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1969-08-01 第61回国会 衆議院 建設委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年八月一日(金曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 始関 伊平君    理事 天野 光晴君 理事 大野  明君    理事 金丸  信君 理事 草野一郎平君    理事 田村 良平君 理事 井上 普方君    理事 佐野 憲治君 理事 吉田 之久君       伊藤宗一郎君    池田 清志君      稻村左近四郎君    丹羽喬四郎君       堀川 恭平君    森下 國雄君       山口 敏夫君    阿部 昭吾君       岡本 隆一君    金丸 徳重君       福岡 義登君    小川新一郎君       北側 義一君  出席国務大臣         建 設 大 臣 坪川 信三君  出席政府委員         建設政務次官  渡辺 栄一君         建設省計画局長 川島  博君         建設省河川局長 坂野 重信君         建設省道路局長 蓑輪健二郎君  委員外出席者         参  考  人         (日本道路公団         理事)     小野  裕君         参  考  人         (水資源開発公         団理事)    竹村 忠一君         参  考  人         (水資源開発公         団理事)    堀  直治君         専  門  員 曾田  忠君     ――――――――――――― 七月二十四日  委員小川新一郎辞任につき、その補欠として  大野潔君が議長指名委員に選任された。 同日  委員大野潔辞任につき、その補欠として小川  新一郎君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 七月二十三日  建設業法の一部を改正する法律案反対等に関す  る請願平林剛紹介)(第一〇九六八号)  同外一件(鈴木一紹介)(第一〇九九〇号)  同(加藤万吉紹介)(第一一一四四号)  建設省現場労働者生活保障に関する請願(勝  澤芳雄紹介)(第一一一四三号) 同月二十五日  建設業法の一部を改正する法律案反対等に関す  る請願依田圭五君紹介)(第一一三七八号)  同外三件(伊賀定盛紹介)(第一一三七九  号)  同外五件(大出俊紹介)(第一一三八〇号)  同外十八件(大柴滋夫紹介)(第一一三八一  号)  同外三件(加藤万吉紹介)(第一一三八二  号)  同(神近市子紹介)(第一一三八三号)  同外二件(高田富之紹介)(第一一三八四  号)  同外二十二件(只松祐治紹介)(第一一三八  五号)  同外三件(中嶋英夫紹介)(第一一三八六  号)  同(成田知巳紹介)(第一一三八七号)  同外二十一件(畑和紹介)(第一一三八八  号)  同(平岡忠次郎紹介)(第一一三八九号)  同外一件(平林剛紹介)(第一一三九〇号)  同外九件(帆足計紹介)(第一一三九一号)  同(武藤山治紹介)(第一一三九二号)  同外二件(山花秀雄紹介)(第一一三九三  号) 同月二十六日  建設業法の一部を改正する法律案反対等に関す  る請願外一件(伊賀定盛紹介)(第一一五〇  六号)  同外一件(岡本隆一紹介)(第一一五〇七  号)  同外六件(加藤清二紹介)(第一一五〇八  号)  同外九件(加藤万吉紹介)(第一一五〇九  号)  同外五件(勝間田清一紹介)(第一一五一〇  号)  同(木原実紹介)(第一一五一一号)  同外五件(佐藤觀次郎紹介)(第一一五一二  号)  同外八件(下平正一紹介)(第一一五一三  号)  同(只松祐治紹介)(第一一五一四号)  同(戸叶里子紹介)(第一一五一五号)  同外一件(中澤茂一紹介)(第一一五一六  号)  同外五件(長谷川正三紹介)(第一一五一七  号)  同外一件(広沢賢一紹介)(第一一五一八  号)  同外六件(平等文成紹介)(第一一五一九  号)  同外十七件(帆足計紹介)(第一一五二〇  号)  同(穗積七郎紹介)(第一一五二一号)  同外六件(山崎始男紹介)(第一一五二二  号)  同外十五件(山花秀雄紹介)(第一一五二三  号)  同(山本幸一紹介)(第一一五二四号)  同(和田耕作紹介)(第一一五九九号)  同外四件(平林剛者紹介)(第一一六〇〇号)  同(門司亮紹介)(第一一七九六号)  同(大出俊君糾介)(第一一七九七号)  同外十二件(曽祢益紹介)(第一一七九八  号) 同月二十八日  建設業法の一部を改正する法律案反対等に関す  る請願玉置一徳紹介)(第一二〇一八号)  同外一件(永末英一紹介)(第一二〇一九  号)  同(畑和紹介)(第一二〇二〇号)  同外一件(広瀬秀吉紹介)(第一二〇二一  号)  同(門司亮紹介)(第一二〇二二号)  同(山田耻目君紹介)(第一二〇二三号)  同外一件(神田大作紹介)(第一二一七七  号)  同(林百郎君紹介)(第一二一七八号)  同(松本善明紹介)(第一二一七九号)  同(渡辺惣蔵紹介)(第一二二七六号)  自転車道整備等に関する法律制定に関する  請願江田三郎紹介)(第一二一三九号)  宅地建物取引業信用確保に関する請願(田中  伊三次君外六名紹介)(第一二一七六号)  地方道整備事業費増額に関する請願(林百郎  君紹介)(第一二三八八号)  河川法施行法第五条の適用期間延長に関する請  願(林百郎君紹介)(第一二三八九号) 同月二十九日  建設業法の一部を改正する法律案反対等に関す  る請願外十二件(松本善明紹介)(第一二三  九三号)  放射第一二号線都市計画街路事業促進に関する  請願島上善五郎紹介)(第一二五七一号)  地方道整備事業費増額に関する請願井出一  太郎紹介)(第一二六二三号)  同(吉川久衛紹介)(第一二六二四号)  同(下平正一紹介)(第一二六二五号)  同(中澤茂一紹介)(第一二六二六号)  同(原茂紹介)(第一二六二七号)  同(平等文成紹介)(第一二六二八号)  河川法施行法第五条の適用期間延長に関する請  願(井出一太郎紹介)(第一二六二九号)  同(吉川久衛紹介)(第一二六三〇号)  同(下平正一紹介)(第一二六三一号)  同(中澤茂一紹介)(第一二六三二号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第一二六三三号)  同(原茂紹介)(第一二六三四号)  同(平等文成紹介)(第一二六三五号) 同月三十日  建設業法の一部を改正する法律案反対等に関す  る請願石橋政嗣君紹介)(第一二七六五号)  同(野間千代三君紹介)(第一二七六六号)  同外十七件(本島百合子紹介)(第一二七六  七号)  一級河川改良工事に要する費用の特則延長  に関する請願亀岡高夫君紹介)(第一二七七  五号)  高速道路三ツ沢線計画変更に関する請願(大竹  太郎紹介)(第一二七七六号)  地方道整備事業費増額に関する請願小川平  二君紹介)(第一二八一三号)  同(増田甲子七君紹介)(第一二八一四号)  同(小坂善太郎紹介)(第一二八一五号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第一二八一六号)  同(小沢貞孝紹介)(第一二八一七号)  河川法施行法第五条の適用期間延長に関する請  願(小川平二紹介)(第一二八一八号)  同(小沢貞孝紹介)(第一二八一九号)  同(小坂善太郎紹介)(第一二八二〇号)  同(増田甲子七君紹介)(第一二八二一号)  自転車道整備等に関する法律制定に関する  請願外五件(中尾栄一紹介)(第一二八三三  号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 七月二十九日  建設業法の一部を改正する法律案に関する陳情  書(  第七二三号)  対馬縦貫道路国道昇格に関する陳情書  (第七五二号)  瀬戸大橋架設に関する陳情書  (第七八五号)  シラス土壌対策に関する陳情書  (第  七八六号)  建設業法の一部を改正する法律案反対に関する  陳情書(第  七九五号)  明石・鳴門架橋促進に関する陳情書  (第七九八号)  播磨国道及び明姫幹線建設促進に関する陳情  書  (第七九九号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  建設業法の一部を改正する法律案内閣提出第  九六号)      ――――◇―――――
  2. 始関伊平

    始関委員長 これより会議を開きます。  内閣提出建設業法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  この際、おはかりいたします。  本案審査のため、本日、日本道路公団及び水資源開発公団から参考人の御出席を願い、意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 始関伊平

    始関委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  参考人の人選につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 始関伊平

    始関委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人からの意見聴取は、質疑応答形式で行ないたいと存じますので、さよう御了承願います。     ―――――――――――――
  5. 始関伊平

    始関委員長 質疑の通告がありますので、順次これを許します。草野一郎平君。
  6. 草野一郎平

    草野委員 建設業法改正案問題点とおぼしき数点に関してお尋ねをいたしたいと思います。  最初に、建設業の将来に対するところ見通しといいますか、そうしたものについて、大臣あるいは局長等から意見を聞きたいと思うのであります。  最近のわが国の経済成長――というよりも、むしろ全般的な躍進は、まことに飛躍的なものがあります。先般経済企画庁が昨年の国民総生産を発表いたしておりますが、それによれば、五十一兆九百二十億円だといわれております。しかもこの成長率は、実質成長率一四・四%であります。そうだといたしますと、一四・四%ということは、五年たてば二倍になるということであります。十年たてば四倍になるのであります。その国民総生産の中における建設投資というものは一体どの程度将来増額していくであろうか、躍進していくであろうか、その見通しを立ててかかることが、日本国土建設といいますか、経済再建といいますか、そういった基本的なものの考え方の背景をなすと私は考えるのであります。ことしの建設投資は大体十一兆数千億円になるであろう、少なくとも国民総生産の二〇%が建設投資になる、こういわれておるのであります。昭和三十五年の建設投資は二兆五千億でありますから、それが昭和四十四年に十一兆数千億になりますと、すでに十年間に四倍以上の躍進であります。今後一四・四%の国民総生産増加が年々見られるとなるならば、五年後に二倍になり、十年後に四倍になる。そうなったときに、十年後の日本建設投資は五十兆円をこすのでないか。五十兆円をこすということになりますと、そのときの建設業界あり方は一体どうなるであろうか、私はその点についてまずお聞きをいたしておきたい。  実はきょうはある程度の時間の制約を受けていますから、私も、一つ聞いて一つ答えてもらうということでなくて、相当まとめてしゃべりますから、要領よく最後にがちっと受けとめて言ってもらいたい。そういう質問形式をとりたいと思いますから御了承いただきたい。それが一つです。  次いで、建設投資がそれだけ行なわれるのでありますが、建設投資の中には、いわゆる民間企業投資政府その他関係機関公共投資とがあります。その比率は一体どれくらいがいいのであろうか。佐藤内閣経済社会発展計画によりますと、企業投資に対する公共投資比率は五五%が適当であろうといっておりますが、現在の公共投資はそれだけに達しておりません。政府にお調べがあるかどうかは存じませんが、どうでしょう。おそらく四二、三%くらいじゃないでしょうか。ここに問題がある。民間企業投資が非常な迫力をもって前進しておる、勃興する勢いをもって、むしろ日本民族膨張本能のような形において前進していくことに対して、公共投資が五五%程度が適当であろうというにもかかわらず、五五%に達しないどころか、四〇%前後しか出ておらないということは、そこに社会資本の大きな立ちおくれが出てくる。いわゆる交通の麻痺、公害の問題あるいは住宅不足、何から何まで、今日の政治的、社会的問題のすべてが、しぼってくれば、ここに根源があるはずであります。そこで、国民総生産増加の中において建設投資が十年後に五十兆円をこすであろうという中において、一体公共投資政府計画する投資がどれだけであらねばならないか、それに対する計画があるかどうか。おそらくないのじゃないですか。ということは、道路予算にいたしましても、あるいは治山治水にいたしましても、下水道にいたしましても、住宅宅地にいたしましても、せいぜいのところ五カ年計画であります。その五カ年計画もおくれおくれであります。計画どおり進んでおるものは何一つありはしません。しかもその全体から見れば四〇%程度しか公共投資をぶち込んでいないという実情です。少なくとも十年後、もっと大きく言えば、二十一世紀――三十年たてば二十一世紀であります。お互い政治に心を注いでいる者は、少なくとも日本の将来を考えながら、すなわち、射程の遠い、着弾距離の遠い政治現時点に立って考えなければならぬ。過去に立って今日を考えることは、退嬰的であります。今日の時点に立って将来をながめることは、進歩性がありません。むしろ将来性の中に立って、振り返って現時点を見る、そこで政治はどうあらねばならないかと考えところに、私はほんとうのこれから躍進する日本政治あり方があろうと思うのですが、公共投資をどの程度に置くか。そうなると、全国総合開発計画を策定されておる中において建設計画というものはどうあらねばならないか、それが私は今度の建設業法改正背景となる基幹的な問題だと思うのですが、それに対してどうお考えか。これが二番目。  さらに三番目の問題は、明年度予算要求大蔵省は二五%増だといっているそうであります。これは全部に向かって二五%といっているのであります。二五%は要求額であります。その中からどれだけ削られてしまうか、これはたいへんなことになると考えますが、この立ちおくれを取り戻すためには――一四・四%ならば、普通の歩み方なのであります。経済実質成長率なのであります。それを追いまくっていかない限りは、政治の優先はあり得ません。政治がよたよたしながら、足を引きずりながら経済躍進におくればせながらついていくようなことではいけない。政治の見識というものは、五年、十年、少なくとも三十年、二十一世紀着弾地点を置いて政治考えなければならぬとするときに、一体どうするんだ、二五%の要求程度でがまんしておるのか。その二五%というワクの中で、しかも建設省建設省で各局の中で割り当ててみて、そこでバランスをとりながらやっているようなことで、日本のこの爆発するような膨張的な経済政策の中で建設行政というものが立っていくはずがありません。この点に対してまずもってひとつお聞きしておきたいと思います。
  7. 坪川信三

    坪川国務大臣 三点にわたる草野委員の御質問に対しましてお答えをいたしたいと思います。  第一点の、建設投資の今後の見通しの問題でございますが、御承知のとおりに、最近五カ年間の平均伸び率は、名目において一七・五%、実質においては一二・五%の伸び率でございます。旺盛な設備投資需要住宅需要社会資本整備推進などを考えますと、建設投資はなお当分の間相当伸びを見せるのではないかと予想されるのであります。しかし、このような高い伸び率長期にわたって持続するとも考えられません。先般策定されました全総計画においては、御案内のごとく、六十年度までの年平均伸び率実質約九%と想定をいたしておるような次第でございます。こうした立場の見通しの上に立ってそれぞれ対応策を講じてまいりたいと考えておるのでございます。  御質問の第二の、民間建設投資公共投資比率をどう考えるか、どの程度になっておるかという問題でございます。四十二年に策定されました経済社会発展計画においては、生産資本に対する社会資本の立ちおくれを是正するために、民間設備投資に対する公共投資比率を三十年代の五〇%から四十六年には六〇%程度まで高めることを目標にいたしておりますが、四十二年度の比率は四七%強に低下いたしております。したがいまして、今後この立ちおくれを解消するため公共投資の一そうの拡充が必要でありますが、公共投資の大部分は建設投資でありますので、公共投資総額に占める建設投資比率もそれに応じて高めていかなければならないと考えておるような次第であります。  御質問の第三点の、来年度予算に対する財務当局考えと、われわれ建設省考えております予算に対する態度につきまして、私といたしましては、いよいよ八月、国会が終了いたしますと直ちに省内の予算会議を持ちまして、最終的な方向を指示し、また結論を出してまいりたい、こう考えておりますが、その基本方針におきましては、最近の公共事業の立ちおくれ、社会資本の立ちおくれ等を考えますときに、あらゆる事業推進につきましては、大蔵省の指示されるワク内においてはとうていこれを、実行に移す段階では至難なことを考えますときに、建設省公共事業推進予算獲得に最大の努力を払う考えでおります次第であり、強い決意のもとに事務当局も折衝を重ねたいと、こう考えておりますので、この点何とぞ与野党を通じて御支持と、またいろいろの御指導を賜わらんことをお願い申し上げる次第であります。  以上三点にわたりましてお答えを申し上げます。
  8. 草野一郎平

