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1969-04-04 第61回国会 衆議院 外務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年四月四日(金曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 北澤 直吉君    理事 青木 正久君 理事 秋田 大助君    理事 田中 榮一君 理事 山田 久就君    理事 戸叶 里子君 理事 穗積 七郎君    理事 曽祢  益君       小泉 純也君    坂本三十次君       永田 亮一君   橋本登美三郎君       宮澤 喜一君    毛利 松平君       木原津與志君    堂森 芳夫君       松本 七郎君    山本 幸一君       伊藤惣助丸君  出席政府委員         外務政務次官  田中 六助君         外務省経済局長 鶴見 清彦君         大蔵省国際金融         局長      村井 七郎君  委員外出席者         外務省経済局国         際経済課長   谷田 正躬君         外務省経済局国         際機関第一課長 溝口 道郎君         外務省条約局外         務参事官    高島 益郎君         農林省農林経済         局企業流通部食         品油脂課長   宮地 和男君     ————————————— 四月三日  委員世耕政隆辞任につき、その補欠として松  澤雄藏君が議長指名委員に選任された。 同日  委員松澤雄藏辞任につき、その補欠として世  耕政隆君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 四月二日  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税の防止のための日本国オーストラリア連  邦との間の協定締結について承認を求めるの  件(条約第一一号)(予)  所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国イタリア共和国との間の条約の締  結について承認を求めるの件(条約第一二号)  (予) 同月三日  千九百六十八年の国際砂糖協定締結について  承認を求めるの件(条約第一三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際通貨基金協定改正受諾について承認を  求めるの件(条約第一号)  千九百六十八年の国際コーヒー協定締結につ  いて承認を求めるの件(条約第三号)      ————◇—————
  2. 北澤直吉

    北澤委員長 これより会議を開きます。  国際通貨基金協定改正受諾について承認を求めるの件を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。戸叶里子君。
  3. 戸叶里子

    ○戸叶委員 SDRにつきましては、この前、総括的な問題を大蔵大臣質問をいたしておりますし、またわが党の穗積委員大蔵大臣質問しておりますので、きょうは四、五点事務的な問題についてお伺いしたいと思います。  まず最初に伺いたいのは、IMF協定改正について、加盟各国批准状況がどうなっておるかということが一点。そしてSDRに対しましても、SDP参加義務国としての手続を完了した国がどのくらいあるか、その点をまず伺いたいと思います。そしてついでに、その名前もあげられたらあげていただきたい。
  4. 村井七郎

    村井政府委員 最も新しい情報、四月三日現在でございますが、四十二カ国が批准を終わっておりまして、総投票権数で五九・五%でございます。それで、寄託書を差し出した国は、先ほどの四十二カ国のうちの二十三カ国、総投票権数にいたしましてクォータの五二・七%に該当しております。
  5. 戸叶里子

    ○戸叶委員 その国の名前は……。
  6. 村井七郎

    村井政府委員 それでは主要国を申し上げますが、アルゼンチン、オーストラリアセイロン、デンマーク、西ドイツ、ギリシャ、インド、インドネシア、メキシコ、ニュージーランド、ナイジェリア、ポルトガル、スウェーデン、トルコ、ユーゴスラビア、アラブ連合、イギリス、アメリカ、その他でございます。
  7. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いまのはSDR義務受諾国ですか。
  8. 村井七郎

    村井政府委員 批准を了した国でございます。
  9. 戸叶里子

    ○戸叶委員 四十二カ国というのがIMF協定改正に対して批准して、いまおっしゃったほうはSDR義務受諾国ということになるわけですね。そうじゃないですか。
  10. 村井七郎

    村井政府委員 法律的に申し上げますと、改正案批准した、国内手続を了したというのが四十二カ国、五九・五%でございますが、SDR義務受諾する、つまり、協定に自分の国も参画するという積極的な意思表示、つまり、批准書寄託というかっこうになりましたのがそのうちの四十一カ国でございまして、それが五八・七%でございます。それで、先ほど申し上げましたのは、そのうちで制度に参画するというのが二十三カ国、五二・七%ということでございます。
  11. 戸叶里子

    ○戸叶委員 このIMF協定改正批准国が四十二カ国で、それでSDRの関係を受諾するしいったのが二十三カ国というふうにおっしゃったのですけれどもIMF協定改正批准国は、たいていSDRに対しての参加義務国になるのが多いのかというふうに私は考えていたのですけれども、そういう点から見ると、非常に参加国が少ないのじゃないかと思うのですが、この点はどういうふうに理解をしたらいいわけでしょうか。
  12. 村井七郎

    村井政府委員 この点につきましては、時間のズレ、あるいは各国出方を見まして、協定が発足、効力を発効いたしますと、逐次SDR制度し参画するという意思表示をするということになりますので、そこに時間的なズレがあると思います。おおむね概観いたしますと、この協定案賛成するということ自体は、これはSDR賛成であるという国が通例でございますので、つまり、協定賛成しておいて、SDRには参画しないということは、普通の場合はちょっとあまりないケースでございますので、おいおいこれが全面的にSDR制度に参画するということに相なってくると思います。
  13. 戸叶里子

    ○戸叶委員 これは見通しの問題ですからよくわかりせまんし、決定的なことは言えないと思いますけれども、いま局長がおっしゃったように、おそらくIMF協定改正批准した国は、SDRに対しても義務受諾国になるだろうという、こういうふうな希望的観測であって、ほかの国の出方を見てというようなことになりますと、その出方がどうなるということで、必ずしもIMF協定に参加してもSDR賛成をしないというか、義務受諾国にならないというような国も出てくるのじゃないかというふうなことを考えるわけですけれども、この点は、局長は、いやそうじゃない、大体見通しとしてはいいのだというふうにおっしゃるでしょうけれども、私ども、その辺がちょっと情勢分析がむずかしいと思うのです。これは必ずそうなるというような、何か裏付けがありますか。
  14. 村井七郎

    村井政府委員 いろいろ各国国内法制上の立て方が違っておる国もございまして、発効いたします前に参加手続をとるという国もございますし、つまり、参加手続を一応とって、それから国内手続をとるという国も中にはございますし、いろいろ国内法制の立て方によっても違いますが、私が申し上げますのは、そういうことよりも、今度の協定改正自体は、SDR制度創設ということが中心的な改正でございますので、したがって、この協定改正賛成するということ自体は、SDR賛成か不賛成かということのいわば実質的なきめ方のような改正でございますので、その点から私どもは申し上げているわけでございます。
  15. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そういうふうにも考えられる面がありますけれども、じゃ次に、ほかの面から聞きますが、EEC諸国のうちで批准した国がどことどこかということと、それからいまのSDR義務受諾国があるかどうか、フランスSDRに対する反応はどうなっているか、これを伺いたいと思います。
  16. 村井七郎

    村井政府委員 EECの中では西ドイツだけでございます。しかし、近く各国批准を了するというふうに聞いております。ただ、御指摘のフランスは、そこのところは非常に不明でございまして、つらつら考えますと、態度変遷というものがあるように私たちは受け取っております。つまり、過去五カ年間におきまして、フランスはきわめて消極的な態度を当初はとっておったわけでございますが、おととしのリオデジャネイロのIMF総会の場におきまして、やはり賛成をしたということ、それから昨年の総会におきましても、フランス大蔵大臣である総務は、演説の中で、世界の大勢はわりあいSDR発動し得るような条件が成熟しつつあるように思うという、従来と非常にニュアンスの違った演説をいたしておりますので、そのところから、考えの中にはやはりだいぶ変遷があるんじゃないかということが一つ。  それから、御承知のように、昨年の十一月にフランの危機がございまして、あのときに非常に外貨準備の激減を来たしたわけでございますが、ああいうときには、だれが考えましても、こういうSDRがかり発動しておりますれば、そういう国にとりましてかなりプラスになったであろう、そういう感じと、それから、わりあい非協調的であった国々から、アメリカを含めまして、スワップその他の支援の手がいろいろ差し伸べられた。つまり、国際協調というものがやはり非常に必要だということが現実に証明された事実もございまして、私たちの想像いたしますところでは、フランス態度というものはかなり変わりつつあるのではないか。また、いろいろな言動から察しますと、どうもそういうニュアンスが出てきておるというふうに想像いたしております。
  17. 戸叶里子

    ○戸叶委員 フランスに対して変わり方というような御説明があったわけでございますけれども、それでは、大体の見通しとして、SDR発動してからフランスがこれに参加するというように見ていらっしゃいますか。それとも発動前に参加できるという見通しでございますか。日本としてはどういう見通しを立てておりますか。
  18. 村井七郎

    村井政府委員 その点は、ああいうフランスのような、いわば最後の段階でノンと言うような大統領が出てきたりするような国なものでございますから、最終的な見きわめまではなかなかできがたいのでございますが、しかし、おそらく私たちが想像いたしますところでは、フランスという国は、何のかんのと反対を積極的に述べたりいたしますけれども、孤立よりも、最後はやはり脱落はいやである、国際社会から脱落することはやはりよくないという感じを——いろいろな国際会議の場でそういうことが数多くございますので、そういった点からいきますと、おそらく協定が発効してからあとで参画するということではないのじゃないか。つまり、発効の直前に何らかの参画ということがあるんじゃないかというふうに思っておりますし、また、私たちもそういうことを期待しておるわけでございます。
  19. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いま局長見通しを伺ったわけですが、そうなるかどうか、これはだれも予期できないことだろうと思います。  そこで、SDR最初配分決定の場合に、よりよい国際収支均衡達成ということが規定されているわけです。アメリカ国際収支がどの程度に改善されれば発動できるのか、具体的な基準というものがここに了解されていないわけです。だから、大幅な赤字を解消するという意味か、それとも少しでも赤字減少の方向があればいいという意味なのか、この辺はどういうふうに理解したらいいでしょうか。
  20. 村井七郎

    村井政府委員 国際収支改善は、もちろん赤字の場合は赤字幅が少なくなる、また黒字に転ずることだと思いますが、これには、判定のときにはいろいろ問題があるような気がいたしております。つまり、一がいに国際収支が黒であるとかあるいは赤であるということを言うときの国際収支とは何であるかという問題が一つあろうかと思いますし、また、国際収支というものは、そういうときに、かりに日本総合収支とか、あるいはアメリカ流でいいます流動性収支じりであるとか、国際収支のとらえ方がいろいろあるかと思いますが、そのことのほかに、アメリカならばアメリカ国際収支パターンというものがどういうものであるか、つまり、貿易収支で非常に黒を出しておる国が、去年のように九千万ドル黒字になった、したがって、貿易収支じりを見て国際収支改善かどうかを判定するという考え方も、アメリカ国際収支パターンから申しましてあるかとは思いますが、これもまた非常にむずかしいことで、アメリカが非常に大きな対外投資をやっておる、あるいはアメリカドルが非常に信任を持ちますと、資本流入が大量に行なわれる。これは現に去年行なわれたことでございますから、必ずしも貿易収支パターンだけでも言えない。ドル信任がございますから、貿易収支が少なくてもやはり資本流入が大きくなる。そこは非常に安帯した資本でございますれば、つまり、ホットマネー的な資本でない限りは、アメリカ国際収支改善になっているというふうにも私たちは思うわけでございますが、これらはやはりいろいろな点を総合的に判定いたしまして、改善かいなかをきめるよりほかはないというふうに私たちは考えますが、きわめて大ざっぱなものの言い方をいたしますれば、赤字幅が減少する、あるいは去年は一億八千万ドルでございましたけれども、一億八千万ドルのわずかな流動性じりの黒字がもう少し大きな黒字になるということ、これは確かに常識的な判定のめどではないかというふうに私たちは考えておるのであります。
  21. 戸叶里子

    ○戸叶委員 よりよい国際収支均衡達成ということがどういうふうなことであるかということが私どもはよくわからないわけですので、いまのような質問をしたのですけれども局長のおっしゃるのも、赤字幅が少し減少していったらいいのじゃないかというふうなことになりますと、このSDRというものを一番利用する国はどこかというふうになったときに、やはりアメリカが一番利用するのじゃないかというふうな結論に達するのはしかたがない。それまでは私も一体どこなんだろうといろいろ考えてみましたけれども、いまの御答弁などを聞いておりますと、なるほどアメリカが一番利用するようになるのだというようなふうにしか私は考えられない。それが一つ。  もう一つの理由は、たとえばアメリカは何といってもいま国際政治の舞台で踊っていますね。そこが話し合いをしていけば、EEC拒否権があるといってみても、ドイツ賛成していったように、だんだんにアメリカ国際収支赤字解消までいかなくても、ある程度の、いまおっしゃるような、赤字が少し減少すれば賛成をさせられてしまうようなところに持っていかれるのじゃないかというような懸念も私たちは持つわけなんですけれども、こういう点は肯定なさいますか。
  22. 村井七郎

    村井政府委員 私ども結論的に考えまして、アメリカがまっ先に多量に使うという感じはなかなかしないのでございます。と申しますのは、アメリカ国際収支は、赤字インフレだとはいいながら、流動性じりで一億八千万ドル昨年は黒字を出しておるということ、したがって、これ以上SDRをどんどん使っていくという点は、いやしくもわずかながら黒字でございますから、そう必要がない。のみならず、現状からいきまして、国際収支のもっと悪い国が幾らでもある。後進国開発途上国にいたしますと、国際収支的に非常に弱い国がたくさんあるわけでございますが、そういった国のほうが、実際問題として先に使う可能性が多いのじゃないかというふうに考えております。これが昨年、一昨年あたりの、三十六億ドル赤字アメリカが出しておるというような時代でございますれば、これはまあ話が違うかもしれませんが、そういったときには逆に発動ボタンが押されないということでございますので、結局アメリカとしては、そう赤字を大きく出しておると、いつまでたっても発動にならないということもございます。したがって、これからやはり黒字をふやしていくことになってまいりますと、まっ先に使うというチャンスが実際面から少なくなってくる、そうでないチャンスの国がわりあいほかに多いという感じがいたしております。
  23. 戸叶里子

    ○戸叶委員 これはやってみなければわからないと思いますし、それから、さっきアメリカがある程度黒字にならなければボタンが押されないということですけれども、結局これは拒否権の問題だと思うのです。EECなり何なりがだめだと言えばそうなると思う。だから、そこをアメリカ政治力を発揮して話をして、発動するということもあり得るのではないかと私は考えるわけです。その辺をどういうふうな見通しを立てていられるかということが一つ伺いたいわけなんです。
  24. 村井七郎

    村井政府委員 これは、SDR発動自体を、つまりよりよき国際収支均衡というものを政治的に判定するということは、実際問題としてはなかなか出てこない事態ではないかというふうに思います。先生が政治的、政治的とおっしゃる意味が、かりにアメリカドイツあたりに対して、たとえばオフセットと申しますか、いろいろアメリカ外貨を使っておる、ドルを使っておる、それを相殺させるというような交渉におきましては、これはいろいろ政治的な要素も加味しまして話し合いが行なわれる。その結果、アメリカ国際収支に多少はね返ってきてプラスになるということはあるかと思いますが、そういう問題を別といたしまして、アメリカ国際収支自体の実態をつかまえて、白を黒と言い、黒を白と言う、そういう意味政治的判断というものは、現実から申しまして、また五カ年の長い問かかってこういう仕組みができ上がった、拒否権制度もでき上がった、しかも現状においてEEC態度から申しまして、この国際収支判定を政治的な判断にゆだねるということは、ちょっと考えられないと思っております。
  25. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いまのは局長のおっしゃったように解釈するといたしましても、一たんSDR発動してしまって、そしてまた、アメリカが何かいまのような形でそのときは黒字だけれども、今後赤字になる場合がある、そうしたときには、IMFクォータアメリカは非常に大きいですから、だからアメリカ利用権と申しますか、それを利用できる権利というものも大きくなる、こういうようなことは当然お認めになるわけですね。
  26. 村井七郎

