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1969-06-25 第61回国会 衆議院 産業公害対策特別委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年六月二十五日(水曜日)     午前九時三十六分開議  出席委員    委員長 赤路 友藏君    理事 天野 公義君 理事 田村 良平君    理事 橋本龍太郎君 理事 藤波 孝生君    理事 古川 丈吉君 理事 河上 民雄君    理事 島本 虎三君 理事 本島百合子君       阿部 喜元君    伊藤宗一郎君       久保田円次君    塩川正十郎君       塩谷 一夫君    田澤 吉郎君       地崎宇三郎君    渡海元三郎君       葉梨 信行君    中井徳次郎君       浜田 光人君    米田 東吾君       折小野良一君    岡本 富夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      床次 徳二君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      菅野和太郎君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房審議室長   橋口  收君         総理府特別地域         連絡局長    山野 幸吉君         防衛政務次官  坂村 吉正君         防衛庁参事官  江藤 淳雄君         防衛施設庁総務         部長      鐘江 士郎君         経済企画庁国民         生活局長    八塚 陽介君         科学技術庁科学         審議官     高橋 正春君         科学技術庁研究         調整局長    石川 晃夫君         厚生政務次官  粟山  秀君         厚生省環境衛生         局公害部長   武藤琦一郎君         通商産業省企業         局立地公害部長 矢島 嗣郎君  委員外出席者         議     員 角屋堅次郎君     ――――――――――――― 六月二十五日  委員遠藤三郎君、岡崎英城君、亀岡高夫君及び  山手滿男辞任につき、その補欠として渡海元  三郎君、阿部喜元君、田澤吉郎君及び塩谷一夫  君が議長指名委員に選任された。 同日  委員阿部喜元君、塩谷一夫君及び渡海元三郎君  辞任につき、その補欠として岡崎英城君、山手  滿男君及び遠藤三郎君が議長指名委員に選  任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  公害に係る健康被害救済に関する特別措置法  案(内閣提出第六三号)  公害紛争処理法案内閣提出第六八号)  公害に係る被害救済に関する特別措置法案  (角屋堅次郎君外十二名提出衆法第一〇号)  公害紛争処理法案角屋堅次郎君外十二名提  出、衆法第二〇号)  公害に係る健康上の被害救済に関する法律案  (小平芳平君外一名提出参法第一号)(予)  公害に係る紛争等処理に関する法律案小平  芳平君外一名提出参法第五号)(予)  公害委員会及び都道府県公害審査会法案小平  芳平君外一名提出参法第六号)(予)  公共用水域水質保全に関する法律の一部を  改正する法律案内閣提出第九四号)      ――――◇―――――
  2. 赤路友藏

    赤路委員長 これより会議を開きます。  この際、おはかりいたします。  去る二十日の委員打ち合わせ会におきまして、公害に係る健康被害救済に関する特別措置法案関係法案について、経済団体連合会公害対策委員会委員長大川鉄雄君、汚水対策全国漁業者協議会事務局長浅原源八郎君、四日市市公害認定患者会代表委員山崎心月君、東京大学教授金澤良雄君、東京都立大学教授野村好弘君、日本弁護士連合会公害対策委員長関田政雄君より意見を聴取したのでありますが、その内容の詳細は記録してございますので、本日の会議録に参照として掲載することにいたしたいと存じますが、これに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 赤路友藏

    赤路委員長 御異議なしと認め、さよう取り計らうことといたします。     ―――――――――――――
  4. 赤路友藏

    赤路委員長 内閣提出公害に係る健康被害救済に関する特別措置法案及び公害紛争処理法案角屋堅次郎君外十二名提出公害に係る被害救済に関する特別措置法案、及び公害紛争処理法案予備審査のため本委員会に付託されました小平芳平君外一名提出公害に係る健康上の被害救済に関する法律案公害に係る紛争等処理に関する法律案及び、公害委員会及び都道府県公害審査会法案、並びに内閣提出公共用水域水質保全に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。島本虎三君。
  5. 島本虎三

    島本委員 いよいよ公害に関する三つの関係法律案最終段階に相なってまいりました。この際、公害に係る健康被害救済に関する特別措置法案について、次の点について私は大臣に明確なる確認をいただきたいと思うわけであります。  いわゆる埋葬料と申しますか、葬祭料と申しますか、本案にはこの規定がないのでございまするけれども、これは来年度新たに設ける必要は当然ある、こういうように思われるのであります。これに対していかがでございましょう。
  6. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 来年度におきましては、前向きをもって考えてまいりたいと思います。
  7. 島本虎三

    島本委員 いろいろ問題点もありますけれども、しかし前向きにこれを設けるということは、とりもなおさずそれを規定する、こういうようなことに相なろうかと思います。必ずその方面に向かって努力してもらいたいと思います。  次は、医療費のうち、これは健保診療方針によらない医療についても、当然研究費の名目で事実上医療費支給するたてまえを貫くべきである、こういうように思いますけれども、この点についてはいかがでしょう。
  8. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 お説のとおり、保険対象にならない医療費につきましては、研究費でまかなうようにいたしたいと思います。
  9. 島本虎三

    島本委員 医療費支給対象はいろいろいままで問題になりました。本案の第五条第一項によりますと、国民健康保険自己負担分のみを対象としていると解されるのでありますが、これはどうでございましょうか。  あわせて、社会保険各法の自己負担分並びに健保特例法による一部負担分も、すべて支給対象と考えてしかるべきだと思いますが、この点についての見解も承りたいと思います。
  10. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 御所見のとおりでございます。
  11. 島本虎三

    島本委員 次に、医療手当の点につきましてお伺いしたいと思います。  これは公害病認定患者のすべてに支給すべきでございますけれども、本法案には、病状政令で定める程度をこえる場合に限る、このようになっているのであります。この政令を撤廃すべきである、このように思いますが、これはいかがでしょう。
  12. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 お趣旨を体して十分考えたいと思いますが、ただいまのところ、政令は撤廃する考えは持っておりません。しかしながら、いまおっしゃいましたような趣旨によりまして、政令内容を考えてまいりたいと思います。
  13. 島本虎三

    島本委員 そうすると、政令内容というものはまだつまびらかでないのであります。この際、入院通院ともにその制限を撤廃しないということになりますと、これは初めからそれを意に介さないということに相なろうかと思います。これでは少しわれわれとしては、いままでの審議過程上納得しかねるのであります。この制限を付しても、どのような程度制限なのか、これを明確にしなければならない、こういうように思いますが、この点いかがでしょう。重ねてお伺いしておきたいと思います。
  14. 武藤琦一郎

    武藤(琦)政府委員 政令内容でございますが、現在検討しておりますが、大体入院患者につきましては八日程度通院患者につきましては三日程度の方を考えたい、かように考えております。
  15. 島本虎三

    島本委員 そうすると、七日以下の入院患者につきましては支給しないということになりますが、一日違いでこの認定を受ける受けないはまことに不公平だ、こういうようなそしりは免れないと思います。この点、政令等において十分対処し、現実に即するようにしなければならないはずであります。この点いかがでございます。
  16. 武藤琦一郎

    武藤(琦)政府委員 現実に即しまして十分考えたい、かように思います。
  17. 島本虎三

    島本委員 次に、通院患者に対する支給は、大気汚染によるものには行なわないことになっているのであります。これも政令の中に散見されまするけれども、財政当局ともこれは十分検討して、大気汚染によるものにも支給するのが当然と思うのであります。論議過程におきましてもこれは肯定するところとなりましたが、この件についてはいかがでしょう。
  18. 武藤琦一郎

    武藤(琦)政府委員 大気関係通院患者につきましても、病状入院患者と同程度の方につきましては、十分政令段階検討いたしたい、かように考えます。
  19. 島本虎三

    島本委員 それで当然問題になるのは金額の点であります。金額引き上げを本年度はどうしてもできないかのように承りましたが、来年度においては当然考慮する用意があってしかるべきだと思います。この点いかがです。
  20. 武藤琦一郎

    武藤(琦)政府委員 金額引き上げにつきましては、今後とも十分実情に合うように、またできるだけ改善できるように考えてまいりたいと思います。
  21. 島本虎三

    島本委員 次に、介護手当支給に移ります。介護手当の場合には、費用を支出しないで済む場合、たとえば家族などが介護する場合には、支給しないことになっているのであります。しかしこれでは貧しい者は、自分が雇えなければ永久にこの恩典に浴されないことに相なろうかと思います。医師が介護を必要と認める認定患者にはすべて支給してしかるべきだ、こう考えますが、この点、当局の御所見を承りたいと思います。
  22. 武藤琦一郎

    武藤(琦)政府委員 介護手当支給につきましては、十分患者実情あるいは家族状況等を見まして、支給につきまして、できるだけ実情を配慮して運用をはかっていきたい、かように考えます。
  23. 島本虎三

    島本委員 その運用の中に、一日三百円では派出婦さえも雇えない、こういうような状態であります。せめて最低千五百円程度は、介護料としても必要な金額であります。来年度から、その点を含めて引き上げも十分考慮されてしかるべきだと思います。この点は考慮する意思がおありでしょうか。
  24. 武藤琦一郎

    武藤(琦)政府委員 一日三百円という金額につきましては、私どもも十分であるとは考えておりませんので、来年以降、引き上げにつきましては十分善処したい、かように考えます。
  25. 島本虎三

    島本委員 所得制限について伺います。医療手当及び介護手当支給は、これは被害者及びその配偶者及び扶養義務者一定額以上の所得がある場合には、これは支給しないというたてまえになっております。また医療費支給についても、これらの者の収入によって医療費負担ができると認められる場合には、支給制限をすることになっているのであります。これは本法案救済法であっても救貧法ではないのでありますから、このような所得制限を一切撤廃するのが妥当であると思うのであります。これは大臣、この点についていかがでしょう。
  26. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 実情に合いますように、来年度は引き上げ方向で努力をいたしたいと思います。
  27. 島本虎三

    島本委員 そうすると、これはもう所得制限の点については、今後は所得制限を撤廃する方向検討し努力する、こういうようなことのように承りましたが、大臣、そのとおりですか。
  28. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 その方向で、常識に合うように考えてまいりたいと思います。
  29. 島本虎三

    島本委員 じゃ、いままで出したものは常識に合わないことになるのでありまして、この点は大臣、少し考えて御答弁願いたいと思います。  次は住居制限について伺います。水質汚濁による患者には、住居制限はしないことになっておるようであります。大気汚染によるものにのみいまだに住居制限を加えているということは、これは不当のそしりは免れないと思います。これも今後撤廃すべきじゃないか、このように考えられますが、この点いかがでしょう。
  30. 武藤琦一郎

    武藤(琦)政府委員 住居制限の問題につきましては、大気の問題と水の問題と実は異なるわけでございまして、大気関係のいわゆるぜんそく等につきましては、いろいろの原因で起こるわけでございます。したがいまして、大気関係につきましては、やはり一定地域につきましての住居制限ということはやむを得ない、いわゆる公害病として認定する場合の条件としては、医学的にもやむを得ないという専門家意見でございますので、条件そのものにつきましては、患者実態等を十分考慮してきめたいと思いますが、やはり最小限は何らかの要件が必要ではないか、かように考えます。
  31. 島本虎三

    島本委員 あわせて、政令による所得制限の場合にはどのように考えておられましょうか、いま事務当局にこの点明確にしておいてもらいたいと思います。
  32. 武藤琦一郎

    武藤(琦)政府委員 住居制限につきましては厚生大臣が定めるようになっておりますが、医学的には三年ないし五年ということの報告を受けておりますが、現在四日市等では三年を一つ条件としておりますので、前例に従いまして、三年程度が適当ではなかろうか、かように考えております。
  33. 島本虎三

  34. 武藤琦一郎

    武藤(琦)政府委員 それから所得制限につきましては、現在のところ原爆と同じ程度の、一万七千二百円の所得税を納めておられる方以上の方には制限をしたい、かように考えております。
  35. 島本虎三

    島本委員 答弁になっていないんだ。
  36. 武藤琦一郎

    武藤(琦)政府委員 先ほどお話しいたしましたのは、医療手当等所得制限でございます。医療費につきましてのいわゆる所得制限につきましては、医療費負担できない方については必ず医療費支給したい。その限度でございますが、現在、大体実態調査をいたしておりますが、ほぼ三百万程度患者がおられるようでございますので、そういう方も救うようにいたしたい、かように考えております。
  37. 島本虎三

    島本委員 制限を付しても、その程度救済したいという意向であります。しかし、それも質問を詳しくしなければ答えないという態度はあまり芳しくありませんから、この点、今後の実施上において注意しておいてもらいたいと思います。  次に、物に対する被害を伺います。  本案趣旨から見まして、物に対する被害をこれに含めることは無理である、一応こういうような答弁がございました。しかし現実には公害によるところの農水産物損害が増大している現状は認めざるを得ません。したがって、これを救済対象から除外することはどうしても納得できないところであります。政府は今後、物に対する被害によるところの生活破壊を防止する法案を準備しなければならない、当然そういうように思うわけでありますが、これについて準備する意思がございますか。
  38. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 物の被害からくる生活破壊と申しますか、これをどういうようにして救済していくかというお尋ねだと思いますが、非常にむずかしい点があると思いますが、十分検討をいたしてまいりたいと思います。紛争処理法案によってどの程度解決ができるかということも、一つ検討のめどになろうと思いますが、いずれにいたしましても、委員各位のお知恵も拝借いたしまして、検討いたしてまいりたいと思います。
  39. 島本虎三

    島本委員 要観察者に対する措置をお伺いいたします。  大気汚染並びに水質汚濁、その他公害被害による患者に対する対策の中で、当然要観察者も含まれているものと、このように解するのでありますが、対策は手落ちなく考えられておりますかどうか、この点お伺いしておきます。
  40. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 誤りなく対策を講じつつあるつもりでございますが、われわれの目の届かないところ、至らないところは十分お教えをいただきまして、大過なきを期してまいりたい、かように思っております。
  41. 島本虎三

    島本委員 公害病患者の多くは生活の道を断たれておりますし、一家の働き手を失った家庭が多いのでありますが、紛争処理機関によってたとえこれが補償が行なわれたとしても、その間の被害者生活保障、この道がない限り安心して治療に専念することはできません。現に入院しておっても、こっそり働きに出ている人もあるというような現状からしても、当然この対策は考えなければならないのであります。したがって、生活保障休業補償等は今後十分前向きにこれを取り入れるように対処しなければならないと思いますが、今後の決意を伺っておきたいと思います。
  42. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 本法案実施状況をよく見きわめまして、いまおっしゃいますような点も十分検討をいたしまして、実施の経過に照らしまして、改正すべきところは十分改正をいたしてまいりたい、かように考えます。
  43. 島本虎三

    島本委員 厚生大臣としては最後です。これは富山県の吉久ぜんそく並びに川崎、大原、それからカドミウムでは安中、こういうような方面にもいろいろと公害による被害が発生しておるのであります。したがって、そのための病気も発生しておりますが、この認定についてはどう考えましょうか、決意を伺います。
  44. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいま調査中でございますが、できるだけ早く、川崎その他におきましては認定患者として認定をすべき者があるに違いないと考えております。カドミウム汚染等につきましては、カドミウムによる疾病だということがわかれば、直ちに認定をいたしたいと思います。
  45. 島本虎三

    島本委員 では、紛争処理法案について伺いたいと思います。  紛争処理最終段階政府案のような仲裁制度となっていることは、これは重大な欠陥があります。政府案では、当事者双方仲裁に付する旨の合意が必要でありますが、この種の紛争において当事者双方合意ということは実際上困難であります。しかも一たんこれを受けると、どんなに不服があっても、これは司法裁判に訴えることができなくなってしまうのであります。これを当事者一方の申し立てでも紛争処理の行なえるよう裁定制度に切りかえるとともに、裁定を受けたあとでも、通常の司法裁判に訴えることができる道を開いておくことが、当然、憲法にのっとった方法だと思うのであります。将来、裁定制度採用その他権限強化を行ないつつ、国家行政組織法第三条機関への移行を考えるべきじゃないかと思います。この点、いかがでしょう。
  46. 床次徳二

    床次国務大臣 政府の提案いたしましたところの公害紛争処理法案におきましては、仲裁制度をとりまして、裁定制度はとり得なかったのでありまするが、その理由は、公害紛争が、民法上最もむずかしい不法行為をめぐる私人間の私的な紛争で、しかもその内容が、損害賠償請求から、行為の差しとめ請求とか、あるいは公害防止施設設置請求に至るまで、非常に多種多様にわたるものでありまして、また、一般にその原因結果の究明が困難である等の特有の問題がございます。これらの点について、なお法律的にも時間をかけて慎重に検討しなければならないので、今回は裁定制度はとり得なかったのでございます。したがって、仲裁制度をとりましたが、仲裁制度をとる以上は、当時者が裁判権を放棄して仲裁人にすべての判断をゆだねるという仲裁契約基本的性格から見まして、当事者の一方からの申請でこれを開始するということは、憲法上にも疑義があります。また、安易に民事訴訟を提起することができることとすることは、仲裁基本的性格から見ても不可能であると考えておる次第であります。したがって、将来、裁定制度採用その他権限強化を行なうかどうかということにつきましては、公害紛争の事態の推移等に応じまして、今後時間をかけまして慎重に検討してまいりたいと存じます。  なお、当面、中央委員会国家行政組織法第八条機関として設立することで十分と考えておりましたが、今後その権限強化、取り扱う案件増大等推移によりまして、必要が生じましたならば、これが国家行政組織法第三条の機関への移行につきましても十分検討していきたいと存じます。
  47. 島本虎三

    島本委員 基地公害を本法案適用外としたことに対しては、われわれは、審議過程を通じましても、とうてい納得し得ないところであったわけであります。将来、これを本法の適用を受けられるようにする用意があるかどうか、この点はなかなか重大なところであります。ことに、基地公害の除外については、相当これは議論が存しまして、今後は、本法案との関連において、いわゆる特損法周辺整備法等を含めて再検討を行ないつつ、基地公害防除に遺憾なきを期さなければならない、こういうように思うわけであります。この点等についても、当然、論議過程を通じまして、これはもう総理府においても御存じのとおりであろうと思いますが、これに対しましての、決意を込めた答弁を承りたいと思います。
  48. 床次徳二

    床次国務大臣 お尋ねの、公害紛争処理法案におきましては、防衛施設にかかわるところの障害に関する紛争処理具体的措置につきましては、別の法律によることといたしておりまするが、これは防衛施設周辺住民の利益が害されてもよい・という意味ではないのでありまして、防衛施設運用等によりまして生ずる障害につきましては、防衛施設周辺整備法特損法等によって、一般産業公害に比し、進んだ措置がすでに講じられておるからでありますが、なお不十分な点につきましては、弾力的かつ積極的な法の運用、予算の充実等をはかることとして、必要がありまするならば、関係法律の再検討を行なう等、防衛施設周辺住民に迷惑や不便をかけることのないように、私といたしましても、防衛庁に大いに協力をいたす所存でございます。
  49. 島本虎三

    島本委員 これは重ねていまの答弁を確認いたしておきたいと思いますが、本会議では総理は、現行法改正はしなくてもやれる、このような決意をも含めて答弁されておったのでありますが、実際の実施状態を見ますと、この点等においても、今後はやはり実態にかんがみて改正の線に沿うて検討しなければならないというような現状に相なったわけであります。まあそういうような意味で対処されることはけっこうであります。しかしながら、これは根本的にまだまだ、これを除外することにおいては憲法違反のおそれさえも考えられる問題もあるのでありまして、この点等については十分考えなければなりません。あわせて、これはもう手厚い保護ができるという特損法並びに周辺整備法、これによりましても、たとえば旧防空ごう、こういうようなものによって、公園全体が百をこえるような陥没ができて、それで青少年の非行や死体の遺棄場所になったり、いわば悪の発生の地になっておる。こういうような状態をそのままにしておくことはとうていできないのであります。これは北海道の千歳に限ったことではございません。全国にもまだあるのであります。この点等についても十分考えて対処する必要があろうかと思います。  それと同時に、進んでこれを行なうとするならば、関係市からの、道路用地遊休施設についての払い下げその他の要請についてもまた十分話し合いをし、この実現をはかってやる、こういうような処理が正しいのじゃないか、こういうふうに思うわけでありますが、この点等を含めて、防衛庁から御意見を賜わりたいと思います。
  50. 坂村吉正

    坂村政府委員 先ほどの防衛施設周辺障害の問題については、総務長官からお答えのとおりでございまして、相当手厚い対策をやっておるつもりでございますけれども、何といいましても、それは完全無欠にいくというようなものでもございませんので、これは十分今後も、現在の法律運用の上でひとつ留意をしまして、そうしてその効果を十分に発揮するようにひとつやってまいります。と同時に、まあ今後の問題として、その足りないところはどうしたらいいか。場合によったら、いまの法律改正までもひとつ含めまして、慎重に、真剣に、前向きで検討してまいります。  それから、後段の、公園の中に防空ごうが一ぱいあるというようなお話でございました。これは前々からこの委員会でも御議論のあったところでございます。所管は、建設省の所管のように承っておりますけれども、これはわれわれとしても、まあ施設をいろいろ持っておりますから、お手伝いできることはできるだけひとつお手伝いして、基地の周辺の皆さんにも迷惑をかけないようにしたい、こういう考え方でおりますので、これはひとつ前向きに取っ組んでまいりたい。すでにいままで一度北部方面軍で調査いたしました。これはえらい膨大なものだそうでございます。この委員会でもいろいろ議論がございましたので、いま本庁から調査にやっております。そして成規の手続に従って、全部金を持ってやれといったってなかなかそうはいかぬかもしれませんけれども、市でもいろいろ金を持ってもらったり、そういうことをできるだけひとつ考えまして、そうして御趣旨に沿うように、防衛庁でもお手伝いをして、そうして実力でひとつこいつを取り除く、こういうような方向でいま検討をしたいと思っておりますし、検討しつつあります。どうぞ御了承いただきたいと思います。
  51. 島本虎三

    島本委員 この紛争処理法案によりますと、議事及び調停、仲裁案の公開は、通常の裁判がすべて公開の原則を貫いているように、本法案でも当然公開とすべきである、こういうように思うのでありまするけれども、この点等はいかがでしょうか。ことに、公害の社会性等から見て、運用に適切な配慮をはかることは当然の義務でもあろうか、こういうように思うわけであります。あわせて、中央、地方の機構の整備と予算の拡充は、今後の公害行政において画竜点睛を欠くか、添えるかの重大なポイントになるのであります。この点についてどのようにお考えですか、お伺いいたします。
  52. 床次徳二

    床次国務大臣 政府提案の紛争処理法案の、調停及び仲裁の手続が非公開としておることに対してのお尋ねでありますが、これは調停、仲裁が強制的に紛争を解決する裁判などの制度と異なり、当事者の互譲や任意的合意に基づく制度でありますので、必ずしも公開原則を貫く必要が少ないことにもよりますが、むしろ公害紛争のように当事者の利害の対立が激しく、その事実関係も複雑な場合が多いものにつきましては、非公開とすることによりて、当事者双方のそれぞれの立場から、その意見等を自由に述べ合いまして、また調停委員会も冷静な立場で、静かな雰囲気で事情等を聞くことが可能でありまして、これによって、実情に即した妥当な解決をはかることが期待できるからであったわけであります。したがって、非公開とすることは、調停等の手続の円滑な進行を期し、妥当な解決をはかることにありますので、これが運用にあたりましては、関係者の期待にそむかぬように十分配意いたしたいと存じます。
  53. 島本虎三

    島本委員 私は、最後に水質関係保全に関する法律案について大臣に念を押しておきたいと思うのであります。最近の新聞等によりましても、アユその他にいろいろな被害が見られるように、重金属による水質汚濁、こういうような被害が深刻にあらわれつつあるのであります。これはいずれも初めはごく微量でありまするけれども、これが積み上げられて、微量から結局は重量になって被害を及ぼすことに相なるのであります。水質基準は当然再検討を要請されている段階でありまするけれども、少しこの点に対しては手ぬるいのじゃないか、こういわざるを得ないのであります。被害が起きてから初めて対処する、これでは政治ではありません。現に六月十六日に、木曽川のアユの死滅十万匹に及ぶところの被害、こういうようなことにおいてもすでにあらわれているのであります。特定有毒物質規制法の制定、また微量重金属の排出規制の強化、これはまことに重要でありますが、この点等においては即刻法を制定し、あるいは対処しなければならない、こう思いますが、少し手ぬる過ぎる。この点は、本法案と関連して、大臣決意を伺っておきたいと思います。
  54. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 お説のとおり、公害原因というものが、経済の発展に従いましていろいろと起こってまいっておりますので、したがいまして、水質の基準もおのずからまた変更しなければならぬ場合も起こってくると思います。ただいまお述べになりました微量重金属の公害の問題なども、新しく起こってきた問題でありますので、こういう問題は、水質保全法の運用によって目的を達成することができる、こう思いますので、それぞれの新しい事項に対しては、それぞれ運用をそれに適合するように今後やっていきたい、こう存じております。
  55. 床次徳二

