運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1969-04-16 第61回国会 衆議院 建設委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年四月十六日(水曜日)     午前十時十九分開議  出席委員    委員長 始関 伊平君    理事 天野 光晴君 理事 大野  明君    理事 金丸  信君 理事 草野一郎平君    理事 田村 良平君 理事 井上 普方君    理事 佐野 憲治君 理事 吉田 之久君       池田 清志君   稻村左近四郎君       進藤 一馬君    丹羽喬四郎君       葉梨 信行君    古屋  亨君       堀川 恭平君    山口 敏夫君       阿部 昭吾君    岡本 隆一君       金丸 徳重君    福岡 義登君       内海  清君    小川新一郎君       北側 義一君  出席国務大臣         建 設 大 臣 坪川 信三君  出席政府委員         建設政務次官  渡辺 栄一君         建設省計画局長 川島  博君         建設省住宅局長 大津留 温君  委員外出席者         経済企画庁総合         計画局参事官  伊藤 俊三君         大蔵省理財局国         有財産総括課長 斉藤 整督君         建設省計画局宅         地部宅地政策課         長       大河内正久君         自治省税務局固         定資産税課長  山下  稔君         専  門  員 曾田  忠君     ————————————— 四月十六日  委員阿部昭吾辞任につき、その補欠として美  濃政市君が議長指名委員に選任された。 同日  委員美濃政市辞任につき、その補欠として阿  部昭吾君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 四月十二日  自転車道整備等に関する法律制定に関する  請願荒木萬壽夫紹介)(第三八六一号)  同(上村千一郎紹介)(第三八六二号)  同(内田常雄紹介)(第三八六三号)  同(小川半次紹介)(第三八六四号)  同(小澤太郎紹介)(第三八六五号)  同(大平正芳紹介)(第三八六六号)  同(加藤常太郎紹介)(第三八六七号)  同(金丸信紹介)(第三八六八号)  同(久保田円次紹介)(第三八六九号)  同(菅波茂紹介)(第三八七〇号)  同(田中龍夫紹介)(第三八七一号)  同外二件(田中正巳紹介)(第三八七二号)  同(田村良平紹介)(第三八七三号)  同外一件(中川一郎紹介)(第三八七四号)  同(丹羽久章紹介)(第三八七五号)  同外一件(長谷川四郎紹介)(第三八七六  号)  同(福家俊一紹介)(第三八七七号)  同(福田一紹介)(第三八七八号)  同(伏木和雄紹介)(第三八七九号)  同(藤井勝志紹介)(第三八八〇号)  同(三原朝雄紹介)(第三八八一号)  同(吉田之久君紹介)(第三八八二号) 同月十五日  自転車道整備等に関する法律制定に関する  請願天野光晴紹介)(第四〇三八号)  同(伊藤宗一郎紹介)(第四〇三九号)  同(斎藤寿夫紹介)(第四〇四〇号)  同(藤枝泉介紹介)(第四〇四一号)  同(藤本孝雄紹介)(第四〇四二号)  同外二件(荒舩清十郎紹介)(第四一五九  号)  同(小笠公韶君紹介)(第四一六〇号)  同(大野市郎紹介)(第四一六一号)  同(奧野誠亮紹介)(第四一六二号)  同(金子一平紹介)(第四一六三号)  同(河野洋平紹介)(第四一六四号)  同(坂村吉正紹介)(第四一六五号)  同外一件(周東英雄紹介)(第四一六六号)  同(内藤隆紹介)(第四一八七号)  同(田中六助紹介)(第四一六八号)  同(塚田徹紹介)(第四一六九号)  同(門司亮紹介)(第四一七〇号)  公営住宅法改悪反対に関する請願野間千代  三君紹介)(第四一七一号)  同外一件(長谷川正三紹介)(第四一七二  号)  同(松本善明紹介)(第四一七三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  地価公示法案内閣提出第六二号)  土地価格抑制のための基本的施策に関する法  律案内海清君外一名提出、第五十八回国会衆  法第二〇号)      ————◇—————
  2. 始関伊平

    始関委員長 これより会議を開きます。  内閣提出地価公示法案、及び、内海清君君外一名提出土地価格抑制のための基本的施策に関する法律案、右両案を一括して議題といたします。
  3. 始関伊平

    始関委員長 なお、土地価格抑制のための基本的施策に関する法律案は、第五十八国会において趣旨説明を聴取いたしておりますので、この際、その説明を省略することとし、直ちに両案の質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。田村良平君。
  4. 田村良平

    田村(良)委員 地価公示法案についてお伺いします。  この間の要綱その他の御説明を承りまして特にお伺いしたいことは、省令で定める市街化区域内の標準地、これは具体的にどのようにしてきめられるか、この点をまずお伺いします。
  5. 川島博

    川島(博)政府委員 法律案の第二条で、「土地鑑定委員会は、建設省令で定める市街化区域内の標準地について、」云々とございます。この建設省令で定める市街化区域でございますが、新しい都市計画法は本年の六月から施行予定でございます。この法律施行になりますと市街化区域が定められるわけでございますが、ただいまの予定では、本年中には——本年の九月ごろまでに三大都市地域東京大阪名古屋並びにその周辺指定をしたい、それから逐次大都市地域指定をしてまいりまして、四十四年度中には主要な地域はすべて指定を終わりたい、こういう段取りでまいっております。したがいまして、この地価公示実施すべき地域もこれらの予定とも見合う必要があるわけでございますが、また一方、この地価公示を行ないます場合には、実際の調査は民間の不動産鑑定士を随時委嘱をして行なうことになります。したがって、この不動産鑑定士動員数にも限界がございますので、そういった点を勘案いたしまして、この地価公示区域は、市街化区域の中で逐次そういった関係を見合わせながら広げていく、こういうことにいたしております。具体的に申しますと、本年度は来年の一月一日に地価調査を行なう予定でございますが、これは三大都市地域プラス北九州地区地価調査を行ないますが、公示する区域は、当面、三大都市区域というふうに考えております。したがいまして、それらを建設省令で具体的にきめていきたいということでございます。
  6. 田村良平

    田村(良)委員 三大都市、まあ六月から実施して九月ごろ、四十四年度中には決定したいということですが、標準地というのはどういう規模でおきめになるのですか。それから、その四十四年度中にきめたいと考えておられる三大都市の中で、およそ何個地点、どれだけのグループを標準地としてきめたい——その標準地は、どういう定義といいますか、どういうものを標準地というのか、そういう標準地を三大都市に四十四年度中に何カ所きめたい、こういうことがおわかりならば、ひとつ御説明願います。
  7. 川島博

    川島(博)政府委員 地価公示実施いたします場合には、なるたけたくさんの標準地をとってその地点価格公示することがよろしいわけでございますが、先ほど申しましたように、実際の調査に従事いたします不動産鑑定士の数、あるいは予算等の制約もございまして、実際の調査地点数がしぼられるわけでございますが、昭和四十五年度におきましては、東京都及びその周辺地域に六百五十地点、それから大阪市及びその周辺地域に二百四十地点名古屋市及びその周辺地域に八十地点、合計九百七十地点標準地を選びまして、これを現在の予定では四十五年の四月一日に官報公示をいたしたいと予定をいたしております。
  8. 田村良平

    田村(良)委員 そこで、まあ全体的には九百七十地点、四十五年の四月一日に公示されるのですが、たびたびお尋ねするようですが、その標準地というのは、どういうものを標準地というか、それをお教え願いたい。
  9. 川島博

    川島(博)政府委員 標準地の選定でございますが、標準地定義につきましては、公示価格が一般の土地取引価格に対します指標となり、また、不動産鑑定士等鑑定評価あるいは公共事業の用に供する土地取得価格基準となるわけでございます。したがって、いろいろこの効果が発揮できるようにし、たとえば商業地とかあるいは住宅地等の用途の区分に応じまして、類似の利用価値を有する地域について地価分布の状況を示すに適当な標準的な一区画土地について行なうことにいたしているわけでございます。
  10. 田村良平

    田村(良)委員 そうすると、しろうとにわかりやすく具体的にお聞きしますけれども標準地というものは一体どのくらいの平均坪数をお考えですか。
  11. 川島博

    川島(博)政府委員 この一区画地域でございます、これは必ずしも一体の土地とは限りませんけれども、敷地として一体的に使われている一続きの土地でございますから、それは場合によっては千坪という場合もございますし、場合によっては五十坪という場合もあろうかと思います。ただ、その分布は、大体将来は一方キロに一地点、一区画程度標準地を抽出いたしましてこの価格調査公示することが適当であろうというふうに考えております。
  12. 田村良平

    田村(良)委員 それは考え方でございますから、いまここでは想定問答みたいになりますけれども、私は、その標準地というものが、何万坪の中で、たとえば三大都市の目抜きの場所といいますか、非常に大きな繁華街地区でたとえば百坪とるところと、あるいは幾らか都市近郊で一万坪の中でたとえば千坪を標準地とする、そういうことをはたして人為的にきめられるかどうか。これは実際技術上非常に困難があると思うのです。まだ実施前でありますから、こういうことが起こったじゃないかと私が現実にデータをあげて御質問をする種がないわけですけれども、この点はいまから警戒的な意味で、実施にあたっては、こういう質問に対して、この次、そら見たことかと言われるようなことがないように、あなた方の実際の行政事務を処理される上に御参考にしておいていただきたいと思います。  それに関連をしまして、標準地並びにその周辺、「その周辺」という範囲でございます。「その周辺」というもののきめ方はどのようにやっていくか、その基準といいますか、きめ方を承っておきます。
  13. 川島博

    川島(博)政府委員 法律案の第一条の目的に「この法律は、都市及びその周辺地域において、」云々とございます。私どもは、地価公示実施すべき地域は、人口なり産業なりが集まりまして非常に活発に土地利用が行なわれる。したがって土地の需給が逼迫をいたしまして地価高騰する地域を重点的に選びまして実施をすべきであろうというふうに考えておる次第でございますが、それはまさにこの東京大阪名古屋等大都市、あるいはその他の小都市でありましても、人口集中の激しい、したがって土地利用が活発で地価高騰の激しい地域を選ぶべきであろうと思います。その場合に、行政区画上市という名のつく都市だけではやはり不十分でございまして、たとえば東京をとりますれば、東京周辺にあります町あるいは村でありましても、この人口集中の影響を受けまして地価高騰の激しい周辺町村等におきましても絶えず地価調査実施する必要があろうと思います。そういう意味で「都市及びその周辺地域」という表現を使った次第でございます。
  14. 田村良平

    田村(良)委員 それでは、周辺標準地の問題は、関連しますので、最初に御質問申し上げたような点をあわせお含みいただいて、都市及びその周辺においての標準地決定につきましては、申し上げたような点を御留意願いたいと思います。  問題点を変えまして次に移りますが、鑑定委員会は、評価を審査し、なお必要な調整を行なうことになっております。そこでお伺いいたしたいのは、土地鑑定委員会はみずから評価調査はいたしません。二人以上の不動産鑑定士または鑑定士補評価を求め、非常にややこしいのには、なおそれも調整される。つまり、土地鑑定委員会はみずから何の評価もいたさない。土地鑑定委員会が二人以上の委嘱した不動産鑑定士あるいは鑑定士補評価を求め、それを今度は必要な調整を行なう。現実評価もしなければ調査もせぬいわゆる名目上の土地鑑定委員会が、現実調査した人の報告をかってに調整する。一体どこでそれを調整してどうやってきめていくかということで、私自身は、これは鑑定士評価自体が非常に権威のないものになりはせぬか、こういうことを考えますが、具体的にはこれをどのようにお運びをするお考えか。
  15. 川島博

    川島(博)政府委員 土地鑑定委員会が判定いたします土地価格公示価格になるわけでございますが、この公示価格は高度に客観的な価格であるべきことが要請されるわけでございます。そういった意味で、不動産鑑定評価専門家でございます不動産鑑定士あるいは不動産鑑定士補二人以上の鑑定評価を求めまして、これを土地鑑定委員会が審査し、調整を行なって判定をするという手続になっておりますが、これによりまして、鑑定士または鑑定士補が行ないました鑑定評価結果の中から、審査、調整の段階におきまして、極力主観的な部分を排除しようとしたものでございます。この鑑定評価鑑定士かあるいは士補が行ないますが、これはやはり人間が行なうわけでございますので、必ずしも二人の調査結果がぴたりと常に同一価格で出るという保障はございません。したがいまして、やはりそういった調整がどうしても必要なわけでございます。しかし、そういった最終的な決定判断土地鑑定委員会が行ないますので、そういった方法公示価格決定することは、この鑑定評価権威をいささかも傷つけるものではないとわれわれは考えておる次第でございます。
  16. 田村良平

    田村(良)委員 いまの答弁にいみじくもありますように、どうせしょせんは人間が行なうことだ、したがって、二人の委嘱をした鑑定士もしくは鑑定士補の意見がぴたり一致はしないだろう、よって、土地鑑定委員会調整をするんだ、そうなりますと、きめどころがきまらないわけでして、たとえば田村良平という委嘱を受けた鑑定士、私が評価をして報告をする、ところが、どうせ、おれが坪一万円だと思って評価しても、肝心の土地鑑定委員会調整するんだ、一万五千円くらいにしておけば、適当に一万円くらいになるだろう。私が目ざしておる一万円にするために、高く言うてみたり低く言うてみたり、そういうことが実際行なわれる。そうすると、今度は土地の持ち主と組んで、鑑定士さん、ぼくのところはひとつ坪一万円くらいに評価しておいてください、そういうことになれば、これも根本的に評価それ自体があやしくなるし、第一、鑑定される鑑定士または鑑定士補は、どうせ鑑定委員会調整されるから、適当にやっておけということで非常にルーズな感覚になりますと、こういった評価報告それ自体も非常にずさんなもの、さらに、そういう一つの薄弱な態度ないし考え方評価をされたものをまた上で調整する、そうなってくると、土地価格なんというもの、地価公示なんというものは、ほとんど権威がなくなりはせぬかということをおそれるわけでありまして、やはりここら辺に一本筋の通った、せっかく国が地価公示をする以上は、相当権威ある公示をすべきでありますから、鑑定評価をしない人がその報告をさらに調整する、ここら辺に私は、土地鑑定委員会というものと、その下で鑑定をする人々の行動というものが、法的に考えても、あるいは道義的な面を入れても、何か非常にあいまいな要素をたくさんお持ちになっておるんじゃないか。そういうことになれば、鑑定委員会意味がないのじゃなかろうか、こういうように考えますが、現実にどういうようにお考えか、御処理をされるか、重ねてお尋ねいたします。
  17. 川島博

    川島(博)政府委員 不動産鑑定士または士補制度は、昭和三十九年にできた制度でございまして、比較的歴史の新しい制度でございます。したがいまして、施行後五年ばかりを経過した現在でございますので、必ずしもこの不動産鑑定士士補制度が完全に安定、定着したものとは考えておりませんけれども、この制度は、たとえば弁護士あるいは公認会計士といった、日本の法律上の資格制度の中では最もハイレベルの分類に入る、きわめて程度の高い資格制度になっておるわけでございます。したがいまして、この試験も、一次試験、二次試験、三次試験と、三回にわたる試験を経過しましてようやくこの士の資格がとれるので、非常にきびしいふるいにかけられておるわけであります。また、現在すでにこの不動産鑑定士の間では不動産鑑定士協会という団体が組織されまして、お互いにこの業務の良心的——と申しますか、忠実な実施につきまして常にお互いに切磋琢磨をしておる団体で、これはきわめてまじめな団体でございます。お互い不動産鑑定士同士でもそういうことでございますし、また、世間不動産鑑定士鑑定評価に対する信頼も次第に高まってきております。この五年間に鑑定士が事故を起こしたということはまだないわけでございます。したがって、世間評価もだんだん高まっていきます。さらに、この際公示価格をきめるために土地鑑定委員会委嘱いたします鑑定士または鑑定士補は、ただいま全国に約二千人近い有資格者がおるわけでございますが、この中から三百名ないし四百名程度の人を委嘱するわけでございます。その委嘱にあたりましては、鑑定士の中でも社会的信用のおける人を選定いたしまして、いい人の中でも特にいい人にお願いをするということにいたしたいと考えております。したがいまして、先生の御心配になるような事態は、万々心配ないところではなかろうかというふうに考える次第でございます。
  18. 田村良平

    田村(良)委員 万々心配がなければけっこうですが、二人以上の不動産鑑定士あるいは鑑定士補評価をして、今度土地鑑定委員会がそれをまた調整する、こういうことなんですから、このものすごく地価の変動の激しい、あるいは建築ラッシュ、あるいは人口の過密化していくそのまん中で、こういったことが調整されたり、あるいは評価が適当にあんばいされる——一人一人はまじめにやっておるかもしれませんが、現実の問題は、まじめにやったからといって地価公示に妥当な結論が導き出せるかどうかということについて非常に危惧を持つものですが、この点、どういうような運び方をされるか、いま一度承っておきます。
  19. 川島博

