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1969-06-05 第61回国会 衆議院 社会労働委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年六月五日(木曜日)    午前十時二十五分開議  出席委員    委員長 森田 重次郎君    理事 澁谷 直藏君 理事 竹内 黎一君    理事 谷垣 專一君 理事 橋本龍太郎君    理事 渡辺  肇君 理事 河野  正君    理事 田邊  誠君 理事 田畑 金光君       阿部 喜元君    海部 俊樹君       藏内 修治君    佐々木義武君       齋藤 邦吉君    世耕 政隆君       田川 誠一君    高橋清一郎君       中川 一郎君    中山 マサ君       丹羽 久章君    広川シズエ君       福家 俊一君    福井  勇君       増岡 博之君    箕輪  登君       武藤 嘉文君    枝村 要作君       加藤 万吉君    後藤 俊男君       島本 虎三君    西風  勲君       八木 一男君    山田 耻目君       山本 政弘君    本島百合子君       大橋 敏雄君    伏木 和雄君       谷口善太郎君    關谷 勝利君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 斎藤  昇君  出席政府委員         厚生大臣官房長 戸澤 政方君         厚生省児童家庭         局長      渥美 節夫君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      辻  敬一君         厚生大臣官房企         画室長     首尾木 一君         自治省財政局財         政課長     首藤  堯君         専  門  員 濱中雄太郎君     ————————————— 六月五日  委員小川半次君、海部俊樹君、中野四郎君及び  福家俊一辞任につき、その補欠として福井勇  君、丹羽久章君、中川一郎君及び武藤嘉文君が  議長指名委員に選任された。 同日  委員中川一郎君及び武藤嘉文辞任につき、そ  の補欠として中野四郎君及び福家俊一君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  児童扶養手当法及び特別児童扶養手当法の一部  を改正する法律案内閣提出第五九号)  国民年金法の一部を改正する法律案内閣提出  第六四号)      ————◇—————
  2. 森田重次郎

    森田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出児童扶養手当法及び特別児童扶養手当法の一部を改正する法律案、及び、国民年金法の一部を改正する法律案の両案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。田畑金光君。
  3. 田畑金光

    田畑委員 この法律は、いずれも手当額の引き上げ、あるいは所得制限の緩和をはかる内容でありますので、前進した法律案であるわけであります。そのことは率直に認めるものでありますが、これに関連してお尋ねしたいことは、もうしばしば質疑応答がなされておりますけれども、大臣答弁が声が小さくて、うしろにすわっておると内容が聞こえなかったので、あらためてもう一度質問しなければならぬ、こういうことになったわけです。  そこで、まず最初に、児童手当制度の問題でありますが、この国会でも、厚生省設置法の一部改正法がすでに衆議院を通って参議院にまいっておるわけであります。政府としては児童手当審議会を設けて、昭和四十六年の三月までのこの二年間に答申を求める、こういう態度でおるわけでありますが、しかし、これに先立ち、この間来取り上げられておりますように、児童手当懇談会昭和四十二年十一月の末に発足して、昭和四十三年の十二月二十日に厚生大臣報告書を出しておる、こういういきさつになっておるわけであります。  この報告書を見ますと、いろいろ具体的な内容を取り上げておるわけでありますが、この児童手当懇談会というのはどんな性格とどんな趣旨でできたものであるのか、まず、この辺を明らかにしていただきたいと思うわけです。
  4. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 厚生省に設けられました児童手当懇談会は、御承知のように児童手当というものが必要だという声が非常に強くあり、また社会福祉審議会その他においてもそういう御意見の御進達があり、国会におきましても、もうだいぶ前から要望の声を各党から承り、総理も、歴代厚生大臣も、児童手当は実施すべきものだという答弁をいたしておりましたが、そこで一体児童手当内容は、どういうようなものが考えられるだろうかということで、政府がこういう考え方を持っているがどうかというんでなくて、児童手当懇談会において、児童手当というものは一体どういう形にするのが適当かという検討をしていただき、それについての御回答をいただいたということでございます。  そこで、その児童手当懇談会では、相当具体的な検討をしていただきましたが、しかし、これにはまだしさいに検討をすべき点もあるから、法案として出すためには児童手当審議会というものを設けて、そこでさらに検討を加えることが適当であろう、こういう答申をいただいたわけでございますので、今度厚生省設置法改正によって、法律に基づく審議会をお願いいたしているわけでございます。そういうわけでございますから、今度の審議会には政府意見を入れたものを御諮問申し上げるのが筋ではなかろうか、かように考えております。
  5. 田畑金光

    田畑委員 手当懇談会であったがゆえに懇談会報告権威がない、こういうわけでこれを直ちに取り入れなかったのか、それとも懇談会でなくして、法律に基づく審議会でなければ権威のある答申というものは得られない、こういうことであらためて今回の厚生省設置法一部改正という形になったのか、この点はどうなんですか。
  6. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 それは権威があるとかないとかいう問題ではございません。懇談会のほうでは自由な立場でひとつ考えていただく、そして厚生大臣に知恵を授けていただく、こういう考え方懇談会を設けて、御諮問を申し上げたわけであります。そこで懇談会としては、一応こういうように考えるけれども、しかしこれを実施するについてはなお幾多の問題があると思うから、そこで審議会という正式な法律に基づくもので審議をやられるのが適当であろうという答申を、懇談会からいただいたわけでございます。私は、どちらが権威があるとかないとかいう問題ではございませんが、そういういきさつがございまするし、先ほども申しまするように児童手当懇談会には、政府はその内容についてこうしたい、これでいかがでござるかという御諮問をしておりませんので、したがって、今度は政府意向をいれたものを御諮問を申し上げる、そのための審議会、かように考えて設置法をお願いいたした次第であります。
  7. 田畑金光

    田畑委員 懇談会は自由な話し合いで厚生大臣報告を出してもらった、ところが審議会については、政府意向をいれた諮問をする、いわば形式の差異ですね。しかし、今度の国会にもやがてこの委員会審議されるであろう社会福祉事業振興会法、これは昭和四十三年五月厚生大臣から葛西嘉資氏を座長とする五人の学識経験者に、心身障害児扶養保険制度に関し、国の行なうべき施策について調査研究を委嘱した。五人の委員は数次にわたって打ち合わせをやり、昨年の七月一つ考え方をまとめて厚生大臣報告をした。その報告を取り上げて今度の国会社会福祉事業振興会法の一部を改正する法律案、こういう形になっておるわけですね。だから懇談会であるから権威があるとかないとか、あるいは審議会であるから政府意見を出して諮問をしたとか、そういうようなことは形の問題であって、懇談会であろうと審議会であろうと、その内容がその所期の目的に沿うならば、進んで取り入れてこれを制度化する、法律化する、こういうのが当然のことだと思うのです。この点はどうでしょうか。ことに社会福祉事業振興会法の一部改正というのは、これは懇談会ですよ。その報告書によって今回の法律改正になっておるわけですよ、どうですか。
  8. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 その点は、まあ事柄にもよりけりというわけでもございますが、これは社会保障制度審議会に正式に政府案として諮問をいたしまして、その答申を得たわけでございます。したがって、先ほどおっしゃいます社会福祉事業振興会法の一部を改正する法案につきましては、社会保障制度審議会にはかりまして、そしてその答申をいただいて法律案として提案をいたしたわけでございます。特別新しい審議会を設ける必要はなかろう、かように考えたわけでございます。
  9. 田畑金光

    田畑委員 そうしますと、今度できまする児童手当審議会答申を出して、いよいよ児童手当を創設する、こういうような場合には、社会保障制度審議会にはかけなくてもいいのですか、どうなんです。
  10. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 これも制度の上では、あるいはかけるということになっているかもしれませんが、したがって社会保障制度審議会だけでもいいじゃないかという御議論もあろうかと思います。その点も検討をいたしました。何せ社会保障制度の三本の柱の一つといわれているような大制度でございますので、将来のこともおもんぱかりまして、最初出発の際にはひとつ別の審議会をつくって、そこで審議をしていただくことが適当であろう。これは懇談会答申の中にもそのことをうたっておられますので、懇談会の御意見を尊重いたしますとともに、政府もそれがけっこうじゃないか、かように考えて、法律案としていま御審議を願っているわけであります。
  11. 田畑金光

