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1969-05-14 第61回国会 衆議院 社会労働委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年五月十四日(水曜日)    午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 森田重次郎君    理事 澁谷 直藏君 理事 竹内 黎一君    理事 谷垣 專一君 理事 渡辺  肇君    理事 河野  正君 理事 田邊  誠君    理事 田畑 金光君       小川 半次君    倉石 忠雄君       佐々木義武君    世耕 政隆君       田川 誠一君    高橋清一郎君       中野 四郎君    中山 マサ君       広川シズエ君    増岡 博之君       箕輪  登君    枝村 要作君       加藤 万吉君    後藤 俊男君       島本 虎三君    西風  勲君       八木 一男君    八木  昇君       山田 耻目君    山本 政弘君       本島百合子君    大橋 敏雄君       伏木 和雄君    谷口善太郎君       關谷 勝利君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         労 働 大 臣 原 健三郎君  出席政府委員         内閣官房副長官 木村 俊夫君         大蔵省主計局次         長       海堀 洋平君         厚生政務次官  粟山  秀君         厚生大臣官房長 戸澤 政方君         厚生省児童家庭         局長      渥美 節夫君         厚生省年金局長 伊部 英男君         郵政政務次官  木村 睦男君         郵政省郵務局長 曾山 克巳君         郵政省人事局長 山本  博君         労働大臣官房長 岡部 實夫君         労働省労政局長 松永 正男君         労働省労働基準         局長      和田 勝美君         労働省職業安定         局長      住  榮作君         労働省職業訓練         局長      石黒 拓爾君  委員外出席者         専  門  員 濱中雄太郎君     ――――――――――――― 五月十四日  委員山田耻目君辞任につき、その補欠として佐  藤觀次郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員佐藤觀次郎辞任につき、その補欠として  山田耻目君議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 五月八日  地方鉄道離職者臨時措置法案板川正吾君外二  十一名提出衆法第四〇号)  健康保険法及び船員保険法臨時特例に関する  法律等の一部を改正する法律案内閣提出第九  三号) 同月九日  家内労働法案内閣提出第八四号) 同月十二日  環境衛生金融公庫における公衆浴場業融資限  度額拡大等に関する請願坊秀男紹介)(第  六一〇三号)  同(武藤嘉文紹介)(第六三一九号)  同(山下元利紹介)(第六三二〇号)  国民年金等改善に関する請願相川勝六君紹  介)(第六一〇四号)  同外一件(渡海元三郎紹介)(第六一〇五  号)  同外三件(相川勝六紹介)(第六三二六号)  同(渡海元三郎紹介)(第六三二七号)  種痘による障害者医療補償等に関する請願  (井手以誠君紹介)(第六一〇六号)  同(加藤万吉紹介)(第六一〇七号)  同(河上民雄紹介)(第六一〇八号)  療術の新規開業制度に関する請願外二件(小山  省二紹介)(第六一〇九号)  同(八田貞義紹介)(第六一九七号)  同(渡辺栄一紹介)(第六三一八号)  ソ連長期抑留者補償に関する請願小山省二君  紹介)(第六一一〇号)  (同白浜仁吉紹介)(第六一一一号)  同(小川平二紹介)(第六三二一号)  ソ連長期抑留者処遇に関する請願白浜仁吉  君紹介)(第六一一二号)  同(本島百合子紹介)(第六一一三号)  同(河村勝紹介)(第六一九三号)  同外二件(和田耕作紹介)(第六一九四号)  同(本島百合子紹介)(第六一九五号)  同外三件(小川平二紹介)(第六三二二号)  同外七件(砂田重民紹介)(第六三二三号)  同外一件(渡海元三郎紹介)(第六三二四  号)  同外五件(堀川恭平紹介)(第六三二五号)  衛生検査技師法の一部改正に関する請願本島  百合子紹介)(第六一一四号)  同(北澤直吉紹介)(第六一一五号)  同(本島百合子紹介)(第六一九六号)  医療保険制度改悪反対及び医療保障確立に関す  る請願曽祢益紹介)(第六一一六号)  同(福岡義登紹介)(第六一一七号)  同(本島百合子紹介)(第六一一八号)  同外一件(谷口善太郎紹介)(第六一九一  号)  同(林百郎君紹介)(第六一九二号)  医療労働者増員等に関する請願外一件(武部  文君紹介)(第六一一九号)  同外四件(浜田光人紹介)(第六一二〇号)  同(武部文紹介)(第六三二九号)  同外五件(浜田光人紹介)(第六三三〇号)  失業保険法改悪反対に関する請願谷口善太  郎君紹介)(第六一九〇号)  健康保険法改悪反対に関する請願田中武夫  君紹介)(第六三二八号)  医療保険制度改悪及び健康保険等臨時特例延長  反対等に関する請願小川三男紹介)(第六  三三一号)  同(長谷川正三紹介)(第六三三二号) 同月十三日  無医地区解消に関する請願井出一太郎君紹  介)(第六三七七号)  同(小川平二紹介)(第六三七八号)  同(小沢貞孝紹介)(第六三七九号)  同(吉川久衛紹介)(第六三八〇号)  同(小坂善太郎紹介)(第六三八一号)  同(下平正一紹介)(第六三八二号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第六三八三号)  同(原茂紹介)(第六三八四号)  同(平等文成紹介)(第六三八五号)  同(増田甲子七君紹介)(第六三八六号)  失業保険法の一部改正に関する請願井出一太  郎君紹介)(第六三八七号)  同(小川平二紹介)(第六三八八号)  同(小沢貞孝紹介)(第六三八九号)  同(吉川久衛紹介)(第六三九〇号)  同(小坂善太郎紹介)(第六三九一号)  同(下平正一紹介)(第六三九二号)  同(原茂紹介)(第六三九三号)  同(平等文成紹介)(第六三九四号)  同(増田甲子七君紹介)(第六三九五号)  国民年金等改善に関する請願相川勝六君紹  介)(第六四九七号)  同(山手滿男紹介)(第六四九八号)  医療保険抜本改悪反対に関する請願有島重  武君紹介)(第六四九九号)  同(伊藤惣助丸君紹介)(第六五〇〇号)  同(石田幸四郎紹介)(第六五〇一号)  同(小川新一郎紹介)(第六五〇二号)  同(大橋敏雄紹介)(第六五〇三号)  同(近江巳記夫紹介)(第六五〇四号)  同(岡本富夫紹介)(第六五〇五号)  同(沖本泰幸紹介)(第六五〇六号)  同(北側義一紹介)(第六五〇七号)  同(小濱新次紹介)(第六五〇八号)  同(斎藤実紹介)(第六五〇九号)  同(鈴切康雄紹介)(第六五一〇号)  同(田中昭二紹介)(第六五一一号)  同(竹入義勝君紹介)(第六五一二号)  同(中野明紹介)(第六五一三号)  同(樋上新一紹介)(第六五一四号)  同(広沢直樹紹介)(第六五一五号)  同(伏木和雄紹介)(第六五一六号)  同(正木良明紹介)(第六五一七号)  同(松本忠助紹介)(第六五一八号)  同(山田太郎紹介)(第六五一九号)  同(渡部一郎紹介)(第六五二〇号)  医師及び看護婦増員に関する請願伏木和雄  君紹介)(第六五二一号)  ソ連長期抑留者処遇に関する請願外二件(上  村千一郎紹介)(第六五二二号)  同外五件(浦野幸男紹介)(第六五二三号)  同外一件(河村勝紹介)(第六五二四号)  同外五件(倉石忠雄紹介)(第六五二五号)  同外三件(砂田重民紹介)(第六五二六号)  同外十件(辻寛一紹介)(第六五二七号)  同(本島百合子紹介)(第六五二八号)  医療保険制度改悪及び健康保険等臨時特例延長  反対等に関する請願外二件(岡田春夫紹介)  (第六五二九号)  同(山花秀雄紹介)(第六五三〇号)  同(和田耕作紹介)(第六五三一号)  医療労働者増員等に関する請願外一件(大橋  敏雄紹介)(第六五三二号)  同(小濱新次紹介)(第六五三三号)  同外一件(伏木和雄紹介)(第六五三四号)  同(正木良明紹介)(第六五三五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月十三日  失業保険法の一部改正に関する陳情書外一件  (第三四八号)  同外三件  (第四一一号)  失業保険法の一部改正反対に関する陳情書外三  件(第三四  九号)  同外六件  (第四一二号)  母子家庭児童修学資金増額に関する陳情書  (第三五〇号)  医療保険制度改善等に関する陳情書  (第三五一号)  医療労働者増員及び看護婦夜勤改善に関す  る陳情書  (第三五二号)  毒物及び劇物取締り強化に関する陳情書  (第三五三号)  中小企業雇用政策改善に関する陳情書  (第三六〇号)  保育行政改善に関する陳情書  (第三九四号)  最低二万円賃金制確立に関する陳情書  (第三九五号)  心身障害者扶養保険制度実施に関する陳情書  (第三九六号)  大久野島毒ガス障害者に対する特別措置法の早  期制定に関する陳情書  (第三九七号)  スモン病患者救済に関する陳情書  (第三九八号)  米ぬか油中毒症患者救済に関する陳情書  (第三九九号)  労働者災害補償保険法の一部改正に関する陳情  書(第四〇〇  号)  全国産業一律最低賃金制確立に関する陳情書  (第四〇一号)  国民年金制度改善に関する陳情書  (第四〇二号)  妊産婦の健康管理に関する陳情書  (第四〇三号)  医師法改正に伴う付帯決議事項完全実施に関  する陳情書  (第四〇四号)  国立結核療養所整備拡充に関する陳情書  (第四〇五号)  日雇労働者健康保険制度改善に関する陳情書  外一件(第  四〇六号)  国民健康保険保険者規模拡大に関する陳情書  (第四〇七号)  国民健康保険制度改善に関する陳情書外一件  (第四〇八  号)  医療保険制度改善に関する陳情書外六件  (第四〇九号)  健康保険法の一部改正に関する陳情書  (第四一〇  号)  医療保障制度改善に関する陳情書外一件  (第四一三号)  医療労働者増員及び看護婦夜勤改善に関す  る陳情書外三件  (第四一四号)  看護婦等設置基準引上げに関する陳情書  (第四一五号)  公立病院医療従事者労働条件改善に関する  陳情書(第四一  六号)  児童手当制度早期実現に関する陳情書外十件  (第四一  七号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  児童扶養手当法及び特別児童扶養手当法の一部  を改正する法律案内閣提出第五九号)  国民年金法の一部を改正する法律案内閣提出  第六四号)  職業訓練法案内閣提出第九一号)  失業保険法及び労働者災害補償保険法の一部を  改正する法律案内閣提出第六九号)  労働保険保険料徴収等に関する法律案(内  閣提出第九七号)  失業保険法及び労働者災害補償保険法の一部を  改正する法律及び労働保険保険料徴収等に  関する法律の施行に伴う関係法律整備等に関  する法律案内閣提出第九八号)  労働関係基本施策に関する件(郵政省等にお  ける労働問題)      ――――◇―――――
  2. 森田重次郎

    森田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出児童扶養手当法及び特別児童扶養手当法の一部を改正する法律案、及び、国民年金法の一部を改正する法律案の両案を議題とし、審査を進めます。     —————————————
  3. 森田重次郎

    森田委員長 提案理由説明を聴取いたします。厚生大臣斎藤昇君。
  4. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいま議題となりました児童扶養手当法及び特別児童扶養手当法の一部を改正する法律案について、提案理由及びその要旨を御説明申し上げます。  児童扶養手当制度は、昭和三十七年に発足して以来数次の改正を経て、今日まで手当額引き上げ所得による支給制限緩和等改善が行なわれてまいりましたが、なお一そうの内容充実を必要とするところであります。  また、特別児童扶養手当制度は、昭和三十九年に重度精神薄弱児扶養手当制度として発足し、その後手当支給対象重度身体障害児が加えられて、名称も特別児童扶養手当と改められたものであり、その手当の額の引き上げ所得による支給制限緩和についても数次にわたり改善がはかられてまいりましたが、今後とも内容充実が望まれるところであります。  今回の改正法案は、以上の趣旨にかんがみ、児童扶養手当及び特別児童扶養手当の額を引き上げるとともに、所得による支給制限に関する規定整備を行なうものであります。  以下、改正法案のおもな内容について、御説明申し上げます。  まず、児童扶養手当に関する事項について申し上げます。  第一に、手当額引き上げについてでありますが、その月額を二百円引き上げ児童一人の場合は月額二千百円、二人の場合は月額二千八百円とし、三人以上の場合は月額二千八百円に三人以上の児童一人につき四百円を加算した額とすることといたしております。  第二に、所得による支給制限に関する規定整備についてでありますが、支給対象者本人所得またはその配偶者もしくは扶養義務者所得により支給制限する場合の限度額に関する規定を改め、政令で定める額とすることといたしております。  次に特別児童扶養手当に関する事項について申し上げます。  第一に、手当額引き上げについてでありますが、その月額を二百円引き上げ児童一人につき二千百円とすることといたしております。  第二に、所得による支給制限に関する規定整備についてでありますが、児童扶養手当と同様に改め、支給対象者本人等所得による支給制限限度額政令で定める額とすることといたしております。  最後に、児童扶養手当及び特別児童扶養手当のいずれも、手当の額の引き上げに関する事項昭和四十四年十月分の手当から、所得による支給制限規定整備に関する事項昭和四十四年五月分の手当から、それぞれ適用することといたしております。  以上がこの法律案提案理由及びその要旨でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  次に、国民年金法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  国民年金制度は、昭和三十四年に創設され、同年十一月から福祉年金支給を開始し、昭和三十六年から本制度の中心である拠出制年金実施に入り、現在では、被保険者数約二千二百万人、拠出年金受給者約十三万人、福祉年金受給者約三百十万人を擁する規模に成長しており、被用者を対象とする厚生年金保険と相並んでわが国公的年金の二大支柱を形成する制度であります。その間、昭和四十一年に制度初財政計算期を迎え、給付水準の大幅な改善を行ない、夫婦一万円年金を達成したところであります。しかしながら、現行給付水準は、この数年間の著しい経済成長に伴う生活水準の大幅な上昇により、老後生活を保障するには不十分なものとなりつつあります。一方、人口構造老齢化現象、農村における生活水準の急速な向上などの事態に際して、老後生活保障施策はますますその重要性を増しているのでありまして、これに対する国民の要望もきわめて強いのであります。このため、今回予定されている厚生年金保険改善にあわせて、国民年金につきましても、本来の財政計算期に当たる昭和四十六年を待つことなく、その大幅な改正提案することとした次第であります。  以下、改正法案の主な内容につきまして、御説明申し上げます。  まず、拠出制年金に関する事項について申し上げます。  第一に、年金額引き上げについてであります。  老齢年金の額につきましては、現行保険料納付済み期間一月につき二百円で計算することといたしておりますのを、一月につき三百二十円に引き上げて計算することといたしております。この結果、二十五年納付の標準的な老齢年金の額は、現行の六万円から九万六千円に引き上げられることになるのであります。  この改正によりまして、二十五年納付の場合、夫婦で受給する年金月額は、通常、夫の定額分八千円、今回導入される所得比例分四千五百円、妻の定額分八千円を合わせますと月額二万五百円となり、いわゆる夫婦二万円年金が実現することとなるのであります。また、全期間四十年納付の場合では月額三万二千八百円となるのであります。  なお、昭和四十六年には、国民年金の最初の拠出制老齢年金いわゆる十年年金支給が開始されますが、資格期間が特例的に短縮されているこの経過的老齢年金の額につきましては、さきに申し上げました単なる期間比例計算にとどまることなく、年齢に応じて特例的に加算措置を講ずることといたしまして、この十年納付の場合の年金額を二万四千円から六万円に、月額にして二千円から五千円に引き上げることといたしております。この措置によりまして、明後年には、夫婦で一万円年金が現実に支給されることとなるのであります。     〔委員長退席竹内委員長代理着席〕  次に障害年金につきましては、現行法では、二級障害年金最低保障額を、二十五年納付老齢年金の額に合わせて六万円と定められておりますが、今回も同様な考え方のもとに、老齢年金額引き上げに準じて、その額を六万円から九万六千円に引き上げることといたしております。また、一級障害年金の額につきましては、現行は二級障害年金の二〇。パーセント増になっておりますのを、厚生年金保険に合わせて二五パーセント増とすることといたしております。  次に、母子年金、準母子年金の額につきましても、従前どおり、二十五年納付老齢年金の額に合わせて、子二人を扶養する場合で六万円から九万六千円に引き上げ遺児年金につきましても、これに合わせることとし、三万円から九万六千円に引き上げることとした次第であります。  第二に、所得比例制についてでありますが、他の公的年金制度におきましては、保険料及び給付の額が所得に比例する仕組みを設けているのでありますが、国民年金におきましても、今回、これにならうこととし、被保険者の実態を勘案いたしまして、まず、当面はきわめて簡単な仕組み所得比例制を取り入れた次第であります。なお、これに伴い、政府の行なう所得比例制を代行いたしますと同時に、業種ごとの特殊の要請にこたえる上積みの給付を設計することができるようにするため、厚生年金保険における厚生年金基金に準じた国民年金基金を設立する道を開くこととしております。  第三に、高齢者任意加入再開について申し上げます。  昭和三十六年に拠出制年金が発足いたしました当時、任意加入する機会を逸した高齢者につきまして、今回、再び国民年金任意加入する道を開くこととしております。しかしながら、この方々がすでに相当高齢であることを勘案いたしまして、保険料納付は五年間にとどめております。  第四に、保険財政について申し上げます。  第一点は、保険料の額の改定についてであります。今回のように給付水準を大幅に引き上げますと、これをまかなう保険料についても当然相当額改定する必要があるわけでありますが、今回はさしあたり百五十円程度の引き上げにとどめ、四百五十円とした次第であります。なお、この保険料の額は以後段階的に引き上げることとしております。  第二点は、今回新たに導入されました所得比例制についての国庫負担でありますが、国庫は、その給付に要する費用の二五パーセントを負担することといたしております。  次に福祉年金に関する事項について申し上げます。  第一に、年金額引き上げについてでありますが、昨年の引き上げに引き続き、昭和四十四年度におきまして老齢福祉年金の額を、現行の二万四百円から二万一千六百円に、障害福祉年金の額を、三万二千四百円から三万四千八百円に、母子福祉年金及び準母子福祉年金の額を、二万六千四百円から二万八千八百円に、それぞれ引き上げることといたしております。  第二に、夫婦受給制限廃止等について申し上げます。障害福祉年金老齢福祉年金夫婦で受給する場合の支給制限につきましては、すでに昭和四十一年の改正の際に廃止いたしておりまして、今回は、夫婦がともに老齢福祉年金を受給する場合につきましても、その支給制限を撤廃することとしたものであります。これによりまして、現在この支給制限を受けておられる二十八万組、五十六万人の方々年金額が、夫婦で六千円増加することと相なるわけでございます。このほか、所得による支給制限につきましてもその緩和をはかることといたしております。  次に経過措置についてでありますが、現に、年金受給中の既裁定年金の額につきましても、本則の改正と同様に引き上げることといたしております。  最後に、実施の時期につきましては、福祉年金の額の引き上げ及び夫婦受給制限廃止は、昭和四十四年十月から、高齢者任意加入再開昭和四十五年一月から、拠出制年金の額の引き上げ及び保険料改定は同年七月から、所得比例制及び国民年金基金に関する事項は同年十月から、それぞれ、施行することといたしております。  以上がこの法律案提案理由でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。      ————◇—————
  5. 竹内黎一

