○
愛知国務大臣 旅券法の一部を改正する
法律案の提案理由を御説明いたします。
最近の国際間の人的交流は、航空機輸送の進歩と相まって、急激な増加を示し、邦人の海外渡航も昭和三十九年四月の観光渡航自由化後は、毎年約三十%に近い増加を示し、昨昭和四十三年におきましては三十三万余の多きに達し、今後もこの増勢は当分続くものと思われます。
現行
旅券法は、戦前の旅券制度を参考にして定められておりますので、現在の渡航の実情に合致しなくなってきております。このため、旅券制度に関する国際的諸勧告及び諸外国の旅券制度を参照して国際的な渡航自由化の時代に適合するようわが国の旅券制度を改正し、
国民の便宜をはかるとともに、増大の一途をたどる旅券事務の合理化と旅券制度の適正な
運用をはかろうとするものであります。
改正法案の主要な点をあげますと、第一は、一般旅券の効力の拡大と渡航先の包括記載をはかったことであります。現行制度では、
日本を出国してから帰国するまで有効ないわば一渡航ごとの旅券が
原則であり、渡航のつど旅券の発給申請を行なうことは不便でありますので、わが国と承認
関係にある国へ数次渡航する必要がある者に対しては、五年間はいつでも使用できる数次往復用旅券を発給し、あわせて旅券の渡航先は、全世界地域等包括的な記載方法も用いることとしております。なお、わが国と承認
関係にない地域に渡航する者等に対しては、従来どおり一渡航ごとに有効な旅券を発給することとしております。
第二は、事務の地方分散と手数料の改訂をはかる点であります。現行では都道府県知事は、申請の受理及び旅券の交付のみでありますが、改正後においては、たとえば旅券の作成事務の一部を知事に委任できるように改め、また、手数料については、昭和二十六年以来据え置きとなっておりますので、五年数次往復用旅券の発給は六千円、一次往復用旅券の発給は三千円に改正するものであります。
第三は、その他の事務の合理化及び五年数次往復用旅券制度を実施するために必要な実務上の調整をはかった点であります。
主要な点を申しますと、申請時の本人出頭の緩和、旅券の二重受給の禁止、旅券の訂正方式の改善、旅券の合冊、査証欄の増補の制度の採用、滞在届け出の制度化、帰国専用の渡航書の新設、刑事事件
関係者等に対する発給
制限の改定及び返納事由の改定であります。
次に、罰則については、今回旅券の効力を拡大した
関係上、従来の虚偽申請に対する罰則等による
旅券法秩序維持がむずかしくなりますので、一般旅券の渡航先以外の地域に渡航した者に対しては、三万円以下の罰金を科することとしました。
最後に、附則でありますが、施行期日、経過措置及び
関係法令の改正について規定しております。
以上が
旅券法の一部を改正する
法律案を提案する理由及びその内容であります。何とぞ慎重御審議の上、御賛成あらんことをお願いいたします。