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1969-04-02 第61回国会 衆議院 産業公害対策特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年四月二日(水曜日)     午前十時二十四分開議  出席委員    委員長 赤路 友藏君    理事 天野 公義君 理事 田村 良平君    理事 橋本龍太郎君 理事 藤波 孝生君    理事 河上 民雄君 理事 島本 虎三君    理事 本島百合子君       塩川正十郎君    葉梨 信行君       工藤 良平君    山口 鶴男君       米田 東吾君    折小野良一君       岡本 富夫君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      床次 徳二君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房審議室長   橋口  收君         経済企画庁国民         生活局長    八塚 陽介君         厚生省環境衛生         局公害部長   武藤琦一郎君         通商産業政務次         官       藤尾 正行君         通商産業省企業         局立地公害部長 矢島 嗣郎君         通商産業省鉱山         保安局長    橋本 徳男君  委員外出席者         議     員 角屋堅次郎君         参議院議員   内田 善利君         経済企画庁国民         生活局参事官  宮内  宏君         文部省管理局教         育施設部長   菅野  誠君         農林省農地局参         事官      井元 光一君         通商産業省鉱山         保安局鉱山課長 下河辺 孝君         運輸省自動車局         整備部長    堀山  健君         日本国有鉄道運         転局長     阪田 貞之君     ――――――――――――― 三月二十日  委員山田太郎辞任につき、その補欠として岡  本富夫君が議長の指名委員に選任された。 四月二日  委員中井徳次郎君及び浜田光人辞任につき、  その補欠として工藤良平君及び山口鶴男君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員工藤良平君及び山口鶴男辞任につき、そ  の補欠として中井徳次郎君及び浜田光人君が議  長の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 三月十九日  公害に係る健康上の被害救済に関する法律案  (小平芳平君外一名提出参法第一号)(予) 同月二十二日  公害に係る紛争等処理に関する法律案小平  芳平君外一名提出参法第五号)(予) 同月二十五日  公害に係る被害救済に関する特別措置法案  (角屋堅次郎君外十二名提出衆法第一〇号)  公害紛争処理法案角屋堅次郎君外十二名提出、  衆法第二〇号)  公害に係る健康被害救済に関する特別措置法  案(内閣提出第六三号)  公害紛争処理法案内閣提出第六八号)  公害委員会及び都道府県公害審査会法案小平  芳平君外一名提出参法第六号)(予) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  公害に係る健康被害救済に関する特別措置法  案(内閣提出第六三号)  公害紛争処理法案内閣提出第六八号)  公害に係る被害救済に関する特別措置法案  (角屋堅次郎君外十二名提出衆法第一〇号)  公害紛争処理法案角屋堅次郎君外十二名提  出、衆法第二〇号)  公害に係る健康上の被害救済に関する法律案  (小平芳平君外一名提出参法第一号)(予)  公害に係る紛争等処理に関する法律案小平  芳平君外一名提出参法第五号)(予)  公害委員会及び都道府県公害審査会法案小平  芳平君外一名提出参法第六号)(予)  産業公害対策に関する件(大気汚染及び水質汚  濁対策等)      ――――◇―――――
  2. 赤路友藏

    赤路委員長 これより会議を開きます。  内閣提出公害紛争処理法案議題とし、提案理由説明を聴取いたします。床次総理府総務長官
  3. 床次徳二

    床次国務大臣 ただいま議題となりました公害紛争処理法案について、その提案理由を御説明申し上げます。  公害問題は、申すまでもなく、現在緊急な解決を必要とする国民的課題でありますので、政府といたしましては、従来から、公害対策基本法精神にのっとり、各般公害対策を講じているところであります。  公害対策におきましては、何よりも公害発生未然に防止する措置を講ずることが肝要でありますが、同時に、公害発生した場合に備えて、公害紛争処理制度を整備することが必要であります。  公害による被害は、単に財産的なものにとどまらず、人の生命、健康に及び、しかも、当事者が多数にわたり、かつ、加害被害との因果関係究明も困難である等、公害特有の問題があり、これらが公害にかかわる紛争の迅速、円滑な解決な困難ならしめているのが実情であります。  かかる公害にかかわる紛争処理する行政上の制度として、現在、水質汚濁大気汚染等につきまして和解仲介制度がありますが、調停仲裁を行ない得ない等不備な点が多く、また現行司法制度をもってしては、必ずしも簡易迅速な解決をはかるのに十分でないうらみがあります。  このような公害紛争処理制度現状にかんがみ、また公害にかかわる紛争について必要な措置を講ずべきことを定めた公害対策基本法第二十一条第一項の精神にのっとり、公害にかかわる紛争の迅速かつ適正な解決をはかるため、公害紛争処理制度を整備すること等を目的として、ここに公害紛争処理法案提案することといたした次第であります。  次にこの法律案のおもな内容について、その概要を御説明申し上げます。  第一に、公害にかかわる紛争処理するための専門的な機構中央及び地方に置くこととしたことであります。中央に置かれる中央公害審査委員会においては、現に人の健康または生活環境公害にかかわる著しい被害が生じ、かつ、当該被害が相当多数の者に及び、または及ぶおそれのある紛争、広域的な見地から解決する必要がある公害にかかわる紛争被害地及び加害地が二以上の都道府県区域にわたる公害にかかわる紛争について調停及び仲裁を行なうこととしております。また、地方に置かれる都道府県公害審査会等においては、これらの紛争以外の紛争について和解仲介調停及び仲裁を行なうこととしておりますが、さらに被害地及び加害地が二以上の都道府県区域にわたる公害にかかわる紛争については、関係都道府県事件ごとに共同して連合審査会を設け、これを処理することができることとしております。  第二に、これらの機構においては、人格が高潔で識見の高い者のうちから、委員長委員または審査委員候補者が任命または委嘱され、これらの者のうちから、事件ごと指名された仲介委員調停委員または仲裁委員が、それぞれ所定の手続に従い、和解仲介調停または仲裁に当たることとしております。なお、調停の場合には、当事者に対し出頭要求を、また一定の場合に文書、物件の提出要求ないし立ち入り検査を行ない得ることとしております。仲裁の場合にも、同様の権限を与えております。  第三に、これらの機構については、具体的な紛争処理を通じて得られた公害防止施策の改善についての意見を、中央においては内閣総理大臣等に対し、地方公害審査会においては都道府県知事に対して申し述べることができることとしております。  以上のほか、公害問題は、地域住民に密着した問題でありますので、地方公共団体は、公害に関する苦情について適切な処理につとめる旨の規定を設けた次第であります。  なお、いわゆる基地公害といわれる防衛施設にかかわる障害に関する事項については、この法律案において別に法律で定めるところによることとしておりますが、これは、その原因となる自衛隊等の行為の特殊性から見て、一般の産業公害と同じ扱いとすることは不適当であり、また、政府は、すでに防衛施設周辺整備等に関する法律等により障害防止工事及び民生安定施設の助成、損失の補償等について手厚い措置を講じ、その補償について異議の申し出等制度を設け、円滑な解決をはかってきておりますので、これらの措置によることとした次第であります。  以上が、この法律案提案理由でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決くだされるようお願い申し上げます。      ――――◇―――――
  4. 赤路友藏

    赤路委員長 内閣提出公害に係る健康被害救済に関する特別措置法案議題とし、提案理由説明を聴取いたします。斎藤厚生大臣
  5. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいま議題となりました公害に係る健康被害救済に関する特別措置法案について、その提案理由を御説明申し上げます。  今日、産業経済の急速な発展都市化進展等に伴って発生する公害問題が、緊急に解決を要する重大な社会問題となっていることは、すでに御承知のとおりでございます。  この問題に対処するため、政府といたしましては、公害対策基本法に定められた理念と方向に従い、従来から、各般にわたる公害防止のための施策拡充強化につとめてまいったところであります。公害問題の解決のためには、公害発生未然に防止するための対策が重要であることは申すまでもありません。しかしながら、現に発生している公害による被害救済をはかることもまた対策の一つとして欠くことのできないものであります。  公害による被害については、公害発生原因者民事責任に基づく損害賠償の道が開かれておりますが、現段階においては、その因果関係立証発生責任者明確化等の点で困難な問題が多く、このため、被害救済の円滑な実施をはかるための制度確立が強く望まれているのであります。このような見地から、公害対策基本法精神にのっとり、公害による被害のうち当面緊急に救済を要する健康被害について、迅速かつ適切な救済をはかることを目的として、ここに本法律案提案することといたした次第であります。  以下、この法律案のおもな内容について、その概要を御説明申し上げます。  第一に、この法律による救済措置は、相当範囲にわたる著しい大気汚染または水質汚濁が生じたため、その影響による疾病が多発している地域指定し、これらの指定地域都道府県知事または政令で定める市の長が当該疾病にかかっている旨の認定をした者に対して行なうことといたしております。  第二に、救済措置としては、医療費のほか、医療手当及び介護手当支給するものとしております。医療費は、当該疾病医療に要した額から社会保険等による医療に関する給付の額を控除した額を対象として支給することといたしております。医療手当は、病状一定の程度以上の者に支給し、介護手当は特に介護を要する者に支給することとしておりますが、本人、配偶者等所得税の額が一定額以上の場合は支給制限を行なうことといたしております。  第三に、給付に要する費用についてでありますが、産業界、国及び地方公共団体がそれぞれ分担するものとし、その割合は、都道府県が実施する場合は、産業界四分の二、国及び都道府県それぞれ四分の一とし、市が実施する場合は、産業界六分の三、国・都道府県及び市がそれぞれ六分の一といたしております。なお、産業界及び国の分担は、公害防止事業団を通じて行なうことといたしております。  第四に、産業界分担は、本制度に協力することを目的とする民法による法人で、その申し出により厚生大臣及び通商産業大臣指定を受けたものが、公害防止事業団と契約を締結し、毎年事業団に対して所定の額を拠出することによって行なうことといたしております。  以上のほか、被害者損害賠償等を受けた場合における本制度による給付との調整の措置その他この法律を実施するため必要な措置について規定いたしております。  以上がこの法律案提案理由でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)      ――――◇―――――
  6. 赤路友藏

    赤路委員長 角屋堅次郎君外十二名提出公害に係る被害救済に関する特別措置法案及び公害紛争処理法案、これを議題として、提案理由説明を聴取いたします。角屋堅次郎君。
  7. 角屋堅次郎

    角屋議員 私は、提案者を代表いたしまして、ただいま議題となりました日本社会党提出公害に係る被害救済に関する特別措置法案並びに公害紛争処理法案につき、提案理由とその内容概要を御説明申し上げます。  戦後わが国経済は、敗戦の廃墟の中から再出発し、今日世界第三位の生産力を誇るまでに成長いたしましたが、庶民の生活実感からすれば、生活は決して楽になったとはいえず、むしろ物価の上昇、公害激増交通事故多発等による生活生命脅威に絶えず不安を感じ、はなやかな見せかけの数字より、もっと中身のある経済成長を待ち望んでおります。特に公害激増は、近年大きな社会問題であり、政府の相も変わらぬ企業擁護姿勢に鋭い批判の眼が向けられ、また企業社会的責任を無視した経営方針の転換を望む国民的世論も、日増しに高まりつつあります。しかし、依然として政府も、企業も、その態度に根本的な反省は見られず、公害経済発展必要悪の如き観念の存することは、まことに遺憾であります。  昨年十二月の国連総会において、スウェーデンの提案による、「世界核戦争による絶滅は避け得ても、公害により同じような脅威を受けている。政府産業界も必要な責任をとるべきだ」とする決議案が採択されましたが、これは世界のいずれの国よりも、まず、日本政府産業界に対する警鐘として謙虚に受け取るべきであります。  元来公害対策の万全を期するためには、公害の予防、公害の排除、公害にかかわる被害救済について思い切った法制的、財政的措置を必要といたしますが、かかる観点から、わが国公害対策現状を見るとき、両者ともにきわめて不十分であり、特に法制的には、現行公害対策基本法をはじめ、大気汚染防止法騒音規制法水質法等抜本改正が必要であり、ただいま提案されました政府の二法案も、原案のままでは、とうてい公害に呻吟する患者はもとより、公害追放を望む国民の期待にも沿い得ないと存ずるのであります。すなわち、政府救済法案は、その対象大気汚染水質汚濁による健康にかかわる被害に限定するのみならず、所得制限をし、しかも被害者及びその家族生活費についての配慮を全く欠いており、被害者救済としてはきわめて不十分であります。これではもし紛争処理法案が完全なものであったとしても、被害者としては当面の医療生活費用にもこと欠き、ついには加害者に有利な条件のもとにおいて妥協してでも、急いで紛争解決をせざるを得ない羽目に追い込まれると判断されるのであります。さらに、政府紛争処理法案は、国に置かれる中央公害審査委員会が独立の行政委員会ではなく、総理府付属機関とされていて、弱体であることは否定できず、その上、仲裁制度も、当事者双方合意による申し立てが、仲裁開始条件であり、したがってこれを利用するかいなかは、事実上加害者の選択にまかせられており、今日企業者倫理意識責任感では、ほとんどこの制度は画餅に帰すると申せましょう。さらに重大なことは、騒音、振動などの基地公害が現に多発しており、今後もその増加が十分予測されるのに、これを適用除外とし、救済の道を閉ざしていることは、国民の健康、生命よりも軍事を優先するという政府、自民党の姿勢を端的にあらわしたものであり、断じて許せないところであります。  今日、公害紛争がこじれて補償問題も解決しないまま苦難にあえぐ公害病患者の悲惨さは、わが党が現地調査を行なった新潟の水俣病、富山イタイイタイ病四日市公害病等患者の実態でも明らかにされ、骨身にこたえるほど公害絶滅に対する政治責任を痛感したのであります。  また、新産都市その他の都市公害紛争を見て、企業の強引さに憤激を覚え、正しい公害紛争解決の道筋を示すことの必要も痛感しております。  わが党が、昨年来の公害総点検、公害絶滅の運動の実績の上に立ち、政府企業姿勢警鐘を鳴らし、国民の健康と生命を守り、被害者擁護の立場から公害法案提案いたしましたのも、当面の重大な政治的課題に真剣にこたえんがためであります。  以下二法案内容について、簡潔に申し上げます。  まず公害に係る被害救済に関する特別措置法案について、その概要を御説明申し上げます。  第一に、公害にかかわる被害救済は、第一条において明らかなとおり、健康または物についての被害について行なうことといたしております。  第二に、公害病患者認定は、政府案の場合、指定地域区域内に、相当期間住所を有することが必要とされていますが、わが党案では、相当時間指定地域内において過ごした期間が、厚生大臣の定める基準以上であればよいとして、郵便集配人等をも対象としたところに相違があります。また政府案では、公害病認定患者指定地域外住所を移したとき、または住所指定地域でなくなったときには、一定期間給付が打ち切られますが、わが党案では、指定疾病もしくは障害に該当しなくなったと認められるまで、打ち切られることはないのであります。  第三は、医療費等支給について、政府案のような所得制限等制限を設けていないことはもとよりでありますが、医療費について、政府案では国民健康保険の一部負担金分のみが支給されるのに対し、わが党案では健康保険法その他の社会保険各法及び健康保険臨時特例法による一部負担金分をも支給することを定め、また介護手当について、政府案介護を受けても介護に要する費用を支出しない場合には介護手当支給をしないとしておりますが、わが党案では、介護を必要とする状態にあり、かつ介護を受けている者に対しては、当然支給をすることとしております。  第四に、生活援護手当については、生計基準額収入とを比較し、収入生計基準額を下回ることとなったとき、その差額生活援護手当として支給し、安んじて療養できるよう措置いたしております。  第五に、物にかかわる被害についての救済は、生計基準額収入とを比較し、収入生計基準額未満となったとき、政令で定める期間、その差額特別手当として支給することにより、物にかかわる被害の打撃から立ち上がれるよう措置しております。  第六に、費用は、政府案では、国、県、政令で定める市、事業者の四者負担方式をとり、そのうち事業者拠出金として拠出することになっております。その場合、政府案に基づく中途はんぱな拠出事業者免罪符を与えたことになる危険性があるのでありますが、わが党案では、これを排して国が費用を受け持ち、反面国は、支給した額の限度において、その支給を受けた者が加害者に対して有する損害賠償請求権を取得することとして、加害者責任を徹底的に追及することといたしております。  次に紛争処理法案について、その概要を御説明申し上げます。  第一に、公害紛争については、和解仲介及び調停制度並びに裁定制度を設けて、解決をはかることといたしておりますが、政府案仲裁制度に対し、裁定制度を設けたことが、わが党案の大きな特徴であります。  すなわち、救済法によって当面の費用は十分にめんどうを見てやり、いたずらに加害者に有利となるような妥協を排し、加害者責任を徹底的に究明するため、当事者の一方のみの申し立てでも開始される準司法的な裁定制度を設けたのであります。  第二に、組織としては、中央国家行政組織法による三条機関たる公害審査委員会を、都道府県公害紛争調停仲介委員会を設けることといたしております。中央裁定を、地方和解仲介及び調停を行なうのであります。  第三は、中央公害審査委員会公害専門調査会を設けたことであります。公害紛争の焦点は、因果関係究明が困難な点にあるのでありますが、これを究明させるため権威ある自然科学者専門調査会に動員いたしまして、これに自然科学上の判断を行なわせ、法律的判断たる裁定はその意見に基づいて裁定委員会が行なうこととし、専門調査会委員及び臨時委員は、審理、証拠調べに立ち会い、独自でも事実調査をすることを認め、これによって裁判上救済の困難な事案を救済するレールを敷いたわけであります。  第四は、裁定訴訟との関係について、特に大気汚染または水質汚濁によって生じた人の生命または身体にかかわる被害についての損害賠償に関する紛争その他の民事上の紛争については、裁定を経た後でなければ、訴訟を提起することができないこととし、裁定の権威を高めるための機構、運営に万全を期することといたしております。裁定委員会証拠調べ及び証拠保全職権探知立ち入り検査等も、公害専門調査会活動と相まち、裁定科学性合理性客観性立証するための必要な措置と申すべきであります。  第五に、裁定の効力は、裁定について、裁定書の正本の送達を受けた日から三カ月以内に、訴えの提起がなかったとき、裁定内容について当事者間に合意が成立したものとみなすことといたしております。  以上、公害関係法案提案理由とその概要でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げまして、二法案趣旨説明を終わる次第であります。
  8. 赤路友藏

    赤路委員長 次に、予備審査のため本委員会に付託されました小平芳平君外一名提出の、公害に係る健康上の被害救済に関する法律案公害に係る紛争等処理に関する法律案、及び公害委員会及び都道府県公害審査会法案、以上三案を議題とし、提案理由説明を聴取いたします。内田善利君。
  9. 内田善利

    内田(善)参議院議員 ただいま議題になりました三法案につきまして、公明党を代表いたしまして、提案理由を御説明申し上げます。最初に、公害に係る健康上の被害救済に関する法律案提案理由説明いたします。  公害対策の要諦は公害発生未然に防止することにあります。事前防止対策を完全に講ずるならば公害病発生もあり得ないのであります。しかし、政府が今までとってきた公害対策は、経済発展を優先してきたために、事前防止策が立ちおくれ、不幸にして多数の公害病患者発生せしむるに至ったのであります。すなわち、熊本県水俣、新潟県阿賀野川における有機水銀中毒病富山におけるイタイイタイ病など、工場排水等原因と思われる悲惨な公害犠牲者を出してきたのであります。また、四日市における石油コンビナート大気汚染によるぜんそく患者をはじめとして、京浜工業地帯、東京の環状七号線交差点の大原においてもぜんそく病状発生していることは、御承知のとおりであります。  しかるに、これらの公害病患者に対する行政救済法制度は存在せず、わずかに予算運用公害病患者の一部に対する医療給付が行なわれているにすぎません。もちろん司法的救済の道もありますが、訴訟費用と時間がかかることや、救済迅速性に欠けること、因果関係立証が困難なことなどの障害があって、公害病救済になじまないのであります。  このような法制度の不備という谷間に追いやられた公害病患者家族の肉体的、精神的、経済的苦しみは想像を絶するものがあるのでありまして、これら公害病患者の置かれている悲惨な境遇と、救済制度確立に対する切実な願いを思うとき、わが公明党は、これらの人々を一日も早く救済するために、独自の新しい制度を創設する必要性を痛感するのであります。  公害病は、現代産業社会における人間の、社会的、経済的活動によってもたらされる災害であります。しかも、わが国における公害病の多くは、最近十数年の高度経済成長政策に基づく企業産業活動によってもたらされたものであります。経済発展という名目のもと、地域住民に対して塗炭の苦しみを与えることは許せないことであります。また技術的に解決が困難という理由で放置することはできないのであります。  次の法案の要旨を説明いたします。  この法案による救済対象公害にかかわる健康上の被害でございまして、救済の種類は医療費医療手当介護手当及び弔慰金の支給及び更生、生計維持のための資金の貸し付けでありまして、他に健康診断も実施いたすことになっております。  救済の仕組みでございますが、公害病発生していると認められる地域と、疾病の種類を公害委員会指定し、次に都道府県知事公害病患者及び公害病による障害者を認定し、これらの人に対して知事が救済給付を行なうことになります。  医療費支給については、社会保険、社会福祉各法による医療給付を控除した部分、つまり患者の自己負担分をカバーすることとします。  医療手当は通院、入院によって医療を受けている者に対して行なわれるものであって、いわば医療に伴う日常必要とする雑費でございます。在宅治療患者介護を要する重症患者に対しては介護手当を、また不幸にして公害病で死亡された方の遺族に対しては弔慰金を支給することといたします。  公害病発生している地域においては、常時住民の健康管理を実施することによって、公害病の予防と早期治療をはかる必要がありますので、健康診断を実施することといたします。  以上の給付都道府県知事が行なうのでありまして、これに要する費用の負担については、国が八分の六、都道府県が八分の一、市町村が八分の一をそれぞれに負担することとし、国及び地方公共団体給付に要した費用額を限度として、公害病原因者に対して損害賠償を行なうことができる仕組みになっているのであります。  なお、公害病患者障害者が置かれている特殊な状況を考えて、事業援助、技能習得、生計維持のための資金の貸し付けの制度を設けることによって、経済的側面からの援助をはかることといたします。  以上が本法案提案理由と要旨であります。何とぞ慎重審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  次に、公害に係る紛争等処理に関する法律案提案理由説明いたします。  御承知のとおり、最近における産業の急速な発展都市化等によって、全国各地の工業地帯や都市において、深刻な公害紛争を惹起しているのであります。  多くの人々がいかに公害に悩まされているかを、具体的に数字で示しますと、昭和四十二年度において、地方公共団体が取り扱った公害にかかわる苦情、陳情件数は、大気汚染水質汚濁騒音、悪臭、地盤沈下など、合計して二万七千五百八十八件に達しておるのであります。四十一年度の取り扱い件数二万五百二件に比較して、四十二年度は八千五百余件増加しているのであります。公害対策が画期的に前進しない限り、遺憾ながら、今後も苦情や紛争はなおも増加し続けるものと予想されるのであります。  現在、このような公害にかかわる苦情や紛争解決の方法としては、司法的解決行政解決と二つの方法がありますが、司法的解決は、迅速な解決を要する公害紛争にはなじまないのでありまして、どうしても、行政的な処理制度が必要となってくるのであります。  一方、行政解決としては、ばい煙は大気汚染防止法水質汚濁水質保全法、騒音騒音規制法、鉱山の鉱害は鉱業法、水洗炭は水洗炭業法によって、紛争についての和解仲介やあっせんの制度が設けられておるのであります。しかし、これらの制度は、公害紛争処理制度として、個別に取り上げてみても、また、全体として見ても、幾つかの欠陥があるのであります。  まず第一に、和解仲介やあっせんの制度は、紛争当事者に対して、行政が話し合いの場を提供し、和解への消極的な誘導をするだけで、積極的な関与ができない仕組みであります。公害紛争の特質から考えて、公正な機関が、権限を持って、積極的に関与していく調停仲裁等の方法が必要になるのであります。場合によっては、公害発生源への立ち入り検査などできるようにして、科学的で公正な事案の解決を期することが必要なのであります。この点から考えても、現行和解仲介制度は、はなはだ微温的なものと言えるのであります。  第二に、現行処理制度は、公害の一部分についてカバーするだけであって、悪臭や日照妨害等については何ら触れていないのであります。公害の苦情、陳情の実態を見ましても、今後なお、産業の発展、社会生活の変化に応じて、この種の公害は増加することが予想されますので、これらの公害にかかわる紛争処理も取り込んで、制度確立する必要があるのであります。  なお、発生源がどのようなものであれ、統一的な紛争処理制度のもとで、これを処理するのが望ましいのでありまして、国民の健康を保護し、生活環境を保全することを第一義と考えるならば、自衛隊や外国軍隊の基地から発する公害についても、他の公害と同一の取り扱いをすべきことは当然であります。  第三に、現行公害紛争処理が、公害原因の種類ごとに別々の法律により、別々の処理機関によって行なわれており、制度が複雑になっていることであります。このことが、紛争処理制度の効率的運用を妨げ、ひいては紛争の迅速な解決障害を及ぼすことになるのであります。  第四に、公害や、生活妨害にかかわる日常の苦情相談の窓口の設置が法制化されていないことであります。地方公共団体が、それぞれくふうをこらして窓口を設けているところがございますが、必ずしも十分の体制とは申せないのであります。  以上述べたような、現行公害紛争処理制度の欠陥を是正し、一元的かつ体系的な紛争処理制度確立し、もって公害紛争の迅速、公正な解決をはかろうとするのが、本法律案提案理由であります。  次に、法案の要旨を申し上げます。  第一に、紛争処理対象は、公害対策基本法に定められた相当範囲にわたる六種類の原因によって生ずる被害にかかわる紛争とし、苦情処理対象は、日常の生活妨害をも取り扱うものであります。いわゆる、紛争処理対象を典型公害的な事案を取り扱うこととし、苦情処理対象は相隣関係に基づく生活妨害的な事案を取り扱うことといたします。  第二に、苦情処理については、都道府県または政令市に設置する苦情相談員が取り扱うこととし、住民の日常の公害苦情の解決のため相談、助言、指導、調査に当たることとします。  第三に、公害原因が相当範囲にわたる公害紛争処理については、中央に設けられる公害委員会都道府県に設けられる公害審査会が取り扱うことといたします。  そして、中央公害委員会は一つの都道府県における公害発生源が他の都道府県被害を及ぼす場合や、高度の知識、判断を要する場合等の紛争を取り扱い、地方公害審査会はその他の紛争処理を取り扱うこととなっておるのであります。  第四に、紛争処理内容でありますが、和解仲介調停及び仲裁の三つの方法をとれるようにいたします。  調停については、調停案の受諾の勧告ができるようにし、場合によっては調停案を公表し、調停不調の場合でも、事件の要点及び経過を公表することができることになっております。  仲裁にあたっては、仲裁人は関係文書、物件の提出を求め、立ち入り検査ができることとなっているのであります。  第五に、公害審査機関は、公害紛争処理のために関係行政機関に対して必要な協力を求めることができるとともに、紛争処理に関連して意見を述べることができることといたしております。  以上が、本法案提案理由並びに要旨でございます。  何とぞ、慎重審議の上、すみやかに御可決くださいますよう、お願い申し上げます。  次に、ただいま議題となりました公害委員会及び都道府県公害審査会法案について、提案理由を御説明いたします。  わが国においては、従来、公害行政を統一的につかさどる機関が欠除しており、各省庁が既成の行政分野の中で、それぞれ、部分的に公害行政を分割担当しているのでありまして、関係するところは十数省庁に及んでいる実情であります。そのために、公害防止施策に統一性を欠き、体系的な対策確立がおくれているのであります。わが公明党は、かねてから、これらの欠陥を指摘するとともに、強力な権限を有する行政委員会の設置を主張してきたのであります。  一方、公害の事後処理のための行政機関についても同様のことが言えるのであります。公害紛争処理については、紛争発生原因、種類によって、これを取り扱う法律解決の方法、処理機関が異なっております。たとえば、鉱山の鉱害にかかわる紛争は、鉱業法によって通産局長があっせんを行ない、一般の工場、事業場のばい煙にかかわる紛争は、大気汚染防止法によって都道府県知事和解仲介を行なうなど、紛争当事者、特に、被害者にとって利用しにくい複雑な仕組みになっているのであります。  また、公害による被害救済については、これを法律上の明確な権限を持って処理する機関もなく、現在は、国が便宜的に予算上の措置で、一部の地域公害にかかわる疾病について、医療給付を行なっているにすぎません。  わが党が提出している公害に係る紛争等処理に関する法律案公害に係る健康上の被害救済に関する法律案は、以上のような障害を解消するために、具体的な方法を規定しようとするものでありますが、その前提として、公害にかかわる紛争処理被害救済の事務を一元的に取り扱う機関として、中央には公害委員会を、都道府県には、公害にかかわる紛争処理の事務を取り扱う機関として都道府県公害審査会の設置を明定する必要があるのであります。  御承知のとおり、公害は科学的にも法律的にも複雑な性格を持っているのでありまして、これを処理するためには専門的機関が必要となるのであります。特に、中央に設置する公害委員会は、紛争処理については准司法的機能を、被害救済については判定機能を有することとなるのでありすすが、裁定、判定の公正を期するためには、高度の識見にささえられ、しかも、他の行政機関から制約されずに、独自の権限を行使する機関でなければなりません。この意味において、中央の公電委員会は、国家行政組織法の第三条に基づいて設置する機関とする必要があります。これに伴って、公害委員会委員については、公害問題について高い識見を有する者のうちから、国会の同意を得て、内閣総理大臣が任命することとするとともに、委員活動を補佐するための事務局を設置することといたすのであります。  また、地方機構については、各都道府県公害審査会を必置することによって、紛争処理についての態勢を常時整えておく必要があるのであります。  次に、この法律案の要旨を申し上げます。  国家行政組織法第三条に基づいて、総理府の外局として、公害委員会を設置し、公害にかかわる健康上の被害救済に関して、健康診断並びに認定患者及び認定障害者の認定の事務並びに公害にかかわる紛争処理等に関する事務に当たらせること。  公害委員会委員は六名とし、公害問題に関し高い識見を有する者のうちから、国会の同意を得て、内閣総理大臣が任命すること。なお、委員会の議事及び委員会の行なう公害にかかわる紛争処理に参与させるため、特別委員を置くこと。  公害委員会に事務局を置くこと。  都道府県都道府県公害審査会を設置し、公害にかかわる紛争処理に当たらせること。  都道府県公害審査会委員は四人とし、公害問題に関し識見を有する者のうちから、都道府県知事が任命すること。なお、特別委員を置くことができるのは、公害委員会の場合と同様であります。  この法律は、昭和四十四年六月一日から施行すること。  以上が、公害委員会及び都道府県公害審査会法案提案理由並びに要旨であります。  何とぞ、慎重審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願いいたします。  以上でございます。
  10. 赤路友藏

