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1969-06-12 第61回国会 衆議院 建設委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年六月十二日(木曜日)     午前十時十八分開議  出席委員    委員長 始関 伊平君    理事 天野 光晴君 理事 大野  明君    理事 金丸  信君 理事 草野一郎平君    理事 田村 良平君 理事 井上 普方君    理事 佐野 憲治君 理事 吉田 之久君       伊藤宗一郎君    池田 清志君      稻村左近四郎君    進藤 一馬君       葉梨 信行君    廣瀬 正雄君       古屋  亨君    堀川 恭平君       森下 國雄君    阿部 昭吾君       岡本 隆一君    金丸 徳重君       島上善五郎君    福岡 義登君       渡辺 惣蔵君    小川新一郎君       北側 義一君  出席政府委員         建設省住宅局長 大津留 温君  委員外出席者         厚生省環境衛生         局水道課長   国川 建二君         通商産業省公益         事業局公益事業         課長      吉崎 英男君         参  考  人         (上智大学教授有泉  亨君         参  考  人         (東京大学教授日笠  端君         参  考  人         (東京首都整         備局長)    石井 興良君         参  考  人         (横浜企画調         整部長)    田村  明君         専  門  員 曾田  忠君 六月十一日  自転車道整備等に関する法律の制定に関する  請願(森義視紹介)(第八六五八号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  建築基準法の一部を改正する法律案内閣提出  第一〇五号)      ――――◇―――――
  2. 始関伊平

    始関委員長 これより会議を開きます。  建築基準法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  本日は、本案審査のため、参考人として、上智大学教授有泉亨君、東京大学教授日笠端君、東京首都整備局長石井興良君、横浜企画調整部長田村明君、以上四名の方々に御出席を願っております。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  参考人各位には、御多用中のところ、当委員会法案審査のため御出席いただき、ありがとうございました。どうかそれぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べくださるようお願いいたします。  なお、議事の整理上、初めお一人十五分程度御意見の開陳を願い、後刻委員からの質疑の際十分お答えくださるようお願いいたします。  御発言の順序は委員長に御一任願うこととし、有泉参考人よりお願いいたします。有泉参考人
  3. 有泉亨

    有泉参考人 御紹介いただきました有泉ですが、私は二つの資格でここに呼ばれているように了解をいたしております。一つは、違法建築被害者の会というのがございまして、その会長を頼まれております。その会長としてと、そのほかに学識経験者――まあ学識経験もございませんが、そういう範鷹に入る者として呼ばれているように思います。そう了解いたしまして、そこで、違法建築被害者の会といたしましてはこの法案賛成いたしかねる、もう少し慎重に練り直してほしいというそういう意見を持っておりまして、昨日あたり先生方のお手元に、われわれのほうで整理いたしました現在の問題点、それを今度のような改正でいいかどうかということが一応わかるように表のような形にしたものをお届けしてあると思いますので、はなはだ失礼な申し分ですが、それについて十分に御検討いただき、御勉強いただきたい、こう思います。  そこで、被害者の会の会長としての地位もございますが、私がここでぜひ申し上げておきたいことを二、三拾ってお話をしたい。  私も、個人としてもこの法案はもう一ぺんよく練り直していただきたいというのが結論でございます。というのは、建築基準法ができましたのは昭和二十五年かと思いますが、それから十六、七年の間やはり今回のような改正が行なわれないで来ております。今度改正が成立をしますと、これからまた十年とか十五年はこの法律でやっていくということになるので、そう簡単には手直しができないのじゃないか、そういう見通しでございます。そうすると、この際少し慎重にやってもらいたい。あとから簡単に手直しができるものならば、また来年やり、再来年やるということでもいいわけですが、どうも実際上はそういうことにはなりにくい。そこで、ぜひこの際は慎重に御検討いただきたい、こういうことでございます。  建築基準法ざる法という悪名が高い法律であったことは、御承知のことと思います。すでに現在何十万あるいは百何十万か、正確な数字はわかりませんが、違法建築ストックができておる。違法建築ストックというのは、実は美濃部知事に陳情に行ったおりに美濃部さんが言われたことばで、いままでのストックはもう善意の第三者に渡っているかもしれないから、これから先は十分に取り締まるようにいたしましょうという返事をもらったのですが、そのストックがどうしてできたかというと、結局はいままでの基準法ざる法であった、あるいはこれを運営するほうに十分の気力がなかった、こういうことで、運営する側に気力があっても、この法律がたいへんなざる法であるということです。現行法ざる法であるということは、これから説明をいたしたいと思います。  その一つは、何といっても敷地というものを把握してない。建築基準法で、何坪の――私はどうも頭が古くて、なれておりますので坪でお話をいたしたいと思いますが、何坪の土地に何坪の建物しか建てられないとかいっておきながら、その何坪の土地というのがその建物のために使われたかどうかということをひとつも把握してないのです。たとえば、百坪の土地に、建築面積四割で、そこへ四十坪の建物が建つ。そうすると、少し端に寄せれば、あとの五十坪くらいは庭になるわけです。ところが、そうやって建てた人がその五十坪を分筆して売るということを少しも押えてない。しかし、ある人がある土地をだれかに売るというのを押えるのは非常にむずかしい。それは、売れないという土地世の中にできるというのはたいへんなことですが、しかし、買った人がその土地をもう使えない。百坪の土地、そこへ四十坪の建物を建てるために一ぺん使ったのだから、もうこの土地は使えない、そうすることはできます。買っても庭にしかできない、こうすることはできるわけですが、それには、ちゃんとした敷地台帳というものをつくりまして、この土地はすでに建築のために使った土地であるということを明確に表示する、第三者もそれを見れるようにする、そうしないと、第三者がたいへんな迷惑をこうむりますから。非常に極端な例を申し上げますと、霞が関ビルがあそこにありますが、あそこにはおそらく百坪くらいのあき地はある。そういうあき地をつくったから三十六階か何か建てられたわけです。その百坪の土地を三井不動産が分筆をして売るということを押える手はないのです。ところが、いまの法律では、買った人がその百坪にちゃんと見合うような建築の設計をして確認を求めてきますと、これを断わる手がないのです。どこにもない。行政指導はありましょう。それから、あんなところがそんなことになれば、それは政治問題にもなりましょう。ところが、地方のわれわれの身近な住宅地区にそういうことが一ぱい起きているわけです。建て売りの業者が一ぱい土地を使ったようなことで確認をもらって建てておいて、分筆してこれを売って、それがまた確認を求めてきているというケースは、幾らでも例をあげることができます。そのためには、敷地をちゃんと把握しなければだめだ。ところが、それが必要だということは建設省はもう前から認めているのですが、そこまで腰を入れてやるつもりがない。したがって、今度の案でも、敷地台帳敷地を把握するという手続は全然はずれている。それだったら、もう建蔽率というのは成り立たないわけです。一ぺん建蔽率をむずかしくいってみても、あとはずして、また売れば、しまいなんです。そこで、少し悪意にとれば、今度の建設省の案では建蔽率はあまりやかましく言わないで、建物のかっこうのほうでいこう、たとえば、北側斜線か何か入れる、そういうことでいこう、建蔽率は押えてみてもあまりうまく押えられない、そこをあきらめた案なんです。私は、そこをあきらめては、ちゃんとした都市建設できない、こういうふうに思うのです。それが、ざる法である第一点です。  それから第二点は、執行体制が全然だめだ。これはもうここで私が繰り返すまでもなく、日曜とか夜中とかにうちをどんどん建ててしまって、そこへ住んでしまえば勝ちだ。いいかげんな違反であれば、いまの執行体制では、こわせということは言われないということが、世の中の少し心臓の強い人には通り相場で、そして悪い、そういう心臓の強い者が得をし、隣の善良な者が損をしているということは、皆さん御承知のとおりと思います。しかし、それでは代執行をちゃんとやって、著しく公益に反するものはどんどんこわせばいい、こういう答えがそこから返ってくると思いますが、現実にはいまの体制のもとで代執行がそんなにできるか、私どもは全然悲観的です。東京都で、ある区は非常に熱心に、はなはだしいものは代執行をどんどんやる、そういう決心をして事を進めておられますが、それでも年に四つとか五つとか数えるくらいのもので、何十万という毎年建っ違反建築も含めて、そういうものを一つも阻止できない。  そこで私どもは、この法案建設省で練られている過程において、ぜひ執行罰というものを入れてくれ――これは建築審議会建設大臣に対する答申の中にも、執行罰など考えろということがあるわけでして、ぜひそれを検討してほしい、こういうことをたびたび申し入れましたが、ついにその執行罰制度は採用されませんでした。この執行罰というのはどういう考え方かというと、建てる途中で、この建築違反だから建ててはいかぬ、そういう命令を出しまして、それに違反して建築工事を進めると、そこでもう罰をかけるわけです。罰金か――執行罰の過料ということになるのでしょうか、それが幾らが適当であるかということは検討を要しましょうが、建てる途中でとめよう。建ててしまってからこわせというのはなかなかむずかしい。実際問題としてもなかなかむずかしい。そこで、建てる途中でとめろ、こういうことを献策をいたしました。そして私個人としては法務省にも関係がありまして、法務省の担当の人と建設省の係の人との間を直接会わせるということじゃありませんが、若干向こうの意見を聞いて、だいじょうぶらしいよとか、そういうことをやったのですが、ついにそれは採用されなかった。どういう理由かわかりませんが。建設省からもらったわれわれの質問書に対する答えでは、そういう執行罰制度というものは不可能とは思わない、しかし、もう少し慎重に検討したい、そういうお答えで、結局入っていないわけです。  それからもう一つ、私は労働基準法などという法律も勉強しておりますので、それと建築基準法とを比較した場合に、性格が非常に違う。労働基準法というのは、労働基準法違反がありますと労働者がすぐに被害をこうむるわけでして、労働者は申告をし、それから、たとえば時間外手当をもらっていなければ、時間外手当をよこせという請求を起こせるわけです。ところが、建築基準法は、ある一軒の人が違反してうちを建てる、隣の人が文句を言ってきますと、これは文句を言ってきてもだめだという、そういう体制、オーソドックスの法律理論でいうと、どうもだめだというほうが、いままでの通説といいますか、通りがいいのですね。建築基準法建築主と監督する者との関係で、隣から文句を言ってきてもだめだというのです。ところが、ある建築違反であるかどうか、そしてそれによってたいへん損害を受けて、これはがまんできないと思うのは、隣の人なんです。その隣の人がぜひ問題を起こせるようにしてほしい。隣の人が、基準法違反だということで相手を訴えてすぐ訴訟を起こせるとするまでにはなかなかむずかしいですが、それには法律上いろいろな手当てが必要ですが、少なくとも建築審査会というのに申し出て、建築審査会が、あなたのところは違反だぞというふうに公にこれを取り扱うという、そういう手続ができるようにぜひしていただきたい。そうすれば、隣近所がそれぞれお互いに戒め合って違反建築をしないという、そういうことになるのではないかと思います。  それから内容的に一いまのは、ざる法を何とかざる法でなくすための方策として二点申し上げたわけですが、内容的には、あそこに模型を持ってきておりますが、建設省のほうの言い分としては、大体いまは宅地がだんだん小さくなった、われわれ小市民はせいぜい三十坪くらいの宅地しか手に入らない、そこに住めるくらいのうちを建てるようにしてやりたい、こういうのだ、そうすると、たとえば、従来のように、三十坪でも初めに九坪、三十平米を引いて、残りの何割というのではとてもだめだ、だから、この三十平米を引くというのは今度の改正でなくす、それから、北側斜線なんてあまりきついことをおっしゃると、うちがもう建たなくなってしまう、こういうことを言われるわけです。しかし、それじゃ三十坪の土地基準法一ぱい一ぱい建物を建てたら――三十坪の土地を持っている人は、ぜひ一ぱい一ぱい建物を建てたいと思うので、これは無理からぬところです。そこで、それを建てますと町がどうなるのかというのが、あそこに持ってまいりました模型で、ちょっとそれを前に出していただいてよろしゅうございますか。  大きいほうの模型は第一種の住宅地区、坪数が三十坪、そういうことでつくってございます。小さいほうが第二種で、一区画が百五十坪、そういうので模型をつくりました。それで、これはいかに込んでいるか、これだけでおわかりと思いますが、あそこにT字に道が入ってもこれだけ込んでおります。あと速記はけっこうです。
  4. 始関伊平

    始関委員長 速記をとめてください。   〔速記中止
  5. 始関伊平

    始関委員長 速記を始めて。
  6. 有泉亨

    有泉参考人 ただいま説明いたしましたように、今後こういう建て込んだ住居地区ができるというのははなはだ心配なことでして、一たび地震でも起きますと一体どういうことになるか。法というのは、そもそも経済法則にまかしておけばどういうことになるかわからないのに公の立場から規制を加えよう、こういうものなのですが、その規制一般住民にとってあまりに無理であっては困りますが、あるいはわが身にも返ってくるかもしれないような適当な規制というようなものはやはり必要ではないか。そこで、たとえばあの北側斜線のとり方などでも、もう少しゆとりをとって、それぞれの地区に応じた斜線を入れるようにしていただければ、いま現にある優良な住居地区もどんどんこういうふうになってしまうということが防げるのではないか。若干は今度の住居地区のきめ方、そこでの隣での立ち上がり五メートルからこんなのでいくわけですが、こっちは十メートルから斜線が入るわけですけれども、それをもう少しそれぞれの地区に応じたゆとりを持ったものにしていただきたい。  時間がもう少し経過いたしましたので、また御質問でもございましたらお答えいたすことにいたしまして、繰り返しますと、もう少し将来のこともよく考えて、ぜひ敷地台帳制度というものを取り入れていただきたい。それから執行体制も、たとえば電気、ガスを供給しないというのも、これもできてからの話なんです。できるまでにそれをとめていただきたい。できてから供給しない、こうなるのはやっぱり無理かあるわけです。できてからこわせというのは無理です。そこで、途中でとめる方策建設省のほうは、途中でとめる方策というのをいろいろお考えのようですが、たとえば木の札の公示をするというようなことでしょう、か、それがどのくらいきき目があるか、私どもはなはだ疑っております。ぜひ途中でとめるようにしていただきたい。なお、全体として地区の特性をもう少し考慮に入れられるような、そういう体制にしていただきたい。この三点を申し上げました。(拍手)
  7. 始関伊平

