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1969-04-22 第61回国会 衆議院 決算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年四月二十二日(火曜日)    午前十時四十三分開議  出席委員   委員長 中川 俊思君    理事 鍛冶 良作君 理事 白浜 仁吉君    理事 丹羽 久章君 理事 水野  清君    理事 田中 武夫君 理事 華山 親義君    理事 吉田 賢一君       菅波  茂君    水田三喜男君       赤路 友藏君    石野 久男君       高田 富之君    浅井 美幸君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 斎藤  昇君  出席政府委員         大蔵政務次官  上村千一郎君         大蔵政務次官  沢田 一精君         大蔵大臣官房会         計課長     阪上 行雄君         大蔵大臣官房審         議官      細見  卓君         大蔵省主計局次         長       船後 正道君         大蔵省主計局次         長       海堀 洋平君         国税庁長官   亀徳 正之君         厚生大臣官房会         計課長     横田 陽吉君         厚生省薬務局長 坂元貞一郎君         厚生省児童家庭         局長      渥美 節夫君         建設省道路局長 蓑輪健二郎君  委員外出席者         経済企画庁総合         開発局参事官  島村 忠男君         会計検査院事務         総局第一局長  斎藤  実君         会計検査院事務         総局第三局長  増山 辰夫君         会計検査院事務         総局第五局長  小熊 孝次君         医療金融公庫理         事       若松 栄一君         環境衛生金融公         庫理事長    大山  正君         専  門  員 池田 孝道君     ————————————— 四月二十二日  委員三宅正一辞任につき、その補欠として高  田富之君が議長指名委員に選任された。 同日  委員高田富之辞任につき、その補欠として三  宅正一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十二年度一般会計予備費使  用総調書(その2)  昭和四十二年度特別会計予備費使  用総調書(その2)  昭和四十二年度特別会計予算総則  第十条に基づく使用調書  昭和四十二年度特別会計予算総則  第十一条に基づく使用調書(そ (承諾を求  の2)             めるの件)  昭和四十三年度一般会計予備費使  用総調書(その1)  昭和四十三年度特別会計予備費使  用総調書(その1)  昭和四十三年度特別会計予算総則  第十一条に基づく使用調書(そ (承諾を求  の1)             めるの件)                   昭和四十二年度一般会計歳入歳出決算  昭和四十二年度特別会計歳入歳出決算  昭和四十二年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和四十二年度政府関係機関決算書  昭和四十二年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和四十二年度国有財産無償貸付状況計算書  (大蔵省所管厚生省所管医療金融公庫、環  境衛生金融公庫)      ————◇—————
  2. 中川俊思

    中川委員長 これより会議を開きます。  昭和四十二年度一般会計予備費使用調書(その2)、昭和四十二年度特別会計予備費使用調書(その2)、昭和四十二年度特別会計予算総則第十条に基づく使用調書昭和四十二年度特別会計予算総則第十一条に基づく使用調書(その2)、以上四件の承諾を求めるの件、及び昭和四十三年度一般会計予備費使用調書(その1)、昭和四十三年度特別会計予備費使用調書(その1)、昭和四十三年度特別会計予算総則第十一条に基づく使用調書(その1)、以上三件の承諾を求めるの件を一括して議題といたします。  これより審査に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。田中武夫君。
  3. 田中武夫

    田中(武)委員 昭和四十三年度一般会計予備費使用調書(その1)外二件のこの付託書を見ますと、「右、日本国憲法第八十七条第二項及び財政法第三十六条第三項の規定によって、事後承諾を求めるため国会に提出する。」となっております。そこで、憲法八十七条第二項を見ると「支出」ということばを使っておりますね。財政法三十六条三項は「支弁」ということばですね。そこで、この「支出」と「支弁」というのは一体どう違うのですか。ここで求めようとするところの事後承諾はどのような性格か。憲法八十七条二項でいう事後承諾を求めるというものと、財政法三十六条三項というか、三十六条によって求める事後承諾というもののその性格は同じなのか違うのか。さらに、財政法三十五条を見ますと、これは内部規定というか行政内部の問題についての規定のように私は思うのですが、これには「使用」ということばを使っておるのですね。したがって、「使用」と「支弁」と「支出」と、こういうようにことばが使い分けられておるのですが、これをひとつはっきりと、「使用」とはどういうことか、「支弁」とはどういうことか、「支出」とはどんなことか、さらにこの承諾を求めようとするものの内容性格は、憲法第八十七条第二項によれば「支出」であり、財政法三十六条三項によれば「支弁」である、したがって、事後承諾を求めようとするこの案件性格は一体何なのか、何を事後承諾を求めようとするのか、以上お伺いします。
  4. 船後正道

    ○船後政府委員 財政法の非常にむずかしい御質問でございますが、御承知のとおり、財政法は、憲法財政に関する章の実施手続を定めておる、まあ憲法に付属した法律でございます。  そこで、この予備費手続につきましても、やはり憲法八十七条から発するわけでございまして、私どもの考えでは、八十七条によりまして予備費支出について国会事後承諾を求めねばならぬというところを受けまして、この三十五条、三十六条の規定ができ上がっておるわけでございます。したがいまして、この三十六条にいうところの、予備費をもって支弁した金額について国会事後承諾を求めるということは、八十七条にいうところの予備費支出についての事後承諾とまさに同じものである、かように考えております。
  5. 田中武夫

    田中(武)委員 答えになっていないね。「支出」とはどんなことで、「支弁」とはどんなことなんです。「支出」とは財政法上どういうことなんですか。憲法でいう「支出」とは具体的にはどんなことで、それから三十六条三項の「支弁」とは一体どんなことなのか。それから三十五条の「使用」とはどういうことなのか。しかもこれは「使用調書」となっていますね、「使用」。厳格にいうならば「支弁調書」じゃないですか。支弁したということになっておるのではないですか、三十六条第三項は。秀才、どうした。
  6. 船後正道

    ○船後政府委員 憲法八十七条には「支出」ということばを使っておりますが、憲法には全般的に非常にばく然とした規定があるわけでございます。財政法におきましては、この「支出」あるいは「使用」「支弁」ということばはかなりはっきりと使い分けておるわけでございます。  財政法による「支出とは」、御承知のとおり第二条で「国の各般の需要を充たすための現金の支払をいう。」かように規定しておるわけでございます。それから「支弁」ということばは、財政法の十二条とそれからこの三十六条とに出てくるわけでございますが、この場合の「支弁」というのは財源にかかわる用語でございまして、平たく申せば、何々をもってまかなうというような意味で、これは旧会計法当時から便っておる用語でございます。予備費というのは、一方、財源の留保という性格を持ったも一のでございますから、予備費をもってまかなったというような意味でございます。それから予備費使用と申しますのは、これは憲法八十七条にいうところの予備費支出一つ手続でございまして、新しい項の金額をつくりあるいは既定の項の予算金額を増加するといったような措置を、予備費使用ということで定義づけておる、かように考えております。
  7. 田中武夫

    田中(武)委員 この「支出」というのは、具体的に使った金、そうなんですか。支弁した金額というのは一体何です。「使用」ということばが、憲法八十七条の二項は「支出」となっているのですね。そうすると、ここで求めようとするのは、あなたの説明でいくならば、現実予備費でもって支払った金について事後承諾を求めるのかというとそうでもなさそうですね。その点がはっきりしないと言っておるのですよ。
  8. 船後正道

    ○船後政府委員 事後承諾をお願いいたしますのは、憲法八十七条にいう予備費支出でございます。それは財政法では三十五条の手続を経ました予備費使用決定額そのものを、三十六条によりまして国会事後承諾を求める、かように考えておる次第でございます。そのようにいたしませんと、たとえば「支弁」ということば財政法にいうところの「支出」と同じように解釈いたしますと、「支出」は現金支払いでございますので、予備費の項から現実現金支出されないわけでございます。予備費使用決定されましたそれぞれの項から現実支出が行なわれるわけでございます。そうでございますから、財政法におきましてはこの「支弁」ということばは、平たく申せば先ほど申しましたように、こういう財源からまかなうという意味で使っておるわけでございます。
  9. 田中武夫

    田中(武)委員 あなたの言うことばで申せば「支出」ということは財政法二条で明確になっておる、こういうことです。これが実際に使った金を意味するのだというのですね。そうすると、憲法の八十七条二項の「支出」というのとは違うのですか。憲法の八十七条には「支出」ということばを使ってあるのですね。それを受けた財政法の第二条によって憲法八十七条第二項の支出定義をきめる、こういう考え方なんですか。
  10. 船後正道

    ○船後政府委員 財政法憲法と同時に成立しておる法律でございますが、その憲法で「支出」といっておりますことばを受けまして、財政法の中では現金支出に至りますまでの諸手続をいろいろな段階で書き分けねばならぬわけでございます。そこで財政法では「支出」ということばを二条のような限定した意味で使っておる。憲法のいうところの予備費支出事後承諾は三十五条、三十六条が受けておるわけでございます。その点では憲法八十七条にいう「支出」と財政法二条にいう現金支払い意味する「支出」とは、若干意味が違う、かように考えております。
  11. 田中武夫

    田中(武)委員 それはおかしいですね。同じ日本法律ですよ。憲法が優先することは言をまたないんだ。憲法の「支出」ということば財政法の「支出」とが違うというのはおかしいね。あなたの説明ではわかりません。責任ある人が出てきて答弁してください。それでわからなければ権威ある学者を呼んで、ひとつこの点「使用」と「支出」と「支弁」をはっきりさせましょうや。憲法第八十七条第二項及び財政法第三十六条第三項の規定によって事後承諾を求めるの件なんですよ。われわれが事後承諾を与えるのは、いわゆる現実に支払ったのじゃない。実際そうなっておるのですよ。ところが財政法の「支出」からいえば、現実に支払った金だというのです。そうでしょう。実際にいままでの取り扱いはこういうことでやってきて、いわゆる予算流用したとかあるいは予備費をどうしたとかいうことで支払う行政府の権限というか、それに対して事後承諾を与えておる。そして実際にやったものは、決算あとでチェックするという行き方が一つだと思うのです。しかし、どうです皆さん、いまの次長の答弁で「支出」と「支弁」と「使用」がはっきりしましたか。私はしません。あなたは責任持って出てきたのだが、それが大蔵省としての責任ある答弁ですか。わかりません。答弁できる人とかわってきなさい。
  12. 船後正道

    ○船後政府委員 憲法八十七条にいう「支出」、これは憲法の中ではっきり定義があるわけじゃございません。私申し上げておりますのは、財政法で使っております「支出」ということばが二条に掲げるような……。
  13. 田中武夫

    田中(武)委員 おかしいですよ。同じ日本法律で、憲法の文言が財政法によって縛られることはないですよ。競合したときは憲法が優先するのはあたりまえじゃないですか。君は何ということを言うんだ。したがって憲法八十七条第二項と財政法三十六条三項を「及び」で両方求めることになっておるが、一体われわれは何に承諾を与えるのですか。その性質は何なのか、説明できないじゃないですか。それであなた大蔵省を代表して出てきたのですか。わかりません。もっと大蔵省でわかる人とかわってきてください。−法制局が出てきてやるならやってもいいよ。委員長、どうしてくれます。
  14. 中川俊思

    中川委員長 ちょっと速記をやめて。     〔速記中止
  15. 中川俊思

    中川委員長 速記を始めて。  ただいまの田中君の質疑の問題は、後日あらためて行なうこととします。田中武夫君。
  16. 田中武夫

    田中(武)委員 昭和四十三年度一般会計予備費使用調書(その一)外二件、この印刷物の九九ページです。  道路事業及び街路事業等調整に必要な経費として、四十三年の九月と十一月ですか、二回にわたって、総額で二十四億四千九十四万円が、国土総合開発法によって総理府所管経済企画庁予算項目国土総合開発事業調整費として国会議決を得た中から、今度は道路整備特別会計ですか、これにそれだけの金額流用しておるのですね。そうでしょう。これはどういうことなんですか。
  17. 島村忠男

    島村説明員 ただいまお尋ねの国土総合開発調整費につきましては、これは予算総則におきまして、毎年実施にあたります各省庁所管の組織上必要とする予算移しかえをするという御承認を願っておりまして、それに基づきましてそれぞれの公共事業につきまして移しかえをいたしておるわけでございます。
  18. 田中武夫

    田中(武)委員 その移しかえというのは一体どういうことなんですか。これは財政法その他の法律命令等には出てきませんし、この移しかえということばはどういうことなんです。予算総則と言ったけれども、予算総則大蔵省等政府部内の問題ですね。部内でかってにきめたものですよ。移しかえというのは法律的にどんな根拠があるのですか。移しかえというのは財政法基礎はどこにあるのですか。
  19. 船後正道

    ○船後政府委員 移しかえとは予算執行責任所属を変更する場合に使っておりますが、予算総則にその規定を設けております根拠財政法二十二条の第六号でございます。
  20. 田中武夫

    田中(武)委員 一号から五号まであって、「前各号に掲げるものの外、予算執行に関し必要な事項」これが基礎だというのですか。こんな広範な以上のほかというような一般的な問題で移しかえというようなことをどんなにでもできるというふうに解するのですか。それと三十三条との関係はどうなんです。三十三条では移行及び流用についての制限がありますね。それがあるにもかかわらず、二十二条の六号によって省にまたがって移しかえができるということなら、三十三条の制限というのは一体どういうことになるのですか。
  21. 船後正道

    ○船後政府委員 財政法三十三条は、予算の移用及び流用に関する規定でございます。この場合は予算目的外使用についての規定でございます。これに対しまして移しかえの行為は、予算執行に関する責任所属を変更するという行為でございます。
  22. 田中武夫

    田中(武)委員 三十三条はなるほど項目でそれぞれの目的がある。それを一方から一方へ移用したりそれから流用するときに、三十三条各項以外のことはできない、こういう趣旨なんですね。この場合は道路整備とかなんとかいうことについての目的は同じだ、こういうことにしても、省が変わっているのです。必要ならばなぜ最初からそういう予算を組まないのですか。しかもほとんどが移しかえ減になっているのでしょう。予算面からいうなうば五分の四が移しかえ減になっているのです。そんなばかなことが二十二条の六号、「前各号に掲げるものの外、」云々という、こんなことでやれるのですか。そんなに権限大蔵省主計局というかにはあるのですか。そんなことならこの財政法趣旨などというものはとっくに死んでしまいますよ。そうじゃないですか。五分の四以上移しかえ減というのは一体どういうことなんですか。これは予備費使用じゃないですよ。それがなぜ予備費使用として総調書に出てくるのですか。予備費使用じゃないでしょう。これは一応総理府予算として予算審議の終わった金額です。それを建設省なり厚生省なり移しているのでしょう、予備費とは違うのですよ。予備費使用承諾を求める件の中になぜそれが出てくるのですか。これもおかしい。出直しなさい。
  23. 船後正道

    ○船後政府委員 移しかえは予算総則に定められた手続によってやります限りでは、そのもの自体国会の御承諾の対象ではございません。ここで国会の御承諾をお願いしておりますのは、道路特会におきまして一般会計からの受け入れが増加したことに伴いましていわゆる弾力条項使用する、その関係でもって国会の御承諾をお願いしておるわけでございます。
  24. 田中武夫

    田中(武)委員 これになるとまた基本的な論議で検討しますということにさかのぼるのだが、予算総則十一条とか十条というけれども、予算総則というのは性格は一体何ですか。法律ですか、そうじゃないでしょう。言うならば、政府部内というか、役人が予算処理がしやすいようにきめた一つの内規にすぎぬじゃないですか。それを法律と同じようなレベルにおいて論ずることはやめてください。予算総則の本旨とは何なのか、性格は何なのか、ひとつはっきりしてください。
  25. 船後正道

    ○船後政府委員 財政法十六条によりますと、「予算は、予算総則歳入歳出予算継続費繰越明許費及び国庫債務負担行為」かようにございまして、第二十二条に、その予算総則内容につきまして掲げておるわけでございます。  いずれも歳入歳出予算執行するために必要な諸事項等をここに掲げておるわけでございます。
  26. 田中武夫