    赤路委員長 以上で提案理由説明は終わりました。  各案についての質疑は後日に譲ることといたします。      ――――◇―――――
  11. 赤路友藏

    赤路委員長 産業公害対策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。河上民雄君。
  12. 河上民雄

    ○河上委員 ただいま公害に係る被害救済法案公害紛争処理法案につきまして、各党よりあるいは内閣より、いろいろ提案がなされたわけでございますけれども、顧みますと、一昨年公害対策基本法が制定され、また昨年大気汚染防止法騒音規制法などいわゆる実施法が制定されまして、本日当委員会におきまして被害者救済法案公害紛争処理法案との趣旨説明がそれぞれなされたわけでございます。  つきまして、われわれとして考えなければなりませんことは、こういう法案内容につきましてはいろいろ意見はございますけれども、ともかく法律が整備されてまいりますにつれて、一体法律を運営していく公害行政の体制が十分できているだろうかという反省でございます。もし公害行政が十分に充実していなくては、法律の効果も期し得ないのではないか、こんなふうに考えるのであります。  そこでひとつお伺いしたいのでありますけれども、こうした法案に伴って、公害行政機構の整備拡充がなされておるわけでございましょうが、それを運営しております公害行政官といいますか、公害担当官の質的な面はどうなっているのだろうか、こういう点でございます。実情を見てみますと、各府県などでも、いわばしろうとの人がいきなり公害課長などに任命されて、公害課長はお忙しいというような形で、汗をふきふき、問題が起こるたびに飛び回っているというのが実情ではないかと思うのでございますが、政府は一体こういう問題についてどう感じておられるか、認識しておられるか、この点をお伺いしたいのであります。  実は先般、毎日新聞を拝見しておりましたら、厚生大臣が次のようなことを言っておられて、たいへんわれわれ心強く思ったのでありますけれども、特にこの点につきまして、厚生大臣から伺いたいのであります。厚生大臣は「真に国民のための公害対策確立するには、この時点でこれまでの公審対策の欠点をきびしく反省するとともに、今後の公害対策に対して、社会的良識と科学的合理性をもって対処する方式を打立てなければならない。」こう言われておるのでありますけれども、まず事務当局に先立ちまして、厚生大臣より、公害担当官の質的な問題についてどうお感じになっておられるか、伺いたいと思います。
  13. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 まことにごもっともな御質問でございますが、公害行政関係するところ非常に広うございます。われわれ厚生省といたしましては、この公害が人間に及ぼす影響という点を主に究明をいたし、そしてそれに対する対策を考えていかなければなりません。それにつきましても、一体公害と一口に申しましても、御承知のように公害源がずいぶんと多種多様になっているわけでありますから、それらの公害源の発生することについての科学的技術的な知識も、厚生省関係の仕事をやる職員はある程度持っていなければならないというわけでございまして、根本的には、やはり人間の健康というものを中心にして考えるわけでございますから、そういった心がまえというものがまず肝要でございますが、それにいたしましても、いま申しますような科学的なあるいは技術的な、それは医療の面の知識も必要であれば、また産業技術的な知識も必要ということになるわけでございますので、したがって、一人でこれを兼ね備えるということはなかなか困難なことでございます。したがってある程度の、何といいますか、チームワークのとれた組織というものが必要になってくるだろう、かように考えます。厚生省関係は、先ほど申しますように人的被害、人間の健康ということを中心にして、そして産業に対処をするわけでございますので、そういう意味を主にいたしまして、そういった専門的な知識技能等を習得してもらった人に従事してもらうということが望ましいわけでございますので、そういった、短期ではありますが、講習等を、公衆衛生院ですか、私のほうの研究機関で、ここ三、四年以前からやっておりまして、これをさらに積み重ねてまいりたい。そしてまた他の分野において働いておられる人、またそういった知識経験を持たれた人もこの組織の中に入っていただいて、働いていただけるように、そういう心がまえで、府県あるいは関係市の組織の強化にみずからまた協力をいたして、強化をいたしてまいっているというのが今日の現状でございます。
  14. 河上民雄

    ○河上委員 それではいま厚生大臣から一つの姿勢について伺ったわけですけれども、一体中央地方を通じて、いわば公害担当官というものは何人ぐらいおるのか、またその中で科学的知識といいますか、そういうものを備えた者と、単なる行政官でそちらのほうへたまたま回された者との大まかな比率といいますか、そんなようなことにつきまして、事務当局から報告していただきたいと思います。
  15. 武藤琦一郎

    ○武藤(琦)政府委員 厚生省におきましては公害部というのがございますが、そこで公害担当職員は、現在定員上は二十人でございまして、実際上はもう少しいろいろ内部のやりくりをしてふえておりますが、その中でいわゆる技術的な職員といいますのは七人でございます。それから地方でございますが、大気汚染防止法のいわゆる立ち入り権限を有します地方自治体の公害職員、私どもが調べたところでは四百八十一名でございます。この中には、あるいは先生おっしゃいます技術的ないわゆる専門職員のほかの者も入っておろうかと思いますが、全体では四百八十一名でございます。
  16. 河上民雄

    ○河上委員 それでは通産省関係はおわかりになりませんでしょうか。
  17. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 通産省におきましては、御承知のように、私のほうの立地公害部に公害第一課と公害第二課と二つ課がありますほかに、昨年の暮れから特に公害調査官というものを設けておるわけであります。そのもとにおきまして公害に従事する職員は、定員上は十七名でございますが、実際上やりくりいたしまして、それに若干名の人間を追加してやっておるわけでございます。  その中で質的な問題という御質問でございますが、通産省におきまして、通産省の公害行政はいろいろな面がございますが、何と申しましても産業公害が中心でございますから、その発生源となる各産業の実態をよく知っている技術関係の職員を充てることが大事でございまして、絶えず各原局から公害にふさわしい技術職員をこちらに連れてきまして、それをもって担当させておるわけでございます。そういう意味における技術担当の者は、この十七名のうちの約八名ぐらいだと思います。そのぐらいの者が、いわば純粋な意味における技術職員だと思います。  次に、通産省におきましては地方通産局というものがございまして、通産局の中に、八通産局を通じまして用水公害課というものがございます。それは公害関係を担当する課でございますが、それを通じまして全通産局で三十六名ございます。この三十六名の中で、質的な問題についてはちょっといま手元の資料がございませんので申し上げられませんが、いずれにいたしましても本省と同じように、発生源となる産業の実態に詳しい者をできるだけそこに持ってくるというような方針でやっておる次第でございます。
  18. 河上民雄

    ○河上委員 わかりました。  厚生省の武藤部長さん、これで十分だとお考えになっておられるのですか。ことしの予算要求でもわずか七名の公害担当員の増員さえ認められなかったというようなことがあるわけですが、もっと充実せねばいかぬというふうにお考えじゃないかと思うのですけれども、いかがでしょう。
  19. 武藤琦一郎

    ○武藤(琦)政府委員 先生御指摘の特に専門職員等の増員について、私どもはその必要性を痛感するのでございますが、いろいろ内部の応援を得まして、ただいま申し上げました七名のほかに、きょうあたりからまた二人ほどの応援を求める予定でございますし、さらに今後とも、現在の省内でのいろいろのやりくりをいたしまして、実質上の増員を行なうように、省内で現在調整中でございます。
  20. 河上民雄

    ○河上委員 大臣にお伺いしますけれども、これはもう少し人員の面でもまた内容的にも充実しなければいけないのではないか、こう思うのでありますが、厚生大臣、ひとつこれは単に精神的な姿勢だけではなく、公害担当官の充実という点について、もう一段と御努力願いたいと思うのでございます。  なお、ついでに大臣にちょっと御所見を伺いたいのでありますが、先ほど厚生省付属機関として公衆衛生院があって、そこで公害専門家を養成しているというようなお話でございましたけれども、これをさらに一歩進んで、いわば公害研修所みたいなものをつくって、少し専門的に強化してみるという、そういう必要があるのではないかというふうに考えるのでございますが、大臣の御所見を伺いたいと思うのです。これは必ずしも本格的な専門家――これももちろん必要なんでありますけれども、地方自治体の実態を見ますと、ほんとに何もわからず、ただ任命されたからやっているという人が少なくないのでございまして、最低限のケミカルな知識、それから産業上の知識、法律上の知識、衛生上の知識、そういうようなものを一通り、ある一定期間に集中的に中央公害研修所でスタッフに教え込んで、それを順次地方公共団体に還元していくというような仕組みを考えてみるべき時期に来ているのではないか、こんなふうに感ずるのでございますが、たとえそれが半年コースであっても、公害行政の質的な向上に非常に役立つのではないかと私は思うのでございますが、大臣のお考えを承りたいと思います。
  21. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ごもっともに存じます。ただいま国立の公衆衛生院でやっております養成訓練は、専攻課程と特別課程がございまして、専攻課程は一カ年間という期間で、いままでは人数が非常に少なかったのでありますが、本年は三十名で一カ年間訓練をする予定をいたしております。特別課程は一カ月で、これは五十名であります。それで、いまおっしゃいます趣旨は、いういった研修機関をもう少し強化をしてという御趣旨であろうと思います。私も御趣旨はごもっともに思いまするし、いまの公衆衛生院における養成訓練をそのままに強化をしていくか、さらに別のものをつくるか、十分検討をいたしてまいりたいと思いますが、いずれにいたしましても、これだけで十分とは思っておりません。  それから、われわれ公害行政を担当いたしますものは、先ほど御意見にもありましたし、私も同様に、その質というものを考えるわけでございますが、厚生省は特にいろいろな技術専門家の方々を必要に応じて委嘱をし、動員といっては悪いのでございますが、そういう人たちのお力をずいぶんと借りているわけでございます。しかしそれにいたしましても、そういった研究班あるいは研究組織というものの、中軸ということばは適当かどうかわかりませんが、そういう方々に中核をなして働いていただかなければならぬわけでありますから、したがってそれにふさわしいだけの教養も身につけていなければならぬというわけでありますので、ますます必要性を感じるのでありますが、全部がそういう職員ということでなしに、今後さらに、野におられるそういう専門家のお力を借りてやっていく必要があるであろう。これはルーアィンワークではございませんが、そういう方面にもさらに今後拡大をしてまいって、野におられる学者、学識経験者の御意見を絶えず吸収しながらやってまいりたい、かように思っております。
  22. 河上民雄

    ○河上委員 これは必ず予算を伴うことでございますので、ひとつ厚生大臣には、予算獲得の面でも一そう御奮闘願わなければならぬと思うのでございますが、しかしその先決問題としては、ものの考え方だと思うのでありまして、そういう公害担当官といいますか、そういう専門家ないしはそれに準ずる専門家といいますか、担当官といいますか、そういうようなものの養成に、法律の制定とあわせて一そうの努力をしていただきたい、私はこのことを切に訴えたいと思うのであります。  先ほどちょっと引用申し上げましたが、厚生大臣が毎日新聞の「公開論争」の中に寄稿しておられますけれども、そのシリーズの一つに、有名なロンドン大学の名誉教授のロブソン氏が公害問題について、イギリスの経験に根ざして、日本に対する一つのサゼスチョンをしているわけであります。それによりますと、世論というものがきわめて重要である。世論が破局を救ったということを強調しておられると同時に、公害査察員というものを設けまして、これに非常に強力な権限を与えた。また身分保障の点でもこれを優遇した、これが霧のロンドンといわれたあのロンドンを一変せしめるほどの公害行政の実績をあげる一つのキーポイントであったということを強調しておるのでございます。それによりますと、「査察員はまる三年間、ボイラーの熱管理、また建築工学からネズミの習性にいたるまで高度の専門教育を受けた後、王室公衆衛生院からその資格をあたえられる。身分は自治体の公務員で、サラリーは年俸二百万円から四百万円と恵まれた地位にある。」というようなことを言っておるのでありますけれども、そういう人がイギリスでは全国で数千人おる。このくらいのことをしないと、公害というものは、幾ら法律をつくっても、実績はあがらないということを教授は強調しておられるのでございます。そういうような意味において、はなはだささやかな提案かもしれませんけれども、いままで厚生省の付属機関として細々ながら設けられておった公衆衛生院というものをより強化して、一方では専門家をつくると同時に、当面公害行政の末端における担当官の質的な向上のために役立てる。この機関を拡大強化して公害研修所というような形にしていただくことができるならば、こうした方向への解決の一歩になるのじゃないか、こんなふうに思いますので、私はその点を強調し、お願いしたようなわけであります。厚生大臣から重ねて一言こういうような問題についての御決意を承って、この問題についての私の質問を終わって、次に移りたいと思います。
  23. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 河上さんのおっしゃいます公害研修員というような考え方にも私は同感でございます。その方向に、今日の現状とにらみ合わせて、できるだけ充実した公害担当官のできてまいりますように努力をいたしてまいりたい、かように考えます。
  24. 河上民雄

    ○河上委員 次に私が取り上げたいと考えておりますのは、最近ようやく世間の関心を引いておりますところの産業廃棄物の処理の問題でございます。実はわが党におきましては、この問題こそ次の公害対策の焦点になるという立場で、すでにこの問題の研究を進めているようなわけでございます。いわゆる第三の公害というふうに呼んで、党組織をあげて、この問題に対する関心を高めているようなわけでありますけれども、従来、公害対策というのはとかくいわば後手後手と回っておりましたのに対しまして、今後は、そうした対策も必要ではありますけれども、予防的な性格を一そう強く、濃くしていかなければならないと考えているわけでありますが、そのうちの一つの大きな問題が、この産業廃棄物である、このように私どもは考えているようなわけであります。御承知のとおり昭和三十年以降十数年間、日本の工業は非常な成長を遂げてまいりましたが、それに伴いまして、この旺盛な生産活動の一つの新陳代謝現象としまして、大量の廃棄物が産出されておることは御承知のとおりであります。これの処理もしくは処分ということについて、政府はどのような認識または対策を持っておられるか、まず大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  25. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 産業廃棄物の処理の問題は、いまおっしゃいますように、今後の非常に重大な問題になってくると思っております。したがいまして、早期にこれに対処する方策を考えてまいらなければならないと私は思っておるのでございます。たまたま同様の意見で、御承知のことと存じますが、日本都市センターの中で清掃事業近代化研究委員会というものを設けられまして、それの御報告を先日拝見いたしました。その報告の中には、いまおっしゃいましたとおりの事柄に触れまして、相当の示唆に富む、そしてこれからの研究体制等にも触れた御報告を私も拝見いたしておりまして、非常に心強く思っておるわけでございますが、これからの産業廃棄物は、量だけでなしに質も、その廃棄のしかたいかんによっては非常に公害発生するというわけでもありまするし、焼却するにしてもまた公害発生するという面もございます。量もどんどんふえてまいるわけでございます。そういう意味から、これは手おくれにならないように、検討を加えて善処してまいらなければならぬ、かように思っているわけでございます。
  26. 河上民雄

    ○河上委員 それではちょっとお伺いいたしますが、いま大臣が言及されました報告書は、たしか大阪府のものだと思いますけれども、都市廃棄物処理対策研究会でございましょうか。
  27. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 おっしゃいますように、大阪府でもそういった検討をやられておりますが、私がただいま申し上げましたのは、日本都市センターの中にできております清掃事業近代化研究委員会というところの報告でございまして、相当専門家も集められて、そして各種の産業廃棄物に対するいろいろな検討も重ねておられる貴重な報告だと私は思います。
  28. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、いまこの種の研究調査といいますか、そういうのは、いま大臣が言われました清掃事業近代化研究会ですか、それと大阪府でやっております調査と、そのほかに何かございましょうか、事務当局のほうでおわかりでございましたら……。
  29. 武藤琦一郎

    ○武藤(琦)政府委員 大阪でやっております問題につきましては、先ほど大臣からお話がありました報告書の中に織り込まれて報告が行なわれておると私は聞いております。そのほかに、愛知県それから神奈川県等で、独自に県自体のいろいろの問題を現在調査中であるというように聞いております。
  30. 河上民雄

    ○河上委員 それでは政府の、厚生省あるいは通産省における独自な調査というものは、まだなされていないというふうに理解してよろしいのでございましょうか。
  31. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 必ずしも先生の御質問に対して直接のお答えになるかどうかわかりませんけれども、通産省におきましては、産業廃棄物の問題についてはかねてから非常に関心を持っておりまして、何らかの対策を講じなければならぬということで、通産省の工業技術院の傘下の試験所にいろいろな研究をやらせておるわけでございます。この産業廃棄物の問題は、産業廃棄物の処理をいたしますと同時に、資源活用の見地から、さらにそこから有用物を回収するという観点も入れまして、そのための技術開発の研究をやっておるわけであります。要するに、一般に産業公害防止施設というのは、生産の向上なり合理化には関係ないということなんですけれども、産業廃棄物の場合については、そこから有用物を回収して幾らかでもそれが役に立つというようなことも必要だ、そういう観点で、工業技術院の傘下の試験研究所でいろいろの研究をやらせておるわけでございますが、二、三の例をあげますと、試験技術研究所、これは川口その他にございまして、近いのですぐごらんに入れることができると思いますが、資源技術試験所では、産業排水に関するいろいろな種類の処理技術を研究しておるわけですが、それを組み合わせた総合処理技術をやりまして、その際に有用物を回収するという実験を行なっておるわけでありまして、たとえば窯業の原料がそこから回収されるのではないかというような研究をやっております。それが第一。それから北海道におきましてはでん粉廃液というのが非常に問題で、北海道の各河川につきましては、でん粉廃液による汚染というものが大問題になっておりまして、いろいろなことをやっておるわけですが、このでん粉廃液につきましても、冷凍濃縮法ということによりまして、そこからたん白質を回収し、これを飼料などに使うということが考えられるのではないかということで、北海道工業開発試験所でそういう研究をやっております。それから第三番目の例としては、東京の工業試験所ではパルプ廃液から何かの有用物が出るのではないか、たとえば香料の原料になるバニリンというものがそこから出るのではないかというような研究をやっております。以上が二、三の例であります。
  32. 武藤琦一郎

    ○武藤(琦)政府委員 都市センターで出されました報告書の作成につきましては、いま申しました大阪、愛知、神奈川その他いろいろの各地方公共団体、それからいろいろな専門家、それから関係各省もそれぞれいろいろのデータなり専門家を出しまして、実はこの報告書ができ上がったわけでございまして、形式的には都市センターの報告になっておりますけれども、これは関係各省総力をあげてこの報告書については協議いたしたわけでございます。厚生省といたしましては、現在この報告書につきまして事務的に検討を行なっておりまして、来年度からこの報告書の基本的な考え方に沿いまして、この産業廃棄物を含めました清掃事業近代化につきまして、ぜも早急に新しい対策を考えてまいりたい、かように考えております。その途中におきまして、本年度なるべく早い時期に、この考え方等につきましても、生活環境審議会に諮問いたしまして、いろいろ御意見も伺いたい、かように考えております。
  33. 河上民雄

    ○河上委員 いまのお話でございますと、都市センターの調査には、政府としては協力はしておる、しかし政府が主体となった調査はまだ行なわれていない、こういうふうに理解できると思うのであります。と同時に、近いうちに何とかしたいというようなお話でございますが、これは非常に大きな問題でありますし、また昭和三十年から四十二年までの十二年間に石油消費量その他あらゆる面における消費量が飛躍的に増大しておる。それに伴って当然産業の廃棄物あるいはいわゆる第三次産業、レストランとか、そういうようなものの廃棄物も当然飛躍的に増大しておると思うのでありまして、これらについて、ひとつ政府責任において一日も早く実態を把握せられるように、ここでお約束いただきたいと思うのであります。大臣いかがでございましょう。
  34. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 もちろんこういうことは政府責任だと思います。したがいしまて、産業関係省ともよく相談をいたしまして、手おれにならない対処の方法を考えてまいりたいと思います。
  35. 河上民雄

    ○河上委員 それはひとつ事務当局も全力をあげて、現状並びに五年後、十年後の推計まで立てて、今後の対策の資料となるようにしていただきたいと思うのであります。  なお、ここでいわゆる産業廃棄物と申しました中に、いろいろの種類があることは御承知のとおりでございますが、公害対策の推進に伴いまして、公害防除設備の設置が義務づけられてくる。それに伴って、たとえば集じん機が取りつけられると、そこに集められた、集じん機によって捕集された粉じんの処理の問題というような、いわゆる第二次公害といわれるようなものが、これまた大きな問題になってくるのではないかと思うのであります。この点につきまして、先日当委員会におきまして、島本委員より注意が喚起されて、御質問があったわけでありますけれども、この集じん機の問題に関する実態について、二、三ちょっとお伺いしたいと思うのであります。  通産省では、この集じん装置をしておる工場の数、そしてその集じん装置をしている工場では、それに伴って起こる収集された粉じんの処理をどういうふうにしているかというようなことについて、どの程度実態を把握しておられるか、伺いたいと思います。
  36. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 最初に御質問の集じん機には、電気式のもありますし、機械式のものもありますが、全国で幾つあるか、そういう御質問でありますが、申しわけないのですが、手元に資料がございませんので、後ほど御報告したいと思いますが、一体こういう集じん機によって捕集された粉じんは、いろいろな方法で処理いたしておるわけでございますが、主として電力会社等――電力会社は石炭火力が従来から相当ありますが、そういうようなものについては、相当な粉じんが集じん機にかかってくるわけでございますが、電力に関しては、全部これをフライアッシュということで、セメントの混和剤に使っておりまして、その量は四十一年度において八十万トンに達しておるというような状況でございます。これが大体電気を中心とする大口の粉じんの処理でございます。それから製鉄所につきましては、その粉じんと申しましても、中身がいろいろ違うわけでございまして、製鉄所の焼結炉あるいは転炉から捕集された粉じんには、大体鉄が相当まだ入っておるわけです。製鉄所におきましては、ほぼ全量を製鉄原料として還元して、また高炉に入れる、こういう処理を行なっております。そういうように大きいところの電力とか鉄鋼に関しましては、全部処理いたしており、問題がないわけですが、問題は中以下のボイラー等における集じん機でございまして、そういうものは、一般的には埋め立て地あるいは廃止された坑道等に廃棄するというのが実情であるそうでございます。
  37. 河上民雄