    竹内委員長代理 次に、内閣提出職業訓練法案議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。後藤俊男君。
  6. 後藤俊男

    後藤委員 今度の訓練所改定の問題につきましては、いままでいろいろな問題について質問も行なわれておりますので、私、最終的に三点ないし四点につきましてお尋ねをいたしたいと思う次第でございます。  まず第一番には、今度の法案要綱の第四におきましても、あるいは法案第三章の第二節におきましても、「公共職業施設」という中へ今度の改定高等訓練校が入っておるわけです。ところが、この経費の問題等につきまして、いままでも再三再四質問も出ておったと思いますけれども、法律案の第二十三条によりましては、高等訓練校のみが依然として無料対象からはずされておる。この点につきましては、ぜひひとつ含めていただく。三月十五日付の最終答申附帯意見の中におきましても、無料の原則の拡充奨学金制度を取り上げる、さらには同時に機会均等を取り上げておるようなところでございますので、いま申し上げましたところの問題につきまして、高等訓練校は、いわば総訓の関係は、いままでは実習費五百円でございますか。その他の府県等実施しておる分につきましては無料になっておる。同じように公共職業訓練施設といいながら、なぜこういうふうな差別的な扱いが行なわれておるのだろうか、この点をひとつ御説明をいただきたいと思います。
  7. 石黒拓爾

    石黒政府委員 都道府県立一般職業訓練所におきましては、養成訓練無料でございまして、雇用促進事業団立総合職業訓練所におきましては五百円の実習負担金を徴収しております。この区別の理由につきましては、これは経過的なものが非常に大きゅうございますけれども、しかし、一般訓練所のほうは一年の短期のものでございまして、やや速成的な訓練をやる場合が多うございます。緊急の必要に応ずるという意味から無料にいたしたわけでございます。総合訓練所のほうは、二年の長期にわたりましてやや高級なる訓練を行なうという意味で、義務教育と高等教育との違いほどではございませんが、やや差別があるということ、それから経過的な理由で、ただいまのような制度になっておる次第でございます。
  8. 後藤俊男

    後藤委員 昭和三十五年の雇用促進事業団法成立の際の衆議員、参議院における附帯決議でございますが、このときにおきましても、衆議院の附帯決議の第三項には、できるだけひとつ一般会計の支出をするように交付金の増額をせよ、こういうような附帯決議もついておるわけです。さらに、先ほど申し上げましたように、三月十五日の答申の中にも、第八項に「職業訓練における無料の原則を拡充するよう努力するとともに、奨学金制度確立に努めること。」これがやはり答申の中身として指摘されておるようなわけでございます。さらに、私いままでの経過をさかのぼって調べてみたわけでございますが、特に総訓関係の労働組合としましても、この問題につきましては今日かなり大きい問題になっておると思います。たとえば、現在のところ実習費が一年間に約一万五千円くらいかと思いますが、その一万五千円のうちで個人から五百円ずつ徴収するということになりますと、年間六千円徴収になります。残りは九千円ということになってくるわけであります。残りの九千円の中で、製品を売って収入を得る、さらに不足分についてはいわゆる事業団のほうで負担をする、こういうふうな形になっておると私は見ておるわけですが、この点いかがでございましょう。
  9. 石黒拓爾

    石黒政府委員 御指摘のごとく、実習に必要な経費につきましては、実習負担金訓練生月五百円、年六千円、そのほかに、実習の結果できました製品を売却することによりまして得た収入と、さらに事業団の一般予算からのつぎ足し、この三者によって実習経費をまかなっておる次第でございます。
  10. 後藤俊男

    後藤委員 そこで、この五百円のお金と関連がありますので申し上げるわけでございますが、いま言われましたように、昭和四十三年度の実習教材費の予算を見ましても約一万五千八百円になっております。この中で、個人から徴収する五百円、これが年六千円でございますが、さらに残りの約九千何がしというのは、いま言われましたように、製品の収入——そればかりではございませんが、それが入っておるわけです。そうなってまいると、専門的な訓練の場でこの収入をあげなければ実習費が生み出せない。そうなると、おのずから収入をあげる方向へ力が入ってしまって、ほんとうの基礎訓練というところがぼかされてしまうのではないかと思うわけです。だから組合関係なり訓練所関係の皆さんとしては、これは当然国庫で負担すべきである。自分で製品をつくって、製品のもうけで実習費をまかなっていく。さらには、収入がどんどんあがりますと、そこの訓練所の所長さんのメンツ、顔がよくなる、こういうふうなことも、にたっとお笑いになっておりますが、事実だそうであります。これらを正しく基礎訓練なり訓練所の目的を生かすためには、当然国庫負担をふやしまして、いま申し上げましたように、この総訓関係におきましても、県のほうのやっておるのと同じように、五百円の徴収はやめて、これらの実習費につきましては国庫で全額負担する、そういう方向へ持っていってこそ、はじめてりっぱな訓練所の方針が立ち、りっぱな実習ができるんではないかというふうに私は考えておるわけですが、この点いかがでしょうか。
  11. 石黒拓爾

    石黒政府委員 実習の結果できました製品の売却につきましては、これはそれによって収益をあげるという性質のものではなくて、製品ができて売るからおのずからそれがあがるということで、これを収益をあげることを目的として訓練をするいうのは、まことに本末転倒でございまして、従来収益をあげることにやや熱心に過ぎた場合も間間あるやに聞いておりまして、その点は先生御指摘のごとく、まことに不適切であると存じます。私どもといたしましては、入ってきた収益ということを本質的なものとして、それをあげなければ実習ができないというようなことになりませんように、国の予算上の負担によりまして実習経費がまかない得るように、予算の充実につとめたいというふうに考えておる次第でございます。
  12. 後藤俊男

    後藤委員 だから、いまおっしゃいましたように、本末転倒的なことをやっておられるのが、先ほどから言っておりますところの内容ではないかと私考えておる次第です。  そこで、ことしの一月の二十八日でございますか、労働省と、さらに職業訓練関係の各労働組合の代表のお方と、団体交渉の単位じゃございませんので、団体交渉と言えるか言えぬかわかりませんが、陳情的な交渉が行なわれたと思います。その席で、いま私が言いましたところのことを組合のほうから強く要求をしたわけです。それに対して労働省側としては、四十四年度はできなかったとしても、来年度の重点として実習費の基準を作成しましょう。ということは、四十五年度からは実習費の基準をつくって、それに基づいて予算要求をして、そうして、先ほどから私が言っておりますような点を改正する方向へ重点として取り扱ってやっていきます、このことを、一月二十八日に、労働省と、さらにいま申し上げました総合訓練所関係の代表との間で、話が取りかわされておりますが、この点、確認の意味もございますけれども、もう一ぺん御説明をいただきたいと思います。
  13. 石黒拓爾

    石黒政府委員 御指摘のございましたのは、日にちは正確に私いま覚えておりませんが、全総訓の代表の方々と職業訓練局の担当課長との話し合いの席のことであろうかと存じます。実習経費の問題につきましては、実習収入に過度に依存しないということと、それから本人の実習負担、訓練生の実習負担をできるだけ軽減する、両方の面があると存じますが、これは従来とも努力してきたところでございますが、審議会並びに国会におきましても、たびたび御指摘ございましたので、四十五年度におきましては、この方針をさらに強力に推進いたすつもりでおります。
  14. 後藤俊男

    後藤委員 そこで、あと事業団のほうにお尋ねしたいと思うのですが、おいでになりますか。
  15. 竹内黎一

    竹内委員長代理 要求がございませんので、呼んでないそうですが……。
  16. 後藤俊男

    後藤委員 いま返答がございましたように、そうしますると、四十五年度からは、先ほどから言っておりますところの実習教材費については、とにかく国庫で負担するように予算措置を強力にひとつ進めたい、こういうことでございますか。
  17. 石黒拓爾

    石黒政府委員 訓練生の経費負担を軽減するということは、私ども非常に必要なことであると考えておる次第でございます。したがいまして、その軽減の方法というのが幾つかあると存じますが、第一に、本年度におきましては、できれば八、九月、おそくも十月をめどに奨学金の拡充をする。あるいは予算の実行上におきまして、実習に必要な経費の増額配布を行なうというような方法を行なう。さらに来年度予算におきましては、本質的な軽減をはかるというようなことで、実質的な実習負担の軽減をはかりたいと考えておる次第でございます。
  18. 後藤俊男

    後藤委員 そうしますと、いま新しい奨学金制度の云々というお話がございましたが、この奨学金制度については現在も実施しておられると思うのです。ところが事業団関係実施しておらないということですね。で、いま言われた奨学金制度についてはどういうふうな具体的なお考えでおられるのか、その点お伺いいたしたいと思います。
  19. 石黒拓爾

    石黒政府委員 現在ございます奨学金は、実は訓練大学校の訓練生に対する奨学金、並びに、これは非常に少ない数でございますが、沖繩からの訓練生に対する奨学金というのがございまして、総合訓練所訓練生一般に対する奨学金の制度はないわけでございます。これを今年度の実行予算において創設いたしたいと考えておる次第でございます。金額につきましては、事業団の財源の問題、それから大蔵省との折衝等がございますけれども、大体千円から二千円の範囲内でなるべく高いところにきめたいという方針で鋭意検討中でございます。これは夏ごろまでに実現に至るものと考えております。
  20. 後藤俊男

    後藤委員 そこで、先ほど返答いただいた分をきちっと私、整理をしたいと思うのですが、先ほどからいろいろ申しておりますように、実習の教材費の国庫負担の問題につきましては、軽減、いわゆる国庫負担を増額して、現在五百円の負担をいたしておりますけれども、これらをひとつ少なくしていきたい、こういう方向は先ほど御説明のとおり。そこで、具体的には一体どうかというと、来年の、いわゆる四十五年度からは、組合とも話をされておりますような方向で、とにかく国庫負担を増額させる、そうして実習負担金を軽減していく、これは変わりがないわけですね。さらに、もう一つ言われましたことしの十月を目途にしまして、いまお話がありましたところの奨学金制度拡充の問題、さらには、実習に必要な経費、予算を実行上増額を行なうようにして個人の五百円の負担を軽減する。たとえば三百円にするとかあるいは二百円にするとか、そういう方向で十月を目途にひとつ最善の努力をしてみたい、こういうふうに確認をしていいかと思うのですが、いかがでしょうか。
  21. 石黒拓爾

    石黒政府委員 実習負担金月五百円の定額につきましては、これは本年度はすでにきまったことでございますので、これを名目上引き下げるということにつきましては、四十五年度以降予算折衝で努力すべきことと存じます。今年度におきましては、御指摘のような実行上の実習経費の予算の配賦の増額、並びに奨学金というとによりまして、いただくものは形式上五百円いただくけれども、実質的に実習生の負担が軽減する方法をできるるだけ考えていく、その実現は十月までにぜひともめどをつけたいというふうに考えておる次第でございます。
  22. 後藤俊男

    後藤委員 そうしますと、もう少しはっきりお尋ねしたいのですが、いわば一人当たり五百円の分担金についてはなぶらない、今年度中はなぶるわけにいかぬ、けれども十月を目途に予算上の経費を増額させて実質的な負担金の軽減をはかりたい、こういうことだと思うのですが、そのことは、もう少し具体的に言っていただくと一体どういうことになるのか、説明をしていただきたいと思います。
  23. 石黒拓爾

    石黒政府委員 目下検討中の事項でございますので、具体的な金額を申し上げるわけにはまいりませんが、奨学金制度が創設されました場合には、これは奨学金でございますから全員に与えるわけではございませんけれども、それを平均いたしますと、五百円のうちの若干が払い戻しになった形になるわけでございます。それからもう一つの実習上の負担というのは、実習収入をあげるために、本来の訓練以外に売れる製品をつくるようにというふうな負担がかかっておる。これにつきましては、実習収入を無理やりあげるというようなことがなくて済むように、実習経費の予算を増額することによりまして、その負担が軽減されるというふうに考えておる次第でございます。
  24. 後藤俊男

    後藤委員 そうしますと、いま言われた奨学金制度でございますけれども、奨学金というのは、貸し付けて、しかもなるべく有利な条件であとからお返しするのだ。一口に言ってこれが奨学金制度だと思います。そうしますと、いま言われたその五百円の分担金が差し引きどうなるというようなことと、全然これは筋違いの問題だと思うのです。苦しい者に貸し付けて、卒業してからお返しする、これが奨学金制度です。さらに私がいま言っておりますのは、いわば毎月毎月五百円の分担金があるが、これをさらに十月からちょっとでも軽減できぬか。軽減する方向で努力してもらえぬのか。それと同時に、先ほどあなたの言われましたように、昭和四十五年度からはこの問題について根本的に検討をするいわゆる第一歩として、十月を目標に、奨学金制度の問題につきましても、それは十分研究してもらわなければいけないけれども、さらにその五百円の問題について、先ほど言っておるように、たとえば十月を目途に三百円なら三百円に減額する、そういう方向でひとつ力を入れてやってみよう、さらに四十五年度になったら根本的に予算の関係もあるからひとつやろう、こういう方向ではっきりできないのかということを私は申し上げておるわけなんです。だから、奨学金制度制度でこれは別の問題だと思いますから、いわゆる実習分担金というのと奨学金制度と、どっちもお金の話でございますけれども、それを先行きどうこうという性質の問題ではないと私は考えておるわけです。
  25. 石黒拓爾

    石黒政府委員 実習負担金五百円という名目上の数字をいじることは、これは本年度予算がすでに成立しておりますので、来年度予算で努力しなければならないと存じます。しかしながら、実質上何らかの方法で訓練生に還元をはかるとか、いろいろな方法をくふういたしまして、名目は五百円でありましても、実質の負担がいまよりも減るという制度をいろいろとくふういたしたいというふうに考えております。
  26. 後藤俊男

    後藤委員 そうしますと、いまあなたは、名目上五百円はなぶることはできないけれども何らかの形で訓練生に還元したい、こう言われましたね。そういうことでいいんですか。
  27. 石黒拓爾

    石黒政府委員 おっしゃるとおりでございまして、何らかの方法の一、二の例は先ほど申し上げました次第でございますが、そのほかいろいろな方法を検討いたしまして、一日も早くそういうふうな実行上の措置をくふういたしたいと考えておる次第でございます。
  28. 後藤俊男

    後藤委員 そうしますと、十月の問題につきましては、何回言っておりましても押し問答になりますが、ただし十月を目途にいわゆる予算実行上の増額を行なっていただいて、この五百円というのは年度内どうしてもなぶるわけにいかぬけれども、ただし増額を行なうことによって何らかの形で訓練生に還元する方法を、ひとつ十月までに検討をして実行できるような方向へ努力していただく、これをまずお願いしたいと思います。  それから、その次の問題としましては、四十五年度になりますと、これは途中であるとかなんとかという問題じゃなしに、労働省と訓練所関係の労働組合との話し合いの中にもありましたように、いわゆる実習教材費につきましては国庫で負担する方向で予算を獲得するようにひとつ十分話をしていただく。きょうは事業団はおいでになりませんが、これは事業団の問題でもあろうと思うわけですけれども、その点十分連絡をしていただいて、四十五年度からは抜本的に改正ができるような方向へ努力をする、このことだけひとつお約束をいただきたいと思うわけです。
  29. 石黒拓爾

    石黒政府委員 ただいま御審議いただいております法律が通りますと、四十五年度からはいろんな点で予算上非常に変わる点がございますけれども、この実習負担金の問題につきましても、最重点の一つとして、四十五年度予算におきましては努力いたしたいと考えております。
  30. 後藤俊男

    後藤委員 その次は施設関係の問題でございます。これは前に枝村委員なり加藤委員からも数回にわたって話があったと私は思うわけでございますが、現在の訓練所の教室の関係を見ましても、さらには実習場を見ましても、さらにひどいところは、昼食を食べようと思いましても施設も全然ない、いわば野天で自分の弁当を食べなければいかぬ、それくらいお粗末なところもあるわけでございますけれども、さらに進めてこれは機械工具等の問題でございます。いわば現在の訓練所関係の施設なり人員その他を十分拡充するならば、もっともっとりっぱに能率があがるのではないか。それが今度の法改正によりまして、いま申し上げましたような、施設の関係なり、機械工具等の関係なり、いわゆる整備等の問題についてはどの程度拡充されるのか、どの程度これはこういうふうになるのだ、どういうふうに強化されるのだという点をお伺いいたしたいと思います。
  31. 石黒拓爾

    石黒政府委員 建物その他の施設の充実につきましては、これは法律改正の有無にかかわらず努力しなければならないことでございます。特に全面的な法律改正ができました際には、従来以上に努力いたしたいと考えておりますが、目下のところ、建物につきましては、広さについては一応基準を満たしておりますが、非耐火構造、すなわち木造の建物がまだ二割前後残っておるというようなこと、それから機械の整備率もまだ十分でないというようなことがございまして、ここ数年非常に改善に努力しておりますけれども、法律改正機会にさらに一そう努力して、急速にその充実につとめたいと考えておる次第でございます。
  32. 後藤俊男

    後藤委員 続いて職員定数の問題です。これもあなたのほうとしては現在十分であるとは考えておられないと思うわけです。現在指導員のあれが訓練生三十名に一名でございますか、これはもう十年なりだいぶ大昔にきまった数だと私は思うわけでございますけれど、さもらに今度の審議会に諮問された最初の段階におきましては、転職訓練等につきましては、一緒にせずに別のコースでやるべきではないかというような諮問が行なわれておるように私も聞いておるわけでございますが、現在は一人の指導員が混合コースで非常に無理をしておられる。オーバー労働になっているというようなことはお認めになっておると思うわけです。そうなりますと、今度の法律改正に基づいて、指導員なり、さらには職員の問題について、現状をどういうふうに考えておられるだろうか、この点についてお尋ねいたします。
  33. 石黒拓爾

