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1969-02-17 第61回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和四十四年二月十七日(月曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 北澤 直吉君    理事 青木 正久君 理事 秋田 大助君    理事 藏内 修治君 理事 田中 榮一君    理事 山田 久就君 理事 戸叶 里子君    理事 穗積 七郎君 理事 曽祢  益君       小泉 純也君    永田 亮一君      橋本登美三郎君    福田 篤泰君       宮澤 喜一君    毛利 松平君       石橋 政嗣君    大柴 滋夫君       堂森 芳夫君    松本 七郎君       山本 幸一君    渡部 一郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 愛知 揆一君  出席政府委員         科学技術庁原子         力局長     梅澤 邦臣君         外務政務次官  田中 六助君         外務大臣官房長 齋藤 鎭男君         外務省アジア局         長       須之部量三君         外務省アメリカ         局長      東郷 文彦君         外務省欧亜局長 有田 圭輔君         外務省経済協力         局長      上田 常光君         外務省条約局長 佐藤 正二君         外務省国際連合         局長      重光  晶君         水産庁次長   森沢 基吉君  委員外出席者         外務省国際連合         局外務参事官  小木曾本雄君     ————————————— 二月六日  委員斎藤寿夫辞任につき、その補欠として世  耕政隆君が議長指名委員に選任された。 同月七日  委員永田亮一辞任につき、その補欠として野  田卯一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員野田卯一辞任につき、その補欠として永  田亮一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 二月十七日  国際通貨基金協定の改正の受諾について承認を  求めるの件(条約第一号) 同月十二日  世界連邦建設の決議に関する請願(中山マサ君  紹介)(第六〇六号)  同(門司亮紹介)(第六三四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 北澤委員長(北澤直吉)

    北澤委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。秋田大助君。
  3. 秋田委員(秋田大助)

    秋田委員 きのうの日曜日の朝、私は、何げなくテレビのスイッチを切りました。ところが、ちょうど十二チャンネルの「三人よれば」という番組が映りました。で、近藤日出造さん、秋山ちえ子さん、それに高橋武彦氏の三人が中国問題を論じておったところでございます。お三方とも、台湾中共政府がそれぞれ一つ中国を主張して譲らないところに、この中共承認問題の困難性があり、特に日本が苦しい立場に追い込まれている点にも深い理解を示されておるようでありまして、私としても感銘を受けた次第でございまするが、最後に、秋山さんがこういうことをつけ加えました。せめてわが国は、この際重要事項指定方式提案国の仲間に入ることだけはやめられないものだろうか、わが国アメリカから何か頼まれているんじゃないでしょうかというような疑問を投げかけられたのでございます。この最後の一言が視聴者に及ぼす影響は、私は無視できないと思うのであります。この疑問にこたえて、自己の方針を明らかにし、国民理解と納得を受け得るようつとめることは、この際わが政府に課せられた義務ではないかと思うのでございます。  中共台湾から遠く離れた、たとえばアフリカの新興国などにとりましては、直接の利害関係はこの中共承認問題というものには薄いでありましょうし、中共承認問題の焦点と本質を正確に把握理解することは比較的むずかしいことではないかと思うのでございます。したがって、わが国が、この際長年の方針を一てきいたしまして、重要事項指定方式提案国たることをやめますれば、このこと自体、中共承認してももう差しつかえない時期にきたんじゃないかという誤解をこれらの国々に与えるような危険がないでしょうか。いわゆるミスリードの結果になる心配があるように思われるのでございます。その結果、中共国連加入問題が多数決でもって国連で議決されるようなことになりますると、台湾は申すに及ばず、極東、ひいては世界の平和と安定に対して与える悪影響はけだしはかり得ないものがございましょう。この問題は、現段階では非常にデリケートで解決困難な問題で、台湾中共当事者間の話し合いに当分まかせることにして、時期の熟するのを待つよりほかにわれわれにとりましてとるべき良策がないと思われるのでございますが、しかし、最近、カナダイタリア中共承認動きを示して、ほかにもこれに追随する国の出現が予想されるところでございます。近い将来、中共承認国の数が次第にふえ、また七億五千万の人口と広大な領土を有する中共国連に入れなければ、国連世界機構としての意義と役割りを果たせなくなるのではなかろうかという国際世論も次第に高まりまして、このような情勢から、本年秋の国連総会において重要事項指定方式提案いたしましても、過半数の支持が受けられるやいなや疑問視する向きもありますが、これらの諸点に関し、政府の御所見並びに御方針を承りたいと思います。
  4. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 この問題は、ただいまもお話がございましたように、非常に微妙で複雑な問題であると考えるわけでございまして、特に最近イタリアあるいはカナダ等のいろいろの動きもございますので、どういうふうに日本として対処したらいいかということが、日本の国内のいろいろの方々からも大きな関心を持たれている問題でございます。  いまさら私からそういう情勢について申し上げるまでもないと思いますが、一応私の考えておりますことを申し上げますと、大体次のようなことになろうかと思います。  やはりイタリアカナダ等動向を見てみましても、中国の本土と、それから台湾と、この関係に対してどういうふうにやっていったらいいか、これに対して中共並びに国民政府がどういう反響を示すであろうかというようなことが、一つ焦点にもなっているようでございまして、こういう点から見ましても、また日本としては、お隣の国で大きな人口を有している、それだけに、その中国大陸に対し、あるいは台湾に対してどういう態度をとるかということは、ますますもってわれわれとしても、ほかの国の動向を見ても、一段と真剣に、慎重に考えざるを得ないというように思います。これが第一の問題でございます。  そこで、いまさらこれも申し上げるまでもないと思いますけれどもわが国としては、そういう状態の中で、中共との問にもずいぶんいろいろと多くの接触の門戸が開かれておると思いますが、現に自由民主党の有力な議員も往来をいたしております。新聞記者の交換もできておりますし、また覚え書き貿易等相当の成績をあげております。これらの点については、こういう関係を一そう広く密接にしていきたい、これがいわゆる政経分離という点から申しましても、日本の従来からの考え方を伸ばしていくことは何ら差しつかえないことであると考えているわけでございます。  問題は、いわゆる一つ中国という中共並びに国民政府双方の主張に対してどういうふうに対処していくかということ、これは何と申しましても、国民政府とは長い関係があり、またいろいろと密接な関係もございますので、政治的に国交という点から考えれば、何としてもこれを第一義に重大視していかなければなりませんし、同時に、一つ中国論に対しましては、これはやはり日本自身の問題ではなくて、中国側のいわば内政の問題こういうふうに理解していかなければならぬのではなかろうか、こういう点から、私どもも、最善の選択はどうしていくかということで真剣な検討をいたしておる、これは御承知のとおりでございます。  そこで、具体的ないまのお尋ねの、ことしの秋の国連総会においてどういう態度をとるか、この点につきましては、私は率直に申しまして、重要事項指定方式提案国になるかどうかというような点は、まだそれに対してはっきりした態度というものを表明する時期ではない、むしろ、この大きな問題に対して日本側としてどう考えるかということの基本態度というものが大切なのではなかろうかと考えております。したがいまして、国連総会においてどういう態度をとるか、重要事項指定方式提案国になるかどうかというようなことについては、中国をめぐる内外の情勢、また日本立場からいって、どういう態度をとればいいかということを、いましばらく慎重に、真剣に検討してからきめていいのではなかろうか、私はこういうふうな率直な気持ちを持っておる次第でございます。
  5. 秋田委員(秋田大助)

    秋田委員 いろいろこの問題についても詳しくお尋ねしたい点がございますけれども、先を急ぎますので、次の問題に移ります。政府のただいまの御答弁は大体了承いたしました。十分国益を慎重に御検討の上、態度をきめていただくことをお願い申し上げておきます。  政府は、従来いわゆる政経分離の原則に基づきまして、中共との間には民間レベルでの各種交渉を促進してこられましたが、今後中共との間に、日中問の懸案について政府間の話し合いを開始するお考えはないか、お尋ねをいたします。たとえば日中問でのあるいは中共を経由しての定期航空路線開設の希望が従来しばしば報ぜられてまいりましたが、これらの要望は今後の課題といたしましても、さしあたり相互臨時便を飛ばすことは考えられないのでございましょうか、いかがでございますか。  もう一つ文化革命が始まってから現在までに、多数の邦人中共地区逮捕あるいは抑留され、行くえ不明が伝えられておる者もございますが、その詳細につきまして御説明をいただけたらと思います。なお、中共逮捕抑留された人々の留守家族関係者はたいへん心配しておりまして、国民もまた大きな関心を寄せておるのでございまして、この際、政府がいかなる対策をお持ちであるか、どういう措置をこれらの事件に対してとろうとしておるか、これらの点もお伺いしたいと存じます。
