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1969-07-08 第61回国会 衆議院 社会労働委員会 第35号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年七月八日(火曜日)    午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 森田重次郎君    理事 澁谷 直藏君 理事 竹内 黎一君    理事 谷垣 專一君 理事 橋本龍太郎君    理事 渡辺  肇君 理事 河野  正君    理事 田邊  誠君 理事 田畑 金光君       阿部 喜元君    加藤 六月君       藏内 修治君    佐々木義武君       齋藤 邦吉君    高橋清一郎君       中川 一郎君    中山 マサ君       福井  勇君    古内 広雄君       増岡 博之君    箕輪  登君       枝村 要作君    大原  亨君       加藤 万吉君    後藤 俊男君       島本 虎三君    西風  勲君       平等 文成君    八木 一男君       山田 耻目君    山本 政弘君       大橋 敏雄君    北側 義一君       谷口善太郎君    關谷 勝利君  出席政府委員         厚生政務次官  粟山  秀君         厚生大臣官房長 戸澤 政方君         厚生省保険局長 梅本 純正君         社会保険庁医療         保険部長    加藤 威二君  委員外出席者         参  考  人         (日本医師会常         任理事)    小池  昇君         参  考  人         (健康保険組合         連合会会長) 加藤 俊三君         参  考  人         (横浜市立大学         教授)     小山 路男君         参  考  人         (医事評論家) 水野  肇君         専  門  員 濱中雄太郎君     ――――――――――――― 七月四日  委員丹羽久章辞任につき、その補欠として小  川平二君が議長指名委員に選任された。 同日  委員小川平二辞任につき、その補欠として丹  羽久章君が議長指名委員に選任された。 同月七日  委員大原亨君及び島本虎三辞任につき、その  補欠として川村継義君及び中井徳次郎君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員川村継義君及び中井徳次郎辞任につき、  その補欠として大原亨君及び島本虎三君が議長  の指名委員に選任された。 同月八日  委員稻村左四郎君、田川誠一君及び中野四郎  君辞任につき、その補欠として中川一郎君、古  内広雄君及び加藤六月君が議長指名委員に  選任された。 同日  委員加藤六月君、中川一郎君及び古内広雄君辞  任につき、その補欠として中野四郎君、稻村左  近四郎君及び田川誠一君が議長指名委員に  選任された。     ――――――――――――― 七月三日  日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一一〇号) 同月七日  児童手当制度の実施に関する請願外百三十七件  (小沢貞孝紹介)(第九八六一号)  同外七十二件(小沢貞孝紹介)(第九九五三  号)  種痘による障害者医療補償等に関する請願  (勝澤芳雄紹介)(第九八六二号)  同(島本虎三紹介)(第九八六三号)  同(只松祐治紹介)(第九九五四号)  日雇労働者健康保険制度改善等に関する請願  (折小野良一紹介)(第九八六四号)  同外一件(唐橋東紹介)(第九八六五号)  同外一件(兒玉末男紹介)(第九八六六号)  同(島上善五郎紹介)(第九八六七号)  同(田邊誠紹介)(第九八六八号)  同外一件(田原春次紹介)(第九八六九号)  同(野間千代三君紹介)(第九八七〇号)  同(堀昌雄紹介)(第九八七一号)  同外二十二件(本島百合子紹介)(第九八七  二号)  同(八百板正紹介)(第九八七三号)  同外一件(八木一男紹介)(第九八七四号)  同(石川次夫紹介)(第九九五八号)  同(石野久男紹介)(第九九五九号)  同(岡田利春紹介)(第九九六〇号)  同(折小野良一紹介)(第九九六一号)  同外五件(島本虎三紹介)(第九九六二号)  同外一件(田邊誠紹介)(第九九六三号)  同(武部文紹介)(第九九六四号)  同(田原春次紹介)(第九九六五号)  同(只松祐治紹介)(第九九六六号)  同外二十三件(本島百合子紹介)(第九九六  七号)  同外一件(山口鶴男紹介)(第九九六八号)  同(井上普方紹介)(第一〇〇四九号)  同(加藤清二紹介)(第一〇〇五〇号)  同(加藤万吉紹介)(第一〇〇五一号)  同(島本虎三紹介)(第一〇〇五二号)  同外二件(田原春次紹介)(第一〇〇五三  号)  同外一件(千葉佳男紹介)(第一〇〇五四  号)  同外七件(戸叶里子紹介)(第一〇〇五五  号)  同外八件(堂森芳夫紹介)(第一〇〇五六  号)  同(中嶋英夫紹介)(第一〇〇五七号)  同(楢崎弥之助紹介)(第一〇〇五八号)  同(野口忠夫紹介)(第一〇〇五九号)  同外四件(安井吉典紹介)(第一〇〇六〇  号)  同外一件(山口鶴男紹介)(第一〇〇六一  号)  同外十三件(米田東吾紹介)(第一〇〇六二  号)  医療保険制度改悪反対及び医療保障確立に関す  る請願島本虎三紹介)(第九八七五号)  同(野間千代三君紹介)(第九八七六号)  同外一件(八木一男紹介)(第九九六九号)  同外二件(山口鶴男紹介)(第九九七〇号)  医療保険制度改悪及び健康保険等臨時特例延長  反対等に関する請願島本虎三紹介)(第九  八七七号)  同(田邊誠紹介)(第九八七八号)  同(西風勲紹介)(第九八七九号)  同(井岡大治紹介)(第九九七一号)  同(加藤清二紹介)(第九九七二号)  同(本島百合子紹介)(第九九七三号)  同(柳田秀一紹介)(第九九七四号)  健康保険等臨時特例延長反対等に関する請願外  一件(唐橋東紹介)(第九八八〇号)  同(島上善五郎紹介)(第九八八一号)  同外一件(島本虎三紹介)(第九八八二号)  同(田邊誠紹介)(第九八八三号)  同(野間千代三君紹介)(第九八八四号)  同(堀昌雄紹介)(第九八八五号)  同外二十一件(本島百合子紹介)(第九八八  六号)  同(山花秀雄紹介)(第九八八七号)  同(猪俣浩三紹介)(第九九七五号)  同(石川次夫紹介)(第九九七六号)  同(田原春次紹介)(第九九七七号)  同(只松祐治紹介)(第九九七八号)  同外二十六件(本島百合子紹介)(第九九七  九号)  同外二件(山口鶴男紹介)(第九九八〇号)  同(山花秀雄紹介)(第九九八一号)  同(石野久男紹介)(第一〇〇二四号)  同(加藤清二紹介)(第一〇〇二五号)  同(加藤万吉紹介)(第一〇〇二六号)  同外一件(田邊誠紹介)(第一〇〇二七号)  同(武部文紹介)(第一〇〇二八号)  同外一件(千葉佳男紹介)(第一〇〇二九  号)  同(野口忠夫紹介)(第一〇〇三〇号)  同(山花秀雄紹介)(第一〇〇三一号)  同(井上普方紹介)(第一〇〇六三号)  同(島本虎三紹介)(第一〇〇六四号)  同(戸叶里子紹介)(第一〇〇六五号)  同外八件(堂森芳夫紹介)(第一〇〇六六  号)  同(中嶋英夫紹介)(第一〇〇六七号)  同外二件(八百板正紹介)(第一〇〇六八  号)  同外一件(山口鶴男紹介)(第一〇〇六九  号)  同外十二件(米田東吾紹介)(第一〇〇七〇  号)  むちうち症の療術治療に関する請願外三件(本  島百合子紹介)(第九八八八号)  同(河野洋平紹介)(第九九八二号)  同外五件(本島百合子紹介)(第九九八三  号)  同(田川誠一紹介)(第一〇〇二三号)  同外二件(賀屋興宣紹介)(第一〇〇四八  号)  医師及び看護婦の増員に関する請願(只松祐治  君紹介)(第九九五五号)  同(島本虎三紹介)(第一〇〇七一号)  全国全産業一律最低賃金制法制化に関する請願  (只松祐治紹介)(第九九五六号)  通勤途上交通事故災害労働者災害補償保険  法適用に関する請願外一件(只松祐治紹介)  (第九九五七号)  失業保険法改悪反対に関する請願外六十五件  (西風勲紹介)(第九九八四号)  同(島本虎三紹介)(第一〇〇七二号)  同(田邊誠紹介)(第一〇〇七三号)  同(八木昇紹介)(第一〇〇七四号)  同(山本政弘紹介)(第一〇〇七五号)  労働保険保険料徴収等に関する法律案等反  対に関する請願浜田光人紹介)(第九九八  五号)  同(山崎始男紹介)(第九九八六号)  同外一件(堂森芳夫紹介)(第一〇〇七六  号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  健康保険法及び船員保険法臨時特例に関する  法律等の一部を改正する法律案内閣提出第九  三号)      ――――◇―――――
  2. 森田重次郎

    森田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出健康保険法及び船員保険法臨時特例に関する法律等の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  本案審査のため、本日、日本医師会常任理事小池昇君、健康保険組合連合会会長加藤俊三君、横浜市立大学教授小山路男君及び医事評論家水野肇君、以上四名の方々参考人として御出席を願い、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 森田重次郎

    森田委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     ―――――――――――――
  4. 森田重次郎

    森田委員長 この際、参考人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございます。  本案は、国民医療に深い関係のある法案でありますので、当委員会におきましても、この機会参考人方々より、それぞれの立場から忌憚のない御意見を伺い、審査参考にいたしたいと存じます。  なお、議事の整理上、御意見をお述べ願う時間は御一人十五分程度とし、参考人各位の御意見開陳のあとで委員の質問にお答え願いたいと存じます。  最初小池参考人、次に加藤参考人小山参考人水野参考人の順序でお願いいたします。  まず、小池参考人にお願いいたします。
  5. 小池昇

    小池参考人 ただいま御紹介いただきました小池でございます。  本日は、この非常にお忙しい時間の中で、私たち意見を述べさせていただく機会をつくっていただきましたことをまず感謝申し上げます。  臨時特例法が施行されまして二年近くになりますが、これらを私たち医師としまして、また患者といたしまして経験をした上で、いろいろこれについての意見を持っております。それを若干でも述べさせていただきまして、御参考にしていただけたら幸いに存じます。  抜本改正が必須のことであると申されましてから久しいのでございますが、漏れ承りますところによりますと、近くこれもその緒につくということでございまして、もしそういうことになりますれば、健康保険法というものはひんぱんに改革が行なわれなければならないと存じます。そういう立場からいいますと、特例法をこの際二年延長いたしまして、そしてその間をつなぐという考え方よりも、むしろ健康保険本法において、改定すべきところは改定していって、これを抜本改正にふさわしいものに直していくという筋道をとるのが本当ではなかったかと思うのであります。  本来この健康保険というのは、国民保険料と、それから政府のこれに対する負担金をもってまかなうのが原則でございますから、当然経済上の、財政上の必要があって、特例法の中で保険料率改定を行なうということにすれば、むしろこれは私は、本法の中でそういう処置がとられていいのではないかというふうに考えております。しかし、どうしても財政上の収支均衡を保つ上に、保険料率改定が必要なら、当然負担すべきものは国民として負担するし、またそれで負担させるのが不合理というのであれば、国は当然これを出してしかるべきと考えるのでございます。しかし、現在この審議のさなかにありまして、そういうあまり基本的なことを申しますよりも、この際どうしてもこの特例法の中で修正すべきものは修正するということが必要ではないかと私は思います。そのためには、この特例法の中で、いわゆる薬剤費患者への一部負担ということがございますので、これが私たち医師立場患者立場として、どれだけ被害をこうむっているかということを申し上げまして、そしてこれをいろいろお考え願いたいのでございます。  まず第一に、国民保険によりまして、国民は高度の医学医術をそのまま身に受けて、健康の保持、増進を現在恵まれておるのでございますが、しかし、これを妨げるものがこの薬剤の一部負担であるというふうに考えます。すなわち、診療のつどに、そのつど患者さんから窓口医師が若干の金額を徴収しなさいということを法律できめられるということは、医師の頭の中に、そのことが診療の間、始終つきまとっているということになります。処方をいたします際に、その患者さんのふところ状態を考えながら処方するということは、医学医術を旨といたします私たち良心が許さないのでございます。しかも、この一部負担金というものは、必ず取らねばいけないということになっておりまして、これは医師が、自分がみずからこれを免除することはできない、どうしても取れという法律になっておるし、取らなければ――いろいろ事情があって、これを患者さんからいただかないことがあります。これを取らなければ、医師自身がこれを払えという法律になっておる。そういうことは、日常患者診療に専念すべき医師の頭の中に、少しでも入ってきてはいけないことではないかと私は思っております。そういう点から、まず第一に、国民の福祉に医学医術の進歩を直結できない、それを妨げるものが薬剤の一部負担であるということを申し上げます。  特にその中で、この薬剤の一部負担がもたらします影響は、どういう階層の方々であり、どういう疾病を持つ患者さんであるかということを申し上げますと、やはり長期療養を要する患者さんに一番影響が大きいということでございます。たかだか十五円ということで、あるいは軽く見られておるかもしれませんですが、長期患者さん、結核、高血圧、精神病、糖尿病、そういうものは長期療養者でございます。毎日毎日医師のところへ参るのではございません。おおむね一週間、あるいは二週間に一度参って、治療に専念するのでございますが、そういう患者さんにはこれは五百円にもなり、千円にもなるということでございますので、そういう長期慢性疾患に対して、特にこの一部負担影響が大きいということでございます。そういう立場から軽々しく十五円と考えていただきたくないのでございます。  第二に、十五円ということはきわめて些少であるというふうに現在の世の風潮から考えられますが、これが先ほど申し上げましたように、処方によって徴収するしないがきまるということになりますれば、処方内容というものが、必然的に一定の金額に制限された、規格的なものになるということでございます。患者に、そのつど一番適した薬剤処方するということが、医師の使命でございますが、それが金を取る、取らないの境目で処方内容が左右されるということは、私たち良心が許さないということでございます。この点は、診療を規格化しまして、同時に、診療内容の堕落を招くものというふうに私は体験しております。  また、別な観点から見まして、この薬剤費の一部負担というものが、非常な医療担当者事務繁雑化を招いているということはこれまでも述べられておりますので、私からは、そうこまかいことまでは申しませんが、そのための健康保険請求明細書作業患者が一人一人いらっしゃるたびに、処方内容原価計算をして、この処方は幾らになるというそろばんを置いて計算をしなければいけないということは、私たちとしましてはやりたくないし、その間に幾らかでも勉強もしたいというのが本音でございます。そういう繁雑な事務を私たちに課するということは、基本的に間違いであるし、私は私たちの専門の仕事に専心したいのでございます。これは十五円であろうと、百五十円であろうと、作業は同じなのでございます。そういうふうに考えますと、今回どうしても二年目という一つ機会をとらえまして、この十五円の薬剤負担というものをはずしていただきたいというのが、私たちの過去二年間の経験から出ました叫びでございます。  時間も参りますので、私としては最終的にどういう気持ちでいるかということを申し上げますと、今回の特例法が二年延長になるに際しまして、ぜひとも薬剤の一部負担だけははずすように御努力願いたいということであります。国民保険というのは、これは国が国民に対しまして強制的にやっている仕事でございます。すべての国民から保険料をいただきまして、国もこれに応分の負担金を出して、その経済をまかなっているのでございますが、それは経済それ自身目的ではなくて、国民があまねく、現在の医学医術の恩恵に浴し得るようにという気持ちから出たものだろうと思います。そういたしますと、国民受診、受療の機会を制限するということは、国民の首を締める、そういう行為であると私は思います。しかもここで、その患者さんを診察に行った医師に対して、おれが首を締めている間に患者ふところから金を取れ、取らなければおれが医者のほうからその金をいただく、こういう趣旨でございます。私はそういう姿はまことに情けないと思っております。  この際、国会にこの審議がゆだねられました機会に、どうかそういう姿を考えましていろいろ御審議願いたいのでございます。国会がこの特例法を無修正でこのまま通すということになれば、首を締められている患者の両足をさらに引っぱる、そういう行為であろうと思います。何とぞ、薬剤一部負担というものだけはこの機会にお考え願いたいのでございます。私は国会の皆さまの良識を信ずるものでございます。  ありがとうございました。(拍手)
  6. 森田重次郎

