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1969-04-11 第61回国会 衆議院 建設委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年四月十一日(金曜日)     午前十時十三分開議  出席委員    委員長 始関 伊平君    理事 天野 光晴君 理事 大野  明君    理事 金丸  信君 理事 草野一郎平君    理事 田村 良平君 理事 井上 普方君    理事 佐野 憲治君 理事 吉田 之久君       伊藤宗一郎君    池田 清志君      稻村左近四郎君    進藤 一馬君       丹羽喬四郎君    葉梨 信行君       廣瀬 正雄君    古屋  亨君       堀川 恭平君    森下 國雄君       山口 敏夫君    阿部 昭吾君       岡本 隆一君    金丸 徳重君       福岡 義登君    山崎 始男君       内海  清君    小川新一郎君       北側 義一君  出席国務大臣         建 設 大 臣 坪川 信三君  出席政府委員         内閣法制局第二         部長      田中 康民君         法務省民事局長 新谷 正夫君         建設政務次官  渡辺 栄一君         建設大臣官房長 志村 清一君         建設省計画局長 川島  博君         建設省住宅局長 大津留 温君  委員外出席者         大蔵省理財局国         有財産総括課長 斉藤 整督君         専  門  員 曾田  忠君     ――――――――――――― 四月四日  公営住宅法改悪反対に関する請願大出俊君  紹介)(第三〇四七号)  同(佐野進紹介)(第三〇四八号)  同(渡辺惣藏紹介)(第三〇四九号)  同(井岡大治紹介)(第三一七〇号)  同(平等文成紹介)(第三一七一号)  同(広沢賢一紹介)(第三一七二号)  同(谷口善太郎紹介)(第三二六一号) 同月七日  公営住宅法改悪反対に関する請願金丸徳重  君紹介)(第三二三六号)  同(佐野憲治紹介)(第三三三七号)  同(山崎始男紹介)(第三四二四号)  建設業法改正反対に関する請願(林百郎君紹  介)(第三四二二号)  都市再開発法制定反対等に関する請願松本善  明君紹介)(第三四二三号) 同月十日  自転車道整備等に関する法律制定に関する  請願外一件(愛知揆一君紹介)(第三六五〇  号)  同(秋田大助紹介)(第三六五一号)  同(宇野宗佑紹介)(第三六五二号)  同(植木庚子郎君紹介)(第三六五三号)  同(臼井莊一君紹介)(第三六五四号)  同(内海英男紹介)(第三六五五号)  同(江崎真澄紹介)(第三六五六号)  同(遠藤三郎紹介)(第三六五七号)  同(大橋武夫紹介)(第三六五八号)  同(海部俊樹紹介)(第三六五九号)  同(亀山孝一紹介)(第三六六〇号)  同(仮谷忠男紹介)(第三六六一号)  同(木部佳昭紹介)(第三六六二号)  同(久野忠治紹介)(第三六六三号)  同(草野一郎平紹介)(第三六六四号)  同(黒金泰美紹介)(第三六六五号)  同外三件(佐々木秀世紹介)(第三六六六  号)  同(塩谷一夫紹介)(第三六六七号)  同外二件(進藤一馬紹介)(第三六六八号)  同(高見三郎紹介)(第三六六九号)  同外四件(地崎宇三郎紹介)(第三六七〇  号)  同(辻寛一紹介)(第三六七一号)  同(中尾栄一紹介)(第三六七二号)  同外二件(中川一郎紹介)(第三六七三号)  同(中村寅太紹介)(第三六七四号)  同(中村庸一郎紹介)(第三六七五号)  同(橋本龍太郎紹介)(第三六七六号)  同(福井勇紹介)(第三六七七号)  同(古屋亨紹介)(第三六七八号)  同(細田吉藏紹介)(第三六七九号)  同(松野幸泰紹介)(第三六八〇号)  同(三木武夫紹介)(第三六八一号)  同(水野清紹介)(第三六八二号)  同(武藤嘉文紹介)(第三六八三号)  同(粟山ひで紹介)(第三六八四号)  同(山下元利紹介)(第三六八五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月七日  建設業法の一部改正に関する陳情書  (第二五五号)  公営住宅法の一部を改正する法律案反対に関す  る陳情書  (第二五六号)  町村道整備促進等に関する陳情書  (第二六  一号)  県道伊那茅野線改良舗装工事促進に関する陳  情書  (第二七一号)  壱岐島内の道路昇格に関する陳情書  (第三〇六号)  西彼杵半島外海県道の国道昇格に関する陳情書  (第三〇七号)  東九州幹線自動車道建設に関する陳情書  (第三〇八号)  有料道路建設促進に関する陳情書  (第三〇九号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  公営住宅法の一部を改正する法律案内閣提出  第二六号)  公営住宅法等の一部を改正する法律案井上普  方君外七名提出衆法第二一号)      ――――◇―――――
  2. 始関伊平

    始関委員長 これより会議を開きます。  内閣提出公営住宅法の一部を改正する法律案、及び、井上普方君外七名提出公営住宅法等の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。  この際、おはかりいたします。  両案審査のため、本日、日本住宅公団より副総裁吉岡英一君及び理事宮地直邦君を参考人として御出席を願い、意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔異議なしと呼ぶ者あり〕
  3. 始関伊平

    始関委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人からの意見質疑応答の形式でお聞きすることにいたしたいと存じますので、さよう御承知願います。     —————————————
  4. 始関伊平

    始関委員長 質疑の通告がありますので、順次これを許します。岡本隆一君。
  5. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 しばらく病気をいたしておりまして、久しぶりに委員会出席さしていただきましたのですが、その間、皆さん方からいろいろお励ましのことばをちょうだいいたしましたことを、この機会に厚くお礼を申し上げる次第でございます。  きょうは、社会党のほうからも公営住宅法等の一部を改正する法律案を提案いたしており、今月初めの委員会提案理由の説明が井上委員からございましたが、なお私はそれを少しふえんしてその考え方を説明しつつ、政府提案公営住宅法の一部改、正案について質問をいたしてまいりたいと思うのでございます。
  6. 始関伊平

    始関委員長 御静粛に願います。
  7. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 まず最初大臣にお伺いいたしたいのば、戦後すでに二十四年もたっておる、そして、もうもはや戦後でないということばは、他の国民生活の部門ではそのような形になっておりますけれども、しかしながら、いまの住宅問題は戦後そのままであるといっても過言でないのでございますが、これはどういうふうな理由に基づくものか、これをどのように理解をしておられるかということについて、建設大臣のお考え最初に承っておきたいと思います。
  8. 坪川信三

    坪川国務大臣 まずもって、岡本委員お元気で御出席されましたことをお喜び申し五げたいと思います。  御指摘になりました、政府の従来とっておりました住宅政策に対する点でございますが、政府といたしましては、御承知のとおりに、国民の最も重要な問題である住宅環境整備住宅の提供、需要に応ずるところの供給の問題につきましては、終戦以来鋭意——御期待に沿い得ませんでしたけれども、十分なる配慮と、また努力もいたしてまいっておるような次第でございますとともに、いま進めておりますところの五カ年計画に対しましても、皆さまの御協力をいただきましたおかげで、大体目標といたします進捗率を遂げておるような次第でございます。したがいまして、現在の国民のいわゆる住宅に対する要望の非常な熾烈なものを考えますときに、もう来年度をもって五カ年計画を終了いたしますけれども、それに対応いたすところの新たなる第二次住宅五カ年計画を目下住宅宅地審議会に御諮問いたして、その答申をお待ちしておるような状態でありますとともに、私も、過般、新たなる五カ年計画に対する基本的な構想を発表いたしました。そうしてその答申と私が打ち立てましたその構想等を十分織り交えまして、ひとつ来年度の予算編成期から順次第二次五カ年計画の問題に鋭意取り組む覚悟でおります。その目標は、何といいましても量をふやすということに重点を置きながら、しかも質、規模の充実ということも並行いたしながら十分配慮いたしたいということとともに、新たなる住宅対策に対しましては、やはり低所得者に対する勤労者への公営住宅重点を置きまして進めてまいりたいという決意でございます。御承知のとおりに、社会資本の立ちおくれからくるところの、現実住宅不足からくる不幸を考えますときに、私といたしましては、さらにいま申し上げ「ました構想のもとにおいて住宅対策専心決意をいたしながら努力いたす所存でございます。
  9. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 私のお尋ねいたしておりますのは、戦後二十四年、日本経済は完全に復興した、国民総生産は第三位から第二位になって、非常な経済成長をうたわれておる、それにもかかわらず、国民住生活は非常に立ちおくれておる、この原因は何か。やはり住宅対策がこのようにおくれておるということには何らかの原因がなければならないし、また、それについての政府反省がなければならない。きびしい反省の上に立って、なぜこんなに住宅対策だけがおくれているか、国民住生活が取り残されておるのか、高度経済成長の陰にこんなに国民住生活というものがおくれておる、これはどういうところに原因があるかというところの分析の上に立って、その上に立って今後の対策を立てるのでなければだめだと思うのです。だから、それを政府はどのように考えておるか、どのように自己批判しておるかということを私はお尋ねいたしておるのでございます。
  10. 坪川信三

    坪川国務大臣 御指摘のごとく、政府といたしましては、国民要望に沿い得ない住宅の状況の現実を見ますときに、その原因というものを考えますときに、私はいろいろの点がやはりあると思うのでございます。土地の問題、宅地の問題、あるいは税制の問題、あるいはその他行政上の題題もございましょう。したがいまして、それらのことに対しまして、御指摘のとおりにきびしい反省をいたしまして、そして住宅不足住宅環境整備のひずみ等に対する対策を最重点としてひとつ今後打ち立ててまいりたい。その客観的な原因等につきましてはいろいろの点もございます。それは私はあらゆる関連性を持ったことが原因をいたしておるということを考えますときに、そうした問題を並行しながら解明いたしつつ住宅政策を強力に推し進めてまいりたい、こう考えておりますす。
  11. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 どうも私は、大臣自身が従来の政府施策に対する分析に明確な認識を持っていただいておらないように思うのです。今日こんなになお住宅難がきびしい原因というのは、政府の基本的なかまえが、住宅というも、のは国民自分で建てるものだ——住宅は国の責任において国民に保障するのだという、住宅建設というものを社会保障的な見地に立って真剣に取り組まなかったということ、このことに一番大きな原因があるのではないか。戦後すでにドイツイタリアの、日本と同じように戦火にやられて住宅大量喪失をやったところの国々が、大体もう戦後の住宅問題は片づいて——私、イタリアドイツへも住宅事情調査に行ってまいりましたが、それは日本とは違った、やはり勤労者住宅というものが大量に建設されておる。それらの国々は戦後いずれもそういう見地から取り組んできたわけです。日本だけは、いや、住宅というのは、これはもう個人財産だ、これは自分で建てるのだ、こういうふうな考え方で、とにかく、まあ金がなくてどうにもならぬ人にだけは救貧的な考え方公営住宅を建ててやろう、しかし、本来は自分が建てるのがたてまえなんだ、こういう考え方を終始貫いてきたわけです。そういうところに日本の今日の国民住生活の貧困というものがあるのではないか、私はこういうふうに思っておりますが、大臣いかがでございますか。私の考え方が間違っておると思われますか、あるいは、確かにそうだ、だから今後はそういう姿勢でひとつ取り組んでいこう、こういうふうに思っていただけますか、この点をひとつ最初に承っておきたいと思います。
  12. 坪川信三

    坪川国務大臣 岡本委員指摘になりました、今日の不幸な住宅の現況に対するその要因について、いわゆる政府に対する欠けている点というような諸般の問題については、私は決して否定するものではありません。岡本委員指摘のとおりだと、私も深くきびしく自省もいたしております。したがいまして、こうした観点に立って、今後住宅政策考えるときには、政府としたいたしましては、さらに非常な新たなる一つの自省の上に立って積極的な住宅対策を打ち立てるべきである、それに対して私は意欲と決意を新たにして取り組んでまいりたい、こう考えております。
  13. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 そうしますと、先ほども、公営住宅に今後一そう重点を置きたい、こういうふうな大臣のおことばもございましたが、従来の政府住宅対策というものは持ち家主義です。この持ち家主義重点を置いたところの従来の住宅対策を改めて、公営住宅を含むところの公的賃貸し住宅建設重点を置く、こういうふうに変えていかれるおつもりかどうか。たとえて申しますならば、いまの五カ年計画というのは、その六〇%は民間建設に依存して、いわゆる政府施策住宅は四割です。それを逆転して、政府責任あるいは公費手当てをして建設するところの住宅というものに比重をより多く——今後は民間建設よりより多くの比重を公的な資金手当ての上に立ったところの住宅というものに置くようにされるかどうかということがまず第一点。  しかし、公費手当てをしたところの住宅といえども、その中には、たとえば、公庫住宅のように公庫から金を借りる、なるほど、それは長期の、非常な低利ではあります。——非常とは申せませんが、長期低利融資ではあります。しかし、それに対する返済能力というものを厳密に審査した上での貸し付けでありますから、したがって、低所得者には、公庫からの融資を受けての建設というものはとても思いも及ばない。また、公団住宅にいたしましても、なるほど、一部には賃貸し住宅もありますが、しかし、相当数分譲住宅があります。この公団分譲住宅というものも、これは低所得者にはとても高ねの花といった存在であります。のみならず、こうして地価が高くなり、建設費が高くなってまいりますと、公団住宅そのもの入居資格所得最低限度の規定がございますから、したがって、公団住宅といえども低所得者にはなかなか入れない。そういうことになってまいりますと、勢い、公庫住宅公団分譲住宅よりも、公営住宅公団賃貸し住宅、さらにまた、その賃貸し住宅の中でも、かなり公営住宅重点が置かれなければ、いま依然として三百万といわれておるところの低所得者層の間の住宅困窮の問題を解決することはできないと思う。  いま大臣は、昭和四十六年度を初年度として、五十年度までの新五カ年計画を立てたい、こう言われました。私は、この五カ年の間に、いまこれだけ国民の間にかしましくいわれておるところの住宅問題をすきっと解決してしまう、こういう決意を持って取り組んでいただかなければならぬと思うのです。それには、やはりいま申しましたような非常にたくさんの、公団住宅にも入れない、公営住宅のくじを何べん引いても、それは宝くじと同じようなきびしい抽せん率だ、こんなふうなありさまでは、これはもう庶民の住宅問題は解決しない、だから、五カ年計画の策定にあたっては、そういうふうな問題を含めて一挙に五カ年で解決する、それには、比重の置き方というものを、従来の政府が立てておりましたところの住宅対策比重というものはがらりと百八十度転換していくというのでなければならないと思うのでございますが、大臣の御所見、さらに抱負を承りたいと思います。
  14. 坪川信三

    坪川国務大臣 お答えいたします。  岡本委員承知のとおりに、いままでの、来年度をもって終わります第一次公営住宅の立案当時の構想を見ますときに、いわゆる持ち家貸し家に対しますところの進捗目標は、大体五〇%・五〇%というような内容の目標であったことは、御承知のとおりでございます。ところが、現実のいまの時点でその進捗率を究明いたしますときに、いわゆる持ち家に対しましての進捗率というものは、大体御承知のとおりに四七%、ところが、貸し家に対しますところのいわゆる進捗率は五四%近いというようなこの現実考えるときに、やはり現実のその必然性というものがおのずからこの点で表明されておるというきびしいことを考えますときに、私は、あらゆる機会に申し上げておりますごとく、第二次五カ年計画に対するところの、いわゆる持ち家あるいは貸し家、言いかえますならば、公営住宅という問題に対しましては大きなウエートを強く置きまして、そしてこの現実の上に立っての公営住宅に対する積極的な施策現実数字の上に乗せてまいりたい、こういうような気持でおるその一環といたしまして、四十四年度等におきましては、公営住宅の第一種等に対しましては、設計の点も十分考えて、いわゆる規模等の問題も考えたいということから、水道とか、あるいはガスせんとか電気線とかいうようなものが配置されるようにいま設計をいたしておるというようなことにおいて、私は、どうしても第二次五カ年計画に対しましては基本的には当然公営住宅に大きな力を注ぎたい、こういう決意でおりますことを御了承願いたい。
  15. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 そういたしますと、新五カ年計画大臣抱負として持っておられる点は、たとえて申しますならば、いまの五カ年計画では、六百七十万戸のうち、四百万戸は民間自力建設政府手当てするのが二百七十万、その二百七十万のうち、公営住宅は大体五十二万戸ですね。そういたしますと、それは政府施策住宅の二〇%なんです。あと公団給与住宅というようなものが入っております。公営住宅というのは政府施策住宅の二〇%、全体計画の中では八%、こういうようなのが数字の上では公営住宅の実態なんです。それなら、今度計画を立てられる場合には、一体公営住宅政府施策住宅の中でどのくらいの比率を考えられるか。これは給与住宅にしても、公団住宅にしても、同じように金は要るのです。これはだれがどのように負担するかという負担区分、あるいはそれをだれがどのように償却していくかというふうな償却の問題なんかがありますが、家を建てるにさしあたり金が要ることは同じなんです。住宅というのは、世帯分離のときに最初に必要とするところの耐久消費財なんです。だから、親が建ててやることができたら、それは一番好ましいです。若い者が結婚して世帯分離していくときに、第一番に必要なのは住宅なんです。なべかまなくても、外食すればいいのだが、とにかく寝るところがなければ世帯持てませんね。だから、最初に必要な耐久消費財としては住宅なんです。一緒に持つところの消費財の中では一番大きなものです。その耐久消費財としての住宅というものは、親が建ててやることができなければ、これは国なり公共団体なり社会が建ててやる。本人に金を借りる信用がなければ、かわりにその信用を貸してやる、かわりに建ててやる。とにかく家をこさえてやる、気ばって働きなさい。そしてあなたが働いた金の中から居住費として支払うことによって償却してください、公営住宅というものはそういう考え方に立つべきものだと思うのですよ。しかも、それが低所得者である間はある程度の家賃の補助もしましょう、所得がふえてきたら、その自分のかいしょうに応じて払ってくださいよ、どうにもならない間はまあその程度でよろしい、しかし、だんだん能力ができてきたら、能力に応じて償却するに足るだけの家賃を払ってくださいよ、そういう考え方に立って、本人は建てられない、親も今日のきびしい物価高の中でとても子供の家も建ててやれない、だから社会全体が、住宅を必要とする、これから人生に出発しようとする人々に対して、住宅を提供し——住宅を提供するというよりも、その信用を提供して家を建ててやり、あと居住費として長期にだんだん支払ってもらう、償却してもらう、こういうような考え方に立ってその住宅建設というものを進めなければだめだと思う。だから、そういう観点からいきますなれば、公営住宅比重を置き、その上に立って国民住生活を解決していくという姿勢をとってもらわなければならぬとは思うのでありますが、新五カ年計画の中にそういった構想を織り込んで公営住宅に圧倒的な比重を置いていく、こういうふうな考え方を持っていただけるかどうか。そしてまた、いまの大臣としての考え方なり——一体政府施策住宅のわずか二〇%であるというふうな公営住宅比重を、逆に、政府施策住宅の六〇%は公営住宅だ、ここまで——団公庫か金を貸して家を建てさせるよりも、政府がそのまま——それは資金の集め方はいろいろありますよ。しかし、集めようと思えば集まるのです。政府資金を動員して、それでもって政府国民信用を肩がわりして、新たに人生に出発する人たち、あるいはほんとうに住宅に困窮している人たち、そういう人たちのために家を建ててやる。そのかわりあとでぼつぼつあなた方の借金は返してくださいよ。建設費能力に応じた負担をして返してくださいよ——どうにもならない分は、それは政府がしりぬぐいしなければなりませんね。しかし、そういうふうな考え方に立って住宅建設というものは進めていくべきだ、こう思うのでございますが、大臣の御所見なり御抱負なりを承っておきたい。
  16. 坪川信三

