○
岡本(隆)
委員 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となっております
政府提案の
公営住宅法の一部を
改正する
法律案に反対し、
日本社会党提案の
公営住宅法等の一部を
改正する
法律案に賛成の討論を行なわんとするものであります。
公営住宅建設の目的は、まず第一に、
国民の
住生活を保障するところになければなりません。しかるに、
政府の
住宅対策の基本的な
考え方は、
住宅は
個人の
責任において建てるもの、金のない者は
民間建設の
貸し家に住め、ただし、貧之でどうにもならない者だけに、救貧
対策として
公営住宅を建ててやろう、これが
政府の
住宅対策の基本的な
姿勢であります。戦後二十四年を経ていまなおきびしい
日本の
住宅難の根本的な
原因は、
住宅問題を
社会保障の一環として取り上げない
政府の態度にあるのであります。
わが国と同じように戦禍を受け、都市の壊滅的破壊によって大量の
住宅を失い、敗戦国として戦後きびしい
住宅難に襲われた
ドイツ、
イタリアにおきましては、すでに戦後の
住宅難は解決しているのであります。それは、これらの
国々が
住宅問題を
社会保障の一環として取り上げていたところに由来するのであります。
ドイツでは、
社会住宅、いわゆるゾツィアール・ヴォーヌンクの制度として
勤労者住宅の大量
建設を行ない、
イタリアでは、INA、CASAの制度をもって、企業と
勤労者の拠出する
住宅資金をもって、
社会保障的
見地に立った
住宅建設を推し進めてきたのであります。
もはや戦後ではない、この
ことばは、事
住宅に関する限り
日本では通用いたしません。これは
住宅問題に対する
政府の基本的態度に由来するものであり、
公営住宅法の第一条、
公営住宅建設の目的を
改正するところから始まらなければ、住問題の解決はありません。
日本社会党は、
国民の
住生活は国が保障する、その
住生活保障のために
公営住宅を
建設する、こうした
考え方に立って、
公営住宅法を
改正し、あわせて
住宅建設計画法をも
改正せんとするものであります。
これ、私が
政府案に反対、
日本社会党提案の
公営住宅法並びに
住宅建設計画法の一部を
改正する
法律案に賛成する第一の
理由であります。
政府案に反対する第二の
理由は、地価の高騰に対する
政府の怠慢、無為無策に関してであります。
近年とみに著しい地価の高騰は、
公営住宅の
建設に際し、事業主体たる地方
公共団体におびただしい超過
負担を余儀なくせしめているのであります。用地取得のための膨大な超過
負担が
公営住宅の
建設をはばんでいるのであります。
政府は、今般、用地費に対する補助を
融資に切りかえんとしているのでありますが、これは当然自治体の将来にばく大な債務としてのしかかってくるものであります。このようなこそくな手段をもってしては、大量の
公営住宅の
建設は思いも寄らないことといわなければなりません。それよりも、
政府は、この際地価問題の抜本的解決と取り組むべきであります。
都市
計画法が本年六月より実施されます。都市
計画法策定の第一の目的は、地価の安定にあります。
日本社会党は、この都市
計画法の実施を
機会に、その本来の精神にのっとり、土地の利用区分を確立するとともに、地価の安定をはからんとしているのであります。すなわち、
住宅建設計画法に、第十一条をもって
宅地管理法を
制定することを明らかにし、市街化地域の土地を市町村管理下に置き、民間の売買を禁止せんとしているのであります。市街化調整地域の土地は、その開発に大きな制限を受け、
住宅、工場等の建築が規制され、地価は大幅な値下がりを来たすのであります。一方、市街化地域に対しましては、従来近郊にスプロールしていた開発エネルギーが殺到して、地価は暴騰するのであります。この際、何らかの強硬な地価
対策をとらない限り、地価は暴騰して、
国民の
住生活を一そう困離にするばかりか、都市
計画そのものの実施をも不可能にしてしまうのであります。したがって、われわれは、この地価の暴騰を押え、さらにこれを引き下げるためには、土地の所有権に制限を加え、
