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1969-06-19 第61回国会 衆議院 社会労働委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年六月十九日(木曜日)     午前十時二十九分開議  出席委員    委員長 森田重次郎君    理事 澁谷 直藏君 理事 竹内 黎一君    理事 谷垣 專一君 理事 橋本龍太郎君    理事 渡辺  肇君 理事 河野  正君    理事 田邊  誠君 理事 田畑 金光君       阿部 喜元君    藏内 修治君       佐々木義武君    齋藤 邦吉君       坂本三十次君    田川 誠一君       高橋清一郎君    中川 一郎君       中野 四郎君    中山 マサ君       丹羽 久章君    広川シズエ君       福家 俊一君    福井  勇君       増岡 博之君    箕輪  登君       枝村 要作君    大原  亨君       加藤 万吉君    後藤 俊男君       島本 虎三君    西風  勲君       平等 文成君    八木 一男君       山田 耻目君    山本 政弘君       本島百合子君    和田 耕作君       大橋 敏雄君    北側 義一君       谷口善太郎君    關谷 勝利君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 斎藤  昇君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         大蔵政務次官  上村千一郎君         大蔵省主計局次         長       船後 正道君         厚生政務次官  粟山 ひで君         厚生大臣官房長 戸澤 政方君         厚生省社会局長 今村  譲君         厚生省保険局長 梅本 純正君         厚生省年金局長 伊部 英男君         社会保険庁医療         保険部長    加藤 威二君         社会保険庁年金         保険部長    中村 一成君         農林政務次官  小沢 辰男君         労働政務次官  小山 省二君         労働大臣官房長 岡部 實夫君         労働省労働基準         局長      和田 勝美君         労働省職業安定         局長      住  榮作君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      辻  敬一君         大蔵省理財局次         長       青鹿 明司君         農林省農政局参         事官      中澤 三郎君         専  門  員 濱中雄太郎君     ————————————— 六月十九日  委員世耕政隆君及び田川誠一辞任につき、そ  の補欠として坂本三十次君及び中川一郎君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員坂本三十次君及び中川一郎辞任につき、  その補欠として田川誠一君及び世耕政隆君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 六月十八日  環境衛生金融公庫における公衆浴場業融資限  度額拡大等に関する請願田中龍夫紹介)(  第八八五〇号)  同(福永健司紹介)(第八八五一号)  失業保険法改悪反対に関する請願枝村要作  君紹介)(第八八五二号)  同(佐々木更三君紹介)(第八八五三号)  同(戸叶里子紹介)(第八八五四号)  同(中村時雄紹介)(第八八五五号)  同(永末英一紹介)(第八八五六号)  同(広沢賢一紹介)(第八八五七号)  同(武藤山治紹介)(第八八五八号)  同(谷口善太郎紹介)(第八九六一号)  健康保険等臨時特例延長反対等に関する請願外  一件(枝村要作紹介)(第八八五九号)  同(佐々木良作紹介)(第八八六〇号)  同(佐野進紹介)(第八八六一号)  同(島上善五郎紹介)(第八八六二号)  同(田畑金光紹介)(第八八六三号)  同(広沢賢一紹介)(第八八六四号)  同外四件(久保田鶴松紹介)(第九〇〇七  号)  同外一件(島本虎三紹介)(第九〇〇八号)  同(山本政弘紹介)(第九〇〇九号)  医療保険制度改悪反対及び医療保障確立に関す  る請願島本虎三紹介)(第八八六五号)  医療保険制度改悪及び健康保険等臨時特例延長  反対等に関する請願小川三男紹介)(第八  八六六号)  同(栗林三郎君)(第八八六七号)  日雇労働者健康保険制度改善等に関する請願(  久保三郎紹介)(第八八六八号)  同(島上善五郎紹介)(第八八六九号)  同外一件(田畑金光紹介)(第八八七〇号)  同(永江一夫紹介)(第八八七一号)  同(広沢賢一紹介)(第八八七二号)  同(和田耕作紹介)(第八九三〇号)  同外三件(島本虎三紹介)(第九〇一一号)  同(山本政弘紹介)(第九〇一二号)  労働保険保険料徴収等に関する法律案等反  対に関する請願外一件(安宅常彦紹介)(第  八八七三号)  同外四件(伊賀定盛紹介)(第八八七四号)  同(小川三男紹介)(第八八七五号)  同(北山愛郎紹介)(第八八七六号)  同(久保三郎紹介)(第八八七七号)  同(佐々木良作紹介)(第八八七八号)  同(阪上安太郎紹介)(第八八七九号)  同(田原春次紹介)(第八八八〇)  同(多賀谷真稔紹介)(第八八八一号)  同(永江一夫紹介)(第八八八二号)  同(門司亮紹介)(第八八八三号)  同(森本靖紹介)(第八八八四号)  同(山口鶴男紹介)(第八八八五号)  同外十四件(西村榮一紹介)(第八九二八  号)  同(吉田泰造紹介)(第八九二九号)  同(谷口善太郎紹介)(第八九六二号)  同(浅井美幸紹介)(第八九九四号)  同(井岡大治紹介)(第八九九五号)  同(石川次夫紹介)(第八九九六号)  同(大野潔紹介)(第八九九七号)  同(大橋敏雄紹介)(第八九九八号)  同外四件(久保田鶴松紹介)(第八九九九  号)  同(小林信一紹介)(第九〇〇〇号)  同(田邊誠紹介)(第九〇〇一号)  同(浜田光人紹介)(第九〇〇二号)  同(福岡義登紹介)(第九〇〇三号)  同(伏木和雄紹介)(第九〇〇四号)  同(楢崎弥之助紹介)(第九〇〇五号)  同(山口鶴男紹介)(第九〇〇六号)  出産費国庫負担に関する請願畑和紹介)  (第八八八六号)  同(島本虎三紹介)(第九〇一〇号)  むちうち症の療術治療に関する請願外一件(山  本政弘紹介)(第八八八七号)  健康保険等臨時特例延長反対及び診療酬引上げ  に関する請願谷口善太郎紹介)(第八九六  〇号)  山村へき地における医療対策に関する請願(渡  辺肇紹介)(第九〇一三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国民年金法の一部を改正する法律案内閣提出  第六四号)  健康保険法及び船員保険法臨時特例に関する  法律等の一部を改正する法律案内閣提出第九  三号)      ————◇—————
  2. 森田重次郎

    ○森田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出国民年金法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。大原亨君。
  3. 大原亨

    大原委員 昨日は、社会保障長期計画の中における所得保障国民年金の問題について質問をいたしておりました途中で時間が参りまして、中断をいたしました。  ここで大臣にお尋ねするのですが、昨日、経済企画庁あるいは大蔵省各省関係質疑、討論をかわしながら、長期計画の問題について論点を進めてきたわけでありますが、厚生大臣、私は率直に申し上げましたように、園田厚生大臣坊厚生大臣は、自分の任期中に社会保障長期計画をつくります。それから佐藤総理大臣は、議事録政府委員の人はお読みになっておると思うのですが、決してパンよりもバターよりも大砲を重視するような政策は、人間開発人間尊重社会開発政策からいって絶対にそういう措置はとりません、こういうことを佐藤内閣が成立いたしました昭和三十九年の十一月のあくる年の昭和四十年の予算委員会でも、これは全閣僚が出席をしておられるところで答弁をいたしてきたのであります。  きのうも議論をいたしましたように、日本社会保障長期計画を立てるにおいては、大蔵省財政制度審議会が言うように、単に、医療保障の中における公費負担、国の負担が大き過ぎる、比率が大きい、こういうような相対的な議論ではなしに、所得保障のおくれ、特に年金制度のおくれや児童手当完全実施、こういう所得保障の面における前進を通じて、そうして医療保障を正当に位置づけていく、こういうことについてはかなり大蔵省認識不足財政制度審議会認識不足、こういうことについて指摘をして、経済企画庁経済社会発展計画策定の改定の問題について議論を進めてきたわけであります。経済企画庁は、昭和四十五年から経済社会発展計画の修正をした新計画初年度を発足したい、こういうことを言っているわけですから、少なくとも来年度、四十五年の予算を編成する本年の八月以降、当面やはり長期計画についての構想がなければ、具体的な政策の裏づけなしに総合政策の中でいままでのような誤りを繰り返すのではないか、政府言明に反する結果になるのではないか、こういうことについて、主管大臣であり厚生大臣であり、あるいは国務大臣である斎藤大臣のはっきりした言明を聞きたい、見解を聞きたい、こういうことで論議を詰めてまいったわけであります。その点につきまして、あらためて私は大臣の決意を、この論争のけさの出発にあたりまして、明らかにしていただきたいと思います。
  4. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 経済企画庁でつくられます昭和四十五年度の長期全体計画策定にあたりましては、厚生省としましては、その中に占める社会保障の位置、割合、そうしてそれに伴って、今後日本経済発展に伴う全体の長期計画の中における社会保障長期的な計画、その限りにおきましては、私はぜひ十分、厚生省立場から恥ずかしくないものをつくらせるように努力をいたしたい、かように思います。
  5. 大原亨

    大原委員 それでは厚生大臣長期計画を展望しながら初年度予算に繰り込むような、そういう予算の編成の態度で臨みたい——ともかくも私は、こういう未成熟や、あるいは実施されてないそういう部面を考える中で長期計画を考えるということでなければ、これは仏をつくっても魂を入れずということになると思うわけです。そういう点で私は、最初に厚生大臣がお話しになった答弁は、舌足らずであって、大臣がかわったから見解は変わるというふうな、そういう御意見も一部あったのですが、私はことばじりをとらえる意思はないが、そういう点についてははっきりした態度で臨むのだ、こういうふうに理解をしてよろしいかどうか。
  6. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私は長期計画意味を若干取り違えておったと思いますが、厚生省のつくる、たとえば道路十カ年計画とか港湾五カ年計画とかいう、厚生省全体の何カ年計画という非常にこまかいものを盛ったものということについてはなかなか時間がかかるということを申し上げたわけでありまして、大きな見通しという意味長期計画は、前の大臣もそのお考えで言われたとすれば、私は全く同意見でございます。やるつもりで努力をいたし、実現をいたしたいと思います。
  7. 大原亨

    大原委員 そういう総合展望について、いわゆる社会保障長期計画について、いつごろを目途にあなたの構想を具体化されますか。
  8. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 でき得れば予算要求までに、かように考えますが、少なくとも経済企画庁のつくられるものに間に合うようにいたしたいと思います。
  9. 大原亨

    大原委員 それは重ねて申し上げておきますが、経済企画庁の中で、非常に佐藤内閣の重視いたしました社会開発や、社会資本の充実や、社会保障、こういう問題については空白であったわけですから、結局は、国民所得の中における振替所得、あるいは総予算の中における社会保障予算、こういう目安は長期計画の中に政策誘導目標として出ておっても中身がなかったということですから、この点は八木委員もよくここで議論されるわけですけれども、やはりそれはそういう内閣連帯性、大きな観点で策定してもらわないと、一つ一つについて大蔵省とがっちゃんがっちゃんやっていて、そして大蔵省に押し返される、こういうようなことでは、これは政策前進というものはあり得ない。これから議論をいたしまする国民年金審議にいたしましても、健康保険やあるいは抜本改正にいたしましても、これは私はほんとうに論議を通じて前進はあり得ない、こう思いますので、この点については、予算要求の夏を目標にその腹固めをする、こう言われた点についてしっかり実行してもらいたいと思います。  そこで、社会保障長期計画にあたって私どもがいろいろ議論するわけですが、つまり日本社会保障は、救貧的な政策である、貧乏におちいった人をどう救済するかという政策が主になっておる。貧乏の原因をあらかじめ除去するような積極的な総合政策がない。救貧政策から防貧政策へ、こういうことについていろいろとわれわれは議論をしてきたわけでありますが、そういう点について私は、厚生大臣が、これは具体的な問題は政府委員でもよろしいが、どういう点に留意をして、たとえば国民年金であるならば、あるいはまた、一般の社会保障の問題についてどういう点に留意をしながら施策を進められるのか、策定されるのか、こういう点についての所見を明らかにしてもらいたい。
  10. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私は、少なくとも国民の全部が、国民全体の平均的生活水準を保っていけるということを目途にしてまいりたい、かように考えております。
  11. 大原亨

    大原委員 少し簡単過ぎるのだけれども。それでは、角度を変えてお尋ねしますが、日本では所得保障や全体的な医療保障についての欠陥がある、こういうことで、やはり生活保護法が、生活扶助がその社会政策の基本になっておるという点についてわれわれは議論してきたところですが、そこでお聞きするわけですが、生活扶助適用するその適用原因についてどのように分析をされているか。これは政府委員でもよろしい。生活保護適用する、そういう原因原因別に調査した資料があるかないか。
  12. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいま関係政府委員が参っておりませんから、詳しい数字的なお答えはできませんが、必要があればすぐ呼びます。  私は、いわゆる生活保護を受けなければならない状態に落ち込む原因は、こういうことであろうと思います。まず、今日といたしましては、やはり疾病、それが一番大きな原因であろうと思います。あるいは働く中心になっている人の死亡、失業ということも従来は多かったのでありますが、最近は非常に少なくなってまいったと思います。大分けをすれば、そういう点が一番大きいのではないかと常識的に考えております。
  13. 大原亨

    大原委員 つまり生活保護は、貧乏になったのを、それが他に方法がないから国が救済する。それで、非常にシビアーな最低の基準は設けてあるが、これは適用を受ける人のプライドを非常に損ずるし、あるいは民主主義的な権利というか、人間尊厳性人間尊重という面から見て制度上の欠陥がある。そういう生活保護適用する原因は、たとえば昭和四十二年、四十三年と、こういうふうにやってみると、疾病が何割で、あるいはその中には障害もあるだろうし、それから子供が多いとか、あるいは年をとったとか、そういうふうな開始原因についての分類の分け方があるわけでしょう。私は原因を究明しながら、生活保護適用に至らないような、そういう積極的な防貧政策をやるのが社会保障総合計画である、こういうふうに考えなければならぬと思うのです、具体的には。単に議論しただけではだめで、具体的に論議をするとするならば、そういうことであります。ですからその点について、総合計画を立てるところは厚生省で、どの局か知らぬが、社会局長生活保護その他については知っておられると思うのだけれども、その開始原因等については、それをはっきり分析をしながら議論を積み上げていく必要がある。それが救貧政策から防貧政策へのそういう総合計画を立てるという長期計画の一番大きな具体的な任務である、こういうふうに私は考えておるわけです。これは私は、たとえ資本主義立場だろうが何であろうが、議論の余地がないところであるというふうに確信しておるわけですけれども、その中で、この老齢年金あるいは母子年金身体障害者福祉年金母子福祉年金はどうあるべきかという改善計画について議論をすることは非常に有効なことである、こう思うわけです。したがってこの点についての資料を出してもらいたいのだが、ひとつ御答弁をいただきたい。
  14. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいまの御意見は私も全く同感でございます。したがいまして、この年金制度を充実するということは、結局いまの生活保護とかいうような救貧的な施策が不必要になってくる、少なくともだんだんと減ってくる、これはもう当然なことだと思います。また児童手当を出すことによって、やはり生活保護世帯というものが、少なくとも増していくことのない、むしろ減っていくことに大いに役立つもの、かように考えているわけであります。そこで最近は、医療保険年金制度児童手当、この三つ社会保障の柱であるといわれているゆえんだ、したがって、この三つをまず柱として充実させていくということが根本である、かように考えているわけであります。
  15. 大原亨

    大原委員 それでは、私のしゃべっているうちに資料を出しなさい。つまり厚生大臣と呼吸がぴったりと合っていなければならぬわけです。それで、病気になったときの医療保険、それから、年をとって核家族で身寄りがない、あるいは身体障害者になる、あるいは働く場所が与えられていないだけでなしに、収入が少ないので生活保護になる、あるいは働き手の主人がなくなって、母子世帯子供をかかえて生活保護になる、あるいは子供が多いからなる、こういうような生活保護についての開始原因が私はあると思うのです。生活保護適用原因となるべきそういう社会的な事故があると思うのです。ですからそのことは、一方では生活保護についての重要性が減るわけではないけれども、生活保護の分野というものが少なくなってきて、そうして積極的な施策のほうが多くなってくる、こういう総合計画が現実に即して必要である。そこで、こういう生活保護がどういう原因から、どういう社会的な事故保護法適用になっているのか、その点を分析してもらいたい、こういうふうに言っているわけです。
  16. 伊部英男

    伊部政府委員 詳細につきましては社会局長からお答え申し上げるのが適当かと思いますが、ただいまお手元にございます資料で申し上げたいと思います。  これは厚生省統計調査部実施いたしております生活保護動態調査の結果でございます。これの昭和四十二年九月現在でございますが、このときに保護開始世帯が九千六ございます。このうち働いている者のいる世帯が三千八百六十、働いている者のいない世帯が四千九百二でございます。理由を見てみますと、いずれも世帯主傷病世帯員傷病、これが非常に多くの比重を占めているようでございまして、たとえば働いている者の世帯におきましては、世帯主傷病世帯員傷病、これを合わせますと三千八百六十のうち約二千八百世帯世帯員または世帯主傷病原因でございます。働いている者のいない世帯、これにおきましても、世帯主傷病及び世帯員傷病原因でございますのが約三千四百でございます。したがいまして、傷病に基づくものが非常に多いということが言えると思います。
  17. 大原亨

    大原委員 傷病が一番多く、七割くらいじゃないかと思いますが、それはあとで聞きます。  それから、年をとって核家族になっているので、やむなくこれを受ける人がある。これは申し上げたとおりだ。そこで、そういう点について総合計画では十分留意をしてもらわなければならぬということが第一ですが、それに長期計画に関連をして、たとえば国民年金改正について、こまかな問題を二、三重要な問題ですから指摘をいたしますが、たとえば無拠出の国民年金福祉年金の場合、一つ例をとって言いますと所得制限があるわけですね。おじいさんおばあさんのどちらかが、たとえば長男、次男、三男というふうにおって、三男なら三男のところへ行っている、三男のところで自分が非常に遠慮しがちに生活している、こういう場合に扶養義務者所得によって福祉年金の給付が制限をされている。これは非常によくわれわれ聞くわけです。非常に苦情を聞くし、意見を聞くわけです。実際に四万円や五万円の収入世帯主扶養義務者にあったにしましても、小づかいやお寺のおさい銭までもらうわけにはいかない。ましてや孫やその他がおる場合に、年寄りとしては孫や子供にお小づかいをやりたいと思っても、一銭もやることができない、そういうことがあるわけですね。今回の改正所得制限について若干の緩和がなされておりますが、その緩和された内容と、そして所得制限が緩和したその基準、これをどういうふうに考えておられるのか。これはいままでの質疑応答で出てこなかった一つ具体例を取り上げて質問するわけです。
  18. 伊部英男

    伊部政府委員 ただいま御指摘のように、老齢福祉年金につきましては所得による制限があるようでございますが、本人の所得並びに扶養義務者に一定以上の所得がありますと、年金が停止されるのでございます。この点は受給者の方々がいわば非常にきびしい気持ちを訴えるわけでございまして、われわれといたしましても、つとめてそういうことがないように、従来から所得制限のワクを引き上げてくるという努力をいたしておるのでございます。今回約一三%の引き上げ実施をいたしまして、標準六人世帯におきまして従来の百五万五千円から百十九万二千五百円、十三万七千五百円の引き上げ実施をいたした次第でございまして、この引き上げは、ここ数年間の常用勤労者賃金農家所得伸び等から見てほぼ妥当なものであろう。したがいまして、通常の伸び率の場合におきましては、引き続き年金が受給できるということをめどにしておるものでございます。
  19. 大原亨

    大原委員 これは今度改正になりましても、わずか月に千八百円の福祉年金ということになります。しかし、たとえわずかであっても、そういう制度対象にならないために、たとえば生活保護を受けていても世帯を別にしよう、こういう年寄りも実際問題として多いわけです。だからそういう問題は、生活保護基準とかいろいろなものの制約があると思うのですよ。おもしがついていると思うのですが、しかしもう少し頭を変えて、そういう所得制限は六人家族で年収百十九万円としますと、ボーナスその他も、相当数家族ですからなかなかお年寄りには回らぬ。こういう点で、当然いまの核家族化の趨勢から考えてみても、おじいさんおばあさん、それからその子供夫婦、そういうものは夫婦単位で、少なくとも個人主義でいくべきです。夫婦単位生活単位を考えながら、同じ世帯であるとかそういう形式にこだわらないで思い切って所得制限を撤廃すべきだ。そうしないと積極的な防貧政策ということにならぬ。常に生活保護とすれすれになっていって、生活保護がおもりになって——これは大蔵省予算を立てて文句を言うだろうが、そういう点については思い切って広げていかなければならぬと思うわけです。  七十歳以上の福祉年金適用対象者の中で、実際に老人福祉年金をもらっている人は何割ですか。
  20. 伊部英男

    伊部政府委員 約八六%の支給と考えております。
  21. 大原亨

    大原委員 八六%の支給率だと、ちょっとよくなっているような気がする。私は七〇何%だろうと思っておりました。八六%に間違いないですか。つまり七十歳以上のお年寄りの中で八六%が福祉年金をもらっている、そういうことですね。
  22. 伊部英男

    伊部政府委員 ただいまの数字は、初めから請求をしなかった方は除かれております。したがいまして、総人口に比較いたしますと、なおこの比率は七割程度に落ちてきます。
  23. 大原亨

    大原委員 だから、七十歳以上の総人口を対象として考えると、福祉年金をもらっている人は七〇%、七割ぐらい。それから、自分で意思表示をして振り落とされたという点からいうと、八六%くらいかもしれない。大体そうだと思うのです。したがって、数から言い、予算額から言うと、そうたいしたものではない。それは松下幸之助さんとか上原正吉さんとかいろいろあるだろうが、そういう人は大体請求しないと思うのですよ。これは国民年金制度のおくれから出ている無拠出の制度ですから、やはり思い切って撤廃するほうがいい。これはたいして予算額にも影響ないけれども、かなりこれは精神的な負担になっておるわけです。この点なども頭を切りかえって、所得制度も本人については今度三十万円になるわけだが、扶養義務者とたまたま世帯を同じくしたところのお年寄りは、むしろ出ていって生活保護を受けたほうがいい、精神的な負担があるから、こういうふうなことであっては趣旨が貫徹されないのであって、そういう所得制限についても思い切った撤廃をする、こういう観点で今後の国民年金のあり方や長期政策を考えるべきではないか、生活保護にとらわれない考え方でこの際積極的に考えていくべきではないか、こういうふうに私は考えるわけです。いかがでしょう。
  24. 伊部英男

    伊部政府委員 所得制限を含めて緩和をしていくという御趣旨は、私どもも全く同感でございまして、その趣旨に沿って努力いたしたいと考えますが、ただ何ぶん一般会計の負担でございますので、所得制限を完全にやめてしまうというのはいろいろ御議論もあろうかと思いますが、いずれにいたしましても、所得制限を緩和していくということば当然引き続き努力いたしたい、かように考えておる次第であります。
  25. 大原亨

    大原委員 大蔵省主計官。
  26. 辻敬一

    ○辻説明員 ただいま厚生省からお答えいたしましたように、福祉年金は、申すまでもなく本人の拠出を要さない全額国庫負担制度でございますので、財源的にも制約がございますし、財源の使い方といたしましては、高額所得者に給付をいたしますより、低所得者を中心といたしまして重点的に考えるのがよかろうという考え方でいるわけでございます。  なお、所得制限の緩和につきましては、厚生省からお答えいたしましたように、逐年改善をはかっておるのであります。
  27. 大原亨

    大原委員 物価も上がる、それから生活水準も上がるということを頭に置くことが一つ。それからもう一つは、やはり住宅その他全般的なこともあるが、核家族化で急速度に夫婦単位になりよるのです。そういうように、かなりのおじいさんおばあさんが、他人が入ってくると息子とは分離する傾向にあるわけです。それは急速度に進んでおるわけです。ですから、少しでもいいから年寄り生活について物質的な裏付けをする、そういう観点から思い切って所得制限を撤廃すべきである。もちろんこれは税金でやっておることはわかっておるけれども、きのうも年金局長答弁しておるように、外国と制度は違うのだが、たとえば年寄りなんかというのは、日本所得保障は非常に貧弱なんです。たとえば身体障害者とか年寄りというようなものは、これは税金でどんどん働いている国民がささえていくということが望ましいのであって、単なる保険主義とのバランス、そういう点だけで考えるということになれば、これは寿命が延びているから、五年たっても十年たってもそこは陥没しているということになる。わずかなことでそういう政府政策の痛手を受けるということになる。だからそういう点では、これは大蔵省はやはり頭を切りかえてやるべきだと思う。いかがですか。
  28. 辻敬一

    ○辻説明員 繰り返して申し上げるようでございますけれども、やはりそういう福祉年金の性格にかんがみまして、相当程度の所得のある場合につきましては支給しなくて、低所得と申しますか、そういう低い所得の方を中心といたしまして重点的にいたしましたほうが効果的ではないか、かような考え方でいるわけでございます。  なお、所得制限の緩和につきましては、今後とも実情に即して努力をいたしてまいりたい、かように考えております。
  29. 大原亨

    大原委員 主計官は何でも知っているから聞くのだが、家族六人で百十九万円、こういえば、月給どのくらいですか。
  30. 辻敬一

    ○辻説明員 ボーナスをどのくらいに見るかという問題とも関連いたしますが、かりに十五カ月で割ってみますと、百二十万を十五で割ることになるので、八万円くらいであろうかと思います。
  31. 大原亨

    大原委員 それで税金や社会保険料を取られたら、どのくらいになりますか。
  32. 辻敬一

    ○辻説明員 ちょっと税金関係の正確な資料を手元に持っておりませんが、四十四年度の所得税の課税最低限で申しますと、給与所得者の場合には夫婦、子三人で大体九十一万が課税最低限、こういうことになっております。
  33. 大原亨

    大原委員 それで実際にはおそらく月に八万円ございましても七万円以下ですよ。いろいろなものを差し引かれるからね。それで六人の家族ですからね。これはもう実際年寄りはいづらいですよ。あなた方大蔵省は机の上でやっておるから実感が出てこないのだけれども、実際そういう生活の場面に臨んだならばこれはたいへんですよ。だから、こういう制度があるのですから、たいした数字じゃないのですから、ぼくはやっぱりそういう点については、わずかな配慮でこのことが生きてくるような場合には、思い切って考るべきだと思う。  それから、今度やりますが、たとえばこの問題ひとつやってみますけれども、この所得制限が、扶養義務者所得が六人で今度百十五万から百十九万になるのだが、おじいさんおばあさんがたくさんおる子供の中でどっかに寄寓している場合には、この人はやっぱり生活単位として見ていく。いろいろな点で生活単位としてこれを見ていって、そうして福祉年金を最大限に適用していく。これは現行のワク内でそういう配慮をしてく。こういう配慮が少し足りないのじゃないか。少し努力する余地があるのじゃないか。質問の趣旨わかりますか。——もう一回。つまり同じ家の屋根の下に住んでいると、中でのやりくりは自分の財産やへそくりをもってやろうが何しようが、それを出して子供に養ってもらおうが、そのやりくりもわからないで、その人が扶養義務者の中におって、扶養義務者所得がこうであるから、これは同一の所得とみなして福祉年金適用しない、こういうふうなシビアーな考えでなしに、実際はいろいろな経過があるわけだから、それらを十分参酌しながら、やはりできるだけ夫婦単位で運営していくというふうな、そういう運営のしかたは私は行政運営上できる余地がある。実際その場面にあたってみてあると思う。その点を、同じ屋根の下に住んでおって、扶養義務者所得がこうあって、だからこれはだめだ、こういうふうなことでなしに、もう少しやっぱり年寄り立場を考えながら、どういう生活の中身でそこに同居しているかということを考えながら、祖父や祖母の独立した単位やそういう立場というものを尊重した福祉年金適用のしかたはないか、それを私はもう少し考慮すべきではないかと思う。あなたらえらいから、そういう第一線のことはわからないかもしれないけれども、私の言っておることはわかったでしょう。
  34. 中村一成

    中村(一)政府委員 老人が独立いたしまして生活いたしております場合はもちろん制限がないわけでございますので、私ども実際の適用にあたりましては、その点はよく老人の方の生活の実態に即しまして裁定をするように努力いたしておるのでございますが、その辺は、具体的な一つ一つのケースによっていろいろあろうかと思いますので、画一的にこういうふうにやれということはできないのでございますけれども、実態に即して解決するように一応指導しておるところでございます。
  35. 大原亨

    大原委員 それから、社会保障長期計画を立てられる際に、国民年金の部面で、これは国民年金審議会や社会保障制度審議会の答申にも出ておると思いますが、拠出制の身体障害者年金あるいは無拠出福祉年金について、身体障害者の範囲が狭い。身体障害者の範囲というものは、身体障害者自体については、国民年金とは別にしまして、独自に国家保障の精神でやるべきであるということを指摘していると思う。きわめて適切だと思う。そういう点は、身体障害者の範囲を思い切って拡大していくという気がまえで社会保障長期計画を立てるということは、こまかな点ではあるけれども、非常に重要な点ではないか。この点について、今後の改善計画について、ひとつ所見を伺わしていただきたい。
  36. 伊部英男

    伊部政府委員 障害年金の問題につきましては、いろいろ検討を要する問題があろうと考えておるのでございますが、今回は障害年金まで手が及んでいないのでございますけれども、今後の研究課題として、厚生省はもとより、公的年金制度調整連絡協議会におきましても取り上げてまいろう、かように考えておる次第でございます。特に障害年金の等級表につきましては、さきに沖中委員会から報告が出ておるのでございますが、これも具体的な適用につきまして、なお技術的に検討を要する点が多うございますので、今回は間に合っておらないのでございますけれども、引き続きすみやかに検討を進めたい、かように考えておる次第でございます。
  37. 大原亨

    大原委員 これは大臣にお伺いしますが、私は、長期計画策定するという場合には、積極的な政策である程度飛躍しなきゃならぬと思う。いま、厚生省大蔵省との関係、あるいは大蔵省生活保護との関係、これを非常にいびつなかっこうで締め上げているというふうな印象を、実際われわれは受ける。身体障害者の問題などは、それにかかわりなく、答申にあるように範囲を思い切ってこの際拡大する、それを出発点として長期計画を立てる、こういうことが心要であると私は思うわけですよ。いかがですか。
  38. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 全く同感でございます。そういう意味において、昨日も私は、まず基盤をジャンプさせて、それに基づいて長期計画を立てていく、かように申し上げました。御意見は全く同感でございます。
  39. 大原亨

    大原委員 同感という御答弁ですが、これは来年から改善するようにやる、こういうふうに私は理解しておりますが、来年から始まる長期計画の中に入れて考える、こういうふうに理解いたしますが、よろしいですか。
  40. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 長期計画の中にそういう構想を織り込むということであります。
  41. 大原亨

    大原委員 それから、長期計画策定について、——これは八木委員からもさらに突き進んで議論があると思いますが、長期計画策定という観点で私は申し上げるわけです。  きのうも若干議論いたしましたが、いつも年金問題についてはスライド制が問題になるわけです。いままで国民年金の改善については、昭和三十六年にできて、その次は昭和四十一年に改善したわけですね。四十一年に改善して、今度は四十四年に改善するわけだから、この間のスピードはきわめて早い。このことについては、またあと関係した事項があるので議論もいたしますが、将来、長期計画の中においてこの改善計画を立てる、こういう際にこれは再計算する、スライドする、こういう点についてどのような観点でやるかということは、きのうも議論いたしましたし、前の委員からも議論がありましたが、ここでもう一回あらためて答弁いただきたい。
  42. 伊部英男

    伊部政府委員 年金額のいわゆる調整につきましては、昨日大臣から御答弁がございましたように、物価及び生活水準に見合った改善をはかっていくべきであるという基本線は、御指摘のとおりでございます。したがいまして、従来から厚生年金も、五年ごとの財政再計算期におきまして改善を行なっておりますし、国民年金は、四十六年の財政再計算期を待たず、今回改定を実施しようとしておるわけであります。  いわゆるスライド制という問題でございますが、スライド制ということばを、年金額を諸事情に応じて調整をしていくという意味に解しますならば、わが国の年金制度は、法律上規定がございますように、かつまた実績が示しておりますように、まさにスライド制を採用しておるといってよろしいと思うのでありますが、ただ各方面でいわれておりますスライド制という御議論は、むしろいわゆる自動スライド制でございまして、一定の数字により自動的に年金額をリンクさせようという御議論でございますが、そういう意味合いにおきましては、厚生年金国民年金もまだ採用しておらないのでございます。それは審議会におきましてもいろいろ御検討いただいたのでございますが、両審議会とも、まだ自動スライド制というものを打ち出すいわば検討が足らない、あるいは現実的には低い年金水準でのスライドになるおそれがあるといったような御意見もありまして、今回はこれを取り入れておらないのでございますが、しかし今後ともこの問題についても、検討をすることはもとより、財政再計算期、あるいは必要があればその間におきましても、必要な年金額の調整は今後とも行なうべきである、かように考えておる次第でございます。
  43. 大原亨

    大原委員 これもまた八木委員その他から質問があると思うのでなんですが、こういうふうに理解してよろしいですね。物価の上昇それから生活水準の上昇率、これを下らないように年金額を変えていく。これは、出始めが国際的な水準からいっても低いのですから、当然のことです。それ以上にやらなければならぬわけです。格差是正にならぬわけです。積極政策にならぬわけですよ。そういう点はそういうふうにはっきり腹をきめて、そうして今後の長期計画も立てていく、つまり物価や生活水準の上昇以上にやっていく、こういう点については議論したあとですから、ひとつ大臣から所信を明らかにしてもらいたい。
  44. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私も同様に存じます。自動スライド制は技術的にむずかしい点がありますが、しかしこれは将来、恩給その他とも通じて考えていくべき問題だと思うわけでございますが、しかし日本年金制度は、いまのベースで将来物価にスライドしただけでいいかというと、私はその点は、日本の今後の経済成長、発展等を考えますと、物価だけにスライドしていいというようにはまだちょっと考えられません。したがって、やはり三年なり四年なりに、実情に合った額に、物価にスライドするより以上に上げる必要があるんじゃないか。現在の年金自身を考えてみましても、この額はもう少し上げないといけないのじゃないかという感じがいたしておりますので、したがって、自動的な物価にスライドという制度は、もうしばらく検討した後のほうが適当である、かように考えます。
  45. 大原亨

    大原委員 これはひとつあとへ譲りまして、今度は長期計画を若干離れましてもう一つの問題に入るのですが、その次の問題は、国民年金審議会の性格と運営についてです。  この国民年金制度は、これは言うなれば被保険者が参加することが——学生参加の問題、直接民主主義の問題がいま議論になっておりますが、このような膨大なそういう機構、そういう中において手が届かぬことであっては相ならぬと思う。そこで問題は、たとえば保険料は、言うなればこれは税金と同じです。皆年金の、皆保険の制度においては、これは税金と同じです。ですから被保険者が参加することを保障しなければならぬと思うわけです。国民年金制度で具体的に被保険者が直接参加して意見を述べる、こういう点について、制度上どういう、あるいは運営上どういう保障をいたしておりますか。ひとつはっきりしてもらいたい。
  46. 伊部英男

    伊部政府委員 国民年金審議会は学識経験者をもって構成をされておるのでございますが、学識経験者の選定にあたりましては、ただいま御指摘のようなことを念頭に置きつつ適切な人選をいたしておるわけでございます。  なお運営上の問題といたしましては、たとえば今回の改正に際しましては、相当大規模な調査を実施をいたしまして、被保険者の意向を確かめるというようなことをやっておるわけでございます。また行政運営といたしましては、御案内のとおり、保険料の徴収の末端は、いわゆる納付組織といいますものが全国で非常に大きい数をなしておるわけでございますが、こういった組織ごとにつとめて意見を聞く、十分話し合うという過程を経て、つとめて被保険者の意向に沿えるような努力をいたしておる次第でございます。
  47. 大原亨

    大原委員 それは、できるだけそういう運営上あるいは——ことばの上であなたは答弁しておられるわけだが、たとえば他の制度でこんなおざなりな審議会というものはないと私は思うのです。共済組合見てごらんなさい。やっぱり運営審議会あるでしょう、各共済組合。それから、たとえば国民健保にいたしましても、国の事務を市町村に委任いたしますと、市町村では運営協議会あるでしょう、保険料をきめる際に。厚生年金だってやはり労使、公益三者の審議会あるでしょう。政府管掌の健康保険だってあるでしょう。国民年金は、積立金の運営の問題で山本委員のいろいろ議論があったけれども、言うなれば保険料は税金なんですね。ですからそれについては、運営の問題と一緒にやっぱり参加を保障するというようにしなければならぬ。この運営審議会の委員の中には、一人も国民年金に入っている人はいないでしょう。このメンバーを見てみますと、国民年金に入っている加入者は一人もいないでしょう。どういう運営をするのですか、あなた。
  48. 伊部英男

    伊部政府委員 一人一人は必ずしも国民年金の被保険者ではございませんが、たとえば町村長の方もございますし、あるいは農林関係の方もおられるわけでございます。あるいは社会保障の専門家の方もおられるわけでございまして、被保険者の実情をよく御存じの方を審議会の委員にお願いをいたしておる次第でございます。
  49. 大原亨

    大原委員 それは私もそういう答弁だろうと思った。町村会の会長とか、農協の常務理事とか、そういうようなのがちょいちょいあるわけですが、しかし、これはほとんど財界とか、それから小山進次郎君は厚生年金基金連合会の理事長だが、学者とかそういうふうなんだけれども、実際に保険料を払い、あるいは積立金の運営についても議論があり、あるいは給付のしかたについて議論がある、そういう者が参加する道はない。これは私は大きく言えば、言うなれば憲法上の問題だ。これは強制的な保険でしょう。そうすると、保険であるから保険主義でしょう。保険主義であってやはり契約ですよ。特殊な契約で、公契約ですよ。契約をするについて相手方の意思を反映しないというふうな、そういう方法はないでしょう。あなたら盛んに保険主義、保険主義、こういうことを言っているのだ。これは保険契約の一種ですよ。立法的に国民年金だけだ、そういうことは。これは私は、憲法上の問題じゃないが、大きく言えば、本質的な議論をすれば。こんなことはあり得ないです。国民健保だって、市町村で運営協議会があって、ちゃんと加入者の代表が入って、保険料値上げその他についてはけんけんがくがくの議論をしている。これはこんなことはないですよ。委員の選任のしかたにいたしましても、私は根本的に検討すべきだと思う。私の見解に対してどうですか。
  50. 伊部英男

