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中川委員長 昭和四十一年度決算についての議決案は、
理事会の協議に基づき、
委員長において作成し、各位のお手元に配付いたしております。
これより議決案を朗読いたします。
議 決(案)
昭和四十一年度
一般会計歳入歳出決算、同年度
特別会計歳入歳出決算、同年度
国税収納金整理資金受払計算書及び同年度
政府関係機関決算書につき左のごとく議決すべきものと議決する。
本院は、毎年度決算の審議に際し、
予算の効率的
執行並びに不当事項の根絶について、繰り返し
政府に注意を喚起してきたにもかかわらず、依然として改善の実があがっていないのは、まことに遺憾である。
(一)
昭和四十一年度決算
審査の結果、
予算の
執行が適切を欠いたため、その効率的使用等所期の成果が十分達成されていないと思われる事項が見受けられる。
左記事項はそのおもな事例であるが、
政府はこれらについて特に留意して適切な措置をとり、次の常会の始めに、本院にその結果を
報告すべきである。
(1) 地方自治体等に対する零細補助金等の整理統合は、従来しばしば
指摘して来たが、なお、その実があがっていない。
即ち、一件五十万円以下の零細補助金の廃止、同一ないし類似の補助目的のための補助金の整理統合等合理化を必要とするものは、
昭和四十一年度において、地方自治体の要望によれば、四百八件に達するが、同年度において、これが
実施されたのは、百九十五件にとどまっている。
政府は補助金の多様化と零細化が、地方行政を複雑、非効率なものとし、地方財政の自主的運営を阻害している実情にかんがみて、補助金の合理化をさらに推進し、国、地方を通ずる
事務の簡素化と財政資金の効率的使用をはかるべきである。
次に、補助金の交付が適切に行なわれていないため、補助の趣旨が十分に生かされていないと認められるものがある。
即ち、文部省
所管において、
市町村が行なう要保護及び準要保護児童生徒就学援助
事業に対する補助金は、経済的理由により、就学困難な児童生徒の就学奨励をするものであるが、教科書費、学用品費、修学旅行費等の給与が、学年末に一括して行なわれているため、補助の効果が十分にあがっていない実情にある。
これは、
市町村の交付申請並びに、文部省の交付決定の遅延によるもので、これら交付
事務の促進をはかって、
市町村が、給与を適期に行なうよう指導する必要がある。
厚生省
所管において、都道府県、
市町村等が行なう
補助事業等に対して交付する補助金等については、交付後、交付すべき額の確定に相当年月を経過しているものが認められ、
補助事業等の成果の確認並びに補助金等の精算の遅延をまねいている。
補助事業者の実績
報告書の提出並びに、受理後の部内の
処理の促進をはかる必要がある。
また、地方自治体等が国の補助金、負担金の交付をうけて施行する各種公共
事業について、
工事費の査定並びに補助金等の交付が遅れたため、
工事が、冬期の
工事不適時に行なわれ、あるいは、年度末にかかる等している事態も改善されていない。
これは、公共
事業関係行政機構が旧態依然として複雑化し、
事務処理に日数を要するためと思われる。
政府は、
関係行政機構と
事務手続の簡素化をはかり、補助
工事が、適時、円滑に行なわれるようつとめるべきである。
(2) 契約の締結にあたっては、契約の目的となる物件または役務について十分な
調査検討を行ない、適正な
予定価格を作成して、契約の適正を確保する必要がある。
とくに、随意契約による場合においては、競争契約による場合のごとく、参加者の競争によって
予定価格の不備が補なわれる機会がないものであるから、
予定価格の決定には一段と慎重かつ細心を期する必要がある。
しかるに、
各省、各公社等における実情をみると、随意契約は比較的少額なものの場合が多いこともあって、競争契約の場合より、安易に
予定価格を作成していると認められるものがある。
たとえば、日本国有鉄道が通運
事業者に請負わせているコンクリートまくら木の取卸し、移送等の作業の運賃及び料金支払の
状況についてみると、これらの通運
事業を行なう者は、通運
事業法第二十条の規定によって、運輸
大臣の認可を受けた運賃及び料金以外のものを収受してはならないこととなっており、
予定価格は、認可運賃及び料金を基礎として積算すべきであるのに、これによることなく原価
計算方式により
予定価格を算定したりした結果、支払が過大となった事例が多数見受けられる。