宅地を公的管理のもとに置く以外に道はないものと信ずるのであります。
民間の売買を禁止されることによりまして、いままで騰勢の一途をたどっておりました地価はその呼び値を消失し、本来の利用価値に戻るのであります。
国民大衆の耐え得る居住用地としての利用価値に地価を戻すのであります。市町村に設置された
宅地管理
委員会は、市町村の定める市街化
計画に従って、道路、水路、公園その他の公共施設の
整備を進め、市街化されていく地域から次々に土地を使用いたします。買収するのでなく、適当な地代を所有者に支払うことによって土地を使用するのであります。こういたしますと、従来ばく大な費用を必要とした用地取得は、借地に切りかわって、
住宅建設はきわめて容易になり、公共事業もどんどん進めることができるのであります。
このような土地の使用、所有権の制限に関し、それは憲法に違反するものだという人があります。しかし、私どもは、市街化調整地域の土地に自由な開発を禁止した新都市
計画法が憲法違反でない限り、市街化地域の土地の自由な売買を禁止する
宅地管理法も、憲法に違反しないものと
考えるのであります。再生産することのできない土地は、最も有効に、
国民全体の福祉に沿うよう利用されなければなりません。
宅地の使用に関する地代は、私どもは、所有者の従来の生活を保障するに足りる額であるべきであると
考えております。すなわち、農地を使用する場合、反当たり月額一万五千円、五反を耕作する農家に対しては月々七万五千円、六反の農家には九万円の地代を支払うことによって、その生活を保障しようとするのであります。そして、この地代は、離農年金的な
考え方に立って、将来物価にスライドさせるのであります。すなわち、公務員給与のベースアップと同率で年々スライド、アップさせるのであります。かくて、
昭和四十五年度、反一万五千円をもって出発し、年々物価にスライドする地代を年金的に提供して、離農する農家の生活を保障することにより、都市
計画法に基づく市街化を促進し、大量の
宅地を確保せんとするのであります。
もちろん、土地を提供する農家が買い取りを希望する場合には買収いたします。その買収価格は、月々一万五千円の利息を、年利六分の利率で生む元本といたします。つまり、反三百万円、坪一万円ということになるわけであります。こうして、従来数万円あるいは十数万円の呼び値をもって
住宅問題のガンとなり、都市問題解決の最大のネックとなっておりました地価は、坪一万円というところに落ちつくのであります。
月額反一万五千円という地代は、坪五十円ということになります。すなわち、
宅地管理
委員会は、月額坪五十円で土地を所有者より借り受け、これを公共用地に利用し、
公営住宅を建て、あるいは
住宅公団、地方
住宅供給公社、
住宅協同組合等の公的
住宅供給機関に貸与し、さらにまた、
住宅を
建設せんとする
個人に適切な地代をもって貸与するのであります。こうして、安い地代で土地を提供されることによりまして、
公営住宅その他の公的
貸し家の大量
建設が可能になるとともに、庶民もまた、みずからの好みに応じたマイホーム
建設をどんどん進めることができるのであります。
住宅難は数年を待たずして解決されるのは当然であります。
住宅問題は
宅地問題であります。地価を野放しにして
住宅問題の解決はありません。
公営住宅の用地費に対する補助を
融資に切りかえるなどという小手先細工は、愚の骨頂であります。都市
計画法の実施を
機会に、市街化地域の
宅地を市町村管理に置くことによって地価を引き下げ、それによって
住宅の大量
建設をはかるべきであります。
これ、私が
政府案に反対し、この
構想に立った
社会党案に賛成するゆえんであります。(拍手)
第三の問題は、高額
所得者並びに建てかえに際しての居住者の明け渡し義務であります。
政府は、現行の
住宅建設計画法に基づく五カ年
計画において、
建設計画総数六百七十万戸中、
公営住宅としては五十二万戸より予定しておりません。
政府の
計画は、
計画の六〇%を
民間建設に依存し、しかも、その四〇%にすぎぬ
政府施策住宅中、その八〇%を
公庫、
公団等による中産階級向きの