    森田委員長 次に、加藤参考人にお願いいたします。
  7. 加藤俊三

    加藤参考人 私は健康保険組合連合会加藤でございます。  最初に、私は政府並びに自由民主党が、この二年の間に抜本改正の成案を得られなかったということは、その間にいかなる事情があったにしろ、その責任はまことに重大でありまして、きわめて遺憾なことだと存ずる次第でございます。しかしながら、現実の問題といたしまして、抜本改正が間に合わなかった現段階におきましては、次善策として、この健保特例法をそのまま延長するということはやむを得ないものであると考えまして、次のような意見並びに希望を申し添えまして政府原案に賛成の意を表するものでございます。  まず第一番に、この特例法がこのまま失効いたしますと、健保財政たちまちに破綻におちいるおそれがございます。政管健保赤字は、四十三年度末で千三百億に近いといわれておりますし、この特例法が八月で失効いたしますと、半年間に約四百八十億に近い赤字が累積するというふうにいわれておりまして、政管健保財政破綻に導くおそれがございます。  なお、この際明らかにしておきたいことは、この保険財政の悪化が単に政管健保日雇健保だけにとどまらず、すべての医療保険に波及するということでございます。その根本原因は、国民賃金所得を上回るような医療費増高によるものであるということでございます。すべての医療保険の運営がどうにか継続することができておりますのは、この特例法効果があるからであるというふうに言ってもよいのではないかと思います。  最近、本年度のベースアップが予想以上に大幅に行なわれたために、保険料収入がふえて、余裕があるのではないかというふうな見方も行なわれているようでございますが、御承知のように、一方においては日本医師会のほうから、二〇%の医療費値上げ要求も出ておりますし、それをもって保険財政が好転したというふうに考えるのは非常に甘い、早計であるというふうに考えるわけでございます。  第二番目に、この特例法の中で一番問題になります薬剤の一部負担でございますが、これは私は絶対に修正すべきでない、堅持すべきであるというふうに考えます。  その理由は、国民医療は、短い日数で安い費用で全快さすというのを目的とすべきでありますが、特例法に定められておりますこの薬剤の一部負担は、その目的のためにきわめて有効な手段であるというふうに考えるわけでございます。  今日の医療にはいろいろ問題がございますが、その最大の問題点は、現物給付出来高払いという支払い方式にあるということは明らかでございまして、たとえば患者自身が受けた医療内容及びその費用というものを確かめることはできません。また患者の側におきましても、医療時に負担のないことから、むだな医療を要求してありがたがるという傾向がございますし、一方医療を担当する側におきましても、医療費算定方法が多量な投薬を行なったり、あるいはまた診療日数を長引かせれば、それだけ収入がふえるというふうな仕組みになっておるわけでございますが、このことにつきましては、先般自由民主党が発表されました国民医療対策大綱についておりまする重要意見にも、医師領収書の発行を義務づけるべきじゃないかとか、あるいはまた支払い方式にあらためて償還制を導入するとかいうふうなことを検討すべきであるというふうな意見がついておりましたが、もっともなことだと思うわけでございます。  次に、この特例法の制定以後、外来診療につきましては、受診率はあまり影響してないのでございます。そして一件当たり費用伸び率が、従来に比べまして低くなっているということが統計的に出ております。これは結論しますと、むだな医療を少なくして、しかも受診機会を抑制していないということを示すものであろうと思います。よく一部負担受診率を抑制するというふうにいわれておりますが、御承知のようにこの特例法には、低所得者に対してはこの一部負担を免除するという除外規定も設けられておりますし、それからその後の厚生省の推定によりますと、一傷病一件当たりの一部負担が、せいぜい二百円そこそこであるというふうにいわれておりますので、これが受診率に大きく影響しているとは考えられないのでございます。  次に、この一部負担制度は、保険財政を健全化するということばかりじゃなしに、医療保険を正しく発展させるものだというふうに私は考えるものでございます。投薬時の一部負担制度は、患者にその一部負担さすことによっての財政効果というよりも、むしろ医療内容をよくして、医療費のむだを排除して、正しい姿の国民医療目的に沿うゆえんであると思うわけでございます。薬の飲み過ぎ、あるいは飲ませ過ぎによる弊害ということは、識者のひとしく認めるところでございまして、国民医療目的からいえば、この受診時における患者負担のないことが好ましいことは当然でございますが、しかしながら、そのためには医学の常識から見たむだな医療、これを制度的に、たとえば現物給付出来高払い方式を改善するなどしてチェックするシステムを考えなければならない。その必要な制度ができるまでは、患者自身の努力によって行なうほかはないと思いますので、その方法がこの一部負担制度である、その一つ具体化投薬時の一部負担でありまして、抜本改正が行なわれるまでは、その間におけるやむを得ございます。  それから、先ほど小池先生医師窓口業務が非常に複雑であるというふうに言われたわけでございますが、しかし、患者のうちで被保険自身よりも、その扶養家族のほうが多いのでございまして、それらはみな一部負担窓口で支払っているわけでございますから、これがために著しく事務量が増大しているとは考えられませんし、むしろ医師のそういう雑務、負担を軽減するということであれば、いまのこのこまかい固固点数方式、この支払い方式をこそ改めるべきであろうというふうに思いますので、そういうことはこの抜本改正のときにぜひお考えいただきまして、いままたこの特例法を部分的に修正するということは、かえって混乱を来たすものであろうというふうに考えるわけでございます。  次に、この投薬時の一部負担は、これは何もわが国だけではなくして各国共通的に行なわれているということでございます。わが国の医療保険における最大の問題点は、医師の技術中心というよりも、物すなわち注射でありますとか、投薬でありますとか、こういうところに中心が置かれておるということに問題がございまして、医療費の約四〇%近くが薬剤費に使われている。このことは諸外国に対比いたしますと二倍ないし三倍の使用量である。  先般社会党が医療制度改革案を発表されたようでございますが、私、新聞で見まして、全文を拝見いたしておりませんので、あるいはニュアンスが違うかもわかりませんけれども、その中に薬剤費を減らすような医療行政をすべきであるというふうに御指摘になっているようでございます。まさにこれもその一つの手段であろうと思うわけでございます。これを改革するためには医薬分業など、根本的な改革を行なう必要がありますが、それが行なわれていない現在、薬剤乱用防止のために、何らかの措置を講ずるということは絶対に必要であるというふうに考えるわけでございまして、他国の例を見ましても、英国におきまして医薬分業は古くから行なわれておりますが、その英国においてさえ労働党内閣の当時に処方せん料の一部負担を実施いたしました。また西独におきましても、処方せん料の増額を行なっておりますし、またソ連のごとき医療国営の国家におきましても、薬剤費においては、受診者の一部負担があるというふうに聞いております。この日本の医療のように全く歯どめのない国におきましては、薬剤の一部負担というものは絶対に必要な措置であろうというふうに考えるわけでございます。  次に、二年前にこの特例法が制定されたわけでございますが、その二年前の当時と現在の時点で全く客観的な情勢、すなわち医療保険国民医療の関係はちっとも変わっていないと思うのでございます。  特例法は、その二年間の間に、医療保険抜本改正を行なうという条件でありましたが、それにもかかわらず、それがいまだに行なわれていないことは、まことに遺憾であるということは冒頭に申し上げたとおりでございますが、だからといって、抜本改正ができなかったから、特例法は廃棄すべきであるという主張は、理論的には全くつながらない、私には理解ができないのでございます。これが行なわれていない現在、医療保険制度の混乱を避けて、抜本改正のつなぎとするためにも、特例法延長することが必要であろうというふうに考えるわけでございまして、このことは世論も認めているのじゃないかというふうに私は考えます。  と申しますのは、四月の上旬にこの法案が国会にかかりましたときに、日刊紙の大部分はこれを取り上げまして、私の記憶しております範囲でも朝日新聞、読売新聞、サンケイ新聞、東京新聞、こういったような新聞、まだそのほかにもあろうかと思いますが、こういったような新聞は社説を掲げまして、いまの段階では特例法延長はやむを得ないものと考えるというふうに論断いたしております。この事実は全く無視することはできなでないかというふうに考えるわけでございます。  最後に、政府並びに与党に申し上げたい。  二年間といわず、この抜本改正は早急にやっていただきたい。先般お示しになりました国民医療対策大綱でございますか、ああいうふうなお粗末なものでは問題になりませんので、何ゆえに抜本改正が必要であるか、それは赤字が出て、財政の危機を招来するからでございますが、それではその赤字の出る根本原因を究明して、その根源にメスを入れることでなければ抜本改正の意味をなさないのでございます。先般のあの案は、医療を受ける側の組織がえをしたにすぎないというふうなもので、これは問題にならないと思うわけでございます。  それから、もう一つ申し上げたいことは、最近新聞によりますと、与党の中にも、この薬剤の一部負担ははずすべきであるという意見があるというふうに聞いております。こういうことは、この特例法を通すために政府並びに与党が全力をあげておるときに、中から足を引っぱるというまさに獅子身中の虫であろうと思います。でありますから、政府並びに与党は、すみやかにこういう声を一掃いたしまして、国民の疑惑を解いていただきたい。そして、先般この委員会並びに本会議におきましても、抜本改正が間に合わなかったのだから、この特例法延長するしか手がないから、何とか承認してもらいたいというふうに提案趣旨を説明した。その舌の根もかわかない先に、あれは間違っていたからこういうふうに直してくれというふうなことは、全く国民を愚弄したものじゃないかというふうに私は考えるわけでございます。  先般佐藤総理も、この委員会で、圧力団体には負けないでやるというふうにおっしゃったというふうに新聞紙は伝えておりますが、どうか勇気をふるって、政府並びに与党は、早急に真に国民のための医療保険制度の改革案をおつくりになるということを期待いたしまして、その間のつなぎとして本案の成立に賛成の意を表するものでござい  以上でございます。(拍手)
  8. 森田重次郎

    森田委員長 次に、小山参考人にお願いいたします。
  9. 小山路男

    小山参考人 最初にお断わり申し上げておかなければなりませんことは、およそわれわれのような研究者の立場で、具体的な法案に対しまして絶対的に賛成であるとか、あるいは反対であるとか、そういうことは申し上げられない立場でございます。特に、本法案のように、政治的な対立が明白である場合においては、なおさらのことなのであります。しかしながら、現在の与えられた条件のもとでは、特例法延長もやむを得ない、この意味で、私は原案に賛成ではありますが、決して積極的に賛成するものではございません。  特例法の性格について、一言申し上げたいと存じます。  特例法は、政府管掌健康保険財政対策であります。しかしながら、財政対策が確立されれば、今度はそれを契機として抜本対策に移行できるはずであります。この意味で、特例法は中間対策でるというのが、四十二年の特例法審議段階における私の見解でございました。しかるに、二年間の期限内に、制度抜本改正が実施されなかったことは、きわめて遺憾であります。今回これを、さらに二年間延長することにつきましては、すなおに賛成しがたいものがございます。しかし、事、医療に関しましては、国民全体の合意が容易に成立しそうもない現状、さらにまた、政府管掌健康保険財政基盤が依然として不安定である事実等を考えますと、延長またやむなしといわざるを得ないのであります。しかしながら、この間において、具体的な問題が生じまするたびに、抜本改正に籍口して、事態の改善に消極的でありました政府の態度は、大いに責められてしかるべきものと私は考えます。  次に、特例法効果について、私の意見を申し上げます。  特例法実施によりまして、政府管掌健康保険赤字は三百二十億になるというのが政府側の見解でございました。しかるに、その決算は五十八億の赤字にとどまったのであります。その理由といたしましては、保険料の上昇分の八十三億をまず計算違いをしたこと、さらに医療給付費の減少が百三十一億あったということ、もう一つ現金給付の減少が二十六億あったこと、さらにまた借り入れ金の減少によりまして二十二億の節約ができたこと、以上合わせて二百六十二億が見込みよりも減ったというのが政府の説明であります。  しかもまた、この数字をながめてみますとすぐわかりますことは、減少いたしました赤字額の半分、つまり二百六十二億の半分の百三十一億が医療費の減少によるものであったということであります。  で、医療費の減少の理由といたしまして政府が申しておりますことは、受診率の鈍化傾向が特例法以前にすでに見られていた。その効果は半年で四十八億であるので、満年度にして九十六億の減少が自然的に生じたのである。これが第一点。  さらにまた、特例法審議段階におきまして非常に問題になりました波及効果の有無でありますけれども、あれはあったとしてもせいぜい三十五億というのが政府の説明でございます。しかしながらこの問題は、一体特例法受診抑制に結びついたかいなかによって判断せざるを得ないと思うのでございます。  そこで、まず最初に申し上げておきたいことは、この参考資料をお持ちの諸先生方は六九ページの統計表(7)をごらん願いたいと存じます。  この表でごらんいただきますように、医療給付費の対前年伸び率は、すでに昭和四十年度決算以後鈍化している事実がございます。  さらにまた、この表の読み方でございますけれども、私は弾性値計算という方法で、政府管掌健康保険財政状態を予測したことがございます。その方法はごく簡単に申しますと、医療給付費の対前年増加率を、一人当たり保険料の対前年増加率で割る方法でございます。これはこういうことでございます。もし、その数値が一以下ということは、医療給付費の上がり方よりも、保険料の上がり方が大きいということであります。もし一以上であれば、医療給付費の上がり方のほうが、保険料の上がり方よりも大きい。こういうことで一つの判断基準となるものでございます。  この方式によりまして計算した結果がございますが、ごく簡単に申し上げますと、昭和三十九年にこの医療給付費の保険料弾性値は二・〇〇と最高値を示しておりました。つまり三十六年以後の政府管掌健康保険の最悪の事態は、昭和三十九年にあったというのが私の判断でございます。しかるに、四十年になりますと、この数値が丁六九六と下がっております。何らの法改正も行なわなかったにもかかわらず、医療給付費の伸び率が、保険料伸び率に比較して鈍化した事実がここに指摘されます。この事実は、さらに昭和四十一年の法改正によりまして、五万二千円の最高標準報酬月額が十万四千円になりました結果、〇・六五五と急速な改善の傾向を示しておるのでございます。  ちなみに、その後の数字について若干申し上げますると、特例法の実施によってこの数値はさらに〇・六〇四と、政府管掌健康保険財政基盤は、もはや好転の基調にあることを明瞭に物語っておるのでございます。四十三年になりますとこの数値が〇・八八一とやや悪くなっておるのでご、ざいますが、これは四十二年末に行なわれました診療報酬の引き上げと薬価基準の引き下げ、これの効果でございまして、大体あのときの診療報酬の引き上げが七・六八%でございました。薬価基準の引き下げが一〇・二%ございました。この効果を相殺いたしますと、三・六八%の医療費の増があった。そのためにやや政府管掌健康保険財政状況は〇・八八一と悪化の傾向にございまするが、四十四年度予算について見ますと、この数値は〇・七九八とまた改善の傾向を示しております。  このような数字をあげましたことは、私が申し上げたいのは、政府管掌健康保険財政基調が好転しつつあるのだ。しかも、四十四年度で政府管掌健康保険財政規模は約四千七百億であります。これに対しまして当局側の試算によりますと、二十七億程度の赤字である。と申しますことは、もはやこの程度の赤字はネグリジブルである、収支は相当しているのだということであります。ただし、この収支相当は国庫負担二百二十五億が入っての上であることに御注意願いたい。つまり現状でまいりますならば、ある程度の国庫負担政府管掌健康保険に確保することは、もはや必然と申さなければなりません。  次に、薬剤費一部負担の波及効果について申し上げます。  投薬負担は四十三年度で五十億程度にすぎません。そこで、現在の薬剤偏重の医療が続き、しかも、診療報酬の支払い方式が、そのような薬剤偏重の医療を正さない限りにおいては、これを廃止することはできないと思います。また、その効果を見まするに、特例法の実施によりまして一時的には受診率が低下いたしましたけれども、低下したとは言え、現在の受診率はすでに四〇〇を上回っておるのであります。きわめて高い水準の受診のレベルであることに御注意願いたい。したがって、受診抑制効果はそれほで問題にならないと判断せざるを得ません。  さらにまた、その後の統計を見ますと、一件当たり受診日数が増加している傾向が指摘されます。しかしながら、これにつきましては四十二年末に行なわれました診療報酬支払い方式改定によりまして剤数日数比例方式が廃止されたこと、さらにまた再診料が新設されたこと、それ等が相まちまして医療のビヘービアに変化が生じた結果であると私は判断しております。  なおまた、薬剤費の一部負担免除の方法につきましては、現在の方式は低等級者対策でありまして、低所得者対策とは申しがたい、まことに拙劣な方法であることを一言申し述べたい。しかもまた、その低等級者対策にいたしましても、その実施状態は必ずしも満足すべきものではないと私は考えております。  第三点に分べん給付の改善について申し上げますと、現在の状況で分べん給付改善のみを行なう必然性は、私はにわかには理解し得ないのであります。しかしながら、いずれこれは現物給付化を行なうべきものとして承認せざるを得ないと思います。ただし、千分の一引き上げにつきましては所要財源を上回ることは事実であります。給付改善を料率引き上げで措置するのはやむを得ないとは申せますけれども、この結果、組合管掌健康保険との格差がますます広がることになったことだけは見のがすことができないのであります。この点につきましては、抜本改正におきまする財政調整によって拠出と給付の均衡をはかるべきものと私は考えております。  最後にお願い申し上げたいことは、政府管掌健康保険は、千三百万人以上の中小企業の被保険者を対象とする重要な制度であることであります。この点にかんがみまして、国会の諸先生方もこの制度の改善、特に家族給付率の七割への引き上げ等、前進的な方向で今後の御審議を進められることを切に希望いたします。  現在最も重要な問題は、保険の問題であると同時に、医療の興廃の問題であります。医療制度の改善、すべての被保険者が安心してかかれるような健康保険にすること、そのような前向きの姿勢で御審議のほどをお願いして私の意見開陳にいたしたいと存じます。  ありがとうございました。(拍手)
  10. 森田重次郎