    伊部政府委員 たびたび申し上げるようでありますが、国民年金の被保険者の実情をよく知り、気持ちがよく御理解いただける方を人選して誤りないようにいたしたいと思います。
  51. 大原亨

    大原委員 国民年金に入っている人を少し入れなさいよ。いわゆる国民年金に入っている人がいないのだ、調べてみたら。これは公の公契約ですよ。ましてや権力が、公共団体がやる。権力がやるのだから、よけいそういう関係者、契約の対象者を入れなければだめですよ。国民年金審議会の法律はどうなっているのですか。非常に簡単にさらりと書いてあって、それについては権限も何もないようにしてある。ほとんど骨抜き同然だ。これでは民主的な運営というものは保障されないでしょう。憲法上の問題ですよ。これは財産権の問題になりますよ。契約上の問題になりますよ。いかがですか。
  52. 伊部英男

    伊部政府委員 適切な人選によりまして誤りないようにやってまいりたいということに尽きるかと思っておりますが、もちろん法律でございますので、国会の御審議もございますし、それ以前にたとえば社会保障制度審議会の答申も得るわけでございまして、そういった点を十分参考にしてあやまちのないようにいたしたい、かように思っております。
  53. 大原亨

    大原委員 審議会を設けて利用する、利用しなかったら、うるさいから避ける、これは言うなれば官僚の習慣みたいなものだ。しかしそれではいかぬ。それでは民主的ではない。権力をもってする契約であるから、逆に被保険者が参加する道を開かなければ、これは問題になる。この制度だけじゃないか。こういう点で私は、年金審議委員の再検討なり、あるいはそういう参加の道を開くべきである、そういう議論です。これはどこへ議論されたって理屈は通っています。ILOの国際的なそういう社会保障運営の基準にも合致しています。当然です、これは。十分気をつけますでは足らない、参加の保証をしなさい、こういうことです。大臣いかがですか。
  54. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 できるだけ運用によりまして、ただいまの御趣旨に沿えるように検討いたしたいと思います。
  55. 大原亨

    大原委員 国民年金審議会の運営に関係をしてですが、国民年金審議会に積立金の運営については論議をさせておりますか、諮問していますか。
  56. 伊部英男

    伊部政府委員 積立金問題は国民年金審議会の重要な議題の一つでございまして、従来もしばしばこの問題につきまして意見をいただいておるところでございます。
  57. 大原亨

    大原委員 どういう議論が出ていますか。
  58. 伊部英男

    伊部政府委員 基本的には特別勘定を設けようというところが一番大きな御主張と記憶いたしておりますが、その趣旨につきましては、昨日も御答弁申し上げましたように、まだ実現の方向には至っておらないわけでございます。
  59. 大原亨

    大原委員 そうでしょうが。特別勘定を設けようと答申しているのでしょう。しかし、答申はほったらかしておいたって何ら抵抗はない、自分のことでないから。何にもやっておらぬでしょう。  局長に質問しますけれども、国家公務員の各省の共済年金審議会、あるいは公共企業体の審議会の運営と一緒に、積立金は独自の運営をしているのでしょう。どうなんですか。
  60. 伊部英男

    伊部政府委員 所管ではございませんが、その三分の一は財投協力をして、三分の二は共済組合で運用しているように伺っております。
  61. 大原亨

    大原委員 三分の二を自主運用をして、三分の一を財投に協力しているのですか。間違いないですか。
  62. 伊部英男

    伊部政府委員 所管ではございませんので、間違いがあるかもしれませんが、三分の一を財投協力、三分の二を共済組合で運用をしている、かように伺っております。
  63. 大原亨

  64. 辻敬一

    ○辻説明員 共済組合の長期給付の積立金につきましては、法律では三割に相当する金額を資金運用部に預託することに定められておりますが、当分の間は積立額の増加額の三分の一を資金運用部に預託する、こういうことに相なっております。
  65. 大原亨

    大原委員 とにかく、ごっそり持っていかれているのは国民年金と厚生年金だけです。厚生年金のほうはあとで議論するが、調整年金が出てきたから、ほかのほうへ持っていっておるけど。そんなことはないですよ。これは被保険者が参加していないからだ。国民年金審議委員は、実際に答申のしつばなしじゃないですか。保険料を積み立てたならば、国庫へ納めたならば、これは所有権はどうなるか。そういう議論はいま時間がないからしないが、こんな非民主的な運営というものはないですよ。こんな不均衝な運営というものはないですよ。厚生大臣いかがですか。
  66. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 御趣旨には同感でございます。
  67. 大原亨

    大原委員 一つ質問いたしておきますが、これは国民年金の積立金の年度別累積状況という資料がありますが、この資料によりますと、国民年金昭和四十四年の累積見込み額は五千五百一億円です。一方、資金運用部への預託金の累積状況を見ますと、国民年金の項目は四千百八十八億円です。五千五百一億円から四千百八十八億円を差し引きますと、一千三百十三億円。これはどのような会計に入り、どういうように使っておるのですか、具体的にひとつお聞かせいただきたい。
  68. 伊部英男

    伊部政府委員 特別会計の経理は年度区分がございまして、当該年度において発生をした債権債務は四月三十日までに整理をいたすわけでございまして、四月一日から三十日までの間に入った金は前年度の収入になるわけでございます。そこでつまり特別会計の累積額と申しますのは、四月三十日までに入るであろうという金でございます。これに対しまして、資金通用部のほうは一種の銀行でございますので、現金ベースで考えます。三月三十一日までに入った金が預託されるわけでございます。そこで、四月一日から四月三十日は、特別会計の立場では、前年度の歳入と新年度の歳入と、二つあるわけでございますけれども、資金運用部の関係の預託金関係では、それが全部新しい年度に入るわけでございます。その食い違いでございます。したがいまして、非常に長期的に見ますとこれは一致をする性質のものでございます。
  69. 大原亨

    大原委員 その金はどこにあるの。
  70. 伊部英男

    伊部政府委員 つまり、四月三十日で切るか、三月三十一日で切るか、その違いでございます。そこで、いわば会計年度は——資金運用部には会計年度というものはありませんけれども、いわば両会計年度の食い違いが一月、これが出てくるわけであります。どこへも行くわけではございません。
  71. 大原亨

    大原委員 前に山本委員から指摘されたことですが、これはあとに残しておきます。  次の質問を進めてまいります。農林省、今回の改正にあたりまして、国民年金に具体的には月三百五十円、所得比例の部分を積み上げる、こういう大改正であります。しかも、これは一段階制の所得比例でありまして、任意制であります。これは本質的な年金のあり方について議論をすれば、かなりたくさんの議論があるわけですが、これについて社会保障制度審議会や国民年金審議会から答申が出ているはずであります。その点について答申を読んでいただきたい。
  72. 伊部英男

    伊部政府委員 所得比例制につきましては、国民年金審議会におきまして、「国民年金制度改正に関する考え方」という点で、これを実施すべきであるという御議論をいただいたのでございますが、法律案に関する問題につきましては、社会保障制度審議会におきましては「所得比例制の導入は、方向としては適当と認められるが、任意制で所得のある階層に対する国庫負担は明らかに他との均衝を失しており、また、適用対象、段階区分等については将来の姿を十分明確に把握の上、慎重に対処すべきである。」こういう御意見であります。
  73. 大原亨

    大原委員 国民年金審議会の答申も、総理府の社会保障審議会の答申も、これは非常に重要な意味が含まれておる。特に社会保障制度審議会の答申によりますと、これは内容的には、任意制の所得比例制を導入することは、皆年金のそういう制度全体の根本にかかわるような重要な問題を控えておる。言うなれば、これは否定的なそういう内容を持った重要な答申であるというふうに読んだわけなんです。その点については、もう少し具体的にこの受け取り方についての見解を示してもらいたい。
  74. 伊部英男

    伊部政府委員 社会保障制度審議会の勧告におきましても、実は昭和三十七年のいわゆる総合調整の勧告におきましては、国民年金においても、保険料所得比例を加味すること等の関係で、定額部分のほかに所得に比例する給付を考慮する必要があろうという御意見があるのでございまして、これらの点をも参考とし、あるいは国民年金審議会等におきましても、長期間にわたる御審議を経て、所得比例制というものを当初は一段階でございますけれども、今回導入した次第でございます。
  75. 大原亨

    大原委員 ここにいっておることは、任意制の一段階の所得比例方式をここに導入をするということになると、これは、本来の国民年金の体系に、将来行く方向いかんによっては決定的な影響を及ぼすのではないかという点ですね。そういう点でしょう。そういう指摘なんです。原則的には、総括的には、それは厚生年金にも共済組合にも、全部所得比例があるわけです。あるわけですが、掛け金も四百円の上に三百五十円ということ、そして四千五百円を上に積み上げていく、そういう所得比例制を導入するということを任意制という制度でやると、これは運営いかんによっては、これに対して国庫負担が出るわけですから、社会保障や社会保険の精神を逸脱をする場合があるのではないかという点を指摘したと思うのです。この点は、どういう点を指摘したと思いますか、あなた。もう少し具体的に言ってください。
  76. 伊部英男

    伊部政府委員 社会保障制度審議会の御意見は、所得比例制の方向は、原則として方向としては適当とお認めになっておられるわけであります。「任意制で所得のある階層に対する国庫負担は明らかに他との均衡を失しており、また、適用対象、段階区分等については将来の姿を十分明確に把握の上、慎重に対処すべきである。」この二つになっておるわけでありますが、今後の実施の上におきましては十分配慮してまいりたい、かように考えておるものでございますが、「任意制で所得のある階層に対する国庫負担は明らかに他との均衡を失しており」という点につきましては、厚生省といたしましては、この点は必ずしも同意できない点でございます。と申しますのは、他の年金制度にも所得比例区分がございますが、これにつきましてもやはり国庫負担は行なわれておるのでございます。そして、非常に所得の高い階層を念頭に置いて、それに対する国庫負担ということであれば、そういう御議論もあろうかと思うのでありますが、本人負担分との比較で考えますと、おおむね厚生年金の場合は四万円程度の階層の方に見合うものでございまして、社会保障制度審議会のこの点に関する件につきましては、厚生省としては必ずしも賛成できない点でございます。
  77. 大原亨

    大原委員 厚生省としては賛成できない、——この答申の趣旨にそういうことがあるのかな。そういう答弁のしかたがあるの。なぜあなたは、正しいと思うことについて意見を出して、そして国民年金審議会や社会保障制度審議会で議論を戦わせないのですか、実際に即して。そういうことで、意見が違うからといって、その理由についても言わないで、一方交通で実施するというようなことは、これは民主的じゃないのです。いろいろな方面の意見を聞いておるとあなたは言ったけれども、そのことばと違うのです。いかがですか。
  78. 伊部英男

    伊部政府委員 所得比例制の導入につきましては、たとえば農民年金の関係者からも御要望がございますし、あるいは厚生省実施いたしました国民年金改善調査におきましても御要望が出ておるのでございまして、そういう点、所得比例制を採用すること自体は、方向としては適当であろうと思うのでございますが、この場合、制度発足の当初でございますので、簡単な一段階制として、しかも任意制といたしたのでございます。この点につきましては、いわば従来の社会保障制度ではあまり例のないことでございますので、社会保障制度審議会におきましてこういう御指摘があったのだと思いますが、今後方向としては、実施の状況を見つつやはり強制適用の方向で厚生省としても考えてまいりたいと思っておるのでございますが、これは今後の問題として考えてまいりたい。ただ、「国庫負担は明らかに他との均衡を失しており」という点につきましては、社会保障制度審議会におきまする厚生省側の説明が不十分で御納得いただけなかったもの、かように反省をいたしておる次第でございます。
  79. 大原亨

    大原委員 それなら諮問してもせぬでもいいことになる。これはまたあとで、社会保障制度審議会に出ておる八木委員、田邉委員がおるから、議論になると思う。  そこで、今回のそういう制度に伴って国民年金基金の制度を導入したわけですが、いままでも企業年金やその他で調整年金のときに議論はありましたが、それらの点検、討論をしたいところだけれども、これは別にいたしまして、国民年金基金を今回新しく設けた構想と立法の精神を簡潔に述べてもらいたい。
  80. 伊部英男

    伊部政府委員 国民年金対象者は、企業者以外のすべての者でございまして、その業種も多岐にわたっておるものでございます。このため国民年金は、これらのものの平均的なニードに応じて制度が仕組まれておるものでございますが、全国的な制度としては、対象者の個別の要望にはこたえられない面がやむを得ない点であります。そこで、これらの個別の要望をも満たし得るような、現に厚生年金保険制度に認められておりますような基金制度を活用し、国民年金制度全般の改善による利益を亭受しつつ、あるグループの特殊のニードに自主的に対応できるような方途を開こうということが基本的無考え方であります。
  81. 大原亨

    大原委員 これはここまでくれば、ずばりと議論してもよろしいのですが、昭和四十一年に再計算しまして、今度は昭和四十四年に非常に近距離で再計算をして、そしてこのことは、前向きで考えれば厚生年金と歩調を合わしたことになる。厚生年金のほうは五年、それから国民年金は、前回は三十六年から四十一年の五年、今度は三年でやった。これは悪いことではないのです、そのこと自体は、歩調はそろったことになるから、厚生年金国民年金は同一時点で議論できるから、これは私は悪いことはないと思う。これは、私は今日までこれに関連していろいろなところで議論をしてきたことがあるので、そのこと自体はともかくとして、問題はやはり農民年金の問題だと思うわけです。  農民年金議論が出てまいりまして、そしてこういう方式を逆に考えていった、こういうことでありますが、私どもは今日までいろいろな点で議論したわけですが、ほんとうに農民のための年金をつくれ、国民年金へ入っておる人は七百万人は農民であるから、国民年金を改善しろ、ほんとうに農民のための年金はどうしてつくるのだ、こういう社会保障発展という見地に立って議論をしてきた。しかし、そういう議論の中からいろいろな意見が出てきて、一つは今回のような所得比例の導入ということになったと思うわけです。しかし、このことが年金制度発展とどういう関係にあるかということを、われわれとしては責任ある国会においては議論しなければならぬ。そこをほうかむりするわけにはいかぬわけです。  これは、小沢さんがおられますが、昭和四十二年三月二十三日の衆議院の予算委員会におきまして、倉石農林大臣は、構造改善のために農民恩給をつくるということが一つ、それから中小企業その他とは全然関係なしに、国民年金とは関係なしに農民の年金をつくるのだ、こういうことを答弁されたわけです。農林大臣はそういうことを言われたんだが、七月十三日の予算委員会でもこういう答弁をしております。倉石農林大臣は、一部には、国民年金に上積みすればよいという安直な考えの論者もある、しかし農業改革としての基本的な考え方に立脚しなければなるまい、こういう答弁をしております。これは速記録とほとんど同じような中身です。国会で大臣答弁して、そしていろいろと論議を進めてきたわけですが、しかしこれは、農林省はいわゆる農民年金についてはどのようなお考えを持っておられるのか。私も関心を持ってヨーロッパの各国を調べたことがありますが、これは非常に大切な問題ですから、この点の基本的な考え方について、ひとつ最初に説明してもらいたいと思います。
  82. 小沢辰男

    ○小沢(辰)政府委員 私ども、農業者年金をぜひ実現をいたしたいと考えておりますのは、まずもちろん農民の老後保障の充実という観点からでございます。しかしながら、この農業者年金の問題は、それと同時に、農業経営の近代化ないしは、倉石元大臣答弁をされておりますように、農業構造改善の観点、これをあわせて、ひとつ農業政策の今後の一環として実施をしたい、こういう考えでおるわけでございます。
  83. 大原亨

    大原委員 これはあとでこまかい議論をいたしますが、それでは小沢次官にお尋ねしますが、老後の保障という社会保障の観点と農業の近代化という政策上の観点との関係はどういうことですか。関係を具体的に……。
  84. 小沢辰男

    ○小沢(辰)政府委員 御承知のとおり、農業経営の近代化、これはいまの農業者の老齢化ということを考えていきますと、やはり経営者の若返りというものも考えなければならない。これもやはり農業を近代化するための場合の一つの要請だろうと思います。それから、自立農業というものをさらに発展させていくためには、当然経営移譲というようなもの、あるいは経営規模の拡大というものを考えなければならない。その場合に、一方において老後保障の制度が確立されておりませんと、このような近代化なり、あるいは経営規模の拡大なり、そういう両方あわせたいわゆる農業の構造改善というものが進まないだろう、こういうような意味で、私が申し上げておるわけでございます。
  85. 大原亨

    大原委員 農業者年金は、今回米価の問題で問題となった総合農政の一環ですか。
  86. 小沢辰男

    ○小沢(辰)政府委員 当然そのように考えられると私は思います。
  87. 大原亨

    大原委員 それでは、伊部政府委員もきのうの質疑応答答弁いたしましたが、所得比例の部面、積み上げの部面、フラットの八千円の上に四千五百円、それにプラスアルファをどういうふうにするかということはいろいろ問題だろうが、それが完全に実施されるのは二十五年後だという答弁があったわけです。そういうまず時間との関係はどういうふうに理解されておりますか。
  88. 小沢辰男

    ○小沢(辰)政府委員 そこが、農業者年金制度をいろいろとこまかく私どもが検討する際に、非常に大事な点でございます。   〔委員長退席、谷垣委員長代理着席〕 したがいまして、昨日も厚生省から議論がありましたように、他のものは制度が発足してすでに八年でございますから、今後十七年たてばというお話があります。なお、老齢者については、一応特別な適用制度あるいは規定もあるようでございますが、農業の場合には、特にそういう点については、成案を得る際によほど慎重にひとつ検討をしていかなければ、おっしゃるように二十五年先だということになれば、この十年、あるいは私どもがこの前発表しました農産物の需要と供給の見通し、こういうものに応ずる新しい総合的な農政を進める上に支障を来たしますので、そういう点は、この制度の内容をきめるにあたっては非常に大きな問題点と思います。いまここで御答弁できませんけれども、農業専門家の間でも検討を願い、いろいろな要望を聞き、成案を得、制度の発足の際には、ひとつ十分そういう点の配慮もしていかなければならないのではないかという方向でいま検討いたしております。
  89. 大原亨

    大原委員 まだほかにたくさん問題があるのだけれども、二十五年後に発足する問題について、たとえば総合農政の十年計画の中に入れておく、それはどういう関係ですか。総合農政は十年計画で何兆円とかということでふろしきを広げているけれども、総合農政、総合農政ということでいっておるが、しかし完全適用になるのは二十五年先でしょう、言うなれば。これはあとでまた議論するが、これは時間的な関係はどうなんですか。それは、できないことをごまかしちゃいかぬですよ。できることをできるようにやらなければならぬ。どういう関係なんですか。
  90. 小沢辰男

    ○小沢(辰)政府委員 総合農政の一環として私どもが考えておると申し上げておりますのは、何も十年後に総合農政を実現するということではありません。逐次、価格政策から生産構造対策に切りかえていこう、そのほかいろいろ構造関係に資する。現在国会で御審議願っておる法案等の成立を待ちまして、総合農政をもちろん逐次今年から進めていっているわけでございます。したがって、その一環として当然、農業者年金というものを考えながら、先ほど言いましたような二つの機能をこの制度によって果たしていこう、こういうことでございます。おっしゃるように、相当先の問題だということになれば、言うことと少し合わなくなってくるのではないか。そこで私どもは、経過的にこの農業者年金を、こまかく制度として成案を得る際には、そういうようなつなぎの問題をどうするか。すでに国民年金では加入をし、しかも四十六年ごろから一般のほうは効果が発生すると思いますから、したがって、積み上げ分の問題が一番問題点になろうかと思いますので、制度を詳細に検討して内容を固めていく際に、専門家の意見等も聞いてひとつ十分検討していきたいと考えております。
  91. 大原亨

    大原委員 長谷川大臣だったら、それはそういう答弁でいいかもしらぬけれども、あなた、社労におってよく知っているんだ。ことばでごまかしちゃいかぬよ。ことばでごまかすと審議は進まぬですよ。そういう点はもう少し率直な答弁をしたらいいと私は思う。この点はここが問題だと言ってもらいたい。私は指摘をしているんだから、そういう点についてははっきり言ったほうがいいわけです。  そこで、観点を変えてお尋ねをしますが、二十五年後には国民年金対象の人口は——厚生年金、共済年金との関係もあるでしょう。そういう関係で、国民年金対象の人口はどういうふうに変わっていくか。また二十五年後にはいまの農村の人口はどのように変わっていくか。国民年金の中における職業別の分野で現在七百万人だけれども、それはどういうふうに変わっていくか。この二点についてお答えいただきたい。
  92. 伊部英男

    伊部政府委員 国民年金の被保険者はほぼ横ばいにあるわけでございます。
  93. 大原亨

    大原委員 人口は一億二千万くらいになるが、老齢化するから横ばいになる。その中で農業者は何人になるか。どういう比率になるか。
  94. 伊部英男

    伊部政府委員 国民年金の計算時におきましては、そこまでの推計はいたさないのでございます。
  95. 大原亨

    大原委員 農業年金についての答申は、一々やっては時間がかかる。一応私は協力するつもりだ。実質的な審議を続けるんだから。  これは拠出制保険主義を原則にしているんですよ。それから国民年金のワク内ということを答申では議論しておるのですよ。これについては倉石農林大臣が違う意見を言ったこともあるんだ。イギリスのようにそういう例もあるんだ。ヨーロッパのEECのようにそういう例があるんだ。つまり政策的な保障の制度年金制度と老齢保障、社会保障を分けておる。そこで、農民が国民年金の中で対象人員がどれくらいになっていくかということは、これは保険の安定的な基礎、こういう点から、保険数理からいったって、これは無視できないわけですよ。そうでしょう。だから、その点をはっきりつかんでおいて議論しなければ、それを政策的にどう変えるのかということについて議論しなければ、二段階に分けてやらなければ、事実は事実としてやらなければだめだ。
  96. 伊部英男

    伊部政府委員 いわゆる農業者年金問題につきましては、ただいま国民年金審議会の農民年金専門部会で審議が行なわれておる段階でございますが、先般その審議の状況をメモの形で親審議会に報告したのでございます。  ただいま先生御指摘の、今後の農民の数をどう見るかということは、この農業者年金基金を構成する場合におきましてはきわめて重要な要素でございまして、今後各種の調査を行ない、あるいは関係者の意見を聞き、政府部内におきましても慎重にその点を詰めてまいりたい、かように考えております。
  97. 大原亨

    大原委員 私は、あなたが了承されたから議論をはしょったのだけれども、今回の国民年金の再計算は、善意にとっても、善意にとらなくても、これは農民年金議論が起きてきてから早まったのですよ。これは一面ではいいことでもある。しかし、まかり間違えば国民年金の基礎をくずすのだということを、各方面の有識者が指摘をしているのだ。これはあとの議論に回すけれども。ですからそういう点は、問題としてあるところを避けて通ってはいけない。  それじゃ農林省にお尋ねしますが、農林省は昭和四十二年に私も質問をし、倉石農林大臣やあるいは佐藤総理大臣答弁いたしておりますが、その当時を契機として、かなりの調査費を計上して調査しているはずです。農林省は大体どのくらい調査費を使っていますか。厚生省はどのくらい調査費を使っていますか。
  98. 中澤三郎

    ○中澤説明員 お答え申し上げます。  農民年金問題で農林省が調査費としてこれまで使用いたしました金額は千五百万円でございます。本年度さらに一千万円の予定で調査を実施中でございます。
  99. 伊部英男

    伊部政府委員 本年度予算におきまして約一千万円の予算をいただきまして、ただいま二万の農家を対象として年金設計に必要不可欠な基礎的な数字を集めておる段階でございます。
  100. 大原亨

    大原委員 それで、年金制度適用する非常に議論の中心である農民について、たとえば、年齢構成が五十歳以上が何人おるのか、六十歳以上が何人おるのか、あるいは三十歳以上が何人おるのか、こういうこと等と一緒に、対象の人口がどういうふうに流動していくのかということをやはり研究しなければいかぬ。きちんとしなければいかぬ。たとえば国民年金の中の四割を農民が占めているのだからね。それで小沢次官、所得比例部分ができても夫婦で二万五百円でしょう。それにプラスアルファしますよ。その完全実施は、法律上いろいろな特例措置を設ける問題も議論になるだろうが、このままでいけば完全実施に二十五年後でしょう。二万五百円はスライドするだろうが、二万五百円で生産手段を手放して経営規模を拡大していく、経営を移譲して、あるいは離農していく、そういうような政策上の効果が期待できますか。そういう議論一つの大きな問題になる。  そこで年金局長、この国民年金対象人口の中で最大のウエートを占めているのは農民なんです。四割、七百万占めているんだから。これが十年、二十年、三十年後に総体的にどう変わっていくか、年齢的にどう変わっていくか、こういう点をきちんと分析しなければ、任意制の所得比例部分を導入して国民年金制度を初めてつくっていこうという法律を議論する際には、私は、責任ある国会としてそれについての解明をしなければ、議事は進行しないと思う。その対象人口と年齢別についての資料を私に見せてください。ここで見たらすぐわかる。
  101. 伊部英男

    伊部政府委員 国民年金全体といたしましては、五年ごとにいろいろな状況を入れて財政の再計算をするわけでございますが、したがいまして、現時点におきましては、先ほど申しましたように、ほぼ横ばいの前提で計算をいたすのでございます。農民年金基金の場合におきましては、御指摘のように、いろいろな年齢構成その他は基本的な重要な数字でございます。そのため、ただいま調査を実施しておる段階でございますが、将来どういうふうになっていくかということも重要な要素でございます。この点は総合農政の展開等もにらみまして、政府部内におきましても十分煮詰めた上でいろいろ考えなくちゃならぬと思っておりますが、方向的に申しますと、おそらく農民は相当著しいスピードで減少するであろう。そういう場合におきましては、財政方式といたしましても、相当堅実な財政方式をとる必要が生ずるのでございますけれども、こういった点、調査が進行してまいりますとともに、専門部会の御審議を深められるのを期待しておるという状況でございます。
  102. 大原亨

    大原委員 農業者年金の中間報告に出ておりますが、小沢さん、重要な検討の課題は二つある。これは年金開始年齢を六十五歳を六十歳にしていくというのが一つある。もう一つは、二十五年というのは長いじゃないか、少し年数の計算のしかたをはしょって二十年とかにしていこう。そういうとっぴなことは不見識だからできぬという議論は私も聞いている。そういう二つの問題点があるでしょう。いかがですか。
  103. 小沢辰男

    ○小沢(辰)政府委員 私が最初に申し上げましたように、農業者年金は二つの機能を考えて私どもはこれからつくり上げていこうということであります。その意味で、当然対象をどうするかということは非常に大きな問題でございます。現在、先生が言われたように、七百万というような——あるいは今後十年間の見込みを考えますと、私ども六百万と考えておりますが、   〔谷垣委員長代理退席、委員長着席〕 これを全部対象にするのか。やはり農業者らしい農家というもの、すなわち通用語で申しますと専業農家だけにするのか、あるいは第一種兼業まですべて範囲に入れなきゃいかぬじゃないかというのが、大体いまの私どもの方向でございますけれども、そういうように考えていきまして、その専業、第一種の農家というものが、今後相当長期にわたった見通しをつけて、数字的には一体どういうようになっていくだろうかという点を、今年度の調査の一番の主眼に私はしていきたい。これをはっきりしていきませんと制度をつくり上げることができませんので、これをまず第一に考えております。  それともう一つは、いま御指摘のように、当然一つ意見として、二十五年じゃ長いから二十年くらいにというような御意見があろうと思いますが、この問題は、やはり年金の専門家である厚生省の考え方あるいはいわゆる数理計算というものの考え方を十分お伺いしてやっていかなければいかぬと思うのですけれども、いずれにしましても経過措置をきめていかなければならぬ。これは農業の特殊性からいきまして経過措置というものを考えていかなければいけない。少なくとも、過去に農業に従事した実績を考慮しながら所要の加入期間というものを短縮していく方向で、一体何年くらいがいいのか、この点を十分ひとつ経過措置としては検討の上確定して、この制度をつくり上げるときには織り込んでいかなければならぬ、そういうふうに考えております。
  104. 大原亨

    大原委員 それは、国民年金の基金の制度を設けて、そうしてプラスアルファを加えて業種別、事業別の年金をつくっていこうというわけでしょう。その中で農民年金の特殊性を考えながら入れていこうというわけでしょう。ことばはそれでいい。しかしいま言ったように、二十五年を二十年にする、あるいは六十五歳というのを六十歳にする、これは全部保険計算、保険の基礎を非常に狭くしていく。つまり、保険金を払う人間を少なくして、もらう人間を多くしていくのだ、そういうことなんです。あなたはしろうとじゃないからわかるはずだ。そのことは西ドイツでもイギリスでも経験してぶち当たったんだ。そうすると、農民を対象とした国民年金基金制度を設けると、掛け金が高くなって給付が悪くなってしまうのですよ、いまの私学共済みたいなもので。つまり政策的な効果を、あなたが言うように近代化とか経営移譲とか大規模化とか構造改善とかそういうものを達成しようとすればするほど、いま申し上げましたように、年金の基礎というものを脆弱にしていく。老齢保障制度というものの発展を阻害していくような、そういう矛盾したものを二つ掲げておいて、ことばだけで説明したのでは、それは結局は国民や農民をだますことになる。それよりか、やはり倉石農林大臣が私に答弁したことのほうがむしろ筋が通っている。
  105. 小沢辰男

    ○小沢(辰)政府委員 倉石大臣が言われた農業者年金と、私どもが現在検討しておる農業者年金が違うとは、私は思っていないのです。端的に言いますと、今後いろいろな基礎調査をやって必要なデータを集めて、来年の通常国会にはぜひ提案をしたいということでいま進めているわけでございますが、まだいろいろ調査すべき、検討すべき内容がたくさんあります。したがって、まだ制度をつくり上げていないわけですから、結論を得ていないわけですから、ここで端的にお答えできないのですが、おっしゃるように、最初に申し上げましたような趣旨で、相当徹底して農業者のためにやるとすれば、いままでのような年金制度とは相当違った考え方の導入をしてこなければいけないということもわかりますし、それがまた非常に困難だということもわかっております。私どもは、いわゆる後継者のための、経営移譲のためのということを考えまして、六十歳から六十五歳までの制度がむしろ農業者年金としてプロパーな考え方が貫かれていくんじゃないだろうか。それ以後は国民年金制度に乗っかって、今度の改正で通過をすれば、基金の考え方を活用しながらやっていくという大体基本的な考え方でございますので、いろいろな点の必要なデータをいま一生懸命とっておりますけれども、私はそう困難な問題ではない。もちろん一番大きな問題点は、今後国庫負担をどの程度導入をすべきかという点で、農業の実態から見まして、非常に困難ないろいろな問題点が出てこようと思いますけれども、総合農政の推進をはかる意味において、ぜひ農林省としてはこの農業者年金制度を来年度から発足できますように努力をいたしたいと考えております。
  106. 大原亨

    大原委員 小沢さん、あなたは倉石農林大臣が言ったことと違わぬと言ったけれども、それは違うよ。私はいま持っているのだけれども、あなた、そういうことでことばでごまかしてはいかぬ。あなたの言っているのは違うのですよ。二回にわたる質疑応答で倉石農林大臣が言ったのは、経営移譲による構造改革一本やりなんだ。政策上の主張というものを貫いて彼は答弁をしているのだ。だからこれはこれで筋は通っているのだ。私はあえて坊厚生大臣との答弁の食い違いを追及しなかったのだ。それはそれとして、彼の主張はちゃんと筋が通っているのだよ。だから、今回の中間の報告の問題点、こういった二十五年とか、六十五歳を六十歳とか、そういう問題ははっきりしているのだから、そういうようにこの議論を詰めていくと、これは社会保障制度審議会、国民年金審議会が答申しているものはとんだことになる可能性があるぞ。  それじゃ、二つのことについて念のために聞くけれども、林業や漁業に従事している人に対しても、やはりそういう業種別の国民年金構想を進めていくのかどうか。中小企業についても業種別に国民年金を進めていくのかどうか。そういう考え方がこの法律案の背後にあるのかどうか。その扱いについてはやはり公平にやるのか、あるいは差を設けるのか、これをひとつ答弁してください。
  107. 小沢辰男

    ○小沢(辰)政府委員 水産、林業につきましては、なお相当いろいろ検討しなければいかぬと思っておりますので、いまのところはまだ決定をいたしておりません。今後いろいろ調査検討を進めて、どうするかをはっきり方針としてきめたいと考えております。  それから、先ほど倉石さんと私のあれが違うと言われますが、私ここに速記録を持っているのですけれども、倉石大臣答弁をされためは、「土地の移譲等をやりやすくして、経営規模の拡大等に資しておる国も御存じのようにございます。」もう一つの考え方は社会保障的な考え方だ。そうして二つの考え方をどのように調整をして実施できるかということについて、目下専門家に依頼して検討しているという答弁をしているわけです。そういうことで……(大原委員「いや、それは前の答弁なんだよ。何日の答弁ですか」と呼ぶ)七月十三日の予算委員会なのですが、同じ日でございますけれども、そのあと先生が御質問になって、それでいろいろやって、そのときに倉石大臣が「一部には、国民年金に上積みすればいいではないかという安直な考えの論者もあります。しかし、これはやはり農業政策としての基本的な考え方に立脚したものでありますから、そういう立場でわれわれは研究をしてもらっております。」——私はそのとき聞いておりませんから、いろいろニュアンスはわかりませんけれども、倉石大臣も、御承知のとおり自由民主党内でこの問題の会長をやっており、政府側と連絡をとって成案を得る責任者になっておるわけでございますから、私どもは、倉石元農林大臣の考え方、しかも国会で正式に表明したことと全く違うような方向で検討しているとは思っておりません。
  108. 大原亨

    大原委員 それはしかし、そのあとの質疑応答で、総理大臣意見が違うということを認めているのですよ。私は、倉石さんが言ったことは倉石さんが言ったことで筋が通っていると思うから、議論をしているのですよ。そのあと坊厚生大臣答弁して、総理大臣答弁と違いがあるのだ。ただし、どこがほんとうの中心になって立案をしていくのだと言ったら、これは国民年金審議会が舞台だ、こう言って答弁したから、これは一つの筋ができたわけだ。それはそれとしてそれ以上深入りをしなかったわけです。総理大臣は確かに厚生大臣意見と違っていると言ったけれども、私はそれについてとやかく倉石農林大臣のことを言わなかった。倉石さんはその当時まだよくわかっていなかった。つい外部で選挙のときに言ったものだから、佐藤総理もそれについていったものだから、あとで何とかしなければいかぬということでこれは理屈をつけたのだけれども、その理屈はすぽっと当たっているのだ。  もう一つ、私の質問に対して答弁がないけれども、農林省は林業に対してどうするのか。あるいは中小企業が構造改革、高度成長で、各業種によってはいろいろな問題があるけれども、それぞれの分野で国民年金基金の制度を設けて、その特殊性を主張して国庫負担の導入を要求した場合に、やはりこれもこの法律の均衡上、政治の均衡上、国民年金を舞台にする場合には無視できぬ。後者の中小企業その他の問題については厚生大臣、林業については農林省。
  109. 小沢辰男

    ○小沢(辰)政府委員 先ほどお答えをいたしたわけですが、林業、水産業については、その特殊性から見ていろいろ検討をしてまいらなければいかぬ面がたくさんありますから、今後検討を進めた上で決定をいたしたいと思います。
  110. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 中小企業につきましては、いま特別なことを考えておりません。さように申し上げておきます。(大原委員「将来問題が提起されたら」と呼ぶ)問題はどういう形で提起されてまいりますか、その問題のありかたによって考えなければならないと思います。
  111. 大原亨

    大原委員 国民年金審議会や制度審議会が指摘しているのはそういうことをいっているのです。年金局長そうでしょう。これは国民年金を基盤にしてそういう特殊性、ニードを主張して、それを根拠にしてたくさん政策を出したら、国民年金はばらばらになって、いままでやったことが台なしになるじゃないか、言うならばこういう議論をしているのだ。この答申はそういう答申なんです。だから私はその考え方から、ほんとうに農民のための年金をつくるならばそういう政策で考える。しかしながら、うやむやなことを、こういう重要な問題についてことばのやりとりだけでやるということは、われわれとしては、あとに大きな問題を残すのじゃないか、こういう点を国会の審議を権威あらしめるために言っているわけです。
  112. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私は、国民年金といたしましては、このたび議論をされております農民年金は特殊の例外として考えていくべきものと、ただいまの段階では考えております。
  113. 大原亨

    大原委員 国民年金の趣旨は、フラット部分で任意制の一段階の所得比例を三百五十円積んでいるのですよ、プラスアルファをやるということを条件に。同一業種、同一事業で三分の二賛成すれば国民年金基金をつくることができるということになっている。そうしたら、そういうことが必ずありますよ。お医者さんとか弁護士とか、こういう職業別のやつが出てくる。だからそういうことを指摘しておる。  そこで、時間もかなり進んできたし、私もおなかがすいてきたからはしょるが、イギリスやスウェーデンやそういうところでは——たとえばイギリスの例をやろう。イギリスはこの問題を議論しているのです。これはかなり議論したのだが、結果としてはどういう政策をとっているか、こういう点についてひとつお答えいただきたい。
  114. 中澤三郎

    ○中澤説明員 お答え申し上げます。  寡聞にいたしまして、イギリスにおきまして、先生御指摘のような問題がどういうふうに議論されましたか存じ上げませんが、ただ結果から見ますと、イギリスで老齢保障制度のほかに、農業者に関しまして無拠出によるところの離農年金制度実施されておることは承知しております。
  115. 大原亨

