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1969-07-02 第61回国会 衆議院 社会労働委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年七月二日(水曜日)    午前十時二十五分開議  出席委員    委員長 森田重次郎君    理事 澁谷 直藏君 理事 竹内 黎一君    理事 谷垣 專一君 理事 橋本龍太郎君    理事 渡辺  肇君 理事 河野  正君    理事 田邊  誠君 理事 田畑 金光君       阿部 喜元君    藏内 修治君       佐々木義武君    齋藤 邦吉君       世耕 政隆君    田川 誠一君       高橋清一郎君    中野 四郎君       中山 マサ君    丹羽 久章君       広川シズエ君    福井  勇君       増岡 博之君    箕輪  登君       枝村 要作君    大原  亨君       加藤 万吉君    後藤 俊男君       島本 虎三君    八木 一男君       山田 耻目君    山本 政弘君       大橋 敏雄君    北側 義一君       谷口善太郎君    關谷 勝利君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         労 働 大 臣 原 健三郎君  出席政府委員         大蔵政務次官  上村千一郎君         大蔵省主計局次         長       船後 正道君         厚生政務次官  粟山  秀君         厚生大臣官房長 戸澤 政方君         厚生省医務局長 松尾 正雄君         厚生省薬務局長 坂元貞一郎君         厚生省児童家庭         局長      渥美 節夫君         厚生省保険局長 梅本 純正君         社会保険庁医療         保険部長    加藤 威二君         労働大臣官房長 岡部 實夫君         労働省労働基準         局長      和田 勝美君  委員外出席者         専  門  員 濱中雄太郎君     ————————————— 七月二日  委員島本虎三辞任につき、その補欠として八  百板正君が議長指名委員に選任された。 同日  委員八百板正辞任につき、その補欠として島  本虎三君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 七月一日  医療保険制度改悪反対及び医療保障確立に関す  る請願大原亨紹介)(第九五四四号)  同(田邊誠紹介)(第九五四五号)  同(山口鶴男紹介)(第九五四六号)  同(島本虎三紹介)(第九六二五号)  同(田邊誠紹介)(第九六二六号)  同(島本虎三紹介)(第九六八三号)  同(山口鶴男紹介)(第九六八四号)  同外一件(島本虎三紹介)(第九八二三号)  同外一件(八木一男紹介)(第九八二四号)  同(山口鶴男紹介)(第九八二五号)  医療保険制度改悪及び健康保険等臨時特例延長  反対等に関する請願實川清之紹介)(第九  五四七号)  同外二件(八木一男紹介)(第九五四八号)  同(大出俊紹介)(第九六〇五号)  同(河上民雄紹介)(第九六〇六号)  同(神門至馬夫君紹介)(第九六〇七号)  同外一件(八木一男紹介)(第九六〇八号)  同(依田圭五君紹介)(第九六〇九号)  同(平林剛紹介)(第九六八五号)  同(楢崎弥之助紹介)(第九六八六号)  同(伏木和雄紹介)(第九八二六号)  同外二件(八木一男紹介)(第九八二七号)  労働保険保険料徴収等に関する法律案等反  対に関する請願外五十二件(川村継義紹介)  (第九五四九号)  同(浜田光人紹介)(第九五五〇号)  同(中村重光紹介)(第九六三五号)  同(浜田光人紹介)(第九八二九号)  失業保険法改悪反対に関する請願河野正君  紹介)(第九五五一号)  同(福岡義登紹介)(第九五五二号)  同(八木一男紹介)(第九五五三号)  同外八件(楢崎弥之助紹介)(第九六三三  号)  同(依田圭五君紹介)(第九六三四号)  同(島本虎三紹介)(第九八二八号)  日雇労働者健康保険制度改善等に関する請願  (安宅常彦紹介)(第九五五四号)  同(江田三郎紹介)(第九五五五号)  同(大原亨紹介)(第九五五六号)  同(加藤万吉紹介)(第九五五七号)  同(栗林三郎紹介)(第九五五八号)  同(實川清之紹介)(第九五五九号)  同(松前重義紹介)(第九五六〇号)  同(八木一男紹介)(第九五六一号)  同(柳田秀一紹介)(第九五六二号)  同(山本弥之助紹介)(第九五六三号)  同外九件(川崎寛治紹介)(第九六二七号)  同(田原春次紹介)(第九六二八号)  同外二十三件(楢崎弥之助紹介)(第九六二  九号)  同(八木一男紹介)(第九六三〇号)  同(山花秀雄紹介)(第九六三一号)  同(依田圭五君紹介)(第九六三二号)  同(井手以誠君紹介)(第九六八〇号)  同(村山喜一紹介)(第九六八一号)  同(山本政弘紹介)(第九六八二号)  同(伊藤惣助丸君紹介)(第九八二一号)  日雇労働者健康保険法等改悪反対に関する請願  (大原亨紹介)(第九五六四号)  健康保険等臨時特例延長反対に関する請願(岡  本隆一君紹介)(第九五六五号)  健康保険等臨時特例延長反対等に関する請願  (栗林三郎紹介)(第九五六六号)  同(山花秀雄紹介)(第九五六七号)  同(山本政弘紹介)(第九五六八号)  同(山本弥之助紹介)(第九五六九号)  同外二件(八木一男紹介)(第九五七〇号)  同外二件(伊賀定盛紹介)(第九六一〇号)  同外一件(石川次夫紹介)(第九六一一号)  同外一件(河上民雄紹介)(第九六一二号)  同(阪上安太郎紹介)(第九六一三号)  同外二件(田中武夫紹介)(第九六一四号)  同外七件(楢崎弥之助紹介)(第九六一五  号)  同外五件(三木喜夫紹介)(第九六一六号)  同外二件(山花秀雄紹介)(第九六一七号)  同(依田圭五君紹介)(第九六一八号)  療術の新規開業制度に関する請願外五件(木原  実君紹介)(第九六一九号)  同(小林信一紹介)(第九六二〇号)  同(下平正一紹介)(第九六二一号)  同(広瀬秀吉紹介)(第九六二二号)  同(古川喜一紹介)(第九六二三号)  同(武藤山治紹介)(第九六二四号)  社会保険池袋中央病院の再建に関する請願(後  藤俊男紹介)(第九六三六号)  同(神近市子紹介)(第九六八八号)  健康保険等臨時特例延長及び日雇労働者健康保  険改悪反対等に関する請願河野正紹介)(  第九六八七号)  日雇労働者健康保険制度改正に関する請願(江  田三郎紹介)(第九八二〇号)  医療労働者増員等に関する請願外一件(伊藤  惣助丸君紹介)(第九八二二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  健康保険法及び船員保険法臨時特例に関する  法律等の一部を改正する法律案内閣提出第九  三号)      ————◇—————    午前十時二十五分開議
  2. 森田重次郎

    森田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出健康保険法及び船員保険法臨時特例に関する法律等の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  本案審査のため、明三日、日本赤十字社当局より参考人を招致し、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 森田重次郎

    森田委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、参考人の人選につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 森田重次郎

    森田委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。
  5. 森田重次郎

    森田委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。山田耻目君
  6. 山田耻目

    山田(耻)委員 前回、総理並びに厚生大臣政治姿勢についてお尋ねをしたわけです。きょうは、若干、そうしたものに引き続いて、いろいろと内容などについて聞きたいと思います。  まず最初に、どうも私解しかねることがあるのでございますが、けさの「日医ニュース」、日本医師会ニュースが会館に届けられておりました。この中を読んでみますと、会長武見さんと斎藤厚生大臣、かなりごじっこんのようでございます。いろいろと、もちろん仕事を通してのお話でございましょうが、この健保特例法社会党国対委員長柳田さんと自民党国対委員長園田さんとかたい約束がかわされていると推測される、それはこの特例法は衆参を可決させる、こういう内容であります。それに加えて、一つは、日本医師会政府との間に、医師会がきわめて不満を表明しておるのは薬価の一部負担をしょわされておることであるので、これは与党である自民党筋から一部修正をして国会審議を行なうのだ、これがまことに真実らしく書かれております。国民健保特例法についてはほとんどおしなべて反対のための強い意向を表明しております。政府政治責任に対しても激しい叱正をいたしておるところですけれども、こういうふうな、少なくともニュース新聞というものにあなたの名前が書かれ、政府の有力な大臣名前が書かれて全国に向けて報道されるということは、私は、国会軽視もはなはだしいし、しかも侮辱をしておると思うのです。しかも、ある問題を憶測をやっておるということに対しては、党に対してもきびしい不信の行為だと言えるわけです。きょう具体的な審議に入るにあたりまして、取るに足らない問題だというふうに一蹴されずに、こうした問題についても、所管大臣である厚生大臣としては、やはり公正な審議、もって国民の負託にこたえたいという立場から、どのようにこの問題をながめておられるのか、ひとつお聞きをしておきたいと思います。
  7. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいま二点についてお尋ねがございましたが、私は医師会武見会長とはときどき会います。会えばいろいろな話が出ますが、少なくともこの健保特例法につきましては、話し合ったことは一度もございません。私は、日医ニュースで私と武見会長とが健保特例問題について話し合ったという記事は見ておりませんが、もしあるとすれば、これは誤りであると思います。まして、社会党柳田さんとそういう話ができているということも、私は全然どこからも聞いておりません。それから薬価の一部負担につきましても、これは武見会長と何の話もいたしておりませんし、政府医師会とこの問題について話をしたということも絶対ございません。その点はひとつ十分間違いのないように御理解をお願いいたしたい。
  8. 山田耻目

    山田(耻)委員 私はあなたのおことばを信じたいと思います。ただしかし、その中には、あなたの——どう言いますか、人格というものを、もっと比重を弱めるようなことばも出ている。あなたは武見さんとお会いになりまして、診療報酬を大幅に引き上げてあげるから待ってくれ、こういうことも言われておるんですね。私は、この一つの問題については、笑いごとでは済まされない。当面の課題についての審議に入るんですから、笑いごとでは済まされないんです。しかも、一市井人政治というものをながめて、かってに判断をし憶測したのではないのです。少なくとも現職大臣の個々の名前が書かれて、診療報酬に対しては思い切った値上げをしてあげよう、こういうことまで、現職厚生大臣であるあなたの名前が出て、あなたが言ったと書いてあるんです。  私はやはり、この問題をこのまま放置するということは、委員長、いけないと思います。それは、こうした問題を審議するのに、いろいろな憶測というものはあろうかと私は思いますけれども、少なくとも、憶測の中には、あなたの、現職大臣名前が出ておることなどと関連をして、各党の名前が出ておることなども関連をして、私は日本医師会に対して国会としてもこのまま放任をするということはいけないと思いますから、いまのあなたのことばに対してもう一ぺんお伺いをすると同時に、私は理事会を開いて、その新聞もあることですから、具体的な措置というものをやはり私はきめていかなければいけないと思いますが、この点は委員長にも後ほどお伺いをいたします。
  9. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいま申し上げましたことには間違いございません。診療報酬費を大幅に引き上げてやる、これは武見会長のとりょうが、あるいはそういう感じでとられたかもわかりませんが、そういうことは私は申しておりません。武見会長と会いました際に、いま薬価調査の問題が中医協で非常に難渋をきわめているわけで、そこで医師会の考えておられる点がどこにあるのか、薬価調査の点について事務当局医師会理事さんといろいろ話し合って検討いたしておるのでありますが、事務当局からも意見を聞いておりますけれども、武見会長薬価調査についての考え方はどこに本筋があるのか、どうなんだという点を聞き、そうして診療報酬制度の問題は昨年の夏から医師会緊急是正要求中医協に出しているわけであります。それが今日まだ審議ができないという状況であります。病院その他においても非常に困っているという事情もいつもお聞きいたしておりまするし、すでに昨年の十二月から審議入ろうとしたものがまだ入れていない。ここらでぼつぼつ中医協審議に入ってもらうようにしたらどうだろうという話をいたした事実はございます。中医協結論が出れば、その結論を尊重してやります、これは言わずもがな、当然さようであるわけでありますから、そこでああいう記事が出たのであろうと考えております。
  10. 森田重次郎

    森田委員長 ただいまの山田耻目委員からの質疑新聞掲載の問題は、理事会を開くようにという社会党理事さんからの要請がありまして、これは後刻理事会を開くことになっておりますから、その際に譲ることにお願いいたしたいと思います。とりあえず質問は御継続をお願いいたします。
  11. 山田耻目

    山田(耻)委員 私は政治姿勢についてお伺いしておるのですから、やはりその中で多くの懸念がございますから、それで、理事会を開いてこの問題に対する対処方針を御相談いただきたいとお願いしておるわけです。ですから、後ほどの、本委員会終了後、公報に出ている理事会で御相談いただくというのでは、いま質問入ろうとする私の質問のまくらになるのですから、やはりいま開いていただきたいということを重ねてお願いいたします。
  12. 森田重次郎

