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1969-04-16 第61回国会 衆議院 産業公害対策特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年四月十六日(水曜日)     午前十時二十七分開議  出席委員    委員長 赤路 友藏君    理事 橋本龍太郎君 理事 藤波 孝生君    理事 古川 丈吉君 理事 河上 民雄君    理事 島本 虎三君 理事 本島百合子君       葉梨 信行君    中井徳次郎君       浜田 光人君    米田 東吾君       折小野良一君    岡本 富夫君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      床次 徳二君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      菅野和太郎君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房審議室長   橋口  收君         防衛庁参事官  江藤 淳雄君         防衛施設庁総務         部長      鐘江 士郎君         経済企画庁国民         生活局長    八塚 陽介君         科学技術庁原子         力局長     梅澤 邦臣君         厚生省環境衛生         局公害部長   武藤琦一郎君         通商産業政務次         官       藤尾 正行君         通商産業省企業         局立地公害部長 矢島 嗣郎君  委員外出席者         議     員 角屋堅次郎君         経済企画庁国民         生活局参事官  宮内  宏君         経済企画庁国民         生活局水質調査         課長      田村 五郎君         農林省農地局計         画部資源課長  佐々木 實君     ――――――――――――― 四月十四日  委員岡本富夫辞任につき、その補欠として松  本忠助君が議長指名委員に選任された。 同月十六日  委員松本忠助辞任につき、その補欠として岡  本富夫君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  公害に係る健康被害救済に関する特別措置法  案(内閣提出第六三号)  公害紛争処理法案内閣提出第六八号)  公害に係る被害救済に関する特別措置法案  (角屋堅次郎君外十二名提出衆法第一〇号)  公害紛争処理法案角屋堅次郎君外十二名提出、  衆法第二〇号)  公害に係る健康上の被害救済に関する法律案  (小平芳平君外一名提出参法第一号)(予)  公害に係る紛争等処理に関する法律案小平  芳平君外一名提出参法第五号)(予)  公害委員会及び都道府県公害審査会法案小平  芳平君外一名提出参法第六号)(予)  公共用水域水質保全に関する法律の一部を  改正する法律案内閣提出第九四号)      ――――◇―――――
  2. 赤路友藏

    赤路委員長 これより会議を開きます。  内閣提出公害に係る健康被害救済に関する特別措置法案及び公害紛争処理法案角屋堅次郎君外十二名提出公害に係る被害救済に関する特別措置法案及び公害紛争処理法案予備審査のため本委員会に付託されました小平芳平君外一名提出公害に係る健康上の被害救済に関する法律案公害に係る紛争等処理に関する法律案及び公害委員会及び都道府県公害審査会法案並びに内閣提出公共用水域水質保全に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。藤波君。
  3. 藤波孝生

    藤波委員 公害の問題につきましては、紛争処理法案についてはすでに古川委員から、また前々回の機会に、私は、健康被害救済について非常に長時間ちょうだいいたしまして、いろいろな角度から、公害問題について関係各省庁の御意見を承っておったわけであります。  きょうは、待望久しかった、公共用水域水質保全に関する法律の一部改正について、幸いに経済企画庁から前回趣旨の御説明もございましたので、いろいろさらに公害問題についてお伺いいたしたいこともございますが、水質保全に問題をしぼりまして、若干の点にわたってお伺いをいたしたいと思います。ただ、あとあとの質問者の都合もございますので、ごく限られた時間の中でお伺いをいたしてまいりたいと思いますから、ひとつ具体的にお答えを願っていきたいと思います。  大気汚染水質汚濁の問題が、公害問題の中でも王座を占めて、両横綱といいますか、二大元凶といいますか、非常に関心を集めておるわけでありますが、今回のこの改正によりまして、水質保全に対する公害対策行政がどのように前進をするのか、まずその点からお伺いをいたしたいと存じます。
  4. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 元来この水質保全の問題については、工場排水がおもな原因になって、それによって水質汚濁の問題というものがやかましゅうなってきておる。そこで水質保全法という法律を出さざるを得ないというようなことになってきたのですが、御存じのとおり、この水質汚濁原因が今日では多様化してまいりまして、工場排水ばかりでなくして、その他いろいろの原因から水質汚濁してきておりますので、したがって、それだけ、それによっての水質汚濁現象発生水域が増加してきたということに対して、国民の保健その他の点からして、ぜひひとつその新しい現象に対しての規制を設けなければならぬということから、この問題が起こってきて、かねてから本法改正に従事しておったのであります。なお、この水質保全をやるためには、国と地方団体とがもう少し協力してやる必要があるというようなことも考えられるし、また水質基準設定後においてのアフターケアというような問題も、いままで以上にそれをやらなければならぬというようなことが、本法改正するに至った理由なのであります。
  5. 藤波孝生

    藤波委員 公害対策はいろいろな角度から取り組んでおりますけれども、いろいろな角度から取り組んでおりますだけに、一つ一つ取りまとめがたいへんむずかしくて、各省庁に問題がまたがっておるということがいえるわけであります。今回も、水質保全法改正については、早く国会提案をされるように承っておりましたが、非常に時間的におくれたように私ども思うわけで、そういうわずかな時間的なおくれというものが、やはり公害対策全般を非常におくれさしていくというようなことを何か象徴しておるような感じがしてならぬのでありますが、そういう意味で、今回の国会提案がおくれました理由は、またまた各省庁間のなわ張り争い原因になったのではないかというようなことをたいへん心配いたしておりますが、その点について御所見を承っておきたいと思います。
  6. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 ただいまお話しのような関係で実は提案がおくれたのでありまして、やはり各省との調整がうまくいかなかったというところに原因があると思うのです。たとえば養鶏場なら養鶏場、あるいは養豚なら養豚農林省では盛んに奨励しております。またしかし、それによって水質汚濁原因がありますから、私のほうで見ると、これを何とか規制したい、農林省側から見ると、養豚事業というものをこの際大いに奨励したいというようなことで、その間の調整がむずかしかった。正直なところ、そういう事情によって調整がうまくいかなかったために、提案がおくれたということになっておるのであります。
  7. 藤波孝生

    藤波委員 ひとつその辺は、積極的に、これからも公害対策に当たるについては各省庁間の連絡を密にして、特に水質に関しましては、経済企画庁、思い切った指導性を発揮してお取りまとめをお願いしたいと思うわけでございます。  そこで、水質保全規制でありますが、調査をして、指定をして、というのがこの保全法で行なわれ、そのあと、大体線が出ると工排法に問題を移して、そこで規制をしていく、こういうことになっておるわけでありますが、どうもその辺が、二つ法律にまたがっておるということが、スムーズにいけばそれでいいようなものでありますけれども水質保全に対する規制の厳格さというか、権威というか、取り締まるべき側から見ても、被告席の側から見ても、非常にその辺が薄らいでいくような感じがしてならないわけでありまして、こういう水質保全法改正する機会に、工排法との一体化ということをもう一つ前向きに検討をなさるべきであったと私は思うわけでありますが、そんなような考え方はどういうことになっておるか、今後そういう方向に向かって検討する考えがあるかどうか、御所見を承っておきたいと思います。
  8. 八塚陽介

    八塚政府委員 ただいまの御質問は、私どもにとってもかなり本質的な点であるというふうに感じておったところでございます。ただ、ただいまも大臣が申し上げましたように、水質汚濁原因というのはきわめて多様でございます。工場におきましても、その工場は、たとえば所管で申し上げますならば、もちろん通産省関係が多いわけでありますが、一方、他の農林その他各省にまたがって、それぞれその工場に対する一般的な監督その他の所管をしておるわけであります。まして、今回も改正案の中に触れております多種多様な汚濁源があるわけでございます。したがいまして、水質汚濁という点をつかまえますならば、確かに一つの問題でございまして、それを有効につかまえていくということは、どうしても関係各省のそれぞれの力を十分に発揮していただくということが必要になるわけであります。逆に申しますと、たとえば一本の法律にいたしまして、企画庁がやるというようなことにいたしますならば、これはまた非常な人員あるいはシステム等が要るわけでございます。そういう意味におきましても、やはり関係各省がそれぞれ得意とする、あるいは責任感じておられる各所管業種に対して、従来の力をもってやっていただくということがいいのではないか。ただ、そこでは、お話にあったと思いますが、そういう気持ちではたしてやってくれるだろうか、あるいはうまく協力ができるだろうかということがございます。正直に申しまして、出発当初は必ずしもそういう協力がうまくいかなかったというような事例も多少聞くわけでありますが、ここ数年、公害あるいは水質汚濁についての関心と申しますか、やはりじっとしておれないというような雰囲気が盛り上がってきておりますので、それぞれの立場による意見はいろいろございますけれども、ここ数年の私ども行政の実感から申しますと、そういう点については大体改善されてきているということを言って差しつかえない。しかし、今後とも御指摘のような問題はあろうかと思いますので、現在、法体系はとにかくといたしまして、もしこういう法体系がいいとすれば、十分今後ともそういう関係各省協力は私ども心がけてまいりたいと思いますし、それについては、関係各省協力も期待できるというふうに考えておるわけでございます。
  9. 藤波孝生

    藤波委員 いまの御意見に対しては、私どもはそれでいいと思っておるわけで、それぞれの省庁がそれぞれの一番持ち味を発揮をして、公害対策政府全般として推進していくということについてはけっこうだと思うわけでありますが、さらに今後はもう一つ前向きに――二つ法律省庁がまたがって、しかも被害者は一本でありますから、その辺について何か現実にそぐわない面がやはりいろいろの面で出てくるのではないかということを考えますので、御検討をお願いいたしたいと思うわけであります。  水質保全法改正をせられました機会に、工排法のほうは改正をする必要がないのか。これはいまの企画庁通産省にまたがるという角度から、通産省の側の御所見を承っておきたいと思います。
  10. 藤尾正行

    藤尾政府委員 藤波先生の御趣旨は十二分にわかるのでございますけれども、私ども工場排水法といいますものも、水質保全法という経済企画庁母法というものがありまして、その子供でございますから、母法のほうが新たにしっかりした改正を加えられるということになれば、その子供は、その運用上、母法精神に従ってまいるということは当然でございまして、子供法律はじはじに至りますまで変えていくという必要はなかろうと思います。これは私ども責任をもちまして、母法精神に従いまして、運用をあやまたないということを期してやるつもりでございます。
  11. 藤波孝生

    藤波委員 続いて、今回の改正に伴って斃獣処理場などに関する法律等の各種の実態規制法を、やっぱりいろいろ改正をする必要があるのではないかと思うのでありますが、その辺については改正する必要はあるのかないのか。またそれは検討せられておるのか、お伺いしたいと思います。
  12. 八塚陽介

    八塚政府委員 ただいまも通産政務次官からお話しになりましたが、水質汚濁の関連で一番関係の深かった工排法についてと同様の問題が、今回つけ加えたいと考えております各法規にあるわけでございます。いずれも現在の法律そのもの改正する必要はございませんけれども、たとえばその各法規による事業場の設置の許可の問題、あるいは汚水処理のためのその構造基準を定める、そういう際、それらをこの精神にのっとって、それぞれ運用をしていただくという必要はあるわけであります。それからまた、場合によりましては、政省令、主として省令の段階でございます。そういうものにつきましては、それぞれつけ加えていただくとか、あるいはもう一ぺん基準等を見直していただくということはあるわけでございます。その点につきましては、私どももこの法律を立案いたします過程でも、関係各省お話をいたしております。いずれもしこの法律が、御審議の結果、通していただければ、それについては関係各省とそれぞれの点について具体的にお話し合いをする。関係各省も、とにかくそれはやろうということにはなっておるわけであります。
  13. 藤波孝生

    藤波委員 時間の関係もありますから、先を急ぎますが、水質保全法改正する機会に、どうしても流水基準をひとつ設定すべきである、規定すべきであるという、前からの非常に強い意向があったと思うわけでありますが、今回の改正にあたって、水域水質基準設定についての規定がないということは、非常に残念だと私どもは思っておるわけでございますが、その辺について、経済企画庁のお考えがあったら伺っておきたいと思います。
  14. 八塚陽介

    八塚政府委員 ただいまの問題でございますが、従来特に被害を受けるほうの立場、あるいは水質保全が十分であるかどうかという立場のほうからの一つ問題点といたしまして、現在の水質保全法が、工場事業場等からこれだけの程度の水なら出してよろしいという排出基準だけをきめております関係上、そのときに期待をしておるその川なり海なりの水質の全体の状況については、底抜けでないかという御指摘あるいは批判があったわけでございます。実際問題といたしましては、私どもその工場排水基準をきめます際には、そういう排出基準でやっていけば、流水全体がどういうふうになるであろうかということを当然計算をいたしまして、そうしてそれについて関係各省の了解の上で、したがってそのもとである排出基準はこうであるというふうにきめてまいったわけでございますから、流水基準というようなものについて全然考えないでやっておったというわけではございませんけれども、その点についていろいろ問題があった。そこで今回改正考えます際にも、当然それを問題として取り上げたわけでございますが、考えてみますと、この水質保全法そのものは、公害対策基本法よりも先に出発はいたしておりますけれども、とにかく公害対策基本法がいわばさらに基本的な法律である。その法律の第九条の中に、水質汚濁については全体としての環境基準をつくることが必要であるというふうに規定をされておりますので、むしろ重複してくるということになりますと、かえってその間の法律的な関係がややこしくなる。したがいまして、私ども実態としての流水基準的なものが必要である。したがってその必要にこたえる意味において、むしろ公害対策基本法に基づく環境基準というものの設定のために努力していくということによって、法律上の重複を避け、そして実態的なそういう要望にこたえていくということがいいのではないかというふうに考えたわけでございます。したがいまして、先生のいま御指摘の点につきましては、私ども正直に申しまして、いまの公害対策基本法に基づく環境基準設定についての作業と申しますか、着手がおくれております。今後関係各省協力を得て、早急にその設定につとめてまいりたい。あるいは設定をいたしたいというふうに考えておるのであります。
  15. 藤波孝生

    藤波委員 公害対策基本法に基づいて、環境基準をつくっていきたいというお話がたまたま出ましたからお伺いするわけでありますが、この公害対策基本法の第九条に基づいて、水質汚濁環境基準設定するという、国民の側から見れば、相当性急なくらいに要望をしておるわけであります。大気汚染については非常に作業が進められておるにもかかわらず、同じような気持ちで注目をいたしております水質汚濁のほうが非常におくれておることは、非常に遺憾だと思うわけであります。そういう意味で、ひとつ作業をぜひ早くお進めをいただきたいと思うわけでありますが、この環境基準設定するについての考え方なり、また水質保全規定する場合に、水域ごと環境基準をきめていこうとするのか。相当広範囲なもの、あるいは全国一本でいくような環境基準のあり方を考えておるのか。その辺何か方針があったら承っておきたいと思います。
  16. 八塚陽介

    八塚政府委員 確かにおくれておりまして、申しわけなかったわけでありますが、水の関係については、ひとつ大気等と違う特徴があるのではないだろうか。と申しますのは、大気の場合には、端的に申しまして、人間の健康ということが最終的と申しますか、最も端的な目標になるわけであります。ところが水の場合には、その目的と申しますか、被害のほうからのことを申しますと、わりに多様であるわけであります。つまり人間と水とのかかわり合いを申し上げますと、人間が水を直接に飲料として使う、あるいはその中で泳ぐ。あるいはまたあまり人間とのかかわり合いがないという水域、しかし水産業とは非常に関係がある。水の場合にはきわめてその目的と申しますかが多様である場合があるわけであります。少し逆説的に、これは必ずしも正確ではございませんけれども、川のそばに人が生活をいたしておりまして、そして若干汚れておっても、それほど激しい被害は受けない。しかしその中にいるアユとかそういうものはたちまちやられてしまうというような場合等があるわけでありますから、水につきましては、なかなか一義的に一般的な基準を立てられるかどうか。逆に指定水域ごとに、具体的にその地帯の産業あるいは被害を受ける人間生活環境、あるいは被害を受ける水産業等を、それぞれのかかわり合い方によってやっていくか、いろいろ問題があるわけであります。私どもといたしましては、いまのところ一般的な環境基準をつくりますと、かえってゆるくなるような気もしないではない。しかしまた、この目的である人間生活環境あるいは健康等考えますならば、むしろ一般的に全国的にまず基準を与えておいて、そうして各水域ごと応用動作をやっていくというような問題があるわけであります。そういう点につきましては、申しわけございませんが、いまのところ最終的にこうすべきであるというところまで詰まっておりません。関係各省研究会をまず開きまして、早急にその基準設定方法論を詰めるように努力をいたしたいというふうに考えております。
  17. 藤波孝生

    藤波委員 経済の成長に伴って、あるいは人口の都市への集中に伴って、いろいろな水質汚濁公害発生をしてきておるわけで、いずれ研究会を開きましてと言っておるようなことでは、ほんとうにもう健康な国民生活を守ることはできぬ、こういうふうに私ども考えるわけであります。そういう意味で、公害対策基本法にもはっきり明示をして、早く環境基準設定すべきである、こういうことに法律でも規定をしておるわけでありますが、大体あとどれくらいで水質保全についての環境基準をまとめる考えであるか、時期的なめどをひとつこの際、できればお伺いしておきたいと思います。
  18. 八塚陽介

    八塚政府委員 確かに公害対策基本法に基づきます環境基準につきましては、私ども非常におくれておりまして、その意味では申しわけないわけでありますが、一つだけつけ加えさせていただきますならば、私ども、先ほども申し上げましたように、工場排水基準法律的にきめておりますが、そのもとにおいては、やはり一種の環境基準的なものを頭に置いてやってまいったわけであります。しかしこれは方法論としては、つまり指定水域ごとという方法でやってまいったわけであります。そこで、先ほど申し上げましたようないろいろな問題があるわけでございますが、逆に言いますと、いままで私ども環境基準について全然勉強していなかったわけではなくて、いま言いましたような形で、ある程度の蓄積なり勉強はあるというふうにも考えております。そういう意味におきましても、研究会というようなことで、だいぶまどろっこしいことではないかという御指摘があったわけでございますが、それほどいろいろな実績、データ等には不足していないと思います。ただ、方法論はなかなかいろいろございます。それから川の種類も非常にたくさんございます。問題になっている川がそれぞれ地域によって違うわけでありますが、そういう意味で、私どもといたしましては、現在、年内に、あるいは年度内にはそういう方法論をまとめて、それを具体化したいというふうに考えております。できるだけ努力をいたしましてその線で詰めたいと思っております。
  19. 藤波孝生

    藤波委員 これまでも指定水域ごと基準が設けられてきて、大体この辺の線というものは一つ一つ積み上げて出てきておると、私ども考えておるわけでありますけれども、ひとつぜひおまとめを願って、環境基準設定については作業を急いでいただくということをお願いしたいと思います。  そこで、水質基準一つ一つ設定をされていくわけでありますが、その場合に、水質汚濁していく基準として、汚濁負荷量そのもの規制をしていくべきではないかという考え方があるわけでありますけれども、その辺についての御所見をひとつ承っておきたいと思います。
  20. 八塚陽介

    八塚政府委員 いまの汚濁負荷量規制をしていくべきであるという問題につきましては、やはり流水基準あるいは環境基準排出基準との関係と、問題としてはやや同じ系列にあるようにも考えるわけでございます。私どももやはりそういう必要が実態的にあるだろうというようなことで、川の実態に応じて、その線を従来とも考えてまいったつもりでございます。たとえば、非常に単純な川でございますと、ある一定の工場事業場があって、その水がある一つ産業にこの程度の害を与えるから、この程度排出基準にするということで、大体形が整うわけでございますが、御承知のように、このごろの問題は、いわゆる大都市における河川、しかも工場事業場その他汚濁源というのはきわめて多様でございます。それからすでにある程度汚れておる。しかもさらにどんどんそこに人がふえ、あるいは工場事業場等がふえるというような場合等を考えまして、その場合には、既存の工場等については今後の改善その他にまちながら、ある程度基準をかけると同時に、今後新しく立地する場合には一そうきびしい基準になるというような形で、全体の汚濁負荷量というものを維持していくという形でやってまいっておるわけであります。そういう方式がどうも現在のやり方としては適切であり、かつだんだん必要になってくるというような状況でございますので、今後とも水質基準指定水域設定の場合、あるいは排出基準設定にあたりましても、いまお話しになりますような汚濁負荷量というものを考えて、それがこなし得る形での基準設定を今後とも考えていきたいというふうに存じております。
  21. 藤波孝生

    藤波委員 水質汚濁原因は、これは多様にわたっておるわけでありますけれども、その中の微量重金属による汚濁の問題が、非常に国民の神経を刺激してきておるわけであります。もっと思い切って基準を強化すべきであるという各方面の意向が強いわけでありますが、その辺について、水質保全立場から企画庁はどのように考えておられるか、ひとつお伺いをいたしておきたいと思います。
  22. 八塚陽介

    八塚政府委員 微量重金属の問題は、微量重金属がどういう形で人間に影響するかというプロセスについては、それぞれ特有なあるいは複雑な形があるようでございます。ただやはりそれがどういう形でか人間にきわめて致命的な影響があるという場合が最近発見され、あるいはふえてきておるということは御指摘のとおりでございまして、私どもとしましても、必ずしもこの改正案がまだ立案されていなかった段階におきましても、これも決して早かったということで自慢できるわけではないと思いますが、メチル水銀等につきましても、一応政府の見解がまとまりました過程では、できるだけ関係各省調査を利用した形で、早急に水質基準をかけたというようなことで、私ども努力はいたしております。しかし、今後ともこういう微量重金属の問題は出てまいると思いますが、冒頭申し上げましたように、このプロセスがなかなかつかみにくいという難点がございますけれども、私ども精神と申しますか、気持ちとしまして、できるだけ早急に因果関係をつかみまして、そうして微量重金属を対象にしていく、現にシアンであるとか、そういうものもすでにやった実績があるわけでございますが、そういう線を強化し、そういう気持ちを鋭敏にしまして、微量重金属に対応してまいりたいというふうに考えております。
  23. 藤波孝生

    藤波委員 それはやはり被害発生をしてから、そういう現象があらわれてきてから、いろいろ、どの程度のものはどうなんだといってみても非常におそいと思うわけですね。ここまで国民が注目をいたしてきておりますだけに、微量重金属等についても、環境基準は相当考え方を多様な面、あらゆる場合を想定して、それを含んで相当きびしい基準というものを企画庁は示していくというような考え方が、環境基準設定の場合に必要であろうと思いますけれども、微量重金属による被害等についても、守るべき水質基準という角度から、思い切って設定をしていく考えであるかどうか承っておきたいと思います。
  24. 八塚陽介

    八塚政府委員 実は微量重金属の問題がたいへんむずかしい一つの点は、天然にある程度微量の重金属が賦存いたしております。それから微量重金属が現実に人間に対して被害発生せしめるのには、その許容限度とか、あるいはどの程度の蓄積になれば問題になるとか、あるいは魚を経過して入ってくるとか、あるいは米を経過して入ってくるとか、種々の問題があるわけでございます。一方、排出基準をかけますためには、どの程度でなければならないということを、ただいまの、いわば天然に賦存しておる関係等々を勘案してかけなければならないものでありますから、どうしても従来おくれがちであったということであります。ただ気持ちとしてあるいは精神としては、当然予防的にやらなければ、結果においては非常におそろしいことになるわけでありますが、私どもといたしましては、いま申し上げましたようなことを勘案しつつも、いわゆるおそれがあるという場合にはできるだけかけてまいりたい。ただ、多少技術的な点で、今後ともいろいろ勉強をしていかなければならない点が、特に微量重金属の場合に多いのではないだろうかということを考えておるのでございます。
  25. 藤波孝生

    藤波委員 二、三点、法律案の内容について具体的に承りたいと思いますが、まず、特に目的をこの際改正する理由を承りたいと思います。
  26. 八塚陽介

    八塚政府委員 水質保全法が昭和三十三年にできたわけでございますが、御承知のとおり、これのいわば初期と申しますか、契機になりました事件は、江戸川におきます某パルプ会社の汚濁と、下流における水産業であるノリとの関係一つのきっかけであったと存じます。そういう意味におきまして、従来と申しますか、当初は産業間の問題という色彩が非常に強かったわけでございます。しかしながら同時に、当然に上水道等がございまして、公衆衛生という関係で、人の健康あるいは生活環境ということをないがしろにしておったわけではございませんし、一方、公害がますます大きくなってくる。それに対する一般の関心も大きくなってくるのに対応いたしまして、実際の問題としては、かなりの程度、人の健康あるいは生活環境ということを配慮した。先ほどもちょっと申し上げましたような都市河川方式というようなことをやってまいりましたが、やはり公害対策基本法というのができまして、いわば国としての姿勢がはっきりしてまいった。そういう時期に対応いたしまして、従来多少狭い概念でございました公衆衛生というような観点を押し広げまして、人の健康あるいは生活環境というところまで取り上げる必要があり、取り上げることが適切であるということで、目的改正をいたしたわけであります。そういう意味におきまして、私ども従来ともそれに関心を抱かなかったわけではございませんし、ある程度そういう対応策をとってまいったつもりでございますが、今後姿勢をはっきりさしてやっていくという意味において、目的改正をやったのでございます。
  27. 藤波孝生

    藤波委員 今回の改正で、斃獣処理場などをはじめとして規制対象を拡大したわけでありますが、特に五事業場に限って規制対象を広げた理由をひとつ承りたいと思います。
  28. 八塚陽介

    八塚政府委員 五事業場を限って、今後とももうこれで限定してしまうということは必ずしも言えないのでございまして、今後とも経済の発展あるいは人口の集中ということによって、汚濁源が出てまいるということは考えられるわけでございます。しかし今回斃獣処理場等あるいは採石場、屠畜場、廃油処理施設あるいは砂利採取業、それぞれ相当な汚濁源になっております。そういう意味で、まずこれは法律規制もできる手がかりがすでにございますから、そういう意味改正の中にまず取り込んだということでございます。  それからし尿処理施設はどうして五事業場の外へ出して、政令で云々ということでやったかということでございますが、し尿処理施設につきましては、大体現在法律二つあるわけでございます。一つは、清掃法に基づくし尿処理施設、もう一つは建築基準法に基づきますいわゆる一般家庭等の浄化槽等のし尿処理施設。したがいまして、し尿処理施設の中ではいろいろなランクといいますか、大小いろいろでございますし、規制のやり方も当然実態に合うように考えてまいらなければならないということで、し尿処理施設につきましては、政令でその具体的なやり方、限度をきめていくという意味で、政令に譲ったわけでございます。これは本法を通していただきますならば、そういう点について早急にきめてまいりたい。  それから養豚場、養鶏場等を政令にまかしております。最近は特に養豚場につきましては、この問題が大きくクローズアップされておるわけでございますが、一方では、先ほど大臣が申し上げましたように、農林省等におきましては、総合農政の一環として、なお養豚業を奨励していきたい。特に少数の豚を飼うということではなくて、多頭羽飼育というものが経済的にも非常にいいということで奨励をいたしておりますのにかかわらず、一方ではそれに対応したふん尿の処理技術が、経済的にあるいは技術的にまだ十分でないというようなことがございます。農林省等におきましては、すでに一昨年来から技術研究をやっておりまして、今年は実験等を現地でやるという段階まで来ておりますけれども、なお若干時間がほしいということでございますので、これは農林省等におきまして、早急にさらに御研究願い、実施に移すように努力をしていただくのと並行いたしまして、私どものほうでは、その時期に対象にするということで、政令に譲っておる次第でございます。
  29. 藤波孝生