    大原委員 これはいろいろ議論があったということは、現地へ去年行っていろいろ聞いたのだけれども、農林省からも書記官か参事官が行っていた。それで厚生大臣、老齢保障以外にこの年金を、年齢によって、希望によって分けるけれども、別の年金、言うなれば、日本でいえば恩給である。それと一時金選択を認めながら、それで何年間に何人を対象にしてこれを実施するのだという、ぴしっと対象予算計画もはっきりした、そういう制度をちゃんと設けておる。これは老齢保障を分けているのですよ。これは議論しろといったら幾らでも問題があるんだ。本質的に、政策的なニードと老齢保障という社会保障、社会保険的な考え方としての拠出制をとっていく場合に、これは矛盾をして足が裂けるという現象が起きてくる。だから私は言っているわけですよ。その基礎をつくるのが国民年金の基金制度である、こういうことであるから、これは一たん発足しますと、やはり日本の皆年金がレベルアップしてどんどんいくのならばいいけれども、そうではなしに重要な問題に逢着するのではないかという点を指摘しておる。イギリスはそれを議論し、他のほうもそうですよ。政策的なものは、国がちゃんと政策費として見ている。むしろ倉石農林大臣が言ったとおりだ。あの感覚のとおりだ。倉石農林大臣が言っておるのは、私は非常に単純なあの人の意見だと思ったけれども、にわかづくりの、しかしそれはそれで意見が通っていると私は思う。だから、そこについて解明しなければ、これは国民年金所得比例制、特に任意制、一段階制を意味していく、プラスアルファを加えて基金制を設けていく、こういう制度から考えてみて非常に重要な問題じゃないか、こういうことを言っているのですよ。これは皆さん方はもう頭を突っ込んでいてわかっていると思うのだけれども、私が、あるいは国民が納得できるような議論にまだかみ合っていないと思う。厚生大臣、この点について、国民年金はせっかく再計算する——短期間で再計算したわけだ。厚生年金に歩調をそろえて前進しようというかまえになった。だからこれを逆に政策的なニードが優先して、それから制度ができておるという問題について、これを正しく受けとめて、そうして、政策上の目的と、老齢保障のそういう過程における矛盾というものを、整理しながら政策を立てないと、これはとんだことになるのではないか。だから、私も昭和四十二年にこの議論を提起したのは、これは農村に非常に社会保障がない、これはたいへんだ、そのことについては国民年金はこたえてはいない、そういう面においてはこの問題は決してマイナスにすべきではない、私はこういう観点で議論したはずなんだ。それだけの良識を持って私は議論したはずだ。倉石農林大臣並びに坊厚生大臣等を、このことについて困らせようとはしていないのだ。当時の議事録を見てもらえばわかる。しかし、事ここまで至ってくると、私どもが関心を持った点については解明ができないばかりか、各方面で議論があるのにこれが未消化のまま通っていくということは、これは、われわれ審議に加わった国会議員としても、国会としても問題だと思うわけです。したがって委員長、これは同僚の質問もあることですから、最後に厚生大臣意見を聞いておいて、もう十二時半になりましたから、私の質問は一応これで終わるけれども、あとに留保していただきます。
  116. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいま大原委員のおっしゃる御意見は十分よくわかります。そのとおりだと思います。農民年金制度を導入いたします場合にも、政策的なものと、そうでない社会保障的なものと、これは混同しないように、また、いまおっしゃるような、将来困った事柄の起こらないように十分留意して運営をしていくべきだ、かように考えております。
  117. 大原亨

    大原委員 最後に一言。厚生大臣の非常にまじめな善意はわかるのです。お気持ちはわかるけれども、中身はわからない。中身は全然理解できない。私は今後これは解明すべき問題として将来——将来ではない、もう出発するんだから、解明すべき問題として問題を保留しておきます。そうして質問を一応中断をします。
  118. 森田重次郎

    ○森田委員長 この際、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時三十七分休憩      ————◇—————    午後一時五十七分開議
  119. 森田重次郎

    ○森田委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  質疑を続けます。田畑金光君。
  120. 田畑金光

    田畑委員 まず初めに大臣にお尋ねしたいのですが、今回の国民年金法改正案は、大幅な改善といわれておるわけですが、制度の飛躍的発展というのにはほど遠い感じがするわけです。ことに厚生年金制度との比較で見ますと、その実態において不十分な点が多々あるわけであります。  今回の厚生年金改正国民年金改正とは、いわゆる二万円年金、こういうことで表向き同じ基準に達したような感じを与えておるわけでありますが、しかし、しさいに実態を検討してみますると、厚生年金、あるいは国民年金の間には、相当大幅な違いがあると考えておるわけで、この点について大臣としても同じような所見であろうと考えますが、まずその点について承りたいと思います。
  121. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 お説のように、今回の改正は相当大幅な改正でございまして、今日の段階におきましては、この程度で満足をせざるを得ないと考えておりますが、これで将来も十分だというようには思っておりません。
  122. 田畑金光

    田畑委員 このことは、要すれば国民年金制度は歴史が浅いし、また年金対象者も、農民であり、自営業者と対象が広範にわたってる、この人方の所得の把握がまたむずかしい、そういう点は確かにあるわけであります。厚生年金制度が発足してすでに二十数年の歴史を経過しておるが、国民年金制度昭和三十六年に拠出制が始まって十年の歴史しか持っていない、こういうことからくる、両制度の中にいろいろな内容の点から見ても、相当な開きがあり、差異があることは事実であるわけでありますが、また大臣もそれをお認めになったわけでありますが、今後国民年金制度というものは、どういう構想をもってこれを強化、発展させていこうということなのか、この点について伺いたいと思います。
  123. 伊部英男

    伊部政府委員 今後の国民年金につきましては、物価あるいは生活水準に見合って、実質的に老後の生活のよりどころとなるような改善を加えてまいりたいと考える次第でございます。  なお、厚生年金とのバランスにつきましては、今回の改正案におきまして、制度上両制度のバランスをとったのでございますが、ただいま御指摘のように、発足時期の差がございまして、直ちに現実支給年金額が、厚生年金までまいるわけではございませんので、今後さような点につきましても、引き続き努力をしてまいりたい、かように考える次第でございます。
  124. 田畑金光

    田畑委員 この間来質疑の中でいろいろ究明されましたように、夫婦二万円年金といっても、実際は所得比例部分の四千五百円を入れて初めて二万五百円、こういうのが実情で、二万円年金というものは事実に反する、こう指摘してもよろしいかと考えるわけであります。なるほど所得比例制を取り入れたということは、制度発足当初からいろいろこの点については論議されてきた問題でありまするし、その意味においては画期的な制度の一歩前進である、こういうことは認めるわけでありますが、ただ問題は、任意制であるというところに、法律体系の面から見た場合、こういう制度においてはやはり強制加入ということであって初めて精神も生かされてくるものと考えるわけでありますが、そういう意味において、今回の所得比例制の導入にあたって、当面第一段階としては任意加入制をとった。また制度審議会なり、あるいは社会保険審議会においても、その答申の中では当面やむを得ぬというような趣旨を述べておりまするが、当面はそうであっても、将来はやはりこれをもっと実態的にも実のあるものに充実することが必要であると考えておるわけで、こういうような点について、厚生省としては今後どういう方針で臨んでいくつもりであるか、この点を明らかにしていただきたい。
  125. 伊部英男

    伊部政府委員 所得比例制は、ただいま御指摘のように、国民年金制度では初めて導入されたものでありまして、被保険者の理解はまだ浅いと考えなければなりません。したがいまして、当面は単純な段階制で、かつ対象者の希望によって加入する任意制としたのでございますが、今後年金制度の充実、成熟に伴い、被保険者の年金に対する認識も深まってくると考えられますので、ただいま御指摘のような審議会の御意見をも参考としつつ、社会経済事情の進展ともにらみ合わせながら、所得区分の強制適用等の問題について険討を進めてまいりたいと考える次第でございます。
  126. 田畑金光

    田畑委員 一般論としては、局長答弁で理解できるわけでありますが、所得比例制の導入ということを、将来、たとえば何年計画で実現するかというようなスケジュールなども、この制度発足にあたっては検討しておいでになったのかどうか。なるほど、先ほどから申し上げましたように、国民年金対象者である人方というものは、所得の把握が非常に困難である。よくクロヨンということばがあるように、税法上から見ても、課税対象の把握は非常にむずかしい層であるということもこれは事実でございますが、されば、むずかしいからというので、ただ任意制でいつまでもほっておくわけにまいらぬと考えるわけです。  たとえば、これは法律案は違いますけれども、この委員会審議されておる労働省所管の失業保険法の一部改正を見ましても、五人以上の労働者の職場においては強制適用であるが、長年の懸案であった五人未満の事業所についても、すべて保険の対象に広げていこう、とりあえず限られた職種については、この三年なら三年の間に、全部強制保険、強制加入、こういうように充実していこうとする法律案が出ておるわけでありますが、やはりこの国民年金についても、せっかく所得比例制を導入したとするなら、もっと実情に即して、所得比例制が任意ではなく、強制制度として確立されるようなことが、制度の趣旨から見て当然なことだと考えておるわけで、その意味において、そのような年度計画などをお持ちなのかどうか、この辺の事情をひとつ明らかにしていただきたい。
  127. 伊部英男

    伊部政府委員 ただいまお答え申し上げましたように、最初の制度でございますので、制度実施後の状況を見まして、あるいは被保険者側の御意向も伺いつつ、この問題についての検討を進めたいと考えておりますが、おおむね次期再計算期までをめどとして、かような問題についての結論をやはり出すべきであろうというふうに考えておる次第でございます。
  128. 田畑金光

    田畑委員 次期財政再計算期というと、おおむね五年ということになるわけでありますが、一応一つのめどだと考えるわけです。しかし、この点については、再計算期を五年にするという現行のたてまえが現状に即するかどうかという点も、これは問題として指摘せねばならぬと考えるわけです。しかし、いずれにいたしましても、局長一つのめどを置いて強制加入についてもっと具体化していこう、この点については了といたしますが、この点、大臣からもひとつその考え方のほどを承っておきたいと思います。
  129. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいま年金局長がお答えをいたしましたとおり、まず所得比例、任意制を導入いたしまして、その趣旨の徹底をはかり、その実施状況を見まして、要すればできるだけ早い機会におっしゃるように強制加入の方途も講じてみたい、かように考えております。
  130. 田畑金光

    田畑委員 局長、今度のこの法改正で、高齢者の任意加入ということが再開されたということは非常にいいことだ、こう思うのですが、どれぐらい該当者があるのですか。
  131. 伊部英男

    伊部政府委員 該当者、つまりこの制度によって再加入できる対象人口というのは約二百万人、こう見込んでおります。
  132. 田畑金光

    田畑委員 さらにまたこの法律改正によれば、継続加入という制度も取り入れておるわけですね。これはどういう条件でどういう内容の人方、そしてどのくらいの数にのぼるわけですか。
  133. 伊部英男

    伊部政府委員 約一万人と見込んでおります。
  134. 田畑金光

    田畑委員 いま約一万人とお話になりました。それからこういう人方もあるんですね。三十六年から拠出制が始まったとき、この制度に反対する動きが相当にあったわけです。そうしてまたそういう関係もあって、現実にこの年金に加入していない人方もいるわけです。また、われわれもしばしば見受けるわけですね。元来強制加入制度国民年金制度からして、そのようなことがあること自体がおかしいと思うのだが、現実にそのような人があるわけですね。そういう人方について、救済の道が講じられているのかどうか。講じてあるとすればどういう内容なのか。またそういう人方はいまどのくらいあるのか。
  135. 伊部英男

    伊部政府委員 ただいま御指摘のように、保険料を滞納したことによりまして資格期間を満たし得ない、したがって、年金権に結びつき得ないと見込まれる人は現在約五十一万人程度と推測されるのであります。今回の改正にあたりましては、これらの人々をできるだけ年金権に結びつける方策といたしまして、昭和四十七年六月三十日までの間に、過去に保険料を滞納していた期間一月につき新たに四百五十円の新しい保険料を納付することによりまして、年金権に結びつき得る措置を講じておるわけでございます。
  136. 田畑金光

    田畑委員 そうしますと、この高齢者の任意加入で、再開された今回の法改正で新しく二百万の人が入ることになる。あるいはまた途中でやめたが今度また継続加入する人が一万人、さらにまたいろいろな事情で保険料を納めなかった人方が五十一万人、この人方は、主としてこの制度そのものに反対して入らなかった人が相当いるのじゃないか。こういう人方が全部捕捉され、そうしてまた法の適用を受けるということになれば、ここに文字どおり初めて皆年金というものが実現する、こういうことになるものだと考えますが、それで国民年金がすべての人方に行き渡るということになるのかどうか。まだ残る人があるのかどうか。  さらにまた老齢者について、今回の任意加入の再開の道が開かれたということは適切な措置であるわけですが、加入期間の問題であるとか、年金額の問題、保険料等を見ますと、相当条件がきびしいわけで、この点は保険審議会の答申や制度審議会の答申を見ても、皆さん方の今回出されたこの法律の提案の趣旨説明を見ても、老齢年金の再加入の人方について条件をもっとよりょくすることが可能ではないかと思うのです。  たとえば給付の面を見ましても、なるほど期間が五年ということも手伝っておりましょうが、月に二千五百円ということになっております。こういう点については、もっと改善の余地があるのではないかと考えるのですが、この点はどうでしょうか。あるいはまた次の機会には、こういう点についてももっと改善するのだということが約束できましょうか。
  137. 伊部英男

    伊部政府委員 第一点の国民年金を達成するという点でございますが、二百五十二万人の方々につきましては、行政努力を浸透することによりまして、これらの方々をつとめて年金権に結びつける努力をいたしたいと考えるものでございます。  なお、これによりまして、これらの方々がもし全部加入されますといたしますと、これらの方々より若い年齢層に関しましては、国民年金が実際的にも全部達成されることになるわけでございます。  高齢者の任意再加入の措置につきまして、その条件あるいは年金額等についての御意見があったのでございますが、資格期間が短うございますので、年金額も低くならざるを得ないのでございますが、十年年金と同程度に優遇するということから、五年で月額二千五百円という水準にいたしたものでございます。この点は、国民年金審議会におきましても、当初から高齢に加入しているものと加入期間、年金額、保険料等について異なる取り扱いとなることもやむを得ないといったような御意見もあったのでございます。保険料につきましては、このような特別の短期年金ではきわめて高額の負担となるのでございまして、もしこれらの方々だけでこのような年金を形成をいたしますと、三千円を上回る負担になるのでございます。そのような負担はとうていできかねますので、給付につきまして非常に優遇しておるこの優遇率程度の保険料の増額をお願いいたしたい。つまり通常の方々は四百五十円でございますが、これに対しまして、いま言ったような状況でございますので、七百五十円という保険料を払っていただきたい。そのかわり給付につきましては、十年年金の半分ではございますが、優遇率は同じような扱いをしよう、こういう考え方でございます。  なお、この加入者が五年間に納付する保険料の総額は四万五千円というわけでございますが、おおむね一年六カ月分の金額に見合うものでございます。
  138. 田畑金光

    田畑委員 数字的に詰めれば、いま局長答弁ということになると思いますが、しかし、高齢者の任意加入の道を開いたというのは、あの制度発足当時、昭和三十六年四月一日現在五十歳以上五十五歳未満の人方、こういうことになっておりますね。そういう、いわばこの国民年金法という法律がわが国において実際できたのは、昭和三十六年初めて拠出制が発足したという、この人方からいわすと、国の制度がおくれた、たまたま年が五十歳以上五十五歳未満であった、こういう人方であるわけです。また、国民年金の法律のたてまえから見ても、この法律第一条によれば「国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によって防止し、もって健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とする。」というのが国民年金法のたてまえであるとすれば、このような人方については、いまお話しのような計数的なことだけで処理するということは、再考の余地がある、私はこう考えておるわけで、なるほどいまお話しのように、十年掛けた人が五千円、五年掛けた人方が二千五百円、まあその意味においては負担に比例して均衡を得たものであるということにもなると思いますが、この種制度というものは、今後いろいろな客観情勢によって動いていく性格を持つ制度であるだけに、いま私の指摘したこの老齢者の任意加入の取り扱いについては、ひとつ将来の課題として、もっと優遇するように検討されることを強く望んでおきたいと思います。この点、私は厚生大臣から一言考え方を承りたい。
  139. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 御意見の次第もございますので、十分検討いたしてみたいと思います。
  140. 田畑金光

    田畑委員 しばしばここでも取り上げられた問題で、あえて繰り返すようでありますが、スライド制の問題ですね、この点についてどういう考え方を厚生省としてはとられるのか、今後この問題に関する基本的な方針、考え方なり、こういうものについてひとつ承っておきたいと思うのです。
  141. 伊部英男

    伊部政府委員 年金額を調整するという意味合いにおきましては、厚生年金保険法も国民年金法も規定を持っておりまして、かつまた実績もあるわけでございます。その意味におきましては、まさにスライドしていってよろしいと思うのでございますが、いわゆるスライド問題といわれておりますものは、一定の数字によりまして、たとえば物価なら物価という数字によりまして、年金額を自動的に引き上げていくという問題でございます。この点につきましては、国民年金審議会あるいは社会保険審議会におきましてもいろいろ御議論をいただいたのでございますが、まだ現実的には低い年金水準へのスライドとなるおそれもある、あるいはわが国のように高度成長を続けている経済のもとでは、ともすれば年金水準は立ちおくれがちとなり、年金の地位は容易に確定できない状況にあるので、スライド制の設定はむずかしい問題となっているといったような御意見もございまして、まだこの問題を踏み切る段階までは至っておらないのでございますが、引き続き関係審議会、あるいは年金制度共通の問題でございますので、公的年金制度調整連絡会議といったようなところにおきまして検討を進めてまいりたい。しかしながら、自動スライド制の有無にかかわらず、年金のレベルを、政策的配慮によりまして、物価あるいは生活水準の上昇を勘案をして改善をするということは、当然のことでございますので、今後ともその点は達成をしてまいりたい、かように考える次第でございます。
  142. 田畑金光

    田畑委員 この点に関連して、これは局長にお尋ねするわけですが、国民年金法の第四条第一項を見ますと、「保険料負担を伴うこの法律による年金の額は、国民生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情に応ずるため、すみやかに改定の措置が講ぜられなければならない。」この第一項を読んで感ずることは、たとえばわが国が昭和三十年代以降急速な経済成長の段階に入ってきた、これに伴うて国民生活の水準、あるいは国民の消費水準も高まってきた、あわせてまた、物価、特に消費者物価の異常な値上がりという、国民生活に影響する問題が強く表面化してきた。したがって、先ほど局長がお読みになった審議会の答申の中にありますように、年金受給者は、特に物価高その他生活環境の変化に伴うて、実質的に生活の切り下げという境遇に追い込まれてきておる、これが現実の事情だと考えておるわけですね。そういうことを考えてみるならば、この第四条の第一項の精神に基づいて、これは当然年金についても引き上げ措置を講じていくべきだ、こう思うのです。したがって私は、ここで念を押したいのは、第四条第一項と第二項の関係ですね。この第二項は、要すれば少なくとも五年ごとに財政再計算をやるということになっておるわけでありますが、第一項と第二項との関係は、これは別個のたてまえでできている条文であると私は考えておるわけでありますけれども、これは一体として見るべきなのか、あるいは第一項、第二項は別々に見るべきなのか、この点についてまずひとつ御答弁をお願いしたいと思います。
  143. 伊部英男

    伊部政府委員 第四条の第一項は、「変動後の諸事情に応ずるため、すみやかに改定の措置が講ぜられなければならない。」という義務規定でございます。第二項は財政の再計算を少なくとも五年ごとに行なうべきであるという規定でございまして、一項と二項は直接の関係はございません。
  144. 田畑金光

    田畑委員 よくわかりました。結局、第一項と第二項の直接の関係はない、こういうことでしょう。ですから、必ずしも第二項に基づく五年の財政再計算期を待たずして、第一項に基づいて年金制度については、年金については、当然生活環境の変化等に応じて検討し、また是正すべきだ、これが趣旨だと考えるわけです。  そこで、先ほどの私の質問に対する局長答弁の中では、審議会の答申はこの点について明確に結論を出してはいないが、しかし政府として、厚生省としては自発的に、自主的に、ひとつ実質的な年金の切り下げにならぬように今後とも措置していくということをお答えになりましたね。これは今後ともそのような方針でいくのかどうか、ひとつもう一度私はお尋ねするわけでありますが、特にこの問題に関連して、恩給審議会が昨年の三月二十五日に答申を出しておりますね。その恩給審議会の答申を読みますると、「五%以上消費者物価が上昇した場合にはそれに応じて恩給年額を改定すべきものとし、将来におけるその実効性を確保する観点から、これを制度化するなど所要の措置を講ずることが適当である。」明確に消費者物価の上昇五%を基準にして、恩給の年金についての是正措置を講ずべしと政府に答申しておりますね。恩給と国民年金、なるほど性格は違うものであるにいたしましても、年金という点においては共通の性格を持つものであるわけです。したがって、この恩給審議会の答申のような趣旨でもって、今後国民年金についても政府としては運用していくという方針であるのかどうか、この点私は、厚生大臣からこの際ひとつ承っておきたいと思うのです。
  145. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 できるだけそういった方針に従ってやってまいりたいと思っております。
  146. 田畑金光

    田畑委員 できるだけという御答弁でございますが、今度の国会における恩給法の改正、あるいはこれに関連して厚生省関係の援護法等見ましても、昭和三十六年度から四十三年度の消費者物価の上昇率四四・八%、こういう前提に立って是正措置が講ぜられておるわけですね。また恩給の是正を見ますならば、あるいは恩給の是正というよりも恩給の引き上げ措置を見るならば、毎年現実に恩給の引き上げというものはなされてきておるわけです。これは厚生大臣一番明るいわけですが、事務当局から出された資料を見ても、恩給の引き上げ経過、これは文官普通恩給についてでありますが、昭和三十七年十月から四十年九月を一〇〇として、四十年十月から四十二年九月まで一二〇、二〇%上げておる。四十二年九月から四十三年九月まで、これは年齢別に引き上げ率がそれぞれ分かれておるわけでありまするが、とにかく引き上げ措置がなされておる。四十三年十月以降についても同様に、年齢区分に応じてではありまするが、相当の引き上げ措置がなされておる。また四十四年度の予算措置においては、先ほど指摘したように物価の値上がりに応じて、現実に恩給あるいはこれに関連して援護措置等の引き上げがなされておるわけです。したがって、この恩給審議会答申というものは、単に恩給だけでなく、年金制度一般についてかくあるべしという一つの方向を示したものであると考えるわけでありまするが、この点について相願わくば、望むらくば、物価の上昇なり、あるいは消費水準の推移、あるいは国民生活の今日の上昇から考えたときに、年金制度国民年金制度等についても、随時是正措置をはかるべきであると考えますが、この○ひとつ大臣の考え方をもう一度承りたい。
  147. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 精神といたしましては、恩給の引き上げをするのと同じような考え方で引き上げてまいりたい、かように思うわけでございます。しかし、年金制度は拠出金の問題もあり、毎年毎年というわけにはなかなかまいりにくい、かように思います。しかし、最低三年くらいたてば必要に応じてやらなければなるまい。五年の再計算期を待つことができないのが最近の日本経済の成長の状況ではなかろうか、私はかように考えます。
  148. 田畑金光

    田畑委員 確かに大臣のお話のとおり、国民年金の場合は拠出制であり、保険料を納めるというので、事務的な処理その他、毎年毎年これを改めるのではたいへんだということは私も了解できます。できますが、しかし、やはり大臣のことばにあったように、少なくとも三年くらいの期間を置いて、あるいは二年くらいの期間を置いて改めていかねば、いまの経済環境の変化には応じていけぬのではないか、こういう感じを持つわけです。  そこで、ひとつ大臣にお尋ねしますが、先ほど私申し上げた第四条の第二項です。厚生年金法でも同じでありますが、財政再計算期五年となっておりますね。現実に沿わないのじゃないでしょうか。現に国民年金法改正でも、昭和四十一年に改正して一万円年金、それからまた厚生年金改正に呼応して、今回四十四年に二万円年金というような姿に移っているわけですから、五年ごとに再計算をやるということは、今日の状況に沿わないと私は考えるのでありますが、この点どうでしょうか。
  149. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私はしろうとでよくわかりませんけれども、しかし常識的に考えまして五カ年の再計算期というのは、そう物価や、あるいは国民生活水準の高まりということがなくても、五カ年ごとには一ぺん数字を洗い直してみる、こういうことだと思うわけであります。第一項はまさしく物価の上昇あるいは生活水準の向上という面で、給付金も、あるいは保険料も、拠出金も、現状にそぐわないという状態を来たした場合にこれを改正する、こういう考え方でございますから、私は日本経済成長がまだ続くものと、かように考えます。十年以内には国民所得がさらに倍になるであろうという一応の考え方のもとに立つならば、第一項による改定が今後続けられるべきもの、かように私は考えます。
  150. 田畑金光

    田畑委員 第四条第一項を適時適切に運用するならば、あえて再計算期を五年にしようと三年にしようと、実態的には国民一般の立場からいうと差しつかえない、こう考えるわけでありますが、しかし第一項と第二項は、相関連した受け取り方というか、解釈というか、そういう思想というものが強く流れておるわけですね。それは、この解釈は正しくない、先ほどの局長答弁のとおり、第一項と第二項は関係ないのだといえばそれまでであるが、しかし、再計算期は五年ごとにという、こういうことはいかにも五年たたなければ改正ができないような解釈も一部生まれておるわけで、この点は十分ひとつ考えるべき問題だと私は思うのです。  少し法律の解釈の問題になるのですが、第四条を見ますと、物価の問題というのは書いていないのですね。これはどういうわけなんですか。たとえば恩給法第二条ノ二を見ますと、「年金タル恩給ノ額ニ付テハ国民生活水準、国家公務員ノ給与、物価其ノ他ノ諸事情二著シキ変動ガ生ジタル場合ニ於テハ変動後ノ諸事情ヲ総合勘案シ速ニ改定ノ措置ヲ講ズルモノトス」、こう規定されております。ところが、国民年金法の第四条には、「国民生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には」云々、物価の問題を取り上げていないんですね。これは同じ解決によって、物価の問題も当然「その他」の中に入っているということなのかどうか。どういうわけで立法過程において、恩給法のそれと年金法のこれとの間に内容の表現に差異があるのか。この点を、立法の経緯に照らして御説明をいただきたいと思うのです。
  151. 伊部英男

    伊部政府委員 「その他の諸事情」に当然物価は含まれるものと考えます。恩給法は実はその後の法律でございまして、第四条と同時に制定された法律ではないのであります。
  152. 田畑金光

    田畑委員 要すれば、この年金法の第四条の第一項の中の「その他」の中に物価の問題も入っているんだ、こういうことなんですね。
  153. 伊部英男

    伊部政府委員 そのとおりでございます。
  154. 田畑金光

    田畑委員 それから、これも先ほどの質疑の中でいろいろ取り上げられておりましたが、基金の問題に関連して、今回国民年金もすべて基金制度を取り入れて、そしてこの基金については事業別、業種別に制度をつくっていく。この基金の発足にあたっては厚生大臣が認可する。また同一業種に所属する三分の二以上の者が同意を得て認可の手続をとるなどと、なるほど法律を見れば書いておりますが、国民年金の中に今後予想される基金というものは、どういう業種別あるいは事業別を予定しておるのか。これは自営業者というと相当広範にわたるわけでありますが、具体的にはどういう業種、業態を考えておるのか。あるいはまた農民、農村についてはこれも基金制度というものを設け得る、当然できると思うのですが、それも予想しておるのかどうか、ひとつもう少し具体的にその構想を明らかにしていただきたいと思うのです。
  155. 伊部英男

    伊部政府委員 ただいま御指摘のように、国民年金対象者につきましても、全国的な制度としては個別の要望にこたえられない場合もございますので、業種ごとに基金を構成をして、その業種の特別のニードにこたえ得るような道を開こうという趣旨でございますが、ただいまたとえば理容業等はすでにボランタリーな年金実施いたしております。あるいはその他の業種につきましても、非公式に相談に来る業種もあるのでございますが、農民の場合、今回の国民年金の改善は、農民に対する年金を、厚年並みにしてほしいという要望にこたえる意味も含んでおるのでございますが、今回の国民年金の改善によりまして、なお果たされないいろいろなプラスアルファの問題、あるいは農政上の要請、そういうようなものにつきましては、年金の体系上は、この国民年金基金を活用していくということになっておるものでございます。この点は、先週親審議会に報告されました農民年金問題専門部会の審議にも明らかなとおりでございますが、ただ、農民に関しましては、総合農政との関係でいろいろな問題がございますので、今後の煮詰めを待ちまして、立法措置が必要であれば必要な措置を講ずるということになろうかと思います。
  156. 田畑金光

    田畑委員 私がお尋ねしておるのは、あなたが先ほど取り上げられたのは理容組合でしたか、ただ理容組合だけじゃないでしょう。自営業者というといろいろな業種、業態があるわけですね。それぞれが基金制度を設けることを厚生省としては予想されておるのか。これが一つ。おおよそこの程度の業種には、独自の基金ができるであろうということもお考えになっておると思うのですが、それはどのような業種、業態を考えていらっしゃるのか。  もう一つは、現行の国民年金のいまの改正案においても、農民自体が基金を設けるということも、この法律が改正を見れば当然これは可能だと思うんですがね。その場合に、どういう構想で農民自体の特別の基金をつくっていくのか、そのあたりについて、ひとつ構想があるならば承りたい思うのです。
  157. 伊部英男

    伊部政府委員 基金をどのようなグールプがつくるかということでございますが、一般論といたしましては、対象者の年金に対する要請が強い、あるいは強い連帯組織と指導統制力を備えた組織母体があること、業務が安定をしておるというようなことが基本的な要件であろうと思うのであります。この要件を十分検討して、申請があれば基金を認可してまいるということでございますが、ただいまのところ具体的に、この基金を設けたいという要望が公式に出ておるのはまだないのでございます。目下の段階では、いろいろ非公式に相談があるという状況でございまして、現在すでにボランタリーな年金制度を持っておる業種もございますから、そのような業種につきましては、比較的すみやかに国民年金基金を設立したいという御要望があるのではなかろうかと考えておる次第でございます。  農民年金、農業者年金につきましては、ただいまその内容を、農民年金問題専門部会を中心にいろいろ関係者が寄って議論をしておる段階でございます。また、厚生、農林両省におきましても、年金設定に必要ないろいろな調査を実施しておる段階でございまして、これらの点を、専門部会の審議、あるいは調査結果等を待って、農民年金の具体的な内容を煮詰めてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  158. 田畑金光

    田畑委員 私がお尋ねしておるのは、いまあとにお答えになった点は、私はそこまでまだ言っていないわけです。そうじゃなくて、今度の法律改正によれば、この国民年金の中に基金制度を設けるということになっておりますね。そこで、その基金というのは企業別、事業別と、こうなっておりますが、その場合、農業者ですね、農民の方々も、この改正法に基づけば独自の基金を設けることができるのかできないのか、それは予定していないのか、この点ですがね。どうなんですか。
  159. 伊部英男

    伊部政府委員 この改正法案に基づきまして、農業者もこの基金をつくろうと思えばつくれるわけでございます。
  160. 田畑金光

    田畑委員 そこで、これは午前中の大原委員の質問の中にも詳しく取り上げられておりまして、私も大体わかったような感じもしますが、せっかく小沢農林副大臣が見えておられますので、副大臣に私ちょっとお尋ねしたいと思うのですが、農民年金問題の考え方についてということで、国民年金審議会農民年金問題専門部会審議メモ、四十四年六月十三日に出ておりますね、これを読んでみますと、大体わかったような感じもするわけですが、今後このメモというものがいつごろ一つの案となって政府に対する——これは国民年金審議会だから、どうなんですか、厚生大臣に来るのですか、政府に来るのですか、この審議会メモは、今後具体的にどのように発展していくのか、それをひとつまずお尋ねしておきたいと思うのです。
  161. 伊部英男

    伊部政府委員 ただいま御指摘のような状況で、農民年金問題専門部会が親審議会に、審議の状況を審議メモという形で報告をしたのでございますが、今後なお専門部会といたしましては関係者の意向等も確かめつつ、あるいは厚生、農林両省の調査結果等も見つつ審議を進めるものと考えておりますが、厚生省といたしましては、明年度予算編成に間に合うような時期に専門部会から御意見がいただけることを期待しているものでございます。
  162. 田畑金光

    田畑委員 国民年金審議会ですから、これは当然厚生大臣の所管として動いていくものだと思いますが、農林省と厚生省との関係は、この農民年金問題についてはどういう関係になっておるわけですか。
  163. 伊部英男

    伊部政府委員 農民年金問題につきましては、この問題が発足以来、両省は緊密な連絡をとってやっておるわけでございます。
  164. 田畑金光

    田畑委員 この農民年金問題というのが主として政策目標として出てきたのは、農業政策、いわば最近流行のことばで言うと総合農政、そういう一環としてこれは取り上げられてきた一わけですね。この制度のねらいというものは、端的に申しますとどういうことをねらっておるのか。これは年金局長じゃなくして、小沢副大臣からひとつお答えをいただきたい、こう思うのです。
  165. 小沢辰男

    ○小沢(辰)政府委員 先ほども大原先生のお尋ねに対してお答えしたのですが、まず年金制度でございますから、当然第一義の目的は農業者に対する老後保障、こういうふうに考えていいと思います。ただしかし、私どもとしては、それならば国民年金の改善措置でいけるんではないだろうか、それだけではどうも農業者年金としては少し足りないんじゃないだろうか、そこで優秀な経営担当者の確保をするとか、あるいは若返りをはかるとか、あるいは農業の近代化に資するとか、農業の規模拡大のための経営移譲の面においても、この年金制度を活用いたしまして農業の構造改善に資するように、農政全般の一環として、特殊な農業者というそのいろいろな立場を考えつつ、ここに何らか新しい考え方を入れていきたい、こういうのが基本的な考え方でございます。
  166. 田畑金光

    田畑委員 この農民年金問題専門部会の検討内容、そして先ほどあげました六月十三日段階における審議メモというのは、おそらく最終的にはこういう思想でもって、この年末か秋か知りませんが、親審議会に報告が出るもんだと考えますが、先ほどお話を承っておりますと、農民年金問題については四十五年度の予算措置、あるいは次の通常国会には法律改正を必ず出すのだ、こういうことで理解してよろしいわけですか。その場合は、結局また国民年金法の一部改正という形で出てくるのかどうか、この点はどういうことを考えていらっしゃるのか。
  167. 小沢辰男

    ○小沢(辰)政府委員 来年度の予算編成のときに予算措置まで必要かどうかは、これは法律を来年度の通常国会に御提案を申し上げて御審議を願って、その実施時間をいつからにするかという問題もございますので、いまここで来年度の予算編成でこれが予算としてどのような形になるかは申し上げることはできませんけれども、少なくとも総合農政の一環として私どもが年来考えておりますのは、四十五年度中にはどうしても実施の段階に入りたい、したがって、来通常国会にはぜひ御提案を申し上げたいと考えておるわけでございます。  なお、これは国民年金法改正になるのか、こういうお話でございますが、これからいろいろ親審議会で御検討を願って、農林、厚生両者でそれぞれ協議をしながら、またこれは最高の政治問題の一つでもございますので、党とも当然御相談を申し上げて成案を得るわけでございますが、いまのところでは国民年金法改正という形でなくて、農業者年金の新設を目的とする新しい立法形式をとるのではないだろうか。しかし、それも今後のいろいろ審議会における、あるいは両省間のいろいろな話、あるいは党との政治的な折衝ということによってきまっていく問題ではありますけれども、大体そういうような方向をとるべきではないかと考えております。
  168. 田畑金光

    田畑委員 そうしますと、農民年金制度というものが独自に発足するとなれば、たとえば石炭については一つ年金制度というものが特別に出ておりますね。これは厚生年金制度のさらにプラスアルファ的な性格を持つものでありますが、いまお話しの将来の構想を聞いておりますと、国民年金とは別個にということになっていきますと、農民は国民年金から離れて独自の農業者年金になるのか、そうでなくして、いまの国民年金制度の上にプラスアルファ的な年金基金的なものが加わっていくのかどうか。この点はどうなんですか。
  169. 小沢辰男

    ○小沢(辰)政府委員 石炭のほうも、御承知のとおり厚年法の特例法という形になっております。今後考えられる農業者年金についても、国年法の特例法というような、名称はどうなるかあれでございますけれども、そういう実質を持つわけでございます。国民年金から全部農民が離れて、そうして別個の制度というような考えではない。したがって、先ほども大原さんが盛んに、四割を占める農民が離れていった場合に、国民年金はたいへんなことになるじゃないかという議論がいろいろありましたが、あれは少し誤解があったように思う。私どもはいま御審議中の基金制度についても、この法律が国会で御協賛を得れば、農業者がこの基金を使って、付加給付的な所得比例とそれからいわゆる付加年金をやるためのこの基金を、農民も当然利用できると思うのです。また今後も、特例法はできましても、国民年金の本体に乗っかっていることは、ずっと大体いるのではなかろうか。これは国民年金審議会なり、その他こまかい成案が出てくる過程でどういう議論が出るかわかりませんけれども、私どもとしてはそういうふうに考えております。  ただ特例法の点は、若干の上積みをするという意味でなくて、ここで先ほど私が申し上げたような構造改善等に資するためのいわゆる経営上に、あるいはその他農業の近代化に資するための農民年金の本来の特殊性というものを、六十歳から六十五歳くらいのところではっきりと出していくような法律形式が生まれてくるのではないだろうか、こう思っているわけでございます。  ただ、これはいま私が言っているわけでもありませんし、国民年金審議会が専門部会の中間報告を得まして、審議会で十分討議をされた、またその結果を見た上で農林省と厚生省が十分相談をして、農業者年金らしい、しかもそれが総合農政の一環として有効に活用されるようなりっぱな案ができあがっていくものだと思いますので、したがって、いま私が申し上げたことは、大体そういうような方向ではなかろうかというふうに申し上げているわけでございますが、言えることは、あくまでも国民年金法の特例法でございますから、国民年金から六百万の農家、あるいは七百万の農家が、全部離れていってしまう、そして別の年金がここにできるというような考え方では基本的にはないということを御了解いただきたい。
  170. 田畑金光