    坪川国務大臣 御指摘になりました基本構想につきましては、私は岡本委員と全く同じ考えでおるようなわけでございます。先ほどから私が申し上げました気持ちあるいは決意で御了承いただけるものと期待いたしておるのでございますが、それに対するいわゆる政府資金の導入の具体的な方法、あるいはその戸数パーセンテージ等につきましては、私がいまの段階、いまの時点で申し上げるということは、御承知のとおりに、私はやはり国会の意見を十分尊重することが議会政治のとうとさであり、当然の処置でございます。とともに、いま住宅宅地審議会において、私は三回にわたりまして会合に出ましたときにも、私の方針はかかる方針であるということだけは、委員の各位にも十分申し上げておるというような時点でございまして、その気持ちの上に立って、各委員の方々にも鋭意いま作業を続けていただいておるというさなかでもございますので、私はこれらの結論の答申を大きく期待申し上げております。したがって、私がいま直ちにそうした資金の具体的な投入の問題あるいは戸数等に対する具体的な数字を申し上げるということは、いましばらく私としては遠慮いたしたい、こういうような気持ちでその答申を深く期待しておるということで御賢察いただけるんじゃないか、こう思っております。
  17. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 従来、河野さんなんかは、住宅というのは個人財産なんだから、自分で建ててもらわなければいけないと、はっきり言っておられました。そういう意味では、私らの意見とはっきり対立しておったのですね。しかし、それでは問題が片づかない。先ほど大臣もそういうことについてはもうはっきりそれを認めていただきましたが、持ち家主義を堅持する限り、国民住宅問題は解決しないんだ。しからば、いま私が申しましたような、住宅というものは個人責任において建て得るものでない。すべて——すべてという意味になりますが、すべての国民にそれを求めることは至難だ。しかも、世帯分離と同時に必要とする大きな耐久消費財ですから、社会がその個人かわり信用を提供して住宅を建ててやる、あとでそれの償還を求めるというふうな考え方に立って住宅建設はやらなければならぬ。これは公団なんかもそうですし、公庫だってそうなんですね。公団公庫というものの場合は、非常にきびしいところの償還条件、あるいは入居資格というふうなものにしてあります。だから、それを公営住宅という形で、公営住宅をもっと大量にふやすことによりまして、とにかく、国がその責任において国民住生活を保障して、同時にまた、その費用の償還については国民の協力を求める、こういうふうな姿勢に立つべきものだという基本的なものの考え方、こういうことについては大臣も御同意いただけますか。
  18. 坪川信三

    坪川国務大臣 基本的な問題につきましては、岡本委員指摘になりましたそのお気持ち、私もその気持ちの上においては全く同じくしておるものと私は考えております。
  19. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 いまの考えをもう少しふえんしていきますと、都市というものは、人間が住み、かつ、働くところですな。いまの日本の政策というのは、都市というものについてまず考えるのは、産業です。どんどん産業を都市に集めていく。ところが、それに対する住宅手当てというものは全然ないんですな。産業だけ考えて、住宅はもうあとからどうなとなるだろう、集まってくるものがどうなとしよるだろうというような形で住宅が放置されておる。だから、産業と人口は都会に集中するが、それに伴うところの住宅建設というものは進んでいない。だから、都市計画法の改正のときに、住宅計画というものをその中に織り込まなければだめだということを強く主張して、都市計画事業として特に住宅計画というものを織り込まなくてはいかぬということを強調して、都市計画法を修正したんです。だから、住宅というものは、そういう見地に立てば、これは都市施設である、こう考えなければならぬと思うのでありますが、その都市施設である住宅建設に対して、現在は持ち家主義、それを次第に転換させていきたいというお気持ちもいまほの見えてまいりましたが、ここで私は今度は住宅局長にお尋ねをしたいと思うのです。  私は、局長がお若いころに、ILOの住宅に関する勧告を雑志の「住宅」というのに紹介されまして、それで非常に勉強さしていただきましたが、局長はそういう問題については非常にお詳しいのでございますが、そのILOの勧告で、住宅は公の機関が公共施設として提供すべきものであって、しかもその高い住宅水準を社会保障的に保障しなければならぬ、それで、企業が住宅を提供するのは間違っておる、こういうふうなことをILOは勧告いたしておりますが、しかし、現在相当の給与住宅がある。この給与住宅というものを今後どういうふうに処理していかれますか。いままでのように、産業は都市に集まる、そうして集まってきた人は自分の家を何とかしなさい、何ともならない人は民間の貸し家でも入りなさい、しかし、企業のほうも従業員の住宅くらいは努力して提供せいということで、企業にその住宅の提供をさせるという形におけるところの給与住宅というものをいままで奨励してこられました。ところが、企業のほうではそれには相当の持ち出しが伴います。それがかなわぬから、これは持ち家主義をやる。だからマイホームに転換して、金を貸してやろう、信用を貸してやろう——というこは、企業の信用において金を借りて従業員に貸してやるいうことや、その金を借りられるようにしてやるということなんです。トンネルなんですよ。企業が持っている金を貸しているんじゃないのですよ。企業がトンネルをやっている。それでもって従業員に住宅を持つことを強要する。マイホームというふうな魅力につられて従業員は金を借ります。しかし、そのことは、結局、企業に対して金縛りにあうということなんです。結局、企業に住宅でいままで縛られておったのを、逆に金で縛られておる。しかも、たくさんの持ち出しをいままで企業がしておったのが、それもしなくていい。相当高い利息を払いつつ一生かかってやっと小さな家を持つ、そのために企業に縛りつけられる、こういうふうなことが今日の企業の住宅対策なんです。政府はそれを知らぬ顔して見ているんです。これなら、むしろ給与住宅のほうがまだあっさりしているんです。金が要らないだけ、金縛りにあわないだけまだあっさりしている。だからそういう意味において、低家賃家に住んで金を残して、それでもって自分の家を建てるということが、給与住宅ならできるんです。ところが、逆に今度は、マイホームを建てなさい、金はトンネルで貸してやろう、それで金縛りにしておくということなら、結局このILOの精神をいまの企業の住宅対策というものは全く踏みにじっておる、私はこう思うのでございますが、こういうふうなものをそのままにしておいていいと思われますか。あるいは、企業が従業員に奨励しておるところのマイホーム主義、これはやはりILOの精神からいえばはっきり間違っておる、だからそういうふうなことをもさせない。それよりかむしろ——どっちにしても、だれが建てようと、住宅建設にはそれだけの資金が動員されているのですから、その動員されている資金政府や公的機関が一切ひっかまえて、それでもって各企業に対して、住宅建設しましよう、勤労者に対して住宅を提供しましょう、こういうふうな見地に立ってもらわなければならぬと思う。政府自分のすべきことをしないで企業にさしたり、企業の責任においてやらしたり、個人責任においてやらしたり、その点、政府は全く無責任で、従来の態度は住宅問題に対して無責任であり過ぎると私は思うのでございますが、企業のいまやっておるところの持家主義に対して局長はどのようにお考えになりますか。
  20. 大津留温

    ○大津留政府委員 ILOの労働者住宅に対する勧告の基本的な理念は、やはりいま先生御指摘のように、国なり公共団体勤労者住宅について責任をもって施策を講ずべきであるということをうたっております。その住宅の提供のしかたといたしましては、公的賃貸住宅を第一にする、しかし、それと並びまして、個人持ち家につきましても助成をするということが、いわば二つの柱としてうたってあるように私は理解しております。しかし、御指摘のように、勤労者の中で自分の力で解決できない方々が特に多い日本の現状におきましては、公的賃貸住宅の提供というのが相当なウェートを占めなければならないというふうに思います。その点は先生御指摘のとおりでございます。  それから、企業が労働者の住生活の安定のためにどういう役割りを演ずべきかというのが、この勧告の一つの主要なテーマでございますが、御指摘のとおり、この給与住宅というのは、労働者をその企業に縛りつけるという弊害がございますから、住宅のあり方としては好ましくないということを断定的にうたっております。しかしながら、このILOの総会でもいろいろ議論がございましたが、公的賃貸なりあるいは融資制度が充実しておりまして、労働者がそういう方法によって住生活の安定が得られるという状況下におきましてはまさにそのとおりでございますけれども、たとえば日本の現状のように住宅の不足がなお著しいという時期におきましては、やはり企業も労働者の住生活の安定のためにその一端をになっていただく必要がある。これは総会でもいろいろ議論がありまして、まあ中進国といいますか、後進国といいますか、そういうヨーロッパ諸国でないアジア関係の諸国、インドだとかその他の諸国の代表はそういう趣旨の発言をいたしまして、やはり住生活が安定していない時期におきましては、給与住宅というのも過渡的な施策として必要だということがいわれたわけでございます。そういうことで、現在の日本におきましては、政府の努力もなお足りません点は御指摘のとおりですけれども、しかし、企業としましては、公的賃貸住宅なりあるいは公的な融資機関の融資にまかせて企業としては何らの手を講じないということは、やはりこれは許されない情勢ではなかろうか。したがいまして、給与住宅をつくるなり、あるいは従業員に住宅資金を貸すという制度を講じていただくことは、今日の状況ではなお必要性が残っておるというふうに私どもとしては考えております。しかし、だんだん公的賃貸住宅あるいは住宅金融公庫のような公的な融資機関を拡充いたしまして、そういう企業のいわばひものついた住宅あるいは融資というものをだんだん減少さしていくということは、これからの方向としてはまさにそうあるべきであるというふうに考えるわけでございます。
  21. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 この給与住宅の弊害、一つは、なるほど、労働者を企業に縛りつけるものだ。もう一つ給与住宅の一番大きな弊害は、職場間のいろいろな関係を居住にまで持って帰るということなんですね。課長のむすこと平社員のむすことがけんかをしたら、母親が課長さんのむすこさんにはなぐられてもだまってしんぼうしなさいということを子供の世界にまで持ち込んで、卑屈な従属関係というものが家庭にまで持ち込まれるというところに大きな弊害があるということです。ところが、いまやっておるところの企業の住宅持ち家制度というものは、企業がある程度の土地を買います、開発します、そしてその土地を分譲してやって、金を貸してやって家を建てさせる。大きい家やら小さい家やらが建つ。いままでなら同じような均等な家が建ち並んでおったのが、大小さまざまな家が建ってくることによって、その中から、もう家の建ち姿からその地位がはっきりしてくる、そしてまた、企業のいろいろな従属関係がそのまま日常の生活に入り、奥さん同士の交際に入り、さらにまた子供の世界までそれが割り込んでくる、こういうことがいかぬ、これがILOの精神です。そうでしょう。そういう見地に立つなら、もう企業のそういう住宅建設というものには、たとえていうならば、公庫融資しない。そういうことは奨励できません。公庫融資しません。そのかわり、企業がもっと労働者の自主的な住宅建設というものに協力すればいい。たとえていうならば、勤労者住宅協会法というのが成立いたしまして、勤労者住宅協会というのができました。だから、労働者は自分の企業と離れて自主的に勤住協に集まって自分らで家を建てていきたい。あるいは、あのときにわれわれは住宅協同組合を提案したのですよ。労働者住宅協同組合法として成立させてもらいたいということで提案したのですが、猛烈な政府の抵抗がありました。さらにまた自民党からの猛烈な抵抗がありました。余儀なくあそこまで後退して、これでもいい、とにかくこれは苗を植えるのだ、これはこれから育てていって、そして労働者が自主的に住宅建設していく、その住宅協同組合へのこれは苗木なんだという気持ちで、何でもいい、とにかくどこまでも——とこまでもというのではありませんが、とにかくある程度の譲歩はやむを得ない、涙をのんであれはあんな形で成立させた、こういうことです。だから、今後、こんな企業の労働者への住宅あっせんというようなことよりも、むしろ——労働者は団結して労働組合をつくっているのです。また、その資金をみな労働組合に集めております。また、企業も、労働組合がそれだけ住宅資金というものを集めるなら、企業のほうもひとつ協力しましょう、労働者諸君が自主的に住宅建設をやるなら、その個人個人に対してでなしに、組合というところの労働者の団結に対して、そしてその組合の労働者が寄って自主的に住宅建設していきたいという意欲に対して、特定の個人でなしに、その企業に働く労働者全体の住宅建設への協力というような形で、ある程度の資金手当ての協力をしてもいいじゃないですか。だから、企業の住宅のあっせん、労働者への住宅のあっせんのかわりに、今後そういった形の労働者の自主的な住宅建設に対するところの政府並びに企業の協力、こういう方向で、今後の労働者の住宅建設というものに進んでいただけるかどうか。これは大臣、いまの話を聞いていただけましたね。これは大きな政策的な問題が入っておるので、局長としては、そういうふうな労使問題にまで入ってくるようなものについてはちょっとうかつに答弁しにくいところもあるかもわからぬと思うのでありますが、大臣として、今後労働者の住宅の自主的な建設、それに対して政府も協力する、また企業も協力させる。同時に、いま勤労者住宅協会法というものによってそれの運営が行なわれておりますが、これをそんなことでなしに、労働組合に集まっている労働者だけでなしに、自由に自分で独立して職場を経営している小さな中小企業の持ち主も、あるいは組合もないような小さな企業で働いておられる人たちも、勤労者みんなが集まって、共同の責任において信用を分担して、お互いに力を持ち合わせて住宅建設をやっていこうという住宅協同組合、これはスウェーデンで非常に発達しているのですね。ヨーロッパ諸国では、こういうふうな住宅建設が非常に促進されておるところに、勤労者自分で好みに合った住宅をお互いに話し合って建てていく、こういうふうなことがあり、それに対するところの政府資金手当てというものがまたあって住宅建設が非常に進んでいっておるのでありますが、こういうような住宅協同組合への今後の政府考え方、これをどう育成していくかということについて大臣から御所見を承りたいと思います。
  22. 坪川信三

    坪川国務大臣 いま御指摘になりました諸般の問題、建設省の住宅政策の基本といたしましては、やはり国の力によるところの思恵によって国民がひとしく住宅環境に恵まれた姿をとりもつということは、政府といたしましては、いま岡本委員指摘になりましたとおりで、何らそうした別な考えは持っておりません。したがいまして、勤労協の御協力、あるいは勤労協自体が住宅建設の達成にいろいろと努力いたしておられますこの実績というものは私は評価いたしたい、こう思いますとともに、今後もこれらに対する育成ということについては政府も十分配慮してまいりたい、こう考えております。  また、協同組合の問題点等につきましても、いわゆる北欧三国等のあの協同組合による住宅政策の実績、また好ましい姿、ああいうことを考えますときに、われわれといたしましても、いま御指摘になりました趣旨を十分そんたくいたしながら、ひとつ十分検討、指導もいたしてまいりたい、こう考えております。
  23. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 関連。ただいま岡本委員の発言の中で、特にILOにおける労働者住宅の勧告、これに対する局長の答弁その他を承ったのですが、局長の言われるとおり、あるいは岡本委員指摘するとおり、一般原則の中に、使用者が提供する住宅に対する原則がうたわれていると思います。これにつきまして、大臣、現行の住宅五カ年計画の中で、特に公務員に対する ——同じ立場だと思いますが、公務員等に対するところの住宅計画がありますね。この場合におきましても、やはりその原則が適用さるべきではないかと考えるのです。民間の使用者の関係だけではなく、公務員の場合におきましてもこういう原則が尊重されねばならない。しかも五カ年計画進捗を見てまいりますと、公的資金による住宅建設が七一・八%だ。公務員住宅に対する進捗率が九九・二%だ。四十四年度で計画されたものにもほとんど達してしまっておる。しかも家賃体系におきましても、ILOにおきましてはいろいろな勧告をなしております。そういうことと、現在の公営住宅なりあるいは公団住宅に対する家賃の決定、これらを考えてまいりますと、政府の公務員住宅に対する考え方は一体どうなのか。ILOの勧告の精神から見て、一体どう考えておられるか、家賃の基準をどこに置いておられるか、この二つの点をひとつ大臣としてお答え願いたいと思います。
  24. 坪川信三

