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1969-07-02 第61回国会 衆議院 外務委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年七月二日(水曜日)    午前十時十八分開議  出席委員   委員長 北澤 直吉君    理事 青木 正久君 理事 秋田 大助君    理事 藏内 修治君 理事 田中 榮一君    理事 山田 久就君 理事 戸叶 里子君    理事 穗積 七郎君 理事 曽祢  益君       佐藤洋之助君    世耕 政隆君       永田 亮一君    福田 篤泰君       松田竹千代君    毛利 松平君       石橋 政嗣君    木原津與志君       堂森 芳夫君    松本 七郎君       山本 幸一君    伊藤惣助丸君  出席国務大臣         外 務 大 臣 愛知 揆一君  出席政府委員         外務省アメリカ         局長      東郷 文彦君         外務省欧亜局長 有田 圭輔君         外務省条約局長 佐藤 正二君         外務省国際連合         局長      重光  晶君     ————————————— 七月一日  委員鈴切康雄辞任につき、その補欠として渡  部一郎君が議長指名委員に選任された。 同月二日  委員渡部一郎辞任につき、その補欠として伊  藤惣助丸君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 七月一日  世界連邦建設の決議に関する請願久保三郎君  紹介)(第九五三九号)  同(湊徹郎紹介)(第九五四〇号)  同(葉梨信行紹介)(第九五四一号)  同(渡辺惣蔵紹介)(第九六〇四号)  同(石川次夫紹介)(第九六七三号)  同(菅波茂紹介)(第九六七四号)  同(小濱新次紹介)(第九八一五号)  同(島本虎三紹介)(第九八一六号)  日米安全保障条約廃棄等に関する請願(安宅  常彦君紹介)(第九六七五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 北澤直吉

    北澤委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。穗積七郎君。
  3. 穗積七郎

    穗積委員 きょうは外務大臣が十二時から法務委員会に行かれるそうで、時間がありませんので、最近の問題について一、二簡単にお尋ねいたしますから、外務大臣、率直にお答えいただいて、明らかにしていただきたいと思います。  それは、今度の沖繩返還に伴う事前協議運用の問題につきまして、特に日本国益と合致する場合にはイエスと言う場合がある。それはいろいろありましょう。その中で、内閣委員会での大臣の御答弁では、朝鮮紛争が生じた場合、台湾海峡等紛争が生じた場合には、これは発進について、基地使用についてイエスと言う場合があるというふうに限定して言っておられますね。これは一体どういう意味なのか、この点、もう少しお考えを明らかにしていただきたいと思うのです。
  4. 愛知揆一

    愛知国務大臣 内閣委員会でそういうふうに申したかどうか、私、いま正確に記憶いたしておりませんけれども、私は、事前協議というものは起こらないような場合が一番理想的だと思うのです。同時に、これは観念的にこういう場合があろうか、こういう場合があろうかということをせんじ詰めてみることは、性格上なじまないものではないだろうかという私の気持ちを、いつも率直にお答えいたしておるわけでございます。御質疑関係等からお答えしましたことが、いまおあげになりましたようにとられた面があるのかもしれませんけれども、私としては、特に地域を限定してどうこう、あるいはどうするといったことを断定的に申したつもりはございませんし、私の気持ちは、いま申しましたような気持ちでございます。
  5. 穗積七郎

    穗積委員 それでは他の場所における発言をとらえないで、ここでお尋ねしましょう。六〇年の新安保条約審議の前後から、六条交換公文による事前協議権については、そのうち、特に第五条との関連で、日本作戦行動義務が発動する危険のあるような米軍日本基地からの発進は、これをチェックする、したがって、戦争に巻き込まれる心配はないということを強調されたわけですね。その場合には、日本基地発進に使う、戦闘作戦行動に使うことについては、むしろこれをチェックする、ノーと言う、それが歯どめになっているということで、国民に安心をさせて、これが軍事同盟的な性格を持って、アメリカ作戦行動から巻き添えをくって日本戦争に巻き込まれるという危険はないのだ、こういうことを強く主張されたわけですね。それが今度沖繩返還に伴って、日本領土内になった基地からの発進について、向こう自由使用を希望しておるようである。しかし、それでは通らぬというので、自由使用ではなくて、いまの安保条約一般、すなわち、事前協議そのものの適用の中で、ノーもあればイエスもあるのだ、特にイエスもあり得るのだということを非常に強く強調されておるわけですね。それは何を基準にしてイエスと言うか、ノーと言うか、そのことを明らかにしていただかぬというと、これはあってなきがごときものですね、事前協議権は。その点をはっきりしていただきたいと思います。まず、その原則からはっきりしていただきたいと思います。
  6. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点は、いままで何べんとなく申し上げておることと同様でございますから、また繰り返すことになっておしかりを受けるかもしれませんが、新しいことは何も考えておりません。  御案内のように、安保条約九年前の改定のときから、私自身としても関係を持ってまいりましたが、私自身、その当時質疑の中にもございますように、事前協議というものは協議なのでございますから、そしてこれは条約論からいえば、日本が双務的に提供した基地というものは、本来ならば、考えようによれば使うものが自由に使える。しかし、それでは困るから、日本の意思によってきめるような、いわば条約論からいえば、留保しているのだと私は考えるわけでございます。したがって、そういう協議がございました場合に、イエスと言うこともあれば、ノーと言うこともある。これは私は一貫してそうだと思います。どういう基準イエスと言い、ノーと言うかということは、先ほど申しましたように、せんじ詰めて、コンピューターにかけて、こういう場合はイエス、こういう場合はノーということの扱い方にするには、本来なじまないものではなかろうかと考えております。  それから沖繩の問題について、特に条約論を新しく解釈したりなにかしていることはないのでありまして、これは、一連の体系をそのまま沖繩にすなおに適用することがきわめて自然の姿である。これを交渉の基本線に、まず第一ラウンド、こちらの主張を十分説明したところで、現在ペンディングになっておることは御承知のとおりでございまして、これからアメリカ側もいろいろの意見を出してくるでございましょう。そういう場合に、十分向こうさんの意見も聞きながら、こちらの意見も常時言えるようにすることが、私はこれからの外交であろう、かように考えておる次第でございます。
  7. 穗積七郎

    穗積委員 基準原則がなくてイエスと言ったり、ノーと言ったり、アトランダム原則を変えては困るのですよ。これは基準原則があるべき問題でしょう。もし事前協議にかけた場合に、イエスと言う場合もあればノーと言う場合もあり得るという、非常に不確定なことであるならば、イエスと言った場合に、一体その及ぼす影響というものは、特に五条との関連で重要な事態に発展していくわけですね、日本国民としては。そうでありますならば、アトランダムにその場その場できめていくんだというようなことで、はっきりした原則がなければ、これはおかしいではありませんか。事前協議権の問題は、私はくどくど言いませんけれども、六〇年前後の国会審議の中で、これはもう厳格に日本戦争に巻き込まれる心配はないんだ、あるいは戦争に加担することはないんだ、こういうことで、はっきりしておるわけでしょう・それがイエスと言うこともあり得るんだということでぼやかして、不確定な、その場その場になって決定するのだということはおかしい。私は、はっきりした基準原則というものがなければならないと思うのです、イエスと言う場合もあり得るという点を今度特に強調される以上は。あなたの御答弁のほうがおかしいと思うのですね。そうお考えになりませんか。
  8. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはケースバイケースによって、日本の安全を守るために必要であるという場合、これを想定しておけば十分ではないか、かように考えます。そもそも、私どもは、安保条約というものが、アメリカ帝国主義世界戦略体制の一環として日本人がかり立てられるんだというような発想はとっておりませんことは、たびたび申したとおりでございます。その気持ちによってケースバイケース運用する、そのように考えることが最も妥当であると思います。
  9. 穗積七郎

    穗積委員 ケースバイケースですが、それは日本の安全が基準です。いまのあなたの御答弁では、日本の安全を守るということが基準ですね。
  10. 愛知揆一

    愛知国務大臣 日本が脅威にさらされないように未然に防止するということが安保条約性格であると私は思いますから、その性格、精神によって運用すべきものと思います。
  11. 穗積七郎

    穗積委員 この問題は、特にポスト・ベトナム、すなわち、ベトナム以後の極東、アジアにおける情勢分析と、それから日本外交路線等関係が一番重要な関心事だと思うのです。その中で見たときに、特にベトナム以後、朝鮮半島の問題が身近に焦点になってきているわけです。そういうことでありますならば、前の朝鮮戦争のときに、南朝鮮韓国というものは日本の防共の緩衝地帯であるというような議論も、政府あるいは自民党内部において出たことがあるのです。外務大臣は、朝鮮におけるそういうトラブルが再発したときに、そのことに対する日本立場というものをどういうふうにお考えになっておられるか、これを具体的にちょっと承っておきたいと思うのです。非常に重要なことでございますから……。
  12. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、朝鮮半島トラブルが起こらないように——たとえていえば、韓国というところが経済的にもだんだん力がついてきた。民心も一安定してきている。国民としても自信を持ってきておるというような状態は、一九五〇年代とはだいぶ様子が違ってきておる。かように考えておりますので、朝鮮半島緊張は起こらないように、この上ともつとめるべきではないかと思います。
  13. 穗積七郎

