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1969-04-08 第61回国会 衆議院 社会労働委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年四月八日(火曜日)    午前十時二十四分開議  出席委員    委員長 森田重次郎君    理事 澁谷 直藏君 理事 竹内 黎一君    理事 谷垣 專一君 理事 橋本龍太郎君    理事 渡辺  肇君 理事 河野  正君    理事 田邊  誠君 理事 田畑 金光君       海部 俊樹君    佐々木義武君       齋藤 邦吉君    田川 誠一君       田澤 吉郎君    高橋清一郎君       中山 マサ君    藤本 孝雄君       箕輪  登君    淡谷 悠藏君       枝村 要作君    加藤 万吉君       後藤 俊男君    島本 虎三君       山本 政弘君   米内山義一郎君       本島百合子君    大橋 敏雄君       伏木 和雄君    谷口善太郎君       關谷 勝利君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         労 働 大 臣 原 健三郎君  出席政府委員         人事院事務総局         職員局長    島 四男雄君         文部省大学学術         局長      村山 松雄君         厚生大臣官房長 戸澤 政方君         厚生省医務局長 松尾 正雄君         厚生省薬務局長 坂元貞一郎君         労働省労働基準         局長      和田 勝美君         労働省職業安定         局長      住  榮作君         労働省職業訓練         局長      石黒 拓爾君         建設省道路局長 蓑輪健二郎君  委員外出席者         建設省土木研究         所長      福岡 正巳君         参  考  人         (首都高速道路         公団理事長)  林  修三君         参  考  人         (首都高速道路         公団理事)   江田 正光君         参  考  人         (理化学研究所         理事長)    赤堀 四郎君         専  門  員 濱中雄太郎君     ――――――――――――― 四月四日  委員本島百合子辞任につき、その補欠として  西村榮一君が議長指名委員に選任され  た。 同日  委員西村榮一辞任につき、その補欠として本  島百合子君が議長指名委員に選任され  た。 同月八日  委員井村重雄君、八木昇君及び山田耻日君辞任  につき、その補欠として田澤吉郎君、淡谷悠藏  君及び米内山義一郎君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員田澤吉郎君、淡谷悠藏君及び米内山義一郎  君辞任につき、その補欠として井村重雄君、八  木昇君及び山田耻目君議長指名委員に選  任された。     ――――――――――――― 四月三日  失業保険法及び労働者災害補償保険法の一部を  改正する法律案内閣提出第六九号)  職業訓練法案内閣提出第九一号) 同月四日  衛生検査技師法の一部改正に関する請願(石川  次夫君紹介)(第三〇〇六号)  同(神田博紹介)(第三〇八九号)  同(斉藤正男紹介)(第三〇九〇号)  同(高見三郎紹介)(第三〇九一号)  同(八田貞義紹介)(第三〇九二号)  医療労働者増員等に関する請願外二件(板川  正吾君紹介)(第三〇〇七号)  同外十件(枝村要作紹介)(第三〇〇八号)  同外四件(大出俊紹介)(第三〇〇九号)  同外十五件(大原亨紹介)(第三〇一〇号)  同外四件(勝間田清一紹介)(第三〇一一  号)  同外一件(川村継義紹介)(第三〇一二号)  同(河上民雄紹介)(第三〇一三号)  同外九件(河野正紹介)(第三〇一四号)  同(佐々栄三郎紹介)(第三〇一五号)  同外一件(佐野進紹介)(第三〇一六号)  同(島上善五郎紹介)(第三〇一七号)  同外一件(田原春次紹介)(第三〇一八号)  同(武部文紹介)(第三〇一九号)  同外三件(楯兼次郎紹介)(第三〇二〇号)  同外四件(戸叶里子紹介)(第三〇二一号)  同外九件(堂森芳夫紹介)(第三〇二二号)  同外三件(中谷鉄也紹介)(第三〇二三号)  同外二件(楢崎弥之助紹介)(第三〇二四  号)  同外三件(成田知巳紹介)(第三〇二五号)  同外七件(華山親義紹介)(第三〇二六号)  同(平等文成紹介)(第三〇二七号)  同外六件(広瀬秀吉紹介)(第三〇二八号)  同外一件(三宅正一紹介)(第三〇二九号)  同外十四件(村山喜一紹介)(第三〇三〇  号)  同外一件(八木一男紹介)(第三〇三一号)  同外一件(八木昇紹介)(第三〇三二号)  同外三件(山口鶴男紹介)(第三〇三三号)  同(山中吾郎紹介)(第三〇三四号)  同外一件(山本弥之助紹介)(第三〇三五  号)  同外一件(阿部助哉君紹介)(第三〇五〇号)  同(有島重武君紹介)(第三〇五一号)  同(石川次夫紹介)(第三〇五二号)  同外二十三件(江田三郎紹介)(第三〇五三  号)  同外二十三件(枝村要作紹介)(第三〇五四  号)  同(大野潔紹介)(第三〇五五号)  同外一件(大橋敏雄紹介)(第三〇五六号)  同外一件(神田大作紹介)(第三〇五七号)  同外一件(唐橋東紹介)(第三〇五八号)  同外五件(川村継義紹介)(第三〇五九号)  同外七件(河野正紹介)(第三〇六〇号)  同外七件(木原津與志君紹介)(第三〇六一  号)  同外十一件(木原実紹介)(第三〇六二号)  同(工藤良平紹介)(第三〇六三号)  同(斎藤実紹介)(第三〇六四号)  同外四件(實川清之紹介)(第三〇六五号)  同外二件(鈴切康雄紹介)(第三〇六六号)  同(田代文久紹介)(第三〇六七号)  同外一件(田原春次紹介)(第三〇六八号)  同外十一件(多賀谷真稔紹介)(第三〇六九  号)  同(楯兼次郎紹介)(第三〇七〇号)  同(谷口善太郎紹介)(第三〇七一号)  同外六件(中澤茂一紹介)(第三〇七二号)  同外五件(成田知巳紹介)(第三〇七三号)  同外八件(浜田光人紹介)(第三〇七四号)  同(林百郎君紹介)(第三〇七五号)  同(樋上新一紹介)(第三〇七六号)  同外二件(平等文成紹介)(第三〇七七号)  同外二件(伏木和雄紹介)(第三〇七八号)  同外三件(細谷治嘉紹介)(第三〇七九号)  同(松前重義紹介)(第三〇八〇号)  同(松本善明紹介)(第三〇八一号)  同外二件(門司亮紹介)(第三〇八二号)  同(矢野絢也君紹介)(第三〇八三号)  同(山口鶴男紹介)(第三〇八四号)  同(山下榮二紹介)(第三〇八五号)  同(山中吾郎紹介)(第三〇八六号)  同外四件(山本政弘紹介)(第三〇八七号)  同(和田耕作紹介)(第三〇八八号)  同(安宅常彦紹介)(第三二一三号)  同外二件(井手以誠君紹介)(第三二一四号)  同外七件(板川正吾紹介)(第三二一五号)  同(太田一夫紹介)(第三二一六号)  同(工藤良平紹介)(第三二一七号)  同外一件(佐々木良作紹介)(第三二一八  号)  同(田原春次紹介)(第三二一九号)  同(内藤良平紹介)(第三二二〇号)  同外三件(中谷鉄也紹介)(第三二二一号)  同(永江一夫紹介)(第三二二二号)  同外三件(楢崎弥之助紹介)(第三二二三  号)  同外八件(成田知巳紹介)(第三二二四号)  同外五件(浜田光人紹介)(第三二二五号)  同外一件(八木一男紹介)(第三二二六号)  同外三件(安井吉典紹介)(第三二二七号)  同(柳田秀一紹介)(第三二二八号)  同外十三件(山内広紹介)(第三二二九号)  同(山本政弘紹介)(第三二三〇号)  同外三件(山本弥之助紹介)(第三二三一  号)  国民年金等改善に関する請願世耕政隆君  紹介)(第三〇九三号)  引揚医師の免許及び試験の特例に関する請願  (世耕政隆紹介)(第三〇九四号)  療術新規開業制度に関する請願臼井莊一君  紹介)(第三二〇七号)  同(佐野憲治紹介)(第三二〇八号)  同(始関伊平紹介)(第三二〇九号)  同(塩谷一夫紹介)(第三二一〇号)  同(千葉三郎紹介)(第三二一一号)  同(内藤隆紹介)(第三二一二号) 同月七日  衛生検査技師法の一部改正に関する請願西村  英一君紹介)(第三二八三号)  同(斉藤正男紹介)(第三三三四号)  療術新規開業制度に関する請願黒金泰美君  紹介)(第三二八四号)  同外三件(松澤雄藏紹介)(第三二八五号)  同(門司亮紹介)(第三二八六号)  同(阿部昭吾紹介)(第三三七九号)  国民年金等改善に関する請願田中龍夫君  紹介)(第三二八七号)  同(橋本龍太郎紹介)(第三二八八号)  医療労働者増員等に関する請願外三十四件  (枝村要作紹介)(第三三一八号)  同外三件(大原亨紹介)(第三三一九号)  同外二件(川村継義紹介)(第三三二〇号)  同外六件(河野正紹介)(第三三二一号)  同外一件(工藤良平紹介)(第三三二二号)  同(栗林三郎紹介)(第三三二三号)  同外四件(實川清之紹介)(第三三二四号)  同外三件(島本虎三紹介)(第三三二五号)  同(田原春次紹介)(第三三二六号)  同(武部文紹介)(第三三二七号)  同外一件(千葉佳男紹介)(第三三二八号)  同外一件(楢崎弥之助紹介)(第三三二九  号)  同(成田知巳紹介)(第三三三〇号)  同(穗積七郎紹介)(第三三三一号)  同(森義視紹介)(第三三三二号)  同(山中吾郎紹介)(第三三三三号)  同外七件(小川三男紹介)(第三三八〇号)  同(田原春次紹介)(第三三八一号)  同外一件(戸叶里子紹介)(第三三八二号)  同外一件(浜田光人紹介)(第三三八三号)  同外一件(松前重義紹介)(第三三八四号)  同外六件(村山喜一紹介)(第三三八五号)  同外三十二件(八木昇紹介)(第三三八六  号)  同外十一件(山崎始男紹介)(第三三八七  号)  同(山本幸一紹介)(第三三八八号)  医療保険制度改悪反対及び医療保障確立に関す  る請願田代文久紹介)(第三三七四号)  同(谷口善太郎紹介)(第三三七五号)  同(林百郎君紹介)(第三三七六号)  同(松本善明紹介)(第三三七七号)  同(米田東吾紹介)(第三三七八号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月七日  保育所に対する国庫補助率引下げ反対に関する  陳情書外二件  (第二二六号)  同  (第二九二号)  看護婦等学校増設等に関する陳情書  (第二二七号)  寺町保育園移築費国庫補助に関する陳情書  (第二二八号)  スモン病患者の救済に関する陳情書  (第二二九号)  保育所制度改善に関する陳情書  (第二三〇号)  岡山県の毒ガ防除費助成に関する陳情書  (第二三一号)  労働者災害補償保険に関する陳情書  (第二三二号)  豪雪地における失業保険強化に関する陳情書  (第二  三三号)  事業内職業訓練強化向上に関する陳情書  (第二三四号)  日雇労働者健康保険法の一部改正に関する陳情  書  (第  二三五号)  原子爆弾被爆者の援護に関する陳情書  (第二三六号)  失業保険法の一部改正に関する陳情書  (第二三七  号)  林業労働者に対する失業保険等生活保障制度  確立に関する陳情書  (第二三八号)  予防接種による医療事故に対する国家補償等に  関する陳情書  (第二六六号)  国民年金制度改善等に関する陳情書  (第二  六七号)  老人福祉対策強化に関する陳情書  (第二八八号)  看護婦確保対策に関する陳情書  (第二八九号)  児童手当制度早期実現に関する陳情書  (第二九  〇号)  同(第三三三  号)  日雇労働者健康保険制度改善等に関する陳情  書  (第二九一号)  失業保険法の一部改正反対に関する陳情書  (第二九  三号)  同外五件  (第三三八号)  東海道遊歩道路早期実現に関する陳情書  (第二九四号)  交通事故診療改善に関する陳情書  (第二  九五号)  日雇労働者健康保険制度改善に関する陳情書  (第三三〇号)  医療保険制度における分べんの医療給付適用に  関する陳情書  (第三三一号)  へき地診療所医師確保に関する陳情書  (第三三二号)  国民健康保険制度改善等に関する陳情書  (第三三四号)  診療報酬緊急是正等に関する陳情書  (第三三五号)  医療保険制度改善に関する陳情書  (第三三六号)  国民健康保険事業費増額等に関する陳情書  (第三  三七号)  医療保障制度改善に関する陳情書  (第三三九号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  職業訓練法案内閣提出第九一号)  労働関係基本施策に関する件(労働災害に関  する問題及び首都高速道路公団等における労働  問題)      ――――◇―――――
  2. 森田重次郎

    森田委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。竹内黎一君。
  3. 竹内黎一

    竹内委員 私は、本日は、続発する労働災害の問題につきまして、諸点お尋ねをいたしたいと思います。  御案内のように、四月一日、東京荒川放水路における新四ツ木橋橋脚工事におきまして、円筒形鉄囲いが一瞬のうちに倒れ、八人が水没する、その作業員のうち、実に七人がそろって青森の農家の出かせぎであったという、たいへんに悲惨な事故があったわけでございます。  これを追いかけるかのように、翌二日には北海道雄別炭鉱におきましてガス爆発が起こり、十九名の痛ましい犠牲を出しております。  さらに四日には、東大付属病院におきまして、高圧酸素治療室において高圧酸素タンク爆発事故が起こり、医師患者を含めて四名の犠牲をまた出しておる。  これらの一連の暗い報道に大きなショックを受け、心を痛めたのは、あえて私一人ばかりでないと思います。私は、質問に先立ちまして、これらの事故の、不幸犠牲になった方々のみたまに対し、その冥福を深く祈るとともに、負傷された方々の一日も早い御快癒を祈念するものでございます。また、御遺族方々に対しては、心からお悔やみを申し上げ、また負傷者の御家族に対しては、心からお見舞いを申し上げるものでございます。  私は、主として荒川放水路橋脚工事における事故についてきょうはお尋ねいたしたいと思うのですが、具体的な質問に先立ちまして、まずひとつ労働大臣見解をただしたいと存じます。  それはどういうことかと申しますと、これらのいずれも死者を出すような惨事の連続、それはそれぞれに原因があろうと思います。また、それぞれの原因究明が急がれておるわけでございますが、これらの一連の連続した事故を通じまして私が感じますことは、安全というものに対するわれわれの今日の取り組み方、あるいはものの考え方にやはり何か欠陥があるのではないか。日進月歩の技術進歩、新工法の採用等々もありますが、そういう進歩した技術が、一面において必ずやそれに原因したところの事故をまた予想させるものでございますが、どうも最近の風潮というものは、いわばそういう進歩の面をとかく評価しがちであって、多少のマイナスがあっても、その技術進歩のほうを強調するという傾きがありはしないかと考えるものでございます。その意味におきまして、私は冒頭まず原労働大臣のいわば安全哲学というものについての見解を表明願いたいのでございます。
  4. 原健三郎

    原国務大臣 竹内さんの御質問、またいま御指摘になりました続発する災害でございまして、なくなられた方に私どもも衷心その御冥福を祈り、また負傷者方々の御全快を祈り、御遺族に対してはお悔やみを申し上げたいと思います。  お尋ねの新四ツ木橋事故につきましては、竹内さんの選挙区、郷里の方々が、七名も突然事故のためなくなられまして、心から哀悼の意を表するものであります。  こういういわゆる災害が起きまして、新四ツ木橋のほうにおきましては新しい工法による、それで新しいいわゆる能率的なということに心を奪われて、安全性について油断しておったのではないかというお尋ねでございますが、最近のように労働力が不足し、そしてその結果、進んだ技術機械、新工法等を採用するというようなことになってまいりまして、でありますからいろいろ事故も起こってまいりますが、それでその御心配の点は、労働基準監督官が監督いたしておるのですが、新しい技術が進んでくると、基準監督官がその機械など、新工法がわからないのじゃないか。今度の四ツ木橋でも、そういう新しい工法でやっておられたのでございますが、そういう点のないように、労働省の中に安全研究所というのがございますが、そのところで所要の研究を進めさしております。そしてその安全研究所で、そういう新機械、新工法がどういうものであるかということがわかりましたら、それでその監督官に計画的な研修実施いたしておるところでございます。  また、中央ではそういうふうにいたしておりますが、全国主要の監督基準局あるいは署において、安全専門官というのを今度新たに――今度ではございませんが配置して、労働基準監督官と提携して、この安全の確保をはかっておる。特に、そういういま御指摘のような新技術、新工法等が出てまいりましたので、そういう専門的な研修をやり、また専門的な専門官を置いて、安全が確保されないことのないように、万遺漏なきを期してやっておるような次第でございます。
  5. 竹内黎一

    竹内委員 私は原労働大臣に、労働大臣安全哲学いかんということを実はお尋ねしたわけでございます。それに対して、たいへん具体的な御答弁が実はあったわけでございますが、本日はあまり時間もないので、この点にあまりこだわっておるわけにはまいりませんので、ひとつ私の考えだけを表明しておきたいと思います。  御案内のごとく、わが国の経済成長率というのはきわめて高く、今日史上最大イザナギ景気というものを謳歌しておるわけでございますが、ただいま指摘しました相連続した三つの事故のほかに、ごく最近におきましては、北海道空知炭鉱においてもまた痛ましい事故を惹起しておるわけです。かくもおびただしい人命を犠牲にする、すなわち出かせぎ農民を人柱にしたり、あるいは炭鉱労務者の地底のうめきに支えられたそういう繁栄景気であるならば、私は、まさにそれは唾棄すべきものではないかという感じを、今回の災害を通じて強く感ずるものでございます。時間がありませんので、この点につきましての大臣見解はあえて求めずに、次の質問に移りたいと思います。  そこで、土木研究所所長さんにお越しを願っておるわけですが、ひとつ専門家として、問題になりましたところのプレストレスリングビーム工法、いわゆる環状基礎工法、この工法長所並びに短所長所につきましては、たとえば工事期間が非常に従来のものより短くて済むとか、あるいは経費が安いとか等々私ども承知しておりますが、この環状基礎工法の一般に考えられる短所というものは何かということを、ひとつ御教授願いたいのです。
  6. 福岡正巳

    福岡説明員 ただいまの御質問短所でございますが、この新工法につきましての短所と申しましては当たらないかもしれませんが、この工法経験が、在来の締め切り工法に比べまして、経験が浅いということが短所であろうかと思います。したがいまして、適用例が相当たくさんあるとはいいましても、まだ、三十年あるいは五十年行なわれているものに比べて、実施例が若干少ないというところが短所かと思います。
  7. 竹内黎一