  8. 日笠端

    日笠参考人 御紹介にあずかりました日笠でございます。  私は、都市計画のことを専門に研究しております立場から、この建築基準法改正につきまして、都市計画といったような観点から、特に集団規定について意見を述べさせていただきたいと思います。  それで、まず、建築基準法都市計画法と昔から姉妹法といわれております。都市計画建築行政建築の取り締まりということとは、密接に関係しておらなければならないわけでございまして、この間に空隙が生じないようにしてほしいというのが、私の一番大きな要望でございます。  これについて申し上げますと、今度都市計画法改正になりまして、そしてこれまで市街地の散漫な無秩序な発展というものに対して、わが国の都市計画法なり建築法というものは野放しの状態にあったわけでありますが、今度初めてこの市街化というものをコントロールする新しい制度都市計画法に取り入れられたわけであります。これが御承知のように市街化区域調整区域というものをきめまして、さしあたり十年間に市街化すべき区域と、それから市街化することが好ましくない地域とを都市計画区域の中ではっきりと分けることになったわけであります。調整区域のほうは、市街化は好ましくないということでありますから、これはどうしても規制ということになると思いますが、市街化区域につきましては、これを積極的に市街地として整備していくということで、公共団体の義務としてその土地に必要な公共施設整備ということをやっていくということがございまして、これで骨組みができるしかけになるわけでありますけれども、それに対して、今度は建築というものがいわゆる骨組みに対する肉づけというようなことで同時に整備されていかなければならない、こういうことになるわけでありますが、その場合に、その肉づけの方法として、都市計画から見まして望ましい市街地の形態というものは、やはり土地を一括しましてそれに対して望ましい形を設計するということでいくのが一番望ましいわけであります。したがいまして、全面買収によっていわゆる団地のようなものとして開発していくのが、一番、いまの日照の問題とか、あるいは交通の問題とか、その他の公共施設整備というようなものをそこで一体に実現することができるわけで、これが理想だということは言うまでもないわけでございますが、これだけでいくわけにまいりませんので、それに次いで今度は、土地区画整理というようなものが積極的に進められる必要があるわけであります。今度の都市計画法改正に伴って、市街化区域の大部分は、この土地区画整理を少なくともやった上で建築物を建てるというようなことをいわれておりますが、それは積極的に進めていただきたいと思うわけです。しかしながら、それもやれないで住宅が建っていく、建築物が建っていくという地域があるわけでありまして、これが、この基準法にもございますように、私道認定というようなことで、公共施設整備を最低限確保してそしてやっていくということで、今度それに対する線形、構造基準がつくられるわけでありますけれども、そういうような何段階かのやり方がありまして、これによって都市公共施設に対して建築的な肉づけができて、そうして一体となって市街地になっていく、こういうわけでございます。  そこで、団地開発の場合はいいといたしましても、区画整理でやります場合とか、あるいは私道認定でいきます場合に、これが量的には相当大きなものになるわけでありまして、これに対して、建築と相隣関係というものを最低限きめてやりませんといけないわけで、ここに建築基準法集団規定意味があるというわけでございます。したがいまして、この市街化区域都市計画できめました場合に、その中の用途地域指定というものが非常に大事になってくるわけであります。これにつきましては、都市計画の調査を十分にやってもらいまして、そして公害の関係とか、いろいろな点で他の部局とも調整をして現実的な合理的な指定をやっていただきたいということが、都市計画として要望される点だと思います。  その次に、今度の建築基準法の内容について見ますと、用途地域の再編成がございます。これまでは四つ基本地域がありまして専用地区というような制度がございましたけれども、これは、できればやってほしいというような形のものであった。実際にはなかなか使われなかったわけでありますけれども、今度はそれを八地域にいたしまして、専用地区というものを地域に格上げをして、そしてそれぞれの用途地域専用度を非常に高くしておるということで、これが一般に使われるということが期待されるわけでございます。そういう意味で、この用途地域の再編成をこれに盛り込んだことについては、私は賛成でございます。特に専用住宅地の問題でありますけれども、これは私が昭和四十二年に建設大臣特命査察を依頼されましたときに、そのときの報告に意見として申し上げたのでありますけれども一般の低い、一階とか二階建ての住宅地と、それから、これから不燃化いたしますが、その不燃化の進んでいくアパート地区とは、これははっきり分けないと、この両者の混合によりまして非常に好ましくない市街地が出てくるということで、これを分けることを提案したわけでありますが、それに関連しまして、今度は住居専用地区を第一種住居専用地域、第二種住居専用地域というふうにはっきり分けられまして、第一種のほうが一般低層住宅、第二種のほうがアパート地区というふうにはっきり分けられたわけでありますが、これは私の提案したことがそのまま生かされていると思います。  それから、その次に商業地域の区分でありますが、これも従来都市計画用途地域指定します際に困っておったことでありまして、いままでの商業地域一本では、住宅地の中の日用品の店舗も、銀座とか、そういう大規模な商店街も、同じ商業地域でやっておりまして、そのために、住宅地に好ましくないような施設まで許されるということで、住宅地環境を非常に害しておったと思いますが、これも近隣商業地域というものを分離して専用化しておりますので、この点も賛成でございます。そういうふうに、用途地域の問題につきましては専用化を進めたという点については、都市計画から見ましても好ましいことであると思います。  そこで、次に大きな問題といたしまして二つあると思うのですが、一つは、いままでの日本の都市というものは、大部分木造建物からできておりまして、都心部、副都心、そういうところを除きますと、圧倒的に木造建築が多いわけですが、これは欧米都市に比べまして非常に違っている点だと思いますけれども、それが最近におきましてようやく不燃高層化の傾向がはっきりしてまいりました。いままでもございましたけれども、それは非常にゆるい速度で、しかも地域的に大体商業地に限られておったわけですけれども、最近は一般木造住宅地コンクリート建物によって建ち上がるという趨勢がはっきりしてまいりました。これに対処するということが、これから非常に大事なことになるのではないかというふうに思うわけであります。ちょうど数年前に木造の非常に零細なアパート東京、大阪を主として蔓延いたしまして、いわゆる木賃アパートというものが非常に短期間の間に密集したわけですが、それが発生する要因があったと思うのですけれども、今度は木造市街地コンクリート化することによって、ちょうど木造アパートが密集したと同じように、建設の経済的な条件が整いますと非常に急速度木造コンクリートアパートが密集して、欧米でいま非常に困っておりますような、いわゆるかたい建物による密集地区というものが発生するおそれがあるのではないか、これをほっておきますと、ちょうど欧米経験しましたようなことを日本も全くそのあとを追ってやるわけでありまして、これはいかにもばかげたことであると思います。これをどうしてもこの際正しく誘導していく施策を講ずるということがありませんと、悔いを千載に残すのではないかという気がいたします。  そこで、この建築基準法というのは、理想的な市街地を描きましてそれを実現していく法律とは私は考えておりません。都市計画のいろいろな制度がございますし、市街地を事業によって積極的につくっていく必要がございますが、それと並びましてこの建築規制ということがあるわけでありまして、この建築規制だけでは必ずしも理想的な市街地をつくることはできない、つまり、町をつくっていくという手法の中で、建築基準法による建築の取り締まりは、非常に消極的な方法でございます。したがいまして、それだけで理想的な市街地をつくるというふうに考えるのは間違いであると思いまして、何といいましても、やはり積極的な開発事業によりまして、先ほど申しましたような、できるだけ一団地住宅とかあるいは再開発というような形でやっていかない限り、いい町はできないということがございます。  そこで、一戸一戸の建物を取り締まるというだけでは限界がございますので、これを地区としてまとめて、いい形に誘導していくという施策が同時に行なわれませんとだめなわけでありますが、特に問題になりますのは、私は第二種住居専用地域だと思います。これは今度は中層のアパートを許すということになっておりますが、アパートを個別に幾ら規制しましてもどれは限度がございまして、そこに模型がございますが、ここにある模型ではまだいいほうでございまして、非常に道路も整備してないようなところで乱立いたしますと、アパートの間に低層の住宅がまざったりいたしまして、非常に好ましくないことが起こるわけで、これについては、前にも報告してありますように、ブロック全体につきまして詳細計画を立てる、その地区建物の配置計画をちょうど団地計画と同じように立てまして、そして地区の住民に将来のあるべき姿というものを訴える、そしてできれば土地を共有するような形にはかって、そして零細な土地の所有者でも、地主さんが共同してアパートを経営していくということができるような方法というようなものを、役所のほうで技術面においてもあるいは資金面においても援助するということで指導をされることが必要ではないかと思います。このことは、基準法には詳細計画というものは制度化されておりませんけれども、私は、そういうものをわが国の建築の法規の中にぜひ取り入れたいということを前から主張しておりまして、もしそれが無理であれば、行政指導ということになるわけで、これをぜひ強力に推進していただきたいと思っております。  それからもう一つは、一般木造市街地のスプロールの問題でございますが、これは今度の都市計画法改正によりまして市街化区域というものがきめられて、これによってかなりスプロールを防止できるであろうということでありますけれども、この市街化区域をどう指定するかということにかなりかかっているわけで、これはあまり広い地域指定いたしますとあまり効果がないということになると思います。それで、スプロールも、アメリカのような状態にありますと住宅地の水準というものはかなり高いわけであります。都心のスラムは別といたしまして、郊外に建ちます住宅は非常に水準が高いので、この民間の開発にまかしておきましてもそんなに悪いものができない。そこで建築の取り締まりをやるというだけでかなり水準の高いものがどんどんできていくわけでありますけれども、ヨーロッパも多少そうでありますが、特にわが国におきましては、最近住宅の質は向上してきていると思いますけれども環境に対しては非常に一般の関心が薄い。そしてそれに加えて地価が非常に高騰しておりますので、一般の方々は家を建てたい一心で、家はりっぱなものをお建てになりますけれども土地とかあるいはその他の環境条件というものをあっさり切り捨ててしまわれるということで、先ほども話題に出ておりましたような、二十坪とか三十坪とかいうような過小宅地が出現するわけで、これが大都市の郊外にスプロールとして蔓延していくところに大きな問題があるわけでございます。これにつきましては、地価そのものをどうするという大きな問題がございますが、それは別といたしまして、それを一応受けて立った形になりますと、どうしてもやはりそういうような形で住宅を建てていくことは問題があるわけであります。根本的に問題があるわけで、公営住宅とか公団住宅というようなものの住宅供給の面をもつと飛躍的にふやしていただきまして、そしてそういうものにできるだけ一般の低所得者を吸収していく、やはり自分で住宅を建てるということはなさいますけれども、いま言いましたような形で二十坪、三十坪に建てていくということは、建てられますけれども、それは隣の家に必ず何らかの迷惑を及ぼすということであります。日照の問題にしましてもそうであります。  そういうことでありますので、やはり公共的な住宅をふやすということ、それから、当然それに伴って環境施設も全部整える、それから、それに必要な土地公共団体があらかじめ確保するということ、それから、先ほどの土地区画整理事業を積極的に進める、それから地主共同団地というものをこれから研究していただくというようなことでやりまして、一戸一戸がばらばらに建っていくというのはこれはもう例外的であるというようなふうに、いま申しましたいずれかに、大部分市街地というものはそういうものだというふうになりませんと、日本の場合にはいい市街地ができないんじゃないか。アメリカあたりの行政指導とは違って、日本の場合にはやはり環境を整えるところまで行政がかなりきめこまかく指導しない限りは、良好な市街地は得られないんじゃないかというふうに思います。そういう意味で、建築基準法というのは最低の基準をきめておる、守らせるものである、これが守られないということは、違反が出るということでありまして、これはまた非常に大きな問題であります。そこで、やはり基準法というものはそういうものであるという認識に立って、あまり理想的な水準を考えましても、これはつくることはできますが、実際問題として守られないということになるのではないかと思います。  そこで、私が前に提案いたしました四つのことがありますが、一つは、最小限画地というものを制度化しておいたらどうか。これは非常に零細な地域では使うことはむずかしいかと思いますけれども、しかし、比較的水準の高い市街地もあるわけで、そういうところでは積極的に使ってもらえるんじゃないか。それから私道の設置の基準をきめるということ、それから詳細計画の制度を取り入れること、それからアパート地区というものを一般住宅地から分離すること、この四つを提案したわけでありますが、そのかなりの部分が今度の法案に取り入れられておりますが、そういう意味で、いままで懸案になっておりました用途地域の分化とか、容積率を採用していることとか、現在の執行体制の強化というようなことを織り込んでおりますので、まあ私といたしましては一応妥当な線をいっているというふうに考えております。  以上でございます。(拍手)
  9. 始関伊平

  10. 石井興良

    石井参考人 東京都の首都整備局長をつとめております石井興良でございます。参考人としての意見を述べさせていただきます。  今回の法改正にあたりましては、法律案の提案説明にもありますように、第一に、都市における建築物の用途の純化、それから土地の高度利用の促進をあげておりますし、第二番目には、建築防災基準の整備をあげ、そして第三には、執行体制整備を主要点に改正されようとしておりますが、私ども地方公共団体事務当局としては、おそきに失した、しかしながら、まあ早く改正をしてもらいたいという意味において深く敬意を表しますが、またこの法案が早く成立されることも期待いたすのでございますが、しかしながら、現在私ども地方自治体が建築指導行政上当面しております問題、なかんずく、先ほど有泉先生からもお話がありました違反建築の取り締まりという問題、これが非常に困難であるという問題点、それから日照問題についてのトラブルが非常に多いということ、それからただいま日笠先生からもお話がありましたが、いわば既成市街地におけるところのかたい建物、マンションがどんどん建っていくということによって、該当するかどうかわかりませんが、いわば既成市街地におけるマンションスプロールである、こういったような現象等の事項につきましてこれから申し述べまして、この法律案がこれらの点については明確な解決策を与えていないという点を御理解いただきたい、そしてそれらについてこの法案の審議の段階において御検討くださればたいへんありがたいと存ずる観点で、以下申し述べたいと思います。  まず、違反の現状について考えてみますと、一部には用途規制関係違反もございますが、そのほとんど大部分というものは建蔽率及び建築延べ面積の関係違反でございます。その背景には、ただいまもいろいろお話がありましたように、いわゆる土地問題が問題である。あるいは住宅政策の問題等が考えられますが、これらは別としまして、今回の法案の五十二条及び五十三条においては、延べ面積並びに建築面積敷地面積に対するところの割合について、各用途地域ごとに現行法よりはある程度の緩和が与えられたことになりまして、地価の高騰の現状から考えまして現実的な処理であり、ひいては違反建築の取り締まり面においても若干の容易さが得られるものと考えられますが、また一面、違反是正措置の整備強化といたしましては、法案では違反建築物の公示制度建築監視員制度をとること、この二つがいままでよりも整備強化の点においてはあげられておる点でございますが、私どもが原案当時において期待いたしておりました、ただいま有泉先生からもお話がありました執行罰とか、あるいは司法警察制度、あるいは水道、ガス、電気等に対する供給の保留というふうなことについては、検討されたということでございますけれども法案の結果としては取り入れられていないということは、きわめて残念でございました。違反是正措置の整備強化という点ではさらに強力な措置を私どもは望まざるを得ません。ただ、法案に明文化こそされてはおりませんでしたが、建設省が通産、厚生の各省と折衝された努力の末、ようやく、悪質な違反建築物に対するところの水道、ガス及び電気の供給保留に関する覚え書きが取りかわされましたことは、不十分ながらも一歩前進であるといえることでございましょう。  法改正によりますところの違反建築取り締まり措置の強化を期待するだけではなく、東京都では、御承知のはずでございますが、二十三区間周辺の緑地地域の廃止を先般いたしましたが、それを契機としまして、違反建築物の撲滅を期するとともに、健全な市街地を形成するために、違反建築物防止のための措置要綱というのを定めまして、取り締まり措置の強化をはかることといたしました。  その内容をちょっと簡単に申し上げますと、何といいましても、先ほど来お話がありますように、違反建築物の初期の発見が大切であるということで、初期発見のためのパトロール強化、あるいは広い地区にたくさんどんどん建ちますので、重点地区をきめたり、あるいは重点の項目、たとえば、建て売り業者の建てる家とか、あるいはアパート建築とかいうふうな重点対象を設定いたしまして、そうして違反である場合には一ほとんど違反が多いのでございますが、違反である場合には、文書命令をすみやかに出すということ、そうしてなるべく早く代執行に踏み切ること、あるいはまた、宅地建物取引業法あるいは建設業法によるところの関係業者に対する強い指導、あるいはまた、それぞれ水道管理者あるいはガス管理者、こういうものと密接な連絡をとって、それらの供給保留をお願いする、あるいはまた、それに要するところの道路の堀さくの許可を保留するとかいうふうなこと、あるいは、住民には、今後きびしい姿勢で臨みますので、ひとつ十分注意してもらいたい、せっかく建てても、あとで思わぬ損害になりますよというふうなPR等々、いまいろいろなことを実施いたしておるわけでございます。しかしながら、これらはすべて第一線の違反建築取り締まりに従事しております者の、ほんとうに異常と思われるほどの努力にまたなければならない問題であります。こういったことをやってもなお完全な取り締まりは不可能に近いと考えられるように思います。  ここで、違反取り締まりに関して問題のある点を具体的にあげてみますと、法第九条の命令は、建築主、施工業者に対するものでございまして、建築主、施工業者の氏名を確かめ知ることが絶対に前提条件になっております。これに対しては、現場の職人等は、まずまず絶対に建築主や施工業者の氏名を教えようとはしません。特にこれは、先ほどお話がありましたような、お隣が建てるというふうな場合ではなくて、建て売り業者が周辺地区にどんどん建てるような家でございますが、絶対に建築主や施工業者の氏名を教えようとはしません。そこで、取り締まるほうの側は、そこにある車のナンバーから割り出すとか、あるいは登記所等へ行って台帳を閲覧するとか、または住民台帳の閲覧をするとか、いろいろな手段をとって相手を調べようとするわけでございます。特に悪質な違反では、やっと建築主あるいは施工業者をさがし当てたときには、他の人にもう転売されてしまっているというようなケースもあります。告発等を行なうにしても、手続的に他の機関をわずらわすために、非常に時間がかかります。その間に建物ができ上がって入居してしまうというようなことが多いのでございます。さらには、代執行について見ますと、著しく公益に反するものでなければならないということもあるし、また、一件の代執行をするには、相当な人間が相当時間をかけてそればかりをやっていなければならぬ。その労力というもの、あるいは時間というものはたいへんなものでございます。このように、違反取り締まりに従事する者にとってあまりにも労多く、しかも実効があがらないので、ともすれば意欲を失いがちでございます。先ほど有泉先生が言っていましたが、要するに、違反取り締まりの姿勢とか気力とかいうものに欠けているといいますか、そういうものに毎日毎日接しているということにおいて、ただいま申し上げましたように、職員の意欲を失うというふうなことが起こりがちでございます。ですから、違反取り締まりに従事いたします者の努力にもかかわらず実効があがらないのは、悪質な違反業者が非常に多いためでございますが、その対策としては、すみやかに命令を発して告発して代執行に至る時間を最小限にすることが絶対に必要であると考えます。そのためには、建築主が不明の場合に、建築主を確知するための努力義務を軽減して、直ちに対物命令を発し得ることが望まれます。これがなければ、公示及び監視員制度だけでは、まして水道、ガス、電気等の供給停止のできないこの法律の範囲では、現行法の一番の問題点が解決しないようなぐあいにも考えられます。  次に、日照の点について申し上げます。  ここ数年来、東京都内では民間の高層分譲マンションの建設が急増いたしました。五階建て以上のもので昭和四十年には五十五棟でございましたが、四十一年には三十二棟、四十二年には三百三棟、四十三年には四百六棟と、分譲マンションが非常に増加して、その大衆化が進んでおります。この点は住宅供給の面ではたいへん喜ばしい現象と思われますけれども、一方、住宅地の個々の小面積の敷地に無計画に建つために、これも先ほど日笠先生がおっしゃっておりましたが、無計画に建つということ、そしてまた、付近住民との間に日照上のトラブルが頻発しております。都では、昭和三十八年以来、住居地域内に、部分的でございますけれども、第一種から第三種までの高度地区指定して日照対策を講じてきましたが、高度地区をかけたところにおいては、日照に関する苦情は比較的少なくなっております。第一種住居専用地域及び第二種住居専用地域指定されましたところの北側隣地斜線の趣旨は、日照もありますが、通風、採光とのことでございますが、都におきましては、現在高度地区内においても同じような種類の規制を行なっております。改正法によって、第一種住居専用及び第二種住居専用地域内の一般規定となったわけでありますから、今後新法の第五十八条の高度地区指定の趣旨を、日照保護という角度からより一そう明確に改めるよう再検討いたしたいと思います。  次に、地域性の関係についてちょっと触れたいと思いますが、改正法案では、住居地域を第一種及び第二種の住居専用と一般の住居地域の三種類に分け、それぞれの性格に応じた用途制限がなされておりまして、地域性の純化の方向へ一歩前進したことは、行政庁といたしましては高く評価するものでございます。しかしながら、制限する用途配分の一部につきましてお願いを申し上げたいことがございます。  現在の住居地域内にどれだけの第二種の住居専用地区指定するかという問題との関連もございますけれども、最近問題になっておりますところの、ボーリング場が住居地域に建つという問題について、新法の住居地域においては、ボーリング場は禁止をされておりません。それについては、第二種住居専用地区では禁止になっておりますので、第二種住居専用地区をどんどんかけたらいいじゃないかというふうな問題等もございますけれども一般住居地域内においてボーリング場を容認するということについては、最近におけるああいったものの付近の住民に対する影響等から考えまして、きわめて困難な問題が多く、検討を要すべきものと存じておりますので、この点もよろしくお願いいたしたいと思います。  終わりに、マンション建設の無計画な乱立状況とその対策について触れますと、これも先ほど日笠先生のおっしゃったことでございますが、最近のマンションの建設状況は、さきに申しましたような、非常に異常なほど激しいものであります。このまま放置しますと、市街地のマンションスプロールとでもいわれるようなものになり、きわめて環境の悪い市街地ができ上がることは必至でございます。元来、都市の再開発の方向として、まとまった大きさの敷地、それから街区単位に高層化することが望ましく、基準行政もその方向に運用できるものでなければなりません。都市再開発法によるところの高度利用地区、一団地住宅施設または特定街区等の総合計画において、条項によっては必ずしも般基準によらないで建築できるメリットが与えられることは、合理的であるといえましょうが、しかしながら、既成市街地の再開発と、言うのはやすいけれども、その実施はきわめて困難でございます。東京都においても、既成市街地の再開発を、職住近接の都市構造あるいは防災的な立場からの再開発計画を目下検討中でありますが、かりに、最も急を要する、先般、本委員会の諸先生に視察をいただきました江東デルタ地帯の防災拠点のみであっても、数千億の費用と十数年の歳月を必要とすることは明らかでございます。このことについては、国の大幅な援助がなくてはとうてい見込みのないことであり、何とぞ来年度より十カ年計画で着工できるように、この席をおかりしてお願い申し上げます。  かかる状況の中で、既成市街地の大部分は再開発計画のない地区でございまして、これらは依然無計画にビル化されていくことを何ら防ぐことができない現状でありますので、この対策として、法第五十二条におけるところの容積制限のあり方とその前面道路との関係において減ずる方法が有効であると考えられますが、住居地域においては、幅員の十分の四倍程度にきびしく制限することにより、狭い道路に面する、すなわち整備されていない地区におけるところの高層、かたい建物が建つものを、そのビルの容積を制限することは、これはまことにこそくなような手段でございますけれども、当面とるべき方策と考えますので、よろしく御配慮くださるようお願い申し上げます。  以上、まことに簡単でございますが、新法の前進的な体制を一応評価しながらも、一般建築取り締まり面の一そうの強化、日照の問題――日照の問題では先ほど有泉先生が相当詳しく申しておりますので、私はちょっとしか触れませんでしたが、日照の問題、あるいは既成市街地内のマンション対策、それから一部地域規制とボーリング場の関連等につきまして意見を申し上げました。できますならばこれらの意見法案に反映するよう御研究くださるよう特にお願い申し上げます。(拍手)
  11. 始関伊平

