○河上
委員 私は、先日
公害紛争処理法案につきましておもに
質問いたしましたが、十分な時間がございませんでしたので、きょうは引き続き
質問の時間をいただきまして、
被害者救済法案を中心に御
質問をいたしたいと思います。
この法案の
質問に入るに先立ちまして、私として特に願いますことは、この法案が、現在いわれのない
公害のために呻吟しておられる
健康被害者の上に
一つの大きな福音となることを願っておるのでございます。また、万一不幸にして、今後現段階では予想されないような
公害病が起こった場合に、この法案が有効に対処できるように、そういうことを私はいま痛切に思っておるのでございます。そのような
立場から、この法案に対し私は疑問といたしますところを
質問さしていただきまして、法案の輪郭を明らかにしてまいりたい、こういうふうに思うのであります。
今回の
内閣提出の法案を拝見いたしますると、いろいろ
問題点はございますけれ
ども、その中で重要なものをあげますと、第一は、この法案の
目的と申しますか、この法案がカバーする対象が著しく制限されておることだと思います。御承知のとおり、
公害によって
被害をこうむった方々の切に願っておる点は、第一に健康の
被害に対する補償であります。第二は物的なそれに伴う
生活上の損害に対する補償であり、第三は
精神的な損害に対する補償であろう、こういうふうに思うわけでございますが、今回の法案では、
健康被害にその
救済の対象を限定してしまっておるという点に私
どもとして不満があるのでございます。その点につきましては、わが党の
提出いたしました案においては、
公害にかかる
被害の
救済という場合には、健康と同時に、物的な損害も含めておるような次第であります。
なお、この法案の
健康被害に限定いたしましたといたしましても、その中でその
原因となります
公害について、
大気汚染と
水質汚濁だけに限ってしまった、こういう点も私
どもとして納得のいかないところでございます。この法案は
公害対策基本法にのっとってできたものであるといわれながら、
公害対策基本法であげられておりますところの六つの
公害――
大気汚染、
水質汚濁、地盤沈下、振動、騒音、悪臭、こういう六つのうちの残りの四つのものは対象外とされておる。しかもいままでのあらゆるケースによりますと、ことに騒音のごときは明らかに
健康被害を起こしておるのであります。そういう点について、私
どもとしては納得のいかぬ点を覚えるのであります。
第二は、この法案の第二条以下に、
指定地域の
規定がいろいろあるのでありますけれ
ども、この「
指定地域」という
考え方の輪郭が非常にあいまいである。この点について、私
どもは明確にしてまいらなければならないというふうに思うのであります。
第三点は、医療給付の内容でありまして、医療給付に関するいろいろな
規定を拝見いたしますると、十八世紀から十九世紀にイギリスにおいて救貧法――プア・ローという
法律がございましたが、その給付の制限によく似ているというか、それを想起せざるを得ないような内容になっておるのであります。つまりいろいろなところへ引っかかって、結局実質的には
人間的にある種の自尊心を傷つけられるような形でしか給付を受けられないような、そんな
感じになっておるような気がいたすのでございます。特に一方では所得制限というような、
考えられないような制限さえ加えられておることが、私
どもとしては遺憾とするところであります。
第四点は、
被害者救済に充てる
公害基金の問題でありまして、この
公害基金の内容が政府案によりますると、
公害源となりました企業の
責任というものがきわめてあいまいになる。そういう点にわれわれは基本的な理念の上で問題を感ずるわけでありまして、わが党案では、まず政府あるいは地方公共団体が医療の
救済に当たった後、
公害源となりました企業の
責任を全面的に追及するということになっておるのであります。
なお、昨年来新聞で報道されたところによりますと、
公害基金の負担区分につきまして、八分の五を企業が負担するということになっておりましたのが、今回
提出された案によりますると、六分の三あるいは八分の四、つまり半分に後退したという点は、これはいかなる政治的
状況によるものであるか、いささか疑問を抱かざるを得ないのであります。
そういうようないろいろな問題がございますが、先日、
公害紛争処理法案に対する
質問の中でも若干触れました点もございますので、私があげました四つのうち、特に第二と第三のこの二点に話を少ししぼりまして、法案の輪郭を明らかにする
目的をもって、御
質問をしたいと思っております。
そこでまず第一に、第一条及び第二条におきまして、この法案、つまり
救済の対象になる地域
指定といいますか、範囲を限定しておるのでございます。それによりますと、「相当範囲にわたる著しい
大気の
汚染又は
水質の
汚濁が生じたため、その影響による疾病が多発した場合」ということになっておるのでありますけれ
ども、この「相当範囲」とは何か。「疾病が多発している地域」という、「多発」というのはどの
程度のものであるか。この非常にあいまいなことばの中に、かなり重大なものが隠されておるように思いますので、初めにその点を
伺いたいと思います。