このような事例にかんがみ、
政府及び
政府関係機関は、契約締結にあたっては、十分な
調査と入念な検討を行ない、もつて契約の適正、効率化を確保すべきである。
(3) 東南アジア地域を中心とする発展途上国に対するわが国の経済協力は、延払輸出による信用供与及び直接借款を主として、近年、急速な伸長を示し、
昭和四十一年度において、その総額は、
政府ベースによる一、〇二七億円のほか民間べースを合わせると二、四〇八億円に達している。
援助は贈与、直接借款、輸出信用、直接投資等多岐にわたり、ここ数年延払輸出より援助条件のゆるやかな直接借款が増加し、また、
開発援助から商品援助に重点が移っているが、これ等の援助効果の発揮には、さらに十分な配慮が必要である。
即ち、経済援助の目的と、わが国及び相手国の実情に即して、最も効果的な援助を選定し、統一ある
方針のもとに、適切なる援助を
実施すべきである。
資本協力にあたっては、
事業の相手国等に及ぼす経済効果等を事前に十分に
調査する必要があり、これがため、技術協力との一元的推進により、経済協力の実効性の確保に努めるべきである。
(4) 公社、
公庫、公団、
事業団等の
事業運営等について、従来、しばしば
指摘して来たが、未だ改善を必要とする点が多い。
既に、
昭和三十九年九月、臨時行政
調査会が「公社、公団等の改革に関する意見」として、また、
昭和四十二年八月、行政監理
委員会が「特殊法人の改革に関する第一次意見」として、その運営の非能率性と、なかには、既に設立目的を達成し、あるいは重複して設立されたものまで、そのまま存続するなどの乱立現象を
指摘し、その運営の効率化と整理統廃合等を勧告している。
しかるに、その後、勧告の趣旨は十分に生かされたとはいえず、これら
政府関係機関等の新設も跡をたたない。
政府は、既に
事業の目的を達成したもの、あるいは、
事業成果のあがらないもの等の整理統廃合を促進し、新設にあたつては、その乱立を防止すべきである。
また、役員の任命にあたっては、高級公務員の選任に慎重を期し、ひろく民間人材と部内
職員の起用をはかるとともに、その定数、給与等については、統一ある基準を法令に明示する等、この際、再検討を行なう必要がある。
さらに、
事業の運営にあたっては、
責任体制の確立と相まって、自主的運営を拡大し、業績評価を励行する等により、効率性の発揮に努めるとともに、業務
報告等を国会に提出し、もって、これら機関が、国の行政機構と独立して設けられた趣旨が、十分に生かされるように努めるべきである。
(5) 交通、水道、病院等地方公営企業は、
昭和四十年度末の不良債務の解消をはかる財政再建
計画の
実施等により、経営収支の改善に努めているが、なお、全般的には悪化の傾向にある。
即ち、
昭和四十一年度における決算
状況は、九七四
事業が二二六億円の利益を計上しているのに対し、三七九
事業が三三億円の損失を計上しており、累積欠損金は、交通
事業の七八八億円、上水道
事業の二七億円、病院
事業の七八億円以下五一五
事業で一、二〇三億円に達し、前年度に比して二五五億円の増加となっている。
これらの地方公営企業は、地方自治体の決算規模において、普通会計の二三・五%を占め、
事業内容において住民の福祉に直結するものであるから、その経営の健全化は、地方自治体にとって急務である。
政府は、地方公営企業の合理化を促進して経営収支の改善をはかるため、公営企業金融
公庫の
融資条件の緩和など財政援助と、経営指導体制を強化し、また、累積欠損金解消のための財政再建
計画の実行に、さらに適切な援助を強化すべきである。
(二)
昭和四十一年度決算検査
報告において
会計検査院が
指摘した不当事項については、本院においてもこれを不当と認める。本院は連年
政府に対して不当事項の根絶について注意を喚起してきたにもかかわらず未だ同様事例が跡をたたないのはまことに遺憾である。
政府は、これら
指摘事項について、それぞれ是正の措置を講ずるとともに、また、行政管理庁の勧告等を尊重して制度、機構の改正整備をはかり、官紀を粛正して今後再びこのような不当事項が発生することのないよう万全を期すべきである。
(三) 決算のうち、前記以外の事項については
異議がない。
政府は、今後
予算の作成並びに
執行にあたっては、本院の決算審議の結果を十分に考慮して、財政運営の健全化をはかり、もつて国民の信託にこたえるべきである。
以上であります。
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