    ○河上委員 いま通産省では、集じん機をつけるように法律などで義務づけておりながら、またそれを監督する立場にあるわけですけれども、実際にどれだけつけたかわからぬというようなお話でございますが、私はここで、手元に持っております、これは非常に地域的な部分的な資料でございますが、ちょっと御紹介したいと思うのであります。そしてそれによって、これの実情の一端というものを、ともに考えてみなければならないと思っております。たとえば、旧ばい煙規制法に伴う指定地域であります神戸市、尼崎市、西宮市、伊丹市、姫路市、明石市、加古川市、高砂市及び播磨町における、同法の規制対象工場についての調査によれば、次のとおりになっておるのであります。総工場数が三百九十九、大工揚が――これは大というのはどういう意味かわからないのですが、大工揚が二百三十五、中小工場が百六十四であります。そのうち集じん装置を設置しております工場数が三十六、うち大工場が三十で、中小工場が六であります。集じん装置設置数、つまり集じん機の数でございますが、これが百八設置されておりまして、うち大工場は電気集じん装置が十七で、その他が八十、中小工場その他が十一となっております。したがってその比率を考えてみますと、集じん装置を設置しております工場数の総工場数に対する比率は、大中小込みにいたしましてでありますけれども、九%であります。また総集じん装置設置数で考えてみますと二七%、こういうようなことになりまして、その他については省略いたしますが、大体こういう数字であります。問題は、この集じん装置が設置されております工場において、収集された粉じんがどう処理されておるかということについては、必ずしも明らかでございません。なお調べてまいりますると、神戸の場合は、あそこは埋め立て事業が非常に盛んでございますので、埋め立てに使っているということが多いというふうに称しております。いわゆる神戸製鋼所が量的には神戸市の全体の七〇%を占めて、少なくとも神戸製鋼所では、粉じんをアスファルトにまでて処理するものと、それから埋め立てに使ってしまうものとに大体分けられるようであります。これは神戸製鋼所に直接当たったわけじゃございませんので、必ずしも正確ではないのでありますけれども、その他の、つまり残りの三〇%については全然掌握されておらない、こういうような実情でありまして、一体こういう集じん機に限って考えましても、それによって収集されました粉じんの処理という問題がかなり大きな問題であるということがわかると思うのであります。したがって、これは一日も早くこういう問題について通産省で実態を把握せられて、これに伴う指導をしていただかなければならないと思うのであります。御承知のとおり、神岡鉱業所のあの神通川のイタイイタイ病も、当時はほとんど無価値と考えられていたカドミウムを含む廃物をただ露天に捨ててあった、それが大きな雨があるたびに流れて、そしてあのような悲惨な事態を招いているわけであります。したがって、いいかげんに投棄せられるというような場合、それは将来非常に大きな新たな公害病を起こす可能性もあると思うのでありまして、一日も早くこの点をお願いしたいと思うのであります。つきましては、これはぜひ早急に何かの方法を講じていただきたい、こう思うのであります。  なお一つ例をあげますと、東京近辺の例でございますが、実はこういう粉じんを集めて、それを、先ほどお話のありましたように、再生して有用な物質を生産しております工場が千葉にありまして、そこが実際の業務をやっておるわけですが、そこでの統計によりますと、東京近辺の十数の工場から粉じんを安く買ってきまして、そしてそれを再生してまた売っているわけですけれども、大体平均して千四百トンぐらいの粉じんが回収されて、そしてそれを工場に持ってきて、それを新しい技術を開発することによって粗酸化亜鉛というものをつくっているわけなんであります。一工場が粒々辛苦して、ようやっと企業化しているわけでありますけれども、こういうようなことをやっているところもあるわけであります。その一企業が扱っているだけでも、東京近辺で千四百トンぐらい月間あるということを考えますと、相当これは大きな問題じゃないか、こんなふうに思うのです。ひとつ政府でもう一度、単にまだ調べていないというだけでなく、もう少し積極的なお答えをいただきたいと思うのであります。
  38. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 先ほど私申し上げましたのは、電気集じん機の設置数が全国的にどれだけになるというのは、たまたま本日手元に資料を持っていなかったわけでございまして、おそらく役所に帰ればしかるべき資料があると思います。ただ、それから集じん機によってできた粉じんをどういうふうに処理しているかという点につきましては、先ほど私が御説明した電力等の大きいところと、それから鉄を特に回収することに興味を有する製鉄所につきましては実態がわかっているわけですが、それ以外のものにつきましては、埋め立て地に埋め立てるということと、それから廃止された坑道等に廃棄するという一般的なことしかわかっていないという点で、この点は先生御指摘のとおり、実態の究明が十分でないわけでございます。さらにそういうふうに埋め立て地に入れたものがいわゆる次の新たなる公害を起こす可能性があるかどうかという点の研究に至っては、これはまだやっていないので、この点は遺憾な点がありますので、今後そういう一般中小の工場の集じん機から出た粉じんが、埋め立て地等にどういうふうに処理されて、それがさらにどういうような悪い効果をもたらす可能性があるかという点につきましては、早急に実態を把握して、必要な措置が講ぜられるものは講ずるように指導してまいりたいと思っております。  それから、千葉県でそういう粉じんを回収して粗酸化亜鉛をつくっているという工場の問題につきましては、私どもも十分実態を承知しておりまして、それにつきましては、必要に応じてさらにお答えいたす用意がございます。
  39. 河上民雄

    ○河上委員 それではひとつ、これはなかなか手数のかかる仕事だと思いますので、さっそく調査にかかっていただきたいと思うのであります。ひとつよろしくお願いいたします。  ここで私一つ疑問になりますのは、こういういろいろの廃物、産業廃棄物あるいは都市生活に伴ういろいろな廃物、それから都市再開発が盛んに行なわれるに伴いまして、瓦れきなどがたくさん出る、そういうものの廃物、それから先ほど申しましたように、消費生活が高まるに伴って、第三次産業といわれるものから出てくる廃物の量がふえるわけでありますが、こういうものの処理というものは一体どういう法律によって行なわれるべきものであるのか。たとえば清掃法というのがありますが、これではたしてできるのかあるいはできないものなのか、それとも、やるべきものをやっていないのか、その点について伺いたいのであります。たとえば清掃法の第三条では「この法律で「汚物」とは、ごみ、燃えがら、汚でい、ふん尿及び犬、ねこ、ねずみ等の死体をいう。」こうなっております。「犬、ねこ、ねずみ等の死体」はけっこうですけれども、その前の「ごみ、燃えがら、汚でい」このあたりはかなり産業廃棄物とかその他いま問題になっております広い意味の産業廃棄物の範疇に入ってくるのではないかと思うのであります。一体これは従来どういうふうにしておったのか。特にこの第二条によりますと、こういう清掃というのは、やはり市町村、都道府県あるいは国の責任であるということはかなり明記されておりますし、御承知のとおり、憲法の中でも、清掃事業というものは国の責任ということになっておるわけなんです。一体この法律的な関係はいままでどうなっておったのか、それを明らかにしていただきたい。
  40. 武藤琦一郎

    ○武藤(琦)政府委員 御指摘の問題につきましては、清掃法の七条、八条で処理される仕組みになっております。七条によりますと、多量の汚物を出すものに対しては、市町村長は、市町村長の指定する場所に運搬し、または処分すべきことを命ずることができるという規定がございます。それから特殊の汚物の処理につきましては、第八条で、汚物を生ずるものの経営者等に対しまして、指定する場所に運搬または処分すべきことを命ずることができるということで、一応法律上の制度としては仕組みがあるわけでございますが、実態上は、この法律上の問題とは別のいろいろな問題を生じていることが実情でございます。
  41. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、確認のために申し上げますけれども、清掃法以外にこれをやる法律的な手がかりというものはないというように理解してよろしいわけですか。
  42. 武藤琦一郎

    ○武藤(琦)政府委員 処理そのものにつきましてはやはり清掃法だけでございますが、そのほか、いろいろ埋め立てに関します法律等で、関連法規としては関与する問題がございます。
  43. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、私に与えられました時間がもう間もなく参りますので、簡単に私の申したいことを結論づけて、質問を終わりたいと思います。  私がこの際政府当局に強く申し上げたいことの第一は、産業廃棄物、これに関する全国的な調査を早急に行なっていただきたいということ。第二は、こうした処理というものは、実際に非常に技術的にむずかしい問題がたくさんあるわけで、処理技術の開発について、政府はもっと前向きの姿勢で臨んでほしいということ。先ほどちょっと申し上げましたように、民間で若い技術者が処理技術の開発に非常に努力をいたしておりまして、そういうことについて、政府として当然あとう限りの援助を与えるべきではないか。また、日本石油協会あたりではプラスチックの公害についての研究をしているというような話もありますし、そういうような各方面の研究、調査とも提携して、この問題について総合的に体制を組んでいただきたい。第三といたしましては、産業廃棄物といいますか、広い意味の産業廃棄物の処理体制の確立を急いでいただきたいということであります。聞くところによりますと、これはアメリカでも非常に頭を悩ましているようでございまして、これは全国的に行なわれているかどうかは存じませんけれども、アメリカの例で申しますと、企業が自治体の経営する処理場へ運びまして、そしてある程度の手数料を払って処理をしているというようなことも聞いておりますが、何か国と地方自治体とそして企業との三者の関係において、処理体制というものを確立していただきたい、こういうように考えるのであります。  以上簡単でございますけれども、この三つの点について、ひとつこれを出発点として、本格的に取り組んでいただきたいと思うのであります。大臣はじめ政府の御答弁をいただきたいと思います。
  44. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 全国的な調査、それから処理技術の開発、それからまた処理をするについての法体系、いずれも根幹の問題だと存じます。御意見を十分尊重いたしまして、そういう方向に進んでまいりたいと思っております。処理技術の開発につきましても、技術開発というような面からこれは格段に進めてまいらなければならないと思っておりますので、できるだけ御趣旨に沿うようにいたしてまいりたいと思っております。
  45. 藤尾正行

    ○藤尾政府委員 通産省といたしましても、仰せごもっともでございますので、仰せの御趣旨に沿いまして、できるだけの努力をいたしたいと思っております。
  46. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、私の質問をこれで終わります。
  47. 赤路友藏

    赤路委員長 ちょっと気になったので、私のほうからひとつ参考に聞きますが、河上君がいま言っておった産業廃棄物の中に、毒物、劇物の取り締まり法の適用を受けるような廃棄物はありますか。
  48. 藤尾正行

    ○藤尾政府委員 私ども考えましても、たとえばこれから原子力発電というようなものがどんどんと採用されてまいる、こういうことになってまいりますと、原子燃料の廃棄物というものは完全に毒物であり、有害物である。こういったものに対しまして、どのようにこれをハンドリングしていくか、たいへんな問題だと思います。一朝一夕にできる問題じゃございません。こういった問題に対しましては、世界的な問題でありまするので、各国とも協調いたしまして、どのように処理をしていったらいいか、十二分に考えていかなければならないと思います。
  49. 武藤琦一郎

    ○武藤(琦)政府委員 毒物、劇物の扱いにつきましては、法律によりまして、厳重にその廃棄その他の処理について規制されているところでございますので、その基準に従いまして、これは処理さるべき問題だと思います。ただ一応廃棄物でございますので、処理体系としては、全体の産業廃棄物の処理体系の中で、そういう問題も含めて総合的にやる必要がある。法律的には、非常に危険な問題でございますので、この点は十分考えなくてはいけない、こういうことだと思います。
  50. 赤路友藏

    赤路委員長 島本虎三君。
  51. 島本虎三

    ○島本委員 おもにこれは経済企画庁にお伺いしますが、その前に、せっかくいい結論がいま出たわけでございまして、かねて今後の公害の問題等につきましては、いわゆる第二次の廃棄物に対していろいろな疑念がありましたが、いま河上委員によってその一端は開かれたわけであります。その中で、特に大臣と通産政務次官がそろっておりますから、ひとつ私からも強く要請しておきたいと思います。  それは、新国土総合開発計画の第四次案なるものができ、もうすでに討議されておりまして、通産省の強力な意向や厚生省の意向なんかをいれて、いわゆる重工業地帯と目される太平洋ベルト地帯並びに各地域開発の拠点、こういうようなところに公害対策が盛り込まれるようになりました。しかし幾ら盛り込まれても、現在の太平洋ベルト地帯といわれる東京を中心にして名古屋、大阪、広島から九州の福岡まで、この間の今後のいわば開発の計画そのものによりますと、第二次の廃棄物の対策をまずやるのでなければ、四十年を基準年度として六十年を達成年度として行なわれるこの工業の開発に追いついていけない、こういうようなことになってしまうわけであります。せっかく河上委員がいま指摘されましたが、千葉県にたった一つしか――ばいじんの集じん機によるところの粗酸化亜鉛、この第二次の加工をするための工場が一つしかない。ばい焼を集めて集じん機にかける、そのばい煙を集めて再びこれを優秀なる資源にし、資料にして、これをたたき上げていこう、こういうような計画ですが、これは通産省で大いに奨励してやらなければなりませんし、これが公害防除の一端になるとするならば、当然厚生省あたりではもろ手をあげてこれに賛成をしていかなければならないし、一カ所くらいでどうなります。おそらく東京に何カ所か必要でしょう、そういうような施設は。大企業に対してこれは義務づけてもいいし、また公害防止事業団あたりに積極的にこの問題と取り組ましてもいいじゃありませんか。大阪、神戸まだこれは四日市方面にはない。これではいけません。まして今後広島、北九州、この方面にもやるとしたならば、いかなる方法でこういうような企業を導入するか、こういうようなことも考えてやって、資金的な援助――これは大企業であるならば直接やれるでしょう。中小企業である場合には、これをいかなる方法によってやるか指導してもいいじゃありませんか。まあ残された問題は多いと思います。そういうような問題を含めて、公害事前防止の問題を含めて、今後これはひとつ取り組んでもらいたい、こういうふうに思うわけなんです。あらためて大臣、次官の決意のほどを承って、次に移りたいと思います。いまのような構想はいかがでしよう。
  52. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 構想としましては、まことにごもっともな構想だと存じます。そういうことも十分考慮に入れまして、善処をしていきたいと思います。
  53. 藤尾正行

    ○藤尾政府委員 まことに島本先生の仰せのとおりでございまして、ただ御案内のとおり、この公害問題といいますものが、不幸でございまするけれども、取り上げられましてこれに対処いたしまする政府措置も、着手いたしましたことはごく最近のことでございます。まことに残念なことでございますけれども、事実は事実として認めていかなければならぬと思います。したがいまして、今後ともこういった一つの、一歩を踏み出したということを意義づけますために、先生仰せのとおり、各拠点におきまして、もっともっと充実をいたしました対策をとっていかなければならぬ、かように考えております。
  54. 島本虎三

    ○島本委員 心からこれを期待します。ことに藤尾政務次官は、自動車の排気ガスの問題に対してはなかなか優秀なる発言をなさいまして、それが一つの今後の明るい見通しを立てた原動力にもなったことを、ここにもう一回思い起こしまして、ひとつ次官、いま言ったような重大な問題に対して、今後また取り組んでもらいたいと申し添えて、次に移らしていただきます。  次は水質の問題に入りますが、そのものずばりとまいります。本年の三月十八日に、北海道の網走川の水質基準、これに関する答申ができ上がった、こういうふうに聞いておりますが、その後の経過はどうなっておりますか。
  55. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 いまお話がございましたように、網走川の水質基準につきましては一応三月十八日に水質審議会の御答申をいただいたわけでございます。それまで三回にわたりまして約半年の間に、部会をやり、あるいは現地部会等も開催をしてまいりましたのが、結果におきまして、三月十八日そういうふうにまとまったわけでございます。ただ水質基準の段取りといたしまして、当然に、それから地元都道府県知事意見を伺わなければならないことになっておりますことは御承知のとおりでございますが、その水質審議会の前日ないし当日におきまして、道庁のほうから、何がしかあらかじめの意見というようなことがございまして、ただいまは道庁のほうの意見の調整を待っておるという段階でございます。
  56. 島本虎三

    ○島本委員 特に厚生大臣にもこの質問は関連ありますから、よく聞いておいてもらいたい、このことをお願いしておきます。  この調査に当たったのはどういう機関ですか。
  57. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 調査に当たりましたのは、当然に私どものほうの係も参っております。それから、道に委託をいたしまして調査をいたしたわけでございます。なお、部会はまた特別に水質審議会で任命をいたしまして、それを判断していただいたということになっております。
  58. 島本虎三

    ○島本委員 これはどういう機関に委任いたしましたか。
  59. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 私どものほうは、道に当然公害の担当課がございますから、そこを通じて、道におきましては衛生研究所に委託されたように聞いております。
  60. 島本虎三

    ○島本委員 その以前には、網走の水産試験場に委託し、いろいろと調査を進めてきたという経過はございませんか。
  61. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 企画庁からは、網走川につきまして、水産試験場に委託をしたというふうなことはなかったというふうに存じております。
  62. 島本虎三

    ○島本委員 今度出た水質基準によると、地元では重大な関心を持って、こういう基準ならつくらないでほしいという運動がいま起こっている。このことを御存じですか。
  63. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 私どものほうに対しましても、地元の漁業関係者のほうから、水産試験場のほうのデータをもとにして、そういうお話があることを存じております。一方、先ほどちょっと申し上げましたが、道の意見もまだ形式的に正式に聞いていないのですが、いろいろ調整をいたしておりますということを申し上げましたが、いわゆる工場側においては逆の意味で、水質審議会において当方が得ました答申ではきつ過ぎるというような意見も、一方ではあるわけでございます。
  64. 島本虎三

    ○島本委員 あなたのほうでは、工場側の意見やそういうようなものによって左右されるような、そういうようなデータを出すべきじゃないということは御存じだと思います。いま工場側のほうから、きつ過ぎると言ってきている。これは通産省だって前に何回も、大気基準をきめる場合でも、または水質の問題なんかでも、そういうような問題が起きている。そういうようなものがいまの公害発生源になって、いろいろな問題を惹起していることは御存じのとおりなんです。同じ水産物に関する問題でも、網走の水産試験場の調査と道立の衛生研究所にかかった調査と、両方とも北海道の機関なんです。北海道の機関が別々な結論を出している。これもそれぞれの優秀なるデータなんです。従来、一〇〇PPM、この水質基準で答申して、今度の場合は平均一四〇PPM、最大一七〇PPM、本年の二月の調査で一六三PPM、答申は平均が二六〇PPMでよろしいし、最高が三一〇PPM以下であればよろしい、こういうようなデータのようです。これはあくまでもサケ・マス、この養殖場です。三PPM以下になるのが望ましい、こういうことなんですが、それが排水口のほうでもうすでにいままで一〇〇PPM、以下の数値でもすでに最低三一・六PPMを示している。これも水産試験場のデータではっきりしているのに、今度は何ですか。一四〇から一七〇にしたら、結局あとはどうなると思います。おそらく四五・五PPMくらいになってしまう。こういうようなことになってしまった場合には、とんでもないことになってしまうではありませんか。サケ・マスのいろいろな基準も、いままでは生物化学的酸素要求量、こういうようなことからしても、浮遊物の物質の量からしても、これは三PPM以下が望ましい、浮遊物の場合は一〇PPM以下が望ましい、こういうようにはっきりもうデータが示されておる。しかしながら、今度の網走川の水質に関する基準として示されたものによると、みんなこれを上回る結果になってしまう。それもまた衛生研究所から出されたというのです、厚生大臣。水産試験場から出されたものは数値が若干これより上回っても、大体間違いのないような数値。今度の衛生研究所から出された数値によると、全然サケ・マスの養殖の役に立たない。こういうようなものを基準として出す。これも業者側からの強い要望がある、とんでもないじゃありませんか。私はこれは理解できないが、これを出したという根拠と、この衛生研究所並びに網走の水産試験場のそれぞれのデータが出ていると思いますが、これを対比し、どちらのほうが正しいと思いますか。
  65. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 先ほど私、少し舌足らずの点がございましたが、従来道において、いま当方が非公式に意見を聞いております過程で、そういう問題があるということを申し上げただけでございまして、もちろん私どもが水質基準をかけます場合には、そもそも重要な目的であります水産とその他の産業との調和、サケ・マスの非常にりっぱなふ化の場所でございますから、その目的を無視した水質基準をかけるということは、私どものほうで当初から意図していないわけでございます。ただ、いまお話しになりました水産試験場のデータ、これにつきましては、実は私ども最近に知ったわけでございます。そのデータからずっと推論をしてまいりますと、確かに先生のおっしゃるようなサケ・マスのふ化の場所としての水質基準については、問題があるわけでございますが、ただそのデータ自体については、当方から委託をいたしました衛生研究所のデータ等とかなり食い違っておりますので、現在そのデータの食い違いの技術的な理由について究明をいたしております。結論的に申しますと、私どもは、いま申し上げましたように、あの川を水質基準をかけるということは、そもそも鮭鱒のふ化のために、ある程度の水質基準を与えなければなりませんから、その目的に合うように技術的にやるべき当然の義務がございます。そういう意味において、私どもは十分その食い違いについては技術的に究明をいたして、さらにその目的に合うような水質基準をつくり上げたいというふうに考えております。
  66. 島本虎三

    ○島本委員 それならばよろしゅうございますが、そうすると、できてもこれはすぐ告示してはならない、もっと道のほうへよく確かめた上でないとこれはだめだということになりますが、いまこれをやったらとんでもないことになると思いますが、この点いかがですか。
  67. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 通常の場合でございますと、水質審議会にかけます前に、もちろん関係各省の御了解を得、かつ地元都道府県知事の大体の感触を伺った上で、ほぼ固まったところで答申を得るわけでございますが、先ほど申し上げましたように、この件につきましては、ただいまのような地元の要望もございますし、道のほうにおいても、同じ道の関係の機関が別の数字を出しておるというようなこともございますから、当然十分に道のほうとよく調整をいたしました上で、他の場合のように、いわば答申を得たらすぐ地元の知事の承認を得てすぐかけるということではなしに、十分に道と調整をいたしてからやりたいというふうに考えております。
  68. 島本虎三

    ○島本委員 生物の酸素の必要量、これはBODですか、いわゆる数値が高いほどきたないことになる、こういうふうにわれわれ理解しておりますけれども、四十一年一月三十一日に、この工場の排水出口の調査によって、これはもうこの程度だと示されたBOD、この数値がまた全然違っておる。水産試験場では一八一PPMというのに、衛生研究所では三五三PPM、二倍じゃありませんか。四十二年十二月十三日、水産試験場では九七・五PPM、こう出したその出口が衛生研究所では二六〇PPM、これまた数字がけた違いじゃありませんか。四十三年一月十七日、水産試験場では一五八PPM、こう出したのを衛生研究所では三四四PPM、こういうふうにはっきり出しておるようです。私どもこういうふうにして見ますと、今後の一つの対策として十分考えておいてもらわなければならないのは、これはもうそれぞれのいままでの答弁でわかりましたけれども、両者の食い違いのままでこれは告示しないということはわかりましたから、十分調べていただいて、網走川に関してはサケ・マスのふ化の関係もあり、日ソ漁業条約の義務を履行しなければならない日本の立場もある、こういうようなことからして、三PPM以下になるようにこれは指導するのが正しいと思います。この点だけは十分お考えおき願わなければなりません。  それと、いろいろ他に理由もあるでしょう。でん粉並びにパルプその他のいろいろな工場、この排水をどうしても流さなければならないというようなこともあるようですが、その方面に対しては、農林省なり厚生省なり通産省なり、もっと指導してもいいと思うのです。流さなければならないからということで許しておいて、サケ・マスの場合なんか、こういう住めないような、全部死ぬような状態にさしておくことは、これはもう国際的にも日本の恥だ、こういうふうにいわざるを得ないと思うのです。これはビート、でん粉、パルプ、それからガス工場もある場所ですから、十分それを考えて、いわゆる公害物質の排出については、今後通産省も農林省も厚生省も大いに考えてやらないといけない、こういうように私ども思うわけなんです。そうして、ことにBOD三PPM以下が望ましい。五になるとこれは危険である。一〇になるともう問題でない。サケが上がる秋口、水の量が多くとも、これは五PPM以上には絶対してはならない、こういうような状態なんです。いまのこの調査によると、全然この基準を上回ります。この数値によるデータを見ましても、これはとうてい納得できない、今後の水産資源培養という立場からしても。この問題は、水質基準の決定が現在だいぶ混乱を起こしておりますから、ひとつ十分考えて対処してもらいたい、こういうように思います。
  69. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 私どもは一定のルールに基づきました調査をやはり基本に考えたいと思いますけれども、現実に違う数字が出まして、そしてそれが問題になるとすれば、これは先ほど来申し上げましたように、当然技術的に十分究明した上でやらなければならないというふうに考えております。  なお、その地点につきましては、網走市内と申しますか、網走の河口に比較的近いところのいろいろな家庭下水その他のものは、川へ放流しないで――それは道庁の指導でございますが、もう少し遠くの海のほうへ出すというような行政指導をやる。同時に、今回問題になっておりますのは、日本甜菜糖あるいはクレードル食品あるいは雪印乳業等、偶然と申しますかあるいは立地条件のしからしめるところでありますか、これはいずれも農林省所管物資でございます。農林省におきましても、やはりてん菜糖等に対しては、この基準がいま問題になってはおるわけでございますが、私どもの考えました基準をかけるにいたしましても、相当程度の企業の設備をやらせるというふうなたてまえになっております。  なお、だんだん御指摘がございましたので、できるだけ、今後ともその点については各省の御協力を得まして、水質基準の保持につとめたいと思います。
  70. 島本虎三