    田畑委員 この点は、児童手当懇談会を設けたのも、児童手当制度を創設すべしという世論の圧力の前に、厚生大臣としては懇談会意見を聞いて、ひとつ世論の期待にこたえようということで懇談会を設けているわけです。また児童手当創設の問題についてはすでに中央児童福祉審議会社会保障制度審議会、あるいは経済審議会雇用審議会人口問題審議会等々、すべてのこういう政府諮問機関から、児童手当制度をすみやかに創設すべしという強い要請があって、そうして政府は、また歴代厚生大臣がこの数年来善処します、早期の成立を期します、総理大臣もまた予算委員会その他でしばしば、あるいは本会議等善処を約束しておるので、この世論の手前ようやく児童手当懇談会を設けて、さてその報告書が出た。なるほどその報告書の中には、「その細目、他の制度との調整などなお検討すべき事項を残している。」がということで、まだ問題があることも指摘はしておりますが、政府がその気になれば、この懇談会報告書によって制度具体化というものは私は早急に、いや四十四年度からでもやろうと思えばできたと思う。  ところが、これは結局大きくは財政的な問題から政府にその気がないもんだから、今度また懇談会報告を受けて審議会、こういう形に、言うならばできるだけ先に延ばそうという政府責任回避だ、私はこのように指摘したいわけです。  この間からも指摘されたように、昨年のこの衆議院社会労働委員会における国民年金法の一部を改正する法律案に対する附帯決議、五十八回国会、この中でも「児童手当に関する法律昭和四十四年度から実現に努めること。」これを第一項にあげて、当時の園田厚生大臣は、これに善処を約束しておる。その直後でしょう、児童手当懇談会政府に設けたというのは。——児童手当懇談会は、すでにその前からできておるわけでありまするが、結局審議会を設けても、これはできるだけ先に延ばそう、延ばそうという政府責任回避にすぎない。いわば隠れみのにすぎない、こういうことだと思うのです。  斎藤厚生大臣は、四月の十五日、衆議院内閣委員会で、来年の国会には必ず児童手当法案を出させるようにしたい、こういうことをお答えになっておりますが、これはいまでも変わりませんか。
  12. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 その点は全く変わりがございません。審議会は、決して延引策としておるわけではございませんで、十二月二十日に答申をいただいて、それから何千億という予算がかかるものを、そのままうのみに出すというわけにもまいりません。したがって、この一年間、十分政府案として検討して、審議会にもはかって、そして次の国会には間に合うようにしたい、かように思っておるわけでございます。
  13. 田畑金光

    田畑委員 その点が私はおかしいと思うのですが、審議会答申政府が期待しているのは、四十六年の三月末でしょう。ところが、来年から実施するということになれば、ことしの十二月から始まる通常国会昭和四十五年度の予算の中で児童手当制度について発足させる、こういうようなことになってきますと、審議会答申と、大臣が四十五年度から実施すると言うこの制度との関係というものは、どのような関係になるわけですか。
  14. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私も期間は一年にしようかとも思ったのですが、しかし、児童手当制度の問題を考えてみますと、発足をいたしましても、なおあといろいろ問題が残るだろうと思います。実施の経過を見ながら、もう一年ぐらいさらに検討していただいて、そして今後さらにこういうようにすべきだとか、あるいは足らない点を補っていただくという点か若干残り得るのじゃないかという感じもいたしましたので、そこで大事をとって二カ年という期限つきにしていただいたわけであります。
  15. 田畑金光

    田畑委員 それだからこそ私は申し上げたいのですが、この懇談会報告書を見ましても、委員の皆さんの、有沢広巳氏以下そうそうたる人方が、一年にわたって検討して、そうして児童手当制度あり方について報告を出しておられる。その詳細についてはなお検討しろ、こういうことばで述べておられる。いま大臣は、審議会答申は二年だけれども、二年を待たずして厚生省部内で、政府部内で一—年というと、もうあと半年ですよ。四十五年度の予算編成事務作業は始まっておるでしょう。それで、十二月に一応四十五年度の予算原案がきまるということになってまいりますと、あと半年ですよ。半年でやるということになれば、何を基準としてやるかとなれば、結局私はこの懇談会報告書もとにしてやらざるを得ない、こう考えるわけです。でありまするから、懇談会をやり、また審議会をつくって、なぜそのように屋上屋を重ねて、先に先に延ばすというようなひきょうなまねをするのか、こう私は指摘をしたいのです。  制度の立て方についても、すでにこれは明確に全国民適用対象にしろ。そうして当面は、被用者については拠出制をとれ、あるいは農民、中小企業者自営業者については無拠出制をとれ。給付についても、御承知のようにすべての児童対象に、そして拠出制の場合は三千円、無拠出の場合は千五百円にしろ。それから被用者の場合については、使用者から八割、あるいは国が二割負担する等々、はっきりうたっておるでしょう。厚生省としては、今後四十五年度の予算作業に間に合わすためには、結局この懇談会報告書もとにして検討する以外にないと思うのですが、この点どうですか。率直に、正直に答えてください。
  16. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 特にその点について、私もしばしば私の個人の意見という意味で申しておりますが、政府の統一した考えというわけではございませんが、まず出発からして、児童手当について被用者グループ自営業者グループとに分けて、そして給付も一方は半分というような制度出発するのがいいのかどうか、私はこの点に非常に疑問を持っておるのであります。いま健康保険制度と国保の制度と二本立てで進んで非常に困ってきているというような現状もあるわけであります。なるほど、これはある意味において労働者保護立法ということも考えられるかもしれませんが、その点に重きを置けば、それは被用者グループを厚くしろという点もございましょうが、この被用者がいつまでも被用者であるということはわかりませんし、児童手当でございますから、私はこの点に相当疑問を持ち、検討いたしたい、できたら一本のほうがいいのじゃないだろうかという感じも切にいたすわけであります。この点、政府部内の意見を統一いたしまして、そうして諮問案として出す、まず出発点がそこから始まってくる、かように思うわけであります。
  17. 田畑金光

    田畑委員 いま大臣お答えの中にありました被用者について拠出制をとるか、あるいはまた自営業者等については無拠出制をとるかという問題について、大臣みずから疑問をお持ちになって、これはやはり最初から一本の制度として発足させるのが、制度本来の趣旨から見ても、本来のあり方ではないのかという点については、私もそういう感じを持つわけですが、問題は、そういう根本的な問題が、審議会答申を待たずして、厚生省部内で、しかも四十五年度の予算から間に合わすようにできるかどうか。一体これを実施するについては金額を幾らにするか、こういうような問題、給付手当をどの程度にするかということが一番大きな問題になってきようかと思うのです。結局、予算であり、財源であると思うのです。この懇談会の案でまいりましても、財政は五千七百億にのぼり、その中で国庫負担が千七百億余、こういうようなことを言っておりますが、問題は、結局財政問題に尽きてくると思うのです。うしろ大蔵省主計局担当者おすわりのようですが、これは一主計官がどうのこうの言うような問題ではなくて、私は内閣全体がほんとうにこの制度をやるかやらぬか、こういう問題だと思うのです。  大臣にもう一度重ねて承りますが、いま大臣お答えになったような基本的な問題も含めて、四十五年度予算からほんとうにやれますか。ただ大臣は、善意でやるとおっしゃっても、心配することは、またいつもそうですが、内閣改造で、せっかく一生懸命追及してみたが、いよいよその時期になってくると、斎藤厚生大臣がいなかった、こういうようなことで、また別の人に同じようなことを言わねばならぬというようなことでは、まことに残念なことです。大体大臣くらいの決意があるなら、これからこの委員会の一番大きな問題になるだろうと思われる健保特例法の問題にしましても、大臣承知のように、一昨年の十一月、すでに厚生省事務当局は、医療保険の抜本的な改革案についての一つの素材というものを提供したでしょう。そして昨年一月から、今度は与党医療基本問題調査会に問題を移して、そしてそれが時間をかけるもかけるも、ことしの五月になってようやく自民党案なるものが世に公表されたけれども、あの内容たるや、反対意見がちゃんとついておる、自民党案としては一本ではない、今度むずかしいものを、厚生省政府しかるべくやってくれ、こういう形でしょう。二年間何をやってきたかということですよ、言うなれば。同じことをまた児童手当の問題についても、繰り返してきておるのじゃないかという感じがするわけですが、どうですか。大臣は正直な方ですし、また良心的な方だから、言ったことは必ず実行する、こういうことを私たちは、ほんとう参議院時代からの大先輩でもあるし、私はその点では敬意を表しておりますが、だいじょうぶですか。
  18. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私としては、最善努力をいたすという以外にないわけです。御承知のように、審議会にかける前に、私が先ほど申しますような方針でかけるとすれば、少なくとも政府の統一した意見が必要でございます。大蔵大臣が一番大事であります。それからまたこの法案につきましては、その内容等につきましても、具体的にわが与党の方に御相談を申し上げて、そして御検討を願わなければなりません。したがって、それだけの時間と、それから大事な問題が、手数が残っているということは私十分承知でございます。私は、もし国会が延長されずに済めば、いまごろは、その問題と、あるいは党において、あるいは政府において取り組んでおった、こういうつもりでおったのでありますが、二カ月ばかり延びましたので、変わってまいりましたけれども、しかし、それを克服して、そして次の予算編成期までには、少なくとも政府大綱としてきめられるものをきめたい。まああと二、三カ月ぐらいは命があるだろうと思いますから、それまでの間にひとつ予算の要求の大綱までは、ぜひいまの趣旨最善努力をいたしたいと考えております。
  19. 田畑金光