    石黒政府委員 指導員の定数につきましては、一般的に申しますと、訓練生三十名について三人、五十名の場合には四人という定数に相なっておるわけでございます。ただいまのところ、この定数を直ちに変えるつもりはございませんが、実は総訓と一般訓練所等を含めまして、指導員の欠員が若干ございます。そのために、指導員に過重の負担がかかっている場合も訓練所によってはあると考えますので、この指導員の欠員の充実ということには今後一そう努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
  34. 後藤俊男

    後藤委員 そうしますと、指導員の不足がはなはだしいと、私、聞いておるわけでございますが、数字的に教えていただきたいと思います。
  35. 石黒拓爾

    石黒政府委員 訓練所の指導員の定数は、一般訓練所総合訓練所、それから身体障害者訓練所と三つ合わせまして、四十三年度におきまして約五千七百人でございます。それに対しまして、現実の実員は約四千八百人でございまして、かなりの欠員がございます。この欠員はもちろん平均してあるわけではございませんで、欠員が非常に大きい訓練所と比較的少ない訓練所とございますが、欠員の多いところでは指導員の方が非常に苦労しておられると存じます。現在のところ講師を千百三十人委嘱しておりまして、講師で補充をしておるという方法をとっておりますが、しかし講師は一人前の指導員とは違いますので、その状態が正しいとは思っておりません。したがいまして、指導員の充実ということにつきましては、今後一そう努力をいたさなければならないと考えております。
  36. 後藤俊男

    後藤委員 そうしますと、いま言われましたように、指導員の欠員が非常にはなはだしいところもある、これは早急に欠員のところを充実いたします、こういうことでございますか。
  37. 石黒拓爾

    石黒政府委員 欠員のところを早急に充実するように努力したいわけでございますが、給与もそれほどよろしくございませんこともありまして、適格者がなかなか簡単には得られない。特に地方の僻地にまで分散しております関係上、なかなか簡単にはいきませんが、これは一そう努力いたしたいと考えておる次第でございます。
  38. 後藤俊男

    後藤委員 指導員なり職員の問題につきましては、御説明のように欠員が多うございますから、早急に充実できるようにぜひひとつ全力を傾倒していただくということでお願いしたいと思います。  それから次の問題は、天下り人事の問題です。訓練所というのは、普通の学校と違いまして、特に変わった学校というとおかしいのですが、特定の技術が必要ではないか、特定の教育が必要ではないかというふうに私は考えるわけでございますけれども、いままで御承知のように、山形県の教育勅語の事件、さらには、茨城の所長でありまして、ことしの四月退職でございますか、中村さんの問題等々、いろいろと問題を起こしておる所長さんもおられるわけでございますが、現在この施設長のいわゆる前歴ですか。考え方によりますと、これは失礼な言い方かもわかりませんけれども、一時的な昇進のステップのような形で人事が行なわれておる。さらには、全然訓練関係に経験もなければ教育もないというような人が所長として赴任してこられるというような、いろんなケースがあると思います。しかし私は、訓練所の目的を達成するためには、それにふさわしい人事が行なわれてこそ初めて達成できるというふうに考えております。できればひとつ、現在の訓練所関係のいわゆる施設長、所長さんでございますか、これらの人の前歴を御説明いただきたいと思うわけです。
  39. 石黒拓爾

    石黒政府委員 全国で四百ございます訓練所の所長の具体的な前歴はなかなか集計しにくうございますが、大ざっぱな数で申し上げますと、労働行政の経験がどのくらいあるかということにつきましては、訓練所長のうち五年以上の労働行政の経験のある者が全体の六割を占めております。逆に申しますと、四割は労働行政の経験が五年未満である。それから、労働行政の中でも職業訓練についての経験がどのくらいあるかと申しますと、五年以上の職業訓練の経験のある人は四割強ということに相なるわけでございます。したがいまして訓練の経験五年未満の人が六割弱おる。これが何年経験があるからよろしいという適格は必ずしも言えないわけでございますが、この中には全くずぶのしろうとが県の人事の都合だけで回された人もないとは申せませんので、この辺は改善の余地のあるものと私ども考えております。
  40. 後藤俊男

    後藤委員 そこで、中央職業訓練審議会の答申した職業訓練法案要綱の中の「労働省令で定める基準」を除いたのはどういうわけですか、これをお伺いしたいわけです。今度は公共職業訓練施設の長の資格の中から「労働省令で定める基準」を除いてあるわけですね。これはなぜ除いたのでしょうかということです。
  41. 石黒拓爾

    石黒政府委員 一般職業訓練所の所長は、申すまでもなく地方の吏員でございます。地方の吏員の任免につきまして労働大臣が省令をもって基準を定めるということは、知事の人事権、いわば地方自治権のはなはだしい制約になるという強い議論がございまして、私ども自治権の侵害までするつもりはございませんので、労働省令で定めるということはやめたわけでございます。しかし、各都道府県におきまして、何も方針がなしに、基準もなしに、そのときの都合だけで所長を任命するということがいいとは少しも思っておりませんので、都道府県ごとにあらかじめ基準をつくり、その基準に従った人事を行なうというふうに運用していただくように府県を指導いたすつもりでおります。
  42. 後藤俊男

    後藤委員 この天下り人事の問題につきましては、総訓関係の労働組合としましても、かなり大きな問題として取り上げなければいけないような所長さんも、先ほど申し上げましたように、茨城の所長でございますか、あったわけです。さらに山形県の教育勅語の問題、こういうふうな事件を起こされることは、職業訓練所の本旨から考えましても、私は絶対にプラスではないと思います。ということは、あくまでもふさわしい人事を行なっていただく。ふさわしい人事を行なわなければいけないんだ。一時的にどうこうだ、あるいは昇進のステップだというような考え方の天下り人事というのは、絶対に今後排除してもらわなければいけない。これだけは私強く主張しておきたいと思います。  それから、今度の法改正によって、地方の審議会をつくらなければいけないということになったわけですね。いままでは、つくることができるということだったと思います。そうなってまいりますと、認定訓練の問題ですね。この認定訓練につきましては、各県知事の認定でございますか。さらに労働基準法七十条に関係のある場合には、労働基準局長の意見を聞いて認定をどうこうきめる、こういうことになると思うのですが、今度の法改正によって、地方の審議会を設置する、こうきまった以上は、この認定訓練の問題の認定につきましては、地方に審議会がありましたら、当然その審議会も参画して、その認定云々の問題を議論できるようにすべきである。そうすることが地方の審議会の拡充強化にもなるのではないか。さらに、それからの訓練の中身につきましても審議会がタッチをしておれば、訓練そのものについてもいい方向へ進んでいくのではないかというふうに考えるわけでございますが、この点いかがでしょうか。
  43. 石黒拓爾

    石黒政府委員 認定職業訓練につきまして地方職業訓練審議会がタッチされるということは、たいへん望ましいことであると存じます。ただ、認定をするときに事前に審議会に必ず付議しなければならないかどうかという問題につきましては、以前にも申し上げたと存じますが、有料職業紹介の認可のごとく、なるべくこれを制限しようという場合に、その制限が不当にならないように、かつ妙なところにといいますか、有料職業紹介があまり甘く認可されないようにということで、非常にきつくチェックする意味で職業安定審議会にかけられておりますが、認定訓練につきましては、これをきつくチェックするという必要はないわけでございまして、むしろますます奨励いたしたい。したがいまして、認定の手続というのは簡素であることが望ましいと考えております。     〔竹内委員長代理退席、委員長着席〕 訓練審議会の議を経なければ認定できないというふうにしぼる必要はない。しかしながら、それじゃ認定訓練について審議会がノータッチでよろしいかと申しますれば、私どもそうは思っておりませんで、どういうところに認定をしたということ、あるいは認定できなかったところにはどういう問題があったというようなことは、都道府県知事ができるだけひんぱんに職業訓練審議会に報告をされまして、さらに認定が活発に行なわれるような指導を訓練審議会の御意見を聞いて行なうというような運用をいたすべきものと考えております。
  44. 後藤俊男

    後藤委員 そうしますと、この地方訓練審議会が関与していくのは非常に望ましいことだ。望ましいことなら、県知事だけにまかしたということではなしに、県知事なり地方訓練審議会のいわゆる御相談によって認定の問題を取り扱っていく、そういうふうにしたほうが理想的ではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  45. 石黒拓爾

    石黒政府委員 訓練審議会はそうひんぱんに開くものではございません。年に四回とかあるいは六回とかというものでございます。その訓練審議会を開くまで認定をストップしておくという必要はない。有料職業紹介の場合には、これは安定審議会が開かれるまでストップしておくくらいのことは甘受させてもよろしい性格でございますが、認定につきましては、別に審議会の都合によって認定をストップするというような必要は毛頭ございませんので、適宜適切に審議会に御報告をし、いろいろ御意見を伺うということはよろしゅうございますけれども、審議会が開かれるまでは認定しないというようなチェックをする必要はないと私ども考えておるわけでございます。
  46. 後藤俊男

    後藤委員 あまり私もこだわる気持ちはございませんけれども、いまあなたが言われましたように、地方訓練審議会が開かれぬからどうこうということでは、私、筋が通らぬと思うのです。いままでは地方訓練審議会を持ってもいいし持たなくてもよろしい。今度の改正によって持たなければいけないということは、これはやはり訓練に対する一歩前進だと思うわけです。それがいままででも、一年間全然開かれておらない審議会もあったように聞いております。そういうふうなことではいけないから、必要の都度できるだけ多く会議を開いて、職業訓練の問題については、関与もし協力もし、あるいは十分なる関心を持ってやっていかなければいかぬということだと私は思うわけでございますけれども、ぜひひとつ、いまの認定の問題につきましても、地方の訓練審議会等も参与して、この問題には関連を持たせるような方向で——法改正どうこうということになるかならぬか、私わかりませんけれども、今後の指導上の問題としてやっていただくようにお願いをいたしたいと思います。  それから一番最後でございますけれども、現在技能労働者の不足ということが非常に問題になっております。そこで、職業訓練所拡充強化というのも非常に大きな問題として取り上げられておると思いますけれども、日本の現状から考えまして、どれくらい職業訓練を受けたいという人がおるのだろうか。そこで、ことしあたりはどれくらい職業訓練を受講させるような計画になっておるかというような、全般的な問題からひとつ御説明をいただきたいと思います。
  47. 石黒拓爾

    石黒政府委員 本年度の公共職業訓練計画におきまして、これは公共訓練だけでございますが、訓練受講生の総数は十二万七千という予定に相なっております。
  48. 後藤俊男

    後藤委員 いま労働省のほうから出されましたパンフレットによりましても、現在百八十四万人からの技能者が不足しておるとはっきり書いてあるわけでございます。そこで、いま申されましたように、十二万六千八百人、大体十二万七千人でございますか、これに伴う予算といたしましては百三十四億だと私は聞いておるわけでございます。さらに先生が約六千人でございますか。そこで問題になっておりますのが、先ほどから言いましたような、施設の拡充の問題なり、あるいは施設の整備の問題なり、あるいは機械機具の問題、あるいは実習負担の問題、あるいは国庫負担増額の問題等、これは問題を多くかかえているわけでございますが、今度のこの法改正によって、一体いま申しましたようないろいろな問題について、どれくらいの前進があるのだ、どれくらい変わってくるのだ。少なくとも百八十四万人からの技能労働者不足の今日、大事な職業訓練に対して今度の法改正が行なわれて、いままでより一体どれだけ前進するのだ、その点の大綱についてひとつ御説明いただきたいと思います。
  49. 石黒拓爾

    石黒政府委員 先ほど申し上げました十二万幾らという数字は公共職業訓練でございますが、そのほかに八万人余りが事業内職業訓練対象と相なっております。訓練は、両方合わせました二十一万程度が、毎年というか、本年の数に相なるわけでございます。これがどのくらいふえるかということにつきましては非常にむずかしい問題でございますが、第一に、事業内訓練につきましてはいろいろな援助が与えられますので、この数はかなり増加するであろう。しかしながら、事柄の性質上一ぺんに二倍、三倍になるというふうにはいきませんので、かなり長い期間にわたってふえるだろう。企業内訓練はこの数年数のふえ方が停滞しておるわけでございまして、停滞したことに対するネックというのは、今回の法改正によってかなりの程度打開されるものと考えております。  それから公共職業訓練につきましては、人数のふえるのは施設の数をふやすということとパラレルになるわけでございまして、予算を何億円獲得するかということによってほとんどきまると申してもよろしいかと存ずるわけでございます。これは法改正を契機といたしまして飛躍的な予算の増額をいたす所存でございます。
  50. 後藤俊男

    後藤委員 いま簡単な説明があったわけでございますが、職業訓練関係の問題につきましては、委員会ごとに主張されておりますように、現在の施設をもっと生かすつもりなら、もっとやり方があると思うのです。財政的にお金を投入するとか、あるいはその他整備拡充していく、あるいは指導員の定員をふやす、あるいは職員を充実する、そういう方向でやればかなりの能率もあがるのではないかというふうに私は思うわけでございますが、今度のこの改正によりまして、現在の日本の技能労働者の不足、これを補っていくためにはあまりにも幼稚な、と言うとおしかりを受けるかもしれませんが、あなた方も真剣にやっていることはわかるわけでございますけれども、もっともっとこの方面に力を入れるべきである、これは強く私はお願いをしておきたいと思います。  それから最後に、一番冒頭に申し上げましたところの実習負担金の問題につきましては、十月を目途にやっていただくわけでございますが、来年度は、この実習負担金五百円の問題につきましても、国庫負担を増額してこれをなしにしてしまう、そういう目途のもとに予算の面でも力一ぱいがんばっていただくようにお願いをいたしたいと思います。  それからもう一つの問題は、いわゆる製品を売って収入をあげて、それによって云々というところは、これはややもすると基礎訓練を曲げるようなことになると思いますので、これらの点につきましても、四十五年度につきましてはこれまたなくして、間違った訓練の方向へいかないようにやっていただきますようにお願いをいたしたいと思う次第でございます。  最後に、十月を目途に奨学金等の問題もございますので、さらに、五百円をなくすことはできないけれども何らかの方法で訓練生に還元する方法を考える、これもやはり前向きの方向の話であろうと思いますので、これらの点もぜひひとつお願いをいたしたいと思います。  それから、先ほど来いろいろ申し上げておりますところの機器なり機械器具、いろいろあろうと思いますが、そういう点の整備計画等につきましても、四十四年度は大体十一億四千万円でございますか。来年度もいろいろあろうと思いますが、これらの整備計画につきましても、さらに前進する方向で努力をしていただきたいというふうに考えております。  いま申し上げましたような点につきまして、最後に労働大臣からお考えをお伺いいたしまして終わりたいと思います。
  51. 原健三郎

    ○原国務大臣 後藤さんの御説一々よく拝聴いたしまして、まことにごもっともな次第でございます。それで、十月を目途としてやる、実習費の負担を実質的に軽減する等、努力いたします。その他、来年度から訓練法の改正を契機として、飛躍的に訓練行政を拡充強化いたしたいと思っております。来年度予算折衝等におきましては、私も陣頭に立って予算獲得等に全力をあげて御期待に沿いたいと思っております。
  52. 後藤俊男

    後藤委員 終わります。
  53. 森田重次郎

    森田委員長 河野正君。
  54. 河野正

    ○河野(正)委員 いま後藤委員からいろいろ最終的な質問がございましたが、さらに一、二簡単に私からもお尋ねをして、労働省の善処をお願いをしたいと思います。時間がございませんから端的に申し上げますから、お答えのほうも、簡明率直にひとつお答えを願いたいと思います。  その一つは、この公共職業訓練に対して自動車車体整備科をぜひ設けてもらいたい。これは従来自動車の整備というものは、大部分がエンジンを中心として考えられてきた。しかし最近の経済情勢その他によって、むしろエンジンの整備というよりも車体整備というものが自動車整備の中心になっておる、また非常に大きなウエートを占めておる、こういうふうな情勢の変化というものが出てまいっております。そこで、ぜひひとつこの際、自動車整備という問題の中で、板金、塗装等の車体整備、これに力を注いで養成をはかってもらいたい、こういうことが第一点です。
  55. 石黒拓爾

    石黒政府委員 自動車につきましては、なかんずく技術が日進月歩でございまして、訓練職種もどんどんふやさなければならないと考えております。自動車組み立て工という職種をつくれというような要望もございます。いろいろな要望がございまして、あまり単能化することは問題でございますけれども、多能工という問題と組み合わせまして、御要望に沿いますように至急検討いたしたいと考えております。
  56. 河野正

    ○河野(正)委員 いま一つは、若干いまの問題にも関連するわけですけれども、この技能検定職種の中に自動車板金というものをひとつ設けてもらいたい。これは御案内のように、技能検定を受ける際には板金工、工場板金、こういうことでございますけれども、しかし自動車の板金は特殊な技術を要する。しかもいま指摘を申し上げましたように、自動車整備というものは車体整備だ、板金、塗装というものが今日の需給関係の中でも非常に大きなウエートを占めておる、そういう問題もございますし、同じ板金といっても、船の板金と工場板金と自動車板金というものは、内容的に非常に質を異にするものでございます。しかも需給関係も非常に大きなウエートを占めてまいっておるわけでございますし、なおまた今後この職種というものが飛躍的に拡大されるというふうな情勢でもございますから、この際、技能検定職種の中に自動車板金工をひとつぜひ設けてもらいたい、こういう強い要望等がございますので、この点についてもひとつ御配慮を願いたい。
  57. 石黒拓爾

    石黒政府委員 板金につきましては、御承知のように工場板金と建設板金と二つございまして、工場板金は従来曲げ板金に非常にウエートがかかっておりました。自動車板金は打ち出し板金のほうでございます。今後は打ち出し板金のほうの検定職種もつくらなければならないだろうということを検討しているところでございますので、御要望に沿えるような形で研究したいと思っております。
  58. 河野正

    ○河野(正)委員 これは特に零細企業の中でそういった要望もございますし、それからまたいま自動車産業の中でそういう趨勢というものが非常に強まっておるわけでございますので、ぜひひとつ善処、努力を願いたい。また努力をするというふうなことでもございますので、実現がすみやかに行なわれますことを期待をして、関連でございますから私の質疑を終わりたい、かように思います。
  59. 森田重次郎