    森田委員長 次に、水野参考人にお願いいたします。
  11. 水野肇

    水野参考人 水野肇であります。私も小山先生と同様に、これに賛成か反対かというふうに聞かれますと、賛成でもあるし、反対でもあるという、きわめて微妙な言い方しかできないわけであります。  まあ結論的に申し上げましたならば、やはり二年前に時限立法として成立いたしましたものが、その二年間の間に約束しておった抜本対策というものが出なかったということについての改政治の怠慢というものは、やはり指摘せざるを得ないのではないかと私は思います。約束というものを重んじなければ何もやれないという国会の場で、簡単に約束がほごにされたということにつきましては、重大な問題であることは申すまでもないと思います。しかし、だからといって、このまま時限立法が時間切れになるということを放置しておいてよいのかということになりますと、それもまた簡単に、それが、それでいいのだ、つまりそこで、あとはあなた方が悪いのだからちゃんとやりなさいということだけでおさまるものではないのではないか、そんなふうに私は考えておるわけであります。いますぐに、ここにおいでの皆さん方が各党からこれぞ抜本対策案であるということをお出しになるのなら、それが一番いいと私は思うのでありますけれども、今日ジャーナリズムを通じて得ました情報では、それはまず実現不可能な話のようでありますので、そうといたしましたならば、やはり赤字が増大するし、かつまた、これがやがては食管特別会計のようになる様相というものがないではないという点から見まして、いわばあきらめられねとあきらめたというような形でこの法案が通ることはやむを得ないのではないか、そんなふうに思うわけであります。しかし、だからといって、この法案がそのまま通るということでは、やはりそれでは困る、少なくとも国民はそう思うのではないかと私は思うわけであります。それにはやはりこの次の二年間、あるいはもしほんとうに二年ができないとおっしゃるのなら、私は三年でもいいと思うのでありますが、確実に抜本改正案というものをお出しになる必要がどうしてもあると思うのであります。  それは、いままで費やされました各党のエネルギー、それをさらに何十倍も上回るエネルギーを費やさなければ、ほんとうの意味の抜本改正案というものはできないのではないか。むしろ今国会審議の場というものは、それをつくるための場とするということがやはり国民の要望ではないか、私はそういうふうに思っておる一人であります。世間では、今日の医療問題を評して応仁の乱だというふうなことがいわれております。麻の乱れるがごとく乱れてどうしようもないではないか、解決の端諸があるのかということに対しては、これが解決の端諸だということを、明確に指摘できる方はきわめて少ないというより、ほとんどいらっしゃらないのではないかと私は思うのであります。そういう場合に、非常にむずかしいことは、まず基本から考えるという姿勢というものが何よりも必要なのではないかと私は思うのであります。多少失礼な言い方かもしれませんが、抜本改正案ということば一つにいたしましても、一体抜本の本のほうは何か、そうして何を抜くのかということになりますと、はたと当惑したということになるのが今日の健康保険ではないか、そう思うわけであります。  さて、こういうふうになってきましたことは、やはり医療問題がきわめて複雑な様相を持っていて、専門家以外にはきわめてわかりにくいという要素があったということも事実ではないかと思いますけれども、そのためにいたずらに、端的に申しまして診療側と支払い側とがまっこうからぶつかるだけで、それから先へ進まないということが、本来ならば行政のベースではからるべき問題が、往々にして政治のテーマになったのではないかというケースが、かなりあったのではないかと私は思うのであります。これは何も政治家の責任とか、あるいはだれがよいとか悪いとかということではなくて、そういう世の中の社会機構になっておる、そこをどう改革していくかということも本委員会に課せられた一つの使命ではないか、私はさように思うわけであります。  さて、いろいろこの法案についての問題は諸先生方から出ましたし、私は、そのそれぞれについて、部分的にはきわめて賛成の個所も多いので、むしろそれよりも前向きの姿勢で取り組むための私たちの考えというものを二、三述べさせていただきたいと思うわけであります。  やはり医寮問題というのもは、医寮問題全体のビジョンを打ち立てて、そこからどういうふうにしていくかということを考えない限り、解決はむずかしいのではないかと私は思うのであります。健康保険というもの一つを直すにいたしましても、やはり全体にかかわることは非常に多いと私は思うのであります。保険制度だけをいじってみても、今日ほとんど解決がつかないのではないか。やはり支払い体系というものも考えてみなければならないし、そんなふうに考えていきました場合には、私は、やはりまず各党でビジョンというものを出されて、それをたたき台にして、新しいビジョンづくりをして、それに何カ年計画で到達していくか、それを厚生省事務当局にお願いするという形でやる以外には、私は、医療問題の解決はできないのではないかと思うわけであります。  次に、この保険の問題についての一つの基本的な問題としまして、私は、日本の現行の健康保険というのが、保険か保障かというところの論議が、きわめて明確ではないということを申し上げたいわけであります。なるほど厚生省では、いまの医療政策は保険である、したがって、経済のワクというものがあるし、ものによっては、自己負担もかかるのである。そして、もう一つ別のものとしまして、社会保障的なものとしては、生活保護法というものがあるし、それに中間的なものとして公費負担という、つまり結核、あるいは精神病、そういったものがあって、それらを並行的に行なっているのが、今日の行政である、こういうふうに御説明になっておられます。  しかし、国民はどういうふうに見ているかと申しますと、やはり私は、単純にそれらを全部引っくるめて保障だと考えておるところに一つ問題点があるのではないかと思うのであります。  次に、保険であるといたしましたならば、一体保険で何をめんどうを見、何は自己負担になるのかということについての論議も、やはり私は要ると思うのであります。もう少しシビアに言えば、何を保障すべきであり、何を保障すべきではないというところまで私は考えるべきではないかと思うのであります。何でもただということは、確かに理想の姿ではあると思います。しかし、何でもただということが、人間にとってほんとうにしあわせなことかどうかという、そういう高級な論議を私は委員会でも、ぜひ承りたい、さように思っておるわけであります。  そこで、よく言われますことは、保障する場合にどうだ、保険の場合にはどうだという場合に、必ず問題になるのは財源であります。しかし、財源というものが、一体どこから出てくるのかということを考えました場合に、やはりこれは国民の税金から出てくる以外には方法がないと思うのであります。その点において、私は、よく言われております――先ほども、ほかの参考人方々から御意見がございましたけれども、欧米先進国、アメリカは別でありますが、ヨーロッパの先進国といわれます国でも、やはり自己負担というものは、幾らかはある国が多いわけであります。あるいは月給の四〇%は、とにかく税金等々について天引きされるという、それがスエーデンあたりの実態であります。そういう場合に、私たちは、どこまで保障し、どこからは保障の外とするかということの明確な概念というものがやはり要るのではないかと思うのであります。ほかのことは、ともかくといたしまして、事、医療保険について、何を一番保障しなければならないのか。一番重要なことは、まず長期療養を要する方については、全部保険がめんどうをみるということにしていただけないかと思うわけであります。今日かぜ引き、腹痛とか、あるいは二日酔いなどについては、きわめて簡単に健康保険で薬をいただけますが、長期療養を要する病気になった場合には、それは自己負担というものがついて回るわけであります。それでなくても、雑費というものを必要とする日本の病院生活におきまして、やはり少なくとも医療費については、全部長期療養の人については見ていただきたいと思うのであります。それから順番に下っていって、そしてかぜ引き、腹痛はどうするかというところまできたときに、ほんとうに財源がないとおっしゃるのならば、私は、それを国民負担することについて、とやかく異議を申し立てるものではございません。ただ、明確な理由、説明がないと、それはいろいろのところでいろいろな議論が出るとは思いますけれども、かぜ引き、腹痛が保障されて、重病が保障されてないのと、かぜ引き、腹痛は保障をされませんが、重病は全部保障します、入院患者は全部持ちます、国民の皆さんはどちらがよいでしょうかという国民投票を行なえば、私は結論はきまっておると思うのであります。そういうようなことを、私はいまの保険について、基本的立場として非常にやっていただきたいと思うわけであります。  先ほどもちょっと触れましたが、もう一点申し上げたいことは、医療問題はきわめて複雑で、むずかしいものですけれども、私は、これの解決方法というのが、ただ政治だけに持ち込まれていいものだろうかということについては、きわめて疑問に思うわけであります。もちろん、こういう問題については、プロフェッションと申しますか、専門家の立場なり、意見なりというものを尊重しなければならないのは申すまでもありません。しかし、イギリスのロイアルコミッションというふうなものも片方にはございますし、私はほんとうに診療側と支払い側とが話し合いのつかない点についてのみは、その点だけについては、何か裁定権というふうなものを設けるという考え方もあるのではないかと思うのであります。そうしない限りは、いつでも診療側と支払い側とが対立する、その渦の中で、とかく国民は不在になるおそれがあるのではないか、それを私は心配をいたしているわけであります。  それからもう一点申し上げたいのは、抜本改正を御審議いただく場合に、私がぜひ考えていただきたいと思いますのは、先ほど来薬の使い過ぎというふうな表現もございましたけれども、私は、やはり医療というものは、本来技術を評価すべきものであって、物に重点を置いた健康保険の支払い体系というものについては、やはり邪道ではないかと思うわけであります。今日の医療の混乱の何割かは、そういうところから出ております。たとえば、医師という職業を見ましても、これは統計によりますと、サラリーマンよりも七年も寿命が短いということになっております。そういうことは、どうしてそういうことになるのかと申しますと、やはり忙し過ぎる、そうしてそれは、やはりそれだけかせがなければならないという悪循環からきている。もともと医師という職業は、非常に忙しいにもかかわらず、さらに忙しくなるということ、それが精神的にも肉体的にもそうであるというところに問題があるのではないかと思うのであります。したがいまして、抜本改正・案においては、ある程度の患者診療をすることによって、十分に収入を得られるという制度というものも考えていいのではないか。そのかわり、午後は先生方にも勉強していただくというふうなことが、やはりあってもいいのではないかと思うのであります。そのためには、今日のあの複雑な点数単価方式を、診療所、つまり開業医の先生のところからは切り離して、一人について幾ら払うというふうな、いわばどんぶり的な考え方というものも、ときにはあってもいいのではないか、私はそんなふうに思うわけであります。とにかく、そういうことを通じていろいろ言われております病院と診療所の機能の分化というふうなことについても、十分にうまくまとめられることをぜひお願いしたいわけであります。  いろいろ申し上げたいこともたくさんあるのでありますけれども、時間のほうは、あと一分ばかりとなりましたので、最後に一言だけ、私は、きょうここにいらっしゃる委員会の先生方に陳情申し上げたいことが一つございます。  それは、どうか今国会では、できるだけ前向きの審議をしていただきたいということであります。強行採決と審議拒否の繰り返しというものについては、国民はもはやあきたという気持ちを持っているわけであります。国民がそういうことの中において、医療問題というものはもうどうにも解決がつかないのだという印象を持ったといたしましたならば、それこそ国民にとって、これが最大の不幸ではないか、私は、さように思うわけであります。私は決して、先生方がそういうふうな審議ばかりをしておられるということを申しているのではないのであります。そういうふうに私たちの目に映るようなことが、しばしばあるということを申しておるのであります。皆さん方の審議というものについて、それがどうこうということを、私はここで批判する意図は毛頭ないのでありますけれども、もしも、そういうふうに国民が受け取ったといたしましたならば、たいへんであるということだけを一言申し上げたいわけであります。  多少失礼にわたったかも存じませんけれども、私の意見にかえさせていただきます。(拍手)     ―――――――――――――
  12. 森田重次郎

    森田委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。田邊誠君。
  13. 田邊誠

    田邊委員 まず、小池参考人にお伺いいたしますが、今度の特例法の中で特に問題なのは、薬代の一部負担である。これが長期療養に対するところの影響、あるいはまた、受診率を抑制しているという問題、医療担当者事務煩瑣の問題、こういった点から見て、この一部負担は、本来的に言えば、廃止すべきものである、こういう御意見がございました。  そこで、現在の医療保険制度の中で、本来、いわゆる払うべきものは保険料が主体で、保険料で足らない点は当然国が何らかのそれに対するところの手だてを講ずる、こういうことが本来のあり方であるという御説明もございました。  私は、そういった御意見の中から、一体、現在の政管健保保険料、千分の七十という特例法によるこの保険料、これと国庫負担の割合、これが一体どのような状態というものが最も適正な状態であるか。たとえば四十二年から四十四年にかけて、政管健保に対するところの国の負担は、同じ額である二百二十五億円でありまするが、したがって、政管健保財政全体から見た場合には、国庫負担の率は全体の中で下がっておる、こういう状態であります。こういったいわゆる国庫負担のあり方というものに対して、小池さんは一体どのようにお考えであるか、お伺いしたいと思うのです。  次に、加藤参考人にお伺いいたしますが、まあ、この中で特に薬代の一部負担の問題を強調されたのでありますが、これを存続されることが必要であって、抜本改正に向けてもそれが前提条件である、こういうお話でありました。  私は、その御意見の中で、いわゆるその薬代が医療費に占める割合が非常に多い、これはもっと考えなければならぬ、こういう御意見がございましたが、これと薬代の一部負担というのは、一体どういう関連があるとお考えでありますか。私どもの立場は、ここで明確にすることは避けまするけれども、この一部負担の問題と、医療費の中で占める薬の問題というのは、これはやはり別な角度で検討しなければならぬ問題じゃないか。これは何か混同されているような印象を御意見の中で拝聴したんでありまするけれども、一体、この一部負担という問題が、薬の抑制という問題とどういうかかわり合いを持っているとお考えでございましょうか。  それから、これは小山参考人にお伺いをいたしますが、特例法は、まあ、一応やむを得ないという立場で御説明がございました。とするならば、このやむを得ないという立場は、一体あなたは、財政効果上の問題を主としてあげられて御説明になったのでございまするが、抜本改正に向けて、この特例法延長というのは、前提として必要であるというようにお考えでございますか、単なるつなぎとして、やむを得ざる措置としてそういったものを容認するという立場でございますか、その点をひとつお伺いをいたしたいと思うのであります。  それから、水野参考人に対して二、三お伺いをいたしたいと思います。  一番最初に、抜本改正案を出す必要があるということを強調されました。そのとおりだろうと思うのであります。したがって、この法律審議抜本改正に向けてやはり論議を深むべきである、こういう御意見でございます。  さてそこで、水野さんおっしゃった、まあ医療問題非常に複雑でありまするから、それぞれひとつ各党なりのビジョンを確立をして、その上で論議を戦わすべきではないかという御意見であります。私は、非常にごもっともな御意見じゃないかと思うのでありますが、一体、このビジョンというのは、大筋としてはどういう柱がございましょうか。私どもは、医療といっても、これは医療保険制度の問題がございます。あるいは医療担当者の問題もございます。はたまた、医療機関の適正配置という問題もございます。ないしは、診療報酬体系を含める医療費という問題がございます。そうして薬の問題もございます。これらのいろんな柱が実はあろうと思うのでありまするけれども、その中で当面、論議をしなければならぬ論点というのは、一体どこに設定したらよろしいとお考えでございましょうか。  その点に関連をして、医療は一体、保険でいくべきか、社会保障でいくべきかという論議は、古くして新しい問題でありまするが、その中で、特に長期療養については、当然、これはもう、社会保障の立場をさらに加味して保障すべきである、こういう御意見は、私は、もうしごくもっともだろうと思うのです。ただ、その裏返しとして、たとえば軽度の疾病、腹痛や、かぜについては、これはまあ赤字になれば負担もしていいんじゃないかという御意見もございましたが、私は、これは財政の問題を水野さん抜きにして率直な御意見があったですから、そういった観点だけでお伺いいたしますが、財政問題を考えられればまたいろいろな御意見がございましょうが、私は、現在の国民医療の中で必要なことは、もちろんそういう長期療養者、非常に複雑な疾病にかかっている人たちにに対する手だてを講ずることは重要でございまするけれども、それと同時に、いわば早期に疾病を発見をし、いわばそれ以前の予防を含めた、そういう国民が健康である状態をつくり上げることも、私は、医療の果たすべき一つの役割りじゃないかと思うのです。そういう予防とあと保護、こういったものを含めた場合に、一体そういう軽度のものに対して、ただ単に、国民に対してある程度の負担をかけることはやむを得ぬじゃないかという、賛成であるといいましょうか、やむを得ないといいましょうか、そういう御意見に、私は、にわかにくみすることはでき得ないのじゃないかと思うのでありまするが、この点に対してもう少しくひとつ深めた御意見を承りたいと思うのであります。  さらに、御意見によって御質問を続けたいと思いまするが、最後に、水野さん、たいへん重要なことをおっしゃいました。それは、こういう国民医療審議しておる国会の場所において、与党は強行採決、野党は審議拒否というようなことは、これはもう、絶対避くべきだという御意見がございました。私どもはたいへん貴重な御意見として承ったのであります。私どもは審議拒否をしたことはいまだかつてございませんが、そこで、私は、やはりこの種の問題、水野さんがおっしゃったように、抜本改正に向けて論議すべきだ、私はこの点非常に重要だと思うのであります。といたしますならば、ただ単にこのリミットを、何日かの期間において審議をするということは、私は、あなたの御意向に沿わないことだと思うのです。私どもは、この際、特例法審議をしながらも、なおかつ、向かうべきものは抜本改正に向けて国会審議を尽くす、その上に立って、たとえば王立委員会等のいわば第三者機関にこれをゆだねるということもある時期においては必要である、こういう立場を実は私はとって、私自身が社会保障制度審議会の委員でございますから、私はこれに賛成をいたしたのでございまするけれども、そういった点から見ますと、いまの論議はきわめてリミットを置いて、その中でもって非常に平面的な論議でもって、あとは強行採決、こうなるのでございまするけれども、そういったことはやはり避けなければならぬというのが、私は、あなたの御意向であり、私どももまたそういった意見であるわけですけれども、したがって、この国会というものは抜本改正に向けて徹底的に審議をする。そのことによって国会が日時が足らぬということであれば、さらに別な機会にまた審議を移すというようなことで、私は、やはりこの機会を得てやらなければならないことはその中身として非常に多いんじゃないか、こういうふうに思うのでありますけれども、ひとつ私どもの今後の審議参考にする意味において、この点に対するところの御意見を承りたいと思います。  また、御回答によりまして御質問をさせていただきたいと思います。
  14. 小池昇