    床次国務大臣 先ほどのお尋の後段のほうにおきまして、将来の機構の整備、充実等に対しての御意見がございましたが、政府といたしましては、現在中央公害審査委員会の庶務を処理するために、組織といたしましては、総理府組織令の改正によりまして、公害審査部、仮称でございますが、これを設けることとして、このために所要の定員と予算を確保しておるので、当面中央公害審査委員会の円滑公正な活動に支障がないと確信しておりますが、今後の事態の推移を見まして、必要に応じまして、機構、人員の一そうの整備、充実、予算の充実につとめてまいる所存でございます。また地方における処理機構等の整備につきましても、御趣旨のように、自治省とも十分協議の上、行政指導を進めてまいりたいと思います。
  56. 島本虎三

    島本委員 終わります。
  57. 赤路友藏

    赤路委員長 岡本富夫君。
  58. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 私は、わずかな時間でありますので、簡単に質問を申し上げますけれども、さきにわが党が基地の公害の総点検を行ないまして、そして非常に基地公害で困っておるということも聞き、また調査いたしました。ところが、その人体被害に対して、現在の防衛庁特損法では十分ではない、こういうことを各所で調査してまいりました。きょうは一々それを申し上げることはできませんが、それについて今後人体被害救済についても前向きの検討をするかどうか、まず防衛庁からお聞きしたいと思います。
  59. 坂村吉正

    坂村政府委員 十分前向きにひとつ検討してまいりたいと思っています。
  60. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 次に経企庁に質問いたしますけれども、今度の水質保全法の一部改正案は、ただ汚濁源の規制の対象を追加しただけである。したがって抜本政策ではない。私はかねてから水質基準をきめる水質保全法と、それから汚染を防止するたとえば工場排水法ですか、こういうものと一緒にした水質汚濁防止法を検討する必要がある、こういうように提案をしておきましたのですけれども、今度もまだそういうようになっておらない。したがいまして、今後それはどういうように考えて検討するのか、これをひとつお聞きしたいと思います。
  61. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 水質汚濁原因が、先ほど申し上げましたとおり、新しい産業が発展するに従っていろいろと起こってまいっておりますので、したがいまして、今後においても、私、まだ起こってくると思うのです。でありますからして、一応ここで水質保全法の改正をやっておるのでありますが、やはりもう少し経過を見て根本的に考えるべきであって、そうでないと、抜本的の対策ということは、私はいまのところではまだ早いのじゃないかという考えをいたしております。産業の発展その他の各種の状況を見て、抜本的な問題についてひとつ考慮したい、こう考えておる次第であります。
  62. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 現在は行政が各省に分かれております。たとえば工場排水法は通産省、あるいは同じ工場でも農薬をつくっているところは農林省、こういうように行政が一本化されてない。そういうことで、結局は水質汚濁を防ぐことができない、こういうふうになっております。それについて厚生省にお聞きいたしますけれども、六月二十一日の各紙の報ずるところを見ますと、木曽川から相当なカドミウムあるいはまた亜鉛を検出されるところのアユの被害がずいぶんあった。さっそくわが党では調査に参りましたけれども、これについて厚生省のほうでどういうような調査を行ない、またどういうような現況であるか、これをひとつお聞きしたいと思うのです。厚生省のほうからお願いします。
  63. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 木曽川でアユが一時に十万尾以上も死んだという報告を受けまして、名古屋の公害研究所が中心になりまして、その原因を究明いたしているところでございます。カドミウムの点はまず致命的な原因ではなかろう、おそらく亜鉛ではなかろうかということで、これといま取り組んでいるわけでございます。なお、このことが名古屋市の上水道に危険がないかどうかということを配慮いたしまして、この点も十分間違いのないように分析また検討をいたしている次第でございます。おそらく木曽川の上流における工場の廃液が原因をしているのであろうというので、個々の工場についてただいま調べているというのが現状でございます。
  64. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 先ほど私が提案しました水質汚濁防止法というような、仮称でありますけれども、行政を一本化しておきますれば――おそらくこれは一級河川でありますので、指定水域になっておりますがゆえに、水質基準もきまっておる。ところがそうした水質基準をきめただけでありまして、各工場に対するところの調査ができておらない。したがって、いまこうした被害が起きてから大騒ぎが起こる。名古屋の上水道の原水でありますがゆえに、住民は非常に心配しておるわけでありますが、さてそれではどこから出たのか、こういうことになりますれば、まだこれから調査します、こういうことで、いつも公害行政が後手後手になりまして、これは私はこの前の委員会でもきびしく要求しておいたわけであります。そこで、現地の調査によりますれば、岐阜県の木曽川の上流に二村化学の岐阜工場というのがございますが、これは活性炭をつくっておるところでありますけれども、ここへ行って現地を見ますと、川の中にものすごいまっ黒い活性炭の廃物と申しますか、そういうものが一ぱいある。ところが、工場排水の規制対象にもあるいはまた調査対象にも入っていないというような現状でございます。したがいまして、その他数工場もございますけれども、経企庁のほうでいかに水質基準をきめましても、こうした各工場に対するところの監視と申しますか、あるいはまた調査と申しますか、こういうことができていなければ、また今後もこうした大きな被害ができてくるんじゃないか、こういうことで、私は先ほど水質汚濁防止法というものをつくらなければならぬじゃないかというように話したわけでありますが、これについて、経企庁長官どうでございますか。
  65. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 岡本委員御存じのとおり、日本の行政は縦割りになっておりますので、したがいまして、公害問題についての被害者側の立場を処理するのは厚生省あるいは農林省、また加害者側とすれば通産省というようなことで、各省は各省でそれぞれ所管事務を扱っておりますので、それらを総合するところが経済企画庁でありますから、したがいまして、これを一本化するということは、現状では私は困難だと思うので、これはやはり経済企画庁で、各省のいろいろ調査した結果を総合して、そして適当な水質基準なり環境基準を設けて、それによってまた各省がそれぞれ監督するというようにやってもらうのが、いまの行政制度のもとにおいては最も適当じゃないか、こう考えておる次第であります。でありますから、私どもといたしましては、そういう各省の調査事項は厳重に調査してもらって、その結果を私どものほうに報告してもらって、そして調整して、いま申し上げた環境基準とか水質基準というものをきめて、それについて通産省が監督するなりあるいは厚生省が監督するなりというようにやってもらいたい、こういうように考えている次第であります。
  66. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 阿賀野川事件あるいはまた水俣事件あるいはまたイタイイタイ病、こうした大きな被害がありますが、そのほかに各所に今後も続出してくるところの公害問題をどうしても防止して、国民の健康を守ろう、人命を守ろう、こういうことになりますれば、行政は、これは役人のための行政ではない。そうでなくして、国民のための行政でありますから、これからひとつ皆さま方は、各公害対策会議の幹事といいますかその一員でありますがゆえに、やはりここらで行政についても考えてもらわなければならぬ時代に入ってきたのではないか、そういう曲がりかどに来たのではないか、こう思います。したがって、行政の一本化を一日も早くできるような、ただ各省間のなわ張り争いでとうとい人命を失う、こういうことのないように検討をお願いしたいと思うのです。  そこで最後に厚生省にお聞きしますが、今度の健康被害救済に関する特別措置法案について、この案の趣旨は、公害認定患者健康被害救済実施に協力するため、民法第三十四条の規定によって、財界が財団法人をつくって寄付を集めて、費用の二分の一を公害防止事業団に渡す、こういうことになっておりますが、これはたくさん起こっているところの公害の無過失の責任を果たすための財界の出資による財団法人なのか、あるいはまた、ただ任意に行なわれるところの寄付行為なのか、この点についてひとつ。  それからまた、たとえばこれは任意の寄付行為であれば、ことしはうまく集まりましたけれども、来年は集まらない、こういうようなことにならないか。これについて、厚生大臣にお聞きしたいと思うのです。
  67. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 これは民法上の責任という意味からではなくて、公害防止に対しましては事業主もその責任を負うという公害基本法の趣旨にかんがみまして、事業者が共同で政府の行なう健康救済に対して協力をする、これを法律に明記いたしまして、そして経済団体連合会が主になって基金を集める、こういうことになっておるわけでありまして、法律上から申しますと、その点はあいまいなように見えますが、今日の実情に一番合うのであろう、かように考えているわけでございます。民法上あるいは刑法上の無過失責任を法定するかしないかという点は、いま法務省において検討中でございます。また各種の大気汚染等による公害についての民事訴訟が起きておりますが、これらの判例等が固まってまいりますれば、それに即応するように体制を整えてまいりたい、かように考えます。  それから、明年度以降はどうであるかという御質問でございますが、この点は私は、経済団体連合会が財団法人をつくるわけでございますから、これを信頼いたしまして、明年以降も間違いがないということを確信いたしている次第でございます。
  68. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 では、ただ確信じゃなくして、責任を持ってやっていただきたい。これを最後に要求いたしまして、終わります。
  69. 赤路友藏

    赤路委員長 本島君。
  70. 本島百合子

    ○本島委員 すでに総理がおいでになりましたのですが、総理に御質問いたしますのはあとにいたしまして、五分の間に二点お尋ねいたしますので、簡単に御答弁願いたいと思います。  公共用水域水質保全に関しまして、過日参考人が参りました。全国の漁業組合の方であったと思いますが、現在全国に三千くらいある、そのうちの半数近い千四百組合が、汚水、工業排水、こういうことのために非常な被害を受けておる。しかもそういう業者は零細業者である。こういうもののために、今回の改正に、なぜ生活環境基準と同時に、水産動植物の産卵、ふ化、生育、生息に適合する水産用水質基準の二段階に分けて法律案提出してもらえなかったのか、こういうような御意見があったわけでございますが、こういう点については政府としてどのようにお考えになっておりますか、簡単に御答弁願いたいと思います。
  71. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 いまのお尋ねのことは、水質の環境基準のことじゃないかと思いますが、いま私のほうで、部会を設けまして環境基準の策定にかかっておりますから、それによって、御心配になる点については解決したい、こう考えております。
  72. 本島百合子

    ○本島委員 もう一点、これは厚生大臣お尋ねいたしますが、海水浴を目前に控えまして、もうすでに過日の日曜日あたりは湘南地域はたいへんな海水浴客がいたわけであります。問題は、そのときのテレビの放送にもありましたが、あれだけ大腸菌がうようよいると報道されたにもかかわらず、海水浴をする人々が多数押しかけてきた。これから先ますます汚濁していくであろう海水の清浄化をどのような形で――今後何カ年計画と言わないまでも、当面だけでもいいから何とかならないものか。過日私ども視察に参りましたときに、東京湾の模型ができておって、そして東京湾の汚水というものが湾外に出るのに大体二十日間ぐらいかかる、という検査をしておられた様子でございます。さすれば、何らかの手を打てば大腸菌等の撲滅もできるのじゃないだろうかという気もするのですが、これはしろうと考えです。ただし、いまのように汚水、し尿等の海洋投棄をどんどんしておる、それも黒潮に乗る手前でやっておるというようなことになりますれば、これはいつまでたってもきれいにならないことなんですが、この点について、厚生省としてはどういう計画をやればきれいになるんだというような確信あるおことばがもらえないものか、海水浴を前にいたしまして、一言お尋ねいたします。
  73. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 いろいろと施策が必要でございますが、まずもって下水の処理を完全にいたしまして、汚物を完全に消毒をしで流すということを完ぺきにいたす必要が急務であろうと、かように考えております。各地域実情に応じまして、やり得るものから緊急にやってまいりたい、かように思っている次第でございます。
  74. 本島百合子

    ○本島委員 じゃ、これで終わらせていただきます。
  75. 赤路友藏

    赤路委員長 質問される委員さんにお願いいたします。総理の時間は限られておりますので、あらかじめ申し上げました時間内で、ひとつ御質問を願いますように。  島本虎三
  76. 島本虎三

    島本委員 いよいよ公害に関する付託された三つの法律案の議了する段階が近づいてまいったわけでございます。公害に係る健康被害救済に関する特別措置法案並びに公害紛争処理法案、それと公共用水域水質保全に関する法律の一部を改正する法律案等であります。この審議過程を通じまして、あるいは修正あるいは附帯決議あるいは政府答弁によって満足する、こういうようなケースを経まして、相当審議を進めてまいったのであります。特に今回は、総理に総括的に公害全体に取り組む政府の態度と申しますか、その考えと申しますか、こういうようなものについて伺いたい、こういうように思ってあがったわけであります。  第一点としては、私は、公害対策というこの考え方であります。総理、単なる行政、単なる手当て、こういうようなものによって公害対策を行なう時代はいまや過ぎました。ウ・タント国連事務総長も、きのうの新聞によりますと、六月二十三日に、世界的な人口増加、都市化、技術革新等が人類の生活環境にもたらす脅威、これは水、空気の汚染、ごみの増加等に対処する考え方を発表された、こういうように報道されているのであります。この報告は、一九七二年に開催予定の人間の環境に関する国際会議提出されるもので、秋の国連総会で討議されるということであります。その要旨は、人類の環境の有毒化は年々ひどくなっておるし、放置すれば将来地球上の人間の生命が脅かさるる状態になる、しかし環境問題解決の科学的知識と技術はいずれも備わっておる。この会議では、この技術を生かすため調整することによって、科学技術の一方的適用、こういうようなものをなくすようにしていきたい、そして前例のない環境汚染を引き起こしているこういうような状態を排除するようにつとめるんだ、こういうようなことであるようであります。その中で、特にアメリカの年間の廃棄物は煙や有毒ガス一億二千四百万トン、廃棄自動車数が七百万台、紙くずが二千万トン、それからあきかんが四千八百万個、あきびんが二千六百万個をこえている、こういうように報告されているのであります。会議では、いろいろこの問題等につきまして、経済、社会計画の環境面に取り組む委員会だとか、財政面に対処する委員会だとか、公共行政と立法を管轄する委員会だとか、地域及び国際協力促進委員会だとか、こういうようなものに付議して、これを十分討議するんだ、こういうようなことがきのう言われておったわけであります。世界がこういうような情勢になっておることは、世界だけの問題じゃなくして、当然日本がこれに先行してこの公害対策を立てなければならないし、いまや同じような状態が日本に行なわれているということであります。そして日本に対しても、これはもう特に他の国の状態よりきびしくこれを見るのでなければならない、また対処しなければならない、こういうように思うわけでありまするけれども、このウ・タント国連事務総長、この国連に対する要請とあわせて、総理公害に対する決意をお伺い申し上げたいと思います。
  77. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 島本君ただいま御指摘になりましたウ・タントさんの国連における勧告というか、各国に対する注意の喚起と申しますか、その記事は私も読みました。ただいま御意見を述べられたように、私も同感を持って、実はこのウ・タントさんの処置についてわれわれも協力すべきだ、かように考えております。  ところで、公害そのものについていろいろの議論がなされておりますが、私はこれは必要悪とでも申すべきものじゃないだろうか、実はさように思っているのです。と申しますのは、いま経済を発展さす、その目的は一体何か。これは申すまでもなく、われわれ人間、その生活に寄与するというか、われわれがしあわせになるために経済発展があるのだ。その経済発展、これが計画的でないと、とかくただいまのような害悪を流しておる。だから、いわば必要悪――必要悪だからといって、それを許すというわけじゃないのです。そういうものだからこそ、われわれは真剣にこれと取り組んで、そういうもののないような、また住みいい社会をつくる、こういうことでなければならないと思うのです。公害そのものは、もちろん一つの形として産業災害もあると思います。これなどは、島本君も御承知のとおり、いままでしばしば炭鉱の爆発事故などが指摘された。本来石炭を掘って産業を興して、お互いがそれによってしあわせになろうという、そういう産業、基本産業、それに携わる者が爆発事故で生命を失う、このぐらいずいぶん困ったことはないわけであります。でありますから、公害に取り組む政府の態度としては、このものを許さるべきではない。しかしその公害だけを取り上げて、公害けしからぬ、公害は一切起こさないようにするといって、産業自身の息の根をとめるようなことがあってもならない。やはり産業自身は、お互いの生活に役立ち、しあわせになる、また住みいい社会をつくるという、そのための発展であり、発明でなければならないと思いますので、そういう意味で、この経済発展も願うが、同時にそのかもし出すいわゆる公害というもの、これとも取り組んでいく、これが政府の態度でなければならぬ、かように実は思っているわけです。おそらくこの点はお話をすれば、いままでの政府、各省の大臣から答えたことも、私の答えることも同じだと思いますし、また島本君御自身も、必要悪というような程度についての認識は、私どもと差こそあれ、おそらく同様じゃないか、かように思います。
  78. 島本虎三

    島本委員 総理の必要悪であるというようなその考え方であります。正当防衛だとか、正しい労働運動であるとか、または必要悪であるとか、こういうようなことばはえてして使われるものであります。その使われる場所、その時、これによってそれは生きるのであります。しかし公害全体、現在は政策が企業擁護の立場に立つか、それとも国民擁護の立場に立つか、こういうような段階に来ているときに、必要悪であるからこれはやむを得ないというような考え方がもしあるとしたならば、公害対策推進のためにはマイナスになってもこれはプラスになる発言ではない、こういうようにいわざるを得ないと思うのであります。ことに炭鉱が、ああいうようにいままでは経済発展に貢献してまいりました。しかしながら現在の経済情勢のもとで、これは爆発によるかつてないような死傷者を出しております。これもやはり必要悪というような考え方がもしあるとするならばとんでもない間違いである、こういわざるを得ないのであります。必要悪であるというようなものの考え方を是認する公害対策というものは、私は今後その推進のためにはブレーキになっても促進剤にはならない、こういうような心配を持つものでありますが、総理、この点は少し考えてもらわないとならないと思います。
  79. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 いまのように当然の疑問を持たれるだろうと思っておりますので、私も必要悪とは申しましたが、誤解のないように、それだからといってこれを許すという意味じゃありませんということを断わったはずであります。  ただいま、公害と取り組む場合に、企業側に立つのか被害者側に立つのか、こういうお話がありましたが、私は両方に立つべきだ、かように実は思っておるのであります。言われるごとく、一方その方面だけに立つという、そういう筋のものではないという、この点をやはり理解していただきたいと思うのです。私は、被害者側に立つならば、そういう産業は一切やめてくれろ、それは非常に簡単だと思います。しかし、それでは世の中の進歩はない、社会の発展はない、われわれのしあわせはない、かように思いますし、それかといって企業側に立って、そして公害を受けてもそういうことはしかたがない、やむを得ない、だからがまんしろ、これでは話ができません。両者に立って、そこで調和という問題が政府ではいわれておるのであります。この調和ということについて、いろんな御意見も出ておることも承知しております。私は、いまの点は誤解のないように注意して実は発言したつもりでございますし、またおそらく島本君にしても、非常な極端な御議論をなすっているとは私は思っておらないのです。
  80. 島本虎三

    島本委員 ただいま、必要悪というような考え方に対する一つの補足というような意味で、間違わないようにという解明がなされました。私は、それはやはり今後の行政の面に、施策の面にはっきりあらわれる態度によってこれを見なければならないと思うわけであります。  私が言ったのは、あくまでも公害は、資本主義社会において資本が利潤を追求するための産業活動による社会に及ぼす害悪なんだ、したがって社会的な犯罪でもあるのだ、したがって公害罪も考えられるような段階にいまやなったのである、しかしながら企業みずからの責任の追及を放棄するような施策や政治を行なうようにしてはならないのだ、これを総理、心配するのであります。したがって今後の企業擁護と住民擁護、これは相いれない立場である、こういうように考えられるわけでありまして、これは両方ともいいとなれば当然中途はんぱになる。したがって住民擁護、国民擁護の立場に立った公害対策でなければならないはずでありますが、それをあいまいにすると、政府の白書のように、企業擁護と住民擁護の二つの妥協の産物になってしまうわけであります。やはり国民あっての日本じゃありませんか。当然企業のためにその国民を犠牲にしていいはずのものでは断じてなかろう、こういうようにいわざるを得ないのであります。私は、そのために、総理に、特にこの点等に対してはお考え願いたい。  公害防止のための企業の投資額、こういうようなものが、つい最近産業界の人に聞いたところによりますと、まだ一・三%を割っている程度である、アメリカの二分の一、三分の一程度にすぎないのだ、こういうようなことを聞いているのであります。そういたしますと、これはあくまでも日本の場合は、世界第二位のいわば産業の成長率を示している、こういうようにいわれても、依然として公害に対する態度というようなものは消極的であるという証拠は、公害に対する投資額が少ないというようなことにあらわれるのじゃないか。その考えの根源は、やはり必要悪なんだという総理のその考え方が、企業に対する一つの鼓舞激励になるのじゃないか。国民の側に立たないで企業側に立つという考えの証左になるのじゃないか。もし私の言ったことが――間違いであることを期待するわけでありますけれども、いまの総理答弁では、そうしか聞き取れないのであります。この点は国民のためにも明確に解明しておいてもらいたいと思います。
  81. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 島本君にお答えいたしますが、私が申した必要悪ということ、これは必要悪だから当然しんぼうしろ、こういう意味の必要悪と申しているわけではありません。とにかく企業ではある程度のものが出てくる。それがほうってあれば必要悪ということになりますが、しかしそれを防ぐこともできるのだ。しかし全然そういうものがないようにしろというならば、その事業をやめる以外にないじゃないか。しかし事業をやめないで、事業から生ずる弊害はわれわれの手当てによってそれを最小限度にとどめる、そういう方法は考えられないのかというのがいまの立法の趣旨でもあり、ねらいでもあると思います。私はそういう意味で、島本君の言われることと私の言うことが、表現こそ違うが、おそらく話はよほど狭まってきているのじゃないか、実は紙一重じゃないだろうかと思っておるのです。  いまの必要悪という、あるいはそれに対する対策というものにいたしましても、いま企業の公害防止対策、これがアメリカと日本と比べて云々と言われる。これもなかなか比べ方がむずかしい。日本の統計で、見方によりましては、日本のほうがこの公害防止対策にたくさん企業家が出しておる、こういう統計も出ております。いま言われるように、日本の場合は投資が非常に少なくて、アメリカの三分の一以下だ、こういうようにも見られておるということであります。しかし、私はそういうことは別といたしまして、とにかく企業が社会に流す害悪あるいは人体に及ぼす影響、それなどを最小限度にとどめる方法、それはくふうすべきじゃないか。そういう意味でとにかく立法もし、原因者の責任、また国、地方公共団体のこの責任等をもきめて、この公害対策と取り組もうという姿勢であります。私が申しますものも、これは何ら対策を立てないというものじゃない。また極端に、その仕事は全部やめろと、こうもおっしゃらないと思う。でありますから、これに対する対策、許容程度というものがどの程度まで可能なのか。いまの技術の進歩をもってすれば、よほど対策は有効適切な処置がとられるだろう、このことも考えないではない。またそういう意味で、企業も十分近代的科学技術を利用して公害を排除する、それに努力してもらいたい。全然ゼロにするという、そこまでかければいわゆる費用の負担が非常にかさむ、企業として成り立たないという場合もあるようですから、そこでいわゆる許容限度というものがどの辺までならしんぼうできるか、その程度まではぜひやらせようじゃないか、こういう話にもなると思います。  私は、私のことばがあるいは不適当だというので、御指摘、おしかりになったかと思いますが、私はいまのままでいいというわけじゃないのです。しかしそういう事業が興れば、それにつれてある程度のものは出てくる。それがお互いに許容し得る範囲ならひとつしんぼうしてもらいたい。これが私の真に言わんとするところです。でありますから、企業者側に立つとか国民の側に立つとか、一方的に立つということになると、それは極端になります。しかし双方の立場に立って、ただいまの許容範囲というものがある程度考えられるのじゃないか。そういうことで産業も発展し、お互いの生活被害をこうむることなくしあわせになる、こういうような世の中をつくろう、これが私どものねらいです。そういう意味で、今日までこの三法についての御審議をいただいている。  ところが、いままでの日本の立法そのものは、これは何と申しましても、いまからやろうというのですから、よほどおくれておる。先ほどお話しになった犯罪、公害罪というような問題でも、ただいま法制審議会でいろいろ検討はしております。しかしこれは一体どんなにするか。単行法にするか刑法全体の改正と取り組むその際にするか、故意または重大なる過失、そういうことに限るか、さらにもっと、どういうような範囲にするかというのは、これは研究課題になっておる。また、いまお考えになりましても、この程度で、大気汚染水質汚濁だけで済むわけのものでもないし、まだまだうんとこれから法を整備していかなければならぬものがある、こういうように思います。そういう意味の御鞭撻、政府をひとつ鞭撻してやろうというそのお気持ちはよくわかりますが、とにかくわれわれは両者の側に立って、そこにやはり調和を求めていく、そういう方向で進歩をはかっていく、こういうことでありたいものだ、かように思っています。
  82. 島本虎三