    川島(博)政府委員 私どももそういう心配もございますし、この地価公示制度を発足させるにあたりましては、そういう点をあらかじめ予備的に実施をいたしてためしてみる必要があるということから、実は昭和三十九年度から予備的にこの地価調査東京から始めたわけでございます。したがって、三十九年、四十年は東京地域だけでございますが、四十一年からは大阪周辺を加え、さらに四十三年度からは名古屋周辺昭和四十四年度北九州市及びその周辺、したがいまして、この四大都市地域について地価公示制度実施を目、さす予備的な地価調査実施してまいった次第でございます。したがいまして、本年度を加えましてすでに六年の経験を持っております。しかもこの結果は、官報ではございませんけれども、逐次新聞紙上で公表いたしまして、その結果については相当重用されておるわけでございます。したがいまして、決してこの法律案が通ったからあわてて地価調査実施するわけじゃございませんで、すでにこの六年という経験を踏まえて、その上に立ってこの制度がすべり出すわけでございますので、その点の御心配もあまりないのじゃなかろうかというふうに考える次第でございます。
  20. 田村良平

    田村(良)委員 その点で最初標準地評価ということをいろいろお伺いしたわけですが、ここでそれに関連をして重ねてもう一ぺん地価公示権威について承りたいのは、省令の定める評価基準により、近傍類地取引価格から算定される推定価格等を勘案してきめる、まことに回りくどい。それで、土地鑑定委員会鑑定士ないし鑑定士補評価報告を求め、報告された評価をまた調整する。それから近傍類地取引価格から算定し推定された価格。こうなりますと、近傍類地価格とは何ぞや、それから算定された価格とは何ぞや、さらに、推定価格等を勘案された価格とは何ぞや、一体これらについて鑑定士ないし鑑定士補はどのような鑑定をされ、評価をされて報告するか。それらを合わせて一本に土地鑑定委員会がどう調整されるか。一体その価格は何だ。こういうことになりますと、これは質疑応答ならまだどうにか答弁になるかもしれませんが、現実に一体どうしておきめになりましたか、こう言ったときに、こういう回りくどいことをやっておられて、はたして適正妥当な、つまり、地価公示として権威あるものが説明できるかどうかということになりますと、ちょっとしろうと判断に苦しむのですが、ひとつ専門的なお立場から、そのものずばりで、御心配は要りませんという御答弁を願いたい。
  21. 川島博

    川島(博)政府委員 本法案におきましては、第四条で、先生御指摘になりました標準地についての鑑定評価基準を規定いたしております。これは、標準地鑑定評価を行なうにあたりまして適用すべき手法について、その骨子を抽出して抽象的に規定しておるわけでございますが、具体的には建設省令で中身を定めることにいたしているわけでございます。ここに規定される方式とは、市場資料比較法収益還元法、それから復成式評価法、この三方式を使ってこれを勘案して評価を行ないなさいというふうに書いてあるわけでございますが、この三方式による不動産鑑定評価手法はすでに確立された手法でございまして、不動産鑑定評価に関する法律昭和三十八年に成立をいたしまして、これに基づいて昭和三十九年度から不動産鑑定士士補が誕生するに至ったわけでありますが、このせっかく法律によって生まれた鑑定士なり鑑定士補がよるべき基準といたしましては、かっちりしたものが必要でございますので、宅地制度審議会から答申がございました不動産鑑定評価基準、これを不動産鑑定士なり鑑定士補鑑定評価を行ないます場合の憲法にいたしているわけでございます。今回四条で規定しておりますことは、この鑑定基準の中からさらに必要なものを抽出いたしまして、それで、この鑑定評価手法の細目を省令でかちっと書いて、よるべき基準にいたしたいというわけでございますから、先生の御心配になるようなことはまずない。これはすでにある鑑定評価基準をさらによりよくしていくという手続になるわけでございますので、御心配のような点はないと考えている次第であります。
  22. 田村良平

    田村(良)委員 その御説明趣旨はわかりますが、私がお尋ねしておりますのは、新たに地価公示法ができますと、従来ある方法も加味しつつ鑑定委員会評価を審査し、必要な調整を行なう。それには、いまの土地鑑定委員会が、自分自身評価調査はせずに、委嘱をした鑑定士ないし鑑定士補、これは二人以上の不動産鑑定士ないし鑑定士補評価が下るわけですね。その評価の内容には、いま申し上げましたように近傍類地価格やあるいは推定価格等を勘案した価格が入っておる。それがさらに土地鑑定委員会でまた調整される。となりますと、きめられた公示される地価というのは一体どの程度権威をもって臨むことができるかということですから、あまりにたくさんの要素が入り過ぎているわけですね。ですから、どういうようにそれがきめられるか。こうなってくると、ずいぶんこれは時間をとられると思うのですね。そのうちに、経済は生きものですから毎日動いておりますので、とてもじゃないが、売買するあるいは取引の対象になったそうした土地あるいは宅地等につきましてそういう土地鑑定委員会地価公示をするのだということは、いつも後手後手に回っていくのではないかということで、実は近傍類地取引価格から算定される推定価格等を勘案し、それから二人の鑑定士評価がまた調整される、調整調整を重ねて上がっていくわけですが、この辺は実際に事務的にあるいは実務の上でどういうような時間的な運びになるか。それから、いま言ったように、実際非常に激しく動いておる不動産の経済的取引の中で、こういうものが権威を持っていけるかどうかということについて非常に私は心配するわけですが、この点どうでしょうか。
  23. 川島博

    川島(博)政府委員 先ほど来御説明申し上げておりますように、不動産鑑定評価制度は、わが国においては比較的新しい制度でございます。したがいまして、この制度が完全は安定、定着いたしておるというふうには考えておりませんけれども、発足後わずか五年しかたたないこの新しい制度といたしましては、社会から受ける評価、私はこれは相当高いものであろうというふうに見ている次第でございます。したがいまして、民間の個々の不動産鑑定士が行ないました鑑定評価そのもの、これも相当信頼性の高い評価をいたしておるわけでございますが、いやしくも国家が官報土地価格公示する以上は、念には念を入れまして、極力主観を取り除いた客観性の高い公示価格を発表すべきだろうというふうに思いますが、そういった意味におきまして、比較的信頼度の高い専門家でございます鑑定士評価したものについて、さらに土地鑑定委員会がこれをスクリーンにかけまして検証するという慎重な手続を経て公示した価格、それであればこそまた社会の信頼が得られるのじゃなかろうか、こういうふうに考えて、土地鑑定委員会が、個々の鑑定士評価した地点価格についてさらに洗い直すという手続を規定したわけでございます。したがいまして、見ようによっては、いろんな煩瑣な手続を経て公示価格決定されるわけでございますが、しかし、これも、私どもは、従来の地価調査、建設省で実施しました予備的な地価調査におきましても、土地鑑定委員会というものはございませんけれども、現在民間の機関でございます不動産鑑定士協会等で鑑定士調査した結果についての実質的な調整作業をやっていただいておるわけでございますが、これらの結果等を見ましても、初めは、二人依頼した鑑定士価格が二割も三割も開くというような場合もございましたが、最近におきましては、そういった数年積み重ねられたトレーニングの結果によりまして、鑑定士を何人か使いました場合に、お互い価格の開差がだんだんとせばまってきておる。これはやはり制度専門家がだんだんと習熟をしてまいった結果であろうと思いますが、そういった傾向から見まして、今後鑑定士調査いたしました土地価格、これに対する調整も、ある程度機械的——といっては語弊がございますけれども、スムーズに処理が済むのであろう。もちろん、これは全国各地点を一斉に調査してその結果を調整するということになりますればたいへんな仕事でございますけれども、当面実施してまいりますのは三大地域でございますが、将来におきましても、市街化区域以外の地域については地価公示を行なうつもりもございませんので、そういった点におきまして十分この鑑定委員会の処理能力の範囲内の仕事である。また、時間的にも、たとえば一月一日に調査をいたしますれば、大体三カ月後の四月一日にはもう実際に官報に活字としてこの価格を載せ得る程度のものであろうというふうに考えておる次第でございます。
  24. 田村良平

    田村(良)委員 この問題はまだ実施されておりませんし、承りますれば、東京大阪等はすでに予備調査もやっておられ、四十四年度には名古屋のほうも調査を完了したい、そうしてできるだけ慎重に——しかも、慎重に処理することによって、公示された地価というものは権威あらしめたい、こういう善意の御努力をされておるのですから、実施後のいろいろな問題があれば、あらためてそのときにまたお聞きしたいと思うのですが、申し上げましたような点をひとつ御留意願って、やる以上は、ひとつ権威のある地価公示——もっといい方法を御研究もせられるし、実施段階においてもやっていただきたい。  そこで、この評価について最後的にちょっと参考に聞きたいのは、もちろん、取引の目安にされるつもりでございましょうが、どういうことをねらっておられるか。公示の効果ですね。民間のほうからいいますと、これが取引の最低の値段にせられはせぬか、そういうことで、与える影響については幾らか危惧の念を持っておる大衆がおるわけですが、この取引の目安にする、つまり公示のねらっておる目的といいますか、どういうことを期待されておるか、それを承っておきたいと思います。
  25. 川島博

    川島(博)政府委員 土地を買いたい、あるいは売りたいという一般の人々が、かりにこの土地は幾らで売れるだろうか、この土地は幾らで買うべきだろうか、こういうことをいろいろ考えます場合に、そういった鑑定評価についての専門的知識がない一般人にとりましては、この値踏みは非常にむずかしいわけでございます。そのために、実際の市場におきましては不当なつけ値あるいは呼び値というものが誘発されがちでございまして、その結果、適正な地価の形成が困難となっていくのが現状でございます。このような現状からいたしまして、地価公示制度を創設いたしました場合には、一般の土地取引について公示価格が信頼度の高い目安として当事者双方から援用され、公示価格に見合った正常な価格により取引が促進されるであろうということをわれわれは期待をいたしておるわけでございます。
  26. 田村良平

    田村(良)委員 それでは、いまお伺いしますと、東京で六百五十点、大阪で二百四十点、三大都市で九百七十点ですか、一千点近い標準地も設けたいというお考えですが、これはいまたびたび申し上げましたように、鑑定士それ自身の能力はだいじょうぶですか。鑑定士の能力というのは、たとえば鑑定士の受験なんかは非常にむずかしいので、早くいえば、合格率は非常にきびしいわけですね。そういうふうにしておられるのですが、新しい法律に基づいてこういう作業をするのに、申し上げたような時代の流れ、経済界の動きに即応したいわゆるスピーディな地価公示も、逆にいえば、必要だと思います。それがために、作業に専念される相当の人材も必要じゃないかと思うのですが、ここら辺の現在の鑑定士の能力といいますか、それからまた、鑑定士に対する今後の態度といいますか、何かお考えがあれば、参考に承っておきたいのです。
  27. 川島博

    川島(博)政府委員 鑑定士の能力の問題は、これは質の問題と量の問題と両方あるわけでございますが、まず質の問題から申し上げますと、鑑定士及び鑑定士補は、制度上、大学卒業者程度の基礎学力を前提とする高度の国家試験に合格をし、かつ、一定の不動産鑑定評価に関する実務経験を有する者でございます。わが国の法律制度上認められております唯一の不動産鑑定評価専門家でございます。したがいまして、一般の土地取引にあたって鑑定士が活用されることはもちろんございますが、そのほか、公共用地の取得等の場合、さらに、裁判所や収用委員会鑑定手続におきましても不動産鑑定士が重用される場合が多いわけでございます。したがって、そういうことは、反面から申しますと、現在この鑑定士なり鑑定士補制度に対する社会の信頼、評価が非常に高いということの証拠ではなかろうかというふうに考える次第でございます。  次に、この量の問題でございますが、ただいま先生御指摘になりましたように、昭和四十五年度からいよいよ地価公示が行なわれるわけでございますが、その前提となる地価調査に動員されるであろう鑑定士が、数の上から十分間に合うかどうかという問題でございますが、本年は、先ほど申しましたように、四大都市地域並びにその周辺地価調査実施いたす予定でございますが、これに動員される鑑定士または士補の数は、約三百名程度予定しております。現在すでにこの鑑定士または士補の有資格者は千八百人をこえておりますので、当面この土地鑑定委員会委嘱して動員すべき鑑定士の数は、十分過ぎるほど十分であるというふうに考えております。
  28. 田村良平

    田村(良)委員 ただいま直ちに委嘱するには数においてこと欠かないというような御意見ですが、こういったむずかしい試験でありますけれども、実際にはその地域の地理勘の非常に強い、野に遺賢がたくさんあるわけですから、これからこの地価公示というものの内容を充実するためには、やはりそのベテランの権威ある人が、単なる大学卒業の学歴を持つということだけではなくして、そういった教養も必要でありますが、さらに、実際に土地鑑定委員会が使って非常に便利だというような人材について、これを重用するというような道もあわせて考えておいていただきませんと、これは言うべくして実際はなかなかたいへんな作業だと思います。すべて利益がくっついておる問題でありますから、この点をひとつ申し添えておきたいと思います。  それから、私の時間が一時間でございますから、あと十七、八分しかありませんので、この機会に、この地価公示の目的の中では、いまの取引の指標にするということが第一番ですが、その次には、公共の利益となる事業の用に供する土地に対する適正な補償金の額の算定の資料にする、それがため地価公示というものが非常に重大な役割りを持っておりますが、私は、これについて、従来の政府の見解——といいますか、行なっております補償金というものにつきまして、私の所見を交えながら質問をいたしたいと思います。私は、個人の財産を一方的に強制的に没収するのですから、召し上げるのですから、したがって、不特定多数の人々が個人の財産をかってに使うのですから、公共の利益に供される個人の財産には十二分の丁重な補償をすべきである、こういうのが私の基本的な考え方です。取られたほうこそ迷惑なんです。そういうことで、この適正な補償金というものを、ただいま地価公示実施せんとする政府、建設省当局はどのようなお考え方ですか。まず、基本的な考え方の根本からお伺いして、御答弁のいかんで関連質問に入ります。
  29. 川島博

    川島(博)政府委員 公共用地を買収いたします場合の補償額でございますが、これにつきましては、昭和三十七年六月二十九日に閣議決定を受けました「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」というものがございます。これは全文で四十六条程度のものでございますが、この第七条を見ますと、「土地の補償額算定の基本原則」といたしまして、「取得する土地に対しては、正常な取引価格をもって補償するものとする」とございます。この補償基準にいわれる正常な取引価格は、まさにこの地価公示制度のいう公示価格そのものでございます。したがいまして、これを基準として補償額を決定し、これを権利者に交付するということが、まさにこの一そう適正な補償を確保するゆえんではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  30. 田村良平

    田村(良)委員 御趣旨はわかりました。三十七年六月二十九日閣議決定による損失補償基準要綱によれば、取得される土地は正常な取引価格基準とする。そこで、実態としてわれわれが非常に解釈に苦しむ——といいますか、問題点は、たとえばオリンピックの際に、私の調査によりますと、東京都内で坪単価三百六十万円の補償金が支払われております。ところが、われわれの郷里、たとえば高知県で、食糧生産をするたんぼや畑、これは貴重な財産でございますが、これは建設省が国道のバイパスをつくるとか、あるいは国鉄がレールを敷くという場合に用地買収が行なわれますと、一反、つまり三百坪がせいぜい三十万内外でございますね。そうすると、この一反、三百坪というものは、東京に持ってまいりますと、何と十億八千万でございます。同じ施政権下の日本の領土の中で、同じ国が行なう仕事で、片方はたとえば坪千円ぐらいで買収される、東京というところにあるからこそ三百六十万というような用地買収費が払われる、こういうアンバランスが、地域格差をなし、経済格差をなし、人口過密化による地価の暴騰ということと、生活が非常な公害を増すような、とんでもない現在の状態なんでございます。でありますので、極端に言うと、東京へ来れば何でも金になるということで、だんだん人もそういう場所に集まってくる。私は、単に地価それ自体では解決できないと思いますが、やはり北海道であろうが九州であろうが、四国であろうが東北であろうが、国の行ないます事業についてその地域で一反とか二反のたんぼや畑が取られますことは、当該所有権者にとりますと非常な生活権の脅威でございます。したがって、これはダムの補償のときにも非常に問題が起こってくる。私らは早明浦ダムをやっておりますが、こういうような公共用地の確保についても非常に重大な問題を起こしておるのであります。したがって、昭和三十七年六月二十九日の閣議決定を金科玉条として、正常な取引価格で補償する、こういうようにいわれておりますが、現実にはそういったような生活のアンバランスあるいは地域格差、経済格差からくる財産の非常な価格の相違といいますか、アンバランスがあります。これからいわゆる都市計画法実施せられ、都市再開発法が国会で成立するといたしますと、都計法と都市再開発法と、さらには土地収用法、この建設省の都市事業に対します三本の柱、それに地価公示、そういうことから、いわゆる個人にとりましてはたいへんな財産の没収、財産の強制買い上げ、そういう場合に、私がいま申し上げましたような、事実上、地域によって同じ取得価格でもこれだけ違うのです。三百坪で三十万、一坪で三百六十万、こういうような違いがあるものですから、これが法制化されて一律に行なわれますと、申し上げますならば、東京大阪名古屋というようなものを除きましたそういう地域においては、たいへんな問題を起こすわけであります。こういうことが、絶えず、あるいは強制買収価格、あるいは、公共の利益に提供するのだから、ごね得はやめろ、こういうように言いますが、本人から言わせますと、ごねておるのではなくて、自分の財産が永久に召し上げられてなくなっちゃうのです。それは先祖が長きにわたって苦労して開いた御本人の財産であります。それを、わしのほうが汽車を通す都合があるから、おれのところの道が車がふえたから、おまえさんのところのたんぼを少し買うんだ、こういうことで買収されるわけでございます。ここら辺に、適正補償金の問題は、経済的にも政治的にも、また人間の生活の上からも、非常に問題が多過ぎると思います。こういう問題点についてどういうように御解釈——といいますか、どういうお考えをもってこれから臨んでいかれようとするのか。いま私の申し上げました現実のアンバランス、現実の生活権に及ぼす重大な個人の財産に対する適正補償というものの考え方が、単に三十七年の六月二十九日決定した閣議のそういう要綱で押し切れるのか。時代は全く一変いたしております。こういう点を、私の所見を交えて御質問をいたしたわけでございます。この点についてひとつ御答弁を願います。
  31. 川島博