    穗積委員 起きないことは、だれしも日本国民は望んでおるでしょう。ところが、起きた場合のことを聞いておるのです。外交的にいえば、朝鮮の五八年の停戦協定以後、まだ国連安全保障理事会侵略国規定、あるいは在韓米軍国連軍の旗を持っている。こういうことは外交上未曾有なことなのです。いまだにそれが続いておる。それにピリオドを打つことに日本政府はどういう努力をされたでしょうか。これはあたかも朝鮮問題の再発を予期した準備行動のようなものですよ。これから明日からの軍縮会議に臨むのに、第四次防衛計画は、沖繩返還以後の情勢にたえ得るためというので、第三次防衛計画の倍以上の予算を組もうとしておるわけでしょう。これは自己矛盾もはなはだしいと思うのです。いまの御答弁からすれば……。したがって、私は、何を望んでいるかではない、そういう問題が起きる可能性が客観的にあり得るわけです。そのときに、至近の距離にある日本米軍基地からの作戦行動発進に対して、イエスと言うのか、ノーと言うのか、聞きたいのです。
  14. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、理想としては、事前協議というようなものが起こらないことが望ましい。自然、そういう気持ちでございますから、観念的にいっても、その幅というものは、できるだけ少なく、幅狭く考えて一きたいものだと考えております。
  15. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、沖繩返還に伴って、いままでの米軍の果たしておった軍事的な効用、それを削減しないことが必要である、その中心核基地自由使用の問題でしょう。特に重要な朝鮮問題等が危険な状態になってくれば、そのときに、一体その削減をしないということを特に強調されるのは、どういう意味でしょうか。軍事基地軍事的効用なんてものは、いまのあなたの路線からいえば、問題にするのがおかしいくらいでしょう。アメリカにかわって、日本政府は盛んに、ここが固有の領土ではなくて、極東基地であるといったり、その果たしておる軍事的効用というものは、これは高く評価せざるを得ない、それを頭に置いて返還問題は考えなければならぬ、その中からいまの事前協議権運用問題が出てきておるわけですよ。イエスが強調されておるわけですね。そうであるならば、問題は、一体ベトナムのときには、日本基地から出ることが——沖繩飛び石でございますから、それは実際は出たでしょうけれども、それが直接の発進ではないというエクスキューズがあったわけですね。沖繩返還後におきましては、事態は身近な朝鮮半島、しかも飛び石はない・そういうことになりますと、いまのイエスと言う場合もあり得るという点の強調が非常に耳にかかるわけです。しかも朝鮮紛争というものが拡大した場合に、日本の安全に一体どういう影響を与えるかという御認識を聞きたいわけです。起きた場合のことですよ。起きた場合を想定していろいろな準備をしておるでしょう。
  16. 愛知揆一

    愛知国務大臣 起きた場合といっても、そこはまことに観念的な問題でございまして、これを予想して、先ほど申しましたように、コンピューターにでもかけてやってみたところで、全く予想もしないことも起こるかもしれない。私はそういうものだと思うのです、この国を守る守り方というのは。こういう場合はどうだ、こういう場合はどうだと突き詰めていってみたところで、しょせんこれは、私のことばでいえば、なじまない問題じゃないかと思います。要するに、ただいまも再々御指摘ですけれども、私も再々お答えしておるように、施政権が当方に返れば、憲法はもちろん、あらゆる条約もあらゆる法制も、すなおにそのまま特別の定めなくして沖繩に適用されるというのが、ほんとうの施政権返還だと思います。したがって、残ります基地につきましては、その施政権返還の瞬間から、安保条約に基づいて、日本が提供する基地というものに相なるわけでございますから、そこに事前協議がかかる。従来の自由使用とは全く性格が異なるものになる。これが私は望ましい姿であるということを再々申し上げておるわけでございます。
  17. 穗積七郎

    穗積委員 その願望はわかっています。そのことを聞いておるのではなくて、朝鮮並び台湾武力紛争が起きた場合に、沖繩を含む日本基地から米軍発進必要性の問題ですね。それと日本の安全との関連を伺っておるわけです。逃げないで、具体的にあなたの考えを聞かしていただきたい。
  18. 愛知揆一

    愛知国務大臣 朝鮮台湾に対しまして、従来といいますか、施政権返還前の沖繩基地ならば、これは自由にどこへでも行けるわけでございますが、返還後にはそうはなりません。そしていま申しましたように、今度はそれから先、どこの地域でどう起こったか、何かということを仮定的に幾らお尋ねがありましても、私はそれはお答えするになじまない問題であると思います。ケースバイケースによってきめることのほうが国益でございます。その国益とは何ぞやといえば、日本国民の安危に重大な関係がありと認定されたときであります。これは従来からしばしばお答えしておったとおりでございまして、それ以上にはお答えはできません。
  19. 穗積七郎

    穗積委員 こういうことがあるわけですよ。事前協議発進の問題がかかったときに、日本の安全に関係ありと判断した場合には、これはイエスと言う。それじゃ具体的に朝鮮または台湾において再び武力紛争があった場合には、これは日本の安全に関係があるとごらんになるかならないかを聞いておるわけです。いかがでしょうか。問題は具体的ですよ。
  20. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それはケースバイケースに見るべきものである。これは従来からお答えしておりますとおりでございます。
  21. 穗積七郎

    穗積委員 だから、ケースバイケースのそのケースを聞いておるわけです。
  22. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そのケースというのは、具体的−に起こりましてからの問題である、私はかように考えております。あらかじめこういう場合はどう、こういう場合はどうとお問いになりましても、私にはお答えはできません。
  23. 穗積七郎

    穗積委員 一般的にそれは考えられるでしょう。ベトナム戦争日本の安全、自衛関係があるか、朝鮮戦争あるいは台湾紛争というものが日本の安全と自衛関係があるかないか。私ども関係ないと思うのです。そんなものは他国のことですよ。日本自衛と安全に何ら関係ない問題でしょう。これは両方とも国内問題ですから、それに対して日本——どのような事態になろうと、これは、北朝鮮なり中華民主主義人民共和国なりが日本に対して武力的な侵略を企てるという事態がない限り、朝鮮半島台湾における武力紛争というものは、たとえ起きたといたしましても、それは日本自衛と安全に関係のないことである、私はこう考えるわけですが、外務大臣はどうお考えでございましょうか。
  24. 愛知揆一

    愛知国務大臣 穗積委員の御意見は承りました。
  25. 穗積七郎

    穗積委員 大臣意見を聞いておるわけです。外交執行権はあなたが持っておる。
  26. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ケースバイケース関係すべきものと、先ほどからお答えしておるわけでございます。
  27. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、その場合は、日本の安全と自衛に重大な関係がある場合とない場合とあり得る。ない場合もあるが、逆にいえばある場合もあるんだ、こういうことですか。
  28. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それが、ですから私先ほど来申しておりますように、こういう場合、こういう場合と観念的に申しましても、お答えするのにはなじまない、かように私考えますものでありますから、最初にお答えしましたように、従来から申し上げていることにそれ以上新しくつけ加えて申し上げることは、現在私としてはできませんということを、くどいようでございますが、申し上げているわけでございます。
  29. 穗積七郎

    穗積委員 おかしいですね。自由発進についてイエスと言う場合もあり得るんだ、戦闘行動発進についてイエスと言う場合もあり得るんだと言っておきながら、そしてそれは国の安全に関係する場合だ、日本自衛または安全に関係する場合だと言う。それでは、いま問題になりつつある朝鮮半島台湾等において武力紛争が再開された場合に、それは日本の安全と自衛関係があると考えておるか、ないと考えておるかと聞いておる。お尋ねするために、私どもは、そんなものは関係のないことである、それを外務省はどうお考えですかと言ったら、それはケースバイケースでわからぬというわけでしょう。そういうことになれば、それが起きた場合に、ない場合もあれば、ある場合もある、こういうことでしょう。逃げる必要はないじゃありませんか。なぜお逃げになるのですか。
  30. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は一つも逃げてはおりませんで、穗積さんのおっしゃるような、何といいますか、私に言わせようとなさることは、私は言えないだけでありまして、私は逃げているわけではございません。
  31. 穗積七郎