    島本委員 やはり総理の考え方を十分納得し、公害に対して住民擁護、被害者擁護の立場から、現在のいろいろな施策を通じて、これはあたたかく迎えてやりなさい、やってほしい、こういうような意味で質問したわけなんであります。十分ではありません。しかしながら、総理がいま公害罪の問題に触れましたので、私も、この問題について、最後の詰めではっきり総理の意向を聞いておきたい、こう思いますので、順序を変更して、この問題に触れさしてもらいたいと思います。  これはやはり刑法の全面改正問題と取っ組んでいる法制審議会だと思いますけれども、刑事法特別部会は、本年には答申の原案作成をめどに審議を進めているという話であります。これは国民の健康を害する反社会的犯罪として、公害罪の規定を新設するかどうか、その内容をどうするかについて検討中だ、こういうふうに承っておるのであります。またこれについては刑事罰を加えるべきだ、こういうような意見もあるやにも聞いておるのであります。いろいろな観点からこれは論議されるでしょう。大気汚染水質汚濁等による公害、こういうようなものの処罰、これは社会経済機構の変化を的確に反映した新刑法ということに当然ならなければならない。  それでいま総理にお伺いしておきたいのは、この公害関係の三法、その中には、紛争処理法案もいまや成立せんとしておるわけであります。そういたしますと、紛争処理法案との関係で、本法によれば公害罪は免責になるのかどうかという疑問を、これを上げる場合には当然どなたも持つのじゃないか、こういうふうに思うわけであります。公害罪は公害事実に対する前提問題として刑事責任が存在する。この関係についてはどう考えるのか。また、この点についてはあくまでも、現在のような社会状態からして、人を殺せば殺人罪であるけれども、企業が合法的に、それもわからないがままに何十人という人を殺しても、まだ補償さえも行なわれないで、あえて放置されているようなこの現状からして、当然これは考えられなければならない施策だと思うわけであります。この点等についても、総理の前向きの御答弁を承っておきたい、こういうふうに思うわけであります。
  83. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 もちろん、いまの審議会でどういう答申が出てきますか、これは答申の結果を待たなければならないと思います。よほど専門的にもなりますが、先にできている法律とあとでできる法律との関係等から、ただいまのお尋ねになるような点も必ず解明される、かように私は思っております。またその答申の際に、それらの調整は十分はかっていかなければならぬ、かように思います。
  84. 島本虎三

    島本委員 これにだけ時間をとっておられません。しかし、実際は最後の詰めになって、この関係等についての解明はもう、私は納得するところではございませんが、しかし私の考えとしては、あくまでも、これは総理が政治的圧力を立法の過程であまり加えないようにしておいてもらいたいんだ、こういうようなことであります。逆に促進させるようにしておいてもらいたいんだ、こういうような希望を含めた質問であるわけでありますので、この点等を十分考えて対処しておいてもらいたい、こういうふうに思うわけであります。
  85. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 この種の法律は、ただいまのお気持ちを十分政府も考えて、これに対処する考えでございます。
  86. 島本虎三

    島本委員 ウ・タント事務総長の国連に対するいろいろな要請等がございましたけれども、いまそれが、総理、端的に日本に今後受け入れられなければならないのは、いま経済企画庁総合開発局で考えられておった新日本総合開発計画、これに基づく今後の産業の発展計画、こういうようなものに相なるんじゃないかと思います。新国土総合開発計画によって、日本の総合的な今後の発展が組み立てられるわけであります。当然重工業地帯、まさに公害地帯がもうでき上がらんとするわけでありますけれども、対策は十分したがって講じなければならない。公害を除いて考えられないような計画、その中の公害対策、こういうようなものは、まさに画餅に帰するような、こういうような答弁ではなく、真剣にその問題から公害を排除する、この計画を進めることが、今後の日本の一つの工業の発展のレールになるんじゃないか、こういうふうに思うわけであります。いまのこの新日本総合開発計画、これに基づいて、公害の排除という点に対して真剣に取り組んでもらわなければならない。しかし、公害対策を当然この中に組んでおると思うのでありますが、万遺憾なきを期しておいてもらいたいと思います。総理のこれに対する決意を伺っておきたいと思います。
  87. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 結論から申せば、島本君が御指摘になったとおりであります。  ただいま、新国土総合開発計画、これはようやく一案でき上がりました。まあ、いわばマスタープランみたいなものであります。これを実行に移すためには、さらに今後研究を続けていかなければならない。その場合に、必ず、いま問題になっておる公害、そういうものを基本として、やはり産業のあり方、都市のあり方などを考えていかなければならない、かように私は考えております。したがいまして、ただいまの新国土総合開発計画、ようやくでき上がったばかりですから、これをさらに実施に移す際に、基礎的な条件として、島本君が御指摘になりましたような考えでこの問題と取り組む、これはもう当然のことだ、かように私思っております。  たいへん、ただいまのように御指摘になりましたこと、政府は力として、そういう意味の基礎づくりの上に案を進めていきたい、かように思っております。
  88. 島本虎三

    島本委員 政府公害対策に取り組む態度として、総理にもう一回思い出してもらいたいのは、一昨年の第五十五国会で、公害対策基本法審議の際の総理答弁であります。現在の制度のほうが、一元化された制度よりもこれは十分その期待にこたえるような実施ができるんだ、したがって、いまのような制度にしたほうがいいんだ、こういうような答弁でございました。しかし、二年たった現在、今国会に厚生省では、工場の新築、増設、こういうようなものを、すべて知事の許可制として、基準に合った許可を得て工場をつくるようにしたい、こういうような改正案を考えたそうであります。しかし、通産省では、公害防止はまず工場の立地条件の改善が先決である、工業立地適正化法案では工場の立地規制ができるのである、こういうような考え方で、これに、厚生省の意向に同調しなかったそうであります。しかし、以前からこの工業立地適正化法案は、日の目を見ようとしても見れない、二回も流れたという、いわくつきの法律なわけであります。  こういうようにして、もうやるべきことをやらないで、各省間の意見の不一致をここに暴露するような、こういうようなことをすることは、これは国民のためにも、必ずしも、喜ぶべきことでは決してございません。こういうようなことは、現実の制度そのものにも基因するのではないか。そうでなければ、ここに公害対策については、総理の厳然たる態度、指導力、こういうようなものがいまや必要なんではないか、こういうように思うわけです。各省間の不一致は、通産省、厚生省のみではございません。水の関係等につきましても多々あるのであります。こういうような点を完全に調整し、公害対策の実をあげなければ、せっかくのこの関連法が生きないのであります。この点、総理も十分考えておかなければなりませんが、いかがです。
  89. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 いま言われるとおり、それは総理の責任だ、かように言われましても、ことばが過ぎるとは思いませんし、当然のことだと思います。御承知のように、いまの行政から見まして、それぞれが、縦割り行政とでも申しますか……。ところが、この公害というような問題になってくると、横の関係から見なければならないもの、しかも公害省というような、それでは公害だけを引き抜いて一省を設けられるかというと、いまの行政の遂行から見ると、適当ではない。やっぱり総理が中心になりまして、両省間あるいは多数の省の間にまたがる問題を処理していくというのが、今日のあり方としては望ましいかっこうだと思う。そういうことを考えますと、各省間の調整は総理の責任であり、また公害そのものが国民生活と直結しておるこの状態から見れば、これは基礎的な、基本的な条件だ、かように思います。そういう意味で、公害をなくすることは、私ども政府の場合は、どこの立場にあろうと、それは考えなければならない。それが最後に妥協するものが、いわゆる許容基準という、そういう形で逃げておるといいいますか、そういう形になるのだ、かように思っております。したがいまして、ただいま、おしかりとは思わないし、鞭撻という意味におきまして政府に声をかけられた、私のやるべきことは、そういう点でますます重大さを加えている、かように私も思っております。
  90. 島本虎三

    島本委員 これは総理がいま答弁したその時点においては、私はいつでもその調子にほれぼれとしているのであります。そのことばはまことにバラ色の幻想を与えるのであります。しかし実際行なわれる結果を見ますと、必ず失望するのであります。私はそれは、総理にこういうようなことを言うのは酷ではございません。一つ申し上げます。  公害対策基本法が制定されて三年、関係実施法も成立されつつある現在でも、公害が減少するどころか、これはだんだん多くなってきている。したがって、実施の重点はあくまでも企業責任、こういうようなものを、はっきり、こう、政府のほうからこれを追及するような態度、こういうようなことを忘れてはならない、こういうふうに思うわけであります。しかしながら、せっかく基本法をつくっても、これでやったならば、総理は、完全にやれます、いかなる一元化方式よりもこれがいいのです、こう言いながらも、できて三年、公害対策基本法による関連立法、こういうようなものの未規制のもの、未成立のものがまだたくさんあるのです。これでは誠意がある証左だと私は受け取れません。  ことに大事なのは、総理公害防止事業における企業の負担、こういうようなものをきめる立法措置、こういうようなものはまだできておらないのであります。これは厚生省は当然通産、自治、この両省と相談して、公害対策基本法第二十二条によって、費用の負担は早く制定しておかなければその実をあげることができないのです。もう前回すでに大気汚染防止法が上がりました。また騒音規制法も上がっております。今回、紛争処理法案被害者救済法、いまやこれも日の目を見んとしつつあるのでありまするけれども、この企業者負担をきめる法律だけはいまだに制定されないというのは、基本法の要請する公害関係に、たった一つこれは大きい抜け穴を与えているようなものじゃありませんか。ことばはバラ色の幻想を与えながら、実施しているのはこのような抜け穴をぬけぬけとつくっておく、こういうようなことでは、総理がいかにいいことを言っても、私は、すなおに信じなさいと言っても信じられません。いまのこれは具体的な事実であります。総理がこれをもって、そうじゃないと言うならば、これを具体的に、私があげたとおり、二十二条によるこの立法をやったかどうか、これをはっきりやってもらいたい。それと国の熱意の点については、やはりせっかくいろいろとやっても、これはもう公害追放はから手形に終わっているのだ、こう言われるような、各都道府県知事からもいろいろな要請と苦情があるのです。これはまだはっきり前向きになっておらない、このためだ、こういうようにいわざるを得ないのであります。総理、いかがです。
  91. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 島本君、たいへん専門的に研究しておられる方に申し上げるのはいかがかと思いますが、公害対策のむずかしさが、ただいまお話しになったようなところに実はあるのです。これはもう公害を与えた原因者がはっきりしておれば、それに対する対策は非常に明快にできる。しかし、なかなかそうでない公害というものがずいぶんある。あるいは多数集合して初めてできるものがある。そういう点で、これに対する対策もなかなかむずかしければ、立法技術もなかなか必要であります。  そこで私は、政府ばかりが立法するわけでもないのだし、これはもう与野党ともにお互いに話し合って、そうしてりっぱな公害防止、公害救済対策その他の法律全部が整備されることが望ましき姿であります。政府もこれから一そう勉強いたしまして、あらゆる対策と取り組む、その姿勢だけは持っておりますから、それはひとつ御了承いただいて、政府が逃げてはおらない、さらにいまのような御鞭撻を賜りまして、そうして与野党ともに、公害こそわれわれの社会を毒するもの、われわれの生命そのものを断つものだ、こういうことに立って、基本的な問題としてこれと取り組んで、そしてりっぱなものをつくっていただきたい、私は、そういう意味で、政府もまた与野党もともに、責任を分けていただくつもりはございませんけれども、政府政府でやりますけれども、政府の足らないところは叱正しながらも、同時におれたちも力をかしてやる、こういうことであってほしい。これは私どものお願いでございます。ひとつよろしくお願いいたします。
  92. 島本虎三

    島本委員 これで私は終わります。  いままでの答弁を聞いておりまして、国家行政組織法第三条機関でない点、軍事基地関係のものを除いた点、その他いろいろございますけれども、救済法に対しての所得制限、またこういうようなものを付しておる点等については、やはり社会党案のほうがより優秀であるということが一そう明らかになったことをここに了解しまして、私の質問を終わります。
  93. 赤路友藏

    赤路委員長 本島さん、要領よく、簡潔に重点を押えて。それから、総理のほうの答弁も、簡潔にお願いします。  本島君。
  94. 本島百合子

    ○本島委員 十分しか与えられておりませんのに、四分ばかり過ぎておりますので、多少の時間のズレを、委員長、前もってお許し願うことをお願いしておきます。  今回の健康被害に対する救済並びに紛争処理に関する産業公害に対しての法律案については、国民がひとしく期待を持って見ておったと思います。同時に、一日も早くこれの制定を期待されておった。たとえば東京都のような場合は、政府より一足先に公害に対するいろいろの点をきめてしまったというようなことも出ておりますが、これは地方の公共団体も大体そういう傾向であろうと思います。私、今回の法案を見ておりまして一番心配になりましたことは、産業公害による病気というもの、これが初めは奇病としかとられなかった、そしてだんだん医師あるいは病院等の研究を待ちまして、やっと産業による公害であるということが明確になってきた。その間非常な年月を費やしておるわけであります。世の中にこういう奇病というものはいまたくさん出ておりますが、そこで政府はそういうものに対しての、あるいはまた公害に対するところの研究、これは一体どの程度に今後お考えになっておるのか。現在では、日本公衆衛生協会に対して年間一億一千万円程度、そしてまた病院、医師等の治療に対しての研究費というものが一千六百万円程度予算化されておりますけれども、この程度ではどうにもならないのではないだろうか。大体そういう病気にかかった人は、まず先に町医者にかけ込みます。町医者がふしぎだなと考え、それを病院へ連絡をとる。それからようやく研究の緒についていくわけでございますが、こうした点についてもっと大幅に予算化されて、この治療というものに早い結論を得させていただきたいと私は願うわけであります。  そこで、公害に対しまして、外国の例では廃液にいたしましても、また大気汚染等にいたしましても、設備費の五%は大体そういう設備にかけておるけれども、日本では平均二%程度であるといわれております。したがって、政府自体の対応策も非常に予算が少ない、おくれておる。だが、また企業家のほうも、こういう点についての設備に対する熱意というものが不足している、こういうふうに感ずるわけでありますが、こういう点について、総理はどのように今後対応していかれるのか、その御意見を聞かせていただきたいと思うわけであります。
  95. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 公害が、奇病というような形で最初処理されている、そのとおりでございます。これはもうはっきりした原因者があって、それからそれがからだにどういうように働く、こういうことがはっきりしておれば、対策もおのずときまるわけですけれども、どうも最初わからない。だから富山のイタイイタイ病――イタイイタイ病というような名前で呼ばれておる。だんだん調べてみると、その原因ははっきりしている。しかもそれは町医者である。どうも町医者の場合には、厚生省の研究費はそこまでは行っておらない、こういうような御心配があるようです。もちろんいまの研究費で十分だとは私は申しませんが、しかし研究は大学やその他の整備された機関だけでやるわけでもありません。開業医、町医者にも協力を求める、こういうところで研究をしておりますから、研究費はその必要に応じて増減もできますが、またその支給の範囲も、そういう意味対策を立てて、そうしていわゆる奇病だということで疑問を持たれるようなもの、それはやはり原因を究明する、そのためには政府も協力する、こういうことでありたい、かように思っております。また厚生省もそういう態度でこれと取り組んでおります。また最初から、自分のところでやる事業が必ず公害を発生する、かように考えておる場合には、設備の当初からそれに対する対策も施設もするでございましょうが、まず関係なし、そういう意味の危険がないのだということで事業を始める場合が多うございますから、どうしても対策の施設がおくれる、こういうことだと思います。しかし、先進工業国等の例もありますから、新しい仕事を始める場合には、そういう点についても十分企業者が対策をよく考えていただきたい。まあ最近この両三年になりまして、わが国内で公害ということが大きく取り上げられ、これはもう社会問題、社会通念としても、これがいろいろの議論を生んでおる。産業界におきましても、したがいましてこれに無関心であり得ると、こういうわけではございません。ただいま言われるように、御指摘になったような点についても、それぞれの企業が十分注意してまいることだと、かように思います。またそういうものに対しては、政府がもちろんこれに協力する、その協力を惜しむものでないことを申し上げておきます。
  96. 本島百合子

    ○本島委員 この健康被害に対する救済法案等を調べてまいりましても、この委員会でその欠陥は十二分に指摘されておりますし、また過日の打ち合わせ会でも、四日市ぜんそくで苦しんでおるお坊さんの話などは、ほんとうに痛ましくて聞いていられない、こういう状況でございます。したがって、こういう産業公害による被害者たちに対しては、やはり所得制限は撤廃するとかあるいは介護手当というものを、いまどき一日三百円程度ではだれも来てくれ手がないのですから、こういう点、血の通うようなものに来年度予算では改めていただかなければならないだろう、このように考える次第でございます。  また、紛争処理等につきましても、すべての人が口をそろえて言うことは、なぜ三条機関にしなかったのか、これが常にいわれております。ということは、司法権の権限というものが、どうしても今回の条文でまいりますと弱い、だから解決のめどというのは立たないのじゃないだろうか、こういうふうに不安がられておる。こういう意味で、この紛争処理の調停あるいは仲裁、こういうような点について、もう少し権限が与えられないものかというふうに思うわけなのです。委員会での大臣答弁等は、それはこれのほうがいいんだなんというような説明のしかたをされておりますけれども、一般の者が考えて、絶対権限を持たない機関がどうして処理できるのかという不安がつきまとっておるわけなんで、こういう点について、総理の見解をお聞かせ願いたい。  もう一つ、時間がありませんのであわせて申し上げますが、百年河清を待つなんというような式で、今日の日本の大小河川はほんとうに汚濁されておりますが、こうしたものについて、今日五十九水系についての指定がされておるわけですが、それでなしに、全般的な日本の河川に対しての再検討をされてみて、そしてその沿岸における産業公害というものはどういう形で出てきているのかということを、もう国民が騒がない前に、政府が手を打っていく、こういう形をとられたらどうか。こういう意味では、来年度予算においてはこういう点の大幅な予算措置というものが必要だと考えておりますが、そうした点について、総理はどのようにお考えになりますか。
  97. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 あまりオーバーコミットメントしてもいかぬと思いますが、いままで厚生省当局あるいは総理府長官等がお答えしたところ、これで政府の方針は一応きまっております。しかし、まだまだ、先ほども島本君からも指摘されましたように、この公害行政は始まったばかりでございますから、まだまだこれからわれわれがくふうしていかなければならない点は多いと思います。  さらにまた、予算等の面におきましても、それぞれ整備しなければならないものがあるだろうと思います。そういうことについては、政府は、先ほど島本君からも御指摘になりましたように、積極的な前向きの姿勢でこの問題と取り組むことが何としても必要だと思います。そういう意味で、ただいまお尋ねになりましたこと、どうもいままでの答弁では不十分だと、こういうようなお気持ちもあるようですが、この際は提案しているものをひとつ成立させていただいて、さらにまた、われわれも、それぞれが、御指摘になりましたような点で前向きに問題を掘り下げる、こういう態度でこの問題と取り組みたいと思いますので、その点も御了承をいただきたいと思います。  これはひとり本島君ばかりではなしに、先ほどの島本君に対する答弁としても、私不十分だったように思いますので、これも社会党の方にも申し上げておきたいと思います。  それから、ただいま全体としての河川の水をひとつ調べてみろ、こういうお話でございますが、これも、全部といわれましてもそうもいかない、むだなことになるかと思いますが、しかし少なくとも都市周辺の川の水、またその汚濁防止、それにはもっと積極的でなければならない。これは御指摘を待つまでもないことだと思います。  ところが、とかく意外なところにカドミウムだとかメチル水銀だとか、そういうようなものが出てきておりますので、このいわゆる都会をはずれたからといってどうも安心はできない、こういうように思います。しかし工場の分布状況等から見て、やはり異変があれば考えなければならぬことだと思います。たとえばいままではサケがのぼっていたんだが急にサケがのぼらなくなったというようなことがあれば、やはりそれらの河川も気をつけなければならないと思うし、最近起こりました問題で、加害者自身で十分救済のできない場合もある。たとえば米ぬか油の被害の場合、これなども、加害者はわかってもなかなか全部救済されないというようなものがある。またそういうような場合に、国や地方公共団体がいかにするかとか等々、救済措置としてもいろいろくふうし考えていかなければならない問題があろうかと思います。とにかくせっかくいまようやく取り上げられ、そうして社会問題となり政治問題となり経済問題として取り組んでおるこの問題を、この程度で済まさないで、前向きでさらにさらに掘り下げていくように、そういう態度でありたいと思います。  ありがとうございました。
  98. 赤路友藏

    赤路委員長 岡本君。
  99. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 私は、時間があまりありませんから、質問を少なくいたしまして、今回の救済法案の対象からはずされた騒音の被害に対しての救済について、総理に若干お聞きしたいと思います。  最近の航空機によるところの人体の影響が非常に多く出ております。この航空機騒音に対する人体の影響について調査をする必要があると思うのでありますが、ところがこの航空機によるところの騒音規制法、これはありますけれども、運輸省の管轄に入っておりまして、運輸省では人体被害調査機関というものは下部にはない。こうしたことによって、航空機騒音によるところの人体被害の全貌というものがわかっていない。  そこで、私ひとつ、これは緑ケ丘小学校、ちょうど大阪伊丹空港の付近の小学校五年生の石笠さんという方のつづり方でありますけれども「テレビをみているときジェット機が飛ぶと、まず、声が聞こえなくなります。ひどいときには画面がゆれて、全くおもしろくありません。」「特別、騒音がはげしいときは、ストーブがゆれたり、家がゆれたりします。勉強しているときにジェット機が飛んで来ると、頭にきます。特に算数の難かしい問題の答を解いているときなどは、気持ちがいらいらしてきて、落ち着いて考えることができなくなります。」、また「急にジェット機が落ちてきそうな感じを受け、とてもおそろしくなって、うす気味悪いことさえあります。また、小さい子どもがはげしいジェット機の騒音を聞いて、大声で泣いているのを見たこともあります。しかし、これくらいならまだ良い方なのです。」 「子どもがひきつけを起こしたり、不眠しょうになったりすると聞いたことがあります。」、こういうように子供の訴えがありますけれども、ところが一つの例をとりますと、大阪伊丹空港周辺のこの被害について、伊丹、宝塚、川西、こうしたところの人体被害の検査は実はまだやっていない。これは明らかでないわけでありまして、妊産婦の方あるいはまた幼児あるいは老人の保護対策が、人体被害についてはできていない。したがって、川西市には保健所もない、こういうような状態でありますが、これに対して総理の御見解を、今後どういうふうにするか、あるいはどういう対策をされるかお聞きしたいと思います。
  100. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 騒音、これがただいま人体にどういうような影響を与えるかという、まだはっきりした調査ができておりません。しかもこれは長期にわたって調査する必要があるのではないかと思っております。いままでのところ、たとえば、どうも騒音で勉強がしにくい、そういうのは、付近にある学校が騒音防止の施設をする、そういうようにして教育できるようにする、あるいはまた、通信所その他があるところにおきまして、やはりテレビが見えない、そういうところについては、そういう対策はとっております。しかし、人体そのものにどういう影響を与えているか、これはまだ十分の調査ができておらないというのが現状であります。いま一番問題になり、人体に多大の影響ありといわれて、まだ結論が出ていないのが、いま御指摘になりました大阪空港の近辺だと思っております。そこで、川西地区において、もう少し長期にわたって調べて結論を出し、その上で対策を立てるべきではないか、そのように思います。  いままで普通いわれておるのは、ジェット機が飛ぶことによって鶏が卵を産まなくなったとか、あるいは牛がどうしたとか、こういう程度の話はありますが、人間自身が問題になっているという、そこまでの調査ができておらない。これから超音速の飛行機まで来るということになると、ただいまのような点もたいへんな問題だろうと思うし、またことに日本の家屋が、障子、ガラス戸にいたしましても、たいへん軽微なドア、戸締まりといいますか、そういう状態でありますから、こういうところで、騒音、同時にそれが音ばかりでなしに振動をも含んでおる、こういうことを考えますと、これに対してもう少し調査ができていなければならないのです。おそまきながらこれからやろうと、こういう状態であります。ただいまお尋ねがありましたが、こういう点も、政府は抜かっていたのではないかとおしかりを受けてもやむを得ないかと思います。おそくても、いまこれから調査するということで、ひとつ御了承いただきたいと思います。
  101. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 これは調査につきまして、この騒音規制法は運輸省の管轄だった。この人体被害はやはり厚生省でございます。したがいまして、厚生省には下部機関として保健所がある。川西市には保健所がないと調査ができない、こういうことでございます。こまかいことでございますが、そういう小さなところにも――そこからほんとうにこの調査ができると思いますが、そういう点はいかがでございましょうか。
  102. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 これは両者でよく相談をさせますが、いま御指摘になりますように、やはり人体に関する問題は、保健所が当然研究すべきではないかと思います。したがいまして、厚生省が中心になるべきだろうと思いますが、両省でよく話し合いをさすつもりです。
  103. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 適切な処置をとっていただく、こういうことで了解いたしまして、次に紛争処理法案の中から、このたび基地公害を除外されたことは、私ども公明党にとりましては、先般百四十五カ所の基地の総点検をやりまして、非常に被害の甚大なるところを明らかにいたしまして、政府のほうにもお願いした。またこの問題と取り組んでもらいたい、こういうようにいたしたわけでございますけれども、そこで次の機会には、基地公害をはっきりと騒音とか今度の紛争処理の中に入れていただきたい。これをひとつ要望いたしまして、去る四月七日、床次長官がランパート会談を沖繩で行なわれましたが、沖繩の米軍基地周辺におけるところのジェット機の騒音の基地公害について話し合って、意見が完全に一致した、こういうことを報道され、これは当委員会におきまして、先般床次長官にこの問題をただしましたところが、基地周辺整備法と同じような考えでいくというように意見が一致したということを聞いたわけでありますが、それでは本土と同じような救済法でいくのか、これについてもう一ぺんはっきりと確かめておきたい。  また、沖繩の基地公害調査、これは具体的にどういうようにして行なっていくのか、その構想を示していただきたい。なぜかならば、私の知人で沖繩に住んでいる方ですが、二人のお子さんがいらっしゃいますが、二人とも神経衰弱ですか、それで非常に困ったような状態でありますので、この点について、ひとつ明らかにしていただきたいと思うのです。
  104. 床次徳二

