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1969-03-25 第61回国会 衆議院 建設委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年三月二十五日(火曜日)     午前十時十九分開議  出席委員    委員長 始関 伊平君    理事 天野 光晴君 理事 大野  明君    理事 金丸  信君 理事 田村 良平君    理事 井上 普方君       伊藤宗一郎君    池田 清志君      稻村左近四郎君    進藤 一馬君       丹羽喬四郎君    葉梨 信行君       廣瀬 正雄君    堀川 恭平君       山口 敏夫君    阿部 昭吾君       佐野 憲治君    島上善五郎君       山崎 始男君    渡辺 惣蔵君       内海  清君    河村  勝君       小川新一郎君    北側 義一君  出席政府委員         建設政務次官  渡辺 栄一君         建設省住宅局長 大津留 温君  出席公述人         大阪助役   大島  靖君         都営桐ケ丘団地         自治会会長   岡   巧君         都営久留米団地         居住者     佐竹  弘君         東京間借人協会         会長      中村 武志君         全国公営住宅協         議会副会長   山口 二郎君         中野中小企業         相談所所長   中村 富雄君         東京主婦同盟常         任委員     松川 笑子君         朝日新聞社大阪         本社論説委員  浜崎 則雄君  委員外出席者         専  門  員 曾田  忠君     ————————————— 三月二十五日  委員内海清辞任につき、その補欠として河村  勝君が議長指名委員に選任された。 同日  委員河村勝辞任につき、その補欠として内海  清君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた案件  公営住宅法の一部を改正する法律案内閣提出  第二六号)      ————◇—————
  2. 始関伊平

    始関委員長 これより会議を開きます。  公営住宅法の一部を改正する法律案について公聴会に入ります。  本日御出席を願いました公述人は、大阪助役大島靖君、都営桐ケ丘団地自治会会長岡巧君、都営久留米団地居住者佐竹弘君、東京間借人協会会長中村武志君、全国公営住宅協議会会長山口二郎君、中野中小企業相談所所長中村富雄君、東京主婦同盟常任委員松川笑子君、朝日新聞社大阪本社論説委員浜崎則雄君、以上八名の方でございます。  この際、御出席公述人各位にごあいさつを申し上げます。  本日は御多用のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございます。御承知のとおり、本案住宅対策一般的関心を有する重要な法律案でありまして、この機会に、公営住宅問題について深い御識見と御経験を有せられる公述人各位から、それぞれの立場に立って忌憚のない御意見を承り、もって本案審査の貴重な参考に供したいと存ずる次第でございます。  この際、公述人各位に申し上げますが、御発言の順序は委員長に御一任願うこととし、議事の整理上、お一人約十五分程度意見をお述べいただき、あとで委員質疑にお答え願いたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、衆議院規則の定めるところによりまして、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、公述人委員に対しまして質疑をすることができないことになっておりますので、この点あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。  それでは、まず大島公述人にお願いいたします。大島公述人
  3. 大島靖

    大島公述人 大阪助役大島靖でございます。  ただいま当委員会で御審議中の公営住宅法の一部改正法案につきまして意見を申し上げたいと存じます。  まず最初に、私は、当建設委員会が、単に今回の法案審議のみならず、わが国の住宅政策国民が最も難渋し、その施策を最も待望いたしております住宅問題につきまして、真剣な御研究、御審議を賜わり、最大努力を傾注していただいておりますことに対し、住宅行政に携わっております者の一人といたしまして、心からの敬意と感謝を表したいと存じます。  さて、改正法案についての意見でございますが、私は結論といたしまして賛成でございますが、以下、委員長から御送付いただきました関係資料の中の提案理由説明にございます三点につきまして、逐次意見を申し上げます。  まず第一点の、用地費補助制度融資制度に切りかえる問題についてでございますが、およそ住宅政策のかなめは、住宅用地を大量にかつ早期確保するにあることは、論を待たないところであります。事業主体である地方自治体といたしましては、もちろん、現行制度のように補助金をいただきますことは、何よりありがたいことでありますが、現実には補助単価と実際単価との開きが非常にはなはだしく、事業主体の単年度一般財源持ち出し相当多額にのぼりまして、大阪市の最近三カ年の例をとってみましても、標準建設費の大体六割から七割程度超過負担となっておるような実情でございまして、地方財政の逼迫によりまして住宅建設促進が著しく困難となっております。もちろん、現行補助制度のまま標準単価の是正がされ、超過負担解消されるということであればけっこうでございますが、それが国家財政上著しく困難であるということでございますれば、われわれといたしましては、融資制度への切りかえによって地方超過負担解消されるということであれば、住宅用地の入手が非常に容易になり、住宅建設促進されることになりますので、改正賛成をいたしたいと思います。  ただし、この際強く要望申し上げておきたいことは、超過負担解消に必要な十分な政府資金の投入と、融資条件をできるだけ緩和願いたい、ぜひともこれを実現されますよう、当委員会格別の御配慮をお願い申し上げたいと存ずる次第であります。  第二に、高額所得者明け渡し義務の設定についてでございますが、公営住宅法第一条にありますように、公営住宅は、本来、住宅に困っている低額所得者に安い家賃でお貸しする住宅でございます。そこで、現行法では、いわゆる収入超過者に対しまして、低額所得者のために公営住宅明け渡しするように努力する義務が課せられておるわけでございますが、これが努力義務でとどまっておりますために、入居基準を著しく上回る収入を得るようになった人たちがなお引き続き入居しておる状況でありまして、必ずしもその実効をあげていないと思います。これに対しまして、一方では住宅困窮低額所得者公営住宅への入居を待ち望んでおる現状でございまして、高額所得者がこのようにいつまでも公営住宅入居しておりますことは、公営住宅本来の趣旨に沿わないと思います。現在入居を希望する数に十分見合うだけの公営住宅を早急に建てるということが可能でございますれば別でございますが、これが困難であります以上、この際公営住宅本来の性格を明らかにして、公平の面からも、入居を待ち望んでおる低額所得者入居していただくために、高額所得者に対しまして公営住宅明け渡していただくように、そうした制度を設定改正いたしますこと、まことに時宜を得た措置でありまして、私ども事業主体といたしましては、かねてからこのことを要望いたしてまいった次第であります。  言うまでもなく、住宅は生活の本拠でございますので、居住安定性につきましても十分配慮しなければならないのでありますが、改正案におきましては、明け渡しが容易にできるように、公団住宅等の他の公的資金による住宅への入居あっせん等配慮をすることになっておりますし、その他特別の事情については格別配慮規定されておるようでございますので、この際一定の制限を設けますことは、公営住宅性格からいたしましても必要やむを得ないと存ずる次第でありまして、賛成いたしたいと思う次第であります。  第三に、建てかえに関する規定整備についてでございますが、当初の時期に建設されました公営住宅には既成市街地中心建設されましたものが多く、しかも木造でございまして、大阪市におきましてはこのような木造住宅約一万八千戸程度を現在管理しておりますが、現在ではその大部分がかなりいたんでまいっております。一方、用地事情は年々窮屈となってまいりまして、市街地用地を求めることが非常に困難となっております。このため、古い住宅を高層または中層の耐火住宅建てかえまして、住宅環境整備都市防災化をはかるとともに、建てかえによりまして二倍ないし二倍半程度住宅を新しく建設できますので、土地を高度に活用いたしまして、公営住宅を大量に供給し、住宅困窮低額所得者により多くの入居機会を与え、職場と住宅を近づける必要策がこの際緊要であると思う次第であります。このため今後建てかえ事業をますます積極的に進める必要がありますが、現在の制度でございますと、建てかえ事業実施にあたりまして、大多数の方々の説得が得られましても、ごく一部の入居者の賛同が得られないために事業が円滑に進まない事例が多いのでございまして、事業主体といたしましては、かねてから建てかえ制度整備を要望いたしておったのでありまして、このたびの改正時宜を得たものであると思います。またその内容は妥当であると考えますので、賛成いたしたいと思います。  以上、改正点に対する私の意見を申し上げたのでありますが、最後に、関連いたしまして二点について要望申し上げておきたいと思います。  第一に、先ほど申し上げましたとおり、用地確保こそが住宅建設促進のポイントでありますが、特に大都市におきましては、住宅建設並びにこれに関連する公共空地早期大量の確保が喫緊の要務でございます。公共空地を大量かつ早期確保するために政府資金を大量に投入していただくように、当委員会格別の御尽力をお願い申し上げたいと思う次第であります。このことが、現在地方財政実情からいたしまして、一般財源をその他の民生事業に回すことを非常に容易にし、大きく助けることになると思うのであります。また、政府資金の原資が、本来、都市勤労市民の貯蓄に依頼するところも相当大きいわけでございますので、当然のことと考えられる次第でありまして、ぜひともお願い申し上げたいと思う次第であります。  次に、本法案については、いろいろの御意見があろうかと思うのでありますが、理想からいたしますればなお不十分、もの足りない点もあろうかと思いますが、さればといって、それがために現実に幾分でもベターになる改正が成立しないということになりますれば、私ども現実住宅行政に従事いたしております者の立場からいたしますと、まことに残念な次第でございまして、大局的かつ現実的立場からいたしまして、ぜひともこの法案が成立いたしますように格段の御配慮をお願い申し上げたいと思います。  以上で私の意見の陳述を終わります。
  4. 始関伊平

  5. 岡巧

    岡公述人 北区の桐ケ丘団地居住しておる居住者の一員としまして、政府が今回提案されました公営住宅法の一部を改正する法律案につきまして私の意見を申さしていただきたいと思います。  政府提案理由の御説明の中にもあるごとく、今日の住宅事情改善は、政府責任において緊急に果たすべき事態に迫られており、私たち国民住宅不足住宅難は、年々窮迫度を増しておる現状であります。東京都における本年二月の公営住宅公募倍率を見ますると、一種平均百三・九倍、二種は二十八・四倍、平均五十三・八倍という実情であります。なお、立地条件の恵まれた地域に至っては、一種最高五千五百七十六・三倍、二種四百二十六・八倍と、全く気の遠くなるような現状であります。私は、このような住宅事情の解決をはかるためには、政府が基本的に住宅政策の確立を急ぎ、施策比重を急ぎ、施策比重を思い切って上げ、住宅建設のネックといわれておる用地問題に抜本的メスを入れ、高騰を続けている用地価格に歯どめをかける一定の規制を行ない、また、地方公共団体用地取得に対し優先権が与えられるような施策の充実が必要かと考えております。さらには、地方公共団体が財政的にも公営住宅建設意欲を燃やし、地域住民住宅問題解消要請に応ぜられるような財政措置を講ずることが基本的に必要であろうと信じております。  私は、このような立場で、地方財政、特に東京都の財政負担を軽減していただきたいという立場に立って、今回の法律案反対立場でいまから二、三意見を申し述べたい、かように思います。  公営住宅建設に要する費用の国の援助の方式及びその内容について、以下申し上げたいと考えます。  提案説明の中で、政府は、現行制度は、用地費の増大に伴い補助額地価実勢とかけ離れ、地方公共団体財政負担増高を来たしておるので、改善し、現行制度実額に沿った融資制度に切りかえたいと申されております。この実額に沿った制度でありますが、この点について若干政府の御説明現実との開きを申したいと考えます。  用地融資制度内容融資基本額にあると考えます。私はこの点に問題があろうかと思うわけであります。今回の算定基礎は、昭和四十二年の実施単価昭和四十三年から四十四年度地価上昇率を掛けたものを推定単価としまして、それに八五%を掛けたものであり、さらには、この起債額の中身は、政府財投七七%、縁故債二三%の内訳となっております。問題は、八五%の率と地価アップ率にあると考えます。アップ率は、説明によりますと、全国平均の一六・五%の率を採用されておると聞いておりますが、この方式は、都市用地事情、特に人口急増地帯東京とか大阪とか横浜などの主要都市実勢とは著しくかけ離れているのではないか、これを採用した根拠は一体どういうふうな考えであろうかと、理解に苦しむ次第であります。ここに建設省が公認されておる日本不動産研究所調査資料を持っておりますが、これによりますと、明らかに、東京のここ二、三年来の地価上昇率は、高い年度で四〇%から五〇%、平均三〇%以上の上昇率が示されております。今回の一六・五%は、都市特殊事情、なかんずく、東京人口急増地帯事情についての配慮が欠けているのではないかと指摘せざるを得ないのであります。ここに地方公共団体持ち出し、あるいはまた、住民の高家賃化への道が待っているのでありまして、地方公共団体のいわゆる超過負担が再度また始まる原因がひそんでおるかと考えます。超過負担で長年苦しんでいる主要都市が、またも貴重な一般財源をここに投入しなければならないということになろうかと思うわけであります。  御参考までに申し上げますと、現行制度のもとでも、すでに東京都は公営改良住宅超過負担を、昭和四十年度一万四千戸において百三十余億円、四十三年度におきましては、一万六千五百戸で百六十九億余億円の当初見積もり額超過負担額となっております。  このように、再び多額超過負担額は、地方財政現状をより窮屈にし、苦境に追い込むだけでなく、国の経済政策のひずみを大きく受けている大都市住民福祉の他の施策に大きな制約を加えることは明らかであろうと考えます。この融資制度の中に占める不安定要素改善なくしては、政府が申しておりますところの、実額に沿うとか、地方財政負担を避け、公営住宅建設の伸長をはかるとかいうふうなことは、結果的にはやはり地方自治体財政負担を増大し、その住宅建設への意欲を減少さすことになるのではないか、こういうふうに考えられるわけであります。  さらに問題は残されております。それは、今回の制度改正の中で、建築費が依然として標準建設費のそれぞれ二分の一、三分の二と——一種、二種の割合でありますが、この補助率がそのままにされておる。しかも、アップ率は対前年度六%しか見ていないという現実であります。昭和四十四年度東京都の建築費超過負担推定額は、一万六千戸の計画で約八十億と推定されます。また、さらに、住宅建設につきものの公共関連施設については、今回は何らの措置もなく、東京都議会いろいろ国に向かって要請書を出した経緯もあるわけでありますが、何の改善策もなくそのまま据え置かれております。これまた、昭和四十二年並びに四十三年度東京都の単独負担分は、ともにそれぞれ十一億の超過負担と推定されております。  また、今回の家賃収入補助についてでありますが、一種は三%、二種は四%とされておりますが、これの償却年数が七十年ということであります。これは全く私たち常識では考えられない方式であり、全く理解に苦しむことであります。もちろん、これは、他方、政策家賃体系をとるという方便のために使っておるという側面も承知しておるわけでありますが、いずれにしても、現在のいわゆる請負単価の中では、七十年もつということは、しろうとが考えても考えられない状況建物に対して、政府は今後毎年度三%ないし四%の家賃収入補助を行なっていくのか、その辺がひとつ理解に苦しむところであります。また、これらの老朽が早期に予想される建物に対してこういうふうな方式を続けていいのかどうか、その辺も非常に疑問だと思います。  私、率直に言わしていただきますと、今回の内容は、政府の意図は、明らかに地方公共団体住宅建設促進への道ではなくて、むしろ、地方公共団体地方債という名の借金を背負わして、長年地方公共団体要請しておった多額超過負担解消の問題をすりかえてしまって、責任地方公共団体、いわば国民責任負担に切りかえようとするものではないかと一応断ぜざるを得ないのであります。  私は、今回の法の改正趣旨を見まして、やはり根本的な住宅問題の解消は、この提案によるようないわゆる収入明け渡し義務化、公権力の発動によるような形で、入居者と、それから外で待っている人たちとの争いの中で問題を解決するというびほう策ではなくて、もっと政府が抜本的に住宅政策を確立して、そして用地対策中心とする施策に真剣に取り組んでいただきたい。そういう中で低家賃公営住宅を大量に建設する道こそ、今日の住宅問題を解決する中心的な課題であろうかと考えるわけであります。  委員会提案された問題につきましては、ぜひともお願いいたしたいのでありますが、この法案がいわゆる廃案の方向皆さん方の御協議がいただけるように、なおかつ、現行補助制度のいわゆる単価を実建設費に上げる方向で御審議をいただきたい、かように存じて、私の意見を終わりたいと思います。  以上であります。
  6. 始関伊平