    田畑委員 小沢副大臣のお話は、その点においてはよくわかるのです。農民年金制度をつくる目的が何であるかということは、われわれもこのメモを読むまでもなく、そのねらいはこうだということはよくわかるわけです。ただいまお話の中にありましたように、国民年金法の特例法的なものとして農民基金制度をいわばつくろう、しかも、それは満六十歳くらいから給付できるような、そうしてそれによって農家の後継者養成、あるいは若返り、農業経営の近代化を進めていこう、その限りにおいてはよくわかるわけでありますが、これはあくまでもやはり年金制度であり、保険制度だと思います。言うならば、今度初めて国民年金に取り入れられた所得比例方式を、農民については特別に国の財政負担をより強化するかどうか、それはいろいろより有利な条件というものが出てくるとは思いますが、いまの国民年金のほかに、別にそれにプラスアルファとして特例法をつくる。  ところが、今回の法律改正を見ても先ほど局長答弁をお聞きいたしますと、今度の改正法によっても農業者、あるいは農民の方々が、基金を設けてもよろしい、それは当然、この法律は希望するときにはそれを予定しておる、こういうわけですね。  さらに、そのほかに今度、いまお話を聞きますと、同じような性格のものを、また所得比例方式を加味した基金制度が設けられるということになれば、農家の人にはこの制度が二重に上積みされていくような、それだけ優遇、あるいはある年齢に達したときには年金もふえるということは事実でありましょうが、しかしまた、これは全額国庫で負担するわけでもありますまいから、農家自身の負担も相当なものになりはせぬかと思うので、今回の法律改正による所得比例制あるいは基金の導入と、新しく予測される農民年金制度との関係というものは、どういう形になるであろうか、そうしてほんとうにそれが農民のためになるのかどうか、あるいは農民が喜んでそれを迎えるかどうか、こういうような問題、さらにまた、本質的にはさっきの小沢さんのお話のようなものでもって、はたしていわゆる総合農政の、大事な後継者の問題とか、あるいは若返りの問題とか、近代化とか、そういうような問題が、はたして所期の目的を達成し得るかどうか、こういうことを私は疑うものでありますので、反対という意味じゃなくて、政策目的はほんとうに達成せられるかどうかという点に疑問を持っておるわけです。このあたりをもう少し御説明いただければありがたいと思うのです。
  171. 小沢辰男

    ○小沢(辰)政府委員 実は農業者年金の問題は、先ほど来申し上げていますように、いろいろな問題点がございまして、そういうような点を掘り下げていま調査もし、また検討もするという段階でございますから、詳しい内容を御説明するという実はネタがないわけでございます。私どもの望ましい方向だけは申し上げたつもりでございます。しかし、言えることは、国民年金というものは六十五歳から出発するわけです。これでは農業者年金の場合には、ちょっと私ども先ほど言った目的を達成できないのではないか。したがって、六十歳から支給開始ができるような、したがって、六十から六十五までは、これはいわゆる特例的な農業者年金らしい特例がそこで生まれてくるのじゃないだろうか、またそうしなければいかぬのじゃないだろうか。しかし、さらに今度は六十五から国民年金に乗っかってその上に所得比例分を——今度の改正法にもございますし、さらには基金制度というものも国民年金法改正であるわけでございますから、それを利用していけばよいのでありますけれども、その基金の構想についてもやり方なり、あるいはその付加給付をどの程度、あるいは所得比例分をどうする、それについて国庫負担のあり方をどうするかという点についても、一般の国民年金と同じでいいのか、やはり先ほど来申し上げておるような、農業問題の一環として私どもは考える場合には、もう少しそういう点を特に特例として認めていくような方向が望ましいのではないだろうか、いろいろ考えておりますので、今後十分各方面の意見も聞き、今年度両省で持っております一千万円の調査費を活用して実態もよくつかみ、りっぱな制度ができるように鋭意努力をいたしたいと考えております。
  172. 田畑金光

    田畑委員 小沢副大臣に対する質問はこの程度で終わりますが、制度のねらいなり方向なりはよくわかりますけれども、詰めていきますと、いろんな問題が出るように感ずるわけで、しかも国民年金の大きな構成部分である農家の方だけについて、六十歳から給付を始めるという制度自体が、その他に影響する場合はないのかどうか等々考えてみますと、いろいろな問題が考えられるわけですが、しかし、まだ煮詰めているわけではないから、これはこの程度でおさめますので、小沢さんはもういいとして、これは局長にお尋ねしますがが、農民年金の専門部会の親審議会に対する報告というのは、大体いつごろ予定しておるのですか。
  173. 伊部英男

    伊部政府委員 ただいま小沢政務次官から御答弁がございましたように、次の通常国会、あるいは来年度の予算編成に間に合うような時期を目途としておるわけであります。
  174. 田畑金光

    田畑委員 大臣みたいな答え方を局長がなさっては困りますよ。次の予算編成だの何だの言ったって、次の予算編成はもう事務的にはあなた方のほうでは作業を進めているのでしょう。国会があるので縛られてたいへん困ったなと思って、内心は迷惑しごくな顔をしていることが、そこに並んでいる人方全部にありありと見受けられるけれども、もうすでに事務段階では四十五年度の予算作業をかれこれ検討しているのでしょう。だから、次の四十五年度の予算に間に合うようにと言ったって、予算の編成は通例ならば十二月末にはまとまるわけだし、おそくても一月の十日前後までにはまとまるのですから、国民年金審議会の中の農民年金専門部会の親審議会に対する報告は、大体いつごろ予定しておるのか。それはもっと、十月とか十一月とか答えてもらわぬと、総理大臣みたいな答えをあなたがやったんでは困りますよ。
  175. 伊部英男

    伊部政府委員 厚生省の調査結果は、八月中に集計が終わる見込みでございます。そういうものを、あるいは農林省の調査をも基礎といたしましていろいろ御議論が進むと思うのでありますが、審議会から御意見をいただいて、政府としてもいろいろ考えたり研究をする時間も要ると思いますので、常識的にいえば、九月なり十月には御意見をいただいたほうがありがたいわけであります。そういう線で御要望申し上げたいと思っております。
  176. 田畑金光

    田畑委員 わかりました。  次に、私は保険料の問題について局長にお尋ねしますが、給付改善に見合って、ある程度保険料負担を上げるということはやむを得ないかと思いますが、現行、二百五十円、三百円、こういう二本立て、それを今回は一本立ての四百五十円にしたということですね。  それでまずお尋ねしたいのは、これはどういうわけで二本立てが一本立てになったのか。いままで三十五歳以下と以上に分けてそれを二本立てにした立法趣旨は、どういうことで二段階に分けていたのか。その二本立てが一本立てになった、それを理論的に御説明願いたいと思うのです。
  177. 伊部英男

    伊部政府委員 従来の国民年金保険料が、二段階であったのは御指摘のとおりでございます。それは年齢によりまして所得の差がある、あるいは年齢によりまして、年金に対する関心の度合いが強いであろうといったようなことが背景にあったのでございますが、この二段階制と申しますのは、実際の事務の上におきましては非常に多くの事務量を伴いまして、第一線の市町村からは、とにかく一段階にしてもらいたいという御要望が非常に強かったのでございます。そういった事情もございましたし、また当初は百円と百五十円でございますので、二段階と申しましても、いわば相当の段階であったのでございますが、だんだん保険料全体が上がりまして、現行法では二百五十円と三百円、同じ五十円の差でありますが、その差は非常に縮まってきているわけでございます。そこで今回所得比例制も導入されるわけでございまして、所得のある方につきましては所得比例制でまかなえるということも考えまして、今回従来の二段階制を一段階にしたわけでございます。
  178. 田畑金光

    田畑委員 当初、制度が発足したときは百円と百五十円、やはり五十円の違いですよ。それから、二百五十円と三百円になったのは昭和四十一年の改正ですか、これも五十円の違いですね。とにかく二本立てになっていたことは間違いありませんね。それが今回一本立てになったことは、いまのお話しのように農村から強い要望があったからというようなこともさることながら、事務処理上から見て、二本立てというのは非常に支障があるために一本立てにしたのか、あるいは今日農家所得の水準から見た場合に、三十五歳以下であろうと以上であろうと、五十円などということは、年金運営について、あるいは年金に対する認識から見ても、たいして問題がないという判断から一本立てにしたのか、どこに重点があるのか、そこをひとつお尋ねしておるわけでなんですが……。
  179. 伊部英男

    伊部政府委員 年金長期保険でございますので、保険料といたしましては若いうちに保険料を多く払い込んでいただいたほうが給付は多くなるわけでございます。しかしながら、従来は若い間は比較的所得が低いであろう、あるいは年金に対する関心が比較的薄いであろうというようなことから、百円、百五十円の差があったのでございますが、国民年金についての認識も非常に深まってまいりましたし、また二段階とは申しましても、パーセントで申しますと非常にわずかな差になりつつあるわけでございます。  そこでこの際、そういった年金財政上も、若いうちに高くなくとも、少なくとも同額の保険料を払っていただく。あるいはまた、事務的にも非常に簡素になる。あるいは、ただいま御指摘のように、農家所得も相当向上しておる。そういったいろいろな事情を考えまして、この程度で御了解いただけるのではなかろうかということを考えた次第でございます。
  180. 田畑金光

    田畑委員 今度四百五十円ということにした場合、国民年金の場合は夫婦とも被保険者である。厚生年金は妻の場合は加算の対象にすぎないけれども、国民年金の場合は夫も妻も被保険者であるということですね。そういうことを考えてみますると、従来の五百円、六百円が、今度は世帯にすれば九百円負担ということですね。さらに所得比例制を希望した場合には、これに基づいて三百五十円新たに負担することになってきます。そうなれば千二百五十円、こういうことになるわけでありますが、ほんとうに二万円年金をもらおうとなれば、千二百五十円これから負担しなければならぬということになってくるわけですが、これはいま局長答弁の中にありました、農家の所得もよくなったとか、あるいは農民も、自営業者も、国民年金に非常に関心を強く持ってきたとかということから見ても、一挙にここまで来るということは、保険料負担があまりにも急激に上がり過ぎやせぬか、そういう感じを強くするわけです。  ことにまた局長御承知のように、国民健康保険はこの人方が対象ですね。そして、医療保険は医療費の増加によってますます財政が苦しくて、国民健康保険税というものは年々上がっておるということですね。医療費の圧迫なり——今度はなるほどわが身に戻ってくる年金でございますから、それはあえて保険料を出すことはいといはしないが、しかし、国民年金保険料が、一挙に何倍も上がっていくということ、そうしてその上に医療費の国民健康保険税も上がっていくということを考えてみますと、これは保険料引き上げというものがあまりにも高いのじゃないか、負担がかかり過ぎやしないか、こういう感じもするわけでありますが、そういうような点等については何か部内でも議論になったことはありませんか。
  181. 伊部英男

    伊部政府委員 国民年金保険料についての基本的な考え方といたしましては、給付水準を厚生並みということを念頭に置く場合におきましては、厚生年金保険料といいますものもやはり一つの参考になるのじゃなかろうか。そこで四百五十円、夫と妻、これに夫の所得比例が入ったと考えますと、千二百五十円になるわけでございますが、千二百五十円の保険料を本人負担分として払っている階層は、おおむね厚生年金では四万円程度になるわけでございます。そこでいろいろ給付の条件も違いますので、一がいに比較はできませんが、この辺が一つのめどであるという議論もできると思うのであります。もちろん保険料が非常に高過ぎてはならない、負担能力に見合ったものでなければならないということは当然でございますが、このため保険料額をどの程度にするかということは非常にむずかしい問題でございましたが、昭和四十二年に実施をいたしました国民年金改善調査におきましてもおおむね一人一万円程度の年金水準に対しましては、四百円ないし五百円の保険料を払ってもよろしいという御意見の方が一番多い状況であったこと、あるいは被保険者の保険料の納入をするいろいろの組織がございますが、そういった組織の御意見を伺うといったような方法によりまして、あるいはまた平準保険料に対するいわば修正率といったようなものをも考慮いたしまして、四百五十円程度につきましては御了承いただけるものという結論を出したわけでございます。
  182. 田畑金光

    田畑委員 その点はその程度にして、積立金の運用の問題もこの間来しばしば議論をされて、またそれに対して厚生大臣も何か今後はこうありたい、こうするのだということを述べておられましたが、この点は社会保険審議会、社会保障制度審議会からの答申を見ても、この問題についてしばしば勧告なり、注意なり、要望が出ておるわけです。昨年の十月十七日の社会保険審議会の答申を見ますと、その一節の中に特に「積立金の管理運用」あるいは「還元融資については、現行の枠をさらに拡大するとともに、年金福祉事業団その他の直接労使の福祉に還元するいわゆる契約貸付に準ずる分については、保険料拠出者の意向が直接反映するような方途を考慮すべきである。」等々、この問題についてはこの委員会でもしばしば議論され、そしてまたせっかく国民の拠出した保険料なり基金が、被保険者の福祉のためにもつとも充当さるべきであるし、運用さるべきであるということは、繰り返し議論されてまいったことでありますが、このことについて、この間大臣何か御答弁なさっていたことでもありますので、もう一度ひとつ今後の方針を、特に来年度の予算編成との関連等も前にいたしまして、今後どういう方針で臨むのか、これを一言承っておきたいと思います。
  183. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 年金資金の還元融資に使われる割合は、直接年金の拠出者の福祉に充てるものといたしまして、今日二五%程度のワクということになっております。これをできるだけ広げまして、少なくとも三〇%ぐらいにはそのワクを拡大するように努力いたしたい、かように御答弁を申し上げたわけであります。今日もその意見には変わりはございません。今後、そういう方向を来年度はぜひ実現いたしたい、かように思っております。
  184. 田畑金光

    田畑委員 まあひとつその点は、ぜひ従前の二五%のワクを破って国民の要望にこたえるように、最善の努力を払っていただきたいことだけ強く要望申し上げておきます。  さらにまた老齢福祉年金の問題についても、今度例の千七百円を千八百円にした。これをもう二百円上げて二千円にしたらどうか、これに対して厚生大臣は、来年二百円上げるように努力をするというお話がありましたが、とにかく老齢福祉年金の問題などについても、昨年の五十八国会の附帯決議においてもこの問題を指摘しておることでありますし、さらに最近の人口構成の問題などを取り上げるまでもなく、この問題については二百円などということではなくて、もっと検討する対象事項ではないかと思うのです。すでに、四十六年度からは経過的な拠出制老齢年金制度が発足するでしょう。そういうことを考えてみた場合、この老齢福祉年金制度については、年齢の問題もさることでありますし、同時にまたこの金額等についても、毎年百円ずつ上がってきておりますが、来年のベースアップが何%になるのか知りませんけれども、諸物価の上昇を見ましても、昭和三十四年を一〇〇とすれば、四十年は一四〇・一、四十四年は一六九・一、こういうような非常な物価の値上がり等を考えたときに、私は、老齢者の福祉については、もっと考えてあげるべきではないか。百円を二百円というようなことではなくして、年金制度の中における福祉年金の問題については、特に配慮をすべきであると考えるわけでありますが、この点もここで議論をしても、この間みたいに、百円を二百円にするとかいうような程度の話だけではどうも納得いかぬわけでありますが、この問題の基本的な姿勢について厚生大臣の考え方を承っておきたいと思います。
  185. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 福祉年金だけを考えますと、御意見まことにごもっともに存じますが、他の年金その他一般のものと勘案をいたして考えますと、来年二百円と申し上げるのが、せいぜいのことではなかろうかと私は考えている次第でございます。
  186. 田畑金光

    田畑委員 せいぜいのことだから、来年は百円を二百円にひとつやろう、こういうことですな。
  187. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 さように努力いたしたいと思います。
  188. 田畑金光

    田畑委員 最後に、私は沖繩の問題について、若干社会保険、社会保障の面から取り上げてお尋ねしたいと思うのです。  沖繩の本土復帰問題は、すでにタイムテーブルに乗った、こういうことになっておるわけです。沖繩の施政権返還が、どういう形で実現するかという政治的な面から、あるいは条約の面から、防衛上の面からも、いろんな角度からなされておりまするが、この問題はまずそれとして、きょうは事柄の性質上、また委員会の性質上触れることはいたしません。ただ、われわれとしてこのような条約上の問題、政治的な問題、防衛上の問題とともに考えなければならぬことは、沖繩の経済的な自立の問題だ、こう思います。完全に基地経済に依存してきた沖繩の経済、ところが六九年度の沖繩の予算を見ますと、一千万ドル以上の歳入欠陥があって、これをどうするかということで、屋良政権は非常な困離に直面したことも御承知のとおりであります。  ことに最近、沖繩の経済は不況に入ったということをよくいわれております。それも、ベトナム戦争の影響もあるし、沖繩におけるアメリカの建設業が非常に少なくなってきたということ、あるいはアメリカのドル防衛の影響等々、いろいろあげられておるわけでありまするが、やはり沖繩の問題の解決というものは、どうして沖繩の経済を基地経済から自立経済に立て直すかという問題だと考えておるわけであります。  政府といたしましても、年来沖繩と本土の一体化政策、こういう面から長期計画を立てて、財政経済の援助なり、あるいは沖繩経済の再建復興について、それぞれの計画などを立てて、また予算の面から見ましても、昭和四十年来、わが国、本土の沖繩に対する援助額も、相当伸びておることも事実でございますが、しかし、なおかつ本土の都道府県と沖繩に対する援助の額を比べてみますと、なお内容においてあるいは財政援助の面において低いものがあるわけであります。  この問題について、特に私は社会保障の面から、一体どの程度沖繩の援助の中にこの社会保障の面について援助がなされておるのか。この点をまず承りたいと思いますが、特に私は局長から昭和四十年以来毎年わが国の援助はこれだけにのぼっておる。その中において、社会保障の面についてはこういう援助額になっておる、こういうことをまず御説明をいただきたいと思います。
  189. 伊部英男

    伊部政府委員 ただいまの財政援助は、福祉年金関係がおもでございます。一九六八年度は一億六千八百万円、一九六九年度が五億一千四百万円、七〇年度は八億四千八百万円、こういう数字になっております。
  190. 田畑金光

    田畑委員 私は局長に、まず沖繩に対する本土政府の援助の予算の推移はどうかと聞いたわけですよ。昭和四十年ごろから、特に佐藤総理が昭和四十年の八月に沖繩に行ってから、四十一年、四十二年、四十三年、四十四年と、相当に援助額がふえてきたでしょう。まずそれから出発しようと思って質問したわけですが、いきなり今度は社会保障費の援助はこうだ、こういうことになったわけで、まず援助額はどのような推移になっておるか、それを御説明願いたいと思うのです。
  191. 辻敬一

    ○辻説明員 沖繩援助費につきましては、四十四年度の予算におきまして百五十六億八千三百万円ということになっております。なお、四十三年度の予算が百十六億六千六百万円、したがいまして四十億一千六百万円の増、かようなことになっております。
  192. 田畑金光

    田畑委員 四十年以降くらいからないですか。私は正確なものを持ってきておりませんから申し上げませんが、ただ、たしか昭和四十年度は二十九億くらいだったと思います。昭和四十一年度が五十八億くらい、倍にふえてきているわけですね。  そこで、その点は直接きょうの審議に関係があるわけじゃありませんが、ただ私ここで特にお尋ねしたいことは、沖繩においても昭和四十二年度に、本土と同じような老齢福祉年金制度というものが取り上げられたわけですね。そうして昨年の七月から障害福祉年金あるいは母子福祉年金、この制度が発足したわけです。やはり私は沖繩と本土の一体化というと、一番大事なことは医療保障の面を見ましても、あるいは所得保障の面を見ても、特に国民年金制度、厚生年金保険制度等々、医療保障所得保障の面をもっとこれは日本が援助して、こういう問題から一体化というものをじみにつくり上げていくことが大事であると考えておるわけです。  すでにたしか四十三年の八月、沖繩においては厚生年金保険法、さらに国民年金保険法、これも立法院の議を経て成立を見、公布されているわけです。だがしかし、沖繩のこの法律と本土の法律には、内容において違いがあるといわれておりまするが、本土法と沖繩における法律との違いというものはどういう点にあるのか、これをまずひとつ御説明をいただきたいと思うのです。
  193. 伊部英男

    伊部政府委員 社会保障全体につきましてもいろいろな援助が行なわれておるのでありますが、年金関係につきましては、まず専門家を派遣するという形で援助が行なわれております。  そのほか琉球政府の担当者を、研修生として受け入れる、あるいは社会保険大学校においてこれを訓練するというような援助を行なっておるのであります。  財政援助につきましては、先ほど申し上げましたように、福祉年金の当初は老齢福祉年金だけ、その後障害、母子が加わるにつれまして、現在八億四千八百万円、所要額の九割を財政援助をいたしておるわけであります。  年金制度長期にわたる制度でございますので、当然沖繩が日本本土に復帰するということを念頭に置いて年金制度策定する必要があるのでございまして、このため沖繩の年金制度は、本土と全くそろえてもらいたいということを基本線として考えておるのでございますが、その場合、ただ沖繩には戦後、ただいまお話がございましたように、最近に至るまで年金制度がございません。したがって、この間における期間がいわばブランクになっておるわけでございますが、そういうブランクの期間についても特例措置を講ずる、これだけが本土の内容と違う点でございまして、あとは全く同一でございます。
  194. 田畑金光

    田畑委員 いま局長答弁にありましたように、財政援助については一九六八年度日本円にして一億六千八百万円、一九六九会計年度では五億一千四百万円、一九七〇年度には八億四千八百万円、これが国民年金関係の財政援助ですね。したがって、さっき私が申し上げた老齢福祉年金あるいは母子、身体障害者福祉年金の援助額だと思います。しかし、結局八割ないし九割なんですね、援助額は。昨年は八割、一九七〇会計年度では九割、こういうことになっておるわけです。これは特に大臣にひとつ頭に入れて善処してもらいたいのですが、私も何回か沖繩の現地に行っておりまするし、特に医療保険の問題、あるいは年金制度の問題なども見てまいっておりまするが、一言に申せばまことにみじめな実情だ。したがって、ようやく昨年の立法院で厚生年金保険法あるいは国民年金保険法が成立を見たという段階。そうしてこの法律の実施は、たしか本年の七月以降だと思います。それで私は、せめて福祉年金ぐらいは次の機会には十割、本土と同じように援助してあげる、こういうことが必要じゃないかと思うのですね。金額の面から見ましても、先ほど年金局長指摘された程度の金額です。やはり本土、沖繩の一体化、こういう意味から申しましても、また本土に比べて平均すると所得が八割前後でしょう、あるいはそれ以下かもしれません。そうしてまた、先ほど指摘したように、アメリカの政策の変化によって、だんだん沖繩の住民の生活水準というものが心配される状況下に入りつつある現況を考えたとき、私はせめて福祉年金ぐらいは十割援助する。向こうの会計年度でいうと一九七一会計年度になりますが、わが国からいうと来年度、四十五年度の予算ということになりまするが、そういう問題について、ぜひこれは検討し、善処してもらいたいと思いますが、この点について大臣の所見をひとつ承っておきたいと思います。
  195. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 全体の援助計画と見合いまして、できるだけ努力をいたします。
  196. 田畑金光

    田畑委員 ぜひ実現のために御努力を願いたいと思います。  それから、これに関連しまして、沖繩と本土の一体化という面から見まして、先ほど局長からいろいろ沖繩における厚生年金法、あるいは国民年金法についての説明がありましたが、やはり私は年金制度については、当然本土と沖繩の通算措置などは講じられるべきだし、そのことは厚生省としても十分考えておると思うのですね。すでに失業保険制度については一体化の措置が講じられておるわけでありまするから、この問題等についても——国民年金法、厚生年金法、内容が若干違っておりますよ。違っておるが、しかし年金制度の通算措置等については十分考慮し善処することが必要だと思うが、この点ひとつ、これも厚生大臣はっきりと、大きな声で答えていただきたいと思います。
  197. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 沖繩との通算の制度につきましては、これは当然早期に講じなければならぬと思っております。
  198. 田畑金光

    田畑委員 いろいろな点について質問いたしましたが、どうかひとつ質問の過程においていろいろ大臣に善処方を要望申し上げた点については、大臣は実際誠実な人であり、正直な人であり、また参議院時代たいへん先輩として尊敬した方でもありますから、ぜひ来年度の予算においてこれが実現のために御努力を強く要請しまして私の質問を終わりますが、あわせて、うしろにすわっておる大蔵省の主計官、別にあなたに質問はしなかったわけでありますが、すべて大蔵省に関係する事項でありますので、どうか大臣にも伝えて、来四十五年度の予算の編成にあたっては、これらの希望がいれられるように進言されることを強く希望して、私の質問を終わります。
  199. 森田重次郎

    ○森田委員長 大橋敏雄君。
  200. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 質問に先立ちまして一言申し上げます。  きょうは朝からわれわれの優秀な先輩が鋭い質問をいたしまして、答弁なさっております大臣局長さん、皆さんも相当お疲れであろうと思いますが、私のあとには、国民年金の父であり母であるとまでいわれておる八木一男先生が控えておりますので、どうかまだ気をゆるめないで答弁願いたいと思います。  さらに、先輩各位がきのう、きょうと、次々といろいろな方面から質問いたしておりますので、私の質問はあるいは重複するかもしれませんけれども、答弁のほうは誠意をもってお願いしたいと思います。  昭和四十三年度版の厚生白書によりますと、その中に「各種公的年金制度適用人員一覧」というのがあります。まず八つの制度が書かれておりまして、その次に適用人員、比率と、こうなっておりますが、いわゆる適用総人員は四千六百七十三万五千四百八十人となっております。その下の欄を見ますと、国民年金が二千百七十二万六千五百五十三人、比率としまして四六・五%、また厚生年金保険を見ますと一千九百九十二万一千七百九十七人、比率としまして四三・六%。したがいまして、八つあります制度の中でも、この国民年金と厚生年金適用人員を合計いたしますと、総適用人員の約九〇%、九割を占めている。ということになっているわけであります。  私も今回の国民年金法の質問をするにあたりまして、私なりに一生懸命勉強させていただいたわけでありますが、率直に申し上げまして、非常にややこしいなという印象を受けます。むずかしいといいますか、わかりにくい。同時に、いろいろと疑問も出てきたわけであります。したがいまして、これからその疑問を順に追ってお尋ねいたしますので、答弁のほうもよろしくお願いします。  これらの年金制度としては、いずれも老齢、退職年金、あるいは障害、廃疾年金または遺族年金支給されることになっております。ところが、いろいろな制度を見ますと、支給要件も、また給付額も、制度によってまちまちであります。特に同じ老齢年金でも、国民年金を見ますと、その資格は納付を二十五年以上行なった者、支給は六十五歳から、厚生年金のほうは、その資格は二十年以上で、一般男子は六十歳からあるいは女子は五十五歳から、これに厚生年金のほうは退職要件がついているわけでございますけれども、私が非常に疑問に思うことは、公的年金制度でありながら、厚生年金は六十歳、そして国民年金は六十五歳、このように支給開始年齢が異なっている、まずこれに非常に疑問を抱くわけであります。率直に申し上げまして、この国民年金の受給年齢も、あるいは納付期間も、厚生年金と同じように、六十歳と二十年に改めるべきではないかということでありますが、この点についてお答え願います。
  201. 伊部英男

    伊部政府委員 御指摘のように、支給開始年齢は、国民年金におきましは六十五歳になっておるのでございます。この点は自営業者、農漁民等、一般に生産手段の所有者が中心である関係上、被用者に比べて所得活動に従事する期間が長いこと、及び妥当な給付水準を確保するべき必要性があること、また保険料を比較的低きに押えるといったようなことのためにもある程度の被保険者期間が必要であるといったようなことから、被用者年金のような六十歳ではなく、六十五歳になっておるのでございます。この点は国民年金審議会におきましても御議論いただいたところでございますが、やはり自営業者の就労の実態、あるいは厚生年金保険でも現実に支給開始年齢は六十歳を上回っておる、あるいは諸外国の制度支給開始年齢が、大部分が六十五歳以上であるといったようなことから、六十五歳を引き続き維持すべきであるという御意見をいただいておるのでございます。資格期間につきましては、たてまえとしてはただいま申し上げましたようなことで二十五年以上になっておるのでございますが、ただ現実には、資格期間を年齢に応じて非常に短縮をしてございます。一番短いのは四十六年から発生をいたします十年でございますが、そういう意味合いにおきましては、現実の支給開始年齢、被保険者資格期間は当分の間一致しておると言ってよろしいと思うのでありますが、この二十年、二十五年の問題は、そういうそろえるべきであるという御意見もありますので、今後の検討課題に考えておるわけでございます。
  202. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 いまの御答弁ではまだすっきりはいたしませんが、現実問題といたしまして、私は現在のわが国の労働者の定年制とも関連しているかと思います。  民間企業におきましては、一般に定年退職制度を設けております。その多くは大体五十五歳だというわけですね。したがいまして、この定年五十五歳という立場からいまの年金制度を見てまいりますと、五十五歳で退職した者が、厚生年金の場合だとその支給は六十歳、そこに五年間のブランクがあるわけですね。また厚生年金というのは常時五人以上使っている事業所、これ以上というふうになっております。したがいまして、それ以下の零細企業は、必然的に国民年金のほうに掌握されていくわけですね。そういたしますと、かりに五十五歳という定年でやめますと、厚生年金の場合は五年ですけれども、国民年金になると、十年間のブランクがあく。一体この期間年とってやめた皆さんに対してどのように生活しろというのか、このような疑問が起こるわけですが、定年制の問題についてどのようなお考えをお持ちか、ます労働省にお尋ねいたします。
  203. 住榮作

    ○住政府委員 先生御指摘のように、わが国の企業におきましては、定年制を採用いたしております。労働省の最近の調査によりますと、かつて定年制五十五歳というのが非常に多かったのでございますけれども、最近五十六歳あるいは五十七歳、こういうように定年年齢を延長する傾向が民間に高まってきております。これは御承知のように労働力不足も大きく影響しておると思うのでございますが、さらに、そういうように定年年齢を延長しますと同時に、再雇用あるいは勤務延長という形式で、定年後も当該企業に働く、こういうケースもふえてきておるわけでございます。御承知のように、諸外国には定年がないわけでございまして、おおむね年金が受けられる年齢まで働くというような状況でございますが、わが国の場合は、その間ギャップがあることは御指摘のとおりでございます。そういう意味で、その間の就職のあっせんをどうするか、こういうことになるのでございますけれども、労働力不足の状況下にありまして、そういう高年齢者の再就職につきまして労働省としても非常に努力してその促進をはかっている状況でございます。
  204. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 いまの国民年金、あるいは厚生年金のブランクの問題もありますので、特に定年で退職したときにすぐ年金がもらえるように、そこにブランクがないように、私はこれを切望するわけです。  その定年制の問題でございますけれども、定年制は大正時代から実施されたということでありますが、当時の平均寿命は四十四歳と聞いております。その四十四歳の平均寿命のときに、すでに五十五歳定年が取り入れられていたわけですね。ところが、現在の平均寿命は、きのうの答弁を聞いておりましても七十歳近くというようになっているわけですね。このように人口構造が変わってきた現状からいきますと、当然定年は少なくとも六十歳くらいに引き上げるべきではないか。そうしますと、大体私がいま切望しているようなところにいくような気がするわけですけれども、労働省として現在定年制を持っている企業については、たとえば五十五歳ならば六十歳に引き上げろと勧告、ないしはもっと積極的に言うならば、義務づけるような意思はおありかどうか。
  205. 住榮作

    ○住政府委員 定年制の問題は、これは労使でどのような年齢をもって定年とするかきめる、こういうことだと思います。御指摘のようにわが国の寿命が非常に延びてまいっております。しかも、労働力不足の時代でございます。さらにそういう方々が十分その能力を発揮して生産活動に従事できる、こういうことでございますので、労働省としましては五十五歳の年齢というものは低過ぎるのではないだろうか、できるだけ引き延ばすべきだ、こういうような観点から、いろいろ民間の経営者の方々等に対しても呼びかけておる次第であります。ただ、六十歳にすべきだとか五十八歳にすべきだとかということは、最初に申し上げましたように労使の問題でございますので、そこは労使の間で自主的にきめられるべきものであるというように考えております。
  206. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 たてまえはよくわかるのですけれども、年金制度等とにらみ合わせた立場で、そのいま言ったような方向で強く指導なさることを要望しておきます。  そこで、大臣にお尋ねいたしますけれども、要するに適用総人員の約九割を国民年金、厚生年金が占めているわけですね。そういう中にありまして、現在先ほど申し上げましたような納付期間と支給年齢の差、ズレがあるわけです。そうした矛盾、このような矛盾を、現行のままではじっとこらえていく以外にないのか、こういう気持ちが私はするわけですね。これはずいぶん大きな話になるかもしれませんけれども、現在、被用者年金と、いわゆる地域年金国民年金の、大きく分けて二つになっているわけでございますけれども、これを将来において統合し一本化するという、こういう御意思はおありかどうかということですが……。
  207. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 厚生年金国民年金の間には、その仕組みも、それからまた給付の条件も、金額も、また拠出の条件、いろいろ違っているわけであります。これは違った必要性から起こってきて、今日見ればほとんど国民年金ということになってまいったわけでございますが、当初から国民年金の頭で出発した制度じゃないわけですから、こういうものが起こってきておる。  このままでいいのかどうか、こうなりますと、私は、同じ国民でありますから、いま医療保険抜本改正が論じられておりますごとく年金制度においてはそれほど痛切な問題ではありませんが、しかし、筋道としましては、将来やっぱり統一的に考えらるべきものだと思います。しかし、これはなかなかむずかしい点が存在をいたしておりますので、早急に実現をいたしたいということは、私いま申し上げるだけの自信はございませんが、しかし、検討を続けていくべき問題だとかように思います。   〔委員長退席、谷垣委員長代理着席〕
  208. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 要するに、原則としては統合されるのが理想である。だけれども現状では早急にというわけにいかない。しかしながら、統合されていく姿が好ましいということは、はっきりおっしゃったわけですね。  それじゃ、その問題は理解したことにいたしますが、また戻りますけれども、現行の定年制につきまして、定年退職と年金支給開始の時期にズレがあることとともに、先ほど言いました定年制とのからみ合いがありますので、これを私は何とか是正したい。諸外国の公務員の定年を見ますと、アメリカは七十歳、イギリス、西ドイツ、イタリアなどは六十五歳である、フランスは六十歳である、こう聞いております。日本の現在の五十五歳、また先ほどの答弁では五十六歳、五十七歳と、だんだん引き上げられているということでありますけれども、まだまだはるかに低い。したがいまして、これは私の強い主張でございますけれども、定年制のある企業においては、定年を最低六十歳、六十歳以上ということにいたしまして、いかなる理由があろうとも六十歳になったら年金支給する、こういう姿に私は持っていきたい、こう思うのですけれども、厚生省としてはこの点はどのようお考えになっているか、お尋ねいたします。
  209. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 定年制と年金支給開始時期の問題でございますが、ただいま労働省側からお答えがありましたように、定年制を一般産業について法律できめるというわけにはまいりません。しかしながら、私は今日の実情から考えまして、だんだんと事実上の定年制は、年金支給開始時期に近づいてくるだろう、これは自然の勢いだ、かように考えます。ただ、日本の賃金制度は、おおむね年功序列の賃金制度でございますから、したがって、これが能率給の賃金制度というようになれば、ますますそういういわゆる定年の延長といいますか、これが促進されてくるだろうと思いまするし、日本の労働の需給状況から考えましても、そういうような方向をたどって中高年層の労働を有効に活用していただくという方向に自然向いてくるし、また、労働省も自然そういう御指導になるのじゃないか、かように考えます。
  210. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 先ほど労働省の局長さんのお話では、定年問題は労使の話し合いできまっていくものだということがありましたので、もしも定年を延長できないという企業があるとすれば、少なくとも五十五歳から六十歳の間は、いわゆる減額年金支給する、八割程度年金支給するという考えはどうでしょうかね。
  211. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私は、六十歳未満でまだ働く能力のある方に年金というものを支給するという、そういう考え方はどうもとるべきではない、かように考えます。
  212. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 確かに、元気な方はそのまま働いてもらいたいし、また働いていかれるでしょう。全体としまして、人口構造は、とにかく老齢化していることは事実であります。さらに高年齢まで働かざるを得ないというのが私は実情であろうと思うのでありますが、私が六十歳というところにめどを持ってきたのは、何も六十歳になったらよぼよぼのおじいちゃんだ、あるいはおばあちゃんだというような扱いとして見ていこうというわけではないのであります。今日はいわゆる家族制度が崩壊したといいますか、むすこ夫婦と同居して、その世話になるというケースはきわめて減ってきたわけですね。つまり核実族に移行してきているというこの現実ですよ。それに加えまして生活難だとか、あるいは住宅難というものが原因いたしまして、老夫婦と若夫婦が別居生活をしている、こういう姿が非常に多いわけです。したがいまして、六十になって健康でぐんぐん働けるという、それだけの条件を持った方ならば、これは問題はないといたしましても、そうでない一般の人々は、まだかなり不安を抱くのではないか、あるいは心配をなさるんではないか、私はこのように考えるわけであります。したがいまして、私は、このような弱い方に対しても、六十歳になりますと、国民年金が受けられるという立場にすべきであるし、また老人に対しては、医療保障というものを別個に考えるべきではないか、こういうふうにも思っているわけです。  そこで、昭和三十八年の厚生省の高齢者実態調査によりますと、六十五歳以上の老齢者が、男女とも一七%まで病弱の状態である、こう答えております。しかも、その三分の一はベッドにつきっきりになっている、寝たつきりになっている。しかもその病気は、高血圧とか脳卒中、心臓病をはじめ、神経痛、リュウマチ、胃腸病、ぜんそくなど、いずれにしましても慢性的な病気ばかりなんですね。  ところが、この老人の生活は、国民健康保険に加入しているわけでございますので、三割は自己負担になるわけですね。そこで医者にかかろうと思いましても、経済的な不安からやめる人が多いというわけです。老人福祉法によりまして、いろいろと健康診断も受けられるようになってはいるものの、その診断をされて、あなたはここが悪いですよ、こう言われてみましても、先ほど言いましたように、経済的な不安からなおす見込みがないということで、とにかくかかろうとしない、診断を受けようとしないというのですね。そういう不安、不幸を感ずるのみだというわけですが、私がここで言いたいことは、こうした老人に対しまして、六十歳以上の方々に対しては、老人福祉手帳というものを渡しまして、そして病気になったときにはすべて全額公費でそれを見る、このような医療保障を考える必要がないのか。必要がある、こういうふうに私は思うのですが、その点について御意見をお伺いしたいと思います。
  213. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 老人の医療保障の問題は、別途医療関係の保険制度抜本改正で考えたいと思っております。しかしその場合におきましても、六十歳という年齢はちょっと早過ぎるように私は思っておるのであります。まず年寄り扱いをするなら七十歳、しかし、現在六十五歳という線がありますから、少なくとも六十五歳以上、私は将来というか、延びゆく日本のこの寿命という点を考えてみますると、六十歳から年寄り扱いというのでなくて、六十になったらもうおれは年寄りの扱いに入ったという法制の立て方、全体として国民感情のあり方というものが、今日ではもう少なくとも六十五歳になっていると思いまするし、われわれのあれといたしましては、七十歳くらいを目標にして、それまではまだ青年だという扱い、気持ち、これでいくべきじゃないだろうかという感じがいたし画す。
  214. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 確かに、六十歳になった方をよぼよぼの老人扱いをすれば、これはお気の毒でありますけれども、しかし、六十歳くらいから慢性的な病気、先ほどの厚生省の調べにもありましたように、やはりかなり病気にかかっている人がいるわけです。したがいまして、優遇していく分については、それを七十歳を六十歳に落としてみても苦しゅうないということでしょうね。まず文句を言う方はいないと思うのですよ。私はむしろそれのほうが、充実した社会保障の思想ではないかと思うのです。こういうところをもう一歩考えてもらって、ただ七十歳からが老人だなんというふうに規定しないで、前向きの姿勢でこれを検討するという範囲に入れてもらいたいと思うのですが、その点についてお答え願いたい。
  215. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私は、自分意見だけをどこまでも主張するつもりではおりません。皆さま方、また各界の一般の御意見を伺いまして、そして検討してまいりたいと思います。大橋さんはそういう御意見を持っておられるということも念頭に置いていきたいと思います。
  216. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 労働省の方にもう一回お尋ねしますが、いま大臣が答えられましたように、最近の老人は非常に健康な方が多いというようなお話もありました。確かにそういう事実も見られます。  そこで、老人雇用の促進についてお尋ねするわけですけれども、六十歳以上の者でも、就労を希望する者については雇用を積極的に促進をしていく。そのために、老人に適し、かつ求めに応じた特定の職種を選定して優先雇用をはかる、このような道を講じようとなさっているのか。また、もうすでにそういう段階に入っているのか、そういう点について、まずお答え願いたいと思います。
  217. 住榮作