    川島(博)政府委員 ただいま先生お話ございました、オリンピックのときに東京都内の土地の補償額が坪当たり三百六十万円、そんな高いものを出したはずはないと私は思っております。たしか、一番高いものでいまの青山通りの坪六十万円が最高だったように記憶いたしておりますが、いずれにいたしましても、相当高額の補償金を払っておることは間違いございません。これに反しまして、農地等におきますたんぼや畑の収用の場合にはそれほどの値段にならないことも事実でございます。しかし、先ほど来御説明申し上げておりますように、あるいは新しく都市計画法によって土地を取得する場合も、あるいは現在の土地収用法によって土地を取得いたします場合も、およそ公共用地を公的機関が取得いたします場合には、すべてこの三十七年の閣議決定によります補償基準によって行なわなければならないということは、閣議できまった以上は政府の方針でございます。したがいまして、これ以外の基準によって買収が行なわれることはあり得ないわけでございます。  また、この基準によりまして買収いたします場合の補償額の算定の基本原則は、先ほど来御説明申し上げましたように、まさに正常な取引価格をもって補償すべきであるという原則に立っておるわけでございます。そして、この補償基準にいう正常な取引価格とは、とりもなおさず、地価公示法案にいう正常な価格そのものでございます。したがいまして、この収用法、都市計画法地価公示法案、これはまさに三位一体の法律でございまして、その間には一分のすきもない構成になっておるわけでございます。したがいまして、確かに、そういった大都市の補償額と農村地帯の補償額、これはたいへんな格差があることは事実でございますけれども、それぞれの地域における実勢価格がそういう値段を示しております以上、これによって補償額に格差ができるのはやむを得ないことではないかというふうに考える次第であります。
  32. 田村良平

    田村(良)委員 御答弁でございますが、押し返して申し上げたいのは、建設省の方、専門家でございますが、私の調査では、この霞が関から羽田に行っておる高速道路、それと合わせまして東京都内で四十二路線、これが、オリンピックスタジアムないし選手村、いわゆるオリンピック施設に連を関する、東京都内で国がオリンピックに準備した路線でありますが、これに七百数十億を投下しております。内訳を調べますと、用地買収、立ちのき補償費が約七割、つまり五百億近い国民の血税が、道を買ったり用地買収を行なったり、いろんなことでその約七割近いものが使われております。でありますから、申し上げたように、同じ財産であって、東京ならば、あなたの御記憶として六十万、一方では坪千円、こういうことなんですね。そこで生活権に対する重大な用地買収の問題が起こっておりますから、その買い上げが非常にむずかしい。したがって、年度予算で一ぱいでやりませんと、ある村だけが用地買収が済んで、来年度に繰り越して今度他の村の用地買収を行なおうとすると、同じところでも、昨年とことしで物価も違った、経済環境も違ったということで、同じ用地買収に非常なトラブルが起きる。農山村では百円、二百円を争うわけです。そうするとまた買収が長引く。長引くうちに全路線の工事はだんだん延滞してくる。話のついたところだけ買って、そこだけ太目に拡張される。そうするとこっちはヘビの腹みたいになる。そういうことで、せっかくの道路網の整備というようなことも一そういう用地買収の適正なる補償金というものの考え方は、お互い、買われるほうと買うほうとずいぶん考えが違う。一銭でも安く買おうというのが国のねらいでありましょうし、売るほうは手放すならこの際一銭でも高く売りたい、こういうようなことで、用地について、つまり財産について、私の基本的な考え方は、先ほど申し上げたように、個人の特定の財産を、不特定多数が自由に使うために人の財産をじゅうりんするのですから、十二分の補償をすべきであるということが私の思想なんです。こういうことをいつの日か解決していただきませんと、これから地域におきます重大な再開発問題が起こったときに、いつもこの問題にひっかかってくる。こういうことが絶えず論争の焦点になっておる限り、なかなか用地買収というものは進まないのではなかろうか。それはひいては、あなた方のねらわれる、あるいは国がねらっております妥当適正な地価公示ないし土地のこれからのいろいろな意味の管理運営にも非常に大きな影響を与える、このように私は考えます。  もう一例引くと、たとえば、二年前でしょうか、第三京浜国道ができました。たしか延長十六・七キロ。これのキロ当たりの工費を見ますと、平均で十七億ないし十八億かかっておる。これは何でかかったかといったら、用地買収です。でありますから、そういうことを考えてみると、四国には循環鉄道がない。また、明石、鳴門海峡にも橋もかかっておらぬ。一方では、キロ当たり二十億近い金でどんどん自動車の道路ができておる。一方では、坪千円で人のたんぼが買収される。一方では、ころんでつかんだ一坪のコンクリートが二百万とか三百万。銀座の四丁目は四百万ですね。東京都庁の税務管内でそういうふうにばかげた地価があるわけです。でありますから、私は、どうしてもこの機会に、適正ないわゆる補償金というものは、申し上げましたように、個人の財産を全体の他の第三者の利益に提供するのですから、利用されるほうこそ非常に受益者ですから、この受益者のほうからは思い切って補償すべきではなかろうかという私の思想でございます。  そこで、時間がきましたからこれ以上申し上げませんが、締めくくりとして、ただいまのこういった質疑応答を通じて、建設大臣とされては、この地価の問題ないし、用地買収に関しまする適正な補償というようなものについて、建設省ないし政府としてはどういう姿勢で今後——弱い個人ですから、権力も何もない個人に法律が臨むのですから、そういう場合には手厚い保護を加えつつ、やはり納得のいく、それこそ適正な、財産権にも悪影響を及ぼさないような用地買収、適正補償というもののきめ方——昭和三十七年の閣議決定以来今日までの経過と、これから行なおうとする新たな都市計画ないし、都市再開発にあっては、やはり個人の財産を尊重してあげる、そしてできるだけ用地買収も楽にする。いつもトラブルが起こる、そういうことを事前に防ぐためにも、ここで用地買収に対する適正補償金に対する国家それ自体考え方、個人に対して非常に親切味を持たす、そういう考え方で、これらの立法にあたっては、そういう一つの政府それ自体、建設省それ自体の姿勢がなければならぬじゃなかろうか。とにかく何でもかでも法律で安く買えばいいのだというようにはまいらぬと思います。この点、ひとつ大臣から、いまの質疑応答合わせて一本で、基本的な大臣の所見なり考え方を承って、私の質問を終わりたいと思います。
  33. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 先ほどから田村委員の御指摘になり、また適切なる意見を交えての御質疑を拝聴いたしておりまして、深く私も敬意を表します。  問題の二点につきまして私の考えを申し上げたいと思いますが、御審議を願っておる地価公示制度によって、即効薬として、また万能薬として、土地問題、地価問題というものが適切なる効果が直ちに求め得るということを全部期待するわけではございませんけれども、今日の都市計画の推進あるいは住宅政策の推進をやる場合においては、何と申しましても、土地問題、地価問題が優先する最も重要な課題でございますので、三十九年以来各党から御要望になりました地価公示制度に対するところの決議等も十分そんたく申し上げて、佐藤政府が決定いたしました地価対策閣僚協議会に出たあの結論を踏まえまして、このたび地価公示制度の御審議をお願いいたしておるような次第でございます。したがいまして、これによりまして不当なる土地取引あるいは地価抑制等も果たしまして、そして一般公共事業団体も、また個人も、それぞれ標準価格の目安となって、地価高騰を押えるというところに大きな期待と役割りを私は持ちたい、こう考えておるような次第であることを第一に申し上げたいと思うのです。  第二の、建設省に関するあらゆる公共事業推進の場合におけるところの用地の取得に対するところの補償の問題につきましての私の基本姿勢は、いま田村委員が御指摘になりましたごとく、何と申しましても私権を尊重する、私権の立場に立って考えるということを私は前提に置いて土地の収用あるいは取得に誠意をもって努力をいたしたい、こう考えておりますので、田村委員と全く私は感をともにする次第でありますとともに、今後もこうした重要なる土地提供者に対するところの理解と納得のいった話し合いの場を持ちながら、これらの土地の取得並びに補償等の問題について十分具体的に措置も講じながら、一般庶民大衆の私権の侵犯というような問題についてはきびしく考えながら措置をしてまいりたい、こう考えております。
  34. 田村良平

    田村(良)委員 質問を終わります。
  35. 始関伊平

    始関委員長 井上普方君。
  36. 井上普方

    ○井上(普)委員 私は、地価公示法案につきましてお伺いいたしたいのでございますが、まず第一番に、この地価公示法という法律をつくりまして、そのメリットは一体どんなものですか、ひとつお伺いいたしたいと思います。
  37. 川島博

    川島(博)政府委員 地価公示法案でございますが、法律上の制度といたしましては、第一条の目的にございますように、一般の土地取引に対しましては、取引価格の目安とする、また、公共の利益となる事業の用に供する土地に対する適正な補償金の額の算定等に資する、こういう二つを掲げてございます。先ほど田村委員の御質問にもお答えいたしましたが、一般の土地取引については、別に法的な拘束力を与えずに、単に、信頼し得る目安、信頼度の高い目安という程度の利用を期待しているわけでございます。これはなまぬるいじゃないかというような御意見もあろうかと思いますが、現在のように、全くでたらめな呼び値、つけ値で土地の売買が行なわれておるという現状からいたしますと、単に目安であるからと申しましても、それは政府が土地鑑定委員会というものを設けまして、慎重に実勢価格をきめましてこれを公表するわけでございますから、世間一般の取引では相当重用されるであろう。どの程度重用されるかということを数字的に計測することはむずかしゅうございますけれども、私どもは、相当程度信頼されることは間違いないということを確信いたしておる次第でございます。
  38. 井上普方

    ○井上(普)委員 地価公示制度ができまして、一般取引の目安になるというようなお話でございますが、実際に取引関係は、地価公示法標準地点における標準価格がつくられても、それが守られるとあなた方はお考えですか、どうでございますか。目安はこうではあるけれども、需給関係によって一般の土地は動いているんじゃないですか。それを、お役所仕事で土地の一般取引の目安をつくったところで、それが実際上役立つとお考えになっておられますか、どうでございます。   〔委員長退席、金丸(信)委員長代理着席〕
  39. 川島博

    川島(博)政府委員 たとえば、政府が公示価格決定するにあたりまして、市場における実勢価格が一万円のものをかりに政策的に八千円に押えて公示するということであれば、まさに先生の言われるごとく、そんな値段は守られるはずはございません。しかし、私ども公示しようといたしております価格は、この第二条の第二項にもございますように、まさに正常な価格、『「正常な価格」とは、土地について、自由な取引が行なわれるとした場合におけるその取引において通常成立すると認められる価格』そのものを公示するわけでございます。それは市場で実勢価格としてまさに適正に成立するであろうと思われる価格公示するわけでございますから、これが守られないはずはないと私ども考えております。
  40. 井上普方

    ○井上(普)委員 私のいまの質問は、土地の一般取引についてお尋ねしたのです。あなたは次の公共事業土地取得価格についてのお話です。いいですか。でございますから、あなたのお話は、公共事業土地取得の目安になる、それを各省庁にあるいは国の各機関に守らせようというのであれば、一般価格との間に相当相違が出てくると思うのですが、どうでございます。
  41. 川島博

    川島(博)政府委員 実際に民間で土地売買が行なわれます場合に、売り手側あるいは買い手側に特殊な事情なりがございます。こういった場合には——公示された価格、これは売り手、買い手に特別の事情がなく、市場において自由に取引されるということを前提にいたしました価格でございますから、そういった特殊な事情がございますれば、公示価格でない価格によって取引が行なわれることは当然でございます。   〔金丸(信)委員長代理退席、委員長着席〕 そういう意味におきまして、売り手なりあるいは買い手なりに特殊な事情があるということを前提に考えました場合には、その取引価格はまさにこの公示価格とは別の価格であろうと思いますけれども、そういった特別の事情なり動機なりがなくて成立するであろう市場価格、これを公示するわけでございますから、そういう場合にはまさにその価格によって取引が行なわれる、こういうことになろうかと思います。
  42. 井上普方

    ○井上(普)委員 あなたは土地価格形成をどうお考えになっておりますか。と申しますのは、土地価格は、ほかの商品と違いまして、土地にはコストというものが微妙なはずです。といいますのは、生産費という観念が適用できない性格のものであります。土地価格というものは、コストに無関係に、つまり生産費に無関係に動いているのが通常じゃございませんか。他の一般商品でございますと、生産費というものが基礎になって、それが価格形成の基準になるはずでございますが、現在、土地に関しましては、生産費、コスト、こういう観念なしに動いておるのが実態じゃございませんか。でございますから、あなた方がおっしゃる意味は、おそらく近傍類地価格によってこの土地の標準価格というものをきめようというお考えだろうと思います。しかし、一般取引というものがどんどん動いておる。ところが、一方において、公共事業土地取得というものについては、これはあなた方のいわゆる標準地点における標準価格、これをもって規制しようというのでございますから、一般取引価格とのギャップが出てくると思うのですが、どうでございます。
  43. 川島博

    川島(博)政府委員 おことばを返すようでございますが、土地価格形成のメカニズムの中に、コストが全然入らないということはないと思います。たとえば、たんぼを宅地に造成をする、これは宅造の費用がかかります。また、海面の埋め立てで陸地を造成する場合、これはまさにコストがかかるわけでございます。そういった意味で、土地についてはコストが価格算定の要素たり得ないということはないと思います。しかしながら、確かに先生の言われるように、土地は、一般的には個別性、再生産がきかないという特定性を持っておりますので、工業製品のようにコストだけできまらない、これも事実でございます。したがいまして、先ほど来御説明を申し上げておりますように、第四条の鑑定評価基準といたしましては、やはりコストからだけの接近では不十分である、したがって、土地価格の判定にあたりましては、いわゆる市場性、収益性、費用性、この三側面からアプローチをいたしまして価格の最終決定に至る、こういう手続を踏まなければならないということを規定しているわけでございます。特に、先生御指摘になりましたように、大都市並びにその周辺では、非常に人口集中のテンポが早いということから需要が急激にふくれ上がる、供給はそれほど追いつかないということから、需給のアンバランスがだんだんとひどくなりまして、いわば売り手市場といわれるほど土地価格が騰貴していることは、御指摘のとおりでございます。したがいまして、この公示価格を一たんきめてそれで固定をしてしまえば、これは確かに実情と乖離した、守れない価格になろうかと思いますが、私どもは、今後におきましてもある程度地価の上昇は避けられないと思いますので、この法案におきましては、毎年一回地価調査し直しましてこれを公示するということによって、その後の地価上昇は当然実勢価格として翌年度価格に反映させるという手続をとっておりますので、これは経済的な市価、時価というものをまさに公示するということになると理解をしておるわけでございます。
  44. 井上普方

    ○井上(普)委員 ただいま、土地が造成費がかかるからこれはコストに入る、こういうお話、そういうような造成地につきましては、あるいは埋め立て費であるとか造成費とかいうものが入ります。しかし、一般の東京都内のいわゆる土地価格の形成を考えた場合、これは生産費及びコストというのはかかりませんよ。そこのところをあなた方は間違っている。土地価格というものは収益性から実は決定されると私は思います。そうすると、いわゆる一般の株というものが、配当と利率との逆算から、その逆算による価格を中心として決定されておりますから、いま擬制資本といわれておる。ところが、埋め立てをする以前の土地考えてごらんなさい、あるいは造成する以前の土地考えてごらんなさい。そこには生産費あるいはコストというものは算用せられない。そういたしますと、土地価格というものは収益性を中心にして決定されるから、株価と同じように擬制的な価格を持っておると私は言わざるを得ないと思うのです。土地は再生産がきかないとか、いろいろ言われますけれども、その収益性と、生産費がかからないのだから他の商品とは大いに異なる性格を持っておるものと私は言わざるを得ないと思うのです。擬制的資本だとこれも言わなければならないし、株価と同様にこれまた上下する。ただ、株より悪いのは、株は下がることがあるけれども土地は、一たん値段がきまれば、それから下がるということがほとんどない、どんどん上がっていくというのが実情じゃないかと思うのです。  そこで、ここ数年来の、特に四十二年から四十二年までの東京三十キロ圏内の土地高騰の実情をパーセンテージでお示し願いたいと思うのです。
  45. 川島博