    小池参考人 政管健保がここ数年来赤字であるということは、その政管健保自体の体質にあるのでありまして、きわめて収入の悪いそういう階層だけを集め、そして収入のいい被保険者は健保組合のほうへ流れていく、そういうことが必然的に出てきたのでありますから、政府としましては、この流れ現象を食いとめて、一つにまとめるということが何より大事なことでありますが、現在そこまで仕事ができないということになれば、これは一時的な対策がやむを得ないということになります。  そこで、そういう一時的な対策に対する政府の国庫支出ということでございますから、私は国民保険政府が強制しております以上は、国庫負担は十分に出すということが必要だと思います。少なくとも今回の特例法において、患者も出すなら国も出すという態度は、私は基本的には考え方として賛成できないのであります。まず、私も出すから、皆さんも出してくれというのならよろしいのでございますが、特例法が通らなければ、今回の二百二十五億も出ないというような話を聞いておるわけでございまして、これは本末転倒だろうと思います。  そこで、皆保険という立場から申しますと、保険料がやはり収入の基礎ではございますが、これは専門の方々がその限界というものをよく御承知だろうと思います。私のような立場のものが、幾らが限界とか、国庫負担は何億円が適当かということを申し上げるのは僣越だろうと思うのであります。しかし、保険料による収入が基本だ、しかし、たとえば老齢対策とか、その他政府は、いまよりももっともっと出さなければいけないということは、私は申し上げていいと思います。ただ何億円ならいいという数字を私がここで出すのは、私の専門的立場ではないと思いますので、そのような御返事をいたさしていただきたいと考えております。
  15. 加藤俊三

    加藤参考人 ただいま田邊先生から、薬剤費が四〇%も占めているのはいかにも多いが、それと一部負担とはどういう関係があるかという御質問であったと思いますが、医療制度というのは、東畑先生もおっしゃったことがございますが、医者と患者、これはソクラテスとヒポクラテスでございますか、その関係で、聖人君子の間のような関係をもって考えられておる。でありますから、われわれは聖人君子の集まりじゃございませんので、患者の側も、薬がただであればよけいもらいたいというのが人情でございますし、医療担当側も、薬をよけいやればそれだけ収入がふえるということであれば、よけいやりたいというのは人情でございます。そういうことから、いままでの医療制度でも軽症者に非常に甘かったということが、今日の飛躍的な医療費の膨張を来たした大きな原因になっていると思います。でありますから、たとえ十五円でも一部負担があるということは、それだけ患者の側におきましても、不必要な薬までくれとは要求しないということになってまいりますので、たとえ十五円でも、一部負担ということが大きな赤字の歯どめになって、赤字の火消し役を果たしている、そのように考えるわけでございます。
  16. 小山路男

    小山参考人 お答え申し上げます。  特例法はやむを得ないというおまえの立場は何であるかといえば、これは明らかに財政的な理由によるものでございます。  後段の、抜本改正のつなぎか、前提かという御質問に対しましては、先ほど申し上げましたように、中間対策でございます。抜本改正にいきます場合には、政府管掌健康保険の体質の改善について、格段の努力を払ってしかるべきもの、このように考えております。
  17. 水野肇

    水野参考人 田邊先生の御質問にお答えします。  医療のビジョンというのは、柱としてはどういうふうにおまえは考えておるかという御質問が第一点だったと思いますが、いろんな考え方はあると思いますけれども、私個人としましては、まず第一番に、医療従事者というのが一つの柱になると思うのであります。これはパラメディカルも含めまして、かつまた日本の医師づくりというふうな問題等も含めたものが一つであります。二番目には、やはり私は社会保険というものがあると思うのであります。その社会保険というのは、私は診療報酬体系というものは、当然その中に入るべきものだというふうに理解しております。それから三番目には、医療機関と国民の結びつきというものになろうかと思うのであります。つまり先生もおっしゃいましたけれども、診療所をどうするとか、病院の機能はどうかという問題について、やはりそういうものがあるのではないか。そのほかにもこまかいことはあるかもわかりませんが、私は、この三つを通じまして相互にバランスがとれ、かつまた、きわめて分析的だけでなくて、総合的でもあるというのがビジョンの形ではないか、さように心得ております。  なお、それの個々についてこまかく言い出しますと、これは委員会が夜になりますので、また、いずれ機会がございましたらお話しいたしてもよろしいと思います。  それから二番目の、おまえはかぜ引き、腹痛はいたし方がないではないかというふうに思っておるのかという感じの御質問でございましたけれども、もちろん私はそうは思っておらないのでありまして、時間がないので省略いたしましたが、私は一言申さしてもらえば、健康保険というのは名前だけで、これは実は病気保険ではないかということを古いたかったわけでございます。したがいまして、先生の描いておられます、たぶんその点においてはビジョンが同じだろうと思うのでありますが、予防医学ということを考えない医学は、もう今日の医学ではないとさえ私は申し上げたいわけであります。  それから三番目の御質問というのが私にとっては最もむずかしい問題でございまして、私は政治はよくわかりませんしいたしますけれども、ただ私たちとして申したいのは、やはりできるだけ審議をしていただきたい。しかし「しんぎ」には人べんのほうの信義も各党間にあるのではなかろうか、さように拝察するわけであります。したがいまして、私はそれ以上のことはちょっとようお答えいたしませんが、時間のある限りできるだけやっていただきたいということは申し上げて差しつかえないと思います。
  18. 森田重次郎

  19. 大原亨

    大原委員 きょうはここで議論は申し上げるというつもりは全然ないわけですが、二点にわたりまして御質問いたしたいと思います。  その前に、いろいろと特例法審議についての御意見がございましたが、その中で共通いたしておりますのは、政府がやるべきことをやっていない、非常に無責任だ、これはみんなの人が言われるわけです。それから抜本改正も非常にお粗末だ、こういう意見も出たわけであります。そういう点で政府は、与党を含めまして、この問題については当時者能力を失っておるのではないか。たとえば佐藤総理は一年ごとに厚生大臣をかえるわけです。これじゃ、何をやろうと思いましても、できっこないわけです。実際にはやる気があるのかどうかという議論が出てくるわけであります。ですから、四百七十四億円ほど、特例法を実施しない場合政管健保赤字があるというのですが、その中には二百二十五億円入っているわけです。ですから、あとぐらいは政府が担保として負担をいたしまして、そして腹をかけて佐藤総理以下が抜本改正をやるべきだ、こういう主張なんですね。だから、内容では非常にお粗末であるとか、やるべきことをやっていないという議論で、私も同感ですが、結論的に若干違う点がございますが、その点は、私ども社会党の主張も御理解いただきたい。これは議論じゃございません。  それから小池さんと加藤さんに率直にお尋ねをいたしたいのですが、いま御議論にならなかった点も含めまして、医師会のほうは、政府・自民党の案のもとになっておりましたが、これはきょうは公述がなかったわけですが、勤労者保険の家族を、地域保険国民健保へ入れていくという案ですね、それはどういうメリットがあるというふうにお考えでしょうか、この機会に率直な御意見を聞かしてもらいたい。この点につきましては加藤さんからも御意見を聞かしていただきたいと思います。  これに関連いたしまして、できるならば、労災保険医療給付や短期給付の面を勤労者保険に入れるという面についても、簡単に議論をしていただければ幸いだと思います。これは一つであります。その他、小山先生や水野先生のほうから、これにつきましての御意見がありましたら、お聞かせをいただきたい。  それから第二の問題ですが、医師会のほうに私は率直にお聞きしたいと思うのですが、いまの診療報酬体系につきましては、皆さんが非常に議論をされて意見を出されたんですが、これは何といいましても、私どもの若いときのことを思うわけではないのですが、大体粉剤で三日分ぐらいの薬をもらいまして、そしてからだを診察しては続けてもらったものであると思うのですが、いまは、言うなれば、病院や診察所へ行きましたら、売るほど薬をくれるわけであります。ビニールの袋に入れて帰るほどくれるわけであります。それを調べてみますと、私がある特定の場所で調べていただきましたところが、これは、半分とは言わないが、三分の一は飲んでいないわけです。これは、技術を尊重しろということとも関係はございますが、これは非常に矛盾があるわけでございます。ですから、医者や、歯科医師や、薬剤師の、技術と責任を尊重すべしということは、私どもは大賛成であります。ですから、総医療費の中で、これは賃金所得を上回っていることが問題だという議論がございましたが、四二%も薬剤費、注射代が占めるということは、これは世界のどこにもないと思うのです、私もヨーロッパその他を回りましたが。だから、技術尊重の診療報酬体系について、いまの点数単価制の議論がございましたが、この点は小池さんはどういうふうにお考えになっておるのかということであります。  もう一つは、物と技術を分離するということは、私は当然のことだと思うのです。たとえば医薬分業をやってないのは日本と、日本の植民地であった台湾、韓国ぐらいのものですよ、若干医療が進歩いたしておりますところでは。ですから、そういう点は、技術を尊重するということと、私は当然合致すると思うわけであります。だから、そういう点で、総医療費の中で技術をほんとうに尊重する体系を立てることが必要です。その中で、物と技術の混同、売薬医療、乱診乱療とか、便乗とか、算術とかいわれている問題は克服していかなければならない。これは私は政治の課題であり、お医者さんの専門家の課題であり、あるいは東大医学部の紛争だって、その根本をたどってみるとそういうことが問題です。ですから私は、そういう点は医療担当者としても、率直かつ明確なる見解を出されることが必要だと思うのですが、この機会にそういう点に触れて御意見をお聞かせいただきたいと思います。この点についてお伺いいたします。  もう一つは健保連の加藤さんの御意見ですが、私は薬代の一部負担をさせて、そして財政効果を出して総医療費についての抑制をしていこうというのは、これは手段としては、水野さんの御意見もあったが、私も医療保障という観点に立つわけですけれども、すぐれた手段ではないのではないか。皆さん方が申し述べられたような点を整理していくならば、二百円の初診料を含めて、入院費の三十円、六十円を含めて、その点はそういう再配分をしながら、産業公害や、職場や、あるいは交通とか、いろいろな疾病構造がふえて――交通事故等があるわけですから、この問題についての公費負担政府の施策等も考えながら――全体としてはやはり名目賃金は上がっていくのですから保険料は上がるのです。標準報酬は上がっていくわけですから、保険料収入は上がっていくわけです。ですから、その中で私は、国民立場に立って安定した、そういう体系をとれる可能性があるのではないか。その間で、そういう疾病構造の変化に対応する公費の負担について、国が十分見ていく。特に、四百七十四億円の中で、二百二十五億円出しておるわけですが、政府の責任からいいますと、これは少ないわけです。少々それについて政府が責任を背負っておいて、責任ある抜本改正を佐藤総理がやるということは、国民立場から見れば当然のことではないか、こういう議論をいたしておるわけであります。これは多岐にわたる議論では――議論をする議論ではございませんが、その点、皆さん方のそういう点に触れた率直な御意見がありましたならば、ひとつお聞かせをいただきたい、こういうことでございます。
  20. 小池昇

    小池参考人 まず初めの勤労者保険の家族だけを移す、分離するということの問題でございますが、勤労者というグループをつくって、そしてほかの国民とこれを分離して扱うということは、基本的に私は考えなければならないと思うのであります。国民の一人一人の生命を尊重するという立場から申しますれば、勤労者であろうと自営業者であろうと、私はひとしく尊重されなければならないと思うのであります。そういう点から、健康保険制度というものは、地域に一本化しなければいけないというのは私たちの理想なのでございます。しかし、そこへ急激に移すということもなかなかできがたいことでございますので、その点一つのそこへ行く道筋としまして、地域に相当密着性のある家族の方というものは、国民健康保険へ移すということもまず第一歩としてはよろしいのではないかというふうに考えるのでございます。もちろん、これは功罪、得失もいろいろございます。しかし、そういう私たちが考えております理想像への第一歩という点では、この辺から踏み込んでいただけたらと思うのでございます。そこで勤労者とあるいは国民健康保険との格差の若干の訂正ができるのではないかとも考えますし、また勤労者というのが、現在企業主から保険料の半分の補助を受けて、しかも自分の家族まで企業主のお世話になるという形は、人間の、あるいは働く者の独立という立場からは、私は賛成できないのでございます。国民の権利として自分の主張はどこまでも自分でその主張を守るという立場国民の間に出てきておりますが、健康につきましても、自分の雇い主に金を出してもらって、自分の扶養家族までめんどうを見てもらうという態度は、だんだん改めていってよろしいのではないかと私は思うのです。そういう意味で、家族をひとまず国保のほうへ移すということは、積極的ではありませんが、私としては賛成いたすのでございます。  それから薬の量が多過ぎるという御批判なんです。また、技術尊重の医療費体系がつくられていないではないかという御質問でございますが、私は、そのとおり、技術尊重の体系は現在はつくられていないと思います。一例をあげれば、患者さんの再診料が三十円というのは、私は医師に対する侮辱的な点数だと思っております。  そこで、この点数体系を改めてはどうかというお話でございますが、私としましては、出来高払い制という制度の中でも、幾らでも技術尊重という体系ができると思います。出来高払いの中で技術尊重ができない法はないと思います。多年私は、そういう意味で技術尊重という方向で診療報酬の点数を改正していくための努力を続けているのでございますから、こういう意味で私たちの考え方を御理解願いたいのでございます。  そこでもう一つは、物と技術の分離、たとえば医薬分業についてはどういう考えかという御質問でございますが、私は医薬分業には基本的に賛成いたしております。分業という立場は技術尊重という点から賛成しております。しかし、現在直ちに強制的にこれをやれば、国民がまだそういう体制についていけない、そういう事情がありまして、技術尊重というものが十分確立されるという見込みがありますれば、その時点で医薬分業はもっともっと進めていい、私はそう考えております。決して私は医薬分業に不賛成ではございません。  以上、私に与えられました御質問については、お答えを終わります。
  21. 加藤俊三

    加藤参考人 お答えいたします。  最初のお尋ねの家族分離につきましては、私どもは絶対に反対でございます。これはもう何らメリットがないのでございまして、それぞれ企業の健康保険組合というものは、いま家族ぐるみの健康管理ということに力を入れてやっております。この勤労者の幸福というものは、家族ともども健康であって初めてしあわせであるのでございまして、なま木を裂くように家族を分離して地域医療に持っていくということは、時代に逆行するのもはなはだしいというふうに考えます。また一方これを受け入れる側も、地域医療に移す場合に、あの試案によりますと、保健所と地区医師会が協議してやるというふうな表現になっておりますが、一体だれが責任を負ってやってくれるのか。保健所といいましても、医者のいない保健所がたくさんございますので、そういうところへ家族を移してはたして家族がしあわせかどうか、私は非常に疑問がございます。受け入れ体制が十分できていないということも反対の一つでございます。  それからもう一点、家族ぐるみ健康管理をやっているとおまえは言うが、しかしながら中には窮迫した組合で本人の医療給付にさえこと欠くような組合があるじゃないか、そういう組合にどうして家族のめんどうまで見れるかという御反論もあろうかと思いますが、ごもっともでございまして、そういう組合に対しましては、私ども健康保険組合連合会といたしましては、共同事業的なことを考えまして、一組合ではできないことでも共同でやればできるじゃないか、お互いに助け合っていこうじゃないかというふうな気持ちもいま考えておるということを、申し添えておきたいと思います。  それから第二点の御質問、総医療費の抑制のためには薬剤の一部負担だけには限らないじゃないかというふうなお尋ねだったと思いますが、そのとおりでございまして、私どもは、全部を含めまして総医療費の一割ぐらいを本人が負担する、九割給付を目途とすべきであるというふうな方針を打ち出しておりまして、これはすでに内外にそういう意見を発表いたしております。そして、先ほどからいろいろ水野先生なんかのお話もございましたように、軽症者よりもむしろ重症者のほうにそういうものを回すべきであるというふうな考えで、平均して九割給付を目途にすべきであるというふうな考え方を打ち出しております。  以上でございます。
  22. 大原亨

    大原委員 これは議論の場ではありませんから……。非常に貴重な御意見で、お二人の御意見は、中央医療協その他では仲が悪いという話を聞いておったのですが、議論していただきますと、かなり一致点があるように私は思います。私どもとの一致点もあるように思います。  で、これは大きな議論は別といたしまして、健保連では組合管掌をやっておられるわけですが、政府管掌の健康保険で千分の一の保険料が上がりますね、分娩費で。分娩費について最低保障額と家族の定額保障をやるわけですが、率直に言いますと、これは便乗の値上げでありますが、千分の一、保険局長よく知っておられるとおりです。そこで、名目賃金が上がれば標準報酬はね上がってきますから、計算いたしますと、言うなれば全く堅実な計算をしたといえばいいけれども、見当はずれの計算をしていることと一それはいろいろ議論は別です。そういうふうになりますと、やはり組合管掌も、分娩費の最低保障を上げますと、平均報酬が高いとかいろいろな問題がありますけれども、組合管掌の健康保険にはどういう影響があるのでありますか、その点をわかっておりましたらひとつお答えいただきたい。
  23. 加藤俊三

