○原国務大臣 ただいま
議題となりました
失業保険法及び
労働者災害補償保険法の一部を
改正する
法律案につきまして、その
提案理由及び
内容の概要を御
説明申し上げます。
失業保険法及び労災保険法は、いずれも、
昭和二十二年に制定されて以来、数次の
改正により逐次その
内容を
整備してきたところでありますが、両保険とも、労働者五人未満の事業所の多くについて未適用のままとなっている現状にあり、これらの零細企業に働く恵まれない労働者に両保険の適用を拡大し、その福祉の増進をはかることは、きわめて重要なことであると考える次第であります。
また、失業保険につきましては、低
所得層を中心に
給付全般にわたってその
内容を
改善し、失業者の
生活の一層の安定をはかるとともに、失業保険経済の現状に照らし、
保険料率の引き下げを行ないまして、
国民の負担を軽減する必要があると考えるのであります。
さらに、失業保険におきましては、季節的
受給者の現状、不正受給の状況等にかんがみ、
制度の健全化をはかる必要があると存ずる次第であります。季節的
受給者は、全
受給者の約四〇%に達し、毎年繰り返して全
給付額の約三〇%を受給しており、
制度上種々の問題を生じているところがあります。このため、短期循環的に離職者を多数発生させる事業主から特別
保険料を徴収し、これを通年雇用等の費用に充てることによって不安定雇用の解消をはかるとともに、被
保険者期間の計算方法を合理化する等の必要があると考えるのであります。また、不正受給が年々増加している現状に対処するため、これを防止する必要があると考える次第であります。
以上のような事情にかんがみ、
政府といたしましては、中央職業安定
審議会及び社会保障
制度審議会に諮問し、本年二月末及び三月初めにそれぞれ答申を得、また、労災保険
審議会の承認を得た上、
失業保険法及び労働者災害保険法の一部を
改正する
法律案を作成し、国会に
提出いたした次第であります。
次に、この
法律案の
内容の概略を御
説明申し上げます。
第一は、五人未満事業所に対する失業保険及び労災保険の適用範囲の拡大であります。まず、失業保険につきましては、労働者五人未満の事業主に雇用される者を新たに当然被
保険者とすることといたしましたが、百万をこえるこれらの事業所を一時に適用することには、種々問題がございますので、当面は、製造業等から段階的に適用拡大を行なうことといたしました。
次に、労災保険につきましても、労働者を使用する事業は、すべて当然適用といたしますが、失業保険と同様、危険有害でない業種は、当面、任意適用とすることといたしております。
第二は、失業保険における
給付のほとんどにわたって、その
内容の
改善をはかったことであります。
その一は、一般失業保険における保険
給付の
改善であります。まず、
配偶者の扶養
手当につきまして、
政令によりその日額を
現行の二十円から三十円に
引き上げるとともに、失業保険金の日額につきましても、告示により、賃金の比較的低い等級の日額を十円ずつ
引き上げることといたしました。さらに、二十年以上の長期被
保険者の
給付日数を
現行の二百七十日から三百日に
引き上げるほか、技能習得
手当の日額も
改善することといたしております。
また、受給資格者が死亡した場合や長
期間の業務災害等の場合にも失業保険金の受給ができるよう、受給要件の大幅な
緩和をはかることといたしました。
その二は、日雇失業保険における
給付の
改善でありまして、日雇失業保険金の日額を、
現行の第一級五百円、第二級三百三十円から、それぞれ第一級七百六十円、第二級五百円に
引き上げることといたしました。さらに、賃金水準の変動等に応じてすみやかに日額の
改善をはかることができるよう、告示により
改定することができることとしたほか、第一級の保険金を受けやすいよう、その決定要件を
緩和することといたしております。
その三は、就職支度金及び移転費の
改善であります。これらの
給付につきましては、いずれも福祉施設として
支給することといたしておりますが、まず、就職支度金につきましては、従来、失業保険金及び扶養
手当の合計額の三十日分または五十日分であったものを、一定の場合さらに二十日分を加算することとし、また、移転費につきましても、着後
手当を新設することといたしました。
第三は、失業保険の
保険料率の引き下げでありまして、最近の失業保険収支の状況を勘案し、また今後の保険経済の推移等を考慮して、
現行の千分の十四から十三に引き下げることといたしました。
第四は、失業保険
制度の現状にかんがみ、
制度の健全化をはかることといたしたことであります。
その一は、三年間連続して短期離職者を多数発生させた事業主から、特別
保険料を徴収し、これを通年雇用等季節的失業の防止のための費用に充てることといたしたことであります。なお、特別
保険料の
内容につきましては、事業主に過大な負担とならないよう留意いたしておりますが、特に中小零細事業主については、離職者五人までは徴収しない等特別の配慮を加えているところであります。
その二は、通常の労働者に期待し得る通常の雇用
期間さえ満たせば、
給付に何らの差別を加えないという趣旨のもとに、受給資格を得るのに必要な六カ月の被
保険者期間の計算につきまして、現在は
最低四カ月二十二日の雇用
期間で足りるとしているのを、原則どおり満六カ月の雇用
期間に改めるとともに、一カ月間の賃金支払い基礎日数を
現行の十一日以上から十四日以上に改めることといたしたことであります。なお、就労の実態を考慮し、二以上の事業主に雇用された者につきましては、被
保険者期間の通算について特別の配慮を加えることといたしております。
その三は、不正
受給者に対しまして、
現行の不正
受給者の返還命令