    田畑委員 国会の会期が二カ月も延びたから作業がおくれたということは、あまり適当な発言じゃないと思いますね。なるほど厚生大臣はじめ関係局長委員会に引っばられているので、それだけ作業がおくれることは当然のことですけれども、だけれども私は、国会が二カ月延長したからどうとかいう問題ではなくして、ほんとう政府にそれだけの腹がまえがあって、そしてわが国がILO百二号の条約の批准できないのも、一つ児童手当制度——いや実は唯一、児童手当制度ができていないところにあるということなども、これはこれだけの工業的に伸びた国としては恥ずかしいことだという気持ちに佐藤総理以下政府全体、与党全体がなるかならぬかというところに私はかかっておると思うのですね。いかに一厚生大臣善意で、そして委員会で張り切ったことを言われても、全体がその気にならなければ、これは何とも進まないわけですね。  すでに、さっき指摘したように、斎藤厚生大臣が四月十五日の衆議院内閣委員会で、来年の国会から必ずやりますよという発言があったので、五月五日の新聞はほとんど、来年から児童手当制度発足かと大見出しで出ておりますから、これは大臣ひとつ何が何でもやってもらわないと、斎藤昇厚生大臣の男がすたれるということになりますからね。男がすたれるだけではない、また同じ違反をしたかということになりますよ。この点はとくとひとつ、この場限りの発言としてではなくて、ぜひ来年から実現できるように骨を折って御努力いただきたい、内閣一体となって、与党一体となって。これを強く要求しておきたいと思うのです。  そこでお隣に局長さんがおすわりのようですが、地方自治体の中で、条例児童手当あるいは出産一時金などをやっておる市町村があると聞いておりますが、さらにそれは拡大の傾向にある、こういわれておりますが、その実情、また条例で実際給付しておる内容などはどういうような内容なのか、この点ひとつ報告を願いたいと思います。
  20. 首尾木一

    首尾木説明員 地方自治体におきまして、児童手当という名前を持った条例をつくっておるところがかなり出てまいりましたことは、お話しのとおりでございまして、現在全体的に地方、都道府県を通じましてやっております状況を集めておりますけれども、その最終的な報告がまだ全部整っておりませんけれども、大体、私どもが現在の時点において把握いたしておりますのは、約八十団体程度のものが児童手当という名前を冠した条例を持っておるわけでございます。その中には、先生もおっしゃいましたような、出産関係給付をやっておるにとどまっておるというものもございます。児童手当ということで、児童の養育につきまして、現金給付を行なっておりますものは、多くの場合第四子以降につきまして、たとえば月額千円を給付するとか、あるいはまた、出産時にお祝い金を出すというようなことをそれぞれ行なっておるという事例が多いようであります。
  21. 田畑金光

    田畑委員 地方自治体ですら、住民の福祉のために、財源的な制約があるにかかわらず、八十前後の地方自治団体の中で、大臣お聞きのとおり、出産補助金であるのか、あるいは児童手当とみなすべきなのか、内容はいろいろあるようでありますが、そのような独自のものができておるということも考慮されるならば、これはすみやかにひとつ、制度化の必要がますます強く要請されておるということは言うまでもないことだと思います。この児童手当を設けるというねらいはどういうことなんですか。児童手当創設の意義とか目的と申しましょうか、その果たさんとする役割りというものは、社会的にいかなることを意図しておるものであるのか。わかっておるつもりでありますが、まだ明確を欠いておりますので、この点についてひとつ御説明いただきたいと思うのです。
  22. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 次代を背負う児童育成ということは、非常に大事なことでございます。ところが今日日本では、児童育成をするについて、相当費用もかかるというようなことから、児童育成ということが、あるいはおろそかになるのではないかという心配もあるわけでございます。今日の国民生活の状況等から考えましても、安心してりっぱに児童を育てていくことのできるような制度というものは、これは日本においても必要性は増してきた、かように思うわけであります。諸外国におきましても、社会福祉制度といえば、児童手当はたいてい持っているというのが現状でございまするし、、何もそれに見習うという必要はありませんが、そういう社会的な要請、要求というものが、日本にもいよいよ強まってまいった、かように思うわけでございます。やはり児童をりっぱに育てていくということ、これを一つの大きな目的といたしておる、かように考えております。
  23. 田畑金光

    田畑委員 児童をりっぱに育てていくということについて手当制度の意義があるということは、私も同感です。ところで、懇談会の中でも指摘しておりますが、義務教育前の子供をかかえておる家庭の家計費の中に、養育費がどの程度占めるか、この点については、義務教育前の二人の子供がある場合には一一二%、三名の場合は三八・八%、約四〇%、こう指摘しておりますね。しからば一体、一人どれくらいの費用になるのだろうか、こういう点に対しては、六千何百円と、こういうようなことをいっておりますね。そこでその半額程度はやはり児童手当制度で見るべきだろうということも懇談会の中で申しておりますね。私は、けだし穏当な妥当な見解ではなかろうか、こういう感じもするわけです。児童福祉法の第二条によれば、「国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う。」そういう点から見ても、まあ国が少くとも半分は児童の養育費については見るのだというたてまえが、これは最低限大事なことじゃないか。あるいは国によっては全額を見ておるところもありますね。そこまでいけばけっこうなことです。児童が将来の国家、社会の有用な人材で、次代を背負う児童を養育するのは国の責任だというたてまえで、国が一〇〇%見るということなら、これはまことにけっこうなことでありますが、わが国の現状でそれを望むということは言うべくして不可能なことである。だがしかし、少なくとも懇談会の中に書いてある程度は国が見るべきだ、こういう感じを持っておりますが、厚生大臣はこの問題について、来年の予算措置をなすにあたっては、どういう立場に立ってこの問題と取り組む御意思であるのか、この辺をひとつ聞かしていただきたい。
  24. 森田重次郎

    森田委員長 声がうしろのほうに通らないようですから、もう少し声を上げて……。
  25. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私といたしましては、いまおっしゃいますような観点に立って進めてまいりたいと思います。ただ、関係するところ非常に広うございますから、できるだけ意見の調整をはかりまして、そして完全を期すよりも、とにかく早く着手をいたしたい、かように考えます。
  26. 田畑金光

    田畑委員 大蔵省主計官、私はあなたに答弁を求めはしませんが、いま厚生大臣もお話しのように、少なくとも児童養育費の半額程度は、児童手当をせっかくやるならば、それくらいは国が見るべきだという考え方を率直に述べておられるわけですから、来年の予算編成作業にあたっては、厚生大臣はそういう角度であなたのほうと折衝されるというわけだから、あなたもよく頭にとめて、この二、三日来、この委員会児童手当問題についていろいろ議論がなされておりますが、この点を十分念頭に置かれて、予算措置にあたっては善処することを強く希望しておきたい、こう思うのです。返事は要りません。またかたい、融通のきかない答弁なんかもらっても迷惑しごくな話だから……。  最近のわが国の人口の出生率、あるいは出生の数、これはどういう状況になっておりますか。
  27. 首尾木一

    首尾木説明員 わが国の最近の人口につきましては、よくいわれておりますように、出生率の低下が非常に目立っておりまして、昭和三十一年ごろから急速に出生率が低下しておりまして、いわゆる人口の純再生産率というものから見ますと、人口の純再生産率が一を割っておるという状態が昭和三十一年以来およそ十数年続いておるというような状況でございます。なお、詳細な数字につきましてはいろいろございますけれども、手元にちょっと持っておらないのでございますが、大体傾向としましてはただいま申しました昭和三十一年以来十数年にわたりまして人口純再生産率が一を割っている状況、これが非常に注目される状況でございます。
  28. 田畑金光