    森田委員長 ただいまの山田委員からの御要請でございますが、後刻理事会を開いて善処いたしたいと思います。
  13. 山田耻目

    山田(耻)委員 先回の質問のときに、総理並びに厚生大臣のほうから御答弁がございました。二年を切っての特例法法案成立にあたって、いまだにできないということの陳謝がございましたが、特に政府がじんぜん日を過ごしたということではないし、しかもこの国会中に関係審議会抜本改正案諮問をすると再三にわたって述べておられました。厚生大臣最後に強くそのことの決意を表明いただいたわけでございますが、あれからまだ四日ばかりしかたちませんけれども、その決意にお変わりはございませんか。
  14. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 その決意には変わりはございません。
  15. 山田耻目

    山田(耻)委員 この会期は八月五日まででございますが、あと三十二、三日でございます。この三十二、三日の間に政府原案として諮問をする案が作成できますか。
  16. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 できるだけ大筋について諮問のできるようなものを作成をいたすべくいま努力をいたしておるわけでございます。
  17. 山田耻目

    山田(耻)委員 この諮問大筋は六月五日に自民党から示された医療政策大綱もとになさっておられるわけですか。
  18. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 大体それをもとにして、反対意見もついておりますが、各省調整をはかってまいりたい、かように考えております。
  19. 山田耻目

    山田(耻)委員 あの政策大綱もとになさっておられるということになりますと、俗にいう三本立て保険主義という立場を貫かれるわけですか。
  20. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 まだ貫くというところには至っておりません。重要な反対意見もついておりますから、それにつきまして関係省との意見調整をはかってまいりたい、かように思っているわけでございます。
  21. 山田耻目

    山田(耻)委員 あの医療政策大綱の中には、いまお話しになりましたように、かなり強い反対意見がついていますね。この間私は、まさに右向け左だ、こういうふうな状態だと言ってやゆしたのですけれども、関係各省との調整をなさっておるということでございますが、その調整は何をどういうふうにいま進めておられますか、その調整内容についてお話しをいただきたいと思います。
  22. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 いま事務レベルにおきまして、関係省考え方を聞き、いろいろと論議をいたしております段階でございますので、したがって、厚生省はこういくといって、はっきり最高方針をきめてやっておるわけではございませんので、ここで厚生省方針はどうだ、こうお聞きになられましても、ちょっとお答えをいたしがたいという事情にありますので、御了承をいただきたいと存じます。
  23. 山田耻目

    山田(耻)委員 結局、事務レベルで、どういたしましょうかという程度のものなんでございますか。私は、この問題について、今国会中に関係審議会諮問をするとお約束をいただいたのですから、ぐずぐずしていたら、またあなたの約束違反公約違反ということで、あなたに文句を言わなければなりません。私は、事務レベル折衝というものも、会期末まであと三十二、三日に向かって計画的に進められているものと思わなければならないのですが、一体どういう内容に従って、どういうスケジュールで進められておるか。これは、この国会中に審議会諮問をするとあなたはお約束をなさっておるのですから、少なくともその作業日程なり計画性というものはあろうかと私は思います。それらについて述べていただきたいと思います。
  24. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 でき得べくんばこの国会中に関係審議会大筋についてでも諮問のできるように努力をいたしたい。努力をいたしたい、かように申し上げておるわけでございます。必ずいたしますと——これは私は逃げるわけではありませんが、必ずいたしますとお約束したわけではございませんので……(発言する者あり)それで私は逃げるわけではございませんですよ。しかし約束したわけではございません。努力をいたします、そして、いたしたいと思います、こう言っておるわけでございます。
  25. 山田耻目

    山田(耻)委員 いろいろ便利な日本語があるものですから、あなたは使い分けをなさっておるわけです。しかし、せんだっての委員会のときには、総理もおっしゃったわけです、この会期中に関係審議会諮問をしたいと。あなたは主管大臣だから、もっと具体的に、この医療政策大綱にのっとり、大綱について必ずやりたい、こういうようにおっしゃったわけですよ。やるという気持ちを言うたのであるから約束じゃない、こういうもののおっしゃり方というのは、私はいけないと思います。少なくとも、主管大臣としてあなたがお約束をなさったことは間違いないのですから、この三十三日間に、どういうスケジュールで、どういう内容で、いつごろまでに各省折衝を終わり、そうしていつごろ審議会諮問をする、こういうことを全然無考えに私に約束なさったものじゃないと思うんですよ。人間同士約束でもそうです。ましてや、これほど日本国民を騒がせ迷惑をかけておる問題に対する約束を守る具体的な方向なんでしょう。それに対して私は、いまおっしゃっておられるようなおっしゃり方では、とてもそれは私も承知しませんけれども、国民自体も承知しませんよ。だから、あなたは厚生大臣なんですから、どういうスケジュールで、どういう内容を持って、どの時期に向かって検討を進めていく、どの時期で審議会に出したい、こういうことは、これもあなたに助け舟を出すわけじゃないけれども、その予定どおり完ぺきにはいかなくても、努力していく実績というものを国民に示さなくちゃならないでしょう。その計画内容、そうして期日というものを、一体どこに目安を置いてやられておるのか話してもらわなければ、あなたの口約束だけで中身ゼロということになるじゃないですか。内容を明らかにしていただきたい。
  26. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 もうぼつぼつ最高レベルのところで話し合いをしなければなるまいかと考えているわけでございます。しかし、例月何日までにどうというスケジュールをつくっているわけでもございません。先ほど申し上げましたように、この国会中に諮問のできるように私は協力をいたす、そのうちにおはかりをいただけるであろうと思っております。
  27. 田邊誠

    田邊委員 ちょっと委員長議事進行について。  いま山田委員から、抜本改正に向ける政府決意と態度について質問が続けられているわけですけれども、私も本会議質問をいたしました際に、当然この通常国会百五十日の会期のうちに関係審議会に対して政府諮問をするということを、予算委員会約束をし答弁をしているはずであります。これは、延長国会に入ってその会期末の八月五日まででよろしいということを、あの当時予測をして予算委員会答弁をしているのではないことは御案内のとおりであります。これが第一番目。  それからもう一つは、なぜ抜本改正に対して関係審議会に、今国会中、大綱についてであっても諮問をしなければならなかったか、そういう答弁をせざるを得なかったかというところのいきさつというものは、御案内のとおり、二年間に抜本改革に対して政府成案を得る、こういう約束が一昨年なされていることについて、今度の特例法二年間延長政治責任を回避する意味において、あるいはそういった責任を痛感するがゆえに、この特例法審議にあたっては、少なくとも抜本改正についても政府責任をもって成案を得ます、審議会諮問をいたしますということだろうと思うのです。したがって、いま特例法審議をいたしておりますが、この特例法審議のいわば途中において、あるいは審議の終わった後において、抜本改正に対するところの諮問をすることは、その本旨でないはずであります。しかし、すでに特例法審議が始まっているとなれば、八月五日までにこの大綱について関係審議会諮問をすれば何か責任を果たしたような言い分というのは、いまのいきさつからいって通らないと私は思うのです。少なくともわれわれは、この特例法審議する際に、その審議の過程において抜本改正については政府関係審議会諮問をする、こういう点というものは、私はその中身として正しく把握されておらなければならないと思うのです。ただ単に通常国会中に出せばよろしいというような、そういう形式のものじゃありません。特例法審議とからめて、抜本改正に対する政府の見通しと計画国民の前に明らかにすることが、せめてもの責任最後に果たすことになる、こういう立場だろうと思うわけでありまして、この二つの私の考え方に対してあなた間違いだと言うならば、ひとつ間違いだというふうに指摘してもらいたいと思うのです。
  28. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 おっしゃいますような考え方で、おっしゃいますように理解をいたしまして、この国会中に諮問を出すように最善の努力をいたしたいと思って努力を重ねているわけであります。
  29. 田邊誠

    田邊委員 あなたは口でそういうことをおっしゃるけれども、それならば山田委員質問に対して、一体どういう中身でもってどういう手順で諮問をしようとするのか、その時期は一体いつであるかということに対していま答弁できないというのは、私はいまの大臣お答えと相反するではないかと思うのです。したがって、山田委員質問に対してあなたがその筋道を明らかにするということが、私は、いまの答弁を受けて当然の責任であろう、こういうふうに思うのでありまして、ひとつそういう考え方でもって答弁をされることを私は要求しますが、いかがでございますか。
  30. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 御承知のように、右向け左というような点があると、こうおっしゃいます。そこで関係省意見も聞き、そして結論を得るというわけでありますから、したがって、関係省意見を十分聞く前にこちらの意見だけを先にきめてしまうというのもいかがであろうか、かように思うわけであります。事務レベルにおきましてはそれぞれにやっておりますけれども、これは厚生省意見だということをまだ関係省意見を聞かないのにやるのは、私は政府一本になっての案をまとめるという上においてはいいやり方ではない、こう思って、そういう考え方を発表することはしばらく御猶予を願いたいと思っている次第であります。
  31. 山田耻目

    山田(耻)委員 関係省意見を聞いて、そうして事務レベルで取りまとめ、あるいは大臣折衝に入ったりして審議会諮問をする大綱をおつくりになる、まだ折衝の過程だから申し上げにくい、こういう大臣のおっしゃり方ですね。一体関係各省との右向け左の異なった意見折衝を、目安としていつごろまでに終わりたいというのか。具体的にこの問題を片づけるのなら当然それだけの計画性がなければなりません。その関係各省との折衝を終える目安、そうして厚生省として、政府として審議会諮問をする時期の目安、こういうものは当然なければなりません。その目安をそれなら言ってください。
  32. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 今週中には事務レベルの話し合いを終わるようにさせたい、かように思います。
  33. 山田耻目

    山田(耻)委員 今週中に事務レベル折衝を終わって厚生省で最終的に事務案をおまとめになる時期、そうして審議会諮問をする時期、この二つの目安について答弁をいただきたいと思います。
  34. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 一応事務レベル意見を聞きまして、その後に最高レベルにおいて話し合いをいたしたい、かように思っているわけでございますので……。(山田(耻)委員「その時期」と呼ぶ)時期といたしましては、今月の中ごろぐらいにできればいい、こう思って努力をいたしているわけでございます。
  35. 山田耻目

    山田(耻)委員 今週中に事務レベル折衝を終わって、そうして今月の中旬ごろまでに最高レベルで意思決定をしたい。最高レベルというのは、厚生大臣、労働大臣、大蔵大臣等々、この問題に関係する大臣をさしておられるわけですね。この最高レベルで御相談なさるのが中旬、そうしてそこで諮問委員会諮問をお出しになるのか。もともと医療政策大綱が与党である自民党から出てきておるのですから、並行的にその作業をお進めになるのか、そうして審議会にはいつごろお出しになるのか、これを続けて言ってもらわぬ限りは、ぽろりぽろりと何かのうんこみたいに出されておったのでは審議は進みません。
  36. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 与党のほうとも並行的に話をしなければなるまい、かように考えておりますが、審議会には月末までにはぜひ諮問のできるように努力を重ねてまいりたいと思っているわけであります。
  37. 河野正

    河野(正)委員 御案内のように、この健保特例法抜本改正というものは不即不離の立場にあるわけですね。というのは、これは二十六日、総理もおっしゃっておるように、また厚生大臣予算委員会その他の委員会においていろいろお答えになっておるように、どこまでも暫定的な措置であるということです。そこで私どもは、この特例法というものと、いま申し上げます抜本改正というのは、不即不離の立場にあるわけですから、したがって、この抜本改正というものがどういう形のものであるかということは、非常に重大な関心を持たざるを得ぬと思う。そうしませんと、健保特例法が通ってしまったら、次に出てきた抜本改正というのは健保特例法とちっとも変わらぬ、これは困ると思うのです。ですから、健保抜本改正というものは、特例法審議を議了するまでにその全貌というものを明らかにしてもらわなければ、これは総理厚生大臣もおっしゃったように、どこまでも暫定措置であるというふうに私ども考えてまいるわけにはいかぬと思うのです。ですから、ここで広範多岐にわたる問題だからおくれてきたということに私どもが一歩譲るとしても、やはり特例法が議了されるまでに、抜本改正に関します全貌というものが当委員会において明らかにされない限りは、私どもは承知するわけにいかぬ。その点を明確にしてもらわぬと、私どもこのまま——今後健保抜本改正というものがどういう形で出てくるか、出てこないかわからぬ。何ら保証がないわけですね。二年のうちに出てくる保証はないわけです。そういう形で私どもはこの議事進行に協力するわけにまいりません。ですから、この抜本改正というものの全貌を、健保特例法が少なくとも議了されるまでに当委員会において明らかにする、こういうお約束をぜひここでお願い申し上げたい。
  38. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私は、この国会中にぜひいたしたい、かように考えて答弁をいたしましたのも、政府はいつもやるやるといって、今度もやらないんじゃないかというようなことであっては相ならぬ。政府の姿勢を示す意味からも、少なくともこの国会中というものを一つのめどにして、少なくとも審議会諮問のできるように努力をする。そうしてその姿勢を見ていただこう、かように思って御答弁を申しあげておったわけでございます。そこで、抜本改正内容をこの委員会で、あるいは国会にお示しをして、審議会諮問をいたしましても、審議会はどういうように答申をされるかわかりませんから、一応諮問をいたしまして、その審議会審議の経過を見て、二年以内に抜本改正案というものを出せるようにいたす、その姿勢を示す、こういう意味で私は申し上げておったわけでございます。したがって、当委員会においていま特例法延長法案の審議をいただいている、それまでに出すということは、これはきわめて困難である、かように御了解を願いたいと思います。
  39. 河野正

