○斉藤(正)
委員 現地をごらんいただいて、
対策につき考え方の御
説明をいただいたわけでありますが、私はここに数種類の新聞を持っておるわけでございます。私も八月六日に
現地へ参りました。三十六、四十、四十三、四十四――私は昨年オリンピック
災害だということを申し上げたわけでありますけれども、これがダブルパンチを受けて、満一年にならないのにまた八月五日にやられたということで、
現地はきわめて不満であります。朝日新聞がここにありますけれども、その記事をちょっと引用いたしますと、「昨年夏に続き、二度も
台風による
集中豪雨で三百二十戸、千三百五人が水害を受けた磐田郡佐久間町浦川。六日は天候も回復、町の人々は総出でドロにまみれた家財道具を洗ったり、ぬれた衣類を乾かすのに懸命だった。」「だが、町の人たちの表情は暗い。町区で自転車屋を営む伊藤友三郎さんは「昨年は電源開発会社からこの地区に千五百万円の見舞金をもらった。そんなものが何になる。おれたちは水につからぬようにしてもらえば、それでいいんだ。昔だって
大雨は降ったさ。が、こんなことはなかった。秋葉ダムが出来て、大千瀬川の河床が高くなったからひどい目にあうんだ。だからおれたちはダムをぶちこわせと要求しているんだ」と、はき捨てるようにいう。」八月八日のコラムはこういうことを書いております。「北遠地方がまた“あばれ天竜”のえじきになった。一年もたたぬうちに二度の
被害。被災地の
状況をみようと
国道百五十二号を磐田郡佐久間町浦川まで走ってみた。山の緑、谷間の清流、まさに秘境の美しさ。だが、
道路はあちこちでくずれ、立木が倒れかかっていた。自然は美しくてもそこに住む人の生活は苦しい。
災害が過疎に拍車をかけているようだ。浦川で畳表をはがしている老女に出会った。「去年もやられて、もうこの畳は使えません。せめてゴザにでもしようと思って……。水害続きで借金はふえるばかりでのう」暗然たる面持ちだった。が、壮年の人たちはもっと戦闘的だった。つまりダム公害への怒りだ。「三十二年に電源開発会社の秋葉ダムができて以来、大きな水害はこれで四度目。ダム上流では土砂が流れなくなって河床があがり、天竜川本流と大千瀬川の合流点である浦川がいつも
被害を受ける。電発側は二十五キロも下流の秋葉ダムが影響しているとは考えられない、という。影響するかどうか、川の模型をつくって実験してみればわかるはず」と憎しみをこめて語る。この人たちは「電源開発のためわれわれだけが犠牲になるのはゴメンだ。われわれは安住の保障を求めているにすぎない」と主張する。現に去年夏の水害のあと十二世帯四十五人が浦川から去って行った。いままた愛知県への集団移住の話が持上がっている。このままでは政治不信の念が高まるばかりだ。ダム公害と
道路整備に本腰を入れることが過疎防止への先決とみられているのだが……。」こういうことが書いてある。これは
現地住民の考え方を端的にあらわしているというように私は思うわけであります。
九月早々
災害対策特別
委員会が招集をされて、さらにいろいろな
質問やお願いをするわけでありますけれども、何といいましても佐久間、秋葉両ダムができてから河床の変動が激しい。ダムの下流が河床沈下し、ダムの上流が河
床上昇するのは、これは常識でありますけれども、私はここに天竜川河状
調査委員会が
調査をいたした資料を持っております。昨年も実はこれを引用してお尋ねをしたわけでございますけれども、特に浦川地区のいわゆる大千瀬川の河状がこの一年間でどう変わったかということが出ているわけであります。この一年間というよりも、
昭和四十三年十一月に
調査した結果と
昭和四十二年十一月の
調査の結果ということでございますから、その一年間にどう変わったかということになるわけでありますけれども、大千瀬川が天竜本川との合流点に近いところで観測地点七というのがございます。ここの河状は、平均で一メートル十五センチ、一番低いところで九十八センチ河床が上昇しているわけであります。そしてまたその少し上流のところは、平均で二メートル四十五センチ、一番低いところで一メートル五十九センチ、さらにその上流の観測点九では、平均では十六センチ下がっておりますけれども、一番低いところで二十三センチ上昇しておるわけであります。
こういうことを考えていきますと、ダムができる前の
昭和三十一年と今日では、場所によっては二、三メートルの違いがあるわけでございまして、なぜ一体大千瀬川がこのように急激な河床の上昇を呈したのであろうか。私は昨年の
質問の最後のときに伺いましたところが、川崎
説明員はこう答弁しておるわけであります。「大千瀬川流域、特に浦川地区にもかなり堆砂をしておるわけでございます。これはやはりあの川の流域全体から土石が流出してくるのが結局河床が上昇してくる最大の原因ではないか。そういった意味ではあの流域全体の治山、砂防といいますか、そういうものをもう一度見直す。それから現在たまっております土石をどういうふうに処置するか。これは改修の計画との関連が出てくると思います。そういうことについては、局長からも総合的に
検討しろというような
指示を得ておりますので、現在直接管理しておりますのが愛知県と静岡県との両方にまたがっております。これに
中部地建が入りまして三者で、
現地で河川管理者としての立場から十分
検討するということになっております。」こういうことで、
建設省もダムの影響は大千瀬川の河床の上昇にはあまり
関係ないという根拠に立っておられます。しからばこうこうこういう現実があるのだけれどもそれはなぜだと追及いたしましたら、わかりませんということです。わからぬじゃ政治にならぬじゃないかと言ったら、最後に、管理者である愛知県と静岡県と
建設省の出先である
中部地建で
検討をいたします、こういうことで幕を閉じておったわけであります。ところが先ほど申し上げましたようなことで、ごく一部分は河床の沈下したところもありますけれども、大体はやはり天竜木川との合流点から観測点八、九、十、いずれも河床がおびただしく上昇しているという、この天竜川河状
調査委員会の
調査の結果は歴然たるものがあると思うわけでございますが、一体その後河川管理者である愛知県と静岡県と
中部地建は、大千瀬川の河床の上昇について
検討いただいたのでありましょうか。あるいは
検討しつつあるのでありましょうか。その辺を伺いたいと思います。