    穗積委員 そんなことがありますかね。あなたはさきに、アメリカ極東作戦というものは帝国主義戦争であるかないかということについて意見が違うと、こう言われた。しかし、それは重大な——それが帝国主義侵略戦争であると見るか見ないかは別として、いずれにしても、アメリカ極東におけるエスカーション政策に重要な関連があるのが安保条約なんですよ。安保条約を結んでおった韓国がそうでしょう。同じくアメリカの核のかさの下に安保条約を結んでおった南ベトナムがそうです。それは韓国南ベトナム政府の自発的なことできまるのではなくて、むしろアメリカ極東作戦エスカレーションの段階できまっていくわけですね。これは条約ですから、他国との関係ですから、したがって、第五条の発動というものは、第六条の事前協議運用と非常に関連があるわけです。そういう意味で聞いておるわけです。それに対して従来は、国民に対して、その事前協議権というものは、日本側権利であって、これはイエスと言わないのだ、歯どめなんだということであった。ところが今度は、それに対してイエスと言うことがあり得るんだということを非常に強調しておられるわけですね。その基準は何かといえば、国の安全だという。安全であるならば、いま問題になりつつある朝鮮台湾における武力紛争が不幸にして再開した場合には、これは日本の安全と自衛関係あると見るのか、ないと見るのか、その点のけじめをはっきりしておいていただきたいのです。その場合になって政府アトランダム判断できめていくことであって、国民はそんなことは心配するなと、これは独善外交ですよ。われわれそのことを非常に心配しているわけですから、国民にかわってわれわれはそれを政府にお尋ねしておるわけだ。そのことなくして、運用の問題に対してイエスと言い得るなどというのがおかしいでしょう。言う以上は、何か基準があり、具体的判断というものがあるはずなんですよ。沖繩基地軍事的効果効用というものは削減させないという以上は、核基地の問題と自由使用の問題、それだけではありませんが、それは主要な一つの条件でございましょう。それを一方で強調しておいて、それを具体的に聞かれれば、ケースバイケースで何も答えられない、これは独善じゃありませんか。非民主的ですね。私どもは、国民の一番心配しておることをかわって聞く権利義務があるから、お尋ねしているのです。
  32. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私も責任がありますから、誠実にお答えをしておるつもりです。しかし、意見の違うことを自分の意見どおりイエスと言えとおっしゃっても、これはもうおかしいと思うのです。意見の違うことは明らかにしておきたいと思います。(穗積委員意見じゃない、論理ですよ、当然の論理ですよ」と呼ぶ)たとえば、ことばを返すようですけれども安保条約米帝国主義世界戦略ですよとあなたはおっしゃる。断定しておっしゃるけれども、私はそこは意見が違うと申しておりますように、やはり意見の違いはあるのですよ。  それからイエスノーの問題にしましても、この委員会でも前にも日時を引いて御答弁申し上げましたように、歴代の担当者が、事前協議というものについてはイエスもございます、ノーもございます、イエスと言う場合には、国益によってケースバイケースにきめますと、これは沖繩返還問題が起こる前ではございますけれども、そういうことをそのまま沖繩に適用したいというのがわれわれの基本的な考え方でございまして、沖繩施政権返還があるからといって、にわかにイエスイエスと言っているわけではございません。これは国会議事録等によりましても明らかに立証できるところではないだろうか、これが私の立っている立場でございます。
  33. 穗積七郎

    穗積委員 はなはだ遺憾の意を表せざるを得ないですね。私は、意見の違いをこちらの意見に従って押しつけて、そのように答えろということを言っているのではないですよ。論理的にそうならざるを得ないじゃありませんか、あなた方が提案しておるイエスもあり得るということは。当然なことでしょう。国民に対してそこまで明らかにする義務があると思うのです。それを聞いているのです。  これ以上時間がありませんから先に進みますが、問題は、きのうから公館長会議をやっておられるようですが、一番中心は、やはり極東におけるエスカレーション政策焦点中国にあることは明瞭ですね。そうであるなら、中国を含む極東における緊張を緩和せしめることがいわば日本政府基本方針であるということなら、緩和のための積極的な努力というものが必要だと思う。昨日も中国問題について討議をなさったようですけれども中国問題についての基本的な認識なり方針というものは従来と何ら変わりがないのかあるのか、今後の展望、どういう発展をお考えになっておられるのか、それは日本中国との関係アメリカ中国との関係、それからソ連と中国との関係等において、これは複雑な問題になってきておるわけですね。その基本認識について、外務省の分析なり方針なりというものをこの際明らかにしていただきたいと思います。
  34. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私も明らかにしたいのですけれども、昨日も本日もこうして国会に伺っておりますので、私自身大使諸君の正確な情報分析をまだ直接聞く時間が少なくて、私としてもまだ申し上げるまでの勉強ができておりません。
  35. 穗積七郎

    穗積委員 それでは具体的にお尋ねいたしますが、この秋の国連総会における中国代表権問題については、やはり日本政府は重要事項指定方式の提案国になるつもりでございますか。われわれとしてはこれはやめてもらいたい、やめるべき情勢にきておるのではないか。それはイデオロギー問題をのけて考えるわけですね。その点を、ひっかからないで、すなおに私の質問を受け取って、外交上の判断をしていただきたい。それを申し添えましてお尋ねいたします。
  36. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま申しましたように、私としては、十分大使諸君の情勢分析をまだ時間をかけて聞くことが今日ただいまの瞬間までできておりませんから、いまおあげになりましたような問題についても、いろいろの意見が出ているようでございますが、私としてはまだ十分聞いておりません。したがって、大公使会議との関係において、私ここで意見を申し上げるまでにはいっておりません。いまの問題は重要な問題でございますから、私としては慎重に検討をいたしたいと考えております。
  37. 穗積七郎

    穗積委員 念のために伺っておきますが、重要事項指定の提案国になるかならぬかもまだきまっていない、これから検討することであるという御意見と伺ってよろしゅうございますか。
  38. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点は、前から申し上げている意見と私は変わっておりません、ただいまのところ。なお一そう慎重に検討いたしたいと思っております。前から申し上げている意見というのは、私は、国連のその議事の運営にも関連いたしまして、まさにこれは重要事項である、かように考えております。
  39. 穗積七郎

    穗積委員 重要事項であるかないかの判断なんか聞いていませんよ。そうじゃなくて、重要事項の提案国になるかならぬかということを聞いているのです。
  40. 愛知揆一

    愛知国務大臣 だから、慎重に検討いたしたいと思います。
  41. 穗積七郎

    穗積委員 不誠意ですね、あなたは。これほどあなたに親愛の情を示しながら聞こうと思っているのに、なぜそんなに拒絶反応を示すのですか。おかしいですね。いやに硬直したというか、何というか、冷淡な態度というか、ぼくは熱心に聞いているんですよ。あなたと私は思想が違い、立場が違いましても、何も憎しみを持っていないし、お互いに考えていることを率直に述べ合って、それで大いに討議を深めていきたい、こう考えているのに、あなたはまるで拒絶反応を示しておる。どういうわけですか。
  42. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いや、これは私も長年の友人として、きわめて遠慮なくお答えをしているので、私は、率直に申しますと、承諾反応を示さないと、あなたは不誠意だとおっしゃる、御自分の意見をそのまま受けないと、あなたは不誠意だとおっしゃるような気がしてならないのですが、どうかその点はひとつ御了解いただきたいと思います。  私は、いまの国連代表権の問題は、まさに重大問題、重要事項だと思うのです。その点は、私前々から申し上げているとおり。それに対してどういうふうな態度をとるかということは、これはもうほんとうに慎重に、真剣な考え中でございますと申し上げておるわけでございまして、あなたは、提案者になるな、承知いたしましたと申し上げれば、ごきげんがいいんですが、その点は慎重に研究をいたしておりますという以上にはお答えができない。どうぞ御了承願いたいと思います。
  43. 穗積七郎

