚生年金については、あの法案が通ったと同じ効果をば、ほとんど完全にできると思うのです。なくなったときも、国年のほうはわずかな、たとえば八月になくなった場合、いま言ったような問題が起こると思うのですが、厚生年金の場合にはほとんどそういうことがないと思います。ですから、そのとおりできるような法案をひとつ臨時国会に提出をしていただきたい。同じお気持ちだと思いますし、首を縦に振っておられますから、確認をここでいたしておきます。  それからもう一つ社会福祉事業振興会法の一部改正案という法律が廃案になりました。これは児童家庭局関係の法案でございます。障害児家庭の扶養保険を各自治体がやっておられることを、国がこの振興会法の一部を改正して、スムーズに合理的に、またよくできるような基盤をつくろうということの法律のように理解をいたしております。たとえば市町村から市町村に転居されたときに、そこで打ち切られてはいけないので通算する。あるいは府県から府県というような問題もございますでしょうし、国が全部やるということで、保険会社のほうに保険料を安くさせるような集団的な話し合いということもあろうと思います。これも自治体がやられることですから直接ではありませんけれども、非常に関係者の方が切望しておられる法律でございますので、ぜひ、よりよいものが出せればさらにけっこうでございますが、急速に提出をされて早い成立を望まれて、各般に早い成立を要請されるということをされるべきだと思いますが、それについてひとつ前向きの御見解をいただきたいと思います。
  70. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 ただいまのは、施行期日をちょっとさかのぼるというわけにまいりませんので、できるだけ早く通過をさせていただいて、できるだけ早い施行のできるようにお願いをしたい、かように思っております。
  71. 八木一男

    ○八木(一)委員 次に、これは、国務大臣または社会保障の主管管庁の大臣として、広い立場で御質問をし御努力を強く要請をするものであります。というのは、国民年金法と厚生年金保険法の両改正案は厚生省の主管事項でございますが、これと並行して、たとえば国家公務員共済組合法の改正案、地方公務員の共済組合法の改正案、それから公共企業体の共済組合の改正案、また恩給法の改正案、農林漁業団体共済組合法の改正案、私学共済組合法の改正案というような、各共済組合法の改正案が同じく提出をされております。内容は、各法律の内容また改正法案の内容で厚年、国年と同じ仕組みではございませんけれども、思想としては大体同じもので、たとえば最低保障額とかそういうものを引き上げる。それから、とにかく年金給付額を引き上げる、特に既裁定年金に対してもそういうことを引き上げていくという内容の法案であります。これも、関係者の方々、あるいはまた遺族年金を受け取っておられる方、あるいは障害で退職されて障害年金を受け取っておる方、特に中心は退職年金でありますが、そういう方々のために非常に成立を要望されて、同じくこの成立をおくれたために、給付がふえたものが早い機会に支給されないのではないかという心配が多分にございます。この点についても、厚生年金、国民年金法を早期に改正案を提出されるわけでございますから、関係の各省、これは総理府になったり、文部省になったり、農林省になったり、あるいはまた自治省になったり、あるいは運輸省または郵政省になったりしておりますけれども、われわれの主管官庁、年金の主軸官庁がやるんだから各省もこの気持ちをそろえてやろうではないか、ぜひやってほしい。また国務大臣としては、内閣として厚年、国年と同じように各共済組合法の早期提案を準備して、臨時国会に提案して成立させなければならないという点で最大の御努力を願いたいと思います。すでにそういう方針がもしきまっておりますならば、それをいたしますということを、内閣を代表しておっしゃっていただければけっこうであります。どうかその点について前向きの一つの明確な御答弁をいただきたいと思う。
  72. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 ただいまあげられました一連の法案は、先ほどおあげになりましたのと大体同様なものでございます。したがいまして、私といたしましては、同様に扱うように要望をいたしたいと思いますし、関係閣僚もおそらく異存がないことだろうと思います。まだ閣議で正式に決定したというわけではありませんが、大体そういうような方向にみな考えてもらっておると私は一応了解いたしておりますが、だんだんとその時期が迫ってまいりますから、近いうちにはっきりと意思統一をやりたい、かように考えております。
  73. 八木一男

    ○八木(一)委員 いま申し上げた各法案については、主管大臣がおありになりますけれども、社会保障のほんとうの主軸の大臣でございますし、国務大臣として全般に対しての審議の責任と権限をお持ちでございますから、近い閣議でみんなそろって出すのだということを御提議になって、ぜひそれを急速に進めていただくということを強く要望をいたしておきたいと思います。  私の持ち時間は一時間でございますけれども、審議に協力したいと思いますので、いま二十分ぐらいしかまだいたしておりませんで、まだ持ち時間がありますので、もう少し御質問申し上げたいと思いますが、特に厚生大臣と児童家庭局長が来ておられますので、児童手当法について、これは数年前から私ども社会党はじめ各野党がいろいろ推進をし、政府がおくられていることについて追及をいたしてまいったわけでございます。本年の初頭に出す約束がずれて、また来年ということになりました。当然今度の通常国会に出されなければなりませんし、その内容が問題であります。当然出すように、社会党やほかの野党の方々の追及で、そういう情勢になっておりますけれども、出てくるものがよいもの、十二分なものでなければ、ただ名前だけ使ってそれに対処をしたということであってはならないと思います。急速に出すということと、十二分によいものを出すということを、ぜひひとつ推進を願いたいと思います。  十二分のよいものを出すということの中で、調査会、審議会の意見の中で非常に不十分な点があります。たとえば被用者以外の者については約半額というような意見が出ておりました。これは厚生省ではありませんけれども、そんなことであってはならないと思います。またそこについてはかなりの大幅な所得制限をつけるというような意見がついておりました。厚生省の意見ではありませんから、厚生大臣や児童家庭局を責めているわけではございませんけれども、そんなようなたるいものが出ている中で、厚生省がたるいものからそれを乗り越えてやっていただかないと困ると思うのです。それから、もちろん第一子から全部ということでなければならないし、金額はしっかりしたよいものでなければいけないと思います。その点について、これは、ILO百二号条約についてまだ批准ができていないのは、日本で児童手当制度ができていないということで、先進国としては非常に恥ずべきことでございますし、これだけの経済の発展をしながら、関係の国民に対して非常に対処がおくれて、政府、また政治を論ずる者としては申しわけないということを考えていかなければならないので、急速にいいものをやる。そこで変な値切り方をしない。第一子からちゃんとやる。二子、三子というような値切り方をしない。所得制限というような値切り方をしない。あるいはまた、被用者はあれだけれども、そうでない者は減らすというような値切り方はしない。被用者の分も、これはもっと全般の分を金額をよいものにする。わが党は、これを当然いまの時点で少なくとも六千円にしなければならないと思っておりますが、少なくとも、最初に財源の問題がありましたけれども、三千円から発足をしなければならないというふうに考えておるわけであります。これは自由民主党でも、また民社党さん、あるいは公明党さん、共産党さんも、いろいろと研究された案をお持ちだと思いますが、少なくとも各党の、その中の野党の案は、政府のいま考えておられるよりははるかにりっぱなものをしなければならないという強い態度でやっておられると思うのです。政府は、そのような審議会、調査会でたるいものが出ているところを、それをまた値切るようなことを一切なさったらいけませんし、それを乗り越えて、野党の社会党の要求しているような、これでも非常にまだ十分でないと思いますが、りっぱな案を来国会に早く提出されるということをやられなければならないと思います。それについての前向きの御答弁をひとついただきたいと思います。
  74. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 児童手当法案につきましては、先般の国会で御審議をいただきました児童手当審議会、これが成立をいたしましたので、さっそく御諮問を申し上げて、次の国会に間に合うように御答申をいただきたい、少なくとも十月か十一月の初旬までには御答申をいただきたいということで、ただいま熱心に御審議を願っているわけであります。その内容は、厚生省としてどう考えているかということのお示しを、ごく大綱でありますが、申し上げております。これは御承知のとおりだと思います。これにつきましては、被用者と被用者でない者の区別をしないこと、月三千円程度、しかし第二子、第三子以降というのがさしあたってやる実施可能なものではなかろうかという意見で御審議をいただいておりますが、御審議の中にいろいろと御意見が出てくるだろうと思います。少なくともわれわれの考えておりますのを値切られるということは私はまずなかろうと思っております。これではまだ足らぬじゃないかという御意見ではなかろうかと思っておるわけでありますが、少なくともいま考えております案が最小限度として実行のできるように努力をいたしたい、かように考えております。
  75. 八木一男

    ○八木(一)委員 いま二子、三子という話が出ましたけれども、そんな案をたたき台として、出されるということ自体がほんとうにけしからぬと思うわけです。そういうことじゃなしに、もっと厚生省自体が、この児童手当についてほんとう内容のあるりっぱなものをやるという態度でいかれなければならないと思います。審議会でよい積極的な意見があったものは全部それを取り入れる。また、審議会がもっと言いたいのを、それをたるい意見になったときには、そういう状況も勘案して、政府自体がこれを乗り越えていいものをやる。たとえば年金法のときに、社会保障制度審議会は遺族、障害について答申を出しておらない。あのときの制度審議会の答申は、制度審議会の答申の中で一番不十分な答申だった。それを乗り越えられた例がある。ですから、審議会でどんな結論が出ても、不十分だったらそれ以上に乗り越える。その乗り越えられることについて野党なり与党なり、この委員会で積極的な発言があったものを全部取り入れていく、ぐんぐんといいものにして出される、そういうことで対処をしていただきたいと思うわけです。  それから、最後にいたします。最後に、そういう問題は予算に関係がございますが、再三申し上げておりますように予算について第一次要求を二五%にとどめるというようなことがあっては、これは非常に前向きにどんどんやらなければならないものをたくさんかかえておられる省のその仕事のどれかが停滞をする。予算の二五%要求というのは、大蔵省の主計局の要望に従って予算編成をすることは間違いである。政治のりっぱなアクセントをそこでつぶすことになるということをさんざん歴代の厚生大臣に申し上げて、厚生大臣はその点について理解をされて、そのとおりだ、閣議においては職責を賭してもこのような大蔵省の主計局の紋切り型の、主計局のサボタージュをしようとする、国政のアクセントを消すやり方については、反対をするということをお答えをいただいているわけであります。ところがまた二五%ということになっている。いまからでも二五%というようなやり方は——主計局は作業をやりやすいかもしれない。しかし、全部前進をするものをかかえている厚生省としては、省内でどれかをとめなければどれかを進められないことになるじゃないか。こういうことでは国民の負託にこたえられない。予算の制約はするな、そのようなことをするなら、厚生省全省をあげて主計局と対処をする、大蔵省と対処をする。閣議において、大蔵大臣とあなたが二十時間でも五十時間でも論争する。そのようなことで、社会保障の関係、厚生行政の関係の予算がへづられないように、抑圧をされないように、またその他の省でも、たとえば教育関係労働関係でも大事なものがある。そういうことが主計局の紋切り型のやり方で抑圧をされないようにやっていく必要があると思うのです。厚生大臣として、国務大臣として、その点の予算の点について、いままでさんざん申し上げておりますから御理解をいただいていると思いますが、その点について職責を賭してがんばっていただいて、いろいろとお約束をしていただいたものをさらによく、さらに早く、さらに十二分にしていただくことができる予算の獲得をしていただきたい。そのことについて、強い決意をひとつ承らしていただきたいと思います。
  76. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 二五%というものにとらわれることなく、来年度としてぜひこの程度はやらなければならぬというものは自信を持って要求をし、自信を持って貫徹をいたしたい、かように考えております。
  77. 八木一男