    草野委員 続いて、建設業界動向に関する現状に対する把握についてお尋ねをいたしたいと存じます。  現行法によるところのいわゆる登録業者というものが一体どれだけあり、それがどういう動向をたどっていたのですか。私は詳細なる数字は存じませんが、おそらく十五万に近くなろうとしておるのじゃないでしょうか。あるいは十四万八、九千くらいじゃないかとも思いますが、これは年々相当増加を見ておるはずであります。未登録はこれの二倍くらいあるのでありましょうが、一面において、建設業界がきわめて不安定である、すなわち、四十五万業者、あるいはこれに従事する者は三百五十万ないし三百七十万といわれておりますが、その中できわめて不安定である。ということは、昭和四十三年中に倒産した実数、一千億円以上の負債をかかえて倒産したものが二千五百件あるというのであります。しかもその率は、負債額においても倒産数においても二〇%前後、全倒産数の中における建設業関係倒産あるいは負債額というものは、二〇%あるいはそれをこえておるのじゃないでしょうか。それほどの激しい倒産を行ないながらなおかつ登録業者が年々ふえていくということは、倒産してもふえ倒産してもふえ、むしろ倒産することによって分裂化し、あるいは零細化し、あるいは弱体化しながら新しい登録業者がふえていくのじゃないか。すなわち、そこに一つの今日の業界脆弱性が存在しているのじゃないか。私はそれを非常に心配しておるのでありますが、非常に倒産しながら業者がふえていくというその体質そのものを一体どう把握しておられるか。しかも原因は一体どこにありますか。これが一つ。  さらに、従業員数は、ただいま申しましたように、三百五十万ないし三百七十万と称せられておりますが、これはおそらく農業従事人口の数に次いでの第二位の大きな数字かと思います。農業人口というのは年々減少いたしておりまして、最近農林省の発表では、全従業員中における二〇・三%、いわゆる一千万人程度でしょう。これはもう十年もいたしますとこの半数になります。一〇%を割るでありましょう。そうなれば、四百五十万か五百万になります。そのときに、現在三百七十万くらいあるところ建設労働者というものが日本建設業躍進に伴ってここで増加をいたしておりますというと、農業を上回る大きな労働者数をかかえることになります。そうなったときに、労働対策というものは一体どうするんだ、技能者不足は一体どうするんだ。全産業における技能労働者不足は二〇%といわれておるが、建設業はおそらく三〇%以上の不足を来たしておるのじゃないでしょうか。職業訓練の問題、技能者養成の問題、あるいは労働者募集条件就労条件手配師の介在、あるいは出かせぎ労働者がここになだれ込んできておる状態、さらに福祉対策環境対策、そういうものの中に問題が伏在しておるのじゃないか。同時にまた、これの対策として、生産性の向上とか機械化とか能率化とか考えられるでありましょうし、関西におきましては、万博というものが非常にたくさんの労働者を吸収してしまって、周辺は枯渇しておる。そればかりでなくして、賃金を必要以上につり上げてしまっておる。建設労働賃金というものがべらぼうに上がってきておるのもそういうところにありますが、これとて長期のものでありません。来年は済んでしまうのでありますから、そうなったときに、一体そこでのアンバランスをどう是正していくのであるか。いわゆる建設業界に対するところの現在の実態、体質動向、同時に、労働者あり方、そういったものを一応まとめて政府から伺っておきたいと思います。
  9. 川島博

    川島(博)政府委員 お答え申し上げます。  建設業登録建設業者の数でございますが、昭和四十四年三月末現在におきまして、大臣登録知事登録を含めまして十四万七千九十五という数になっております。建設業法制定されました昭和二十五年当初には建設業者の数は約三万三千でございましたので、この十九年間に四・四倍に増加したことになるわけでございます。この間の増加傾向を見ますると、特に三十九年以降の増加が顕著でありまして、ここ数年間は毎年一〇%強の増加率を示しております。  また、建設就業者の数の伸びも著しいものがございまして、四十三年には三十一年の一・九倍でございます三百七十万人に達しておりますが、この建設就業者数伸び率は、全産業の丁二倍、製造業の一・六倍というたいへんな数になっておるわけでございます。  次に、建設業倒産の問題でございますが、御指摘のように、四十三年中におきます負債金額一千万円以上の建設業者倒産件数は二千四百四十七件、負債総額は一千五百五十三億円に達しております。全産業倒産に対する割合は、件数負債金額ともに約二割に達しております。また、全産業倒産件数増加率に比べまして、建設業倒産件数増加率は著しく高いという顕著な傾向がございます。  なお、建設業倒産資本金階層別に見ますと、規模の小さい業者ほど倒産率が高いのでございまして、これらの原因として考えられますのは、工事受注量の減少によりますところの業積不振、あるいは放慢経営、工事代金回収難技能労働者不足による人件費及び経費の高騰、あるいは収益率の低下、過小資本などなど、いろいろな原因考えられるわけでございます。一言にして申しますと、建設投資の継続的な増加にもかかわりませず、中小建設業者の乱立によりまして受注競争が一段と激化したという構造的な原因に基づくものもあると思われますが、これらの倒産原因の中には、建設業者経営能力不足等建設業内部の問題も少なくないものと考えられる次第でございます。  次に、労働力不足問題でございますが、今後の建設投資規模、及び第一次産業からの労働力供給余力等々の観点から想定をいたしますと、今後建設業就業者数は、長期的には年平均約三%の増加を示すものと思われます。現在約三百七十万人といわれております労働者数は、昭和五十年には約四百二十万人程度になるものとわれわれは試算をいたしております。しかし、今後の建設投資需要の増加は、先ほど大臣の御説明にございましたように、全総計画によりますと、年平均九%程度と見込まれますので、実際の人間は三%しか伸びませんから、差し引き六%は労働生産性の向上によってまかなっていかなければならないものと考えております。  特に建設業につきましては技能労働者不足が深刻化しつつあるということは、非常に憂うべきことでございます。労働省の技能労働力需給調査の結果によりますると、昭和四十三年六月におきます建設技能労働者不足率は二九・九%、約三〇%、人数にいたしますと三十三万人となっておりまして、各産業の平均不足率一九・五%を大幅に上回っている実情でございます。このような労働力不足、特に技能労働力不足に対処いたしまして、建設省といたしましては次のような施策を強力に進めていく考えでございます。  まず第一に、建設業を何としても労働者にとって魅力のある産業とする必要がございます。したがって、広い意味において労働環境の改善には最大の努力を払うべきではないか。具体的に申し上げますと、賃金についてはすでに製造業平均と同水準に達しておりますが、今後雇用の安定、あるいは宿舎等福祉施設の整備、あるいは就業経路の正常化、雇用関係の明確化、退職金、共済制度の拡充、賃金不払いの防止、災害の絶滅等について、業界への指導を一そう強化いたしたいと考えておる次第でございます。  第二に、技能労働者を養成いたしますために、労働省が実施いたしております職業訓練制度、また、わが省が実施しております産業開発青年隊等により技能労働力の拡充をはかりたいと考えております。  第三に、何といたしましても、それらの施策を講じましても人手不足はますます深刻になるということは冷厳な事実でございます。したがいまして、これに対応するためには、建設工事をなるべく労働者を使わない、いわゆる省力化をはかる必要がございます。このため、工事設計の合理化、あるいは施工の機械化、工場生産化、新建材の開発等を推進する必要があろうかと思います。  第四には、公共工事の発注を年度間を通じて極力平均化する、労働者の需要が一時期に片寄らないように年間ならして、労働力の需要をならすということが必要でございます。このためにはいろいろな施策、努力を重ねていかなければならないと考えております。  以上によりまして、今後の膨大な増大する建設業に対して対処してまいりたい、かように考える次第でございます。
  10. 草野一郎平

    草野委員 次いで、今度の法改正の問題点と思われる四点についてお尋ねをいたします。  第一点は、これはいろいろ憶測も入っておると思いますが、政府建設業界の再編成をねらったのとは違うかという問題に対するお答えであります。ちょうど、先年証券取引法が改正されました、私はこれと非常によく似ておるということを思うのであります。なぜこんなものを建設業法の引き合いに出してきたかと申しますと、証券業界というものは、かつてこれを相場師といいました。建設業界は、かつては請負師といいました。よく似たものであります。相場師と請負師が、今日では証券業者となり、建設業者となってきたのであります。その証券業界では、証券取引法という法律は先年改正され、再編成が自動的に行なわれたのか、そこに指導力も法の精神において指導が行なわれたのでありましょうが、私は非常に健全なる姿で今日証券業界が運営されておるということを見ておりますから、それを今日引き合いに出したわけでありますが、証券取引法というのは、御承知のとおり、昭和二十二年、まだ米国の占領当時でありますが、これを米国の証券業界の実態を模倣して制定されたとさえいわれておるのであります。すなわち、一定の条件さえ満たしておるならば、これを今日の建設業法と同じように登録制にしておったわけであります。したがって、登録でありますから、自由に登録さえすればいいのでありまして、ちょうど間もなくやってきました神武景気にあおられて大衆投資家の株式ブームが巻き起こってきた。それは一応よかった。その次に今度はなべ底時代が来た。一応景気鎮静で大衆投資家の犠牲によって業界の乱立と無秩序が混乱を誘発し、証券業界の社会的信用もついに破綻してきた。そこで、昭和四十年に至って証券取引法の一部改正を見たのでありますが、これがちょうど同じように登録制から免許制に切りかえられたのであります。もちろん、同じように三年間の経過措置は講じております。その結果どうなったかといいますと、東京証券協会の実態を見ますと、以前五百五十から五百七十の業者のあったものが、今日では約半数の二百七十から二百八十の業者になってきておる。そこに私は一つの健全性もあると思いまするし、同時にまた、再編ということばがいいのか悪いのかともかくといたしまして、そういう実態をながめたときに、建設業界もややそれをなぞっておるようなことがありはしないか。もし再編をねらっておるのであるとするならば、どう再編しようとしておるのであるか、ここに対する政府の適確な見解を聞いておきたい。これが一つであります。  二番目は、法案の中に出てまいりますところの特定建設業と、さらに、許可制に至らないところの適用除外の線を一体どの辺に引くのであるか、これは政令にゆだねられるのでありましょうが、政令の腹案というものはありますか、これは非常な懸念を呼んでおりますから、この際、ある程度明確なる線を打ち出しておいていただきたい。これが二点であります。  三番目、許可条件というものがある、その許可条件は、資産であるとか、設備であるとか、過去の経歴、なかんずく、信用度とか誠実性というものまで含まれております。信用度、誠実性というものはお役人がこれを判定するのですか。役所の窓口だけで信用度と誠実性を判定して、それで適確にいくでしょうか、うまくいくでしょうか、ここに私は大きな問題があると思う。ここにも大きな懸念がありはしないか。これが三番目の問題点であります。  四番目に、私はこういう三つの問題点をあげてきたのでありますが、建設省が原案を作成してここへお出しになるまでの間、いわゆる経過措置もとっておいでになりますが、最近問題になっておるところは、たとえば適用除外の線をどこに置くか。現在は五十万円であります。五十万円でいくはずはありますまい。これを百万円に引き上げるのか。中には、三百万円にしろとか、いろいろの議論も出てきておりますが、それもどの線において、あるいはどの層においてどの程度要求なのか、まだ適確性を欠いております。しかし、そういう議論が出てくるのであるとするならば、一応経過的に――経過的というよりも、緩衝地帯を設けるような意味において、ある線からある線までは登録制を残しておくようなことが、この改正法律案の過程において考えられなかったかどうかということであります。そのことを聞いておきたい。  以上の四つの問題は、これは私が私見を交えながらもしも議論を展開するとするならば、本日一日やっても切りがありますまい。私はきわめて短いことばで申し上げたのでありますが、お答えもひとつ適確なお答えを伺って、この建設業法に対する態度がきまってくると思います。
  11. 坪川信三

    坪川国務大臣 四点にわたる御質問に対しまして、重要な第一点並びに第四点の問題について私はお答えをいたしたいと思うのでございます。  本法案の立法の大きいねらいは、やはり先ほどから提案の理由にも申し上げましたごとく、業界の近代化、適正化をはかりたいというのが第一のねらいでありますとともに、注文者と請負人との間に不合理な取引等が行なわれておるというようなことを考えますときに、この問題を抑制、適正合理化したいということが第二の問題でありますとともに、やはり下請業者に対するところ経済的な地位を確保するということも大きなねらいであるということにおいて、御理解を賜わりたいと思う次第であります。  また、許可制度の適用除外金額の問題につきましては、御承知のとおりに、許可の適用除外にかかわる第三条第一項ただし書きの政令は、「軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者」を適用除外とする、現行登録制度の考え方をそのまま踏襲した者でありますから、この政令を定める考え方は、許可制度に移行しても基本的には変わっていないような次第であります。現行登録制度では、「工事一件の請負代金の額が五十万円に満たない工事」のみを請け負うことを営業とする者が適用を除外されているが、今回の許可制の適用除外金額は、現行の五十万円の金額を定めた昭和三十一年以降の建設工事価格の上昇に照らし、現行適用除外金額のほぼ二倍に相当する百万円程度の金額を定めるのが妥当ではないかとも考えております。なお、土木一式工事及び建築一式工事は、それらの部分工事として施工される専門工事を総合するような形で施工されるものでありますから、適用除外金額を定めるにあたっては、土木一式工事及び建築一式工事と他の専門工事とを区分して取り扱うことが適当であると考えるのであります。土木一式工事及び建築一式工事については、前に述べましたように定めるとしましても、専門工事については、その施工割合等を考慮して、現行の適用除外金額をそのまま据え置くことが妥当ではないかと考えております。以上のような考え方については建設業界もほぼ賛成しており、また、去る六月二十七日と七月四日の両日開かれた中央建設業審議会の法制小委員会においても大かた賛同を得たところでありますが、今後とも私といたしましては、慎重に検討をいたしたい考えであります。  他の二点につきましては、政府委員から答弁させます。
  12. 川島博

    川島(博)政府委員 第一に、法律案第三条第一項第二号の、政令で定める下請代金の額、これは特定建設業の許可が必要となる根拠になるわけでございますが、この下請代金の額につきましては、この制度を設けた趣旨が、特定建設業者は一般の元請業者より下請代金の支払い等に関しましてきびしい義務を課すという制度でございますから、その義務とのかね合いから見まして、通常よりも下請施工の度合いが高いと認められる程度の金額を定めることが適当と考えられます。したがいまして、この金額は、私どもといたしましては、一千万円程度にいたしたい、かように考えます。なお、この点につきましても、先ほど大臣の御答弁にございましたように、中央建設業審議会法制小委員会にはかって御意見を聞いたわけでございますが、大かたの賛同を得ておりまして、建設業界自体もほぼ賛成というふうに考えます。しかし、これらの点につきましては、当委員会の御審議、御意見をも十分拝聴いたした上、今後なお慎重に検討いたしたい、かように考える次第でございます。  それから次に、今回の改正におきまして、許可要件に誠実性に関する要件が追加されたわけでございますが、それでは何が誠実かということが問題でございます。これにつきましては、法人企業の場合には、常勤の役員や責任ある地位にある使用人、これは支店長とかあるいは営業所長等が考えられるわけでございます。また、個人企業につきましては、事業主や責任の地位にある使用人、これは法律上の用語でございまして、支配人等を考えておるわけでありますが、それらが「請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと。」というような新たな要件が付加されておるわけであります。請負契約に関しまして不正な行為と申しますのは、法律的に申しますと、請負契約の締結または履行に際しまして、詐欺、脅迫、横領等法律違反の行為を行なうことをいいます。また、不誠実な行為とは、工事内容、工期等について契約違反の行為を行なうことをいうのでありまして、従来建設業建設業に類似する営業に関しましてこのような行為をした経歴があり、今後ともそのような行為を繰り返すおそれが明らかに認められる者、これは該当するわけでございますが、そうでない者につきましては、通常平穏に営業を行なっている大多数の業者の方々は、この要件はさして問題にはならないと考えられるのでございます。なお、この要件につきましては、一般建設業、特定建設業ともに共通の要件になっているわけでございます。  それから、百万円の適用除外金額を定めました場合に、従来平穏に営業を行なっておりました零細業者が許可が受けられなくて非常に困る事態が予想されないか、かりに予想されるとすれば、何らかの特例措置と申しますか、緩衝措置を設ける必要がないのか、こういう御質疑でございます。これにつきましては、この法案の中央建設業審議会における審議の過程におきましても一番のポイントになった点でございます。論議の過程におきましては、零細な業者に関しては現行の登録制度を残して、許可制との二木立てでいくべきではないかという議論のございましたことも事実でございます。しかしながら、結論といたしましては、登録制を許可制に改める以上は、これを一本化すべきだ。ただ、許可の際にそういった中小零細業者が誠実に仕事を続けておっても、許可要件があまりにもきびしいために脱落をし、営業の継続が不可能になるというような事態は厳に慎むべきである。そのために、政令で定める金額あるいは許可制度の運用については、これらの点を十分に配慮すべきであるという意見が大勢を占めたわけでございます。このような観点から、私どもは、一応許可制度の適用除外金額は百万円未満が適当であろう、また中央建設業審議会の大かたの委員のお考えもそれにひとしかったわけでございますけれども、既得権者の利益を擁護するためには何らかの経過措置が必要であろうということから、この法律案におきましては、法律施行期限を公布後一年後といたしますとともに、さらに、法律が施行になりましても二年間は従来の登録制度をもって平穏に営業が継続できるということにいたしました。したがいまして、かりにこの法律案が通過成立をいたしまして公布されましても、三年間は従来どおり平穏に営業が継続できるわけでございます。私どもは、不幸にもかりにこの許可要件に適合せず、許可を受けられない業者につきましても、この三年の猶予期間にみずから体質を改善し、経営を合理化いたしまして、適格要件を取得するという努力をお続け願いますれば、その点の心配はないと考えております。したがいまして、政府といたしましては、かりに、この政令で定める金額が、業界並びに中建審の御意見のとおりに百万円にきまりました場合にも、特に法律上の緩衝手段をあらためて用意する必要はないものと考えておりますが、なおこの点に関しましても、今後当委員会における御審議、御意見を十分拝聴いたしまして、その結果あらためて慎重な検討を加えたい、かように考える次第でございます。
  13. 草野一郎平