  7. 佐竹弘

    佐竹公述人 都営久留米第五都営住宅という、二種の都営住宅に住んでおります佐竹と申します。  私は公述人として公営住宅法改正案に対する意見を申し上げます前に、今回の改正案提案理由につきまして、きわめて重要な点につきまして建設省の御説明がないことを御指摘申し上げたいと思います。  建設省提出提案理由説明最後に、「法定の限度額以内の家賃変更については建設大臣承認を要しない」と記載されている点についてであります。  昭和三十四年の法改正にあたりまして法第十三条第三項が新しく設けられたわけですが、この中で、家賃の値上げが公聴会を開かずに実施できることとなって、同年政令を改正して、家賃の中に含まれる地代相当額は、土地取得造成費または固定資産税評価額相当額のどちらか高いほうから地代補助額を控除した額の六%が年額と定められたのであります。ところが、この方法によって家賃を算定した場合、固定資産税評価額相当額当該住宅土地取得造成費を大幅に上回ることが考えられます。東京大阪をはじめ大都市及びその周辺においてこの傾向はすでに顕著にあらわれております。商業地となった地域に所在する公営住宅家賃をこの方式で再計算いたしますと、固定資産税評価額相当額は二戸当たり三百万円をこえることも考えられます。そうしますと、地代だけでも毎月一万五千円の増額が可能になるので、将来の地価高騰を考慮すれば、家賃天井知らず上昇することが可能となるのであります。このような極端な場合は別といたしましても、東京及び大阪等におきましては、一戸当たり固定資産税評価額が百万円をこえるというのは常識となっております。現行公営住宅法第十三条第一項の建設大臣承認規定は、このような著しい家賃上昇を押えるための歯どめの役割りが果たされていたことは明らかでありまして、今回この改正案が何の説明もないままに建設大臣承認を不要としたことは、公営住宅法第一条に定めます「低廉な家賃で賃貸すること」を目的とした法そのもの趣旨を踏みにじったものと言わざるを得ません。また、入居者がこれによって受ける物心両面の不安は深刻で、このような重大な条項の変更提案理由説明からはずされているということは、いかなる理由によるものか、この委員会審議を通じましてぜひ明らかにしていただきたいと存ずるものであります。  では、公営住宅法改正の基本的な問題点について、私の所見を申し上げさせていただきます。  まず、地代補助打ち切りに対する反対趣旨を申し上げます。  公営住宅法改正案提案理由説明によりますと、入居者家賃等負担が、法が改正されましても上がるわけではない、こういわれておりますが、御指摘の標準価額のきめ方いかんによりましては、従来の超過負担によるしわ寄せ家賃と同様のものが入居者負担増となることは明らかであります。標準価額につきましては、適正な立地条件を備えた土地を取得するため通常必要な費用基準として定めると書かれておりますが、法第十二条の二には、「予算の範囲内において」という条件が付されております。標準価額を適正な標準価額にするという裏づけがここにないのであります。これは従来の補助規定第七条と同様の規定というべきであります。従来の用地費補助単価が実態にそぐわなかったものであることは、今回の提案理由説明の中でも政府が認めているところであり、今回の改正においても標準価額には依然として超過負担が残されることが法文上明らかでありますから、事業主体入居者とも超過負担しわ寄せをもろにかぶることになりまして、そのため、事業主体である自治体の住宅建設意欲をそぎ、入居者立法精神と相反する高い家賃を押しつける結果になることもまた明らかであります。  次に、建てかえに伴う明け渡し請求について申し上げます。  昭和四十年度における各事業主体公営住宅管理戸数は、全国で九十万二千六百戸であり、現在は百万戸をこえているものと推定されます。このため、各事業主体においては、公営住宅管理戸数増加に伴い、人件費増加付帯事務繁雑化等の問題が生じ、特に昭和三十四年の法改正以後、収入調査割り増し家賃徴収等をめぐりまして入居者側と深刻な対立が生じている現状にあります。  公営住宅は今後さらに大量の建設が要望されていますが、管理面行き詰まりは早急に打開を要する問題であります。昭和四十年度までに建設された公営住宅は百三万二千戸でありますが、昭和二十九年までに建設されました四十四万五千二百戸のうち、十万四千三百二十二戸が分譲されており、その後分譲されたのはわずか千二百七十二戸にすぎません。そのため、昭和四十年度末の管理戸数は九十万二千六百戸に達しているわけであります。もし昭和二十九年度までと同様の比率で分譲が続けられていたとするならば、昭和四十年度末の管理戸数は六十九万戸と推定されまして、現在よりはるかに適正な管理が行なわれていたであろうと推察されるわけであります。今日公営住宅管理行き詰まりを招いた最大原因は、昭和二十九年度以降分譲を中止したためと推定されまして、今後もこの傾向は著しくなるものと考えられるわけであります。一方、入居者側の多くは、入居時にそれぞれの事業主体によって分譲を約束されており、五年たったら払い下げをしますから、大切に使用してくださいということばが、当時当せん者に対して繰り返し言われておりました。これは事業主体側の公約ともいうべきものでありました。当然、入居者としては分譲されるものと信じて、多額の自費を投じて維持管理、修繕に当たってきたわけであります。にもかかわらず、事業主体側の都合で一方的に建てかえ事業を決定され、明け渡しを請求されることは、入居者として耐えられないことであります。三月十九日の当委員会におきまして、この点に関する委員からの御質問に対しまして、建設大臣のほうで善処すると御答弁になったと聞いておりますが、どのように善処してくださるのか、全入居者の注目しているところであります。  私たちの要望としましては、まず分譲をしていただきたい、こういうことであります。分譲の要望は、一部に伝えられておりますように、ただ同然の価格で払い下げをしてほしい、こういうものではありません。適正な価格で分譲をしていただきたいということをこの際明らかにしておきたいと思います。適正な価格とは、時価を基準にして賃借権相当額を控除した額を考えております。賃借権相当額の判定につきましては、公正な第三者機関の査定に待ちたいと思います。このような適正価格での分譲が実現されれば、入居者の喜びはもちろんのこと、事業主体側にも分譲による多額収入が保証されることとなるので、この収入を基礎として新たに公営住宅建設または公営住宅用地の取得費に充てれば、住宅難に悩む国民に対しても大きな利益をもたらすものと考えられます。  試みに、昭和二十九年度までの公営住宅建設戸数に対する分譲比率二三・四%を昭和四十年度末までの建設総戸数に乗じて得た推定分譲戸数は、二十四万一千戸になりますが、これを適正価格で分譲したとしまして、二月平均百万円の収入があったとするならば、その総額は二千四百十億という高額が見込まれることになります。分譲することによりまして得た二千四百十億円の収入によって、三・三平方メートル当たり五万円という高額の土地をかりに取得したとするならば、実に千五百九十万平方メートルの公営住宅建設用地確保されることになります。この用地の広さは、お隣の皇居の実に十四倍に相当する土地が得られるわけです。一方、御提案の方法により木造住宅を鉄筋中層住宅建てかえたとしましても、戸数の増加は二・五倍程度にしかならず、取りこわしによる滅失分を差し引けば一・五倍にすぎず、大量建設という観点から見る限り、この両者の得失はおのずから明らかであろうかと思います。  今日、公営住宅の大量建設が叫ばれているときにあたって、当面の緊急措置として、すみやかに分譲を推進し、その収入によって建設用地確保をはかることが必要であると考えられるのであります。入居者としても、いたずらに自己の利益のみを追求するものでなく、国民住宅難解消のためにこのような形での負担を忍ぶつもりでおります。  ところで、今回の建てかえ事業に伴う明け渡し請求措置には、幾つかの重要な問題が含まれております。  まず、建てかえ計画の策定、施行にあたっては、実質的に、住んでいる者、入居者の意向が反映されない仕組みになっている点についてであります。従来の建てかえ事業の推進にあたりましては、事業主体は二つの方法によって建てかえを実行してまいりました。その一つは、入居者と話し合いを十分に行ない、合意の上で建てかえをする場合であります。この方法につきましては、私どもも基本的に異議を差しはさむものではありません。第二には、住宅地区改良法の適用による建てかえでありました。住宅地区改良法第十六条の規定によりますと、不良住宅の収用等にあたりましては土地収用法の適用があることとなっており、土地収用法第三十九条には、協議が不調に終わった場合の措置として、都道府県収用委員会の裁決申請規定があり、収用委員会の裁決に際しては、関係人等の適正な補償並びに意見が十二分に考慮されることとなっております。ところが、今回御提案趣旨によれば、単なる説明会の開催及び移転料の支払いによって、従来の二つの手続にかえることができるとなっております。公営住宅入居者は、法律的には土地の所有者ではありませんが、当該土地建設された住宅に住居するものでありますから、公共の目的のために立ちのきを要求される場合には、憲法第二十九条の定める財産権の保障を受ける権利があると考えるものであります。今回の改正は、入居者の基本的な権利を無視したという点で重大な権利の侵害であると考えるものであります。私どもといたしましては、公営住宅建てかえが公共のために必要欠くことのできないものであるならば、立ちのきそのものに反対するものではありません。しかしながら、その場合といえども、国が国民一般に対して保障している基本的な権利、すなわち、当事者として意見を述べる権利、正当な補償を受ける権利が侵されてはならないことは当然であります。いずれにいたしましても、今回御提案のような内容では、かりに説明会等が行なわれたとしても、説明会は単なる形式にすぎず、居住者意見の正しい反映が行なわれるという保証は全くありません。  以上の理由から判断すれば、御提案趣旨のような建てかえ事業の推進は、入居者の財産権を侵害するばかりでなく、形式的な説明会による一方的明け渡しの実行を迫られることになりますので、私どもとしましては反対せざるを得ないわけであります。したがいまして、今回御提案建てかえ事業推進に関する趣旨公営住宅の大量供給を目的とするものであるならば、残念ながら、その効果は薄いと言わざるを得ません。公営住宅の大量建設の道は、このような応急措置によって解決されるべきものでなく、住宅政策全般にわたっての抜本的な改善が必要であるにもかかわらず、基本的対策を示さずに、居住者の犠牲において住宅政策の貧困の現状を糊塗しようとする今回の建てかえに対しては了承できないものであります。  終わりに、高額所得者の強制明け渡しについて反対趣旨を申し上げます。  提案理由によれば、公営住宅低額所得者のための低家賃住宅であるにもかかわらず、入居者の所得が上昇し、相当な高額の収入を得るに至った者が引き続き入居している、これは、住宅に困窮する低額所得者が多数入居を希望している現状から見て、著しく公平を欠き、公営住宅法本来の趣旨に沿わないので、高額所得者に対して明け渡しの請求をすることができるようにする、こう述べられているのであります。ところが、私どもから申し上げますれば、今日住宅難が解決をせず、多数の低額所得者住宅に困窮している現状は、あげて政府責任ではないかと思うのであります。政府住宅難解決のためにどのような対策を講ぜられたのか、私どもはまずそれをお伺いしたいと思います。  昭和三十年以後政府が樹立した住宅建設計画は、昭和三十年一月に閣議決定されました十カ年計画をはじめ、四十一年に策定されました現行住宅建設五カ年計画に至るまで、十二年間に十カ年計画二回、七カ年計画一回、五カ年計画五回となっております。昭和三十年から昭和四十五年の十六年間に五十二年分の計画を発表されたことになるわけであります。しかし、これらの計画は、継続中の現行五カ年計画を除きましては、いずれも途中で立ち消えになっております。早いもので一年、長続きしたもので三年にすぎなかったことは、建設省において発表されました住宅関係資料によっても明らかであります。このような政府の基本計画段階における混乱が、今日の住宅難を招いた最大原因であるといえるのであります。また、これらの計画によれば、民間自力建設に約六三%の比重がかかっており、政府施策住宅は三七%にすぎません。しかも、その中には一般国民にあまり関係のない公務員住宅等の建設相当含まれており、低家賃住宅の占める割合は僅少なるものといわざるを得ません。公営住宅建設は、公営住宅法第六条に定める五カ年計画に基づいて行なわれているのでありますが、その建設実績は平均八九%にすぎず、実行面での立ちおくれもまた著しいものが見られるわけであります。去る三月二十日付の朝刊各紙の伝えるところによりますと、昭和四十四年度の各都道府県における公営住宅建設希望数は計画戸数に達しなかったと報道されております。このようなことはかつてない事態でありますが、この一事をもって見ても、政府住宅政策、特に公営住宅建設面における立ちおくれはますますひどくなるものと見なければなりません。  さらに、これらの住宅建設計画の根本的な欠陥は、予算措置が伴っていないことにあります。このため、昭和三十一年から昭和四十年度までの一般会計の歳出総予算額に対する住宅対策費、すなわち、公営住宅、改良住宅建設、及び、日本住宅公団及び住宅金融公庫に対する出資金、補給金の合計額の比率は、いずれも一%に満たない額しか使用されておらず、四十一年度以降わずかに一%をこえたにすぎないことは、予算面から見た住宅対策の貧困を裏づけるものであります。これらの点から考えますれば、今日住宅不足解消できないでいるのは、むしろ当然のことと言わなければなりません。  ところで、今回御提案趣旨によりますと、高額所得者が引き続き公営住宅入居していることは、住宅に困窮する多数低額所得者に対して著しく公平を欠くといわれておりますが、本来、政府が低家賃住宅の大量建設によって公平を期すべきものであるにもかかわらず、住宅建設努力を怠り今日の住宅難を招いたものであることは、先ほど申し上げたとおりでありまして、公営住宅入居者でかりに多額収入があったとしても、入居時点において低額所得者であったことは事実であり、その後本人の努力によって収入増加したとしましても、それはむしろ国民生活の安定という見地から喜ぶべきことではないかと思います。明け渡しをさせることによって再び生活困窮者に逆戻りするおそれも十分ありまして、このような方法で未入居者との公平をはかるということは、本末転倒というべきであり、憲法第二十二条に定める、居住、移転の自由を侵害するおそれのある重大な問題であり、同時に、憲法二十九条の、財産権の保障を脅かすものと言わざるを得ないわけであります。政府のいう公平の原則は、公営住宅入居者だけに強要されるべき性格のものでなく、社会のひずみをまず正し、しかる後にあらためて検討されるべきものと信ずるのであります。  また、高額所得者の定義につきましては、従来からきわめてあいまいでありまして、昭和二十六年公営住宅法制定以来の公営住宅入居基準額の変遷と、国民平均的な一世帯当たり収入額を比較した場合、その不明瞭な性格が把握できるのであります。すなわち、昭和二十六年法制定当時の入居資格は、第一種で、賞与等の不定期収入を除外した六カ月間の平均が二万円であり、第二種都営住宅の場合は一万円でありました。これを同年の勤労者世帯年平均一カ月当たりの実収入一万五千五百二十八円と比較した場合、第一種入居者は、国民平均的な世帯収入よりも相当上位にあるものに対しても入居資格が与えられておったわけであります。昭和二十九年までこの傾向は継続されたものであります。ところが、昭和三十一年以降三十六年まで、入居基準は第一種、第二種ともそのまま据え置かれ、一方、勤労者世帯年平均一カ月当たりの実収入は年々上昇を続け、三十六年には四万五千百三十四円に達しております。昭和三十七年には八年ぶりに入居基準改正され、第一種三万六千円、第二種二万円と定められ、同時に、収入超過基準は、第一種四万五千円、第二種二万五千円と決定されました。この年の勤労者世帯年平均一カ月当たりの実収入は五万八百十七円であります。この入居基準並びに収入超過基準昭和四十三年まで七年問続けられ、現在勤労者世帯年平均一カ月当たり収入は、推定いたしますと八万三千円程度に達しているのではないかと思われます。これを昭和二十六年当時と比較した場合、政令で定める基準なるものがいかに実態から遊離し、いかに国民を苦しめ、いかに入居者を窮地におとしいれたかは明白でありまして、これらの経過から判断いたしますれば、高額所得者という定義は意識的な操作によってつくり出されたイメージであるということが、事実関係を通して確認できるのであります。したがって、このようなイメージによってつくり出された高額所得者明け渡しに対しては、絶対に容認できないものであることをこの際申し上げておきます。  昭和三十四年の法改正によって、明け渡し努力義務及び割り増し家賃が課せられることになりまして、入居者事業主体との対立は現在深刻をきわめております。東京におきましても、昭和三十六年の家賃の不均衡是正をめぐりまして七年に及ぶ集団供託事件が発生し、昭和三十七年、昭和四十一年及び四十二年には、東京大阪、名古屋等におきまして大規模な収入調査拒否事件が発生し、これをめぐって居住者に重大な不安と動揺が生じており、今後この傾向はなお拡大するものと思われます。さらに、今回御提案趣旨が法律化された場合、事業主体入居者側との対立は著しく先鋭化することが予想され、憂慮にたえない次第であります。  最後に、今回御提案の四点にわたる主要な改正点は、いずれも共通の原則によって貫かれていることを申し上げておきたいと思います。  それは、公平と社会正義の美名のもとに、みずからの住宅建設不足に基因する住宅難に対する国民の非難を、きわめて少数の公営住宅入居者責任に転嫁するとともに、公営住宅の短期回転による延べ使用人員の増加をはかって、その増加によって補おうとするものであります。政府国民住宅不足を解決するためある程度努力をしてきたことは、率直に申し上げまして、認めたいと思います。しかし、その努力はあくまでも問題の本質的な解決に向かってなされるべきであって、顧みて他を言うような行政上の姿勢はとるべきではないと考えるのであります。問題の本質的解決とは、あくまでも適正な規模と適正な家賃住宅を大量に供給するために必要な措置を講ずることであって、単なる戸数主義に基づく住宅不足の解決であってはならないと思うものであります。  以上申し上げました理由によりまして、今回御提案公営住宅法改正案は、入居者としては全面的に反対するものであります。どうぞ慎重御審議を重ねられまして、今回の改正案は廃案にしていただきますようお願い申し上げる次第であります。
  8. 始関伊平