    坪川国務大臣 公務員の住宅建設に関する基本的な態度については、いま岡本委員あるいは佐野委員指摘になったとおりでございます。しかし、御承知のとおりに、公務員住宅に対する管理あるいは計画その他は大蔵省が持っておるような事態からくるこれらの意見調整あるいは思想統一等においる欠けている点もあることを私は認めておるような次第であります。したがいまして、大蔵省との意見の調整あるいは思想の調整等については建設省も十分努力をいたしてまいりたい考えでおるのでございます。  また、第二の点につきましては、数字にわたる問題もございますので、局長から答弁させます。
  25. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 数字はいいです。ILOの精神から見て、公務員住宅という問題よりも、やはり政府資金による公営住宅の拡充、このことにおいて矛盾しているいろいろな問題を解決していくべきではないか。公務員のほうだけは九九%も計画を達成する。しかも、ILOの精神からいえば非常に問題点を含んでおる。民間に対して指導していかなければならない住宅政策の基本的な問題を政府みずからが破ってしまっておる。おれたちの場合は別なんだ、これではILOの勧告の精神を政府みずから踏みにじっておることになるのじゃないか。こういう点において、大臣として、単なる対大蔵省の問題ではなくて、日本における住宅政策の根幹に関する問題として今後努力していっていただきたい。それ以上は、時間の関係がありますから、いいです。
  26. 坪川信三

    坪川国務大臣 ILO勧告に伴うところの住宅政策の基本線については、さっきも申し上げましたとおり、建設省といたしましても、また私といたしましても、その実態は全く認めてもおり、当然これらに対するそんたくをいたさなければならぬ、こう考えておりますので、今後も、これらの意見調整その他については、建設省は十分御期待の線に沿うよう配慮、指導もいたしてまいりたい、こう考えております。
  27. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 一応、今後、給与住宅、あるいはまた、ILOの精神を尊重していただく中で公的賃貸住宅比重を高めるという方向で努力していただけるというふうなことでございます。  しからば、そういうふうな方向に進むために資金の問題があると思うのでございます。最近政府のほうでは賞金つきの住宅債券というふうな構想を新聞で発表されておるのを見ます。民間資金の導入もできるだけするということについては私も賛成でございます。これも一つの思いつきではございますしかしながら、一千万円の賞金をつけるのだ、そしたらこれがうんと売れるのじゃないか、そのかわり、年四厘ですか——というふうな低利でございますよ、ということでございますが、この賞金つきの住宅債券というものをこれから大蔵省との話し合いをしていかれるのでございますが、建設省の構想としては、こういうふうな資金がどれくらい集めることができて、一体それは何戸分の住宅に相当するのか。この資金は一体公営住宅のためのものなのか、あるいは公団住宅のためのものなのか、あるいは公庫で集めるのか、この資金の使い道、それと、この債券についての計画規模、そういうふうなものを御説明願いたいと思います。
  28. 大津留温

    ○大津留政府委員 ただいま御指摘の割り増し金つき住宅債券の問題でございますが、これはただいま住宅宅地審議会で、民間資金をいかにして住宅建設に導入するかというテーマで御研究いただいておる中の一つの問題点でございます。戦前こういった性格の債券を発行いたしまして、いろいろ政策的な目的に資金を導入したという実績もございますので、それを今日の住宅建設に応用したらどうかということでいろいろ研究していただいているわけですが、しかし、戦前と戦後のいろいろな金融情勢その他の経済情勢も必ずしも同一でございませんので、これがどの程度効果を持つものかどうか、まだそこまでは見きわめがついておりません。  また、これを発行いたしまして集めた金をどういうふうに使うかというお話でございますが、相当な金利になりますから、ちょっとこれは公営住宅には使いがたい資金じゃなかろうか、主として民間の住宅金融の資金に充てられるというふうに私ども考えております。
  29. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 ちょっと重要な問題に入ろうと思うのですが、大臣が電話をかけておられますから、それに関連した私の思いつきをひとつ提案的に申し上げておきたいと思うのです。  なるほど、これである程度の規模の、ある程度の額のお金を集めて住宅建設をやろうということはけっこうなんですが、それなら私は、一千万円までの賞金をつけなくてもいいんじゃないか、むしろ、住宅困窮者は非常にたくさんおりますから、入居資格つきでいいと思うのですよ。二戸二百万か二百五十万でしょう。かりに二戸土地ともで二百五十万かかるとしますよ。そうすると、一戸二百五十万の家に、とにかく一万円買ってください、二百五十分の一の確率であなたは当たりますよという——頼母子講的ですな。これを五枚、十枚、二十枚買っている間には、ひょっとしたら一万円で入居資格が当たるかもしれない。これも大きな魅力ですよ。それをやってしまって、その分については何にもならぬでしょう。そうすると、このお金は、一万口集めて一本くらいの賞金が当たるのですから、一万分の一くらいの確率の当選率にしかならない。それよりも、二百五十分の一、あるいは二百万円の家でしたら二百分の一ですから、二百分の一の確率において当たるというくじを発行されましたら、もっと手近な夢になりますね。そのほうがまた夢として大きいでしょう。めったに当たらぬというものを本気で一万円買うというよりも、いや、おれのものになるかもしれないのだというふうな入居資格つきの家ですね。だから、これはこれで資金を集めて、その資金でもって家を建てる。公団なら公団に発行さして、公団入居資格つき抽せん債券というふうなことで資金を動員して、それで入居さしていけば、もっと手近な夢になって金が集まるというふうに思うのですが、大臣、いまの構想を聞いていただきましたか。一千万円をやるくらいなら、政府の思いつきのあの新聞記事を見たときに、これよりも入居資格つきのほうがいいのじゃないか、そのほうがずっと大きな魅力です。だから、応募者は幾らでもあると思いますが、そういう方法を御検討願ったらどうかと思います。大臣どうですか。
  30. 坪川信三

    坪川国務大臣 なかなかいいアイデアといいますか、入居者に対する人情の機微に触れられたお気持ち、そうしたアイデアなどによって、国民のいらいらした気持ちあるいは大きな期待ということからくる喜びというようなことについては、私はやはり十分考えてあげなければならぬ、こういうような考えを持っておるような次第でございますが、さて、現実の行政事務の上において、そうしたものをどういうように生かし得るかということについては、また事務当局とも十分打ち合わせをいたしまして、これらの夢と、また入居者に対するところの愛情を持った配慮をいたしてまいりたい、こういうことで、いまの時点においては直ちにこれを実施するということにおいては、もう少し検討いたさなければならぬ点がもるのじゃないか、こういう考えでおります。私は、非常にいいアイデアとして、御意見を十分資料にしてひとつ考えていきたい、こう考えております。
  31. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 いまの債券といまひとつ同じようなことで、私はこれは前から提唱しておるのですが、建設省ではまだ御採用になっておりませんが、これは、住宅公団に以前に入居した人、たとえていえば、最初、結婚して赤ちゃん一人というふうなときに2DKに入りました、しかし、子供が二人、三人になりました、家族構成が非常にふえてもう手狭で困る、子供が学校に行くようになったら困る、しかし、自分で家を建てるにはまだ金がない、こういうような人はいま相当多いのです、そういう人たちに協力を求めたらどうかということを私は前にも委員会で申したことがあるのです。それには、住宅公団が債券を発行しなさい、その名前を、わかりやすくいえば、エンラージ債券というようなものとして発行しなさい、そうして一室分三十万なら三十万、これは一坪かりに十万としまして、三坪あれば六畳でしょう、だから三坪三十万持ちなさい、そうしたら、いま2DKに入っている人は、新たにその資金を上積みして建てた3DK——公団の持ち出しは2DKです。3DKの一室分は、それはエンラージ債券でまかないますよ、そういうふうな形で資金の協力を居住者に求めて、それでもって自分らの住水準を高める、そのための資金は入居者が出す。このくらいの金ならあるんですよ。できるんですよ。二戸建てるために三百万、四百万というふうなことは、これはとても思いもつかぬが、しかし、一室ふやすために三十万、四十万ということなら、これは不可能ではないというふうな人が幾らもいるのです。そういう人たちに協力を求める。一たん公団住宅に入ったらそのまま、2DKに入った人は終身2DKだ、もう動けないんだ、よほどの理由がなければ、職場が遠くなってもなかなか交換もできない、こういうふうな窮屈なことでなくて、せめてもう少し大きいところへ入りたい、それなら、ある程度自分で可能な協力を公団にすれば入れるんだ、そういう道を開いたらどうですかということを、数年前の委員会でも私申し上げたことがあるのです。これはわれわれの基本的な考え方、公的な賃貸し住宅の大量建設というものからはちょっとずれております。しかしながら、いまの政府がやっておる施策の中で、せめてこんなことでもしたら、もうちょっとましになりはしないかというふうな意味でのアイデアとして申し上げるのでありますが、ひとつこういう問題もやはり考えていただく必要があるのではないか。これは、公団居住者からいろいろな話を聞いている中で私が思いついて申し上げた発想でございますが、こういうことも含めて、大臣政府政府なりのペースで今後の住宅政策を進めていかれるでありましょうが、その中にひとつ織り込んでいただきたい、こう思うのです。これは希望でございます。  そこで、先ほどからの資金の問題で、政府は、住宅債券というものを、一千万円の賞金つきで、うんと金を集めたいというふうに考えておられますが、これは筋からいけば、もっと公共投資的考え方に立って政府資金をつぎ込むべきではないか。言うなれば、いまの日本の政治というものを見ていきますときに、公共事業の中では道路投資が一番大きいです。ことしだって、六兆何千億のうち約七%は道路投資です。住宅投資は何%でしたかな。それに比べると問題にならぬです。七百億余りでしょう。だから一%余りです。一・二%くらいですか。だから、住宅投資と道路投資というものはこんなに開きがあるのですね。それでは、それだけの道路投資をやって道路事情はよくなっているか。ちっともよくなっていないです。これは自動車の生産を野放しにしているからですよ。この問題は直接いまの問題と離れますから、あまりこの問題については触れませんが、とにかく自動車の生産を野放しにしておいて、マイカーをうんとはんらんさせて、それでもってあとを道路投資が追っかけ回っている。全くこれは、何と申しますか、シジミ貝で井戸がえと申しますか、何ぼ追っかけてもこの自動車のはんらんにはほとんど追っつけないですよ。これは建設省の直接の問題ではありません。しかし、言うなれば、日本経済は、経済の支柱に政府施策として自動車産業に一番重点を置いているのですよ。自動車産業で日本経済は繁栄してきたけれども、しかしながら、もう交通事故はふえるわ、もうスモッグでどうにもならぬようになるわというような、非常な公害が出てきておる。私は、むしろ日本経済の支柱を住宅産業に置きなさいということを、かねがね予算委員会でも言ってきておるのです。住宅産業なら、同じように経済支柱にいたしましても、国民住生活が安定しますし、ちっとも公害は起こらないですよ。いろいろな社会悪をむしろ逆に縮小することができる。だから、そういう観点に立たなければならなかったものを、自動車産業の保護ばかりやってきたから、こういうふうなことになってきたのでありますが、そういう考え方に立てば——道路投資にはそれだけの財源をつくってやっております。住宅だって、いろいろな考え方で財源を求めていけば、財源をつくれないことはないのです。だから、そういう意味で、今後住宅投資を少なくも道路投資と同じ規模あるいはそれ以上の規模に置く、こういうことでなければ、公営住宅の大量建設はできませんよ。そうでしょう。だから、公営住宅の大量建設をやるためには、住宅建設計画を立てるときに——いままでは戸数主義です。何戸建てます。十カ年に一千万戸です、五カ年六百七十万戸です、こういうような戸数だけです。だから、そういうふうな戸数だけでなしに、投資規模をはっきりさせなさい。たとえば治水計画にしても、あるいは道路計画にしても、全部投資規模をはっきり打ち出しているでしょう。住宅計画は投資規模を打ち出さないのですよ。投資規模の打ち出されていないところの住宅計画というものは、これはいわゆる絵にかいたもちです。だから、これからは投資規模をはっきりうたい出しなさい、打ち出しなさい、投資規模を要求しなさい、こう私は申し上げたい。社会党では今度これに対する対案を出しました。住宅建設計画法改正案です。公営住宅法改正とともに住宅建設計画法の改正をしなさい、住宅建設計画法の改正の中には、年間、国の予算の一〇%を下らざるものをもって住宅投資をしなさい。それで、住宅問題の解決するまで永久にという意味ではないですよ。いま一番大きな問題なんだから、道路投資以上に重点を置いて、少なくも一〇%を下らざる住宅投資をやれ、こういうふうな形に住宅建設計画法を改正せよ、こういうことを私どもは言っておるのでありますが、少なくも財政的な裏づけというものをはっきりさせる、それには、住宅建設計画に投資規模をはっきりさせる、こういう方向で進んでいただきたい、こう思うのでございますが、大臣の御所見いかがですか。
  32. 坪川信三

    坪川国務大臣 住宅建設を裏づける資金の確保ということは、非常に重要な大切な問題点であると考えております。したがいまして、いま道路とともに住宅に並行した投資をはかるべきであるという御意見、最も必要な御意見だと私は思います。したがいまして、新たなる五カ年計画に対する財政的裏づけをどうすべきか、どうあるべきかということにつきましては、ただいま私もこの点に対して非常に心配といいますか、当然の措置として考えるべき重要な課題といたしまして、住宅宅地審議会にもいま諮問をかけておるというような状況でもございますので、この諮問の答申をまちまして、資金確保、財政等の投入をどうすべきかということに対して私は決意をいたさなければならぬ当然の措置だ、こういうつもりでおるような状態であります。
  33. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 それでは、今後この次の新五カ年計画を立てられる場合には、単に戸数主義だけでなしに、投資規模、幾らの投資をやるのだということをはっきり打ち出して、それで要求されますか。あるいは、漫然と、あとこれだけ必要ですから、これを年次的にこういうふうに建てますというふうな、従来のような計画でいかれますか。そしてまた、将来の展望ですね、これを建設省は出す必要があると思うのです。いまの日本住宅難を解決するためには一体何ぼの住宅投資が必要なんだ、それを民間で幾ら負担させ、公的な資金手当てとしては幾ら負担する、その資金手当てのうち、財投からは幾ら持ってくれ、そしての政府資金は幾らつぎ込むのだ、こういうふうな財政投資を幾らつぎ込むか、逆に言いますならば、このように財政投資をつぎ込みますという形を今後はっきり打ち出すことの中から、国民に対して、住宅対策に対するところの政府の熱意、情熱というものを今後示される必要があるのではないか、こう私は思うのでございますが、大臣の御所見を承っておきたい。
  34. 坪川信三

    坪川国務大臣 ただいまも申しましたとおりに、いわゆる住宅政策の新たなる五カ年計画に対する政府資金の投入あるいは財投の投入というような問題については、やはりばく然とした、絵にかいたもちというような計画あるいは構想であっては、私は具現性がないと思います。したがいまして、これらの裏づけされました姿で第二次五カ年計画を打ち立てたい。これはいわゆる住宅宅地審議会に対しましても諮問をいたしておりますので、その答申を深く期待し、諮問の答申が出てまいりました上において、いま申し上げました気持ちでひとつ取り組みたい、こう考えております。
  35. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 大臣、審議会審議会とあまり言わないほうがいいと思うのです。あなた自身いかにも他力本願で、審議会にかけたから、あとその答申を待っているなんというようなことでは、政府の基本的な姿勢というものはないですよ。それから、私も審議会のメンバーに入って——住宅の審議会ではございませんが、地方制度調査会に入ってその議論に加わりまして、審議会の議論の進め方というのを知っております。これは、審議会の御用委員さんといいますか、審議会の委員さんは、お役人をやめた人がずいぶんおられるし、財界の人もずいぶんおられます。審議会をぐっと握っているのは各省の次官なんですよ。みんな事務次官の顔色を見てものを言っています。だから、審議会の中でほんとうに自主性を持ってびんびんものを言っているのは、野党の議員だけですよ。そんな審議会でどんな結論を出したって、これは役所がきめたとおりです。賛成の意見を述べさしているにすぎぬのですから。言うなれば、ちゃんと尻にネジが巻いてあって、蓄音機みたいな委員さんです。そんなところできまった審議会の答申を、それを尊重いたしまして——その答申は役所がつくらしているのですよ。いまの制度としてそういうものがあるのだから、それはいいですが、しかし、そういうことなら、やはり各省それぞれそれだけの見識を持って方針を立てなさい、そしてみずからの責任において世に訴えていきなさい、そのほうが私は強いと思うのです。そういう意味においては、投票で、あなたはいま一番何に困っていますかといえば、やはり物価でしょう。その次には住宅だと思うのですよ。それほど国民にとって切実な問題であるこの住宅問題、また、いま自分が困っていなくても——大臣なんかはそんな住宅問題などはおありでないでしょうし、また将来御家族にも、むすこさんやお嬢さんにもそんな心配ないでしょうけれども、ここらにおられる多くの皆さんは、自分はいまどうにか親譲りの家に住んでおりましても、自分のむすこや娘の家をどうしてつくったらいいのか、みんな心配の種ですよ。だから、いまは住宅問題から解放されている人たちも、もうすぐ住宅問題と真剣に取り組まなければならないというのが、今日の日本の実情なんです。そういう意味におきますなれば、国民にとっての大きな課題である住宅をどうするかということについて、建設省はもっとはっきりとした自主性を持って、しかも資金手当てはこうしなければならぬのだという将来の計画——たとえば治水事業なら、ちゃんと日本の治水を完全なものにするためには幾ら要りますというふうな治水水系計画を立てているでしょう。住宅だって、住宅の全体の規模というものを立て、将来像はこういうものでございます、それにはどれだけの資金が必要でごいます、そして民間ではこう、政府ではこう、そうしてまた、その内訳はこのようにすべきだというふうな方針をばちっと打ち出すことの中から、その第一期計画としての新五カ年計画、こういうふうに出していただきたい、このことを私はお願いしておきたいと思うのでございますが、重ねて御所見を承りたい。
  36. 坪川信三