    森田委員長 田畑金光君。
  60. 田畑金光

    ○田畑委員 若干後藤委員質問に関連してお尋ねしたいと思うのですが、先ほどの訓練指導員の不足の問題、これについて、五千七百名が指導員の定員であるが実人員が四千八百名、そうして現在百三十名の講師をもって補充しておる、こういう説明であったわけです。さらに、今年度の受講者は十二万七千名、そうしてまた事業内職業訓練は約八万名にのぼっておる、こういうことでありまするが、指導員の四千八百名というのは、公共職業訓練施設についてどれくらいの数にのぼっておるのか。さらに、事業内職業訓練についてはどれくらいの正規の指導員が配置されておるのか、そのことが一つ。さらに、相当数の指導員が不足しておるということをお答えになっておりましたが、今後これが補充はどのような方法で充足していこうとするのであるか、これを一つ……。
  61. 石黒拓爾

    石黒政府委員 指導員の定数につきましては、概数五千七百名と申し上げましたのは、これは全部の公共訓練の指導員の定数が五千七百名でございます。そのうち実員が四千八百名、講師が千百三十名でございます。この千百三十名の講師というものを早急にほんとうの指導員で埋めるように努力をいたしたいと考えております。  それから、事業内の訓練というのは、これは規模や何かも、やり方も、非常にまちまちでございまして、事業内の指導員の総数は三万八千人に及んでおります。  数と質と両方の問題がございます。数が足りないのを埋めなければなりませんが、しかし指導員資格のありますものは、実は二、三十万もおるわけでございます。この中には、かなり質として問題の人も、従来経過措置でもって認定された指導員資格があります。資格さえあればだれを引っぱってきてもよろしいというわけにはまいらないわけで、ほんとうの適格の指導員を得るということはなかなかむずかしいことでございます。一番の方法は、訓練大学校の卒業生である指導員、これが一番いいわけでございますが、これは、訓練大学校を拡充する予算もすでに本年度出ておりまして、二、三年のうちに大拡充いたしまして、訓練大学校卒業の指導員の数をふやすというようにいたしたい。さらに、法律改正に伴う経過措置、三十三年の経過措置がいまだに生きておりますが、これを検討いたしまして、試験制度その他をさらに改善をして、質のいい指導員をどんどん生み出されるように努力いたしたいと考えておる次第でございます。
  62. 田畑金光

    ○田畑委員 いまの局長の答弁のように、職業訓練大学校を出た正規の指導員を養成していくのが当然だと思いますが、いまお話しの総過措置によって訓練指導員を養成しておるというのでありまするが、その経過措置内容というのは、どのような措置で充足されておるのか、その点説明願いたいと思います。
  63. 石黒拓爾

    石黒政府委員 経過措置はいろいろな種類がありまして、たとえば旧制大学を卒業した人はどうするとか、いろいろなものがあるわけでございますが、一番大きなのは、実務経験十五年、現場の経験十五年を経た人は、技術的には一応熟練に達しておると見なしまして、これに訓練指導方法等の講習、三十五時間講習というようなものをやって、それで指導員資格を認定しております。しかしながら、経過措置のうち一番問題がありますのは、この三十五時間講習であろうと存じます。したがいまして、この制度は、法律改正機会に検討をいたしまして、もう少し厳格な制度にいたしたいと考えておる次第でございます。
  64. 田畑金光

    ○田畑委員 局長、実は私、質問の骨子というのは次のことなんです。  この労働省の資料によれば、事業内職業訓練について、「国、都道府県及び雇用促進事業団は、事業主その他の関係者に対して必要な援助を行なう等職業訓練の振興を図るように努めなければならない」、こういうことを明確に規定しておるわけであります。また、認定職業訓練に対する援助の点についても、「都道府県及び雇用促進事業団は、認定職業訓練について、職業訓練指導員の派遣、教材その他認定職業訓練に必要な資料の提供、認定職業訓練の計画及び運営に関する助言及び指導その他認定職業訓練に係る技術的な援助、委託による認定職業訓練の一部実施公共職業訓練施設を利用させること等の援助を行なうように努めなければならないものとする」、このように、認定職業訓練については、国、都道府県あるいは雇用促進事業団は、必要な職業訓練指導員を派遣する等援助することということが、この法案の骨子になっておるわけです。ところが、事実そのようになっておるかといいますと、先ほど来問題になっておるように、公共職業訓練施設においても訓練指導員が不足である。そこで、現実の運営はどうなっておるかと申しますと、いま局長のお話しがあったように、訓練指導員に新しく資格免許を付与するについて、実務経験十五年以上の者について三十五時間の講習をやって、そしてこの試験に合格した者は訓練指導員としての資格を付与する。そういうような資格免許を取得した者、しかもそれは事業場内においても、非常に有能な、その事業にとっても必要欠くべからざる技能労働力として長年養成し、そしてまた今後ともその事業場において確保しておかなければならぬ熟練工、こういうものを、いまあなたのいみじくも答弁された、十五年以上の実務経験者で、そして三十五時間の講習を受けて指導員の免許資格をとると、雇用促進事業団あるいは府県の公共職業訓練施設に指導員としてどんどんこれはひっこ抜いていっておるのですよ。これは私は、国並びに府県の公共職業訓練施設は、民間の工場、企業体において不足する技能労働者を充足し、わが国の産業全体の発展をはかるのが、この法律のねらいであると考えておるわけです。現に労働省の調査結果によっても明らかなように、技能労働者が百八十四万余も不足しておる。要すれば、民間の必要とする技能労働者を充足して、そしてわが国の産業全体の発展、個別企業における生産性の向上、こういうことをねらいとしたのがこの法律の目的である、こう見るわけです。ところが、末端においてはそうではなくして、民間企業から有能な技能労働者で職業訓練指導員の資格試験を通った者はどんどん抜てきして、それが雇用促進事業団に行ったり府県の職業訓練施設に指導員としてひっこ抜かれていっておるのです。これは労働省がそういうことを指導なさっておるのか、奨励なさっておるのか。あるいは、こういう点については行き過ぎであるから、あくまでも生産工場なら生産工場に確保して、さらにその業態の発展のために、それぞれ有能な人方を今後とも長くその製造工場や生産工場で確保しておくように、そのような指導をなされようとするのであるかどうか。この点もっと明確な方針を持って臨んでいかないと、末端のほんとうの生産現場においては、非常に迷惑をこうむっておる会社が現実に相当あるわけです。あなたは頭を振っておるようだが、例を示せと言えば示しますよ。現にそうなっておるのですよ。その点は労働省としてはどういう方針をとっておるのですか。それを明らかにしていただきたい。もしまた、ひっこ抜くことがあなた方の考えと相反するならば、今後はそういうことのないようによく指導してもらいたいと思うのだが、その点についてはっきりとした労働省の方針を明示してもらいたい、こう思うのです。
  65. 石黒拓爾

    石黒政府委員 労働省といたしましては、実務経験十五年プラス三十五時間講習で経過措置による指導員の資格を得た者、そういう者がすべて訓練所における指導員にほんとうに適格とは実は思っておりませんので、そういうのをどんどんひっこ抜くようにという指導は全くいたしておりません。場合によりましては、事業所の指導員のうち非常にいい人は割愛をお願いすることがあるかもしれませんけれども、これは一般的な方針として、どんどんひっこ抜けというようなことは指導いたしておりません。むしろ訓練所の指導員の優秀な者が民間にひっこ抜かれることがありまして、その防戦に私どもは実は苦労しておるような実情でございまして、とてもそう簡単に民間からひっこ抜けるような情勢ではないと実は私は思っておるのであります。民間技能労働者の不足に拍車をかけるような引っこ抜きという方針は出してもおりませんし、今後ともそういう方針で指導するつもりはございません。
  66. 田畑金光

    ○田畑委員 これで質問を終わるが、職業選択自由の憲法のもとでありまするから、AからBへ行こうと、BからAへ行こうと、それは各自の選択の自由でありますけれども、ただ私の申し上げたいことは、民間の製造工場等でしばしばそのようなことを見聞いたしますので、要すれば、民間に有能な労働力を確保しよう、技能労働力を確保しようというのがこの法律のたてまえであるとすれば、府県や雇用促進事業団の訓練所等が、末端において民間から有能な技能労働者の指導員をひっこ抜くようなことは、ひとつできるだけ控えるような指導を労働省としてもはかっていただきたい。このことだけを希望として申し上げまして、私の補足質問を終わります。
  67. 森田重次郎

    森田委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  68. 森田重次郎

    森田委員長 次に討論に入るのでありますが、別に申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  内閣提出職業訓練法案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  69. 森田重次郎

    森田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  70. 森田重次郎

    森田委員長 この際、澁谷直藏君、加藤万吉君、田畑金光君及び大橋敏雄君より、本案について附帯決議を付すべしとの動議が提出されておりますので、その趣旨の説明を求めます。加藤万吉君。
  71. 加藤万吉

    加藤(万)委員 私は、自由民主党、日本社会党、民主社会党及び公明党を代表いたしまして、本動議について御説明を申し上げます。  案文を朗読して説明にかえさせていただきます。     職業訓練法案に対する附帯決議   政府は、本法の施行にあたり、次の事項について、特段の配意をすること。  一、雇用政策の見地から産業の需要のみに応ずることのないよう、養成訓練は、多能工の素地を与える訓練に重点を置くようにすること。  一、職業訓練を行なうために必要な施設を整備充実し、同時に、訓練に必要な経費負担の拡充を行ない、労働者の職業訓練を受ける機会を増し、意欲を高めるようにするとともに、都道府県又は市町村の設置する高等職業訓練校に必要な経費の一部を国が補助することについて検討すること。  一職業訓練に係る教科、訓練期間、設備その他の事項に関する基準の設定並びに技能検定の実施職種及び等級の決定にあたっては、中央職業訓練審議会の意見を尊重するとともに、技能検定と国の行なう他の試験、検定、免許等との関連を強化すること。  一、教科書認定制度の運用にあたっては、特定地域の地場産業の必要性、個々の職業訓練施設の特殊性等を十分考慮すること。  一、認定訓練に必要な経費の一部について、国の補助を拡充するよう努めること。  一、技術革新の進展に対応できるよう職業訓練指導員の資質の向上に努め、このため職業訓練大学校の拡充と現任指導員の再訓練を強化すること。  一、炭鉱閉山の続発に対処して離職者の能力再開訓練については、その受入れ、援助について特別の配慮を払うよう努力すること。 以上であります。何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  72. 森田重次郎

    森田委員長 本動議について採決いたします。  本動議のごとく決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  73. 森田重次郎

    森田委員長 起立総員。よって、本案については澁谷直藏君外三名提出の動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、労働大臣より発言を求められておりますので、これを許します。労働大臣原健三郎君。
  74. 原健三郎

    ○原国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、政府といたしましても、これを尊重いたしまして極力御趣旨に沿う所存でございます。
  75. 森田重次郎

    森田委員長 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  76. 森田重次郎

    森田委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  77. 森田重次郎

    森田委員長 次に、内閣提出失業保険法及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案労働保険保険料徴収等に関する法律案、及び、失業保険法及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律及び労働保険保険料徴収等に関する法律の施行に伴う関係法律整備等に関する法律案の各案を議題とし、審査を進めます。     —————————————改正する法律案
  78. 森田重次郎

    森田委員長 提案理由説明を聴取いたします。労働大臣原健三郎君。
  79. 原健三郎

    ○原国務大臣 ただいま議題となりました失業保険法及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  失業保険法及び労災保険法は、いずれも、昭和二十二年に制定されて以来、数次の改正により逐次その内容整備してきたところでありますが、両保険とも、労働者五人未満の事業所の多くについて未適用のままとなっている現状にあり、これらの零細企業に働く恵まれない労働者に両保険の適用を拡大し、その福祉の増進をはかることは、きわめて重要なことであると考える次第であります。  また、失業保険につきましては、低所得層を中心に給付全般にわたってその内容改善し、失業者の生活の一層の安定をはかるとともに、失業保険経済の現状に照らし、保険料率の引き下げを行ないまして、国民の負担を軽減する必要があると考えるのであります。  さらに、失業保険におきましては、季節的受給者の現状、不正受給の状況等にかんがみ、制度の健全化をはかる必要があると存ずる次第であります。季節的受給者は、全受給者の約四〇%に達し、毎年繰り返して全給付額の約三〇%を受給しており、制度上種々の問題を生じているところがあります。このため、短期循環的に離職者を多数発生させる事業主から特別保険料を徴収し、これを通年雇用等の費用に充てることによって不安定雇用の解消をはかるとともに、被保険者期間の計算方法を合理化する等の必要があると考えるのであります。また、不正受給が年々増加している現状に対処するため、これを防止する必要があると考える次第であります。  以上のような事情にかんがみ、政府といたしましては、中央職業安定審議会及び社会保障制度審議会に諮問し、本年二月末及び三月初めにそれぞれ答申を得、また、労災保険審議会の承認を得た上、失業保険法及び労働者災害保険法の一部を改正する法律案を作成し、国会に提出いたした次第であります。  次に、この法律案内容の概略を御説明申し上げます。  第一は、五人未満事業所に対する失業保険及び労災保険の適用範囲の拡大であります。まず、失業保険につきましては、労働者五人未満の事業主に雇用される者を新たに当然被保険者とすることといたしましたが、百万をこえるこれらの事業所を一時に適用することには、種々問題がございますので、当面は、製造業等から段階的に適用拡大を行なうことといたしました。  次に、労災保険につきましても、労働者を使用する事業は、すべて当然適用といたしますが、失業保険と同様、危険有害でない業種は、当面、任意適用とすることといたしております。  第二は、失業保険における給付のほとんどにわたって、その内容改善をはかったことであります。  その一は、一般失業保険における保険給付改善であります。まず、配偶者の扶養手当につきまして、政令によりその日額を現行の二十円から三十円に引き上げるとともに、失業保険金の日額につきましても、告示により、賃金の比較的低い等級の日額を十円ずつ引き上げることといたしました。さらに、二十年以上の長期被保険者給付日数を現行の二百七十日から三百日に引き上げるほか、技能習得手当の日額も改善することといたしております。  また、受給資格者が死亡した場合や長期間の業務災害等の場合にも失業保険金の受給ができるよう、受給要件の大幅な緩和をはかることといたしました。  その二は、日雇失業保険における給付改善でありまして、日雇失業保険金の日額を、現行の第一級五百円、第二級三百三十円から、それぞれ第一級七百六十円、第二級五百円に引き上げることといたしました。さらに、賃金水準の変動等に応じてすみやかに日額の改善をはかることができるよう、告示により改定することができることとしたほか、第一級の保険金を受けやすいよう、その決定要件を緩和することといたしております。  その三は、就職支度金及び移転費の改善であります。これらの給付につきましては、いずれも福祉施設として支給することといたしておりますが、まず、就職支度金につきましては、従来、失業保険金及び扶養手当の合計額の三十日分または五十日分であったものを、一定の場合さらに二十日分を加算することとし、また、移転費につきましても、着後手当を新設することといたしました。  第三は、失業保険の保険料率の引き下げでありまして、最近の失業保険収支の状況を勘案し、また今後の保険経済の推移等を考慮して、現行の千分の十四から十三に引き下げることといたしました。  第四は、失業保険制度の現状にかんがみ、制度の健全化をはかることといたしたことであります。  その一は、三年間連続して短期離職者を多数発生させた事業主から、特別保険料を徴収し、これを通年雇用等季節的失業の防止のための費用に充てることといたしたことであります。なお、特別保険料内容につきましては、事業主に過大な負担とならないよう留意いたしておりますが、特に中小零細事業主については、離職者五人までは徴収しない等特別の配慮を加えているところであります。  その二は、通常の労働者に期待し得る通常の雇用期間さえ満たせば、給付に何らの差別を加えないという趣旨のもとに、受給資格を得るのに必要な六カ月の被保険者期間の計算につきまして、現在は最低四カ月二十二日の雇用期間で足りるとしているのを、原則どおり満六カ月の雇用期間に改めるとともに、一カ月間の賃金支払い基礎日数を現行の十一日以上から十四日以上に改めることといたしたことであります。なお、就労の実態を考慮し、二以上の事業主に雇用された者につきましては、被保険者期間の通算について特別の配慮を加えることといたしております。  その三は、不正受給者に対しまして、現行の不正受給者の返還命令制度に加え、新たに納付命令制度を設けることといたしたことでありますが、労働者に対して過酷なものとならないよう、納付額は不正受給金額と同額以下とし、またその基準は、労働大臣の中央職業安定審議会の意見を聞いて定めることといたしております。  以上のほか、失業保険におきまして、失業の認定回数、失業保険金等の支給方法、日雇失業保険の保険料納付方法等について整備をはかることといたしております。  次に、この法律案の施行期日につきましては、失業保険及び労災保険の適用の拡大は、実施準備に万全を期するため、別に法律で定める日から施行することとし、その他の事項は、それぞれの内容により、昭和四十四年七月一日、八月一日、十月一日の三段階に分けて施行することといたしております。     〔委員長退席澁谷委員長代理着席〕  以上この法律案提案理由及びその概要につきまして御説明申し上げました。  何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  次に、ただいま議題となりました労働保険保険料徴収等に関する法律案、及び、失業保険法及び労働者災害保険法の一部を改正する法律及び労働保険保険料徴収等に関する法律の施行に伴う関係法律整備等に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  さきに提出いたしました失業保険法及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案におきましては、両保険の当然適用の範囲を労働者五人未満の零細事業に拡大することといたしておりますが、これにより、今後新たに両保険の適用を受ける事業の数は、大幅な増加が見込まれております。  これら零細事業について、失業保険と労災保険とでそれぞれ異なった手続方法によって、別個に適用徴収の事務処理を行なうことは、事業主に過重の事務負担をかけることともなり、また、保険事業運営の面から見ましても効率的な事務処理が期しがたく、このため、両保険の一元的な適用と保険料徴収方法の一元化を行なうことによりまして、保険加入者の利便と両保険の適用徴収事務の簡素化、能率化をはかる必要があると考えます。  また、かねてより、関係審議会等各方面からも、労働者五人未満の事業への適用拡大の際、あわせて、両保険の適用徴収の窓口及び事務処理方法等の一元化をはかることを強く要請されてきたところであります。  以上のような事情にかんがみ、さきに提出いたしました失業保険法及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案に引き続き、これと関連する二法律案をここに提出した次第であります。  まず、労働保険保険料徴収等に関する法律案内容の概要を御説明申し上げます。  第一は、現行の失業保険及び労災保険の適用徴収につきまして、これを各事業ごとに労働保険という一つの保険関係とし、両保険の適用徴収事務を一元的に処理することといたしております。  適用のしかたは、ほぼ現行の労災保険のとおり、各事業を単位とし、建設業等数次の請負によるものにつきましても、労災保険と同じく、原則として工事ごとに元請で一括して処理することといたしております。  第二に、保険料につきましても、現行の労災保険と同じく、毎年度の初めに、その事業で一年間に支払われる賃金の見込み額に両保険の料率を合算した保険料を乗じ、これを概算保険料として徴収することとし、その年度末までに実際に支払われた賃金に基づき、過不足を精算することといたしております。  通常の場合には、前年度分として精算確定した保険料の額を当年度の概算保険料として納付すればよいこととし、また、保険料が高額となる場合には、分割納付を認めることにより、加入者の事務的、財政的負担の軽減をはかることとしております。  なお、失業保険の日雇労働被保険者に関し、印紙で納付する保険料につきましては、従来の納付方法によることとしております。  第三に、保険料の労使の負担割合は、現行どおりでありまして、労災保険に関する部分は全額事業主負担とし、失業保険に関する部分は労使折半を原則としております。  また、労働者が負担する保険料は、現行の失業保険の場合と同様に、事業主が毎月の賃金から控除することができることとしております。  第四に、現行の失業保険及び労災保険の事務組合につきましては、適用徴収事務の一元化に伴い、これを統合して新たに労働保険事務組合の制度を設けることといたしております。  次に、失業保険法及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律及び労働保険保険料の徴収に関する法律の施行に伴う関係法律整備等に関する法律案の概要について御説明申し上げます。  この法律案は、さきに提出いたしました失業保険法及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案のうち、労働者五人未満の事業についての両保険の適用拡大に関する規定及びただいま御説明申し上げました労働保険保険料徴収等に関する法律案の施行期日を公布の日から起算して二年をこえない範囲内で政令で定める日とすることとあわせて、これらの法律の施行に伴い、関係法律規定整備及び必要な経過措置を定めるものであります。  これらは、いずれも、各法律案の附則事項でありますが、立法技術上まとめて一法律案として整理することといたした次第であります。  以上、二法律案提案理由及びその概要につきまして御説明申し上げました。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。      ————◇—————
  80. 澁谷直藏