住宅建設に振り向けているのであります。真に
住宅に困窮し、一畳千五百円ないし二千円といった高
家賃で、しかも狭小過密の木賃アパートで人間性を否定されている低
所得者に対しての
公営住宅はわずかに二〇%、
計画総数に対しては八%に満たないのであります。これでは、低
所得者にとっての
住宅難解消は、木によって魚を求めるも同然であります。さればこそ、
日本社会党は、
住宅建設計画法を
改正し、現行五カ年
計画を本年度をもろて打ち切り、
昭和四十五年度を初年度とする新五カ年
計画を策定し、その五カ年間に七百六十万の
住宅建設を行ない、一挙に
住宅問題を解決せよと主張するのであります。
新五カ年
計画におきましては、
計画戸数の六〇%に当たる四百六十万戸を公共機関の
責任において
建設し、さらに、その六〇%に当たる二百八十万戸を
公営住宅に充当せんとしているのであります。
宅地管理法によって地価を引き下げるとともだ、
住宅建設計画法の
改正により新五カ年
計画を策定し、大量の
公営住宅を市街化地域のさら地に職住近接の形で
建設することにより、
住宅困窮者の
住生活を保障しようというのであります。
今般
政府の提案いたしました高額
所得者や建てかえに際しての明け渡し義務化の問題は、こうした地価問題の抜本的解決や
公営住宅の大量
建設といった
政府の
責任を忘れ、これをささいな矛盾の解決とすりかえんとしているのであります。地価の安定は
政府の
決意次第で直ちになし得ることであります。
公営住宅の大量
建設も、
政府の
住宅対策に対する熱意のいかんにかかわっているのであります。
住宅問題解決の抜本的
対策を忘れ、重箱のすみをほじくるような今回の
政府提案よりも、すべからく現行の
住宅建設五カ年
計画を改定し、来年度より出発する新五カ年
計画を策定して、その五カ年間にわが国の
住宅問題を一挙に解決せんとする
社会党提案に、良識ある
委員各位の御賛同を期待するものであります。(拍手)
第四には
家賃政策であります。
政府は、
公営住宅の
家賃の算定に
建設費償却方式をとっております。これは、物価が安定し、地価に変動がないものという前提に立っているのであります。ところが、その後地価はべらぼうに高くなり、
建設費も年々五ないし六%値上がりがあるために、
建設費の償却額は次第に大きくなり、
公営住宅の
家賃も
建設年次により非常に大きな格差を生じてまいりました。その結果、早く
住宅難を免れた者ほど安い
家賃に住み、長く
住宅難に苦しんだ者が高い
家賃を支払い、いまなお
住宅難にあえぐ者は、べらぼうな高い
家賃で劣悪な木賃アパートに住むといった矛盾が出てまいっているのであります。これは
政府のゆがんだ
高度経済成長政策のしからしむるところであり、その地価
対策、
住宅対策の怠慢によるところでありますが、
住宅問題を
社会保障制度の一環としてとらえる限り、
家賃政策にも
社会保障的な
考え方を貫くのは当然であります。
国民は、権利として、国から必要に応じた
住宅の提供を受けるとともに、
能力に応じた
居住費を
負担するといった
考え方に立って
家賃政策を立てるべきであると思うのであります。
日本社会党は、地価問題の解決策として、物価にスライドした離農年金をもって市街化地域の農地を借り受け、ここに大量の
公営住宅を
建設することといたしましたが、物価にスライドした地代を支払う必要から、
家賃の地代部分は年々漸増いたします。それに対処しなければならないというこたとも一つの
理由でありますが、
国民各層間、ことに
公営住宅の入居者間における
居住費負担の不均衡を是正するとともに、低
所得者にその家族構成に応じた
住宅を提供して適切な住水準を保障するためには、
家賃は収入に応じた
家賃を支払うこととすべきであると
考えるのであります。たとえば、基礎控除一万円、扶養控除一人につき一万円といった額を控除した
所得に対して一〇%といった形の、収入別
家賃の
構想に立つべきであります。そして徴収する
家賃の最高限度額は、
建設費償却額プラス地代で押え、なお、経過措置として、現在
公営住宅に住んでいる人々の
家賃は現行のままとすべきであると
