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1969-04-22 第61回国会 衆議院 社会労働委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年四月二十二日(火曜日)     午前十時二十七分開議  出席委員    委員長 森田重次郎君    理事 澁谷 直藏君 理事 竹内 黎一君    理事 谷垣 專一君 理事 橋本龍太郎君    理事 渡辺  肇君 理事 河野  正君    理事 田邊  誠君 理事 田畑 金光君       藏内 修治君    佐々木義武君       齋藤 邦吉君    世耕 政隆君       田川 誠一君    中山 マサ君       広川シズエ君    箕輪  登君       枝村 要作君    後藤 俊男君       西風  勲君    八木 一男君       山本 政弘君    本島百合子君       大橋 敏雄君    伏木 和雄君       谷口善太郎君    關谷 勝利君  出席国務大臣         労 働 大 臣 原 健三郎君  出席政府委員         防衛施設庁長官 山上 信重君         労働省労政局長 松永 正男君         労働省労働基準         局長      和田 勝美君         労働省職業安定         局長      住  榮作君         労働省職業訓練         局長      石黒 拓爾君  委員外出席者         専  門  員 濱中雄太郎君     ————————————— 四月十八日  委員広川シズエ辞任につき、その補欠として  西村英一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員西村英一辞任につき、その補欠として広  川シズエ君が議長指名委員に選任ざれた。     ————————————— 四月十八日  自然公園法の一部を改正する法律案内閣提出  第七〇号)(参議院送付) 同月十九日  児童手当法案山本政弘君外十二名提出衆法  第三〇号) 同月十八日  国民年金等改善に関する請願鴨田宗一君外  一名紹介)(第四五二八号)  療術新規開業制度に関する請願宇野宗佑君  紹介)(第四五二九号)  同(大石武一紹介)(第四七一一号)  医療保険制度改悪反対及び医療保障確立に関す  る請願唐橋東紹介)(第四五三〇号)  同(林百郎君紹介)(第四五三一号)  同(柳田秀一紹介)(第四六九九号)  同(渡辺芳男紹介)(第四七〇〇号)  医師及び看護婦増員に関する請願加藤万吉  君紹介)(第四五三二号)  同外一件(島本虎三紹介)(第四五三三号)  同(八木一男紹介)(第四五三四号)  同(勝間田清一紹介)(第四七一二号)  同(神門至馬夫君紹介)(第四七一三号)  戦争犯罪裁判関係者見舞金支給に関する請願  (池田正之輔君紹介)(第四五三五号)  ソ連長期抑留者の処遇に関する請願外二件(濱  野清吾紹介)(第四五三六号)  衛生検査技師法の一部改正に関する請願(仮谷  忠男君紹介)(第四五三九号)  同(河村勝紹介)(第四七一四号)  医療労働者増員等に関する請願石野久男君  紹介)(第四五四〇号)  同外二件(石橋政嗣君紹介)(第四五四一号)  同外一件(石橋政嗣君紹介)(第四七〇一号)  同外三件(川村継義紹介)(第四七〇二号)  同外三件(木原実紹介)(第四七〇三号)  同(神門至馬夫君紹介)(第四七〇四号)  同外三件(中村重光紹介)(第四七〇五号)  健康保険等臨時特例延長反対に関する請願  (林百郎君紹介)(第四五七七号)  全国全産業一律最低賃金制法制化に関する請  願(林百郎君紹介)(第四五七八号)  医療保険制度改悪反対等に関する請願大橋敏  雄君紹介)(第四七〇六号)  同(沖本泰幸紹介)(第四七〇七号)  同(近江巳記夫紹介)(第四七〇八号)  同(伏木和雄紹介)(第四七〇九号)  同(正木良明紹介)(第四七一〇号) 同月二十一日  医療労働者増員等に関する請願外一件(石橋  政嗣君紹介)(第四八七五号)  同(大橋敏雄紹介)(第四八七六号)  同外一件(美濃政市紹介)(第四八七七号)  医療保険制度改悪反対及び医療保障確立に関す  る請願石橋政嗣君紹介)(第四八七八号)  同(島上善五郎紹介)(第四八七九号)  同(佐々木更三君紹介)(第四八八〇号)  同(依田圭五君紹介)(第四八八一号)  社会保険池袋中央病院の再建に関する請願(伊  藤惣助丸君紹介)(第四八八二号)  原爆被災者援護に関する請願中村重光君紹  介)(第四八八三号)  療術新規開業制度に関する請願外一件(宇野  宗佑紹介)(第四九四三号)  同(小澤太郎紹介)(第四九四四号)  同(上林山榮吉君紹介)(第四九四五号)  衛生検査技師法の一部改正に関する請願(塩谷  一夫君紹介)(第四九四六号)  同(藤本孝雄紹介)(第四九四七号)  戦争犯罪裁判関係者見舞金支給に関する請願  (田中龍夫紹介)(第四九四八号)  国民年金等改善に関する請願渡海元三郎君  紹介)(第四九四九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  職業訓練法案内閣提出第九一号)  労働関係基本施策に関する件(駐留軍労務者  等の労働問題)      ————◇—————
  2. 森田重次郎

    ○森田委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。河野正君。
  3. 河野正

    河野(正)委員 本日は二点の大きな問題について質疑を行ないたいと思いますが、質疑の時間の問題もございますので、お答えになるほうは簡明、的確にひとつお答えを願いたいと思います。  そこで第一は、アメリカの基地労働者の問題についてお尋ねをするわけですが、きょう特に冒頭にお尋ねをしてまいりたいと思いますのは、板付基地に常駐しておりましたRF101迎撃偵察中隊が、当初二十日ということでございましたが、本日を期して、米本国ミズーリリチャーズ・ゲーボア基地引き揚げる、そして今後は事実上板付基地予備基地となるということでございます。     〔委員長退席竹内委員長代理着席けさ方の報道によりますると、この引き揚げを実施いたしておりましたRF101が、離陸に失敗をして炎上した。まあ人畜被害はないということでございますけれども市民は非常に大きなショックを受けておるのであります。そこで、この間の事情について、まずもってひとつお話しを願いたい。このことはあと質問にも関連してまいりますので、まずこの点について山上長官お答えを願いたいと思います。
  4. 山上信重

    山上(信)政府委員 ただいまの、板付におきまする米軍機の本日の事故の件でございますが、ただいま御質問にもありましたように、板付基地に常駐しておりました戦術偵察中隊本国引き揚げる。これは二十日に予定されておったものが都合で本日に延びたわけでございますが、その帰還飛行をするために今朝十数機飛び立った。そのうちの一機が板付におきまして離陸に失敗して、滑走路南端さく等を突っ切りまして、約五十メートルの地点で、これはクリアゾーンと申す地点に停止した。幸いに人畜には被害はない模様でございまして、大体ここはまだただいままでの報告では、現在国有地内のようでございます。したがいまして、外部に対しての被害は、ただいま運航が中止されておるということでございます。  いつごろ解除になるかどうかという明細なことはまだ承知いたしておりませんが、いずれにいたしましても、米軍機による事故によりまして地方民相当影響を与えることと考えられますので、さっそくにも米軍に対して今後かような事故が起きないように十分な注意を促すようにいたしたい、かうに考えておる次第でございます。  なお、米軍機の一般的な事故防止につきましては、再々、これらにつきまして米側にも注意を促し、米側も留意をいたしておったことと思うのでございますが、今朝かような事故がありましたことは、まことに遺憾に考える次第でございます。さっそくにもこれは注意を促して、不安のないようにいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  5. 河野正

    河野(正)委員 全く遺憾なことで、市民に及ぼす心理的な、あるいはその他の影響というものがきわめて大きいわけでございますから、ひとつき然たる態度で、政府もこの問題に対する抗議を実施してもらいたい、こういうふうに思います。  そこで、かねがねの問題でございますけれども、この問題とやはり関連してまいりますのが、政府が約束してまいりました板付基地撤去の問題があると思います。今度RF101の引き揚げで、事実上板付基地プエブロ事件以前に戻って、予備中継基地になるだろう、こういうふうにいわれておるわけですけれども現地では板付基地撤去、こういういろいろな議論もございますし、政府もそれらの議論に対して、早急に基地撤去について検討していきたい、こういう公約もあるのでございますから、このRF101引き揚げ板付基地撤去との関連というものは、どういうものであるのか、この際ひとつお聞かせをいただきたい。
  6. 山上信重

    山上(信)政府委員 政府が昨年の六月に、板付基地移転方針を定めましたのは、当時の実情もさることながら、板付飛行場が、福岡市の非常な人口稠密地帯にあるというようなことから、将来のことを考えての措置であると私は考えておるのでございまして、その後におきまして、米側におきましても、この基地を本年六月までに、予備基地的にするという方針をきめて、政府側に通告してまいりましたけれども、これとは一応関係がないと私どもは考えております。したがいまして、今後におきましても、この点については移転先その他の調査を進め、できるだけすみやかに措置をとりたい、かように考えておる次第でございます。
  7. 河野正

    河野(正)委員 今度の事件関係はないようであるけれども、昨年六月、板付基地撤去という方針も出てまいっておるので、さらにその線に沿って調査を進めるというお答えであったわけですが、私ども仄聞するところによりますると、福岡施設局では、予備調査資料として、何カ所かの候補地をあげて、施設庁に対しまして資料提出しておる、こういうことを私どもは承っておるわけですが、この事実についてひとつお答えを願いたい。
  8. 山上信重

    山上(信)政府委員 板付飛行場移転先の問題につきましては、先ほどもお答え申しましたように、昨年来いろいろ検討してきたところでございまして、本年の予算におきましても、約五千万円の予算をもちまして、数カ所概略調査、並びにその結果に基づく測量等調査を実施する予定でございまするが、現在までのところ移転候補地といたしまして、具体的にきまったようなものはないような状態でございます。今後鋭意これの調査を進めてまいりたいと考えておる次第でございます。
  9. 河野正

    河野(正)委員 その調査を進めるについて、一つ資料として、福岡のほうでは何カ所か具体的な地域をあげて、その調査参考に供しよう、こういうことでたとえば芦屋築城有明西海切木、こういうような具体的な地名をあげて、予備調査資料として、福岡施設局から本庁にあげられておるというようなことを私どもは仄聞しておるわけですが、この点についてお答え願いたい。
  10. 山上信重

    山上(信)政府委員 福岡におきまして、いろいろまた検討もいたしており、中央におきましても検討いたしておりまするが、まだどこどこといった候補地をあげてきておるというようなことではないような実情でございまして、どこといって、まだ具体的にきまっておらぬというのが実情でございます。
  11. 河野正

    河野(正)委員 そうしますと、私どもが仄聞するところによると、いま申し上げるような、かねがねいわれてきた地点ですね、いま私が申し上げました芦屋にいたしましても、築城にいたしましても、有明切木西海にいたしましても、大体私どもがいままでいろいろ言ってきた地点でございます。これらについて、たとえば芦屋であるとか、築城であるとかいうことは別として、いま申し上げました地点というものが、候補地として現地施設局において考えられておる、それをどこにするかは別として、そういう意味での予備調査資料としての候補地というものが考えられておるかどうか、こういうことです。
  12. 山上信重

    山上(信)政府委員 予算におきましてわれわれが考えておりまするのは、当然やはり数カ所候補地前提といたさなければならないと思います。それについていろいろ概略調査をやった上で特定候補地がきまりますれば、それについてただいま相当大きな調査費が載っておりますが、ボーリングであるとか測量であるとかいうのは、特定個所がきまった場合に、さような経費を大量に支出して、航空厚真をとったり、あるいはその飛行場の内外の測量を行ない、あるいはボーリングをするというような予算を組んでおるというのでございまして、前提として数カ所からもちろんしぼられまするが、予算行使内容の大部分になるものは、しぼられた段階でやってまいる、かように考えておる次第でございます。
  13. 河野正

    河野(正)委員 その予算行使段階では、かなりしぼられてくると思うのです。その予備調査資料として、いま私が申し上げたような地域というものが考えられておるのかどうか、こういうことを言っておるわけです。
  14. 山上信重

    山上(信)政府委員 現在まで私どもの承知しておるのでは、そういうようなものが参っておらないというのが実情でございまして、今後、現地でも検討はいたしておると思いまするが、そういうものが参りましたら検討するということになると思いますが、どこそこといった数カ所地域にしましても、具体的にきまっておらぬということでございます。
  15. 河野正

    河野(正)委員 いずれにしても、四十四年度の予算として五千万円の調査費がつけられておるわけですね。ですから、四十四年度の予算の中で、具体的にどこどこの調査をしなければならぬということは、当然のことであると思うのです。したがって、そういうどこどこを調査するというような方向というものが、大体いつの時点ごろ出てくるのか、この点についてひとつ御見解をお聞かせいただきたい。
  16. 山上信重

    山上(信)政府委員 ただいままださような時期を、はっきり申し上げられる段階に参っておりませんが、なるべくすみやかに個所をしぼってまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  17. 河野正

    河野(正)委員 いずれにしても四十四年度の中で五千万円の調査費というものが行使されなければならぬわけですから、したがって、いずれにしても早急に、具体的な地名というものにしぼられていくということは、これは想像にかたからざるところだと思います。ですから、これは政府のいつものきまり文句ですけれども、すみやかにということで、なかなか具体的におっしゃっていただけぬわけです。しかし、いずれにしても四十四年度内での予算行使ということで、これは特にきょうのような事故が起こってくれば、市民というものは、この問題についてますます関心を持ってくると思うのです。そういう意味で、やはり大体いつごろには、その候補地というものがしぼられてくるというような方向ぐらいはここで示していただかぬと、単に現地に対していろいろ不安をかけ、あるいはショックを与えた、申しわけないということだけでは私は済まされぬと思うのです。現地市民に対して不安をかけ、またショックを与えた、それでこういたしますということにならぬと、ただそれはきまり文句のごとく、まことに申しわけないということだけでは私は済まされぬと思う。そういう意味では、やはり誠意を示す意味においても、大体四十四年度ということにしぼられておるわけですから、そこで四十四年のどの時点においては、一応候補地というものをしぼって調査に入りたいというようなことは、やはりここで明らかにしてもらわぬといかぬと思うのです。
  18. 山上信重

    山上(信)政府委員 先生御承知のように、この板付飛行場移転するという必要性につきましては、地元の方々も一致しておられるところでもあり、政府もまたそれをいたしたいと考えておるところでございまするが、さて、移転先となりますと、これはなかなか地元方面にいろいろな、むしろどちらかといえば反対の空気の強い場所が多うございます。したがいまして、私どもは腹の底から、何とか早くしたいというふうには考えております。したがって、誠意を見せたいところ一ぱいでございまするが、残念ながら、今日まだいつごろまでにこういうことが特定できるということを申し上げられないというのが実情でございます。できるだけすみやかにこういうものを決定していくように、今後も努力していきたい、かように考えている次第でございます。
  19. 河野正

    河野(正)委員 できるだけすみやかにやらなければならぬことは、四十四年度に五千万円の予算をつぎ込まなければならぬわけですから、これは当然のことであって、それをもって誠意がある答弁というふうに理解するわけにはまいりません。私どもがこういった問題を取り上げておりますのは、やはり現在米軍基地で働いております、基地労働者雇用とも密接な関連を持ってまいります。一つには、市民感情というか、市民がいろいろ基地のために不安を感じておるという問題もございますが、一つには、やはり基地で働いておる労働者雇用というものが一体どうなるのだ、これはいずれ後ほど労働大臣に聞くわけですけれども、まだ基地労働者に対しまする雇用安定策というものが確立されておらぬ。そういう意味で、私どもはこの問題を重要視いたしておるわけでございます。すみやかに、すみやかにというようなきまり文句で、どうも誠意ある答えが出てこないことを私どもは非常に残念に思います。  そこで、板付基地人員整理について、きょうは後ほど立川を中心とする人員整理問題について論議をしたいと思っておったわけですが、せっかくここまでまいりましたから、この際関連をしてお尋ねをしておきたいと思いますが、この板付という基地は、昨年一月末のプエブロ事件以来、若干基地労働者増員をされてきたという経緯がございます。ところが今日RF101が引き揚げ後方基地ということになりますと、勢いこれまた人員整理という問題が起こってこようと思います。これは単に板付に限らず、立川にしても、府中にしても、横田にしても同じでございますけれども、今日まで私どもが非常に残念に思っておりますのは、基地が縮小される、あるいは軍が移動する、こういうようないろんな発表は聞きますけれども基地が移動され、基地が縮小される、一方基地で働いておる労働者生活権というものは、一体どうなるのだ、この後段の問題が非常に軽視されてきた。基地が縮小されたり、基地移転したり、返還されたり、こういうことは、私ども基本的には非常に歓迎するところでございます。ところが、そういう点についてはすぐ新聞報道されるけれども、そういう基地が縮小されたり、あるいはまた軍が移動したなら、それに対応して、一体基地で働いておる労働者というものはどうなるのだ、こういう問題が、今日までなおざりにされてきた、そのことを私どもは非常に残念に感じてきたわけです。そこで、せっかく出てまいりましたから、この板付基地RF101引き揚げ後にどういう人員整理問題が予想されるのか、この際、ひとつ明らかにしていただきたい。
  20. 山上信重

    山上(信)政府委員 プエブロ以後に、百数十名の従業員増員が行なわれたことは事実でございまするので、今回の移駐に伴いまして、何らか人員整理が行なわれるのではないかということが、予想されないこともないのではございますが、現在までのところでは、いまださような通報もございませんし、さような動きも米側に見受けられません。したがいまして、どういうふうな影響が起きるであろうかということは、いま直ちに申し上げる段階にないわけでございまするが、いずれにいたしましても、一般的に申しましても、何かそういう人員整理というようなことが行なわれる場合におきましては、これらについては配置転換であるとか、あるいは離職対策等について、万全の措置を講じてまいりたい。これは板付とは直接関係はございませんが、米軍基地整理縮小ということを、政府が昨年来強く米側に要請したという事実もございまするので、組合その他の要望もあり、離職者に対する特別給付金の増額というようなことも取り上げたのでございまするが、個々の問題になりますと、こういうことだけでは必ずしも満足いたしません。したがって、どういうふうにあと措置をめんどうを見ていけるかということでございます。われわれとしては、最善を尽くすということでございますが、いま直ちに板付についてどうなるという話がございませんので、その点については今後、ただいま申し上げたような考え方で処理してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  21. 河野正

    河野(正)委員 板付については見通しがないということでございますが、ところが現実には、この四月より五月にかけて予定されておりますのは三沢立川府中横田といったぐあいでありまして、ここ最近は、一つの不安定中の小康と申しますか、やや人員整理が少なかった。     〔竹内委員長代理退席委員長着席〕 ところが、この四月から五月にかけては、先ほど申し上げましたような地点で、一挙に六百名近い人員整理合理化が強行されようとしておるわけです。若干延期をされたり、その他調整をするというようなことで、いろいろ話し合いがなされておる面もございます。しかし、一応そういう方針というものが出てきた。特に、立川のごときは三百三十五名ということで、非常に多かったわけです。そこで四月、五月ということでございましたが、いま調整段階だということでまだ若干延期されておる面もございますが、いずれにいたしましても、本年は七〇年安保の前年でもございます。このことは、基地労働者にとりましてもまことに不安と焦慮にかられる、非常に重大な深刻な問題だと思います。そこで板付についてはいま見通しが立たないということでございましたが、それならば、いま私が指摘いたしました六百名近いと予想されます人員整理、これはもう解雇日もすでに立川が五月三十一日、府中が五月三十一日、横田が五月三十一日、それから三沢が四月二十五日、こういうふうに一応予定されていたわけです。こういうような事態について、一体どういうふうに対処されようとしておるのか、これは後ほど労働大臣からも承りたいと思いますけれども、まず、長官のほうからお答え願いたい。
  22. 山上信重