    ○澁谷委員長代理 次に、労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。河野正君。
  81. 河野正

    ○河野(正)委員 先般の委員会において、労働基本権に関する諸問題についていろいろと討議を進めてまいったわけでございますが、その中で私どもは三月二十四日の東京地裁で行なわれました大関裁判の判決、この点を特に重要視いたしまして、いろいろとこの委員会において議論をいたしたわけでございますが、きょうはそういう点とも関連をして、特に福岡の中央郵便局で行なわれました労使紛争、具体的には郵便番号の自動読み取り区分機の導入をめぐります労使紛争でございますが、この問題についていろいろとお尋ねをいたしてまいりたい、かように思うわけでございます。  そこで、まず最初には、いろいろと合理化政策というものが進められていく、その中で、合理化問題を中心として、労使紛争というものがしばしば繰り返されていく。そこで、この合理化政策を推進するについては、労使がもっと話し合いを行ない、そしてその中から解決方策を見出していく、そして紛争を未然に防止をしていく、こういうことがきわめて望ましいと思うわけでございます。特に、今回の福岡の中央郵便局におきます自動読み取り区分機の導入につきましても、なお話し合いが行なわれておる過程の中で強行されておる、こういうところに私は非常に大きな問題があると思います。  そこで、先般は東京地裁の大関裁判の判決をめぐって、いろいろ討議をいたしてまいりました経過もございますので、こういった合理化をめぐる福岡の中郵の問題、あるいは北海道の札幌局の問題について、ひとつ労働大臣のほうから、合理化をめぐる労使紛争の状況に対して、どういうふうにお考えになっておるか、まず見解を承ってまいりたいと思います。
  82. 原健三郎

    ○原国務大臣 労政局長から答弁させます。
  83. 河野正

    ○河野(正)委員 これは基本的なことを言っているわけですから、労働大臣がまずお答えになってあなたが補足するならよろしいですよ。基本的なことは、やはり労働大臣から見解を述べられて、そのあとであなた方が具体的に補足される、こういう運営をやっていかぬと……。
  84. 松永正男

    ○松永政府委員 具体的な問題でありますので……。
  85. 河野正

    ○河野(正)委員 具体的な問題ではありませんよ。それはもちろん具体的な問題を出しましたけれども、基本的な、要するに労働基本権の問題についてこういういろいろな問題があるがどうだという見解をお尋ねしておるわけですから、そういう意味ではまず労働大臣からお答え願いたい。
  86. 原健三郎

    ○原国務大臣 私がお答え申し上げます。  そういういろんな紛争が起きました場合においては、労使双方において十分胸襟を開いて相談し、話し合いをしていくことが望ましいと、こう考えております。
  87. 河野正

    ○河野(正)委員 労使間の紛争を防止するためには、やはり労使が胸襟を開いて話し合いを進めていく、その中から円満な解決方策を見つけていくということが望ましいことは、いま大臣から基本的な見解として述べられたとおりでございます。  そこで、北海道の札幌中郵もそうでございますが、福岡の中央郵便局におきまする自動読み取り区分機の導入にいたしましても、やはり労使間の話し合いというものが完全に実行されておらない。しかも現実の問題としては、この搬入を阻止しようとする組合員と機動隊との間に激突が行なわれて、組合幹部三名が逮捕されたという不幸な事態が生じておるわけです。この郵政業務というものは、国民に対しまするサービス行政でございます。サービスをもって国民にこたえていかなければならぬ郵政行政の中で、こういった事態が起こってまいりますることは、私どもはまことに残念に考えるところでございます。  そこで、私は現場の状況を知っておりますので、きょうはまず、先ほど基本的には労働大臣から見解が述べられたわけでございますが、ひとつ当事者である郵政当局の見解をお尋ねしておきたい、かように考えます。
  88. 木村睦男

    木村(睦)政府委員 福岡におきます問題は、自動読み取り機を搬入いたします場合に起きた、まことに遺憾な事件でございますが、この問題につきましては、すでに一月以来、労使の事前協議の協約に基づきまして話を進めてまいったわけでございます。一方におきましては時間短縮に関する問題もございました。しかし、この読み取り機の問題は、すでに東京あるいは大阪においては試験をいたしておる、また、今後の郵政業務の合理化のためにもぜひ必要であるということから、既定の計画に基づいてこれを使用する方針でおったわけでございます。最初の考えでは四月の三十日ごろからこれを搬入して使用いたしたい、こう考えておったのでございますが、その後の組合とのいろいろな話し合い等の経過を見まして、少しずらせまして実は先般搬入した、こういうことでございます。  一方におきまして、時間短縮の問題につきましては、これはかなり時間のかかる問題でもございますし、また、いままでの労使の交渉の経過を聞いてみますと、時期尚早であるという意見も出まして、なかなかはかどっていないというふうな状況でございますので、そこでこの読み取り機の問題につきましては、各個に個別的に話をしていこうというふうなことで、並行して問題を処理していくという線に沿いまして、読み取り機の問題は、福岡の場合には先般搬入した、こういうふうな事情になっておるわけでございます。
  89. 河野正

    ○河野(正)委員 経過はそのとおりでございましょうけれども、いまの次官のお答えでは、一種の経過報告であって、郵政省としての見解というものには非常に不十分なものがございますね。  私ども、今回の問題を振り返ってみて痛切に感じますることは、先ほど労働大臣のほうから、やはり合理化問題をめぐっては、労使というものは胸襟を開いて、ざっくばらんに話し合いなさい、それが紛争を防止し得る最大の道だ、こういう意味での御発言があったわけでございますけれども、今回郵政省がやっておりまする態度を見ておりますると、自分たちの目的を貫くためには、労働者の立場というものはどうあってもよろしいのだ、労働者の言い分というものはどうあってもよろしいのだ、おれの目的さえ達成できれば、自分のところの従業員はどうなってもいいのだ、こういう姿勢というものが非常に露骨に出てまいっております。いわゆる親心と申しますか、要するに使用者と使用される者、こういった人間関係におきまする愛情というものが、片りんも見ることができない。こういう事態では——この労使間の紛争というものは私も何度かこの委員会で取り上げてまいりました。が、一つも郵政につきましては反省のあとがない。ですから、私ども何とか円満にと思うけれども、むしろ郵政当局側が自分たちの野望を達成するために、労使間の健全な慣行というものを確立するというより、むしろ破壊をするというふうな態度をとっておられることを私どもは率直にここで指摘をせざるを得ないと思います。これは後ほど私は具体的な例をあげて申し上げます。私は苦い体験をしてまいっておりますから、いろいろ申し上げたいと思いますけれども、こういったことでは、基本的に労働大臣がおっしゃっても、これはいつまでたっても百年河清を待つがごとしで、健全な労使慣行というものは生まれていかないと私は思うのです。そういう意味で、いま私が指摘をしたような点について、次官としては一体どういうふうに反省をしておるのか。先ほどのは経過報告です。私どもが承りたいのは、経過報告は知っておるわけですから、ひとつ郵政省としてのそういう意味での見解を、ここで明らかにしていただきたい。
  90. 木村睦男

    木村(睦)政府委員 問題の、基本的な態度につきましては、先ほど労働大臣がお答えになりました。同じような趣旨で対処いたしております。  ただ本件につきましては、片方におきまして時間短縮あるいは週二日の休暇の問題、これは相当時間をかけて折衝をしなければ、容易に解決ができないというふうな性格も持っております。また一方におきまして、読み取り機の問題はすでにスタートいたしておりますし、またこれによって郵便の速達をはかるということで、国民へのサービスという面から、国民に対しての約束もございまして、これはこれとしてやっていきたいという考えでスタートしておりますので、郵政省の基本的な考え方といたしましても、労使の間におきましては友好的に、また十分意を尽くして協議をして問題の解決に当たっていくという姿勢には変わりはございません。
  91. 河野正

    ○河野(正)委員 郵政業務というものは国民に対するサービス業務である、しかし、国民に対するサービス業務を実施していくためには、やはり従業員の協力なくしてはできないことをひとつ十分念頭に置いてもらいたいと思うのです。  ところが、私はここに指摘をしたいと思いますが、十二日の福岡中郵で起こりました紛争事件のあと、福岡中央郵便局の局長が新聞談話を発表されております。その一節をここでそのまま読み上げます。「混乱は予定していたがともかく最後の中庭の混乱が避けられ、一応ほっとしている」と書いてある。それならば、郵政の当局は、どういう紛争を解決するための努力をされたか。何にも自分からは努力しないで、紛争が最小限にとめられた、——これはもう新聞紙上でも非常に高く評価しております。そういう何にも努力せぬで、人のふんどしで相撲をとるように、中庭での、一番大きな動員者のおった位置でございますが、その間の紛争は未然に防ぐことができた。そしてほっとしたということはどういうことですか。あらゆる努力をしてそういう不幸な事態が回避されたということであれば、ほっとされてもけっこうだと思う。そういう一切の努力は何らなすことなく、そういう結果が生まれたならば、何か自分たちの手柄のような新聞談話については、私どもは全く納得することができない。こういうことでは、いま次官から労働大臣の姿勢と同じ姿勢でやっていきたいというような御見解であったけれども、現実には次官のそういう見解が実施されておらぬということに私は非常に大きな問題があると思うのです。いま私が申し述べたような事実について、次官はどういうふうにお考えですか。
  92. 木村睦男

    木村(睦)政府委員 おそらく郵便局長が申し上げましたのも、手柄話のような気持ちでは言っていないと思うのでございますが、既定の方針をとにかく実行するということに努力をいたした結果、それがいろいろ遺憾な点はございましたが遂行できたということで、そういう感想を述べたのじゃないかと思っております。しかし、今後とも事務の能率をあげます上におきましても、労使十分に協調いたし、また組合の協力を得なければいけないことでございますので、この点におきましては、今後とも郵政局長を十分指導して遺憾のないようにやらせたい、かように考えております。
  93. 河野正

    ○河野(正)委員 そこで、少し具体的議論に入りたいと思います。     〔澁谷委員長代理退席、竹内委員長代理着席〕  今度の福岡中央郵便局に読み取り区分機を導入する、そのために、かなり当局側の労務に関係する職員が現地に派遣されておりますね。これはどういう職務の方がどの程度派遣をされておるのか、この点についてひとつ明らかにしていただきたい。
  94. 山本博

    山本(博)政府委員 お答えをいたします。  当局の福岡中央郵便局の管理者が、約三十名その衝に当たっておるほかに、熊本の郵政局から約四十名が応援に出かけております。並びにその近隣の局からの管理者の応援、それが約二、三十名、正確な数字は覚えておりませんが、大体そのくらいの管理者が、福岡中央郵便局でその仕事に当たったということでございます。
  95. 河野正

    ○河野(正)委員 大体数字は百名程度の人が、現場に派遣されたということのようです。  そこでもう一つ伺っておきたいのは、どういう職務の方が派遣をされたのか、何を目的に派遣をされてきたのか、その二点についてひとつお答えいただきたい。
  96. 山本博

    山本(博)政府委員 機械の搬入にあたりまして、前夜から約千五百名くらいの組合員並びに支援団体の人々が構内に入り込み、並びに外でピケを張る、そういう事態がございましたので、あらかじめできるだけ混乱をしないように、ないしは機械搬入にあたってそれが円滑に行なわれるように、そういう目的をもちまして、約三十名の現地の管理者ではそういう事態に適切に対処し得ることはできないだろうという断判で、いま申し上げたような郵政局並びに近隣の管理者を、その局内におきまして、いろいろな問題の処理に当たらせるということをさせたわけでありますが、その人たちが、本来郵政局のどういう職務であったかということまで、現在全部私のほうで資料として持っておりません。しかし、その局に参りまして当たる仕事は、いま申し上げた混乱の防止、あるいは機械の搬入をできるだけ円滑に進めるためにということでございます。
  97. 河野正

    ○河野(正)委員 その当局が読み取り区分機を導入しようということですから、そのためにその作業を容易にするということは、それは議論としてわからぬことはございません。しかし第一に、いま人事局長がおっしゃったように、混乱を防止するためにという理由が述べられたが、現実に混乱を防止するようにという使命を与えられて派遣されておるのかどうか、この点、ひとつ伺っておきたいと思います。
  98. 山本博

    山本(博)政府委員 本人たちが派遣される場合には、私がいま申し上げたような目的をもって派遣されておるというふうに承知しております。
  99. 河野正

    ○河野(正)委員 派遣する際に、混乱を防止するようにということが任務であって、事実この労使紛争を刺激するような、挑発するような、そういう暴力的な態度に出てきておるという事実があれば、どういうふうにお考えですか。
  100. 山本博

    山本(博)政府委員 私が現在まで入手しております情報では、福岡中央郵便局の機械の搬入に際しまして、いわゆる暴力的な行為というものは双方になかったというふうに聞いております。
  101. 河野正

    ○河野(正)委員 現地からは、暴力的なごろつきのような態度、行動をすれば、派遣した任務に非常に大きな違反をするわけですから、おそらくそういう行動に移ったということは御報告がないでしょう、常識的に判断をして。ところが現地における、熊本郵政局という腕章をはめられた方がかなりおられましたが、全くやっておられる行動というものは、一般社会における、これは平たいことばで申し上げますと、ごろつき、ぐれん隊のたぐいではないですか、やっていること、言っていること。それはよく、しばしば私どもはこういう場合に遭遇いたしますが、非常に興奮をして労働者の諸君が攻撃的なことばを使うことを、私たちは承知しております。ところが、当局側としては、混乱が起こらないように配慮をしてこの百人前後の管理者を派遣したと言いながら、その管理者が全くぐれん隊、ごろつきのたぐいのような言動をふるまっておるではないですか。私もその一員ですから、しかも私どものあっせんによって、中庭の自主退去が成功しておるわけですね。そのあっせんをする際に、熊本郵政局の腕章をはめた諸君がどういう行動を私どもにやったか。その行動をここで実演してみせましょうか。人事局長下がれと言われたら、あんた一体どういう気がしますか。政務次官下がれと言われたら、政務次官、一体どういう気持ちがしますか。それが現地の実態ですよ。私はものごとを客観的に見得る立場にあります。いやしくも当局側が、現地の混乱を防止するようにということで管理者を派遣したと言われるなら、この現地における、派遣された管理者の暴挙というものは、許せぬと私は思うのです。それはおそらく、ぐれん隊、ごろつきのような言動をやったということは、その地方から報告はないでしょう。現実はいま申し上げますように、私は率直に申し上げますが、全くぐれん隊、ごろつきの言動です。これではたして百名の管理者を派遣して、そして労使間の紛争というものを円満に解決しようという御意思があるのかどうか、私は全く疑わざるを得ない。これは少なくとも、もし政務次官がおっしゃったように、また人事局長がおっしゃったように、百名の派遣された人員というものは、何とかして労使間の紛争というものが、不幸な事態が起こらないように、至らないようにという配慮で派遣されたとするならば、現地に派遣された職員というものは、非常に省の方針に違反した行動をしておるということになると私は思うのです。こういう事態をここで聞き入れられて、一体どういう気持ちがいたしますか。政務次官の率直な心境を私は聞かしていただきたいと思うのです。
  102. 木村睦男

    木村(睦)政府委員 先ほど人事局長が申し上げましたように、派遣いたしました者は、読み取り機が円満に搬入できるようにということの使命をもって行ったと思います。現地の報告は、私もいまお話しのようなことがあったということは聞いておりませんが、あるいは想像ですけれども、千五百人ほどの人が集まって、これに対して抵抗があったというふうなことから、なま身の身ですから、あるいは不穏当な言辞等があったかもしれぬと思いますけれども、もしそういうことがあったといたしましたら、これはやはり十分本人が反省しなければいけないと思います。当局が派遣したその趣旨とは違うわけでございますので、もしそういう事実があったとしたら、十分今後考えていかなければならぬ問題だ、かように思います。
  103. 河野正

    ○河野(正)委員 これは本人がそういう事態があったならば考えるというしろものじゃないですね。いやしくも管理者でしょう。管理者が、しかもこういう労使の紛争というものを起こさないようにという配慮で派遣をされて、しかも何とかこの重大な事態というものを回避しようということで努力しておるわれわれに対して、そのごろつき、ぐれん隊のたぐいにわたるような言動をしたということは、私は全く許せぬと思うのです。そこでそれを考えるではなくて、もしそういう事実があったならば、厳重に処置するということが当然だと思うのです。私ども言われたことを、ここで再現しましょうか。政務次官として一体どういう心境になられるのか、人事局長として一体どういう心境になられるのかやってみましょうか。しかも、あの中庭の通用門における激突というものは、何ら紛争を呼ぶことなく解決しておるわけですね。ですから私どもはその中間にあって——それは非常に困難な情勢です。前の晩からすわり込んでおりますからね。それを自主退去させようというのですから、これはたいへんな仕事です。その努力をしておるのです。何も現場で紛争があってないのですよ。そういう努力をしておるのになぜわれわれに退去を命じますか、なぜ私どもが下がっていかなければならぬのですか。そしてこともあろうに、新聞談話では、ほっとしたとは何です。もし政務次官、あなたが現場におって、政務次官下がれ、人事局長下がれと言われたら、一体あなたはどういう心境になりますか。もう一つ現場でごろつき、ぐれん隊のたぐいのような言動をいろいろあなたがやられて、一体あなたがどういう心境になられるのか、そういう心境も踏まえてこの問題処理についてはお答えを願いたいと思う。
  104. 木村睦男