考えるのであります。
こうして国はその
責任において
国民の
住生活を保障し、
国民は
能力に応じて
居住費を
負担するという
社会保障的
見地に立つとき、
家賃問題の中に派生するいろいろな矛盾は自動的に解消するのであります。
かかる
見地から、私は、
家賃の団地間の格差は放置し、わずかに一%に満たない収入超過者に立ちのきを要求してこと足れりとするようないまの
政府の態度に反対し、
住宅建設を
社会保障として取り上げようとする
社会党の
家賃政策に賛成するものであります。
最後に、重要な課題として、
住宅建設に対する財政的裏づけの問題があります。
従来の
政府の
住宅政策の失敗はその
戸数主義にあります。
所得倍増とか、十カ年一千万戸
建設などといったキャッチフレーズで、
国民をバラ色の夢で幻惑しようとした従来のインチキな態度を
政府はおごそかに
反省すべきであります。財政的裏づけのない
計画を、絵にかいたもちと申します。従来
政府が真剣に取り組んだ
計画には、すべて財政的裏づけが行なわれております。道路
計画、治水
計画、すべてしかり。そしてこれらの
計画は、投資
規模をもって
計画内容としるしているのであります。しかるに
住宅計画は、ただ単に
計画戸数を示すのみで、その大部分を
民間建設に依存してきたのであります。万事他力本願で、何でもよい、ただ数が建ちさえすればいいではないかといった投げやりな形で放置されていたのであります。そこに、いつまでたっても解決しない
住宅問題の根本的な
原因が横たわるのであります。
本年度
政府の一般会計予算六兆七千九百億に対する道路予算は四千九百八十億、その七・四%であります。それに対して、
住宅予算は七百九十四億、わずかに一・二%にすぎません。
経済の高度成長の支柱を自動車産業に求め、マイカーのはんらんでばく大な道路投資を余儀なくされているのが、今日の
日本の公共投資の姿であります。自動車産業への奉仕に追いまくられ、それでも交通災害や排気ガスの公害に苦しめ抜かれているのが、わが国
政府のとる
経済政策であります。地価
対策にもっと早く目ざめ、
住宅産業を
経済復興の支柱としたら、すでに
日本に
住宅難は消失し、
国民はもっと明るい豊かな生活に恵まれていたであろうと思うのであります。
政府の財政
計画に対し、われわれは、道路投資以上の
住宅投資を求めるよう、
住宅建設計画法
改正の中に規定すべきであると思うのであります。すなわち、同法第三条に第二項を加え、国は少なくとも一般会計予算の一〇%、財政投
融資の一〇%を、
住宅難解決の日まで
住宅投資に振り向けて、住問題の早急なる解決をはかるべきことを規定せんとするのであります。
戦後二十数年、平和憲法のもとに持続した平和
経済の成果として、
国民生活は次第に向上しつつあります。
国民の衣食の欲求おほぼ満たされ、しかも戦後そのままに放置された
住宅環境の改善は、いまや切実な要求となりつつあります。
経済界もこれを読み取り、
日本経済の支柱を、自動車産業より
住宅産業へと転換せしめんとする意図すらほの見えつつあるのであります。おそまきながら、
経済界も、総合産業としての
住宅産業の
国民生活の中に占める
比重とその重要性を認識し始めたのであります。
経済の成長とともに進む都市化現象、それに対処するための新都市
計画法の実施、いまこそ地価問題の解決に絶好の
機会であります。かつて、「農地は耕作農民へ」という合い
ことばで農地改革が行なわれました。いまこそ、「
宅地を居住する市民へ」なる合い
ことばをもって
宅地改革を行なうべきときであります。これは切実なるわが
国民の声であります。
政府はこの
国民の輿望にこたえるとともに、大
規模な
住宅投資を果敢に行なうべきであります。
宅地を公共の管理下に置くことによって地価を引き下げ、
公営住宅を中心とした公共賃貸
住宅の大量
建設によって
国民の
住生活の安定を期すべきであります。
かかる
見地に立って、私は、
政府提案にかかる
公営住宅法の
改正に反対し、
日本社会党提案の
公営住宅法等の一部を
改正する
法律案に賛成するものであります。
委員諸君の御賛同を期待して討論を終わります。(拍手)