    河野(正)委員 厚生大臣がどういうような御意図で予算委員会その他で発言されたかということは別として、私が一歩譲ったといたしましても、抜本改正特例法というものは切り離すことのできない関係にあるわけですから、そこで、私どもが言っておったのは、今国会中に諮問をいたしますそのことは、少なくとも健保特例法というものは今国会末には審議に入っていくわけですから、それまでにはこの抜本改正に対しまする全貌というものが明らかにされる、そういう前提で私どもはこの審議に臨んできているわけです。ですから私どもは、何も最終案をここで示しなさいと言っているのではない。諮問機関に諮問しなければならないという手続を私どもは知っているわけです。しかし、その際における政府の構想としては、こういうものを審議会諮問をするのです、こういう全貌というものは示していただかなければ一いま大臣お答えになったように、なるほど諮問をしても、この諮問機関がどういう答申をするかわからぬ、それはそのとおりだと思うのです。しかしながら、政府としてはこういう内容のものを審議会諮問するのですという全貌というものは、この特例法審議の過程の中で示していただかなければ、特例法審議は終わっちゃった、そしてその後にできた抜本改正というものの内容については全くどういうものかわからぬというようなことでは、特例法抜本改正というものが無縁、無関係のものであるならばいざ知らず、これは重大な関係があるわけです。また、重大な関係があるということを、今日まで総理厚生大臣も二年前の健保国会からしばしば約束されてきた、そういうお答えをされてきた、こういう経緯がございますから、少なくとも政府としては、こういう内容のものを諮問機関に示すのですという方向ぐらいは、特例法の議了前に示していただかなければ、私どもは今後この議事進行には協力するわけにはまいりません。そのことを特に要求をいたしたいと思います。
  40. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 先ほど申し上げておりますように、あるいは私の考えておりましたのと当委員会の方々の考えておられたのとは違っておったかもしれません。私は、政府の姿勢を示すという意味で、この国会中に諮問のできるように努力をいたしたい、こう申し上げておったわけであります。と申しますことは、健保特例法の衆議院の審議が終わるまでに出すということを私は申し上げておったわけではなかったわけでございますから、そこは意見の違いであったと、いま私は思うわけでございます。
  41. 河野正

    河野(正)委員 わかりやすく言うと、こういうことだと思うのです。私どもが言っておる今国会中というのは、少なくとも健保特例法議了前。これは、健保特例法抜本改正というものが非常に重大な関係を持っているわけですから、いまの大臣のような見解でございますと、それは、もう一方的にでももし今度特例法が通りますと二年間有効ですから、その間に諮問すればよろしいということになるのです。何も今度の国会中に諮問しなければならぬということにはならぬのです。次の通常国会でも間に合うのです。そこで私どもが今国会中と言っているのは、特例法の議了前ということを前提として言っていることは、いまの理屈からも大臣十分御理解いただけると思うのです。これは、そういう関連がなければ、次の国会中に諮問したっていいのですよ。ですから、私どもが今国会中と言うのは、どこまでも特例法議了前だということは、いま私が申し上げまするような理由をもっていたしましても、私は、大臣も心の中ではわかっておられると思うのですよ。ただ、表面いろいろ政治的な問題があるものですから、なかなかここで肯定ができぬだけの話で、私がここで言う理屈は、大臣は頭脳明晰な方でございますからおわかりだと思うのです。でありますから、いま私が申し上げましたような私どもの理由からも、やはりこの際この特例法の議了前において、少なくとも政府が考えておりまする全貌についてはお示し願わなければならぬ。これは今国会中であれば、特例法がどうであろうとこうであろうとよろしいのだ、そういう議論ではない。そういう議論ならば、次の国会に提案されても間に合うのです。もし通れば二年間でしょう。ですから間に合うのです。そういうことでないことは、それは子供の理論でもわかるのです。ですから、この点は重ねてひとつ大臣の明快なお答えをいただかなければ、このまま議事進行に協力するわけにはまいりません。
  42. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 おっしゃいますことも、それは一応御無理もないかと私は思いますが、きょうのきょうまで私は、この国会中に出して政府の姿勢を示す、熱心にここまでやったという姿勢を示すのは、まずいままでの怠慢を責められていることに対するせめてもの政府の誠意の示し方であろうか、ただそう考えておったのでございまして、この法案の議了の際に、その大綱内容までいろいろと御審議にならなければならないのだという感じは持っていなかったものですから、そこでスケジュール的に大きなそごを来たしてまいりました。いまおっしゃいますとおりとすれば、私のスケジュールに大きなそごを来たしてまいっておるわけでございます。その点は御了承いただきたいと思います。
  43. 大原亨

    大原委員 関連厚生大臣答弁をずっと前から聞いておりますと、非常にしどうもどろです。頭脳明快な厚生大臣にいたしましては、答弁を聞いておりますと、理解できないようなしどうもどろの答弁です。  当時、三月四日の予算委員会におきまして、予算関係法案である健保特例法案、重要な政府の政策の柱の特例法延長法律案の構想について、国会に提出をされていないときに予算を議了することはできないではないか。これは当然の議論ですから、その問題から局面が発展をしておるわけですが、そのときに、予算に関係すると一緒に、特例法審議に関係する抜本対策についてあなたのほうが見解を示したわけだが、もしそのときにそういう見解が示されなかったならば、予算は通っていないし、暫定予算を組まなければならなかったのですよ、そのときの情勢は。だから、三十分間ほど休憩いたしまして、政府の統一見解であなたが答弁したわけです。  その答弁の中には、医療保険の問題、抜本改正につきましては可及的すみやかに成案を得る、議院の期限はあるけれども、できるだけ早く成案を得まして、今国会中に関係審議会諮問の手続をとるよう努力をいたします。総理大臣はこのことの答弁の裏づけもしておりますが、そういうことです。そのときの今国会中というのは、五月二十五日までの通常国会ですよ。こんな七十二日間もでたらめな延長をする、そんなことを想定して政府がやっているわけはない。予算の審議もやっているわけでもないのです。安保のときだって五十日でしょうが。それを七十二日間も延長したのだ。だからその後国会においては、いろいろなトラブルがあったでしょう。ですからそのことは、五月二十五日までにちゃんと示されていることが、今国会中という精神ですよ、この精神は。それをずるずると引っぱっておいて、そうして世上何と言っておるかというと、昭和四十二年の十一月には厚生省試案、牛丸試案を出した。そうしたら自民党の中においては、鈴木調査会、西村調査会では、それはたな上げにしておいて、今度はその調査会の基本の政策大綱を出した。その中身右向け左である。山田委員が指摘されるとおりだ。世間では言っているのだ。これはじんぜんと日を過ごして時間切れを待っているのだ、つくる意思はないのだ、こういうことを言っているのだ。これが、いままでわれわれの同僚委員が指摘されたように、いままでだって法律できめたことを実施しなかった。国会答弁したことを実施しなかった。国会を軽視した。さらに今度は、特例法抜本改正は密接不離の関係であるという点がはっきりわかっておるのに、その全貌も示さないで、そうしてこれをほおかぶりで逃げよう、そういうことはいけないですよ。  ましてや厚生大臣答弁を聞いていると、初めの答弁といまの答弁、だんだんと違って、しどろもどろだ。私どもは少なくとも国会の権威のためにそういうことがあってはならぬと思う。そういうことについて、それを期待し、あるいは約束を信ずるということは、いままでの経緯からいってできない。したがって、厚生大臣総理大臣ともよく相談して、この問題については統一見解をきちっと国会の場を通じて説明してもらいたい。責任を持った統一見解を示してもらいたい。だめですよ、こんなことでは。(「はっきりしているじゃないか」と呼ぶ者あり)一つもはっきりしてないですよ。今国会中というのは、五月二十五日の通常国会までですよ。会期延長は五月の二十日ごろになってわかるのです。延長するかどうかということが審議になるのは。それまでは五月二十五日が会期じゃないか。しかもそれを過ごしておいてから、またじんぜんと延ばしているじゃないか。会期延長なんか全然予想してないですよ。だから時間的に言いましても、何も約束したことをやってないことになる。こんなおざなりなことで、また二年間延長しましても、二年間延長してその後にできる保証はないじゃないか、うそつきの連続じゃないか、こんなのは。国会の権威にかけてそんなことは了承できないですよ。だめですよ。政府責任を持った統一見解を、きちっと原稿を書いてやりなさい。
  44. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 お説のように、三月四日に、「今国会中には関係審議会諮問の手続をとるよう努力をいたしたいと存じます。」こう私は申し上げました。その気持ちは変わっておりません。その国会とは延長のない国会であろうというお話でございましたが、私はその段階においてはさように考えておりました。ところが、党の調査会の御報告をいただくのも非常におくれまして、したがって非常におくれて困ったなと思っておったのでありますが、私は会期延長されました際に、とにかく会期末までには何とか通してまとめたい、こう思っているわけです。それはいまおっしゃいますように、政府抜本改正をやる気がないのじゃないか、こういうように一般にとられては心外であるから、少なくとも政府はやるという気がまえを示して、その一つの段階は審議会諮問をする段階であるから、それをできるだけ早くいたしたい、この国会中にもいたしたい、こういうような趣旨であったわけでございますので、何ら考え方に変わりはないわけでございます。御了承をいただきたいと思います。
  45. 大原亨

    大原委員 関連質問ですから、もう一問だけ。つまりあなたは、三月四日の予算審議の際ですよ。重要な予算審議ですから、特例法の裏づけになる予算を審議しておるのですから、そのとき、三月四日に今国会中という場合には、会期をこんなに延長するなどということを想定しているのじゃないんですよ。それまでの質問から言いましても、五月二十五日までというのは、法案の審議に役立てるという議論の中から出てきておるのですから、当然五月二十五日までには出ておらなければならぬはずですよ。当時は、国会会期延長については与野党とも何も言ってないから、だから、会期延長とは関係なしに五月二十五日までにはつくるんだ、そして関係審議会に対して、抜本改正についてはこう考えております、こういう考え方をちゃんと示しておいて、特例法責任ある審議をやろう、こういうことでしょう。国会というのはそういう精神ですよ。国会を尊重するたてまえでしょう。それをじんぜんと日を過ごしておいて、そしていろいろな点でどうでもいいような答弁をするということだったならば、国会は、質疑応答をしても全然だめじゃないですか。そんなことはだめです。だから政府は、責任ある統一見解を具体的に示しなさい。じゃ、できなかったら、五月二十五日を過ぎているんだから、できなかったことについて——できないという事実は変えることはできないでしょう。できないが、できなければ、山田委員が指摘しているように、どういう日程で、どういう問題があって、それでどういう大綱をやるのだ、いつごろまでにどういう手だて、これをぴちっと言わなければいけない。このことは特例法審議に間に合わなければだめですよ。特例法審議は、当然保険全体あるいは赤字の原因等について究明するわけですから、抜本改正と不可分ですよ。どういう認識を持って、どういう政策を立てるかということは不可分です。だから、おざなりの審議で時間を過ごして、それで強行採決をやろうというのかわからぬけれども、そういうことはだめですよ。それは国会無視だ。国民無視だ。そんなことはできないですよ。絶対だめです。統一見解をきちっと示してもらいたい。
  46. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 どういう大綱かという点は、これは審議会諮問する段階でございません。こういう大綱だということを私は責任を持って申し上げることは今日まだできません。そこで、先ほど申し上げましたように、審議会には少なくとも月末ごろまでには諮問をいたしたい、そのスケジュールをもって事務当局の一応の下ざらいは今週中ぐらいには終わって、来週中ぐらいには上のレベルで話し合いを進めたい、かように思っております。
  47. 山田耻目

