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田村参考人 横浜市の
企画調整部長の
田村でございます。
私は、現実の自治体の行政の中で、広い
意味の総合的な
都市計画というものをしている
立場、それから
都市計画というものをフィジカルプランニング、物的計画と申しますか、そういうものの研究を少ししております者として、
参考人としての
意見を申し述べたいと思います。すでに三人の諸先生方から十分な御
意見も出ておりますし、それと重複する点もあるかもしれませんけれ
ども、その点はひとつ御容赦願います。
いまの
都市をどういうふうに考えていくかという問題から考えますと、すでにいまの
建築基準法の中でも、
日笠先生からおっしゃいましたとおりに、単に
建築基準法だけではできない、
都市計画法その他の
建設法、そうしたものと
一体となった
都市づくりをしなければならない、こうした総合計画を要求されているという時代の中での
建築基準法の
改正というようなことから、問題をとらえたいと思います。それからもう
一つの点は、現実の
都市化の状態を見ますと、先日の、国民総生産が世界第二位というふうな数字からもわかりますとおりに、町が非常にかたくなっている、ハード化していると申しますか、そういう状況が見られます。ハード化しておりますと申しますのは、現実に、
木造建築ではなしに、鉄筋
コンクリートその他の構造物が盛んに建ち並んでおります。大体この十カ年間の数字を見ますと、非
木造建築物と申しますか、いわゆるかたい
建物は大体九倍程度になっております。十年前には約八〇%が
木造だったものが、現在は五〇%を下回っているというふうな状態で、どんどんかたくなっております。こういう状態で町の状態を考えますと、やはりどうしても総合的な計画が要る、そうしたものがなければ、町はいよいよ動きがつかなくなってくるという状況が見られるわけでございます。この辺から、
建築基準法が町づくりそのものの
法律ではございませんけれ
ども、町づくりに非常に重要な役割りを果たすというふうに考えるわけでございます。それからもう
一つの問題は、
宅地のスプロールが進んでおります。これは
都市計画法の
関係において十分に考えられなければいけない問題でございます。それから、このほか、全体の市民の
都市生活の質と申しますか、こうしたものを向上するような手段というものが十分にはかられていいというふうに考えるわけでございます。
いま申し述べましたような基本的な問題の状況を考えまして、それでは今回の
建築基準法についてどのように考えるかということについて、以下若干簡単に
意見を申し上げたいと思います。
現在の
建築基準法の
改正でございますが、約二十年間を経まして、現実の情勢の変化に応じましてこれに対応すべく
建築基準法の
改正が今回考えられた、このように考えるわけでございます。しかし、一番の
問題点は何かといいますと、いま先生方の御
意見でもさんざん出ておりましたとおりに、
違反建築が非常に激増している。これに対して、自治体の
基準法行政としては
違反建築の是正に追いまくられている。追いまくられているけれ
ども、しょせんこれは実効があがらない。やっている人たちが非常に意欲を失っている、こういう状況に置かれております。しかし、
違反建築がなぜ出るかといいますと、一番もとから考えますと、やはり人口の
都市集中と申しますか、
都市の過密化というふうなものが一番最初にございまして、それに基づきます地価の上昇の問題、それでさらに
宅地の狭小化を生んでいる、さらには、
違反建築、特に先ほど
東京都の局長さんもおっしゃいましたとおりに、
建蔽率関係が非常に多いということが、この狭小化の裏はらの問題でございます。そのような状況で
違反が起きる、こういうふうな結果、ある程度
違反の問題というものを緩和する必要があるのではなかろうかというふうなことで、たとえば、今度の
建築基準法の
改正では、住居
地域において三十平米マイナスというふうなものを抜きまして、単に六割というふうなかっこうにする、そういう
違反を現実に多少合わせていくというふうな
方策もとられているわけでございます。そのような現実の情勢変化によりまして多少の
改正がございますのは、私
どもとしても当然のこととは思います。しかし、現実にこのような
違反が集積している、あるいは状況いかんに応じてはやはりそのような
法律が変更される、あるいは
地域の
都市計画か変更される――先ほ
ども東京都の緑地
地域の問題もございましたが、正直者であるとばかを見てしまう、かえって現実のほうが優先していくというふうな状況が感じられるわけでございます。これは一