    穗積委員 そういう提案者になるのだという御答弁でもいいんですよ。これは佐藤内閣の本性だからやむを得ないのですよ、残念ながら。私はそういうことを言っているんじゃないんです。はっきりした考えがあるなら示しなさいと言っている。あなたは、さっきから聞いていると、中国が国連に加盟するかしないかは重要な外交上の問題である。このことについては、われわれも意見が一致するのです。重要問題であるということと、それから国連加盟の審議に重要事項の議題として審議するのとは、これは違うのですよ。重要事項ということは。重大な外交上の問題ということと、重要事項としてこれを審議の手続をとるかとらぬかということは、それは単純に重要な問題であるから重要事項でいくんだ、こういうことにはならないんですね。重要事項指定に参加するということは、すでにこれは妨害的意味が含まれている、政治的偏向が。認識の問題ではない。もうすでに路線を示しておるわけですね。政策を示しておるわけです。私がさっきからお尋ねするのは、中国が国連に加盟するかしないかということは、これはもうアジアのみならず、世界的に重要な外交問題であることは、われわれもあなた以上に認めております。だからこそ早くやれというのです。私が聞いているのは、その認識の問題ではなくて、それほど重要だという外交認識、政治認識に立って、そして国連においてとる態度として、国連の規定に伴う重要事項としてこれを審議の手続をとるのかとらぬのかということが問題なんですね。それを私は聞いているんですよ。最近の情勢の変化の中で、あなたがきのうの公館長会議の討議を実はまだ報告を受けてないというようなことではなくて、最近の一つの大きな外交上のうねりというものがあると思うのです。特に昨年三月の北爆停止声明、それからパリ会談、それからニクソンに発展してきた対ベトナム政策、それから今度のソビエトの共産党世界会議、これらにおける変化、それから中国の文革の成功と九全大会の総括というようなものも出ておるわけですから、こういう大きな変化の中で判断しないとよくないと思うのですね。私も新聞記事だけできのうの会議の模様を聞いておりませんが、中国問題については、遺憾ながら外務省は、手足を持っていない点もありますけれども、まるで子供じみた認識だと思うのですよ。たとえば岡田君の報告にいたしましても、どこから聞いた報告か知らぬけれども、香港は、御承知のとおりいろいろな勢力や情報の乱れ飛んでおるところで、それを聞いたくらいのものでしょう。直接調べたものでもない。直接確かめたものでもない。風評にすぎない。ルーマーにすぎない。そのルーマーの中の非常に不正確な一部のルーマーを報告しておるにすぎません。こういうもので、あなたは公館長会議の報告を聞いた上で対中国政策を判断するのだというようなことをやったら、大きな誤りをおかしますよ。あなた自身だけの個人責任ならいいけれども日本国全体の問題ですから、この点はぜひひとつもっと真剣に取り組んでいただきたい。  それから、ちょっと時間がなくなりましたけれども一つ簡単にお尋ねしておきたいのは、核拡散防止条約をこの九月ごろをめどにして、今度軍縮会議に参加したことで、それをおみやげのごとく考えて調印をしようという動きがあるということが盛んに伝えられておる。われわれも非常な関心を持ってながめております。自民党内においてもそういうことを問題に具体的に討議を始められたようでございますけれども、われわれは情勢は変わっていないと思うのです。すなわち、従来から問題になりました第一は、核保有国米ソの態度が核兵器の独占をねらっておる。そしてあの問題が提案されましてから数カ年の間、特に調印をされましてから一年の間、何らのいい方向はないじゃありませんか。それから査察の問題でも同様です。それから非核保有国に対する義務問題。これは拡散を防止するといっておりますけれども、そうであるならば、当然持ち出しを禁止することから始めなければならない。使用の禁止から始めるだけの態度がなければならない。ところが、実験の制限すらやっていない。そういうのが実情じゃないでしょうか。ただアメリカの片棒をかつぐために、軍縮会議にモンゴルと組み合わせで参加さしてもらったということだけで、それで誤った大国主義、米ソ両国の世界支配のなれ合いみたいな核防条約に、参加しただけでそれをおみやげにして調印するというようなことは、何ら根拠のないことだ、そう私は思います。  それらの概括的な感想を述べまして、外務省あるいは政府は拡散防止条約に対する調印問題についてどう考えておられるのか。これは重要なことですから事前にお尋ねをし、事前にお考えをただしておきたいと思うのです。
  44. 愛知揆一

    愛知国務大臣 拡散防止条約につきましては、ただいまお話がございましたように、九月とかなんとか時期をきめて調印するということをきめたわけではございません。ただ、これもいろいろ御意見のおありのことはただいま承りましたけれども、最初この問題が起こりましてから相当の期間がたっておりますが、政府としてはもちろん満足ではございませんけれども、とにかく一歩、数歩前進をした考え方であろうという意味で、趣旨においては賛成だということをかつて言っておる。その気持ちは変わっておりません。しかし、その後の状況や、それから日本自体の、たとえば平和利用の問題などを考え合わせてみますると、もう少し念を押しておきたいところもある。実はこれもよく御承知のように、現在の段階は、条約の中の条文をさらに直すという時期は過ぎておりますので、条約の形としては、いわばクローズドされた問題だと思います。したがいまして、条約の中に手をつけることはできないけれども政府が態度をきめます場合には、やはり十分ほかにもなし得る手があるかどうかも考えなければならないと思っておりますので、いま時期をきめてどうということまでまだいっておりません。いまも御指摘がございましたように、私の属しております自民党の中にもいろいろの意見もございますし、いたしますから、大きく皆さんで論議をしていただいて、そして一つ考え方を盛り立てていく。それには軍縮会議に参加できたことはたいへんよかったことだと思ってはおりますけれども、何もそれと引きかえに取り引きでどうこうというような考え方は持っておりません。
  45. 穗積七郎

    穗積委員 この間、ガンジーが来ましたね。拡散防止条約については、われわれ外務委員会理事も懇談の機会がありました。おぼろげながらかの国のこの問題に対する方針とか気持ちはわかったのですけれども政府はこの問題についてもっと詳しくお話しになったと思いますけれども、その模様がありましたら一点報告していただきたいい。  それから、一番大事なことは、やはり核保有国、特に米ソ両国が核軍縮に対して何らの誠意を示していない。その後の状況というのは、至るところで大国主義を振り回して、威嚇外交あるいは危険な外交の方向を取りつつある。こういうことでありますが、ただ、さきに言いましたように、軍縮のみながら、持ち出しあるいは製造の制限あるいは実験の制限すらやってない。こういう状態についてどういう御感想を持っておられるか。——ちょっと私語をしておられますけれども、一点は、インド首相と何らかの話し合いをされて、それに対してインド首相はどういう発言をされたか、それからそれに対してわがほうはどういう意思表示をされたか、それを聞きたい。第二点は、拡散防止条約の問題について、最近の報道を見ますと、いささか外務省の態度が心配な傾向が見受けられたので、総括してちょっと御注意を申し上げながら、お尋ねしたにきょうはとどめます。特に私はその中で言いたいことは、米ソ両国が、われわれが指摘したように、核の解消に向かうのではなくて、独占を固定化して、これを背景とする大国主義外交一つの条件にしようとする傾向すらある。したがって、核保有国の核解消に対する責任を少しも果たしておりません。果たす傾向すらも示していない。それにわれわれは変化がないと見ている。むしろ好ましくない方向をたどりつつあると見ているけれども政府はそれに対して、この一年間だけに限ってみてもいいと思うけれども、米ソの核問題に対する傾向をどういうふうに認識しておられるか、その二点をお尋ねするわけです。時間が許しませんので、結論だけ聞かしてください。
  46. 愛知揆一

    愛知国務大臣 インドとの関係でございますが、先般ガンジー首相が来日されましたときに、佐藤総理との間で会談が行なわれまして、そのときに核防条約の話も出たことは事実でございますが、コミュニケにもありますように、ずいぶん多くの問題、ことに二国間の問題が多かったものですから、拡散防止条約については話が出ただけで、特に何か新しい考え方とか態度とかいうものは出なかったようでございます。私が直接会いましたときには、拡散防止条約の話は全然出ませんでした。こちらからも申しませんでした。  それから、今後の取り扱い方につきましては、いまのような御意見もございますし、先ほど私が申しましたように、日本自身の平和利用というものを大切に守っていかなければならないという問題もございましょうし、あるいは二十五年間が長過ぎるというような意見もございますが、私から申すのはいささか礼を失すると思いますけれども、お互いの政党の間でもまだ賛否両論があるのではないかと思うのです。これはたいへん大切な問題であり、新しい問題でございますだけに、私の仄聞しておるところでは、社会党の中の方にも非常に御熱心な推進論者もあるし、自民党の中には非常に疑惑を持っておる一部の方があるしというわけで、まだ十分に国民的にこの問題の所在、したがって取り上げ方というものの研究が不足ではなかろうかと考えますので、私といたしましても、十分積極的に取り上げて、政府の態度というものを間違いなくつくり上げたい、こういうふうに現在考えておるところでございます。
  47. 北澤直吉

  48. 戸叶里子

    戸叶委員 私は、質問に入ります前に、いま核拡散防止条約の問題が出ましたので、関連して一点伺っておきたいと思います。  いま穗積委員が指摘されましたように、持てる大国が核縮小に対しての良心を示さずして、核拡散防止条約というようなものが提案されているところに、私は問題があると思うのです。持っている国はどんどん軍事的にも平和的にも開発が許されていて、そうして他方に向かって核を使うな、核を保存するなといっていることは、たいへん行き過ぎだと思うのですが、この核拡散防止条約のことをいま伺っておりますと、外務大臣も、こういう問題とこういう問題とこういう問題がまだ解決もしておらないけれども、急ぐわけではない、ひとつ前進という態度で臨むけれども、まだそういう問題が解決しなければ調印はできないのだ、こういうことをおっしゃったと思いますけれども、そうだといたしますと、軍縮の委員会等でこの問題が出ましても、いまおっしゃたような希望条項が達成されなければ、これに年内に調印をするということはあり得ない、こういうふうに了承してもよろしゅうございますか。
  49. 愛知揆一