    ○島本委員 そうして冬の期間を設定して、冬の間はわりあいに手を抜いて、まあきたない水を流してもよろしいという指導をしておるようです。なぜかというと、網走川からまっすぐ海へ流れるからだというような指導をしておられますが、全然違います。網走湖に入って、あの中に滞留するのです。この中でもいろいろな漁業を営んでいるのです。全然違う考えです。こういう考えではいけません。まっすぐなんて出ません。その悪い水、いわゆるきたない水は、そのまま網走湖にたまって、その中にいる魚介類を全部死滅さしてしまいますから、この考え方はどうも甘いようです。これではだめです。これはそういうことだということを知っておいてもらえば答弁要りません。――では答弁を承りましょう。
  71. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 私は、正直に申しまして技術のほうには暗いわけでございますが、ただ、いま御指摘になりました網走湖におけるいわば停滞という問題は、やはり当然問題になります。したがいまして、冬季間、一、二月の間、比較的工場等は操業をやめますし、それからサケ・マス等についてはやや遡上の時期でない時期も、やはり他の場所よりも網走湖の特性を考えて、水質基準の設定をしたいというふうに考えておるわけでございます。あるいは十分であるかないか、いろいろ御批判はあるかと思いますが、御指摘の網走湖の停滞という問題については、私どもも十分留意しなければならないというふうに考えております。
  72. 島本虎三

    ○島本委員 網走湖の場合には、そういうふうにして同じ北海道の機関が二つそれぞれ別なデータを出したので問題になりましたが、同じサケ・マスの遡上する川に常呂川があるのです。この常呂川の場合には、もうはっきり一つのデータによってやっております。昭和三十九年七月一日に告示しております。そうして製糖工場のBODは、これはもう日間平均二二〇以下、最大一五〇、それからでん粉工場は一〇〇以下、最大一二〇、パルプ工場は三〇〇以下、最大三五〇PPM、こういうふうにしてはっきり示しておるのですが、それの示されたあと、水質基準がきまったら、きまる以前よりももっと水が悪くなった、こういうような事態が発生しているのです。調査機関は一つです。データも一つです。これは一体どういうことですか。これは現在、きまる前のほうがよかった。きまったあとでは、それまではいいんだということで、じゃんじゃん水を流して、いまはもうきまる以前よりも悪くなった、こういうようなことで、漁民は恐慌を来たしております。これは、きわめて悪くなったというんでは話にならぬじゃないですか、常呂川は。
  73. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 常呂川は、昭和三十九年に水質基準を設定いたしまして、先ほど先生がお述べになりました基準になっておるわけであります。四十年の七月から適用をいたしております。私どものほうでも、その他の指定水域についても同様でございますが、やはりその後のアフターケアということをやらなければならないということで、常呂川につきましても、特にサケ・マスの遡上期の時期に着目いたしまして、四十年、四十一年、四十二年というふうに、北海道庁に委託をして調査をしてまいりました。基準地点で三PPMというのが守られておるかどうかということでございますが、四十年は四・三PPM、四十一年は三・六PPMというようなことで、必ずしも著しくその川が基準よりよごれておるということは見受けられませんけれども、いずれも若干は上回っているような状況でございます。ただ、その原因は何かということでございますが、私どものほうでは、そのかけました工場自体は排出基準を守っておるわけでございますけれども、なおその他の、あの地帯のいわば人口の急増あるいは若干工場もふえたかと存じますが、そういうことで、全体としてよごれてきた。特定の排出基準をかけました工場が基準以上によごしておるということは、あまり見受けられないのでございますが、やはり北見市を中心にしたいわば都市化関係で、こういうことになったのではないかというふうに考えております。したがいまして、私どもといたしましては、もう一ぺん基準の改定をしてみる必要があるのではないかということも考えております。おそらく、いまちょっと触れましたが、一つの原因と考えられます都市下水というようなものをどうするか。そうすると、それについては、やはり地元のほうで、都市下水に対するいろいろな対策等とのにらみ合わせで意見を言ってくると思います。私どもといたしましては、ただいまのような状況でございますから、基準の改定について今後検討をしてみたらどうかというふうにも考えます。
  74. 島本虎三

    ○島本委員 では、そういうふうにしてもらいたいと思います。やはり十一月ころは、一番水質的にも危険な時期だとされております。そのころこの水質基準が設定されて、そしてBOD三・二から三・三PPMとなるような指導であったようです。しかし実際は、四十年の十月三十日には六・二PPM、四十年十二月二十五日には七・五PPM、四十一年二月一日には一五・五PPM、四十一年八月三十一日には三・一PPM、四十一年十月二十九日には六・三PPM、四十一年十一月八日に四・七PPM、四十一年の十二月十七日に八・五PPM、それから四十三年に入って八月四日に五・二PPM、同じ四十三年九月一日に八・〇PPM、四十三年九月二十六日に六・四PPM、だんだん、危険な十一月を境にして、その前後はこういうような数字です。ですから、三・二PPMまたは三・三PPM、こういうようなことを幾ら基準にして指導しようと思っておっても、これは各工場の排水の水質は大半が示された基準内だという。それでこういうような数値になる。これはもう基準自身をもう一回改めなければならない、こういうようなはっきりした意味です。そのほかに原因があるのならば、それを摘出しなければなりません。農林省であるなら農林省、並びに通産省であるなら通産省、これは公害関係行政の窓口は厚生省ですから、せっかく厚生大臣もおることですから、この点等については、ひとつ水質基準をつくらなければならない。この意味と立場を十分理解して、何の遠慮も要りませんから、ひとつ堂々とこれを主張し、りっぱにこの実をあげてもらいたいと思うのです。厚生大臣もいままでずっと聞いております。この点を、厚生大臣大いに協力して、やってほしいと思います。いろいろ遠慮があるようですが、これは重大な国際的な問題ですから、最後にひとつ厚生大臣とあなたの答弁を伺って、私はこれで満足したならばやめたいと思う。
  75. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 水質汚濁の問題は非常にむずかしい問題だと思います。産業と産業の間の問題でもあり、人体に影響するということになれば、われわれのほうもさらに積極的に介入しなければならぬ問題だと思いますが、公害全体に関係いたします省といたしましても、できるだけ御協力を申し上げまして、御趣旨に沿うようにいたしたいと存じます。
  76. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 私どものほうで道へ委託をいたしましてアフターケアをいたしております数字は、先ほど私が申し上げたように、確かに三PPMを若干上回っておりますが、平均いたしますと、それほど実は上回った数字では決してないのでございます。ただ、先生の御指摘のような数字をあとでお見せをいただきまして、私どもでも参考にいたしたいと思います。そういう意味で、何ぶん数字の問題は測定の方法、時期、地点、いろいろございますので、技術的に十分いわば目をならすと申しますか、平均値がうまくとれるようなことを考えてやらなければならないというふうなこともございます。どうか、ただいまお話しになりました数字につきまして、また後刻いろいろ御指示を得たいと思います。  なお水質保全につきましては、先ほど来もお話がありましたが、特にあの地帯は、対外的に日ソ漁業交渉等をする場合に、日本の川が十分にその資源保存の任務を果たしてないということは、いろいろな意味で困るという意見は、水質審議会等におきましてもあったわけでございます。私どもも当然それは考えております。そういうこともございまして、今後とも、水質保全につきましては、基準の設定、あるいはその後の変化に対応するアフターケア、あるいは基準の改定について、十分努力をしてまいりたいと考えております。
  77. 島本虎三

    ○島本委員 終わります。
  78. 赤路友藏

    赤路委員長 経済企画庁のほうに、いまの島本君の質問に関連して、知っておいていただきたいことがありますので、一つだけ注文をつけておきます。  御承知のとおり、今度の決定については、それぞれ専門の技術の人や経験者等がお寄りになって御決定になるのですから、私は間違いがあるとは思いません。ただ知っていただきたいことは、北海道のサケの遡上する川というものが限定されてきておる。もう、一番過去において上がった石狩川はだめなんです。日本海岸のほうはもはやあきらめざるを得ない。残されたのはオホーツク海岸、この方面の河川だけが唯一のものになっておる。内地のほうも非常に上がりが悪くなっておる。そういうような資源の諸条件をぜひ考えていただきたい。本来なれば、人工ふ化でなしに自然のままで川へ上げて、そして産卵ふ化さすというのが一番いいのですけれども、それは不可能なんです。ただ、いまのところオホーツク海の河川が唯一のものであるということをひとつお考えおき願って、十分慎重にやっていただきたい、こういうように思います。  それでは、午前中の質疑はこの程度にとどめ、午後一時四十分より再開することとし、暫時休憩をいたします。    午後零時四十四分休憩      ――――◇―――――    午後一時五十五分開議
  79. 赤路友藏

    赤路委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。岡本富夫君。
  80. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 私は、持ち時間の間にきょうは三点について質問いたしますけれども、最初に、この公害対策基本法の中に、悪臭がやはり公害の中に入っておりますけれども、この悪臭については、四十八国会からずっと換算しまして、わずか八回しか審議されておらない。現在この悪臭問題が、苦情が非常に多くて、人の健康を保持する上から非常に重大な問題になっております。したがって、まず最初に悪臭問題を取り上げまして御質問をします。  そこで、先月の十三日午前一時三十五分、千葉県の市原市における出光興産の千葉製油所で起こった事件でありますけれども、高オクタン価ガソリンを精製する装置につきまして、硫化水素ガスが噴出して、三人死亡、三人重軽症、こういうような問題が起こりまして、すでに新聞報道されておりますけれども、これについてとった処置、これをひとつまず通産省からお聞きしたいのです。
  81. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 まことに申しわけないわけでございますけれども、いまの出光興産の市原工場の硫化水素の爆発につきましては、鉱山石炭局のほうでやっておるものでございますから、私大ざつばなことは存じておりますけれども、正確を期するために、至急鉱山局を呼びますから、それまで御返事を待たせていただきたいと思います。
  82. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 では呼んでください。  そこで、この問題はあとで鉱山局が来たら聞くことにいたしますけれども、その状態の報道を見ますと、ドレンバルブに通ずる直径五インチのパイプに当時二・五気圧のガスが残っていた。このガスのふき出す音で、近くで点検した同僚がバルブを締めたために、被害が少なくて済んだ。それでも三人、ガス中毒で死んでいるわけです。こういうようなことは、こうした有毒ガスに対するところの国民の認識というものが非常に少ないのじゃないか。その認識不足によって起こったものである。したがいまして、有毒ガス装置の操作指導の不徹底、こういうところからも発生しておりますけれども、大メーカーですらこういう重大な過失が起こっておる。いわんや中小メーカーにおいては野放し状態であると推定せざるを得ないのであります。  そこで、こうした状態をよく見ますと、各会社の装置を見て回りますと、人間が鼻で感ずる、それくらいしか測定法がない。ああこれはガスが出ている、というような状態ですので、これについて一日も早く、こうした臭気に対する環境基準あるいはまた測定法、こういうものを確立しなければならぬというように思うのですが、厚生省のほうでは、それについてどういうような処置をいまとっておるか、これをお聞きしたいのです。
  83. 武藤琦一郎

    ○武藤(琦)政府委員 悪臭の問題は、先生御指摘のように、いわゆる測定が非常にむずかしいわけでございまして、現在のところ、数値で悪臭を測定するということは、まだ各国とも確立しておりません。外国等におきましては、いわゆるパネル式、いわゆる鼻さき制度といいますか、人を使ってその悪臭の程度をきめるということが行なわれている状況でございます。厚生省といたしましては、この悪臭問題につきましては、やはりこの排出規制を改善するというようなことよりも、むしろ生産設備の施設をきちっとやる。たとえばいろんな排水の問題につきましてはオープンで流さないとか、あるいはガス等が漏れないようにする、そういう施設の整備が大切ではないか、かように考えておる次第でございます。  それからこの測定につきましても、いろいろ専門家が研究をいたしておりまして、私ども環境衛生センターという一つの法人を監督をしておりますが、ここにいま委託をしておりまして、最近の報告を聞きますと、悪臭につきまして、たとえばガス等につきましてどういう成分が含まれているかといった場合に、その成分比とその悪臭の程度との関係を数値であらわせるような、いわゆる器械で測定できるような目安がついたというような報告も聞いておりますので、こういうようなものを早く実用化できるようにいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  84. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 いまこの悪臭につきましては、大都市、たとえば大阪あるいは神戸、尼崎市内、こういうところにおきましても、相当悪臭問題で苦情が出ております。一つの例をとりますと、これは四日市石油コンビナートのあるところの苦情が出ておりますのは、悪臭で三百五十七、刺激性ガスが三十、ばいじんあるいは粉じんが四十二、振動が五十三、汚水二十一、その他二十、こういうようになっておりまして、苦情の一番大きな問題が悪臭になっておる。それに対する防止手段といいますか、これが非常に立ちおくれておる。いま説明がありましたけれども、これはやはり悪臭問題に対する、厚生省の健康を守るというところの基本態度が非常に手ぬるいのじゃないか。国会でも取り上げ方が少なかったのが一つでありますけれども、もっと強力に精力的な悪臭問題に対する防止をやらなければ、非常に不快である。同時にまた人体に影響をずいぶん来たしております。それで、これは私のほうで調査した一つの例でありますけれども、製紙工場、パルプ会社、こういうところからすごい悪臭が出ておりますけれども、これは特に意識調査をしますと、くさくて鼻が曲がりそうだ、あるいは特に夜間がひどい、またその工場範囲から十五キロないし二十キロ、この悪臭の主成分はメルカプタン、こういうようになっておりますけれども、この問題についても、厚生省のほうでどういうような取り組み方をしておるか、ひとつお聞きしたい。
  85. 武藤琦一郎

    ○武藤(琦)政府委員 ただいま例にあげられましたメルカプタンの問題につきましては、これはこの前にも参議院予算委員会でも御質問がございましたけれども、メルカプタンの悪臭を感じます濃度といたしましては、いろいろ個人差はあるわけでありますが、一PPMのさらに一万分の幾つくらいでもにおってくるということでございます。ただ、この程度でありますと、人体への影響はないというふうに私どもは聞いております。ただ、工場等の事故などで濃度が高い場合には、いろいろ刺激性の問題が出てくる。たとえば気管支炎等を起こすということが専門家の一致した意見でございます。このメルカプタンにつきましては、通産省と私どものほうとで、大気汚染防止法の特定有害物質に指定すべく、現在調査中でございまして、おそらく来年度におきましては指定できるのではなかろうか、かように考えております。  悪臭問題は、先ほどから御説明のありましたように、なかなかむずかしい問題でございますが、厚生省のみならず、たとえば科学技術庁におきまして、特別研究費等を使いまして、たとえば、通産省では脱臭の研究、私どもとしては人体に対する影響あるいは生活環境に対する影響、あるいは労働省では生理的な問題等を、いろいろ検討を行なっておるわけでございます。やはり先ほど数字をあげて御説明されましたように、悪臭の問題は住民の方々にすぐわかるわけでございます。したがいまして、ある工場地帯等では、そういう地域住民の方々をモニターとして活用しておられる。においが出た場合には、すぐ工場に連絡する。その場合に、工場ではすぐ点検をして、ガス漏れがないか、あるいはその他の問題がないかということを行なっておるわけでございまして、そういう方法も一つの方法ではなかろうかと、私ども考えております。
  86. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 そこで、すでに名大医学部あるいは徳島大学、こういうところでは、メルカプタンは非常に人体に影響あり、こういうふうに発表しておりますけれども、いまあなたのほうで聞きますと、住民を悪臭のモニターに使っておる。人をモルモットに使っておるのじゃ、ちょっと問題だと思う。厚生省のほうでそうした監視員、技術員をもっと養成して、そして悪臭の防止につとめなければならぬ、こういうように思うのですけれども、現在、厚生省のほうでこの方面を担当しておる人数といいますか、あるいはまた都道府県に対してはどういうふうに指導しておるのか、これをひとつお聞きしたいのですが、どうですか。
  87. 武藤琦一郎

    ○武藤(琦)政府委員 悪臭だけを専門で担当しておるという係官はおりませんけれども、御案内のように、悪臭問題は大気汚染とも関係しますし、それから水の問題とも関係しますので、それぞれ水の専門家なり大気の専門家が、この問題については現在検討を行なっております。  それから、住民をモルモットにして役人はサボっておるのではないかというような御意見でございますが、この点は、やはり二十四時間測定するということが、役所だけでは非常にできにくい問題がありますので、そういう点ではやはり地域住民の方の御協力を得るのも一つではないかということで、例示にあげたわけでございます。ただ御指摘のように、悪臭問題が起きました場合に、直ちに、たとえば保健所その他公害課等の第一線が参りまして、行ってみたらもうにおいがなかったとか、そういういろいろな問題もあるようでございますが、やはり四六時中起きる問題につきましては、それぞれの第一線の機関で悪臭につきましての監視をするということは当然だと思います。
  88. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 パルプ、製紙、こういう工場で、全国でどのくらい悪臭を出しておるメーカーがあるのか、そういう事業場がどのくらいあるのか、これは全部把握済みだと思いますが、私のほうでも調査があるけれども、幾らぐらいを対象にし、あるいはまたどのくらいのところを調査しておるのか、これをひとつお聞きしたいのです。
  89. 武藤琦一郎

    ○武藤(琦)政府委員 先ほどお話しのメルカプタンを出します。パルプ工場等につきましては、約五十程度があるように聞いております。
  90. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 案外この調査は不十分じゃないでしょうか。私のほうで調査したものによりますと、パルプ製造あるいは製紙会社の現状を見ますと、十條製紙あるいは王子製紙というようなメーカーが十四、それから悪臭を特に放っているのはその中で十三カ所ぐらい、パルプ製造から製紙を行なうメーカーが十一社、それから悪臭が心配されると思われる事業場がその十一社のうち九カ所、製造加工などが主体のメーカーが十七社、その他はもっとこれも検討しなければいけませんが、公害の点検をやりますと、どんどんどんどん悪臭問題が出てくる。いまあなたのほうの答弁を聞いておりますと、まず悪臭を出しておるところのパルプ会社あるいは製紙会社の全部の把握ができていないんじゃないかと思うのですが、どうですか。まだできてないならできてないと、はっきりしていただきたいと思います。
  91. 武藤琦一郎

    ○武藤(琦)政府委員 私がいま約五十と申し上げましたのは、メルカプタンの問題だけでございまして、そのほか石油化学工場等には、悪臭を出す工場がまだほかに多数あると私どもは考えております。
  92. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 結局、私がいま言ったのは、全部の調査ができていないのでしょうと聞いているのです。できてなければできてないと……。
  93. 武藤琦一郎

    ○武藤(琦)政府委員 厚生省といたしまして、どの工場からどういう悪臭が出るのだという統計調査をとったことはございませんけれども、各府県等においてわかっておると思いますし、通産省のほうでも、それぞれの専門の部局で、そういう問題は御検討なさっていると思います。
  94. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 通産省、あなたのほうではわからぬでしょうね。
  95. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 正直に申し上げますと、実は先般参議院の予算委員会で御質問がありまして、特にメルカプタンについて、これが紙パルプ、少なくともパルプの関係であるものですから、その質問があった際に、実は早急に調べてみたのですが、先生の御質問のように、何工場あって、その工場の悪臭程度がどうかという具体的なものにつきましては調べがついておりません。現在におきましても、先生御質問のように正確に、何工場、どうかということにつきましては調査ができていません。
  96. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 この悪臭問題の中で、メルカプタン類の生物、生体に及ぼす影響、これは徳島大学の西山という先生が発表しているわけですけれども、一〇PPM程度で呼吸器機能の刺激作用がある、一〇〇〇PPMになると数秒間で命がなくなるんだ、致死量だ、こういうような発表をしているわけです。だから、悪臭はただ食欲を減退させるだけだとか、いま厚生省は簡単に考えておりますけれども、いま言いましたように、この硫化水素が一〇〇〇PPMなら数秒間でもう命がなくなる、こういうようなことから見ますと、悪臭問題についての積極的な政府の力の入れようが足らないのじゃないか。過日参議院の予算委員会で、公明党の三木さんからいろいろ質問をしておりますけれども、満足な答えが得られない。その後どういうようになっているのか、あるいは野放しなのか。外国ではこの悪臭問題はあまり取り上げられていないから、日本でも取り上げる必要はないのだ、こういうような考え方は大きな誤りではないかと私は思うのです。そこで、悪臭問題につきましてもやはり環境基準というものをきめなければいけない。これについてどういう考えを持っておるのか、ひとつ厚生大臣からお聞きしたい。
  97. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 悪臭の問題は、いまおっしゃいましただけでも非常に複雑な問題で、悪臭を出すガスによってそれぞれ違うわけであります。そこで悪臭のあるガスは大体多かれ少なかれ有毒であろう、これは私どもも常識的にこういうように思うわけでありますが、ことにいまおっしゃいましたメルカプタン、これは悪臭として処置するか有毒ガスとして処置するかという問題じゃないだろうかと思うのでありますが、アメリカの工場では、二〇PPMがその工場における悪臭の最高基準とされているという点も、そういうところにあるのじゃないかと思うのですが、魚の処理場から出てくるにおい、あるいは鶏や豚を飼っているところから出てくる悪臭、これらも一種のガスとなってそれが臭気になるわけでありましょうが、それがはたしてどこまで有毒であるかどうかという調査は、実際いままだ有権的に行なわれたものがないと思っております。悪臭に対する科学的な人体に及ぼす影響調査というものは非常に少ないと思います。  そこで、先ほどおあげになりました四日市の悪臭も、実は私もそれを感じて、非常によく存じておるのであります。そこで、四日市の悪臭は、亜硫酸ガスと一体どういう関係があるのか、亜硫酸ガスとは全然別の悪臭であるのか。これもまだ科学的には調査をされておりません。少なくとも早急にこれを調査するように、本年は科学的に調査するようにいたしておるわけでありますが、そういうようなぐあいで、非常に手おくれでございます。それで、私が当時四日市に参りましたときでも、まるで吐き気を催すような場合もあるので、これは人体に精神を通じて影響がないことはないわけだと思うのであります。そのにおいをかいですぐに倒れるような、そういう有毒物であるかどうかはわからぬにいたしましても、広い意味の衛生的見地からいって、非常に悪いに違いないのであります。まずここからでも科学的に調査のメスでも入れようということをいまいたしておるわけであります。とにかく悪臭はその地域的な問題であって、その地域地域の悪臭の発生源によって違うわけでもありますので、私としましては、各地域にそういった公害対策委員会というようなものが置かれてありますが、これを強化していただいて、そうしてこれには県、市町村等の関係機関も入り、住民の方も入って、そこらから非常にやかましく突き上げてもらうということが一つの推進の方法だろうと思っております。そういう推進がなければ動かぬのかというおしかりもあろうかと思いますが、しかし、そういうことによって調査も進み行くものじゃないだろうか。よくいわれております製紙会社、パルプ工場等から出る悪臭というものは、これは前からの古い問題であるにもかかわらず、まだその悪臭を除去する方法が見つからないということは、今日の科学技術の進歩した世の中においてまだそうだということは、非常に遺憾なことだと思います。そういった科学技術の進歩を促進し、そうしてそれをなくするということを考えていくのが肝要であろうと考えております。  先ほどおっしゃいましたメルカプタン等に対する環境基準等に対しましても、特定のものについては、考えられればできるだけ考えたい、そうしてつくりたい、かように考えておりますが、御承知公害対策基本法の中にも、悪臭の環境基準というものには触れておりませんのは、はたしてそれが可能であるかどうかということがまだ十分検討されていなかったからであろうと思いますが、そこにあるとないにかかわらず、できるだけ検討してまいって、そうしてそういった毒性の強いであろうと思われるメルカプタンのようなものについては、一日も早くつくれるように努力をいたしたい、かように思う次第でございます。
  98. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 大臣、実は先ほど公害部長から話がありましたように、日本環境衛生センターですか、そこの発表によりますと、たとえば硫化水素を例にとりますと、一五PPMでもう頭痛がする、それから五〇から一〇〇になりますと、とてもしんぼうができない。五〇〇PPM以上になりますと、急性の中毒を起こす。それから一〇〇〇PPMになると、数秒間で死ぬ。このくらい大事な悪臭問題なんです。いままで御認識がなかったのかもわかりませんけれども、また、いままで悪臭についてはあまりこちらも取り上げなかったのも一つのあれですけれども、悪臭については、いま話があったように、化学工業系と動物性、この二つに分かれますけれども、いずれにしてもちょっと気になることは、付近の住民の方が騒がなければ公害にならない、騒げば公害というようにここで感じたのですけれども、そうでなくして、やはり国民の健康を管理し守っていくのは厚生省である、したがって技術開発ももっともっと推進して、この悪臭問題については強力に、厚生省は――何か厚生省の態度を見ていますと、大企業に対して遠慮しているような――変な話をして悪いですけれども、前の園田厚生大臣のときには、イタイイタイ病なんかを強力にやってもらいまして、十何年問もほうってあったあの水俣病の解決も前向きに進んできた。したがって、斎藤厚生大臣になりましたら、今度はひとつ悪臭問題を十分取り上げて、環境基準をきめていく、また技術開発もしっかりやっていく、こういうふうに私は要求したいのですが、いまのお話を聞きますと、若干消極的な、付近の住民の方が騒いだらというような意味合いのお話がありましたが、これは私はもう一つ納得いかない。国民の皆さんもおそらくこれでは納得いかないと思うのですが、どういうような姿勢で、どういうようなやり方で前向きに取り組んでいくか、これをひとつ国民に明らかにしていただきたい、こう思うのですが、どうでしょうか。
  99. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 先ほど私が申し上げましたことを誤解をしていただいてはたいへんなことだと思うわけで、騒がなければやらぬというわけではございませんが、こういう悪臭のような問題は、地方の方が非常に敏感に感じられるわけでありますから、ここにはこういう悪臭がある、これじゃ困るということを取り上げてもらって、やかましく言うていただくことは、われわれを鞭撻してもらうわけでありますから、そういうことも望ましいということを申し上げたのであります。われわれのほうで、どこに悪臭があるかさがして歩くということは、なかなかむずかしいわけであります。しかし、おっしゃいましたように、すでに製紙工場のあるところ、パルプ工場のあるところはわかっておるわけでありますから、そういうものについては、いまおっしゃいますような科学技術の開発によって、これを防除していくということを、一日も早く進めてまいりたいと思います。私が先ほど申し上げましたのは、動物性の悪臭というようなものは全国に非常に広いわけでありますから、私もそれには関心を持っております。特に私は、党におりまして、公害問題を数年前から推進をしておった一人でございますが、その発端はといえば悪臭であります。やはり四日市の悪臭であります。嘔吐を催すような悪臭。これではほうっておけないじゃないかということから、だんだんとあれしてきておるわけでありまして、私の時代にというわけではありませんが、この悪臭に対する措置を一日も早く打ち出すということは、私が公害問題に取り組んだ最初のあれでございますから、ぜひ一歩でもここでは前進をさしていきたい、かように思います。
  100. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 この悪臭の脱臭の方法ですね、それから技術開発、これの改良がたいへんおくれておりますが、私どもの調査によりますと、防脱臭装置の建設費が、一つの方法では四百万円から八百万円かかる。しかし、この二つの方法を総合しなければうまくいかない、こういうようなところがありますが、現行公害防止設備改善資金あるいは設備近代化資金などの公害融資制度、これを利用しようと思ったら、現在のところきわめてむずかしい、こういう現状を見てまいりましたけれども、こういう問題につきましても、大臣は新年度はどういうような計画をし、またどういうような予算をつけて、どういうようにやっていこうと考えておるのか、ひとつ抜本的な考えを聞かしてもらいたい。
  101. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 工場からの悪臭あるいは公害源の発生するのを防止あるいは軽減をさせるための施設、設備等をやりたいという場合の融資の問題は、厚生省の担当いたしておりますのは、御承知公害防止事業団でありますが、私は、公害防止事業団としましては、四十四年度で各地方からこういう公害防止のための仕事をやりたいという、その事業計画のほとんど大部分は消化できるだけの融資措置をとったつもりでございます。大企業等になりますと、これは通産省でやっていただいておるわけでありますから、通産省関係で、関係会社等のそういった希望がどの程度満たされることになったか、私は承知しておりませんが、私のほうの関係におきましては、四十四年度でやりたいという中小企業あるいは集団的な工場の改善というような意味合いの事業は、前年度に比べて約倍になっておる。やりたい事業のほとんど大部分はこれで本年度は消化ができますという報告を、事業団から受けておるわけであります。
  102. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 厚生省の悪臭問題に対するいままでの取り組み方が非常に消極的でありますがゆえに、私のほうから質問いたしましても、それに対するはっきりした答えが得られない。これはまことに残念なことでありまして、すでに日本環境衛生センターあるいは各データを見ますと、悪臭問題は全国で第二位の苦情を出しておるわけです。これに対する政府のいままでの取り組み方というものは非常に弱い。私はきょうは特にこれを強調して、そうして今後前向きの姿勢を持ってもらいたい。非常にお答えも抽象的で、この問題はこうするんだというようなあれがない、こういうように私は思うのです。  そこで、通産省、来ましたか。――きょうは政務次官に出てもらって、もう一つこれを念を押しておこうと思ったんですけれども、通産省といたしまして、全国的な悪臭、すなわち硫化水素あるいメルカプタンですか、この防除装置の現状あるいは実施状況、あるいは新設工場に対してどういうプランを立てておられるか、これをはっきりと聞きたいと思ったのですけれども、これについて、通産省として現状ではどういう考えを持っておるか、またどういうようにするか、これは公害部長では答えられないでしょうか、どうですか。
  103. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 先ほどお答ええいたしましたように、残念ながらメルカプタンをはじめとする主要なる悪臭の要因につきましては、全国的な調査というものはやっておらない。この点至急にやらなければならないと思っております。本来そういうものの実態調査を踏んまえた上で具体策を講ずべきだと思いますが、とりあえずの問題と申しますか、悪臭問題全般のとらえ方として、悪臭防止技術の開発というものが、やはり基本的な問題ではないかと思います。これは何も悪臭に限らず、公害防止に関する全般に通ずる問題でございまして、通産省としては特にそういうものを公害対策の第一番にとらえておるわけであります。そういう意味で、悪臭防止技術というものを研究することが大切じゃないかと思いまして、すでにある程度やっておるわけでございますが、今後さらに工業技術院傘下の試験研究所で、この悪臭防止技術の研究開発というものを進めたいと思っております。  それから次に、悪臭問題というのは、やはり土地利用計画その他、あるいは工場の配置に関係するわけでございまして、新規の工場地帯については、土地利用計画とのからみも考えまして、工場の適正配置ということを考えておるわけですが、そういう際に、やはり住宅との関係その他を考えて、工場の適正配置の一環として工場立地を考えていく、そういう方向でいかなければならないと思っております。  それから、やはりこれは騒音なんかとも若干似ておるわけですが、悪臭を出すような産業はある程度まとめるというようなことで、たとえば魚腸骨の関係で、すでに塩釜などで工場アパートをやっておりますが、こういうふうにしてまとめて、そうしてその際悪臭防止の施設を共同でもってやらせる。こういうような方法も考えなければならないと思います。  まことにまとまった対策ではございませんけれども、とりあえずの私どもの考えておる対策としては、以上のようなものがあるわけであります。
  104. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 大体、においというものは、分子の小さいほどにおいが大きい、こういうようなデータが出ておりますけれども、そこで、こればかり取り組んでおりますと時間がありませんが、何としてもやはり悪臭の環境基準、これをきめてもらわなかったら、いつまでたっても問題は解決しない。このきめ方として、周囲の環境等に照らして、工場または事業場の周囲の人が著しく不快を感ずる、そういうものを程度として環境基準をきめていかなければならない、こういうふうに私は思うのです。  それからいま話がありましたように、工場配置の適正ですね、この工場配置の適正化法が検討されておると思いますが、これはいつごろ出されるのか、あるいはまた、こういった悪臭を出すおそれのある工場に対してはそれを適用するのか、これをひとつ最後にお聞きしたいと思いますが、どうですか。これは通産省から……。
  105. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 最初の御質問の工業立地適正化法の提案の見通しでございますが、それに関しましては、現在鋭意関係各省と折衝いたしておりまして、今月中には提案の運びにいたしたいと思います。  それから第二の御質問の悪臭問題は、工業立地適正化法の運用に際して考慮すべき要因かというお話でありますが、やはり工業立地適正化法は、過密の防止と公害の防止というようなことを一番大きな使命といたしておるわけでございますので、悪臭問題も、その運用に当たっては無視することはできないものと思うのです。なお現在工業立地適正化法はまだ提案の運びに至っておりませんけれども、工場立地調査法というのがあるわけでございます。これは全国の工場の一定規模以上のものについては届け出て、通産省がその届け出を見た結果、いろいろ勧告をいたすことになっておるわけですが、これの運用でも、悪臭の問題が著しい場合においては、その防止措置というものが考えられないことはないと思います。
  106. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 最後に、悪臭問題につきまして、環境基準をきめる用意があるのか、あるいはこのまま野放しにするのか、この一点を厚生省にお聞きしたいのです。
  107. 武藤琦一郎