制度に加え、新たに
納付命令
制度を設けることといたしたことでありますが、労働者に対して過酷なものとならないよう、
納付額は不正受給金額と同額以下とし、またその基準は、労働大臣の中央職業安定
審議会の意見を聞いて定めることといたしております。
以上のほか、失業保険におきまして、失業の認定回数、失業保険金等の
支給方法、日雇失業保険の
保険料の
納付方法等について
整備をはかることといたしております。
次に、この
法律案の施行期日につきましては、失業保険及び労災保険の適用の拡大は、
実施準備に万全を期するため、別に
法律で定める日から施行することとし、その他の
事項は、それぞれの
内容により、
昭和四十四年七月一日、八月一日、十月一日の三段階に分けて施行することといたしております。
〔
委員長退席澁谷
委員長代理着席〕
以上この
法律案の
提案理由及びその概要につきまして御
説明申し上げました。
何とぞ慎重に御
審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
次に、ただいま
議題となりました
労働保険の
保険料の
徴収等に関する
法律案、及び、
失業保険法及び労働者災害保険法の一部を
改正する
法律及び
労働保険の
保険料の
徴収等に関する
法律の施行に伴う
関係法律の
整備等に関する
法律案につきまして、その
提案理由及び
内容の概要を御
説明申し上げます。
さきに
提出いたしました
失業保険法及び
労働者災害補償保険法の一部を
改正する
法律案におきましては、両保険の当然適用の範囲を労働者五人未満の零細事業に拡大することといたしておりますが、これにより、今後新たに両保険の適用を受ける事業の数は、大幅な増加が見込まれております。
これら零細事業について、失業保険と労災保険とでそれぞれ異なった手続方法によって、別個に適用徴収の事務処理を行なうことは、事業主に過重の事務負担をかけることともなり、また、保険事業運営の面から見ましても効率的な事務処理が期しがたく、このため、両保険の一元的な適用と
保険料徴収方法の一元化を行なうことによりまして、保険加入者の利便と両保険の適用徴収事務の簡素化、能率化をはかる必要があると考えます。
また、かねてより、
関係審議会等各方面からも、労働者五人未満の事業への適用拡大の際、あわせて、両保険の適用徴収の窓口及び事務処理方法等の一元化をはかることを強く要請されてきたところであります。
以上のような事情にかんがみ、さきに
提出いたしました
失業保険法及び
労働者災害補償保険法の一部を
改正する
法律案に引き続き、これと関連する二
法律案をここに
提出した次第であります。
まず、
労働保険の
保険料の
徴収等に関する
法律案の
内容の概要を御
説明申し上げます。
第一は、
現行の失業保険及び労災保険の適用徴収につきまして、これを各事業ごとに
労働保険という一つの保険
関係とし、両保険の適用徴収事務を一元的に処理することといたしております。
適用のしかたは、ほぼ
現行の労災保険のとおり、各事業を単位とし、建設業等数次の請負によるものにつきましても、労災保険と同じく、原則として工事ごとに元請で一括して処理することといたしております。
第二に、
保険料につきましても、
現行の労災保険と同じく、毎年度の初めに、その事業で一年間に支払われる賃金の見込み額に両保険の料率を合算した
保険料を乗じ、これを概算
保険料として徴収することとし、その年度末までに実際に支払われた賃金に基づき、過不足を精算することといたしております。
通常の場合には、前年度分として精算確定した
保険料の額を当年度の概算
保険料として
納付すればよいこととし、また、
保険料が高額となる場合には、分割
納付を認めることにより、加入者の事務的、
財政的負担の軽減をはかることとしております。
なお、失業保険の日雇労働被
保険者に関し、印紙で
納付する
保険料につきましては、従来の
納付方法によることとしております。
第三に、
保険料の労使の負担割合は、
現行どおりでありまして、労災保険に関する部分は全額事業主負担とし、失業保険に関する部分は労使折半を原則としております。
また、労働者が負担する
保険料は、
現行の失業保険の場合と同様に、事業主が毎月の賃金から控除することができることとしております。
第四に、
現行の失業保険及び労災保険の事務組合につきましては、適用徴収事務の一元化に伴い、これを統合して新たに
労働保険事務組合の
制度を設けることといたしております。
次に、
失業保険法及び
労働者災害補償保険法の一部を
改正する
法律及び
労働保険の
保険料の徴収に関する
法律の施行に伴う
関係法律の
整備等に関する
法律案の概要について御
説明申し上げます。
この
法律案は、さきに
提出いたしました
失業保険法及び
労働者災害補償保険法の一部を
改正する
法律案のうち、労働者五人未満の事業についての両保険の適用拡大に関する
規定及びただいま御
説明申し上げました
労働保険の
保険料の
徴収等に関する
法律案の施行期日を公布の日から起算して二年をこえない範囲内で
政令で定める日とすることとあわせて、これらの
法律の施行に伴い、
関係法律の
規定の
整備及び必要な
経過措置を定めるものであります。
これらは、いずれも、各
法律案の附則
事項でありますが、立法技術上まとめて一
法律案として整理することといたした次第であります。
以上、二
法律案の
提案理由及びその概要につきまして御
説明申し上げました。
何とぞ慎重御
審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
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