    床次国務大臣 沖繩における基地公害の問題でございますが、過般ランパート高等弁務官と会談いたしました際におきまして、十分米側においても配慮せらるべきことを要求し、なお基地公害対策に対しましては、従来本土政府からのこれらの各種の施設に対する援助費の対象になっておりません。今後におきましては、そういうことに対しましても、ひとつ積極的に考えたらどうかということに関しまして、話し合いました。その趣旨につきましては、高等弁務官も十分了承いたしました。今後とも、具体的にいかなる措置をとるかということに対しまして、話し合いをいたすことになっております。  なお、従来の基地に対する損害は、米軍におきましては、各部隊ごとにそれぞれの損害に対しまして処置をいたすことになっておるのでありまして、この解決に対しましては、琉球政府等におきましても十分努力しております。  直接は、損害額等の問題につきましては、米軍外人賠償法がありまして、その委員会によりまして、賠償の金額を査定いたしまして、給付するという形になっておる次第であります。
  105. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 岡本君にお答えいたしますが、公明党、いち早く日本国内の基地の調査をやられた。そうして基地のあり方についていろいろ結論を出しておられる。これはひとり基地公害ばかりではございません。いろいろの問題点を指摘しておられる。この点では、政府もたいへん鞭撻を得たと思っております。その線とほぼ同一な形で、米軍ともただいま交渉しておる最中でございます。とにかく不用になった基地がいまなお残っているとか、あるいは基地の使用のしかた、もっとくふうがあれば、日本国民に与える迷惑も少ないのではないかとか、いろいろの問題があります。それらのものが、大体公明党が御指摘になりましたような形で、それぞれ私ども交渉しておる。この点はもう御承知だと思います。  そして、この問題をいわゆる一般公害と区別いたしまして、そうしていま基地周辺整備法その他がございますから、それによって処理しよう、こういうことでございますが、しかしこれとても、いまの法律でもう十分だ、かように申すわけではございません。なお、われわれはくふうすべきものがあれば、さらにくふうするつもりでありますが、ただいまのところ、一応済んでいるのではないかと思っております。一般の調査に対して心から敬意を表すると同時に、ただいま政府がそういう線に沿って種々交渉しておること、この点を御了承いただきたいと思います。  また、ただいま飛行機の爆音あるいは騒音についての伊丹の話がありましたが、この点は基地中心にして、しばしば問題を引き起こしておりますし、いままでのところ、いわゆる学校教育その他には支障ないように防音装置を整備するというか、そういう意味の予算は相当に出してまいりましたけれども、それ以外に、ただいま言われるような人体にどう影響するか、こういう問題が残っておると思います。したがって、それはさらにさらに調査する必要がある、こういうことであります。これらの点はいまのところで十分だと、私申すわけじゃございません。しかして、政府もなおなすべきものがあれば、具体的にその問題と取り組む、その姿勢だけはこの機会に明らかにしておきたいと思います。ありがとうございました。
  106. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 そこで、最後に一体化促進で同意というような、高等弁務官と床次長官の話が報道されておりますけれども、暫定的な特別措置として、戦争の打撃から立ち直る、これに非常に助成措置が必要であると思うのです。たとえば、山が裸になっておる。この山を回復するためには、たとえば北海道では四十五年もかかりますけれども、沖繩では二十年以下でできるんだ。また、二十四年間にわたる施策の欠陥、すなわち占領政策によるところの不利益、あるいはまた沖繩自体の持つところの地理的条件、こういうものに対して、開発事業団等のものをつくって、そして一体化の促進にあたっていただきたい。また、復旧の施策においては、沖繩全島が離島的環境に置かれている事情また台風が常襲する地帯にある、その他、本土から各県と同様な法規上の助成措置すなわち交付金の増額、こういうものをひとつきょうは要求をしておきまして、これで質問を終わりたいと思います。
  107. 赤路友藏

    赤路委員長 委員長のほうから一言だけ総理にお願いいたします。  ただいまの答弁の中に、「必要悪」ということばがありましたが、これはたいへん誤解を生むと思いますので、十分御説明を願う、真意をお聞きする時間がなかったようでありますので、後日、委員会のほうで、もう少しこの点御説明願いたいと思います。ひとつ御理解おき願います。  けっこうです。どうぞ。  この際、提出角屋堅次郎君より発言を求められております。これを許します。角屋堅次郎君。
  108. 角屋堅次郎

    ○角屋議員 本日、佐藤総理の出席を委員会として求められまして、先ほど来、島本、本島、岡本三委員から、最後の締めくくり的な質疑が展開されました。島本委員、本島委員のほうから、私に質問の予定があったようでございますが、総理に対する質問の時間の関係上、御質問が直接ございませんでしたので、本日は政府の三法案、私ども社会党の二法案、公明党の三法案を通じての最後の締めくくりの機会でございますので、委員長のお許しを得て、一言発言を申し上げたいと思います。  衆議院産業公害特別委員会におかれましては、今回の公害紛争処理の立法並ぜに公害にかかわる被害救済に関する立法関係の問題について、それぞれ政府案、社会、公明両党からの対案を通じまして、熱心なる審議が展開されてまいり、また、政府案に対しまして、与野党理事を通じまして、修正の折衝あるいは今後に対する附帯決議の注文、こういうことで、党派を越えて非常に熱心な御努力が展開されてまいりましたことにつきまして、社会党の提案者として、心から敬意を表するわけでございます。(拍手)  いま、委員長からも、特に佐藤総理に御指摘がございましたが、島本委員との質疑展開中における、公害は経済発展の必要悪であるという御発言については、社会党提案者といたしましても、非常に問題を感ずるわけでございまして、特にこの点については、一言申し上げたいと思うのでございます。  各位も御承知のとおり、三年前に公害対策基本法の論議が展開されました際に、政府案に対して野党各派から対案が提案され、慎重な議論がされたときに、当時の厚生大臣の園田さんは、公害対策はやはり人間の健康と生命を守る、これが至上命令である。したがって、このことを基本にして、公害の予防、公害に対する排除あるいは公害にかかわる被害救済、こういうものが行なわれなければならぬということが明言されたのでございまして、その点からいたしますならば、総理の御発言は、非常に国民に疑惑を招くと思うのであります。あくまでも、公害対策は、政府におかれましても、国民の健康と生命を守る、これを至上命令として推進すべきものである、かように私は確信をいたしております。  なお、本日、三法案についてそれぞれ処理がされるわけでありますが、今後の問題として、二法案関係について簡潔に若干申し上げますと、救済立法については、大気汚染水質汚濁にかかわる健康の被害救済のみならず、さらに公害全般、そして物的被害についても、さらに今後推進をされるように要望いたしたいと思いますし、特に医療費等の支給の問題に加えて、葬祭料あるいは生活保障の問題についても、前向きな考え方をもって対処してもらいたい、こういうふうに考えますし、紛争処理法案については、先ほど来議論国家行政組織法三条機関の問題、あるいは裁定制度の今後の前向きな検討等についても、積極的に検討してもらうように要望申し上げまして、社会党提案者としての意見の開陳を終わります。(拍手)
  109. 赤路友藏

    赤路委員長 これにて内閣提出公害に係る健康被害救済に関する特別措置法案公害紛争処理法案及び公共用水域水質保全に関する法律の一部を改正する法律案に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  110. 赤路友藏

    赤路委員長 この際、本日まで委員各位と十分協議をし、私の手元で起草いたしました内閣提出公害に係る健康被害救済に関する特別措置法案に対する修正案及び公害紛争処理法案に対する修正案並びに公共用水域水質保全に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案、以上三修正案を提出いたします。     ―――――――――――――     ―――――――――――――
  111. 赤路友藏

    赤路委員長 各修正案はお手元に配付してございます。  その趣旨について、御説明申し上げます。  まず、公害に係る健康被害救済に関する特別措置法案に対する修正でありますが、その第一点は、政府原案の指定地域に住所を有している者だけでなく、通勤者等についても、一定の要件のもとに公害疾病の認定を行ない、もって救済対象の道を講じようとするものであります。  第二点は、本法の附則に一項を起こし「政府は、公害対策基本法に規定する公害のうち、大気汚染水質汚濁以外の公害に係る疾病に関し、検討するものとする」旨の規定を新設しようとするものであります。  次に公害紛争処理法案に対する修正でありますが、その第一点は、中央公害審査委員会に専門の事項を調査させるため、非常勤の専門調査員二十人以内を置くことができるものとし、中央公害審査委員会に設けられる調停委員会または仲裁委員会一定の場合に行なう立ち入り検査については、この専門調査員をして補助させることができる旨の規定を新設しようとするものであります。  第二点は、都道府県及び政令で定める市に公害苦情相談員を置くこととし、それ以外の市及び町村は必要により相談員を置くことができる旨の規定を新設しようとするものであります。  公害苦情相談員は、苦情について住民の相談に応じ、その処理のために必要な調査等を行なうものとする規定を設け、もって苦情処理体制の強化をはかろうとするものであります。  次に、公共用水域水質保全に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正でありますが、その第一点は、国民の健康の保護を他の目的に優先させる公害対策基本法の精神にのっとり、目的の項の「産業の相互協和」と「国民の健康の保護及び生活環境の保全」の順序を入れかえようとするものであります。  第二点は、指定水域の指定要件についても、これに即して所要の修正を行なおうとするものであります。  以上が三修正案を提出した趣旨内容でございます。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。  これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。  修正案について、御発言はございませんか。――なければ、この際、公害に係る健康被害救済に関する特別措置法案に対する修正案及び公害紛争処理法案に対する修正案の両修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたしたいと思います。斎藤厚生大臣
  112. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいま提出されました公害に係る健康被害救済に関する特別措置法案に対する修正案につきましては、院議として御決定される以上、政府といたしましては、やむを得ないものと考えます。
  113. 赤路友藏

  114. 床次徳二

    床次国務大臣 ただいま御提案になりました公害紛争処理法案に対する修正案につきましては、院議として決定される以上、政府としては、やむを得ないものと存じます。     ―――――――――――――
  115. 赤路友藏

    赤路委員長 次に、公害に係る健康被害救済に関する特別措置法案及びこれに対する修正案、公害紛争処理法案及びこれに対する修正案、公共用水域水質保全に関する法律の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案を一括して討論に付するのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、これより採決に入ります。  公害に係る健康被害救済に関する特別措置法案を採決いたします。  まず、本案に対する修正案について採決をいたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  116. 赤路友藏

    赤路委員長 起立総員。よって、本修正案は可決されました。  次に、ただいまの修正部分を除く原案について採決をいたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  117. 赤路友藏

    赤路委員長 起立多数。よって、公害に係る健康被害救済に関する特別措置法案は修正案どおり修正議決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  118. 赤路友藏

    赤路委員長 次に、本案に対し、自由民主党、日本社会党、民主社会党及び公明党を代表して、河上民雄君外三名より、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者より趣旨説明を聴取することといたします。河上民雄君。
  119. 河上民雄

    ○河上委員 私は、自由民主党、日本社会党、民主社会党及び公明党を代表いたしまして、公害に係る健康被害救済に関する特別措置法案に対する附帯決議を付すべしとの動議について御説明いたします。  まず、案文を朗読いたします。     公害に係る健康被害救済に関する特別措置法案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行にあたり、公害対策に万全を期するためには、公害の予防、公害の排除に関する総合対策を強力に推進することが先決であることを充分自覚すると共に、公害に係る被害救済についても、公害被害者の立場に立って、救済制度を一層整備充実するよう、次の事項の実現に努力すべきである。  一、公害に係る健康被害救済は、医療費等の支給に止っているが、今後速かに葬祭料等をも含め救済内容を拡大すること。  二、医療費等の支給にあたり、所得制限等については相当議論の存するところであり、公害救済の本旨からみて従来の救済に関する行政的措置を基礎として実態に即した運用を図ること。  三、費用の支弁に関する事業者の拠出については、公害に関する事業者の責務にかんがみ、今後これが運営については適切な措置を講ずること。  四、公害に係る物的被害救済制度及び生活保障について、具体的措置を前向きに検討すること。   右決議する。  以上でありますが、この動議の趣旨につきましては、案文のうちに尽くされておりますので、省略させていただきます。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。
  120. 赤路友藏

    赤路委員長 以上で説明は終わりました。  採決いたします。本動議のごとく決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  121. 赤路友藏

    赤路委員長 御異議なしと認めます。よって、本案は附帯決議を付することに決しました。     ―――――――――――――
  122. 赤路友藏

    赤路委員長 次に、公害紛争処理法案を採決いたします。  まず、本案に対する修正案について採決をいたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  123. 赤路友藏

    赤路委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除く原案について採決をいたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  124. 赤路友藏

    赤路委員長 起立多数。よって、公害紛争処理法案は修正案どおり修正議決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  125. 赤路友藏

    赤路委員長 次に、本案に対し、自由民主党、日本社会党、民主社会党及び公明党を代表して、河上民雄君外三名より、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者より趣旨説明を聴取することといたします。河上民雄君。
  126. 河上民雄

    ○河上委員 私は、自由民主党、日本社会党、民主社会党及び公明党を代表いたしまして、公害紛争処理法案に対する附帯決議を付すべしとの動議について御説明いたします。  まず、案文を朗読いたします。     公害紛争処理法案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行にあたり、累積する公害  紛争処理に充分な実効を挙げるため、次の事  項について積極的に対処し、公害紛争処理制度  の整備充実に万全を期すべきである。  一、今回の紛争処理制度においては、和解の仲   介、調停、仲裁採用しているが、公害紛争   が多くの場合公害発生源の明定、因果関係の   究明等に複雑困難な公害固有の特殊性の存す   ることを配慮し、今後裁定制度採用等と国   家行政組織法第三条機関への移行を前向きに   検討すること。  二、本法から所謂基地公害を除外することにつ   いては、相当議論の存したところであり、今   後本法との関連において、既存の防衛施設周   辺の整備等に関する法律等をも含め真剣に再   検討し、所謂基地公害の防止等の対策に遺憾   なきを期すること。  三、公害紛争処理に関する議事は、非公開を旨   としているが、公害の社会性等からみてこれ   が運用に適切な配慮を加えること。  四、公害紛争処理の円滑公正なる実施を図るた   め、中央、地方を通ずる機構、人員の整備、   予算の充実等について充分配慮すること。   右決議する。  以上でありますが、この動議の趣旨につきましては、案文のうちに尽くされておりますので、省略させていただきます。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。
  127. 赤路友藏

    赤路委員長 以上で説明は終わりました。  採決いたします。  本動議のごとく決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  128. 赤路友藏

    赤路委員長 御異議なしと認めます。よって、本案に附帯決議を付することに決しました。     ―――――――――――――
  129. 赤路友藏

    赤路委員長 次に、公共用水域水質保全に関する法律の一部を改正する法律案を採決いたします。  まず、本案に対する修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  130. 赤路友藏

    赤路委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除く原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  131. 赤路友藏

    赤路委員長 起立多数。よって、公共用水域水質保全に関する法律の一部を改正する法律案は修正案どおり修正議決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  132. 赤路友藏

    赤路委員長 次に、本案に対し、自由民主党、日本社会党、民主社会党及び公明党を代表して、河上民雄君外三名より、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者より趣旨説明を聴取することといたします。河上民雄君。
  133. 河上民雄

    ○河上委員 私は、自由民主党、日本社会党、民主社会党及び公明党を代表いたしまして、公共用水域水質保全に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議を付すべしとの動議について御説明いたします。  まず、案文を朗読いたします。     公共用水域水質保全に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、公共用水域水質保全がわが国の公害対策上極めて重要な課題である実態に鑑み、本改正案の成立に伴い、次の事項の実現を積極的に推進し、もって公共用水域水質保全に万全を期すべきである。  一、公共用水域水質保全するため、一層公害の予防的対策を重視しつつ、指定水域の指定及び水質基準の設定を促進すると共に、水質の汚濁に関する環境基準を速かに決定すること。  二、最近における公害被害実情に照らし、重金属物質に係る水質の汚濁について、法的措置も含めて防止対策強化を図ること。  三、公共用水域水質保全に万全を期するため、一層機構、人員、予算等の充実を図ること。   右決議する。  以上でありますが、この動議の趣旨につきましては、案文のうちに尽くされておりますので、省略させていただきます。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。
  134. 赤路友藏

    赤路委員長 以上で説明は終わりました。  採決いたします。  本動議のごとく決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  135. 赤路友藏

    赤路委員長 御異議なしと認めます。よって、本案に附帯決議を付することに決しました。  この際、各附帯決議について、それぞれ政府当局より発言を求められておりますので、これを許します。斎藤厚生大臣
  136. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 公害に係る健康被害救済に関する特別措置法案の採決に際して決議せられました附帯決議につきましては、その趣旨を尊重して善処してまいりたいと存じます。
  137. 赤路友藏

  138. 床次徳二

    床次国務大臣 公害紛争処理法案に対しまして附帯決議を付せられましたが、その御決議につきましては、御趣旨に沿ってできるだけ努力いたす所存でございます。
  139. 赤路友藏

  140. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 経済企画庁といたしましては、今後における水質保全行政の推進にあたりましては、ただいまの附帯決議の御趣旨を十分尊重いたしまして、公共用水域水質保全に万全を期したいと考えております。     ―――――――――――――
  141. 赤路友藏

    赤路委員長 ただいま議決いたしました三法案に関する委員会の報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  142. 赤路友藏

    赤路委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  143. 赤路友藏

    赤路委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時五分散会      ――――◇―――――   〔参照〕 昭和四十四年六月二十日(金曜日)  産業公害対策特別委員打合会   午前十時三十六分開議
  144. 赤路友藏

    赤路委員長 これより産業公害対策委員の打ち合わせ会を開きます。  公害に係る健康被害救済に関する特別措置法案及び公害紛争処理法案関係法案について、ただいま経済団体連合会公害対策委員会委員長大川鉄雄君、汚水対策全国漁業者協議会事務局長浅原源八郎君、四日市市公害認定患者会代表委員山崎心月君、東京大学教授金澤良雄君、東京都立大学教授野村好弘君、日本弁護士連合会公害対策委員長関田政雄君に御出席を願っております。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  本日、御多忙にもかかわりませず、わざわざ御出席をいただきましてまことにありがとうございます。これから各案につきまして御意見を承りたいと存じますが、皆さんには、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお伺いいたし、参考にいたしたいと存じます。  なお、話の整理の都合上、御意見をお述べ願います時間は、申しわけありませんが、大体お一人十分程度として、御出席の各位の御意見をお聞きしたあとで、委長の方々からお尋ねがあるかと思いますので、それに対しましてはお答えを願いたいと思います。  それから順序としましては、最初に大川鉄雄君、次に浅原源八郎君、山崎心月君、金澤良雄君、野村好弘君、関田政雄君の順序でお願いをいたします。  まず、大川鉄雄君よりお願いをしたいと思います。
  145. 大川鉄雄

    ○大川鉄雄君 私、大川鉄雄でございます。  まず、紛争処理法案から申し上げたいと思いますが、公害紛争の適正かつ迅速な処理につきましては、経団連といたしましても、以前から現行の都道府県知事によります和解の仲介制度では不十分なところもございますので、国としての紛争処理機関を新設されることがぜひとも必要であるということを要望してまいっておりましただけに、今般かかる制度がようやく発足の運びにあることは大いに喜ばしいことであり、また、私どもとしては、政府原案に基本的に賛意を表するものであります。  そこで、今後の運用等について、若干の要望を申し述べたいと存じます。  まず、この中央公害審査委員会及び都道府県の公害審査会の委員の構成についてでございます。  同法案では、第三条及び第十三条で、公害にかかわる紛争処理機関として、それぞれ中央公害審査委員会と都道府県の公害審査会を設置する旨規定されておりまして、それらの委員は、人格が高潔で識見の高い方のうちから、両議院の御同意を得て、総理大臣が任命されるということに相なっておりますので、当然委員構成は公正なものになるということを期待をいたしておりますが、この際あえて一、二、私どもの強く要望を申し上げておきたいことがございますので、それを簡単に申し上げたいと存じます。  中央の公害審査委員会委員の構成にあたっては、これは人格識見の十分な方をお選びいただくということではありますが、やはり産業界にはいろいろな事情もありいたしますので、産業界の実態を熟知をなすっておいでで、しかも公害に関連した技術問題、これも日進月歩でございますが、同時に技術的に、科学的にこれが防除できるという見通しを十分につけていただかないと困るのではないかというような感じもいたしますので、技術的問題に精通した方を委員にお選びをいただきたい、かように存じます。そして公正にして科学的審査が十分尽くされることが、審査を権威あるものとする意味からも、ぜひとも必要でありまして、いたずらに政治的に取り扱われるというようなことのないよう、十分な配慮がなされるべきであろうと存じます。  また都道府県の公害審査会につきましても、この場合は特に地元の政治的圧力やまた一方的な利害に影響されがちな懸念もございますので、そのようなことのないよう人を選んでいただき、かつはまた、審査会の運営等にあたって十分の配慮を願いたい、かように存じます。  仲裁、調停につきましては、本法案仲裁、調停制度が明文化されておりまして、それぞれ立ち入り検査を行なうことができるものとなっております。立ち入り検査に際しましては、万が一にも企業の生存にかかわるような企業機密の保持が侵されるというようなことのないよう、運営にあたっては厳格な基準を設けるなど、特別な御配慮を願って、この立ち入り検査というものが、あり得べきことではございませんけれども、乱用におちいるというようなことのないよう、その防止に特段の御配慮を要望いたす次第でございます。  また、調停は、本来当事者双方合意のもとにこれは行なわれるべきものであろうかと存じます。しかも双方がほんとうに腹を割って、胸襟を開いて自由に話し合うということがスムーズな解決をはかるという上で不可欠の要件ではないかと思います。調停案を含めて、調停の手続についての非公開の原則がとられておるということよも、おそらくはこの趣旨からであろうかというふうにわれわれは理解しております。この点については一部に御異論もあるというように承りますが、本制度の実効ある運用をはかるためにも、あくまでこの基本線が厳守されるように要望いたします。  次に、公害に係る健康被害救済に関する特別措置法案について申し上げます。  公害被害者の迅速な救済をはかる上で、このような制度をつくる必要は、産業界でも実は早くから認識をいたしておりました。しかもその際、これは財界全体としての社会的責任と申しますか、そういうような見地から、救済に自主的に協力するという態度を早くから実は固めておった次第でございます。本法案についても、全面的にこれは賛成をするものでございますが、協力の限度を、救済費用の二分の一――これはわれわれ産業界が負担する限度でございますが、二分の一といたしましたことは、行政上の救済に民間が協力を申し上げるという趣旨からいっても、これは限度であろうかと考えております。  なお、法律施行の暁には、必ずこの拠出の責任を果たし得ますよう、目下民間側の協力拠出機関公害対策協力財団と申しますか、そういう財団の設立の準備をすでに固めておるというような現在の段階でございます。  右、申し上げます。(拍手)
  146. 赤路友藏