    加藤参考人 お産の給付が大幅に増額されるということは健康保険組合財政にも影響をもたらしますが、そのためにもこの特例法延長していただくということが必要でございまして、特例法延長されることによりまして、この医療費が――いまこの九月から特例法が廃止になるという前提で予算を組むように厚生省から指示を受けまして、本年度初めから、この九月から廃止になるというたてまえで、医療費増高を見込んだ予算をわれわれの組合は組まされております。でございますから、この特例法延長になりましたら、お産給付の増額が大体とんとんであろう。政管のほうで千分の一ならちょっとおつりがくるというふうにいわれておりますが、われわれの組合でも、このままでいけばお産給付で増額いたしますが、大体とんとん、若干おつりがくるという程度が一般の趨勢じゃないか、そのように考えます。
  24. 大原亨

    大原委員 それは組合管掌のおたくのほうは、できるだけ財政が豊かになるほうがいいから、大体やんわりとおっしゃる。  それは別にいたしまして、それで私はあまり続けないわけですが、もう一つだけ水野さんに聞いておきたい。つまり薬に対する宣伝、販売ですね。これはむちゃくちゃですね。薬の概念が日本はむちゃくちゃですね、いろいろな国へ行ってみまして。ドリンク剤などが薬としてはんらんしていて、赤マムシとかなんとか言いまして、これは薬の概念がむちゃくだと思うのです。それからお医者さんのところにいきまして、アリナミンくれなければ承知せぬとか、それに迎合すればいいお医者さんであるとか、全く医者を侮辱しておると思うのですね。そういう薬に対する概念が非常に乱れに乱れているということです。それも医療費の増大と深い関係がある。この点についてひとつ率直な所見を水野先生からお伺いしたい。
  25. 水野肇

    水野参考人 薬というのはたいへんむずかしい問題だと私は思うのでありますけれども、私はいま世界的に薬という名において売られているものには三種類あると思うのです。一つはつまり治療薬で、医師処方し、また医師治療に使うという、これが一つのグループであります。それから二番目には、医師処方はないけれども薬剤師なら売れるという薬があるわけであります。これは日本の場合じゃなくて西ドイツとかその他ヨーロッパの各国の例であります。それはたとえば、具体的な名前をあげるのは差しさわりがあると思いますが、つまりかぜ薬とか胃腸薬とかというふうな種類のものがそれに該当します。それから三番目にはどこで売ってもよいもの、それを薬というべきかどうかについては御議論のあるところだと思いますけれども、私はその三種類あるのではないかと思うのであります。西ドイツあたりでは、医師処方せんを出したものに限り薬剤師が売れる薬というものと、薬剤師なら売れるけれども薬剤師以外の人は売れない、ただし処方せんは要らないというのが二番目としてあるわけです。三番目には、ドロゲリーというのですけれども、薬店のようなもの、いまおっしゃった赤マムシ的なものでありますが、そういうようなものも含めましていろいろあるわけであります。  ひるがえって日本の薬の状態を見ますと、私は日本の薬の問題を論議する場合に一番重大な問題は、実はメーカーの産業構造にあるというふうに考えておるわけであります。つまり非常にたくさんのメーカーがあって、そこがいろいろなものをやり、そしてまたパテントというものがヨーロッパの各国とは全く違う。つまり物質特許ではなくて製法特許であるというところに問題があるわけであります。イタリアは全く特許がないので、これはおっしゃるような表現をすれば、むちゃくちゃになっております。それから西ドイツでは、おととしだったと思いますが、物質特許に変えました。だから私は、日本の場合には、薬がたくさんはんらんし、薬がたくさんはんらんするからやはり広告というものが要るんだと思う。その薬のたくさんはんらんする一番大きな理由は、パテントのがれというものが易々としてできるところに私は問題があると思う。薬の問題というのは、さきのほうで出てきたいろいろなことを論議することももちろん重要であると私は思いますけれども、やはり根本の産業構造としての薬のあり方、あるいはメーカーのあり方というところから順次考えていくほうが、もとを正すという意味においてやはり正しいんじゃないか、私はそんなふうに考えるわけであります。出てきた現象だけを見ますと、確かに大原先生のおっしゃるようなことも多々あるというように私も思いますけれども、その現象をどういうふうにして直すかということになりますと、やはりもとにまで戻らなければならないのではないか、さように私は考えております。
  26. 森田重次郎

  27. 島本虎三

    島本委員 私も、いま意見聴取にあたりまして、貴重な意見を拝聴いたしまして、ここで相反する意見についてのみ私はひとつただしておきたいと思います。  その一つ小池先生でございまするけれども、薬剤一部負担の問題については、これは負担をはずしてもらいたい、こういうような御意見の開陳があったわけであります。そのあとで加藤参考人のほうからは、薬剤一部負担、この分については修正すべきではない、これは有効な手段である、むだの診療をありがたがる傾向がある以上これは当然だ、このような意見の開陳がございました。これは相反するのでありまして、私は、この点に集中して小池先生加藤先生からひとつ御意見を賜わりたい、こういうように思います。  次に、小山先生と水野先生にお伺いしておきたいと思います。それは医療についての保険か保障かの問題であります。水野先生の場合には、なかなか含蓄の深い開陳がございまして、かぜ引きや腹痛、こういうような表現がございまして、それよりも長期療養に対して保険で全部めんどうを見るべきではなかろうか、こういうような御意見等あったわけでございます。そういうふうにして見ますと、見ようによりましては、簡単なものは保険で、長期のものは保障で、こういうようにも見れるわけであります。しかし、この医療全体のスタイルから申しまして、予防と治療とアフターケア、こういうふうなものを考えますと、やはり保障という観点からこれを進めるべきではないのか、こういうふうに思うわけなのでございますが、この保険と保障、これについてのはっきりした御意見をひとつ賜わりたいのと同時に、二百二十五億の国庫負担につきましてのいろいろな御意見も出たのでございますが、当時は二百二十五億。昭和四十二年のころの予算は多分四兆何千億かでございましたが、本年は六兆七千億をこえておるのでございます。二百二十五億の国庫財政負担はそのままでございますが、そうなりますと、率にいたしますと当然三百億をこえてもいいことに相なるわけじゃなかろうか、こう思うわけでございますが、現行据え置きのままの二百二十五億についての議論が集中されましたが、このようにしてスライドされる立場というようなものの御意見の開陳を全然聞かれなかったわけでございます。その点等について水野先生にも伺っておきたい、こういうふうに思います。  それから最後に、これはいかがでございましょうか、加藤先生ですが、四十二年の当時も、これは不本意ながらああいうふうな事態になりましたが、しかし延長二年間の時限立法で本年こういうようなことになりました。本年また再延長、二年延長の案が出ておるのであります。四十二年の当時も、健保連の人たちは盛んに、そのまま認めなさい、このまま政府の言うとおり認めなさい、こういうふうに言っておったわけでございます。今回また加藤参考人も、これはこのとおりやりなさい、こういうふうに言うわけでございますが、また二年の時限立法にもしなったといたしますと、この抜本改正は前回できなかった、今回ももしできない場合を予想すると、二年後においてはまた政府のやるとおりやりなさい、こういうようなことになるのでございましょうかどうか。ちょっと皮肉めいておりまするけれども、前からのいきさつがあるのでございまして、この点についてお伺い申し上げておきたいと思うわけであります。
  28. 小池昇

    小池参考人 健保連の加藤さんとは、薬剤の一部負担のことで基本的に対立した意見になりましたが、私としては、現場を預かる医師立場としてきょうはお話し申し上げたいということを、前にもお断わりして申し上げたのでございますが、法律によって医療行為の中のある部分だけを制限するというのはこの薬剤負担だけでございます。医療行為の中には数々ございまして、どれも必要なことでございます。いま薬剤について、むだが多いとか、その他いろいろ御意見はありましたが、薬剤というものは医療の中の一番大事な位置を占めるのでございまして、今日の平均寿命の延長、あるいは結核の減少、そういったものはすべて、この薬剤の開発、これの国民への応用ということから生まれてきたのでありまして、薬剤を目のかたきにしての多い多いということばの裏には、やはり医療費をそこで縮めようというねらいがあってなされているのではないかと私は思います。薬剤というものが医療の中で占める地位というものをもう少し判断していただきたいのでございます。私は、決してむだな薬剤投薬をすすめるものでもないし、そういうものは厳に慎むべきであると考えております。しかし、法律でこれを強制して、金を取り上げることによってこれを制限していこうという考え方には、私は根本から賛成できないのでございます。そういう立場で幾ら議論してもこれは並行線であるということになると私は思いますので、その辺は、議論を通じまして、先生方の御判断によるということになろうかと思います。
  29. 加藤俊三

    加藤参考人 薬剤一部負担につきまして、むだな医療がこれで抑制されておるというふうに申しましたが、全部が全部むだな医療というわけではございませんので、小池先生がおっしゃいましたように、一部負担があるために、もっと薬をやりたいがやれないという場合も確かにあるだろうと思います。でございますから、私も冒頭陳述に申し上げましたとおり、患者負担のないことが望ましい、しかしながら、いまのように支払い方式にチェックシステムが全然ないときにおいては、これはやむを得ないのではないかというふうに申し上げたわけでございまして、チェックシステムができればこの一部負担ということは取っ払ってもいいのじゃないかというふうに私は考えるわけでございます。  それから、二年前に健保連は賛成し、今度もまた無条件で賛成しているじゃないか、またこれでできなければ、さらに二年先でも賛成するのかというお尋ねでございましたが、私は最後に申し上げたとおり、二年といわず早急にやってほしいということを申し上げたわけでございまして、二年後にもまだできないというようなことは考えておりません。
  30. 小山路男

    小山参考人 保険か保障かという御質問でございますが、保険にいたしましても、保障にいたしましても、帰着するところは財源の調達方法の相違にすぎないのであります。元来、医療保障と申しますものは、その中核に医療保険があり他方において公費負担医療がある。しかも、その中間にサービスとしての医療、つまり保健所等によります予防給付等が一体となって医療保障になるものと理解しております。しこうして、医療保障の中核になるものが医療保険であると申しますのは、賃金所得の上昇に応じて弾力的に財源を調達し、その面で自主的な安定財源をとれるという意味では、医療保険が最もすぐれた手段であります。したがいまして、保険によることが不適当な医療については公費負担医療を積極的に拡大すべきである、こういうのが私の意見でございます。
  31. 水野肇

    水野参考人 私にも小山先生と同じ質問が出ておったわけなんでありますが、私も全く小山先生と同じ意見であります。ただ一言だけ申したいのは、やはり医療というものは産業になるのかならないのかという議論が一つあると思うのです。医療が産業になるかならないかということによって、私はそこでいろいろバランスの問題なんかも出てくると思うのであります。それから、社会保障という色彩というものは、今日世界のどこの保守党でももうスローガンになっておるわけでありまして、社会主義政党だけの専売特許ではないように今日なっておるわけであります。そこでその方法としては、保険という形をとりながら公費負担をふやすか、そうではなくて保障というものでいくかという違いにだんだん近寄ってきておるということは言えると思います。ただ私は、何でもただということについてはいささか疑問を持っております。と申しますのは、何でもただということがはたして人間の生きがいというものとどう関係があるかという一点においては、私は、何でもただということがほんとうにいいものか悪いものかというのは、むしろこれからの歴史が証明するであろうというふうに考えております。  その次におっしゃいました、赤字は国がどれくらい負担すべきかというのは、私は、赤字が出たら何でも負担しろという意見にも賛成いたしかねますけれども、そうかといって、赤字が出たら、それは財政が悪いのであるからそこで考えろというふうに一方的に押しつけることも、また反対だと思うのであります。しかし私は、その赤字内容ということについて十分に考えなければいけないと思うのであります。私は門外漢ではございますけれども、食管特別会計がなぜ赤字になったかということをいま考えてみました場合には、その問題も、おのずからやはりどこに限界を引くべきかというのは、御議論はあるでありましょうけれども、何かその線が出てくるように思います。  それから三番目の、おまえはいまさつき、この法案についてはやむを得ぬからしかたがないと言ったけれども、二年たってまたこうだったらどうかという質問については、やはりそれは仏の顔も三度というようなことが世の中にもございますので、そうとしか言いようがないわけであります。しかしむしろ私は、二年たってまたこういうことにならないようになさる責務というのも皆さま方のほうにもおありではないか。つまり二年間、半年でも三カ月でもよろしいから、あれはどうなっておるかということをいろいろつつかれるということも、一つ方法ではなかろうか、さように存じております。
  32. 森田重次郎

    森田委員長 この際、午後零時四十五分まで休憩いたします。     午後零時二十四分休憩      ――――◇―――――     午後一時六分開議
  33. 森田重次郎

    森田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続けます。田畑金光君。
  34. 田畑金光

    ○田畑委員 最初医師会の小池先生にお尋ねいたしますが、実はわれわれ、日本医師会健保特例法延長には反対だ、このように承っておりましたし、また全国の各医師会からも、強く反対してくれ、こういう陳情書をたくさんいただいていたわけでありますが、先ほどのお話を承りますと、むしろこの際修正して通すべし、通してくれ、こういう点に焦点を当ててお話しになられておりましたが、これはどういうわけでいつごろから態度の変更がなされたのか、これが第一点。  それから、第二点としてお尋ねしたいことは、六月十七日の第三回のH本一医師会の理事会において、武見会長からのお話として、「日医ニュース」によれば、特例法については、自民党が審議の過程で、先生の指摘された医療費の一部負担については修正をして、これをなくして成立がなるである、こういうことをお話しなさったということをわれわれは見ておるわけであります。先ほどの小池先生のお話を聞いておりますと、武見会長のお話の趣旨に基づいて発言されておるやに承っておるわけでありまするが、日本医師会としては、医療費の一部負担がはずされれば健保特例法の成立はやむを得ない、こういうことなのか、あらためてその辺の事情を承りたいわけです。  第三の点として、特に私はこの際、いろいろ薬の問題が出ておりましたが、とにかくわが国の医療費の中で、療養費払い、診療報酬体系の問題等等、この診療報酬の中において医者の技術の評価を正当に取り入れるということが一番大事な問題じゃなかろうかと思うのでありますが、こういう点こそ日本医師会等から強く発言されてしかるべきではないかと考えておるわけであります。残念ながら、先ほどのお話の中でもこのような発言がなかったということは遺憾に思いますが、正当な医療報酬のあり方の大きな問題としては、いまのように物に偏重する療養費払いではなくして、技術に重点を置いた支払い制度、それを徹底すれば、医薬分業、いろいろな問題に発展すると思いますが、そういうことこそ大事な点ではないのか、これが第三点。  第四点は、これは健保連とともにお尋ねするわけでありますが、けさの新聞を見ましても、昨日二カ月半ぶりに中央医療協議会がようやく開かれたが、これまた開かれたままになって終わってしまっておるわけです。いろいろな経過を経て、中央医療協は二カ月半も空白の状態を続けておるということをわれわれは承知しておりますが、とにかく、昨年すでに医師会としては、一二・五%の医療費の引き上げを要求されておるわけです。開業医の皆さんもいろいろ御苦労されておられると思いますが、特に病院の経営は四苦八苦の状況に追い込められておるというのが実態じゃないかと思います。看護婦のいわゆる二八闘争などを見ましても、いろいろな点からこれは来ておるとは思いますが、やはり病院経営の財政の面からくる制約などがこういう問題を引き起こしておると考えておるわけで、しかも、ことしの春闘ベースがあのように高いベースできまっておることなどを考えれば、人件費、物件費による病院、診療所の経営が非常に苦しく追い込められておるということは、われわれしろうと筋もよくわかるわけでありますが、こういう問題について、中央社会保険医療協議会などが、もっと話し合いの場所として、お互い立場を越えてわが国の医療のあり方を追求するならば、共通の場所があり得ると思うのでありますが、どうして医療協が今日までこのような経過になっておるのか。これは日本医師会の代表であらせられる小池先生と健保連の代表であられる加藤先生にそれぞれお尋ねしたいと思います。  さらに、健保連の加藤先生にお尋ねしたいことは、国民医療対策大綱が先般与党から出されて、そうしてこれが厚生省に預けられて、厚生省がこれをもとにしていろいろ検討しておるやに聞いておるわけでありますが、内容に触れて発言することは控えますが、端的に健保連としては国民医療対策大綱をどのように評価しておられるのか。  さらに、第三点としてお尋ねしたいことは、このままの形で健保特例法延長は通してもらいたいというお話がございましたが、とにかく政管健保については、当面の財政問題として特例法を出しておるわけであり、また今回も、財政対策としてさらに二年間延長してくれというのが政府の言い分です。しかし、加藤先生たちが経営しておられる健保連は組合健保であり、しかもまた、どっちかというと大企業の組合健保であり、標準報酬を見ましても、政管健保との間には相当の開きがあるわけで、これがいわば両組合における保険財政のアンバランス、給付のアンバランス、こういうことを生み出しておるわけで、そういう点から見ますならば、政管健保と組合健保を比較検討してみたときに、一昨年十一月に厚生省医療保険制度の改革試案なるものを出しておるわけでありますが、あの中で財政の調整という思想が出ておるわけであります。こういう問題等について、健保連としてはどのようにお考えになっておられるのか、この点を第三点として承ります。  次に、小山先生にお尋ねいたしたいのは、先生も、結論的には、特例法延長することも客観的な状況から見てやむを得なかろう、こういう結論でございますが、各参考人が共通してあげられた薬剤費の一部負担の問題でございます。この問題については、抜本策の中でこのような問題は取り上げてしかるべきであって、臨時応急の財政対策の中等で取り上げるのはいかがであるかという議論もあることは御承知のとおりであります。また、この薬剤費の一部負担については、結局これは将来の抜本策の場合につながるのだというような見方もなされておるわけです。先ほどの日本医師会と健保連との意見の相違もそのあたりからきておると思いますが、こういう点について、薬剤費の一部負担等については、これは将来の抜本制度のあり方から見た場合に、どういうつながりを持つべきものであるか、この点が第一点。  第二点は、三十九年以降、医療給付費と保険料率の比率について年々低下の傾向にあるというお話がございましたが、これについてどういう事情によるものか、もう一度承りたい。  最後に、水野先生に承りたいのは、端的に申されて、行政ベースから政治ベースに問題を引っぱり込んだことが医療問題を混乱さした大きな原因だ、こういうようなお話でございましたが、私もうなずける点があるわけです。抜本改正がこのようにおくれたのは、やはり政府厚生省が中心となってやるべきやつを、それを御承知のごとく自民党の医療基本問題調査会が取り上げて、足かけ二年にわたってああだこうだと議論して、結局はまた意見のまとまらないまま政府に戻してしまった、こういうことが、先ほど指摘された政治ベースで問題を取りし上げられておるということじゃなかろうかと思います。その限りにおいては私は賛成でありますが、そのように理解していいのかどうか。さらに、抜本策が過去二年間できなかった事情について、先生としては何が一番大きい原因であるか、その点を御指摘いただきたい。  さらに第三点として、これは最後の質問でございますが、先生はイギリス王立委員会をあげられました。社会保障制度審議会の中でも、王立委員会なるもののごときものをつくって、こういういずれの圧力団体にもとらわれないところで抜本策の成案を得るように努力しろというような勧告が出ておりますが、ただ問題は、いまから王立委員会のようなものにかけるとすれば、より以上時間もかかる。これは政府の答弁でもありまするが、そういう問題等についてどのように考えておられるか。以上、それぞれの先生に承って御答弁を求めます。
  35. 小池昇