    川島(博)政府委員 従来の地価調査で一応権威のあるものといたしましては、日本不動産研究所が毎年二回発表しております全国市街地宅地指数がございます。そのほかには、先ほど来御説明申し上げておりますように、三十九年以来建設省が地価公示制度の準備調査として毎年実施をいたしております地価調査がございます。そのほか民間機関がいろいろ調査をいたしておりますが、全国的に見て一番権威があるといわれておりますのが日本不動産研究所の資料でございます。これによりますと、六大都市におきましては、昭和三十年三月を一〇〇といたしまして、昭和四十三年九月、約十三年たっておりますが、その間における土地の値上がりは約十二倍となっております。私ども東京大阪について試験的に実施しております地価調査の結果によりますと、昭和四十一年の十月から四十二年の九月までの一年間におきます土地の値上がりは、これは既成市街地を除いてドーナツ部分の調査をいたしておりますが、東京周辺で約二一%、大阪周辺では約一四%程度の値上がりを示しておるという結果が判明をいたしております。
  46. 井上普方

    ○井上(普)委員 私はここであなたのおっしゃる一般取引には何ら役に立たないということを申し上げたいのであります。それと同時に、公共事業用地を取得する際に、現在の体制のもとにおいては、これによってくくられて一般に不当に低く押えられる可能性があるということを申し上げておきたいのであります。といいますのは、土地というものは、先ほども申し上げましたように、株が擬制資本と呼ばれるように、擬制的な価格を持つものであります。したがって、これが擬制的な性格を持つから投機の対象になる。いわば土地価格というものはフィクションであるということが言えると私は思う。そのフィクションである土地価格をあなた方が地価公示法によって決定しようということには、ちょっと無理があるのではないか。しかも、それは一般取引は除くにいたしましても、公共事業土地取得をやろうとする場合には、こういうような投機の対象になり、価格がフィクション的な要素を持っておる以上は、これはあなた方が標準地点における標準価格というものを設定いたしましても、それは一般土地所有者に対しましてむしろ低く押えるというような、あるいはまた、一般土地所有者に対しまして不満を増発させるという結果を招くのではなかろうかという考えに立たざるを得ないのでございますが、大臣、どうでございます。
  47. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 本法案の目的につきましては、御承知のとおりに、一般の土地取引価格に指標を与えると、こう明文化されておるのでございます。大体土地の需給、与える者、求める者、この関係者の気持ちからいいますと、それぞれいろいろの思惑なり、いろいろの感情が一かなりその精神的な面にウエートを置きながら土地の需要供給の取引が行なわれていくんじゃないか、これが地価の上昇を来たしている、こういう一つの心理的な作用面からくる問題点がここにあるのじゃないか、こういうように私は考えておるのであります。したがいまして、いま申し上げましたような、専門的な鑑定評価の結論を得ましたことによってその土地の標準価格の目安がつきまして、それに対する信頼度からくる抑制というものの心理的作用はかなりあると、私はこれを大きく期待をいたしてまいりたいと考えておるような次第であります。
  48. 井上普方

    ○井上(普)委員 大臣の御答弁は、いつも低目の右寄りの直球ばかりしか投げませんので、非常に打ちにくいのでありますが、あなたの御答弁によると、土地価格が心理的に投機性を持っておるということはお認めになるのですね。そうしますと、一般取引価格は一応これは除外する、規制できるようなことをおっしゃっておりますけれども、実際問題の商行為としては、私は、こんなのは——いまの大蔵省の相続税の標準地点というのは十万点きめている。これでも大体取引の十分の三くらいの価格ですね。これくらいになっているのです。全国的で十万点の標準点をきめているのですが、ましていわんや、これはわずか千点でしょう。ことしやるのは七百九十点ですか、それくらいで、一般の地価の標準になる、あるいはまた、公共事業土地取得のこれが標準になって、これによって押えようというような考え方は、ちょっと甘いと思うのですが、どうでございます。
  49. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 御指摘の問題点も私もよく理解もいたします、お気持ちもよくわかりますが、いま、われわれといたしましては、これらに対しまして、少なくとも全国の重要地点を目標に置きますと、私は、やはり八千地点ほどの問題点の対象をひとつ目標に置きたい、こういうような気持ちも、そういうようなことの計画に立ってこれが制定をお願いいたしておるような次第であります。したがって、何と申しましても、不安な疑心暗鬼によって——お互いが話し合いの場を持つ場合において、やはり人間的な人情の点を考えますと、なるべく高く売りたい、なるべく安く買いたい、こういうようなことからくる気持ちからいいますと、地価に対する一般の国民の適正な知識というものは、あるいは総合的な情報というものは、ある程度不足しておる、これが大きな地価高騰に通ずる道である、こう考えますときに、私は、大体最終目標の八千地点を対象にいたしまして標準地価格をそれぞれ評価していただいて、安心といいますか、信頼度を持った土地取引が、おのずから私はひとつ——道義的ということではございませんけれども、精神的に安心してそれらの取引が行ない得る一つの大きな刺激剤といいますか、一つの薬といたしまして私は非常に重要な役割りを果たすものだと思っております。
  50. 井上普方

    ○井上(普)委員 大臣の意図するところ、ねらいとするところはよくわかります。こんなのは、二階から目薬ということばがありますが、二階から目薬にもならぬような感じを実は持たざるを得ないのです。  そこで、私は問題を一転いたしまして、現在の土地価格の変動がいかにひどいかということを、これは特に住宅局長にお伺いするのですが、千葉県でしたか、稲毛というところに公務員住宅と公団住宅があるはずです。埋め立てをしましてやっておるのですが、大体公務員住宅をつくるとしてやったのですが、その所有者に幾らか渡した。それがさらに転売、転売、転売になりまして、何回転売しておりますか、これもおわかりでしょう。そうしてNHKが代々木のあそこに放送センターをつくられたはずですが、それと等値交換をやられたはずです。そのときの値段と前のときの値段と一体どれだけ差がありますか。その間に何年たっていますか。その間の事情をお聞きしたいのです。
  51. 大津留温

    ○大津留政府委員 実は公務員宿舎用地の取得は、大蔵省の国有財産局のほうで当時おやりになったのでございまして、私のほうでは実は詳細承知しておりません。ただ、先ほどお尋ねがございましたので、急遽大蔵省に問い合わせましたところが、いまお話しのように、稲毛海岸一丁目というところの埋め立て地を四万坪ばかり渋谷区所在の国有地と交換した。三十九年の十二月二十八日でございますが、そのときの価格は坪当たり約三万円程度ということをいま伺ったような次第でございます。
  52. 井上普方

    ○井上(普)委員 そこには公務員住宅と公団住宅があるはずです。その稲毛の公団住宅にするのに埋め立てをした土地と、公務員住宅にするのに埋め立てをした土地と、その価格は一体幾らなのかを私は聞いている。これは代々木の土地と等値交換をしたときの価格が三万円とおっしゃいましたが、この問題はあとにしまして、公務員住宅と公団住宅とがあそこは並んでいるはずです。公務員住宅の土地は一体何年に幾らで買ったのか、そうして公団の住宅はその後何年に幾らで買ったか、等値交換したか、そこのところをひとつお伺いしたいのです。
  53. 大津留温

    ○大津留政府委員 日本住宅公団が、稲毛海岸三丁目というところで埋め立てをいたしました千葉市から昭和四十年十月八日付で約二万五千坪をこれは買いました。そのときの価格は、坪当たり二万三千四百五十九円でございます。
  54. 井上普方

    ○井上(普)委員 公務員住宅は、三十九年の十二月二十八日に代々木のNHKの放送センターと等値交換する以前に土地があったはずなんです。それは幾らになっているのです。
  55. 大津留温

    ○大津留政府委員 ちょっと私そこまでは調べておりませんし、大蔵省でおやりになったことでございますので、大蔵省からお聞きいただくとありがたいと思います。
  56. 井上普方

    ○井上(普)委員 実はこの問題につきまして私聞こうと思いまして大蔵省を説明員として呼ぶようにしたのでございますが、何かほかの都合がありまして来れないのですが、住宅局長、あそこは十五分もあればわかりますから、ひとつもっと詳細にお聞き願いたいのです。それで私の質問にひとつ答えていただきたい。係官が来て、それが係長だの課長補佐だったら、あなた十分聞いて、あるいは住宅公団に聞いてひとつ御答弁願いたい。私は、これはけしからぬとかなんとか言っているのじゃないのです。さっそくやっていただきたい。どうです。——この公務員住宅等値交換したのです。NHK放送センター、代々木にある土地ですよ、それと、千葉県の海岸にある埋め立て地と等値交換しているのです。そのときに公務員住宅が坪三万円で稲毛を評価しているのです。一体代々木のほうは幾らやっているのです。これもひとつ調べていただいて御報告いただきたい。その間ほかの問題をやっておりますから。私は、意地悪い質問じゃなくて、土地の値上がりがいかにひどいものであるかということを……(「意地悪くてもいいよ」と呼ぶ者あり)それなら住宅公団関係も呼んでいただきたい。  それで、私はほかの問題に進んでまいりたいと思うのでございますが、先ほどからも申しますように、おそらく不動産鑑定の結果が三十年の十月から四十年までに十二倍しておるというのは、これは通俗いわれておるところでありますが、しかし、一体日本で土地というものが銀行信用に転化せられて、この結果日本は大きいインフレを招く一つの重大なる要因となっておると私ら考えるのです。ところが、自治省は府県税としまして不動産取得税というのを徴収しております。この不動産取得税を徴収しておりますけれども、これは実勢価格にいたしまして、宅地と農地と山林というものに分けますと、宅地が十倍、農地が四倍、あるいは山林が四倍、十、四、四というような比率で大体市町村の土地評価が行なわれるということを私どもは聞いておるし、事実私も十数年来土地の売り食いばかりやっておりますから、いかに低いかということがわかるのでありますが、自治省でつかんでおる最近の資料によって、不動産取得税というものは一体全国で総額幾らあるのか、お伺いいたしたい。といいますのも、実をいいますと、十、四、四の比率でいきますと、いままでは六十万円までは不動産取得税がかからないのでしょう。どうです。そうしますと、大体五百万円前後以下はこれは税金がかからないということになる。五百万円以下の取引ということになると、日本における住宅のほとんどがこれから漏れておるという結果にも相なろうかと思いますので、この十、四、四の比は後ほど申し上げるといたしまして、六十万円以上の不動産取得税が全国でどのくらい昭和四十三年にはあったか、それからまた、昭和三十年当時にはどのくらいあったのか、三十五年にはどのくらいあったのか、四十年にはどのくらいあったのか、三十年、三十五年、四十年と最近のと、四つお示し願いたいと思います。
  57. 山下稔

    ○山下説明員 不動産取得税の三十五年度の収入済み額は百三十七億でございます。それから四十年度が四百十四億でございます。それと、四十三年度はまだ決算が出ておりませんのでわかりません。地方財政計画上四十四年度の収入見込みとして予定いたしております額が六百二十四億でございます。
  58. 井上普方

    ○井上(普)委員 一般に市町村の不動産評価額というものが非常に低いということはあなた方でもお認めになりますか、どうです。
  59. 山下稔

    ○山下説明員 御承知のように、固定資産税の評価は三年ごとでございますが、現在使っております評価額は、昭和三十九年度評価したものでございます。四十二年度評価がえをすべき基準年度でございましたが、一応見送りました。したがいまして、現在使っておりますのは三十九年度評価額でございます。そこで、現在すでに五年間も経過いたしておりますために、いわゆる時価とかなりの差が生じているであろうということは、御指摘のとおりであろうと思います。
  60. 井上普方

    ○井上(普)委員 私は昭和三十六年の新聞並びに評論というものを実は拝見いたしたのです。そうしますと、大体固定資産の評価額が、宅地においては十分の一、農地においては四分の一、山林においては四分の一であるということを実は拝見いたしたのです。一般にそういわれておる。事実私が土地を売ってみて、井戸べいになるかどうか知りませんが、私は土地を売って売ってきておるのでございますが、最近の私の郷里の土地をいいますと、農民同士の取引が大体十五万円から二十五万円ぐらいだ。ところが、ある動機によってそれが百万円ぽっと上がっておるというのが実情です。これはもちろん離農補償というような問題もありますけれども、それにいたしましても、一反歩当たり十五万円ないし二十五万円の土地評価というものは、これはあなた方の土地評価からすると非常に低いものといわざるを得ないと思うのです。それで、四分の一ないし五分の一からきているのではないか、こういうように思われるのです。そういたしますと、あなたがいまお話しになった、昭和三十五年の土地取得税というもの百三十七億からずっと逆算していきますと、この当時におきましてももうすでに一兆二、三千億の土地取引が行なわれたと私ども考えざるを得ないのです。そうして現在におきましては六百二十四億でございますからして、これから考えましても、これは大体七兆くらいの土地の一般取引が行なわれておるのが実情でないかと思うのです。これは表面にあらわれておる税金だけですよ。先ほども申しましたように、土地評価額が六十万円以下でありましたならば、これは固定資産税というものはかからない。としますると、大多数の住宅用の土地というものが、これが五十坪ないし百坪でありますと、こういうような関係からいたしますと、ほとんど五十万円以下ないし、あなた方が税法上で認める六十万円以下というような結果にもなりかねぬ。ほとんど庶民大衆の土地というものは税金がかかってない。これは一面において喜ばしいことだと思いますけれども、金融政策の上からいきますと、実に重要な問題をここにはらんでくると思うのです。それで、あなた方がいま現在におきまして、私の先ほどの質問にあなたがお答えになりましたように、やはり土地評価というものが非常に低くてということはお認めになりましたが、やはり六十万円以下はかけていないのが実情じゃないかと思うが、どうでございましょう。
  61. 山下稔

    ○山下説明員 固定資産税の課税標準額は、適正な時価ということになっておりまして、その適正な時価によって評価をいたしますが、御承知のとおり、土地の売買には値段に非常に幅がございます。そこで、私どもとしては課税上安全度を見まして、最高の値段をとるというようなことはいたしておりません。そういうことからいいまして、評価額について、いわゆる世評価格とギャップがあるという印象は強いのじゃないか。先ほどもお答え申し上げましたように、現在、評価をいたしましてからすでに五年を経過しておりますので、時価とのギャップもさらに加わっておるということは事実であろうと思います。ただ、御指摘のありましたように、十、四、四という比率については、私ども承知しておりませんし、そういう意味で、一応、多少のギャップはありましても、三十九年度評価額で考えます限り、固定資産税の免税点は、土地については八万円でありますので、八万円以上の評価額の土地に対しては課税がされているものと考えております。
  62. 始関伊平

    始関委員長 午後一時より委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時三分休憩      ————◇—————    午後一時十八分開議
  63. 始関伊平

    始関委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続けます。井上普方君。
  64. 井上普方

    ○井上(普)委員 先ほどからだいぶん時間がたちましたが、稲毛の土地をどういうように変遷していったか。千葉市が最初に造成し、ブローカー、ブローカーに変わって、あるいは大蔵省、あるいはまた公団が手に入れたと思うのですが、それはどういうような変遷で移っていったか、ひとつお示し願いたいと思います。
  65. 大津留温

    ○大津留政府委員 日本住宅公団が買いましたのは、埋め立てを行ないました千葉市から直接買っております。
  66. 斉藤整督

    ○斉藤説明員 稲毛の公務員宿舎用地の取得の経過につきましては、私たちのほうで登記簿上把握しておりますところでは、千葉市から朝日土地に移りまして、それが日本放送協会に移りまして、それを国が交換で受けております。
  67. 井上普方

    ○井上(普)委員 年月日はいつですか。
  68. 斉藤整督

    ○斉藤説明員 千葉市が保存登記いたしましたのが三十九年五月十八日でございます。それから朝日土地が取得いたしましたのが三十九年五月十四日でございます。それから日本放送協会が取得いたしましたのが三十九年十二月三日でございます。それから国が契約いたしましたのが三十九年十二月二十八日でございます。
  69. 井上普方

    ○井上(普)委員 私は、この問題については千葉市議会におきましてかなり事件になったことを記憶するのです。しかし、それはともかくといたしまして、その土地の値段の上昇を見てみますと、半年の間に五千円値上がりしているのですね。二万五千円のものが三万円に上がっている。こういうようなはなはだしい値上がりが現状においては行なわれておるということを私らが何が悪いとか申しませんけれども、ともかくこういうふうにぼんぼん値上がりしている。しかも計画局長の話によりますと、四十一年から四十二年に大都市のドーナツ圏内におきましては二一%も値上がりをした、こういうようなことを聞きますと、実は日本の経済のインフレ要因の最大のものがこれじゃないか、こういう気がいたすのであります。  先ほども不動産取得税につきましてお伺いいたしましたが、不動産取得税が昭和三十五年には百三十七億であったのが、現在では、四十二年の決算ですと、六百二十四億円になっている。ところが、その土地分はどれくらいかといいますと、お伺いするところによると、六千万前後だ、こういうのですね。
  70. 山下稔