    木村(睦)政府委員 いままでの現地からの報告では、お話のような事実があるようには聞いておりませんので、なおよく実情を調べた上で善処をいたしたいと思います。
  105. 河野正

    ○河野(正)委員 そういうことになりますと、私はここでいろいろ具体的な事実を披瀝しながら、あなたの見解をお伺いしておるのですけれども、どうも私の発言というものが信用ならぬとでもおっしゃっているのですか。お考えになっているのですか。その点どうですか。
  106. 木村睦男

    木村(睦)政府委員 別に信用していないわけではございませんけれども、お話として十分承っておりますが、なお現地の責任者からよく事情を聞き、またこちらも調べました上で善処したいと思います。
  107. 河野正

    ○河野(正)委員 それでは、私どもはひとつ委員長提案いたします。  この際、地方からいろいろ意見を求めてもその真相が伝えられるかわかりません。私どもは信用するわけにまいりません。そこで、その間の真実というものを、この委員会の席上において明らかにしたいと思う。そういう意味で、次回の委員会に、現地に派遣された——しかもその派遣された方々はこういう労使間の紛争というものをぜひ防ぎたい、防がねばならぬという使命を受けて派遣された管理者の方々、この管理者の方々をぜひこの委員会に招致してもらいたい。ここでお互いに議論をいたして、この真実というものを見出してまいりたい。この点ひとつ委員長に対して要求いたします。     〔竹内委員長代理退席、委員長着席〕
  108. 木村睦男

    木村(睦)政府委員 ただいまの河野先生の御指摘のような事実がありますれば、まことに遺憾であると存じます。すみやかに調査の上厳正な処置をとることをお約束いたします。
  109. 河野正

    ○河野(正)委員 いま、次官お答えのとおり、ひとつ厳正に処置をしてもらいたいと思います。  そこで、私どもが心配いたしますのは、今回読み取り区分機の導入をめぐっての紛争があった。しかし、主力は自主退去という形で未然に紛争が防止されましたから、私ども、その点は、問題はいろいろあとには残りますけれども、一応よかったというふうに判断をいたすところでございます。ところが東京、大阪、北海道というふうに導入され、福岡中郵に導入され、さらに今後熊本中央郵便局、鹿児島中央郵便局、それから門司局——熊本郵政局管内でもなお三カ所の合理化が行なわれる予定のようです。それから今回紛争のございました福岡中央郵便局においても、近く読み取り区分機のほかに郵便物の自動取りそろえ機、自動押印機が導入される、こういうふうになっておるようでございます。そこで、今回の紛争というものを教訓にして、今後の事態について対処されなければ、幾らここでいろいろ責任を追及しても、また労使間の紛争を繰り返すことになるわけですから、私は、今回の紛争というものはこれを最後にして、あとは冒頭に労働大臣から見解の表明がございましたように、労使間で十分話し合いを煮詰めて、そして実行に移していくということがきわめて望ましいと思いますし、またそうあってもらわなければならぬというふうに考えるわけでございます。特に、今後読み取り区分機が導入されても、その稼働ができるかできぬかということについては、やはり組合側の協力がなければできぬわけです。そういう問題もございますから、今後については十分話し合いでこれを実行に移していく、こういうことをぜひひとつこの際要望をいたしておきたいと思います。  これについて、ひとつ次官から御答弁願いたい。
  110. 木村睦男

    木村(睦)政府委員 今後読み取り区分機を導入いたしまして、郵便サービスの向上をはかるということは、非常に重要なことでございますので、これの達成をはかることにわれわれとしては努力をいたしますが、同時に、この目的を達成するためには、これに従事してもらう組合員諸君の協力が絶対に必要でございます。ただいまお話のございましたように今後十分その点に配意をいたしまして、目的を十分達せられるように努力をするつもりでございます。
  111. 河野正

    ○河野(正)委員 特に中央で、読み取り区分機を導入するについては、労働条件その他どうあるべきかというふうな交渉がいろいろ持たれておると私どもは承っております。合理化、機械化がだんだん行なわれていくというのは、やはり世界的な趨勢であると思います。そういう合理化、機械化が行なわれて余裕時間というものが出てきたならば、それは労働時間の短縮に結びつかなければならぬ、これが大体世界的な一つの労働条件の趨勢だと思います。こういう点について十分な解決が行なわれぬということは、私どももちろん遺憾に思いますし、そういう問題に端を発して紛争が行なわれたということは、なおさら遺憾な点であると思います。  そこでこの際、労働大臣にも見解を承っておきたいと思いますのは、合理化、機械化によって生ずる余裕時間というものは、やはり労働時間の短縮という問題に結びついていかなければならぬというふうに私どもは考えておるわけでありますが、今回の紛争の原因の一端でもございますので、この際ひとつ労働大臣からも御見解を承っておきたい、かように考えます。
  112. 原健三郎

    ○原国務大臣 当局は合理化を進めていこうとするし、労働組合のほうでは時間短縮を望まれる、そういうのは何も日本だけじゃなくて、やはり世界的にこういう趨勢にございますので、その場合におきましても、労使双方においてよく話し合って、そうして話し合いのもとに話が妥結していくというふうに、双方で十分話し合いをされることを私どもは望んでおります。
  113. 河野正

    ○河野(正)委員 郵政省としても、いま申し上げるような労働事情というものは世界の趨勢でもございますから、交渉の中でそういう点もひとつ十分生かしてもらいたい、こういうふうに思います。  そこで、時間が長くなりましたからはしょってまいりたいと思いますが、いずれにしても郵便業務というものは市民、国民に対しまするサービスでございます。ところが、こういった労使紛争がある、衝突事件があるということになりますと、そういう労使間の衝突というものがしこりになって、サービス的な面にだんだん欠けるところが出てくるということは、国民としても、市民としても、困るわけでございます。具体的にはそういう労使間の衝突のしこりが、郵便遅配に結びついていくということでは困るのであって、そういう意味でも、国民、市民のためにも、また郵政業務、国民に対するサービス業務、そういうものを推進していただくためにも、やはり労使間の話し合いというものが円満に行なわれていかなければならぬということは労働大臣の仰せのとおりだと思います。  そこで、今後合理化をめぐって、長期合理化計画というものが出てくると思うわけでございますが、そういう長期合理化計画について、円満な話し合いをさらに今後とも続けていく、そういう中から円満な解決方策を見出していく、こうなければならぬと思うし、またそうあってもらわなければきょうここで取り上げた意義というものがなくなると思うのです。そういう意味で結論的に郵政次官から、長期合理化計画等について円満な話し合いを続けていくのだ、そういう方針というものを、この際ぜひ聞かせていただきたい、こういうふうに思います。
  114. 木村睦男

    木村(睦)政府委員 郵政業務の機械化、合理化ということは、すでにスタートもいたしておりますし、また、ぜひやらなければならないことでございます。これにつきましては、組合側の十分な協力も期待をいたしますし、また協力を得なければできない問題でございます。同時に、協力を得ながら、ただいまお話しの時間短縮の問題についても十分協議をいたしていきたい、かように思っております。現在でも、その協議はなお続けておるような段階でございます。
  115. 河野正

    ○河野(正)委員 ぜひひとつ、いま次官がお答えになったような方針で対処していただく、そのことが結果的には、国民にサービスをもって応ずるということになるわけでございますので、ぜひひとつ、いまお答えの方針で臨んでいただきたい、こういうふうに思うわけです。  先ほど次官のほうから、いろいろ今回の紛争事件の責任問題については御発言等がございましたので、私からあえて重ねて申し上げる必要はないと思いますが、しかし、もし適切な処置というものが不幸にしてとられない、あるいは約束が踏みにじられるということになりますれば、大体私の手元には、ぐれん隊、ごろつきのたぐいといいましたが、そういう人物が一体だれだということは氏名がわかっておりますので、この際その氏名を提示をして本委員会に招致をする、こういうことで今後の議事を進めてまいりたい、こういうふうに思いますので、その点については、委員長からひとつ御発言をこの際願っておきたい、こういうように思います。
  116. 森田重次郎

    森田委員長 ただいま河野委員から御発言がありましたその趣旨を尊重するように、委員長からも要請いたしておきます。  田邊誠君。
  117. 田邊誠

    ○田邊委員 いま福岡中郵の問題に関して河野委員から質問がございましたが、私は、たびたび郵政の労使関係の問題で、当委員会においても質疑がかわされたことは、たいへん残念だと思っているのです。きょうは、特に紛争を処理したいと念願しておった国会議員に対してすらも、きわめて非礼な態度をとっているような管理者があることを聞きまして、非常に私遺憾に思います。  大体、この自動読み取り区分機の導入は、私もたびたび取り上げて質問をいたしておりますけれども、それほど、労使間においての話し合いがつかないうちに、それを強行突破して導入しなければならぬ性質のものじゃないはずです。十年間に何百台、何千台の区分機が入るわけじゃないのです。やはりまだまだ五年、十年の間は、職員の手によるところの区分を主体として事業が行なわれているという事態は、これは変わらないことですから、そういった点からいっても、やはり労使間の話し合いが十分済んだあとでやるべきである。われわれは、実はその後の状態を見ておりますと、郵便番号を書くというような状態もあまり上昇カーブをたどってないんですね。低迷しているんですよ。そういった点からいっても、まだまだ国民に対するPRや、準備や、労使間の話し合いを経た後でもって、この問題に対して対処すべきである、こういうふうに考えておるわけでありまして、今後もその準備なり、労働組合に対する十分な理解と協力なり、話し合いというものはなされるべきである、こういうふうに私は考えておるのですが、一言次官からもう一度お答えをいただきたいと思います。
  118. 木村睦男

    木村(睦)政府委員 ただいまお説のとおりにわれわれも考えておりまして、この読み取り区分機を全般的に普及するのには、かなりの時間もかかります。また機械そのものも、使用しながらさらに開発をしていくという面もございますので、当分の間は従来の方法とあわせてやる。また将来に向かっては、非常にこれがサービスの向上になりますので、あらゆる面におきまして従業員との十分な連携と、そして従業員の協力を得ましてこれをやっていきたい、こういう考え方には従来とも変わりはございません。
  119. 田邊誠

    ○田邊委員 そこで、この四月十七日なり二十四日なりに、全逓が実力行使をやった前後において、全国においてかなりのトラブルが起こっておる、こういうことを私は聞いておるわけであります。私は、その原因は一体どこにあるのかということに対して、郵政当局は正しく認識をしてもらわなければならぬと思うのですが、最近確かに一部のはね上がりがあるようでありますね。いわゆる全学連中核派と称する人たちに類するような思想を持った人たちもあるかもしれない。あるいはまた、それを応援をするようなグループもあるかもしれない。それはもう別であります。それは、われわれは排除しなければならないと思います。しかし、郵政の職員の中に、この実力行使の前後を通じて、かなりトラブルがあるというこのことの原因は、私は非常に重大だと思うのです。一言で言えば、そのいろいろなトラブルがある要因の中に、管理者に対する不信感が非常に大きくなっておるという事実を私は見のがせないと思うのです。これが組合の闘争の中で爆発する、こういうことがあるのじゃないかと私は思っておるのですけれども、そういった点に対してどうお考えですか。
  120. 山本博

    山本(博)政府委員 ただいま御指摘になりましたような要因があるかどうかということは、本年の春闘には相当の暴力事件に類するものが発生いたしておりますので、全部分析をいたしまして、大体こうだろうというところまで、実は済んでおりません。     〔委員長退席竹内委員長代理着席〕 しかしながら、いまおっしゃったような点が、必ずしもないとは私も思いません。同時に、管理者の側からいたしましても、これは類例のない最近の現象でございます。ことに、ことしの春闘は、組合と官側とが本質的に対立をするというような問題ではございませんで、むしろ従来よりも、今次の春闘における賃金交渉というものは、前進をした段階で話し合いが中央において進んでおったものでございます。にもかかわらず、地方において種々のそういう暴力事件が起こったということは、先ほど申し上げましたように、全面的な分析は済んでおりませんけれども、やはり全部管理者側に問題があるということではなくて、私も管理者側にも全然ないとはいまここで断言できませんが、同時に労働組合側の、あるいは従業員側のいろいろな問題点というものも相当、特にことしの春闘において発生したということで、管理者側だけの要因じゃなくて、従業員側、あるいは労働組合側のほうにも、十分な要因もあるんじゃないかというふうに考えております。  いずれにしましても、十分な分析を最終的にいたしてみたいと思っております。
  121. 田邊誠

    ○田邊委員 人事局長、あなたは私の質問に対して正しく答弁しなさい。私は、管理者に責任があると一言も言ってないじゃないか。管理者に対する不信感があるのじゃないかと言っているのですよ。何を先走ってあなたはそういう答弁をするのですか。私は、その要因の中に、いわゆる管理者と組合員の間における不信感が、かなり増大しているんじゃないか、それが要因の一つになっているんじゃないかと言っているんですよ。事を心配しているのじゃないのです。あなたが先走って、管理者に責任があるとは考えませんなんて、そういう答弁をするなら、私はお伺いしたい。  あなたが、管理者に全部責任があると言い切れない。それはそうでしょう。しかし管理者に責任があるとあなた自身も感じていらっしゃるなら、その原因は一体どこにあるのですか。そのさかのぼった根源は、一体どこにあるのですか。やはり管理者がいろいろな面において、挑発的な行為に出る。大衆の中に、さっき私が申し上げたような、一部のはね上がりのあることに対して、私は容認しないと言っているのですよ。     〔竹内委員長代理退席、委員長着席〕 これはやはり厳正な態度をとらなければならぬと最初から私は言っているのです。それにもかかわらず、あなたはそういう答弁をされるのだが、管理者がそういうような行動に出るその根源は一体何にあるのか、私はここに郵政省の何か強い締めつけがあるのではないか、強い指導があるのではないかとどうしても感ぜざるを得なくなる。いろいろなものをつなぎ合わしてみて、いろいろな事実を関連さしてみて、ここに郵政省の管理者の下部に対する強い締めつけが、いろいろな面においてあらわれておるのじゃないか。さっき河野委員質問にあったように、郵政省の管理者がきわめて非礼な態度をとったというのも、言うなればそのあらわれじゃないかと私は思うのです。上におもねり、上の言うことだけを聞いておれば出世街道間違いなし、ほめられる、そういう締めつけというものがありはしないかと私は心配しているのです。それが、私は当委員会でたびたび郵政の労使関係について取り上げている一連の、一つの根源じゃないか、こういうように思うのですが、あなたのほうはそういうことは全然感じませんか。
  122. 山本博

    山本(博)政府委員 かねがねこの問題につきましては、私たちも労使間、できるだけ円満な関係でいきたいということは希望いたしております。  現場の管理者が、いまおっしゃったように、上におもねって、下に非常に強いというような傾向がある、これは私は、特に郵政省の現場においてそういうものが強くて、それが労使間に直ちに不正常な関係をもたらしておるということは、一がいには断定できないと思います。むしろ従来の管理者のあり方自身に非常に問題がありまして、私のほうで世論調査といいますか、管理者の日常生活についてのいろいろな問題を調査をいたしたことがございますが、そのときに、ちゃんとなすべき命令、なすべき指示、あるいは指導、こういうことについて十分なし得ていないという管理者の数が相当ございました。これはむしろ必要以上に部下に対して、あるいは組合に対して遠慮をし過ぎて、言うべきことも言っていないというのが相当数ございます。私たちの管理者に対する指導というのは、むしろ日常的に自分の職務というものをちゃんと正しく行なうようにという指導は、かねがね非常に強くいたしております。そういう点が自分の日常生活における職責というものを全うするという意味での強い指導というものは、どういう形かでいろいろな、それぞれの管理者の言動というものを通じて出ておると思いますけれども、決して毎日の職責を全うするということ以上に、職責を離れて上の者におもねるとか、下の者に強く出るとかいうようなことについては、むしろ私たちは望ましい管理者ではないと思っておりますし、またそのために私たちがそういう管理者を歓迎するということは、これは指導もいたしておりませんし、逆にそういうことのないようにという指導こそ十分いたしておるつもりでございます。  ただ、これだけ三万人もの管理者がおるわけでございますから、中にはそういうわれわれの指導とは違って、そういう、いまおっしゃられたようなことは、全く一人もいないということじゃなくて、そういうことが絶対ないとは私も申しません、あり得ることだと思います。しかし、これは特に郵政省の現場だけの問題じゃなくて、そういう特殊な例外というものは、どこの組織の中にも多少はいるんじゃないか、その程度のことは、私たちの組織の中にもないとは申し上げかねるという程度だと思います。
  123. 田邊誠

