○森
委員 業務上の事由による災害であるかどうかを判断するのは遂行性と起因性だ、私が具体的にそう言うと、今度はことばをかえて、通勤途上というのはいわゆる業務上の災害に入れないのだ、あるいはその通勤途上の木馬道というのは、一般の
会社でいわれる構内的なものであったかどうかということによってきまるのだ、さらには業務上の遂行性や起因性というものが支配管理下にあるかどうか、そういうことばでいま逃げておられるわけです。
そこで、そのことについて私は少し掘り下げて申し上げたいわけですが、まず支配管理の問題であります。林業労働者の実態というのは、常に林業労働者の作業場へ行って使用者が支配管理する、そういうものではないのです。たとえば
一つの山を七十区で日給千六百円で地明け作業をするといえば、これはもう同じ作業をしに行くのですから、何もそこへ行って経営者が、毎日地明け作業を契約どおりやっておるかどうか見に行かぬでも、大体何月ごろまでに終わってくれよ。そうしますと、ことしはいま雪が多いから、ちょっと日にちを延ばしてもらわなければできないなというくらいの話はございます。しかし、ある期間においてきめられたら、地明け作業というのは単純な作業ですから、そんなものを山の現場の作業場に行って支配管理をするということはないわけです。そういう支配管理が作業現場においてなければ業務上災害に入らないのだというのだったら、林業労働者は入りませんよ。それは林業労働者の作業実態というものを知らない人のことばなんです。林業労働者というのは、毎日支配管理をしたければ仕事ができない、そんな作業ではありません。したがって、そういう観点から言うならば、林業労働者というのは、そういう支配管理に入っていない労働者である、それが林業労働の実態であるということです。そのことをやはり実態として認めてもらわなければならないということであります。
次に木馬道の問題であります。これは、
一つのある作業場に行く場合、その途中の林道なり木馬道というものは、その沿線、周辺の森林所有者が、それぞれ造材なり伐木なり植林なり、そういう場合に共同で使うわけです。したがって、そういう林道あるいは木馬道がつくられる場合には、その周辺の山持ちがその分に応じて負担をしているわけです。したがって、これは森林所有者の共同管理の施設である、こういうふうに
考えます。自分の山に行くのに、そこだけ道をつくっても、途中がなかったら行けないわけですから、共同の林道があり、共同の木馬道というものがあるわけなんです。その付近の谷から全部出てくる、Aという所有者、Bという所有者、Cという所有者が、それぞれDという木馬道を通って材木を搬出する、こういうことになっているわけです。したがって、工場内とかそういう感覚で見る場合より、山の作業場は、林業の場合は、もっと広範な視野で作業場であるかどうかというものを判定する
基準をお
考えいただかなければ、実情に合わないと思うわけです。現に、
先ほどの某
事件のその通った木馬道というのは、その周辺の森林所有者が、その木馬道をつくる場合において、経費の分担をしているわけです。したがって、その地域における林業の共同施設であるというふうに
考えるのが正しいのじゃないか、こういうふうに思います。
それから通勤途中の問題でございますけれ
ども、林業の通勤というのは、家を一歩出ますと、もうすでに作業場に入ったと同じ姿勢でいるわけです。たとえば、途中でせびろを着ていって、作業場に入って作業着に着がえて作業をする、こういう作業ではないわけです。家を出たときから、作業服を着、地下たびをはき、七つ道具を持っていくわけです。途中でパチンコ屋に行ったり、一ぱい飲みに行ったり、そんなことをしているわけではないのです。だから林業労働者の場合は、門口から仕事場に入る、こういう気がまえで行くのであって、したがって、普通いうところの通勤途上、こういう
考え方ははずして
考えるのが正しいのではないか。通勤途上における災害は業務上災害に入れないとおっしゃっていますが、これはILOの百二十一号条約でも、いわゆる通勤途上は、今日のような交通戦争の中では、業務上災害に入れようということがはっきりしているわけです。これはただ日本がそれを批准していないだけであります。だから通勤途上という
考え方は、これから通勤途上の
事故が業務上の災害になり得る
条件が、国際的にも国内的にもどんどん発展していくだろうということを前提にしながら、山林の場合には特殊な通勤途上である、いわゆる作業服を着て仕事をする、通勤それ
自体が
一つの仕事の場の中で歩いていることである、こういうことで理解されるならば、
先ほどの支配管理の問題、いわゆる林業の実態、それから木馬道というものが共同管理施設であるということ、そういう点から
考えまして、あなたが
先ほどからおっしゃっています遂行性、起因性の問題を、一歩後退して業務上を否定されたが、そういういろいろな要因を再考をしていただくならば、これは業務内に入り得るのではないか、こう私は思います。その
考え方の基礎に、林業労働者がただ
一つ強制適用を受けておるこの社会保険の労災保償保険、そんなものを何とかしてはずしてやろうというふうな意地悪な問題で
考えられたら困りますよ。何とかして林業労働者の災害を救う道がないだろうかという観点で
考えてもらわないと、何とかけちをつけて業務上の災害からはずそうということを根底に置きながらものを
考える——頭のいい役人の皆さんが、
法律の一字一句をたてにとりながら
考えているならば、私はそれは政策じゃないと思うのです。今日林労働者の災害の問題については、何よりも先んじて政府が真剣に
考えなければならない重大な課題であることは、
先ほどの林業が当面している問題からいっても明らかであります。ただ
一つ強制適用を受けておるこの社会保険が、皆さんのような、ああ言えばこう言う、こう言えばああ言うで逃げまくるというような
考え方では、私はもう議論をする必要はないと思うのです。何とかしてこれを拡大解釈してでも適用し、救済をする道がないだろうか、そういう姿勢でものを
考えてもらうのでなければ、私は当面している林業労働者のこういう重大な課題を解決できないと思うのですが、その点について
大臣いかがですか。