    藤波委員 規制対象の業種を拡大したというのは、これは公害対策の面から見てたいへんけっこうなことだと思います。今回の拡大をした事業場の中には、相当零細な業者も他に含まれておると思うわけであります。その辺についての考え方は、どういうふうに対策を講じようとしておられるのか、この機会に承っておきたいと思います。
  30. 八塚陽介

    八塚政府委員 お話しのように、今回追加いたしました業種は、私ども考えましても相当零細なものが多い産業でございます。中には市町村営というようなものもございますが、ただ従来工排法におきましても、業種業種によりましてかなり中小企業あるいは零細業者の方の集まりの産業もあったのでございます。そういう場合の従来の取り扱いといたしましては、もちろん水質保全をはかるという大目的からそれてはまずいわけでございますが、やはりそういう業者の方の経済力あるいは技術力なりというものをある程度しんしゃくをいたしまして、きめてまいったような次第でございます。今後ともそういう配慮は当然やはりある程度してまいらなければならないというふうに考えております。しかしそうだからといって、ほうっておくというわけではもちろんございませんで、あるいは通産省等の御尽力によりまして、中小企業振興事業団であるとかあるいは、私も一つの例を覚えておるわけでありますが、比較的零細な染色業者の方が集まっておるところで、ひとつ水質汚濁防止の施設をしたい、そういうような場合には、公害防止事業団等から資金のめんどうを見る。したがって、その資金によって設備ができるまでしばらく待っておるというような措置をやってまいりましたが、今後ともそういうことをやりまして、いわば実効性のある水質汚濁の防止ということをやってまいりたいというふうに考えております。
  31. 藤波孝生

    藤波委員 今回の法改正一つの眼目は、私ども勉強させていただいて感じますことは、地方公共団体との関係を特に密接にして、いろいろな角度からひとつ一緒に公害に取り組んでいこうという姿勢が、政府の側から示されたということであろうと思うわけです。そういう意味では、指定水域水質の測定について地方公共団体の知事にその権限をまかす。一面から見れば、これは非常に現場に近いわけでありますから、何もかものみ込んでよく測定はできるだろう、しかも継続的にやっていくだろうという期待が持てると同時に、一面現場でやはりなれ合いになってしまうのではないか、まあ知事の独断ということはないと思いますけれども、そんな心配も一面するわけです。特に水質の測定を知事にやらせるという規定を設けた理由は何か、ひとつ考え方を承っておきたいと思います。
  32. 八塚陽介

    八塚政府委員 都道府県と本省と申しますか、企画庁との関係等につきましては、従来からいろいろな問題があったわけであります。一つは都道府県のほうがより熱心であるのに、中央の段階ではいろいろな利害の調整があって、不十分じゃないかという形で、いわば中央を突き上げるという形がある。反面やはりその他の配慮が働きまして、あまり水質保全をやかましく言ってもらっては困る、あるいは水質保全についてまでまだ配慮が行き届かない地方公共団体もある。したがって、どちらかというと、私どものほうから指導しあるいはお願いしという形で、地方公共団体との関係が二面あったわけでございますが、だんだんに水質汚濁という公害が問題になってきておりますので、やはりそれに対応するためには、中央の関係各省だけではうまくいかない。地方公共団体と仕事の分担をし、そうして力を合わせていく。そのためには、相互に情報の交換をするなり指導をするなり、あるいは資料の提出を求めるなり、あるいは資料を教えてそうして地方公共団体にやっていただくというような関係を密にする必要がある。これとてもただいま申し上げましたように、熱心な府県に対しては、私どもそういう形で従来も関係があったわけでございますが、一般的にそういう姿勢で地方公共団体と接触――接触と申しますか、関係を密にしていくということに事態がなってまいったわけであります。そういう意味におきまして、従来とも水質のいわゆるアフターケアにつきましては、三十八年以降企画庁のほうから委託をいたしまして、都道府県知事に、その後排出基準がどういうふうに守られているかという点についての追跡をお願いしておったわけでございます。今回、測定ということはとにかく企画庁のほうから委託をいたしますから、都道府県知事にやっていただくという法改正にいたしたのも、一般的に言いますと、やはり都道府県と国との協力関係一つのあらわれであります。なれ合い等のお話がございましたが、どちらかといいますと、いままではそういう問題は比較的少なく済んでまいっておりますし、むしろ場合によっては、地方のほうが公害に対する気持ちがきびしい地点すらもあったわけでございますから、そういう問題は今後もあまり起こらないと思いますし、それから測定でございますから、これはどうしても技術的にどうこうできるところがございませんので、そういう意味におきましては、いわば技術的な意味で、いま先生の御指摘になったような問題はあまり起こらないと思います。しかしそれぞれのいろいろな立場がありまして、もし先生のおっしゃるような事態が起こるようであれば、これは十分私どもといたしましても勧告をしていくということで、そういうことのないようにつとめてまいりたいと思っております。
  33. 藤波孝生

    藤波委員 いまのお話の、指定水域水質汚濁状況、それから基準に照らし合わしてのアフターケアの調査を公共団体の長が責任をもってやっていく、これはたいへんけっこうなことだと思うわけでありますが、そういう場合に、やはり海がよごれていく状態、水域がよごれていく状態というものは、相当思い切った施策を講じない限り、だんだん美しくなるというわけのものではないし、いろいろ公害発生源が多様化してき、状態も複雑になってくる中で、指定水域水質を守っていくというのはたいへんなことだと思うわけでありますが、特に漁業の側から見て、排出口本位の調査なり基準なりでいきますと、いろいろな面で相当広範囲な水域が知らず知らずのうちに汚濁されていく状況に入ってしまうという状況は、たくさん見受けられるわけであります。そういう場合に、その後ずっと測定をしていくとして、いろいろ水質基準設定をした段階よりも変わった状態、汚濁をしてきた状態が顕著になってきた場合に、特に漁業者の側から見たら――一番神経をとがらせるのは漁業者になると思うのですけれども、そういう事態におちいったときに、やはり直接ぶつかるのは、知事が現場でぶつかるということになろうと思うのですが、そういう場合に、たとえばさっそくに知事の申請に基づいて指定水域水質基準をさらにシビアなものにするとか、そういう変更をしていくというようなかまえが必要だと思うわけであります。そういう意味で、ひとつ企画庁の御所見を承っておきたいと思うわけであります。
  34. 八塚陽介

    八塚政府委員 まず技術的な点を申し上げますと、私どものほうの測定は、排出基準が守られているかどうかというよりも、いまお話しになりましたような一般的な水のよごれがどうか、指定水域における排出基準が守られているかいないか別にいたしましても、一たんかけたその基準どおりに、あるいはそのとき予想したとおりに、その流水水質が守られているかどうかという意味で、流水における水質の測定をやらせるつもりでおります。それから、確かに私ども現実の悩みといたしましては、基準をかけましても、やはりその後の人口の集中であるとかあるいは工場の集中であるとかということによりまして、一ぺんかけたらそれで安心だというよりも、むしろ――こういうことを言っていいですか、押され押される場合があり得るわけです。ただそういう場合には、やはり私どもとしては、早急に新しく水質基準考え直すということは、これはもう必要なことでありますが、現実には若干時間がかかった例もございますから、あまり口幅ったくは言えないかと思いますけれども、しかし、いま御指摘のような形で、たとえば木曽川におきますある水質基準、これがかかっておったわけでございますが、どうもその後の事態からいいますと、そのままほうっておくわけにはいかないということで、最近も一部水質基準の改定をやったわけでありますが、そういう形で、できるだけ事態に対応したことでやっていくことが本筋であろうと思っております。そういう意味では、府県からのいろいろな要望を十分聞いて、そして対応してまいりたいというふうに考えております。
  35. 藤波孝生

    藤波委員 三十三年に水質保全法が制定をされて以来、水域指定が行なわれて、今日まで五十九水域にわたって水質基準設定せられてきたわけでありますが、問題が出て、さあやろうということになってからでも三年ぐらいかかっているんじゃないかというふうに私どもは見ておるわけですが、これは痛感をしていただいておるように、公害というものは、発生してきたらすぐぱっと手を打つということでないと、だんだん公害が大きくなっていって、影響が広範囲にわたっていって、国民の健康、公衆衛生に対して害を及ぼすことになってしまうわけでありますが、そういった水質基準設定するという問題について、時間的な問題について、経済企画庁としてどのようにお考えになっておるか。これは各省庁との調整で時間をとりましてとか、あるいは調査に時間を要しましてとかということでは許されない問題が、これから出てくるのではないかと思うのですが、もっと早急にやれるような体制というものを国民は要求すると思うのですけれども、お考えを承っておきたいと思います。
  36. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 お話しのとおり、水質保全の問題の重要性につきましては、政府並びに国民一般もだんだんと認識してきたと思っております。しかし公害という問題自体が、どうもこの二、三年間急激に起こってきた問題だと思うのです。前から公害ということは、言うてはおりましたけれども、これほどまでに切迫した問題ではないように思っておりましたから、おのずから政府自身においても、まあそれほどまでに緊迫感を持たずに今日まで来たと思うのです。しかし、今日では、公害という問題は、国民生活上においてはもう緊急な問題、緊密な問題になっております。したがいまして、せっかくこういう改正法案を出したのでありますから、これをひとつ早くやるし、ほかにもまだこの公害の問題が起こってくると思うのですが、そういう問題を一々取り入れて、新しい規制を設けるなり、今後とも一生懸命にやりたい、こういうふうに考えております。
  37. 藤波孝生

    藤波委員 もう一、二点だけお伺いをしておきたいと思うのです。  指定水域以外の公共用水域水質保全については、これはやはり相当真剣に取り組んでいかなければならぬと思うわけで、どうしても企画庁の仕事は、水域指定する、水質基準設定する、それを通産省が守りなさい、工排法を守りなさいというだけのレールの上を走っているのではなしに、なるたけ思い切って、工共用水域については水質を守っていくんだという力強い姿勢が必要だと思うのでありますが、どのような施策を講じておられるか。それから地方公共団体に対しても、経済企画庁長官の名において、相当力強くシビアーに指導していくという必要があると思うのでありますが、その辺について、ひとつ御所見を承っておきたいと思うのであります。
  38. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 もうお話しのとおりであって、私ども全く同感でありまして、今後この水質保全の問題につきましては、地方団体を特にきびしく督励をして、実績をあげるように指導したいと思っておりますし、また経済企画庁としても、この問題についてはきびしく取り組んでいきたい、こう思っておるのであります。  御承知のとおり、いままで日本の産業自体が、産業の発達自体ということばかりに中心を置いて、それによって生ずる公害あるいは人命に対する影響というようなことは、ある意味では軽視された傾向があったと思いますが、今日ではもう産業自体の発展ということよりも、それによって生ずる公害をいかにしてなくするかということに重点がきたと思いますから、この点については、経済企画庁はじめ各省ともに緊密な連絡をとって、そうしてひとつ公害をなくするように万全を期したい、こう考えておる次第であります。
  39. 藤波孝生

    藤波委員 非常に力強い長官の御所見を承って、私ども安心したわけでありますが、ぜひひとつ、産業の発展はたいへんけっこうなことではありますけれども、あくまでも国民生活環境を守るという姿勢で――これは大気汚染の場合は、相当病気が陽性といいますか、ずっと表に出て騒いでまいりますが、水質汚濁の場合は、どうも陰にこもって非常に暗い感じが、公害の場合でもあるわけで、水質保全については、せっかく平素から思い切った施策を講じていく必要をお願いしておきたいと思うわけであります。今回の改正につきましては、従来水質保全といえば、産業の側から見ると、被害者は漁業者である場合が多いわけでありますけれども、いろいろ国民生活局長と水産庁との間にかなり積極的に、経済企画庁として取り組んでいこうという姿勢をお示ししていただいておるということは、たいへんありがたいことであります。ぜひその線に沿って、今後とも御努力をお願いいたしたい。  小さいことですけれども、今度水産庁で全国の漁場環境を保護していくためにいろいろ調査に入っていこうというような――これはまあ公害を防ぎきれぬですから、公害がこれ以上発生してきたら困るから、水産庁側からも漁業者の側からも、調査に取り組んでいただかなければならぬということについては、いろいろ理解をいただいておるわけですが、こういう調査は相当の広範囲な水域、それから海底の調査が行なわれていくことになろうと思います。そうすると、たとえば一つの湾単位くらいの、県も一県ではなしに二ないし三県、一つの湾にまたがって各県が共同して調査をしていくというような形が、これから漁業者の側からもやはり取り組まれていかなければならないだろうと思うわけであります。ということになってまいりますと、排出口だけを非常に厳格にしていくとか、あるいは一定の水域だけを指定して、そこであとあとの測定をしていきなさいという程度考え方ではなしに、従来漁場として非常に貴重な海域であったところについては、広範囲な水域というものが想定をせられて、そこでその湾の水質が問題になってくるというようなことになろうと思うわけであります。そういう意味では、環境基準設定で、各水域ごと基準でなしに、やはり全国一律な何らかの線が明示せられて、それとにらみ合わせて、各湾ごとの水質調査なり測定なりというようなことになっていくのではなかろうか、こう思うわけですが、その辺について、経済企画庁はどのようにお考えになっておられるか、ひとつ承っておきたいと思うわけであります。
  40. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 お話しのように、実際いままではこの水質汚濁の点については、小範囲で観測しておったと思うのですが、今後はそうじゃないと思うのです。だんだん水域が拡大されていって、湾全体について考えなければならないという問題も起こってきます。実は私はその感を深くしたのは、この間OECDに行きまして、この水質汚濁ということは、あちらの国では国際的になっておる。日本は幸い島国ですから、国際的な問題は起きませんけれども、向こうでは国際的な問題になってきておるということを知って、日本としても、水質汚濁の問題については狭い範囲内においてお互い考えてはいかぬということを私は教えられてきたわけです。  お説のとおり、水質汚濁さす原因が多様化してきましたから、今後は単なる川筋だけとかということでなしに、その川の水の入り込む湾なり全体について調査する必要があるのではないかということを痛切に感じた次第でございます。
  41. 藤波孝生

    藤波委員 そういう意味で、近い将来に相当思い切った――日本の国内の一つ一つ水域についても、日本を取り囲んでいる水域についても、だんだん汚濁されていく状態であるということを十分踏んまえていただいて、その上に立って今回の法案をまず手始めにやっていくんだという立場で、私どもこれを理解したいと思いまするし、将来にわたってもぜひそういう姿勢でお取り組みいただくことを企画庁に十分お願いいたしておきたいと思うわけであります。  もっといろいろ承りたいこともございまするし、ことに公害については非常に熱心な、私の最も尊敬する角屋先輩に伺いたいこともたくさんございますが、指示された時間も参りましたし、国民の側から見れば、一日も早く法案を上げてもらいたいという切実な要求になっておりますので、私の質問は以上で終わりたいと思います。ありがとうございました。
  42. 赤路友藏

    赤路委員長 河上民雄君。
  43. 河上民雄

    ○河上委員 私は、先日公害紛争処理法案につきましておもに質問いたしましたが、十分な時間がございませんでしたので、きょうは引き続き質問の時間をいただきまして、被害者救済法案を中心に御質問をいたしたいと思います。  この法案の質問に入るに先立ちまして、私として特に願いますことは、この法案が、現在いわれのない公害のために呻吟しておられる健康被害者の上に一つの大きな福音となることを願っておるのでございます。また、万一不幸にして、今後現段階では予想されないような公害病が起こった場合に、この法案が有効に対処できるように、そういうことを私はいま痛切に思っておるのでございます。そのような立場から、この法案に対し私は疑問といたしますところを質問さしていただきまして、法案の輪郭を明らかにしてまいりたい、こういうふうに思うのであります。  今回の内閣提出の法案を拝見いたしますると、いろいろ問題点はございますけれども、その中で重要なものをあげますと、第一は、この法案の目的と申しますか、この法案がカバーする対象が著しく制限されておることだと思います。御承知のとおり、公害によって被害をこうむった方々の切に願っておる点は、第一に健康の被害に対する補償であります。第二は物的なそれに伴う生活上の損害に対する補償であり、第三は精神的な損害に対する補償であろう、こういうふうに思うわけでございますが、今回の法案では、健康被害にその救済の対象を限定してしまっておるという点に私どもとして不満があるのでございます。その点につきましては、わが党の提出いたしました案においては、公害にかかる被害救済という場合には、健康と同時に、物的な損害も含めておるような次第であります。  なお、この法案の健康被害に限定いたしましたといたしましても、その中でその原因となります公害について、大気汚染水質汚濁だけに限ってしまった、こういう点も私どもとして納得のいかないところでございます。この法案は公害対策基本法にのっとってできたものであるといわれながら、公害対策基本法であげられておりますところの六つの公害――大気汚染水質汚濁、地盤沈下、振動、騒音、悪臭、こういう六つのうちの残りの四つのものは対象外とされておる。しかもいままでのあらゆるケースによりますと、ことに騒音のごときは明らかに健康被害を起こしておるのであります。そういう点について、私どもとしては納得のいかぬ点を覚えるのであります。  第二は、この法案の第二条以下に、指定地域の規定がいろいろあるのでありますけれども、この「指定地域」という考え方の輪郭が非常にあいまいである。この点について、私どもは明確にしてまいらなければならないというふうに思うのであります。  第三点は、医療給付の内容でありまして、医療給付に関するいろいろな規定を拝見いたしますると、十八世紀から十九世紀にイギリスにおいて救貧法――プア・ローという法律がございましたが、その給付の制限によく似ているというか、それを想起せざるを得ないような内容になっておるのであります。つまりいろいろなところへ引っかかって、結局実質的には人間的にある種の自尊心を傷つけられるような形でしか給付を受けられないような、そんな感じになっておるような気がいたすのでございます。特に一方では所得制限というような、考えられないような制限さえ加えられておることが、私どもとしては遺憾とするところであります。  第四点は、被害者救済に充てる公害基金の問題でありまして、この公害基金の内容が政府案によりますると、公害源となりました企業の責任というものがきわめてあいまいになる。そういう点にわれわれは基本的な理念の上で問題を感ずるわけでありまして、わが党案では、まず政府あるいは地方公共団体が医療の救済に当たった後、公害源となりました企業の責任を全面的に追及するということになっておるのであります。  なお、昨年来新聞で報道されたところによりますと、公害基金の負担区分につきまして、八分の五を企業が負担するということになっておりましたのが、今回提出された案によりますると、六分の三あるいは八分の四、つまり半分に後退したという点は、これはいかなる政治的状況によるものであるか、いささか疑問を抱かざるを得ないのであります。  そういうようないろいろな問題がございますが、先日、公害紛争処理法案に対する質問の中でも若干触れました点もございますので、私があげました四つのうち、特に第二と第三のこの二点に話を少ししぼりまして、法案の輪郭を明らかにする目的をもって、御質問をしたいと思っております。  そこでまず第一に、第一条及び第二条におきまして、この法案、つまり救済の対象になる地域指定といいますか、範囲を限定しておるのでございます。それによりますと、「相当範囲にわたる著しい大気汚染又は水質汚濁が生じたため、その影響による疾病が多発した場合」ということになっておるのでありますけれども、この「相当範囲」とは何か。「疾病が多発している地域」という、「多発」というのはどの程度のものであるか。この非常にあいまいなことばの中に、かなり重大なものが隠されておるように思いますので、初めにその点を伺いたいと思います。
  44. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 第一点の「相当範囲にわたる著しい大気汚染」という問題でございますが、公害によりますいろいろな問題が、先生御承知のように、ある程度の長期間にわたって、しかも広範囲にいろいろ汚染状況が起きました場合に、いわゆる原因者がわからないでいろいろ問題を起こしておるわけでありまして、非常に小規模な範囲で、しかも原因者と見られる企業が単一な場合には、比較的問題の処理が簡単でございますけれども公害でいろいろ問題になります問題は、やはり相当範囲にわたります大気汚染水質汚濁のために病気が起きる。その場合に公害という認定をすることができるような状態になりました場合は、疾病状況がやはり多発している場合が考えられまして、大体公害と認定できる場合は、疾病なりあるいは患者が多発しておる状態として考えられるということで、法律目的をそのような表現にしたわけであります。
  45. 河上民雄

    ○河上委員 公害病というのは一人や二人ではない、発生するなら必ず相当数一ときに出るというお考えかもしれませんけれども、ぽつりぽつり出る場合もあるわけです。そうしてその疾病の状況から見て、これは明らかに公害病であると認定せざるを得ない場合もあると思うのです。一体「多発」というのは、何名くらいを考えておるのですか。
  46. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 先生の御設例のぽつぽつ起きるといったような場合も、これは当然多発するということの御前提だと思いますが、数で二人か三人か、あるいは四人か五人かという点については、限定的に私ども考えておるわけではありませんけれども、少なくとも一、二名程度の患者が出た状況で、その病気が公害病であるという認定ができるかどうかということが一つ問題でございますので、やはり公害病として認定できる状態は多発じゃなかろうかということで、繰り返しになりますけれども、法文を書いたわけでありまして、それじゃ二名か三名か四名かということにつきましては、別に何名以上でなければ多発と認めないということで、制限的に私ども考えておりません。
  47. 河上民雄

    ○河上委員 それじゃ、ちょっと伺いますが、ばい煙規制法で指定地域というのがあります。これは大気汚染防止法に引き継がれておると理解してよろしいと思うのですが、これはいま全国で何地域くらいになっておりますか。
  48. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 大体二十地域でございます。
  49. 河上民雄

    ○河上委員 もちろん、それはSO2だけでありますか、降下ばいじんだけでありますか。
  50. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 両方含んでおります。
  51. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、そのばい煙規制法によって指定地域になったところで、現実に公害病と認定されたのは、四日市以外にどこかございますか。
  52. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 現在地方でいわゆる認定制度をとっておりますのは四日市と、それから富山の高岡市の一部の吉久地区、このように承知しております。
  53. 河上民雄

    ○河上委員 そのうち、政府として公害病と認定したのは、この二つですか、それとも四日市だけですか。
  54. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 いわゆる政府として公害にかかわる疾患であるかどうかという見解を従来から発表しておりますのは、四日市だけでございます。
  55. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、最近本委員会におきまして、島本委員が、三月十九日でございましたか、質問されました富山県の高岡市吉久地区の呼吸器疾患は、おそらく降下ばいじんが原因かと思うのですけれども、これに対して市では、政府とは別に単独で大気汚染健康障害者医療措置制度というものを発足させておる。現在では二十名の申請がなされて、そのうち十五名が公害病と認定され、治療中であるということでありました。そうすると、この市がやっておりますこの制度は、今回のこの救済法ができた場合にどういうようなことになるのか。国はそういうものを包摂するのか、それとも国は国で適当に――適当というか、別の次元で公害病を認定する、なお市は市で、それぞれよろしくやってくれということなのか。財政的な裏づけを市に対して国がするというのか。そういういわゆる厚生省が認定するところの公害病と、ばい煙規制法による指定地域という問題、それから今回の救済法における指定地域というものとの関係、また、その高岡市の場合のような市独自でやっておりますところの医療制度というものと今度できる医療制度との関係ですね、これはこの際、法律が通る前に明らかにしておいていただきたいと思います。
  56. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 御指摘の点は、どういう地域を指定して、どういう程度の疾患を救済するか、こういう一般的な制度的御質問かと思いますが、私どもとしましては、この法を運用し、かつまた政策を考える場合に、大体現在各地方でいろいろ疾病についての認定等が行なわれておる点を十分検討いたしまして、その間に一つ法律としてのアンバランスがないようにいたしたい、かように考えております。現在のところ、大気汚染関係で、いまの段階ではっきりと申し上げることができますのは、四日市地域を考えておりまして、先生の御設例の富山の問題につきましては、これは十分その地元の意見を聞きたい、かように考えておりますが、この高岡地区の問題は、実は企業もたしか一、二はっきりとわかっている状況でございまして、いわゆる発生原因者というものがつかめる状況にあるようでございますので、こういう点につきましては、よく地元の意見なりあるいは患者の実態を十分調査いたしまして、この法律の適用について、当てはめるかどうかという点につきましては慎重に検討いたしたい、かような考え方でございます。
  57. 河上民雄

    ○河上委員 大臣にお伺いしますけれども、いま言ったような問題が存在するわけでございます。公害対策は、非常に熱心な地方公共団体が、地域住民の声に押されてまず着手する、あとから国の法律ができる、という経過をたどる場合が多いわけでございますが、そういう場合に国が取り上げる基準と地方公共団体がすでに行なっているところの基準との間にギャップが生じた場合にどうするか、この問題は非常に重大な問題だと思うのであります。もしこの法律が通ったがゆえに、高岡市のほうの医療制度というものがだめになってしまうということでは非常に困るわけでございます。また、市は、かってにおまえが始めたんだから、おまえのほうの手でかってにやれということであっては、これは地方行政立場から見て非常に問題があるわけでございます。こういう点、すでにあるものはやはり国の法律の制度の中に包摂していくというような方針をやはり御確認いただきたいという気がいたすのであります。  それから、もう一つここで問題になりますのは、公害病の認定を四日市の場合は国がいたしました。しかし高岡の場合は市がやっているわけであります。そこで、この救済法をやる場合に、公害病であるという認定がどこがやるかという問題が出てくると思うのです。つまり中央の国がやらなければこの制度は発動しないというのか。一番詳しいはずの地域自治体の保健所が認定したものを国が認めるという形にするのが一番望ましいのではないか、私はこういうふうに思うのでありますけれども、こういう点についてもあわせて、大臣のお答えをいただきたいと思うのです。
  58. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 私は高岡の実情はつまびらかにいたしておりませんで、はなはだ申しわけございませんが、しかしながら考え方は、いま公害部長が申し上げましたように、全国を不公平のないようにしなければなりませんし、したがって高岡に大気汚染による公害病患者と認められる者が相当あるというのであれば、これは同じ扱いをしなければならぬと思っております。原因者が一つであろうと二つであろうと、私は同じだ、かように思います。したがいまして、実情をよく把握いたしました上で、不公平のないようにいたしたい。  それから、公害病患者の認定は、これは府県知事がやるという法律のたてまえになっておりますので、国が直接やるわけではございませんが、しかし、そこは予算の関係もありますから、国と、認定する地方公共団体の長とよく連絡をとってやってまいりたい、かように思うわけであります。四日市は、まだ国で公害病患者だというように認定したのではないのであって、実際問題として、四日市は、いままでの経過から見て、一応四日市で公害病患者と指定されておる者はそのまま認めることになるだろうというだけの話でございまして、したがいまして、そういう段階においては、高岡の場合も私は同じだと思うのであります。いままで国との関係がどうであったか詳しく存じませんけれども、同じような関係にあるものなら認めなければならぬ、こう思っております。その他の地域におきましても、まだ、地方公共団体あるいは国のほうと話し合って、そこの区域の者、この程度の者を公害病患者にしようということをやっておりませんけれども、しかし今後これを進めてまいって、そして同じ程度汚染による患者が発生しておるところをほっておくというつもりは毛頭ございません。四日市はその見本だ、こういうように思っていただいて、あれを見本にして、ほかのほうもずっと律していきたい、こう思っております。
  59. 河上民雄