    ○武藤(琦)政府委員 悪臭についての環境基準の問題でございますが、これは率直に申しまして、公害対策基本法の第九条では、水と騒音大気について環境基準をつくるようになっておりまして、悪臭あるいは地盤沈下その他の公害につきましては、環境基準はきめるようになっていないわけでございます。この点は、いわゆる環境基準というものが、個々の排出基準を順守しても、なお汚染の集積によりまして環境汚染の問題が出る点に着目しまして、この環境基準をきめる制度を考えたわけでございますが、この点、悪臭公害の場合は比較的集積という問題がございませんし、いわゆる排出規制、もしくは発生源そのものの対策ということが一番根本であるということに照らして、こういうふうになったことと思います。ただ、先生が御指摘の、環境基準はどうかということは、この悪臭問題について一つの何らかの程度をきめて、それに応じて排出規制を十分やるべきではないかということの御提案だろうと思います。この点につきましては、各府県で悪臭条例等をやっておりますところを見ましても、いわゆる不快度をある程度の目安として、運用として取り締まりが行なわれておるようでございまして、この点につきましては、先ほどから御指摘の環境衛生センター等でも、悪臭の程度を数値に示せるような一つの実験データ等も出ておりますので、こういう点の実用化ができますれば、私どもとしては、いわゆる排出悪臭の一つの取り締まり基準的なものができるのではないか、かように考えておるわけでございます。
  108. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 悪臭問題につきましては、その程度でおきますが、これは何と申しましても大きな問題になってきております。したがって、後手にならないように、基本法のほうでそうなっていなかったならば、対策基本法を改正していくとかして、前向きにひとつやっていただきたい。  次に、大気汚染防止法の施行がされておりますが、これは工業立地適正化法が発令されませんと、たとえば車でいえば片方の車が走っておるだけ、これでははっきりした大気汚染防止にならない、これは周知の事実であります。そこで、これからは工場の届け出制、こういうことでこの前は終わっておったのですが、今度はこれができませんと、やはり許可制にしなければならないと、この前もぼくは強調しておいたのですが、許可制にするのかしないのか、この問題についてお聞きしたいのです。
  109. 武藤琦一郎

    ○武藤(琦)政府委員 昨年大気汚染防止法を御提案申し上げましたときに、この問題があわせて検討されたわけでございますが、現在厚生省といたしましても、この問題につきましては許可制の問題を検討中でございます。ただ、この問題は、先ほど通産省のほうに御質問がありました工業立地適正化法におきますいろいろの規制の問題、具体的に言いますと、許可制をも含めた問題ともからむ問題でございますので、現在、両省で、この問題につきましては調整中でございます。
  110. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 現在の大気汚染の、東京あるいは川崎あるいは兵庫県の尼崎、こういうところの例をとりますと、大気汚染によって非常に病気が多発しております。一つの例をとりますと、この間私、三田市の養護学校に行ってきた。小学校一年生から中学三年までの方が百八人入院しておりますけれども、そのうち尼崎市出身が三十八人。ほかの市は十人とかあるいは五人とか、こういうふうになって、全部兵庫県ですけれども、そのうちの三十八人、三八%が尼崎市出身であったということは、大気汚染の非常にきびしいところには、そういう結核の子供がたくさんいる、こういうことをあらわしていると思うのです。それで、大気汚染を防止するについては、非常に精力的な厚生省の措置がなければ、国民の健康を守るわけにいかない、こういうように思うわけでありますが、その大気汚染の中で、大原の交差点を例にとりますと、これはこまかいことを一々言っているひまはありませんが、車の排気ガスで非常に困っている。これを立体交差にすればよくなるのじゃないかという考えだったらしいのですが、それでも少しも減っていない、あるいはかえってふえている、こういうことで、きょうは運輸省に来ていただいておりますけれども、現在自動車の排気ガスの取り締まりについて、新車あるいは中古車はどういうようにやっているか、これをひとつはっきりしていただきたいと思います。
  111. 堀山健

    ○堀山説明員 お答えします。  自動車には新車と古い車がございますが、新しい車につきましては、生産の過程におきまして、現在濃度を規制しております。これにつきましては、現在いろいろなはかり方がございますが、日本における船研方式という方式ではかりまして、三%ということで押えております。しかし、これにつきましては、この秋から規制を強化いたしまして、二・五%に下げるという準備をしております。それから、これは量産する車の規制でございますが、大量に生産されない車につきましては、実は規制されておりませんので、これにつきましては、今年度になりましたけれども、横浜に試験場をつくりまして、そこで全部検査をする、こういう用意をしております。それから使用過程の車、つまりいわば中古車と申しますか、これにつきましては、昨年十二月一日、大気汚染防止法施行のときにきめたのですが、使用過程の車につきましては、定期点検をやりますとガスの条件がよくなるということが、いろいろな十六項目の試験の結果わかりましたので、その点検を励行するようにということで、点検基準をきめました。それから、なお点検に対する行政指導でございますけれども、これを確実に担保するためには、やはり検査場で何かチェックをすべきではなかろうかということでございますので、今年度、つまり四十四年度予算につきましては、東京、大阪、名古屋地区の検査場におきまして、検査に来る車をチェックするように手配をしております。なお、四十五年度につきましては、全国的に強制検査をするという準備を考えております。その前段階としては、四十四年度に東京、大阪、名古屋地区に、一種の試験といいますか、トライアルという形でチェックをするという用意をしております。これはことしの予算で認めていただきましたので、実行いたす所存でございます。以上でございます。
  112. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 それで、輸出車は新車では何%ですか。それから中古車をチェックするだけでなくして、何%までに押えられるようにするか。この点もひとつはっきりお答え願いたいと思います。
  113. 堀山健

    ○堀山説明員 輸出の車につきましては、私ども直接所掌しておりませんので、実ははかったことはございません。それから、古い車につきましては何%にするかということでございますが、現在一酸化炭素を規制しておる国は、日本とアメリカと西ドイツでございます。日本とアメリカはほぼ同じようなはかり方をしております。それから西ドイツのほうは、いわゆるアイドル規制といいますか、車が低速の回転をしているときにはかるというはかり方をしておりますので、実は規制している数字が違うわけでございます。それで、私ども今後検査場でチェックをするということになりますと、できるだけ実用型の簡単なやり方でありませんと、車を大量に検査をするわけにまいりませんので、どういう方法で何%にするかということは今後きめたいと思います。
  114. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 運輸省は、この公害防止に対して非常にはっきりした態度をとっていないように思う。なぜかといいますと、聞くところによると、輸出車は大体この一酸化炭素を取る装置をつけないと売れない。日本ではそれをつけない。そうたいしたものじゃないんですからね。いま車を発売しているところの広告を見ましても、快適にスピードは何ぼ出るとか、そういうことは出ますけれども、排気ガスを取る装置をつけます、こういうような宣伝がないところを見ますと、日本の国の公害に対するモラルが非常に低いんじゃないか。これは国民全体の一つのあらわれでありますけれども、やはりこれは問題がある。あるいはまた人に迷惑をかけない、国から公害を除去していこう、そういうようなモラルを高めていくためには、そうたいした金額ではないと私は伺っておる。一万五千円か二万円ぐらいのものだ。それを受益者負担ということは、これはあまり考えてはいけないと思いますけれども、メーカーのほうでそれぐらいサービスできるような指導を政府のほうでしないといけないと私は思うのです。御承知のように、もうすでにこうして大原交差点あるいは各所において、非常に公害問題で困っておる。これも一々私はこまかいことを時間がないから申し上げませんけれども、あなたもよく知っておられるはずです。ですから、もっと強力に、車には全部公害防止の機械はつけるんだというような強い姿勢でひとつ行政指導をしないと、日本公害はなくならない。いかに産業が発達したり、あるいはいかに車がたくさんできても、こんなにたくさんの病人が出ては、これはもう何にもならない、こういうように思うのです。そこで、中古車についてはまだチェックをしていなかった、これから何%にするかきめるのだ、こういうような全く弱い姿勢では、公害行政は進まないと思う。今度の大気汚染防止法というのは、あなたのほうも車の規制については入っているわけですからね。それについての腹案がないというようなことでは、大気汚染防止法というのはもうざる法に近い、こう言わざるを得ないと思うのです。いまあなたのほうでは全然腹案がないのか、中古車は調べてから、チェックしてからやろうというのか、この点もう一ぺんはっきりしてください。
  115. 堀山健

    ○堀山説明員 少しことばが足りなかったと思いますが、中古車に対する規制の方法は、先ほど申し上げましたように、新しい車と古い車のはかり方をどうしても変えざるを得ないと思います。と申しますのは、古い車につきましては、現場的に処置しなければならない。新しい車はいろいろの走行サイクルを想定いたしましてやりますので、非常に時間と手数がかかる。しかし、そういうことを検査場の現場で一々長い時間をかけてやるわけにはまいりませんので、できるだけ実用型の機械で、しかもガスも一種類のガスだけはかれる、こういうようなものをいま開発しておるところでございまして、それを使って、できるだけ簡単にはかれるようにしたいということでございます。そういう方法によってやるということと、もう一つ、何%に押えたらいいかということでございますが、これはできる限り新車で出るときに近い値ということを考えております。例としてはドイツの五・五%という線がございますけれども、そういうことも参考にいたしまして、できるだけ低い値できめたいというふうに考えております。
  116. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 輸出車については公害防止の浄化装置をつけるけれども、国内で販売するものに対してはそんなものはいいんだというような考えでなくして、これはもう全車にこれをつけるのだ、そうしてこの狭い日本の国でこんなに大量の車が出ておるわけですから、もう一度前向きに検討してもらいたい。どこから圧力があるかしらないけれども、そんなものは排してやらないと、日本の国の大気汚染はなくならない。きょうはこのことを御指摘申し上げておきます。時間がないので答弁はよろしい。  あと五分でしまいですので、通産省の鉱山石炭局ですか、これは私、商工委員会でこの問題はがっちりやりますから、きょうはやめておきます。  最後に、先回の当委員会におきまして、同僚の山田委員からスモン病について質問がありましたが結論がはっきり出ておりませんので、きょうは幸い厚生大臣がお見えになっておりますので、スモン病の結論、要するに今患者が千三百二十九名、うち死亡者が七十九名、これは三十九年の調査でありますが、それがその後、岡山県では十倍近いところの人数が出ておる、こういう病気が出ておる。なお四十一年から四十二年について、厚生省は調査団をつくったけれども、その間にもう解散してしまった、こういうような状態で、このスモン病という病気に対する調査が行なわれてなく、患者は野放しである、こういうことがこの前に山田委員から発言されて、そのままになっておりますが、厚生大臣、このスモン病についてどういうように取り組むか、これをひとつお聞きしたいと思います。
  117. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 昨年は国立病院を中心に臨床研究を進めていたのでありますが、いまおっしゃいますように、スモン病は一日も捨てておけない、住民の方々の中にも非常に不安が起こっている、集団的に起こっているところもある、また散発的に起こっているところもあるというので、これがはたして伝染するものであるのか、ビールスからくるものであるのか、それすらもわからないという状況で、ことに集団的に発生している岡山地方におきましては、住民の方としては非常に不安に思っておられるわけでありますので、したがって、本年は、原因究明と、それから全国の発生状況の把握というものを中心にいたしまして、厚生省の医療研究助成費で、ひとつ徹底的にやりたい、こう考えております。医療の研究費はスモン病に対して三百万円しかございませんので、私はこれではまだ不足をするだろうと思って、科学技術庁の特別研究費を回してもらってやるべく、いま研究を加えております。早々に研究班をつくり発足をいたしたい、こう考えております。
  118. 岡本富夫

    ○岡本(富)委員 では、いま大臣の言われました、早急に研究班をつくる、これが一つ、それから研究費をもっとふやす、こういうふうに解してよろしゅうございますね。  では、きょうはこれで終わりまして、次の機会に……。
  119. 赤路友藏

    赤路委員長 米田東吾君。
  120. 米田東吾

    ○米田委員 私は、時間が限られておりますから、ごく要点について、二つの問題点をお尋ねしたいと思うのであります。  最初に、簡単なほうから先に質問いたしまして、国鉄当局にお聞きしたいのであります。おいでをいただいておりますので、ひとつお願いいたします。  私は新潟第一区の出身でございまして、新潟市でございます。御承知のように、新潟では、新潟駅の構内に国鉄の新潟運転所がありますし、それから、名称はよくわかりませんけれども、客車の洗車をする施設も併用されてある。  そこでお聞きしたいのでありますが、客貨車区というのですか、そういうところは全国にあるわけでありますし、この洗車というのは相当国鉄当局としても一これには確かに油を、軽油か何かわかりませんけれども、そういうものを使っての洗車もあろうかと思うのであります。いわゆる油の処理、そういうものについての公害をなくするということについて相当御配慮がなされておるんじゃないかと思うのであります。全般的な問題で恐縮でありますが、この洗車というようなものについて、特に油の処理、そういうものを中心にした公害対策といいますか、そういうことについては、何か方針なり、あなたのほうで何か当局としての一つの作業要領といいますか、そういうようなものがあると思うのですが、それをひとつお聞かせいただきたいと思うのです。
  121. 阪田貞之

    ○阪田説明員 国鉄の運転局長でございます。  ただいまお話しの車の洗浄につきまして一番油が問題になりますのはディーゼル関係の車でございます。これが三十二、三年ごろより急激にふえてまいりまして、ただいまお話しの油がいろいろな面で、川に流れ込んだり、いろいろいたすようなことが事実出まして、これではいかぬということで、三十六、七年にかけまして、部外の専門の先生方にお寄りいただきまして、この廃油の中の油を抜き取る調査をいたしました。その結果、昭和三十八年の三月にその研究結果をいただきました。それにはいろいろ項目がございますが、たとえば廃油の処理につきましては、薬剤投入とか、そういうものよりも重力式の分離装置がよろしい、またその排水量は、車の洗浄の両数によって、それぞれその排水の量をきめなさい、またそれに伴う排水路も、一般の構内の排水路じゃなくて、そのための排水路を設ける、また分離装置にいたしましてもただ一つではなくて、二つ脱油装置をつける、おもにこういうような研究結果をいただきました。その後、現在この線に沿いまして、ほとんど主要な客貨車区、洗浄するところは全部この装置をつけております。ただいまお話しの新潟運転所も、この線に沿って別な排水溝、それから貯水槽も二つ設けまして、ディーゼルがどんどんふえてくることに対して、世間さまに御迷惑をかけないような手を極力打っておるつもりでございます。
  122. 米田東吾

    ○米田委員 新潟に関する限りは、いまの答弁のようになっておらないように、実は私感ずるのでありますが、それはあとでお聞きするといたしまして、現在新潟では一日どれくらいの客車――いまのお話ではそれが主体だというのですが、どれくらいの客車を洗浄しておられますか。そうしてそのために、油はどれくらい使用なさっておられますか。
  123. 阪田貞之

    ○阪田説明員 油は一がいにはわからない。大体配置両数が二百両ございます。一日に検査、洗浄いたしますのが大体二十両。それで一回に使います一両当たり大体、その情勢によっていろいろ変わりますが、一立米余りの廃水が出まして、その中に油が、これもまた状況によってずいぶん変わりますが、数リットルの範囲で出るかと思います。
  124. 米田東吾

    ○米田委員 相当な量だと思うのでありますが、実はその処理が、新潟ではどうもいまあなたが御答弁なさったように、たとえば排水溝は別につくるとか、それから分離装置をつくるとか、そういう点についての処理が完全になされていなかったように思うのであります。というのは、三月二十九日に、新潟地元のほうでは公害火災だという見方をしておりますが、そのあなたのほうで洗浄された油を含む汚水の処理が不完全なために、都市計画にある一般排水溝に全部流出されておって、そしてその排水溝が、表面約二センチぐらいの層で油が一ばい浮いている。たまたまそこに火がついてしまって、そして、資料によりますと、約二メートルぐらいの火が排水溝一ぱい走ってしまって、そのことが原因で手がつけられなくて、その排水溝を中心にして両方に住んでおられた市民の方のうちが合わせて五軒、二戸は全焼、三戸は半焼、そういう被害を受けて、これは国鉄の怠慢による公害火災だ、こういう見方をしておるわけであります。この事件については、皆さんのほうへ報告しておられると思いますが、真相は御理解なさっておられますか。
  125. 阪田貞之

    ○阪田説明員 ただいま先生の御指摘の件につきましては、警察から、その火の引火状況、並びに国鉄側から、油が漏れた状況、ただいま調査中でございますが、その新聞報道のように、国鉄の廃油によりましてこういう火災を起こすようなことに相なりますれば、まことに私どもとして申しわけなく存ずる次第であります。それで、ただいま先生からのお話の、新潟の排水溝は、さっき私が申し上げたようになっていないということでございますが、実は調査いたしましたが、やはりさっきお話したような、ちゃんと第一槽、第二槽と貯水槽を設けて、それがまた市の下水の排水溝のほうに流すようになっているのでございますので、それがどうしてこういう結果になったのか、新潟支社のほうとしても――新潟地震のと一時問題がございました。あるいはその後の処置が悪かったのか、また現在排水溝はあるけれども、その保守のしかたが非常に悪いのか、いま新潟調査しております。また警察のほうといたしましても、その点明確に、おまえのほうはこういう点が不届きだという御意見もいただけるかと存じますが、何せ廃油自体がありますことは、おっしゃるとおり間違いのないことでございます。これは火災になろうがなるまいが、こういう事態があったということに対しましては、私どもとして精密に調査いたしまして、そういうことのないように処したいと考えております。
  126. 米田東吾

    ○米田委員 これから精密に調査されたっておそいのです。焼けたうちはもとへ戻らない。あなたのいまの御答弁だと、三十八年以降国鉄当局もこういう問題については手をつけられて、専門的に学問的にも検討されている。そしてその答えに基づいて、たとえば専門の排水溝をつくるとか、あるいは分離装置を二つ以上つけさせるとか、そういう措置をなさっておられる。それが当然なされておれば、私はこういう事態はなかったと思う。その原因をこれから調査なさるのはけっこうでありますけれども、こういういいかげんな状態で放置されておるとすれば、私は、全国にある運転所なりあるいは客貨車の洗車の施設というものは、公害関係では再調査しなければならぬ問題ではないか、こういうふうに思うのでありますが、そんないいかげんなんですか、あなたのほうの仕事というのは。私はそんなことでは困ると思うのです。
  127. 阪田貞之

    ○阪田説明員 ほかにまだ全国数十カ所ございますが、現在のところこういう問題が出ていないところに新潟のこのことが起こりましたので――排水溝も全然別の排水溝をやっておってそういう結果になったので、一つ考えられるのは、結局日常の保守が悪い。それから、あるいは雨水の関係もございますし、それからいろいろそのときによります。車両の洗浄の洗浄内容が非常によごれていて、平生よりも非常に使う、あるいは計画よりも使うというような面があったのではないかと思います。そういう点のまずさというもの、それが今回そういう御迷惑をかけたことについて反省して、もちろんただいま先生からおっしゃいましたように、これを契機にいたしまして、ほかの、全国に同じような設備を施しておりますので、それらにそういう欠点がないかどうかということは、これはもう直ちに私どもとしても調査して、こういうことのないようにしなければならぬ、ただいま即刻手を打ちたいと考えております。
  128. 米田東吾

