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1969-06-18 第61回国会 衆議院 外務委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年六月十八日(水曜日)     午前十時五十五分開議   出席委員   委員長 北澤 直吉君    理事 青木 正久君 理事 秋田 大助君    理事 田中 榮一君 理事 山田 久就君    理事 戸叶 里子君       坂本三十次君    永田 亮一君      橋本登美三郎君    福田 篤泰君       松田竹千代君    宮澤 喜一君       毛利 松平君    石橋 政嗣君       大柴 滋夫君    木原津與志君       堂森 芳夫君    松本 七郎君       山本 幸一君    麻生 良方君       渡部 一郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 愛知 揆一君  出席政府委員         外務省アメリカ         局長      東郷 文彦君         外務省条約局長 佐藤 正二君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 北澤直吉

    北澤委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。戸叶里子君。
  3. 戸叶里子

    ○戸叶委員 安保条約に対する政府のお考えは、大体自動継続というふうにおきめになっていらっしゃるようでございます。これに対してはいろいろ議論、また異論があるところでございますが、政府自身の今日までの国会での応答を伺っておりますと、自動継続というふうなことで話を進めていらっしゃるし、また国会においても、アメリカに向かっても、自動継続でいくんだということを宣伝されていらっしゃるわけです。  そこで、安保条約の十条の有効期間というところを見ますと、十年存続した後は、いずれかの締約国が他の締約国に対して廃棄通告をすれば、これは廃棄されるんだということになっているわけでございますけれども、これまではいつでも、日本廃棄する意思はないんだ、こういうふうなお気持ちを述べてこられたわけでございますけれども、しかし、権利としては、アメリカにも廃棄通告する権利はあるわけです。両方がこの廃棄通告はできることになっているわけです。そこで、アメリカのほうは安保条約をこのままの形で、日本から廃棄通告が出るまで継続をされるんだ、こういう見通しの上に立って、この安保条約の締結といいますか、考え方というものを政府が進めていらっしゃるのかどうか、この点をまず伺っておきたいと思います。
  4. 愛知揆一

    愛知国務大臣 安保条約の取り扱いにつきましては、先般来本会議委員会等でも詳しく政府態度を御説明申し上げたつもりでございますが、これを要するに、政府としては、いわゆる自動継続といいますか、自動存続といいますか、そういうことをまだ決定したわけではございません。先般アメリカ側と話し合いをいたしましたときに、日本政府が正式にさような提案をしたと伝えられましたけれども、それは会談の経路におきまして、安保条約の堅持を望む日本の意見の多数の中には、自動継続というやり方がいいのではないかという説がだいぶ多数に見受けられる状況であるということを、日本の国内の客観的な情勢として伝えたことはございますけれども、それ以上に進んでおりませんことは、先般総理大臣からも私からも明確にお答えいたしましたとおりでございます。  それからその次に、かりに自動継続といいますか、そういうかっこうになりましたときの仮定のお尋ねで、アメリカはどういう態度であろうか、こういうお尋ねでございますが、これは最終的にいずれそのうちに日米国の合意ができるような時期になると思いますけれども、それまではさだかなところまだ私から先方の考え方を申し上げるのは早計だと思いますが、印象として受け取れることは、当分の間安保条約というものが日米双方のために存続することが望ましいということをアメリカ側のほうも考えているように私には見とれるわけでございます。
  5. 戸叶里子

    ○戸叶委員 外務大臣が、アメリカとの折衝の過程において、当分の間日米安保条約存続方向が好ましいというふうに考えているような印象を受けた。そこいら辺はわかりましたけれども、そうしますと、ここで問題としては、先ほど私が申し上げましたように、アメリカにも十年後には一年の予告期間をもって廃棄通告ができるのだ、だから、いずれはそういうときも来るであろうということも日本政府はお考えになっていらっしゃるかどうか、このことも念のために伺っておきたいと思います。
  6. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それは条約的にいえば、十年とか二十年とかいう期限をあらためて設定した改定をしない限りは、条約上は双方とも対等の立場を持っておりますから、アメリカも自分の立場で必要がなくなったと考えれば、一年の予告期間廃棄通告をすることができる。これはもう当然のことだと思います。
  7. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私がそれを申し上げますのは、沖繩にああいうふうな核基地があり、そしてアメリカ軍隊自由使用の形をもっておりますのは、戦争抑止力である、こういうことをたびただ政府が言われておりますので、そういう考え方のもとに、アメリカ軍隊沖繩にいるということの評価をそれだけに強くしておりますと、将来いま言われたような問題が起きたときには、日本米軍の撤退ということによって非常にばく大な戦力を持たなければ抑止力にならない、こういうふうな考え方になるわけでございまして、この抑止力としての考え方はそれほど過剰に考えるべきではない、私はこう考えるわけでございますが、この点については、いままでと同じように依然として米軍戦争を抑止するためにあるのだというふうにお考えになるのでしょうか、この点を伺っておきたいと思います。
  8. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは沖繩に限ったことではないと思います。日米安保条約全体が戦争抑止力として有効適切に働いておったから、日本沖繩も安全であり得たというのが私の見解でございます。その全体の中で沖繩の占めている地位をいかに判定するかということは、施政権返還後の沖繩の体制がどうあったらいいであろうか、どうあったら必要にして十分な日本及び沖繩の安全と直接関連する極東の安全に寄与し得るかということを判定していくべきである、かように考えております。
  9. 戸叶里子

    ○戸叶委員 事前協議弾力的運用とかあるいはまた適用——外務大臣事前協議弾力的運用、あるいは適当にするとおっしゃっていたのですか、そういうふうな言い方をされていますけれども、そのときに、この間の穗積議員質問に対しまして、米軍基地重要性とか極東の安全に果たしている役割りとかをめぐって、どの程度のものであれば必要にして十分の姿になるか、結びつけて考えていかなければならない、こう言われて、この極東の安全ということは今日までも強調をされております。安保条約の中にも、極東の平和と安全に寄与するということが書かれているわけです。  そこで、今後においては、極東の平和と安全というものが非常にいろいろ問題となってくるのではないか、私はこう考えるわけでございますが、この極東の平和と安全に寄与するということばから考えてみますと、極東情勢把握ということは非常に必要なことであり、非常に大切なことだと思うわけです。そこで、この極東情勢緊張激化のほうにあるか、緩和の方向にあるか、こういうことの判断によって、極東の平和と安全のために日本から米軍出動をするかしないかというようなことになるわけでございまして、これが非常に問題になってくると思います。政府は、こういうような場合に、日本国益に反することなく、自主的な判断によって、戦闘作戦行動に対する事前協議イエスというようなことを言っておられるわけでございますけれども極東情勢把握のしかたということによっては非常に異なってくるのじゃないか。たとえば極東の平和と安全と日本の平和というものが、いつでも必ずしも全く一致するというふうに考えられない場合も出てくるのじゃないかと思います。この点についての外務大臣の御答弁を伺いたいと思います。
  10. 愛知揆一