    ○河上委員 大臣からお答えがございましたのですが、すでにばい煙規制法、その後引き継がれて大気汚染防止法で指定された地域に発生したいわゆる公害病に関しては、この救済法は適用されるべきだというふうに、はっきりは言われなかったのですが、そういうようにしていきたいというお考えのように承ったわけでございますが、そのように承知してよろしゅうございますか。
  60. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 さよう御了解を願いたいと思います。
  61. 河上民雄

    ○河上委員 この問題は、なおもう少し詰めていかないと、実施した際に多少混乱が起こるおそれがあると思いますが、この点は、いま大臣から一応の方向を示されましたので、時間の関係もございますので次の問題に移りたいと思います。  医療手当の問題でございますけれども、これは医療費の内容もさることながら、受給対象に非常に問題があるというふうに私ども感じたのでございます。その点につきましては、わが党案の提案者である角屋議員もここにおられるのでございますけれども、非常にきめこまかく配慮しておるのでございますが、政府案ではその点かなり大ざっぱで、むしろ逆に大なたをふるうような感じになっておる点もあると思うのであります。その点を少し御質問したいと思うのであります。  第三条の認定という個所によりますると、受給対象は、「当該申請の時にその管轄に属する指定地域の区域内に住所を有しており、かつ、その時まで引き続き当該指定地域内に住所を有する期間が厚生大臣の定める期間以上である者に限って行なうものとする。」そういうようなことになっておるのであります。さらに第四条の中ではこういう文句もございます。「その者については、その住所を移した日又はその指定地域でなくなった日から起算して厚生大臣の定める期間を経過した日以後は、適用しない。」というようなことが書いてあります。私は意地悪く申し上げるわけじゃございませんけれども、これを拝見いたしますと、たとえばこの指定地域内に住所を持たなくても、その指定地域内の工場に働きに行っているために、長年の汚染にさらされて公害病になるという形の方もあると思うのでありますけれども、まずこれがすぐはずされてしまうのでございます。そこで、私がこれから申し上げるようなケースは、全部内閣提出法案によりますとはずされるのじゃないか、こういう懸念があるのでございますが、ちょっと申し上げます。  たとえば、指定地域以外に住所を有し、通勤し、指定地域内で働いていた者、わが党案では「一日のうち相当時間を当該指定地域内において過ごし、」ということばを入れて、そういう者がはずれるのを防いでいるわけでございますが、これはまずはずれるものだと考えざるを得ないと思います。第二に、当該申請のときには、すでに指定地域の区域外に健康上の理由から引っ越していたが、それ以前に相当期間引き続き当該指定地域内に住所を有していた者、これもこの法文からいうとはずれるのではないか。それから三番目に、指定地域内に長く生活し、かつ勤務していたが、定年退職あるいは他に職業を選んで他の地方に移転したところ、当該地域内に発生した公害病にかかっていることが後ほど判明した者、それから、治療期間中に地域外に治療上の理由から移転してしまった者、こういうような者は全部はずれてしまうのではないかと思うのでありますが、いかがでありましょう。
  62. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 四つの設例でございますが、最初の二つは、結論から申しますと、はずれる予定でございます。それからあとの二つは、これは認定を受けたあと、そういう事情でお引っ越しになるといった場合は、一定期間は公害病患者として扱い得るということでございます。  なお、この三条と四条二項の関係でこういう条文にいたしましたのは、これは大気関係を想定しておりまして、いわば大気関係で、たとえばぜんそく等につきまして、やはりその地域での汚染によって生じた場合に、その地域の責任者が認定をするという制度でございます。この大気関係は、いわゆる原因が――たとえばぜんそくでありますと、いろんな原因とその大気との関係等について、いろいろ認定について問題があるわけでございますが、やはりその地域での大気汚染によって病気が起きたという推定をする以上は、ある程度の期間そこにいる条件を私どもとしては考えておりますし、その地域を去った場合には、その一定期間の影響がなくなったあとにおいては、その疾病自身は、その地域の大気によらない状況として、たとえば回復するとかあるいはなおるとか、そういう状況考えられますので、一応大気についてそういうような運用をいたしたいということで、このそれぞれの場合を想定して、限定的に書いたわけでございます。
  63. 河上民雄

    ○河上委員 大臣、いまお聞きいただいたと思うのでございますけれども、私がややアトランダムに取り上げた四つのケースのうち、二つはきわめてあり得ることであるにもかかわらず、厚生省事務当局におかれても、これは対象外になってしまう。第三、第四の点については、なおこの文章を厳密に解釈しますと、やはり非常に問題があって、この法案では救えないのではないかという気が私にはするのでございます。と申しますのは、当該申請のときに住所を有していなければならないということばになっておりますので、申請のときにはもうよそへ移っておった場合はどうにもならないのじゃないか。したがって第三のものはやはりはずれてしまうのではないかという気がいたすのです。第四の場合はあるいはおっしゃるとおりかもしれませんが、そこで、一定期間とはいつかという問題が残ると思うのであります。私はこういうことを一々意地悪く、天井を見ながら考え出したわけではないのでございまして、そういう具体例があるわけであります。たとえば四十二年九月十六日の新聞によりますると、四日市の化学会社の従業員が公害で殺されるといって退職したというのがございまして、企業の中には患者が多い、会社はひた隠しにしておるし、社員は認定の圏外に置かれておるというようなことを強く言ったケースもございますし、またある老人の方は、もう四日市には住めないから、私はもうなつかしい土地を離れていくという宣言をした方もあるわけです。そういう方々が、おまえ、てまえで出ていっちまうならめんどう見ないぞということになるとするならば、これは非常に重大な問題じゃないか、こういうふうに私は思うのでございますが、大臣いかがでございますか。この第三条、第四条の文章はたいへん厳密に書かれてけっこうなんでございますけれども、その結果、公害病患者が救済の対象からはずされてしまうという危険が非常に多いということをいかがお考えになるでしょうか。
  64. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 これは主として大気汚染を頭に入れて書いた条文でございますが、御承知のように公害病、ぜんそくと申しましても、はたして公害病の、公害からくるぜんそくか、あるいはそうでないぜんそくかということが非常に見分けがむずかしいというところから、その地域にある一定期間住んでおって、そしてそういう症状を起こしているという者には、全部適用しなければならない。その地域から去れば大体なおる者が多いということから、住所という制限をつけたわけであります。したがって公害病患者と認定された、そしてその住所を去ったという場合には、ある一定期間まではそれは認めるけれども、しかし五年、十年たった後はもう認める必要が事実上なくなるのじゃないか。こういう見地から、一定期間というものを入れているのでありますが、私のほうとしては、それをできるだけ制限しようという気持ちはございません。できるだけほんとうの公害病患者は救いたいし、そして公害病患者でない者あるいはそうでなくなった場合には、それをはずすというのが当然だというところの調和を求めている、かように御理解をいただきたいのであります。
  65. 河上民雄

    ○河上委員 せっかくそういうお気持ちをお持ちでございますなら、先ほど厚生省の事務当局の方から御答弁がありましたように、公害源とみなされるような、あるいは指定区域内に存在する企業で長年働いておる、しかしたまたま住所は区域外にあるという人を救うような、そういうような条項をやはり挿入しないことには、非常に大きな問題が起こるのではないかということを、私は政府に申し上げたいのであります。また、その一定地域を去った後一定期間で打ち切るという、一定期間というのも非常にあいまいでございまして、一定期間たてばなおるだろうといわれるようでございますが、むしろこれはやはり一応治癒が完了したとみなされる時期とか、そういうような形であるならば問題はないと思うのですけれども、一定期間ということになりますと、その点はまだなおっておらないのに――たとえば静岡県の富士のあれは、富士の病いは不治の病いよなんて話もあるくらい。四日市のぜんそくもなかなかなおらぬ。終生なおらぬケースもあるわけですね。そういう場合に、おまえは五年たったから打ち切るというのは、あまりにも酷ではないか。やはり公害対策全般の措置がよければ、こういう対象になる人の数はそう多くなくなるはずでございますので、やはり病気になられた人に対しては、最後までめんどうを見るという立場を確認していただかないことには、この法案をつくった意味が半減してしまうのではないかと私は思うのであります。この二点について、もう一度お答え願いたいと思います。
  66. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 いま御指摘の二点の問題でございますが、私は、先生の御指摘一つの問題を含んでいることは十分理解できるわけでございますが、いわゆる区域外に住んでいて通勤しているというような方については、いわば労働環境の条件として先生はとらえているわけでございまして、この点は、私どもとしては、やはりその地域に一日じゅう生活して、その地域における大気汚染によるとして推定をして、公害にかかわる疾患であるということを一つの仕組みとして考えております。そういう点からしますと、先生の立論の立場からすると少し冷たいような印象があるかもしれませんが、やはりわれわれとしては、制度を、労働環境だけでそこまで踏み切るということについては、とらなかったわけでございます。  それから第二点の、いわば病気になった人は永久に救うべきではないかという御議論についても、一応それとしての意味はあると思いますけれども、私どもとしては、現在、たとえば四日市の例をとりますと、四日市市で運用いたしております制度につきましては、これはそれを去りますと、翌日からは全然公害病患者としては扱っていないわけでございます。こういう点、何らかの救済措置ができないだろうかということを考えまして、一つ法律立場から、全国的な見地に立って何とかそういう点を解決したいと思って、法律を立案したわけでございまして、その点やはり大気汚染にかかわる疾患につきましては、やはりその原因が一定条件――現在四日市では三年の居住条件によって、公害にかかわる疾患として市長さんが認定しておられますが、それとつり合いをとりまして、私どものほうとしては、できますならば、その後三年程度はやはり救ったほうがいいんではないか、またその居住条件を三年とする場合には、それと見合って、一応その地域を去った場合には、三年くらいを医療の対象とするのが適当ではなかろうかという考え方で、現在いるわけでございます。
  67. 河上民雄

    ○河上委員 いまの御答弁で、だいぶ立論の哲学というものの一端がのぞかれたような気がして、私どもとしても考えざるを得ないのでありますけれども、第一点の第一のケースの場合ですが、そこで働いているということは、工場で働く場合だけではなくて、その工場の――いまのようなお話でございますと、工場の中は特別いいけれども、外に出れば悪いというような状況はないわけでございまして、工場の区域内も、やはりその大気全体の大気汚染と同じ状況にあるのだと思います。それから遠くに住んでおって、郵便局につとめておって、一日じゅうそこの指定区域内で配達の仕事をしなければならない、あるいは最近のドーナツ化現象などのように、郊外に家を持っておるけれども一日都心部で店を開いているという、そういう中小企業の方もあるわけでございますね。そういうようなことを考えてみますと、いま言ったようなことは、結局対象の範囲を大幅に削るという結果しか招かないのではないか、救済さるべき人々の大半をこぼしてしまうのではないかということを、私は強く憂えるものでございます。その点はひとつ厚生大臣もお帰りになったあと、事務当局の方々と、具体的に、一体これでいいんだろうかどうかということをもう一度お考えいただきたいのでございます。ここで押し問答してもあれと思いますので、ひとつ武藤公害部長も、この点大臣とよく御相談なすって、単に精神だけでは救えないわけで、もっと具体的に、この場合この場合ということを詰めていただきたいと思うのです。  それでは、次に医療費の問題になりますけれども、今度の政府案では、大体次のように理解してよろしいわけでございますか。要するに自己負担分だけ見るという考え方でございますね。しかし、これは被用者保険あるいは国民健康保険、いろいろ保険には種類がございますけれども、これは本来保険としてやっているわけでございまして、いわゆる本人のいわれのない健康被害に対して用意したものであるのかどうか。一体その場合、治療費に対する企業の責任というものはどこに行ってしまうのか。非常にあいまいのような気がするのでございます。こういういわれのない公害病になった場合は、本来からいえば、保険制度を援用せずに、全額企業または国で見るというくらいの姿勢が必要だと思うのでありますが、どうも今度の政府案では、自己負担分だけ見るという精神のように受け取れるのですけれども、そのように理解してよろしいですか。
  68. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 この法律の対象とします救済措置は、先生指摘のように、医療費の自己負担分と、それからそれに関係する医療手当の問題でございますが、医療費の問題につきましては、先生指摘のような議論がいろいろございました。ただやはり原因がわからない、あるいはわかったというふうに一般的に考えられても、それが相手方が納得しない、いわば最終的にはまだ原因者がわからないという状況のような問題をどういう制度で救うかということが問題でございます。こういう場合にやはり社会保障制度そのもので救うべきではないかという考え方と、それから、新しいそういうような公害に関する一つの特別の制度をつくるべきではないか、こういう議論に分かれるわけでございますが、現在の医療関係の社会保障も、やはり原因がわからなくていろいろ病気になるという問題を包括的に救っておるわけでございまして、こういう点に着目いたした場合に、なおかつ公害病患者は、その点現行制度のいろいろの仕組みの関係上、やはり自分で医療費を払わなくちゃいけないことになる。そこを何とかとりあえず救済すべきではないかという点に着目して、一つの特別的な制度を考えたわけでございます。
  69. 河上民雄

    ○河上委員 大臣にちょっとお伺いしますけれども、四日市では、公害病患者に対し市費の治療制度というのですか、市費治療制度というものができているように承知しているのでございますけれども、そこでは市が治療費の全額を見ている。公害病と認定した患者に対しては全額を見ておるというふうに聞いておるのでございますけれども、こういうような例がもしあるといたしますなら、この法案ができた場合に、四日市のほうの制度はむしろ後退せざるを得なくなるのじゃないかと思うのです。そういうような点については、先ほど私が申し上げたように、すでに地方公共団体が独自で着手した仕事について、こういう法案をつくるときに、一体政府としてはどうすべきかという問題とのからみ合いにおいて、大臣の御所見を承りたいと思うのです。
  70. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 四日市との関係でございますが、全額を見ておるという言い方と、それから自己負担分を見るという言い方、これは法律的にいうといかにも違うようでございますが、まあ実際問題としては同じでありまして、四日市も、自己負担分を見ている、それを全額とこう称しているのだと思うのでございます、実際問題としましては。そこでこの保険の場合でも、それに原因を与えているものがはっきりするならば、その保険者が原因者に対して求償権を持っているわけなんであります。そういう意味から申しますと全額ということになるわけでありますけれども、保険者が原因者の会社から取り立てることができるということになっているわけです。これはまあ患者と関係は持ちませんけれども、患者の面から見ますと、全部治療費はどこかで見てもらっているということになるわけであります。ところが大気汚染のような場合には、どの原因者から取るかということは事実上わかりませんから、実際問題としては、保険者の負担、それと自己負担分は国から出す、こういう形になるわけでございます。  最初一点として、この法案の考え方という点について御所論がございましたが、御承知のように、公害病といって非常に困っておる地域がある。それに対して何らかの措置を国がしなければなるまい。あれは企業者負担だから企業のやるがままにほっておけというわけにはまいらぬというので、どういう措置をやったらいいだろうかということから、まず健康被害について国がさしあたってひとつ行政的な措置を考えようということで、この措置を考えたわけでございまして、いわゆる原因者の支払うべき補償を、損害賠償を、国がさしあたって立てかえておきます、こういう考え方ではないわけです。そこで立論のいろいろな点から、そういう点が出てくるわけでございまして、たとえば給付の内容にいたしましても、あるいは公害病になってそれで仕事ができなくなる。そうするとその人に対する損害というものの補償はどうなるのだということになりますが、それは人によって非常に違うわけですね。河上先生のような方がお仕事ができなくなったという人と、あるいは日雇い労働をしている人ができなくなったという人と、これは非常に違うわけです。しかしそういうのは結局損害賠償というほうに譲って、国がさしあたってやる行政措置としては、一律にまず病気の治療、それに関係する限りにおいて、できるだけの行政的な措置をしよう、自己負担というだけでなしに、あるいは介護の手当であるとかあるいは医療給付、額には少な過ぎるという御議論もありましょうが、さしあたってこの程度でいこうじゃないかということで出発をしたわけでございます。  そこで、患者の居住制限と申しますか、これもさらに御指摘がございましたから、事務当局と十分検討はいたしますけれども、私は四日市の治療に当たっている医者などにも聞き、四日市の事情も聞いてみますと、やはり一定期間ここに住んでいたということでないと、公害病患者としては認定ができない。本来、御承知のように、そういう病気に非常になりやすい人と、そうでなくてもなる患者が各地にあるわけでありますから、それをどう把握するかということになりますと、そこに一定期間住んでいて、そして気管支ぜんそくあるいはぜんそく的症状を持って悩んでいるという人はすべて包括をせざるを得まいということで、はたして公害から起こった患者であるのか、そうでなくて、よそにいても起こった患者であるのか、とうていそこは見分けがつかぬということで、一括してやっているわけであります。  よそから通っている人はどうかということになりますと、そうすると医学的な常識として、そこに昼夜住んでいるということをやはり条件にせねばなるまいということで、そのくくりをつくったわけでございます。その地域から離れてどのくらいたてば、大体普通一般的に直るものか、これも医学的常識でその期間をきめなければなるまいというわけでございまして、個々の患者に当たってみれば、これで非常に得をする人もあるであろうし、また損をされる人もあるであろうが、しかし制度としてする以上は、今日の医学的常識から考えれば、そこで締めくくりをせずばなるまいということで、この居住制限あるいは地域を去った場合の制限というものがあるわけでございます。地域を去った場合の制限も、私は行政措置としましては医学的常識を少し上回る程度の期間をきめたい、こういうように思っているわけでございます。
  71. 河上民雄

    ○河上委員 それじゃ最後に、例の所得制限の問題について若干触れてみたいと思います。  その前に、医療手当の問題も残っているのでございますが、これはいま大臣も、額が少ないという異論もあろうけれどもというふうに言われました。まさにそれに当たる部分だと思うのでありますが、入院が一カ月で四千円、通院の場合は一カ月二千円ということでございます。現在入院の点数はたしか一日四百五十円から五百七十円くらいのようにちょっと聞いたのでございますが、そうしますと、大体一カ月一万五千円前後は点数だけでもかかる。ところが入院に対する医療給付は一カ月四千円である。これはだいぶギャップがあり過ぎるように思うのでございます。それからまた介護手当、これも月額九千円ということでありますけれども、今日九千円で人が来てくれるかどうか。最低二万円くらいかかるのじゃないかと思うのでありますが、そうなりますと、その間のギャップというものはずいぶん大きいのではないか、こういうふうに思うのであります。それはそれとして、いわゆる貧しい人にとりましては、そういう手当が非常に不十分であるということなんでありますけれども、ところが一方ではこの所得制限というのがあって、ちょっと所得がある人の場合には今度は給付しない。上限と下限が非常に接近しておって、その該当者がほとんどいなくなってしまうのではないかという懸念を私は持つわけであります。たとえば、所得制限は、標準世帯で九十三万二千円以上の所得というようなことでございますが、その場合には、医療費の自己負担分が今度はだめになってしまう(「そうではない」と呼ぶ者あり)というふうに理解できないわけですか。――自己負担分は当然もらえる。それから百万二千円以上の所得の場合は、今度は医療手当がだめになるわけですね。そこで所得制限というものが、一方では上限があって、下限は今度は下限で、たとえば介護手当のごときは、月九千円出るということでありまするけれども、これは実際に介護者を雇った場合にのみ出る、こうなっておりますね。ところが先ほど申しましたように二万円くらいかかるわけでございまして、月に二万円払えない人は、逆に介護者を雇えない。雇えないから、したがって月額九千円の介護手当をもらえないということになりはしないか。一方、二万円を出せるくらいの人は、今度は所得制限のほうでひっかかって、実際にはもらえないというようなことになりはしないか。こういうことが、私はこの法案をただ一通り読んだ限りにおいて、疑問として浮かんできたのでございますが、厚生省当局としては、一体こういう点をどうお考えになっておるか、伺いたいと思います。
  72. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 所得制限の問題でございますが、この点は、医療費と医療手当と、実は条文をごらんになりますとわかりますように、違う仕組みになっております。医療費の点は、これは医療費そのものは一応自己負担分を全部見る。少なくとも、この法律の適用を受ける方には全部見るということでございまして、先生、先ほど月に一万五千円かかるけれども、これについての医療手当が四千円、入院料一万五千円に対して低いのではないか。これはもう入院料を自分で持つ者、たとえば一万五千円の半分とか、その七割を国庫で見るといった場合に、その三割の四千五百円はまるまる医療費のほうで見れるわけであります。そのほかに入院中におきますいろいろな治療効果を促進するために、入院雑費その他精神的なものを含めて、入院患者に四千円を差し上げる。もちろんこの額につきましては、御指摘のように、私どもこれは十二分だというふうには思っておりません。最小限だというふうに先生おっしゃいますけれども、この点の額については、ことしは発足の年でございますので、さらに努力を重ねていきたい、かように考えております。  それから所得制限の、いわゆる高額医療費を負担できる者につきましては医療費はやらない、こういう仕組みをとっているわけでございますが、この運用につきましては、非常な高額所得者についてだけ考えておりまして、いわば一律にこれこれの所得がある以上の者については一切見ないというようなことではございませんで、かなり高額所得者で、しかもかりに公害病の患者をその世帯に二人かかえているというような状況、あるいは医療費そのものが患者の状態によっていろいろ違うわけでございますので、その点は十分現在各市で行なわれております患者の実態をつかまえまして、少なくとも現在の方々がはずれることのないように、運用については十分に注意したい、かように考えております。  医療手当についての所得制限の問題は、率直に申しまして、いわば医療費そのものではございませんので、たとえば現行原爆等において行なわれている所得制限の例にならって、一つ制度を立てたということでございます。
  73. 河上民雄

    ○河上委員 では念のためもう一度伺いたいと思うのでありますが、政府提案の法案の第八条にございますもろもろの規定は、いま公害部長が説明されたように、非常に常識的な判断を加えてやるおつもりなのか。その点もう一度伺いたい。
  74. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 第八条の「医療手当の支給の制限」は、これは医療手当でございますので、原爆と同じような制度を考えております。所得税額が政令で定める額をこえる場合、一万七千二百円を現在のところ原爆では考えておりますが、それによって運用したいということでございます。  それから医療費につきましては、二十二条に支給の制限がございますが、「医療費を負担することができると認められるときは、医療費の全部又は一部を支給しないことができる。」これにつきまして、先ほど申し上げましたように、高額所得者については二十二条を適用する。運用につきましては、いま先生おっしゃいましたように、十分現状を見て運用したい、かように考えております。
  75. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、第八条のほうはここに書いてあるとおりに適用し、二十二条のほうをいま御説明あったように大局的に判断する、こういうふうに理解してよろしゅうございますね。いずれにせよ、公害というものは、本来本人にとってはいわれのない原因で起こる病気でありますので、そういうことに関して所得制限という概念を入れたりいたしますことはいかがかと思われるのでございます。  それから一方、介護手当の場合など、実際に雇わない者には出さないというのは、当然のことのようなことでございますけれども、しかし実際に雇う場合には二万円かかる。その二万円が惜しいということで、また実際に金がなくて、介護者を雇えない場合には、その手当が出ないということになりますと、これは介護者を雇うことを促進することにはならない。その意味では、先ほど申しましたように、下限はこれでかなり――どっちが下限か上限かわかりませんが、貧困者のほうは、そういう意味で十分な手当をやろうと思ってもできないという問題が出てくるのではないか。そういう点で、なかなかこの法案の趣旨は非常に厳密に書いてありますけれども、その結果として、かなり本来の目的である被害者救済の点から見ますと、あちこちこぼれてくるということで、私は憂いを深くするわけでございます。
  76. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 第九条の介護手当の支給の問題は、これは原子爆弾等の被害者救済法律と同じように仕組みを考えたわけでございますが、現在、長崎、広島を中心として考えられております介護手当の運用等も十分把握いたしまして、この介護手当の支給の運用については、十分そういう前例をも参照いたしまして運用したい、かように考えております。
  77. 河上民雄

    ○河上委員 では、私の質問は、これで終わります。
  78. 赤路友藏

    赤路委員長 島本虎三君。
  79. 島本虎三

    ○島本委員 公共用水域水質保全に関する法律の一部改正法案、これに主眼点を置いて、後ほどには、当然この法律の一部改正に伴って発生してくると思われる微量重金属、いわゆる毒性金属物質、これらの規制に関する法律案とかね合わせて、逐次質問してまいりたい、こういうふうに思うわけであります。  まず大臣にお伺いしておきたいと思いますが、昭和四十二年八月に制定された公害対策基本法、これは法律第百三十二号でありますが、これの制定までのいきさつ並びにその後の経過並びにその実施法の制定、こういうようなことについて、大臣はすべて御了解のことだと思いますので、私はそれにはもう触れません。そしていま、その中で特に実施法制定の際に内閣総理大臣佐藤榮作は、七月に、紛争処理機関の整備と無過失責任制度については前向きに検討する、こういうようなことがはっきり議事録にとどめてあるわけであります。それは御存じのとおりです。そして衆議院の特別委員会でも、無過失賠償責任についても、逐次その制度が整備されるようにつとめること、それから参議院の特別委員会では、無過失賠償責任に関し、その法制の整備に努力するとともに、紛争処理制度及び救済制度の整備につとめること、これが決定され、本会議でも附帯決議として通って、現存しておるわけであります。これは大臣、御存じのとおりです。こういうような観点からして、その付帯法、いわば実施法として存在をし、またそれを修正したこの公共用水域水質保全に関する法律の一部を改正する法律案、これはこの基本法精神並びに総理が断言したこのことばより後退したものであってはならない、これが原則であり、進んで今後の実施法の中に無過失賠償責任制度は取り入れなければならない、これほどの強い要請のもとに生まれたものである、こういうように思っておるわけであります。したがって、基本法よりもこれは後退した法律ではないということが原則だ、こう思いますが、大臣の高邁なる御所見をまず承りたいと思います。
  80. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 基本法は基本法でありますから、それに対して、これは実際に適用する法律をつくるわけですから、決して基本法から後退すべきものではない、こう考えております。
  81. 島本虎三

    ○島本委員 基本法の第一条の一項は「公害対策の総合的推進を図り、もって国民の健康を保護するとともに、生活環境保全することを目的とする。」二項は「前項に規定する生活環境保全については、経済の健全な発展との調和が図られるようにするものとする。」こういうふうにはっきりあるわけであります。いまの大臣の言明からこの改正法第一条の目的を見る場合には、大臣、残念ながらこれはよけいなものがついているのです。この中の「これに必要な基本的事項を定め、もって産業の相互協和と」その次に基本法を入れているんですよ。「国民の健康の保護及び生活環境保全」、二項として「前項に規定する生活環境保全については、産業の健全な発展との調和が図られるようにするものとする。」この点はいいのですが、この第一条の主目的に、何のために「産業の相互協和」ということを、基本法よりもまっ先にこれを載せなければならないのですか。これは、いまの大臣の言明と反対になりますよ。
  82. 八塚陽介