    山上(信)政府委員 三沢あるいは朝霞、その他神奈川の消防関係について、若干の人員整理要求が出ていることは事実でございます。ただ、立川等につきましては、まだ整理という形で正式にきておるものではございませんで、相当数過剰人員があるというような話し合いがきておるのでございまして、今後整理問題ということが発生をする可能性はあるかと思います。いずれにいたしましても、かような問題が出ておる、また出る可能性がある段階でございますので、こういった人員整理という問題が生じた場合につきましては、関係都道府県等と密接な連絡をいたしまして、県の労管事務所あるいは県の労務等とも十分連絡をとって、事前調整米側との間に十分やってまいりたい、そしてこの内容といたしましては、配転その他によって極力人員整理を最小限にする、圧縮していくというふうにやってまいりたい、中央段階においても、また必要なればこういった話し合いもするというような考え方でおる次第でございます。
  23. 河野正

    河野(正)委員 実は、配転その他、できるだけ話し合いをやって、人員整理というものは圧縮していきたい。——私は、ただ漫然とそういうことでは了承できないわけであって、ニクソン政権が誕生してドル防衛政策海外経費節約政策、こういう点が明らかにされてまいっておるわけですから、したがって、いずれにしても基地労働者にそのしわ寄せというものが起こってくるであろうということは一般論として当然考えられることだと思います。  そこで、いま特に配転その他で人員整理というものは圧縮していきたいという御見解であったわけですけれども、私は、ただ漫然とそれでは困る、やはり通告された人員整理、その理由というものを、徹底的に究明するという姿勢というものがなければならぬと思うのですそして、その理由というものがもう的確で、適正で、どうにもならぬという理由であれば、その段階配転その他を考えればよろしい、ただドル防衛であるとか、あるいは海外の経費を節約するというような理由で一方的に軍が解雇を通告してくる、そうすれば、あわてて配転その他を考えるということではなくて、やはりその解雇をする、あるいは整理をしようとする理由というものが、納得のいく理由であるのかどうか、たとえば基地が全部なくなれば、当然それは解雇をするのがあたりまえであって、それに対してとやかく言うべき筋合いのものではないわけです。そういう整理の理由に対して、徹底的に究明をして、そしてアメリカ側に対して強いき然たる姿勢で対処する必要がある。  時間がございませんから、私は一例として申し上げたいと思いますが、たとえば立川の六〇九部隊、これは輸送中隊だそうですが、これがなくなる。ところが、実際には仕事があるものですから、あらためて今度再雇用する。仕事はあるけれども、一応整理をして、そして再雇用する場合には、これは初任給ですから、安い賃金で再雇用する。こういうことでは、私どもは、この輸送中隊がなくなるということだけでは、実際には仕事があるわけですから、この解雇通告に対して納得するわけにいかぬ。ですから、やはり解雇通告があっても、その理由というものがほんとうに妥当な理由であるのかどうか、この究明というものがぜひなされなければならぬ。そうすると、その理由というものが不当であれば、たとえば配転するとかそういうことは別として、不当なものであれば、やはり政府としてはき然たる態度でアメリカ軍に対して臨んでもらわなければならぬ。特に立川においても、そういう事例がございますので、あえて一例を指摘して政府の姿勢についてひとつお尋ねを申し上げたい、かように思います。
  24. 山上信重

    山上(信)政府委員 人員整理の場合の考え方でございまするが、ニクソン政権のドル防衛という問題、こういうもので整理が大きく行なわれるというようなことにつきましては実は私どもも、もしさような考え方で問題が出てくるのであれば、相当問題であろうと考えまするので、この点については、米側にも私自身確かめてございまするが、さような考え方は、少なくとも当分の間はないように私どもは承知いたしております。  それから、ただいまそういった整理が、たとえば立川の空輸部隊の移転に伴うような問題の例をあげてのお話でございますが、もちろんわれわれといたしましても、この整理の問題がありましたときには、そういう問題が出ましたつど、個々にその問題の内容を十分に検討して、それが妥当であるかどうかというような点についても十分究明して、それはほかにちゃんとそういう仕事があるのであるということであれば、むしろ整理をすべきではないという、御趣旨のような線でわれわれも今後折衝してまいりたい。そして万やむを得ない、これはどうしても整理せねばならないというようなものについては、配転、あるいはどうしても配転がつかないものについては、今後離職対策を考えるとか、その他の施策を講ずるというような順序でものを考えてまいりたいという考えでおる次第でございます。
  25. 河野正

    河野(正)委員 この立川でも四月十八日、それから二十五日、ストライキが予定をされ、そのほか横浜、座間でもストライキが計画をされてまいりましたことは御承知だと思います。こういった実力行使をしていろいろ抗議をするというのは、やはりアメリカ軍の不当な労務管理、あるいはこの点はひとつ大臣に聞いていただきたいのですが、日本政府雇用対策について、十分責任がとられておらない、こういうことに対する抗議が目的で、やはりいま申しましたような立川その他で、この実力行使というものが一応計画されておるというように私どもは理解をいたしておるわけでございます。  ところが今日まで、いま山上長官からも配転離職者対策というようなお答えもあったわけですけれども、基本的には何ら基地労働者雇用、生活安定策というものが考えられておらぬ、私ども社会党としては、ここ数年来の懸案でございますけれども基地労働者、駐留軍労働者雇用安定法を提出をいたしておるわけでございます。最終的にはやはり法で、これは、基地労働者というものは、政府雇用してアメリカ軍に労務を提供しておるわけですから、したがって、やはり公務員と同じように、公務員に準じて政地がこの駐留軍労働者については、雇用について責任をもってもらわなければならぬということ、私はそのとおりだと思うのです。  そこで、そういう意味で、ひとつ基地労働者雇用安定について、どういう姿勢で臨んでいくか、この点について労働大臣から誠意のあるお答えをひとつ承りたい、かように思います。
  26. 原健三郎

    ○原国務大臣 御説ごもっともでございまして、駐留軍関係離職者に対する援護措置については、昭和三十三年の駐留軍関係離職者等臨時措置法の制定以来、だんだんよくなりつつあるところでございます。そういう人員整理とか、職離者対策等々については、防衛施設庁とよく協力いたしまして、御趣旨の線に沿うて善処いたしたい、こう思っております。
  27. 河野正

    河野(正)委員 この臨時措置法も、これはまあ逐年改善されてまいりました。その点の誠意を私どもは無視するものではございませんが、根本的にはやはり基地労働者雇用というものについて、どう対処していくかという政策というものが私は必要だと思います。そういう意味で、私ども社会党としては、この駐留軍労働者雇用安定法、こういう法律で塗木的に駐留軍労働者雇用というものを安定さしていこう。ただ出てきた者について、配転をするとか、出てきた者について、給付金を増額して渡してやるとか、そのことも大事ですけれども、根本的にはやはりこの基地がなくなる——おそらく逐次米軍基地というものが、自衛隊に移行していくでございましょう。いずれにしても基地労働者というものが、そういう雇用面においては非常に不安定だということは、これはもう何人も不定することができないと思うのです。そういう意味で、やはりこの際労働大臣としても、いまおっしゃったような抽象的なことでなくて、この駐留軍労働者雇用問題について、具体的な施策というものを何らかの形でやっていくという方向だけは、ひとつぜひこの際お示しをいただきたい。
  28. 原健三郎

    ○原国務大臣 駐留軍労務者雇用の安定その他の施策につきましては、これは防衛施設庁とよく協議し、相談して、河野先生のおっしゃるような線に向かって進んでいきたい、こう思っております。
  29. 河野正

    河野(正)委員 まあ非常に抽象的でございますけれども、私が指摘した方向で努力するということでございますから、きょうの段階では、時間もございませんので、その辺で終わりたいと思います。  そこで、いま一つ私は具体的な事例をあげてお尋ねをしてまいらなければならぬと思うわけですれども、それは最近の一つの傾向として、具体的には立川府中横田等でそういう事例が起こっておるわけですが、たとえばガレージ職場、自動車修理、こういうBXにおいて下請というものにだんだん切りかえられつつあるという一つの事例がございます。そうしますと、再びそのBX職場において整理問題が起こってくるでございましょう。また、業者ですから、賃金その他労働条件というものが劣悪な状態に戻ってまいるでございましょう。要するに、こういうような現在ある職場というものが、ガレージ職場であるとか、自動車修理であるとか、そういうような現在ある職場というものが、請負制度でなされるということ、このことも、この基地労働者にとっては労働条件その他、非常に関心の強い問題でございますので、こういう傾向についてどういうふうに受け取っておられるのか、これは長官のほうにひとつお伺いを申し上げたいと思います。
  30. 山上信重

    山上(信)政府委員 従業員の従事しておりまするところの業務を、民間事業へ切りかえるということにつきましては、われわれといたしましても、できるだけこれは避けていくようにすべきではないか。ただいまおっしゃいましたような地域につきまして、若干そういう問題が現在起きつつあることは、われわれも承知いたしておりまするので、目下これらにつきましては、米側との間で、事前協議をいたしておる段階でございまして、必ずしも十分納得できない点がありますれば、これは関係の都庁等とも打ち合わせて善処いたしてまいりたい、かように考えておる次第でごいます。
  31. 河野正

    河野(正)委員 そういうような民間事業に対しまする切りかえが起こるということは、基地労働者にも非常に大きな影響を持ってくるわけですから、そういう意味でひとつ強い態度で対処してもらいたい。  こういった背景をいろいろ私ども検討してまいりますと、最近除隊をするアメリカの軍人、軍属、こういう軍人、軍属が日本に残って民間事業としてやっていこう、こういう事例があるようでございます。そうしますと、施設も機械も器具も、一切米軍から貸与を受けてやる。ですから、中で働いておる者は、全くの単純労務を提供するいうことでございますから、この点は労働大臣にひとつお聞き及びを願いたいと思うわけなんですが、私はきょうは突っ込んで追及する時間もございませんからはしょりたいと思いますけれども、このこと自身は、やはり職安法違反のおそれがあるというように私どもは考えております。この点について、いま山上長官のほうから、事前協議で民間事業に切りかえることについては、いろいろ防止をしていきたいという問題もあったわけですが、それと並行して、そういう職安法に違反して民間に切りかえていくというようなことは適切でないわけですから、そういう意味でも、ぜひこの問題というものを、私は提起をしておきたいというように考えます。この点については、労働大臣からお答えを願いたいと思います。
  32. 原健三郎

    ○原国務大臣 そういう問題、私どもはよくわかりませんので、防衛施設庁ともよく相談して善処いたしたい、こう思っております。
  33. 河野正

    河野(正)委員 これはわからぬのじゃなくて、法律違反ということを私ども指摘しておるわけですから、もしその疑いがあれば施設庁に対して厳重に申し入れをする、こういうお答えを願わなければならぬと思うのです。これは住さんでもいいですから、ひとつはっきりお答えを願いたいと思います。
  34. 住榮作

    ○住政府委員 実態、十分調べまして、適切な措置をとりたいと考えております。
  35. 河野正

    河野(正)委員 時間の都合もありますから、さらに進めてまいりたいと思います。  そこで、さらにお尋ねをしてまいりたいと思いますのは、最近アメリカ兵の暴行事件というものが基地内で何件か起こっております。  一つは、二月二十二日に岩国基地で吉本君という労働者が暴行事件にあっておる。この岩国では、すでに昭和三十九年八月十六日に松本君がアメリカ兵に刺し殺されたという事件もございます。  いま一つは、横須賀の基地で三月二十四日、石塚君というのがアメリカ兵に襲われて重傷を負ったという事件もございます。  たまたまこういった事件の起こりました職場というものが、クラブであるということも一つの理由でございましょうが、いずれにいたしましても諸機関労働者に起こった事件であるわけです。このようなアメリカ兵の日本人労働者に対して加えられてきた暴行事件、これは私はアメリカ兵の日本人基地労働者に対しまするべっ視のあらわれが、結果的には基地労働者に対して暴行を働く、あるいは刺し殺すというようなことになったのじゃなかろうかと思うのです。  そこで、こういうアメリカ軍の兵に対しまする管理、こういう点を私どもはきわめて重視をしなければならぬと思うわけでございます。したがって、政府は日本人の、特に基地労働者の生命を守っていく、そういう立場で、米軍に対しましてもこの米軍の管理について、強い姿勢で対処してもらわなければならぬと思うわけですが、こういうような犠牲者を、次から次に出すことは、非常に不幸なことですから、こういった暴行事件に対してどういうふうに対処されてきたか、また対処しようとお考えになっているのか、この点は山上長官のほうからお答え願いたい。
  36. 山上信重

    山上(信)政府委員 ただいま御指摘のありました、岩国の事件等につきましては、政府といたしましても直ちに犯人を逮捕するとか、あるいは保安警備を強化するといったような措置につきまして、厳重に米側に申し入れをいたしております。そして具体的な安全措置を早急に講ずるように申し入れましたのでございまするが、米側におきましても当庁の申し入れに対しまして、それに応じて対策の強化を実施しておるという段階でございます。  なお、いまおっしゃいましたような管理の強化という点につきまして、今後も米側と、十分趣旨の徹底をはかってまいりたい。具体的に申しますと、パトロールの強化であるとか、あるいは警報装置あるいは照明、安全協議会、そういったようなことを申し入れておるのでございますが、軍側といたしましても、パトロール要員を増強する、あるいはそういった巡回する頻度を増すとか、警報装置をつくるとか、あるいは深夜作業を中止するとかいったような、各種の措置を講じております。なお、かような措置で十分でないというような点につきましては、今後ともこういう事故の起こらないということをやってまいりたい。  なお、かような事故が、アメリカ人の日本人に対するべっ視ということから発したかどうか、これらの点につきましては必ずしもつまびらかでございませんが、まあたくさんおる中には、やはり不心得者もあるかと思いますので、今後こういうようなものが起きないように、全軍に精神的な意味の教育もしていただくようにということは、あわせて申し入れておる次第でございます。
  37. 河野正

    河野(正)委員 この暴行事件というような問題は、被害者はもちろんのことでございますが、その家族にとりましてもまことに不幸なことでございますし、同時にこれは、今後いつだれの身の上に降りかかってくるかわからぬという意味におきましては、全基地労働者の問題だとも私は考えるわけです。そういう意味で私は、こういった岩国、あるいは横須賀の基地で行なわれてまいりました暴行事件につきましては、重要視しなければならぬ。  そこで、いろいろな方法、たとえばパトロールを強化するとか、巡回を強化するとか、あるいは深夜勤務をやめるとか、いろいろありましたが、やはり根底を流れるものは、私は、先ほど指摘したように、アメリカ兵の日本人労働者に対するべっ視の態度というものが、結果的にはそういうことになると思う。たとえばこの岩国の基地におきましても、横須賀の基地におきましても、いずれもアルコールが入るようなクラブで行なわれておるわけですね。ですからそういう日本人労働者を軽べつする、あるいはべっ視をするというようなことが、アルコールでやはり助長されて、そこでいきなり暴行事件になっていくというように私どもは考えざるを得ないと思うのです。ですから、単にパトロールを強化するとか、いろいろございましたが、基本的には日本の基地労働者というものを軽べつをし、べっ視をするという気持ちがアメリカ軍の根底に流れておるということは、私どもは決して無視することができないと思うのです。そういう意味でこういう点は、さらにその背景となっております日本人労働者をばかにしたり、あるいは軽べつしたり、あるいはべっ視したり、そういう点について強く反省するように申し入れをしてもらわなければ困る。そのことが、結果的には基地労働者の命が守られることになるわけですから、そういう意味で私たちは、この点を非常に重要視いたしておるわけです。そういう意味で、重ねて強い態度で臨むという気持ちをあらためて披瀝をしてもらいたい。
  38. 山上信重

    山上(信)政府委員 この点につきましては先ほどもお答えいたしましたとおり、米軍人、軍属等の精神面におきましても、かようなことのないようにということを、全体に教育していただくように私ども過去におきましても申し入れをいたしておりますが、今後ともさような線でやってまいりたい、かように考えておる次第であります。
  39. 森田重次郎

    ○森田委員長 関連質問の申し出がありますので、これを許します。山本政弘君。
  40. 山本政弘

    山本(政)委員 ちょっと施設庁長官にお伺いしますが、そういう米軍の暴行事件とかいろいろなことがあった場合、裁判権というのは日本にあるわけでしょう。
  41. 山上信重

    山上(信)政府委員 裁判権の問題については、法務当局から御答弁いただくのが至当かと思いますが、基地内で起きた事件につきましては、現在のところ米軍にあるかと私ども存じております。
  42. 山本政弘

    山本(政)委員 基地内で起きた場合、犯人が逮捕された場合に、犯人の逮捕引き渡しの要求というのはできないわけですか。
  43. 山上信重

    山上(信)政府委員 これはそれぞれの地位協定の各条項に従って、法務当局において御処理されることと存ずる次第であります。
  44. 山本政弘

    山本(政)委員 最後にあれですけれども長官のほうでもう少しきちんとした態度をもって——いま聞きましたら死人も出ている。そして暴行も出ている。婦女暴行という話もちょっとお伺いしている。金品の強奪もある。そんなことが連続、二月から三月に起こって、それをほったらかして抗議一つもできないという、そんな弱腰がどこにありますか。もう少しきちんとやってもらうということを私はひとつお願いしたいと思うのです。  質問をそれで終わります。
  45. 山上信重

    山上(信)政府委員 かような事故が起きました場合には、私どもといたしましては厳重に抗議をいたしておるのでございます。先ほどから声が低かったので私の気持ちが伝わらなかったと存じますが、私どもはまじめに、これは厳重抗議しております。今後ともさような考えでおる次第でございます。
  46. 山本政弘

    山本(政)委員 あなたがそういうことをおっしゃるのだったら、私、再度申し上げますよ。それじゃいままで事件が起こったときに、日本のほうで裁判されたことがありますか、日本の法廷で。アメリカ兵が暴行なり何なり犯罪を犯したときに、それが告発されたことがありますか。おそらくないでしょう。ほとんどがホフマン方式とかなんとかいうことで、賠償によって片づけられているじゃありませんか。その点はどうです。
  47. 山上信重

    山上(信)政府委員 民事事件につきましては、私のほうで賠償の業務等を実施いたしておるのでございます。刑事事件につきましては、法務当局のほうで処理いたしておる次第でございます。
  48. 河野正