    草野委員 次に、中小建設業並びに零細建設業の振興作といいますか、これをこの業法改正の中においてどう考えておるか。現に建設省はいかなる指導方法をとっておるのか。最近特に顕著になってきたのでありますが、大手建設業者が地方にぐんぐん進出してまいりました。しかも、支店であるとかあるいは営業所等を設ける、そうしてその支店や営業所が、まるで地方の中小建設業あるいは零細建設業等が受注しなければならぬような分野にまで進出してきて、まあ地びき網でざこまでさらえていくようなしかたをやっておるのであります。したがって、大手の建設業者というのは、ややもすれば、これを統括しておるだけの商事会社のような傾向になっていく。したがって、地方の中小建設業及び零細建設業というのは非常な苦境に立たされて、ここで倒産が行なわれ、分裂が行なわれて行くのであります。この問題に対しては政府はどう指導していくのか。あるいは発注区分、先ほど局長の答弁にもありましたが、発注の時期、金額、そういったものをどう行政指導していくのか。同時に、大手建設業者の支店とか営業所というものをこの際思い切って認可制にしたらどうだ。そして、その発注区分において、あるいはおのずからランクがあるわけでありますから、金額等においてそこへ強力なる指導方法をやったらどうなのか。これが一つの問題。  さらに、中小建設業というのは、資本金から申しましても一億以下の業者というのが九十何%でありますから、何ぼ寄せてみたってこれは大きな資本にはならぬのであります。したがって、これらに強い力を持たせるには、いわゆるジョイントベンチャーの方式をとらなければならぬ。そのジョイントベンチャーの方式をとってみても、なおかつ、資本において機材においてその実力は大手建設業に対抗できるものじゃない。それをランクを一つないし二つ引き上げる方法を考えながらでも、地方の中小建設業、零細建設業をどう育成し、さらに振興させていくか。これが二つ目の問題。  同時に、考えられる問題は、協同組合をつくらしてみたらどうだろう。機材の協同組合あるいは債権譲渡等の協同組合――これはもう地方によってやっておるところがあります。  同時にまた、これは府県によって、信用保証制度もある程度県等が資金を出してやらせておるのでありますが、どうでしょう、思い切って建設金融公庫というようなものを大きくつくってみるような意思はありませんか。そうすることによって、中小建設業と零細建設業を育成しかつ振興させる方法があるんじゃないだろうか。  私は、長い時間を要することを避けるために、きわめて短いことばでありますが、以上の四つの点について答弁を求めます。
  14. 坪川信三

    坪川国務大臣 御指摘、御質問になりました中小建設業の振興策ということは、非常に重要な問題であります。私どもといたしましては、これらの業界を育てるということが本法制定の大きなねらいでもあることは御理解いただけると思うのでございます。資本金五千万円未満あるいは従業者三百人未満の中小業者の占める数は業界の九九%を占めておるというような状況でありますので、これら中小建設業者経済的地位の向上あるいは受注機会の確保をはかるとともに、建設工事の円滑な施工を確保するための施策を十分講じてまいりたい。  その一つといたしましては、中小建設業の組織化の推進あるいは中小建設業の近代化、合理化をはかりまして、その安定的な発展を期するための方途といたしまして、中小企業等協同組合法による協同組合等の設立を推進することにより、建設機械等の共同保有、相互利用及び金融の円滑化をはかるとともに、あわせまして、中小企業団体の組織に関する法律による協業組合の設立を推進いたしまして企業の協業化をはかり、また、工事の受注区分の調整等、共同請負方式の推進をいたしてまいりたい。公共工事につきましては、工事金額に応じて建設業者の受注分野の調整をはかっており、請負業者の選定にあたっては、中小建設業者の受注確保に一そうの配慮をいたすように指導をいたしたいと考えておる次第であります。  また、大手業者が地方に進出した場合における諸般の問題点の多いことも私も十分苦慮いたし、それらの点を踏まえまして十分行政指導、配慮をいたしてまいりたい。  中小建設業者の受注機会の確保については、中央建設業審議会の勧告による建設工事の入札制度の合理化対策の趣旨に沿って、関係各発注機関に対し、工事発注に際しては、発注標準を厳守して中小建設業者の受注の機会を確保し、特に地元中小業者の活用をはかるよう指導、要請しており、また、今回の業法の改正においては、法律のたてまえから、受注に関する規制を行なうこととしてはいませんが、今回の改正が特に中小建設業者体質改善をはかることを目的としている趣旨にかんがみ、これを機会に、中小建設業者の受注機会の確保及び中小建設業界の振興策の推進については、関係行政機関及び団体を通じてさらに指導に徹底をいたしてまいり、特に大手建設業者がみだりに地方進出をはかり、地元中小業者の受注市場に混乱を来たすことのないよう、また、中小建設業者の健全な発展について大手建設業者もこれに積極的に協力するよう指導、要請することといたしたいと考えており、なお、改正法の許可制においては、営業所ごとに、専任の法律で定められた資格を有する実務経験者を配置していなければならないことといたしましたが、これの運用にあたってはこの規定の趣旨を十分考慮し、単に受注便宜のための名目的に営業所を設置する行為等を抑制することとして、営業所の新設のための変更届け出の処理に際しましては、大手建設業者が営業所新設後の営業活動によって地元中小業者の受注市場に混乱を来たすことのないよう十分配慮すべき旨の伝達を行なうことといたしたいと考えます。  また、最後にお述べになりました、いわゆる建設資金公庫といいますか、これらに対するところの金融機関を設けてはいかがかという、非常に建設的な御意見もお述べになっておられますが、いま建設省として直ちにこれに対して取り組むという方針にいたしてはおりませんけれども、検討すべき重要な問題点として今後これらに対して考えてまいりたい、こう考えておる次第であります。
  15. 草野一郎平

    草野委員 次に、これは小さい問題であってその本質は大きいのでありますが、一人親方の問題をちょっと聞いておきたいと思います。大工とか左官等々の一人親方であります。これは今度の改正法によっては許可が受けがたいのではないか、そういう懸念があるのではないかと思っている。一人親方というものは、大きな会社と違いまして、資本があるわけではないし、資材を持っているわけではない。ただ、地域と密着をいたしまして人と人との関係におけるところの信用が基礎であります。そこで安心して、見積もりも出さなければ請求書も持ってこないような、きわめて信頼し合った関係において非常に小さい仕事を請け負っておるのが実態でありますが、こういう人たちがいまこの業法に対して非常な心配をいたしております。その心配が杞憂であるかどうか、同時にまた、こういう人たちが許可を受けた場合に、日雇い健康保険であるとか失業保険であるとか、さらにまた労災保険、あるいは所得税等の問題において、不利益な取り扱いを受けはしないだろうか、そういう問題についてひとつこの際はっきり御答弁をいただいておきたいと思います。
  16. 坪川信三

    坪川国務大臣 私は、この問題は、草野委員も御指摘になりましたように、非常に小さいようにも思いますけれども非常に重要な問題でもあり、関係各位が非常に御心配になっておることも十分考慮いたしまして、これらの方々に対しましては十分配慮をいたす気持ちで処してまいりたいというのが私の基本方針であることを御理解いただきたいと思いますが、いま御質問になりました問題については、建設業の許可要件は、事業主または常勤の役員のうち一人が、許可を受けようとする建設業に関し五年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者であること。また二番目には、営業所ごとに、許可を受けようとする建設業にかかる建設工事に関し一定期間の実務の経験を有する者を専任のものとして置いていること。事業主、常勤の役員その他責任ある地位にある職員が、請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと。また四番目には、請負契約を履行するに足りる財産的基礎または金銭的信用を有しないことが明らかでない者であります。これらの要件は、現に誠実かつ適正に建設業を営んでおる者であれば、一人親方、中小企業、零細業者であっても、十分満たし得るものであると思われ、また、たとえ要件を満たしていない者であっても、三年間の猶予期間中に従来の登録制度によっても補充することができるし、許可を必要としない軽微な建設工事について請負を行なうことにより要件を満たすことができるようになっていると考えられます。したがって、一人親方等の小零細業者が誠実かつ適正に請負をやっておれば許可を受けられることになりますので、不当に不利益な取り扱いを受けることになるとは考えられませんが、これらの問題については非常に重要な問題でもありますので、十分これらの点を踏まえまして育成をいたしてまいりたいと考えておりますとともに、一人親方の育成策としては、小規模工事、修繕工事等、一人親方に対する需要はかなりの量があり、最近における環境の変化にはきびしいものがありますので、経営の合理化、生産性の向上をはかるため、一人親方等の小規模業者について、協同組合、企業組合による事業の共同化を推進するとともに、金融、税制措置、共済制度による事業の振興と福祉の増進をはかってまいりたいと考えておるような次第であります。
  17. 川島博

    川島(博)政府委員 お答え申し上げます。  大工や左官等のいわゆる一人親方、これが、今回の登録制から許可制に切りかわることによりまして、たとえば日雇い健康保険、失業保険、労災保険等の各種の保険制度あるいは所得税等の税の関係で不利益な取り扱いを受けることになるおそれがないかという御質問でございます。まず、日雇い健康保険、失業保険、労働者災害補償保険等の各種保険及び所得税に対する取り扱いといたしましては、一人親方については次のようになるわけでございます。以下の御説明は、所管の厚生省、労働省とも打ち合わせ済みのものでございます。  日雇い健康保険につきましては、一人親方につきましては日雇い健康保険法を擬制適用いたしている現状でございますが、一人親方をその被保険者として取り扱うかいなかは、あくまで当人が日雇い労務者としての実態を有するか、あるいはまた、事業主としての実態を有するかに基づいて判断しておるわけでございます。したがいまして、単に建設業法に基づく登録または許可を受けているからといって、それだけで被保険者から除外をするという取り扱いをいたすつもりはございません。  次に、失業保険の取り扱いでございますが、失業保険における一人親方の適用の取り扱いについては、建設業法に基づく登録または許可を受けているということのみの理由によって、適用にあたり不利益な取り扱いを行なうつもりはないわけでございます。  次に、労働者災害補償保険の取り扱いでございますが、これも、一人親方とは、労働者を使用していないことが常態である者をいうものでございますから、常態であるかないかの判断は、一年のうち百日以上労働者を使用しているかどうかを基準にして行なっているわけでございます。したがって、一年間に百日以上労働者を使用しないと見込まれる場合には被保険者として取り扱われるものでございまして、建設業法の登録または許可があるかないかということとは全く関係がないわけでございます。  第四に、所得税の取り扱いでございますが、一人親方の受ける報酬に対する課税につきましては、その報酬のうち、請負契約に基づくものは事業所得とし、雇用契約に基づくものは給与所得として取り扱っている実情でございます。しかしながら、一人親方の場合はその区分が必ずしも明らかでございませんので、年収入が百八十万円以下であり、かつ、その区分が明らかでないときは、年収の多寡に応じまして一定の比率を定め、年収にその比率を乗じた額を給与所得とし、その残余の金額は事業所得として課税をするという取り扱いを行なっている現状でございます。したがって、給与所得であるか事業所得であるかにつきましては、あくまでも固々の実態によって判断をするものでありまして、一人親方が建設業法にいう登録または許可を受けていれば、年収はすべて事業所得とみなすというような取り扱いをするつもりは毛頭ないわけでございます。
  18. 始関伊平

    始関委員長 草野君、簡潔にお願いします。
  19. 草野一郎平

    草野委員 それでは、委員長から簡潔にというお話でありますから、もうこれで終わります。  もう一つ。これは時間をとらせないために、一ぺんに私がしゃべります。したがって、その中に質問もあり私の意見もありますから、最後に一括してどなたかからお答えをいただけばけっこうであります。  それは、ちょうど昨日まで行なわれておりました日米貿易経済閣僚会議、あそこでも大きな問題になってまいりました資本自由化の問題であります。資本の自由化がわが国の建設業に対していかなる影響を与えるであろうか。もし影響を与えるとするならば、建設省はこれに対してどういう対策をとり、どういう指導をなさろうとしておるのか、これであります。  第二次自由化の決定に際しまして、建設業界は、一部専門業種を除いて自由化の時期は尚早であると訴え、そのために、総合工事業種と、これに密接な関連のある、たとえば設備、しゅんせつ工事等は第三次自由化以降に持ち越されることとなったのであります。  この際、自由化によって起こる影響として想定されるものの二、三を上げるならば、第一、大型プロジェクトに対して外資の進出あるいは新技術の導入が行なわれ、これに伴い、先進国系建設業の進出が予想されはしないか。たとえば、原子力発電所建設におけるところのGE系の建設会社、エバスコまたはベクテル等の進出の問題であります。これに対する進出の予想はどうか。  二番目は、長大橋梁に対する技術、工事経験等を背景として外資系の企業が進出する可能性がありはしないか。  三番目、日本国内における経済発展に伴う建設市場の投資需要がすこぶる旺盛であるという事実に従って、ことにこの経済の発展が安定性を持っておるという点に着目して、たとえば新建材の開発、量産化が外資系の大資本のもとに行なわれるとするならば、これを足場にして建設市場が撹乱され、あるいは地場業者がこの結果として恐慌を来たすようなことになりはしないか、こういうことにも懸念を持ちます。  続いて、大型企業は自由独立の立場をとることは可能であっても、過小資本の中小企業層は外資の魅力に引かれやすいのではないだろうか。資本、経営の基盤に幾ぶんでも脆弱性のあるものはその資本に吸収されはしないだろうか。それに吸収されるとするならば、日本の市場は外資によって次第に侵食される結果になりはしないだろうか。  以上の四点に対して、私は次の六つの点をあげながらこの対策をとるべきでないかということを申し上げて、これで質問を打ち切るのでありますから、ひとつ聞いておいてもらいたい。  第一、国際競争力を持つところの企業体質を充実すべく、段階的になるべく早く体質づくりをすること。これに今回の建設業の許可制というものをうまく関連さしていく必要があるのではないか。  二番目、体質づくりの前提として、業界の秩序を整備すること。それは、業界再編成という大上段に振りかぶった、あるいは官僚統制のようなものの考え方ではなくして、大企業、中小企業あるいは零細企業のそれぞれのランク、ランクに応じながら、あるいは分野、分野に応じながら、建設的な整備方向をとっていくということ、いわゆる体質の強化をはかっていくということ。特定建設業者と専門工事業者の系列化、すなわち、元請、下請の系列化をはかること、こうしたことが考えられる必要があるのではないか。  続いて、海外からの労働力の移動を一応排除することを考えなければならないのではないか。そんなものは来ないのだとたかをくくることは私は危険だと思う。なぜかと言えば、日本経済がここまで高まってき、国民所得というものが今日では世界の十何番目、二十番目だと卑下した言い方をしておりますが、たとえば、もう十五年、二十年すればアメリカに匹敵するところまで前進すると私は思う。そうなったときに、周辺の国々を見渡しますと、日本の十分の一あるいは二十分の一というような低い国民所得の、きわめて気の毒なような生活状態を続けておることは、皆さん御承知のとおりなんです。こういう労働力というものが海外から日本へ流れ込んでくるとなると、日本の労働市場はこのために撹乱されます。この問題に対する考え方があるかどうか。  さらに、海外からの進出企業が国内の商慣行等を無視したり中小企業等の弱点に乗じながら無秩序に進出してまいりますと、   〔委員長退席、金丸(信)委員長代理着席〕 その結果外資が支配力を持ち、もしくは大、中、小の各市場を撹乱する、そういうことの防止対策を一体どうしていけばいいのだろうか。  最後に、米国は国全体といたしましては自由化はいたしておりますが、州法が採用している免許制の実情から判断いたしまして、自由化の場合でも、互恵平等の原則から、わが国に来た場合に、わが国もこれに対して互恵平等の対抗条件を出さなければならぬのじゃないだろうか。  そういうことも一応考えて、以上の前提として、建設業界の現在の登録制が業者の分裂、乱立、過当競争等の原因を誘発しておりますから、これを許可制にすることは私はけっこうだと思うが、先ほど申し上げましたような適用除外の線をつくることと、同時に、緩衝地帯をどうするかということは、これからの審議の過程においても、あるいは今後の中建審の審議においても、与党たるわれわれとしても真剣に考えるべき問題となっておりますから、この問題の背景となるべき諸問題に対して整備し、いわゆる準備体制を完全にする必要がある。私は資本の自由化に対してもこれらをあわせて考えるのでありますが、以上の点を一括して御答弁いただくことによって、私はどうもきょうの予定時間よりも長くなったようでございますが、以上をもって私の質問を終わりますから、要領よくひとつお答えをいただきたいと思います。
  20. 坪川信三

    坪川国務大臣 草野委員の、資本の自由化に伴う諸般の問題あるいは将来におけるところの展望等に対する御高見を交えての御質問に対し、私も深く傾聴いたしておるような次第であります。これによりまして、建設業については、土木一式、建築一式、管、鉄骨、舗装、しゅんせつ及び機械器具設置工事の七業種を除き自由化が実施され、今後自由化が拡大される方向にありますが、これに伴いまして中小建設業者も影響を受けることは免れないと考えられます。また、中小建設業者が外資系企業との間で下請関係に入ることも予想され、その場合に、外資系企業においては、在来の国内慣習にとらわれず、合理主義的な経営観念による業務の処理が行なわれるものとも考えられます。したがいまして、中小業者がこのような情勢に対処するためには、今後の経営の合理化、技術の高度化等、企業の体質の強化、近代化を積極的に進めると同時に、下請人の保護のための規定を整備する必要が十分あると考えておるような次第でありますとともに、最後にお述べになりました、激動する国際情勢下にあって、資本の自由化が大きな波となって打ち寄せてまいる今後の日本経済あり方からくる、その中に立っての建設業の立場からくる問題点の六つにわたるお考えを交えての見通し等については、全く同感でございまして、これらに対する立ちおくれのないよう万般の対応策建設省といたしましては十分備えまして、国際水準に負けないところのりっぱな建設業あり方及び日本の国土開発並びに国土の建設にいそしみたい、体制を持ちたい、こう考えておることを御理解いただきたいと思います。
  21. 金丸信

    金丸(信)委員長代理 井上普方君。
  22. 井上普方

    ○井上(普)委員 私はこれから質問するわけでございますが、ひとつ私の指定する以外は局長なんかは御答弁にならないように、大臣にお願いいたしたい。  この法律案が出されておりますけれども、これは政令に委任する事項が非常に多いのでございますが、われわれこの法律案を審議するにあたりまして、当然そういうような政令の要綱が出されてしかるべきだ、それがなければ審議できないと思うのですが、大臣、なぜ出さないのですか、理由をお伺いしたいのです。
  23. 坪川信三