    八塚政府委員 ただいま大臣から申し上げましたように、従来の水質保全法のやり方なり考え方なりを、公害対策基本法の公布、施行と同時に改めなければならぬだろうということで、私どもそれを一つの重要な観点にいたしまして、今回法律改正案を立案いたしたわけでございます。そこで、語句の点で申し上げますと、公害対策基本法生活環境には、通常いわゆる生活環境に対しまして、人の生活に密接な関係のある財産、あるいは人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含むということで、通常の生活環境という感じから連想いたしますよりも広い概念、つまりある程度経済的なものをこの中に含んでいるわけでございます。そういう点からいたしますと、やはり公害を、特に水の場合に公害を有効に防止していく際には、まず経済の問題をやはり視野の範囲に取り入れなければ、実際的な効果があがっていかない。そういう点におきましては、私どもの経過的な点もございますが、やはり水の水質保全をやっていく場合には、経済、あるいは端的に申しますならば、加害者的産業被害者産業というものが十分調和していくということをうまく担保していくことが、水質保全の実際的な効果を確保する一つの手段であるということで、私どもは、この公害対策基本法精神に別に反するというようなことではなくて、そういう目的に到達する意味においても、産業間の調和をはかっていくということが必要であろうというふうに考えているわけであります。  それからもう一点でございますが、確かにお話しのように順序が、まず「産業の相互協和」というのが第一にきております。それから「国民の健康の保護及び生活環境保全」というようになっておりますけれども、これは実は経過的に――今回改正いたしましたところは、従来そこに、御承知のように公衆衛生上の問題が、「公衆衛生」ということばが入っておった。これは少なくとも立法当初あるいは法律ができましてからしばらくの間は、公衆衛生という考え方をかなり限定的に扱っておりました。実際問題といたしましては、その後事態の変化なり私ども行政感覚のある意味では向上、そういう意味で、もう少し広く解釈してこれを運用してまいりましたら、今回、公害対策基本法との関係からいえばまさにそこが問題になるというので、そこを変えたわけでございます。順序としてあとから書いてあるからということでは毛頭ございませんで、その問題になったところをあらためて変えた。しかしそうは言ってもあとになっておるじゃないかという御指摘があるかと思いますが、しかしそのあとをごらんいただきますと、人の健康の問題に関する限りは、何をさておいても、他のものとの調和等は考えておりません。やはりこれは絶対的第一義的な問題である。そういう意味におきまして、二項におきましては「前項に規定する生活環境保全については、」ということで、少なくとも国民の健康の保護に関する限りは、これはいわば価値基準といたしましては、かなり絶対的な考え方で第二項が書いてございます。そういう意味におきまして、ことばの順序という点からいえば、あるいは島本先生の御指摘になる点があるかと思いますが、私どものこういうふうに直しました気持ちなりあるいはそれを運用していく気持ちといたしましては、ただいま大臣が申し上げましたように、十分公害対策基本法精神であるというふうに考えております。今後ともその精神運用していくというつもりでおります。
  83. 島本虎三

    ○島本委員 国民の健康の保護、これが絶対的なものである、こう言っても、その絶対的だということがここに書いてない。それで、上から並べれば先の方に重点があるというのも、これはやはり一つの常識なのであります。まああえて私は悪く考えないで言うと、現行法の第一条には「産業の相互協和と公衆衛生の向上に寄与することを目的とする。」とある。何かこの一行に郷愁を感じて、そしてこの「公衆衛生の向上」はもう古いから、「産業の相互協和」だけを残そうじゃないかという、あなたのこの法に対する郷愁だと、これは善意の解釈です。ところがそれをまっ先に持ってくると、あなたがいかに絶対それではないと言っても、法に書いてない。これはあえて言うと、この「産業の相互協和」ということばは、公害対策基本法、この中にもないことばなんです。いかにあなたが現行法律に郷愁を感じても、これより後退しないという大臣のいまの言明を前にして、絶対そうじゃないのだと言っても、これに絶対と書いてありませんから、「産業の相互協和」ということばは、これは当然なくならなければならない。そうして次にある「国民の健康の保護及び生活環境保全に寄与することを目的とする。」、これが生きてきて、この「生活環境保全」、これについては、第二項にはっきりうたってある「産業の健全な発展との調和が図られる」、これも基本法に書いてあるのと同じ。そうすると一つだけよけいなものがある。一つだけよけいなものについては、まあこんなものはないほうがいいんです。あえて大臣にいま言わせると、前言を取り消されては困るから、これを言わないで、角屋社会党提案者にお聞きいたしますが、あなたはあなたで、前の公害本法の際にも、はっきり政府案に対決してこの点をついた改正案も出されたことを私どもは存じております。私がいまいろいろ政府に言ったことは、当時の事情からして、私はこれでなければならないという信念を持っていま質問したわけですが、角屋議員は、ただいまの「産業の相互協和」ということがまっ先に出てくることについていかがお考えでしょうか、御高邁なる御高見を拝聴したいと思います。
  84. 角屋堅次郎

    ○角屋議員 いまの島本さんの御質問にお答えをする前に、委員長はじめ委員の各位に、簡単に提出者として希望を申し上げておきたいのでありますが、社会党からも議員立法は出ておりますし、さらに参議院関係から公明党からの議員立法が出ておりますが、やはり国会としては、議員立法尊重の精神というものが必要だと思いますので、議員立法に対する質問機会というのは、そうしばしば委員各位からあるとは思いませんが、理事会で御相談になって、政府案と相当基本的に違った点について、提出者の意見を求めるというふうな委員長のさばきが適宜できますならば、審議を深める上で非常にいいのじゃないか、こういうふうに思いますので、これは委員会の運営でございますから、理事会等でも御相談を願いまして、議員立法尊重の立場を生かした委員会運営をひとつやっていただきたいことを、希望として、たいへん僣越でございますが、申し上げたいと思います。  ただいまの島本委員の御質問の点は、公害対策基本法にさかのぼって御論議がございました。当時、私も政府与党と、公害対策基本法の問題については、他の民社、公明の責任者とともに修正の折衝もいたしました、そういう経過がございます。私どもといたしましては、公害対策基本法の場合に、「経済の健全な発展との調和」ということばは削除すべきだという強い意見でございました。なかなか政府与党としては譲らなかった経過もございまして、健康第一主義という当時の園田厚生大臣のおことばを生かすならば、やはり第一条の中で取り扱う場合でも、第二項に下げる。少なくともそういうことで健康第一主義の精神を明確にすべきだというふうな、われわれとしては一歩下がった話し合いにもなりまして、現行の公害対策基本法ができた経緯がございます。これはここにおられる民社党の折小野先生も御承知のところであります。  そういう公害対策基本法の制定当時の経過から、いま島本委員お話の、公共用水域水質保全に関する法律の一部を改正する法律案の第一条について政府が改める場合に、私は従来の第一条の「産業の相互協和」という文字がそのまま残ったということは、基本法精神から見て間違っておる、こういうふうに思います。これは本来削除いたしまして、そして「国民の健康の保護及び生活環境保全に寄与することを目的とする。」とし、公害対策基本法の修正の経過からするならば、「産業の健全な発展との調和」は第二項に譲る。事実、改正案でも第二項に譲っておるわけでありますが、産業面のことが、第一条の第一項でも出てくる、第二項でも出てくるというのは、郷愁ばかりではありません。基本法提出当時の伝統的な産業偏重の考え方というのがそのままここでもやはり残っておる、こういうふうに率直に指摘をしなければならないと思います。公害対策基本法の制定当時の経過から見て、私どもとしては一歩後退をして話し合いをしたという形に、率直に言ってなるわけでありますけれども、その立場からいっても「産業の相互協和」という点は削除すべきものである、これが公害対策基本法制定当時の精神である、こういうふうに考えております。
  85. 島本虎三

    ○島本委員 大臣にお伺いいたしますが、いまのようにして削除すべきであるというような、社会党提案者の角屋議員からの答弁もあったわけですけれども、もしこの公害対策基本法立法の当時にさかのぼって考えてみても、これはやはり逆転した考え方の上に立っているものか、でなければ、これは間違いである、このいずれかである。おそらくはもう逆転した考え方には立っていない、こう思います。それと同時に、もしこれをこのままにしておくと、企業の健全な発達のためには水質基準を考慮するものとする、こういうふうに読みかえられるおそれさえあるので、この次にくるものもそれである、初めもそれであるといったら全部がこれになってしまうので、人間の健康なんてものはもう吹っ飛んでしまうおそれがあるのだ、このことを心配するのであります。したがって、これはおそらくは大臣も、いま私が言ったように企業の健全な発達のためには水質基準、許容限度も含めてこれを考慮するものとするなんて読みかえられる危険があり、現実には企業の順守可能な設備費、こういうようなものの増大や利潤、こういうようなものをなるべく伴わないような水質基準としておいたらいいじゃないか、こういうような安易な考え方に堕すのじゃないか、こういうように思うわけであります。これはひとつ考え方としてはっきりしておきたいと思いますが、第一条「産業の相互協和」は、これはほんとうにダブっておる、必要ないものである、こういうふうに思って次に進みたい、こう思いますが、大臣、よろしゅうございますか。
  86. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 私、実は初めてこのあれを見て、島本委員から教えられたのですが、なるほど御趣旨の点はよく十分わかります。やはりある意味では、この水質保全法というものが公害本法より先に出たものだから、それでそういうことになってきたのではないか、こう思っております。やはりこれは公害本法に準じてつくっていくべきことが本来ではなかったかと思うのですが、そこらの経緯は、私十分知りませんから、いまいいとか悪いとかいうことを私からちょっと申しかねますが、私どもで十分検討します。
  87. 島本虎三

    ○島本委員 次に、同じ法の十条に規定されている「経済企画庁長官は、この法律目的を達成するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長及び関係地方公共団体の長に対し、必要な資料の提出及び説明を求めることができる。」それ以下二、三、これはいままでにないような新しい試みで、これはおそらく私は賛成することであります。ただこの中で基本的に考えてみたい点は、意見はやはり出しっぱなしでいいというものじゃない。これを法ではっきり示す以上、大臣をはじめとして、必要な資料の送付やそのほかの協力を求めたり、または意見を述べたりするわけでありますから、当然これは国会に報告して、水質保全の万全を尽くすのがやはり正しいのじゃないか、こう思うわけです。これは意見を申し述べることができるだけで、しなくてもいいような、何かしらこの辺にもあいまい性が見られるわけであります。これは当然それをもっと深めて、進んで施策に対する回答を出させるとか、結果については国会に報告するとか、こういうようなところまで責任ある措置をとったならば、これはしり抜けにならぬのじゃないか、こういうように思いますが、大臣、いかがでございましょう。
  88. 八塚陽介

    八塚政府委員 この地方公共団体の長が政府との関係でどういうふうになるかということについては、今回改正するときに非常に検討をいたしたところでございます。とにかく現在の段階では、現在の水質保全をうまくやっていくためには、中央と地方とが息を合わしていかなければいけないということで、いろいろな点でそういうことを配慮いたしたつもりでございますが、たとえば地方公共団体の長が、いまお話しになりましたように、政府に、これこれだという意見を言ってきたときに聞きっぱなしになるのじゃないか、都合のいいところだけ政府がやって、あとは聞きっぱなしになるのじゃないかというあるいは御指摘であったかと思います。実際問題として、私ども確かに、地方公共団体から言ってきたことをそのまますぐ全部聞いておるということではございません。やはり中央官庁としては、またいろいろな点からそれを検討して、全部が全部そのとおりだというふうには採用いたしておりませんことはかなりあるわけでありますが、しかし、それならば一切聞きおいて知らぬ顔をしておる、あるいは問答無用で、当方は当方というようなことをかりに一回でもやりましたならば、これはやはり行政が進まないということでございますから、従来の例におきましても、水質基準をきめます際には都道府県知事の意見を聞いておる。あるいはその聞く前にも十分な意思の疎通をはかるというようなことをやっておったわけであります。今後とも、意見を聞いたならば、その意見についてはどういう理由によって私どもはその意見をもっともだと思う、あるいは、これはこれこれしかじかの理由によって採用いたしかねるというようなことを、十分意思の交換をやりまして、そうしてその意見に答えていくということは、これはむしろ当然でございます。私どもといたしましては、いま先生の御指摘になりましたような趣旨で、今後ともこの点を進めてまいりたいというふうに考えております。
  89. 島本虎三

    ○島本委員 この公共用水域水質保全に開する法律の一部を改正する法律案、これはいわゆる公共用水域水質保全法と、こう言いますけれども、この法律ができて、受けざらということばがございますが、この法律を受けて改正をしなければならない法律は幾つございますか。
  90. 八塚陽介

    八塚政府委員 先ほども藤波先生の御質問に対してお答えいたしましたが、法律の段階で改正することはあまり――あまりと申しますかございません。しかしながらこの受けざらとして実質的に運用を効果あらしめるためには、省令等を今後検討していただかなければならないところがございます。あるいはここには、法律の中に当然書いてございますが、政令等によって具体化をしなければならない養豚場、養鶏場の問題等もあるわけでございます。したがって、法律の段階では、さしあたっては特に改正を現在の段階では考えておりません。
  91. 島本虎三

    ○島本委員 わりあいにここで受けざらと思われる工場排水法や鉱山保安法、水洗炭業法、下水道法それぞれあるわけですが、これは全部そのままではならない。もうすでにこれに対する被害が、あとから私一つ一つあげますから、これはもうすぐ考えないとだめです。緊急なんです。ことにきのうの朝日にまでちゃんと出ていたあの事件があるでしょう。下水道で人が死んだ事件があるのです。あとから具体的にあげますよ。いまその段階でないから、ちょっとこれだけ言っておきますけれども、これはやはり急いで手をつけなければなりません。そしていまのこの本法によって、今後は未規制汚濁源、こういうようなものはほとんど解消される、こういうふうに考えてよろしゅうございましょうか。
  92. 八塚陽介

    八塚政府委員 今回の改正で、現在考えられておりますあるいは問題になっております未規制汚濁源はおおむね網羅したつもりでございます。私ども水質保全をやります際には、やはり基準をかけて、そしてその基準が実際的に守られるという保障がなければならないわけでございますから、当然それに対応する、先ほどお話がございました受けざらの法律があるわけでありますが、その法律も、いまのように方法論としてはまだ問題があります。法律的にも問題がございます。養豚、養鶏等も一応政令でいつでもできるという態勢をとっておりますから、一応現在網羅したつもりでございますけれども、しかし、すでに昭和三十三年に考えたものが今日の段階で不十分になっておるということを考えますならば、やはり今後とも、経済の発展と申しますか、人口の集中と申しますか、技術の進歩、いろいろな関係で、出てこないとはこれは限りませんから、私どもといたしましては、そういう場合に対応して、絶えず気をつけておって、政令であるいは指定をしていく、あるいはどうしてもそういう汚濁源が大きく浮かび上がってくる何かがあれば、それはまた改正をして対象に加えていくというふうにしていかなければならぬと考えております。
  93. 島本虎三

    ○島本委員 念を押しておきたいと思います。この法律が通ったあとすぐそれに着手して万全を期すべきである、こういうように思いますが、よろしゅうございますか。
  94. 八塚陽介

    八塚政府委員 私どもは、従来でも汚濁源の捕捉についてとかく非難があったわけでございます。そういう関係で、この法律が幸いに通りまして、汚濁源がつかまえられるということは非常に希望いたしておるところでございますから、この法律が幸いにして通りましたならば、この新しい法律趣旨で邁進をいたしたいというふうに考えております。
  95. 島本虎三

    ○島本委員 問題になるのは農業、畜産関係またはそれに対する処理技術、これがいまどうなっているのか。この問題とあわせて、いま一番この方面に対する水の公害というものが具体的事例になってあがってきておるわけです。これはやはり、聞くところによりますと、豚は人間の十倍のふん尿をたれるそうであります。牛に至ってはどれほどになるかわかりません。トラはどれほどたれるかわかりませんけれども、しかしこの農業の畜産関係でも、処理技術、こういうふうなものに対してはあらためてすぐやっていただかないと、ここがまた大きい問題になってしまうのです。もうなっているのです。カニのかん詰めがいまカズノコより高いそうです。カニの漁獲規制、それからサケかん、マスかん、これに対してのいろいろなまた漁獲等についての制限、日ソ漁業協定、こういうふうなものに対していろいろあるのは、日本の川がきたないからなんです。そしてこういうようなものに対しては、もうすでにオホーツク海岸方面でも、いままで養殖しておったところはだめになった、こういうような事例さえあるわけです。これはすぐこの水質をよくするのであれば、農業の近代化資金もあるだろうし、農業の構造改善事業もあるだろうし、この方面も一緒に――現在なお、でん粉だとかこういうようなものだとか、いろいろなもので、いわゆる住民との間のトラブルは絶えないし、同じ産業の漁業家との間のトラブルが絶えないような現状、これは一体このままにしておくのですか。これもすぐ手をつけて是正させる方面へ指導するのですか。これは経済企画庁と同時に、農林省意見も聞いておきたいのです。
  96. 八塚陽介

    八塚政府委員 ただいまお話しになりました汚濁源としての業種の問題でございますが、家畜の飼養が最近特に集中して多頭化いたしておりまして、そういう意味で豚あるいは鶏が問題になってきておるわけであります。同様に多頭飼育になっております乳牛でございますが、これは御承知のように草で相当程度飼いますから、比較的そういう問題が少ないわけでございまして、豚は最近いわば非常に工場的に飼っておるというようなことで、弊害が目立つわけでございます。この点につきましては、農林省等においても四十三年度から処理技術について、それぞれ比較的関係の深い県に補助金を出しまして、そして処理技術の経済的、技術的な実験をやらしております。一方、畜産試験場の系統では、それを分析してさらにいいものをつくっていって、その普及をはかろうという体制をとっております。私どもといたしましては若干おくれておるという感じがいたしますが、それにしても一応そういう段取りで進んでおりますので、できるだけ早い機会にめどをつけてもらおうというふうに私ども考えておるわけでございます。  それから、農業ということばでお話しになりましたが、いわゆる農産加工の公害、加害でございますが、これは実は法律的には、工場排水法ですでに特定施設としてでん粉等は対象になっておったわけでございます。ただ、御承知のように、でん粉工場は産地におきましても企業としては比較的小さいというようなこともございましたし、そういうことでなかなか経済的、技術的な処理方法というものがおくれておるというようなことで、せっかく特定施設として、かなり前に制度的な受けざらは用意しておったわけでございますが、残念ながらごく最近まではあまり実際問題として対象にしてなかった。ただ、いま先生お話しになりましたように、水産資源等と非常にはっきりした問題の対立という事態になってきております。私どもといたしましては、水産と、あるいはそういうでん粉等の農産物加工との対立点をできるだけ調和いたしまして、そして水質保全を確保しなければ、まさにお話しになりましたように、国際的な問題でもあります。かたがた、その関係の漁業者も必ずしも生活状態はよくないわけでありますから、そういう点については今後十分やっていきたい。むしろ最後の問題は、新しく制度をつくるというよりも、その運用をどんどんやっていくという点で、比較的従来問題のあったためにおくれておった点でございますから、私どもとしましては、その点に力を入れていきたいと存ずるわけであります。
  97. 島本虎三

    ○島本委員 農林省から来ているはずなんですが……。
  98. 佐々木實

    ○佐々木説明員 いま先生の御質問の問題につきましては、私、所管じゃございませんので、お答えできませんので、担当のほうにお伝え申し上げます。
  99. 島本虎三

    ○島本委員 この点では、角屋委員は長い間農林水産委員会に所属して、あるいは予算委員会等において、こういうような問題についてうんちくの深い人だ、こういうように私は承っておったのですが、いまのような状態で、やはり農業公害としてこれは残る。しかしながら、やはりこれは零細なものであるからいま手をつけられないという考え方がほんとうなんだろうかどうか。やはりそのためにこそ、近代化資金というものや構造改善事業なんというものも考えられているのじゃないかと思うのですけれども、いまの御答弁のように、零細であるからこれはなかなか手がつけがたいということを、やはりわれわれ肯定せざるを得ないでしょうか。この点は、政府答弁ではありませんが、私は同志に対する忠言として、ひとつ角屋委員の御意見を承りたいと思います。
  100. 角屋堅次郎

    ○角屋議員 島本委員に少しくお願いしておきたいのでありますが、私のほうから出しております公害二法関係のことについては、提出者としてもちろん答弁する責任がございますが、いま出ております問題については、先ほども答弁したのですけれども、この当面提案をされております法律案について一々御質問がございますと、私、提出者というか、改正案提出とかいろいろそういう対案を出しておる立場でもございませんので、その点は今後の質問の中で御配慮を願いたいと思います。ただいまの点についてはせっかくのお尋ねでございますので、私遠慮しながら申し上げたいと思います。  島本委員が御指摘になるまでもなく、私ども日ごろ農政関係の問題を取り扱っておる立場からいたしましても、最近都市あるいは都市周辺ばかりでなく、農村部に入りましても、多頭飼育あるいは大規模経営管理に伴います鶏や乳牛や肥育牛や、いろいろな豚等を含めてですが、畜産公害といわれるものが、相当地域住民から声があがる形勢にございます。したがいまして、先ほど政府側からも御答弁でございましたが、今後そういう実態に即して必要な法令の問題に取り組む、あるいはそういう点について具体的な予算、財投等の配慮を加えながら、公害の防止あるいは公害地域の改善に資するということが積極的に考えられていいのじゃないか、かように私ども考えております。
  101. 島本虎三

    ○島本委員 厚生省の調べによりますと、水俣病といわれる熊本県の患者総数は四十三年十月二十二日現在で百十一名、死亡者が四十二名、現在患者六十九名。それから新潟県の阿賀野川水銀中毒患者は四十三年十月二十二日現在二十七名、死亡者五名、要観察者七名。富山県のイタイイタイ病は、昭和四十三年十月二十二日現在、患者総数百三名、要観察者数百五十二名。その他ずっとあるわけでありますけれども、これはやはり全部水によって、川の汚染によるところの人体の被害であります。今後公共用水域水質保全に関する法律改正されて出た場合は、カドミウム、有機水銀というようなものは本法で当然規制されるものであり、こういうようなことがおそらく今後においては規制されてしかるべきものだ、私はそう考えますが、この点は可能でしょうか、可能でございませんでしょうか、お伺いしたいと思います。
  102. 八塚陽介

    八塚政府委員 カドミウムにつきましては、現在の段階では、厚生省なり通産省なりで調査されておる段階でございます。私どもといたしましては、その調査によってまた態度をきめていく。ただ一般論といたしまして、非常に事態がはっきりしプロセスがはっきりしておる場合に、メチル水銀等の例がございますが、別に、かけるということにちゅうちょいたすことはございません。ただカドミウムにはカドミウムの問題がございますから、その点については、厚生省なり通産省なりのただいまの段階を待っておるということでございます。
  103. 島本虎三

    ○島本委員 いま言ったように、これは人の健康にかかわる重大な被害であります。死者さえも出ておるのであります。そのために、川の水をいままでのような野放しではだめだから、これを規制するために公共用水域水質保全に関する法律の一部を改正して出してきたのです。しかしこれを出しても、いままでのようなカドミウムや有機水銀によるところの、いま言ったような川の被害さえ食いとめられないというのでは、またこの点でおかしいじゃありませんか。そういうやつなんですか。大臣、これはおかしいですよ。
  104. 八塚陽介

    八塚政府委員 食いとめられないというよりも、そのカドミウムをどういう形で規制していくかというためには、たとえばその排出がどうなっているか、天然の賦存量との関係はどうかというようなことがはっきりしませんと、工場にかりにゼロにしろということを言いましても、天然の分があるとか、あるいは土地の中に堆積しているものがあるとかいうことで、排出基準というものがかからないわけであります。それからまた、どういうメカニズムでということがわからないと、どういう形で排出基準をかけていくかということがはっきりしない、そういう意味でございまして、そういうメカニズムなり、そういう関係がわかりましたならば、排出基準と因果関係がつなぎましたならば、これはもう私どものほうとしてはその点で対策を講ずる、排出基準にかけて規制する。現在はそういう問題を含めまして、それぞれの立場において、厚生省、通産省調査をするということでございます。できる、できない、この法律改正によって云々ではなくて、現在そういう技術的な問題の段階になっておるということでございます。
  105. 島本虎三

    ○島本委員 熊本県の水俣病、新潟県の阿賀野川水銀中毒、三重県の四日市公害、富山県のイタイイタイ病、これは公害病として国が認定したはずだと思っている。これから研究しなければならない過程じゃないのです。四日市はまず別にして、他のほうは水の汚染によって人体に障害を与えているのです。これはそのための改正案じゃありませんか。それなのに、そういうようなやつは何もできないといったら、一体これは何をやるのですか。私はわからぬ。すでに汚染されている河川に対しては、本法は適用できないということになるわけですか。この点はっきり答弁願います。
  106. 八塚陽介

    八塚政府委員 既成事実であるからもうやらないということでは毛頭ございません。その点は、たとえばメチル水銀にいたしましても水俣にいたしましても、むしろ既成事実が進行したあとで、おそきを批判すべき時点でかけたわけでございますから、既成事実であるからということは毛頭ございません。  それからまた、今回の法律案のいかんにかかわらず、従来とも、重金属等について、そういうことがあればやっておったわけでございます。それからカドミウムの公害病認定、これはもう公害病認定として厚生省のほうでおやりになったわけでございます。その意味においては、公害病であるということを私どもで否定しておるわけではございませんけれども水域指定いたしまして、どれだけの程度の水しか出してはいけないというためには、どれだけの水が、どれだけの金属が、どういう形でどれだけの被害を及ぼすようになったかということがわかることが第一点、それから、そのカドミウムが、一体どういうところからどういうふうに流れてくるかということについて、それを押えませんと、かりに天然にあった場合にはその対策が必要である、あるいは工場、鉱山から出ている場合にはその対策が必要であるということで、天然と人工的に出てきたものとの割合というようなものがわかりませんと、鉱山に対してどうするということはできないわけでございます。つまり責任の帰属、その責任の帰属が計数的に、数量的にあって、はじめて排出基準というものがかかるわけであります。そういう意味において、私どもは、そういう調査なり何なりが進む段階でそれを判断していくということになっております。
  107. 島本虎三

    ○島本委員 熊本の水俣病が発生してから何年たつのですか。富山県のイタイイタイ病、これが発生してから何年たつのですか。いまだにあらためてこれをやらなければどうにもならないというのは、これは怠慢じゃありませんか。これでは事務当局は要らないよ、大臣。せっかくこれをつくったのに、イタイイタイ病でも水俣病でも、カドミウムでも、これは現在きたなく流れているのは規制できないというのだ。どうする。これはとんでもない法律じゃありませんか。これは大臣に聞きます。
  108. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 いま局長から言われましたとおり、そこの因果関係さえはっきりすれば規制するという方針は間違いないのですから……(島本委員「因果関係ははっきりしておる」と呼ぶ)どの程度、どこからどう出てきたかということをもっとはっきりしてもらわなければ、こちらは基準を立てるわけにはいかないものですから、それを待っておる。その際は、厚生省なり通産省のほうで、できるだけその結果を発表してもらいたいということを、われわれは待っておるわけです。
  109. 八塚陽介

    八塚政府委員 因果関係でございますが、確かに公害病と厚生省が認定された以上は、因果関係があるわけでございますが、私どもの段階でやり得ますのは、もう少しいわばプロセスがわからないと、なかなかかけられない。しかし、それならば因果関係がないと考えているかということでございますが、それはそういうことではない。やはりそういう意味におきまして、たとえば、その米を食べればどうなるか。そういうことで害をさらに防ぐ、あるいは今後未然に防ぐというための対応策は並行してとっておるわけでございます。そういう意味におきまして、カドミウムに対する対応策は決して政府としては怠っているわけではない。ただ水質保全法の手法でそれをやるということについては、少し鎖の輪が抜けておる。しかし、鎖の輪が抜けておるのをほっておいていいかといえば、それはいけませんので、それぞれの対策をいわばそれぞれ用意して、たとえば身体検査、健康検査をやるとか、そういうことで、その害をさらに拡大するとか、あるいは再び起こることのないようにということだけは、これはある種の因果関係を前提にして、政府としてはやるということを御了承願いたいと思います。
  110. 島本虎三