    ○田邊委員 時間がありませんから、私はまたあとの機会に譲りますけれども、たとえば挑発行為をするにしても、あるいはさっきの自動読み取り区分機の導入に対して管理者がピケを張るにしても、これはやはりやり方があるのです。無理して相手方を押しのけたり、ひじを張ってぶつかっていったり、そういうことは私は必要以上のことだと思うのです。したがって、やっておることはきわめて平面的に見れば同じようなことだけれども、実はそこに自分が何か上からの命令は、必要以上にそれを聞かなければならぬ、必要以上に実行しなければならぬ、一〇〇%ではなくて一二〇%実行しなければならぬ、そこに自分の存在をひとつ浮き彫りにしよう、そういう意識が動いておる管理者が最近多いのです。これは一体何から原因がきておるか、こういうことを実は私は言いたいのでありますけれども、これに対する論争はきょうは避けたいと思います。  ただ、最近いろいろな暴力に類する、と人事局長がおっしゃった事件が発生をしておる。ところが、その一つ一つをとってみても、いろいろな要因があるのです。たとえば長崎の局については、四名の逮捕者が出た。ところが、その原因は一体何かというと、最初は、あなたのほうの報告によりますると、組合掲示板にストライキ宣言を掲示した、これを局側が撤去した、こういうのです。これがだんだんと雪だるま式に大きくなって、最後には暴力に類する事件になった、こういうのです。これは私は、この前これを取り上げたのですが、あなたのほうでは都合のいい掲示は、いわゆる同志会のグループに対しては、局側も掲示を許しておるという事実があったのです、北海道の函館で。そういったことに対しては、局内の秩序を維持できれば省側、局側の掲示板を貸すことも認めるのだ、こう言っておるのであります。この組合側の掲示板というものを認めておるのですから、そこに組合が、やはり中央からの指示に基づいていろいろなものを張り出す、これの中身についてまで一々厳正なことをやらなければ——あなたのほうでは、郵政大臣の告示か何か出しておるのだから、省側の掲示板に。そういったことに対する処置は、有無を言わせずそれをはがして取る、組合がまた張る、それをまたはがす、それがエスカレートしていって、いわゆる激突をする、こういう場面をとらなくても、処置のしかたがあるのではないかというふうに私は思うのです。一体組合の掲示板に張ることに対して、一々あなた方はチェックしなければならぬのですか。これはまた労働者の側からいえば、そういう組合の掲示板なるものを認めておる、こういう事態の中で、一々これは違法だとか、適法だとか、けしからぬとかいっておって労使関係が円満にできるのかどうか、その点に対するそれぞれの見解を、端的に伺っておきたいと思います。  それからもう一つついでに、時間がないから……。北見の郵便局もありましたね。これも逮捕者を出しておる。これは組合旗や横断幕を掲げておったのを撤去したというのが、これもまたトラブルの最初の出発点なんです。これは労政局長、民間の争議でもそうですけれども、会社の周囲に組合旗を掲げるなどということはいま通例です。常識です。これをまた撤去しなければならぬ、有無を言わさず撤去するというようなことからエスカレートして、暴力に類する事件が起こったということは、ナンセンスだと思うのです。もっと適切な方法があるはずだ、これに対するところの処置は労使で話し合いをして——争議は一時的なものなんだから、もっとほかの処置のしかたはないか。こういうことに対して私は言いたいのですけれども、これも一つの原因になって逮捕者を出しておる、こういうことに対して一体どうお考えですか、ひとつお答えいただきたいと思うのです。
  124. 山本博

    山本(博)政府委員 掲示板の問題につきましては、従来は掲示板の中にかけられます文案一つ一つについて、内容審査をしていたという時代もございました。現在では組合との間で話をいたしまして、掲示板に、組合側がどういう内容であろうが、ひとまず組合側の判断でかけるということで、包括的な使用許可ということになっております。ただ、現実に張り出されたものの内容法律に違反しているようなもの、あるいは個人の中傷にわたるようなもの、あるいは非常に政治的なもの、こういうものは幾つか事例をあげまして、組合との協議の結果、そういうものについては出さない、あるいはこちらが審査をして撤去を求めるということについて話し合いがついております。現在は、その規則に基づいて利用しておるという実態でございます。
  125. 松永正男

    ○松永政府委員 一般的にいいますと、たとえば会社の建物等に懸垂幕をたらすとか、会社の垣根に旗を結びつけるというようなことにつきましては、これは会社の管理権といいますか、そういう面から、会社の承認なり許可がなければできないというのが一般的なものの考え方になっております。組合掲示板というような場合には、いま人事局長からも御説明がありましたように、一々その内容審査するというやり方でなくて、組合が自分の会社との話し合いによりまして、自分のところで掲げるべき掲示板をきめられた場合には、そこの組合の関係のものは、組合の判断でやるというのが普通の状態ですが、ただ違法であるとか、あるいは暴力的なものであるとかというようなことにつきましては、いまのような打ち合わせがあればやはりそれに従うべきであるというふうに考えます。
  126. 田邊誠

    ○田邊委員 時間がないから論議は譲りまして、最後に一つだけ。  いろいろな事件、トラブルが起こっておるのですが、何か暴力に類する事件が起こったというので警察が自主的に取り調べをしているのもありますけれども、かなりの数の局について、この事件に対して非常に特徴的なのは、いわゆる局側が警察に対して告訴をしているのですよ。いまの掲示板についても組合旗についてもそうだけれども、問題の本質は一体どこにあるかということを考えて対処すれば、この種のことは解決すると思うのですよ。これと同じように、この事件の問題に対して、これを中でもっていわば部内的に処置しよう、円満に解決しようという精神が欠けているのじゃないかと私は思うのです。さっきの河野委員質問は同じだと思うのです。事件が起こると、すぐその直後に告訴をしている。もうひとつ警察で逮捕してください、取り調べてください、これは徹底的に弾圧します、郵政省はそういう精神なんですな。このことがいいのかどうか、もちろん問題の理非は明らかにしなくちゃいけないでしょう。しかし、その明らかにすべきことは、これはそれぞれの内部的な事情もあり、要因があるわけですから、それに対応してやるべきじゃないか、こういうふうに私ば思うのです。全逓中郵事件に見られるように、いわゆる刑事事件としては、労働運動の範疇の中ではなかなかとりづらいというのが一般的常識ですね。したがって私は、行政的に処置をすることが何といっても時代に即応したことじゃないか、こう思っておるのだけれども、もうすぐさま、それはひとつやってくださいというふうに告訴する、こういうやり方をやっているのが、きわめて特徴的にあらわれているのが永見や北見等に見られるのですけれども、これに対しては郵政政務次官は一体どういうお考えですか、どういう態度で処置をされておるのか、最後にお聞きしたいと思うのです。
  127. 木村睦男

    木村(睦)政府委員 局側と組合、あるいは従業員との間が、どうも円滑にいかない、うまくいかないというのは、多くの原因がありましょうけれども、やはり私は両者の間の不信感ということが一番大きい問題だろうと思います。この不信感につきましては、できる限り双方ともに反省をしてやっていくということが必要だと思います。  なお先ほど来お話がございましたように、違法の事実等がありました場合には、違法の事実であるということが間違いないとすれば、それをどう措置するかという措置のしかたによって、やはりそこに不信感等があれば、同じ措置をしてもそれがかえってしこりを残すような場合もあると思います。ですから、そういう場合の当局のやり方ということにも今後十分考えていかなければいけないと思います。  なお、いまお話がございましたように、そういう違法行為があった場合に、直ちにこれを告訴するというふうなことも、もちろん本省から、そういう場合には常に告訴しろというふうな指示もやっておりません。それぞれ現地におきまして、その責任者が適当だと思う措置をやっておりますので、具体的な告訴事件につきましては、その事件について告訴したことが、全般的から見てはたしてよかったかどうかというふうなことは、常に十分考えていかなければならぬ問題と思いますので、こういう問題は、それぞれの責任者が慎重に措置するということは、今後とも続けていきたいと思っております。
  128. 森田重次郎

    森田委員長 河野正君。
  129. 河野正

    ○河野(正)委員 官房副長官所用もあるようですから、まず最初に、その辺から質疑を行ないたいと思います。  質疑を申し上げます中心は、政府関係機関、特殊法人の賃金決定についてでございます。今日まで当委員会におきましても、しばしば政府関係特殊法人、いわゆる政労協といわれておりますが、この賃金決定問題に対して論及をいたしたところでございますが、依然としてこの賃金決定というものが長引く、長期化していく。長期化すればどうしても労使間の状況というものが険悪な情勢になるということで、私どもも今日まで、何とかこの問題が打開できないのかということで、いろいろと取り組んでまいったところでございます。また木村副長官も今日まで、その間にあっていろいろ御配慮いただいてまいりました点につきましては、心から敬意を表するものであります。が、なかなか成果があがらぬというところに、私どもの今日の要求が重ねてなされるわけでございます。  そこで、副長官の時間もなかなか許さぬということでございますから、今日までこの政労協関係の賃上げについて、早期解決ということでいろいろ努力願ったろうけれども、今日の事情というものは、人事院勧告に始まって、閣議決定ないし回答、しかもその回答がゼロ回答だというようなことになって、半年以上もにっちもさっちもいかぬというような状況が続く、これではこの労使関係が、健全な慣行というわけにはまいりませんので、やはり早急に、長年問題になってまいりました懸案の事項でもございますので、ぜひひとつ、この問題が早期に解決するように御配慮願わなければならぬし、この際、これらの点について、官房副長官の御見解をひとつ聞いておきたいと思います。
  130. 木村俊夫

    木村(俊)政府委員 まず、おわびを申し上げなければならぬのは、保利官房長官、ただいま地方連絡会議に司会者として出ておりますので、私、代理で伺ったわけでございます。  いまお述べになりましたように、どうも政府関係特殊法人の賃金紛争が例年長引きつつある、こういう傾向は、政府としても非常に好ましい状態ではない、こう考えております。ただ、そのことによって来たるところがなかなか困難であることは御推察のとおり、一般の民間企業と違って、公益性また公共性がきわめて強い、また、そのために法律によって、そういう事実上の制約を受けているということから来る問題であろうと思います。政府といたしましては、ことしの賃金紛争が、できるだけいまの制約のもとにおける自主性を発揮しまして、円満に解決することを望んでおりますし、また今後の問題といたしましても、こういうことを毎年続けてはいけないというような前提のもとに、いま申し上げた法律上の制約の、事実上の制約内において、できるだけ自主性を発揮するようなくふうを、政府並びに当事者同士でぜひ協議、努力をしたい、こう考えております。
  131. 河野正

    ○河野(正)委員 公共性、公益性、あるいはまた財政的な資金面の点からいろいろ規制が行なわれるのだ、こういう議論を私どもしばしば聞いてきたわけであります。しかし、それについて、私どもは私どもなりにいろいろ言い分があるわけです。ですから、それはいずれあとで、大蔵省、労働省、それぞれにお尋ねすることにして、何といっても政府関係機関というものが多種多面にわたっておりますので、どうしても内閣において取りまとめて解決していただくということにならなければ、なかなか思うようにまいりません。特に、当事者能力の問題ですね。これを確立せぬことには、一定のワクの中での解決もなかなかむずかしいということですから、ここできちっと交通整理するようなかっこうにいかぬと思うけれども、ぜひひとつ早期解決ということで、さらに格段の努力をお願い申し上げたい、こういうふうに思いますので、重ねて長官に御見解を承りたい。
  132. 木村俊夫

    木村(俊)政府委員 その面において、私も同感でございますので、先ほど申し上げましたとおり、いかにして自主交渉を可能ならしめるかという問題につきまして、今後真剣に検討してまいりたい、こう考えております。
  133. 河野正

    ○河野(正)委員 そこできょうは、いま官房副長官が述べられた政労協関係の公益性、公共性といいますか、あるいはまた、規制を行なうといわれる第二の理由である財政資金の問題について、私どもの言い分を若干申し上げて、さらにこの問題の前向きの解決が一日も早く実施されるように要望いたしてまいりたい、こういうふうに思うわけでございます。  そこで、なるほど公共性、公益性がある、あるいは国が財政援助をやっている、国の資金であるので、したがって、国の規制を受けなければならぬ。これは言い分として一分の言い分があることはあるわけですけれども、さればといって、それが必ずしも合理的な理由にはならぬと私は思うわけです。と申し上げますのは、公益性、公共性、だから政労協関係の賃金規制をやるんだ、こうおっしゃっても、民間にも公共性のある企業というのはたくさんあるのです。たとえば電気、ガス、私鉄、こういった企業というものは、大いに公共性、公益性というものがあるわけです。しかし、賃金の決定については別に政府が規制するわけじゃなくて、労使間の自主交渉によって賃金が決定されておる、こういうことですから、政労協に関して、公共性、公益性があるから賃金規制するんですといわれても、私ども納得するわけにいかぬという点が一つ。  それからもう一つは資金の面でございますが、これは民間においても財政援助を受けておるいろいろな機関というものはたくさんあるわけです。あるいは例の特別措置法というような、税制上の恩典に浴しておる機関もたくさんあるわけです。そういう民間の事情から見てまいりましても、国の補助金あるいは財投の融資が出ておる、資金の手当てをしておる、だから政労協の賃金については、規制の必要があるといわれても、いま申し上げましたような問題が一般にあるわけですからね。ところがそういう機関なり企業については何も大蔵省が規制するとか、政府が規制するとか、こういうたてまえになっていないのですね。ですから、ことばは悪いですけれども、ばかの一つ覚えということばがありますが、ばかの一つ覚えのように、政労協の賃金問題が出てまいります場合には、それは公共性、公益性があるから規制はやむを得ぬのじゃないか、あるいは財政的な資金の裏づけをしておるから、当然国が規制するのはあたりまえじゃないか、こういう議論でございますけれども、それならば、一体一般の民間企業というものはどうだ、政労協と同じような性格を持っている企業は一体どうなんだということになりますと、いま申し上げましたような事態で、私どもは、いままで政府からいわれてきた賃金規制の論拠というものは、これは非常に根拠が薄弱だという議論をしなければならぬと思うわけです。こういう点について労働省、大蔵省から、それぞれ見解を承っておきたい、かように思います。
  134. 松永正男

    ○松永政府委員 ただいま政府関係の特殊法人が百十幾つあるというふうな現状でございますが、そのうち政労協として労働組合の面で組織されておるのが、たしか四十四というふうに承知をいたしております。  そこで、百幾つの団体が、それぞれ事業目的がありまして、おっしゃいましたように公共性につきましても、それぞれいろいろなニュアンスの違いがあるかと思うのでありますが、したがって、労使関係の面におきましても、そういうのに応じた多少の違い、たとえば賃金決定の時期等につきましても、政府の予算でまるまるかかえられておるといいますか、政府まるがかえのような、事務費全額国庫といったようなものと、それから自前でやっておるようなところとでは、賃金決定でも多少の違いは出ておるようでございます。  そこで、おっしゃいましたように、公共性と、それから労使関係、労組法適用というたてまえをどう調和させるかということが問題の焦点になるかと思うのでありますが、現実の問題といたしまして、たとえば公労協等におきましては民間賃金、国家公務員、生計費等を勘案して賃金をきめるという法律規定がございます。  そこで、民間賃金の動向を見てきめようというようなことで、やはり自主決定というたてまえでおりますけれども、民間賃金の動向を見て、大体きまったようなところでもって実際上これが処理される、そういう意味におきましては、民間賃金の動向というものに規制をされるというような、事実上の規制があるわけでございます。  それからまた、たとえば全駐労という組合がございます。この組合の賃金決定は秋になされる。それは国家公務員との関係が非常に濃密である。事実上、防衛施設庁が雇用主でございますから、そういう意味から国家公務員の賃金がきまって、その動向を見ながら賃金をきめるというような組合もございます。  それから純民間におきましても、炭労のごとく再建計画というようなことで、事実上賃上げについて制約があるというような組合もございます。  そこで、大きく分けますと、国家公務員の労使関係、それから三公五現の労使関係、それから民間の労使関係、こういうふうに法律のたてまえは分かれておりますけれども、それぞれのグループの中で、民間の中でも事実上賃金決定の時期とか、それからよるべき基準とかいうのは、置かれた実態によっていろいろ制約を受けておる、こういう事情があるわけでございます。  そこで、政府関係の特殊機関につきまして、賃金決定の時期が、従来、国家公務員の賃金の動向がはっきりしたときということにされておりますが、組合のほうとしましては、春闘の時期にこれをきめたいというような希望が強いようでございます。しかし、これを一挙にやるということはなかなか問題がございますので、国家公務員の賃金の動向というものとあわせまして、できるだけ早期にこの政府関係機関につきましても、賃金交渉ができるような状態にもっていくという方向におきまして、先生御承知のように、従来は国家公務員の給与が国会を通りませんと賃金交渉が始まらない、こういう事態から、昨年のごときは、国家公務員の閣議決定をする前に、すでに賃金交渉ができる状態にしているというような努力はいたしておるわけでございます。  もう一つは、内容の面におきまして、いろいろ百幾つもある団体でございまして、各省大臣が今度賃金の決定を認可し大蔵大臣と協議をしてきめる、こうなりますと、どういう基準でどうきめていくかということになりまして、その面につきましてはいろいろな規制があるわけでございますが、できるだけそういう自主交渉で決定する範囲を広げていく、弾力性を持たしていくという方向で努力をしたらどうだろうかというふうな点が、私どもといたしましては、まず具体的な方法としまして、前進をする方法として、今後政府部内でも極力そういう方向で努力をしていきたいというのが、現在私どもが考えております対策でございます。
  135. 河野正

    ○河野(正)委員 一挙にということは、現実の問題としてなかなかむずかしいことは、私どもは承知しておりますから……。  そこで、いま労政局長からお答えがありましたような、まず自主交渉の範囲を広げていくということも、段階的な解決の一策だとは思うのです。ところが、現状は一つも前進していないのですね。これは見るべき成果はほとんどございません。ですから、私どもも今日までしばしば当委員会でもこの問題を取り上げてきたわけです。  そこで、やはり一挙に解決することがむずかしければ段階的な解決、その段階的解決のためには自主交渉の範囲というものを広げていく、そういうこともけっこうです。ただ問題は、それがすみやかに実施されるという、この点が問題だと思うのですね。ところが、それがなかなかうまくいかぬ、そこに政労協の非常に強い不満があると私は思うのです。そういう意味で、ここでなかなかうまい結論が出てこぬのが残念ですけれども、ひとつ大臣としても——この政労協関係から公開質問状が出ていますね。これに対して若干見解が述べられていますけれども、これまた非常に抽象的な見解です。大体、いままでたびたび大臣にもお願いもし、交渉もしてまいりましたが、その席上で言われたことが文章で盛り込まれていないということで、一つも斬新味というものがないのですね。それだけ問題の困難性というものがあるということにも通ずると思うのですけれども、一つも斬新性がない。そこに私どもが強く不満の意を表明しなければならぬ点があったと思うのです。  そこで、やはり大臣としても、今日までいろいろ約束され、言われてきましたが、それを一つでもここで実行していくという配慮というのか努力というのか、それが必要だと私は思うのです。私は多くを申し上げる必要はないと思います。大臣としても、段階的解決もけっこうだから、まず階段を一歩登るための実行と申しますか、実現と申しますか、そういうものをはかっていただきたい、こういうことを強く考えておりますので、この点に対する大臣の御見解をひとつ承っておきたいと思います。
  136. 原健三郎