  6. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 まず第一の航空問題でございますけれども、これについては、私の承知しておりますところでは、ずいぶん前にも一度話題になったことがあったようでございます。つまり、何らかの目的で相当大ぜいの人が一時に中共日本から渡航するとか、あるいは中共側から日本に渡航するというようなときに、せめて臨時便というようなものを飛ばすことを相互にすることはできないだろうか。これは私は確かに一つの問題だろうと思うのでございまして、中共側が積極的に反応を示す、あるいは積極的な提案があるというような場合におきましては、これをテークアップして話に乗ってしかるべき問題ではなかろうか、こういう意味で、何と申しますか、現在のところ、話題としては相当関心を持っているわけでございます。ただ、航空の問題もなかなかめんどうな点があって、たとえば双方の飛行場におけるいろいろの施設とか、あるいは航路の管制であるとか、いろいろ技術的な問題もあるようでございますから、一つ話題としてテークアップはできようかと思いますけれども、技術的ないろいろの難点もあるようでございます。したがって、いまのところは、何といいますか、話題として関心を持っているという状況でございます。  それから、第二の抑留者の問題でございますが、これは新聞記者、商社の人等々合わせまして、大体十三人くらいが抑留され、あるいは行くえ不明というような状況にあるようでございます。これはただいまもお話がございましたが、本人はもちろん、家族人たちの心情を考えれば、ほんとにいっても立ってもいられないような気持ちです。何とかしてお助けをしたいということで、昨年来、外務省としても、外交機関をなし得る限り総動員をいたしまして、なし得る限りの手を尽くしておりますけれども、いまだ手ごたえが全然ございませんのは、たいへん遺憾であると思います。これも率直に申し上げますが、一両日前に古井、田川両衆議院議員が渡航するに際しましても、私からも重ねて協力お願いをいたしました。従来からもこれらの方々が非常に骨を折ってくださっておるのですが、協力お願いをし、そしてこういう人道的な問題について、幸いにして中共側政府間の話し合いに取り上げてやろうというような態度に出てくれるならば、これはぜひ私どもとしてもそういう話し合いに積極的にいつでも応ずる、これがいわゆる政府間交渉という形になりますれば、これは私はたいへんけっこうだというよりは、そういうふうなことをやっても本件の解決に当たりたい、こういう姿勢でおるわけでございまして、この抑留者問題につきましては、できるだけすみやかに、何といいますか、いい方向が出てくることを心から期待しておるわけでございます。
  7. 秋田委員(秋田大助)

    秋田委員 日中問臨時飛行便を飛ばすということ、これはもう少し積極的にひとつお考え願ってはどうかと思います。日中問友好親善を増すばかりでなく、中共国際社会に入っていくきっかけもつくれると思いますので、前向きにお考えを願いたいと思います。  なお、後者の邦人逮捕抑留の問題、この人道問題の解決について、政府が積極的なお考えを持っておることは喜ばしいのですが、いまだ中共から何らの反応が示されないというのは、まことに残念でございますが、これはやはり中共国際社会に仲間入りのきっかけをつくる意味において重要な問題だと思いますので、なお積極的に政府において御努力あらんことを希望いたしておきます。  次に、ベトナム問題に入りたいと思います。  すべての関係当事者出席のもとに拡大パリ会議が開会されるに至りましたことは、一応交渉和平実現に大きく前進を始めたいということを示すもので、喜ばしいと存じます。しかし、とりあえず非武装地帯の復活、外国軍隊相互撤退等の軍事問題から解決をしていこう、これが先決である、こう主張する米国あるいは南越側と、米軍撤退をまず要求し、その他の軍事問題の解決政治問題の解決から切り離し得ないと主張する共産側との間に、大きな立場の隔たりがございまして、パリ会談前途はなお多難を予想されますが、和平実現にはいかなるお見通しを立てておるか、政府の御見解を伺いたいと同時に、また、拡大パリ会談の行くえを実際に決定するものは、何といっても現地情勢推移いかんであろうと存じますが、共産側政治闘争活発化しつつあるに対しまして、米・南越側軍事体制相当固い、共産側はこの点やや不利であるというふうに聞いておりますが、政府は、かかる南越政治軍事情勢が今後どのように推移すると見ておられるか、これまた御見解を承っておきたいと思います。  さらに、ベトナム戦争の帰趨はアジア全体の将来をも左右すると思われますが、日本としても、ベトナム問題の解決態様に対しましては、重大な関心を寄せておるところであります。政府は、この和平実現に至る過程においてどういう役割りを果たす御用意がありますか。  また、和平実現後のベトナム及びその周辺諸国に対する戦災復興援助等について、どういう具体策考えておられるか。たとえば復興基金設定というようなこと等はどうでありましょうか、御見解を承りたい。  また、ベトナム問題の解決には、ベトナム及びその周辺諸国の将来のあり方について何らかの国際保障を与えることが必要と考えられますが、政府はこのような国際保障参加する意向をお持ちでしょうか。将来ベトナム和平について当事者間に合意が成立した場合に、これを保障する意味国際会議の開催が予想されますが、この会議には、アジアの平和と安定に関心を有するできるだけ多くの国の参加が望まれるのでございます。ところが、共産側徹底抗戦を唱えてきた中共が、将来こういう国際会議にはたして参加するかどうか疑問でありますが、政府は、中共ベトナム和平国際会議参加の問題はどう見ておられるか、この点もあわせてお伺いをいたします。
  8. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 拡大パリ会議見通しの問題でございますけれども、これはそもそも、双方がいわば局地的なということになりましょうが、ともかく軍事的な手段によっては解決することができないということを認めて、交渉を通じての政治的な解決に踏み切っている、こういうふうに私は理解してしかるべきではないかと思います。そういう観点から、当事者双方とも、もはや武力によって再び争いを繰り返すというようなことに逆戻りすることはまずまずあるまい、また、そうなることを期待するのが、日本のみならず各国期待ではないかと思います。ただ、従来の経過経過でありますだけに、まだ前途は多難であり、またその間においてはあるいはある程度の軍事的な行動というものがまだあるのではなかろうかとも予想されますけれども、現在の小康状態というものが続いておるうちに実りのある妥結ができるようにということを、私どもとしては心から期待しておるわけであります。  その後における問題としては、いろいろなことが考えられると思います。会談の成り行きあるいはその成果によって、いろいろのことが考えられると思いますけれども、たとえば一つは、休戦の場合に、どういう機関がこれを監視するかということも当然出てくる問題じゃないかと思います。あるいはまた、四当事者でない国際会議というものも、おそらくは当然一つの線として出てくるであろうかと思われます。休戦監視機構等につきましては、前々から政府態度というものは明らかにしておるつもりでございますけれども日本の法制の許す限りにおいて、ということは、たとえば若干の資金的な援助とか、あるいは機材の提供であるとか、あるいはシビリアンに求められれば若干の協力をするというようなことは、ぜひ協力をしたい。その態様あるいは形態等基本がまだきまっておりませんから、そのきまり方に応じてのことでございますが、考え方としてはそういう方向に行くべきじゃないかと思います。  それから、国際会議等、これもいかなる性格の、いかなる使命のものができるかわかりませんが、国際会議というようなことになれば、日本も求められれば喜んでこれに参加をする。また、中共参加の問題でございますが、これも中共参加するということは、より広い立場からアジアの平和を招来するという意味からいって望ましいことである、私はそう考えるわけでございますが、これはかかって中共側の今後の外交姿勢、あるいはその後の中共国際政治に対する姿勢の問題でもあろうかと思いますので、私は期待をいたしますけれども、どういうことになるかということについては、何とも申し上げられないのではなかろうかと存じます。  それからその次には、いわゆるポストベトナム復興についての協力の態勢でございますが、私はこれらの点については、大体三木前大臣の提唱したような考え方を引き続いて尊重しといいますか、そういう考え方を続けていきたいと思っております。たとえば復興基金設定というようなこと、これはやはり日本の独力だけではもちろんできないことでありますので、各国のいろいろの面の協力が必要だと思いますけれども考え方としては、従来からの方針による考え方を続け、かつ、これを発展的に考えていきたい。さしあたりのところでいえば、難民救済をはじめ、いろいろすぐにやらなければならぬことが予想されると思いますが、それらの中で、具体的にすぐやらなければならない点については、たとえば住宅の建設等につきましては、四十四年度の予算の上にも計上いたしておきましたので、御審議をお願いいたしたいと思います。また、状況推移に応じまして、これらの点につきましては、所要の措置を講じていくことに前向きに取り組んでまいりたい。  大体のところを申し上げますと、以上のとおりでございます。
  9. 秋田委員(秋田大助)