    ○島本委員 因果関係は、熊本の水俣病の場合は、これは実質的にはっきりしたものだと私たち思っているのですが、厚生省どうなんだ。
  111. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 いまのこの工排法と、それから先生の御疑念の点について、こういうふうに私どもは理解しております。工排法の……(島本委員「私の質問に答えればいい」と呼ぶ)ですから、ただいまその点につきまして、水質保全法改正につきまして、先生の御疑問につきまして、私から厚生省としての考え方を述べさしていただきます。  この水質保全法では、いわゆる水域指定しまして、それに関連する工場排水規制するわけでございますが、先生御承知のように、いわゆるいままで起きましたいろいろの事件をとりますと、いろいろの微量のものが長年の間に、どろあるいは魚、あるいはコケ、そういうものに蓄積をいたしまして、それからあるいは農水産物を通じて、いろいろ事件が起きたわけでございますので、この水質保全法によりますいろいろの予防策のほかに、万万全を期すためには、やはり環境汚染の問題をいろいろ検討しまして、場合によりましては法律等の立法措置が必要ではないか、かように考えております。ただこの問題は、現行法、たとえば鉱山保安法あるいはこの水質保全法等によりまして、ほとんど規制はされておりますけれども、いま私が申しましたような慢性的な問題あるいは環境汚染的な問題につきましては、なおそういう法律の予想せざるところにつきましても、私どものほうとしては、長期的広範囲に問題を考える必要があると考えますので、そういう点につきまして現在いろいろ検討中でございます。
  112. 島本虎三

    ○島本委員 これは公共用水域水質保全に関する法律なんですから、その辺の一貫した体系的な立法体制でなければだめだ。受けざらはこれでいいのかと聞いたら、現在これでいいと言うから、やってみたら次から次とだめになってしまう。指摘しないとわからぬじゃだめなんですよ。  それでは、次に聞くけれども、阿賀野川、あの川は現在のところどういうふうなことになっておりますか。
  113. 八塚陽介

    八塚政府委員 阿賀野川の際にはメチル水銀が問題になったわけでございます。メチル水銀につきましては、全国約五十工場、三十九水域につきまして、二月の上旬でございますか、水質規制をかけた次第でございます。一般のメチル水銀についてはそういうことで、工場のあるところ、特定施設のあるところはかけたわけでございます。阿賀野川につきましては、すでにそういう施設がないということで、問題の発端の一つではございましたけれども、現在はございませんので、かけておりません。しかし一般的にメチル水銀につきましては、そういう特定施設を持っているところはすべて、メチル水銀を検出せざることという基準をかけた次第であります。
  114. 島本虎三

    ○島本委員 これはやはりかけておらないということです。昭電の排出施設、そういうようなものがないので、現在はそういうようなことにしておらない、かけておらない。そうすると、工場の特定施設がなくて排水口からそういうようなものが出ない、したがってそれは基準設定もしない、それではいかにも、この法律をつくっても何にもならないことが一つそこに起きてきている。水質保全法では、いまの阿賀野川のあの有機水銀の問題はどうにもならない、このことを認めざるを得ない、こういうようなことになってしまうわけです。するとこれは、皆さんのほうではいかに水を規制しても、阿賀野川の場合はだめだということになるのですか。
  115. 八塚陽介

    八塚政府委員 阿賀野川につきましては、いまお話しになりましたように、すでに現在の段階では、おそれのある特定施設がないわけでございますから、施設がないところにかけても、その排出基準がきめられないということでございます。しかし問題は、あるいは先生の御指摘は、過去における問題はどうなるかということでございますが、過去における問題は、いろいろ原因がだれであるかというような問題がありまして、一応科学技術庁の見解等が出たわけでございまして、私ども水質基準排出基準は、今後の予防措置としてかけたわけでございます。したがいまして、予防措置を講ずる必要のない、つまりそういうものを出すおそれのないところにはかけない、かけられないということだけでございまして、そのことによって、水質保全法はメチル水銀なりそういうものに対して実益がないのではないかということではないわけでございます。原因がないところにその規制がないということでございます。
  116. 島本虎三

    ○島本委員 だめですよ、そんな答弁。その原因はあったのです。原因がないのに水俣病が発生しますか。それだけで、原因がないのに公害病と厚生省のほうは認定しますか。それはあなたもう少し勉強してこないとだめだ。今後排出され汚染を増加させることを阻止するためには本法は有効である。しかしながら、いますでに汚水を出してしまっている、そういうようなことに対しては無力である、こういうようなことになってしまうが、それではとんでもないことになるじゃありませんか。水質をせっかくここまでよくしながら、これから排出するものに対しては阻止はできるけれども、いままでよごされたものに対しては無力だ、これがこの優秀な法律案だということは、私はどうも理解することができないのですが、いままでのあなたのおっしゃっているのを聞くと、そういうふうな結果になってしまうのです。しかし、いま水を幾らはかってもそれは出ないでしょう。しかし、人に被害を与えている原因物、魚、汚泥、貝類、こういうようなものは、水質保全水質を幾らはかったって、これはもう出てこない。したがって、いかにこれをやっても、現在の公害発生阻止にもならないし、これを防止することもできないのだ。したがって、これから排出されるものに対しての阻止には役立つけれども、いままでよごれたものに対してはこれは無力だ、こういうようなことになりますね。
  117. 八塚陽介

    八塚政府委員 私、原因ということばを使いましたから、多少不正確であったかと思います。そういう点につきましては、原因となったメチル水銀を排出するそういう特定施設は、過去においてあったわけでございますが、その後それがなくなった段階で、この工場排水法律の手法からいいますと、特定施設に対してこれこれ排出基準を許すとか、これ以上はだめであるとか、こういう基準をかけるわけでございますから、この段階では、確かにお話しになりますように、基準をかけた以降の水質保全をやるということになるわけであります。しかし、過去においてそういうものがありまして、そうしてそれがどろの中に、あるいはその他水槽の中に等々で問題があることはあり得るわけでございます。いわばその後の状態は、油断をしておってもいいとか、あるいはほっておいていいということではございません。私どものほうも、やはり阿賀野川等につきましてはアフターケアの水質の測定をやっておりますが、そういう点につきましては、厚生省等におきまして、なおその後いろいろやっていただいておりますので、厚生省のほうから御答弁を申し上げます。
  118. 島本虎三

    ○島本委員 大体わかりましたが、これだけでは、微生物、重金属、こういうものはどうにもならない。それから、これからの汚水を防ぐということはわかったけれども、もうすでに土やどろや魚や農作物や米や貝、こういうようなものの中に微量な重金属が入っている。それがいろいろ被害を与えるような状態になっておっても、この水質保全法では手が出ないのだ、どうにもならないのだ、こうなってしまうのだ。一応そこでピリオドを打っておきましょう。それ以上責任を追求してもだめだから、大臣、それをはっきりして次へ進めましょう。
  119. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 大体水質保全法の性質については、島本委員もよく御存じのとおりです。そこで、そういうどろの中にあるものとか魚とかいうものは、そういう魚をとってはならぬというようなことは、別の規制が必要だと私は思うのです。そこらも、その川の魚をとってはいかぬ、食べてはいかぬということは、これは水質保全法とはまた別の問題になりますから、これはひとつ厚生省のほうでも特にそういう問題については考えてもらわなければならぬ、こう私は考えておる次第であります。
  120. 島本虎三

    ○島本委員 足尾銅山の廃水について、渡良瀬川の水質その他についてはどういう措置をとっておりますか。
  121. 宮内宏

    ○宮内説明員 御承知のように、百年戦争といわれた非常に長い紛争でございまして、一昨年水質規制を行ないまして、鉱山の排水口で規制することのほか、自然汚濁もございますので、それに対しましては、いわゆる植林とか砂防堰堤、そういうものをつくりまして、そして逐次所定の方向に進んでおる次第でございます。
  122. 島本虎三

    ○島本委員 百年戦争であり、まさに田中正造先輩が、いわゆる足尾銅山のあの鉱害問題で、最近残っていた弟子である黒沢酉蔵という――八十四歳です。いま酪農に専念し、北海道開発審議会の会長をしながら、まだかくしゃくとしてやっております。この田中正造先生の弟子としての黒沢酉蔵氏が、その場所へ行って松の木にさわったら、ぽかっと折れてきた。その根は腐って青光りがしておった。銅の排気でくさい。しかしながら、官憲の弾圧その他の圧迫で、最後になって弟子として残ったのは私一人だった。この述懐はつい先日聞いたばかりなんです。それで、百年戦争とはいいながらも、いま公害の問題がこういうように論ぜられるその中で、まだその対策もはっきりできていないということはとんでもないことだと思う。流域の土地の改良の問題で、水質審議会からどんな意見が出ておるのですか。
  123. 宮内宏

    ○宮内説明員 客土事業をやらなければ、これは三十年くらいの回転でやっていかなければ、やはりある程度汚土がたまるというようなことでございまして、客土事業を農林省においておやりになるという結論になっております。
  124. 島本虎三

    ○島本委員 これはもう土地改良事業です。土地改良事業をやらなければならない。この費用はだれが負担するのですか。
  125. 佐々木實

    ○佐々木説明員 いま御質問の客土事業でございますが、現行の土地改良法では、農民負担を伴ったような形で行なわれております。ただこういう公害の問題につきましては、公害対策基本法趣旨に沿いまして、補助体系を検討しなければいけないのじゃないかということで、農林省としても現在検討しております。
  126. 島本虎三

    ○島本委員 これは費用はだれが負担するのですかと聞いておるのです。農林省のやつはわかったのです。あなたはいまここへ来て思いつきで言っておるのではないでしょう。きのう、おとといの地方行政委員会で、これはもう地元負担、受益者負担をあなた出したじゃありませんか。――あなたではないか。山口鶴男委員質問に答えて、客土事業の地元負担、これもいたしますと言っておるのです。だから、このせっかくの足尾銅山、百年戦争といわれた渡良瀬川のこの水質汚濁問題とからんだ、これがいまもう土地改良事業、客土事業までいっておる、その費用はだれが負担しておるのだと聞いておるのです。
  127. 佐々木實

    ○佐々木説明員 現在、宮内参事官から先ほどお話がありましたように、水質基準は四十四年の一月から適用することになっておるわけでございます。したがいまして、水が汚染されている間は、客土事業を行ないましても再びよごれますので、水質規制が行なわれたあと客土事業をやればいいのじゃないかということで、検討しておるわけです。
  128. 赤路友藏

    赤路委員長 ちょっと島本君。
  129. 島本虎三

    ○島本委員 大事な質問です。
  130. 赤路友藏

    赤路委員長 大事な質問であることはわかる。しかし約束は約束ですからね。
  131. 島本虎三

    ○島本委員 もう一問だけ……。  大臣、いまのように、水質基準をはっきりさして、きれいになったときに客土事業その他のやつもやらなければならないと言うのですよ。これはこのままじゃ困りますよ。費用の負担、これあたりは、よごしたのは鉱山じゃないですか。ましてこれは、少なくとも鉱業法によって無過失賠償責任がはっきり唱えられているじゃありませんか。これをやる費用の負担まで農民に負担させる、これも水質基準を待ってやると言うのですよ。あなたがもたもたしているからこうなってしまう。農民の負担になるじゃありませんか。これは困りますよ。一体この問題に対しては、私は農民の立場に立って、いまの現行法で――佐藤総理が、実施法については無過失賠償制も取り入れて完全に処置しますと言ってある。しかしもう無過失賠償制をうたってある鉱業法によるところのこの処置さえも、農民に負担させて客土事業をやろうとしている。そしていま聞いたら、水質基準、また澄んで、よくなるのを待ってこれをやりたいと言う。そうしたら、大臣、あなたのほうが全部怠慢ということになってしまう。百年間怠慢ということになってしまう。冗談じゃないですよ。
  132. 八塚陽介

    八塚政府委員 水質保全をはかります場合には、やはり先ほどからお話がありますように、水質保全法だけではいけない、いろいろな手法を通じなければ十全でないわけで、足尾銅山の問題にいたしましても、治山あるいは治水あるいはいまのように土地改良ということで、多面的にやらないと、問題の根が深いだけになかなか解決しないということでございますから、これはそれぞれ関係各省が、それぞれの責任に応じて、たとえば治山であれば林野庁がやっていくというふうに進んでおるわけです。ただ、仕事の段取りとしまして、これくらいという場合に、確かにお話しのように水質規制がかかるということは必要である。その点につきましては、昨年の四月に私どものほうは水質基準をきめたわけであります。(島本委員「まだそれに対して対処できないと言ったばかりでしょう」と呼ぶ)いや、土地改良、客土事業はやる。ただそれの補助のやり方、基準等については、いま農林省のほうで検討しておるということでございます。その意味では確かに若干おくれておりますが、まあ体制は、各省協力してやっておるつもりでございます。
  133. 島本虎三

    ○島本委員 じゃ最後に、大臣がおられる間に確認だけしておきます。  この足尾銅山の廃水、これについてはいまのところ水質保全法とは関係ないのだ、こういうようなことになってしまうと思うのです。しかし関係ないということも、これはどうも言い切れない。ことにこの土地改良、応分の費用負担、これはもう山が負うのは当然過ぎるほど当然なんです。しかし、これはもう――通産政務次官来ておりますから、ここでひとつ……。
  134. 赤路友藏

    赤路委員長 島本君、島本君。
  135. 島本虎三

    ○島本委員 発言中です。
  136. 赤路友藏

    赤路委員長 委員長の発言です。重要なことはよくわかるが、大臣に対しては質問を保留して、またあさって委員会を開きますから、大臣に来ていただいてやる、こういうことで、当局のほうに、厚生大臣がお見えになっていますから、どうぞ……。
  137. 島本虎三

    ○島本委員 じゃ大臣に。それで鉱業法による無過失賠償責任、こういうものもはっきりしておりますし、渡良瀬川の水質基準もきまっているけれども、まだ実施に移されておらないかのようでございます。土地改良ぐらい、百年戦争といわれている現在、これを農民に費用の負担をさせるということはどうも過酷である。もうよごしたのは山ですから、鉱山ですから、鉱業法による無過失賠償責任がはっきりしているのですから、これはまず、しかるべく農民負担を軽減してやるのは当然過ぎるほど当然じゃないか、こういうように思うのですが、通産省政務次官来ておられますけれども、ここで御高見を拝聴したいと思います。
  138. 藤尾正行

    藤尾政府委員 島本先生指摘の問題は、実はこの渡良瀬川は私の選挙区でございます。したがいまして、私といたしましても関心のきわめて深いものがございますし、田中正造先生は私どもの大先輩に当たられるわけでございますが、この問題につきましては、私は私なりに勉強いたしておるつもりでございます。御案内のとおり、足尾の銅山といいまするものは、これは江戸時代から掘っております。したがいまして、その鉱害問題が発生をいたしたのはもっとずっと以前からでございまして、その沿岸の諸地域の農作成績といいまするものはきわめて悪い。これが足尾の鉱害によるものであるということで、明治年間に田中先生が立ち上がられまして、そうしてそれが責任追及を、当時の明治政府を相手取って、長い時間をかけられまして闘争せられたわけでございます。問題は一応片はついたのでございますけれども、しかしながら問題がこれで片づいたわけでございません。当時の官憲の裁量といいまするものは、鉱山側にきわめて有利であった、こういうことで、この問題は引き続き問題を潜在いたしたまま続いておったわけでございます。ときたまたま昭和三十三年に、鉱業法がきめられました以降の問題といたしまして、足尾の銅山にかけられました鉱滓の堰堤といいまするものが大水によって切れまして、そのために鉱滓が一気に渡良瀬川に流れ出しまして、この問題によりまする鉱害という問題が起こった事実がございます。この際におきましても、この際はもうすでに鉱業法に指摘をいたしております無過失賠償責任といいまするものが当然発生をいたしておりますし、それ以前に、これはもう完全な過失でございますから、ひとえにこれは鉱山側の落ち度であるということで、鉱山側が住民に見舞い金を出しまして、そこで一応はお手打ちになったわけでございます。しかしながら事態はそれで決して解決をいたしたわけではございませんので、依然といたしまして、足尾の銅山をめぐって流れます渡良瀬川に銅の微粒子といいまするものが含まれております。そのために、今日におきましても、沿岸の群馬県及び栃木県の流域におきまする農作物の収穫高と申しますか、たとえば米なら米で換算をいたしますると、大体二俵から三俵、ほかの地域に比べて少ないという事実がございます。したがいまして、沿岸の農民の皆さま方におかれましては、こういった問題についてなお十二分の考慮を払ってほしいという御要望がまだ強くあるということでございます。ここで法律的な問題とそれから道義的な問題と、私は峻然と区別をして考えてみなければならないと思うのでございまするけれども法律的な問題からいたしますると、そういった経過をたどっておりまするので、これは鉱業法に規定をいたしておりまする無過失賠償責任といいまするものが制定をせられる以前から、そういった問題がずっとある。そういった微粒金属でございまする銅の流出というものが至るところになされておった。しかも足尾の鉱業所から出されまする排煙といいまするもの、そういったものによりまする汚濁といいまするものが十二分に行なわれておった。したがいまして、鉱業法が制定をせられました昭和十六年でございますか、それ以降のものについての責任は、法的には一切鉱業側がとらなければならない、こういうことになるわけでございますけれども、農作物に対しまする土壌の汚染といいまするものは、昭和十六年以降に行なわれたものであると認定するわけにはまいらないのでございまして、それ以前からの銅の微粒子の流出、これが排煙によるものであろうと、あるいは河川流出によるものであろうと、そういったものの蓄積が長い期間にわたって行なわれておったわけでございます。したがいまして、その無過失責任といいまするものをどの時点から考えていくかというような問題が、法的な問題としては存在をいたすと思います。しかしながら、こういった問題につきまして、これは対馬におきまするカドミウム問題も似たような問題があるわけでございますけれども、そういった法的な問題は離れまして、こういった、ただいま問題とされました客土の問題でありますとかなんとかというような、新しいこれに対しまする措置というものにつきましては、これは国、県あるいは鉱業所、地元といいまするものが当然相寄り相集まりまして、そうしてこれに対する措置をきめていかなければならないという問題としていまだに残っておりますし、当然これを進めるべきである、かように私は考えております。
  139. 島本虎三

    ○島本委員 当然進めるべきであります。農林省では受益者負担の名において、農民にまで、金を出せ、それでなければ客土をやらない、こういうようなことを言っているから問題になるのです。(藤尾政府委員「そういうようなことはいたさせません」と呼ぶ)そのことばを聞いて満足であります。  それと同時に、同じ無過失賠償責任を採用しているのに、原子力損害賠償制度、これもあるわけでありますけれども、この場合には特に原子力事業者に対する責任の集中が行なわれている、こういうようなことでございまして、現在原子力のこの問題に対しては、行政的にその対処のしかたは、私どもはわりあいによくやっているように聞かされておるのであります。しかしこれは、もしものことがあってはたいへんなような要素を持っておる放射性降下物に対する暫定対策、こういうようなものはきちっとしておかなければならないはずなんです。無過失賠償制度をとっている原子力のこの放射性降下物に対する暫定対策は完全に行なわれておりますかどうか、どのようにして照会や調査をしておられるのか、この点についてはっきり御答弁を願いたいと思います。梅澤原子力局長に願います。
  140. 梅澤邦臣

    ○梅澤政府委員 ただいま先生のおっしゃいましたのは、一つ大気フォールアウトの場合でございますが、この関係につきましては、対策本部を三十六年に設けまして、ことに爆発実験を各国で、ことに中共でございますが、やる場合の体制としては完備しております。したがいまして、その点におきましては十分一般国民に対して安全性を保つという形がとられております。それから、そのほかの安全性の問題でございますが、加工事業その他につきましては、すべて規制法でこれらの安全審査をやりますので、その点においては十分な体制がとれている、こう思っております。
  141. 島本虎三

    ○島本委員 これはいま参考に聞いてみたのであります。これは人体にも重大な影響をもたらすものですから、この安全性だけは確保しておいて、そしてこの運用に当たっていただきたい。この対策はきちんといつまでも組んでおいてもらいたい、このことをこの場所から特にお願いしておきたいのです。  いままでいろいろ聞きましたように、これは阿賀野川の有機水銀の問題、それによって死者も生じさせておるような状態の中の水質についても、また足尾銅山の廃水、百年戦争だといわれるその中でも、いま出されているこの法律案によっては万全を期し得ない、これがほぼわかったわけです。そうなりますと、この対策こそはきちんと組まなければならないとすると、この水と同様に特定有害物の環境汚染に対する規制を明確にしていかなければならない、こういうようなことに相なってくるわけであります。  厚生大臣にこの際はっきり聞いておきますが、水質関係法律と同時に、特定有害物質による生活環境汚染防止に関する法律案、この策定も同時に進められておったはずでありますが、このようにして片や水質関係のやつができても、いまのような重大な問題は全部骨抜きになってしまっておる。その骨抜きになった点をあえて入れようとすると、特定有害物質による生活環境汚染防止に関する法律案を出さなければならないということになってくる。それはどこだというと、厚生省だということになる。一体厚生省は、せっかくあなたが窓口で――公害のほうは私のほうが窓口ですと、前にも胸を張って言ったのは園田厚生大臣だったのです。そういうたてまえからして、この水に関しては、おそらくはいままでの討論を大臣はよく知らなかったかもしれませんけれども、いままでいろいろやってきたのでありますけれども、この公共用水域水質保全に関する法律案だけでは、これは公害規制はできない。はっきりした。足尾銅山の問題でもはっきりしておる。阿賀野川の問題でもやれない。それだったら、ここに特定有害物質による生活環境汚染を防止するための法律を急がなければ、これは有名無実になってしまうし、画龍点睛を欠くものになってしまう、公害行政が片ちんばなことになってしまう、こういうようなことにはっきりなるじゃありませんか。これはそういうようになってまいりますけれども、やはり厚生大臣と同時に、この問題に対しては、多分に通産省のほうの見解もこの中に入ってまいることになります。対策を十分講じて、水と空気だけでもこの公害のないように、特別な対策を早く確立さしてあげなければならない、こういうように思っておるのですが、この問題等についてはいかがでございます。
  142. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 いまおっしゃいますように、水質汚濁防止それだけでなく、問題になっておりまする重金属等を含めた特定有害物の人体に及ぼす影響という見地から特別な立法が必要であろう、かように考えておるわけでありまして、水質汚濁防止法の運用だけではどうしてもいかぬ。いまおっしゃいますように、非常に困難であると私ども考えておりますから、特別な法案を、大気汚染防止法と同じような考え方検討いたしてみたいというので、ただいま検討中でございます。
  143. 島本虎三

    ○島本委員 検討中である、こういうようなことを聞いて、これ以上申すことはできませんけれども検討中であるならば急いでこれを提出するようにしてもらいたい。ことに安中の要観察地域、こういうようなものさえもありますし、各方面で人々はこのために苦労されておるようです。責任ある行政法律、こういうようなものをわれわれがやらなければだれもやらないのですから、その窓口は大臣なんですから、カドミウムの調査なんかで、汚染されているのは事実だ、安全量だけはまだ不明だ、危険はないのだ、こういうように言いながら、要観察地域だと言われるのは、だれもわからぬ。それだったら、被害の進行を観察するいわば人体実験だと言われてもしようがない。要観察地域だったら、まさに被害の進行を観察するための人体実験をやっているのと同じです。こういうようなことは許さるべき問題じゃないと思いますから、これは急いで法律案を出すようにしなければならないし、水銀なんかでよごれた魚、こういうようなものでも、とらなければ生活できない人もいるのです。しかし、とるなという法律さえないじゃありませんか。完全な対策というようなものをつくらぬといけない。ここでやはり重要なのは、法律をわれわれとしてここではっきりつくっておいてもしりが抜けるおそれがあるのに、その肝心な法律さえもない。これはやはり為政者としても、われわれを含めて、十分その責任を自覚しなければならない問題が、いまの水質関係審議を通じて明らかになってきた、こう言わざるを得ないと思います。  これは厚生省ですけれども、特定有害物質の規制、この問題については可及的すみやかに――こういうようなことはいままで何回も聞いたことばです。私のノートにも、これは何回も書いています。しかしながら、これはいわゆる公共用水域水質保全に関する法律だけでは取り締まれないような水、どろ、生物、地下水、井戸それから植物、貝類を含む、こういうようなものを調べるのは厚生省でないとやれない、したがって今後はこの法律をつくるには全力をあげて、大臣はもうしっかりしてもらわないとだめなんです。あなたは最後に、この法律をつくったときに笑ってもいいと思う。その前に笑うのは早過ぎる。特定有害物質の規制、この問題については、今国会中に出すという確約を取りつけておいていただきたいと思いますが、大臣の決意を伺いたい。
  144. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 ただいま精力的に関係各省とも検討中でございます。なるべくそういたしたいと思いますが、五月二十五日までの期限ということになると、なかなか、それまでに必ず出しますと良心的に言い切れないものもございますので、精心的に早急に出すということで、ひとつ御了承いただきたいと思います。
  145. 島本虎三

    ○島本委員 今国会にはできるだけ早く出す努力をする、もしも今国会に間に合わなくても、来国会には出さなければ、進んであなたは辞職する、これくらいの決意を持ってほしい。衆議院解散があっても参議院はないのだから、これをはっきりいまこの場で決意を承って、次へ移りたいと思います。
  146. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 来国会には、責任を持ちまして、こういうわけで出す必要がなくなったらなくなった、あるいはそうでなければ必ず出すということで、御了承をいただきたいと思います。
  147. 島本虎三

    ○島本委員 出すということですから、それで容赦しておきたいと思いますが、これも厚生省の資料によりますと、特定有害物質等によるおもな事故事例ということがずっとあるわけです。二酸化セレン、硫化水素、弗化水素、塩素、ホスゲン、硫酸、三塩化燐、それから臭素、こういうようなのが全部日にちまで付して、これによる被害が載っておりますよ。こういうのを含めて重要なんです。あに水質のみならんやです。これはひとつ公害を完全に排除するという立場から、これだけは強力に実施してもらいたいことを私は要請しておきたいと思います。  それとあわせて、私はかねがね通産政務次官を尊敬しているのです。自動車の排気ガス等の問題についても、進んで自分の感じたことをある程度進めることを意欲的に行なった、この点は私は尊敬しております。しかし私がいま申しました特定有害物質に関する規制法律案を出すにしても、障害になるのは通産省だ。幸いに通産政務次官もここにおられますから、十分お聞き届けの上で、ひとつこの問題に対しては敢然と善処し、来国会までに出すようにしてもらいたい。特に両省の緊密なる連絡を心から要望しておきたいと思いますが、政務次官よろしゅうございますね。
  148. 藤尾正行