    ○八木(一)委員 その点で決意を伺って、いいようなものですが、厚生省全体の予算の第一次要求、それは昨年度の何%増になっておりますか。
  78. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 ただいまのところでは児童手当、それから医療費の値上げと申しますか、これはいま中医協でやってもらっておりますが、そういうものを除いて、ただいま要求しておりますのは前年度に比べて二五%でございます。
  79. 八木一男

    ○八木(一)委員 これで質問を終わるわけでございますが、予算についても、法案についても、お約束をいただいたことを確実におやりになるというふうに私、要求しておきたいと思います。厚生大臣はそれをおやりになると思います。  また、私どもの短い時間で御指摘を申し上げたこと以外に、非常に大切なものがあると思うのです。たとえば一例だけ申し上げておきますが、ガン対策の問題などがあります。たとえば医療の関係では、ブレオマイシンがいま保険で適用されていないというような重大な問題があります。いろいろ数をあげればたくさんあると思いますが、そういう問題、あるいは特別な委員会がありますから遠慮をいたしておりましたけれども、公害関係の三法も廃案になってしまいました。これも急速によいものを成立させる必要があろうと思います。そういうことを全体で積極的にやっていただくことを強く要望いたしまして、積極的なお約束をいただいて質問を終わりたいと思うのです。ひとつ総括的に、全力をあげて取っ組むことのお約束をいただきたい。
  80. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 ただいま最後におっしゃいましたように、私はその気持ちで今後も努力をいたし御期待におこたえをいたしたい、かように思っております。
  81. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)委員長代理 河野正君。
  82. 河野正

    河野(正)委員 きょうは、食品公害について最近いろんな問題が起こっておりますしいたしますので、その質疑を行なうわけでございますが、まず冒頭に一つ緊急の問題としてお尋ねをしておきたいと思いますのは、昨九日でございますが韓国政府は外務省に対しまして、韓国西海岸をコレラ汚染地域として指定をし、WHO、世界保健機構に通報した、こういう通報が外務省になされたということでございます。実は、韓国西海岸には最近コレラが流行をしておる、こういういろんな議論がございました。ところが今日まで、これはコレラじゃないのだ、腸炎ビブリオ菌による食中毒である、こういう発表がなされておりました。ところがやはり、案に相違をして九日、コレラの汚染地域だ、こういうことになったわけでございますが、二転三転するような報道がなされておるわけですけれども、一体現況がどうであるのか、この点についてひとつ御報告を願いたい。
  83. 村中俊明

    ○村中説明員 韓国のコレラの発生状況でございますが、去る三日の日に韓国の日本大使から公電が入りまして、西海岸地域に疑似コレラが発生して、三日午後現在で十名死亡、五十名以上が感染、発病というふうな電報が入りました。さらに引き続いてすぐ続報が参りまして、韓国政府保健社会部は、本疾患は腸炎ビブリオ菌による食中毒と判定、こういう続報が入りまして、その後六日の朝、韓国日報が、腸炎ビブリオ患者は新たに六十二名増加し、計百四十五名が発病した。このうち十四名が死亡し、現在百十五名が罹病中である、こういう新聞の発表があったことを伝えてまいりました。  さらに九日になりまして、NHKのソウル特派員からの外電として、韓国保健社会部は新型の疑似コレラと発表。そこで私どもは、さらに外務省を通じまして、疑似コレラなのかいかなるものなのかということについて照会をいたしました。四時二十分に外務省に公電が入りまして、これでは、九日正午、韓国保健社会部発表の内容は次のとおりである。アジアコレラ、エルトールコレラの二型のいずれにも該当しない。患者は四百名のうち二十四名の死亡がある。症状はコレラに似ているので、コレラに準ずる防疫対策をとる。ただしWHOには通報しない。これは、コレラに汚染された場合には、汚染地域を指定いたしましてWHOに報告をすることになっておりますが、この段階で韓国政府は、昨日の四時二十分、WHOには通報しないという電報でございました。  さらにこれが午後六時、夕方になりまして重ねて外務省へ公電が入りました。コレラ発生の汚染地区に指定をしたい、近く一両日中にWHOに通報の予定、こういう公電が入りまして、私どもはこの時点でコレラ汚染地区というふうな切りかえをいたしまして検疫体制を整えました。ただし、最初にございました九月三日の公電をもとにいたしまして検疫体制を強化していたことは、新聞その他で御承知のとおりと存じますが、特に韓国沿岸地域の門司、それから北九州、こういう地域の検疫所については、重点的に電話連絡をいたしまして検疫体制を強化してまいっているわけでございます。昨日の午後六時から、汚染地区の指定と同時にコレラの本格的な発生、汚染地域という判断のもとで検疫を強化して現在に至っているわけでございます。
  84. 河野正

    河野(正)委員 いま政府の報告を承りましても、今月初めからの情報というものは二転三転しておるわけです。あるときは疑似コレラといわれ、あるときは食中毒といわれ、あるときはコレラらしいといわれ、またWHOに対する通報にいたしましても、しない、またする、こういうふうに二転三転いたしてまいりました。そこで、どうも政府もこの二転三転した情報に振り回されたというふうな非難もございます。特に、韓国と日本との船舶の交流というものが非常に多い。特に北九州、関門でございますが、関門だけを見てまいりましても、年間出入いたしまする船舶五千隻の中の半数が韓国である。それから生鮮食料品、たとえば野菜、ノリ、サバ、エビ、こういうものもどんどん日本に輸入されておるということですから、やはり韓国におきまするコレラの流行は、日本と目と鼻の間に距離があるということ、それからいま申し上げまするように、生鮮食料品あるいは船の出入というふうな交流が非常にひんぱんである、こういうことで、特に厳戒を要するところだろうと思うわけです。  ところが、いまのように情報が非常に不的確で、ああでもない、こうでもないというようなことでは、この防疫対策というものが非常にむずかしいんじゃないか。それが結果的には国民にかなり大きな不安を与えておるのではないか、こういう感じを持つわけでございます。  そこで、三日からコレラに準じた検疫体制がしかれたということでございますが、きのうあたりのテレビなんか見ておりますると、外務省にはそういう外電が入ったけれども、厚生省からは現地に対する指示がないということで、板付空港あるいは関門港では戸惑っておるというような報道もございました。真偽のほどはわかりませんけれども、そういう報道が結果的には国民に不安を与える。そういう意味で、私どもも外務省、厚生省の連携プレーというものがいささか不十分ではなかろうか、こういう感じを持ったわけです。  そこで、一体上陸の可能性があるのかないのか、この点についてひとつ見通しと御見解を承りたい。
  85. 村中俊明

    ○村中説明員 コレラの今後国内に上陸するかどうかについての見通しの点でございますが、これは私非常にむずかしい問題だと思っております。ただ、過去三十七年、八年にも韓国でコレラの発生がありまして、相当強化された防疫検疫体制をとったわけでございますが、今回も私どもはこれとほぼ同じような体制をとりまして、前回成功したと同じような成功をおさめる努力をいたしたい。  具体的な問題といたしましては、ただいまも御指摘がございましたが、韓国の防疫の実態の把握をいたしたいというふうな考え方を持っておりまして、この点については、ただいま外務省と事務的に話し合いをいたしておりますが、ただ問題は、先ほど申し上げましたとおり、韓国自身の発表にも二転、三転したという経緯がございまして、私どもが十分な事前の措置のない状態で技術者を派遣した場合に、技術者が十分な協力を得られるかどうかという点についての若干の心配も私自身持っておるわけであります。そういう意味で、その辺の客観情勢を外務省を通じまして十分把握をいたしたい。もしも可能ならば、早急に専門家による現地の防疫体制の把握をいたしたい、こう考えております。
  86. 河野正

    河野(正)委員 情報が非常に不的確だったということについては、ぜひ反省をしてもらわなければならぬと思うのです。  それからいま一つは、今度の韓国におけるコレラの状況というものは、死亡率がわりあい低い。それから菌の形状が異なっておる。そこで、これから総合して、新型のコレラ菌、こういうふうにいわれているわけです。そこで、現在日本にも四百万のワクチンが用意されておると聞いておるわけですが、はたして新型の場合、一体このワクチンというものがどういう効果を持つのかどうか。特に、時間があればあとで触れると思いますが、今度宮崎で起こりましたボツリヌス菌の問題、これもやはりワクチンが非常に問題になっておるわけです。ですから、新型の場合の防疫体制が一体どうなるのか、この点についてもひとつ御見解を承っておきたいと思う。
  87. 村中俊明