    村井政府委員 このSDR制度自体は、世界インフレを起こさず、デフレを起こさず、やはり慎重にSDR発動創出を行なうべきであるということになっておりますので、かりにアメリカ国際収支がよくなってきた、そこでボタンを押した、ボタンを押したあくる年か何かに非常に急激な赤字になったという場合にはどうするか。確かにおっしゃるように、五カ年間の基本期間につきまして一応の発動創出決定はあるわけでございますが、そういう異常な事態になりますと、この協定の中に「重大な事態発生」という協定文がございまして、それによりまして変更を行なう、ことに率、たとえばクォータの一〇%を発動しようということにあらかじめきまっておりましても、その一〇%という率を切り下げるということを行なったり、そのほか、いろいろ短縮したり、あるいは場合によっては消却、消し込みをしたりする手段が残されておりますので、そういう予測されないような重大な事態発生に対しましては、それ相応した措置がとられるものと私たちは考えております。
  27. 戸叶里子

    ○戸叶委員 わが国の場合のことを考えてみましたときに、日本では、SDR創出の場合に条件折衝なりというようなもので何か具体的に考えていられるかどうかということを伺いたい。たとえばSDR創出について、当初の五年間の割り当てを初年度においては厚くしておいて、あとはだんだん減らしていくというような、そういうようなことも考えていられるのかどうか、この点を伺いたい。
  28. 村井七郎

    村井政府委員 その点は確かに一つ考え方であろうかと思います。と申しますのは、確かに流動性が不足しておることは事実でございまして、それがあまり小さな額でありますと、スタートのときの効果というものが非常に低く評価される。つまり、ある程度の量を創出いたしませんと、なるほどSDRというのはこういう影響力、こういうメリットがあるという感じ方が少ないというような意味におきまして、スタートのときはとにかく一応普通の平均よりも厚くしておいて、インフレにならないようにその後慎重に運営するというような、先に厚く、あとで平準化するというやり方も、確かに一つ方法だろうと私たちは思っておりますが、これも目下私たちは検討いたしておりまして、発動の時期その他のときの情勢によりまして、一番いい方法を主張すればいいのではないかということで、これから検討いたしたいというふうに思っております。
  29. 戸叶里子

    ○戸叶委員 聞くところによりますと、アメリカなどが、いま私が申し上げましたように、初年度に厚くして、そしてだんだんに残りは少なくするということによって、SDR自体の心理的な効果を最大限に発揮させていきたいというようなことを考えて、そして条件折衝を裏でしているというようなことも聞くわけでございます。そういう意味で、いまおっしゃったようなことをあわせてまいりますと、日本はもうそれに同じように合わせていくのだというふうにもとれますし、そのときになってから発動の状態とかいろいろ見た上でないと、それに応じるかどうかはわからないというふうにもとれますし、一体どちらのほうをおとりになるのかということをまずはっきり伺っておきたいと思います。そしてついでに、もしいまのアメリカがやっているような条件折衝というものに同じような形でいくとするならば、一体何をねらいとしてそういうふうにするのかということ、そして、いま発動状況とか見た上でするとおっしゃいましたが、どういう発動状況のときにそういう道をおとりになるのかをあわせて伺いたいと思います。
  30. 村井七郎

    村井政府委員 これは確かにそのときの状況を主体といたしまして、その環境の中で考えていかなければいけないという意味におきまして、これから検討したいというふうに思っておるわけでございますが、私たちが考えますときの基本条件になりますのは、SDRの趣旨と申しますか、やはり国際流動性というものがどの程度不足しておるかということをそのときの状況判定する。つまり、もう少し具体的に申しますと、そのときの世界景気動向、ひいてはそのときの世界貿易の量というようなものと非常に関係してまいりますので、非常に高い貿易の伸びがございます場合と、低い、世界的に非常に沈静したような経済動向の場合と、やはり数字的にかなり違ってくるのではないかというふうに思っております。要は、与えるべき国際流動性不足量いかんということになってくるのではないか。それではありますけれども、また逆にあまり多くを与え過ぎて、しょっぱなからこの制度を挫折させるということのないように、インフレ的にならないような、そういう配慮ももちろん必要ではございますけれども、やはりそのときの世界経済環境における流動性不足量を測定する、なるべく的確な量を測定するということに尽きるかと思います。
  31. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私、間違えていたら直しますけれども大蔵省のほうでは、これはたいへんいいものだから早く入れ、入れとおっしゃるわけですね。いまの御答弁を伺っていますと、そのときの国際流動性不足量いかんだとか、そのときの世界貿易の様子を見てとかおっしゃるのですけれども、入る前にそのときのというのは、一体いつのことをいうのか。発動するときのことをいうわけですね。アメリカはもうすでに条件折衝をやっているわけですね。それで、日本のほうではそういうふうに応じるかどうかということは、そのときの——そのときのとおっしゃるけれども、そのときのおっしゃりながら、一方においては早く入れと言うのですから、言うからには、もうそのくらいのことは検討して分析してあるのではないか、私にはそういうふうに思われるわけです。だから、よそごとのようにそう言われますと、ではまだ先のことかなという気がしてしまうわけですけれども、その辺のところは、一体どっちが間違っておるのですか。私の考え方が間違っておるのでしょうか、それを伺いたい。
  32. 村井七郎

    村井政府委員 確かにおっしゃるようなことはあると思いますが、たとえば卑近な例で申しますと、よく話に出るわけでございますけれども、四十三年度の日本国際収支が、一年前は三億五千万ドルの赤であった。それが十数億ドル黒字である。その幅というのが、こういう小さな国におきましても二十億くらいの幅の予測の違いというものが一年間で起こり得るわけでございますので、なかなか私も言い切れない。数量はいまのうちから予測し得ないということはこれで御想像願えるかと思いますが、要は、やはり二段がまえ、つまり、協定を発効さしておいて、そうして発動の時期をさらに別にとって、そのときの、あるいはそのときに予測し得るような状況のもとに発動量を測定するという二段がまえでございますので、私が早く早くと言いますのは、つまり、そういう事態に到達し得るように、日本もそれに参加資格がございますように、早く協定自体を成立さしていただきたい。発動よりも成立を早くお願いをしておきたいという意味でございます。
  33. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、発動さしておいて、条件折衝はいま裏でアメリカがいろいろやっているようですけれども、そういうものはやるだけであって、一度発動さしてしまって、発動してみんなが入って、それからいろいろ条件折衝をして、それに応じるか応じないかということを考えていく、そのときにするのだ、いまの場合は裏で何を言われても応じることはできないのだ、こういうふうに理解していいわけでございますか。
  34. 村井七郎

    村井政府委員 これは一応発効いたしまして、それでその上に、各国がまた新しく集まりまして判定すべき問題で、発効前にそういう発動の話をするということ、私は非常に順序として不適当ではないかというふうに思っておりますし、実際問題といたしまして、まだそういう創出量、発動の量というような話し合いは行なわれておりません。これは新聞その他でいろいろなことがいわれておりますが、これは単なる憶測でございまして、私たちはそういう集まりを持ったこともございませんし、私たちのほうにこれだけの量はどうだというような相談があったわけでもございませんし、私たちはとにかく全力をあげて発効をお願いする、それからのことにしたいと考えております。
  35. 戸叶里子

    ○戸叶委員 条件折衝の問題もすでに出ておるということを私たちは聞いておりますし、やはりそういう点もただしておかなければならないと思って質問したわけでございます。  そこで、わが国の金・外貨準備高が三十億台に乗ったということがたびたびいわれておるわけですけれども、いままで量の増加に重点を置いていたと思いますけれども外貨準備の体質改善というようなことはお考えになっていないかどうか、この点をまず伺いたい。
  36. 村井七郎

    村井政府委員 現在確かに国際収支は好調でございまして、そういう好調なときに、おっしゃるように、確かに外貨の積み増しが行なわれると思いますが、要は、これを積極的に、つまり目的としてそうながめるか、あるいは先生がおっしゃいますように、体質改善をしながら、その結果としてなお外貨準備の増加ということが行なわれるかという二つに分けて考えるといたしますと、私は、できれば後者のほうがいいのではないかというふうに思うわけでございます。しかしながら、これはもちろん外貨準備が増加すること自体は非常に望ましいし、またそういう政策を長期的にとるべきだとは思っておりますが、体質改善というものを忘れて、それを外貨準備の積み増し自体を目的とするということは、私はこういう国際収支状況のいいときにとるべきではないんじゃないかというふうに思っております。
  37. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、いま金が大体三億六千万ドルといわれているわけですけれども、先進諸国などに比べますと、金の保有割合というものが非常に少ないと思うのです。そこで、三十億ドル台の外貨準備ということになっていますと、その三十億台に占める金の割合というものは、大体どのくらいが適当であるというふうにお考えになりますか。
  38. 村井七郎

    村井政府委員 確かにいま三十二億ドル外貨準備で、三億六千万ドル弱の金でございますので、一二%程度の率になるかと思います。これは確かに率といたしましては、先進諸国に比べまして低いと思います。低いと思いますが、これをこれからどの程度ふやしていったらいいかということは、よく考えていかなければいかぬ問題で、的確な数字を示して、ここまでは金の保有量を引き上げるべきであるというようなことは、なかなか私は言いにくい、非常にむずかしい問題であるというふうに考えております。  先生がおっしゃいましたその体質改善ということが、そのことばどおりの意味だといたしますと、金の保有量を増加するということも、確かに場合によっては体質改善になるかと思いますが、その他の体質改善方法、たとえば海外の販売輸出力を増強する、商社の力をつける、メーカーの力をつける、輸出力をつけるというような外貨の使用方法もございましょうし、金の保有ということも確かに一つの場合かとは思いますが、その増加率だけを目的にするということは、体質改善ということばと必ずしもぴったり合致はしないということは申し上げたいと思います。
  39. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私が伺いたかったのは、先進国などに比べて、金の保有量が非常に割合が少ない。いまも局長がおっしゃったように、一二%ぐらいで、これは低いんだというふうにおっしゃったわけで、私はどのくらいが大体妥当であろうかというふうに伺ったんですが、これはたいへんに言いにくいことだとおっしゃるので、これ以上伺いませんけれども、しかし、大体どの程度のものが妥当というふうに大蔵省で考えているかということは、私ども聞きたいことなんですよ。だから聞かしてもらえれば聞かしてもらいたいのですが、どうしても言えないということになりますと、それじゃこれは妥当ではないんだ、低いんだというふうに考えられる、その答弁しかできないんじゃないかと思いますので、その程度にしておきます。  それから、日本外貨準備というものがドル建てになっておりますので、ほかの通貨というのは非常に少ないと思うのです。それで、外貨準備の中のドルを減らして、たとえばマルクに切りかえるとか、ほかのものに切りかえるというような、そういうお考えは全然ないのかどうか、これをまず伺いたい。
  40. 村井七郎

    村井政府委員 いわゆる外貨準備の保有通貨の多様化と申しますか、そういう問題につきましては、私は、やはり多様化ということは一つの考えるべき方策だとは思います。ただ、もちろん、一国の外貨準備でございますから、弱い傾向の通貨ではなくて、なるべく強い傾向の通貨の多化様をはかるということは申すまでもないわけでございますし、その最右翼と申しますか、それに金があるということだと思いますが、そういう意味におきまして、逐次事情の許す限り強い通貨の多様化をはかっていくということは、一つ方法であると私は考えております。
  41. 戸叶里子

    ○戸叶委員 多様化ということも考えられる、そして強い通貨ということを強調されるわけですが、それは当然だと思いますけれども、強い通貨の中には、たとえばどういうふうなものを考えていらっしゃるか。一、二の例でけっこうです。
  42. 村井七郎

    村井政府委員 はなはだ言いにくいのですが、たとえばマルクとかスイスフラン、そういったものが一つの例でございます。
  43. 戸叶里子

    ○戸叶委員 もう一点伺いたいのは、IMF協定改正によりまして、SDR外貨準備のうちに上積みされてくるということになるわけですけれども日本の国としては、SDR外貨準備の中においてどういうふうに位置づけていかれようとするか。たとえば金やドル資産との保有の割合をどういうふうにするかというようなこと、どういうふうに位置づけていくかという点をひとつ明らかにしていただきたい。
  44. 村井七郎

    村井政府委員 その点は、確かにSDRの問題の一つの中核点であろうかと思います。SDRは、御承知のように、金価値保証というものがついておりまして、金にこそかわりませんが、価値保証は絶対的な金価値というものがついておるわけでございまして、そういった意味におきまして、ドルその他の通貨よりも一つの長所といいますか、利点があるかと思います。しかもまた、金と比べますと利子を生む。一・五%でございますけれども、利子を生むという経済的な長所もあろうかと思います。こういったことをあわせ考えますと、全体の創出量の中で、SDR世界通貨の中で占めていくウエートというものが、やはり運営よろしきを得れば、だんだん増してくるのではないかというふうに私は思います。そうなりますと、わが国といたしましても、やはりウエートをふやしていく。SDRというものが一つの通貨であると考えますと、信任性の問題でございますから、国際的にそういう信任が高まってくるに従って、日本も当然そのウエートを高めていくべきであろう。外貨準備の中でSDR保有率のウエートというものは高めていっていいのではないかと思っております。ただ、いろいろな制約がありまして、二倍以上は普通は持たないとか、あるいはIMFがいろいろSDRを受け取る国を指定いたしますときに、外貨準備SDRの保有量との比率を考えながらIMFが指定するとか、いろいろな実際のやりくり、運営がございますので、そう一挙にやろうと思ってもそうなりませんが、私たちはそういうルールの中におきまして全体のSDR信任性というものが国際的に高まっていくに従いまして、やはりふやしていったほうがいいのではないかという程度のことは考えられるし、また御答弁できるかと思います。
  45. 戸叶里子

    ○戸叶委員 その位置づけの問題で、私は多少局長の御意見とは違います。というのは、いままで穗積委員質問や、また私の大蔵大臣にした質問などによっておわかりだと思いますけれども、いまのような見方がはたして正しいかどうかということは、いまここで議論すべきでないと思いますから、いたしませんで、次に質問を譲っていきたいと思います。
  46. 北澤直吉

  47. 穗積七郎

    穗積委員 お尋ねしようと思うことの中に、技術的な問題と、それから基本の路線に関連する問題があります。基本の路線については大臣にもお尋ねしなければならぬと思っておりますが、その問題については、きょうは政務次官もお見えになりますから、政務次官並びに事務当局の責任者にお尋ねしておきたいと思います。来週は両大臣御出席のようですから、そのときまた重ねてお尋ねもいたします。  事務的な問題について最初にお尋ねいたしますが、アメリカの現時点における金保有量はいまどれだけになっておりますか。
  48. 村井七郎