    田畑委員 いまお話しのように、昭和三十一年以来わが国の人口の純再生産率は一を割っておる、確かにそういう状況がこの十年来継続しておるわけですね。これに対して西ドイツやフランスやイギリスを見ますると、いずれも一コンマ何ぼ、一をこえておるわけですね。これはどういう原因でこのような現象になっておるのか、どういうように厚生大臣はお考えですか。
  29. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 これはいろいろございましょうが、やはり総じて申しますると、児童の扶養の負担が相当重い、やはりそれよりも自分たちの生活の向上を望みたいというような気風が、一番大きな原因をなしているのじゃないだろうかと私は思います。都市における住宅問題という点も、しばしばまた多くの議論としていわれておりますが、そういった点もあろうと思います。大きな風潮としては、そういう風潮ではなかろうかと、かように考えます。
  30. 田畑金光

    田畑委員 この問題は、どういう原因に基づいてこのような事態になっておるのかということは、人それぞれいろいろな原因をあげるのですね。しかし総じていえば、やはり厚生行政として、この問題については重大な責任感じてこの対処策を考えてもらわねばならぬ、こういうことを私は強く主張しておくことにとどめたいと思います。  ただ最近の、いまお話しのように人口構造の変化であるとか、出生率の低下であるとか、そういう点から児童手当制度の問題を論議すること、また労働力不足からくる児童手当制度役割りを議論する立場も、いろいろあろうと思うのです。ことにいまのわが国の賃金体系が、若い人たちは安く、年功序列型の賃金給与体系になっておるということ、したがって、労働力の流動化をはかるためには、どうしても児童手当というものを国が制度化して、児童の養育については国が相当の責任を負うてやっていくのだ、そういうことがまた人口流動化を促す道であるという考え方等々、いろいろな角度から児童手当の問題は考えられるだろうと思いますが、問題はやはり何と申しましても、人口の数の問題もあるが、質の問題、国民のあすの資質をどう向上させるかという問題、特に家計費における児童の養育費の占める割合が非常に高いということ、その点からくる生活機会が不均衡化しておるという実情などを考えてみたとき、この問題を処理、解決するということは、言うならば、憲法二十五条の基本的な精神を具体化し実践化する政策ではなかろうか、こういう感じを私は強く受けるわけです。したがいましてこの問題については、私は、どうかひとつ厚生大臣が、この委員会だけの審議として終わらしめることではなく、ほんとうにことばどおり、来年度からその緒につくように、ぜひひとつ政治責任をもって処理することを強く望んでおきたいと考えるわけです。  この点はその程度におさめまして、あとは、児童家庭局長さん、きのうまでの質問で聞きたいこともほとんど尽くされておるようでありますが、もう一度念のため、母子家庭というのは一体どれくらいあるのか、そうして生別と死別の母子家庭の割合ですね。それからもう一つ、生別母子家庭のこの数年来の増減、どういう傾向にあるのかということですね。ということは、児童扶養手当法は生別母子家庭でしょう。最近は非常に離婚が多いというお話ですね。去年一年間の離婚率、離婚件数は幾らにのぼっておるのか。これに基づいて新しくこの法律の適用を受けざるを得なくなった母子家庭というのは幾らなのか。この二、三年来の動きをひとつ御説明いただきたいと思うのです。
  31. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 第一の、未亡人といいますか、母子家庭の現状につきましては、実は昨年の八月に調査をいたした結果がございます。これによりますると、三十歳から六十歳までの寡婦の数は二百三十万人、かようになっております。このうち二十歳未満の子供を持たれた母子家庭の数が約五十万世帯、こういうふうな数字になっております。この間生別、死別の調査が、まとまったのがまだ集計しておりませんけれども、大部分がやはり病気で夫をなくされた方が多い、かように考えております。したがいまして、生別母子家庭のほうがウエートが少ない、このように考えております。  それから最近の離婚率の傾向でございますけれども、昭和三十九年以来わが国の離婚率はだんだんと上昇してまいりまして、昭和三十九年に人口千人につきまして〇・七四という数字がございますが、昭和四十一年になりますると、〇・八〇というふうに上がってまいりまして、昭和四十三年の推定数は〇・八六ということに相なっております。これらの数字は、たとえばアメリカにおきましては人口千対二・三五、このように非常に高い国もございまするし、またフランスにおきましては千対〇・七一、こういうふうな数字でございますので、これに近いのではないか、かように考えております。  それからこの児童扶養手当の支給を受ける対象につきましては、このところ約十六万五千あるいわ十六万六千の数を示しておりまして、若干減るきざしを見せておるように考えられます。
  32. 田畑金光

    田畑委員 離婚率は、漸次高くなってきておる。ところが、その児童扶養手当を受ける数ですが、これは幾らか漸減の傾向にあるということですが、むしろ離婚率がふえてくればこの児童扶養手当を受ける母子家庭というものがだんだんふえていくんじゃないか。でないとすると、やはり例の母子家庭といっても母親が働く。今度所得制限が二八万から三十万になったというような、この所得制限に該当する母親等が、扶養義務者がふえてきたということが、そういうようなことになっておるのかどうか、この点はどういうように見たらいいのでしょうか。
  33. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 いま御説のように、いろいろとこれには事情があると思います。やはり母子家庭自体の社会的、経済的な自立という方向が進んでおるということも考えられます。  また同時に、所得制限を毎年少しずつ緩和をしてまいりました。緩和の額が所得に見合わないのじゃないか、こういうような問題もあろうかと思いますが、一般的に申しまして、やはり最近の母子家庭における婦人の労働市場に入ってまいります数が、最近におきましては非常に多くなっておるということはいえるのではないか、かように思います。現在、昭和四十二年度におきまして、そのような方々の稼働している人口数も、共かせぎ世帯及び死別、生別含めまして四百三十万人ぐらい、雇用労働力の婦人の調査におきましてはその数字があらわれておるところを見てもわかる、かように考えております。
  34. 田畑金光

    田畑委員 この制度は母子世帯において、——母子世帯というのは概して収入が少なく、したがって子供の養育はたいへんだろうから、この子供の養育という点を重点に置いてこの制度はできておるわけですね。ところが、最近は母親の蒸発ということがしばしばいわれるわけですね。子供の養育を重点に考えるということであれば、母親が蒸発したあと小さな子供をかかえておる父親にとっても、子供をかかえて仕事をするということが容易でないということは、またしばしば見受けるわけです。子供の養育という点から見れば、これは母子家庭でなくても蒸発された、そして残ったおやじが子供を見る、その家庭も考えてやらなければ均衡がとれぬのじゃないかという感じもするわけです。男女同権の世の中になってきたし、いま局長お話しのように、だんだん婦人労働者が労働市場の中に入ってきて、おそらくもう三割から四割の比率を占めておるでしょう。そして男女とも同一労働、同一賃金などということで、世の中が進歩すれば進歩するほど、婦人の労働力も高く評価されていくという趨勢が出てくるわけです。これは比較的男尊女卑、男中心の社会において、そしてまた戦後の非常に雇用の機会が制限されたような時代においては、これは母親中心に、児童を養育するためには、児童扶養手当制度というものがそれなりの役割りを果たしたと思うのだが、どうも最近の世の中がだんだん変ってきてみると、子供を残して顧みないという母親もしばしば見受けるという世の中になってくると、どうも私は、子供大事に考えるならば、母親の家庭だけでいいのかどうかという考えを持つのですが、この点、大臣はどうお考えでしょうか。
  35. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 母子家庭のほかに、父子家庭というものを考えたらどうかという御意見、おっしゃいますように、子供をかかえた父親が困っておるという状況も、見受けないことはございません。しかし、総じて申しますと、やはり男はまだ活動能力があって、母親に去られた場合に、困るには違いないが、子供を養うのに、いままで母親の賃金所得で養っていたのを、その収入がなくなって困ったというのは、これはどちらかといえば少ない例ではないだろうか、またそういうこともないようにいたしたいというので、今日父子家庭という考えは、まだそこまで熟しておらぬのであります。
  36. 田畑金光