建築基準法だけの問題ではございませんけれ
ども、このような、実際には正直者でやっているとばかを見てしまうというふうなことから、行政あるいは
建築基準法その他こうした
都市計画に関する住民全体の不信感と申しますか、こういうものが
一つ基本的に根ざしている。この辺が今度の
基準法改正を機にいたしまして根本的に改められて、やはりこの線でやるのであるというふうなことがはっきりと出てくる、現実にただ流されるだけではなくて、筋は通していく、このような姿勢がどうしても必要かと思います。しかし、先ほど申し上げましたとおりに、
建築基準法だけでほんとうは筋が守れるかと申しますと、たとえば、
宅地狭小化の問題について、
敷地制限の問題その他を加えるといたしましても、狭小化は、いま地価の上昇等で起きております。そうしますと、どうしても基本的な
都市づくりの
問題点を考えざるを得ないわけでございます。
このような
都市の根本的な対策といたしまして、幾つかの点があげられるわけでございますが、第一は、何と申しましても、いまの地価の問題でございます。地価の上昇に対しましては、
宅地審議会及び
土地問題懇談会等からいろいろな御提案が出ております。その
うちの一部の地価公示
制度等はすでに実施の方向に向かってはおりますけれ
ども、しかし、こうしたその対策の中の弱いものだけでは地価対策は行なわれないというふうに考えるわけでございます。
土地問題懇談会の中の御
意見では、地価値上がりの利益の帰属については、どうもこれは多少不当ではなかろうかという御
意見も出ております。このようなことは全く私
ども賛成でございまして、この地価の値上がりという問題は、国民総生産が二位に上がるというふうな国力の背景ではございますけれ
ども、同時に、私は、単に地価が上がるということではなしに、その地価の値上がりの利益の帰属の問題、これについて相当厳然たるお
立場をおとりになりまして、地価問題についてかなり徹底的な対策をお立てになるということをぜひ期待したいわけでございます。そのようなことがございませんと、
建築基準法が現在の状況に合わせましても、やはりこれから
違反がまだ激増してくる。
宅地狭小化は現在でとまるわけではございません。十数年前に大体百坪の基準でありましたのが、いまは百平米あればまあまあいい。九十平米、八十平米の
土地も出ております。この状況が続きまして、いまの地価の値上がりの差額を見ますと、実際問題として十年後にはどのような
宅地の狭小化が生まれるか、まことにおそろしいものを感ずるわけでございます。これについてひとつ根本的な対策をお願いいたしたいわけでございます。
それから、
宅地狭小化、過密化というふうな問題が、しかしそれでも進んでまいるとは思います。これに対しては、先ほど来の御
意見でもございましたけれ
ども、どうしても二月二月の
敷地に対しての問題ということだけでは押えきれない。
有泉先生の
お話にもございましたが、このような
模型でございますような絵というものを見ますと、まことに私
どもの住居
環境というものはおそろしい感じがいたしますが、これに対しては、どうしても
建物を一戸一戸の
敷地で考えるよりは、やはり総合的な
敷地ということで考えざるを得ないだろうというふうに考えるわけであります。このためには、一戸の
敷地でなしに、たとえばこの
模型にいたしましても、全体を一戸の
建築物にいたしますと、相当いいオープンスペースもとれまして、いい
環境の
住宅もできるわけでございます。しかし、
建築費はもちろん当然単価が多少上がつてくるということはございますが、そのような総合的な
建築というものが行なわれませんと、一戸一戸の
敷地に対する基準ということだけでは、もう状況が間に合わない。これに対しては、相当総合的な
敷地と申しますか、こういうことを考えざるを得ないだろうというふうに思うわけでございます。このためには、共同化を推進するための――単に
規制あるいは基準ということだけではなしに、共同化については特別な助成がなされるとか、あるいはこれに対して特別やりやすいような
方策がとられる、たとえば容積率の割り増しであるとか、そういうことで多少のメリットがある、このような情勢にいたしまして共同
建築を推進していくということがどうしても必要かと思います。このような全体的な
都市づくりに対する基本的な助成策なくては、これから非常にかたくなってまいります町づくりが、非常にかたいスラムと申しますか、マンションスラムあるいは鉄筋スラムとかいうことばをよく耳にいたしますが、そのような状況に追い込まれるのではないかということを懸念するわけでございます。
それから、このような状況で考えまして、現在の
法案の中のちょっと個別なことに入りますと、