    ○村中説明員 これも、韓国の政府筋の発表によりますと、アジアコレラでもない、エルトールコレラでもない、新型のものでないかというふうな見解があるようでございまして、この点は現在まだ確認をいたしておりませんが、過去のデータによりますと、たとえばエルトールコレラがフィリピンで流行いたしました際に、抗原構造が共通部分が相当あるというふうなことで、アジアコレラのワクチンを接種してある程度の効果をあげた実績があるわけでございまして、私の判断では、おそらくコレラというカテゴリーの中に入るものであれば、型の上で異型のものが出たといたしましても共通抗原は相当あるんじゃないか。これはエルトールコレラについての経験からでございますが、そういった判断をいたしております。  なお、全般的な防疫対策といたしましては、これはアジアコレラ、エルトールコレラ、あるいは韓国で報道しております新型というふうなこと共通で全般的な防疫対策はできると思います。そういうふうな判断をいたしております。
  88. 河野正

    河野(正)委員 そういう判断が甘くなければけっこうですけれども、実はいまも指摘いたしましたように宮崎県で起こったボツリヌス中毒、これは日本ではE型の血清しかなかった。ところが実際発見しましたのはB型であったということで、非常に血清対策というものが後手になったという経験もあるわけですね。ですから、アジアコレラ、エルトールコレラの場合に、共通点があってかなりの効果があったといっても、今度の新型に対して効果があるかないかということについては、これはおのずから別な問題だと思うのです。それを初めからアジアコレラ、エルトールコレラにおいて、ワクチンというものが非常に共通した効果があったということを前提として対策を立てられることがいいか悪いかというと、それは私は疑問があると思うのです。ですから、そういう点はむしろもっと慎重なかまえで臨むべきだと思うのです。これは時間があれば申し上げますが、九月のことですけれどもボツリヌス中毒で苦い経験が出ておるわけですね。そういう意味でいまのような情勢判断というものは少し甘過ぎやせぬかというような気がいたします。ですから、やはり新型ならば新型というものに対する取り組みというものは慎重に取り組んでいかなければならぬ、こういうように考えるわけですが、その点いかがでございますか。
  89. 村中俊明

    ○村中説明員 御指摘のとおりでございまして、これは別な外電の報道によりますと、学者の発表が新聞に報道されておりまして、これによりますと、当初腸炎ビブリオというような話がありましたし、一応私どもも現在の段階でできる体制をしいておりますが、先ほども申し上げましたように、もしも向こうの受け入れ体制が可能ならば、できるだけ早く現地に参りまして、防疫体制と合わせまして向こうで流行している菌株の把握というようなこともぜひいたしたい、こう考えております。
  90. 河野正

    河野(正)委員 ころばぬ前のつえということばもございますけれども、ぜひ万全の検疫体制というものをひとつ確立してもらいたい、こういうように思います。  そこで、もとに戻りまして、食品公害に論議を進めてまいりたいと思いますが、八月の二十五日、御承知のように北九州カネミの油症患者問題について福岡県警小倉署は、その刑事責任追及のために書類を送検をした、こういうことになっておるわけでございます。むしろその処分というものがおそ過ぎたという議論もございますが、一応この際刑事責任を追及した点について、警察庁当局の経過報告を承わっておきたいと思います。
  91. 小野島嗣男

    ○小野島説明員 ただいまの事件につきまして、警察段階における捜査は大部分終わりまして、お話にありましたように、検察庁に送致いたしておりますが、なお一部捜査を警察において続行して追送する予定のものもございます。また本件につきましては検察庁でなお取り調べ中でございます。  本件告訴また告発がございまして、直ちに小倉署に特別捜査本部を置きまして、福岡県警では鋭意捜査をいたしたわけでございます。約十カ月にわたって捜査しておるわけでございますが、本件は被害者が十三府県にわたりまして、九月現在の報告では、千四百七十四人の関係者を取り調べております。捜査員は、延べ約一万二千人動員したというような報告でございます。したがいまして、非常に広範な捜査になりましたので、長期にわたったわけでございます。  また事件が非常に技術的な専門的な内容を含みますので、そういう点でも困難な捜査でございましたけれども、九州大学の篠原教授をはじめ、その他専門家、学者の方々の御協力を十分得まして七次にわたる鑑定をいたしました。その結果業務上過失傷害罪関係としては、カネミ倉庫株式会社の社長加藤三之輔外二名を、不正競争防止法関係につきましてはカネミ倉庫株式会社の社長加藤三之輔外三名と法人カネミ倉庫株式会社を、軽犯罪法関係といたしましては同社の営業部長林清を、食品衛生法関係につきましては社長の加藤三之輔を、それぞれ法違反の疑いがあるということで八月二十五日福岡地方検察庁小倉支部に送付いたしました。  本件は、油症患者約八百八十六名のうち、福岡関係の油症患者三百五十八名を被害者として送付いたしておりまして、なお、その他の被害者はございますが、その被害者捜査はさらに続行中でございます。  以上のような状況でございます。
  92. 河野正

    河野(正)委員 いま申し上げましたように、このカネミの社長らの書類送検というものは、今後の補償問題の足がかりになるであろうという面においては非常に期待をされております。ところが逆にこれで事件が一段落したというふうな気持ちは受け取られますると、かえって今後の対策というものが手ぬるくなるのではないか、こういう心配もあるようでございますが、こういった一応の第一段階の結論が出たわけですが、これに対して一体どう対処するのか。それには刑事責任に対する点ですから、したがって補償問題が中心となるわけですが、この補償問題については一体政府としてどうお考えになっておるのか、この点についてはひとつ大臣から御見解を承わりたい。
  93. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 補償問題につきましては、やはり原因者に補償をさせるというのが、今日の法制のたてまえでありますから、そのたてまえでまいるべきものだと考えております。ただ、現実問題としてそれで事が片づくかどうかというと、そこにまだ問題が残ると存じます。これをどう処置していくべきかと、ただいまいろいろと検討をいたしている次第でございます。
  94. 河野正

    河野(正)委員 補償問題については、広い意味の食品公害、狭い意味では今度の刑事責任追及というものは一つの私害だということもいえると思います。ですからそういう意味では、まず第一に加害者とも目さるべきカネミの会社が、その責任を持たなければならぬということは当然のことだと思いますけれども、しかし現状では、なかなかこの話がうまく進展するというようには予測をされない状況にあります。これは大臣もしばしばの陳情でお聞き取りのとおりです。したがって、その足りないところはやはり政府が何らかの形でこの問題の解決のために努力をするということでなければならぬと思います。そういう意味で、検討をされることが、どういう形で補償問題の解決に当たっていくかという、そういう意味の検討だろうと思うわけですけれども、この点は非常に現地でも心配をいたしておりますので、大臣の気持ちをぜひひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  95. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 こういった食品使用者の被害につきましては、被害者の実態によって考えていかなければならぬのじゃないだろうかと考えております。当初では、おそらく油症の治療もむずかしいには違いないが、しかしそう長くかからないで決着がつくんじゃないだろうか、こういうように九大のお医者さんその他からも伺い、またそうでもあろうかと考えておったわけでありますが、そういう場合の考え方と違って、どうもこれが非常に長引いて、そしてあるいは後遺症も残すかもしれない、その間にさらに内臓もおかされるかもしれないというようなことになってまいりますると、これは治療対策をもちろん急ぐ必要がありますが、それと同時に、そういうことから起こってまいりまする患者に対する社会保障的な考え方を取り入れていかなければならないのじゃないだろうかという気がいたします。法律一片でいけば、これはカネミで支払わせるべきものだ、こうありましても、そのしかたがきわめて複雑であり、なかなか急の間に合わない。裁判に持っていってもそうだ。そこでまず実際問題として、見舞い金というような程度で、どの程度のことがカネミでやれるか。それは現実に一度、二度と見舞い金も出しておりますが、どうもその程度では追っつかなくなりそうでございます。こういうように固定をいたしてまいりますると、ちょうど公害による被害患者のような扱いを場合によってはしなければならないのじゃないだろうか。それにはまた法律も要るんじゃないだろうか。公害被害に準じたような扱いをしなければならないのは、この場合だけでなしに、他にも起こってくるんじゃないだろうか、そういうこと。これは私、ただいま自分だけで考えておりまして、これからこれを事務的に検討させ、また党や皆さま方の御意見も伺って、そうして、そうだ、それがよかろうということになれば、そういう措置もとっていかなければなるまい、今日の事態に即応してただいまそういう心境でおりますので、御批判をいただきたいと思っております。
  96. 河野正

    河野(正)委員 法律的な責任は別といたしましても、市民の健康、国民の健康をいかにして守っていくかという立場から、いま大臣からもいろいろと適切なお答えがあったわけですし、私どももそれについては全く同感でございます。  そこで問題は、それならば、そういう考え方で今後いろいろやっていただくとする際に、やはり特別の機関というのか、そういうものをつくって、そこで御検討願う。ただ、窓口がばく然としておりますとなかなか思うようにまいりませんから、しかもいまのこの補償の問題は、いま大臣お答えになったように、だんだん病状が長引く。最初は皮膚疾患であるといわれたけれども、内臓にもきわめて顕著な変化があるというようなこと、それから塩化ジフェニールを体外に出すにいたしましてもなかなか思うように排出ができない。そういうことで生活は苦しくなるということですから、やはり早急にこの問題に対する結論というものを出してもらわなければならぬというようにわれわれは思います。聞くところによりますと、現地の市議会でも、議会各派の代表が上京して厚生大臣に対して補償交渉の機関をつくって解決されてはどうだというふうな意見も出ておるというふうに聞いておるわけですが、この際カネミの社長らが書類送検されたというのを契機として、やはりこの問題も一歩進める段階だと思いますので、それについて具体的な御見解をお聞かせ願えれば幸いだと思います。
  97. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 私、先ほど申し上げましたのは、相当具体的だと思っておるわけであります。これについては別に機関とかいうものを設けなくとも、私の手元におきまして、関係省、それからやはりまず与党の意見も聞き、御賛成を得て、そしてやってまいりたい、かように考えております。
  98. 河野正

