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佐藤(達)
政府委員 最初に弁明を申し上げておきますが、いまのおことばの中に、
昭和四十年の法律の附則に九十日でしたか、何か期限が切ってある、それをも無視しておるではないかということがございましたけれ
ども、これは申すまでもなく、その実施期限というのは、当時公務員法が改正されまして、たしか職員の教育、訓練とかいうことばが研修に直りまして、それが職階に関する法律の中に同じことばがありましたものですから、公務員法とことばを合わせる
意味で研修ということばに直した、その実施が公務員法の実施と同じ何カ月以内に実施されるべきだということでございまして、この職階制自身をいつまでにつくり上げろという
意味のタイムリミットではないわけであります。
しかし、それはつけたりの問題で、お尋ねの重点をなしておりますのは、もう十年余もたっておるのに何ごとかとおしかりを込めてのおことばだと思いますが、これはそういうふうにごらんになるのは一応ごもっともであろうと率直に申し上げておきます。ただし、その間われわれは何もしないでぶらっと遊んでおったのかという点は、これはとくと御了解をいただかなければならないと思います。少なくとも私自身が総裁になりましたときにも、いま法律ではっきりうたわれておるものの中で実現していないものとしてこれが一番顕著なものである、いずれぐずぐずしておると、法律があるににかわらず人事院はなまけておるではないかという御
指摘がきっとあるぞ、そういう御
指摘に答えられるというようなことはつけたりでありますけれ
ども、事柄の本質からいって、われわれとしてはこれを一日も早く確立すべく努力をしなければならぬということを申しております。途中で、これも御記憶かとも思いますけれ
ども、その
日本的職階制を人事院は
検討しておるというような新聞記事が相当大きな活字で見出しになって出たことがあります。つけたりでありますけれ
ども、この職階制というのは、公務員の組合の諸君からは非常に警戒をもって臨まれておりまして、そのときも人事院は職階制をいよいよやるそうだ、一体総裁、どういう考え方でそれをやるのだというようなかけ合いを受けたことがございます。一つの面からの誤解としては、やはり昔の身分制、階級制というようなものを職階制によって確立するのではないか、それから職務給をそれによって導入することから、いままでは相当幅広い給与制度になっておったものが、非常に窮屈な職務に即してのワクの狭い頭打ちの給与制度になるのじゃないかというような懸念が相当あられたように思います。しかしわれわれとしては、職階制が直ちにそういう結果に結びつくものではないのであって、職階制は一つの分類表である、分類表をいかに任用の面に結びつけるか、あるいは給与の面に結びつけるかということは、またそれに伴う別の作業の問題であるからして、職階制をつくったからといって心配されるような身分制の確立だとかあるいは給与の頭打ちを導入するというようなものではないということは弁明してきておるわけであります。その新聞記事をごらんになってもわかりますように、とにかくすでにその当時から努力しておるということであります。
そこで、私はいろいろなことを申し上げて、ことばの裏に私の気持ちをくみ取っていただきたいと思いますけれ
ども、非常にいい機会だと思いますので、ことばは少しふえますけれ
ども、お許し願いたいと思います。
ちょうど東京オリンピックの年に西ドイツの
政府からたまたま招待を受けまして、私
ども三週間でしたか四週間ばかり向こうの役所及び公務員、組合、その他つぶさに歴訪する機会を得ました。そこで向こうの制度をいろいろと
検討したのでありますけれ
ども、たとえば西ドイツでは職階制度というものはつくっておらない、つくらなくともりっぱにいくのだということを言っておって、これは
アメリカから占領中に示唆を受けたらしいのですけれ
ども、職階制はつくらぬ、私のところではあまり
意味を持たぬものと考えているというようなことで、やっておらぬ。大体職階制の本場は
アメリカ流のものであるわけであります。私
どもはこの職階制というものはそんなに
意味のないものかというと、それは決してそうではないと思います。ただいまのことばの中にもありますように、職務の分類というものは正確な分類をひとつつくって、これを表にして、その表をながめながらこの職務についてはどういう給与をあてがう、この職務についてはどういう任用方法をとるというたてまえを考えるということの