    ○山下説明員 昭和四十二年度不動産取得税のうち土地にかかる分の税額から逆算をいたしますと、昭和四十二年度土地にかかる不動産取得税の対象になりました課税標準額は、御指摘のとおり五千九百六十億、約六千億になるわけでございます。
  71. 井上普方

    ○井上(普)委員 課税標準額なんですね。しかし、大臣、いま土地を買いましてその上へ家を建てるというときには、土地の値段のほうが家よりも高いのが実情じゃございませんか。ところが、課税標準額が六千万円しかかかっていない。(「六千億だぞ」と呼ぶ者あり)そうすると、六千億ということになると、二十四億分しかかかっていないのですか。
  72. 山下稔

    ○山下説明員 昭和四十二年度不動産取得税の決算額が五百二億でございますが、この中には滞納繰り越し分が含まれておりますので、現年分だけで申しますと四百九十七億でございます。このうち、土地にかかる部分が百七十九億ございます。この百七十九億のうち、税率の三%で割り返しますと、五千九百六十億円が土地にかかる不動産取得税の対象になった課税標準額ということになります。
  73. 井上普方

    ○井上(普)委員 ともかくも、不動産取得税というものが、土地分として六百億円、こう言われておるのですけれども、これだけでは、標準価格——間違っていたら言ってください。標準価格が非常に低いというようなところからいたしましても、大きいインフレ要因にならざるを得ないと思うのです。と申しますのは、日本の企業というものは借金で設備投資をやっておることは、御存じのとおりです。自己資金としては、大体設備投資その他に要する金の三割ぐらいしか持っていない。あと七割は銀行からの借り入れ金で行なっておるというのが実態であります。しかも、長期のものは多くの場合土地建物を担保にいたしております。もちろん、大企業でございましたならば、信用が優先するとか、あるいは在庫品が優先するとかいうような考え方もありますけれども、設備投資などという長期のものを考えると、大体土地を担保にいたしております。これは八幡にしても富士にしましても、含み資産というのは大体土地にしています。そうすると、八幡あたりで一千億ないし二千億近い付保力を持っているといわれておりますが、これはほとんど土地ということに相なっておるようであります。ところで、土地がどんどん値上がりすることによりまして担保力が増大する、担保力が増大するからして借り入れ金額がこれまた増大していって、これがいままで借りているものでございますと、第二の担保に入れてくれとか第三の担保に入れてくれとかいう形で、普通銀行の信用貸しというものの背景には不動産担保というものが非常に大きい要因になっておると思うのですが、経済企画庁、どうでございますか。
  74. 伊藤俊三

    伊藤説明員 企業が設備投資をいたします場合に、土地と機械設備施設、両方につきまして担保に入れて金を借りておるというのが事実でございます。土地の値上がりというようなことが、企業が資金を調達する場合に非常に容易になるという要因を持っていることは事実でございます。金融全体といたしましては、全体の資金流通量を別個の立場から大蔵省あるいは日銀等が判断してきめるというような形になっております。
  75. 井上普方

    ○井上(普)委員 あなたはそうおっしゃいますが、ともかく、土地が担保になっておることが非常に多いのです。企業あるいは個人におきましても、ほとんどと言ってもいいでしょう。しかも、それがどんどん値上がりするから、担保力が増大してくる、増大してくるから銀行がそれに対して貸し付けを行なう、こういうのが実態でなかろうかと思うのです。  そこで、大蔵省から出しております統計を見ますと、昭和三十五年に現金通貨は一兆一千億円だったのです。そしてまた、預金通貨は三兆一千億だった。ところが、四十一年末におきましては、現金通貨のほうは二倍ちょっとでございまして、二億六千万円程度になった。ところが、預金通貨というものは三倍になって、九兆二千億になっておるのですね。これと土地の値上がりの比率と比べました場合、三十五年と現在とですと、土地の値上がり、及び先ほど申されました固定資産税等々を考えますると、土地のほうがむしろ非常に先行しておる形になっておると思うのですが、どうでございます。
  76. 伊藤俊三

    伊藤説明員 土地価格と消費者物価との関係、インフレとの関係というようなことで消費者物価との関係というようなことを御参考までに申し上げますと、人口五万以上の都市におきまして——土地ということでは実は統計をとっておらないので、地代家賃というようなかっこうになっておりますので、その辺はちょっと御了承願いたいと思いますが、地代家賃というようなかっこうでは、大体約三%くらいのウエートになっております。物価上昇よりも地代家賃のほうが上回っておるということは事実のようでございます。大体いまのところは、物価上昇に対する寄与率が四%から五%くらいになっておるということが言えると思います。
  77. 井上普方

    ○井上(普)委員 あなたの家賃とか地代というようなものは、私らは対象にならないと思います。これはあくまでも土地の値上がりというものによって通貨インフレ、通貨膨張、こういうものが大きい要因になってくる。それで、銀行が担保にとって手形を出すという場合には、これは日銀に行ってまた再割り引きが行なわれる。それがすなわち通貨の増大になってくるし、銀行信用というものが膨張してくる。ところが、普通商品でございますと、生産費があるから、商品を売って金を手にいたしましても、その中から原価を支払わなければなりません。ところが、土地取引は、その原価というもの、生産費というものを支払う必要がない。すなわち、原価に当たるものと売価との間に大きい開きがこの場合は出てくる。それがいわゆる銀行預金の形になってくるし、また流通通貨の膨大に返ってくるのではなかろうかと私は思うのです。そのとおりでしょう。  そしてまた、土地担保の銀行貸し出しの方法は、土地取引のほうが銀行貸し出しよりもふえ方が金額的に多いという実態から、むしろこれを引っぱっておる。しかも二重三重の抵当に置くことによって手形というような形になってあらわれておりますからして、どんどんと通貨膨張を来たしてくるという結果に相ならないかと思うのであります。物価上昇も、これが根本だとは私は申しませんが、一大要因であるということは私は言えると思う。現に、先ほども申しましたように、預金通貨は昭和三十五年から三倍になっておるのです。こういうことを考えますと、土地政策というものが信用インフレもしくは通貨インフレの最大の——最大と申しても過言でないと思うのですが、元凶にすらなっておると私は思うのですが、経済企画庁のお考え方をお示しいただきたいし、大臣の御所見を承りたいのです。
  78. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 ただいま御指摘になりました、いわゆるインフレ要因の大きなウエートは土地価格の問題である、その一環ということについては、私はある程度やはり認めなければならぬ、こう思っておりますが、そうしたことであればあるほど、いわゆる土地問題に対しましても政府は非常なくふうをこらしながら対処せなければならぬ、こういう決意でおる次第であります。
  79. 伊藤俊三

    伊藤説明員 ただいま大臣がお話しでございましたので、私からつけ加えるようなことは特にございませんけれども土地の問題につきましてはわれわれも非常に関心を持っておりまして、かねてから経済企画庁の経済審議会に土地政策研究委員会というものをつくりまして、地価問題だとか土地利用計画、そういうようなことにつきまして、学者の方々あるいは有識者の方々にお集まり願って、根本的な検討をしている次第でございます。
  80. 井上普方

    ○井上(普)委員 私が先ほども申しましたように、土地の値段がどんどんどんどん上がることによって通貨の増発を来たす、また、本会議でございましたか、予算委員会でございましたか、福田大蔵大臣は、預金通貨は回転率によって違うんだ、経済に対するインフレ要因になるかならないかがきまると言っておりましたけれども、見てみますと、インフレの起こっておる昭和二十七、八年なんかは、一般当座預金の回転率は実に八〇、九〇になっている。ところが、経済が停とんしたといわれるときには、二〇%あるいは三〇%程度で押えられておる。インフレの激しいときにはこの回転率が激しくなってきておるということは、私はこれは率直に認めなければならない。それよりも、先ほども申しましたように、三十五年と比べますと、現金通貨は二倍近くなり、預金通貨は三倍近くなり、しかもそれが結局通貨インフレの原因となっておる。その一番大きい原因のこの土地の値段との比較をずっと見ていきますと、大体同じような傾向を示しておる。すなわち、これが全部とは申しませんけれども、大体通貨インフレの最大の要因になっておるのは、土地値段の高騰にあると言っても私は過言じゃなかろうと存ずるのであります。それから銀行信用の増大も問題があります。  こういうようなことをいろいろ考えてまいりますと、どういたしましても、現在私どもに課せられました任務というものは、これは土地高騰を押えることに全力を注がなければならないと思います。これはもうすでに四、五年前から都留委員会におきましても——都留委員会は経済企画庁でしたね。また、住宅地審議会におきましても、土地高騰につきましては、再三再四にわたって勧告ないし意見書というものが出されておるところであります。保利大臣になられまして、この住宅問題あるいは土地問題についての私的諮問機関を建設省につくられました。その際に異口同音に言われたことは何かといいますと、新聞紙上で承るところによると、建設省がいままで出された勧告あるいはまた意見書を実行に移すことだけだということを言われておるのです。ところが、いま初めて建設省として出てきた土地政策らしいものは——もちろん、都市計画法という法律が出てまいりました。しかし、この都市計画法だって、私どもが見るところによると、市街化区域と市街化調整区域との間におけるアンバランスを生じてくるし、市街化区域に設定せられたところの土地というものは、ものすごく上がってくることが十分に予想せられる。すでにもう市街化区域になっているということを聞いただけでも値段が上がっておる実態じゃありませんか。こういうときに、私どもが言いたいのは、建設省が、二階から目薬のごとき地価公示制度を出すのみで、あとの政策を出してこないというところに問題がある。もっとしっかりした政策を出してこなければ、これは通貨インフレを招くし、国民大衆に対して大きい迷惑を及ぼしてくる。もちろん住宅もなかなか建たないという問題もありますが、観点を変えて通貨のみを考えましても、インフレという面から考えましても、私どもは重大なる問題を含んでくると思うのです。そういう観点からするならば、もう少し建設省は真剣に土地問題と取り組んでいただきたい。同時に、私も十分にわからないのでございますけれども、私どもが、土地税制について、空閑地税の創設、あるいはまた、開発利益を徴収する方法等々を申しますと、昨年税制調査会においては、税制におけるところの地価抑制方法は補完的なものだ、主目的はあくまでも土地の利用区分をつくることにあるというようなことをいわれておるのでございますが、利用区分というのは一体どんなことをいっておるのか。具体的にどこまでやれば大蔵省は土地税制に取り組むのか。建設省は希望的観測ばかりおっしゃらずに、土地の問題について都市計画並びに利用区分等々についてここまでこまかくやれば、大蔵省のほうは補完的補完的という土地税制に取り組むつもりなのか、ひとつお伺いしたいと思うのです。
  81. 川島博

    川島(博)政府委員 先生御指摘のように、政府の税制調査会におきましては、土地政策全般に対しまして、土地税制の持つ意味は、あくまで補完的、誘導的であるということをいっております。しかし、この点に関しましては、これは私の個人的見解になりますが、必ずしも私はそうではない。少なくとも地価抑制地価の安定という対策に焦点をしぼってみた場合に、土地税制の持つ意味は、私は、補完的、誘導的であるよりも、むしろ主導的、牽引的であるのではないか。これは私の個人的見解をいま述べているわけでございます。  まあいずれにいたしましても、御指摘の空閑地税の問題でございますが、これは土地の有効利用の促進にはきわめて有力な武器だろうと思います。しかしながら、残念ながら、税制調査会におきましては、空閑地税を、前向きで考えるべきだけれども、現状において土地利用計画の確立が不十分であるから——これは新都市計画法の成立を見ましてもなおかつ不十分であるという意味でございますが、もう少しきめのこまかい土地利用計画が確立されないと、空閑地税の実施は困難だ、こういう報告を出しておるわけでございます。税制調査会のいわんとするところは、おそらく、現在の建築基準法なり都市計画法なりにあります土地利用規制は、利用の最高限度を規制しておる、したがって、空閑地税を実施する場合には、最低利用義務と申しますか、そういったものが土地利用計画として確立されないと、なかなか空閑地税というような新しいむずかしい税目を起こすことが困難である、こういう論旨であったと記憶しております。
  82. 井上普方

    ○井上(普)委員 私も、計画局長のように、税制の確立が土地価格高騰を抑止する最大の武器じゃないか、むしろこれが主導的な役割りを果たすのじゃないか、このように思うのです。ただ、それが政策上にあらわれてこない。今度、土地の分離課税、二年間は取得価格の一〇%しか税金がかからないというような税法を大蔵省で出してきましたけれども、ドーナツ圏においてこの一年間に二一%も上がっているのですよ。二年間このまま置いたら、四二%上がるのです。その上へ持ってきて、都市計画法によるところの市街化区域が設定されたら、またばんと上がるのです。それに土地の売買の一〇%を徴収するのみで、これでもって土地税制は終わりというような現在の政府の考え方は、非常になまぬるい。むしろ建設省が——坪川大臣、あなたは、国務大臣として去年の九月閣議で決定した土地政策、あの方向になぜもう少し力をお入れになりませんか。この地価公示制度、これをきめますと、おそらく、一般の取引価格、もしくは公共用地の取得の場合に、標準地点における標準価格、これが最低になりますよ。これが、標準じゃなくて、最低価格になって取引が行なわれる可能性があると思う。どうでございますか、坪川さん、国務大臣として、建設大臣として。
  83. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 井上委員御指摘になりましたごとく、いまの都市計画の推進あるいは住宅政策の推進において最も優先するものは土地問題であり、地価問題である、私はその方針のもとにこの問題についてあらゆる面から取り組んでおるようなわけでございます。したがいまして、土地、住宅等に対する根幹をなす地価対策につきましては、政府といたしましても、昨年の閣僚協議会で決定いたしました線に対しまして、それぞれ方向を打ち出しながら、行政上、予算上、手を尽くしておるのでございます。いま御審議を願っております地価公示制度につきまして、さきも申し上げましたごとく、すべてがこれによって解決するというようなことは——私は十分期待はいたしておりますけれども、これが万能薬として、即効薬としての機能を果たすものではない、あるいはすべてが解決されるものではないという考え方で、決して安易な気持ちでいるようなわけではございませんから、私はやはりこれにつきましてはあらゆる総合計画を打ち出さなければならぬ。御承知のとおりに、この間参りましたロンドン大学のロブソン教授も指摘したごとく、日本の地価土地問題がいまの東京あるいは過密都市の一番の問題点であるという、非常に示唆に富んだ、含みを持ったことを言われて日本を離れていかれましたあの新聞記事を読むにつけましても、私はほんとうにこの地価問題に対しては真剣に取り組んでいきたい。佐藤内閣政府といたしましても、その観点から鋭意努力もいたしておるような次第であります。  その一環の措置といたしまして、御承知のとおりに、先ほどからお話のあった都市計画法の五月よりの施行に伴うところの仕事をいたしますとともに、いま参議院で御審議を願い、間もなく当委員会において御審議をわずらわさなければならない都市再開発法の制定によりまして、土地と建物と、そして住宅等、いわゆる横の面でなくして、上下の面において立体化いたしました総合施策によって、土地と建物と住宅とを一体化した方向の立法措置を講じたのも、このような考えからであります。  また、私といたしましては、公有地あるいは国有地の活用、これに対しましてやはり大きな一つの期待するものを持つわけでございます。御承知のとおりに、過般私が直接筑波に参りまして見てまいりましたのは、結局、頭脳都市としての、首都圏開発の意味からの学園都市の建設という大目標はもちろんでございますけれども、その裏を返すならば、三十六機関に及ぶ政府機関の移転に伴っての、東京都内の中心地にあるところのこれらの土地をどう活用していくかという、大きな一つの裏を返した問題に非常な期待を持っておる考え方から、筑波学園都市への移転計画について、建設省として私は閣議で二度も発言をいたしまして、そしてこの問題に取り組みたいという意欲から、ああした措置を講じた気持ちもここにあるような次第であります。  また、いま御指摘になりました税制上の問題、土地税制に関連する問題といたしましては、今度の個人譲渡に対するところの分離課税及び短期のあの措置を講じたことは、かなり抜本的な税制対策の一環であったと私は思います。ただいま計画局長が申しましたごとく、空閑地税の問題等も、建設省といたしましてもいま非常にこれらの問題に取り組みまして、大蔵省と十分協議をいたしまして、前向きの姿勢でこの空閑地税にも取り組みたい。予算委員会において福田大蔵大臣が述べましたごとく、大蔵大臣も、空閑地税の必要性といいますか、その創設の重要性については共鳴を持つが、技術上においてなかなか至難な問題があるので、それを目下検討中だと答えられましたごとく、いま計画局長が申しましたごとく、そうした税制の面からも今後前向きの姿勢で十分取り組みながら、土地税制に対するところの刷新的な方策を進めてまいりたい。  いろいろとございますが、建設省及び佐藤政府といたしましては、鋭意、いわゆる土地問題、地価問題に対してひとつ積極的に打ち出したい。その大きな分野として、いま御審議を願っておる公示制度制定いたした気持ちもここにあることを、ひとつ賢明な井上委員よく御理解いただけるであろうと思うのであります。
  84. 井上普方