建蔽率の制限というふうなものがございます。この中で新しく特に
用途地域の中で生まれましたものが、第二種住専という
地域でございまして、中高層の
アパート、住居を建てたいというふうな
地域というふうに考えられております。しかし、これについて多少中高層が建つように容積の点では考えられておりますが、
建蔽率のほうを拝見いたしますと、
建蔽率も六割ございます。こうした状況におきますと、中高層を促進するというよりは、やはりずんどうの
建物が建ってしまう、この絵のような状況というものを私は考えるわけでございます。中高層
建築をせっかく考えられて、多少風通しのいい、すき間の多い、緑地の多いこうした住居地帯というものをこしらえるというようなお考えの第二種住専でございましたならば、むしろ
建蔽率のほうは極端に制限する、そのかわり、容積はある程度
ゆとりがある、このような
方策を立てませんと、かえって法の意図したような結果にはならないのではないかということを私は心配するわけでございます。そのほかに根本的な問題といたしましては、
都市の全体的な
環境と申しますか、こうした質を上げていくということがどうしても必要かというふうに考えます。これについてはすでに御
意見も十分出ていることではございますけれ
ども、何と申しますか、総合
建築と申しますか、あるいは総合
建設法と申しますか、
都市総合
建設法と申しますか、単に基準ということではなしに、そのような総合的な
建築を促進していくような、このような
方策がどうしても必要ではないか。それが、国民生産第二位になり、町が非常にかたくなって、これから十年たつとどうにも動きがとれなくなる、その前段階において、現在において考えられる手段ではないかというふうに考えるわけでございます。
それからもう
一つの
問題点といたしましては、私
ども自治体で町づくりをしておりまして、町づくりというのは、しょせん、全国的な基準はございますけれ
ども、各
都市によっていろいろな事情がございます。これは町々によりまして、その歴史的な状況も違いますし、地形的な条件も違いますし、住んでいる人の感情の問題も違います。たとえば、
一つの再開発の話をするにつきましても、非常に合理的に受け入れる方、あるいは伝統的なものに非常にこだわる方、こういうように地方によっていろいろな性格を持っております。このようなものが全国一律の基準だけで割り切られるというのではなしに、町づくりというものは、やはりその町の個々の特性によりましてその町の人々がほんとうに総力をあげて結集して町づくりをしていく、このようなことが必要ではないかというふうに考えられるわけでございます。その辺から考えまして、
建築基準法も、単に一定の法的安定性と申しますか、あるいは全体の権利の
調整と申しますか、こういう点から、全国的な基準が必要ではございますが、ある
部分については、むしろ、その町づくりというのを、町の個性によりあるいは特徴に応じて十分にいろいろな指導ができるような形で大きなワク組みだけをきめまして、内部については条例あるいは規則等によるというふうなことをぜひお考えいただきたいと思います。その中で、特に
法案の中で、私
ども拝見いたしまして、
法案の五十二条の三項の三号でございますけれ
ども、容積に対します一種の割り増しでございますが、この割り増し量が、従前の
法律では五十九条の三の三項でありましたが、各条例に委任されていたわけでございます。ところが、今回の五十二条の三項の三号によりますと、これは政令基準による、空地の割合あるいは
敷地の条件というのを政令の基準によるというふうになっておりますのは、
都市づくりを実際にいろいろこまかな点で考えております自治体としては、制約が非常にきついわけでございます。つまり、この政令で定められます案はどのようになるか、私
ども拝見はしておりませんけれ
ども、やはり
東京都あたりが
一つの大きな基準になるのではないか。しかし、
東京都でございますと、たとえば二千平米以上のものについては割り増しをやってもいいということができましても、ほかの小さな
都市になりますと、そのような基準ではとうてい適合しない、しかし、それなりに、たとえば千平米でも多少の割り増しをつけてやることによってそこに非常にいい
環境が生まれるという可能性があれば、これは条例によって千平米でもいいというような形にできるということが望ましいと思います。今回の
改正案では、むしろこの辺は多少改悪になっているのではないか。全国的に容積制がしかれるから政令であるというお考えよりも、政令はむしろ割り増しできる一定のワクを与えるとか、こういう問題だけにいたしまして、むしろ、どれに与えるかという個々の条件につきましてはその
都市の特性にゆだねるということのほうが妥当ではないかというふうに考えるわけでございます。