  12. 田村明

    田村参考人 横浜市の企画調整部長田村でございます。  私は、現実の自治体の行政の中で、広い意味の総合的な都市計画というものをしている立場、それから都市計画というものをフィジカルプランニング、物的計画と申しますか、そういうものの研究を少ししております者として、参考人としての意見を申し述べたいと思います。すでに三人の諸先生方から十分な御意見も出ておりますし、それと重複する点もあるかもしれませんけれども、その点はひとつ御容赦願います。  いまの都市をどういうふうに考えていくかという問題から考えますと、すでにいまの建築基準法の中でも、日笠先生からおっしゃいましたとおりに、単に建築基準法だけではできない、都市計画法その他の建設法、そうしたものと一体となった都市づくりをしなければならない、こうした総合計画を要求されているという時代の中での建築基準法改正というようなことから、問題をとらえたいと思います。それからもう一つの点は、現実の都市化の状態を見ますと、先日の、国民総生産が世界第二位というふうな数字からもわかりますとおりに、町が非常にかたくなっている、ハード化していると申しますか、そういう状況が見られます。ハード化しておりますと申しますのは、現実に、木造建築ではなしに、鉄筋コンクリートその他の構造物が盛んに建ち並んでおります。大体この十カ年間の数字を見ますと、非木造建築物と申しますか、いわゆるかたい建物は大体九倍程度になっております。十年前には約八〇%が木造だったものが、現在は五〇%を下回っているというふうな状態で、どんどんかたくなっております。こういう状態で町の状態を考えますと、やはりどうしても総合的な計画が要る、そうしたものがなければ、町はいよいよ動きがつかなくなってくるという状況が見られるわけでございます。この辺から、建築基準法が町づくりそのものの法律ではございませんけれども、町づくりに非常に重要な役割りを果たすというふうに考えるわけでございます。それからもう一つの問題は、宅地のスプロールが進んでおります。これは都市計画法関係において十分に考えられなければいけない問題でございます。それから、このほか、全体の市民の都市生活の質と申しますか、こうしたものを向上するような手段というものが十分にはかられていいというふうに考えるわけでございます。  いま申し述べましたような基本的な問題の状況を考えまして、それでは今回の建築基準法についてどのように考えるかということについて、以下若干簡単に意見を申し上げたいと思います。  現在の建築基準法改正でございますが、約二十年間を経まして、現実の情勢の変化に応じましてこれに対応すべく建築基準法改正が今回考えられた、このように考えるわけでございます。しかし、一番の問題点は何かといいますと、いま先生方の御意見でもさんざん出ておりましたとおりに、違反建築が非常に激増している。これに対して、自治体の基準法行政としては違反建築の是正に追いまくられている。追いまくられているけれども、しょせんこれは実効があがらない。やっている人たちが非常に意欲を失っている、こういう状況に置かれております。しかし、違反建築がなぜ出るかといいますと、一番もとから考えますと、やはり人口の都市集中と申しますか、都市の過密化というふうなものが一番最初にございまして、それに基づきます地価の上昇の問題、それでさらに宅地の狭小化を生んでいる、さらには、違反建築、特に先ほど東京都の局長さんもおっしゃいましたとおりに、建蔽率関係が非常に多いということが、この狭小化の裏はらの問題でございます。そのような状況で違反が起きる、こういうふうな結果、ある程度違反の問題というものを緩和する必要があるのではなかろうかというふうなことで、たとえば、今度の建築基準法改正では、住居地域において三十平米マイナスというふうなものを抜きまして、単に六割というふうなかっこうにする、そういう違反を現実に多少合わせていくというふうな方策もとられているわけでございます。そのような現実の情勢変化によりまして多少の改正がございますのは、私どもとしても当然のこととは思います。しかし、現実にこのような違反が集積している、あるいは状況いかんに応じてはやはりそのような法律が変更される、あるいは地域都市計画か変更される――先ほども東京都の緑地地域の問題もございましたが、正直者であるとばかを見てしまう、かえって現実のほうが優先していくというふうな状況が感じられるわけでございます。これは一建築基準法だけの問題ではございませんけれども、このような、実際には正直者でやっているとばかを見てしまうというふうなことから、行政あるいは建築基準法その他こうした都市計画に関する住民全体の不信感と申しますか、こういうものが一つ基本的に根ざしている。この辺が今度の基準法改正を機にいたしまして根本的に改められて、やはりこの線でやるのであるというふうなことがはっきりと出てくる、現実にただ流されるだけではなくて、筋は通していく、このような姿勢がどうしても必要かと思います。しかし、先ほど申し上げましたとおりに、建築基準法だけでほんとうは筋が守れるかと申しますと、たとえば、宅地狭小化の問題について、敷地制限の問題その他を加えるといたしましても、狭小化は、いま地価の上昇等で起きております。そうしますと、どうしても基本的な都市づくりの問題点を考えざるを得ないわけでございます。  このような都市の根本的な対策といたしまして、幾つかの点があげられるわけでございますが、第一は、何と申しましても、いまの地価の問題でございます。地価の上昇に対しましては、宅地審議会及び土地問題懇談会等からいろいろな御提案が出ております。そのうちの一部の地価公示制度等はすでに実施の方向に向かってはおりますけれども、しかし、こうしたその対策の中の弱いものだけでは地価対策は行なわれないというふうに考えるわけでございます。土地問題懇談会の中の御意見では、地価値上がりの利益の帰属については、どうもこれは多少不当ではなかろうかという御意見も出ております。このようなことは全く私ども賛成でございまして、この地価の値上がりという問題は、国民総生産が二位に上がるというふうな国力の背景ではございますけれども、同時に、私は、単に地価が上がるということではなしに、その地価の値上がりの利益の帰属の問題、これについて相当厳然たるお立場をおとりになりまして、地価問題についてかなり徹底的な対策をお立てになるということをぜひ期待したいわけでございます。そのようなことがございませんと、建築基準法が現在の状況に合わせましても、やはりこれから違反がまだ激増してくる。宅地狭小化は現在でとまるわけではございません。十数年前に大体百坪の基準でありましたのが、いまは百平米あればまあまあいい。九十平米、八十平米の土地も出ております。この状況が続きまして、いまの地価の値上がりの差額を見ますと、実際問題として十年後にはどのような宅地の狭小化が生まれるか、まことにおそろしいものを感ずるわけでございます。これについてひとつ根本的な対策をお願いいたしたいわけでございます。  それから、宅地狭小化、過密化というふうな問題が、しかしそれでも進んでまいるとは思います。これに対しては、先ほど来の御意見でもございましたけれども、どうしても二月二月の敷地に対しての問題ということだけでは押えきれない。有泉先生のお話にもございましたが、このような模型でございますような絵というものを見ますと、まことに私どもの住居環境というものはおそろしい感じがいたしますが、これに対しては、どうしても建物を一戸一戸の敷地で考えるよりは、やはり総合的な敷地ということで考えざるを得ないだろうというふうに考えるわけであります。このためには、一戸の敷地でなしに、たとえばこの模型にいたしましても、全体を一戸の建築物にいたしますと、相当いいオープンスペースもとれまして、いい環境住宅もできるわけでございます。しかし、建築費はもちろん当然単価が多少上がつてくるということはございますが、そのような総合的な建築というものが行なわれませんと、一戸一戸の敷地に対する基準ということだけでは、もう状況が間に合わない。これに対しては、相当総合的な敷地と申しますか、こういうことを考えざるを得ないだろうというふうに思うわけでございます。このためには、共同化を推進するための――単に規制あるいは基準ということだけではなしに、共同化については特別な助成がなされるとか、あるいはこれに対して特別やりやすいような方策がとられる、たとえば容積率の割り増しであるとか、そういうことで多少のメリットがある、このような情勢にいたしまして共同建築を推進していくということがどうしても必要かと思います。このような全体的な都市づくりに対する基本的な助成策なくては、これから非常にかたくなってまいります町づくりが、非常にかたいスラムと申しますか、マンションスラムあるいは鉄筋スラムとかいうことばをよく耳にいたしますが、そのような状況に追い込まれるのではないかということを懸念するわけでございます。  それから、このような状況で考えまして、現在の法案の中のちょっと個別なことに入りますと、建蔽率の制限というふうなものがございます。この中で新しく特に用途地域の中で生まれましたものが、第二種住専という地域でございまして、中高層のアパート、住居を建てたいというふうな地域というふうに考えられております。しかし、これについて多少中高層が建つように容積の点では考えられておりますが、建蔽率のほうを拝見いたしますと、建蔽率も六割ございます。こうした状況におきますと、中高層を促進するというよりは、やはりずんどうの建物が建ってしまう、この絵のような状況というものを私は考えるわけでございます。中高層建築をせっかく考えられて、多少風通しのいい、すき間の多い、緑地の多いこうした住居地帯というものをこしらえるというようなお考えの第二種住専でございましたならば、むしろ建蔽率のほうは極端に制限する、そのかわり、容積はある程度ゆとりがある、このような方策を立てませんと、かえって法の意図したような結果にはならないのではないかということを私は心配するわけでございます。そのほかに根本的な問題といたしましては、都市の全体的な環境と申しますか、こうした質を上げていくということがどうしても必要かというふうに考えます。これについてはすでに御意見も十分出ていることではございますけれども、何と申しますか、総合建築と申しますか、あるいは総合建設法と申しますか、都市総合建設法と申しますか、単に基準ということではなしに、そのような総合的な建築を促進していくような、このような方策がどうしても必要ではないか。それが、国民生産第二位になり、町が非常にかたくなって、これから十年たつとどうにも動きがとれなくなる、その前段階において、現在において考えられる手段ではないかというふうに考えるわけでございます。  それからもう一つ問題点といたしましては、私ども自治体で町づくりをしておりまして、町づくりというのは、しょせん、全国的な基準はございますけれども、各都市によっていろいろな事情がございます。これは町々によりまして、その歴史的な状況も違いますし、地形的な条件も違いますし、住んでいる人の感情の問題も違います。たとえば、一つの再開発の話をするにつきましても、非常に合理的に受け入れる方、あるいは伝統的なものに非常にこだわる方、こういうように地方によっていろいろな性格を持っております。このようなものが全国一律の基準だけで割り切られるというのではなしに、町づくりというものは、やはりその町の個々の特性によりましてその町の人々がほんとうに総力をあげて結集して町づくりをしていく、このようなことが必要ではないかというふうに考えられるわけでございます。その辺から考えまして、建築基準法も、単に一定の法的安定性と申しますか、あるいは全体の権利の調整と申しますか、こういう点から、全国的な基準が必要ではございますが、ある部分については、むしろ、その町づくりというのを、町の個性によりあるいは特徴に応じて十分にいろいろな指導ができるような形で大きなワク組みだけをきめまして、内部については条例あるいは規則等によるというふうなことをぜひお考えいただきたいと思います。その中で、特に法案の中で、私ども拝見いたしまして、法案の五十二条の三項の三号でございますけれども、容積に対します一種の割り増しでございますが、この割り増し量が、従前の法律では五十九条の三の三項でありましたが、各条例に委任されていたわけでございます。ところが、今回の五十二条の三項の三号によりますと、これは政令基準による、空地の割合あるいは敷地の条件というのを政令の基準によるというふうになっておりますのは、都市づくりを実際にいろいろこまかな点で考えております自治体としては、制約が非常にきついわけでございます。つまり、この政令で定められます案はどのようになるか、私ども拝見はしておりませんけれども、やはり東京都あたりが一つの大きな基準になるのではないか。しかし、東京都でございますと、たとえば二千平米以上のものについては割り増しをやってもいいということができましても、ほかの小さな都市になりますと、そのような基準ではとうてい適合しない、しかし、それなりに、たとえば千平米でも多少の割り増しをつけてやることによってそこに非常にいい環境が生まれるという可能性があれば、これは条例によって千平米でもいいというような形にできるということが望ましいと思います。今回の改正案では、むしろこの辺は多少改悪になっているのではないか。全国的に容積制がしかれるから政令であるというお考えよりも、政令はむしろ割り増しできる一定のワクを与えるとか、こういう問題だけにいたしまして、むしろ、どれに与えるかという個々の条件につきましてはその都市の特性にゆだねるということのほうが妥当ではないかというふうに考えるわけでございます。  それから、この辺に関しまして、建築基準法以外の問題といたしましても、町づくりにおいては、そのように都市に応じてのいろいろな特性がございますから、単に全国的な基準によるよりは、町づくりを実際に推進できるような、そうした体制というものをぜひ自治体に与えていただきたい。職員の問題一つにいたしましても、自治体の職員にはまだ不十分な点もございますけれども、順次そうした町づくりをする職員も育ってまいります。そのような意欲をぜひ育てていただきたいというふうに考えるわけでございます。  今回の改正案で、二十五万以上の都市に対しては建築基準法の行政をおろすというふうな趣旨もございまして、このような点はまことにけっこうかと思いますが、同時に、基準法違反建築取り締まり的なそうした面だけをおろす、先ほどもお話が出ておりました、非常に労多くして功少ない仕事だけがおりるのではなしに、やはり、むしろもつと計画的な権限と申しますか、この辺のものも、そうした二十五万程度の都市であれば、おろしていくということをお考えになってもいいのではないか、これは建築基準法以外の問題ではございますけれども、あわせてこの際に申し述べたいと思います。  それから最後に宅地開発の問題、これは新都市計画法との関係でございますが、横浜は、御承知のとおりに人口増加が非常にきつうございます。現在年間で約十万人という人口増加が見えております。大都市といたしましては、一番人口増加が多い都市でございます。これに関しまして、私どもは、この宅地開発というものを何とか規制していきたいというふうに考えるわけでございます。その際に、建築基準法で問題になりますのは私道でございます。私道の問題で、今回は新しい私道基準をこしらえるというようなことが法案の中に示されてございますけれども、これに関しまして、その基準というのは、一種の技術基準と申しますか、単にそういう物的基準だけではなしに、もう少し広い計画基準と申しますか、こうしたものが入ってもいいのではないかというふうに考えるわけでございます。と申しますのは、そこに排水路があるとか、何メートルであるとかという幅だけではなしに、全体のその地域というものの開発を考える場合に、非常に小さい宅地だけが小さな私道をつくって開発されるというのではなしに、ある程度それを総合的に開発していくという線にのせていくための計画基準と申しますか、こうしたものが必要ではないかというふうに考える次第でございます。新都市計画法の中にもございます開発許可の中でも、当然に一定の技術的基準に合えば許可をしなければならないというふうな考え方が多少示されておるようではございますが、一定の技術的基準だけではなしに、その地域を実際にどう開発していくか、そうした総合的な大きな計画基準に合っていないものはむしろ開発をさせないというふうな考え方が必要ではないかというふうに考えておるわけでございますが、それと同じような考え方から、この私道についても、単に一定の幅員があればいいというだけではなしに、そのような計画的な基準、そういう判断というものがどうしても必要ではないかと思うわけでございます。それが、先ほど一番最初の前提に申し上げました総合的な都市づくりと申しますか、単に建築基準法行政だけではなしに、総合的な都市建設一つの考え方ではないかというふうに考えるわけでございます。  以上、私の申し上げました中で、建築基準法の前提になりますような根本的な施策をぜひ考えていただきたい、地価の問題あるいは狭小過密に対する総合建築的な考え方、あるいは都市環境を積極的に上昇させていくような一つの基準であるとか、こうした根本的な対策、及び自治体独自にやりますところの町づくりをするために、政令で全部縛るということではなしに、条例等十分に活用し、その都市に合った特性のある町づくりというものができるような施策を講ぜられていただきたいということ、それから最後に、宅地開発について、新都市計画法改正において、これは調整区域だけでなしに、市街化区域の中におきましても種の計画基準といったもので良好な市街地が造成されるように――土地区画整理法ができる場合はよろしゅうございますが、先ほど日笠先生もおっしゃった、こうしたもののできない市街化区域もございます。これに対しては、かなり強い計画基準というものでこれが指導できるような、そうしたことを御配慮願いたい。改正案全体についていろいろ問題点も多いわけでございますが、前進的ないまのような考え方の入れられるところは入れていただいて、前進的な方向でこの改正案が御審議願えればまことにしあわせだと思います。(拍手)
  13. 始関伊平