    坪川国務大臣 今回の改正におきまして政令に委任する事項は、許可の適用除外金額、あるいは特定建築業の許可の対象となる下請金額、欠格要件の対象となる使用人等でありますが、これらは現行建設業法の取り扱い及び中央建設業審議会の答申に基づき政令に委任することにしたものであります。政令に委任された事項については、事務当局としては一応の案を用意しておりますが、国会審議を通じての意見を尊重し、さらに中央建設業審議会の意見をも聞きまして、十分な検討を行ないました上において十分考えてまいりたい、こう考えておる次第であります。
  24. 井上普方

    ○井上(普)委員 この委員会における審議の中において考えたい、これなら私はわかると思います。しかしながら、中央建設業審議会の意見を聞きながら政令をつくるということについては、私はどうも合点がいかない。一応原案をわれわれに見せて、その原案について審議さして初めてこの場において十分な審議ができるわけです。それを、法律ができたそのあとで、中央建設業審議会の答申を待って政令をつくるんだという行き方は、いままでの行き方と違うと思うのです。すでにこの法律そのものにおいてそこに大きい欠陥があると私は思うのです。大臣、どうでございます。
  25. 坪川信三

    坪川国務大臣 もちろん、私といたしましては、いま答弁いたしましたごとく、本委員会における審議の過程における皆さまの御意見を第一にそんたくいたしましてこれらに対する考え方をまとめてまいりたい、これは当然のことだと思います。
  26. 井上普方

    ○井上(普)委員 しかし、それにしても、あなた方建設省としてはあまりにも主体性がなさ過ぎる。原案を出しなさい。建設省考えておる政令事項をお出しになるのがほんとうでしょう。それについてわれわれがこうだ、こうだと言うことをいれて考えていくのがほんとうじゃないですか。その点はどうでございます。そうしますと、この法律案は、いまあなたのおっしゃいました非常に重要な部分が政令にゆだねられているのです。それをお出しになる必要があると思う。それをお出しにならない理由はどこにあるのです。
  27. 坪川信三

    坪川国務大臣 それぞれ事務局においては皆さまの御意見を十分そんたくいたしながらきめてまいりたい、こう考えておりますが、主体性を持つ建設省といたしましては、それらの案については具体的にも一応考えておりますので、その内容につきましては政府委員から答弁させます。
  28. 井上普方

    ○井上(普)委員 答弁だけではだめです。文書にしてお出しなさい。出てきてないじゃないですか。建設省というのはどうもルーズなところで、五年前につくった河川法の二十九条による政令がまだできてないということを、運輸委員会でしたか、公害対策委員会でしたかで指摘せられて、ひいひい言ったのは官房長です。あなた方はそういうようなこともある。事実、国会の会議録を見てごらんなさい。大臣、あなたも言われたでしょう。しかも一番問題になることを政令事項に委任しようとしているのです。こんな不届きな法律がありますか。この法律は出直してこいというのが、まず私が申したい第一点であります。  第二点といたしまして、現在まで建設業界は非常に倒産が多く、業界が混乱しておる、これは私どもも認めます。しかしながら、なぜそこまでに混乱をさせ、また倒産が多くなったか、あるいは乱立が多くなったか。これは一つ政治の責任もあると思うのです。これは先般も阿部昭吾議員が本会議で申しましたように、一人の政治家が誕生すると、それによって天の声――あるいはまた、入札に関与する例が非常に多い。ために、業者がひとつ政治家とくっついてやろうというようなケースが多いことが、乱立を来たした一つの大きい原因であると思う。  しかし、それはそれといたしまして、もう一つ考えなければならないのは、現在の業法を改正しようという一つ考え方といたしましては、現行法が不備であるという考え方なのでございますけれども、そうじゃないのです。現行法でも十分にやれるのにもかかわらず、建設省並びに建設省配下の各官庁がこれをやらなかったところに私は原因があると思うのです。  これは具体例でございますので局長の答弁でよろしゅうございますが、一体、営業の取り消しとか罰則を四十三年一年間にどれくらいやっておりますか、お答え願いたいのです。
  29. 川島博

    川島(博)政府委員 お答え申し上げます。  建設業者に対する指導監督が適切に行なわれているかどうか、その具体的な指標として、監督処分の状況はどうかということでございますが、昭和二十四年の八月に建設業法が施行になりましてから約二十年を経過したわけでございますが、昨年までの実績によりますと、二十八条による知事処分が六百四十一件、営業停止処分が二十六件、登録取り消し処分が三十三件、合計七百件でございまして、そのうち、建設大臣の処分したものが六十二件というふうになっております。
  30. 井上普方

    ○井上(普)委員 これだけ業界における紊乱があり、法の改正までしなければいかぬということでありますけれども、それが二十年間の実績でしょう。行政当局の姿勢が悪いからこういうような法改正をしなければならぬようなことになってきているのじゃないか。大臣、どうです。いまのは二十年間の話ですよ。知事が登録を取り消したのはわずか二十件です。大臣がやったのはまだ少ないのじゃないですか。これが二十年間の実績なんです。行政当局の責任というものを法改正におっかぶせようというのがこのたびの改正案じゃございませんか。大臣、どうです。
  31. 坪川信三

    坪川国務大臣 井上委員の御指摘の問題点、理解も十分いたしておりますが、政治の力によってこれらの問題点を是正して健全な建設業界の育成をいたしてまいりたい、こういう考えで、政治的な問題として法の制定をお願いいたしておる政府当局の考え方もひとつ御理解をいただきたい、こう考える次第であります。
  32. 井上普方

    ○井上(普)委員 そういうことはできないですよ。これは現行法の中でも取り締まることはできるのです。しかも、刑法の詐欺や業務上の過失致死罪としても摘発することができるし、また現行法の二十八条でも必要な処置はとれるのです。こういうことができるのにもかかわらず、あなたのほうの行政当局がやっていないから、こういうような人身事故も起こるし、かつまた、倒産とか、あるいは不良工事であるとかいうようなことが起こってきているのでしょう。大臣、いまの数字を聞いてどうお考えになりますか。あなたも建設大臣という政治家です。政治家として考えた場合に、この建設当局のとっておる行政指導というものはあまりにも怠慢である、こうお考えになりませんか。
  33. 坪川信三

    坪川国務大臣 御叱正になる問題点のあることを私は否定するものではございませんけれども、これらの問題を解消いたしまして建設業の円満なる合理化、近代化をはかってまいりたいという大きな構想のもとにおいて本法案の制定をお願いいたしておる気持ちを御理解いただきたいと思います。
  34. 井上普方

    ○井上(普)委員 しかし、大臣、この法律案を見てごらんなさい。あなたも十分にお読みになったと思う。この法律の最も新しい重要なところは、登録を許可制にするというところだけじゃありませんか。あとは全部倫理規定になっておる。これは実質上いわゆる倫理規定になってしまわざるを得ない法律じゃございませんか。下請企業の保護とかいっておりますけれども、これも倫理規定になっておるじゃないですか。私はここに大きい問題があると思うのです。どうでございますか。
  35. 坪川信三

    坪川国務大臣 私、一律にすべてをそうした考えでこれを理解いたしていない次第でございます。
  36. 井上普方

    ○井上(普)委員 それじゃ、ひとつ私はいままでの建設業界あり方について大臣にお伺いしたい。  大臣も福井市の名市長といわれた人でございますので、行政の最高責任者としてやられておったことをあなたはひとつ思い起こしていただきたい。現在の倒産が、あるいはまた業界の乱立がなぜ起こっておるかということを考えてみますと、先ほど申しました理由も一つあります。さらには、現在ではなぜ倒産が起こるかということを考えてみますと、先ほど草野さんが申されましたように、大手の業者が各地方に出張所あるいはまた支店、営業所を持っておることは、御承知のとおりです。そして二千万円、三千万円くらいの工事にまでどんどんと入っていく、それが大きい特殊な工事じゃなくして、一般の県内業者ができるような仕事にまでどんどんと入っていく、ここに中小企業を圧迫する一つの大きい原因があると思うのです。  もう一つの問題としては、一つの大きい大手業者が請け負うと、今度は全部一括下請みたいな形で各業者に下請けさせる。そのときには、名義料と称して一五%ないし二〇%ピンはねしている現状をあなたは御存じでしょう。中小企業の人たちは、資金の回転が苦しいがためにやむを得ずそれらの大手業者にくっついて、採算は合わないけれども、ともかく手形を落すためにこれを請け負っておるというような実態があるではございませんか。  さらにまたひどいのは、一たん倒産した会社であっても、いままで建設省がいういわゆるABCDEというようなランク、県によればABCDというようなランク、そのランクというものは過去の実績に基づいてきめておりますからして、その実績の売買すら現在行なわれておるじゃありませんか。倒産した会社の実績を買い取って新しい会社をつくるというような実態まで行なわれておるじゃありませんか。これが中小企業における実際の建設業の実態じゃございませんか。  大臣、どうでございます。この三点について大臣の明確な御答弁を承りたいと思うのです。
  37. 坪川信三

    坪川国務大臣 先ほども草野委員の御質問お答えいたしましたごとく、資本金五千万円未満の会社、あるいは従業員三百人未満の中小業者の数が、建設業界の総数の大体九九%を占めておるということを考えますときに、何と申しましても、われわれといたしましては、中小業者建設業をいわゆる適正かつ合理化してこれらを保護していくということが、私はわが国の建設業法の適正運営の基本的な姿勢であろうと考えるのであります。したがいまして、法案の制定のねらいは、これらに対するねらいを最重点に置いて立法措置を講じておることは、賢明な井上先生でございますから私はよく御理解いただけると思いますが、それらの問題点のある点については、われわれといたしましては、さっき草野委員お答えいたしました具体的な方途を講じながら指導育成に十分配慮いたしてまいりたい、こう考えております。
  38. 井上普方

    ○井上(普)委員 賢明なわが輩でも、この法律はわからないのです。下のほうばかり押えておいて、、上のほうは野放しの法律じゃありませんか。上のほうは野放しにしておき、上から下に対して圧迫することについては、倫理規定で押えているだけです。こういうような法律がありますか。大手業者に対してはこれはまことに手厚い法律です。企業に対しては、登録制を許可制にするというようなきびしい制限を付しながら、大手に対しては――これは先ほど草野さんも言われましたが、中小企業を育成するというような方法が全然書かれていない。しかもそれは倫理規定になっている。ここに大きい欠陥があると思うのです。先ほども申しましたように、たとえば鹿島建設でもよろしゅうございましょう。世界で第一番の受注量を誇る鹿島建設です。しかし、鹿島建設が出張所あるいは営業所あるいは支店というものを持っておる。そこで行なわれておる実態はどうですか。本社経費と称して一五%ないし二〇%ピンはねしている現状じゃありませんか。ここで不良工事も起こる、あるいは中小企業の倒産も起こってくるのです。大臣、この実態についてどうお考えになりますか。
  39. 坪川信三

    坪川国務大臣 私は、現在のこうした登録制によっての建設業界あり方というものに対しては、ますます共食いといいますか、全く零細な企業の方たがほんとに法的な立場で保護を受けていないということを考えますときに、この法案の制定は決して大手筋を保護するのではなくて、中小企業の零細なる業者を守るということに大きなねらいを持っておることはぜひ御理解を願いたい、こう考えております。
  40. 井上普方

    ○井上(普)委員 ある程度のことは書いてありますが、きびしくそれを制限しなければ、倒産とか、そういうことの防止は行なわれないのです。料を取るなという、これ一条だけでもなぜ書けないのですか。いかにも、ここには、元請人は下請人の意見を聞かなければならないというふうになっています。しかし、下請人というものは大手に対して非常に弱いのですね。だから、こういうような規定をつくっても、実際上は守れないじゃないですか。これをなぜ入れないのですか。私はその点をこの法律の非常に大きな不備として考えざるを得ない。中建審なんというメンバーを見ましても、どうも大手に有利な方々が非常に多い。大手が中小企業の分野にどんどん入っていくのをチェックする方法を法律に入れない限り、倒産というものはますますふえてくる、私はこう考えるのです。倫理規定じゃないですか。こういうようなことを大臣もひとつお考えを願いたいと思う。不備なるものです。  それから、さっきもいろいろと申し上げましたが、あなた方建設省は、いままで、ジョイントベンチャーによって中小企業を助けるのだ、こういうようなことをおっしゃってきた。私、一昨年もお伺いしますと、ジョイントベンチャーにつきましては、中小企業の方々が技術的に不備である、あるいは資金的にも不備である、そういうときには、集まってやれば、これは協同組合的なことでいい、こういう方針で実はジョイントベンチャーという方式を考えられたようであります。しかし、このジョイントにつきましての法規制というものは、現行法規においてはありません。中小企業等協同組合法ですか、これによってやっておるのでしょう。しかし、実際にほんとの協同組合的にやった例といいますと、これは昨年ですかでき上がったあの新宮殿において、鹿島、間、熊谷というような、日本の屈指の大手業者が協同組合をやった例だけでしょう、ほんとうの協同組合的例は。大臣、どうです。あとの工事といいますと二つあるいは三つが組んでやっておるのが実態じゃございませんか。ジョイントというのは、本来は、技術的にはこれは欠陥があるが、二つ合わせれば十分にできるであろう、あるいはまた、資金の面においてもこの点二つ合わせれば十分にできるのであろう、あるいはまた、危険が伴う場合にはひとつやろうというようなことでやって、建設省が行政指導としてとられた方策です。これは昭和三十四、五年ごろから取り入れられた方策ではありますけれども、これについての法的な――何といいますか、法制化が全然なされていないでしょう。大臣、この点どうでございます。――局長でもいいです。
  41. 川島博

    川島(博)政府委員 お答え申し上げます。  まず第一点は、大手のゼネコンが名義料を取って一括請負で……。
  42. 井上普方

    ○井上(普)委員 そんなこと聞いていない。ジョイントだけ聞いているのだ。
  43. 川島博

    川島(博)政府委員 それではジョイントベンチャーだけについてお答え申し上げます。  ジョイントベンチャーは、御案内のように、戦後間もなく国土建設投資が盛んになりました昭和二十六年から、建設省は、中小企業の保護育成という観点から、積極的な指導をしてまいってきておるわけでございますが、御承知のように、この制度は、アメリカで非常に発達を見ておる制度をわが国に取り入れようとしたわけでございます。そこで、アメリカではどういう形のジョイントベンチャーが発達しておるかと申しますと……。
  44. 井上普方

    ○井上(普)委員 日本のことを聞いているのだ。アメリカじゃないよ。
  45. 川島博

    川島(博)政府委員 そこで、このジョイントベンチャーは、そのねらいは、まず、一つの零細企業が二つ寄れば融資力はそれだけ増大し、危険も分散される、それからお互いに技術を補完し合って技術面、施工面での拡充強化がはかられる、こういう点がメリットとしてあげられるわけでございます。したがいまして、この方式をアメリカにならって採用いたしたわけでございますが、アメリカのように当時パートナーシップというような制度がございませんので、わが国としては、当時、民法四百三十条によりますところの共同請負方式という形でこれを推進していこう、そのねらいは、あくまで中小業者が共同して共同責任において施工する、その責任体制はこの個々の業者の共同責任という形で法律的にはいつも組合契約でやったわけでございます。ところが、御指摘のように、確かに大手の間でもジョイントベンチャーが行なわれていることは事実でございます。そもそもこのジョイントベンチャーは、行政的には中小企業の保護、育成強化という観点から練られておった制度でございますけれども、大手が単に受注の調整のためにジョイントベンチャーを組織する、これは厳に慎まなければなりませんが、しかし、たとえば青函隧道とかあるいは本四架橋とか、こういった大型プロジェクトになりますと、日本の大手の企業ですら十分に資金力、技術力においてこれを請け負う力はございません。そういった場合に、こういった融資力増大あるいは危険分散、あるいは技術革新に伴う技術の相互補完というような観点からジョイントベンチャーを組む場合は、たとえそれが大手同士の場合であっても必ずしも非難さるべきものではない、ジョイントベンチャー制度そのもののねらいに全くマッチするものではないかというふうに考えます。しかしながら、そもそもこの制度を推進したねらいは、中小企業の力を結集することによって大手に対抗し得る企業力を育てようということでございまして、その方針は今日においても変わりはないわけでございます。しかし、お話にもございましたように、その後日本の中小企業に対する法制は着々と整備されておりまして、たとえば中小企業等協同組合法による企業組合、あるいは中小企業団体の組織に関する法律によりまして一昨年新たに創設されました協業組合制度、これらはまさにアメリカで従来発達してまいりましたこの共同企業体に法律的な性格を付与するものではないか、したがいまして、私どもは、そもそもジョイントベンチャーを育てるという目的も、当初は単一の企業ごとに企業体を結成いたしましてその体質の強化をはかるということでございますが、大きな目標は、この共同企業体からさらに協業化、協同組合化してますます体質を強めていく、最終的には、これらの中小企業がそれぞれ企業合同によりまして十分に大手に対抗できる体質を備えていくということが目標でございます。したがいまして、私どもは、今後ジョイントベンチャーの育成のみが中小企業の育成策ではない、むしろ、整備されました協同組合あるいは企業組合の育成、さらには完全に大手に対抗し得る手段としては、企業合同ということが今後の中小企業の育成の方策としては最も望ましい姿である、したがいまして、ジョイントベンチャーの育成強化については今後とも力を入れるべきだと思いますが、目標はさらにそれより一歩踏み越えて、協業組合化あるいは協同組合化、さらには企業合同という大きな目標に向かって今後中小企業の育成強化をはかるべきではないか、かように考える次第でございます。
  46. 井上普方