それから、この辺に関しまして、
建築基準法以外の問題といたしましても、町づくりにおいては、そのように
都市に応じてのいろいろな特性がございますから、単に全国的な基準によるよりは、町づくりを実際に推進できるような、そうした
体制というものをぜひ自治体に与えていただきたい。職員の問題
一つにいたしましても、自治体の職員にはまだ不十分な点もございますけれ
ども、順次そうした町づくりをする職員も育ってまいります。そのような意欲をぜひ育てていただきたいというふうに考えるわけでございます。
今回の
改正案で、二十五万以上の
都市に対しては
建築基準法の行政をおろすというふうな趣旨もございまして、このような点はまことにけっこうかと思いますが、同時に、
基準法の
違反建築取り締まり的なそうした面だけをおろす、先ほ
どもお話が出ておりました、非常に労多くして功少ない仕事だけがおりるのではなしに、やはり、むしろもつと計画的な権限と申しますか、この辺のものも、そうした二十五万程度の
都市であれば、おろしていくということをお考えになってもいいのではないか、これは
建築基準法以外の問題ではございますけれ
ども、あわせてこの際に申し述べたいと思います。
それから最後に
宅地開発の問題、これは新
都市計画法との
関係でございますが、
横浜は、御
承知のとおりに人口増加が非常にきつうございます。現在年間で約十万人という人口増加が見えております。大
都市といたしましては、一番人口増加が多い
都市でございます。これに関しまして、私
どもは、この
宅地開発というものを何とか
規制していきたいというふうに考えるわけでございます。その際に、
建築基準法で問題になりますのは
私道でございます。
私道の問題で、今回は新しい
私道基準をこしらえるというようなことが
法案の中に示されてございますけれ
ども、これに関しまして、その基準というのは、一種の技術基準と申しますか、単にそういう物的基準だけではなしに、もう少し広い計画基準と申しますか、こうしたものが入ってもいいのではないかというふうに考えるわけでございます。と申しますのは、そこに排水路があるとか、何メートルであるとかという幅だけではなしに、全体のその
地域というものの開発を考える場合に、非常に小さい
宅地だけが小さな
私道をつくって開発されるというのではなしに、ある程度それを総合的に開発していくという線にのせていくための計画基準と申しますか、こうしたものが必要ではないかというふうに考える次第でございます。新
都市計画法の中にもございます開発許可の中でも、当然に一定の技術的基準に合えば許可をしなければならないというふうな考え方が多少示されておるようではございますが、一定の技術的基準だけではなしに、その
地域を実際にどう開発していくか、そうした総合的な大きな計画基準に合っていないものはむしろ開発をさせないというふうな考え方が必要ではないかというふうに考えておるわけでございますが、それと同じような考え方から、この
私道についても、単に一定の幅員があればいいというだけではなしに、そのような計画的な基準、そういう判断というものがどうしても必要ではないかと思うわけでございます。それが、先ほど一番最初の前提に申し上げました総合的な
都市づくりと申しますか、単に
建築基準法行政だけではなしに、総合的な
都市建設の
一つの考え方ではないかというふうに考えるわけでございます。
以上、私の申し上げました中で、
建築基準法の前提になりますような根本的な施策をぜひ考えていただきたい、地価の問題あるいは狭小過密に対する総合
建築的な考え方、あるいは
都市の
環境を積極的に上昇させていくような
一つの基準であるとか、こうした根本的な対策、及び自治体独自にやりますところの町づくりをするために、政令で全部縛るということではなしに、条例等十分に活用し、その
都市に合った特性のある町づくりというものができるような施策を講ぜられていただきたいということ、それから最後に、
宅地開発について、新
都市計画法の
改正において、これは
調整区域だけでなしに、
市街化区域の中におきましても種の計画基準といったもので良好な
市街地が造成されるように――
土地区画整理法ができる場合はよろしゅうございますが、先ほど
日笠先生もおっしゃった、こうしたもののできない
市街化区域もございます。これに対しては、かなり強い計画基準というものでこれが指導できるような、そうしたことを御配慮願いたい。
改正案全体についていろいろ
問題点も多いわけでございますが、前進的ないまのような考え方の入れられるところは入れていただいて、前進的な方向でこの
改正案が御審議願えればまことにしあわせだと思います。(拍手)