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1969-03-19 第61回国会 衆議院 外務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年三月十九日(水曜日)    午前十時三十四分開議  出席委員   委員長 北澤 直吉君    理事 青木 正久君 理事 藏内 修治君    理事 田中 榮一君 理事 山田 久就君    理事 戸叶 里子君 理事 曽祢 益君       坂本三十次君    永田 亮一君      橋本登美三郎君    福田 篤泰君       宮澤 喜一君    石橋 政嗣君       大柴 滋夫君    山本 幸一君       伊藤惣助丸君  出席国務大臣         外 務 大 臣 愛知 揆一君  出席政府委員         外務政務次官  田中 六助君         外務大臣官房領         事移住部長   山下 重明君         外務省アジア局         長       須之部量三君         外務省アメリカ         局長      東郷 文彦君         外務省欧亜局長 有田 圭輔君         外務省経済協力         局長      上田 常光君         外務省条約局長 佐藤 正二君  委員外出席者         法務省入国管理         局次長     瀧川 幹雄君     ————————————— 三月十九日  委員小濱新次君辞任につき、その補欠として伊  藤惣助丸君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 北澤直吉

    北澤委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。青木正久君。
  3. 青木正久

    青木委員 私は、韓国人問題並びに在韓日本人の問題にしぼりまして、若干の御質問をいたしたいと思います。  まず、戦争中に軍属あるいは徴用などによりまして樺太に渡りまして、そのまま終戦を迎え、今日まで樺太に残留している朝鮮人がいると聞いております。この問題につきまして、樺太が現在日本管轄下にないために、いろいろの問題もあると思いますけれども外務省でおわかりの点をお示し願いたいと思うのですけれども、大体何人くらいの朝鮮人樺太に残っているか、お伺いします。
  4. 愛知揆一

    愛知国務大臣 戦争中、軍属あるいは徴用等によって樺太に渡りまして、そのまま終戦を迎え、今日まで樺太に残留している朝鮮人の数は、これは正確には明らかでないのでありますが、韓国政府赤十字国際委員会に対して七千名の引き揚げ希望者名簿を提出しておる趣でございます。韓国政府は、従来から、わが国が、これらの朝鮮人のうち韓国あるいはわが国への引き揚げ希望者を、その最終定着地いかんを問わず引き揚げせしめる責任があると主張いたしまして、協力を要請してきておる次第でございます。
  5. 青木正久

    青木委員 先日、韓国議員団が参りまして、この問題についてお話が出たわけでございますけれども、それによりますと、四万人くらいいるという話も伝わっておるわけであります。七千人あるいは四万人、だいぶ幅があるわけですけれども、こういう点につきまして、これまで政府ソ連と折衝されたことがあるかどうか、また、折衝されたことがあるといたしますと、その交渉内容についてお伺いしたいと思います。
  6. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど申し上げましたように、正確な数字は遺憾ながら不明なのでございますけれども赤十字社に出しました韓国側数字というものが、先ほど申し上げましたようなことになっておるわけでございます。  ソ連に対してわがほうとしてどういうふうなやり方をしておるかというお尋ねでございますが、いわば非公式と申したほうがいいかと思いますが、ソ連当局に接触しております。それによりますと、ソ連態度は、現に樺太にいる朝鮮人はもうソ連籍になっておる、あるいは北鮮籍の者だけであって、樺太から外へ出国するという希望者は全然ないという見解をとっております。こういうわけで、引き揚げ希望者実態が明らかにされてないと、わがほうとして明らかにすることができないという点が非常に残念といいますか、困ったことであるというのが偽らざる実情でございます。
  7. 青木正久

    青木委員 ソ連と非公式に折衝されたというのは、何回交渉されましたか。いつごろされたわけですか。
  8. 須之部量三

    須之部政府委員 ソ連と非公式に接触いたしましたのは昨年中のことでございまして、二回やっております。
  9. 青木正久

    青木委員 ただ、この問題は、日本に直接関係ないわけでありますけれども戦争中のことを考えますと、やはり日本政府が最終引き揚げ地までの責任をとるという、これまた人道的な責任があると私は思うわけであります。そこで、ソ連政府としてはもう全部処理済みだというお話でありますけれども樺太にいる朝鮮人内訳ですけれども韓国北鮮とどういう割合で残留していたか、その点おわかりだったらお知らせ願いたいと思います。
  10. 須之部量三

    須之部政府委員 現在その内訳がどうなっておるか、正直なところ、私どもにはちょっとわかりかねます。ソ連側ではソ連籍ないし北鮮籍になっておるということでございますので、韓国籍の者があるということはまずあり得ないと考えられます。ただ、韓国側一つの資料によりますと、いわゆる無国籍というものが千名以上いるのじゃないかということを言う者もおりますけれども、私どもいまそれは確認いたしかねておる。それで、少なくとも向こうに聞く限りは、ソ連側ソ連ないし北鮮籍であるという言い方をしております。
  11. 青木正久

    青木委員 実態がよくわからないということでありますけれども、いずれにしても、残っておる韓国人がいると思うわけでありまして、そういう人たち日本引き揚げたいという希望のある人も中にはいると思うわけでございます。その場合、日韓問法的地位協定というのがございますけれども、これに該当するかどうか、法文上だけでは、引き続きずっと日本に居住した者ということになっておりますので、該当しないと思いますけれども樺太に残った韓国人はちょっと事情が違うと思います。この点どう御解釈になりますか、将来のことでございますけれども、わかりましたらお伺いしたいと思います。
  12. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点は法務省のほうから御答弁申し上げたほうがいいかと思いますが、先ほどお触れになりましたが、私どもも、樺太に在住しておる韓国系引き揚げ希望者というものがあるに違いない、そういう点を考えますと、まことに同情にたえない次第でございまして、何とかこの実態を掌握し、かつその希望が実現するようにしたいというのが、われわれの基本的な考え方でございます。  申すまでもないことでありますけれども樺太が現に日本管轄下にないために、わが国としてなし得ることには限界もございますけれども、先ほど申しましたように、ソ連側に対しましてもわがほうの希望を伝え、あるいは赤十字等協力を求めるということで、なし得る限りのことは今後も引き続きやっていきたいと考えておるわけでございます。韓国政府のほうも国際赤十字に依頼しておりますことは先ほど申し上げたとおりでございますが、いまも御指摘のように、非常に大きな人道的な問題であると思いますので、わがほうとしても、赤十字国際委員会等のあっせんをこの上とも得まして実態を明らかにする、そしてそれによってとるべき措置をできるだけのことをしてあげたい、かように考えておる次第でございます。  なお、法的地位の問題は、いま申しましたように、法務省のほうから答弁することにしたいと思います。
  13. 瀧川幹雄

    瀧川説明員 御説明申し上げます。  法的地位の問題は、ただいまも御指摘がございましたとおり、本邦に引き続き在留している者でございませんので、それに該当いたさないということに考えられます。現在約百六十名ばかりが希望をいたしておりますが、そういったことで留保いたしておりまして、現在まで許可した例はございません。
  14. 青木正久

    青木委員 いま大臣から、国際赤十字あるいはソ連交渉して前向きに検討したいというお話がございましたけれども、私もぜひともそうしていただきたいと思う次第でございます。  次に、在日韓国人の問題についてお伺いいたします。  日韓問の、在日韓国人法的地位協定の前文にも、「多年の間日本国に居住している大韓民国国民日本国の社会と特別な関係を有するに至っていることを考慮し、」とありますけれども、やはりこの問題も両国間の親善のために大きな意味があると思います。それで、この協定はもう協定の期限までに半分を過ぎているわけでありますけれども、現在、その永住権を取得した韓国人がいろいろ不満がたくさんあるということを聞いておるわけでありまして、この点につきまして、まずその永住権を取られた韓国人は何人くらいおられるか、またその年別の数がわかりましたらお知らせ願いたいと思います。
  15. 愛知揆一

    愛知国務大臣 日韓法的地位協定に基づく在日韓国人永住権取得数は、今年の一月十六日現在で九万千六十人と相なっております。この問題について、ただいまも御指摘がございましたが、韓国側としては、日本側による協定の運用が円滑に行なわれていないという主張をいたしております。協定による永住を許可する際に、本人が日本に継続して居住していなければならないという居住歴につきまして、協定永住者数を促進するために、その審査をもう少し柔軟性を持って行なってほしいということ、それから協定永住権を取得した者について、再入国許可など種々の待遇改善をして、いまだ永住権申請をしていない者に対して、永住権を取得することが利益があるのだということを実際上示してもらいたいというようなことを要望しておるわけでございます。このような韓国側要望に対しましては、昨年八月の第二回の日韓定期閣僚会議共同コミュニケによりまして、必要に応じて閣僚を含む両国法務当局間の会談を行なうことがきめられまして、まず十一月、事務的なレベル会談が行なわれた次第でございますが、これらの点につきまして、やはり法務省当局からも説明をいただくことが適当かと思います。
  16. 瀧川幹雄

    瀧川説明員 協定永住関係を申し上げますと、本年二月末現在で申請が約十万九千件でございます。そのうち、許可いたしましたのが約九万七千件と相なっております。  協定永住申請につきましては、申請をしたために居住歴調査されるということを非常に問題にされておるわけでございます。外務大臣が先ほど申されましたとおり、昨年十一月に実務者会談を行ないまして、第二回登録ができておってその不法入国の疑いがない者については、居住歴調査しないで協定永住を与えようという取り扱いになっております。  また、先ほど大臣の仰せられました再入国許可につきましても、協定永住を取った者につきましては、できるだけこれを与えるように実施いたしております。
  17. 青木正久

    青木委員 そうしますと、問題は、居住歴の算定の問題と、それから待遇改善だと思いますけれども居住歴のほうは大体わかりましたけれども待遇改善というのは、どういう点を韓国のほうは不満としておるわけですか。
  18. 愛知揆一