    ○井上(普)委員 いま局長がおっしゃいましたけれども、企業組合あるいは協同組合的なことをやった例は、新宮殿をつくったときに大手がやっただけです。これらは名誉欲のためにやっただけの話です。いいですか。あとはどういう形をとっておるかといいますと、大手同士がジョイントを組む、あるいは大手と中小企業とがジョイントを組んでおる、こういう実例ばかりではありませんか。――道路公団はおいでですね。私は東名高速道路をやっておるときに見てみますと、全部の区間、セクション、セクションの工事が全部ジョイントで組まれておる。しかも鹿島と間が組んでおる。金額がわずか十五億です。大手同士がこういうようなジョイントを組んでおるのです。あの区間でジョイントでなかった――東名で、少なくとも御殿場から大井松田までの間にしましょうか、それとも厚木でもよろしゅうございますが、ジョイントでなかった例がありますか。全部ジョイントでしょうが。しかも、ジョイントは全部大企業が一かみかんでおるでしょう。わずか十五億の――大臣、聞いていただきたい。わずか十五億、二十億の工事に対して、鹿島と間がジョイントを組んでとっておるのですよ。これが東名高速の実態なんです。全部ジョイントなんだ。しかも中小企業同士でジョイントを組んでいないのです。大手業者と中級の業者が組むか、大手同士が組んでいるのです。こういうことはなぜやられるのです。先ほど川島局長は、受注量の調整のためはこれはけしからぬと言いましたが、まさに受注量の調整のためにやっておるのですよ。言いかえますならば、談合をやっているのです。このセクションはわしがとろう、このセクションはおまえに譲ろう、こういうことで現在の東名高速道路というものが少なくとも御殿場から厚木までの間はできている。これは道路公団だってお認めになると思う。こういうところにメスを加えずに、何でこの建設業法の改正ということが言えますか。大手同士が――しかも片一方においては、黒四だって一社でやったでしょう。また、ここの霞が関ビルだって一社でやったでしょう。それだけの工事力はある、資金力もあり、しかも技術的な能力もあるような大手の業者がジョイントを組んでおる。この姿を、大臣、どうお考えになります。大臣政治家としての御見解をひとつ承りたい。
  47. 小野裕

    ○小野参考人 ただいまお話にございました東名道路の建設につきましては、大手のジョイントばかりではなかったかという話だと思うのです。   〔金丸(信)委員長代理退席、田村(良)委員長代理着席〕 大手ばかりではございません。大手と中堅もございますが、全体的にジョイント体制で執行いたしました。この一番大きい理由は、この東名高速は名神の経験を生かしながらやったわけでありますけれども、わが国としては最初の最高規格の道路でございましたので、どうしても優秀な業者にお願いしなければならないということでございました。そのときに一同じAクラスの業者と申しましても、非常に経験の豊かな、あるいは資力、能力の十分なところと、またこれから伸びつつある、いま勉強しておるというところもございまして、そういうような意味では、中クラスの業者の一種の教育的な意味もございまして、経験の豊かな者と組んだのを認めたという例もあるわけであります。一つは、そういうような高度の技術を必要とするというところから、比較的大手あるいは中堅の上位というところに固まった。もう一つは、工期を一応定めていたしましたので、その間に仕事の執行を迅速化する、能率をあげるというために、一つの工区でございましても二つの業者に分担をしてもらうというような形をとった事情がございました。大体私の承知しております事情は以上でございます。
  48. 井上普方

    ○井上(普)委員 大臣、公団はああいうことをおっしゃいますが、鹿島と間が組んでおるセクションがあるのですよ。政治家としてあなたはどうお考えになります。大臣の御答弁を願いたい。
  49. 坪川信三

    坪川国務大臣 私が大臣に就任いたしまして以来、建設業界の工事施工あるいは指名その他に関連いたしましては、きびしい態度をもってこれらに対する行政指導をいたしておるような次第でございます。とともに、中小企業の業者を育成するという立場から、地方の重要な建設工事、公共事業推進の場合においては、いま川島局長が申しましたごとく、いわゆる協業化あるいは組合化あるいは共同企業体の推進ということをもって、零細といいますか、中小企業の業者を育成していく。一切を大手筋のジョイントあるいはその他の談合によってこれらの工事が進められるというようなことでなくして、九九%を占めておるところの中小企業を育成するという立場から、共同企業体あるいはそれらの推進を十分考えるように指示もいたしております。しかし、工期あるいは工法その他によって、これらに即応してはできないことも条件としてあることは、また御理解もいただける、こう思うような次第でございますので、私の基本方針といたしましては、あくまでも中小企業の工事の施工には格別こうした指導をもっていたしていく方針をとっておることを御理解いただきたいと思います。
  50. 井上普方

    ○井上(普)委員 私は例を出しておるのです。セクションわずか二十億のところに鹿島と間がジョイントを組んでやっておることについてどうお考えになりますか。急ぐというのであれば、彼らにはおのおの十分な労働力もあるし、技術もあるはずです。そうじゃございませんか。いずれも能力があるもの同士がジョイントを組んでおるのです。この事例について、大臣、あなたの政治家としての感覚でひとつお考えになっていただきたい。
  51. 坪川信三

    坪川国務大臣 政治家としての考えは、先ほど私が申しました方針でいたしております。いま御指摘になりました具体的な点については、その現実というものをいま初めて聞く問題でございますから、道路公団の理事をして答弁させます。
  52. 井上普方

    ○井上(普)委員 こういう実例があるのです。あなたは道路公団に対して監督権があるのでしょう。こういうものをチェックしなければならないでしょう。あなたもうなずいておられるから御同感だと思う。ただ、大臣、いままでやっておったから、まさか坪川さんが大手に対する思惑でこういうようなことをおっしゃっておられないと私は確信します。しかし、現在そういうことが行なわれておる実態があります。このジョイントに対する当初の建設省の方針は正しいと私は思う。しかし、それが現在く、ずれ去っておる。くずれ去っておる現在において、このジョイントをほんとうの当初の目的のごとく直すには一体どうすればよいか。これは行政指導でやるといったって、もう手はなくなっているのです。業法に書いて、そういうことをびっしり入れなければだめなんです。百貨店法においても、小売り業者を圧迫してはいかぬということをいかめしく制限しているでしょう。大企業が中小企業の分野に入ってくることを防ぐための業法の改正という、これが最も大切なんだ。これが抜けておるじゃないですか。ただよその通産省でつくった協同組合法によってやればいいとか、あるいは企業組合でやればいい――企業組合とか協同組合というのは、十とか二十とか集まったときに初めて協同組合になるのです。しかし、現在の建設業の実態は、二社ないし三社がやっておるのですよ。私が出ました大学の建設、これもまた建設省の中国地建かで入札にかけております。これもわずか十五億の工事に対して大手二社入っております。特殊工事といって一体何があるのかと思って見てみますと、レントゲン室の防備装置だけです。放射能が出たらいけませんから、鉛を入れた防備装置をつくる。これだって他の業者に下請させておるのです。ジョイント組んだ二つじゃないのです。実態はどうかといいますと、一つの会社が事務員を置いて帳簿をつけておるだけ。片一方の業者というのは県内の下請業者に全部かけておる。ただそこには技術員が十人くらい来ておって、県内の下請業者にああしろこうしろという指導をやっておるだけ。設計をやっておるだけ。これが現在の建設業界の実態です。しかもジョイントを組んだ場合にもそういうようなことが行なわれておるわけです。片一方は事務員を置いておるだけなんです。これらに対してきびしい態度をこの立法になぜうたい込まないのです。政治家の坪川信三さんとすれば、うたい込みたいでしょう。あるいは、あなたは福井の市長をやっておって、地方の建設業界の実態というものは十分知っておられると思う。それをなぜここにうたい込まないのです。ここに大きい欠陥があるのです。これを私らは要求するのです。こんなちゃちな倫理規定を入れたくらいで下請業者、中小業者を保護できるとお考えになっておるところに、建設省当局の指導性についての非常に無責任体制があらわれておると私は思うのです。こういう法律はメンツにとらわれず引っ込めて、すべからくもう一度大臣自身の感覚によって練り直して出してきなさい。そしてほんとうに中小企業を育成するためにはどうすればいいか、あなたの真剣なるお考え方をこの中に盛り込んで初めて提出していただきたい。大臣の御感想を承りたい。
  53. 坪川信三

    坪川国務大臣 御感想とおっしゃいますけれども、私は、感想というような主観的な問題でなくして、これは信念といいますか、政治のきびしい問題として――私は、感想というような気持ちで答弁申し上げるような軽々な問題でない、こう思っております。言いかえますならば、私は建設大臣に就任いたしまして以来、いわゆるとやかくうわさをされたり誤解をされたり、あるいはいろいろの問題点をかもし出すようなこうした問題については、きびしい態度で臨んでおることは御理解いただけると思います。私は、そうした立場におりますときに、中小企業の育成をどうすべきか、あるいは支払い代金、あるいは請負と下請代金等の支払いとか、あるいはこれらに対するところの契約等というものを法律的にやはり裏づけして守ってあげるという点においてこの法的な大きなねらいを持っておるような次第でございます。したがいまして、根本的には私は井上さんと全く同じでございます。しかし、解釈のいかんによってはそこに主観がおのずから分かれることも万やむを得ないと思いますが、それらの点については、私は、委員会で御指摘になりました各委員、各党の御意見を十分考えながら政令にも打ち込んでまいりたい、こう考えておりますので、なるべくよりよき法律として、これらの点の最終的なる建設業界を適正、近代化、合理化いたしまして中小企業を守るという方針のもとにおいてこれらの問題と取り組み、また御審議をいただいておる私の気持ちも御理解をいただきたい、こう考えておる次第であります。
  54. 井上普方

    ○井上(普)委員 私は、非常にこの法律は消極的なもので、もっと積極的な姿勢を打ち出せと言っておるのです。それには、下請を保護するというようなのじゃなくて、下請というものは大手に対して非常に弱い立場にあるのです。   〔田村(良)委員長代理退席、委員長着席〕 でございますから、大手が中小企業の分野に入ってくるのをチェックするという姿勢でなければならないのです。それがこの法律には欠けておるでしょう。全然ないじゃありませんか。これを入れなさいと言うのです。根本的にやりかえる必要があると私は言っておるのです。こういう点をまず申し上げたい。  それで、大臣は非常に積極的な、とやかくうわさのある建設業界を粛正していって清らかなものにしよう、こういうお考えでございますので、一つ例を出して大臣の御所見なりをお伺いしたい。  これは昭和四十二年三月三十日に高知県の早明浦というところでダムの請負契約をやったのでございます。ところが、三月三十日に請負契約をやりまして、四月一日に水資源公団に移したのであります。わずか二日ですね。いいですか。その間に入札いたしますこと一あれは八社が入札したのでございますが、八社が入札しますと、入札価格が合わないということで、実に入札を六回やったのです。それで、最低価格のやつは六回とも間組であった。そして間組が落札した。ところが、その工事全体の四割を大成建設がやっておるということがございます。ところが、当時私たち、岡本議員などがこの点は鋭く追及いたしましたが、それは六回とも偶然の一致でございますということで、現在の技監が逃げたのでございます。六回入札をやって六回とも同じ業者が最低価格であった。建設省の見解によると、これは偶然の一致だそうです。  それはそれにいたしまして、その後、先日、私、国元へ帰りましたところが、非常に大きい問題になっておる。何だといいますと、当時の金額百五十億でダムかできるといっておったのか――昭和四十二年の三月ですよ。ところが、二、三カ月前に県、地元に対しまして――地方負担しなければなりませんから、その金額が実は五割増してきたのですね。二百七十億くらいになるのじゃないか、こう言ってきておるのです。一体これはどこに原因があるのだといって聞いてみました。そうしますと、建設省あるいは水資源公団の――もうすでに建設省は予定答弁つくっておるそうです。それによりますと、物価の値上がり、こうおっしゃるのですね。四十二年からいままで二年間に五割も増すような物価の上昇というのは、これはありませんよ。佐藤内閣は物価を上げろ上げろという政策をとっておりますけれども、二年間に五割も増すような物価上昇ということはあり得ないでしょう。しかし、事実やっているのですね。五割の値上がりを県に対して要求しているのですね。実に不届きだと思いますが、この間の事情を、河川局長あるいは水資源公団、御存じでございますか。もう予定答弁もちゃんとつくっておるということを私は聞いておるのですが、ひとつそれを読み上げていただきたいと思うのです。
  55. 坂野重信

    ○坂野(重)政府委員 お答えいたします。  先生よく御存じでございますが、実はまだ変更する金額――どのくらいになるかということははっきり確定しておりません。ただ、四十二年の契約当初は、たしか三十八、九年ごろの調査資料に基づいて設計したものと聞いております。それで、その後いわゆる水没補償等の関係がだんだんはっきりしてまいりまして、その当時の水没補償に対する見積もりが、結果的に見ますと若干低かったんじゃないかということでございまして、まあそれ以外に、もちろん、先生おっしゃるような物価増もあるいは労賃の増もございますが、主としてそうした水没補償の見積もりが当初の予想よりもかなり上回ったということが大半の原因であると私は考えております。
  56. 井上普方

    ○井上(普)委員 金額は幾らだったのだ。当初は幾らに考えて、幾らになったのだ。
  57. 坂野重信

    ○坂野(重)政府委員 ちょっとあとでまた資料をもちまして御報告しますけれども、やはりそのうちの大半は、いま申し上げましたように、水没補償が大きなウエートを占めておるということでございます。目下その辺のところを検討中でございまして、まあこれは基本計画の変更にもつながる問題でございますので、関係県あるいは経済企画庁、その他、水資源公団等とも十分相談いたしまして検討した結果、いずれ数字を明らかにしたいと思いますが、いまのところは、先生のおっしゃる二百七十億とかなんとかというのは、私どもまだはっきり詰んでおるわけではございませんが、しかし、当初の百七十億に対しましては相当大幅な増額はせざるを得ないのじゃないかというぐあいに考えております。いま検討中の段階でございます。
  58. 堀直治

    ○堀参考人 補償額は、四十二年の三月にうちのほうで引き継ぎましてから十月に大体の基本線を立てていただきましたのは、御承知のとおりでございますが、なかなか難航いたしまして、結果的には、当初予算に組まれたものは十七億でございましたが、約五十二億に増額しております。
  59. 井上普方

    ○井上(普)委員 あのときは非常に難航をして、水没補償が完成しなければ工事にも着工しないという、高知県と建設省当局と一札が入っておったにもかかわらず、その年の三月三十日に入札させたのです。そして半年おくれて水没補償ができたのです。そこに私どもは黒い霧を感ぜざるを得なかったのです。こういう実態もあることを、大臣、御認識をいただきたい。  さらに、河川局長のお話によると、三十八年に設計した金額で、地方の各県にこれで工事いたしますからといって四十二年の三月に押しつけておるのです。ところが、県にとりましたら、これは五割も増してきたのでたいへんだということになって、いまてんやわんやの騒ぎなんです。したがって、各県議会において、そういう値上げは県としては受けとめられないということを決議した県も二、三あります。こうなりますと、一体どこに責任があるんだ。三十八年に設計した金額で四十二年に了承を与えた。その金額で諮問しているのですよ。そしてその金額で県に押しつけているのです。ところが、いまになってくると、物価が上がった、水没補償がこうなってきたというようなことで、県議会か――あなたも御承知でしょう。地方議会が、そういうような金額はお受け取りできないということを決議されている。そうなったら、責任は一体どこがとるのです。これはどなたでもよろしい、ひとつ御答弁を願いたい。すでに決議までしているのですよ。
  60. 坂野重信

    ○坂野(重)政府委員 御指摘のとおり、徳島県等に対する話はぼつぼつ始まっているようでありまして、各県それぞれの反応が出ております。費用の割り振りの関係は、当初いろいろないきさつがございまして、新しい方式で、身がわりダム方式とか、その他の新しくつけ加えるべき事業の負担というものを考えた早明浦方式ということである程度やっているわけでございます。それを今度物価増に伴ってそのままの方式でやるかどうかという問題についても若干の検討の余地があろうかと思います。水資源の開発の面からいいますと、よそのダムに比べて用水の単価も若干安いというような関係もございますし、電力の関係等総合的に考えまして、できるだけ今後誠意をもって県の御了承を得るように、これは経済企画庁、各省にわたる問題でございますが、建設省といたしましても、物価の増、あるいはそういった設計における当初の見込み違いということにつきましては、深く反省しているわけでございます。ひとつできるだけ誠意をもって御協力願うようなことでいろいろ関係各省と相談をしながら進めてまいりたいと思っておる次第でございます。
  61. 井上普方

    ○井上(普)委員 河川局長、あなたは、昭和四十二年の三月に、県あるいは地方議会に対して、これでできますということをお約束になっているのですよ。ところが、その金額は昭和三十八年の設計金額なんです。明らかにあなた方建設省は詐欺行為をやっているじゃないですか。そのとき、三十八年の設計でございますということを言いましたか。これは詐欺じゃないですか。うそを言っているんじゃないですか。そういうものを示しておいて、うんと言わせておいて、なぜ誠心誠意をもってこれから交渉ができるのですか。四十二年の設計が間違って、二年間でこれだけ増しましたというのでしたら、また理由は立ちます。三十八年の設計単価でもって県に押しつけておいて、一体これはどうなんです、詐欺行為じゃないですか。それでもまだ誠心誠意でもって納得させる自信があなたにはありますか。すでにぼつぼつ交渉が始まっているどころじゃないですよ。県議会においては、この増額は認められないという決議をしているでしょうが。ぼつぼつ始まっているどころの騒ぎじゃないですよ。どうなんです。一体、建設省は、こんな詐欺行為をやったこと、及びもうすでに県議会が決議していること、こういうことを考えたら、どうなんです。早明浦にかかわる一連の黒い霧がここにあらわれている。高知県もやがてこれは反対決議をするはずです。どうなんです。業法との関係もありますよ。
  62. 坂野重信