    竹内委員 私はしろうとでございますので、実はよくわからないのでございますけれども、話を聞くところによりますと、 このリングビーム工法というのは、設計どおり施工するのは、かなり高度の技術を要するものである、いわゆる真円度と申しますか、設計どおりに完全な円をつくるということがきわめてむずかしい。したがって、完全な円であるべきものが、しばしば施工においてはやや楕円形をなしている、その楕円形が、偏心荷重について非常に弱いのだという、こういう説明を承っているのでございますが、専門家としての御意見はその点いかがですか。
  8. 福岡正巳

    福岡説明員 御質問の件でございますが、リングビームのひずみと申しますか、直径の長いほうと短いほうの比がほんとうに全く同じであるということは、これは施工の上からいってできないことだと思いますが、それがどの程度になればどの程度強度が弱るかということにつきましては、まだこれからもう少し研究をしてまいりませんと、はっきり言えないのではないかと考えます。
  9. 竹内黎一

    竹内委員 時間がないので、ひとつずばりとお尋ねいたしますのでお答え願いたいのですが、今回の円筒形のあれが、一瞬にして倒れたその原因については、これから究明が行なわれるわけでございます。建設省労働省、それぞれに調査団をおつくりのようでございます。また警察のほうも、捜査という観点から進められているようでございますが、工法そのものの持っている欠陥としての今回の事故なのか、あるいは施工上のミスと考えられる可能性が強いのか、所長としてはどちらの可能性がより強いとお考えでしょうか。
  10. 福岡正巳

    福岡説明員 御質問の件でございますが、私どもいま委員会をつくりまして、委員長だけの経験知識じゃなくて、非常に広い専門家知識を総合いたしまして検討をいたしたいと考えている次第でございまして、おそらくその原因もそう単純なものじゃないかもしれませんし、あるいは案外早く原因が見つかるかもわかりませんが、現在のところ、はっきりしたお答えはできない状態でございます。
  11. 竹内黎一

    竹内委員 この環状基礎工法を、新工法ということで、かなりの地点で採用しているわけですが、一体こういう新工法というのは、何らか建設省のほうで許可するとか、あるいは承認するとか、こういうような仕組みになっているものですか。道路局長からひとつ御答弁願います。
  12. 蓑輪健二郎

    蓑輪政府委員 こういう新工法、いろいろ技術進歩してくることだし、新しい合理的な工法が出ることも今後考えられます。ただ、この新工法というものの中に、やはり材料的に究明しなければならない点、あるいは応力的に非常にむずかしい構造になりますし、応力的に、まだまだこういう計算でやっていいのだというような計算方法確立されないような構造もあろうかと思います。また、いまの土木工事の実情を見ますと、必ずしも計算どおりにいくかどうか、それにはやはり天候の問題もございますし、また土質、水深、流速の問題もありまして、いろいろ天然現象が変わってくることによりまして、外から受ける力も変わってくると思いますので、そういう点も考えまして、将来新工法を採用いたしますときには、やはりどういう点に気をつけなければならないか、どういうような施工の段取りに注意をしなければならないか、その辺は、十分検討をしなければならないと思います。  今回につきましては、やはりそういうような材料力学的な問題につきましては、一般的な方法として、土木研究所でも研究しております。あのリングビーム工事そのものにつきましては、各実施の事務所が、いままでの前例その他に基づきまして、補強すべきところは補強し、考えられる安全性を保つようにしたわけでございますが、こういう結果になりましたことは、われわれとしては安全性の追求ということをもっと考えると同時に、いま言いました技術的な諸問題を、土木研究所を中心といたしまして解決してまいりたいというふうに考えております。
  13. 竹内黎一

    竹内委員 実は私がいま伺っているのは、そういういわゆる新工法というものについて、建設省が何らかの形でオーソライズを与えているかどうか、こういう点を実は伺っているのです。もう一度御答弁願います。
  14. 蓑輪健二郎

    蓑輪政府委員 新工法といいますと、特許をとるということから始まろうかと思います。特許というのは、私たちの考えていますのは、一つのアイデアに対する――これは合理的なアイデアであるということで、特許になるのではないか。ではそれを、特許をされたからといって、それが全部の場合に応用して必ずしも安全であるというものではないかと思います。やはり新しいアイデア、それで特許を受けましたものに対しまして、どういうような場合にどういう注意でやればいいかというのが、われわれ建設工事に携わっておる者の仕事になろうかと思います。そういう意味で特許そのものを私たちが、この特許は使いなさいとオーソライズするものではなくて、やはりその特許に基づきまして、そういう考えをどういう場合に導入するか、こういうものについて、工事の施行者でございます建設業者等の施工考えも入れまして、それをとるかとらないかをきめている状況でございます。
  15. 竹内黎一

    竹内委員 続いてお尋ねいたしますが、今回の新四ツ木橋の橋梁工事については、発注者である建設省で、リングビーム工法によるそういうあれをやりなさいという指示を、はたしてしておるのですか。その点はいかがですか。
  16. 蓑輪健二郎

    蓑輪政府委員 私、いま聞いておりますのは、こういう仮設工事につきましては、今回の場合は、業者の設計に基づきまして、それもその設計書の中で、計算書もついております。そういうものをチェックして、これを承認したということになっております。
  17. 竹内黎一

    竹内委員 プレストレスリングビーム工法というのは、実はかなりの例があるわけでございますが、これの事故報告例というのは、はたして建設省に届いているのでございますか。この点はいかがですか。
  18. 蓑輪健二郎

    蓑輪政府委員 実は私、今後考えなければならぬ一つの問題にしておりますが、事故の問題につきましては、人命にあまり大きな死傷のないような場合は、報告を受けておりません。ただ、そのほかいろいろ技術的な雑誌に、そういう報告という形で載せられているのを拝見しているのでございまして、この辺はやはり土木工事進歩のためには、将来相当――いろいろ現場の問題あろうかと思いますが、事故をもとにして将来改善していくということを考えますと、やはり事故について、ある程度の報告というか、そういうものも今後は考えてまいりたいというふうに考えております。
  19. 竹内黎一

    竹内委員 いま局長の話にあったわけでございますが、実はリングビーム工法については、過去において二件事故があったということが報道されております。  すなわち昭和四十二年四月中旬に、今回の橋の下流である新小松川橋において最上部リングがはずれたという、そして水没をしたという一つの事例の報告があるわけであります。  さらに昭和四十二年八月、青森県の岩木川に架橋いたしますところの長泥橋におきましても、やはりこの事故がございまして、しかもその長泥橋の場合のリングビーム工法事故というのは、今回のケースにきわめて類似していると考えられるわけでございます。  こういう意味におきまして――局長は雑誌にそういうものの紹介があった、それによって若干は承知しているというような口ぶりでございますが、もし烱眼の士がおって、これらの雑誌に報告したものに早く着目していただけたならば、あるいはまた今回の悲惨な事故が防ぎ得たのではないかと私も考えるのでございます。そういう意味におきまして、私はぜひとも新工法、新技術というものは、すっかり定着するまでは、事故の大小、たとえば人命に関係のない、人身事故でなくとも、やはりそういう事故の報告例はすみやかに求めて、これを検討するという体制を、ぜひとも建設省はとっていただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  20. 蓑輪健二郎

    蓑輪政府委員 ただいまの先生の御趣旨、私もそのとおりだと思います。今後、やはり事故というものは、人命にもすぐ関係することでございますし、できるだけ事故を報告をさせるようにいたしまして、それに基づいて新しい施工の注意、また現場の安全管理、こういうものを一そういま以上に強化をしてまいりたいというふうに考えております。
  21. 竹内黎一

    竹内委員 そこで、今度は労働省お尋ねをいたしますが、労働省としては一体、このリングビーム工法安全性、あるいはその工事を施行するにあたっての、どういう安全の基準を守らなければならぬという、こういうことを、かつて検討したことがございますか。
  22. 和田勝美

    和田政府委員 ただいまの御指摘の点は、まだ研究をいたしておりません。
  23. 竹内黎一

    竹内委員 まことに残念な答弁をいただいたわけです。今回の事例に即して申し上げますと、工事着工前に施工業者から、いわゆる事業所設置届けと同時に、工程表が出てくるはずでございますね。その工程表の中において、このような工法を採用するのだということも、あるいは付記されてあるのじゃないでしょうか。その意味では労働省として、少なくとも書面の上でも審査があったはずでございますけれども、その点いかがでございますか。
  24. 和田勝美

    和田政府委員 ただいまの規則の上では、工程は出ますが、工法まで書き込むようなことになっておりませんので、これらのことにつきましては、今後私どもとしては十分検討しなければいけない。ちょうど調査団もできておりますので、調査団の結果等を伺いましたならば、それらのことについて十分考えてみたいと思っております。
  25. 竹内黎一

    竹内委員 いまの労働省のお答え非常に残念なのですが、ここにはしなくも提示されておる問題は、新技術、新工法ができた場合の安全確認、・それに対する安全基準の設定というものを、一体労働省としてはこれからどうやっていくかという、こういう大きな問題を実はここで指摘されていると思うのです。ひとつこの点につきまして、大臣の先ほどの御答弁の中で若干触れておるわけですけれども、あらためて労働大臣に、こういう新技術、新工法の出現に伴う安全確認を、どうやって進めていくのか、御見解をお願いいたします。
  26. 原健三郎

    原国務大臣 竹内君のさいぜんの御質問で、安全に対する哲学と申されましたが、私ども労働省の立場から申しますと、人間尊重が根本でございます。でございますから、人命を尊重していくことは本質的なことでございます。だから、工事が進捗するとか、能率が上がるとか、新工法というのはその次の問題でございまして、どこまでも安全第一、人命尊重、生命をとうとぶ、こういう方針で労働基準監督等もいたしておる次第でございますが、今後もそういう根本精神に基づいてやっていきたいと思っております。  それから第二に、いまお尋ねの新しい工法、新しい機械等のできたときにおきましては、さいぜんもちょっと申し上げましたが、これからは――不幸なことに、新四ツ木橋のあの工法については、あまり研究していなかったそうでございます。今後は、そういう新機械とか新工法が出た場合においては、労働省安全研究所に一々これを研究させまして、監督官にもよくそれを勉強させ、専門家も派遣してやる等々、これは建設省とも連絡をとりまして、新工法ができたときには建設省労働省の基準局、その専門家同士で相談して、さてこれでやってよろしいという承認を与える、こういうところまでやりたいと思っておりますので、今度調査団も帰ってまいりますから、その結果を見まして、そして積極的にその対策を講ずる所存でありますので、よろしく御了承願います。
  27. 竹内黎一

    竹内委員 いま大臣の発言の中にあったわけでありますが、そういう新技術、新工法の採用と申しますか、そういうものにあたっては、事前に建設、労働の両省はよく協議をするということですが、ひとつぜひとも今後実行してもらいたいことであります。強く要望をしておきまして、次の問題に移りたいと思います。  ただいま大臣の答弁の中に、人間尊重、人命尊重、こういうお話があったわけでございますが、今回のあの不幸な出かせぎ農民の事故を通じまして、地元の人が素朴に持っておる疑問は、なぜ未熟練の出かせぎ農民をああいう危険な作業に従事させていたのか。ことさらに出かせぎ農民を下積みの労働者として扱って、特に危険な作業に従事させたのではないか、こういうたいへん強い批判が出ておるのでございます。一体こういう出かせぎ農民の安全、保護について、労働省は今日までどれだけの配慮をしてきたのか、ひとつ御説明を願いたいと思います。
  28. 和田勝美

    和田政府委員 最近、人手不足ということが、安全問題にもたいへん反映をいたしまして、いま先生御指摘のように、出かせぎ労働者で未熟練の方が、建設業にずいぶん従事していらっしゃる、こういう点にかんがみまして、私どもは未熟練労働者の方の労働災害の防止ということに対しては、たいへん力を入れておりまして、建設業労働災害防止協会ともよく相談をとり、業界一般との連絡をとりながら、出かせぎ労働者の皆さん、危険有害なところではできるだけ適格でない方を働かせない、こういうことで指導監督を行なっております。  特に、採用されましたときには、必ず安全教育を徹底してやるようにということ、それから現場につきましては、建設業ですから、毎日毎日日程が変わってまいります。そういう点で、朝、就業開始前に、必ずミーティングを開いて、本日の仕事の工程、仕事の姿というものを、就労する労務者の皆さんによく知らせるようにということ、その次は、その労働者の方々を、第一線にあって直接把握し、指揮命令をするいわゆる職長さんとか、フォアマン、この人たちの管理能力が非常に問題でございますので、その方たちの管理能力を高めるような指導を、各建設業者の皆さん方がやるようにということ、おおむね大きな点はこの三つでございますが、あと、作業責任者をはっきりして、その権限を明確にするというようなことで、未熟練労働者の方の安全問題にさしあたっては対処をしていきたい、こういうことでございます。
  29. 竹内黎一

    竹内委員 ただいまの局長の答弁で、重大な一点が抜けていると私は思うのです。  雇い入れ期の安全教育、これは基準法にも明示してございます。作業前のミーティングあるいは現場の作業主任の教育、こういう点を指摘されたわけですが、私はこういう未熟練な人を使う場合の一番の問題は、やはり適正配置だと思うのです。一つの比喩で申し上げますならば、保安帽のあごひもも十分に結べないようなにわか土工が地底にもぐったり、あるいはまたにわかとびがビルの鉄骨をのぼっていくという、こういう人の使い方をしている限りにおいては、とても労働事故、特に未熟練出かせぎ農民の労災事故は防げないと思うのです。その点についても努力をしていると局長はおっしゃいますが、たとえば青森県の五所川原職安管内だけにおきましても、すでに昨年だけで事故によって十人が死亡し、六十三人がけがをしております。私は労働省がこの点に力を入れているという答弁を、決してそのままに受け取れないのが実情だと思うのでございまして、この適正配置という点について、今後相当真剣に考えていただかなければならぬ。今回の作業の危険性というものについて、あの出かせぎ農民の方たちが、はたしてどれだけ知らされていたかもはなはだ疑問とするところでございますが、何といたしましてもにわかでございますので、やはりそういう技術経験の少ない人は適正な作業所に配置する、これをまず第一にやっていただかなければならぬと思うのです。もう一度御答弁を願いたい。
  30. 和田勝美

    和田政府委員 先生御指摘のとおりでございまして、先ほどもお答えの中でちょっと触れたわけでございますが、私ども一番こわいのは、労働力不足ということが未経験の方を経験の要る職場に働かせる、しかもそれが非常に危険な作業であるというような場合につきましては、非常に事故のもとになっております。建設業におきましてもお説のとおりでございますので、私どもとしては、業界に対して、適性のある者を適正なところに就業させるようにということで指導もし、教育もいたしております。万博あたりでは、そういうことがいまよく守られておるのですが、今後とも先生の御指摘にありますようなことでございますので、業界の指導に力を尽くしていきたいと思います。
  31. 竹内黎一

    竹内委員 私はまだまだお尋ねしたい点がたくさんあるのでございますが、すでに所定の時間が参っております。また同僚の田澤議員が、このあといわゆる出かせぎ対策の再検討の問題、あるいは今回の事故に対する国の責任、あるいは補償の問題について尋ねることになっておりますので、その点は田澤議員に譲りたいと思いまして、最後に一点、労働大臣の所見をただしたいと思います。  端的に申し上げまして、一体何が農民を出かせぎにかり立てておるのか、この点について労働大臣の認識はいかがでございますか。
  32. 原健三郎

    原国務大臣 第一は、労働力の不足でございます。現在労働力不足が二百万人にも及んでおるというような状態でございますから、どうしてもそういう出かせぎの人を雇っていくというようなことになってくると思います。  第二は、やはり収入が少ない方々は、ことに地方農村におきましては、現金収入が入るから、そういう臨時の仕事に、出かせぎで行って働くというようなことが原因であろうと存じます。
  33. 竹内黎一

    竹内委員 大臣のいまの御答弁、実はおことばが足りなかったので、気持ちはそうではないと思うのですが、何が出かせぎに農民をかり立てるのか、あえて危険を承知でより高い賃金を求めて農民が出かせぎに出るのか。これは端的に申しまして、今日農業だけではもはや食べていけない、家計の維持ができない、ここに端的な原因があるのです。別な表現で申しますならば、日本経済の今日の繁栄の中の大きな陰の部分、そのひずみが農民を出かせぎにかり立てるのだ、こう認識すべきものだと私は思うのです。そしてその論理から出発いたしますならば、今回原労働大臣が提案の責任者として失業保険の改正法案をこの国会にお出しになりました。その改正法案によりますと、少なくとも従来出かせぎ農民が得ておったところの利益の一部は失われるという可能性があるわけでございます。出かせぎをしなくても済むような政治の配慮、あるいは政策の実行なくして、ただやむを得ず出かせぎに出ている農民が、今日まで享受してきたところの一部の利益を、短期循環労働者の名目のもとに剥奪をしていく、ここに何か本末転倒がありはしないかという疑問を私は非常に強く持つものでございます。大臣、この点いかがでございますか。
  34. 原健三郎

    原国務大臣 私のことばが足りませんでしたが、竹内さんと全然同感でございまして、そういう農民は、ことに東北のほうにおきましては農業だけでは生活ができない、それでどうしても出かせぎに行かざるを得ない、しかも、それが非常に求人難で仕事に引っぱり出される、そういうことでございまして、その点はまことに政治のでこぼこがあることを私も認めざるを得ません。大いに地方の振興、農村振興等もやらねばならぬと思っております。  それから失業保険の改正でございますが、いろいろ誤解もあるようですが、決して出かせぎに出る循環労働をやる方々には、それほど不自由にはならないので、期限なんか一応延ばしておりますが、これはそれを補うために二カ所で働いた人などは、一年間通算してその期限になればよいというので、決してあまり不自由がございませんし、失業保険によって、そういう出かせぎの方々が不自由したり困ったり収入が減ったりするようなことのないように、法改正の中にも手配をいたしておりますから、よろしく御了承のほどを願っておきます。     〔「了解」と呼ぶ者あり〕
  35. 竹内黎一

    竹内委員 了解というようなことばもあるようですが、実は、私個人としては、大臣の答弁では納得しがたいものがございます。それはいずれ法案が出てまいりました際にやることにいたしまして、同僚田澤議員に質問を譲りたいと思います。
  36. 森田重次郎