    愛知国務大臣 日本からすれば、沖繩を含む日本の安全が何といっても大事な国家存亡の要件だと私は思う。同時に、日本のような地理的な状況にある国におきましては、周辺の地域における緊張、その度合いが直接日本の安危に関連する場合もあり得るということは考えなければならぬ。これが日米安保条約の性格であると私は思っております。したがって、施政権返還後におきまして、基地使用のしかたについては、私は理想をいえば、過去九年間本土基地がそうであったように、事前協議というようなことが起こらない状態が一番望ましいと思います。ことにわれわれの交渉の基本線は、いわゆる本土並みということでがんばって、そういうことの成果をあげたいと考えておるくらいでありますから、私は理想からいえば、事前協議というような事態が、過去九年間本土においてそうであったように、沖繩においてもそういうことが考えられないという状態が一番理想的であると思います。したがって、極東情勢をどう見るかということについては、日本自身が相当にいろいろな配慮をしていかなければならないと思います。たとえば一九五〇年代と現在を比べてみて、韓国政府がその間において非常な実力をつけてきた。国民もおそらく自信をもって国づくりにいそしんでいる。こういう状態ができ上がってきていることは、恐怖に巻き込まれないような、無謀な戦争にさらされないような地歩ができてきていることだと私は思います。ただ単にありようのままにほっておいて、極東緊張をどう見るかどうかというよりも前に、わが国といたしましても、そういう紛争が起こらないようにやはりいろいろ日本としてやるべき方策を尽くしていかなければならないと思います。そして一方において、そういうような状態が起こらないように未然に防止するような方法をいろいろの面からあわせて講じていくことによって、いま観念的に論ぜられているような自由使用なんということは、私は全然考えませんけれども、そういうことあるいはそれに近いことが起こらないように日本国益から割り出して、万々一の場合にもその範囲というものはできるだけ狭めて、そうして主体的の判断で、かりにイエスということがありましても、その範囲というものはできるだけしぼって考えるべきものではないか、かように存じております。
  11. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私が質問させていただいたことに対して、まわりのほうからたいへん詳しくお答えになったわけです。そこで、私が疑問に思いますことは、極東の平和と安全というものと、それから日本の平和と安全というものが必ずしも一致しないような場合もあるのじゃないか、こういうことを伺ってみたわけです。それに対して外務大臣お答えは、極東の、平和と安全に日本の平和と安全が非常に関係がある、一致する場合もあるというふうにお答えになったように思いますが、必ずしも一致するとは考えなくてもよろしいかどうか、この点を一点伺いたい。たとえば、なぜ私がこういうことを言うかといいますと、先ごろも問題になりましたが、EC121の偵察機とかあるいはプエブロの事件は、日本の近海であったならば近くにあったということで、日本の国にも非常にいろいろな危機感を感じるわけでございますけれども、あれが朝鮮の領海、領空すれすれのところにあったということによって、それは好戦的な国であるというふうにアメリカ韓国はきめつけているわけです。しかし、なぜそういうふうなことが起きてきたか。たとえばそういう好戦的だというふうな見方をする前に、どこでそれが行なわれたかということを考えないで、頭から好戦的だときめつけるような見方をする、そういう国と日本の国との考え方——もっと冷静に正しくものを見ていかなければいけない。こういうふうな立場から考えますと、必ずしも極東情勢判断というものは一致しないんじゃないか。こういうことを考えるわけでございまして、この点について外務大臣お答えを伺っておきたいと思います。
  12. 愛知揆一

    愛知国務大臣 どこの国に対しても、好戦的とかなんとかということは考えるべきでないと私は思います。したがいまして、アメリカのやることはすべて好戦的だ、あるいは日米安保条約アメリカ帝国主義の一環として日本がかり立てられる、そういう発想も私は断じてとらざるところでございます。  それから、極東の安全と日本の安全と一致しないこともあるのではないかというお尋ねでありますが、これはコンピューターで計算するように、これとこれとは切り離せる、これとこれとは八分密接している、これとこれとは一〇〇%密着している、こういうふうには、事柄の性質上もなかなか言えないことではないかと思うのでありますが、これはやはり政治家のお立場で、そういう点につきましての御判断の基礎というものも、おのずからそのときそのときによってあるのではないでしょうか。私はそういうふうに考えるわけでございます。
  13. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私が好戦的と言ったのは、アメリカ韓国が、この前プエブロなりEC121に関して朝鮮に対して好戦的といっている、そのことを例に引いて出したのですが、誤解のないようにしていただきたい。ですから、いま愛知さんがおっしゃるように、必ずしも日本の国が好戦的ということは言ってない。これは私は正しいと思うのです。そういうことを申し上げただけでございます。  そこで、私どもが非常に気になりますのは、やはり極東範囲ということで、フィリピン以北、それから何々というような定義がこの前下されたわけで、これは、愛知外務大臣が与党の議員としていられたときに、統一見解として発表されたことを私はいまでも忘れないわけでございますけれども極東の平和と安全という中で、たとえばフィリピンなどで混乱が生じて、沖繩が返還されたときに、沖繩を含めて言う問題ですけれども日本基地から米軍戦闘作戦行動に出るというような場合には、必ずしもイエスということは言えないんじゃないか。どういう理由イエスと言うようになるのかわかりませんけれども、そういう場合にはイエスと言うことはあり得ないんじゃないかと考えますけれども、この点はどういうふうにお考えになりますか。
  14. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その点で、観念論になって恐縮なんですけれども、そういう場合に、アメリカ事前協議をしてくるかどうかということも、また同時に考えたいと私は思うのです。そういう場合に、おそらく事前協議をかけてこないんじゃなかろうか、そういう場合も私は非常に多いと思います。
  15. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それはどういうことですか。日本基地から飛び立つわけですよ。飛び立つんですから、当然事前協議対象にしてくるわけでしょう。してこないわけですか。
  16. 愛知揆一

    愛知国務大臣 事前協議をしてこない場合がたくさんあると思います。つまり、日本基地を使うような、そして日本の安全と直接の関連が非常に深いということでなければ、アメリカとしても、この日米安保条約あるいはそれの底につながる日米間の相互信頼に基づく、日本国民日本政府考え方も十分よく理解しておるはずでございますから、そういう日本と直接関連のないようなときに、日本基地を使うということで事前協議をかけてくるという場合があるのかないのかということも、またそういう場合には考慮に入れて議論をしていかなければならないのじゃないかと思います。
  17. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、もし沖繩からそういう場合に戦闘作戦行動に出ていく場合であるならば、事前協議対象になる、ならない理由はあり得ない、こういうふうに考えるわけですが、それは間違っていますか。条約上そういうことになるわけですね。
  18. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それは、あなたのおっしゃることと私の答えとが全くすれ違っているのです。つまり、アメリカ側としても、相当直接に日本の安全に関係しないようなことについて、日本事前協議を求めて、日本基地使用させてくれというようなことは言わない。言い出さない場合も相当あるということも想定の中に置いていただいて、御議論をしていただいたほうがいいのではないか、こう申しておるわけでございます。
  19. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、日本の安全に別に関係がない場合には、極東の平和と安全という名のもとに事前協議対象にならず、日本基地から戦闘作戦行動に出る場合もあり得る、こういうふうに考えてよろしいわけでございますか。
  20. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そうなったらとんでもない、たいへんなことでございます。
  21. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それはたいへんなことだと思います。  そこで、私、ここでもっと根本的な問題で疑問に思いますのは、安保条約極東の平和と安全の維持に寄与するということは、これは前にも議論になりましたけれども、それがまだ解明されていない。たとえば日本基地からの米軍軍事行動を肯定しているわけですね。そこで、一体これはだれによって許されるのかということだと思うのです。国連でその任務を与えているかどうかということを私は疑問に思うわけでございます。国連決議をして、平和と安全のためにやれというならば大義名分は立つと思います。しかし、アメリカ委任行為なり授権行為というものを国連ではしておりません。それで、アメリカだけが陸海空軍を使うかもしれないということは憲章にない行為である。六条できめているのでありますが、国連憲章の違反ということにならないか。私は、この点たいへん疑問に思うわけでございますので、解明していただきたいと思います。
  22. 佐藤正二