    秋田委員 ベトナム和平後は、アジア平和のために日本に課せられた使命は、発展途上国に対するわが国よりの経済援助を強化することにあると思います。わが国としましては、戦争を否定しているたてまえから、軍事面より、経済技術等協力を通じて、ベトナム復興、その他アジア諸民族の民生の安定向上、その繁栄に協力すべきであると信じておりますが、これらの問題については、時間の関係上、省略をいたします。  次に、ベトナム問題は、おそかれ早かれ和平実現を見るでございましょうが、その後の東南アジア情勢はどんなふうに展開するであろうか。また、これに対しまして、わが国はどういうふうに対処すべきでありましょうか。これが問題でございます。ソ連並び中共は、北越及び解放戦線に大量の経済軍事援助を与えてきたことは、私は明白な事実であろうと思いますが、ベトナムに何らかの形で和平がもたらされたあとは、ベトナム以外の地域、たとえば朝鮮半島その他で新たに紛争が勃発する危険はないでございましょうか。現に本年一月初頭、タイ領土の北部で、タイ解放戦線結成が宣言されたという新聞報道を私は読んだ記憶がございます。また、韓国の東海岸で、北鮮との国境に近い韓国の数カ村が、北朝鮮のゲリラによって解放されたという情報も伝えられております。これらの事件は、従来からありました北鮮ゲリラ韓国領土内における活動の活発化とともに、世人の注目を集めておるところでございますが、これらのことがベトナム戦にかわって第二、第三戦線結成につながるものでなければ幸いであろうと思うのであります。  中ソ両国は、今後アジア地域におきまして、自国の勢力侵透をはかりつつ、お互いにアジアにおけるヘゲモニー争いに乗り出して、中ソの抗争は一そう深刻化していくのではないかと思うのでございます。さきに中共は、ワルシャワにおける米中大使級会談を久しぶりに再開しようじゃないかとアメリカ提案し、米側はこれをいれて、二月二十日を期してこの再開を見るに至りましたことは、一応歓迎すべきことに見えますが、この会談の結果、米中関係が急速に改善の方向に向かうものとして期待ができるでございましょうか、参考までに政府の御意見も伺っておきたいと思います。また、中共は、東欧にまで触手を伸ばして、アルバニアへの軍事援助を約束しております。ソ連に対抗するものであることは言うまでもございません。中共からインドネシア共産ゲリラへの援助も相変わらず伝えられておるのでございます。要するに、いままでのところ、中共が従前の閉鎖的で非妥協的な非国際協調性を改めつつあるという証拠が、遺憾ながらどこにも認められないのでございます。  ソ連は一体どうでありましょうか。昨年十月三十日に、ソ連対外秘密警察機構に所属するといわれておりますビクトル・ルイスといわれる人物が、台湾への入国を許され、台湾蒋経国国防相秘密裏会談したという事実が伝えられております。長い間反ソ一辺倒であった蒋介石政権ソ連との交流は、一種の雪解けとして喜ぶべきでありましょうが、注目を要するところであろうと存じます。このほか、ソ連は、中共を出し抜いて、最近タイ、シンガポール、マレーシア、フィリピン、インドネシア等と、通商上、外交接触を深めておる事実があるようでございます。また最近、ソ連漁船団太平洋沿岸のわが領海近く、また大西洋のアメリカ領海近くにしきりに出没しているという新聞記事も目につくところでございます。それよりも、ソ連黒海艦隊地中海回送あるいはウラジオ艦隊インド洋進出は、世界注目の的であります。一方、陸路、ソ連は、ハイウエーの建設等を通じて、インド、パキスタン、イラン等に接近をはかり、外交上、通商上にもこれらの諸国接触を密にしておるようであります。ことに中東、アラブ諸国への進出は目ざましいものがございまして、いまやスエズ運河ソ連の手中にあるのではないかとすら極言される方がございます。また、アルジェリアと特殊関係を結んだということも宣伝されておるのでございます。  われわれは、決して共産側をいたずらに敵視するものではございませんが、これらの国際情勢の客観的事実を前にして、自国とわが国周辺の安全と平和の維持に関しましては、万全の策を怠ることはできないと思うのでございます。  このような国際情勢に備えて、アメリカ韓国では、最近しきりにASPACを軍事同盟化したらどうだろうということがいわれておるようでございます。これを提唱する心情はわれわれにも十分理解できるのでありますが、憲法によりまして戦争を否定し、自衛隊の海外派兵を禁じておりまするわが国が、これらの提言に賛成することはできないと思います。また参加すべきではないと私は思うのであります。また、一九七〇年以後における英軍のスエズ以東からの撤兵、これが実施に伴いまして、これを補完するためにSEATOやあるいはANZUS体制に何らかの改善工作が試みられるとも想像されるのでありますが、しかし、これらの体制にもわが国は入れない。また入るべきものではないと私は思うのであります。  今日の国際情勢、特にアジアの諸情勢にかんがみまして、日米安保条約の堅持以外に日本のとる、べき道はないと確信するのでございますが、これらの諸点につきまして、外務大臣の御所見を伺い、あわせて政府方針を伺いたいと存ずるのでございます。
  10. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 ただいまのお尊ねの中で、具体的な問題と、全体を通ずる大きな構想といいますか、考え方の問題と、二つにわたっていると思いますけれども、たとえば米中関係の問題としては、米中大使会議がそのうち開かれることになろうかもしれない。これも開かれることは久しぶりでございますから、私も非常な関心をもって見ているわけでございますが、どうもしかし見ておりますところ、その後の状況から申しましても、従来の経過から申しましても、最近に実りの多いようなムードが出てくるようには私には必ずしも思えないわけでございまして、先ほどお尋ねの中にもございましたような問題を含んでおります関係もあって、たとえば、二方では台湾状態というものを非常に大切なものであるという考え方でありますし、一方は全然これを認めないという立場に立っておるというようなことをはじめとして、従来からの考え方がなかなか解けあうことはないのではなかろうか。また、このごろになりまして、ニクソン政権が誕生してから、中共側としては、ニクソン政権に対して相当強い批判というか、非難的な態度を明らかにしているというようなことから見ましても、すぐにこういう点が打開されてくるようには私は見ておらないわけでございます。  それから、米ソ関係はともかくとして、中ソ関係、これもなかなか微妙なところであると思いますが、いま形にあらわれておりますところでは、ますますこの対立というものがひどいかっこうになるおそれというか、そうなるような状況ではなかろうかとも判断されます。  それから一方、中東問題は、これまたなかなか日本としても注意を怠ることはできないわけでございまして、ソ連一つ提案を最近にもやっているようでございますけれども一つの打開の方向に向ける過程としての努力のあとは、ソ連提案にもかなり見とれますので、その点はけっこうだと思いますけれども、はたして終極的に、大きなイスラエル、アラブ問の紛争、これは従来からの基本的な対立かと思いますけれども、そういうところが数歩前進するようになってくれればいいがな、しかし、なかなかそこまではいかないのではなかろうかというふうにも判断されるわけでございます。  そういったようなことを総じて申しますと、いろいろの努力が各国問において行なわれている。いろいろの陣営の中にそれぞれいろいろな平和への動きというようなものの努力も見られるようであります。そして、これをいわゆる多極化というようなことばで呼ぶ向きもありますけれども、やはり基本的には二極というか、東西の対立というか、そういうふうな対立関係というものは、依然として非常に強い、こう見ることが妥当ではなかろうか、私はこういうふうに考えるわけでございまして、そういう点から申しましても、安保体制というものが、国民的に日本の国益として、これがやはり一番重要な、また最も適切な日本としての選択である、こういう基本的な観念に立って外交を展開していくべきである、私はそういうふうに考えるわけでございます。  同時に、しばしばいろいろの機会で申し上げておりますように、日本国憲法の精神、世界にユニークな憲法の精神というものが、やはりわれわれとして一番大切なことである。したがって、ASPACの問題あるいはSEATOの問題等の取り上げ方も、やはりこの基本精神で貫いていかなければならない。日本が戦力あるいは武力によって協力をするというような考え方は絶対にとるべきでない、こういうふうに考えております。幸いに、たとえばASPACの問題にいたしましても、ただいま御指摘のように、ある国等においていろいろな意見はあるようでありますけれども、ASPACにつきましては、成立以来、また今日におきましても、平和的な相互協力、また平和的な事業の推進についての協力、あるいはそういう面での政治的な話し合いの場にする、この考え方が確立されてきている。ASPACの場においてそういう意見がどこからも出てきていないということは、日本のこういう考え方がかなりしみ込んで、支配的に定着しつつあるのではないか。どうかしてこれを確固たるものとして伸ばしていきたい、あくまで平和的な機構である、こういうことをあくまで伸ばしていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。  要するに、考え方としては、世界はやはり現在においても二極の対立である、その状態を踏まえて、しかし日本としてとるべき方向は、最も平和的なやり方である、また国益をそういう考え方、そういう条件のもとに貫いていくのには、安保体制というものが最も賢明な選択である、こういうふうな考え方でいることをもってお答えにかえたいと存じます。
  11. 秋田委員(秋田大助)

    秋田委員 外相の御答弁、大体私と意見が一致することを喜ぶものでございますが、時間の関係上先へ進みます。  以上のような国際情勢アジア情勢を考慮いたしまして、私どもは、この際米軍わが国及び極東から撤退したほうがいいのかどうか、あるいはその兵力をどういうふうにかげんしたらいいのかどうか、こういう点について、真剣にひとつ検討すべきときに来ておると思うのであります。米軍の存在こそがかえって共産諸国を刺激いたしまして、平和にマイナスになるんだという見解を持っておられる方もあるようでございます。平和と安全は、単に強大な軍事力があったら確保されるんだ、そう単純に考えられるべきものではないでございましょう。国家や民族間の相互信頼、あるいは平和に対する強い意思と精神面、心理面を十分考慮しなければならないことは申すまでもありませんけれども、しかし、われわれは現在ユートピアにいるのではないのでございまして、自国とその周辺の安全のために、責任のある政府と、責任のある政党といたしましては、十分に安全度の余裕をとった予防策を講ずるこの現実の必要に、目をおおうことはできないと思うのでございます。非武装中立論の高い理想、またその理論に、われわれといたしましても理解を持つものでございますが、しかし、その思想をそのままこの現実の政策として引き直すのには、世界はあまりにもきびしい。また、日米安保の段階的解消論や有事駐留論につきましても、やはり現実の見方が甘いのではないかというように考えられるのでございますが、政府の御見解を、また御所信を承りたいと存ずるのでございます。  現下の激動じ、流動してやまないきびしい国際情勢にかんがみまして、国連の安全保障維持機構がいまだ十分でない今日、わが国は現行の日米安保条約をここ当分堅持し、その体制を原則とすべきものと考えざるを得ないのであります。しこうして、わが国の一部には、日米安保条約日本戦争に巻き込む危険があるという反論があるのでありますが、日米安保条約第六条のいわゆる極東条項は、わが国もこれを必要と認め、事前協議に際しては、わが国としては、わが国の国益の見地に立って自主的に判断して対処することになっておるのであります。わが国がこのような自主性を堅持しておる限りにおきましては、いわゆる極東条項がありましても、何ら不安はないと信じますが、政府見解はいかがでございましょうか、お尋ねいたします。