    村井政府委員 私の記憶に間違いがございませんでしたら、百八億九千万ドルでございます。
  49. 穗積七郎

    穗積委員 それはいつの時点でございますか。
  50. 村井七郎

    村井政府委員 これは昨年の十二月末でございます。
  51. 穗積七郎

    穗積委員 私のお尋ねしているのは現時点。ですから、それはわかりませんですか。
  52. 村井七郎

    村井政府委員 手元の資料で一月末しかわからないのでございますけれども、百八億二千八百万ドルでございます。
  53. 穗積七郎

    穗積委員 これは御注意をちょっと申し上げておきますが、この間から申し上げたように、また政府も認識しておられるように、いままで世界資本主義経済というものは、IMF機構を通じて、ドルのいわば独裁的な支配体制の中にあったわけです。その根本が、為替相場あるいは国際収支赤字等を通じて基本的な危機に当面をしてきておる。また、資本主義諸国間における比重が変わっておる。これは、特にヨーロッパ並びに日本の生産力の対アメリカ関係で、非常な伸びがきておることは言うまでもありません。いずれにいたしましても、この危機というものは、私どもがこの前から申しますように、体制的な危機である。単に運営上の危機ではないというふうに理解いたしております。それについては政府も必ずしも反対でないと思っておりますが、そういう情勢の中で、このドルを中心とする危機問題について、二重価格制度がとられて以後、金の保有量がどういう変化を生じておるか、これを十二月または一月しかわからないというような捕捉のしかたでは、今後のわが国の経済方針、政策を決定するのに、はなはだしく私は手落ちではないかと思うのです。これらの流動の問題は、単に為替レートの変化ないしはその基礎にある大きな動揺変化を見るだけでなくて、いま申しましたように、二重価格制後におけるいまの金地金保有の動向というものは、もっと敏速かつ的確に把握しておくべきではないかと思うわけです。このことは、いやみではなくて、御注意いたして要望しておきます。  次にお尋ねいたしますが、この傾向が、現時点においてはまあ百八億ドルということでありましても、これからの展望傾向としては、これは漸減の方向をとり得る可能性が多いのではないかと私は判断いたしておりますが、政府は今後の傾向をどう見ておられますか。
  54. 村井七郎

    村井政府委員 私は、率直に申しまして、微減、微増というような小波動ということはございますにいたしましても、大きく減ってくるとかいうようなことは考えられません。と申しますのは、これは結局、これからのアメリカ国際収支に対するアメリカ態度によると思うのでございますが、相変わらず大きな赤字を続けていく、それを放置するというようなことでございますと、これは明らかに減少していくということは言えると思いますが、そうでない、これを何とかして食いとめていこうという決意並びにその実行力あるいは実行性ということが見えてまいります限りにおきましては、私は、大きく減るという事態は食いとめられるのではないかというふうに考えております。
  55. 穗積七郎

    穗積委員 それは経済の原則によって食いとめられるのではないのです。もうすでに、金にリンクいたしておりました米ドルというものは不換紙幣になっているわけですね。もしこれが兌換の自由、売買の自由が行なわれるならば、おそらくはもうすでに百億ドルを切っておると思うのです。その危機を感じたから、不自然な人為的な方法によってこれをチェックしておるだけでありますね。  それじゃ、次にお尋ねいたしますが、一オンス三十五ドルというのが発足以来のノルマルなレートですね。それが現在やみ相場においては一体どうなっておりますか。特にスイス、ロンドンあるいはジュネーブ等における最近の取引事情から見まして、一オンス何ドルになっておりますか、ごく最近の数字を示していただきたい。
  56. 村井七郎

    村井政府委員 四十三ドルをちょっと上回っておるという相場がロンドンとチューリッヒの相場でございます。
  57. 穗積七郎

    穗積委員 私の申しますのはそのことです。もし真に正常なドル体制でありますならば、金地金は百億ドルを切っておるはずですね。そのことは、すなわち、三十五ドルのものが四十三ドル以上にはね上がっておるということは、これはアンダーカレントとして、経済の自然的なノルマルな原則の中においては、ドルはすでに非常な切り下げの危機に直面しておると見なければならない、このことを証明しておると思うのです。ただ、百億ドルを切らないで、百八億ドルないしは百五億ドル程度は必ず維持ができるであろうという安易な観測は、これは全く現象をとられただけであって、われわれが今後このSDR問題を討議するにあたって最も必要なことは、将来への展望なんです。傾向が問題なんですね。  そういう点からいたしますならば、次にお尋ねいたしますが、ポンドはごく最近におきまして二回切り下げをいたしました。ところが、この問局長と私どもの問で意見の一致いたしましたように、経済あるいはその国の為替レートの基礎というものは、やはり貿易量、さらに掘り下げますならば、生産力または生産性に基礎を置いておらなければ安定はしないと思うのですね。もしSDRがこの国際経済の発展と国際的なハーモニーセーションのために役立つとするならば、このことが、その経済体質改善に、まず各国の、それから各国問における均衡の問題を是正するのに役立たなければならない。ところが、現実は逆なんですね。私どもがこの問、ごく不十分な時間であり、問題提起も必ずしも正確ではなかったかもしれませんが、申し上げた危惧が現実だと思うのですよ。  そうなりますと、次にお尋ねいたしますが、まず、このIMFの体制の中で一番の危機は、やはりこの間のマルク、フランの問題が一時これを乗り越えた後には、ポンドの危機が最も早く、かつ現実的な問題として出てくる危険がある。このことは、米ドルに関係をいたしましょうし、米ドルは、いま戸叶委員質問のとおり、日本円はほとんど米ドルに依存しておるわけですから、影響は深刻だと思うわけですね。だから、大蔵省当局は、ポンドについての今後の安定性あるいは不安性についてどういう分析をしておられるか、その分析に従ってどういう展望を持っておられるか、この際、伺っておきたいのです。
  58. 村井七郎

    村井政府委員 ポンドの問題は、即英国経済の問題であることは言うまでもございません。ただまあ、英国経済が、いわゆる所得政策と申しますか、賃金の抑制を非常にはかっておるわけでございますが、生産性がそれになかなか追いつかない。低い生産性しか実現されていない。そこへ所得政策をかなり強く強行するというのが現状かと思っておりますが、まあこれが低い生産力、低い生活水準ということであきらめておりますれば、これはそれなりに一つの経済循環というものが成り立っていく道理かと思いますが、実際はああいう英国民族でございますので、なかなかそうはまいらないということになってまいりますと、そこにどうしてもひずみが出てくるわけだと思います。現に三・五%に賃金の上昇を押えるという所得政策をとってまいりまして、もう二年有余になるわけでございますが、いまやなかなか賃金の抑制ということができがたくなっておる。労働党の内閣の力をもっていたしましてもなかなかむずかしい局面になってきておるという事態一つ。それからデバリュエーションというようなものをおととしの十一月にもやったわけでございますが、その効果というものが必ずしも的確にあらわれてきていない。輸出力の伸びというものがそれほどではない。輸入の増加ということがやはりじわじわあらわれてきておるということもございまして、なかなか効果があらわれてきていないという実態が一つあるかと思います。そのほかに、やはり何といいましても問題でございますのは、過去の債務、ことに短期債務というものが膨大でございまして、この支払いの時期というものが絶えず追っかけてやってくるという事態、この二つの問にはさまって、なかなか英国の経済というものはたいへんであろうと私は思います。したがって、去年の通貨不安のマルク、フランのときに、ポンドもかなりのゆれ方をいたしまして、その結果、さらに一段と強い引き締め政策をとったわけでございますけれども、その結果、国際収支黒字というものがすぐ実現してくるかというと、そういう経済の実態でございますので、引き締めただけの効果がすぐおいそれと国際収支黒字ということになってあらわれてきていないということが実態であろうと思います。現に二月の貿易収支はやはりかなりよくなかった。イギリスの貿易収支はよくなかったということでございます。  非常に悲観的なことを申し上げるようですけれども、そうだからといって、ポンドに直ちに危機が来るということを私は申し上げているのじやなくて、結局かなり困難である、先行きなかなかむずかしいかじとりをしなきゃいかぬ、そういう実態をかかえておる。しかも、なかなか新しい活力というものが入りにくいという事態を率直に申し上げておるわけでございます。
  59. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、われわれはもうポンドの切り下げは必至だと見ています。日本政府としてはそういうことは言いにくいから言わぬだけのことであって、改善の見込みがなければ必至でしょう。アメリカの指導による資本主義諸国からの国際的なカンフル注射でいままで数年間もってきた。その問に、カンフル注射というものは、これはそのときに体質改善の余裕を与えるというだけであって、体質改善そのものがなされない限り、時間的にやや矛盾が延長されただけであって、改善の見込みはないのです。第一回の切り下げのときから第二回の切り下げに至る問、その経過を通ってきた。いまあなたは、労働党内閣だから、労働者のベースアップが物価騰貴の原因をつくり、国際収支赤字の原因をつくっておるかのごとく言われますが、私どもはそう見ていないのです。そんなふうには見ておりません。労働党でありながら、その経済社会体制の根本的な改善をやらぬからだめなんですよ。問題はそこにある。先ほど言いましたように、一時的な物価の問題あるいはまた、ベースアップの問題ではなくて、この間から私が言うように、SDRというものが新しい通貨として、萌芽として——通貨まではいかぬとしても、その方向に向かう萌芽としてこれを見ようとするならば、経済の判断見通しの基礎というようなものは、その国の生産力または生産性に置かなければいけないと思うのです。その開発が全然できていないからです。これはもう運命は明瞭ですよ。これを長続きさせるということは、アメリカをはじめとする資本主義諸国が、現体制を維持するために必死になってやりましてもだめですよ。やった者がばかを見るだけなんです。矛盾がこっちへはね返ってくるわけです。あげくの果ては、SDRも同様な性格の路線の上に乗っておる。だから、そのことを重要に見るべきではないか。SDRに関係いたしまして、これが発動する前にあるか、発動して後にあるかは別であります。しかし、私は、いまのIMF体制の中で、ポンドの危機というものは、とうていいまの体制の中では救いがたい。かの国に革命的な経済社会の体質改善が行なわれれば別ですけれども、その見込みはないということから、そういうふうに考えられるのです。  事務当局にもう一つお尋ねいたしましょう。イギリスの国際収支の中で、いわゆる大英帝国というものは政治的には崩壊した。しかしながら、経済的にはEFTAを通じてこれが継続されておる。イギリスの外交政策というものは、この帝国主義政策というものを労働党になってもいまだに継続しておるわけです。年間これらのEFTA関係の諸国から吸い上げておる国際収支における一われわれからいえば収奪ですけれども、インカムはどのくらいになっておりますか。
  60. 村井七郎

    村井政府委員 いまちょっと手元にございませんので、後刻取り調べまして、そして御連絡をいたしたいと思います。
  61. 穗積七郎

    穗積委員 私ども最近のことを一々見ておるわけではございませんけれども、十億ドル近く、ドルに換算をしてそのくらいになっておるのじゃないかと思いますが、八億ドルないし十億ドルぐらいこれに依存しておることが、イギリス経済の対外的な矛盾であり、行き詰まりの原因だと思うのですよ。これは国際的な民主主義の傾向から見ますならば、そう断言せざるを得ない。当然だと思うのです。そうなりますと、ポンドのいまの地位を守ることは、もう不可能になっていると言っていい。あとは時間の問題だけです。その時間はだれがきめるかといえば、結局自由主義諸国、IMF諸国がこれに対して、ポンドの危機は自分の危機だというようなばかばかしい論理で、つまり、ドルに結びついた手下同士であるということで、親分のアメリカをはじめとする自由主義諸国のカンフル注射でもっておるだけのことなんです。そうなってきますと、カンフル注射した債権国というものは、当然、自国のためにも、またイギリスのためにも、体質改善をするということが前提でなければならない。今度のSDRにおきましても、そのチェックする方法が考えられておる。発動のときの条件にもある。また二十四条の消却のチェックのシステムもできておる。こんなものは無益だと言っていいぐらいでしょう。いままでポンドを守るために、アメリカをはじめとする諸国がそこに問題の焦点を把握しながら、それができなかった。今度のSDRについてもそうです。これは各国の経済主権とエゴイズムの問題がありますから、したがってSDRのごときは、国際的な協力ということが唯一の基礎になっておるわけですね。それを信ずるか信じないか、主観的に信ずるだけでなくて、その安定性の客観性があるかないかによって、これが成功するか、矛盾の拡大になるかということなんです。いままでの例を見ましても、これはもう考えられないことですね。それらのことはいささか外交にも関係しておりますので、外務省のすぐれた官僚に敬意を表して、高島参事官から、これらの問題についての御感想を——あなたはかの地におられて、EEC並びにEFTAの経済構造の実情と、EFTAの中核におるイギリスの老朽化した——私は当時あなたにお目にかかったときも、没落地主だという形容詞を使いましたが、それがいまだに継続しておるわけです。あなたはどういう御所感を持っておられるか。私は皮肉で言うんじゃないのです。あなたの人格と学識には敬意を表して、立場は違いますけれども、伺っておきたいと思うのですから、客観的な事実を——いまはイデオロギー論争じゃないのです。客観的事実、見通しを伺うのですから、あなたからもひとつ参考のために御所見を伺っておきたいと思うのです。
  62. 高島益郎

    ○高島説明員 御指名でございますけれども、私、現職が条約局の参事官でございますので、たいへん申しわけございませんですが……。
  63. 穗積七郎

    穗積委員 あのとき、あなたとヨーロッパで会ったから、それで敬意を表して聞いておるんだ。それでは局長からどうぞ。
  64. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 ただいま穗積先生から御指摘がございましたが、確かに、イギリスの経済の状況ということにつきましては、一般的に私どもも大体そう思っておりますが、経済の構造上に問題が多分にあるようでございます。したがいまして、いろいろとイギリスの当局は、一昨年あたりから国内引き締め政策をとり、また御存じのとおり、一昨年十一月にポンド切り下げをやり、さらには昨年の暮れに、十一月でございましたか、五〇%という大きな輸入担保金制度というものを導入いたしております。現在までのところでは、輸入担保金制度効果というものは必ずしも十分にはあらわれておりませんが、今後だんだんにあらわれてまいるかと思います。先ほど村井局長が御説明申し上げましたとおり、輸出は確かにその後伸びてきております。伸びてきておりますが、問題は、昨年じゅう通じました輸入需要が非常に強かったということでございます。その関係で国際収支が思ったほど改善しなかったというわけでございます。したがいまして、昨年の十一月に導入いたしました五〇%の輸入担保金制度、これは原材料、食糧についてはかかりませんけれども、それ以外のものにつきましてこれをかけるわけでございます。これが輸入需要の抑制効果というものをだんだん強めてくるのではないかというふうに私ども見ておりますし、イギリスの当局もそれに期待をかけておるようでございます。そこで、昨年の段階では、ことしじゅうに五億ポンドの国際収支の黒を出すということを一応のねらいにいたしていたようでございますが、その後の状況を見ておりますと、とても五億ポンドまではまいりませんが、最近のいろいろなイギリスの経済研究所等の観測によりますると、まあ一億五千万ポンドくらいの黒は出し得るのじゃないか。御存じのとおり、イギリスの場合、大体貿易収支は赤でございますが、問題は資本収支面での黒がかなりある。総合いたしまして、五億ポンドまではいきませんが、一億五千万ポンドくらいの黒には達し得るのではないかということでございますが、先生も御存じのとおり、イギリスの負っている対外負債というものはかなり大きなものがございますから、その年間一億五千万ポンドの黒がたとえ達成できたといたしましても、それだけでは必ずしも十分でない、もっと黒をふやす必要がある。そういう観点に立ちますると、イギリスのポンドというものにつきまして、私どもも今後とも十分注意していかなければならない。ただ、必ずことしじゅうにポンド切り下げ必至であるかどうかというところになりますと、そこまでは断定しがたいのではないかというふうに見ているわけでございます。
  65. 穗積七郎