    佐藤正二政府委員 先生おっしゃるとおりでございまして、安保条約米軍日本基地を使うときは、当然国連憲章に沿ったと申しますか、国連憲章に違反しないような行動ということが前提でございます。したがって、国連憲章の面から申しますれば、国連強制措置という形もございますでしょうし、五十一条のいわゆる集団的自衛権として国連憲章が認めている形でなければ、安保条約前提として基地使用ということはあり得ない、そういうことになると思います。
  23. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、この国連憲章五十一条による場合以外には、戦闘作戦行動には出ないんだ、こういうふうに理解してよろしいわけですか。
  24. 佐藤正二

    佐藤正二政府委員 先ほど申し上げましたとおり、国連強制措置の場合も当然考えられるわけでございます。国連自体がある侵略国を認定いたしまして、これに対して国連行動として戦闘行為をする、この形は当然考えられるわけでございます。朝鮮戦争の場合には、必ずしもそこまではっきりいっておりませんけれども、それに準ずるような形がとられたわけでございます。国連軍という形で米軍が出ていくということが可能だったわけでございます。しかし、実際には行なわれませんでした。ああいう形と、それから五十一条のいわゆる集団的自衛権と申しますか、個別的自衛という問題も入りまして、あの形と、それしか考えられないわけでございます。
  25. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、日本基地から直接国連アメリカ陸海空軍行動をさせる場合に、いま言われたようなときだけ使われるんだ。これは国連憲章にのっとってそうされるかもしれませんけれども、そうだとすれば、当然それは安保理事会報告されるなり、安保理事会決議を待たなければならないのじゃないかと思いますけれども、これは安保理事会とは何の関係もなしにできるというふうに考えていらっしゃるのでしょうか、この点を伺いたいと思います。
  26. 佐藤正二

    佐藤正二政府委員 前に申しました二つ場合があるわけでございまして、国連強制行動になりますれば、当然国連安保理事会侵略国の認定がございまして、それから行動が行なわれますから、これはもう報告とかなんとかいうよりも、安保理事会自体行動といってもいいくらいの形のものでございます。それから五十一条の問題は、これはもうちゃんと五十一条自体に書いてありますとおり、「自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会報告しなければならない。」ということがございますから、戦闘行動がとられた場合には、当然安保理事会に対しての報告というのは、国連憲章義務としてあるわけでございます。
  27. 戸叶里子

    ○戸叶委員 五十一条のこともわかっています。それから、いまの強制行動のこともありますけれども、もう一つ国連考えられることは、地域的取りきめの場合ですね。ところが、たとえば韓国なら韓国に問題が起きたときに、日本韓国アメリカと三つ以上の国が地域的取りきめをしていない場合には、アメリカ軍行動することはできないわけですね。それで、この場合は、地域的取りきめをしておりませんから、戦闘作戦行動は、その条文に応じての出動ということはできないと思うのです。国連憲章に応じての出動はできないと思います。しかし、いまおっしゃったような五十一条の場合にはやるのだということが一つと、それから強制行動の場合には、当然これは安保理事会決議を待たなければならないのだ、こういうふうにおっしゃるわけでございます。そうすると、日本基地を使って極東の平和と安全のためにアメリカ軍戦闘作戦行動に出るということは、国連憲章によるところのものであって、これは違反するものではない。ではどこによるのかといえば、いまの強制行動の問題と、それから五十一条の自衛権の発動の問題である、こういうふうに理解していいですか。この点をもう一度念のために伺いたいと思います。
  28. 佐藤正二

    佐藤正二政府委員 安保条約上の関係から申し上げますれば、前文にも、それから一条にも、国連憲章条文と申しますか、精神といったほうがいいかもしれませんが、国連憲章を引いておるわけでございます。したがって、当然日米両国とも国連憲章ワク内でこの行動が行なわれるということは、当然の前提だろうと思います。したがって、安保条約のほうの面から見ても、そういうふうな形になりますし、それからアメリカ及び日本は、国連憲章締約国でございますから、そちらの国連憲章のほうからくる義務というものもあるわけでございます。したがって、両方の面からそういう形になるわけでございます。
  29. 戸叶里子

    ○戸叶委員 国連憲章ワクの中でということは、安保条約にうたってあることは私も知っています。それから、極東の平和と安全に寄与するというのが、一体国連のどういう形で授権され、委任されているかということを伺ったわけです。そうしましたら、いま二つの例をお引きになったわけです。そうすると、あとのほうの五十一条の場合に、事後に国連通告ですけれども強制行動の場合には、これは当然安保理事会決議を待たなければならない。そうすると、日本事前協議の前に決議がなければならないわけですね。これも念のためにはっきりさせておいていただきたいと思います。
  30. 佐藤正二

    佐藤正二政府委員 国連強制行動自体が発動いたします前といったほうがむしろ正しいと思いますが、そういう安保理事会決議がございまして、強制行動というのが発動するわけでございますから、それからしか戦闘行動というものは行なわれないわけでございます。したがって、当然事前協議の前ということになります。
  31. 戸叶里子

    ○戸叶委員 この極東条項の問題につきましては、国連憲章関係でもう少し議論していきたいのですけれども、ちょっとほかのほうの質問がありますので、この程度にして、もう少しあとの機会に質問したいと思います。  そこで、原子力潜水艦の問題でございますけれども大臣沖繩への寄港について、アメリカ民政官のカーペンター氏が、先月だと思いますけれども屋良主席に、事前または同時通告を行なうことは、軍事行動に属する問題なので不可能だと、琉球政府側の要請を拒否したということが伝えられているわけです。そこで、これは松岡主席のときに、二十四時間前の寄港通告を要求しましたけれどもアメリカ同時通告を約束したということが前の歴史で残っているわけでございますが、最近のホワイトビーチ原潜寄港で、通告をしないで、そこで米側沖繩とで折衝してきたことがあったわけでございます。私どもは放射能の汚染というものを考えてみましたときに、入港の前と入港のときと出港の後と、それぞれ測定をしてみなければわからないということが科学的に証明されているわけです。だとしますと、こういうふうな測定ができないような形でいままで原潜寄港というものが沖繩にされておりましたので、いろいろな放射能の汚染の問題等が出て、それがいいかげんになってしまっているわけですね。そこで、こういう問題も不当ではないか。大臣立場からすれば、基地を貸してあるのだから、原潜寄港はあたりまえなんだ、こういうふうなことをおっしゃるかもしれませんけれども、やはりこういう問題も、日本に返ってしまえば、二十四時間前に通告することは当然でございますけれども、それ前でも沖繩の人たちがたいへん心配しておりますので、七二年に返るまでに、そういうような原潜寄港の場合には、入港前に通告してもらいたいくらいの交渉をなすってもいいじゃないかと思いますが、かつてそういうことはなさいましたか、それとも全然なさいませんでしたか、また今後においてもする意思がないのかどうか、こういう点を伺っておきたいと思います。
  32. 愛知揆一

    愛知国務大臣 たいへんどうも私どもの何か怠慢をあらかじめ前提にしてのお尋ねのようで、私も非常に残念でありますが、沖繩の原潜の問題につきましても、御案内のように、日本政府としても、もう従来できるだけの努力をしているつもりでございます。たとえば原潜の放射能汚染、那覇港内の調査その他につきましても、何べんかの折衝の結果、御承知のように、日本本土の権威者を米琉両方の共同調査の中に参加させる、そして日本本土の専門家からも、沖繩の方々にひとつ客観的なその調査の結果、実情等を報告してもらうということが、ようやく成就いたしましたことは御承知のとおりでございます。  それから、お尋ねがございませんでしたが、B52の問題にいたしましても、まだ十分の成果こそあがっておりませんけれども、私の訪米中におきましても、公式、非公式を問わず、さらにさらに注意を喚起し、善処を求めているわけでございます。ただいまのお話につきましては、これは本土並みにやりたいというのが私どもの念願でありますが、現在は入港と同時に、あるいはその直後にというふうに言うほうがより正確かもしれませんが、できるだけすみやかに通告をしてくれることにいまなっております。これで満足をしているわけではございませんが、しかし、とにかくアメリカ側としても誠意を尽くして、二十四時間前ということにはいまなっておりませんが、できるだけすみやかに通告をしてくれることになっております。しかし、これではまだ満足できませんから、できるだけすみやかに本土並みに扱ってもらうように、さらに今後におきましても話し合いを進めたいと思っております。
  33. 戸叶里子