    愛知国務大臣 韓国側から要望されておりますことをせんじ詰めてみますと、結局待遇改善の問題というのは、再入国許可等についての保証を与えてくれといいますか、取り扱いをゆるやかにしてくれということが一番の問題ではなかろうかと理解しておるわけでございまして、これらの点につきましては、韓国側要望はできるだけ好意的な措置をとりたいという考え方で、ただいま法務省からも御答弁がございましたような次第で、事務レベル話し合いというものも相当進んでいるように私も承知いたしております。  それからなお、先ほどの御質問の中でお触れになりましたが、協定永住申請は次第に増加しておるのでありまして、四十二年以降は毎月二千件をこえておりますし、それから四十三年六月以降は三千件以上、四十三年九月には五千件以上というように増加の一途をたどっております。今後もこの数は増加して、結局四十六年一月が申請期問終了時でございますが、それまでには永住権取得者相当数に達するのではなかろうかと見込んでもおりますし、さように運びたいと考えておるわけでございます。
  19. 青木正久

    青木委員 この協定の第三条に、永住権を取った者、これに対する強制退去の条項がございますけれども、これに該当した例がいままであるかないか。あるとすればどういうのがあるか、お知らせ願いたいと思います。
  20. 瀧川幹雄

    瀧川説明員 協定永住者につきまして退去強制事由に該当した者は、現在のところまで一件もございません。  それから、先ほどの大臣の御説明に補足させていただきたいと思います。協定永住者の優遇の問題につきましては、再入国許可のほかに、協定永住者家族吸び寄せの問題がございます。これもできるだけ好意的な考慮を払っているわけでございます。それから親族の一時訪問、なお協定永住者家族につきまして、たまたま不法入国者がございまして、これは一般の出入国管理令によって退去強制事由に当たる場合がございますが、そういう者についてもできるだけ好意的に取り計らうという取り扱いをいたしております。
  21. 青木正久

    青木委員 政府としても、在日韓国人待遇につきまして好意的な配慮をすることが両国親善になると思うので、その点を特に御留意願いたいと思うのです。  私の聞いておりますのでは、ただいまの再入国の問題、それから呼び寄せの問題のほかに、やはり徴税方法について不安があるということも聞いております。これは在日韓国人の職業の関係もあると思いますけれども、こういう点もやはりPRをしないと、とんだところから誤解が起こるということもあり得ると思いますので、大蔵省のほうにもひとつ御連絡を願いたいと思う次第でございます。  次に三番目に、今度は韓国におります在韓日本人の問題についてお尋ねいたします。  時間がないので詳しくはできませんけれども、まず釜山において実情調査相当進んでおると聞いておりますが、現在のところまででわかっておる在韓日本人実態についてお知らせ願いたいと思います。
  22. 愛知揆一

    愛知国務大臣 韓国に現に居住しております日本人の問題の中では、ことにいわゆる日本人妻の問題が社会的な問題でもあり、人道的な問題でもございますので、たいへん気の毒な状況にありますので、これらの人たちの本国への帰国希望に対しては、できるだけ積極的に行ないたい、そのほか、いろいろの措置を講じておりますが、昭和四十一年に日韓の国交が正常化いたしまして、まず帰国したものを申し上げますと、昨年末までで子女を含めて約三百五十名、それから昭和三十一年以来の累計で申しますと千八百名が帰っております。  ところで、それに漏れて現在韓国に居住しております日本婦人が千名をこえておると推定されておりますが、その多くは終戦前に韓国に渡った者、引き揚げの途中で韓国に在留した者、それから終戦韓国人の夫とともに韓国に渡った者、これらの人々の中では、子女をかかえて生活に事を欠く者も相当おるものと見受けられるわけでございます。大部分は帰国希望しているようでございます。したがいまして、一番これらの人の多い釜山と、それからソウルの両公館総領事館等におきまして、韓国側協力を得まして、いま実態の把握につとめて、それから帰国の促進につとめようということで、四十四年度予算におきましても若干の予算も計上いたしまして、前向きに処理をしたいと考えております。たとえば四十四年度予算で、在韓邦人援護費といたしまして千二百万円の予算が計上されておりますのもその一つの例でございます。
  23. 青木正久

    青木委員 全般的にやはり在韓日本人というものは生活困窮者が多いと思うのですけれども、それで帰国希望の方が多いというお話ですが、帰ってきても身寄りが全くなくて、帰るにも帰れないというような人も相当多いのではないかと思います。新聞にも、現地の日本人女性の会の芙蓉会というものがございまして、この会員の方は帰りたいけれども、受け入れのことを考えると不安になるというようなことも記事に出ております。そこで、何といいますか、日本身寄りのない者、それに対する引き揚げの問題をどう処理されるか、対処されるか、それをちょっと伺いたいと思います。
  24. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この問題につきましては、昨年の暮れにも特に閣議の議題にもいたしまして、ただいま仰せになりましたように、帰国するまでの措置については相当の手配ができましたが、帰ってからの処遇についてはまだまだ非常に心配なので、厚生省に特に協力を得まして、引き揚げ後の生活保障等についてもできるだけのことをいたしたいという姿勢をとっておる次第でございます。
  25. 山下重明

    山下政府委員 身元引き受け人のきまっていない者につきましては、いま大臣から御説明いただきましたように、厚生省と協議しておりまして、最近釜山から四十一名ばかり帰ることになっておりますが、そのうちでも、十七名の人がやはり身元引き受け人のない人になっておりまして、その人たち希望を聞いて、おのおのの県に、厚生省を通じていろいろ日本に帰ってきてからの援護措置を講じてもらうという交渉をしております。
  26. 青木正久

    青木委員 この問題は、ほんとうに悲惨な問題でありますけれども、これから韓国政府と折衝する御計画があるのかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  27. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど申し上げましたように、韓国政府協力はすでに受けておりまして、出国に際しいろいろの便宜を計らってもらうようにいたしておるわけでございまして、先ほどお触れになりましたけれども、従来も芙蓉会というような事実上の団体でございますが、これに対しましても日本側としても、そのときどきに必要な経費等について、十分とは申せないと思いますけれども、積極的な援護をいたしております。また、韓国政府のほうも非常に好意的な態度で、要するに、日本へ帰りたい希望の人は早く日本にいわば引き取るということについて積極的な姿勢を示してくれておりますが、今後も必要に応じまして、足らざるところがございましたら韓国側にさらに協力を求めることは当然考えております。
  28. 青木正久

    青木委員 最後に、北鮮帰還の問題についてお伺いいたします。  北鮮帰還協定は、一昨年の十一月で大体終了したわけですけれども、昨年からことしにかけて、この申請済みの者、これの取り扱いについて往来があったと思うわけでありますけれども、この問題の最近の状況、これを伺いたいと思います。
  29. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまのお尋ねのとおりでございまして、四十二年の十一月に昭和三十四年八月のいわゆるカルカッタ協定終了いたしたわけでございますが、約八万八千人の帰還が実現いたしまして、大体所期の目的を一応達したように考えておるのでございます。その後、四十二年の十一月から昨年の一月にかけて、御承知のように、コロンボにおいて会談がございまして、協定が有効であった期間中に申請を行なった者が約一万五千人ございますが、その取り扱いを協議するために、日本及び朝鮮赤十字会談が行なわれました。この一万五千人に関するいわゆる暫定措置終了後における帰還希望者取り扱いにつきまして、赤十字において協議をいたしておるわけでございますが、この交渉は遺憾ながら話し合いがつかないままになっておるというのが今日の実情でございます。
  30. 青木正久

    青木委員 新聞報道によりますと、最近朝鮮赤十字から返事が来たということを見ておりますけれども、そういうことがあったのかないのか、もしありましたら、その内容をお知らせ願いたいと思います。
  31. 須之部量三

    須之部政府委員 交渉の経過は、大体いま大臣から説明申し上げたとおりでございますが、さらに具体的に申しますと、昨年の一月に、コロンボ会談が一応結論が出ないままに終了したという形になりまして、日本側としては、コロンボ会談のときに提案したラインがあるならば、協定の延長ではございませんが、事実上問題が解決できるように措置する用意があるという態度を一貫してとり続けてきておるわけでございまして、昨年の九月に、さらにそのラインに沿いまして、日赤のほうから具体的な提案をしたわけでございます。その内容は、結局コロンボ会談日本側提案しましたことを一応繰り返した内容のものでございます。それにつきまして朝鮮赤十字のほうから、ただいまの一万五千人の申請済みの者、この人たちは、もしかりに一応実行するとしますれば、北鮮帰還が再開されましてから六カ月以内に処理するという計画になっておるわけでございますが、その後もし帰りたいという人が出てきた場合どうするかという問題が、次に残るわけでございます。その際に、あるいは必要に応じて北鮮から引き揚げ船が配船されるかもしれない。かりに配船されるようになった場合には、その配船される船に乗ってくる朝鮮赤十字の代表の人が、どういう身分証明書を持って日本に来るかという問題が、一つの問題として朝鮮赤十字のほうから照会がありました。それに対して、元来ならば渡航証明書、つまり、日本在外公館に出頭して渡航証明書というのをもらって、日本に渡航するということが必要になるわけでございますが、この手続をある程度簡素化といいますか、手数がかからないようにということで、国際赤十字を通してその身分証明書を発行して、日本に来るという道を開いておこうということで、その提案日本赤十字からいたしたわけでございます。それに対して朝鮮赤十字のほうは、そういう提案はのめないという返事が約一週間ほど前に参りまして、問題がいまそこで行き詰まっておるというのが現状でございます。
  32. 青木正久