  9. 中村武志

    中村(武)公述人 中村武志でございます。  東京間借人協会会長として、私は今度の改正法律案に全面的に賛成でございます。  第一点、高額の収入を得るようになった人に対する明け渡し請求制度を設けることというのに賛成でございます。  私、二年半近く東京間借人協会会長をしておりまして、住宅問題についてはたいへんしろうとでございますが、その間に経験しました実感的なことを、取りとめもなく申し上げてみたいと思います。  東京都には、現在約八十万世帯の民間アパートに住んでいる人たちがおりまして、この人たちは全部、公営住宅に何とかして一日も早く入りたいという人たちばかりでございます。高い民間アパートに住んでおります。まず民間アパートに入るには、礼金を家賃の二カ月分取られます。そうして不動産業者の紹介手数料が一カ月分でございます。また敷金が二カ月、契約年数は大体二年というのが一般的でございます。これがだんだん短くなってくる傾向がございます。一年というのも相当ございます。つまり、契約の更新ごとに契約の更新料を大家さんは取ろうというわけでございまして、契約年数はなるべく短くするという傾向が出ております。ですから、民間アパートに入る場合には、家賃の六カ月分のお金を必要とするわけでございます。しかも、建物木造で、設備は悪く、太陽の光線はささず、風は通らない、洗たく場もなければ、物干し場もない、便所は五世帯共同とかいうような場合がまだまだたくさんあるのでございます。そういう人たちがみんな、粗雑で高い家賃の民間アパートで、公営住宅にいつ入れるかと待っているわけでございます。統計を見ましても、低所得者が一番高い家賃を払っているという統計が出ております。そうして、むしろ高所得者が非常に安い公営住宅に入っているという結果が出ているわけでございます。住宅に一番困っている人たちというのは、六万円以下の低所得者でございます。つまり、年収百万円以下の人たち、約八〇%から八五%がそういう人たちでございます。  そういう点を考えてみましても、今回の改正案で、現在入っている人たちは二百万をこえたら公営住宅を出ていっていただくということは、むしろ二百万ではちょっと高過ぎるのではないか。私個人の意見を申し上げますれば、百五十万程度でいいのではないか。現在の方でも百五十万でいいのではないか。新規に入られる方は百五十万ということになっておりますが、これも先になりますので百五十万もよろしいと思うのですが、もし現在とすれば、もっと下げてもいいわけでございます。ただ、行く先のことを私としてはぜひお願いしたいと思います。  公営住宅法の一部を改正する法律案関係資料十ページをごらんいただきたいと思います。この二十一条の四でございますが、ここには、その場合の行く先のあっせんについて特別の配慮をしなければならないとしてありますが、これはこれでよろしいのですが、その二十二ページの二行目の「公的資金による住宅への入居等についての希望を尊重するように努めなければならない」というのを、やはり特別の配慮をしなければならないというふうにしていただきたいと思います。つまり、出ていっていただく以上は、やはり行く先を政府がお考えになるのが当然だと思います。この義務は必ず守っていただく。行く先をお考えにならないで、ただ出ていけでは、少し残酷だと思うのであります。どうぞひとつ、行く先をちゃんとおつくりくださって、そして強制的に出ていただくということでなければ、政府のあたたかみはないと思います。どんなことをなさるときにも、なるほど政府はなかなか味なことをやるではないか、あたたかみがあるではないかというものをいつでもお与えいただきたいと思うのであります。  第二点でございますが、公営住宅建てかえを促進するため、建てかえに関する規定整備すること、これも私としては賛成でございます。  現在の東京の場合でございますと、戸山ハイツ、その他の問題が具体的に出ておりますが、終戦直後アメリカの資材の払い下げで建て木造の建築でございまして、もうたいへん老朽しているわけでございますが、これを建てかえて高層住宅にして、そして私ども民間アパートで苦しんでいる人たちをそれに入ってもらうということは、もう当然なことだと思います。現在の三倍に入居者がふえるということで、私どもはもう前から待っているのでございますが、なかなかそれが進捗しないというのは非常に残念でございます。これはたいへん賛成でございます。ただし、いま住んでいらっしゃる皆さんには御同情は申し上げます。終戦直後、戸山ハイツのアパートなどは、ほとんどじゃ口一つしかなく、窓、それからふすま、畳もそうかもしれませんが、御自分でそれを入手し、そしてほとんど設備を御自分でなさって現在に至っておるやに聞いております。そしてまた、当時東京都あたりでは、将来払い下げるというようなことを言ったようであります。これも確かに言ったのでありましょう。しかし、現在はそういう公約とか既得権をかたく守っている時期ではございません。東京都の住宅事情の悪さというものは、もう私が申し上げるまでもないことでございまして、自分一人だけの権利をあくまで主張するような時代ではないのでございます。政府住宅政策の不備は別にあとで申し上げますが、われわれ国民としても、やはりできるだけのことを協力すべきだと思います。協力というのは、つまり、苦しみも喜びも悲しみも国民全体が分かち合うという良識をわれわれは持たなければいけないのではないかと思うのであります。すべてを政府責任にして、われわれ個人は何ごとも政府だけを責めていればいいというような考え方では、いまや日本の住宅事情は解決しないと思います。まず第一に、われわれはわれわれの周囲の人たちと喜びをともにし、苦しみもともにして、その上、徹底的に政府にハッパをかけるべきだと思います。もう少し私どもは自分だけでなく周囲のことを考える、そういう意味で私どもも住宅事情改善努力をしたいと思うのであります。むしろ、私としては、この法の改正がおそかったのではないかというふうに、はっきり申し上げます。  また、住宅事情の問題では、市街地の再開発ということ、現在の公営住宅建てかえばかりでなしに、市街地開発をほんとうに徹底的にやっていただきたいと思います。そうして結局は、この住宅事情を解決するためには、抜本的な土地政策を実施する以外に方法はないのではないかと、私のようなしろうとでも考えるのでありまして、このほうが非常におくれているように思うのであります。今度の公営住宅法の一部改正だけで安心していらっしゃるわけではないと思いますけれども、これはもう小さいことでございまして、もっと大きな問題を政府は思い切ってやっていただきたい。たとえば、具体的に申し上げますと、民社党で、昭和四十三年四月五日提出、衆法第二〇号、土地価格の抑制のための基本的施策に関する法律案というのを、河村勝、内海清両議員が提出しております。これは地価を凍結するというような法案でございますが、どうぞこういうものを挙党一致で研究なさって、どこの党で出したからそんなものは知らないというようなことでなく、いいものは、どの党が出そうと、それを各党が挙党一致で推進し、土地政策をほんとうに実行していただきたい。もう一日も猶予できない時期に来ていると思います。小さなことも大切でございます。今度のような法案も必要でございますが、もっと大きな問題、抜本的な解決をぜひ次の機会にしていただきたいと思います。  第三点の問題につきましては、私としては、しろうとでございますので、こまかいことを申し上げることはできませんが、一番先の大阪助役さんがおっしゃったように、これが建設省がやりいいようでしたら私も賛成いたします。そうして家賃が変わらないで、家賃が上がらないでそうして安い公営住宅が私どもの手に入るならば、もうどのような方法でもけっこうでございます。  以上、どうもたいへん支離滅裂なことを申し上げましたが、とにかく、私ども何年もかかって公営住宅に入れるということでなく、せめて三カ月くらい待ったら安い公営住宅に入れる、地方から東京へ入学あるいは就職する人たちが出てきて、三カ月日に公営住宅に入れるというようなことをやっていただきたいと思います。もう数字とか統計で私どもは生活しているわけではないのでありまして、とにかく住宅事情がだんだん明るくなるという、その明るさを与えていただきたいと思います。現在のような状態では、ことしよりは来年のほうが住宅事情がどうも悪くなるのではないかというような感じさえいたします。二年や三年で簡単に解決きる問題ではないと思いますが、どうぞことしよりは来年、来年よりは再来年と、少しでも将来の明るさをわれわれに与えていただきたいと思うのであります。それが私どもの願いでございます。  こういう法律案と同時にもう一つお願いしたいことは、民間アパートの礼金、更新料というようなものをなくすような政府の強力な指導をお願いしたいのでございます。われわれ間借り人は、お客さまでございます。お客さまがアパートへお金を出して部屋を借りに行くのに、お礼を持っていくというような全く不合理なことが堂々と通用しているということは、非常におかしいことでございます。これは小さいことではないのでございまして、どうぞひとつ政府として、そういうものは取るべきでないではないかというような強力な指導をお願いしたいのでございます。  以上、どうも失礼しました。
  10. 始関伊平

  11. 山口二郎

    山口公述人 私は全国公住協の副会長をやっております山口でございます。この法案に全面的に反対する立場から意見を申し述べたい、そのように考えます。   〔委員長退席、金丸(信)委員長代理着席〕  今日、日本は世界第二位の生産力を持つような国になったわけでございます。したがって、私たちは、いまこそこの驚異的な経済成長の成果を国民の生活と福祉を増進するために使われ、そうして歴代内閣が公約しておりました一世帯一住宅を実現して、戦後二十四年間国民が待ち望んだ地価対策を含む総合的住宅政策が確立されるものと今日まで期待をしておったわけでございます。それにもかかわらず、いわゆる一千万戸といわれる住宅難世帯の存在を、その責任公営住宅居住者個人にあるかのように公営住宅法改正案提出されたわけでございます。  公営住宅法改正案の骨子は、用地費の国庫補助を打ち切って地方債にすること、政令で定める基準をこえる所得者の明け渡し義務づけること、建てかえを強制化することなどであるわけでございます。  そもそも、居住権は国民にひとしくあるべきものであり、憲法二十五条も、健康で文化的な生活を国民に保障しており、なお二十二条でも、居住、移転の自由を保障しているわけでございます。しかるに、政府は当然国民居住権を守るべきものであるというように考えるわけでございますが、それにもかかわらず、今度の改正案は、第二十一条の三では、明け渡し義務づけによって、立法措置居住権を侵そうとしているわけでございます。農業基本法によって農村人口は都市に移動しました。そして都市住宅難は激化しました。産業政策においてもまた同じことが言えると考えられます。  このように、住宅難の主たる要因が国の政治にあり、また、その解決は、政治による解決以外に道がないにもかかわらず、居住者居住権を奪い、しかも住宅難責任国民に転嫁しようとすることは、非常に重大なことであると私たちは考えております。  第二十一条の三の第一項にある明け渡し基準には「政令で定める基準をこえる高額の収入のあるときは、」となっておりますが、重要な居住権にかかわる基準が政令だけできめられる、このことにも問題があるかと考えられます。なぜ国会の議決を経ないのか、私たちはこの点の理解に苦しむところであります。法案では、収入基準は、世帯主一人の収入ではなくて、家族合算の数字とされております。家族は一人一人がそれぞれに独立の人格を持ち、各人の収入はそれぞれの使途を持っているわけでございます。   〔金丸(信)委員長代理退席、委員長着席〕  なお、一般的に、高年齢者というものは、家族も多く、費用もたくさんかかるようになっております。そして、収入も比較して高くなっていることは事実です。しかし、合算の数字によって高額所得者とされた、そのような人たち公営住宅から立ちのかされ、定年になって所得が減少したり、結婚等で子女が独立して収入が減少した場合どうするのか、その対応策は示されておりません。厚生白書にもありますとおり、社会保障制度はきわめて貧困な現在であります。私たちは、血の通う住宅政策を望むものであります。  さらに、公営住宅居住者のほとんど大部分が、八割以上が内職やともかせぎ等によって生活をささえているわけでございます。  このような現実の具体的条件を考慮しないところに、家族合算というような方式が生まれたのではないだろうかと考えざるを得ません。家族合算の問題だけを取り上げても、いかに居住者居住権を奪い、犠牲を強要しているかが明らかになると私たちは考えるわけでございます。  総理府統計局の調査によりますと、異常な物価の値上がりの中で、全国平均の標準世帯の一カ月当たりの実収入は、昭和二十六年に一万六千五百三十二円でございました。五年後の三十一年には三万七百七十六円になっております。同じく三十六年に四万五千百三十六円、四十一年には七万五千三百七十二円となっております。おそらく四十四年には十万円程度が推定されるわけでございます。二十六年から四十一年までの世帯収入がこの十五年間に四・五六倍にも達しております。現在では、家族の収入を合算しても百五十万、二百万という収入のある居住者というものは、建設省の発表にもございましたが、きわめて少数であります。しかしながら、総理府統計局の数字の傾向が示すように、数年後には過半数の居住者がこれに該当するのではないかと予想されるわけでございます。物価の値上がり、名目所得の増加によって居住者の所得がふえ、これに該当して公営住宅から追い出される、このときこそ社会不安の要因というものが生まれるのじゃないだろうか、このことを私たちは憂えるわけでございます。それは、他国の例を申すまでもなく、フランスその他の国にも見られておるわけでございます。それだからこそ、私たちは本法案の撤回を求め、希望してやまないわけでございます。  私たち建設省に陳情しておりました際に、ある担当の一係官は、この政策を回転政策と言われたことがありました。まさにこの法案は回転政策だろう、私たちもそう思います。しかしながら、居住者公営住宅から公団等の住宅に回転させることによって住宅難が根本的に解決するならば、それはそれなりの意義があるかもしれません。しかしながら、そのことによって公営住宅入居のたとえば競争が緩和されるとか、まして、公団の入居率が緩和されるとか、決してそのようなことはないわけでございます。いたずらに社会不安を招くだけではないだろうか、そのように考えられます。私たちは、少しばかりの所得が上がったからといっても、それをともに喜ぶ政治姿勢というものが、国民に対してあたたかい政治ではないだろうか。このことこそ、私たちの望む住宅政策でございます。  なお、今度の法案が示されましてから、地方自治体の例をあげますが、ことし一月七日の毎日新聞によりますと、神奈川県の大和市では、市営住宅建設にかわる制度化の準備を進めております。その理由として、次のような点をあげているわけでございます。  第一には、公営住宅建設費は、第一種住宅四十二・五平方メートルで百三十七万五千円を必要とするのに、国庫補助は五十七万一千円しか交付されない。したがって、一戸当たり建設費に対する市費の持ち出しは八十万四千円。ほかに三・三平方メートル当たり四万円の土地取得、整地費もかかる。  第二に、このため、一カ年十戸の市営住宅建てようとすると、市の出費は合わせて二千六百万円にも及ぶ勘定になる。国の住宅政策に背を向けるわけではないが、貧弱な市町村の財政能力では、負担の限度をはるかに越える額でもあるというものであります。  そして、さらに次のように説明をしております。  政府現行公営住宅政策を手直しし、高額所得者に対する明け渡しや老朽住宅建てかえに踏み切ろうとしているが、現在安い家賃入居者家賃の高い建てかえ住宅に引っ越しすることは考えられず、強行立ちのきの義務づけもできない実情から、同市は建てかえ住宅の構想を打ち切った、このように報道されております。  一地方自治体政府の政策に対してこのような形で発表することには、非常に大きな勇気が要ると思います。それにもかかわらず、これを言わなければならなかったところに、問題の本質が存在するのではないか、このように考えます。  以上のように公営住宅法改正がいかに不当であるかを率直に表明し、このことこそ、実態の中から本案の不合理性をあらわしておるのじゃないかというように考えます。  また、私たちの経験ですが、昨年の十一月の二十五日に、私たち建設省における住宅宅地審議会に陳情いたしました。ところが、建設省は厳重な警戒体制をとっておって、私たちは予期しないことにあ然としたわけでございます。そして建設省内のさくの中にさえ、御婦人をまじえた陳情者は入ることはできませんでした。私たちはいかなる暴力も決してふるいません。私たちの中には、自民党から社会党、共産党、すべての政党を支持し、また無所属の人たちもたくさんいるわけでございます。そのような人たちを、ただこの公営住宅法の陳情に来たからというようなことで、居住者がびっくりするようなことをやられる、このことが公営住宅法改正にあらわれたのではないか、私たちはそのように考えております。また、そのときに一時間、二時間と立たせられた御婦人は、泣き出さんばかりの状態であったわけでございます。  さて、私は、日本の住宅政策を明らかにするために、西欧諸国と日本の住宅建設状況というものを比較してみたいと考えますが、確かに日本の住宅建設が非常に少ない、非常に貧困であるということをいわざるを得ないわけでございます。西欧諸国ではすでに一人一部屋が達成目標であるといわれているわけでございます。それは、たとえば昭和四十一年までの十七年間の公営住宅建設戸数をイギリスと比較しました場合に、日本は一年平均五万戸にすぎない。しかしながら、英国のそれは二十五万戸にも及んでいるといわれるわけでございます。このような点でも住宅政策の立ちおくれが目立っておる、そのように考えられます。もはや戦後ではない、そのようにいわれてから数年を経ておる今日、住宅難による悲劇は枚挙にいとまがないわけでございます。大家さんに気がねをして泣き声も出せずに生後一カ月の赤ちゃんが死亡したり、階段もない屋根裏で住み込み店員が窒息死したり、二畳に親子六人が住み、赤ちゃんが窒息死する等、住宅政策の恥部はいまだに放置されているわけでございます。ことしこそは、来年こそはと、住宅難から救われることを望んでいる人々の願いは、本法の改正では何ら達成されるものではありません。ここに私がこの法案改正反対する理由があるわけでございます。  公営住宅法改正公営住宅居住者居住権がそこなわれようとしているときに、また同時に、都市再開発法で土地を持たない借家人百万人の居住権が問題になっているといわれているわけでございます。このような事態こそ重要ではないだろうか、私はそう考えます。日本の社会保障制度は、ヨーロッパに比べると、先ほども申し上げましたとおり、非常に低いわけでございますが、住宅は、単に家が存在するということではなくて、そこに人間が住んでいるわけでございます。いかに住まうかということが課題であろうかと考えます。大きな都市からは次第に青空も失われ、清らかな空気もなくなりつつあります。公害問題、通勤、交通の問題等、たくさんの問題が発生していますけれども、このもろもろの問題が解決されることを私たちは望んでいるわけでございます。  私たち公営住宅法改正案に直面しまして、単に百万の公営住宅居住者の問題としてではなくて、一億国民が二十五年間待ち望んだ政策、すなわち、土地対策を含む総合的な広義の住宅政策が確立されることを心から願うと同時に、日本の立法機関であり、そして国民の期待をになう国会の栄光と威信のもとに、居住権をそこない、将来に不安と混乱を残すおそれのある公営住宅法の一部を改正する法律案が撤回されることを心から望んで、意見陳述を終わります。
  12. 始関伊平