    ○坂野(重)政府委員 さっきお答えいたしましたことでちょっと誤解があったかと思いますが、三十八年の単価というのではなくて、三十八年度に調査いたしました資料に基づいて将来の推計というものをある程度行なっております。  それから、もちろん、水没補償の問題になりますと、やはり実際にぶつかってみないとわからない問題が多いわけでございますので、ほかのダム等につきましても、当初の見込みどおりいかなかった点が、多々例があるわけでございます。これは好ましいことではございませんが、やむを得ず中途においてそういう変更をするという事例もないわけではございませんので、そういう点を御考慮いただきまして――特に徳島県についてはいろいろな問題があることは、十分承知いたしております。それから、当初のアロケートの段階におきましても、建設省においては徳島県にはかなり気を使ったといいますか、配慮した事例は確かにあるわけでございます。その辺は先生よく御承知かと思いますが、今後とも私ども誠意をもって何とか徳島県の御協力を得るように最大の努力を払ってまいりたいと考えております。
  63. 井上普方

    ○井上(普)委員 あなたはそうおっしゃいますが、しかし、ともかく三十八年の設計で押しつけたことは間違いないですよ。それでもって、これから誠心誠意をもって徳島県に当たると言ったところで、徳島県にしたって、あるいは高知県にしたって、うんと言うわけはありはせぬじゃないですか。しかもこの間において、大臣、先ほど私が申しましたように、非常に集い霧がある。この黒い霧を押しのけて白日のもとにさらそうとしたのでございますが、われわれの手で遺憾ながらそれができなかった。しかし、いままた設計変更の形で増額が行なわれようとしているのです。これは元請である建設省、水資源公団――当時は建設省です。このときにこういう条文は入っておったのですか。物価の値上がりがあった場合には変更するということがあるのか。あるいは設計変更でやっておるのか。この条文の中にも、そういうところを明示しなければならないということがあります。下請人を納得させなければならないということがありますね。この点はどうなんですか。
  64. 坂野重信

    ○坂野(重)政府委員 契約の関係だけについて申し上げますと、建設省の標準の取り扱いがございまして、そういった変更のある場合にはスライド方式というものがございまして、一定の方式によってスライドすることになっております。
  65. 井上普方

    ○井上(普)委員 これは地方官庁には了解を得さしてありますか。
  66. 坂野重信

    ○坂野(重)政府委員 地方官庁のほうには、正式の文書による了解はないと思います。ただ、口頭なり何なりで十分連絡をとっておると思います。
  67. 井上普方

    ○井上(普)委員 そういうことは地方官庁にはできていないのです。これはおそらく設計変更でいかれるのだろうと思いますが、一たん安く請負さしておいて、設計変更設計変更で上げるということは――業法とあまり関係はございませんが、十分そういうところも入れるような業法にしなければならないと思うのです。これは明らかにこういう法律は不備なるところがたくさんあるのです。一例をあげますと、いま建設業法というと、これが大体建設業に関係する者の基本法でしょう。そういうことを入れてくれなければ、こんな法律なんというものはこれは一片の空文にすぎない。ただ困るのは――困るといいますか、下のほうの許可制だけが明確にされておるのがこの法律の実態であります。  これは関係ないのですけれども、早明浦が出たからついでに言いますが、天下の奇勝といわれる大歩危を水の中につけてしまうのは絶対反対と出ておるのですが、あれは一体どうなっているのですか。私もあれは反対なんですが、大歩危、小歩危を水の中につけてしまうという計画をつくっておるのです。あんな発電オンリーのダムをつくるのはどうもおかしいと思うのですが、どうなんですか。これも誠心誠意か。
  68. 坂野重信

    ○坂野(重)政府委員 いま大歩危と先生おっしゃいましたが、大歩危ではなくて小歩危ということで、これは通産省の問題でございますが、建設省ももちろん関係ございます。早明浦、池田の一連の関連で電力の最も効率をあげるには小歩危がいいということで、通産省を主体にして調査をされて、いまのところそういう計画になっております。私どもも地元から反対の声があるということも実はよく聞いておりますので、今後の問題として、これは電発の審議会でも保留になっておるようでございますし、その辺十分県の意向を聞き、また通産省とも連絡しながら、側面的にひとつ――これは通産省の問題でございますけれども、地元に関係の深い問題でございますので、十分意見を聞いてしかるべく今後検討してまいりたい、かように考えております。
  69. 井上普方

    ○井上(普)委員 しかるべくやめさせるようにひとつ極力お願いしたいと思うのです。  さらに、先ほどジョイントベンチャーの問題が出ましたので、ひとつお伺いしたいのですが、大工事が行なわれる際には一体どういう形式でやられるか。――道路局長は来ておりますか。――私は特にジョイントベンチャーのことで道路局長に聞かなければならぬことがありますので、次の質問者の阿部さんのあとにやらしていただくようにお願いいたします。一応これで保留しながら終わります。
  70. 始関伊平

    始関委員長 阿部昭吾君。
  71. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 私に対する答弁もひとつおもに大臣がやっていただきたいと思うのです。  業法の提案説明を五月の九日に衆議院においてされたわけですね。その際、私が質問をいたしましたが、その質問の速記録はまだ出ておらぬのであります。私はあの質問の問題で現在懲罰動議を出されておる、こういういわく因縁があるのであります。  そこで、今度の改正案というものは、いまも井上委員から指摘がありましたように、何といっても、大手業者を優遇する、そして中小、零細のほうは下請か孫請といったようなかっこうで囲い込んでしまう。それから一人親方といったようなものは、事業家というような立場でチェックをして、そしていわば一人の賃金労働者的な立場に囲い込もう、こういう性格が今回のこの改正案のねらっておる許可制というものの内容の中にきわめて明瞭に盛られておる、こう指摘をしておるわけであります。  そこで、いまこの登録制度のもとにおいては、二つ以上の県にまたがって事業を行なわんとする者は大臣登録一つの都道府県内だけで事業を行なわんとする者は知事登録ということになっておるわけですね。そこで、最近の新規の登録認可の状況、これは一体どのようになっておりますか。これは大臣に答弁せよと言ってもちょっと無理でしょう。これはひとつ局長のほうから……。知事登録にいたしましても、あるいは大臣登録にいたしましても、先ほどの一人親方の皆さんも、今度の許可制になりました場合に、明らかに不正を行なうということが明らかでない場合――なかなか日本語はむずかしいのですが、そういう説明を大臣はしておったのでありますが、不正を行なうことが明らかでない限りは大体許可になる、こういう言い方をしておるのでありますけれども、最近私どもの調査では、現在の登録制度のもとにおきましても、なかなか簡単に登録が認められないという状態になりつつあるように見ておるのであります。その状況、傾向についてひとつ説明をいただきたいと思います。件数、その他新規の……。
  72. 川島博

    川島(博)政府委員 お答え申し上げます。  先ほどもお答え申し上げましたが、本年の三月末現在の建設業者登録総数は、十四万七千九十五でございます。このうち、大臣登録が四千七百七十一、知事登録が十四万二千三百二十四でございます。対前年伸び率で見ますと、大臣登録が〇・九%、知事登録が一一・〇%、平均いたしまして約一〇%になるわけでございます。したがいまして、ここ数年の動きを見ましても、大臣登録が年間わずか数十件しかふえておりません。これに対しまして、知事登録は約一万四千近くふえておるわけであります。
  73. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 一万もふえましたか、一年間で。
  74. 川島博

    川島(博)政府委員 はい。さらに少し詳しくつけ加えますと、たとえば、四十二年の十一月から四十三年の十月までの一年間をとってみますと、新規登録が二万七千三百七十二、抹消が一万四千九十九、差し引き純増が一万、二千二百七十三ということでございまして、一方において、新規登録が年間二万七千もある反面、一万四千もの既存の登録業者が蒸発をしていく、こういう実態になっておるわけでございます。
  75. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 これは政令事項になるわけでありますが、業法にいう登録業者――今度の許可業者以外の者が行なうことのできる軽微なる事業、軽微なる工事、これは百万円くらいが適当ではないかという説明があったのでありますが、政令による除外の軽微なる工事、これが五十万円というのは、何年になったのですか。
  76. 川島博

    川島(博)政府委員 業法が制定されましたのは二十四年でございますが、当時の除外金額は、まず三十万円からスタートしたわけでございます。それからその後物価の上昇がございましたので、昭和三十一年に五十万円に上がりまして、今日に至っておるわけでございますが、その間、三十六年に、相当物価も上がったから、五十万円は改定して上げるべきじゃないかという議論が出まして、これを中央建設業審議会におはかりしたわけでございますが、本来、許可除外金額は、いわゆる消費者保護の観点からはなるたけ低いほうがよろしい。すなわち、零細な発注者が安心して工事をおまかせできるためには、やはり登録という国家の公証行為によって確認された業者にやらせるということが、消費者保護の本旨である。したがって、その後物価の値上がりもあったけれども、この際は五十万円は据え置くべきであるということで、この十三年間据え置かれておるわけでございます。しかしながら、その後物価も高騰いたしておりますし、私どもの推算では、三十一年から四十四年の今日までに大体建設物価は二倍程度に上昇いたしておりますので、この際、過去のいきさつはありますけれども、許可制に切りかえる機会に、この金額を倍額の百万円程度まで引き上げるのが適当じゃなかろうか。ただし、建設業の実態は、ゼネコンといわれる土木、建築の一式業者から左官等のいわゆる専門職別業者まで引っくるめておりますので、これらを一律に百万円に引き上げることは適当でない。ゼネコンについては百万円が適当といたしましても、職別専門業者についてはそれぞれそのシェアに応じて許可除外金額をきめるべきである。そうなりますと、五十万円に一律にきめるということも問題でありまして、ものによっては三十万円と、現行より下げることが理論的には適当でございますけれども、それらはややこしくなりますので、この際、一式業者は百万、その他の専門職別業者は五十万、現行据え置き、こういうことが適当であろうというのが中処審の大かたの御意見であったわけでございますので、私どももその程度が適当ではないかと考えておる次第でございます。
  77. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 そこで大臣にお伺いしたいのですが、たとえば、昭和二十四年業法が誕生いたしました当時、一軒の住宅を建設する場合に、せいぜい三十万、五十万くらいで小住宅は優に建設された時代だったと思う。いま地方の中小都市やあるいは農村地域において住宅を建設するとすると、三百万、四百万というのはあたりまえのことなんですね。その際に、実際上は百万円といわれましても、建物もまさか二度にも三度にも分けて建てるなどというわけにはいかぬわけでしょう。したがって、大工の棟梁さんがいまこのうちを請け負いますという場合に、このうちはかりに五十坪なら五十坪の農村住宅で四百万円いたしますという場合に、百万円までしかできません、総額四百万円のものをやりたければ許可業者になりなさい、こういうことだと思うのですけれども、それは先ほどから草野委員その他御指摘がございましたように、長い間地域に定着して信用を土台として育ってまいりました一人親方、大工の棟梁さん、こういう方々、これと密着しておる地域の小住宅、農村住宅、こういうものを発注する皆さんが長い間育ててきております慣行を否定することになりはしませんか。一軒のうちを分断しなければ契約できないなどという状態、許可業者以外は契約できないなどという状態、大臣、これはどうでしょう。
  78. 坪川信三

    坪川国務大臣 この問題につきましては阿部議員が本会議においても御質問になりました重要な御指摘の点だと思います。いろいろと問題点もございます。したがいまして、私といたしましては、これらに対しましては十分考えなければならぬ。しかし、どういうような範囲、どういうようなリミットというようなことについては、もう少し私は私なりに検討いたし、勉強もいたしまして、審議会その他の意見なども、また国会の委員会における審議の御意見等も十分踏まえまして、これらに対する最終的な態度を決定いたしてまいりたい、こう考えておる次第であります。
  79. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 ただいまの大臣の答弁は――本会議ではあのとおり総理大臣がおこってしまったものですから、建設大臣の答弁もまさか二度も三度もというわけにいかなかった本会議でありますから、さらに大臣から――いま局長が答弁したのは、十何年間据え置いたのでありますから、物価の値上がりもあり、社会情勢その他の諸関係の変化もあり、したがって百万円だ、しかし、何でもかんでも百万円というのじゃなくて、ものによりけりで、いろいろ考えなければならぬ、こういう御意見。私が具体的な例として言っております都市の小住宅ないしは農村住宅は、木造住宅で坪当たり単価が普通の場合にいま約十万円程度でしょう。農村住宅ならば、四十坪、五十坪というのがあたりまえですね。そういたしますと、三百万、四百万、五百万という時代になってきておるのです。この場合に、従来それらの小住宅を実際請け負って工事をしてまいりましたのは、一人親方、大工の棟梁さんなんです。この皆さんが百万円までしかいけないということになりますと、これは従来の慣行がそのとおりではいけないということになって、大きな変更をせざるを得ないということになるわけですね。したがって、いまの大臣の御答弁は、そういう現実に沿うように考える、こういう意味に理解していいのかどうか。
  80. 坪川信三

    坪川国務大臣 たいへん失礼ですが、いまの最後のところちょっと私はっきりしなかったのですが……。
  81. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 住宅一軒を建てるとすれば三百万、四百万、これを大工の棟梁さん、一人親方の責任において請け負って工事をするというのが、ずっと長く続いてきておる慣行なんです。したがって、この皆さんが従来の慣行どおりやれるようにする、そういうことになりますと、いわゆる許可業者もしくは登録業者でなくてもできるところの工事金額は、先ほどの局長答弁では、百万円までだ、しかもものによってはもっと額を刻んで小さくしなければならぬとも思っている、こういう説明と、いまの大臣の御答弁とは私は違うという理解をしたわけです。つまり、私は、三百万、四百万といえども、小住宅一軒請け負って工事を担当するのが一人親方、大工棟梁さんだとするならば、それはいままでの慣行のとおりに認めていくようにすると、こういうふうに理解していいかどうか、こう聞いたのです。
  82. 坪川信三

    坪川国務大臣 大事な、また微妙な点でございます。方針といたしましては、いま局長が申しましたとおりの方針でございます。しかし、私がさき申している点につきましては、御承知のとおりに、三百万円未満についてのなには許可制にも変えられるということにも相なります。また、これらに対応する金額のリミットにつきましては、私は、建設審議会の意向、また特に当委員会の御意向等も十分承った上において検討をいたしたい、こういう気持ちを持っておることだけを表明いたしまして、しからば額のリミットをそういうような問題として具体的にいまどう考えるかということについて、いまここで私がはっきり表明する段階ではないということで御理解を願いたい、こう申しておった次第でございます。
  83. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 どうも局長がうしろから入れ知恵をしたら、さっきよりも大臣の答弁が後退をしたように思う。さっきの答弁は、いま私が言いましたように、小住宅、農村住宅、これがかりに百万円の限度をこえて工事金額が三百万、四百万、五百万に達するというような場合といえども――従来は大工の棟梁さん、こういう皆さんは、実際は違法なのかどうか知らぬけれども、ちゃんと請け負って工事をやっておるのですよ。これは地域の長い間育ててきておる信用関係であり、事実なんです。この事実を否定しようとするのか。百万円という限度だ、こういうお話ですが、これに対する大臣の御答弁は、今後十分考慮していきたい、こういうお話ですから、小住宅のような場合には、三百万であろうと四百万であろうと、それらの一人親方、大工棟梁さん、そういう立場にある皆さんが請け負って工事をすることを認めるように努力をする、こういう理解をしたら、原則は局長の言うとおりなんでということで、もとに戻っちゃったのですね。  そこで大臣、私は観点を変えてお聞きしなければならぬのでありますが、さっき話に出ました間、鹿島、大臣の地元の熊谷建設、ああいう日本の大手、こういうものと、あの一人親方、大工棟梁さん、これを同じ法律で縛ろうというところに無理を感じませんか。
  84. 坪川信三

    坪川国務大臣 私は、いわゆる一人親方の立場で過去において大きな業績を残され、今後もやはりこれらに対する大きな足跡を残していただかなければならぬ一人親方の立場も千分そんたくいたしてまいりたい。また、大手筋といいますか、これらの持っている技術、あるいはそれらに対するところの工法、そういうような問題を考えますと、これらの大手筋の立場も考えなければならぬ。私は、いわゆる大手筋であろうと、中小業者であろうと、あるいは一人親方であろうと、あくまでも公正な立場においてこれらの各位が安んじて業界の発展のためにいそしんでいただく立場を守ってまいりたい、こういう方針を大前提に持っていることを御了解いただきたいと思います。
  85. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 その大前提は私はよくわかるのですよ。その大前提に立つのならば、一人親方の皆さんを守っていくためには、一つの小住宅あるいは農村住宅、こういうものをまるがかえで請け負ってやってきておるのが現実までの姿なんですが、これを拒否しようとなさるのか、認めようとするのかということを問うておるわけです。
  86. 坪川信三

    坪川国務大臣 私はこれらの方々をいわゆるむざんに拒否するというような考えはみじんも持っておりません。
  87. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 大賛成。そういたしますると、小住宅が三百万、四百万した場合でも、従来の慣行のように認める、こういう方向で今後努力をなさる、こういうふうに理解していいんですか。
  88. 坪川信三