    河野(正)委員 いまの点は、私どもも非常に不満でございます。と申しますのは、一つには被害者の生命を尊重する、また残された遺家族の問題、それからさらにこういう暴力問題ということが、いつ基地のすべての労働者に振りかかってくるかわからぬという問題ですね。私どもは、この問題を非常に重要視いたしておるわけですから、ひとつそういう気持ちを十分踏まえて、もっとき然たる態度でアメリカに対して臨んでもらわなければならぬ、こういうふうに思います。  それからさらに、基地労働者をべっ視するというような基本的な姿勢から、こういう暴力事件というものが起こり、基地労働者を殺したり、なぐったり、あるいは凌辱したりということが起こってきておると思うのですが、それと関連していま一つここで取り上げてまいりたいと思いますのは、諸機関労働者の問題がございます。IHAの問題がございます。この諸機関労働者は、ことしの一月現在で九千八百二十名、こう私ども聞いておるのですが、諸機関労働者というものは、元来軍の直接雇用であったものが、裁判の所轄権のことから昭和三十六年十二月一日から政府雇用となったことは御案内のとおりでございます。したがって、このMLCとIHAとは何ら差別される理由はないのです。ところが現実は、協約の規定以上に諸機関労働者の場合は劣悪なものとなっておるということを私どもは見聞をするわけです。  そこで、私どもはこの駐留軍労働者の地位を向上させなければならぬ。地位を低めておるからばかにされて、暴力事件が起こり、命を奪われるということが起こってくるわけです。基地労働者の社会的地位を上げてもらわなければならぬ。ところが、この諸機関労働者のごときは、一応政府雇用にはなったが、現実にはMLCと比べて、非常に差別されておる。そこで全駐労でも、今日までしばしば協約をMLC並みにしなさいという強い要求をやってきたようでございます。この点について、四十一年六月十三日には六項目の要求を示して、施設庁誠意を迫っておるようでございますが、この協約の問題について、最近長官がやられた軍交渉の中で、今月一ぱいにはこの点に対する回答を行なうということがいわれておるようでございますが、この点について、長官お答えをいただきたい。
  49. 山上信重

    山上(信)政府委員 諸機関従業員に対する労務協約の改定の問題につきましては、昨年の十月、米軍参謀長に対して申し入れをいたしました。数項目の改定を話し合っておるのでございます。自来、私のほうの労務部を中心に、米側相当対象者と努力いたしておったのでございますが、再び去る十六日にも私と参謀長との会談を持ちまして、この改定の話し合いをいたしております。今後ともこの解決につきましては、ただいま先生のおっしゃいましたような、IHAの従業員の処理というものが、MLCと著しく差があるというようなことは、同じく政府雇用であるというたてまえからして好ましくないという根本的な考え方のもとに、私どもはこれの改善について、できる限り努力してまいりたい。現在まで四項目の申し入れをいたしておりますが、これらにつきましては、今後できる限り善処してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  50. 河野正

    河野(正)委員 このMLCとIHAというものが差別されておる、——もちろん基本的には基地労働者の社会的地位というものを上げなければならぬ。にもかかわらず、同じ政府雇用でありながら、MLC、IHAという相違によって、その身分なりあるいは労働条件というものが差別されておる。たとえば人事問題、あるいは旅費の問題、こういうような具体的問題の中でいろいろ差別されておる。そこで、極論しますと、MLCにいたしましてもIHAにいたしましても、政府雇用でございますから、自分で雇用しておる労働者の中に差別が行なわれておるということは、私はむしろアメリカ軍よりも、政府の責任だといわざるを得ぬと思うのです。ですから、そういう意味で当然この協約というものは、MLC、IHAが平等になるように改善されなければならぬ。  そこで、この米軍参謀長との間で、今月一ぱいに全駐労に対しても回答するということであったが、今月中に、いま長官がお述べになったような方向で回答されるものかどうか、この際あらためてここで明らかにしていただきたい。
  51. 山上信重

    山上(信)政府委員 一応今月中に返事があるということは、はっきりいたしておりますが、その内容がどういうふうになるかということは、返事が来ない限り明らかに申し上げられない現状でございますが、われわれといたしましては、今後その回答が、どういうふうに出るかということはともかくといたしまして、できるだけ最善を尽くして、そしてこの差別というものがだんだんとなくなっていくような方向で努力してまいりたいということを申し上げておきたいと思います。
  52. 河野正

    河野(正)委員 いまの長官の答えで、だんだんとなくなるじゃなくて、即刻なくしてもらわなければいかぬわけです。政府雇用だって、IHAとMLCによって差別されておるわけですから、こういう差別があってはいかぬわけですよ。どっちも政府雇用ですからね。ですから、われわれは即刻その協約というものが改定をされて、同一のものにならなければならない。それを、だんだん改善していこうというような答弁では、これはちょっと承服するわけにいかぬです。即刻やらなければいかぬわけでしょう。アメリカ側との交渉ですから、結果はどう出るかは別として、長官としては即刻MLCとIHAというものが、同一にならなければならぬというたてまえでやらなければならぬと思うのです。それをだんだん改善しなければならぬというような姿勢では、納得するわけにいきませんよ。ですから、即刻差別をなくするという姿勢でアメリカ側と折衝して、今月一ぱいに回答を出させるんだ、こういうお答えをここで願わないと、ちょっと引き下がるわけにいきませんね。この点どうですか。
  53. 山上信重

    山上(信)政府委員 すみやかに解決に努力いたしたいと存じます。
  54. 河野正

    河野(正)委員 そこで、労働大臣に最後の締めくくりを願いたいと思うわけですが、いずれにいたしましても政府雇用である。それは諸機関労働者であろうとMLCであろうと同じでありますけれども政府雇用であるこの基地労働者というものが、いまのように、あるときには生命の危険にさらされておる、あるときには生活権の脅威にさらされておる、こういう実態があるわけですから、やはり労働行政の最高責任者として、基地労働者についてはその雇用というものが安定するように、また生命というものがしょっちゅう脅かされてはいかぬ、そういう方向で、これを救済する何らかの道というものは、私どもはいわゆる駐留軍労務者雇用安定法以外にないというかまえでございますけれども、それはそれなりに、いろいろ政府には政府なりの見解がございましょう。とはいいながら、やはりいま申し上げたように、常に基地労働者というものは生命の危険にさらされておる、あるいは生活権の脅威にさらされておる、こういう事態を解決するための方策というものを、すみやかに具体的に確立してもらわなければならぬというふうに考えておりますので、その点について、最後にひとつ労働大臣誠意ある御見解を承っておきたいと思います。
  55. 原健三郎

    ○原国務大臣 お答え申し上げます。  第一点は、MLCとIHAとの間に、いろいろ差がある、これは同じいわゆる政府雇用でございますので、差があることはまことに好ましいことではございません。私どもすみやかにその差をなくしたいと思っております。  それから第二の、いわゆるこういう駐留軍労務者の方々の雇用の安定その他福祉の増進等につきましては、さいぜん防衛施設庁長官からお答えもございましたが、いまアメリカ軍に四項目の要望を出しておりますので、防衛施設庁と私ども労働省もよく協力いたしまして、すみやかに向こうの解決策が出されるよう協力して、善処を積極的にいたしていきたい、そして河野先生の御期待に沿うようにいたしたい、こう考えております。
  56. 河野正

    河野(正)委員 この労働基本権に関連をして、いま一つお尋ねをしてまいりたいという案件の中に、次のような問題がございます。  そこで、この点は非常に重大な問題でございますから、まず労働大臣に見解を承りたいと思うわけですが、これは去る昭和四十一年の十月人事院勧告完全実施を要求して行なわれた公務員共闘第八次統一行動の際のデモ事件に対して、この三月二十四日東京地裁で大関判決が行なわれたわけでございます。この判決の中できわめて大きな特色というものは、デモは憲法に保障された表現の自由であって、形式的に公安条例や許可条件に違反したということだけで処罰することは適当でない、こういうことで、この四十一年十月の統一行動に参加した皆さん方に対しては無罪の判決が行なわれた。これは憲法で保障された表現の自由というものがいかに大きな意義を持っておるか、そういう意味一つの大きな新しい判例だと思います。このことは後ほど申し上げたいと思います福岡県の庁内管理規則の問題と基本的に関連をしてまいりますので、ぜひひとつこの際この判決に対しまする労働大臣の所感というものを承っておきたい、かように思います。
  57. 原健三郎

    ○原国務大臣 お説のとおり、そういうデモは表現の自由の中に入るものである、こう思っております。
  58. 河野正

    河野(正)委員 表現の自由に入る。そうすると、形式的な公安条例だとか、あるいは許可条件というよりも、むしろ表現の自由のほうが優先するというところがきわめて特徴的であって、このことはいろいろあとから述べまする問題と関連いたしますので、特にひとつお耳にとどめておいてもらいたいと思います。したがって、このデモというものは表現の自由に基づく正しい行為であるということに、この判例ではなっておるわけです。したがって、今後の労働運動にも私は非常に大きな影響を与えるものであろうというように考えておるわけでございます。  この判例に関連をして、私は福岡県の庁内管理規則の問題について質疑を行なってまいりたい、こういうふうに考えます。この福岡県の庁内管理規則というものは、もちろん県庁内の管理権というものは知事にあるわけですから、その管理規則を、根本的に私どもは否定するものではないわけですけれども、ただ、いま東京地裁の大関裁判で判決が行なわれましたような、そういう憲法で保障された表現の自由と、いわゆるこの庁内管理規則というものの関連というものが当然出てくると思うのです。そこでわれわれは、知事の管理権というものを否定するものではございませんけれども、おのずからいま申し上げましたような基本的な点から、知事の管理権にはある一つの範囲というものが当然考えられなければならぬ、また規制が行なわれても、その規制を行なう限界というものが、当然出てこなければならぬ。したがって、この管理規則を策定する場合においても、いま申し上げまするように、管理権の範囲あるいは限界を越えるということは、私はこれは許されぬ行為だというふうに考えなければならぬと思います。  そこでこの際、大関裁判も頭に入れながら、この管理規則のあり方についての御見解を、ひとつ大臣からお聞きをいたしておきたい、かように考えます。
  59. 原健三郎

    ○原国務大臣 デモが自由の表現という中にあるというのはそれは一般論で、私もそのとおりだと思っております。(「一般論じゃない、原理論だ」と呼ぶ者あり)原理論と申し上げてもよろしいのですが、それで福岡の県庁の内部に管理規則があるとか、私、その管理規則を見ておるわけでもございませんし、どんなことをやっておるのかはっきりわかりませんし、お説にもありましたように、その限界—— 具体的なものになりませんとどうなるか、その管理規則、とんと私もわかりませんから、もう少し研究してから答弁いたしたい。
  60. 河野正

    河野(正)委員 私がいま申し上げたのは、今度の大関裁判で、この表現の自由というものが非常に優先すべきだと思う。——論議が中断しましたけれども、いずれにしても、私がここで申し上げておるのは、たまたま福岡県でそういう事情があったから福岡県ということで申し上げているのであって、いまここで論議いたしておりますのは、一般論として、管理規則というものが知事の権限内にあるものであるけれども、それには範囲と、あるいはやり方についての限界というものが、当然考慮されなければならぬ。何でもかんでも、どんな範囲内にでも管理権を行使してはならぬということだと私どもは考えておるから、その点について管理規則のあり方については、一体どうだという意味でのお答えを願いたい、こういうことを言っておるわけですね。
  61. 松永正男

    ○松永政府委員 県庁の管理規則につきましては、施設の管理権の主体である知事がこの規則を定めるということは、通常の状態だと思うのでありますが、県庁というものの性格からいたしまして、あるべき管理の原則というものは、御説のごとく、何でもかんでも規制をしていいというものではなくして、あるべき姿というものはあるというふうに私ども考えます。
  62. 河野正

    河野(正)委員 いずれ自治省からも御出席になると思うので、その際触れてまいりたいと思うわけですけれども、いま労政局長からお答えになったように、どういう範囲でも管理権があるからできるんだ、あるいはどういうきびしいことでも管理権があるからできるんだということは、管理権の乱用ではないかということにも通じていくと思うのです。そういう意味でおのずから範囲というもの、あるいは限界というものが当然考慮されなければならぬ。そういう考慮の中で、管理規則というものが設定されなければならぬ。これは単に福岡県の庁内管理規則にとどまらず、管理権すべてのものに通じていく問題だと思うのです。特に、時間の制約等もございますから、若干具体的な問題に入りたいと思うわけですが、この福岡県の庁内管理規則は、自衛警備員の配置、禁止行為、許可、質問、こういった十七条によって成り立っておるわけです。  その具体的な例を一、二あげますと、禁止行為の中には、「面会」の問題がある、「寄付の強要」の問題がある、あるいは「乱暴な言動又は嫌悪の情を催す行為」、それからさらに「示威又は喧騒にわたる行為」、こういった、禁止行為の中にはいろいろな事例というものがあげられておるわけです。そのことが、一つには地方自治の住民尊重の精神に反するという、憲法九十二条違反の問題があると考えられるし、いま一つ、先ほど申し上げましたような憲法二十一条の、表現の自由から見て、行き過ぎじゃないかというようなことが考えられるということでございます。それからさらに、「許可を受けるべき行為」の中に、ビラ、ポスター、看板、それから旗、プラカードの配布行為、または結着ですから、ポスターを張ったりビラを張ったりするということだろうと思うのです。ところが、こういった点は、やはり先ほど私は冒頭で、基本的な問題でございますから、東京地裁大関判決を申し述べたのでございますけれども、こういう憲法で保障された表現の自由であるとか、あるいは住民尊重の、憲法九十二条の地方自治の基本原則であるとか、そういうものを受けてこういう規則というものは、立案されなければならないことだと思うのです。ところが、そういう点から見ますと、この具体的な例でございますけれども福岡県庁の管理規則というものは、いささか管理権の行き過ぎではなかろうか、乱用ではなかろうか、こういう問題が提起されておるわけでございます。  そこで、この点はむしろ行政局長からお答え願ったほうが適切だと思いますけれども、いま申し上げます問題の中に、一つには、県庁には住民が出入りするという問題がございますから、部外者の問題がございます。一つには、県庁内で県庁の職員組合というものが、組合運動を行なう権利があるわけですから、そういう意味では組合員の表現の自由というものが確保されなければならぬという問題が、いま一つあるわけです。  そこで後段の問題についてはむしろ労働省関係の問題ですから、こういう具体的な例をあげましたけれども福岡県庁の管理規則というものが一体どういう意味を持っておるのか。私どもは、いま申し上げましたように、一つには住民の権利というものを抑圧しているのではないか、一つには労働者の表現の自由、組合運動というものを抑圧しているのではないか、こういう議論でございますが、そういう問題と関連をするのではなかろうかということをこの際指摘をして、労働省の見解をまず承っておきたいと思います。
  63. 松永正男

    ○松永政府委員 県庁というものは、県政を行なう場所でございますので、その目的に照らしまして、県庁の庁内の施設管理がいかにあるべきかということがきまってくると考えるわけでございます。先ほど御指摘ございましたように、これに対しまして、県民が県庁に陳情したり、あるいは意見を述べたり、あるいは必要な手続等のために県庁を利用するというような、県民一般がどのように利用するかという問題が一つと、それからおっしゃいましたような、たとえば福岡県庁の職員組合の組合活動と県庁の施設管理権の問題、二つの側面があるのではないかと考えます。  その最初のほうにつきましては、先生もおっしゃいましたように、自治省のほうから見解を申し上げるほうが適当ではなかろうかと思いますが、第二の面につきましては、一般的に労働組合運動が、団体交渉等によりまして、労働条件の改善等の活動を行ないますとともに、その趣旨を宣伝する、表現をするという、宣伝活動というものも伴うわけでございます。したがって、組合員に組合の運動方針を徹底するというような面から、職員の団体におきましても、たとえばその運動方針を掲示をして、そしてこれの徹底をはかるという場合が多くございます。その場合に一般的にはたとえば——これは民間でも共通の問題でありますが、取りきめを行なうなり、あるいは規則に基づきまして、一定の組合用の掲示板をきめまして、そこに組合が掲示をするというようなことが通常の姿だと思います。したがいまして、表現の自由と申しましても、施設のどこでも好むところに組合が自由に何でもできるというものではなくして、やはり一定の秩序に基づきまして、定められた規定のところに組合の掲示板を設置し、そしてそこに掲示をするということになるのではないかと思います。具体的に福岡県庁でそのような組合活動、組合の表現というものがどのような関係になっておるかということについては、私ども詳細存じておりませんが、通常の場合におきましては、何でもかんでも自由たできるというようなことではなくして、やはり一定のルールがありまして、それによって定められた場所に、組合の意思表示をするというのが、普通の状態ではないかと考えます。
  64. 河野正

    河野(正)委員 問題は要するに、規則の内容が具体的には問題になると思うのですが、たとえば先ほども申し上げましたように、禁止行為の中に「面会」という問題がございます。これは組合の交渉権というものが当然包含されるでございましょうし、それから「乱暴な言動又は嫌悪の情を催す行為」、これも非常に微妙でございますね。一体どういう程度のものが乱暴であるのか、どういう程度のものが嫌悪の情であるのか、非常に問題を残す項目だと思います。それから示威行為、これが禁止行為になっておるわけですが、これは表現の自由ということで大関裁判では明らかに認めておる。大蔵省にすわり込んでも、それは表現の自由だということで無罪になっておるのですね。そうすると福岡県の場合は、「庁内においては、次の各号に掲げる行為をしてはならない。」「示威又は喧騒にわたる行為」、デモはいかぬということですね。これは明らかに大関裁判の精神に反しておるし、それから「庁内の美観を損する行為」、これはおそらくビラ張り等をいっておると思うのですが、これもどの程度が美観を損するのか。こういうふうにいろいろ——大関裁判は私どもが見ていろいろ感ずるところがあるわけですけれども、この福岡県の庁内管理規則というものは、極端にいうと、この外来者、県庁に出入りいたします住民の問題もあると思うのです。たとえばいろいろ陳情に行く、あるいは抗議に行くというような問題もありましょう。ところが、面会の禁止というようなことで、非常に住民のこの表現というものが抑圧されるという危険性がある。ですから、単に組合運動を抑圧ということだけでなくて、住民のこの表現の自由というものも合わせて抑圧されておるというのが、私は福岡県の県庁管理規則の特色だと思います。  それから、時間がございませんから続いて申し上げますと、この「許可を受けるべき行為」の中にもいろいろ問題がある。ビラ張り、旗を立てたり、懸垂幕をたらしたり、こういう点もさることでございますが、その際そういうことがしたいならば、一週間前に許可を受けなさいということですね。ところが、それが先ほど労政局長からお話がございました、県庁職員組合には団体交渉権がある。そうすると、交渉の内容というものをすみやかに組合員に周知徹底させなければならぬのですね。それが一週間前に許可を受けなければならぬということになると、これは全く組合の情宣活動というものは抑圧されることになりますね。たとえば私どもが、そういうことが許可されるかされぬかという心配もありましょう。ところが、許可されてみても、団体交渉して、直ちに組合員に対して周知徹底させなければならぬ。ところが、一週間しなければできないわけですね。これはもう要するに、ビラを流したり、あるいはプラカードを立てたり、ポスターを張ったり、こういうことはその一週間前ならば許可いたしますといっても、一週間ではとてもとても間尺に合わぬケースがたくさんありますね。これは先ほど労政局長御指摘のとおりです。団体交渉をした、交渉結果はこうであったということを周知徹底させなければならぬ。それで組合の意思というものを聞かなければならぬ。ところが、それが一週間もしなければならぬということになると、とてもとても、組合運動というものは円滑に進めていくわけにはいかぬということは、当然こういうことになるだろうと思うのです。そこで、住民の中からは、たとえばいろいろ営業権の許可問題で面会したい、あるいは陳情したい、あるいは抗議をしたいといっても、一週間前にやらなければならぬ。それではとてもとても住民としても、われわれの意思というものを県に反映さすことはできぬのじゃないかという議論もございます。こういうような問題が具体的にたくさんあって、それが結果的にはトラブルの原因になっておるようでございます。ですからこの点はむしろ行政局長お尋ねしたほうが適切と思いますけれども、いまのような規則では、後段の組合運動の抑圧という問題に通じてまいるわけですから、そういう意味で私どもは重要視しなければならぬ。こういう意味で、こういう庁内管理規則というものが、適当であるというふうにお考えであるかどうか、この際、この点についてお尋ねをしておきたいと思う。
  65. 松永正男