    青木委員 渡航手続が簡単になることでありますし、また第三者の介入といっても、日赤と朝赤の親分である国際赤十字が入ること、これは別に問題ないと思いますけれども北鮮側がこれで応対するというのは、何かほかに理由があるのですか。北鮮が特に反対する理由はないと私は思うわけでありますが、いいがですか。
  33. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その点は、私も実はなかなかその根拠がわからないのでございまして、先ほど申し上げましたように、申請済みで、まだ渡航していない一万五千人の人については、従来からの経緯から申しまして、日朝両方赤十字間の話し合いで、双方ともこれに期待をかけておったわけでございます。現在の段階になって、その赤十字のような存在を通しての話というものには応ぜられないというような、いわばさかのぼって根本的に話がくつがえるかのような印象を与える態度に出てきたのは、一体どういう理由なのであろうか、そういう点につきまして、なおよく検討し、あるいは情勢を判断しなければならないと思いますけれども、せっかくこういうふうにきておることですから、やはり赤十字問話し合いによって、あるいはコロンボ会談というようなものの原則でもってこれが処理されることが、われわれとしては望ましい、こういう態度で当たってまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  34. 青木正久

    青木委員 私も、いま大臣の言われたこと、全く同感でございまして、ただ、問題は人道問題でございますので、どうぞ忍耐強く接触をされまして、解決するようにしていただきたいと思います。  時間が参りましたので、私の質問は終わりにいたします。
  35. 北澤直吉

  36. 戸叶里子

    ○戸叶委員 参議院のほうでまだ予算委員会をやっているようでありまして、沖繩の問題やらいろいろな問題の質疑応答が取りかわされておるようでございますので、この問題については、参議院予算委員会でも済んでから、私も時間をいただいてゆっくり聞きたい、こういうふうに考えております。ただ、参議院における答弁などを伺っておりましても、残念なことには、総理の答弁が、沖繩問題について、核抜き、本土並みということを言われたかと思うと、また次には、外務大臣が白紙ですというようなことを言われたり、非常に国民が迷っている。どういう考えでいるのだろうという、非常にふしぎな念を持っておるということだけは、肝に銘じておいていただきたいと思うわけです。  そこで、きょうはその問題に入りませんけれども、一、二点だけただしておきたいと思いますのは、沖繩問題は、何といっても交渉相手はアメリカです。アメリカと交渉をするのに、総理が十一月に訪米される、それを軌道に乗せる前に外務大臣がアメリカに行かれるわけですね。そして話し合いをして、ある程度の道をつけていらっしゃるのじゃないかと思うわけですけれども、それにいたしましても、アメリカのほうの肝心の相手であるニクソン大統領のほうで、沖繩の問題について正式に国内で討議をしているらしき様子が見えないわけです。たとえば国会議員等が、非公式といいますか、親睦の形といいますか、日本に来られて、日本の野党の議員と話し合いをしたいというようなことは見られるわけでございますけれども、アメリカの国内で、一体ニクソン外交がどういうふうに考えておられるのかというようなこと、そういうふうな正式な道というようなものが、何にもいまのところないように思うわけでございますが、これでは外務大臣がお出かけになりましても、何か一方交通的なものに終わるのじゃないか、そういうふうなことを私は懸念いたしますが、この点はどういうふうにお考えになりますか。
  37. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、しばしば申しておりますように、六月に私が参りますときが、いわば本格的な下交渉の最初でございますから、そこから十一月末ごろを予定しております佐藤・ニクソン会談を一応の終点にして、その間約半年近くございますが、十分にその問において意見の交換をやってまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  38. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、外務大臣がいらっしゃって本格的な下交渉をされて、お互いに考え方を述べ合って、そして六カ月の間にその考えをだんだん煮詰めていって、そして佐藤総理が十一月に行なって、ある程度の具体的なものをまとめてくる、こういうふうに確認してよろしゅうございますか。
  39. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その点はそのとおりでございまして、これは十七日の参議院の本会議の総理の答弁というのが一番最近の答弁でございますが、その中にも、「今後、六月初旬に予定されている愛知外相の訪米、七月か八月に東京で行なわれる日米貿易経済合同委員会等を通じて、米国側の意向も打診しながら、私の訪米までには、政府沖繩帰還に関する基本方針をきめる考えであります。」これで明らかなとおり、ただいまお述べになりましたとおりと考えております。
  40. 戸叶里子

    ○戸叶委員 新聞によりますと、極東担当のグリーン新国務次官補が来月の十三日に来て、そして日本といろいろな話し合いをするというようなことが出ておりましたけれども、これがアメリカ側から直接日本に来て、沖繩の問題の道をつける最初のものになるのではないかとも考えられますけれども、この点はいかがでございましょうか。
  41. 愛知揆一

    愛知国務大臣 グリーン大使の件は、極東担当の国務次官補に内定をしておる、現在はまだインドネシア駐在の大使でございまして、そういうようなことを背景にして、現在、将来担当するであろうところの各地域を一応視察旅行に出発したようでございます。そしてインドネシアで若干滞在をして、その帰りに一日くらい東京に寄りたい、寄ったときに外務省人たちともちょっと会いたいという連絡には接しておりますけれども、これが沖繩問題交渉ということとは違うと理解いたしております。
  42. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、グリーン国務次官補との話は、一応いまの情勢の中にあって一番問題になっている沖繩問題交渉に寄られるのじゃなくて、一般問題を話し合うだけだ、こういうふうに理解してようしゅうございますか。
  43. 愛知揆一

    愛知国務大臣 彼は今度旅行に出ている。きょうあたりは羽田を通過してどこかへ行ったはずでございますけれども、いま申しましたように、将来担当するであろうところの各国の視察旅行をやるように聞いておりますから、その帰りに、四月の中旬でございますか、日本に一日滞在をしたいというだけでございます。彼はまだ国務次官補になってもおりませんしいたしますから、アメリカ側から彼を通して沖繩話し合いをしてくれということも言ってきておるわけではございませんから、ここで彼として日本の一般情勢を視察していきたい、これが旅行の目的であると、かように理解しておるわけでございます。
  44. 戸叶里子

    ○戸叶委員 もう一点だけ沖繩問題で伺いたいのは、前に下田大使が日本に帰られまして、アメリカは核のつかない沖繩というようなことを考えていないというようなことを言われまして、たいへん問題になりました。今度帰られましてから下田大使が言われていることは、核抜き、本土並みというようなことを盛んにPRしているということもいわれているわけです。期せずして、また総理もそういうことを言われたわけです。そこで、私どもはそれらを勘案いたしますと、一体、下田さんは政府の訓令でそういうPRをしているのかしら、それともただ単に一人でしゃべっているのだろうか、こういうことを考えるわけでございますが、この点は、外務大臣どういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  45. 愛知揆一

    愛知国務大臣 下田大使に期待し、かつ訓令をしておりますことは、特に最近日本に来ました有力な議員の人たちが帰りましてから、あるいは日本問題について関心を持っておる各方面の人たちのいろいろの意見というものを常識的なことばで言えば取材すること、これが彼に与えられた任務でございます。同時に、日本の、ことに最近の国会内外における沖繩問題の論議につきまして、客観的にその中から、先方のそれはというような人にその状況を伝えるということが、同時に駐米大使としての任務であろうと思います。そういうことで働いておるわけでございまして、沖繩問題につきまして、先ほど私だけが白紙と言っているようなお尋ねがございましたが、これまた引用いたしました十七日の参議院会議における総理自身の答弁にも、冒頭に「最終的には沖繩の基地の態様については依然として白紙であります。」という答弁をいたしておりますくらいで、日本政府として、また私として、沖繩基地の態様についてこういう意見をPRせよということについての訓令はまだ出しておりません。
  46. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そこで、下田さんが適当にいろいろ言われているのでしょうけれども政府自身が白紙白紙と言いながら、今度は下田さんがいろいろ向こうでPRですか、あるいはまたいろいろな発言をしているというところに、一つの混乱が起こると思うのです。そこで、私は、沖繩返還のあり方というものは、屋良主席が主席として選ばれていろいろなお考えを持っていらっしゃる。しかも、長い間沖繩で苦しんだその苦しみを通して、今日の主席という重大なポストが与えられて、そこで沖繩問題と取っ組んでおられる中心人物でございますから、こういう方の意見をも聞きながら、むしろアメリカにその意見を反映さしていくということが、非常に重要ではないかと思う。こういう意味におきまして、外務大臣がアメリカへ行って沖繩問題で話をされる前に、いままでももちろんお会いになってはいらっしゃいましょうけれども、直接ゆっくりとそういう問題で話をして、そして屋良さんの意見等も組み入れて交渉に当たっていただきたいと思いますけれども、この点の決意のほどをまずお伺いしたいと思います。
  47. 愛知揆一

    愛知国務大臣 下田大使は、正月に一時帰国いたしましたときも、屋良主席との間にはもう十二分の率直な意見の交換をいたしておりますから、屋良主席の考え方というものは十分掌握しているはずでございます。同時に、この問題は、沖繩の問題だけではございません。日米関係の基本的な問題であります。非常に重要な問題でございますから、もちろん主席の意見も十分に掌握しておるはずでございますけれども、同時にまた、日本全体としての立場も、これはいまの大使の問題と離れますけれども日本政府態度としては、それらも含めまして十二分に真剣に検討していかなければならない。これが基本姿勢であることは御承知でございますが、申し添えておきたいと思います。
  48. 戸叶里子

    ○戸叶委員 下田大使が屋良さんの意見を反映するとするならば、もう少し違った形の発言になるのではないかと私は考えるわけです。これは外務大臣と私との見解の相違ですし、この沖繩の問題については、来月になりましてからとっくりと質問をさしていただきますので、次に入りたいと思います。  外務大臣が四月二日から六日まで第四回東南アジア開発閣僚会議に出席されるということを聞いたのですけれども、これはもうおきまりになったかどうかということと、もう一つは、今回行かれる問題は一体どういうところにあるか、お伺いいたします。
  49. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この東南アジア開発閣僚会議というものは、すでに数回行なわれておりますけれども、沿革的に申しますと、日本が非常な指導的といいますか、言い出しっペと申しますか、日本の意見によってかなり影響されて、この会議が持たれるようになったわけでございます。この内容につきましては、いろいろのプロジェクトの問題もございますことは御承知と思いますけれども、そういう背景、沿革でございますから、国会のお許しがあれば、三日間の会議でございますから、関係各国の要請も非常に熾烈なので、出席いたしたいと考えております。日本側がどういう提案をするか、あるいは各国から予想される提案をどういうふうにさばいていくかということにつきましては、いま鋭意関係各省とも相談をいたしまして検討中でございます。
  50. 戸叶里子