    ○井上(普)委員 私も、地価公示制度というものが地価抑制の大きな武器であるとは絶対考えません。二階から目薬のごとき役割りしか果たさないというのです。先ほども申しましたように、全国で九百七十地点でしょう。そしてその標準地点における標準価格というものが取引の最低価格になることがいまから予想せられる。そうしますと、うっかりすると、むしろこれは土地高騰に拍車をかける結果に相なりはせぬかという懸念すらあるのです。さらにまた、あなたは、あらゆる方法土地抑制について講じたい、こうおっしゃいますが、あらゆる方法というのは何ですか。政府はやっていはせぬじゃないですか。今度の土地税制の分離課税を見ましても、二年間は一〇%、その後の二年間は一〇%上げて二〇%にするのでしょう。しかし、いまの土地の値段の上昇からしますと、先ほども計画局長が言われたように、一年間で二一%ドーナツ圏においては上がっているのですよ。土地を買い占め投機の対象にしたら、これほどいいものはありませんよ、二年間で四〇%前後上がるのですから。しかも、都市計画法制定せられて市街化区域指定されますと、まだまだ値上がりが予想せられるのです。そのときに、二〇%ぐらいの税金でこれが押えられることは、私どもには考えられないのです。  さらにはまた、科学技術庁が出しております「土地形成の理論、メカニズム」というのを見ますと、政府の施策全体、あらゆること一つ一つが土地高騰を来たしておる原因だという結論にならざるを得ないのです。私どもは、この地価高騰が概算で西欧諸国の三倍近くなっておる、ここに一つの大きな原因——住宅問題もありますし、インフレを来たさせる状況が出てくると思います。  ここで私どもの言いたいのは、先般私どもが出しました宅地の管理制度という方法も、これでは住宅に困るということが一つと、現在の日本のインフレの最大の要素であるところのこの土地高騰を押えるがために実は出したわけなんです。また、土地というものは民族に与えられたものであるという考え方からやったわけなんです。  ここで空閑地税ばかりをあなたはおっしゃいますが、開発税をひとつお考えになったらどうです。税金で道路をつくる、あるいはまた、税金で港湾をつくる、税金で住宅をつくったら、その付近の土地が一発にぱっと上がる、こんな不合理な世の中がありますか。開発税というのは、イギリスにおいても、幾多の変遷はありますけれども、いま現在やっておるじゃありませんか。開発税というものをひとつ積極的に取り入れる必要があると思うのですが、大臣、どうでございますか。
  85. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 決しておことばを返すような意味で申し上げるのじゃございませんが、この御審議を願っている地価公示制度の問題が、単なる目薬程度のものであるとは私は考えておりません。御承知のとおりに、地価公示制度を設けようということは、昭和三十九年に与野党一致して地価制度をとるべきであるという決議をされましたときは、野党さんも与党も、まことに重要であるという趣旨のもとにそれぞれ賛成され、そして決議されたので、その当時、こういうようなものは目薬だが、しかたがないからやれとはおっしゃらなかったことは、御記憶におありだろうと思います。そういうような意味で、私はこの公示制度についてはかなり期待をしておるということで——万能薬とは申しません。しかし、大きな役割りを果たしてくれるものと、大きく期待をいたしておることだけはひとつ御理解願いたいと思います。  次の、いわゆる開発税の問題、これもやはり土地税制に関連する重要な問題でもありますが、これらにつきましても、やはり空閑地税とともに私は前向きの姿勢で検討を加えつつあるということで、建設省の方針を御理解願いたいと思うのでございます。  それから、先ほどおっしゃった、また、公営住宅法案のときにもお述べになりましたごとく、いわゆる土地管理法の問題、これは社会党さんの主義、政策からいってのお立場からいろいろとお述べになるお気持ちもよく理解いたします。また、すべてを否定はいたしませんけれども、政府といたしましては、直ちに管理法を適用するというような考え——いま検討は加えるべき大事な問題ではありますけれども、政府は、これに関しましては、いまお述べになりましたことに対して私は直ちに賛成でございますというお答えはいたしかねることだけは御賢察願いたい、こう思うのでございます。
  86. 井上普方

    ○井上(普)委員 三十九年に衆議院において決議しましたときには、たくさんのうちの一つとして地価公示制度があったはずです。たくさんのほかの項目は実施せずに、地価公示制度だけを引っぱり出しておるじゃございませんか。  いろいろと申し上げたいことがございますけれども、税制の問題にいたしましても、これも政府機関の審議会等々が出しておるのですね。地価安定には問題は出尽くした、これをやらぬ政府に責任がある、もうやらなければならないのは、政府に具体的にこれをやるかどうかという問題だけだということを、保利さんが大臣になられましたときに、審議会をつくったときに、異口同音に言われたそうですね。ところが、ことしになって出してきましたものは、税制における分離課税。これもあまり役に立たない。いままでよりは少しは前進したけれども、あまり役に立たない。といいますのは、二年間に税金として取り上げるのが一〇%です。二年間に四〇%上がるのですよ。大体予想されるのですよ。これは取らねば損だということで売り惜しみが行なわれる、買い占めが行なわれるのです。土地が投機の対象になっておることを、われわれはこれを押えなければならないと思うのです。これが一番のガンなんです。  筑波学園都市について、これも河野建設大臣のときにやられて、まだ着工もしてないでしょう。買収法までできた。政府の熱意は、坪川さんになって、あなたは一生懸命やってまっすぐ進もうというお気持ちはわかりますけれども、これだって何年たちます。もう七、八年になるでしょう。こんなことで、政府は一体土地については熱意がない、こういうことを私は言わざるを得ないのです。開発税にいたしましても、三十七年当時から論議されているのです。それを全然いままで実施せずに、ただ二階から目薬のような地価公示制度——霞が関ビルの上からかもわかりませんぜ。こういうようなことを出してこられましても、いまの時点においては、先ほど申しましたように、取引価格の最低をともかく公示価格としてきめるというような結果になりはしないかと私は危惧するのです。ひとつ大臣は、土地問題については——先ほども申しました住宅問題も大きい問題です。同時にまた、この信用インフレ、通貨インフレの最大の元凶ともいうべき土地価格高騰、これについてもう少しメスを入れていただいて、土地のほんとうの安定をおはかりになるよう格段の御努力をお願いいたしまして、質問をやめます。
  87. 始関伊平

    始関委員長 吉田之久君。
  88. 吉田之久

    吉田(之)委員 先ほどから、地価公示法案をめぐりましていろいろな質疑田村、井上両委員から続けられております。この法案を読めば読むほど、あるいは先ほどからの質疑応答を聞けば聞くほど、いかにもたよりない法案であることよというふうな感じがしてならないのです。もちろん、地価の異常な高騰に対して政府も何か考えなければならないということで、地価をどのようにセットさせようかという方向に向かって、確かに建設省はこちらを向いたという感じは、この法案ではいたします。しかし、どうひいき目に見ても、相当積極的に前に踏み出したというような感じをわれわれは一向に感ずることができないのです。以下、そういう問題につきましてしばらく御質問をいたしたいと思います。  特にわれわれ民社党のほうでは、土地価格抑制のための基本的施策に関する法律案というのをかねて提出いたしておりまして、きわめて積極的な法案をいまこそ政府はわれわれ各党と力を合わせて国民の前に提示すべきではないかという非常な強い希望を持っているわけなんですけれども、それらとも関連しながら少し意見を申し述べ、質問をさしていただきたいと思います。  そこで、まずこの法案を審議するにあたって、われわれが一番考えなければならない問題は、はたして客観的に科学的に土地の値段というものは正しく評価できるだろうか。先ほど来政府の説明を聞いておりますと、近傍類地の実勢単価を見て、それをいろいろ勘案し、修正して、そうしてこの辺だろうといって数字を鑑定士の人たちにきめてもらおう、こういう仕組みだと思うのです。結局、私どもの常識から考えれば、それは現にあるがままの土地価格、そういうものを材料として、そうして足したり引いたり、割ったりして、いわば算術をやるにすぎないのではないか。とすれば、はたしてそれが正しい土地の値段なんだろうかどうかという気がしてならないわけなんです。この点、今度の地価公示法案によってほんとうの正当な土地価格というものが設定できるという自信をどの程度建設省としてはお持ちになっているのかという点を——先ほど来の委員の方々もいろいろ御質問になりましたけれども、あらためて私はその点をお伺いいたしたいと思うのです。具体的に市場資料比較法収益還元法復成式評価法というふうな三つの手法を柱としてこの地価価格を算定していくのだというふうに言われておりますけれども、その辺、だれにでもわかるようにひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  89. 川島博

    川島(博)政府委員 私も鑑定評価専門家ではございませんので、あまりうまい説明にならないかもわかりませんが、不動産鑑定評価という実務は、この売買あるいは賃貸等の流通面、あるいは金融機関から融資をする際の担保物件の調査というような形で行なわれておったわけでございますが、最近、昭和三十八年に鑑定評価に関する法律制定されまして、この鑑定士という資格制度が確立いたしましてから、鑑定評価の技術につきましても業界並びに建設省の間で非常に検討が行なわれまして、現在業界における鑑定士の技術的な基準とも申すべき鑑定評価基準というものが確立したことは、先ほど御説明申し上げたとおりでございます。この鑑定評価基準は、実は一〇〇%完全ではないわけでございますけれども、現在、この地価公示法案提出する機会に、あらためて従前の鑑定評価基準についてもう少し手を入れる必要があるということで、ただいま住宅宅地審議会に諮問いたしまして、この鑑定評価基準の改定について御意見を伺っている最中でございます。近く答申になると思いますが、この基準を受けまして、第四条にございますように、建設省令標準地についての鑑定評価基準を詳細定めたいと思っております。その際に、正常な価格への接近の方法といたしまして、いろいろ方法はあるわけでございますが、この柱となるのは、何といっても、物件そのものの市場性、収益性、費用性、こういう三側面からアプローチすることを基本とすべきだ。これは不動産鑑定評価の各国を通ずる基本ルールでございますので、したがって、そのことを法律上明記する必要があろうということから市場資料比較法あるいは収益還元法復成式評価法、この三つの方式を必ず参酌して評価をしなければならぬという原則をうたったわけでございます。
  90. 吉田之久

    吉田(之)委員 この復成式評価法というのはどういうやり方ですか。
  91. 川島博

    川島(博)政府委員 この復成式評価法というのは、四条にも書いてございますように、同等の効用を有する土地の造成に要する費用でございます。つまり、同品質、等格の土地を新しくつくり出すといたしました場合にはどの程度の費用がかかるだろうかという費用を推定いたしまして、その費用を出す作業、これを復成式評価法といっているわけでございます。
  92. 吉田之久

    吉田(之)委員 第四条で、「近傍類地取引価格から算定される推定の価格」、これがいわゆる市場資料比較法ですか。それから、いまおっしゃったのは、「同等の効用を有する土地の造成に要する推定の費用の額」、これが復成式評価法。よく似たものでの例という意味なんでしょうね。そうすると、収益還元法というのはどこに書いてあるんですか。「近傍類地の地代等から算定される推定の価格」、これですか。地代から推定される価格が収益ということばになるのですか。
  93. 川島博

    川島(博)政府委員 さようでございます。「近傍類地の地代等から算定される推定の価格」、つまり、地代から資本価格を還元いたしまして、元本がどの程度価格を持っておるだろうかということを評価しまして推定価格を算定する、これが収益還元法でございます。
  94. 吉田之久

    吉田(之)委員 課長にお聞きしますが、この三つの方法は、通常の場合大体非常に似通った数字になるのか、それとも、どの方式でいくほうが必ず上の価格を示すのであるか。その開きは千差万別でしょうが、何かそういう法則めいたものはないのですか。
  95. 大河内正久

    ○大河内説明員 現在の鑑定基準の運用の状況を見ますと、収益還元法が若干下回る傾向がございますが、これは収益還元法を含めまして鑑定基準全体につきましていま改定作業中でございます。それは、収益還元の場合の資本還元の方法の中に収益の見方が非常に限定的であるというところから、若干そういうふうなひずみを生ずる傾向がございました。これは現在審議会の基準の起草小委員会でもって検討中でございますが、いわゆる収益の見方、範囲等の取り方等によりまして、均衡のとれた価格のアプローチができるのではないか、こういうふうに期待しております。もともとこの三者は一致すべきものであろうというふうに観念されております。理論上はそういうふうに考えられております。
  96. 吉田之久

    吉田(之)委員 その三つの方式をかりにA、B、Cとして、そのA、B、Cを足して三で割るのか、あるいはそのうちのどれかに少しウエートを持たすのか、あるいはそういうふうに数字を算定したあとで、高度の勘によるプラスアルファないしはマイナスアルファをつけるのか、こういう問題。  いま一つは、大体三人くらいで鑑定するわけでしょう。二人以上、まず三人でやる。三人がこういう方法でやれば、大体同じ、あまり変わった数字は出てこないはずだと思うけれども、それら三人の答えがそれぞれ違った場合に、それはどのように調整するのか、これもただ足して三で割るのか、そのところをどの辺まで考えておられますか。
  97. 大河内正久

    ○大河内説明員 まず第一点の、理論上の開差の問題でございますが、これは理論的に、先ほど一番最後に申し上げましたように、一致すべきもの、客観価値に当然その三つの側面から到達すべきものというふうに観念いたしておるわけでございます。ただ、現実の問題としまして、いままでの実績を見ますと、理論的にはそうであるにもかかわらず、実績上は収益還元法が若干下回る場合があり得る。しかしながら、これは土地柄その他によりまして必ずしも同一じゃございませんで、それぞれの実績上の偏差も、土地柄その他によって逆のほうに出てくる場合もございます。そういう問題を含めまして、鑑定上の開差の問題でございますけれども、これはやはり理論的には資料をまんべんなく採取いたしまして、その資料の数あるいは資料の質その他が、偏在と申しますか、中身が片寄ることなく、理論的なものに合致した形で採取されました場合には、最も適正な価格として算定し得るものになるわけでございますけれども、実際上の問題としましては、資料の採取、調査その他で若干の誤差、隔たり等がありますので、個人差——と申しますよりは、個々の調査のしかたいかんによってそういう差が生じるという場合はあり得ます。しかしながら、最近、こういう調査そのものにつきましての理論的な検討、いわゆる経験等を重ねられまして、鑑定士の行ないます鑑定評価の開差は非常に縮まっておるのが現状でございます。
  98. 吉田之久

    吉田(之)委員 この法案の目的のところに、そのようにして算定してオーソライズした価格を今後一般の土地取引価格に対して与える指標にしようという表現を使っておりますね。指標ということばは、非常に抽象的なことばで、あまりなじまないですね。  そこで今度は、皆さん方が出された「地価公示制度について」、昭和四十四年二月に出しておられるこのテキストによりますと、土地の適正な価格決定して、それによって「公示された価格は、一般の土地取引価格の目安となる」というふうに書いてございます。大臣、この目安ということば、これは非常に通俗的なことばです。しかし、これほどあいまいなことばはないのです。目安といったら何だというと、目安は目安だ。どの辺まで確かにセットした権威のある数字なのかどうなのか、ばくとした、非常にあいまいなことばなんですね。目安というものはこういう法律説明の中で使って適当だとお考えになりますかどうか。地価抑制をはかろう、地価をこの辺で何とかフィックスしようといっているときに、こうして計算した数字はこれからどこまでの目安でございます、こういうふうなまことに勇ましくない表現でこれから向こうを向いて走れると大臣はお考えになりますか。
  99. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 土地を求める者、与える者、いわゆる需要供給の両者の人間的な心理状況から考えますならば、なるべく高く売りたい、なるべく安く買いたいというような気持ちで、しかも買う人、与える人は、特殊的な動機あるいは特殊的な事情というふうなものもあろうかと私は思うのでございます。そう考えますと、その心底には、ある不安といいますか、ある一つのこれに対する心理的な気持ちというものがかなり動いておる、動揺するものである、これは人間の常識といいますか、人間の本能として当然だと私は思うのでございます。そうしますと、私は、政治の力といいますか、この法律的措置を講じたことによって、一つの信憑性、信頼度あるいは依頼度、安心度というものが大きくプラスしてくる、こういうことを思うのでございます。そうすると、そこに一つの指標あるいは目安、大体この土地はこれだけの値段、この土地はこれこれの事情だからこれだけ高いんだなというような一つの基準、あらゆる基準を踏まえて一つの落ちついた安心感が出てくる、これを私は非常に期待もいたし、これが本法の想定いたしました一つの目標に相なりますので、そこにいわゆる心理的な動機からくるところの地価高騰するというようなものはかなり抑制できるということも期待できるということでございますので、非常にばく然としたような目安でありあるいは指標ではございますけれども、落ちついた一つの的確に近いまでの標準としてこれは期待できる、私はこう感じておる次第であります。
  100. 吉田之久

    吉田(之)委員 だから、その大臣のおっしゃっている気持ちと、そういう信頼性のあるものであろうとする気持ちと、使われている用語というものが私はかみ合っていないと思うのです。局長、目安ということばは、法的にはどういう意味を持っているのですか。どのように使われるのですか。
  101. 川島博