    ○松永政府委員 ただいま、数点おあげになりまして御質問でございますが、たとえば乱暴な言動、あるいは嫌悪の感を与えるというのは、その表現どおりに確かに乱暴なことはいけないのでありますが、要は運用の問題ではないかと思うのでございます。  それから組合運動との関係につきましては、私ども承知しておりますのは、組合掲示板というのは庁内にございまして、そして自由に組合がそれを使えるということになっておるように承知をいたしておりますので、その他の、定められた場所でないところに何か掲げるということについて、いまおっしゃいました十五日でございますか、許可を要するというようなことになるのではないか。これは私どものほうで、労政関係の労政課がございますので、それに聞きましたところでは、職員団体のその組合員に対するいろいろな伝達事項等の掲示板は、非常にたくさん整備されているようでありまして、そこには自由に掲げられる、こういうふうに承知をいたしております。したがって、その面は問題はないのではないか。  それからビラの配付あるいはデモ等につきましては、おっしゃいましたようにデモが表現の自由である、これはもうおっしゃるとおりでありますが、県庁という施設が、県民全体のための施設であるということから考えますと、県民の方々ができるだけ広く、そういう県庁というものを利用ができるというたてまえ、そしてそれが秩序立って、整然として、平穏な状態で利用できるということが一番の目標ではなかろうか。その場合、たとえばデモにもいろいろあるかと思うのでありますが、たとえば庁舎の中に非常に多数が隊伍を組んで入りまして、ジグザグ行進をするというようなことになりますと、一般の人の利用というものが非常に妨げられる場合も出てくるというふうに考えられますので、おっしゃったように、表現の自由というのは尊重されなければなりませんが、やはりその施設の利用目的ということから考えて、それに合致するような、秩序正しい利用の方法というものをつくるのが管理規則ではなかろうかというふうに考えられますので、具体的にそのどこからどこまでというような限定になりますと、私どもも管理規則をよく勉強してみないとわからないのでございますが、それにつきましても合理的な規制の範囲であれば、これは施設管理権というものの発動でしかるべき内容のものがあるというふうに考えるわけでございます。したがって、いろいろな方のいろいろな要望、利用というものが、調和できるような秩序立った県の施設の管理ということになるかと思います。たいへん抽象的でございますが、要は文言だけでなくして、運用が、そのような調和のとれた形で運用されるかどうかということにかかってくるように考えられます。
  66. 河野正

    河野(正)委員 その運用にかかってくることは私どもも承知をしているわけですけれども、たとえばいま申し上げたような許可事項の中に、ビラの配布等がございますね、掲示板は別としても。ですからこのビラの配布は、別に掲示板と違いますからね。これは固定してやるわけにはまいりませんよね。いま労政局長から、一般論としての抽象的なお答えがあったわけですけれども、具体的に見てこれが適当であろうかというような点が非常に多い、この点を私どもは指摘をしておるわけです。ですから、具体的にはケース・バイ・ケースという問題がございましょう。ただ基本的には、この大関裁判ではございませんけれども、表現の自由というものが、それがまた憲法九十二条の地方自治に対しまする基本原則というものが——大関裁判の特色というものはこの表現の自由、憲法二十一条というものがいろいろな規則にも優先するんだ、こういうことをいっておると思うのです。  そこで私は、大関裁判だけをあげましたけれども、一、二判例がございますから、この際簡単に申し上げておきたいと思います。  一つは昭和三十八年十一月二十七日の判決がございます。これは新潟電務区新津電修場事件であるわけですが、この際の判決によりましても、単に管理者側の意向に反するという理由だけで、この組合掲示物を撤去する行為というものは許されぬというわけですね。組合が出しておるたとえば掲示物を、それが管理者側の意向に反するということだけで撤去することは許されぬというふうな新潟裁判の判決が一つございます。  それからもう一つは、弘南バス事件の判決が昭和三十九年四月十四日、仙台の高裁で出ておるわけですが、これも一方的な慣行否認ということで組合活動を不当に抑圧したり、制限したりする意味で施設管理権を乱用することは許されない、こういうふうに書いてあるんですね。  ですから、いま申し上げますように、この組合運動というものは、この大関裁判ではございませんが、やはり憲法の精神にのっとった組合活動であれば当然許されなければならぬ。憲法に許された行為を規則によって処罰をしたり、処分をしたり、——これはもうすでに、ことしこの県庁職員組合の中で四名が庁内デモをしたということで処分を受けている。いずれこれは裁判で争われると思いますけれども、おそらくいま申し上げましたような判例によりますというと——デモをやった、しかも、この四名のうち二名はデモに参加していなかったのに、誤認をして処罰をされた、戒告処分を受けたというようなきわめて特異な例でございますけれども、そういう事例がございます。こういうことになりますと、単に一方的な知事の解釈によって規則というものが成り立つものじゃないということが、先ほどの憲法の精神からも、さらにはいま二つの判例を申し上げましたが、二つの判例からも言うことができると思うのです。そういう意味でどうも今度の福岡県がとってまいりました庁内管理規則というものは、管理権の乱用であると私どもは断定せざるを得ぬと思うのです。  特に私ども見聞いたしますると、この県当局の姿勢として、どうも住民敵視の姿勢というものが非常に露骨にあらわれている。これは自治省おいででございませんから、実は全国の状況を聞きたいと思ったのですけれども、この住民を最初から敵視するという姿勢というものが非常に露骨に出てきておる。それは、私はここにも写真を持ってきておりますけれども、集会等を企画しますと退去命令が出る。そうすると、何時何分退去命令——何時何分というところがあけてある。そこだけ紙を張ることになっているのですね。そして染め抜きのたれ幕が用意されておって、人間が集まるとぱっとそれが出て拘束されるわけですね。こういう染め抜きの退去命令なんという、いつでも来いというばかりに、何時何分というところだけあけてある、そこだけ紙を張るようになっている。こういうような姿勢に私は問題があると思うのです。それは、個々の規則の内容についてはいろいろ解釈がございましょう。ですけれども、いま根本的に流れるこの福岡県の姿勢に私は問題があると思うのです。それはおそらく県に限らず、庁内管理規則というものがあるわけですから、したがって、いろいろ問題があれば警告を発するということはあると思います。ところが福岡県の場合、たれ幕が四方八方から下げられる。そういう用意がなされているわけですね。私はそういう姿勢に問題があると思うのです。ですから、労政局長からいろいろ苦しい答弁があっているようですけれども、どうもそういう姿勢を背景としてこういう管理規則が出てきたというところに非常に大きな問題があると思うのです。  ですから、むしろ福岡の住民や、あるいは組合員というものがいろいろ心配をしておる。たとえば面会の問題についても規制が行なわれる、十名以上いかぬ、あるいは五十名以上集まっちゃいかぬ。それなら、九名なら、十名なら職務に支障がない、十一名なら職務に支障がある、こういうのもおかしな現象であって、五十名の集団ならよろしいが、五十一名ならいかぬというのも、これはおかしな規定のしかたであると思うわけですが、いずれにしても、この背景を流れます住民敵視の姿勢というものの中から、今度の県庁の管理規則が生まれておる。そこらに、私どもの指摘しなければならぬ理由があると思うのです。そういう意味でいま申し上げましたような、いろいろお答えはあったわけですけれども、たとえばビラまきにしても、一週間前に許可を受けなければならぬというような具体的な事例もございますので、そこで、庁舎内で廊下の中をデモるという事例が出ましたけれども、要するに五十一名以上は運動場を使ってはいかぬというわけですから、ですからそういうことが行き過ぎでないのか、管理権の乱用でないのかどうか、私はおのずから判断ができると思うのです。そういう意味で、自治省おいででございませんから、重ねてひとつ労働省のほうからお答えを願いたいと思います。
  67. 松永正男

    ○松永政府委員 県政の態度ということで御意見がございまして、私から申し上げるのはあるいは適当ではなかろうと思うのでございますが、どこの知事さんも県民の総意で選挙をされた方でございますので、県民を敵視するというようなお考えは、常識上あり得ないというふうに私ども考えるのでございますが、ただ、庁舎管理と、それからその他のいろいろな住民の権利、あるいは自由の調和ということを、どの点で調和させるかというところが一番問題だと思うのでございまして、具体的にいまおっしゃいましたようなことも、施設がどのような状況になっておるか、私どもも詳細には存じませんので、具体的にはもう少し検討をさせていただきまして、また別の機会にでも意見を申し上げさせていただくということにお願いをいたしたいと存じます。
  68. 河野正

    河野(正)委員 自治省おいででございませんものですから、勢い二つの問題の一つだけをお尋ねするという結果になっておるわけですが、いま一つ、私どもが問題にしたいと思っておりますのは、なるほど局長から、知事が住民の付託を受けて県政の運営をやっておるのだから、まさか住民敵視の精神というものはないだろう。これは亀井知事が労働省出身でございますから、そういう御意見もあるかもわかりませんけれども、そういうことでなくて、やはり適正な判断でひとつ御答弁を願いたいと思うのです。そうしなければ、私どもここで、亀井知事を参考人として呼んでやらなければならぬということになりますから、そういう先輩に礼を尽くされることはけっこうですけれども、この国会の場というのは、先輩、後輩はないわけです。要するに労働行政として、正しい判断に立ってお答えを願うということが望ましいわけですから、そういう意味でひとつお答えを願いたいと思うのです。  そこで、いろいろ申し上げても水かけ論になりますから、私はあらためて申し上げたいと思いますが、たとえば県警察が、この四月一日に実施ということで、県警庁舎管理規則というものを策定をしたわけですね。ところが県庁と県警とは、福岡県の場合は同じ庁舎に同居しておるわけです。ですから県庁職員というものは、県警だろうが、県庁であろうが、同じ建物に同居しておるわけですから、しょっちゅう出入りをするわけです。そこで、県警が県庁の管理規則を受けて規則をつくるという点については、私どもは異論を申し上げるわけではございませんが、ところが同じ地域内に、しかも同じ建物の中に同居しておるわけですから、県庁の管理規則よりもきびしい管理規則を県警がつくるということは、いかがなものだろう。それは別個な地域であれば、これは別ですね。そうすると、それ相当の管理規則をまたつくらなければならぬ理由というものはおのずから生じてくるでしょうから別ですが、同じ地域内に、しかも同じ建物の中におって、警察だけはこの県庁管理規則よりもさらにきびしい禁止条項等をつけ加えてつくるということは一体いかがなものだろうか。こういうところに、私どもがいろいろ疑惑を持つゆえんのものがあると思うのです。ですから、これはむしろ私は警察権力の乱用ではなかろうか、こういうことを私ども考えるわけですが、この点についても、自治省おいででございませんから、労働省のほうからひとつ組合運動を抑圧するという意味での一面の答えですけれども、——それは両面あります。住民と両面ありますが、一面の答えですけれども、一応お答えを願いたいと思います。
  69. 松永正男

    ○松永政府委員 警察の庁舎管理が、何か特別の規則になっておるということでございますが、この面になりますと、ますますどうも的確なお答えを申し上げかねますので、ただいまおっしゃいました御意見を、所管の自治省あるいは警察等にも伝えまして、よくその点検討してもらうようにいたしたいと思いますが、私から、適当であるかどうかというようなことになりますと、ますますどうも御答弁申し上げかねますので、御了承願いたいと思います。
  70. 河野正

    河野(正)委員 これは県警が別個に規制するという意味はわかるのですが、しかし、福岡県の場合は、同じ場所に、しかも建物も同じでしょう。ですから、何も県庁の管理規則に加えて、きびしい禁止条項その他を加える必要はないではないかということを言っているわけですから、これは福岡県に限らず、一般のこととしてお答えができると思うのです。それが別の地域にあって、別の建物によってやる場合は、またそれ相応の理由が出てくるかもしれませんけれども、同じ地域内ですね。しかも、同じ建物の中にあるのですよ。それを、なぜ警察で庁舎管理にきびしい条項を加えなければならぬか、こういうことを言っているわけです。ですからこれは、福岡県に限らず一般のこととしてお答えできると思うのです。ですから一般のこととしてお答え願ってもけっこうだと思います。
  71. 松永正男

    ○松永政府委員 どの程度別の規則になっているかも実は承知しておりませんので、申し上げかねるのであります。たとえば警察の庁舎につきまして、全国的にそれぞれたくさんあるわけでございますので、たとえば県警本部で、福岡だけ特にきびしいのかどうか、その辺につきましても、調べてみないと、どうも全く自信がございませんので、その点も含めまして関係方面に連絡をいたしまして、先生の御質問の趣旨も伝えまして、検討をしてもらうということでごかんべんを願いたいと思います。
  72. 河野正

    河野(正)委員 東北大学の清宮名誉教授は、管理権というものは否定するものではない。しかし、福岡県の庁内管理規則は、これはもう当然行き過ぎで、住民のためにある県庁が、結果的には住民を縛る結果になっている。このことは、地方自治の住民尊重の精神に反するし、憲法第九十二条の地方自治の基本原則にも反するし、また憲法二十一条の集会、表現の自由にも反するということを指摘をせられているのでございます。それから先ほどいろいろ指摘をいたしましたように、具体的な事例におきましても、私どもが常識で考えることができないような事態がたくさんあるわけです。単にデモをやったということで四名戒告処分にしている。ところが、東京地裁の大関裁判では、デモやってよろしい、正当な行為である、こういう判例も出ているわけです。これはいずれ裁判で争うことになると思うのですが、しかもその四名のうちの二名は、デモに参加していなかった、誤認をして処罰しているというような特異なケースでございます。  そこで、自治省おいででございませんので、話がちぐはぐになりましたが、いずれにしても、きょうは主として労働問題を中心としてのこの庁舎管理規則の問題ということで終わりました。いずれにしてもこの問題については、あらためてこの委員会で追及をしてまいりたいと思いますので、実態を——何も知事が労働省出身だということで遠慮することは要らぬですよ。おそらく大臣は官僚出身ではございませんから、そういう遠慮をされぬと思うので、これはぜひひとつ徹底的にその実態を究明されて、その上に立ってあらためてこの委員会で論議していきたいと思います。  この管理規則というものが、労働運動を抑圧する。要するに、県庁の広場で組合運動をやるのは、あたりまえのことでしょう。企業の中でやるのは、あたりまえのことでしょう。その県庁の中においてすら、五十人以上は集まることができないということでしょう。十名以上では、知事に交渉を申し入れることはできない。しかも、一週間前に面会を申し込まねばならない。いつ知事との交渉が必要になるかわからないですね。ですからそういう意味で、やはりこの管理規則というものは、住民に対する規制であると同時に、組合運動に対しても、非常に大きな規制だと思うのです。  最後に、この点についての前向きの御答弁を労働大臣からいただいて、あと法案審議もございますから、私の質問を終わりたいと思いますので、ぜひひとつ誠意ある答弁を願いたいと思います。
  73. 原健三郎

    ○原国務大臣 るる御説拝聴いたしましたが、その福岡県庁の管理規則というものを取り寄せて、その真意を確かめて、検討して、あらためて善処いたしたいと思っております。      ————◇—————
  74. 森田重次郎

    ○森田委員長 次に、内閣提出職業訓練法案を議題として審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。枝村要作君。
  75. 枝村要作

    ○枝村委員 本法案の審議に入る前に、労働大臣に伺っておきたいことがあります。  中央職業訓練審議会は、職訓法の第三十条によって設けられておるのでありますが、これは、大臣の諮問に応じてそれぞれ定められた重要事項を調査審議して関係行政機関に建議する、そういう役目を持っておるのであります。この建議した事項の取り扱いについてのお尋ねでありますが、建議の基本的な精神、その答申の具体的な内容は、これはいささかも曲げることのないように尊重して措置しなければならないと考えておりますが、その点についてのお答えをお願いいたしたいと思います。
  76. 原健三郎

    ○原国務大臣 方針としてはそのとおりでございます。
  77. 枝村要作

    ○枝村委員 方針についてはそのとおりということのお答えのようでありますが、いま私が申し上げましたような精神尊重、これに基づいて立法措置をするということに理解してよろしいかどうか。
  78. 原健三郎

    ○原国務大臣 その答申の基本的な精神は、それを踏まえて当然立法すべきものである、こう考えております。
  79. 枝村要作

    ○枝村委員 今日までいろいろな審議会がありまして、数多くの答申がなされております。私がこう見てまいりましても、その答申を尊重して、少なくともその基本をひん曲げたり何かするようなことはなかった、政府はやはり忠実にそれに基づく立法措置その他を行なってきておる、こういうふうに見ておるのでありますが、間違いございませんか。
  80. 原健三郎

    ○原国務大臣 他省のことはさておいて、労働省に関する限りは、その審議会の答申を尊重して、それを法律案に盛り込んでおる、こういうように考えております。
  81. 枝村要作

    ○枝村委員 私もそういうように信じておりますし、大臣もそういうように答弁されましたので、お考えを確認しておきたいと思います。そのことは、私が申すまでもなく、審議会方式をとっておるということは、広く一般の有識者からそういう意見を聞きながら民主政治の根本を確立していくということにあるのであります。そのために、審議会はきわめて高い権威を持っておるし、その権威をさらに高めるように、行政機関、政府はやはり措置しなければならぬということになっておると思うのでありまして、大臣のいまの御答弁は、そういうことをそうだというようにはっきりと決意として表明されたというように考えております。  ところが、今回の職訓法の改正にあたりましては、四十四年三月十五日、中央職業訓練審議会の会長内田俊一名で労働大臣に対して答申された職訓法案要綱案を基礎に立法されたものであると私は考えておりますが、それに間違いございませんか。
  82. 原健三郎

    ○原国務大臣 そのとおりと心得ております。
  83. 枝村要作

    ○枝村委員 その要綱案は、四十四年二月五日付の労働省発訓第七号をもって諮問したものであるということに間違いございませんか。
  84. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 中央職業訓練審議会に対しましては、御指摘のごとく、労働省発訓第七号、四十四年二月五日付で諮問をいたしました。
  85. 枝村要作

    ○枝村委員 では、審議会でこの要綱案が中心になって審議されたと思うのでありますが、審議の内容を詳しく説明要りませんが、どれくらいのたとえば修正がなされたものか、あるいは出された要綱案原案がそのまま決定されて答申となってあらわれたのかという点について、簡単でよろしゅうございますから説明をお願いいたしたいと思います。
  86. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 当初審議会に対しましては口頭で諮問をいたしまして、その際要綱案の案をお示しいたしました。委員各位の御意見を承りまして、最初口頭でお示しいたしました。要綱は、審議の過程を参照いたしまして、若干修正をいたしました。そして、二月五日付の文書をもちまして、その修正されたものを正式の諮問案として審議会に諮問いたした次第でございます。
  87. 枝村要作