    ○住政府委員 高年齢者の方々の雇用を促進する、これは当然なことでございまして、平均余命も延びた現在、そしてまた人手不足の現在、高齢者の方でも、長い職業経験、生活経験がございます。あるいはそういうことからくるりっぱな判断力等もございまして、かえって若年労働力に見られない特色もお持ちでございます。そういうような職業の能力なり適性を生かせば、現在大いに働いていただける職種の分野があると思うのです。  それから、さらに今後の問題として考えましても、従来の過剰時代の人の使い方と違いまして、やはり不足時代に入りますと、人に合わせて仕事をつくる、こういうくふうも必要になってくると思うのでございます。そういう意味で、今後まだそういう面での開拓すべき分野も非常に多いのでございます。そういう点についても十分心をいたすべきだ。  さらに、現在の法律の体制の上におきましては、御承知のように雇用対策法、あるいは職業安定法におきまして、中高年齢者をどれだけ雇っておけという雇用率をつくるようにという規定がございますが、いずれ中高年齢者の雇用率というものも具体的にきめていかなければならない段階にきておると思います。そういうこと等も考慮いたしまして、中高年齢者の雇用の促進ということに一そう努力してまいりたいというふうに考えております。
  218. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 それでは、たとえば老人を雇用したという企業があれば、その企業に対して助成金を支給するとか、奨励金を出すとか、こういうふうなこともその中には考えられておりますか。
  219. 住榮作

    ○住政府委員 現在、中高年齢者の雇用を促進するために、たとえば雇用促進事業団において雇用促進融資等も行なっております。さらに、中高年齢者の方が新しい職場に定着する場合に、従来の職場、産業環境と異なるということもございますので、そういう新しい産業環境になれながら、必要な技能なり職務をやっていく能力をつける必要もあるわけでございます、そういう意味におきまして、職場において適応訓練をするために、事業主には必要な費用を支給しておる、本人には訓練手当の額を支給する、そういうような制度等をも駆使いたしましてやっておる次第でございます。
  220. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 老人雇用については、老人を雇用した事業主に対して助成金を支給するという点を強く打ち出していくことは、老人雇用の促進に大きな力になるんじゃないか、こういう点をしっかり踏まえて今後の対策に当たっていただきたい。労働省関係はこれでもうけっこうです。  それでは、年金の納付と給付の関係についてお尋ねいたしますけれども、国民年金保険料は、ことしの一月から三十五歳未満は月二百五十円、三十五歳以上は月三百円で、二十五年間納付で、六十五歳になると初めて支給される、こういうことですが、結局昭和三十六年ですか、発足したのが。それでこの計算でいきますと昭和六十六年ということになるのです。そうしますと、この制度が発足してまだ間がないわけですから、現実には年金給付を受けるのはこれから二十数年後だということになるわけですね。先ほど経過措置とかいわれまして、十年年金といいますか、そういう措置が講じられるということは聞きましたけれども、大勢としましてはまだ二十年後の話だということになりまして、一般的にこの年金は、あすからもらえるというのじゃなくて、いわゆる希望的国民年金である、こういうふうなやじも飛んでいるわけでございますけれども、これは制度でございますし、やむを得ないといえばやむを得ないわけですけれども、発足当時、年齢の関係で拠出制に加入できない人々に対しては、老齢福祉年金などの無拠出の制度が設けられたということで、先ほどの話じゃございませんけれども、七十歳になりますと政府が全面的に年金支給する。  ところが月にわずかに千七百円、今回の改正では百円上げまして千八百円になったわけでございますけれども、現在の社会情勢から見ますと、小づかい銭にも足りないというような金額なんですね。  こういうことを考えていきますと、私は次のようなことを思い出すわけです。それは福祉年金昭和三十四年、また拠出制は三十六年ですか、いわゆる三十四年、三十五年、三十六年あたりから発足しまして、支給額がきめられたわけでございますが、拠出制で当時は二千円だそうですね。その基礎になったのが、生活保護四級地の老人単身者を基準とされた、このように私は聞いたわけです。そしてその当時、老人福祉年金の金額は、拠出制の二千円の半額の千円が適当ではないか、こういうことで拠出制二千円、福祉年金は千円ということで発足したかに聞いております。  ところが、その後におきまして、数回にわたって改正がなされてきたわけでございますけれども、今度の改正案を見ますと、拠出制は二千円から今度は八千円になっているわけです。ところが、いま申し上げましたように無拠出のほうは千八百円である。だから、発足当時の思想からいきますと、拠出制が八千円ならば無拠出は半分だから四千円にすべきではないか、このような考えに落ちつくわけですけれども、この点はどのようなお考えでいらっしゃいますか、お答え願いたいと思います。
  221. 伊部英男

    伊部政府委員 拠出年金は、被保険者の拠出する保険料でまかなわれるわけでございますが、福祉年金は、御指摘のとおり全額国庫負担によるものでございまして、それぞれ保険料の許す範囲、あるいは国家財政の許す範囲といったような制限が出てくるのでございます。したがいまして、直接両者の比較をするのは必ずしも適当ではないと考えておりますが、今後も福祉年金引き上げるということにつきましては、その御趣旨につきましては厚生省といたしましても全く同感でございます。かりに拠出年金との比較で福祉年金の額を考えるといたしますと、当面高齢者に支給する十年年金昭和四十六年から発足をいたすわけでございまして、これらの方々に対する国庫負担は三分の一と考えますと、月額千六百六十七円ということになるのでございまして、こういった点をも配慮する必要があるのでございます。   〔谷垣委員長代理退席、委員長着席〕
  222. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 いまの説明をちょっと聞き漏らしたのですけれども、十年年金が三十六年に発足して、それから何とおっしゃったのでしょうか。
  223. 伊部英男

    伊部政府委員 福祉年金は現在支給されている年金でございます。今回引き上げ実施する年金額は二十五年後に、正確には十七年後に支給するわけでございます。それは保険料引き上げて、将来の被保険者の負担をも見込んで八千円という水準をきめるわけでございますが、福祉年金はすでに現在支給しているわけでございます。そこで拠出制年金というものを考えますと、一番高いのは十年年金でございます。十年年金との比較というのは一つ議論になろうかと思うのでありますが、いずれにいたしましても、当面四千円に引き上げるということは、非常に巨額な財政負担を要することでございまして、なかなかむずかしい問題を含んでおりますが、先ほど大臣の御答弁にございましたように、福祉年金の額の改善につきましてはいろいろくふうをして努力をいたしたい、かように考えている次第でございます。
  224. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 局長さんの話を聞いておりますと、そういうことも考えられようかと思いますけれども、私が言っていることも、論理的にはそんなに矛盾したものではない。ただ、財政的な立場から無理であるというような印象を受けるわけです。  そこで、それでは八千円の半分の四千円では無理だと百歩譲りまして、いまお話しなさいました十年年金は四十六年からもう支給が開始されますね。千円だか八百円だかで発足した十年年金改正されまして、今回は五千円になるでしょう。この点はかなり優遇された改善であると、非常にうれしい気持ちで見ておりますけれども、十年年金は、いま言いましたように当時八百円であったものが、今度の改正で五千円になるというわけですから、少なくとも来年、再来年でしょう、再来年までに福祉年金のほうもその半分くらいまでは上げるべきではないか、こう思うのですが、大臣、この点どうですか。このくらいは上がるんじゃないですか。五千円の半分ですからね、二千五百円です。いまの千八百円を五千円の半分くらいまでに、あと二年あるわけですから、これは私は何とかいくんじゃないか、こういう感じを受けますがね。
  225. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 さきにもお答えをいたしましたように、来年度はできるだけ二百円増額をするように努力いたしたいと考えております。さようにいたしますると、四十六年度には大体その半額に近いものになるだろうと思っております。
  226. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 じゃ、その十年年金支給額の五千円の約半分くらいに近いところまではいくというわけですね。間違いないですね。じゃ、これはこの辺で……。
  227. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 努力をいたしたい。
  228. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 努力をいたしますか、だいぶ後退しましたですな。  それでは、所得制限の問題でございますけれども、現在所得制限——まあ本人かかなり収入があるということになれば、この福祉年金の場合は遠慮してもらわなければならぬということも容易に考えられるわけでございますけれども、家族収入があるために老人の皆さまに支給が停止される、こういうことになっておるわけですね。無制限にこれを撤廃するというわけにはいかぬでしょう。老人といいましてもいろいろいますのでね。だけれども、現在の所得制限——まずその前に、今回所得制限はどこまで引き上げられたのか、それをまず説明してください。
  229. 伊部英男

    伊部政府委員 今回の改正案によりまして、対前年伸び率一三%、実額で十三万七千五百円を引き上げまして、従来のベースが百五万五千円でございますが、これを百十九万二千五百円にするものでございます。これは従来どおり扶養親族数五名を基準にしておるものでございます。
  230. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 これは所得の課税等の対象がそういうことに持っていくのでしょうけれども、私たち公明党は、所得の最小限度を少なくとも現状では百三十万、あるいは経済情勢を見ていきますと、百五十万くらいまでは上げるべきではないか、このような意見を持っているわけです。今回百十九万二千五百円まで所得制限を緩和したということでございますけれども、これはもっと百五十万くらいまではならぬものなんでしょうかね。これはどうですか。
  231. 伊部英男

    伊部政府委員 この引き上げ率は、常用労働者の賃金の伸び率農家所得伸び率、一人当たり国民所得伸び率等を勘案をして決定をしたものでございますが、これによりましておおむね昨年度受給された方は、今年も引き続いて大部分の方が受給されるであろうという見通しを持っております。
  232. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 とにかく、これは現実問題でございますけれども、地元に帰りましていろいろな皆さんとお話をするのですが、この中にやはり老人の方がいまして、お隣の老人のほうはちゃんともらっている、私はなぜもらえないのだ。説明しますけれども、それは家族収入があるからですよと言うけれども、いや、収入はそう変わりませんよ、むしろ私のうちのほうが貧乏な生活をしているみたいでしょうということを言われるわけですね。だから、もう少し引き上げれば、その点はもっとはっきりしてくるんではないか、こういう現実的な立場から言っているわけですので、今後所得制限の緩和をなさるときには、もっと大幅な緩和を希望するということでこの点は終わることにいたします。  それでは次に、年金額の問題でありますけれども、国民年金の最低保障額を月額二万円とすべきである、私はこう思うのです。確かに今度の改正を聞きますと、一万円年金から二万円年金になったのだ、このような盛んな話があるわけでございますけれども、老齢年金というものは、現行が平均賃金の四割を保障すべきだ、そういうたてまえから考えられているということを記憶しているわけでございますが、今回の改正案は、もっぱら二万円年金だということでございますけれども、その二万円になる内容をここで説明してもらいたいと思います。
  233. 伊部英男

    伊部政府委員 国民年金におきます二万円の水準は、夫と妻を基準といたしまして、被保険者期間二十五年、夫が所得比例給付に入っておられるという前提で、三十五年給付で二十五年の老齢年金の給付額が二万五百円となる、こういう仕組みでございます。
  234. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 いまの説明ですと、定額部分で八千円、妻の部分で八千円、所得比例で四千五百円がついて初めて二万五百円と、こういうことですね。しかも二十五年だ。  ということになりますと、私は疑問が起こるわけでございますが、まずその第一点は、所得比例は任意加入である。入れる方は別としまして、入りたいと思っても入れない方もあるだろうと思うのです。そういう人は、二百円にはならぬわけですね。一万六千円だ。  ところが、ILOの新年金条約が厚生白書の中に記載されておりますけれども、それをちょっと読んでみますと、「昭和四十二年六月のILO第五十一回総会で採択された「障害・老齢及び遺族給付条約(第百二十八号条約)」によれば、老齢年金に関する基準は、三十年以上の拠出期間を有する六十五歳以上の夫婦に対して、その者の従前所得又は普通成年男子労働者の賃金の四五%」と、こうなっていますね。そうしてまた「(拠出資格期間が二十年で年金支給される場合には、五%を減じた四〇%)」であるということになりますと、私は主人なら主人一人が二万円になるのが、このILOの新年金条約の条項に合うのではないか、このような考えを受けるのです。ですから、二万円、妻二万円、四万円年金になるのがほんとうはこの条約に適当な内容であろう、このような考えを持つのですけれども、どんなものでしょうか。
  235. 伊部英男

    伊部政府委員 ILO条約におきましては、老齢年金の受給の標準受給者は、妻を含んで考えておるのでございます。
  236. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 それじゃ、妻を含んでの話ですね。それはそれで理解しますが、四十三年三月現在の毎勤統計を調べてみましたら鉱業で四万九千七百二円、建設で四万八千六百八十四円、金融・保険業で六万一千四百五十九円、それから運輸・通信業で六万四千三百二十四円、電気・ガス・水道で七万七千七百二十八円、事務のほうで建設は五万六千四百九十一円、製造で五万五千七百七十九円ということですから、平均しましても四割といえば十分二万円を受けていく立場になるわけですね。先ほど言いましたように所得比例に加入しなかったら一万六千円じゃないですか。この点はもう少し上げるべきじゃないか、こう思うのです。
  237. 伊部英男

    伊部政府委員 今後、社会情勢に応じまして年金額を引き続き改善をすることはもとよりでございますが、ILO条約との関係で申しますれば、今回の厚生年金保険法及び国民年金法の水準は、老齢年金に関しましてはおおむね達成をしておるというふうに考えております。
  238. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 今回の改正案を見まして、先ほど言いましたように八千円、八千円とそれから所得比例を合わせて二万円であるということになっておりますが、所得比例のその部分に対して、入りたくとも入れない方もいるわけですね。私はそういう方に対しては、やはり何か特別な措置を講ずべきではないかと思うのですよ。そうしないと格差をつけるような感じがするのですね。これは財政問題にひっかかってくるわけですけれども、そういう点についてどういうお考えを持っていらっしゃるか、お答え願いたいと思います。
  239. 伊部英男

    伊部政府委員 厚生年金におきましても所得比例部分が入っておるわけでございます。その意味におきまして、今回国民年金にもこの所得比例分をつけ加えたのでございますが、制度発足当初でございますので、これを任意加入といたしたという状況になっておるのでございます。やはりどの年金制度所得比例を含んで何パーセントということを考えておりますので、国民年金の場合におきましても、所得比例を加えて差しつかえないものと思っております。
  240. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 大蔵省の方、いますか。——こういう点について、いま言うように、所得比例制度に加入したくともできない人に対して、何らかの特別措置でその部分を優遇してやるという立場で考えられたことはありますか。
  241. 辻敬一

    ○辻説明員 ただいま厚生省からお答え申し上げましたように、厚生年金等におきましても所得比例部分がございますので、それとのバランスをとりまして所得比例部分を設けるということにいたしたわけでございます。何ぶんにも制度発足の当初でございますので任意制ということにいたしておりますが、今後所得比例部分の充実、改善につきましては、厚生省とも相談いたしまして検討いたしてまいりたい、かように考えております。
  242. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 私はあくまで、二万円年金というのですから、その二万円が基準となりまして所得比例の部分にしましても、いま言った特別措置にしましても、それをプラスアルファとして見ていくような立場で今後もっと改革していく必要がある、こういうふうに思うわけであります。この点について大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  243. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 御意見のとおりに存じます。できるだけ、厚生年金と同じように、全部が入れるようにいたすのが、将来の進み方ではなかろうか、かように考えております。
  244. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 社会保障制度審議会の答申では、国民年金法の一部改正案を諮問しましたときに二年間で物価が五%以上になったときには改正しろという趣旨のように見受けますけれども、むしろ私は、国民年金は毎年改正していくべきではないか、このような考えを持っているのですけれども、その点についてはどういうお考えですか。
  245. 伊部英男

    伊部政府委員 無拠出制の年金につきましては、最近連続五年引き上げ実施いたしておるわけでございますが、拠出制の部分につきましては、保険料負担を伴うわけでございますので、毎年というのは技術的にもなかなかむずかしい点があろうかと思うのでございますが、先ほど大臣も御答弁ございましたように、現在のような、経済情勢が著しく変わる時期におきましては、年金制度を五年間固定させるというつもりはございません。その間の経済情勢に応じまして、適時適切なる方法を講じたい、かように考える次第でございます。
  246. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 最後に、大臣に要望いたしますけれども、この年金社会保障制度の中でも非常に重要な位置にあると思うのです。したがいまして、国民年金改正にあたりましては、従来よりももっと積極的な姿勢で今後取り組んでいっていただきたい、こういうことでございますが、大臣の御決意をお伺いして終わりたいと思います。
  247. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 国民年金は創設後まだ日が浅いものですから、国民にもまだ十分な御関心が少ないのじゃないかと思います。拠出年金が渡るようになってまいれば、これはほんとうにたいした制度だということになると思いますが、われわれといたしましては、そういう時期を想定をして日本社会保障制度の大事な三本の柱の中の一つである、かように考えて充実をはかってまいりたいと思います。
  248. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 終わります。
  249. 森田重次郎

    ○森田委員長 八木一男君。
  250. 八木一男

    八木(一)委員 私の出席要求いたしました政府委員が全部参っておられるかどうか、ひとつ委員長のほうでお調べ願いたい。
  251. 森田重次郎

    ○森田委員長 高辻長官、小山政務次官、上村政務次官、船後主計局次長、青鹿理財局次長見えておるようです。
  252. 八木一男

    八木(一)委員 私は内閣総理大臣と、厚生大臣と、労働大臣と、大蔵大臣と、法制局長官と、主計局長と、理財局長、それだけの要求がしてございます。そのおのおのが出てこられない理由をひとつ。——ぼくは審議したいと思うので、理由を言ってくれればいいのですよ。
  253. 森田重次郎

    ○森田委員長 八木君から要請されておりました各大臣出席のできない理由を、いま調査いたしまして御答弁申し上げます。  総理大臣は、強く出席要求いたしましたが、すでに予定の公務が計画されており、出席できないとのことであります。  労働大臣は、参議院内閣委員会において同和問題について答弁中でありまして、小山政務次官が出席いたしております。  大蔵大臣は、他の委員会出席中であり、上村政務次官が出席しております。  以上で御了承願います。
  254. 八木一男

    八木(一)委員 主計局長はどうです。それから理財局長
  255. 森田重次郎

    ○森田委員長 局長出席のできない理由を申し上げます。  理財局長は病気のため欠席中。主計局長は目下会議中なので出席できないとのことで、それぞれ次長が出席いたしておりますから御了承を願います。
  256. 八木一男

    八木(一)委員 いまおっしゃった理由の前に、私ども委員が熱心に審議をしようとして、各大臣政府委員要求をしたのにかかわらず、それがどのような事情で出席できないということを事前に通告されない点については、委員会の運営については問題があろう、委員長のお取り扱いにも問題があろうと思う。この点については今後厳重に反省をしていただいて、直していただかなければならない。  それとともに、本日の問題でございますが、本日の問題の中で、理財局長の病気ということは、病気の程度はわかりませんけれども、病気であれば人権じゅうりんになりますから、無理に出てこなくても次長でけっこうです。  しかし、それ以外の理由ははっきりいたしておりません。総理大臣は公務と言われるけれども、国会における質問に対する答弁は、公務の中で一番大切なものではないかと思います。総理大臣要求は、私は一週間前から出してあります。なぜほかの公務と差し繰りをするような連絡をされなかったか。いま御答弁になったのは、そういう努力をしておられない証拠であります。これからでもすぐほかの公務を差し繰って出席をしていただくようにしていただきたい。  それから労働大臣もそうであります。同和問題も重要な問題でございますから、それが済んだら即刻に御出席を願いたい。  それから、大蔵大臣のほうは理由を聞き漏らしましたけれども、ただ委員会というようなことをおっしゃっただけで、どこの委員会ともおっしゃっておられません。その委員会審議がすでに十二分の質疑応答を大蔵大臣がしておいでになるのでしたら、こっちに早く回っていただきたいし、その委員会が散会になった、休憩になったなら、それから一分後にはここに御出席を願いたい。ほかに行くことは私どもは承知はできません。
  257. 森田重次郎

    ○森田委員長 あなたの御要請どおり要請いたします。だから、質疑を御継続ください。
  258. 八木一男

    八木(一)委員 その次に、鳩山君のことであります。局内の会議というが、この鳩山君の出席要求は私、午前中にいたしました。しかし、大蔵省の中の主計局内の会議よりも、国会の質疑応答が大事だ。答弁をすることが大事だ。ということは、おのずから総理大臣の公務とは比較にならない問題だ。飛んでこなければならない。即刻これは会議を中止して飛んでくるように、指示をしていただきたい。十五分以内に出席をしなければ、そのような、国会に出席の義務を怠り、公務員としてのほんとうのやり方というものを怠っておるということで、委員会として痛烈に指弾をしなければならない。十五分以内に鳩山君が出席をするか、大蔵大臣が他の委員会終了後一分以内にここに出席をするか、あるいはまた総理大臣が他の公務を差し繰って出席なさるか、この点について委員長は責任をもって対処されることをお約束をいただきたい。
  259. 森田重次郎

    ○森田委員長 ただいまの八木さんの御要請に対しましては、できるだけ努力いたしますから御了承を願います。
  260. 八木一男

    八木(一)委員 それでは質問に入りたいと存じます。  まず第一に、法制局長官にお伺いをいたしたいと思います。日本国憲法に対する見解でありますから、これは法制局長官が一番間違いない答弁をなさると思う。  日本国憲法の中で、主権在民、基本的人権、あるいはまた平和主義、憲法第九条に規定された正しい大切な規定、そういうような大きな問題について規定がございますが、具体的な政策について日本国憲法の中で述べられている、記述をされている条文は、どこどこにどういう条文があるかということを伺っておきたいと思います。
  261. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 簡潔にお答え申し上げますが、具体的な政策についてという具体性が実は明瞭ではございませんけれども、まあ特に具体的だということになりますと、憲法の二十五条の二項の規定、これは先生はむろんとつくの昔に御承知でございますが、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」というこの種の規定、このような規定は、二十六条の二項にも「義務教育は、これを無償とする。」というような規定もございますが、個別行政の部面で一番具体的な規定といえば、この二十五条の二項あたりが一番典型的な事例であろうと私は思っております。
  262. 八木一男

    八木(一)委員 憲法第二十五条第二項の規定で、社会福祉、社会保障、公衆衛生について国は不断に向上改善しなければならないというのが具体的な規定であって、しかも方向、動きを示した規定であります。それに似たものとして、二十六条の義務教育無償の規定がある。具体的な政策についてうたわれているのは、政策だと無理に解釈すると政策になりますけれども、具体的に政治面で、たとえば社会保障とか、貿易政策とか、あるいは中小企業対策とか、文教対策というような名前で呼ばれている、そのような政策の中で、日本国憲法の中でうたわれているのはその四つであります。しかも社会福祉、公衆衛生というのは、将来発展する概念でありますが、社会保障という概念の中に入っているわけであります。そこで、社会保障というものが具体的に提起をされているのは、日本国憲法の精神でいえば、他の具体的政策よりもはるかに重視して、それは先に強力にやらなければならないという意味を有するものであると解釈をしなければならないと思います。そういう点について、高辻法制局長官の正しい御見解を伺っておきたい。
  263. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 何よりも二十五条の二項が、具体的な政策の場面では一地大きな憲法が重視している規定ではないかということ、そのことを特別にそうではないという気持ちは私はございませんが、たとえば何といいますか、お答えに欠陥があるといけないという趣旨で申し上げますが、たとえば国民は個人として尊重するとか、あるいは平等取り扱いの原則とか、ああいうものが具体的な行政の場面で出ていきますときに、これはもうよろしいんだ、それよりもこちらのほうが大事だというようなことにはならないということだけつけ加えて申し上げさせていただきたいと思います。
  264. 八木一男

    八木(一)委員 さすがに法律の番人、憲法の番人でありますから、非常に正しい御見解を示されたと思います。いまおっしゃったような他の基本的人権、自由とか、そういう問題と関連のある問題については、ほかのほうが優位を示すこともあろうと思います。また同じようなウエートを持つ場合もあろう。ただ具体的な、普通政策面でいわれている、たとえばさっき言った文教政策であるとか、あるいは貿易政策であるとか、あるいは資本蓄積政策であるとか、あるいは財政硬直であるとか、そういうようないろいろの具体的な政策は書いていないわけであります。したがって、具体的政策としては社会保障は最優位、一番先に強力にやらなければならない問題だということの理解が正しいと信じます。  そこで、もう一回法制局長官に伺っておきたいと思いますが、これはみんな御承知のことでございますが、大事なことでございますからもう一回ひとつ、私も知っておりますけれども、長官から確認をしていただきたいと思います。  憲法第九十九条の規定について、それを読んでいただいて、そしてそれを確認をしていただきたい。
  265. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 九十九条はただいまも御指摘がありましたように、きわめて重大な規定であることは仰せのとおりでございます。「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」という規定が御指摘の規定でございます。
  266. 八木一男

    八木(一)委員 いまの法制局長官の読んだとおりの非常に重大な規定であります。ここで、私もその一員でございますが、国民年金法審議に参画をしておられる方々は、同僚議員はもちろんでございますが、政府委員も全部この範疇に入るわけであります。国務大臣あるいは公務員ということで、憲法の精神をほんとうに尊重しなければならない非常に重い任務を持っているわけであります。したがって、社会保障のうちの重要な問題である国民年金の問題については、私も熱心に、一生懸命に審議をいたしますけれども、その受け答えについては、政府もほんとうに憲法の精神に従って答えてもらわなければならない。これは厚生省だけではありません。特に大蔵省関係の政府委員にあらかじめ申し上げておきたいと思います。そしてまた、この審議がほんとうに円滑にいくように、ぜひ委員長にそういう御配虜を願いたいと思います。それについての委員長——まあいいです。  では、次に、やや具体的に質問に入りたいと思います。これは年金局長答弁でけっこうでございますが、国民年金関係の本年度の予算が、拠出制年金では昨年度に比して何%予算が増大になっているか、福祉年金では何%予算が増大になっているか、私自身計算はいたしました。しかし、不正確だといけませんから、国民年金局のほうから局長の御答弁をいただきたい。計算が時間がかかれば私から申し上げます。
  267. 伊部英男

    伊部政府委員 国庫負担は、拠出制年金福祉年金合わせまして四十三年度が千三十億円でございます。これが四十四年度におきましては千二百億円、四十五年度におきましては千五百二十億円の見込みでございます。四十五年度はこのまま平年度化したという仮定でございます。
  268. 八木一男

    八木(一)委員 質問に答えてくださいよ。パーセンテージを聞いているんですよ。質問妨害をしてもらっては困るよ。
  269. 伊部英男

    伊部政府委員 福祉年金の額は四十三年度六百億、四十四年度六百七十億でございますので一一・六七%の増加でございます。
  270. 八木一男

    八木(一)委員 それから拠出制年金……。
  271. 伊部英男

    伊部政府委員 ただいま計算いたしておりますので——お答え申し上げます。
  272. 八木一男

    八木(一)委員 私はこの資料で計算しているんですよ。あなたのほうの資料があるんだ。けつから二番目……。
  273. 伊部英男

    伊部政府委員 拠出制の国庫負担の増加率は一九・四%でございます。福祉年金の増加率は一一・三%でございます。訂正させていただきます。
  274. 八木一男

    八木(一)委員 ちょっとその資料を戻してください。私と食い違う。——けっこうです、もうこんなこまかいことは。とにかく全部合わせてどのくらいの率ですか。
  275. 中村一成

    中村(一)政府委員 拠出制の国民年金の歳入の伸びでございますが、これはパーセントで二三%の伸び、それから歳出が一六%の伸びでございます。
  276. 八木一男

    八木(一)委員 これは厚生省資料なんですがね。国民年金給付費というのがあるのですが、この資料の一〇ページです、それが、四十三年度が七十六億——これは給付だけです、国庫負担積立金じゃないですよ。それから四十四年度予定額というのが八十六億、そして差し引き増減額が十億という資料、本年の社会保障制度審議会のときに厚生省からいただいた資料です。この一〇ページです。ありますね。——もうよろしいです。私のほうで言います。もういいです。いま給付で言ったのですよ。国民に拠出制年金でどれだけ国のお金が渡ったか、それから福祉年金でどれだけ渡ったかというようなこと、片方の福祉年金のほうは、御返事は幾ぶん誤差がありますけれども、一一%強ということは間違いありません。それから給付のほうは、拠出制年金では、私の計算では一三%強であります。国庫支出としても、これは積立金になるだけで、国民には渡っていないわけです。国民に渡った額の率は、昨年に比して本年度は、片方が一三%増、片っぽが一一%増であります。  ところで、それに関連してでございますが、本年度予算の昨年度予算との比率ですね、何%伸びているか。これも私計算いたしましたけれども、計算が違うといけませんから、主計局次長、主計局長来ていないから次長でよろしいですから、ちょっとパーセントだけおっしゃってください。
  277. 船後正道

    ○船後政府委員 四十四年度の一般会計予算の対前年度予算に対する伸び率は一五・八%でございます。
  278. 八木一男

    八木(一)委員 そこで、国民年金について非常に一生懸命やっているようなことを厚生省当局なり関係者は言っておられるようでございますが、そのような、予算の伸び方よりも国民年金の給付の伸び方のほうが少ないという状態湾あります。これは予算ではっきりとそういうことが示されているわけであります。で、今度の国民年金法はかなり踏み切って出されているようでございますが、毎年の予算面でこうういうように伸び率が少ないということでは、国民年金並びににその他関連の年金制度発展がないと思います。厚生大臣の御見解を伺っておきたいと思います。
  279. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 年金改正は、まだ実施をいたしますのは、無拠出年金にいたしましても本年の半ば以後でございます。拠出年金は、まだ今回の改正は本年の支給額には影響をしない、そういった関係から、一般会計の予算は伸びておりましても年金支給率は伸びない。御了承を願いたいと思います。
  280. 八木一男

    八木(一)委員 年金はどんどん充実していかなければならないわけですから、これは将来においては予算伸び率もはるかに多くなければならない。しかし、年金を受ける必要のあるいまの年寄りとか、あるいはまた障害者とか母子家庭、そういうのがいま現存をしておるわけです。財政規模はそのくらいのパーセンテージで伸びているのに、そのような現在の年金支給を受けなければならない人たちに対処するやり方が、予算伸び率よりも伸びないというようなことでは、いまの年寄りや、いまの障害者や、いまの母子家庭は非常に苦しんでもかまわないということですか。
  281. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 今日の年金制度において国費を保障するというこの制度の立て方では、私は、ただいま申し上げましたとおり、今回の改正も後年度において非常に役立ってくるというわけでございます。ただ、老人に対する福祉施策は、年金制度だけでなしに、いろいろと他の制度実施をいたしておりますから、たとえば老人の特別な養護対策といったようなもの、こういうようなものにつきましては本年は相当の伸びを示しております。
  282. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣がそんな消極的な考え方では困りますよ。老人対策は年金だけではない、わかり切った話です。ほかのものもどんどん伸ばさなければいかぬ。障害者対策も年金だけじゃありません。施設もふやす、従事者の待遇もよくして、ほんとうにいろいろな人たちがよくなるようにしなければならぬ。あるいは教育もよくなるようにしなければならぬ。就職対策もよくできるようにしなければならぬ。あらゆるものがありますけれども、そういう問題についてはすべて伸びていかなければならない。伸ばしていかなければならない。その中の年金というかなり重要な部分について、予算のワクの伸び方よりも少ない、そんなことを平気な顔して、あたりまえな顔して答弁されるのでは、厚生省を預かっておる精神が疑わしいです。ぼくは、斎藤さんはまじめな方だと思っています。だけれども、その補佐をする人もほんとうにいかぬです。この前の予算要求前は斎藤さんおられなかった。年金局長やほかの局長は、一体何をしておる。予算の全体の伸び率よりも社会保障に関するものが伸び率が少ないというようなことは、憲法の精神の違反でありますよ。何をしておる。局長から答えてください。
  283. 伊部英男

    伊部政府委員 ただいま大臣から御答弁がございましたように、両年金制度改正法案の施行時期がそれぞれ異なっておりまして、やはり年金に対する国庫負担といいますものは、全体を含めて考える必要があろうと思うのでありますが、厚生年金及び国民年金並びに福祉年金を加えてみますと、四十三年度は千三十億円、それに対しまして四十四年度千二百億円でございます。四十四年度は厚生年金が十一月からの実施でございます。この改正法がはね返ってくるわけでございますが、さらに国民年金は四十五年の七月の実施でございます。そこで厚年法が平年度化し、国民年金が七月から実施されると、その要素を入れまして、厚生省の見通しでございますが、千五百五十億円程度、この場合は四十五年度に行なわれるであろう福祉年金の改定を見込んでおらないのでございます。さらに、両制度が完全に平年度化いたします四十六年度は千六百億円を上回る見込みでございまして、年金に対する国庫負担も両制度改正によりまして今後急増してまいるということが見込まれる次第でございます。
  284. 八木一男

    八木(一)委員 一つも反省なしに将来の金額を述べて宣伝するような、そういうことでは、ほんとうに年金をよくしようという気持ちがないと認めざるを得ない。何といったって、あなた方が言うことぐらいぼくらもわかる。宣伝じゃない、ほんとうに反省をして、年金予算をふやすという覚悟のもとに答弁をしなければいけないと思う。  そんなことだったら、これを忘れておるかもしれない。昭和三十七年八月に社会保障制度審議会で「社会保障制度の総合調整に関する基本方策についての答申および社会保障制度の推進に関する勧告」というものがありました。この勧告については各局長が、いつも新しく就任された厚生大臣に説明することを、怠慢に次ぐ怠慢で怠っておりましたので、毎回それを説明しなければいかぬということを申し上げてありました。その説明を厚生大臣は受けられたかどうか。みずから勉強されたか。局長がそういう説明をしたかどうか、伺っておきたいと思います。厚生大臣どうでしたか。その内容じゃないですよ。その説明を受けられたかどうか聞きたい。
  285. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 いろいろ説明を聞きましたし、また私もいろいろものを読みましたが、いま御指摘のものはどうであったか、ちょっと記憶を喚起いたしたいと思って、現物を見たいと思います。——残念ながら、まだ見ておりません。
  286. 八木一男

    八木(一)委員 率直な厚生大臣の御答弁、その率直性については敬意を表します。  年金局長以下、実に怠慢であります。指摘されないんじゃなくて、これは説明しておかなければならないということを各局長に何回も言っているのに、厚生行政を推進される最高の責任者をつんぼさじきに置いておる。そんなことはほんとうに許されないことです。厚生大臣は、厚生大臣をほんとうの意味で補佐をしていないこのような各局長について、一体どういうふうに処断をされますか。
  287. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 今後十分補佐をしてくれるように指導をいたしたいと思います。
  288. 八木一男

    八木(一)委員 御答弁は非常に不満でありますけれども、これはまた後の問題で処断の内容について伺いたいと思います。  国民年金に私非常に血の道をあげています。熱心ですから、もっと本論を進めたいと思います。  そこで、社会保障制度審議会のこの答申、勧告には試算表がついておったということを、年金局長は御承知でございましょうか。
  289. 伊部英男

    伊部政府委員 この勧告が提出されました際、参考の文書として提出されたように承っております。
  290. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣、実はこの答申に試算表というものがついておった。昭和三十六年から昭和四十五年までの間において、あらゆる社会保障部門で、そのときの経済見通しのもとに、国民所得がどう伸びるか、予算がどう伸びるかということを書いて、その時点で、最終年度でこうあらねばならないという金額まで載っているわけであります。ただし、経済情勢の見通しは、その当時の経済企画庁の見通しや何かを使われました。経済企画庁の見通しもしばしば狂っておりますから、それから少しずつ違っております。しかし、これは修正して計算ができる一わけであります。  そこで、そのときの試算では、昭和四十五年において租税収入等が四兆六千四百九十億円になるという推定のもとに、——いまだいぶ違っておりますね。そういう推定のもとに、そこで国民年金の国費は千五百二十億円にならなければならない。これは最低の基準であります。ただし、租税等の収入というのは大体予算総額とマッチする金額、でございますから、いまの予算総額でこれを換算すれば、おのずから千八百億円というような支出にならなければならない。それといまの数字とはかなり大きな隔たりがあるわけであります。厚生省年金についての計画をつくられるときに、またその計画大蔵省に積極的に同意をしてもらって閣議の中できめるためには、これは非常にりっぱな資料であります。  しかも制度審議会のこのときの会議は、私も参加をしておりましたけれども、非常に熱心な会議でありました。総会が十六回、全員委員会が三十六回、各種の分科会を数十回持っている。しかも、各種の委員会や総会は、一時半から始まって、場合によって十時までやったことがしばしばあるわけであります。ちょろっと三十分ぐらいでいいかげんな論議でやめる会議ではない。社会保障の非常な権威者である大内兵衛先生や、あるいは方々の審議会で指導的立場を発揮しておられる今井一男君や、あるいは近藤文二君や、あるいは末高君や、そういう学者が熱心にその百回に余る会議に参加しておられる。もちろん厚生省も、事務次官はこのとき太宰君だったと思いますけれども、太宰君が参加をしておりましたし、またそのときの局長山本君かだれかで、後の厚生省の指導者になられる方が事務局長におりました。そういう厚生省の関係の方は、全部知っておらなければならないことであります。  そういうようなりっぱな材料があるのに、これを使おうとしない。非常な怠慢であります。このとき、昭和四十五年が終点でありますけれども、この終点のところの国庫負担の比率をいいますと、社会保障は、予算全体の二七%はこの時点に達していなければならないということになっておるわけであります。ところで、予算全体における社会保障費の比率は幾らになっているか。−大蔵省の鳩山君まだ来ないのですか。委員長、約束に従ってすぐ呼び出してください。
  291. 森田重次郎