    ○米田委員 即刻手を打ってもらいますが、あなたのほうの新潟の運転所長さんの談話によりますと、洗浄に使った軽油に砂利やさびなどが含まれているので脱油が完全でなかった、こういう談話を出しております。さびなんというのは、もともと洗浄すればさびが出てくるが、砂利というのはどういうことで入ったかわかりませんが、おそらく排水溝に至るところまでの装置で砂利がまざったのかわかりませんが、いずれにしても野外でやる洗浄でありますから、あり得ることであります、これは常態としてどこでも。その常態としてあり得ることが原因で脱油がうまくいかなかったというのは、脱油装置自体がこれはインチキではないか。そういうようなことがいま採用されておることについても、これを検討しなければならぬと思うのでありますけれども、私は専門的にはわかりませんが、脱油装置というのは、これはどうなんでしょうか、ものになるのでしょうか。この所長の話だけでは、われわれしろうとでも全然初めから問題にならないものをつけて、そして浄化装置をつけたのだというふうに自己満足なさるのか、あるいは大衆欺瞞をなさるのか、そういうことに結果的になるのではないかという気がするわけであります。これはいかがですか。
  129. 阪田貞之

    ○阪田説明員 これは一番初めに申し上げましたように、埼玉大学の専門の先生とかあるいは専門の会社の技師、そういうもの全部集まっていただいて、また国鉄側からは技術研究所の専門家が出て討議して、それでこれが一番いいという結果でこの装置を考えたわけでございますが、ただいま御指摘のとおり、砂利とかさびとかいうものが――どうせどこかにろ過器があるはずであります。そのろ過器のところで、そういうろ過器の洗浄清掃があるいはまずかったのではないか、あるいはこういう浮遊物その他に対する除去措置がまずかったのではないかということが、先ほど申し上げました、装置そのものよりも、日常の保守面が何か手抜かりがあったのではないかということを、いま新潟支社のほうによく調べろと申しつけておるわけであります。
  130. 米田東吾

    ○米田委員 昭和三十九年に新潟大地震がございました。御承知のとおりでございます。このときもこういう事故がございまして、やはりいまと同じ火事の原因になったその排水溝に油が流れておった、そのときには火事にはならなかったけれども、悪臭がするとか、いろいろ環境衛生上困るというので、住民が国鉄当局に談じ込んで、そしてその被害についての補償をさせておる。記録によりますと、千円から千五百円、三十九年当時でありますけれども、被害についての補償をなさっておるわけであります。そういう一つのできごともあるわけでありますから、普通の管理をやっておるならば、こういうようなことは私はあり得ないと思うのでありますけれども、どうもそこらあたりは、ちょっとあなたのほうでずさんか怠慢か、納得できないのですけれども、いかがですか。
  131. 阪田貞之

    ○阪田説明員 新潟地震のときの災害は、地震による亀裂もございましたし、装置そのものが地震によってまずくなりまして、それで廃油が多量に流れて非常に御迷惑をおかけいたしました。ただいま先生からお話しのような補償と、それからその後の手といたしまして、そういう排水路を直すとともに、脱油装置をもう一回直しかえまして、それで今日まで至ったわけでございます。
  132. 米田東吾

    ○米田委員 いずれにいたしましても、これはあなたのほうもいま調査されているそうでありますが、こういうことでたれ流しにされておったのでは、国鉄周辺の住民は助からないわけであります。これこそ国鉄公害と言っても差しつかえないと思います。こういう点については、あなたのほうもとかくルーズじゃないかと私は思うのです。汽車に乗せてやっているんだから多少のことはがまんしてもらおう、あるいは、鉄道や駅は請願や誘致によって来たんだから、少しのわがままは認めてもらわなければならぬ、そういうようなことで、公害に対する観念というものは、他の一般の企業やあるいはそういう機関とは違った観念があるのではないかという気が私はするわけであります。最近はありませんけれども、たとえば国鉄の機関車が吹く石炭のばい煙によって、線路の近くのうちが燃えたなんというのも間々あったわけであります。そういうようなことを繰り返しておりますので、公害に対する観念というものについても、どうも私は弱いように思うのであります。十分この問題についてはひとつ調査をしっかりやって、こういう公害のたれ流しのような――これは軽微で限られているからいいようなものだけれども、そうかといって、これを許しておくというわけにはいかない問題だと私は思います。ひとつ善処してもらいたいと思います。  それから、とりあえずあなたもいま答弁なさっておられますように、被害者に対する対策というようなものはどんなふうにいま進めておられますか。何か、警察の調べが終わってから考えるというようなお話のようでありますけれども、これはとんでもない官僚的ではないかと私は思うのであります。原因というものははっきりしている。かりに補償その他の関係は残るとしても、十分誠意を尽くしてお見舞いするなり、それから再起についてのめんどうを見るなり、当然私はやってもらわなければならぬ問題じゃないかと思うのです。原因をすっかり警察が調べ終わってわかってからなんといっては、被害者は今日ただいま困っているわけでありますから、手をつけなければならぬ問題だと思います。  それから、あとの処理については、この脱油装置の点検や検査だけでは困ると思うのです。問題の排水溝等についても、やはりあなたのほうで二度と繰り返さないための、いま答弁なさったように、ほんとうに都市計画による排水溝なんかに流さないような、専用の排水溝をつくるとか、完全な処理をやるとか、そういう処置をこの際早急にやらなければならぬと思うのでありますけれども、その点はいかがですか。
  133. 阪田貞之

    ○阪田説明員 補償の問題につきましては、私、実はただいま飛んでまいりまして、また担当でもないので、詳しいことはわかりませんが、従来の例からまいりますれば、まずお見舞い金を考えると思います。それからただいま警察の調べを待ってからということをおっしゃいましたけれども、そんなにひどく、十日も二十日もということはないと思います。その点につきましては、現地の新潟支社のほうで、十分被害者の方々とお話を申し上げて、御納得のいく線で善処させていただきたいと思います。  それから排水溝の処置につきましては、いま一つは、先ほど重力式装置と申し上げました。化学処理よりもそちらのほうがいいというような専門的な話で、上のほうは除去いたしましたが、かりに数%油が残る、そういうことがあってはなりませんので、これに対する化学処理をいたしまして、国鉄から最終的に出ていく排水の中に燃焼性のものを含まないように、それの化学処置の方法、ちょっとこれは専門的になりますのでむずかしいと思いますが、即刻やる。それから新聞にもちゃんと書いてございますが、ふたをしっかりつけて、大雨のときに雨水や何かがあふれて、それがまた近所の方に御迷惑をかけるということのないようにする。それからろ過器のみならず、全部に、側壁にきたない油が付着いたしまして、それが重なり重なって流水が悪くなったり、計算的にはある流水があるはずなのが、保守が悪いために流水量が減ってあふれるということがありますので、そういう保守面の整備をしっかりやらすようにいたしたい。これは念のために申し上げますが、単に新潟のみでなく、全国にありますものを、これを教訓にいたしまして、全国的に処置いたしたいと考えております。
  134. 米田東吾

    ○米田委員 ぜひひとつそういう誠意のある処置を、しかも迅速にやっていただかないと、またあとで補償の問題や何かでよけいなトラブルや対立が被害者と起きても困りますから、今後こういうことを再び繰り返さないためにも、いま御答弁なさったような趣旨で、親身になって早急にひとつ処置をしていただきますように、なおこの処置にあたっては新潟市等との関係も出てくると思いますけれども、ひとつ国鉄当局は能動的に処置をされるように、御要請申し上げたいと思います。国鉄当局はこれでよろしゅうございます。  次に私、厚生省並びに通産省、それから後半におきましては文部省の関係も出てくると思うのでありますが、お聞きしたいのであります。  実は新潟市の一般的に山ノ下地域といわれる工場地域大気汚染、いわゆる公害の問題についてでございます。私は社会党の公害の点検調査団として、実はこの間現地に行ってまいりまして、この地域がいかに被害の甚大な公害地域であるかということを見てまいったわけであります。そういう立場で、これから御質問を申し上げたいと思うのであります。  新潟県は産業の面でおくれておる後進県といわれておりまして、とかく公害関係は関心が薄かったのでありますけれども、その中でも、この新潟市の山ノ下地域というのは工場が集中しておる地域でございまして、実はここでは前から公害の問題はございました。一番最初に出てきたのは地盤沈下の公害でございます。その後大気汚染等の問題が大きな公害の問題になりましてから問題になりましたのは、ばいじん、亜硫酸ガス、あるいは悪臭、それから震動、さらにここに飛行場がございまして、飛行場騒音、最近では、公害源のあらゆるものがここに集中しておるような公害地帯でございます。ただ、いろいろ県等でも測定をやっておるようでありますけれども、基準を越える強い被害地域ということにはなかなかならない。総体的に公害被害は大きいけれども、大気汚染原因になっておる亜硫酸ガスにしても、あるいはばいじんにしても、個々の測定ではなかなか対策を必要とするような重症地域にはならない、こういうようなことで、一般的に対策がおくれておったところでございます。したがって、ほとんど公害対策というようなものは、県や市が最近ようやく少し調査活動をやって動いておる程度でありまして、対策としての対策はないのでありますが、しかしこの地域がいわゆる公害地域である、しかも大気汚染のひどい地域だということについては、厚生省当局もあるいは通産省等におきましても、リストに載っておるところではないかと私は思うのです。そこで、専門的にこの山ノ下地域承知なさっておられる厚生省や通産省の当局から、この山ノ下地域というのは一体どういう状態のところであるか、皆さんのほうで持っておられる資料によるところの診断を、ひとつ最初に聞かしていただきたいと思うのです。
  135. 武藤琦一郎

    ○武藤(琦)政府委員 いま先生のお話の地域でございますが、この地域は厚生、通産両省で四十一年の十一月に、いわゆる指定地域、旧ばい煙規制法、現在の大気汚染防止法でございますが、それの指定地域として指定をしております。したがいまして、おそらく指定される前から公害問題が起きていたことは推察のできる問題でございます。最近新潟県のほうでこの地域の詳しい調査が行なわれて、報告が来ておりまして、それによりますと、いわゆる降下ばいじんが月に、地区平均としまして約十六トンでございます。この十六トンと申しますのは、大体日本におきます最汚染地域といわれております川崎市等よりはもちろん低うございますけれども、大体東京地帯の平均だとわれわれは思っております。したがいまして、降下ばいじんにつきましては、かなり高いのではないか、かように考えます。それから亜硫酸ガスでございますが、これは最高が〇・〇三でございまして、月平均〇・〇一でございまして、亜硫酸ガスにつきましては、これは先般、いわゆる最低限の環境基準としてきめました〇・〇五よりも下回っておりまして、この点は一応安心できるのではないか、かように考えております。そのほか、おっしゃいましたように、臭気等も、パルプ工場があるようでございまして、いろいろ住民の不満があるようでございます。
  136. 米田東吾

    ○米田委員 いま示された月平均というのは、具体的には何年の何月の平均でございますか。
  137. 武藤琦一郎

    ○武藤(琦)政府委員 四十年の十一月から四十二年の七月までの平均が〇・〇一で、最高値としまして、〇・〇三が出ましたのは、四十年、四十一年のそれぞれ十二月の月でございます。
  138. 米田東吾

    ○米田委員 ばいじんの十六トンはそうたいして違いがないのですけれども、亜硫酸ガスの平均〇・〇一PPMですか、いまのお話では。
  139. 武藤琦一郎

    ○武藤(琦)政府委員 失礼いたしました。平均〇・〇二でございます。
  140. 米田東吾

    ○米田委員 〇・〇二ということで修正されましても、私も手元にありますが、新潟県の企画部の公害課で出した測定資料からいきますと、ちょっと低いように思うのでありますけれども、あなたのほうの調査の根拠になっているのは、私が持っているのと同じじゃないかと思うのでありますが、間違いありませんか。
  141. 武藤琦一郎

    ○武藤(琦)政府委員 私どもが最近手に入れました、企画部で編さんしております、山ノ下公害対策報告書、四十三年三月の、このものでございます。
  142. 米田東吾

    ○米田委員 わかりました。この測定の結果は、いずれあとで照合してもよろしゅうございますから。ただ私は、問題なのは、こういうふうにばいじんにいたしましても十六トン、それから亜硫酸ガスにしても平均が〇・〇三ないし〇・〇二、こういうところでありまして、厚生省が持っておられる今回出されましたこの亜硫酸ガスの基準、あるいは降下ばいじんなんかに対しましての基準なんかとにらみ比べますと、直ちに対策を必要とするというところにはならないかと思いますけれども、総体的にここは実は公害が集中しているのです。こういう総合的に、よそにはあまり例がない、こういう地域についてもっと政治的に何か、厚生省なりあるいは――これはやはり厚生省にならざるを得ないと思うのでありますが、行政的な指導ができないのか。それから通産省等におかれましても、個々の企業に対してもっと強い指導ができないのか。私はこの地域に住んでおるのでありますけれども、特にここは特定重要港に指定された商業港、新潟西港にずっと付帯をしております。したがって公害源は、船が入るたびに亜硫酸ガスをまいたり、あるいはいま石炭の船だって入ってきますから、ばいじんもやはりまき散らしておる。それから県の調査なんかになかなかデータとして載っておりませんが、ここにはたとえば東北特有の練炭の製造工場がある。冬季使う練炭ですね。これがまたものすごいばいじんを振りまく。そういうようなものが総合いたしまして、とにかくここは有名なくらいの大気汚染地域なんです。私ども何かこれはひとつ方法がないものかと思っておるのでございますけれども、専門的に皆さんのほうで、この山ノ下地域について、こうしたらいいんじゃないか、何かそういうものを持っておられませんか、お聞きをしたいと思います。
  143. 武藤琦一郎

    ○武藤(琦)政府委員 私が先ほど数字をあげて御説明いたしましたように、降下ばいじんは、決してこれは安心できる数字、安心といいますか、いわゆる少ない数字であるということは、先ほども申しておらないのでございますが、この点につきましては、県当局も、関係企業のほうには集じん機をつけるように指導しておりまして、現在その設備が進行中のはずでございます。先ほどお示しいたしました先生が御所有の資料にも、その点は明記してありますので、この点は、やはり降下ばいじんにつきましては集じん装置を早く取りつける、それからその推移をよく見守るということが必要かと思います。ちなみに十六トンと申しますと、東京で言いますと、神田あるいは渋谷等、都心に近いところでございまして、決してきれいなところではございません。それから亜硫酸ガスも、環境基準の〇・〇五よりももちろん下回っておりますが、この報告書にありますように、三十九年から見ますと、わずかずつながらこれは高くなっておりまして、この点もやはりある程度よく推移を見守る必要があるということでございます。
  144. 米田東吾

    ○米田委員 集じん機の取りつけということについての御答弁をいただきましたが、この間行きましたときも、県はそういうことを言っておられました。指導しておられる。ただそれは、比較的そういうことが可能な企業は、県のそういう行政的な要請にこたえてやっておられるけれども、中小企業やあるいは公害をまき散らしておる小企業等についてはなかなかこれはできない。何とかそういう点について、ひとつ国あたりからでも、助成の面やあるいは何らかの方法で考えてもらうことができないのかというようなことも訴えておられる。たとえば日本鋼管あるいは電気工業、あるいは旭カーボンというようなところについては、それぞれ企業努力で、たとえば開放炉を密閉炉にするとか、あるいは集じん機をつけるとかいろいろ方法を講じておられるようであります。しかし、ばい煙の発生源、一番多いと思われるような練炭工場あるいは中小のいろいろな企業なんかについては、なかなかそれができない。データの面では、いま読まれましたような数字になって出ておると思いますが、この地域は特に風向きの関係、それから新潟というのは北陸特有の、からっとした天気の時期はあまりない、いつでも曇っておる、雨が多い。そういうものと、大気汚染源になっているばいじん、亜硫酸ガスというものは決していいようには関係しない、そういうようなことから、基準だけではなかなか処置できないような面がたくさん実はここではあるわけです。もう少しきめのこまかい指導というものがなされていいんじゃなかろうかと実は思うのでありますけれども、どうも抽象的な質問でありますけれども、どうでございましょうか。
  145. 武藤琦一郎

    ○武藤(琦)政府委員 おっしゃいますように、大企業はそれぞれいろいろな資力その他において、中小企業と比べてやりやすいわけでございますが、中小企業等におきましては、これは単にいまの地区のみならず、各地でいろいろ問題になっているわけでございます。御審議いただきました本年度の予算につきましても、中小企業につきましては、現行よりもさらに利率を引き下げて四月から実施する予定でございますので、こういう点もよく県と相談いたしまして、あるいは通産省ともよく御相談いたしまして、指導をいたしたい、かように考えております。
  146. 米田東吾

    ○米田委員 それからいま一つ、ここで、臭気の関係でやはりお聞きしておきたいのでありますが、先ほど岡本委員から臭気についての相当突っ込んだ御質問が展開されました。ここに北越製紙という臭気の発生源になっている企業があるわけであります。それからもう一つは、新潟港はシベリアからの材木の輸入港であって、集積地も、新潟港周辺にたくさん貯木場ができておる。この山ノ下地域にもそういう貯木場があるわけでありますが、その貯木に、私はよくわからぬのだけれども、防腐剤というものを使って、そうしてそれがまた一つの臭気の発生源にもなっている。製紙のパルプから出てくる臭気ですね。あともう一つ、これは特異なのでありますけれども、こういう地域にまた新潟市のし尿処理場がある。これはまた別にあれしますけれども、化学的なカーボンあるいは貯木の防腐剤、そういうようなものについての臭気を測定したり、あるいはこれを脱臭するあるいは防臭する、そういう措置については、聞くところによれば、なかなかこれはおくれておるし、臭気の発生源すらまだ十分科学的につかんでおらない段階だというようなことも聞いておりますけれども、現在どういう取り組みがなされておるのか、この点についてもお聞きしておきたいと思います。
  147. 武藤琦一郎

    ○武藤(琦)政府委員 悪臭の問題につきましては、県当局で本年度実態調査をやるように聞いておりますので、厚生省としても、何らか予算的な援助ができるのではないかと思って、現在検討しております。
  148. 米田東吾

    ○米田委員 それから、この地域に東北電力の新潟火力発電所があるわけであります。現在は五十万キロワットアワーの発電能力を持って運転しております。これが新潟市の亜硫酸ガスの公害の八〇%の発生源だといわれておるわけです。これがことしの九月になりますと、新しい二十五万キロワットの第四号炉が稼働する、運転するという事態になっておるわけであります。現在は五十万キロワット、炉は三つであります。今度一つでありますけれども、二十五万キロワット、これが九月以降通帳を開始するわけでありますが、そうなりますと、亜硫酸ガスの量というものはさらに私は拡大するだろうと実は思うのであります。この間この東北電力の発電所にも行ってまいりましたけれども、やはり企業としても、ガスの量を下げるということについての努力はしておるようでありますが、通産当局としても、この新潟火力発電の四号機の完成、稼働にあたって、公害上何か指導なり措置なりがなされておりますか、その点ひとつお聞きしておきたいと思います。
  149. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 一般的に申し上げまして、火力発電所を増設するにあたりましては、電源開発調整審議会の審議を経まして、さらに具体的には、電気事業法に基づいて許可するわけでございますが、その際におきましては、火力発電所が完成した暁において、当該地区の大気汚染に対してどういう影響があるであろうか、非常に悪影響があるかあるいは環境基準をオーバーするおそれがあるかという点については、十分慎重に検討した上で許可することに相なっておるわけでございます。  御質問の東北電力の新潟火力第四号機、二十五万キロワット、本年九月稼働開始につきましては、その電源開発調整審議会の審議なりあるいは電気事業法に基づく認可に際して、十分検討しておりまして、使用重油は二・二%をたくということで、完成時において新潟地区の環境汚染について非常な悪影響はない、具体的にいえば、環境基準をオーバーするようなことはないということでもって、これを認可したわけでございます。  それで、現状は先ほど厚生省のほうからお話がありましたように、一番高いところで年間平均値〇・〇二PPMということになっております。これが新潟火力第四号機完成の暁にどれだけになるか、正確なことはわかりませんけれども、われわれとしては、環境基準の〇・〇五PPMをオーバーすることは絶対ないと確信しておるわけでございます。しかしながら、完成時におきまして、その他の中小煙源による複合汚染ということも考えられるわけでございますから、そのときの環境汚染を再度十分チェックいたしまして、もし万一この新潟火力四号機が原因となって、重大なる亜硫酸ガスの汚染を生じておるという事態がわかりました際におきましては、使用燃料の低下その他の措置を講ずる考えでございます。
  150. 米田東吾

    ○米田委員 わかりましたが、おそらく東北電力自体も、この環境基準が示されておりますから、これをこえるようなことは企業みずからやらないだろうと思います。また山ノ下地域には、県の公害課の測定機能が二カ所か三カ所あるように聞いておりますから、相当県自体も調査をされて測定をされておると思います。ただ私、問題なのは、環境基準はこれは基準でありますけれども、要するにこれは最低基準というか、厚生省としては一つの最低基準として出されたと思いますけれども、〇・〇五PPMにならなければよろしいということで、こえたら処置をするということでは、実は特に山ノ下のような総体的に大気汚染されているような地域については、これは何かこの基準の盲点だと思いますけれども、方法を考えて、やはりこの硫黄の量を下げてもらうような、そういう行政指導というものはなされてもいいんじゃないか、こういうふうに実は思うのであります。いまたいている重油の硫黄の含有量は、私が聞いたところでは二・六%だ、これは二・二%程度に下げる用意があるんだということを言っておられました、企業自身が。しかしこの大井における東京電力の低硫黄というようなああいう企業努力によって、ああいう努力もなされて、ガスの少ないこの努力をなさっておられるわけなんでありますから、山ノ下というような気象条件がまず悪い。それから総体的にばいじんや何かで大気汚染されている。そこにもう基準すれすれの亜硫酸ガスの汚染がなされる。こういうことになりますれば、私は、そのときになったら対策するといっても、もう手おくれじゃないかという気がするわけであります。したがって、四号機の稼動にあたっては、もう少し思い切った当局としての、もっと硫黄の量の少ない低硫黄の重油をたけとか、あるいは、あの新潟の火力というのは、いまの新潟で出ておりますガス――もともと燃料は重油ということよりも、ガスを燃料にする設計で出発をしたんだというようなことを言っているわけであります。そういうものについて転換をさせるとか、そういうようなことは行政指導としてはできないものかどうか、その点あたりはいかがでございましょうか。
  151. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 先生の最後の御質問からお答えいたしますが、先生のおっしゃるとおりに、新潟火力というのは、そもそも新潟地区において豊富に出ている天然ガスを使う、大部分天然ガスを使うということで出発したわけでございまして、現在におきましても、天然ガスを火力発電所で使うということができれば、本来の目的にかなうわけだし、新潟地区の産業の振興という観点からも、最も望ましいことは言うまでもないわけでございます。われわれとしても、基本的にそういう線を捨てているわけではないのでございますが、先生また別な意味で御承知のとおりに、天然ガスにつきましては、予想された供給力が必ずしも期待どおりに出なかった。反面、新潟地区においては、この天然ガスを使う化学工業の急速なる発展等ございまして、東北電力が当初の設計上予定しておりました天然ガスの供給が、実際問題として期待できなくなった。むしろ火力発電所は重油を使っても動かせる。しかし他方、天然ガスを目的としたいろいろな化学工業は天然ガスを使わなければやっていけない。やっていけないということは、新潟の地元産業の発展にならないというような関係で、やむを得ず、東北電力の火力発電所は重油専焼に近いような形でやっているわけでございまして、その点まことに残念でございますが、そういう事情もあるので、できれば天然ガスを使いたいけれども、現状においては重油を中心としてやっていかざるを得ない、こういうのが実情でございます。
  152. 米田東吾

    ○米田委員 時間もありませんから、またあとで十分私も勉強して、よくお聞きしたいと思いますが、いずれにいたしましても、山ノ下のこの大気汚染地域につきましては、特別な関心を、ひとつ厚生当局も通産当局も持っていただきたい。  次に、文部省から来ていただいておりますので、もう時間がありませんが、かいつまんでお聞きしたいのでありますけれども、いま私が御質問いたしましたことをお聞きいただいておって、新潟の山ノ下地帯というものはどういう公害地帯であるか、大体おわかりいただいたと思うのでありますが、しかし公害の、しかも亜硫酸ガスあるいは大気汚染の測定によりまして、等量線では一番強い値が出ているところに、東山ノ下小学校という、約千四百名近い小学校があるわけです。これは地元でも、学校の子供でも、カラスの学校、カラスの学校と呼んでいるわけです。ばい煙で校舎が全部まっ黒になっている。そしてもう一つ悪いことには、その学校のすぐ隣が市のし尿処理場になっている。これはじんあいとふん尿の処理をやっているわけです。臭気がたいへんなんであります。加えて東北電力から出るところの亜硫酸ガスが、大体その上空をいつでも、あれはどういう関係でしょうか、そこだけエアポケットみたいになって、空気があまり動かないのですね。そういうようにところにあるわけでありまして、亜硫酸ガスの測定においても、そこは一番高いというところなんです。そういうところに小学校があるわけなんです。そこの校長が、公害の中に戦っておる子供の――これは教師から父兄から子供から、公害と戦いながら勉強しているわけですが、その記録を出版して、これはおそらく全国の公害関係者には届いている資料じゃないかと思うのでありますが、そういう最も悪い環境の中に東山ノ下小学校があるわけです。私、時間があったらもう少し詳しく実は御質問をするつもりでおったのでありますけれども、この間その学校にも行ってまいりまして、校長から直接いろいろ話も聞いてきました。そしてまたこの資料ももらってきたのでありますが、この東山ノ下小学校の公害状況というものを、何かあなたのほうでも二回くらい調査に来ておられるそうでありますから知っておられると思いますが、いかがでございましょう、どんなふうに把握しておられますか。
  153. 菅野誠