    ○枝村委員 それでは、ただ一部ちょっと修正されたという程度でございまして、大体、政府が諮問いたしました要綱案なるものは、あまりいらわれずに三月十五日付で答申されておるということになるわけであります。答申の中にもありますように、大体これは妥当なものと認められ、若干の付記事項をつけてなされております。これは御案内のとおりでありますが、ここでちょっとお聞きするのですが、出された要綱案、承認された要綱案のほかに、何か労働省が別の要綱案なるものを各委員の手元まで渡されたというようなことはありませんでしょうね。それ一本しかないわけなんでしょう。
  88. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 審議会に諮問いたしました要綱案というものは、正式には一本でございます。その審議会に諮問いたしまして答申をいただいた要綱案をもとに法案をつくりまして、国会に法案並びにその要綱というものを出しました。これは審議会の答申しましたものと多少の違いはございます。
  89. 枝村要作

    ○枝村委員 ここに出されました要綱案というものがあります。これは答申用なんですか。
  90. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 はい。
  91. 枝村要作

    ○枝村委員 間違いないとすれば、またここにふしぎなことが発見されるわけであります。その点についていまからお尋ねするわけでありますが、国会にいわゆる提出されました法案とくっつけての要綱案を含めた関係資料、これのものと答申された要綱案とは、比較してみますと、大幅な相違があることが発見されるわけであります。全体として、いわゆる削除、修正された個所が、私の数えただけでも三十数カ所ある。それは字句修正その他であり得ることがあるのでありますけれども、その中で特に重要な点が、非常に大きくひん曲げ、削られておるということであります。これは私はきわめて重要な問題だと思うのです。たくさんありますが、その中の四つばかりを申し上げてみましょう。  具体的にあとから質問いたしますけれども、「国、都道府県、事業主その他の関係者の責務」のところで、(一)と(四)が全部削られております。それから二つ目は第三の「職業訓練の体系」で、「教科書等」のところの(一)は全部削除されている。三番目に第四の「公共職業訓練施設等」で、「公共職業訓練施設の長」のところでは、大事な基準を設定しようとするこの条文が削ってある。第四に第十一の「その他」の「安全衛生等」のところでは、これは全部削られておる。そのほか、先ほど申し上げましたように、部分修正がたくさんある。これは要するに、労働省がかってに答申の要綱案を変質させたか、ないしは変更させているのではないかという、十分な疑いが持たれるわけであります。いまその点についての総括的な質問ですが、どのようにお答えであるか、お聞きしたいと思う。
  92. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 私からまずいきさつを御説明申し上げます。  審議会から答申をいただきまして、その答申の要綱案をもとにいたしまして、急遽法案を作成いたしまして、これを関係各省と協議いたします。そうして法制局の審議を受ける、これが普通の順序でございます。この法制局の審議その他関係各省との折衝におきまして、私どもの気がつかなかったことに多少の手直しがあることは通例でございます。特に今度の法案につきましては、特に訓示規定等がどうも冗長に流れるというような御指摘が方々からございまして、若干の整理をいたしたわけでございます。御指摘の点につきましても、おおむね御指摘のような修正がなされておりますが、全体といたしまして、私は労働省といたしましては、答申の基本的な性格というものには支障のない程度の手直しであるというふうに考えておる次第でございます。
  93. 枝村要作

    ○枝村委員 気がつかなかったとか、各官庁の間で意見の相違があったとか、あるいは大筋では間違いなかったとか、これは私は全く詭弁だと思うのです。労働省がいわゆる要綱案なるものを出したのは、皆さんが自信があり、しかもいろいろな方面と折衝した結果、これが最善なものとして出されたものであるのでありまして、しかも、それを審議会がそれでよろしいとして答申したものを、その後のいろいろの折衝とか気づかなかったということでお逃げになろうとするのは、やっぱり基本的な労働省の態度として欠陥があるか、ないしは労働省の態度そのものに基本的な誤りがあるか、どちらかだと思うのです。その点を私はいまから追及していきますし、また法案の審議に入りましたら、いろいろな逐条審議の中ではっきりさせていきたいと思いますが、そういう基本的な労働省のとった態度に誤りがあると私は思うのです。  そこで私は、ほかの皆さんまだわからぬ人がおるかもしれませんから、どういう点を削除したかというのを、いまから説明していきたいと思うのです。  先ほど言いました第一の部面でありますが、「国、都道府県、事業主その他の関係者の責務」のところで、一番にあげておる「国、都道府県及び雇用促進事業団は、この法律による職業訓練を行なうために必要な施設の整備充実に努めなければならないものとすること。」、これを全面削除ということは一体どういうことかということなんです。それから、その項ですからあわせて言いますが、(四)では、「国、都道府県、事業主その他の関係者は、労働者が職業に必要な技能及び知識を習得しようとする機会と意欲を高めるように努めなければならないものとすること。」、この最も重要な二つを削って、あとの(二)、(三)をいわゆる変質、変更して国会に提出をしておるということなんです。これは一体どこがいけないのか。具体的に説明はあまり要りませんけれども、これはだれが見ても、いわゆる職訓法を発展、前進させ、ほんとうに労働者のためにするためには、これで不十分であってもこの努力を惜しんでいってはならない。ただ単なる訓示規定ではないのです。これを労働省がほんとうに真剣になって取り組んでこそ、徐々に職訓制度というものが、国民の期待する、労働者が期待する方向に前進していく一つの基礎にもなる、ストップにもなるという問題なんです。特に四番目の「機会と意欲を高める」、これがあってこそ初めて職訓制度が本物になっていく。いまそういうものがないから、結局、職訓制度があっても、これじゃ何にもならぬ、魅力がないから入り手がおらぬ、こういうことになっておるのでしょう。そのために職訓法そのものを大幅に改正しようとして、あなた方は今回こういう法改正を出されたのじゃないですか。にもかかわらず一番大事なところを削るというのは、一体どういうことなんですかということです。  それから、その次の二番目の教科書の問題。これでも第一に、「労働大臣は、この法律による職業訓練に必要な教科書その他の教材を整備するための措置を講じなければならないものとすること。」こういうふうになっておる。ところが、これもべったり削るということ。これはなぜ削らなければならぬか。これはあたりまえなことじゃないか。いまの教科書なんというのはお粗末しごくでありますから、何の役にも立たない。だから各訓練所でも副読本というものを持ち込んできてやる。お粗末な訓練所長がおるところは、教育勅語なんか持ってきて読ませるという山形県の例なんかもありますが、でたらめなことをやっておる。これは軍国主義、ファシズムの謳歌なんですね。こういうことをさせないようにするためにも、しっかりした教科書その他の教材というものを整備しようということであなた方が提案してきたやつを、それはよかろうということで、審議会がこれこそ満場一致できめたものを全部削除してひん曲げてしまう。これなんか全く私は労働省の態度は許せないと思う。  それからその次に、「公共職業訓練施設の長」の問題なんですけれども、これも「公共職業訓練施設の長は、職業訓練に関し高い識見を有する者であって労働省令で定める基準に該当するものでなければならないものとすること。」この中の「労働省令」というやつを削っておるのですね。これは施設の長というものは、全部とは申しません、二、三はりっぱな人がおるかもしれませんが、大体高級官僚にようならぬ連中が、そこに天下り的に配置されて、そして技能も何も知らぬ連中が、精神訓話だ何だといって、そこで職員やいわゆる指導員に官僚的な押しつけをする。こういうところが方々にあらわれてきておる。実際に職業訓練の成果というものは一つもあがっていないということにつながっておるから、そうさせないように、ちゃんとした労働省の規定によって基準をつくって、そのようなことのないようにさせようということで出されたのを、それをまた削るということは一体何事か。  それからもう一つ、最後にあったやつは、これは安全衛生の問題です。これも「国等及び職業訓練を行なう事業主等は、職業訓練を受ける者の危害の防止、健康の保持等に関し必要な措置を講ずるように努めなければならないものとすること。」、これもまた重要なやつですが、これも全部削っておる。  一体労働省は何を考えておるかということになるわけです。結局は要するに、私が見ると、金のかからない、安上がりの職業訓練を行なって、安上がりの労働者をつくり出そうとする大企業の要請にこたえるために、審議会で法定したものをねじ曲げて国会に提出するのではないかというように疑われます。特にあなたは、大筋において間違いないと——確かにそういう意味考え方がもし労働省にあるとするならば、それは大筋において間違いないのです。大企業の要請に応じて職訓制度を確立していこうとする労働省の大筋には、それは間違いないでしょう、これを削っても。しかしそうではない、そうあってはいかぬということで審議会が慎重にしたのですから、これは私ははっきり言うならば、大間違いであるというふうに考えるのです。その点についての労働大臣の答弁をお願いいたします。
  94. 原健三郎

    ○原国務大臣 具体的には、いままでの経過その他趣旨等、局長から話させまして、あとで私のほうから結論的に申し上げます。
  95. 枝村要作

    ○枝村委員 経過は要りません。経過は先ほど聞いたように、そういう答申案が出たんだが、これはいろいろな都合によって削除した、こういうことが経過でありますから、要りません。ですから問題は、特にまた労働省は、満場一致でこの要綱案というものは答申されたものだということを一生懸命宣伝しておる。この問題は、私は別に論議しなければならないから、それは別にしても、いまの部分は少なくとも、満場一致どころではない、完全に一致して決定した部分だと思う。そのよい部分を削るということは、これは間違いだと思うし、先ほどちょっと申しましたように、関係各省と折衝したら削られた、これは労働省の態度の弱腰というよりも、むしろあなた方は、そういうことを渡りに船として飛びついた、飛び乗ったのじゃないかというふうにしか思われぬのですよ。それは独占企業の要請にぴったりと合っているからじゃないですか。そういう意味で疑われてもしかたがない大失策をあなた方はしているのでありますから、ここで、労働省がみずから起算した要綱案、それを審議会がよかろうといって答申したものを無視して、そうして別個の、全然相違した、間違った要綱案を出し、それに基づいてこの国会に法律として出したことについては、これは明らかに審議会を軽視するものもはなはだしいものである、民主政治の基本を破壊するものであるというように私は思います。  それから二番目は、そのことは、審議会をいわゆるペテンにかけたようなしろものをこの国会に提出して、皆さんに審議してくださいという、それ自体は国会を冒涜しておるというように考えます。したがいまして、重大な疑いを持たれるので、この審議には、それが解明されぬ限りは、私は入られないような気がするのです。ですから私は委員長に要望します。中央職業訓練審議会にこれはひとつ差し戻してもらいまして、再審議してあらためて国会に提出するようにしてもらいたいと思うのです。そして、このような手続をとるために、ひとつ理事会を開いて審議して、一つの決定を出してもらいたいと思います。それを要求します。
  96. 森田重次郎

    ○森田委員長 答弁がありますか。
  97. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 先ほども申し上げましたように、審議会の答申を私どもとしては極力尊重いたしまして、ただ若干の点につきまして技術的な訂正があったというふうに理解しております。そして国会に出ました要綱が、審議会の答申されました要綱と若干食い違っておる点があるという点につきましては、審議会の会長にも御報告申し上げ、その御了承も得ておる次第でございまして、私どもといたしましては、審議会の御答申の本旨を曲げたものではないと確信しておる次第でございます。  御指摘のございました四点につきまして御説明申し上げます。  第一点の、関係者の責務に関する規定につきまして、審議会の答申のございました要綱におきましては四項目に分かれておりまして、それを二項目に整理いたしましたわけでございます。意欲を向上するとか、あるいは設備の充実につとめる——大体全体につきまして、今回の要綱においては、少し訓示規定、精神規定が煩瑣に過ぎるという意見がございまして、その整理を試みたわけでございます。したがいまして、御指摘の第一点につきましては、四項目に分かれておりますのを二項目に集約いたしましたが、答申されました要綱に、「必要な援助を行なう等職業訓練の振興を図るように努めなければならない」という文句をつけ加えまして、その中に、意欲の向上、機会の向上、設備充実というものを込めたつもりでございます。  それから第二点の教科書の問題と第四点の安全衛生の問題につきましては、教科書、教材の整備ということは、毎年予算の充実をはかってやってきております。それから、安全衛生に対してできるだけ配慮するという点につきましても、たびたび訓練所当局の注意を喚起し、また災害等に関する補償の基準も制定しております。要するに、すでに行なっておることであり、そしてあまりにも当然過ぎることである。それをいままでやっていなかったかのごとくに書くということは必ずしも適当でないという意見に従いまして、これは当然過ぎるほど当然であるので、一応法律の規定からは落とそうということにいたしまして、当然の努力は今後ともまた当然なすべきものと考えます。  それから、第三点の施設の長につきまして「労働省令で定める基準」というのを削りましたのは、施設の長で問題になりますのは、都道府県で設立しております一般職業訓練所の所長の人事の問題でございます。所長の人事につきまして労働省令であまりきつく縛るということは、都道府県知事の自治の見地からいかがなものであろうかと存じまして、法律といたしましては、抽象的に「高い識見を有する者でなければならない」というしぼりをかけまして、そして具体的の人選につきましては、そのときどきの思いつきによって訓練所長を選ぶということではなくて、都道府県ごとにその実情に合うような基準をつくり、その基準に従って選ぶというふうに、都道府県に運営してもらおうということになって、ごらんのごとき条文となった次第でございます。
  98. 枝村要作

    ○枝村委員 私は理事のほうの要請に従いまして、この問題について当局の言い分を聞いたらどうかということで、そのようにしてもよろしいというように応じたのであります。ですから、これは論議をしなくても、この削除したという事実は当局も認めておるのですからね。ただ、削ったところが、いま局長から言わせれば、当然過ぎることであるからむしろ書かぬでもよろしい、いつもやっていることであるから、こういうふうないろいろな理由をつけております。あるいは、この条文をこう書くことは非常に煩瑣であって、そういう手間を省くためにも、とこういう理由を述べておる。それはそれなりに、あなた方の理由はそうであってもいいと思うのですけれども、審議会の権威、それから審議会で審議した多くの委員は、これこそ先ほど私が言ったように、職訓制度の前進になるんだという気持ちでこれを承認しておるのだと思うのです。それから、この事態を個々の委員の諸君どなたが見ても当然であるから、これがやられていないから条項として起こしたということにほとんどが理解されると思うのです。それほど今日の職訓制度というものはお粗末だ。ですから、それを当然なことだからといって削るところに私は問題がありますから、これは本議題に入って徹底的に論議をしていかなければならぬ問題だ。  それよりもう少し私の言いたいのは、この諮問に出した要綱案そのものは、労働省当局がつくったのじゃないかというのですね。その時点では気がつかなかったなんということを言われる筋合いのものじゃないというのですよ。そのときは気がつかなかったが答申を受けて気がついた、それは各省折衝してみてからで、いろいろ理由があるでしょうけれども、そういう腰が、そもそも労働省の態度というのはけしからぬ。そのこと自体、審議会の答申そのものを全く無視する、審議会そのものを軽視する、その風潮がやはりあるのじゃないかというふうに疑われてもしかたがないでしょう。ですから私は、いじったところは三十数カ所あると言いましたけれども、重要なところは四つか五つあります。これを審議会の会長にはちょっと相談したがと言いますが、会長だけの審議会じゃないのですからね。これだけの大幅の修正をする以上は、これはもう一。へん審議会に差し戻して、その承認を得るなり審議会であらためて審議して、そしてそれに基づいてまた同じものが出るかもしれませんが、国会に提出して、国会でわれわれが慎重に審議しましょう、こういうきわめて道理を尽くしたお話をしておるのですから、そのためには、私は新米で手続はよくわかりませんけれども理事会あたりで相談して私の要求に対する何らかの結論を出してもらいたい、このことを要求しておるのです。
  99. 後藤俊男

    ○後藤委員 関連して。いま枝村委員のほうから話がございましたが、その前に局長はなぶったところについて説明がありました。私も聞いておりました。たとえば一番最初の第一から第四までの分を、いわば要らぬところを省いて二つに集約したのだ、こういうような説明だったと思うのですが、ところがこの内容を読んでみると、職訓法で現在一番問題になっておる点でございます。  それは何かというと、施設の整備充実、これが現在におきましても十分行なわれておらぬ。さらに要員問題についても非常に不足しておる。さらに予算の問題についても十分でないのだ。これは今日現在における職訓法におきましても一番大きな問題になっておるわけなんです。それを集約してしまって、省略したというのか、省いてしまって、審議会のほうへ出した分につきましては、「必要な施設の整備充実に努めなければならないものとする」とはっきり明記してあるわけなんです。ところが、下のほうで読みますと、そうではなしに、「必要な援助を行なう等職業訓練の振興を図るように努めなければならない」と、さらに抽象化してしまって、上の文章を何かなしくずしにするような文章で、これは表現されておるわけなんです。これは私非常に重大だと思います。われわれのほうも、ただ字句の一字や二字や三字や五字でどうこうというような気持ちは持っておりませんけれども、現在一番問題になっておる施設の整備充実等の問題を省いてしまって、下のように簡略に抽象的にしてしまったという点につきましては、実に私は重大だと考えておりますので、先ほど局長が御説明になりましたことはごまかしの論議のように私は聞いておりますから、この点につきましても、非常に重大なる点が曲げられて出されておるから、これは絶対に承服ができないと私は考えておりますから、先ほど枝村委員が言いましたような方向でひとつ善処をしていただきますように、お願いをいたしたいと思います。
  100. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 御指摘の点につきましては、おっしゃいますとおりに、施設の整備ということは非常に重要なことでございます。そのほかに要員の充実とか、職業訓練をさらに充実したものにするために、なすべきことは非常にたくさんあろうかと存ずるわけでございます。そのうちの若干のものを、答申のありました要綱におきましては指摘したわけでございますが、さらに包括的に職業訓練全般をもっと強く振興すべきであるという字句を入れまして、すべてを漏れなく包括したというつもりで集約した文章でございます。
  101. 後藤俊男

    ○後藤委員 それでは申し上げますが、いま局長が全体の面に織り込んであるのだとは言われますけれども、この文章を指摘いたしますと、先ほども言いましたように、「職業訓練を行なうために必要な施設の整備充実に努めなければならないものとすること。」これは非常に大切な一項だと思います。これがここで省略されてしまっておるわけなんです。なくなっておるわけなんです。で、私の言わんとするのは、今日の職訓法において、整備充実なり予算なり、あるいは人員の問題が、一番大きな問題になっておるわけなんです。その一番大きな問題で非常に大切なところを、はっきりと整備充実をやらなければいけないのだと書いてあるところを抹殺してしまって、そうではなしに、ただ必要な援助を行なう等つとめなければならないというように抽象的にぼかしてある。これは私は重大だと言っておるわけなんです。なぜ一体これをはずしたのだということなんです。こんな重要なことを会長だけに相談してはずしましたということでは通らぬと、そのことを私は指摘しておるわけなんです。
  102. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 たびたび申し上げますように、施設の整備充実は非常に重要なことでございまして、私どもはこれを軽視するつもりは毛頭ございません。また毎年の予算におきましても、施設の整備充実に要する費用というものは、いろいろ財政当局の都合もありますけれども、その中では可能な最大限にまで認めてもらっております。特に今年度におきましては、施設の整備充実につきましての費用も相当程度に向上をはかっておりまして、これを軽視するつもりは毛頭ございません。ただ、なすべきことは非常にたくさんございますので、それを一々訓示的な精神規定として列挙するよりは、全部をくるめまして、職業訓練の振興をはかることにつとめろという規定を置いたわけでございまして、整備充実を無視するあるいは軽視するというつもりは毛頭ございませんことを申し上げます。
  103. 後藤俊男