  37. 田澤吉郎

    田澤委員 ただいま竹内委員からお話しがありましたように、四月の一日十六時四十分に、荒川放水路の新四ツ木橋工事現場から災害が起きたわけでございますが、この点に関しましては、私も現場へ参りまして、いろいろ現場の方々と話し合いをいたしましたが、私は潮の干満の状態、あるいはまた川の質の問題、底の土質の問題、あるいはこのリングビームというものが、ああいう大きい川、水のある川ではたしていいのかどうかというような経験が、はたしてあったのかどうかということを考えますと、かなり私は、あれを行なっている建設省自体にも大きな責任があると思う。ですが、私はいま時間がありませんので、これを建設省質問をいたしておりますとたっぷり一時間はかかると思いますから、これはこの次に譲りますが、こういう新しい方法でやるときには、単にこの問題は経済的によく、家際にやってもいいくらいの簡単なものでは、私は重大な問題だと思いますので、今後ひとつ累計的にその実績を積んだものでなければ、実際に行なわないように十分考慮していただきたい。そうして一日も早く原因究明をいたしまして、今後これらの工事に対して、安全に工事ができるという体制を、この際しっかり建設省はやっていただくことをお願い申し上げる次第であります。  そこで、先ほども竹内委員からもお話しがありましたように、今回の事故にあった八人のうちの七名が私の県の出身者なんでございます。それは申し上げるまでもありません、出かせぎとして出てきたわけでございます。私は、きょう実は向こうから帰ってきたのですが、あの遺骨が大鰐駅に着いたときに、大鰐町の人たちは、約数千人の人が駅前に集まりまして、そうして県民全体が嘆き、悲しみ、憤りさえ持っているわけでございます。きょうはちょうど合同葬儀の日でございます。ですから、私はこの八名の方々の御冥福をお祈り申し上げると同時に、この御家族の方々が、将来安心して生活ができる体制をひとつ労働省が叱咜激励してつくり上げていくことが必要でありましょう。  それからもう一つは、この出かせぎ者がなくなった、この死亡というものを将来に生かすために、やはり新たなる考え方を持ってこういう職場の安全というものに、もっともっと力を入れていかなければならないということを皆さん方が考えていただきたい。そういう観点から、私は以後質問を申し上げる次第であります。  今回の事故犠牲になったような出かせぎ労務者は、労働省の推定で六十万あるといっております。その半分以上がいわゆる大都市に来ているわけです。道路とか、橋梁とか、ビルディングをつくるために従事しているわけでありますが、そのうちの六〇%が北海道と東北なんです。この六十万の中で、職業安定所を通じて来た者は二十万前後であろうといわれております。あとは縁故や会社が直接に採用したという形の者で、正確に実態が把握されていないということを労働省自体も白状している状態では、一体これをどうするのですか。はっきりこの実態というものを把握して、六十万いるなら、六十万の人はこうこうこういう状態にあるということを、はっきり把握しなければ私はいけないと思うのであります。先ほどの労働大臣の御答弁によりますと、労働力が不足だから出かせぎというものはこういう状態にあると言いながら、なぜ、そういう重要な労働力であるならば、はっきり実態を把握できないのであるかどうか、そういう点を一つ尋ねたいのであります。  それから、この六十万のうち建設業に従事しているのは五五・二%あるといわれております。半数をこえておるわけです。その次が電機あるいは自動車等の製造業が二六・六%あるといわれておりますが、ことに大阪の万博工事や、東京の道路とか、地下鉄等には、出かせぎが大きなウエート力を持っているわけであります。最近の日本の一つの労働のあり方というのは、若年労働者、いわゆる中学校あるいは高等学校を卒業したあの人たちが、鉱工業の重要な一つの労働力として働いていると同時に、公共事業、ことに建設業に働いている日雇い労働者の労働力というものは、非常に大きな力を日本の労働力の中に持っていると私は思うのです。これを単に、低開発のほうから、経済的に困っているから出てきているんだというような安易な考え方で、この労働力を使ってもらってはたいへんな問題であります。少なくともこれは、出てくるのじゃない、これが必要なんだ、この労働力は、日本の建設のために必要なんだという積極的なかまえで労働省が向かわなかったならば、出かせぎ対策などというものは出てきません。そういう意味において、今後この出かせぎ対策に対して、労働大臣が一体どういう考えで進もとするのか、いまの問題に対してどういうような反省を持っているのか、今後何らかの法的な措置によって、不安のない、非常に意欲的な職場につくり上げていくような気持ちがあるかどうか、この二点を私はお伺いする次第であります。
  38. 原健三郎

    原国務大臣 田澤議員の郷里から出られました七名の方が、ことごとく犠牲になられまして、まことに哀悼にたえないところでございます。心から御冥福をお祈り申し上げる次第でございます。  それで、いろいろ御説がございましたが、約六十万の人が出かせぎをしておられる。それを何とか、今度の事件を契機として災いを転じて福となす、こういうような意味で、いま労働省といたしましても調査団を結成し、鋭意その原因究明に当たらしておりますので、その結果が出ましたら、それに対応する処置をやりたいと思っております。  それから、さいぜん竹内さんにもお答え申したのですが、それはそれとして、こういう新しい工法、新技術等の出た場合におきましては、どうしてもわからない点が多いのですから、建設省ともよく連絡をとって、専門家によって調査して、これならよろしいという認定を下して、それからひとつやらせるようにいたしたいと思っております。  それから、さらに万博を控えまして、多量の出かせぎ労働者が出てまいることになりますが、私どもは人手不足だからといって決してゆめおろそかにするのではありませんで、いろいろさいぜんも申しましたが、人命尊重等の根本理念を打ち立てて、出かせぎ者が事故を起こしたりしないように、また日ごろにおいては、その処遇の改善等々、万般の手配を、この災害を契機として決意を新たにして御期待に沿うようにいたしたい、こう思っておりますので、よろしくお願いします。  詳細は局長に答弁させます。
  39. 住榮作

    ○住政府委員 ただいま先生から実態についての御説明がございましたが、出かせぎ労働者が約六十万、そのうち安定所を通ずる者が二十万、いわゆる今回の橋脚工事事故にあらわれたようなケースで、事業主の募集員を通じて出かせぎに入っておる者が約二十万、残りのおおむね二十万程度の者が縁故あるいはその他で就労経路が必ずしも明確になっておりません。まあ安定局の立場では、まず就労の経路を明確にするということで、御指摘のように地元市町村なり農協等とも連絡をいたしまして、出かせぎ者の台帳を整備していく、あるいは出かせぎ者には手帳を与える、それから就労先におきましては、出かせぎ者の働く事業所の台帳を整備をするということを逐年積み重ねてまいっておりまして、そういう意味でまず出かせぎ者の就労の実態、これをはっきりつかんでおくということで措置してまいりたいと思います。
  40. 田澤吉郎

    田澤委員 建設省、決意だけをちょっと表明してください。
  41. 蓑輪健二郎

    蓑輪政府委員 このたびの事故につきましては、はなはだ申しわけなく思っています。今後こういうような新しい工法をやる、またそれの施工についての未熟練工の労務管理という問題、これは今後私たちさらにもう一段力を入れなければならない問題だと思います。先ほどから申し上げていますように、新しい工法といいますのは、経済的であるばかりでなく、やはり安全に施工できるということをまず第一に考えて今後の施工については十分注意をしていきたいと思っております。
  42. 田澤吉郎

    田澤委員 次に労働省にお伺いいたしますが、「ちっとも減らない労災事故」という見出しでこのごろこの問題を扱っているわけでございますが、労働省調査によりますと、労働災害による死亡者は、昭和三十三年には全産業で五千四百人であった。三十五年には六千をこえた。その後一進一退を続けて、四十二年には五千六百四十八人に下がり、四十三年にはまた上向きになって五千七百九十二名死亡しているという。特に三人以上も死傷者を伴っている重大な災害は、建設業がトップだ、こういわれているわけでございます。  今回のこの災害はこういうような形で出てきたから非常に何でございますが、ある職場で一人か二人非常な不幸を見てなくなっている人が、犠牲になっている人がたくさんあるわけであります。私のすぐそばの町で藤崎町というのがありますが、ここでボーリング業を営んでいる人のところへ行って、そうして水の中へ入っている間に、高圧の電気がきてなくなった。中小企業であるので何ら見舞い金も出さない、労災保険だけよりないということでございます。全く人の命というものを考えているのかどうかという雇い主がいまなおいます。こんな民主主議の時代に、こんな人がいるだろうかと思うぐらいさびしいあいさつをする人がいるわけです。これは労働省がもっともっと真剣にこの問題を考えていないから――積極的におやりなさいよ。何かよその仕事を手伝ってやっているようなかっこうでは、とてもこんな問題は解決できません。思い切って出て、人員不足なら思い切って労働省の人員をふやしておやりなさいよ。そうしないと私はこんな問題は解決できないと思うのです。皆さん方が答弁していることは、私はもう渋谷代議士からよく聞いています。もっと渋谷代議士の上のところの熱意のあるところを答えていただきたいと思います。  そこで、この問題で労災保険の引き上げをしたいということをいっておりますがどうなのか。  それから失業保険にこの人たちは非常に依存しているわけです。今回また改悪する、こういっているじゃありませんか。これはだめです。  それからこの問題に対しては、いろいろむずかし問題があるでしょうけれども、国家補償をしなければならないということは、わが県の県会の人たちは、一生懸命になってそれを唱えています。こんなかっこうでやっておるのですが、こういう形も、どういうことになるのか私はわかりませんけれども、こういう点も考えていただきたいのであります。  時間がないそうですから全部まとめてお話し申し上げますが、もう一つは労働基準局の問題でございます。作業場が非常に多いので、そこで都市が過密化してくると、だんだん現場に回る度合いが少なくなっている現状でございます。ここの向島の署でも、署長以下十六人とかおるそうでございますが、管内に七十カ所の現場があるそうでございます。だものですから、安全確保のため、住民のために必要な場所だけ歩いているそうです。ですから、結局高速道路とか、ビル建築工事だけ回っておって、橋梁などという工事は回っていないというのが実際なんでございます。そこで私は、この問題は非常に重大である。こういう点をもっともっとしっかりやっていただかないと、危険というものはなくなりませんよ。ましてや先ほど竹内代議士もお話しになったように、新しい工法に対する勉強が何もしていない。しかも、工法は明示しなくてもいいといっておりますが、潜函工法というのを前にやっておったでしょう。これに対しては、あなたのほうで明示しているのですよ。だから、新しいリングビームという工法も、明示しなければならないようにあなたのほうでつくってあるのです。これもやっていないじゃありませんか。それで、あそこにおる向島労働基準監督署の署員が、この工法による工事の危険性がどの点にあるか、まだ的確につかめていないことでございますとしゃべっているのですよ。あなたのほうで現場に何も指示していないでしょう。こういう状態であなた方が労働省という看板をかけておって、堂々とあなた方が自動車で通ってあそこへ出勤できますか。もっとまじめに労働行政をやっていただかないといかぬと思うのです。労働大臣、はっきりした決意をお願いいたします。
  43. 原健三郎

    原国務大臣 いま田澤議員から、非常に力強い激励のおことばをいただきまして、まことにありがとうございました。私のほうへも、これは参議院でも、衆議院でも、もっと労働基準監督を強化せよというおことばが非常にたくさんございます。それがいま人員のほうはふやせない事情にございますので、なるべく能率をあげて労働基準監督を強化いたしたいと思っております。これはできたらば、労働基準監督官をもう少しふやすことが非常にいいことであると思っておるのですが……。たいへん御注意やらおしかりもいただきましたが、御説のようにこれから、労働基準監督官を激励しまして、能率をあげてこういう災害防止に全力をあげてやることを、ここにお約束申し上げます。よろしく御了承願いたいと思います。
  44. 田澤吉郎

    田澤委員 最後に、今回災害を受けた方々に対する災害の補償の問題でございます。それから見舞い金の問題でございます。こういう点に関しましてはどうかひとつ、家族の方々が将来安心して生活ができるような状態に直ちにしていただきたい。間組も誠意を尽くしております。しかしながら、やはり労働省としても、この点に関しては十分な注意を尽くしていただきたいのであります。  もう一つは、今回なくなられた、犠牲になった方々の死を生かす意味において、どうかひとつ労働省労働省なりに新しい法律をつくって、出かせぎ者のための明るい、しかも希望の持てる職場にしていただきたい。建設省建設省として、もっと建設工事に関しては人命を尊重するという、まずそれを頭に置いて、そうして新しい工法に立ち向かっていただきたいということをお願いを申し、その決意をお伺いして私の質問を終わりたいのであります。
  45. 原健三郎

    原国務大臣 出かせぎの方々のこういう事故を起こしましたので、これを機会にして、出かせぎ労働者のために法律をつくるといういま御意見でございましたが、十分ひとつ検討していきたいと思っております。
  46. 蓑輪健二郎

    蓑輪政府委員 このたびの不幸な犠牲につきましては、まことに申しわけございません。これのとうとい犠牲を生かす意味で、私、今後の工事に当たりましては、人命尊重をまず優先といたしまして、安全な施工法をするように現場を指導したいと考えております。
  47. 森田重次郎

  48. 米内山義一郎

    ○米内山委員 私も新四ツ木橋労働災害事故について、特に責任の所在を明らかにしたいという観点から質問したいと思います。  最初に、建設省のほうからお尋ねしたいと思うのですが、リングビーム工法を採用するにあたって、注文主である建設省が、設計書ないしは仕様書に、この工法を用いることを、明らかにうたっておったのかどうかということをお聞きしたいと思います。
  49. 蓑輪健二郎

    蓑輪政府委員 工事を発注いたします場合に、私たち目的物の図面、それを完成するための仕様書、こういうものをつくるわけでございますが、こういう仮設工事、本来の目的物をつくるための仮の設備工事、こういうものにつきましては、仕様書に何を使いということは明示してございません。
  50. 米内山義一郎

    ○米内山委員 しかし、普通の小さな川の締め切り工事ならば、土俵を使おうと矢板を使おうと任意であろうが、少なくとも潜函工法を用いるか、あるいはこのリングビーム工法を用いるかによって、工事費に数千万の違いがあるはずです。その際、それを明示しないということは、不合理じゃないかと思う。金額の中では、どっちのほうを考えて発注しておるか、その点を明らかにしていただきたい。
  51. 蓑輪健二郎

    蓑輪政府委員 工事の入札の場合に、私たち、工事費を積算いたします。それを予定価格にするわけです。その中では、私たち、前の小松川の橋梁の実績もございますので、こういうリングビーム工法という形で積算をしてまいった次第でございます。
  52. 米内山義一郎

    ○米内山委員 そうしますと、仕様書等については、明らかにうたってはいないけれども、発注の際にはこれをあらかじめ指定しておったということは言えるわけですね。結局は、工期の問題あるいは工事費の問題を節約するために、この工法を国が指定したと理解して差しつかえないわけですか。
  53. 蓑輪健二郎

    蓑輪政府委員 こういう橋梁の基礎工事の問題については、いろいろ工法があろうかと思います。いま言いましたように、工事の積算といたしましては、リングビーム工法で積算したのでございます。ただ、これにつきましては、どういう矢板を使い、どういうリングを使い、どういう掘さくの方法をするか、こういうことにつきましては、かなり自由度があるわけでございまして、そういうような自由度のある仮設工事につきましては――重大な仮設工事につきまして、業者から施工の段取り及びそういう仮設工事のいろいろ計算書を出させまして、それを検討してこれを承認したということでございます。
  54. 米内山義一郎

    ○米内山委員 そうしますと、結局、この工法を採用しているということについては、建設省は異議がなかったわけですか。責任をのがれるために言うているのか、私のほうでもあの工法を使うことは認めたというつもりで言っているのか、はっきりしてください。
  55. 蓑輪健二郎

    蓑輪政府委員 これは先ほどから申しましたように、やはり仮設工事について、いまの工事の契約のしかたに――この場合契約のしかたについては、業者からの申し出によって、それを、これでいけば施工できるということで承認をした次第でございまして、私たちこの問題につきまして、全体の責任をのがれるということじゃなくて、いまの契約の考え方だけを申し述べておる次第でございます。
  56. 米内山義一郎

    ○米内山委員 そうすると、責任は、建設省と間組と半々だというような言い方のように聞こえるが、この責任はどっちに重点があるのですか。
  57. 蓑輪健二郎

    蓑輪政府委員 私たちやはりこういう工法につきまして、現地の間組から出てまいりましたものにつきまして承認しておる責任はあろうかと思います。またこれにつきましては、やはりどういうようなリングビームの取りつけ方をするか、またリングビームを取りつけるときに、どのくらいまでの掘さくをするか、そういういろいろな施工上の問題があろうかと思いますので、最終の、どちらに責任があるかという問題は、やはり警察の調査なり、いまの事故の直接の原因がどこにあるか、そういう原因調査を待って私たち善処したいと考えております。
  58. 米内山義一郎

    ○米内山委員 問題は、そういうところに、大災害が起きる原因があると思うのです。たとえば津軽海峡のトンネルを掘っておりますが、これに対しては全国民が注目しているわけです。非常に困難であり、危険な工事だが、いまだかつてこんな人命事故が起きたことをわれわれ聞いていない。要すれば、安全に確実に仕事をしようとする場合には、もっと責任もった態度で施工方法等を検討しなければならぬはずです。しかも、先ほど竹内委員によって指摘されたとおり、この工法が青森県において、一昨年同じような状態で、ちょうどパンクしたような状態で破壊しておる事実もある。この事実から見ても、この工法には安全性については非常な危惧が多いものだ、常識的にはそうだ。これをあえて採用したということ、承認したということについては、建設省の責任は免れることはできないと思う。  そこで、私はお聞きしたいのは、この工法も、条件によってはあるいは安全性が高いかもしれない。あの場合に、どのような条件があったかをお尋ねしたいのです。これは資料を委員長を通してお願いしたいのですが、あの場合に、地質調査というものをどのようになさっておるか。何メートル下までボーリングしたか。その地質構造の柱状図はどういう状態であるか。深度ごとの地耐力はどういう状態であるか。さらに、水の流れの抵抗はどうであるか。潮汐の変動によって水位の変化がある、あるいはそれに風圧が加わった場合に、どういう力が加わるかということなどは、こういう工法を採用するにあたっては、当然、十二分に検討されなければならぬはずだ。この点について手ぬかりがなかったかどうかということを、われわれは確かめたい。そのために、こういう関係の資料を後日、要求したいと思うのですが、このことについて、いま答弁できる用意があるならば、一応お聞きしておきたいと思います。
  59. 蓑輪健二郎

    蓑輪政府委員 ここに地質調査の図面がございますが、     〔森田委員長退席、谷垣委員長代理着席〕 大体、あの川幅につきまして六カ所、深さ六十メートルくらいまでの地質調査をいろいろしてまいりました。さらに、そのおのおのの地質につきましての土質の分析その他も、いろいろやっておる次第でございます。また、橋梁の基礎をつくります場合の、いわゆる地耐力がどのくらいあるか、いわゆるN値というものも算定しておったわけでございます。ただいま先生のおっしゃいました岩木川の例、また小松川での深掘れの例、そういうことも十分考えまして、いま設計につきましては、十分リングビームの補強をはかってまいった次第でございます。こういう不幸な事件になりましたことは、まことに私ども至らないこともあったということで、おわびいたしたいと思います。
  60. 米内山義一郎