    ○戸叶委員 その辺が私率直に言って疑問に思うのですよ。たとえば日本の場合には二十四時間前に通告する。ところが、沖繩の場合にはこれができない。しかし、返還後になれば、本土並みになるのだから、二十四時間前に通告する。その間においてたいした変化がないにもかかわらず、日本に返ってくれば、すぐ通告制にしてくれるのだけれども、返るまでは二十四時間前に通告することはできないで、なるべく早くするようにしてあげるということで、こういう違いがはたしてぐっと変われるかどうかということが、たいへんいろいろな面で一これは原潜の問題を取り上げてもそうですが、非常に疑問に思うところなんですね。だから、これは国民なりみんなが、事前協議の適切な運営というものは一体どういうことなんだろうか、ワクがあるの、だろうか、ケース・バイ・ケースになるのだろうか、いろいろ疑問を持つのはしかたがないと思います。これは原潜だけの問題を取り上げてもそういうことになるわけですね。たとえば、いまそれを二十四時間前の通告制にしても、七二年に返還されて、たった二年か三年後に返還されて、そのあとで二十四時間前の通告になっても、そんなに変わらないのだから、いまそのくらいのことをしておいたほうが、国民感情からいってもいいのではないかというふうに、外務大臣考えになりませんか。それともその間に大きな違いが出てくるというふうにお考えになりますか。この点率直に言って私疑問に思うのですけれども、いかがでしょうか。
  34. 愛知揆一

    愛知国務大臣 率直に言って、私も戸叶さんの御意見に疑問を持つのです。これはどんどん本土並みに近づいておるわけですね。それから同時に、私は議論は平行線になると思いますけれども、やはり何といっても具体的に施政権が先方にある、ないという、この大きな違いですね。これについては、アメリカにはやはりアメリカ側のものの考え方とか、あるいは面目とか、あるいは世論の動向とか、いろいろございましょう。その施政権の返還ということは、やはりアメリカとしても並みたいていな問題ではない、難問題だと思います。これをとにかく正式交渉の軌道に乗せたわけでございますね。そしてこちらは七二年返還ということで具体的にどんどん迫っておりますね。それに対する反応は私は決して楽観はいたしておりませんけれども、同時に、私は反応は悪くないと考えております。必ずこれはものになるし、またしなければならない。ぎりぎりのところにきておりますね。そのときになればはっきりするのだから、いまのうちにそれをやったらいいじゃないか、これも一つ考え方でありましょうが、やはりこれは国と国、それぞれの世論を背景にした国同士の大きな問題でございます。そういう点をもう少し大所高所から御理解と御同情を持って政府のやりますこともひとつ見ていただきたいと思います。
  35. 戸叶里子

    ○戸叶委員 同情するので、なるべく早くやってもらいたいというふうに、国民の側に立って言っているのですから、その点誤解のないようにしていただきたいのです。  あとの方の質問がありますから、もう一、二点だけ伺いたいと思うのですが、新聞によりますと、この間、返還の話をされていたときに、何かアメリカ沖繩に手を貸した資本だとか米軍基地、道路、港湾、ガス、水道なんかの施設に対して、返還になった場合には、その資産を評価して、それを日本に買い取ってもらいたいというような話も出たかに聞いておりますけれども、はたしてそれが出たかどうか。それからまた、出た場合に、どの程度の金額が問題になったかどうか、この点をまず伺いたいと思います。
  36. 愛知揆一

    愛知国務大臣 率直に申しまして、具体的にそういう話が出るところまではまいりませんでした。しかし、これは容易に想像し得るところでございまして、返すほうの立場からいえば、相当の施設その他民生に対しましても、いわば俗なことばでいえば、お金も使っているのだということについて何がしかの考慮を求めてくるということは、返還する立場の者からいえば、言い出すのが自然の成り行きではないか、私はこう思っておりますけれども、具体的にそういう点について先方からの提案というものはまだございません。
  37. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そういうふうな提案は佐藤首相訪米前にあって、それを解決して、七二年返還ということがきまるのか、それともきまったあとでそういう問題がいろいろと残って、そして地位協定やいろいろな問題とからんで解決していくのか、この点も念のために伺っておきたいと思うのです。といいますのは、やはり向こう側が投下した資産を要求するのも一つの行き方でしょうけれども、たとえば畑などを取り上げて、非常に厚いコンクリートなどを張られて、今度はそれが返還されて、それをこわしてもとの畑にするというのも容易ならぬ金がかかるのではないか。そういうような問題はどうするのかとか、いろいろな問題が残ってくると思いますけれども、その点はどういうふうに、どの程度佐藤さんの訪米前にされるかを伺っておきたいと思います。
  38. 愛知揆一

    愛知国務大臣 望むらくは、大局的な話し合いというものは、すべての問題、この問題に限りませんけれども、予想される大きな問題あるいは小さな問題も含めて、取り扱いの方向だけは、私はできれば十一月のときに合意をするようにはからいたい。私は、それが沖繩の方に対してもあるいは日本国民の皆さまに対しましても、誠実なやり方ではなかろうかと思います。しかし、ものによりましては、非常にこまかい錯綜した、いまもお触れになりましたような問題がございますしいたしますから、あるいは十一月に話はきまりましても、実際の返還の時期まで、そういう点について、いろいろの折衝とかあるいは具体的な話の進め方というものがさらに必要であるということも予想しなければなるまいと考えております。
  39. 戸叶里子

    ○戸叶委員 最後にもう一点だけ、これは別の問題ですが、伺っておきたいのは、日本が軍縮委員会のメンバーになって、そしてきのうの沖繩の委員会の何か外務大臣の御発言では、核拡散防止条約には、軍縮委員会のメンバーになったから、やはりこれはなるべく早く調印しなければならないというような答弁をされたように思いますけれども佐藤総理の渡米前に核拡散防止条約は調印をしなければならないのかどうか、この点も伺っておきたいと思います。
  40. 愛知揆一

    愛知国務大臣 核拡散防止条約については、きのう沖繩特別委員会で私が申し上げたのは、そういうふうな申し上げ方ではなかったのです。これは非常に率直に私あの委員会で申し上げたのですが、UNDC、つまり十八カ国軍縮委員会に日本の参加を昨日米ソ両国から正式に招請がございました。これは私、日本といたしましてほんとうに御同慶の至りであると思います。同時に、この加盟については、米ソ両国が非常に骨を折ってくれたということになりますですね。そしてこの両国は拡散防止条約につきましては非常に熱心な立場におりますから、こういう機会に米ソ両国から拡散防止条約について日本も早く態度をきめてくださいよという言い方は、従来よりもその熱の度合いが加わるでしょう。これに対してわがほうとしては、あらためて真剣慎重に考えなければなるまい、こういうのが私の現在の考え方でありますということをそのまま申し上げたわけでございます。
  41. 戸叶里子

    ○戸叶委員 批准はいずれにしても、調印ということは近く行なわれるわけですか、佐藤さんの訪米前に。そういうことはお考えになっておらないですか。私どもも核拡散防止条約については問題点もありますし、いろいろ質問なり研究もしていかなければならないと思いますので、一応その点を伺っておきたいと思うわけです。
  42. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私の現在の私見をもっていたしますれば、調印をするということは、国会の御承認が得られるということとあわせて考えなければならない。これが私は日本立場としてのまっとうなあり方だと考えます。したがって、私は自民党でございますが、自民党内をはじめ国民的に十分この拡散防止条約というもののいままでの経路や、内容の意味するところや、あるいは将来わが国が立っていく道にどういう関係になるかというようなことを十分国民的に冷静に検討していただいて、そして国民的な合憲が求められる環境の中でこれは処理したい、かように考えております。
  43. 戸叶里子