    ○後藤委員 いま言われました気持ちというか、それはわからぬことはないのですけれども局長、ただ先ほどいろいろ問題がありますように、特に私なぜこういうことを言うかというと、施設の整備なり人間なり、そういう関係は今日の訓練法では一番大事なことだ。一番大事なことだからこれは書いてあるのだと思うのです。なぜ一体これを抹殺したか。抹殺したところで、私たちはやります、やっておりますと言うなら、書いておけばいいじゃないですか。やっておるなら書いておけばいい。一番大事なことなんですから。枝葉末節なことなら私はそう言うつもりはないのですが、今日あなたもおっしゃっておるとおり、職訓法で一番大事なところは、施設の整備なりそういうところなんです。それもやっておりますと言われるなら、やっておるなら、ここにちゃんと書いて提案しておけばいいじゃないですか。それをなぜ消さんならぬかということです。私はこの問題だけじゃありませんよ。このほかにも問題がありますけれども、この問題だけを取り上げて言いますとそういうことになるから、これは事は重大ですよと私は言っておるわけなんです。あなたは非常に簡単に考えておられるようですけれども、  一番大事なことを、いまやっておりますからいいんですよ、これじゃ私は通らぬと思うのです。さらに今度よけいやってもらわなければいけない、こういうことになろうと思いますから、あなたがいかに弁明されようとも、一番大事なことを抹殺してしまって、これでいいのですということでは通らない、こう私は主張しておるわけなんです。
  104. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 施設の整備充実が非常に大切でありますことは、まことに御指摘のとおりでございます。しかしながら、今日の職業訓練を行なっていきます上におきまして、施設の整備充実のみが唯一に大事なことではございません。もちろん指導員の充実あるいは資質の向上の問題もございますし、あるいは中卒が減り高卒がふえてくるという状態に対応する職業訓練の基準の体制とか、そのほか大事なことは非常にたくさんあるわけでございます。そのうち施設の整備充実ということをここに例示したわけでございますが、むしろ、大切なことがたくさんあるならば、それを全部含めて、国、都道府県その他の関係者は職業訓練の振興をはかるという、すべてを包括した表現のほうがより適切ではないかというふうに考えた次第でございますので、御了承いただきたいと存じます。
  105. 山本政弘

    山本(政)委員 関連して。石黒さんにちょっとお伺いするのですけれども、審議会に出された要綱案の「事業主は、その雇用する労働者に対し、必要な職業訓練を行なうように努めなければならないものとする」というのは、これは訓示規定ですね。当然これはしなければならない問題ですね。そうですね。あなたのおっしゃるように、国、都道府県及び雇用促進事業団は当然しなければならないのだからはずしたということになれば、この文章も当然はずしていいことになりますね。そうなりませんか。つまり訓示規定というのは全部要らぬということになる、あなたの議論を展開をしていくなら。つまり当然あるべきことなだから省いたということになれば、少なくとも事業主というのは、雇用をしている労働者に対して必要な職業訓練を行なうようつとめることも当然のことなんですよ。そうすると、これは要らないことになるのじゃないか、あなたの論旨をそのまま発展させれば。
  106. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 訓示規定につきましては、全部が全部削るというふうに申し上げたわけではございませんで、比較的その緊急度、重要度の低いものはなるべく整理したほうがよかろうというのが全体の方針でございます。ただ、個々の関係者の責務に関する事項につきましては、これは一つにおいては事業主の責務というものをあげ、それからもう一つにおきましては国、都道府県等の責務をあげた。原案では国、都道府県等の責務を三つに分けておったわけでございますが、それを事業主の責務と国、都道府県の責務の二つに集約したということでございまして、削ったわけではございませんので、御了承をいただきたいと思います。     〔発言する者あり〕
  107. 山本政弘

    山本(政)委員 いま澁谷さんが何かおっしゃっているようですけれども、審議会の要綱案は(一)、(二)、(三)、(四)とある。(三)の部分と(一)、(四)の部分とは性格的に違うでしょう。つまり同じ訓示規定でも内容が違うはずです。それを(二)と(三)だけを残して、(一)と(四)だけをすぽっと落としてしまう。これは私に理解できないのですよ。あなたは緊急云々と言われたけれども、これは口の項目だけでも、緊急じゃありませんよ。緊急とは私は少なくとも考えられないです。当然なすべき責務だと私は思いますけれども、緊急とは思いませんよ。だから(一)と(四)に関しても、当然なすべき責務であるということ。緊急とは思いません。同時に、(一)と(四)というものは、日とは基本的には趣旨が違うのですから、こういうものを簡単に落とされるということについて私は納得がいかぬから、もう一ぺん差し戻したらどうだろうという枝村さんの意見に賛成だ、こう言っているのです。
  108. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 この点につきましては、原案というか、もとの審議会の案の(一)と(四)と単純に落としたわけではございませんで、口の中に「職業訓練の振興を図る」という字句を入れまして、(一)と(四)をここに吸収したというふうに御理解いただきたいと存じます。
  109. 田邊誠

    ○田邊委員 議事進行。いま質疑の行なわれております職業訓練審議会に出された政府の要綱案と国会に出された要綱案との食い違いの問題です。私もきょう聞きまして、審議会が出した答申案と政府が今回出された要綱が違うのならば、これは話がわかる。しかし政府が審議会に提出をした諮問案、しかも審議会はそれを受けて、政府の諮問案は妥当なりと答申をしたのです。したがって、政府が審議会に出した諮問案は、そのままこの時点で生きているわけです。政府は当初の考え方に基づいて国会に法律を出してくるのが当然の責務です。しかも、いまお話を聞いておりますと、この「関係者の責務」という点でありまするけれども、最初に審議会に出された政府の要綱案では、「国、都道府県、事業主その他の関係者の責務」と、明確にその責任の所在を明らかにしているのです。しかも「国、都道府県及び雇用促進事業団は、」まず第一に「施設の整備充実に努めなければならない」、次に「職業訓練を行なうために必要な援助を行なうように努めなければならない」、さらには「職業に必要な技能及び知識を習得しようとする機会と意欲を高めるように努めなければならない」、いわゆる具体的な規定を行なっておるのであります。これをいま局長の答弁のように一括をいたしまして、「職業訓練の振興を図るように努めなければならない」と、まさに精神規定に直しておるのであります。言うなれば国の責任を回避しているという、こういうことに変革をしておることは、私はきわめて重大だと思うのです。したがって、この二つの要綱が違うということだけでなくて、その底に流れるものとして、国の責任の所在を明らかにしている最初の考え方というものをきわめて薄めて、これをきわめていわば歪曲をして国会に提出したとすれば、私ども国会としては、これを審議するのに当たらないというのが当然だろうと思うのです。まあ審議会に出された要綱が抽象的であって、それをさらに国会に出すときに具体化したというならば話がわかります。その逆の立場をとっている。こういう政府考え方に私どもは大きな危険を感ずるわけであります。したがって、国の責任の所在を明らかにするという、こういう意味合いにおいても、私はやはり、この二つの要綱案が大きな食い違いを見せている現時点においてそのままこの国会に出された法律案を審議することは、これは国会軽視であると同時に、また審議会に対する不信行為である、こういうように考えざるを得ないわけでありますから、これに対する取り扱いは、やはり理事会を開いてこれを協議してもらうことがどうしても必要である、こういうふうに考えますので、ひとつ理事会の開会を私は正式に要求いたします。ひとつ善処をお願いしたいと思うのです。
  110. 森田重次郎

    ○森田委員長 暫時休憩いたします。     午後一時十四分休憩      ————◇—————     午後一時四十分開議
  111. 森田重次郎

    ○森田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、労働大臣より発言を求められておりますので、これを許します。労働大臣原健三郎君。
  112. 原健三郎

    ○原国務大臣 お答え申し上げます。  いろいろ御心配いただきました審議会の答申の件でございますが、審議会の答申した要綱と労働省が国会に提案した法案とに若干相違する点のありましたことは、まことに遺憾に存する次第でございます。  次に、今後とも審議会の意見は十分に尊重してまいりたいと考えております。  さらに、本委員会における御審議の内容あるいは御意見等につきましては、十分尊重して対処いたしたい考えでございます。
  113. 森田重次郎

    ○森田委員長 質疑を続けます。枝村要作君。
  114. 枝村要作

    ○枝村委員 それでは審議に入ります。  最初に私が冒頭の中でちょっと述べましたが、この職訓法要綱を審議する際の審議会の経過でありますが、それに対して労働省当局は、満場一致でこの答申は出されたものである、こういう宣伝をされておるようでありますし、私もそういうふうに聞きました。ところがよく聞いてみると、そういう事実はないのでありまして、審議会の中では非常な激しい討論も戦わされたようでありまして、それらの経緯について、ひとつ当局の局長からの経過の説明をお願いいたしたいと思います。
  115. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のごとく、審議会におきましては、きわめて御熱心なる御意見の開陳がございまして、先ほど申し上げましたように、当初口頭をもって諮問いたしました案を、若干手直しがございまして、正式の諮問要綱につきましては、御承知のごとく十五項目にわたる希望意見がつけられております。特にその希望意見の中におきまして、第三項において、「「目的」において「雇用対策法と相まつ」ことに委員の一部から疑念が表明されたことにかんがみ」というような、特別の字句を用いた希望意見もございます。そういう点につきまして、あくまで強い御意見のありましたことは事実でございますが、最終的には、これだけの希望意見をつけた上で、ごらんのごとき答申が全会一致で可決せられたという次第でございます。
  116. 枝村要作

    ○枝村委員 いまの答弁だけではすっきりいたしませんが、とにかく審議会の中ではきわめて慎重に審議され、いろいろな問題がむしろ労働者側の中にあったようでありますが、しかし、いわゆる強い少数意見というものが存在しておったということをいまの答弁で認められたと思うのでありますが、そのように理解してよろしゅうございますね。
  117. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 形式上の少数意見というのは、答申の本文に付帯して何々委員からこういう反対意見があったというのを書き加えますのが、少数意見でございます。そういう形は避ける。希望意見の表現を適当にやることによって形式上の少数意見は避けるという形で、答申が可決されたわけでございます。そういった疑念ないし批判的な御意見があったということは、希望意見の中にも記載しておるということでございます。
  118. 枝村要作

    ○枝村委員 この点であまり時間をとってはなりませんので、この問題はここで打ち切りたいと思いますが、私の要望は、労働省がこの法案を通すためにいろいろあの手この手の御苦労はあると思うのですけれども、その苦労の手段として、審議会の中では労働者の少数意見をつけられぬほど——実際に少数意見は付記してないんですから、そのことを利用して、これは満場一致できまったんだという、そういう印象を与えるような手回しとか宣伝はされないようにしてもらいたいと思う。あなた方、しちゃおらぬと言うかもしれないけれども、受け取るほうではそういう理解をする場合がありますし、そういう言動がちょこちょこ見えるのでして、それはひとつ控えてもらいたいと思います。これは今後の問題です。いまここで審議しておりますから、今後審議会を通じていろいろ問題は論議されましょうが、労働者側の意見を巧みに利用して、そういう手段を手としていわゆる根回しをしないようにしてもらいたいということを一応要望しておきます。  そこで私は、職訓のこの法案の総括的な点について質問をしていきたいと思います。  最近のいわゆる若年労働者は、第三次産業へ希望する者が非常に多くなってきておるということは、御案内のとおりだと思うのです。そのために技能労働力がますます不足の傾向を強めておりますが、その原因を正して追及して明らかにしていかなければ、職業訓練制度だけ拡充強化しようと努力しても実らない、労働力不足を解消することにはならないと思うのです。ですから、この問題についての労働省当局の基本的な対策はどこにあるかということを、これはばく然とした質問になりましたが、まずお聞きしたいと思います。そのために私どもいろいろ資料をあさっておりますが、どうも古いものばかりのような気がします。ですから、できれば、産業別技能上の不足の状況とか、それから技能工不足率の推移、それから技能工の規模別の不足状況、そういう最も最近調査された資料があれば、ひとつ提出していただきたいと思います。まず、最初言いました基本の問題に対する質問に対して答えていただきたい、こう思います。
  119. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 技能労働者の不足状況の推移につきましては、私ども技能労働力不足に関する調査を毎年行なっております。昭和三十五年におきましては、不足率は全産業、全規模合計いたしまして一四・七%でございましたが、逐年これが上がりまして、昭和四十三年六月、昨年の調査におきましては、不足率一九・五%でございます。その中で不足数の非常に大きうございますのは、申すまでもなく、これは数も大きうございますが、製造業が非常に不足数が多い、その次には建設業が多いということに相なっております。それから規模別の不足率につきましては、これは中小零細企業で、規模の小さくなるほど不足率が高くなっておりまして、たとえば三十人ないし九十九人の事業所におきましては不足率が二三・八%に及んでおる。一方、千人以上の規模におきましては不足率は四・四%であるというふうに、規模別に不足率の差が非常に大きうございます。  この技能労働者の不足をいかに解決するかという問題は非常にむずかしい問題でございます。全体的に労働者が不足してきつつある一環として技能労働者も不足してきておるように思うわけでございますが、その中で特に技能職種に労働者の不足がはなはだしい場合、これを解決する方途としては、一つは労働条件を改善していってより魅力ある職場にするということ、それから第二には技能労働者の養成を積極的にやる、すなわち職業訓練を大いに振興してこれを養成するということが主体でございますが、同時にまた、進学率の向上に伴いまして、従来から高学歴の者はホワイトカラー的職種を専攻するという傾向がございます。これが今日のごとき進学率になりました場合に、そのような従来からの慣行というものはこれを是正するようにしなければならない。これは気持ちの持ち方の問題でございまして、きめ手はございませんが、そのような努力もいたしたいというふうに考えております。
  120. 枝村要作

    ○枝村委員 いまの答弁はきわめて官僚的な答弁としか受け取れませんが、それはあとから法案をいろいろ審議していく中で、それぞれ明らかにしていかなければならぬと思うのですが、やはりもう少し高度な立場からこれを見ていかなければならぬと私ども思うのです。単に、労働力全体が不足しているその一環として技能労働者が不足しておるというようなものの見方だったり、それから、労働条件が非常に悪いから魅力がなくなっておるとか、職業訓練そのものが、先ほどから論議しましたような、あのようなお粗末なことであるから結局訓練の受け手がなし、こういうふうなことだという一面的な見方だけではやはりいけないと私は思います。それは確かにその面もわれわれは否定はいたしませんけれども、それだけではいかぬ、やはりもう少し高次な立場で、大きな観点、視点でものを見詰めて、そしてその中から活路を見出していくという、抜本的な方向を見出していかなければならぬ、それがやはり政府の立場であろうというように考えます。  そういう意味で、私、若干意見を述べますが、現在の職業訓練は、最初も言いましたように、いわば資本の要求する職業訓練であって、労働者が必要とし要求している職訓ではないというふうに思います。戦後わが国の職訓は、労働基準法に基づく技能者養成と職業安定法に基づく職業補導との二つの系統のもとに発足したということは、御案内のとおりであります。技能者養成は、主として経営者によって行なわれる職訓について規定したものでありまして、何よりもまず年少労働者の労働保護をたてまえとしておりましたし、それから職業補導は、主として都道府県及び公共団体によって行なわれる職訓について規定したものであって、そこでは、失業対策と労働者需給調整の二つの役割りを兼ね果たそうとしていたということであります。  そこで、技能者養成は初め、いわゆる輸出産業の振興に見込みがあると思われた中小企業向きの工業関係ですかの十五職種に限られていたのでありますが、昭和二十六、七年ごろから、大企業でもこの技能者養成規定を受けて職訓を行なうようになったのでございます。しかし、時代がたつに従いまして、いろいろ部分的ないじくりをやって改善してみても、いわゆる資本の要求が満されなくなってきた。     〔委員長退席竹内委員長代理着席〕 そこで、総資本の要求として体系的に提起してきたのが、例のいわゆる新時代の要請に対応する技術教育に関する意見であります。これは御承知のように、昭和三十一年十一月、日経連が政府提出したものであります。この意見が提出されてから以後、政府はこの意見に基づいて、いわゆる政府の政策というものが行なわれだした。早くいえば、この意見に忠実に従ってきておる。これはいろいろ例があります。これは歴史的に明らかにすることができますけれども、そういうふうにすべてがなっておる。  その第一が昭和三十三年五月に今日の職訓法が制定された。そして、職業に必要な技能と腕の訓練に限定しておって、知識と頭という問題については副次的なものとみなして、この職訓法の本質というものが貫かれておるのであります。特に技能検定の問題でありますけれども、職訓とはかかわりなくこれは実施されて、一年後に強行しておる。そして技能労働力の不足を補うために間に合わせの技能検定を行なったということは、職訓そのものに対する等閑視の傾向が当時からすでに持たれておる。これは先ほど言いましたように、資本の要請にこたえる政府の労働行政の一つとしてまず手始めに行なわれておる。そればかりでなく、これは国内のいわゆる人的資源のうちから、使いものになる技能者を残らず引き出して、そして国家総動員的に安く利用するという、そういう意図が今日のこの職訓法の中の底を流れておる、このようにその後の経過から見えるのではないかと思うのです。  また教育の面についても、そのことがはっきり言えます。これは一々は省きますけれども、そういうやり方をしておる一面、いわゆる技術革新によって当然資本とすれば合理化を進めてまいります。合理化によって資本の側から職業技術教育訓練が必要とされるのはあたりまえのことなんですが、合理化を進めるにあたって、資本は労働者には必要最小限度の職業技術教育の訓練を与えておりますが、残りの労働者にはそれは与える必要がない。職業技術教育訓練の問題は、資本が意識するかしないか、あるいは好むと好まざるとにかかわらず、そういう資本の差別的なやり方というものが一面に出てきておるというように私どもは見るのであります。このようないわゆる資本の要求が今日職訓法の基本を流れておるのでありまして、今回の改正も、そういうことを打ち破ってしまって、そして新しい時代、新しい感覚、新しい思想の上に立ってこの法が改正されておるのではないと思います。依然として、先ほど言ったような方針が今回の法改正の中にも貫かれておるというように、私どもは見るのであります。  それに対して労働者の基本的な態度は、これはもう皆さんも知っていらっしゃいますように、すべての労働者は、年齢、性別にかかわりなく、公共的な職業技術教育、いわゆる技術教育を受ける権利がある。国はそれを保障しなければならない。特に若い労働者の権利は尊重しなければならないという、そういう原則をわれわれは持っております。それから職業技術教育の内容は、体系的で完全な基礎教育を含んで、そして永続的な社会的技術進歩に対応するものでなければならない、そういうふうにわれわれは見ております。そこにやはり大きな相違点、基本的には考え方の相違があるわけなんですね。しかし、政府労働者の側の考え方を全部取り入れて、そして職訓法を完全なものにする。それは今日の政治情勢の中では無理でしょう。無理でしょうが、しかし、何とかして労働者の要求するこの権利としての職業訓練を取り入れる努力をすべきであるにもかかわらず、していない。総資本の要求のみを満たすために職訓法を依然として生かそうとする、そういうところに、最初私が質問いたしましたように、今日の技能労働者の不足があるし、職訓に対する魅力というものが失われておる、このように思うのであります。  ですから、これをいまさらどう言ってもしょうがありませんが、労働省は、単に資本の側だけでなくして、資本主義の世の中であるから、社会主義的なものを加味しながら入れるとか入れぬということは別にして、当然やはり行政官庁としてどうしたらいいかというのを、一面的な現象面だけにとらわれず、基本的な観点に立って、われわれの主張することも十分受け入れながら、いまからの職訓の問題に取り組まなければ、ものの解決にはならぬというように私は考えるのでありますが、その点についてお答えを願いますと言ったって、これはたいした答えにはならぬでしょうけれども、ひとつ述べてもらいたいと思います。
  121. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 資本家側の意見だけではなくて、労働者側その他あらゆる方面、あるいは国会における御質問等にあらわれました各種の御意見をできるだけ取り入れて運営するということにつきまして、私どももとよりそのつもりで努力をしておるところでございます。  で、総資本の要請に基づく職業訓練が従来行なわれてきたし、今回の改正もそういう思想であるという点につきましては、私どもは従来からそうでなかったと存じますし、また特に今回は、従来と法律のていさいも変えまして、職業人として有為な労働者を養成するという労働者の主体性に重きを置いた思想をもって貫いておるつもりでございます。労働者が、かりに社会主義社会であろうと資本主義社会であろうと、必要な職業訓練を受けることによりまして、社会に貢献することができると同時に、自分の幸福を得ることができる、その点は必ずしも社会体制に関係なく行なわれる部分が多いのじゃなかろうか。今日の社会、日本の経済はいわゆる資本主義体制でございますけれども、しかし、総資本に奉仕するという観点だけでやっているのではなくて、私どもは労働省でございますから、労働者の幸福のためということを第一の主眼として努力しておるつもりでございます。至りません点がございましたらば御批判をいただきたいと考えております。
  122. 枝村要作

