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床次国務大臣 ただいま御質問の中にありましたが、本来基
本法におきまして予定いたしましたものにおいて、裁定まで考慮すべきかどうかということは、基
本法の論議の際におきまして議論のあったところでありまして、その後答申等を見ましても、裁定まではいき得ないのではないかという
結論になっておるのであります。一部御議論になったことは承っておりますが、しかし裁定という字までは入らなかった。なお今日、
本法をつくります際におきまして、御
意見のような裁定まで加えるかどうかということにつきましては、
政府といたしましても十分検討いたしたのでありますが、ただいまも仰せになりましたごとく、
公害というものは非常に
種類が多いし、なかなか
原因の究明がつかみにくいのでありまして、それに対して裁定をするとなれば、やはり
裁判所と同じように相当強力なものでもって、広範なものでやらなければならなくなってしまう。結局新しいこういう
機関を設けたことが、やはり
裁判所と同じことになってしまうのではないかという問題があるわけでございまして、したがって、むしろその裁定という問題に対しましては、従来の
訴訟の行き方にまかしておいて、
当事者が、妥結したい、
互譲の
精神を持っております者については、
本法によって引き受けて
解決しよう。一つの新しい
解決方法だと私は思います。お互いが
公害というものの性質にかんがみて、そうしてできるだけ話し合う、両
当事者がさような
気持ちになりましたものは、
本法によって十分
効果があがると思うのであります。しかし
当事者の一方がどうしても言うことを聞かない。執行力を持ってこれを押えつけなければならぬというような場合、これはむしろ裁定に当たるべきものだ。そういうものを加える場合におきましては、やはり
裁判所の力によらざるを得ないと思っておる。
行政機関におきましてそれに類似するところの作用を営む、すなわち裁定という
事項を新しくこの第一条の
目的に加えるということになりますると、これは相当検討を要するものが少なくないのであります。はたしてそれでもって十分役立つかどうかということ、並びにわが国の
訴訟法の
裁判のたてまえから申しまして、はたして
効果があがるか、結局
裁判所と二重になるのではないかという問題もありますので、今後の検討にゆだねたい。
本法におきましては、第一条の
目的にあげました三つの
事項の範囲にとどめた次第であります。したがって、そういうふうに考えますると、先ほど申しましたように八条
機関でけっこうである。
なお、独立性の点を御心配になっておりまするが、この
機関にありましても、第二章以下にありまするが、
委員の任命等におきましても明らかでありまするごとく、第六条におきましては「人格が高潔で識見の高い者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。」ということになっておりますると同時に、
委員の
立場というものを十分検討いたしまして、第七条、「
委員長及び
委員は、独立してその職権を行なう。」というふうにもなっておりますし、その
立場というものは十分に中立性を保てる。第九条以下にその身分の保障があるわけであります。したがって他からの圧力、往々にして
企業者の圧力を御心配になっておられると思いまするが、
企業者からはもちろん、行政官庁からの圧力というものも排除いたしまして、独立的な中立的な
機関として働けるように、法制的に整備いたしておるのでありまして、したがって御心配のような独立性は、
本法によって十分これは守られ得ると考えております。