意味において、相当意義深いものがある。ただしこれも前回私
どもの局長からお答えしたと思いますけれ
ども、実は
昭和二十七年にこれをつくったわけであります。そうして告示もしましたし、国会にもこれを御提出申し上げた。ところが国会は全然御審議なさらないで、審議未了になってしまった。片やこの告示に基づいてわれわれののやった給与の規則とかなんとかというようなものにつきましても、今度は各省から猛反撃を食った。ちょうど私はそのころは人事院ではなしに、各省側にいたわけでありますけれ
ども、何百という職種をつくって、まるで電話帳みたいなものじゃないか、それで一体実情に合うのかという批判を私自身が申したことがございます。そういう批判が各省から巻き起こりました。片や国会は御審議にならないというようなことから、これが実はたな上げの形になってしまった。
そこで第一にそういう経過から考えて、私自身が猛反省を加えなければいけないのは、これは
アメリカ流そのままの直
輸入のこまかい分類表などというものは、
日本の実情には合わない。そこで先ほど新聞の見出しになったと申し上げましたように、われわれは新たなる
構想によって
日本的の職階制をつくる。それはまず最初から合理的なおそらくどこからもおほめを受けるような職務分類はできないだろう。しかし現実を考えてみれば、給与の制度の上においてもいろいろな職種を考える、また公務員法でありましたか、給与法でありましたか、職階法ができるまでは現在の給与法に基づく職務の基準、これが職階法にかわるべきものであるということを法律自身がオーソライズしてくれているわけであります。そういう点から見ても、インビジブルな職階制というものは、いまの制度のもとにおいてもある。あの俸給表をごらんになりましても、これは非常にラフな分け方でありますけれ
ども、行政職、研究職、ちゃんと俸給は分かれておる。そうして研究職の中のどういう職種についてはこうと標準職務というものが規則でこまかくきまっております。これこれの標準職務の者についてはここからここまでの俸給をやる、これはある
意味ではりっぱな職階制が給与の面でできておると思います。
今度は採用の面から申しましても、御
承知のように公務員試験の種目というものは職種によって多様に分かれ、行政職あり、法律職あり、医療職あり、ことに理科系においては非常にこまかく採用試験の分類ができている。これもインビジブルな形の職階制といっていいのではないか。したがってわれわれはあまり大それた理想を追わないで、現実にインビジブルな職階制というものができている、それを一応表に出して、図にかいてみる。とにかくそれは法律の
要請にも合う。いまのインビジブルなものをビジブルにするというようなことじゃ
意味がないじゃないか。そういうわけじゃない、
意味は十分ある。一つの表にとにかくつくってみれば、今度はそれを見ながら、現在の給与制度はこれで妥当かどうか、あるいは採用試験の分け方は妥当かどうか、そういう反省のこれは大きな地図として手がかりになるのじゃないかという
意味でやろうじゃないかということで、いまも
日本的職階制というものを私
どもとしては確立すべくずっと努力をしているのであります。
しかしこれはかつての苦い経験というようなことから申しましても、軽々しく乗り出すべきものではない、よほど慎重に臨まなければならぬということで、これは決算
委員会においては御
承知と思いますけれ
ども、数年来毎年この問題では百五十万円程度のそのための予算をいただいておりまして、大体そのうち約七十万円、これを
調査旅費として、それに基づいて
調査をいたしまして、大体一年当たり進捗率は、非常に人数が少ないものでありますから、目ざましくはありませんけれ
ども、毎年大体六十程度の役所につきまして職務の実態
調査をやって、そのつど
調査結果をまとめております。もちろん
民間でもやっていらっしゃる。
沖繩がやっておられるわけでございますので、
沖繩にも人を派遣して、先年、三年ぐらい前になりますか、一体どういうやり方をしているのかということで資料を集め、たびたび中間報告を私自身がとって話を聞いて、
検討に
検討を重ねておるわけであります。それだけの努力はしておりますけれ
ども、先ほど来申しますようにこれはなかなか軽々しく踏み出すわけにはいかぬ。かつての苦い経験を顧みます場合においては、慎重に努力を重ねていくべきであるということでやっておるわけであります。
いろいろ申し上げたいこともありますけれ
ども、一応そういう努力をしておるということだけは、御了解をいただきたいと思います。