    坪川国務大臣 先ほど申しましたことは、私がすべて審議会オンリー、審議会におんぶしておるというようなことでその答申を待って善処するという、すべてがそうした気持ちであるようなことは絶対ございません。御承知のとおりに、何といいましても、国会でかわされました各党の意見を、また各党でかわされました決議等をやはり第一にそんたくいたしましてその方針を打ち立てるということが、議会主義の本髄であります。したがいまして、議会において審議をいただきました法律によってできました審議会につきましても、私は決して無視するということでないということでございます。御承知のとおりに、住宅宅地審議会に対しましての私の期待というものは、オンリーとか、おんぶしてとかいう気持ちでございませんが、私も過去三、四回この会議に出まして、そうして私の考え方を申し上げ、また各委員のそれぞれの意見を開陳されましたのを聞いておりましたが、非常に適切な御意見等も、各界各層を代表されましての貴重な意見が述べられておるといううようなことを考えますときに大きな資料としてその答申を尊重するということで、あくまでも私は建設大臣という立場から、基本的な第二次五カ年計画の財政的裏づけの問題、数字の問題あるいは規模の問題その他については、私の判断と独自によって、皆さんの御意見をそんたくいたしまして基本計画を打ち立ててまいりたい、こう考えておるので、この点は御了解いただけるのではないか、こう思います。
  37. 始関伊平

    始関委員長 岡本君、もう時間ですから……。
  38. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 もらいいかげんにやめろという委員長からのきびしいなにでございますから、もう一点重要な問題をお尋ねいたしまして、あとはこの採決のときの私の討論の過程の中で意見を述べさせていただこうと思いますが、私は、住宅問題は土地問題だ、こう思っておりますが、これはもうすべての人が認めるところです。ところで、都市計画法が実施されます。都市計画法が実施されると、いままで近郊にスプロールしておりました開発エネルギーがどんと集中してまいりますから、市街化区域はべらぼうに地価が上がります。これに対しまして政府のほうは、いや、ことしは税制も考えました、早く売れば得になるようにしましたし、いろいろな税制上の配慮をある程度いたしましたから、まあまあそう御心配要りません、こういうふうなのんびりムードでありますが、しかし、事態は必ずしもそのようになまやさしいものではない。政府考えております優遇措置にいたしましても一、初めの二年の間に売れば、分離課税一〇%ですよ。四年たつと一五%、六年たてば二〇%になります。しかしながら、市街化区域の地価の値上がりは、そんななまやさしいものではないのです。どんどん上がるのですよ。だから、六年待って三〇%、五〇%上がれば、持っておるほうが得じゃないか。また、みんながそういう考え方に立ってぐっと持っておれは——開発エネルギー、開発業者は、開発をやらなければめしが食えないのですから、とにかく出しますよ。それではそこまで出しましょう。これは幾らでもかぶりますよ。これは逆に、この税制で六年二〇%ということをきめたということは、結局地価値上がりの一つのてこになる、こういうふうにすら思えぬことはないのです。必ずそうなると思うのです。だから、こういうようなことでは地価はとても押えられないと思うが、それはどうされますか。都市計画法の一番大きな目的は、地価の安定だったのです。少なくともこの建設委員会におきまして都市計画法を成立さした。いろいろな意見を私どもも申し述べました。私どもの修正が通らなかったから、言い分が通らなかったから、私たちは反対いたしました。反対ではあるが、しかしながら、成立に協力したということ、これは、地価安定ということが一番大きな目的であり、また、都市計画法を建設省が提案してきた一番のにしきの御旗は、地価の安定だったのです。ところが、その都市計画法の実施に伴うところの適切なる措置が講じられないために、地価は暴騰するのです。来年のいまじぶんになってごらんなさい。いまのまま、だったらたいへんなことになってきますよ。大臣、それをどうしていただけますか。
  39. 坪川信三

    坪川国務大臣 住宅対策に優先する問題は、岡本委員指摘のごとく、地価対策にある、これが重要な、優先すべき、解決すべき課題である、こう考えておることは、同じ考えでございます。したがいまして、政府といたしましては、三十九年に与野党一致されまして地価公示制度の制定という決議をちょうだいいたしましたこの趣旨にのっとりまして、本年の通常国会に審議をいただく予定になっておる地価公示制度をとりましたゆえんもここにあります。しかし、決してこれが地価対策の万能薬あるいは即効薬とすべてを私は依存いたしてはおりません。これが一つの大きな標準価格、あるいは土地抑制というような、また取引等の抑制というような点についてかなりの効果を私は強く期待いたしておるような次第でございます。そういたしますと、私は地価問題に対する総合的な施策をやはり打ち立てなければならぬ。たとえば、去年御審議、議決をいただきました都市計画法の施行が五月から行なわれる。この施行と、また御審議をいま願わなければならぬところの都市再開発法の法的措置、御案内のごとく、都市の中心部の空洞化を見るときに、最近の都心部における住宅土地の取得の非常な困難を考えますときに、私としては職住近接その他を考えましてのいわゆる中高層の都市部における住宅建設というようなことからの法的措置をお願いいたしておる気持ちもここにありますとともに、やはり住宅建築等のいわゆる生産工業化などもいたさなければならぬ、こういうような問題、あるいは、いつも申し上げておりますけれども、国公有地の活用、あるいは全面的な御期待に沿い得ませんでしたが、いわゆる税制の改正を国会においてお願いいたしましてのいわゆる個人所得のあの措置を講じました問題、あらゆる問題を含めまして私は地価対策に対する一つの政府方針の推進をいたしてまいりたい。この間、御承知のとおりに、ロンドン大学の有名な都市問題の研究者であるところのロブソンが参りましたときにも、東京におけるところの土地問題、地価問題に対して強い指示なりあるいは示唆を与えて帰られましたその内容あるいは新聞記事等を読みまして、結局、ほんとうに日本はもっと地価対策、土地対策を、都市計画の大きな一面、また住宅対策の一面から、やはりこれを進めなければならぬ、こういうような決意でおりますので、さらにこれはそういうことを加えながら地価対策に鋭意努力いたしてまいりたい考えでございます。
  40. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 それはまた地価公示法のときに議論をいたしたいと思いますが、地価公示法なんというようなものは、これはあとを追っかけていくものですよ。公正な地価はこうでございます、諸般の経済活動その他から見ていけば、公共施設のあり方、経済活動、使用価値、こういうようなものから見ていけば、地価は、合理的に算定いたしましたらこうでございます、というふうなことをきめるのが地価の公示でありまして、それはもう強権力もなければ、指導的な役割りもあまりないのです。だから、あんなものは私はちっとも当てにしていないのです。大体いま大臣のおっしゃいました衆議院の院議ですね、あれをきめるときに——あれは社会党から提案したのです。この地価安定に関する施策の強化ですね、それを院議できめなければ、土地収用法の採決に応じないといって強硬にがんばったので、それならしようがない、そういうかっこうでもつけたら協力してくれるならそうしょうというふうな形で自民党さんが応じてきたのです。しかし、院議としてそれをきめた限りにおいては、やはりその後の地価問題の解決促進にある程度役には立っていると思うのです。しかしながら、あのときに私どもは、地価公示制というものをここから先に出さなかったのです。あれは自民党のほうから——というよりも、建設省のほうにそんな考え方があったのでしょう。提案したのは正示君です。正示君なんて、大蔵で金の動かし方はきわめてじょうずだから問題になったけれども、別に初めから建設委員会の中では議論としても地価公示制をやるというような議論は出ていなかった。あれは突然に入ってきたのです。こんなものはあってもなくてもいい。いらぬことを言うよりも、早く院議をきめたほうが賢いということで、地価公示制というものが入ってきている。言うならば、あればさしみについているパセリみたいなものです。だから地価公示制というようなものは、私どもは反対——あまり役に立たぬからという意味では反対ということになるかもしれませんが、あっても毒にはならぬパセリみたいなもの、だと思っています。そういう意味においては、地価問題については大きな役割りを期待することはできないのです。だからやはりもっと強力な手を打たなければいかぬ。そのためには私どもは宅地管理法を制定しなさいということで、今度社会党の出しておる公営住宅法等の一部を改正する法律案の中で、住宅建設計画法をこのように変更したい、そしてその中に、宅地の公的管理というので、住宅建設計画法の第十一条に、市街化区域内の土地を公的管理に置くような法律をつくりなさい、こういうことを規定しているわけです。これは私ども大体その要綱をつくっております。しかしながら、その要綱を持って法制局へ行ったところが、法制局では、やあ憲法がどうじゃこうじゃというふうなことで非常に抵抗があって、なかなか法制化ができないものだから、この段階でわれわれは今度対案を出したのでありますが、都市計画法が実施されて市街化区域と調整区域に分かれ、調整区域になりますと、これは工場も住宅も建てられないのですよ。その土地利用にものすごい制限を受けているのです。これは憲法違反じゃないですか。市街化調整区域に農地を持っております。いままではその農地に工場を建てようと住宅を建てようと自由でありました。今後はそれは一切禁じられるのです。都市計画法が実施に移されて調整区域になったら、工場も住宅も建てられない。農業以外はやれないのです。ものすごい所有権の制限です。都市計画法は、持っておるところの権利をものすごく制約し奪っているのです。この都市計画法は憲法違反じゃないですか。
  41. 田中康民

    ○田中(康)政府委員 本来建設省からお答えすべきかもしれませんが、私から申し上げます。  確かに所有権の制限であることは、岡本先生の仰せられるとおりでございますが、所有権の内容につきましては、その所有権が公共の福祉に適合するように法律で定めるというふうになっております。  そこで、しからば、市街化区域等につきましてそういう制限をすることがはたして公共の福祉に適合するかどうかという問題になるかと思うのでございますが、私たちといたしましては、いま申し上げましたような農地にするとか、そういうようなところではもはやないというような土地でありますならば、そういう土地についてそのような制限をいたしましたといたしましても、憲法に違反するような制限ではない、そういうように考えておるわけでございます。
  42. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 いままでスプロールしていって住宅がどんどん建っていっているのです。またそういう可能性がある、そういうところが、もう工場はできませんよ、住宅が建ちませんよということになるのですよ。それはもういままでの憲法解釈からいうなれば、そのような土地の所有権の制約は憲法違反です。だから、都市計画法を成立させたということは、そのように憲法解釈を大きく変えたということなんです。あなたがいま言われる、市街化調整区域における土地使用というものを規制して土地使用の自由を奪っても憲法違反にならない、それなら、市街化区域における土地、いままで農地でありましたそういうところの権利を相当制約しても、これは憲法違反ではありませんね。
  43. 田中康民

    ○田中(康)政府委員 市街化区域にあります土地につきまして所有権を制限することが、先ほど申し上げましたように、公共の福祉に適合した形で制限されるということでありますならば、先生おっしゃるとおりになるかと思います。
  44. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 そうすると、公共の福祉の内容が問題になってくるのです。市街化区域では、そこを市街化することが公共の福祉に沿うゆえんだ。言うなれば、都市は、人間が住み、かつ、働くところなんだから、住宅を建てあるいは工場を建て、生産活動をやり、同時に生活の基盤にする、安息の場にする、こういうことにすることが公共の福祉に沿うことでしょう。しかもそこの土地があまり高くなっては困りますね。これは庶民の手に負えません。そんな高い土地に住めません。坪二十万も三十万もする土地には庶民は住めません。また一方、坪二十万も三十万もする土地を買って生産活動をやろうとしても、コストがついてきませんね。そんなことになれば物価が上がりますね。だから、国民に安いものを提供する、そのためには地価を押えなければならぬ。地価を押えるためにはいろいろな手を打たなければならぬ。たとえて言うならば、土地の価格を凍結するとか、あるいは国民の福祉に沿うような線に土地の価格をぐっと押えていく、これは憲法違反にならぬですな。
  45. 田中康民

    ○田中(康)政府委員 公共の福祉という内容には私はいろいろのものがあると思います。そこで、いろいろな公共の福祉をどういうように評価していくことが一番社会公共の目的に沿うゆえんであるかということを判断して、その上で初めていまおっしゃったような使用方法にすることが公共の福祉に合うかどうかということがきまるのだと思います。そこで、所有権の制限ということはやはり重大な問題でございますので、そういうものと、新しく制限することによって得られる利益と比較考量して、その上で、利益のほうが大きいという場合に初めてそういう措置ができるというふうに考えられるわけでございますから、必ずしもすべての場合に憲法違反になるかならないかというふうには断定できないわけでございます。
  46. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 そうしたら、市街化区域の中に農地があります、今度開発エネルギーが集中してぼかっと上がる、そのことと、それから、それじゃ困るから地価を押えるんだということと、どちらが公共の福祉により沿うことになりますか。
  47. 田中康民

    ○田中(康)政府委員 これは私たちといたしましても慎重に考えなければいけないところでございまして、いま直ちに結論を押し上げることは非常に無理なことかと思います。
  48. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 そういうことをのらりくらりと言っているんじゃこれは議論になりませんよ。そういうことを言われながら、あなた自身あなたの良心がうずいていると思うのです。そういう御答弁を、あなたはしかたなしに、役目として、心にもないことを言っておられるのか、あるいはそうでなければわれわれを愚弄しておられるのですよ。私は、あなたは心ならずもそういうことを言っておられると思っています。しかし、心からそう思っておられるとするなら、私を愚弄するものですよ。大臣いかがですか、いまの応答を聞いていて。そうでしょう。私は法制局に聞いているんじゃないのです。建設大臣に聞いているのを横取りしたんだ。それでああいう、私から言わしむれば、ぼくを愚弄するようなことを言っておられますが、大臣、いかがですか。
  49. 坪川信三