    ○枝村委員 至りませんところばかりで、すべてが批判になるわけですが、そういう答弁しか期待できないわけです。しかし、実際の法運営の中でも、労働者の意見は少しも聞かれようとしないし、主張してもそれを取り入れられようとしないという部分的な問題もたくさんあるわけです。  ただ、今日の職訓法の中で、やはり発言のできるのは審議会だけである。しかも中央の審議会だけであって、地方は、二、三のところにおいては全然何もやっていないというのが実情であります。そうでなくて、あとからまた私ないしは同僚が質問すると思いますけれども、すべての面でやはり労働者が強い発言ができるようにすべきである。これは枝葉末端の問題であるかもしれませんけれども、そういうことに対しても努力がされていないという点が、やはりいまあなたが言われたような答弁は、きわめて空虚にしか受け取られないところの原因になっておるわけでありますから、ひとつしっかりしてもらいたいと思うのです。  そこで、参考にひとつ資料を、先ほどのものとあわせて提出してもらいたいのですが、毎年いろいろな実態調査はされておるのでしょうね。そうすると、職業訓練の実際の活動状況ですか、運営状況、そういうものを含めた実態調査をされておれば、産業別、規模別の職業訓練の、特に企業内の取り組み状況などがわかりますか。
  123. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 事業内職業訓練についてのお尋ねでございますが、事業内職業訓練をどの産業で行なっておるかと申しますと、一番多いのは建設業、それから製造業でございます。これにつきましては、単独訓練と共同訓練と、それぞれ別に各産業別の数字がございます。ただいま読み上げてもよろしゅうございますが、なんでしたら後ほど資料提出するようにいたします。
  124. 枝村要作

    ○枝村委員 その中で、私ども知りたいのは規模別のものもありますが、大体どういう規模の産業が本気になって職業訓練に取り組んでおるかということなんですね。それが実は知りたいのです。だから、たとえば二、三でいいから出していただきたい。それから反対に、本気になっておらぬというものも出してもらいたい。それは数字の上から明らかなんでしょう。
  125. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 お答え申し上げます。  実施事業所の数で申しますと、産業別には鉱業は非常に少のうございます。五カ所しかございません。建設業が三万三千三百二十一、製造業が一万八千百四十一、卸小売り業が一千一、運輸通信業が六、電気ガス事業が十、サービス業が千三百二、これが事業所の数でございます。  規模別に申し上げますと、四十二年では、企業規模一人から四人の零細企業におきましては二万七千六百八十九、五人から十四人が一万一千四百十五、十五人から九十九人が四千三百九十八、百人から二百九十九人が四百六十二、三百人から四百九十九人が百三、五百人以上が三百二十六ということに相なっております。これは、企業規模の小さいところのほうが事業所の数が多うございますので、この数だけでは、どこが一生懸命でどこがよくないということは申し上げかねるわけでございますが、一般的に申し上げますと、二次産業に比べまして、第一次産業のほうの職業訓練というのは、ややおくれておるように感じております。
  126. 枝村要作

    ○枝村委員 第二次、第三次というように、そういう分け方をされても、私の質問にはぴんとこないのですが、要するに、規模の小さいところの企業、事業所が本気になってやはり職業訓練に取り組んでおる。しかしそれは非常に苦労しておるということなんですね、これはそれこそ身銭を切って、ない金を出して、そうして自分を助けるために苦労して職業訓練をし、技能労働者をつくって、自分の事業を守ろうとしておる。こういうことが、事業所の数だけではわからぬにしても、大体零細のほうのほうがたくさんあるのですから、言えるんじゃないかというように思います。それから、大きな企業は単独でそれぞれ企業内でやっておりますけれども、これは単に中堅幹部の養成であって、全体の労働者に技能を身につけさせる、そういうことじゃないんでして、てまえのもうけになるための職業訓練であって、一特にそういう中堅幹部を養成していく、そうして労働者の中に差別の待遇、差別の思想を植えつけよう、そういうのが顕著なんですけれども、それは別にして、同じ中小の中でも、いま言われたように、百人以上はあまりやっていないですな。やっていません。これはやはり公共訓練のほうに回しておるのかもしれませんね。そして、そこでいろいろ訓練されてきたのを引き抜くとか、ないしは共同で分配するというようなやり方をしておるわけなんですね。そういうふうに、いまあなたが述べられた中だけでもやはりくみ取れるのでありますが、そのように、職業訓練そのものの取り扱いに対するいわゆる事業主のやり方を見ていいのかどうかということについて、説明を願いたいと思います。
  127. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 全体に、若年労働者に対する職業訓練を受けている労働者の比率というのが、ヨーロッパの国なんかと比べますと非常に低うございますので、どのクラスが熱心でどのクラスが怠っておるということは、たいへん申し上げにくいのでございますが、しかし御指摘のごとく、百人から五百人くらいの、中くらいのところというのが、単独訓練をやるには資力が足りないし、共同訓練をやるには大き過ぎるというようなことで、比較的そこのところが訓練をやりにくいような傾向があるように感じております。
  128. 枝村要作

    ○枝村委員 まあ、その問題はそれまでにしておきたいと思います。  その次に、後期中等教育と職業訓練の問題について質問をしたいと思うのです。  それで、これは急速な技術革新、合理化の中で、技能労働者の技能はきわめてすみやかにスクラップ化しております。今日の熟練工があすの無技能工へ転落してしまうケースが非常にふえておることは、一番よく当局が知っておると思います。こうした急速な技術革新や合理化に対応する能力を持つためには、せめて高校程度の学力を必要とすることが社会的な通念となっておると思うのです。そういう意味で高校全入運動は、完全なまでの成功はおさめておりませんけれども相当の。パーセンテージを占めて、今日東京ではすでに九〇%、平均八〇%弱が高校に進学するようになっております。     〔竹内委員長代理退席委員長着席〕 なお、この進学率が今後ますます上昇する傾向にあると言えるのではないかというように私ども見ます。  こうした中で、文部省は高等教育の多様化に乗り出して、約二百三十の職業課程というものをつくっております。この中には、いわゆるかんきつ科と称するミカンの皮むきを教える科など、いろいろつくられておるのですけれども、高校を職業教育の場から職業訓練の場にしようとしておるような、こういう傾向が見られるのであります。この問題については、あなたに質問してもどうにもなりませんが、そういういわゆる後期中等教育の再編成を受けて、職業訓練では主として単能工養成に重点がかけられておるのではないかというように私どもは思うのですが、その点どうでしょうか。
  129. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 職業訓練の今後のあり方といたしましては、技術革新の変化等に対応できる多能工を中心としなければならないということは、お説のとおりでございます。私どもの行なっております訓練におきまして、総合訓練所は大体多能工中心と申し上げてよろしいと思います。都道府県立の一般訓練所につきましては、多能工的なものと単能工的なものとまじっておるのが事実でございます。私どもといたしましては、すべての訓練所を通じまして、できるだけ多能工の養成に今後重点を置くべきものであるというふうに考えております。
  130. 枝村要作

    ○枝村委員 あなたは、置くべきであるというよに考えておるというのですが、実はそうなっておらぬのが実態なんですね。やはり単能工を多数養成して資本の要請にこたえよう、私が最初言ったそういう方向にやはり力を注いでおる。あなたのほうから言えば、いまはそうだが将来はそうならないようにするということを言っておるようでありますけれども、しかし、それもどうもから念仏のような気がしてくるわけでありまして、そういう意味から、私どもはこの問題については、資本の要請する職種に重点を置くのではなく、いわゆる労働者がすべて訓練は権利として受けることができるという、そういうためのいろいろな方針というものを職業訓練の中にも確立していかなければならぬと思うのでありますが、それはあとからの逐条審議の中で逐次討論を重ねていきたいと思いますけれども、いまのあなたの答弁は、私どもが主張するような、いわゆる権利としての要求を満たしていくようにするものかどうか、それに通ずる第二、第三のそういう暫定的な手としてとろうとしておるのかという点について、お伺いいたしたいと思います。
  131. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 職業訓練を受ける権利という権利のことばにつきましては、これは御承知のように、権利というのはいろんな意味がございます。職業訓練所に入れてもらえないから、国に対して入れろという請求権があるという意味の具体的な債権債務にはもちろんならないわけでございますが、およそ訓練を受けたいという人に対しましては、それを収容する十分なスペースと申しますか、収容力を持つように訓練の施設を拡充するということは、きわめて大事なことであろうかと存じます。また、家が貧困なために訓練所に通いにくいという人に対しまして、そういう人も通いやすくするというような点につきましても、私ども大いに努力しておりますが、今後一そう努力したいと考えております。
  132. 枝村要作

    ○枝村委員 たとえば公共訓練の場合では無料にすべきだということなどはやはり原則でありましょうし、それからILOの百十七号ですか、それにもそういう勧告がされておるにもかかわらず、やはり多くの訓練所によっては銭をとっておるというところもあるようであります。こういうような、先ほど言いましたように、労働者に権利として与えるということにはなっておらぬといういろいろな問題もありますが、労働省当局は、われわれの要求するところに従って、ひとつそれを十分加味しながら今後真剣に取り組んでもらいたいと思います。  それからその次に、財源の確立の問題をちょっと質問したいと思うのですが、これはさきの国会で、財源は一般会計で行なうということが附帯決議か何かで出ておると思うのです。それがいまだに放置されて、依然として失保特別会計によって大部分がまかなわれておるという点についても、やはり労働省当局が職訓の制度に対して本気でないということが、この面からもうかがわれるのではないかというように考えられるのですが、その点についていまからどうするのですか。
  133. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 職業訓練に要する経費を一般会計から支出することはもちろん非常に望ましいわけでございますが、同時に、失業保険法及び雇用促進事業団法におきまして、失業保険の被保険者に対して福祉施設として失業保険の金が出せる。そして特に総合訓練所及び職業訓練大学校の経費は失業保険の福祉施設として行なうということが法律で定められております。失業の予防という観点から、失業保険の福祉施設として職業訓練に支出をすること自体はあながち悪いことではない。むしろ私ども訓練局だけの立場から申しますならば、ともかくあらゆる財源を集めて訓練の原資を豊かにしたいと考えておる次第でございます。
  134. 枝村要作

    ○枝村委員 しかし、あちこちからかき集めてやるという、おかしいことばを使っちゃいけませんけれども、おかしなものがついたやつでも何でもいいという思想は、やはり間違っておると思うのですね。ほんとうに職業訓練を拡充強化し発展させるためには、やはりちゃんとした会計のもとに運営していくということが正しいと思う。審議会の中でも、たとえば労働者委員から、目的税を設定せいとかなんとかいう意見も出ておったようです。それがいいとか悪いとかは別として、よそから借りていく、しかも今日多くは失保会計で、そこから大部分はまかなっておるなんということは、これは本気で取り組んでおるかおらぬかということを疑われてもしかたがないような気がするのですし、国会でも決議されておるのですから、それにはやはり忠実に当局は守って努力せねばならぬと思う。ところがいまの答弁では努力どころじゃない。ちっともそういうようには受け取られぬわけなのであって、そういう意味から言えば、これは国会の決議なんというのは全く無視されております。そういうように見られてもしかたがないのですが、どうですか、その点は。
  135. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 どこからでもかき集めて、どんな金でもよいというふうにお受け取りいただいたといたしますれば、これは私の御説明がことばがまずうございまして、おわび申し上げたいと存じます。  私どもといたしましては、一般会計から必要な金を獲得するということに最大の努力を傾注いたしておる次第でございまして、今後とも一そうそう努力いたしたいと思いますが、従来からのいきさつもあることであり、現実問題といたしまして、一般会計では非常に財源が窮屈だけれども、失業保険の保険施設とするならば財源に余裕があるというような場合もございますので、失業保険の金もいまなおかなり使っておりますけれども、今後におきましては、一般会計のお金をよけい取るということに最大の努力を傾注いたしたいと考えております。
  136. 枝村要作

    ○枝村委員 現在の職訓法のもとでも、施設や設備を基準どおりに整備して、それから指導員も完全に配置する、そうしますと、どれくらいの金が要るのですか。いまは出した金額のワクでやっているのでしょう。いまの法律に規定されておるとおりにやったら、一体どのくらい要るのですか。まあ私はあまり数字に詳しくないから、聞いてもしようがないですけれども…。
  137. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 ちょっと御質問意味がとりにくかったのですが、いまの訓練所というのが、数そのものが十分であると思っておりません。それからいまの施設すべてがもちろん十分であるわけじゃございません。これをどの程度にまで拡充強化すればよろしいかというのは、ちょっとこれは金銭ではじくのはむずかしいかと思っておりますが、もし御質問の御趣旨を取り違えておりましたらば恐縮でございますが、もう一ぺん答え直します。
  138. 枝村要作

    ○枝村委員 これはなんでしょう、金があれば現行法でもある程度の職業訓練が行なわれていく。希望どおりにはいかぬにしても、まあまあやれる。ところが問題は、金がないからじゃないですか。あなた方が要求しても大蔵省からへずられるというようなこともありましょうけれども、全体としてやはり予算の財源に縛られて、現行法でもやれることがやれない、こういうことじゃないですか。
  139. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 御指摘の点は、現在ある訓練所につきまして基準の整備率の問題であろうかと存じます。整備率は逐年向上してきておりまして、建物につきましては、面積はほぼ達成しておりますが、耐火構造にするという問題がございます。この非耐火構造率というのは、四十年の二六%が四十二年には一九%に下がっておる。それから機械につきましての整備率というのは、同じく四十年の六五%から四十二年には七二%に上がっているというふうに逐次向上いたしております。この整備率を十分に満たすためにはどのくらいの金がかかるかというのは、これは非常に試算しにくいものでございますが、たとえばこの施設整備の予算が百億ほど一度に上がりますならば、年々三%ないし四%の整備率の向上というのが一ぺんに達成せられると考えております。
  140. 枝村要作

    ○枝村委員 要するに、午前中の問題にもなったように、安全衛生等を要綱案から削って国会に出されるというようなことの原因は、聞くところによれば、こんなことをすると金がかかるからといって大蔵省からしかられたから削ったというような話も聞いておるのですが、そういうことで、金の問題が原因してやはりあなた方がいろいろ苦労されておると思うのですよ。そうすれば、根本的に解決する方法というものを、単に一般会計からというだけでなくして、基本的にあらためて新しい何かをつくるということも考えていかぬとだめだ、こういう結論になってくるのですよ。そうじゃありませんか。だから労働者の意見も十分お聞きなさいということなんですが、どうですかその点。
  141. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 私ども労働者の御意見は極力伺うようにしておりますし、書いたい意見を聞いてくれないというような御非難はないのじゃないかと思っておりますが、それは別といたしまして、たとえば訓練税あるいは訓練課徴金のような独自の財源を持つということは、きわめて望ましいことであると考えております。ただ、その財源だけで十分であるかどうかという問題は、これまた別の問題でございます。また特に今日の日本の職業訓練の発展状況におきまして、一足飛びにそういう強制的な課徴金というのも非常にむずかしかろうと思いますが、将来の問題といたしましては、私ども非常に興味のある問題であると考えております。
  142. 枝村要作

    ○枝村委員 総括的な問題については、以上で一応終わりますが、次に、時間がありますれば、法案の中の重要な問題点について質問をしていきたいと思います。委員長、いいんですか。まだ時間ありますか。
  143. 森田重次郎

    ○森田委員長 どうぞ。
  144. 枝村要作

    ○枝村委員 この第一条の中の「雇用対策法と相まって」とありますね。これは、職訓の目的が雇用対策に従属して、雇用政策、労働力流動政策の重要な一環をなすものであるこういうふうにわれわれ労働者側は常にいろいろな場所でも主張しておるのでありますが、当局の言い分も聞いております。ここであらためて私どもはそう見るのだが、労働省はどういうふうにこれを見ているかという点について答弁を願いたいと思います。
  145. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 「雇用対策法と相まって」というのは、文字どおり相まってございまして、雇用対策に、あるいは雇用政策に、職業訓練が従属するというものではないと存じますが、しかし雇用対策法も、また職業訓練も、広い意味での完全雇用を目的とするものである。雇用対策法は一〇〇%そうであろうと存じます。職業訓練は、それのみを目的とするものとは申せないと思いますが、しかし、質の面での完全雇用を達成する上におきまして、職業訓練というのは非常に重要である。そういう機能を持ってはならないというふうには申せないんじゃないかと思っております。雇用対策法の中でも職業訓練に関連のある規定がございますし、職業訓練法もまた、技能労働者の職業に必要な能力を開発、向上させるというようなことを目的としておるわけでございまして、そういう点におきましては、職業訓練と雇用対策といったようなものは、うらはらをなして進まなければ、真の労働者の幸福は実現できないものと私どもは考えております。
  146. 枝村要作