    赤路委員長 ありがとうございました。  次に、浅原源八郎君。
  147. 浅原源八郎

    ○浅原源八郎君 汚水対策全国漁業者協議会の浅原源八郎でございます。  私は、本日は全国の漁民の代表として発言させていただく次第であります。  本日、私の述べます意見は、公害紛争処理法案並びに公害に係る被害救済に関する特別措置法案、この二法案に限られているわけでございまするが、この問題を論ずる場合、私どもとしましては、その前提として、その背景として、水質汚濁による漁業の被害状況というものを一応申し上げておく必要がある、かように存ずる次第であります。  公害対策基本法が制定されようとする時点におきまして、一昨年の五月九日、われわれ全国の漁民は、この公害対策基本法こそいままで多発、激発しておりまするところの水質汚濁による漁業被害を防止し、排除することのできる、そういうはっきりとした目的を持った基本法として、政府、国会におかれましても十分御慎重な御審議を尽くしていただきたい、かような悲願をもって、全国漁民大会を開催いたしました。国会の先生方にも御臨席をいただきました上、決議をいたしたのでございます。  その決議文の内容を申し上げることは時間の関係上とてもできませんので、一体何を目標にわれわれはそのような漁民大会を開いたか。要望事項の第一点は、公害対策基本法の制定にあたっては、一、立法の目的を明確にして、国民の健康と農水産資源の保全において産業調和の表現を削除されたい。二、事業者の責任をより明確にし、無過失賠償責任を明文化されたい。三番目に、被害者の保護を目的とする強力な行政委員会的な機関を設されたい。四番目に、被害者救済に関する損害補償制度を確立されたい。この四点を基本的な要望事項として、政府、国会にお願いを申し上げたのであります。自来、われわれは全国の漁民の総意に基づく決議をもって、汚水公害追放の憲法として、この四つの目的を貫徹するために、今日まで運動を続けてまいっておるのでございまするが、本日の委員会で、私は主として水質保全法の改正案に対する意見を主として述べさしていただきたかったのでありまするが、これがはずされましたので、先ほど申し上げましたような意味において、この公害紛争処理法案の背景をなす、水質汚濁による漁業被害実態を簡単に申し上げたいと存ずるのであります。  まず第一番にあげられますことは、皆さんもうすでに御承知の、微量重金属による水俣病あるいはイタイイタイ病等によって生じている、人の生命を奪うというおそるべき災害、これは人の生命、健康をむしばむ、奪うという、まことに許すべからざる事件でありますが故に、マスコミ等における、あるいは世論等も非常な高まりを見せまして、このような公害が現在の社会に存在することは許されないというきびしい態度をとっているわけであります。それはそのとおりでございます。しかしながら、そのほかに、一般国民の目の届かない漁業被害というものがどれほどあるかということを、あらゆる方面の資料をもとにいたしまして、私どもが推定いたしますと、大体全国に三千の漁業組合があるのでございますが、その三千の漁業組合のうちで千四百の組合に、し尿、工場排水、油濁、都市下水等による漁業被害が発生しているのであります。千四百の組合にたった一つだけというのはめったにないのでございます。ただいま申し上げましたような各種の漁業被害が、重複いたしまして発生しているわけでございますから、その件数たるや、おそらく三千をこすのではないか。金額にいたしますると、大体百二十億から百三十億に達する漁業被害が生じているわけでございます。したがいまして、私どもはこの人の健康、命をむしばむその原因をなす水質の汚濁、それからこのようなばく大な件数、金額に及ぶ漁業被害原因をなす水質汚濁は、断固としてこの際、この公害紛争処理法案並びに公害に係る被害救済に関する特別措置法案、これは社会党御提案の法案でございまするが、この法案によって、ぜひとも救済していただきたい。防衛し、排除していただきたい。これがこの冒頭に陳述いたしました漁民大会の決議事項第三、第四の問題を解決する唯一のものであるということを私どもは信じている次第であります。  そこで、時間もございませんので、私どもはいまさら当委員会におきまして意見を申し述べるという必要を認めていないほど、常にこの問題を取り上げ、政府、国会の先生方に対しまして、恒常的な運動、要望を申し上げている次第でございまするので、その要望事項を逐条的に御説明申し上げることでもって、私ども全国漁民の意見の開陳といたしたい、かように考えるわけでございます。  私どもは法律専門家でも何でもありませんので、そういう専門的なことは、話せといっても話しきれないのであります。非常に抽象的な、あるいはまた常識的な発言になると思いまするが、それを諸先生方並びに関係の各省について消化してくださいまして、適当に修正すべきところは修正し、慎重に御審議の上で、可決、御成立をお願い申し上げておきたい、かように考えます。  まず第一点は、中央公害審査委員会、都道府県公害審査会の権限を一そう強化されたいということであります。いわゆる国家行政組織法第三条機関にすべきか第八条機関にすべきかということが、国会の御審議過程におきましても大きな問題点になっていると承っておりまするが、この私どものお願いを法律的に御解釈くだされば、これは国家行政組織法案三条の性格を持った、いわゆる公正取引委員会のような、ああいう強力な権限、機能を持った行政委員会というものであっていただきたいということが、私どものお願いの第一点でございます。  万一、どうしてもそれが不可能とするならば、第二番目に、中央公害審査委員会あるいは都道府県におきまする公害審査会のもとに、それぞれの分野にわたる調査専門委員会のごとき機関を付置されたい。これはただいまも申し上げましたように、三千件にも及ぶ漁業被害というものが、将来とも紛争処理機関の中にのぼってくるわけでございましょうと思いまするが、それを調査するということはたいへんなことでございます。あるいはまた、科学的に正確な判断をするということも、よほど権威のある調査専門機関を設けなければこれは不可能なことであって、単に十五名や二十名からなる、そういうお茶を濁したような委員会の事務組織では、とうていこの公害の問題を抜本的に処理、解決するということは望むべくもないことであろうと存じます。  三番目に、委員会、審査会に独立する事務局を付置し、その機能の整備をはかられたい。これは御説明を申し上げる必要はないと思います。  四番目に、「仲裁に付する旨の合意に基づくものでなければならない。」というこの仲裁の申請規定を、この制度が能動的に調停し仲裁し得るよう、十分な御検討を加えていただきたい。  五番目に、立入り検査の場合、仲裁委員は、その属する専門調査委員会の中から、当該紛争にかかわる専門調査委員を帯同することができるように規定されたい。当該紛争にかかわるというのは、大気汚染の場合には大気汚染専門家、振動の場合には振動にかかわる専門家水質汚濁の場合には水質汚濁の権威者、専門家と、こういうことでございます。  六番目に、委員会、審査会はその所掌事務の遂行を通じて得られた公害の防止に関する施策の改善について、内閣総理大臣または関係行政機関の長、当該都道府県知事に対し意見を述べ、または勧告し、一定の期間を付してその施策の改善等について回答を求めることができるように明文化されたい。  八番目に、審査会は臨海のすべての都道府県に置くよう強力に指導されたい。任意設置でなく――任意設置ということは、これはだめだと思うのであります。その証拠には、従来水質保全法で和解仲介の制度がありました。これは何と申しますか、十五名以内の候補者をあらかじめ都道府県知事が任命しておきまして、事件が発生するごとに、和解というか、申し立てがあった場合に、臨時にその中からその水質保全なら水質保全関係のある五名の委員を任命しまして、これによってその和解仲介を行なわしておったのでありまするが、昭和三十三年に水質保全法が成立してすでにもう十一年を経過しておるわけでございまするが、この和解仲介の制度にのぼってきた件数はわずかに三十数件にすぎない、こういうことであります。これはなぜかと申しますると、いわゆる被害住民あるいは被害漁民が、こういう制度があるということを知らないということなんです。だから、これはあくまでもやはり今度の都道府県に設ける公害審査会は常設の審査会、それがもしできないとするならば、臨海の都道府県だけには、強い行政的指導でもって、常設の公害審査会を置くようにしていただきたい。それから……。
  148. 赤路友藏

    赤路委員長 浅原さん、時間がもう七分ほど過ぎているのですから……。
  149. 浅原源八郎

    ○浅原源八郎君 では、これで終わります。  最後に、この公害にかかわる被害救済の制度でございまするが、私どもは人の健康にかかわる被害のみならず、漁業被害救済につきましても、この際先生方の特別の御配慮によりまして、この貧しい零細な沿岸漁業者を救ってくださるようなあたたかい国の御配慮をお願いいたしまして、私の陳述を終わらしていただきます。(拍手)
  150. 赤路友藏

    赤路委員長 どうもありがとうございました。  それから、皆さんにちょっとおはかりしますが、大川鉄雄さんは十一時三十分までしか時間がないわけです。それから金澤先生と野村先生はともに十二時ということになっており、時間がないのですが、あと金澤先生と野村先生にお話を承りますと、もう大川さんの時間になってしまうので、ちよっとここで何分間か、大川さんに先に何かお聞きしたい点がございましたら、それのほうがいいと思いますが……。  〔島本委員「そのほうがいいですね」と呼ぶ〕
  151. 赤路友藏

    赤路委員長 先生方どうでしょうか。それで差しつかえございませんか――どうもまことに相済みませんが、それじゃ大川さんに、そう時間がございませんから、だれかお聞きしたい点がありましたら……。   〔島本委員「では私から」と呼ぶ〕
  152. 赤路友藏

    赤路委員長 それじゃ島本さん、お聞きください。
  153. 島本虎三

    島本委員 それじゃ、大川さんにお伺いします。いま救済の問題で、特に拠出基金の問題に関係しまして、二つの点でちょっとお伺いしておきますが、これは責任体制が法人として明確でないままに、財界から拠出する、またこれも政府は責任を持つ、こういうことになっておりますが、もしこれ途中で、拠出が出ない場合には、患者被害者へのこの資金の行き詰まりということが考えられるのですが、政府は間違いないと言う。しかしながらまずその法的な体制が整っておらないままにこれをやる場合には、もしものことがないということは、われわれとうてい考えられないわけです。これはほんとうにいまの説明では、財界は積極的な姿勢を持つから間違いない、こういうようなことで、一応は安心しました。しかしやはりこれはもっと明確な責任体制じゃない。法人体制をしいておいて、間違いない拠出の母体になっておいたほうがよろしいのじゃないか、このように思いますが、この点についての御意見を伺っておきたいと思います。  もう一つは、以前は八分の五ということで拠出されることは反対なすっておりましたが、今度二分の一ということでよろしいということ、そうすると、八分の五と二分の一は八分の一しか違わないということになるのですが、この八分の一で財界がつぶれることもなかろうと思いますが、この辺もわれわれ了解しかねておりましたが、この辺の考え方等について、ちよっとお漏らし願いたいと思います。
  154. 大川鉄雄

    ○大川鉄雄君 お答えを申し上げたいと思います。  この公害被害者に対します対策協力財団、これは実は経団連自身が責任をもって公害事業団と御契約をするということが、あるいは本道かもしれませんけれども、御承知のように社団法人でございますので、理事の各位が数多いし、それらのみんな一々御同意を得ないとそれができかねるということから、便宜経団連の中忙そういった財団をつくる、そうして公害防止事業団にはその財団が御契約をして、必ず毎年の救済基金の二分の一を公害防止事業団にお渡しする、かようなことで、一番確実な方法ということになりますと、ある原資を積み立てまして、そしてそれの利息でまかなえるようなものをつくれば、これが一番完ぺきかと存じますが、あるいはそういうようなことも、将来必要と見られればやらざるを得ないかと存じます。しかし何ぶんにも、そうなりますと、相当の大きな金額にもなります。それで経団連が、これは面目にかけてもギャランティして、決して間違いを起こさないようにいたそうということで、ただいま申し上げたような方式をとって、とりあえず何年分かのものを集め、またそれに対して、年々に起こります特定のものに対しましては、それに関連する企業から一々の寄付を仰ぐということで、間違いなく運営できるものと考えて実はスタートをし、また経団連の理事会その他にも、さような趣旨は御説明をして、この財団設置に踏み切った次第でございます。 それから、先ほどの八分の五、二分の一という点につきましては、実は八分の五という御提案がありました当時、これは大気汚染によるものがかなり問題が多く相なるのではないかというような感じも私自身持っておりましたし、御承知のように、一番問題の起こりやすい東京、大阪、あるいは横浜に至る京浜、千葉にかけての問題、大阪の近郊等というようなものに相なりますと、実は公害病というものは、SO2の存在量をもって汚染の尺度とはなすっておいででありますが、実際にこれが病気に直結するという問題になりますと、多多疑問もありますし、やはりその間に浮遊します粉じんでありますとかあるいは炭水化物、そのほかCOもございましょうし、いろいろな影響がそこに出てくるのではないか。そういうようなことも考えますると、これは悪い表現かもしれませんが、いわゆる都市公害的なニュアンスのあるものに関しまして、ことにある特定の場所で、どうも自動車の交通が非常にひんぱんなところで起こったというような場合には、これは産業側は関係がないので――大きな意味からいえば、これはやはり産業と間接に関係はございますと思いますけれども、そういうような次第で、必ずしも産業側が八分の五と――これはほんとうに責任が明らかにされるものならば、八分の五も八分の六も、これはあるいはもう全部それを負担しなければならぬということも当然かと存じます。しかし一般公害と相なりますると、その原因をほんとうにきわめ尽くす手段が現段階では非常に困難ではないか。さようなことから、八分の五という御意見には、私は絶対にそれは受け入れられないという態度で終始いたしました。しかし、しからば二分の一との差は幾らもないじゃないかというただいまのお話は、数字においてはまことにごもっともでございますけれども、私ども二分の一と申しますのは、結局その救済費用を折半して持つという趣旨でございまして、これは多くても少なくてもまあ半分持ちで、産業側も大いに御協力を申し上げるということが必要ではないかということで、経団連内部も、特にこまかいああのこうのという話を、ひとつこの際は、まあ折半して持つということで二分の一と、これは文章に書きますと同じでございますが、どうもその気持ちはだいぶ違いますので、その辺おくみ取りを願いたいと存じます。
  155. 赤路友藏

    赤路委員長 あと時間がないから、ちよっちよっとやってください。  岡本君。
  156. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 まことにあれですが、先ほど島本委員からも、途中でとまってしまっては困るじゃないかというお話もございましたが、これについては、大体公害発生源に近いところから拠出するのだというようなお話がありましたが、寄付の強制ということもいまはできませんけれども、大体この拠出金を出す企業といいますか、その対象は、発生源ときまってなくても、発生源らしきところか、あるいはまた資本金によるのか、あるいはまた利益を対象にするのか、あるいはまた、ただ良心的に出すのか、こういうような点をひとつ……。
  157. 大川鉄雄

    ○大川鉄雄君 非常にデリケートな御質問でございますが、これは水汚染や何かによるものでございますと、これは原因を追及するのに非常に便利でございます。したがって、関連の企業に十分な御協力を願うということは可能だと信じております。しかし、この際は、実は都市公害的なものが相当にある以上は、直接公害発生企業でなくても、例を申してはなはだあるいは適当でないかもしれませんが、証券業界あるいは銀行、保険会社というようなところも、これはやはり産業あっての会社でございますし、それらのいろいろな都市公害的なものの原因には皆さんおなりになるんで、そういう方々にもこの際は応分の御寄付を願いたいということで、御了解を願いつつある次第でございます。しかし、これは年々出てまいります都市公害的なもの以外に、やはり相当密接な関係のあると考えられますもの、あるいは大気汚染につきましても世間の注目を引いております、たとえば石油の業界でありますとかあるいは鉄鋼、電力、そういうようなところは、相当の大きな資本も擁しておられますし、大気汚染には、ややベースラインを上げていくという上で相当の寄与をされているというようなたてまえから、相当の御寄付を願わざるを得ないんではないか。ただし、利益率とか資本金とかいうことで一々分類をしてお願いをするということではございません。しかし同時に、幸いにして相当の御協力を願い得るというようなところがございましても、何かそれが公害の直接原因につながる感じを持たれますことは、相当踏み込んだ御協力をむしろ阻害するということになりますのはまことに困るので、その詳細の点はひとつしばらくお預けをいただいて、大要はただいま申し上げたようなことでまいりたい、かように存じております。
  158. 赤路友藏

    赤路委員長 それじゃ、折小野さん。
  159. 折小野良一

    ○折小野委員 経団連におきましても、公害対策にだんだん力を入れてきていただいておるのですが、現実公害被害が発生をし、それから公害に関する紛争があとを断たない、したがってこういう法案をつくっていかなければならない、これが現実の姿であります。特にいろいろな公害が非常に激化していっておりますその背景にありますのは、やはり地域住民の産業界あるいは企業に対する不信感、これが非常に大きいと思うのです。今日、私一部お話を聞いたところで、電力関係あたりで立地に非常に苦労しておられるということは、やはり公害に対する住民の不信感、これが非常に強いわけです。こういう点から考えますと、やはり公害が現在のような状態推移いたしますと、今後の産業の基盤をゆすぶるようなことになる。結局いわゆる産業の健全な発展というものも期せられない、こういうことになるわけであります。そういう面からいたしますと、いろいろな対策を講じていただいておりますが、さらに一そう、産業界あるいは個々の企業におきましても、公害に対する認識をより一そう高めていただくことが、これは社会的な責任から申しましても、また企業の健全な発展という面から見ましても、必要なことであるというふうに考えます。したがって、公害の当面の対策についていろいろ御検討いただくこと非常にけっこうでございますが、と同時に、経団連全般、わが国の産業界全般が、もっともっと公害に対して強く深い認識をしていただくということが非常に大切だと思うのであります。そういう面について、経団連として何か具体的な方法をお考えになっておられますか。またそういう面についての経団連としてのお考え方、ございましたら、簡単にお聞かせいただきたいと思います。
  160. 大川鉄雄

    ○大川鉄雄君 ただいまの公害に対する考え方、これは電力さんにおきましても、その地域住民の不信感というようなお話もございましたけれども、最近は重油専焼の発電所においては二百メートルの煙突を立て、しかもその排気のガステンパラチャーを、これは燃料経済からいえば多少のロスはございましても、幾ぶん温度を高目に放出をする、それによって熱による拡散をできるだけはかろうというようなことをやられておりますし、これはその土地よりも、大体普通の風速から申しますと、十七、八キロ、二十キロ辺でこれは設置をするというような計算方式もございますが、そういうことで相当拡散をはかるというようなこともやっておりますが、いまの大気汚染につきましては、特に日本で問題は、亜硫酸濃度を下げる、言いかえれば、重油の中の硫黄分をできるだけ少なくするということに重点がかかっておるのではないか……。
  161. 折小野良一

    ○折小野委員 具体的な対策につきましては、大体承知いたしておりますので……。
  162. 大川鉄雄

    ○大川鉄雄君 それで、ただいまの問題点、経団連は御承知のように各種の方がお集まりのところでこざいますので、これ一列には申し上げられない。従来一部においては、相当公害対策というものにクールな業界も当然ございました。それで、かねてから私は、トップクラスの学者の方に、これは政府が任命していただいて、オーソライズされた、これはもう化学といわず、電気、物理、そのほか法律も経済も医学も、あらゆる面のトップの学者の方々にお集まりをいただいて、将来公害というものに対処するのにどうすべきか、またこの問題をどう解析し、どう解釈していくべきかというような体系をぜひつくってもらいたい。それに対しては、また経団連も応分の費用を投じてもいいんじゃないか。しかし政府が任命されるのでないと、一般にオーソライズされませんし、それと、われわれがかねて大企業の間でいろいろなPRをしましても、これは申さば耳をふさがれておるというような状態でございますので、何かそうしてほんとうに科学的にこの公害問題を取り上げるということに、ぜひ経団連をあげてそういった機運をつくり出していただきたいということは、かねて二、三年前からたびたびそれは申し上げております。しかし初めはなかなかお耳に入らなかったようでございますが、今回のこの財団に対する寄付金や何かも幾ぶん効果あったのか、妙な言い方でございますが、最近は特にそういったことをぜひ考えるべきであろうというようなお気分がだいぶ一般に広まりつつあるように存じます。そしてまた、各公害に直接つながるような企業におきましては、これはもうだいぶ以前から、いままで問題が起こるとそれを防衛するというような態度ではとてもいけませんので、積極的にそれを何とか解決し、またベストの得られる結果はこうであろうかということを十分見通しをつけて一々御折衝をするというような形に、おもな企業ではそういうかっこうに相なっております。  その程度で、まだなかなか御満足は得られる状態ではないかもしれませんが、努力はいたしておりますので、お含みを願いたいと思います。
  163. 赤路友藏

    赤路委員長 どうも大川さん、時間が三分ほど過ぎました、申しわけありません。どうぞひとつ……。どうもありがとうございました。     ―――――――――――――
  164. 赤路友藏

    赤路委員長 それでは、引き続いて金澤先生、お願いいたします。
  165. 金澤良雄

    ○金澤良雄君 それでは、まず公害紛争処理法案について申し上げます。  公害にかかわる紛争は、基本的には裁判所による司法的紛争処理ということになろうかと思うのでございますが、裁判所による司法的紛争処理にはやはり相当時間がかかる。それから因果関係の究明というものが、公害の場合には非常にむずかしい問題もございまして、なかなかひまもかかるし金もかかるというのが実態でございます。それからまた現実を見ますと、この公害紛争問題が起こりますと、まず行政庁に持ち込むというのがわが国の実態のように、われわれ調査した上では思われるわけでございます。  こういうことを前提といたしますと、何らかの行政的な紛争処理の制度を整備しておくということは確かに好ましいことだと思われます。そこで、今回の公害紛争処理法案は、そういう要請にこたえるものとして定められておりますので、基本的に賛成したいと存じます。  こまかいことは省略いたしまして、ただわれわれがこれに期待するところのものは、公害紛争処理というものは、ただ金を出せばよい、損害を賠償すればよいというような性質のものでないものが非常に多いわけで、つまりいろいろの行政措置その他と関連して、そこに初めて効果的な紛争処理が行なわれる性質のものが多いのでございます。できるだけそういうような広い意味での今後の紛争処理のやり方を、この中央委員会なり審査会に期待したい、こういうことでございます。なお、それに関連して、四十八条に、内閣総理大臣または関係行政機関の長に対して意見の申し出ができることになっておりますが、これは非常に重要な規定であると私どもは解釈しております。先ほど申しましたような意味で、現実紛争処理の問題を担当する機関がそこで――処理のしかたに関しましていろいろ手法がある。その手法について、実体的な行政権限を持っている機関に十分にそれを反映して、全体として合理的な紛争処理のしかたをしていかなければならない。いわば前向きの紛争処理をやっていかなければならない。これが運営に関する私の希望でございます。  次に、公害に係る健康被害救済に関する特別措置法案について申し上げます。  この公害にかかわる健康被害救済につきましても、これは基本的にはやはり民事訴訟によって解決されるべきものであるということは間違いないのでありますが、先ほど申しましたように、公害の問題は因果関係の究明その他で非常にむずかしい問題を含んでいるわけで、したがいまして、そういうことを待っておられない。現にそこに発生している被害をどうするのかというのが、この法案の出てまいりました背景かと思います。したがって、その被害をどうするか。何とかそれを救済しなければならない。そこで、これを理屈づけるのは非常にむずかしいのでありますが、結局、公害対策基本法にあるところの社会的責務というところに根拠を求めまして、国、地方公共団体並びに経済界が応分の負担をする。その費用によってこの問題を解決していこうということは、まことに一面非近代的なように見えますけれども、またある意味におきましては、非常に知恵のある解決のしかたではないかというふうに思っております。  なお、この救済対象でございますが、健康被害に限定されておる、この点でありますが、先ほど申しましたように、つまりともかく現に起こっておる被害を、外国にも例のないような特別の救済制度をこのたび設けるわけでございますが、そういうものに乗っけるのは、緊急度のあるものにまず限定していくということが望ましいのではないかと思われます。漁業、農業などの生業被害というものもできるだけ救済していかなければならないと存じますけれども、この点につきましては、できるならば公害紛争処理の制度等を十分に活用いたしまして、解決がはかられていくということが望ましいと存じます。  以上で私の発言を終わります。
  166. 赤路友藏

    赤路委員長 どうもありがとうございました。  それでは、引き続いて野村先生。
  167. 野村好弘

    ○野村好弘君 野村でございます。  いままでの公害紛争は、民法の平面では、不法行為法の問題といたしまして、主として裁判所で判例の形であらわれてきたわけでありますが、不法行為法による解決でいきますと故意、過失であるとか、あるいは因果関係、違法性といったような、いろいろ厳格な要件が要求されまして、それをめぐって証拠をそろえたりあるいは争っていたのでは、非常に長い時間がかかります。したがいまして、裁判所による紛争解決を期待するのでは、現在の一般の市民の要求にこたえることは少し無理ではないか。過去の例を見ましても、有名な、明治の末から大正にかけましてあったのですが、大阪アルカリ事件という大気汚染に関する判決がありますが、これは第二審から数えまして、最終的に決着がつくまでおよそ九年かかっております。第一審も入れますとおそらく十年以上はかかっているだろうと思います。それからまた、最近、水質汚濁に関して山王川事件というものがありましたが、これも第一審から最高裁で固まるまで、およそ九年かかっております。これに対して、騒音に関して最高裁判所の判例がありましたが、名古屋の工場騒音事件でございますが、これはおよそ四年で解決されております。  こういうように見ますと、大気汚染とか水汚濁に、特にこういった長い期間がかかるという傾向が顕著でありますが、これは特にこのような事件につきましては、因果関係をめぐって紛争が長引く、こういうことに起因するものと思われます。こういうように迅速な被害者救済をはかるという見地からいいますと、もちろん民事実体法の平面で、無過失責任を立法化するあるいは因果関係の推定規定を設ける等々、裁判所に対する改善策、このほかに民事調停制度を利用しやすくするというようなことも十分考えられるわけでありますが、そちらのほうを改善するということになりますとかなりたいへんな問題となりますので、いまさしあたりの問題としまして、裁判前の手続、あるいは行政上の救済紛争処理の制度を確立していくのが一番望ましいのではないかと思われます。  こういうことから申しますと、現在出されております公害紛争処理法案及び公害救済特別措置法案といいますのは、非常に望ましいものであろうと思います。ただしその内容につきましては若干改善すべき点があろうかと思いますので、ごく大まかではございますが、一、二指摘させていただきたいと思います。  最初に公害紛争処理法案でございますが、中央公害審査委員会の性格が、国家行政組織法八条に基づく付属機関とされておりますが、この点ではもう少し独立性が高い、いわゆる三条機関にするのが法制度上合理的ではないだろうかと思われます。  それから第二に、この審査委員会権限でございますが、仲裁まででとまっております。調停、仲裁。しかし同じような問題で、石炭鉱害賠償等臨時措置法にありますような裁定の制度を、このような公害の問題についても導入することが可能ではなかろうかと思うのです。ただし民事実体法のほうから見ますと、裁定の制度をいきなり持ち込んでもうまく動くかという疑問はなくはないと思われるわけであります。すなわち実体法がいままでどおり民法の不法行為法のままでありますと、やはり裁定へ持ち込んでも、因果関係等をめぐる紛争が長引くおそれがあるというわけで、いまのところ、裁定制度は、制度自体としては望ましいわけでありますが、実際上は導入しても動くことが非常に困難であろうと思われるわけであります。  第三は、対象となる公害の中で、いわゆる基地公害がはずされておりますが、この点は、飛行場周辺の航空機騒音による被害については、やはり他の民間空港の場合と同じように被害者救済をはかることが望ましい。もちろん基地周辺整備法等もございますが、それらと今回の公害紛争処理法とは、おのずと手続その他で違いが出てきますので、やはり住民に対しては同じような保護を与えるのが望ましいのではなかろうかというわけで、基地公害を除外する点は、被害者救済の平面から見ますと、若干疑問ではなかろうかと思われます。その他こまかい点ございますが、大まかに以上指摘いたしておきます。  第二に、救済特別措置法案でございますが、ここでは健康被害ということにしぼってございますが、これはやはり公害に関して救済を必要とする緊急性という観点から申しますと、ここにしぼることには十分合理性があるのではなかろうかと思われます。   〔委員長退席、河上委員長代理着席〕  それから、第二は、この救済の仕組みでございますが、いろいろの公害防止事業団とかあるいは財団法人等、複雑にからみ合ってございますが、結局のところは、半分は行政上の救済であり半分は民事責任の考え方が入った責任的なものである、そういう折衷的なものではなかろうかと思われます。こういうことから申しますと、後のほうに出てきますが、医療手当とかあるいは医療費について所得制限の規定が置かれてありますが、この一定所得税以上を払っている者について全く給付をしないという点は、この制度が半分は一種の責任保険的なといいますか、責任的な要素が入っていることから申しますと、問題であろう。ですから、そのような場合には、全部給付をしないというわけではなくて、半額程度は給付をしても、むしろそのほうが合理的ではないだろうかと思われます。  あと、指定地域あるいは居住期間の問題がございますが、この法案では、住所というような形式的な区切り方をしておりますが、この点はやはり実際にその場で働いている人たら、さらに長時間にわたって働いている人が多いわけでございますので、もう少し実質的な平面を考慮した、実際にそこで生活をするあるいは働いているという要素を盛り込んでいったら、もっと望ましい制度になるのじゃないだろうかと思われます。  以上、幾つかの点にまたがりましたが、これで終わらせていただきたいと思います。(拍手)
  168. 河上民雄