  13. 中村富雄

    中村(富)公述人 中野中小企業相談所長の中村富雄であります。  御承知のように、本改正案の第一点は、土地取得等に要する費用について、現行の国の補助制度融資制度に改めること、第二点は、入居者一定基準を越えた高額所得者に対し明け渡しの請求を法定化しようとすること、第三点は、既存の公営住宅に対する建てかえ措置についての規定整備しようとすること、以上の三点であります。  私は、まず最初に、これらの改正点が、いずれも日本における住宅政策の貧困、いな、住宅政策についての無策から出発していることを指摘しないわけにはまいらないのであります。  戦後二十四年、十年一昔と申しますと、二昔の歳月が流れているわけでありますが、今日なお住宅難に苦しまなければならないということは、国の施策がどこか大きくピントが狂っているからではないかと思うのであります。日本と同じ、戦後焼け野原となったヨーロッパ諸国においては、公共的住宅中心に積極的に住宅政策を推進してきたのに比べまして、わが国の場合は七割近くも民間自力によって行なわれる建設だということは、住宅についての今日までの政治の無為無策を端的に示していると思うのであります。  特に都市過密化動向を集中的に受けております東京においては、住宅に対する不満はまさに爆発寸前にまで来ていると申しても決して過言ではないと思うのであります。東京の場合、公営住宅の応募者は五十三・八倍にも達し、約四十七万戸の住宅が不足しているのであります。四十二年に都が実施しました第十六回都政世論調査によりますと、住宅のことで困っていると答えた都民は四一%にも達したのであります。特に個人経営アパートに住む者のうち七三・四%が、住宅のことで困っていると答えているのであります。困っている理由の中で、六〇%が、狭い、二五%が、家賃が高いと回答しているのであります。  今日、国内政治上の問題で、住宅問題ほど国民の不満を集めている問題はないと思うのであります。それにもかかわらず、住宅政策が旧来の踏襲で、何ら根本的な新鮮な施策を持たぬということは、まことに残念なことであるといわなければなりません。今回の公営住宅法の一部を改正する法律案に対しましても、失礼な言い方かもしれませんが、病原体に深くメスを加えることなく、熱さましを飲ましてその場をしのいでいる感じがいたすのであります。  そこで、第一点の、土地取得等に要する費用について、国の補助制度を改めて融資制度にしようとする考えでありますが、これほどどろなわ式な法改正はないと思うのであります。建設省からいただきました「公営住宅法改正案内容」というパンフレットの二十七ページに、なぜ補助をやめて融資にするかという問いに対しまして、このように答えております。「住宅建設五箇年計画で予定した公営住宅の計画戸数は必ず達成しなければなりません。現在の用地費に対する補助制度のままでは、必要な資金の確保が難しくその達成があやぶまれますので、この際用地費についての補助を融資に切り替えることによって資金を十分に確保し、公営住宅建設を円滑にする必要があります。」と説明しておるのであります。これはあたかも次のように弁解しているように思うのであります。政府土地値上がりについて全く対策を持ちませんでした。上がりほうだいに上げてしまいました。今日でもなお土地政策について無能ぶりを発揮しております。したがって、用地費がどうしても足りません。この用地費の不足については、以前から各地方自治体から何回となくその苦情を訴えられてきましたが、全部地方自治体しわ寄せして超過負担をしいてまいりました。地方自治体はそのためにほかの事業がなかなか進みませんでした。いままでは補助金ということで四十三年度百七億円を差し上げましたが、今度からは補助金をやめて、四十四年度は二百八十六億円を貸してあげましょう。利率は、第一種年三%、第二種は年二%。貸すのでございまするから、お返し願います。償還期間は三十年で、非常に条件もよいですよ。それから用地費、工事費の算定基礎となる単価については、適正な立地による実額を基礎として建設大臣が定めさしていただきますということをいって、弁解しているように考えられるのであります。実は地方自治体が一番苦しんでまいりましたのは、この標準価額単価についてであります。このことについて何ら触れておられないで、この問題について、たとえ現行制度改正いたしまして融資に切りかわっても、同じような状態が地方自治体にやはり私は起こってくるのではないかと思うのであります。標準価額の問題につきましても、幸い近々中に地価公示制度が発足するやに聞いておりますが、やはりそういうものを基準にいたしまして、一建設大臣の、一建設官僚のそういう感覚的な点で標準価額をきめることのないようにお願いをしたいのであります。  御存じのように、住宅問題は土地問題であるといわれております。現状のように、土地の値上がりを野放しのままにしまして、たとえ補助金制度融資制度に切りかえたとしましても、それで若干の前進は期待できるでございましょうけれども、あくまでも政府の考えは、資金事情の許す限り適切な配慮をするというにすぎないのであります。融資制度についてもそういう程度配慮しかしないということなんであります。現状のままですと、早晩この融資制度土地値上がりの前に破産をしてしまうことは明らかではないかと思うのであります。そこで、やはり私はお願いしたいのでありまするが、地価抑制についての積極的な対策をぜひとも早急に確立していただきたいと思うのであります。  次に、一定基準を越えた高額所得者に対する明け渡し請求ですが、確かに公営住宅法は、「これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸すること」を目的としており、その点から考えれば、高額所得者は遠慮していただくのが正しいと思います。ですが、建設省の指導によりますと、四十四年二月に、年二百万以上の収入超過戸数は、管理戸数百四万六千六百九十六戸のうち、わずか四千六百一戸ということでございます。この四千六百一戸の人々を追い出すことによって正義と公平を貫いていくのだと説明しておりますが、それであたかも鬼の首でもとったようなつもりで住宅問題について正義と公平が貫かれているということを考えておられるならば、私は大きな誤りだと思うのであります。宝くじでも当てるような気持ちで、何回となく、いな、何十回となく申し込みながら、なおかつ公営住宅に入れない数多くの人々と、運よく公営住宅に入れた人々との間にこそ、ほんとうの不公平があることを考えていただきたいのであります。公営住宅に入れた人と入れない人々の谷間を早く埋めることこそ、要するに、大量な公営住宅をたくさんつくり上げることこそ、真に正義と公平を貫く道であることを再認識していただきたいのであります。  そこで、若干細部にわたりまするが、世帯主と配偶者以外の同居親族、特に子供たちが働く世帯の場合ですが、これについては、収入の計算にあたって、各人の総収入から給与所得控除額を控除し、さらにその残額からある程度を控除することとしております。この場合、ある程度というのは、あるいは三分の一、または二分の一ともいわれているようですが、私は、同居子弟の収入を超過基準収入に合算することには反対なのであります。  その第一の理由は、これらの同居子弟は、当然将来親のもとを離れて独立していく、すなわち、核家族化が必然だからであります。なぜならば、物理的に二世帯が同居することは不可能だからであります。現在の公営住宅はそれほどのスペースがないからであります。核家族化が必然であることは、将来ほかに家を持たなければならないことを意味しますが、御承知のように、これについては何ら公営住宅は保障されておりません。住宅建設計画の大部分は民間自力の建設に負っているのであります。  いまかりに、二十二歳で大学を出た一人の男の子供が、二十八歳で結婚するといたしまして、一体幾らの貯蓄ができると思うのでしょう。二十二歳から二十八歳までの六年間に一生懸命がんばって、せいぜい五十万から百万程度ではないかと思うのであります。かりに百万といたしたとしましても、とても家など建てられるものではございません。結婚の費用に、移転しなければならないであろうつつましい民間アパートの礼金に、敷金に、その仲介料に、また、その高い民間アパートの家賃の足しに、これらの貯金をおろさなくてはなりません。一年ぐらいたって子供ができますと、出産のための費用だけで十万円は軽くかかります。今日の国保は出産について何ら保障しておりません。要するに、百万円ぐらいの貯金があっても、結婚して、まあまあ満足できる民間アパートに入って、一年ぐらいたって子供を産んで、ほとんど二年か三年で百万くらいの貯金はなくなるということであります。同居子弟が将来明るく核家族化できるためにも、超過基準収入にこれらの子弟の収入というものを合算すべきでないと思うのであります。  第二の理由は、これら同居子弟の所得は、所得税及び地方税を通じて、世帯主と合算されて、高額になればなるほど、御承知のように累進的に高い税金を取られているということであります。その意味では、公営住宅入居するための最低の義務は果たしているとも言えるわけでありまするから、この点からも、同居子弟の収入を超過基準収入に加えることは反対なのであります。  第三の理由は、もし改正案がそのまま通りまするならば、同居子弟の収入があるために基準収入を超過し、公営住宅を出なければならないという場合に、たぶん、そこに住んでいるお子さん方は、籍だけでも友人か親類のところに移して、言うなれば、法の網をくぐって、追い出されないように考えるであろうということであります。このようなことは明らかに予測されるところであります。今日わざわざ離婚までして生活保護を受けようとする世帯が現に炭鉱離職者の間に起こっていることは事実であります。これについての効果的な対策は、政策的にも法的にもほとんど不可能に近いのでありまするから、できないことはいまのうちからやらないほうがよいと思うのであります。反対する第三の理由であります。  改正案の三番目は、既存の公営住宅に対する建てかえ措置についてでありますが、私は、これは当然のことであり、ぜひ行なうべきことであろうと思います。土地は本来利用するためにあるのであり、所有するためにあるのではございません。戦後行なわれました農地改革は、利用優先の原則を貫いて小作者に農地を解放したものであります。宅地のみが明治以来の土地財産絶対主義の伝統を受け継いでおり、これが今日土地問題解決にどれほどマイナスになっているか、はかり知れないと思うのであります。土地に対する私益優先の風潮を公益優先に切りかえていくことは、土地問題解決のためにぜひ必要なことでございます。憲法第二十九条は、「財産權は、これを侵してはならない。」と規定するとともに、「財産權の内容は公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。私有財産は、正當な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」と規定しているのであります。また、第十二条は、「この憲法が國民に保障する自由及び權利は、國民の不斷の努力によつて、これを保持しなければならない。又、國民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」と規定しております。公共の福祉を重視しているのであります。それでもなお、今日わが国においては、土地所有に対する公益尊重の精神は、欧米諸国と比べて非常にまだまだ薄弱なのであります。こういう観点からいたしまして、ましておや、都有地でございます、あるいは国有地でございます、これらの古い都営住宅建てかえて、高層化をしてそうして効率的な利用をはかろうとする政策を進めるために、一時どいていただく、そしてまた後に入っていただくという政策は、これはもうほとんど万人が認めていかなければならない、大義名分に立脚した施策ではないかと思うわけであります。  最後に申し上げたいことは、二十一世紀に入りますと、都市化動向は現在以上に進んでまいりまして、おそらく、東京圏、中部圏、近畿圏を中心にいたしまして、日本人口の約八割はこの太平洋メガロポリスに集中するであろうといわれております。このままの状態では、このメガロポリスはおそらくもう全くスラム化して、スラム・メガロポリスになってしまうというぐあいに考えるわけであります。したがいまして、現在のような形で、地方自治体におんぶにだっこの形で、これらの、特に太平洋沿岸の住宅問題というものを考えていくならば、私はたいへんなことになってしまうだろうと思います。こういう点につきましては、もっと国が積極的に——国がみずから自分を背負って、おんぶにだっこじゃなくて、ほんとうに国が直接手を伸べてそうして住宅政策を打ち出していかなくてはならないと考えております。  以上申し上げまして、中村富雄の公述を終わらせていただきます。
  14. 始関伊平