    坪川国務大臣 いまお聞きいたしまして、第二部長が岡本委員を愚弄もほんろうも嘲弄も私はしておらぬと思う。やはり大事な問題点として非常に真摯に取り組みながら回答申し上げている、こう思うのでございます。  私、建設省のほうの考えといたしましては、現行の制度によりまして、一定の要件のもとにおいて、使用権とか先買い権とか、いろいろなことがございますので、これらの適当な活用によりましてそれぞれ土地も確保できるというような法的な運用をひとつ十分いたしてまいりたい、こういうような気持ちでおりますので、この点御了承願いたいと思います。
  50. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 大臣はさすがに議運委員長の御出身でございますから、実に老獪な御答弁をなさいましたが、しかしながら、これは重要な問題なんですよ。もうこれは焦眉の問題、少し下品な表現かもしれませんが、しりに火がついている、そういうふうな問題なんだから、これだけはいいかげんにしておくわけにはいかないので申し上げておく。たとえて申しますならば、いまこの公営住宅法では明け渡し義務を要求しております。建てかえの場合にどいてくれ、こういうふうな内容の条項が出てまいります。しかしながら、もし地価が安定して、地価を引き下げて公営住宅を建てようとするねら、通勤三十分以内のところで幾らでもさら地があるのです。そこでどんどん地価を安定させて公営住宅を建てていけば、立ちのいてもらって、その間には別の家を提供しておいて家を建て直すというようなまどろっこしいことをしなくても、幾らでもあるさら地にどんどん公営住宅を建てられるのです。要は地価問題なんです。地価問題を政府の怠慢で放置しておくから、地価がべらぼうに上がっていくので、かわりの土地を買うんじゃ高くつく、しようがないから立ちのいてもらって建てようか、こういうみみっちいことになるのです。だから、地価問題が解決したら、こんな公営住宅法改正なんか全然要らぬのです。さら地にどんどん建てていけばいいのです。だから地価問題が一番重要な課題だと私は申し上げておる。しかも地価対策は何もないじゃないですか。公的管理人を置いてごらんなさい。地価がなくなるのですよ。社会党が今度出しておる住宅建設計画法の改正の中で、宅地の公的管理をやりなさい、その内容は宅地管理法として私どもは考えておるんです。その宅地管理法は、とにかく市街化区域の土地は民間の売買は禁止しなさい、そうして市町村に宅地管理委員会をつくりなさい、宅地管理委員会で管理しなさい。持っている人はそのままでいいんです。しかし、都市計画法で市街化計画を立てますが、市街化をことしはどこまで、来年はどこまでというその計画に従ってどんどん区画整理をやる。道路や水路等の公共施設をつくって、それでもって都市化を進めていきます。そこのところは持っていてもらえばいいのです。適当な地代を払います、その地代でもってお借りいたします、こういう考え方なんです。つまり、これは土地収用法も改正しなければなりません。買い取るんじゃない。持っていてもらうんです。そのかわりどんどん使わしていただくのです。地代はずっと払う。その地代は幾らか。反一万五千円程度でいいんじゃないか。反一万五千円の地代を農家がもらいましたら、五反で七万五千円、六反で九万円ですね。一応従来の生活は保障できますね。だから、従来の生活を保障するに足るだけの地代は払いましょう。それでもって使わしていただきます。それは月額にいたしまして、反一万五千円だったら、三百坪ですから坪五十円なんですよ。つまり坪五十円で土地を借りて、それでもって公営住宅をどんどん建てていって、かりにその居住者に坪五十円の地代を払ってもらってもいいじゃないですか。そうでしょう。公営住宅は幾らでも建つのですよ。片や、土地の自由なる使用を禁止しておる。市街化調整区域ではそうなんでしょう。だから、今度はそういうふうな私有権の使用を——法律的なことはでは使用というんだそうであります。これはわれわれの使うという使用と、法律的にいう使用と、ややこしいのですが、しかしながら、そういう使用をやるということも、公的に使用するということも土地の使用権の制約ということになければやはり同じことだと思うのですよ。片や、市街化調整区域におけるところの土地の使用権が制約されることが憲法違反でないとするならば、市街化区域におけるところの土地の使用権というものが制約されても、これは適切なる補償が行なわれるならば、しかもそれが公共の福祉に沿うものであるとするならば、それは憲法違反ではない、私どもはこういう考え方に立っております。だから、坪五十円でどんどん借りて、それでもって公営住宅を建てる、公団住宅を建てる、自分で建てたい人には自分の好みに応じた家を建てなさい、五十円プラス整地費、その他のいろいろな事務費が要りますね。それでもって貸しましょう。ただし、物価が安定しておればそれでいいですね。物価が上がっていけば——どんどん物価は上がっていくわ、いつまでもその価格で借りられるのでは、生活権の問題があります。それは公務員給与のベースと一緒で、どんどんベースアップしていきましょう。また、地代を払う人たちも収入アップするんですから、その中で同じパーセンテージにおいて上がっていくのなら——いま地価がものすごく高く、物価とは比べものにならぬほど上がっていくから困るのです。同じパーセンテージで上がっていくのなら、地代の支払いにも耐えられるはずなんです。そのことによってまた土地の所有者の生活も保障されるのです。だから、言うならば離農年金ですね。物価とともにスライドするところの離農年金を支払うことによって土地を提出してもらい、そこに公営住宅をどんどん建てていく、こういう考え方になれば、地価問題は一ぺんに解決するのです。そうしてその地価問題の解決の中から公営住宅の問題も一挙に解決するのです。そうでしょう、大臣。だから、ここまでのことをもうやらなければならぬ時期が来ているんですよ。ただ、国民の中の少数の土地所有者、ことに都市周辺の土地の所有者及び土地ブローカー、こういう人たちだけが不利益をこうむります。いまのままのほうがいいですよ。けれども、そういう少数の人のばく大な不労所得の陰に、狭小過密の住宅の中で、日々人間性を否定されたような暮らしをしなければならない多数の人たちのことを考えたら、私はいまこそこうしたところの土地問題の解決をはからなければいかぬと思うのですよ。かつて農地改革がありました。その農地改革は、土地は耕作農民に持たせる、こういうことだったんですね。いま宅地改革をやるべきときだ。その宅地改革は、土地を都市に住むところの住民のために提供せよという形の宅地改革をいまこそやるべきだ、社会党はこういう考え方に立って、宅地管理法を制定せよ、こういうことを主張し、その第一歩として、住宅建設計画法を改正して、宅地の公的管理というところの第十一条を加えよ、こういうことを主張しているのです。なるほど、これは政府施策としてここまで踏み切ってこられるのにはある程度日にちがかかるかもしれません。しかし、これをやらなければ地価は安定いたしません。また、そういう方向へ進むのだということを政府方針として示されたならば、何ぼ土地を買っておいても、将来は宅地が公的管理法のもとに置かれますよ、市町村管理に置かれますよ、こういうことになれば、将来を目当てにいまから思惑買いをする人もなくなってくる、そういうふうに政府が腹をきめよう、そういう意見政府・与党の中に出始めたということになれば、地価もある程度の押えもきこうと私は思うのです。実際はそこまで政府に踏み切ってもらわなければ日本の土地問題は解決しない、国民住宅問題は解決しない、こう思うのでございますが、大臣、そこまであなたは勇気が出ましょうか。
  51. 坪川信三

    坪川国務大臣 社会党さんから出されました管理法の要綱につきましても、私は十分拝承いたしております。また、いま岡本委員が御指摘になりました数々の諸般の問題点につきましても、十分拝聴いたしております。したがいまして、私は、全面的にいまのそれらの御趣旨あるいは要綱等を否定するものでもございませんけれども、先ほど申し上げましたような、現行制度によって、いわゆる使用権、先買い権その他の適切な運用によって、いま御指摘になった諸般の問題に対する解決あるいは御期待に沿う運営ができ得るもの、私はそう期待もいたし、自信も持っておるようなわけであります。また、御指摘になりました諸般の問題をわれわれといたしまして検討はいたしておりすが、そのいろいろの問題点については直ちに賛成いたしかねる点も多くございますので、これらの点については今後大事な意見、資料として十分検討いたしてまいりたい、こういうような態度で臨みたいと考えております。
  52. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 私のほうの理事から、もうそこらでどうだということでございますので、長いこと病気でかっていたしておりまして、あまり長時間議論いたしますことはまあ少し遠慮しなければならぬと思いますので、この機会公営住宅にかかわるいろいる、な重要な問題をもっと議論を深めたいと思っておりましたのでございますが、きょうはこの程度にさせていただきまして、また次の機会にいろいろ議論させていただこうと思います。私の質問はこの程度で打ち切ります。
  53. 始関伊平

    始関委員長 阿部昭吾君。
  54. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 前回お尋ねをしたのでありますが、その後法制局のほうから、公営住宅の使用関係、この法律的性格はどうかということについてて、文書で法制局の見解が示されているのであります。それによりますと、公営住宅の使用関係、法律関係、契約、これは民法、借家法のいわば私法上の関係である、これが原則だ。しかし、公営住宅法において特定しておる事項、たとえば家賃の決定及び変更、入居者の資格及び選考方法、明け渡し努力義務、割り増し賃料等、これらの特定しておる問題については、公営住宅法が民法、借家法のいわゆる私法上の関係に優先する、こういうふうに法制局はその見解を示しているのであります。これは間違いありませんね。
  55. 田中康民

    ○田中(康)政府委員 ただいま法制局が文書で差し出したと、こうおっしゃいましたけれども、この見解は建設省が書きましたものでございましてて、私どもそれについては異議がないということでお示ししたのでございます。   〔委員長退席、金丸(信)委員長代理着席〕  そこで、ただいま仰せになりましたように、基本的には、公営住宅の関係は、使用関係は民法、借家法の適用がある問題でございますが、公営住宅法の一条の目的を達します範囲内において、公営住宅法がいろいろの規定を設けております。そういう規定が民法、借家法に抵触いたします部分につきましては、公営住宅法が特別法として優先的に適用になる、このように解釈しておるわけでございます。
  56. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 法務省の方来ておりますか。——いまの問題に関する見解をお聞きしておきたい。
  57. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 法制局の第二部長がいま答えられましたと同じような考えを持っております。
  58. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 住宅局長、いまの特定をしておる入居者の資格及び選考。方法、家賃の決定及び変更、明け渡し努力義務、割り増し賃料等云々、この特定をしておる車項というもの、これは法制局が書いた文書だと思っておったら、建設省が書いた文書に、それでよろしい、こういうふうに法制局のほうではいわば裏打ちをしてやった、こういうことなんでありますけれども、いま建設省の住宅局が書いてまいりましたこの特定事項というのは、二十六年の公営住宅法制定当時、ここには四つの特定事項を入れておるのでありますが、全部入っておったのかどうか。
  59. 大津留温

    ○大津留政府委員 そのうち、明け渡しの努力義務というのは、三十四年の改正で加えられましたた。それ以外は当初から——割り増し賃料も三十四年でございます。   〔金丸(信)委員長代理退席、委員長着席〕
  60. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 家賃の決定及び変更は前から入っておりましたね。——そういたしますと、原則は民法及び借家法の関係である、こういっておるのでありますが、そういういわば私法上の契約の場合に、契約した当時の条件というものは相互に守り合っていかなければならないものだと思うのです。そうすると、守り合っていかなければならない約束を、かりに一方が破るということになりますれば、いまの場合は地方自治体対入居者という関係になるのでありますが、そうじゃない、普通の民間の相互関係においての契約であったといたしますれば、一方的にその契約を破ったりいたしますれば、契約不履行とか契約違反とか、こういうことになっていくと思うのであります。国の場合、地方自治体の場合は、そのような場合破っていってよろしいのかどうか、このことは、法務省と法制局から——建設省の援護をしようなんというみみっちい量見でなくて、ひとつ正確に答えてもらいたい。
  61. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 一般の私法上の契約でございますければ、契約に違反する事実があれば、その契約の内容に従った履行の請求をすることもできますし、また、権利者のほうでは、契約の解除、さらに損害の賠償請求、こういうこともできるわけでございます。当事者の一方が国あるいは地方公共団体でございましても、契約が私法上の契約でありますれば、その理屈には全然変わりはございません。したがいまして、履行しなければ、ただいま申し上げたような措置をとり得る、こういうことになると思います。
  62. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 前に住宅局長は、私が特に念を押して、いわば三十四年の法改正以降の入居者の問題はまずさておくとして、その以前の入居者は、ほとんどの場合に、私どもが調査をした限りでは——私の町などでもずいぶんたくさんの皆さんと議論をいたしました。  そういたしますと、選考の結果入居することに当選をした皆さんを地方自法治の関係の係の方々が呼び集めて、皆さん、大ぜいの中でやり合った結果当選しました、おめでとうございます、そこで、五年の期間を経過いたしますれば皆さんのものになるのでありますから、管理、営繕その他には十分の注意をして大切にしてほしい、いろいろ修理をしなければならぬようなことが起こりましても、修繕費は現状の状態で出すわけにはまいりませんというようなことで、入居者の皆さんに対しては、特に木造家屋の場合、二十年間の耐用年数でありますから、四分の一の五年間が経過をすれば、この建物は皆さんに払い下げをするようになる、したがって修繕あるいは管理、こういうものに十分の注意をするようにということを、非常にはっきりした姿で言っておるのであります。私は、いま自民党の幹事長の田中さんの、議員立法としてこの公営住宅法制定当時のいわば提案の説明も引用して前回申し上げたのであります。したがって、入居者は、三十四年の法改正以降のものはまずさておくとして、その以前の皆さんは、ほとんどの場合、いずれ譲渡、払い下げを受ける、こういう前提で入居しておるのであります。こういう事情に対して住宅局長は、通達を二度ほど出しておるのだ、こう言っておるのであります。この通達というのは一体どういうものなんですか。入居者の一人一人に通達は全然届いていない。住宅局長から都道府県知事あてにこの通達は出ておるようですね。その通達が入居者の一人一人を拘束することのなるのかどうか。聞いてみますと、入居者は全然そんなことは知らぬのであります。ただ、三十四年の場合以降、どうも今度は譲渡、払い下げは簡単にいかぬようになるらしいぞということは、この法律改正であり、ますから、国会の論議等々を通じて入居者の皆さんはよう承知をするようになった。なかなか簡単にはいかぬようになるらしい。ところが、二十八年、二十九年の通達なんというものは、都道府県知事も知っておるか知らぬかわかりませんよ。建築課長あたりは知っておるでしょう。しかし、一般の入居者はこれは知らぬのであります。そういう通達を出しましたから、もう三十四年以前といえどもその皆さんは払い下げや譲渡というものは簡単にいかぬようになるということはみんな知っておるはずだ、こういうように局長は言われるのでありますが、これはいささか官僚的なものの見方ということになり過ぎませんでしょうか。大臣、いかがでしょう。
  63. 坪川信三

    坪川国務大臣 公営住宅のいわゆる法制定当時の入居者にその公営住宅の払い下げをするという約束をしたという御主張については、いろいろの事情もございますが、公営住宅の譲渡にあたってはあらかじめ建設大臣の承認を要することは、当時から明文の規定があり、公営住宅の管理者が数年、あるいは十数年先の建設大臣の承認を当然の前提として払い下げを約束したとは考えられないことでございます。とともに、法律の規定を熟知といいますか、よく承服していない管理人等が約束をしたとしましても、正当な権限を有しない者がしたことであり、法律上の事業主体を拘束するものとはいえないというような問題もございますとともに、通常、公営住宅のような不動産の売買にあたっては、目的物はもちろん、代価、履行時期等が明確になっているはずであります。単に将来譲渡するかもしれないという口頭の発言が法律上直ちに契約として拘束力を持つかどうかは、かなり疑問な点があろうと考えておるような次第であります。
  64. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 大臣、それはだれが書いたあれですか。ちょっとそれば少し——私はいまそんなことを聞いておるんじゃない。私の聞いた以外のことを大臣は盛んに答弁しておる。だれかに書いてもらったそういう型どおりの答弁ではちょっと困ると思うのです。私は、やはり大臣の心情の訴えたい、こう思っておる。そこで、局長はどうです。いまのを書いてあげたらしいのですがね。
  65. 大津留温

    ○大津留政府委員 公営住宅は御承知のとおりの目的のもとに建てられたものでございますから、やはりこれを払い下げるということは特別の事情がある場合に限られるという性格のものだと思います。この法制定の当初から、一定の要件に該当する場合には譲渡することができる、その場合には建設大臣の承認を受けなければならないという規定はございました。したがいまして、五年間の、耐用年数の四分の一の年限が経過した後におきましては、要件に合致すれば、建設大臣の承認を得て払い下げられ得るということには相なるわけでございますけれども、大臣の承認がないのに払い下げを約束するということは、これは法律的には有効なことになり得ないじゃないかというふうに思います。したがって、先生御指摘のこの問題は、法律論と、一面、末端の管理人といえども管理主体の一員でありますから、そういう者がそういう趣旨のことを言ったとすれば、かりに法律的な効果はないといたしましても、そういうことを申したという道義的な問題、これは残ると思います。したがいまして、行政上の扱いといたしまして、そういうことを申したことに対する道義的な責任というものはある程度感ぜざるを得ないかと思いますけれども、これを法律上の根拠として御主張なさるということはいかがかというふうに思います。また、公営住宅住宅事情、また御承知のような土地事情でございますから、扱いに対する方針もその後変更されまして、きわめて例外的な場合以外は払い下げが行なわれない、とりわけ都市部におきましてはそういうことが行なわれないという方針に変わったという事情を御理解願いたいと思います。
  66. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 関連して……。ただいまの法律の解釈でうけれども、昭和二十六年に公営住宅法が成立し六。これは議員立法で成立しているわけですね。だから、議員立法の趣旨はどうだったか。それ以前にも公的な住宅があったわけですね。その当時インフレのときだった。地方自治団体は厚生省の立場やいろいろな立場でつくってまいりましたが、やはり払い下げしようとする。当時におきましては非常なインフレの中で、引き揚げ者その他生活の困窮者がいる場合に払い下げするということは、その人たちの生法権の問題に関係してくる、こういうことで、あの立法は、少なくとも、居住者に対して自治団体が財政上の事情から買い取れ、譲渡する、こういうことを強制してまいる場合におきましては、非常に社会問題になるということから、これをとめなくてはならない。特別の事情ある場合というのは、そういう時代的背景のもとに生まれてきた法律用語だと思います。いま局長が言っておられるところだと、当時のその立法趣旨と離れてしまって、もう法律がひとり歩きした形で条文だけの解釈をとってまいりますと——特別の事情がなければ譲渡してはならないというのは、あのときにおけるところのいろいろな制限は、居住者の利益をいかにして守るか、居住者の利益を守ることを前提として、担保として、あの用語は生きてまいったのであります。ですから、そういう意味におきまして、局長さんの話を聞いていると——大臣も当時国会議員であり、市長の経験者として、やはり立法の過程を御存じであると思います。経営の維持に困る、だからこれを買ってもらいたいと自治体は押しつける、それでは困る、買えないならどこかへ行ってくれ、こういう不安定な居住状況の中で、居住者の権利をいかに守っていくか、しかしながら、五年間くらいたてばあるいはある程度の生活の余裕もできてくるであろう、そうした場合においてはあるいは譲渡ということも考えられるだろう、だから、特別の理由のある場合は譲渡してもよろしいという居住者保護の規定としてできてまいったものだ。それを、今日になってまいりますと、もう立法の趣旨から離れてしまって、法律用語の解釈から、これはそうじゃないのだという通達が出てまいる。これは事情変更の原則だと前回も言っておられるのですが、事情変更の原則じゃなくて、立法の趣旨が全然変わってきてしまっている。事情の変更じゃなくて、立法の精神自身が全然変わってきてしまっているということになりますと、これは重大な問題だと思うのです。公営住宅そのものの性格、根幹に関する問題が、政府の行政解釈によって法律がゆがめられてしまっている。これは単なる条文を変えることによって、公法としての部分が拡大されてきたとかいう法律技術論にみんな転換してしまっておる。そういう立法の趣旨と違う性格、そして議員立法として提案された当時の時代背景、その住宅政策の根幹をなす問題が変わってきてしまっておる。こういう場合には、新しい公営住宅法政府みずからの責任で提案して、前後の矛盾を明確にしていくのが当然じゃないか。それを、立法の趣旨から全然変わった形で法律を変えていく。これは阿部さんもあとから追及するでしょうけれども、憲法三十九条による遡及しないという原則でも、こんな形で法律がどんどん解釈によって事情変更の原則だという形において、立法の趣旨を全然踏みはずした形において法律改正がやられてくる、解釈が生まれてくる、これは重大な問題だと思うのですが、この場合は大臣どうですか。
  67. 坪川信三