    田畑委員 現状は、いま直ちに父子家庭をどうとかこうとかいうところまでは立ち至っていないかもしれないが、世の中には、そういう事例もあるのだということだけは、共通の理解と認識を持ってもいいのじゃないかと私は思うのです。  そこで、次に私は金額の引き上げについて、これも根掘り葉掘りあらゆる角度から質問があって、それに対してお答えがありましたから、これはやめますが、ただ私がここでお尋ねしたいのは、いまの児童扶養手当も、今度千九百円を二千百円に、二百円引き上げたわけですね。それからさらに母子福祉年金を、二千二百円を二千四百円に上げた。この二百円上げたというのは、何を基準にしてお上げになったわけですか。
  37. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 児童扶養手当、あるいは特別児童扶養手当の二百円の改善の問題につきましては、制度的には母子福祉年金の値上げに歩調を合わせたということでございます。そして母君福祉年金の二百円を改善したということにつきましては、これも従来からとっておりまする、いろいろな数字があると思いますが、たとえは昭和四十二年から四十三年にかけての消費者の物価指数、これは五・三%改善されておるというふうなこと、その他、そのような各種のデータ等を見合いまして、児童扶養手当につきましては、二百円の値上げ幅が一一%と相なるわけでございます。それで二百円というふうにきめられたのでございます。
  38. 田畑金光

    田畑委員 一一%だから二百円を上げたのだ、こういうことですね。——そこで、生活保護費は一三%上げておりますね。それから失対労務者の労働賃金については一二%上げでおりますね。これはやはり母子家庭でほんとうに子供の養育がたいへんだという気持ちが先に立つならば、やはり生活保護費は一三%上げているのですから、少なくともそれと歩調を合わすぐらいは上げるのが——幾ら二百円とか値切りなさるにしても、値切るのもいいが、まあこの程度ならば一三%くらいと歩調を合わすというのがほんとうじゃないでしょうか。私はどこから見ても、二百円刻みにだんだん上げていくということが、——これはあなたの所管じゃないけれども、国民年金の老齢福祉年金については千七百円を千八百円と百円お上げなさるわけですね。どうしてこんな百円だの二百円だのというのが出てくるのか、こう考えるわけですが、この制度の本来の趣旨から見た場合、二百円、一一%上げることが、いまの経済状況なり生活水準から見て、財政の面から見て、この程度が適当という論理的な根拠というものをもう少しひとつ明確に説明していただけませんか。どうも地方に帰って、今度はこういうわけで二百円上がりましたといって報告するのに、局長答弁ではなかなかどうも奥歯にものが突っかかったような感じがして、説明もできませんよ。もっと説明ができるように、論理的な根拠をひとつはっきり示していただきたい。
  39. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 この改善の額のきめ方にも、いま御指摘のように、消費者の物価指数の伸びでございますとか、あるいは労働者一人当たりの平均給与月額の伸びでございますとか、いろいろな指数を参考にいたしたのでございまして、その結果一一%ということとなったのでございますが、この改善につきましては、毎年逐次改善をしておりますし、今後ともこういった改善にはさらに努力をいたしたい、かように考えております。  先ほど生活保護費の一三%というお話もございました。たとえば、ちなみに昭和四十一年から四十二年にかけましての全産業規模三十人以上の平均給与月額の伸びが一〇・九%、これは毎月勤労統計報告にも出ております。こういったのが一つのデータにも考えられると思います。
  40. 田畑金光

    田畑委員 勤労者の平均賃金水準の上昇が、一〇・何%だからこれは多いくらいだというようなことでは——あるいは首を振られたから……。それと見合いでやったのだというようなことですけれども、もとが大体少ないのですから、それはあまり理屈にならぬと思うのです。千円とか、あるいは千二百円とか、こういうところからだんだん上がってきておりますから、出発しておりますから、もとそのものが、あまりにも低過ぎるから私は疑問を感ずるわけです。  これはここで議論したってしょうございませんが、どうかひとつ大臣にお願いしたいのは、例のこの間来話になっておる児童扶養手当なり特別児童扶養手当なりと母子福祉年金についてみますと、ここに三百円の差がある問題とか、いまの絶対量が非常に低い額であるとか、こういうような問題等については、もっと実情に即するように今後善処願いたい、このことを強く要望しておきたい思うのです。  それから、特に私は、この児童扶養手当というものと特別児童扶養手当というものが、金額で同じだということは、これはどういうことなのか、しかも児童扶養手当については三十七年度から制度発足し、特別児童扶養手当はおくれて三十九年からこの制度ができておるということ、特に特別児童扶養手当については、これは重度の心身障害者の児童を持つ家庭について支給する手当ですね。それが児童扶養手当と特別児童手当と同じであるという理論的な根拠はどこにあるのか。特に私は、児童手当懇談会のこの報告書を見てみましても、大臣が先ほど御答弁ありました、なお細目について、あるいは他の制度との関連等について、審議会をつくって検討願う、このために審議会を設けた、こう言われていますが、その内容一つとなるこの問題について、この懇談会では、「重症心身障害児について支給される特別児童扶養手当制度は、介護等特別の経費に着目して支給されるものとみるべきであり、これは、原則として、一般の児童手当のほかに支給すべきであろう。」こう書いておりますね。特別児童扶養手当については、かりに児童手当制度というものができても、そのほかにこれは支給すべきであろう。懇談会はそのような見解を述べておるわけですね。その点から見ると、児童扶養手当と特別児童扶養手当、しかも健全な子供を持つ家庭と、重度の心身障害児を持つ家庭の生活上に対する圧迫とか、あるいはその家庭におけるさまざまの影響を考えてみたとき、これを同一に扱うということが、どうしても私には理解できないわけですが、この点についてはどういう理由で同一なのか。  さらに今後この特別児童扶養手当については、これは大臣からお答え願いたいのですが、この児童手当懇談会報告の中にあるような考え方で将来児童手当制度ができたような場合には処理されるつもりであるのかどうか、この点を承っておきたいと考えるわけです。
  41. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 児童扶養手当の額と、特別児童扶養手当の額が同じであるという点につきましては、私からお答え申し上げます。  もちろん児童手養手当が主として生別母子世帯の所得保障を中心として行なわれるということと、特別児童扶養手当のほうは重度の心身障害、こういった方の養育を中心として、その子供の福祉を守るということで、制度の立て方が違うわけでございます。しかしながら、子供を養育するという観点につきましては、一部同じような形態もあるというような観点から、この金額が同一にされたわけでございますが、ただ先生も御承知のように、特別児童扶養手当の場合には、子供さんが二人いらっしゃる場合には、いま御審議いただいております二千百円というものはちょうど倍額になるわけでございます。児童扶養手当の場合はこれが二千八百円、こういうふうになるわけでございます。その点は、特別児童扶養手当のほうにつきましては、子供さんの数に応じまして、それだけの介護料的な性格をも持つということが言えるのではないかと思います。金額が第一子あるいは一人の子供につきましては、同一であるのは、そのような理由によると考えております。
  42. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 特別児童扶養手当の問題で、児童手当ができた場合にもこの趣旨は残しておくべきではないかという御意見は、私も同様に考えております。どの程度に残すか、どうやっていくかということは、児童手当自身も問題は持ちますけれども、しかし今日必要があってやっておりますので、この制度の必要がある限りはその必要を満たしていくのが当然だ、かように考えております。
  43. 田畑金光

    田畑委員 私は、特別児童扶養手当に該当する重度心身障害者の子供さんたちについては、これはやはり特別な配慮を将来考えるべきではないか、かりに子供だというので特別児童扶養手当を二千百円もらっておる子供さんが満二十歳に達した。そうなってきますと、今度は国民年金の障害福祉年金に入っていくわけですね。そうしますと、障害福祉年金は今度二千七百円が二千九百円になるでしょう。きょうまでは二千百円であったのが、満二十歳に達すれば二千九百円の障害福祉年金にこれは入っていくわけですね。一日でそのようなことにもなるわけです。また今度社会福祉事業振興会法で取り上げる、親がなくなったあとの気の毒な子供たちについては、この保険で見ていこう、月二万円の保険金を支給するというこの社会福祉事業振興会法の一部改正法、私は、この特別児童扶養手当をもらっておる重度心身障害児の子供さんたちも、将来これに入っていくのであろうと見ておるのですが、間違いであるのかないのか。間違いであるとすれば、そのような特殊な状況にある特別児童扶養手当、あるいはこの該当者については、やはり特別の配慮というものが今後とも必要である。いま大臣お答えになりましたが、そういうような方向で御努力願えると思いますが、そのようなことについていま一度局長並びに大臣のお考えをひとつ承っておきたいと思います。
  44. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 先生の御指摘のとおり、特別児童扶養手当内容につきましては、所得保障という性格もありますが、同時にその介護料的な性格を持っておりますので、その点は十分私も心がけて努力をさせていただきたい、かように思います。  それから第二の心身障害児扶養保険年金制度との関連でございますが、これは先生も御承知のとおり地方公共体が実施主体となりまして、親御さんの任意の保険といたしまして普及してまいりました。これを全国的なレベルでやるために、今後社会福祉事業振興会法の一部改正法を提案して御審議をわずらわすことになっておるわけでございますが、これは性格的に申しますと、確かに任意的な保険制度でございます。しかし、任意的な保険別度でありましても、これは国の立場におきましても助長するという態度を持っておるわけであります。同時に、母子福祉年金、あるいは特別児童扶養手当児童扶養手当の公的制度も、御指摘のようにこれ自体として、さらに拡充していくことは当然である、かように考えております。
  45. 田畑金光