    田中(武)委員 財政法根拠を持つというのは、それがあたかも法律レベルのような考え方で、何か言うと予算総則予算総則ということを持ち出すのですが、内部事務処理規定じゃないですか。そうでしょう。内部事務処理規定によって予算の五分の四も移しかえなんて、そんなばかなことがあるものですか。初めからわかっておるなら、それぞれのところに予算をつけなさいよ。そうじゃないですか。いままでそうしておりましたでは通しませんよ。  それから決算を見ても、一体それが四十二年度の決算ではどう出てくるのです。どこへ出てくるのです、この金は。  そしてついでですから申しますが、同じような弾力条項についての処理文部省国立学校特別会計では、決算書歳出の中に予算総則規定による使用額というのがあって、そこに出てくるようになっておるのですね。建設省にはそんなのはないのですよ。予算総則予算総則とおっしゃるのならば、なぜ予算総則規定による使用額というのが決算に出てこないのです。決算書の一部をリコピーしてきておるのですがね。
  27. 船後正道

    ○船後政府委員 まず初めのほうの御質問にお答え申し上げます。  予算総則予算内容でございますので、国会議決をいただきましたものでございます。その範囲内で執行しておるわけでございますが、このようになぜ各省庁移しかえを必要とするかという問題でございますが、国土総合開発事業調整費、一般的にこういった調整費性格を持つものにつきましては、予算執行上出てまいります各省庁の種々の事業執行の不均衝調整するという性格のものでございますので、当初からある省庁に組めればいいわけでございますが、そうはまいらない。どうしても執行過程でもって弾力的にやる必要があるという性格のものでございますので、予算総則移しがえの規定を設けておる次第でございます。
  28. 田中武夫

    田中(武)委員 あとのやつはあとにしましょうね。  しかし五分の四ですよ、移しがえ減というのが。そんなでたらめなことをやるのですか。それじゃもっとさかのぼって、国土総合開発法からいきましょうか。その規定に基づいてというんだが、その規定に、どこにどういうことが書いてあるのです。説明書には、「国土総合開発法等に基づき」とあるが、国土総合開発法の何条によってそういう移しがえの根拠が出てきたのか、それからひとつ説明してもらいましょう。
  29. 島村忠男

    島村説明員 国土総合開発法には、調整費に関する根拠規定移しかえ等に関することも含めまして、これは一切ございません。ただ先ほどから大蔵省の御答弁にもありましたとおりで、予算総則財政法系列において、これは御審議願ってまいるということでございます。
  30. 田中武夫

    田中(武)委員 国土総合開発法にはそういう規定は一切ないのです。ところが、説明の一番冒頭に「国土総合開発法等に基づき」となっている。まず説明の一番冒頭にうたっている法律にその根拠がないのです。これもアウトにしておきましょう。もっと責任ある人に出てきてもらって説明してもらいましょう。
  31. 島村忠男

    島村説明員 重ねてお答えいたしますが、国土総合開発法には法的な根拠は明記してはございませんけれども、国土総合開発法の中には調整権限というのが非常に強くうたわれております。その総合開発調整に基づいての意味でそのような取り上げ方になっているのだと心得ております。
  32. 田中武夫

    田中(武)委員 「国土総合開発法等に基づき」云々となっているんですよ。国土総合開発法のどういう規定からこうなったか、まずそれを説明してもらわぬとわからぬ。冒頭そうなっている。そうじゃないのだったら、これは印刷し直してください。−では、これも保留。次に決算書説明してください。
  33. 船後正道

    ○船後政府委員 決算の場合に、国会の御承諾をお願いするにつきましては、予備費支出した場合、弾力条項使用した場合、この一、つの場合でございますが、まずこの調整費のように一般会計に計上してある経費特会のほうに受け入れます。そうしますと、特別会計のほうでは歳入が増加するわけでございますが、その歳入増加に伴いまして特別会計のほうでは歳出権がふえる。そのふえる歳出権弾力条項によりましてふやした場合には、予算総則第十一条に基づくものとして国会の御承諾をお願いしております。それから他方、弾力条項によらないで特別会計予備費範囲内で歳出権をふやすという場合には特別会計予備費使用として国会の御承諾をお願いする、このように手続が分かれております。
  34. 田中武夫

    田中(武)委員 私の言っているのは、同じようにいわゆる移しかえといいますか、その流用したやつについて、文部省のたとえば国立学校特別会計決算書を見ると、最初から流用等増減額という欄がちゃんとあるわけですね。ところが、道路整備特別会計歳入歳出決算書には、そういう欄はないのです。これは各省によってまちまちですか。そういう欄はないんですよ。たまたまそこがゼロになろうがなるまいが、同じ形式にやったらどうです。それから弾力条項弾力条項とおっしゃいますが、弾力条項ということもこれは政府部内のかってなことばなんです。財政法にはそんな根拠はないのです。あえて言うならば、いま言っておった二十二条か、予算総則ということが出てくる。そこにかってに入れたやつですね。これは私先日来言っておる。そういうことでやるのではなくて、これは別に補正をすべき問題であるということについては、これはもう別個の問題としてやっておる。弾力条項なんて言っておられますが、どこをひっくり返しても、財政法とか憲法にはそういうものは出てこないのです。財政法には法律的根拠はないのですよ。あえて言うならば、予算総則が「総括的」云々ということで二十二条で委任しておる、こう言えるかもしれないが、あれはそういうところまで委任しておるのじゃないですよ。できるというならもっとさかのぼって、憲法法律政令、どんな性格のものなのか、政令では一体どの程度のものがきめられるのか、憲法にも政令規定がありますね、等々に根本的な問題の論議を発展したいと思いますが、いかがです、受けて立ちますか。fこれもアウト。
  35. 船後正道

    ○船後政府委員 弾力条項そのものにつきましては前回大蔵大臣も申し上げたとおりでありますが、ただいま先生御指摘になりました四十二年度の決算文部省と国土総合開発との相違でございますが、御指摘の文部省国立学校特別会計、これは病院収入が増加いたしましたのに伴いまして、その範囲内で医薬品その他の経費を増加する、いわゆる予算総則十一条を弾力条項でございますが、そのような扱いで国会の御承諾をお願いいたしております。  それから国土総合開発のほうでございますが、このほうは、四十二年度におきましては、特別会計歳入におきまして一般会計受け入れが増加いたしておりますけれども、特別会計歳出特別会計予備費でもって措置いたしておる、このような関係になったわけでありますが、この点は四十三年度からは統一的に扱う予定でございます。
  36. 田中武夫

    田中(武)委員 それも聞いておるので、やられると思って今度は形式を変えろということが論議になっていることは知っています。しかし、指摘される前になせ!これはまちまちのやつはとうなんです、ちゃんと一つの形式があるのじゃないですか。一方には同じような性格のもの、それが弾力条項であることは間違いないのです。収入の道が違っておったとしても、弾力条項であることは間違いない、あげる欄がちゃんとある、片方にはないのです、どうなんです。これは特別会計決算には一つのちゃんとしたフォームをつくったらどうなんです、違うじゃないですか、まちまちじゃないですか。それは四十三年度から改めようとしておる、やられるということに気がついてきたのですよ。だから四十三年度は−四十三年度はいま出てきてないのですから、四十二年度でいったら少なくともまちまちのものが出てきておるということなんです、そうでしょう、違いますか。かりになかったらその欄をゼロにすればいいじゃないですか、そういう決算書が出ておるじゃないですか。
  37. 船後正道

    ○船後政府委員 私ちょっとことば足らずでございました。四十二年度の道路特会におきましては、弾力条項使用したという実績がないわけでございます。そして四十二年度の道路特会におきましては、特会予備費を使って所要の予算の不足に対処した、こういうことでございますので、四十二年度の道路特会では、いわゆる弾力条項は適用いたしておりません。
  38. 田中武夫

    田中(武)委員 使っていなかったら欄を設けないのですね。それなら四十二年度の決算予備費使用、四十二年度のこれは全部ゼロですよね、使っていない、ゼロ、ゼロ、ゼロが並ぶのに、なぜこんな欄を設けたのです。言いわけはよしなさい。各省庁特別会計によってフォームが違う。ちゃんとした一つの必要な項目は、使ったものがなければゼロであげたらいいのですよ。あなたの説明では、四十二年度の経済企画庁の、たとえば決算予備費使用額というのがあるのです、そこは全部ゼロ。ゼロが全部並んでいる。使っていないのならなぜこれをあげたのです。
  39. 船後正道

    ○船後政府委員 使ってないのに……(田中(武)委員「使ってないからあげていないというなら、欄を設けていないというなら、片方には使ってないのも欄があるじゃないか」と呼ぶ)予備費使用の実績がないのにゼロということであげておるではないかということでございますが、これは、財政法三十八条の二項の、歳入歳出決算は、左の事項を明らかにして作成するというように法律上義務づけられておりますので、使用の実績がない場合にはゼロとして掲げることになりますが、他方、弾力のほうは、これは先生非常に問題になることでありますけれども、従来から、弾力条項を発動いたしました場合にはそれを掲げる、そうでない場合にはこれを掲げないということで整理しておる次第であります。
  40. 田中武夫

    田中(武)委員 根本問題に触れてきたと思うのです。弾力条項というのは、そういう名目でかってなことが行なわれておる、それは決算の面で、一方では予備費使用については、なくたって欄を設けてちゃんとゼロになる、これは法に規定があります。一方、法律規定がないから、使ったときは欄を設けてあげるけれども、そうでなかったら欄を設けないと言ったのです。これは弾力条項を軽視というか、そういう扱い方になっておる。そのもとというと、財政法根拠がないからあげなくてもいいの、だ、裏を返せば、弾力条項によって予備費以上の金をどんどん使っているのです。何でも弾力条項にほうり込んでかってなことをやっているということが出てくるのです。そうじゃないですか。したがって弾力条項というものについては、もっともっと堀り下げて検討する必要がある、こういうことなんです。言っていることは間違いないですか。また、少なくとも弾力条項について、予備費使用と同列において国会事後承諾を求めるとして出てきておるのですね。ならば、なぜ使ってなくてもその欄を置いて、ゼロ、ゼロ、ゼロで——使ってなければ出てこない、まちまちじゃないですか。それは言いわけですね。しかし言いわけにはなりません。今後どういうようにするのか、はっきりしてください。
  41. 船後正道

    ○船後政府委員 弾力条項につきましては、田中先生の前からの御指摘に対しまして、大蔵大臣、主計局長もお答えいたしておりますとおり、弾力条項そのものの扱い方につきまして、財政制度審議会にもはかって検討いたしたいと考えております。
  42. 田中武夫

    田中(武)委員 それは大臣がそうさしてもらいますと言っておるのだから、それ以上私は言いませんが、ことほどさように軽視をし、かってなことを行なっておった、そういうことなんです。一方においては、あってもなくても欄を設けて決算のときにはっきりするようにする、一方は法律基礎がないから設けなくてもいいのだ、そもそも弾力条項自体が法律基礎がないわけなんですよ。それを流用ということで、あるいはいろいろな操作によってばく大な金が動いておるということなんです。こういうところこそはっきりとしない限り、決算としての役割りを果たせぬと思うのです、そうじゃないですか。違いますか。−ではこれもひとつはっきりした責任ある答弁を、弾力条項それ自体については、これは大臣がそう言っておるからいいです。決算面における扱い方、各特別会計決算の、決算書のフォーム、型、こういうものについてどのように統一するか、こういう問題も含めて、ひとつ次回に責任ある人から答弁を願います。
  43. 船後正道

    ○船後政府委員 弾力条項を使いました後の決算上の扱いにつきましても、先生いままで御指摘ありました弾力条項に関する種々の事柄等を含めまして検討さしていただきたいと存じます。
  44. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは、いままで質問してきた中で三点ばかりお預けしたと思います。このごろ大蔵省へはたくさん宿題を出すことになりますが、これは次にはっきりと責任ある人から責任のある答弁を要求することにいたしまして、次に入りたいと思います。      ————◇—————
  45. 中川俊思

    中川委員長 昭和四十二年度決算外二件を一括して議題といたします。  大蔵省所管について審査を行ないます。  これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので順次これを許可いたします。田中武夫君。
  46. 田中武夫

    田中(武)委員 政府関係の特殊法人について、及びその職員の給与待遇等々含めてお伺いいたしたいと思います。  まず最初に、政府機関の特殊法人、こういうのを置く目的は何ですか。もちろんそれぞれの特殊法人の設置法というか、特殊法人に目的が書いてあるのです。そういうことを聞いているのではない。特殊法人の性格目的それは一体どういうものですか。
  47. 海堀洋平

    海堀政府委員 いわゆる政府関係機関といっているものをさしてのお話と存じますが、政府関係一機関の中にも、公社あるいは公庫、銀行等予算をもって国会議決をお願いしているものもございますれば、事業、予算について国会議決を経ない公社、事業団等がございます。それを設置するのはなぜかという御質問でございますが、本来でありますれば国が直接行なうのが適当な仕事でありましても、国が行なうとなりますと、国の規制いたします会計法上あるいは事業を遂行する上の各種の法律というものによって行なわざるを得ない。そういたしますと、それの事業遂行の能率といいますか、そういうものがある程度犠牲にされてくる。国会法律もしくは予算等による規制と、それから事業遂行の能率との調和をどの点に求めるかということで、その調和を非常に能率的な遂行のほうに重点を置いたものが公団、事業団等になっております。それから、国会の規制、監督というほうに重点を置いたものが公社となっている。     〔委員長退席、丹羽(久)委員長代理着席〕 したがいまして……
  48. 田中武夫

    田中(武)委員 そんなことを聞いているのではない。一言で……。
  49. 海堀洋平

    海堀政府委員 いわゆる政府関係機関というものは国の公的な仕事を能率的に遂行する必要上設置されていると考えていいんじゃないかと存じます。
  50. 田中武夫

    田中(武)委員 それは本来が行政事務なんですか。政府としてやるべき仕事ですか、どうなんですか。
  51. 海堀洋平

    海堀政府委員 国のやるべき仕事といいますか、いわゆる行政事務の範囲というものが、必ずしも固定的なものじゃないんじゃなかろうか。要するに、経済社会の発展に応じまして、その範囲がそれぞれ違ってくるという意味におきまして、現在の日本の状態を前提といたしました場合に行なわなければならない公的な性格の仕事じゃなかろうかと存じます。
  52. 田中武夫

    田中(武)委員 いまのあなたの答弁では、まだ私は納得できないのだけれども、それはそれとして、要は各特殊法人は独立した一つの法人として、特殊法人法によって定められた目的達成のためにいろいろな仕事をしておる一つの独立体である、そういうことですね。
  53. 海堀洋平

    海堀政府委員 そのとおりでございます。ただその場合に、国はそれに応じました適宜の措置をとるように、たとえば出資をするとか、あるいは財政投融資の金を用いるとか、そういった特殊な措置はとっておりますが、独立した特定の目的を遂行するために設置されました法人でございます。
  54. 田中武夫

    田中(武)委員 そうするならば、これら政府機関の特殊法人のいわゆる理事者というか、使用者、これは独立した人格の上に立っておる。したがって、いわゆる三公社五現業といわれるような三つの公社を除いては、これらは労働関係からいうならば、公共企業体労働関係法の規律を受けない。ところが、そうでないその他の政府機関の特殊法人は、労働三法の保護の上に立っておる、保障の上に立っておる。労働三権はこれらの職員及びこの職員団体には完全に与えられておる、このことはお認めになりますね。
  55. 海堀洋平