  12. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 私は日ごろから考えており、主張し、またその実現に努力をしておるつもりでございますが、一番基本の問題は、私は、平和ということ、安全ということ、自由を守るということが、日本としての一番大事なことではないかと思います。したがって、ぎりぎりのところ、考えられる可能性のある日本に対する脅威というものを基本的に起こらないようにする、言いかえてみれば、戦争を起こらないように未然に防止する万全の策を講ずる、こういうことが今後の日本の国益を伸ばしていく上においても一番必要なこと、これは国家存立の基本要件であると私ども考えているわけでございます。そういう点から申しますると、いわゆる戦争を未然に防止する抑止力の力、これに私はたよってまいりたい。これは実績の上においてもそのメリットは証明されているし、また今日において、あるいは明日におきましても、その考え方が正しいのである、こう考えておりますから、いわんや戦争日本が巻き込まれるというようなことを起こすようなことは絶対にないようにするということが、私は基本であると思います。私は、現状の体制から見れば、こういうかまえをしておれば脅威というものが周辺に起こらないんだ、このかまえを捨てれば脅威というものが相関的に考えられる可能性がある。その可能性に対して十分の守りをするという意味において、先ほど申しましたが、安保体制というものの意義がある、私はこういうふうな基本的な考え方でございます。  したがいまして、戦争に巻き込まれるおそれがあるということが一方においてどうしても考えられるのだという方があれば、そういうことが起こらないような十分の措置をまたしていくことが、これはまた当然必要でございます。そういう面におきましても、従来もそうでありましたように、今後におきましても、十分な配慮をしていくということがその基本であると思います。私は、戦争に巻き込まれるとか、あるいは安保条約が、一部の方から言われると、これはアメリカの帝国主義の世界戦略体制の一環であって、そのために日本戦争に巻き込まれるという考え方は、私は絶対にとりません。私は、日米安保条約は、いま申しましたように、日本の安全や自由を確保するために必要な日本の第一義的な国益に合うものである、そうしてこの考え方協力をするということがアメリカのまた国益である、その合意によって成立しておるものが日米安保条約である。私は、この点については、かたく信念として考えておることをあわせて申し上げたいと思います。
  13. 秋田委員(秋田大助)

    秋田委員 時間の関係上、最後に、沖繩返還の問題について御質疑を申し上げまして、私の質問を終わることにいたします。  佐藤・ジョンソン共同声明に盛られましたアメリカの沖繩返還に対する政策は、ニクソン政権になりましても変わりないものであると私は確信をいたしておりますが、いかがでございましょう。沖繩の早期返還は、沖繩住民を含め、わが国民全体の一致した願望でありまして、わが党もまた強くこの実現を期しておるところであります。ただ、返還後の沖繩における米軍基地のあり方につきましては、わが国の安全と極東の平和のためにどうあるべきであるかということを、わが国といたしましてはわが国独自の立場に立ちまして、自主的に冷静に、慎重に検討した上で、国民の納得する結論を下しまして、日米両国それぞれの世論及び国民感情の調和点を見出すべきものであると考えております。しこうして、この合意に達するためには、この際、軍事及び外交の専門家よりなる日米合同委員会を急速に開催をいたしまして、ここで日米の見解について煮詰める必要があると思います。この際、何にも増してこの種の日米合同委員会を開催する急務を私は痛感いたすものでありますが、外務大臣の御所見はいかがでございましょうか。  最後に、沖繩の核と兵力の自由使用の問題につきまして、一言私見を申し述べてみたいと存じます。  科学技術と兵器の発達した現段階におきましては、私は、沖繩に核を置くことは、必ずしも安全保障の見地からいっても絶対必要要件ではないのではないかと思っております。ミニットマンやポラリス潜水艦が存在しておるのでありますから、いわゆる沖繩の核抜きという状態実現をいたしましても、アメリカの核の戦争抑止力は、それによっていささかたりとも削減を見るというようなものではないのではないかと私は思うのであります。したがいまして、日米の専門家の間で、あるいはトップレベルの政治家の間で十分に話し合えば、核抜きの点につきましては、これは私の所見でございますが、米側の同意を取りつけることは、さして困難ではないと私は思っております。また、それが当然日米の将来のため、世界平和のためにもとるべき処置ではなかろうかと私は考えておるのでございます。  なお、いわゆるアメリカ軍の沖繩における自由使用の問題でございますが、沖繩返還によりまして、日米安保条約は当然沖繩にも適用されるでありましょう。また適用されなければなりませんが、さきにも申し上げましたとおり、日米安保条約第六条の事前協議制が有効に働く限り、わが国にとっては心配がない、またアメリカ側にとりましても、この条項が正当に運用される限りにおきましては、さして私は不都合が生じないと思われますが、詳細の点、やはりこういう点についてはよく打ち合わせておく必要がありますから、要は、可及的すみやかにこの際は日米合同委員会を開催しまして、そこにおける真剣にして慎重な討議にゆだねることが肝心である、こう思っておるのでございます。  以上につきまして外務大臣の御所見を伺いまして、私の質疑を終わることにいたします。
  14. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 第一の沖繩の問題、特に基地の問題についてのお考えでございますが、これはただいまもお話がございましたように、日本、それから日本を含む極東の安全というわれわれの考え方から見て、いかにあるべきか、また逆に言えば、どうあってはいけないかというようなことについて真剣に考えるべきものである、また、これらの点については日米問で徹底的に話し合ってみる必要があるのではないか、こういったような御発想や御提案につきましては、私も全く御同感でございます。ただ、いまの段階で、そういった問題について、特に早急にしかるべき委員会をつくったらどうかというような点については、ただいまのところはまだ考えておりませんですが、いろいろの御提言につきまして、十分ひとつ検討させていただきたいと思います。  それから核の問題、自由使用の問題につきましても、いろいろと御意見を承りました。これらにつきましても、御趣旨のありますところを、私は十分敬意をもって傾聴をいたしたいと思います。御案内のように、基地の態様につきましては、政府としては、いわゆる白紙の状態でございますので、いろいろの御提案に対しまして、謙虚にこれを参考にさせていただく、そして対処してまいりたい。現在のところ白紙であると申し上げることをお許しいただきたいと存じます。
  15. 北澤委員長(北澤直吉)

  16. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 外務大臣に初めてお尋ねするものですから、いろいろお尋ねしたいことがありますけれども、与党の秋田委員中国問題に触れられました。私は、実は中国問題を最後お尋ねしようと思っていたのですが、たまたま触れられましたから、関連をいたしまして、その問題について先にお尋ねいたします。  時間の制限がありますから、持って回った説明をされて結論のないような御答弁をやめて、お互いに多少問題は理解し合っておるはずですから、立場は違いましても……。だから簡単に結論を言っていただきまして、あなたの御説明で質問の時間が制限されないように、妨害されないように御協力お願いいたします。  中国問題について、さっきの御答弁で不明な点について、あるいは足らざる点について、具体的にお尋ねいたします。  中国大陸台湾との問題は中国の国内問題であるという理解外務省はしておられるかどうか。それでよろしゅうございますか。先ほど御答弁の中に触れましたが、確めておきます。
  17. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 これは、いわゆる一つ中国という主張を双方にされているということは、客観的な事実だと思いますが、それには私どもとして直接触れて申しますことは、中国のやはり内政問題と申しましょうか、ことばはあるいは練れないかもしれませんが、そういう角度で扱うべきものではないか、私はこう思っております。
  18. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 そうすれば、日本政府は、北京と台湾との問の何といいますか、合作に関する自主的な話し合いを歓迎されますか。
  19. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 そこのところが、端的率直に答えろという話でございますが、非常に微妙なところだと思います。日本政府立場から申しましては、これに対しとやかく申すべきものではない、私はかように考えております。
  20. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 いまの御答弁は、こう理解してよろしいですね。台湾問題は中国の内政問題であるから、二つある政権、事実上あると認めておる政権の間で話し合いが行なわれるかどうかということについては、内政干渉にわたるから、賛成でも反対でもない、白紙である、こういう解釈に理解してよろしゅうございますね。