    ○戸叶委員 出されそうな問題あるいは日本が出そうとする問題等につきましては、いま関係各省がいろいろ協議中だとおっしゃいましたが、それは大体いつごろおきまりになりますか、私どもに一度発表していただけますでしょうか。
  51. 愛知揆一

    愛知国務大臣 とにかく、いま国会が一番忙しい最中でもございますので、まあ日夜一生懸命検討いたしておりますが、もうしばらくいたしますれば、大体の会議に臨む姿勢といいますか、それは明らかにいたしたいと思います。私どもとしては、とにかく前々からも申しておりますように、経済協力ということについてはできるだけ積極的に、しかし、同時にエフェクティブに、合理的にやりたいという基本線を持って、できるなら相当長期的な視野に立っての考え方というものを基礎に持っていって、先ほど申しましたようないろいろな案件に対する基本的な考え方というものを明確にして、そうしてその個々の案件の取りさばきに資したい、こういう気持ちでおるわけでございまして、そういう角度から、いま外務省が中心になりまして、鋭意考え方を取りまとめ中でございます。いましばらくといいましても、これはわりあい最近にだんだん考え方をまとめ、それに従って考え方を明らかにしてまいりたいと思っております。
  52. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いまおっしゃったような東南アジア開発閣僚会議をはじめとして、東南アジア関係会議は経済面だけでもたいへんたくさんあると思います。たとえばエカフェですね、これは国連のアジア極東経済委員会ですけれども、そのエカフェとか、あるいはアジア開発銀行、コロンボ・プラン、こういうふうにたくさんあるわけでございますけれども、これをそういうふうにいろいろと分散しても、むしろ効果がないのじゃないか、経済開発をはかっていくということの目的を達成するのに、会議だけをつくって、そして幾つにも分散してしまうと、かえってその効果が薄いのじゃないかと私は思います。それぞれがそれほど目的は違わないのじゃないかと思いますけれども、特にこれはこういうふうに違って、これはこういうふうに違って、これはみんな別々でなければならないのだというふうなお考えをお持ちでしょうか、どうでしょうか。
  53. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはエカフェにしても、あるいはコロンボ・プランにしても、あるいはASPACにしても、それは御指摘のようにいろいろの組織がございますが、それぞれ参加国も必ずしも全部が全部一致しているわけでもございませんし、また、沿革的にも各国のいろいろの主張というようなことが背景になって、こういう組織がいろいろできているわけでございますが、それをそれぞれについて御説明すると長くなりますけれども、私は、こういう多角的な、多面的なやり方というものは、やはりそれなりに非常に有意義ではなかろうかと考えております。ただ、その中で、わがほうの立場というものが、それぞれの組織の中でばらばらになるということはいけませんから、特にたとえばエカフェとの関係というようなことにつきましては、取り上げる案件あるいはやり方等につきましては、先ほど申しましたように、各省庁とも十分に連絡をして、わがほうのそれに処する態度というものは一元的にりっぱにやっていくようにしなければならないという基本的な考え方で、関係各省ともこれは一致した考え方でございます。そういう態度で臨みたいと、かように考えております。
  54. 戸叶里子

    ○戸叶委員 わが国一つの立場というものが、これはきちんと一元的なものであるという、そういうふうな立場をとるのならば、多角的、多元的にやたらに会議だけを多くしても、これは効果が薄いんじゃないか、こういうふうに私は考えるわけでございます。これは外務大臣のお考えと私の違うところでございますし、また、そういうふうに多角的にやっていくことが必ずしもいいかどうかという問題については、あとの機会に外務大臣質問したいと思います。  そこで、外務大臣がいまもおっしゃいましたように、そしてまた外交演説でもおっしゃいましたように、わが国姿勢は平和への戦いにあることを強く印象づける援助政策を立案したい、こういうようなことをいろいろなところで述べられているわけでありますが、援助政策の具体的内容というようなものはどういうものであるかを一度伺いたい。
  55. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはたとえばいろいろなアングルから見なければならないと思いますけれども、一口に言えば、従来の海外援助というようなことは、戦後賠償問題というものに出発しています。したがって、それが一段落したといいますか、軌道に乗り、それぞれに実施が円滑に行なわれる。しかし、この時期にくれば新しい構想を持つことは当然なことではないかと思います。もっと別な観点から見れば外務省が機構改革をいたしましたのも、やはりそういうふうな基本的な発想から出ているわけでございます。それからもう一つは、できるならば、ちょうど一九七〇年代というのは、国連におきましても、低開発国というか開発途上国の発展の計画をすべき時期であるという趣旨のことがいわれているくらいでございますから、一九七〇年代においては、日本としては、一方において国民所得も、けさの新聞に大蔵省の出しておりますように、二十年先にはパーキャピタでも世界第一位になるというような意欲的な見込みもあるようでございますから、国民総生産に対して、たとえばどの程度のことを一九七〇年代においては日本としてはできるというターゲットを掲げる必要もあると思います。そしてそういうターゲットのもとにおいてそれぞれの国の実情を十分踏んまえて、いわゆるひもつきでない合理的な協力、そしてことにこれからは技術協力というようなことが非常なウエートを占めるでありましょうから、そういうことと結び合わせて、できるならばひとつガイドラインと申しますか、われわれのなさねばならない一つの指導的な理念というものをつくり上げてまいりたい、これを考えておるわけで、ただいまそれについて、これはこう、これはこうと申し上げるまでの段階に至っておりませんけれども、気持ちとしてはそういう気持ちで事に当たってまいりたい。私は、やはり日本としても、犠牲というとまた問題を起こすかもしれませんけれども相当の負担、相当の犠牲は払うという心がまえが同時に必要ではないかと思います。
  56. 戸叶里子

    ○戸叶委員 戦後は賠償ということで出発して、それから経済援助的なものにだんだん変わっていく、新しい構想を持っていかなければならない、こういうふうなお考えのことはよくわかったのですが、いままである国に片寄り過ぎていたから、そういうふうなことでなくして、もっとアジア全体を考えてするという、そういうお考えはお持ちになっていらっしゃいますか、どうでしょうか。
  57. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それはもう構想としては、アジア全体ということを当然念頭に置かなければなりませんが、同時に、中近東でもラ米諸国でもあるいはその他の国でも、日本の最近の経済状態が目ざましくよくなったということで、平たく言えば、おねだりの気持ちがほうはいとして日本に対し起こっている。これに対しても、出たとこ勝負で案件を出てきたものを適当に処理するというようなことは、私は大国日本らしくないと思うのでございまして、そういうことは総合的に見ていかなければならない、かように考えております。
  58. 戸叶里子

    ○戸叶委員 愛知構想といいますか、そういったものが響いてか、それともほかの情勢かもしれませんけれども、最近アジア諸国からの援助要請額は非常にふえてきている、こういうふうなことを聞いているわけです。たとえばインドネシアにしても、台湾にしても、南ベトナムにしても、韓国にしても、インパクトローンを要求するとか、いろいろな面で非常に要求額がふえているといわれているわけでございますが、いまの愛知さんの構想によって事を進めていくとするならば、日本が非常に相当額の予算を組んでいかなければいけないのじゃないか、結局、各省で経済協力予算を持っているでしょうけれども、そういうものが非常に多くなってきているのではないか、こういうふうに考えるわけでございますが、具体的に何かお示し願えることがあったら示していただきたい。
  59. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはいまもお話がございますように、一方ではおねだりが多いし、一方では国益の立場から申しまして、外貨準備が三十億ドルになったからといって、そうほかの国がおっしゃるほどまだ日本の実力というものは十分じゃない。そこで、先ほど申しましたように、効果的であり、かつ合理的でなければならない、こう考えますが、同時にしかし、一九七〇年代を考えてみれば、そうなればすばらしいと思いますけれども、大蔵省が発表しているように、一人当たりの国民所得でも世界第一位に二十年後にはなるというようなことが堂々と発表されているくらいでございますから、一面において国民の総所得、あるいはこのごろは総生産のほうがむしろ基準に考えられるようになっておりますが、その一%にもなかなか達していない程度の経済協力でございますから、せめてそういうふうな一つの先ほど申しましたような大きなターゲット、ワクというものくらいはきめてかからなければいけないと思いますが、これについては、大蔵省はもとよりですが、国内の各省庁、それぞれの考え方がございまして、私がそういうふうな構想を考えまして、これを具体的に積み上げていくのには、国内の政府部内のコンセンサスをつくることがまず第一でございまして、この点についていまいろいろ努力を続けておりますが、具体的に政府の直接の援助はこれほど、あるいは民間の協力はこういう程度、あるいは貿易の目標額はこうである、あるいは資本的な参加はこういう程度というふうに各国別に考えるというところまでお示しをするようなものができますのには、まだ多少の時間がかかる。性質上非常に多面的な問題でございますから、いまにわかに、評論家的な立場なら私も一つのアイデアを持っておりますけれども責任者といたしましてここに御披露するまでのものがまだできておりませんことを御了承願います。
  60. 戸叶里子