    海堀政府委員 それらのいわゆる三公社を除きます政府関係機関の特殊法人の職員につきまして労働三法が適用されていることは事実でございます。しかし、他方、それらの特殊法人の各法律におきましてその職員の給与の基準等をきめる場合には、主務大臣の承認を必要としているというふうに別個にそれを制約——まあ制約と考えれば制約する規定も同時に存在しておるわけであります。
  56. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほど確認しておるように、独立した法人である、これといまの答弁とは若干矛盾してきます。それはそれといたしましょう。  そこで、これら特殊法人の職員、従業員の給与についてはどのように考えておられますか。
  57. 海堀洋平

    海堀政府委員 いま法律的な問題といたしましては、労働三法が適用になっている、他方これらの機関があるいは政府の出資あるいは財政投融資の資金等によって運営されておりますために、その役職員の給与の基準については主務大臣の承認を必要とするという形になっております。  どういうふうに考えているかというお話でありますが、先ほども申し上げましたように、仕事の内容が利潤追求といいますか、営利的な目的を持っていないがために、どこの高さに給与を定めるかという点につきましては、やはりそれぞれの法人の問にあまり差等を設けていくわけにはまいらない、したがいまして、公務員の給与が人事院勧告に基づきまして民間給与に準じて定められている、それを基準にして考えていくというのが妥当ではなかろうかというふうに考えております。
  58. 田中武夫

    田中(武)委員 大体、常識的にというか、そもそもこの出発にあたって、給与についてわれわれが承知しておるのは、一般公務員より一五%くらいは高い、そういうことだったと思うのです。そこで、労働三権の保護を持つところのこれら職員団体、労働組合が春闘として要求を出しておることは御承知だと思う。ところが、これが結局それぞれの独立しておるはずの各法人内の使用者と労働者といいますか、労使の間で実際的に話し合いができない。ということは一つの大きな矛盾であり、当事者能力がないということになるわけですね。しかも、いままでの扱いはどうかといえば、人事院勧告が出る、公務員の給与がきまる、それに右へならえというのがいままでの実情であったようなんです。そうしますと、実際面においては、公務員と同じようなベースアップがあるといたしましても、しかしその実施はうんとおくれる。そういうことになっておると思うのですね。人事院勧告というのは、いわゆる国家公務員に対する人事院勧告である。職員団体、労働組合は本質的に違うわけですね、いわゆる一般公務員とは。それが結果において同じようになり、しかも不利な立場に置かされているというのが、この人たちのいま置かれている立場なんですね。そういうことについて労働三権を自由に保有しておる、認められたというこれらの労働組合、職員団体と、国家公務員の職員団体、労働組合との本質的な違いから考えて、あるいは人事院勧告の本質からいって、どうです。こういうような点、矛盾とは思いませんか。しかも一五%程度上回ることが、大体の最初出発の目安であったはずです。それが右へならえになっておるわけです。そういうような点についてはどうです。
  59. 海堀洋平

    海堀政府委員 大体、三つお話がございましたと思いますが、まず第一点の、一般職公務員について人事院勧告が出て、一般職公務員の取り扱いがきまって、それからこれらの政府関係機関職員の給与の取り扱いをきめているから実施がおくれるではないかというお話でございます。実施時期がたとえば……(田中(武)委員現実に金をもらうことです」と呼ぶ)実施時期のほうは、一般職公務員に準拠して定めているわけでございます。ただ政府関係機関職員につきましては、給与の基準を定めまして、その後それの配分につきまして労使間で話し合いを行なうということになっておりますので、その時期が、従来多少おくれておりましたが、四十三年度あたりになりますと、政府のほうも早く方針をきめましたので、その政府のほうの職員は、法律国会で御承認いただかなければ出ないということがございまして、八月の終わりごろにきめたものが現実には十二月になっておりまして、八月に政府の方針がきまったときに、政府関係機関職員につきましての給与改定の基準を示しておりますので、これは相当くっついてきているのではなかろうかと存じます。  それから二番目に、実際の話から先に申し上げますと、一五%程度上であったのが、いま全く公務員と同じではないかというお話でございます。一五%と別にきめたわけでございませんが、初めに、大体一〇%程度から一五%程度、それぞれの機関によって違いますが、公務員より確かに上にきめまして、その後アップの率で公務員に準拠いたしておりますので、公務員との格差は、その一〇%から一五%というものは依然として持ち続けているわけでございます。  それから、法律的な労働三権があるものについて、こういう取り扱いをしているのは非常に矛盾を感じないかという御質問でございますが、これは私も立法論としては、確かに片方で労働三法が適用されながら、片方でその給与の基準について主務大臣の承認を得べしというふうに規定してあるという点につきましては、問題がないとは思いません。  ただこういう点があろうかと存じます。たとえば民間の会社でございますと、それぞれの業績に応じまして、資本あるいは職員にそれぞれの得たところを配分していくという考え方で賃金がきまっていっておるんだと存じます。ところが、政府関係機関はそれぞれ性格がございまして、利潤を追求しているわけでございませんのですが、たとえば日本開発銀行をとってみますと、これは初めに非常に大きな出資があるものですから、どうしても百億をこえる利益が出る。他方、住宅公団のごときは、政策的に非常に低額の住宅を賃貸もしくは分譲している。そのために欠損が生じており、それを一般会計が交付金の形で埋めている。そういう場合に、片方は欠損が生じているから、おまえのほうは低くあれ、片方、開発銀行は利益があるんだから少しくらいアップ率が高くてもいいではないか、こういう形になりますと、結局、もともと政府関係機関を設置した本来の目的が、やはり公共的な仕事をやっておりまして、その仕事の性格からして必ずしも利潤のいかんによって差等を設けるというようなことは適切ではない。したがって、やはりある基準に基づいてできるだけ公正に取り扱っていくという必要上、給与の基準について主務大臣の承認というふうな形になっているんでなかろうかと存じます。
  60. 田中武夫

    田中(武)委員 主務大臣の承認というのは、それぞれの特殊法人の設置法というか、特殊法人法です。労働三権は憲法の保障であります。憲法に保障されている。それが法律で主務大臣の認可を得なければいかぬとか、承諾を得なければいかぬということで、から回りになっているのですね。その点どうです。一法律の条文、それによって憲法に保障するところの労働三権がから回りになっていることに対して、法律的に矛盾を感じませんか。  さらに、人事院勧告の実施に伴って、これで公務員に右へならえだと言っておる。これは公務員に対する人事院の勧告であって、これらの人たち、職員に対しての勧告ではないはずです。そうでしょう。それが一方的にきまったといって押しつけられる。過去はそうであったと思うのです。ならば団体交渉権、これはから回りになっておりますね。団体交渉権は言うまでもなく憲法の保障する労働三権の一つなんです。これがから回りになっているという問題が一つある。そういう点についてはどうですか。  ともかく交渉はできるというが、実際は交渉してみたってしょうがなくて、政府がきめたやつ、人事院勧告の実施、これが押しつけられておるように思うのです。しかも同じ特殊法人である——仕事の内容は違います。この三公社については、これは労働三権が十分に保障せられていない。そのかわりに、公共企業体等労働委員会が仲裁をすることになっている。こういう機関もないわけですね。そこでこれらの職員団体と使用者の間の問題について地方労働委員会は調停できますか、できませんか。仲裁までやれるかやれませんか。
  61. 海堀洋平

    海堀政府委員 まず、矛盾を感じないかというお話でございますが、私は、立法論としては非常に問題があろうかということは、先ほど申し上げたとおりでございます。つまり、一応労働三法の適用をそのままにしておきまして、他方給与の基準について主務大臣の認可を受ける、こういう規定になっております。したがいまして、そのほかの労働条件はもちろん違うのでございますが、給与に関しては相当な制約を受けていることは事実でございます。これはどういう点からきているかといいますと、その仕事が公的なものであり、利潤追求の仕事をしているわけではなくて、そこに給与の団体交渉をするといいましても、やはり何か一定の基準で考える以外にないというところからこういう形になっているのだろうと思います。ただ先生も御指摘のように同じように政府関係機関であっても、三公社はいわゆる公共企業体等の関係法令によりまして調停仲裁という制度があるわけですから、必ずしも公的であるがゆえに現在の規定のままでいいんだということは言えないと存じます。現在の労働三法の上での中労委なりの調停、仲裁があり得るかということでございますが、これはそれぞれの手続がとられますればあり得るわけでございます。しかし事実上、先ほど先生が申されましたように、理事者側の当事者能力を主務大臣の認可に一よって制約しておりますので、実際問題としてはそういう措置に乗り得ることは事実上少ない、あるいは非常にむずかしいのではなかろうかと思います。
  62. 田中武夫

    田中(武)委員 少なくともこの労働関係法、労働三法、これは近代的法律です。憲法で保障せられておる三権がこの場合はほとんどから回りになる。労働委員会に対する調停あるいは仲裁の申請も事実上動かない。これは大きな矛盾だと思うのです。したがって、あなたにここで答弁をしろというのは無理かもしれない。少なくともこの労働三権が完全に使えるということは、当事者能力の問題に復元するわけですけれども、それをひとつ検討すべきである。ストライキもやれる、現にやっておる。また次にもストライキをやる。そんなら無期限ストでもどんどんやったらどうなります。これは弾圧できぬですね。そうすると政府のやるべきあるいは行政目的を達するための政府機関、この機能が全部麻痺することも合法的に認められておるということですね。そういうところまで発展をいたします。したがってそのようなことのないように法律的あるいは予算的な考慮を払うべきである、これを強く要求いたします。しかし、ここであなたに責任ある答弁をといっても無理だと思いますから、あらためてこの点については責任ある答弁のできる大臣に出席を願って要求することにいたします。  これから伺うことも、これは失礼ですがあなたにはちょっと無理かと思うのですが、いまこれら特殊法人の職員の給与等についての考え方が述べられたわけです。毎回言っておりますが、それでは役員はどうなんですか。次官といえば、事務官僚というか役人の一番上ですね。役員はこれの倍もとっているでしょう。職員にはいま言ったような答弁を押しつける。そうしておいて役員にはこれは一般公務員の最高の倍も出すということに矛盾は感じませんか。さらに何回も申しますが、退職金は一カ月に百分の六十五ずつ積み立てるということ、こういうことは職員と役員との間で、これら特殊法人をひっくるめて、これはその仕事に従事する者です。大きな相違がある。矛盾がある。これを是正する必要があると思うのであります。これはあなたが責任を持って答弁はできかねると思いますが、そのことについて強く大臣に要求します。いかがです。
  63. 海堀洋平

    海堀政府委員 先生の御質問に私、答弁できる資格がないことは先生の仰せのとおりでございます。ただ政府関係機関の役員の給与が高くなっておりますのは、やはり初めに設けられましたときに、民間から有能な人に来ていただくというふうな意味から高くなっており、その後は大体その初めにきめられた給与に準拠しまして他の機関もきめていかれた。ただその後の給与の改定につきましては、ほぼ役人の非常に上の方々、あるいは一般職の非常に上のほうのアップ率というものをもって改定いたしてきております。したがいまして、民間との交流というふうなことも考えまして高くなっているというのが事実だろうと存じます。  それから退職金の一カ月につき百分の六十五という問題でございますが、これも当初たぶん輸出入銀行が一番先にできたのかと存じますが、そのとききめられているようでございます。これはその当時たぶん日本銀行等を参考にしてきめたようでございますが、これは感想として申し上げれば、確かに一カ月につき百分の六十五というのは高い率ではなかろうかというふうに存じます。しかし現在既得権にそれがなっておりますので、これをどういうふうに調整していくかという問題になりますと、なかなかむずかしい点が残るのではなかろうかと存じます。
  64. 田中武夫

    田中(武)委員 これからの質問はあなたには無理なんです。しかしあなた自体がいま答弁しておって矛盾は感じませんか。役員については、民間が上がったから上がったのだ。職員については人事院勧告の政府実施に右へならえ、しかも最初が一五%程度、そういうことできたが現在ではこういうことです。私が言っているのは、同じ何々事業団、何々公庫で、役員は一般の国家公務員の最高給の次官をものすごく上回る給料であり、退職金を持っている。職員についてはおまえたちは公務員の人事院勧告実施に右へならえということは矛盾を感じませんか。そうでしょう。  したがって、一つは、労働三権の問題と当事者能力の問題、これはあなたでは答弁できません。それからいま一つは、公社あるいは事業団、公庫において、あまりにも役員はかってなことをする。これも主務大臣の認可が必要だと思うのです。ところが民間が上がったからといってどんどん上がって、公務員と比べた場合、最高の事務次官よりか倍以上のところもあるのです。そしてその職員には、おまえたちは一般公務員に右へならえということの矛盾がある。  さらに役員に対する、これはよく言われる天下りなんです。それを調べてみますと、まず、去年の六月二十九日現在で、高級役人が天下った人数、次がその公社公団の役員数、それに対する比率であるが、建設省関係へ天下ったのが五十名、その役員総数五十四名、比率九二・五%、役員の九二・五%はいわゆる高級官僚が天下った。農林省関係、三十五名、四十五名、七七・七%、科学技術庁関係、二十三名、四十三名、五三・三%、企画庁関係、八名、十一名、七二・七%、大蔵省関係、二十七名、三十七名、七二・九%、文部省関係、十五名、十六名、九三・七%、通産省関係、三十二名、四十一名、八六・四%、労働省関係、十五名、十七名、八八・二%、外務省関係、二名、五名、これだけが四〇%ですね。厚生省関係は一〇〇%、自治省関係一〇〇%、こういう比率で天下っておる。しかもその人たちが、いま言ったように、職員には、おまえたちは政府のきめたベースでがまんしろ、おれたちはこれだけもらうんだといって、多額の退職金、あるいは何回も言うけれども、最高の事務次官を上回ること倍くらい、あるいはそれ以上もある給料を取っておることの矛盾、さらによく人材を登用するんだ、あるいはそのことの経験のある人がそういう関係の特殊法人にいくことはけっこうなことだというわけだ。ところがよく調べてみると、元警視総監が農地開発の公団の総裁になっておるのですね。これはこの前にも申しましたが、この公社あるいは事業団には、何省何名、何省何名というようなワクがあらかじめある。しかもこの特殊法人の人事が、官僚人事の下請になっておる。何々次官が勇退して何々局長が次官になる。したがってその次官がどこそこの特殊法人、何々公社の総裁になる。そうすると、前の総裁は、今度はどこそこの理事長になるといったような人事が行なわれているということです。このことについて今後も掘り下げていきます。掘り下げていくが、これをあなたに責任ある答弁をしろといっても無理なんです。次官が大臣にかわって責任ある答弁ができるんなら伺います。  私は、こういう責任のない人、的確な答弁のできない人を相手にこれ以上の質問は続けませんが、委員長代理に申し上げます。決算委員会は政府にとってさしあたりの法案を持たない、あるいは予算のような期日のきまったものを持たないということで、こちらが要求した者が出てこない、責任ある答弁ができない者がそろう、こんなことで審議ができますか。そういうことであるなら、決算委員会をなくしてしまって、予算決算委員会とでもして、われわれとしては、もっと決算に対して各省庁責任ある態度をとり、責任ある答弁者が出てきて答弁するようにしないと、これはほんとうに問題だと思うのです。きょうの顔ぶれは一体何です。しかも責任ある答弁がだれもできぬじゃないですか。やれるというんなら次に幾らでもやります。たとえばいま申しました特殊法人に対する天下り人事の問題について三点をあげる。このことについて責任あり、こういたします、あるいはいたしませんという答弁が君らにできるんなら伺いましょう。
  65. 海堀洋平