  21. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 そういうお尋ねでございますと、現在日本としては、従来からの——長々御説明申し上げることはやめますけれども国民政府日本の国交の相手国である、これに対してはその態度を保持していかなければならない、これがわれわれの態度であると思います。
  22. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 しかし、その政権との問で条約があることはわかっています。それをいかに解決するかということが、一つ中国か、二つの中国かの問題である。台湾問題は内政問題だとすれば、結論はもう明瞭です。アメリカでも主張しておるように、一つ中国問題、こういうことになるわけですね。内政問題であれば、賛成とか反対とか、外交上はそのことを好ましい、好ましくないということはあるでしょうけれども、両政権の自主的な判断に対して、日本はとやかく言うべきではない。ただ、私が聞いたのは、そういうことがアジアにおける緊張緩和のための大きなステップとして、日本外交がもし平和を欲するならば、当然これを歓迎してよろしいという——干渉ではございませんよ。評価です。そういう意味で聞いたのですが、お答えなくば先へ進みましょう。そういうところで押し問答しても、あなたはお答えにならないでしょうから、時間がもったいないので、先に進みます。  中国国連における加盟問題について、日本政府は賛成ですか、反対ですか。
  23. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 先ほど秋田委員にお答えしたとおりでございます。
  24. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 そうすると、慎重に審議をして国際世論に従うということですね。
  25. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 もう少し具体的に申しますと、秋田委員の御質問は、重要事項指定方式提案国になるということについて……。
  26. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 代表権を認めて国連参加を認めることが、アジア外交上歓迎するかしないか、それを聞いておるのだ。重要事項の問題はあとで聞きます。それは手続上の問題ですから、そんなことを言っておるのじゃない。国連中国参加を認めたほうがいいと思うか、悪いと思うかということです。
  27. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 中共が、前にも使われたことばでありますが、国際的に歓迎される、祝福されるような状況国際社会に入ってくるということは歓迎いたします。
  28. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 そういう国連中国参加が認められた場合には、日本中国政権を承認して、その問に国交の回復の討議に入るということは当然でございますね。国連参加を歓迎しておいて、その国との間の国交を未回復状態のまま放置する、国際条約上で言えば、戦争状態のままに続けておくということはあり得べからざることだと思いますから、当然なことだと思いますが、念のために伺いましょう。
  29. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 ただいま申しましたように、祝福されるような状況国際社会に入ってくるということが前提ですね。そういう環境がこれからどういうふうにでき上がるかということが、私は前提であると思います。まだそこまで状態は動いておりませんから、いまのお尋ねに具体的にお答えすることはできないというのが私の解釈です。
  30. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 それでは、大平さんが、祝福されて加盟したときには、中国政権を承認して国交に努力したいと言われたより、はるかに後退ですね。何のためにそれじゃ国連参加を歓迎するのですか。その前提に立っているのですよ。無条件で私は聞いているのではないんだ。国連参加という事実を条件として、日本中国との間に政府間の相互承認、国交回復、これはもう当然な結論であると思うが、念のために聞いているのですから……。そうでないと、あなたの国連参加を歓迎するということは、まやかしでうそだということなんだ。口だけにすぎない。最近、イタリアもやり、カナダもやる。アメリカですらおそらくは一つ中国問題、中国論というものが台頭しつつある。それに、何というか、ばつを合わせたというか、こまを合わせたというだけで、腹の中から中国との問題を解決してアジアの平和を確保しよう、相互経済の発展に協力しよう、そういうことじゃないわけですね。ちょっともう一ぺん、それ論理的に矛盾しておりますから……。あなたは聡明で頭がいいから、そんなことはわかって答えていると思うから、聞く必要はないのですけれども、念のために聞いたのですよ。それじゃあなた後退ですよ。
  31. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 これは先ほども私申しましたように、まことに複雑な問題でもあるし、ことに日本としては、カナダイタリア立場とはだいぶ違っておるわけですから、そして、われわれといたしましても、いままでも最善の努力をしておるつもりでございます。それで、いまのようなお尋ねに対して、前提や考え方を申し上げないで、端的にイエスとかノーとか申し上げるような簡単な問題ではない、私はかように考えるわけです。
  32. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 しごく簡単な問題ですけれども、こわいということですね、言うことが。おそれをなして言えないということでしょう。しごく簡単ですよ。論理的にそのことまで腹をきめなければ、国連に代表権参加を認められることを歓迎するなんということは言えないはずですわ。論理的矛盾ですよ、それは。だから、日本外交なんというものは、アメリカの顔を見、台湾の顔を見て、無原則、無定見で動揺が続いている、こう言われるわけですね。その点はこれ以上——お答えになりたければどうぞ答えてください。答えられぬならもうむだですから先に行きます。どっちにしますか。お答えになりますか。
  33. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 いま申しましたように、イエスとかノーとか、クリアカットにお答えをすることは、いまの状況においてできません、こういうふうに申し上げたいと思います。
  34. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 大平さんは答えたのですよ。なぜそれより後退するのですか。大平さんは、そのときはその承認に踏み切るということをはっきり言われたわけですね。それは押し問答してもしようがありませんから、次をお尋ねいたします。  重大な問題は政府間の折衝をしたいということですね。この間からやっておったと言い、あるいは古井、田川両氏にもその意向を中国に伝えてサウンドしてもらうということですけれども、そこでお尋ねいたします。政府間の折衝というのは、日中関係全般の問題について議題に制限を置かないでお話しになるわけでございますね。そういう腹でしょう。どういうことですか。
  35. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 まあそう性急に詰めかけられても私はお答えできないので、抑留者の問題というようなことは、どなたがお考えになっても、また国際的にお考えになっても、何とか一日も早く解決をしてもらいたい。これはもうどなたがお考えになってもそうじゃないかと思いますが、こういう種類の問題につきまして、いわゆる政府間の折衝であっても何でもけっこうでございますから、どうかひとつわれわれの要請にこたえてほしい、こういうことを申し上げたのであって、そのほかの議題をきめず云々ということを申し上げたわけではございませんし、それを考えているわけではございません。
  36. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 そうすると、抑留者返還の問題だけに限って政府間折衝したいということですか。大使会談をやりたいということですか。そんな虫のいいことが通ると思っているのですか。ばかばかしくてお話にならぬですね。そんなことだれが考えたのですか。そんなこと中国が相手にするはずはないですよ。そんな状態じゃないでしょう、日中関係というものは。どうですか、可能性があると思って自信を持ってあなたは提案されたのですか。
  37. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 虫のいいというおことばを返すわけではございませんが、しかし、十数人というような日本人が生死も安否もわからないということについて、何らの意思も表示してくれないということを、考慮に入れていただきたいと思うわけです。
  38. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 この問題は、周総理から自民党の有志代表にも話があって、もうそのことをお聞きになっておられると思う。おととしでしたか、それで、これらの人が何をしたか、日本政府は調べていますか。日本側で調べておりますか。
  39. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 これはまあ、日本側にそういう点を調べる由がないわけでございますね。ですから、たとえば政府間の話し合いというようなことになれば、少なくとも事態あるいは言い分といいましょうか、そういうことも明らかになるのじゃないでしょうか。(穗積委員「明らかにしていますよ、すでに」と呼ぶ)こちらとしてはわかりません。