    穗積委員 これは将来の見通しですから、必至であるか必至でないか、時期はいつであるかということについては、これはお互いの判断でございますから、私は専門家の前ではなはだおこがましいですけれども、比較的早く、そして必ずポンドの切り下げがあるという見通しに立って、このSDR問題を検討する必要があるのみならず、基本的には、これはこの問大蔵大臣が、ボリュームの問題だ、経済成長のボリュームと通貨のボリュームとの矛盾の問題だと言われましたが、そうではないのです。このことは、この問の質問でも、多少事実を通じてお尋ねいたしましたが、これからもそのことに触れるわけですけれども、そういうふうになってきますと、この問題は、SDR並びにその基礎にあるIMFIMF体制内における金ドル体制そのものに根本的な検討を加えるべき段階にきておるのではないか。特に日本としてはその必要があるのではないかということを私は申し上げ、かつお尋ねしたいわけなんです。  そこで、お尋ねいたしますが、発動前または後にこういうふうにレートの切り下げというような状態が起きてまいりましたときに、いままでの金ドル国際通貨プラスSDRSDRを保有している国と、これに通貨を供出している国との利害関係は、どういう変化が生じますか、それについて認識をお尋ねしておきたいのです。
  66. 村井七郎

    村井政府委員 SDRは、御承知のように、いかなる通貨にもリンクしておりませんで、端的に金の価値にリンクしておるわけでございますから、ある通貨が切り下げになりましても、一応SDRを保有しておるその価値は変更ないというふうに考えていいと思います。したがいまして、SDRの取引が世界で行なわれまして、その結果、かりにSDRの保有が多くなっておる、通貨が相対的に少なくなっておるという場合に、その通貨の中の一つの通貨が切り下げになりますれば、相対的に得をしておる。
  67. 穗積七郎

    穗積委員 保有国がね。
  68. 村井七郎

    村井政府委員 保有国が得をしておるというふうに考えていいのではないかというふうに思っております。
  69. 穗積七郎

    穗積委員 そのとおりだと思うのです。SDRは金保証になっておるといっても、実は観念的なものであって、不換なんですね。金との兌換はできないわけです。だがしかし、いまおっしゃるように、金にリンクしておるのが原則であるべきドル自身が金から離脱して、ずっと値段が下がっておる。それが国際レートの中にあらわれるかあらわれないかが問題になってきておるわけですね。そこで、そうなりますと、この保有国は利益して、それから供出国は不利になる。こういうことになりますと、これは国際間の現状からいたしますならば、利害の対立、矛盾が出てくるわけですね。より多い保有国はより多い利益を得る、SDRに関してですよ。そういう現象は、国際間の協力、協調というものの破綻に対して一つのくさびになり得るわけです。それがおそらくは発動の量並びに割り当て問題となって、このクォータの問題としてあらわれてくるわけです。各国ともそのエゴイスティックな立場でその運営に当たろうしておるわけですね。そうなりますと、美辞麗句で、これは国際協力のもとで、国際的な貿易発展、経済発展を継続する妙薬であるということは言えないと思うのです。しかし、それが遠い将来でありますならば、一時はある、その間に次のことを考えるということですが、私の考えでは、これは発動前と断定はいたしませんけれども、これは発動する時期が問題ですけれども、前後いずれにいたしましても、遠からずそういう矛盾と危機が出てくる。そうなりますと、SDRの基礎になっております国際協力、それによってのみこれが円満に運営され、プラスアルファにメリットがあるんだという基礎が、もう間近にくずれる危機を迎えて、われわれはいま討議をしておるわけでしょう。観念的な討議ですよ。その的確な経済分析と見通しがなくて、SDR国際経済並びにわが国の貿易発展にメリットになるかならぬかということは、これは深刻な問題ではないでしょうか。特に日本のように、先ほど戸叶委員の御質問のとおり、金とドルとの原則的な価値関係が変わっておりますときに、その中で、わが国の金保有量というものはたった三億ドル余である。これはわが国の生産力または生産性と比べまして、ヨーロッパ諸国と比べまして、はなはだしく低い比重だ。これはかって私は外務大臣に向かって、一昨年のゴールドラッシュのときに、悪意的または投機的にやる必要はないけれども、この国際通貨の金と米ドルとの構造の比重というものに対して意を用うべきではないか。当時、ドゴールがこれを買いあさった先頭になったわけですね。あれには政治的な意図と、民間には多少投機的な意味もあったでしょう。だがしかし、将来、日本のように経済が伸びておる、それから貿易黒字を続けておるということで、SDRを持ち出して、わが国の経済の利益のためと訴えなければならぬほどわが国の国際環境というものは決して楽観を許さない。したがって、シビアーなものであるということが前提になっておるわけですよ。その点から見ますならば、これは非常な薄氷の上に打ち立てられたシステムであって、何らいまの行き詰まりなり矛盾というものを救済する妙薬ではないと言わざるを得ないと思うのです。その点に対して、政務次官いかがでしょうか。御所見があれば伺っておきたいのです。
  70. 田中六助

    田中(六)政府委員 先ほどから両局長から答弁しておりますように、SDR国際的な流動性ということが大きな眼目でございますし、各国もその点からこれに協調しているわけでございます。したがって、これを利用する段階において利用するのであって、無理やりにまずこれを取り上げていくということでなくて、やはり要はインフレにならないように、デフレにならないようにということだというふうに思っております。各国の、たとえばポンドにつきましても、御不安があることは事実でございますが、御承知のとおり、イギリスの場合でも、経済の底というものは、外貨の保有高が少なくても、各個人あるいは国の持っている財産を投げ出しますと相当なものでございますし、ポンドがすぐ切り下げになる——まあ大体御承知のように、十年に一度の平均でポンドの切り下げになっているようでございますが、イギリスといたしましても、大国の伝統を持っておりますので、そう急にこれががたがたになるというふうには私は思っておりません。ただ、なだらかな下り現象だというふうに思っておりますし、フランスにいたしましても、フランは、やはりフランスの持っておる各個人の財産あるいは国の財産などから検討しますと、そう国際的にフランスフランが弱いというようなことではないと思いますし、各国とも非常に努力をしてささえていくという主体性を考える場合に、やはりSDR流動性、あるいはデフレにならぬように、インフレにならぬようにというような各国の良識がある以上、穗積委員の御懸念も御懸念だというふうにいい意味で解釈できますが、私どもはそれほどこれが悪いほうにいくというふうには考えておりません。
  71. 穗積七郎

    穗積委員 願望はわかるのです。その願望はわかりますけれども、その願望が現実に即して見たときに、そのように発展していくかどうかという問題をいま論じておるわけですね。すなわち、SDRの立っております基礎の現実を私はいま見通しとして言っているわけです。この分析が正確でないと、タコの足を食うというか、いままでの体制に対して引きずられながら、ナイヤガラの瀑布へ進んでおるという結果にならざるを得ないのではないかということを心配するわけです。  次にお尋ねいたしますが、万一今度ポンドが三回目の切り下げがあったといたしましたときに、いまのドルの実力並びにアメリカの内外政策から見て、これはこの前とは比較にならぬドルに対する危機を招き、影響が多いと私どもは認識いたしておりますが、前回と比べまして、そのドルに対する危機の程度はより深刻であろうというふうに私は見ておりますが、外務省または大蔵省は、その点はどういうふうに見ておられるか、内容を伺ってからまたお尋ねいたしましょう。
  72. 村井七郎

    村井政府委員 仰せのとおり、かりにそういう事態になりますと、たいへんなことになってくるわけでございまして、ことにアメリカ経済あるいはドルに対するインパクトも非常に深刻であることはおっしゃるとおりであると思いますので、そういうことにならないようにやはり全力をあげるということであろうと思います。
  73. 穗積七郎

    穗積委員 それがすなわちすべてではないが、SDRはその方法一つである、こういうことになってくるわけですね。  それで、SDRの問題を討議するときに、この前も大臣並びに局長もお示しになりましたように、これは深刻な国際経済の問題であるとして、衆知を集めて十カ国蔵相会議またはIMF総会において討議をしたのだ、そこで確認された基礎というものは、ここに示されているように国際協力なんですね。ところが、SDR問題についての発展の中で、その傾向とは逆な傾向がいま申しましたように出ておるわけです。資本主義諸国問における内部対立または内部矛盾というものがむしろ深まりつつあり、是正する方向に向かっていない。国際協力よりはまずナショナルインタレスト——というよりは、エゴイズムだというほうが的確だと私は思うのですけれども、そういう立場に立って行なわれておる。それは言いがかりではなくて、私は時間がありませんから、SDRだけに関連をして、その逆の傾向であるということをちょっとお尋ねして、政府のお考え、今後の対処される方針を伺いたいわけです。  けさの朝日新聞の報道によりますと、SDR発動をできれば九月にやりたい、そして初年度の引き出し総量、発動総量を五十億ドルにしたい。これは、かねて報道されておりました五カ年間百億ドル、年間二十億ドルの倍以上になっておるわけです。これに対してEEC諸国が抵抗を始めておるというのが現状です。このことがどういう結果になるかということは、この制度が八五%制度になっておることと、それから各国のチェック・アンド・コントロールの作用があらわれて、これは国際的なハーモニーをくずすようなことはないであろうということを皆さんは願望しておられるわけですね。ところが、傾向としては、むしろ国際的なハーモニゼーションヘという向かい方ではなくて、その中核のドル、すなわちアメリカが、いまもう全くこのハーモニーを破るような提案をすでに具体的にやり、かつ動きを示しておるわけでしょう。この傾向をわれわれはやはり事実として正確に把握して、SDR問題に取り組まないといけないと思うのです。そこで、これはSDR批准され、そして発動会議が行なわれたときに、具体的にきめればいいということでございましょうが、初年度から総額四十億ないしは五十億ドル発動を要求するなんという、その基本的態度が間違っておる。これが一点。  それから、額そのものが決して安定成長をやるものではない。むしろインフレと危機を増大するものであると私どもは考えますが、その二点について、政府はどういう態度をもってこれに臨まれるつもりでしょうか。
  74. 村井七郎

    村井政府委員 SDR各国問の経済的な力のハーモニゼーションとの関係というのはなかなかむずかしい問題かと思います。私たちは、やはり流動性のジレンマと申しますか、かつてこちらで議論されましたように、一国の経済力をもって、その国の通貨で世界全体の国際流動性というものをまかなうということがはなはだむずかしいのみならず、場合によってはいろいろ弊害も出てくるということがございますので、共同責任、各国の経済力を分担的に共同的にそこに出し合って、それでもって流動性を補強していくということになっていくのは、ある意味では進歩でありますし、ハーモニゼーションとの関連におきましても、それなかりせばそうであったのに比べまして、こういうものがあったほうがハーモニゼーションに対する一つの貢献ではないか。ただ、貢献とはいいましても、うまくいってこそ貢献でありまして、うまくいかない場合はかえってぐあいが悪いということは御指摘のとおりだと思います。したがって、何よりもこれがハーモニゼーションに役立つためにも、具体的には創出量あるいは創出時期というものに対して慎重にならざるを得ない。ことに最初のすべり出しというものが、史上始まって以来のこういう非常に画期的なことでもございますし、心理的なエフェクトというものが非常に大きいわけでございますので、最初のすべり出しはことに慎重でなければいかぬというふうに思っておるわけでございます。時あたかもアメリカ国際収支、その他の主要国国際収支というものがああいう状態でございますので、やはり方向は国際収支改善ということ、それからやはり節度は守る。つまり、国際収支改善のために各国が経済運営をまじめにやるということがはっきりいたしませんと、最初のすべり出しはきわめて危険であるというふうに思うわけでございまして、逆にそういうものが確保されれば、非常にハーモニゼーションに役に立つというふうに思っておるわけでございます。  ところで、四十億ドルとかあるいは二十億ドルとかの話でございますけれども、これは先ほど来申し上げましたように、そのときの発動の時期になってみないと、どういう数字がいいかということはなかなか言えない問題で、抽象的に先の経済自体を予測して、ここで数量をきめるということは間違うもとであるそういう慎重な態度の必要性という点からいきましても、間違いやすいというふうに思っておるわけでございます。ただ、せっかくこれだけ人知を集めたSDRでございますので、やってみたけれども何にもならぬというのでは非常に情けないわけでございますので、先ほど来のように、これが弊害を及ぼさない、インフレ的な影響を持たないという限度におきまして創出量を考えて、これがハーモニゼーションにも貢献するというふうに考えていきますと、やはりそのときの貿易量なり、先生のおっしゃいます生産力の各国の伸び方なり、そういったものを勘案して量というものをきめ得るというふうに私は考えております。
  75. 穗積七郎

    穗積委員 だってあなた、これはもうすでにあれでしょう。かりに五カ年間百億ドル、そうすると、年平均に直してみても、大体初年度から多くて二十億ドル、いまも申しますとおり、経済は成長発展しているのでありますから、平均で割るということは、ほんとうは非常識なんですね。二十億ドルスタートして、五年後も二十億ドルだなんてことは考えられないことでしょう。そういう現実を無視した算術計算をいたしましても、二十億ドル以内というのが常識であるわけですね。これはわれわれがかってに出した数字じゃないのです。SDR制度の討議の中で出てきた見通しであり、その上にすでに見通しが立てられておるわけでしょう。だからこそ、これが九月になるか、十二月になるか、来年になるかは別にして、EEC諸国の強い抵抗が始まるというのは当然だと思うのです。それに対して、日本アメリカの意向を聞かなければ何とも言えないなんというばかばかしい態度では、日本の経済の安定性に対して政府が責任を持てるなんということは言えないと思うのです。メリットがゼロならいいんですよ。ゼロではない、マイナスになるということを危惧しておるわけですよ。  鶴見局長にお尋ねいたしますが、けさの報道によりますと、すでにアメリカは、政府の一部の願望にとどまらず、政府としての一つの具体的な結論を持って、そして実現のためにそのアクションに入っておるわけですよ。そうであれば、日本に対してアメリカから、初年度四十億ドルないしは五十億ドルという打診はなかったと思いますけれども批准を早くしてもらいたいという内意はおそらくあろうと思うのです。  それからもう一つは、発動初年度額について、おそらくなかろうと思いますけれども、もしあったならば、その事実を公式であろうと非公式であろうとお話しをいただきたい。  それから第三にお尋ねいたしたいのは、もしなかったとしても、この事実は情報としてどう把握しておられるか。  その三つについてお尋ねいたします。
  76. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 ただいま御質問の点でございますが、まず、アメリカがはたしてはっきり政府全体といたしまして、初年度に五十億ドルなら五十億ドルという大きな額の発動を期待しているかという点につきましてでございますが、これは本日のみならず、約二週間か三週間ほど前にもそういうものが伝わっておりました。私どものほうでも、ほんとうにそういうことを考えているのかどうか確かめさせましたけれども、政府全体としてそこまで考えているのではない、一つ考え方にすぎないという返事をもらっております。  それから、SDRのこの協定を早く発効させるために、日本が早く批准をという要請は具体的にはございません。ただ、二月にOECDの閣僚会議がございましたが、この際に、SDRの発効、IMF協定の改定の発効を早くすべきだとアメリカは言っております。そういう意味ではございますが、二国間の形でもって日本に対してそういう要請が具体的にあったという事実はございません。  それから、この五十億ドルというものが、いまのところ一体どうなってくるのか、これをもってはたしてEEC諸国に対して働きかけているのかどうかという点につきましては、現在のところまだ具体的な情報がございませんが、少なくとも日本に対してそういう働きかけがあるということはありません。
  77. 穗積七郎

    穗積委員 これは大蔵省にお尋ねいたしますが、いまの流動性の欠除の問題は、これは的確に言えば、各国間の構造的な矛盾、特にドルに象徴された金、これが中心だと思うのです。そういうことになってまいりますと、やはり為替レートの問題が現象的に見ても重要なものになってくるわけですね。そのときに、最近為替相場に多少エラステイシティを認めて、何といいますか、屈伸相場と訳したらいいかどうかわかりませんが、屈伸性を認めて、それを国際間で話し合って、合理的なマネージングをやったらどうだ、こういう意向があるわけですが、日本政府、大蔵省としては、この問題についてどういうふうにお考えになっておられるか、それを伺いたいのです。
  78. 村井七郎