    坪川国務大臣 先ほど阿部委員に答弁いたしましたとき、いわゆる法理論といいますか、法律上の立場から回答申し上げ、心情論ではどうかというような御指摘もありましたが、いまの佐野委員の問題も、私はその問題が大事な関連性の問題だと思いますので、それを含めましてお答えいたしたいと思うのでございますが、あくまでも公営住宅対策の基本的な考え方は、やはり居住者のしあわせを守ってあげる、これは私は当然だと思います。その方向で配慮しなければならぬということは当然だと思います。したがいまして、私が、先日も申し上げましたように、福井市長をいたしておりましたときに、建設省に頼んでそうして譲渡いたした事例もございます。そうしたことを考えますときに、今後といたしましては、いわゆる大都会等に対するところの公営住宅あるいはその他の住宅の事情を考えますときに、やはり二月でも低所得勤労者に住まってもらいたい、こういうふうな気持ちが先に出てくるものでございますから、そうした立場をとろうという心情もここにあるということも御賢察いただきたい、こう思う次第でありますので、すべてが一刀両断において法的な理論をかざしながらそうした処置を講じていないということも御了承願いたい、こう思います。
  68. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 私が大臣に聞いているのは、立法の精神なり立法の趣旨、これが全然変わってしまっておる。いわゆる居住者をいかに保護するか、こういうために生まれた制限を、いわゆる居住者保護のために担保として設けたこのものが、逆に居住者を公法的に制限するというところに持っていってしまう。これは全然法律の精神、たてまえが変わってしまっておるわけです。こういう場合は、一部改正という形でやっていくのが妥当か、新しい公営住宅法として政府の見解を明らかにした法律をつくるべきじゃないか、この点を聞いておるのです。立法の精神から全然離れてしまって、立て方が違ってきてしまっているでしょう。逆に、公法上の規定だ、こういう形でどしどし基本的な立法の趣旨が変わってきてしまっている。そうした場合に、やはりこの間のように、旧都市計画法と、新都市計画法が生まれてくる。これは性格が変わっしてまっているから、新しい都市計画法が生まれてくる。それと同じように、こんなむちゃな、議員提案として立法されたその趣旨を行政府の解釈によって根本的に変えてしまっている。それは法律的に裏づけて、公法的な規定が入ってきたんだ、だから特別法なんだ、こういう解釈すらここに出てきている。こういうことの歯どめを持つためには、新しい法律をつくって政府の見解を明らかにする、そうしなければ、居住者の権利なり何なりが守られないのではないか。新しい契約のもとにおける公営住宅、大都市なりその他の事情を考えて新しい性格を持つとするならば、その性格を持つ法律をつくるべきではないか。そうしなければ、議員立法として提案したものが、行政府の解釈によって次から次へ変えられていく。保護すべき規定が逆に公法上の拘束力を持ってくるんだ、こういう形になれば、たいへんな問題じゃないかと私は思うのでございますが、大臣、どうですか。新しい法律をつくるべきじゃないか、どうですか。
  69. 坪川信三

    坪川国務大臣 私は、その法的な運営の面において、前段で申し上げましたような保護者、いわゆる居住者の立場を守るということを前提に踏まえまして運営をいたしてまいりたい、こう考えております。
  70. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 そこで、三十四年の改正の前にも、先般指摘をいたしまして、通達を出した、こう言っておるのですが、その通達は一人一人が知らない。このことはどうですか。
  71. 大津留温

    ○大津留政府委員 この二十八年に出しました通牒の趣旨といいますものは、この払い下げに関しまして——これは立法当時から建設大臣の承認という事項がございます。建設省といたしましては、承認方針といいますか、これを公共団体に連絡いたしまして、こういう考えのもとに承認をいたしますから、そういうふうに公共団体としても御了承の上、入居者の方々の照会に対しては、そういうことで御指導願いたい、こういう趣旨でございます。
  72. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 そこで、通達という問題をもう少し解明してみたいのですが、入居者の資格及び選考方法についても通達を出しておるようです。その通達では、都の職員などが管理人という立場で優先入居をするようなことはやってはいけない、こういう通達を出しておるようです。しかも、一度出しただけではなくて、その通達の精神が守られているかどうかということをさらに地方自治体に対して問うという形の通達も追っかけて出しておるようであるが、これは守られているかどうか。
  73. 大津留温

    ○大津留政府委員 団地の管理をいたします場合に、職員がその中に住まっておれば、それを管理人あるいはその補助者として使うということは、管理する立場からは非常に好都合だという面はあるようでございます。そういう考えで事業主体が職員を管理人という名目で特別に入居させておったという事態があちこちに見られましたので、それは公営住宅の本来の趣旨からいって好ましくないということで、そういうやり方はやめるようにという指導は当時からやっておるわけでございます。しかし、事業主体のほうとしましては、先ほど申しましたように、そういう形で管理人なりその補助者を置くということが管理上非常に都合がいいというようなことか、なかなかこれを全廃するまでには至ってはおらない。合理的な基準——何十戸なり百何十戸に一人というような割合で置くというようなことがまだ今日までも続いておるような事例が見られます。私のほうとしましては、それらの人が入居の収入の資格を持ち、また合理的な基準に該当するものならば、ほかに方法があれば別ですが、なければ、ある程度はやむを得ないものじゃなかろうかというふうに考えております。
  74. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 そうすると、通達は守らぬでもいいということになりますね。ほかに適当な方法がなければ守らぬでもいい。
  75. 大津留温

    ○大津留政府委員 そういうことが好ましいということで指導したわけでございますが、事業主体としては、その事業主体としてのやむを得ない事情というものもあったかと思いますので、合理的といいますか、国民の皆さま方が御納得いただける程度のことならば、やむを得ないのじゃなかろうかというふうに思います。
  76. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 これは局長、重大な御発言じゃありませんか。公募をやらずに、管理その他に必要があれば優先入居を認めてもいい、こういうぐあいに法律は規定しておりますか。
  77. 大津留温

    ○大津留政府委員 法律は、公募その他の公正な方法で入居者を選定するということを規定しております。したがいまして、職員を管理人という名目で入れることは、そういうことからいって好ましくないというふうに思うわけでございます。したがって、そういうことはやめるように指導をしたわけでございます。したがいまして、そういうことも好ましくないわけでございますが、一部におきましては先ほど申したような事例がなお見られるという状況でございます。
  78. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 公募によらざる優先入居というのは、いかなる事由を付するにせよ、公正な選考方法ということになるのでありましょうか。
  79. 大津留温

    ○大津留政府委員 公正な方法と申しますのは、抽せんによる方法その他、いろいろ実態によりまして選考するというような方法もあろうかと思います。また、政令で定められました事由に該当しました者に優先的な入居をはかるということも許されておるわけでございます。
  80. 佐野憲治

    佐野(憲)委員 関連。これはどこから根拠が出ておるのですか。政令には、優先入居をさせる基準をちゃんと明確に示しておるでしょう。本条には、公募しなくちゃならないという規定を置いておるでしょう。新聞その他ラジオ等を通じて周知し、厳正に公募することになっている。優先する者としては、政令の第六条で明確になっておる。ところが、東京都の場合、一万人にもわたり、三十世帯から四十世帯に一戸ずつ、しかも職員だけ希望者を集めて抽せんして、その者を管理人として、公営住宅に入居させておる。東京都の条例によってそういうことがきめられておるのですよ。公法というよりも、私法上における契約としてすでに東京都は実行しておるのじゃないですか。入居選考その他は公法的な部門だと言われる。しかし、東京都においてはちゃんとかってに一万人の人を入れておる。好きな者を集めてそのうちから入れておる。それじゃ公法的な規定じゃなく、この規定を私契約を意味するところの私法上の契約として東京都は取り扱っておることになるじゃないですか。どうですか。それを認めておるのでしょう。皆さんが指導監督する、だから建設省は通達も出しておるのだと言う。しかしながら、現実に東京都はそういう形において私法上の契約をやっておるわけじゃないですか。皆さんが言われるところの入居者に対する基準その他は公法的なものだということで規定が置かれるというけれども、東京都はそうじゃないじゃないですか。どうですか。
  81. 大津留温

    ○大津留政府委員 法律またはその法律に基づきます政令あるいは条例の規定によらないで入居させるということは許されないと思います。したがいまして、それに違反しているような事情がございますならば、それを是正させる考えでございます。
  82. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 局長、もしあろならば是正させるとおっしゃるのですが、あるならばというのはどういう意味ですか。あなたはさっき、ずいぶんあるようでございますと言われた。あるのでしょう。あることはずっと前から、二十年この方よう知っておるのです。知っておるがゆえに通達を出してきたのでしょう。通達が守られていないのです。これはどうです。
  83. 大津留温

    ○大津留政府委員 法律、政令あるいは条例に違反した状況は是正をいたさせます。
  84. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 どうやって是正しますか。
  85. 坪川信三

    坪川国務大臣 いま御指摘になりました点は、非常に大事な問題でございます。法令、条例その他に背反いたしました措置等の実態を直ちに調査させまして、その調査の結果を見まして私といたしましては善処いたしたい、こう考えております。
  86. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 法制局、いまの論議をお聞きになっておって、この契約関係は明瞭に私法上の契約だというふうにお認めになりますか。
  87. 田中康民

    ○田中(康)政府委員 入居者の選考という部面につきましては、必ずしもそういう管理関係ではなくて、やはり法律に定められたところに従って入居者を定めなければならないわけでございます。その部分について違反している、そういう御質問だと思いますが、その部分につきましては、私法関係ということではなくて、一種の公法的な関係と考えざるを得ませんので、違反しているものにつきましては、違反しないようにしなければいけない、それを是正する措置をとるべきであると考えております。
  88. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 法務省の御見解はどうですか。
  89. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 もちろん、法律的な政令に違反しないようにすべきでございます。ただいまの点は、入居希望者の公募の方法、さらに公募した者の中から公正な方法で入居させる者をきめるという手続を欠いておるわけでございます。したがいまして、その限りにおいては、私法上の契約がそこにあるというものではなくて、ただこの法律の規定に従って手続を進めておる、これだけのことであろうかと思います。
  90. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 そこで大臣にお伺いいたしますが、三十四年の法改正の際に、その以前もというので、局長はずいぶんと三百代言的な言辞と私は言わざるを得ないのでありますが、大臣の認可がなければ払い下げあるいは譲渡はしないということでありますから、都なり各自治体の係がどのように話をしておろうと、それは無効だ、こうおっしゃっておるわけですね。払い下げをする、耐用年数の四分の一の期間が経過すれば皆さんのものになるのでありますから、修繕費は出しませんよ、管理、営繕等々には十分注意をするようにということを、入居することにきまった皆さんを集めて公開の席上で——どんな話をしていようとも、それは無効ということなんです、こう先ほど局長は言うのであります。しかし、その場合、私ども民法上のたてまえからいいますれば、善意の第三者、その皆さんは、おそらく契約の関係は、それぞれの自治体との間において行っておると思うのです。その際に、自治体の責任ある立場に立つ係の人が、入居することにきまった全員の皆さんを集めてそのように明言をしておるという事実、この事実は、どんなにいろいろ抗弁をされましても、どうもやはりこれは一方的に契約を踏みにじるという形になるんじゃないかというふうに言わざるを得ない。しかも、当時の家賃体系というのでしょうか、これなども、いわば建物の償却費を中心とする形で家賃の算定などもやっておるのであります。したがって、どうも私どもいろいろな観点から総合いたしましても、単にその入居することにきまった皆さんを集めて、公式にそれぞれの自治体の関係者が、いずれ皆さんに払い下げになる、四分の一の耐用年数の期間が経過いたしますれば皆さんのものになるのでありますから、払い下げをするのでありますから、十分注意をして大事に入っているようにということを言っただけではなしに、当時の事情からいいますと、家賃体系そのものが払い下げを前提にしておるように私ども思われます。そこで私は前々から何度も念を押して申し上げておるのでありますが、三十四年以降のものはまずさておくとして、三十四年以前のものは、関係者の皆さんが全員、いずれ自分たちのものになる、払い下げ、分譲されるのだ、こういう前提で入居をしておることは間違いないのであります。しかも契約の当事者である自治体の関係者は、このことをきわめて明らかにいたしておるのであります。ところが、今度の法改正によってこれを徹底的にシャットアウトする形になる。あと法律をつくって前のそういう関係を全部帳消しにしてしまう、これは政治に対する不信を招く原因となり、民間の関係ならば、そういうことは契約の不履行であり、あるいは契約を踏みにじることになり、とうてい許されないことだと思うのです。これは一体どうなんですか。
  91. 大津留温

    ○大津留政府委員 当時の法律におきましても、払い下げにつきましては建設大臣の承認という規定がございます。したがいまして、法律を御承知の方はそういうことは御承知なのでございますが、事業主体の担当者ももちろんそういうことを承知しておるわけでございますから、建設大臣の承認が得られたならば払い下げをする、そういう趣旨のものと解するべきじゃなかろうかと思います。したがって、管理人等が申したことは、法律上の払い下げ契約というふうには見られないじゃないかというふうに思うわけでございます。ただ、先ほども申しましたように、事業主体の職員が公の席上でそういうことを申したということでございますから、道義的な責任は十分感じなければならないというふうに思います。しかし、先生御承知のとおりに、先ほど岡本先生からるるお話がございましたような今日の土地事情でございますので、やはり都市部におきましては建てかえをすべきものじゃなかろうか。ただ、地方におきましてはそういう必要がないというところもございますから、そういうところにおきましては、管理主体の指導により、あるいは入居者の御希望によりまして払い下げをするということは、今日もなお行なっておるわけでございます。
  92. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 これは重大な問題です。そこで、これは大臣にお伺いします。いままでの論議をお聞きになって、たとえば払い下げはあれだとしても、通達は二十八年、二十九年に出しておりますね。なぜその通達を出さざるを得なかったかということになると、公営住宅は、入居者に対して、耐用年数の四分の一を経過すれば払い下げになるということが、各契約の一方の当事者である自治体なり何なりがきわめて明瞭にしておるというその実情が国のほうでもわかったがゆえに、通達を出さねばならぬという必要に迫られたのだと思うのです。それはそうでしょう。その辺は大臣どうですか。
  93. 坪川信三

    坪川国務大臣 私が先ほど申し上げましたごとく、いまの問題を含めてでございますが、この問題の取り扱いにつきましては、いわゆる居住者の立場を十分尊重する、守るということを前提に、優先に考えたいというようなことでおるわけでございます。それは私の方針であり決意でございます。したがって、このたびの、特別な事情を勘案いたしましてということになるその運用、その適用というものについては、私がいま冒頭に申し上げましたような、居住者のしあわせと居住者の立場、環境を絶えず優先するということを踏まえて特別な事情というところに通ずるという方針を私は望みたいというので、御了解いただけるのじゃないかと思います。
  94. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 とうてい了解できませんよ。  そこで、大臣先ほどの公募によらざる入居者、これは直ちに是正をさせるように措置をする……(「調査をしてな」と呼ぶ者あり)いや、調査なんかずっと前からわかっているのです。通達まで二度も出しておるのでありますから。  そこで、この場合、入居している者の責任がありますか。東京都で一万人といわれるこの入居者に責任がありますか。
  95. 坪川信三

    坪川国務大臣 私が先ほど調査と申しましたことは、入居されたときの実態、法あるいは政令に準拠して入られた方々もその中には私はあると思うのでございます。また、そうでないような事情で入られた方々もあるんじゃないか、こう思うときに、私は調査の必要があるということを申し上げましたので、調査をいたしまして、私は、早急に是正すべき点は是正いたしたい、こういうような態度でおるような次第であります。
  96. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 大臣、私がお聞きしておることとちょっと違うのですけれども、公募によらざる方法で入っておる者に責任があるか、こう問うておるのです。
  97. 坪川信三

    坪川国務大臣 それは、さき申しました二つの理由で、それぞれの立場で入られた方があるのでありますから、すぐさま入居者の責任とか、あるいは責任がないというように即断を私が下しまして、いま直ちに私の態度を表明するのは早計だ、こう考えております。(「そのとおりだ」と呼ぶ者あり)
  98. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 そのとおりではない。この入った人は、管理の必要上ぜひ入ってくださいといって優先入居をさせてもらったのですよ。その必要があるから通達が出ておる。   〔発言する者あり〕
  99. 始関伊平