    ○河上委員長代理 どうもありがとうございました。  ただいま意見を述べられました三人の方が時間の都合がございますので、ここでいまの御意見に対し質問がございますなら、簡単にお願いしたいと思います。質問される方のお名前をおっしゃって、その上でお願いいたします。
  169. 島本虎三

    島本委員 これは金澤先生と野村先生のお二人に聞くことになりますが、この点いかがでございましょうか。  紛争処理の五十条による除外、いわゆる基地公害を除くということになっておりますが、このいろいろな考え方についてはわかります。これは単なる手続上の問題だとして解釈すべきでしょうか。あえて言うと、国民の権利義務の問題から、憲法違反事項になるかならないかというところまでこれはいくのじゃないかと思われますけれども、これに対しての御所見を伺いたい、こういうように思うわけです。  それと、野村先生がただいま、救済の面では、健康に限りこれが緊急性があるから、合理的だ。これは物によるところのいろんな被害も当然あるわけでございますが、これを考えないほうが合理的だ、逆論を言うと、こういうようなことになるのじゃなかろうか。この点では、いま私聞いておりまして考えるところもあるわけでございますが、今後の参考に、この二点に限って急いでお伺いしておきたいと思います。
  170. 金澤良雄

    ○金澤良雄君 ただいま五十条が憲法違反になるかならないか。おそらくお考えになっていることは、法のもとの平等ということなんでございましょうか。――法のもとの平等の解釈につきましては、いろいろ考え方があろうかと思います。  私、憲法学者ではございませんので、お答えになるかどうかわかりませんが、あの場合考えられておるのは、一つのある法律によって取り扱い方を不平等にしないということかと思うのです。そういう点から申しますと、確かに御指摘のような問題もあろうかと思いますが、その場合の平等というものの考え方でございますが、これはただ形式的、平面的といいますか、平等ということではなくて、実質的な面から考察すべきものかと思われます。   〔河上委員長代理退席、委員長着席〕  その点、基地整備法の関係につきましては、それぞれ特別の法律もあって、補償その他紛争処理についてはかられておる。考えようによりますと、むしろ基地整備法のほうが、基地の整備というような、先ほど私が紛争処理で申し上げました、つまり紛争処理のやり方は前向きでなければならないということを申しましたが、むしろそういうことまでもはかられているわけです。ですから、この辺をどういうふうに実質的に考えていくかという比較考量は非常にむずかしい問題があろうかと思います。  私の考えとしては、確かに先ほど野村参考人からお話がございましたように、被害者の立場からすれば、こういうものにも紛争処理の門戸を開いておくということは理由のあることかと思われます。しかし反面、いま申しましたような点で、基地整備法のほうがむしろ前向きになっているというような面もございますので、その点は十分ひとつ御検討の上、この条項をどうするかということは考えていくべき問題ではないかと思います。
  171. 野村好弘

    ○野村好弘君 ただいまの御質問の点でございますが、基地公害の除外の点は、これは憲法の上から申しますと、やはり学説一般の考え方どおり、形式的な平等よりも実質的な平等ということで判断いたしますので、これをもしも基地周辺整備法等のもとで、こちらと同じ程度に保護するということであれば、憲法違反にはならないんではないかと思います。ただ現在の基地周辺整備法では、公共補償であるとか、あるいは個人であっても、一定の事業者に対してのみ補償がなされる仕組みになっておりまして、そこに住んでいる住民個人個人に対しては、個人補償は非常に制約された形でしかなされていない。こういう面からいきますと、基地周辺整備法内容のほうを今後改めていかなければいけないんじゃないかと思います。  それから、第二の、物に限るのは逆に合理的かというお話でございますが、この点は、そこまでは言えないというふうにお答えするよりないと思います。現在、何しろ、社会的な問題といいますか、社会的なレベルで緊急な救済を要求されているのは何かということになりますと、これはいろいろ考え方が分かれると思いますが、やはり人の健康、人体に対する侵害というものを一番重視して、それからまず救済していくのが筋道じゃないかというふうに、一市民として思いますので、こちらのほうの限定のしかたから出発して、今後次第にその他のものについても救済を広げていくということでよろしかろうかと思います。
  172. 島本虎三

    島本委員 金澤先生、いま申されました基地の問題になりますと、米軍の場合はいわゆる特損法、それから自衛隊の場合は周辺整備法、このいずれもが、陳情して向こうのほうにやっていただく、いわば施す意味での行為ということになりまして、いわゆるつかみ金をやるようなことになりますが、実態に対する補償ではもちろんない。それも一部限定で、第一次産業である農業だとかまた政令によるところの部分、これに限られておりまして、商人だとかサラリーマンがそういうものを受けても、それは除外されるという点があるわけです。手厚いといいながらも、施されるのが手厚いので、権利としての問題は補償の問題にはならない。これあたりで手厚いかというのが、やはり議論の焦点になっておるわけでございますけれども、問題は改正しなくてもやっていける、これが手厚いのだ、こういうようなことが焦点にあったのでしょうか。
  173. 金澤良雄

    ○金澤良雄君 手厚いという意味でございますが、私が申し上げましたのは、整備に対して前向きにやっていくという、そういう点で申したのであって、補償のほうから申しますと、むしろ先ほどのように、こちらのほうが手厚いということになっておるわけでございます。どう言いますか、法文上従来書かれていないものが法文上書かれてきたという意味では、われわれのことばで申しますと、いわゆる溝垣補償的なものがさらに拡大してきた、こう申しておりますが、そういうことであります。
  174. 折小野良一

    ○折小野委員 両先生に一言だけお伺いをいたします。  紛争処理過程におきまして、審理が、この法案の場合に、原則として非公開ということになっております。これにつきましてはもちろんいろいろな考慮もあるわけでございますし、またこれに対しましては一応原則は公開制である、こういう点ももちろんあるわけでございます。これは産業機密という問題に関連することかと思いますが、この点についての両先生のお考えをひとつお伺いいたしたいと思います。
  175. 金澤良雄

    ○金澤良雄君 三十七条でございますが、こういうものは裁判であれば公開ということが原則である、その趣旨からいって、できるだけ事前の、事前と申しますか、行政的紛争処理についても、公開が望ましいという御意見も当然あろうかと思います。ただこの行政の場合には、いろいろ当事者の事情というようなものもあると思いますし、ことにいま産業機密というような問題があると思いますので、必ずしも公開原則を貫かなければならないということでなくてもよいというふうに私は考えております。
  176. 野村好弘

    ○野村好弘君 いまの点でございますが、やはり調停とか仲裁ということになりますと、民事の平面でもそうでありますが、具体的妥当に当事者間の話し合いによって解決するという点が重点で、形式的な、あるいは法理論をそのまま適用して解決するという点にはあまり重点が――もちろんそれも重要でありますが、そちらのほうよりも具体的妥当に話し合いによって解決するという点が重要でありますので、むしろ公開しないほうがうまくいく場合が多いのじゃないかと思われます。そういう意味で、手続、その審理の過程は公開しないほうが、むしろ民事のほかの調停とかそういうことからいいましても、いいのじゃないかと思います。ただ、結果すなわち調停の結果あるいは仲裁の結果、一体どういうふうになったのかという、そちらのほうは、普通の判決と同じような形で、公開するのがよろしいのじゃないかと考えております。
  177. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 金澤先生にちょっと伺いたいのですが、先ほどもお話の中で、当委員会はやはり準司法的な性格を持つものだというような御意見でしたが、いままで実際に公害にかかった人たち、これを救済するにつきまして、なかなか裁判に持ち込んでもたいへんで、また裁判に持ち込むと、被害者は費用がないわけですね、それで途中でやめてしまう。あるいは気の毒な人はもうなくなっているということでございますので、こうした委員会をもつと強力な独立した行政委員会として、それで調停、仲裁を行なうばかりでなく、審判権も持っておるというようなやり方にしないと、ほんとうに弱い被害者の人たちを救うことができないのじゃないか、こういうような意見を持っておるわけであります。  なおもうーつは、いまの法案では、厚生省で公害認定する、それから今度はそうしたものだけ救済する――私どもの考えでは、この行政委員会認定をして、そうして救済をしていく、こういうふうにしないとうまくいかないのじゃないか、こういうふうに思うのですが、いかがでございましょうか。
  178. 金澤良雄

    ○金澤良雄君 三条機関か八条機関にすべきかという問題は、ただ抽象的にそういうことでなくて、やはりどういう権限を持たせるかという具体的なところから考えていかなければならないと存じます。一つの考え方は確かに――三条機関、行政委員会的なものにしていくということは、確かに一つの考え方だと思うのでございますが、その場合には、民事実体的規定というものをよほどしっかりと固めておかないと、なかなかむずかしいと思うわけでございますが、その前提が今日ではまだ十分でないということから、そういう意味で、三条機関にすることが必ずしも必要であるとは私は考えてはおりません。  それから次にやはり問題となるのは、たとえば行政処分的な権限を持たしたらどうかというこの考え方も当然出てくるわけであります。紛争処理を前向きにやるためには、そこまでいかなければならぬ。たとえば防除施設を設けろとか、操業を停止しろとか、そういうことでございます。ところが現行の制度では、そういうものはそれぞれの実施官庁が権限を持っているわけでございまして、この間の調整をどうはかるかというところに一つのネックがあるのじゃないか。行政機構全般を改革するというようなことになりますと、これはもうたいへんなことになりますし、その点のネックを、でき得べくんば先ほど申しました意見の申し出、四十八条を活発に活動させることによって、その辺は解決していくのが、現在の段階では望ましいのじゃないか。したがって、そういう権限の問題から考えてまいりますと、必ずしも三条機関、いわゆる行政委員会的なものにしなくてもよい、現段階においてはそういうふうに考えております。
  179. 野村好弘

    ○野村好弘君 三条機関かどうかでありますが、これは実質的に見て、八条機関であっても三条の機関に近いようにしていくことができれば、そちらのほうがより望ましい方向へいくのじゃないかと思います。一つは、この委員会に規則制定権を付与することはむずかしいだろう。それから第二は、独立の事務局をそれに付するということであります。この主要な二点で、現在の法案の中で規定されていることは、かなり独立性は高いような仕組みになっておりますので、この二点さえ解決がつけば、一応形式上は八条であっても、三条に近い機関になり得るというふうに考えております。  それから権限の点でありますが、先ほどお話ししたとおりでございます。
  180. 赤路友藏

    赤路委員長 それでは金澤先生と野村先生、ちょうどもう十二時でございます。どうもありがとうございました。それから浅原先生、何か十二時までということで……。どうもありがとうございました。     ―――――――――――――
  181. 赤路友藏

    赤路委員長 それでは山崎さん、ひとつお願いいたしします。
  182. 山崎心月

    ○山崎心月君 私、四日市市公害認定患者の会を代表しております山崎心月でございます。  四日市公害は、諸先生方も御承知のとおり、先ごろの週刊誌に取り上げられて、日本で一番住みにくい都市はどこかというアンケートに、四日市が一番住みたくない都市だ、こういうことが書かれてございました。そのとおりでございます。四日市は、ただいま認定患者の実数は四百十七名、その中で三十三名入院しておるのでございます。昭和四十年に認定患者制度ができましてから、すでに死亡いたしましたのが二十六名、その中で二名自殺者が出ておるわけでございます。私も昭和三十六年の五月四日の深夜に突然発作を起こしまして、自来今日まで一日も欠かすことなく、注射の打ち続けでございます。ところが今月の初め、私、北海道の十勝へ参りました。一週間余り参ったのですが、薬を用意してまいったのに、ほとんどその薬も飲まないで済んできたという事実。先ほどSO2、亜硫酸ガスと病気との因果関係ということをおっしゃった先生がございましたが、確かに四日市の公害患者は亜硫酸ガスの影響によるものであるということは、九年間私自身が身をもって体験してきたわけでございます。それは亜硫酸ガスの発生しない地域については苦痛をさらに感じないということなんであります。  昨年まで四日市にはそうした患者の組織というものがありませんでした。ところが、磯津地区という漁業の部落ですが、そこの患者たちが九名、入院しております患者の中で訴訟を起こしましてちょうど二年になるのでございます。そうしたことから、ようやく四日市の公害病というものが多少世間のうわさにあがってきたような状態であります。ところが、水俣あるいは富山の公害患者のように、形の上にあらわれていないというのが四日市の患者の特色なんであります。私、昼はこうしてものも言えております。動けるのです。しかし深夜になりますと、ほとんど苦痛で、トイレに行くことすらも苦痛で、まことに恥ずかしいことですが、いつもベッドの横にはその用を足す器具を置かなければならないというような現状なんであります。きょうもこういうものを持って歩きまして話をいたしております。私は御承知のとおり僧侶でございますからお経も読みます、説教もいたしますが、こういうものを絶えず飲みながら、お話の間にも、これでようやく気管支を押えながらお話を続けているという現状であります。家の中には空気清浄機もまた酸素吸入器も用意してございまして、苦痛が起きますと、そうしてじっとすわりながらその苦痛に耐えておらなければならない。そして皮下注射でございますが、これはもうすでにお医者さんを呼ばなければならぬような事態になりますと、来ていただくまで待っておれないので、自分で注射をしております。そういうことでようやく押えておるのであります。昨年までそうした患者が取り上げられなかったのは、市民運動というものも全然なかったのでございますが、昭和三十六年までに気管支炎の患者というのは一名しかなかったわけであります。ところが三十六年に十四、さらに三十七年に十六、三十八年に二十一、三十九年に二十九、そして一日に発作の起きるのが一、二回というのが二十四名、十回以上発作が起きるというのがかなり多くありました。そして発作ごとに注射を絶えず打たなければならないというのが九十二名ございました。一カ月に六十一本以上打っているというような患者もおるわけでございます。それらは入院患者ではないのであります。通院患者なのであります。  そうしたことで、昨年たまたま、私あちらこちらの信者先でいろいろな患者に会って話をしておるとき、これはだれかをたよっていてもどうもならぬのだ、自分が立ち上がるより方法がないのだということで、昨年の十月四日に、数人の患者を誘いまして、認定患者の会というものを発足したのでございます。自来今日まで約半年間、私は四百名の患者の家庭を、広くは約八キロほどのところをてくてくてくてくと訪問して歩きまして、一軒さがすのに一日かかったようなときもあります。あるいは夜間しか見えないから、一晩かかって一軒さがして面会するというようなことで、そうした患者の方々に一人一人会ってまいりまして、その中で多くの患者の者は、下層といいますか、中以下の生活をしている家庭が一番多いということであります。そして現在の患者は、五月三十一日現在で四百十七名ですが、三月までの四百六名の中で、乳幼児九歳という子が一人おりますが、それまでの子供が百五十八名、それから五十五歳以上の患者が百三十五名、その他が壮年者であります。ほとんど老幼者でありまして、死んでいったのも老人がほとんど、中学三年生という女の子もございます。  これは昼はわからないが、夜になると、お隣の家まで私どものうめき声が聞こえるのです。ちょうど笛をくわえたような形で、ひゅう、ひゅう、ひゅうっという声が数軒先まで聞こえるのが、四日市の公害患者現状でございます。お隣また苦しみ出したな、こういうことでございます。  自殺されました一人の木平さんという方は、これは経済的な面もございまして、苦痛と家庭の経済と、そうした両面から、やむを得ず縊死をいたしました。首をつって死んだんであります。その家庭も、月に五、六千円、お医者さんのほかに臨時にいわゆる補助薬を買わなければならぬ。それを子供に負担をかけるのがかわいそうだといって、首をつったわけであります。  次に、一昨年首をつりました大谷さんという方は、これは岡女堂という甘なっとうをつくっている会社の社長さんでございますが、御自分が車を持っていらっしやるので、夜中にえらくなりかけると、その車をもって風上に向かっていつも逃げられた。この方の日記を見ましても、また空気が悪くなってきた。苦痛がだんだん起きてきた。やはり私は逃げなければならない。さみしい、世界にただ一人逃げていかなければならない、というような日記を書いております。最後になくなります日も、ちようど六月でございました。深夜に苦しんで、ようやく夜が明ける――五時過ぎになってくると私ども楽になってくるのです。深夜に苦しんでようやく五時ころに起きて、二階に休んでおられる方ですが、下の工場へ行かれて、その工場の中でとうとう首をつってしもうたのです。それで目をさまして、奥さんが一緒におられて、その奥さんに、きょうもまた空気が悪いなと一言残したまま、工場へ行って首をつったのです。首をつるような心当たりはないと家族の人は言われますけれども、私自身が患者の立場から考えますと、この方は工場へ入って、そこでまた発作が起きてきたから、無意識に首をつったのであろう、私はそう思います。  こうした患者が四百数十人です。これは国民保険だけが四百十七名でございまして、健康保険の方は入っておらないのでございます。そしてまことに矛盾しておることは、市内に、そのコンビナートの周辺地域に三年以上いた者でなければ認定しないということなんです。そうしたことが相当距離が離れたところに非常に増加しつつあるのに――この間も市長に会いまして申し入れたけれども、地域拡大する意思はないということを言っておりました。  この苦痛は、一軒一軒訪問して感じますことは、母は苦痛に耐えかねて死にたい、殺してくれ、こう叫べば、子供がおかあさん死んじゃだめだと、親も泣き子も泣き、ともどもに泣いている現状なんです。  私は昨年の十一月にある一軒を訪問いたしましたが、子供が三人、妻と夫、その夫はさしもの職人であります。ところがこれがちょうど八年わずらっておるのであります。そして私に、一ペん上がってみてくださいと言うので、引きずり上げられて上がってみたら、まことにあなた方では御想像もできないような、ミノムシのようなふとん、綿はちぎれてしもうてどこにあるのかわからないようなその綿を引きずり出して、これを見てください先生、私はこの寒空に親子五人がこの中で冬を越すのですよと、泣いて訴えたのであります。こうした現状を聞きまして、ほんとうにここに国の政治というものがあるのだろうかということを心から感じたのです。どうか先生方がこうした国民の上にあたたかい救いの手を差し伸べられ、一つの法というものをつくり出していただきたい。  また、ある家庭に伺いますと、これは入院しておられるということになっておりまして、病院に参りましたら、退院をしたということであります。そこへ参りましたら、四十歳ほどの主人がうつぶせに伏さってじっとしておる。いま病院へ行ったら、あなた退院したということですが、そのような状態でなぜ退院したのか、こう言いましたら、この人は、いや私は入院しておりたいのです。先生もまだ退院しちゃいけないとおっしゃったのです。けれども子供があるんです。家内があるんです。私のかわりに家内が労働に出ているんです。働きに行っているんです。そして夕方帰ってきた子供が締め出されて入ることもできない現状を見て、私は病院の屋上からしばしば飛びおりて自殺をしようと覚悟したことが幾回かありました。けれども何とかしてやはり子供のために生き延びてやらなければと考えて、今日は先生に無理にお願いをして、通院をさせていただいております、こう言って家庭の中で苦しんでおられる。  あるいはまた、ある一軒の家へ参りますと、薄暗い小さな小屋というような家の中で、老婆が一人――四日市は万古という陶器のできる町でありますが、その内職をやっております。薄暗いんです。そこで万古の仕上げの仕事をやっておる。暗がりをじっと見ておると、そのはたでうめき声が聞こえる。その母の向こうに伏さってうめいておる。そのたった一人の二十三歳の青年が、ひゅうひゅういいながら伏さっている。なぜ病院へ入れてもらわないのか、病院へ入れてもらえるようにできているんだ、こう言いましたら、この青年が、おじさん、この間まで入れてもらっていたんです、けれどももう病院に置いてもらえないのです。入院費は市が払ってくれるんですよ。それはありがたいのだ。けれども私は、朝起きて顔を洗って、一枚の手ぬぐいがなくても、顔はほっておけばかわいてきます。口を洗うブラシ一本なくても、それはしんぼうができます。けれどもおじさん、私たち一日に一度は欠かすことのできないトイレヘ行ったときのちり紙一枚ないのです。それを同じ病室の中の患者が、かわいそうがって私に恵んでくださいます。けれども幾月も幾月もそうしたお恵みを受けてじっとはしておれないのです。だから私はたとえ三百円でも五百円でもいい、昼雑役に使ってもらって、その金が少しでもできたらまた入院さしてもらうのだと、泣いて訴えておるのです。これが四日市の公害患者現状でございます。  ところが、昼は人が見てもさほどに苦痛らしく感じられないものが、夜間にまいりますと、みなそうであります。特に一時半から二時、朝の五時にかけてが一番の苦痛なんであります。これは昨年大阪のお医者さんと会いまして、そのお話をしておりましたら、山崎さん、夜は自然現象で気温は下がるんですが、気温が下がってくるから病人はみなつらいんです、そうおっしゃった。けれどもそれは一般論です。私ども四日市の公害患者はそうじゃないのです。夜は、あの百万ドルの夜景といわれている排気ガスがどんどんどんどんたかれ、そこから濃度の硫黄がどんどんどんどん出てくるということなんです。あれがあのまま放置されたら、もしもここに一塊の硫黄を持ってきて私がこれをたいたら、あなた方はみな死んでしまうのです。そうしたら私は殺人罪という罪をしょわなければならない。国の発展のために産業ということを非常に重要視しなければならない。けれども人間の生命が断たれながら産業がいかに発展しても、これはだめだということでございます。そうしたことを考えますときに、何とかしてこれを、発生源対策というものを十分に考慮していただきたい。  こうしたことが、私は、昨年と一昨年と、これは三十歳と二十八歳の若い奥さんであります。これも一日おきに注射を打ちに病院に通っておられるのです。ところが、妊娠をしたのです。まだ二十八歳の若い奥さん、三十歳の若い奥さんが、子供がほしいんで、専門医のところへたずねていって御相談なさったら、専門医が、保証できません、あなたのように一日おきに注射を打っている人が子供をもうけて、もしも奇形児ができたらどうなさる、私は専門医として保証ができないから中絶より方法がない。合法的に中絶はされたけれども、ほしくてたまらない、産みたい子供が産めなくて、中絶させるということは、間接的に完全な殺人行為なのであります。この殺人行為は一体どこから来るのか。いわゆる公害、国の発展のために、高度成長のためにというような、ああした公害発生源であるところの工場から出てくるいわゆるSO2、亜硫酸ガスのために、こうしたことに会わなければならないのが、私ども四日市の現状でございます。おそらく数千名潜在患者があります。それから、患者認定していいか悪いかという、いわゆるボーダーラインにあるところの患者がたくさんおります。これらを救うためには、どうやっても発生源対策をもう少し十分にしていただきたい。そうして、先ほどからいろいろな先生方もおっしゃいましたが、あの紛争処理法というようなこともでありますが、ああいうことが、会社が断われば――両方の合意の上で訴えなければならないというようなことをこの前新聞で見たのでありますが、そのようなものでは何にもなりません。やはり一つのはっきりとした権力のある裁断法によってそれをはっきりしていく。工場内に働いている従業員の話を聞きますと、どんなに衆議院から参議院から議員の方々が調査にいらっしゃっても、その日は、私どもが工場に行ったら、きょうは操業中止、こうなるのです。操業が中止されたところを議員の方々が調査します。そうして、会社もそれぞれの専門の人が御案内しておるのです。その方々が四日市を離れると同時に、われわれは深夜にフル運転にかかるのですと、従業員はこう申しております。これが、夜間に非常に亜硫酸ガスが発生するという事実、明らかであります。でありますから、四日市に青空が見えて晴天になりますと、きようはきっと東京から偉い人が来てござるだろう、みなこう言っておるのです。それは明らかなんです。まことに――きのう私参りますのに、あの霞が関ビルが汽車の中から見えませんでした。この状態が四日市は毎日続いておるのであります。ただ夜だけしか四日市らしい姿が見えない。深夜の中に電灯がつき、そうして炎を上げて廃ガスが燃えておる。それだけが四日市らしい状態であるということ。こういうような患者が非常に苦しんでいる。  どうか先生方がいろいろ御苦労していただいて、そうしてわれわれ四日市市民、また全国いろいろなところにありますこの公害によって被害を受けている者たちの、特にわれわれ下層社会の者ほど被害が大であるという事実を御承知いただきまして、どうぞりっぱな法律をつくって、国民にしあわせを与えていただきたいということをお願い申し上げます。(拍手)
  183. 赤路友藏