    愛知国務大臣 たとえば平和利用の問題などにつきましては、追って協定をつくらなければなりませんし、その進みぐあいなどを見て、これが年内にどうなるとか、来年ならどうこうとかいう期限はつけにくい問題だと思うのです。ですから、前向きに大いに検討いたしまして、大体こういうところでそれでは調印してもやむを得ないかというふうな取り上げ方も一つの方法ではなかろうかと思いますが、いま申しましたように、そういうふうな状況でございますから、前向きに取り上げるという姿勢は必要だと思いますけれども、いっ何日調印するというようなことを申すのには、まだ国際的にも時期尚早ではないか、かように考えております。
  50. 戸叶里子

    戸叶委員 この条約の前身ともなるべき部分的核停条約、これが国会に提出されましたときに、私は賛成討論をした一人です。ですから、忘れられないわけですけれども、そのときに強い条件をつけました。地下実験等は禁じなければいけない、そういうことを条件として賛成したことを覚えております。したがって、そういう問題もいまだに解決をしておらない。だから、軍縮委員会等におきましては、こういう問題をむしろ取り上げて、核拡散防止条約に調印する前に、部分的核停条約の問題点等をも先に解決した上で、そちらのほうに取り組む、こういう姿勢でなければならない。そうでなければ実を結ばないのではないかと私は思いますので、この点について大臣のお考えを承って、私の質問に入りたいと思います。
  51. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いま御指摘の戸叶委員の賛成御討論、私も拝聴いたしました。私も全然賛成なんです。したがって、今度の軍縮委員会につきましても、これは御承知のように、核探知クラブができましたときにも、日本は率先して入りましたし、それから今度も、そういう点もございますので、宮村教授を最初から同行させているのもそういう点にあるわけでございます。要するに、全面的核実験停止というようなものをぜひひとつ——日本が指導的の立場というのはいささか気負い過ぎかもしれませんけれども、こういう点は、軍縮委員会の中で大いに日本として活動いたしたいと考えております。場合によりましては、しかし、軍縮委員会で、そういう技術的な問題でもございますし、そういうものが実施に移るまでは核防条約の調印はしないというふうにからめるのもいかがかと思いますので、そこは並行的にひとつ検討させていただきたいと思います。
  52. 戸叶里子

    戸叶委員 いまの大臣の御答弁ですけれども、私どもは何か裏切られたような気がするのです。あの条約を審議いたしまして、いろいろな条件をつけました。ところが、その条件が一つも解決しておらないで、また核拡散防止条約ということが出てまいりますと、私は、何かそういうものに賛成することは何にもならないのじゃないかというような気持ちをさえ抱かざるを得ないのでございまして、この前残されている問題等も大いに解決するために御努力を願いたい。これをまず要望して、次に進みたいと思います。  私は、この前の委員会で、沖繩の米側資産買い取りについて質問をいたしました。そのときには、外務大臣が、正式には日米の交渉の中で出てこなかったけれども、また話し合いが出てきたときにはある程度考えてもいいというようなことをお答えになりましたし、おそらくこういう問題も今後においては非常に大きな問題として出てくるでしょうし、また、あちらこちらでもこれに対していろいろな意見を私は見るのでございます。保利官房長官がこの間の記者会見で、払うべきものは当然払わなければならないということも言われているわけでございまして、私はこういう点を考えますと、少し疑問点が出てまいりましたので、その点を確かめておきたいというふうに考えるわけです。  一体、政府として、原則的に払うべきものであると考えるかどうかということが第一点、それから法律的に米側の資産を買い取らなければならないということが言えるのかどうか、こういう点をまず伺っておきたいと思います。
  53. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは前にも御説明いたしましたように、たとえば沖繩にある米国の資産をいかに処理するかということについて、米国側が関心を持っているということは想像にかたくないのですけれどもアメリカ政府側から、こういう問題についてはこうしたい、こう協力してくれというふうな趣旨の申し入れにはまだ接しておりません。その後もそういう状態が続いております。  それから、これはよく御案内のように、小笠原返還のときにも、若干のものについて米側と相談で処理したものかありますし、そんなこともありますので、こういう種類のものについてあるいは申し入れがあるかもしれない。あるいは前例的な処理もございますから、そういうことと見比べて、そういう場合には適宜相談をしたり、あるいは相談に応じたりすることも必要であろうか、こういうふうな程度に現在のところは考えておるわけでございます。
  54. 戸叶里子

    戸叶委員 政府の基本的な姿勢というか、考え方というものが私は大切だと思いますけれども向こうから何か今後の処理のしかたで相談があったときには、それに対して政府も応じて支払う考えがあるという態度でお臨みになるのかどうか、この点をまず基本的に伺っておきたい。
  55. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは、具体的な話し合いというもの、あるいはそれの前提になる向こうからの希望というようなものが、まだ掌握されておりませんので、こちらから、何といいますか、この際こういう場合はこうだというようなことを先回りすることが適当かどうかということについては、若干考えなければならない点があろうかと思っております。
  56. 戸叶里子

    戸叶委員 まだ向こうから正式に話が出てこないので、いまからいろいろ言えないということですが、それでは私のほうからちょっと二、三の点をお伺いしておきたいと思います。  たとえば屋良主席が、沖繩へのガリオアというものは、これは支払う必要がないのだ、これは当然援助であるということを言っておられます。これはお認めになるわけでございますね。
  57. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 沖繩に対するガリオアは、ただいま詳しく覚えておりませんが、米国民政府沖繩住民に対する、沖繩住民のために信託されて持っている、たしかこういうことになったと思います。しかし、今日からこれはどうだということに私がいま断定的に申し上げることはできませんわけでございます。しかし、こういう沖繩に関するいろいろな問題は、やはり返還交渉の中で必ず向こうから出てくる問題だと考えます。具体的になってからわれわれとしては事の性質を判断の上、対処すべきだと考えております。
  58. 戸叶里子

    戸叶委員 アメリカ局長、そんなことでいいのですか。ガリオアですよ。ガリオアが沖繩にも与えられた。日本にもガリオア援助がありましたね。私たちは当時感謝決議をして、そして食糧難を救ってくれたといって非常に曹んで、無償だと思っておったわけです。ところが、それがあとから有償だというので国会で問題になったことを私は覚えております。そこで、沖繩の場合にはガリオアの援助は無償であるということは、政府がいままでおきめになっていらしたのではないですか。これから向こうからガリオアの援助は無償でなかったぞと言われて、そうですが、それではどれくらいあったのでしょうか、どれくらいお払いしましょうかという交渉をなさるのですか。いままでもうすでに沖繩のガリオアは無償であるということで、きまっていたのではないでしょうか。
  59. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 米国政府との間で、沖繩に対するガリオアの話は、いままで公式にしたことはございませんで、返還交渉になれば、すべての問題が最終的に解決されるわけでございます。そういうことにアメリカは出してくるか出してこないかというのは、これはやはり向こうの問題でもあるわけでございます。事の性質によってこっちが正しく対処すべき問題だと考えております。
  60. 戸叶里子

    戸叶委員 いまの御答弁、たいへん問題だと思うのです。と申しますのは、このガリオア援助でもって、沖繩の水道だとかあるいはガスだとか電気だとか、そういうようなものがまかなわれて、そういう施設ができて、つぎ込んだお金よりもよけいに利潤を生んで、それによって高等弁務官の政治資金というようなものも出たことは、これはだれでも知っていると思う。これはアメリカ局長も御存じだと思うのですね。ですから、私がなぜこれを出すかといいますと、もしもときどき新聞等で漏らされておりますように、水道だとかあるいはガスだとか電気の施設等に対して買い取り等というようなことが出てきた場合に、たいへんだと思いますから、はっきりさせておいていただきたいと思って聞いているわけなんです。ガリオアの援助を払うか払わないか、これは日本が負担すべきかどうかということは、アメリカが何とか言ってくるまで黙っておりますというアメリカ局長の御答弁を、愛知さんお認めになるでしょうか。
  61. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私、先ほど率直に申し上げましたように、向こうから意思表示がないのです、現在のところ。事柄あるいは性格から申しまして、いまの段階で先回りしてあげつらいますことが得策であるかどうかということも、若干考えさせていただきたいということを申しましたのは、いまの東郷局長答弁関連がある考え方でございます。そういうふうに御了解いただきたいと思います。
  62. 戸叶里子

