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斎藤国務大臣 水俣病の
有機水銀の
中毒患者の
お方の
現状に対しては、非常にお気の毒だと思っております。いまお述べに
なりましたように、
政府ではその
原因をはっきりいたしたわけでありますから、その上は、
被害者と
加害者との間の
補償問題の
解決ということになるわけだと思います。そこで、
原因の
決定前に
熊本県知事が中に入りまして、
患者同盟の方と
会社との間に
約定があったそうでありますが、しかし、その
約定ではだめだということになって、
会社に要求をするけれ
ども、なかなかいれられない。さりとて、
裁判に訴えれば時日がかかる、できたら、ひとつ
厚生省で
補償の
基準をつくってくれないかという
陳情を、私が就任して以来受けたわけであります。同様に、
会社側からも同様の
陳情を受けました。私は、これは両者の側で話し合ってきめるか、話がつかなければ、これは
民事の問題ですから、
裁判による
なり話し合いによる
なりで
解決をしてもらう問題だ。
補償の
基準ということになると、そういう
民事補償の
基準を
政府がきめるということは非常にむずかしい、たてまえからいってもおかしいし、事実上非常にむずかしい。
民事賠償というものは、本人、相手方のそれぞれのいろんな条件で変わってくるわけですから、こういう
病気に対してはこう、この
程度の
病気に対してはこうというような、それを
補償としてきめるわけにはまいらないという話をしましたところが、ひとつ
仲裁に入ってくれぬかという意味の
お話があったわけです。そこで、
公害に関する
紛争の
仲裁をするような
委員会を、この国会で提案をして、そしてそれができればそこでやってもらったらどうだと申しましたところが、それができるまで待てない――
お話を伺ってみればごもっともに思いましたから、私は思い切りまして、それでは、その
法律ができるまで、
第三者の事実上の
仲裁の
機関みたいなものを設けて、そしてそこであっせんをしてもらう、私のほうでそういう
人たちを
お願いをするということでどうだ、と話しましたところが、ぜひそうやってもらいたい。しかし、それには、大体そこでいろいろ両方の言い分を聞いて、これでどうだという妥当な線ができたらそれに応じるという
態度を示してもらわないと困るがと申しましたところ、それはそういたしますということであったわけであります。そこで、
会社側に対しても、その
患者側の
方々はこういうふうに言われる、そこでどうだという話をいたして、
会社側は、初めは必ずしも気が進んでいなかったのでありますが、
厚生省がせっかくそういう世話をするというなら応じましょうということになったわけでありますが、二月の終わりまでには
委員の方を
お願いをして、そして発足してもらうということを
約束をいたしたことは事実であります。ところが、その
第三者機関できまった
事柄には従いますということは、ちょっとひど過ぎるじゃないかという
議論が、
患者側の中のほうで起こってきたようであります。それで、そんなところでやってもらったって、従うか従わぬかはかってだ、従うなんて誓約はできないというような
議論が起こってまいって、とてもこれはまとまりそうもないぞという話があったものですから、そういうことになると、初めの話とは違うから非常に困るというので、こういうようなことで、そこできまった
事柄には応じましょう、異議は申しませんという、少なくとも道義的な
返事でももらわないと困る、団体の
幹部の
方々も、ああは申したけれ
ども、
患者の中でそんなものには従わぬという者ができてきたんでは困るという話もあって、そこで、
患者の
方々から、
皆さん方に
おまかせするというものをいただこうじゃないか、そうすれば発足しましょう。そうでないと、私は
第三者の方に
お願いをする場合でも、一応は
お願いするけれ
ども、
患者の中には従わぬという者もあるし、どうなるかわかりませんよということでは
お願いができないということで、いま進んでおるわけでございます。したがって、その御
返事を待っておるというのが今日の
現状でございます。