    山田(耻)委員 三月四日の予算委員会政府の統一見解が出ておりますね。この国会中、いま大原委員の指摘のとおりです。三月二十日には社会保険審議会で、公的に約束したことはすみやかにやれ、特例法では何ら現状を国民の期待に沿えるように変革することにはならないからという意見が出ております。四月三日には社会保障制度審議会も、同様の趣旨をあなたに差し出しております。いまあなたのお話では、この国会中というのは五月二十五日が八月五日まで延ばされたこの国会をさしておられます。しかし私たちはいま抜本改正について審査を進めているのです。全く愚にもならない、国民怨嗟の的のこの法案を審議しているのです。この基礎になるものは抜本改正であります。全く密接不可分の法案であり一まずだけに、抜本改正が、大綱であってもけっこうですけれども、この委員会に示されて、われわれもそれをしっかりと横目で見ながらこの特例法審査を進めるのが、私は一審正しいやり方だと思うのです。大臣もこれに対して、心の中では賛成なさっておられると私は思う。この状態で審議を進めておるということについては、委員長、私が聞こうとする論旨と非常にそぐわないのです。しかも国民の期待にこたえてあげることもできないのです。ここでひとつ理事会を開いていただいて、いまちぐはぐな政府の見解に対する統一をあらためて要求いたします。理事会の開会を求めます。
  48. 森田重次郎

    森田委員長 それじゃ理事会を開きます。したがって、委員会は暫時休憩いたします。     午前十一時二十五分休憩      ————◇—————     午後一時四十五分開議
  49. 森田重次郎

    森田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、厚生大臣より発言を求められておりますので、これを許します。厚生大臣斎藤昇君。
  50. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 先ほど山田委員の御質問に対しまして一応お答えいたしましたが、さらに補足をさせていただきます。  去る三月四日の予算委員会におきまして、なるべくすみやかに成案を得て関係審議会諮問をいたすように努力をいたしたい、こう申し述べ、その後の本会議におきましても同様のことを申し上げておりましたが、今日に至るまでまだ成案を得て関係審議会諮問する段階になっておりませんことは、まことに遺憾に存じます。この点はお許しをいただきたいと思うわけでございます。  さらに、この委員会審議中に、少なくとも大綱をきめて委員会諮問すべきであるという御意見に対しましては、これは非常にむずかしいと存じますけれども、さらにできるだけ努力をいたしたい、かように考えます。そうして、その政府間の意見をきめなければなりませんが、私といたしましては、この医療保険の抜本改革大綱につきましては、自民党国民医療対策大綱に示されました事柄を基本といたしまして政府意見調整、統一してまいりたい、かように思う次第でございます。  「日医ニュース」につきましては、先ほど申し上げたとおりでございますが、中医協において審議をされるべき問題だ、私はかように考えております。その審議内容について、診療報酬緊急是正につきましては中医協において審議をしてもらっておるわけでありますが、これを見守っておるわけでございますが、しかし、その中において薬価調査の問題が、厚生省側と日医の側といろいろ折衝をいたしておりまして、相当長引いておりましたので、私はその点について意見を聞いたわけでございますが、診療報酬の是正につきましては、中医協において三者構成による公正な御判断をいただきたい、こう思っておることには全然変わりはございません。したがって、何かそれに対してある種の取引みたいなことがあったということであれば、これは非常な間違いでございますから、日医のほうに対しまして、そういう間違いのないようにということをさらに申し伝えておきたいと思います。
  51. 森田重次郎

    森田委員長 質疑を続けます。  山田君。
  52. 山田耻目

    山田(耻)委員 大臣から午前中の問題について御回答をいただきました。不満であります。審議全体を促進する意味から私も協力をいたしたいと思いますが、「日医ニュース」の問題につきましては、診療報酬の引き上げについては中医協にかかっているのですから、いわゆる審議会軽視、こういうことにあの新聞を読んだ人たちは——全国に配られておるのですから、まさにあなたと武見さんの間に何か取引があった、こういうふうに思いがちなんです。従来の経緯からも考えてみて、誤解でしょうけれども、そういういわゆる感じを与えることは避けられないと思いますから、やはりこの問題につきましては、「日医ニュース」を通じて、いまあなたが答弁なさったようなことの見解を述べていただくことも一つの方法だと思いますし、医師会に対して、誤解を招かないように大臣として忠告を与えるのも方法だと思いますが、そうした方法をひとつお考えいただいて善処願いたいと思います。  三月四日の予算委員会の問題につきましては、五月二十五日が会期切れでございますから、これまでに間に合うように可及的すみやかに出したい、そういう趣旨については、遺憾の意が述べられました。また、この会期末に医療大綱審議会諮問をしたい、むずかしいが努力をすると述べられました。私は、前者は遺憾の意を述べられましたし、ある意味では過ぎ去ったのでありますが、これからの心がまえとして、この特例法審議しておりますこの委員会の開かれておるうちに抜本改正が示されていくのが、私は、正常な、正当な審議のルールだと思っておるわけです。しかし、おっしゃいましたように、今週中は事務レベルで、中旬までには大臣のレベルで、そうして月末には審議会諮問をしたい、このお答えは、単なる努力目標であってはいけませんし、しかも、この特例法審議しておる本委員会の開かれておるさなかに、どうしても提出してほしい。その立場に立っての一切の作業をお進めいただくのが、私は厚生大臣としてのあなたの責任だと思うのです。この特例法審議もきょうが初日です。初日にこの問題が出ているわけです。あなたの、むずかしいが努力をするとおっしゃる気持ちを、いま私が申し上げた、この委員会審議中に出していただくというところにもつと気持ちを近づけていただいて、御努力を願いたいと思います。少なくとも、事務レベルの段階が今週で終わるようでございますが、そうした事務レベルの段階の資料なり次に進む方向というものも委員会に示しながら、誠心誠意この問題に取り組んでほしいと思いますから、特に大臣お答えに対して私の気持ちを申し上げて善処方をお願いしたいと思います。
  53. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 はい。
  54. 山田耻目

    山田(耻)委員 それでは審議に入りますが、最後におっしゃいました三点目はこれから審議の中心になりますが、六月五日に、与党である自民党のほうから関係大臣をお呼びになって、院内で医療政策大綱をお示しになりました。この医療大綱もとにこれからやっていくのだというのが、いまの三点目のお答えです。  そこで、この医療大綱について、私が見ております点を若干聞いてまいりたいと思うのでありますが、一体、この三本立てというものは、かなりむずかしい要素があると思います。ただ私は、今日の保険制度が八つに分かれておりますので、これを三つなり四つなりに縮小していくことは望ましい傾向だと思っております。しかし問題は、観念的にそのことを方向づけただけでは、抜本改正は生まれてまいりません。その方針の中で、これから事務レベルから始まって打ち合わせをなさっていくわけですけれども、やはり問題点が五つ、六つございます。  特にあの大綱の中で付随する強力な意見が五つついております。この五つをこれからただしていかなければならぬ。与党間の調整各省折衝の中心になろうと思いますから、それらについて若干聞いておきたいと思いますが、労働大臣が座談会で若干お急ぎのようでございますから、労働大臣のほうに先に伺っておきますけれども、これは労働大臣、たいへんなことになりそうですね。いわゆる公社ができていく、そうしてあなたの所管である労災保険を勤労者保険に統合していく、このことは、労働省が厚生省に吸収されていくことにもなります。一体これはどういうことですか。あなたの見解を示していただきたい。
  55. 原健三郎

    ○原国務大臣 お話しのごとく、先般自由民主党医療基本問題調査会から医療の抜本改正についての提案がなされたことは、御承知のとおりでございます。しかしながら、そのうち業務上の傷病に対しては、業務上の事由による傷病に関する保険を勤労者保険制度に取り入れることは適当でないとの反対意見が示され、政府がこの点を十分考慮するようにされたいとのことでございます。そこで、ただいま労働省労働基準局長厚生省保険局長との間で、この点について話し合いをさせて、進めさせている最中でございます。両局長はすでに数回折衝を行なっていると聞いておりますが、今日までその結果についての報告はまだ受けておりません。この問題については、労働省側から申しますと、次のような重要な問題点があると考えている次第でございます。  その問題点の第一は、職場における健康管理に関する行政については、その職場の事情に精通している労働省が行なうことが適切であること。  第二は、業務上の傷病についての医療は使用者の無過失責任に基づくものであるのに対し、私傷病についてはそうではないこと、したがって、業務上の傷病に対する医療及び社会復帰については、手厚い措置を講じていること。第三、職場における健康管理は、労働基準法上第一義的に使用者の責任とされているのに、国民医療大綱ではその点が明確にされていないこと。以上のような問題がありますので、いま両省の両局長にさらに精力的かつ慎重に折衝を継続させる考えであります。
  56. 山田耻目

    山田(耻)委員 そうすると、労働大臣、総論的に言えば、労働省は断じて承服できないということですね。私は、あなたに折衝の過程を伺っているのではないのです。きわめて重大な問題点であるから、労働省の意見を私は伺ったわけです。労災保険というのは、御存じのように、作業中にけがしたり病気になったりすることをいっているわけですね。これに対しては、事業主体の責任として傷病をなおしていくというのがたてまえでしょう。ところが、勤労者保険という現在の政府管掌保険なり組合管掌保険なりと統合してまいりますと、けがをした患者の負担でなおすことになるでしょう。労災保険の立法の趣旨というものは、そんなものじゃないのです。一体、こういうふうなものの考え方というものが、労働省の労務管理なり、それを指導する立場から許容できるのかどうか、そのことを実は聞きたいわけなんです。
  57. 原健三郎

    ○原国務大臣 重大問題ですから、いろいろ相談して間違いのなきを期したいと思います。(「間違いを自民党大綱はおかそうとしているじゃないか」と呼ぶ者あり)そういうわけでございまして、労働者の疾病を労働者だけに負担さすというようなことは反対でございまして、さいぜんに申し上げましたように、三つの点についてまだ意見調整ができる。私どもはこの三点をいま主張いたさせております。最終的に意見が合うか合わないか、さいぜん厚生大臣からありましたが、もう数日中に結論を出す考えであります。
  58. 山田耻目

    山田(耻)委員 御存じのように、高度な経済成長を遂げていきつつありますし、産業構造もうんと変わってまいりました。合理化政策も労働者の意思を無視して強行されておりますし、最近の業務災害の上昇率は著しいものがあるのです。こうした日本の産業政策の変化の中で、働く労働者はまさに命を削るようにして働いているのです。そうして、そこに発生する労働災害、その労働災害を保険システムの中で、みずからかけた掛け金で治療していくということは、明らかに保険行政の後退でしょう。このことを容認できないというあなたの立場を私は支持いたします。しかしながら、それは六月五日に出された自民党の医療大綱反対をするのですよ。あの医療大綱の前文に、政府は一致して見解を取りまとめて諮問するようにと書かれております。あなたは、職を賭してでも前進する医療体系を築き上げていく、労働大臣として全力を尽くして前向きでりっぱな抜本改正を築き上げていく、こういう決意で取り組んでいただけることに間違いございませんか。
  59. 原健三郎

    ○原国務大臣 このいわゆる国民医療対策大綱というので自由民主党が出しました正式の文書によりますと、こういうふうに書いてあります。「今回、医療基本問題調査会が了承した国民医療対策大綱については、左記の如き問題点があるので、」——これはさいぜん私が申した五つの点でございまして、並べてあります。「問題点があるので、政府は之等を充分参酌して国民医療対策を立案する様配慮すべきである。」ということでございますから、こういう問題点があるし、議論の多い点が五つあるから、政府においてはこれらを十分——反対意見があるということをよく踏まえて、そうして国民医療対策を立案すべきものである、こういうのですから、このままのめとものむなとも、大いに意見のあるところは……(「反対、賛成、どっちをとる」と呼ぶ者あり)私の意見は、さいぜんから反対であるという意向を申し上げているつもりでございます。でありますから、これは、これから折衝したり意見を言うてもよろしい、そしてまとめるべきものはまとめる、こういう自民党からの文書が来ておると私ども了承いたしております。
  60. 山田耻目

    山田(耻)委員 何かこう歯切れが悪いような気がするのですが、労働大臣としては、後退していくこの医療行政にはやはりきびしい態度で臨む、だから大綱の中にございます私の指摘した点については反対をする、こういう立場として確認をしてよろしゅうございますね。
  61. 原健三郎