    ○米内山委員 労働大臣お尋ねします。  近ごろ季節出かせぎ者のこういう労働災害事故が、非常に多発の傾向にあることは、先ほど竹内委員田澤委員によっても明らかにされておりますが、これにはそれなりの条件があるわけです。原因があり、結果があるわけであります。  たとえば第一点は、この間の新聞にもこういうことが書いてある。東京都内で、どこの工事現場に石を投げれば青森県人に当たる、こういうことばがありましたが、青森県に限らず、東北、北海道の農村からは非常な出かせぎ者が出てきておる。これはことごとくは、大部分は未熟練工なんです。したがって、高いところに上がる、あるいは低いところも同じですが、元来ならば、とび職の経験を必要とするようなところで作業しておる。さらにまた使用者側は、何でも唯々諾々と、金さえとれれば働くということから、危険な作業を平気でやらせております。  たとえば一つの例を申し上げるならば、国鉄でさえ危険な仕事を請負にしておる。東北本線や地方の鉄道で、保線作業というものを、国鉄職員がやっておるのでありますが、新幹線の保線作業を請負制度にしておる。しかも、あれは夜間作業でしょう。昼は仕事するひまがない。過般、新幹線で、こういう下請にある季節出かせぎ者が、三人即死しておる。こういうふうに、経費節約ということから、しろうとと申しますか、未熟練者をこういう危険な作業にやっておるのが今日の体制なんです。この根本が一つの原因であります。  さらには、いわゆる直接雇用する建設業者というものは、出かせぎ者を、土工を、人間扱いにしていない、こういう事実がある。東京の杉並区で、青森県から出てきた出かせぎ者だが、夜、宿舎から見えなくなった。宿舎の残留物は何であるかというと、ズボンその他の一切のものがある。いなくなったのは、からだと、長ぐつだけが見えない。だが、それをさがしていない。二、三日たってから、その現場から百メートルばかりのところにある下水で、溺死体になって出た。普通の社会であるならば、犬が見えなくなっても捜索するはずなのに、通行人が発見したときは、すでに、夏であるから腐乱しておった。この一事を見ても、農村から来る出かせぎ者は消耗品扱いにされている。したがって、こういうところでは、宿舎の施設も何も、基準にも規則にも合っていないのです。こういうことを少しも指導も監督もしていない。現に、今度の場所にだって、基準監督署の職員がたった一ぺん行っただけであるという。  しかも、この際、私は特に聞きたいが、これらの七人のそこでなくなった人間のからだに、命綱がついておったかどうか。だれかが危険を察知した場合に、早く上がれとかなんとかいうふうな、そういう通報なり、監視の体制があったかどうか、それを私はお聞きしたい。
  61. 和田勝美

    和田政府委員 具体的な問題でございますから私から申し上げますが、あの工事の、あの程度の場合においては、命綱の使用を法律的には義務づけておりませんし、現実には、七人の方は命綱を使っていらっしゃいませんでした。  なお、事故の目撃者のことでありますので、確認をしたということではございませんが、一緒になくなりました三浦さんという職長さん、これが警告を発し、脱出を指示されて、みずからも中に入られて不幸な災害にあわれたのでありますが、そういうことで、崩壊がきわめて一瞬の間に行なわれたということで、緊急避難等をやる余地がなかったようにいまのところでは承知をいたしております。
  62. 原健三郎

    原国務大臣 御承知のように出かせぎに来られた未熟練労働者に対して、指揮監督等まだ十分にいっていないところはございます。たとえば、ことに建設業におきまして、その飯場、宿泊設備やなんかも、去年の九月に全国数千カ所で調べてみましたが、大体七、八割が不適格でございます。それで、厳重な抗議を申して、そういう規則に――労働省でいま基準をきめておりますが、その規則や基準に適合するよう、建設関係に注意を喚起いたしております。昨年の暮れにも、ことしになってからも、東京都でありましたが、依然としてどうも飯場のほうは成績が悪いので、厳重に督督官をして抗議もさすし、改善をさせていきたい。  それから、お話にありました未熟練の方でありますが、危険なことをやらせないように、また、その本人に適したような仕事をやらすように等々、これからも労働基準監督官をして監督を十分強化させて、御期待に沿うようにいたしたい、こう思っております。     〔谷垣委員長代理退席、委員長着席〕
  63. 米内山義一郎

    ○米内山委員 一年に四千人、五千人という死者があるくらいですから、その何倍という障害事故もあるはずです。しかも、その中には脊髄損傷とかなんとかいう、終身働くことのできない重障もきわめて多いと思うのです。これはここまできますと、まるで小さな戦争みたいな状態、重大な社会問題だと思う。これに対して国として、何らかの厳重な措置を必要とすると思うのです。労働大臣は、この点についてどうお考えになっておるか。  さらに、同時に賃金不払い等も依然として多い。この関係は何から起きるかというと下請関係です。大手というものは、入札を取ればすぐ直属の何々というものに、――大体相場は、一五%ないし二〇%頭をはねて実際はその次の業者が仕事をする、それをまた孫がやる、ある場合にはひこまごがやっているという事実を東京都内で見ましたが、その際は請負金額、親金の四〇%程度でひこまごが事業して、倒産して、そして賃金を払えないで逃亡するというような実態もあるわけです。こういうふうなことも、当然法律的に厳重に規制する必要がある。そうでなければ、いたずらに、困ってる農民が東京へ出てきて、自分の無料奉仕で道路をつくったり、下水道をつくったりするという結果になる。注文母体に聞けば、われわれのほうは元請に払った、元請に聞くと、下請に払った、下請に聞くと、この業者には前々の貸しがあるから差し引いた、そして彼は逃亡した、こういうふうになって、相手のない賃金の支払いという要求になるという事実もまだあるわけです。こういう事柄についても、出かせぎ者の身辺を保護するだけでなく、それだけが目的で出てきているのだから、しかもそれが全国的に数十万に及ぶのですから、国としてはこの際新しい角度からこういう季節出かせぎ者の不幸がないように抜本的な対策を講ずる必要があると思うが、労働大臣の所見をお伺いします。
  64. 原健三郎

    原国務大臣 お説ごもっともでございます。どうしても災い転じて福となすように抜本的にこの際やりたいと思っております。それで労働基準監督官による監督の強化をうも少しびしびやりたいと思っております。その労働基準監督官による監督をやるにいたしましても、第一に人が不足でありまして、なかなか手が回らない。さいぜん向島の監督署の例も申されましたのですが、なるべく来年度から労働基準監督官をふやして、そして監督の不行き届きということのないように、厳重なる監督をするよう、抜本的対策を考えていきたいと思っております。
  65. 米内山義一郎

    ○米内山委員 最後ですが、いまの新四ツ木橋犠牲になった八名の方の雇用関係をお尋ねしておきたいと思います。これらの人は、間組の直用であるか、あるいはまた別の、何々班の使用人であったかをお聞きしたいと思います。
  66. 和田勝美

    和田政府委員 八人の方は、全員間組の直用でございます。
  67. 森田重次郎

  68. 淡谷悠藏

    淡谷委員 最初に、基準局のほうにお聞きしますけれども、今度のリングビーム工法というのは、あなたのほうの基準から、いくと危険作業になるのですか、危険作業にならないのですか。
  69. 和田勝美

    和田政府委員 リングビーム工法につきましては、比較的新しく採用されたものでございまして、いまのところ、安全規則関係では危険有害業務というようなことにはいたしておりませんが、今後の調査結果いかんによりましては、いまの体制を変える必要があるならば変えざるを得ない、かように考えております。
  70. 淡谷悠藏

    淡谷委員 労働基準法の第五章の「安全及び衛生」というところにあります「危険業務の就業制限」その他の項目を見ますと、工法自体を基準局が危険と認定するような条文が見当たらない。全体の工法を危険として認める条項が見当たらない。これは今後やると申しますけれども、この基準法でやっていきますか。
  71. 和田勝美

    和田政府委員 工法によりましては、たとえば潜函工法というのは、中が、環境が悪くなる、そういう意味では有害業務ということで指定をして一定の規制をする、そういうことは現行法でも、できると思います。
  72. 淡谷悠藏

    淡谷委員 今後、しばしば起こると思いますが、やはり工法全体が危険でないかということは、今度のような事故を防止するためたいへん重要だと思う。これはいまの基準法で完ぺきでしょうか。法律は改正できるものですから、もしこの基準法でやれないとしたならば、やはりこの基準法を改正しなければならない。どう見ましても工法自体を認定するような基礎が、たいへん薄弱のように思いますけれども、国会ですから、法律が不備であればもちろん法律を変えなければならない。それをもっと率直にお答え願いたい。
  73. 和田勝美

    和田政府委員 工法自体をもって直ちに危険業務、こういうことが認定できるのかといいますと、実は工法は危険なことというのとは違って、安全であることが当然であろうと思います。ただ、その工法によってつくられる環境によっては、先ほど潜函作業で申し上げましたが、問題があるということでございます。ただ今回の場合も、いま先生御指摘のように工法自体の問題につきまして具体的な問題があって、いまの基準法の規定のしかたであれば変えなければならないというような結論が万一出ました場合には、十分法律の改正等につきましても検討していきたいと思います。
  74. 淡谷悠藏

    淡谷委員 建設省に伺いますが、さっき米内山委員に対する御答弁の中で、この工法を、この工事に用いることを、何か承認したような御答弁のように伺っておりますが、その安全性の確認は何によってやられたのですか。この工法自体が、十分安全性を確認された工法かどうか。あらゆる条件に対応して安全でなければ、安全であるとは言なえい。事情や環境が違ったのだから、これは安全性がなくなったとは言えないと思うのです、事、人命に関する問題でございますから。その点で建設省としてのこの工法に対する認識をはっきりしていただきたい。
  75. 蓑輪健二郎

    蓑輪政府委員 先ほど申しましたように、こういうような素材を使ってやりますというような設計書、段取り、こういうものが間組から出されてまいりまして、現地の事務所では、もちろんそれに付属します応力計算書その他見ておるわけです。応力計算書その他によりますと、やはり安全率が一以上になっておる、そういうことで応力的には安全であるという見方をしたわけでございます。ただやはり応力の計算そのものが、一つの前提条件がありまして、外圧はどのくらいあるかということでございます。それが先ほど言いましたように、今度の原因はどこから来たかまだはっきりいたしませんが、私たち土木の常識から言いますと、外からの圧力というのは、干満の差もあるだろうし、また天候的な問題もあるだろうし、また施工にあたりまして、逐次掘さくをしていってリングのビームを入れるわけですが、その入れ方の方法もあるだろうし、そういう点はやはり現地において、十分間組も安全の管理をいたし、私どもの事務所といたしましても、十分それを監督する立場にあるわけでありまして、そういうことが前提でその安全が確保されるであろうということで、これを承認した次第でございます。
  76. 淡谷悠藏

    淡谷委員 この工事は、たしか建設省の直轄工事であると伺っておりますが、間違いございませんか。
  77. 蓑輪健二郎

    蓑輪政府委員 そのとおりでございます。
  78. 淡谷悠藏

    淡谷委員 その当時の認定では、その工法を安全と認定されたが、幾ら認定されましても、起こった事件なのです。危険性があったのです。その場合に、直轄工事の最高責任者である建設省は、その工法自体に欠陥があった場合に、これは大胆に責任をとらなければならない立場にあると思います。今後、警察の取り調べと言っておりますけれども、警察なんかには、なかなか取り調べがつかぬこともある。これは工法自体の問題であります。万一、許可をしたその工法自体に大きな欠陥があったとした場合に、建設省ははっきりその責任をとられますか。
  79. 蓑輪健二郎

    蓑輪政府委員 私、その辺につきましては、やはり建設省に、全体のそういう仮設の段取りについて承認した責任はあると思います。ただ、段取りを承認した場合に、それが安全になるように実際施工されたかどうか、その辺が一つのこれからの問題であろうかと思います。私たち、そういうような安全性につきましては、今後注意いたしますとともに、いまの請負の工事契約書によります重要仮設物の設計を、甲側、いわゆる発注者側が承認するということの法律的な解釈、こういうことがどうなるのか、これも一つの問題であろうかと思います。全体を見まして、やはりこういう建設省も監省しておりますそういう点の責任は、私ども十分感じております。
  80. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは、工法自体に欠陥があったのか、工法施工する際の間組のやり方に欠陥があったのかで分かれるとは思いますけれども工法について間組から建設省のほうに、これでいいかどうかということの一つの質問、あるいは相談があったわけですから、これにオーケーを出した建設省は、やはり工法自体に対してもっと真剣に責任を感ずる立場はどうしても必要だと私は思うのでありまして、特にこの際お聞きしておきたいのは、直轄工事を請け負う人との関係ということはどうなのですか。一体どこまで監督権が及ぶのですか。たとえば、さっき聞いておりますと、今度事故を起こしました人たちも、間組の直轄の労働者だと言われておりますが、労働者の使役、その他のことについても、建設省に責任があるのかないのか。これは間組のように大きな請負工事者は、またさらに下請にやらせますが、国会で議論の結果は、下請の責任は元請が負うという方向に漸次向かいつつあるのです。これでなければ始末がつかないような状態になっている。そうすれば、これは平たく申しますと、間組の最終的な工事責任者というのは建設省自体だというのが、これは直轄工事の常識だろうと思うのです。これは何としても、間組のほうに責任を押しつけることもあるでしょうけれども建設省自体が最終責任をとるのが至当だと私は思うのですが、その点はいかがですか。
  81. 蓑輪健二郎

    蓑輪政府委員 一般に工事の請負契約で、いわゆる甲側の責任、発注者側の責任がどうあるべきか、また受注者側の責任がどうあるべきか、これについては、いろいろ今後の問題があろうかとも思います。ただ私たち、全体を行政的に見まして、建設省が発注しておるということ、またその発注につきまして、その工事をいたします建設業者が十分安全に工事をやるということを監督することは、これは別に法律その他の問題以外にやはり道義的にあると思いますので、そういう点につきまして、私たちは十分反省してまいりたいと思います。  ただ、私たちよく現場におりまして、請負工事をやっておりますと、ここはこうしろ、ああしろというような細部の指示をいたしましても、目的物が私たちの発注した目的物になるようなものであれば、必ずしもそれにとらわれなくてやるという自由性は、いまの契約書の中にあるわけでございまして、そういう問題と、いまの安全の問題というものは、契約書の中にどういうような関連をつけて考えていくべきか、いまいろいろ対策を関係省と協議している次第でございます。
  82. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そういうところに、やはり今度の惨事のかなり根本的な問題がひそんでいると思うのでありまして、これは、さっき大臣からも、基準監督署関係の人員が、たいへん不足で困ると言われておりますけれども、基準監督署としても、こういうことに対して、十分署員を配置するような余裕はないでしょうな、ほんとうの話は。この工事は、あまり見ていなかったでしょう。
  83. 和田勝美

    和田政府委員 本件の工事現場につきましては、監督署の監督は、十一月から事故発生時までに三回行なわれておりまして、現在の監督官の配置状態から見ますと、監督はよくやったほうではなかろうか、かように考えております。
  84. 淡谷悠藏

    淡谷委員 その監督をした場合に、工事の危険は感じなかったのですか。特に働いているのは非常に不熟練な労働者です。あの工事の性格と、労働者の性格から見て、十分危険が予知できたと思いますが、そういう点は基準監督署としては発見できなかったかどうか。
  85. 和田勝美

    和田政府委員 監督はやりましたが、第一回は工事着工期でございまして、そういうことからいたしまして、まだ状態がわかっていなかった。二回目は工事現場のすぐそばにあります寄宿舎を、主として監督いたしておりますので、現場それ自体がある程度まで進んだ段階では監督を実施いたしておらなかったので、監督署の所見としては、そういうような監督の実績からしまして、具体的に危険を感じてはいなかったわけであります。
  86. 淡谷悠藏

    淡谷委員 今度事故にあわれました労働者の諸君は、六カ月前に来ておりますね。専門家ではございません。農民ですね。それが少なくとも、ああいうふうな危険が予知されるような事業所で働いている。この労働者は職安を経由しておりますか。
  87. 住榮作

    ○住政府委員 これは職安の紹介ではございませんで、間組の募集従事者が青森へ参りまして、募集してきた労働者でございます。
  88. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは職安を経由しないで間組が募集したというのですが、間組は合法的な手続をとって雇用したのですか。
  89. 住榮作

    ○住政府委員 許可を受けて募集いたした労働者でございます。
  90. 淡谷悠藏

    淡谷委員 一体職安を経由して雇用された労働者の管理と、いまのようなケースで工事者が独自に募集した労働者の管理、この関連は労働省としてはどっちが管理しやすい、あるいは監督しやすいのですか。同じですか。
  91. 住榮作

    ○住政府委員 私どもとしましては、職安を経由する、しないにかかわらず、労働者の就職経路なり就職後の状況が、完全に把握できるような体制になっておれば、そのどちらでもけっこうだと思うのでございますが、直接縁故募集等による者につきましては、実態がなかなか把握できない、そこに非常に問題が起きやすいというように考えておりますので、安定所の正規の許可を受けた就職、そういうものに全部持っていきたいと考えておりますが、まだ現在のところそこまで至っておりません。
  92. 淡谷悠藏

    淡谷委員 いまたくさんの季節労務者も出ているようでありますが、あの季節労務者の何%くらいが職安を経由していないのですか。
  93. 住榮作

    ○住政府委員 大体季節労働者六十万と言われておるのでございますが、安定所の紹介による労働者は二十万あります。
  94. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは、雇用条件を非常に完全なものにするためにできたのが私は職業安定所だと思っておりますが、それが六十万のうち、わずか二十万しか経由していない。四十万というものは、安定所を経由していない。これは大臣にお考え願いたいのですが、なぜこういう労務者が、安定所を経由することをきらうかという基本的な問題です。これはどうお考えになっているのですか。何かみずから顧みて原因がおわかりになりませんか。
  95. 住榮作