    ○原国務大臣 河野さんの御意見、ただいまよく拝聴いたしました。実は昨日も総評の岩井事務局長、それから総評の蛯谷争議対策部長並びに滝沢政労協の議長さんなどと一時間にわたっていろいろ懇談いたしました。そして先方の意見も十分聞きましたし、私の意見も十分申し上げまして、結局、私の労働大臣見解といたしましては大体こういう点である。いまおっしゃられたように、事はずばりぴしゃりというようになかなかいきません、これはむずかしい諸般の法律その他の制限がございますので。ですが、まずこういうところにおいて私どもはやるという決意を表明いたした次第があります。  事、非常に重大でございますから、文章にいたしておりますが、ちょっと読み上げます。誤解を招きますとなんですが、結論的に申しますと、政府関係機関において大いに私が尽力してその実現を期します、こういう結論になるわけでございます。「政労協の賃金紛争が例年長期化の状態にあることは好ましいものではない。本来、政府関係特殊法人の労使関係は、事業の特殊性、公共性をふまえながら、労組法の立場にたって、自主交渉で解決されるべきである。労働大臣としては、以上の立場にたって、今次賃金紛争についても、自主交渉で円満に解決されるよう期待するとともに、明年以降の賃金問題についても、前記の趣旨に沿って自主的解決ができるよう政府部内関係当局と協議努力したい。きのうもこういう見解を明らかにした次第であります。階段を一歩でも二歩でも上がるようにというお説でございますが、政府部内の関係当局と私がこれから接触し、協議をいたして、一歩でも二歩でも進むようにいたしたいと思っております。
  137. 河野正

    ○河野(正)委員 ぜひひとつ格段の努力を願って、一歩でも二歩でもいいから、前向きの解決が行なわれるように努力を願いたいと思います。  そこで、この際大蔵省おいででございますから、何といってもこれは大蔵省がさいふのひもを握っておりますので、これが賃金規制の親方ともいうべき存在でございます。そこで、この際若干大蔵省に見解を承っておきたいと思うわけでございます。  先ほどから言われておりますように、特殊法人政労協の性格というものが、公共性、公益性、あるいは資金財政面での国の援助を受けておる、こういう言い方で強く大蔵省が賃金規制をする、そこでそれぞれ企業側では当事者能力を主張する、こういう結果になっておると思います。  ところが、この政労協関係の実態を見てまいりますと、これは資金的な裏づけといいますけれども、政府出資にいたしましても、補助にいたしましても、ピンからキリまであるわけですね。全額やっておるところもあるけれども、ほんのスズメの涙ほどしかこの資金の援助が行なわれておらぬという機関もあるわけです。そこで、ある意味におきましては全く千差万別でございます。ところが大蔵省では、千差万別であるけれども、この規制については、十ぱ一からげということばがございますけれども、十ぱ一からげ方式で規制をする。この辺にも私は大きな問題があると思います。  それからいま一つは、同じ特殊法人といわれる中にも、営団地下鉄、あるいは日本輸出入銀行、日本開発銀行、こういった機関も実はあるわけでございますが、これらの機関については、政労協と異なった賃金決定というものが今日行なわれておる。営団地下鉄のほうは私鉄方式、それからまた日本輸出入銀行、あるいは日本開発銀行等においては、一般の金融機関と同じような春闘、春の戦いの中で賃金決定が行なわれておる。こういうふうな非常な不合理と申しますか、賃金規制の中でも矛盾というものがたくさん包括をされておる。ですからやはり政労協関係の非常に強い不満があるというのは、こういう点からも非常に強い不平、不満というものが出てまいっておると思うのです。ですからやはり大蔵省としてもそういう実態というものを十分認識をし、把握した上に立って、この当事者能力といいますか、自主交渉と申しますか、自主解決と申しますか、そういう方向に努力を願わなければならぬ、こういうふうに思うわけでございますが、その点について大蔵省の見解をひとつ承っておきたいと思います。
  138. 海堀洋平

    海堀政府委員 お答え申し上げます。  大蔵大臣が特殊法人といいますか、この給与の基準について関与いたしておりますのは、法律規定に基づきまして主務大臣が給与の基準について承認をする際、大蔵大臣と協議すべしとされています法人が五十四ございます。それから、それとは別に国会に予算として提出される、その場合に大蔵大臣は、それを調整して、予算として国会に提出すべしとされているものが十四ございます。この十四の中で、いわゆる三公社は公労委の関係になるものでございますから、これは一応除かれる形になると思いますが、したがいまして、大蔵大臣が関与いたしておりますのは法律に基づくものが五十四、予算の調整に基づくものが、その三公社を含めまして十四ということに相なりまして、計六十八になるわけでございます。これがどういう分類でこれだけのことについて関与することになったかという点につきましては、それぞれ政府が主として出資をしている、あるいは財政投融資の資金を出している、あるいは非常に公的な仕事をしているというふうな、それぞれの理由があろうかと存じますが、いずれにいたしましても、そういう法律規定に基づきまして、協議あるいは予算の調整という形で関与いたしているわけでございます。その場合に、それぞれの事業の態様も区々でございますし、またそもそも営利を追求する機関でないものでございますから、給与をどういうふうな考え方できめるかという点につきましては、非常にむずかしい問題があろうかと存じます。初めにきめる際には、やはり公的な機関ではあるけれども、公務員とはまた違って、主として現業的な部門が多いからというふうな理由で、あるいは民間の事業によく似た事業をしているからというふうな理由、あるいはその機関の、そういう仕事の存続期間があるいは限定されるかもしれないというふうな理由から、大体公務員のベースに対しまして一〇%ないし一五%程度の高さにきめられているのじゃなかろうかと存じます。で、これの給与の改定につきましては実はその機関、機関によりまして、その仕事の性格上非常に収益の高い機関もございます。また、政府の施策の遂行上常に欠損を出しまして、それを政府の金で埋めていっている機関もございます。しかしながら、それを片方は収益があがるから高くしてよい、片方は損金が出るのだから低くしてよいというふうには割り切れませんので、そこはやはり人事院の勧告は民間給与、民間の非常に広範な調査から出てまいりましたものが勧告されますので、その額ではなくて、その率を適用しまして改定の基準としているわけでございます。  それから先ほど先生の御指摘のございました帝都高速度交通営団、輸・開銀という例をおあげになりましたのですが、帝都高速度交通営団は、法律上も、また予算という形でも、大蔵大臣が関与することになってございません。だから、これはやはり東京都あるいは国鉄が出資いたしておりまして、政府が関与いたしておりますのは財政投融資の面で政府保証債の発行を認めておるということでございますが、法律上では大蔵大臣の関与する法人となっておりませんので、これは労使間の協議で賃金が決定されているわけでございます。  それから日本輸出入銀行、日本開発銀行、いずれも予算の調整を通じまして大蔵大臣が関与いたしておりますので、やはりほかの法人と同じように、人事院勧告に準拠いたしまして、その時期にひとしく、同率の改定を指示いたしておりますので、特にこれだけが早く決定されている事実はございません。
  139. 河野正

    ○河野(正)委員 性格的に言うと、いずれにいたしましても公共性、公益性があるし、それから資金面の裏づけがあるということですから、そういう性格を持ちながら、一方では自主交渉、自主解決が行なわれ、一方では大蔵省の規制が行なわれるというところに矛盾、不合理というものがあるのじゃないですかということを私どもは指摘をいたしているわけであります。ですから、法律的にそうであっても、実態としてそこに矛盾があれば、当然それは矛盾として今後改善しなければならぬわけですから、そういう意味で私どももあえて提議をいたしておるわけです。  そこで問題は、たまたま海堀さん、当事者でございますから、この際、ここでお尋ねをしておきたいと思うわけでございますけれども、昨年の十一月二日に政労協から公開質問状が出された。そして政労協の代表との話し合いの中で、海堀さんのほうから、内示を越えるものを出されてもその協議に応ずることはできない。内示に示された基本的な部分は絶対に守ってもらわなければならぬ、こう言っておられるように私どもは仄聞をいたしております。  そこで、その際問題になりますのは大蔵省の内示の点でございます。内示を越えるものは話し合いの余地はない。  そこで内示の中味というのが問題になるわけですけれども、、その内示の中身というものは、賃上げ率、初任給、実施時期、定昇ですね。こういうことになりますと、もう内示の中に、一切の賃金条件というものが入っておるわけです。そうしますと、労働三権が政労協に認められたといっても、何をか言わんやですね。全然交渉の余地がないわけです。いま申し上げるような賃上げ率、あるいは初任給、実施時期、定昇率、こういう一切のものが内示の中身であるとするならば、もう何をか言わんや。労働組合にとっては、何も賃金について交渉の余地があり得ないわけです。ですから、もしそういう発言をされたとするならば、これは私どもとしても労働条件の立場から、きわめて重大な御発言だと思うのです。もし誤りであればひとつここで訂正をしていただきたいと思います。もしそれが真実であれば、これは実質的には労働三権というものが否認されたということになると思うのです。この点については一応海堀さんのほうからお答えを願って、その結果いかんによっては、労働大臣の見解をひとつお聞きしたい、こういうように思います。
  140. 海堀洋平

    海堀政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、大蔵大臣が現在法律に基づきまして給与の基準につきまして主務大臣の協議を受けているのは六十八の法人でございます。いわゆる内示と申しておりますのは、主務大臣が承認を与える場合に、どこまで給与の改定について理事者に許可をしていいかということを、あらかじめ協議を受けた場合の大蔵省の立場というものの表明を意味することになるわけですが、先ほども申し上げましたように、それぞれこれらの機関を見てみますと、たとえば日本開発銀行というのは非常に資本金が大きいものですから、年間百億をこえる利益が出ている。一方、輸出入銀行は輸出金融のために低利な金融をしているために、貸せば貸すほど赤字がふえていく。しかし、それは日本の輸出振興のために、どうしても行なわなければならない事業であるということで、その事業の性格はいずれも非常に重要な事業でございますが、片方は発足の経緯から見まして、産投の資金の非常に大きな部門が出資としてそこにあるものですから、利益が出てくるというようなもので、いわゆる利益が出るから給与が高くあっていいのだという形になかなか割り切れない。  さらに例をあげてみますと、たとえば郵政省関係の簡易保険郵便年金福祉事業団というようなものは、老人ホームだとか、あるいは福祉施設を非常に低廉に提供する。したがって、初めから赤字が出て、その分を特別会計から補てんすることにきめられているような機関でございます。しかし、それも非常に重要な機関であることには間違いないわけでございます。  これに対しまして、それぞれ性格上多少初めの給与につきましては、主務大臣と協議いたしまして、ある程度の仕事の重要度に応じた差は出ておるのでございますが、その後の給与改定につきましては、やはり人事院勧告というような、客観的な、統一した率というもので行なわなければ、何をもってそれの基準にするかということになりますと、非常に議論百出で、結論を得られないのではないか。したがいまして、私のほうでは現在までのところ、人事院勧告に基づきます公務員の給与改定の率を、それぞれの給与に掛け合わせたものの原資の範囲内で行なっていただきたいということを申しているわけでございます。この点につきましてはやはり各機関それぞれの御主張もあろうかと存じますが、その原資の範囲内で給与改定を行なってもらいたいということを申しているわけでございます。  それから、昇給につきましても、予算を通じましてやはり一定の率というもので、その範囲内で行なっていただきたいということで、原資をお示ししておるわけでございます。ただ、先ほどお話のございました初任給の問題とか、あるいはそれ以外の点も、たとえば一番上はあまり高くなっては困るというようなことを申していると存じますが、この初任給の問題は私のほうが申さなくてもいいのかと思うのですが、実は各機関、あまりばらばらになりますと、新規にそういったところに就職される方の人数がだんだん減ってまいっておりますので、それぞれ重要な事業である限り、あまりあるところだけに優秀な人が片寄って、あるところにはあまり優秀でない人しか行かないということになっても困るという意味で、できるだけ統一をとってもらうようにしているわけでございますが、そのあたりにつきまして反省すべき点はあろうと思いますので、今後検討いたしてみたいと思います。ただ基本的な原資につきましては、やはり考え方としては統一をとっていただく以外にないのじゃなかろうかと考えているわけでございます。
  141. 河野正

    ○河野(正)委員 この内示というものは絶対的である、しかもその内示の中身は賃上げ、初任給、実施時期、定昇率というふうにすべて縛り上げるということになった場合には、労働三権というものは一体どうなるのか、そのことによって労働三権というものが否認されはしないか。公務員と違いますから、ここに問題があると思う。ですから、いま海堀さんがお答えになったような、四角四面の規制と労働三権との関係は一体どうなるのだ、これが私どもの言いたいところです。この点についてひとつお答えいただきたい。
  142. 海堀洋平

    海堀政府委員 これは立法論になるのではないかと思いますが、現在の法律は、一応労働関係法律の適用があることは、それはそのとおりでございます。他方それぞれの法人の設立に関する法律によりまして、給与の基準については主務大臣の承認を得べし、その承認を得るについては大蔵大臣に協議すべしということを規定されているわけでございます。したがいまして、その限りにおきましては、労働三法の適用が、その規定によってそれだけ制約を受けているということになるのではなかろうか。その制約を受けているのは、なぜそういう形の規定になっているのだろうかという点につきましては、やはり国の出資なりを受けているというふうなこと、しかもその行なっている事業が非常に公的な事業であるというふうなことからきている制約ではなかろうかと思うわけでございます。私が申し上げましたのは、そういう法律規定に基づきまして大蔵大臣が協議を受けた場合に、仕事が公的な仕事であって、利益追求の仕事でないために、その給与の基準というものを考える場合には、やはり人事院勧告といったような、民間の平均的なものでその改定率は考えざるを得なくなるのではなかろうかというふうにお答え申し上げたわけでございます。
  143. 河野正

    ○河野(正)委員 労働三権はあることはあるというようなことでは困るのであって、これは労働者に対する最大の権利ですから、これをあいまいもことして取り扱われるところに私は非常に大きな問題があると思う。  そこで、この点は労働大臣にお聞きをしたいと私は思うわけですが、先ほどから大蔵省が規制をしなければならぬ、公益性、公共性、あるいはまた財政援助、それが論拠として十分でない、論拠として薄弱であるというようなことについては、私どももうすでに申し述べたわけですから、あらためて申し上げようとは思いません。ですが、いまのように給与の基準をきめるためには大蔵大臣の承認が要る、それだからといって、労働三権というものを軽視してもらっては困ると思うのです。もちろんいまの海堀さんの御見解では、労働三権はあることはあるというような表現が使われたようでございます。これはもし誤っておればあとで訂正を願いたいと思います。私が聞き及んでおる範囲では、あることはある。そういうような労働者に対して与えられた権利というものを、軽視されるというところに、この規制の強さというものが出てきておるんじゃなかろうかという感じを持ちます。そこで、この点は労働大臣から、ひとつぜひ労働大臣としての的確な御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  144. 原健三郎

    ○原国務大臣 さいぜんからいろいろ河野さんの御意見を聞きましたのですが、なかなか法律その他の制約もあるし、ずばりこういうように解決という策は、残念ながらまだ出ておりません。しかし、さいぜんからいろいろ申し上げましたように、当局と組合との自主交渉という場面をだんだん広めていきたい。これは相談いたしたいと思っております。  それで自主交渉をやる。自主交渉の内容といえば、給与の問題ですが、その給与につきましても、さいぜんから他の政府委員から答弁ございましたように、人事院勧告を基準にするとか、いろいろございますが、私どもとしては、労働三法の適用されておる組合でありますし、これからは若干でも当局者と組合とが相談する機会や場も多くするし、給与についても、何とかそういう自主交渉の場に乗せることができる場面もあるんじゃないか。ただ百以上のこういう政府機関がございますので、そのそれぞれによっても多少違うんじゃないか等々、いろいろ一歩一歩前進するように配慮し、相談をまとめていきたいと思っております。
  145. 河野正

    ○河野(正)委員 これはぜひひとつ労働大臣の胸に深く刻んでおいてもらいたいと思うわけですけれども、やはりいま大蔵省の意見を聞いておりますると、労働三権というものが規制の陰に隠れてしまっておる、こういう印象を強く持ちます。私は、労働三権が与えられておる限りは、やはり賃金というものは労使間の話し合いによって決定さるべきであって、それをやたらに規制するということは、これは結果的には労働三権を否認するという形になるわけですから、やはり労働大臣としてもその立場というものを強く堅持してもらわなければ、いまのような大蔵省の姿勢では困ると思うのです。これはもう百年河清を待つがごとしで、いつまでたってもこの問題は、この委員会ではいろいろ論議をいたしますけれども、解決の道を見出すことはできぬと思うのです。やはり今後一歩一歩改善をしていく、階段をのぼるように改善をしていくにしても、労働三権を守っていくという立場で改善が行なわれなければ、いつまでたっても政労協の諸君の基本的な権利というものは守られぬと思うのです。そういう意味でぜひひとつ労働大臣は、いまの大蔵省のような姿勢でなくて、労働三権というものを認めるという立場で、この労働条件の一つでございまする賃金決定をはかっていくという方針を進めてもらいたい、このように思います。この点はぜひひとつ労働省のほうからあらためて見解をお聞かせをいただいて、大蔵省にもひとつ労働大臣の見解を十分聞かせていただきたいと思うのです。
  146. 原健三郎

    ○原国務大臣 いま河野さんのおっしゃられたような、そういう立場で大蔵省とも交渉いたしてみます。
  147. 河野正

    ○河野(正)委員 時間がだんだんなくなりましたから、結論を結びたいと思いますが、現在の状態では、一体責任の所在はどこにあるのか全く不明確です。あるときは労働三権があるから当事者能力があるんだ、こういうように言われるけれども、一方では公益性、公共性があるし、財政的な措置をしておるから大蔵省が規制するのは当然のことだ、こういうことで、なかなか責任の所在というものが明確にならないというところにこの問題の困難性というものが私はあると思うのです。  そこで、やはり私は何が何でもこの当事者能力というものを確立する。ことばを変えて申し上げれば、当事者というものは一体だれか。いまの労働三権の立場から見れば、結局当事者というものは使用者側にあるわけです。ところが、実態としては、当事者能力というものは大蔵省にあるような形であるのが今日の実態だと思うわけです。それではこの問題の解決には役立たぬわけでございますから、したがって、この際、いま労働大臣からも比較的明快な御答弁をいただいたわけですけれども、ひとつぜひこの責任の所在というものをはっきりする、当事者能力というものを確立する、こういう立場で、さらに格段の努力を願いたいということを最後に申し添えまして終わりたいと思うわけですが、もう一つわかりやすくいいますと、現在がんじがらめに賃金決定に対します規制が行なわれておりますが、この規制を大幅に緩和する、これが私は先ほど労政局長から言われた、いわゆる一歩前進の解決法だと思うのです。具体的にはやはり私は規制というものをだんだん緩和していくということだと思うのです。ぜひひとつこの際、最後に労働大臣の前向きの御見解を承って、私の質疑を終わりたい、かように考えます。
  148. 原健三郎

    ○原国務大臣 河野さんの御意見はよくわかりましたので、その御趣旨に沿いまして、政府部内の関係機関と協議するように尽力いたします。
  149. 森田重次郎

    森田委員長 次回は明十五日午前十時委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後二時四十八分散会