  40. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 その点は明らかになっていますよ。あなたもかつて官房長官をしておられたときに、日本で強制労働に服して、それで死んだり殺されたりした人、遺骨送還のときもそうです。それで、それに対する日本政府の責任や態度というものを一言も明らかにしないで、そうして非公式にあなたが包み金五万円か幾らか出そうとしたら、受け取らない、そういう事実があったわけだ。向こうはそんなことはみなわかっていますよ。それで今度はこちらからだけ人道上だ人道上だと言って、遺骨の問題、墓参りの問題等々を提案する。しかし、中国が言っておるように、いま公安の所管に移っておる、重要な政治的なスパイ行為の疑いがある。正当な理由によって抑留しているのだ。それに対してただ人道上の問題で——これは大きな政治問題じゃないですか。政治問題です。  そこで、外務省に、私は事のついでですから、資料要求をいたしておきます。  昨年の当委員会で、ここへ内閣調査室の責任者を呼んで、内閣調査室が大きな予算を持って、対中国、対北朝鮮、対ソビエト、対北ベトナム等々に対する諜報活動、調査活動をやっておるとはっきり言われた。その計画はあるはずです。その計画に従って予算が出ておるはずですね。そこで、私は資料を要求いたします。いま問題になっておる、三カ年間における対中国の調査予算はどういうふうに使われたか、それから対ソ、対北朝鮮、対北ベトナム、この四カ国に対してでけっこうです。それに対してどういう計画で下請をさしたか、その団体はどこであるか、その団体にその調査項目について幾らの予算を出したか、それに対して、その請負団体からどういう報告があったか、その一切の資料を当委員会に提出をお願いしたいのです。  そういうことをあなた、やればできますよ。やればできるのです。調べる方法がないといって、あなたは調べているじゃないですか。内閣調査室がスパイ活動をやっているじゃないですか、下請させて。それで、ただ人道上の問題だって、どういう意味ですか。その問題を根本的に解決することが、問題解決の早期帰還を実現する正当な論拠であり、根拠であると私は思うのです。向こうは、何のことやらわからぬと言っていませんよ。自民党の代表に言っています。私たちに話はない——自民党の代表に、正確に周総理の口を通じて言っているのですから、とぼけたようなことを言わないで、この問題は、そういうことを人道上の名をかりて、相手が非人道的国であるかのごとく誹謗するならば、これは非常な言いがかりです。そんなことで、あなた、政府間折衝だなんて、ばかばかしくて、われわれが聞いても、まるで三つ子の願望にすぎないと思うのですね。家族の心配にこたえることでもない、そう思うのです。その認識をあなたは改めていただきたいし、それから、いま申しました内閣調査室の対中国対北朝鮮、対ソビエト、対北ベトナムについての、この三カ年間にわたってされておる調査資料、報告を当委員会に出していただきたい。もしそれが政府の判断あるいは委員長の判断で、どうしても公表をはばかるというようなものがあれば、理事会においてその理由を明らかにしていただきたい。それが合理的であるかないか、われわれの判断をいたした上で、秘密にするか公開にするか、それの取り扱いについては御相談いたしましょう。だがしかし、昨年この委員会でそういうことを言いながら、いまだにほおかぶりでこの委員会に出さない。要求いたしておきます。それに対するお答えだけは、外務大臣、ぜひお願いをいたしたいのです、関連した問題ですから。
  41. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 御要求の資料でございますが、私、その当時のことは存じませんが、いま伺ったような資料があるのかどうか、また、これは内閣の問題でもございますから、よく調べまして、御返事を申し上げます。
  42. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 念のために申しておきますが、あるそうです。あると言って答弁されました。なるべく御要望に沿って提出いたしますという答弁をして引き下がって、そのままに年を越しておる。参考までに申し上げておきます。官房長官とお打ち合わせの上で、直ちに処置していただきたい。お願いしたのは去年のことですから、もうそれはできておるはずです。その上で、いまの問題を委員会外交問題として討議をいたしたいと思っています。  そこで、続いてお尋ねいたしますが、今度、全日空と中国の民航との間における民間協定と称する航空協定を提案されたわけですね。それでお尋ねいたします。関連しておりますから、時間節約上、一括してお尋ねいたします。  まず第一に、なぜ政府間協定に踏み切れないのか。人道問題であるからということで、政府間の折衝交渉をやろうとしておるならば、その問題をなぜ考えられなかったか。  第二、そうであるならば、日本の国際航空の業務の中で、やはり国際的に中心なものは日航です。向こうは、中国民航というのは、これは唯一の国全体の航空会社ですね。そこで日航をなぜはずされたか、これが第二。  第三は、航路の路線についてです。北京−東京をなぜ提案されないか。これらはすべておそらく政治的偏向あるいは恐怖心、対アメリカ、対台湾に対する外務省の恐怖心によって、こういう卑屈な提案をされたのではないかと国民はあざけっております。もしそうでないなら、ここではっきりした理由を明らかにしていただきたいのであります。念のために伺っておきます。
  43. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 民間航空の問題は、先ほど秋田委員にお答えいたしましたように、これはちょっと御説明させていただきたいと思いますが、古井、田川両君が行かれるときに、私どももいろいろの御相談をいたしたわけですが、そのときに、たとえば一つのグループが往来するというようなときに、ことばで言えば、チャーターということばになるのでしょうか、一つのケースとして、相互往来するというようなことの話は前にも出たが、そういうことについてはどうしたものだろうかという程度の話が出ただけでございます。したがって、世間にあるいはそういうふうに伝わっているとすれば、それは誤解でありまして、民間協定を全日空とどことの問にするというような話は、そこでも出ておりませんし、ただいま私どもとしても、それから当該の航空局等におきましても、あるいは全日空等におきましても、全然それはいま考えておる問題ではございません。したがいまして、日航をはずした理由とか、あるいは北京−東京間のルートをどうしたとかいうようなことは、もちろん全然話は出ておりません。
  44. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 続いてお尋ねいたします。  古井、田川両氏は、昨年の暮れに切れました、かつてのLT貿易、いまわれわれ国内のことばで覚書協定、これの長期にわたる総合的な妥結を希望することを佐藤総理は両代表に示されたようです。そうでありますならば、この成否、むしろ中国を敵視しないで、貿易を発展せしめようということであるなら、当然もう世界の常識、延べ払いは認めるべきだと思うのです。特に御承知のとおり、友好貿易と覚書、かつてのLT貿易との間の両輪の関係、補完関係というものは、特に基幹産業の建設資材その他について、長期にわたる、しかも取引のバランスは総合的なものでやっていこう、そういうことでありますならば、日本側から長期を提案しておいて、延べ払いすら認めない、こういうことでは、いかにこれがごまかしであるか、見せかけであるかということでありまして、表面はいかにも敵視していないようなことを言いながら、直ちにそのしっぽは出ておって、それは反中国だ、敵視だ、差別待遇だということの結果になるわけですから、これはもう、あなたは経済官僚の出身ですから、御説明するまでもありませんが、そういうことを申し上げまして、延べ払いは当然だ、当然な論理ではないかと思うのですが、これについての政府考えをこの際明らかにしておいていただきたいのです。
  45. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 覚書貿易について、できるだけこれを長期的なよいものにしたいと、原則的な希望は私どもも持っておるわけでございます。  それから、延べ払いという具体的な問題になってまいりますと、これはまあ、どこの国との問もそうでございますが、プロジェクトについて十分の双方審査をしてやっていく、いわゆるケース・バイ・ケースのやり方でございますから、まずこの覚書貿易というものの改定、それから今後長期的になれるかどうか、またその問においては双方にいろいろの希望もあろうかと思いますけれども、それをだんだんにケース・バイ・ケースで処理していくというのが、これはもうきわめて自然な成り行きではないかと思っております。
  46. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 それじゃその問題は整理して結論を出しておきましょう。そうであるなら、かつての吉田書簡には政府はとらわれないで、ケース・バイ・ケースで、それが合理的であるものならば輸銀の延べ払いを認めることがあり得る、こういうことですね。
  47. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 この問題は、先般当院の予算委員会でも質疑応答があったと思いますが、要するに、ケース・バイ・ケースで実行するということに考えております。
  48. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 そうすると、吉田書簡には政府はとらわれませんね。
  49. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 吉田書簡というのは、もう前々から御承知のとおり、政府間の協定というようなものではない、こういうたてまえでございます。
  50. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 そうであるなら、これはもう効力を失効したものであるという声明、談話を発表したらどうですか。その用意はありませんか。官房長官または外務大臣名でいいでしょう。
  51. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 政府間のものではございませんから、取り消しとか存続するとかというようなことを官房長官談話等でやるのにはなじまない問題である、こういうように考えております。