    ○住政府委員 安定所を経由するのは、いま申し上げました二十万でございますが、そのほかに、結局出かせぎ労働者の台帳を市町村等と協力してつくっております。そういう台帳による出かせぎ労働者の把握は、約四十万ぐらいになっています。  安定所を通じたがらないという原因にはいろいろあるかと思うのですが、最近は、逐次安定所を利用する傾向も強まってきていると考えております。
  96. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは原因等も、お気がつかれないかもしれませんが、非常に大きな原因があるのです。出かけていきますと、まず本人の意思もあるだろうけれども、その選ぶ職種について、職安ははっきり規定しますね。いやだというと、おまえさんには労働意欲がないんだから、失業保険を打ち切りますよといっておどかすのです。これはもうわれわれ全国の安定所を見てきましたけれども、そういうケースがずいぶん出てきた。したがって、その点を考えますと、どうも回避するおそれがある。確かな職業安定紹介はやりましょうけれども、そういうお役所式の固さが、これはあなたの耳には入らないかもしれぬけれども、窓口ではしばしば出る苦情なんです。そういう点について、もう少し季節労務者その他の気持ちのあり方についての御配慮を願いたいし、特に大きな土木工事などは相当危険が伴いますから、これからさまざま、万博をはじめ、必要とする労務者も多くなるでしょう。一つの奴隷労働がまたあらわれないように、十分本人の希望する意思、能力、体力などもよく見てやっていただきたいと思う。中にはせっかく旅費をかけてやってきまして、血圧が高いというだけで帰された人もあるのです。これは出てくれば、わかっておるはずなんです。そういう愛情の欠けた雇用方法が、お役所としてやられるというと、とても完全な職安経由の雇用はできなくなってくる。間組なども、そういう点は十分配慮してやっているのでしょうけれども、その点は一そうの御配慮をお願いしたいと思うのであります。  それから、この間組のやっていることなんですが、今度の事件でたまたま明らかになったのですが、こういう事故に対する見舞い金は二十万円といわれていますね。これはお調べになっていますか。
  97. 和田勝美

    和田政府委員 間組の具体的な見舞い金の金額、手元にございませんので、調べさせていただきます。
  98. 淡谷悠藏

    淡谷委員 お手元にないかもしれぬけれども、各紙が一斉に書いているのですよ、新聞が、見舞い金が二十万円ということは。ここに切り抜きがありますよ。これはわれわれの目にも入る新聞でありますから、関係のある皆さんの目に入らないはずはないのです。これはお調べください。確かにありますから……。  見舞い金というものの性格は何なんです。ほんとうの見舞い金ですか。
  99. 和田勝美

    和田政府委員 先生がいま御指摘になりましたのは、たしか、さしあたって出したものであろうと思いまして、最終的にどの程度の額になるかにつきまして、なお間組としても考えておるのではなかろうかと思いますが、それが見舞い金というかっこうで出ますか、慰謝料というかっこうで出ますか、事情をまだ正確に把握いたしておりませんので、きょうのところはそういうことで御了解願いたいと思います。     〔委員長退席、澁谷委員長代理着席〕
  100. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは従来、私もしばしば経験したのですけれども、見舞い金というものの性格を、この際基準局あたりでも、はっきりしてもらいたいと思うのです。この見舞い金をやるから、あとは民事上の請求その他一切いたしませんという一札をとる場合がしばしばあります。間組がそうだとは言いませんよ。これじゃ全く正当な損害の請求などはなくなってしまうのですね。特に、ああいうふうな大きな会社の慣習ですから、その点はやはりもっとはっきりお調べになって、見舞い金と損害賠償の関係などもこれから起こってきますから、いまの問題でも、把握される必要があると思いますが、いかがでございますか。
  101. 和田勝美

    和田政府委員 間組の就業規則によります弔慰金につきましては、労災保険で支払う金額のほかに、雇用期間に応じて変化があるようでございまして、一年未満の場合は大体二十万から三十万、事案になって違うのだろうと思いますが、そういうことを就業規則では規定をいたしておるようでございます。弔慰金、あるいは見舞い金、あるいは慰謝料、これにつきましては、その性格が多少不明確なところがございますが、先生のいま御質問の中にありましたように、使用者側と御本人の遺族と、和解のようなかっこうで成立をいたしますと、訴訟には非常になりにくい、かように考えております。その点は遺族側のほうでも、そういう性格のことを御承知をいただいて、合意が成立するなら、これで裁判にはなりにくいのだということを御了解の上でおやりいただくようにしたいと思いますし、私どものほうにも御相談がございますれば、そういうことを申し上げたいと考えております。
  102. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは労働大臣にお考えおき願いたいのですが、今度のような事故はほとんど本人の責任ということは言えない。職安を経由しなくても、あるいは許可を得た募集方法によってきておるし、それから仕事の現況から見ましても、本人の過失ということは一つもないわけですね。しかも、仕事が国の直轄工事、これだけで済めばいいというわけではございませんけれども、こういうみじめな目にあっておる労務者はずいぶん多いと思うのです。私もしばしば扱いました。ある有名な道路工事の会社ですが、名前は申し上げませんけれども、たまたま羽田付近の深夜の路面工事に使っておった労働者が、酔っぱらい運転の車、しかも、真夜中の一時ごろに、女を乗せて遊び歩いておる車にぶつかりまして即死した。これは明らかに下請の雇用者ですが、元請は大きな道路工事会社です。弔慰金はわずかに五万円ですよ。これは実態です。あとは下請ですから責任がない。こういうあたりからも、元請の責任を追及するわれわれの態度が強まったわけですが、間組の今度の問題なども、間組に欠陥があれば十分に責任を追及しなければなりませんが、まず元請の立場にある国自体が、この賠償については、本人から申し出があるなしにかかわらず、積極的に世話をしてやるべきじゃないかと私は思うのです。私もいろいろ調べてきましたけれども、まだ罹災者の家族は、いろいろあとの弔いで、賠償まで考えていないようですが、本人たちは考えなくても、賠償してやるのが国としての当然の責任じゃないかと思うのです。  それに関連しまして、国家賠償法の問題ですが、一条、二条の条項というものは適用できるのじゃないですか。
  103. 原健三郎

    原国務大臣 建設省のほうにお答え願います。
  104. 蓑輪健二郎

    蓑輪政府委員 国の直轄工事でございますが、この場合の請負契約というものは、発注者が国であろうと、県であろうと、市であろうと、これは大体標準の請負契約書でやられておると思います。また、民間の一つのこういう建設業者にものごとを発注する際のいろいろ考え方は、これは多少それぞれ違っておると思いますが、請負業者が発注主から工事を請け負うというような点につきましては、これは請負工事の契約書の法律的な考え方いかんによるかと思いますが、やはり思想としては同じものがあるのではないかというふうに考えております。  ただいまの国家賠償の問題でございますが、国家賠償というのは、やはり国の営造物の設置または管理に瑕疵があったということでございまして、この問題につきましては、いろいろ今度の事故原因究明していかなければならない問題もございます。  また、国家賠償についてのいろんな意見があろうかと思います。一つの考えは、いまの請負工事の契約の常識から言いますと、やはり完成物を引き継ぐまでは、これは業者の財産だというような考えもございます。また、そういうものであっても、本体の工事というのは、将来の予定の公物だというような考えもございます。また、そういう考えの中で、まあ、現地に工事をやるための一時の仮設的なものについての取り扱いというようなことになりますと、それはまた非常に議論の分かれるところがあるかと思います。私たち、責任を回避するものではございませんが、やはり国家賠償の問題については、法務省その他の関係省とも十分打ち合わせをいたしまして、国としての最終の意見をきめたいというふうに考えております。
  105. 淡谷悠藏

    淡谷委員 まあ、御記憶を新たにするために、一条、二条、簡単ですから読み上げますと、国家賠償法の第一条はこうなっているのです。「公権力の行使にもとづく損害の賠償責任、求償権」ですね。こういうのが第一条ですが、一項は、「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」二項は、「前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があったときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。」第二条は、「公の営造物の設置管理の瑕疵にもとづく損害の賠償責任、求償権」一項は「道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。」これは、まあ建設省のほうからはいま御意見を聞きましたが、労働大臣に私は一つお願いがあるのです。  さっきから、質疑応答の中ではっきりしましたのは、この工事建設省の直轄工事である、あの工法についても、建設省がオーケーを与えている、基準監督のほうでも三回も監督を行なっている、河川に関係のある橋梁の工事である、労働者には少しも瑕疵がない。これはできた橋が落ちて損害が生じたというんじゃない。これは無条件でありましょうけれども、落ちた場合と、建設の過程において生じた事故というものは、機械的に分離ができない。きゃうは、私は、即答は求めませんけれども、これはやはり、建設大臣労働大臣とは職務は違いましょうけれども、同じ閣僚ですから、特に労働大臣は、労働者の保護に任ずべき大きな使命を持っている。ぜひ、この国家賠償法はこの事故に対してどう発動するものか、今後閣議その他の席上では十分御配慮を願いたいと思うわけです。もうこの条文二つで――適用しないと思うと適用しないような理屈も出てくるでしょう。私は、これは積極的に適用してやるべきじゃないか。普通の事故とは違うので、一応ひとつ労働大臣の、確答はできませんならできませんでかまいませんが、御答弁を願いたいと思います。
  106. 原健三郎

    原国務大臣 国家賠償法のこと、私、あまり詳細に存じませんが、さいぜんからの質疑応答を通じて、出かせぎの方々、まことにお気の毒で、できるだけのことをいたしたいという考えでございます。  それで、どうなるか、まだはっきりわかりませんが、とにかく、一応、御趣旨もございますから、建設大臣、法務大臣等々、関係のところで検討してみたいと思います。
  107. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これで終わりますが、今回の非常に不幸な事故が契機となりまして、この出かせぎ労働者のあり方や、あるいは基準監督の立場、建設省の立場、いろいろ問題があると思うので、いまちょうど内閣委員会では総定員法の審議をしているわけなんですが、関連ございますが、やはりこういうふうな実務に差しつかえるような人員ははっきり持たなければならぬと思うし、それから、特に、こういう季節労務者の不幸の発生する原因についての究明は、油断なく、常時やってもらいませんと、安心して出てこれないと思う。おそらくは、きょうあたり、お葬式の準備が進んでいるかお葬式をしているかと思いますけれども、このあとで必ずまた生活上賠償の問題が出てくると思う。一家のつえ、柱ともたのんでいる人たちが、急激にああいう目にあったのですから、心情的な悲しみも察するに余りありますけれども、やはり生活上の問題も、国の工事だけに、私は、やはり国が身を入れて、訴訟だとかその他やっておりましたのでは、いろいろ労働者の性格上救いがたいものがあると思いますから、そういうことになる前に、積極的に十分にできるだけの法的な措置は講じまして、でき得る限りの賠償はせめてもやっていただきたいということを強くお願い申し上げまして、私の質問を終わります。
  108. 澁谷直藏

    ○澁谷委員長代理 本島百合子君。
  109. 本島百合子

    ○本島委員 今回の荒川放水路の新四ツ木橋工事におきます災害については、それにあわれた、青森県から来られた方々に対する心からなるおくやみを申し上げます。同時に、政府は、今後、このような災害が起こらないための万全の措置をとっていただくことを要望いたすと同時に、先ほどから繰り返し言われておりますように、遺族方々の生活を十分に保障できるような方途を講じていただきたいことを前もって申し上げておきます。  そこで、建設省に伺いますが、今回のリングビーム工法によりますと、大体だいじょうぶだと思ってこの方式を指示したということになっておるようでありますが、たとえば小松川の場合には直径二十一メートル、そうして四ツ木橋の場合は二十三メートル、利根川の場合は二十七メートルと、こうなっておりますね。そういたしますと、この安全というものをどの程度で認められたものかどうか。私どもこういう技術のことよくわかりませんけれども、二十一メートルの場合、二十三メートルの場合、二十七メートルの場合では、相当いろいろの点で違いが出てくるはずであると思います。そういう意味では、どういう安全度を確かめて指示をされたのかを承りたいと思います。
  110. 蓑輪健二郎

    蓑輪政府委員 リングビーム工法、これは四十年に特許になったわけでございますが、この工法の特徴といたしましては、やはりまるく矢板を水中または土中に埋め込みまして、中の土を掘るわけでございますが、外から、水があればもちろん水圧、土があれば土圧がかかってくるわけです。そういう外からの圧力を、まん中に、矢板の中にまるいビームを置きまして、それで圧力をとるというような考えでできたものであります。     〔澁谷委員長代理退席、委員長着席〕  実は、小松川につきましては、その工法で全部完成いたしました。ただこの工法につきまして、今度の場合、間組からいろいろこういう工法、こういう段取りでやりたいという設計書が出てまいりました。それにはやはり外の圧力に対しまして、中のリングのビームにどのくらいの圧力がかかるか、そういうものと、それからリングのビームは鋼材でございますので、鋼材の圧縮に対する部材の強度がどのくらいあるか、こういうような計算をいたしまして、それで破壊に至るまでの安全率というものが出てくるわけでございます。その安全率が一以上あるということは倒壊する前の状態であり、安全性があるという計算書に基づきまして、私たちこれの施工を承認したわけでございます。ただ、同じリングビーム工法といいましても、径によりまして外の圧力が変わってまいります。それに基づきましてやはり中の、力を取りますリングのビームの間隔を狭めるとか、あるいはリングのビームの強度を増すように大きなものを使うとか、そういうようなことがいろいろ現地のその工事、その工事に、設計いたします場合の配慮をしておるわけでございまして、それに基づきましていまの効率計算上、これが普通の場合安全であるというように判断したわけでございます。
  111. 本島百合子

    ○本島委員 そういうことは計算上のことで、おやりになって実際実地でもって検討されたことはなかったわけですね。あるいはまた、たとえばこういう新方法でなさる場合、新聞等にも出ておりましたけれども、その柱となるべき鉄骨をぐっと底のほうまで入れなきゃならぬ。それが入っていなかったのではないか。私ども技術者でないからわからないのですが、しろうとで考えてみても、相当大きなワクになってきた場合、これは深さも相当深くなければならぬ。こういうことになるわけなのですが、そういうものについての実験の方法というものをどういうふうにやられておるか。現在、たとえば自動車などは、いろいろの形で、民間でやっているものを見ておりましても、相当の研究をしているようでございますが、こういう危険性のある工事等に対する工法については、よほどの研究がなされなければならぬと思うのです。こういう点は、どういうような形でいままでなさってきたか、こういうことをお聞きしたい。私、質問時間が短うございますから、要領よく簡単に言ってください。
  112. 蓑輪健二郎

    蓑輪政府委員 実験といいましても、なかなか現地と同じようなもののあるところにつきまして、そこで圧力をかけるというような実験は非常に困難でございまして、いままでの、小松川その他でやりました実施例で、その中でいろいろ矢板の曲がりぐあい、そういうような過去の実例に基づきまして補強をしておるわけでございまして、そのほかにやはり土木研究所といたしましては、そういう計算方法、たとえば一つの長さのリングビームに対しましていろいろ圧力の試験をいたしまして、どういう計算方法が実際にあるのか、そういうような試験は一般的な材料の試験及びそういう応力を計算する一つの技術的な問題としてやっているわけでございます。そういうことを積み上げまして、最終的な大きなものについての安全性を保つというような計算に入るわけでございます。
  113. 本島百合子

    ○本島委員 その安全性の問題についての政府機関での研究というものが、私どもはどう考えても十二分に行なわれていないというような気がしてならないのです。これが、小松川橋の場合にも災害が起こっているわけなので、人間というものはモルモットじゃございませんから、災害が起こってこうだったからこうというような考え方では困るのです。人命尊重ということがいわれておる今日におきましては、災害をある程度予想して、その場合、人間がその犠牲にあわないための措置というものがとられていなければならぬと思うのです。いずれの場合においても、そういう方法は講じられていないように見受けておりますが、この点はどうでございましょうか。
  114. 蓑輪健二郎

    蓑輪政府委員 これはやはり私のほうの、現地でこういう橋を設計し、請負にいたしましたときのいろいろの工事の仕様書をつくり、また現地の業者のほうから出てきます仮設の設計をチェックする、そういうような中で、こういう新しい工法につきましては、いままでの例、過去の実施例を見ていろいろ改善を加えておったわけでございます。結果的に見ますと、非常に申しわけのないことになったわけでございますが、私たちこういう過去の例及びまた現地のそういう調査研究だけでは足りないものは、やはり中央の土木研究所その他も動員して検討するということも今後は積極的に行ないまして、こういう事例のないように私たち努力いたしたいと考えております。
  115. 本島百合子

    ○本島委員 労働大臣に伺いますけれども、私どもどんな場合でも、人命尊重という形における措置というものを、常に考えていかなければならぬと思うのです。今回の場合におきましても、御承知のとおり技術者といわれるような人はいなかったということ、それから監督官もいない、危険な作業というものは、季節労務者の人たちのような、あるいは日雇い労務者でマル公で働いておる人たち、こういう人たちが常に使われておるわけなのです。そういうところについては、特段の、いざといったときの救命用具とか、機械とか、そういうものがちゃんとしてなければならないのにしてない。そういうところばかりをやらせられているという感じがするわけですね。こういう点、今後もあることですから、いろいろの工事について、大臣はこれから先、どういうようにしようと考えていられるのかを承りたいと思います。
  116. 原健三郎

    原国務大臣 お説ごもっともでございまして、危険なところには、緊急避難とかその他いろいろ規定もございますが、今後は、ことに建設業には、非常に出かせぎの形が多いというような特殊事情もございますので、労働省といたしましては、さいぜんから申しているのですが、労働基準監督官強化して厳重に監督をいたしまして、そして危険防止――お説のように人命尊重、人間尊重というようなものは大事でございまして、能率があがるとか、経済であるとかいうのは第二でございますから、それをはき違えないようによく監督を強化して、御期待に沿いたいと考えております。
  117. 本島百合子

    ○本島委員 労働基準監督官を増員して、こう言われておりますが、私ども地方を視察いたしまして痛感することは、この役人さんの数が不足していることも事実だし、また災害を防ぐための措置というものはあまり講じられておりませんし、それから機械化ということが要望されているのに、これもできていない。たとえば災害があった場合に、かけつけるのに自動車、オートバイ、こうなるのですが、自転車しかないというところも以前にはずっとあったようであります。最近やっとオートバイ程度が配置されているようですが、自動車などの最も現場で必要なものが設備されなければならないのに、ほとんどされていないのではないでしょうか。私は特に従前、いろいろの災害地を見てまいりましたときに、それがいわれているわけです。そうすれば、今回の場合におきましても、そうした危険に対する防御、用心、こういうものがすっかりしてなかったということに大きな原因があるように思うのですが、これを契機としてそういう役人さんをふやすだけが能じゃない、そういう面をどうなさるか、具体的に、どういうふうにしていこうということをお聞かせ願いたいと思います。
  118. 原健三郎

    原国務大臣 私ども、決して役人さんをふやすだけが能とは考えておりませんが、どうしても、手不足な点も事実でございます。余っているところから足りぬところへ回すような、そういうぐあいよくいかないシステムでございますので、残念なことでございます。  それで、いま先生のおっしゃった危険に対する防御とかもっと用心をすること、御説ごもっともでございます。これから労働基準監督官をして、そういう危険防止、人命尊重のあの手この手万般やる指示を出してやらせていく考えでございますから、どうぞよろしく。
  119. 本島百合子

    ○本島委員 私はいまその監督官の方の立場でこういう点を申し上げ士のですが、すべての事業所に対して、そういう点の指導はどういうふうにいままでやられておったのでしょうか。
  120. 和田勝美