    始関委員長 どうもありがとうございました。以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  14. 始関伊平

    始関委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  なお、質疑をされる委員各位に申し上げますが、参考人の方々もお忙しいことと思いますので、なるべく十五分程度で簡潔に質問せられるようお願いいたします。古屋享君。
  15. 古屋亨

    ○古屋委員 ただいま非常に有益な御意見をそれぞれ専門の立場からお承りさしていただきましたので、二、三これにつきましてお伺いをいたしたいと思います。  有泉参考人から、違法建築被害者の会の会長とされましての御体験からいろいろのお話をお伺いしたのでございますが、そのうちでもう一度お伺いしたいのは、建築基準法は、従来、非常にざる法的なといわれるほどあまり守られていない、また守られないような法律であった、今度改正すれば、おそらくいままでのあれから見て十五年ぐらいは手直しはできないと思うから、もつと慎重に改正をしたらどうかというお考えでございますが、非常に進歩の早い時代の進展でございますので、いままで十五年ぐらい手直しはしなかったのを今度改正する、改正すればまた十五年ぐらいは改正できないのじゃないかというような御意見につきましては、時代の進展から考えまして、やはり必要な住民の福祉のためにはそういうものを改正していくべきだと私は考えておるのでございます。  そこで、お話しになりました諸点で一、二お伺いをいたしたいと思いますのは、執行体制がだめだというようなお話でございまして、特に執行罰についてお話がございました。行政庁が工事中止命令を出しましても従わない場合、相手方に制裁として過料を科するといういわゆる執行罰制の採用というようなお話がございましたが、これは、この問題につきまして、過料を納付すれば、違反行為が是正されなくても、重ねて過料を科することができないから、心理的圧迫として資力のない人には実効性がありましても、過料を納付することを覚悟して違法行為をやるという資力のある人には、執行罰のみでは実効を期しがたいというような不均衡、これは理屈でもそういう点が出ると思いますが、そういう不均衡を生ずるという問題があるのではなかろうか。違反建築物対策を推進するために、早期発見、早期是正、執行罰を採用するにいたしましても、そういう過料の金額を高くする場合の罰金との均衡の点、あるいはそういうものの過料の金額の決定あるいは徴収等に相当長く時間がかかるのではなかろうか、こういう点につきまして御意見を承ることができればたいへんありがたいと思います。  同時にまた、建築審査会に対して違反是正の不服申し立てを認めることについてでございますが、建築審査会が行政庁にかわりまして違反是正命令を出すことができることにするという意見もございますことは、先ほどの御意見を承ってよくわかっておりますが、しかし、このためには、建築審査会というものをどういうふうにしていくか、今度法の改正によりまして、相当行政庁の人員、予算の充実というものが予定されておりますが、そういうような点から考えまして、建築審査会にこういう違反是正命令を出すことができるようにすることが適切か、あるいはもう少し人をふやし、あるいは予定されておる人員の増強、あるいは行政庁の予算というような点で解決できないものだろうかどうか、そういう点についてお伺いをいたしたいと思います。  それから第三番目には日照の問題でございまして、先ほどいろいろ御専門の御研究の結果を見せていただきましたが、改正案の北側斜線の制限はゆるきに過ぎる、この程度の制限ならばないほうがいい――と言ってはあれでございますが、今回の改正よりもきびしい制限にいたしますと、先ほどから諸参考人お話のように、二十坪ないし三十坪程度の敷地が現在たくさんあるという実情から見まして、これをどうするか、総合的にどうするかということも考えられるのでありますが、現実にはそういうような二十坪ないし三十坪程度の敷地がたくさんある現状から考えますと、南側敷地に二階建てもできなくなる場合が多いのではなかろうか、こういう小規模な宅地の所有者に酷になるというような点につきまして、参考人の御意見をお承りいたしたいと思います。  有泉参考人にお伺いしたいことはその程度でございます。一応結果をお承りしましてから他の参考人にお承りすることにいたします。
  16. 有泉亨

    有泉参考人 お答えをいたします。  十年か十五年ぐらいは改正がむずかしかろうというのは、実は――言っても御迷惑にならないと思いますが、田中幹事長がお忙しい中でごく最近に私に小一時間時間をさいてこの問題で会ってくれました。そのときにまつ先に私が言ったのは、これを一ぺんやったら、十年か十五年むずかしいでしょうと言ったら、そうだとおっしゃった。それで確信を得たのですが……。  そこで、執行体制ですが、執行罰というのは、かけ方がいろいろございまして、一日について幾らというふうなかけ方があるわけです。御承知のように、労働組合法で、不当労働行為をやって、労働委員会の命令に従いませんと、一日につき十万円という――たしかそういう執行罰の規定があると思います。そこで、かけようによっては、資力のある者でも、一日につき十万円取られれば、これはやめるだろうと思います。ですから、資力の有無によって取り締まりがきいたりきかなかったりする、金のあるやつはさっさと過科を払ってそして工事を進めてしまうということは起きないだろう、そんなに大きな規模の工事をする人は――先ほど霞が関ビルの話をしましたが、まさか三井不動産は建築基準法違反をやらないだろうと私は思うのですが、その程度で、そんなに資力による差は起きない、こういうふうに考えます。  それから、審査会に是正命令を出させるかというのは、これは建築審査会の組織をすっかり変えて行政委員会にしなくてはだめです。だから労働委員会に似たようなものにすれば、できます。しかし、そこまでいかなくても、私は、審査会が取り上げて、そしてこれは違反建築だということを非常に明確に公の場でするということだけで――そうすると、建築審査会は一応行政庁の外にありますから、たとえば東京都でいえば、都のほうに、あれはどうしたということがおっしゃっていただけるということでも、ごく一番最小限ではきき目があるだろう。けれども、行政委員会までいけばこれはやれるということで、そういう改正はいまからはなかなか間に合いっこないと思います。  それから、日照の問題は小規模の宅地所有者にとってはなはだ酷ではないか。大体三十坪得た、そうしたら、家族数が多いから三十坪に一ぱい建てたいというのにはなはだ酷だろうというのは、そのとおりだと思います。ただ、先ほどもそういう意味で若干含みをもって申し上げたのですが、今度の法案では、第一種の住宅専用地区ですと五メートル、それからこういくわけですね。一律にどうもそうだ。それを、環境のいいところではたとえば三メートルから持っていってくれたらどうだろう。第二種についても同じようなことがある。そういうゆとりのある運用ができるような……。それから角度にしても、法律できめてしまうと、一ぺんきまってしまうと、なかなか――先ほど石井整備局長のお話で、東京都はもっときつい制限を高度地区に現在持っているわけです。この法律ですと、一で一・二五ですか、東京都は逆に、一いくと二下がれ、そうでしたね。――同じになったそうです。取り消します。そういうきついものを持っていた時期もあるわけです。ですから、地区によってそういうゆとりのあるものにしていただけないかしらということ、先ほどもそういう意味では含みをもって申し上げたつもりでございます。
  17. 古屋亨

    ○古屋委員 次に、石井参考人にお伺いをいたしたいと思いますが、先ほどから、都とされまして違反建築物についていろいろの第一線の御労苦、心から敬意を表する次第でございます。したがいまして、この法律違反建築の是正について最も重点を置いておられるといういろいろのお話をお伺いいたしましたが、この法律案が通過いたしました場合の都の違反是正についての心がまえを第一にお伺いしたい。  第二は、建築基準法改正に伴う地域地区指定変更はいつごろ行なわれるお考え、見通しでありますか。三年以内に指定することになっておりますが、実際問題としてはどうであるか。  この二点についてお伺いをいたしたいと思います。
  18. 石井興良

    石井参考人 私どもは、先ほども申し上げましたように、現行法においても、いろいろな機会をつかまえまして違反建築の取り締まりを厳重にやるべきであるという姿勢を持しておりますが、いろいろ問題点が先ほど申し上げましたようにありますので、なかなかうまくいかないというのが現状でございます。したがいまして、今度の改正でありましても進歩したというところは、公示制度の問題、それからもう一つ、監視員制度の問題が主なることでございますが、監視員制度は、権限を下に移したということでございます。これはいまでも監視員的なことはパトロールでどんどんやっておるわけでございます。いろいろ命令を口頭で発したり何かしておるわけですが、それが聞かれないでどんどんいってしまうというようなことでありますので、たとえ監視員制度になってもその点が問題ではないかと思いますし、公示制度をしたところで、これはやはり告発等にいくという手続の問題までは無視されるおそれがあるというわけで、非常に残念なのであります。したがいまして、最後のところまで行くその速度を早くするということ、そのためには相当人員を強化しなければならないという問題がございます。まだ不十分でございますが、先般のときは、人員はふやしませんでしたが、自動車等もふやしたりしておりますし、近いうちにはやはり人員等もふやしていきたい、そういうふうなことを考えておりますので、でき得べくんば、先ほど申し上げましたようなぐあいのもっとスピード化のできる方法、そういうようなことを御検討願いたい。  次に、地域地区の変更の問題でございますが、これは東京都二十三区内は、御承知のようなぐあいに容積制を全部しいております。したがいまして、特に問題は、住居専用地区が第一種専用地区に変わっていくだろう。まだ深く検討しておりませんが、いまの住居地域の中に第二種住居専用をどの程度配置していくかというような問題点があります。三多摩におきましてはまだ容積制をしいておりませんし、いろいろ問題もあると思いますが、おおむね、いまのところ、法施行後一年を目標ぐらいにやりたいというふうな考え方であります。
  19. 古屋亨

    ○古屋委員 次に、日笠参考人から、御専門の見地から種々有益な御意見を承ることができたのでございますが、今回の建築基準法改正案は、市街地環境改善の上で全体としては前進と考えられるというふうな先ほどのお話しのように承っておりますが、この点もう一度お話し願いたい。つまり、市街地環境の改善の上では全体として前進であるかという点について御意見を伺いたいと思っております。
  20. 日笠端

    日笠参考人 建築基準法の今度の改正によりまして市街地環境が著しくよくなるかということになりますと、これはかなり疑問がございます。と申しますのは、私から先ほど申しましたように、市街地が形成されていくその過程で、計画的ないい市街地がつくられていくというのには、積極的な手法と、それから消極的な手法とがございまして、前者を私ども都市計画的な観点から都市開発というふうに呼んでおります。それから後者を開発規制というふうに呼んでおりますが、この基準法はその後者に当たるわけでございまして、それによりまして、それが改正されたからといいましても、前者の開発的手法は、やはり市街地を改善していくという点ではかなり有効であって、そしてそれを補うものとして規制的な手法があるというふうに考えておりますので、その規制的手法が改正されまして、その改正については、私は先ほど申し上げましたようにいろいろ私としての注文はございますが、現状から見まして、無理のない線を一応出しておるのではないか。それを踏まえて、建築規制をもつと自信を持って強化していただくということによりまして、従来よりもその成果があがるということになりますと、もちろんその効果はございます。それから地域性の種類を変えましたり、そうしたことの効果はあると思いますが、それだけでは、著しく市街地がよくなるというふうには期待しておりません。その程度に考えております。
  21. 始関伊平

    始関委員長 井上普方君。
  22. 井上普方

    ○井上(普)委員 少しくまず日笠先生にお伺いしたいのでございますが、先ほど先生のお話によりますと、永久建築物が非常に多くなりまして、コンクリートアパートとかあるいはマンションが密集するおそれがある、これは西欧ですでに経験済みのことである、これはこのままいけば悔いを千載に残すのだ、こういうお話がございました。まことに私どももしかりであると思います。しかし、先ほど御指摘になりましたが、第二種住居専用地区の、その小さいほうの模型も、これはまだいいほうではないか、こういうお話でございますので、こういうような実態がもっと過密化したような、もっとこれよりも悪くなった場合に、それこそ欧米の二の舞い以上のことになるのではないか、このように思うわけです。そういうことを考えますと、一体この建築基準法がはたして都市計画上から見ましてもいいのか悪いのか、的確にどう直おせばいいのか、ひとつ先生のお考えをお伺いいたしたいのでございます。  それからもう一つは、都市計画上からいえば、区画整理を行なう、あるいは地主組合を行なうというようなことによって初めて先生のお考えになっておられる都市計画ができるのであって、現在のように狭小過密化した住宅がどんどん建っている現状において、しかもその容積率なんかを緩和した場合に、これよりも-先ほど先生は、現状から見て無理がない妥当な線ではなかろうか、この法改正が妥当じゃなかろうか、こうおっしゃられたのでございますけれども、私どもから考えますと、ますますこの狭小過密化が進んでまいり、先ほどもだれかがおっしゃいましたように、永久建築物が五〇%以上も占める現在、これこそまた悔いを千載に残すのではないか、このように考えますので、これをどう直せばいいのか、ひとつ先生のお考え方をお示し願いたいのでございます。特に、区画整理であるとかあるいは地主組合というような考え方は、目下まだとられておりません。特に石井さんのほうからも申されましたように、都市再開発の面においても非常な金がかかる、あるいはまた、土地の所有観念が西欧と日本とではかなり違っております現在において、それが現在の都市づくりに非常な障害になっておるときに、現在の法改正によってそれがますますむずかしくなっていくのじゃないか、このような気がいたすのでございますが、先生の御見解をひとつお伺いいたしたいと思うのでございます。  続いて、石井さんにお伺いいたしたいのでございますが、現場において特に御苦労になっておる点につきましては、私どもは非常に御苦労に存ずるのでございますけれども違反建築物を発見いたしましてそしてこれを執行上において代執行を行なうまでのスピードを早くしてほしいという御要求がございましたが、それを一体改正の上においてどのようにしてやればいいのでございましょうか。現場の声としてひとつお答え願いたいのでございます。続いては、先ほど法第十条によるところのお話で、違反建築が発見された場合に、建築主がだれであるか、あるいは建築業者がだれであるかということがわからない、これに非常に手間がかかるのだ、職員の苦労もここにあるのだというようなお話でございますが、これを一体どのように直せば監視員がこれを的確につかむことができるか、この点ひとつお示し願いたいと思うのです。  それから最後に、法第五十二条の容積率のところで建設的な御意見を局長さんはお述べになったのでございますが、もう少しこの点を明確にお示しを願いたいと思うのでございます。  それから続きまして、有泉先生にお伺いいたしたいのでございますが、建設省は、現在の監視員制度であるとか、いろいろの法改正によって執行体制がまずまずできるという自信をお持ちになっておられるようなのでございますけれども、先生といたしまして、被害者の会の方といたしまして考えられた場合に、このたびの法改正による執行体制で実効があがるとお考えになっておられますか、どうでございます。そしてその実効をあげるのにはどういう方法を具体的にとればいいのか。先ほど先生は執行罰のことを言われましたけれども、もっと詳しい具体策をひとつお伺いいたしたいと思うのでございます。  第二点といたしましては、日照権をやかましく申しますと、土地の高度利用という点に障害にならないかという点、私どもは疑問に思うのでございますが、先生のお考えをお伺いいたしたいのでございます。  それから、質問はダブりますけれども、第三点といたしましては、狭小住宅についてこれをどういうように今後直していけばいいとお考えになりますか、ひとつお伺いいたしたいと思うのでございます。  田村さんにお伺いいたしますが、先ほどお話の中に個性的な都市というようなことがありました。まことに私も都市都市によって特性のある都市をつくり上げることが必要であると思います。日照権にいたしましても、北は北海道からあるいは南は鹿児島に至るまで同じような角度をとっておることも、私は一つ大きい疑問を持ちますし、また、その地域地域によって特性のある都市建設せられるのこそ初めてほんとうの都市づくりであろうと思うのでございます。この都市づくり、個性的な都市、特徴のある都市づくりにどのようなことを田村さんはお考えになっておられるのですか、そしてまた、それをつくりあげる手段といたしましてはどういう方法がございますか、どういうお考え方を持っておられますか、ひとりお伺いいたしたいのであります。  それから、このたびの法改正によりまして、日照権に対する北側斜線の制限が出ておるわけでございますが、横浜におきましてはこれが有効であるとお考えになりますかどうか、ひとつお伺いいたしたいと思うのでございます。  さらに、都市における住民の生活の質の向上にはどのような手段を講じていくべきか、ひとつこの点、御見解をお示し願えればと、このように思う次第でございます。
  23. 日笠端

