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村井政府委員 流動性と現行為替相場との関係でございますが、私は、この相場を自由にさせることによって
流動性を解決しようということは、非常に混乱と弊害が大き過ぎるというふうに考えております。現に、戦前の体制というものは、ここは自由相場でございまして、それでもって
流動性自体はある程度不足は押え得たかもしれないけれ
ども、その反面、率の切り下げ競争あるいは大不況というような
事態が起こってまいりまして、その結果、ブレトンウッズ体制というものができ上がった。
かつて
IMFなり
世界銀行なり現行のブレトンウッズ体制というものができ上がりますときに、過去の惨たんたる苦悩を背景として、その
改善というかっこうででき上がっておるわけでございますことは、先生も十分御承知のことと思います。
ところで、固定レート制でございますが、これは何と申しましても、端的に申しまして、商売をいたしますときに、大体相場が見当がつくということのほうが、そのときの成り行きで相場が変動するという
事態よりも、契約がしやすい。輸出契約にいたしましても輸入契約にいたしましても、相場が成り行きというのではないほうが契約しやすいという
意味におきまして、私は、やはり
制度といたしましてはレートは固定しておるほうが、これは原則論でございますけれ
ども、
世界の
貿易量の伸展という
意味に貢献するのではないかというふうに考えております。したがって、いま
各国で
国際的に議論になっております際に、相場を全く自由にするという、フリーレートといいますか、非常に自由にする、波のままにまかせようという議論は、もはや姿を消しておる。そこまでの極端な自由為替相場
制度を主張する人は少ないと思っております。したがって、先生もおっしゃいましたように、現行固定
制度の改革案としての
方法としては、大別して二つあると申しますか、
一つは幅を広げるという案、もう
一つはあまり定訳はないようでございますけれ
ども、クローリングペッグと申しますか、そういう二つがあるといたしますと、前者の幅を広げるということは、やはり先ほど申しました自由相場とまではいきませんけれ
ども、いまの一%の上下ということに比べて、やはりかなり相場が浮動的になる。しかもその幅を広げれば広げるほどそうなる。あまり狭いと現行
制度と大差がない。広げるとそういう弊害が出てくるという問題で、結局は現行の固定
制度にしくはないという
感じがいたします。それから第二の、クローリングペッグという、定期的に為替の平価を動かしていく、小幅に動かしていくという
制度でございますが、これはこれでまたかなりの弊害を伴う。まあ経済力が非常に強い国でございますと、もうこの次はこういうふうになるという予測ができるようなことから、投機的な動きもそこで引き起こすという作用もございまするしするので、私は、このクローリングペッグ
自体も現行
制度に比べて劣るのではないかという
感じがいたしております。
ただ、議論は議論として非常にやり得るということでございますし、かりに
各国の経済運営の節度というものが十分徹底し得ないということになりますと、あるいはそういった
制度をとったほうが安易なのかもしれませんが、しょせん現行為替相場
制度と申しますものは、経済の運営節度を強く維持しながらやっていくというそういう基本方針とのうらはらの
制度でございますので、一方がどうしてもだめだ、経済運営の節度がそううまくいかないというふうなあきらめになりますと、これはやはり多少相場に変更を加えるという関係になるかと思いますが、何といたしましても
世界の
貿易量、経済成長というものを極力伸ばしていくというたてまえをとりますと、やはり現行相場の固定
制度というものが最もすぐれておるのではないかというふうに思っております。