    和田政府委員 安全に対します関心は漸次高くなっておりますが、まだまだ十分とは言い切れない面がございます。したがいまして、労働省としましては、第二次産業災害防止計画に引き続きまして、昨年第三次の労働災害防止基本計画をつくりまして、五カ年間の計画でございますが、危険業種の指定その他の処置をとりますとともに、会社の首脳部が安全問題に対する認識を徹底的に持ってくれるように、あるいは、現場の第一線の人に安全に対する管理能力がある、働く労務者の方が適性を持った作業につかれること、そういうようなことを根幹にいたしまして基本計画をつくって、それに基づいて年次計画を立て、現在のところでは年間七%くらいの発生率の低下ということを目ざして勢力をしているところでございます。
  121. 本島百合子

    ○本島委員 今回の青森県の大鰐町の人々の例でしみじみ思いますことは、お米やリンゴの作があまりよろしくなかった、あるいはまたミカン、バナナ等の競争にある程度負けた、そういうことから出かせぎということになってきて、その数がふえておる、こういうふうにいわれております。そこで、今日いろいろの面で見てまいりますときに、こうした不作だとかあるいは競争に負けたとか、いろいろの条件によるところの出かせぎというような労務者はふえてくると思うのです。ということは、いろいろいわれておりますけれども、結局いままでは、地方の零細農業では三ちゃん農業といわれて、じいちゃん、ばあちゃん、かあちゃんでやっておったけれども、いま、そのかあちゃんのほうまで現実に賃金の入る労務に働きにいく、そうして四時なり五時なり帰って日のある間じゅう農業をやるというので、二・半ちゃん農業、こういわれておるわけですね。こういうことは、政府の施策も物価高を引き起こして、日本の国民の生活水準が多少引き上げられた、こういってはおりますけれども、やはり日の当たらない地域というものがあるということが、はっきりここにも出てきておるわけなんです。したがって、こういう労務者に対する措置というものが、先ほどからもたびたび言われておるように、人員すらはっきりと把握ができていない、こういわれておりますけれども、日本に市町村がどのくらいあるか、そちらのほうで詳しく知っていらっしゃるわけで、そういうところに対して、大体どの程度に出かせぎに出ておるのかという調査などはできるはずだと思います。それが、たとえば職安を通して働いている人ばかりでなく、個人的に出ていっておるということも、はっきりその町なり村なりというものをたずねればわかるわけです。私も、うちの近所で季節労務者に飛び込まれて、自分の行くところはどこでしょうかというわけで、びっくりして聞いてみたら、世田谷の三軒茶屋というところで工事をやっておるそうだからということで、この人はおまわりさんが心配して、本島のところに行けばわかるだろうということでよこされたわけですが、その事業所をさがすのに五時間かかりました。はがき一枚で番地も何も書いてないのですから。そういうふうにしてたどってこられた人が、その村だけでも大体百名近くいるだろうということを聞いたのです。職安を通しているのかと言ったら、全部通していないというのですね。だから、職業安定所の業務の中で、こういうものを今後どういうふうにやれば的確な把握ができ、そうした人たちのいろいろの災害等がかりにあった場合でも、的確にその措置をしてやることができるか、こういう点の調査なりあるいは把握のしかたというものをどういうふうに考えていられるか、この点をお尋ねします。
  122. 住榮作

    ○住政府委員 御指摘のように、実態はまだ必ずしも把握されておりません。そういう意味で、市町村だけでも、あるいは安定所だけでも、独自ではなかなかつかめないことが多うございますので、私どもとしましては、市町村なりあるいは農協その他の組織、安定所、こういうところが一致しまして出かせぎ労働者の状況というものをつかむように努力してきておるのでございますが、今後ともそういう努力を一そう積み上げていきたい。それと同時に、必要な実態の把握、そのための調査というものもやっていきたいと考えております。
  123. 本島百合子

    ○本島委員 いま労働行政の中で最も望まれていることは、社会の底辺にいる人たちの問題だろうと思います。特に中高年齢といいますが、今回の災害の例から見ましても、大体出かせぎに行かれる方々は、四十歳代、そして五十、年をとっていらっしゃる方で六十五歳ぐらいまでの人たちが出ておるということになるわけなんです。そうすると、中高年齢の職業というものが適職が与えられていないということと、技術を十分に持たれていないということであろうと思います。そのために労働省には職業訓練所などもあるわけで、そういうところで、手に技術のないこういう人々に、機関を設けて技術の習得をしてもらうとかというような方法も立てなければいけないのじゃないだろうか、こう思うわけなんです。  それからもう一つは、若年労働者の問題ですが、たまたま青森県の人であったのですが、今回の射殺魔というようなもの、これも集団就職で出てきて、そして職業に定着できず、転々として歩いて転落した青年の例になるわけなんです。さすれば、きめこまかい労働行政ということを、たしか労働大臣に原さんがなられたときに言われたと思うのですが、一体どの程度のきめこまかい行政が行なわれていこうとしておるのか。私ども、この中高年齢以上の人、それから若年労働、こういう点におけるところの、労働省のいわゆるきめこまかい、愛情豊かな行政というものがなされていない結果、今日のこのような災害なり、また転落者なりが出てきたのだと思うのです。それがすべて、地方の農村地帯の人々、ほんとうに収入の少ない、そして労働の激しい地域の人々にかけられておる犠牲というふうに思われるわけなんです。こういう点、今後労働大臣は、この災害にあわれた方々の霊に対して冥福を祈るという意味からしても、今後の災害は防いでいかなければならぬと思いますが、そういう点をどういうふうに計画されるのか、あらかじめ御報告願っておきたいと思います。
  124. 原健三郎

    原国務大臣 本島先生の御意見まことにごもっともでございまして、さいぜんからしばしば申し上げておりますが、これを機会に、労働災害が起こらないように、安全操業をやるように、労働省の監督行政をきわめて積極的にやる決意でございますので、よろしく御了承のほどをお願いいたしたいと思います。  それから第一点の、適材適所に置くようにおのおの――さいぜんからもお話がございましたが、本人に向くような仕事をさがしてあげる、そういうことを職業安定所においてはやっておるのでございますが、まだ十分でございません。これからそれが一番大事で、方々で調べたところによりますと、中卒、高卒なんて若年者は、三年すると大体五二%の人がその職場を離れている。そういうようなことの最大の原因は、やはり適材適所にいっていないということでございますので、よく職業安定所において善処するように指令を出したいと思っております。  それから、中高年齢者に対する職業訓練、これも、短期の講習会とか、あるいはずっと長いのとか、いろいろ訓練所を通じてやっておりますが、もう少し積極的にやって、こういう未熟練労働者が若干でも技術を持つようにいたしたいと思っております。  それから若年労働者でございますが、これもいろいろ問題がございまして、就職後については、地方におきましても、方々で職場適応のための指導をいたしたい。若年労働者が工場などへ入りましたら、あるいは建設業に行きましたら、その職場適応のための指導を実施して、本人が喜んで仕事をするようにいたしたい。あるいは若年者の中卒及び養成訓練修了者全員には、青少年手帳というのを交付して雇用条件をよくするようにいたしております。その他、労働者福祉員というのを置いて、労働環境改善の促進をはかっております。さらに四十四年度においては、主要な職業安定所に年少就職者相談員というのが三百人、新たに今度できまして、労働市場センターの機能によって把握された離職の状況等を活用して、職場に適応するような指導をいたしておる次第でございます。  その他、勤労青少年の積極的な余暇利用のスポーツ、レクリエーション、文化、教養等をやるために、勤労青少年ホームというのを拡充いたしております。全国にかなり効果をあげておりますが、中野には勤労青少年センターというのを今度新たに設置いたしまして、すでに総工費六十億――おそらく八十億になると思いますが、去年土地買収が済んで、ことしから建築にかかります。二十階建ての東京でも珍しい、名物になるぐらいのたいへんなものでございます。そこに日本の勤労青少年の全国的な中心を置く、地方には勤労青少年のホームを置く等、万般積極的にやりたい、こう思っておりますので、よろしく。
  125. 本島百合子

    ○本島委員 最後に要望しておきます。  まあ最後は労働大臣の自慢みたいになりましたが、幾ら建物をつくっても、愛情のこもった、そしてよりよき技術的な指導者がない限りは、それはほんとうにもう箱だけになってしまうのですから、そういう意味で労働省は思い切って人材を採用されて、そういう面での教育なり、あるいは娯楽なり、いろいろの点で、労働行政というのは第一線部隊ですから、きめこまかにやってもらいたいと思うのです。同時に災害を防がなければいけない。このお正月早々から災害の連続である。これはほとんど人災なんです。天災ではないのです。人災ならばこれは防げるはずなんですが、防ぐ研究が足らないためにひんぱんに起こってきておるのですから、この点は労働省がやはり受けて立って、あらゆる職種に対する災害というものを未然に防げる措置を講じていく、また指導する、こういうことをしなければいかぬだろうと思っておりますので、この点を強く要望して質問を終わります。
  126. 森田重次郎

  127. 河野正

    河野(正)委員 本日は労働災害ということですが、御承知のように、ここ数日間をとらえてまいりましても、荒川放水路事故がございましたし、また北海道におきまする雄別炭鉱の事故がございましたし、さらに東大病院におきまする高圧酸素治療タンクの爆発事故、こういうふうな事故が相次いで起こってまいりまして、日々の新聞には労働災害の記事が載らない日はないというふうな、まことに残念な状況でございます。そこで、いままで荒川放水路事故につきましてはいろいろ論議されましたので、私は、特に今回の東大におきまする高圧酸素治療タンクの爆発事故にしぼって、いろいろ労働災害についての質疑を行なってまいりたいと思います。  特に今度の東大におきまする事故の特色というものは、人命を救うことが医療であるにもかかわりませず、この東大の場合には、かえって医師と治療を行ないつつある患者のとうとい四名の人命を奪ったというところに、その特異な事情がございます。しかもこの事故は、医学の新しい領域での事故でございますので、そういう意味におきましては、今後に及ぼす影響も非常に大きかろうというように、私どもは判断をいたすのでございます。そこで、いずれにいたしましても、労働災害についてやはりこの際大いに反省をする時期が招来されておるのではなかろうかというふうに考えるわけです。そういう意味で、後ほどいろいろとお尋ねをしてまいるわけでございますけれども、こういった事故に対して、労働災害に対しまする危害防止、労働衛生なり安全という立場からやはりこの問題が大いに反省されなければならぬということは、これはもう否定することはではない事実でございます。そういう意味で、ひとつこの際大臣の御見解を承りたいと思います。
  128. 原健三郎

    原国務大臣 河野さんの御承知のとおりでございまして、最近各所に労働災害が頻発いたしまして、私どももまことに申しわけなく、責任を痛感いたしておるところでございます。  それで、さいぜんからいろいろ申し上げておるのでございますが、それは何といたしましても、やっぱり人命尊重、人間尊重ということを第一といたしまして、その精神やそういう主義、観念を盛り立てることが非常に大事でございまして、その他経済とか能率とか等々のことは第二にする、こういう考え労働省といたしましてもやる考えでございます。そして、いわゆる労働衛生とか、それから安全の監督を強化いたしまして、労働基準監督官によってそれらを積極的に監督して、災害防止に万全を期していきたい。このたびの災害を契機として、決意を新たにしてやる考えでございますので、よろしくお願いいたします。
  129. 河野正

    河野(正)委員 決意を新たにしてやっていただくことはけっこうでございますけれども、それならば今回の事故原因は一体どこにあったか。一説には電気系統の故障説がございますし、一説には医師の不注意による過失説がございます。これは一面におきましては、犠牲者に対して非常に相すまぬ言い方でございますけれども、申しわけない言い方でございますけれども、そういう議論がございます。そこで、基本的な姿勢についてはいま大臣からの御意見どおりだと思いますが、具体的にいろいろ質疑を展開する意味でぜひ承っておきたいと思いますのは、その直接の原因というものは一体何であるのか、この点だけひとつ政府の御見解を承りたい。
  130. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 今回の東大の爆発の事故原因は、現在警察当局等によって現場検証が行なわれております。本日午前中の状況でもまだ最終結論は出ていないということでございますが、新聞等にも出ておりましたように、いろいろな考えられる原因が一応出されているようでございます。いまお述べになりましたように、電気系統なりあるいは操作上のミス、そういういろいろな問題が原因説として出されているようでございます。いずれにいたしましても、この種の高圧酸素治療装置というものは、非常に治療効果というものも高いだけに、また反面、操作上のミスなり何なりによって事故等も当然予想される性質のものでございますので、今後そういう構造上の安全性と同時に、また操作上の面にわたる安全基準等の確立、こういうものが早急に検討をいたされなければならぬ問題だ、私どもはこういうふうに考えておるわけでございます。
  131. 河野正

    河野(正)委員 そこで、大臣、それから人事院から、職員局長おいででございますから、承っておきたいと思うわけですが、今回の東大におきまする酸素タンクの爆発事故の直接の原因が何であるかいま明らかでない。そこで、これは基準法では、危害の防止のために必要な処置を講じておかなければならぬというような明文があるわけです。ところが、どういうふうな処置が行なわれているかというような実際の監督については人事院にある。そこで、労働省と人事院、その間の連携というものがうまくいっているのかどうか。これに一つ基本的な大きな問題があろうと私は思うのです。この点について労働大臣と人事院のほうから、ひとつ御見解を承りたい。
  132. 島四男雄

    ○島政府委員 国家公務員の安全保持については、現在どういう仕組みになっているかということをまず最初に申し上げておきたいと思います。  現在、職員の安全保持につきましては、国家公務員法に基づきまして、人事院規則によってその根本基準が定められておるわけでございます。私どもがいろいろ基準をつくる上において、先ほど先生のお尋ねの、労働省とどのような連携が行なわれているかという御質問でございますが、その私どもが定めております基準というのは、労働基準法等の規定の例によっておりますので、そのいわゆる安全保持の基準は民間におけるそれとほとんど同じである、このように申し上げてよろしいかと思います。
  133. 河野正

    河野(正)委員 一般の民間と同じだと言われておるけれども、実際には安全基準というものが策定をされておらないということだろうと思うのです。いま職員局長は民間と同じとおっしゃっても、民間と同じようにやられておるかどうか。その点はやられておらぬということですからね。それはお答えにならぬと思うのですよ。これはどういうことでしょう。
  134. 島四男雄

    ○島政府委員 私どもでは、職員の安全保持は、先ほど申し上げましたように、根本基準を定めておるわけでございまして、具体的に各省庁の長が必要な措置を行なう、こういう仕組みになっております。人事院規則にいろいろこまかい規定がございますが、各省庁の長は、安全管理担当者というものを指名しなければならない、あるいはまた危害防止主任者を指名しなければならないということになっておりまして、その危害防止主任者に指名された者は、所定の基準に従って必要な安全対策を講ずる、こういう仕組みになっておるわけでございます。
  135. 河野正

    河野(正)委員 その基準がきめられておらないで、そういうことがやられておるとか、やられておらぬということは、ちょっと言いにくい問題ではなかろうかと思うのです。各省庁とおっしゃるけれども、基準が定められて各省庁がやるのであって、結局監督権は人事院にある。公務員法によって、人事院規則によって人事院がおやりになる。ところが安全基準というものは確立されておらないということになりますと、私は先ほど冒頭に指摘しましたように、一体労働省の基準法の問題と人事院規則との関連というものがどうもうまくいっていないじゃないか、こういう感じを持たざるを得ぬと思うのです。  そこで、それは後ほどまたお尋ねしますが、それならば、今回発生をいたしました高圧酸素タンクの使用というものが一体どの程度全国に普及しておるのか、こういう実態というものが捕捉されておるのかどうか、まずその点から御報告を願いたいと思います。
  136. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 便宜私からお答え申し上げます。  高圧酸素治療装置といわれるものにつきましては、各大学等の病院において研究試作というような形で取り入れられているものが相当あるわけでございますが、その実態をつかむのは非常に困難でありますけれども、現在まで厚生省当局で確認をいたしましたところによりますと、全国的には七十六台くらいあるのじゃなかろうか。もちろんこの中には、先生専門であられますので十分おわかりだと思いますが、いろいろな機種なり型のものがあるようでありますが、そういうものを全部含めまして、大体七十六台くらいが現在あるようでございます。
  137. 河野正

    河野(正)委員 いま厚生省から実態についての御報告があったわけですけれども、七十六くらい――くらいじゃ困るのですね。七十六くらいということでは、実際監督はうまくいっているのかどうか。要するに、安全基準が設定をされて監督がうまくいけば、七十六とか、八十一であるとか、きちっと数が出てこなければならぬと思うのです。監督が十分いっていないから、七十六くらいという表現というものが出てくると思うのですね。これは監督がうまくいっていれば、七十六であるとか、七十七であるとか、断定的な数字というものがここで報告できなければならぬ。そういうような実態というものが十分把握されずにおいて監督が十分行なわれるということは、私どもは理解するわけにいかない。やはり監督が十分行なわれているならば、実態というものが完全に把握されていなければならぬ、こういうふうにわれわれは考えるわけですが、その点いかがですか。
  138. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 私どもが現在まで確認をいたしておりますのが七十六台、こういうことでございます。おそらくこの数字は実情とほとんど差はないのじゃないか、こういうふうに思っておりますが、ただ、大学なりそれ以外の病院等で、試作段階でつくっているものも若干あるんではなかろうかと思っておりますので、そういう点も遠慮しながらお答え申し上げたわけでございまして、現在確実に私どもがつかんでおります台数は七十六台、この実態は実情とそう隔たりはない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  139. 河野正