    ○枝村委員 うらはらということばで、いみじくもあなたの本心をあらわしたようでありまして、これは並列して、並列という意味がどういう意味かわかりませんが、やはりうらはらということになるのですか。しかし、ほんとうに職業訓練というのが独立したものとして、私どもが主張するように、いろいろな何々対策でなくして、すべての労働者に技術教育、そういうものを訓練させるという立場に立つとするならば、雇用対策法というようなものと並列とか、うらはらとかということを考えずにやってもいいものではないかというふうに考える。ところがあなた方は、やはりこれを非常に固執して、条文の中に書き込んでおるということは、これはうらはらとかといっても、実はそれに従属していわゆる職業訓練というものが取り扱われておるというふうに見られても、しかたがないのじゃないですか。  それで、この問題も審議会あたりでは、労働者相当強く主張したと思うのですが、職業訓練局長として、ほんとうの腹はどうなんですか。職業訓練局長として、こんなものを削ってしまえという役に応じられぬのですか。それとも他に何か関係があって、これは残しておけという指示でもあるんですか。あなたの内輪のことをこちらからほじくり出すことはないと思うのですが、職業訓練局長としては、こんなものはあってもなくてもいいでしょう。あってはいけないけれども、なくてもいいのじゃないかと思うのです、あなたの職業柄からすれば。いろいろ思想は別として、そう思うがどうでしょう。
  147. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 審議会におきまして、労働側の二、三の方から、「雇用対策法と相まって」という字句につきまして、強い御批判の御意見がありましたことは御承知のとおりでありますが、しかし、それ以外の委員の方々は、やはり雇用対策というものを無視して、職業訓練だけ独走するのが正しいとはいえない、やはり雇用対策法というものもあり、これが政府雇用政策、雇用対策というものを代表しているものであるので、雇用対策、雇用政策あるいは完全雇用ということを無視した職業訓練ということはあり得ないのだから、このような表現は妥当であるという御意見でございます。  私個人の意見、あるいは職業訓練局長としての意見をお尋ねのようでございますが、これにつきましては、私が、特別この条文を削ったら承知しないというような圧力を加えられたことではございませんで、私が訓練局長として、公正に判断いたしました場合に、やはり雇用対策というものを職業訓練におきましては決して忘れてはならない、それに従属してはならないけれども、同時に忘れてはならないというふうに確信をいたしておる次第でございます。
  148. 枝村要作

    ○枝村委員 しかしこれは、われわれは非常にこだわるのですが、ほんとうに技能労働者の職業に必要な能力を開発し、及び向上させるために職訓、技能検定を行なうという、この第一条の目的で十分じゃないですか。雇用対策法というものと相まってということは要らぬじゃないですか。それが一つの大きな国の政策——国の政策というのは、先ほど言いましたように、資本の大きな要請によって着実に進めておるという、これ以外にないのです。ですからそうなると、やはり雇用対策、国の大きな政策のもとに、いわゆる資本の要請による雇用対策法という、これに基づいていまの職業訓練というものが行なわれておるとするならば、やはりあとにあるやつは、全部その効力を失ってしまう。それがひいてはいろいろな面で差しつかえができるし、魅力がなくなってくるという方向に、次第につながっていくということになるのじゃないですか。ですから、何回も言うようですけれども、この目的をほんとうに生かすためなら、従属関係と見られるような、「雇用対策法と相まって」というものは、やはりこれはなくしたほうがかえってすっきりしたものになって、本来の職業訓練法が生き生きとして生まれ変わってくるのではないかというように思うのです。それをなぜ固執するかということなんです。固執することはないでしょう。ほんとうにすべての労働者が技術を身につけ、訓練をすれば、しかもそれは、国や企業の全部の負担ですれば、どうせぬでも、企業の要請、国の要請にこたえることができるのじゃないですか。先にワクをはめて、その中でやって、それに吸収させるということは、今日の段階では、さか立ち的な政策としか見えぬのですが、その点はどうですか。
  149. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 先生のたびたびの御指摘でございますが、私ども雇用対策法そのものが、資本に奉仕するためにあるとは考えておりません。この法律につきまして、若干の御批判の御意見のありますことは承知しておりますが、政府の役人といたしましては、雇用対策法というものが成立しております以上は、労働省の雇用政策を代表するものはこの法律であると考えておる次第でございます。  職業訓練というのは、たびたび申し上げますように、雇用政策というものと全然無縁に行なわれるというものではないので、職業訓練によって、完全雇用が質的に推進せられるということは、否定できない事実ではなかろうかと考えております。また、職業訓練を受ける人たちの中には、相当多数の人が、雇用対策法に規定する手当を受けておるというようなこともございまして、雇用政策に訓練が従属してしまってはいけないことは、まことに御指摘のとおりでございますが、私どもといたしましては、雇用政策というものとにらみ合いながら職業訓練をやるという意味で、相まつということは間違っていることではないと考えておる次第でございます。
  150. 枝村要作

    ○枝村委員 これはいろいろ問題点の質問ですから、あまりこまかいところまで立ち入って質問いたしません。このあたりで終わりたいと思いますが、しかし生産のにない手は労働者ですから、国の発展の基礎をなすのは、すべて働く人々ですから、その多くの人々がやはりこれではどうもというような意見が出れば、別に差しつかえが——差しつかえがあるのかもしれませんが、なければ、その意欲をそぐような固執はやめてもらったほうがいいような気がするのですがね。そういうふうに思いますが、それはこれで終わりたいと思います。  その次に、第三章第一節のうちの第八条第三項の「向上訓練」という問題についてお尋ねいたしたいと思います。これは逐条説明の中で、あるいは現行訓練の内容からいろいろ見てまいりますと、労務管理体制強化のための監督者訓練または職長訓練、昇進訓練であるように見られるわけでありますが、それに間違いございませんか。
  151. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 「向上訓練は」、たとえば二級の技能士程度の技能を持っておる者を、一級の技能検定に受かるようにさらに技能を向上させるというような、労働者の技能を向上させることを目的とするものでございます。会社の職制を養成しようというような目的ではございませんので、労務管理上の手段として云々というような御指摘であったように思いますが、私ども、さようには考えておらない次第でございます。
  152. 枝村要作

    ○枝村委員 しかし逐条説明の中にはそういうように、そういうものを含めて、総称とかなんとか書いてあるのでしょう。大体この法案を出すときには職長訓練という名称で出したのですが、どの辺で引っ込めたか知りませんが、大体そのねらいというものはそうなんじゃないですか。
  153. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 御指摘のごとく、職長ではなくて、技能長訓練というようなことを一時いわれたことがございます。しかしながら、技能長訓練というのは、いかにも職制養成のための訓練であるようにとられますので、私どもそういうものは職業訓練の直接の対象とすべきではないということで、以後そういうことばは口にしないようにいたしたわけでございます。現実に監督者というものがあるわけでございます。その監督者というものを、よりよい監督者であるように訓練する、これは現に行なわれておりますし、別に悪いことではないというふうに考えて例示はいたしておりますけれども、そういう職制の養成そのものを、職業訓練の本来の姿というふうに考えているわけではございません。ただ、労働者がより広い技能を持ち、より高い技能を持つ、そのための訓練というものはいろいろございまして、それを総称して「向上訓練」と申した次第でございます。
  154. 枝村要作

    ○枝村委員 しかし、逐条説明の中には、先ほど言うように「追加訓練、昇進訓練、監督者訓練、職長訓練等」の総称であると説明されておりますね。これは間違いありませんね。そうだとすると、やはりほんとうのねらいは、この追加、昇進、監督者、職長、四つの総称ではなくて、そのうちの三つはいわゆる技能長みたいな訓練として見られぬやつがはっきりうたってあるんですな。だから、最初は——まあいろんな反対があったから「向上訓練」に改めたけれども、それでおしまいならいいけれでも、逐条説明の中で化けの皮をあらわすことになる。本質はやはり依然として技能長という、そういう職長を、公共の職業訓練所で養成するという、これはちょっと考えられないような訓練所にしようとするねらいが隠し切れないじゃありませんか。これはどういうふうにあなた答えますか。
  155. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 私どもといたしましては、監督者というものは、現に存在しておるわけでございますが、職長も現に存在している、そういう人たちが、職長としての訓練を受けるということは、これは訓練しないよりもよろしいことであろうと考えておるわけでございます。しかしながら、訓練所でもってこれこれの訓練を受け、検定を受けた者が、各会社において、現実に職長になるかどうかという問題とは全く別でございます。現実にある労働者のいろいろな種類に応じた訓練をしておるということでございまして、伝えられた技能長訓練といったような思想はただいま持っておりません。
  156. 枝村要作

    ○枝村委員 しかし、そういうふうにするということは事実なんでしょう。いまあなたも言われたように、職制をつくる——職制というとおかしいんですけれども、まあ職制か、そういうものを総称してこの向上訓練とするんだから、否定はされないわけなんですね。そういうものも含めて、やはりこの向上訓練をするということなんでしょう。それが間違っているというんですよ、私は。これはあくまでやはり労働者の技能を向上させるという、こういうことでいいのでありまして、公共の施設で監督的な労働者をつくるようなことは、する必要はないのです。監督的というと、これは非常に幅が広いのでしてね。腕をみがいたり、技能をつけるというのは、監督者であろうが何であろうが、これは一労働者として、職制がどうあろうとも、それは当然やらなければならぬことです。それをやり、そして腕をみがいてあげるということならいいんですよ。監督者的な労働者をつくるということは、これは腕がいいから監督者じゃないんですからね。腕がようても、あくまで平の労働者でおる人もおるのですから、結局はやはり思想的なもの、それから職制ですから、やはりある程度の長としての資格を備えるためには、いろいろ精神的な指導もしていかなければならぬということになると、そこには教育の問題としていろいろなやはり疑われる問題が出てくると思うのです。特に、現今のようなきわめて政治情勢がおかしいときに、あなた方が言われる教科というものは、どうもわれわれは信用ならぬということなんでして、やはりそういう監督者をつくるためにいろいろ精神訓話、道徳教育をする場合に、常に私どもの心配するのは、そういう政治情勢の中で行なわれるいろいろな危険を思うし、それからやはり監督者ですから、その会社の利益を守ることを本分とするのですから、そこには労働者の団結のためにはよくない思想教育というものが現実に行なわれる。そこで労働者がんばれ、団結せよというやつは、教えるはずはないでしょう、職制として。愛社精神でやるんですからね。そういうものが、こういう「向上訓練」の中には入ってくるからいけないと言っているんですよ。ですから、あなた方が最初の考え方をやめて、ほんとうの意味の技能を向上していくという、あるいは追加訓練というような、そういう意味のものだけの訓練制度であるならば、これは逐条説明とかなんとかいうもので疑いを持たれるようなことをせぬように、ぴしっとしてもらいたいというのが私の要望なんです。どうですか、それは。
  157. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 監督者訓練は、従来TWIと称して行なわれておったものでございまして、これは十時間程度で行なうもので、このTWIを通ったから職長になれる、職制になれるというような教育じゃございません。監督者になっておる者に対しまして、人の扱い方とか、改善のしかたというようなものを教育いたしまして、監督的地位にある労働者としての能力を、より上げようというふうに考えておるものでございまして、いわゆる技能長訓練といったようなものとは全く性質を異にするものでございます。ただ、そういう説明を加えずに逐条説明に書きましたために、もしそういう職制養成的な訓練をするんだというふうにおとりになりましたといたしますれば、逐条説明の書き方が非常にへたでございまして、その点はおわびしたいと存じます。
  158. 枝村要作

    ○枝村委員 まあ、へたとかじょうずでなくて、あるいは本心かもわからぬということなんでして、そういうことはひとつやめてもらいたいと思うんです。  それからあと、時間がありませんので進めます。九条の養成訓練を専修訓練と高等訓練に区分していらっしゃいますが、単能工養成は不必要ではないかと思うんですがね。いわゆる専修訓練、これはどう思いますか。
  159. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 専修訓練のすべてが単能工養成ではございませんが、専修訓練課程の中に幾ぶんかは単能工的なもの、すなわち多能工に比べて、技能の幅の狭いものがあることも事実でございます。私ども将来におきましては、先ほど申し上げましたように、多能工を訓練の主体にすべきであるというふうに考えておりますが、現実に専修訓練校、すなわち従来の都道府県立の職業訓練所というのが三百二十でございますか、相当な数でございまして、これを一ぺんに廃止して改めるということも不可能でございますので、今後は漸次、今度の法律で申します高等職業訓練校、すなわち従来の総訓並みのものに切りかえていくように努力いたしたいと考えております。と同時に、専修訓練校の運営におきましては、短時間ではございますけれども、できるだけ多能工的なものにいたすというように心がけてまいりたいと考えております。
  160. 枝村要作

    ○枝村委員 企業や資本の要請からすれば、それは単能工のほうがいいですわね、安上がりで使えるのですから。それはいいですけれども、やはりこっちの身になってもらわなければいけぬということなんです。それは一年コース、二年コースというふうに区分することがまた無理なんですね。しかも、機械的にそれをきめるということは無理なんじゃないですか、あなたもわかっておるように。一年で一人前になる人もおろうし、あるいは職種によっては、三年も四年もかかって一人前になる職種もあるのですからね。ですから、詰め込みで一年コースの専修訓練というものに入れて、そうしてぽんとほうり出していくということは、受ける側の労働者としては、たまったものではありませんよ。出ておる人たちはみな言っているでしょう、何のために職業訓練所に入ったかわからぬと。そういう人たちもたくさんおるわけなんですからね。私たちとすれば、やはりそういうやり方に基本的な間違いがあるような気がするけれども、実際に、実態に合わないやり方ではないかというように見るわけなんです。  それともう一つは、中学卒業者と高校卒業者、あるいはいまごろは大学まで含めて、一緒にこんがらかって訓練をさせるということなんですね。それは一体何のためにやるかということなんです。短期、一年で何が一体覚えられるのであろうかという疑念を持たれるでしょう。あなたも当局者としておかしいとは思わぬですか。ですから、われわれが要求しておるのは、そういうものはやめてしまって、そうして多能工を養成すべきだということを常に言っているのです。あなた方も、それは正しい主張、意見ですから、だいぶその意見に基づいてきたようなかっこうを見せておられるようであります。たとえばいま専修が二で高訓が一の割合を、逆にしようとかいうような意見も述べられたようであります。労働者側はそれはいいとして一応は喜んではおりますが、しかし、ほんとうに具体的にそれをどういうふうな計画で進めていくかとか、あるいはそれに伴う予算、財政の面でどういうふうに措置するかという具体的な問題になってくると、あなたのほうでは言を左右にして明らかにされないということになっているようなんです。そうすると、せっかくいいことはおっしゃいましたが、実はから念仏で、当面のごまかしにしかすぎない。これもまたペテンにかかったわいということになって、労働者の不信を買うということになるわけです。ですから、ほんとうにあなた方がこういうような方向で、真の意味の職業訓練をさせるということを本気で考えておるのだったら、ぴしっとした計画のもとに、やはり労働者側、受ける側に自信を持たして、魅力を感じさせるような点を明らかにすべきだと思うのです。そう思うのですが、どうでしょう。
  161. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 ペテンにかけて云々というおことばがございましたが、私はそういうことをいたした覚えはございません。ただ、それでは具体的にどういうふうに進めるかという点につきましては、まず法律におきましては、従来は一般訓練所しかつくることを認めておりませんでしたのを、高等訓練校をつくることを認めるということによりまして、今後都道府県立の高等訓練校がふえると存じます。これは制度的にそういう道を開いたわけでございます。具体的にそれについてどれだけのものを何年計画で変えていくかという点につきましては、法律が通りました上で都道府県の意見も聞き、また現実に労働者としましては一日も早く社会に出てかせぎたいという人がおることも事実でございますので、そういう実情も勘案いたしまして、できるだけそれに必要な予算を獲得するようにいたしたいと考えておる次第でございます。
  162. 枝村要作

    ○枝村委員 確かに労働者の中には、貧困者が非常に多いですからね。二年も三年も職業訓練で、ろくに保障もされぬでやられたらたまったものじゃないということで、それは一年を希望する者がおるかもしれませんよ。おるかもしれませんが、それではやはり職業訓練の本来の精神を生かすことはできないのでありまして、そういう貧乏人に対しては、ほかの方法で援護措置を講ずるようにしてやらねばならぬ。これはもうILOの百十七号の勧告を読めばわかりますけれども、そういうふうにすべての保障をさせるべきだ。本人が自由かってに訓練所に通ったり通わなかったりする、そういう制度は日本にはありませんが、自由意思で訓練を受けておるなら別ですけれども、強制的に訓練所に入れているのですからね。まあ強制的というわけじゃありませんけれども、いろいろ規律に基づいてやっているのですから、そうなればILOの百十七号に基づいて、ちゃんとした保障をすべきだと思うのです。それは生活がすべてできるようにするのも大切でしょうけれども、そのほかいろいろな交通費とか、食事費とかあるでしょう。すべてのものをやるようにすることによって、これはほかの方法でもいろいろあるでしょうけれども、援護措置をして、貧乏人でも進んで職業訓練を受けて、一人前の技術を身につける、そういう方向政府としてはやるべきであると思うのですが、それはいまあなた方は一つもしていないのですね。そこまで手が回らぬといえばそれまででしょうけれども、やはりそこまで考えてやる必要があると言っているのです。そのために、貧乏を助長するような制度というものは早くやめて、二年なら二年という、多能工をつくる高等訓練に集中させるならさせて、そういう貧乏がつけ入るような制度をその面からくずしていくということも大切なことではないかと思う。  それと、これはうわさですけれども、労働省は、貧乏人はそういう職業訓練を受けさせぬようにせい、受けても入れぬようにせいというような秘密指令でも出しておるのですか。
  163. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 あとのほうの御質問の、貧乏人は入れないようにしろというような秘密指令を出しているという事実は、全くございません。むしろ最近におきましては、生活保護を受けておる世帯の者でも、こういうような扱いで、できるだけ容易に訓練が受けられるように配慮しろという注意を与えておる次第でございます。できることならば、全部を多能工にいたしたいというのが私どもの念願でございます。  また、最近におきましては、経営者の認識も改まりまして、審議会の経営者側委員からも、職業訓練は多能工を基本とすべきであるという意見が述べられておりまして、多能工を重点とするということにはおおむね異論はないと考えております。ただ、現実の問題といたしまして、今度の法律でいう専修校、すなわち従来の一般訓練所というものが従来の訓練所の大部分を占めておりまして、これを一ぺんに廃止して高等訓練校に切りかえるということもむずかしゅうございますので、それはできるだけ速いスピードをもって漸次切りかえるようにいたしたい。またそのための経済的保障というような問題につきましては、無料の原則の拡充につとめることはもちろんでございますが、そのほかに奨学金の制度というような従来からございましたものの拡充につとめまして、昭和四十四年度におきましても、予算の執行上、これをできるだけ拡充するように目下計画中でございます。
  164. 枝村要作

    ○枝村委員 私の質問は本日はこれまでにしておきたいと思います。
  165. 原健三郎

    ○原国務大臣 先ほどの私の発言中、答申と申し上げましたのは、諮問と訂正させていただきます。      ————◇—————
  166. 森田重次郎

    ○森田委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  本案審査のため、雇用促進事業団より参考人を招致し、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  167. 森田重次郎

    ○森田委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  168. 森田重次郎

    ○森田委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  次回は明二十三日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後三時二分散会