    村井政府委員 流動性と現行為替相場との関係でございますが、私は、この相場を自由にさせることによって流動性を解決しようということは、非常に混乱と弊害が大き過ぎるというふうに考えております。現に、戦前の体制というものは、ここは自由相場でございまして、それでもって流動性自体はある程度不足は押え得たかもしれないけれども、その反面、率の切り下げ競争あるいは大不況というような事態が起こってまいりまして、その結果、ブレトンウッズ体制というものができ上がった。  かつてIMFなり世界銀行なり現行のブレトンウッズ体制というものができ上がりますときに、過去の惨たんたる苦悩を背景として、その改善というかっこうででき上がっておるわけでございますことは、先生も十分御承知のことと思います。  ところで、固定レート制でございますが、これは何と申しましても、端的に申しまして、商売をいたしますときに、大体相場が見当がつくということのほうが、そのときの成り行きで相場が変動するという事態よりも、契約がしやすい。輸出契約にいたしましても輸入契約にいたしましても、相場が成り行きというのではないほうが契約しやすいという意味におきまして、私は、やはり制度といたしましてはレートは固定しておるほうが、これは原則論でございますけれども世界貿易量の伸展という意味に貢献するのではないかというふうに考えております。したがって、いま各国国際的に議論になっております際に、相場を全く自由にするという、フリーレートといいますか、非常に自由にする、波のままにまかせようという議論は、もはや姿を消しておる。そこまでの極端な自由為替相場制度を主張する人は少ないと思っております。したがって、先生もおっしゃいましたように、現行固定制度の改革案としての方法としては、大別して二つあると申しますか、一つは幅を広げるという案、もう一つはあまり定訳はないようでございますけれども、クローリングペッグと申しますか、そういう二つがあるといたしますと、前者の幅を広げるということは、やはり先ほど申しました自由相場とまではいきませんけれども、いまの一%の上下ということに比べて、やはりかなり相場が浮動的になる。しかもその幅を広げれば広げるほどそうなる。あまり狭いと現行制度と大差がない。広げるとそういう弊害が出てくるという問題で、結局は現行の固定制度にしくはないという感じがいたします。それから第二の、クローリングペッグという、定期的に為替の平価を動かしていく、小幅に動かしていくという制度でございますが、これはこれでまたかなりの弊害を伴う。まあ経済力が非常に強い国でございますと、もうこの次はこういうふうになるという予測ができるようなことから、投機的な動きもそこで引き起こすという作用もございまするしするので、私は、このクローリングペッグ自体も現行制度に比べて劣るのではないかという感じがいたしております。  ただ、議論は議論として非常にやり得るということでございますし、かりに各国の経済運営の節度というものが十分徹底し得ないということになりますと、あるいはそういった制度をとったほうが安易なのかもしれませんが、しょせん現行為替相場制度と申しますものは、経済の運営節度を強く維持しながらやっていくというそういう基本方針とのうらはらの制度でございますので、一方がどうしてもだめだ、経済運営の節度がそううまくいかないというふうなあきらめになりますと、これはやはり多少相場に変更を加えるという関係になるかと思いますが、何といたしましても世界貿易量、経済成長というものを極力伸ばしていくというたてまえをとりますと、やはり現行相場の固定制度というものが最もすぐれておるのではないかというふうに思っております。
  79. 穗積七郎

    穗積委員 時間の関係上、私もちょっとあと都合があるものですから、ここでこの問題については締めくくってお尋ねいたしますが、これはどうせ外務省だけで決定すべき問題ではなくて、特に大蔵、通産省等と共同検討をした上でしょうが、窓口が外務省でありますから、局長にお尋ねいたしておきますが、先ほど私の申しました、SDRを年内に発動するということの希望は希望として、是非は論じませんけれども、その見通し、めどとして、初年度から四十億ないし五十億ドル発動は過当であるというふうに、アメリカに対してはチェックすべきであるというふうに私は考えますが、それについて、なるほど何十何ドルまでの決定はもう少したってからでなければなりませんが、いまの経済情勢というものとわが国の経済成長計画から見て、国際間の動きを見れば、大体近い将来のことについても、わが国の経済から見れば、特に年内でありますから見通しが立つことだと思うのです。その見通しに合わせてこれが過当であるかどうか、私は不当かつ過当である、こう思いますが、外務省として折衝の窓口に当たられるわけですから、次官並びに局長にその点を確かめておきたいと思うのです。
  80. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 ことしじゅうにSDRがただいま御指摘のように発動するという状態になりますかどうか、いまのところでは、もちろん断定的には申し上げられないわけでありますが、先ほど来村井局長からも御説明申し上げておりますように、まずIMF協定改正が成立いたしまして、さらにSDRへの加入というものが実現いたしまして、その上の階段で発動をいつにするか、また発動の場合にどの程度の量にするか、しかもその量のうち、先のほうを太くするか、あるいはしないかというような問題は、結局発動しようとする時点の前に、IMFの内部において検討されるわけでございます。その際、日本側といたしましても、その時点におきます日本経済の動き、及び主としてアメリカの経済、あるいはヨーロッパの経済というものの動きも十分勘案いたしまして、そのときの態度をきめざるを得ないかと思うわけでございますので、現時点におきまして、はたして四十億ドルあるいは五十億ドルというように先をストップするのがいいのかどうかという点につきましては、断定的に申し上げられませんというふうに御了解願いたいと思います。
  81. 穗積七郎

    穗積委員 村井局長にお尋ねいたしますが、五カ年間百億ドルという数字はどこから出てきたのですか。討議の経過をちょっと説明してください。
  82. 村井七郎

    村井政府委員 創出量の討議は全然行なわれたことはございません。したがって、百億ドルという数字もそういう討議の場では存在しておりません。
  83. 穗積七郎

    穗積委員 討議の場ではなくて、そういう動きはあるわけですね。そうすると、百億ドルというのは、ジャーナリストがかってに推測した数字ですか、そうではないでしょう。
  84. 村井七郎

    村井政府委員 これはまあ茶話といいますか、いろいろ創出量は計算あるいは試算し得るわけでございますけれども、たとえばいま全体の世界流動性というものが、金を入れて七百五十億ドルといわれております。金が四百億ドル、その他でもって七百五十億ドルといわれておりますが、かりに流動性の供給の伸びというものが、ここのところ毎年二・五%であるといたしますと、かりに一つの試算として、七百五十億ドルにその伸びを掛けてみますと、大体二十億ドルに近い数字になろうかと思います。これがジャーナリスティックにいわれておる試算としての一つの根拠じゃないかというふうに思っておるわけでございますけれども、これはやはり公式に議論いたしますと、いろいろ私は言えるというふうに思います。したがって、まだ批准もされていないのに、こういうことが議題になったということがないのは、先ほど申し上げましたとうりでございますが、私たちにいろいろな試算をやってみろというふうにかりにおっしゃいますと、これは一つのワン・オブ・ゼムの試算として、こんなふうな試算もでき得るということで申し上げ得る、そういった程度のことかと思います。
  85. 戸叶里子

    ○戸叶委員 関連して。いまの問題ですけれども、この間、大蔵大臣のいらっしゃるとき、私その問題を質問しました。そのときに、大体十億ドルから二十億ドルという大蔵省考え方のもとに、外為会計に載せてはあるわけですね、もうすでに。そうすると、いま穗積委員が指摘されましたように、四十億ドルということは、これは全然受け付けられない問題であるというふうに見ていいわけですね。いや、そういうことが出てきたときは、そのときまた考えるなんということになるのですか。
  86. 村井七郎

    村井政府委員 これは予算の一つの積算根拠として、あのときは七千二百五十万ドルであったと思いますが、これは先ほどのいろいろな試算をしてみますと、そういう一つの試算もできる。しかも発動の時期とも関連いたしますから、これが四月から発動ということになりますと、これは全くフルに七千二百五十万ドル、全体の流動性は二十億ドルというような一つの仮定を立ててやるということも、一つ方法ではあるのですが、何しろこの発動の時期も不確定であるということ、また予算の時期が四月から来年の三月までであるということ、いろいろ不確定要因が数個重なりあってのことでございますし、予算でございますので、一応のめどというものをつけて御審議を願わないと、御審議としては非常に不十分であるという意味におきまして、一応の仮定を設けまして、七千二百五十万ドルというふうにしたわけでございますので、これがシーリングと申しますか、限度的な意味は持ってはおりますけれども、結局そのときの状況判定していくよりしようがない。非常に大きなとてつもない数字になりますと、これはまた私たちも予算との関連で非常に不都合を生じるわけですが、常識的に考えて、先ほど来穗積先生あるいは戸叶先生がおっしゃいますように、二十億ドルとか四十億ドルとか五十億ドルとか、そこら辺では、けた数が違うというような程度の大きさではないというふうに常識的には考えますので、一応のめどという意味で、七千二百五十万ドルというものを外為会計の積算根拠にしたわけでございます。
  87. 戸叶里子

    ○戸叶委員 だから日本の政府としては、先ほど穗積委員との質疑応答の中でもはっきりしたように、一つの基礎を置いて、そして大体このくらいだろうというので積算の根拠を置いて、外為会計に載せたわけですよね。めどとしてであるならば、そこら辺を目標に置いているのであって、四十億ドルとかそれ以上になるとかいうことになると、やはり狂ってくるのじゃないですか、考え方の基礎というものは。だから、これはやはりこれ以上にあまり上がっていくと考えものであるというふうに私たちは理解していいですかということを聞いているわけです。四十億ドルくらいならしかたがないというお考えですか。そのものずばりとして伺うならば、四十億ドル−六十億ドルくらいならばしかたがないでしょう。しかしそれが七十億ドルくらいになると困ります、そういうことなんですか、どうなんですかということを聞いているのです。世上総額十億ドルから二十億ドルくらいだろうと伝えられて、またそういうことをめどにしてあの外為会計に載せていらっしゃって、私が質問したときには、十億ドルから二十億ドルくらいと思いますということだったのです。いま穗積委員との質疑応答の中では、四十億ドルくらいにアメリカは考えているのじゃないかという話が出てきたわけでしょう。そうなると、どういうふうに考えていいか、私たちは混乱してしまうわけですよ。だからはっきりさせていただきたいと思います。
  88. 村井七郎

    村井政府委員 したがいまして、先ほど来申し上げておりますように、そのときの経済情勢というものを考えてきめるということにならざるを得ないので、いまのうちから先の変動というものを想定して創出量ということは無理じゃないかというふうに考えております。したがって、予算としては、この七千二百五十万ドルというのはあくまでもめどでございますが、ただ、このめどといいましても、非常にとてつもなく離れておるようなめどだとは思っておりません。おそらく、先ほど来からの話にございますように、二十億ドルとかあるいは四十億、五十億というような、そこら辺の周囲できまるような感じがいたしておりますので、それだからどう思うかというふうに現時点で聞かれましても、なかなか数字的にお答えしにくいというのが本音でございます。
  89. 戸叶里子

    ○戸叶委員 なかなか苦しいですね。
  90. 穗積七郎

    穗積委員 額そのものが四十億ドルないし五十億ドルという数字で示すと、私はそれを問い詰めて、そのことを聞くわけではないのです。万一四十億をこえるような要求が出てくるとすれば、これはまさにインフレと、やがてはパニックにつながる、非常に危険なスプリングボードにSDRがなるということを私どもは憂えるから、常識をはずれた倍以上の数字がもう構想されているのではないか。現実に非公式ながら折衝に入っておるわけですよ。それに対して何の認識も持っていないということでは、いささか無責任というか、たよりないというか、追随主義というか、そう言わざるを得ないのではないでしょうか。私は形容詞にとらわれるわけではありません。四十億ないし五十億ドルというものが初年度から発動されるというようなことになれば、現在の見通しにおいては、これはインフレーションをますます倍加するものである、こういう心配は誤りでしょうか、誤りでないか、それを聞きたいのですよ、あなた方の観測を。
  91. 村井七郎

    村井政府委員 これは先生御承知のように、創出量は五年間をまずきめます。したがって、五年問百億なら百億というきめ方をいたしまして、そうして毎年幾らにするというふうにきまるわけでございますけれども、いま新聞その他でいわれておりますのは、五年間の全体の量の中で初年度だけ多くしたらどうかという案が一つあるというふうに書かれておるわけでございます。したがって、次年度以降でその分を調整するという考え方で、これは私は五年間を通してみて、全体としてインフレにならないようにするというところから出発しておるのではないか。したがって、ある数字が五年間にあって、それを五年間で倍にするという議論は、私は新聞その他の情報、非常に非公式な茶話等であります限りにおいては、そういう話はまだございません。したがって、その前提として、あくまでもインフレとかデフレというものが基本原則でございますから、その基本原則をくずさない範囲内での数字の話というふうに私は理解いたしております。
  92. 穗積七郎

    穗積委員 それはあなた、経済の専門家がそんなことをおっしゃっては困りますよ。貯蓄が百方円ある。初年度では五十万円使う。そうすると、あとは十何万円しか使えない、そんな算術計算でものがきまるわけがないですよ。経済の発展成長の過程に即応してものが考えられるわけでしょう。だから、この間の提案理由の説明の中にもあるように、年間二・五%。ところが、金産出量というものはそれに追いつけない。それにリンクしてある国際通貨も追いつけない。そこにSDRを考え出したのだ、こういう発想なんですね。非常にノルマルな、それでグラジュアルな発展の中でそれを言っているわけです。それに対してあなたは、総額でチェックしてあるから心配するな、こういうことを言われるわけですけれども、そんなことができるわけがないですよ。この制度の発想自身がそうですもの。これはまああまり問い詰めても——あなた、お答えしてくださいますか。
  93. 田中六助

    田中(六)政府委員 これが誤りであるかどうかという結論をいま穗積委員は尋ねておるわけでございますが、ブレトンウッズ協定あるいはIMF、それからこのSDR、そういう経路を見ましても、国際通貨全体の量が七百五十億ドルいま流動性のあるものがあると仮定されておりますが、それに約百億ドルを足す。そうすると、八百五十億ドルという算術計算ができるわけでございますが、それが十分世界経済の拡大と生産性、そういうものに加味されて、まあリーズナブルな線であるという前提があるわけでございます。したがって、これは各国の金融あるいは財政専門家の衆知を集めて、そういうような方向の結論を出したわけでございますし、私どもも大体それがリーズナブルな線であるというふうに確信を持っております。したがって、穗積委員のおっしゃるように、それが誤りであるかどうかという答えを出すとするならば、多少の懸念はせなければならないし、十分心配はせなければなりませんが、まあまあという線だというふうに考えるわけであります。
  94. 穗積七郎

    穗積委員 これは今後の情勢の中で——きょうだけではありませんから、まあこの程度にして、それでわれわれの懸念というものはよく心にとめて、そうして慎重を期していただきたいと思うのです。  もう二、三点で終わりますが、次にお尋ねいたしますのは、そのSDRの割り当て通貨、それと、従来保有いたしております金または他の通貨による国際支払い通貨、これは同時に、単に支払い通貨だけではなくて、生産体制の中へ資本として入り得るものでありますから、SDRと他の国際通貨との性格は違います。そういう意味を含めて、そうしてこのSDRによる支払い手段と、それから従来の国際通貨との関係は一体どういうふうに把握されるか、それをちょっと伺っておきたいのです。何といいますか、その効用が違いますね。従来の国際通貨、金またはドルというものは、いま申しましたとおり、国際支払い手段であると同時に、資本の手段でもあるわけですね。SDRは、私の理解では、これは単なる支払い手段にすぎないわけでしょう。投下資本には使えないわけでしょう。貿易を通じてそれが投下されるということになると、これは間接的にはありますけれども、その支払い手段の性格が違うわけですね。したがって、従来の国際通貨とSDRの支払い手段との比率とか、それから関係、これは一つの問題点ではないかと思うので、聡明な皆さんですから、多くを申しませんから、その問題についてのお考えをちょっとこの際、再質問しないで済むようにお答えをいただきたいのです。
  95. 村井七郎