    戸叶委員 私は、日本にとって得だと思うからそういう発言をしているのですから、誤解のないようにお願いしたい。  それからもう一つは、こういうふうな御答弁が出てくるので、私は政府がかわるたびに信用ができなくなるわけなんです。と申しますのは、沖繩のガリオアは無償であるという答弁国会で二度しているわけなんです。これは参議院の本会議で、奄美大島が返ってきたときに、沖繩については返す必要はない、当時の大蔵大臣小笠原氏がはっきりお答えになっておられます。いまその速記を読んでもいいですが、時間がないので読みません。日付だけ申し上げておきます。十二月二十四日の官報で、奄美群島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求める件、このときにはっきりとおっしゃっておられます。  それから予算委員会で、私は忘れないのですが、昭和三十九年だったと思います。十二月でしたが、わが党の、いまはおられませんが、辻原さんが、予算委員会で質問をされましたときに、いまの自民党の幹事長で、当時の大蔵大臣をされた田中さんが、「沖繩日本返還されたときに、米国の沖繩に対するガリオア援助の返済を求められるのではないか、こういう明確な御質問に対してお答えをいたします。米国は沖繩に対するガリオアの返済は期待していない、米国側は出したものに対して返ってくるというふうには期待しておらないと承知をいたしております。それは何によって承知をするかと言いますと、米政府側の議会における証言等によって申し上げておるわけでございます。」云々と言って、アメリカ政府の議会における証言でも、沖繩のガリオア援助というものは無償であるということがいわれているということを国会で言われているわけです。  そこで、私が今日ここで念のために御質問をしたわけでございますけれども、なぜこういうことを伺うかといいますと、さっき申し上げましたように、アメリカ側の資産の買い取りというような問題が出てきまして、ガリオア等でまかなった公共施設というものに対する買い取りというような問題が出てきたときに、私は政府も困るんじゃないかと思って、そういうことは不当であるという、こういう意味で言っているのですから、この辺を御了解願いたいと思うのですが、この点について外務大臣、それでもそれはその当時はそうであったけれども、いまは情勢が変わっているなどということは、まさかおっしゃらないと思いますが、いかがでございましょう。
  63. 愛知揆一

    愛知国務大臣 戸叶委員の御質問になっておられるお気持ち、私非常によくわかります。いまお述べになりましたような点については、敬意を表して、私どもとしても大いに参考にいたしたいと思います。
  64. 戸叶里子

    戸叶委員 おしまいのほうをちょっと……。
  65. 愛知揆一

    愛知国務大臣 敬意を表して参考にいたします。
  66. 戸叶里子

    戸叶委員 私は別に敬意を表していただかなくてもいいのです。ただ、はっきりさしていただきたいのです。敬意よりも、やはり私たちはずっと国会で審議をしてきた関係上、そういうものをそのときにおいて出してきた裏づけは、アメリカの証言があったのだと言われたからには、やはりそれを信じてきたつもりです。こういう問題が起きたときに、そういうことが裏づけとなって出てこなければいけないと思うわけで、その意味で申し上げているわけですが、こういうところから見ますと、たとえば沖繩においての水道、ガス、電気とか、その他港湾、道路等におきましても、いま申し上げたようなガリオアが基になって施設をつくったような場合は、これは当然買い取る必要はないのだ、こういうふうに考えるわけでございますが、念のためにこれも伺っておきたい。  それから第二の点は、港湾だとか道路などは、アメリカが軍事目的のために、特別の日本との間の取りきめをしないで、かってにつくったものでございまして、それは占領政策を円滑にするためにつくったのですから、これも買い取りというような対象にはならない、こういうふうに理解してよろしいでしょうか。
  67. 愛知揆一

    愛知国務大臣 前段については、先ほど申し上げましたように、敬意は要らないという話ですが、私は敬意を表しておいて、私としては参考にしてまいりたいと思います。  それから第二段は、これもまだ出てきていない問題でございますけれども、お話しになっておりますお気持ちはよくわかります。やはりもし払うべきものがあるとしても、これは相談づくでございますし、日本としては、逆に評価その他においてもこちら側が主張してしかるべき分子もございましょう。そこのところは十分腹をかまえて、ことばは悪いですけれども、何と申しましょうか、十分折衝をいたしたい、かように考えております。
  68. 戸叶里子

    戸叶委員 そういうふうなことで、私どもは、資産買い取りということはどこからも出てこないように思うわけです。たとえばもう一つの問題で、いまの軍事施設の問題でございますが、軍事施設の問題も、安保条約に基づく地位協定の四条には、施設及び区域の返還、原状回復、補償というところがございまして、その一項では「施設及び区域をそれらが合衆国軍隊に提供された時の状態に回復し、又はその回復の代りに日本国に補償する義務を負わない。」というふうになっていて、日本国に補償する義務は、もとどおりにしなくても負わないのだ。そうしてその二項のほうでは、「施設及び区域に加えられている改良又はそこに残される建物若しくはその他の工作物について、合衆国にいかなる補償をする義務も負わない。」アメリカにこちらも払うこともないということがきめられているわけです。しかし、その場合に、第三項として、特別の取りきめがあった場合は別なんだ、こういうふうに書いてあるわけで、沖繩の場合には私は特別の取りきめがないと思いますので、せめてこのくらいのことさえも行政協定には書いてあるのですから、これを進めていけば、当然軍事的な施設などに対しても買い取りの義務はない、こういうふうに考えるわけでございますけれども、この考えは間違っているかどうかをまず伺いたいと思います。
  69. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 地位協定上の原則は御指摘のとおりでございますが、また軍事施設の問題は、沖繩返還の態様にもよるわけで、かりに全部米軍が引き揚げて基地がなくなるということであれば、それはまたおのずから別の問題が起きるでございましょうが、この多くの施設がかりに地位協定上の施設として残る場合には、やはりそのときの条件を考えて、返還協定において条件がきまるわけでございますが、まあ純粋の軍事的な施設に関して申せば、大ざっぱにはいま御指摘のような原則になるかと思っております。
  70. 戸叶里子

    戸叶委員 ですから結局、軍事的な施設等も、いまの点から考えますと、買い取りの義務はないし、それから公共施設も買い取りの義務がない。そうなってきますと、私考えますのに、ほかにどういうものが一体この日本が払わなければならないようなものが出てくるかというと、ほとんどないのじゃないか。ですから、今後交渉の過程におきましていろいろ話が出てくると思いますけれども、こういう点からいけば、基本的には買い取りの義務はないのだ、こういうふうに理解してよろしいかどうかを外務大臣に伺っておきたいと思います。
  71. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど申しましたように、小笠原の返還、これは沖繩と比べものにならない程度の規模のものでもございます。また、これが必ずしも前例としてそのとおりというわけにいかないかもしれませんけれども、小笠原の例で申しますと、アメリカ政府としては、日本政府に対して、動産は買い取ってほしいという申し入れがあって、個々の動産について価格等を十分検討の上、アメリカ政府側と相談をいたしまして、日本政府が公有を希望するものについては適正な値段で買い取ったという事実もあるわけでございます。こういうことも念頭に置いて処理をしなければなるまいかと思っております。
  72. 戸叶里子

    戸叶委員 私は、次の問題に入りますと時間をとりまして曽祢議員に悪いと思いますから、次の機会にしますが、いまの問題で、個人の資本を使って、そして私有財産である場合には、当然払わなければならないと思うのです、しかし、国に関係のあるものは払う必要がない。いままでのことから見ますと、個人の資産を費やしてそこに私有財産が残った場合には、これはある程度買い取るとかなんとかいうときには買い取っていかなければならないと思いますけれども、そうでない限りはそういうことはあり得ないというふうに考えますので、この話し合いがまだきまっておらないからとおっしゃいますけれども、話し合いの過程において、そういうふうな、私が申し上げましたような理論からいっても、この資産を買い取るという必要がないのだということを頭に入れておいて、交渉をしていただきたいと思います。
  73. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど申しましたように、この問題について、本日戸叶委員からいろいろ御意見を交えての御質疑がございましたが、政府といたしましても、十分それを体してまいりたい。ただ何ぶんにも、先ほど申しましたように、その話というか、希望も具体的にまだ出ておりませんものですから、現在の段階ではそう申し上げるだけでひとつ御了承をいただいておきたいと思います。
  74. 戸叶里子

    戸叶委員 もう一点だけ。日米友好関係にあるというならば、アメリカがそんなことを言い出すことがおかしいのであって、少しけちくさいのじゃないかとさえ私ども考えますので、どうかこの点も考えておいていただきたいと思います。
  75. 北澤直吉