    ○戸叶委員 これで質問を終わります。
  44. 北澤直吉

    北澤委員長 麻生良方君。
  45. 麻生良方

    ○麻生委員 党を代表して簡単に御質問したいと思います。  外務大臣アメリカからお帰りになって、連日ASPACまた国会とお疲れだろうと思いますが、あまりお疲れになって肩を張らせますと大事な国事に支障がありますから、どうぞひとつ気持ちを落ちつけて、沖繩返還の衝に当たっていただきたい。  初めに東郷さん、あなたに御質問したい。あなたははじめアメリカにおいでになったでしょう。そのとき、あなたが下準備としていろいろとアメリカ関係筋に御折衝された。そのときの報道は、沖繩の返還についてはきわめてアメリカはかたいのである、なかなかそう簡単に核の撤去また本土並みという主張に応じ得る見通しはきわめてむずかしい状態にあると報道された。私もその後、あなたがおいでになった直後、アメリカに単独でわが党の使節団の下準備に行きました。私がそのときに会ったのは、二、三のジャパン・デスクの関係者でありましたが、あなたと同じような印象を受けたことを私もいまでも思い出しております。事外交でありますから、あまりせんじ詰めて、だれがどう言ったということは質問をいたしませんが、あなたがそのとき得られた印象はいまでも変わっておられないのかどうか、この点東郷さんからお答えを願いたいと思います。
  46. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 基本的には変わっておりません。今回外務大臣が行かれまして最高のレベルでお話しになりまして、私の得た印象は、わがほうの態度、申し入れに対して向こうが真剣に検討して、これからの交渉に臨みたいという気合いを十分感じましたが、問題の解決ということはこれからの問題であるという意味におきまして、四月の印象あるいは今回の印象も、私としてはそう変わっておりません。
  47. 麻生良方

    ○麻生委員 そうしますと、結論でいえば、そう簡単に、政府がとっている本土並み返還の交渉に米側が応ずるということは、なかなか不可能ではないか、非常に困難があるであろう、こういうお見通しを東郷さんとしては持っておられるだろうと思います。私もまた、率直に申し上げますと、実は同じような見解をいまでも持っております。  そこで、いままで国会議論されたことは、政府の基本方針についていろいろと質問のやりとりがあった。しかし問題は、アメリカ側がこの問題について、いま東郷局長が答えられたような、かなりかたい立場で臨んでいるとすれば、それは具体的にせんじ詰めていきますと、私はこういうことになると思うのです。愛知外務大臣は、きのうかおとといか、どこかの御発言でもされているように、必ずしも核を抜くという約束はまだアメリカ側から取りつけておられない。私は、このことはせんじ詰めれば、日本立場からいえば、核を持ち込むなどはもってのほかだという立場があります。しかし、アメリカ側からいえば、必ずしもそうではない。  そこで、いまアメリカの焦点は、核を持ち込むか持ち込まないかはまだきめてはいないが、しかし、かりに持ち込まない場合には、それに見合うべき条件を沖繩基地に与えようというところにあると私は判断している。具体的にいえば、どうしても核を持ち込まないなら、それに見合うべき条件とは基地自由使用です。私は帰りにロサンゼルスのランド調査機関に立ち寄りまして、ある筋におけるアメリカ側の意向も——これは世論でありますから、それが政府の決定的方針であるとは思わないが、ある関係者はこう言っておった。おそらくアメリカとしては、核を持ち込まないということを約束する以上は、基地自由使用について、安保条約とは別個な条約交換を行なうつもりがあるのではないか、それを取りつけなければ、アメリカがいま極東の安全、特に朝鮮半島の安全についての抑止力としての沖繩基地の効果を果たし得ない、こういうふうにアメリカ考えている筋がかなり多数ではないかという印象を受けました。そうすると、アメリカで論議されていることは、核はほんとうは持ち込みたい、また持ち込まなくても、いつでも核を置けるような状態は取りつけたいが、それがどうしても日本国民が許さないとすれば、それに見合うべき自由使用をペーパー交換で、つまり安保とは別個な条約交換で取りつけたいというところにアメリカ側の世論の焦点はある。  ところが、日本の世論の焦点は、国会の昨今の質問で明らかになったように、本土並みでありながら、しかも事前協議弾力的運用が焦点になっている。  このアメリカ側の焦点のあり方と、日本側の焦点のあり方とのズレ、このズレをこれから二、三カ月の間にあなたが中心になって埋めるわけでありますけれども、その埋めることについて、あなた御自身、いま私が申し上げたようなアメリカの感触を全く御否定されるかどうか、その点について確かめておきたい。
  48. 愛知揆一

    愛知国務大臣 申すまでもありませんが、先ほど戸叶さんにもお答えいたしましたように、これからの数カ月というのは実にたいへんで、私も御期待に沿うような結果を何とかあげるように全力をあげてがんばりたいと思っておりますときだけに、あるいはあまりこまかく御期待に沿うようなお答えを現在のところいたしかねるかと思いますけれども、これはやはりニクソン大統領もこれを話しておりましたけれども、お互い民主主義の世論の国でございますから、アメリカとしては、アメリカ国民に対していれられるような結論でないとぐあいが悪いし、御同様あなたのほうの国でもそうでしょう、その両方を何とかして寄せてくるということについては、これから非常にたいへんなことであろうが、とにかくひとつ徹底的にやってみて、そしていわば頂上会談に持ってきてくださいということになっておるわけでございますから、それをやっていくためには、アメリカのほうのいろいろの考え方というものも常に念頭に置いて、こちらもいわば作戦を展開していかなければならないと思います。ただ、これはやはり国交関係といいますか、すでに一番頂上のところで、この話についてできるだけすみやかに合意を得ようという路線だけはしかれたわけでございますから、今後私としては、正規の線に沿って、国務長官、国務省と私どもとの間で、正規の外交チャンネルでもってできるだけこれを煮詰めていく、アメリカのいろいろな考え方は、私の期待としては、国務省筋において十分検討し、調整をはかってくれるであろうということを期待しながら、この正規のルートによってできるだけ話し合いを煮詰めてまいりたい、かように考えております。したがって、先ほどのいろいろの御観測や情報についてのお考えにつきましては、私はこれは否定もいたしません。肯定したということになるとどうかと思いますので、否定はいたしません。
  49. 麻生良方