  52. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 続いてお尋ねいたします。  いま進行中の日本工業展覧会、北京、上海でやるもの、これはココムを理由にして、不当な、十九品目が持ち出し禁止、あと十九品目が向こうへ売り渡し禁止、こういうことでなされたわけです。これは、きょう時間がありませんから、ちょっと簡単に結論だけの質問をいたします。  第一にお尋ねしたいのは、これはココムによる国際関係の義務によって行なっていると思うのですけれども、そうであるかどうか。ちょっとそこメモして間違いないようにひとつお答えください。ココムによるものであるかどうか、それが一。第二、ココムは一体いかなる条約上の効力を持っておるものであるか。われわれ国会はそんなもの見たことも聞いたこともない。だから、それは一体どういうオブリゲーションを国際法上持っておるのかどうか。それが第二点。第三点、ヨーロッパ諸国、ココムの会議出席しておる特に西ヨーロッパ諸国が、ココムに対して、日本のココム禁止と照らし合わせながら、どういう持ち出しをやっておるか、それを調べてください。私のほうは調べてあります。向こうはそれを励行していないのです。ココム無視の態度であります。特に今年度は御承知のとおり、ココム会議というものは、アメリカ提案は全く無視されて、会議にならなかったわけでしょう。そういう空気をあなたは御存じだと思うのです。そういうことですから、会議だけではなくて、輸出の実行の中において、今度日本が禁止したものをヨーロッパで出しておるわけです。それを一つも出しておらぬということ。ココム会議参加しておる国は、日本の禁止したものは全部禁止しておるという事実が証明できるなら証明してもらいたい。われわれはそれに反論をする資料を持っております。それが第三です。その次にお尋ねしたいのは、日本はかつては天津に出した。それを禁止しているのはどういうわけか。それから第五番目に、ソビエトへ出しておるものをなぜ中国に禁止したか。ココムの対象は中国とソビエトと差別はないはずです。それを禁止されておる。それを明らかにしてもらいたい。  最後お尋ねいたしたいと思いますが、それらのすべてがきょうはここでお答えできないでしょう。で、われわれは機関を持っておりませんから困難でありますが、苦労しながら、ヨーロッパの対中国延べ払いと、それからココム参加国が出している品物、これらについての多少の資料を持っております。ほしかったら見せてあげますけれども、あなたのほうからまず、政府の責任がありますから、禁止した以上は、これを資料として出していただきたい。ココムの協定そのものと、いままでの経過の重要な点ですね。われわれがオブライジされなければならない、拘束されなければならない点だけについて明確にしていただきたい。  そして最後に、それらを御答弁を要求しながら、資料の提出を要求しながら、お尋ねいたします。  十九品目の禁止並びに制限は、これは非常に不当なものだと思うのですね、私がさっき言ったような点で。私がそういうことを言わなくても、お調べになって、ココムの性質から、条約上の効果から、それから最近のヨーロッパ諸国との関係日本と対ソビエトとの関係から見て、不当であることは、私が申し上げなくても御自覚になるでしょう。そうであるならば、これを追加の許可をする方針はおありになるかどうか、再検討のお考えがあるかないか。これをお進めしながら、ぜひ再検討されることを私は要望しながら、あなたのお考えを伺っておきます。
  53. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 ココムの問題等につきましては、もう穗積委員のほうが私よりよくお詳しいので、私から十分な御答弁ができないかもしれません。それともう一つは、これもよく御承知のとおり、この主管は通産省になっております関係で、場合によりましたらそのほうから答弁を求めていただきたいと思います。  私から申しますと、第一のココムというものの性格、それから義務の問題ですが、これは御案内のように、条約でつくられたものではございません。いわば事実上の話し合い機関でございますから、あれに参加しております国々の間の相互協力話し合いの場である、こういうふうに私は理解しておるわけでございますが、従来から自由主義諸国との間にはやはりずっと続いてきたものでございますから、日本としては、ココムに対してはこれを尊重していきたい、尊重しなければならないと申し上げたほうがよろしいかと思いますが、そういうことで歴代の内閣がこれに対処してまいったわけでございます。  第二は、条約上の効力、法律上の義務規定があるかというお尋ねですが、したがって、私は、条約上の効力とか義務の問題ではないと思います、法律的には。  それから欧州諸国態度は、いま申し上げましたように、通産省のほうが詳しいので、あるいは間違ったらお許しいただきたいと思いますが、私の理解では、欧州の諸国日本とは歩調を合わせてきておるはずでございまして、欧州の国がどこへ出した、あるいは出さなかったということと違ったことを日本がやっていることは、私はないと思いますけれども、あるいはそういうことはあろうかもしれません。これは別の向きから答弁をすることにいたします……(穗積委員「もしあればどうします、再討検しますね」と呼ぶ)これは自由主義諸国とやはり従来からの関係からは歩調を大体同じにしていくのがよろしいのではないかと思いますが、これはいわば条約上のいまお話の問題でもございませんから、その点はお含みおきいただきたいと思います……(穗積委員「それをヨーロッパ並みに引き下げますね、もし事実があれば」と呼ぶ)それはまず事実があるなしを調べることと、それから、その背景なり経過なりを調べてみなければ、早計に御返事はできないと思います。  以下、具体的な問題は、私いまここに資料を持っておりませんから、答弁を保留いたします。  それから最後に、これは私の政治的判断でございますけれども、簡単に比較するわけにまいりませんけれども、数千にのぼる品目であって、実は内輪話を申せば、私は大平通産大臣との問に、日工展というものは円滑にこれができるようにしたいという気持ちで、そして通産省の事務当局、外務省の事務当局も、私ども両人の気持ちを十分体し、あるいは途中でもさらに私どもとしては事務当局にも指図をしたことがございますが、私としての政治的判断としては、誠意を尽くして、そしてこの品目をできるだけ少なくして、もうこれ以上は私はいかぬという結論にいたしましたので、私としてはこれを再検討するつもりはございません。
  54. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 だから、私はさっきから言っているのですけれども、あなた方が最終結論として出したその判断の基礎ですね。それがヨーロッパと同等だと考えてやったわけでしょう。それが同等でなかった時には、結論の基礎はくずれるわけだ。それからもう一つは、ココムにおいては対ソ、対中国の差別はしないのだ。ないのですよ、コミュニズム一般ですから。だから、そのときにソビエトに出したものを今度禁止しておったら、当然再検討すべきですね。客観的に合理的にやったという自負を持っておられるわけでしょう。そうすれば、客観的、合理的基礎というものは当然くずれるわけです。再検討をするわけです。それを聞いているのです。何も政治的判断もへちまもないわけです。最も合理的なんです。それはどうですか。それをお答えしていただきたい。
  55. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 私は、今回の日工展については、これ以上変更するとか再検討するとかいう気持ちは毛頭持っておりません。ただ、ココム等の従来のやり方等について、私は知らないところがあって、御質問を十分御満足を願えないような答弁でございますから、その点は保留し、かつ、ほかのほうからお聞きいただきたい、こういうふうに申し上げております。
  56. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 これは機会を得て、通産にもお尋ねを申し上げようと思う。あなたにも御参考までに、外交関係に重大な関係、特に中国問題に関係があるから申し上げますが、これは訴訟が提起されているわけです。被告は通産大臣大平正芳さん、あなたではない。あなたではないけれども、問題が対外、対中国問題ですから、外務省の判断というものはやっぱり自主的に、責任をのがれられない。この二十日から弁論が始まるわけだ。いまのような御答弁で、ここでは多数をもって委員会の答弁は通れるとお思いになっても、杉本判事のもとにおいていまの内容で裁判が正確に行なわれるとすれば、すなわち、行政府から独立して合理的裁判が行なわれるとすれば、政府は負けますよ。私の貧弱な法理の知識をもってしても、さっきも言ったように、ココムなんというものの法律的な根拠はない。そのものに日本人民が縛られる理由はないのです。しかも、実際のあれはヨーロッパと差別がある。ソビエトとも差別をしておる。そういう不当だらけのものでありますから、これを最終だなんという非合理的な御答弁をなすって、恥をかかれる心配がありますから、日本政府とそれから外交上及ぼす日本の利益のために、私はあえてもう一ぺん再検討の余裕をお残しなさいということを御忠告申し上げるわけです。これは大平さんにもお伝えください。この二十日から始まるわけですから、念のために申し上げておきます。  最後に、二点お尋ねいたします。中国の代表権問題については、重要事項指定方式という手続について再検討中であって、まだ白紙だ、こういうことですね。そういうように承ってよろしゅうございますか。さっきのあれは、いずれともきまっていないが、重要事項の提案国になるかどうか、その以前に、重要事項指定方式そのものは賛成するかしないか、それは白紙だ、それが白紙であるならば、むろん提案国になるなんということは、いまからきめるべき性質のことではないわけですね。先ほど秋田委員に対して、提案国になるかならぬかということについては白紙だとおっしゃったのですが、重要事項指定方式の手続そのものについて白紙だとおっしゃったのか、それを私が聞きたかったのです。両方であると私は理解したいのですが、それを区別してお答えをいただきたいのです。
  57. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 重要事項の問題につきましては、先ほど私秋田委員にお答えしたのは、提案国になるかならないかということにつきましては、さらに補足して申し上げますと、まだ総会は秋のことでもございまするし、十分これから検討したい、こういうふうにお答えをいたしたわけでございます。  それからなお、これはいまお尋ねの点とあれするかもしれませんけれども、私は、この重要事項指定方式というものが、国連の現在の運営のやり方等からいえば、中国問題というようなものに比較してみれば実に簡単な軽微な問題でも、重要事項として扱われております。単純多数決というような方式は、本件と離れますけれども、私は疑問を持っておりますことを率直にこの際申し上げておきたいと思います。