    ○戸叶委員 先ほども私申し上げましたように、アジアの諸国からの援助の要請額というものは相当たくさん出ていると思います。たとえばインドネシアが一億何千万ドル、台湾が三億ドルの借款とか、いろいろ出ているわけですけれども、それでは、そういうものをいまの愛知外務大臣の構想に従ってやっていくけれども、その中であるものは削りながら、あるものは助けながら、あるものは要求額に応じながらしていく、いまともかくこれまでよりは援助額をずっとふやして、それらの要望にこたえていきたいけれども、大蔵省との関係もあるから、あるものは削りながらいくんだ、こういうふうに考えてもよろしいわけでございますか。
  61. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それはなかなか微妙なところなんですけれども、実は援助を受ける国のほうの御希望だけを片っ端から取り上げていくというようなことは、私は国益上やるべきことではないと思います。それが、先ほど効果的かつ合理的というようなことで抽象的に申し上げたわけでございますが、これは決して向こうさんの立場をどうこうというわけじゃございませんが、率直に言えば、ともすればそれぞれの国の立場というものもございますから、おれのところにはこれだけというような希望はたくさん出ておりますけれども、それを片っ端から取り上げて、そして総花的に日本予算と同じように、要求はこれだけだから三割減だとかなんとか、そんなばかなことはすべきではない、私はこういうふうに考えております。
  62. 戸叶里子

    ○戸叶委員 まあ愛知外務大臣のお考えが、大体経済援助を主として、ある程度言われた国の満足のいくようにしたいというような構想を今日まで述べてこられたものですから、私ども、一体どこにどういうふうにしていくのだろうかということに非常に関心を持ってきているわけです。今日の外務大臣の御答弁の中からは、まだ具体的にどこに幾らというようなことは考えておらないというようなことでございましたが、たとえばいま言われているような援助の中にも、各国の一つ一つを取り上げてみますと、問題点があるわけでございます。ですから、こういう問題も一ぺんゆっくり時間をかけて伺ってみなければならないというふうに考えるわけでございます。  そこで、いま時間がないと言われましたので、はしょって質問を縮めてまいりますが、第一点は、そういうふうにアジアに対して経済援助を強めていくという姿勢をお出しになった。というのは、ちょうどニクソン政権が生まれて、そうしてニクソン大統領の発表されたのを見ますと、アジアの問題は日本にある程度肩がわりをさせるべきである、経済的にも軍事的にも肩がわりをさせるべきであるというような発表をこれまで見ているわけです。したがって、私は、愛知構想というものがここに出されたのは、結局それを受けて、アジアの経済援助というものを大いにアメリカにかわってやらなければいけないんじゃないかという気持ちで出されたのではないかというようなことさえ考えられましたので、その点もお伺いしたいと思ったわけです。これに対するお考えをまず第一に伺いたいと思います。  それからもう一点は、二月の末だったと思いますけれども、北ベトナムの政府が、戦争後の復興計画の中で、繊維の加工品の工場をつくるために合弁会社を設立したいというようなことを日本に打診してきたように私は聞いております。当然、こういうところにも、いままで述べられた愛知外務大臣の構想によれば、私は、そういう相談を受ければ応じるべきであるというふうに考えますけれども、この点についてのお考えも伺いたい。そしてそのあと、もう一つだけ伺いたいと思います。
  63. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず第一の点ですけれども、これはたいへんなまいきなことを言うようで恐縮なんですけれども、私は、アジアといいますか、日本の対外経済協力については、かねがね一つの私としての持論を持っておるのでありまして、はばかりながらと言わせていただきたいのですが、ニクソンさんがどう言われているか知りませんが、それとは発想が異なりますことを明らかにしておきたいと思います。  それからベトナムの問題は、何しろいまお互いにベトナムの休戦ということはなかなか情勢が必ずしもよくはないかにも見受けられる節もございますけれども、とにかく一日もすみやかに戦争が終わることをお互いに日本国民としては希求しているわけだと思います。そしてポストベトナムということになる。それの場合におきました、十分ひとつ具体的に考えていきたい、かように考えておるわけでございます。
  64. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いま私が質問したことに対して、具体的にお答えになっておりませんが、たとえば北べトナムからそういうような要請があっても、日本としては考える余地がある、こういうふうに受け取ってよろしゅうございますか。といいますのは、アメリカの一九六八年の対外援助法の実施についての制限規定を読んでみますと、北ベトナムと交易を行なっている国に対する援助は禁止するというようなとこがありまして、もしも日本が北ベトナムに何らかの援助をしたときに、日本への援助がこの対外援助法でストップさせられる、禁止させられるというようなことになりはしないかということを政府が御心配になっては困ると思いますので、はっきりさせておきたいと思ったわけです。ですから、その点だけを確かめまして、私の質問を終わりたいと思います。
  65. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはいままでの私の答弁で御理解いただけるかと思うのでありますけれども、とにかくベトナムについては、戦争撃ち方やめが双方の合意でできるということが何よりの念頭でございまして、そういう点から将来の構想というものを考えていきたい。しかし、私が申しますことの終局の目標は、私は、経済的に安定し、民生が向上するというところには、歴史的に見ても、激しいことは起こらない、またそう信じたい、こういうことを基本的に考えて事に当たってまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  66. 戸叶里子

    ○戸叶委員 念のために一点だけ。アメリカの対外援助法などというものはアメリカの国内法であるのだから、やはり民生の安定に必要とあれば日本もそれに応じる考えがある、こういうふうに理解をいたしまして、私の質問を終わります。
  67. 北澤直吉

    北澤委員長 曽祢益君。
  68. 曾禰益

    ○曽祢委員 この十日ぐらい前だったと思いますけれども、中国とソ連との国境のウスリー川の中州の、ソ連側からいえばダマンスキン、中国側からいえば珍宝島といわれる島において、ソ連と中国の軍隊の武力衝突が起こった。この事件は国際的にも非常に大きく衝動的な事件であることは当然ですけれどもわが国にとってもこれはなかなか重大な問題だと思うのです。そこで、この問題についてどういう見方をしておられるのか、その発展の可能性あるいは限界、これらについて、外務省としてはソ連、中国問題についての相当な研究もされておるし、むろん中国については情報はなかなか直接困難と思いますけれどもソ連については在外公館も持っておられるし、東欧諸国にも在外公館があるわけですから、そういうような材料も相当おありだろうと思うので、最近の国境紛争事件、この問題に限ってだけでもけっこうですけれども、情報並びにその情報に基づく情勢分析をお示し願いたいと思います。
  69. 愛知揆一

    愛知国務大臣 中ソ紛争につきましては、いまお話しのとおりでございまして、中共側からの情報というのは、直接の国交がございませんから、公式な中共側の情報は入手いたしておりません。したがって、間接の情報という程度にとどまらざるを得ません。それからソ連のほうは、この問新聞にも報道されておりましたが、正確な日時はちょっといま記憶いたしておりませんが、紛争が始まりまして直後に、トロヤノフスキー大使が本国の訓令によって私のところをたずねまして、中ソの国境紛争につきましては、衝突の状況等について具体的な説明がございました。これはソ連側の取り上げ方がございますが、自分たちには何らの落ち度がない、一方的に攻撃を受けて、ある程度の死傷者もあった、こういう具体的な事実から見ても、どちらに非があるかということは明白である、それから問題になっておる地点というものは、古くからの条約からいっても完全に自分たちの領域であるのだという、とにかくこの二点を主とした説明がございました。二、三の質問はいたしましたが、要するに、これは承りおいたわけでございまして、ソ連側の見解というものを私としても直接に承ったわけでございます。  どういうふうにわがほうが見ておるかということにつきましては、あの衝突が起こった地域が地域でもございますし、双方ともに拡大する、エスカレートして大激突になることをこの件について欲していないということは、常識的に理解できるような感じもいたしますが、私どもとしても、こういう武力衝突がエスカレートしないで、紛争が一日もすみやかに解決することをいまのところは望んでいる次第でございます。  どうしてこういうことが起こったかということについては、中共側の言い分というものが直接には掌握できませんので、にわかに論評するということもできないし、また不適当かとも思いますけれども、内政、外政いろいろの観点から、何か意図があったのかどうかということも含めまして、いろいろの想像はできますけれども、いまのところは、当事者でもございませんししますから、静観するという以外に方法はないと思っております。
  70. 曾禰益

    ○曽祢委員 ソ連の大使がわざわざ本国の訓令によって日本政府説明に来たということは、ソ連側相当重視している証拠だと思うのですけれども、その場合に、これは日本の立場はなかなかデリケートなことはわかりますけれども、常識的に考えて、一体、ああいう国境の場合に、国境線というものは、国際法の原則から見ればどういうことになるのですか。ウスリー川が国境線という場合には、その国境線の引き方というものについて国際法のきめがあると思うのです。たとえば普通だったら流れの——流れはしょっちゅう変わりますけれども、そのまん中に線を引くとか、その場合に中州があるとすれば、中州をもう一ぺんまん中からぶっ切って国境線とするものかどうか、そこらのことについて、ソ連側は、なぜ一方的な攻撃なのか、大体どこまでが国境と見ているのかについて、それに触れた説明があったかどうか、念のために伺いたいと思います。
  71. 愛知揆一

    愛知国務大臣 駐日ソ連大使が参りました説明では、先ほど申しましたように、いろいろの条約も引いておりました。一々申し上げる必要もないかと思いますが、北京条約とか愛琿条約とか、そういう観点からして、あの島——ウスリー川の中にある島ですが、あそこを含めて条約的に古くからソ連領土、ソ連側としては、明らかに条理上もわがほうの領土である、ここいら辺は一方的な説明だと思いますけれども、われわれとしては、本件については領土欲で拡張して云々というようなことは毛頭考えていないのだという補足的な説明をいたしておりましたが、地図について的確に、ここはこう、ここはこうというところまで彼も説明をいたしておりません。  それから、先ほどの二、三の質問もいたしましたということは、とりあえずのこちらの考え方として、とにかくこれはそういう理由をお持ちなのかもしらぬが、武力で紛争に当たるということについては、われわれ日本としては非常に遺憾千万なことであって、ともかくもどういうふうなことでこれが始まったかということの根拠は明らかにしないわけですけれども、この紛争についてはすみやかに撃ち方やめ、これをほんとうに衷心期待するということは、わがほうの態度としてとりあえず申しておきましたことは当然のことだと思いますが、そういうふうにいたしておいたわけでございます。
  72. 曾禰益