    赤路委員長 どうもありがとうございました。  引き続き関田さんにお願いいたします。
  184. 関田政雄

    ○関田政雄君 山崎さんの訴えを聞きまして、岩波新書にあります「恐るべき公害」ということばを思い出しました。公害は社会的殺人である、しかも公害による侵害はきわめて階級的であるということばであります。非常に惜しいのは、経済面を代表される大川さんが先にお立ちになりまして、この訴えを聞いていただけなかったことが非常に遺憾に思います。  実は日弁連の公害対策委員会――、日弁連といたしましては、この公害対策基本法が上程されます前から意見の開陳をいたしておりまして、皆さん方のほうへはそれぞれお送りいたした次第であります。  順序を申し上げますと、公害対策基本法案に対する意見公害の私的救済についての意見書第一、公害の私的救済制度についての意見書第二、公害にかかわる紛争処理及び被害救済制度についての答申に対する意見、今回は公害紛争処理法案に対する意見公害健康被害に対する特別措置法に対する意見、これを、一連のわれわれの意見の連続でございますので、すでにお送りいたしてございます。もしもまだお手元に届いておりませんようでしたら、後ほど全部資料を差し上げたいと思いますが、これから私の述べます意見は、その意見の中の一部分でございますから、どうぞその意味でお聞き取りいただきたいのであります。  公害紛争処理法案のほうから申し上げます。  一言にして申し上げますと、これは至って軟弱な、そして不徹底な制度であると申し上げたいのです。これはあまりに歯にきぬを着せませんで失礼に当たるかもしれませんが、前進のためには少少の無礼をお許しいただきたい。もとより一歩前進であることは間違いありません。いままでないものをつくろうとおっしゃるのでありますから。しかしながら、ちよっと御注意いただきますと、これ、きわめて妥協的で、その場限りのものだと言うても過言でない。  今回の紛争処理制度は、和解の仲介と、調停と、仲裁と、三つの制度を一本の法律にまとめたということになります。ところが、この三つの制度は、いままでからあったものなんです。日本の裁判制度ができて、少なくとも大正年代になって調停という制度ができましてからございます。仲裁という制度は、民事訴訟法ができたときからあったのです。ところが、いままでにこの制度がどれだけ利用されたかということを統計的にごらんになる必要がございます。  第一番目に、民事訴訟法に規定してございます仲裁制度、これは私は、寡聞にして、いまだかつて一ぺんも利用されぬのではないかと思います。簡単に申し上げて、仲裁ができて、それが調書に記載できるくらいなら、もう紛争がないのですから。話がついておるのですから。しかも、仲裁制度というものは、裁判官の判断なくして、非常な拘束を受けますから、おそらくは利用した者はおりません。そんな利用したことのない制度を何でここへ持ってくるのか、これが一つです。  二番目の、調停制度、これは民事調停の制度ですが、これも公害問題に関してはおそらく利用されませんでした。理由を申し上げますと、裁判所の調停に付しまして、いまの山崎さんのような話を理解していただくのに三日も四日もかかります。とても理解していただくだけでたいへんなんです。だからこれは利用されなかった。  それから、和解の仲介制度は、少々利用されました。この数字をちよっと申し上げますと、これはすでに皆さん方のほうが御承知と思いますけれども、水質保全法による和解の仲介制度は、これはおそらく昭和三十六年か七年にできた法律ですが、今日までに申し立て件数わずかに三十四件です。そうすると、八年間に三十四件という申し立てですね。どれだけうまくいったか、ちょっと結果はわかりません。それから、ばい煙規制法による和解の仲介制度は、これも同じくらいの、八年間に、わずかに三件です。三件だけが利用されたのです。  そうしますと、事公害に関して一つも利用されなかった民事調停制度と、それから日本の裁判制度始まって以来ほとんど利用されなかった仲裁制度と、分けてみたところでこれは話になりませんと私は申し上げたい。いまになってみて一番役に立ちますのは、まず調停制度なんです。これだけは活用されるでしょう。今度の委員会による調停制度だけは。そうすると、三つあげたようですけれども、実質は一つ、こういうことになります。われわれ法律専門家から見たらそうなるのです。  そこで、その次です。いま山崎さんなんかの申しました、この悲惨な状況が、四日市裁判が始まってからもう二年になるのです。これはいつ果つべしともわかりません。それから、富山県のイタイイタイ病事件も、二年になっておりますが、これもいつ果つべしともわからない。いま富山県のイタイイタイ病裁判では、千人ぐらい入れられる法廷をつくってもらわなければならぬというようなことで、うろうろしているのです。水俣病事件、これは新潟県のほうも二年たちますが、いつ果つべしともわからない。熊本県の御本家はどうしても調停がうまくいきませんので、今度訴訟に踏み切りました。これまた何年たつかわからない、こういうことなんです。したがって、一歩前進するための一つ紛争処理法案として、もう一歩前進していただかなければ意味がないのではないかということです。しからば前進とは何か。この調停を行なうところの行政委員会が独立性を持っておるということ、非常な権威があるということ、そうしてその独立性と権威のもとに、調停がうまくいかなければ裁定する権利、権限を持っておるということなのです。私は、裁判制度によらずしてその裁定権が乱用されることは慎むべきであると思います。けれども、裁判官が和解を進めますときに話が非常にうまくいきますのは、もしもこの裁判官の勧告がうまくいかなければ、この裁判官は今度は判決をする権限を持っているのだというところが、当事者を非常に自粛自戒せしめるのでしょう。したがって、調停制度において、かりに裁定権が与えられても、それらの乱用を慎まなければなりません、日本の国民は最後は裁判所の判断に服すべきですから。けれども、この調停委員いわゆる行政委員は、うまく話がきまらない、お互いに譲歩ができなければ、裁定権を持っているというところに、話がうまく進行していく大きな契機があると考えますので、日本弁護士連合会では、この裁定権を付与すべしということを初めから申し上げているのです。  誤解のないようにちょっと弁解をいたしておきます。  日本弁護士連合会では、裁判所以外にこの法律的判断を下すような機関を設けてはいけないということが年来の持論なのです。したがって、日本弁護士連合会の中におきましても、公害委員会裁定権を付与すべし、準司法機関を設くべしというが、従来の日本弁護士連合会は反対だったのだ、その同じ連合会が反対の意見を出してもらっては困るということで、この調整にだいぶかかっております。そこで私はこう説明申し上げたのです。裁判権というもの、裁判所による判断を受ける権利は、国民の固有の権利ではあるけれども、しかしそれには限度がある。最も公害らしき公害問題は、裁判制度にはなじまないのだ、これは無理というものだ。従来の裁判制度というものは一対一の紛争でございました。最も公害らしき公害公害紛争司法裁判制度になじまないので、これだけは日本弁護士連合会としても例外的に主張するのである、唯一の例外として、ようやく理事会を通したような次第でございます。この点、皆さん方のほうにおかれましても、どうぞ御認識の上で前進していただきたいと存じます。  もとより、今日まできておるのでありますから、われわれの主張する制度は、今国会で成立さしていただきたい、あるいは主張していただきたいというのは無理かもしれません。しかし、いまの制度は前進の第一歩である、これで満足するのではない、公害処理のためには、もっと、進歩した、前進した機関をわれわれは考えているという態度において、立場において処理していただきたいと存じます。  それから、時間がございませんので、一点だけ申し上げておきますと、基地公害問題が先ほどから出ました。日本弁護士連合会は、極端に申し上げますと、基地公害除外は憲法違反であると申しているのであります。この点は後ほど御質問がございましたときにお答えするほうがかえって適切かと存じますので、それ以上は申し上げません。  それから、不徹底な点を二、三申し上げておきますと、都道府県の中で、この紛争処理委員会を置かなくてもよいという制度であります。これは全国この公害多発の時期において、置かなくてもよい県があるはずがありません。これは必置の機関とすべきであります。  それから、立ち入り検査権とか文書提出権というものを与えてあるようで、非常に前進したように見えますけれども、これをよく注意してごらんになりますと、これは活用されない制度です。立ち入り検査権のあるのは中央公害審査委員会だけであって、しかもその問題は健康被害に関する場合だけです。ほかの公害問題ではこの権限は使用できません。非常に大きな権限を与えたようであって、実質は使えない権限なんです。なぜかと申しますと、先ほど申し上げました仲裁制度というものはほとんど活用されませんから、こういうところに、非常に微温的な退嬰的なものがあるということをわれわれは訴えたいのであります。  以上、紛争処理制度に関しては終わります。  被害救済制度でありますが、これは一言にして評しますと、今国会で成立させていただく必要もないのではないか。かえって、もうちょっと整備したものを出していただいたほうがけっこうではないかというくらいなんです。いま山崎さんの申されました、公害病患者認定されて、治療は受けておるが、生活ができない、こんなばかなことがありますでしょうか。治療費や医療費は出してやるが、生活保障はせぬぞ、病気はなおったが、命がなくなったということになりましょう。そういう点がございますので、われわれは大反対なんです。  それからもう一つの大反対の理由を申し上げますと、救済基金が財団法人であるというような点であります。法第十六条によれば、費用拠出の機関として、民法三十四条により財団法人が設立されるということになっておりますが、一体だれがその設立の責任を負うのですか。財団が設立されなかったらどうするのですか。その費用は財界の寄付金だと申しますが、寄付が集まらなかったらどうするのですか。こういうことが、被害救済制度の中で、これで被害救済をしようというようなことはとても実行されることではない。最も大切なことは、被害救済にしても、紛争処理損害補償にしても、その出捐する義務ある者は公害をまき散らした者であります。原因者が負担すべきであるということは明らかな法理なんです。公害対策基本法にその損害賠償の拠出義務まで規定いたしておりませんのは、あれは当然の公理であったからであります。公害対策基本法ができるまでもなく、公害の発散者は、原因者はその損害賠償の全責任があるのだ、この点を御認識いただきますならば、財界の寄付によって財団法人を設立して、その基金で被害救済をするというような微温的なことでは、とうてい満足な結果は得られないと存じます。被害救済制度の中には物的損害もあるのではないかということであります。われわれは、物的損害については紛争処理制度でまかない得ると考えますが、ただ健康保護に限ったことについてあえて反対をいたしませんのは、迅速なる被害救済は類型的でなければできません。この病気に対しては一日何ぼだ、治療費が一日幾らだ、こういう類型的なものでなければ、迅速にことは運べませんので、被害救済健康被害に限ってもあえて異議は申しません。もし物的損害においてもこれと同じ制度ができますと、物的損害は、類型化されなければこれは非常にむずかしいのです。したがってその点は類型化されるよりも個々の具体的な妥当性を生むためには、紛争処理制度によって、しかもその紛争処理委員会裁定権を持っておる、その裁定に対しては執行力もあるのだ、というくらいの強度なものでなければならないと考えておる次第でございます。  以上、意見を申し上げました。(拍手)
  185. 赤路友藏

    赤路委員長 どうもありがとうございました。  橋本君。
  186. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)委員 お二人の方からきわめて示唆に富む御意見を拝聴させていただいたことに、最初にお礼を申し上げます。  ことに、それこそ全国公害病患者を代表して本日お出ましをいただきました山崎さんからは、公害病患者の方々のお気持ちをきわめて強く訴えられました。これに対しましては、私どもは、いまの御意見、そのお気持ちを体して、これからも行政に取り組んでまいりたい、それをまず最初にお礼とともに申し上げたいと思います。  むしろ山崎さんの御意見に対しましては、私どもは、それぞれ患者のお立場としてお話をいただいたことと思いまして、当然患者を代表される方から出るべき御意見をちょうだいした、それはありがたく今後の審議の参考としてちょうだいをいたしたいと存じます。また、それこそ司法界を代表して本日御意見をお述べいただきました関田さんの御意見、それぞれに非常に有益な、また特色のある御意見をちょうだいいたしました。これについてもお礼を申し上げるとともに、一点だけお教えをお願いしたいと思います。  今度の紛争処理制度についての御意見でありますが、先ほど日弁連としての従来の態度を変更された理由、公害というものの特殊性をお話しになりました。そしてこれが司法的な制度になじまない、よってこういう制度を活用する必要があるのだというふうな御意見もありました。私ども実はこの点は同感であります。今回この法案審議いたすにつきまして、私どもの頭の中に一つ入っておりますのは、司法制度の中においても、現在いわゆる公害罪というものが考えられ、公害罪というものが、司法制度の中で処理されようという傾向が非常に強くなっております。そうした時期になりましてこの制度をつくってまいります場合、当然この公害罪というものが設定されました場合には、将来あるいは公害裁判所という方向移行することも可能でありましょう。あるいは現在政府から提出しておりますものを母体とした紛争処理制度というものが拡充されまして、なお強い裁定あるいはそれらにかわるべきもっと強い処置等も、これに加えられることが可能でありましょう。そういう中で、現在公害罪というものが明定されようとしておる時点において、現在の民事訴訟法と抵触するという意見も一部にある裁定制度を、現行の制度の中に取り入れることについては、私どもは多少の疑義を持っております。この紛争処理制度と現在法制審議会等で議論されております公害罪とに関して、司法の立場におられる関田さんとして、どのようなお考えをお持ちであるか、また裁定制度というものを取り入れていくその一つのきっかけとして、私ども、今後の方向として裁定制度というものを考えないわけでは決してございません。これは考慮の対象として考えております。ただ、いわゆる司法権というものを代表し、行政の機能を持っております法務省等の、民事訴訟法との関連の考え方をただしてまいります上において、今回これを取り入れることには多少の疑念を今日持っておるものでございます。その辺について御意見をお教え願えれば幸いと思います。
  187. 関田政雄

    ○関田政雄君 お答えいたします。まず公害罪の問題であります。公害罪がもし制定されましたら、裁判所で裁判されることはもちろんですね。したがって、公害紛争公害裁判所というふうな専門部ができて処理されることもあり得るであろうという推定でございますが、これはちょっと関係がないのです。日弁連といたしましては、公害罪制定にはまずまず反対です。明らかな態度はまだ打ち出しておりませんが、反対するであろうと、私も推定いたします。なぜかと申しますと、公害罪というものの構成要件をきめるのが非常にむずかしいのです。これが一つ。それから二番目は因果関係を立証することが非常にむずかしい、これが二番目。民事紛争であればこそ、因果関係が蓋然性でもよろしい、これは金で済むことですから。しかし人を罪するということになりますと、因果関係が蓋然性では許されません。これは合理的に疑いを差しはさむ余地なきまでに立証されなければ有罪の判決ができませんので、非常に困難でございますね。しかし公害罪に限って蓋然性でいくということになりますと、他の刑事罰が全部がたがたになる危険性がございまして、罪刑法定主義が根本からくつがえりますので、そういう意味から公害罪の制定には慎重なんです。これが第一点なんです。  それから公害裁判所がつくられれば、いわゆる委員会裁定権がなくてもできるではないか。もとより公害裁判所という専門部ができて、われわれが考えているような付属機関ができたら、これはけっこうでございます、そういうことでありましたら。しかし、これは行政委員会の中にわれわれが考えているような下部組織、事務局、調査機関、監視機関、研究機関を設けるほうがはるかに楽でございまして、裁判所の中にそれをつくっていくということになりますと、だいぶむずかしい問題を構成いたします。だからわれわれといたしましては、公害らしい公害には、専門的知識があり、それからデータを常にたくわえておる調査機関、研究機関、監視機関があって、常にそこに接触しておる機関によって裁定をされた場合に、それでもなお不服ならば裁判所に訴えてよろしいという考え方をいたしております。そういう意味で、公害罪とはちよっと関係がございません。公害裁判所がもし実現されるならば、それは一番けっこうなんです。しかしそれのほうが困難でございますから、行政委員会にその権限を与えよ、こういう結論になります。
  188. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)委員  いまの御意見に付随してでございますが、いまお教えを受けましたわけでありますが、私どもは行政機構をつくること、法体系をつくること、それを仕事にしてまいります。この公害罪というものは関係ないという形は、これはやはり今後の審議の上ではとってはいけないと思うのです。この点は、法曹界の御意見としてそのような御意見が述べられたということで、私どもは了解きせていただきたいと思います。  もう一点お教え願いたいと思いますのは、その場合に、現行の民事訴訟法とのかね合いの問題、その裁定制度を明定していくことの可否についてであります。いまのお話を伺っておりますと、あるいは調停、仲介、仲裁あるいは裁定、こういう行為を通って、なお当事者間の合意が得られない、言いかえれば加害者と目された方の同意が得られない場合、初めて訴訟に移行し得る、そういう形をお考えのようであります。これは私どもとしては多少問題があるのではないかと思うのです。むしろそういう場合には、被害者の方々の意思をはっきりさせるためにも、早期に裁判に移行し得る、それだけの幅を持たせたほうがいいのではないか。あるいはそれこそ蓋然性の問題が出てまいりますけれども、加害者側の同意がなかなか得られにくい種類の公害紛争というものが、非常に長い時間各段階を通りまして、最終的に裁定の同意が得られない、それでは裁判に移行しようというのでは、非常にむだな時間を費やす可能性はないのか。むしろその場合には、どちらかの不同意が表明された場合に、直ちに裁判に移行し得る体系をとっておく必要があるのではないか。これは被害者の方のお立場を考えましても、その必要がありはしないかと私は考えますけれども、その点はいかがでございましょうか。
  189. 関田政雄

    ○関田政雄君 公害罪は関係ないという表現ですと、ちよっとこれは真意が通じていなかったのです。これはことばの端でございまして、公害罪のほうは因果関係の立証に非常に困難だから、われわれとしては反対する率が多い、こういう意味で受け取っていただいてけっこうです。  それから行政委員会裁定権を与えておいたほうが四審制になるのではないか、こういうことですね。裁定の一審があって、あと三審ございますから、四審制になって、かえっておくれるじゃないか。なるほどそういう場合もあり得ないとは申しません。説明が不十分でございましたが、だんだん答えていきますと、行政委員会による裁定については、執行力を与えよということをわれわれは申しているのです。そうしますと、裁判を経ないうちに今度は加害者のほうが執行されるではないかという問題が起こりますので、これはそれに服し得ないほど不満があるのならば、その執行力を停止してもらう機構を考えていこう。これは現在の仮処分制度なんかでもそれがあるのですね。仮処分を出します、あるいは仮差し押えを出しまして、非常に不服があるならば、裁判所において執行を停止、そのかわりただでは停止していただけません。それにしかるべく保証を立てろ、停止してほしいというほうが保証を立ててするんだというふうにまで考えておりますので、それでもあえて裁判をするということになると、これはやはり四審制でもやむを得ないのではないか。しかしそういう例外はあっても、裁定権のある行政委員会の調停に服して円満に解決するほうが、私は多いと予測いたしております。
  190. 赤路友藏

  191. 島本虎三

    島本委員 簡単です。軍事基地との関係、これは何のために残したのか。私に対して答えるためにそう言ってくれたのかと感謝します。これを除外した、この憲法違反の問題に触れるかどうかという点について、ひとつお願いしたい。  それから、これはいかがでございますか、公害罪の問題、これはもう日弁連も反対の意向を表明されましたが、お隣の山崎さんの御意見等を聞いても、もうすでに国としても因果関係が認められるような場合でも、現在の裁判では解決ができない。人が多数死んでも、それに対して判決が出ないものもある。中には一世紀以上かかってまだその結論が出ない。それに対して国が行なう行政でも、なお農民から逆に受益者負担金を出しなさいなんといって、これが当公害委員会でも問題になって、なくした例もあるのです。黙っていたら、これは現在の階級的な機構で、どこまで弱い者はしいたげられなければならない状態に追い込まれるかもしれない。そういうような場合に、はっきり認定され、その事実が認められるものに限り、公害罪というものは、やはり反対であろうか。この点は率直に、単純に、きわめて単細胞的に私は疑問なのです。この点、ひとつめんどうくさくなく解明してもらいたい。
  192. 関田政雄

    ○関田政雄君 順序を逆にいたしまして、公害罪から申し上げます。  これもお聞きしていますと、討論の必要を痛切に感じました。疑問があって反論がありますと、わかってくるのですね。私たちが公害罪に反対だというのは、刑法典の中に規定する、いわゆる総合的公害罪には反対だという意味なのです。(橋本(龍)委員「法体系を乱すという意味ですか」と呼ぶ)ええ。各付属法令の中に、たとえば水質保全あるいは大気汚染、そういう場合に、あの中に罰則規定がございますね。たとえば排出基準を守らないものに対しては罰金何ぼだ、それがさらに重くなりますと、少々の懲役刑も課しているようですね。(島本委員「知事に権限があるのです。ストップさせる場合がある。」と呼ぶ)ストップさせる場合がありますが、これは刑罰ではございませんから。  そこで、そういうきわめて簡単に認定できる、排出基準をオーバーしたじゃないかというような場合には、あの法律を活用してどんどん罰してもらったらいいのです。  これは御参考までに申し上げますと、フランスなんかの排出基準を守らない場合の罰金刑は、あれは一日一罪だそうですね。一つ行為が一罪じゃなくて、一日守らなかったら一日五万円、あくる日も守っていなかったらまた五万円、あくる日守らなかったら一日五万円と、こういうふうにして罰しておるそうです。非常に実効をあげておりますね。そういう罰則規定はもう少し強化せよと私は申し上げているのです。その点誤解のないようにお願い申し上げます。  第二番目の憲法問題、私は憲法違反のおそれ大いにありと考えております。  ちよつと旧聞に属しますが、親殺し重罪の規定は、二〇〇条と二〇五条ですか、親殺し重罪の規定は憲法違反だという判決が行なわれまして、最高裁まで行きましたね。最高裁では、あれは憲法違反ではないという最後の断を下しましたけれども、もう少し検討していきますと、あれは二名の裁判官は少数意見を出しておられます。だから、やはり親殺し重罪の規定は憲法違反だという裁判官が二人おられたのです、明らかに。それからもうーつは、少数意見というものは、あれは法律の進歩の前兆なんです。いかなる判例も少数意見からできてきたのですからね。ですから、親殺し重罪すら憲法違反議論が出たのです。基地周辺に住んでいるがために、受けられるべき保護が受けられないということになりますと、これは明らかにと言うていいほどに、憲法違反の疑いがある。私はその点から申しますと、基地公害は除外したけれども、別の法律をつくって、一般の被害救済よりももっと厚く保護するという法律ができても、やはり問題は少なくとも残っているのです。しかし、それならまだ恕すべき点がございますけれども、これは島本先生のほうが非常にお詳しいので、基地公害における被害救済は手厚くというようなことばは、とても使える柄ではありません。恩恵的なわずかの補償をしておるという程度にすぎませんのですから、二重に憲法違反の疑いありと考えておる次第です。
  193. 赤路友藏

