○村井
政府委員 私たち、三月の、いわゆるゴールドプールを廃止して二重
価格制をとりましたあのコミュニケにもございますように、二重
価格制というものは、元来一物一価の法則に反しておるものでございますから、よほどの
国際協力がないとこの
制度は維持できない。しかし、ほかにいい方法もないし、これしかないということで踏み切ったのがこの二重
価格制度であるわけでございますが、そういった
意味におきまして、このうらはらをなす、つまり二重
価格制度というものが今後続いていくためには、相変わらず
アメリカの
国際収支が赤字あるいは
アメリカがインフレを続けるということは許されないということが、ちゃんと前提になっての議論でありますし、そういう前提のもとに、
各国がそれじゃ二重
価格制というものを維持するように
協力しましょう、こういうふうになったわけでありますし、さらにその二月前の一月には、いわゆる
国際収支対策といいまして、ジョンソンが三十億
ドル国際収支の改善という目標を打ち出しておるわけでございますが、そういった
国際収支改善ということは、内外からの要望になっておったわけでございますが、そこでやっと六月に増税案というものが日の目を見たということは先生も御承知のとおりでございますが、その以後の足取りを見てみますと、なかなか思ったようなインフレ収束というものが行なわれていない。これは現実の昨年の姿であったかと思いますが、しかしながら、そうかといって、この
国際収支の努力にかかわらず、なかなか改善してこない、そういう事態を力をもってと申しますか、
輸入制限をやるとかいうようなこと、あるいはそれほどでないにいたしましても、国境税、BTAでございますが、そういったものを駆使して収支改善をはかる、これは、何と申しましても本道からはずれておるということも十分承知しておるのではないか。と申しますのは、増税案を通しましたあとも、かなり財政の削減、御承知のとおり五十億
ドルの財政の削減をいたしましたし、あれからの金融面での
アメリカの引き締めというものはかなりなものでございまして、高金利がずっと続いておる。量的な引き締めもかなり思い切ってやっておるという事態でございまして、なるべくならそういう力を持った
輸入サイドの制限ということはできればやめたいという気持ちは、わりあいあらわれておるというふうに私たちは見ておるわけでございます。新
政権になりましてからの
動きも、やはりその
動きを受け継いでおるのみならず、さらに、やはりできれば、対外投資とかいうようなものを抑制しておったああいう旧
政権下の、つまり、水ぎわでいろいろ
措置する、
国際収支の改善を水ぎわでシャットアウトするというようなことではなくて、むしろ本格的なインフレ抑制と総
需要の引き締めという態勢でもって
国際収支の改善をはかりたいということは、旧
政権にも増してより多く、より強くあらわれておると思います。そのときに、この
SDRの問題が出てくるわけでございますが、
SDRが、そうかといって、
国際収支の改善努力をなおざりにして、その穴埋めをするということであっては、これはたまらない。これは日本のみならず、EECでも、これはおかしいじゃないか、そういうことじゃなくして、
アメリカというものは、ほんとうに自分の国のインフレあるいは
国際収支を改善する
経済節度というものをどの程度発揮するのだ、なるほど増税案はわかったけれども、これでなかなかよくなっていないとすると、もっと早く
国際収支を改善するための
経済運営の節度というものをどこで働かすのだというふうに言っておりますし、私たちはEECにも増して、その方向で機会あるごとにそういう主張を
アメリカに対してもしておるわけでございます。
ところで、そうなってまいりましたときに、いよいよ
SDR協定が成立する。今度はその発動をするという段取りになるわけでございますが、そこで一呼吸実はございまして、発動するには、この
アメリカの
国際収支——
協定上は
国際収支の改善というふうになっておりますけれども、
アメリカの
国際収支というものは、一体改善の方向に向かうのか、向かわないのか。何もすぐ黒字を出せというわけではありません。現にそういう
意味でございましたら、昨年少しではありましたが、黒字を出しておるわけでございますが、基本的に
国際収支の改善が行なわれているかどうかということを、みんなが集まりまして、そこで議論をいたしまして、これはなるほど
アメリカの
国際収支の改善、
経済運営の節度というものが達成されている、あるいは遂行されているという認識が得られましたならば、そこで八〇%の要件を満たしておれば、この発動が行なわれるという段取りになるわけでございますので、私たちは、
SDRはそういう
経済運営の節度というものを前提としながらやるのであるけれども、そうかといって、ただ表づらだけの
国際収支改善、それをいわんや
輸入制限とかそういったものに訴えるという
態度は、これは厳重に排斥しながら、その
SDRを扱っていきたい、こう思うわけでございます。