    ○森田委員長 いま要求いたしております。
  292. 八木一男

    八木(一)委員 大蔵省のほうから、政務次官でも、主計局次長でもけっこうですが、お答えを願いたいと思います。
  293. 船後正道

    ○船後政府委員 一般会計でございますが、四十四年度予算における社会保障関係費のウエート、シェアでございますが、一四・一%でございます。
  294. 八木一男

    八木(一)委員 前年度は何%でしたか。
  295. 船後正道

    ○船後政府委員 四十三年度は一四・〇、四十二年度は一四・六%になっております。
  296. 八木一男

    八木(一)委員 いまのお話にありましたように、一四%台を低迷いたしております。一昨年から昨年に関しては、がさつと落ちました。本年の比率は、一昨年の比率よりも少ない。一向にその比率が伸びようという方向を示していない。制度審議会のこの最低の要件、比率ですから、金額と関係ありませんから、当然この比率はいまのものでも通用いたします。昭和四十五年度において総予算の二七%を占めるべし、これは最低のものとしてつくられた、この勧告を実施するための財政計画として出されたものであります。そういう大事なことを一つも各局は援用しない。こういう大事なことがあるのに、厚生大臣に説明もしない。そういうことのために厚生行政が停とんいたしております。社会保障制度審議会の多くの先輩の人が一生懸命やった、方向を出したことが、主管官庁で活用されなかったら何をしたかわからないことになる。そういう方向なんです。いまからでもすぐこの年金法案を停止しても、この方針に従ってこれを組みかえなければならないぐらいのものであります。厚生大臣は即刻この試算表を御検討になって、国民年金審議、あるいはほかの社会保障審議について、これを強力に活用されるおつもりになられているのかどうか、伺っておきてたいと思います。
  297. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 即刻に、強力に勉強をいたしたいと存じます。しかし、それかといって、すでに通りました予算の組みかえということは、本年といたしましては不可能でございますから、来年度予算におきましては、できるだけ努力をいたしたいと思います。
  298. 八木一男

    八木(一)委員 御質問申し上げないことまでおっしゃいました。そんなことはおっしゃる必要はございません。それは、予算については補正予算という方法もあれば、米価の問題で予備費を使われたような経験もあります。また審議について、ことしはできなくても来年は組むというやり方で、法律にそういう方向を示すということのやり方もあります。ここにおられる自民党の先生方は、そういうことについては十分知悉をしておられます。私どもも研究をしております。示した方向にについてやる方法はあるわけであります。別に予算大蔵省がいるのですから、そんなことを御心配にならなくていいです。そういうことであります。  ところで、こういうことについても前から厚生大臣によく申し上げ、あるいは労働大臣やほかの大臣にも申し上げているけれども、こういう結果になることについては、一つの具体的な要因として、毎年予算要求のときに各省の予算を一省二五%までにとどめてくれというけしからぬ要求が、大蔵省の主計局あたりから出て、閣議でそういうつまらぬ方針を決定するということに大きな要因があります。予算は全部総ワクの中に入れなければならないことは確かであります。最終的にいろいろな点で急ぐものを先に入れ、ゆっくりしていいものをあと回しにする、大事なものをきっちり入れ、その次のものを少し削減をするというような操作をしなければならないことは明らかでございますけれども、そういうように最初に二五%の要求に押えるということは、最終的な問題じゃなくて、国政のアクセントを消すことになるわけです。  たとえば伊部君が、さっきからだいぶ何といいますか、大仏さんみたいに意欲を示さない答弁ばかりしておりますけれども、もしその心の中に年金局長という烈々たる精神があったとしたら、もっと要求をしたいでしょう。ところが保険局のほうでも金が要る、社会局でも金が要る、公害部でも金が要るというようなことで、厚生省の中で要求を押えなければならないということになるわけです。ところが年金も、医療保障も、あるいは公害対策も、老人の一般的な対策も、障害者対策も、ガンの対策も、ありとあらゆるものが厚生省は大事なものばかりなんです。しかも、全部金をかけなければ実施ができないものばかりなんです。その厚生省で、一省について二五%に一次要求を押えられたならば、各局の要求をみずから押える、また各局は各課の要求をみずから押える。大蔵省は、そういうふうに各省の要求を押えたら操作がしやすいでしょう。しかし——鳩山君、まだ来ないですか。鳩山君に聞かせなければならなない。呼んでください。——大蔵省の人たちは、それは仕事は楽でありましょう。しかし、それでは国政のアクセントが消えて、大事な政策がストップをする。社会保障の問題なら、どこの局でも問題によっては八割、九割の増大があってもしかるべきであります。新しく出る公害の問題だったら、前年度予算のこれが五十倍になったってちっとも差しつかえない。そうしなければならないものがある。ガン対策なんかぼやぼやしておるから——ガンをほんとうに撲滅するだけの体制にしたら、いまの予算の百倍ぐらいにしたら、日本国民は将来において大きく助かる。そんなものを二五%に押えるから、国民がほんとうに健康を保てる状態をつくり出すすことができないということになる。そういうようなとんでもない予算編成方針をやっているところに非常に問題があるわけであります。  厚生大臣は断じてこのような閣議決定をさせない、このような主張をされ、もし閣議で無理やりにでも決定をさせられようとしたら断固として抵抗をする。職を賭してでも抵抗する。それが多数決できめられるのだったら社会保障を担当する厚生省を担当することはできません、それを天下に公表をして、佐藤内閣総理大臣に辞表をたたきつける。このぐらいの勢いでやらなければ——大蔵省とか、主計局というところは、変な実際上の権力を持っておる。その変な実際上の権力のために国政のアクセントが消え、ひん曲がるということを直すことはできないと思う。  そこで、厚生大臣のその意味の決意ありやいなや。そして年金制度をはじめ、いろいろなものをほんとうに国罠の要望に沿うように前進をされる決意があるかどうか、前向きの決意を伺っておきたいと思います。
  299. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 予算委員会の際に、その御意見をとくと拝聴いたしました。大蔵大臣も同席をしておられました。私は厚生行政を遂行するために非常な決意を持って臨みます、手段、方法はおまかせをいただきたい、かように申し上げております。
  300. 八木一男

    八木(一)委員 そのように厚生大臣が決意をしておられるのですから、各局がへっぴり腰では何にもならぬわけです。こんな二七%の平均要求もできるのですから——年金局では二七%の増じゃないでしょう。予算の二五%ぐらいは来年度はとるのがあたりまえだというりっぱな一つ資料があるのだから、それをもとにして、いま一四だったら二七に、全部厚生省予算は比率にして、前より倍に、金額にしては十割増し以上にしておくればせながらやっと追いつくのです。そのくらいの決意でやっていかなければならないし、厚生大臣がそういう決意でも、年金局がこんなちびったような計画を出しておるのじゃちっともものが進まない。年金局も心を入れかえて、来年度はそういう予算要求をする、したがって、これからの問題についてもその意味答弁をする、その意味で考える、前向きの姿勢で問題を推進する決意を披瀝するという覚悟でなければならないと思う。年金局長のずばりとした答弁を求めたい。それを答弁できないようだったら、年金局長にはもう質問しません。全部厚生大臣にします。あなたは答弁する資格がない。
  301. 伊部英男

    伊部政府委員 八木先生の国民年金改善に関する御熱意には、かねて深く敬服いたしておるところでございまして、毎国会御指導を受けつつ、国民年金の改善をいままで果たしてまいったわけでございますが、今後とも御趣旨を体しまして改善に努力したい、かように考える次第でございます。
  302. 八木一男

    八木(一)委員 鳩山君まだ来ないのですか。——あとでまた大蔵大臣と鳩山君か来たら同じ質問をいたしますから、その点は保留しておいて、大蔵政務次官と主計局次長に、いま論議をされたことは、聞いておられて、頭のいい方ですから理解をされたと思う。そういうふうな国政のアクセントをつけることを消さない態度で、社会保障が伸びるように、いままでのそのような間違った、二五%に第一次要求を押えてくれという、大蔵省だけが事務的に楽で国政がひん曲がってしまうような不当なことを一切出さない、そういうことを大蔵大臣に言わせない、大蔵大臣が言ったら、それは間違いです職を賭しても、それを諌止する、そういう決意でなければならないと思うのです。大蔵政務次官と主計局次長の答弁を伺いたい。
  303. 上村千一郎

    ○上村政府委員 八木先生が社会保障制度審議会の審議の過程におきまして、いろいろと御熱心であったことは、私、当時総理府におりましてよく承知をいたしております。社会保障が非常に重要なものであるということは、これは先生御主張のとおりだし、また法制局長官もお述べになったとおりだと思うのであります。そんなふうで、いまいろいろと御主張になっておられることはよくわかるわけです。厚生省ともよく御相談をしまして、そうして善処していきたい、こう思っております。
  304. 八木一男

    八木(一)委員 船後主計局次長に。
  305. 船後正道

    ○船後政府委員 各省の予算概算要求の際に、閣議でもって一応要求額の上限、最近は二五%でございますが、これを閣議できめております趣旨は、毎回申しておりますように、やはり財政支出の優先度を要求段階で各省が判断しつつ、要求を重点的に整理していこうという趣旨でございまして、決して主計局が手を抜くとか、あるいは仕事が楽になるからとか、こういったものでないわけでございます。したがいまして、各省におかれましては、この範囲内でもって重点施策に対しまして、それぞれ重点をつけて予算要求をされるわけでございますが、ただいま問題になっておりますこの年金の問題、これは国民年金も厚生年金もひっくるめまして、今後のわが国社会保障を充実する上の非常に重要な課題でございます。ただいま伊部年金局長から厚生省の考えのお示しがありましたけれども、われわれも年金の充実につきましては、今後ともできる限りの配慮をしてまいりたい、かように考えております。
  306. 八木一男

    八木(一)委員 後段はいいですけれども、前段は少し答弁がぼやけている。経過を述べられたのですが、各省に重点というのですけれども、重点をつけてもいいですよ。予算のワクを取っ払ってて——ただ、国民年金については三十割増しの要求がある、医療保障については五十割増しの要求がある、公害については百割増しの要求がある、その中で重点をつけてもいいですけれども、二五%というような制約をつけては国政のアクセントが省内で消えてしまう。厚生省だけではありません。たとえば交通災害をなくすための運輸省の政策にも大事なものがあります。労働省の政策にも大事なものがある。そういうことを第一次要求で制約してはならない。最終的には予算の中におさめなければならないから、そこで重点は閣議で相談されることになろうと思うけれども、主計局は、操作はめんどうくさくても国民のために——サボタージュする気かあってああいうことを提起したわけではないだろうと思うけれども、具体的には主計局のサボタージュによって国政のアクセントが消えている。そういうつもりでないならば、みずから二五%でとどめてほしいというようなことはやめにして、全省、全庁、全局から予算が出て、その中でほんとうに重点であるものについて内閣の中で御相談になって、順番をつけてそうして総ワクに入れる、そういうことをされなければならないと思う。次長の答弁は、その点について前段はぼやけていると思います。年金については熱心にやると言われたことはけっこうであります。年金だけではありません。社会保障全体もそうであります。社会保障だけではありません。交通災害対策も大事なんです。公害対策も大事なんです。全部大事なことがある。大事なもののアクセントを消さないように、大蔵省が、そのような自分の省、局だけがやりやすい方向と各省に押しつけてはならないということについて、いま大蔵政務次官が言われたとおりにやられるということを主計局次長は答えられなければならないと思う。もう一回答えてください。
  307. 船後正道

    ○船後政府委員 国の予算に盛られております施策は、どれをとりましても重要でないというものはないわけでございます。それぞれ所管の各省におかれましては、非常な熱意をもって要求され、その実現につとめているわけでございます。  そこで、私どもが概算要求の際に、各省ごとに対前年度の何割増しという上限を閣議でお願いしております趣旨のものは、やはり各省も概算要求の段階におきまして、各省内の施策の重点というものをしぼって合理的に予算を編成していくという趣旨で現在まで参ったわけでございまして、来年度の予算がどういうことになりますか、これは現在申し上げる段階でもございませんけれども、やはり予算は重点的に、合理的に編成していこうという趣旨にいずるものでございますから、やはり今後もそういった方向でもって予算の編成につとめていきたいと思います。
  308. 八木一男

    八木(一)委員 そういった方向というのはどういうことですか、抽象的でわからぬ。
  309. 船後正道

    ○船後政府委員 概算要求の上限をどうするかということは、毎年度、毎年度の予算編成の方針でございますので、四十五年度予算がどうなりますか、これは私が現在申し上げる段階でもございません。ただこういつたことをいたしております趣旨は、やはり予算を各省の要求段階から重点をしぼって合理的に編成していこうという努力でございますので、私どもこういった努力は今後とも続けていかねばならない、かように考えておる次第でございます。
  310. 八木一男

    八木(一)委員 これはとんでもない話です。いまの論議なり、それから予算委員会なりで質疑応答せられて、そしていま大蔵政務次官の答えられた趣旨とあなたの言っておられることは違うと思う。  あなたは主計局という予算編成の現場の最高の責任者でないけれども、一部の責任者であるから、苦しいことは苦しい、しかし、この局の方針が、国政全体について誤らすことがあるとしたならば、どんなに局が苦しくてもそのことを改めていかなければ、りっぱな国家公務員とは言えないと思う。ほんとうの責任を果たしていると言えないと思う。ですから、これについてはそういう心がけを改めていただかなければならない。  政策については重点的にしなければならないことばわかります。重点的に予算の中におさめなければならないことはわかる。そのことは申し上げているわけだ。それを各省別にそのような金額に二五%という制約をつけることによって、各省の各局全部緊急にして二五%という増大では、国民の要望に対処できないような省がある。それを一省の自縄自縛で、年金に力を入れれば医療保障を押えなければならない、医療保障に力を入れれば公害を押えなければならないというようなことになってはならない。政府全体で公害、あるいは医療保障、あるいは年金が大事なら、その三つ政府全体の中で最重点になることもあるようにならなければならないと思う。ほかの省にも大事なものがあるでしょう。ところが厚生省でこのように中で重点ということで押えられて、二五%で押えられたら、ほんとうは一〇〇%、二〇〇%増大しなければならない問題でも、自分で省内で押えなければならない。それを各省各局の予算が全部出てきて、その中で、ことしは厚生省要求ばかりだけれども、その医療保障も、年金も、公害対策も、これはほかの省のほかのものより最重点である、一、二、三、四と厚生省が入る、次に交通対策が入るという場合もあってしかるべきである。また社会保障が完成した暁においては、ほかの省の政策が一、二、三、四というようなところをとって、一省でも大事な省があれば、そこの各局のものが一位から五位まで占めて、厚生省が十五位くらいになることがあっても仕方がない。それを各局の中で押しつぶしてしまうということは国政のアクセントをなくす問題である。各局がでてきてもあなた方がしっかりやれば、それをほんとうの国政全体の重点といえども、順番をつけることが、各省との話し合い、また閣議においてできるはずである。それはめんどうな仕事でしょう。めんどうな仕事だからといって主計局だけの都合で、主計局が大蔵省を動かして、大蔵大臣が実力大臣として内閣を動かして、国政のアクセントを消すというようなことは、ほんとうの政治の上においては重大なマイナスを来たす。主計局だけの立場で国政をひん曲げるということは許されないことです。それは考え直してもらわなければならない。財政だけが国政ではない。しかも財政を軽視しているのではない。財政のワクにおさめることはしなければならないということを言っている。方法だけなんです。各省で詰めて、いいかげんにしてアクセントをつけてあなた方は操作をすれば楽でしょう。全部出して操作ができないはずはない。できないで、人員が足りなかったら、みずから人員の要求をすればいいのだ。そんなふうなサボタージュ、ストライキですよ、あなた方は。国政はあなた方主計局員のサボタージュでひん曲げられたら、たまったものじゃない。このような考えを改めていただかなければならないと思う。もう一回答弁
  311. 船後正道

    ○船後政府委員 概算要求時に各省はその要求のワクの中で、それぞれいろんな施策の中にその重点をつけて御要求をされるわけでございます。ですが、やはり予算を、各省のほうでまず要求段階から、重点的な御配慮というものが必要だろうということから、ただいまのようなやり方でもって予算編成に当たっておるわけでございますが、決してこれによりまして私どもの手を抜くとかそういったことではないわけでございますので、御了承願いたいと思います。
  312. 八木一男

    八木(一)委員 一番最後何とおっしゃったのですか、聞こえません。
  313. 船後正道

    ○船後政府委員 各省ごとにその要求のワクの中で、施策に重点をつけて御要求されるということが、やはり予算全体の編成の合理化に最も役立つということから、最近のような要求ワクに対前年度ワクの何%という上限を付することになったのでございますので、決して大蔵省が、あるいは主計局が手を抜くとか、そういったものではございません。あくまでも予算は各省とまた財政当局も一緒になりまして、最も重点的かつ合理的に編成されるという趣旨のものでございます。
  314. 八木一男

    八木(一)委員 船後さん、私個人的によく知っていますが、頭のいい方で誠実な方だと思っておるのですけれども、それでもあなたは主計局の概念から離れ切れない。あなたは国家公務員ですよ。いま主計局の一部を預っておられるかもしれないけれども、国政全体のことについてあなたが積極的に発言する責任がないかもしれないけれども、あなたの主計局という範疇で国政全体をブレーキをかける権限はないはずです。アクセント、重点をつけてはいけないと一つも言っていないのですよ。予算の総ワクに入れてはいけないと一つも言っていない。ただ各省の第一次要求にワクをつけるのがいけないと言っている。頭のいい方だから、それがわからないはずはない。ただ主計局のいままでの、われわれに言わせたら横車という伝統をはずしたくない。主計局の一員としてこういうことや、そういうこと、主計局から見て後退したことを言ったら、主計局の中でまだそういうことがわからない連中が、主計局の方針が曲げられたといって文句を言うだろう、そういうことが影響をしていると思う。そういうことではならぬと思う。閣議できめることで、いま大蔵政務次官は、あなたの答弁よりもずっと前向きの答弁だった。大蔵大臣もそうである。あなたは私の言っていることがわからないはずはないと思う。重点をきめていけないと言っていない。総ワクに入れていけないとは言っていないんだ。各省別のワクはいかぬということを言っているわけだ。そんなことは一わからないはずはないと思う。主計局の一存で国政を曲げることを続けようということをやられるようだから、これは重大なことですよ。そういう考え方を改めていただきたいと思う。
  315. 船後正道

    ○船後政府委員 決して主計局の都合でさようなことを申し上げているわけではないのでございます。毎年度、毎年度、予算編成いたします際には、閣議によりまして各省の要求ワクを、前年度何%の範囲内にしようということが決定されまして、それに従いまして各省から具体的な要求があり、予算編成に入っていくということでございますので、私どもがこれを無理押ししておるとか、決してそういうものではございません。
  316. 八木一男

    八木(一)委員 方針は閣議できめられるのでしょう。その提起はだれがするのですか。大蔵大臣でしょう。それについて伺いたい。
  317. 船後正道

    ○船後政府委員 予算編成に関する問題でございますので、大蔵大臣がこの問題を提起するわけでございます。
  318. 八木一男

    八木(一)委員 予算編成について、これを補佐するのは主計局でしょう。違いますか。
  319. 船後正道

    ○船後政府委員 そのとおりでございます。   〔委員長退席、谷垣委員長代理着席〕
  320. 八木一男

    八木(一)委員 したがって、閣議で提起をされるのは大蔵大臣、補佐するのはあなた方、主計局の人。大臣は一年か二年ごとにかわられますよ。ところが、この方針は十年近くになりますが、踏襲されているのは、主計局がそういう考え方を持っているからだ。だから、主計局の考え方で国政のアクセントをつぶしているわけです。主計局の人は頭がいいことで有名ですから、そんなことを言ったって、われわれその中でアクセントをつけていると反論をしたいかもしれません。しかし、それはそのワク内のアクセントです。そういうことではいけないと思う。エリートで有能な官僚で、大事な仕事をしておられることは認めます。しかし、それだからといって、非常な権力を持って、主計局のやり方で内閣をゆり動かす、国政の方向まで支配する、そういうことは許されないことです。あなた方は国民の税金を、いろんなところに配合する事務を扱っているだけで、国政のアクセントを消すような権限はあなた方にはないはずだ。そのような反省をしてもらわなければならないと思う。答弁を求めます。
  321. 船後正道

    ○船後政府委員 先ほど来申し上げておりますように、予算はもちろん重点的に合理的に編成しなければなりませんし、そういった問題は、各省が概算要求の段階からそれぞれ問題点を整理していこう、こういった趣旨から、従来二割五分増しといったような閣議の決定が、毎年度予算編成時に行なわれておるわけでございます。私、先ほど来その趣旨をるる申し上げてまいった次第でございます。したがいまして、各省予算ひっくるめましての総ワクに対しましての率でございますから、やはり一般会計全体の伸び、財源の伸びその他から勘案いたしまして、各省におかれましても、その範囲内で十分アクセントをつけた要求をされることが可能でございます。また従来も、そのような要求があったわけでございます。決して各局がそれぞれ一律に二割五分だとか、そういった要求ではなかったわけでございます。
  322. 八木一男

    八木(一)委員 各局が二割五分という要求ではありません。そんなことは知っております。しかし各局が、たとえば予算の額との比率ですか——比率だけではいきませんけれども、非常に急激に対処しなければならないで、予算を二五%以上、各局か各課か、そういうことをしなければならないときには、ほかの局のほかの課が、あなたのやり方でいくとそれだけへっ込まなければならないということになるわけです。  もう年金審議に移りますから、この問題はあとに譲りますけれども、こういうことですから、委員長、鳩山君が来ないということでは困る。主計局の次長は有能な公務員だということですが、別な方面で有能なことは認めます。しかし、これは次長ですからね。主計局長が来なければ困る。かけ足で来ることを要求しておる。こんなにのろのろして、はってきてももう到着するはずです。
  323. 谷垣專一

    ○谷垣委員長代理 要求いたします。
  324. 八木一男

    八木(一)委員 要求するだけじゃなくて、しかってください。こういうところに主計局の独裁があるのです。国会で委員長があれだけ努力されても来ない。主計局はなめているのです。国会議員なんかどうでもいい。内閣なんかどうでもいい。予算をほんとうに握っておるのはわれわれだという思い上がった考え方がある。委員長から厳重に、ほんとうに十分以内に到着しなかったら内閣に申し入れて、そのような不当なやり方についてどう対処されるか、要求していただきたいと思います。
  325. 谷垣專一

    ○谷垣委員長代理 努力をいたします。質疑を続けてください。
  326. 八木一男

    八木(一)委員 その意味で、大蔵大臣はもう会議は終わったと思う。福田君に来てもらわなければ困る。いまの次長の話が、もう少し問題がわかった話ならいいけれども、主計局の責任者にこういう一つの考え方が底流している。あれだけ理を尽くしても、主計局のいままでやった立場を守り抜こう、がんばり抜こうという考え方がある。そうならば、大蔵大臣にもっと決心を強めていただかなければならぬ。それがあって大蔵大臣要求した。大蔵大臣はほかの委員会が済んだらすぐ飛んでくるはずです。ほかの委員会はまだ続いているのかどうか。
  327. 谷垣專一

    ○谷垣委員長代理 八木君に申し上げます。  大蔵大臣は、いまインドネシアの副総理と会談をいたしておりますので。
  328. 八木一男

    八木(一)委員 それは何時何分に終わりますか。
  329. 谷垣專一

    ○谷垣委員長代理 ちょっとそこは確かめておりませんが、いま会議をいたしておりますので、御了承いただきたいと思います。
  330. 八木一男

    八木(一)委員 委員長代理が委員長に交代しておられますけれども、さっきからさんざんぼくらわかりよく言っておるのです。最初から、来られなくても、主計局長がいなくても、大蔵大臣がいなくても、年金審議を始めているのです。それだからといって、その間に、いなかったら来なくてもいいだろうというようなことを思っておられるとしたらたいへんだし、思っていられないとしたら、いまごろそういう御連絡があるはずがないし、何時くらいに来るというくらいは……。
  331. 谷垣專一

    ○谷垣委員長代理 先ほど来努力をいたしております。今後なお努力をいたします。質疑を続けてください。
  332. 八木一男

    八木(一)委員 それから政務次官に申し上げます。鳩山君の来ないことについて、早く来なかったら、この問題は大蔵省の中の重要な問題としてもらわなければならぬ。  また国務大臣である斎藤さんに申し上げておきたい。このような国会無視の国家公務員がいるということになれば、内閣の閣議でこれを処理してもらいたい。それについての国務大臣としての御答弁を伺いたい。
  333. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 八木委員の御趣旨を十分お伝えいたしたいと思います。
  334. 八木一男

    八木(一)委員 いまの質問は、大蔵大臣または主計局長が来るまで——上村政務次官がおられるのにたいへん失礼で申しわけありませんが、政務次官の御答弁は大体満足なほうですから、大蔵大臣と主計局長にこの問題をあとで繰り返します。  答弁が非常にかたくなであったり、あるいは年金局の調査が時間がかかったり、大臣が来なかったり、そういうことで、私の心に反してたいへん時間が空費しております。これから実際的な話に入っていかなければならない。すぱっと来てすぱっと答弁すれば早くいくのに。(「心にもないことを言う。」と呼ぶ者あり)ほんとうに心にないことじゃないのです。  それではいまの御度審議会の答申、勧告の中に、いま見られましたからおわかりだと思いますけれども、三つの公準があります。その中で社会保障重要性、一は、「社会保障は、国民生活を安定させる機能をもつとともに、なおそれが所得再分配の作用をもち、消費需要を喚起し、また景気を調節する等の積極的な経済的効果をもつ。この点からいえば、社会保障は、国の政策として、公共投資および減税の施策とならんで、あるいはそれ以上重要な意義をもつこと。これはいろんな人がいましたから、表現は非常にぬるくて、私は非常に不満なんですよ。少なくとも各省の次官やなんかがいて、それから与党の議員の方々も、委員の中で最大公約数としてきまった表現がこうでありますす。次に「国民所得および国家財政における社会保障費の地位については、今後十年の間に、日本は、この制度が比較的に完備している自由主義の諸国の現在の割合を、少なくとも下廻らない程度にまで引き上げるべき」であるということが善いてあるわけであります。これは非常に遠慮した答申であります。さっき申し上げたような構成でございますから、やはり政府についてもだいぶ遠慮をしておられるわけです。そういう遠慮をした答申の中で、「少なくとも」という表現でこれは書かれている。ですから、三十六年を起点として四十五年までに、三十六年のこのような自由主義諸国のところまで最小限度到達しなければいけないということがいわれている。それより上回ることはちっともかまわない、上回ってもらわなければいけないわけです。それで計算したのがさつきのあれです。ですから、これをもとにして予算を、当然の要求を、いままで大蔵省のああいうようなやり方にも制約をされ、その他についても社会保障についての理解が十二分じゃない点についても制約をされて、厚生省や各局が非常にへっぴり腰で要求をしておられると思うのですが、心根を入れかえてそういう要求を出していただかなければならないと思うのです。それについてひとつ決意のほどを伺っておきたいと思います。
  335. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 先ほども申し述べましたように、来年度は厚生省として十分責任の持てる予算要求をいたしたいと思います。
  336. 八木一男

    八木(一)委員 では、国民年金のもっとまん中に入っていきたいと思います。  まず、国民年金法の精神は第一条に具現をされているわけです。非常に大事な条文でございますから、これは年金局長でけっこうでありますが、明快に、皆さまによく聞こえるようにはっきりと読んでいただきたい。
  337. 伊部英男

    伊部政府委員 「第一条、国民年金制度は、日本国憲法第二十五条第二項に規定する理念に基き、老齢、廃疾又は死亡によって国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によって防止し、もって健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とする」
  338. 八木一男

    八木(一)委員 ここで国民年金法第一条にありますように、憲法第二十五条第二項に規定する理念に基づいて国民年金法というものは制定されておる。したがって、憲法第二十五条第二項のそれにあたるところは、社会保障であります。社会保険ではありませんよ。社会保障の理念、それを充実向上をしなければならない理念のもとに国民年金法ができている。したがって、国民年金法の今後の改善の方向については、社会保障の理念に基づいてそれを改善をしていかなければならない、欠陥を埋めていかなければならない、そういうことになるわけです。その点について厚生大臣の、当然同じお気持ちだろうと思いますが御答弁をお伺いいたします。
  339. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 まさしくそのとおりでございます。
  340. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣の明快な御答弁に敬意を表したいと思います。  次に、そこで今度はやや具体的な問題に入りますが、世俗的に、厚生省もそういう表現をしておられますが、厚年が一人で二万円の年金になる、国年は夫婦で二万円になるというような宣伝をしておられるわけであります。したがってみんな、そういうふうに期待をしておるようであります。その中に、ずばりではない点が、この前同僚の山本政弘委員からも指摘をされました。そういうようなたとえば二万円年金といえば、それはいろいろな条件がついているのに、厚年と同じように夫婦でなるのじゃないかというような間違った幻想を与えて、あとで国民に失望を与えるような、そういう表現をなされないほうがいい。そういうような間違った点について、厚生大臣十分御承知だと思うのですが、厚年の二万円と国年の夫婦二万円というのは、条件が非常に違うという点について、厚生大臣から、あるいは年金局長でもけっこうです、明らかにしていただきたいと思います。
  341. 伊部英男

    伊部政府委員 厚生年金は二十七年の歴史を持っておりまして、国民年金はまだ八年の歴史でございます。したがいまして、ここに想定をいたしております二十五年の被保険者というものはまだ出てこないのでございますが、それにおきましては、厚生年金のほうは明年の十一月に支給されるであろう年金の平均を二万円と考えておるわけでございますが、国民年金につきましては制度上の年金、現在三十数歳の方々以下の年金ということになるわけでございます。
  342. 八木一男

    八木(一)委員 もっと親切に説明をする方法はありませんか。私は頭が悪いから一生懸命勉強してきたが、それじゃ足りないことはわかりますけれども、いろいろな関係者がおられるので、違った点がたくさんあるはずです。かってなところだけ述べないで、ずばりほんとうの正体を皆さんにお見せをしなければいけない。
  343. 伊部英男

    伊部政府委員 被保険者期間二十五年の方々が定額部分八千円になります。かつ所得比例部分は四千五百円になりますので、夫と妻、夫が所得比例に入っておるという前提で二万円ということでございます。これらの年金は二十五年後に実現をするわけであります。
  344. 八木一男

    八木(一)委員 ここにおられる委員の方々は全部御研究だから、それでもわかると思いますが、世の中に、そういう妙な宣伝をしちゃいけないという質問から答弁を求めたのですよ。二十五年ということだけではわからぬじゃないですか。厚生年金は二十年で基本金額を出しておるけれども、国年は二十五年ですよ。そういう比較をしなければ、国民はわからなくなっちゃう。そういう点で厚年と同じようなものと思っちゃう。ところが実際は違う。政府はうそをつく、厚生省年金局はうそをつくということになったら困るのです。だから、うそにならないようにはっきりおっしゃい。
  345. 伊部英男

    伊部政府委員 国民年金は資格期間二十五年でございます。やはり年金額を示す場合におきましては、資格期間の一番短い二十五年を基準にして申し上げるのが適当と考えておるわけでございまして、もし四十年を基準にいたしますと、三万二千八百円になります。これも国民年金制度において、今度の改正法案において約束されておるレベルでございますけれども、その場合は二十五年を基準として申し上げておるのでございます。
  346. 八木一男

    八木(一)委員 ほんとうにあなた方頭のりっぱな役人のはずなのに、人をばかにしておるですよ。私の言っておるのを聞いておるのですか。国民にわかりいいように説明してくれというときに、厚年は二十年で平均的にこれも二万円。これもうそですね。ほんとうは二、三年たたなければ二万円にならない。もちろん二、三年後に厚年は二万円になるはずです。それについて国年は二万円にするつもりだけれども、その計算基礎は二十五年だから、二十年払い込みと二十五年払い込みは違いますということを、国民に親切に教えるように答弁をしたらどうかということを言っている。四十年のことなんか聞いてない。ばかじゃあるまいし、四十年のことなんか私も知っている。聞かないことを答弁して審議を妨害することはやめてください。聞いていることをはっきり答弁なさい。不まじめですよ。
  347. 伊部英男

    伊部政府委員 厚生年金は二十七年の歴史がございます。そこで、二十五年の被保険者期間を持っておられた方が現在受給者となって出つつあるわけでございますが、国民年金はまだ八年でございます。したがって、二十五年に該当する方がまだ出ないのでございますが、今回の改正法案におきましては、短い高年齢層の方々につきましても、御承知のとおり非常に優遇をするように考えておるわけでございます。
  348. 八木一男

    八木(一)委員 そんなに厚生省の原案の宣伝みたいなことはやめておきなさい。ずばり言ったらいい。自民党の先生方も、民社党の先生方も、公明党の先生方も、共産党の先生方も、社会党の同僚の先生方も、みんな内容は知っておる。この委員会において、厚生省の宣伝みたいなことやめなさい。  厚生年金については基本的に二十年で二万円に——これは二万円年金は少しうそですが、一年後にする予定です、国民年金も、普通夫婦二万円年金といっておるけれども、厚年との関係とは違って、二十五年払い込んだ人がいろんな要件のもとになるのだ、しかもこれは一万六千円年金だ、そしてそのような所得比例制と称するへんてこりんな年金を設けて、その適用になった人が二万五百円になる、これは保険料を払い込まなければならない、そういう点があるのだということをはっきり言われなければ、国民は何でもかんでも二十五年たったらもらえるだろうと期待して、国民を裏切ることになる。はっきりおっしゃい。もう一回、いま言ったとおりです、先生の御指摘のとおりです、これから言い方を改めますと言いなさい。
  349. 伊部英男

    伊部政府委員 二万円年金は、二十五年払い込んで、さらに夫が所得比例に入った場合を想定をしておるものでございます。
  350. 八木一男

    八木(一)委員 もう年金局長は、ひねくって時間をとるから、厚生大臣に伺います。  厚生大臣、そのほかに違うところあるでしょうう。
  351. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 どうもいろいろと審議をおくらせまして申しわけございません。私は、国民の皆さんに御了解をいただくように、誤解があってはいけないということを十分留意をしてPRをしなければならぬと思います。  二万円年金と申しますが、厚生年金は二十年、国年は二十五年の掛け金を必要といたします、しかもあすから二万円になるように思われては誤解でございますから、国年につきましては、当初からかけておられる人でもまだ十数年要します、かように宣伝しなければならぬと思います。同時に、国年の二万円、二十五カ年の掛け金は、さらに所得比例の三百五十円の掛け金を増してもらわなければなりませんということをつけ加えるほうが親切であろうと思います。そうして同じ年金と申しましても、福祉年金は違いますから、間違いないようにしてください。
  352. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣態度は、ほんとにごりっぱです。年金局長は、こんなりっぱな大臣のもとでひねくれた答弁をしないで、厚生大臣の人格に学んでやりなさい。  ただ厚生大臣一つ抜けたのですけれども、ごりっぱですからこっちから申し上げます。厚生年金はいろいろな付加的なことがありますけれども、基本的には六十歳から開始、国民年金は六十五歳から開始、これが大きく違うということを言っておかないと、何か厚年と同じようになるということになる。六十五歳開始というのは猛烈に違うのですよ。国年のいまの二万円はインチキですけれども、たとえば二万円として計算をすると、六十五歳は厚年の六十歳に換算すると一万二千円くらいにしか当たらないわけですね。それからまた二十年と二十五年を換算すると、一万円くらいにしか当たらないわけです。しかも、これは二万円として計算したので、ほんとうは一万六千円ですよ。だから八千円にしか当たらないわけです。八千円にしか当たらないものを二万円の幻想を抱かせるような宣伝をしておる。こういうように国民を愚弄するようなことはやめたほうがいい。厚生大臣はまじめですから、六十五歳のことを抜かされたが、善意ですから、私はそう文句を言いませんけれども、局長はそんなひん曲がった答弁でなしに、局長なんか六十五歳と六十歳なんかわかっているはずです。それをうそをつかれた。態度を入れかえてちゃんとまともな答弁をなさい。  次に、今度の国民年金法の中では非常に大きな変革がございます。いわゆる所得比例制というものを中に導入しようということ。これは、所得比例ということばは当たりません。何か厚年のまねをしようとして所得比例というけれども、いまの基本的に一段階上の段階を加えるということで、所得純比例ではございませんし、この術語は誤解を生みます。誤解を生んだことばで、それを直そうとすると、所得比例だからこういうようには直せませんというようなとんでもないことにならないように、その内容については十二分な把握をして、その欠点についてお互いに考えあって直していかなければならぬと思います。このようないわゆる所得比例制度という点がありますが、これについてはいろいろな、政令でゆだねられているようですが、どういう人を、どういう方法で保険料を納めてもらうか、それについて厚生省のいまの考え方、これを明らかにしておいていただきたい。
  353. 伊部英男

    伊部政府委員 このたびの所得比例制は、任意加入でございますので、つとめて多数の方々の加入を期待いたしたいと思っておるのでございますが、性質上、やはり所得のない方は除外をして、その他の方々の加入を期待したい。その方法といたしましては、通常の保険料の拠出方法を旨として検討してまいりたいと思っております。
  354. 八木一男

    八木(一)委員 やや抽象的でよくわからないが、結局はどういう人を入れるのですか。その人が入りたいと言った場合に、どういう人はいい、どういう人はいけない……
  355. 伊部英男

    伊部政府委員 なるべく入りたいといった方には入れるように考えたいと思っております。しかし、たとえば若年の任意加入の方がおられます。こういう方々は、国民年金の本来の趣旨からして適当でないと考えておりますけれども、なるべく広く入れたい、かように考えております。
  356. 八木一男

    八木(一)委員 どういうことなんですか。所得のある人ということでやるのですか。その所得というのはどういう点で規定するか、認識をするかということです。
  357. 伊部英男

    伊部政府委員 所得のある方と申しますのは、要するに一銭でも所得のある方、そういう趣旨でございます。そういう方々は入ってよろしいということでございます。
  358. 八木一男