    河野(正)委員 与党の意見だけでなくて、野党の意見も聞いてぜひやってもらわないと、せっかく国会で取り上げても、何のために取り上げたかわからなくなりますので、広く与野党の意見を聞いて対処するということにぜひしてもらいたいと思うのです。
  99. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 もちろん野党の御賛成を得なければならぬことは当然でありますが、まず足元を固めませんと、与党から反対されるのではとても出ませんので、まず与党の御意見を伺って御賛成を得、それについてまた野党のほうへと逐次お願いをいたしたいと思っております。
  100. 河野正

    河野(正)委員 ぜひひとつこの補償問題については、この際刑事責任の追及が行なわれたということを契機として、ぜひ前進をはかってもらいたい、こういうふうに思います。  そこで、いま一つの問題は、やはり今日まで的確な治療方法がつかめない。ですからこれについては国はもっと研究させたいということで、一応この油症対策費として三千万円が治療研究促進のために科学技術庁から支出された、こういうことになっております。このことは今後非常に大きな効果が出てくるだろうと思うわけですけれども、何しろ治療方法がつかめないということは、患者にとりましても非常に大きな、深刻な不安ですね。治療方法がつかめておれば、いつの日か必ずなおるだろうということで、少々時間がかかりましても安心感というものが出てくるだろうと思うのです。そこで、いま一番深刻な悩みというものは、治療方法が明らかでないということだろうと思います。  そこで、今後もひとつこの原因探求あるいは基礎研究、こういう点に対してはひとつ積極的に研究費を支出してもらいたい。今度は科学技術庁から三千万円ということでございますけれども、ひとつ十二分な配慮を願いたいと思います。この点について前向きの御見解を承っておきたいと思います。
  101. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 おっしゃるとおりでございます。まず先決問題といたしまして、患者の身になって考えてみましても、治療方法を早く確立してもらいたいというのがまず第一の切なる願いだ、かように考えまするし、われわれ考えましてもさように責任を感じまするので、治療費三千万を一応科学技術庁からもらいましたが、さらに研究費の不足のために遅延をするということのないように、全力をあげて治療の研究、発見につとめたい、かように考えます。
  102. 河野正

    河野(正)委員 御承知のように、今日まで九大が中心になってこの研究に携わっておるわけですが、その九大の治療研究班に対して北九州が百万、厚生省が百五十万、福岡県は昨年五十万、ことしさらに二百万、そういうことで、なるほど科学技術庁が三千万は出しましたけれども、厚生省の支出はわりあい少ないのですね。これはもちろん厚生省と科学技術庁といろいろ話し合いになって出ておるわけですから、どこから出てもけっこうですけれども、厚生省はもっと新年度においてはひとつ熱意を示してもらいたい。特に今日も、七月末現在で九百十三人、それから八百二十一人が治療中であり、四百十二人が重症だといわれておるわけですから、やはりこれは早急に研究体制を確立するということだと思います。  それからいま一つ伺っておきたいと思いますのは研究体制の問題でございます。これは主としていままで九大が中心になって、それに久留米大学がお手伝いをするというのが大体中心でございました。しかし、何といっても原因が十分つかめない。原因がつかめないから治療法のきめ手がないということですし、それからずっと今日まで経過を見てまいりましてもわかりますように、当初は皮膚症状だ、内臓に変化がないといわれてまいりました。それからだんだん治療をやってみたけれども、なかなか思うようにいかない。そして山口と福岡でなくなられた方の解剖をやってみたところが、副じん皮質に変化があった、こういうことがわかって、そこから初めてこれはどうも内臓に変化があるぞということで精密検査が始められた。こういう経過をたどっておるわけです。  そこで、やはり研究体制というものをそれこそ早急に確立する。いまは九大中心でございますけれども、あらゆるその研究者が英知を集めて、そてすみやかにその原因を探求し、治療方法をつかんでいくという方向でやってもらわなければならぬと思います。  そういう意味で今後この研究体制と申しますか、治療体制と申しますか、そういうものについてさらに積極的な方策をとってもらいたいという私どもの願いに対して、ひとつ厚生省の御見解を承っておきたいと思います。
  103. 金光克己

    金光説明員 研究体制の強化の問題でございますが、先生のお話のように、従来九大の油症研究班を中心に研究をやっていただいておったわけでございますが、この点につきましてはいろいろとこの治療面におきまして非常にむずかしい問題があるということで、これが研究の体制の強化をする必要があるという要望も非常に出ておるわけでございます。そういう意味で、本年度の研究費の運用につきましては、九大のほかに関係県、患者の発生している県の大学等の研究者も参画していただきまして、研究体制を強化し、衆知を集めて一つの研究を進めてまいりたい、かように考えている次第でございます。
  104. 河野正

    河野(正)委員 巷間伝うるところでは、九大の油症研究班というのが中心になっておるようで、各大学の英知というものが結集されたようには理解していない。いろいろ口添えを受けたりあるいはサゼスチョンを受けたりしておるか知らぬけれども、それをこの際一つの研究班なら研究班の体制の中に総まとめにしたらどうかということですね。そうしてやれば、いままで研究費等は九大のほうにいっておったはずですが、そういう研究体制に研究費その他がつぎ込まれるということが、この問題の解決の最も近道ではなかろうかというふうに考えるわけです。少なくともいまいろいろ世間に出ておる表現では九大の油症研究班ですね。ですからそれをもう少し具体的に強化したらどうか、そういうことを申し上げているので、そういう点についてひとつ善処をお願い申し上げたい、こういうことです。
  105. 金光克己

    金光説明員 先生のおっしゃるように、九大の油症研究班が従来ずっと続けて研究してまいっておるわけでございまして、やはりこの上に積み重ねた研究を進めていくということが根本的に必要なわけでございますから、どうしても九大の油症研究班というものが中心になってもらわなければならぬと考えておるわけでございますが、それに加えまして長崎医大とか、あるいは山口医大等におきましても、ある程度の研究はやってきておるわけでございますから、そういった方々、さらにまた特別な研究者の方があれば参画していただく、かような形で進めてまいりたい、かように考えているわけでございます。
  106. 河野正

    河野(正)委員 各大学それぞれやっておられるわけですが、それを終局的には一元化していくということですね。研究の一元化と申しますか、やはりばらばらやるとお互いに同じようなことをやっても非能率的だと思うのです。そこである程度結局お互いに連絡しながら、統一した、一貫した体制で研究していくほうがより能率的ではなかろうか、こういうことを感じまするがゆえにいまのような意見を申し上げたわけですから、ぜひそういう意見を取り入れながら、すみやかに油症の真の原因が探求され、そしてその上に立って治療のきめ手が出てくるようにひとつお願いをいたしたい。そういう意味でひとつ前向きな厚生大臣の御見解を承って私の質疑は終わって、あと大橋さんに譲りたいと思う。
  107. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 私も同様にむしろもどかしく思っているものでございますので、ただいまの御意見のように今後さらに十分検討いたしまして、そして万遺憾なきを期してまいりたいと存じます。
  108. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)委員長代理 大橋敏雄君。
  109. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 ただいま河野委員から質問があっておりますライスオイル事件に関連しまして、私も二、三質問してみたいと思います。  油症患者原因となりました塩化ジフェニールというもの、商品名はカネクロールといわれておりますが、これが油症患者の内臓部分に沈着している、こういう疑いが強まりまして、最近あらためて動きが活発になってきたわけでございますが、特に副じん障害があるというふうに考えられまして、最近九大では全患者の再診察をしまして、その中で百十三名ですか入院を指示した、こう聞いておりますけれども、その状態はどういうふうになっておるのでしょうか。何か三つの病院に収容するとも聞いておりますけれども、そういう内容についてまず報告願いたいと思います。
  110. 金光克己

    金光説明員 油症患者の症状の問題でございますが、御説明のように、当初は皮膚症状ということでございましたが、最近内臓にも障害が起きているのではないかというような考え方が一部出ておるわけでございます。これにつきましては、先ほど御説明のございましたように、副じんの異常あるいは肝臓機能がおかされておるのではないかというような疑いも出てきておるわけでございますが、これはまだそうであるときまったわけではないわけでございまして、そういうような疑いを持ちながらいま研究を進めておるような状態でございます。  それで患者につきまして、地元におきまして精密検診を八月四日から二十六日に分けまして、九州大学の油症研究班が中心になりまして精密検診を行なったわけでございます。全部で三百三十四名の検査をいたしまして、そのうちに精密な検査を必要とする、たとえば副じんの機能をさらに調べてみる必要があるといわれるのが百十二人あったということでございます。それから胃の障害と申しますか、そういった胃の検査をさらに精密的にやる必要があるという患者が七十一名、こういうような結果が出ておるわけでございまして、こういうことで、入院させて、こういった精密検査を行なおうという方向で現在進めておるというふうなかっこうでございます。
  111. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いま言われましたように、再度精密検査をやらなきゃならぬのが百十二名ですね。その百十二名は全部入院させるというわけですか。その点はどうですか。
  112. 金光克己

    金光説明員 その入院をどこまでさせるかということにつきましては、私まだ詳細を聞いておりませんが、この百十二名というのは、副じん機能について要精密検診、さらに精密に検診をする必要があるという患者数でございますので、入院につきましては現在資料を持っておりません。
  113. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 新聞の報道によれば、九大と、北九州の小倉市民病院と、田川市民病院に分散入院させるんだというふうに出ておりましたが、まだそういう入院は現実にはなされてないわけですね。
  114. 金光克己

    金光説明員 精密検診につきましては、一部は入院する必要があるかと思うのでございますが、いまその数字につきましては報告を受けてないということでございます。
  115. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 患者にしてみれば、これは重大問題でございますので、こういう点については、もっと積極的に情報を収集して、指導も徹底してもらいたいと思います。いまのような報告では、患者はますます不信を抱き、不安を抱くのではないかと思います。というのは、もう御承知のとおりに、去る七月八日と九日に二名の確症患者がなくなっております。この死亡された二人の内容が、いままで皮膚だけの問題だと思っておったのが、全くその内容が違って内臓にきておる、副じんにきていたということで、このような再検診になったわけであろうと思いますが、この死亡の原因が、先ほどのお話では、油症と直接関係があるかないかはまだはっきりしていない、こういうお話でございますけれども、もうすでに二カ月間を経過しているわけですけれども、大体の傾向としてはもうつかまれているのじゃないかと思うのですが、この点についてはどうでしょうか。
  116. 金光克己