    村井政府委員 SDR外貨を取得する手段、交換可能通貨を取得する手段というふうにお考えいただくと、非常にこの問題というものはわかりやすいのではないかと思います。したがいまして、これは外貨準備としてはプラスになって、そのSDRは、いつでも外国通貨を取得できるという機能を果たすわけでございますから、その限りにおいては、各国経済が安定成長あるいは高度成長をとろうとしたときに、外貨準備からの制約というものは、それだけ高くなるという機能を果たすことは言うまでもないわけでございますが、それがその国の実体経済の中に入るかどうかという点につきましては、これは私はそうではないというふうに申し上げたほうが正確じゃないか。たとえば外貨とか、あるいはその他の決済通貨、あるいは金というものは、結局、民間経済の直接の資本あるいはその他の資産の構成になり得る。また、取引の決済手段でございますから、そうなり得るわけですが、SDR自体は、そういうふうに銀行で保有するわけでもございませんで、民間取引での決済手段ではございませんので、そういった意味から、民間の経済の中に入るというものではないというふうに私は考えております。  ただ、外貨準備というものは何であるかということを考えてみますと、私は、やはりそういう支払い手段そのものではなくて、支払い手段を取得する力、あるいは金でもそういう機能であるということが言えるわけですが、そういう意味におきまして、SDRが、外貨準備としての、国としてのそういう支払い準備手段、そういう機能、これは十分果たし得る。しかも、その内容におきましては、先ほど来の話にもございますように、金価値もついておる、利子も、低い一・五%ではございますけれども、ついて経済性もあるということでございますので、結局、悪貨が良貨を駆逐するというような意味におきまして外貨準備から脱落していくということは、私はないと思います。運営よろしきを得れば、つまり、先ほど来からの議論にありますように、あまりインフレ的になって、そのものに対する信任を失うというような運営をしない限り、私は、SDRというものが十分外貨準備としての機能を果たしていく、その発展性があるというふうに考えております。
  96. 穗積七郎

    穗積委員 次にお尋ねいたしますが、この制度の討議の中で、これは国際協力であり、国際的な多少チェックコントロールするシステムはできておるわけですけれども、そうなりますと、各国の経済主権といいますか、そういう問題とちょっと関連してくるわけですね。そういう点で、討議の経過、これが一点。  それからもう一つは、日本のこの問題に対する、この制度との関連における経済主権の問題について、今後はどういう方向を指向しておるか、お考えを持っておられるか、その二点についてお尋ねいたします。
  97. 村井七郎

    村井政府委員 この主権との関係でございますが、あくまでもこれは支払い手段、外貨を取得するもの、外貨準備一つの機能を果たすものとしての手段でございますので、私は、やはり主権といやしくも抵触するということはあり得ないし、あってはならないというふうに考えておりますが、具体的には、このSDR制度自体は、これは協定というかっこうで各国批准を仰いでおりまして、これを批准するかいなかということで、主権の意思がそこで表明される。しかも、それに積極的に参加する。参加するということは、申すまでもなく、そのSDR制度に伴う義務受諾するという一つ意思表示でございますから、主権がそういうものを表明するということは、これは全く自由な意思に基づく一つの表明であろうかと思います。それからさらに具体的な場面で申しますと、このSDR制度自体は、通貨提供義務発生させる。協定受諾いたしますと、そういう義務発生するわけですが、これも非常に無制限にそういう義務があるんだということでございますと、私は実際問題としてはなかなかたいへんなことであるというふうに思うわけですが、これは債務負担行為と申しますか、いやしくも国家が債務を負担するにあたっては、やはり適当な国会の御審議を得て、しかもその御審議におきましては、一応限度を設けて御審議を願う。しかも制度としての限度、つまり、配分を受けた二倍までの限度が通貨提供の義務限度であるというふうになっておりますが、この限度もございます。それからまた、一応この制度賛成いたしましても、後に至ってまたこれは一時参加を見合わせるという、いわゆるオプティングアウトといいますか、そういうきめのこまかい自由意思の表明の場というのもございますので、いろんな角度から考えまして、一国の主権というものの下にもちろん入ってくるという制度であるというふうに私は理解しております。
  98. 穗積七郎

    穗積委員 それに関連して、なおこまかいことをお尋ねしたいのですが、まだきょうだけではありませんから、次に譲りまして、少し審議をスピードアップしたいと思うのです。  最近のアメリカ国際収支のインカムの中で、投資利潤のインカムというものが、貿易の漸減をカバーしている大きな主要な収入になっておるわけですね。そこで問題は、国際経済の交流と協調の中で、貿易につきましては、きびしい制限なり保護政策なり、相互主義というものが現にとられておるし、これからもますます対米、対ヨーロッパにおいてそういうことは出てくると思うのです。ところが、高度成長の中で資本主義体制が高度になった国にとっては、資本収入というものが重要なものになるわけですね。そこで、私はこの前求めました資料を昨日さっそく見ました。これを見ましても、相互主義どころの騒ぎではない、われわれのことばでいえば、国際的な搾取が行なわれているわけです。これはやはり貿易における相互主義あるいは総合的な貿易の調整、それと同様に、これはこれからさらに重要な問題になっていくのではないかと思うわけです。この数字は私が申し上げるまでもありませんが、たとえば、見ますと、アジア諸国における資本収益というものは驚くべき比率ですが、一昨年が三一・四%になっておる。それから日本は一四・二%それから、その池中近東に至りますと五七・四%という、これは想像に絶するような搾取が、不均衡が行なわれておるわけです。こういうことになってきますと、この資本の投資の輸出、投資の自由化の問題とともに、これは国際関係の、何といいますか、経済の協力を発展せしめるために、この問題についてもやはりわれわれとしてははっきり方針を持つべき段階にきておるのではないか。現在は、国際収支、為替問題になりますと、何といっても貿易に主眼を置いて、それに目が奪われがちでございますけれども、こういうふうに国際間における経済の成長の格差がひどくなりますと、この問題は国際為替関係で重要な要素になってくると思います。高度資本主義を誇っておる日本の例をとりましても、十億以上の資本金の会社の資産とあれを見まして、私どもがこの問申し上げたとおり、二%台でしょう。それに対して、日本のような国に対しても一四%、これはむろんすべての産業にわたるわけではない、最も有利なものを選んでどんどん入ってくるわけですから、これはアベレージのパーセンテージを見ることは誤りでございましょうけれども、いずれにしましても、こういうような国際間における不協力あるいは搾取あるいは格差の拡大というものが行なわれておるわけですから、これに対して、貿易におけると同様に、やはりわれわれとしてこの問題を国際経済の場において提起する必要がある。それに対してどういう検討を政府はなさっておられ、そしてどういう方針をこれから志向しようとしておられるか、このことについて総括的にお尋ねいたしておきます。
  99. 村井七郎

    村井政府委員 外国資本、特にアメリカ資本との関係でございますが、この数字自体はいろいろのとり方はあるかと思いますが、やはり一般的にいって、なかなか外国資本の収益率というものは低くないというように考えるのがおそらく適当ではないかというふうに私も思います。ただ、通産省の統計でございますけれども、外国資本全体、つまり、アメリカ資本も入れまして外国資本全体と日本資本との売り上げ高の純利益率というものを比較いたしますと、大体同じようになってきております。しかし、その中で、アメリカ資本が非常に大資本を擁して、非常に利益率の高い分野にやってくる可能性はあろうかと思います。  ところで、この問題をどう対処するかということになるわけですが、資本の自由化の問題とも関連して私たちが日ごろ考えておりますのは、やはり気分的に外国資本を取り入れていくということ、これはもちろん限度のある話ではございますけれども、その国の経済の効率を高めるという限度、あるいは国際的な競争力を高めるというメリット等も考えますと、やはり取り入れていくという基本的な姿勢はくずさないほうがいい、くずすべきではないというふうに考えておりますが、他面、やはり先進国と比べまして、日本も先進国の一つではあろうと思いますが、やはり利潤率はこういうふうに非常に格差があるというところからいきまして、一挙に、また無差別にそういうものを取り入れていくということにあまりに急になりますと、一つは、いろいろな摩擦、特に中小企業の分野その他において摩擦が生ずる。また、その限度を越しますと、角をためて牛を殺すというようなことにもなる場合もあり得るということは、これは十分心にはとめるわけですが、そうかといって、外国資本は入れない、あるいは基本的にそれを排除していくということを長期的な視野からかりにとったといたしますと、それは日本のためには決してならない。日本の長期的な国際分野における体質ということを考えますと、それはそうすべきじゃないというふうに私は考えておりますので、結局、先生の御指導の問題は、これは事実の問題としておそらくあると思いますが、しかし、これをどう処理していくかという点は、これは慎重にやっていく必要があるけれども、基本的にはやはり積極的なかまえといいますか、前向き的な感じでやっていっていいんじゃないかというふうに思っておりますが、御指摘の点につきましては、今後の運営その他につきまして十分気をつけながらやっていきたいと思っております。
  100. 穗積七郎

    穗積委員 政務次官に申し上げて、御所感を伺っておきましょう。この問題は、わが国の未開発国に対する経済援助の問題とも関連をいたしまして、わが国は被害者であると同時に、加害者になる可能性が多いわけです。そういう意味で、アメリカ資本にはより以上の搾取をされても、後進地域からより以上の搾取が可能であるという考え方が出がちなんですね。たとえばここでアメリカの例をとりましても、中近東が一番高くて五七・四%という利潤率をあげておる、こういう状態でございます。アジア全体を入れまして三一・四%という、もう問題にならぬような高率の利潤率をあげておる。したがって、この問題につきましては、いま局長も指摘されたように、私は、これをチェックしてしまって鎖国主義をとれなんということを言っているわけじゃないのですよ。そうではなくて、やはりこのSDR制度そのものから見ましても、わが国並びにアジア諸地域、後進地域に対しましては非常なへんぱな取り扱いが行なわれておるわけです。そのことがへんぱで間違っておる、アンリーズナブルなものであるということが認められて、そしてIMFの出資額の増額を求められて、SDRの割り当て額を広める可能性があるんだ、こういうことを言われたわけですけれども、それを持っていない後進地域に対しましては、これはやはり世界経済のハーモニゼーションがこれから向かうべき方向であると思いますから、そういう点で見れば、これは現在これだけをもって資本の自由化というものを押えるわけにはいかないんだ、それは後退だということについてはわかります。私どもは、その前進を含めながら言いたいことは、だがしかし、この事実が継続されるということをほおかぶりでこれを黙視しておるということは、やがて国際間における不均衡の増大と同時に、フリクションと矛盾が多くなって、そういう経済格差に伴う矛盾の非常な拡大になるから、注意しなければいけないというわけですから、そのことはよく踏まえて、私はいま被害の点だけを言ったわけですけれども、同時に加害者になる可能性もあるわけですから、それについての基本的なあなたの構想といいますか、お考えをこの際私の希望を含めて伺っておきたい。はなはだ政治的な問題ですから、政務次官にお尋ねするわけです。
  101. 田中六助

    田中(六)政府委員 お答えします。  先進国が後進国を搾取する、経済の一つの原則といたしまして、そういうふうな観点からラトイを浴びせれば、搾取という表現が成り立つかもわかりませんが、やはり後進国を開発して生活のレベルアップをするというふうな考え方にライトを浴びせますと、当然の資本の流れとしてそういうことが考えられるわけでございます。したがって、必ずしも搾取ということで資本が投下されるというふうには私どもは考えておりませんが、しかし、やはり何といっても利潤というものの追求という観点からしますと、搾取という面も必ずしも——もうけなければそういう投資はしないという論理の発展からしますと、そういうことが考えられますし、わが国がそういう立場に徐々になっておるわけでございます。したがって、そういう搾取という面が強調されることはぜひとも避けていかなければならない。しかし、自由市場、資本主義機構からいたしますと、資本が必然的にそういうふうに流れることは理の当然でございますので、御承知のように、先進国は後進国に対しまして、商売はしますが、逆にいろいろな現金援助あるいは物の援助というものをやっておるわけでございます。日本も、予算面で国会でいろいろ審議していただいて、後進国への援助に対しましては、物の面、金の面からやっておりますが、そういう点でかなりのカバーはできますし、そういう後進国への援助というようなことについて、十分今後とも配慮して、国際的なバランスを維持していきたい。そういう観点からものを考えますと、SDRの運行のしかた、ケインズではありませんが、「ゼネラルセオリー」の中に「貨幣はみずから歩く」ということばがございますが、SDR一つの基本の外貨の準備資金としてなっていくといたしましても、やはりそういう悪い面が出てくるというふうに考えられますので、十分その点は配慮して今後対処していきたいというふうに思っております。
  102. 穗積七郎

    穗積委員 最後に問題提起をします。これで終わりです。総括として問題提起をして、特に大蔵省のお考えを伺っておきたいのです。  このSDR問題が出てまいりましたその原因なり、今度の制度そのものが矛盾に満ちて、非常にびほうの策で、問題解決にならなくて、矛盾を拡大するものではないか、悪くすればインフレとパニックにすら発展する危険性を含んでおるというふうに、私は現在の段階においてはそう指摘いたしました。ところが、ここで新しい問題が提案されておると思うのです、世界のすべての人に。それは何かというと、従来の金とドルの支配と独裁的な支配体制の段階はもう過ぎたんじゃないか、各国の生産力の上昇からいたしまして。アメリカの生産力との比率の変化もありますし、それからさらに思想といたしましては、資本主義社会主義という段階以前に、やはり国際的な協力あるいは国際経済運営における協調ということに発展しつつある。そうなりますと、国際通貨もしくは為替問題については、根本的にドルの危機に追随をしてびほうの策を考えるよりは、もうドルと金から一ぺん離脱して、そしてすべての国がひとしく参加して制御し得る国際通貨、これはいろいろな案がもうすでに提案されておるわけでございますけれども、この問題を常に指向しながら現実の問題を処理していかないと、提案理由の説明の中には、ハーモニゼーションと流動性の拡大、貿易経済の安定成長に益するといいながら、現実は遺憾ながら矛盾の拡大に終わってしまう、私はこういうことを言ったわけです。そこで、根本は何かといえば、やはり金ドル体制から離脱することがまず必要な段階にきたのではないか、われわれの今後の見通しにいたしましても、具体的な政策を進めるにいたしましても。私は、一ぺんに今日からそこに飛躍しろということを言うわけではない。経済には飛躍はあり得ません。革命以外には経済は飛躍はない。そうなりますと、革命を想定しないでみても、その方向へ行くというものの考え方や、そこから出た具体的な政策というものが必要ではないか、こう思うわけです。  そうなると、結論として申しますならば、ドルに追随し、ドルに固執したSDR体制というものはナンセンスだ。そこで、私どもとしては、少なくとも金ドル体制から一ぺん考え方が自由になって、再検討すべき段階にきておるのではないか、こういうことを私は問題提起として申し上げまして、そして特に大蔵省の御所見があれば伺っておきたいと思うのです。これをもって私の質問はきょうのところは終わります。
  103. 村井七郎