    田畑委員 私は、質問をこれで終わりますが、大臣に最後に要望しておきたいのは、この委員会で各委員とも取り上げたのは児童手当制度の創設をどうかすみやかにやってもらいたい。四十五年度から大臣お答えのとおり、ぜひ実現をはかってもらいたい。そのことですね。  さらに私は、いま審議されておる、この法律案児童扶養手当、あるいは特別児童扶養手当制度については、いずれもこれは気の毒な母子家庭を対象にしておる制度であるだけに、これはできるだけひとつ内容の充実強化という面については格段の御努力を今後も継続して進められんことを強く要望して私の質問を終わります。
  46. 森田重次郎

    森田委員長 大橋敏雄君。
  47. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私も、ただいま審議されております児童扶養手当及び特別児童扶養手当内容に入るわけでございますが、その前に、関連いたします重要な事柄だろうと思いますので、ひとつお尋ねしたいと思うことがあります。  それは一昨日、夕刊で大きく報道されておりました少女の誘拐殺害事件の問題でありますが、これは事件が発生した後は、当然警察庁でそれぞれそれなりに手は打って進められております。しかしながら、児童を守るという児童家庭局長という立場で、こういう事柄について、どのようにこれをとらえ今後対策なさろうとしているのか、まずお尋ねしてみたいと思います。
  48. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 お話のございました十歳の少女の誘拐事件につきましては、まことに残念な、遺憾なことだと思うのです。特に最近におきましては、あのように自動車を利用しての犯罪、これはおとなの犯罪もそうでございますが、子供に対する犯罪も相当目立ってきておるということでございます。したがいまして、特にことしは児童権利宣言が国連で採択されましてから十周年というふうな、そういった子供の人権思想が普及されなければならないというふうなときにおきまして、はなはだ残念なことだと私思っております。     〔委長員退席、竹内委員長代理着席〕  私ども厚生省児童家庭局におきましては、従来からも、子供の健全育成対策といたしまして、家庭における母親等を中心といたしました母親クラブでありますとか、あるいは親の会、こういった会を指導し、あるいはそういった会を指導する指導者の育成、養成、研修、こういうふうなこともやってまいりましたのですが、このようなおかあさんとか子供というのは、非常に行動半径が小さいことでございますので、むしろ地域におきまして、そういった児童育成の思想を普及し、子供の指導のしかたを教えるということを、学校教育等との協力のもとにさらに進めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  49. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 大臣にお尋ねしますが、少年少女誘拐事件というのは、六年前でしたか、吉展ちゃん事件を頂点にいたしまして、ずいぶん大きな社会問題として取り上げられたわけであります。しかしながら、その後一向に誘拐事件というのはあとを絶たない。もと警察庁長官をなさっていた大臣でもありますし、また今日は厚生大臣という両面の立場から、こういう問題についてはどこに問題があって、ここのところに手を打てばもっとこういう予防的な対策がなされる、このようなところを教えていただきたいと思います。
  50. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ああいった誘拐事件は、まことに残念な遺憾な事柄だと思います。世の中に、変質者というような者がときどき飛び出してくることは、なかなか防ぎがたい問題でございまして、常時、あの人が変質者だというレッテルがついておれば格別でございますが、そうでもございませんので、したがって、まず何といたしましても、児童を持つ親たちが、児童に対してふだんから仕込んでいこうという防衛対策が必要であろうと思います。これは社会教育問題、あるいは学校教育問題とも関係をいたしまするし、ただいま局長が答えましたように、子供を守る会、あるいは母親の会、こういったような地域組織で、そういった事柄について絶えず児童に警戒心を持たせるということが必要ではないかと思うわけであります。ただ、人を見れば疑えということも困ったことでございますから、その間の教育は非常に大事なことだと思います。  同時に、そういった変質者というようなものを見つけて、これは精神関係で、精神病者だということがわかればそれぞれの措置がありますが、そういうことにつきましても、社会全般の組織を通じまして、そしてそういう変質者の行動に移らないような措置も必要であろう。これは最近心身医学というようなものも相当進歩をしてまいりましたが、そういった幅広い考え方でやっていかなければなるまい、かように思っておるわけでございます。
  51. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 このような児童の誘拐事件等あるたびに、厚生省としてもチェックされておると思いますが、去年一年間ではどの程度の事件が起こっておるか、教えてください。
  52. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 たいへん残念でございますが、誘拐事件の数につきましてはここに資料がございません。ただ私ども、特に地域におきまして活躍を願っております児童委員の方々に対しましては、このような誘拐事件の数例につきましてはいろいろとお話しを申し上げて、その事実等を御披瀝して、いろいろと御指導を賜わるようにお願いしてはございます。
  53. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 児童福祉対策というのはすなわち家庭対策である、よくこういわれます。こういう事件も、単に警察だとか、あるいは文部省等にまかせたようなことではなくて、もっと積極的に厚生省として取り組んでいく必要があろう。  実は、それと直接関係はないと思いますけれども、児童福祉法施行十五周年記念の際に、政府はみずから、児童は危機的段階にある、このように宣言しております。このことは児童福祉白書の中にはっきりと明示されております。よく考えてみれば、確かに高度成長する中に世界は急速に発展、繁栄しておりますけれども、その陰に隠れて、児童福祉対策というのが総合的に見てきわめてみじめな姿である、こう指摘せざるを得ないのであります。また、児童憲章というものは児童の権利と社会的責任における擁護をうたったものである、こういうことを私はかねがね自覚しているわけでございますが、現実はその理念と大きくかけ離れている実態を見るわけですね。たとえば、その事業といい、あるいは扶養金といえども、また施設といえども、まことに貧弱といわざるを得ない。こういうことで、もう少し本気になって前向きで進んでもらいたい。法律やたてまえのりっぱさから比べますと、内容は、先ほど言いますように、あわれそのものといってもいいくらいの内容ではないかと思います。  そこで法律内容に入りますけれども、まず社会保障制度審議会からこのような答申があっておるはずです。ことしの二月ですけれども、児童扶養手当、特別児童扶養手当については、「問題の取り組み方にはなお不十分なものがある。とくに、特別児童扶養手当の金額及び所得制限については今後格段の配慮をはらわれたい。」答申尊重の精神は原則的なものでございますが、今度の改正内容を見てみますと、先ほども同僚議員から質問があって、それを指摘しておりましたように、改正の金額の幅がきわめて僅少であります。わずか二百円。大体大臣はどのようにそれをお考えになっているのか、まず説明願いたいと思います。
  54. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私といたしましては、最近の物価の値上がり、それから生活水準の向上というものと見合って、一割前後というのが適当ではなかろうか、かように思って提案をいたした次第でございます。
  55. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 前年度比の物価上昇率を見ますと五・三%だといわれておりますが、この程度だったら、物価にようやくスライドするかしないか程度のものであります。したがって、実質的には引き上げではないわけですね。これも各委員から強力に指摘をされておりましたので、今後の改正のときにあたっては、この点も十分踏まえた上で取り組んでもらいたい。  もう一つお尋ねしたいことは、児童扶養手当にせよ、特別児童扶養手当にせよ、児童三人以上の場合、三人以上の児童一人に対する加算額は従来どおり四百円。ほかは二百円でも上がっておりますけれども、この点はなぜ上げられなかったのか、この理由を説明してもらいたいと思います。
  56. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 児童扶養手当の第三子以降の加算額についてのお尋ねでございますが、これも制度上、母子福祉年金の第三子以降の加算額に合わせたのでございますが、これも先ほど来御説明申し上げますように、やはり物価水準その他の生活水準等を勘案して四百円ということにいたした次第でございます。
  57. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 他の金額は全部多少なりとも引き上げられた。この点だけは全く変わりがないというのは、私はどうも納得いかぬのですけれども、大臣からひとつお答え願いたいと思います。
  58. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 先ほど申しますような、物価や、あるいは生活水準の向上という面から考えますと、この加算額もあるいは増すべきであろうかとも思いますが、しかしながら、その額は、一割程度というめどでやったわけでございますので、四百円の一割といえば四十円というような形になるわけであります。それで、これはことしは見送って、次のときにでも、まあ百円単位くらいになったときに、かように考えておるわけであります。
  59. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いっそのこと百円引き上げたらよかったのですね。予算関係でしょうけれども、横ばいというのは、改善ということばがついている限り、よろしくないと思います。  そこで、いわゆる重症の障害児あるいは障害者に対する国の態度について私は指摘してみたいと思うのですが、重症障害児の対策については、この数年来少しずつは強化されてきているようでありますが、その施設、病床数ですね、ベッド数などはまだまだ足りません。私が調べたところによりますと、重症児童一万七千三百人、重症の成人は二千人で、合計一万九千三百人だ、こう聞いておりますが、これは間違いないですか。
  60. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 昭和四十年八月に厚生省で調査をいたしました際の数字でございますので、私どももその数字で施策を講じておるところでございます。
  61. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 この一万九千三百人のうちに、早急に収容しなければならないという重大な症状の方が現在一万六千五百人もいる。ところが一万六千五百人緊急要収容者がいるにもかかわらず、施設は、私設と国立療養所合わせて、昨年末でわずかに二千九百床である。そして今年度末に四千三百床になるということだそうですが、これは間違いありませんか。
  62. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 早急に施設に収容しなければならない数は一万六千五百と推定されます。ただ、御指摘の病床数でございますが、昭和四十三年末におきまして、これは三月三十一日でございますが、工事等は多少延びておりますが、現在この病床は四千三百六十九床でございまして、先生の二千八百床というのは、おそらく四十二年度末の数字ではなかろうか、かように思います。
  63. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 四十三年度末ですでに四千三百六十九床はでき上がっておるのですか。
  64. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 昨年度の予算で措置いたした分でございますので、工事が若干おくれておるところもありますが、昨年度の予算で措置いたしました分で完成すれば四千三百六十九床となるわけでありますが、現在おそらくこの数字に近い数字が建設、完工しておる、かように考えます。