    金光説明員 二名の死亡した患者につきましては、御承知のように一人は山口県の方でございまして心不全ということでございますが、胸腺リンパ体質による心不全の死亡ということでございます。それからもう一人は福岡県の方でございますが、穿孔性胃かいようということで入院されておったわけでございます。そういうような方でございますが、いずれにしてもショック死と申しますか、そういった体質的な問題だということが一つの問題として提起されておるわけでございます。それで現在のところでは、死因と油症とは直接関係がないと考えられておるわけでございますが、病理学的な検査というのは、やはりまだまだ続行しているわけでございますので、その結果が出ませんと、最終的なはっきりしたことは結論がまだ得られないというような状態でございます。
  117. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 患者の皆さんは、もう前々からこれは内臓にきているというように感じていたらしいですね。道を歩きながら目まいがするとか、そのほかいろいろと、内臓からきているのではないかという感じを大いに持っていた。しかしながら、治療というものは皮膚病の治療のみであったというようなことで、だいぶ長い間そうした措置に対して不安を抱き、不満を持っていたわけですが、この二人の犠牲者が出て、さらに患者の不安は深まっておるわけですよ。したがいまして、緊急入院の措置等は、私はりっぱな措置であると思って見ていたわけでありますが、きょうの報告によりますと、その実態はまだ把握されていない。こういうことでは、この問題について、政府は消極的な態度であるなというように見られるのですけれども、厚生大臣にお尋ねいたしますが、このようなことでよろしいでしょうかね。
  118. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 私といたしましては、患者の治療等につきましても、もっともっと早く把握をいたしたい、かように考えておるわけであります。先般も、そういう意味で治療関係者の会議も開いてもらい、厚生省にこれの対策本部を設けましてやっと出発をいたしたところでございますが、ただいまおっしゃいますようなお感じをお持ちになられるようなことでは相ならぬと存じますので、今後さらに真剣に取り組んでまいりたい、そのためには部員を督励いたしまして、御期待に沿うようにいたしたいと思っております。
  119. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 患者さんはこう言っておりました。確かにこのライスオイルによる症状というものは、拡大していくものではない、もうすでに根がとめられておるわけですから。そういう立場から、国としても、また九大の諸先生方のこれに対する考え方も甘いのではないか。つまり広がっていく心配がないということから、対策に対して手心が加えられておるのではないか。確かに毎週土曜日に、外来患者の診療をなされておるようでありますけれども、その患者さんの率直な意見は、非常に心もとない感じがすると言っておりましたから、いまの大臣お答えにありましたように、さらにこの問題について積極的に指導していただくことを要望しておきます。  次に、治療方法についてでございますけれども、塩素剤を手で扱って皮膚から体内に入ったという事例は過去にあった。ところが、口から入ったという例はいままでなかったそうですね。したがって、その治療方法も現在までは決定的なものがないということらしいのですけれども、もう一年数カ月たった今日ですけれども、これに対していまだに決定的な治療方法は見つかっていないのか、疑問を抱いておるのですが、この点はどうでしょうか。
  120. 金光克己

    金光説明員 治療方法につきましては、現在研究しながら治療を行なっておるわけでございまして、対症療法を中心にいろいろと行なっておるわけでございますが、たん白同化ホルモン等を利用するとか、その他いろいろと方法を講じておるわけでございます。現在、これが一番いい、これが非常に効果があるという結論は出ていない、こういうことでございまして、今後もこれの研究につきましては鋭意努力してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  121. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 先ほど河野委員からもお話がありましたけれども、この治療方法が見つからないというのは、研究費そのものがいままで非常に少なかった、あるいは治療費がなかったということからおくれたんだという意見がかなり強く出ております。今回三千万円の費用が予算化されたということを聞いておりますが、これは科学技術庁ですね。厚生省からは百五十万ということを聞いておりますけれども、まずその金額の点について確認してみたいと思います。
  122. 金光克己

    金光説明員 前年度合計二千五百万円の研究費を支出いたしたわけでございまするが、本年度に入りまして、なかなか治療の方法が発見できないというようなことで、とりあえず厚生省におきまして、医療研究助成補助金から百五十万円の研究費を出したわけでございます。それから科学技術庁と協議いたしまして、先般三千六十七万七千円という特別研究促進調整費を支出することに相なったわけでございます。そういうことでございまして、この研究費は一部は中央におきましても研究費に充てるわけでございますが、油症治療研究班に対しまして約千六百万円を見込んでおるということでございます。昨年の治療研究費につきましては、油症研究班に五百六十万円支出いたしておるわけでございます。それに対しまして、今年度は約千六百万円支出する、かようなことにいたしておるわけでございます。
  123. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 その予算が実際に使えるようになるのは大体いつごろなんでしょうか。
  124. 金光克己