    河野(正)委員 隔たりがあるとかないとかということではないんで、やはり監督が十分行き届いておれば、きちっとした数字は明らかにされなければならぬわけです。  そこで、この点については委員長に要求いたしますが、ぜひ資料を提出いただきたい。そうしてその間に何らかの食い違いがあれば、さらにあらためてひとつ追及してまいりたい、かように思いますので、七十六の数字がいま示されたわけですから、それらについては、ひとつこの資料を後ほど提出をしていただきたいというふうに思います。  そこで、大臣もお見えになりましたが、最近高圧酸素治療タンクというものが、ガン治療が進んできて非常に日の目を見てきたという新しい治療の領域です。ある人をしては、ガン治療の新兵器とまで言われておるところの治療の方法でございます。ところが、放射線治療については、医療法施行規則で比較的こまごまとした規制が行なわれておるのです。ところが、酸素タンクの場合は、歴史が浅いといっても、かれこれ使用され始めて十年になるわけです。にもかかわらず、なぜこの点については取り扱い規程あるいは安全基準というものがつくられておらないのか。何かいまの政府の施策を見ておりますと、事故が起こって初めていろいろと対策を立てよう、事故を追っかけて施策が確立される、こういう傾向があると思うのです。そういうことでは、労働大臣は人命尊重、人命尊重とおっしゃいますけれども、私どもは、どうも人命というものは軽視されておるのではないか。犠牲が起こって初めて施策というものが確立されるということは、必ずしも人命というものが尊重されるというふうには理解しがたいと思うのです。そういう意味で、なぜそのようなことになっておるのか、せっかく大臣がお見えになりましたから、ひとつ大臣から御見解をお聞かせいただきたい。
  140. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 高圧酸素治療装置の件につきましては、先ほどから政府委員がお答えをいたしていたようでありますが、御承知のように、今日病院等で使われております装置も、各大学で研究試作というような形でメーカーに依頼をしてつくらせたというもののほうが、今日の段階ではまだ数が多いくらいでございまして、商品としてこれならだいじょうぶだというて売り出すために製造する場合には認可を受けなければなりませんが、そうでないものは、治療研究用ということでメーカーに命じて、ここをああせい、こうせいというてつくらしているわけです。東大病院のものもまたそれでありますが、厚生省の認可をいたしたものは二つのメーカーで、その数も少ない。外国から輸入しているものも若干ある。それらの数字は申し上げたと思いますが……。  そこで、装置といたしましては、安全性が十分に保たれるというので、メーカーが売り出す場合には、その装置の使用注意事項というものも厚生省が指示をしてやらしているわけでありますが、大学その他の病院で自発的に研究開発用としているものについてはまだなにしていない。その点はおしかりの点だろうと思います。しかも、高圧といいましても一気圧から三気圧程度のものでありますから、普通の高圧容器、これは労働省のほうで指定をしておられる基準に合えばそれでよろしい。あとは爆発、いわゆる発火をどうして注意をするかというので、この点につきましては、メーカーで出しているものにつきましてはちゃんと注意事項もつけておりますが、しかし、いまおっしゃいますように、まだ治療の面でいろいろと開発の途上にありますので、厚生省も前から、この高圧酸素利用の治療の方法、それから発火等による災害を防ぐということにつきましても、それらの研究をしている学者のグループにいろいろと調査研究をしてもらって、近くその報告ももらうということになっているわけでございます。  東大のごとく、自分で開発をし、自分でやっているというところにつきましては、みずから、そういった事柄について十分知識を持ち、また検討をされて、そしてやっておられることでありますので、今日までそこにおまかせしておったということでございます。しかしながら、だんだんと今後は数が多くなってまいりますれば、あるいは研究開発用といっても、こういう点は注意する必要があるということは、これはよく知らせなければならぬと思います。東大の事件も、どういうことが原因であったかということについて、これは司法的な見地を中心に原因調査もやっておりますし、東大の関係の諸先生も検討しておられるわけであります。それらも踏まえまして、そして今後こういった操作上のミスのないようにいたしたい。東大のごときは、とにかく先生自身が、自分たちが入っておられるわけであり、そしてこの酸素タンクの中では非常に発火しやすいということは十分御承知であり、十分あれであったと思うのでありますが、しかし、どうして起こったのか、そこに何らかの手落ちがなかったのかという点も考えなければなりませんので、そういった事柄を積み重ねまして、今後あやまちなきを期してまいりたい、かように思っております。
  141. 河野正

    河野(正)委員 高圧酸素が、いろいろ火災を起こしたり、あるいは爆発を起こしたり、ガス中毒を起こしたり、そういう大災害の危険があることは、これはもう明らかに予測することができるわけです。しかも四十二年の十月九日には岐阜県で事故が起こっているわけですね。そういうような過去の事例もあるわけです。それから、いまメーカーについていろいろ御報告がございましたが、放射線のごときは、それはいろいろメーカーについての種々の指導もありますが、さらに医療法施行規則では長々とその取り扱い等についての規制があるわけです。先ほど申し上げますように、酸素タンクの場合は、火災を起こしたり、あるいはまた爆発を起こしたり、あるいはまたガス中毒を起こしたりする危険性があると予測される。しかも四十二年の十月九日には岐阜県で不幸な事故が発生しておる。ですから、当然、管理運営上の手落ちという問題がございましょう。もちろんもう一つは、やはり医療法その他で基準をつくったり、あるいは取り扱い上の規程をつくったり、こういう必要も起こってくるのは当然だと思うのです。  ですから、もう時間がございませんから、端的にひとつお答えをいただきたい。こういう不幸な事故があって、私ども非常に遺族に対して気の毒に思いますが、今後こういう犠牲者を無にすることなく、新しくそういう犠牲者が出ないように、すみやかに安全基準なりあるいは取り扱い規程というものが考えられなければならないと思うのですが、この点はひとつ端的にお答え願いたい。
  142. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、いま研究班をつくって検討をしてもらっておりますから、その結果を踏まえまして、要すればそういう規則をつくりたいと思います。  ただ、私が申し上げたいのは、放射線のようなものとは違って、普通のそういった酸素治療をやろうという、そういったお医者さんなんかにおいては、どの程度で発火するか、どういう発火源がもとかということは、もう百も千も承知してもらっているわけでございます。しかし、そういった中にも、さらにこまかい点に注意をする必要があるのではなかろうかと思いますから、いま調査をしてもらっているわけでありますが、あまり知り過ぎて少し手抜かった点があったのではないか、今度の事故はかように思っているわけでありますが、結果を見ないとわかりませんので、その結果と調査班の方々の意見を近く出してもらうわけでありますので、それに基づいてやりたいと思っております。
  143. 河野正

    河野(正)委員 いま放射線と違うようなお答えがあったが、これは本質的に非常に誤った概念であって、一つも違わぬです。放射線だって、いろいろ放射線障害が起こってきているでしょう。放射線は、一面においては非常に高い治療効果をあげるけれども、一面においてはそれらに対する障害が起こってくるわけです。ですからこまごまと医療法で規制というものが行なわれておるわけです。したがって、放射線と違ってというような概念では困るので、やはり同様な立場からこの問題についての、安全についての配慮が行なわれなければならぬと思うのです。  たとえば、もう時間もございませんから多く申し上げられぬことが残念ですけれども、臓器移植においてもそうですよ。心臓移植においても私はそうだと思うのです。まだ死の判定基準ができてないわけでしょう。にもかかわらず、そういう操作というものは前向いておる。ですから、臓器移植がいい悪いは別として、やはり人命というものはとうといわけですから、その前段の死の判定基準というものがまず考えられなければならぬ。そして臓器移植というものに移されていかなければならぬ。ところが、その死の判定基準というものはまだつくらぬで、臓器移植が先に行なわれている。人命がとうといことは私ども十分承知しておるわけですけれども、それならば臓器を提供する人の人命は一体どうなるか、こういう疑問が当然出てくると思うのです。厚生省の施策というものは、事故が起こってそのあとからあとから追っかけていく、こういう後手というものが今日あらわれておると思うのです。こういう臓器移植の問題等は一体どうお考えですか、大臣
  144. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私は、これも医学界の権威の方々とも十分相談いたしたいと思いますが、このごろの医学の進歩は、御承知のように臓器移植も全くその一例であります。高圧酸素の治療もその一例であります。これらはとにかく医学界の方々が開発していかれる段階でございます。その開発の段階で行政的にそれをチェックするようなやり方がなかなかむずかしい。開発の段階で、だれが考えてもそんな無理なことをやってということであれば、これは医者として治療を誤ったとかなんとかいうような問題になりましょうけれども、その治療はあぶないぞ、それはちょっと待て、厚生省で研究してみてと言ったところで、私どもまだ研究しておりません。臓器移植のごとき、あるいはその治療の面は、やはり最善の注意を払いながら、そうして新しい治療方法の開発ということをやってもらって、それが定着をしてくる、だれでもやれるというような状態になった場合に、それらの人たちの意見を聞いて、やる場合にはこれが大事だ、ここを注意せよ、ああだこうだというものができてまいりませんと、何か新しいことを始めたらしい、それはあぶないというわけにはちょっと――技術あるいは医学の進歩というものを押えていくのではないか、私はかように思うわけであります。  臓器移植、あるいはそのほかの問題も一つだ、かように思うわけであります。このごろは、人工じん臓、あるいは人工心臓だ、あるいは人の心臓を移しかえるという問題もあるわけであります。これは、死の認定というものがはっきりされなければ、生きた人の心臓を移すことにもなりますから、そこでこれを法律化せよという問題がありますが、死の認定をどう見るかという学問上のあれが決定されなければ、これを法律化をし、安易にやれるというわけにはなかなかまいらない。そこで、死の認定をどうするか、いま世界的な学界の中の一つの大きな争いの問題になっておるわけです。それを踏んまえまして、厚生省は死の認定はこうだということを、いま直ちにするわけにはいかないということであります。
  145. 河野正

    河野(正)委員 非常に重大なことだと思うのです。いまの発言は非常に重大だと私は思うのです。なぜならば、私どもも医学技術進歩を阻害しようという気持ちはさらさらございません。ございませんけれども、医学技術進歩といえども、やはり人命を尊重するたてまえでの医学の進歩であり、開発でなければならないと思うのです。ですから、いまの臓器移植にしたって、まず死の判定ができようができまいが、医学の発展のためにはやってよろしいという議論では困るのです。やはり死の判定が、基準というものがどうだという上に立って臓器移植というものが行なわれることが人道上も望ましいことはあたりまえのことであって、これは人道上非常に重大な問題だと思うのです。労働大臣は、人命というものを尊重しなければならぬ、人の命でも尊重しなければならぬ、こうおっしゃっておるわけです。ですから、いまの厚生大臣のおっしゃっておることと、労働大臣のおっしゃっておることは、本質的に相矛盾しておると私は思うのです。そういうことでは困るので、やはり人命というものを尊重するなら、すべての制度というものは人命を尊重するたてまえの上で制度というものが確立されなければならぬ。そういうものを確立しないで、医学の進歩発展だから、それについては厚生省は規制するわけにいかぬというようなことであったら、全く人命軽視じゃないですか。そういう政府内の不統一では困りますよ、事人命でございますから。いまの厚生大臣の発言はきわめて重大だと私は思うのです。
  146. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私は、人命の尊重の面においては、決して食い違っていないと思います。人命を尊重しなければならぬからこそ、医学の新しい開発もやっていかなければならない。そこで、いま心臓移植の問題でありますが、一体死の判定をどうするか、これは医学界における非常に争いの大きな問題であります。それをいま厚生省が一時的に判定して、脳波がとまっただけではだめなんだ、心臓もとまってしまわなければだめなんだということをやれば、それで、そういうことがいいかどうか、これはやはり学界の検討にまかせてそういう判定をすれば、この間の北大のあの先生は、生きておる人間の心臓を取ったということになる。これは軽々にできません。したがって、脳波がとまり、そうしてこれが死亡だという認定ができるのではないかという学説が半分以上あるわけですね。その半分以上ある以上は、やはりこの学説も尊重してまいらなければならぬ。しかし、本人の承諾もなしに、あるいは親戚の承諾もなしにということでは相ならぬということでありますけれども、そこでいま直ちに厚生省は、脳波がとまっただけではだめだ、心臓の鼓動がとまらなければだめだということは、軽々に言うわけにはまいらない。
  147. 河野正

    河野(正)委員 それならばお伺いいたしますが、その結論が出るまでは、いまのような医学の開発のためには何をやってもよろしい、こういう議論ですか。
  148. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 何をやってもよろしいかどうかということは、これはまず第一に刑法というものがあります。何をやってもいいというわけじゃない、そんなことは。どこまで乱用されるかということは、やはり医学界、学術界で、ある程度、相当の程度の妥当性といいますか、そういうものがなければ、これは刑法で直ちに問題になる、私はそう思います。
  149. 河野正

    河野(正)委員 その妥当性についていろいろ議論があるわけでしょう。ですから、妥当性というものがほんとうに固定をして初めてそういう新しい開発についてやることが望ましいのであって、何でもやってよろしいということは、医学の開発の前提があってそういうことを言っておるわけでしょう。何でも切り刻んでやってよろしいと言っておるわけではない。医学の開発のためには何でもやってよろしいとか、刑法に触れるという問題じゃないです。人命が尊重されなければならぬなら、やはり臓器を与える人の人命も尊重されなければならないでしょう。そういうことじゃありませんか。臓器を提供する人の人命はどうなっても新しい命をささえるためにやるということについては、それだけが人命尊重でしょうか。
  150. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 河野さん、誤解をされているようですけれども、臓器を提供する者はどうなってもいい、人間をモルモットにしていいというわけじゃございません。それは医学的な常識で、過半の人からいえば、もうこの人は死んだと見ていいのだという一つの判定があって、それによってやっておられるからあの問題も私は刑法の問題にはならぬのだ、かように思います。したがって、そういう医学界の許される常識というもとにおいてやらなければ、そうでなければ、一方の人命を尊重するため他の人命を傷つけていいという理由は毛頭ありません。どこまでも尊重してまいらなければならない。
  151. 河野正

    河野(正)委員 そこで、脳死でいいのか、心臓死でいいのか、いろいろ医学界で議論があるでしょう。そういう議論があるのに一方的にそういうことが許されますか、こう言っているわけです。大臣がおっしゃっておるのも、私の意見も、意見においては一致しておると思うのです。ところが結論においてちょっと違うのですよ。いま結局、脳死が死の判定の基準だという議論があることは、そのとおりです。しかしそれの反対の意見もあるわけです。そういう議論があるのに、一方でどんどん臓器移植をやっていいのかということを言っているわけです。ですから、大臣もおっしゃっておるように、人命が尊重されるということなら、それならば、死の判定というものがはっきりしてそういう学問の進歩に寄与することが望ましいということになるだろうと私は思うのです。ですから、死の判定基準というものは、そこで学説が完全に一致すればいいですよ。どっちが多いか少ないかはまだ学界で議論をやっているわけでしょう。どっちが多いですか。どっちが少ないんですか。そういうことじゃないと思うのです。やはり学界の死の判定の基準はこうあるべきだという断定が最終的に下されて、それに立って医学の開発というものが処なわれなければならぬと思うのです。どうも大臣の話では、私が指摘するように、死の判定についてはもうすでに学界において一定した学説があるんだ、だからやってもよろしいのだというような印象を受けるけれども、学界でいろいろ問題があることは承知しておる。だから、それをまず取りまとめて、それに立って臓器移植をどうするかという議論に入っていかないと、議論の最中にそういうことをどんどんやることがいいか悪いかということについては、やはり人命尊重という立場から問題があろうということで私は新しい問題を提起しておるわけです。その点はおわかりだろうと思う。
  152. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私も河野さんと同じ考えで申しておるのであります。ただ、違うかどうかという点でありますけれども、まだ死の判定というものは学界で統一見解が出ていない。日本だけではない。世界各国で出ていない。それにもかかわらず、移植というものがときどき行なわれる。そこで、その判定が下されるまでは臓器移植はやめる、こういうようにするかしないかという問題だと私は思う。それはいまにわかに判定を下すわけにはまいらぬ、こう思いますということです。
  153. 河野正

    河野(正)委員 その点については大臣と私は見解を異にしますから、いずれあらためて議論したいと思います。  そこで、時間がございませんから最終的に申し上げますが、とうとい四名の命を失われた。そこで、これは遺族の方に対して最大め補償をするということがいろいろ伝えられております。ただ心配いたしますのは、台湾から留学された林医師については身分がさだかでないという問題がございます。その際丁重にいろいろ補償問題が検討されると思うけれども、新聞紙上では幽霊人口だというような議論も出ておるようでございます。なくなられた方に対しても私ども最大の補償をしてもらいたいという気持ちがございますので、この点について文部省から見解を承って、まだいろいろございますけれども、時間がございませんので終わりたいと思います。
  154. 村山松雄

    村山(松)政府委員 東京大学の高圧酸素治療装置の爆発によりまして死亡された中に、中華民国人の林昭義医師がおるわけでございますが、この方は、現在の身分は大学院の学生ということになっております。ただ若干デリケートなのは、この三月で一応の修業年限が経過しておりますが、単位等の関係で留年願いを出しておったということになっております。その処理を含め、林医師に対する補償の問題、それから職員でありました明石助手並びに患者等々、全部含めまして、この補償につきましては、東京大学、文部省におきまして、関係各省とも連絡をとりまして、できるだけのことをやるように目下検討中でございます。      ――――◇―――――
  155. 森田重次郎

    森田委員長 内閣提出職業訓練法案を議題とし、審査を進めます。     ―――――――――――――
  156. 森田重次郎

    森田委員長 提案理由の説明を聴取いたします。労働大臣原健三郎君。
  157. 原健三郎

    原国務大臣 ただいま議題となりました職業訓練法案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  現行の職業訓練法の制定を見ました昭和三十年代の初頭以来、わが国の経済は技術革新を基軸としてめざましい発展を遂げ、この間に重化学工業を中心とする産業構造の高度化が急速に進展してまいりました。  こうした経済の成長発展と表裏して、職業訓練を取り巻く労働経済の変化は著しく、特に労働力の需給は近年とみに逼迫の度を加え、中でも技能労働力の不足は深刻で、昨年六月の労働省調査では百八十四万人の多きに達しています。また、技術革新の進展は、生産設備の機械化、自動化を促し、その結果、生産現場の技能労働も質的に多様な変化を遂げ、このため、技術革新に対応できる新しいタイプの技能労働者を待望する声が強まっております。  労働省におきましては、このような職業訓練をめぐる事態の変化に対応するため、数年来職業訓練制度の改善整備について検討を進め、昨年七月の中央職業訓練審議会の答申の趣旨を尊重して現行職業訓練法の全部を改正する法律案の要綱の案を取りまとめ、さらに同審議会の意見を聞きました上で成案を固め、職業訓練法案を作成し、ここに提案いたした次第であります。  次に、その内容の概略を御説明申し上げます。  第一に、この法律の目的は、雇用対策法と相まって、技能労働者の職業に必要な能力を開発向上させるために職業訓練及び技能検定を行なうことにより、職業人として有為な労働者を養成し、もって、職業の安定と労働者の地位の向上をはかるとともに、経済及び社会の発展に寄与することにあるものであることを明らかにいたしました。  第二に、職業訓練は、労働者の職業生活の全期間を通じて段階的かつ体系的に行なわれるものでなければならないこと、その他職業訓練及び技能検定の原則に関する規定を設け、基本的な理念を明らかにするとともに、職業訓練の振興に関する関係者の責務についても規定いたしました。  第三に、職業訓練及び技能検定の重点的かつ計画的な推進をはかるため、国は職業訓練基本計画を、都道府県はこれに基づいて都道府県職業訓練計画を策定することとし、あわせて計画の内容等に関する規定を整備いたしました。  第四に、職業訓練の体系を段階的に整備するため、職業訓練の種類を、養成訓練、向上訓練、能力再開発訓練及び再訓練並びに指導員訓練とし、これにより、国、都道府県等の行なう職業訓練と事業主等の行なう職業訓練の両者を通ずる一貫した体系建てと職業訓練に関する基準の統一をはかることといたしました。  また、養成訓練は専修訓練課程と高等訓練課程に区分して行なうこととし、高等訓練課程の修了者が修了時の技能照査に合格した場合には、技能士補を称することができることといたしました。  第五に、公共職業訓練施設の名称を職業訓練校と改めるとともに、市町村も公共職業訓練施設を設置することができることとする等、職業訓練の施設に関する規定を整備いたしました。あわせて、公共職業訓練施設の業務内容を拡充して、関係地域における職業訓練の振興に資するように運営されなければならないことといたしました。  第六に、事業主等の行なう職業訓練に関し、従来養成訓練のみに限られておりました都道府県知事の認定の制度をすべての職業訓練に拡大するとともに、認定を受けた職業訓練に対しましては、都道府県等は積極的に援助を行なってその振興につとめることといたしております。  第七に、事業主特に中小企業の事業主が共同して職業訓練を行なう場合等に、責任体制を明確にし、永続性を確保するため、職業訓練法人を設立して法人格を取得できることとし、あわせて職業訓練法人連合会及び職業訓練法人中央会の制度を設け、事業主等の行なう職業訓練の自主的かつ積極的な発展をはかる体制を確立することといたしました。  第八に、技能検定の等級区分を、技能労働者の職務の主要な段階に応じて定めることができるようにする等、技能検定に関する規定を整備するとともに、技能検定の試験に関する業務を行なわせるため、中央技能検定協会及び都道府県技能検定協会を設立することとし、技能検定に関する民間の積極的な協力を確保し、技能検定の拡大実施のための体制の整備を行なうことといたしました。  以上、この法律案の提案理由及びその概要につきまして御説明申し上げました。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。      ――――◇―――――
  158. 森田重次郎