  65. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いずれにしましても重症障害児や成人の五分の四程度、これでももう話にならないと思うのです。これだけの実情がもう掌握されておるのですから、もう少し積極的な施設あるいは病床の増設をやるべきではないでしょうか。(「やることばかりじゃないか」と呼ぶ者あり)そうだよ。問題は、このような重症児あるいは重症者を持つ親たちの悩みというのは、もしも自分が死んだあと、その子はどうなるのだろうかという問題ですよ。また、そうした子供が将来はたして生きていけるであろうか、これが親の深刻な悩みであります。だからこんなことは冗談半分に言える問題じゃないと思うのです。  そこで、現在心身障害児扶養年金制度というのが東京都でもできるそうです。これは、もしなくなった場合に残された障害児に対して月に二万円程度の年金を支給しようというのがその制度内容らしいのですけれども、東京都でも四十四年度からですか、実施するような話を聞いております。また、厚生省としましても、心身障害児扶養保険制度というのを計画なさっておるということを聞いておりますが、これはどの程度内容なのか、説明してもらいたいと思います。
  66. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 心身障害児の親がなくなられたあとの子供に対する養育につきまして、いろいろとお悩みのことであることはもう当然でございます。したがいまして、昭和四十四年一月現在におきまして、都道府県が主体となりまして、親御さんが毎月一定の金額を拠金されまして、拠金したものを保険料といたしまして、たとえば生命保険会社等と契約いたしまして、親がなくなったあと得られる保険金を運用することによりまして、先生のお話のように、一月に二万円程度の金額を、かわって子を養育する者に差し上げる、こういった制度は、都道府県におきましては二県十五市一町、比較的最近になりますと普及をしてまいったのであります。     〔竹内委員長代理退席、委員長着席〕 しかしながら、こういった制度は、私的保障の制度ではございますけれども、親のない子供に対する福祉をはかる制度としてはきわめて重要な制度でございますので、国におきましても、こういった地方公共団体でやっております制度を全国的に普及をしようという考え方に立ちますとともに、全国的にこれを取りまとめて契約をいたしますと、掛け金、つまり保険料の額が団体契約という性格から安くなるというふうなこともありますので、そういった点を勘案いたしまして、この十月から、これはこれから御審議をいただくようにお願いしておるわけでございますが、社会福祉事業振興会に、これは仮称でございますが、扶養保険部というものを設置いたしまして、その扶養保険部におきまして、先ほど御説明いたしました、地方公共団体でやっておりますところの心身障害者扶養保険制度を全国的なレベルで総括するということにいたしておりまして、そのような予算を計上しております。この予算額につきましては、社会福祉事業振興会の扶養保険部で事務をとる経費といたしまして約二千万円でございます。それから地方公共団体でこの事務を行なうに必要な費用のおおむね半額を補助しようという金額が約一千五百万円でございます。こういった予算を計上しておるのでございます。
  67. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いまの保険制度は、内容的には実施されたほうがいいようなものだろう私も感ずるわけでございますが、これは任意加入なんでしょう。それで私は思うのですけれども、このような児童扶養手当制度が現実にあると、それについて、また新たに各都道府県あるいは市町村等で実施されるであろうこのような保険制度を取りまとめて国で行なっていくという話でございますけれども、一体今後厚生省として、特別児童扶養手当を主体として、あるいはいまの保険制度を主体として進まれるのか、どちらを重点的に進めていかれようとしておるのか、この点をお伺いしたいと思います。
  68. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 心身障害者の扶養保険制度は、お話にありましたように、これは親が任意に掛け金をするという意味におきまして、これは任意の制度でございます。しかしながら、その仕事の機能の重要性にかんがみまして、国のほうもこれを助長して普及していこうという態度でございます。同時に、御審議をいただいております母子福祉年金あるいは特別児童扶養手当自体は公的制度でございます。したがいまして、この公的制度はさらに拡大をする必要がある。つまり、どちらがどうということでございませんで、公的な制度といたしましての内容の拡充もはかるとともに、私的保険に対しましても国が助長をしていくという考え方で進めたいと思っておるわけでございます。
  69. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 要するに、心身障害児の発生予防、あるいは早期発見、あるいは治療、そういうことがあらゆる悲劇を未然に防止していくきめ手ではないかと思うのです。私は、これは母子保健対策をもっともっと強化充実していく必要がある、このように考えております。  そこで、母子福祉年金と児童扶養手当の支給に関してですけれども、昨年の第五十八国会衆議院参議院社会労働委員会におきまして、次のようなことが附帯決議として可決されております。「死別、生別の如何を問わず母子家庭の援護に差別をつけないようにすること。」ところが、今回の改正を見ましても、この差別が依然として縮まっておりません。母子福祉年金は二千四百円ですか。そして児童扶養手当は第一子二千百円ですね。これが依然として差別があるわけでございますが、この附帯決議指摘されておりますことについて、今回なぜその問題を縮められなかったのか、理由をお尋ねいたします。
  70. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 この点につきましては、いろいろと御説明を申し上げましたわけでございますが、この母子福祉年金はその世帯を同じゅうする父が死亡したという場合に支給される。児童扶養手当の場合におきましては、その世帯を同じゅうしない場合におきましても、父がいなくなってしまったという場合に支給されるというふうな、仕組みなり目的が違うのでございます。そういったところで三百円の差が従来からもありまして、本年度予算におきましてもそれは解決できなかったのでございますが、しばしば大臣も御答弁されましたように、この問題につきましては、今後の問題といたしましても努力を傾けてまいりたい、かように考えておるところであります。
  71. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 大体の理由は説明されましたけれども、大臣斎藤厚生大臣のときにこの差は縮めるべきである、私はこう思うのですが、御決意を伺いたいと思います。
  72. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 この委員会でもたびたびその御意見がございまして、私も、来年度はせひその差をなくするように最善努力をいたしたい、かように考えております。
  73. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それから、特別児童扶養手当は介護料とみなして所得制限を撤廃すべきであるという意見が非常に強い。これは答申の中でもはっきりいっておりますね。児童福祉の観点から、親の収入というものは差別するものではないというような考えを持っているのですけれども、これについてはどのようなお考えでしょうか。
  74. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 特別児童扶養手当は、まさに重度の心身障害児を扶養する者に対しまして支給され、その子供の福祉をはかるわけでございます。しかしながら、現行といたしましては、その支給の内容が所得保障的な面を持っております。そういうような意味におきまして、いろいろと所得制限等が課せられておるのでございますが、同時に、この特別児童扶養手当は、その内容といたしましては、そういった特別の状態にある子供に対する介護料的な性格を持っておる、かように考えております。したがいまして、御指摘所得制限の問題は確かに重要な問題でございますので、そういった点につきましても今後努力を続けてまいりたい、かように考えております。
  75. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 では次に移りますが、社会保障の政策として、特に地方自治体の中で神奈川県が非常に進んでいるような感じを受けるわけですが、最近神奈川県で、施設に入れない心身障害者に対して、年間一万八千円の在宅重度障害者手当というものを支給することになったそうでございます。何か四月から実施だと聞いておりますけれども。また栃木県の宇都宮市も、四十四年度から重症心身障害児の福祉手当制度というものが発足したと聞いております。これは御承知でしょうか。
  76. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 神奈川県のそのような手当につきましては、その報告を承っております。
  77. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 こういう地方自治体制度と、いま行なわれております児童扶養手当あるいは特別児童扶養手当との関連はどうなるのでしょうか。
  78. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 国の制度といたしましての特別児童扶養手当がございますが、地方公共団体におきまして、そのような自主的な児童福祉面についての施策を講ずるということは、それ自体は好ましいものである、かように考えております。
  79. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 ちょっといま聞き漏らしたのですけれども、もう一回言ってくれませんか。
  80. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 国といたしましても、このような特別児童扶養手当等につきましての内容改善に努力しておるわけでございますが、これはあくまでも国の制度でございます。神奈川県のように、地方公共団体の立場におきまして、その財源で児童の、特にこういった障害児の福祉をはかっていただくということは、それ自体好ましい制度である、かように考えております。
  81. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 時間が迫っておるようですが、いま、在宅の重症心身障害児に対しまして、四十三年度から特殊寝台の貸与制度が実施されておりますね。その実情はどうであるか、その反響と問題点についてお答え願いたいと思います。
  82. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 先ほどちょっと触れましたように、重症心身障害児の収容がおくれております。したがいまして、在宅者に対しまする施策といたしまして、昭・和四十三年度より、低所得の家庭に対しまして、千五百台の手で比較的容易に調節することができるベッドの貸与を開始いたしました。昭和四十四年度におきましても同数千五百台を貸与することになっておりますが、これはもちろん無償でございます。家庭におきまするそういった子供たちの介護には非常に便利である、かように私ども歓迎されておると思っております。
  83. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 重症の障害児のベッド数がきわめて少ないという立場から、応急措置として私は必要であろうと思います。これは千五百程度じゃなくて、もっともっと積極的にこの対策に手を入れられるほうがよろしいんじゃないか、こう強くこれは要望しておきます。  それからもう一つですけれども、自治省の方、来ていますかね。−四月二十四日に都道府県地方課長会議というものが開かれたそうですけれども、その席上で自治省は、現在各自治体が独自で実施している児童手当や交通遺児手当あるいは老人手当などの支給をできるだけ差し控えるべきである、このような行政指導をしたと聞いたんですが、それはそんな指示をなさったんですか。
  84. 首藤堯