    ○曽祢委員 そうすると、ダマンスキー島の全体がソ連領内にある、国境は北京条約によってウスリー川をもって国境とする、しかし、ダマンスキー島というものは、その国境線を引いたときからソ連側というか、ロシヤ側をして言わしめれば、歴史的にずっとダマンスキー島は、まん中に線を引いてもソ連側にあるのだ、こういう主張をしておったわけですか。その点もう一ぺん明確にしておいていただきたいと思います。
  73. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その点は、必ずしも明確ではないと思います。原則的にということじゃないかと思います。それで、これはメモを読み上げておりまして、私の申し上げるのは以上のことである、とりあえずこれを通報といいますか、お知らせに参りましたということですから、そのダマンスキー島のどこが国境であるとかなんとかということは、その中になかったように思います。その紙は読み上げただけで、置いてまいりませんでしたけれども、その場で開いたところでは、いまのお尋ねのようなところに至ってまで明確ではございませんが、しかし、条約上、沿革上、これは完全にわがほうの領土であるということの主張はいたしておりました。明白にしておりました。
  74. 曾禰益

    ○曽祢委員 そこで、従来、この中ソ国境における衝突、場合によっては武力衝突ということがあったわけですけれども、私の知っている限りでは、ソ連側のほうが先にこれを公表したことは例がなかったのじゃないか。これは実例をよく御承知の外務省から、これは事務当局からでもけっこうですけれども、私の知っている限りにおいては、中国側のほうがむしろ早く発表した。ソ連側のほうはやや受け身であったというか、消極的であったと思うのですが、今度の場合に限り、中国側もその直後に発表したようですけれども、時間的にソ連側が異例の最初に手をつけた発表であった。それから、単に発表だけでなくて、外交機能を動かして、まず自分らの主張の正しさを訓令によって、関係国とまで言えない主要国の政府に、おそらく日本以外にもやっていると思うのですけれども、PRを始めたという点で、ソ連の関心が、特に意図は別として、少なくとも強い関心を示しておるということで、それが特徴的じゃないかと思うのですが、その点は一体どうですか。いままでの例から見て、ソ連のほうが先に公表したということは異例ではないかと思うのですけれども、その点、私のあれが間違っているか、お示し願いたい。
  75. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私も前の例はよく承知しておりませんけれども、常識的にお話しのとおりで、非常にすみやかにソ連大使が本国の訓令によって私のところへ話しに参りましたということは、いままではあまり例はなかったことではないかと思います。ただ、私が就任してから以降におきましては、たとえば中近東の紛争についてのソ連態度というもの、これもやはり本国の訓令によって話しに参りました。そういう事例は最近ございます。
  76. 曾禰益

    ○曽祢委員 もしソ連のほうが今度公表したのは初めてだとすると、ソ連のなみなみならぬ意欲があらわれていると思うのですね。しかし、そのことは、大臣も言われたように、国境紛争を武力的に拡大しようということとは必ずしもつながらない。ただ、ソ連のなみなみならぬ意欲があらわれている。したがって、これは非常にソ連がいろいろな観点からPRの材料に積極的に使おうとしているということは間違いないと思う。そのあらわれとして、やはりたとえばハンガリーにおいてワルシャワ条約機構の首脳会議があった。そのときにも、中国非難のコミュニケを考えたらしいのですけれども、そのために、首脳部会議の開会の時間がおくれるということがあったけれども、最終的にはルーマニアの主張が通って、それで最終コミュニケには、そういったソ連の原案であったような中国非難のことばは抜けておったようですけれども、そこら辺のことについて、ハンガリーあたりから情報がございましたか。
  77. 有田圭輔

    ○有田政府委員 現在までのところ、現地から、現実にその中ソ関係について討議が行なわれたというような情報はございません。発表された共同コミュニケ、アピール等については、新聞に報道せられておるとおりでありまして、主として全欧会議というものに焦点を合わしておるようでございます。
  78. 曾禰益

    ○曽祢委員 そうすると、PRのことは別として、軍事的な武力衝突の発展性については、少なくともソ連側においてはそういうような意図はない、こういうふうに判断しておられるのかどうか。またこれに関連して、中共側の意図も特段に武力衝突拡大のほうに見ておられないかどうか。この点についての判断はどうですか。
  79. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはなかなかむずかしい徴妙なところだと思うのでありますけれども、一番最初にお答えいたしましたように、あの紛争が起こりましたダマンスキー島の——私ももちろん現場を知りませんけれども、地理的な状況その他から申しまして、あそこでの武力抗争がエスカレートするということまずないのではなかろうかというような希望を含めての観測はできますけれども、それから先の見込みということになりますと、あそこの現場におけるこれからの状況というものは、ちょっともう少し情勢の発展を悪くいかないように静観する以外にいまのところないと思います。
  80. 曾禰益

    ○曽祢委員 私もしろうとながら、そうこれが無限にエスカレートするとは考えておりません。しかし、同時に政治的には中ソ双方とも極力これを利用して、中共のほうは、九全大会に向けて、党の綱領を変えてまでソ連修正主義を徹底的にたたくという態度をとった。中共からいえば、これこそまさにソ連の帝国主義的な修正主義の典型であるというふうにPRつとめるだろうし、またソ連ソ連で、むろんこれは中共のトロツキー主義というか、行き過ぎの一番いいあらわれだということで、味方の陣営の引き締めと、特に世界共産党会議での中共孤立化の材料に徹底的に使うのではないかと思います。これはそれとして、この問題はきわめて不気味な危険性を含んでいることは事実でして、ソ連のほうでは極東シベリアにおける弾頭ミサイル兵器の展開のことをわざわざ中共にリマインドするというような手まで使っているということ、並びに、とにもかくにもソ連としては、ソ連のことですから、ツアーの帝国主義時代の遺産である愛琿条約、北京条約の、アムール川から北のシベリアとかあるいはいまの沿海州ですね、そういうような中央アジアにおける全体が七千キロに及ぶ国境において、中共との問に国境紛争という一つの葛藤を持っている。加えて、スターリン帝国主義の所産である第二次世界戦争の、西においては東ドイツ、さらにフィンランドもそうかもしれませんが、東ドイツ、ポーランド、ルーマニア等の国から、あるいは日本の北上領土に関連して、いろいろな拡張の歴史を持っているので、国境紛争については非常に硬直した姿勢をいつでもとっていると思うのですね。そのソ連のことですから、やはり中ソ国境問題については、非常に大きな自分の国の安全上の問題として、決して——われわれの希望とともに、現実にシベリアの端で中ソの紛争が起こって、それがいきなり拡大するとは思いませんけれども、問題の含み出る潜在的危険性というものについては、それは中国もそうかもしれませんが、ソ連としては安全に関する一つの異常な脅威と受け取っていることは事実だと思うのですね。したがって、ソ連の外交のこれからの行き方についても、やはりそこに徴妙な投影があるのではないか。それが直ちに日本ソ連とのいろいろな交渉についてどういうふうな影響、特にわがほうに直接有利な影響があると断定するのは、これは少し甘いと思いますけれども、そういうことの見通しもあながち間違ってないような気がするのです。したがって、これが直ちに日本ソ連との間の紛争なり問題にどう関係を及ぼすかむずかしい問題ですけれども、現在少なくとも経済問題の形で起こっている日本ソ連との漁業関係の問題、あるいは紛争といいますか、こういう問題についても、影響が出てくる可能性があるのではないか。たとえば、目下相当集約的時期に達しているやに見られる北洋のカニ漁業についての、ソ連の非常に硬直した姿勢がありますね。それからまた逆に、この間本委員会でも私が問題に取り上げた、日本近海、伊豆諸島にまで出てきたサバ漁についてのソ連態度、これらについて何か、いまの国境紛争に関連があるという意味じゃございませんが、最近若干の変化なり発展があったかどうか。たとえばサバ漁については、あれは漁業をやったんじゃない、実験をやったんだという変な申しわけみたいなものをしたやに新聞に出ておりましたが、そういう変化があったのですか。それから、北洋のカニ漁業についての交渉の煮詰まり状況は、直接には農林省所管でやっておられると思いますけれども、全般を監督されておる外務省としてどう見ておられるか、お話を願いたいと思います。
  81. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ソ連の動向の微妙な点に触れてのいろいろの御意見は、私も大いに傾聴いたしたわけでございます。それはそれとして具体的な最近の日ソ関係お尋ねでありますが、細部にわたりましては欧亜局長からも説明をいたさせますが、一例をカニの交渉にとってみますと、いまお話がございましたが、非常に硬直した態度でたいへん困っておるわけでございます。いま政府の代表として藤田代表が、モスクワで大いに忍耐強くがんばっているわけですが、先般は、交渉相当のイシコフ漁業大臣が何か外国旅行ということを理由にいたしまして、交渉の途中から交渉を離れるというような情報もございましたので、三月一日から一応予定しておりました漁業委員会の開催も、これに関連して延びておりますので、私としても、これはなかなか憂慮すべき事態である考えましたので、この件についても、トロヤノフスキー大使を招きまして、イシコフ漁業大臣がひとつ真剣にわがほうの藤田代表と討議を続けて、結論をすみやかに出すように考えてほしい、本国に対して早急に連絡をして、本国政府に申し入れをしてくれということを申し入れました。その際に、かなり詳細に日本側の主張も条理を尽くして説明いたしておきましたが、駐日大使は漁業問題にあまり明るくない関係もございまして、多少私としてもたよりなさを感じましたけれども、しかし、その結果かと思いますし、その結果であればたいへん私もしあわせだと思いますけれども、昨日までのその後のモスクワからの連絡によりますと、イシコフ大臣の出張ということは取りやめた、それから藤田代表とはさっそく会談をしたい、これが一回でなく、引き続き——引き続きといいますか、二回目もまたやるということになったようでございまして、若干の進展は期待できるのではなかろうかと考えておるわけでございます。したがいまして、たとえばカニの問題について、何か大きなソ連の世界政策あるいは対日政策の結果として、こういう膠着状態になったとかしからざるかということは、私まだよく掌握できませんけれども、私はそんな大きな背景はないように感ずるわけでございまして、むしろ、向こうとすれば漁業関係者の利権の擁護といいますか、ところが、こちらからいえばズワイガニ——ズワイガニというのは日本独特のあれで、日本が沿革的にもずっと開発したものであります。タラバガニとの競合がない。それから資源の保存といったところで、先方の主張には科学的根拠はございません。そういう点を根拠にいたしましてのこちらの主張がもう少し向こうの納得を得られるならば、多少前進が企図できるのではなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。  なお、これは先般もここでもお話に出たことがありますが、中ソ紛争前ではございましたけれども、日ソ間の航空協定は、わがほうとしては非常にうまくいったと思っております。
  82. 有田圭輔