    ○麻生委員 大臣、私はあまり詰めるつもりはありません。これからの大事な交渉に支障があるような質問は私もしたくない。したがって詰めるつもりはありません。ついこの間の外務委員会における事前協議弾力的運用で特に問題になる焦点、またしたがって、イエスかノーかの焦点についても、昨日の発言で、これから詰めていくのだという御発言がありますから、しばらく見守ることにしたい。ただしかし、私は一番おそれますことは、政府本土並み返還という足場を踏まえていることは、私ども大歓迎、またそれを譲ってはならない。しかし、現実問題として、アメリカ側の意向とかなり焦点のズレがあるということについて、日本国民の認識を得ることは、これはしておかなければなりません。いかにも本土並みが簡単に通る、おれにまかしておけというような態度で臨んでいくことは、きわめて危険であります。やはり情勢情勢として、アメリカに対して批判や非難をすることは別でありますが、しかし、アメリカ側の確実な情勢分析としては、いま東郷局長も言われたようにきわめてかたいのです。これは私も同じ印象を今度も得て帰っている。かたい中でも、しかし、日本政府が腰を据え、国民が一致協力して当たるなら、本土並み解決の道も開ける、だろうという一つのポシビリティ、可能性を求めて、われわれはこれから返還交渉に臨んでいくのですから、どうも昨今の国会の総理やあなたの御答弁ぶりを見ていると、いろいろASPACその他で頭にきている点もあるでしょうけれども、だいじょうぶなんだ、まかしておけ、つべこべ言うなというような御態度があまり出ることは、やはり好ましくない。やはりアメリカ情勢情勢として、すなおにそのまま日本国民に知ってもらう義務がある。私はその点特に強く念を押しておきたいと思う。その強さの中からどうしてアメリカ側の理解を得るか、われわれがなぜ本土並みの返還が将来の日米の友好関係の上に基本的に必要であるかという説得と理解をアメリカに得るかということが今後の焦点になるだろうと思います。その点は特に念を押して、私は、これ以上の詰めばこの問題についてはしないことにしておきます。しかし、やがて日がたつにつれて、何回か取り上げられるでしょうから、そのたびに、もう少しずつそれに歩調を合わせて私も詰めていきたい、こういうふうに思います。  そこで、全般的なアジア情勢についてですが、アメリカのアジア政策はかなりいま大幅な転換の時期に立っておることはお認めになると思う。これはいかがですか。
  50. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず前段の御意見につきましては、まことにありがたいおことばをいただきまして、感謝申し上げます。まことにそのとおりなんでございます。なかなかむずかしいことで、こういう政府基本線というものがそんなに簡単にできるものとは毛頭考えておりません。よほどの国民的な御支持がなくしては、そういう成果をあげることはできない。今後ともそういう点につきまして十分注意してまいりたいと思います。  それから、アジアに対するアメリカの政策については、これは率直に申しますと、変えていかなければならないと思われるが、どういうところをどういうふうに変えていったらいいかということについて、まだクリアカットの線が出ていないのではないだろうか。それにつけても、俗なことばで申しますが、日本よ、頼むぞ、ほんとに親友、しっかりして助けてくれ、あるいは君、頼むよ、こういう雰囲気が非常に強く読み取れ、印象づけられるような感じを持ったわけです。
  51. 麻生良方

    ○麻生委員 その点は、いろいろおことばのあやもありましょうが、私もほぼ同感です。アジアにおける政策は転換させなければならない岐路にアメリカが立っておる。しかし、これをどう転換させるか、また転換させた後において、アジアの情勢がどうなるかということについて、特に日本の動向とからみ合わせてつかめないというところが実情でしょう。しかし、具体的には、転換せしめなければならないという考え方一つの動きになって、政治的、軍事的な形になってあらわれておることも事実ですね。たとえば、ちょうどいまから二カ月くらい前に、アメリカのニクソンの側近筋から、近く五万人のベトナムの軍隊を撤退させるであろうという放送がなされた。それからちょうど一カ月経て、ニクソンは例の提案を行ないました。しかし、ニクソン提案の中では、必ずしも一方的撤退ということではなかったにもかかわらず、その後一カ月を経ずして、二万五千人の一方的撤退が決定された。こういう一連の推移を見ると、明らかにベトナムにおいては、いずれにしても、アメリカ軍が撤退してベトナム和平をかなり強引にでも片をつけたいという方向に現に動いている、これは事実です。これは御否定されないと思うのですね。だから、やっぱり情勢は動いておる。  それからもう一つは、中国に対するアメリカの政策です。これはいろいろ問題もあると思うけれども、特に最近の中ソ紛争以降におけるアメリカと中国との関係は、かなり微妙な段階に入っておるように感じられる節がありますが、外務大臣アメリカにおいでになっていろいろ感触を得られておると思いますけれどもアメリカの一部有力な上院議員等の中に米中の接近説、しかも一部のアメリカの経済界がこれに対してかなり強い支持を与え始めておるという情報も、かなりひんぱんに入ってきておる。そういうような情勢の中から、アメリカが中国に対しても——特にワシントンポストなどは大きく報道しておりますけれども、中国に対しても、ここ一両年の間にかなり具体的な接近工作を始めるのではないかという観測がいまアメリカにしきりにある。これもやはりアジア情勢の大きな変化、特にアメリカ行動がもたらすアジア情勢の変化と見られるわけですね。そういうような一連の動きを見れば、やはり戸惑いながらも、アメリカはアジア全域からその伸ばし過ぎた軍事的勢力を撤退していきたい、そしてその行動をすでに開始しておる、こう見てもほぼ間違いないと私は思いますが、この私の見解について御意見、御批判をまずちょうだいいたしておきたい。
  52. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ベトナムについては、いまお話しになりましたそのとおりの状況であると思います。  それからなお、中共の問題につきましては、いまお述べになりましたようなことが、必ずしもアメリカにおける一つの有力な動きとも見受けませんけれども、しかし、やはり民主主義、自由主義の国でございますから、各界各層いろいろの意見があることは、私も感得できます。ただ、ニクソン政権——ニクソン内閣と申しましょうか、この立場において、ここしばらくの間、対中共政策が非常な変化を来たすとは私は見取れないわけでございますが、先ほどお述べになりましたような意見のあることは事実であると思います。
  53. 麻生良方

    ○麻生委員 まあ、その点で論争をするつもりはありませんが、しかし、いずれにしても、そういう方向にある。そこで、先ほど外務大臣が言われた、ちゅうちょしておる点はどこにあるか。ちゅうちょしておるということになると、中国に対しても、そういまアメリカとして積極的な対決姿勢を強めている方向ではない。まあ平行線あるいはゆるめようとしておる方向にある。そしてその結果、全体としてアジア全域の緊張が緩和されていく方向にあると外務大臣はお考えですか。つまり、アジアの緊張が激化されておる方向にあるのか、緩和されておる方向にあるのか。どちらの方向にあると分析されていますか。
  54. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは常識的に考えましても、だれしも緊張を欲しておらないというような意味で、どちらであるかと、こういうお問いであれば、緩和の方向が望まれておるということではないかと思われます。  第一にベトナムでございますね。これが何とかして撃ち方やめという状況になってほしいということは、だれしもが望んでおるところであろうと思いますが、最近の関係者の動きの中からも、相当具体的な動きが出てくるやに思われますが、これは一つの大きな転換期になるのではないかと望まれておるわけでございます。  それからもう一つは、ソ連が、中ソ関係もございますが、やはりポストベトナムといわれる時期に処してでありましょうか、いろいろな考え方や動きなどはなかなか微妙であるようであります。それはイギリスの一九七一年以後の撤退ということにも大きな関連があるかもしれませんが、これらについても十分情勢の推移を見守っていかなければならない。一面において、米ソは非常な接近を示しているとも見えるわけでございますが、この辺のところの情勢分析は非常にむずかしいのじゃないかと思います。世界党大会の状況などにつきましても、私もなおよく情勢分析をしてみたいと思っておりますけれども、世界的な情勢の推移というものはきわめて微妙であります。  それから、お問いの範囲外になって恐縮なんでありますが、それだけに、またそれ以外の点におきまして、日米間というものが私は非常に大事だと思うのですけれども日米関係もいろいろな意味で一つの転換期に来ておる。日本の主体的な立場に立って、しかもアメリカを助ける立場に立ってみると、よほど考え方や今後の体制に注意していかなければならない点があるのじゃないか、こういうふうにも考えるわけでございます。
  55. 麻生良方