    坪川国務大臣 それぞれの立場でこれらの各位をこの法案の制定によって守り得る、これを守るのは当然だ、私はこういうような気持ちでおります。
  89. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 大臣、矛盾を感じませんか。さっきも井上委員が指摘をいたしましたように、たとえば大きな工事になりますと、いま言ったとおり、大手がみんな談合で工事をとっていますね。そうして最初の工事価格よりも、実際請負業者がきまって工事が動いている過程の中で、どんどん設計変更、こういうことが行なわれておるのです。もちろん、小住宅の建設などに当たっておる一人親方が担当しておる工事なんというのは、工期も短い。短いけれども、いまの大きな大手が請け負うような大事業の場合に、何回も設計変更が加えられるということは、よほどの場合でないとないのです。たとえばダムの高さが当初の予定は百メートルだった、これを二百メートルにしようという場合なら、いろいろ変わってくることはわかる。たとえば十メートルの堤防の高さは同じでありながら、工事金額が三割も四割も五割も違っていくというのは、私どもはこれは黒い霧の背景を非常に感ぜざるを得ないのです。末端の一人親方その他にはそういうことはないのです。長い間の相互の人と人との信用関係を土台として業を進めてきておるわけでありますから、したがって、このような皆さんと、政府をも動かすような力を持っておる大手の大業者とを同じ法律で縛ろうというところに私は無理があると思うのです。したがって、現行建設業法は明瞭に大手を優遇して、下のほうにいる最末端の一人親方、途中にある中小零細業者までますます圧迫をして、大手だけがきわめて大きな力を持つようになる、これが今度の業法改正のねらいになっておると思うのです。私は、この際、やはり下のほうの、特に一人親方なんというものは、今回の業法のワク外にすべきじゃないかという意見を持っておるのです。大臣、どんなに抗弁したって、一人親方をこの法律で保護するなんということは不可能です。圧迫があるだけですよ。
  90. 川島博

    川島(博)政府委員 お答え申し上げます。  一人親方の問題につきましては、政府部内におきましても、中建審におきましてもたいへんな議論を呼んだことは、先ほどお話ししたとおりでございますが、適用除外金額を百万円にするか、現行の五十万円にとどめるか、あるいは二百万にするか、あるいは三百万円まで野放しにするか、これはいずれも議題にのって意見が戦わされたところでございます。なるほど、三百万円という金は、今日の貨幣価値からいうとたいしたことはないと言えるかもしれませんが、ただいま三百万円で二十坪の家を建てるということは、われわれサラリーマンにとってはたいへんな投資でございます。一生に一回しかない投資。これが信用と技術を誇る善良な町方の大工さん、親方さんにうまく当たればいいのですけれども、いまの都会のサラリーマンは、これは流浪の民でございます。この一人親方さんが、はたして徳川時代から続いて、信用がおけるかどうかということは、発注者たる零細なわれわれサラリーマンにはわからないわけでございます。それを見分ける唯一の手段は、登録制度なりあるいは許可制度によって、国家からこの人は大丈夫だということが認められているかどうかということが唯一の見分け方じゃないか。そういう観点から、中建審におきましても、この許可除外金額はなるだけ低いほうがよろしい、現行の五十万円にとどめるべきであるという意見相当あったわけでございます。しかしながら、取り締まるほうからいえば、それでは数が膨大になりますから、取り締まりもたいへんだ、それから許可を受ける零細業者のほうもたいへんだということで、この際これを二倍にして百万円程度が適当じゃないかということできまったわけでございます。  したがいまして、現在三百万円の工事を無登録でやっている違反業者を、許可制の機会にこれを正当化すべきではないかという御意見には、全く反対でございます。それでは業法の改正どころか、改悪にしかすぎないというふうに考えます。
  91. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 局長、たいへんむきになってくるようでありますが、こっちもむきにならざるを得ません。  私は本会議でも指摘をいたしましたように、たとえば地方で一つの工事を受け取りますね。少々まとまった工事には全部大手業者が入っていっておる。この皆さんは、その工事を受け取った場合に、出かけていくのはせいぜい二人か三人の管理的な立場に立つメンバーだけなんです。あとは全部地方の業者がピンはねされてそしてやらされているのが現状なんです。この事実はあなたは認めますか。これを今度の業法でさらに擁護しようということじゃありませんか、さらに正当化しようということじゃありませんか。
  92. 川島博

    川島(博)政府委員 日本建設業の実態が、一企業者が工事をとりまして、これを各職別専門業者に分割して下請けさせるということは事実であろうと思います。したがいまして、今後の建設業あり方といたしましては、なるだけ専門業者、職別業者を育てましてこれが専門化を促進するということが、業法改正の一つのねらいでございます。そのために、従来、一人の技術者がおれば、しかも一回登録を受ければ、いかなる建設工事でも自由に受注し得るという機構を改めまして、業種別の許可制、たとえば左官工事なら左官工事をとりたければ、左官工事業としての許可を受けなければできないということによって、職別専門化を促進しようということが一つのねらいでございます。したがいまして、決して大手を擁護するというような気持ちじゃございませんし、今回の改正によりましては、むしろ、大手業者を特定建設業という格づけをいたしまして、特に下請保護についての重い義務を課するという制度に切りかえたわけでございますから、その観点でも、この法律が大手の保護偏重ということとはおよそ関係のない、逆の中小の保護の法律でございます。
  93. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 私はこれは与党の皆さんとも個別にはいろいろ話し合っております。与党の皆さんも、今度の改正案はやはり地方業者、中小零細、一人親方、こういうものには非常にきびしく当たるという性格を持ち、大手をさらに大きくしていく、擁護していく、こういう性格を持っておる、こういうふうに言われておる皆さんが非常に多い。  そこで、局長がむきになってくるので私もかっとくるのでありますが、一人親方、大工の棟梁さんや何かに、確かに、一人の市民が住宅やなんかの工事をやってもらうなんということは、一生に一ぺんかそこらしかない大事業です。したがって、そこはいいかげんなところで依頼なんかしたりするものじゃない。長い間の人間関係、それを土台にして契約や何かが生まれていっておると思うのです。ところが、現在の登録業者でさえ、登録業者の中で工事をいいかげんにしておる例が相当あるじゃございませんか。そうでしょう。職人の皆さんというのは、これはよく職人はだの人間というでしょう、信用が何よりも大事なんです。したがって、私の地域で知っておる限りでは、少なくともこれらの一人親方、職人の皆さんがいいかげんにしたなんということはないんですね。したがって、私は、今回の業法で、地方業者、中小零細、これと大手との関係にも大きな問題があると思いますが、少なくとも一人親方、職人の皆さんはこの業法とはまた別のもので一定のワク組みを法律的につくるというくらいのことがあっていいのじゃないかと思うのです。鹿島、間あるいは大臣の地元の熊谷建設から一人親方、大工棟梁さんまで全部この一つ法律で規制しようということは無理があると思うのです。無理がありませんか。
  94. 坪川信三

    坪川国務大臣 私は阿部委員の本質的なお考えについては全く同感でございます。私はやはり問題は対人間性の問題だと思います。法の運用も、法の適正な効率をあげるのも、すべて私は対人間関係の問題であろうと思います。ことに私は、一人親方といいますか、一人大工さんといいますか、われわれ子供のときから、近所のあの親方に頼めばもう万事修繕もあるいは建築もやってくれるという、非常な何か人間的な、日本人的な、一つの民族的な親しみといいますか、信頼度というものが非常に私は深いものを感ずるとともに、これらの方たこそほんとうに人生の苦労を持たれる人間性豊かな各位でございますので、こうした方たに対する問題については、やはり信頼性というものをお互い持つということで、人間的な一つの腕と人間性のりっぱな誠実さのある人が私は一人親方の大部分を占めておられると思うのでございます。そうした気持ちで思うときに、この問題に対して、一つの技術的な、立法的な問題で論議をいたしましてこれらの各位がいわゆる一つの希望を失うようなことのないような私は期待と行政指導もいたしたい、こういうような気持ちでおることだけはひとつ御理解を願いたい、こう思っております。
  95. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 いまの大臣答弁は、私全く同感です。そこで、現在提案されております業法は、大臣御答弁のように内容的にそうなっているかと言うと、大臣のお気持ちのようになっておらないのがいま提案されておる業法だと思うのです。  私、おそらくきょうだけでこの業法の審議が終わるなんというものじゃなくて、おそらくは今回は廃案になって、来国会にまた出し直される、その際は、一人親方のほうは別にして、大手や中小零細の、従来いわれておる建設業者、これは区分したもので出されるように希望したいと思うのですが、さっき局長答弁で、局長が国税庁長官になったり、あるいは労働省の職業安定局長になったり基準局長になったりして御答弁がありました。そこで、大工、左官の棟梁、こういう皆さんが、今度の法適用除外の工事金額を百万円にしたと仮定をいたします。そうすると、百万円以上の工事をやりたいと考える方々は、少なくとも許可業者になってきなさいということになるわけですね。そこで問題は、この許可業者になった皆さんが、給与所得か事業所得かという問題の場合には、さっきの御答弁では、ケース・バイ・ケースで、一がいに事業所得だというようなきめつけ方はいたしません、こういうふうに理解できる答弁がありました。これは私、国税庁長官の答弁ならば納得いたします。いつ計画局長が国税庁長官になったのか知りませんけれども、私はそんな甘いものじゃないと思う。たとえば、出かせぎの問題や何かで大ぜいの皆さんが東京に出てまいりまして、死んだり、何か事故が起こる、その場合、あるいは失業保険の問題で問題が起こる、こういう問題でたくさんの相談を私はいただくわけでありますけれども、いま地方でどういう問題が起こっているかということになりますと、労働省の職業安定局が失業保険の問題で各県の失業保険課その他に指示をする場合に、社会保険を適用されておる事業所でなければ失業保険の認可は取り消しますという通達が出ていっておるのです。一人親方、大工が、いま問題の健保で参議院はもめているわけでありますが、あの適用を受けるなんということが簡単にできっこないのです。その一事をもっていたしましても――失業保険の擬制団体適用も許可業者になっても同じに扱っていきますなんということをここで川島局長おっしゃるのでありますが、私は労働省の職業安定局長か何かがおっしゃるなら、そこでさらに話を詰めなければいかぬと思うのです。税の問題で、事業所得か給与所得か、これは国税庁長官あるいは大蔵大臣がおっしゃるなら、私は観点を変えたいと思う。そんな甘いものじゃありませんね。窓口でそれぞれ税務署も、あるいは職安も、基準局もケースワーカーがいるわけですよ。この皆さんがいまの川島局長の答弁のように簡単なわけにまいりませんね。私もずいぶんとそういう問題に直面をしていろいろな問題をやってきておるのでありますけれども、そんな甘いものじゃない。したがって、いま一人親方、職人の皆さんが、百万以上の工事をやりたかったら許可業者になってきなさいと言いましても、そんな簡単にはまいりませんね。局長どうです。
  96. 坪川信三

    坪川国務大臣 たいへんなにでございますが、決しておことばを返すような意味で申し上げるのじゃございませんけれども、川島局長が先ほどから答弁いたしております気持ちというものは、決して労働基準局長とか、あるいは職安の局長とか、あるいは国税庁の気持ちで申し上げておるのでなくして、あくまでも現下の建設業界というものに対しましての適正な、公正な、合理化的な問題をひとつ解決いたしまして、よりよき国土建設の基本的問題を解決したいという一念から申し上げた次第でございますので、その点、基本的な考えは、全く私の信頼する部下でございますので、私同様の気持ちでおりますので、その点はひとつ御海容を願いたい、こう思っております。
  97. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 それは私も川島局長をよく存じ上げておりますし、個人的には決して不信の念を持っておるなんということはございません。なかなか有能な行政官だ、こう思っておるのです。ところが、事、業法の問題になると、目の色を変えて固執をしてくる。これはどうも私ちょっと合点が参らぬ。  そこで私は、やはり局長も地域末端の広範な現場の状況がどのようになっておるかということをよく理解をされて、ひとつ私どもの意のあるところもくんで、どうせ今国会では廃案になるのですから、来国会に向けてひとついまから御準備を願いたい、こう思うのです。  そこで、もう一つの問題をお伺いして――私は、時間の関係で当初は一時間半と言われていましたが、なるべく五十分くらいで私の質問を切り上げたいのです。  そこで、建設業法というのは、当初は、下請やピンはね、こういうものをなくするというところに本来の精神を持っておったのじゃないか。業法制定当時の速記録やその他を見ながら私は実はこういう感じを持っておるわけであります。今度の業法では、下請とかピンはねとか、こういったものを規制しようという方向とは逆に、むしろそれをさらに大胆に認めていこうとする、そういうふうに思われてならぬのですが、局長どうでしょう。
  98. 川島博

    川島(博)政府委員 お答え申し上げます。  御承知のように、今回の業法改正は、特定建設業、一般建設業の許可制度によりまして、特に特定建設業については下請履行の義務を加重するということ、それから元請、下請人については、特に下請保護についての規定を強化していく。発注者、元請人におきましても、従来契約の片務性といわれていた弊害を除去するために、可能な限りの改正を行なったわけであります。したがいまして、ピンはねということは、今回は、やはり元請業者は原価を割るような工事を下請にのせてはいかぬという規定を挿入することによりまして、この実効を確保したい、そしそのような実態がありますれば、建設大臣または都道府県知事が公正取引委員会に必要な措置の請求ができるようになっております。また、これを受けて公正取引委員会は、勧告なりあるいは審判による差しとめ命令によってその違反を是正するという措置を採用しておるわけでございます。そういうような関係から、この改正案が施行されますと、御指摘のような事態も相当改善をされるということを信じてやまない次第でございます。
  99. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 大臣、いまの局長の御答弁ですが、私どもはなまなましい現場の状況というものをよく知っておるわけであります。たとえば、先ほども指摘がありましたが、請負などの場合、事実上いま全部談合ですね。指名競争入札なんという規則どおりのことなんかやっておるのはどこにもおりません。そして規則どおりに、たとえば予定価格の最低価格、ここのぎりぎりのところにがんばるような業者は、それぞれの地建にいたしましても、工事事務所にいたしましても、あるいは都道府県段階の建設当局にいたしましても、指名競争入札で本来のあの規則の精神のとおりにやった人は、次から全部指名をはずされてしまうのです。談合に応じなさい。ですから、さっき言ったように、早明浦の場合に、何度やっても一番下の札は鹿島が入ってくる、やっぱりそういうことになるのです。いまは全部談合ですよ。(「協定だよ」と呼ぶ者あり)協定が縦令ということです。政府のほうはこのことをいま奨励なさっているのですか。これに応じない業君は次から全部指名からはずされているのです。大臣、どうでしょう。
  100. 坪川信三

    坪川国務大臣 先ほどから私が申し上げておりますごとく、建設行政の中にあって最も倫理性を持たなければならぬという問題は、いわゆる建設の入札あるいはこれに伴うところの諸般の問題点である、私はこう考えております。私といたしましては、各責任者に対しまして指示をいたしておりますのは、私もかつて福井市長の経験から申しますと、いわゆる最終的な最低限額、というものは、入札の十分前に私自身が封をいたしましてそして指示したということが、私の市長時代の経験でございますが、私はその経験を思いながら、関係責任者に、厳正な立場でこれらの処理を行なうということを指示いたしておるような次第でございますので、こうした不快な疑念とか、あるいは不正な暗雲、黒いものがおおいかぶるようなことを建設省としては絶対とらない方針をもって行政指導をいたしておることを御理解願いたいと思います。
  101. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 不正なことをやっておるということをいま直ちに私言おうと思いません。しかし、指名競争入札ということは、予定価格があって、最低価格を下回ったものは失格するのでしょう。予定価格を上回った場合、これも失格でしょう。したがって、指名業者の中で談合不成立ということになりますと、最低価格の限界価格ぎりぎりのところで入札をした人に当然落札になるわけでしょう。ところが、そういう協定に応じないでがんばるような業者は次から指名されないという状態が行なわれておる。私は、入札予定価格あるいは最低限度価格がばらされているとか、こういうことを言おうとしているのではない。ところが、業者間の談合で――協定とは談合のことです。ですから、こういうことを建設省では御奨励なさっておるのかどうか。
  102. 坪川信三

    坪川国務大臣 先ほど、ほんとうに大事な問題として私の心境を申しましたとおりでございまして、したがって、かかることのないように、もし万一あったといたしますならば、厳正な処理をいたしてまいりたい、こう申し上げます。
  103. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 そこで局長、これはどうですか。そういう不正やいろいろなものがあった場合、知事その他が、異議申し立てですか、何かあると言っていましたね。こういう契約の内容や何かで不正があるという場合に異議の申し立てをすることができるということを、知事や何かだけでなくて、国民だれでもの固有の権利にするということをこの業法で規定するわけにいかないですか。知事や何かというと、政治家ほど業界と深い関係にあるものはないのですから、それがどうして異議の申し立てや不服の申し立てをするはずがありますか。そんなことは絶対ありません。したがって、国民のだれでもが異議の申し立てをすることができる。異議の申し立てがあったときは、かようかようなことをしなければならぬということを業法で規定すべきじゃないですか。
  104. 川島博