  15. 松川笑子

    松川公述人 ただいま御紹介いただきました主婦同盟常任委員松川でございます。  議題となっています公営住宅法の一部改正にあたり、主婦の立場から意見を申し述べさせていただきます。  住宅は、国民が健全な家庭生活、人間形成及び明日への社会活動を円滑に行なう場としてきわめて大切な役割りを持ったものであり、健康で文化的な生活を営むには、国民の住生活の安定向上がなくてはなりません。ところが、わが国の住宅事情は、経済、社会の発展に伴い、人口、産業の都市集中、世帯の核家族化によって、その需給に至ってはアンバランスを生じ、依然として住宅難は、向上どころか、深刻な悩みとなっております。  政府は、昭和四十一年度より住宅建設五カ年計画を実施され、御努力しておられますが、昨年八月の都営住宅入居競争率は、実に九十・一倍の現状であり、いかに住宅不足であるかを如実に示すものでありました。そこで、公営住宅入居できず、やむなく民間経営の木造賃貸しアパートを借りざるを得ないのであります。  こうしたわが国の住宅不足、つまりは、住宅政策の貧困は、特に大都市の民間賃貸しアパートの過酷な契約条件となり、賃貸し期間契約は大体二カ年とし、契約時には権利金、敷金、礼金、保証金、前家賃と、約十万余円の金が一瞬に飛び、やっと落ちつけたと思う間なくすぐ二年目がやってまいります。その上、物価上昇のあおりから、家賃を上げてくださいと家主から責め立てられ、泣き泣き交渉に応じていくという実態であります。最近の私どもの調査によりますと、賃貸し契約には、子供が生まれたら出ていけという文書による契約さえあります。これらは人間としての基本的権利を奪うものでありましょう。たとえば、西欧諸国では国家の責任のもとにおいてすでに住宅難解消していると聞いております。ところが、わが国の公営住宅は、管理戸数総数二千三百万戸の中で公営住宅は百四万戸という、たった六%にすぎません。この一つを見ても、西欧諸国に比べて日本は著しく立ちおくれています。過日、建設省、総理府の住宅意識調査を見ましたところ、大都市における調査戸数のうちでぜひ必要な住宅難は六〇%にのぼっています。しかし、日本は国民総生産が資本主義国家の中で第二位になっていますので、住宅対策政府がもっと力を入れてくださるならば、早く住宅難の解決はなされると思います。  次に、改正案問題点について申し述べてみたいと思います。  まず第一点は、公営住宅建設費用に関する援助についてですが、現行用地費については国が地方公共団体に対して補助制度をとっていますが、用地費高騰及び地方公共団体超過負担の増大によって地方財政がきわめて圧迫されているという理由によって、用地費補助を打ち切り、新たに融資制度に改めることは、公営住宅建設を行なう施行主にとってたいへん不安を感ずるものと思うのであります。政府としましては、住宅建設の実行を見るために、政府資金は償還期間を二十年から二十五年として、利息は六分五厘、民間資金は七年、七分三厘を償還するとなっておりますが、これは起債でありますゆえに借金政策で、地方財政相当比重がかかることは明白であります。なれば、地方公共団体の財政難にさらに拍車をかけることとなり、はや、朝日新聞社の調査では、四十四年度地方公共団体公営住宅建設戸数が国の計画の十万戸を下回るものとなっており、このように住宅建設意欲をそこなう危険性があらわれているのが事実であります。ILO百十五号には、経済成長に伴い、都市化の趨勢によって住宅難、交通難等が起こり、国民生活は著しく圧迫されているので、住宅対策においては、個人建設負担をかけるのではなく、国の責任とすべきであると勧告されています。いまわが国の国民生活を顧みますと、住宅対策はきわめて枯渇している状態であり、これを維持、確保するためには、国の責任において住宅難解消する以外ないと思います。そこで、用地費の国庫補助を打ち切るのではなく、現行補助制度の適正な運営をはかるとともに、公営住宅を供給することを第一義とすべきであると思います。  第二点は、適正な標準価額の設定についてであります。  土地取得等に要する費用の補助を融資に切りかえることによって起こる家賃の変動を避けるため、家賃収入補助金として、第一種に三%、第二種四%、四億五千二百万円を計上して、家賃を値上げしないような制度をつくられておりますが、現実は、地価高騰建設費の値上げ等によって本年の家賃は昨年よりも五百円の値上げとなっております。これは家賃収入補助金の新設があっても、標準価額の算定基準のいかんによって家賃のスライドがあると思うのであります。また、政府は職住近接という新住宅対策をうたっていますが、これにアプローチするには、都市再開発による住宅建設しなければなりません。ところが、建設コスト高によって高家賃となることは、火を見るより明らかであります。そのために、市街住宅地に住むことを望んでいる低所得者は都市には居住できないことになります。標準価額基準実情に合わせたところの算定基準にしなければ、家賃の値上がりは当然起こってくるのではないでしょうか。実情に合った適正な標準価額の設定を行なうべきであると思います。  次に、大都市における法定家賃の設定についてであります。ただいま申し上げましたように、大都市には、第三次産業の発展に伴い、数多くの業務就業者の集中が著しくなっております。その人たちは低所得者が多く、満員電車にゆられて遠距離より通勤しております。これは、都心は家賃が高く、土地高騰によって、やむなく一時間以上も通勤に時間を費やすのであって、職住接近の政策をとる上においては、公営住宅入居する人々は当然低所得者であり、家賃については考慮しなくてはなりません。  現在家賃の算定は建設に対する一定基準に従ってなされていますが、大都市における住宅の場合、当然地価建設コストが高いので自然家賃算定も高くなります。大都市における法定家賃をどうするか、これは建てかえ住宅、または新規に住宅建てる場合の今後の住宅政策として大切な問題でありますので、考えていただきたいと思います。きめられた法定家賃に対し、所得者に見合った一定基準を定めておくことが必要であろうと思います。  第三点は、高額所得者に対する明け渡し義務規定であります。公営住宅は本来低所得者のためのものであり、著しく高い収入を得た者が公営住宅入居していることは、公平の原則から見てもまた公営住宅の十全の目的にそぐわないことは当然でありましょう。しかし、公営住宅百四万戸のうち、明け渡し対象者はわずか四千六百一戸であり、これによって住宅難の根本的な解決になることは考えられません。ましてや、極度の物価上昇の現今を考えますと、高額所得者といっても生計一ぱいの生活をしており、単に数字の上でのみ高額所得者ときめて片づけることはできません。  また、子供を持つ親としてぜひ考えていただきたいことがあります。それは、移転から生じる子供に与える精神的影響です。どんなきたない家でも、子供にとっては、おかあさんのにおいのしみ込んだ一番安全な古巣であり、育つにつれて生じた思い出や夢の一ぱいあるわが家です。それにまして友だちとの関係は大きく、ましてや、学童においては、通いなれた校舎や、先生、机を並べた、子犬のように遊びたわむれた友だちと別れて、見知らぬ環境の中にぽつんと置かれたときはどんなでしょうか。子供の人権を無視し、事務的に動かせばよいという、ただそれだけでは済まないたくさんの問題が生活の中にはあるということを強く訴えるものです。  ゆえに、公営住宅を大量に建設して低所得者に住宅を供給することが何より先決だと思います。だれ人も居住権の保護を憲法では定められております。住宅は生活の本拠であり、高所得者に明け渡し義務を強制するのではなくて、収入と物価上昇に応じた割り増し家賃を徴収していく考え方が妥当ではないでしょうか。高い家賃で狭い公営住宅入居するよりも、住宅環境の適した他の住居へ移転したほうがよいという考えを自然に起こさせるような制度にしたらよいと思います。  第四点は、建てかえの制度についてであります。  老朽住宅建てかえる制度にすることは、建設戸数をふやすことでありますから、けっこうなことですが、ただし、ここで問題とすることは、家賃の算定であります。旧住宅都市内の比較的よい立地条件のところにあります。中高層住宅建てかえた場合、いままで非常に安い家賃入居していた者が、新住居となれば当然家賃が上がりますので、家計費の中の住居費は支出増となり、家計を乱すおそれが生じます。そこで、建てかえた新住居の家賃については特別な措置を講ずるようにしたらよいと思います。すなわち、傾斜方式による家賃の算定をはかり、一定期間を通過すれば、建設年度の標準家賃による優遇措置をとられるような住宅対策を切に希望いたす次第でございます。  以上をもちまして私の公述を終わらさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  16. 始関伊平

  17. 浜崎則雄

    浜崎公述人 朝日新聞の論説副主幹をしている浜崎則雄でございます。  公営住宅法の一部改正につきまして、私の所見を申し述べます。  先ほどからるるたくさんの公述人からお話がございました、また、国会の各位は、私どもよりもむしろその方面には精通しておられるベテランの方ばかりでございますので、私は一々法案のこまかい点には触れません。そこで、大筋の考え方というようなものを述べさせていただきたいと思います。  御承知のように、先ほどからもお話がありましたけれども、現在の都市の過密状況、特にその中における住宅問題の深刻さというものは、これはもう皆さん、特に国会に出ておられる方は一番御承知のはずだと存じます。私は昨年の末まで東京におりまして、そして年末に大阪のほうに転勤いたしました。両都市圏の実情もある程度体験上わかっておりますが、都市問題の中でも、住宅問題ほど重大な問題はないと思います。これはいまのままに放置しておきますと、あらゆる面で非常に激しい社会政策的な問題を露呈してくるんじゃないか、こういうように憂慮しております。したがって、住宅建設というものは、政府施策の最も重要な柱として今後取り上げていただかなければならないということは、申すまでもございません。  戦後のわが国の住宅事情は、昭和三十一年に経済白書が戦後は終わったということを書いて胸をそらせましたけれども、事住宅に関する限りは、私は、戦後は終わるどころではなくて、ますますひどくなりつつある、こういうように考えます。そして、現在行なわれております住宅建設五カ年計画、あるいは四十六年から施行されるはずの、現在策定の準備に入っております新住宅五カ年計画のかりに計画戸数あるいは居住水準というものが全部達せられたといたしましても、まだまだわが国の住宅難解消するということには至らない、こういうように考えております。したがって、今後のこの住宅建設というものは、皆さま方のお力によってより一そう強化していただかなければならない、こういうように考えております。  それから、先ほどからもお話がありましたように、現在の住宅建設計画は、いわゆる公四民六といわれますように、公共施策によるものはわずかに四割にすぎない、そして六割が民間の自力建設に依存しております。この政策は、現在住宅問題は社会政策として考えなければならないという観点に立ちますと、修正して逆転してもらわなければならないと思っております。そういう意味で、この住宅建設というものが、政府の投資、公共投資の中で非常に大きなウエートを占めてもらいたいということを皆さまにお願いしたいわけであります。しかも、この住宅建設の基本は、これはあくまでも政府施策の公共住宅公営住宅に重点を置いてもらいたい。公団の分譲住宅とか、そういうようなものに手の出せない、ほんとうに困っている低所得者の方を救うための公営住宅に大きなウエートを置くべきものであるということは、申すまでもないと思います。ただ、こういうような政策をとるにあたりましては、現在の国家財政上から見ますと非常にむずかしい面があることは、これは国政全般をおにらみの皆さま先刻御承知だと思います。国家財政上、いわゆる財政資金が窮迫しておりますし、しかも、土地の入手難その他から、一挙に解決できるものではございません。非常に長年月かかります。そこで、そうなった場合に、それでは、そういう理想論を幾ら展開しても、現実に大きなひずみが出ている問題は是正しなければならぬじゃないかということが起こってまいります。そこで私どもは、理想論は幾らでも述べられますけれども、いろいろな事情から考えまして、当面のこの公営住宅現状というものをそのまま野放しに放置しておいていいものかどうかという点を考えますと、いろいろな問題点がたくさん出ておりますので、これは改正せざるを得ないだろう。そこで私のきょうの意見は、万全ではないけれども、次善、あるいは次善までいかないかもしれませんけれども、何がしかの改正を行なわなければいけないという現実に立脚いたしますと、この改正賛成せざるを得ない、こういう立場で、以下この改正の要点についての意見を申し述べます。  第一点の、土地の融資の問題でありますけれども、私は本質的にはとの問題には賛成しがたい。先ほど言いましたように、住宅政策というものは社会政策の一環として考えなければならないという立場に立ちますと、これは従来あった補助制度実勢価格に見合うように国がちゃんとめんどうを見てやるというのが一番の本筋だろうと思います。いわゆる大蔵省その他の言い分でどうしてもそれができないというのでしたら、では現実公営住宅が建ちやすくするにはどうするかという次善の策を考えないわけにはまいらない。そこで私は、この融資に切りかえることには個人的に反対でございましたけれども、全国知事会とか、あるいは市町村会とか、こういうような方々の御意見を聞き、それから現地の話を聞きますと、いまのような補助金の補助のあり方では、実際問題として住宅は建たない。これはどなたか先ほどからも申しましたように、おそらく、場所によっては三分の一、平均して半分ぐらいしか補助が行なわれていないということになります。これでは、地方財政は窮迫しておりますし、将来に負担はかかるといたしましても、むしろ融資制度に切りかえて、その融資の額を保証してさえもらえれば、そのほうが現実に家は建てやすいというのが、一致した意見でございました。これは冒頭に大阪市の大島助役さんが申し上げましたように、現実公営住宅建てる場合は融資のほうがやりやすい、だからそうしてもらいたいということが地方公共団体から強く要望されておりますれば、これは単なる理想論を引っ込めて、そのやりやすくて、当面、家が一軒でもよけい建つような方策に切りかえるということのほうが私は大切だと思います。そういう意味で、心から賛成するわけではありませんけれども、やむを得ない改正としてこの融資制度を認めていかなければしかたがない、こういうように考えます。  それから、第二の明け渡しの問題でございます。これは現在公営住宅に入っておられる方、あるいは公営住宅に入りたくてどうにもならない方という、この両方の立場を考えますと、これは議論がまっ二つに分かれる、これは当然でございます。私どもは、第三者というと非常に悪いのでありますけれども、そのワク外からものを考えてみますと、現在の公営住宅に入っておられて、そしてカラーテレビを持ち、あるいはマイカーまで持っておられるというような、そういう人を私どもは高額所得者と言いたい。こういう方たちは、やはり、ほんとうに困って、あとに入りたくてひしめいている人たちに席を譲ってやるということが、国民の連帯精神、いわゆる助け合い、こういう意味からいいまして、社会正義上あるいは社会常識上から当然であろうと思います。  聞くところによりますと、この高額所得の水準は二百万円だそうでございます。これは先ほど中村さんがおっしゃいましたように、私自身はむしろ高過ぎると思う。総理府の家計調査の統計を見ますと、現在二百万円をこえる所得者は全世帯の三%にすぎません。それから、同じくその調査の統計を見ますと、年収百四万円というのが、いわゆる夫婦と子供三人の標準サラリーマンの平均収入でございます。そういうことから考えますと、二百万円という限度は、私は少し高過ぎると思う。これは、公営住宅に入っておられる方から考えますと、何を言うかといわれるかもしれませんけれども、私はそれが現在のわわれわれ国民の所得の実態だと思う。そこで、百万円、いな、それ以下の低所得者が非常に多いということをまず考慮に入れなければなりません。この人たち現実にどうしているかと言いますと、先ほども説明がありましたように、東京だけでも七十万以上の方が過密狭小の住宅にひしめいております。しかもこれらの住宅は、住宅の名に値するような内容のものではございません。炊事場とか便所とかが共用になっている、あるいは六畳一間に親子五人が住んでいるというような方々が現実に非常に多いのです。この人たちを救済してやるというのが、私はほんとうの政治であり、政策であると思う。したがって、公営住宅に入っている方々が、先ほども御婦人の方がおっしゃいましたように、子供の教育の問題とか、あるいは定年を迎えるとか、いろいろの事情はございましょう、しかし、その公営住宅にさえ入れずに、転々と追い出され、そして、家を求めている人たちは一体だれが助けてやるのか、それは公営住宅建てればいいじゃないかといいましても、これは皆さん御承知のとおり、簡単にすぐに解決できないといたしますと、この人たちを順々に入れてやって、そして少しでもゆとりがある方はやはりしんぼうしていただく。昔からいいます、乏しきを憂えず、ひとしからざるを憂う、これがわが国の美風じゃないかと思う。住宅に関しては、私は乏しきを憂えます。乏しきを憂え、ひとしからざるも憂える。したがって、公営住宅を一戸でも多く建ててそしてこの人たちを救済するのと同時に、二百万円以上も所得を持たれている方は——幸いに、今度の改正を見ますと、私はやや不満ですけれども、二百万円以上の収入を持たれている方は、百四万戸のうち四千六百戸です。しかもこの中から、奥さんや子供さんの収入を合算して、ある程度、三分の一にするとか、いろいろな処置をとりますと、四千六百戸のうちの三分の一くらいはまた戸数が減ると思います。たとえば二百万円という収入は、東京都で申しますと、いわゆる古参課長の収入です。最右翼の課長の収入です。宮城県の例をとりますと、これに該当する人は、宮城県の県営住宅の中では、東北大学の教授と土建会社の社長さんの二人が該当するにすぎない。こういう人たちを守るために公営住宅におられる大部分の方がこの法律に反対するといたしますと、世間の受け取り方はいかがになるでしょう。善良な、ほんとうに貧しい——と言うと語弊がありますけれども、生活のお苦しい大部分の百四万の公営住宅の方々は、世間から非難されるんじゃないか。なぜ、わずか四千六百戸の高額所得者を守るために公営住宅百四万の人が反対しなければならぬのかということになりますと、これは公営住宅居住者全体の方々がむしろ国民から非難されるんじゃないか。私はこの反対にはどうしても納得がいかないのであります。そういう面から考えまして、私はどうしてもこの高額所得者——これはわずかで、何も住宅難の解決にならないとおっしゃいますけれども、しかし、世間は、筋道とか、たてまえということが必要なんです。私は、野放しにしておけという議論にはならないと思うのです。そういう意味から、公営住宅居住者の方々も、御不満はございましょうけれども、なるべくあとにつかえている人たちに譲るというおおらかな助け合いの気持ちになっていただきたい。しかも、この四千六百戸という数字は現実にはそれより減ると思いますけれども、立ちのいた場合に地方公共団体が他の住宅にあっせんできる数字だと私は思います。逆に言いますと、この程度はあっせんできるからというところからこの数字が逆算されて出されているんじゃないかというような気分も私はいたします。そういう意味で、路頭に迷われることはまずございますまい。そして、高い家賃になるという御不満はございましょうが、公営住宅に入れないで、しかも公営住宅に入っている方々よりももっと安い収入の人は、はるかに高い一畳二千五百円も三千円もするような、ほんとうに環境の悪い住宅に住んでおるということを考えますと、自分たちの権利と義務だけを主張されていましては、国民生活というものは円満にいかない。公営住宅にお住まいの方々が、まず、自分よりも苦しんでいる人たちを何とか助けようというあたたかい気持ちになっていただきたい。これを私どもは心からお願いしたいと思います。  そういう意味で、この明け渡し義務というものは、やはり当然法改正で認めてもらわなければ困ると思う。皆さんも古い方は御存じだと思いますが、公営住宅法改正昭和三十四年に国会をパスしております。そのときの原案もたしか明け渡し義務があったはずでありますが、国会の修正によってこれが努力義務ということになっております。その結果、ほとんど実効があがらなくて今日に至っておるということは、もう皆さん御承知のことだと思います。そういう意味で、一見非常に酷なように思えますけれども、社会全般の良識あるいは社会正義というような面から見ましても、私はこの程度改正は当然行なわれるべきであり、なぜいままでほっておいたかということにむしろはなはだ遺憾な思いをするわけであります。  それから次の建てかえの問題、これは私がここでるる申し上げる必要はないと思います。公営住宅にお住いの方も、おそらく、心の底ではこの問題に根本的に反対している方はないと思います。現在の都市の過密化、土地の有効利用、都市再開発というようないろいろな観点から見ましても、この平家建ての古い木造の老朽した住宅をいつまでもそのまま置いてよいということは許されることではございません。しかもこの方々は、家賃は多少上がるにいたしましても、ほかの公営住宅に入れない人々に比べれば、新しい家をあっせんしてもらえ、移転の場合は移転料ももらえるのだし、そしてちゃんともとのととろに居住地を与えられる。これにすら反対するというようなことは、私は許されることではないと思います。  そういう意味で、一度自分が取った既得の権利は是が非でも守るのだというような、そういう狭いお心ではなくて、もう少しみんなが助け合って国全体、国民全体が少しでもしあわせになるような方向にみんな努力していくということは当然のことであります。特に国会に出ておる方々は、そういう国民のより多数の人たちの利益ということを考えて政策を遂行していただきたいと思います。ものを言える立場にある人と、ものを言えない立場にある人、いろいろな方々がございます。ただ、従来私どもが外から見て不満に思いますことは、いろいろな組織を持ち、ものを言える人たちのことが政策の上で大きく取り上げられて、ものを言えない、組織も持たない人たち発言というものがなかなかあらわれてこない。こういう従来の傾向から見ますと、ものを言えない、未組織の、住宅にほんとうに困っている人たちのことをもひとつお考えくださいまして、今回の住宅法の改正をお通し願いたい、こういうように衷心からお願いしたいと思います。  最後に一言申し上げておきますけれども、むろん、わが国の今後の住宅政策で、この程度のもので能事終われりとしておられては、これはたいへん迷惑でございます。これはあくまでも当面の改正でございまして、根本的には、冒頭に申し上げましたように、公的施策住宅を一戸でも多くつくり、そして一人でも多くの国民に家を与えるという政策を遂行していただかないと困るわけであります。  その点につきまして私どもがもう一つ衷心から国会の皆さま方にお願いしたいのは、土地問題の解決でございます。先ほどからもるる申し上げておりますが、住宅問題を解決するのに、土地政策を何ら樹立せずに何とか住宅確保しようということは、もうこれから不可能なんです。ところが、わが国の土地政策は列国に比べて最も立ちおくれております。今国会にかろうじて——たいした役にも立たないと私ども思うのですが、地価公示法案というものが出されております。しかし、これすらもなお異論があるというようなことを伺っておりますが、このようなことでは、日本の住宅問題をただ住宅問題として切り離して幾ら論議しても、私は解決の道はないと思う。したがって、土地に対する私権の制限ということは、もう百万言を費やしておりますが、皆さま方が所属せられております自民党でも、都市政策大綱の中で、あるいは社会党でも公明党でも、それぞれりっぱな都市政策を出しております、その中でみんな土地問題にはりっぱなことをいっておりますが、それが一向実行に移されない。私はここに住宅問題が難航している最も大きなガンがあると思う。したがって、非常に申しわけない発言でございますけれども、政府がそれだけの意欲や熱意がないのならば、議員立法で、政党が、あるいは皆さんが一日も早くこの土地政策というものをもっと強化して、その上に立脚した住宅の大量建設というところにこの出発点を返していただきたい。  そういうことで、個々の住宅法の改正とか、こういうようなものをいじっていたって私はしかたがないと思う。それはいじらぬよりもいいのですけれども、もう一つ根本の立場に立って抜本的な土地対策、住宅政策というものをひとつ樹立していただきたい。それは政府には制約があるかもしれませんので、議員立法でちっとも差しつかえない。そういうことにこそ、ひとつ皆さんの偉大なる力を大いに発揮していただきたい、こういうことをお願いしまして、非常に雑然とした話になりましたけれども、私の意見を終わらしていただきます。  どうも失言の点も多々あったと思いますが、御了承願いたいと思います。
  18. 始関伊平

