○板川委員 総務長官、実は来る前に私が議論したのは、例の春と秋に全国的な規模で交通安全運動が行なわれておる。政府は
総理府以下あらゆる機関を通じて主催者としてこの運動を指導しておる。全国の報道関係ばかりじゃなくて、産業関係の九十五団体がこれに賛同して参加しておる。その規模の雄大さ、その運動の広範さという面から見ると、全国民的な運動に盛り上がっていいはずです。それによって交通安全の正しい知識を
キャンペーンすることによって、交通安全の知識が国民の中に普及して
交通事故が防止できるという、そのねらいを持った運動だと思うのです。しかしその運動を続けておりながら、実は
交通事故が年々死者については新記録を出し、負傷者については対前年比二〇%以上ふえておるのですね。こういう運動をやりながら実は
交通事故がちっとも減らない。逆にふえておる。運動をやりながら効果がないというのは、一体どこに
原因があるのだろうか。これはおそらくはほんとうにきき目のあるところに運動しないからです。ききめのあるところに
対策を立てないからです。精神的な訓示、精神的な規定というだけではこれからの
交通事故というものは防止できないし、具体的に取り組んでいかなければならない。それには交通規制問題もあるだろうし、いわゆる自動車の激増をある程度押える間接的な政策もあるだろうし、さらに
交通事故を起こした場合にはそれを完全に救済し得る責任を持つ
制度、たとえば自賠法の保険限度をもっと引き上げるなり、あらゆる面で
交通事故防止に対する具体的な
対策のほうに、政府はあまり積極的じゃなくて、安全都市宣言じゃないけれ
ども、横断幕を掲げるだけ、精神的な運動だけ、こういうところにこの成果があがらないのじゃないだろうか。だから、この運動自体を私は否定するのじゃない、これはこれとしていいとしても、実はもっと国民全体からこの運動に参加するというものがなくちゃなりません。しかしそうじゃない。そこに問題が
一つあるでしょう。しかしこういう運動をすること自体われわれは悪いという
意味じゃない。ただ政府の交通安全に対する取り組み方が、実はきき目のあるところに取り組んでいない、こういうところに私
どもは批判をせざるを得ない、こういうわけであります。
では一体社会党なり野党議員としてどういう具体的な
対策を持つかという点については、交通安全基本法を出しておりますし、それに対する
関連法十幾つの用意も着々しておりますから、そういう中で私
どもの具体的な考え方を打ち出してまいりたいと思うのですが、どうもこういう運動の精神的なかけ声、こういう点だけ政府は重視して、具体的な
交通事故防止上の
対策をなおざりにしているというところに
事故の激増というのを防止できない体制があるのじゃないだろうか、こう思うわけでありますが、いかがでありますか。