    始関委員長 静粛に願います。
  100. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 そこで、優先入居という、公募によらざる方法で入っておる者が相当の数いるということで、あのような通達が二度にわたって出されたものだと思う。実情を全然知らざるもので、調査の要ありなどという段階であんな通達は出ておらぬと思う。そういう事実が相当広範囲に及んでおるという事実が問題になりましたから、ああいう通達を住宅局は出されたと思うのであります。  そうすると、調査の上の是正をする、こうおっゃるのです。調査もいいでしょう。是正をする。ところが、その是正する場合に、いままでそこにずっと入っておった入居者が、是正をする過程で不利益な扱いのなるんじゃないかと懸念するわけです。そこで、入った方々に責任があるかどうか、優先入居で入れられた皆さんに責任があるかどうかということを私は大臣の問うておる。
  101. 坪川信三

    坪川国務大臣 いま御指摘になりましたあらゆる問題を対象に含めまして調査いたしたい、こう考えております。
  102. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 管理の必要上入った皆さん、それぞれの自治体が入れた皆さん、建設省では、そういう入れ方はまかりならぬといって、二度にわたり通達を出しておる。入れたのは、それぞれの自治体が入れておるわけです。入れられた皆さんに責任があるかどうかということを問うておる。調べる前の話です。
  103. 坪川信三

    坪川国務大臣 それは、先ほども申しましたように、あらゆる対象を含めまして正確な調査をいたしまして、その上で善処したい、こう思います。
  104. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 それじゃ答弁にならぬじゃありませんか。いま私は特定して聞いておるのです。私が聞いておるのは、いまのような場合に……(発言する者あり)ちょっとやじを言わないでください。やじを言う限りやりませんよ。
  105. 始関伊平

    始関委員長 静粛に願います。
  106. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 大臣、どうですか。私は一般論として聞いているのじゃなくて、特定して、入った皆さんは、管理上必要があるから入ってもらいたいというので優先入居の方法で入ったのです。この入った入居者自体の、問われなければならぬ責任があるかどうか、このことだけを聞いているのです。
  107. 坪川信三

    坪川国務大臣 私はその気持ちがあります。それをそんたくいたしておりますから、いま直ちにこの時点で即断することは早計であるから、それらの対象を含めて善処したい、調査をいたしたい、こういうので御理解いただける、こう思うのです。
  108. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 大臣、理解ができれば、こっちも、ばからしいから、何度も同じようなことを質問しないのですよ。しかし、入れたのは自治体なんです。入った人々はきわめて善意に、管理上必要がありますから入ってくれ、こういうので優先入居をした。私はいろいろな問題をやっておるのではなくて、このことに限って、入った人に責任があるかどうかと聞いている。
  109. 坪川信三

    坪川国務大臣 十分理解の上に立って、この対象をあらゆる面から調査をいたしたい、こう思っております。
  110. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 大臣、そんなコンニャク問答みたいなことを何度やってもしようがないですよ。調査することはいいんです。ぜひやってもらいたい。しかし、入ってくれと言われて、法によらざる方法で入った者に責任があるかどうか。ないでしょう。ないですね。
  111. 坪川信三

    坪川国務大臣 責任のある、ないというような問題よりか、その事情を十分尊重してあげたいという立場で私はやりたい、こう思っておるのであります。
  112. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 大臣、そういう答弁では私は納得が参りません。  そこで、もう一つお伺いをいたしますが、私も、確かに情勢の変化、社会情勢がものすごく変わっておるということについては、それはもう正確に見きわめておるのであります。でありますから、わがほうでも党独自の対策を法案の形で出しておりますこと、これも御承知のとおりであります。ところで問題は、情勢が変化をしたからといって、入居しております皆さんが持っておる既得権、それがそう簡単にそこなわれてもいいものだとは思わぬのであります。そこで私は、三十四年以降と三十四年以前というものを区分けしてお尋ねをしておる。確かに今日情勢が変わりました。変わりましたので、いろいろ政策遂行の立場から新たなる観点で問題を提起していかなければならぬ立場にあること、これも私ども十分理解をする。しかし、そうであるからといって、その以前の入居者個々人が持っておったいろいろな守られねばならぬ利益が虫けらのようにじゅうりんされていいなんということにはならぬと思う。したがって、情勢が変化をして、かつて立法の当時と今度のやり方が変わるという場合には、当時の経過、それから先ほど言った、国は知らぬというけれども、知らぬはずはないのであります。経過はいろいろあるのでありますから。そういう経過の中で、個人個人が持っておる権益というものを、いま情勢の変化というこの立場か大きく変えなければいけない。個人の持っておる権益をそこなわないようにしてもらわなければいけない。その場合には、何らかの救済規定なり経過措置なり、そういうものが、従来立法の場合しばしばとられてきていると私は思うのです。この場合、どうも今度の公営住宅法の改正案を見ますと、もう伝家の宝刀でばっさりやればいいんだということになるのであります。その辺はどうです。
  113. 坪川信三

    坪川国務大臣 先ほども申し上げましたごとく、私といたしましては、直ちにいわゆる既得権の侵犯を強権をもってやるというようなことはみじんもない。特別な事情の立場に立ってその環境すべてを十分そんたくいたしまして、これが正しい、是なれば是という場合には、譲渡すべきである、こういうふうな判断で、私は、その実情に即応した、しかも特別な事情をそんたくいたしましてその処置を講じたい、こう思っておりますので、御了承願いたいと思います。
  114. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 そこで、大臣、いまの答弁、そんたくをして払い下げをすべきところはする、これはわかりますよ。わかりますが、大都会周辺に関する限り、今度の改正によってやらないわけでしょう。そうすると、その皆さんの公営住宅発足当時以降持っておった権益というものを擁護するために、経過措置なり救済の規定なり、やはり何かなければいけないのじゃないか。先ほど大臣の答弁では、払い下げしてもいいところは払い下げする、それはあたりまえなんで、払い下げされるという前提のいろいろな契約関係で発足をしておった皆さんが大部分なんでありますから、これは、大都会周辺だからといって、快刀乱麻を断つがごときというぐあいにはいかぬと思うのですよ。そこには何らかの経過措置、何らかの救済規定、こういうものがなければいかぬと私は思うのです。その辺はどうです。
  115. 坪川信三

    坪川国務大臣 私はあらゆる客観情勢を十分判断いたしまして、そしてその特別な事情、立場というものを重んじながら対応いたしてまいりたい、こう考えております。
  116. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 たいへん不満足ではありますけれども、あらゆる客観情勢、これは、先ほど私が指摘をしたいろいろな論点も、客観的情勢の重要な部分になるであろうというふうに考えまして、これで終わりたいと思いますが、一つだけ、これも前回留保しておった問題でありますが、公務員住宅規模、構造、家賃、特に家賃の問題についてはきわめて説明がありませんでした。きょうは大蔵省から来ておるはずでありますけれども、規模家賃、構造、これをひとつお聞かせ願いたい。
  117. 斉藤整督

    ○斎藤説明員 公務員住宅家賃につきましては、本年の四月一日に改定いたしましたときに、構造別の差を廃止いたしまして、規模別の差に変えております。一番低いところで、五十三平米未満が四十七円。いろいろございますが、百平米以上が最高が七十九円ということになっております。なお、地域別な加算がございまして、たとえば東京の特別区でございますと、平米当たり十円加算するとか、四級地でございますと、六円加算、それから四級地、三級地以外は二円控除、そういう控除もございます。  それで規模でございますが、鉄筋がほとんどでございますが、鉄筋につきましては五段階に分けておりまして、一番小さいのが独身寮でございます。それからその次が、これはB型と申しまして、3Kでございますが、約四十三平米、それからC型と称しておりますのが3DKで、約五十六平米、D型が3LDKで、約六十七平米、E型が4LDKで、約八十四平米、こういうことになっております。
  118. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 以上で私の質問を終わりますが、先ほど指摘いたしましたように、大臣は私どもの主張点、論点を今後の運営面で配慮していただきたいということをきびしく要請いたしまして、私の質問を終わります。
  119. 始関伊平

  120. 金丸徳重

    金丸(徳)委員 時間の関係がありますから、端的にお伺いいたします。  本改正案の審議にあたりましては、入居中の高額所得者の処遇が重大問題になっておりますが、この際、明確にお答えおきをいただきたいのでありますが、高額所得者としての収入の算定にあたって、同居親族の収入の合算方法についてはどういうふうにお考えになっておられますか、明確にお答えをいただきたい。  また、入居資格としての収入の算定についてもこの際はっきりしておきたいと思いますので、御答弁を願います。
  121. 坪川信三

    坪川国務大臣 御指摘になりました二つの問題は、非常に重要な問題でございます。第一の、高額所得者としての明け渡し請求を受ける入居者の収入の算定にあたりましては、配偶者以外の同居親族の収入については、将来の世帯分離等を考慮いたしまして、一定額を控除することといたしたいと思うのでございます。すなわち、第一種公営住宅入居資格を得る程度の収入まではこれを全額控除するものとし、これをこえる部分について合算することといたしたいのでございます。なお、入居資格としての収入の算定は、明け渡しを請求される高額所得者の収入と必ずしも同一に扱う必要はないものと考えますが、今後十分検討いたしてまいりたいと思います。
  122. 始関伊平

    始関委員長 吉田之久君。
  123. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 私のほうからも一点御質問いたします。  この法案は、事業主体は、明け渡しの請求を受けた者に対して他の住宅のあっせん等を行なう場合には、当該公営住宅の明け渡しを容易にするように、他の公的資金による住宅への入居等について、特別の配慮をしなければならないものとするということになっておりますけれども、特別の配慮とはどういう配慮であるか、きわめて具体的に、明快にお答えいただきたい。
  124. 坪川信三

    坪川国務大臣 これも非常に重要な問題でございますので、その所信を表明申し上げたいと思います。  明け渡し請求を受けた高額所得者に対しましては、公団住宅公庫住宅等、他の公的資金による住宅等について一定のワクを設けて優先的に入居させる等の措置を講ずることといたしたい考えであります。すなわち、公団、公社の賃貸住宅並びに分譲住宅の募集の際に、その二割までをこれらの人のための特別ワクとして確保するほか、公庫個人融資につきましても優先扱いをすることといたしたい考えでおるのでございます。その場合、移転先の住宅の場所、規模等についても十分配慮いたすべく、行政指導に対しましても十分誠意をもって努力いたす所存でございます。
  125. 始関伊平

  126. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 明け渡しの収入基準や、入居基準及び超過の基準は、物価の変動等に応じ改定すべきであると思いますが、この点、建設大臣はどうお考えですか。
  127. 坪川信三

    坪川国務大臣 この点も非常に大事な問題でございます。はっきりとお答え申し上げたいと思いますが、明け渡しの収入基準は、勤労者世帯の収入に対して適切なものであるよう、物価の変動等を考慮しまして適時改定することといたしたい考えでございます。すなわち、明け渡しの収入基準の適否については、毎年住宅宅地審議会意見を聞きまして、必要があるときには遅滞なく改定することといたしたい考えであります。  なお、入居の収入基準及び収入超過基準についても同様に取り扱う方針でございます。
  128. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 これとは別に、先ほど議論になりました点で——法制局おりますか。——どうして帰ったのですか。まだ終わってないのに、けしからぬじゃないかすか。
  129. 坪川信三

    坪川国務大臣 法制局の政府委員が戻りましたことはまことに恐縮いたしております。御指摘になりました点を私からも十分連絡いたしまして、それぞれの機会に直ちに答弁させる指導をいたしますから、御了承願いたいと思います。
  130. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 じゃ、来るまでに、局長、今度高額所得で立ちのかなければならぬ方々の契約書を一ぺん見たいのです。これはひとつお願いしたい。  それからもう一点は、先ほど管理人のことで問題になりましたけれども、管理人の名簿ですねさっき議論になりました名簿、これがどうなっておるで見たいと思います。これをひとつ提出をお願いしたい。
  131. 大津留温

    ○大津留政府委員 できるだけ早い機会にお手元まで提出いたします。
  132. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 ここで私がどうなっているかと聞けば、これは局長が非常にお困りだと思うので、私もそんな意地の悪いことはしたくありません。ここまで話がスムーズにいったのですから。ただし、早急にこれは出していただきたい。  それからちょっと大臣にお尋ねしたいのですが、たとえば社宅等で、使用者から提供された家屋で、正当な対価を払っておれば居住権はあるという判決が過去にある。今回の場合も、こういう立場で——これはあとで、民法上の問題でありますから、法制局または法務関係の方に聞いてみなければならぬのですが、こういう場合に前例があるのですが、これはどういうふうにお考えになりますか。
  133. 坪川信三

    坪川国務大臣 いろいろとそうした問題においての前例あるいは事案等もあろうと思いますので、それらの事実をよく見きわめましてまた御返事申し上げたい、こう思っております。
  134. 始関伊平

    始関委員長 これにて、内閣提出公営住宅法の一部を改正する法律案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  135. 始関伊平

    始関委員長 本案に対し大野明君から修正案提出されております。
  136. 始関伊平

    始関委員長 この際、提出者の趣旨説明を求めます。大野明君
  137. 大野明

    ○大野(明)委員 ただいま議題となりました公営住宅法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、自由民主党を代表して、その趣旨を申し上げます。  なお、案文はお手元に配付してありますので、朗読は省略させていただきます。  御承知のとおり、政府原案では、この法律は「昭和四十四年四月一日」から施行することとしておりましたが、御説明申し上げるまでもなく、現在すでにその期日を経過しておりますので、これを「公布の日」から施行することにあらためようとするものでございます。  以上で修正案の趣旨説明を終わります。
  138. 始関伊平