    小池参考人 最初特例法に対する根本的な考え方はどうなのかという御質問でございます。特例法というのが二年前にできましたとき、私たちはそれに全面的に反対したのでございます。その基本的態度は今日も変わっておりません。しかしその特例法の中には、保険料率を引き上げるということと患者に一部負担を課すという、二つの全く違った要素が盛り込まれて成り立っているものでございますので、保険財政という点から考えまして、保険料率の引き上げがどうしても必要であるという点からは、これは特例法を通すということよりもその保険財政の確保の道が必要なのではないかという立場をとっております。それから、一部負担という問題の中にも二つの違った面があることは、先ほど申し上げたのでございます。患者さんそのものに課する一部負担と、その医療行為の一部に課する一部負担、つまり薬剤費の一部負担、これは私たち立場として分けて考えまして、現在最もはずす必要のあるのが薬剤費の一部負担であろうと考えるのでございます。そういう立場から、一部負担がなくなれば通してもよいということよりも、すでに本年度の予算も確定した現在の状態のもとにおいては、最小限のところ薬剤費の一部負担だけははずしていただかなければ、国民も私たちも困るという立場からお願いしておるのでございまして、国会の皆さまの御審議、御判断に、私たちから差し出がましいことを申し上げる立場で私はお話ししておるのではないのでございます。そのように御理解いただきたいのでございます。  一と二はこれで済ましていただきまして、それから第三の技術中心を私の公述の中に述べなかったではないかという点でございますが、今回私をお呼びくださいましたのは、臨時特例法に関しての意見の開陳が目的であろうかと存じまして、そういう点から一般的な問題は避けておったのでございます。しかし、先ほどからの御質問に対しましては、私の考えを述べたつもりでございまして、技術中心ということは、私たちが今後も堅持していかなければならない基本的な方針でございます。したがって、今回中医協に提出しております点数の改正につきましても、技術料を中心にしての引き上げを、それのみを主張しているということもございますので、私はそういう立場だということを御了解願いたいのであります。  最後の中医協のことになりますと、二時間でも三時間でも必要になってきますので、どのようにまとめて申し上げていいか、私もわからないのでございますが、昨日も総会がありまして、その場での論議が取りかわされている状況を私なりに判断しまして、国民のために真に病院、診療所の危機を救おうという気持ちがやはりどうも少ないんではないかと思います。すべて、自分の所属団体とか、あるいは自分の組合とか、そういう立場をあまりに固執しているのではないかというふうに私は判断いたすのです。実質的な審議に入らないということは、理由はともあれ中医協としての使命の放棄だと私は考えております。そういう点から、私も委員の一人としまして、ぜひとも実質審議に入って、その上でいいか悪いかの判断をすべき義務があるのではないかと思ってます。そういう立場に徹するように各委員が心がまえを持たなければ、いつまでもこのような形式的な論議ばかり続きまして、医療経営がますます苦しくなり、国民にこれが非常な重荷になっていくだろうということを私は憂えるのであります。そういう立場で私は臨んでおりますので、ほかの委員方々に御接触がもしありますれば、どうぞよろしくお願いいたしたいと思います。
  36. 加藤俊三

    加藤参考人 中医協の問題についてのお尋ねでございますが、私も医療費の値上げには賛成でございます。と申しますと奇異にお感じになるかもわかりませんが、しかし、これだけ諸物価が高騰しているときに、医師収入だけくぎづけにしておいてよいという理屈はないわけでございます。ただしそれには前提がございまして、およそ物の値段をきめるのに、実態も調査せずに物の値段をきめるというわけにまいりませんので、実態調査も行ない、それからまた医療費の支払いが正常なる姿において行なわれるという前提がございまして、この前提が果たされるならば、医療費の値上げというものは当然行なわれるべきであるというふうに私は考えます。  それから第二点の、国民医療対策大綱についてどう考えるかという御質問でございますが、簡単に答弁しろという御指示がございましたので簡単に申しますが、うなづける点もございますが、われわれとしては基本的に反対でございます。反対理由は自由民主党の総務会自身でおつけになっておりますので、それを繰り返して申し上げることはここでは避けたいと思います。  第三点に、特例法を通すというのは主として政管健保が対象になっているじゃないか、おまえの組合とどういう関係があるのかということでございますが、われわれのほうも、特例法が廃止になりますと、当然医療費増高いたします。所得を上回る増高ということで財政が圧迫されますので、そういう意味でもわれわれとしては賛成できないということでございます。  最後に、政管健保との財政調整についてどう考えるかということでございますが、われわれは非常に経営努力ということをいたしております。診療側から回ってまいりますレセプトは、そのまま無条件で支払っておりません。いろいろチェックをしておりまして、それに相当金をかけ、しかも非常に効果をあげております。大きい組合では、月に六百万円ぐらい払わなくてもいい金の払い戻しを受けているというふうな実例もございますので、そういう実情で、非常に経営努力をしてその赤字を少なくしております。ところが政管健保というのは、全然そういうことをやっておりませんので、いわばなまけ者でございます。われわれは勤勉で小銭をためておる、政管健保はなまけ者で貧乏しておる。だから、両方の格差があるのは不公平だから財政調整しろという理論は成り立たない、そういう意味で反対いたしております。
  37. 小山路男

    小山参考人 お答えいたします。  薬剤費一部負担につきましては、確かに臨時特例の方策でございまして、これによりまして受診をチェックすると同時に、医療のあり方に対してある種のビヘービアを与えることを期待していた、かように私は理解いたしております。しかし、これが抜本につながるかいなかは、抜本対策における一部負担制のあり方とかかわるものと私は了承しております。  第二点、三十九年以降の財政好転の理由につきましては、医療費の伸び方よりも保険料の伸び方のほうが大きかったために財政が好転した、簡単に言えばそういうことでございます。
  38. 水野肇

    水野参考人 田畑先生の御質問にお答えします。  大体みな同じような話ではないかと思いますので、まとめてお答えさしていただきますが、本来私の考えから申しましたならば、やはり抜本対策というのは、まず厚生省ベースで行なうべきものであろうというふうに思います。しかし、それを自民党にげたを預けたということは、端的に申しましたならば、やはり私は役人の知恵ではないか、さように思っております。ただ、その前に、役人の知恵という言い方をしては失礼かもしれませんけれども、そこにはやはり政治の力学というものが支配しておるために、ある程度はやむを得ない点もあったであろう、かように思います。  それから、抜本策がなぜできなかったかということ、及び王立委員会云々という点についてでございますが、抜本策ができなかった一番の理由というものは、やはり問題がきわめてむずかしい、簡単にはいかないということと同時に、当事者間の対立がきわめて深刻であるという、その二つがやはりあげられると思うのであります。私は王立委員会というのを申し上げましたけれども、たとえば王立委員会ということであって、王立委員会絶対賛成という意味で申し上げたのではなくて、私はやはりプロフェッションの意見というものを尊重して、そこでどうしても意見の調整のつかない点についてどこかの委員会に裁定権を与える、それのほうがものごとがスムーズにいくのではないかと思うのであります。なぜそれを申すかといいますと、やはりいまのままではあと二年たってもなかなかできにくかろうというふうに私たちは推測しておりまして、その点で、それをやるためには、やむを得ない措置として裁定権ということも考えてもいいのではないか、御審議は皆さま方の責任である、さように思っております。
  39. 田畑金光

    ○田畑委員 ありがとうございました。
  40. 森田重次郎

  41. 加藤万吉

    加藤(万)委員 最初小池先生にお聞きいたします。  実は患者の側から薬剤の一部負担というものを見てまいりますと、非常に不合理な点が起きるわけであります。時間がありませんから端的に申し上げますが、たとえば飯田橋の警察病院は甲表を使っております。同じ警察病院でも北多摩の警察病院は乙表を使っているわけです。先ほど先生は、薬剤の一部負担医師の業務内容を非常に繁雑化している、こういうお話でありましたが、私は診療報酬の面から見て、薬剤の一部負担というものはどういう不合理を生じてくるだろうか。患者の側から見ますと、たとえば、この病院は甲の表を使っている、あるいはこの病院は乙表を使っているという表示はないわけです。したがいまして、たとえば一人の警察官が、飯田橋の病院に入りまして外来を受けまして、その次に北多摩に行って受けますと、御案内のように十五円と三十円の差が起きますから、北多摩病院では薬剤費が取られますけれども、飯田橋では薬剤費が取られない、そういう不合理があるわけです。いわゆる診療報酬体系が甲表、乙表とある関係上からくる薬剤の問題、これは一体どのように医師側では見られておるのでございましょうか。  それから、これは加藤先生にお聞きしますが、同じようなテーマでございますが、そういう形で患者薬剤負担をするということが、患者側から見るときわめて不自然な状態であるわけです。いわゆる甲表、乙表という診療報酬体系が変わらなければ、薬剤の一部負担、木に竹をつないだような制度ですから、そういう面から見てもこの薬剤の一部負担は排除されるべきではないか、診療報酬の面から見て私どもはそういうふうに見られるのですが、なおそれも押して薬剤の一部負担は今日でも続けられるべきだという御意見、その面から見ての御意見をひとつお聞きしたいと思うのです。  それから、小山先生にこれはお聞きをいたしますが、先ほど保険料の増収の問題が出まして、弾性値をあげていただきました。実は厚生省の資料でも、四十二年度しかこの保険財政と支払い側との関係の資料が出ていないのです。四十三年、四十四年、先生弾性値をあげられましたけれども、この場合に中小企業の賃上げ率ですね。政管健保の場合には中小企業関係の労働者がきわめて多いわけでして、この賃上げ率が、先生があげられました三十九年、四十年、四十一年の傾向値よりも非常に高いわけですね。そのものが先ほどの弾性値の中に含まれているんだろうかどうだろうか、実は私ちょっと疑問を持ちましたので、この辺をひとつ明らかにしていただきたいと思うのです。  それから、分娩費について御意見が出まして、同時に、この暫定法、特例法は、中間的にはという意味でその存在、存立を認められましたが、分娩費について見ますと、確かに、特例法によって千分の七十一にいわゆる一上げましたけれども、しかし分娩費給付そのものは本法の改正条項であるわけですね。健康保険法そのものの改正条項であるわけです。そうしますと、かりに特例法が廃案になったと仮定をしましても、この分娩費に関する限りは千分の一上げなければならない、すなわち千分の六十五の料率を千分の六十六にしなければならないということが財政効果からは出てくるわけです、それだけを見てまいりますと。したがって、先生が言われるように、今回の特例法のケースは中間的なものとしては認めざるを得ないという立場が、その関係から見たら、私どうも合点がいかないわけです。この二点について御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  42. 小池昇

    小池参考人 ただいま、甲表の医療機関と乙表の医療機関に患者さんが行った場合、そこに薬剤一部負担について差があるのはおかしいという話でございます。そのとおりだと私は思っております。これは、甲表、乙表をなくしまして一本にしてしまうということが最もよいのでございますが、現在その差があるという状態でございますれば、その上に立って公平にやるという措置が必要なのではないかと思います。  私、ただいまはなはだ申しにくいのでございますが、この前、二年前特例法ができますときに、あるいはこの委員になっていらっしゃる方もおられるかとは思いますが、そのとき、当時箕輪代議士から、この差があるのはけしからぬじゃないかという御質問がありました。そのとき保険局の熊崎局長は、技術的にこれはやむを得ないことなんですという返答があって、それ以上押さなかったということで確定してしまったわけです。これは私、当時の先生方のほうが押しが足らず、その答弁にごまかされたというふうにはっきり申し上げます。(「聞いたのは自民党だ」と呼ぶ者あり)そうです。そのとおりです。箕輪さんと申し上げました。だから今日でもこれは同じにできるのです。できないというのは保険局のごまかしです。  それは薬剤の価格が十五円というところで線を引いております。甲表では十五円というのが最低の平均薬価になっているわけです。それは、つまり三十円までの薬は十五円で払うということになりますから、ぴったり一致する。乙表のほうは、十五円までが七円を払う、それから十五円の上の三十円までは二十一円で払うということに平均薬価がございます。十五円で、平均薬価で線を引いてしまったから、乙表のほうは、七円でひっかからず二十一円でひっかかる、こういうことになって、甲表の十五円の線を乙表に延ばしていくと、二段階になって、乙表は最低の七円の線だけかからず、甲表は十五円までかかるということになりますから、平均薬価でかけないで、薬の値段そのものずばりで三十円で線を引けば、両方同じになるわけです。全く技術的にできるものを、できませんという答弁で終わってしまったという点で、今日その差が生じてきているのでございます。これはただいまでも直せることなのでございます。  いずれにしましても、甲乙表二表というのがはなはだ不合理なものであって、両者基本的な考え方の違いで出てきたものでありますので、一朝一夕に足して二で割るわけにはいきませんが、漸次一つの方向へ持っていくという基本方針で私たちは点数の改正をやりたいと思っております。しかし、ただいまのような薬剤負担が違うという点ははなはだ遺憾でありまして、これは、薬の値段そのものを十五円あるいは三十円というふうに、平均薬価にとらわれずに線を引けば同じにできる問題でございます。
  43. 小山路男

    小山参考人 加藤先生にお答えいたします。  保険料の増収の件でございますが、説明を省略いたしましたのですが、四十一年の法改正までは中小企業の標準報酬月額のほうが大きかったのでございます。しかるに四十一年に、御存じのように十万四千円にいたします法改正後は、平均標準報酬月額の上がり方は健保組合のほうが多くなりました。その差は約一万円でございます。これが第一のお答えでございます。  大二点、分べん給付をここに取り入れることはおまえはどう考えるかと御質問でございますが、冒頭陳述で申し上げましたように、当面急いで分べん給付のみを改善しなければならないという積極的な理由は私は認めがたい。しかしながら、改善をするということであるならばあえて積極的には反対しない、こういうことです。この問題は、いずれまた抜本改正のときに、その他の給付のあり方とからめて、私どもとしては議論をいたしてまいりたいと存じております。  以上お答えいたします。
  44. 加藤俊三

    加藤参考人 先ほど加藤先生から、甲表、乙表の間の差、矛盾があるじゃないかという御質問でございますが、確かにそのとおりでございます。しかしながら、こういった矛盾はいまの医療制度の中にはたくさんあるのでございまして、これが矛盾しているから一部負担はやめるべきであるというふうには私どもは考えていないのでございます。いままでたびたび申し上げておりますように、一部負担がないに越したことはございませんが、この全般の支払い方式のチェックシステムができるまでは、この一部負担はやむを得ないものであるというふうに考えております。
  45. 森田重次郎