    日笠参考人 御質問が二点ございましたので、お答え申し上げます。  最初の御質問は、コンクリートアパートが乱立いたしまして、西欧の二の舞いをやるおそれがある。それから、そこに模型がありますが、それよりももっと悪いような形の地区が発生するのではないか、それに対してどうすればよいかということだと思いますが、私は先ほども申しましたように、木造市街地の蔓延、これはもうわが国ではこれまでずっと現実としてございますし、最近非常に悪化しておるわけですが、この問題と、それから今後不燃化いたしましていわゆる住宅ストックとして有効なもの――木造住宅が有効でないとは申しませんけれどもコンクリート建物はやはり耐用年限も長いですし、商業建築のようにすぐ建てかえられるということでなくて、これが長いこと除却されずに残っていくというのが、各国においてもそういう状況にございますので、やはりわが国の住宅ストックとして非常に重要な意味を持つと思いますので、その問題と二つ分けて考えております。  そのコンクリートアパートにつきましては、現在のまま、あるいは今度の建築基準法の規定によりましても、ただそれのみによって市街化が進みますと、必ずしもいい市街地はできないというふうに思っております。そこで、どうすればいいかということでありますが、先ほどちょっと詳細計画ということを申しましたが、これは、たとえばそこにございますような幾つかのブロックをあわせまして、その地区について建築の立ち上がります形を全体として設計をいたしまして、そしてそれが実現するように指導するということでつくり上げていくという提案でございます。それはどうしてかと申しますと、これまでの都市再開発と申しますのは、ある地区を選びまして、そこを全面買収するか、そこの地区をとにかく一挙に改造してしまおう、こういうことで事業が行なわれるわけでございます。住宅地につきましては、これをやろうといたしましても、なかなかその地元の方の意見がまとまらないということで、実現がこれまで非常に困難なわけでございますが、私がいま申しますのは、すぐに一挙にそれをやるということではなくて、ある地区についての計画をあらかじめ立てまして、そして常にその地区の住民に対して行政的な指導をするということで、まあ最近建てかえた人もいますし、それから、ずっと前にもう建ててしまって、最近建てかえなければならない時期に来ている人もあるし、地区の中でかなり豊かな人もあるし、そうでない人もある、非常に時期的にもアンバランスがあるわけですが、それを一挙にやるということではなくて、長い間時間をかけましてその地区の住民が納得した上でそれを改造していく、そういうことでございまして、その場合にはおそらく一戸建ての住宅からアパートに変わるわけでありますから、敷地を合併いたしまして共有というような形をとらなければならないと思いますが、それの納得ができるまでに時間をかけて指導するということの提案でございます。  それから、次に、今度の基準が妥当かどうかということにつきましては、非常にむずかしい問題でございますが、私は都市計画を専門としておるものでございますから、建築取り締まりというような面は非常にこまかいことであるというふうに思っておりまして、建築行政指導については私はそれほど専門でないわけでございますが、要するに、個別的な敷地について、建蔽率であるとか、容積率であるとか、高さであるとかいうようなことを取り締まっていくというたてまえは、どうしても建築基準法にはあるわけでございます。その限りにおいて、先ほども申しましたように、理想的な市街地というものはどうしてもできないということがございます。そうなりますと、むしろこの制度を非常にきびしくいたしまして、それは今度は違反という形で出てくる。それから、非常にゆるくいたしますと、その中でやりますので、市街地が非常に悪化していく、どっちを選ぶかというその二者択一を迫られるわけでありますが、私は、どちらかというと、守られない制度をつくりまして――東京都の緑地地域が非常にいい例だと思いますけれども、あれは建蔽率一割ということで、私は現地を視察いたしましたけれども、これは常識的に考えましても非常に無理な制限であったわけで、そうなりますと、違反が蔓延する一方、地区の人たちの間で、順法精神と申しますか、そういうものさえ薄れて、違反があたりまえになっている、これは非常によくないことだと思います。そこで、妥当な線といいますか、その辺の問題は非常にむずかしいと思いますけれども建蔽率一割とか二割というのは現実にはかなり無理であって、そういうことが可能な地域というのは、かなり豊かな人で敷地もゆっくり持っておるというようなところでありますから、これは別に建築協定とか、そういうような制度もございますので、そういうものにゆだねる。一般のごく平均的な敷地に対しては、あまり過酷な制度を設けて逆に違反が多くなるというよりも、ある妥当な線で、むしろ取り締まりを厳重にする、そういうほうが効果があるのではないかというふうな考えから、今回の線くらいが大体いいところではないかというふうに考えておるわけでございます。
  24. 石井興良

    石井参考人 先ほど来私が申し上げました違反建築取り締まりのスピード化のことでございますが、九条は現行法どおりでございまして、申し上げるまでもなく、九条の一項で、違反建築があった場合においては、それに対して工事の施工停止を命ずるとか、あるいは相当の猶予期間をつけて移転、除却その他の命令を発することができるとなっております。それで、私が先ほど申し上げましたのは、十一項に関することでございまして、十一項では、「第一項の規定により必要な措置を命じようとする場合において、過失がなくてその措置を命ぜられるべき者を確知することができず」ということでございます。これが非常に多いわけでございまして、確知ができない、特に建て売り業者などはほとんど名義がわからないというふうな実態が多いのでございます。それを探すために先ほどのようないろいろな処置をするために時間がかかるというようなことを申し上げましたが、それでこの九条をずっと見ますと、違反建築者に対して非常に保護をし過ぎているような感じがいたします。というのは、二項を見ましても、「前項の措置を命じようとする場合においては、あらかじめ、その措置を命じようとする者に対して、その命じようとする措置及びその事由を記載した通知書を交付しなければならない。」――現場に行って、違反だということがはっきりわかっておるのであります。これはだれが見たっては違反だということがわかるのでございますが、こういうような、あらかじめ事前通知をしなければならないというふうなことをしなければならぬし、四項においては、「聴聞の請求があった場合においては、第一項の措置を命じようとする者又はその代理人の出頭を求めて、公開による聴聞を行わなければならない。」というようなわけで、非常にたくさんの手続をしなければならないことが義務づけられているというふうなこと等、結局それをやるにしても、第一に、十一項の、相手がわからないというふうなことでございますので、そういった場合においては、直ちにそのものに命令を与えるということができますれば、違反建築物だということがすぐわかるが、現場に行って聞いても、言わない。これは明らかに悪意で言わないのでありますから、そういうような場合においては、直ちにそのものに対して停止命令をかける。人にかけるのではなくて、ものにかけるということができないだろうかということを先ほど申し上げたわけでございます。そうすると、その命令によって、次の代執行なり何なりに進んでいくことができる。そういった手続をやるのに普通二カ月くらいかかってしまうというふうなことでございますので、とてもとても、一つの物件に二カ月もかかってやったのでは、何万とあるものに対して、幾ら人があっても足りないというふうなことで先ほど申し上げました。  それからもう一つは、いま日笠さんのおっしゃっているようなぐあいで、私も先ほど申し上げましたが、再開発計画のない既成市街地一体どうするのだろうかということでございます。個々の建物としてどんどんマンション等が建っていく、あるいはビルが建っていくという中で、規制されるのは、容積制、建蔽率、それから斜線というふうなことで規制されておるのでございますが、東京の都内でありましても、幹線道路はだいぶ広くなっているけれども一つの街区の中に入れば、四メートル、六メートルの道路というものはざらである。こういったところが二種住居地域あるいは普通の住居地域ということになるだろうと思いますが、そういったところで三〇〇%、四〇〇%というふうな容積制、これはもちろん都市の高層化をはかるという意味で容積制を与えておるわけですが、この容積制を、それじゃ高過ぎるじゃないかということがあると思いますけれども、それはそれとしまして、一面において、道路等が非常に狭いところに建つものはうんと容積を削る必要があるという思想がいまあるわけでございます。それが道路幅員の〇・六ということに――これは五十二条かにあるわけでありますが、住居地域等においては、将来当然これは再開発される地区でございますので、そういったところは、ある程度まとまった敷地において開発されるならけっこうであるけれども、過小な敷地とおいてそういったピル化されることをある程度制限する意味も含めて、道路幅員の狭いようなところにつきましては道路幅員の四掛けぐらいにしたほうがいいのじゃないか。かりに六メートルでございますと、四割、二四〇%というふうなことになりますが、いま六割で、三六〇%というふうなことになりますので、そういったふうに規制を強めますと、かりに狭小な宅地でありますと、一面においては道路対面の斜線の影響もあるし、一面においては容積の制限というようなことで、あまり大きな建物が建たない。まとまった敷地であれば建ってくる。大きな建物をまとまった敷地でやる場合においては、前面の道路も特にそこだけ広くつけること等によって指導ができるのじゃないか、そういうふうな期待を持って申し上げたわけであります。
  25. 有泉亨

    有泉参考人 お答えをいたします。  建設省は、私ども質問に対しても、それからまた、きょうちょっと資料をいただきましたが、佐野先生に対する建設大臣の答弁ですか、文書によるもの、これによりましても、大体四つの点をあげて、これで大体やれる、なお、執行罰については、いろいろむずかしい問題があるので、検討する、そういう御返事を私どももいただき、この国会でもそういう御答弁があったように承るのですが、まず、建築監視員というのを置くということ、これはおそらくただ建築主事の名前を建築監視員とするという、そう名前を変えただけできき目があるとお考えだとは思いませんが、数をふやすとか何か、そういうことがねらいだと思いますが、これはかなり画期的にふやさないと、むずかしい。地方の財政がそれに耐えられるかという、まずそういう問題がございます。  それから、公示をする、木の立て札をする、いままでは紙を張ったり何かしていたけれども、木の立て札というのはきき目がある、実際の経験からもそれはあるように私ども聞いておりますが、そこでただ木の立て札をしましても、見えなくしてしまうとか、相手はいろいろの対応措置をとりますので、この点は石井さんの御意見に全く私は賛成なんですが、本の立て札そのものに――それからさっきのあて名がわからなくてもいいわけですが、この建物は、現に進行しているが、建築違反だ、だれもこの工事を進めてはいかぬと、そういうふうな木の立て札ができれば、違反しているやつが現行犯でつかまえられれば、これは非常にきき目、があると思うのですが、いまのままでは、一体どれだけきき目があるか。紙を張ったのだったら、その上にまた紙を張って工事を始める、これが現実なものですから、それが木の立て札になって、その木の立て札を抜いたら何かの違反になるかもしれませんが、上に白い紙を張ったら一体どうなるか、若干問題がありまして、はたしてきき目があるだろうかというのが、一つ疑問に思うのです。  それからもう一つは、二十五万以上の都市では建築行政を市におろす、そのことは一面確かにけっこうで、県では目が届きかねるということがあるかと思いますが、それについては、私は少し――御質問に必ずしも答えることにならないと思いますが、若干疑念を持ちます。というのは、東京都でも各区に建築行政をおろしているわけですが、区によって、非常に熱心な区と、そうでない区と、ばらばらなんですね。ですから、これを二十五万のそれぞれの都市へおろしますと、それぞれの都市が特色を生かしてちゃんとまじめにやってくれればいいのですが、どこかの圧力で一たびくずれてしまいますと、おろしたためにかえってだめになるということが起こる心配がある。したがって、その点では知事にやはり責任があるということをもう少し明確に残しておいていただきたい、こういうふうに思うのですが、まあ仕事を現場の人がやるようになるということは若干のきき目があると思いますが、はたしてそれでいくかということです。  それから、ガス、水道、電気、これは運営上の問題で、これが四番目の柱になるわけですが、これも非常に基本人権の問題などがひつかかりまして簡単でないので、条件が非常にたくさんついているわけです。第一、住み込んでしまうとだめだということになっておりますから、荒壁でもついたらさっと住み込んでしまうということは幾らも起こり得ますので、筋としてはこれはきき目がある。ことに電気はきき目があると思うのです。ガス、水道というのは――水道は井戸を掘ればいいですし、ガスはこのごろプロパンで済んでしまいますが、自家発電というわけにいかないでしょうから電気はきき目があると思いますけれども、これも限界がある。悪質なやつにかかるとだめなんですね。悪質なやつにかかれば、それじゃおまえのように言ってもだめだとおっしゃられるかもしれませんが、私どもが考えておるのは、もう少し役に立つだろうと思うのです。それは、執行罰でいけば一番手早くいきます。建築主事が命令を出して、そして相手がわからなければ、対物命令を出して、それに違反すれば、違反するやつに罰を加える。この違反したやつをつかまえるのがなかなかむずかしいとか、いろいろ手続上のむずかしさがありますが、うまくいくと思いますけれども、ただ行政官にそういう強い権限を与えていいかという疑念が一方でなくはないのです。これはさっき名前を出してしまいましたから、あとでしかられたらあやまることにしまして、田中幹事上長に会ったときに、田中さんは、これはもともと取り締まりを警察にまかしておけばよかったのだ、こうおっしゃったのです。私どもはどうも警察にまかしていいかという疑念が少しあるのですが、建築主事の場合に、建築主事にまかせるのがもし心配であれば、建築主事の命令ですぐそれに高い過料だというような御心配があれば、建築主事が違反建築を発見してそして命令しても、言うことを聞かない、そういうときには裁判所に持ち込む。これは裁判所がすぐ受け付けてくれないとだめですけれども、それはその体制を一方で整えなければだめですが、裁判所が見て、なるほど建築違反だと思えば、建築主事の命令を追認するといいますか、承認する、認めるわけですね。そうすると、それで罰金になる。今度はコンテンプト・オブ・コートといいますか、法廷侮辱罪でいきますから、相当高く取っても取れる。そういう手続を講じたらどうか。これは私はそんなに詳しく勉強したのではないのですが、アメリカなどの建築基準法が――日本の建築基準業法に該当するものが非常に守られているのは、そういう手続がさっとすぐできるからだというふうに私は理解しているのです。そういうことをすれば、行政官の判断ですぐ過科がくる、こういうのよりは少しは安心できる。裁判所のほうはまた今度はなかなか人が足りないとか何とかおっしゃるかもしれませんが、しかし、国家百年の大計のためならばそういうことを少し考えてみていただいたらどうだ、こういうふうに考えるわけです。  それから第一点の、具体的にどうすればよいかということですが、執行体制執行罰というのは、くふうを要しますが、やってみる価値がある。建設省も現に、なお検討すると、こうおっしゃっているのですが、それを至急に検討していただきたい。そうして、これはできれば基準法改正と一緒に中へ入れないと、うまくおさまるかどうか、そういう疑念があるわけです。先ほど申し上げました敷地登録制度というものは、これは別にあとからやってもできると思うのですね。敷地登録というのは、家屋台帳、土地台帳などとは別にもう一つこれをやらなければならない。相当金がかかりますけれども……。それを新しく確認を求めたものから順に塗りつぶしていけば、これはすでに一ぺんどこかで使った土地だということで、やれると思います。だから、そういう意味では、この敷地登録制度というようなものは、別な仕組みでもあとからもできますが、執行体制そのものというのは基準法にいま入れないと、あとから入れるというのはちょっとむずかしかろう、そういうことを感ずるわけです。対物命令が非常に有効、くふうして、できれば有効だろう。伝え聞くところで、確かなことはわからないのですが、建設省は対物命令ということはある程度考えたと思うのです。そういうふうに聞いているのですが、これは法制局との交渉のうちで落ちてしまった。それで、そんな対物命令というようなものを出すためには、効力を認めるためには、ここに違反建築ありということを官報か何かに示さなければだめだ、全国のだれがまたそこに来て工事をするかわからないから、官報に出さなければだめだ、河川法にあるじゃないか、こう言うと、いや、河川というのはちゃんと告示してあって、どこからどこまで河川だということがわかっているというような、何かやりとりがあったのじゃないかと想像するのですが、それは先ほど言ったように、その場に立て札ができて、それでこの立て札はうっかり手をつけると処罰される、そうしてそこに、この工事は違反建築である、何人もこれを進めてはいかぬ、こういうことを書いて、そうして違反すれば処罰される、そういう掲示ができるようになぜできないか。それならば、もしくいが抜かれて、なければ知らないのですから、それは処罰されない、くいがあるのにやれば、これは処罰されてもしょうがないというのでいくのではないかと思うのですけれども、そういう交渉までいかないでどうも建設省のほうが引っ込んでしまったように聞いております。それが第一点。  それから第二点は、高度利用と日照権の問題についての御質問ですが、私どもの会は少し誤解をされまして、おまえたちのようなことを言っていると、土地に大体高層ビルは建たないじゃないか、こういうふうによく言われるのですが、ほかの参考人の方が皆さんおっしゃったように、私ども、計画的に都市が開発されていくということについて、それはいかぬなどと言ったことは一ぺんもないのです。環状七号の中くらいが市街化地域ですか、そういうようなものになって、だんだん高層化していくだろうということは承知しておりますし、それはそうすべきだと、私個人としては積極的にさえ思っております。実は都市再開発法がここの皆さんのところで御審議されたおりに、私に都合がつかないかという話がたしか建設省のほうから来たので、私は都市再開発法の卵にもまだならない時期に若干関与しまして、補償をどういうふうにするかという、あとの利害配分については若干慎重にやってもらいたいと思っておりますが、都市が再開発されていく、そのために、一部の人がその意に反して巻き込まれるというのはやむを得ない、そういうふうにさえも考えております。ですから、高層化されていくところで、日照権を――個々の人が古い家を守っていて、そしてそこへ建てるなというようなことは、これはある意味では権利乱用で、そういうものまでも保護しろとは言ってないのです。とにかく理想的な住居地区をつくろう、こう思っているところで、そこで日照がこない――先ほど、あとからよそから注意がありまして、第一種の住宅地区で道をはさまないで建てますと、三階まで――一階は日が当たらないと言ったそうですが、三階でも日が当たらない場合が起こる。これをごらんいただけばわかりますけれども、そういうことで、地域地区、そういうようなものを無視して日照権というふうなことを言っているつもりはございません。特に違法建築によって、現にある法律違反して日照が侵害されている、こういう場合はぜひ救済してもらいたい、こういうふうに思うわけです。  それから三番目は、過小宅地について、これは日笠さんからも先ほどお話がありましたし、かつて別の機会に日笠さんと対談したことがありまして、私の記憶が間違いなければ、日笠さんは、過小宅地、たとえば――いまどのくらいに考えておられるかわかりませんが、二十坪以下か三十坪以下か、どこかそこから下は、それでは家は建たないという制度を採用すべきである、諸外国にある、こうおっしゃっているのです。ところが、過小宅地についての制度は私も賛成ですが、日本ではできない。なぜできないかというと、先ほど言いましたように、敷地が押えてない。ですから、分筆をして十坪しかないという土地があるわけですけれども、これは過小宅地で押えようとしても、いや、あともう十坪借りたいといえばだめなんです。借りたいということで手続してくれば、押えられない。そうして建ててしまって返されれば、これもだめなんです。ですから、過小宅地規制というのは必要と思いますけれども、それを問題にするのには、敷地登録制度というものを同時に採用していかないと、そういうものを処理できない。現在私が実際に上野広小路からちょっと入ったようなところで実態調査を五年ごとにやっていた地域がありますが、そこでは、何と、四坪の土地がありまして、そこへ一階四坪、二階四坪という建物が建っている。そういうものは当然整理されていかなければならないはずのものですが、それが何ともいまの基準法改正では押えようがないというふうなことになっているというのが実情でございます。そういうような点の手当てもぜひ考えていただきたい、こう考えます。
  26. 田村明