    北澤委員長 曽祢君。
  76. 曾禰益

    ○曽祢委員 外務大臣に三点について御質問申し上げたい。  第一にはソ連との外交、第二は軍縮会議に臨む日本の態度及び姿勢、第三は、いま同僚委員からもお話がありましたが、核拡散防止条約に関する問題であります。  まず第一に、ソ連についてでありまするが、新聞の伝うるところによれば、きょう午後にもトロヤノフスキー在日ソ連大使が大臣をたずねることになっておるそうでありまして、何かそのときに、おみやげか何か知らないけれども、二、三おもしろい話を持ってくるやに伝えられておりますけれども、それはそれといたしまして、新聞の伝えるところはわりあい正確だと思うのですが、外務大臣も非常に意欲的であられて、ソ連にひとつ行ってみようじゃないかというソ連訪問の計画もあるやに聞いておるのであります。私はその熱意、積極性を多とするものでありますが、その場合に二点ばかり伺っておきたいのは、第一には、これはすでにソ連側から直接あったなり、あるいは外務省の全世界的な情報網でおわかりかどうか知りませんが、ソ連が最近アジアにおける集団安全保障機構あるいは体制云々というようなことをいっておるそうであります。これはなかなか意味深長であって、われわれは冷静にこれを判断する必要があると思います。必ずしもソ連の思うとおりに一むろんそれだけにいってはならない点もあると思うのです。ソ連の考えの中には非常にいろいろ考慮がありまするが、特に中共を意識し過ぎた面も相当あるのじゃないか。むろん、これに対して日本は客観的に評価するし、また、日本がいかなる場合においても対外的なそういう条約に加わるべきはずでないわけでありますけれども、そういったようなソ連の動きについてどういうふうに考えられ、またソ連をこちらが訪問するというような場合の心がまえとして、どういうふうにそういう点をお考えであるかということが第一点。  第二点は、やはりどんなに仲のいい国でも基本的な原則の問題はきちんとしておかなければならない。その意味で、わが国がソ連に対して当然の領土権回復の主張を持つ。加えて、これはソ連から言わせれば、沖繩との関連で北方領土が左右されるものじゃないという立場をとっていることは知っております。同時に、沖繩領土としての返還の方向がおおむね固まらんとしつつあるときに、いかに友好だからといって、ソ連に行って、領土問題を逃げたような姿勢で話されるというのは適当でない。かといって、そこら辺の問題が、なかなかあうんの呼吸は緩急よろしきを得なければならないことも事実でありますが、やはりソ連に対しては、領土問題についてまだ解決してないんだぞ、それを解決する、わが国の領土主権の主張を認める、こういう基本線を常にはっきりしながら、現時点における友好を進めるということが必要だと思うのですが、以上二点についての大臣のお考えを伺いたいと思います。
  77. 愛知揆一

    愛知国務大臣 実はソ連の最近の動きにつきましては、十分情報を収集し、分析し、判断いたしたいと、かねがね心がけておるわけでありますが、ちょうど過去三週間ばかりの間、駐日大使もモスクワに呼ばれて帰っておりました。たまたまその間、ただいまもお話のソ連版アジア安保というようなことが伝えられております。帰任早々ソ連大使側から私に面会を求めてまいっておりますが、先ほど申しましたように、国会中でなかなか時間もとれませんので、ようやくきょう夕方会うことにいたしました。その用向きというものは明らかにされておりませんが、おそらく最近におけるソ連の何かそういったようなことに関係した話が出るのではなかろうか。こちらも聞いてみたい、こういうふうな気持ちでおるわけでございます。  それから、それはそれといたしまして、日ソの関係でございますけれども、これは何といたしましても北方領土の問題、この解決なくして平和条約の締結もあり得ない、真の親善関係というものは期待し得ない、かように考えておりますのが一番基本的な問題でございますが、実はことしも定期協議が東京で行なわれる番にはなっておるのですけれども、最近どちらかといいますと、ソ連側からこちらに来るほうが多くて、こちらの責任者が向こうに参りますことがちょっととぎれているというか、向こうとの関係で申しますと、こちらのほうが少ないというようなこともありますので、そういう点も勘考しなければなるまいかと思っております。いろいろ領土以外にも安全操業の問題その他もかかえておりますから、もう少し接触を密にしたほうがいいのではなかろうかと考えておりますが、具体的なことはまだ最終的にはきめておりません。  なおまた、中ソ関係、米ソ関係、いろいろ背景、環境があると思いますが、そういうような点につきましては、できるだけこれからも情報の収集につとめたいと考えております。
  78. 曾禰益

    ○曽祢委員 それで集約して、この点だけをぜひひとつお考え願い、またソ連に機会あるごとに言っていただきたいのは、第一には、ソ連がアジアの安定ということに関心を持ち、努力することは、非常にわれわれとして歓迎すべきことだと思うのです。それはたとえばベトナム戦争を終息する方向において、もっともっとやはりソ連の大きなインフルエンス、影響力を使うように、これは言うまでもなく、北ベトナムに対するいい意味の抑制的な影響力。もう一つは、何といっても北朝鮮ですね。北朝鮮の動向に対しても、やはりソ連の影響は非常に大きい。そういう意味で、集団安全保障かどうか知りませんけれども、ソ連のアジアの平和安定への役割りというのは非常に大きい。その意味で、日本から見れば、せめてその二点だけをもっとしっかりやってもらいたい。  それから第二は、やはり領土問題はきちんと要求する。加えて、この前、三木前外相が行かれたときに、その成り行きはいささかしりつぼみの感があったけれども、とにかくコスイギン首相のほうから、中間的なものはどうかというような——平和条約にいきなりいっても、領土問題というのはなかなか困難だという話もあったやに聞いておる。むずかしい点はあると思うけれども、会うたびごとに、われわれの領土権の主張をちゃんとしておいていただきたい。この二点についてもう一ぺんお答えを願って、次の問題に進みます。
  79. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ベトナム撃ち方やめ、あるいは北鮮に対する指導ぶりというようなことについて、ソ連に協力を求めるというような趣旨の御意見でございますが、ひとつ大いに参考にさせていただきたいと思います。  それから領土については、先ほど申し上げましたとおりで、これはどうもいままでのところうまくいかない。非常にかたくなな態度でありますが、こちらとしても、これは執念を燃やして国民的な御支持のもとに、何としてもこの厚い壁にぶつかって開かせなければいけない。かたい決意を持って臨みたいと思っております。
  80. 曾禰益

    ○曽祢委員 わが国が国連の軍縮委員会にメンバーとして迎えられるに至ったことは、基本的にはわが国の国民努力の結果の経済的な興隆、こういうような国力増進の結果だと思うのでありますが、これは大いにけっこうなことであります。日本だけではなく、世界に対して軍縮を叫ぶ日本の姿の真価をあらわす舞台が与えられたことは、御同慶にたえないのでありますが、その場合に、やはり日本がこの軍縮委員会に参加して、どういう態度で臨むか。やはり特に大国の軍縮を促進するために、ただ口で軍縮を望みます、願いますだけでなく、具体的に問題になっている、たとえば地下核爆発実験禁止の問題にしても、結局は、その査察がどの程度要るのか、査察をほとんど限界点までにとどめてしまって、あとはブラックボックスを置けば、地震とはっきり区別ができるほどわが国の地震学というものが進んでいるならば、そういう具体的、科学的な根拠に基づく提案を出すことによって軍縮を進める。ただ訴えるだけでなく、こちらからそのノーハウスというか、こっちのテクニックというようなものを提供することによって、軍縮委員会における役割りを演ずるということが一番望ましいわけであります。そういうことについてどうお考えであるか。また、口で言ってみても、実際上この軍縮に関する国内体制、外務省に軍縮関係のりっぱな部屋をつくって、名前は部屋でも部でも何でもけっこうですが、そういったようなりっぱなスタッフを設けて、最高のテクニックを駆使するというような体制なしには、一回限りの軍縮委員会の総会に演説しただけでは、これは二の句が継げないわけですね。そういった体制をどういうふうに国内的にお整えになるか、この点についてのお考えをお示し願いたい。
  81. 愛知揆一

    愛知国務大臣 軍縮会議につきましては、すでに朝海君を政府代表にお願いをして、出発をいたしました。明日からジュネーブの総会が始まるわけでございますが、わが国のこれに参加をすることができましたについての基本的な態度を明らかにしたい。その基本のねらいというものは、核兵器の全廃ということを目ざした基本的な努力を表明したいと思いますが、同時に、いまもお話をいただきましたが、たとえば地下核実験の停止、それから細菌兵器といいましょうか、そういうことの禁止、それから海底の軍縮とでも申しましょうか、そういったような点は、具体的に相当日本も実績も持ち、また、過去における研究も相当進んでおりますので、こういった実質的な、いまお話しのノーハウあるいはテクニックという程度にいえるかと思いますけれども、たとえば全面核実験禁止については先ほどもちょっと触れましたが、三年前から核探知クラブの有力な一員として、日本の提案というものも出ておりますし、それから国連の事務総長の依嘱によって研究したものもあります。こういったような実績もある程度ございますから、これを盛り上げて、実質的な提案としてひとつ委員会の場で成就するようにいたしたい。ただ単にお話しのとおり入って演説をするというだけが能ではないのでございますから、そういう面にできるだけの努力をいたしたい、かように考えまして、したがって、朝海代表に宮村教授をつけて最初から行ってもらいましたのも、そういう配慮からでございます。  それから国内的の体制でございますが、ぜひひとつ来年度においては機構の再編成をいたしたいと思っております。しかも、これは各国の例などを見ましても、必ずしも外務省の中だけに膨大な人員を擁するというようなことは、私妥当でないものと思っておりますが、しかし、機構を整備いたしまして、それから同時に、学界その他の徹底した協力体制が必要でございます。従来も、事実上そういった面の専門の方々、十名前後になりますか、ときどきお寄りいただいて、私もできるだけ参加をして、広く核問題の研究をやっておりまして、こういうものをできれば制度化した委員会組織か何かにするのも一案かと思っております。なお、今回委員会の中の正式メンバーになれたわけでございますから、それは各国の状況なども十分見まして、一番斬新で適切な機構をつくりたい、意欲的にやりたい、こういうふうに考えております。
  82. 曾禰益