    金光説明員 現在研究につきましては準備を進めておるわけでございまして、少なくとも九月下旬か十月初旬には、福岡におきまして研究関係者が集まりまして打ち合わせ会を実施いたしたい、そういう運びにいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  125. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 九大の先生方が口をそろえて言っていらっしゃることは、研究費が少ないので、治療費が少ないので思うように治療方法が見つからないのだ、こういうことでございました。したがいまして、今度いまのような予算もはっきりついたことでありますし、そういう予算的なことで治療方法が見つからないなんということはもう言われないと思いますので、そういう点もあわせて一日も早く治療方法の開発を急いでもらいたい、このこともあわせて強く要望しておきます。  時間がないので次に移ります。  補償問題でございますが、これも河野委員から質問がありましたけれども、とにかくライスオイル事件というのは確かにカネミの責任でありますけれども、大きく見れば食品行政の不備であり、あるいはまた監視体制の弱さからきているんだ。したがいまして国として、厚生省として責任なしと断じて言えないわけです。特に患者さんの実生活を見きわめられまして、この補償問題については積極的に取り組んでいただきたい。患者の家族の生活は、想像以上にかわいそうな状態であります。とにかく不安定な状態に置かれて、日々かぼそい生活をしておるわけでございます。先ほど警察関係の説明がありましたけれども福岡地検小倉支部も、九月八日にようやく初めて実地検証に乗り出した。いずれは刑事責任もはっきりすることでありますので、そのときになればまたその後の措置がとられることは明瞭でありますけれども、その間の患者の生活の問題があるわけです。そういう点もよく考えられまして、先ほど言いますように積極的に手当てをしていただきたい、こういうわけです。  そこでカネミの態度でありますけれども、この原因がまだはっきりしないうちには非常に強気なことを言っておりました。もしわが社のオイルによってこういうことになっているというならば、会社あげて全力で補償に当たります、このように言って、患者の皆さんある程度安心をしていたわけでございますが、だんだんこの原因が確かにカネミのオイルであったということがわかってくるにつれて、会社のほうとしては、金がないから操業さしてほしい、再開さしてほしい、仕事をして、それから出てくる利益でもって補償を考えてみたいというような非常に弱腰に変わってきたわけです。こういう点について患者さんはとにかく不安を抱いているわけですが、先ほどの答弁にもありましたけれども、もう一度、大臣として、この補償問題についてはどのような態度でお取り組みになるのかお答えを願いたいと思います。
  126. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 先ほども河野委員お答えをいたしましたように、補償問題は会社と被害者の関係だというのが今日の法的な解釈でございます。しかし、法的な解釈に従って、会社もできるだけのことを事前にもいたすというので、見舞い金あるいは治療費としていままで二千万円ほど出しているそうでありますが、しかし、それではまだ患者にとっては十分でない。また、今後どれだけ要るかもわからない。日常の生活にも困っておられる人もあるわけです。したがいまして、そういった会社の補償をできるだけ、まず少なくとも、法的な最後の損害賠償という問題に決着する前に、見舞い的なものをもっとやらせるべきだと考えております。これは地元においてもそういうように慫慂いたしております。しかし、おそらく会社も誠意をもってやっても、やるにはおのずから限度もあることだろうと思います。将来全額補償費を見積もればどうなるか、これはまた見込みも立たないことだろうと思いますし、これは会社とそれにまかしておいて、その間のあっせんをはかっていくということも必要であり、これは地元でやらしておりますけれども、それにも限度もあろうと思います。  同時に、これが長引いてくればやはり水俣病の患者さんの人たちに講じたような、公害に準じるような措置も必要ではなかろうか。それには法律の制定あるいは改正が必要じゃなかろうか。今日の生活扶助あるいは医療扶助等でまかなえるものは、できるだけそれを適用してまいりますけれども、及ばない点が多々あると思いますから、その点は先ほども申しますように——これはただいま私の頭の中で考えておるところでありまして、きょう申し上げるのが初めてでありますが、この考え方をもとにしてそういった方法をひとつ十分検討してまいりたい、かように思っておるわけであります。
  127. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)委員長代理 大体時間が尽きておりますから、簡単に願います。
  128. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 はい。かつて森永ミルク砒素混入事件があったとき、この補償問題については、厚生省として、国として非常に積極的な態度でそれに当たられているようでございます。いまの大臣の答弁を聞いてそういう心情がありありと見受けられますので、ひとつ口ばかりでなくて、ほんとうにその渦中に飛び込んで補償問題については特に指導していただきたい。これも要望としてとどめておきます。  時間がきましたので終わりたいと思いますが、とにかく緊急入院等の措置がとられるにあたりましても、患者の家族構成などから見まして、その生活の中心者が入院しなければならないというようなところもかなりあるようでございます。その家族の不安を一日も早く取り除かれるような特別な措置をとっていただきたいこともあわせて要望いたしまして、終わりたいと思います。
  129. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)委員長代理 岡本富夫君。
  130. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 私は、きょうは主として社会保障の中で、児童手当の実施について若干質問をしたいと思います。  最近若年層が非常に減っておる。聞くところによると、毎年赤ちゃんの数がどんどん減ってくる、こういうことでは将来の国の人口問題にかかわる、まして国の衰亡にかかわることでありますがゆえに、この問題を究明していきますと、物価の上昇と、それから子女育成に非常にたくさんの費用がかかる。そのために子供を産まない、産児制限していく、こういうような状態でありますがゆえに、一日も早くこの児童手当については、国の大きな将来の問題として解決しなければならない、こういうわけで、私ども公明党が非常に要求いたしまして、全国で百三十八市にわたっていま行なわれておる、こういうような状態でありますけれども、世界の六十二カ国でもすでに実施されておりますが、非常に児童手当についてはおそいのじゃないか、こういうわけでありますが、そこで、この児童手当について今度の厚生大臣は非常に熱心に取り組んでいる、こういうように伺っておりますので、どういうような構想でやるのか、これについてひとつお聞かせ願いたいと思います。
  131. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 すでに児童手当審議会に御諮問を申し上げ、私の考え方を述べまして、できるだけ近い機会に、十月中あるいは十一月初旬ごろまでに、とにかく一応の御答申をいただきたいとお願いをいたしておるわけであります。  そこで、構想と申しますのは、いわゆる被用者の児童と被用者でない人の児童というものを区別をしないで、一律に支給いたしたい、金額も一律にいたしたい、考え方は世界で六十二カ国が児童手当を出しておりますが、しかしながら、国民すべての児童にというのは私は二十二、三カ国だと思っております。他の諸国は、ほとんど被用者の児童に対する児童手当であります。これらは多くはいわゆる賃金体系を直して児童手当というものに振りかえていったという経過をたどっているようでありますが、しかし今日、ただいま岡本さんのおっしゃいますような事柄もあり、また児童を扶養するということに対する家計の援助、それをやることによって児童の健康な育成ということが児童手当本来の趣旨でございますから、したがって、被用者あるいは被用者でないものと区別なしに、一律の児童手当ということにいたしたいというのがまず第一点。  それから児童手当はすべての児童、いわゆる学齢児童、十五歳未満の児童全部に支給をするというのが本体でもありましょうが、まず実施の可能性ということも考え、あるいは緊急な必要度ということから考えますと、さしあたっては三番目の子供から支給するということにしたらどうであろうか。  金額はこの前の児童手当懇談会で答申をいただきました被用者の児童には三千円、被用者でないものには千五百円という答申でありましたが、それを一律に三千円ということでいったらどうであろうか。また所得制限はなるべくしないように、高額所得というところあたりで制限をしていったらどうであろうか。あとのこまかい問題は多々ございますが、根本はそういうところで考えたらどうであろうか。  財源は、国費だけでやるか、そうでないものも入れるか、私の考えといたしましては企業者にも一部負担をしてもらう、それは二本立ての場合には企業が大部分負担して、国費が一部という答申もいただいております。先ほど申しました外国のいわゆる被用者の児童手当というものは、ほとんど企業者が相当部分負担をいたしておりますが、今度は一緒にするわけでありますから、一緒にした場合に企業者で負担をしないということでなくて、やはり企業者にも負担をしてもらうというのがいいのじゃなかろうか。さらにまた地方公共団体におきましても、金額はわずかでありますが、すでに児童手当というものをやっているところもあるわけでありますので、公共団体自身、そういった事柄に関心を持ち、地方費を支弁するという、何といいますか、一つのニードもあるわけでありますから、したがって、国費と企業負担、地方団体の負担、この三者を適当に負担割合をきめて、そうして一括した財源として支給をすることはどうであろうか、この点を御諮問を申し上げているわけでございます。
  132. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 大臣の大体の考え方はわかりましたが、そこで、いまのところでは、大体予算要求する国庫負担の予算は、全部でどれぐらいになりますか。
  133. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 私の考え、御諮問申し上げておりますような考え方によりまして、年間四、五百億程度であろうかと考えております。
  134. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 大体、こういった若年の児童の方は、やはり公平に、差別のないというのが非常に望ましいと思いますが、そこで、私ども公明党でかつて教科書の無償配付について政府に申し入れて、やっと全部いま支給されるようになった。非常に喜んでおるわけでありますが、そういう見地から見まして、いま大臣は第三子ということでありますが、これは将来全児童、要するに一子から全部支給してあげるのが望ましい、こういうように思いますが、そういうように漸増していく考えはあるのかどうか、これをひとつお聞きしたいのです。
  135. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 この点は非常に大事な問題だと考えております。望むらくは全児童にということが理想であるという考え方もございましょうし、また所得政策といいますか、賃金政策といいますか、二子くらいは養える程度の所得の保障をすべきじゃないか。それは経済政策において、あるいは賃金政策においてという考え方もあるわけでありまして、そこらは私もちょっと判断をいたしかねておるわけでありますので、児童手当審議会におきまして、恒久的なものとして、どれが理想であるかというところも御論議をいただきたい、かように申しておるわけであります。
  136. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 大体、次の国会に提出されるようなお答えをいまいただきましたが、そこで生活保護者——所得制限のほうは高額所得者、すなわち五百万円ぐらいと見当していいと思いますが、生活保護を受けている方、これは二万九千九百四十五円ですか、この生活保護を受けている人に対して児童手当が出た場合、その生活保護が削られる、こういうようなことでは、せっかく支給をいたしましてもそれだけ少なくなるのであれば、これは何にもならない、こういうように思うのですが、その点について大臣のお考えをお伺いしたいと思うのですが、どうですか。
  137. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 私はただいま、一応そのために、生活保護者の所得に認定するということは適当ではないと、かように考えております。
  138. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 いま適当でないというお話しでありますけれども、生活保護を受けている人たちが、たとえば六千円受けた、それも削られるというようなことでは、まことにこの児童手当というものはその目的を達しない、こういうわけでありますので、これを法的にどういうように解釈をしたらいいのか、その点について……。
  139. 坂元貞一郎

    ○坂元説明員 児童手当と生活保護等の他の制度との調整、これは今度の児童手当制度を立てる場合の一つの問題点でございます。重要な検討課題でございます。したがいまして、私どもとしましても、児童手当審議会の答申をいただくわけでありまするが、その答申の際にも、この問題は当然根本的な課題として議論がなされると思いますので、そういう答申を得ましてから最終的に厚生省の態度がきまるわけでございますが、児童手当と生活保護なり他の公的年金制度とどういうふうに調整していくか、この調整の方法、これは過去の例からいいましてもいろいろあるわけでありますので、どの方法が適当か、また技術的に可能か、あるいは事務的に非常にやりやすいかやりにくいか、そういう点を中心としていま省内で相談をしております。しかし、最終的な態度というものは児童手当審議会の答申をもらいましてから、その答申の結果を十分われわれも尊重する、こういう立場考えるわけでありますが、児童手当制度というものがつくられる、そういう特別な趣旨が没却されないような方向で考えていくべきだ、私どもはいまこういう基本線で省内で相談をしている、こういう段階でございます。
  140. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 児童手当についての御構想がわかりました。  審議会の答申をよく——というような御答弁がいまもありましたけれども、これは審議会の答申を全面的に尊重するという政府のいままでの態度ではなかったように思います。これは選挙制度審議会も同じでありますから、ひとつこの点について、厚生大臣、いまのあなたの構想がゆがめられるような、またそれよりも後退するような審議会の答申であれば、これはひとつ積極的に、いま大臣お答えになったような構想に戻していくようなやり方の法案をつくっていただきたい。この点についての御確信はいかがでございましょうか。
  141. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 局長は審議会に対する点もあって、きわめて慎重に述べておりますが、審議会がどういうことをいおうとこれでいくのだというなら、審議会は要らぬじゃないかといって審議会からおこられるわけでありますが、しかしながら、政府あるいは厚生大臣は、これがいいと思っておりますので、御審議をいただきたいと審議会において申し上げた以上は、できるだけその趣旨に沿うて御研究をいただき、しかし、審議会のほうでいろいろ御議論を賜わり、なるほど自分の意見よりももっといい意見を出していただいたということであれば、それに従いたい、かように考えておりますので、私もただ無責任に御諮問申し上げ、またわれわれの意見を審議会において述べているわけではございませんので、少なくともいま申し上げたような諸点を最低なものとしてまず出発をいたしたいという、その趣旨を十分審議会の皆さんに御理解を願えるようにいたしたいと思うて、努力をいたしておるわけでございます。
  142. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 なぜそれをお聞きしたかと申しますと、予算要求されました四、五百億というのは、四と五では百億違うのですね。ですから予算要求をされる根拠、何人を対象にしてどのくらい、ここのところをもう少し詳しくお聞かせ願いたいと思うのですが、いかがですか。
  143. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 まだ予算要求はしていないのであります。これは児童手当については別途要求をいたしますからということで、その別途の要求はまだいたしておりません。  と申しますのは、国費が幾ら要るかという点は、先ほど申しました他の企業者あるいは公共団体に、どういう割合で負担をしてもらうかという点がまだ確立されておりませんし、三、三、三の比率がいいか、あるいは国費が半分で、あとはどれがいいか、あるいは企業者負担のほうを重くするのがいいか、これはいま議論をしていただいておりますので、その御答申をいただいた結果によって最後の割合を決定いたしたい。したがいまして、その割合によって国費の要求する分は変わってくるわけであります。  総額は八百億ないし九百億くらいになろうと思います。それは第三子以降の児童の数というものは大体掌握できまずから、それに一応三千円をかけるということで数字が出てくるわけであります。三子以降に、あるいは四子はそれよりもふやすか、あるいはずっと三千円でいくかという点もいま検討してもらっております。さらに三子以降と申しましても、現に十五歳未満の児童を三人かかえているということにするか、あるいは三人以上児童は産んだら、一人はもうすでに十六歳、十七歳になっている、あとに学齢児童としては二人であるけれども、その家庭から考えれば三子だというものを入れるか入れないかというようなこまかい点が出てまいります。したがって、こまかい数字はまだはじいておりませんが、大体国費は四、五百億程度はかかるであろう、それは一応胸の中に入れておいてもらいたいということは大蔵大臣に私、話しておりますので、国費自身はその程度で済むのじゃないだろうか、あるいはそれより以下になるかもわかりません。
  144. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 そうしますと、大蔵大臣もそのことは大体了承したと解釈してよろしいですね。
  145. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 これは、大蔵大臣に聞けば、おそらくおれは了承しておらぬとおっしゃるだろうと思います。私から言えば、大体了承してもらっておるということでありますが、それは数字もはっきりいたしませんから、この程度のものを審議会に付議をいたします、結果はこういうことになります、一応御了承ください。一応わかったという程度でありますから、金額の点になるとまだまだこれから折衝しなければなりません。
  146. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 では時間があれですから、この問題はこのくらいにしておきまして、次に、全国各地に無医村地区、要するに医者のいないところがたくさんございますが、こうした無医村地区に対して厚生省としてはどういうような手段をとっおるか、あるいはまたどういうような対策を講じているのか、あるいはまた今後どういうようにやっていくのか、これについてお聞かせ願いたいのです。
  147. 松尾正雄