    川島(博)政府委員 お答え申し上げます。  談合につきましては、現在刑法九十六条ノ三に、「公正ナル価格ヲ害シ又ハ不正ノ利益ヲ得ル目的ヲ以テ談合シタル者」は、二年以下の懲役云云という刑事上の罰則規定がございます。同じように、会計法等においても、そういった不正な執行を行なった者は指名停止処分ができるようになっております。このように、不正な執行につきましてはそれぞれの刑法あるいは行政法規で手当てがされておるわけでございます。これを第三者たる国民からの告発を認めたらどうかということでございますが、現在の不服審査法では、自己に直接不利益あるいは権利の剥奪を受けるというようなものについては広く不服審査請求ができるようになっておりますが、こういった自分の利害には直接関係のない行為について広く申し立てをする制度はございません。しかし、制度がないからといって、そのような道がふさがれておるわけではございません。事実私どものほうにはしばしば投書の形でございます。そういった場合には事実を調査してしかるべく処理することにいたしておりますので、そういう道が全くふさがれておるわけではなくて、私どもは、そういう事実がわかり次第、適宜適切な処分をいたすことにいたしております。
  105. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 来国会新たに提案されました場合にさらに申し上げたいと思います。  そこで、この機会に、五分間で済むと思うのでありますが、道路局長、道路整備五カ年計画がことしで三年目、来年が四年目であります。そういたしますと、来年あたりには、さらに今後将来に向けての新しい道路整備計画というものを策定しなければならぬ時期に来ているのじゃないかと思う。その見通しは一体どうか。これが一つ。  それから、私は、昭和四十二年に新しい五カ年計画がスタートを切った際に指摘をしたのでありますが、六兆六千億というものをすべてが大臣の判断でさじかげんできるような現在のこの予算運営、事業費の運営というのは私はまずいと思う。そうするとどうしてもメガロポリスに集中をして、地方のほうが薄くなるという傾向が強まっておるように思います。したがって、六兆六千億なら六兆六千億の五カ年間の計画というものを、地方別、都道府県別の五カ年間の事業はどのようにやるのかということを、道路なら道路の種類別におおよそのめどは出すべきだ。それは、若干の留保しておかなければならぬ部分は、行政上いろいろ動きますから必要でございましょうが、総体のものは、地域別に、地方別に、都道府県別に私はこの計画の六兆六千億をどのように運用していくのかというおおよそのめどはやはりつけておく必要があるということを指摘したのですが、あれから二年たっておるのですが、なかなかこの面は煮詰まってきていない。私はぜひそうすべきだと思うのであります。この点についてはひとつ大臣のほうからも御答弁を願いたい。
  106. 蓑輪健二郎

    ○蓑輪政府委員 御承知のように、現行の五カ年計画が四十二年から発足いたしまして、ことしがその三年目になっております。いままでの例を言いますと、大体第二次から第四次までみんな三年ぐらいで新しい計画に入っております。いま予算要求の時期でございまして、現在いろいろ検討をしておる段階でございます。いままでの例を見ますと、やはり経済指標の大きな変更とか、特定の事業を進ませるために道路の投資をふやす、また、交通量の増に伴って道路投資をふやすというような理由で改定してまいったわけでございますが、今回は、これも御承知のように、三カ年たちましてまだ事業相当残っております。そうなりますと、いままでのような理由は立たないのかとも思っております。ただ、どっちにいたしましても、現状では道路と交通の関係は非常に悪化する一方であるということも事実でございますので、そういうことも考えまして、五カ年計画をこの際改定すべきかどうか、いま検討しております。どっちにいたしましても、やはり財源をふやすというような方法をある程度めどをつけませんと、改定して大きな数字にいたしましてもなかなか実行できないようなものでも困りますので、財源の問題とあわせて検討しておる次第でございます。  御質問の第二でございますが、やはり五カ年計画というのは、私のほうも、地方建設局別、各ブロック別の大きな指標をきめまして、その中で各県別も一応つくっておるわけでございます。ただ、これは県別につきましては、当初考えたものより思わぬ仕事も出てまいります、また、当初考えたものがなかなかできないようなものもございまして、この県別ははっきりしたものでございませんが、大体県がいまの五カ年で考える指標になるような数字は県に示しております。ただそれも、いろいろ他事業の関連が出てまいりますとやはりそれを止すということもございまして、ある程度留保しながら県別のワクも一応は示しております。これも、いま言いました、決定的なものではございません、ただこの程度でやったらどういうことになるかという程度の指標でございます。今後の五カ年計画の改定でも、やはり同じように、一つの県なら県でどのくらいができるかというような目標は示して、その中で道路投資が有効に使われるようなことで五カ年計画の道路事業を遂行していきたいというように考えております。
  107. 坪川信三

    坪川国務大臣 御指摘の道路政策の基本的な問題については、均衡のとれた国土開発、建設をいたす場合に基本をなす問題は、道路であると考えます。したがいまして、いま御指摘になりましたように、これらの道路政策を、年次計画を立てながら、財源を考えながら、これを推進していくことが建設省基本方針でございます。したがいまして、御指摘のとおりに、総合的な立場に立って、地方道を含めたいわゆる府県別の道路の実態というものも十分やはり基礎に置きながら、予算配慮、予算措置を講じなければならぬ。ただ御理解をいただきたいのは、東京のオリンピックがあった場合においての東京近辺の道路の問題、あるいは万博があった場合における関西、近畿圏の道路の問題、あるいは札幌の冬季オリンピックの問題等からくる特殊性な場合にはおのずから異にいたしますけれども、そうしたこと以外の問題については、私はあくまでも公平な立場において、国土建設の均衡のとれた、過疎過密対策を含めましての道路政策の予算執行、予算配慮をいたすべきである、こういうような考え予算の配慮、また道路政策を進めていることを御理解願いたいと思います。
  108. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 私が申し上げるのは、六兆六千億あるわけですね、そのうち八割なら八割は、五カ年の間に、財源さえ順調に調達されるならば、この県のこの種類の道路はこのくらい、この種類の道路はこのくらいだというめどを、六兆六千億の八割ぐらいはまず明瞭に示しておく、あと若干の調整はその二割のところでやっていく、こういうことにしないと、どうも過密地域、メガロポリスのほうにだけ予算のしわが寄って、過疎地帯はだんだん置き去りにされる、こういう傾向がこの数年間非常に顕著になっておるように思います。したがって、これはまだことしを含めますと三カ年間の今次計画の残っておる事業もあるし、来年あたりはさらに新しい五カ年計画を策定しなければならぬ、こういう時期でありますから、考え方はそういう方向で進めてほしい。  それから、これで終わりますが、さっきの局長答弁――大臣が答弁しましたので話がはぐらかされたのでありますが、一人親方、これは擬制団体適用でも、あるいはいわゆる労働者災害補償法の問題にいたしましても、あるいはまた、日雇い健保の問題にしても、さっきの局長答弁のとおりでいけると思う。ところが、許可業者ということになった場合に事業所得になることは、これは現行の税制体系からいって当然なんです。したがって、これは私はさっきの局長答弁のようなわけにはならぬという認識をしているのです。また逆に、すること自体が旧問題なんです。したがって、この面については、来国会再提出をなさるとすれば、その際までにさらに十二分に検討してもらわなければならない点だ、こう思います。  以上で終わります。
  109. 始関伊平

    始関委員長 井上君。
  110. 井上普方

    ○井上(普)委員 私は、この業法に関連いたしまして特にお伺いしておきたいことがあるのでございます。この九月の中旬にきめるとかおっしゃっておられる本四連絡橋について、特に先ほどもジョイントの関係で問題が出たわけなんですが、この際に、どういう形式を――いままで、東名高速道路にいたしましても、あるいは大きい事業にいたしましても、セクション、セクションに分けることができました。しかし、今度の場合は、一つの橋ということになりますと、一本の企業体でやらざるを得なくなってくるのじゃないか、こういう考え方が出てくると思うのです。そういう場合に、建設省としては、あるいは二千億、あるいはまた二千四、五百億に及ぶのでありますから、どういう形の施工業者としてジョイントにするのか、あるいはまた、そういうような一つの企業体、大きい組合をつくってやっていこうというお考えなのか、そこらあたりをひとつお示し願いたいと思うのです。
  111. 蓑輪健二郎

    ○蓑輪政府委員 実は本州-四国の橋の施工の問題でございますが、現在のところ、やはり早く着工したいということで、それに力を入れておりまして、まだ施工の体制まで検討しておりません。ただ、どうするのかと、こう聞かれますと、私のいまの考えでは、今度の橋は、どのルートをとりましても、つり橋が相当数多く出ます。そのために、つり橋のタワーがございますが、それの橋脚が数多く出ます。そうなりますと、この海中の基礎工事というのは、場所もそう広いところでもございませんので、いろいろ違った業界の人が入ってやるということがはたしてうまくいくかどうか、その辺疑問を持っております。それからもう一つは、そういう海中の構造部がたくさんございます。それの資材を運送するために、中国側または四国側に物掲げの埠頭をつくらなければならぬと思います。また、その輸送の手段として作業船もつくらなければいかぬ、こういうものを各業者めいめいやるのは、これはもちろんむだでございます。その辺は発注者側がある程度やるにいたしましても、それの運用となってまいりますと、やはり業者がたくさん入っておるとなかなかその運用の面でもむずかしいかと思います。  そういう点で、ある程度はいまのジョイントの利点も出てくるかと思いますが、この辺は、いまの着工の、一つの橋についてどういう順序にやるか、一応計画を立てておりますが、さらにもう少し深い検討をいたしまして、そういう物掲げ場、作業船の運用、こういうものをあわせまして、一番いい方法できめてまいりたいと考えております。
  112. 井上普方

    ○井上(普)委員 実は佐藤内閣はこの九月の中旬に決定すると、こうおっしゃっておるのですが、大臣、これはついでですが、あなたはこの間山崎委員質問お答えになっておられましたが、どうです、完成時期を明示するということぐらいはさめたらどうでございますか。山崎さんは、この九月に、三本ともかけるということを決定しそうだ、こんなことでは困るということをおっしゃった。私もそう思うのです。しかし、この完成時期、このルートはいつ完成するのだ、このルートはいつ完成するのだぐらいはひとつおきめになる必要があると思うのですが、これがまず第一点です。  それから、業法との関係において、あれだけの二千億近くになりますと、幾ら鹿島建設一つがやるといっても、これはできないと思うのです。ただ、ジョイントでやるということになりますと、これまた問題が出てくる。当然これは、新宮殿をやったような、ああいう協同組合的なものにならざるを得ないのじゃないか。そうすると、あなたのいまおっしゃったように、これは非常に問題が出てくる。そういうよりも、むしろ一つの企業体というか、施工の公団みたいなものをつくられるという考え方も出てくるでしょう。それともう一つは、ほんとうの意味の、新宮殿のごとく一つの企業体、企業組合をつくっていくという方法、こういう方法があると思うのです。それをあなた方はどういうようにお考えになっていますか、これをお伺いしたい。これが第二点です。  それから、もう時間がございませんので、私、最後に申し上げておきたいのですが、この法律は、先ほど来阿部委員あるいは草野委員並びに私が指摘いたしましたように、不備なる点が非常に多いのです。大手業者が中小企業の分野へどんどん進出している、これをチェックする方法がない。あるいはまた、発注者と元請の関係においては片務性がある。刑法の九十六条ノ三に談合の罪というのがあります。これがつくられたのは昭和十六年なんです。そのときには、つくられたのが、軍部によって業者が人身御供にあがってくるじゃないかというようなことがありましたので、これは衆議院で修正になった事項なんです。そうしてこの談合罪というものは成立したのでございますが、あのときといまと比べてみますと、はるかに自由競争の世の中になっておるのでございますけれども、いまの契約内容を見てみると、どういたしましても発注者のほうが非常に強くて、片務性は否定できないと思います。私はこの談合罪をきびしくやれという主張をきびしく持っておる者です。しかし、それと同時に、この片務性を除けということも私は言わざるを得ないと思うのです。牧野英一博士の、談合に対する著書なんかを見てみますと、片務性があるのだから、これは業者が談合をやるのは正当防衛だというような考え方すら生まれておるのです。でございますから、こういうような点は、あなたも佐藤内閣の国務大臣でございますので――あなたは就任早々のテレビの放送で、清潔な、清らかなる建設行政をやりたいということを御表明になったことを私は覚えております。しかし、いま建設業界に対して国民はどういうような目を向けておるかと申しますと、黒い霧がいつもつきまとっておるとしか思わないのです。先ほど阿部君も言いましたように、この談合、これがともかく横行しておる。あるいは、天の声というのが横行しておる。これに対して国民は不信感を抱くと同時に、また政治に対する不信感も出てきておると思う。したがいまして、この刑法の九十六条ノ三を変えなければならないと思うのです。同時に、この契約事項の片務性というものは改めなければならないと思うのです。ここらを閣僚としては御検討になって、国民の疑惑、不信というものをなくしていくべきではないか、このように思うわけでございます。  それともう一つは、現在の業法においても規制できるにもかかわらず、先ほど計画局長が御発表になりましたように、知事の処分が六百四十一件、登録停止が三十三件、営業停止が二十六件、私はこれは半年か一カ月くらいのことかと思っておったら、満二十年間にこれだけしかやってない。ここらに問題があるのです。これを建設省としては、あなたが大臣に就任してから指示した、こうおっしゃいますけれども、実際やられておらない。ますます横行しておるのが現在の実態です。これをもう少し法的に業法の中にきびしく織り込む必要がある。さらには、先ほども申し上げましたように、ジョイントベンチャーの規制がいま全然ない。法的にもこれも入れなければならない。あるいはまた、これは一人親方のみに対する改正案なんだと私らは規定せざるを得ない。こういうようなことが一つ。それから、下請代金支払遅延等防止法という法律はあります。ありますけれども、実際にこれが行なわれておらないからして、現在建設業界においての倒産というものは非常に多いのです。ここらをもう一度この法律を根本的にやりかえて御提出になる御意思ありやいなや、最後にお伺いしたいのです。
  113. 坪川信三

    坪川国務大臣 井上委員の御指摘になりました第一の問題、これにつきましては、御承知のとおりに、竣工の大体のめどをつけるべきであるというごもっともな御意見でございます。これらの点、着工をどうすべきか、あるいは竣工のめどがどうあるべきか、あるいはこれらに対するところの併用橋の問題をどうすべきか、いろいろな問題についていま最終的な段階の煮詰めを事務当局でやっておりますので、それなどを加えまして、九月にはぜひ結論を出させていただきたい、こういうような方針であります。御意見は御意見として十分そんたくいたしたいと考えております。  二番目の問題でございますが、事業主体の問題等につきましても、その橋その橋自体にいろいろのことがございますので、どういう方法でこの事業の施行をいたしていくかということも目下事務当局で十分検討をいたしておりますので、これらの点についても御期待に沿うよう配慮もいたしてまいりたいと考えております。  また、最終の御質問である、業法に対する、この改正措置に対する問題点のいろいろあることは、私は決して否定はいたしておりません。そうした立場で、私は本委員会の議論あるいは要望、御指摘等を十分踏まえまして、政令その他において運営も考えてまいりたいと思います。しかし、いまこれを出直すかという問題がございますけれども、私といたしましては、本会議で総理も述べられましたごとく、私も述べましたごとく、この法案を撤回いたしまして、新たなる法案として提出をいたすという考えは持っておりません。したがって、国会の皆さまの御協賛によって私は私なりに態度を考えてまいりたいと思いますが、基本的に、いまこの法案の撤回を考えていないということだけは御理解願いたいと思います。
  114. 蓑輪健二郎

    ○蓑輪政府委員 本州-四国の橋の施工体制でございますが、これは先ほど申し上げましたように、橋の中で基礎工の楽なものと非常にむずかしいものがございます。むずかしいものにつきましては、これは水中の深い掘さく、深い基礎工でございます。これについては、ある程度発注者が工法を指定せざるを得ないと思います。そういうことも考えますと、やはり先ほど先生おっしゃいました、共同した一つの企業体、こういうところでやってもらうのが一番いいように思いますが、そうなりますと、やはり契約の問題が随意契約になるという点の難点がございます。また、これも取り越し苦労かもしれませんが、この資金のために外資導入ということになりますと、その導入のときの借款についていろいろな条件がつくというようなこともございます。私たちのいまの考えは、できるだけ日本の技術でこの難工事をやっていきたいと考えております。その施工につきましては、やはり各業界が総力をあげた形で参加するようなことが必要じゃないかと考えております。具体的な企業体をつくるか、つくらないかは、まだ時間もあることでございますし、検討を続けてまいりたいと思います。
  115. 井上普方

    ○井上(普)委員 現在のこの建設業法の中では、ジョイントについての規制もないのです。法的規制もない。ただあるのは協同組合法だけなんです。はたしてこれでできるかどうかということも、これから本州-四国の橋もありましょうし、あるいは青函のトンネルの問題もありましょう。あるいはまた、これからますます時代が進歩していきますと、大工事というか、これは単に建設省関係のみならず、大きなプロジェクトの、たとえば宇宙開発あるいは海底開発というような問題も出てきましょう。そういうようなものに対応するだけのともかく業法の改正というものは、私はある程度やっておかなければいかぬと思うのです。それもやはりこの中に別に法律でつくっておかなければいかぬと思うのです。そういうのが抜けているのです。しかし、九月の中旬にきめるといっても、着工はいつになるかわからぬ、時間があるからと言うけれども、時間があったら困るのですよ。早く着工していただくには、そういうような法律体系まできちっときめておかなければいけないのではないか。そして、この法律というものは先ほど申しましたように非常に不備なものがあります。大臣としては撤回する意思はないかもしれませんが、これはわれわれは廃案にする意思も十分ございますので、その際には、先ほど来申し上げました点を十分に織り込んだものにしていただかんことを最後に申し上げまして、私の質問を終わります。
  116. 始関伊平

    始関委員長 次回は、来たる四日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時十五分散会