    ○首藤説明員 御案内のように、ただいま地方団体に対します財源措置といたしましては、生活保護費とか児童保護費などの制度として行なわれております各種の社会福祉、保障関係地方負担につきましては、これを的確に財政計画に算入しますとともに、具体的にも交付税等の配分を通じて個別の団体に財源措置をいたしておるのでございます。ただ、そのような制度としてとられていない単独の地方団体の事業につきましては、これを交付税等を通じて財源措置をすることが現在できないわけでございます。そのような意味で、地方団体が財政運営をしてまいります際に、単独の分野において将来義務的な経費として固定化するような経費をたくさん支出をいたしますことは、財政運営上の問題として一般的にいかがか、このようなことでございます。そのような意味で、財政運営の一般的な注意事項として、慎重に処理をするように、このような連絡をいたしたわけでございます。
  85. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それは自治省の立場から主張なさったものと思いますけれども、これらは国民福祉、生活の向上に逆行するものだと私は思います。そういうことは、地方自治体に言うんじゃなくて、むしろ当然厚生省がやるべき仕事なんです。国がやるべき仕事なんですから、厚生大臣のほうに言わなければいかぬのです。私はそのように思うんです。そこで、その問題はまた後日、具体的な内容を調べた上でもう一回私は追求してみたいと思います。  大臣に、児童手当のことでちょっとお尋ねしますが、とにかく児童手当の問題は、各同僚委員からも質問がありまして、昭和四十五年度から実施するという話でございます。実は、つい前の内閣委員会で私たちの鈴切委員が質問したときに、このようにお答えになっておりますね。「できるならば来年度の後半期から実施のできるようにしたいと考えております。もしできなければ、準備だけということになると思いますけれども、来年の国会審議をしていただいて、そして準備を進めて、後半には実施のできるようなめどで進めたい、かように私は考えております。」このようにお答えになっておりますけれども、この答弁から受ける印象は、来年の秋から実施しよう、こういうふうに受けるんですけれども、まさか来年の秋ではないだろうと思います。当然来年のいわゆる当初の予算には、十分予算化されて実現なさるものであろうと思いますけれども、確認の意味においてこの点をお答え願いたいと思います。
  86. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 児童手当の実施をする法案を来年度の国会でぜひ御審議願えるように準備をいたしたい、かように存じるわけであります。そこで、実際にそれが成立をして、そして手当が支給されるというのは、やはり実施準備が必要でありますから秋ごろになるんではないか。法律は次の通常国会に出して承認をしていただいて、それによって私のほうは準備をする。準備というのは、いろいろな手続が要りますから。そして現実にお金を渡すのは秋ごろから以降になるんじゃないだろうか。そこまでちょっと詳しく……。
  87. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それじゃ児童手当は、来年度は必ずその当初に法律もまた予算もきちっと組んで実施の方向にいく、ただ実施段階として秋ごろからになるんじゃないかということですね。それは了解いたしました。  要するに、ぼくは最後に大臣に申し上げたいことは、政府がかつて、四十三年度に実施するとか、あるいは四十四年度に実施するというように公約なさってきたわけですね。いろいろな理由をつけてそれが全部今日まで引き延ばされてきたわけでございますが、斎藤厚生大臣に限ってこの公約に違反なさるとはゆめゆめ思いたくないんですけれどもね。ひとつ来年度は何が何でも実現をすると、もう一言確約をなさった上で私の質問を終わりたいと思います。
  88. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 最善努力をいたしたいと思います。
  89. 森田重次郎

    森田委員長 これにて児童扶養手当法及び特別児童扶養手当法の一部を改正する法律案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  90. 森田重次郎

    森田委員長 次に、本案を討論に付するのでありますが、別に申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  これより児童扶養手当法及び特別児童扶養手当法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  91. 森田重次郎

    森田委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  92. 森田重次郎

    森田委員長 この際、竹内黎一君、西風勲君、田畑金光君、大橋敏雄君より、本案について附帯決議を付すべしとの動議が提出されておりますので、その趣旨の説明を求めます。西風勲君。
  93. 西風勲

    ○西風委員 私は、自由民主党、日本社会党、民主社会党及び公明党を代表いたしまして、本動議について御説明を申し上げます。  案文を朗読して説明にかえます。   政府は、児童扶養手当制度の重要性にかんがみ、今後さらに次の諸点の早期実現について努力すべきである。  一、児童手当制度は、昭和四十五年度より実施すること。  一、児童扶養手当及び特別児童扶養手当の額の大幅引上げとともに所得制限の緩和に努めること。  一、特別児童扶養手当を公的年金と併給すること。  一、特別児童扶養手当対象となる障害の範囲を内部疾患、精神障害等にすみやかに拡大するよう善処すること。  一、母子家庭の援護における死別、生別の差別をなくすること。 以上であります。  満場一致で確認されることを要求して、提案にかえます。
  94. 森田重次郎

    森田委員長 本動議について採決いたします。  本動議のごとく決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  95. 森田重次郎

    森田委員長 起立総員。よって、本案については、竹内黎一君外三名提出の動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、厚生大臣より発言を求められておりますので、これを許可します。厚生大臣斎藤昇君。
  96. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいまは満場一致をもって御可決をいただきまして、厚くお礼を申し上げます。また、附帯決議として御決議になりました諸点につきましても、決議の趣旨を十分尊重をいたしまして実現に努力をいたしたいと存じます。
  97. 森田重次郎

    森田委員長 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  98. 森田重次郎

    森田委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  99. 森田重次郎

    森田委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後零時二十二分散会