    ○麻生委員 そこで、大臣、その情勢の分析で、希望的観測であっても、アメリカ軍のアジア全域にわたる軍事勢力の撤退が、ある意味においてアジアの情勢緊張緩和の希望的観測とその動向にあるという判断をするといたしますと、結局アジアの緊張の原因はどこにあったかという逆説的な質問がここに出てくるわけです。つまり、いままで安保条約沖繩基地がアジアにおいて戦争抑止力としての効果を果たしてきたという観測は、若干変更させなければならない。むしろ、その抑止力が強過ぎたために、あるいは行動力が強過ぎたために、アジア全域における緊張状態継続してきたのだ、特にベトナムにおいてはそれがはっきりと指摘されてきておるということになると、日本もいままでのように、一点ばりで、安保が抑止力を果たしたんだ、沖繩基地抑止力を果たしたんだという抑止力の効果だけを大きく評価することは、この情勢分析の上に立てば誤っているという判断が当然生まれてくる。そういうことになりませんか、外務大臣。いま中国はさして軍事勢力の動きを変化さしているわけではないでしょう。北ベトナムも依然として同じ状態を続けている。ソ連も同じである。変わってきているのは、アメリカのアジアにおける政策である。これが変わったら、緊張緩和の方向が生まれてきたとなれば、緊張状態を生んでいたのはアメリカ極東政策であり、アジア政策であった、特に軍事的行動であったという逆説的結果が、ここに当然生まれてくる。この判断について、外務大臣肯定されますか。
  56. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その点になりますと、どうもにわかに肯定できないと思うのでございまして、一番根本には、やはり東西の対抗、そして力のバランスがあるということが、大所高所から見て、国際的な緊張が激発しなかった。そういう意味において抑止力が働いていた。今後も、どうもしばらくそういう状況であってもらわなければ困るのじゃないか。この辺になってまいりますと、意見が分かれるところだと思います。  それから極東状況におきましては、ベトナムというものを一応別にして考えてみますと、ことに日本自身あるいは朝鮮、台湾、あるいはもう少し広げてもいいかもしれませんが、こういうところが——先ほどもちょっと朝鮮半島の状況に触れましたけれども韓国が、私の見解をもってすれば、最近国力の伸長に見るべきものがある。国民も非常な自信と意欲をもってやっておられる。そのことがやはり緊張の緩和にたいへんな役をするに至っていると私は思います。そしてそれは、やはり米韓条約というようなものを中軸にしたアメリカのいわゆるプレゼンスによって、恐怖というか脅威が未然に防止されている。そういうメリットも私は見のがすわけにはいかないと思います。ですから、現在緊張緩和の方向に向いているからというので、アメリカのプレゼンスが全然なくなった場合に、この状態がはたしていいほうにずっといくのかというと、むしろ逆にいく可能性の危険性を考えなければなるまいか。ここが、日本自身にとりましても安保体制の新しい意味であり、その点についての認識というものが、私は私の考えが正しいと思いますが、その辺になりますと、だいぶ意見が違ってくるかと思います。
  57. 麻生良方

    ○麻生委員 大臣、私は、過去の安保条約が果たしてきた抑止力としての効果は、これはある意味において客観的に認めていますよ。それは確かに過去においては、何もアメリカだけが挑発的であったわけではございますまい、特にアジアにおいては。中国もかなり挑発的行為を行なってきたし、また北ベトナムも行なったこともあるし、現に北朝鮮はいまだにその態度を捨ててないことは事実です。それは認めますよ。しかし、とにかくアジアの情勢一つの転機に立っておる。そして転機に立ちながら、アメリカがアジアに繰り広げた軍事勢力を撤退する方向に向いてきたのがきっかけとなって、全域において緊張緩和の状態が生まれつつある。しかし、なお依然として部分的には——その部分的は朝鮮ですよ。部分的には緊張状態継続されておる、こう見るのが私は至当だろうと思う。  そこで、私は、いままで現行安保が果たしてきた抑止力としての効果、これを批判するつもりはないのです。しかし、この新しい情勢に対応して安保条約がどうあるべきかという点については、私は、米国側の立場からも、日本側の立場からも、現行安保条約が当然この新情勢に即応して再検討されるべき時期に入りつつあるという認識を持つのは、間違っておるでしょうか。この点について御見解を伺いたい。
  58. 愛知揆一

    愛知国務大臣 麻生さんのおっしゃることに対して、次元の低いことを申し上げるようでありますけれども、たとえば安保条約本土におきまする——御承知のように、昨年暮れにも、基地の数を相当減らすことになりましたですね。そういうことが、やはり安保体制というものが時代に即して適正な方向に動いている一つの証左ではないかと私も思いますし、これはやはり私は伸ばしていきたいと思うのです。要するに、抑止力というものは、その名のとおり、必ずしも目に見えなくても抑止の力は大いにあると私は思いますが、そんなような気持ちで、今後安保条約の時勢に合うような適正な運用ということは、少し事務的な話になって恐縮なんでありますが、やはりお話しになったような点も頭の中に入れながら、時勢に合うように、またそれが国民の希望されるところでもあろうかと思いますので、そういう点を心してまいることが、まず一番着実な行き方ではないだろうか、こんなふうに考えております。
  59. 麻生良方

    ○麻生委員 いまの外務大臣の御答弁の中には、私の質問の先回りの答弁もかなり含まれておるように思いますが、要するに、外務大臣は、新情勢に応じて、若干安保条約の運用について変更をさせなければならない点はお認めになっておる。その運用の中に含まれるのは、国内の軍事基地の取り扱いの問題ですね。それだけでしょうか。極東条項についてはどうですか。十年前にこの安保が結ばれたときの国際情勢、そのときには、確かに、安保条約の中にある極東条項について、その点をはっきりさしておかなければ日本の安全が保ち得ないという不安があったことは事実だ。しかし、いま現在の時点において日本が侵略される可能性があるような極東条項、つまり極東の不安、そういうものが起こり得る可能性はきわめて限定されてきておる。どこに限定されてきておるか。それは朝鮮半島とその周辺にだけ限定されてきておる。とすれば、私は、やはり十年前の極東条項のあり方も必然的に再検討されるべき時期にきておる、軍事基地のあり方も再検討されるべき時期にきておるという判断に立つのです。その再検討を運用の面であなたは再検討しようとおっしゃっておるが、私はもう少し先に進めて、条約そのものの条文改正の中で再検討する必要が生まれてきているのではないか。ここは見解の相違ですから、これは煮詰めません。しかし、初めに申し上げた極東条項の面も含めて、かりに一歩譲って運用の面で再検討する必要が生まれてきているという認識については、大臣も御同意されますか。
  60. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点は、ちょうどまる九年前になり、先ほども戸叶さんからもお触れになりましたが、私自身も当時その安保改定問題について関与した一人として感慨深いわけなんでございますけれども、そして極東条項についてはずいぶんいろいろの議論が当時もございましたが、まあしかし、現在私は、麻生さんのお考えもお考えとして理解できるのでありますけれども、この時点で条約に手をつけてまで極東条項になにするのには、政府としてはそこまでの決意はできかねる。これはまた日本側だけのあれでもなくて、条約のことでもございますので、なかなかそこまでは踏み切って申し上げることはできないのを遺憾といたします。
  61. 麻生良方

    ○麻生委員 外務大臣としての御答弁としてはそこまででやむを得ないと思いますが、ただ、もしそういう運用の面でかなり弾力的に安保条約方向を変えていかなければならない、方向というよりか、その運用を変えていかなければならぬというお考えがあるとすれば、やはり自動延長ということもそうむやみに御主張さるべきではない。つまり、一年後、またどういう情勢が特に極東において発生しているかもわからない。それは好ましくない情勢もあり得るかもしれないが、しかし、方向として緩和の方向に向いておるとすれば、われわれが努力すべき焦点は、問題は、全体として緩和の情勢にありながら、部分的に緊張状態が続いている、朝鮮を周辺とする緊張状態をどうやってこれまた全体の方向に合わせて緩和させるかというところに、日本の基本方針を置かなければならない。この朝鮮半島の緊長があるから、それに対処してさらにその緊張の度を増すような方向で、日本安保条約沖繩問題に取り組むべきではない。この緊張を緩和させる方向で取り組んでいかなければならない。そうすると、おのずからそこに安保条約に対する姿勢と、それから沖繩返還に対する姿勢とが生まれてくるはずだと私は思うのですが、この点についてはどうですか。
  62. 愛知揆一