    田村参考人 第一点の、個性的な都市づくりというふうなことを申し上げたわけでございますが、現在のように、新幹線も発達し、七千六百キロの高速道路も順次でき上がっていくというふうな情勢でございますと、ほとんど全部がスモール東京都市になってしまうということを私ども非常におそれるわけでございます。都市には、それぞれの特性がありますような都市が方々にある、そこにいろいろな魅力的なところがあるというふうなことが、一つ一つ都市にとっても利益があると同時に、日本全体の開発のためにもやはり利益があるのではないか。どこへ行っても東京の銀座と同じものがあるというふうなかっこうでは、日本全体がこれだけの小さい土地でございますが、小さい中に、いろいろな密度、コンパクトないろいろなものがあるというふうな、そういうよさが失われるのではないかというふうに考える次第でございます。  これについての具体的な手段でございますが、片面で都市の広域化ということが非常に叫ばれております。たとえば水の問題、交通の問題、確かに広域化が進んでおります。それだけに、一都市だけでは解決しないような問題を非常に多くかかえております。しかし、これは非常に大局的な立場からの水の計画あるいは交通の計画が必要でございます。しかし、結局一都市の問題になりますと、そうした問題で解決したもののいろいろな組み合わせの問題、この辺が都市づくりの一番の基礎になってまいります。都市計画というものは、個々の技術、道路の技術あるいは鉄道の技術ということではなしに、その組み合わせをいかにうまくするか、これは完全に小さな部分部分的に積み上げて組み合わせを考えなければ、プランニングは不可能でございます。そういう意味で、どんなに広域的な計画が進もうとも、やはりそうした個別組み合わせの技術としての都市計画というのはますます都市にとって必要ではなかろうかというふうに考えるわけでございます。  それでは、そのようなことはどういうふうにして可能であるかということを考えますと、ここにお役所の方もおられるわけでございますけれども、やはり、周知の事実でございますが、中央官庁の縦割り制と申しますか、こういうものの一番のしわが結局自治体のところへ全部集約する。その組み合わせば自治体のところで適当に考えろというのが、いまのしかけになっております。したがいまして、中央官庁でそのような総合的な施策のところができれば別でございますが、これは非常にむずかしい問題がございます。しかし、自治体の場合には、そういう組み合わせがばらばらであったということは言っているわけにはまいりませんので、どうしてもそこでかなり総合的な計画をつくるセクションが必要でございます。そういう考え方に基づく自治体の考え方に対しまして、中央の各官庁の方も、ひとつどういうふうな考え方であるか、しかるべき御理解を賜わりたいというふうに考えるわけでございます。  しかしまた、そのためには――今度の都市計画法でも相当に権限が自治体におりたということが一つのたてまえにはなっておりましたが、政令等で拝見いたしますと、あまりおりていないわけでございます。むしろ、こういうものを積極的に自治体におろしてやらしてみるということが必要ではないかというふうに考えるわけでございます。いまの基準法に関しまして、有泉先生から、二十五万の都市ではあぶないというふうなことをおっしゃいましたが、これは戦後の全体の日本の変革の一つの問題を見ますと、非常に教育が進んだということが一つの特徴でございます。それだけに、従来は東京だけに人間が集中していた、いままではそうでございますが、これからは地方にもどんどんそういう人が育ってくるという時代でございまして、従来のもあと同じには考えられないというふうに考えるわけでございます。しかも、そうした都市づくりというふうなものは、いま申し上げたとおりに、本来、やはりその地域を愛し、その地域を知っている人々によって行なわるべきであるというふうに考えております。そのような意味では、権限は現在のところでは建築基準法違反是正というだけではなしに、もつとプランニング的な権限というものをむしろ都市に一緒におろしてやるべきではないか。プランニングの権限はない、違反だけ取り締まれということでは、片手落ちでなかろうか。そのようなことでかえって都市それぞれが自覚を持ってくる。現在のところでは、どうも不信である、不信であるから結局権限を与えない、権限を与えないから人が集まらない、人が集まらないからやはり自覚も生まれない、こういう悪循環を繰り返しております。しかし、むしろ逆に、権限も与える、やらしてみる、そういう中で、自分たちの選んだ首長あるいは議員を持っております、そういう中で十分にそれは是正される機会もございますし、どちらかと申しますと、中央の選挙に対しては熱心であっても、地方選挙に対しては投票率が低いというふうな数字が出ておりますけれども、これについてももっと都市が自覚を持ってやっているということになれば、積極的に住民がいまの首長あるいは議員に対してももっと十分なみずからの判断ができるのではないか。そういう機会が与えられないと、いつまでたっても地方自治が育たない、非常に中途半ぱなかっこうにしかならないというふうなことに考えるわけでございます。そのためには、まあ県知事がどうだというふうな有泉先生のお話もございましたが、不服審査等に基づきましては、これは別な機関でやるということが、迅速な不服審査機関というものの意味ではけっこうでございますが、計画自体を知事がやるというふうなかっこうでは、やはりいまの問題は育たないというふうなことを考えるわけでございます。したがいまして、やはりどうしても市町村が現実にこの基準法の問題あるいは計画の問題に取り組んでいくということが最も必要ではなかろうか、そうすれば、いまの違反建築の問題につきましても、もっと直接的な突き上げがきて、そうした議員あるいは市長あるいは町長というものもいたたまれなくなるというふうなことが必ず起きる。そうした直接の住民のチェックによらずしては、ほんとうの個性的な都市づくりもできないし、違反建築の是正もできないというふうに考えるわけでございます。ただし、二十五万というふうな機械的な人口数字だけで割り切るのは適当であるかどうか、私は疑問でございます。大体いまの県庁所在都市ぐらいであればその程度の実力は持っておると思いますし、実力を持たしめるべきだと思います。二十五万というのは一つの基準かと思いますけれども、こうしたものはやはり実情に合わしてやらしていく、そういう中で地方の議員なり首長なりに十分そうした住民とのつながりが生まれてくるというふうにお考えいただきたいと思います。  それからもう一つは、個性的な町をつくるには、やはり具体的な組み合わせ技術の問題でございます。こうしたプランニング技術と申しますか、日本ではまだ進んではおりませんけれども、これを専門にいたしますようなプランナー、日笠先生の東京大学の都市工学というものもございますけれども、こうした人たちが多数方々の大学にできまして、あるいは大学以外の養成機関でもよろしゅうございますけれども、こうした専門職の方々が出てこられ、そうした方々が積極的に都市の中に入って計画をおやりになるということが、最も違反の問題あるいは計画の問題の同時的な解決ができ、同時に個性的な都市も成立が可能ではなかろうかというふうに考える次第でございます。  それから日照権の北側斜線の問題でございますが、これについて有効かという御質問でございますけれども、私どもの拝見いたしますところでは、なかなかむずかしいのではなかろうか、端的に申しまして、そういうふうに考えております。と申しますのは、これ自体、法律としても非常に不十分である。実際の日照の角度の問題等から考えまして、これで日照権が確保できるというふうには考えないわけでございます。  それからもう一つは、今度は結局いまの狭小宅地の問題とからみ合うわけでございますけれども、加害者も、これは悪気があって加害者になっているわけではございませんで、なけなしの金でやっと買えた土地、そこに家を建てようとする、ところが、お隣の日照権でこれは建ちません。非常に狭小化していますとそういう事態が起きるわけでございます。住居専用地区と申しましても、現在のように狭小化した宅地の中では、やはりそうした事態が起きます。そうしますと、せっかく宅地が買えました、土地を買ったほうの権利者を保護することにならないわけでございます。この辺の関係が非常にむずかしくなってくる。そうしますと、結局そうした個別的な建築ではなしに、先ほど私が申し上げましたような基本的な問題で、全体の建設という中でこれを共同化していくとか、そういうことで考えざるを得ないというふうに考えるわけでございます。  それから三番目の、住民の質を向上させていく。建築基準法及び都市計画、広くいいましてこうしたものは、やはり私ども、そこに住んでいる方々、そういう方々の生活を守り、あるいはそれを豊かにし、あるいは能率をよくするというためにやっているものというふうに考えているわけでございます。こういう中で考えますと、住民の質をどういうふうに向上させていくかには、現在のところでは、都市計画というものは、ただ街路をこしらえればいい、あとは色を塗っておけばいいという考え方に基づいておりましたけれども、先ほど私が申し上げましたとおりに、建築部分というものがかなり大きな都市のメージャーストラクチャーと申しますか、大きな構成要素になりかけております。従来そのメージャーストラクチャーは鉄道、道路だけでございましたけれども建築物自体がそういうことになりかけております。こうしたものの空間構成というものを可能にするためには、単に基準法だけではなしに、この建設をどういうふうにしていくか、それに対する助成策、こういうものが有効に行なわれることによって、かえってあとで再開発とか、あとからの追加投資を必要としないで、十分効率的な町づくりが行なわれるのではないか。現在のところは、基準基準で押えていくというだけに終わっているという感じがするわけでございます。都市の中心部でございますと、なかなか環境の質を向上させるということはむずかしゅうございます。ある程度都市はそうした密度の高さということにたよっているわけでございます。密度が高くて、同時に十分環境の質を上げていくということは、非常にむずかしい問題でございます。それだけに、先ほど来からお話が出ておりますような共同住宅化、こうしたものが具体的に促進されるような手段がどうしても必要でございます。そのために、建蔽率、容積率等がある程度制限されている。建蔽率については私はもっと制限されていいと思いますけれども建蔽率が制限される、公共的なスペースを提供するとか、あるいは共同化をはかるとかということによりまして多少容積等が緩和を受ける、それによって共同化が促進される、その分については助成の策が十分に講じられる、こういう策でも講じませんと、なかなか個別の建築指導だけでは、住民の質、都市の質、環境の質というものを向上することは困難ではなかろうか。結局、いまの個別、集団規制と申しましても、建築基準法のは、個々にあらわれた個別の敷地に対する基準ということになっておりますので、もっと大きな地区あるいは都市の基準というふうなもので環境条件がきめられなければいけないと思います。そういう意味で、第一点の個性的な都市の中で申し上げたのですが、横浜の中では、いろいろなそういう環境の質を向上するための、法律によらないいろいろな考え方を出しております。たとえば私道基準につきましても、普通は四メートルでありますけれども、四・五メートルはぜひとっていただきたいということをお願いしておるわけでございますし、あるいは宅地開発をするにつきましても、宅地開発の要綱というようなもので、できるだけいい質のものをひとつつくっていただきたいというふうなことをいっております。それから、先ほど容積の問題で五十二条の問題を申し上げましたが、これもまだ現在条例もつくっておりませんけれども敷地の問題あるいは規模の問題等によりましてどういう容積のボーナス制をするかというふうことをいろいろ検討しております。そういういろいろな検討をして自治体で考えましたような一つの基準というふうなものは、これは法律できめられているわけではございませんけれども、全体の都市の中で皆さんがそれでひとつやろうではないかということを、市会あるいは地方の議員の方々あるいは首長の方々、そういう方々が決心をされた場合には、国としてはひとつそれで応援してやる。いろいろなケースがあるだろうけれども、それは法律にないのだからいかぬというふうなことではなしに、それでみんながやってみようというのであれば、ひとつ応援してやろうじゃないか――全体の基準を一気に全国的に引き上げると申しますと、これは東京の場合といなかの場合とまるきり違いますから非常に問題でございますけれども、それぞれの都市の中でやってみようということに対しては、国の積極的な援助をいただきたいというふうに考える次第でございます。そのようなことで住民の質の向上というものは順次でき上がってくるのではないか。そのほかに、全体の建築基準法のほかに、先ほど私申し上げましたような、都市あるいは地区というふうな単位での質の向上をはかるような住居水準の基準と申しますか、こういうものができ上がってきていいのではないかというふうに考えるわけでございます。
  27. 始関伊平

  28. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 有泉先生に、時間がありませんので、先にお願いします。  悪質不動産業者の問題がいま非常に社会的問題になっておりますので、まずこれに対する先生のお考え方をお聞きしながら、特に今回の法改正によって問題点一つ残しておりますが、それは二重登記、土地の二重利用ですね。たとえば、現在土地が三百平方メートルありまして、そこで建蔽率が五〇%としますと、百五十平方メートルのうちができる。しかし、八十平方メートルの家を建てて、残りの土地うちの二百平方メートルは他の人に転売している、そういうやり方をしてきたために、建蔽率の上にまた上がっていく点が出てまいりますが、こいう点が今回の法改正の中では何か置き去りにさてれたという考え方のために、宅建業者、建て売り業者ら、こういう不動産の扱い方を熟知している人たちが、こういう法改正の盲点を突いて違反を犯していく、こういう点についてお考え方をひとつお尋ねしたいのです。  第二点は、不良宅地業者の追跡捜査というものがいままで行なわれていないわけですね。たとえば大きな違反を犯した、それで必ず被害をこうむるのは、個々の弱い方たちに被害がおっかぶさっている、東京都なんかでもいろいろ問題が起きておりますが、こういう問題についての調査が十分に行なわていないし、また、そういう人たちは二度も三度も同じようなことを繰り返している、こういう点についてはどのように取り締まり、また、そういう業者に対する許認可の問題が非常な盲点になっておりますが、この二点について御意見を伺いたい。
  29. 有泉亨

    有泉参考人 お答えいたします。  悪質不動産業者がよく宅地を二重に使用して、そのために一般の善良な市民が迷惑をこうむるというのは、しばしば見受けられる現象でして、現に私どもの会員に福永さんという方がおられますが、それはちょうどいまおっしゃったような事件でして、かりに三百平米で、ここへ不動産業者が三戸建てよう、こうしたわけですが、世田谷で確認を求めたら、それは建蔽率違反でだめだ、二戸ならばいい、そこで二戸、こっちの端とあっちの端に建てた。そうすると、これは一応合法です。この二戸の人たちがついうっかり、この三百平米を百五十平米ずつ買えばよかったのですが、百平米ずつ買った。そうすると、まん中に百平米残った。その百平米をお医者さんの人が買いまして、建築を始めた。まわりがびっくりしまして、まずこの建築そのものが建蔽率違反だ、その点を突いたわけです。それで世田谷に行きましたら、今度は逆にさかねじを食ったわけです。あなたたちの建物違反になっていますよという。百五十平米のところに建てるべき建物確認をもらって建てたわけです。その業者が悪いやつで、分筆して五十平米とってしまいましたから、百平米のところに建っている。そこで、あはたのほうも削らなければだめだ、そうすればこっちもやってやる、そう言わんばかりの返答をもらったわけです。そういう二重使用がなぜ起こるか。先ほどから私が繰り返して言いましたように、敷地登録制度がない。使った敷地は、かりに売っても、もう買った人は使えない、そういうことがどこかに公示されている、だから、宅地を買う人は、不動産登記簿で土地の登記を見るだけでなくて、宅地台帳を見に行って、この土地は使われているということがわかる。それを怠ったら、それは買った人が悪いのだ。不動産登記簿を見なかったのと同じことですね。いま土地を買うのだったら、不動産登記簿を必ず見ますが、同時に宅地台帳あるいは敷地台帳を必ず見ろということを普及して、それが公示されていれば、いま言ったようなことは起きないわけです。そうなれば、悪質業者は、百平米を別な人に売ろうとしても、買い手が見つからないはずです。ところが、そういう公示がありませんから、第三者が買います。買った人が百平米でちゃんとこれに合った確認申請をしてくれば、断わる方法がないのです。おそらく世田谷のケースというものは東京都にも行ったでしょうし、あるいは、世田谷のケースそのものが行っているかどうかわかりませんが、同様の事件は建設省にも行っていて、建設省の方はもう重々そういうことを御承知なんです。けれども、それを手を打ってくださらない。そこでそういう悪質業者がはびこる。確認はもらって建ててしまって、あと分筆してあき地をまた売っ払って逃げてしまう。このケースでも、ほんとうの責任者はどこかわからないように逃げてしまっています。第三者に売ってしまっている。途中人が一人入ります。自分のところの事務員か何かの名前に一ぺん移して、逃げてしまう、そういうことをやっている。そこで、そういう悪い業者の追跡調査というのがどの程度あるか、私は自分でやったことはありませんし、都などはある程度お持ちと思いますが、ブラックザストというものがあって、それがはなはだしくなれば、どこかで建設業の資格をとってしまうとか何かあるわけですが、私どもは、初め、建築基準法の中に罰則を入れてくれ、こういうことを言いました。それで建設省も一度はそういう気になったように私は記憶するのですが、ところが、いやそれは、建設業法なり宅地建物取引業法なり、そういう業法のほうに罰則があるから、それでいいのだ、そこで、たとえば建設大臣のお答えの中でも、違反建築に関与した建築士、建設業者、宅地建物取引業者に対し、登録の取り消し、業務停止等の監督処分を強化することという答えが出ていますが、これはどの程度強化なさるか、これはこっちにも罰則規定はありますから、できないわけではないと思います。だから、実際に行政の担当に当たるほうでこれがどの程度強化できるか、ぜひ強化して悪質の業者を追放していただきたいのですが、これはなかなかむずかしいと思いますけれども、これでは罰則がゆるいとかなんとかいうのですと、建築士法とか建設業法、宅地建物取引業法というような、そっちの法律を一々手直しして罰則をきつくする、こういう方法しかないと思います。  大体以上でございます。
  30. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 ありがとうございました。
  31. 始関伊平