    始関委員長 以上で趣旨説明は終わりました。     —————————————
  139. 始関伊平

    始関委員長 これより、内閣提出公営住宅法の一部を改正する法律案、及びこれに対する修正案を一括して討論に付します。討論の通告がありますので、これを許します。岡本隆一君。
  140. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となっております政府提案公営住宅法の一部を改正する法律案に反対し、日本社会党提案の公営住宅法等の一部を改正する法律案に賛成の討論を行なわんとするものであります。  公営住宅建設の目的は、まず第一に、国民住生活を保障するところになければなりません。しかるに、政府住宅対策の基本的な考え方は、住宅個人責任において建てるもの、金のない者は民間建設貸し家に住め、ただし、貧之でどうにもならない者だけに、救貧対策として公営住宅を建ててやろう、これが政府住宅対策の基本的な姿勢であります。戦後二十四年を経ていまなおきびしい日本住宅難の根本的な原因は、住宅問題を社会保障の一環として取り上げない政府の態度にあるのであります。  わが国と同じように戦禍を受け、都市の壊滅的破壊によって大量の住宅を失い、敗戦国として戦後きびしい住宅難に襲われたドイツイタリアにおきましては、すでに戦後の住宅難は解決しているのであります。それは、これらの国々住宅問題を社会保障の一環として取り上げていたところに由来するのであります。ドイツでは、社会住宅、いわゆるゾツィアール・ヴォーヌンクの制度として勤労者住宅の大量建設を行ない、イタリアでは、INA、CASAの制度をもって、企業と勤労者の拠出する住宅資金をもって、社会保障的見地に立った住宅建設を推し進めてきたのであります。  もはや戦後ではない、このことばは、事住宅に関する限り日本では通用いたしません。これは住宅問題に対する政府の基本的態度に由来するものであり、公営住宅法の第一条、公営住宅建設の目的を改正するところから始まらなければ、住問題の解決はありません。  日本社会党は、国民住生活は国が保障する、その住生活保障のために公営住宅建設する、こうした考え方に立って、公営住宅法改正し、あわせて住宅建設計画法をも改正せんとするものであります。  これ、私が政府案に反対、日本社会党提案の公営住宅法並びに住宅建設計画法の一部を改正する法律案に賛成する第一の理由であります。  政府案に反対する第二の理由は、地価の高騰に対する政府の怠慢、無為無策に関してであります。  近年とみに著しい地価の高騰は、公営住宅建設に際し、事業主体たる地方公共団体におびただしい超過負担を余儀なくせしめているのであります。用地取得のための膨大な超過負担公営住宅建設をはばんでいるのであります。政府は、今般、用地費に対する補助を融資に切りかえんとしているのでありますが、これは当然自治体の将来にばく大な債務としてのしかかってくるものであります。このようなこそくな手段をもってしては、大量の公営住宅建設は思いも寄らないことといわなければなりません。それよりも、政府は、この際地価問題の抜本的解決と取り組むべきであります。  都市計画法が本年六月より実施されます。都市計画法策定の第一の目的は、地価の安定にあります。日本社会党は、この都市計画法の実施を機会に、その本来の精神にのっとり、土地の利用区分を確立するとともに、地価の安定をはからんとしているのであります。すなわち、住宅建設計画法に、第十一条をもって宅地管理法を制定することを明らかにし、市街化地域の土地を市町村管理下に置き、民間の売買を禁止せんとしているのであります。市街化調整地域の土地は、その開発に大きな制限を受け、住宅、工場等の建築が規制され、地価は大幅な値下がりを来たすのであります。一方、市街化地域に対しましては、従来近郊にスプロールしていた開発エネルギーが殺到して、地価は暴騰するのであります。この際、何らかの強硬な地価対策をとらない限り、地価は暴騰して、国民住生活を一そう困離にするばかりか、都市計画そのものの実施をも不可能にしてしまうのであります。したがって、われわれは、この地価の暴騰を押え、さらにこれを引き下げるためには、土地の所有権に制限を加え、宅地を公的管理のもとに置く以外に道はないものと信ずるのであります。  民間の売買を禁止されることによりまして、いままで騰勢の一途をたどっておりました地価はその呼び値を消失し、本来の利用価値に戻るのであります。国民大衆の耐え得る居住用地としての利用価値に地価を戻すのであります。市町村に設置された宅地管理委員会は、市町村の定める市街化計画に従って、道路、水路、公園その他の公共施設の整備を進め、市街化されていく地域から次々に土地を使用いたします。買収するのでなく、適当な地代を所有者に支払うことによって土地を使用するのであります。こういたしますと、従来ばく大な費用を必要とした用地取得は、借地に切りかわって、住宅建設はきわめて容易になり、公共事業もどんどん進めることができるのであります。  このような土地の使用、所有権の制限に関し、それは憲法に違反するものだという人があります。しかし、私どもは、市街化調整地域の土地に自由な開発を禁止した新都市計画法が憲法違反でない限り、市街化地域の土地の自由な売買を禁止する宅地管理法も、憲法に違反しないものと考えるのであります。再生産することのできない土地は、最も有効に、国民全体の福祉に沿うよう利用されなければなりません。  宅地の使用に関する地代は、私どもは、所有者の従来の生活を保障するに足りる額であるべきであると考えております。すなわち、農地を使用する場合、反当たり月額一万五千円、五反を耕作する農家に対しては月々七万五千円、六反の農家には九万円の地代を支払うことによって、その生活を保障しようとするのであります。そして、この地代は、離農年金的な考え方に立って、将来物価にスライドさせるのであります。すなわち、公務員給与のベースアップと同率で年々スライド、アップさせるのであります。かくて、昭和四十五年度、反一万五千円をもって出発し、年々物価にスライドする地代を年金的に提供して、離農する農家の生活を保障することにより、都市計画法に基づく市街化を促進し、大量の宅地を確保せんとするのであります。  もちろん、土地を提供する農家が買い取りを希望する場合には買収いたします。その買収価格は、月々一万五千円の利息を、年利六分の利率で生む元本といたします。つまり、反三百万円、坪一万円ということになるわけであります。こうして、従来数万円あるいは十数万円の呼び値をもって住宅問題のガンとなり、都市問題解決の最大のネックとなっておりました地価は、坪一万円というところに落ちつくのであります。  月額反一万五千円という地代は、坪五十円ということになります。すなわち、宅地管理委員会は、月額坪五十円で土地を所有者より借り受け、これを公共用地に利用し、公営住宅を建て、あるいは住宅公団、地方住宅供給公社、住宅協同組合等の公的住宅供給機関に貸与し、さらにまた、住宅建設せんとする個人に適切な地代をもって貸与するのであります。こうして、安い地代で土地を提供されることによりまして、公営住宅その他の公的貸し家の大量建設が可能になるとともに、庶民もまた、みずからの好みに応じたマイホーム建設をどんどん進めることができるのであります。住宅難は数年を待たずして解決されるのは当然であります。  住宅問題は宅地問題であります。地価を野放しにして住宅問題の解決はありません。公営住宅の用地費に対する補助を融資に切りかえるなどという小手先細工は、愚の骨頂であります。都市計画法の実施を機会に、市街化地域の宅地を市町村管理に置くことによって地価を引き下げ、それによって住宅の大量建設をはかるべきであります。  これ、私が政府案に反対し、この構想に立った社会党案に賛成するゆえんであります。(拍手)  第三の問題は、高額所得者並びに建てかえに際しての居住者の明け渡し義務であります。  政府は、現行の住宅建設計画法に基づく五カ年計画において、建設計画総数六百七十万戸中、公営住宅としては五十二万戸より予定しておりません。政府計画は、計画の六〇%を民間建設に依存し、しかも、その四〇%にすぎぬ政府施策住宅中、その八〇%を公庫公団等による中産階級向きの住宅建設に振り向けているのであります。真に住宅に困窮し、一畳千五百円ないし二千円といった高家賃で、しかも狭小過密の木賃アパートで人間性を否定されている低所得者に対しての公営住宅はわずかに二〇%、計画総数に対しては八%に満たないのであります。これでは、低所得者にとっての住宅難解消は、木によって魚を求めるも同然であります。さればこそ、日本社会党は、住宅建設計画法を改正し、現行五カ年計画を本年度をもろて打ち切り、昭和四十五年度を初年度とする新五カ年計画を策定し、その五カ年間に七百六十万の住宅建設を行ない、一挙に住宅問題を解決せよと主張するのであります。  新五カ年計画におきましては、計画戸数の六〇%に当たる四百六十万戸を公共機関の責任において建設し、さらに、その六〇%に当たる二百八十万戸を公営住宅に充当せんとしているのであります。宅地管理法によって地価を引き下げるとともだ、住宅建設計画法の改正により新五カ年計画を策定し、大量の公営住宅を市街化地域のさら地に職住近接の形で建設することにより、住宅困窮者の住生活を保障しようというのであります。  今般政府の提案いたしました高額所得者や建てかえに際しての明け渡し義務化の問題は、こうした地価問題の抜本的解決や公営住宅の大量建設といった政府責任を忘れ、これをささいな矛盾の解決とすりかえんとしているのであります。地価の安定は政府決意次第で直ちになし得ることであります。公営住宅の大量建設も、政府住宅対策に対する熱意のいかんにかかわっているのであります。  住宅問題解決の抜本的対策を忘れ、重箱のすみをほじくるような今回の政府提案よりも、すべからく現行の住宅建設五カ年計画を改定し、来年度より出発する新五カ年計画を策定して、その五カ年間にわが国の住宅問題を一挙に解決せんとする社会党提案に、良識ある委員各位の御賛同を期待するものであります。(拍手)  第四には家賃政策であります。  政府は、公営住宅家賃の算定に建設費償却方式をとっております。これは、物価が安定し、地価に変動がないものという前提に立っているのであります。ところが、その後地価はべらぼうに高くなり、建設費も年々五ないし六%値上がりがあるために、建設費の償却額は次第に大きくなり、公営住宅家賃建設年次により非常に大きな格差を生じてまいりました。その結果、早く住宅難を免れた者ほど安い家賃に住み、長く住宅難に苦しんだ者が高い家賃を支払い、いまなお住宅難にあえぐ者は、べらぼうな高い家賃で劣悪な木賃アパートに住むといった矛盾が出てまいっているのであります。これは政府のゆがんだ高度経済成長政策のしからしむるところであり、その地価対策住宅対策の怠慢によるところでありますが、住宅問題を社会保障制度の一環としてとらえる限り、家賃政策にも社会保障的な考え方を貫くのは当然であります。国民は、権利として、国から必要に応じた住宅の提供を受けるとともに、能力に応じた居住費負担するといった考え方に立って家賃政策を立てるべきであると思うのであります。  日本社会党は、地価問題の解決策として、物価にスライドした離農年金をもって市街化地域の農地を借り受け、ここに大量の公営住宅建設することといたしましたが、物価にスライドした地代を支払う必要から、家賃の地代部分は年々漸増いたします。それに対処しなければならないというこたとも一つの理由でありますが、国民各層間、ことに公営住宅の入居者間における居住費負担の不均衡を是正するとともに、低所得者にその家族構成に応じた住宅を提供して適切な住水準を保障するためには、家賃は収入に応じた家賃を支払うこととすべきであると考えるのであります。たとえば、基礎控除一万円、扶養控除一人につき一万円といった額を控除した所得に対して一〇%といった形の、収入別家賃構想に立つべきであります。そして徴収する家賃の最高限度額は、建設費償却額プラス地代で押え、なお、経過措置として、現在公営住宅に住んでいる人々の家賃は現行のままとすべきであると考えるのであります。  こうして国はその責任において国民住生活を保障し、国民能力に応じて居住費負担するという社会保障的見地に立つとき、家賃問題の中に派生するいろいろな矛盾は自動的に解消するのであります。  かかる見地から、私は、家賃の団地間の格差は放置し、わずかに一%に満たない収入超過者に立ちのきを要求してこと足れりとするようないまの政府の態度に反対し、住宅建設社会保障として取り上げようとする社会党の家賃政策に賛成するものであります。  最後に、重要な課題として、住宅建設に対する財政的裏づけの問題があります。  従来の政府住宅政策の失敗はその戸数主義にあります。所得倍増とか、十カ年一千万戸建設などといったキャッチフレーズで、国民をバラ色の夢で幻惑しようとした従来のインチキな態度を政府はおごそかに反省すべきであります。財政的裏づけのない計画を、絵にかいたもちと申します。従来政府が真剣に取り組んだ計画には、すべて財政的裏づけが行なわれております。道路計画、治水計画、すべてしかり。そしてこれらの計画は、投資規模をもって計画内容としるしているのであります。しかるに住宅計画は、ただ単に計画戸数を示すのみで、その大部分を民間建設に依存してきたのであります。万事他力本願で、何でもよい、ただ数が建ちさえすればいいではないかといった投げやりな形で放置されていたのであります。そこに、いつまでたっても解決しない住宅問題の根本的な原因が横たわるのであります。  本年度政府の一般会計予算六兆七千九百億に対する道路予算は四千九百八十億、その七・四%であります。それに対して、住宅予算は七百九十四億、わずかに一・二%にすぎません。経済の高度成長の支柱を自動車産業に求め、マイカーのはんらんでばく大な道路投資を余儀なくされているのが、今日の日本の公共投資の姿であります。自動車産業への奉仕に追いまくられ、それでも交通災害や排気ガスの公害に苦しめ抜かれているのが、わが国政府のとる経済政策であります。地価対策にもっと早く目ざめ、住宅産業を経済復興の支柱としたら、すでに日本住宅難は消失し、国民はもっと明るい豊かな生活に恵まれていたであろうと思うのであります。  政府の財政計画に対し、われわれは、道路投資以上の住宅投資を求めるよう、住宅建設計画改正の中に規定すべきであると思うのであります。すなわち、同法第三条に第二項を加え、国は少なくとも一般会計予算の一〇%、財政投融資の一〇%を、住宅難解決の日まで住宅投資に振り向けて、住問題の早急なる解決をはかるべきことを規定せんとするのであります。  戦後二十数年、平和憲法のもとに持続した平和経済の成果として、国民生活は次第に向上しつつあります。国民の衣食の欲求おほぼ満たされ、しかも戦後そのままに放置された住宅環境の改善は、いまや切実な要求となりつつあります。経済界もこれを読み取り、日本経済の支柱を、自動車産業より住宅産業へと転換せしめんとする意図すらほの見えつつあるのであります。おそまきながら、経済界も、総合産業としての住宅産業の国民生活の中に占める比重とその重要性を認識し始めたのであります。経済の成長とともに進む都市化現象、それに対処するための新都市計画法の実施、いまこそ地価問題の解決に絶好の機会であります。かつて、「農地は耕作農民へ」という合いことばで農地改革が行なわれました。いまこそ、「宅地を居住する市民へ」なる合いことばをもって宅地改革を行なうべきときであります。これは切実なるわが国民の声であります。政府はこの国民の輿望にこたえるとともに、大規模住宅投資を果敢に行なうべきであります。宅地を公共の管理下に置くことによって地価を引き下げ、公営住宅を中心とした公共賃貸住宅の大量建設によって国民住生活の安定を期すべきであります。  かかる見地に立って、私は、政府提案にかかる公営住宅法改正に反対し、日本社会党提案の公営住宅法等の一部を改正する法律案に賛成するものであります。委員諸君の御賛同を期待して討論を終わります。(拍手)
  141. 始関伊平

    始関委員長 以上で討論は終局いたしました。  これより採決いたします。  まず、大野明君提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  142. 始関伊平

    始関委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。  次に、ただいま議決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  143. 始関伊平

    始関委員長 起立多数。よって、内閣提出公営住宅法の一部を改正する法律案は、大野明君提出の修正案のごとく修正議決すべきものと決しました。     —————————————
  144. 始関伊平

    始関委員長 なお、本案に対しまして、田村良平君から、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者の趣旨説明を求めます。田村良平君。
  145. 田村良平

    ○田村(良)委員 附帯決議案はお手元に配付いたしておりますので、お読みを願いたいと思います。  ただいま議題となりました公営住宅法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党を代表いたしまして、附帯決議案の趣旨につき御説明申し上げます。  御承知のごとく、わが国の住宅事情は、経済成長の著しい中で、他に比較してその立ちおくれが目立っておることは、すでに各方面から指摘されておるとおりでありますが、特に都市における住宅の不足が問題になっており、消費文化の進展とともに、いまや住宅の量の解決と同時に、質に対しるも大きな転換を迫られつつあるといっても過言ではございません。  このため、政府は、住宅建設五カ年計画によりまして、質、量ともにその達成に努力をいたしておりますが、中でも、公営住宅建設につきましては重点を置いてその促進をはかっており、ただいま修正議決されました改正案は、まさに時宜に適したものと考えておる次第であります。  しかし、公営住宅制度をより充実させ、実効あるものとするためには、政府は、法の施行にあたり、次の諸点につきまして適切な措置を講じ、その運用に遺憾なきを期すべきことを強く要望してやまないものであります。  その第一点は、住宅に困窮する低額所得者が多数公営住宅に入居を希望いたしておる現状にかんがみ、公営住宅を大量に建設するよう一段と努力することかであります。  第二点は、事業主体の財政負担を軽減し、公営住宅建設を一そう促進するため、用地費に対する実勢単価による融資額の確保をはかることであります。  第三点は、用地の取得難が住宅建設の隘路であることにかんがみ、土地の有効利用の促進、国・公有地の活用、地価公示制度の確立、土地税制の改善、土地需給の緩和等の施策を総合的かつ強力に推進することであります。  第四点は、高額所得者の明け渡し請求制度の実施にあたっては、入居者の収入額の的確な認定、同居親族の収入合算の方法に対する考慮、転居先に対する特段の配慮等をすることであります。  第五点は、建てかえ事業の実施にあたっては、入居者の意向を十分反映するほか、建てかえ後の家賃が家計に及ぼす激変を緩和するため、一定期間家賃を軽減するように事業主体に対し行政指導をすることであります。  以上が公営住宅法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨でありますが、委員長各位の御賛成をお願いいたしまして、趣旨の説明を終わります。     —————————————   公営住宅法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  政府は本法の施行に当たり左の諸点について適切な措置を講じ、その運用に遺憾なきを期すべきである。 一 住宅に困窮する低額所得者が多数公営住宅に入居を希望している現状にかんがみ、公営住宅を大量に建設するよう一段と努力するとともに職住近接、居住水準、生活環境の改善について配慮すること。 二 事業主体の財政負担を軽減し、公営住宅建設を一層促進するため、用地費に対する実勢単価による融資額の確保を図ること。 三 用地の取得難が住宅建設の隘路であることにかんがみ、土地の有効利用の促進、国、公有地の活用、地価公示制度の確立、土地税制の改善、土地況需給の緩和等の施策を総合的かつ強力に推進すること 四 高額所得者の明渡し請求制度の実施に当たつては、次のとおり措置するものとし、その運用の適切を期すること。 (一) 高額所得者に対する明渡し請求制度の円滑な実施を図るため、入居者の収入額の認定の的確を期し、入居者相互間に不公平な事態が生じないようにすること。 (二) 配偶者以外の同居親族の収入については、将来の世帯分離等を考慮して相当額を控除するものとすること。 (三) 近い将来において定年等の特別な事態が生ずることによりその収入が激減することが明らかである者に対しては、明渡しの請求を猶予するものとすること。 (四) 明渡しの請求を受けた者に対しては、公団住宅公庫住宅等他の公的資金による住宅への優先入居の措置等について特段の配慮をすること。 (五) 明渡しの収入基準公、勤労者世帯の収入に対して適切なものであるよう物価の変動等を考慮して適時改訂すること。 五 公営住宅建替事業の実施に当たっては、次の点につき十全の配慮をすること。 (一) 公営住宅建替事業の施行に当たっては、極力、入居者の納得を得た上で実施するように努めること。 (二) 立替え後の家賃と従来の家賃との著しい差があるときは、家計に及ぼす激変緩和のため、一定期間家賃を軽減するよう、事業主体に対し行政指導すること。 右決議する。    —————————————
  146. 始関伊平

    始関委員長 本動議について採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  147. 始関伊平

    始関委員長 起立総員。よって、田村良平君提出の動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、坪川建設大臣より発言を求められております。これを許します。  坪川建設大臣
  148. 坪川信三

    坪川国務大臣 国民生活に関連するまことに重要な法案を提出させていただきまして、本委員会に付託をいただきまして以来、連日にわたる委員各位のまことに適切なる御発言、御質疑あるいは適切なる御叱正等をいただきましたことを深く感謝、また敬意を表し上げる次第であります。  ただいまこの法案に対する決議をいただきましたことは、われわれ建設省一同深く感銘いたしておりますとともに、その質疑の間にいただきました重要なる諸般の問題につきましては、当然皆さまの御意見を十分そんたく申し上げます帆とともに、また、各党がお述べをいただきました討論に対しましても、十分その趣旨のほどを尊重申し上げますとともに、最後に満場一致で御決議をいただきました付帯決議に対しましては、当然なありがたい御決議と感じますので、その指導、その適切なる運用に万全を期する覚悟でおる次第であります。  本法案の議決に際しまして、連日にわたる委員各位の真摯な、適切なる御指導と、また御協力に対し、深く感謝と敬意を表し上げまして、私の御礼のごあいさつを終わりたいと思います。どうもありがとうございました。     —————————————
  149. 始関伊平

    始関委員長 おはかりいたします。  ただいま議決いたしました本案に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  150. 始関伊平

    始関委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  151. 始関伊平

    始関委員長 次回は、来たる四月十六日委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時五十一分散会