    ○松尾説明員 無医地区の対策でございますけれども、三十一年以来今日まで、それぞれ五年計画ごとに区切りまして、いろいろな措置を講じておるわけでございますが、当初は主として診療所を設置するという方向で進んでまいっております。  その後道路の事情等の改善に伴いまして次第に診療所を整備していくという体系から、患者輸送車、あるいは巡回診療車、こういうようなものを配置をいたしまして、もよりの医療機関患者さんが常時行けるような体制をとる、いわば機動力を発揮いたしますほうの医療確保対策というほうに重点をしぼってきておるわけでございます。  なお、これらの診療所等におきます医師の確保という問題は、御承知のとおりきわめて困難な問題もございますが、これらにつきましては、国立病院あるいは療養所等からの定員を確保いたしまして非常勤で派遣をするとか、あるいはそれぞれの地域におきます親元病院というようなものを設定いたしまして、その親元病院がそれぞれの地域の診療所等の医師を派遣する体制、こういうことを中心にして大体進めてまいっておるわけでございます。
  148. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 時間の関係で率直に申しますけれども、兵庫県の淡路島の洲本市、ここから少し離れたところに由良というのがあるのです。これは漁師の町なんですが、ここには七千二、三百名の人がいまして、昔は長手病院というのがあったのですが、これが医者が老齢になって廃業してしまった、こういうことによって非常に困っておるという現実の状態があるのですが、診療所をひとつ何とか設置してもらいたい、こういうような申し出があるわけですが、こういうことに対して厚生省としてはどういうような方針をなさいますか、また今後どういうようにこれを解決してやっていただけるか、これについてお聞かせを願いたいのです。
  149. 松尾正雄

    ○松尾説明員 ただいま御指摘の具体的な地域におきましては、市全体として考えますればそのほか病院等もあるようでございます。  なお、ただいまの地元の御要望というものにつきましては、まだ県の段階までは承知してないようでございますが、一般論的なお話でもございまますが、かりにそういう市当局等が市の診療所としてそういうものを設置したい、こういう希望があれば、それぞれ起債等の世話によってその財源をお世話する、あるいはまた国民健康保険等の診療所というものを設置する可能性もあり得るわけでございますが、そういう場合につきましても、それぞれ財源的な補助金を出すという道は開かれておるわけでございます。
  150. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 大臣、これにつきまして、実は私もこの地に行ってつぶさに見てまいりましたが、市のほう、あるいはまた市民病院もずいぶん遠いのです。ちょっとこれだけ離れた入り組んだところになっておりまして、病人ができたときに非常に困っておるという状態なんです。ですから診療所設置についてひとつ特別の御協力、あるいはまたこれについて御指示をお願いしたいと思うのですが、いかがでしょう。
  151. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 ただいま医務局長お答えいたしましたように、できるだけひとつ検討をいたして御期待に沿えるようにいたしたいと存じます。
  152. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 あとだいぶ質問はあるのですけれども、きょうはもうこれくらいにいたしまして、あともう一点だけ。  いよいよ沖繩が返還されるというようなところに参っておりますが、本土一体化の見地から、沖繩にはらい病患者の方が非常に多いというようにもいっておる。またある医者が調べたところによると、その地域は非常に多かったのかもしれませんけれども、四人に一人の患者がいた、こういうような報告もあるわけですが、いまどういうような救済方法をとっておるのか、あるいはまた今後さらにどういうような対策を講じていくのか、これにつきましてはいま返答は要りません。あとでひとつ総理府の担当者と相談をされて、はっきりした資料を出してもらいたい、こういうように私は思うのですが、これについていかがですか。
  153. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 ただいまおっしゃいました趣旨に沿う資料をできるだけ早く取り寄せまして、あるいはこちらにあれば即刻でありますが、お手元に差し上げたいと思います。
  154. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 では、最後に、この問題につきましても、どうか不十分な点はさらにひとつ手を打っていただきまして、現地の方々の健康管理の問題については十分の措置をしていただきたい。これを要求いたしまして、その答弁をいただいて私の質問はきょうは終わります。
  155. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 沖繩が近く復帰することはほぼ確定、と言っては言い過ぎかもわかりませんが、前途は非常に明るいと思いますので、したがいまして復帰後、できるだけ早く本土と同じ程度の健康管理体制その他を整えることのできますように、いまからいろいろ準備をいたしております。遺憾なきを期したいと存じます。
  156. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)委員長代理 谷口善太郎君。
  157. 谷口善太郎

    ○谷口委員 大臣、きょうは短い時間ですし、また具体的な問題で一つだけ伺っておきたいと思うのです。  療養所へ入っておりますハンセン氏の長期療養患者に対する援護の問題なんですが、最近、大臣ライ患者の療養所を御視察なさって、彼らの療養生活をつぶさにごらんになって、これは何とかもう少し援助の積極化が必要だというような御感想をお持ちになったという話を伺ったのですが、そういうふうなお考えがあるかどうか。またお考えがあるとすれば、彼らのいまの立場をどういうふうに御理解になったか。どう対策すればいいかというお考えを何かお持ちでしたら最初に伺っておきたいと思います。
  158. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 私が療養所を視察いたしました感じといたしましては、かねがね考えておりましたのとそう変わった感じは持ちませんでしたけれども、実際に見聞をいたしまして、いままで感じておりました事柄をさらに強めたわけでございます。その感じておったということはどういうことかと申しますると、まず、いろいろな諸手当が、適用される法律その他によって違うものでありますから、同じところで生活をしておる者の間に非常に不公平感を与えているという点であります。しかし、これはその制度そのものから考えれば不公平ではないんでありますけれどもお互いに同じところで、自由をある程度制限されたところで生活をしているものでありますから、できるだけその差異感をやはり縮めるようにする必要があるんじゃないだろうかという点が一点。  それから、ことに身体不自由者の方々に対しましては、なお措置をしなければならないと思われる点が多いと思います。ことに目の見えない、そして重度障害を持っているというような方々に対しましては、この福祉的な措置をもう少し強化をしてあげなければお気の毒だという感じがいたしました。  なお、療養所の設備等につきましても大いに改善をしなければ、このままでは非常に、たとえば老朽をしたというような設備もまだあるわけでありますが、そういうところは一日も早く改築をいたしまして、台風、火災等の危険のないようにこの上ともやる必要があるというような事柄が主たる感じでございます。
  159. 谷口善太郎

    ○谷口委員 たいへん正確に見てきていただいたようでありますが、いろいろ問題はございますし、私もこの前、昨年ですか、園田さんが厚生大臣のときにこの問題を一つ取り上げまして、いろいろな面がありますけれども、特にこの生活上一番苦しい立場におるから何とかしてもらいたいという問題と、それからもう一つは、大臣いまおっしゃったように、あの中で同じような立場にいながら、制度の上からは必然的にそういう結果にならざるを得ないような状況もあるわけです。非常に格差があるというような問題が、あの中の生活をやっている人たちにとりまして非常に苦痛だという問題。具体的に申しますと、国民年金の拠出制障害年金をもらっている人が現行では六千円くらいもらえる。ところが、福祉年金で障害年金をもらっている者はその半分にも満たないというような状況がある。ここらあたりに、同じ苦痛をしている人でありながら、制度上そういうことにならざるを得ないという——制度の上からいえばおっしゃるとおりに矛盾はないのだけれども、そこに生活している患者諸君から見ればいろいろな点で矛盾が日常的に起きる。この苦痛を何とかしてもらいたいというような、大臣御承知のとおりきのうおとといあたりですか、厚生省に対して患者諸君がいろいろな御要求を持っていったようですが、そういうところに大きな問題が、一番大きな問題としてあるわけなんです。  これはお互いに、前の園田さんのときにも、政府の皆さん、厚生省の皆さんが、そのとおりだ、これは解消してやるべきだし、してやりたいのだが、現行法の上ではなかなかそれはできない。拠出年金と無拠出の福祉年金の相違は、これは法律上からいったら相違があるのは当然だが、そういう点からいえばこれは改正したいが、なかなかできがたい点がある、そこを苦労しているのだという答弁を、昨年私が質問したときにいただいているわけです。問題はお互いによくわかっておりますし、どう解決するかが問題なのであります。そういう点で私、大臣にお尋ねしましたのは、大臣実情をごらんになって、この問題の解消のために具体的な何か措置をとる必要がある、そういうことでは積極的に何か具体的なことを考えてみようという御意見をお持ちになったように聞いているものですから、もしお持ちでしたらお漏らし願いたい、こういうことなんです。
  160. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 国民からその生活を隔離した中に置かなければならないという運命に置かれた方方は、ほんとうにお気の毒に思うわけでございますが、その中へ社会一般に行なわれているいろいろな年金制度とか、あるいは福祉制度とか、恩給制度とかいうものを持ち込んでいるものですから、そこに差別が起こってくる。一緒に住んでいる者からいうと、全く生活も保障されているにもかかわらず、ある者は金がよけい入ってくる、ある者は入らない、この矛盾だと思うわけであります。  そこで、あるいは法の立て方として、あの中においてはそういうものは持ち込まないで、適当な方法というのもあったかもわかりませんが、なかなかそうもいかぬでございましょう。ことに発病前にすでに恩給をもらっている人というのは、中に入ってもその恩給は続けてもらっていかなければならないということからその差別が起こっているわけですが、これをできるだけ縮めるために、この前、あるいは作業金の問題とか、あるいは生活扶助金の問題といいますか、そういったようなものを増していって、そうして均衡をできるだけとるようにいたしたい、こう思うわけです。  ところが均衡をとりますと、自分たちは本来の権利として、みなの者よりもいいものをもらえるということになっておるのに、均衡をとるのはけしからぬという議論も一方に出てくるわけです。その調節をはかってまいりたいと思うわけです。  具体的に来年度特にこの点についてという点は局長からお答えをさせます。
  161. 松尾正雄