    八木(一)委員 その所得が、勤労所得であろうと、資産所得であろうと、かまわないのですか。
  359. 伊部英男

    伊部政府委員 そのとおりでございます。
  360. 八木一男

    八木(一)委員 そうなると、かりに松下幸之助さんみたいな大金持ちがおられる。大会社の社長ですから、まさか厚年に入るということにはならないでしょう。国年に入っている。その方の奥さんが、みずからの資産を何十億持っていて、資産収入がある。そのむすこさんのほうも、資産収入がある。娘さんのほうもある。お孫さんは年がどうなるか知らないけれども、年齢に達したお孫さんがあるというようなことになると、全部入れるのですか。
  361. 伊部英男

    伊部政府委員 国民年金の加入者でありまして、所得がある方は加入ができるわけでございます。
  362. 八木一男

    八木(一)委員 そうすると、今度、これは大蔵省の次官も、主計局の関係の方もおられる。この点について国庫負担が出たこと、これ自体については、いま主計局にさんざん文句言ったけれども、その点については前向きな点でけっこうだと思う。だけれども、その国庫負担の使いようになる。そのような一軒で五人とかそういうような二段階年金といいますか、所得比例制年金自分が希望したら入る。そこで給付について二五%の国庫負担があるということになりますね。そうすると、松下さんのような金持ちの一族が五人おれば、その一族で五人とも二五%の国庫負担をいただける。これは国費の使い方としてまっすぐじゃないと思いますね。いいことですか、それは。
  363. 伊部英男

    伊部政府委員 所得比例制の対象といたしましては、なるべく広く国民年金の被保険者に入っていただきたい。これは任意でございますので、強制をするわけじゃございませんので、そう考えております。したがいまして、一つ世帯に数名入るということもあり得ると思います。通常の場合は、夫が稼得活動に従事をする、妻には通常の場合所得がない、こういうケースを考えておるわけでございます。
  364. 八木一男

    八木(一)委員 それは一番通常の場合だと思う。さっき任意加入に非常に熱心で、一銭でも収入があったときに入れると言いましたね。いまの通常の場合とだいぶかけ離れておりますが、そのときそのときで都合のいい答弁では困りますよ。それはこれから行政上の問題になるのですから、片方は一銭でも収入があったら入れる、片方は通常の場合におとうさんだけだろう、おかあさんは収入がない、そんな定見のない考え方はない、どっちなんですか。
  365. 伊部英男

    伊部政府委員 先ほど申し上げましたのは、筋として、収入のある方、所得のある方は入ってもよろしいということを申し上げたのでございます。そのほか、実質的に世帯の稼得活動に参画をして収入がある者と見ることができる方もあると思います。たとえば税制上給与支払いに準じて事業主体の所得から控除することができる専従者、こういった方々につきましては、やはり所得がある方と考えてよろしいのではないかと思っておりますけれども、入り得るという人の範囲につきましてはっとめて広くきめてまいりたい、こういう趣旨でございます。
  366. 八木一男

    八木(一)委員 たとえば普通の定額制のほうで免除を受けておる人がありますね、そういう方、普通のほうの保険料負担も困る、しかし、その人でもわずかな収入がある場合がある、入る資格はあるけれども、実際上入れないとか——入れてくれますか。
  367. 伊部英男

    伊部政府委員 援助を受けておられる方は、この所得比例の対象とは考えていないのでございます。
  368. 八木一男

    八木(一)委員 このいわゆる所得比例制には、二五%の国庫負担があるのでしょう。そうしたら、貧しくて蓄積がなくて老齢になったときに、そういうときに一番年金の必要の度の多い人が入れてもらえなかったら、実際に入れない。猛烈に資産がたくさんあって、さっき言ったような例の人で、それがなくたってゆうゆう暮らせるような人には二五%の国庫負担がある。そんなような制度——この社会保障的な考え方で考えなければならないときに、なぜそういうような何か欠陥のある制度が考えられたか、ほんとうに理解に苦しむのです。どういうわけでそういうことを考えたのですか。
  369. 伊部英男

    伊部政府委員 国民年金は、御案内のとおり定額制で出発をしたのでございますが、さらに保険料をより多く払うかわりに、保険給付もより多く受けたいという声は、発足当初からあったのでございます。その後研究を重ねてまいったのでございますが、先般の国民年金審議会の御審議、あるいは国民年金の被保険者の四割を占める農民の方方の御要望でありまして、やはり厚生年金のように所得比例制を設けてもらいたいという御要望があったのでございまして、かような点を考慮いたしまして、今回所得比例制を導入したのでございますが、ただ先生御指摘のように、今回は第一歩でございますので、これが一段階である、あるいは任意適用であるといったようなことがございますので、普通の報酬比例部分とは違う面があるのでございますが、将来の方向としては、実施の状況を見つつそろえてまいりたい、かように考えておるのでございます。
  370. 八木一男

    八木(一)委員 いま初めて少し積極的な答弁をしたですね。厚生年金は強制適用ですね、五人未満の事業所は適用がないのは残念ですけれども。だから、上のほうまで国庫負担がいっても、これは筋が通ると思います。これは任意適用でしょう。任意適用国庫負担をつけるということは、そういう保険料負担のできる、比較的に見て豊かな人たちに大事な国庫負担が向いて、それ以上に生活が苦しくて、一番年金の必要な人にそれがいかないということになるのです。これは筋が通っておりませんよ。そう思いませんか。厚生大臣にちょっと伺いたい。
  371. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 所得比例の適用を受ける人たちに、所得制限をするかどうかという点は、ただいま御指摘になりました点もございますが、なお検討をいたしてみたいと考えますけれども、ただいまの考え方としましては、所得制限なしに、入りたい人は入っていただく、そして社会連帯の考え方で、年金額を増額をするという一つの方法として、なるほど国費は入りますけれども、そのほうがいいのじゃないか、かように考えて、原案者は立案をいたしておるわけでございます。
  372. 八木一男

    八木(一)委員 さっき年金局長は、将来の方向として強制適用にしたいというようなことを考えているようですね。そうしたら、いま言った、それに当たるかどうか知りませんけれども、松下家のようなところで五人とも任意適用に入っていた、それ全部五人とも強制適用しますか。
  373. 伊部英男

    伊部政府委員 強制適用の問題は、やはり負担能力、あるいは負担の意思等を考えますと、やはり相当慎重を要するところと思うのでございまして、したがいまして、その範囲はおのずから限局されてくるのであろうと思うのでございます。その場合、強制適用だけで問題をしぼるかどうかということでございますが、強制適用のほかにやはり任意適用というものも残るのではないかという予想でおるのでございます。つまり国民年金の中で、たとえば免除制度がございますが、申請免除は、申請するしないは本人の意思でございます。あるいは法定免除につきましても、後に保険料を追納できる制度があるのでございまして、そういう意味での個人の意思というものを国民年金は相当尊重いたしておる制度でございます。たてまえとして、強制適用に踏み切るにいたしましても、そのほかにやはり本人のほうで、意思的に保険料を払って、しかし払うが、より高い保険金を受けたいという方々があれば、やはり将来も任意適用というものは残すべきではなかろうかというふうに考えておるのでございます。
  374. 八木一男

    八木(一)委員 いまの積極的な答弁はいいけれども、言わないところを言うと時間をとりますから、聞いたところだけ答えてください。そうでないと熊率が悪くてしようがない。早く終わりたいのです。  強制適用は、それはなかなかできないように思われる。それはあたりまえの話です。そこで、しようがないから提起をします。ほんとうにこれは苦心の作、へんてこりんな苦心の作だと思うのです。筋がほんとうにあらゆるところで通っていない。苦心の作という、それはいろいろなところの要望があったのでしょう。要望している人たちは善意であっても、年金というものはどういうものであるか知らない人がごちゃごちゃ要望する。その要望を少しくらいいれなければならないというようなことで、ひん曲がったような、渦を巻いたような変な案が出てくる。そんなことじゃ年金局というものは全く任務を果たしていない。  このいわゆる二段階制をするとしたならば、——そしてそれに国庫負担するのは大賛成です、するとしたならば強制適用でなければならない。強制適用でなければならないとしたならば、強制適用をどうするかという問題は、いま偶然おっしゃったように、おとうさんが働いておかあさんには収入がない。だんなさんが働いて奥さんは収入がない。奥さんが働いている場合もありますけれども。とにかくいまの現状では、ほかにも例がありますから世帯ということを考えて、世帯に一人を強制適用をしてそれに国庫負担をつけるならば、これは大体公平にいきます。そういう筋が当然考えられなければならない。それでなければひん曲がってしまう。金があって保険料をたくさん払える人が、かってにそれだけをやるのはいいですよ。自分たちの年金をふやしたい、こういう要望は当然の要望だから、かってにやるのはいい。またそれをかってに生命保険に委託したならば、生命保険の予定利率が四分で国民年金は五分五厘だ。あるいはまたいろいろな手数料がとられる。そこで死亡保険に入れば死差益がとられるということがあるから気の再だけれども、生命保険もりっぱなことですけれども、やはり最低のものとして、基盤のものとして国の年金制度が必要だ。いまの年金制度は少ないから、その要望にこたえて少しふやそうということは、大体その基本の年金がなまけているからいけないのですが、それは一応おくとして、いま現時点として、その考え方が絶対にいかぬとは言いません。絶対にいかぬとは言わないけれども、それを任意として国庫負担を入れるということは筋が間違っている。それは任意でやりたい人は、国で扱ったほうが予定利率もいいし、死差益もつかないという方向で国が管理してやってもいいけれども、絶対に事務費だけ入れて、有利なほうの年金制度に国が入れてやる、自分保険料を払って、たくさんの年金をとりたい人には、そういう希望をかなえてやってもいいです。しかし、そこで任意適用国庫負担を入れるというような、こんなにひん曲がった考え方はない。それをするならば強制適用にしろ。一軒に一人は二五%の国庫負担の恩典にあずかる、みんな公平にあずかるという方法でやっていかなければなりません。  次に、それについてさっき渦巻きのインチキ機構だからそんなことを言われたけれども、法定免除の人は入れませんというようなことを言われた。とんでもない話だ。これは強制適用にして一軒に一人ということになれば、さっきの例のように一銭でもあれば、たとえば失対の人で、しかもそれが四級地であって、しかも、年齢が少なくて、金額が少ないという人たちでも、収入があるのですから、世帯の主だったら当然入れなければならない。その人たちが、たとえば失対の方の場合に、そういうような基本的年金の場合でも、免除を受けておる免除者は入れないということになれば、はみ出すことになる。強制適用にして一軒一人だけやる。そこまで現在の免除規定を適用するのがあたりまえだ。そうすれば接近する。強制適用にして一世帯一人にする。そして免除規定をそこに適用する。免除規定の適用を取っ払うわけじゃないのでしょう。一番最初の国民年金法が出たときには、免除規定と称して大事な国民年金から低所得階層をほうり出そうとした。ところが、いろんな運動があり、また委員会のりっぱな審議があって、昭和三十六年の改正で、そういう人たちこそ年金が必要であるということで、普通のいまの基本的年金について、保険料に対して五割の国庫負担がつく。払える人には五割の国庫負担がつくけれども、免除を受けた人にはその国庫負担がない。そんなばかなことはないじゃないかということで、われわれは免除を受けた人はそれ以上の年金が必要であるという主張をしたけれども、その三分の一だけ入れて、国庫負担分だけは免除して積立金で確保した。三分の一の年金は、ごくわずかではあるけれども確保されている。それがそこまで及ばない。今度のいわゆる所得比例制というインチキな機構の中で、年金を一番必要とする人たちをそういう年金制度の拡大からほうり出して、そして金持ち階級に大切な国庫負担を埋め合わせる、そういうことになるわけです。保険料払ってもいいから年金をたくさんもらいたいという一般の現時点での要望、これはさっき言ったように付加年金にして、そしてほんとうに原資が損をしないように国で管理さしてやったらいいのです。それで一番りっぱな方法がとれる。何を好んでこんなものに結びつけてこういうことを考えるのです。所得比例制については、そのように世帯主一人を強制適用にして免除の規定を適用し、免除期間は年金の計算期間に入れて、少なくともいまの所得比例制を加えた部分の三分の一——三分の一ではわれわれは不満ですが、少なくとも現行制度と同じような原資がそういう免除を受ける人にも確保される。数回の附帯決議にあるように、免除を受けた人たちの処遇をもっとよくしなければならないということを、ここに満場一致で、与党の熱心な先生方をはじめ私どもも一生懸命になってやって、五、六回附帯決議をつけている。これは国会の重大な意思です。それにごく一部だけれどもこたえて、この制度をすっきりさせて、その要望のごく一部でもこたえるためには、世帯主一人強制適用、免除適用ということにすれば、やはりこのようないわゆる所得比例制という二段階制、年金額をふやそうという要望とすっきりと合う。そういうことにひとつ考え直していただきたい。それについて、厚生大臣または年金局長から答弁を願いたい。
  375. 伊部英男

    伊部政府委員 八木先生から御提案をいただいたわけでございます。したがいまして、先ほども御答弁申し上げましたように、次期再計算期をめどに強制適用の問題につきましては方針を定めたいと考えておりますので、その一環として十分検討さしていただきたいと思うのでございますが、ただ、ただいまの御提案は、いわば個人単位で構成されております国民年金を、世帯主世帯員に分けまして保険料が違ってくるということに結果的に相なりますので、非常に基本的な問題を含んでいるように考えられるのでございますが、いずれにいたしましても御提案でございますので、十分検討さしていただきたいと考える次第でございます。
  376. 八木一男

    八木(一)委員 いま年金局長は六十点くらい、ややぎりぎり及第くらいの答弁をされた。だけれども、それじゃいけないと思うのです。厚生大臣も、こんなひん曲がったものや、ねじ曲がったものや、変なものができたら困るのですよ。さっき言ったような例の五人家族で、そんな金持ち家族が入っているのを、任意適用を一、二年後にやめてしまうというわけにいかない。それは金持ちだからぶうぶう言わないかもしれません。しかし、始めておいて一年くらいでやめますというわけにいかぬ。だから、初めからそういう間違いをおかさないようにしなければいけない。これをやろうとするのは来年以降でしょう。あわてる必要はないわけです。ゆっくりと考えていただいて、こういう重大なことですから、至急に御検討いただいて、厚生大臣あるいは年金局長はそういうお考えになられて、私もまだ熱心にやっていますから、ここでその質問を熱心にお聞きいただいている与党の先生方も、そういうことをいいじゃないかというお考えになられると思う。相談してそれを直せばいい。相談して直して、スタートから曲がらないように、そういうことをお考えをいただきたいと思う。委員長代行はじめ与党の理事委員の先生方にも、また各野党の委員の先生方にも、初めから間違わないように御検討いただくように、私、お願いいたしたいと思います。政府もそれは即刻に検討していただきたい。この法案を、それを直そうとするならば、これは法制局を呼んだり、その部分を直すことぐらい、ほんとうに一生懸命やったら一時間でできる。そういうふうにやっていただきたいと思います。厚生大臣の御答弁を伺いたい。
  377. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 よく検討をいたしまして、誤りのないようにいたしたいと存じます。
  378. 八木一男

    八木(一)委員 委員長代理におかれましても、いま委員長の席に着いておられるので、どうかひとつ与野党の熱心な理事さん、そして委員さんに御連絡になって、これを協議をしてみようじゃないかということをやっていただきたい。即刻やっていただきたい。ひとつお願いをいたします。
  379. 谷垣專一

    ○谷垣委員長代理 質疑をお願いいたします。
  380. 八木一男

    八木(一)委員 いまの要請ですね、いま席を離れられませんから、与党の理事の方がそのうちに来られるでしょうし、野党のりっぱな理事の方もおられるのですから、そういうことがあるので、政府のほうも検討すると言っていられるから、それをいま審議している与野党の熱心な委員で、この問題検討してみようじゃないか、——そのとおりやるということじゃない。検討してみて、私の考え方が間違っていれば、私、時間を浪費して申しわけございませんとあやまります。もし私の考え方が間違ってなかったら、これはりっぱな先生方ですから、そのくらいの努力はして、いいものでスタートしようじゃないかという話にもなると思う。ですから、その検討の機会をすぐつくっていただきたい。いま委員長席におられますから、委員部に命ぜられて、そういう御連絡をしていただきたい。
  381. 谷垣專一

    ○谷垣委員長代理 理事の諸君に連絡をいたします。質疑をひとつ続けてください。
  382. 八木一男

    八木(一)委員 次に、国民年金基金という、これもまたいかがわしいものが出てきた。いかがわしいなんということばは下品でありますから、おしかりをこうむったら、まあ変わったものが出てきた。これは厚生年金基金をまねしたようでございますが、そんな必要は全然ないと思います。このいまの二段階制、いわゆる所得比例制というものと、国民年金基金というものは、それをつくろうということに一連の底流のあることは私も存じておりますし、また同僚議員の質問の中でもそういう底流が明らかになっております。  農業をやっておられる方々の問題で、農業者の方々が年金をたくさんのものを確保してほしいという御要望があります。これは農業が圧迫されておりますし、その中の御老人がおりますから、素朴な御要望としてはこれは尊重し、考えていかなければならない問題だと思う。しかし、事、年金制度というのは、長期的な性格を持っております。非常に重大な問題を含んでおりますので、簡単にただ要望があるから、そのまますぱっということになってはいけないと思うわけです。  そこで、その問題の影響を考えていかなければならぬと思います。農村の方々で生活が不安定な方々もいられる。将来の心配な方々もおられるということは、基本的には農業経営の問題で片づけるべきであると思う。米価の問題や農産物価格の問題、流通機構の問題、それから農地の基盤整備の問題、そういう問題で考えられるべき問題であって、年金制度で農家のいろいろな御要望を主体的に解決をしようというのは、これは非常に思い上がりであり、また間違った方向にいこうと思います。   〔谷垣委員長代理退席、委員長着席〕 特に、年金制度に関してでございますが、斎藤厚生大臣伊部年金局長は、その当時厚生大臣なり年金局長ではおられませんでしたけれども、年金を提起された当時の厚生大臣は、坂田君でありました。それから、そのときの局長は、小山君、小山君はよく知っていて、伊部さんも先輩の小山君の苦心談を聞いておられると思いますが、拠出制年金について非常に理解が浸透することがおくれ、不十分であって、国民年金反対運動が全国的に巻き上がったことを御承知だろうと思う。その反対運動を提起した理由にも、事実理解が十二分でない主張もあったようであります。私は、事実理解を十分にするような努力を微力ながらしましたけれども、全国的な点で、その理解が少ない点を、全部解明することができないで終わりましたけれども、少なくとも素朴な要求としてああいう拠出制国民年金反対運動というのが、理解が少ない点もあるけれども、ずばり焦点を貫いた主張もその中にたくさんあって、そういうような運動が起こったわけであります。  その運動の最初はいわゆる全日自労の方々、失対労働者の方々が、その中で一番熱心だった。それからそういう方々の団体、労働組合が熱心でああった。これは国民年金であるのに労働組合が熱心であったのは、五人未満の厚生年金適用がないという結果からそういうことが起こったわけであります。  そこで、その後その運動が広まって、あとどういう階層に及んだか、伊部君は聞いておられると思うのでちょっと伺っておきたいと思います。
  383. 伊部英男

    伊部政府委員 反対運動の経緯でございますか。
  384. 八木一男

    八木(一)委員 聞いてなければいいです。ぼくが言います。そういうこともやはり年金局長調べておかれたほうがいいですよ、いろいろな背景を。  昭和三十六年でしたかに年金反対運動が非常に強くありましたね。三十六年の改正案に、幾ぶんそれに受けて立ちました。たとえば国庫負担の点、それから免除の拡大の点、そういうことを——大部分反対運動か終息して、年金というものはいいものだ、これに入っていこうという空気ができかけた時代に、全般のそういう反対車軸、批判運動が終息した時代に、熱心にやりかけたのはどこか。農民階層。三十六年には長野県の農民団体が猛烈に反対しました。三十七年には新潟県の農民団体が猛烈に反対した。三十八年には山形県の農民団体が猛烈に反対した。そういうことです。ですから農業の実態は変わってきても、しかし農民の方々の素朴な気持ちということを、今後よく考えていかなければならない。農民の方々はただの福祉年金はよろしい。拠出年金というような、保険料を取られて、貨幣価値がどうなるかわからないような、二十五年とか四十年先のような年金保険料を払うことは、非常におもしろくないという意味で、そういう運動が、ほかの運動が終息しておるのに非常に熱心に展開をされたわけであります。このこと自体には論点があります。私は国民年金はいいものだと思っておりますから、いろいろな団体に非常にすすめました。政府の、ひん曲がった不十分な点があるけれども、全体としてはこれは大切な問題だということを説明しましたけれども、私がそれは主観的に言っておるだけで、ほんとうに田を耕して、毎日の生活をして苦闘をしておられる方々については、そういうことが実感として入ってこなかった、そういう状態がある。保険料を出すのは、あとで貨幣価値がどうなるかわからない、何十年先のための保険料はごめんだ。福祉年金はいいけれども、将来の年金などはごめんだという底流があった。それから時代は移っております。  だから、農民階層の中で裕福な方々の中には、そういう保険料をたくさん出してもたくさんの年金を確保したいという気持ちを持っていられる方も、熱心な運動をしておられる方もございます。しかし、そういう運動面に出てこられる方だけが全部の農民の方々ではないと思う。また、そういう運動をしておられても、全部の農民の方々がその内容なり、将来どうなるかということを予測しておられないのではないか。  たとえば六十五歳開始を六十歳にしたい、あるいは五十五歳にしたいという要望もありますね。そういう要望もある。国庫負担保険料の倍というような要求もあります。倍ですよ。いまの国民年金の四倍の率ですよ。そういうような要望もある。五十五歳開始と六十五歳開始とどんなに原資が違うかということをたいていの方は御存じない。六十五歳と五十五歳と、これは猛烈に違いますよ。そういうふうな、農業をしておられる方が年金を熱望されることは大事だし、農家の方々の年金をふやさなければならないと思います。しかし、そういうふうな非常にむずかしいことが、簡単にできるような間違った説明、不十分な状態のもとにこういうことに取りかかることは、非常に国民を誤るものであると思う。たとえばそれだけのりっぱな給付内容をしたとすれば、これに猛烈な国庫負担をつぎ込むとなれば、ほかの階層の人はどうする。われわれのことはほっておくのかということに当然なろう。そういうことは不可能だ。そうしたら国庫負担をつぎ込めないか、あるいはこれについては問題がありますけれども、ごくわずかつぎ込めば、いまの農家の方々は、運動家の方々からぱっと聞かれて、あんまり保険料を払わないで十分の年金がもらえるのだという幻想が、ほんとうのときになったら全然うそだということになろうと思う。そういうことになってしまう。  そういうようなことではなしに、さっきの三十六年、七年、八年の運動にあったように、家の方々に一番大事なことは、いまの年寄り、いまの農民の方々のお年寄りに、すぐ渡せる年金をどうして早くふやすかということのほうがほんとうに親切なことです。老齢年金をよくする、金額をふやす、開始年齢を引き下げる、そうして所得制限をなくする、そういうことをやるのが、ほんとうの素朴な農民の気持ちにこたえる。それを、いろいろな団体が自分の団体の利益で、非常に困難なことを簡単にできるような宣伝をする。そういうような空気の中でかっこうをつけなければならないということで、いろんなことが論議をされるようなふまじめな、ほんとうに国民に対処しないやり方はない。各団体の要望のようなことが、年金制度——これは大蔵省のことをいわれるが、大蔵省がしゃちほこ立ちしない限りそんなものはなかなかできるものじゃない。そういう中をやろうとすればうんと保険料を取らなければできません。あのような小さな、あのときの百円、百五十円の保険料すら払うのは困ると言った方々が多かった。農民階層に十年たったからといって、そんな大きな変化はないと思う。ですから、そういうことでなしに、ほんとうに真剣に対処をしなければならないと思う。農業を担当して、国のためにほんとうにりっぱな基盤をつくられた農民の方々に、ほんとうに年金制度その他でりっぱに対処することは政治の本道だと思う。しなければならないけれども、こんなに宣伝をしたり、おくれるのをすぐできるように宣伝をしたり、そういうことをして一時的に満足をさせても、それが裏切られたならば政府は信用できない、政治は信用できないということになろう。ですからよく解明してものごとをやっていかなければならないと思う。  それを厚生省のお考え方は、——ぼくは内容は少しわかります。保険料システムでやっていかれようと考え、二段階制の上に農業団体をそこに据える、任意に入られて、そこで給付をふやすようにされると思います。しかし、まさかそこに猛烈な国庫負担率で国庫負担を投入するという考え方はないと思う。それをやったならば、中小企業者はどうする、ほかの階層はどうする、また年金についてちょっとしか国庫負担がない労働者階級はどうするという問題になってまいります。そういうことについて、ほんとうに慎重に考えていかれなければならないと思う。この点について斎藤厚生大臣の御答弁を伺いたい。
  385. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 農民年金を考える場合の貴重な御意見をいただきまして、十分御意見をしんしゃくいたしたいと思います。
  386. 八木一男

    八木(一)委員 十分慎重にお考えになる、厚生大臣はほんとうにりっぱだと思う。厚生大臣ははったりをやらない、ほんとうに真剣に討議に参画されて、いいと思ったことはやろうという努力をされるので、これはすばらしい厚生大臣だと思っておるわけです。ところが、各省を動かす、大臣を実際上動かしているのは各局ですから、ぜひひとつ厚生大臣が、この局がほんとうの意味厚生大臣を補佐されるように指揮をして、そうして使って、りっぱなものを考えていただきたい。  それにつきましても、そういうように慎重に考えるとしたならば、それをやろうとすることでつくった国民年金基金というものは無用の長物であります。こういうことももっと検討をしていただきたい。確かにこれが必要だというときには、私どももその理由がわかって、そうですかということもあるかもしれません。しかし、いまのところは無用の長物であります。この国民年金基金という条項を、この法案からなくすということが必要であると思う。こういうことについて厚生大臣のお考えを伺いたい。
  387. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 この法案で考えております国民年金基金は、運用の方法によっては必ずしも無用の長物ではないのじゃないか、私はかように考えております。そうしてこれは必ずしも農民年金をつくる前提である、かように考えていただく必要もないと考えます。
  388. 八木一男

    八木(一)委員 これについても非常な論議があるので、慎重に検討をいただきたいと思う。  実は、国民年金審議会にはりっぱな先生がおられますけれども、国民年金審議会というところの答申は、私の感想では、ずいぶん厚生省に遠慮した答申ばかり出すところだという感じを持っております。その国民年金審議会が、国民年金基金については慎重にということを言っている。それから社会保障制度審議会は、特に、特に、特別にこれは慎重に考えなければいかぬということを言っているわけです。そこには年金制度の権威者が——野にもおられますけれども、表面上そういうところに出るチャンスを得た中で、権威者と称する方々が全部言っている。そこで非常な熱意を持ってこれは書かれたものであります。したがって、国民年金基金については慎重に検討をする、そうしてこれの発足も来年でありますから、ことし慎重に検討しなければならないものを、法律案の中で、国会の権威でこれをきめる必要はない、きめたら間違いだと思う。これについてはやはり考え直していただかなければならない。その御検討を願いたいと思います。  先ほど、いわゆる所得比例制について、それについて強制適用にしなければ筋が通らないから強制適用にしたらどうか、そうして世帯に一人の強制適用にしたらどうか、免除を適用したらどうかということについて、厚生大臣に御質問しましたら、よく検討してみましょうという非常にりっぱなお答えでございました。これはしかし、いま審議をしておりますから、委員会審議でございますので、各党の理事、また委員の方々で御検討していただいて、もし私の考え方が間違っておれば、時間を費やしたことはひらにおわびをいたしますけれども、正しければそれを検討していただきたいという御連絡をいただくように委員長代理に申し上げました。やっていただいていると思いますが、いまの国民年金基金のことも同様の問題であります。御一緒にひとつ御検討をいただくように、その場を至急につくっていただくようにお願いをいたしたいと思います。至急にそういう御処置を願いたい。
  389. 森田重次郎

    ○森田委員長 よく相談します。
  390. 八木一男

    八木(一)委員 ですから、委員長席に着いておられますからすぐお動きになれませんけれども、与党の理事の方々もおられます。また、委員部の方に指命されることもできますから、ひとつそういう御連絡をすぐお願いいたしたいと思います。  ところで、委員長が生理的要求で御不在の間に何回も要望したのですが、鳩山君が来ておりません。先ほどは一定の時間以内に来なければ、これは斎藤国務大臣から、大蔵省の公務員が国会を非常に軽視をしていることを、閣議の問題にしていただくことになっているわけです。鳩山君という、ある意味では熱心で有能な公務員を、そういうことで閣議で糾弾をしなければならないということは、私は個人としてはいたしたくはございません。しかし、何回も言っているのが実現をしなければ、厚生大臣に提起をしてもらって、あしたの閣議で、鳩山君の議会無視についてそれを決定をしてもらわなければならないことになる。これは委員会で確認をされたことであります。したがって、委員長のほうは——大蔵省の人たちがぼやぼやしておって鳩山君に伝達がおくれているかもしれません。聞いたならば飛んでくる性格の人であろうと思う。聞いてもちっとも飛んでこないということは、連絡がついてないんじゃないか。委員部は全力をあげて、すぐ来いと言っていただきたいと思います。委員長はその命令をしていただきたい。  それから、大蔵大臣、労働大臣、一体何をしている。
  391. 森田重次郎

    ○森田委員長 委員長出席要求をしておりますが、まだそれに対しての報告が入っておりません。もう少しお待ちください。
  392. 八木一男

    八木(一)委員 それではあと十五分か二十分以内に、ひとつ委員長が厳重な立場でやって、しかもその間に鳩山君が来なかったら、厚生大臣はあしたでも、臨時閣議を開いてでも、公務員の議会無視について糾弾してもらいたい。  それから、大蔵省でいま来ている者があったならば、特に委員長のお許しをいただいたならば退席してもらってでも、かけ足で帰って鳩山君を連れてくる必要があると思う。それは委員長の権限ですから。
  393. 森田重次郎

    ○森田委員長 いま出席要求をさらにいたさせますから、質疑を継続してください。
  394. 八木一男

    八木(一)委員 では、この問題については、また協議が終わったときに、いまのいわゆる所得比例制の問題と、国民年金基金の問題については、触れさせていただかなければならないことも起こるかと思いますが、一応審議を非常に具体的に展開をしたいので、ほかの問題に移ります。  次には、今度の保険料の問題であります。今度保険料は、私知っておりますけれども、間違うといけないので年金局長から、月額幾らから幾らにしようとするか、それを言っていただきたいと思います。
  395. 伊部英男

    伊部政府委員 現行法によります保険料は、三十五歳以上の方は三百円、三十五歳未満の方は二百五十円でございます。この保険料を当面四百五十円に引き上げるわけでございます。その二年後さらに百円を引き上げて五百五十円、こういうことでございます。
  396. 八木一男

    八木(一)委員 二年後五百五十円ですか。
  397. 伊部英男

    伊部政府委員 はい、そのとおりでございます。
  398. 八木一男

    八木(一)委員 二年間四百五十円、それから二年先は五百五十円、それからあとはずっとそのままですね。
  399. 伊部英男

    伊部政府委員 国民年金は、いわゆる修正積立方式でございまして、一〇〇%の保険料を徴収をいたしておりませんので、その整理資源につきましては後代の負担として、段階的に保険料をなお引き上げていくという見込みでございます。
  400. 八木一男

    八木(一)委員 国民年金の拠出年金は、最初完全積立方式、ところがそれから修正積立金方式を取り入れられました。それは、おそらく修正積立金方式をとられたのは、対象者の方々がたとえば物価の値上がりがある、あるいはいろんな経費がかかって生活が楽でないという事情を勘案して、一部後代にそういう負担をゆだねて、そうして修正積立金方式をとられたというふうに理解してよろしいでしょうか。
  401. 伊部英男

    伊部政府委員 御指摘のとおり、国民年金は発足当初は完全積立方式であったのでございますが、昭和四十一年の財政再計算の際に、現在のような修正積立方式に変更されたのでございます。
  402. 八木一男

    八木(一)委員 それは昭和四十一年はいわゆる夫婦一万円年金のときですか。
  403. 伊部英男

    伊部政府委員 そのとおりでございます。
  404. 八木一男

    八木(一)委員 これは当然の具体的な措置であったと思います。年金制度はちゃんと早く拡充をせなければいかぬけれども、国民のほかの分配がうまくいっていないから、それに対応した保険料負担にたえにくいという条件があるので、日本経済が成長をし、社会の分配が完全によくなるというときの後代の国民に幾ぶんの負担をゆだねるという方式は、それは具体的には非常にりっぱな対処であったと思います。そういう意味で理解をしておいてよろしゅうございますか。厚生大臣からお願いいたします。
  405. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 さように御理解を願いたいと存じます。
  406. 八木一男

    八木(一)委員 今度はいわゆる二万円年金ですね。看板には、さっき申しましたようにずいぶん偽りがございますが、そういうふうに、年金額をまた引き上げることをやられたことは、これは厚生大臣も、また、さっきから批判ばかりしていますが、年金局長も、かなり積極的に努力をしたことをお認めをしたいと思います。それから大蔵省のほうも、これに協力されたことについては、その点もいささかほめて差し上げてもいいと思います。いささかですよ。そういうことだと思います。  それで、いわゆる二万円年金ということになったわけですが、四十一年の一万円年金のときにそういう考え方がとられた。今度も当然そういう考え方がとられていなければならないと思いますが、それについては厚生大臣いかがでしょうか。
  407. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 今度もさような考え方で組み立てておるわけでございます。
  408. 八木一男

    八木(一)委員 そういう方向でなければいけないと思います。厚生大臣も同じお考えだと思いますが、いかがでしょう。
  409. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 さように存じて提案をいたしておるわけでございます。
  410. 八木一男

    八木(一)委員 でございますが、精密に計算すると、どこかその趣旨と違う点がある。厚生大臣はほんとうにそういうことを善意で考えておられるのに、どうも事務局は、完全に逆ではないけれども、そういうことが少し怠慢であると思う。事務的な組み立てはやっかいなことですから、りっぱな政治家である国務大臣が計算をしてどうのこうのということはなさいませんから、これは厚生大臣より年金局のほうの責任だと思いうのです。  ところが、現在三百円と二百五十円の保険料がありますが、三百円の大きいほうをとってみましょう、年金局長に都合がいいように。大きいほうをとってみても、四百五十円にすれば保険料は五割増しになります。それから五百五十円にすれば八割増し以上になります。ところが年金給付は五千円の基盤部分が八千円になる。六割増しであります。年金自体の給付は、たとえば十年年金については配慮したとかなんとかいうことは、時間の関係上ごちゃごちゃ言わないでください。そのくらいのことは知っておりますから。基本として全体で給付を六割増した。ところが保険料は、二年間だけ五割増し、三年目からは八割以上増しだ、そういうことになっておる。これは、年金を急速によくしなければならない。しかしいまの国民は、分配がうまくいっていないので、負担にたえにくいから、修正積立金方式をとるという方向に逆行するではありませんか。この点について厚生大臣のお考えを伺いたい。
  411. 伊部英男

    伊部政府委員 数理的な点がございますので、私からお答え申し上げたいと思います。  ただいま御指摘のように、給付の引き上げは基幹分につきましては六割でございます。その他の年金につきまして、これ以上ゆるくしておるものも、いま御指摘のように相当ございますが、基幹分については六割でございます。保険料引き上げはそれより上回るではないかというような御議論があるのでございますが、保険料のきめ方につきましては、厚生年金におきます修正率あるいは従前の修正率を考慮して決定をいたしたのでございまして、だんだん期間がたつに従って整理資源がふえてくるのでございます。そこで、前回と同様、将来に向かっての数理的な保険料というものをめどとしてこの保険料額をきめておるのでございますが、この場合、全体の平準保険料がふえておりますので、修正率は前回よりも強まっておるのでございます。  なお、前回はどうだという御議論がありますが、前回は完全積立方式を修正積立方式にすることによる給付の改善、このほか保険料引き上げによる改善と、二つの要素があったわけでございます。今回は同じ修正の方式のものを二つ——修正当時の比較でございます。したがって保険料引き上げが反映してくるわけでございますが、そのほかに整理資源がふえてきておりますので、修正率はなお若干強まっておる、そういう状況でございます。
  412. 八木一男

    八木(一)委員 年金局長のいまの御答弁では、頭の悪い私にはわかりません。ここにおられる頭のいい先生方にも、あのような簡単な一方的な御答弁ではわからぬと思うのです。たとえば基本年金と十年年金がある。その中の原資が幾らかということまでいかなければわかりませんけれども、十年年金というのは質的には大事な問題でございますが、根幹ではございません。根幹の年金が六割増し、そしてこれはあなたの都合のいい数字をとったのですよ。三百円が四百五十円になったら五割増しだけれども、三百五十円から勘定したらもっと率は多いでしょう。それから三百円で計算しましょう、あなた方に少しゆるやかにして。それで五百五十円にすれば八割三分になりますね。基本的な年金の金額が六割しか上がっていないのに、保険料の上がり方が二年後には八割以上になる。二百五十円から勘定すればもっと高い率になる。これは少なくとも修正積立金方式を取り入れる精神を逆行させていることは明らかであります。年金局長は何か原案を理屈づけようとしていますけれども、そういうような原案固着の精神に拘泥する年金局長ではなしに、すなおにものを判断し、まともに答えていただける厚生大臣から、このような修正積立方式の逆行であるという点について御見解を伺いたい。
  413. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私は保険数理に詳しくございませんので、修正積立方式の考え方をよけい強化したか、あるいは修正積立方式には違いないけれども前よりも若干鈍化をしたか、専門家の保険審議をやっておりますところでは、これは修正積立方式だ、それに間違いがない、こういうことでございますから、それを信じておるわけであります。
  414. 八木一男

    八木(一)委員 伊部君も率直に言ってくれと三回も四回も聞いたが、ちっともあなたは率直にならぬ。そこで、りっぱな率直な政治家の厚生大臣を惑わしている。とんでもないことだ。いま言っているように、基本的に修正積立金方式であるということは明らかです。これは否定をしていない。修正積立金方式を取り入れている。それを拡大する方向に逆行して縮小している。比率的に見てですよ。金額的でないのです。比率を金額でごまかしても、そんなものごまかされません。そういうことを申し上げておる。それを伊部君は、これは修正積立であることは間違いないと言う。計算をしたら八百六十円の保険料になるということは私は知っているのです。何も修正積立金方式でないとは言っていない。完全積立金方式から修正積立金方式にした、そういう方向を減らしているわけです。減らしても修正積立金方式は間違いないのです。そういう悪知恵をりっぱな政治家につけている。そういうようなことを言われるのは、修正積立金方式を縮小する、比率的に、そういう方向をとっているのが厚生大臣の先ほど指向された方向と違った内容であるからだということを申し上げておる。そういうことでお答えをいただきたいと思います。伊部君、変な入れ知恵はよしなさい。
  415. 伊部英男