    ○原国務大臣 私どもの労働省としての基本的の態度は、さいぜん申し上げましたとおりでございます。それで、そういう点をこれから事務的にも折衝さして、さいぜん厚生大臣がおっしゃったように、その後において各大臣のレベルにおいて結論を出したい、こう思っております。
  62. 山田耻目

    山田(耻)委員 どうもなかなかお苦しいようですが、賛成か反対か、簡単でいいんですよ。
  63. 原健三郎

    ○原国務大臣 大体の労働省の態度等はさいぜん申し上げたとおりですが、またこれから厚生省意見も聞いて、最終的にはどの線で妥協するか、最終的には妥協しないか、そういう点はこれからまた話し合いをしませんと、最終のきめのところはまだきまっておりませんが、どうぞよろしく。
  64. 山田耻目

    山田(耻)委員 どうぞよろしくと言ったって、あなた、私が質問をしておる立場なんだから。それは、佐藤総理大臣によろしくとおっしゃるのなら、わかりますけれどもね。私は、非常にふえていく労働災害に対して、いわゆる事業主が負うべき責任を、けがをさせられた労働者がみずからの金で治療していくというシステムになってはいけませんよ、このことは断固としてやはり抵抗するという立場でないと医療が大幅な後退になっていくということを言っているのですから、これはひとつよく相談をして検討してよろしく頼みます、こういうことでは、私は主管大臣としての労働大臣責任を問いたくなりますよ。もっとそこははっきり申してください。
  65. 原健三郎

    ○原国務大臣 私自身ははっきり言うているつもりでございますが、食い違いがございますが、そういう労働災害にあった者に、労働者だけに負担さすというようなことについては反対でございます。それはさいぜん申し上げたとおりでございます。その他いろいろございますので、それについては最終的のところは相談する、こういうことでございます。
  66. 山田耻目

    山田(耻)委員 この問題につきましては、これから何回か論議をする場があると思いますから、抜本改正の進捗状態の中で議論がこの委員会を通して深められると思いますから、労働大臣についてはきょうはこれでひとつ釈放したいと思います。  そこで、大蔵省主計局次長お見えでございますね。  今回、この抜本医療大綱の中で、いわゆる被用者保険の家族は被用者保険本人と分離をして地域保険に入れる、いまの国民健康保険に合併をしていく分離論が立てられております。そういたしますと、被用者保険の中では、家族に対しては五割ですが、付加給付がございます。七割以上のものもあります。国民健康保険は七割ですから、五割の面につきましてはそれだけ給付がよくなります。ところがそれ以上のものについては悪くなります。こうしたもろ刃のやいばを持っております。しかし大蔵省としては、この五割を七割に引き上げるということで言われておりますように、千二百億ないし千五百億の国庫負担の持ち出しが要るのだ、そういうことがこの大綱の中に示されておるわけですけれども、この制度には幾つかの問題点がございます。しかし、あなたに対しては、それだけの財政負担というものを大蔵省として可能である、やれる、そういう立場をおとりであるかどうか、御答弁をいただきたいと思います。
  67. 船後正道

    ○船後政府委員 国民医療対策大綱、これを本文どおりに実施いたしました場合には、先生御指摘のように、千億円をこえる国庫負担の増加が見込まれるわけでございまして、財政的にも非常にむずかしい問題であると考えるのでございますが、この医療の抜本対策を政府が立案するにつきましては、先ほど労働大臣からも御紹介ございましたように、党からは五項目にわたる付帯意見も十分参酌して政府案をまとめろということでございますので、このような財政措置の問題も含めまして現在検討中の段階でございます。
  68. 山田耻目

    山田(耻)委員 財政を検討すると言っておられますけれども、いま私がお伺いをしておるのは、検討しておるのかどうかということを伺っておるわけではないのです。いまのように、制度ははっきりしているわけです。被用者保険の家族を地域健康保険制度に入れる、吸収する、こういう方向が出ておる。これが三本立ての一つの骨格なのですからね。それを推進するさっきの厚生大臣の御意見では、政府が示した大綱もとにしてこれから折衝に入るとおっしゃっているわけですから、私は厚生大臣一つことばを受けて、可能性、期待が持てるかどうかという立場から伺っているわけですから、大蔵当局としては、検討の結果、財政負担というものにたえ得るかどうなのかという立場から御返事をいただきませんと、いま研究中であるとか検討中であるとかいうものは、いま私が聞いている回答にはなりません。そういう意味からお伺いしていますから、大蔵省としては、この問題についての可否をひとつ話していただきたいと思います。
  69. 船後正道

    ○船後政府委員 千億をこえる国庫負担の増加の問題でございますので、非常にむずかしい問題ではございますけれども、この抜本対策を政府として立案するということになりますれば、もちろん現在及び将来にわたる国庫負担の問題も含めて意見をまとめるわけでございますから、医療対策の内容自体につきまして、現在事務的に折衝中であり、早急にこれをまとめたいということでございますから、御了承いただきたいと存じます。
  70. 山田耻目

    山田(耻)委員 結局、期待をしていいということですね。あなたがおっしゃるのは、厚生省関係、各省とよく相談をしてこの大綱に沿って努力したい、財政支出もそれによってはかりたい、こういうような立場にも聞こえるし、従来の大蔵省の態度から見たら、出すのは舌を出すのもいやだ、金は出さぬ、取るのは取る、こういうふうに見えてならなかったのですけれども、きわめて重大な国民医療に関する問題ですから、この際この大綱の線に沿って金を出す、こういうふうにいまのお答えを伺っていいのですか。
  71. 船後正道

    ○船後政府委員 私は結論的なことは何事も申してないわけでありまして、たとえば御指摘の被用者家族の給付割合の引き上げという問題一つとらえてみましても、一般的に健保組合なり共済組合なりで付加給付として七割程度の給付をやっておるところと政管健保の給付割りとの間にアンバラがあるのではないかといったような問題が、やはり医療の抜本対策の一つのかなめの問題でございまして、私どもも、負担能力の範囲内でできる限りの給付の改善ということは将来への努力目標であろう、かように考えているわけでございますが、ただ医療対策につきましては、先ほど来申し上げておりますように、五つの重要なる付帯意見もついておる次第でございまして、これらの問題も含めて現在検討中でございますから、財政上これが可能であるとか不可能であるとか、これは現在の段階では申し上げられない点を御了承いただきたいと存じます。
  72. 山田耻目

    山田(耻)委員 あなた、主計局次長としては最高決定ができないし述べられないとおっしゃるのでしょうが、あときわめて会期も少ないし、スケジュールもはっきりしているし、この委員会の寿命がどこまであるかわかりませんけれども、もう今週中で事務レベル折衝は終わるのですよ。厚生大臣計画では、今月中旬にはもう大臣折衝を終わるのですよ。まさに目睫の間に迫っているでしょう。そのときに、国会に出てきていまのような答弁というのは、私は非常に不満ですよ。やる気があるのかないのか、あらためてまた疑いたくなるのですよ。あなたはどうしても答弁ができないとおっしゃるならば、あらためて大蔵大臣を呼びますけれども、いかがですか。やはり財政的に可能か不可能かということについては、御答弁いただけませんか。
  73. 船後正道

    ○船後政府委員 まず、財政的に可能であるというような前提から出まして案をまとめるというのではなくて、党から示されました医療対策並びに五つの付帯意見、これらを十分検討いたしました上で政府としての案を固める。当然、そういたしますれば、国庫負担がどういうことになるかということも同時に議論になるわけでありまして、現在、その制度の内容並びに国の負担あるいは保険料負担といったような負担面の問題も、あわせて政府部内において検討しているところでございます。
  74. 山田耻目

    山田(耻)委員 わかりました。結局あなたではむずかしいということでしょうから、あらためて大蔵大臣を呼びたいと思いますから、あなたにはこの程度にしておきたいと思います。  そこで厚生大臣、労働大臣なり大蔵省の担当官からいま話を聞いてみたのですが、いまのような、あなたがおっしゃっているように、これから事務レベル折衝、そして最高グループの折衝、そしてこの委員会の継続されている中で審議会諮問する、最大の努力をするお約束になったのですけれども、いかがですか、自信がございますか。
  75. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 自信をもってと言い得るかどうかわかりませんが、まあ私の分際でできるだけの努力をいたしたいという決意には変わりはございません。
  76. 山田耻目

    山田(耻)委員 たいへん御努力をなさるというかたい決意を御披瀝いただいたわけですけれども、しかし今日の問題点を見まして、たとえばいまの地域保険に被用者保険を入れる。経済構造も疾病構造も社会情勢も変わってきて、そうした一つ大綱に示す方針というものが、まじめにものごとを考えるときに、そう簡単に実施が可能なものとは思いませんよ。しかも、こうした状態の中で、それぞれ態様が異なっておる地域地域の健康管理体制というものもまだ把握が不十分です。そうした地域の健康管理体制というものをあわせて早急に進めていかなければ、与党が言っているような抜本的な改正というものについての成立に私は危惧を持ちますけれども、そうした地域健康管理体制も、社会の態様、経済の変貌、こういうものに即応できる体制というものがやはりとられるという確たる自信をお持ちでございますか。
  77. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私はやはり、この医療政策大綱にありますように、地域の健康の管理体制を整えるということはどうしても必要なことだ、かように考えます。早急にできるかというと、それはなかなかきょう言ってあすできる問題ではございませんが、これはやはりわれわれの到達目標として掲げていく青写真だ、かように考えます。そこで、この地域の管理体制を整えるということを一つの青写真にいたして、そしてこれに合うように地域保険をまとめていくというのも将来への一つの行き方であろう、かように考えます。  先ほどの、労災と勤労者保険との一本化という問題も、これは一本化することによっていわゆる事業主の労災責任を免れしめるものではございません。この原則は確として保持していかなければならぬと思います。したがいまして、労災によった疾病の治療費は、いままでどおり事業主の負担でなければならぬ、この原則はくずすわけではございません。ただ、病人が病院へかつぎ込まれた、それが労災に属するものか、そうでなくて他の保険に属するのか、そうせんさくするよりも、まず治療をやらなければならない。医者としましては完全な治療をやらなければならない。その費用を一体どの会計で負担をするかというのが問題であろうと思います。その会計を労働者の掛け金による資金から出させるべきものとは考えておりません。迅速に、そして的確な治療をどういう方法でやるのがよろしいかというのが、いわゆる勤労者保険と労災保険を一本にするのがいいか悪いかという問題であります。また、事業場の健康管理という問題も、これは事業主の責任であろう、かように私は考えます。したがって、いわゆる事業から来る労災の疾病をなくするということだけでなしに、やはりそこで働いている勤労者の一般の健康管理も事業主としてはやっていくということが必要であろう。かれこれ勘案をいたしますると、やはり勤労者保険として一本化をし、そしてその負担をどういうように分け合うか。それは現行どおり分け合っていくという行き方も考えられるのじゃないか、私はいまそう考えておるわけであります。事務レベルにおきまする労働省の意見もよく聞きますし、また労働大臣意見もよく聞く、そういう点から考えますると、これは全く永炭相いれないものではない、かように思うわけであります。
  78. 山田耻目