    ○菅野説明員 文部省の施設部長でございます。  ただいまのお話の、新潟市東山ノ下小学校の公害につきまして、報告を受けております。三十七学級の児童数約千五百六十六名、建物面積が七千三百二十四平米というような、かなり大規模な小学校でございます。この子供たちが公害で非常に苦しんでいるという話も聞きました。また現実にも、いまお話しのようにいろいろな複合した公害を受けておるということで、この学校は御存じのような新潟市立の学校でございますから、直接的には、新潟市がいろいろまたその学校と相談いたしまして、公害対策を講ずるわけでありますが、四十二年度において、さしあたり一年生の教室六教室に、空気浄化装置とクーラーを取りつけて、公害防止工事を実施しております。それから四十三年度において――この年から公立文教施設整備の中に公害対策の予算を組んでいただいた関係もあるわけでございますが、四十三年度におきまして、二年生、三年生の教室十二教室と特別教室の二教室、合わせまして十四教室に、国庫補助の事業といたしまして、防止工事を実施いたしました。しかしこれが全部でございませんで、なお残りがあるわけでございます。残りについては、昭和四十四年度に実施する計画のように聞いておりますが、これは御存じのように、まあきのうからといいましょうか、予算が今年度の予算になりますので、補助の申請は五月末日までに文部省に参ることになっておりますので、市のほうから県の教育委員会を通じまして、五月末日までにその補助申請が出てまいりますれば、できるだけ、ただいまのような公害地域でございますので、精査いたしまして善処いたしたい、かように考えております。
  154. 米田東吾

    ○米田委員 お聞きいたしましたけれども、実は学校へ行ってみたり、校長の話を聞いたり、教師と話をする段階で私どもわかったのでありますけれども、もともとこれは学校を置く場所でないというんですね。学校ができたのは昭和二十五年、その後大気汚染の――あるいは新潟のし尿処理場なんかもその後であります。工場がその周辺にどんどん寄ってきた。前からあったのもありますけれども、特にひどくなったのは学校ができたあとなんです。したがって、こういう経過にかんがみまして――企業がどこかへ行けば一番いいんだけれども、いまそんなことを言ったって、なかなかできっこない相談です。したがって、思い切って、これは新潟市立であろうと、文部省のほうで力をかして、学校を移転させるということが手っとり早く最良の方法ではないか。しかもこの地域には、通学の校区をあまりずらさぬでも、適地があるわけであります。私は具体的には申しませんけれども、皆さんがその気になって、市と文部省が力を合わせれば、手近なところにもっと環境のよい場所がある。あそこは海岸でありますから、砂丘地帯もあるわけでありまして、おそらくいまある学校の位置から半径五百メートル以内のところに適地を求めることは可能だと私は思います。そういうような条件もありますので、多くのことは申し上げませんが、これはもうもともと学校を置く場所でありません。昼間における照明施設をつくったり、あるいは浄化装置をつけたり、私も聞いてきましたけれども、こんなことでは全然問題にならないわけです。私はあの学校を見まして、ほんとうに公害対策というものについての政治がないということを、実はしみじみ感じてまいりました。できれば思い切って解決するために、学校ぐるみ、どこか適当なところに移転をさせる、こういうことでひとつ検討をいただけないかどうか。これはまあ唐突な質問でありますけれども、ひとつお答えをいただいて、前向きで取り組んでいただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  155. 菅野誠

    ○菅野説明員 ただいま学校移転の可能性及びその検討の余地等について御質問がございましたが、もちろんこの関係は、設置者が新潟市でございますから、市のほうと十分打ち合わせる必要はあると思いますが、その可能性はないことはございません。現に公害のために学校を移転する場合に補助金を出した例もございますから、市がそのような方向において前向きの姿勢で申請してまいれば、相談の余地はあります。こちらとしても、ただいまの御意見を伺いまして、市のほうと十分意見の調整をして話し合ってみたい、かように考えております。
  156. 米田東吾

    ○米田委員 ぜひひとつ、いまの御答弁を私そのままお聞きをして、私も帰りまして、市のほうとも十分話をしたいと思いますが、前向きで検討をいただきたいと思います。  なおまた、あとの質問はあとの委員会でさしていただきたいと思います。これで終わります。
  157. 赤路友藏

  158. 工藤良平

    工藤委員 私は、カドミウムの問題につきまして、後ほど山口委員のほうから御質問がありますから、関連のほうが先になるわけでありますけれども、先般からの問題を取り上げまして、その後の中間的な問題の取り上げ方になりますけれども、一応お伺いをいたしたいと思っております。  実は、厚生省からカドミウムによる環境汚染に関する見解と今後の対策というのが出まして、実は地方紙には大分県の奥岳川の問題が出ておりませんでしたので、何かそでにされたような、たいへんこの地域では心配しておりまして、来週知事が直接厚生省のほうに上ってくるそうでありますから、あらかじめ厚生省のほうでも、その点については、県側に対して十分その考え方を明らかにしておいていただきたいと思うのです。  昨年の九月の委員会で取り上げまして、その後、県それから厚生省、農林省、通産省、それぞれこの問題に真剣に取り組んでいただいたわけでございますが、その後の経緯について、これはいつごろまでにこの調査がまとまるのか。その点について、厚生省のほうからまずお伺いをいたしたいと思います。
  159. 武藤琦一郎

    ○武藤(琦)政府委員 先般、私どものほうで三地域についての発表を行なったわけでございますが、大分の問題につきましては、同時にやる予定ではございましたが、調査の結果の分析について若干おくれておりました関係で、発表ができなかったわけでございまして、いずれ五月上旬には、三地域同様、発表ができると考えております。
  160. 工藤良平

    工藤委員 厚生省自身として調査をやらせたのか、あるいは県に依頼をして調査をやったのか、その点お伺いをしたいと思います。
  161. 武藤琦一郎

    ○武藤(琦)政府委員 大分県の問題につきましては、実は先ほど申しましたように、若干三地域よりもおくれて実は調査を始めた関係で、今回間に合わなかったわけでありますが、厚生省は公衆衛生協会に委託をして、公衆衛生協会のほうで、学者が三地域と同じように調査をやったわけでございます。
  162. 工藤良平

    工藤委員 この報告書の末尾にあります付記の中の、大分県奥岳川についてはクロスチェックが完了していないので、今回の発表から除外している。そのチェックが終わりますと発表できる、その時期は五月の上旬くらいになるだろう、こういうようにお話のようですが、そういたしますと、その厚生省の調査と、それから県からも報告が来ておると思いますが、一体どのようなものをチェックしていくのか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  163. 武藤琦一郎

    ○武藤(琦)政府委員 県自体としましては、十月から十一月にかけて、川の水とそれから水産物の一部につきまして調査を実施したようでございまして、この点につきましては、先ごろ厚生省にも結果が参っております。
  164. 工藤良平

    工藤委員 私、先般党の調査団で、この中間的なデータを県からいただいたわけでありますが、県のほうでは、これは四十三年の七月二十二日に公害パトロールで採取をいたしました三つのサンプルの中から多量のカドミウムが検出されたということを、実はこの委員会で私が取り上げまして後に発表いたしまして、たいへん大きな問題になったわけでございますが、その後十月の三日とそれから十一月の八日のこの内容というものは、私いただいているわけであります。通産省もたしか十一月に福岡の鉱山保安監督局が調査をいたしたと思いますけれども、その点確認をしておきたいと思うのです。
  165. 下河辺孝

    ○下河辺説明員 通産省としましては、福岡の鉱山保安監督局が主体になりまして、十一月四日から十日の間、豊栄鉱山及び奥岳川本流の水質調査を実施いたしております。
  166. 工藤良平

    工藤委員 これはいま県のほうに調査をやらしておりますけれども、たしか私が現地に入っておりますときに、通産局のほうから見えておったようでございますけれども、この十一月八日の調査結果というものが、工場そのものも、施設をたしかこの前後にやっておると思いますが、坑内水の中に含まれておるカドミウムの量を見ましても、非常に急激に少ないわけであります。これは原因がどういうことかと、私もこの数字をもらいましていろいろ検討してみているのですけれども、当時私が参りましたときは、ちょうど台風の直後に参りました。まだ水量の非常に多い日であったわけであります。鉱山のほうでは採鉱その他作業を中止しておりまして、沈でん池の改修等をやっておった事実を私は確認をしているわけでありますが、もし台風直後のまだ水量の多いときの結果というものがこのデータの中に入ってくるというと、数字そのものが非常にゆがんだものになるのではないだろうか、私はこういうふうに考えるわけですが、その点、いつ幾日に採取をしたということが、もしわかっておれば明らかにしていただきたいと思います。
  167. 下河辺孝

    ○下河辺説明員 監督局といたしましては、問題になりました時点以降でございますね、八月それから十月、それからまた十二月におきまして、数項目にわたりまして、鉱山側に改善の指示を行なっております。  その内容をちょっと申し上げますと、主としまして水素イオン濃度をもっと高めて徹底した中和処理をする。それから水素イオン濃度の自動測定装置をつくらせる。あるいは自動警報装置を設けさせる。またさらに、坑内水が多うございますから、その水を減らせるように、坑内のセメント注入をやらせる。あるいはまた堆積場に入ります水を少なくするために、山腹水路、非常水路というようなものを設けさせる。またさらに第三堆積場というものを使っておりましたが、それをやめまして、第二堆積場を新しい堆積場に、沈でん物の堆積をさせるというような措置をやらせたわけでございます。したがいまして、先生いまおっしゃいましたように、十一月の調査当日、採水をしたときに、はたしてどこの選鉱場あるいは鉱山が作業を休止しておったのか、私ただいまはっきり申し上げることはできないわけでございますけれども、鉱山に対しましてもこのような措置をとっておりますし、鉱山側もかなり積極的に対策を講じておるという結果からも、かなり水質が改善されているのではないかというように考える次第であります。
  168. 工藤良平

    工藤委員 確かに御指摘のように、何回か勧告をしていただきまして、鉱山側もたしか十一月の初めに施設を実施されたと思いますから、私は十一月八日の、この中に含まれておるカドミウムをはじめとして重金属類の率が非常に低いということは、理解できるわけであります。たださっき申し上げましたように、私も台風直後であったという記憶がありますので、ちょうど通産局がいま来ているという時点に、私も一緒になりました。そのことは、もしもこれがチェックをする過程の中で参考になるとするならば、非常に大きな問題になりますので、その事実をひとつ確認していただきたいと思う。私のほうも県を通じまして、その雨量その他の問題については、また資料として提示をいたしまして、参考にしていただきたいというふうに考えているわけであります。  厚生省に実はお伺いをしたいわけですが、地元の町村が大分大学の志賀研究室に依頼をいたしまして、これは四十三年の六月からずっと何回かにわけまして、ある定点をきめまして、調査をいたしているわけでございますが、この調査によりますと、たとえば宇田枝井路あるいは昭和宮三井路の取り入れ口における水質のカドミウムの量というものは、水質基準よりも相当高いものが出ているようであります。したがって、このような資料をあわせて参考にされるのかどうか、その点をひとつ聞いておきたいと思うのです。
  169. 武藤琦一郎

    ○武藤(琦)政府委員 昨年の六月に取水をされたデータについて、いわゆる基準よりも高い数字が出ているけれども、こういう点をいろいろ総合判断上参考にされるか、そういう御意見でございますが、厚生省が、三地域と同じようなことで、昨年の秋に取水をいたしました時期と時期は違いますけれども、厚生省が行ないました結果を総合的に判断する場合の一つの参考のデータとして考えたい、かように考えております。
  170. 工藤良平

    工藤委員 この点については、問題として取り上げます以前に、非常に高い関心を示しておりましたが、その結果というものは後ほど出たわけですけれども、工業試験所の七月二十二日の調査と、この大分大学の志賀研究室の調査結果というものは非常に貴重なものになるのではないだろうか、私はこういうように思いますので、ぜひこの点については、厚生省の見解をまとめる場合に参考にしていただきたい、こういうように思っているわけであります。  それから次に、これは農林省の方にお伺いをいたしたいわけでありますが、これは他の地域と私比較をして見ているわけでありますが、奥岳川の場合に、水稲の被害が非常に大きいし、また麦の被害が大きいわけでありますが、この中で県の調査結果の報告を、中間報告ですけれども、見ますと、亜鉛の濃度が非常に高い。こういうことから、それが水稲の被害の主たる原因ではないかということがいわれておるわけでありますが、これについての農林省の見解をひとつ伺っておきたいと思うのです。
  171. 井元光一

    ○井元説明員 御指摘のように、また先生よく御存じのように、四十年に農地局が行なった調査によりますと、被害面積が二百町歩前後でございます。その前に、また先生がよく御存じの、農地局による鉱毒対策事業というもの、これは科学的に全部調査したわけじゃございませんけれども、こういう事業をやればおそらくある程度はとまるだろうということを推測をいたしまして、二十七年から三十年の四カ年にわたりまして、六千八百万円で鉱毒対策事業をいたしました。これはいまでは非常に被害が出てまいりまして、これも効果が十分ではないわけです。現在、県で中間報告がありました。この県の報告内容から推察いたしますと、水稲の被害発生が水口において非常に顕著である。それから収量と収量構成要素との関係から見ますと、穂長の短小化、一穂もみ数の減少、登熟歩合の低下、玄米の千粒重の低下等によって収量の低下が生じたと考えられる。それから、そのほか、水稲被害の主因は、長谷緒井路関係は砒素、宇田枝及び宮三井路は亜鉛ということが推定される。  農林省といたしましては、こうした分析はまだいたしておりませんけれども、これらの中間報告から見て、大体そういうふうに推定しております。  現況は以上でございます。
  172. 工藤良平

    工藤委員 農林省として、土壌中の最大許容濃度といいますか、これは一定基準というものがあるだろうと思うのですが、亜鉛、硫酸亜鉛あるいは硫酸銅で、基準があればひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  173. 井元光一

    ○井元説明員 砒素は一〇PPM、それから亜鉛は五〇、銅が四〇でございます。
  174. 工藤良平

    工藤委員 そこで、これは県の報告で、農林省にすでに入っているかどうかわかりませんけれども、たとえば長谷緒井路では亜鉛が三四〇PPM、宇田枝井路のかかりでは一番高いところで二四二〇PPM、こういうように非常に高いわけであります。もちろん、他の硫酸銅等につきましても同じように非常に高い濃度を示しておるわけで、これについては、私ども調査の結果を見まして非常に驚いているわけであります。もちろん、これが人体に及ぼす影響というものはまだ想像もつきませんけれども、しかし、これだけのたいへんな濃度のものが土壌の中に、しかも二十七年から四年間の間に、天地返しをやって土壌改良事業をやった後も、またそういうものが新たに積み重ねられてきている。農民の健康にとってもたいへんな問題でございます。また農業経営にとっても非常に深刻な問題でございますので、この点について、異常な濃度でございますから、農林省として、本格的に調査をされる意思があるかどうか、もしあるとすれば、どういうような計画でやられるか、その点も、できれば明らかにしておいていただきたい。
  175. 井元光一

    ○井元説明員 ただいま先生御指摘のように、これは県からの報告でございますけれども、非常に収量の悪いところ十カ所あたりの収量の抽出でございますから、これがすべてとは申せませんけれども、あるところは三分の一くらいの収量でふる。非常に影響のあるところも確かにあるわけでございますが、私どもは、昨年九月、先生が委員会で御指摘になった以後・まだ科学的な調査も何もいたしておりません。県の御報告というものもありますけれども、それを待たずに、何とか調査費をとってその対策を講じようと努力してまいりましたが、四十四年度といたしましては、調査期間一年を目途といたしまして、約五十万円を予算に計上したわけであります。これは一般調査でございまして、またこのほかに、全国的の調査といたしまして、二カ年にわたって耕地関係対象にいたしまして、施設をどういうふうにすればいいか、こういうような調査も同時に予算を計上してまいったわけでございます。また、科学的の調査に対処するために、いままで東海、近畿、関東と、三カ所しか、われわれの出先には水質専門官というものがありませんでしたけれども、今度九州にも出先に水質専門官を置く措置を予算的に講じたわけでございます。  以上でございます。
  176. 工藤良平

    工藤委員 この問題については、深刻な問題でありますので、ぜひひとつ慎重な、しかも綿密な、あまり時間をかけないように、なるべく早く調査が完了しますようにお願いをいたしたい、こういうように思います。  それから、次に経済企画庁にお伺いいたしますが、汚染されておる水の問題でございます。特に鉱山関係というのは奥地のほうにありますので、水の開発のしかたによりましては、鉱害を未然に十分に防止でき得る措置がとられるのではないだろうかというふうに私は考えるわけであります。たとえば、ここの場合も、大野川上流の地域開発も一緒に含めて検討する、こういうことが、特にこういうカドミウム等の危険な重金属を含む鉱山等の廃水問題については必要ではないだろうかというふうに思って、いま各省それぞれ、私も打診をしてみているわけでありますけれども、特に汚染をされておる河川の問題として、経済企画庁として取り上げて、そういう措置を早急に検討していく必要があるんではないかと思うのですが、その点に対する御見解を伺いたいと思います。
  177. 宮内宏

    ○宮内説明員 まず一般論として申し上げますと、非常に汚濁が進んでまいっております都市の河川などは、川から希釈用水を入れまして、そして、なかなか理想的にはきれいになりませんけれども、そういう方法ですでに実施しておるところがある。たとえば隅田川あるいは大阪の寝屋川あるいは神崎川等で始めております。  それから、本件につきましては建設省の所管でございますので、ちょっと水の開発について聞いてみたのでございますけれども、現在大野川と奥岳川の合流点に近いところで、開発の調査を始めたように聞いております。しかしながら、一般論といたしまして、いわゆる自然の汚濁原因者がはっきりしている汚濁とに分けなければいけないと思います。それで、天然のものはやはり公共事業的色彩が入った処置の方法が考えられる、企業者責任のものは企業者にできるだけのことはやっていただく、そういうことに相なるんじゃないかというふうに思います。
  178. 工藤良平

    工藤委員 この場合、ごく局地的な問題になりますけれども、私は一般的な問題とも関連があると思いますからお伺いをするわけでありますが、たとえば、いま豊栄鉱業所は仕事をしているわけですけれども、その奥にあります三菱の尾平鉱山はいま廃鉱になっているわけであります。もちろんその所有権は三菱にあるわけでありますから、施設は当然しなければならぬことになっておりますが、廃鉱になっておる。しかも、それからなお坑内水がどんどん出ているわけでありますから、そういうことができれば、地域の開発とあわせて、その水が五十年、百年という大計の上に、鉱害も防止でき、さらにそれが地域開発に役立つとするならば、やはり水資源の開発ということについては経済企画庁の所管でありますから、農林省なり通産省あるいは建設省、こういったところで総合的に検討してみて、可能であるとするならば、五十年、百年の大計を立ててそういう措置を講ずる、そうしなければ、局部的に施設をやらせた、しかも簡単な沈でん池はつくった、それでも三年、五年たつうちにはまた埋もってしまうという形で、集中豪雨でもあれば再び被害を起こすという結果になりますから、そういう意味では、やはり大きな意味の鉱害を含めた水の開発というものを当然検討してしかるべきではないか、私はこういうように思っているわけであります。この点については、きょうそうおそくまで詰める必要はないと思いますけれども、ぜひひとつ大きな意味で御検討いただいて――両方できるとするなら一石二鳥であります。私は、そういう面についての御検討を経済企画庁としてもお願いしたい、こういうように思っております。もう一ぺんこの点についての考え方を明らかにしておいていただきたいと思います。
  179. 宮内宏

    ○宮内説明員 先生の御発想、非常にいいと思うのでございますが、たとえば多目的ダムで水をつくるような場合に、たとえば農業用水でありますとか、発電とか、それから治水、飲み水というふうに、いろいろ水の種類がございまして、それでそれぞれダムなり、それを引っぱってくる施設、いわゆるアロケーションといいまして、それぞれ分担関係が出てくるわけですね。その中に公害をどういうウエートで、あるいはだれが持つのかというふうな非常にむずかしいといいますか、もう少し研究しなければ御即答申し上げられないような内容があるわけでございます。しかし、今後の公害問題の中では一つの考え方だと思いますので、勉強してまいりたいというふうに考えております。
  180. 工藤良平

    工藤委員 これで終わりたいと思いますが、先ほども申し上げましたように、三カ所の調査結果が出ることによって、私のほうでは、むしろ奥岳川問題がそのままにされるのではないだろうかという地域の不安が非常に大きいわけでございまして、この点については、厚生省としてもなるべく早く結論を出していただきまして、地域住民が安心でき、しかも次の対策が万全にとられるように――幸いにしてまだ患者が出ていないわけでありますから、そういう措置が早急にとられることが必要ではないか、私はこういうように思いますので、ぜひひとつよろしくお願い申し上げまして、大体この程度で終わりたいと思います。
  181. 赤路友藏

  182. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 大臣もおられますが、厚生省におきましては、三月二十七日にカドミウムによる環境汚染に関する厚生省の見解と今後の対策を発表せられまして、二十八日に大臣のほうから閣議にも御報告になったそうでございます。わが党といたしましても、この厚生省見解を直ちに政策審議会におきまして検討いたしまして、二十八日に、私厚生省の記者クラブにも参りまして、党としての厚生省見解に対する考え方を発表いたした次第であります。そういう立場から、今回厚生省が発表されました厚生省見解の問題点につきましてお尋ねをいたしたいと思う次第であります。  まず第一にお尋ねをいたしたい点は、この報告の最後の総合的評価におきまして、宮城県の鶯沢におきましては、カドミウムの一日当たりの摂取量が約〇・三ミリグラムパーデー、群馬県の安中地域におきましては約〇・四ミリグラムパーデー、それから長崎県の対馬におきましては約〇・四九ミリグラム。パーデーであるというふうに推定をされておられます。そうして富山県の神通川流域における摂取量の推定が約〇・六ミリグラム。パーデーである。そうして、イタイイタイ病発生をいたしました当時におきまして摂取されましたカドミウムの量は、約一・〇ないし一・四ミリグラム。パーデーであるというふうに推定をされまして、結局イタイイタイ病発生する危険があるとは考えられないが、安全を見込んで、今後これらの地域を要観察地域として、継続的な対策を行なうことが必要である、というふうにありまして、以下鶯沢、安中、対馬の各地域における具体的な対策を出しておられるわけであります。しかし問題は、この資料をいただいておりましても、鶯沢、安中、そして対馬のカドミウムの一日当たりの摂取量というものは、結局は推定の積み重ねでしかない。特に問題は、対馬の場合におきましては、米、サツマイモ、白菜等のカドミウム量を調査されまして、さらに水等につきましても調査をなされているわけでありますが、問題は鶯沢並びに安中につきましては、米だけしかカドミウムの量の調査はされておられない、もちろん水はやっておられますけれども。そういう中ですべて推定によるところの摂取量を積み重ねられまして、しかも神通川流域の摂取量につきましても、これは推定であります。そういった推定と推定の量を比較されまして、直ちにこのような結論をお出しになろことは早計であり、非科学的ではないかと思うのであります。この点に対する厚生省の御見解はいかがでしょうか。
  183. 武藤琦一郎

    ○武藤(琦)政府委員 ただいまの御質問に対して率直にお答えいたします。  第一は、私どもこの三地域につきましてのデータがまとまる段階で、まだ健康診断等のすべての総合的な研究結果までいかない段階で、いろいろ見解を発表することについては問題があることは十分承知でございました。しかしながら公害問題のいろいろの調査結果が出ましたときには、これはいち早くガラス張りでこれをする、そうしてその段階において考えられる範囲内で、早く対策なり検討なり着手を始めたい、こういうことがやはり必要ではないか、こういうことで、実はこの問題に取り組んだわけでございます。いままでいろいろ厚生省が、あるいは政府等が調査をやっても、なかなか発表がおくれる、結果その他が出たときにはもうすでに手おくれで、手を打つのがおくれているという批判もありましたので、私どもとしては、できるだけなるべく早く対策なりデータを発表するのがいいのではないか。もちろん先生が御指摘のように、非科学的な結論しか出せない段階でそういうことをあえてすることは、これはもちろんいけませんけれども、ある程度の結論が出せる段階では、これは率直にやったほうがいいのではないかという気持ちがあるので、この点については踏み切ったわけでございます。  具体的な問題に移りまして、この三地域につきまして、どろ、川の水、飲料水、米その他、ある地域におきましては、そのほかの食物も調査をいたしました。それでこの調査対象を米に一応水準的にしぼりましたのは、米が主としてわれわれ日本人の中心的な食物でありますし、各地域を通じて共通的な性質のものであるということから、関係単者のほうでも、とりあえずそれを基準にデータをとったらどうかというような御意見もございましたので、米を出したわけでございまして、そのほかの野菜等について、あるいは御指摘のように全部網羅すればよかったのかもしれませんけれども、その点につきましては、たとえば野菜等の採取の時期、あるいは種類等によってなかなか比較ができない点も、あるいはあったのではないかと私ども考えておるわけでございます。  それから第二の、いろいろ全部推定ではないかということにつきましては、これは神通川におきましても、あるいはその他の地域につきましても、その住民そのものがどの程度の食事を実際とったかということは、これは先生の御推察のように、なかなか実証的には、これはデータ等の整理ができないわけでございまして、この点はやはりある程度の推察によらざるを得ないのではないか、こういうことで、ごらんに入れましたような推定をやったわけでございます。この点につきまして、もちろん推定ではございますけれども、私どもとしては、大体こういう考え方でこの三地域について考え、またカドミウムの事件で不幸な事件が起きました富山についても、水あるいは米等についての推定を考えまして、現段階では直ちにいわゆるイタイイタイ病発生するというようなことは考えられない。また現実に長崎あるいは宮城等におきましては、県当局自体としては健康診断の結果を発表しておりまして、群馬につきましては、これはまだ全然発表はしておりませんけれども、非公式には、ある程度の情報が私どもの耳には入ってきておりまして、その段階で直ちにイタイイタイ病が発病するというようなことは考えられないと述べたわけでございます。しかしながら、ここに結論がありますように、私どもとしては、やはり十分注意をする必要がある。したがいまして、今後予防的な対策、あるいは環境汚染についてのいろいろの健康診断等につきましての調査研究は十分にやらなくてはいけない。またさらに、このカドミウム量の漸滅対策をも合理的に検討していかなければならないということで、十分これは注意する必要はあるということを重ねて、この点は考え方を示したわけでございます。調査に伴う見解ということで、何か最終的な結論を私どもが出したような印象を受けたかもしれませんけれども、この点につきましては、この時点におきます一つの考え方を示したのでございまして、当然十分今後の調査をやる、あるいはその結果に基づきまして、それぞれの対策なり見解を示していくことは当然でございます。
  184. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 いろいろお話しがありましたが、結局推定に基づいた数字であるということはお認めになったわけでございます。しかもこの水あるいは泥、土壌、農作物につきましては、この鶯沢、安中、対馬、さらには神通川流域のそれぞれのデータにつきましても、発表しておられるわけでございます。そういう中では、この土壌につきましては、安中にしろ、さらには鴬沢にしろ、それからまた対馬にしろ、神通川流域よりも非常にカドミウムの汚染度が高いわけですね。これははっきりデータとして比較検討ができる。それから米につきましては、三地区とも一応調べている、こういった事実を私はやはり率直に発表すべきではないかと思うのです。そうして要観察地域であるということについて発表をすることは、これはけっこうだと思うわけであります。あまり発表がおくれるということはいかがかということは、私も同感でありますが、しかしそこへ一歩さらに継ぎ足して、そうしてそれぞれの地域のカドミウムの摂取量の推定を出し、だからいまのところイタイイタイ病の心配はないのだというところまでお書きとめになることは、これは私はやはり行き過ぎではないか、かように思うのです。調査をいたしましたならば、調査の結果出ました明確な事実だけを発表すべきではないかと思うのですが、大臣いかがですか。そういった事実のほかに、いま部長もお認めになったような、幾多の推定数字をつけ加えた上での御見解というものをお出しになることは、大臣いかがでしょうか。
  185. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私は作為的な推定はいけないと思いますけれども、学者の方々が、相当根拠を持って推定をされて、おそらく三地域住民の方々は、一体どうなるのだろうと非常に心配をしておられるだろうと思いますから、われわれの良心的な結果によると、いま直ちにはそう心配しなくてもいいぞという結論が出れば、やはり私は早く知らせたほうがいいのではないか、かように思います。
  186. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 作為はいかぬが、学者の人たちが良心的に検討した結果の推定ならば、ある程度許されるのではないかという御見解のようでありますが、そこでさらにお尋ねをしたいと思いますが、安中につきましては、他の地域と違いまして、ここの製錬方法が湿式製錬と乾式製錬を併用しているということは、過日の当委員会でも、私、指摘をいたしました。萩野博士をはじめといたしまして、何人かの医者の方が当該地域の健康調査をいたしております。また現地へ参りまして住民の訴えを聞きますと、むしろイタイイタイ病の相当重い症状ではないかと推察されます患者の人たちはどこに居住をしておるかと申しますと、排水による汚染地域ではないわけて、排煙によって汚染をされたと考えられる野殿という地域に住んでおられるわけであります。今回の土壌調査、それから米の調査は、この排煙汚染地区と推定される野殿地区についてはお調べになったのですか。
  187. 武藤琦一郎