    伊部政府委員 平準保険料率に対する修正度合いは、前回よりも今回のほうが強まっておるのでございます。
  416. 八木一男

    八木(一)委員 強まっておるとあなたは強弁しても私は信用できませんから、強まっておる書類を全部整理して出してください。それから質問します。すっかりわかるような表を出してくれ。
  417. 伊部英男

    伊部政府委員 国民年金の平準保険料は八百四十四円でございます。そこで、これに対応する二年後の五百五十円は六割五分に相当するのでございます。これに対しまして、前回は四百十四円に対しまして二百七十九円に当たるのでございまして、前回は六割七分三厘程度の修正率であったのでございます。これらの修正率は、いずれも厚生年金におきます同様なもの、つまり報酬比例分を除いた修正率に見合っておるのでございます。  なお、御参考まででございますが、整理資源はだんだんふえてまいりますので、本来から申しますと、この修正度合いはだんだん上がってこなくちゃいけない。ところが、修正率を同じにするだけでも、実は修正の度合いを強めるということになるのでございます。つまり裏返せば後代負担が多くなるわけでございますけれども、今回は、ただいま申し上げましたように、〇・六七から〇・六五に修正度合いは強まっておるのでございます。
  418. 八木一男

    八木(一)委員 ぼくは非常に頭脳低劣でございまして、年金局長の説明ではわからぬ。非常に頭のいい委員長はいまのことをおわかりになったかどうか、伺っておきたいと思います。委員長の御答弁を願いたい。おわかりになったか、おわかりにならないか、ぼくみたいなばかはわかりませんけれども、委員長に伺っておきたい。
  419. 森田重次郎

    ○森田委員長 大臣局長に質問してください。
  420. 八木一男

    八木(一)委員 委員長にも質問できる国会法の規定になっていると思います。ぼくはばかですからわからないけれども、委員長はりっぱな方ですけれども、ここにばかが一人いるのだから、委員長もわからないとおっしゃっても決して恥じゃないです。委員長、わかっておられないでしょう。わかりますか。  ところで、りっぱな頭を持っていられる、一番近くにおられる委員長もわかっておられないと私は判断をいたします。わかっておられるというのだったらまた委員長に御説明願いますけれども、わかっておらない。私もわかりません。各委員の方々で、すばらしい頭の方はおわかりになるかもしれないけれども。わかっておられる方がもし多いなら、異議ありとおっしゃっていただけば、私はあやまります。わかっておられないと思う。それをわかるだけの資料を即刻つくってください。——いま資料要求をしているのです。委員長から資料を出すように命令してください。
  421. 森田重次郎

    ○森田委員長 伊部局長、わかるように八木さんに説明してやってください。
  422. 八木一男

    八木(一)委員 資料要求ですよ。説明というのは、いま言っていることは、ことばとしては聞こえて、ぼくは記憶しております。記憶しているけれども、その意味がわからぬ。——いま、休憩中に御説明を受けまして、年金局長としての説明のことについてはわかりました。その説明によると、前が六割七分、今度が六割五分だから、そういう修正積立金方式はほとんど横すべりの形だけれども、こういうことになるわけです。ところが前に、完全積立金方式の百であったのが六十七になった、三十三減ったというところを、今度は六十七が六十五では、修正積立金方式のシステムを拡大するという方向にはなっておらないわけです。そのような点があります。まだ三つ点があるのです。  そこで、とにかく私のほうから言うと、給付は六割増した、保険料は八割三分ふえたということは、国民立場から見ると、修正積立金の方式が逆行したということが明らかに言えるわけです。ただ、そちらのほうの保険料の原資計算からすると、わずかに六十七が六十五に下がったということが言えるわけです。そういう点でわかりましたが、これはどちらの視点から考えるべきかということになると、おのずから意見が違います。国民立場から言うと、明らかに逆行をしておるということになります。それとともに厚生省立場から言っても、完全積立金方式の百のところから、前回の一万円年金のときに六十七に下げたのを、今度のあなた方の言うところによったら、二万円年金、二倍にふえたときに六十五にしかしないということは、修正積立金方式にこの前踏み切った精神が、ここで完全にじゅうりんをされておるということになります。  その次に第三点。この前の、修正積立金方式のために積立金に穴があいている部分を、今度の標準保険料の中にも計算しておられる。それは別にして、今度のこれからの分として計算されると、別な数字が出てくるわけです。  さらに第四点。あなた方は、この保険料の計算について、五分五厘で利殖をされる計算をしておられるのではないかと思います。実際の運用は六分五厘であります。それを変えれば大きくまた数字が変わってくるわけであります。  私の粗末な頭で研究してこの四点について考えまするときに、ほんとうに国民立場に立って修正積立金方式を拡大する。いまの保険料負担が困難な国民に、負担をできるだけ少なくしようという意図のもとに年金を多くするという重大な精神が、ねじ曲げられておるということは明らかであります。そういうことのために、いま年金局長の、年金局だけの立場の数字の魔術については、八割ぐらいはわかっておりました。全部はわかっておりませんです。しかし、私のようなばかではなしに、もっとりこうな先生方にも、この問題についての数字を明らかにお認めをいただいて、このような保険料値上げがもっと下げられる、下げてしかるべきだということを、この法案を審議しておられる与野党の委員の各位に、特に理事の各位、委員長にも、前から知っておられると思いますけれども、再確認をしていただいて、このような不当なやり方でなしに、保険料の四百五十円は、少なくとも三百五十円か、ぎりぎりでも四百円ぐらいに下げる。五百五十円にするのは、二年後ではなしに五年後か十年後にずらす。あるいは上げるとしても、これを四百円にとどめておくというようなことが考えられてしかるべきだという点で申し上げたわけであります。  そのようなことについて、いま数字の問題は解決をしましたので、そういう方向でお考えになっていただく必要があろうかと思いますが、年金局長答弁ではなしに、厚生大臣国民立場に立った前向きな御答弁をひとついただきたいと思います。年金局長の介入は拒否をいたします。
  423. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 修正積立方式の精神は、前回のときにいたしましたと同様に持ち続けているわけであります。   〔委員長退席、谷垣委員長代理着席〕 それを拡大はいたしておりません。若干拡大いたしておりますけれども、拡大しておるといっていばったものではございませんが、とにかく一万円年金にいたしますときに考えましたその修正積立方式の考え方を持続をし、できたら少しでも延ばしたいという気持ちでやっておりますことはお認めいただきたい。また、次の改正時にはできるだけこの考え方を拡大をしていきたいと存じますが、今回はこの程度でひとつお認めをいただきたいと思います。
  424. 八木一男

    八木(一)委員 今度は年金局長——ほかのことを言わないで、そのものだけの答弁を願いたい。五百五十円というのは法律に書いてありますか。書いてございませんか。
  425. 伊部英男

    伊部政府委員 法律に書いてございます。
  426. 八木一男

    八木(一)委員 四百五十円は書いてありますか。
  427. 伊部英男

    伊部政府委員 法律に書いてございます。
  428. 八木一男

    八木(一)委員 そうしますと、五百五十円ということを二年後にやろうとしておられるけれども、いまの厚生大臣の御答弁で、これは法律にはきまらないですか。これは二年先ではなしに十年後ぐらいに延ばすということは当然考えられるべきであると思いますが、厚生大臣のお考えを伺いたい。
  429. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 この次の大改正のときにはさらに拡大をするように考えたいと存じますが、このたびの改正は一連のものでございますから、五百円の分もこのままでお認めをいただきたいと存じます。
  430. 八木一男

    八木(一)委員 先ほどの御答弁とは趣旨が違うと思うのです。これは法律にきまってないのですから、いま即決することではない。いま申し上げた国民立場に立って、さっき理由を大臣に四つとも言いましたね。もしそれがおわかりにくかったらもう一回話してもいいのですが、四つ理由があるのです。ですから私が言っていることは間違いがない。ですからそういうことで、五百五十円は少なくとも、何年か知らないけれども、二年後にするというのじゃなしに延ばすことを考える、前向きで検討するというぐらいなことはおっしゃらないと、さっき厚生大臣が御答弁になった御趣旨とは相反すると思うのです。非常に率直で、明快で、前向きで、うそをつかない厚生大臣が、うそをおっしゃるとは言いませんけれども、そういうことになるといけないので、それを、上げないほうについて前向きに検討いたします、そのような御答弁はあってしかるべきだと思います。
  431. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私の申し述べましたのは、このたびいわゆる一万円年金をいわゆる二万円年金にいたしますにつきましては、この修正積立方式の考え方は、前のとおり若干は上回っていますけれども、いばった上回り方ではございませんが、これでお認めをいただきたい。この次にさらに二万円年金を三万円年金というぐあいに改正をいたします際には、いまおっしゃいました御趣旨を十分体しまして、積立方式をもう少し拡大するように努力をいたしたい、かように申しました。したがっていまの五百五十円も、そういった考え方でこの法律の中に明記をいたしておるわけでございますので……(「おらないから検討してみてください。四百五十円は明記して、五百五十円というのは法律にないのです。提案説明の中で、法律にはないのです。」と呼ぶ者あり)附則の第九条に書いておるのです。そうして全体のいわゆる二万円年金というものを構成をいたしておるのであります。
  432. 八木一男

    八木(一)委員 年金局長、さっき書いてないと言いましたね。
  433. 伊部英男

    伊部政府委員 法律に書いてあると申し上げました。
  434. 八木一男

    八木(一)委員 それでしたら、あなたは声が小さくて、ぼくはないと聞いた。そういうことで附則に書いてあるのなら、そういう法律は、まことに年金をやる方向と違っているので、これまた委員会において修正していただく必要があろう。その点について私のなまいきな意見でございますけれども、一生懸命に質問をし、一生懸命に問題点を指摘をしているのですから、同僚先輩の皆さま方には、ひとつまたお集まりをいただいて、この問題の修正について御協議をいただきたいと思うわけであります。委員長代行、ひとつよろしく。
  435. 谷垣專一

    ○谷垣委員長代理 八木さんにちょっと申し上げますが、質疑は続けてください。
  436. 八木一男

    八木(一)委員 質疑は続けます。協議はしていただけますね。
  437. 谷垣專一

    ○谷垣委員長代理 質疑が終わりましたあとで協議をいたしますから、質疑を続けてください。
  438. 八木一男

    八木(一)委員 しかし時間急ぐでしょうから、その前にも協議をしていただきたい。(「審議並行」と呼ぶ者あり)
  439. 谷垣專一

    ○谷垣委員長代理 質疑を続けてください。
  440. 八木一男

    八木(一)委員 続けますから協議のほうも……。
  441. 谷垣專一

    ○谷垣委員長代理 八木さんにちょっと申し上げますが、ここの質疑の間に理事同士で話をしていただきますから、質疑を続けてください。
  442. 八木一男

    八木(一)委員 委員長代理の前向きな御答弁で、すぐ一生懸命に大急ぎで……。それでは今度はごく軽い問題を申し上げます。  十年年金について、これを実効のある年金にすることをされたことは、りっぱなことだと思います。厚生大臣もそのことを推進されたことは敬意を表します。年金局長は欠点だらけだけれども、この点については少しよくやりました。ただ、この十年年金について再任意加入という制度がございますね。これもあることがいいと思いますが、これをなぜ五年というふうに限ったか。再加入をさせてあげるなら、十年加入させてあげて、十年年金適用をさせてあげるのが親心ではないか。理屈を言って五年でなければいけないというなら、なぜ六年ではいけないということになります。四年ではいけないということになります。そんなけちばったことをしないで、十年間さかのぼってこれが適用になるというふうにしていただくことが至当であろうと思いますが、それについて厚生大臣いかがでしょう。
  443. 伊部英男

    伊部政府委員 十年年金の任意再加入の対象の方々は、現時点で見ますと五十八歳から六十三歳の方でございます。こういう高年齢の方々でございますので、やはり保険料の拠出は五年程度が適当であろうということで、かような考え方をいたした次第でございます。
  444. 八木一男

    八木(一)委員 まことにへんてこりんな話ですね。再加入で十年全部払わせると言っているのではない。三年さかのぼって入りたい人は、三年さかのぼって入られるようにしたらいい。五年の人は五年にしたらいい。七年の人は七年にしたらいい。十年の希望のある人は、十年入れてあげたらどうですかということです。かってに、何歳と何歳で負担能力がないだろうから、もっと払ってさかのぼりたい人も一切いけませんというような、そんなむちゃくちゃなやり方はないと思います。こんなことはすぐ変えられますよ。厚生大臣の御答弁のほうが率直でよろしい。これは十年でも希望があれば入れるようにしていただきたいと思います。質疑急ぎますからどんどん答弁してください。どんどん進めますから。
  445. 伊部英男

    伊部政府委員 年金支給開始年齢は六十五歳でございますので、これを過ぎてなお保険料を徴収するということはあまり長くはしたくない、こういう趣旨で五年にしたわけでございます。
  446. 八木一男

    八木(一)委員 あなたは、人のことば、ほんとうに聞いているの。ただ自分たちがつくった、ひん曲がったとか不十分な案、それを何でもかんでも守ろうということでは、国会の審議ではないですよ。年金局長厚生省の中で、これはいいのだといって指導しているのはいいけれども、言っていることに答えていないじゃないですか。適当でないと言っておるけれども、あなたの言っておる年齢の人で、私は入る、六年間さかのぼりたいという人もいるでしょう。あなたは、適当でありません、これが適当でございますと、そんなきめつけ方をするほど神さまみたいな人ですか。任意であるのだから、三年さかのぼたって、五年さかのぼったっていいじゃないか。伊部君だけで、そんな年寄りは入れてやらないというのは意地悪ですよ、これは。そんな意地悪なんということは、国民の政治で認められているわけではない。もっと前向きの答弁をなさい。
  447. 伊部英男

    伊部政府委員 この制度は、今回再加入を認めて、その後五年間保険料を払っていただくという制度でございます。かような制度は、三十六年発足当時に入らなかった人に対する、きわめて例外的な臨時の措置でございます。そしてまた、年金開始年齢を越えて保険料を徴収するということは、あまりこれも適切な先例ではないと思うのでありますが、特に今回踏み切ったのでございまして、その意味におきましてやはり五年が限度であるというふうに考えております。
  448. 八木一男

    八木(一)委員 話にならぬこんこんちきだと思います。あなたは意地悪じいさん、いじわる局長。あなたのおじいさんやおとうさんのことを考えなさい。言っていることの答弁一つもなっていない。そんな意地悪局長のほうで時間をむだにして、もっと大切な質問を抜かすといけないから先に進みますけれども、あとで繰り返しますよ。そんな年寄りなんかおれの言うことを聞けなんという、昔の独裁者みたいな考え方はやめなさい。  それから次に、この任意の適用の人たちの年金は二千五百円ですね。これは時間を急ぐからこっちから言うわ。それの保険料は幾らですか。
  449. 伊部英男

    伊部政府委員 七百五十円でございます。
  450. 八木一男

    八木(一)委員 七百五十円というのは、どういうことで計算をしたのだ。
  451. 伊部英男

    伊部政府委員 今度の年金につきましても、十年年金と同様な優遇をもってしたわけでございますが、その優遇率を四百五十円に乗じた額でございます。
  452. 八木一男

    八木(一)委員 なんという。厚生大臣、よく聞いてごらんなさい。年金局長はさっき二、三回ほめてやったけれども、ほんとうにでたらめを一言っておるから。これは二千五百円ですよ。十年年金は五千円です。片方は二千五百円でしょう。それで保険料が七百五十円とは一体何ごとですか。十年年金の人はいままで二百五十円、三百円で払っておるわけでしょう。あとから入ってきた人は、保険料は倍も取られ年金は半分だ、そんなばかな話がどこにあるのですか。それはあなた方は、年金制度を理解しないで入っていないから、ぼやぼやしておるからかってだと言いたいのでしょう。しかし、年金というものは複雑なもので、ぼくみたいに国会で職務として一生懸命勉強してもなかなかわかりにくい問題を、年寄りの人にはなかなかわからない。それをわからせようとしなかった。わからせることを浸透できなかった年金局や厚生省やいまの社会局長に責任がある。わからないから、最初、初期のときに任意加入ということができなかった年寄りには、一つも責任はない。それを、最初から入っていない者は、年金はほかは五千円でも二千五百円しかやらない、保険料はほかは三百五十円でも七百五十円取る、そんな意地悪なことが世の中のどこにあるか。  年金局長には非常に意地悪局長で、時間がもったいないから言いません。厚生大臣、一体こういうインチキなやり方があるのですか。年金というのは複雑ですから、主務大臣でもわからないことがある。それをやっているのは意地悪局長なんだ。それを断固として直させなければいけません。そのために私ども一生懸命審議をしているのですから、大臣みずからそれを直すのだということを言っていただかなければならぬ。大臣答弁を願います。
  453. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 先ほども申し上げますように、私は保険数理の専門でございませんからよくわかりませんけれども、これから月七百五十円五カ年掛ける、そうすれば二千五百円ずつずっと死ぬまでもらえる。この保険の数理からいくと、それは過酷な数理ではない、私はさように思っているわけです。
  454. 八木一男

    八木(一)委員 片方は十年間で五千円になる。その人の保険料は三百幾らなんです。片方の人は五年間だからという計算で半分の二千五百円にしかしていない。保険料は七百五十円。年金制度というのは年寄りを大事にする制度だから、ほかの資格を全部やめにしても、七百五十円払って月に二千五百円ずつ、百まで生きたら得だということはあります。それは年金制度の主体だ。十年年金は五千円、五年年金は二千五百円で七百五十円取られる、そんなばかなことがあるか。そのぐらいのことはおわかりでしょう。年金局長は半分はインチキを言うという考え方のもとに厚生大臣は判断をしないと、局長が言った数理でごまかされる。そんなことではいけません。そういう問題は賢明な委員の皆さま方が直されると思いますので、そんな意地悪局長みたいなのは時間の浪費だから、これ以上言いません。  その次に通算の問題に移ります。  年金制度で通算という問題が非常に大事なことは申し上げなくてもわかると思います。ただ御答弁によっては、無理解な御答弁があれば、その説明をいたします。おわかりになるまでその説明をいたしますけれども、理解がおありになると思いますから、通算の問題について説明をしないで伺いますが、ほかの年金制度だけの通算であれば二十年で通算年金がもらえるようになっている。これはいわゆるじゅずつなぎ方式、さいふ内通算方式という少しなまけた方式です。私は原資移管方式を主張したのですけれども、このような、じゅずつなぎ通算方式とか、さいふ内通算方式とか、ほんとうに大なまけな通算方式をとった。大なまけですけれどもそれは役に立つ。しかし、その大なまけの通算方式の中で、そのなまけた点が非常に具体的に阻害をしている。国民年金の期間がちょっとでも入れば二十五年間。ほかの年金制度、たとえば厚生年金、船員保険であれば二十年。職業転換した人で国年の部分があれば、二十五年間にならなければ通算通則法の適用を受けない。ところが労働者、たとえば国家公務員共済組合、あるいは厚生年金、あるいは船員保険、そういう人で職業転換をした人が二十年で通算年金適用を受けられる。なぜこういうことになったかというと、伊部君聞いていらっしゃいよ、理由があって、国年の者はいじめてやろうということでそういうことをしたということが一つ。それでなければ、国年の基礎的計算は二十五年払ってやっておる、厚生年金の基礎的計算は二十年でやっておる、その計算がめんどうくさいから、国年は二十五年でやっておるから二十五年にせにゃいかぬ。国民年金の被保険者は少し延ばしておこうという気持ちがあったら、これは言語道断だ。そうして厚生省の計算が弱いだけだ。こっちは全部一切二十五年で計算しておるのだから、国年でやったから二十五年でなければいけないとしたならば、彼らの事務的サボタージュのために国年の被保険者の権利が不当に侵害されておることになる。なぜこの通算通則法の通算方式を全部二十年にしないか。できれば十五年、十年に全部下げたほうがいいのですが、少なくともいま言っておる線において、どこの年金制度を渡り歩いても二十年で通算をされるというようにしなければならぬと思う。これは厚生大臣、絶対にしなければならぬことで、しても絶対に困らない。しないと言えば年金局長のサボタージュだ。おわかりだと思いますから、即刻それをやるという御答弁をいただきたい。おわかりにならなければ、通算の意義についてこれからおわかりになるまで御説明申し上げます。——年金局長じゃない、厚生大臣答弁を求めているのです。かってなことをするな。説明はわからなければ私がすると言っている。伊部君、よけいな口出しは要らない。
  455. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 どうもまだよく御趣旨がわかりませんので……。
  456. 八木一男

    八木(一)委員 大臣のあれですから御説明します。  通算ということは年金制度で非常に大切でございます。そこで、いままで通算通則法のないときには、厚生年金は二十年なら二十年。国年はそのとおりでありませんで二十五年に達しないで被保険者でなくなると、脱退一町金というものがあります。この脱退一時金というものは、すぐ金が手に入りますから、非常に生活に困っておられる労働者の方々、あるいは結婚直前の女子労働者の方が職場を去られるときには、目の前に金がありますから、これを歓迎されたわけです。しかし、その素朴な国民感情に便乗して、その労働者の権利を猛烈に抑圧をしている内容があるわけであります。年金の計算には——厚生年金ですよ。使用主の負担分が半分、労働者の負担分が半分、それについて、完全積立方式ではないけれども、将来にかかる国庫負担は現在では二割、そのことで年金が計算されているわけです。ところが脱退一時金のときには国庫負担分の計算がございません。そしてまた、使用主の保険料負担分の原資も計算をされないで、労働者の保険料だけで計算をされる。もっと精密に言えば、同じグループにある労働者の中で、早く死亡されて遺族年金が早く出る部門があります。それから早く障害を受けられて障害年金の給付も受けられる方があります。それを年金計算で原資から差っ引く。そして残りのものについて五分五厘の利息をかけたものを脱退一時金として支給されているわけです。二十年になれば、一ぺんに使用主の保険の分が来て、国庫負担分も計算されて二倍以上になるわけです。十九年でやめる人は不幸な人であります。自分の職場を転向するというのは非常な苦労であります。また、いろんな事情で気の毒な事情でかわられるわけです。そういう方々が年金制度を通じて不当に弾圧をされてきたわけです。しかし数字がむずかしいですから、素朴な善意な労働者の方々はこれを知りません。すぐ前に脱退一時金が出れば、現金が入りますからこの制度はいいと思うのです。だけれども、その妙なからくりの計算で収奪をしていたのは労働省です。そういうようなことがあってはいけないということで通算という方式をつくったわけです。ただ、まだこのことが、年金局や社会保険庁の怠慢のために、労働者の方々にすっかりわかり切っていません。だからまだ脱退一時金があったほうがいいという方があります。これはあなた方の行政指導が悪い。そういうことです。それをやめるために通算通則法というものができた。  そこで私どもは、おのおの原資を使用主分、国庫負担分も入れて現価計算をしまして、最後に入った年金制度のところに原資を持っていって、そこでできた原資と合わせて年金計算をして、最後は国民年金と厚生年金のところから一括してもらうようにすべきだ。日本社会党の立場は、特に国民年金は六十歳開始ですから、六十歳からそういうことができる。しかも場合によっては繰り上げ支給ということができるから、人によっては五十五歳からそれを支給することができるという態度であります。そういうことについてほんとうにそういうことができる方式を提起した。ところが、今井一男君なり近藤君なり厚生省において、そんなめんどうくさいことは計算上できませんということを言うものですから、いわゆるじゅずつなぎ方式というものをとりまして、おのおのそこで凍結をする。そうして厚生年金がたとえば十三年間であれば、その分は厚生年金から六十歳に達したらもらう。国民年金が十二年間だったら、その分は六十五歳になったら国民年金のほうからもらえる。ですから、さいふの中で通算される、まとまってくれない、支払い利子も違う、そういうなまけた通算方式がいまとられている。しかし、ある程度なまけても効果を発している。その効果を発している通算制度の中で、いま言った脱退一時金の弊を除くために、この通算の分は十九年間でも損をしない。これは正確ではありませんが、十九年間だったら二十分の十九の原資が国庫で維持をされる。そして共済組合に一年入られたら、そこの二十分の一が入る。決して損をしないで受け取れるように通算通則法はなっている。だから脱退一時金の損害は、通算通則法の適用々受ければのがれられるわけであります。  その通算通則法のやり方を二十五年でしなければならないと思う。しかしここで伊部さんは御説明になろうと思いますけれども、経過規定がございます。かなりの問題に対処されるような方式はとられておることは私は存じております。経過規定があることは知っている。知っているけれども、その経過規定があってもなくても、二十五年を二十年に直すことは、金額をふやすという問題でなしに、みんながわかりよくなって、そういう通算というものは二十年たったら適用になる、だから脱退一時金をもらわないでがまんしても老後の年金を確保しようということになるわけであります。それを、労働者年金は二十年、そして国民年金に入れば二十五年というようなへんてこりんなかっこうでしていく法は毛頭ない。経過規定の説明は、伊部君いいでしょう、ぼくは知っておりますからいいけれども、そういう変なことをする必要はないじゃないか。だから二十年にならしたらどうかということを申し上げておるわけであります。伊部君、それだけでいいです。二十年にならすように努力すると言ってください。言えなければ言わなくていい。また先に質問を進めます。
  457. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 大体わかりました。よく検討いたしまして、要すれば通算通則法の改正をいたしたいと思います。
  458. 八木一男

    八木(一)委員 それでは先の質問を急ぎます。  次は、今度は積立金の運用について、同僚の議員からずいぶん言われましたから、ごく簡単に申し上げたいと思います。  積立金の運用については、そのほんとうの精神を考えていかなければならない。一体積立金というものは本来だれに所属すべきものか、厚生大臣のお考えを伺いたいと思います。
  459. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 だれに所属と申しましても、これはやはり保険料を出しておる人、それに政府も出しておるなら政府も、それらの共同の全体のものに所属しておると、まずかように申し上げまししょうか。
  460. 八木一男

    八木(一)委員 鳩山君、まだ来ないのですか。一体だれが鳩山君に伝えたのか。だれがどういう経過で伝えたのか。伝えたのに鳩山君来なければ、鳩山君を次の会議で糾弾しなければならない。なまける者があったら、それ々糾弾しなければならない。その経過をはっきりしなさい。−大蔵大臣はどうした。労働大臣はどうした。一体何をしているんですか。
  461. 谷垣專一

    ○谷垣委員長代理 大蔵政務次官労働政務次官が来ておりますから、政務次官で済む質問は続けていただきます。——八木一男君、質疑を続けてください。   〔発言する者あり〕
  462. 谷垣專一

    ○谷垣委員長代理 静粛にお願いします。
  463. 八木一男

    八木(一)委員 労働省の関係のほうに質問します。  私は、国民年金法審議に労働大臣出席要求し、それから政務次官には前から誠実にお待ちになっていただいて、順番がおそくなりまして、その点は申しわけないと思いますが、政府関係の答弁に不十分やでたらめな点が多いために時間をとったので、その点は御了承を願いたいと思います。  実は、国民年金法が労働省というのは、ちょっと目に見たら、そうぴたっと任務管掌じゃないんじゃないかと思われる方もあると思いますが、そうではないので、なぜ私が労働省の方に来ていただきたかったかというと、厚生年金保険は五人未満の適用がございません。また五人未満適用をしてまいりましても、たとえば常用労働者五人未満の方向のほうが先に施行されていますから、いわゆる日雇い労働者には、厚生年金適用政府筋ではまだ進められておりません。このことについて、厚生省だけではなしに、労働者の立場に立ってものごとを進められなければならない労働省が、この問題について積極的に厚生省と協議をされ、特に大臣大臣と言いましたのは、政務次官も大臣と同じようにりっぱな政治家でございますけれども、大臣は閣議の出席権があって国務大臣であります。労働者保護の立場から、そういうことを厚生大臣と協力をして閣議で主張してもらわなければならないし、大蔵省が無理解であったら、腕を組んで団結をして大蔵各に当たっていただかなければならぬということのために、労働大臣に特に出席を求めた。ところが労働大臣が一向に来ない。私は労働大臣よりも政務次官のほうがりっぱだと思います。政務次官即時労働大臣になっていただければすぐ申し上げられるんですが、残念ながらそういう状態でありません。大臣が来られるまでにひとつ申し上げたいと思います。  そこで、いまの厚生年金保険の適用という問題を、労働省は厚生省とともにどう推進されるかということについて、労働省の考え方を伺っておきたいと思います。
  464. 小山省二

    ○小山政府委員 大臣出席をいたしまして御答弁を申し上げなければならないのでございますが、よんどころのない用事のために、私がかわって答弁を申し上げることをお許しいただきたいと思います。  いま、八木委員の御指摘のありましたとおり、私どもの役所といたしましては、厚生年金適用が受けられるように、従来とも厚生省といろいろと御連絡を申し上げておるわけでございますが、今日なお実現のできませんことは、たいへん遺憾に考えておるわけでございますが、労働者が安心して働けるよう、労働条件あるいは労働福祉について、その改善に関する努力をすることは労働行政の重要な責務でございます。したがいまして、将来この問題につきましては、厚生省とさらに一そう緊密な連携を保ちながら、これが実現をすみやかにはかるために最善の努力をいたしたいと考えておる次第であります。
  465. 八木一男

    八木(一)委員 いまの御答弁は五人未満の適用のことだけだと思いますが、もう一つの質問についてはどう思いますか。
  466. 小山省二

    ○小山政府委員 日雇いのほうの問題が私の答弁に欠けておったというふうに思います。本件につきましては、技術的にいまなお解決に非常に困難な問題があります。その点、ただいまそれらの問題の解決のために、いろいろと両省間において協議をいたしておる段階でございます。将来すみやかにそうした問題の解決がはかれますよう、鋭意努力をいたすつもりでございます。
  467. 八木一男

    八木(一)委員 その問題について、いつどういう機会で厚生省に労働省は申し入れ、得心をされましたか。
  468. 小山省二

    ○小山政府委員 法案が改正されますつど、それぞれ厚生省のほうから協議がございますので、その段階におきまして両省間において話し合いをいたしておるわけでございます。その合議に当たりまして、私ども労働省といたしましては、十分私どもの考え方、主張というものを厚生省のほうに申し入れをいたしておるわけであります。
  469. 八木一男

    八木(一)委員 今度の法案については、労働大臣か、政務次官か、何局長が、厚生省の何大臣、何局長とこういうことについて協議を受けられましたか。
  470. 和田勝美

    和田政府委員 事務的な問題でございますので、かわって私からお答えさしていただきます。  法案の改正につきましては、厚生省から次官会議あるいは閣議決定の前に協議がございます。労働省としましては、改正法案の協議がありました際に、部内でそれぞれ検討いたしまして、厚生省の主張されることも伺いまして、そうして労働省の意見をまとめて厚生省のほうにはお伝えをする。今回の場合もそういう手続をとりまして、厚生省のお話を伺って、今日の段階ではただいま国会で御審議をいただいているような法案でやむを得ないだろうということで賛意を表した。こういうことでございまして、何々局長といいますか、省の事務レベルで次官会議の前にそういう相談をして、次官会議も了承をし、閣議でも閣議決定になった、こういうことでございます。
  471. 八木一男

    八木(一)委員 労働省はそれについて、やむを得ないというふうにどうして判定をされましたか。どういう理由か聞いて、厚生省のほうで、私のほうの省のことだからうんと言ってくれ、はいそうですかと言ったんですか。何か意見を言わなかったんですか。どういう理由でやむを得ないと思ったんですか。
  472. 和田勝美

    和田政府委員 中身につきましては、厚生省のほうからいろいろと御答弁があっておると思いますので、正式決定までのいきさつにつきましては、厚生省のほうから御答弁があったとおりでございます。そういう点につきましては、私どもとしては、先ほど政務次官から御答弁を申し上げましたように、およそ労働者の地位の向上ということについては労働省の責任でございますので、できる限り早い機会に、労働者の厚生年金あるいは国民年金につきましても、手厚い措置がとられるようなことを希望しておることは当然でございますが、これもいろいろの段階を追って進むべきものが争うございますので、そういうことを考えまして、今回は、厚生省の言われるような、あるいは国会で御答弁になっているようなことで、労働省としても了承したわけでございます。
  473. 八木一男

    八木(一)委員 そういうことについては、大臣に説明したり報告したり、大臣意見に基づいて厚生省と交渉するということをやっておられないですか、やっておられますか。
  474. 和田勝美

    和田政府委員 大臣には、次官会議で議題になりました際に、次官会議から事務次官が帰りますと必ず報告をいたしております。それに対しまして大臣の御了承も得ますので、閣議決定になるわけでございます。そのつど、今回の場合も、事務次官会議のあとで事務次官から大臣に御説明をして了解を得ている、こういうことでございます。   〔谷垣委員長代理退席、澁谷委員長代理着席〕
  475. 八木一男

    八木(一)委員 いつ報告しましたか。いつと、それからその中身。
  476. 和田勝美

    和田政府委員 この案件が次官会議にかかりましたのは、たしか二月だそうでありますが、その前に次官のところでまとめまして次官会議にかかって、その結果を大臣に閣議の前の日に御説明したように聞いております。
  477. 八木一男

    八木(一)委員 労働大臣はその報告について何にも一言も言わないですか。どういうことを言いましたか。
  478. 和田勝美

    和田政府委員 事務次官から御説明を申し上げましたが、大臣がそのときにどういうことであったかにつきましては、私その席におりませんでしたので承知いたしておりませんが、ただ、大臣は御了解になった、したがって閣議決定になった、さように考えております。
  479. 八木一男

    八木(一)委員 そのような内容について説明はしていないと思うし、また説明はしたとおっしゃるならば、そういうことについて一つ意見を述べられないということであってはならないと思うのです。  ところで、そういうなまけた大臣であるか、非常に熱心な大臣であるか、いまのところわかりません。あなたのほうの事務次官が大臣に報告をされたわけですね。ですからこれはそういう意味で、大臣にすぐ出てきていただかなければならないと思いますが、なお、厚生大臣が労働大臣から、国民年金法の問題について意見を聞かれたことがあるかどうか、伺っておきたいのであります。その意見について、いつどういう席で、どういう内容のことを厚生大臣に言われたか、その事実がありましたら伺っておきたい。
  480. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 国民年金法案の改正にあたりまして、労働大臣から意見は聞いておりません。異議ありということも聞いておりません。閣議では御賛成でございました。
  481. 八木一男

    八木(一)委員 一つ意見を言わないで了承する、あるいは賛成だ、そんな大臣は、労働者の立場を守る大臣としては非常に不適任であろうと思います。ところで、しかし厚生大臣は、何にも意見を言わなかったと言われるけれども、労働大臣厚生大臣に言ったと言われるかもしれない。厚生大臣は正直な方だから、聞いておられないというのはほんとうでしょうけれども、たとえば総理大臣や大蔵大臣意見を述べられたかもしれない、そういうこともあります。  私は、このようないわゆる所得比例制について、労働省が非常にめんどうを見なければならない。たとえば失対の労働者の方々が今度所得比例制の対象にはなれない。あるいは強制適用になっても免除規定の適用が受けられないという問題がある。そういう問題を一つも考えていない、また理解もしていないというような労働大臣であれば、これは労働大臣の資格がない。しかし、原労働大臣はそういう方であるかどうかわかりませんし、私どもが労働省を預けるに足る人物であるかどうかわかりませんし、労働大臣にぜひ即刻に御出席をしていただいて、この真意を確かめたいと思います。そうでなければ、私ども、これから労働大臣の不信任案を出すかどうか、そういうことを協議する材料になります。それから労働大臣に、この問題については、ほかでお答えにならないにしても、どういう考え方があるかということを伺っておかなければ、労働大臣に対してたいへん失礼なことになろうと思います。労働大臣をぜひ即刻にこの委員会においでをいただくように要求をいたします。
  482. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 年金の事柄は、国民所得保障の方策と考えまして、これは厚生年金国民年金も、厚生省、私の責任において考えるべきことだ、かように考えております。したがいまして、五人未満の適用の事業所の問題も、日雇い労務者のただいまおっしゃいました問題も、やはり年金法案が、国民全体の年金を預かっている私の、厚生省の責任だと考えまするので、事柄はそう簡単には出てまいりませんけれども、これは考えるべき問題であることには間違いございません。ことに所得比例の実施にあたりまして、いま任意加入の制度の提案をいたしておりますが、その任意加入の資格者の点は政令に譲られておりますから、その際に十分考えまして、また法律改正を要するものがあれば、次の機会までにできるだけ考えてまいりたい、検討いたしてまいりたい。これは厚生省の責任において、わからないところは労働省にもお伺いをいたしますけれども、国民所得の保障の問題として私のほうで責任をもって考えてまいります。
  483. 八木一男

    八木(一)委員 たとえば、五人未満の事業所の労働者の方々の問題や、日雇い労働者の方々の問題について、労働大臣は当然責任を持っておる。主体的なこの年金制度については厚生大臣が責任を持っておられますけれども、それに対してただの一言も意見がないというような労働大臣であれば、これは労働大臣の資格はございません。しかし、原健三郎君がそのような政治家の資格のない人物であるかどうかは、これは本人が出てこなければわかりません。ですから、本人をすぐ出していただく必要があろうと思います。その上、労働大臣出席要求は最初から私はいたしております。委員長委員長代理が即刻に連絡することをお約束になりました。それでまだ出てこないというならば、労働大臣が国会を完全に無視をしておるということになります。そういうことで、私はいまの佐藤内閣の閣僚である原健三郎君が、国会を無視をする、国務大臣の資格のない人間であるかどうかを、ここで判断をしなければならない。判断をするためには即刻出ていただかなければならない。また年金審議にも、労働省の立場からの労働大臣意見を伺って、それを厚生大臣が大きな参考にされて、今後の御答弁、今後の推進をされる必要があろうと思う。即刻労働大臣出席要求いたします。
  484. 澁谷直藏

    ○澁谷委員長代理 八木君に申し上げます。催促いたしまして、労働大臣間もなくこちらに到着する予定になっておりますので、いましばらくお待ちください。——労働大臣間もなくお見えになる予定でありますので、質疑をひとつ。——八木君、労働大臣間もなくお見えになりますので、どうぞ質疑を続行してください。
  485. 箕輪登

    ○箕輪委員 委員長、本案の質疑を打ち切られんことを望みます。   〔「賛成、賛成」「反対、反対」と呼び、その他発言する者、離席する者多く、議場騒然、聴取不能〕   〔澁谷委員長代理退場〕    午後八時五十一分