    海堀政府委員 人事の問題につきましては、私答弁いたしかねることは先生御存じのとおりであります。御存じのとおりに、特殊法人の長、つまり総裁と監事は大体主務大臣の任命、それからその他の理事者は理事長もくは総裁の任命、その場合に、あとで主務大臣に報告することを規定しているものもあればないものもあるという状態でございます。これはそれぞれの所管大臣の問題でございますので、私から答弁する限りではないと存じます。  ただ給与の点につきまして、ちょっと私のことばが足りなかったかと存じますが、初めに役員の給与は確かに民間等との均衡をとって高くきめられましたと申し上げました。しかしその後の給与改定につきましては、役人の上級者の改定率等を参考にしてきめてまいっておりますので、現在民間と均衡をとっているというわけではないと存じます。  それから職員の給与は、人事院勧告に準拠してただやっておるだけじゃないかとおっしゃいましたが、初めに職員の給与は、先生は一五%と申されましたが、一五%ときまったわけではございませんが、大体一割程度高いところにきめられまして、それを人事院勧告のアップ率で改定してまいっておりますので、その約一割程度の格差というものは役人との間では持っていると考えていいかと存じます。それから人事院勧告自体が民間給与を一番大きな要素として勧告されていることも事実でございますので、その意味においては、やはり基礎が民間給与にあるというふうに考えてよかろうかと存ずるわけでございます。
  66. 田中武夫

    田中(武)委員 人事院勧告が民間給与、そのアップ等を参考になされることはもちろんです。しかしいまあなたの答弁は、最初、役員のは民間のやつを見てきめた、それからその後のアップ率については民間の役員のやつを参考にしておる、こういうのでしょう。では役員のアップは何を見てやっているのですか。
  67. 海堀洋平

    海堀政府委員 初めは民間の役員等の給与をなにしてきめられたようでございます。その後の改定、たとえば去年の四月に行ないました改定は、これは前も同じでございますが、官吏の一般職のうちの指定職のアップ率、それから特別職及び政務次官等のアップ率、その単純平均をとりまして改定をいたしております。あとは大体一般職の上級のほうの、すなわちいまでいえば指定職と特別職の改定率を基準にして改定をいたしておりまして、その後は民間の関係の重役の給与との均衡を特に考えているわけではございません。
  68. 田中武夫

    田中(武)委員 さっきはそう言わなかったですね。特別職とか指定職とは言わなかった。初めは民間の会社の役員を見てやった、その後のアップはその役員等のアップ率といいますか、それを参考にと言ったのだが、それは議事録を見たらいい。言うなら、議事録でひとつ対決いたします。しかし、それが矛盾である、したがって、直します、とあなたは答弁できますか。直す必要がないと言い切れますか、あるいは直しますと言い切れますか、あるいは労働三法の憲法に保障された権利と、これら法人の単独法の中に定められた条文とが競合した場合にはいかにすべきかということについて、責任ある答弁できますか。天下り人事について、いま言ったように全然関係のない警視総監が農地の問題のところへ行く、そういうふうなことについてどうかということについて、責任ある答弁ができますか、できないでしょう。したがってこれは総理が出てこなくちゃだめだと思うのですよ。だってそれぞれの省が各省関係大臣でしょう、それを統一するのには総理ですよ。しかもはなはだ失礼ですが、この顔ぶれで、あまりなめた委員会の運営はしなさぬな。二人の次官どうです、責任ある答弁をいまから公開いたしますか、答弁いたしますか。(「一人は大臣」と呼ぶ者あり)厚生大臣は関係ないか。名乗らぬからわからぬ、次官かと思った、厚生大臣が入りましたというべきだ、あいさつがなかったらわからぬ。  じゃ厚生省の関係のもので聞きましょう。特殊法人は幾らあります、大臣。そして、それらの人の給与、出身の役所及び退職金が一カ月百分の六十五、適当であると思うのか思わぬのか、お答え願いましょうか。
  69. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 厚生省関係の特殊法人に、総裁なりあるいは理事長なりが、どこからだれが行って、給料がどうなっているかという資料はただいま持ち合わせておりませんので、取り寄せましてお答え申し上げます。
  70. 田中武夫

    田中(武)委員 というようなことで、私は当委員会の運営について、大きな疑問と不満を持ちます。したがって、たまたま丹羽理事中川委員長にかわってそこにすわっておられるのだから、この実態をどう改めるか、一ぺん理事会ないし理事懇談会でも開いて、はっきりした態度を出す必要があると私は思う。さらに次官は、御答弁があるならけっこうですが、先ほど来お聞きになっておるのですから、そのことを大臣に言っていただいて、次回には大臣みずから出てきて私の質問に答える、そういうことを保留いたしまして、一応きょうの質問は終わります。      ————◇—————
  71. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員長代理 次に、厚生省所管医療金融公庫及び環境衛生金融公庫について審議を行ないます。  まず厚生大臣より概要説明を求めます。斎藤厚生大臣。
  72. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 昭和四十二年度厚生省所管一般会計及び特別会計決算の大要について御説明申し上げます。  まず、一般会計歳出決算については、予算現額七千十六億九千六百余万円に対して、支出済み歳出額は六千九百六十億三千二百余万円、翌年度繰り越し額は三十四億五百余万円、不用額は二十二億五千八百余万円で決算を結了いたしました。  以上が一般会計決算の大要であります。  次に、特別会計の大要について申し上げますと、厚生省には五特別会計が設置されております。  まず第一は、厚生保険特別会計決算でありますが、健康、日雇保険、年金、業務、四勘定合わせて申し上げますと、一般会計から五百二十三億七千余万円を繰り入れました。  その決算額は、収納済み歳入額一兆八百六十九億九千百余万円、支出済み歳出額六千百五億六千七百余万円、翌年度繰り越し額二億四千二百余万円でありまして、差し引き四千七百六十一億八千余万円の剰余を生じ、これをこの会計の積み立て金に積み立て、決算を結了いたしました。  第二は、国民年金特別会計決算でありますが、国民年金、福祉年金、業務、三勘定合わせまして申し上げますと、一般会計から九百二十億九千余万円を繰り入れました。  その決算額は、収納済み歳入額二千六十九億四千余万円、支出済み歳出額一千百九十七億一千七百余万円、翌年度繰り越し額二十四億八百余万円でありまして、差し引き八百四十八億一千三百余万円の剰余を生じ、これをこの会計の積み立て金に積み立てたほか、翌年度の歳入に繰り入れて決算を結了いたしました。  第三は、船員保険特別会計決算であります。  船員保険特別会計につきましては、一般会計から十七億二千二百余万円を繰り入れました。  その決算額は、収納済み歳入額三百十四億四千余万円、支出済み歳出額百九十七億七千六百余万円、翌年度繰り越し額二億三千三百余万円でありまして、差し引き百十四億三千余万円の剰余を生じ、これをこの会計の積み立て金に積み立て、決算を結了いたしました。  第四は、国立病院特別会計決算であります。  国立病院特別会計については、一般会計から四十五億六千五百余万円を繰り入れました。  その決算額は、収納済み歳入額四百二十二億二千九百余万円、支出済み歳出額三百九十五億一千七百余万円、翌年度繰り越し額二十四億三千百余万円でありまして、差し引き二億八千百余万円の剰余を生じ、これをこの会計の積み立て金に積み立て、決算を結了いたしました。  第五は、あへん特別会計決算であります。  あへん特別会計決算額は、収納済み歳入額九億九千八百余万円、支出済み歳出額二億七千百余万円でありまして、差し引き七億二千七百余万円の剰余を生じ、剰余金は、この会計の翌年度の歳入に繰り入れました。  以上が厚生省所管に属する昭和四十二年度一般会計及び特別会計歳入歳出決算の大要であります。  最後に、本決算につきまして、会計検査院から指摘を受けた点がありましたことは、まことに遺憾にたえないところであります。  指摘を受けました件については、直ちに是正措置を講じましたが、今後なお一そう厳正な態度をもってこれが絶滅を期する所存であります。  以上をもちまして、厚生省所管に属する一般会計及び特別会計決算の大要について御説明を終わりますが、何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  73. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員長代理 次に会計検査院当局より、検査の概要説明を求めます。増山会計検査院第三局長
  74. 増山辰夫

    ○増山会計検査院説明員 昭和四十二年度厚生省の決算につきまして、検査いたしました結果の概要を説明申し上げます。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項が三件でございます。  一四一号及び一四二号の二件は、健康保険及び厚生年金保険並びに船員保険の保険料の徴収に関するもので、いずれも保険料算定の基礎となる報酬の把握が適確に行なわれなかったため、保険料の徴収が不足していたものでございます。  一四三号は、国民健康保険調整交付金の交付につきまして、調整対象収入額の算定等が誤っていて、その交付が適正を欠いているというものでございます。   以上、簡単でございますが説明を終わります。
  75. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員長代理 次に、医療金融公庫及び環境衛生金融公庫、両当局より、資金計画、事業計画等について説明を求めます。  若松医療金融公庫理事。
  76. 若松栄一

    ○若松説明員 四十二年度の医療金融公庫の業務の概況から先に申し上げます。  医療金融公庫昭和四十二年度の貸し付け計画額は、貸し付け契約額を二百四十八億円、貸し付け資金交付額を二百四十八億円(うち二十五億円は前年度において貸し付け契約し、交付未済となったもの)を予定し、その原資として、資金運用部借入金二百十三億円及び貸し付け回収金三十五億円、計二百四十八億円を充てることといたしました。  この計画額に対する実績は、貸し付け契約額及び貸し付け資金交付額とも二百三十一億円でありまして、これを前年度と比較いたしますと、貸し付け契約額で一一・六%、貸し付け資金交付額で一一・六%の増となりました。なお、貸し付け計画額二百四十八億円と貸し付け実績額二百三十一億円との差額十七億円は、翌年度へ繰り延べとなったものであります。  貸し付け契約額の内訳は、設備資金二百二十八億円、長期運転資金三億円であり、また、貸し付け資金交付額の内訳は、設備資金二百二十八億円、長期運転資金三億円であります。  貸し付け残高は、前年度末六百八十一億でありましたが、四十二年度中に二百三十一億円の貸し付けを行ない、さらに六十五億円を回収いたしましたので、当期末においては八百四十七億円となっております。  次に決算状況について申し上げます。  昭和四十二年度の損益計算上の総収益は五十一億九千五十八万四千円、総損失は五十一億七千五百十万七千円でございまして、差し引き一千五百四十七万七千円の償却前利益を生じましたが、大蔵大臣の定めるところによりまして、固定資産減価償却引き当て金へ五百六十二万二千円を、滞り貸し償却引き当て金へ九百八十五万五千円を繰り入れましたので、結果といたしまして、国庫に納付すべき利益金は生じなかったのでございます。  以上が昭和四十二年度の業務の概況並びに決算でございます。  以上御説明いたしました。
  77. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員長代理 次に、大山環境衛生金融公庫理事長。
  78. 大山正

    ○大山説明員 環境衛生金融公庫昭和四十二年度の業務の概況につきまして御説明申し上げます。  環境衛生金融公庫は、国民の日常生活に密接な関係のある環境衛生関係の営業につきまして、衛生水準の向上と近代化の促進をはかる目的をもって昭和四十二年九月に発足いたしたものであります。  なお、貸し付け業務は、現在、すべて国民金融公庫、中小企業金融公庫及び商工組合中央金庫に委託して行なっております。  昭和四十二年度の貸し付け計画額は二百億円の予定でありましたが、貸し付け実績額は六十一億三千余万円でありました。この貸し付け額は、当初の予定に比較いたしますと、百三十八億六千余万円の減少となっておりますが、これは公庫の設立が予定よりおくれたため等であります。  次に、貸付金残高について御説明いたします。  公庫が発足いたしましたとき、従来、国民金融公庫が、環境衛生関係営業者等に対して行なった貸し付けにかかる債権百九十五億四千余万円を承継し、これに昭和四十二年度における貸し付け額六十一億三千余万が加わり、一方貸し付け回収金十八億九千余万円がありましたので、差し引き二百三十七億八千余万円の貸し付け金残高となっております。  次に、昭和四十二年度の収入支出決算について御説明いたします。  昭和四十二年度における収入済み額は八億七千余万円、支出済み額は七億五千余万円でありまして、収入が支出を上回ること一億一千余万円となっております。  まず、収入の部におきましては、本年度の収入済み額は八億七千余万円でありまして、これを収入予算額二十億八千余万円に比較いたしますと、十二億一千余万円の減少となっております。この減少いたしましたおもな理由は、貸し付け金利息収入が予定より少なかったためであります。  次に支出の部におきましては、本年度の支出予算現額二十億二千余万円に対し、支出済み額は七億五千余万円でありまして、差し引き十二億六千余万円の差額が生じましたが、これは借り入れ金利息等が予定より減少したためであります。  最後に、昭和四十二年度における損益について申し述べますと、本年度の総利益九億七千余万円に対し、総損失は八億九千余万円でありまして、差し引き八千余万円の償却引き当て金繰り入れ前利益をあげましたが、これを全額滞り貸し償却引き当て金及び固定資産減価償却引き当て金に繰り入れましたため国庫に納付すべき利益はありませんでした。  以上が昭和四十二年度環境衛生金融公庫の業務の概況であります。  何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  79. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員長代理 これにて説明聴取を終わります。
  80. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員長代理 これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。高田富之君。
  81. 高田富之

    高田委員 時間の制約がございますので、端的に問題点を一、二お伺いいたします。ひとつ明瞭な、誠意ある御答弁をいただきたいと思います。  まず第一は、サリドマイド児に対する対策の問題でございます。  この問題につきましては、国会におきまして何べんか取り上げられておるところでございますが、最近の問題といたしまして、昨年末十一月中にサリドマイド児に対する対策を講ずる費用といたしまして、関係業界、すなわち日本製薬団体連合会から当時の厚生大臣、園田前大臣に対しまして一億円の寄付があったと承知いたしておるのであります。     〔丹羽(久)委員長代理退席、鍛冶委員長代理   着席〕 この寄付はどういう名目で寄付されたものであり、また、これはどういう方向に使われておりますか、その具体的な内容についてお伺いいたしたいと思います。
  82. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 御質問のございました、製薬団体連合会におかれまして、昨年の十一月に、当時の園田厚生大臣に対しまして、一億円の寄付を、肢体不自由児福祉事業のために使用してほしいというたてまえで、その目録の贈呈がございました。先生御承知のように、児童家庭局におきましてこのような肢体不自由児の事業を従来からもいろいろやっております。育成医療の給付でありますとか補装具の交付でございますとか、あるいは肢体不自由児施設への入所ということでいろいろ仕事をやっておりますが、このような上肢の奇形に対しまする対策というものは非常におくれておったことは事実でございます。したがいまして、この一億円を活用いたしまして、この寄付金を社会福祉法人日本肢体不自由児協会が一応受け入れ、そして受け入れましたお金を肢体不自由児施設でありますところの整肢療護園、これは東京にございます、それからもう一カ所大阪にございます大手前整肢学園という肢体不自由児施設がございます。その二カ所におきまして、主としてこの上肢の不自由ないわゆるフォコメリーの子供たちを主たる対象といたします訓練施設を屋内、屋外に設けまして、その機能訓練なりあるいは日常生活の向上をはかるということで、その二つの施設を拡充いたしまして整備をするという計画にいたしておるわけでございます。その二つの施設の設計等がいま急いで企画されておりまして、このお金が正式に受け入れられることになりますれば、直ちに着工いたしまして、いま申し上げましたようなフォコメリー児のために主として活用される施設をつくりたい、つくることになるということが現状でございます。
  83. 高田富之