    始関委員長 どうもありがとうございました。以上で公述人の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  19. 始関伊平

    始関委員長 これから公述人に対する質疑に入ります。質疑の通告がありますので、順次これを許します。田村良平君。
  20. 田村良平

    ○田村(良)委員 本日は公営住宅の問題で各お立場からの公述人の方々の御意見を拝聴しまして、賛否それぞれたいへん参考になりまして、まずもってお礼申し上げます。  だんだんの御意見がありますが、大体、東京というところは人口が多過ぎるわけですね。だから、土地は何ぼでもウナギ登りに上がるし、買い手と売り手でございますから、どんどん上がっています。地価対策も、いまお話しのようにいろいろ出ていますが、基本的には、人口をもっと分散しなければいけない。みんな東京に集まって、みんなそこで衣食住を完全にやろうとなると、たいへんなことでございます。そういうことから、そもそも大都市に片寄っている現在の行政、産業、経済、文化、そういったものは政治の上で分散をしなければならない。それが基本的な問題ではなかろうか。私の住んでいるところを全部よくしろといわれてもなかなかむずかしい問題でありますから、意見が賛否それぞれ出たわけであります。そういうことを考えながらお話を承りまして、時間もありませんし、また、あと各党の方から御質問がありますので、私は一、二点、ちょっと中村さんにお伺いします。  ただいまあなたのおられます協会の会員の皆さんが住んでおられます家賃の状態とか、その他、借家につきましてのいろいろの条件、どういうような中でお住まいをされておるかということと、あわせまして、今度の公営住宅につきましては、ただいまもだんだん出ましたが、高額の所得者が出ていって低額の所得者に明けていただく、こういうねらいがあるわけです。ですから、皆さん方会員さんの現在のお住まいになっているような条件とか、あるいは家賃現状と、高額所得者ができるだけひとつ低額所得者にお譲り願うというような——現在の公営住宅に住んでおられますそういった意味の所得のアンバランス、そういったことについて中村さんのほうではどういうような御見解をお持ちか、これをまず最初に一点御答弁いただきまして、それからまたあと一点だけお伺いしたいと思いますが、まずこの点をお伺いします。
  21. 中村武志

    中村(武)公述人 お答えを申します。  先ほどの公述の際に、民間アパートに住んでいる人たちの苦しさも触れましたが、大体、都内でございますと、入るときには、礼金が二カ月分と、二年ごとの更新に一カ月分の更新料、それから不動産業者にお礼を一カ月。都内ですと、一畳当たり最低大体千五百円。千五百円というところはなかなかそう簡単に見つかりません。しかも、一畳が高いものでございますから、私どもの協会の低所得者、独身のサラリーマンは、三畳間をさがすわけなんです。三畳と申しますと、もはや生活の場ではないといえると思います。幾ら独身でも、三畳間というのは生活の場ではございません。最低四畳半は必要でございますけれども、四畳半ですと、収入の三分の一あるいは半分になる場合もございます。収入の二分の一を住宅費に取られて、人間らしい生活は絶対にできないわけでございます。ですから、私どもとしましては、最近、減税の問題、サラリーマン税制あるいは減税の運動なども起こってまいっておりますが、減税ということもさることながら、むしろ住宅を、私ども四畳半あるいは六畳というものを借りる場合に、せめて四畳半なら三千円、六畳なら五千円から六千円というくらいな部屋を都内に借りられるようにしていただければ、たいへんありがたいわけでございます。そうしてこれがまず困りますことは、礼金を二カ月分大家さんに取られるものですから、大家さんのほうでは、一たん間借り人が自分のアパートに入りますと、今度は出ていってもらうことが大家さんとしてはありがたいわけです。つまり一カ月入っただけで二カ月分の礼金を払う、一カ月でその人が出れば、次の月また二カ月分の礼金がもらえるわけでございまして、つまり一カ月の家賃で三カ月、一カ月入っていただいて三カ月の収入になるというような状態でございまして、たいへんいやがらせが多いわけでございます。これは邪推ではございませんので、それを計画的にしているというような大家さんも中にはいるやに思われるのでございます。ですから、私として、先ほど申し忘れましたが、どうか民間アパートの経営者にも低利な融資をしていただいて、そうしていまのような木造のちゃちなアパートでなく、もっと高層で堅牢な——ベニヤ板の壁というような、こちらの部屋で新聞紙を開く音が隣の部屋に筒抜けに聞えるようなそういう間仕切りでない、ちゃんとした、プライバシーが守られるようなアパートを政府の資金によって建てる、そうしてそのかわり家賃を規制していただきたい。もう野放しの状態でございます。大家さんが、ある日、食事をしながら、どうもちょっと自分のうちの家賃は安いようだ、あしたから千円上げようと思ったときは、家賃を上げられるわけでございます。どうぞひとつ政府でも融資をする、しかし、そのかわり家賃を押える。地代家賃統制令を——二十五年七月十一日か以後のものに対しては野放しになっておりますが、むしろ、この地代家賃統制令を延長して、現代に合った地代家賃統制令を設けていただきたいと私は思うのでございます。  お答えいたします。
  22. 田村良平

    ○田村(良)委員 それでは次に、そういう民間の一般の借家の状態についてたいへん御苦労されていますが、われわれもいろんなことを頼まれた際に経験をするわけで、畳一枚が千五百円も二千円もするということは、実際はたいへんなことであります。そこで公営住宅を何とかという問題になるわけでして、あなた方いまの会員の方々も、そういうたいへん苦しい中で、何とか安らかな住宅がほしい、当然の御希望であろうと思います。したがって、便利な場所で公営住宅をうんとたくさん急ピッチでつくらなければならぬということになりますが、御承知のように、市街地は、いま全くめちゃくちゃに乱雑な市街地であります。しかも既存の非常に古い建物がありますから、こういったぼろ家、老朽な建築物を改新築して新しい住宅をつくる、それに対しまして、だんだんに御意見もありますように、いろいろむずかしい問題点もあります。でありますが、ただいまのこの住宅法案は、入居者の保障とか、あるいは仮住まいの提供、さらには移転料の支払い、いろいろこまかい配慮もなされております。しかも現在、その工事の施行にあたりましては、大部分の事業主体が新住宅家賃一定期間は減額する、こういうような——完全に満足ではないにしても、サービスをして、ひとつ建てかえ制度で御協力願わなければいかぬ、こういう立場法案趣旨でありますが、こういった建てかえ制度につきましても、ただいまの民間の借家におられる皆さん方現状から、今次法案制度そのものについてどういう御意見をお持ちか、参考にひとつお聞かせ願いたいと思います。
  23. 中村武志

    中村(武)公述人 先ほど朝日新聞の浜崎さんが、政府立場、また、現状入っておられる公営住宅建てかえあるいは収入が高くなって出ていくというようなことについて、両方の立場に立って完全ないいお話があったのですが、私としては、現在高い家賃を払って民間アパートで苦しんでいる人たちから見ますと、たいへん幸福だ、しあわせだと思うのでございます。聞くところによりますと、現在でも百円くらいな公営住宅に入っておられる方がいるやに承りますし、また戸山ハイツの場合ですと、千四百五十円でございますか、それに少し割り増しがついて約二千円の一戸建てに入っておられる。これは民間のアパートでは一畳分に当たるのでございます。しかも、いままで終戦後から二十年そういう安い住宅に入っておられただけでもしあわせだと思うのでございます。その間、ほかの間借り人は、何千円という数倍の民間アパートで、しかも粗雑な建物、設備、その中で苦労してまいったのでございまして、どうか、いままででもたいへんしあわせだった、これからは周囲の苦労している人たちと多少一緒に苦労をしようじゃないかというようなお気持ちをぜひ抱いていただきたい。せっかく既得されたその権利を、私ども仲間が寄ってたかってたたきこわすというような、そういう気持ちは毛頭ございません。どうぞひとつ、東京都の七十万、八十万の民間アパートに住んでいる人たちの中から——それは少ない数だとおっしゃった方もございますけれども、一人でも二人でも楽にしてやっていただきたいと思います。戸山ハイツなんか、その他の場合でも、建てかえで大体三倍になるというふうに聞いておりますけれども、これはもうたいへんな数でございます。千戸が三千戸になれば、二千世帯が助かるわけでございます。どうぞひとつお願いします。  これは、さっきも浜崎さんも申し上げましたし、私も申し上げたのですが、最後はやはり抜本的な土地政策を実行なさっていただきたいということ、これは議員立法というような形でぜひお願いしたいのです。先ほども申し上げましたけれども、民社党から出ている、地価を凍結してそうして何とか土地政策を解決する、こういうことを——これはもう一例でございまして、どういう方法でもけっこうでございます。私どもしろうとにはわかりませんので、皆さん専門家が研究に研究を重ねて、そうしてこれはいまやもう実行する以外にはございません。もう考える時期ではないのでございます。一日も早く実行するということが当面の問題でございます。  それともう一つここでお願いしたいことは、各省大臣あるいは政府は、それぞれ審議会とかいうもので、有識者を集めていろいろいいお考えをお聞きになっているようでございます。その審議会が答申したり勧告したりした記事が新聞に出ますと、私どもは錯覚を起こしまして、それではこれがすぐ実行に移るのだなと、非常に期待をし、安心をするのでございますけれども、さて政府ではそれのごく一小部分をお取り上げになるだけのようでございまして、どうかひとつ、りっぱな方々を集めてせっかく御意見を聴取されたわけでございますので、実行可能なことは断固としておやりになっていただきたい。先ほどどなたか言っておられましたが、私どもはたいへんおとなしいのでございます。ゲバ棒もふるいませんし、私など年はとってまいりまして、もうとても大きい声も出せませんけれども、しかし、おとなしい私ども国民が一たび怒りを持ったときには、たいへんなことになるのでございます。どうぞひとつ、たいへんなことにならない前に、おとなしい多数の人たちのおしあわせを、先手先手を打ってお考えいただき、実行いただきたいと思うのでございます。  失礼しました。
  24. 田村良平