    森田委員長 大橋敏雄君。
  46. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 参考人の先生方に、まず御質問をおしなべて順々にいたしますので、答えのほうをまとめてお願いしたいと思います。  小山先生が非常に時間がなさそうでございますので、まず小山先生のほうにお尋ねしておきます。  先ほど、特例法効果につきましてるる御説明があったわけでございますが、昭和四十二年度におきまして、その単年度で七百四十五億円の赤字が生ずるという、そういうことから四十二年度の決算を見ますと、その結果は単年度で五十八億円であった。これは大きな開きがあったわけでございまして、私もこれを見聞しまして非常に驚いているわけでございまして、きょうの先生のお話を聞いておりますと、保険料の上昇分の計算違いがその原因であった、このような御説明があったと思います。  そこで私はお尋ねするわけですが、今回の延長法案の内容につきまして、保険料値上げ見込みのところは適当であるのかどうか。これは厚生省に尋ねるほうが適当でありましょうけれども、そういう点についてやはり関心を寄せていらっしゃると思いますので、お尋ねいたします。  それともう一つは、医療保険医療保障の基本的なものの考え方について、お教え願いたいと思います。
  47. 小山路男

    小山参考人 お答えいたします。  特例法財政効果におきまして最も大きな役割りを果たしましたものは、医療給付費の減少でございます。これが百三十一億ございました。二百六十二億の見込み違いのうち、百三十一億が医療給付費の減少であることを申し上げておきます。保険料上昇分の見誤りは八十一億のアンダーエスティメイトであった、こういうことでございます。そして今回の予算の組み方におきまして、厚生当局の推計が適当かいなかということは、先般山田耻目先生だと思いますが、御質問がありまして、当局の見方が、ことしの春闘の結果、やや低目に過ぎるという事実が明らかにされておりますので、これをもって十分かと存じます。  最後に、保険と保障につきましては、先般来申し上げましたとおり、保険医療保障の中核になるものであって、保険で対応すべき疾病は保険で見るべきである。しかしながら、保険で見ることが適当でないような特定疾病及び低所得者医療あるいは伝染病等、そういう問題につきましては公費負担をなすべきであるし、予防給付等につきましては、公衆衛生行政等の医療サービスによってこれは充当すべきもの、このように考えております。  以上、簡単にお答えいたします。
  48. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それでは、日本医師会小池先生にお尋ねいたします。  特例法につきまして、先ほど、薬価の一部負担をはずすならばその延長もやむを得ない、こういう御説明がありましたけれども、それでは、特例法の二年延長という、この二年という期間ですね、これについては異論はないというお立場をとっていらっしゃるのかどうか、その問題が一つでございます。  もう一つの問題は、抜本改正の大きな柱になっております診療報酬の適正化の問題でございますが、この診療報酬の適正化の最大のポイントといいますか、問題点、あるいはかぎ、そういう点を的確にひとつお教え願いたいと思います。同時に、その診療報酬の適正化と医薬分業との関係、この点の御意見もあわせてお尋ねいたします。  もう一点は、医療費の値上げ問題を審議しております中医協の審議について、医師会の反対で二カ月間も空白状態であった、こう聞いておりますが、最近、七月七日ですか、同意されまして、会議が開かれたと聞いておりますけれども、この拒否をされたほんとうの理由は那辺にあるのか、また同意されたときの条件は何であったのか、その点をお尋ねいたします。  それから、それに関連いたしまして、薬価調査の協力を拒否されたということも聞いておりますが、先ほども参考人からの説明の中に、医療費の値上げの審議については、医療経済の実態が当然資料の基本となるのだ、こういうお話もありましたが、私もそのことは同感でございます。そういう点についてなぜ御協力なさらないのか、その点もあわせて御説明願いたいと思います。  次に健保連の加藤会長さんにお尋ねいたします。  特例法について原案どおり延長賛成である、このようなお話があったわけでございますが、非常にショックを受けているわけでございます。それは、二年前にこの特例法がつくられたときも、まず第一に保険料の大幅な値上げがありました。それから、初診料が百円から二百円になり、入院料が三十円から六十円、それから薬価の一部負担が課せられたわけでございますが、これはすべて患者あるいは国民大衆側に押しつけてその赤字を解消しようとしている財政措置である、私はこのように理解をしているわけであります。国民大衆はこの法案についてはきわめて強い反対の意思を貫いておるわけでございますが、この点についてもう少しわれわれが納得のいくような御説明を願いたいと思います。  それから、政管健保保険者は政府側でありますから、その赤字は、当然政府が全面的に大幅に国庫負担を増大して解消すべきではないか、このような気持ちも私はありますので、この点もあわせて説明願いたいと思います。  それから、現在、一定等級以下の者については免除措置が講じられているわけでございますけれども、この基準の根拠は一体どのように把握なさっているのかということ。また、今度特例法延長するということにつきまして、当然この基準が改定される、こういうふうに私は思うのですけれども、今回はこの点は全く配慮していない、この点についての御意見をお伺いいたします。  最後に、医事評論家水野先生にお尋ねいたします。  政府のこの公約違反について、政府・自民党が国民の納得のいく責任をとる態度をとるべきであると思うのですが、水野先生は、この点について政府はどのような態度をとるべきである、これがほんとうに国民に対する責任を果たすことになるのだ、御意見をお伺いしたいと思います。  それから、先ほどのお話の中にこの特例法延長はやむを得ないだろう、しかし二年の延長はむしろ三年に延びてもいいような気がする。それは、抜本改正らしき抜本改正をやるには腰を落ちつけてというようなお気持ちからの発言であろうと思いますけれども、私はこのように思うのです。抜本改正の柱というものは、もうずいぶん長い間各関係団体から示してきております。ですから、もうすでに青写真というものは大体でき上がっておるのでありまして、むしろこの共通点、最大公約数をいかにまとめるか、最終的には政治力である、こう思っておるわけであります。その点につきまして、今月一ぱいには厚生大臣も諮問をするというところまできておりますので、むしろ二年は一年くらいに見るべきではないか、このような意見を持っているわけでございます。それに対するお答えをお願いいたします。  最後にもう一つですけれども、先ほどのお話のように、かぜ引きだとか二日酔い、腹痛は保険で簡単に見てもらえるというようなのはあまり感心しないというお話がありましたけれども、実際問題としまして、診察を受けに行きますと、二時間も三時間も待たされて、そしてわずか一分の診療で終わる、こういう現実から、かぜ引きだとかあるいは腹痛とかは、もう医者に行く気が起こりません。むしろ薬局に行って自分のふところからお金を出して買っているのが現状だろうと思います。こういう現状から、あわせて御返事を願いたいと思います。  非常に早口でおわかりにくかったと思いますが、お答え願いたいと思います。
  49. 小池昇

    小池参考人 ただいまの二年間という期限についてはどうかというお話でございます。私は、これは短ければ短いほど、特例法というものの性質上それでいいというふうに申し上げるほかないのでございます。これをさらに三年、四年ということは私は根本的に間違っておると思います。しかし、その判断が、二年ということが適当かどうかという点も、よく御審議の上やっていただきたいと思います。  それから、診療報酬の適正化と分業の関係でございます。これはもう先ほどからたびたび御質問もいただきましたのでございますが、やはり私たちに対しまして、専門家としての技術を中心にした立て直しということであろうと私は考えます。それ以外に道はないのでございまして、分業の問題も私は基本的に賛成だと申しておるのでございます。しかしそれには、再診料が、つまりわれわれの技術が三十円だなどという侮辱的なものをまず改めるということが先決条件で、そこに見向きもしないで、ただ分業推進だけを持ち出しても私は通らないというふうな考えを持っておるのでございます。  それから、中医協における論議につきましては、昨日総会もありましたし、この速記録も出ますので、これはお読みいただけばわかると思いますが、医師会の反対で今日まで二カ月半も空転したというのは、私は間違いであるということをきのうも申し上げました。医師会が反対というのは、私はおかしい。あの場では、一号側も二号側も、それぞれ言い分があるのでございます。片方の言い方が通らなければ、相手の反対で空転したということを主張なさるのは、私はいけないと思います。そういう意味から、医師会が反対しているというのは、私はきのうは徹底的にその反論はいたしたつもりでございます。  その核心となります反対は一体どの点かといいますと、やはり薬価調査が問題になっておるのでございます。薬価調査というものが、過去にいかにして行なわれたかということを掘り下げることなく、またこれを掘り下げてみますと、はたして適正であったかどうか、疑わしい作業が行なわれていたという、そういう実態が明らかになった上でも、なおそのとおりやれという御主張はとれないのが基本的に私たちの態度でございます。ですから、正しい条件のもとにおける実態調査は、いつでも私たちはやる覚悟でございます。  そこで、先ほど御発言のありました中医協の行ないました医業経済実態調査というものはどうなったかということになりますと、これは厚生省のほうで御集計をなさっております。同時に、その原票のコピーは、日本医師会でもいただいておりまして、これを作業して終わっております。おそらく厚生省も終わっておるのかと思います。しかし、それは医業のあるべき姿でなく、一昨年の十一月はどういう姿であったかという断層を示すものでございます。それに同時に、保険者の内容の調査、それから医療というものが国民の福祉の向上にどれほど貢献しているかという大きな意味の立場からの調査、こういう三つのセットで医業経済実態調査がなっておるのでありますが、いま完了したと思われますのは、診療所、病院の一昨年十一月の断面調査だけでございます。その他の調査は、まだ未完成なのでございます。そういう実態でございますので、私たちが、一昨年行ないました実態調査に対しまして反対しているとか、それの妨害をしているということは、毛頭ございません。これはもう厚生省のほうに全部集計が終わっているのではないかと私は思っております。しかし、今回の緊急是正というものは、そういう立場からの判断よりも優先して、ともかくもいまの病院の苦しい経営を幾らかでも救えというのが本旨でございますので、それはそれで応急的な立場でやっていただきたいということなのでございます。  私に対する御質問は大体それで終わりかと思います。
  50. 加藤俊三

    加藤参考人 特例法延長に賛成するのは非常にショックだという御発言でございましたが、しかし、われわれはいつまでも永久にこれを続けていけと言っておるのではございませんで、先ほどから再三申し上げておりますように、いまの医療費に歯どめがないということでございますから、この特例法の中に含まれておりまする一部負担、これをはずしてしまいますと、際限なく医療費が膨張するということは明らかでございますので、その完全なる支払い方式のチェックシステムができるまでのつなぎとして、この特例法は続けていくべきであるというふうに申し上げておるわけでございます。  それから、第二点の免除基準、これはいま平均標準報酬二万四千円でございましたかにリミットがあるわけでございます。これをどうするかというお尋ねだったと思いますが、基本的にはわれわれは、この低所得者に対する対策というものは、先ほど小山先生が保険か保障かというところで御発言があったように、低所得者というものは社会保障としてとらえるべきものだと思いますので、基本的にはおかしいと思いますけれども、しかし、この特例法の中に二万四千という数字がございますから、これはこのままでいいということは言い切れないと思います。これだけ大幅に本年度ベースアップ、所得が上がったのでございますから、それに見合う分のレベルアップというものは、あえて反対はいたしません。
  51. 水野肇

    水野参考人 大橋先生にお答えいたします。  公約違反である、それの責任をどういうふうにとるべきか、おまえはどう思うかという御意見なんですが、これはたいへんむずかしいので、私は政治責任を評論家がとる必要はないと思うのであります。したがいまして、これは政治の場であるということは、やはりそうお答えせざるを得ないということであります。ただその場合に、責任をとるという場合には、何か腹を切ったらいいのだということではなくて、ほんとうにいい抜本改正案をつくられるということも政治の責任のとり方の一つではないか。私は政治にはしろうとでありますが、そういう方法もあるのではないかと思います。  それから、先ほどおまえは抜本改正案ができるまで二年を三年にしてもいいということを言ったとおっしゃいましたけれども、もちろんそれは早いに越したことはないのでありますが、きわめて早い期間に私の申し上げるような医療の全体のビジョンから打ち出したものができるとは、私は考えておらないわけであります。したがいまして、いま先生のおっしゃった中で、各党から出ておる青写真の最大公約数をとればいいではないかとおっしゃいましたけれども、私は、各党の青写真をより一そう各党で御検討の余地もまだあるだろうと思いますし、何か足して二で割るようなことで糊塗するのは、かえって国民にとって不幸ではないか。したがって私は、時間をかけてもこの際やむを得ないではないかという言い方をしたわけであります。  それから、かぜ引き、腹痛をおまえは自己負担でもよいと言ったというふうにおっしゃったわけでありますが、私は、先ほどのどなたかのお答えの中でも申し上げましたように、やはり予防医学でチェックするという問題を落としては困るわけであります。したがいまして、予防医学時代に対応した医療制度というものが打ち立てられて、そうして行なった場合には、かぜ引き、腹痛というものは、その中間的なものとして、きわめて単純な病気に終わるわけであります。医療保障というものは、日本の場合には、いまの状態では公費負担というものがだんだん保障的性格を帯びてくる。そうすれば、たとえば皆さん方がよくおっしゃいますガンの対策にいたしましても、そういうところから早期発見というものを考えていく。そうして片一方では、不幸にして病気になった人は保障していくということになれば一まあ金があれば全部を保障すればいいのでありますけれども、やむを得ないときには一番どこを負担すべきかといえば、私はやはり、二日酔いの薬などというものを簡単に保険でとれるということ自体は、率直に申しましておかしいのではないか。それはなぜかと申しますと、保険というものは、社会連帯責任の心のつながりがない限りだめなものです。その心のつながりというものは、自分がむだな保険を使わないということにも通ずる。そういう点にもぜひ目を向けていただきたい。そういうふうに思います。
  52. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 終わります。
  53. 森田重次郎

  54. 谷口善太郎

    ○谷口委員 小池先生にお尋ねします。  特例法実施の結果、確かに政管健保赤字は激減いたします。しかし、それは患者、被保険者の犠牲の上になされたもので、患者、被保険者の苦しみは深刻なものがあると思うのであります。しかし私どもは、何よりも関心の深いのは、このやり方が国民医療保障そのものにどういう影響を与えるかということであります。  ことしの二月、総評の行ないました社会保障討論集会で保険団体連合会の代表は、こういう報告をしております。特例法は本人十割給付の原則を完全にくずしてしまう。感冒のような短期の疾病では、四百四十七円の医療費中一部負担は二百四十五円で、実質給付率は四割五分。長期疾患でも、二種投薬の場合は一カ月の医療費四千四十円中一部負担は千二百十円で、実質給付率は七割二分に当たる。こうして患者治療中断や売薬に走るという結果を招いている。こういう報告をしております。特例法の実施は、医療の面でこういう犠牲を患者、被保険者に与えているということになりますと、これは重大な問題だと思うのであります。医療保障制度財政対策は、たとえ保険制度のもとでありましても、医療保障そのものの前進にこそ必要なのでありまして、その逆であってはならないと考えるのでありますが、先生のお考えはどうでしょうか。  もう一点ございます。これは水野先生にお尋ねいたします。  国庫負担、事業主負担及び被保険負担の割合の問題ですが、ILOの資料によりますと、ヨーロッパ諸国の医療保険収入の財源別の割合を調べてみますと、イギリスの被保険負担は一一・八%、フランス二五・二%、イタリアに至りましてはわずかに一・一%にすぎません。その他は国、事業主、その他公費となっておるのであります。そこへいきますとわが国の保険制度では、国庫負担は、事務費のほか国民健保の四〇%、日雇い健保の三六%だけで、健康保険でも、公務員等の共済制度でも、医療費の国庫負担制度は一例もございません。公的制度はないのであります。政管健保等の赤字には若干の国の補助が出ますが、これは法的根拠のないつかみ金で、政府は出さぬといえばそれまでのことだということになっております。これでは国民総生産世界第二位を誇る日本資本主義としてはまことにはずかしい限りで、われわれは、医療制度の抜本改革が云々されておる今日、断固として少なくとも当面全医療保険制度を通じて三〇%くらいの国庫負担を出す法規定をつくるべきだと思いますが、どうお考えになりますか。  以上、二点でございます。
  55. 森田重次郎

    森田委員長 参考人方々、時間の関係がありますので、なるべく簡潔に御答弁を願います。
  56. 小池昇

    小池参考人 薬剤一部負担という制度につきましては、先ほどから申し上げたとおり、私は絶対に反対する立場をとっております。ただいまのお話にありますように、私たちは基本的にこういう制度は反対なのでございますが、きょうは特に、医学というものを国民の福祉に直結するにない手であるという立場からこのことに私は反対しているのでございまして、財政負担、個人の費用負担という点からももちろん私は反対なのでありますが、そういう医師としての面から私は反対を先ほどから申し上げているところでございます。
  57. 水野肇

    水野参考人 谷口先生にお答えします。  私は、谷口先生のようなお考え方もあるし、それもたいへんりっぱなことだと思います。ただ、私はそこで一つだけ思いますことは、やはり国が保険負担というものをやるといたしましたならば、私は、それは全部国民健康保険一本にすべきである、そういう上で行なうべきではないかと思うのであります。同じ日本人に生まれながら掛け金も違えば給付内容も違う、そういうふうな現在の状態においては、どこにどれだけやるかということについての操作というのもたいへんむずかしいと思いますし、私はやはり国庫負担というものを行なう以上は、これは税金でございますから、それ相応の一つのほんとうに正しい医療――これはいろいろ皆さん方によって正しい医療の解釈が違うと思いますが、それのそれこそ最大公約数としての正しい医療というものの中で初めて行なっていくべきではないか。ただいまの状態で三〇%負担するということだけでは、私は、何となく解決したように見えて、実は問題は残されたということが残るのではないか、そういうふうにも思います。ただ、そのパーセントそのものについては私も深く考えておりませんから、何%がいいかということについては、またの機会に考えた上で申し上げたいと思います。
  58. 谷口善太郎