    高田委員 主としてサリドマイド児が使う施設がつくられるというふうないまお話しのようでございますが、このおっしゃる二つの施設につきまして私は内容をつまびらかにしておりませんが、新聞紙の報ずるところ、また関係者からちょっと聞いてみたのですが、東京、大阪におけるただいまお話しの二つの施設とも、特に東京については若干名の関係の児童が収容される。しかし大阪のほうは全然関係ない。それから新たにつくられようとしております施設も、看護婦の詰め所であるとか、プールであるとかというようなことであって、いまお話しの趣旨とはちょっと違うように私は承っておるのでございますが、どうでございますか。
  84. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 このフォコメリーの問題が起きましてから、全国の肢体不自由児施設に入所して訓練をかって受けたことがあり、また現在も受けておる子供たちは、三十名程度になっております。この東京の整肢療護園におきましては、現在でも七名ばかりの子供が入っております。したがいまして、この整肢療護園におきましては、さらにその寄付金を活用いたしまして室内訓練施設を新設いたします。それから室内の温水訓練プールを新設する、それから屋外の訓練設備を整備いたしまして、このような上肢奇型の子供たちに対する対策、そういった機能を向上するということにしております。  それから大手前整肢学園でございますが、これは実は、昭和四十二年に着工いたしまして、四十三年にでき上がりました大阪におきまする新設の整肢学園でございまして、そのために、従来からこのようなフォコメリー児が入ってはいないわけでございます。新設されたばかりでございますので、そういうふうな関係でございますが、この整肢療護園に、さらに遊戯治療室、屋外訓練設備、それから屋外流水訓練プール、こういうものをつくりまして、新設の一般の肢体不自由児対策に加えまして、上肢奇型のフォコメリー児等に対するこのような機能をさらにつけ加えてやる。このことによりまして、いわゆるサリドマイド児の日常生活の向上でありますとか、機能訓練をはかってやるということにいたす予定にしております。  なお、おことばの中に看護婦の詰め所というふうなことがございましたが、現在大手前整肢学園のほうの整備計画の中には、そのようなものは考えられておらないようでございます。
  85. 高田富之

    高田委員 私がこういう御質問を申し上げておりますのは、これが前大臣のときに国会で問題になりましたとき、園田大臣の答弁、これは速記録も持ってきておりますが、その答弁に基づきまして、こういう寄付ということが出てきておる。突然として業界が自発的に寄付したというよりは、やはり一つ国会における質疑応答があり、大臣が明確な政府のお考えを約束され、これに基づいてあなた方がおそらく業界と接触されて、その意向を伝えてこういう結果になったんだと私は思うのですが、もし違えば違うと言ってください。そうしますと、そういう趣旨に基づいて寄付されたものであれば、その趣旨に基づいて使うのが当然ではないか。ところが、業界のほうでは、いや、そういうとサリドマイドの責任というか、過失をこっちが認めたことになってしまう。現在裁判もされているんだ、それはまずい。だからそういうことでなくするなら寄付しよう。何かべールで包んで、それもまじえてほかの一般的な身体不自由児の対策とかなんとかということで出そう。出すものもサリドマイドを売った会社だけでなく、ほかの会社からも何ぶんか出してもらって、全体の業界が出した形にするというふうに、当初大臣がここで非常に明確に−読み上げてもいいのですが、時間の関係がありますので読み上げませんけれども、明確に政府の責任、それから製薬会社の責任ということを言って、それに基づいて寄付をしてもらって——寄付などの方法ということを言っておるわけですが、寄付その他の方法で責任を明らかにするんだ。そのための対策を立てるんだということをはっきり言っているんですが、どうもそこに食い違いがあるんじゃないかということが新聞記事にも相当出ています。これは非常に明朗を欠くのでありまして、そこら辺はひとつ率直にお答え願っておかないと困ると思うのです。
  86. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 寄付のいきさつなりその実態でございますが、御承知のように昨年園田前厚生大臣から、いま仰せのような趣旨国会答弁がございました。それに基づきまして、私どもは薬業界といろいろ意見の交換をやってきたわけであります。その間薬業界自身も厚生省のほうの肢体不自由児対策事業というのがまだまだ予算的にも不十分だ。対象児童というものは非常に数が多いというような実態を、業界としても前から問題としていたわけでございます。そういうような国の福祉施策の現状から、この際薬業界としても何らかの形において微力ながら応援を申し上げたい、こういうようなことがたまたま話の過程で出てまいったわけでございます。そこで、そういうような薬業界全般の意向が厚生省側に伝わりましたので、厚生省側としても肢体不自由児事業というものがいろいろな面においてまだ強化しなければならぬという現実は全く同感である、したがって、そういう趣旨で、薬業界全般の意向として一億なら一億の寄付金が厚生省のほうに出されることは非常にけっこうなことだ、まあこういうようなことで時の厚生大臣は、この一億円の寄付をありがたくちょうだいした、大体こういうようなことになっているわけでございます。  そこで、先ほど児童局長から申し上げましたように、もし薬業界のほうが肢体不自由児事業という非常に広い立場でものを考えて寄付する意向があるとするならば、やはり業界の意向もある程度尊重しながら、また現在の肢体不自由児事業の実態というものがどういう点に問題があり、またどういう点を早急に整備していかなければいかぬかというようなことを省内でいろいろ相談した結果、先ほど児童局長から御答弁申し上げましたような姿勢で整備を急速にやっていこう、こういうような結論に落ちついたという事情に相なっているわけでございます。
  87. 高田富之

    高田委員 ですから、いま御説明を承っておりましても、大臣の答弁趣旨とはだんだんずれてきているということはもう疑う余地はないですね。いまのあなたの御説明でも——大臣の答弁ははっきりとこう言っているのですよ。「政府と製薬会社がその責任をとって今後の処置をそれぞれやるべきだ、この点をまず第一に明確にいたしておきたいと思います。」こういうふうなことですね。だから「この際、非常に手おくれでございまして申しわけございませんが、過去の問題を率直に反省をして、ここに厚生省としてサリドマイド児及び今後の新薬に対する方針を明確にいたしておきます。」こういうふうなことで、これはサリドマイド児に対してだけ特に強力な施策をやらなければならぬ、この問題については責任があるから関係の製薬会社にもその旨を明らかにする意味で寄付もさせる、政府も一生懸命やる、こういうことなんですね。ですからそれがぽかされておるということは非常にわからないことでありまして、どうもやはり業界に弱いんじゃないかというふうなことをしばしばいわれるのですね。ですから、もしもそういうことでこれは一般的な不自由児対策というようなことで受けたとすれば、そのほかに、これはわずか一億なんですから、この趣旨にのって、サリドマイドのために責任を明らかにする意味も含めて寄付をさせる、あらためて寄付をさせるというお考えはございますか。
  88. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 このサリドマイド事件につきましては、もう十分御承知のように、現在わが国だけでなくて諸外国においても裁判等が行なわれているわけでございます。特に最初の発売元でございます西ドイツにおきましては、世紀の論争といわれるぐらいに大きな裁判の論争が現在続行しているわけでございます。わが国におきましてもほぼ同様な事情にありまして、現在六地方裁判所において裁判が続行中でございます。で、私どもといたしましては、法律上の責任とかいうような問題になりますならば、やはりどうしても裁判の厳正な判定というものがなければ、法律上の責任云々ということを軽々しく言えないわけでございます。ただ、片一方において、現実にいわゆるフォコメリーの児童が現在若干名おられるということは、やはり国の広い立場に立った場合に、国の社会福祉の施策として何らかの形において援護の手を差し伸べるということは、これは考えなければならぬことだろうと思う。そういう趣旨で昨年園田前厚生大臣は国会答弁をされたと私は承っているわけでありますが、い、ずれにしましても、現在この問題、裁判続行中でございますので、どうしても薬業界としまして何らかの形においてサリドマイドのためにいわゆる寄付金等のような形で金を出すということについては、まだまだ機が熟さないというのが業界全般の意向のようでございます。なおこの問題は裁判の続行とにらみ合わせながら、やはり慎重に考えなければならぬ問題だろう、私どもはこういうふうに思っておるわけでございます。
  89. 高田富之

    高田委員 次に、聞こうと思ったことを先に答えておるのですが、整理しますと、とりあえずいま−前の大臣の意向がとこにあったか知るよしもないですけれども、厚生省が昨年の五月三十一日に記者会見をして発表されました「フォコメリー児に対する福祉対策について」という刷りものを私は入手しておりますが、これによりまして、「趣旨」「対策」、その「対策」の中には「補装具の研究開発」「補装具の交付」「機能訓練施設の整備」「職業訓練対策の検討」「其の他」とこういうふうにありまして、今年度若干の予算がつけられたものもあるわけでございます。それで、今回の寄付金等についてもおおむねこの中のどれかに当たる部分もあるわけです。重複する部分もあります。しかし問題は、実際に使おうとされておりますニカ所の東京、大阪における療護園に対する一億円の使用ということになります場合には、ほんのわずかしかフォコメリー児に対しては関連がないということになりまして、むしろこういう施設に対しては国の予算でやる必要があれば十分対処できる性質のものでありましょう。ですからこれは国の施設でもってどんどんさらに強化しておやりになったらいいので、せっかくの寄付というようなものであれば、この対策の中の「其の他」の中にありますような、たとえば「フォコメリー児のための生活指導及び介護に要する費用、修学資金、技能修得資金については検討中」とありますが、これこそが寄付金を利用するに一番適当な項目であって、また、関係者も一番期待を寄せておったところらしいですね。ですからしばしばそういう点については陳情もあったと聞いておるのであります。実際に前大臣の意向も、予算でやれる範囲のものはできるだけ予算を強化して今後やっていく。いままでの責任もあることだから一生懸命やる。また、予算でやるに必ずしも適切でない、寄付等によってやることが適切であるというようなもの、たとえば、いま申しましたような修学資金、技能習得資金、生活指導や介護に要する費用といったような部分にむしろ充てたら非常に有効なんじゃないか、こういう意向であったと私は聞いておるのです。事実そうだったと思うのです。  さっきお話しになったようなものをなぜ予算でやらないか、予算で当然やるべきじゃないか、こういうことなんです。これは一番関係者の要望しておる点でもございます。何しろちょうどいま小学校に上がったというようなところですね。大部分の方が来年か再来年には学校に上がるわけですから、非常にこういう方面に費用がたくさんかかるわけです。そういうものを何とかしてくれませんか、そういうものは寄付でもしてもらわなければ、予算からなかなかさきにくいというようなことです。ですからこの点については一体配慮しておられるのかどうか。これは一つ問題なんです。この点について手当てをするお考えがありますかと言うのです。
  90. 渥美節夫

    ○渥美政府委員 御承知のように、そのサリドマイド児に関する治療訓練でございますが、従来から肢体不自由児対策というものは下肢の不自由な子供に対する治療訓練が非常に進んでおりまして、このような上肢の奇形についての例が非常にまれでございましたために、これの治療訓練というのは非常におくれていたことは事実でございます。西ドイツ等におきましても、このためのまず治療をし、日常生活ができるようにするためには何をしたらいいかということでいろいろな研究がなされまして、特に補装具の研究が進められたのでございます。わが国におきましても、ようやく二、三年前からこのような補装具の研究が始まりまして、特にわが国では電動式の義手の研究が起こりました。まずその補装具を装着することによりまして日常生活ができるようになる、それから学校にも行けるようになるし、将来は就職、社会復帰ができるようになるということになるわけでございまして、そのために、昭和四十三年度に先ほど先生にお示しをいただきましたフォコメリー児に対する福祉対策の中で、この補装具の開発というものを最重点にいたしまして、その昭和四十三年度では特別研究費をもちまして三百万円の助成をいたしたのでございます。同時に、本年昭和四十四年度におきましてもこの研究は続行いたすことにしておりますが、この研究開発されました電動式の義手を子供たちに装着いたしまして装着訓練をする。子供たちもだんだん大きくなるわけでございますので、その年齢に応じたような義手を交付しなければいけない、これが一番大きな問題でございました。したがいましてそういった補装具の装着訓練を行なうための施設というものが何よりも大切である、かように考えておるところでございます。  たまたま、御承知のように先ほども申し上げましたように、下肢の訓練が中心となりました現在の肢体不自由児事業でございますので、これを上肢の訓練をするための施設というものをつくらなければいけない、これが焦眉の急であったために、この寄付金一億円をもちましてそのような対策を講ずるということにしたのでございます。  なお、このような電動式義手を装着し訓練をするための医師というものも地域的に非常に限られておりまして、関西地方あるいは東京の一部というようなことでございましたので、東京、大阪にともかく大至急このような施設をつくることが肝要である、かように考えたのでこのようなことをしたわけでございます。  なお、寄付金以外におきましても一、東京におきましても国費をもちまして、あるいは他の地域におきましても国庫補助金によりまして、この肢体不自由児施設を拡先するということを予定しているわけでございます。  それからフォコメリー児のための生活指導、あるいは介護に要する費用、あるいは就学資金、技能習得資金等に関する資金の問題でございますが、こういった点につきましては、先ほど薬務局長が御答弁申し上げましたように、訴訟その他の問題もございますので、重要な問題であるということは認識はしておりますが、その訴訟等の成り行き等もやはり頭の中に入れまして検討する必要があるのではないかということで、なお検討を続行しておるというのが現状でございます。
  91. 高田富之

    高田委員 そこで、大臣、これは私非常に重大だと思うのですが、いまの御答弁、それからその前の御答弁、両方ともいま進行中の裁判ということを、いまも前も答弁の中に入れておるわけですね。御承知のように、国と大日本製薬等を相手といたしました訴訟が関係者から出ておるわけでございます。これは大臣もよく御承知だと思うのです。それが成り行きがどうのこうのということで、だから業界に対しても、責任を明らかにしたような形では、サリドマイド対策の寄付というのはできにくい状況にございますなんという答弁をする。またいまも育英資金のようなもので云々といっても、それも裁判の成り行きを見なきゃということをおっしゃる。私はここに大問題がひそんでいると思うのです。  それで大臣のお考えをぜひここで明確にしていただきたいのですが、大体こんな裁判をやらしておくということは、私は世界に対して恥をさらしているようなものだと思うのです。いま世界で同様の問題が方々に起こっておる。いまも御答弁にありましたように、ドイツのごときは警察庁から刑事被告人として告発して、刑事裁判、付帯した民事裁判もございますが、裁判までやらしているのです。それから英国におきましては、政府が行政指導をして訴訟の起こったものは和解させてしまって、そうして一人について何百万円かの見舞い金のようなものを出させ、また訴訟しなかった関係者にも出させ、そうして円満に解決をし、かつ責任を明らかにしているのです。それから、カナダ、スウェーデンその他のところにおきましても、会社側から和解の申し出があったというようなところもあって、政府はやはりこれを推進する立場をみんなとっているのです。しかも日本はよそと違うのですよ。国まで相手にされている。なぜかというと、よその場合と全然違うのは、製薬会社がつくったのがいかぬ、販売したのがいかぬというばかりでなくて、政府が事情を知って、なおかっこれを差しとめもしなければ、回収命令もしなければ、一年近くもほったらかしておいたということで、行政上の責任を問われているのでしょう。これは世界に例がないのです。どこでも問題になったらすぐストップをしているのです。イギリスなんか、おくれたといっても、一週間日にストップしている。日本は一年近くたっている。ここに国の責任が問われているのですよ。ですから国としては、園田さんのときの御答弁、非常に明快ですよ。過去を反省しているのです。そうなると、しょうがないから読まざるを得なくなる。「この際に第一に明確にしなければならないことは、いままでずいぶん調べてみましたが、正直言って、許可した場合、それからその後の措置について、あいまいな責任のがれのことばを言っておりまするが、たとえ訴訟になっておりましょうとおりませんとも、政府と製薬会社がその責任をとって今後の処置をそれぞれやるべきだ、この点をまず第一に明確にいたしておきたいと思います。」こう言っているのです。その説明もちゃんとあるのですよ。「おかしいと思ったら直ちに製造中止を命じて、そして販売中止を命じて、その上で実験をすべきであった。」こういうのですね。実験中だから−一カ月に何百人もあぶない者が出るぞという学者の警告があるにもかかわらず、半年も一年もほったらかしている。これを率直に反省した上に立って対策を立てるんだと、こんなに明言されているのですよ。裁判の経過を見てとは何ですか。冗談じゃないですよ。私はすみやかに政府が中に入って和解さすべきだと思う。そうして訴訟しているのは何十家族、そのほかにまだ百家族くらいの訴訟してない人がある。金がないとかそういう事情があるのでしょうけれども、そういう人たちも含めまして、政府が中に入って、これは法律上勝ったらどうするとか、負けたら処置しますというわけにはいかぬでしょう。そんな勝った負けたという問題じゃない。こんな問題は、そんな法律にひっかかるかひっかからないかという法律上の興味の問題ではないのでありまして、事はきわめて明白なんです。世界じゅうにこういう裁判に対する政府の態度ははっきり出ているのです。これはすみやかに政府が中に入ってあっせんをする、——法律上の過失の有無とかなんとかいう問題じゃないのであって、これは道義的責任でいいです、道義的責任を明確にして、処置して、誠意ある態度をとれば、問題は円満に解決し、これから政府の行政に対する国民の信頼あるいはまた製薬会社の製薬に対する信頼感というものも出てくるでしょう。それがなかったら、ますます信頼感はなくなるばかりですよ。しかも、さっき申しましたように小学校へいよいよ上がるサリドマイドの特殊な子供をかかえました父兄の悩みは、精神的にも物質的にも大きなものです。これに対して、裁判がありますから経過を見てとか、そんな、とんでもない態度だ。これは第一、前の大臣とは全然態度が変わってしまう。新しい大臣になりましてからまだ見解を聞いておりませんから、きょうは大臣から責任ある御答弁をいただきたいと思います。
  92. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 私も園田前大臣とそう変わった意見を持っておるわけではございません。しかしながら、現在訴訟になって、それを政府が和解を慫慂しないかというお尋ねでございますが、原告のほうが、和解をいたしたい、こういう御意向であれば、私のほうは個人的にでもその労をとってみるのにやぶさかではございません。私の聞いておりますのでは、原告のほうは和解の意思がないかのように聞いておるわけでございます。原告に和解の意思がないのに和解をすすめるということは、これはわれわれ第三者といたしましては、国に責任があるという立場は明らかにいたしましても、訴訟関係の事件に原告、被告どちらにも和解の意思がない。ことに原告にないというのに、しいて和解をすすめるというのはいかがなものであろうかと、私は裁判の点では考えております。  それから刑事問題でございますが、これは御承知のように検察庁が告発をいたしまして刑事裁判になりましたが、これは不起訴の決定になっておるわけであります。
  93. 高田富之