    ○田村(良)委員 それでは、制限時間がまいりましたから私の質疑はこれで終わりますが、公述人皆さん方の御意見は、ただいま申し上げましたように賛否それぞれございますが、また、われわれ建設委員としては、委員会立場としてこれから審議を進めてまいりたいと思います。  ありがとうございました。
  25. 始関伊平

  26. 島上善五郎

    ○島上委員 各公述人からは貴重な御意見をお聞かせ願いまして、ほんとうにありがたいと思っております。時間の制約がありますので、ほんの二、三の点についてお伺いします。  まず、用地費の打ち切り問題ですが、私は、公営住宅法実施されましてからたしか十八年だと思いますが、十八年間、政府は法律によって定められて用地費建築費を含めて二分の一ないし三分の二の補助をしてきた。それを、宅地の価格が急増をしておる今日、それから今後またさらに急増するであろうと予想される今日、宅地費の補助を打ち切るということは、政府住宅政策のもうたいへんな大転換ではないか、私、そう思います。その大転換が、現状に合ったように、前向きに進んだ意味の転換ではなくて、これは後退である。いまの法律のたてまえからいえば当然政府が負うべき財政的な負担責任地方公共団体に転嫁するものである、こう解釈せざるを得ないわけです。  そこで私は、この点については、大島さんと、もう一人は、久留米の住宅に住んでいらっしゃる佐竹さんにお伺いしますが、地方公共団体にさしあたって家賃にはね返るような形で負担をかけないように、三%ないし二%の家賃補助という対策を考えられておりまするが、終局的には借金ですから返さなければなりませんし、これが短年毎年継続されるとしますれば、雪だるま式にふえていく。こういうことになりますれば、終局的には地方公共団体に大きな負担になる。それが建設意欲の減退という形であらわれるのではないかということを心配します。もうすでに、せんだって三月二十日の朝日新聞に出ておりましたが、四十四年度政府の割り当て戸数に対して地方公共団体ではしぶる傾向が出てきておる、この割り当て戸数に達しないのではないかということをかなり具体的に書いております。そういう傾向がだんだんあらわれてきはしないだろうかということ、それからやがては家賃にもはね返っていくのではないか、いまさしあたってここ一年二年ははね返ると申しませんが、やがてはそういう結果を生みはしないか。それからまた、事業主体が負うべき環境の整備とか家屋の補修とか、そういう点にまで影響が及んでいくのではないかという心配が持たれるのです。その点、大島さんと佐竹さんから御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  27. 大島靖

    大島公述人 用地費補助制度融資制度に切りかえることが地方財政の圧迫になり、ひいては住宅建設意欲を阻害するのではないかという御質問でございます。私は、地方財政の圧迫にはならないと考えております。この補助制度融資制度に切りかえることが、地方財政に得になるか損になるのかという問題になりますと、これは非常にむずかしい問題だろうと思います。これは補助の程度にもよりましょうし、融資の量にもよりましょうし、融資の条件にも——非常にむずかしい将来にわたる計算でございます。また、物価の上昇程度にもよりましょうし、非常にむずかしい問題でございます。私ども、現実に一方におきまして公営住宅事業主体として建設の衝に当たり、また一方、地方財政の運営を現実にやっております者の実感からいたしますと、毎年予算編成の際に、公営住宅を何戸建てるかということが問題になるわけでございます。その際の折衝の一番の要点は、公営住宅建設のために、補助金と起債を差し引いて、現実にその年の租税収入一般財源をどれだけ持ち出さなければならぬかということが、財政当局の一番の関心事なんでございます。その年の租税収入一般財源というものを人件費に充て、あるいは教育費に充て、衛生費に充て、消防費に充て、この中から住宅にどれだけ回すかということが問題点になるわけなんでございます。むしろ、地方財政に長期的にどれだけ利益になるかということよりも、その単年度一般財源の配分の問題が、実は実際問題としては住宅建設の量を規定するものでございます。  それから第二に、将来いいのか悪いのか、なかなか問題でございましょうけれども、私ども、現在の地方財政の窮状というものは、これが最低のものではないかと思うのであります。現在一般的には、地方財政は好転しておるというふうにもいわれておりますけれども、膨大な建設事業をかかえております都市、ことに大都市におきましては、大阪市さえ地方交付税をちょうだいしているという、まことにおかしな——ありがたいのですが、おかしな状況でございまして、それでなおかつ赤字の状況を続けておるのでございます。したがって、長期的に将来どうなるかというよりも、現在何とかして百戸でも二百戸でも公営住宅建設を多くしたいというために、現在の財政のやりくり上楽であるということが、私は住宅建設を非常に大きく促進するのじゃないかと思うのであります。  それからさらに、そうは申しましても、その標準単価と実際単価の食い違いという問題、これはやはり予算制度をとります点からいいますと、どうしてもそうならざるを得ないと思うのでありますが、その超過負担の問題もございますし、それから、一体融資をどの程度見てもらうのかという問題もあるのですが、補助金でございますと、二分の一なら二分の一、三分の二なら三分の二、この補助率を変えるということは、実際問題としてなかなかむずかしい。ただ、融資になりますと、その融資の量というものは、何とかして皆さんの御尽力によりましてだんだん融資の量をふやしてもらうということはまた可能性がある。すなわち、補助金制度の固定的な形よりも、融資のほうがむしろ弾力的になる。したがって、その単年度一般財源を持ち出す苦しさというものは、この融資制度に切りかえることによってより軽減されるのじゃないか、私、実際の衝に当たっております実感といたしましては、そういう感じがいたしまして、したがって、私は、融資制度に切りかえることによってむしろ住宅建設はやりよくなるんじゃないかという感じがいたします。もちろん、この制度の実際の実施のやり方いかんにもよります。ことに融資の量が問題になることは、もちろんでございますが、制度としては、私そういう意味合いにおいて賛成申し上げる次第でございます。
  28. 佐竹弘

    佐竹公述人 大島さんのほうから、これは実際に建設に当たる者として融資のほうがやりやすい、こういうお話だったわけですが、それは、大島さんの言われるように、当面一般会計から持ち出すわけじゃないからいいのだというが、しかし、これは将来にわたる借金政策であるし、先ほど女の方がおっしゃったように、借金政策を続けていくわけであって、それは返していかなくちゃならないものであるという点では、やはり地方自治体事業主体の苦しさというものは変わらないのじゃないか。むしろ、補助そのものがないわけですから、かえって苦しくなるのじゃないか、こういうふうに思うわけです。  それと、もう一つ一番大きな問題は、その融資にあたります標準価額の設定そのものにあるんじゃないか、こういうふうに思うわけです。融資にかえるのであれば、標準価額というものが、いつでも、その土地取得に要する費用でなくて、取得に要した費用でなくてはならないんじゃないか。土地を取得するに要する費用ということになりますと、あらかじめきまってしまう。その辺につきまして、政府のほうでは、融資基本のアップ率あたりを一六・五%ぐらい見ておるというふうに聞いておりますけれども、実際に四十一年から四十二年に対して土地の値上がりしたものは、六大都市の場合ですと大体三〇ないし四〇%です。これはもっと具体的に申し上げますと、四十一年度東京土地の値上がりというのは、四一・九%値上がりしております。そして四十二年度土地の値上がりは三九・九%である。つまり三〇%ないし四〇%土地そのものが毎年値上がりしていくわけですから、融資基本のアップ基準が一六・五%ぐらいに押えられてしまうのであれば、超過負担というものはどんどん上がっていく。やはりこの辺においても土地政策そのものが一番問題になってくるのじゃないか。そして標準価額の設定というものも、結局、用地そのものの取得に要した費用、こういうふうに変えていくのならば、自治体そのもの、事業主体そのものもずいぶん助かるのだろうとは思うのです。しかし、それにしてもなおかつそれは借金政策である。地方自治体は当面建てやすくなるという大島さんのお話ですが、当面だけで済む問題でもありませんし、また、当面いいから、あと次年度あるいは何年後か先に持ち出していくのならばいまよりもやりやすいというのは、基本的にはそういうことはあるかもしれませんが、しかし、それは一方、たいへん無責任なお話ではないか、かように思うわけです。  以上です。
  29. 島上善五郎

    ○島上委員 私たちは、いままで政府が法律どおりに実行しなかった、そして超過負担地方公共団体にさせてたいへん御迷惑をかけておるということこそ政府が反省すべきであって、これは物価が今日のように上昇する時代には、予算制度をとる以上、ある程度やむを得ぬという御意見もありました。それはそうかもしれませんけれども、たとえば、ことしなどでももう去年の標準価額に何%増ということで、その去年の標準価額が実態とはかなり離れておるわけですね。もうことしの標準価額はすでに物価の上昇を計算からはずしても実態に合わないものになっている。私たち社会党では、むしろ一種、二種をはずして、政府が実態に合うように三分の二の国庫補助をすべきである、そうしなければ、地方公共団体建て渋るという傾向を、積極的に建てようという意欲に転換することは困難であろう、こういうように考えておりますが、これはいま伺いましたからよろしいです。  次に、これは浜崎さんと、それからもう一人、自治会の岡さんにお願いしたいと思いますが、高額所得者の問題です。浜崎さんは、二百万円では高い、もっと下げてもいいんじゃないか、こういう御意見です。二百万円というのは、現在入居している人に対する経過措置であって、法律は百五十六万円か七万円です。しかも、四人家族の場合、奥さんと御主人は全額計算する。もしむすこさんが二人働いておれば、これも三分の二合算するという方式、私はこの三分二合算する方式自体に問題があると思うのです。もう遠からず結婚して新しい世帯を持つ人々ですから、そういう人々の収入を計算するということ。  それから、これは入居者の自治会の方に伺いますが、私どもの判断によると、高校を卒業して就職した人は、お嫁に行く前に、あるいはむすこさんが結婚する前に、かりに三万円取っても、家庭に二万円入れるということはとうてい考えられないことです。ほとんど入れない人のほうが多いんじゃないかと思うのです。そういう実態なのに三分の二計算するということ自体がおかしいし、それから、一たん明け渡したら、もし収入が減った場合にどうする、こういう質問をしたら、これはもう一ぺん応募する資格がある、こういうことをおっしゃいましたけれども、五十倍もの競争率の激しいところへ、資格があってもこれは宝くじでも当てるような幸運に恵まれなければとても入れませんから、救済策というのは何にもないわけです。むすこさんが働くようになれば、御主人は普通の会社でしたら、あるいは役所でもそうですが、定年が近くなっている。そういう商売ではなくて、ほかの商売でかなり固定的に永久的に収入が高いという者の場合と、そうでない場合とがあると思うのです。いま言ったようなそういう点。  それからもう一つ問題なのは、収入調査が一体的確にできるかどうか。これはつとめ人ならばできます。いま私があげたような例の場合にはできます。しかし、自由業のような方もかなりいらっしゃる。特にマイカーを持っている人などは自由業の人が多い。いまの法律では、収入調査の的確ということは、これは入居者の協力なしにはできないのです。今度の改正にも実は収入調査を的確にするための改正を当初は考えておりましたけれども、これは法的に非常にむずかしいというので断念したわけですが、それほど、収入調査を的確にするということはむずかしい。不的確な収入調査の上に立って、一方は強制立ちのきだ、こういうことになれば、それこそ非常に不公平な扱いが生ずるということになりはしないかと思うのです。そういう問題。  それから、あなたがおっしゃったとおり、現在努力義務というものがあります。私は、この努力義務の条項が全く実効があがらないものか、ある程度働きをなしているかということについては即断はできませんけれども、たとえば、去年東京都では四千戸も自発的に転出していっておるのです。十二万戸のうち四千戸、そうするとかなり高い率です。全国の百四万戸に対して四千六百一戸という数字が先ほど出ましたが、この東京都の四千戸の中には——実態を都のほうに問い合わせておりますが、まだはっきりお答えいただきませんけれども、かなり収入が多くなって、マイホームを建てるとか、もっとましな住宅へ引っ越すとかいう人がかなり多い率を占めているのではないかと思うのです。そうすると、努力義務という条項がある程度働きをしておるとみなしてもよいわけです。私は、努力義務という現在の条項でも、運用のいかんによっては事が足りるのではないかということが考えられるのと、もう一つは、強制立ちのきという法律が明文化しますると、いま直ちに適用される四千六百人の不安はもちろんですけれども、そうでない人たち、きょうは人の身、やがてはわが身に振りかかるという居住の不安というものを、収入が今後上がっていく可能性のある人々すべてに与えることになりはしないか。公営住宅は、健康で文化的な生活を営む権利のある国民に対して、安定した住居を保障するというのが本来の趣旨ではなかろうか。そういう意味からいって、絶えず不安を抱きながら住んでいなければならぬということは、その趣旨に反しはしないか、こういう点を心配するわけです。いかがでしょう、そういう点、お二人にひとつ御意見を……。
  30. 浜崎則雄

    浜崎公述人 お答えいたします。  私も実は住宅審議会の委員をしておりまして、いま島上さんが言われたようなこともずいぶん心配いたしまして、そのつどただしたこともございます。確かにあなたのおっしゃるような矛盾とかか、いろいろなものはございます。ただ、私どもが言いたいことは、そういう矛盾も個々にはございますでしょう、先ほど言いましたように、私はその個々の矛盾よりも、もうちょっと住宅に入られない方々の苦しさというものと両方てんびんで比べますと、まだこちらのほうが——いろいろ不安やあれはございましょうけれども、もっとこちらの方のほうがこのことを考えてやらなければいかぬという、その大前提に立ってものを申しているわけです。したがって、あなたのおっしゃったようなこと、合算のこととか、あるいは定年が来ることとか、当然私どもは議論して、いろいろ考えたそのあげくの果ての結論が、住宅に入られないで待機しているこっちの人たちにウエートを置くべきだ、そういう結論を出して踏み切ったわけであります。もちろん、あなたのおっしゃったような面で不安を感じている方とか、いろいろな問題点は確かにございます。しかし、そういう個々の問題を一々取り上げておりますと、それじゃいつまでたったってこのままにしておかなければならぬ。そうするとこっちの人の不安はどうするか。あなたは社会党の大長老であられるので、そういうこちらで困っておられる方のこともお考えになると同時に、もっとこちらの不特定多数の方のお立場も少々御考慮いただければ、ある程度の矛盾あるいは不安はがまんしていただけるんじゃないか、私はこういう判断です。私がもしも——これはちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、社会党の議員でありましたならば、こっちのほうの方をもう少し重視する政策のほうがほんとうじゃないかという気がいたします。  非常に失礼な言い分でございましたけれども、以上が私の考えです。
  31. 岡巧