    藤尾政府委員 よろしゅうございます。
  149. 島本虎三

    ○島本委員 次に、水質関係にまたちょっと戻りますが、一条の目的を先ほどちょっと念を入れてやったのは、網走川の水質基準で、答申済みだけれども告示はできないというような情勢、もしやるとすると、一条の目的がああだったからできない理由があるのです、両方とも企業ですから。この企業の中をとって、両方ともおかしいものになってしまうからできない。だからこれはやはり北海道の水産試験場と衛生研究所の水質試験の結果の食い違いだけでもない。第一条によるところの考え方産業相互間の協和、これだけをやっていくから両方とも調和がつかぬのだ、両方とも産業だから。この網走川の水質基準は国際的な問題になる可能性がある問題ですが、これはその後どういうふうなことになっておりますか。当然これは分析はしていないと思いますが、その後調査を進めておりますか。
  150. 宮内宏

    ○宮内説明員 この前も先生から御質問がありまして、道のほうと連絡をとってやっております。したがいまして、まだ調整がつきませんので、まだ告示に至っておりません。
  151. 島本虎三

    ○島本委員 これはどういうふうにするつもりですか。
  152. 宮内宏

    ○宮内説明員 とにかく水産関係と衛生研究所の数字が違うということで、まだ道の中で照合しておるという段階でございます。したがいまして、十分両方の意見を聞きまして、善処していきたいというふうに考えます。
  153. 島本虎三

    ○島本委員 これは同じ北海道の機関、片や水産試験場、片や衛生研究所、この間でこういうふうにデータが違ってしまってどうにもならなくなる、このことは悲しいかな、私は事実だと思います。しかしこの中にも、やはり水質関係のこの法律の持っている一つの宿命もあるような気がして、これを脱却しなければだめだから、その先兵として、この解決のために努力してみてください。これは私は期待しております。  それと同時に、厚生大臣、熊本の水俣病ですが、いろいろな紛争がございましたけれども、会社側も大臣に全面的にお願いしてあるようですし、この紛争処理委員会というようなものも二月中につくって人選するということにもなっておりましたし、それに対しては補償の金額、補償基準というようなものも、ひとつおまかせするというようなところまでいっているようであります。聞くところによると、患者の中には、仲裁ではだめだとか調停でなければいけないとか、いろいろもんちゃくがあって手がつけられない、こういうようなことのようであります。これはやはり一たん政府として断言した以上、誠意をもってこれに当たらなければならない、これが私の考えです。これは二月中に人選すると言ったならば、仲裁にして拘束力を持たれると、過去の例からして、どんなことをやられるかわからないという危惧があって、それに従うに逡巡する。まかせなさいという決意を表明したら、あらゆる点を尽くしてなすべきだ、こういうふうに思っているのです。それがもう不一致だから何もしないよということは、これは詭弁に属することである、私はそういうふうに思う。この水俣病の問題一つさえも、厚生省のほうで、この問題について全権を一任されているのに、手を染められないということはやはり私は恥ずかしいと思う。これはいまどういうふうになっておりますか、経過並びに今後の決意を承っておきたいと思います。
  154. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 患者同盟の方から、二月の初めでありましたろうか、一任をいたしますからというお話であったわけでございますが、その後、どうも必ずしも患者の方々がそれに賛意を表されないというような状況が実現されまして、そういうことであれば、第三者の調停機関を設けましても、事実上不可能になりますので、少なくとも過半の方に同意をしてもらえるという状況でなければというので、そういったことで、いろいろ話し合っておりました。数日前に御上京になりまして、過半数そういう意向になったからということでございますので、それならばというので、いま人選を急いでいるところでございます。必ずその線に沿ってやってまいりたい、かように思います。
  155. 島本虎三

    ○島本委員 心からこの成功を期待しております。それとあわせて、この問題等につきましては、おそらくは紛争処理法が通過して、これに準拠してこの解決をはかるのだ、こういうような意図では断じてない、私はそう思っておりますが、もし、そういうようなためにこれを引き延ばしているとすれば、これはもう完全に裏切り行為です。こういうようなことはいけないと思います。それとは関係なしに、早くこの問題の解決に誠意をもって当たっていただきたい、このことを心から要請しておきたいと思います。  またカドミウムによる河川の汚濁、またそれのおそれのあるような川は全国でいま何河川くらいありますか。
  156. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 河川そのものの状況はわかりませんけれども、鉱山としては約五十五鉱山ある、こういうように聞いております。
  157. 島本虎三

    ○島本委員 この五十五鉱山については、もうすでに富山県の神通川、こういうようないろいろな例もあることでありますから、これはやはり完全な手を打って、指導しておくべきである、こういうように私は思います。これに対して、通産省はカドミウムの汚染問題についてどのように指導されておりますか。鉱山関係です。
  158. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 ただいま厚生省のほうからお話がありましたように、カドミウムを産出している鉱山というのは全国で五十五鉱山あるわけでございまして、たしか昨年の五月だと思いましたけれども、神通川問題に関連いたしまして、イタイイタイ病についてはカドミウムが主たる原因であるという厚生省の見解が出た。それに伴いまして直ちに、この五十五鉱山につきましては、鉱山保安法に基づきまして、必要な指示をいたしまして、利水地点において〇・〇一PPMをこえないように、必要な排水処理施設をするように指示しておるわけでございます。そういうわけでございまして、とりあえずの措置といたしましては、そういう鉱山保安法に基づく措置をやっておるわけでございますが、現在、厚生省においても、さらにいろいろな研究をやっておりますので、その結果に基づきまして、さらに水質保全法に基づく措置も、あるいは考えなければならぬと思っております。
  159. 島本虎三

    ○島本委員 これはやはり通産省では、そういうような点すぐつかめるのですから、その点は完全に指導すべきである。した例もあるじゃありませんか。私は、自分の選挙区の中の定山渓の元山にある日鉱豊羽鉱業所、ここでは、もうすでに総額八億円を投じて、監督官庁の努力を高く評価と、こういうようにもうすでにやっている、こういうようなことを聞いている。北海道です。そうかと思うと、同じ汽車に乗って帰ってくると、東北では、これは鶯沢町議会で、やはりカドミウム汚染問題でもめているのです。どうも、片やよくて、片やこういうようなのが新聞にも出るというのは、指導の一貫性を欠いているのじゃないか。むしろこの公害はいま重要な問題ですから、この問題では通産省も、片やできて、片やできないなんということはないのですから、全国のこの山、幾つですか、いまあるというのは。(「五十五」と呼ぶ者あり)五十五ですか。この五十五の山、全体を再点検して、そして出す場合、排水溝、それから除濁池ですか、こういうようなものに対しても完全に措置させるように、これは指導すべきだと思います。おそらく金がなくてやれない、こういうような山は、この場合にはなかろうと思うのです。なければないで、また公害防止事業団もあることであります。そのほかの金融機関もあることですから、特に人畜に被害を与えるような、こういうような問題については、完全にその根源を絶つように通産省が指導すべきだ、私はそう思います。どうもこの点、通産省の指導は、立地公害部長責任じゃないかもしれませんが、少しとろいような気がするのですが、とろくないのですか。
  160. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 先生指摘のとおり五十五鉱山くらいですから、これは総点検をやるべきである。実はその総点検を全部やったわけでございます。その総点検の結果では、鉱山保安局長がきょう来ていないので、私正確な数字は申し上げられませんが、二、三やはり問題があったわけでございまして、通産省の指示する基準どおりにやらないものが二、三あったそうでございます。そういう意味におきまして、先生指摘の鶯沢などもあるいはその一つかと思いますが、それは経過的な問題でございまして、その後問題点があったところについてはさらに強く所要の措置を講ずるように指示しておりますから、総点検の結果と、その後の強力なる指導の結果、現在においては、私は問題ないと確信いたしております。
  161. 島本虎三

    ○島本委員 今後の水質関係、この基準設定を含めて、運営の面では公共用水域水質保全に関する法律、この全きを期していただきたいこととあわせて、これでは規制できない特殊有毒物質、こういうようなものについては、厚生省、通産省で鋭意努力して、今国会中でも必ず出すというようなことだけはしてもらいたいことを心からお願い申し上げておきたいと思います。  あわせて、カドミウムの点は、五十五についての総点検が終わったそうであります。せっかく何でもないようなことでありますから、今後これが住民に害を与えたとか、またはその煙――桑の葉並びに野菜、そういうようなものの果てにまでも影響がないように、完全な指導をして、公害発生阻止規制に対しては万全の措置をとってもらいたい、このことだけは心からお願いを申し上げまして、私の質問はこれで終わります。
  162. 赤路友藏

    赤路委員長 速記をとめて。   〔速記中止〕
  163. 赤路友藏

    赤路委員長 速記を始めて。  折小野君。
  164. 折小野良一

    ○折小野委員 一昨年公害対策基本法が成立をいたしまして以来、とりあえずの措置として最も期待されておりました実体法の一つといたしまして、救済に関する特別措置法というものがあったわけであります。今回その法案が提案されました。しかし、私ども、この法案を読ましていただきますと、せっかくのこの法案でございますが、これで救済しようというものが非常に制限をされておる、こういうことでございます。先ほど来の質問にも、そういう面がいろいろ述べられておりますけれども、この目的である第一条におきまして、まず大気汚染と、それから水質汚濁と、この二つだけに限定をされ、それから公害被害につきましても、いろいろな被害があるのでございますが、健康被害だけに限定をされる、しかもまた相当範囲の、著しい公害、それからさらに、それによる疾病が多発した場合、こういうような制限がございますし、さらに読んでまいりますと、二条以下におきまして、地域を指定して、その地域に限るとか、あるいは疾病を特定の疾病に限るとか、あるいは今度は公害病の認定に際しましても、また居住の要件その他のいろいろな条件をつけるとか、こういうようなことで非常に多くの制限が付されておるわけでございます。私どもはこういう面にはたいへん不満でございまして、こういった制限が少しでもなくなるように、広がるように心から期待をし、またそうでなければほんとうの救済というものができない、こういうふうに考えるわけでございます。その制限に関連をして、二、三まず御質問を申し上げたいと思います。  この法案の第一条におきまして、大気汚染水質汚濁、この二つだけを取り上げられた。そのほかに公害対策基本法の第二条におきまして騒音、振動、地盤沈下、悪臭、こういうものがあるのでございますが、この二つ以外のものにつきましては、今回の救済の対象になっていないのであります。こういうふうに一部の公害を除かれた。これはいわば経済の健全なる発展との調和、こういう面を特に考慮されてこれを除かれたのではなかろうか、こういうふうに私ども考えざるを得ないのであります。特に公害対策基本法の制定の当時におきまして、この問題が非常に大きな問題になった。特にその当時の問題の焦点になったということにつきましては、先ほど来いろいろお話があるわけでございますが、くしくもこれに関連をいたします四つの公害に関する被害については、これが除外されたということでございます。こういう点からいたしまして、私どもは、いまの政府においては、経済の発展との調和ということに非常に重きを置いて考えておられる、こういうふうに受け取らざるを得ないわけでございますが、その辺の真意を大臣からお聞かせいただきたいと存じます。
  165. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 この法案を立案いたしました基本的な考え方は、企業、産業との調和をはかるという考えは毛頭ございません。さしあたって公害による健康被害というものに対して、非常に困っておられる人が多いわけでございまして、これらを公害源の発生者に補償させるということを待っておるわけにはまいらない。また、それがきわめて困難であるという状況でございますので、健康被害に対して、ひとつ救済の道を早くつけようということでいたしたわけでございまして、健康に全然無関係とは申せませんが、先ほどあげられましたあるいは騒音あるいは地盤の沈下、あるいは悪臭、これも健康には何らかの被害があるわけでありますけれども、そのために特別の疾病で困るという状況の具現がございませんし、ただいまのところそういうことも考えられないために、これは除外するということにいたしたわけでございまして、本来ならそういうことを除外しなくても、多数一定地域において発生公害病として認定したものというのであるいはよかったのかもしれませんけれども、他にはあまり考えられないじゃないかということで、大気汚染水質汚濁というものに限ったわけでございまして、決してこれは他意あるわけではございません。われわれの検討といたしましては、水俣あるいは神通川や阿賀野川の重金属の汚染による人体被害で悩んでいる人、大気汚染としては四日市の公害というような点を念頭に置きまして、その患者の方々の救済を至急にやりたい、これを念頭に置いているわけでございますから、これに類似のような被害は、全部この法案で処理ができる、また処理をいたしたい、かように考えているわけでございます。
  166. 折小野良一

    ○折小野委員 厚生省の立場とされまして、特に健康に重点を置かれるということは私どもよくわかる。そうして大気汚染水質汚濁以外のいわゆる公害におきまして、いわゆる疾病に関係のあるような健康上の被害という面からは程度がそれほど大きくない、こういう普通の状態も私どもわかる。しかしこれらの公害は、広い意味の健康と申しますか、あるいは健康的な生活と申しますか、そういう面には非常に大きな影響があると私ども考えるわけであります。たとえば騒音、振動といった場合に、特に人の神経に非常に大きな影響がある。その結果とうていそこに住めない、こういうような状態が出てまいるわけでございます。また悪臭にいたしましても、悪臭そのものは、場合によって鼻がつん曲がるような悪臭というような表現もありますが、悪臭そのものが人の健康にそれほど大きな疾病的な影響を与えるということではなさそうに一応考えます。しかしそういうふうなひどい悪臭のところにはとうてい住めない、いま直ちにでも移転しなければとうてい耐えられない、こういうような状態もございましょう。また地盤沈下の場合は少し状態が違うかと思いますが、たとえば家が傾いてしまってとうていそこに住めないとか、あるいは地盤沈下のために井戸水がなくなって、普通の生活をするのにも非常に支障を来たして、直ちにでも何らかの措置をし、あるいはそこにはとうてい住めない、こういうような状態が出てくることは当然予想される。これはもちろん健康被害と直接言えないかもしれませんが、しかし一定の公害による被害であるということは間違いありませんし、その救済も場合によっては緊急を要する事態というのは当然考えられるわけであります。したがって、これらの問題につきましても何らかの措置が望ましい。たとえば緊急を要する場合におきまして、関係地方公共団体等が適切な救済措置のための行政措置を講ずることができる、こういうような何らかの対策がほしかったというふうに考えるのでございますが、こういう面について御検討になりましたか。あるいは将来こういう面についての御検討がなされる御予定でございますかどうか、お伺いいたします。
  167. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 おっしゃいますように、悪臭にいたしましても、振動にいたしましても、あるいは騒音にいたしましても、これは健康に何らかの被害のあることは私は当然だと思います。疾病という程度でなくても、あるいは医学が進歩してくれば、公害的な疾病というものにもなるかもわかりませんけれども、ただいまのところはそこまでなりませんが、健康上やはり相当な被害を与えておることは、私は明瞭だ、かように思います。したがいまして、あるいは騒音防止法、あるいは悪臭についてはまだ法律をつくっておりませんけれども、そういうものを設けて、そして健康を保持し、快適な生活環境を維持できるように、それはそれでやってまいる所存でございまするし、また現にやっているわけでございます。  いまおっしゃいます特殊の状態で、とうていそこに住めない、移転しなければならないというような場合も、これは起こり得るだろうと私は思いますが、これは健康被害というのでなしに、環境被害といいますか、そういう場合に一定の基準法律で設けて、そういう場合にはこうするということを一々書くわけには、なかなかこれはまいらないと私は思いまするし、しかもそういう場合には多くは公害源が一定されておりまして、大気汚染なんかとも違い、公害源を与えている企業との間の話もできやすい点もあろうと思います。したがって、そういうようなトラブルは、これは別の公害紛争処理として、紛争処理法案によって設けられまする処理委員会で早急に解決をして、適切な結果を出してもらう、そちらのほうへお願いをする、こういうように考えている次第でございます。
  168. 折小野良一

    ○折小野委員 トラブル処理としての処理方法というものもあろうと思っております。これにつきましては、あとで紛争処理の法案について御説明申し上げたいと思うのでありますが、実はトラブルとして取り上げました場合におきましては、現実の問題として、非常に時間がかかることが多いわけであります。こういうような場合におきましても、何らかとりあえず緊急な行政措置が必要である、こういうふうなことも考えられるわけでございます。私どもはそういう緊急措置を要する場合の何らかの行政措置、この法案で健康の被害に対して治療その他の行政措置をいろいろやろうとしておられると同じような何らかの措置というものがやはりなされなければ、トラブルが解決したあとで措置されても、当面の解決にならない、こういう事態が非常に多いのではなかろうか、こういう懸念をいたすわけでございます。  そこでさらに健康被害でございますが、とりあえず健康被害を取り上げられました点については、私ども一応了解いたします。しかしこれとあわせて、いわば経済的な被害と申しますか、そういうのが起こってまいる場合が非常に多い。たとえば水俣病の場合等におきまして、健康に対する対策、疾病に対する対策は当然直ちにやらなければならぬ。しかしその関係者が、魚が売れなくなったというようなことで、生活上、経済上非常に大きな被害を受ける、こういうようなことによりまして、結局生活上の困窮、場合によっては自殺に追いやるというような極端な例も、今日までの例からいってないではないわけであります。公害そのものが直接人の健康に影響しなくても、それがその人の生活にきわめて大きな、しかも直接的な影響を及ぼしたがために、結局場合によっては生活は破綻し、あるいは自殺に追い込む。こういうような例等から考えましても、この経済的な被害というものを全然無視していいということはないと、私ども考えるわけでございます。特に公害が農業あるいは漁業とか、こういう面に影響を及ぼします場合においては、しかも公害の常として、これに対する紛争があったといたしましても、その解決に長い時間を要する。その間に生活上何ともやっていけないというような事態が生じてくるわけでございまして、こういうようなものにつきましても、やはり健康被害と同じような何らかの救済措置が行なわれていいのではなかろうか。またそういう救済措置が行なわれなければ、その被害者が非常に苦しい状況に追い込まれる。こういうような事態から考えまして、今度のこの法案にはないのでございますが、将来こういう面についてさらに御検討になるお気持ちがあるのかどうか。また厚生省といたしまして、そういう面の被害についてはどういうふうにお考えになっておるのか、御見解をお聞きしたいと思います。
  169. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 疾病あるいは健康を害したということに基づく経済的な被害、ごもっともに思うわけでございますが、これも先ほど申し上げますように、人それぞれによって非常に違うわけであります。一定の基準を設けるということもなかなかできない。個々の人について算定をしていく以外に道がない。正確に申し上げれば、企業とそれから被害を受けた人との間におけるいわゆる損害賠償という形になっていくと思うのであります。ところがこれはなかなか日数がかかる、その間どうするかという問題でありますが、一つには紛争処理で民事訴訟では非常に長くかかるというものを、できるだけ短日月の間に当該関係者の間を取り持ってきめるというために、紛争処理法案を出しておるのでありますが、それまでの間という問題もございます。お聞き及びの水俣病の患者の方々も、紛争処理法ができるまでは待てないからということでございますので、事実上第三者の調停機関のような処理機関を設けましょうというので、ただいま人選に取りかかっているという状態でございます。そういったことからも、できるだけ早く処理をいたしたいと思うわけでありますが、法律上どうということは、先ほど申し上げましたように非常に困難でございます。その間に生活上一日も困るというお方もできてくると思います。これらは御承知の生活保護法、何といいますか、いかにも生活保護の限度ではという何もございましょうが、それで一応生活の道は立てていただけるということで、生活保護に関する社会保障関係法律を満度に適用いたしまして、そして生活をされるだけにはこと欠かないようにという配慮は、現行法でいたしているわけであります。それで足らない部分を、いま医療の救済として、この法案でお願いをしよう、こういうことでございます。
  170. 折小野良一

    ○折小野委員 健康被害以外の経済的ないろいろな被害等におきまして、最悪の場合は生活保護法で見ていくという手は、確かに大臣のおっしゃるとおりに、それはあるだろうと思います。しかしながら、公害に対する救済という面から見ました場合におきましては、これはいわゆる社会福祉という考え方でやっていくのがはたして至当であるかどうかということに、いろいろな問題があると思うのであります。たとえ経済的に困っておろうとおるまいと、その人はいわれなき加害によって受けたいわゆる被害者であり、被害の状態を救済する、こういうことがやはり基本でなければならない、こういうふうに考えます。そういたしますと、生活保護法があるからいいじゃないかというわけには、やはり現実の問題といたしましても、なかなかそういうわけにまいらない、こういうものがあるのじゃなかろうかと考えます。したがって、私どもはそういう面につきましては、やはりこれは公害対策という立場におきまして、もっと考えていかなければならない。したがっていろいろな制限がこの法案ではございますけれども、この制限をだんだんなくしていって、そして必要な面につきましては、その範囲をだんだん広げていく、こういうのがやはり本来の方向じゃなかろうかというふうに考えております。私どもは、今度のこの法案の提案は確かに一歩前進であるというふうに考えております。しかし公害対策という面からいきますと、もっともっと前進すべきでありましょうし、一歩前進がさらに二歩前進、三歩前進になっていくことを心から願うわけであります。そういう面からいきまして、将来この法案、あるいはこの法案以外に広く救済に関する法案におきまして、その救済の範囲を広げていく、こういうようなお考えは、厚生省当局としておありでございますかどうか、お伺いしたいと思います。
  171. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 御意見ごもっともに存じます。社会福祉の面からと申し上げましたのは、社会福祉的な行政措置、こういう考えに御理解を願いたいと存じます。と申しますことは、これは企業の責任、損害賠償の責任を、この法律によってかわってまずやるという考え方ではないという意味で申し上げているのでございます。企業の当然やるべき損害賠償を、それがきまるまでかわって先にやる、こういう考え方でなしに、行政的な措置として、国、地方公共団体あるいは企業者と一緒になって、行政的な一応の措置をやろう、こういう考え方であるということを、まず最初に御理解をお願いいたしたいと存じます。  そこで、健康被害に対してこれだけでいいかどうか、将来はどうかというお尋ねでございますが、企業が最終的に負うべき責任がはっきりしている、近く企業的には損害賠償あるいは紛争処理で片づくであろうというものにつきましては――私は水質汚濁に基づくものは大体そうだと思うのであります、神通川、阿賀野川あるいは水俣病の問題は。ところが大気汚染ということになりますると、これは公害発生源に一々損害賠償を持っていくというわけにはなかなかまいらない。一つの大きな大気汚染発生するところで起こっているという場合には可能であるかもしれませんが、大部分は都市公害である。また大部分は多数の工場あるいはホテル、大きな建物からの公害ということでございますから、究極するところ、ほとんど多くは、その民事的な損害賠償責任というものはそれは不可能である、そしてまた紛争処理といってもなかなか片づきにくいであろう、かように考えます。したがいまして、そういう面の救済につきまして、このたびのものはさしあたってのとにかく第一歩でございますが、今後一般的な情勢もながめて、必要があれば、拡大をしていく必要もあろうか、かように将来の点は考えているのでありますが、まずさしあたって、とにかくいままでこういうものをどうするかというので宙に迷うていた問題を、こういう見地からひとつ取り上げようというので、第一歩を踏み出したわけでございますので、その点を御了承をいただきたいと存じます。
  172. 折小野良一

    ○折小野委員 救済に関して第一歩を踏み出した、その立場はよくわかるのでありますが、しかし大臣のいまのお話をお伺いいたしておりますと、私ども基本的に非常に大きな疑問にぶつかるのであります。今度のこの法案が損害賠償の責任の肩がわりじゃないのだというお考え、特に大気汚染等におきましては、損害賠償等が結局不可能であろうと思われる分野が非常に広い、そういうようなことをお考えになった上で、健康被害を何とか措置しようということでございますが、私どもの理解は、むしろ公害による被害というものは、その公害の特質から、特に現段階におけるその公害の特質からいたしまして、原因の究明に時間がかかる、あるいは因果関係の立証に非常に時間がかかる、あるいは発生原因者を特定する、こういうことになかなか困難がある。したがってそこにはこれを明らかにするための相当時間的な経過というものが現段階において必要である。しかしその間において被害はますます大きくなっていく。それではいけないのじゃないか。したがって、その被害が大きくならないように、ひどくならないように、できるだけ初期の段階においてこれを措置して、そうして原因の究明とか因果関係の立証とか、そういうものは事実上おそくなってもこれはやむを得ないが、とりあえず最も被害者にとって大切な面だけは、直ちに応急的な措置でもとにかくやろう、こういうところに重点があるのじゃないかと私ども考えてまいっておるわけであります。特に水俣病等につきましては、これは原因者がはっきりしているのだから、原因者がやればいい、こういうようなお考えのようでございますが、しかし水俣病が発生いたしましてから公害病というふうに認定されるまでたしか十五、六年の年月を経過いたしておるわけでありますが、今日、いまなお最終的な紛争の解決もできていない。その間には四十二名の人がなくなり、百名以上の患者があの病苦に呻吟をする、こういうような状態になっておる。したがって、もしこれらの被害者に対する措置が早急に行なわれましたならば、死亡者がもっと少なくて済んだのじゃなかろうか、あるいは患者ももっと少なくて済んだのじゃなかろうか。やはりそういうことをやっていくことが、公害防除の当面の対策として必要なことじゃないか、それが救済の本旨ではなかろうか。大気汚染というようなものではなかなかその加害者というのがはっきりしないからやっておくというのでなしに、とにかく公害の病気というのは非常に悲惨な結果が多い。だから、とりあえずできるだけの措置を講じて、その面の被害を少なくしよう、そういうところにいま私どもは重点があるのじゃないかと思うのであります。たとえばイタイイタイ病なんかにいたしましても、これが学会で発表されてからすでに十何年たっておりますが、聞くところによりますと、その病気の発生というのはもうすでに数十年も前からあったというふうにいわれておる。ですから、できるだけ早い機会にそれに対する対策が講じられておりますならば、ああいう悲惨な患者というものは発生しなかったでありましょうし、そういうような点をとりあえずやっていく、とりあえずの救済をやっていく、こういうことのために特に健康被害に対する救済特別措置法が必要である、そこにこそ重点があるというふうに私ども考えるのですが、そういう点についての大臣考え方が少し違っているような気がいたしますので、お考えを承りたいと思います。
  173. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 その点は、考えは全く同じでございます。決して違っておりませんので、政府といたしましても、やはり公害源をなくするということが第一、また初めから公害源のないようなそういうやり方をするというのがもう先決でございまして、私はこの健康被害の特別措置の法律にいたしましても、あるいは公害紛争の処理法案にたいしましても、あんなものがかつてあったんだなというような歴史的な産物になって、これの適用を受けるようなものがないという状態を一日も早く出現させることが必要だ、かように考えております。  水俣病にいたしましても、当初は地方病であろうか何であろうかとわからなかったのが、だんだんとこれは公害だということがわかってまいり、それがいよいよこれだということを確定をしたのがごく最近であって、非常にそこまで至るのに長い道程をたどったということは、これは私は非常に、まあ医学の面もございますが、ある意味においては怠慢であったと責められてもやむを得ない。今後はそういう怠慢であったということを責められないように、いま問題になっておりますカドミウム汚染の問題につきましても、事前にそういうことのないようにするのがまず第一だ、かように考えておるわけでございます。したがって、そういうような大気汚染にいたしましても、低硫黄対策が徹底いたしますなら自然消滅いたしてしまうでありましょうし、また一酸化炭素の中毒にいたしましても、排気ガスの規制というものが完全にできるようになれば、そういう問題もなくなってくる。そういうように実現をいたしたい。私たち健康を守る立場からは、それに努力をいたしまして、企業を担当される通産、農林その他の省におきましても、今日そういう気持ちで企業に対処してもらっているわけであります。これをもっともっと促進してまいるのが私のほうの責任だ、かように思っているわけでございます。そういうわけでございますので、その点は、先生のおっしゃるのとちっとも基本的には違いがないのでありまして、私たちはこんな公害病がいつまでもあるという状態は、決して常態だ、さようには思っておりません。その点は御了承をいただきたいと存じます。
  174. 折小野良一