    村井政府委員 先生のお考えの線をずっとたどっていきますと、やはりSDRというものは一つのいい試みではないか、世界の管理体制下に進むいいスタートではないかというふうに私は拝聴いたしまして、はなはだ心強いと感ずるわけでございますが、私も、一国の通貨でもって世界流動性をまかなうということにつきましては、どうしても限界がある。これは適当な赤字を続けていって適当に流動性をふやしていくということよりも、それ以上に世界の経済の成長率というものが伸びてまいりますので、それに追いつくためには、どうしても何らかのギャップを埋める手段が必要である。そうでなくて、ドルだけで埋めようとすると、そこに非常に無理が生じて、逆に一国通貨のドルの価値がかなえの軽重を問われるということになってくる。いわゆるジレンマの問題がどうしても存在するわけでございますので、そこは先生が御指摘になりますように、各国の共同責任、経済力の共同分担というシステムがとられたほうが一つの進歩であろうかと私は思います。SDRは、そういった意味におきまして、まさにそういったものへの一歩前進であろうかと思いますが、金との関係がその次にあろうかと考えます。これは非常に長い将来ではまさに自然的条件に制約される。一つの金鉱が発見されるとどっと出てくる、そうでないとまた足踏みするというように、非常に自然的条件に左右されるようなこの金に、全部の価値尺度の基本を置いておるということも、はなはだ不合理なような気がいたしますが、一面、この価値尺度と申しますのは、これも先生おっしゃるとおりに、世界各国信任、全世界信任ということで成り立たないとだめなものであるわけですから、SDRがまだ発足してない、あるいはこれから最初に発足するというときには、これでもって一〇〇%の信任をしろということは、私はなかなか無理なことではないかというふうに率直に思います。したがいまして、SDR制度のねらいは非常にいいのですけれども、この運営というものは非常に慎重にして、世界信任を獲得するということに主眼を置いていくべきである。そういたしますと、この信任が累積していきます段階において、金の果たします分野というものがある程度交代し得る。金そのものにSDRはかわりませんけれども、金価値がつき、しかも金そのものではない。しかも経済性も利子をつけることによってある程度ある。しかも、このSDRというものは信任があるという事態になってまいりますと、うまくいきますと、金に代替し得るという可能性をその中に内包しておるということかと思いますが、現時点でそういうふうに信任しろというふうに上から押しつけることははなはだ無理な話で、将来は、よくいわれますように、金の廃貨、金と貨幣との結びつきを断ち切るということは、方向としてはけっこうだと思いますが、その方向にたどりつくためには、こういうSDRというものの中間的なものを一つ中へ置いて、それで代替させていくということでないと、金の廃貨と申しましても、結局口頭禅に終わるというふうに私たちは考えておりますので、そういった意味におきまして、穗積先生の御発言は、私は一面はなはだ心強く拝聴いたした次第でございます。
  104. 穗積七郎

    穗積委員 質問を終わろうと思ったけれども、あなたは現在の国際経済の現実とこの制度の内容の現実を飛躍して、そして、政治的な発言をされたので、ちょっと黙って引き下がるわけにいかないのです。それは何かといえば、ある意味では、IMF体制、すなわち、金ドル支配体制の行き詰まりと矛盾の表現から自然発生的に出てきたものだ。これはいずれの社会でもそうですよ。外国のことは別として、わが国の封建社会の時代においても、もうすでに元禄時代から商業資本主義あるいは貨幣経済単位というものに自然発生的に入ってきたわけですね。それが封建社会を離脱するために役立つものとして期待が持てたかどうかということになれば、そうではなくて、封建社会の体制内におけるその矛盾のやむを得ざるびほうの策として出てきたわけだ。今度のSDRがそうなんです。金ドル支配体制から離脱した、すべての国のひとしく参加する、制御し得る国際管理通貨しいう方向へのスプリングボードとしてこれを受肝取るわけにはいかない。あなたはこれをスプリングボードとして受け取れというわけだ。そうじゃないのですよ。現在の世界資本主義体制の矛盾の中から自然発生的に出てきたやむを得ざる一つのびほう策で、それがさらに現在の矛盾、国際間におけるエゴイズムとインフレ、この二つを助長せしめる危険性をはらんでおるから、こんなものはナンセンスだとわれわれは認識をしておるわけです。ただ、金ドル体制からやや発展をすることが、これがすべていま言われましたような、金ドル体制から財産通貨に発展するスプリングボードとして期待が持てない、むしろ逆である、こういうことですからね。その制度そのものに対して、私は何のイリュージョンも期待も持ちません。私しろ逆に、やむを得ざる発想の中から出てきて、金ドル体制の擁護あるいはそれに追随するという点からものの考え方が解放されていないから、こういうばかばかしい結果の制度が出てくるのだ、こういうことですからね。ひとつ誤解のないようにしておいてもらわぬと、黙って引き下がるわけにいかぬ。これは答弁を必要としません。一言申し上げて、どうぞせっかく大蔵省勉強されるように鞭撻をしてやめておきます。      ————◇—————
  105. 北澤直吉

    北澤委員長 次に、千九百六十八年の国際コーヒー協定締結について承認を求めるの件を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。戸叶里子君。
  106. 戸叶里子

    ○戸叶委員 きょうは二時から本会議のようでございますし、それから伊藤委員質問があるようですし、私も実はちょっとぐらいでは済まないわけです。コーヒー協定の全般的な問題と、多角化基金の問題と、消費の増大、振興計画、こういうことについていろいろと質問してみたい、こう考えていたわけですけれども、最小限度一時間ぐらい必要とするところ、時間がありませんから、きょうは一点だけにしぼって伺っておきたいと思います。  その一点は、消費を増大させようという考えがこの協定の中にあるようです。その振興計画ということがあるようでございますが、この協定によりますと、コーヒーの消費を促進するために宣伝事業をすることができて、その振興計画の費用は輸出国の拠出金をもってすることということが四十六条にあるわけでございます。そうすると、この振興計画の費用及び各輸出国の拠出金の割合というものはどうなっているか、まず説明をしていただきたいと思います。
  107. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 お答え申し上げます。  この振興計画の基金に対する輸出国の拠出でございますが、それを賦課する根拠は、六十キロで一袋になるわけでありますが、一袋につき十五アメリカセントというものを賦課して徴収するということになっておるようでございます。この総額は約七百万ドルというふうになるということになっております。
  108. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、輸出国、大きなところだけでけっこうですけれども、どういう国がどのくらいずつ出しているかを、計算が出ていますか、出ていたら説明していただきたい。——こまかい計算ですから、この次でもけっこうです。  そこで、この十一章の四十六条によりますと、世界コーヒー振興委員会から各国に消費促進のためにお金がきているわけですね。そうすると、どのくらい送金されて、それはどういう条件で使われるようになっているか、これをまず伺いたいと思うのです。
  109. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 ただいまちょうど資料が出ましたので、先ほどの輸出国の負担の点を申し上げますと、年間負担額で一番多いのは、先生御案内のとおり、ブラジルが一番輸出量が多いわけでありますから、ブラジルが約千六十六万ドル見当になります。その次がコロンビアでございまして、三百五十二万ドル見当になります。それから象牙海岸、アイボリ・コーストでございますが、これが百五十一万ドル、その次の段階になりますと、あとポルトガル、ウガンダというところで、だんだん下がってまいります。それが輸出国のうちの拠出の大要でございます。  それから、輸入国に配分されるほうの金額でございますが、日本の場合には二十五万ドルでございますが、一九六八−六九年度、これはたしか十月から九月までだったかと思いますが、それによりますと、これは五十万ドルに増額されておるという状況でございます。  以上でございます。
  110. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、さっき総額で七百万ドルとおっしゃったのは、何が七百万ドルなんですか。拠出金が七百万ドルということじゃないでしょう。
  111. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 先ほど申し上げましたのは、各輸出国の比率の一袋当たり六十セントで計算しましたのを申し上げたわけであります。冒頭に申し上げましたのは、一袋当たり十五セントに直しますと、約それの四分の一に減ってまいります。したがって、総額としては、冒頭に申し上げましたように、七百万ドルというのが正しいということでございます。
  112. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いまのは拠出金じゃなくて、基金のほうの問題でしょう、六十セントというのは。全然違うじゃないですか。これは私の了解が違っていますか。六十セントとか十五セントというのは、基金のほうと拠出金のほうと、別なんじゃないですか。ちょっとそれを教えてください。
  113. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 どうも失礼申し上げました。  基金には両方ございまして、いわゆる多角化基金と、それからもう一つ、現在の消費の振興基金とございまして、先生の御質問になりましたのは消費の振興基金のほうでございますから、これは総額約七百万ドルでございまして、先ほど申し上げましたブラジルが千万ドル以上というのは、多角化基金のほうでございますので、その点、訂正申し上げます。
  114. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、いま二番目の問題として、世界コーヒー振興委員会から各国に、消費を促進させるためにどのくらい送金されているかということをさっき伺っていたわけです。それはどのくらい送金されているか、そしてまた、それを使うためにはどういう条件が必要になるか、伺っておきます。
  115. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 先ほど申し上げましたように、総額は約七百万ドルでございますが、アメリカ及びカナダが送金を受けている額が非常に多いわけでございます。これがアメリカ及びカナダで約四百五十万ドル見当でございます。日本は先ほど申し上げましたように五十万ドル、その他はそれほど大きなものはございません。たとえばイギリスが三十五万ドルというようなことになっております。  それの使用の条件ということにつきましては、農林省当局から御説明申し上げたいと思います。
  116. 宮地和男

    ○宮地説明員 この基金は、すべてコーヒーの消費宣伝に使うということになっております。
  117. 戸叶里子

    ○戸叶委員 その条件は、コーヒーの消費宣伝に使えばそれでいいわけですね。何に使ってもかまわないわけですね。どういう委員会をつくって、どういうふうにしてもかまわないわけですか。
  118. 宮地和男

    ○宮地説明員 その計画につきましては、世界コーヒー振興委員会が事前に審査をいたしておりまして、それの承認を受けまして実行しております。
  119. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、日本の場合には、世界コーヒー振興委員会の審査を受けた委員会ですか、日本にできているわけですね。その審査を受けた委員会か何かができてなければ、その使いようがないわけですね。その委員会というものはどういうふうな構成でできているかということを聞きたいのです。
  120. 宮地和男

    ○宮地説明員 その実行機関として、日本コーヒー振興委員会というものができております。この委員会委員は九名でございまして、コーヒー関係の団体、つまり、コーヒーを輸入する者、あるいは豆の販売業者、それからレギュラーコーヒーのできます焙煎業者、あるいはインスタントコーヒーの製造メーカーの団体、それから喫茶店の組合、これは消費者でございますが、そういった団体のそれぞれの長、そのほかに、ネッスルの日本株式会社の取締役が入っており、またブラジル及びコロンビア政府のコーヒー院の代表、これは外国の生産者といいますか、輸出国の代表として二名、全体で九名、以上でございます。
  121. 戸叶里子

    ○戸叶委員 輸入する者と豆の販売業者、インスタントコーヒーの団体と喫茶店の組合の長、ネッスルの日本株式会社取締役、コーヒー院の代表二名、あと二名はだれですか。輸入する者というのはどういう人ですか。
  122. 宮地和男

    ○宮地説明員 商社でございます。輸入業者が日本珈琲輸入協会をつくっておりますが、その代表でございます。それから日本グリーンコーヒー協力会という豆を販売する団体がございます。それからコーヒーをいります焙煎業者の団体として全日本コーヒー商工組合連合会、それから日本インスタントコーヒー協会、そのほか、ネッスル日本株式会社の代表、喫茶店組合代表、コーヒー院の代表二名、そのほかに、コーヒー関係の四団体を総合しました全日本コーヒー協会というものがございますが、その会長が一名入っております。以上で九名でございます。
  123. 戸叶里子

    ○戸叶委員 この方たち委員になって、そしてコーヒーを飲む宣伝をやられているわけですね。そうしていままでに日本には相当来ているのですね二十五万ドルですか。そこで、私ちょっと疑問に思うのですけれども、インスタントコーヒーというのは、やはりこのコーヒーと関係あるのですか。このコーヒー協定にインスタントコーヒーというのは関係あるのですか。
  124. 宮地和男

    ○宮地説明員 インスタントコーヒーと申しますのは、豆からいって、それをわかしましてコーヒーの状態にしたものを、たとえば牛乳から粉乳をつくりますように乾燥させたものでございますので、原料はやはりコーヒー豆を使っております。コーヒー豆からつくるという点では同じでございます。
  125. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、いわゆるマックスウエルとかなんとかという、ああいうふうなインスタントコーヒー、そういうインスタントコーヒーの会社もこのコーヒー協定に関係あるのですか、ないのですか。
  126. 宮地和男

    ○宮地説明員 ございます。日本ゼネラルフーズとかネッスル——マックスウエルというのはゼネラルフーズでございますが、そのほか明治、森永等、現在日本では五社で製造をやっております。
  127. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、純然たる民間の人たちだけでこの委員会をつくって、そしてそこでもって運営をして、それでこのコーヒーを飲ませるための運動をさせているわけですね。念のためにちょっと伺っておきたいのです。
  128. 宮地和男

    ○宮地説明員 これは本来コーヒーの宣伝のために使うという趣旨の金でございます。特に宣伝費でございますので、業界の自主性を尊重しまして、自主的にやらせておりますが、コーヒーを所管する立場、それから国際的な関係もございますので、その計画の内容につきましては、事前に説明を聴取し、その結果等も報告を受けております。
  129. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、こういうふうな人たちが自主的に運営しているけれども、農林省の課長さんがその上に立って、はたして消費者にコーヒーを飲めという宣伝がよく行き届いたかどうかを見たり、それから検査をしたり、そういうところにタッチしているわけですか。行政がこういう宣伝にまではタッチできないと思いますけれども、こういう点はいかがですか。
  130. 宮地和男

    ○宮地説明員 もちろん私のほうはそういう監督、指導をするということが職務でございますが、しかし、それ以上に強い権限を持っているわけではございません。ただ、これだけの金が出ておりますし、また国際問題もございますので、十分間違いのないように検討はしております。
  131. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私たちしろうと考えからいって、二十五万ドルから五十万ドルに今度ふえたわけでしょう。そうすると、一億八千万ですか、相当なお金ですね。それでコーヒーを飲みなさいという宣伝をするのだったら、私たちちの目に映ってもいいと思うのですが、ほとんど映っていないのですね。私の考えていたのは、テレビなんかでよく見るのは、マックスウエルとかなんとかよくやりますね。あれはたまには見ます。けれども、その程度で、テレビのスポット、そういう放映料というか、スポンサーとして払うお金などを計算してみても、そんなになるかしらというような疑問を抱くわけです。五十万ドル、一億八千万も使う。何に一体お金を使うのだろうということで、非常に疑問に思うのですけれども、どこにどういうふうに使ったというようなことがよくおわかりになっていらっしゃるのですか。
  132. 宮地和男

    ○宮地説明員 実は、この五十万ドルは、六八年の十月から九月まででございます。それで、大体十二月ごろまでに宣伝プランをつくりまして、ことしの九月にかけて実行する予定で現在実施中のところでございます。それから、昨年まではテレビにかなり重点を置いて、約九千万のうち、半分ぐらいをテレビに使ったのでございますが、御指摘のとおり、非常に短いスポットでございまして、効果がないということで、本年は約四千万の予算でやっておりますが、各地区地区違いますけれども、現在東京ではたとえば8でやっておりますが、若干十五秒ないし三十秒のスポットを延ばしまして、なお、今年からは週刊誌、雑誌のほうに重点を置きまして、雑誌になると多少新聞などよりは効果があるということで、内容等につきましては、今回の増額を契機といたして、多少内容を変えて実施をしていくということで、現在やっているところでございます。
  133. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、たとえば特殊な資本でできているマックスウエルとか、そういうふうなところのコーヒーの宣伝、これもこの協定による宣伝になるのですか。
  134. 宮地和男