    ○有田政府委員 日ソのカニの交渉については、ただいま大臣から御説明申し上げたとおりでありますが、サバにつきましては、過日わがほうから注意を喚起いたしましたのに対しまして、在京大使館のほうから説明がありました。それは第一点は、あれはまき網の操業をしたのではない、試験操業をしていたのである。それから第二点は、先般わがほうが申し入れましたときに、向こうは、資源の保存については、ソ連としては常に細心の注意を払っていたものであるという、とりあえずの説明がありました。まさ網の操業についても、日ソの漁業委員会の場で日本側と話し合う用意がある、このように中間的な回答がありました。その際、わがほうの担当課長から、それはそれと聞きおきまして、さらにその当時、襟裳のほうにまたソ連の船団が来ておったという情報がありましたので、そのことも指摘いたしまして、さらにソ連側の注意を喚起いたした次第であります。ソ連側は逆に、今度の漁業委員会でのワク内で話し合ってもよろしいということを言っておりますが、実は漁業委員会の議題というものはあらかじめきまっておりまして、このサバの問題というのは議題にあげられておりません。したがって、正式に話し合うということにはならないと思いますが、もちろん、非公式にそのような話が出るということはあるかと存じます。
  83. 曾禰益

    ○曽祢委員 これは釈迦に説法かもしれませんが、とにかくソ連のほうは領土問題については非常に固い。これは弱点だらけですから、方々に負い目を持っておりますから、なかなかむずかしいが、そうではない一般的関係においては、日本との友好ということに非常に重点を置いてきつつある、こなければならない情勢もあると私は思うので、その点も踏まえて、経済問題等についても今後とも御努力をお願いしたいと存じます。  最後に、今度は中国側ですけれども、この間、自民党の古井、田川両代議士が中国に覚書貿易のために交渉に行かれる前に、外務大臣にも確かに両君お会いになったかと思うのですけれども新聞によると、そのうち田川代議士が帰られたようですが、中国関係のその後の貿易問題についての模様について、あるいは外務大臣のほうにすでに田川代議士の報告、あるいはその他の香港あたりからの情報等がございましたかどうか。この点は、やはり中国側も、いろいろな関係で、覚書貿易問題については非常に強い姿勢といいますか、佐藤内閣の政治姿勢についていろいろ要求があるようですけれども、いろいろな関係から見て、貿易問題等についてはかなり柔軟な姿勢をとる可能性を含めているのではないか、これは国境問題だけじゃございませんけれども、そういう感じがするのですが、何か最近の発展等について、外務大臣あるいは外務省が御承知のところがあるならお教えを願いたいと思います。
  84. 愛知揆一

    愛知国務大臣 田川君が帰ってまいりまして、私まだ直接会う機会がございませんが、間接には情報を聞いております。それから同時に、十六日に出発いたしました岡崎嘉平太さんが行く前にも懇談をいたしました。いま曽祢委員がおっしゃったようなことであるならばたいへんありがたいと思うのです、率直に申しまして。  前途はなかなか多難ではないかと思いますが、二つに分けて申しますと、いわゆる政治問題ということにつきましては、非常に強い態度で、これは今度田川君が帰りましてからの印象を交えた報告にもございますけれども、私は、このごろのいろいろの国会の応答などについては、受け取られ方が、こちらからいえば少しひど過ぎるのではないかと思う点もございますけれども、そんなことじゃなくて、もっと根本の問題のように見受けるわけでございます。これはなかなか態度がきつい。  それから第二に、経済問題につきましては、御案内のように、私も、いわゆる古井交渉が始まった後におきましても、重大な関心を持っておりますので、実は関係閣僚の問で相談をいたしました。これはきのうかおととい長谷川農林大臣からも記者会見で話が出たようでございますが、たとえば、モチ米にいたしましても、その他のものにいたしましても、要するに、さしむきこちらが買えるもの、ずいぶんこちらも無理をしなければならぬと思いますけれども、向こうがこれにどれほどの評価をしてくれるかは別といたしまして、こちらとしては誠意を尽くして、無理をしても向こうからの輸出品について最大限度の考慮を払おうということで、閣僚間でも申し合わせをしておるようなわけでございます。そういう背景で、さらに岡崎さんも行かれましたので、前段の問題はともかくといたしまして、後段の覚書貿易の妥結ということについては、私も大きな期待を持ち、かつ努力すべきことは大いに努力をしなければならない、かように考えておるわけでございますが、見通しが明るいというところまではちょっとまだまいらないようで、ここ数日のところが山ではないかと思っております。
  85. 曾禰益

    ○曽祢委員 この日中貿易については、私は、政府姿勢というものについて、中国側の言いどおりに一〇〇%賛成しているわけじゃありませんが、もっと弾力的な姿勢があっていいのじゃないかという基本的な考えがありますが、それはそれとして、日中だけの政治関係はなかなか台湾を含めたらむずかしい問題があろうということもわかるのでありまして、同時に、かなり大きな視野から中ソ関係、あるいはそういったような大きなコンテクストから見れば、日中関係は必ずしも台湾だけがこれの阻害原因として全部貿易関係までストップするというものではないのじゃないか、こういう意味におきまして、今後とも根強く田川君、古井君たちの交渉を実らせるように私も期待をして、本日の質問はこれで終わりたいと思います。
  86. 北澤直吉

    北澤委員長 伊藤惣助丸君。
  87. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 外務大臣に伺いたいのですが、佐藤総理は、沖繩の返還方式の中で、特に核と基地のあり方について、衆議院の予算委員会においては白紙論ということをずいぶん言ってまいりました。しかし、早期返還ならば現状に近い形ということを示唆した答弁もしたわけであります。ところが、参議院予算委員会では、中国やソ連の核兵器がどんな方向を向いているかも考えねばならないが、現状では沖繩に核は必要ないのではないか、そう米側に主張することは可能だ、こう述べたわけです。このことは、総理は、基本的に核抜きの交渉態度で臨む方針を示したものではないかと私たちは考えておりました。しかし、外務大臣は、過日の外務委員会等において、核つきか核抜きかあるいは自由使用を認めるかどうかを含めて、対米折衝の腹案はきまっていない、白紙だ、こういうふうに言われているわけです。これは参議院予算委員会での佐藤総理の発言と異なるものであって、核抜き、本土並みを対米交渉の出発点とすべきだという総理の発言から見れば、外務大臣答弁は非常に後退しておる。この点で総理大臣外務大臣の考えが違うのではないかと思うわけです。その点について外務大臣の見解を伺いたいわけです。
  88. 愛知揆一

    愛知国務大臣 総理大臣と私の考え方が違っているということは全然ございません。先ほども叶委員の御質問にお答えいたしましたが、一番最近の参議院の本会議における総理の答弁をごらんいただきましてもおわかりと思いますが、こういうふうに総理自身も言っております。「衆参両院の質疑を通じてお答えしたとおり、最終的には沖繩の基地の態様については依然として白紙であります。」ここに象徴されておりますように、対米交渉についての基地の態様等をめぐる問題については、私の表現をいま御引用になりましたが、私としてはまだ腹案をきめ切っておらない、これが現状でございまして、意見が違うということは全然ございません。
  89. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それでは伺いますが、佐藤総理が述べた、現状では沖繩に核は必要ないのではないか、そう米側に主張することは可能だ、この総理の発言と外務大臣の考えは同じでございますか。
  90. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは一々速記録等につきまして的確にその表現などについて検討していただきたいと思いますけれども、核抜き、本土並みで対米交渉をやるんだということをはっきり言明しているわけではございませんで、要するに、十七日の参議院における総理の答弁にもございますように、白紙でありますけれども、いろいろの国会内外の御論議を通じてだんだん私の考えも煮詰まりつつありますと、これは現状をそのまま率直に申し上げているわけでございます。その際に、こうこういう意見もある、こうこういう意見もあるということに触れまして、客観的に言っておるのでございまして、核抜き、本土並み交渉を腹案の原案にするということを断定的に申したわけではございませんで、これを要するに最終的に言えば、まだ私は白紙と申し上げざるを得ないということをすなおに表現している、かように私も考え、また申すまでもないことでございますが、総理との間では始終意見の交換もいたしておりますから、意見の食い違いということはございません。
  91. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 端的に伺いますが、外務大臣は、沖繩の核を取り除くことを前提として交渉するのかどうか、また、沖繩の核の現在の日本にとっての役割りというものについてどう判断されているか、その点も伺っておきたいと思います。
  92. 愛知揆一