    ○折小野委員 大臣は、考え方は違わないというふうにおっしゃいました。しかしこの法案を見てまいりますと、行政というのは非常にこまかにいろいろきめていかなければ、場合によって抜け穴がいろいろあったり、あるいは乱用されることがあったりというようなことをいろいろ気づかわれておられる面は、それはわからないでもないのであります。しかしこの法案が適用になりますのは、やはり相当な範囲にわたって著しい被害が出てくる、こういう状態になってまいらなければならないわけでしょうし、それから、地域が指定されておってなおかつ政令で掲げられた特定の疾病ということでなければこの対象にならない。しかし水俣病とかイタイイタイ病が起こりましたその状態を見てみますと、その当時水俣病なんというのはどういう疾病であるかということは全然わからなかったわけです。イタイイタイ病だって、当初は地元では迷信的な考え方すらあったのでありまして、これが特定の疾病であるというようなことは、当初わからなかったわけでございます。そういう面からいたしますと、特に現在の科学技術あるいは医療の現状からいたしまして、今後新たな、現在まで予想もしなかったような公害病が発生しないという保証は、現在のところないわけであります。そうした場合においては、たとえ直ちに救済を要するような健康上の被害が起こったといたしましても、この法案によって直ちに措置するということはなかなかできないのじゃなかろうか、こういう疑念があるわけでございます。むしろそういうような状態にこそ、何らかの方法、場合によってはそれが拙速であったにいたしましても、そういう措置を講ずることが、最も貴重な人間の生命身体に対する措置として生きてくるのじゃなかろうか。ところが、この法案によりまして、あまりにも行政的な面の考慮がなされておるがために、むしろそういう際に現実に働かないのじゃなかろうか、こういうような懸念を多分に持つわけでありますが、その辺はどういうようにお考えになっておりますか。
  175. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 法律化することは、御承知のようになかなかむずかしい問題でございまして、たとえば公害による健康被害にかかった者は公害病と認定してこうだ、こう書けば非常に常識的でございますが、そこで、それじゃ公害による健康被害とは一体何だということになりますと、こういう書き方をせざるを得ないということでございまして、実際は、いま私が申し上げましたように御理解をいただいていいのじゃないか、かように思います。普通公害病だといわれるものが、今後新しくまた起こってくる可能性もあるだろうと私は思いますが、そういう場合にも、この法律の概念の中に十分取り入れてそして考えられるものだ、かように考えます。  ここで除かれるおそれがあるかもわからないというのは、たとえばある工場から廃液が出た、それをかぶって特定の人が特定の病気になったというような場合には、これはある意味においては公害かもわかりませんが、直ちに処置のできる問題でございますから、地域的にその公害によって健康がおかされているという状態とは違いますので、そういうものは除かれるということになりますが、ある一定の地域的にそういう被害にかかっているということであれば、新しい疾病であろうと、すべて指定のできるようになっているわけであります。その点は、運用もそういたしたいと考えますので、御了承いただきたいと存じます。
  176. 折小野良一

    ○折小野委員 現在の状態から考えますと、公害病というのはいつどこで、あるいはどのような形で発生するかわからない、そういうような情勢があるわけでございますので、やはり適時適切な措置がとられる、こういうことが最も大切なことじゃなかろうかと思っております。ただいま大臣から、運用の面においても、そういうような場合においても支障のないように運用が行なわれる、こういうような御答弁がございましたが、ぜひひとつそのような措置を必要に応じて講じていただくことによりまして、この法案の精神が生かされるように、公害対策のほんとうの精神が生かされるように御尽力をお願いいたしておきたいと思います。  そこで、この医療でございますが、第四条にこの疾病に関して受ける医療というものを一から六まで具体的に掲げてございます。もちろん通常の医療の場合におきまして、こういうような措置が行なわれるのが通常であるというふうに考えます。したがってその場合に医療費が支給されるということは当然だと思うのでありますが、公害の場合、特に水俣病あるいはイタイイタイ病なんかの例を見てもわかりますように、これは公害病であるということは認定できましても、その医療につきましては、なかなかそれまでにはっきりしたものがないといったような場合におきましては、いわゆる調査とか検査とか、こういうことばに類するような措置がなされる、こういうことはあり得ることじゃなかろうかと思います。特に新しい病気でありました場合に、どういうような薬剤を支給したらいいのかとか、あるいはどういうような医学的な処置を講じたらいいのかという面につきまして、はっきりしたものがないといった場合に、あれもやってみなければならぬ、これもやってみなければならぬ、そういうようなことが事実問題としてあるのじゃなかろうか。そういうものは医療費の対象になるのかどうか。もちろん私どもは、そういうものこそ当然対象にして考慮さるべきである。しかしこれはことばでいわれております医療費とは必ずしも同じものではないかもしれませんが、その辺の考え方をお聞かせをいただきたい。
  177. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 医療費の支給の範囲でございますが、「診察」「薬剤又は治療材料の支給」それから三には「医学的処置、手術及びその他の治療」と書いてありますが、おっしゃるように、公害の問題につきましては、普通考えられます医者にかかりました費用につきましては、これは全部入る予定でございます。
  178. 折小野良一

    ○折小野委員 と申しますことは、いわゆる保険診療というのは一定のルールがありますが、そういうもの以外でありましても、その公害病を治療するに必要なすべての経費というものは医療費の中に含まれる、こういうふうに考えていいわけですか。
  179. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 第四条でいっておりますのは、これは保険治療の範囲内でございまして、先生が御心配になるような点につきましては、現在でも医療研究費等でこれを補っておりますが、そういうことになるかと思います。
  180. 折小野良一

    ○折小野委員 そういう面は、これは現実の問題だと思いますけれども、費用の出どころが別であったり、あるいは担当の部局が別であったり、こういうようなことがあろうと思っております。ですから、はたしてそういう面が患者負担になってしまったりとかいうようなことで、被害者にさらにそれ以上いろいろな迷惑をかけるということがなければ非常にけっこうなわけなんですが、その辺が十分うまくやっていけますか、どうでしょうか。
  181. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 現在でも、各府県または市で行なっております治療につきましては、患者にはよけいな負担がかかるようなことになっておりませんし、当然この法律でも、そういう点は配慮するつもりでございます。  なお、先生が御指摘のように、いろいろ研究を要する部面がございますので、そういう点では、現在厚生省に医療研究補助金というものを持っておりますので、そういう点の運用で現在もやっておりますし、将来もやりたい所存でございます。
  182. 折小野良一

    ○折小野委員 それから、公害病が、特定地域でそして特定された疾病の場合であってもいいわけでありますが、公害病そのものだけで終わるというような場合、それはけっこうでありますが、いわゆる合併症が起こるということはよくあることであろうと思っております。たとえばいわゆる公害病によるぜんそく、これが原因となってほかのいろいろな病気を引き起こした、あるいはもともと病気を持っておるところに公害病が加わって、そしてその病気を悪くした、こういうような問題は、これは現実に幾らも出てくる事態だというふうに考えますが、こういう面についてはどういうふうな措置をお考えですか。
  183. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 いわゆる続発症的な問題につきまして、これは現在もそれを含めて処置されておりますが、そういうふうに私どもいたしたい。ただ関係のないような――関係のないようなというと語弊がありますが、いわゆる別の病気の問題につきましては、これは現在も処置されておりませんので、そのような形で処理したい、かように考えます。
  184. 折小野良一

    ○折小野委員 原因となる場合、あるいはいろいろそれがプラスされて問題になる場合、いろいろあろうと思いますし、その辺の判定は非常にむずかしいと思います。こういう点につきましては、ひとつ現実に即した対策を十分行なっていただくようにお願いをいたしておきたいと思います。  それから次に移ります。通常、公害の場合にいわゆる原因者負担の原則というのがございます。これは公害対策全般についていわれるところであろうと思いますし、特に政府の経済社会発展計画ですか、あれなんかにおきましても、公害の対策については原因者負担の原則を明確にする、こういうようなことがいわれておるわけでございます。今度のこの措置につきましては、先ほども大臣は損害賠償の肩がわりじゃない、こういうふうにおっしゃいました。いずれにいたしましても、こういう措置をやっていただくことは必要なんでありますが、そういう損害賠償の肩がわりじゃないという考え方と、それから公害対策全般についていわれております原因者負担の原則、これはどういうふうに調整をしていくべきであろうか、こういうふうにいろいろ疑問を持っております。たとえば具体的には加害者がはっきりしている場合があります。それから加害者がやがてわかる場合があります。それからなかなか加害者がはっきりしない、あるいは加害の程度がなかなかはっきりしないという場合もございます。また現在の科学技術の段階においてはそれがなかなか究明しにくいが、そういう面の科学技術が進んだならばそれははっきりする、こういう面もあるわけでございます。したがってこの法案について申しますならば、後日、加害者から医療費についての損害賠償等があった場合には返えさせる、こういうことがあるのでございますが、加害者が明らかになったということになりますならば、これは医療費等は当然加害者が持つべきものだということでございますので、やはり加害者負担の原則というものは明らかにしておくべきものじゃなかろうか。たとえこれによって何らかの措置がなされておったにいたしましても、加害者が明瞭になった場合には必ず加害者から取る。場合によっては、それまでにいろいろ支給されておりますならば、加害者に対して求償権を行使する。こういうことはやはり法の精神として明らかにされておくことが必要であろうと思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  185. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 加害者が明瞭になりまして、加害者がそれを負担する意思があるという場合は、当然この法律は適用されないわけでございます。ただ、先生指摘のように、加害者がわかった場合におきましても、その加害者と被害者関係が、正式の損害賠償という形で行なわれる場合もありましょうし、あるいはそういう名目によらない場合も多々あるわけでございます。そういう場合に、やはり一方で、いわゆる被害者の方がこの制度による、またそのほかに原因者と目されるものからそれと同じような給付を受けるということは、いわば二重になるという意味で、そういう点につきましてはやはり制度をきちっとしたほうがいいのではないかということで、第二十四条でこの点を明確にしたわけでございます。
  186. 折小野良一

    ○折小野委員 理論的に考えますと、公害によって被害が起こった場合に、原因者を明らかにすることが非常にむずかしいということはあっても、原因者、加害者がないということは言えないわけであります。これは必ずあるわけであります。といたしますと、現段階におきましてはなかなかそれがわからない、こういう面はありますが、少なくもわかる範囲におきましては、やはり原因者負担の原則というものをはっきりさしておくべきじゃなかろうか。そうでありませんと、結局企業倫理と申しますか、そういうような面からいたしまして、他人に被害を及ぼし、迷惑をかけても、国のほうでこういうような処理をしてくれるのだからというようなことで、結局公害に対する考え方というものが非常に甘くなるということですから、こういうことは、むしろ今後公害対策を進めていくという立場から見ればマイナスになるのじゃなかろうか。むしろ企業に対して、こういう倫理的な考え方をより厳しくさせるということのほうが、全般的な今後の公害対策のために寄与し得るのじゃなかろうかというふうに考えます。したがって現実には返ってくるものもありましょうし、返ってこないものもある。あるいは加害者がわかる場合もある、なかなかわからない場合もある。しかし理論的にはやはり原因者負担の原則というものは貫くべきじゃなかろうか、こういうふうに考えますが、いかがでございますか。
  187. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 先生の御指摘の立論については、私どもはそう考えます。ただ現実に公害問題でいま被害が出ておりまして、いろいろ問題になっております点につきましては、いわゆる原因者がはっきりわかっていない場合でいろいろ被害者の方がお困りになっておる、その方々をどうやって救うかということで、この制度を立てたわけでございまして、先生の御指摘の点につきましては、この法律の制度と直接関係しないのではないか。もちろんこの法律論の点につきましては、当然それはそれとして一つ理由がある。ただ、この制度をつくったから、そのすべての原因追及というものがなおざりになる、あるいはこの制度ができたことによりまして、いわゆる原因者側がほおかぶりをしていくというようなことは、これはあってはいけない、かように考えているわけでございます。
  188. 折小野良一

    ○折小野委員 それだから、私、基本的に先ほど申し上げたわけなんです。この法律によって救済をする趣旨は、原因者がわかるわからないということは一応置いておいて、そしてそれは、その立場でやればいい。しかし、とりあえず出てきたこの健康被害というものはほっておけないのだ、だからそれに対して早急にこういう措置を講じて、そして健康被害をできるだけ少なくしなければならぬ、そういう立場からこの法案というものがつくられなければならないのじゃなかろうかというように私ども考えております。ですから、この問題に関連をいたしましても、原因者がはっきりしておれば、たとえそこに紛争があろうが、何をしようが、これは適用しないのだということになりますと、その間に病気はますます進んでいき、被害はますます拡大していくということになるわけであります。加害者がわかっている、あるいはわかるというのは時間の問題なんです、結局はどっかに加害者、被害者というものがあるわけですから。そういたしますと、やはりこの法でほんとうに守っていかなければならぬ法益というのは、その原因の究明とかなんとかを抜きにして、とりあえず起こっているこの健康上の被害、これを何とか早く措置しなければならない、そこにやはり重点があるのではないかと私は思う。そういう立場からいたしますならば、あとで加害者が出てきても、あるいは場合によっては加害者の特定というのができなくとも、それはいたし方がない。しかしながらとりあえず措置をする。加害者が出てきたらそれから取ればいいし、出てこなければしようがない。おそらくはそのままということになってまいるでしょう。だからとりあえず被害者に対する健康上の救済を急ぐのだ。これをやはり主眼に置いて考えませんと、実際の運用についての問題が出てくるのではなかろうかと思うのでございますが、いかがですか。
  189. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 加害者がわかっております場合には、当然その加害者が被害者にいろいろな救済措置をやる、あるいは被害者が加害者に損害賠償その他の要求をするということが行なわれるわけでございます。ただその間に、先生指摘のように、長い時間がかかってなかなか話がつかないというような場合には、場合によりましては、この法律によりまして、その間いわば救済措置を講ずるべきではないかというのが先生の御議論だと思います。その点については十分考えたい、かように存じます。
  190. 折小野良一

    ○折小野委員 これはただ考えたいということではなしに、そういうものを当然やるべきだと私は思うのです。たとえば水俣病あるいはイタイイタイ病の発生状況から考えまして、その当時この制度がありましたならば、――今日までまだ問題は解決しておりませんが、しかしその状態においてこれはやはりやらなければいけなかったはずだ。なるほど加害者というのはわかってきました。しかしその加害者がわかっておっても、なかなか早急にやるかどうかということは、事実問題としてそう保証はできません。紛争がある。その紛争だって相当な時間を要するわけでして、相当な時間がかからなければ解決しないというような現実があるわけです。そういうような現実の中において、被害者がそのままほっておかれていいか。それをほっておけないからこそ、こういうような措置が必要である。ここにやはりこの法案の基本があるのではなかろうか。もちろんその加害者がだれかわからないような、いわゆる車の排気ガス等によるものは、これはおそらく最終的に取れといっても取れませんでしょう。しかしこれも理論的にいえば加害者があるわけなんですから、それはやはり現実に即して、この法案の精神を生かして、特に水俣病とかイタイイタイ病のような実情を考えますと、こういうものはまず当然やらなければならないのだ、こういうふうにお考えになって運用されることが最も大切なことであり、またそれがこの法案の本来の趣旨ではなかろうかと考えますが、いかがですか。
  191. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 折小野先生のおっしゃるとおりに私たちも考えているのでございますが、原因者がはっきりするまでの間ほうっておけないから、とにかく緊急に行政的な措置としてこれだけはやらなければならぬ。そこで問題は、この法律によって措置をした費用を、加害者がはっきりした場合に、この法律によって国のほうに先に取ってしまうか、あるいは被害者にその加害者のなし得る限度において損害賠償を先にやらせて、そしてたっぷりもらったという場合には、その患者から返してもらってもよろしいという程度にしておくほうが、患者には親切じゃないだろうか。どちらからどちらへ求償するのがほんとうであろうか。被害者の側から見ますると、両方からもらって得をする必要はないじゃないかという議論があるわけですから、その場合に、国のほうで取るものは先に取ってしまう、いままで出したものは取って、そして残った限度で被害者に損害賠償をさせるという立て方は、被害者に対しては気の毒ではないだろうか。もちろん損害賠償をやる原因者が、金が幾らでもあって、十分な補償ができるという場合は、どちらが取っても同じことでありますけれども、相当な金額になる、しかもその企業にそれだけ支払う能力がないというような場合も、私は考えられると思います。現在、隆々としてやっておっても、いつ破産をするかもわからないという、そういう企業の将来も考えなければならぬということを考えますると、そういった求償権を法律で先に取るというよりは、まずその加害者の能力においてあとう限りの損害賠償はやらせて、そして、それがたっぷりやれたというのであれば、国のほうでその被害者から一部を返還させることもできるという程度にしておいたほうが、こういった行政的な措置としての法律としては適当じゃないだろうかと、かように考えたわけでございまして、先生のお考えもよくわかるわけでありまするし、私もどちらにしようかというときに迷うたのでございますけれども、そのほうが社会立法としては適当ではないだろうか、かように考えたわけでございます。
  192. 折小野良一

    ○折小野委員 いずれにいたしましても、この被害を受けております人たち、こういう人たちに早急に必要な医療措置を講ずるということがまず第一だと思います。何をおいてもまず第一だ、そのほかのことは、その後の措置によって解決する方法を講じていけばいい、しかし、かといって、やはり原因者、すなわち加害者の責任は免れない、こういうことだけは、やはりはっきりさせておく必要があるのではなかろうかというふうに考えます。  そこで、その二十四条でございますが、こういうことが起こり得ませんでしょうか。これは紛争との関連で出てくるわけでございますが、医療費に相当するものを加害者が出したというようなことになりましたら、それは返させる、こういうことなのですが、通常の場合、被害者のほう、もらうほうといいますか、それは少しでも多くもらいたいというふうに考えましょう。それから加害者のほう、出すほう、これは少しでも少なく出そう、こういうふうにいたしますでしょう。そうした場合におきましては、これを医療費ということで出すよりか、たとえば精神的な慰謝料とかその他の名前で出したほろがどっちのためにもいい、こういうようなことで、この規定はむしろ悪用される、こういうおそれはありませんでしょうか、どうでしょうか。
  193. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 その点は、私はかえってこの規定のほうが逆に被害者にいいのではないだろうかと思います。どうせ原因者が損害賠償いたします場合に、国に取られてしまうよりは、少しでも被害者によけいやって、そして満足してもらって手打ちをしたいというのが真意でございます。そこで、これが治療費という名前でなくて、済まなかったという費用だというほうが、被害者にとってはいいのではないか、かように私は思います。  先ほど、求償権をまず加害者にすべきだとおっしゃいましたのは、こういう法律を出すことによって、加害者の責任を免除するとかあるいは軽くするとかいう心配はないかという御心配ではなかろうかと私は思います。その点につきましては、私どもは、それはもう当然のことである、かように考えて書かなかったわけでありますが、念のために言えば、この法律によってこれだけの措置はするけれども、これによって加害者の民事責任を軽減するものではないというようなことを念のために付記しておけば、あるいは御安心であったかとも思うのでございますが、私たちは、それはもう法理解釈として当然のことだ、かように考えて、あえて書いておらぬわけでございますので、御了承いただきたいと存じます。
  194. 折小野良一

    ○折小野委員 少し条文の小さい点をお尋ねいたします。  二十八条ですが、この二十八条には「政令で定める市の長が行なう医療費等の支給に関する処分についての審査請求の裁決に不服がある者は、厚生大臣に対して再審査請求をすることができる。」こういう規定がありますが、これは政令で定める市の長がやったことに対してだけですか。都道府県知事がやった場合については、再審査の請求というのはないのですか。その辺の区別というものがされている理由というのはどういうのですか。
  195. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 知事のやった処分につきましては、当然行政不服審査法で、厚生大臣に再審査請求ができるとお考えいただきたいと思います。
  196. 折小野良一

    ○折小野委員 考えるということではなしに、それは当然こうなって、したがって差がないということなんですね。
  197. 武藤き一郎

    ○武藤(琦)政府委員 さようでございます。
  198. 折小野良一

    ○折小野委員 それでは健康被害法案についての質問は終わりますが、その前に一つ、さっきの水質関係でちょっと御質問を申し上げます。  水質汚濁によりまして、直接被害を受けるのは魚ですが、魚が被害を受けた場合のいわゆる被害者あるいは被害程度というものは、どういうふうに考えたらよろしいでしょうか。
  199. 田村五郎

    ○田村説明員 ただいまの魚の点でございますが、一般的に水質基準設定いたします場合、その水質におきまして、内水面漁業あるいはまた海面におきまして魚資源を保護する必要があるという水域につきましては、大体BODで申しますと三PPM以下という基準で、目標水質といたしまして基準設定しておるわけでございます。それからたとえば海域におきましてノリ等の養殖が行なわれておるという場合には、CODで三PPM以下という目標を掲げまして、それに見合うような水質規制ということでやっておるわけでございます。
  200. 折小野良一

    ○折小野委員 私はそういうふうにむずかしいことをお聞きしているのではないです。水質汚濁の問題があります場合に、魚とかあるいは海藻とか、水藻とか、そういうものが直接被害を受けます。しかしいま行政的に見ました場合に、その場合の被害者とあるいは守らるべき法益といいますか、それはどういう範囲のものがあるのかということをお聞きしているわけです。たとえば、水質汚濁して、それによって魚は死にまして、しかし魚は無主物なんですね。そうした場合の被害者はだれなのか。あるいは魚全部がその人の被害なのか、あるいはそのうちのどの程度被害なのか。あるいは場合によっては水質汚濁されたために魚が寄りつかない、魚が逃げるという場合があります。そういう場合の被害者被害の範囲というものはどういうものなのか。あるいはその海域の海藻等がなくなる、それもありますけれども、そうすることによって、その後魚の繁殖というのが非常に阻害される、こういうような例が出てまいります。そうした場合に、その被害者というのがあるのか、だれなのか、そうしてその場合の被害というものははたしてどういうものなのか。その点をお聞きしたい。
  201. 宮内宏

    ○宮内説明員 お答えいたします。  やっぱりお魚あるいはノリも無主物ではございましょうけれども、実際にはそれを生業としておられる方があるわけです。あるいは漁業権が設定されておるわけであります。それで水質保全法の中では、産業の調和というようなことで、結局加害者がたとえば工場排水であり、被害者はやはり漁民であるというふうに考えます。
  202. 折小野良一

    ○折小野委員 被害者は漁民であるということでありますが、そうした場合の被害の範囲と申しますか、これのつかみ方というのは非常にむずかしいわけだと思うのでありますが、それは結局いわば漁業権が侵害された、こういうことでとらえるべきでありますか、あるいはその他の何か具体的な方法というのを企画庁ではお考えになっておられますか。
  203. 宮内宏

    ○宮内説明員 ケース・バイ・ケースというとちょっとオーバーでございますけれども、具体的に漁業権が侵害されるという中に、あるいは漁獲高がこういうふうに減ってきておるというふうな考え方、それからたとえばサケ・マスのように、ややオーバーでございますけれども、国際的な資源がだんだん枯渇していくというような、そういうふうな場合によりまして、それぞれ産業間の調和ということを調整しながら規制していきたいという姿勢でございます。
  204. 折小野良一

    ○折小野委員 私がお聞きいたしたいのは、ほんとうは、今後経済企画庁で、水質保全法等に基づきましていわゆる環境基準というものをきめていこう、こういう作業に入ることになっていると思うのでありますが、そうした場合に、やはりきめのこまかい基準のきめ方というものをなさるべきではなかろうか。たとえばこの河川は幾らだとかいうふうにきめられましても、その河川の部分によっていろいろ事情があるわけでございます。たとえば河川によりますと、そこがアユの保護地域に指定されているということになりますと、アユという魚は普通の魚よりは弱いということになると、普通のところできめられている基準よりはより厳密な基準でなければ、保護区域としての使命は果たせないということになってまいりますし、河川だけでなしに、その河川が流れ込みます海につきましても、地域によっては繁殖のための特定の地域というようなものもあり、あるいは最近のように栽培漁業というものが行なわれるということになりますと、その種類によっていろいろ規制というものが現実に問題になってくるというような点から、環境基準等の設定につきましては、やはりそれぞれの河川の役割りというものを十分考えていただいて、それに即応したきめのこまかい指定のしかたというものが必要になるのではなかろうかというふうに考えます。そういう面について、今後水域環境基準設定について御考慮になっておられるのかどうか、あるいはどういうふうに現在考え作業を進めようとされるのか、お伺いしたいと思います。
  205. 宮内宏

    ○宮内説明員 現在の水質保全法は三十三年にできたわけでございますが、以来それに沿ってきております考え方の中に、いま先生がおっしゃいますように、水域ごとにきわめて特殊的な問題がございます。たとえば水の合理的利用と申しますか、工業用水を取っておったり、上水道を取っておる。あるいはいまおっしゃるように魚の保護区域である、養殖していかなければならぬというようないろいろなケースがございます。それで、その地域が将来どういうふうに都市化していくのか、あるいは工場が来るかというようなことを考えながら、いわゆる産業あるいは健康の調和を考えながら、河川の区域ごとに汚濁基準考えまして、いわゆる環境基準に近いような目標水質と申しますか、流水基準と申しますか、そういうものを想定いたしまして、先ほどお話のありましたように、たとえばアユのようなお魚だと三PPMというふうな汚濁の限度があるわけでございます。それに流れてくる川の水、工場から出てくる排水の量、そういうものが三PPMに保たれるにはどういうふうに工場規制すればいいかというような立場で従来やってきております。
  206. 折小野良一

    ○折小野委員 その点はひとつ十分な御配慮を願っておきたいと思います。  ところで、公害行政というものは非常に多元的な行政だというふうにいわれるわけでございます。たとえばいまの例について申し上げますと、アユの保護地域ということになりますと、それを守るためにできるだけ汚水がその水域に入らないようにしなければならぬ。したがって下水についての規制等も行なわなければならぬ。ところが下水の認可とかそういう面につきましては、やはり下水独自の立場というものがありまして、アユの保護水域を守るために何とか下水の処理場をつくろうと思うのだが、現実にはなかなか行政のルートにのってこない。地元で一生懸命やっておるがなかなかそれができない、こういうようなことがあるわけでございます。いずれにいたしましても、公害対策の万全をはかるためには、やはり現実には少なくともいろいろな行政というものを調整をしていかなければならぬ。特にこういうような場合におきましては、水質保全というのは企画庁が中心になってやられることでございますが、そういう企画庁立場において、そういうようなところに下水の処理施設が必要であるということならば、それに応じて促進できるような、そういう調整というものが現実に行なわれておりますかどうか。まあ、行なわれていないと私は思うのであります。したがって、私のほうとしましては、ぜひそういう調整を行なっていただいて、そうしてアユの資源保護の水域であるならば、いつまでもその目的が十分かなえられるような、その他の公害対策というものを十分に行なうべきである、そういう調整をひとつやるべきであると思うのでありますが、現実にはどういうふうにしておられるのか、あるいは、今後どういうふうにされようとするのか、お伺いをしたいと思います。
  207. 宮内宏