    高田委員 それは大臣、原告にとおっしゃるけれども、これは政府が誠意を示すかいなかにかかっていると私は思うのです。政府に誠意がなければ引き下げっこない、誠意がないと見たから訴訟になったのですから。問題は、会社に対して政府に対して一千万とか一千五百万とか、金額はよく知りませんが、いろいろな費用を要求したりしている、民事訴訟みたいになっているわけでしょう。ですから、政府の誠意ある予算化なり、業界を説得して寄付金を出させるなり、いろいろな方法で誠意を示してごらんなさい。政府自身が被告なんですからね、だから、幾らだってこれは解決の道はあるわけですよ。その努力もしないでおいて、裁判の成り行きを見てから、勝ったら祝ってやるぞ、負けたらしょうがないからやってやる、そんなばかげた一ちゃんと前の大臣か言っている。訴訟が出ていようが出ていまいが、問題ではない。責任は政府と会社にある、その立場で処置すると言っている。これを実行すれば、裁判なんか自然に取り下げですよ。金がなくて苦しい中を、弁護士はただでやっているじゃないですか。そういう態度はいかぬ。第一、日本の製薬会社ぐらい世界で大手を振っていばっているところはない。日本は製薬天国といわれているじゃないですか。きょうは時間がないから申し上げませんけれども、私は総理の前でも総括質問で申し上げましたが、大衆保健薬というインチキ薬が横行濶歩して、外国で一つも売れない薬を日本では片っ端から飲まされて、保険財政がそのために破壊されている。この間、大阪の関係のお医者さんの会合等においても、大阪大学の教授が、アリナミン、その他のビタミン剤は無用のものであるということを堂々と発表しているでしょう。私の言っていることと同じことを言っている。日本にはこういう学者がたくさんおります。ただ、言えない・だけです、各方面のいろいろな問題があるから。これは重大問題です。製薬会社に弱い、いまどんどん汚職で引っぱられておるが、これは氷山の一角なんです。日本の薬事行政というものは根本から洗い直さなきゃならぬところにきておるのです。私は、この前も二度も三度もあなたの前で申しまして、そのとき忠告しておる。日本の製薬会社というのはあらゆる力を持っておる。絶対権限を持っておる。社会的な力を持っておる。高田君は深追いすると政治生命はなくなるだろうと言っておる人があるが、何を言っているんだというのです。大臣、ひとつ真剣に考えてくださいよ。日一本くらい製薬会社が大手を振って、インチキな薬・一をつくってどんどん売りまくって、誇大宣伝をして大衆をだまして大もうけしている国はないんですよ。その一つが、製薬会社に薬事行政が引きずられる、これなんですよ。せっかく大臣がこの責任をとる、そのために業界から寄付をさせることだと言っておるのに、そういうことじゃ困るからというので、わけのわからぬところに寄付をさせる、わけのわからぬところに使う、そんなばかなことは許されないのです。これはどうかひとつ大臣は、園田大臣の申されたことをもう一ぺん読んでみてください。これははっきり言っておるんですからね。そして大臣自身が、この新聞記事がうそでないとすれば、してやられた、残念だ、ちょうど交代期になっちゃったのであんなことになってしまった、あの一億はああいうものに使われるべきじゃなかった、こういうことを言っておるんですね。言っておることが間違いであるかどうか知りませんが、新聞に大きく出ていますよ。ですから、そういうことをいわれないように、あなたは園田大臣以上に徹底的にそういう問題を実行してもらいたいのです。園田さんカンカンと書いてあります。約束が違うといって園田さんもカンカンにおこっているというんです。ですから、ぜひひとつこれから厚生省の製薬会社に対する指導のあり方というものは、き然としてもらいたい。いま大臣のことばは私は非常に不満足でございます。
  94. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 製薬会社に対しまして、私は園田大臣に劣らず、き然とすべきところはき然といたしてまいりたいと思います。その寄付金の問題につきましては、ここで園田大臣が答弁をされたことが契機になっておることは事実でございましょう。結局、話が進んで寄付の内容が決定をし、そしてそれの受け入れをするということがきまったのも園田大臣のときでございまして、大臣がかわったから方針が変わったというのではございませんから、その点誤解のないようにお願いをいたしたいと存じます。  インチキ薬が横行しておるとおっしゃいますが、先般もお話がございましたから、そういうような見地から、さらにあのときの薬事審議会の審議がずさんであったのかどうなのか、あるいはまた、そういう議論が一、二の学者であっても唱えられるというならば、薬事審議会の権威のためにも、また国民のためにも、それがほんとうにきくのかきかないのか、もう一度検討してみる必要があるというので、私は指示をいたして検討しておるのでありますが、薬事審議会の委員の方々もたくさんおられるわけです。それから、薬の申請をいたします際には、御承知の実験をしたデータも出てくるわけでありますが、これらが全部インチキだとして、日本にはインチキ薬が横行しておるというようには私は考えたくございません。ただ、ときに間違いということがある、見落としということがある、そういうことがないかということは、必要に応じて検討をさせていただくわけでございます。
  95. 高田富之

    高田委員 最後に、いまの問題はもう時間がありませんからこの席では申し上げません。サリドマイド対策については園田大臣のときと考え方は全然変わらない、基本的に変わっっていないのだということをいまあなたはおっしゃった。これは非常にけっこうだと思います。  そこで、これからこの問題の対策についてさらに大きく前進してもらいたいわけですが、その点についてのあなたのお考えを最後に述べていただきたい。
  96. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 フォコメリー児だけではなしに、そういう類似の身体障害の気の毒な方はたくさんいらっしゃいます。原因はいろいろあるかもしれませんが、特にいま政府委員答弁いたしましたように、フォコメリーといわれる前肢の不自由な者に対するいままでの施設なりあるいは訓練方法が十分検討されていなかったということでございますので、いまも言っておりますが、さらにこれを精力的に進めてまいりまして、そうして社会復帰が十分にできるように最善の努力をいたしたいと思います。      ————◇—————
  97. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員長代理 次に、大蔵省所管について審査を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。吉田賢一君。     〔鍛冶委員長代理退席、丹羽(久)委員長代理着席〕
  98. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 細見審議官にお伺いいたしますが、わが国の経済の現状と今後数年間の見通しについては、大蔵大臣も予算で何かと答弁しておられるようでありますが、あなたのほうでは、大蔵省の統一見解としては大体どういう見通しでありますか。
  99. 細見卓

    ○細見政府委員 非常にむずかしい御質問でございまして、大蔵省として統一的見解をもちまして将来どういうふうに日本経済を見通しておるかということでございますと、まだ確定的な見通しは持っておりません。ただ、聞くところによりますと、経済社会発展計画につきまして経済企画庁のほうで見通し手直しの作業等が行なわれているやに聞いておりますので、それらのことも参考にいたしまして私どもは今後の施策を進めてまいることになろうかと思います。
  100. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 財政のいわば元締めであり、予算作成の主管庁としての大蔵省でありますので、その財源あるいは財政の需要といった面からは、日本経済の将来の見通しにつきましては経済企画庁もさることながら大蔵省自身が責任をもちまして相当確固たる方針を立てておかなければなるまいと思う。特に八月に入ると昭和四十五年度の予算に取りかからねばならぬ非常に重要な段階になるわけでありますので、これらの点については、適当な機会に大蔵省といたしまして、相当明確な今後の経済発展の見通しを当委員会で説明されんことを強く要請しておきます。  そこで聞きたいのですが、今後社会経済の変化、技術革新、公害その他の新たなる行政需要、こういうことにも伴いまして、今後の財政需要は減退すべき要因が直接ないようにも考えられます。この点はいかがですか。
  101. 細見卓

    ○細見政府委員 むしろ政務次官にお答え願うことかと思いますが、非常にむずかしい判断であろうかと思います。
  102. 上村千一郎

    ○上村政府委員 いま吉田先生が御指摘されておりますが、財政需要というものにつきまして今後減退するというようなことは考えられないであろうかという御指摘でございますが、私もそうだろうというふうに思っております。
  103. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 財政需要が減る要因は見当たりにくい、これを前提にして考えますと、一面におきましては、歳入の面につきましてはむしろ歳入の硬直を予想するような要因はいまのところ全然ありませんか。その辺はいかがですか。
  104. 細見卓

    ○細見政府委員 日本経済が順調に発展してまいりまして、それを前提にいたします限りは、歳入について差し迫っていろいろ心配しなければならないというような問題はないと思います。ただしかし、これは長期的に申しましてそういうことでございますが、年々の税収ということになりますと、法人税などのようにかなり景気の動向に左右されるものがございますので、長い傾向としては税収は増加してまいりますが、年々の増加が同じ一定の率というような形で増加してまいるかどうかは一概に予断のできない問題であろうかと思っております。
  105. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 経済の成長が伝えられるがごとくに順調に伸び、年率一〇%も伸びていくということが確実であるならば、それは財政面におきましてもかなり明るいのでしょうけれども、しかし、ニクソン時代に入ったアメリカにおけるドル防衛が強化しつつある事情、保護貿易主義的な色彩が濃厚になってきたこと、それから開発途上国の日本に対する輸出競争の追い上げの実情、こういうものをいろいろと考えてみますと、やはり将来におきましては相当一面警戒をしながら財政政策ないしは税制問題を考える必要があるのではないか、こういうふうに思うのですが、これらの要因につきましてはどのようにお考えになっておりますか。
  106. 上村千一郎

    ○上村政府委員 先生もただいま御指摘されておりますが、四十四年度の予算編成におきましても、御承知のごとくに現在のところ依然として日本経済の拡大基調というものにつきましては継続していくであろうと思います。しかしながら、いま御指摘になりましたように、ニクソン政権が誕生した後の動き方あるいはその他フランスの関係あるいはイギリスの関係とかそういうようないろいろの諸問題につきましてまだ動揺いたしておる、そういう中をどういうふうにつくるかということは非常に警戒すべき要があるということで、いわば警戒をきわめて強く持ちながら、慎重に運営をいたしていこう、こういう態勢でございます。
  107. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 そこで、国内問題といたしましては、大蔵省の所管する税収の面でただいま大きく浮かび上がっておる一つの問題は、給与所得者に対する所得減税の問題であります。申すまでもなく国の税収が昭和三十四年に比較して四十四年は四・五倍、所得税収が三十四年に対して四十四年は七倍強になっております。この所得税のうちいわゆるサラリーマン、給与所得者は、所得納税者総数二千三百万人のうち千八百万人を持っております。そこでこれらの問題を考えてみましたときに日本経済の底の浅いこと、ないし警戒を要する要因もあること、財政需要の増加こそあれ減る要因のないこと、歳入につきましては必ずしも一楽観のみは許されないこと等々を考えてみますと、この際やはり税制対策といたしましては、根本的に税制度のあり方を再検討する時代に入っておるんではないであろうか、国民の負担能力、公平な負担、こういった諸般の面について根本的な再検討の時代に入っておるんでないかと思うですが、国税庁長官いかがですか。
  108. 亀徳正之

    ○亀徳政府委員 税制にわたります点で、ちょっと私からお答えするのはどうかと思いますが、実施を担当しております目から見た私の感じを申し上げたいと思います。  確かに最近直接税か全体の税収の——本年度の新しい予算で六二%。ちょっと直接税の負担が多いのではないか。また同時にいま先生の御指摘のありましたサラリーマンの面が特にきついのではなかろうかということがよく指摘されるわけでございます。私たちの立場といたしましては、与えられた税法をいかに適正に執行するかということで努力いたしておる次第でございますが、問題はやはり税制面で考えます場合に、直接税が重いから間接税をもう少しよけいにするかという議論がすぐ頭に浮かぶのでございますが、間接税といたしましても現在のビールも価格の半分以上が酒税である。揮発油税も御存じのように相当な高い税率になっておる。ということになってきますと、間接税のどういう税目を起こして補ったらいいかということも、これだけ大きい財政規模になるとたいへん困難かと思うのでございます。したがいまして、こういった問題は単に税収だけでなく、いわゆる歳出が削減できる分野がないか、双方あわせて今後真剣に御検討願うとともに、また税源でなおとるべき点があるのかどうかという点についてはさらに主税局でも検討をお願いしたい。  ただ国税庁といたしましては現在与えられた税法がそのまま正しく執行されておるかという点においてなお問題がございますので、私たちといたしましてはその中で課税漏れがないようにさらに努力いたしていきたい、かように考えておる次第でございます。
  109. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 国税庁長官答弁される幕でないかもしれませんけれども、やはり国税庁が独立してあるのでありますから、税行政を執行する上におきまして単に課税漏れがないかというそういう面だけではなしに、そもそもやっておる仕事は、たとえばどれだけが徴税主義的な観念じゃなしに国民の立場も守る、何を守るのか、それは経済生活であるかもしれない、安全な世帯であるかもしれない、企業の正常に行なわれることを期することにあるかもしれぬ。したがいまして、そのような多角的な面からも考えつつ税行政を行なうのでなければ、取り立てだけならば国税庁というものは私は要らぬと思うのですね。国税庁である以上は、もっと高い見地に立ちまして、そして改むべきものがないか、改革すべきものはないかという面もあわせて任務遂行途上に必ず発見するのですから、これはお考えあってしかるべきじゃないかと思う。  そこで私は、いまの、たとえばサラリーマン減税問題にいたしましても、サラリーマン減税問題を追及していけば、これは見方によれば、日本の税制全般に対して波及し得るような問題を含んでおるのじゃないか、日本の税制の根本に触れる問題を含んでおるのじゃないか、こう思うのです。いろいろ指摘はしておるわけでありますけれども、かた苦しいものの言い方をすれば、給与所得者の納税につきましては、租税負担が相当過重であるという感じが強いのであります。一体どこからくるのだろうかということになりますね。そんなことはよく数字を知らぬ人間の言うことだと一がいに言ってしまえば別ですけれども、しかしひるがえって思いましたら、第一、やはり国の政治、行政のあり方を見てみましたときに、予算の決定の過程において、圧力団体があるならば補助金はとれる、圧力団体がうんと働くならば減税もさせるということがあるのじゃないかという、そういう過程における一つの不信感もなしといたしません。また、その予算の使い道に対する不信もなしといいません。幾多の膨大な浪費、決算委員会で指摘されまするようなことも耳にし、目につきますれば、やはりそれに対する不信感が生ずる。二番目には一体、われわれの税金がもっと効率的に使えないものかなということをほんとうは感じておる。年度末になったら皆さん旅行しなさい、もらったものは使わなければ損だ、親方日の丸だというようなことで一体いいんだろうかというような感じがあるのです。また第三には、たとえば特定の階層と申しまするか、青色申告の個人業者であるとか、あるいはまた配当所得者であるとか、そういったものとの比較におきまして、租税負担がいかにも重く自分たちには感じられる。あちらでは証券を売買しても一文も税をかけないでもいい、こちらではそうではない、源泉徴収で先に一〇〇%取られてしまう、こういうようなことになる。またこれに対して政府のサービスにしましても、政府のサービスは一体何があるのだろうかということになってきますと、少し極端な言い方ですけれども、まことにアンバランスではないか、こういう面からも不信感が生ずる。  そこへもってきて抜き差しならぬのは、最近の消費者物価の値上がりであります。減税千五百億といっておりますけれども、少々の給与の引き上げといっておりますけれども、物価上昇は天井知らず。ここでこの間も企画庁長官に言ったのです。あなたのほうは企画をなさるが、それが一たび運輸省で論議される、一たび農林省で論議されるというと、米の価格問題は全く対立する、あるいは運輸省になりますと、運賃問題は対立します。企画庁というところは看板だけ出すけれども、実施官庁でないからだめですな、それなんですよ。でありまするから、そういうようなことから見ますことと、生計費がかさむことはいなめません。としますると、減税千五百億してもらったというが、減税感が、ありがたいという感じが少しも生じません。そういうこともあり、さらにまた、最近生活様相が複雑になりましたから生活水準が、欲望が高くなりましたね。あるいは理想かもしれません。しかし欲求水準というものが相当高度になってきました。ということから考え、あれこれ考えますと、やはりサラリーマンの税というものの過重感は、そういうものからもひしひしと身に迫ってくるのじゃないか、こう思うのです。これはあなたのほうもサラリーマンだから身をもって体験せられておろうととろであろう。それは天引きして取ってしまうから何も感じていないだろう、とんでもないことであります。国税庁の長官は、それは取り立て役かもしれませんけれども、取り立て役だけじゃだめですよ。その裏にあるところの千八百万人の給与所得者の衷情に対する深い洞察がなければそれは政治じゃありません。昔の坂り立ての酷吏になってしまう。そうなるおそれがあると思うのです。ですからそういうことに対する、私は五点指摘しましたが、五点指摘したことはここで論議したことばからですが、どれ一つ否定でさません。大臣は否定しません。一々私、御説明はいたしませんけれども、どう感じられますか。政務次官からでもよろしいが……。
  110. 上村千一郎