    ○曽祢委員 委員会や事務機構をどう置かれようが、また、その所管がいわゆる外務大臣であろうが総理であろうが、それはどうということはないのでありますが、ぜひひとつりっぱな体制をつくっていただきたい。この点を重ねて要望しておきます。  最後に核拡散防止条約でありますが、これはいまも両同僚委員外務大臣との応酬にも出ておりましたが、私は、一番問題なのは、やはり米ソの核軍縮に対する熱意が足りない。まあ、再びABM競争を何とかして少しスローダウンしょうという米ソの話し合いが始まる傾向が、またほの見えてきたようであります。これはいろいろな事情があるにせよ、最もしっかりやらにゃいかぬ。これはむしろ核拡散防止条約の前提条件ですらある。第二は、中共がこういったものに入るといったことについてもっと真剣に努力しなければならぬ。第三は、非保有国について、この条約に正式にサインし、この義務を受諾する国に対しては、やはりその国の安全というものの保障を——核兵器というものを放棄する以上は、その国に対する安全は、核攻撃、核のおどしに対する安全については、なし得る限り完備したものを、米ソ両大国を中心に複数で保障してやる必要がある。これが一番大きな政治問題だと思うのです。しかし、ながら、条約の案文の修正という形においてはなかなか困難だという状況もある。そこで、それらの軍縮等の努力を軍縮委員会等を通じて日本がもっとしっかりやるということが、当然必要になってくるということが第一点。  第二点は、これは外務大臣も触れられましたが、今後日本の平和、日本として核問題で生きるために、ほとんど死活的の重要性があるのは、平和利用についての査察について、わが国は国際原子力機関の査察を、核防条約ができる前から安易に進んで受け入れるぐらい、核の平和利用についてはあくまで自主、平和、公開の原則を守っているぐらいですから、どこの国に見せても差しつかえない、こういう一つのプライドを持っている国であると同時に、これからの核の平和利用については、日本の国力を各国と争うという意味においては、やはり商業上の利益を守ることは当然なことであります。平和利用に対する不当な差別的な査察、これを断じて受け入れてはいけない。これはそういう意味で、とかくソ連のように、核兵器を持っておる国だから、平和利用についてはそんな査察など理屈にならぬといって、平和利用を断わる国、あるいは英米のように、条約とは別に、平和利用については国際原子力機関の査察を入れてもいいという国もあるけれども、現実にたとえば濃縮の施設まで見せるかということになると、ここは軍事的だといって、実際上は見せない。そうすると、わが国だけが、いやしくも核兵器をつくろうなんていう底意が全然ないのだけれども、すべてのテクニックは、その国の意図いかんによっては平和利用にも軍事利用にもなるのだからといって、査察をきびしくすると、日本の商業的な利益のほうは押えられてしまう。どうして日本が、GEなりウエスチングハウスなり、あるいはイギリス、西ドイツとのそれらの商業的な核平和利用施設の売り込み競争において、日本だけが不当な差別待遇を受けなければならぬかという問題になるのです。したがって、この問題は、むろん条約の問題ではないのです、はっきりいって。たとえば西ドイツ、EEC諸国がIAEA、国際原子力機関と結ぶ査察のこまかい協定をよく見ないと、EECのほうは、EEC以外の諸国のように直接国際原子力機関から査察を受ける国よりも、非常にきびしい待遇を受ける、こういうことになったのでは断じて承服できないことになる。したがって、これも外務大臣の言われたことと線は同じだと思うのです。必ずしも既存核防条約の字句の問題ではないかもしれない。しかし、必要に応じて実際上の査察のこまかい点まで、まず原子力機関あるいは関係諸国、あるいはEECと原子力機関との協定の内容等を見て、それだけ査察に関する不当な差別待遇がないということを十分見きわめないで、軽々しくこの条約にサインし、あるいは批准することは、悔いを千載に残す危険がある。こういう意味から、この点については、きちんとした態度で、あらゆる外交機関の機能を発揮して、あくまで平和利用の査察についての無差別待遇を、現実の査察のプロセス、方法において確保するということが絶対必要だと思う。これが第一点。  それから第二点は、これはこの問題と沖繩返還に関するあれとを直接からめるということは、いささかどうかとは思います。しかし、一方においては、沖繩返還に伴って、日本に核兵器を持ってくるかもしれない。しかし、日本は核防条約をサインしろ、それは必ずしも直接論理的に矛盾でないかもしれない。たとえば西ドイツは、自分の国に自衛上のアメリカの核兵器を喜んで入れている。しかし、核兵器をみずから持たない。これは矛盾ではないかもしれぬ。しかし、政治的、心理的にいえば、そういうことは私はないと思いますし、私自身の希望を含めて、アメリカはそういう核兵器の持ち込みを沖繩返還等に関連して無理やりに押しつけることはしないと思いますが、そういったようなことと、核防条約を早くサインしてくれ。ほかの潜在的な核保有国であるインドのごときは、ほとんどサインしないことときまっておるときに、あるいはイスラエル、アラブは、場合によれば核兵器を供与するかもしれないというときに、なぜ日本だけがアメリカやソ連によって核兵器を押しつけられ、圧力をかけられなければならないか。特にアメリカの場合は非常に問題だ。そういう政治的、心理的な微妙なからみ合いのあることでありますから、直接からめるわけではないけれども、そういう点も見きわめて、核防条約の署名及び批准というものを、そう正直にこっちだけ国際的に成績のいい子みたいなつもりで、とっとっとプログラムをつくって、サインするということばかりが能じゃないという気もするのです。  以上二点について外務大臣お答えをお願いいたします。
  83. 愛知揆一

    愛知国務大臣 大体いま曽祢委員の仰せられましたことは、私同感なんでございます。先ほど戸叶委員にもお答えいたしましたように、何と申しましょうか、国際政治というか、国際外交というような面から見れば、私率直に言いまして、核防条約に対しまして、積極的な姿勢というものが私は必要じゃないかと思います。同時に、特に力説になりましたが、平和利用の保障措置の問題、これは日本として非常に大きな関心のある問題でございます。これもただいま御指摘がありましたように、従来のIAEAとの関係においては、日本は全くりっぱなお行儀のよい優等生で通ってきておるわけでございますが、あまりそれが度が過ぎますと、率直に言って、将来手をしばられることになる、こういうことを考えなければならない。これが日本の直接の国益の問題じゃないかと思いますが、この点は、この核防条約の第三条で、国際原子力機関と締結すべき保障措置の協定の内容のいかんにかかってくる問題でございます。したがいまして、こういう点について、いわばユーラトムとの間に差別が起こらない、あるいはさらに進んで核保有国との間に差別が起きないということが、私は理想だと思いますが、さしあたりユーラトムとの関係は非常に大事だと思います。こういう点についての考え方を固めまして、そしてこの条約に対する姿勢というものをきめればよろしいのではないか、私いまの考え方を率直に申しますと、そういう考えでございます。何もあした、あさって調印するということを申しておるわけではございませんし、この点は先ほど戸叶委員お答えしたとおりでございます。  それから第二点の沖繩返還との関係でございますが、これはいまお話もございましたように、必ずしも理論的の関連性とかなんとかということはないと思いますが、私もいわば核抜き外交を展開しておるつもりでございますから、そういう点から、なおそういったような関連等におきましても、十分慎重に態度をきめてまいりたい。なおまた、西ドイツがどういうふうになるか、あるいはインドはただいまもお話がございましたような態度のようでございますが、国際的に核防条約というものがどういうふうにこれから進んでいくであろうか、どういうような国際的な意見が出てくるであろうかというようなことも、十分見きわめながら善処いたさねばなりますまい、かように存じておる次第であります。
  84. 曾禰益

    ○曽祢委員 終わります。
  85. 北澤直吉

    北澤委員長 本日はこの程度にとどめ、次回は明三日午前九時五十分より理事会、十時より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。     午前十一時五十九分散会