    ○宮内説明員 従来とも、家庭下水の汚濁の割合、非常に多いのでございまして、先生の御指摘のとおり、下水道がおくれておるために、あるいは、早くやらないために、汚濁がすでに進んでおる、進みつつあるというふうなケースがあるわけでございます。したがいまして、水質保全法に基づく審議会で御審議いただいて、いろいろ御答申をいただくわけでございますけれども、その中で、相当なケースにつきまして、この地域は下水道を整備しなければならぬというふうな御答申、附帯決議的にいただきまして、それを所管大臣である建設大臣なりあるいは終末処理の厚生大臣なりにお願いをしておる。具体的にも、下水道の整備につきましては、ある程度大蔵省のほうもその意見を尊重して促進していただいておる次第でございます。
  208. 折小野良一

    ○折小野委員 企画庁質問は終わります。  次は、紛争処理法案について御質問を申し上げます。  この第一条の目的におきまして、公害にかかわる紛争について、その解決のためのいろいろな制度を設けて、迅速かつ適正な解決をはかる、こういうことになっておるわけでございますが、公害発生するおそれがあるということでいろいろな紛争が生じておる事例も多々ございます。たとえば、東海村におきまして、原子力の再処理工場ですか、それの建設に関連していろいろな紛争があっておるように聞いておりますし、また、各地区におきまして、電力会社が原子力発電所をつくる、そういう際にも、将来公害発生するおそれがあるというようなことで、いろいろな紛争が起こっておる。また、近くは、富士ですか、火力発電所を建設するということによっていろいろな紛争が起こっておるわけでございますが、そういう公害発生するおそれがあるということによって紛争が起こりました場合に、やはりこの法案によって、そういう場合の紛争処理ができますかどうか、お伺いをしたいと思います。
  209. 床次徳二

    ○床次国務大臣 本法によりまして対象としておりまするところの公害につきましては、現に起こっている公害、なお、将来起こり得る公害、両方のものを含んでおりまするが、しかし、たてまえといたしまして、加害者、被害者の間におきまして、和解なり調停なり仲裁ということが行なわれるためには、やはりばく然とした、いわゆる公害を生ずるおそれというだけではここに含まないのでありまして、やはり相当の被害というものが明白にかつ相当確実な関係があります場合に限られておるわけであります。したがって、具体的に私どもが予想し得ますものは、現在公害発生しまして、紛争の種になっておる工場、それが工場を拡張するというときは、明らかに因果関係考えられますので、将来のものでありましても、この紛争処理の対象になり得る。しかし、新しい工場を設置するという場合におきまして、将来起こり得る明瞭でない加害者、被害者関係におきましては、この紛争の処理目的にはならず、むしろ、この紛争処理機関以前の問題といたしまして処理していただきたい。すなわち、町村あるいは府県等におきまして、いわゆる広い意味公害の紛争あっせんと申しますか、話し合いの機関を設けまして、そうしてそれぞれの行政措置において解決を願うことが適当であろうと考えておるのであります。
  210. 折小野良一

    ○折小野委員 確かにこの法案の二十四条におきまして、現に著しい被害発生しておるということが一つの条件になっておりますので、将来発生するおそれがあるというものは対象にならないと私ども考えます。しかし、現在のそういう紛争を見てみますと、正式な紛争処理機関とかそういうものはなかったにいたしましても、そういう公害のおそれある工場等が設置されるその際に、いろいろな紛争が正しく処理されておるということが、将来のために非常に大切なことじゃなかろうかというふうに考えます。これが簡単に設置をされるということになってまいりますと、結局、後々、次から次に紛争が発生するあるいは公害発生するということになってまいります。したがって、その工場が設置される前とか、あるいは、その事業場が設置されるときにいろいろな問題が解決しておりますならば、将来の紛争の種というものも少なくなってまいりますでしょうし、現実の公害そのものが少なくなってくるであろうというふうに考えます。そういう面からいたしますと、「現に」でなしに、おそれある場合の紛争処理、やはり広い意味公害に関する紛争処理ということが行なわれるならば、現実にはより効果的じゃなかろうかというふうに考えるわけであります。  それで、この法案では、確かに大臣のおっしゃるとおりだと思いますが、おそれある場合について対象にするように、将来この対象を広げる、こういうお考えはありませんかどうか、お伺いいたします。
  211. 床次徳二

    ○床次国務大臣 将来起こり得る公害というものにつきましては、なかなか事実の認定等におきましても問題があるのでございまして、仰せのごとく、事前においてこれを解決するということは、現在の場合においてきわめて必要であると思います。さような意味におきまして、本法におきましても、四十九条におきまして、地方団体公害に関する苦情についていろいろ相談に応ずる、なお、関係行政機関と協力して適切な処理につとめるという規定が設けてありますが、これはそれぞれの具体的のケースに応じて最も適切な処置を事前に講じ得るように、特に考えられておるのであります。いわゆるここに申しまする狭義の紛争でなくて、そこにいきますまでの間に――まあ苦情処理といっておりますが、その段階において解決をいたしたいと思っておるのでありまして、今日におきましても、各地方団体におきましては、それぞれ、部なり課なり係なりを設けまして実績をあげております。なお、市町村等におきましても、係等を設けまして相当の実績をあげておるのでありまして、今後とも一そうこの点は進めてまいりたいと思っております。
  212. 折小野良一

    ○折小野委員 その二十四条におきまして、第一号、第二号で「政令で定める」というふうにしてございます。「政令で定める」ということは、制限をするということであるかどうかわかりませんが、ここで政令で定めようとお考えになっておるのはどういうものでございますか、あるいは、どういう意図によって、政令でこれを定めるとされておられるのですか。
  213. 床次徳二

    ○床次国務大臣 この政令の範囲につきましては、少し具体的なものになりますので、政府委員からお答え申します。
  214. 橋口收

    ○橋口政府委員 第二十四条第一項第一号、第二号の政令の範囲でございますが、第二号につきましていま予定いたしておりますのは、飛行機騒音に関するものでございます。つまり飛行機の騒音に関連いたしまして、ダイヤの変更等を伴います場合には、当該府県だけでなくて、全国的な影響があるわけでございます。したがいまして、そういうものにつきましては、二つ以上の都道府県にまたがる広域的な見地からの配慮が必要だという点におきまして、第二号の内容といたしまして、ただいま申し上げました飛行機騒音について予定いたしておるわけでございます。それから第一号でございますが、これは健康あるいは生活環境に対して著しい被害を生じておる場合でございまして、これは抽象的な規定を設けますより、むしろ具体的に内容のはっきりわかるようなものとして、政令内容を確定したいというふうに考えております。
  215. 折小野良一

    ○折小野委員 具体的にその内容をきめたいということでございます。確かにそれは具体的にきめられること、けっこうなことでございます。しかも中央委員会が管轄するわけでございますから、やはり全国的な立場といいますか、あるいは高度な科学技術と申しますか、そういう面を必要とするとか、そういう面があろうと思うのでございますが、それについて具体的にお考えになっておる項目、それはどういうものかお知らせをいただきたい。
  216. 橋口收

    ○橋口政府委員 ただいま御説明申し上げましたように具体的な案件についてはっきり政令内容を確定したいと考えております。ただ、第一号にもございますように、「相当多数の者」というような表現もございます。これを政令で何名というふうに規定することは必ずしも適当でないというふうに考えておりますので、ただいま一応予定いたしておりますのは、病名として申しますと、水俣病事件あるいは阿賀野川有機水銀事件、イタイイタイ病等が一応の予定になっておるわけでございます。
  217. 折小野良一

    ○折小野委員 水俣病、イタイイタイ病、阿賀野川事件というのは、もうこれは人口に膾炙しております代表的な公害であります。しかし、今後紛争の処理をしなければならないという問題は、この問題だけに限ったわけじゃございませんし、また今後どういうような公害発生するかわからない。それがわからないがために、したがってまた政令でそれがきめられていないがために、中央委員会の管轄外だということもおかしいことじゃなかろうかと思っております。法律で一応こういう制度をつくって、そうして今後紛争処理について適切な処理をはかり、あるいは迅速な処理をはかろうという趣旨でできております以上は、さらにその他のものあるいは今後起こるであろうもの、こういうものも当然この中に含まれてしかるべきだと思うのでありますが、いかがでございますか。
  218. 橋口收

    ○橋口政府委員 先ほど具体的に名前をあげて申し上げましたが、それはただいま想定されるものとして申し上げたわけでございます。ただいま御指摘がございましたように、将来、先ほどあげましたようなものに匹敵するような公害が生ずることを希望はいたしませんが、そういうことも予想されるわけでございますから、できるだけ内容が確定できるように、研究はいたしてみたいと思っております。ただ、先ほどもちょっと申しましたように、具体的人数を確定するとか、あるいは病名をあげるというようなことは、実際問題としてむずかしいというふうに考えております。したがいまして、当面中央公害委員会の対象になり得るようなものとして、先ほどあげた病名のものを予定いたしておるわけでございます。
  219. 折小野良一

    ○折小野委員 次に、調停あるいは仲裁に際しまして、いろいろ実態調査して、間違いのない処理をすることがたいへん必要なわけでございます。それに際して、関係行政機関等にいろいろ聞いたり文書を出させたりということ、これはけっこうなのでありますが、そのほかに一般の学識経験者と申しますが、あるいはその問題についてかねて研究をしておられる大学の先生、あるいは関係の医師であるとか、あるいは当事者以外の関係者、参考人、こういうような面の意見も聞いて、あるいは場合によってはそういう人たちの参加も願って、より公正な結論を出すということが必要であろうと思いますが、そういう面で正式に意見を聞いたり、あるいは参加願ったり、そういうことができますかどうか。
  220. 床次徳二

    ○床次国務大臣 この問題は、審査委員会、中央の委員会並びに地方におきましても、当然その職務を遂行するために必要なことでありますので、必要な経費を予算として計上しておりまして、十分に専門的知識を活用して、判断をいたしたいと思っております。
  221. 折小野良一

    ○折小野委員 できるだけ万全の措置をとっていくということが非常に大切なことだと思うのであります。ただ、今度は、そういたしました場合におきましては、原則として、その紛争処理に要する経費というのは当事者に負担させる、こういうことになるわけなんでございますが、そういう制度が、特に弱者である被害者にとっていいことであるのかどうか、あるいは紛争処理を早めると申しますか、そういう面にプラスになるのかどうか、こういう点に多分の疑問があるわけでございます。むしろ紛争処理を容易ならしめるために、被害者が経済的な基盤の薄い人たちであるというような場合におきましては、その費用を援助するとか、あるいは一般的な調査費用、こういうようなものは被害者にかけないとか、こういうような経済的な弱者である場合、特に紛争の被害者というのは多くの場合そういうような人たちが多いわけでございますので、そういう面についての配慮がなさるべきであると思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  222. 床次徳二

    ○床次国務大臣 仰せのごとく、紛争処理にあたりましては、被害者たる方たちは、往々にして経済的に非常に弱者であるという立場の方が少なくないのであります。そういう人に過重な負担をかけることにつきましては、紛争処理の本意ではございませんので、でき得る限り安い経費でもって処理ができますようにいたしたい。したがって、中央審査委員会におきましては、政令でその費用に対しまして規定をいたします。また都道府県の公害審査会等におきましては、条例によりましてその経費をきめてまいるわけであります。この点は、できるだけ安い経費において紛争処理に委託することのできますようにいたしたいと思います。なお、たてまえといたしまして、条例あるいは政令で定めますものを除きまして、当事者が負担することになっておるわけでありますが、当事者の請求以外のものにつきましては、先ほど申し上げましたように、委員会あるいは審査会等におきまして経費を持っておりますので、その経費によりまして負担をいたすという趣旨でございます。
  223. 折小野良一

    ○折小野委員 いろいろ運用の問題もあろうと思いますが、できるだけ紛争処理を容易にさせるために、安い経費でやられるようにお願いをいたしたいと思います。しかしその反面に、安い調停、いいかげんな処理をやっていただくということは、これは決していいことではございませんので、そういう面につきましては、ひとつ十分な調査なり処置なりをやっていただくように御配慮を願いたいと思います。  ところで、この公害に関する紛争は、とかく長引くというのが現実の姿でございます。これは現段階における公害の特質とでも言っていいかと思いますが、原因の究明に時間がかかる、あるいは因果関係の立証が非常に困難である、あるいは原因者の特定がむずかしい、こういうようないろいろな問題がありまして、非常に時間がかかるのが普通なんでございます。しかしこういう問題をできるだけ早く処理するということが、やはり紛争処理一つ目的でなければならないと思いますし、この法案の目的におきましても、「迅速かつ適正な解決を図る」、こういうふうに目的がうたわれておるわけであります。しかしこの法案の中身を見てまいりますと、迅速にやるための特別な措置というものは何ら規定されておらないようでございます。何とか迅速に処理するような方法があってしかるべきじゃなかろうかと思うわけでありまして、たとえば一つの例といたしまして、このような仲裁その他調停等の処理を行ないます場合に、時間的な制限を設ける。たとえば三カ月以内に処理をしなければならない、三カ月が経過した場合におきましては、その間の事情を通知しなければならぬ、そういうような形における時間的なめどと申しますか、そういうものを設けて、紛争処理の迅速化をはかる、こういうことが特に必要なことじゃなかろうかというように考えますが、どういうふうにお考えになるのか、また具体的な運営ではどういうふうにやろうとしておられるのか、お伺いいたしたいと思います。
  224. 床次徳二

    ○床次国務大臣 本法におきまして、迅速に解決をはかる――「迅速」並びに「適正」という字を使っておりますが、特に迅速ということに対しまして要点を置きましたことは、これは本法の紛争処理は、調停、仲裁という形におきまして、当事者間のいわゆる互譲と申しますか、歩み寄りと申しますか、これによりまして解決していくところに、その迅速性を得られるというふうに考え、徹底的に争ってそうして結論を出すという立場ではないという大前提に立っておるわけでございます。したがって、これが迅速に進み得るし、またある程度まで適正な結論は得られるのではないか。これは訴訟とは別個の特色を持ち得るというふうに考えておった次第であります。したがって、もちろん審査にあたりましては、十二分な審査をしなければならぬ、必要な調査はいたさなければならぬというわけでありまして、一定の期限をもって限るということにいたさなかった次第であります。むしろ時間を限るということは、そういうような場合におきましては円満な結論を出しにくい結果になるのではないか、さように考えました次第でありまして、この点は、いわゆる裁決をいたしまする準裁判所的なというものとは扱いが異なっておりまして、そこに本法の紛争処理の特色があると私ども考えておるわけであります。
  225. 折小野良一

    ○折小野委員 裁判と比較しますと、このような制度はより迅速であるということは一応言えると思うのでございます。しかし、こういうような制度でも、さらに解決しなければまた裁判に持っていかなければならないということは、こういう制度にかけただけ、それだけ長引いてしまったというようなことになってもいけないわけでございます。したがって、なかなかこの時間的な歯どめというのは、内容がそれぞれ違いますから、いろいろ問題があろうと思うのでありますが、運用面におきまして、できるだけ迅速に処理するという実効をあげていただくように、御配慮を願っておきたいと思うのでございます。  それから、公害の苦情処理でございます。これは非常に私ども大切なことだと思っております。その苦情処理が適切に行なわれますならば、公害紛争の多くは大きな問題にならない間に解決をする、こういうふうに考えるわけでございます。したがって、これにつきましては、今後行政上の措置といたしましても、ひとつ十分力を入れて、その効果があがるような対策を講じていただきたいと思うのでありますが、四十九条におきまして「地方公共団体は、」というふうにございますが、これは都道府県を意味するのか、市町村を意味するのか、あるいは両方であるのか。実はこの問題につきましては、むしろはっきりとその責任の所在というものを明らかにする必要があるのじゃなかろうかというふうに考えるわけであります。  先般、私、名古屋でちょっと公害についていろいろ現地の実情を見てまいりましたが、実際は市のいろいろな機関にいろいろ言ってくるわけなんですけれども公害は県の責任だからというようなことで、県のほうに押しやる。そうすると県のほうは、今度は、それは窓口は市の保健所だからということで市のほうに押しやる。こういうようなことで、苦情を持っていきます市民といたしましては、はたしてどこで十分な処理ができるのかということが非常に問題がありまして、かえってそのことが地方団体に対する不信感をも助長する、こういうような結果になっております。したがってこの苦情処理につきましては、その効果というのは非常に大きいのでございますが、その責任を明確にするということが必要なことだというふうに考えております。御意見をお伺いいたしたいと思います。
  226. 床次徳二

    ○床次国務大臣 仰せのごとく、公害問題におきましては、最もその公害の影響のありまする住民並びに住民に密接した地方団体が、話し合って解決する、苦情処理いたしますことが一番効果のあること、仰せのとおりであります。したがって本法におきましても、都道府県また地方団体におきまして、この点につきましては十分努力してもらいたいと思うのであります。したがってその必要経費につきましては、交付税等におきまして算入いたしまして、実効をあげたいというふうに取り組んでおる次第であります。この点は、自治省に対しましても十分な協力方を申し入れておりまして、その実効をあげたいと考えておる次第であります。
  227. 折小野良一

    ○折小野委員 地方公共団体ということでなしに、市町村あるいは都道府県、これを明確にすべきじゃないでしょうか。どうでしょうか。
  228. 橋口收

    ○橋口政府委員 自治省の調査によりますと、現在公害専門の課を設けておりますのは、都道府県で二十二ございます。それから、係あるいはこれに相当する組織を持っておるのが十二ございます。全体で三十四になるわけです。それから市町村におきまして、やはり同じような公害問題に関する組織を設けておりますのは百十二ございます。  公害紛争に至らない段階において、地域住民の不満の解消としての苦情処理で問題を処理するということが一番望ましいことでございます。現在におきましても、先ほど御指摘もございましたが、市町村において取り扱いましたものにつきまして、むずかしい案件のものについては都道府県に持ち上げる、あるいは関係行政機関に照会する等の措置を現にやっておるようでございますが、今度の公害紛争処理法におきまして、第四十九条を設けまして、特に地方団体の責務を明らかにいたしたわけでございます。またその裏づけの措置も考えておるわけでございますが、さらに法律案が成立いたしました上におきましては、自治省とも十分相談いたしまして、さらに苦情処理の体制なりあるいは責任の明確化をはかりたいというふうに考えておるわけでございます。
  229. 折小野良一

    ○折小野委員 時間の関係がございますので、少し急ぎます。  五十条の、いわゆる基地公害に関する紛争を除外した問題でございますが、現在までの状態で、どのような基地に関する公害の紛争があるのか、あるいはそれはどれくらいの件数が起こっておるのか、そしてそれがどのように処理されておるのか、防衛庁関係にお聞きいたしたいと思います。
  230. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 お答えいたします。  自衛隊並びに米軍の施設の運用に伴いまして、周辺に種々の障害を及ぼしておるということは事実でございますが、世間一般に基地公害と呼ばれておりますいろいろな問題の中には、この公害本法にいうところの騒音あるいは水質汚濁、そういったような六つのいわゆる公害以外に、いろいろな地元との紛争といいますか苦情、そういったものが生じておるわけでございますが、私どもはこういう周辺の障害あるいは民生安定につきまして、従来行政措置あるいは立法措置によって逐次処理してまいったわけでございます。すなわち米軍の行為に基づくところの補償、これにつきましては、先生すでに御承知のとおり、特別損失補償法なるものが昭和二十八年に制定されております。それから自衛隊等の、もちろん米軍の行為も入りますが、防衛施設周辺の整備等に関する法律、これが四十一年度に制定されました。こういう法律あるいは行政措置によりまして、いわゆる公害本法にいうところの騒音等の障害の問題の解決、こういうことは、紛争に至る前に、かくかくの障害が基地に生じておるというような陳情ないしは苦情を受けた場合には、私どもは直ちに調査をやりまして、先ほど申しました法令によって、逐次措置しておるわけでございます。  ただいま先生の御質問の、いままで何件あったかということは、突然の御質問でございますので、現在その資料を持ち合わせておりませんが、ともかく当庁といたしましては、紛争にならない前に、障害の除去あるいは人の健康、それから生活環境の整備、そういった問題につきましては、積極的に迅速に処理いたしておるわけでございまして、先ほど御質問がありました水質汚濁によるところの漁業の補償、こういった問題も、かりに原因者が米軍であるあるいは自衛隊であるといった場合には、逐次、従来、適法に漁業を営んでおった漁業者に補償を払っておるということで、いろいろな障害の除去等につきましては前向きで処理しておるというのが実情でございます。
  231. 折小野良一

    ○折小野委員 いろいろな対策を講じておられることは承知いたしております。しかし公害に対するいろいろな対策を講ずるということと、紛争処理ということとはおのずから別問題であります。そこに紛争があるならば、やはり紛争処理の対象になっていいというふうに考えます。この法案が決定される前の段階におきましては、この五十条のような条項はなかった。しかし途中でこの五十条ができたというふうに聞いておるわけでございますが、この法案で基地関係公害紛争を処理することに困るという問題点あるいは隘路、こういうものがあってのことだと思いますが、それはどういうことでありますか、お聞かせいただきたいと思います。
  232. 床次徳二

    ○床次国務大臣 基地の公害をこの際におきまして別の手続によりまして処理することにいたしましたのは、これは御承知のごとく、基地は防衛施設として使っておりますので、その性格が特殊である。たとえば空港等におきましても、普通の民間空港でありまするならば定時発着をいたしておりまするが、しかし防衛関係でありますると、練習の時間また緊急発進等の状態がありまして、事情が違っておるという点がある。なお、米車が使用いたしまする際等いろいろありますので、立ち入り検査その他におきましても支障があるという点で、やはり防衛施設としての特色があると思います。もう一点は、先ほどもお話がありましたが、防衛施設に関するところの整備法ができておりまして、これがかなり徹底して実効をあげておるわけであります。損害に対する補償あるいは民生安定の諸施設、さらに異議の申し立て等に対しましても、それぞれの処置を講じておるのでありまして、今回の紛争処理法案において予期しましたものはすでに行なわれておるという状態であったわけであります。私どもも立法の段階においていろいろ検討いたしたのでありまするが、実際の運営におきましては、五十条を設けない時代にありましても、やはりこの基地周辺の整備法というものの存在を前提として、審査会あるいは中央審査委員会におきまして処置をはかっていくという運営を私ども予想しておった関係上、特に五十条として切り離しましても、実効におきましては大きな差がないというふうに考えておる次第であります。  なお、お話がありましたところの、紛争になった場合はどうかということでありますが、今日までこれがかなり円満に解決せられておりまして、なお、損害賠償等に対して異議の申し立てがありましたときには、さらにこれを検討いたしまして、十分納得のできる処置を講ずるというふうになっております。したがって五十条によりまして「別に法律で定めるところによる。」というふうにいたしまして、基地周辺整備法によりまして解決いたしておることが今日では適切でないか、かように考えた次第であります。
  233. 折小野良一

    ○折小野委員 基地は、米軍であろうと日本軍であろうと――日本軍というのはおかしいでしょうが、自衛隊であろうと、一般の場合と態様が多少違っておるということもわかります。また同時に、防衛施設周辺の整備等に関する法律があって、いろいろ行なわれておるということもわかります。しかしながら、そこに紛争があります以上、また紛争があることが予想されます以上は、やはりそれに対して何らかの方法というものが講ぜられていいわけであります。別に紛争処理について条項を置いて、この法案の適用を除外する、それほど大きな理由があろうとは私ども考えられないわけでございます。むしろこういう法案の適用を置いて、そうして紛争に対してもこのような措置が講ぜられておるということが、紛争を少なくするゆえんでございましょうし、またそれによって防衛施設に対する国民の信頼をつなぐことになるのじゃなかろうかというふうに考えるわけでございます。  どうも時間があんまりありませんので、これで最後にしたいと思いますが、この法案で別に「法律で定めるところによる。」というふうにございますが、いままで聞いたところあるいは報道されたところによりますと、防衛施設周辺の整備等に関する法律改正するかあるいは別途の法案を出すか、こういう問題を検討しておられるというふうに私ども伺っておりました。ところが、先般この法案が本会議におきまして提案されました場合の質問に対する総理の答弁は、別にそういう措置は必要でないのだ、こういうようなことでございます。いわば、政府の見解が一致いたしていないということなんでございますが、総務長官といたしましては、どのような見解でございますか。あるいは、その見解が政府の見解として統一された見解でございますかどうか、お伺いいたします。
  234. 床次徳二

    ○床次国務大臣 この問題は、防衛庁において御答弁申し上げると思いますが、特に総務長官よりという話でありますので、私からも申し上げますが、すでに佐藤総理からも御答弁申し上げておりますが、現在の整備法をもって十分に解決できるというふうに考えておるのであります。  なお、防衛当局からは別に御答弁申し上げます。
  235. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 この公害紛争処理法案先生も十分御承知のとおり、公害本法の二十一条にいうところの、「必要な措置を講じなければならない。」ということを受けまして制定されたものと、私どもは解釈しておりますが、この必要な措置ということで、和解の仲介、あるいは仲裁、調停、これらの制度を設けることによりまして、公害にかかわるところの紛争の迅速かつ適正な解決をはかるものでありますが、この二十一条の定めは、ただいま申し上げました和解の仲介、調停及び仲裁の三つの手段だけで解決していいということではなくて、私どもは、実体法によって紛争が処理できれば、そういう方法でも解決の一つの手段であるというふうに考えております。したがいまして、公害原因者、その他その態様などから見まして、紛争の迅速かつ適正な解決をはかるための手段であるならば、この三つの方法をとるほかに、ほかの措置を講じてもいいのではないかというふうに解釈しております。すなわち、先ほども申しましたように、いやしくも防衛施設の運用によって生じますところの障害につきましては、関係者と十分調整をいたしまして、周辺整備法により、あるいは特損法によりまして、実質的な救済方法を積極的に行なっておるわけでございます。今後とも地域住民の皆さんに迷惑あるいは不便をおかけすることのないように最大の努力を払っていきたい、またいろいろの苦情、陳情等につきましては、基地の近くに防衛施設庁の出先の局もありますれば事務所もございます。あるいは自衛隊の施設では、自衛隊の司令が、地元の皆さまの苦情、陳情等を都道府県、市町村、そういう方々からお聞きします。そういうことで、それらの皆さん方の御協力によりまして、先ほども申し上げましたとおり、これこれの障害が起きているから何とかせいというような話が持ち上がってまいりますと、みずからその原因調査いたしまして、それを逐次解決いたしておる。したがいまして、そう  いうような方法でやっておりますし、今後もこの防衛施設周辺の障害防止、紛争に至る前の障害防止、そういう問題につきましては、従来以上に最善の努力を払っていきたい、かように考えておりますので、いまこの改正案提案するということ  は考えておらないということでございます。
  236. 折小野良一

    ○折小野委員 実態的に公害処理されておるということと、紛争に際して、紛争処理の必要な制度が設けられるということとは、これはおのずから別の問題だと思います。そういう面について、ただいまの御答弁は全然納得がいきませんが、しかし時間の関係もございますので、あとはまた同僚議員の質問にまつということにいたしまして、私の質問はこれで終わります。
  237. 赤路友藏

    赤路委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時三十六分散会