    山田(耻)委員 地域の健康管理体制は不可欠の要件であるし、ぜひともやらなくちゃならないのです。しかしまだ青写真の段階だ。青写真の段階ということは、これはまだまだ日暮れて道遠しという感じがするのです。  労働災害の問題にもお触れになりました。これは事業主の責任である、制度上はきっちり通していきたいとおっしゃいました。私はあなたのことばを伺っておるわけですけれども、現実でもどうですか、労働災害であっても、できるだけそれを拒絶して、政府管掌保険によって治療させている現実がたくさんあるのです。その事業主の意欲というものをその方向に走らせることは間違いないわけです。だんだんと激増していく労働災害というものが、一般健保の保険財政の中でまかなわれていく方向に後退をしていくことは、私はやっぱり避けられないと思う。だから、あなたのいまの大綱に基づいて述べられているお考えの中には、現実にそぐわないものがたくさんあるのです。それだけに、あなたの決意なり努力表明がなされましたけれども、抜本改正に具体的に踏み切っていくのには、まだまだ政府の根性が足りないし、努力も足りない。そして現実をしっかり直視しての具体的な取りまとめというものが大きく不足をしておる。このような状態でこれからじんぜん日を送っていくということになりますと、この国会であなた方の力関係でどうなるか予測はつきませんけれども、抜本改正というものが日の目を見るのはかなり遠いと私は思うのです。  こういうむずかしい現実というものは、少なくともよく御理解なさっておるわけですね。むずかしいということは、再三の答弁に出てきております。私は、このまま進んでいけば、結局は四十二年に激しい反対の中で、強引に力関係で通っていきました特例法というものが、なしくずしに固定化されていくんじゃないか。少なくとも来年八月までには名実ともに抜本改正ができ上がってまいりませんと、予算編成に間に合わなくなります。同じおろかさを、同じ公約違反を繰り返していくのではないかと、腹の底が煮えくり返るようです。私は非常に不信感を持っておりますけれども、厚生大臣がさっきから何回も繰り返して答弁なさっておりますように、決意を固めて努力をするとおっしゃっておられますから、困難を克服してやっていただけるものと、あなたにげたを預けます。  そこで、特例法の関係に入っていきたいと思いますが、昭和四十二年に五十五、五十六国会と二回の国会にわたって特例法審議されてまいりました。そのとき厚生省が言われましたのは、保険財政がたいへんな赤字である、このまま推移していくと保険財政はつぶれる重大な危機に立ったから、特例法がいいものとは思わないけれども実施をしたいということで、二年間の時限立法で押し切られていったのです。それが当初、公約の違反だということで政治責任の追及を行なったわけでありますけれども、当時の特例法を提案をしてきた厚生省の意図の中に、けしからぬものがあると私は思うのです。昭和四十二年見込まれた累積赤字、単年度赤字を、いま一度意識を明確によみがえらせるために述べていただきたいと思います。
  79. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 四十二年の特例法制定当時の財政状況でございますが、特例法を制定いたしますときに、四十二年度の単年度赤字七百四十五億と見たわけでございます。七百四十五億の赤字が四十二年度出る、そういうことで、これに対して対策が必要である。それから、ずっと累積の赤字が出ておりますので、それを含めまして、とにかく単年度七百四十五億の赤字については何らかの手を打たなければならないということで特例法を制定するに至ったわけでございます。それで、御承知のような保険料率のアップとか、あるいは入院、初診時の一部負担のアップ、それから外来の投薬時の薬の一部負担の新設、それから国庫補助二百二十五億、こういうことで、この一連の施策によりまして財政効果四百二十六億をあげる。その結果、そういう特例法をやりましてもなお三百二十億の赤字が出るだろうというのが特例法制定当時の財政の見通しでございました。
  80. 山田耻目

    山田(耻)委員 私たちは、本委員会なり国会審議をしますときに、いまあなたのおっしゃいましたように、四十一年で九百七十八億の累積赤字、そうして四十二年度に単年度で三百二十億の赤字、累積千九十九億の赤字になる。このとき私たちは、疾病構造の変化なりあるいは経済構造なり・社会情勢の変化なりで、国で負うべき負担というものを大幅にふやして、保険料率を一挙に千分の六十五から千分の七十に上げるというやり方をやめてくれ、こういう強い主張をいたしたのでございますけれども、おっしゃっているように、単年度三百二十億、累積千九十九億の赤字が出て、保険財政はまさに危機に瀕するという立場から深刻に現状を訴えられた。国民もわれわれも抵抗いたしましたけれども、力で押し切られたのです。いかがでございますか、四十二年度の赤字決算は幾らになっておりますか。
  81. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 ただいま申し上げましたように、特例法を制定いたしましたときには、特例法を通しまして後になお三百二十億の赤字が出る、こういう見通しであったのでございますが、四十二年度の決算を了しましたときにおきましては、赤字が五十八億でございまして、赤字の見込みの減少二百六十二億ということになったわけでございます。
  82. 山田耻目

    山田(耻)委員 私は厚生省としては責任をとってほしいと思うのです。責任をとってほしい。国民をだましたわけですね。私たちの国会議員もだましてしもうた。三百二十億の見込みに対して決算は五十八億、二百六十二億も誤差があった。私は、数多い事柄ですから、五億や十億の見込み違いはあるかもしれません。何ですか一体、六分の五に近い誤差が出ているじゃないですか。三百二十億の赤字と五十八億の決算赤字と並べてごらんなさい。当時の厚生大臣斎藤さんではございませんから、あなた自身厚生大臣でなかったのですから問題は別として、しかし厚生大臣として、この見込み違いをもって国民特例法を押しつけて、恥ずかしいと思わないですか。一体大臣としてどう理解されますか。大臣のこの見込み違いに対する責任者としての答弁をひとつお願いいたしたいと思います。
  83. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 当時の赤字見込みが予想よりも非常に少なく済んだということは、当時の計算としては非常に見通しがずさんであったということは、これはおわびをしなければならぬと思います。しかしそれでもなおかつ赤字は赤字でございまするし、四十三年度も四十五億の赤字を持っておりますので、そこでさらにこの特例法を続けていただきたい、かように申し上げているわけでございまして、赤字の額の見通しが非常に間違っておったということは、これは申しわけのなかったことだと思っております。
  84. 山田耻目

    山田(耻)委員 私は何かふてぶてしいように聞こえるのですよ。主管省としておかしたあやまち、そのあやまちの犠牲を国民が受けて、てんとして恥じるところのない態度というものは、私は許せないと思うのですよ。千分の五引き上げたのでしょう。五十八億というのは幾らです。ことし標準報酬が上がりまして千分の一は六十三億ですけれども、この五十八億というのは千分の一相当です。正確に単年度赤字を見通しておれば、千分の五を上げなくて済んだのです。千分の一でよかったのです。それを千分の四もふくらまして千分の五も上げ、そうして国民負担をかけ、みずからの見込み違いに対しては、三百二十億も赤字、五十八億も赤字、赤字赤字に変わりはありません——私はその態度というのは許せないと思いますけれども、大臣いかがでございますか。
  85. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 数字の問題でございますので私からお答え申し上げますが、この数字の見込みが違いましたことにつきましては、これは全く事務当局責任でございまして、まことに申しわけないと思います。  ただいま先生御指摘の赤字が五十八億、これは千分の一でございますが、それは千分の五上げる必要がなかったと御指摘になりましたのは、ちょっと誤解がおありになるのじゃないかと思いますが、実は、特例法で千分の五を上げまして、その千分の五の財政効果は百四十五億でございます。千分の五上げました結果、百四十五億の収入増になったわけであります。それから入院時、初診の一部負担とか、薬の一部負担の給付費の減がございます。その結果、百八十二億の特例法の財政効果が出たわけでございます。それでその結果、見込みでは七百四十五億の赤字が三百二十億に減った、そういうことでございまして、その限りにおいては特例法の効果というものはあったわけでございますが、そのほかに、三百二十億が五十八億に減りましたのは、結局、医療給付費の上昇傾向が鈍化したということと、それから保険料の収納状況が非常によかった、そういうことと、収入支出が両々予想よりも好転いたしました結果、赤字が減少した、こういうことでございます。
  86. 山田耻目

    山田(耻)委員 当初の七百四十五億の単年度赤字が、特例法の効果があったので、三百二十億と見たところが、その三百二十億もとんでもない間違いで五十八億の決算になった。当初の七百四十五億自体に誤りがあるのじゃないですか。それを担当の官僚がてんとして恥じない。けしからぬと思うのです。四十三年度をごらんなさい。四十三年度も資料で明らかになっておりますから私のほうで言いますけれども、百四億の赤字の見込みに対して四十五億の赤字でしょう。特例法の実施によって、すでに科学的計算もできる立場に立っているのに、なぜここでも見込みが五五%も違ったのですか。これは、あなたの四十二年九月、十月以降の見通しが前の見通しと違ったので、七百四十五億の当初見込みを誤ったという、ある意味では理由も立ちましょうけれども、四十三年度はそうはいきませんよ。一体これはどうなんです。
  87. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 四十二年度におきましても、四十三年度におきましても、収支の見込みというのは、保険料収入におきましては上平均標準報酬が基準になるわけでございますけれども、結局、当該年度の過去二年にさかのぼってその上昇傾向といいますか、それをとって、その当該年度の平均標準報酬がどういうことになる、それに保険料の収納率をかけて保険料収入を出す。それから支出につきましては、当該年度よりさかのぼりまして過去三年の医療給付費の推移、その平均をとりまして、そして当該年度の医療給付費の見込みを出す、こういうやり方をやっているわけでございます。これは四十二年度も四十三年度も同じやり方でございます。特例法制定のときにも、非常にやり方が機械的だというおしかりを受けたわけでございますが、医療費の推移というものは、先生御承知のように現在出来高払いでございますので、ある意味では、お医者さんの気持ちである程度医療費も動くという要素もございます。そういうことで非常に不確定な要素が多分にあるわけでございます。そういうことで、医療費の見通しは、来年度の医療費がどういうことになるかということは、なかなかはっきり見通しが立たないということもあるわけでございます。そういうことで医療費の推計というものはなかなかむずかしい。また収入面におきましても、来年度の標準報酬がどういうことになるかということは、これもなかなか的確な把握がむずかしいというような、そういう技術的な問題がございますので誤差が生じた、こういうことでございます。
  88. 山田耻目

    山田(耻)委員 私はいまあなたの、その見込みと決算の誤差が生じた言いわけを長々と聞いたのですが、あなたのいまのことばの中に許しがたいものがあるのですよ。医者の心の持ち方によって診療費がふえたり減ったりするということは、重大な問題ですよ。一体厚生省は、こうした健康保険を管理、監督していく立場から、そういう事態を認めて、医者のさじかげんで保険給付が減ったりふえたりするというのですか。私は重大な問題だと思う。あなたの立場をもう一ぺんここで述べてください。
  89. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 いまの医療費の問題についての私の発言中、不穏当なものがございましたので、つつしんで取り消しさせていただきます。
  90. 山田耻目

    山田(耻)委員 大臣、いまのことばを聞かれて、私が言ったことはおわかりでしょう。しかし、いまのおっしゃり方は、私の言ったことばの中には不穏当なところがあるから取り消します、こういう言い方だけなんですね。やはりどこを取り消すかということを言ってもらいませんと委員会審議にはなりませんから、取り消す内容をひとつ言ってください。
  91. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 先ほどの私の発言の中で、現在の医療費が出来高払いの結果、お医者さんの気持ち次第で動くことが考えられるという趣旨の発言をいたしましたけれども、その後段が不穏当でございますので、つつしんで取り消しをさせていただきます。
  92. 山田耻目

    山田(耻)委員 私は、いまのことばは不用意に部長は述べられたと思いますけれども、ページをめくってみたら、次にはそうだというふうに認識されておる向きがあるのではないか。たとえば、これから後段で御質問してまいりますけれども、保険料の収納部分については非常に低目に見る、保険給付の部分については非常に高目に見る、こういう傾向が、こうした見込みなり予算をおつくりになるときには、ずうっと伝統的に出ているのですよ。その保険給付費を高目に見るという中に、医者のさじかげんでという不用意に出たいまのことばが、真実として予算編成上貫かれておるのじゃないだろうか、そういう気がしてなりません。大臣厚生省責任者として、そういうふうに私が勘ぐってものを考えるのに誤りがございますか。間違いでしょうか。答弁してください。
  93. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 山田委員の勘ぐられるのもごもっともだと思います。いまの政府委員答弁は私は間違いであると思いましたから、ここで取り消すようにということを実はないしょで話をいたしたわけでございます。やはり収入、支出の見積もりは、そういったことでなしに、過去何カ年間の傾向を見て、それによってきめていく、こういうように答弁をいたしておったようでございます。その過去の傾向は、賃金の上昇率が過去何カ年間の上昇率よりも高かった、それから医療費は過去何カ年間の上昇率よりも鈍化をした、こういう結果である、こう答弁をいたしておったわけでありまして、お医者さんのさじかげんで云々というようなことは、これは全く間違った考え方であり、そういう考え方を持っておるといたしますれば、私は今後十分戒めてまいりたいと思います。
  94. 山田耻目

    山田(耻)委員 私は、これほど見込みと決算が違う中には、医者のさじかげんを見込んでおるのだろう、だから何%ぐらいそのさじかげんを含んで見込みと決算の誤差が出たのかと実は聞きたかった。しかしそれは医者に対する人権の無視であります。少なくとも、私たちがことばに出してそういう観念論で議論すべきではないと思いますのでやめますけれども、これからの予算編成なり見込みの作成にあたっては厳重に自戒をされて、こうしたことが再び繰り返されないように厳重に私からもあなたに注意を与えておきます。そのおつもりでひとつ処置をしていただきたいと思います。  そこで、四十四年度の赤字見込みは幾らになっておりますか。
  95. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 二十七億であります。
  96. 山田耻目