    始関委員長 岡本隆一君。
  32. 岡本隆一

    ○岡本(隆)委員 最初に日笠先生にお伺いいたしたいと思います。  先生は、都市計画の専門家でいらっしゃると承りました。私もまた、昨年成立いたしました都市計画法の中で国会で真剣に取り組んでまいった者の一人でございます。   〔委員長退席、金丸(信)委員長代理着席〕  そこで、その都市計画法を補完する法律として、建築基準法やあるいは都市再開発法が今般今国会に提案されてきた、こういうふうに理解しておるのでありますが、都市計画というものは都市区域を平面的に計画を立てていく、それを立体的にどのようなものにしていくかというふうなことを一なるほど、先生は先ほど、理想的なものを基準法によって求めることはできない、こうおっしゃいました。私もそれは存じております。しかしながら、都市計画法で平面的なプランニングを立てまして、今度立体的にそれをどう形づけていくか、それを先生は肉づけをするという表現をされました。そのとおりですね。そこで、その肉づけをする際に、どのようにしてそこに住む住民の生活環境を守っていくか、ミニマムの線、最低限の線をどのようにして守るかということが、建築基準法の集団規制の大きな役割りである、こういうふうに私は思うのです。そういうことになってまいりますと、適当な範囲の通風と日照というものは保障されなければならぬ、こういうふうに思うのです。だから、先生のおっしゃることに議論を吹っかけるわけじゃございませんけれども、矛盾があるようなものですね。理想は求められないが、しかし、ミニマムは守らなければならぬ。そのミニマムを守る基準法によって、いま有泉先生から説明されたように、三階、四階まで日照がさえぎられてしまう。ことに第二種住宅地区ですね。第二種住専になってまいりますと、アパート群を建てるのだ。アパート群を建てるということは、現にあるのでなくて、これから建てていくのです。これからつくっていくアパート群が、いま言ったような形の日照も通風もさえぎられるというものになってしまうという形において建築基準法をこれからきめていくということは、大きな間違いではないか。だから、やはりシビルミニマルが害せられることがないような形のものとして基準法を仕上げていくこと、これがわれわれに課せられた義務ではないか、また、都市計画に専念される先生としては、当然そういう考え方に立って進んでいただきたいと思うのでございますが、私の考え方は間違っておりますでしょうか。
  33. 日笠端

    日笠参考人 お答え申し上げます。  いま御質問がありましたこと、私全く賛成でございまして、私もそのとおりに考えております。おっしゃるとおり、都市計画法を補完するものとして建築基準法がございまして、その間に、いろいろな都市計画的な事業とか、そういうものの重要性については先ほど申したとおりでありますが、それをやらない市街地もどうしても出てくるということであります。それに対しては、建築基準法が最低の環境条件を守る、これもおっしゃるとおりだと思います。そこで問題は、要するに、最近におきまして旧来の建築基準法が適用されておりました市街地の実態から見ますと、地価の高騰ということが非常に大きな原因だと思いますが、それによりまして宅地が零細化する。確かに日本の現状は、高度成長によりまして国民の生活も豊かになっております。そうして住宅につきましては、私が調べました限りでは、それに対する要求が非常に高度化しておりまして、住宅については、私が十年前に調べましたものよりもかなり高度な要求を持っている。坪数につきましても、設備につきましてもそうでございます。そのほかに、自家用車を持つとか、そういうようないろいろな点で生活が豊かになっていると思いますが、土地に関しましてはどうにもならないというか、そういうことがございまして、自分の要求する住宅を建てて、そしてその中にいろいろな家具とか、自動車とか、そういうようなものを持ち込みたいという国民の要求がございます。それを満たすために何を削るかといいますと、土地を削る、環境条件というものをまず削って、そしてその要求を満たす、こういうことが大都市の郊外では起こっておりまして、それがこの狭小過密なスプロールを蔓延さしているのだと思います。そういうような実態がございまして、それではどうして一戸建ての住宅に住まなければならないか。アパートに住むのがいいか、一月建てがいいかという問題がございますが、これも日本人――これは日本人だけではないのでございますけれども、諸外国も含めまして、だれでもやはり一戸建ての住宅を自分の敷地に建てたい、これはもっともな要求だと思うのですが、それを全部満たしますと、いまのような住宅がどんどん建っていくというようなことになるわけです。このことを抜きにしまして、個々の敷地についての建蔽率とか容積率とか、そういうような制限だけを強化いたしますと、これは幾らでもできるわけでありまして、それをしますと、当然違反が出てくるということになって、違反が出ますと、どこも違反だらけであるということになります。ちょうど東京都の緑地地域のように、もう隣もやっているから自分のところもやるというような、順法精神がなくなってしまいまして、そういうような状態が放置されるということがいいのか、あるいは適当な現状に合った基準にいたしまして、そのかわり、悪質な業者とか、ひどい違反を徹底的に取り締まるというのがいいのか、そういうような問題になってくるのだと思います。   〔金丸(信)委員長代理退席、委員長着席〕 これは、一方供給の上から考えますと、そういう一戸建て――土地がたとえば二十坪か三十坪しか買えないということは、どんな建て方をいたしましても、敷地がそういう零細でありますと必ず近隣に迷惑を及ぼす、というのは、これはどんなくふうをいたしましても、日照その他で迷惑がかかるということは確かなわけでございまして、そういうものを許すか許さないかという問題になりますと、これはむしろそういうアパート公共団体が建てまして、そういうものにどんどん収容していく、もうほとんどそういう階層の人たちは公営住宅ないし公団住宅に収容していく、こういう政策が一方においてありますれば、それはまた一つの解決策だと思いますが、それとの見合いでどうしてもある程度のそういう一般住宅を認めざるを得ないということになりますと、違反が蔓延するのがいいか、もうちょと妥当な線で取り締まりを厳にするほうがいいか、こういうような問題になるかと思います。それで、おっしゃるように、今度の改正は必ずしも緩和だとは私は思っておりません。要するに、いままであまりにも厳に過ぎる制度がございまして、たとえば緑地地域建蔽率一割というようなのは、むしろこれは特例であって、非常な別荘地とかそういうところでは可能でありますけれども一般市街地ではちょっともう明らかに無理であるというようなことがありますと、そういうものはやめて建蔽率三割以上にするというような、そういう点では現状に合わしてあるんじゃないかと思いますが、そういう道具立ての種類がたくさんできたわけで、それを今度現地にどういうふうに適用していくかというのは、先ほどおっしゃいました都市計画市街化区域というものがきまりますと、それに対して将来の市街地のあり方というものを十分考慮した上で、公害等が起こらないように商業地域とか用途地域をきめまして、住居地域についても、今度できております何種類かの種別をそれに当てはめていく、こういうことになるのではないかと思うわけでございまして、そしてできるだけこの建築基準法による適用は市街地の中でそんなに比重を占めない、ということは、ほかの事業によってどんどんもっと良質な市街地がつくられていく、こういう一般的な取り締まりによる部分をなるべく少なくするような方向に都市開発を行なっていく。先ほどおっしゃいました都市計画から建築へのつながりの間には、地区の計画というものがございまして、先ほどもほかの参考人の方も述べられましたけれども建築を対象にせずに地区を対象にしてやっていく。団地もよろしいです。それから区画整理もいいと思います。それから先ほどのアパート、共同化ですね。そういうような地区をつくっていくことによって、なるべく建築基準法による一般適用は少なくしていく、そういう方向が都市計画としては望ましいのではないか、こういうふうに考えております。
  34. 岡本隆一

    ○岡本(隆)委員 都市計画をやっていきますのには、都市計画法は、十年以内に市街化すべき地域市街化地域とする。市街化地域指定いたしましたら、そこはやはりその自治体において市街化十カ年計画というものを立てるべきだと思うのです。その計画に乗ったところの建物建築行為は許可していい、それに乗らないものはチェックしていく、こういうような方向に進むべきだと思うのです。ところが、それをやっていくのには私権を非常に制限いたしますから、だから私どもは、そう場合にはその市街化地域土地については民間の売買を禁止すべきだという意見を持ち、そういう考え方に立って党の方針を立てておるのです。売買の自由がなくなりますと市価というものはなくなりますから、その土地は、市町村に土地管理委員会をつくり、それに土地の要らない人は売る、ほしい人は買うというふうなことになれば、いわゆるいまの呼び値というものは全然なくなって、地価というものは、管理委員会がきめる価格になります。それが適正な補償をして市街化計画を進めていく、こうしなければ市街化計画というものはうまくいかないし、また国民の住環境というものもよくならない、こういうようなことで、われわれ、この前の公営住宅法の改正問題のときには、ずいぶんそういうふうな立場に立って論争をいたしました。しかし、それはいまの自民党政権下における国の施策のあり方からいけば、ちょっと夢のようなことです。しかし、国民としてはこれは強い要望であり、そういうようなことは共感を得られると思っておりますが、なかなかすぐには実施困難なことだと思います。だから、今度の基準法にいたしましても二つの矛盾点を持っておるわけです。一つは、理想を追うていくところの、少なくともシビルミニマムは守っていきたいという一つの意欲ですね。そういうふうな観点と、もう一つは、現状にどうしてマッチしていくかというものと、二兎を追っているわけです。ですから、この法律案は二つの道に分裂しているわけです。一つは集団規制の問題ですね。片一方では建蔽率の緩和です。建蔽率の緩和をいたしましたら、これはいわゆるスラム化する、過密狭小がより激しくなっていくということは当然の帰結です。狭小過密が起こりますと、さらにまた今度地価が上がります。地価形成は一応需要者の支払い能力によってきまってくるというようなことで、最近科学技術庁の資源調査会がそういうようななにを発表いたしましたが、私もそうだと思うのです。そうすると、いままでは少なくも二十五坪くらいなければ建たなかったのが、十五坪あれば九坪のもの、それに一部二階を足せば最低の住まいがつくれるというようなことで、十五坪くらいのものがもうそれでもって一つの流通価値を持ってくるわけです。そうすると十五坪で間に合う。いままで二十五坪なければ間に合わなかったものが、十五坪で間に合うということになれば、それだけまた地価が上がる。地価が上がってまいりますと、今度は経済的な理由から、やはりそれに一坪でも三坪でも建蔽率違反しても建て増していこう、こういうふうな意欲が出てきまして、違反はなくならない。だから今度の建蔽率の緩和は、ざる法だから、違反をなくするように建蔽率を緩和してやろうというのだが、緩和したことが逆にまた違反行為を誘発してくるということになると私は思うのですね。だから、今度の基準法がそういった二つの矛盾点を一つに合わせようというところに無理があるから、むしろ、理想を追うならば、やはり建蔽率をそのままにしておいたほうがいいのではないか、こういうふうに思うのでございますが、いかがでしょう。
  35. 始関伊平

    始関委員長 ちょっと参考人の方々に申し上げますが、午後二時から本会議開会の予定でありますので、たいへん失礼でございますが、御答弁は簡潔にお願いいたします。
  36. 日笠端

    日笠参考人 お答えいたします。  建蔽率をいままでどおりにしておいて、今度のように緩和しないほうがいいんじゃないかということでございますけれども、たとえば、東京都の緑地地域について私は四十二年に査察をいたしまして状況を調べましたところが、不法建築は、要するにすべてをとらえておらない。どのくらいあるかわからない。おそらく届け出の倍くらいはあるだろう、それはほとんど違反ではないかということでございました。それからその中でまた相当な部分違反である、要するに、緑地地域の中の最近の建築のほとんどが違反であるというような実情を見せてもらいました。緑地地域は、きめられました歴史的な経過がございまして、最初は戦時中の防空緑地ということで、戦後は、東京市街地に対する蔬菜の供給とか、そういうことで農家が自分の家を建てて住んでおるというような地域だったわけですが、それがもう最近は全く変わりまして、緑地地域の外側までどんどん市街地が仲びていってしまうということになりますと、外側と中側で状況が違わないのにかかわらず、片一方は建蔽率が一割である。片一方は六割というような一般住宅地であるというような実情でございましたので、その実態を見ますと、実際に一割を守っているというのはほとんどないわけでございまして、区役所の指導される方は非常に困っておりまして、ようやく、違反ではあるけれども建蔽率三割で何とか私道をつくらせて指導したというのが、まあまあ見られる住宅地というような水準でございます。そういうことでありますので、一割、二割という建蔽率を残しておくことは、どこかもうちょっと高級な住宅地には適用できまずから、制度として残しておくのは私もいいと思いますけれども、実際にはあまり使われないであろうということで、これは緩和というよりも、それはまた別に、たとえばかなり高級な住宅地で、住んでいる方が建築協定をしよう、ここで宅地が分割されては困るから、これは一応そこの最小限画地と申しますか、そういうものをきめようとか、あるいは宅地を細分化して五十坪以下にしてはいかぬとか、そういうようなことをしたり、あるいは建蔽率を一割にしようではないかというような協定をされるというのは非常にいいと思いますが、一般にはあまり使われないのではないかということを考えますと、必ずしも三割というのは不適当ではないというふうに考えますのですが……。
  37. 岡本隆一

    ○岡本(隆)委員 少し議論がかみ合ってなくて、私のお尋ねのしかたがまずかったと思うのですが、私は零細宅地の問題をお話しておりまして、先生は緑地の問題をお話しておられるので、議論が食い違ったのだろうと思います。時間がございませんから次に進みたいと思います。  東京都の石井さんにお尋ねをいたしますけれども、先ほどからの井上委員有泉先生やあなたへの質問の過程を通じて大体明らかになったのでございますけれども、かりに今度の原案のまま法律が成立いたすといたしまして、建蔽率はいままで三十平米引いたのを引かなくなるということにななりますと、非常に狭いところにそこそこの住宅が建つことになりまして、非常な建蔽率の緩和ということになってくるのであります。そこまで建蔽率を緩和した場合には、やはりそれだけはどこまでも守っていかなければいかぬ。だから、基準法で、現在の土地事情というものを勘案して、やむなくそういうふうな建蔽率の緩和をやった、それならば、その線で今度はそれ以上の違反行為がないように法律は厳正に守られるよう措置を講じていかなければいけないと思うのです。いままで、無理もないから、ざる法承知で運営していた。食管法と建築基準法、それから選挙法、その三つが一番のざる法だといわれておるざる法の代表的なものになっておったのを、今度は守り得る法律にして、守ってもらう法律にするんだ、守らせる法律にするんだ、こういうことがたてまえでございますね。そうしますと、守らせるのにどうすればいいかというと、執行体制が問題になってくるわけですね。いままでのなにで困難なこと、それをこうすればいいということも承りました。そこで、私ども住宅局から説明を聞いておりますのには、パトロールをやります、監視員が見に行きます、見つけます、見つけたら、そこで、これは違反だぞといって、建築行為が続行することを停止させてしまうんだ、それに違反して続いてやったら、すぐ罰金を科すなり行政処分をやります、だからもうそんな基準法に往反した行為はできないのです。こういうふうな説明を受けておるのです。それで、十一項の前に、十項に、特定行政庁は、緊急の場合には、前にいろいろなことを書いてある手続を踏まなくてもすぐ措置できるというふうなことがあるわけなんですね。だから、この九条の十項の適用によってどんどんスムーズにやっていけるのじゃないか、やれるのじゃないかというふうなことを考えられもしますが、その点はいかがなんでしょうか。いまのお話では、この十項がありましても、なかなかそうはまいらないということのように承れるのでございますが、いかがでしょう。
  38. 石井興良

    石井参考人 先ほども申し上げましたように、違反建築の相手をつかまえるということがきわめて困難であるということで、私が十一項で申し上げましたように、相手がわからない場合の措置をどうするかということがいま一番問題である、相手をさがすために非常に時間がかかるということで、十一項のことを先ほど申し上げたわけでございます。
  39. 岡本隆一

    ○岡本(隆)委員 そうすると、相手をさがすのに、たとえていえば、有泉先生が言われたように、札を立てますね、そして違反建築だから、これに触れてはならぬということが書いてあるところへ、その表示があるにかかわらず作業している者があるというふうな場合には、それを違反行為として摘発できるというふうな規定をつけ加えればそれでいいわけですか。
  40. 石井興良

    石井参考人 非常に違反者を守るような法律になっておるように感ずるのです。したがいまして、違反建築物であるということはだれが見てもすぐわかるわけです。直ちにそのものがもう違反建築物であるということは、先ほど申し上げましたように、その建物に対してこれが違反でありますよという命令を発する対物命令と称するそうですが、そういうことができて、そしてそれによって、以下、たとえば告発の行為ができるとか、あるいは告発でも、これは相手の問題になってきますけれども、あるいは代執行をするとか、そこにあらゆる問題が出てくるわけですけれども、もっと前の措置をうんと短くすることをしなければいかぬじゃないか。現行法もそうでありますが、新法もそう変わっておらないはずですが、違反者の立場ということを非常に――要するに、善意の違反者ばかりがあった時代の思想ではないかというふうに感じます。
  41. 岡本隆一

    ○岡本(隆)委員 よくわかりました。それでは、ここで詳しいことをお尋ねしておりますと時間をとりますから、また後ほどよくお尋ねをいたしまして、あなたの御趣旨が生きるように修正する努力をいたしてみたいと思います。これは与党が応ずるか応じないかは別といたしまして、修正をする努力をいたしたいと思います。また与党の諸君も、これだけよ聞かれたら、まさか反対はされまいと私は思いますから、そのように努力をいたしたいと思います。  そこで、住宅局長に念のためにお尋ねをいたしておくのですが、これできわめてスムーズに動くのですよということでございましたが、いま東京都の石井さんからお話を聞きますと、なかなかそうはいかぬということです。だから私どもは、やはり現場でパトロールする人が、パトロールをする意欲が出るように法律をつくり上げていかなければいかぬと思うのです。そういう意味では、いまの石井さんの御意見に従った修正意見を出していきたいと思いますが、いままで住宅局長は非常にうまいこといくようにぼくらには説明しておられましたが、あまりしろうとをごまかしちゃいかぬ。その点、いや、ごまかしたのではない、こういうことなんです、これでできるのです、うまくいくのですということであれば、ひとつその御意見を伺っておきたいと思います。
  42. 大津留温