    ○上村政府委員 吉田先生がいま御指摘になられましたが、これはまた私ども同感でございます。それでいま特に給与所得者の方々の税の過重感と申しますか、負担感というものは現在の世論を見ましても非常によくわかるわけでございます。この点につきましてはもちろんわが国の高い経済成長と、それから所得税制の中の累進構造といういろいろな制度的なものもちょうどそこにからんでまいっております。それで先生も御承知のように、四十四年度の税制改正におきましては、この点についてあるいは免税点を引き上げるとか、税率の点につきまして五%を四%にし、小きざみにするとか、いろいろな処置を講じております。先ほど先生も御指摘のように、わが国の急激な経済成長、あるいは経済社会情勢その他の急激な変化、複雑化におきまして、この税制のものにつきまして、現在、洗い直しをしていく必要がありはせぬだろうか、こういう問題につきましてはきわめて同感でございます。それで私どもといたしましてもこの際少し基本的な部面につきましても検討を開始する必要がありはせぬか、こういう姿勢であります。ただ先生御案内のように、税体系というものは一つの独立体系を持っておりまして、そうして有機的な連係を持った一つの体系でございますので、また及ぼすところの影響も非常に多うございますので、慎重に扱っていかなければならぬ関係もございまして、いろいろと各種の調査会その他いろいろな審議機関もあるわけでございますが、そういう方々にも諮問しなければならない点もございましょうし、また大蔵省としましてその前にいまの姿勢に基づきまして検討を開始しなければなりませんし、いろいろな点もございまして、慎重に扱う必要のあることは当然であります。とにかくこの際に相当基本的な線におきまして検討を開始する必要がありはせぬか、こういうような考え方でございます。
  111. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 長官、私のいま述べましたことにつきまして……。
  112. 亀徳正之

    ○亀徳政府委員 ただいま政務次官がお話しになったとおりでございます。ただ、先ほどのお答えに一点補足いたしますと、やはり私の立場は依然として基本的に税法を適法に執行する立場にあるわけでございますが、同時に、やはり常に執行面に立っておりますので、どうしても納税者の方々の実態といいますか、より身近にそういう問題をいろいろ考える機会が多いわけでございます。率直に申して、やはり一カ所からしか給与をもらわないで的確に源泉徴収されておられる方々は一〇〇%課税されております。また勤労所得と資産所得というものを考えました場合に、どうしてもやはり勤労所得といいますものは、勤労を唯一のよりどころとして所得を生む所得でございますので、やはり負担力において資産所得と比べまして弱い面があるのではないか。そういう意味で引き続いて所得税の減税の問題が議論されるであろうと思いますが、所得税を中心にお考え願う必要があるのではないか。また、特に先ほど先生御指摘になりましたように、物価も上がってくるということでございますので、課税最低限の問題がこのままでいいというわけにも相なりませんでしょうし、税率の問題もいろいろ手を加えざるを得ぬでございましょうし、また特にサラリーマンの負担感の問題も含めて考えますと、やはり給与所得控除がなおこのままでいいかという点も今後検討していただかなくてはならない。執行面の立場に立ってそのような感じを持っておることを一言つけ加えたいと思います。
  113. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 国税庁長官に聞きますが、あなたは税制の改革につきましては、たとえば改革案の検討、改革をなすべきかいなや、こういうことについてはタッチする機会はないのですか。
  114. 亀徳正之

    ○亀徳政府委員 いろいろ主税局に意見を申すことは、執行面の立場から当然ございます。しかし全体の財政規模、主税局サイドの要望と、今度は歳入の見積もりはどうかということをぶつけ合っていろいろ議論をする場合には、われわれの意見を込めて主税局長がいわゆる調整役に当たっておりまして、率直に申して税制並びに歳入見積もりその他は主税局長が担当いたしております。
  115. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 主税局が主として担当する、税制調査会におきまして長期税制のあり方を検討する等々、これもわかりますが、やはり税制の根本にメスを入れて、そうして新たなる時勢に適応するように放電すべきものは改革していくということをしなければ、いつまでも主税局でござい、あなたの国税庁は取り立てでござい、主計局歳入歳出予算でござい、主として歳出予算、といったような一種のばらばらの状態でいきましたら日本にはその面から一つの危機が来るんじゃないか。大学の問題でもそうなんです。去年の一月にあんなに大学問題がどっと爆発するというようなことがあって、初めてあ然としちゃって、みな驚いて中身を見たようなことでございます。そこで昨年度は、大蔵省自身が財政について一つの危機感を積極的に訴えたのです。その財政とうらはらの関係にあります税制についてもっと深刻な考えをしていかなければならぬと思うのです。だから、それは主税局も大事ですけれども、あなたのほうも大事ですよ。なぜならば、あなたのほうは現場を全部知っておるのですから。税務署の職員の問題と違うのです。あなた御自身は一庁の長官なんだから。長官の立場は、政治的分野において相当な発言をしながら、 いかにして税制の運用をより一そう健全化するかということに進んでいく体制をとらなければいけないと思うのです。そこで私は言うのです。
  116. 亀徳正之

    ○亀徳政府委員 私の説明があるいは不十分だったかと思いますが、もちろん執行面からいろいろの問題を私たちは感じております。その意見は内部的には常に強く主税局にも申し、また省議の段階でも申しております。その意味では、むしろ主税局と私たちとは一身同体で動いておると申し上げてよかろうかと思います。ただ、税制面の表にはやはり主税局長に立っていただくという仕組みになっておりますので、そのことを申し上げただけで、いろいろ問題点について、主税局のことだからどうでもいいというようなことは私は決して考えておりませんので、その点は御了承願いたいと思います。
  117. 細見卓

    ○細見政府委員 一言補足させていただきます。  長官は非常に主税局の立場を尊重していただいて、遠慮がちの発言をいただいたのでありますが、かく申す私ども主税局の者も、絶えず第一線との人事の交流をいたしておるわけでございます。ただ、制度といたしまして、執行者と制度の立案者あるいは大蔵大臣の直接の補佐として中側におる者と、長官の立場を先ほど政治的とおっしゃいましたが、政治的にはむしろ独立して公正な税務執行を確保するために国税庁長官の地位を高めるという意味において、国税庁の置かれておるその立場を尊重いたして、われわれは内局にあって直接大臣の補佐をいたす、かような分担を、長官が非常に懇切におっしゃったものですから、あるいは誤解をいただいたかもしれませんが、事実は、私ども人的にも行ったり来たりしておりますし、全く同体であり、税制調査会等の審議におきましても、第一線の実情を無視した税制というものはあり得ないわけでございますから、そういう意味で絶えず審議に御参加願っておるわけで、おっしゃるような意味での二元化した行政ということはございませんので、御了承願いたと思います。
  118. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 実は二元、三元して分裂しておるのです。私ども常に言うのでございますけれども、一体、大蔵省財政の主権者のような考え方を持つことが、もうとんでもない越権なんです。いうならば、これは内閣総理大臣が当然に直接担当するというくらいな責任の体制が明確にならねばいかぬのであります。したがいまして、そこに実施官庁、企画官庁、そういうようにばらばらになり、またそれぞれの省がそれぞれの言い分をそれぞれ行なっていくということになりまするので、私は、大蔵省自身が目下給与所得者の税問題が大きくクローズアップしてきたということをいろいろな角度から検討したら、税制制度運用の全面に波及する関連があるという点を指摘しておるのでありますから、そうなれば、大蔵省だけの問題じゃございません。むしろこれは各省総合的に処理対策を立てねばならぬ問題であるので、結論的にはやはり税制改革、根本的対策としてそこに触れていかねばならぬじゃないか、こう思うのです。一体、サラリーマンの担税能力というものは、いうならば身体が資本であります。したがいまして、所得の把握率も一〇〇%。クロヨン、トーゴサンとかいうキャッチフレーズのもとにいろいろと伝えられる立場にあるのであります。だから、これはいいかげんにほうっておきましたならば相当蔓延するものを内在しておるというふうにお考え願っておきたいのであります。  そこで、いまのたとえば直接税を間接税化するという面についても簡単にいかない、税制の根本、だから重大であるということをおっしゃっておりましたことは、これはもっともであります。もっともでありまするけれども、たとえば一、二例を拾ってみますると、かりに五千億円の所得減税額を算出するといたしました場合に、これは相当財源の不足を来たすのではないかという懸念もあろうかと思います。反面から見まして、たとえば物価の安定あるいは経済成長を持続する限り、相当な自然増収がありまするから、この自然増収というものからもっとこれを引き当てることができないものかどうか。あるいは利子とか配当所得の租税特別措置というものにつきましても、適当に規制あるいは停止するというような手は打てぬものかどうか。最近の一種のレジャーブームといいまするか、少し奢侈に流れるような傾向が強いのでありますから、高級物品税等につきましては考える余地はないか。ことにこの委員会におきまして繰り返し論じておる点でありますけれども、池田内閣以来の大懸案の補助金の全面的整理の問題、行政改革の問題等によりまして、財政の節約をはかるということによりまして、相当浮いてくるのではないか、あるいは土地の増価、地価の増価、これを規制するということは絶対に必要でございます。したがいまして、だんだんと住宅需要も増大していく趨勢でありますので、こういう点につきましてもさらに法人に対しまして特別に規制税を設定するというような手とか、その他さきに述べましたように有価証券の譲渡所得税というようなものも復活する等々、二、三例としてあげてみましたようなこと等真剣に取り組んでいきましたならば、給与所得者の税問題は単に一つの課題として完全に解決する。かくしてそれらの人々が職場において家庭においてそれぞれ明るく勇躍して仕事にいそしんでいくことができる。これが政治の根本であります。  だから財源を求めるということになるならば、こういう手もあるのではないか。これは私が一、二しろうとながら指摘したのでございますけれども、税制調交会等におきましてもやはりもっといろいろな角度からの人が入って、底辺の人も入る、あるいは谷間に悩んでおる人も入るというようなことで、いろいろな角度からもっと論議するようなメンバーがそろわぬと——これはりっぱな人がそろっておられますけれども、なかなかそれ、だけではいかぬのではないか。またそういった人にはほんとうの苦しみということがない人が多いのでありますから、こういうことも考えながら、私はかりにこういう提案も可能ではないか、こう思うのです。これは福田大臣に聞きたいのですけれども、どなたかひとつしかるべき人から……。
  119. 上村千一郎

    ○上村政府委員 いま先生か御指摘になられました点につきましては、私は国会の審議の場におきまして代表的な御指摘だと思うのです。この問題につきまして実はもちろん税制調査会その他で長期税制の安定とかいろいろな御答申を承っておりますし、またその年度、年度につきましての問題の御指摘もあるわけでございますが、ただいま御指摘のような点につきましては、大蔵委員会などにおきましても同じような御指摘がございました。それでその際にも私御答弁を申し上げたのと同じことになりまするが、いまのような御指摘の点につきましては前向きに十分考えまして、そして検討をいたし、またそういうことをいろいろと主税局その他も中心になりまして整理をし、そしていろいろと税制調査会その他に対して諮問をいたす際におきましても、重要な参考にさしていただきたい、こう思っておるわけであります。
  120. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 たとえばいま指摘した中で行政改革の問題財政改革の問題、それに触れていきますと、これは福田さんとも佐藤さんともしばしば問答は繰り返しておるのでありまするけれども、熱意は示される。しかし実効はあがっていない。これが現状なんです。これは容易じゃないのです。容易じゃないけれども、これと取り組んでいくことの決意と熱意が続いていかなければ、これはものをよくしましょうということは無益な発言になってしまう。でありますから、私はそれらの点につきましてはこれは実現するまで絶えず叫び続けます。そうしてあなた方も、そのつど誠意ある御答弁になっていることもわかります。国民も、国会の全議員も、すべてこれらの点につきましては一そう深い理解を持ってもらわねばならぬのであります。でありますので、いまの諸点につきましては、あなたのほうも一そう御勉強になって努力せられたいのです。  それから徴収が非常に不公平だというような声がよくあるわけです。最も公平に徴収してもらわねば困るという声があるのであります。徴収不公平につきましては、事実を指摘し、議論すれば長くなりますから、よろしゅうございますが、一口に言って、最も公平な徴税ということにあなたはどういう対策を持ち、努力をしつつあるのか、これだけを一点聞いておきたいと思います。
  121. 亀徳正之