    山田(耻)委員 二十七億の赤字が見込まれておりますけれども、保険料を収納していく基礎であります標準報酬月額を聞きたいのでありますが、その前に、労働省の方がお見えでございますので、労働省から、ことしの春闘におけるベースアップ、それも千人以上の規模におけるベース、千人以下五人以上の規模におけるベース、この上昇率をお尋ねをいたしたいと思います。     〔委員長退席、谷垣委員長代理着席〕
  97. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 山田先生の御質問関連いたしまして、労政局長の通告を受けておりましたのでございますが、労政局長はここ一週間ばかり病気で休んでおりまして、本日出席できないので、まことに申しわけないと思います。  なお、その間の連絡等につきましては、私どもも十分尽くし得ない点がございまして、ために審議にも御迷惑をかけましたことをおわび申し上げます。今後はこういうことのないように努力をいたしますので、どうぞ御了承いただきたいと思います。
  98. 山田耻目

    山田(耻)委員 労働省に対してことしの健保の標準報酬を聞きます前提として、大体ことしのベースアップを聞いてみたいのです。  そこで、ベースアップされた平均が、ここ三回ばかり前の委員会で、田邊誠委員のほうから労働大臣質問されましたときに、六千八百六十七円程度の総平均のアップ額が示された。そこで本日は、千人規模以上の大手、どれだけ上がったか、千人以下の中小企業、このベースアップがどれだけ上がったか、それをひとつ聞かせていただきたいと思います。     〔谷垣委員長代理退席、委員長着席〕
  99. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 労働省といたしまして、春闘の妥結状況、その結果につきましては、そのとり方といたしまして、先生御質問の千人以上の規模というようなことではなくて、東証の一部上場の会社を中心としたいわゆる大企業につきまして毎年調査をいたしております。その結果が、先ほど先生お触れになりました大手百五十二社についての調査で、平均して六千七百六十八円ということでございまして、いまお尋ねの規模別の春闘の状況の調査はまとまっておりませんので、御了承いただきたいと思います。
  100. 山田耻目

    山田(耻)委員 この間、労働大臣お答えになりましたベースアップの平均は六千八百六十七円だ、こういうふうなお答えをいただきましたが、これにも根拠があるわけであります。端数が若干違うかもしれませんけれども、一体ことしの春闘のベースアップ平均はどれくらいになっておりますか。
  101. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 後刻調査いたしました数字は、大手百五十二社についての数字でございまして、ベースアップ率は一五・八%ということになっております。
  102. 山田耻目

    山田(耻)委員 それでは、全体の平均については調査中と申されておるようですから、それにいたしておきますが、大体大手筋のベースアップ率と、それから中小企業その他のベースアップ率は、毎年中小企業のほうの引き上げ率が高いわけです。いわゆる雇用の安定政策なり、あるいは若手労働力の吸収なり、いろいろ中小企業の労務対策はなされておるわけだと思いますけれども、ここ四十一、二年ごろからのいわゆる大手と中小以下のアップ率をひとつ言っていただきたいと思います。
  103. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 四十一年について申し上げますと、九十九人未満が一一%でございます。それから百人から二百九十九人までが一一・二%、三百人から四百九十九人が一一・三%、それから五百人以上一一・五%ということになっております。なお、四十二年は、いまのそれぞれが、一番小さい規模が一二・六%、それからその次が一三・四%、その次が一三・五%、なお五百人以上のところが一三・八%、四十三年はそれぞれの数字が一四・一、一四・八、一五・三それから大企業のほうは一五・一、そういう状況でございます。
  104. 山田耻目

    山田(耻)委員 大体、大企業と中小以下の企業のベースアップ率は、二ないし三%の差があるわけですね。  そこで、ことしの大手百五十二社平均ベースが六千七百六十八円、パーセントで見ますと一五・八%、これは昭和三十六年のアップ率を上回る戦後最高を示しておると思います。それは経済情勢の一つのしからしむるところ、これは低賃金を片づけていきたいという労働者の意欲、こういうもののそれぞれの成果だと思いますけれども、ことしはこの一五・八の大手のアップ率以上に中小は上がっているはずなんです。これは各地の状況を見ましてもそうですけれども、雇用の対策なり、あるいはかつての低賃金なり、こうしたものを片づけなければ労働者が来ない、そういう立場からことしの中小のアップ率は異常に高いわけです。この点は労働省お認めになりますか。
  105. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 正確な手持ちの数字がございませんが、全般的には中小におきましては、当然のことでございますが、上がる額は大手に比べて低うございますが、率は先生のおっしゃるように大手よりも高めになっているということが趨勢だろうと思います。
  106. 山田耻目

    山田(耻)委員 そういたしますと、大手百五十二社が一五・八%上がったのですけれども、私の推定では大体一七%から一八%、私の山口県で一七%程度上がっておりますから、全国的に見ましてことしは大体十七、八%のアップ率だと私は見ておるわけですけれども、これは例年と対比いたしまして、大企業が一五・八、それより一・二ないし二・二くらいの高い率だ。そういう趨勢から見ますと、一七%ないし一八%だ、こういう推定は無理からぬ推定ということになりますね。
  107. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 特に本年度におきましては、先生おっしゃいましたような事情で、中小企業関係の賃金の上がりが、例年に比べて高いという事例は私ども承知いたしておりますので、いまおあげになりました数字が、的確にそのとおりであるかどうか、申しわけございませんが、実は私ども資料がございませんが、全般的にはことしは、特に中小企業関係のアップ率が、例年に比べてさらに高いということは言えるのではないかと思います。
  108. 山田耻目

    山田(耻)委員 おそらくこの調査資料が出ますのは、もう県段階からぼつぼつ労働省へ上がってきているはずですけれども、大体資料として国会へお示しになるのは、早くて来月程度ではないかと思います。そこで——それを聞くのじゃないのですよ。いま私が資料がないものですから、あなたにも御用意がないようでお伺いするのですけれども、大手の一五・八%以下ということは絶対ございませんね。過去の趨勢から見て、ことしのアップの実態から見て、これ以下であるということは絶対ない。これだけは狂っても間違いはないということで御証明いただけますね。
  109. 岡部實夫

    ○岡部(實)政府委員 いま、申しわけございませんが、実は数字を的確につかんでございませんので、絶対にあるかないかということにつきましては、ここで私も明言はできないわけでございますが、またその数字のとり方によりまして、中小企業のどこまでをとるか、全体をとるかということにもよろうと思いますが、いま先生のおっしゃいましたような数字が、多くの事例に見られるということは言えるのではないかと思います。
  110. 山田耻目

    山田(耻)委員 ありがとうございました。まだこれから関連して話が出ますから、ひとつ退席なさらずにお願いいたします。  そこで、厚生省がお出しになりました四十四年度の標準報酬月額、これは幾ら見られておりますか。
  111. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 政管健保におきます昭和四十四年度の平均標準報酬の見込みは、四万六十二円でございます。
  112. 山田耻目

    山田(耻)委員 昭和四十三年の実績と比べてみまして何%の上昇ですか。
  113. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 パーセントにいたしますと一一・二%、金額にいたしまして四千三十円のアップでございます。
  114. 山田耻目

    山田(耻)委員 この一一・二%の標準月額のアップ率で保険給付費を対置いたしましたところ、二十七億の赤字が出るわけですね。
  115. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 そのとおりでございます。
  116. 山田耻目

    山田(耻)委員 あなたは、四万六十二円というのはどういう根拠で見込まれたわけですか。
  117. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 私ども、政管健保におきまして、平均標準報酬の算出のしかたというのは、先ほどもちょっと触れましたけれども、なお詳細に申し上げますと、たとえば四十四年度の標準報酬を策定いたしますのは、これは四十三年の大体十二月前後で、予算の前でございますが、そのときに大体四十三年の十月以前の平均標準報酬が実績として出ている。したがいまして、まず第一の作業といたしましては、四十三年十一月以降の毎月の平均標準報酬がどうなるかというのを推計するわけでございます。  たとえば四十三年の十一月の平均標準報酬、これはまだ未定でございますので、その出し方は前二カ年、したがいまして、四十二年、四十一年のそれぞれの平均標準報酬が、それぞれの年、ですから四十一年の十一月の平均標準報酬が四十一年の十月に比べてどれだけ伸びているか、何%伸びているか、それから四十二年の十一月平均標準報酬が十月に比べてどれだけ伸びているか、その平均をとりまして、実績の出ております四十三年の十月の平均標準報酬にそのパーセントをかけましてそうして十一月を出します。同様にいたしまして十二月、一月、二月、三月というのをそれぞれ出すわけでございます。それで四十四年の三月の一応推計の金額が出ますから、今度それを基礎にいたしまして、それを一〇〇といたしまして、それから四十四年の四月、五月、六月、毎月、それが四十三年の三月を一〇〇といたしました場合に、四十三年の四月、五月、六月がどういうぐあいに伸びているか、それから四十二年の三月を一〇〇といたしまして、四月、五月六月というのがどういうぐあいに伸びているか、その平均をとりまして、四十四年の三月から九月までを、毎月の平均標準報酬を出すわけでございます。推計値を出すわけでございます。  それから十月に、私どもは全部定時決定というのをやるわけでございます。平均標準報酬は十月に新しいのに、千二百万の被保険者全部調査いたしまして、そうして新しい賃金というものを十月に定時決定をやって、その平均標準報酬を翌年の九月末まで大体一年間使う、こういう原則になっております。その定時決定分の十月分は五、六、七月の三カ月の平均をもって十月の平均標準報酬とするという法律の規定がございますので、それでその十月の決定につきましては、四十三年の十月分が四十三年の七月に比べてどれだけ上がっているか、それが四十三年では三千百七十五円上がっているという実績がございますので、それを四十四年の七月の推計値に加えまして四十四年の十月分の平均標準報酬を出し、以下十一月、十二月はそれぞれ四十三、四十二の十一月、十二月のそれぞれの伸び率といいますか、十月を一にした伸び率をもって推計する、非常に説明がごたごたいたしましておわかりにくいと思いますが、そういうことで四十四年の三月から二月までの毎月の平均標準報酬を推計値で出すわけでございます。原則として過去二年の伸び率を使いまして出すわけです。それを使いまして四万六十二円、こういう作業をしておるわけでございます。
  118. 山田耻目