    岡公述人 お答えいたします。  私は、この委員会の中で皆さん方がおっしゃっている高額所得という概念につきまして、よくわからないわけであります。法案の中身によりますと、一般の公募の人は百五十万円、経過措置として二百万、こういうことになっておりますが、一体高額所得というのは何を基準にそういう概念があるのか。この問題はさておきまして、いずれにしましても、家族合算の現状からいきまして、たとえば百五十万という所得が、合算の実態から見て高額であるかどうかという、こういう問題にあろうかと思います。現在の消費物価の上昇率が、政府発表で一二・九%といわれております。それに沿って、名目賃金は、下降線をたどりつつも上昇しておるのが現状であろうと思います。この法案によりますと、五年たつと出ていくという義務になるわけでありますが、その時点まで持ちこたえられるかどうか、こういう問題は重大な内容を含んでいるであろう、かように思うわけであります。  昨年十一月二十五日の住宅宅地審議会の答申の中にもありましたように、家族合算の問題につきましては、全部もしくは一部を消すべきである、加算すべきではない、こういうふうな答申があったと記憶しております。なおかつ、東京都議会におきましても、昨年の十二月、この内容が不明確ではないかというふうな意味を含めまして、自民党から共産党まで各党一致して、全会一致で家族合算全廃を議決した意見書を国に提出しておるという現状であります。その裏づけは一体何であるかといいますと、私の調査によりますと、二百万円以上のいわゆる高額所得者といわれる方は、東京都の段階では二千百五十九名あると国に報告されてあるはずであります。その中身であります。私たちの承知している範囲におきましては、なるほど、一部マスコミが書いておるように、車を持って団地に入ってくる人、あるいは兄弟で買っている人、あるいはポンコツの中古車を買っている人は確かにおります。しかしながら、これは決して高額所得者ではないと思います。現在、車は、二万円から三万円あれば車が買える段階になっております。そういう単なる皮相な見方で高額所得者がいるのだというふうなことは、いささかおかしいのではないか、現実に団地に住む人間として、かように思うわけであります。東京都のいま申し上げた二千百五十九名の二百万円以上の所得者の中には、こういう実情が内蔵されております。東京都は、三十五年、住宅改良地区の指定をして、そして改良住宅建てております。その建てかえの段階におきまして、いわゆるその網にかかった商店の方々を、併用住宅という形で団地の中に収容しておるわけであります。これは御承知のように事業所得という形であらわれてきます。これが四百五十六戸あると思います。三十五年以降今日までの実態であります。この数字がもうすでに入っておる。しかも今度の法案によって、この人たちは改良住宅法の適用を受けるわけでありますから、明け渡し努力義務は残るけれども、追い出しにはならない、こういうふうに、この法律改正案が持つ性格は、いわゆる行政不均衡である。もしこの人たちも同じように公営団地におるのであれば、皆さん方、いわゆる賛成なさる方がおっしゃるような、同じ法律の網をくぐらなければ不適当ではないか、かように考えるわけであります。私は、いま島上議員がお尋ねになったように、家族合算はぜひとも全廃していただいて、いわゆる審議会の答申にもあるわけでありますから、そういう実態をよく把握して、高額所得はその内容はどういうものであるか、委員会の審査の中で慎重審議され、東京都の実態なども調査なされてきめていただきたい、かように思います。  以上であります。
  32. 島上善五郎

    ○島上委員 それでは、最後にもう一問だけ簡単に伺いますが、これは松川さんと山口さんにお伺いします。建てかえの際の問題です。  私どもは、今日の宅地事情で、木造平家が都市中心部にあるというような事情等も考えて、建てかえそのものは必要だと思います。この建てかえそのものを否定するという考えはありません。また、入居者の方々も、単に自分の利益だけに拘泥して目先のことだけ考えて建てかえを否定するという、そういう人もあるいは中にはいるかもしれませんけれども、必ずしもそうではないのではないか。ただ、今度の法律改正は、御承知のように、三カ月の猶予期間で強制立ちのき、こうなっている。三カ月の猶予期間では、建てかえに伴うたとえば仮移転、再入居、いろいろ希望やら条件を話し合うことができない、話し合う余裕がないと思うのです。話し合う余裕がなくて三カ月強制立ちのきということになると、一方的な押しつけになりかねないのです。そこが建てかえの際は特に問題だと思うのです。住めば都ということばもあるように、長年住んでおれば、子供さんの通学の関係もあるし、御主人の通勤の関係もちろんありますし、私ども都営住宅を回ってみましても、ずいぶん手入れをして、植木を植えたり、住みいいようにしております。そういう入居者のことを考えずに一方的な都合だけを考えた法律と思わざるを得ないわけです。十分に話し合いして、話し合いがまとまらぬ場合にどうかということももちろんありますけれども、少なくとも、三カ月ではなくて、もっと長期に——建てかえる計画を立てる際には、二年も三年も前から計画を立てて、建設大臣の認可を得てそれで着手するわけですから、もっとかなり前から話し合いをする、こういう行政的な措置が必要ではなかろうか、こう思いますが、入居者立場あるいは主婦の立場からしてこの三カ月の期間があまり短過ぎるとしたら、どのくらいの期間が必要であるか、どういう措置が必要であるかという点、お気づきでしたらお答えいただきたいと思います。
  33. 松川笑子

    松川公述人 いまの質問ですが、私は一主婦ですので、あまりむずかしいことはわかりませんが、いまおっしゃられたとおりに、三カ月間で強制的に受諾させることは無理だと思います。  そのことよりも、もう一つお願いしたいことは、建てかえた場合の家賃ですが、先ほども私ここで読み上げましたけれども、当然、国民としていまの物価高を考えますと、自分だけは公営住宅に入っているんだから、昔の驚くような安い家賃をそのままやってくれとか、そういったような利己的な考えは許されないんじゃないかと思います。しかしながら、やはりそういう生活の中で、安い家賃で生計を立てておりますと、じゃ新しくなったから、いまの世間並みに急激に——たとえば世間の何分の一かは削減したにしても、きれいになったのだから、これだけ上げなさいとぽんと言われては、台所を預かる主婦としてはなかなかそれに応じられないことがたくさんございます。そこでいまおっしゃいましたように、相談する期間をなるべく長く持っていただきたい。それともう一つ、家賃の値上げについては、据え置きをできるだけ長くしていただきたい。それから、先ほど申し上げました。だんだん上げていくという家賃の値上がりの方法、そこは居住者とよく相談なさって、みんなが納得できる、みんなが生活していける、そういう段階においてやっていただきたいと思います。もちろん、そうなれば政府のほうもたくさんのお金がかかることと思いますが、それは私は政治のやり方で、もう少し居住者にプラスになるような方法が、今回の改正案じゃなくて、ある、そのように思っておりますが……。
  34. 山口二郎

    山口公述人 いまの建てかえ問題ですが、その点につきましては、私たちは、合理的な土地の利用ということについてはいま島上先生がおっしゃったとおりでございますが、同時に、わずか三カ月の猶予期間で建てかえを行なう——明け渡し努力義務の場合は六カ月ありますね。家賃が変わるとかなんとかいうと、生活が非常に激変するわけです。それですから、私たちの基本的な立場としては、徹底的な話し合いの中でやっていただきたい、その同意を得た時点においてそれをやってもらいたいということが、やはり基本的な立場だろうというわけでございます。それは政府でも居住者とほんとうに話し合う姿勢というものを持っておれば、何もこのところで話し合いができないということはない、そのように考えております。建てかえ問題につきましてはそういうことでございます。  私たちはこの建てかえ問題でいろいろなことをやっておりますが、同時に私が考えますのは、われわれのこの立場居住者だけの立場だろうかということでございます。いまやっておることにつきましては、たとえば強制建てかえの問題にしましても、一般の借地借家の人たちも私たちと一緒に運動しているわけです。これは借地借家といいましても、東京間借人協会も借地借家でございますけれども、全国の借地借家人組合も一般の住宅でございます。そしてそういう人たちが私たちと一緒にこの問題を取り上げているわけでございます。ですから、浜崎さん非常に御心配になっておりますが、決して一般の住宅とわれわれの運動は遊離してないということをほんとうに頭に入れていただきたいというように考えております。
  35. 始関伊平

    始関委員長 北側義一君。
  36. 北側義一

    ○北側委員 本日は公述人の皆さんにおかれてはお忙しいところ貴重な御意見をいただきまして、非常に参考にさせていただいたことをお礼申し上げます。  私は、いま島上さんが聞きましたので、一、二点について、大阪市の助役をやっていらっしゃる大島さんにちょっとお聞きしたいのですが、まず今度の融資制度、これは国庫補助がいままで一種で二分の一、二種で三分の二、これはもちろん超過負担がありまして、六割か八割近くは超過負担であった、このようにお聞きしたわけです。そこで、私が一番心配することは、当初の間はいいと思うのです。融資制度があるので非常に楽ではないかと思うわけです。しかし、民間資金としては、三四%は約七年で償還期限がくるわけですね。そのほか、政府資金にしましても二十年から二十五年と、このようになるわけなんです。その際に、住宅難がこのままずっと進みますと、この期間にはたして解決されるかされないかと考えますと、これが解決していくには、いまのような建設戸数では非常にむずかしい。特に、先ほどからお話がありましたとおり、太平洋沿岸ベルト地帯、特に大都会、ここは非常に産業の集中に伴って住宅難がますます激しくなっております。この傾向はなかなか現状ではとまらない。そういう点を考えますと、その償還期限がきた場合に、地方公共団体の財政を非常に圧迫していくのではないかという心配がまず一点にあるのです。  第二点としては、大都会の場合は比較的いいわけなんですが、中小都市という場合にその建設意欲というものがこれで減退されるのではないか。たとえば、本年度は当初でありますが、来年度、再来年度、こうなっていく場合に、そのような傾向があらわれてくるおそれはないか。これが第二点なんです。  第三点として、実際の問題といたしましては、大阪市とか東京都、この辺は非常に用地確保がむずかしいと思うのです。周辺部でもずいぶん地価が上がっております。どうしてもやはり都心部へ帰ってこなければならぬ。そういう場合に、都心部に建設する公営住宅というものは、私は当然高層にしなければならないと思うのです。土地の高度利用の面から考えて、できたら十階とか十二階とか、これが一番望ましいと思うのです。その場合のいわゆる法定家賃基準というものはどうしても上がってまいります。その場合に、用地取得標準価額、これが実情に見合ったものでなければ、これは家賃に大きく加算されるんじゃないか、私はこのような心配を持っておるわけなんです。しかし、現状としては、大都会ではそう持っていかなければならない段階にあるんじゃないか、私はこのように判断しているわけですが、その点についてどんなものでしょうか。  この三点についてちょっと意見をお聞きしたいと思います。
  37. 大島靖

    大島公述人 公営住宅建設につきまして、先ほど島上議員からお話がございましたように、補助率もどんどん上げていただく、残りの地方負担分についても全額起債でみていただくというようなことがもし可能であれば、これはまことにけっこうなことなんでありますが、ただ、全般的な国家財政事情あるいは全国的な金融情勢、そういう点からいたしまして、なかなかむずかしい問題でもあろうかと思うわけなんであります。そういう前提に立ちまして、現実の問題として先ほど来の私の意見を申し上げておるわけなんでございますが、私が、先ほど、当面地方財政としてこのほうがやりよいと申し上げたのは、もちろん、融資というのは起債でございますから、後代にわたって元利償還をしなければいけない、そのことを忘れて、当面楽だからということで申し上げているわけではないのでありまして、私が申し上げました趣旨は、住宅といわず、都市建設事業というものは、本来単年度の租税収入をもって支弁すべきものではなくて、やはり後代に効果の残るものは後代の納税者がこれを年賦でそれぞれ負担していくというのが本来のあり方であろうと思う。その中で国庫補助をすべきものは国庫補助をしていただく、残りについてそうやっていく、すなわち、起債でもって都市建設事業というものはやっていくのが本来のあり方であろうと思うのです。現実の問題といたしましても、私は、一挙にいま単年度一般財源でもって支弁いたしますよりも、後年にわたって均等にこれを償還していくというほうが、財政的には楽であろうと思うわけであります。と申しますのは、現在、私どものような都市におきましては、各種の道路、下水、その他の建設事業が山積いたしておりまして、これが一応の整備がつきますれば、この建設事業に回るべきお金がかなり助かると思うのです。現在は、都市再開発と申しますか、過密対策の各種事業が一番山積しておる時期ではなかろうかと思うのであります。そういうときに単年度一般財源住宅に多くさくということは非常に困難で、むしろ後年度に年賦で回していくほうが、全般的な長期的な地方財政の運営としてはしかるべきではなかろうかという感じがいたすわけでございます。  なお、中小都市についてのお尋ねでございますが、この点、中小都市というのがどの程度か、問題でございましょうが、私ども以外のことについてお答え申し上げるのは、ちょっと越権のそしりを免れぬと思いますので、差し控えさしていただきたいと思います。  なお、たとえば大阪市のようなところにおきます住宅用地の取得は、仰せのとおり、現在非常な困難をきわめております。周辺部におきましても相当地価高騰がございますし、あき地も少ない。しかし、私どもいま考えておりますのは、現在の周辺部——逐次スプロール化の現象が進んでおりますが、現時点においてこの周辺部を大規模に再開発をすべき時期にきておると思うのであります。区画整理の手法を用いますなり、再開発の各種の手法を併用いたしまして再開発をして、土地を生み出してここに住宅建設していくことが一つ必要であろうと思います。しかし、なおかつ、仰せのとおり、中心部に高層住宅建設の必要があろうかと思うのであります。いま大阪で私どもが一番住宅用地として期待をいたしておりますのは、大工場が大阪の市内から新産都市へ移転していくあと地の利用の問題でございます。私どもの手元に買い取ってもらいたいと申し出のある金額を総計いたしますと、数百億円にのぼる申し出がございます。したがって、私は、こういう一万坪、二万坪という非常に大きな工場あと地を早急にいまの時点で買い取って、これを今後の住宅用地に充てるというととが一番大事なことではなかろうかと思います。そういった点で、私は用地取得に対する国家の融資、このことをほんとうにお願い申し上げたいと思います。いたずらに補助金をいただきたいと申し上げているわけではない。また、銀行もお金は貸してくれるわけでありますから、ただ起債の許可さえいただけばこのことが可能になるわけでございます。何とかして少しでも多くの公共空地を私どもに確保さしていただきまして、ここに一戸でも十戸でも百戸でもたくさんの住宅建てさしていただきたい、これが私どもの願いでございます。
  38. 北側義一

    ○北側委員 私が申し上げているのは、たとえば大工場のあと地なんか、都心部はどうしても用地が非常に高いのじゃないかと思うのです。その場合に、たとえば基準額が建設大臣によって定められる。そうすると、定められる用地取得費、これはその基準が非常に問題になるのじゃないか。いままではそれが問題になって超過負担になっておったわけですから、この際、それが実情に見合ったものでなければ、入居者に対してやはり非常に家賃負担になってくるわけですから、そういう点で心配するわけなんですね。そういう点の考えをお聞きしたわけなんです。
  39. 大島靖

    大島公述人 用地費標準価額についてでございますが、これは補助制度にいたしましても、融資の基本といたします価額にいたしましても、やはり制度としては標準価額というものは当然必要なことだろうと思うのであります。標準価額が実際価額と著しく懸隔が出てくるというところが問題であろうかと思うのであります。従来の補助制度としては相当な懸隔があったわけでございます。今回融資の制度に変わりまして、これがまたぞろいまお話しのようなことになりますれば、これは何のために制度を変えたかわからないのでありまして、仰せのとおり、私は、やはり融資の基礎としての標準価額については、できるだけ実際価額との差を縮めていただきたい、また、これは年次のおくれというものがございますし、それから毎年の地価高騰がございますので、その辺、追っつけるような形で何とかできるだけ差を縮めていただきたいとお願いを申し上げたいと思います。
  40. 北側義一

    ○北側委員 ありがとうございました。  では私はこれで終わります。
  41. 始関伊平

    始関委員長 他に公述人に対する質疑もないようでありますので、これにて公述人に対する質疑は終わりました。  公述人の方々には、本日は長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、本案審査に資するところ大なるものがありました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  以上をもちまして公聴会は終了いたしました。  これにて散会いたします。    午後一時四十三分散会