    川島(博)政府委員 目安というのは俗語でございまして、したがって、そういうことばを法律では使わないで、指標ということばに置きかえてございます。指標とは、私はここで英語などは使いたくないのですが、ガイドポストという英語がございますが、これが一番内容を示しているものと思っております。
  102. 吉田之久

    吉田(之)委員 ガイドポストなら、ややわかるような気もします。目安ということばは、私は非常にくふうされようとしている努力はわかりますけれども、日本語として、観念というもの、基準というものをあいまいにすることばのように受け取っているのです。こういう地価公示法案説明用語の中に、法律用語でもないことばで、しかも最もばく然と、何だかこの辺が目安なそうだという程度の、権威のない表現を使われるということは、やはり問題がある。しかし、いまお話しのとおり、実は賢明なる官僚の皆さん方は、これは目安程度にしかならないということを初めから十分御承知なんで、言わずもがなの表現が出たのじゃないかというふうな気がするのです。  そこで、大臣にお尋ねしたいのですが、目安と称する地価の数字、これを今度は実際にどのように効果あらしめるか、どのように実際の取引の中で効用、効力を発揮させていくかという問題が、この法案の一番大きな問題だと思うのです。公共用地取得の場合には、この法案の表現を見ますと、「公示価格を規準としなければならない。」あるいは「公示価格を規準として算定した当該土地価格を考慮しなければならない。」というふうなことばを第九条、第十条に使っておられます。こうして出てくる公示された地価というものは、公共用地の取得の場合あるいは土地収用の場合に考慮する程度の数字なんですか。どういうものですか。
  103. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 いま吉田委員が御指摘になりました目安と、法律上の用語としての指標、この指標に私は一つの大きなウェートを置き、これが本法の一つの最終の終着目標というような期待をいたしておりますので、公共事業体の一つの標準価格、また個人の一つの目標といいますか、参考というよりかもっと強い効果を、個人の場合にも、また公共体におきましても持ちたい、こう思っておるような次第であります。
  104. 吉田之久

    吉田(之)委員 大臣、持ちたいでは、全然死んだ法律になるのです。いやしくも公共用地の取得に関する限りは、こうして設定された地価、いわゆるマル公の値段ですね、断じてこれ以上にも以下にも買わないというほど権威ある態度で臨もうとするのかしないのか、この辺がはっきりしなければ、審議できないです。
  105. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 非常に大事な問題でありまして、願望ではなくて、かくあるべきである、こういう点で私はこれを解釈いたし、当然の措置を講じたいと思っております。
  106. 吉田之久

    吉田(之)委員 そこで、民間の売買の場合は別として、地方公共団体等が用地を取得しようとする場合に、これからは、公示された地価で、初めからかけ引きも何もなしに正攻法で押していかれることに私はなるだろうと思うのです。局長そうでしょう。
  107. 川島博

    川島(博)政府委員 民間の取引の場合にはあくまでガイドポストにとどまるわけでございますが、八条、九条、十条に書いてございますように、不動産鑑定士鑑定評価する場合、公共用地を取得する場合、それから収用委員会が裁決価格をきめる場合、いずれも公示価格によって拘束されるわけでございます。ただ第十条だけが、「公示価格を規準としなければならない。」という書き方でなくて、「公示価格を規準として算定した当該土地価格を考慮しなければならない。」何か奥歯にもののはさまったような間接的な表現をとっておりますが、なぜ十条だけが、考慮という形で、何やらわけのわからぬ表現になっているかと申しますと、本質的に十条で価格をきめるのは、行政機関ではありますが、裁判所と同じ公正と権威と独立性を持った、いわば準司法的な機関でございます収用委員会が最終的に収用地の価格をきめるということでございます。したがいまして、土地鑑定委員会が同じ行政機関として独立の権限を持ってきめる公示価格ではございますけれども、この公示価格に一〇〇%拘束されるということになりますと、土地鑑定委員会よりむしろ司法的機関たる性格の強い収用委員会土地鑑定委員会に全く拘束されてしまう、独立性を失うということになりますので、これは法制局、法務省とも十分協議いたしましたところ、この収用委員会は裁判所と同じ性格を持っておるのであるから、それが最終的な判断をできなくするような法律構成は適当でないということで、第十条に限って「考慮しなければならない。」しかし、現実におきましては、この公示価格は、相当な手続を経て、権威ある信頼性のある価格として公示されるわけでございますから、表現は考慮でございましても、収用委員会としては相当程度尊重することは間違いなかろう、したがって、表現は考慮でありましても、八条、九条と同じような形で実際は運用されて、非常にうまくまいるのではなかろうかと私は考えております。
  108. 吉田之久

    吉田(之)委員 いまの局長の御説明で、九条、十条に関する限りは非常に明快によくわかりました。要するに、準司法的機関である収用委員会という立場をそんたくして、一応表現としてはこういう表現に変えてある。しかし、実際おそらく、この公示価格というものは、収用委員会等の結論に従っても、その結果は大幅にくずれることはあり得ないであろうと、こういう強い自信と決意をもってつくられた法律なのだというふうにわれわれは了解いたします。だとするならば、大臣、これは公的機関が土地を取得しようとする場合に関しては、この公示価格というものは、いわば、相当価格の統制をしようという強い態度のものであるというふうに判断していいと思うのです。価格をきめてしまうのです。うんもすうも言わせない。きまった以上は、それ以下にも買いたたかないし、どんな事情があったって、予想される程度の事情のごときはそれを変更する材料にはならないであろうというふうに考えていいのですか。
  109. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 私は、この法的措置を講じましたことは、この法律によって、いま吉田委員が御指摘になったごとく、いわゆる統制をしくというねらいでなくして、やはり一つの基準を示すというところに期待をするものでありまして、これによっていわゆる統制されたものである、法的に限定されたものであるというところまで解釈はいたすべきでないと、私はこう考えております。
  110. 吉田之久

    吉田(之)委員 じゃ、具体的にお聞きします。  大体土地の値段をきめて土地を買おうとする場合には、これは買おうとする側と売ろうとする側とが全く主観的なぶつかり合いをしているわけなんですね。そこで、鑑定士なるものがあって、やや客観的な資料というものを提供しておるというのが今日の実態です。しかし、今度はそれ以上にもっと権威ある公示価格というものが、とりあえず全国千十カ所ほどに設定される。やはりこれはだんだんとさらに数を増していくであろう、こういうことですね。いままでは、土地の売買の場合には、まあ両方から近づいてきて、ある程度距離が近づいたところで微妙なかけ引きや配慮が行なわれて、そして、少しはつらいけれどももう少し奮発しようかとか、うまくいったかなというふうなことで、公的機関といえども土地を取得してこられたというのが、私は常識だろうと思うのです。いまの大臣の御説明でしたら、あくまでもその指標である、ガイドポスト的なものである、これは断じて地価を統制するというほどのものではないんだ、そういうあいまいなことで臨んだ場合には、やはり売る側から見れば、一応マル公はきまったらしいけれども、それは交渉のしかたによって多少は違うんだよというふうに期待いたしますね。するのが当然だと思うのです。どうしますか。
  111. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 御説明申し上げるまでもなく、私の法的の大きなねらいは、投機的な取引といういままでの矛盾といいますか、これを避けるということを本法の大きなねらいにいたしておるということで御承知いただけるのではないかと思います。
  112. 吉田之久

    吉田(之)委員 投機的な取引は現にどんどん行なわれていますし、今後も行なわれるでしょう。ただ、こういう高騰する地価を少しでも抑制していくためには、まず政府みずからが、あるいは公共団体みずからが、みずから取得する土地だけでも公正な値段というものをきめていこう、アンバランスがあってはならない、まず隗より始めなければならないという意気込みでこの法律をつくっておられるのだ。また、精一ぱい好意的に見て、この法案にはそれ以上の価値はありません。しかも政府みずから、あるいは公共団体が、いや、これはやはり指標でございまして、投機的な売買でなければ若干の考慮はいたさないでもございませんというふうなことであれば、これはくずれます。こういうものは、くずれかけたら、もう音を立ててくずれてしまう。昔の終戦直後のやみ時代のマル公と一緒なんです。張ってあるだけなんです。だれもそのとおり売りも買いもしない、そういうものに終わってしまうのではないかと私はおそれるのです。いやしくも国家がつくる法律なんですね。議会が承認する法律なんですね。その辺どうなんですか。
  113. 川島博

    川島(博)政府委員 一般の取引の場合と公共用地の場合、このねらいの違いますところは、第一条の目的にもございますように、一般の土地取引価格に対して指標を与えることを目標としております。また、「公共の利益となる事業の用に供する土地に対する適正な補償金の額の算定等に資し、」ということをねらいとしております。したがいまして、ただいま大臣が御答弁申し上げましたように、そのものずばりの価格統制を公共用地についてしいているものではございません。しかしながら、いやしくも複数の不動産鑑定士を使い、現地調査をした価格に、審査、調整を加えて、七人の土地鑑定委員会が慎重に判定、公示した価格、これを公共用地の買収の場合に事業主体が民間と同じガイドポストとしてしか利用しないということでは、きわめて不十分でございます。したがいまして、ここでは、この公示価格を規準としなければならないということにいたしておるわけでございます。一体この公示された価格を規準とするというのはどういう意味かと申しますと、土地は一物一価、隣の土地はもう公示したものとはすでに違うわけでございます。それから位置、形状、品位等によって違いますし、また、一カ月あとに買うか、半年あとに買うか、八カ月あとに買うか、その時間の経過によっても値段は変わってくる。そういった特殊な商品でございますから、公示価格そのものずばりで、一足す一は二式に収用地の価格が自動的にきまるものじゃございません。したがいまして、当然公示価格を規準といたしまして、これから当該買収地の価格をはじき出す別途の手法が必要になってくるわけでございます。その場合に、その基本となるものは公示価格である。公示価格を基本としてひっぱり出すということは、各事業主体に課せられた義務でございます。そういう意味においてここに規準と書いたわけでございますが、ですから、たとえばある地点公示価格が一万円というふうに公示されるといたしましても、その同じ近傍のある特定のところを公共用地で買う場合に、これは一万円であるはずはないわけです。まず一万一千円であるか、あるいは九千円であるか、いろいろあるわけでございます。そういうふうに、公示価格というものを規準にして価格を導き出さなければいかぬ。その導き出す方式だけを事業主体に縛っておるわけであります。そうやって値段を出しましても、おそらくなかなか収用者の納得を得られない場合もあろうかと思いますが、その場合に、そこで収用者に負けて相手の言い分を払ったのでは、せっかく地価公示制度実施する意味はありませんから、そこで、公示価格を規準としてはじき出した補償額で話が合わない場合には、これは十条によりまして、収用委員会に持ち出して収用委員会で値段をきめていただきなさい、収用委員会が値段をおきめになる場合には「公示価格を規準として算定した当該土地価格を考慮しなければならない。」というところにリンクをいたしまして、全体として地価の安定にこの公共用地がある重要な役割りを果たすことにいたしたいという法律構成にいたしておる次第でございます。
  114. 吉田之久

    吉田(之)委員 御答弁非常に懇切丁寧でけっこうなんですけれども、だいぶ時間がおくれておりますので、わからぬ点はこちらから聞きますから、なるべく簡潔にひとつお願いしたいと思います。  それで、ガイド、結局、案内していくというか、リードしていくというか、何かそんな感じもします。しかし、もう少し権威ある積極的なものでなければならないような気もしますし、先ほど来の御答弁、意図はわかりますけれども、どうも私にはまだ釈然としない点が残ります。この辺はむずかしい問題で、今後の運用を見なければならないと思います。しかし、さらにひとつこの法案審議の中でいろいろ最終的な詰めをさせてもらいたいと思うのです。  そこで私は、せっかくできる法律である以上は、りっぱなものにしておいてもらいたいというふうに感じます。したがって、まず公示価格というものをきめます。それでだんだんふやしていく。しかもそれとそれとを結んで他の売買する場所の値段をきめていくということでございますから、やはり相当強力な組織体制というものを組んでいかなければ、先ほど田村先生や井上さんもお話しになっておりましたように、ただ日本じゅうあっちこっちわずか千点や二千点、せいぜい八千点選んだだけぐらいでは、これは全くの気休めにしかならない。実際いざ具体的に動く土地の値段をきめていこうとする場合には、とほうにくれてしまうのではないかというふうに私は思うのです。だから、やりかけた以上は、たくさんのネットをつくらなければならない。このネットの網の目はもちろんこまかいほうがいいと私は思うのです。そういう意味で、実際いま用意しておられる予算、それから委員会の人員は、問題の大きさと比較して月とスッポン——と言ったら失礼かもしれませんけれども、あまりにも乏しい予算、少ない人員、はたしてこれで日本のこれからの土地のガイドポスト的な役割りを果たしていくことができるのだろうかというふうな気がいたします。大臣、どうお考えになっておりますか。
  115. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 御指摘になりました点、私も考えないわけではございませんが、この問題だけによっての大機構あるいは一つの網といいますか、これらの行政措置を講ずるということに至りますと、いろいろと問題点も出てくるのじゃないか、こういうような気持ちを持つわけでございます。したがって、テストケースというような安易な気持ちで申し上げるのではございませんけれども、さっき前段で申し上げました一つの大きな指標となるべき問題を取り扱う意味においては、いまの事業量あるいは事業対象からいいましたならば、これでけっこうではなかろうか、こう私は思うわけでございますが、吉田委員が御指摘になりました目標とされるお気持ちの上においては、われわれとしても決して考えないわけではございません。ほかの国などの例を申し上げますならば、御承知のとおりに、フランスやあるいはイギリスにおけるところの大蔵省あるいはその他の土地局、あるいは地方公共自治体が土地問題だけの一つの大きなシステムを持っている行政機構などの国のあることも私は見ておりますが、日本にほんとうに地価問題を真剣に取り上げる問題としては、あらゆる角度から私は前進的に推し進めてまいりたい、こういうような意欲は持っておりますが、いま直ちに御指摘になりましたようなことは考えてはいませんけれども、これからの事業の進め方に並行しながらこれらの問題もやはり十分考えてまいる必要は当然出てき、また、それにかかわる検討を加える段階はぜひ必要だと、こう考えております。
  116. 吉田之久

    吉田(之)委員 気持ちとか祈りというようなものでは問題は解決しないと思う。それが解決するくらいなら、学生騒動はとっくに解決しているはずなんです。非常にすさまじい時代ですから。しかもこういう罰則規定のない法律で、土地鑑定委員会の人数は、限られたわずか十八名でしょう。日本じゅうの土地最初の柱を立てていこうというくらいの意欲ある法案であるとするならば——そのいわゆる指導的な最終的なオーソライズする機関である土地鑑定委員会というのがわずかに十八名ですよ。その一年間、昭和四十四年にもくろんでおられる予算というのは二千四百八十九万円でしょう。このごろ、一坪百万円も、最高のところは二百万円近くもする土地があるそうですが、わずか十坪ほどの額です。それで日本じゅうの指標を立てる最初の作業ができると局長お考えになるのですか。
  117. 川島博

    川島(博)政府委員 この法案の成立後発足する土地鑑定委員会の機構並びに予算等必ずしも十分なものではないことは、御指摘のとおりでございます。ただ私どもは、午前中に大臣からも御答弁がございましたように、地価高騰の激しい市街化区域、これは新都市計画法では、十万以上の都市について市街化区域を設定する方針でございますが、これがおそらく八千方キロ程度に達するだろう。私どもは、地価公示は、一方キロに一地点程度実施するような姿になることが理想であるというふうに考えておりますので、将来は八千方キロについて一方キロに一地点、すなわち八千地点程度公示地点として標準地として設定する必要があろう、かように考えているわけでございます。その場合に、今度はそうやって選定されました標準地鑑定評価を具体的に行なわなければならないわけでございますが、これはやはり不動産鑑定評価に関する唯一の公認の専門家でございます鑑定士なり鑑定士補鑑定評価さすことが最も適切だろう。この鑑定士鑑定士補以上に鑑定評価権威を持っている人格はないのでございますから、この鑑定士に一切の調査をさせる。しかし、これについては、国家機関としての土地鑑定委員会が最終的には検証調整を加える、こういうことを義務づけておりますけれども、こうやって考えられる最高の信頼性を持った価格公示する必要があろうということで、こういう制度にしてあるわけでございます。したがいまして、私どもは、土地鑑定委員会の機構をむやみにふくらませましても、そういった不動産鑑定評価に関する専門家を集めることはとてもできる問題ではございません。要するに、この標準地をふやし、標準地評価権威を高めるためには、やはり鑑定士制度というものの育成強化にまたなければならない、そういう意味におきましては、標準地地点数をふやすことは望ましいことではございますが、それが同時に実際の鑑定評価に当たる鑑定士制度が育つ度合いと平仄を合わせなければ、せっかく鑑定標準地をふやしましても、その評価が非常に信頼性の薄いものになってしまっては何にもならない。したがいまして、この標準地の数の選定の密度は、かかってこの鑑定士制度の拡大と申しますか、強化、これは量、質ともにこの鑑定士制度というものの強化をはかっていく、それと平仄を合わせていかなければ、この公示制度の拡大ははかれない、かように私は認識をしている次第でございます。
  118. 吉田之久