    愛知国務大臣 どうもその辺になりますと、御高説を御高説として拝聴いたしておくことに、ただいまのところとどめておきたいと思います。
  63. 麻生良方

    ○麻生委員 外務大臣なかなかずるいですから、そこから先は御返答されない。しかし、私は一つだけ御披露しておきますよ。アメリカのある高官が私にこう言ったのですよ。日本アメリカにたよって防衛してもらっておるではないか。そして現に北朝鮮アメリカに対しても韓国に対しても挑発行為をしているじゃないか。それ後現実の事跡として、プエブロや米偵察機の撃墜事件が起こったではないか。だから本来、日本は憲法を改正して、軍備を持てるならその軍隊を持って、アメリカ軍韓国に協力して、北鮮の侵略、挑発的行為を防衛すべき義務があるのだ。しかし、憲法があるからそれはできないだろうから、当然沖繩基地は自由に使用させるべきだ、こういう意見はかなり一つの筋としては通った意見です。それに対して外務大臣本土並みを主張されておるわけです。このアメリカ見解に対して、あなたはどう反論されて本土並みを御主張されますか。
  64. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはそもそも安保条約の改定のときにさかのぼる面もございますね。私は、その限りにおいて、アメリカの意見にも率直にいって大いに傾聴すべきところがあると思うのです。たとえば安保条約は、きのうも沖繩委員会でも申したのですけれどもアメリカの当時の上院の審議の状況を見ましても、アメリカのほうが日本に対して不平等で、自分たちは徴兵の兵隊で、そして他国であり、いをに親善関係があるにしても日本という外国である。これを守る義務を負わされている。そして自分のところの兵隊が自国と同じに守る義務を持って日本に駐とんしたとして、基地使用については日本の欲せざる武器は使えない、自由に出動はできない。これはどう考えたってアメリカにとって不平等だ。私は逆にいえば、これは日本外交の大勝利かといえると思うのですけれども、まあそこまではいわないにいたしましても、やはりアメリカの発想としては、現在の国際情勢の認識、その中には日本のあり方も含めまして、ずいぶんこれは率直にいわせればたくさんの意見があると思いますが、なぜそれらに対して本土並みを主張するかといわれれば、私は、アメリカの人たちに対しても、こういう相互信頼関係にある日本で、そして安保の重要性をこれだけ認めて、沖繩返還後においても若干の基地というものはむしろ残してくれという立場にある。それだけに、その基地使用あるいは機能を発揮するに際しては、日本国民沖繩県民の十分の理解と協力の上になければならないではないか。したがって、核にこだわったり、あるいは戦略的ないろいろなあれにこだわって、そういうことに主張を強くするよりは、日本沖繩の人たちの気持ちを十分理解して、その上に立ったほうが、日米相互の目的をより多く達成し得るではないか。まあもっぱら政治論に立脚していくよりほかにはないと私は思っております。
  65. 麻生良方

    ○麻生委員 あと十分でやめます。いま了解がつきましたから……。  大臣、そこが非常にポイントなんです。もっぱら政治論で本土並み返還を要求するということですが、政治論というのは日本の国内事情ですよ。結局、それをさらに発展させれば、日米の友好関係のために本土並みが必要だという議論になる。それだけでは私はアメリカの説得としては少し足らないと思う。つまり、いま初めに私が御質問申し上げた韓国の防衛ということについて、アメリカが要求している点に日本がどういう考え方を持つかを明らかにしていかなければ、本土並の主張というものは、ある意味の理論的根拠が生まれてこない。そこできょう、私は私の意見を先に申し上げておく。  私はこういう意見を持っておるのです。確かに日本アメリカ関係からいけば、アメリカプエブロや米偵察機が北朝鮮の挑発を受けたということについて、黙って見ているというわけにはいかないだろう。しかし、万が一そのことについて日本アメリカに協力をして基地を提供したり、その軍事行動を是認をすれば、プエブロ号事件として起こった朝鮮半島の一つの発火、その火種がさらに日本の介入によって拡大される結果になるではないか。そうでしょう。日本の介入によって拡大される。日本戦争の意思がなくても、基地の発進を認めれば、その結果日本が介入することになる。したがって、その紛争は、米国と北朝鮮間の部分的な紛争からさらにエスカレートしていく。そうすれば、当然、北朝鮮は中国ともソ連とも軍事同盟を結んでおるのですから、さらに北朝鮮へ中国やソ連がある意味において介入してくるという結果になる。つまり、日本が軍事基地をその場合に発進基地として認めれば、結果的には朝鮮半島についた火がエスカレートしていくのだ。本来、日本は平和に徹する国民としてそれを消しとめなければならない立場にあるのだ。かりに友好国であるアメリカがその火種の中に入ったとしても、それを消す立場日本は立たなければならぬのだ。だから、その発進は認めることはできないのだ。この基本的な姿勢を踏まえた上で本土並みの主張をなさらないと、ただ基地を自由に使わしたら沖繩の県民感情が許さない、日本国民感情が許さない、核を置かれたのでは非核三原則にもとる、それだけではやはり説得力にはならない。この基本姿勢が、この間から私が御質問申し上げているプエブロ号事件のようなときに、イエスと言うか、ノーと言うかという、その政府の基本姿勢にかかってくるわけです。そして、あなたもお認めになっておられるように、それをいずれは煮詰めなければアメリカは納得しないというところに来ておるわけですね。  だから、私がいま申し上げたように、ただ政治的主張だけで本土並みアメリカに要請するだけでは足らない。もっと大局的見地に立って、アジアの平和について日本が果たし得る役割りは、むしろアメリカに軍事的に協力するのではなくて、突発的に部分的に起こるかもしれない朝鮮を中心とした火種を日本が消しとめることについて、どうアメリカに協力するかという基本姿勢を堅持することが、私は一番大事な姿勢ではないかというふうに考えておりますので、先日来その具体的な事例をあげて大臣に御質問を申し上げておるわけです。その点、ひとつ大臣ももう一度心の中で踏まえられて、本土並みの説得力というものを、ただ政治的主張だけではなくて、平和を維持するという基本姿勢の上に立って、本土並みが必要なのである、つまり、自由に沖繩基地の発進を許さないのであるということをはっきりさした上で、対米交渉をしていただきたいということを希望として申し上げまして、理事会の御承認がとられてなかった由いま理事からお伺いをいたしましたが、私は委員長の発言がありましたので御質問申し上げたのでありまして、この点については、自後また理事会でも御了解をいただきたいことを付言いたしまして、本日における私の質問はこれで終了させていただきます。
  66. 愛知揆一

    愛知国務大臣 実は、これは率直に申しまして、麻生委員の前段でお話がございましたことは、これは一つの焦点の問題であると思います。ただ、率直に申しますと、私のいままでの受けでいる印象その他を総合いたしますと、それに対するいまの麻生さんのような対処のしかたであると、ますます話がこじれてくるような感じもしないではない。こういう点については非常に苦慮いたしておりますが、お話しになっております点は、私は私なりによく理解できると思いますので、大いに参考にさせていただきたいと存じます。
  67. 北澤直吉

    北澤委員長 本日はこの程度にとどめ、次回は、来たる二十日午前十時より理事会、十時十分より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。     午後零時二十分散会