    ○亀徳政府委員 御存じのように現在源泉徴収制度がしかれておりまして、給与所得の方につきましては、特に一カ所からしか給与をもらっておらない方々からは、年末調整の措置を通じまして的確に所得が捕捉されておる。したがいまして、現在私たち全体で五万人税務職員がおりますが、実はほとんどあげて事業所得者あるいはその他所得というところに全面的に力を入れている次第でございます。特に土地をめぐる権利金その他非常にとらえにくい所得がいろいろあるわけでございますが、法人の調査等いろいろな調査を通じていろいろな不正なり漏れを発見しましたら、そういうものを極力資料化いたしまして、法人の係から所得税のほうに連絡するとか、また特に資料係というようなものを設けまして、そこに資料の送付漏れがないというような点を注意いたしますし、特に最近土地問題についての課税漏れが多いというようなことからして、不動産所得の的確な把握といった点、言い出しますと切りがないわけでございますが、全力をあげてむしろそういう方面に努力を傾けており、また非常に多くの脱税をする場合には、率直に申しまして令状ももらいまして、一罰百戒の意味も含めまして査察の対象にし、摘発をいたすということもいたしまして、極力まじめな人が喜んで納税をするような雰囲気、態勢づくりに全体が総力をあげているような次第でございます。
  122. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 時間がなくなってきましたから、お互いに要点を簡単明瞭に問答することにして進めたいと思います。  いま徴税行政の問題に入ったわけでありますが、わが国におきまして目下徴税のために要する国費は総計どのくらい使っておりますか。
  123. 亀徳正之

    ○亀徳政府委員 四十四年度におきましては、総額で七百九十一億四千万円に相なっております。
  124. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 人口が過疎過密の現象を呈しまして都市に集中するような傾向が強いのであります。したがって都市におきまして課税対象になるような人、事業がだんだんふえてきたのですが、こういうような意味におきまして、職員の配置関係のアンバランスがあるのじゃないだろうか。最近いなかにおきましては税務署員は余っておる、都会においては足らぬ、そこで参観交代で少し都会へ行って勉強してくるとかいう声さえ聞くのでありますが、この点についてはどうなのでありますか。
  125. 亀徳正之

    ○亀徳政府委員 御指摘のように何と申しましても都会局といなか局と比べますと、都会局の調査が不十分だという感じも率直にいってございます。また特に賦課面、調査面が手薄ではないかということで、実は二重の方法で都会局の直税賦課関係に人を捻出する努力をいたしております。試みに昭和三十八年から四十三年を通じてみまして、まず徴収から約二千八十五名、間税から七百九十三名の人員を捻出して、徴収、間税関係からあげて二千八百七十八名を直税に振り向けております。またいなかの地方局から人を捻出いたしまして、東京局に千八百二十六、大阪二百四十四、名古屋百六十一というふうに定員をさいております。また先生先ほど御指摘のように期限つき転勤f将来それか永住するかどうかわかりませんが、ともかく三年間ひとつ御苦労だが東京に行ってきてもらいたいということで、三年にわたって期限つき転勤を八百四十七名やっております。率直に申してなま身の人を移すということはたいへんな作業でございますが、やはり課税の公平を期するためにあえてこういった作業をいたしておるような次第でございます。
  126. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 最近税務職員の希望が少ない、こういうことをちょっと聞くのでございますが、これは対策といたしまして、上級試験の場合は大学卒業ということになっておると思うのですが、中級は短大ですか、初級は高卒ですか、ところが一般の労働力不足の影響もあるかとも存じまするけれども、ともかく高校卒業者の希望者がとんとないとか、大学卒業者をとらんとしてもこれは希望者が少ないとか、そういったので量、質ともに落ちているという批評が非常に強いのですが、この点どうですか。
  127. 亀徳正之

    ○亀徳政府委員 御指摘のように最近税務大学校普通科の人員の募集に実はたいへん苦労いたしております。競争率が七倍から八倍ということで、まだほかの分野よりは相対的にはいいのでありますが、連年の状況を見ますと、御指摘のようにだんだんこの募集がむずかしくなる。また現在の仕組みは、税務大学校の普通科で一年教育いたしましてから第一線にその人を差し向けるわけでございますが、途中でまた大学を受験したいという人たちも出るという状況でございます。ただ目下のところはわりと、東京あたりからは実はとても応募者が少ないのでございますが、北海道、東北、九州、こういった地方からの希望者がなお引き続きあるということで、教育内容の強化ということで目下のところは対応いたしておるような次第でございます。しかしながらいずれこの問題は長期的にどうするかということで検討を要すべき問題かと考えておるような次第でございます。
  128. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 最近いわゆる汚職ですね、税務汚職につきましては全国的に起訴された者、起訴されない者、それは総数はどのくらいの統計になっておりますか。
  129. 亀徳正之

    ○亀徳政府委員 ただいまその資料を手元に持っておりませんが……。
  130. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 御記憶の程度でもいいです。
  131. 亀徳正之

    ○亀徳政府委員 ことし非常に少なくなって、私の頭には非常に大きい事件が個別に頭に入っておりまして、ちょっと数の上で——取り調べまして、正確に御連絡したほうがいいかと思います。
  132. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 むしろ委員会のほうに正確に報告してもらったほうがいいと思います。
  133. 亀徳正之

    ○亀徳政府委員 こういう数字はいいかげんなことでは……。
  134. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 さようでございます。よろしゅうございます。  税の関係は、納税者の立場から見ますと、これはいまは私はサラリーマンを例にあげて論じたのでありますが、それ以外におきましてもおそらくは相当神経を使いながらこれに対処していると思うのであります。そこで昔は警察官、いまは税務職員というふうな、人にいやがられる、おそれられる、こういうこともあるのではないだろうか。そこで、量はやや不足ぎみ、そして上級の学歴者がなかなか得にくい、その現状にあるのではないだろうか。としますると、いわゆる有資格者でない人が、ベテランが長くあるところに巣くっておる、そこに汚職の要因もあるということは一般の行政の通弊であります。私、綱紀粛正を叫びたいゆえんもその点からもくるわけであります。最近ノイローゼとか神経系統の何か健康をそこなった人があったとか、これはうわさですか以貢一偽は別といたしまして、とするならばこれはたいへんだろうと思います。また近い例の通産省の関税汚職の問題、堀田何がしの事件、あれなんかにつきましても、一体大蔵省責任がないだろうかどうか。通産省の一課長補佐とあっても、あの天下の耳目を從耳動したところの汚職事件というものは、一体身分はどこなのか。身分は通産省。仕事はどこなのか。仕事は関税ですから、彼が認定をするならば、必要なある機械の輸入は免税でしょう。免税にするかどうかの権限を持っている。これはたいへんなものです。というような関税を通過するところの権力を握っておる、そこに汚職ありということになりますると、がく然として大蔵省は、関税局はたいへんでということにならねばならぬと思います。というようなこともありまするので、それやこれや考えてみますると、やはり税務行政上しゃんとしたみずからの姿勢を正さなければならぬ面が相当あるんじゃないだろうか、そういうように私思うのです。そういうことでないと、これは納税者は納得しません。一面苛敏訣求の感じがやはりひしひしとくるわけです。そして悪いことはして、われわれだけにだいぶきついことを言う、一体なんだ、おれの税金をろくなものに使っていない、行くえもよくわからぬような使い方をするんじゃないかということにも波及していくわけでございますので、質の向上、行政のあり方等、これらの関係におきましては、やはり厳として姿勢を正して税行政に当たるべきでないだろうか。そしてこれは通産省問題としてもっぱら言われておりましたけれども、第一に責任を感じるのは私は関税局長であろう、大蔵大臣であろうと思う。その辺についてどんな論議がかわされたか存じませんけれども、私は、通産省だけに責任をおっかぶせるべき案件ではないのじゃないかと考えるのです。その点につきまして、やはり筋を通し綱紀を粛正していくということを強くあなたの立場からしていかなければなるまいと思うのです。どうですか。
  135. 亀徳正之

    ○亀徳政府委員 綱紀の粛正という点は、私たち税の仕事にあずかっておる者の間では幾ら強調しても強調し足りない問題であるかと思いますが、なお私たちの仕組みを、さっきの採用の問題ばかりではございません。一人の人があまりまたなれないままくるくる移動しても因りますが、大体三年おれば必ずその税務署を転勤させるということで、いわゆる納税者との間に特別な関係がないように特に配意いたしております。また仕組みといたしましても、国税庁は監察官制度というものを設けまして、外部からだけでなしにむしろ内部的にそういったところの不心得者を出さないように、またそういうような例があるというような場合には、事前にそれを予防する、チェックするということに万全の努力を払っておるような次第でございます。
  136. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 その点は、結んでおきますが、やはり国の税制の根本は申すまでもなく憲法に由来いたします納税の義務がある、あるいは;回法律によってこれは規定されなければならぬ、その条件の改廃等につきましても同様でございます。したがって、これは昔の徴税主義的な官僚主義のそれじゃもう時代に合いませんから、やはりあくまでも国民主権的な見地に立ちまして、民権も尊重して、そうしてみずからの地位、仕事も全うす  るというふうに私は進めるべきだ、こう思うのであります。これらの点につきましては、非常に大事なことでありますので、お互いとも自戒してい  かなければなるまい、こう考えております。  最後に私は伺いたいのでございますが、これは  一転いたしまして、一つは、恵まれざる谷間の所得税法上の控除問題であります。最近の労働力の不足は御承知のとおりでございますが、この労働力の不足というもので、主婦はそれぞれとパートタイマー、あるいはまた赤ちゃん、子供を託児所、保育所あたりに預けまして、そして仕事に行く。  一面これは生産に寄与するとともに、一面家計を助ける、同時にまた、子たちの教育に尽くす母親であります。この母が託児所に託すような場合、あるいは保育所に託すような場合には、それぞれの階層は御承知のとおりありますけれどもu、しかしわれわれの調べたところによりますと、最高の負担が五千円をこえるのがございますね。生活保護者等々の無料の場合は一応のけまして、五千円をこえる場合がございます。こういうようなものにつきまして、特に三歳までのものにつきましては、相当多額のものを負担するということは御承知のとおりでありますので、子供、幼児を預けるこの経費は控除対象にすべきではないか、こういうふうに思うのです。ひとつ御検討あってしかるべきと思うのですが、いかがでしょうか。
  137. 細見卓

    ○細見政府委員 その問題につきましては、各方面でそういうお話があることも存じておりますが、御承知のように、いまの日本の所得税制におきましては、もし奥さんがそういう形で相当の収入を得られたというような場合でありますと、奥さんと御主人とが、両方が納税者になられる。そういうことになれば、多くの場合、免税点が御承知のようにかなり高くなっておりますが、失格になるということになろうと思いますし、また扶養控除と配偶者控除といいますか、税制上の配偶者としての地位を保ちながらお働きになりますときには、普通の配偶者の場合でありますと、所得が五万円以上ありますと、配偶者控除が適用にならないわけでありますが、こうした給与所得者の場合でありますと、所得十万円以上ということで給与の収入金に直しますと、ほぼ二十二万五千円程度になろうかと思います。そういうことで、私どもといたしましては、それらの点につきましては、十分ではないにいたしましても、そういう世の中の実態について配慮いたしたつもりであるわけであります。  ただ子供を預けるための経費というようなことになりますと、たとえば病弱な奥さんが子供を預けられた場合にそれを経費と見るか、いろいろむ、ずかしい問題がございまして、御承知のように、現在の税制では概括的にいろいろ考えられる標準的な経費を扶養控除、配偶者控除という形で引き、特に身体障害者の方につきましては、特別な控除をするというようなたてまえになっておりますので、別に子女の保育というようなこと、さらに大きくなりまして教育費控除というような問題につきましては、今後の検討事項ではございますが、現行の税制としましては、かなりの問題があるところでございます。
  138. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 いまの税制の御説明じゃなしに、やはり私は問題点としてこの点は検討して、そして私が壁頭言うたごとく、谷間にあえぐ人なんです。この労働はとうといんです。そうして相当寄与しておるんです。一人一人の人が一軒一軒の家庭におきましても大事な仕事をしてくれるんです。その子供を預ける場合でありますので、いまの税制の説明、それは何かと理由はあります、わかりますけれども、一歩進んで検討されてはいかがかと思いますのでぜひ検討してください。  それから類似のことでありますけれども、最近御承知のとおり看護婦の不足でどこも困っております。全国の正准の看護婦を合計しますと二十五万三千人と最近いわれておりますが、どうにもいかぬ。そこで、夜勤があり、あるいは長い時間勤務しなくちゃいかぬ。しかし赤ちゃんを持っておる、幼児を持っておるという人はどうするか。東京における、たとえば国立の東京第一病院あたりの実例をとってみましても、看護婦さんの会で夜だけ保育所をつくって、そこへ夜預けておる。一般の保育所ですと夜は預かってくれませんので、そういうことにすると、意外な経費がかかる。ことに最近の保母の不足というのはこれまた激しいのであります。適当な保母に来てもらわなければいかぬ、経費が相当かさむということもありまするので、これらにつきましても、これは国全体の財政から見たら小さな数字でありますけれども、しかし、看護婦としましてこれらの問題に明るい救いの控除の手を差し伸べるということになれば、どれだけ仕事にいそしむことができるかわからぬと思います。こういう辺を私は二、三指摘していきたいのでありますが、これはひとつ次官御研究願いたいのであります。
  139. 上村千一郎

    ○上村政府委員 吉田先生が御指摘になりました点でございまするが、いま審議官は現行法上の点を説明しただけで、われわれのほうでもその趣旨というものは十分検討していかなければならぬという姿勢であります。これを独立項目として取り上げるのか、それとも必要経費的な意味で取り上げるのか、あるいは免税点の引き上げというような点で取り上げるのか、いろいろな取り上げ方もあるでありましょうが、少なくとも現実の社会におきまして重要な検討の点であることは間違いございませんので、それを何らか前向きに検討していこうという姿勢でございます。
  140. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 例の教育費の所得控除の問題でありますが、これは意見によりますると、高等学校、大学までという意見もありまして、大蔵省ではそれは賛成しないような意向のように雑誌記事なんかには出ております。私は、少なくともやはり義務教育につきましては、その点については再考して検討されてはいかがか、こう思うのであります。  それからさらに主として給与所得者でありますけれども、家賃を払っておる人−家持ち、これは別であります。固定資産もあり、家賃も入るのでありますから別でありますが、借家の住宅費というものは所得の中から払っておりますので、これは当然控除対象にしてしかるべきじゃないか、こう考えるのであります。新世帯のアパート住まい等におきましても、この住宅費問題は相当重視すべき控除対象になるべきでないか、こう思うのですが、これらの点もあわせましてひとつ調査、研究をせられたいのですが、いかがでございましょう。
  141. 上村千一郎

    ○上村政府委員 一番最初にいろいろ私のほうから先生の御質問に対しまして御答弁申し上げた際にも触れましたが、現在、いま先生御指摘されておるようないろいろな問題が、ずっと現実に重要な課題として出てきておるわけでございます。そういうようなことも含めまして、ひとつこの際、前向きに検討していく段階に来たっておるだろうという姿勢でございます。ただ申し上げましたように、税体系というのが、先生御案内のように非常にいろいろな内部的な一つの理論体系もあり、また独立体系もあるというような状態にもございますので、これを扱っていく場合に非常に他に大きな影響もあるというようなこともございまして、慎重な考え方でいくわけでございますけれども、前向きな姿勢でこれを検討していこうという姿勢には変わりはないわけでございます。
  142. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 半面におきまして、税の問題は財政上の問題であり、また会計技術上の問題でもあり、ないしは憲法的な法律論的な問題も相当持っているわけでございますが、ともかくいまの日本におきまして、税制のあり方、もしくは税行政のあり方、税財政と国民の関係というものは相当重大になっているととは事実でございます。しかもかなり膨大な税につきましての税行政の予算の額をお述べになっておりました。四十四年には七百九十一億円でありますが、たいへんなことであります。だからそれらの面につきましてもみずからもっと簡単にできないものだろうか。税行政の簡素化、公平とともに簡素化−最近は存じません。戦前のことでありますけれども、デンマークにおきましては税ほど簡単な事務はない。まるでいなかの郵便局で貯金をするように、貯金を引き出すほどの簡単な手続で税行政が行なわれているということを私は聞いたことがあるのでありますが、できるだけ簡単に公平に、そして国民の福祉に積極的に寄与するのが税行政というような考え方で、税行政にも当たっていただきたいと強く御要請申し上げておきます。
  143. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員長代理 次回は公報をもってお知らせいたすことにし、本日はこれにて散会いたします。     午後二時十二分散会