    山田(耻)委員 いろいろ回りくどいお答えでしたけれども、去年対比一一・二%のアップ率は不当に低いということは、いまの私と労働省との話でおわかりですね。少なくとも大手の一五・八%より高くて、私の推計では一七%から一八%になっています。あなたのお出しになりました標準報酬というものは、少なくとも現時点で国会で赤字黒字論議をするのには資料としてふさわしくないです。少なくとも一七%アップしておるということになりますと、四万二千百五十七円、一六%アップしておるということになりますと四万一千四百三十六円、大きな読み違いがあるのです、見込み違いがあるのです。あなたのお出しになりましたこの資料で、単年度赤字が二十七億、累積赤字が千四百二十三億になる。だから健保特例法は、なお存続していかなくちゃならぬという赤字論議の攻め方をなさっているわけです。健保特例法が、保険財政政策のあり方から出てきておるだけに、黒字になるものを赤字として言っておる。この二十七億の単年度赤字というものは、決算では必ず黒字になりますよ。そういうふうなでたらめな資料をお出しになって、この委員会審議を求めておられるということは、私はきわめて遺憾です。  いま過去をさかのぼってずっと尋ねてまいりました。昭和四十三年の当初の見込みに対してアップ率は一一・一%です。決算は一三・五%でしょう。すでにここに二・四%の見込み違いがあるのです。これが百四億の赤字を見込んで、四十五億の赤字になっている一つの要因です。ことしは一一・二%のアップ率しか見ないが、現実には最低一五・八%をこえることは明瞭です。それがわかっていて、一一・二%で二十七億の赤字だから健保特例法延長してくれ、こういうふうに論理を発展させる根拠がどうしても私には解しかねる。一体黒字になるものを、なぜ赤字にしたのか、その見解を述べていただきたい。
  119. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 先ほど御説明申しましたように、この予算をつくりますときは四十三年の十二月前でございます。それで先生確かに御指摘のように、また労働省の官房長からも御説明がありましたが、ことしの春闘は異常なアップ率だということであります。少なくとも私どもは、先ほども申し上げましたように、ただでたらめにつくっているということではございませんで、非常にこそくな手段でございますが、過去二年の伸び率を基礎にして計算している、こういうことでございまして、少なくともこの予算をつくりましたときには、四十四年度の春闘が史上最高といわれるぐらいに非常に高くなるかどうかということはわからない時点であったわけでございます。  そういうことで、従来とも一応過去二年の計算によっておる。しかも、過去二年は一応景気のいい時期でございまして、それを伸ばしていくというやり方をとったわけでございます。そういった意味で、ただパーセントを比較いたしますと、春闘の一七%か一六%か、まだ確定しないようでございますが、そういうものと比べますと、非常に低いということは御指摘のとおりでございますが、ただ一つ、この平均標準報酬というのは春闘のアップと並行的に必ずしも考えられない要素があるということでございます。  その一つは、平均標準報酬は御承知のように天井があるわけでございます。十万四千円という天井がございます。したがって、十二万円もらっている人も、十三万円もらっている人も、十万四千円ということで上をちょん切ってしまうわけでございます。そういうことで、必ずしも春闘のアップ率がそのまま反映するということもいえないということが一つと、それから先ほども申し上げましたように、平均標準報酬の新しい賃金への切りかえというのは、十月に定時決定ということで、十月に被保険者の月給を全部再点検いたしまして、そして上がっているものは、そこで十月一日から新しい平均準標報酬に組みかえるわけでございます。したがって、ベースアップというものも十月以降に反映するケースが相当ある、こういうような関係もございまして、確かに機械的に先生御指摘のような春闘のアップ率と、私のほうの平均標準報酬のアップ率とを比較いたしますと、ものすごい懸隔がございまして、いかにも非常にずさんな予算のようではございますが、そういう面もあるということをひとつ御了承をお願いいたしたいと思います。  それからまた、よけいなことでございますが、決算で必ず黒字に転ずるだろうという御指摘がございましたけれども、これも非常に不確定な要素を申し上げてまたぐあいが悪いかもしれませんが、医療費のアップの問題がございます。これは私も中医協の支払い側の委員といたしまして、その末席を汚してずっと出ておるわけでございますが、その模様を見ますと、中医協の少なくとも支払い側の委員、労働者代表、あるいは事業主代表、あるいは保険者代表、こういった人たちは、従来はとかく医療費のアップにチェックをするという立場が出がちでございますが、今度の場合には、私が見ておりますと、少なくとも医療費のアップというものは相当必要じゃないか、ことに病院関係が非常に困っている、こういうことで正当な、客観的に妥当性のある医療費のアップについては、むしろ協力しようという空気が相当強いということを、私も委員の一人として見ておるわけでございます。  そういう意味で医療費のアップという——これはまあ先のことでございますからはっきりいたしませんけれども、ただ中医協意見が出るということになりますれば、先ほど大臣から答弁もありましたように、政府としてはそれを尊重するということになりますと、四十四年度におきましては医療費のアップということも考えられるわけでございます。これは一%上がれば四十二億支出がふえるわけでございますから、たとえば五%上がればもう二百億吹っ飛んでしまう、こういうこともありますので、そういうことがなければ、あるいは先生おっしゃるように黒字に転ずるということも考えられるかもしれませんけれども、そういう要素も勘案いたしますれば、先のことを申し上げて非常に恐縮でございますけれども、一応決算のときにはどうなるか、必ず黒字になるということはこの段階ではやはりまだはっきり申し上げられない。ただ、おっしゃるように、この標準報酬の見方は、四十四年度の春闘が異常に高かったということについては、そういう意味では若干それを反映してないという先生の御指摘はごもっともだという感じがするわけでございます。
  120. 山田耻目

    山田(耻)委員 私は、いま診療報酬が何ぼ上がるかということを聞いているんじゃないのです。あなたがお出しになった標準報酬月額が間違っていると言っているのです。いまこの国会審議をしておりますのは、四十四年度のいわゆる標準報酬は幾らが決算時の真実に近いか、それを明らかにしていきながら、千四百二十三億という累積赤字を持つといわれるこの赤字の実態に私は触れようとしておるのです。だからさっきから議論しておりますように、標準報酬月額が去年と対して一一・二%の上昇率は間違いである。あなたのとられた年次が四十三年十月である。私はそのとられたことは承知をしておるのですよ。ただ、四十四年度の保険財政を審議をしていくのには、もっと客観的に、もっと具体的な赤字黒字論議をしていきませんと、私は当を得た論議とはいえないと思いますから聞いておるわけです。一一・二%のアップ率は異常に低い。少なくとも一六%程度のアップ率はある。あなたのおっしゃっているように、十万四千円で頭打ちになっておる。この千人以下の単位で、十万四千円で頭打ちになる人たちなんてごくわずかなのですよ。全体の率に影響するのは、ほとんど私は率としては目に見えない、どれがどれだけいるのか、聞いてもよろしゅうございますが、やはり現実に、私は標準報酬というものを今日の立場で見定めて、四十四年度の赤字、黒字の見通しというものをつけていただかなければ、いわゆる保険財政を建て直すという立場からとられたこの特例法審議には入れぬじゃないですか。この資料では審議をするに値しないですよ。黒字に転化していく可能性がきわめて強いのに、二十七億の赤字である、累積千四百二十三億の赤字である。私は、うそとわかりきったものを出して、ここを基礎に議論してくれというやり方はひきょうだと思うのです。もっと現実の見通しの立場に立って議論を推し進めていけるように、私はあなたの態度の検討と、資料の再提出を求めたいと思います。
  121. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 繰り返すようで申しわけございませんけれども、結局、現実の中小企業の春闘のアップ率、それからアップの金額もはっきりいたしておらないわけでございます。先ほどのお話では、大企業で一五・八%、六千七百円ですか、その程度の金額のアップがある。したがって、その場合に、それじゃ中小企業は一体今度の春闘で、何千円ぐらいのアップがあるのか。アップ率はたとえ大企業を上回りましても、根っこの賃金が低いわけでございますから、その金額がどのくらいになるかということをはっきり見定めませんと、私のほうの平均標準報酬との関係が一体どうなるのかということがわからないわけでございます。そういう意味におきまして、私どもといたしましては、確かにことしの春闘のアップ率が、異常に高かったということは認めざるを得ないわけでございますが、平均標準報酬との関係につきましては、まだはっきりしないものがあるということで、早急にこの平均標準報酬の差しかえということにはなかなか踏み切れない状態でございます。
  122. 山田耻目

    山田(耻)委員 私は、委員長にお願いいたしますが、いまの御答弁では審議に入るのはむずかしいですよ。二十七億赤字だ、累積千四百二十三億の赤字だ、これは間違いであるという前提に立っておられるわけですよ、向こうも。取り方が違ったからしかたがないのだ、こういうふうないわゆる虚偽、虚構の上に立った数字をもって審議をするということは、非常に困るのですよ。ですから、やはり少なくとも、四十四度年の収支見込みと、そして決算との誤差をできるだけ縮めて審議を進めていくようにしていただきたい。そのためには資料の要求をいたしたいと思います。
  123. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 私も絶対間違いということではございません。これは必ずしも合うとは限りません。これは前々も、今回限りではなくて、平均標準報酬でも、先ほどお話がありました医療費でも、なかなかぴたりと当たるものではございません。一応の予想でございますから、そういう意味では毎年この平均標準報酬でも高い低いがあったわけでございます。必ずしも低く見ている年ばかりではございません。高く見た年もございます。これは景気の動向によりまして過去の二年をとりますから、したがって、景気が下降のときにはむしろ標準報酬が高くて、そして上昇のときには低く見る。こういうことでございまして、そういう意味ではほとんど毎年数字は違っているわけでございます。その限りにおいて、私はこの数字が来年度の標準報酬ぴたりであるということはとうてい申し上げられません。むしろ賃金のアップが非常に大きかったから若干の開きが予想当初よりも出るかもしらぬ。しかし、これを出し直して、新しい平均標準報酬をつくるためにはまだ資料不足でございます。先ほどの労働省のお話でも推計でございまして、まだ中小企業の賃金はどうなるかということもわからないという状況でございますので、一応この段階では、この数字を私どもとしては動かすわけにはまいらないというぐあいに考えておるわけでございます。
  124. 山田耻目

    山田(耻)委員 四十二年、三年、四年とずっと上昇してきているのですね。しかもあなたの見込みというものと実績の間には、各年度ごと二ないし三%の開きがあるのです。ことしは一一・二%と見ておられますけれども、従来の開きから見たら二ないし三であったら一四・五%でしょう。しかし、ことしは客観的に見て、高率アップの現実が——もう国会議員の皆さんも、担当の労働省も、みんなそのことについては異議をはさんでいないのですよ。そういうふうな状態を、現実にわかり切っていて、不当に一一・二%という低いアップ率を定めて、そして二十七億の赤字を出して、そして保険財政を確立するという立場から、千分の一また率を引き上げようとする。この一貫した思想の中に、誤った基準を設定し、そして意識的に赤字を求め、そして保険料率の引き上げを計画的に進める、そういう意図があるといわれてもしかたがないじゃありませんか。  私は、委員長、重ねて要求します。新しい資料を出してください。そうしないと審議はむずかしいですよ。私は、国会で架空の議論をして、架空の審議をしようとは思いませんよ。やっぱり国民が待っているのだし、われわれ真実を追求しながら、日本政治の変革を遂げていかなければならぬのですからね。架空の数字に基づいて審議することはまっぴらごめんです。資料を出してください。
  125. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 先生の御指摘もごもっともでございますが、ただ繰り返して申し上げますように、この数字は私ども予算編成の当時においてつくった数字でございます。その限りにおいて、私どもとして、従来と同じような意図を持った数字をつくったわけではございません。  それからまたこの保険の赤字問題というのは、やはり収支両面を見て、その結果どうなるかということを見なければならないと思うのでございます。そういう意味におきまして、収入面におきましては、先生御指摘のとおり若干予定よりも増の傾向のほうが強いかと思います。しかし、支出面におきましては、先ほど私がちょっと申し上げましたように、これはまだ決定的な要素ではございませんけれども、私が中医協に出ております限りにおいては、相当気配が濃厚である。したがって、そういう収支面の赤字という問題を論ずるならば、やはりそういう支出面も、四十四年度中にどう変わるかということもある程度考えた上でこれを修正するとかなんとかいう問題はまた出てくるかと思います。そういうことでありますので、私どもといたしましては、この赤字が必ず黒字に転ずるという見通しは、まだないわけでございますから、そういう意味でこの数字で御審議をお願いいたしたいというぐあいにお願いするわけでございます。     〔発言する者あり〕
  126. 山田耻目

    山田(耻)委員 私は、標準報酬のアップ率に客観的に間違いがある、そういう立場から追及をしておるのです。中医協でいろいろと審議なさっております診療報酬の引き上げについては、これから触れていくのです。しかも、ここに出されております資料は、いわゆる標準報酬月額について四万六十二円、しかも、保険給付費については三万五千五百二十八円、こういう資料しか出てないのですよ。この資料で審議をしようとすれば、いまのような非現実的なものにぶち当たる。それを追及していけば、診療報酬が上がるかもしらぬから、わからぬ。私は、中医協にかかっておるし、これから私たちが審議をする立場を、いまここに先ばしって煙幕を張り、標準報酬の月額を不当に押えておる意図はけしからぬと思うのです。この点については承服できません。理事会を開いて、具体的にふさわしい、現実的な資料を出していただくように、要求いたします。これから直ちに相談していただきたい。
  127. 森田重次郎

    森田委員長 いま新しい資料を出せないと、こういうのです。だから、その理由を明確にした上で理事会を開きたいと思います。
  128. 加藤威二

    加藤(威)政府委員 先ほど申しましたように、私は間違いということばをはっきり申し上げなかったわけでございますが、とにかくこの推計の基礎というものが、過去の標準報酬の伸びを基礎にしてやるわけでございますから、したがって、標準報酬の過去二年の伸びを基礎にしてやる、こういうことでございますので、これは食い違いが出ることは往々にしてある。むしろぴたりと当たるほうが非常に少ないわけでございます。そういう意味で誤差がある。その誤差が若干大きいかもしれぬということを申し上げたわけでございまして、従来のやり方からいたしまして、ここ二十数年このやり方でやっておるわけでございますから、たまたま景気の変動の非常にいいときとか悪いときとかには誤差が出るわけでございます。そういう意味で誤差が出るかもしれないということを申し上げたわけでございますが、それでは新しい資料をこの段階になって出せと言われましても、ただいま労働省のほうからお話もありましたように、私のほうの政管健保の対象になります中小企業の事業所の絶対額がどのくらい上がるのかというような資料もないわけでございます。そういう意味におきましては、私どもといたしましては、そういう誤差のない数字で新しい資料を国会に提出することもできかねるということでごいざますので、おしかりの点は重々わかりますけれども、ひとつこの現在の標準報酬を基礎にして御審議をお願いいたしたいというぐあいに考えます。
  129. 森田重次郎

    森田委員長 いまの点で御了解願えませんか、もう一ぺん確認します。
  130. 山田耻目

    山田(耻)委員 できません。一一・二%なんて、べらぼうに低い。
  131. 森田重次郎

    森田委員長 それじゃ、これから理事会を開きます。  暫時休憩いたします。     午後四時十七分休憩      ————◇—————     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