    ○武藤(琦)政府委員 大気につきましては、県がやったというふうに私どもは報告を受けております。
  188. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 重松公衆衛生院の疫学部長が来られましてサンプルをおとりになりました。これはすべて野殿地区ではなくて、いわば排水によって汚染をされたと思われる地域、場所を言えば中宿とかいう地域である。したがって、重松さんが参りましてサンプルをおとりになりました地域は――この野殿という高い地区はサンプルをとっていない。この地域は排水による汚染というのは考えられないわけです、高いわけですから。当然これは排煙による汚染と考えなければならぬ。この地域の土壌、あるいはその米、こういうものを調査しなければ、安中地区におけるカドミウム汚染というのは他と状況が違うことは、もう御案内のとおりなのでありますから、いわば完全な調査とは言いがたい、瑕理のある調査だ、こう言わざるを得ないと思うのですが、いかがですか。
  189. 武藤琦一郎

    ○武藤(琦)政府委員 御指摘の野殿地区につきましては、排水のほうにつきましては、御指摘のようにサンプルの調査が行なわれていないようでございますが、やはり継続調査としてやる必要がある、かように考えております。
  190. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そういう意味では、安中の調査は非常に瑕理がある調査と申しますか、十分ではないと私は思います。特に問題は、私も常識的には考えるわけですが、カドミウム鉱石は硫化カドミウムですね。これは水に非常に溶けにくい。しかし亜硫酸の場合は溶けるわけですね。溶解するわけです。亜硫酸はどうやってできるかといえば、亜硫酸ガスが水に溶けた場合は亜硫酸ができるわけです。ですから、結局野殿地区というのは、排煙によるカドミウムが畑にたまる、あるいは野菜の上にも着くでしょう。この排煙には当然亜硫酸ガスが一緒に出ているわけですからね。そうすると、当然亜硫酸によってこの排煙によるカドミウムが溶解して、植物にも着くでしょうし、あるいは土壌にも入る、あるいは水の中にも入るでしょう、ということで、現に現地の住民は、この排煙の汚染地区に、イタイイタイ病と思われる病気が発生しているということを非常に心配をしておるのです。とすれば、そちらのほうの調査をせぬで、しかも現在のところイタイイタイ病発生するとは思われぬというような結論をつけることは、だれが考えても私は非科学的ではないかと思うのです。大臣の言うように、これはいわば故意に現状を無視した調査結果による推定である、こういうふうにも言えるのじゃないかと思うのですが、この点はいかがでしょうか。
  191. 武藤琦一郎

    ○武藤(琦)政府委員 昨年の夏、三地域調査をやったわけでございますが、その後大気の問題がいろいろ問題になりまして、県のほうでも大気についての調査をやられ、私どものほうでも一部この製錬所の排煙による問題を調査いたしたわけでございますが、現在の段階で、それを大気の結果につきまして発表するだけの自信のある結果が出ておりませんので、この点はもうしばらく検討いたしたいと考えますが、昨年の夏以降、三地域調査を終えました段階では、その点の問題は、確かにいまから振り返ってみますと、問題が一部にはあったのではないかと思いますけれども、その当時としてはいたしかたがなかったのではないか、かように考えます。
  192. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 部長も今回の調査は不十分なところがあったということをお認めになったわけであります。どうですか。この排煙の問題でありますが、排煙に汚染されている野殿地区の土壌、それから米、野菜あるいは――岡山大学の小林教授は、この地域の桑には非常にカドミウムが付着しているというようなことも発表しておられるわけでありますが、そういった排水の汚染地区のみでなく、排煙の汚染地区の土壌、米、野菜、こういうものをきちっと御調査なされますか。
  193. 武藤琦一郎

    ○武藤(琦)政府委員 排煙の影響によって土壌その他が汚染されていると考えられる問題につきましては、当然調査すべきだと私どもは考えます。
  194. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 私は、そういった調査までやはり厚生省がおやりになって、そうして推定をお出しになるのならけっこうでありますが、明らかに私どもが常識的に考えても、非常に欠けている点があるのではないかと思われるような片寄った調査によって、こういう結果をお出しになったことについては、私ども、党といたしましても非常に疑義を持っているわけであります。この点を、党としての見解として発表いたしたわけでありますが、大臣、この点につきましては、部長も言われましたが、地域住民の人たちにすれば、何か非常に、厚生省は、一番汚染されていると住民が思っている地域を調べぬで、他の地域調査だけで、イタイイタイ病患者と思われる者はないというような発表をしたことについては、非常に疑義を持っておりますから、厚生省として、今後十分住民の意向も聞いていただいた上で、住民の納得する調査をやっていただく、こういうことを特にお願いをいたしたいと思うのです。ひとつ大臣としてのお考え方を示していただきたいと思います。
  195. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 野殿地域大気汚染について非常に心配しておられるということであり、その地域について調査がまだ不十分であったということであれば、これはまた引き続いてさらにやらなければならぬと思っております。
  196. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そこで、通産省も来ておられますからお尋ねしたいと思うのですが、過日の委員会におきまして、私は、直接鉱山保安法に基づきまして、排煙、排水等について、現在法律的に立ち入り検査もでき、規制をする権限は通産省の鉱山保安局におありだ。ところが排水につきましては、調査をされてその基準を工場に示しておるけれども、排煙についてはこれはまだ調査をしておる段階だ。現実的には排煙の中に含まれるカドミウムは現在野放しの状態になっておるということを指摘いたしました。そうしてさらに、東邦亜鉛の工場が、六万ボルトの電圧から、二十七万五千ボルトという超高圧の電気を受け入れまして、さらに生産を大きく拡充する計画を持っておいでになります。しかも送電施設につきましては、通産省としても施設の拡充についても認可をしておられます。現在まだ受電につきましては認可はしていない、こういうことも明らかになりました。しかし、いま大臣もお認めになったように、安中の地区では排煙によるカドミウムの汚染ということが問題なんでありますから、そういうときにさらにこの工場施設を大きく拡充をいたしまして排煙が出る。しかも厚生省見解でも煙突が非常に低いことは問題だという指摘をいたしておるわけでありまして、煙突を高くすることも必要でありましょうが、同時にやはりこれ以上施設の拡充を許さぬ、そうして地域の環境の保全をはかるということが、私は、公害見地からいえば最も必要ではないかと思うのでありますが、この点についての御見解はどうですか。  それからまた、私は大臣にお尋ねしたいと思うのでありますが、やはり厚生省としても、こういう見解を出しまして、特に安中地区につきましてはばい煙の処理施設について維持管理や事故時の保安対策を明確化する必要がある。それから煙突につきましては、非常に高さが低くて丘陵地帯に対する汚染が懸念される、こういうことも書いておるわけでありますから、当然厚生省見解が、不十分ではありますが、こう出た段階で、工場の施設の拡充ということについては、やはり少なくとも野殿地域調査を厚生省が行ない、そうしてその実態が明らかになるまでは、やはり通産、厚生両省の協議におきまして、この受電の施設は許可しない。現実には、施設が拡充されてさらに大きく排煙中のカドミウムが排出をするということのないような、そういう歯どめをかけるということが必要ではないかと私は思うのでありますが、この点ひとつ大臣並びに通産当局の御見解をお伺いしたいと思うのです。
  197. 下河辺孝

    ○下河辺説明員 安中製錬所におきましては、昨年末ごろ、電気亜鉛の電解槽の増設、それから焼結炉、乾燥炉及び電気炉等を一基ないし数基増設するという認可申請があったわけであります。それからこの製錬所におきましては、四十二年、四十三年にわたりまして、排煙中の亜硫酸ガスの除却装置及び除じん装置というものをかなり強化してまいっております。それらのことを東京の鉱山保安監督部におきまして慎重に検討いたしました結果、除却装置に余力があるということで、一応認可をいたしたわけでございます。しかしその前に、昨年末十一月、十二月にかけまして、約一カ月野殿付近の空気中の大気汚染の状態につきまして、監督部としましても調査いたしたわけでありますが、そのときの結果によりますと、大気汚染防止法で規定しております濃度をはるかに下回る汚染の状態であったということが判明しておったわけでございます。
  198. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 それは亜硫酸ガスだけでしょう。
  199. 下河辺孝

    ○下河辺説明員 はい。その後、鉱山保安局といたしましても、この製錬所におきましては、落雷の場合に送電線が停電すると、すでに燃焼しております炉内の反応が停電の場合にも継続するということから、亜硫酸ガスが炉外に漏れて、それが各地に流れているというような問題もございまして、停電の対策、それから煙突の高さにも一応問題があるのではないかということで、それらの除害装置につきまして、監督部を中心にいたしまして、現在検討を進めている段階でございます。
  200. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 先般、厚生省のほうでああいった報告を出しました。したがいまして、いまの段階で、そのままでさらに生産のキャパシティを増して、増産をするということは、私はもう少し私のほうの技術者の意見も十分聞いて納得できませんと、常識的には、いま直ちにやることはいけない、かように考えております。  野殿地区につきましても、さらに土壌その他の調査もやらなければならぬ、かような見解に立っております以上は、なおさらさように思っております。しかし技術者の意見を十分聞いて、今度できるものが、いままでより以上にそういった公害を出すおそれがないということでありますれば別でありますが、ちょっといま私の常識といたしましては、もう少し対策を進めてから後でなければいけないのではないか、かように考えます。
  201. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 たいへん大臣の明快な御答弁をいただきまして、私も敬意を表します。  鉱山課長さんに私は申し上げたいのですが、排煙中に含まれる亜硫酸ガスだけをおたくのほうはお調べになっておるようですが、問題は、排煙の中にカドミウムが一体どの程度排じんとなって出ておるのか。そして先ほど申し上げたように、この排じんの中に含まれるカドミウムが、当然亜硫酸ガスと一緒に出ておるわけでありますから、亜硫酸によって溶解して、土壌の中に入る、あるいは食物にも入るということが懸念をされているわけです。そういうときに、おたくのほうは亜硫酸ガスだけ調べて、施設を増設してもよろしいのだ、私はそういうような考え方では困ると思うのです。したがって、カドミウムにつきましては、厚生省のほうでもお調べになっておられて、厚生大臣としての御見解もいま承ったとおりですが、通産省の側におきましても十分――おたくのほうは、カドミウムについてはまだ明確なデータも出ていないのですから、単に亜硫酸ガスだけでもって許可するということは、やはり軽卒である。十分厚生省側とこれは協議をするということが正しいと思うのです。当然そういうふうにやってもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。
  202. 下河辺孝

    ○下河辺説明員 昨年は亜硫酸ガスの調査をしたわけでございますが、この三月に大気中の浮遊粉じん量及びその中に含まれておりますカドミウムの調査というものを実施いたしております。したがいまして、その結果が出ました段階におきまして一まだその大気中のカドミウムの許容限度というものにつきまして、基準というようなものはないようでありますけれども、さらに慎重を期するために、厚生省ともよく協議した上で、今後の対策を考えてまいりたいと思っております。
  203. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 この点は委員長にも過般お願いをいたしまして、委員会としても十分対策を講じていただきたいとお願いしておきましたが、ただいま厚生大臣の御答弁もありまして、私の希望する点を十分お認めいただいて、感謝いたしているわけでありますが、カドミウムの害というものは新しい公害であります。それだけに、この問題につきましては、公害防止という観点から、委員会としても十分慎重にお取り組みいただくようにお願いいたしておきたいと思います。  次いで、厚生省にお尋ねしたいのでありますが、水俣病にいたしましても、イタイイタイ病にいたしましても、それから最近問題になっておりますスモン病にいたしましても、明確な治療法というものがまだ確立されておらぬようであります。科学技術の進歩する現在でありますから、これは国として、厚生省あるいは科学技術庁等とも連携をおとりになってもいいと思うのでありますが、ひとつ国民の心配を解消するという意味で、こういった新しく発生しつつある公害病に対しては、国が総力をあげて研究開発していく、こういう体制が必要ではないかと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  204. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 全く同感でございまして、国内のそういった知識を動員いたしまして、早急に治療法を発見いたしたいとつとめております。
  205. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 神通川であのイタイイタイ病にお取り組みになりました荻野博士も、いわば全く自費でもってこの研究をなされたそうであります。私は、そういった非常な篤志家の方に御努力いただくことも必要だと思うのでありますが、いま大臣の言われたように、国として研究開発に力を注いでいく、しかも単に国の関係の技術者ばかりではなしに、在野のこれらに取り組んでおられる英知をも結集して、そうしてお取り組みになることが必要ではないかと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  206. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 これは、もう官公、私を問わず、そういった専門家と認められる方に参加をしていただきたいと思って、関係当局にも指示をいたしております。
  207. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 それから、いま神通川流域の要観察者の方に対しては、国が一〇%、県が一〇%、市町村が一〇%という形で医療費の援助としていると聞いたわけです。国保の適用者でありますから、七割は国保の対象、そしてあとの三〇%は国、県、市町村でもって負担するということのようでありますが、今度鶯沢、安中、対馬、この三地域の方々についても、要観察地域だという御認定なんでありますから、当然同じような体制をお考えになることが当面必要ではないだろうかというふうに思うのですが、この点はいかがでしょうか。
  208. 武藤琦一郎

    ○武藤(琦)政府委員 富山におきますイタイイタイ病患者につきましては、先生御説明のとおりの医療費の援助あるいはそのほか医療研究費の補助をいたしております。ただこれは現在のところ、県当局が、いわゆるイタイイタイ病患者として審査会の結論で認定された者について、この措置をとっているわけでございまして、現在先生がいまお話の群馬の安中地域の問題は、これはまだ患者として認定されているわけではございませんし、私どもとして、当地域が要観察地域であるというふうに考えているわけでございまして、当地域の健康診断の結果は、先生先ほどから問題にされております野殿地域を含めまして、現在三千人程度の健康診断の結果を、県当局がいま急いで調査分析中でございますので、その点は、現在の段階では安中地域を現にイタイイタイ病認定をされております富山地域と同じようには措置できないのではないか、かように考えております。
  209. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 ですから、健康調査の結果が五月には出ますのですね。そういたしまして、もしかりに、ということになるだろうと思いますが、結局要観察地域である、そして健康調査の結果が出ました段階で、もし神通川と同じような状況があった場合は、同じような措置をお考えになることが必要ではないだろうかという意味でありますが、その点はどうですか。
  210. 武藤琦一郎

    ○武藤(琦)政府委員 富山と同じような状況になりますれば、そういうことになろうか、かように考えます。
  211. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 これで終わりたいと思いますが、私はこの際、通産省の立地公害部長さんがお見えですから申し上げておきたいと思いますが、実は、横浜市で亜硫酸ガスの大気汚染の状況につきまして、市としてもいろいろ努力をいたしております。そして厚生省の、十年後に〇・二PPM、しかもこの九九%の時間においてそれ以下の基準にしていきたい。五年のうちには〇・三PPM、九九%というようなお考え方でおるようでありますが、現実に横浜市として、八十五工場ですか、当該地域の工場の調査をいたしましたその資料の公表を求めましたところが、いや、企業秘密の問題もあるから、そういうことは発表できぬというような態度をおとりになったそうであります。それからまた、過日参議院の予算委員会の一般質問におきまして、わが党の田中寿美子議員が、石油あるいは電力の企業公害防止に対して一体どの程度の投資をいたしておるのかというような質問をいたしましたのに対して、通産大臣は、石油におきましては二〇%近く、電力におきましては七%近く、投資額のうちその程度を公害防止に投資いたしておるというような答弁をいたしたようでありますが、これは厚生省にいま聞いてみたいと思うのですが、現実にはそんなに公害防止の投資はやっておりません。せいぜい電力におきましては一・五%程度の公害防止の投資しかやっていない、こういう状態だそうであります。したがいまして、自治体が地域住民の健康を守る意味から公害対策のために資料の公表を求めても、通産省の側はそういうことは企業秘密だと称して、住民の期待にこたえない。さらに電力あるいは石油等の大企業がこの公害を振りまいているわけでありますが、こういったものの公害投資に対するところの資料等につきましても、きわめてずさんなといっては一恐縮でありますが、現実から離れたような御答弁を通産大臣もしているということでは、私は、通産省の側は公害防止というものについてはほんとうの熱意を入れていないのだというふうに国民の側が感ずることは無理がないと思うのです。私は、当然住民の期待にこたえて、自治体が、何も個々の企業秘密を知りたいなんということを思うわけはないのでありまして、少なくとも通産省がどのような調査をしたかという結果を求めた場合は、すなおにこれを公表する、それからさらに電力なり石油化学なり、こういった公害を振りまくと思われる企業が、どの程度公害防止に対して投資をしているかということも厳密にやはり調査をして、そうして公害防止のために努力をする、こういう態度が必要ではないかと思うのですが、いま私が申し上げた点につきまして、通産省としましてはどういう御見解でありますか、承っておきたいと思います。
  212. 矢島嗣郎

    ○矢島政府委員 先生のただいまの御質問は二つございますが、あとのほうから先にお答えいたしますが、先日の参議院の予算委員会におきまして、田中先生の質問に対して大平通産大臣が答えたのは、概数でございますが、決してずさんなものではなくて、十分な根拠に基づいて調べたものを、大臣が概数としておっしゃったわけでございます。具体的に申し上げますと、電力につきましては、公益事業局の精密な調査が常に行なわれておりまして、昭和四十二年度の実績によれば、工事費総額に対して公害対策費は七%強に相なっておるわけでございます。さらに、公益事業局におきましては、四十三年度から四十八年度の長期計画について、それぞれ公害防止対策費が総投資額に対してどのくらいに相なるか正確に調べてございますが、この四十三ないし五十二年の長期の計画を見ましても、七%を優にこえている数字が出ておるわけでございまして、大臣がおっしゃった点は、決してずさんな数字ではなくて、正確なものということができます。  次に、石油につきましても、大臣は二〇%程度というふうに申されましたが、これも正確な資料に基づいておるわけでございまして、四十二年度が総投資額に対して一二%、四十三年度は総投資額に対して一六%というふうに累年比率が上がりまして、現在集計中の四十四年度の計画では、総投資額の二〇%強に当たっているわけでございまして、この数字をもとにして、大臣は二〇%というふうにお答えになったものと思われます。  以上が第二の御質問に対するお答えでございますが、次に第一の横浜、川崎の問題につきましては、若干誤解もございまして、御説明申し上げなければならぬと思いますが、通産省が先般行ないました横浜、川崎の大気汚染調査というのは、実は暫定的な、中間的なものでございまして、その結果に基づいて、これから企業からいろいろな改善計画を出してもらいまして、さらに第二次調査をやり、場合によりましては第三次調査をやりまして、ファイナルなものになるわけでございます。これは何も横浜、川崎に限らず、通産省が従来やっておるほかの地域につきましても、とても一ぺんだけのものではなかなか所期の結果は出ない。それで二次、三次というものをやっておるわけでありまして、最終的な結果が出ましたならば、その結果というものは、当然のことながら、関係の自治体である横浜市なり川崎市なりと十分御連絡して、むしろそのアフターケアをこそ、横浜市なり川崎市なりにやっていただくつもりでありまして、決してその結果を企業の秘密とかなんとかいって隠すつもりは毛頭ないわけでございます。この点につきましては、横浜市に対しても十分説明してあるわけでございます。問題は、いまは暫定的なものでございまして、その中には、いろいろな複雑な生産計画でありますとか、その他いろいろございますので、こういうものは一応外には出さないという約束で企業からとっているものでございますが、これをいま出しましてもかえって混乱を起こしまして無意味でございますし、会社に対しては、そういう出さないという約束でとっている次第でございますので、あえて中間的なもので出さないわけであります。繰り返して申し上げますけれども、第二次、第三次調査が終わって最終結果につきましては、これは十分にそういう連絡をいたしまして、アフターケアをやっていただこうと思っております。
  213. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 横浜、川崎市の問題につきましては、これは地方自治の基本にも触れる問題でありますから、また地方行政委員会なり、あるいはまた産業公害という見地から、また当委員会でもきっと議論になると思いますから、その点はこれ以上触れることは避けたいと思います。  最初のお答えになりました公害投資の問題でありますが、銀行等の調査によりましても、鉄鋼、電力など十二業種の大手九十三社の公害防止の投資は、一九六五年の銀行調査によっても、平均一・七%というのです。厚生省でももっと低い数値だという御見解を発表したこともあると存じます。それから、お答えになりましたのを聞きましても、石油につきましては一二あるいは一六という投資だ。二〇ではたいへん違うのじゃないかと思いますが、そういうことは触れませんが、どうなんですか、厚生省は、この程度石油、電力が公害防止の投資をやっているというふうに御認識なんでありますか。
  214. 武藤琦一郎

    ○武藤(琦)政府委員 企業公害投資をどのくらいしているかという調査につきましては、厚生省といたしまして独自の調査をやったことはございませんし、通産省からの調査の連絡を受けるか、あるいは他の機関が調査をいたしたので知るほかはないわけでありますが、その点につきましては、厚生省独自の調査結果を持ちませんので、何とも言えませんけれども、この問題につきましては、やはりできるだけ公害防止につきまして企業が努力されることを望んでいる次第でございます。
  215. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 この問題も、商工委員会等でさらに党として議論のあるところだろうと思いますから、これで私は終わることにいたします。
  216. 赤路友藏

    赤路委員長 それでは私のほうから……。  大臣のけさの答弁の中で、一つお願いしたいことがある。公害防止事業団の事業のあり方についてちょっと御答弁がありました。各県からいろいろ集まってきたものを、それぞれ取捨選択をして決定しておる、こういうことなんですね。どうも公害防止事業団の資料等を見てみましても、受け身なんですね。積極的な指導性というものがないので、各県から持ち上がってきたもの、あるいはその地方から来たものを取捨選択して、融資したり、あるいは工事をやってそれを譲渡したりしておるわけです。いわば受け身です。積極的な指導性というものがないように思うわけです。これは公害防止事業団のいままでの事業の進め方といいますか、それが常例か何かわかりませんが、そういうふうになっております。ぜひひとつもう少し積極的に、そうした問題のあるものは、ぱっとつくって、すぐそれに右へならえさすくらいの積極性を持ってほしい、こういうように思うのです。それだけです。四十五年度の予算の中等で、ひとつ御検討願えればけっこうだと思います。
  217. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 公害防止事業団は、御承知のように、大体公害防止事業をやる事業に対して貸し付けをやるというのが大きな目的になっておるものですから、したがって、こういう事業をやるから貸してくれという形で、受け身の形になっておるわけであります。いま委員長のおっしゃいますような方向におきまして、積極的にこの公害防止事業団でやらしたらよかろうというようなものをまた考えてみまして、適当なものがあれば、積極的にやることも考えてみたいと思います。
  218. 赤路友藏

    赤路委員長 もう答弁は要りませんから……。  私の申し上げるのは、いま公害防止事業団で施設を建設しておる、そうして中小企業の集団に譲渡しておるわけです。これは相当な負担になっておる。やはりいまのままでは、それの伸びが案外ないのじゃないか。結局、譲渡してもらっても、金利分だとか、それへどんどん払っていきますと、かなり高いものになる。中小企業では非常に無理な点が出てくる。それが一つあるものですから、むしろ積極的に政府のほうでてこ入れをして、そして中小企業の連中がほんとうに使えるような体制、それを積極的に考えていただきたい、こういうことです。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時二十八分散