    ○松尾説明員 ただいま御指摘になりましたように、いわば格差という問題が、特に年金の支給額の相違によって起こっておるという点、御指摘のとおりでございますが、ただこの解決が、ただいま大臣からも申し上げておりますように、一気にいくということはなかなか困難である。しかしながら、何とかその内部における処遇というものを水平にいたしたい、こういう考え方で、すでに御承知だと存じますが、四十四年度におきましては、従来にない大幅な改正を行なったわけでございます。特に日用品費等につきましては、生活保護法の日用品費に比べてはるかに少なかったというものを、すべて生保並みの標準に回復できるようにいたしましたし、不自由者加算でございますとか、あるいは作業賞与金の額でございますとかいうものを考えまして、全体としましては園のほうから支給できますような費用というものが、あるいは患者の現金の手取りというものが、かなり水平になるように、こういうような大幅な改善を行なったわけでございます。たとえば老齢福祉年金を受けておられる方の一月が、四十三年度までは二千九百円程度でございましたけれども、そういう昨年の改善によりまして、大体五千六百円程度まで上がってまいっております。それがまた他の方々との間の格差もかなり縮まってきた、こういうことを四十四年度で行なったわけでございますが、ただいま申し上げましたように、従来なかったようなそういう考え方を、四十四年度の予算におきまして生かして、ようやくそのベースを確立いたしました。したがいまして、今後さらにこのベースをもとにいたしながら、処遇をさらに改善してまいりたい、こういうのを基本的な姿勢として進めるつもりでございます。
  162. 谷口善太郎

    ○谷口委員 よくその点は、現状はわかったのですが、大臣、こういうことですよ。実は私、去年問題にいたしまして——これは私だけじゃなくて、その他の関心ある社会党の人たちもおそらくそうだったと思いますが、いたしましたのは、いろいろ問題はあるけれども、あのときには問題が二つある。  一つは、いま局長おっしゃった、日用品費、これをせめて、当面生活保護基準程度に上げてもらいたい。できるなら五千円くらいに上げてもらいたい、こういう要求が一つです。これはしかし実際は、ことし政府が努力されてそれを実現されました。これは私ども評価しております。まことにいいと思うのです。みんな五千円上げてもらいたいということではまだ足りないという面はありますけれども努力はよくわかります。  それからそのほかにもう一つは、いま大臣もおっしゃった一番大事な問題は、いろいろな慰安金にしましても、あるいは不自由者慰安金にしましても、あるいは生活物品費、いわゆる日用品費にしましても、こういうものはみんなに出ているわけですね。不自由者慰安金というやつは特別に身体障害のひどい人ということになっておりますが、あとの慰安金もみな出ている。そういう点では、大臣もおっしゃった恩給を五万円もらっているという人も、中にはあるわけなんですけれども、そういうことは、これは当然のことですから問題じゃなくて、一般的にいいましたら、いま申しましたような慰安金だとか、あるいは不自由者慰安金だとか、あるいは生活物品費だとか、こういうものが出ているわけですね。これは一応みんな一律に出ておるということなんです。その上にいま問題になっておりますのは、拠出制年金の一級の障害年金をもらっている人、あるいは二級の障害年金をもらっている人、この間にも若干格差はありますけれども、これは一級、二級ですからやむを得ません。そうでなくて、拠出制年金じゃなくて、福祉年金で安いものをもらっている、こういう点の格差ですね。そこが問題だ。全体が低い、全体をもっと上げてくれということは、もちろん患者諸君の要求としてはありますけれども、しかし、現実問題として、そこのところに格差があって、これがやはり日常生活の上ではいろいろな面で——私は内容は申しませんけれども、いろいろな面で生活の上につまらないいろいろなトラブルが起きてくる。また人間としても苦しいという状況がある。これは大臣も認めていらっしゃるし、政府も認めているし、われわれも知っている一般的なことです。これをどうするかということを簡単にいえば、拠出制年金と同じものを福祉年金が出してくれるならば、一応解消するということになるわけですね。しかし、それはいまの国民年金法のたてまえからいってできぬという問題が、法律上あるいは制度上の問題があるということで、何とかこれを解決しなければならないのだが、どういう方法をとるかについては、ちょっと苦慮をしているんだということが昨年の政府側の御答弁だったのです。  そのときに私、ここに記録を持ってきておりますが、不自由者慰安金というのがあるから、この不自由者慰安金というものの操作で、何とかそこを穴埋めをしてもいいのではないかという方法もあるという御答弁をあのときいただいたわけなんです。そこらを何とか解消するような方法ができないものなのか、私どもは、いまの国民年金法の中へ、こういう立場における人、ハンセン氏病患者というものに対して、特別に福祉年金で拠出制年金に相当するものを出すというような一項を入れていただけば一番簡単だと思うのですけれども、そういう何かの方法でこの問題を解消できないかということを伺っているわけなんです。  いま局長のおっしゃった、ことし政府でおやりになった若干の改善というのは、これは改善のところは私も評価しております。しかし、そこはまだ解消していないわけですね。依然として、いま申しました生活のガンになっております問題点が解消していない。これを現行法ではできなければ、何か法律の改正とか、あるいは単独法をつくるとかしてやれないものかということなんです。これはどうでしょう。
  163. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 拠出制の障害年金と、それから障害福祉年金との差異、同じ条件であるにもかかわらず、そこに非常な違いがある。この点は、療養所の中におる人は一そう目立つわけですが、そうではないところにおきましても、この差異をそのまま認めておくのはどうかという御議論が、かねがねからあるわけでございます。今度はこの問題をぜひ解決をいたしたい。そうしてそういう非常な不公平と感じられるようなことのないように制度を改めたい。いまこれは鋭意検討中でありまして、成案を得て来国会にひとつ提案をいたしたい、かように考えておりますので、その点はそのほうで解決をいたしたいと考えております。
  164. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)委員長代理 ちょうど時間ですから、簡単にお願いします。
  165. 谷口善太郎

    ○谷口委員 ちょうど時間でありますが、大事なところなんで、私は長く言いませんが、そこのところなんですね。そこを私はお聞きしたかったのです。たとえば今国会はああいう状況になりましたから不成立に終わったようでありますが、恩給法の改正をことしやろうといたしまして、内閣委員会で若干論議がなされておったようでございますが、この恩給法の改正の中で、ことしやりましたのでは、——これは特にきょう抜き書きをしてまいりましたが、恩給法の別表の中へ若干の条項を入れることによりまして、今度は別表一号表ノ二の第三項症の一になりまして、「心身障害ノ為家庭内ニ於ケル日常生活活動が著シク妨ゲラルルモノ」というような条項を入れることによって、特にこれはハンセン氏を対象にして、その他脊損患者が若干おるようでありますが、こういうものを入れようとして改正して、お金を——この場合は三項症になるのでありますが、現在は五項症であります。そうなりますと、現在十五万四千円が年間の加給金でありますが、それが二十六万四千円になるというような改正をやろうとされて、これは流れました。流れた結果、今度は特別の取り扱いで、あの別表の欄外に規定しております「右ニ掲ゲル各症ニ該当セザル傷疾疾病ノ症項ハ右ニ掲グル各症ニ準ジ之ヲ査定ス」というような規定があるのですが、これに準じて、ことしの十月から実施まるということをいっていますね。そういうことも一方では恩給法のもとではなされているということであります。  それから国民年金の問題としましても、拠出年金という問題と、拠出を伴わない福祉年金という二つの違った考え方に立つ問題が一緒にされた法律でありますから、そういう点からも、必ずしもこれを改正することはむずかしくないというようなことも考えられる。あるいはこれはまた別なことでありますけれども、原爆被害者に対しましては、特に国は特別な法律をつくってこれを援護するということもやっているわけなんですね。ですから、制度としてこういういわば——ハンセン氏は非常に科学的に発達しておりますから、もはや現在は、年をとって非常に苦しい障害者になっているようなああいうことは起こらないほどいまでは早期になおる。そういたしますと、現在残っておる一万人ばかりのあの人たちというものは、いわば科学の未発達時代と、それからまたハンセン氏に対する国の対策として、いろいろ矛盾が過去にはたくさんあったというふうな材料を持ってきておりますが、時間がないですから申しませんけれども、こういう国の政策の犠牲になって、現在年をとり、しかも世間からきらわれて、完全になおっても、外へ出て社会生活は実際上はできないというような状況で、ああいう療養所の中で一生飼い殺しの状況におる。人数はわずかに一万人だ。たとえばわずかに五千円上げましても、一万円上げましても、大体五、六億、年間あれば済むわけですね。  こういう人々に対して国が特別にやはり対処するということは、それこそ社会福祉の上で絶対に必要なことではなかろうか。そういう点で、大臣はそこらを解消するために、新しく何かの形で積極的にこれを解決する、あるいは法制的な措置をとられる、何か考えられるということになれば、これはたいへんけっこうなことでありまして、まだそれが具体化しておらなければ、いまここで御答弁いただくことはできませんけれども、そういう方向でこの問題は解決すべきではないかというようにわれわれは考えているわけです。こういう問題を申し上げましても、これは、わずか一万人が対象でありますし、実際は世間からは隔離されている方々でありますから、だれもよく取り上げません。しかし、この問題を解決するということは、事は小さいけれども、やはり現在の政治のあり方について、非常に大きな確信と、また前途の明るさを国民に与えることになると私どもは思うのです。だから、ハンセン氏のこの問題は、ハンセン氏の患者諸君だけの問題ではなくて、政治のあり方の問題として非常に重要だ、こういうように思いますので、積極的にその点を勇気を持って、新しい制度をつくってでもいいから、これに救済の手を伸べていただきたい、こういうように思います。  終わります。
  166. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)委員長代理 本日はこれにて散会いたします。   午後三時三分散会