    赤路委員長 本島君。
  194. 本島百合子

    ○本島委員 先に山崎さんにお尋ねいたしますが、先ほどいろいろお聞きしておって、ほんとうに私自身も気管が弱いし、いま有名になっている大原ぜんそく、三軒茶屋ぜんそくなんという、そういう地域に住んでおりますので、ひしひしと胸を打たれたような気がいたすわけであります。私、委員会で質問をいたしまして、その文書をもらったのですが、厚生省で認可をいたしておりますところの酸素吸入に属するようなものなんですが、これが数が非常に多いんですね、認定されておるものが。しかし、それはほんとうにきくのかと聞いたのです。というのは、四日市ぜんそくのテレビを見ておりましたときに、そういういろいろのものを使われているのを見たものですから、それで質問をしたところが、ききませんと、こういうわけなんです。きかないものを認定しちゃって、そうして高いものを買わせて、というわけで、私憤慨してしまったのですが、私が質問する一年前に、私どものほうの党の吉田之久代議士がやはりこの点について質問をしておるわけなんですが、そのときの質問は、これがきくものと考えて、そうして一軒のうちに一台だけでは足らない、安いもので一万五、六千円、高いもので四万、五万ととられるのですから、そういう場合に多少の補助金を出さないか、こういう質問をしてもらったそのときにも、きかないと言われた。業者はえらい騒ぎになって、私どものところへだいぶ陳情に来られましたけれども、厚生省がきかないと言うているのだから、あなた方が何とおっしゃってもどうしようもありませんね、と言っておったのです。そうしてどうしても不審なものですから、ことし質問をいたしましたところ、やはりきかないと、言下にこう言われたわけなんですが、そんなものを認定するほうがどうかと思うのですけれども、こういう点について、四日市のいろいろの御苦心があったと思いますけれども、厚生省からもらった書類の中では、たとえば室内配管設備つきのものなんて、これはお医者さんがやるものだそうで、高圧酸素室もそうです。ところが酸素ボンベあるいは過酸化水素を使用するもの、これの数は非常に多いのですね。こういうことの被害がかなり多かったろうと思うのですが、その後やはりこういうものにたよる患者さんたちがあるのかないのか、あれだけ国会でききませんと言ったのですから、いまはだいぶないだろうと思うけれども、現実はどうなっているかという点が一点。  それから、今回の法律によりましても、所得制限というようなものがあるわけなんです。私ども、この所得制限はけしからぬ――先ほどもおっしゃったように、生活の面で苦しんでいる、これだけ補償してみたところで、ちり紙一枚ないという苦痛、こういうものを考え合わせますときに、大体所得制限は撤廃しろ、こういう気持ちが強いわけですが、こういう点をどういうふうにお考えになりますか。ほかにもございますけれども、とりあえずこの二点をお尋ねいたします。  それから関田先生に……。私、調停と裁定と仲介、いろいろ文章的にあるのですけれども、この点がどういうものかということで質問をいたしましたが、自分の納得のいくような回答が得られなくて、きょうあなたに言われて、すかっとしたような気がいたします。  そこで、すかっとしたついでにお尋ねいたしますが、先ほどから言われている公害罪の取り扱いなんです。私どもやはりこの公害罪というものが設けられたほうがいいと考えて、今日まで主張してまいったわけですが、法体系上いろいろの点を指摘されたわけであります。しかし私は、あるほうがいいと思うのです。さすればどういう形の中にこれを盛り込んでいくかということは、いまもおっしゃっておったようですけれども、いまもこの公害についての法案が出ているさなかでございますから、これをこういうところに押し込んでみたらどうか、たとえば文章はこういうふうに変えたら、これが生きてくるのではないかというような点、お聞かせいただければ幸いだと思うわけです。  それからもう一つは、先ほどから、財団ができた場合のいろいろのことをおっしゃったのですが、寄付金でまかなわれるようなことではなくて原因者が負担すべきだ、その原因者を発見してきてきめるまでというのが非常に長くかかるわけですね。そうすると、その間の救済ができないということにもなってくるものですから、原因負担といっても、たとえば零細企業の密集している地域、この間も委員長に引率されて板橋のほうをずっと見てまいったわけですが、現地視察してみて、あの零細企業の連中の排出するいろいろの被害というもの、この人たちが、これはこうだと言われた場合に、それだけ負担能力がない、こういうことになれば、どういうことになるだろうかという不安を常に持つわけなんです。被害を加えたのですから、それは賠償するのはあたりまえですが、しかしそういう力のない人たちのために、こういう財団ができるという形になるんじゃないだろうか、こうも言えるわけなんですが、こういう零細企業や何かのいわゆる原因者に、どのような形をとらせればいいのか、その立場としてどうすればいいか、こういうことなんですが、その点、御説明をお願いいたしたいと思います。
  195. 山崎心月

    ○山崎心月君 酸素吸入、私も持っておりますけれども、たいしてきくとも思えないのです。それでつい注射にたよるわけでございます。それをやっていますけれども、やはりつらさがひどくなってくると、自分で皮下注射をやる。とにかく発作が起きてきたら、全身汗みどろになつて、まくらをかかえてしがみつくのです。これはもう耐えられないのです。ですから、もうぶるぶるふるえながら、自分で皮下注射――医師法違反なんですけれども、やむを得ないからやります。そうしなければ、おさまりません。それでほかの方で酸素吸入、ボンベなんかを買っていらっしやる方もあります。ある御婦人なんかは、公害患者になってから、すでにもう七百万円費やした、こう申しております。たいへんなことなんです。それで、この間、テレビの方がいらっしゃったので、旅館をしていらっしゃる方なんですが、旅館ができなくてやめておりますが、施設はありますから、私の家で二日でも三日でも泊まって、私の女房の苦しみを写真にとっていってください、お宿しますからということを言われました。夜になると、とてもはたに夫もおれないのです。ですから、この人はまるきり夢遊病者のような調子で、町へ昼出て行って、それで発作が起きると、そのまま山のほうの旅館なんかへ泊まっちゃうのです。お金がなくても行って、それでうちへ電話してお金を送ってもらって、そこで一週間でも十日でも泊まって帰ってくる。そういうようなことをやりながら、すでにもう七百万円を費やしたということまで申しておりました。それで結局、かかる人は貧乏人が多いのですが、ところが実際の補助薬は、平均四百名の患者の中で五千円前後、補助薬を使っております。これは私、昨年ずっと調査して歩きました。多い人は七、八千円、少なくて二千円、平均が五千円ぐらい使っております。そしてこの医療特別手当を出すか出さぬかという話も出ておりますが、これも入院患者だけが重いんじゃないということをよく知っていただきたい。そういう入院したくてもできない現状がたくさんあるということなんです。いま申し上げた青年なんかもそのとおりなんです。通院患者で、往復四十円、八十円のバス代に困って行けないというような人があるのです。ですから、私は、念仏を唱えるものですから、創価学会の方なんか、私たちをかたきのように言われますが、ところが、そうした患者のところへ訪ねて行きましても、先生、助けてくださいよと、私たちを拝むのです。それほど苦痛なんです。気の毒なんです。だから、手を取り合って泣くんです。まくら元にお曼陀羅をかけて、少しでも楽になるように拝みながら、それでも苦痛でたまらないから、そうなるともうお題目も念仏もないのですよ。苦痛を何とかして救ってほしいということなんです。こういう気持ちで、ともどもにそういう宗教というものを離れて、苦痛から逃れたさに泣き合うのです。その通院患者の――もうほとんどが四日市は通院患者でございますが、そういう入りたくても入れない現状にある人と、その人たちが非常にたくさん金を費やしている、こういう事実を何とかしてほしい。せめてバス代だけでも通院患者には出してやりたい。二名の自殺者がすでに通院患者の中から出たということなんです。入院患者には自殺者は出ておりません。そうしたたいへんなことがあるのです。ですから、もうこの苦しみを何とかして救ってほしい、そういうこともお願いしたいのです。とにかく苦しみに耐えられないということなんです。ですから、結局は発生源対策ということを一番やっていただきたい。そうして医療手当をできるだけ出していただきたい。そうしないと、病院まで通えない人があるのです。  これは一人の老婆をこの間尋ねたときなんですが、まくら元に曼陀羅をかけて、お題目を唱えながら、先生、私は、四十円のバス代も、今度上がって六十円になりましたから、そのバス代がないんですよ、こう言うのです。わずかな生活費の扶助を受けておりますけれども、その中から毎日毎日病院にはとても通えません、そういうことで、これを市長さんにいろいろお願いしたけれども、市長は、そういうものは出せない、こうおっしゃるのです。そうして地域的にも、各企業側の会社の社宅は、ほとんどもう市外に出ております。残っているのは一、二です。それから公務員住宅は地域内にありましたが、これも全部外に出ていった。そして裁判所なんかも、裁判長や何かは、みな外に、りっぱなところに変わってしまって、地域内の大きな邸宅には廷丁がいるだけです。この廷丁がかわいそうです。裁判長なんか遠いところへ行って、楽な環境のところで仕事をとって、空気の悪いところに延丁を置いてあるというのが事実なんです。そしてほとんど四日市の中小企業には就職者がない、こう言いますけれども、中小企業には就職者がないけれども、あの大企業には幾らでもわんさわんさと来るのです。なぜかというと、社宅が遠いのです。そしてマイクロバスで往復させているのです。それですから、その中にいる者には、もうちっとも何がないのです。そしてようやく石原産業のごときは、今度鈴鹿にほとんど移っておりますが、この中にも家族にかなりおります。この間尋ねましたら、市の公害課に行って、鈴鹿に越しますが、現状はこうなんだから、お医者さんに通いたいのだ、この認定書を使わせてくれるかと言ったら、即日停止、こう言う。そんなばかなことはないのです。四日市におって病気になって、鈴鹿に来たからといって、そこで病気になったのだから、私は、せめて半年でも一年でも、これは認めてやるべきだと市長にそう言いました。そうしたら、それはできません、こういうような矛盾があるのです。ですから、いまの国道一号線を境にして、その西側は地域外になっておりますが、この間、そこのお医者さんを尋ねましたら、うちの地域から気管支の患者が非常にふえ出した。ところが、私が診断書を書いて、そして精密検査を受けるべく医療センターに送っても、みなはねてしまう。なぜかというと、地域外だ、こう言う。これも何とかこれを認める方法を山崎さん、あなたやってくださいよ、こう言われたから、その町に行きまして、私は自治会長に、これは住民運動以外に方法はない、だから、住民全体が署名を集めて市長に陳情するより方法がないのだ、私ら幾ら言ってみても取り上げてくれないのだ、こう言いました。  それで、酸素吸入なんか、家庭に一軒一軒置けるものではございませんし、それから、この間、四日市でテレビが、街頭で日曜日に取り上げてやりましたが、そこで一青年が、私は四日市で塩浜に五年おりますけれども、そんなに悪いとは思いません、こう言っておりました。けれども、その青年は、そこに来ている人はどんな人が来ているかというと、ほとんど病気でない者ばかり来ている。そして朝日新聞の記者の方が来ていらっしゃったから、電話して聞いたら、市に申し入れたけれども、市の人はだれも出てくれない、市の助役がテレビが始まるまでは来てうしろに立っていたけれども、いま逃げちゃってもうおらないんだ。こういうことを言っております。これが市の態度なんです。で、患者の名簿すらも――私は初めは非合法的にとったんです。ところが、それはどういうことをしてとったかというと、名簿見せてくれといったら、絶対見せられない、これは病気のことだから、個人の秘密に関することだから、ということで見せてくれない。ところが、ある人にお願いして、そして、私がこう出しておくから、ちょっと席はずすから、その間にかってに写すなりなんなり、見るなら見なさいということで写さしてもらった。そうしたらこの人はすぐ左遷された。今日でも絶対見せないんです。ところがこの間も、年末助け合い運動のお金を各患者に二百五十円ずつ配られた。名簿は民生委員に渡しているんです。民生委員には名簿を渡していながら、われわれ患者にはその名簿を見せない。患者救済運動に立ち上がって一生懸命になっているものにそれを見せないというようなばかなことはないんです。何とかしてそういうことを、見せる方法をやってほしい。明らかにしてほしい。そしてこの地域を拡大してほしいということを――地域に住居してかかったものは、他の市へ移っても、少なくとも数年の間は見てやってほしい。昨年、私ちょうど二十六人、市外、県外に転出した人を追跡調査いたしました。その二十六名のうちで、よくならないという人は一名だけです。これはもとよりのぜんそくなんです。二十五名の方は半年でほとんど楽になりました。だから、六名ほどは全快いたしました。あとの人は一年たったら楽になりました。こういうのが二十五名の患者でございます。これが市外へ出た人なんです。ですから、四日市の市外というものは――もう認定地域の中であろうが、外であろうが、ほとんどかかっております。煙突が高くなったからよけい悪いんです。そのために百二十メートルぐらいの煙突じゃもう全然だめなんです。夜ももう――ここに先ほども私申した厚生省の警報が出たのが、警報発令云々ということが昼の時間だけ書かれてあります。警報発令は昼だけじゃないんです。夜の発令は一つもやっておりません。夜苦しいのに夜の発令がないということはおかしい。私は、先月の九日、十日と二日間塩浜の患者のお宅を訪問して歩きましたが、二日とも途中で車を頼んで帰りました。そして晩にニュースを聞きましたら、きょうは〇・六二PPMあった、その翌日参りましたら、きょうは〇・五PPMでした、こういう濃度の亜硫酸が発生しておるわけです。それでも警報が出ていないんです。ですから、私が途中で倒れかけて、車をたのんで帰って、そして市の公害課へ電話をしましたら、パトロールが出たんです。帰りに私のところへ寄って、いま行って回ってきたけれども、何もない、こう言うんです。そんなことはないんだ、何時ごろこの地点で私はこういう苦痛を受けたから車に乗って帰ってきたんだと、こう言ったら、またそのパトロールが行った。また帰ってきて、どう言ったかといったら、心当たりがありました、それはなぜかといったら、三菱化成が何か機械の故障を起こしてどんと出しちゃった、それが明らかになった、その時間に私がそこに行きあわしておった。それでも、市なんか、私がそうくどくど言うまでは行かないんです。四日市なんかじゃ、この間も市長は、あれはもう公害患者じゃないんだ、ぜんそく患者だ、こういうことを言っているんです。ですから塩浜病院で、入院患者の中でこの間けんかがありました。そうすると、漁師なんか元気なものが出てきて、そしてそこに寝ておって、年寄りのぜんそくだけれども、この亜硫酸ガスゆえに気管支を悪くしていった、そういう患者たちに対して、若い者は、おまえたちみたいなぜんそくが来ておるから、おいらまで公害ぜんそくでなく、普通一般ぜんそくと一緒にされるんだ。市長のいまの声聞いたか。てまえらみたいに普通ぜんそく患者だと言うて、公害ぜんそく患者として扱ってもらえないんだと言って、患者同士けんかをするんです。この間も事実そういうことがあったんです。それはなぜかというと、結局はそういうものを、みんなのものを、ぜんそく患者なんですよなんというようなことを平気で市長が言うんです。県の知事なんかも、この一月に行ってそれを言ったら、そういったら山崎さん、山の中だってぜんそく患者はありますよ、こう言うんです。そんなことは世界じゅうにありますよ。そんなことはだれだって知っている。知事さん、あんたがそういうことをおっしゃっちゃだめなんだ。われわれのような者が、町の者が言うのならばこれはやむを得ませんけれども、あなたたちがそんなことをおっしゃって、四日市のこの気管支を四日市の条例で、この審議会で気管支ぜんそく、ぜんそく性気管支炎、慢性気管支炎、こういうもの以外は指定してないのです。単にぜんそくというものだけは全部審議会ではねております。それなのに、知事のごときも、やはりこれは、ぜんそくは日本中ありますよ、こういうことを言っているのです。だから四日市ぜんそくなんというものは公害患者として取り上げていないのが、まず三重県四日市あたりにおる行政機関の長たちの言うことなんです。これに対して市民は非常に憤慨しておるのです。
  196. 関田政雄

    ○関田政雄君 お答えいたします。  先生方の意見を聞いておるうちに、公害罪は反対だということを少々緩和いたしまして、慎重を期すべきであると訂正いたします。これは討論の結果でございますからどうぞ。ただ、こういう点なんですよ。極端な例をあげますと、あっせん収賄罪という刑法上の罪がございますね。あれを適用するのは非常に困難でしょう。あっせん収賄罪というのは、なるほど概念的にはわかるのですが、よって不正の行為をなさしめた、その不正の行為が立証できないでしょう。あれはあってもなきにひとしいのです。公害罪というものを設定する以上は、構成要件が明確で、因果関係が立証されて、眠っている罰条になっては困りますというような配慮から、慎重論者になっておるわけでございますから、どうぞ。  それから寄付金問題でございますね。これは被害救済の金というものはいかなる性格を持つべきかという問題にかかっているのです。どうも今度の被害救済法案は非常に救貧的性格を持っていますね。困っておるのだから支給してやるのだ。しかし、自分のなまけた結果によって自分が貧乏したというような場合、あるいは自分のところの原因で貧しくなって社会保障を受けるのだというのとは、これは性質が違うのです。ですから被害救済の金は、あれは損害賠償の一部と解釈すべきでしょう。損害賠償の一部と解釈いたしますと、寄付金でまかなっておってはいけないのです。もしも私はそういう点から意見を求められますならば、原因者を追及するのに時間がかかっておって、それを追及しておるひまがないのだということならば、これは明らかに国家が立てかえ払いをすべきです。国家が立てかえ払いをすべきです。しかも、これは私の記憶に誤りがなければ、最初政府の予定しておられたあの基金の額は、三億ということから出発するという話でございましたね。一日に一人に千円の生活保障を出して、一万人の公害患者がおれば、一年に三十何億かの予算が要るはずです。三億って、子供だましと実は申し上げたいのですね。その点西洋では、設備投資の五%は公害対策費に予定すべきであるというものができているのです。昭和四十二年か三年度の日本の設備投資七兆といたしますと、三千五百億円は、企業家は公害対策費に予定すべきものです。そいつを出さずに置いて、いわゆる公害の侵害は階級的であると先ほど申しましたが、逃げ出すこともできない、あるいは公害排除の機械も買うことができない人だけが受けるという結果になっているわけですから、この意味においては公害は明らかに社会的費用ですね。私は、もしも原因者から出させるのに時間がかかって困るということならば、三億や三十億の金は国家が立てかえ払いしていいじゃないか、そうして徹底的にゆっくりと国家はその原因者から徴収すべきであるという意見を持っているのです。
  197. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 関田さんにちょっと。大体基金の、財団法人として寄付金を集めるということについては非常に反対であるという御意見でございました。私どものほうとしても、やはり賠償であるというような考えから、最初国が立てかえて、そうして原因者を追及して、全額原因者から払わせる、これは私どもの主張なんですけれども、非常によくわかりました。  そこで、所得制限ですね。そういう面から見ますと、所得制限というのは、賠償になりますと、これは憲法違反ではないか。たとえば公害によって被害を受けた賠償は、これは自賠法なんかでも、交通事故によってなくなったらいま三百万ですか――金持ちだから三百万払わぬでもいい、こういうわけにいきませんね。それで、所得制限というのは憲法違反になるというふうに私は解するわけですが、この御意見。  それからもう一つ、この一番最初の一条の目的に、あなたのほうから御意見を伺っておるのがないのですが、この政府案によりますと、大気汚染水質汚濁だけなんです。公害対策基本法には、あと騒音、振動、地盤沈下及び悪臭、なおいま日照権の問題がやかましくいわれていますが、あれも相当な裁判費用がかかって、被害者は困っているわけです。それも入れるべきじゃないか、こういうような考えを持っておりますが、これに対して御意見は……。  それからもう一つ、これはきょう四日市の被害者患者代表でおいでになりました山崎さん、この法律をあなたお読みになったかどうかわかりませんが、いま医療手当、それから介護手当ですね、これは家で治療している人たちはやはり介護に相当かかると思うのですが、これはいま一日三百円、それも払った人ですね。いま聞きますと、家の中に介抱してくれる人はないわけですから、雇わぬわけにはいかないから、やっぱり費用がかかる。そうするとこの点も御意見いただきたいのです。  それから生活保障。私どもいま考えておりますのは、この前私も四日市へ現実に参りまして、昼働かなければぐあいが悪いというわけで、夜は病院、昼は会社、こういうような状態を見ましても非常に気の毒に思いまして、今度生活保障、あるいはまたそれによって会社を長期に休んで、次の更生資金ですか、こういうものも出さなければいかぬということを考えております。それに対する御意見を伺いたい。  最後に、山崎さんが先ほど創価学会があなたたちをぼろくそに言うけれども、こういうお話がありました。これは宗教論争ではありませんので、これははっきりしていただきたいのは、仏法に照らしてあなたの仏法は間違っている、こういうことを言うておるのですから、これは誤解のないように。これは答弁は要りません。
  198. 関田政雄

    ○関田政雄君 答弁いたします。  目的については、社会党案あるいは厚生省案いずれも公害による健康被害なんですね。これはもちろんであります。何も二つに制限すべき理由はありません。のみならず、騒音による被害というものは非常に急激ですから、そういう限定をする必要はなしという点は同感です。  それから所得制限。これは救貧的性格からきたものでありまして、所得のあるものは要らぬということなら、議会におられる大先生などずいぶん所得の高い方がおられますから、あれは全部無報酬になさったらいいんじゃないか、そういう極端論さえ出ますから、救貧的性格がない限り、賠償額の一部ですから、所得制限というようなことは考えるべきではありません。  それから、憲法違反という話がちょっと出ましたが、この点はどの点をさしていらっしゃるのですか。
  199. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 それは所得制限をしたということ。
  200. 関田政雄

    ○関田政雄君 所得制限ということですね。その点は、憲法違反までいくまでもなく、この給付の性格が損害賠償の一部であるということになれば、当然制限は撤廃すべきであると思います。
  201. 山崎心月

    ○山崎心月君 これはある患者の家庭なんですが、先生がおっしゃった介護手当というようなことですが、ある家庭を私が訪問いたしまして、五、六歳くらいの女の子が夕方うずくまってせきを続けておりました。おかあさんはと、こう言ったら、仕事に行っている、こういうことで、何時ごろ帰るのかと言ったら、五時半か六時にならねば帰ってこない、それならあしたもう一ぺん来るわねと言って、また翌日に行ったら、相変わらず夕方またうずくまってせいているのです。そして六時ごろになったらおかあさんが帰ってきたのです。目を充血させちゃって、せきがひどくて、そんなかわいそうな五、六歳の子供が家に一人いてせいている。おかあさんに、なぜこれを病院に連れていかないのですかとこう言ったら、この子供を病院に連れていくと半日かかると言うのです。そしてあと半日は、私は働きに行けません。朝から行かなければ仕事がないのです。仕事をするためには、この子を連れていけないから、近所の薬屋さんでせきどめくらい買ってきて飲まして、ただしてくれるお医者さんへも連れていけないのだと、こう言うのです。だからこういう人たちには、そのおかあさんにいわゆる介護手当というものを出して、そしてお医者さんに連れていけるような方法をしていただきたい、こう思うのです。そうでないと、行きたくても行けない現状がたくさんあるわけなんです。これはいま創価学会の宗教批判は要らぬと先生おっしゃったけれども、それは私たち信仰、信条ということをお互いに……(岡本(富)委員「それは答弁要りません」と呼ぶ)そうなんですが、それほどに苦痛だということを申し上げたのです。信仰を持っていても、お互いに一つに語り合えないような、それがやっぱり助け合わなければならないのだ、手を握り合わなければならぬというほどに苦しいのだということを申し上げただけで、そういう意味ではございませんからどうぞ……。
  202. 橋本龍太郎

    ○橋本(龍)委員 非常に有益な御意見を多数伺いましたことをお礼を申し上げます。  これは質問ではございません。お聞きを願いたいと思いますが、先ほどから基金の問題が非常に問題になっておりますけれども、これは寄付という考え方を私どもは実はとっておりません。これはむしろ無過失責任の原則に基づく拠出であると考えております。と申しますのは、先ほどから関田さん御自身が言われますように、公害の加害者の明定というものはきわめて困難な問題であります。しかし、加害者がなければ公害は起こらない。加害者とはだれだ、それは企業であります。そうすれば、明定ができるにせよ、できぬにせよ、産業界全体がこれに対して何らかの責任を負うことは当然であるという思想で、これをとってまいったわけでございます。政府の考え方でありましても、犯人と目される者が明定をされましたら、それに代位賠償請求権を請求させることは私は当然であると考えております。この点はそのように御認識をいただきたいと考えております。  と同時に、基地公害を除去したことが憲法違反であるという御議論がございました。これについては、私どもはこれが憲法違反だとは考えておりません。ただ、現行の基地周辺整備法その他基地公害に対処すべき法制が不十分であるという御指摘に対しましては、これは私どもは謙虚にちょうだいをいたしたいと考えます。ただ、憲法違反という御議論は、おそらく私どもの頭の中にたたき込ませるために極端な御発言をなさったものと理解をさせていただきたいと思います。  また、山崎さんから、最初に申し上げましたとおりに、私どもにとって、患者の方々の心情等を察するに非常によい御意見を聞かせていただきました。これは私個人として申し上げるのではなく、この国会に議席を持ち、そうしてこの委員会に議席を得ております各政党所属の委員全員の気持ちとして、お聞きを願いたいと思います。  先ほどお話が出ました入院患者通院患者入院患者に匹敵するような重態の方で、御事情があって病院にお入りになれないために、通院で御苦労なさっておる方もあるだろうと思います。これは私たちとして何らかの方法を考えてまいりたいと思いますし、また、たまたま四日市市の公害発生源のために、居住は鈴鹿あるいはその他の地域におられて、やはり公害病としての苦痛を負っておられる、しかしそれが指定地域外であるために公害病認定患者としての扱いが受けられないというような点は、御指摘のとおりわれわれも不合理だと考えますし、当委員会審議の中でも、これは政党政派の別なく、各党の委員から同様の意見が出てまいりました。この点に関しては、国会の責任において何らかの処置をいたしたいと考えております。私は自由民主党の党員でありますけれども、これは自由民主党の党員としてではなくて、この委員会におります日本社会党、民主社会党、公明党、そして私どもみなの委員の気持ちであります。その点については、お帰りになりまして、患者の方々にある程度の御安心が願えるような処置をする、これは皆さんおそらくどなたも御異存のないことだろうと思います。そういうお気持ちでお帰りをいただきたいと思います。一応それだけ申し上げます。
  203. 関田政雄

    ○関田政雄君 いまのは質問でございませんから、答弁ではございません。目的は公害問題をどうして解決するかというわれわれの熱意をおくみ取りいただいて、前進していただきたいと思います。
  204. 山崎心月

    ○山崎心月君 最後のお願いなんですが、何か収入の多寡によって医療手当はやらないとかやるとかということ、これだけははずしていただきたいと思います。ぜひこれはお願いしたいと思います。たくさん収入のある人は税金だってたくさん出しているわけなんだから、それに関係なしに、病気だから与えるのだということにしていただきたい。ぜひこれはお願いしたいと思います。
  205. 赤路友藏

    赤路委員長 どうも、本日おいでいただきましてありがとうございました。おかげで非常に有益な御意見を聞かせていただきました。心からお礼を申し上げます。  それでは、打合会は散会いたします。    午後一時三十二分散会