    森田委員長 労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  理化学研究所及び首都高速道路公団における労働問題について調査のため、本日、理化学研究理事長赤堀四郎君、首都高速道路公団理事長林修三君及び同公団理事江田正光君に参考人として御出席いただき、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  159. 森田重次郎

    森田委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     ―――――――――――――
  160. 森田重次郎

    森田委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。加藤万吉君。
  161. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 時間がありませんから単刀直入に質問をいたしますので、お答えも明瞭に簡単に御答弁いただきたいと思います。  最初に首都高速道路公団の林理事長にお伺いをいたします。いま公団の内部で行なわれている労使間の紛争は、給与の体系の変更をめぐって紛争が行なわれている、このように聞いておりますが、そのように理解してよろしゅうございますか。
  162. 林修三

    ○林参考人 ただいま加藤委員から仰せられましたように、給与の体系について、公団といたしまして、昨年来組合のほうにこの交渉について申し入れをしております。昨年の暮れ以来、あるいは本年になりましてから、精力的に組合との団交をやるべく努力をいたしておるわけでありますが、なお妥結に至っておりません。しかし、私のほうといたしましても、どうしてもこの問題については早急に解決しなければならない事情にございますので、目下最後の努力をいたしておる状況でございます。
  163. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 給与体系といいますと、労働者、働いている者にとっては、労働力の価値を評価をされる体系ですから、それだけに非常に慎重な審議が必要だと思います。公団におけるこの給与体系の変更について、労使間では実質的にどのような団体交渉が行なわれましたか。
  164. 江田正光

    江田参考人 お答え申し上げます。  昨年の七月に公団から給与体系の改定の提案を組合側にいたしまして、その後組合側といろいろ団交その他折衝してきたわけございますが、体系改定に関する団交の回数としては、現在まで二十数回やってきております。
  165. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 私の聞き及ぶところでは、今回の体系変更の提案が行なわれたのは四十四年の二月三日と聞いておりますが、間違いありませんか。
  166. 江田正光

    江田参考人 現在の体系変更の提案は昨年の十二月の末でございます。組合側に提案いたしました。
  167. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 公団側と組合側との間で幾つかの覚え書き、協定を本問題をめぐって締結されておりますね。たとえば昭和四十一年二月二十八日における確認、覚え書き、さらに昭和四十三年十二月二十一日における覚え書き、これを御存じですか。
  168. 江田正光

    江田参考人 そのとおりでございます。
  169. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 両方の覚え書きを通してうかがわれることは、給与改定については「長期、かつ慎重な審議を要するものであるから」、長期慎重に協議をする。さらに十二月二十一日の協定では、「給与体系改訂案を提案し、組合はこの提案を受領して昭和四十四年一月初めより審議に入るもの」、このように書かれておりますが、あなたがいま言われたように、十二月に提案をして今日交渉中ではありますけれども、後ほど質問いたしますように、四月の八日をもって時間切れをするというような発言が交渉の段階で行なわれているように聞き及んでいるわけです。そうしますと、この協定にある「長期かつ慎重な」ということばと、さらに「四十四年一月初めより審議に入る」というこの二つの事実の中で、四月の八日をもってタイムリミットとするというあなたたちの発言ないし団体交渉のあり方は、この協定に基づいて正しいと思われますか。
  170. 林修三

    ○林参考人 ただいま総務担当の理事からお話しいたしましたように、昨年の七月以来、公団側の提案はいたしておるわけであります。いま加藤委員の仰せられたような協定はいたしておりまして、それに基づいて交渉をいたしておるわけであります。この協定に基づいての具体的な交渉は本年の一月からでございますが、その前にもいろいろの実際上の交渉をやっておるわけであります。その昨年の十二月の覚え書きに基づきますのは、ことしの一月からであります。これから相当実は精力的にやっております。  それから、実はこれは他の建設関係の公団との振り合いの問題も私どもあるわけでございまして、何とか年度内に妥結をいたしたいということで鋭意努力をいたしまして、そういうことでやってまいりましたが、いろいろの予算上の措置とかなんとかの問題がございますので、一応の期限を切ってやりたい。いま四月の八日と仰せられましたが、十日ということでやっております。そういうことで、何とかその間に妥結いたしたい、かように努力いたしております。
  171. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 きょうは労働省の労政局長も見えておりますが、民間で一般的に給与の体系の変更――特に今度の場合は、通し号俸から職階・職務給に移行するという、賃金体系としてはきわめて抜本的に変えるというような内容を持っているわけですね。その内容が実質的に審議されている時間、いわゆる団体交渉の日数といいましょうか、時間といいましょうか、これが、民間では普通少なくとも二年はかかりますよ、給与体系を変更するのに。いま御説明がありましたように、十二月に提案されて四月の十日にタイムリミットを設けるというのは、あまりにも拙速ではありませんか。この覚え書きには、先ほども申し上げましたように、「長期、かつ慎重な審議」――「長期」ということは、これはなかなか時間的にはむずかしいでしょうけれども、一般的には長期といえば、半年や一年をさしていうのが本来の趣旨ではありませんか。この四月の十日にタイムリミットをおかれたという、その意思といいましょうか、意味といいましょうか、態度をお聞きしたいというふうに思います。
  172. 林修三

    ○林参考人 先ほどもお答えいたしましたとおりに、実は私どもといたしましては、昨年の当初以来、四十三年度において改定をいたしたいということを申し入れたわけでございます。それが組合との間の事実上の折衝で、覚え書きができましたのは実は昨年の十二月になっておりますが、公団側といたしまして、四十三年度の初めにさかのぼってやりたいということの意思は、相当前から実は伝えてあるわけであります。  それで、体系改定でございますが、もちろんこれは基本的には、公団といたしましては、職員全体に実は有利になる改定だと思って、相当自信を持ってやっているわけであります。いままでのいきさつもございますし、これの予算等の関係もございまして、ぜひともこの四十三年度に何とか片づけたい、こういう希望で実はやっておるわけでございまして、その後予算措置との関係もございまして、実はいまのようなことをやっているわけでございます。
  173. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 四十三年度の賃金は二月三日に妥結しているのでしょう。二月三日に四十三年度賃金は妥結をしているわけですね。問題は、四十三年度の賃金の妥結に伴って、給与体系の変更を四十三年度にさかのぼってやるというところに問題があるわけでしょう。私は、四十三年度に賃金問題が妥結をしておれば、あと体系変更についてそう拙速にされる必要はないと思うのです。たとえば債権債務の確定等々がありましょう、公団ですから。そのことは私承知です。しかし、事賃金問題に関する限りは、公団あるいはそれぞれの事業団体の自主的な条件というものは、全体の総予算なり、あるいは債権債務の全体の大まかな確定がされておれば、原局との関係は問題はないんじゃないですか。なぜそれほど急がれるのですか。
  174. 林修三

    ○林参考人 これは先ほども申し上げましたとおりに、やはり年度を越しての問題につきましては、これは限度がある。実はわれわれ、やはり公団としていろいろの会計法規に縛られておりまして、限度がございます。その点で、先ほどから申し上げたようなことでやっているわけでありますが、何とかこの期間にやりたいということで、実はいま非常に誠意を持ってやっておるわけでございまして、何とかこの期間内に妥結に持っていきたい、かように考えているわけでございます。
  175. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 いま団体交渉の進行中ですから、私は団体交渉を多少見守りたいという気があるわけです。しかしそれにしても、四月十日をタイムリミットにおかれて団体交渉を行なわれるということは、私は本来の団体交渉のあり方じゃないと思いますよ。かりにそこに紛争があり、あるいはストライキの条件があっても、理事者側としては、その紛争をできる限り解決していく、そのためには、相当粘り強い交渉と双方の納得を得る、合意を得る協議が続けられてしかるべきじゃないですか。一定の期間をおいて、その間にすべてを解決する。解決できればいいですけれども、いまの条件では、私どもの聞き及ぶところでは、どうも解決できそうな条件ではない。とすれば、事務折衝の段階で、四月十日までに解決しなければ解決のための条件はすべて白紙にします、こういうメモが出ておるそうですが、これはおかしいじゃないですか。私は本来、もっと団体交渉そのものを煮詰めていくべきだというふうに思います。タイムリミットをおくべきじゃないというふうに思いますが、理事長の御見解をいただきたいと思います。
  176. 林修三

    ○林参考人 一般的に団体交渉については、もちろん私どもも粘り強くやる考えでございます。何とかして説得をして労働者側の納得を得るという方針でまいるつもりであります。この問題につきましてももちろんそのつもりでおるわけでありますが、これは先ほど来申し上げますように、公団内部の予算措置、計上措置で非常な制約もございますので、公団としても実は苦しい立場もございまして、この期間内に解決いたしたい、かように思って最後のこの三日間において努力をいたしたい、かように考えておるわけであります。
  177. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 簡単でいいですが、苦しいという立場をよく言われるのですけれども、どこが苦しいのですか。事労使関係に関する賃金問題について、いま林理事長が苦しいと言われましたけれども、苦しい立場というのはどこにあるのですか。
  178. 林修三

    ○林参考人 先ほども申し上げましたとおりに、これはやはり四十三年度にさかのぼってやりたいと思っております。四十三年度にさかのぼることが、全体の体系上も、今後においても、私は職員のためにも非常に有利になると考えまして、そういう意味でやっておるわけであります。そういうことから申しますと、やはり年度というものの縛りがございますので、その点はあまり逸脱することができない、かような関係でございます。
  179. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 年度をあまり越えることはできないということは、必ずしも四月十日をタイムリミットにおくということではございませんね。どうですか。
  180. 林修三

    ○林参考人 実は公団については、普通の一般会計と違いまして、国と違いまして――国もいまはございませんが、出納整理期間というものがないわけでございます。その点において、やはり私のほうとしては、そこに一定の限度があるわけでございます。その点ぜひともそういうことでやっていきたい、かように考えております。
  181. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 一定の限度があることは私は承知していますよ。それは四十五年も四十六年もやれなんということは私は言いませんよ。事労使関係の問題、賃金問題ですよ。双方の合意がなくしてやるということは、一方的にやるということ以外にないじゃないですか。どうです。四月十日をタイムリミットにおいて、しかも提案されているこの中にも相当問題がありますけれども、私はきょうは時間がありませんから追及しませんが、この本給制度改定の妥結条件なるものをひっくるめて白紙にされるという態度をこの際撤回されて、労使間の団体交渉をもっと精力的に理事長は行なうべきではないかというふうに私は思いますが、いかがでしょうか。
  182. 林修三

    ○林参考人 私どもといたしましては、できるだけこの両三日間にこの団体交渉を詰めまして、その結果に基づいてそのときに判断していきたい、かように考えております。
  183. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 その結果によって判断をするということは、いままで団体交渉の間でタイムリミットを明示されたようなメモ、あるいは妥結条件に対して白紙に撤回するというような事務折衝段階のメモ、そういうものはとりあえず保留をする、こういうことで理解してよろしゅうございますか。
  184. 林修三

    ○林参考人 その点は私ども非常に困難な事情がございまして、ただいまのところでは、どうしても私は十日に持っていきたいということでございまして、その点をひとつ御了承願っておきたいと思います。
  185. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 それでは話がもとに戻るんじゃないですか。私は一定の時限があることを認めているのです。しかも労使間の問題、賃金問題ですから、体系の変更ということは、当初も申し上げましたように、民間では一、二年かかるような問題ですから、そんなに長くはかけられないにしても、自主的な団体交渉すら持たれていない。この給与体系の変更についてタイムリミットをはずされて、団体交渉を三日間精力的にやってみる。私はこのことが当面の紛争の解決の――首都高速道路の通行について、いま国民は非常に困っておるのですよ。そういう観点から、あなたは紛争を解決される責任があるのですよ。そういう意味で、この三日間の精力的な団交をやられるについても、そのタイムリミットの問題あるいは白紙の問題はとりあえずこちらにおいて、この三日間団体交渉を精力的に行なわれるという意思表示があってしかるべきだと私は思いますが、いかがでしょうか。
  186. 林修三

    ○林参考人 はなはだ申しわけないことでございますけれども、先ほど来申し上げておるところで私どもの真意の存するところをお察しいただいて、この三日間団体交渉をやらしていただきたい、かように考えております。
  187. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 林さん、私は、これから三日間行なわれる団体交渉は、きわめて重要だと思っているのです。この時期をはずしては、この紛争の解決のめどを求めることは、事実上は困難ではないかと私は思っているのです。聞くところによりますと、江田さんがその衝に当たっておられるそうでありますが、この際、理事長みずからが団体交渉に出席をされて、この三日間に本問題の紛争の解決のめどを見つける努力をされることが必要だと思いますが、いかがでしょうか。
  188. 林修三

    ○林参考人 私のほうでは担当の理事に一応全部委任しておるわけでございますが、この問題が重要でございますので、私も精力的にこの問題について努力したい、かように考えております。
  189. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 念を押しますが、団体交渉に理事長も参加をされて本問題の解決に最後の努力をしてみる、こういうことに理解してよろしゅうございますね。
  190. 林修三

    ○林参考人 重要点の解決に参加して私は努力したい、かように思います。
  191. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 そういう事実がなければ、私はこの問題は再質問しなきゃなりませんけれども、そういう意味では、理事長のこの三日間における努力を期待したいというふうに思います。  理研の問題について実は質問する予定でありましたが、時間がありませんので、理研の方と公団の理事長の林さんを含めて、二、三点、同趣旨の問題ですからお聞きをしておきたいと思います。  公社、公団の団体交渉は、前回も人事院勧告の問題と並行して相当問題が提起されたことなんです。一体自主的な交渉能力はどこに存在するだろうかという、この課題です。御承知のように、労働組合は一般的な労働関係法が全部適用されます。民間においては、中央労働委員会なり地方労働委員会でもって調停あっせんを行なうわけです。公労協においては、公共企業体等労働関係法によって問題が処理されています。国家公務員については、人事院によってこの問題の調整が行なわれる。ところが、公社、公団、特に政府関係機関の公団においては、この道がいずれも閉ざされている。たとえば法律上は確かに労働委員会に提訴することはできますけれども、実質上原局の認可ないし内示に基づいてすべてが拘束されているのが実情です。とすると、事業法と労働組合法との関係、あるいは自主的な交渉能力をその際皆さん方はどこに求められて、これからの労使間の紛争がかりにあった場合どう処置をされるか、この点をお二人の方にお聞きしておきたいと思います。
  192. 林修三

    ○林参考人 公団につきましては、一般の民間労組と同じ労働関係法が適用になっていることは、いま御指摘のとおりであります。ただし、公団といたしましては、同時に国家予算あるいは財政投資計画、こういうものによる資金なり予算のワクがございます。そういうワクを、公団の理事者としては、当然に踏まえて交渉に当たらなければならない。公団の理事者としては、そういう国家予算、財投計画のワクの範囲内においてできるだけのことを努力し、労使関係の、ことに労働者側の納得を得るように交渉に当たる、一般的方針を申せばそういうことだと思います。
  193. 赤堀四郎

    ○赤堀参考人 理化学研究所も特殊法人でございまして、自主性はある程度は与えられておるのでありますが、公共的な研究機関として大部分の予算を国の資金に仰いでいる関係上、ある程度の制限を受けておりますので、われわれは許されている範囲内で事務局とも相談してやっていきたいと思います。
  194. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 どうもはっきりわからなかったのですが、事業法があって政府の財政によってまかなえることは理解している。しかし、労使関係については労働法が適用されて、たとえば調停なりあっせんなり受けても、こっちで全部縛ってしまうと、この調整機能なりあっせん機能は事実上ゼロになってしまうわけです。国家公務員については人事院というのがある。公共企業体には公共企業体等労働委員会がある。民間には中央労働委員会、地方労働委員会がある。一体この政府関係機関の場合、これらを利用されるときの自主的交渉、当事者能力というものを、あなたたちはどういうふうに理解をし、そういう範疇の中でどういうふうに次に発展をさせられますか。そういうことを私は聞いておるのです。林さんの御答弁はいただきましたから、もう一ぺん赤堀さんからいまの点について御見解をお聞きしたいと思います。
  195. 赤堀四郎

    ○赤堀参考人 特殊法人における労使関係の問題というのは、特に理研のような研究機関でありますと、民間の企業体と同じようにはやれないところもあるのではないかと思います。私、実は申しわけないのですが、あまりよくわからないのですが、この点は今後研究を要する問題であろうと思います。
  196. 加藤万吉

    ○加藤(万)委員 おそらく林さんも赤堀さんも、その矛盾を感じておられると思うのです。したがって、この打開をどうされるかということを、ひとつ真剣に考えてほしいと思うのです。なお、聞くところによると、一水会、二水会という、それぞれ理事者の労務関係の研究あるいは協議機関というのがあるそうですが、その場でも、一体この当事者能力をあなたたちはこれからどう備えようとされるのか、原局に対してどうものを言うようにされるのか、この辺をしっかりと研究していただきたいと思います。本問題が解決しない限り、私はもう一度本委員会でこの問題を取り扱いたいと思いますので、よろしく御検討を願って、質問を終わります。
  197. 森田重次郎

    森田委員長 参考人には御多用中御出席いただき、まことにありがとうございました。お礼申し上げます。  次回は来たる十日午前十時委員会委員会散会後理事会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後二時一分散会