    ○谷口委員 ありがとうございました。
  59. 森田重次郎

  60. 八木一男

    八木(一)委員 いま私は、四人の参考人に御質問申し上げたいと思っておりました。小山参考人が途中でお帰りになりましたが、お帰りになるまで私はお帰りになることを知らなかった。私は参考人の方のりっぱな御意見を伺って、さらにそれについて御質問を申し上げて、この審議参考にさせていただきたいと思っておりました。小山先生が帰られるなら、帰られる事情があったのでしょう。なぜ、小山先生に対する質問をほかの委員は集中して、私にも小山先生に対する質疑ができるように計らえなかったか。そんなばかなことはありません。したがって、参考人はきょうどういうふうになるか知りませんが、とにかく、あすでもあさってでも小山先生がもう一回御出席になり、この参考人審議を続けていただかなければ、私の議員としての権限をあなたが奪ったことになる。あした小山先生を呼ばれるか、小山先生が御都合が悪ければ、いわゆる学者の方を呼ばれて、参考人審議を続けていただきたいと思います。
  61. 森田重次郎

    森田委員長 御希望のある点は、理事会によくはかった上で善処いたしたいと思います。
  62. 八木一男

    八木(一)委員 それでは質問に移ります。  いま小山先生に特に質問したかったことでございますが、あとりっぱな参考人が三人おられますので、御質問申し上げたいと思います。  実は参考人の先生方の傾聴に値するりっぱな御意見をしみじみと伺っておりました。伺っておりましたけれども、その中でどの先生も少し御遠慮があるように思います。小山先生は、財政対策でこの法案がやむを得ないと言われました。学者の方々としては、もっと学者的に考えていただきたいと私は考えておりました。ほかの先生方もそういう点が多うございます。財政というものと健康とか命というものをそのように考えていいものかどうか、私どもは疑問だと思います。  憲法第二十五条第二項には、政府は、社会福祉や、社会保障や、あるいは公衆衛生については、不断に向上、改善をしなければならないことが規定をされております。そのほかに具体的な政策で日本国憲法に規定されておるのは義務教育無償だけであります。平和主義、主権在民、基本的人権という大きな問題については記述がございまするが、具体的政策についてそのような記述があるのはその四つであります。その中の三つは全部社会保障に関係があります。そうでありまする以上、政府財政硬直というようなことを称して社会保障の改善、向上を怠るということは、日本国憲法違反であります。そのような観点からも考えていかなければならないと思いますが、――声が大きくて先生方に猛烈に失礼でございました。その点はお許しをいただきたいと思いますが、それは委員長の運営に憤慨した余憤であります。そういう点で、りっぱな先生方がすべて財政ということで、言わなければならない、こうしなければならないということを制約されているように思うわけであります。  それで、不断に改善、向上しなければならないという場合に、問題点はございますが、この健保特例法延長法案、前の健保特例法案についても、こういうような薬代の一部負担とか、それから入院時とか初診料の一部負担とか、あるいは保険料の値上げとか、いろいろなものがついているわけであります。少なくとも、給付についてこういう制限をするということは、社会保障、医療保障の後退であります。停とんをしておっても憲法違反であります。不断に改善、向上をしなければならない。停とんが憲法違反である以上、それを後退させるということは二重の憲法違反であります。そのようなことを、大蔵省とか財政という立場で制約することは許されないと思うわけであります。そういう観点からお考えをいただいて、この健保特例法延長法案というものは通すべきではない、これは廃案にすることが日本国憲法の精神であるというふうに私は考えるわけであります。  現にまた、国庫負担の点について社会保障のやり方はどうかということがありますが、先生方の御意見の中で、健康保険等の医療保険は社会保障、医療保障の中核であるという御意見が各先生方からあったと思います。したがって、生活保護の医療保障だけが社会保障というような俗論では、これは論議すべきものじゃありませんで、社会保障の中核としてのこのような医療保険健康保険を改悪するということはいけない。  改悪をしようという原因としては財政が問題であります。ところが社会保障制度審議会の四十年の勧告では、患者や、あるいは国民や、あるいは医療担当者のその一つ一つの犠牲よりも、はるかに大きな国庫負担をしなければならないということが規定をしてあるわけです。その規定から考えて二百二十五億の国庫負担というのは問題外であります。しかもそれから対象者もふえておるのにふえない。大体国庫負担というのは定率ですべきものであって、定額というような、それから予算補助というような不安定なものですべきではありません。そのようなことをやっている政府自身に非常に姿勢に間違いがある。その間違った姿勢から出てきたこの健保特例法は、いろいろな意味がありますけれども、これは間違った法案であるというお考えになっていただけるのではないかと思います。先生方は財政ということに非常に御遠慮になっておられると思います。非常に苦慮しておられますけれども、財政というような政府ベースの、大蔵省ベースの制約を離れて先生方が考えていただいたときに、この法案は各先生ともに御反対であろうと思うわけでございますが、水野先生あるいは加藤先生、小池先生から、ひとつ御意見を伺っておきたいと思います。
  63. 小池昇

    小池参考人 特例法全般的なものとして、これは基本線として反対であるということは前から申し上げております。保険経済のみを主にして、そういう観点からものを考えてはいけないという、ただいまおしかりを受けたのでございますが、現在のところは、すべてがこの経済優先で立法行為が行なわれているといっても過言でないのでありまして、私たちは学術団体としまして、学術を中心としていろいろな建設的な論議も吐きまして、あるいはこの薬剤費一部負担につきましても、医師良心から反対するという意味を申し述べているのでございまして、決して私は財政優先で私の意見を組み立てているのではございません。しかし、いろいろ国会その他政府方面からの御意見を私なりに拝聴していますと、ただいまこれを全部廃案に持っていくに際しましては、やはり財政的な裏づけをした上でということが私必要ではないかと思います。そういう点ができますれば、私は、これはなしが最善ということをはっきり申し上げるわけでございます。
  64. 加藤俊三

    加藤参考人 八木先生御指摘のとおり、人間にとりまして人命ほどとうといものはないのでございまして、これが金の面で医療が規制されるということはまことに残念なことでございます。また、こういう議論を朝からしなければならないという事態もまことに悲しむべきことだと思いますが、こういう事態になるまで放置しておいたということは、全く行政の怠慢であろうと私は考えるのでありまして、その点は幾ら責められても責め足りないと思いますが、しかしながら、一たんこういった事態になった以上は、昭和三十六年でございますか、国民保険に突入したこの時点にまで戻すというわけにはまいりませんので、覆水盆に返らずでございますので、こういう現実の事態に直面いたしました場合、やはりいまの現時点では、この特例法延長して、できるだけ早く、国民のため、真に国民のしあわせになる抜本改正をやっていただきたい、そのためのつなぎ役としてこの延長法案はやむを得ないというふうに申し上げる次第でございます。
  65. 水野肇

    水野参考人 ものごとにはたぶん、賛成というのと積極的賛成というのと、反対というのと絶対反対というのと、そういうふうなぐあいにあるんだと思うのであります。私は、そのいま申し上げたどれでもなくて、先ほど申し上げましたように、あきらめられぬとあきらめたという心境でこれはやむを得ないと申し上げたわけであります。それはなぜかと申しますと、やはり予算が無限にあるのなら、もう先生のおっしゃるとおりで一つも間違いはないと思うのであります。私も同感であります。しかし予算の配分をするのが政治の一つ仕事であるということに考えをいたしましたならば、どれかを削らなければならない。そのどれかを削るということが政治ではないか、そういう点でいろいろ御意見が出てくる、そのいろいろの中のちょっとワク外的ないろいろの意見というのが、私のあきらめられぬとあきらめた、そういうふうに御理解いただきたいと思います。
  66. 森田重次郎

    森田委員長 なるべく簡単に願います。八木君。
  67. 八木一男

    八木(一)委員 そんなこと言っている間に時間がたつ。簡単に願いますなんて言っているうちに。(笑声)  水野参考人にお伺いいたしたいと思います。いろいろなことを勘案して世の中をよくするために考えていただいている水野さんとしては、いまの時点でものをお考えになっていただくという点もあろうと思います。御努力には敬意を表するわけでございますが、しかし、財政というものの中に、いま特に憲法のことを言ったのですが、いろいろな政策のかね合いがあります。その中に憲法二十五条と二十六条に四つの具体的な政策が掲げられているということは、財政硬直とかあるいは貿易振興とかのほかの政策よりも、はるかに国民の基本的人権に関係があって、これを優先をしなければならないという立場で憲法に具体的政策がきまっていると思う。そこのところを、これは私が、国庫負担をいますぐ何千億しろと言ったら話にならないと思うが、二百二十五億の国庫負担を六百億や七百億ぐらいにすることは、いまの財政の中では、ほんとうに決心したら可能です。そういう点で、そういう赤字については国で対処をして、このような一部負担というものがないように、また、経済が発展しているけれども配分の少ない労働者に、このような保険料負担がかからないように、そういうふうにするのが正しいのではないかというふうな考え方を持っているのですが、そういう観点から先生の御意見を伺いたいと思います。  さらに、非常に申しわけないのですが、先生は、ただだから何でもいいということは問題があるとおっしゃいました。私も一般的にはそうだと思います。たとえば世の中がよくなって、映画を全部ただで見られればいいかもしれません。しかし、それはやはりただじゃなしに、映画を見るくらいのことは、自分でかせぐか、あるいは倹約して見たければ見たらいいことです。それから、道路が広くなったときに、道路のその辺の負担があるということは、私、疑問がありますけれども、幾ぶんの理屈があろうと思います。ところが、この医療の問題は、だれが好んで病気になりたい人はないわけであります。だれも不健康になりたい人はないわけであります。したがって、その人たち負担ということを――いわゆる受益者負担というような考え方が世の中にはびこっておりますが、先生は決してそういうお考えではないと思いますけれども、こういう考え方で、ただであってはいけないという考え方が医療のほうに入ってくるのは適当ではないのではないかという考え方を持っているわけであります。それについて水野先生にお伺いしたいと思います。  その次に加藤先生のほうには、先ほども、ただであったらいろいろな薬の使い過ぎが起こるとか、診療が必要以上に多くなりそうだというような御発言がございました。一万人に一人くらい薬気違いの国民がいるかもしれません。先生に注射してくれ、薬を飲ましてくれと言う人がいるかもしれません。また一万人に一人くらい、薬をやったら少し収入が多くなるという先生がおられないとも限らないと思います。そういうことはあるかもしれませんけれども、それと逆に、その反対の全部の善意の国民が、善意の医療担当者が、そういうことでチェックを受けるということは、政治としては、また医療保障の行政としては間違いだと思う。すべて善意の国民、善意の医療担当者としてものごとを判断しなければ、悪意の人のために善意の人がチェックをされるということになってはいけないと思う。そういう点で、薬代の一部負担等は不適であろう、それから初診時の一部負担も不適であろうというふうに考えられるべきだと思うわけです。それとともに保険料を国庫負担で埋める。その次に保険料という話がすぐ出ますけれども、保険料負担も、労働者は配分が少なくて非常にいま生活が困っているわけであります。その場合に、当然使用主が、五対五の比率ではなくて八対二くらいで引き受けて、配分が少なくて困っている労働者の保険料負担をしないでやるという考え方が考えられてしかるべきだと思いますが、それについての先生の御意見を伺いたいと思います。  最後に小池先生にお伺いをいたしたいと思いますが、薬がいま非常に悪者になっております。薬の点について、医療費用をむだにふやしているということは確かにあると思います。薬価が高過ぎるという点もあるし、いろいろな問題がございます。これは一つの焦点でありますが、それを考えるあまり、いま新しいりっぱな薬が日本人の健康と命を守っているという点を無視してはいけないと思う。  ところで、いま制限診療の問題が論議に入っておりませんけれども、しかし私の知っておるところでは、ブレオマイシンという非常によくきく薬が保険薬に入れられていないのです。それをほんとうにこい望んでいる患者や家族のために非常に状態が悪いわけです。あのように、早期に使用すれば一部のガンがなおるような薬が、いま一般的には非常に高うございますけれども、それが保険の中で使われるというような、いろいろ論議にあまりない制限診療というものがこれから行なわれない、そういうふうにしなければならないというふうに私は考えますが、先生の御意見を伺っておきたいと思います。
  68. 水野肇

    水野参考人 二百二十五億くらいの国庫負担は全予算から見るとたいしたことではない、まずここを保障していくのが憲法にうたわれた精神そのものであるという八木先生の御指摘でありますが、私は、確かにそういう考え方はあると思うのですけれども、私たち立場としましては、私個人の考えとしては、やはり重病をまず保障する、そういうことのほうが先なのではないかと思うのであります。つまり重病が現実には保障されていない。そういうときに二百二十五億を補てんすることは、考え方によれば――これは誤解のないように願いますが、考え方によれば、かぜ引き、腹いたを起こすおそれがないではないという心配を私は持つわけであります。いや、それも全部引っくるめてやれ、それもけっこうな御意見だと思いますけれども、全部引っくるめてやれるだけの予算があるかないかということは、先ほど触れましたように、配分というものが政治というものにつながると思うわけです。  それから、おまえは何でもただということではいけないと言うが、しかし医療だけは別ではないかという御質問であります。私は、日本人が権利のみを主張して義務を履行しないような精神をもっと改めて、社会連帯の責任の精神に芽ばえたときには何でもただでよいと思うのです。しかしそうでない限りにおいては、何でもただというのは――私は、医療の世界にでも、若干残された金を払う部分があるのはいたし方ないと思うのであります。そこはもうこれ以上御議論をいたしましても、たぶん見解の相違ではないかと思いますので、この程度で終わります。
  69. 加藤俊三

    加藤参考人 八木先生御指摘のとおり、確かに世の中薬マニアばかりではございませんので、中には善意の患者が犠牲になっているということも否定いたしません。しかしながら、薬剤費医療費の四〇%ということでいかにも多過ぎる。これは社会党自身お認めになって、この間の意見書にも書いておられるとおりでございます。いかにも不自然に多いということでございまして、イギリスなんか、たしか一一%ぐらいだというふうに聞いておりますが、これは私、医者じゃございませんのでわかりませんが、最近の医療方式が、多分に米国式の物量医療が日本にも入ってきたのでふえたという原因、あるいは新薬とか技術の高度成長による新療法ということもございましょうが、しかし四〇%ということはいかにも多過ぎるという気がいたしますので、これはやはり支払い方式全部のチェックシステムができるまでの暫定措置として、この一部負担は撤回すべきではない、かように思います。
  70. 八木一男

    八木(一)委員 使用主の負担率を増す点について。
  71. 加藤俊三

    加藤参考人 事業主負担の点でございますが、これは御承知のように組合というものは、労使同数の理事者を出して民主的な運営をいたしております。そのときに、事業主負担が多いに越したことはございませんが、しかし、いたずらに事業主負担ばかりがふえまして労働者の負担が減るということは、発言力にも影響いたしますから、ある程度限度があるというふうに私は考えます。
  72. 小池昇

    小池参考人 薬剤のある一部分につきまして、現在制限があるのは確かでございます。これが先ほど御指摘の治療指針並びに基準でございます。これは終戦後、まだ現在のように社会の通信状態その他一般が復活しておらないときに、高価な薬が輸入されまして、ペニシリンその他輸入されまして、それを使いたいということのために出された規則でございます。今日、当時と違いまして、学会も盛んに行なわれ、また学術講演会もひんぱんに行なわれております。こういう状態とその当時とを同じ扱いをするということは間違っておると私思うのでございます。  そこで、この薬剤の中の制限、つまり治療指針と基準は全廃しなさいということを、私は厚生省にも申し入れてあります。これはいろいろな見方はあるではありましょうけれども、ある一部では、こういう規則、つまりどの病気にはこの薬しかいかぬという規則があれば、それを使えないため医療費のチェックができる、医療費を制限する防波提であるという論議も行なわれておったのでありますが、今日ではそういうことはもうないと私は思っております。医療費というものの中の薬剤費がいま論議の的となっておりますが、治療指針があるためにかえってふくれるという現実もあるのでございます。ですからこの治療指針は即刻やめていただきたいというのが私の立場でございます。言ってみれば、この治療指針というのは、終戦後に私たち国民服にゲートルを巻いておったのですが、いまでもそのままの姿で道路を歩かせているという状態でありまして、新しい薬や使い方ができると、それに次々とアクセサリーをつけていくという、こういう方法はもうやめていただきたいのでございます。私たち日本医師会では、責任をもって新しい薬品の使い方というものは会員に徹底いたしたいということでございます。  そこでブレオマイシンでございますが……。
  73. 森田重次郎

    森田委員長 小池参考人、本会議の本鈴が鳴っておりますので、なるべく簡潔に願います。
  74. 小池昇

    小池参考人 これは御存じのようにガンの薬でございますので、これは即刻使いたいというのが私の念願でございます。厚生省でお許しになったお薬は保険でも即刻使いたいということでございます。
  75. 森田重次郎

    森田委員長 参考人方々には、御多忙のところ御出席いただき、まことにありがとうございました。お礼を申し上げます。  この際、暫時休憩いたします。     午後二時二十八分休憩      ――――◇―――――     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