    ○大津留政府委員 簡単にお答えいたします。  今回の改正案で建築監視員という制度を設けまして、九条に定めてあります権限のうち、一部を監視員に委任いたしますので、監視員が現場で違反を発見いたしますと、その場で工事の中止あるいは工事の停止の命令ができます。その命令は、建築主だけではなく――建築主はもちろんでございますが、それを請け負って工事をする請負人、またそれに使用される現場の労務者、それらに命令ができます。東京都の石井局長が御心配になりますのは、そういう違反の工事中であるが、だれもいない、だれがやっているのかわからない、それからそこに職人が入っておれば労務者に対して命令ができますけれども、肝心の建築主がわからないというようなことで、実際にあたっていろいろ御苦労が多いと思います。法律上はそういうふうに、今度監視員が現場で直ちに命令ができますし、また、これは工事中止の命令が出されたものであるという旨の公示を立て札でいたしますから、これは何人が見てもわかる。もしこの立て札をかってに引き抜いたり、こわしたりすれば、刑法上の罰則を食う、こういうことでございますので、相当やりよくなるであろうというふうに信じておりますけれども、問題は、石井局長が御心配のように、だれもいない場合に、はたしてだれに命令したらいいかということですね。それから、そういう場合に、物に着目して、この家は違反建築物だから、何人といえども工事してはいけないというようなことができれば、これはきわめて好ましいということでございますが、これはちょっと法律上問題があるということで、そういう意味で、なかなかいかなる場合にも満点に対応できるというふうには至っておりませんけれども、これは監視員を充足し、パトロールカーを与えまして、そういう運用面で充実をはかるということとあわせまして、現行制度よりは相当進歩が見られておるのであろうというふうに考えておるわけであります。
  43. 岡本隆一

    ○岡本(隆)委員 そういたしますと、自動車の駐車違反の場合、運転者がおらなくて車が路上に置いてあるとすれば、駐車違反のあれをすぱっと張りますね。あれと同じ形で、これは不法建築だという立て札を立てるということをやる。建築基準法はそれでいけないのですか。石井さん、そのように理解できませんでしょうか。
  44. 石井興良

    石井参考人 その点、ちょっとここで即答できませんが、罰金とか、そういうものが非常に安いということも問題であるというふうに考えます。
  45. 岡本隆一

    ○岡本(隆)委員 最後にもう一つお伺いしておきたいと思うのですが、先ほど有泉先生も引用しておられましたが、建設大臣の答弁として、違反建築の公示の建物があります、そうしますと、その違反建築の公示のある建物に人が入居しておらない場合には、水道、ガス、電気の供給を停止する、こういう措置を講ずる、こういうことは、通産省、それから厚生省と大体話し合いがついている模様でございますね。それは先ほどたしか石井さんがおっしゃいましたね。そういう話し合いがついたことはえらいけっこうだというふうなお話でございましたね。そこで、きょう、そのために来てもらったのですが、通産省並びに厚生省のそれぞれ担当の方にお伺いをしておきたいのですが、新聞で私どもは、厚生省や通産省は電気やガスやあるいは水の供給を拒否することはできないといって突っぱねたというふうに承知しておるのでありますが、その後、こういうふうな話し合いができたのかどうかということ。その次には、それじゃ、公示されておる、札が立っておる、札が立っておるものには供給はしないが、人が入居してしまったらどうするのか。札が立っておるところに強引に入っちゃった、そして供用を開始しちゃった。それで最初はもらい水をしながらでも住んでおる。しかし、おれの生活権のために水をよこせという要求があったときに、この電気、ガス、水道の供給は拒否できるのかできないのか。拒否できないとすれば、こういう協定は何にもならぬのです。話し合いは何にもならぬのですが、それはどうなさいますか。その点を念のために確認しておきたいと思うのです。
  46. 吉崎英男

    ○吉崎説明員 ただいまの御質問についてでございますけれども、本件につきましては、私どもとして、建設省お話しいたしまして、きのうでございますが、住宅局長から御答弁があったと思いますけれども、覚え書きをつくりまして、通産省といたしましても協力いたすようになっているわけでございます。終わりのほうに先生が特におっしゃいました、入居している場合の扱いでございますが、これは手続的に、電気事業者なりガス事業者が特定行政庁から要請を受けるわけでございますが、その受けたときにおいてすでにその建築物が居住の用に供されている場合、すでに人が住んでいるときは、これは人道上の問題がございますので、電気を送らないというわけにはいかないと考えております。
  47. 岡本隆一

    ○岡本(隆)委員 いまの答弁漏れがあるのですよ。公示があって、依頼を受けたときには住んでおらなかった、しかしながら、その後に住んで要求してきた場合はどうするかということです。
  48. 吉崎英男

    ○吉崎説明員 たいへん失札いたしました。  その後入った、要請があったあとに入居があった場合は逆でございまして、その場合には電気なり、ガスを送ることを承諾はしないということになるわけでございます。
  49. 国川建二

    ○国川説明員 水道課長でございます。  違反建築に対します水道の給水停止の問題につきましては、ただいま通産省から御説明がありましたように、また厚生省と建設省の間で覚え書きを結びまして、運用上、先ほどおっしゃいましたような違反建築であることが明らかであるとか、あるいは公示されている、そういった場合には、給水の申し込みを保留するという形でこの違反建築の是正に協力するという形で行なっております。
  50. 始関伊平

    始関委員長 吉田之久君。
  51. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 先ほどから参考人の皆さま方から非常に貴重な御者心見を拝聴いたしまして、感謝いたしております。時間もたちましたし、各委員からだいぶ御質問がありましたので、ちょっと簡単に一、二御質問いたしたいと思います。  まず私は、善意の違反者という論議が先ほども出ておりましたけれども、大体人間が家を建てる場合には、もともと異常な状態で建てるというのが普通だと思います。特別大金持ちの方は別として、一般庶民の場合には、あり金を全部放出して、さらに借れる限度まで金を借りたり、あるいはサラリーマンの場合には退職金まで担保にして金を借りたり、そして全知全能をしぼって、できるだけ信用のある、しかも安い、早い業者をさがして、そして自分の城をつくろう、こういう事態で臨むわけでございますので、なかなかに通り一ぺんの法律を順守しなければならないということは、概念としてはわかっておっても、非常にむずかしい状態に置かれていると思うのです。したがって、私は、建築基準法などを定める場合にも、理想を追えば幾らでも高度な基準を定めるべきではあると思いますけれども、実際あまり高度なものを定め過ぎると、ほとんど万人がそれを守らなくなる。全然守らない法律ならば、むしろつくらないほうがいいわけでございますので、守り得るであろう限界をよく見きわめて、そして一たん法律をつくった以上は断じてそれを守らせ得るという体制がなければ、意味をなさないと思うのです。そういう点で、先ほど日笠先生のおっしゃった御意見に私もほぼ同感でございますが、特に私は、守らせ得る体制が確保できている段階に応じて基準を定めていかなければならないのではないか、逆の面からも十分考察しなければならないと思うのです。  そこで、監視員をつくったり、いろいろなことを全度は新たに考えようとしているわけでございますけれども、一番問題は、これからどんどん家を建てようとする人がますますふえてまいります。現に年間九十万件くらいの申請があります。わずかに七百人くらいの建築主事でこれを監督しなければならない。今後年間百万をこえる現状になってまいると思います。そこで、こういう法律ができた場合に、特に地方の行政庁をあずかっておられる石井さんや田村さんのほうの御意見を承りたいのでございますが、現在の人員配置の状態で十分これを守らせ得ることに自信を持てるかどうか、あるいはこれに携わるべき人員をどの程度ふくらましていったときに初めてこの法律が守られるであろうか。先ほど田村さんのお話では、だんだん自治体の職員も育ってまいりますという御意見でございました。しかし、五年先、十年先で基準法が守られるだろうということでは、私は意味をなさないと思うのです。すぐに守らせなければ、二、三年前は大目に見てくれたではないか、何でそう急にきびしく見るのだということになると思います。その辺のところを少しお答えいただきたいと思います。
  52. 石井興良

    石井参考人 都におきましては、建築職種が五百二十四名おります。現実に違反建築を取り扱っているのは百七十二名であります。これが何名くらい要るかということは非常にむずかしい問題でございまして、いまの違反実態を都の人との関連で計算してみますと何百人という数が出るので、それをもってそのまま確実な数であるかどうかということは言えないと思いますが、相当な数をふやさなければいけないだろうということだけしか申し上げられません。
  53. 田村明

    田村参考人 お答えいたします。  員数として何人要るということははっきり言えませんが、現在すでに違反が累積しているわけでございます。これをどう処置をするか、違反ストックといいますか、この問題が一番大きいのではないか、いま改正がございましても、急にこれからきびしくなるということはむずかしいわけでございます。  そこで、特に今回の場合に、東京都さんと私どもと多少違いますのは、東京都さんは、容積的なもの、あるいは空地制、こういうものをすでにやってございますから、この違反が非常にございます。ところが、横浜市の場合には、幸か不幸か、こういう容積制もしいておりませんし、空地制限もございません。ところが、今回の法律案を見ますと、全面的に容積制を採用するということでございます。そうしますると、東京都でもこの違反が非常に多うございますけれども、こういう違反を全国にびまんさせる、これに対する体制は、いまおっしゃいましたとおりに、明らかにできておりません。全く新しく追加される。東京都の場合とこの点は非常に違いますが、東京都あるいは大阪市、若干の都市を除きまして、容積的な考え方はほとんど入っておりません。空地はだいぶございますけれども、しかし、今回の場合はほとんど全国的にこの問題は広がってくる。そうすると、先ほど言いましたような体制はまず整わない。この容積の問題が非常に問題だろうというふうに考えます。したがいまして、もう少し全面的に容積制をやることが可かどうか、むしろ技術的には、もっと簡単に、敷地境界線から何メートル後退せよ、あるいは高さは二階にせよとか、三階にせよとかというふうな、こうした非常に簡単な、目で見たらわかるというふうな状況に置かれるほうがけっこうかと思います。しかし、実際には敷地関係が明確でございません。有泉先生から御指摘がございましたとおりでございます。したがいまして、パトロール体制幾らできまして見に行きましても、現実に測量でもしてみないと、さっぱりわからない、これでは、何人ございましても、ほとんど全く違反建築を是正することは不可能だろう。この容積の問題については、十分慎重にお考えいただくほうがけっこうではなかろうかというふうに考えるわけでございます。  それからもう一点は、私は先ほど申し上げたとおりに、単に違反の取り締まりというだけではなしに、そういう人たちが同時に計画面をあずかっている、そういう自覚を持ってやるということが必要だというふうに申し上げたわけでございまして、取り締まりだけをやるということでは、なかなかこの意欲もあがってこないというふうに考える次第でございます。そういう意味体制整備する必要があるというふうに考える次第でございます。
  54. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 いろいろ承りました御意見、また今後委員会の中で生かしていきたいと思います。  そこで、田村さんにもう一点だけお聞きいたしたいのですが、確かに、おっしゃいましたとおり、この基準法で守るべきは最低の規格であります。しかし、それだけではほんとうのよい町づくりはできません。さらに積極的には、先ほど申されましたとおり、地方自治体において町の個性を生かしていく、そしてそこに町々の特徴や文化を生んでいく、そういうことができなければ、問題は解決しないと思うのです。そのためには、個々の敷地の問題から、総合的な敷地一つの集団としてどのように建設を進めていくかということを考えなければなりません。その場合に、いろいろ用意できた個々の人たちを少しレベルを合わすために待たしてみたりするようなことが必要だと思うのです。そうなってまいりますと、先ほども申しましたように、個々の主張は、非常に殺気立っているときですから、これのコントロールが非常にむずかしくなってまいると思います。したがって、いろいろと集団で指導を受けてやる場合には、規制の若干の緩和があったり、容積率の割り増しがあったり、何らかの助成などが必要であろう、そういうメリットを加えながら誘導していくというお説は、非常にもっともだと思うのですが、もう少く具体的に、たとえば、一つ田村さんの構想として横浜のほうで独自の新しいものをつくるとするならば、こういうことも考えてみたいのだということを、一、二分でけっこうですから、お述べいただければ、ありがたいと思うのです。
  55. 田村明

    田村参考人 現行の制度と、それから権限と財政、こういう問題を考えますと、非常にむずかしい御質問でございます。しかし、私どもは、やるのであれば、横浜のような新しい宅地開発が盛んに行なわれている、この時点においてとらえてやるべきだ。一番はその問題だ。既成の市街地はどうでもいいとは申しません。これはもちろん再開発が必要でございます。しかし、建設省の推定によりましても、約二十年間で現在の市街地が倍以上になるというふうな計算も出てまいります。こうした新しく開発される市街地が、ばらばらであってはいけない。これが同じ轍を繰り返すようではしようがない。そうすると、宅地開発をする場合に、そうした総合建築をさせるような指導をしていく、これが一番のきめ手になるのではなかろうか。それに従っての適当なる助成が加えられるということも必要だと思います。そうでございませんと、すでにばらばらに所有権が移ってしまっているという段階においてこれをまとめてやれということは、私ども防災建築街区等でも非常に苦労しておりますが、非常にむずかしい問題がございます。しかし、これから多量に供給されるところの、新しく市街化される地帯、これについては、初めからそうした共同的総合的な開発で、宅地造成と同時に建設的な問題が片づけられていく、これがでうしても必要ではなかろうかというふうに思っております。
  56. 始関伊平

  57. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 どうも長いこと御迷惑をおかけします。  最初に日笠先生にお尋ねしますが、政府が住宅政策で六百七十万戸建てるという、そのうちの六割は民間自力建設でおやりなさい、あとの四割は公共住宅でやりましょう、こういう住宅行政の姿勢というものが、宅地の問題、土地の問題のほうに手を打っていないにもかかわらず、あなた方のお力でおうちをお建てなさい、こういうところからいまの住宅不足にわれわれが追い込まれていく、そこで、当然、こういう建築基準法違反というものが、好むと好まざるとによらず、出てくる、こういう政府の姿勢というものを先生はどうお考えになっているかという点をまず第一にお聞きしたい。  その次は、違反建築の設計者とか施工業者に対する罰則がないわけなんです。設計者とか施工業者に対する処分が抜けております。この点、私はまず非常に手抜かりだと思うのです。この点についてのお考えをお尋ねしたい。  その次は、先生がちょっと前に発表なされました、公園住宅をつくれということが朝日新聞に載っておりました。この構想は私ども非常に賛成しておるのですが、業者まかせの宅地開発をやめて、地主、施工者、地方公共団体の協力による公園住宅建設するよう提案したい、こういうユニークな先生の御提案が新聞に出ておりました。この点についてお尋ねしたいと思います。
  58. 日笠端

    日笠参考人 お答えいたします。  まず第一点、政府の住宅政策について、これは非常に大きな御質問で、短時間ではちょっとお答えできないかと思いますけれども、私は住宅政策専門ではございませんで、やはり都市計画の観点からいつも意見を申しておるものでございますので、その点だけちょっと申し上げます。  公営住宅の供給量につきましては、必ずしも欧米の各国に比べて非常に少ないということはないと思いますけれども、日本の現状を見ますと、やはりいまの違反建築の問題を考えてみましても、やはりもっと供給量をふやすべきであるということを私は考えております。  それからその建て方についてでありますけれども、やはり都市計画というものは、大きく分けまして、社会の発展ということと、その中で生ずるいろいろな矛盾の解決という、いろいろな目的を持っておりますが、そういう意味で、私は、都市計画、これは道路をつくったり港湾を整備したり、いろいろございますけれども、その中で、生活環境整備ということは非常に大きなウエートを占めるべきではないかというふうに考えております。そういう観点から見ますと、住宅政策と都市計画とが必ずしも斉合しておらないという点がございますので、日本における都市計画の発達の経過にもよりますけれども欧米におきましては、都市計画の中に住宅政策というものがもつと密着して位置づけられているのではないか。たとえば、団地を開発する位置にしましても、それから都市計画に合った用途地域とか、そういうものに合って私営住宅とかそういうものが建てられていく、こういうような土地利用計画と住宅政策、特に供給される住宅の立地というようなものにつきましては、もっと斉合性があってもいいのではないか、そういう点についてもっと努力すべきではないかというふうに考えております。  それから、違反建築につきまして設計者、施工業者に対する罰則の点でございますけれども、これは私、あまり専門的に、法律屋でもございませんし、ちょっと専門でないものですから、的確な、どうすればいいという意見は申し上げられませんけれども、そういう違反建築に携わった設計者や施工業者について何らかの罰則が適用されるのは、当然ではないかと思います。  それから第三点、公園住宅についての提案についてでございますが、これは私、緑地地域を解除する問題につきましていろいろな考え方を整理してみたわけであります。緑地地域というのは、先ほども申し上げましたような目的で設定されましたものが今日に至っているわけで、状況が非常に変わったわけですけれども、従来、市街地の中に緑地を確保するということ、これは非常にりっぱな考え方だと思いますが、そういうものとして初めにつくられたものであるからには、今回これを住居地域にするという場合につきましても、できるだけああいった市街地の中に公園緑地を確保したい、それにはどうすればいいかということで、従来は単独事業としまして公園の用地を一括買収するわけでありますけれども、何にせよ非常に地価が高騰しておりまして、多少の公園を買収するにしましても、区の財政のかなりな部分を投入しても何年もかかるというような状況がございます。そこで、緑地地域を解除するにあたって、地主と、それから住宅公団なら住宅公団、そういう施工者、それと地元の公共団体、たとえば区でもよろしいわけですが、その三者が歩み寄りまして、そうして地主は、緑地地域が解除になるわけでありますから、土地を時価よりは多少安く提供する、それから市街地の中に開発するわけでありますから、従来のアパート団地よりも設計の上で多少くふうして公園、緑地を多く生み出すような設計をする、それから地元の公共団体は、時価よりは安く土地を提供を受けてそれを公園にするということで、従来のような団地の中の公園ではなくして、一般地域の人々も利用できるような公園をそこで生み出す、こういうようなことを考えまして、三方一両損みたいなことでみんながよくなるというようなアイデアで公園住宅というものを提案したわけでございます。
  59. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 本会議のベルも鳴りましたので、これで終わらせていただきますが、最後に、東京都の石井さんですか、ボーリング場の件で御意見がございましたが、これは私どものほうとしても十分考えてやっていくことをこの席でお約束しておきたいと思います。  以上をもって終わります。
  60. 始関伊平

    始関委員長 他に参考人に対する質疑もないようでありますので、本日の参考人に対する質疑は終わりました。  参考人の方々には、本日は長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、本案審査に資するところ大なるものがあります。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)  次回は、明十三貝午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時五十一分散会