    ○宮地説明員 との基金による宣伝はコーヒー一般についてやっておりまして、特定の会社のものは全然含まれておりません。別個にやっております。ネッスルあるいはマックスウエルというそれぞれの会社が自分でやっているわけでありまして、この基金とは関係がございません。
  135. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、この基金でテレビで宣伝するというのは、どういう形でやっているのですか。私ちっとも見たことがないのですが、どなたか見られた方はあるのですか。マックスウエルやネッスルのはよく見ますけれども、普通のコーヒーの宣伝ではあったかどうか……。
  136. 溝口道郎

    ○溝口説明員 いま農林省の食品油脂課長が御説明しましたように、従来必ずしも宣伝のやり方が——始めたばかりでございますから、ふなれだった点はございますけれども、たとえばポスターなど、これは必ずしも趣味がいいとはいえませんが、こういうものを自主的にやっております。ですから、こういうマックスウエルとかいう一つのブランドをつけないで、飲むのだったらコーヒーというふうに、最近はレコードのほうにも出すことになっておるということを承っておりますけれども、あるいは週刊誌とか雑誌とかで、コーヒー一般の消費促進という角度から宣伝をやっておるわけでございます。
  137. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いままでの九千万ですかはどんなふうに使ったかというのはわかりますか。わかれば、あとでけっこうですから教えていただきたい。  それから、今後においての発表のプランもあるわけですね。どのくらいをどういうふうに使うかということ、こういうことももしわかりましたらあとで教えていただきたいと思います。  それから、こういうふうな九人の人たちが一緒になって相談をしてきめることですけれども、これは民間でやることではないのですね。一つ協定、国と国とが結んだ協定を民間にやらせるのですから、官庁がそれに対してある程度指導的立場に立っているわけなのですから、やはりそこいら辺は、これから見ますと、有効に使わなければいけないのじゃないかと思うのですね。そうすると、たとえばどういうところに宣伝費を使うというようなことも、私たちとしても知っておかなければならないと思いますし、知りたいと思いますから、そういう表がありましたら次に出していただきたいと思います。
  138. 溝口道郎

    ○溝口説明員 この事業は、コーヒー協定に基づきます世界コーヒー振興委員会という委員会の監督のもとに行なわれておりまして、資金は、輸出国が委員会に対して出しておるわけで、この事業のための活動費は直接にはコーヒー委員会のほうに出ているわけでございますけれども、もちろん国内でもなるべく有効に使わねばならないというようなこともございますから、計画の資料などはできる限り農林省や業界とも御相談しまして、先生のお手元にお出しいたしたいと思います。
  139. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私、あと質問がありますけれども、ちょっと時間をとりますので、伊藤さんにきょうのところは譲りたいと思います。
  140. 北澤直吉

    北澤委員長 伊藤惣助丸君。
  141. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 初めに、国際商品協定について伺いたいのですが、現在どのような国際商品協定というものがあるか、その点伺いたいと思います。
  142. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 伊藤先生も御案内のおり、国際商品協定というものは、結局一次産品の価格の安定をはかって、したがって、輸出入についても安定的な需要の育成をし、また、世界のその商品の市場もあまり大きな価格の値上がりあるいは値下がりがないように、安定的な貿易体制に持っていこうというのがねらいでございまして、そういう観点に立ちまして、現在大きなものといたしましては、世界穀物協定というのがございます。これは先般ケネディラウンドの際にまとまったもので、それ以前にございました小麦協定を代替したものでございます。そのほか砂糖協定、それからオリーブのオイル、それから鉱産物といたしましてはすずがございます。大体以上が主たる商品協定の内容でございます。
  143. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 商品協定締結する必要性はどこにあるのか、その理由を説明願いたいと思います。
  144. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 ただいま御説明申し上げましたように、そういう一次産品でございますので、つまり、穀物あるいは鉱石というものでございますので、とかく自然的な条件によって非常に左右される向きがございます。しかしながら、あまりに大きく価格が変動いたしますと、安定的な世界規模におきます取引が十分できないという点、したがって、一次産品の国際商品協定をつくりまして、ある程度の価格帯というものを設けるという考え方一つであります。それから第二番目には、先ほども申し上げましたごとく、主として一次産品の輸出国というのは低開発諸国、発展途上国ということもございますので、その価格の変動があまり大きいと、それぞれの国の経済開発にも十分な寄与ができないという面もございますので、その面からの考慮も払われているというわけでございます。
  145. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 コーヒー輸出国が国際収入の面でコーヒーの輸出にどの程度依存しておるか、大ざっぱでけっこうですから伺いたい。
  146. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 先ほども戸叶先生の御質問にお答えいたしましたが、輸出国として一番大きいのはブラジルでございますし、その次にはコロンビア、さらには象牙海岸等がございますが、それぞれの国のコーヒーの輸出がそれぞれの国の輸出総額の中で占めているシェアというものを申し上げますと、これは一九六六年ではございますが、たとえばブラジルの場合には四四・三%、コロンビアの場合には六七%、それから象牙海岸の場合は三九・五%、エルサルバドルの場合には四七・二%、かなり大きなウエートを占めているわけでございます。
  147. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 各年ごとの、コーヒー機関がございますが、そのコーヒー機関に対するわが国の分担金はどのくらいになっておりますか。
  148. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 一九六八−六九コーヒー年度のわが国の分担金は、日本貨にいたしまして約三百七十四万円、米貨にして約一万三百九十ドル見当ということになっておりますが、各年度ということになりますと、昭和三十九年度が六十三万円、四十年度が百六十万円、四十一年度が約二百万円、四十二年度が二百十六万円、四十三年度が二百十八万円というふうになっておりまして、今度の四十四年度になりましてこれが少しふえるということでございます。
  149. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 三十九年度の分担金と四十四年度の分担金を調べてみますと、六倍くらいになるわけですね。この分担金はどういうふうにして定められておるわけですか。
  150. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 これはわが国の例をとりますと、わが国のコーヒーの需要がふえるに従って分担金がふえるわけでありますが、これの一応の積算といたしましては、コーヒーの理事会といいますか、コーヒー協定加盟国が総予算額をきめまして、それに対してわが国の持っておる票数を加盟輸出入国の総票数で割った分を総予算額にかけたものがわが国の分担の率ということになっておるわけであります。
  151. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この分担金は、この中にある二十五条によりますと、自由に交換できる通貨であるものとされておるわけですが、わが国は円貨で払っておるのか、ドルで払っておるのか、その点……。
  152. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 わが国はドルでもって分担金を支出しております。
  153. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それはおかしいのではないですか。たとえば円貨というのは、IMFにおいて交換可能な通貨ということになっておりますが、なぜ円貨で払わないのですか。
  154. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 交換可能な通貨ではございますけれども、先生も御案内のとおり、日本がいろいろな国々と行なっております貿易の決済手段は、ドルまたはポンドというものを使っておる関係もございますので、その点からも当然御了解いただけるかと思います。
  155. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 おかしいことはおかしいわけですね。IMFの中では円は交換可能であるといわれておるのですが、その点はどうなんですか。
  156. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 先生のおっしゃいますように、あるいはそういう観点からはおかしいかと存じますけれども、現在の段階では、世界的に十分流通する通貨といたしましては、先ほどのSDRのときにいろいろな議論もありましたけれども、現在のところでは、やはり米ドル、あるいは若干価値が下がってまいりましたがポンドというものが、世界的に一応流通する国際通貨ということになっておりますので、その点から御了解いただけるかと思います。
  157. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この附属書Bに列挙されている新市場国の中で、協定に加盟しておる国はどこですか。
  158. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 現在は日本だけでございます。
  159. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そうしますと、この協定に加盟していない国を新市場国指定したみたいに書いてあるわけですね。こういうことは国際法上いいことなんですか、こういうふうにかってにこういう協定に載っけて。これは国際法上からいうとちょっと疑義があるのじゃないですか。
  160. 高島益郎

    ○高島説明員 ここにございますのは、輸出割り当ての計算の中から除外されるという意味で、新市場国を指定したものでございまして、これらの地域または国が、この協定に基づいて何らの権利または義務を負うものではないという意味において、国際法上ちっとも差しつかえないというふうに考えております。
  161. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いわゆる非加盟国をこのように協定の中に入れたわけですが、これはちょっとよくわかりませんけれども、非常に見ていて誤解もしますし、必要がないのじゃないかと思いますが、その点はいかがですか。
  162. 高島益郎

    ○高島説明員 先ほど申しましたとおり、輸出の割り当てというのがございまして、輸出の割り当てを受けて輸出をする国と、それからその輸出の割り当ての範囲内でコーヒーを買う国との関係がこの協定に規定されておるわけです。したがって、その輸出の割り当てをされたコーヒーを輸出割り当ての計算外で輸入し得る地域というものを置いて、コーヒーの消費を奨励しておるわけです。そういう意味で、日本もこれに入っておるわけでありますけれども、そういう観点から申しまして、これらの地域または国が何らの権利、義務を負うものではないので、もっぱらこの協定に加盟しておる国だけが特別の権利を持つという意味において、国際法上別に差しつかえないというふうに考えております。
  163. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 わが国はインスタントコーヒー等の製品を再輸出することができますか。
  164. 溝口道郎

    ○溝口説明員 新市場国でございますので、輸出国のワク外の輸出を受けるという恩典がございますので、つまり、全世界の輸出を統制しておりますから、その統制外で日本も新市場国なら新市場国に輸出をすることができますので、その統制を破らないために、日本に入りますコーヒーは、日本のような新市場国からは原則としては再輸出することはできません。ただ、なまコーヒーの場合は三百キロ以下、インスタントコーヒーの場合には百キロ以下の小さなロットでございましたら輸出可能でございます。
  165. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 原則的には輸出はできない、しかし、小さなものはできる、こういうわけですね。現に日本では、コーヒーは少額ではありますけれども、輸出しているわけですね。この点は、どこの国にどのくらい行っていますか。
  166. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 その点、現在手元に資料がございませんので、調べました上で、また御答弁申し上げます。
  167. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 事実あるわけですね。この点もあとで資料として要求します。  それから、先ほどわが国は新市場国であると申されましたが、この新市場国であるということは、どういう面でわが国の国益となるのか、どこに利益があるのか、その点を伺いたいわけです。
  168. 溝口道郎

    ○溝口説明員 このコーヒー協定の一番の中心は、輸出国がそれぞれ輸出量をきめまして、協定できめられておりまする輸出量に基づいて、そのときの市場動向によって基準数量、上げ下げございますけれども、大体協定に基づきまして、輸出国が輸出量を統制する。その統制によりまして、世界の市場におけるコーヒーの価格を安定させようというねらいがございます。ただ、日本のように、いまは非常に消費量が少ないけれども、将来は有望市場であるという国は、先生の御指摘なさいました附属書Bによりまして、新市場国になっております。こういう新市場国向けの輸出は、この輸出国の輸出統制量のワク外で、量の規制を受けないでできるということになっております。したがって、価格的にもわが国の買っておりますコーヒーの価格は、伝統市場国と申しますアメリカその他の通常の輸入国の場合に比べまして、若干買い付け価格は安くなっているというのが現状でございまして、非常な利益を享受しております。
  169. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この協定によりますと、コーヒーの消費促進のため宣伝事業をすることができ、世界コーヒー振興委員会から日本コーヒー振興委員会に年間五十万ドルの費用が送られている。この宣伝文は、飲むならコーヒーということで、ずいぶん宣伝しておるようでありますが、先ほど来戸叶議員の話を聞いておりまして、このコーヒーの消費宣伝と政府の関係について伺いたいわけです。
  170. 宮地和男

    ○宮地説明員 先ほど戸叶先生にお答えしましたとおり、政府が直接これにタッチする関係ではございませんけれども、コーヒーを所管するという立場で、国際問題でございますので、間違いのないように、十分事前に、PRの内容あるいは事業の可否について事情を聴取しまして、現在特に、先ほどからも御指摘がございましたとおり、宣伝効果があがっておるかどうかにつきましては、本年度が三年目でございますので、だんだん向上しておると思いますが、今後ともよく指導をしてまいりたいと思います。
  171. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 要するに、私も率直に申し上げて、戸叶議員と同じように、非常に疑問を多くここに感じるわけですね。五十万ドルという大きな金額、そしていままでも何回かやってきたわけですね。昨年も四千万近くの金額がテレビに使われたというふうに聞いております。私も、その点について、ある代表するテレビ会社で調べてみました。しかし、その中では、一年くらい前に、一カ月か二カ月分くいらの宣伝を頼まれたことがある、それ以後ないというふうにも聞いております。しかも、あなたのいまの説明では、全然政府が関係ないようなことをおっしゃっておりますが、たしか、これにはそれぞれの所管の課長がいろいろがっちりと入ってやっておるという事実を私は聞いております。そんないいかげんな、業者だけにまかして、全然関係ないような中で指導監督しておるというようなことは、聞いていても納得できません。もう少し明確に言ってください。
  172. 宮地和男

    ○宮地説明員 先生御指摘のとおり、この計画につきましては、私ども外務省、通産省の両省にお願いをいたしまして、先ほど申し上げましたとおり、事前に計画の内容を聴取しております。報告につきましても受けております。
  173. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 外務省の何課長ですか、農林省の何課長ですか、はっきり言っていください。
  174. 宮地和男

    ○宮地説明員 委員会委員は、外務省は国際機関第一課長にお願いしております。通産省は農水産課長、農林省は食品油脂課長、私でございます。
  175. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 その三課長が集まって、そういう五十万ドルの使い方については指導監督いたしておるということになりますね。
  176. 宮地和男

    ○宮地説明員 これは先ほど戸叶先生にお答えしましたとおり、宣伝事業でございますので、やはり宣伝機関、宣伝業界の自主的な立場を尊重するという姿勢でございますが、なかなか巨額のことでございますので、その点に遺漏のないように、事前に内容を聴取しておるということでございます。
  177. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 先ほども事前によく聞いておるという話でありますが、こういうようなものについては公平に、しかもだれでも納得できる形で使われていかない限り、国際的にも信用をなくすと思います。ですから、その点については、私の調査では非常に不明確でありますし、東京では八チャンネルだけというふうに聞いておりますが、なぜそこにしぼったのか。さらには、今年度も四千万という金額を予定しておりますが、昨年も一昨年も同じような金額を使っておるはずです。そのことについて、三十九年から少なくとも日本に、最初は二十五万ドルですか、そういう金額が来た時点から今日に至るまでの、いろいろなところに使った内容、決算書でもけっこうです、そういう点の資料を私は要求したい。
  178. 宮地和男

    ○宮地説明員 報告書はございますので、あとでお届けをしたいと思います。現在までの経過につきまして、その効果については、ことし三年目ということで、だんだんと向上しておると思いますが、特に内容の実施の状況につきまして、問題があるというふうには私考えておりません。
  179. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いろいろ聞きたいのですが、本会議のベルが鳴っているようでありますし、このことはまた次回にしたいと思うのです。現在の質問を留保いたします。ただ、早目に最初からの資金を使ったいろんな資料の提出を要求しまして、私の質問を終わります。
  180. 北澤直吉

    北澤委員長 本日はこの程度にとどめ、次回は、来たる七日午後零時三十分より理事会、一時より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。     午後一時五十分散会