    愛知国務大臣 よく申されますように、特別の取りきめがない限りは安保条約の、この委員会でも申し上げましたように、法体系というものは当然沖繩に適用される、これが自然な考え方でございましょう、こういうふうに考えるべきであって、そこで、特別の取りきめというものはどういうものかということが、また御論議の対象になっているわけでございますが、そういうことを含めて、私はいまのところ交渉の腹案というものをまだ固めてはおりません。  それから、これもしばしば引用するようで恐縮でございますが、総理自身の、まあいま現在において最終的な、一番最新の明らかにされた態度は、「今後、六月初旬に予定されている愛知外相の訪米、七月か八月に東京で行なわれる日米貿易経済合同委員会等を通じて、米国側の意向も打診しながら、私の訪米までには、政府沖繩返還に関する基本方針をきめる考えであります。」、これが政府の現在における最終的な態度であると御理解を願いたいと思います。
  93. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 外務大臣は、来たる六月二日に訪米してロジャーズ米国務長官と会談を持つようになっているようでありますが、その際、日本国民は核抜き早期返還を希望しているという意味を、外務大臣ははっきり言うのか言わないのか、また何らかの形で日本政府としての考えを伝えるという言い方をするのか、それとも単に沖繩に対する米国政府考え方をお伺いしてくるのか、その辺がわれわれ国民から見れば非常に重大な問題であると考えておるわけですが、その点について大臣から……。
  94. 愛知揆一

    愛知国務大臣 同時に、これもまたいまとしては一番最近の政府態度として言明いたしておりますことは、「相手のある外交交渉でありますから、政府としては交渉上のフリーハンドを維持することが、国益に沿うゆえんであると私は考えるからであります。」したがいまして、いまおあげになりましたようなことは私も十分頭に入っております。そうして日本国民の理解と支持がなければ、外交交渉沖繩返還というようなものが実りあるものにならないということは、私としても十分わきまえております。
  95. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 答弁が非常にあいまいですが、時間の関係上続けるわけにいかないわけですから、具体的に、あるならばある、ないならばない、こういうように答弁をはっきりと言っていただきたいと思うのです。そういう考えも入っているのか入っていないのか。そういう考えもあるけれども、よく十分承知しておるという考えもある、こう言っていただければいいわけであります。その点は国民が知りたがっている点ですね。だからもう一回、いま三点について伺ったわけですが、明らかにしてもらいたいと思います。
  96. 愛知揆一

    愛知国務大臣 タイミングということもございますし、ただいま申しましたようなくだりもありますから、こういう重大な問題は、この時点でイエスともノーとも申し上げることはできません。
  97. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 ニクソン政権発足後初めての日米貿易経済合同委員会が七月ごろ開かれると聞いておりますが、正式の日程はいつになっておりますか。
  98. 愛知揆一

    愛知国務大臣 何月何日ということ、それから何日間ということはまだきまっておりません。
  99. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 このときに佐藤・ロジャーズ会談は開かれるということが検討されているかどうか、その点。
  100. 愛知揆一

    愛知国務大臣 当然考えております。
  101. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この日米貿易経済合同委員会において当然沖繩の返還問題が取り上げられるわけだと思いますが、六月の外務大臣の訪米よりは一歩進んだ話し合いが持たれるだろう、このようにわれわれは考えております。そしてまた、非常にこの会談は重要な会談になるのではないかと思います。それまでに一応日本政府としての考え方を明らかにするのかしないのか、その点を承っておきたいと思います。
  102. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは先ほども申しましたように、それらを通じて最終的に総理自身の訪米のときまでに基本方針をきめたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  103. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 現在米韓合同演習が隣国で行なわれているわけでございますが、このフォーカス・レティナ空輸作戦と呼ばれる合同演習は、日本には直接関係はありませんが、隣接国として今回の演習は無視できない問題であると考えております。この演習に対して外務大臣はどう考えているか、伺いたいのです。
  104. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この問題も前々から御説明いたしておりますように、この演習を始めるという前に、まず、在ワシントンの大使館に対しまして米国政府から連絡がございました。また次いで、東京の米大使館から外務省に対しても連絡がございましたが、これは長距離の渡洋輸送の可能性、実現性ということを主たる目的にしてやる演習であって、日本とは直接関係はございません。こういうのがその内容の趣旨でございます。そういう目的でございますならば、それはそれなりで聞きおいてよろしいことでないかと思ったわけでございます。
  105. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 今回の演習によって、沖繩の米軍基地が補給基地として使用されておる、そういう事実があるようであります。このことについて沖繩の戦略的重要性が再認識されたのではないか、こういう報道もあるわけです。この点について外務大臣はどう考えておられるか。
  106. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはまあアメリカと韓国との合同演習ということになっておりますから、これについて、先ほど申しましたような経過ですから、私が何かとこれに対してコメントすることは差し控えたいと思いますが、いろいろな報道とか情報によりますと、これを計画した人たちがそのほかにどういう目的を持っていたんだろうかということについては、いろいろの観測があるようでございますが、そういったような観測や情報は私としても注目をいたしております。
  107. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 このことは、韓国においても非常に今回の大演習で果たした沖繩の役割りを特に強調し、またその重要性を言っているのであります。そして韓国の各紙もこのことを報道しております。特に韓国では沖繩の現体制維持の要望が非常に強いわけです。こういう隣国の沖繩に対する意思表示に対して、政府はあくまで国内問題として解決できる見通しを持っているのかどうか。また、台湾においても同様に、沖繩の核がアジアの大きな抑止力になっている、こういうことを主張しているわけです。このような沖繩に対して、近隣諸国が、多くの国家の関係する国際問題であるとしていろいろ論評しているようでありますけれども政府は、こうした近隣諸国との話し合いを持つ考えがあるのかどうか、その点について伺いたいわけです。
  108. 愛知揆一

    愛知国務大臣 政府としては、沖繩返還問題は日米間の問題でございますから、あくまで筋道としては日米間の交渉ということでいきたいと思います。それから、これも再々申し上げているとおり、条約的にいえば、沖繩の施政権が返還されますれば、これにかかわりのある米韓、米華、その他の条約の根拠というのはなくなるわけでございますから、あくまでこの返還問題というものは日米間の問題ということで処理をしなければならないし、また、日本が、それこそ皆さまも御激励いただいておりますように、日本の国益第一義的に日本がどうしなければならないか、どうあるべきかということで、これは処理に当たらなければならないと考えております。
  109. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 安保条約について伺いたいわけですが、来年一応再検討期を迎えるわけでありますが、日米政府も一応何らかの意思表示をすると思いますが、再検討という意味では、ことしはその前年でありますし、非常に重要な年なわけです。政府は、七〇年六月二十二日時点においての安保に対してまだはっきりしてないわけでありますが、いつごろきめる予定か、その点伺いたい。
  110. 愛知揆一

    愛知国務大臣 日米安保条約は、来年六月二十三日になりまして、そのまま何にもしなくとも、条約は国際的に平和が確立されるという両方の合意があるまでは有効につながるわけでございます。その途中におきまして廃棄通告ということはもちろんございますけれども考え方としては、そういうことが条約論として私は正しい考え方じゃないかと思います。同時に、沖繩の問題につきましては、これはやはり安保条約との関連がございますから、これに関連していろいろの話し合いが出ることは予想いたしております。
  111. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 ことし予定されております外交交渉において、沖繩問題とともに、いま外務大臣から取り上げられるようなお話がございましがが、六月の訪米の時点でこの問題を取り上げる考えでありますか。
  112. 愛知揆一

    愛知国務大臣 六月はまだ来年の六月から一年前でございますから、必ずしもその必要はないんじゃないかと思っております。
  113. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それじゃことしの秋に予定されております佐藤・ニクソン会談ですね、このときあたりにこの安保条約に対しての問題を考えるかどうか、その点を伺っておきたいわけです。
  114. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはただいま申しましたように、沖繩問題が最終的に合意に達するというと朱には、いまの私ども考え方では、安保条約が前提になっておりますから、当然相関連した問題として話し合いに出てくることは自然の成り行きではないかと思います。
  115. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 たとえば先ほど、何もしなければ、変更がなければそのままいくという外務大臣答弁がございましたが、その場合、全く変更せずに、特に第十条をそのままで、何らかの取りきめや交換公文等によって長期固定化をはかることが事実上できるかどうか。この点、条約局長から技術的な問題として伺っておきたいわけです。
  116. 佐藤正二

    ○佐藤(正二)政府委員 全く仮定の問題といたしまして、法律的にお答えいたしますれば、これは固定と申しますか、たとえばあと十年廃棄通告の権利を双方が持たないというような形をつくるといたしますれば、当然この十条の改定になるわけでございます。したがって、法律的にこの十条の拘束力を変えてしまうということになりますれば、これは当然安保条約の改定という形になると思います。
  117. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 外務大臣、その点で、いまの条約局長答弁がございましたが、もしそのような事態があれば改定もあり得る、こういうことですか。
  118. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いま条約局長が申し上げましたように、非常に仮定の問題として条約論的に言えばそういうことになる、これはそれだけのことではないかと思います。
  119. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 最後に一問だけ伺っておきたいのですが、事前協議の問題について、イエスと言うこともあり得る、こういうふうに外務大臣答弁なさっておりますが、その場合はどういう場合か、伺っておきたいのです。
  120. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これも十七日の総理の答弁がございますから、何か食い違いがあるというまた御懸念をお持ちになると困りますから、それを引用させていただきますが、「事前協議においては、ノーという場合もあり、イエスという場合もあるということは、岸内閣以来歴代政府の一貫した態度であります。それならば、どのような場合にノーと言い、どのような場合にイエスと言うのかということだと思いますが、それはあくまでも、わが国の国益の面から政府が自主的に判断してきめることであります。」
  121. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 以上で終わります。      ————◇—————
  122. 北澤直吉

    北澤委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  すなわち、当委員会中で審査中の国際通貨基金協定の改正の受諾について承認を求めるの件について、参考人の出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  123. 北澤直吉

    北澤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、日時及び人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  124. 北澤直吉

    北澤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会をいたします。     午後零時三十八分散会