    吉田(之)委員 ぼくらは非常に建設的な、鞭撻的な、協力的な気持ちで言っているのです。だから、皆さん方、自分の用意した法案やいろいろな計画に固執するあまり、何かと弁明にこれつとめて、これでいいのだ、これでいいのだとおっしゃるが、われわれは非常にいやな感じがするのです。どうして十八名でこんなものがやれるのですか。いま千十カ所だからできるのかもわかりませんよ。将来八千カ所をやるのにこれは何人にするのですか、どの程度の予算にするのですか。その専門家たちがやはり全国から集まってくる資料に目を通さなければいけないでしょう。めくら判を押したのでは意味がないでしょう。土地鑑定士だって国家公務員ではないでしょう。業者とどうして結託するかわからぬでしょう。そういう重要な任務を与えるのに、十八人で、これでやっていけますなんて、私はどうも残念です。皆さん方もっと期待していたでしょう。しかし大蔵省に削られたのでしょう。だから、そういう悩みを建設省としてはわれわれと一緒にぶちまけて、しかし残念だけれどもこれでやらなければならぬのだという姿勢が出なければ、おかしいと思うのです。私は、官僚政治というのはいつまでもそんなものであってはよくないと思うのです。そういう意味で、やはり確かな権威のある公示価格というものをより多くつくっていく、それでなければ、これは気休めです。ままごとです。お遊びです。お遊びなら、たとえ二千万の金でも三千万の金でも、これはもったいないです。しかも何ら守られない昔のやみ時代のマル公とまるで変わらない、鼻で笑われているような公示価格が幾らできたって、全然意味がないのです。  そこで、私は、たとえば初め千なら千の標準地を選んで公示価格を設定する、今度は、たとえばその大臣の場所と私の場所でこれは二つがちゃんときまっておる、この速記者のおられるまん中の場所で公的機関が土地を取得したときの値段は、当然それらの標準地から算定してきまるわけでしょう。このきまった値段というのは、当然最初のスタンダードになった標準地価格と全く同じ権威を持つ価格であると私は思う。そうでなければこれは意味がないです。そういうふうにして公的機関が新しい土地を取得して、そのときにつけた値段、買った値段——新たに鑑定士が何もきめようがきめまいが、調査しようがしまいが、現に公的機関が一応こういう基準に基づいて新しく値段をつけたその価格というものは、私はいわゆる公示価格に準ずる価格として尊重されていいと思うのです。そういう方法によってたくさん点を打っていくことができるのではないか。しかし私は、それでも建設省が中央において一カ所で日本じゅうの点と値段を打つというようなことは不可能に近いと思うのです。いかに大都市だけを選んでも、大体だんだん広げていっても、それは何十万以上の大都市には値段がきまっているそうなということだけであって、それは何ら日本じゅうの問題を解決することにはなりません。そこでわれわれのほうでは、いわゆるこういう仕事こそ都道府県に協力を求めるべきではないか、国のほうとしては土地評価基準審議会というふうなものをつくろう、これは民社党の考え方ですけれども、そうして都道府県知事らがそれを受けた土地評価会というものを設定する、彼らに協力を求めてどんどんと基準となるべき土地をこまやかに選んで、そうして的確な数字をきめていく、こういうことをしない限り、これは全くの一つの思いつきに終わってしまうのではないかというふうに思うのです。非常にその点は政府の提案されている法案の内容は残念なんですけれども、大臣は、われわれの考え方のどこに矛盾があるとお考えになるか、どこに欠陥があるとお考えになるか、御説明をいただきたい。   〔委員長退席、金丸(信)委員長代理着席〕
  119. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 民社党の御提案になっておる法律案の内容につきましても、私も私なりに勉強を幾らかさせていただいたのでございますが、これを検討させていただいておりますと、大体その目的あるいは目標等についてはおおむね私は一致するものが数多くあることを見出しているような次第でありますが、御承知の都道府県知事がいわゆる企画した地について行なう問題、これなどについて、いわゆる中央におけるところの土地鑑定委員会市街化区域内の標準地についてその価格公示することとしておられる、こうした点について、もう少し、私たちにおいては解明といいますか、もう少し検討する必要があるのではないか、こういうような気持ちを持っておるようなわけでございます。
  120. 吉田之久

    吉田(之)委員 だいぶもう早くやめろよという声がありますので、遠慮しておるのですが、能率的に答弁も、簡潔でけっこうですから、要点だけお願いいたしたいと思います。  大臣、私は、こういう土地価格をどこかで落ちつけていこうとする場合には、幾らこういう数字をつくってみたところで、それだけでは何の効果も発揮しない、やはりこの値段で売らなければ、それ以上高く売ったって何にももうけにならないという裏づけを税制の面でがちんとかまさなければ、これは全然効果がないと思うのですね。政府が幾ら値段をきめたって、民間が買う場合には、売るほうだって高いほうがいいのですから、それのほうが確かにもうかるのですから、どんどん買いたい人があればやはり高く売りつけるだろうと思うのです。ある程度いわゆる公示価格以上は、かりに三割増しで売ろうが、倍で売ろうが、高く売りつけた分だけは全部税金で取られてしまって、結局は政府がおっしゃるとおりこの公示価格のままで売って、それでいいんだわということにしなければ、これは守れないと思うのです。われわれは、そういう意味で、そういう土地税制の改革の裏づけなしには土地価格というものは安定しないであろう、この高騰抑制できないであろうというふうに、これは信念としてもそう思っているのですけれども、なぜ最初にこういう効力の乏しいような単なる願望やお祈りにすぎないような法案で出発されるのか、私はどうもその辺がわからないのですけれども、どういう事情なんですか。
  121. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 いま御提示になりましたいわゆる土地関連の税制の問題に取り組むことが優先する問題の第一であるという、民社党さんのこれに対する具体的な案等も、われわれといたしましては検討させていただいて、大きな示唆として私は尊重申し上げたい、こう思うのでございますが、現実の点においてこれらの点にかなりまだ至難な点等もありましたものですから、その点に賛同いたしかねた点も御了承願いたい、こう思っております。
  122. 吉田之久

    吉田(之)委員 その次に、いままでのような多少自在に値段をつけられる時代から、いわゆる地価公示法ができて土地価格がセットされる、裁量でどのようにもできるものではないというふうになってまいりますと、やはり土地の取得の場合に、売るほうは売りしぶるだろうと思うのです。最終的には収用法にかけなければならぬとか、ずいぶんやっかいな問題が出てまいります。こういうことで、これから公共用地の取得に若干暇がかかろうとも、あえて受けて立ちます、日本の土地の値段をどこかで落ちつけるためには建設省としてはそういう方針なんだというくらいのはらをくくっておられるのかどうかということをお聞きいたします。
  123. 川島博

    川島(博)政府委員 公共用地の取得価格が往々にして実勢価格より高い、したがって、政府の公共用地の取得価格地価上昇の牽引的役割りを果たしているというのは、物価安定推進会議におきます都留委員の御報告にも載っておるところでございます。確かにそういう面もあろうと思います。したがって、九条、十条によりまして、公示価格を規準として補償額を決定するというルールを確立することによりまして、先生がただいまお述べになりましたような効果を建設省としては大いに期待している次第でございます。
  124. 吉田之久

    吉田(之)委員 大臣、公共用地の取得の場合に、普通よりは値段は安くとも、そのかわり、その地域全般に対してひとつ開発の面で協力してあげましょう、道路をつけましょう、あるいは集会場をつくってあげましょう、いろいろな別の面でカバーしておった点があると思うのです。今後も、やはり公示価格はきまっても民間価格よりはどうせ低いです。相当不満はあります。したがって、納得させる一つの材料として、いままでどおりとられてきたそういう方法というものはやはりとられざるを得ないだろうと私は思うのです。そうすると、これはちょっと理屈をこねているわけですが、公示価格を守れといったって、民間のほうは、いや、政府のほうはそれは公示価格で買えるよ、別のサイドでいろいろ援助、手当てをしているじゃないか、おいら民間は取引一本なんだ、何ら別の方法はないんだ、だから、おれたちは公示価格より高く買わざるを得ないんだ、だから、おれたちは公示価格は守らなくてもいいんだという考え方がだんだん一般化してこないだろうかという点を心配するのですが、いかがです。
  125. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 いま御指摘になりましたとおり、かかる場合においては当然私はとるべきである、こう思っております。
  126. 吉田之久

    吉田(之)委員 何をとるのですか。
  127. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 冒頭に御指摘になりましたごとく、これらに対するところの周辺のいわゆる公共事業体に政府が公共事業の推進に援助を与えるかどうかという御質問に対して、私は当然とるべきである、こう考えておるのであります。
  128. 吉田之久

    吉田(之)委員 それはそれでいいのですよ。それがいわゆる公共用地を取得する場合の公示価格というものと民間とはやはり別の問題なんだというふうな理屈を生ませる材料に私はなると思うのですよ。この辺の説得のしかた、局長、何かお考えがあるのですか。おれたちはこれで買うから、おまえたちもこれで買えといったって、どうせ守らぬだろう、と初めからあきらめておられるのかどうか。
  129. 川島博

    川島(博)政府委員 確かに、公共事業が行なわれます周辺関連事業が行なわれる場合がございます。ただ、それは、当該収用地の価格を他の一般の実勢地価よりも安く買うためにそういう事業が行なわれるわけではございません。価格決定と、関連の公共工事が行なわれるということは、全然別の問題でございます。したがいまして、当該土地をそういう関連工事が行なわれるということが前提になって安く買うということは、実は違法なわけでございまして、公共用地の取得補償基準におきましても、正常な取引価格というもので補償しなければならぬということになっておりますから、前とあととは無関係だと私も考えます。
  130. 吉田之久

    吉田(之)委員 次に、鑑定士土地鑑定の点につきまして、聞いておりますところでは、大体作業期間は公示の前の三カ月ぐらいを適当とするあまり長い間期間がかかって調査してきめたのでは、ほんとうに公示するときには、それはもう色あせたものになるだろう、三カ月ぐらいのスピードでやってもらわなければならぬということのようです。やはりだんだんこれから標準地を選んでいく場合に、たとえば、何も四月一日が公示の日でなければならないというふうに私は考えません。東京は四月一日であっても、名古屋は六月一日でもいいのではないか。その場所場所の日を年に一度はきめておかなければならないけれども、何も日本じゅうが同じ日でなければ取引できないというわけのものではないという、この辺に、鑑定士の使い方の、より効率的な働いてもらい方というものがあるではないかという点が質問の一つ。  いま一つの質問は、聞いておりますところによりますと、大体一件の調査をして値段をつけてもらうまでに、鑑定士一人に対しては一万五千円ぐらい要るらしいんですね。材料も必要でしょうし、日当も計算しなければならないし、いろいろなものを考えると、大体の相場というのは一人一件一万五千円だそうです。ところが、今度政府が予算の中で見ておられるのは、わずかに一人六千円のようですね。ずいぶん渋ったと思うんです。それほど渋っても鑑定士というのは喜んでお仕事をしてくださるという自信があるのかどうか。  それからいま一つは、あまりこういう点で渋るということは、やはり鑑定士も生活しなければならないのですから、そうすると、ともすれば、旧来、土地鑑定をする人たちは、一般のうわさでは、顧客の側より土地の所有者の側につい親切になりやすい。それは片方は不特定の人ですからね。片方は土地を持っているのですから。これは人情として、全くフィフティー・フィフティーのまん中におられるかといったら、普通ならば、そう完全には中立性は守れない。いままでは何も完全中立でなくったって、別にそれが特別に権威を持っておったわけでもないし、それが重要な基準になったわけでもない。ところが、これからは、それが非常に重要な、公的な数字をはじき出す人たちとなってくるわけなんですね。だから、こういう人たちの費用弁償というものは、私は、常識的に考えて、値切るべきものではないというふうに思うのですが、どうですか。
  131. 川島博

    川島(博)政府委員 第一点の、地価公示の日でございますけれども、これは来年はさしあたり三大都市地域並びにその周辺だけを考えておりますので、一応、一月一日調査の、四月一日公示ということを考えておりますが、将来これが市街化区域全域にだんだん拡大されてまいりました場合に、必ずしも同じ日に一斉に公示する必要はもちろんないと思います。むしろ、ある程度地域によって日を変えたほうが、鑑定士を有効に活用できるので、かえって信頼性の高い公示価格が得られたのではないか。先生の御意見には全く賛成でございます。  それから次に、報酬の問題でございますが、これも実際私どもは予算の要求段階ではある程度のものを出したのでございますが、残念ながら、大蔵省の査定で一人一件当たり六千円に値切られたのが実情でございます。これは従来の予備調査を五年ばかり続けておりますが、鑑定士協会には非常なサービスを願っておりまして、今回の予算決定にあたりましても、今後地価公示制度がいよいよ発足した場合に引き続いて御協力が得られるかどうかという点の確認を求めたわけでございます。せっかくの国家的な事業でもあるので、この際、非常に安いけれども協力してやろう、こういう協会のほうの御意向でございますので、私どもそれに乗っかる——と言っては語弊がございますが、お願いをしようということにいたしております。
  132. 吉田之久

    吉田(之)委員 最後に二点だけ。  一つは、毎年公示価格というものは改定する、こういう方針ですね。わかるのですけれども、われわれは、やはり価格抑制していく、物価を押えるというためには、何としてもその価格を一時凍結するという方法しか答えないと思うのです。これは言うべくしてなかなかむずかしゅうございます。しかし、年々必ず改定するんだ、それは単なる物価上昇だけではない、その辺の社会的な諸条件の変化というものがそのまま加味されるんだということになりますと、これは売り惜しみの理由を与えることになりますね。いま売らなくなったって、来年になったって損はしない、必ず上がるんだ、今度は政府が必ず責任をもって値段をきめてくださるのだから、押えておくということはめったにないだろうということになると思います。この辺のところ、いつまでも年々諸情勢に応じてどんどん土地価格が改定されていくということは、大臣、それでいいんだというふうにお考えになっているのかどうか、それが一つ。  それからもう一つは、いわゆる公共用地の取得の場合に、公示価格はすべての取得の場合に適用できるのかどうかという点で私どもは少し疑問を感ずるのです。たとえば、道路とか河川とか、そういう用地を取得する場合に、同じ値段で買えるかどうか、いろいろ問題がございます。そういう場合の適用除外という点についてこの法案ではどこにも触れておられないようでございますが、どういうことなんでございますか。  以上二点をお聞きいたして、一応きょうの質問を終わらしていただきたいと思います。
  133. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 民社党さんのお考えの内容、いわゆる凍結の問題については、私どもの政府案といたしましては考えていないわけでございます。御承知のとおりに、われわれといたしましては、当面この方針をとりながら、事態の推移をながめてまいりたいと考えておるわけでございます。  それから、いまの第二点につきましては、政府委員をして答弁させます。
  134. 川島博

    川島(博)政府委員 現実に河川敷用地を買います場合、あるいは市町村道の用地を買います場合、高速道路の用地を買います場合、ある程度格差があることは事実のようでございますが、しかしながら、今回の公示法案による公示価格は、そういった同じ地点評価が、適用する事業によって違うというような不合理なことは、当然認めるわけにはまいりません。もっと客観的に価格をきめるわけでございますから、今度公示価格がきまりましたら、河川事業であれ、高速道路であれ、鉄道であれ、みなその価格を規準にしなければならぬことになるのであります。
  135. 吉田之久

    吉田(之)委員 特に最後の問題で、そういう考え方はわかります。だとすれば、それはいわゆる市街化地域にだけ適用される発想では、国民の側から見れば、おかしいと思うのですね。たとえば農村地帯であろうと、あるいは僻地地帯であろうと、新しく川をつくったり道路をつくったりする場合に、いままでは、とかく、それは公共のためのものなんだから、そしてみんなが大いにそれを利用するものなんだから、特に格別安く提供してもらいたいというのが、一般の常識になっておりますが、そういうものは、これを契機にすっかり変わって、あらゆる土地の値段というものは、政府がみずから指導してセットされた以上は、それは用途のいかんを問わず、都市、農村、山村を問わず、同じように買われるべきものである、そういう考え方に従っていいわけですね。大臣、いかがですか。
  136. 川島博

    川島(博)政府委員 確かに、公共用地の取得価格を全国的に統一をはかることは望ましいことでございます。そういう観点からいたしますれば、確かに御指摘のように、地価公示制度は、単なる大都市地域だけではなく、全国的に適用することが望ましいと思います。しかしながら、当面、私どもは、やはり地価高騰に悩んでおる大都市及びその近郊における地価の安定をいかにしてはかるかというところから問題点の解決が急がるべきである。全国的にこの地価公示制度実施するということになりますと、それはたいへんな不動産鑑定士の数と予算を必要といたします。そういうことは当面早急な実現はとても困難でございますし、何はともあれ、当面まっ先に手を打つべきは、大都市及びその近郊における地価高騰を何とか抑制したいというところに発しておるわけでございますから、当面そういうところに限って本法を適用することにいたしておる次第でございます。
  137. 吉田之久

    吉田(之)委員 質問は一応終わります。
  138. 金丸信

    金丸(信)委員長代理 次回は、来たる十八日委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。午後三時十七分散会