  58. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 それについてお尋ねしたいのですけれども、次の機会にいたしましょう。  きょうはほかにちょっとお尋ねしたいことがありますが、だいぶ残りましたけれども、いままでの国会討議で、安保と沖繩との関連討議の中で、政府の答弁を大体総括いたしますと、沖繩の基地の地位並びに条件を現在のままであるならば、即時あるいは早期に返還ができる、そうでなくていわゆる本土並み、すなわち核抜き、事前協議権つきであるならば、これは返ってこないよ、こういう二者択一のような問題提起をされているわけだ。あなたはこれに対して、われわれのほうから開き直って聞けば、核つき、事前協議権を放棄して自由使用つきをにおわせながら、そういうことで国民世論を無視して交渉に臨むのですかと聞けば、白紙です、こういうわけだ。そうでしょう。そこで、あなたはもうすでに近くこの問題で事前折衝のために渡米をされようという方針が発表になっておる。これは事実だろうと思いますが、念のため伺います。それが事実であるならば、いまの政府提案している二者択一について、どちらの方針をもってお臨みになるのか、予備折衝に当たるのか。相手の意見を打診するにいたしましても、こちらの世論の実情、それからこちらの腹というものは、公式あるいは非公式を問わず、これを明らかにしないで、相手の意見をサウンドするなんということは、事の性質上不可能なことです。白紙論なんというものがいつまでも通るわけはない。しかも国民に対しても——これは国民侮辱でありますけれどもアメリカと具体的な問題について事前折衝に入ろうというあなたに、そのいずれでもない、子供の使いみたいなことは許されるべきことではないと思うのです。  そこで、政府としてはいずれのお考えをもって臨まれるのか。それを四月、五月といえばまだ時間があるから、もう一度みなの意見を聞いてやろうということをおっしゃるのでしょうけれども、それではもうあなたの担当大臣としての国民に対する態度ではないと思うのです。昨年から今年の国会にかけての佐藤さんとあなたの答弁を見て、もう腹が大体みな読み取れつつあるわけですよ。だからこの際、一番大事な外務委員会でございますから、この委員会を通じてあなたの方針を明らかにしていただきたいと思います。
  59. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 私の答弁を予測していただいて、またそれを繰り返すことは、たいへん恐縮ですが、結論としては、ただいま私にかわってお答えいただいたようなところと同じにならざるを得ない。私はほんとうにまじめに申し上げているのです。  そこで、一つ申し上げたいと思いますのは、私はこういうふうに考えておるのです。この問題につきましては、戦争で失った領土話し合い解決する、これは外交上の新しいパターンである、こういうふうに私は考えざるを得ないと思うのです。したがって、いろいろのこれからの日程と申しますか、ものを考えておりますけれども、随時いろいろの接触の機会の中で、だんだんこちらの考え方も通せるし、また向こうの言い分というものにも理解が進むこともあり得る、私はそういう方法でまいりたいと思いますから、五月末、国会が終わりましてから、私が渡米いたします際にも、渡米前に、私はこれであります、そして、それよりももっとよければいい、悪ければ失敗だというふうな姿勢でこの問題を取り上げることは、私は不適当ではないかと思います。最終の目標は十一月末ごろになろうかと思いますけれども、ニクソン・佐藤会談というものはすでに具体的に日程にものぼっておりますから、そのときに最後のめどをつけるように、そういうふうにもっていきたい。その間、私ども期待とするところは、夏には東京で日米貿易閣僚会議もございます。また、過去のことになれば、京都会議もあった。アメリカの国会議員も相当大ぜい日本に来られて、各政党の意見も聞き、あるいはそのほかの人たちの意見も、それぞれ違ったニュアンスはあるかもしれませんけれども、十分にこれを聞かせる機会を持ち得たということは、私は非常によかったのではないかと思います。一方、私といたしましても、世論の動向ということ、これはもう十二分にわきまえておるつもりでございます。そういうことで、この問の外交演説で申し上げましたように、沖繩問題の解決というものがもう非常に困難である。それをまず私は考えておりますが、しかし、困難であることを否定しないが、とにかく考え方をだんだん煮詰めて、そして御期待に沿うような終結を見るようにしたい、こう考えておるわけであります。  それから、これはほんとうに予測された答弁になるかもしれませんけれども、本会議で佐藤総理が申しましたのは、世論を見てみれば、こういう意見とこういう意見があるということを申しましたのであって、その問から二者択一をするものではございませんということは、その後お聞き及びのとおり、予算委員会等でも説明申し上げているわけでございますから、この点もあわせて御理解をいただきたいと思います。
  60. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 外務大臣、あなたは外務大臣初めてですね。初めてですから、早々だと言えばそれまでですけれども、いやしくも、こんな独立か戦争かという問題をひっかかえた沖繩の基地条件問題について話をされようというのに、いまお話しのようなことではわれわれは納得できませんよ。それはどういうことかといいますと、最近、自民党の方々は、いろいろな演説会、座談会等で、戦争によって失った領土というものを取り戻すためには、話し合いでできたためしは少ないのだ、その問題解決のために一世紀も二世紀もかかっておるのが、それを今度話し合いでやれば、どんな条件でも、核つき、自由使用つきでも、こんなものは画期的な大成功だ、こういうことを盛んに言われるわけだ。それは無知な代議士選挙演説や床屋談義なら聞き捨てできますけれども、あなたはこの問からもそういうことを堂々と外務大臣の地位、自覚において、しかも国会の議場でそういうばかばかしい答弁をされて、これでは心もとなくてしようがないですよ。なるほど昔は領土拡張を目的とした戦争があり得た。それをなかなか返さない。実力を使わなければ返さない。それはヨーロッパでもあるし、アジアでもあった。しかしながら、近来の国際原則というものは、領土不拡大原則なんですよ。それが一般的、抽象的原則であることはもとよりでありますけれども、それだけではないのです。日本が道理に従ってアメリカあるいはソビエトに放棄するかしないかをきめるものは、降服文書によってきめるべきですよ。いまの沖繩問題について申し上げれば、あるいは北千島——私どもは千島列島全体だ。北千島を含む千島列島全体の領土権についても、道理に従って、戦争をやめたときに、向こう自身が出したポツダム宣言、それにちゃんと調印した。それはカイロ宣言がコンバインされて、一緒に結ばれておるわけだ。カイロ宣言の中で、戦勝国が戦争によって領土を拡大しない原則というものを確認して、そして初めから沖繩は日本の固有の領土である。盗んだものでもないし、戦争によってとったものでもない、おどかしてとったものでもない、その中にちゃんと入っておるのです。千島列島にしてもそうです。カイロ宣言でちゃんと約束しているのですよ。終戦後、それをアメリカがみずから違反をしている。それを日本人はおこらないで、黙って、こわさ一方でほおかぶりしておったでしょう、政府は。ところが、ネールはそのことを客観的、合理的に憤慨して、サンフランシスコ条約には調印しなかったわけでしょう。問題は、このカイロ宣言の原則ですよ。その領土を不法かつ不当に——特に信託統治にすれば軍事基地は置けない。そこで、信託統治でなければ取り上げられない。ダレスのほうが知っておるから、そういうややこしい、彼自身がわれながら老獪なうまいことをやったといって自画自賛するような、取り上げるときは、カイロ宣言で取り上げられないから、信託統治で独立国という名目で取り上げた。信託統治にすれば、軍事基地は国連憲章の条項で置けないから、その間は独力でこれを統治するんだということでしょう。しかも、それは信託統治にしないという意思表示がアメリカからあった。しかも、わが国国連参加しておる。加盟国の領土はこれを国連で信託することができないとちゃんと書いてある。もう消滅しているのです、第三条は。それをとったものを、われわれが下げてもらうんだ、向こうが不正にもとったものをわれわれが下げてもらうんだ。だから核つき、自由使用つきくらいは当然ではないか、それでもなおかつ返れば、これは世界外交史の中で画期的なことだ、こんなばかばかしい論理であなたは対米折衝されるなら、これはわれわれも考えなければならぬと思うのですよ。あなたは外務大臣として認めるか認めぬか。そんなことで、いまのような白紙論や、向こうの要求だと称して、それで核つき、自由使用つき、こういうことはもうこの際振り切って、いらっしゃる以上は、まず主権者である国民に明らかにして立つべきだ。きょうは答えなければ、お立ちになる前の外務委員会でぜひそのことを明らかにしていただきたい。方針を持たずして折衝に当たるなんということは、それは三つ子に聞いても考えられないことでありますから、そのことを私は非常な不満と要望を込めて申し上げておきます。  それから次に、事前協議権、特に作戦行動に対する事前協議権を放棄した場合に限って、外務省見解お尋ねいたしておきます。一括してお尋ねしますから、大臣または局長からでも、外務省を代表されるならばどちらでもけっこうです。  第一は、そのときは本土とは違った特別な条件を許すならば、当然そのことを内外に明確にする取りきめ文書だというものが必要である。これをどう考えておられるかどうか。  第二は、その文書は当然国会の承認を得べきものであると思うが、どう考えておられるか。これが第二。  そしてその上で、もし事前協議権を放棄して基地の自由使用を認めた場合に、それはまず第一に、アメリカに対して第五条との関係——安保条約第五条、共同戦争の義務規定がございます。この共同作戦行動の義務は、日本承認なしに、沖繩から自由に行動をとった場合に、それによる報復攻撃が生じた場合には、第五条の日本側の共同作戦行動の義務条項というものは免除されると思っておられるか、どうであるか。わかりましたね。  それからもう一、そういうことであるならば、日本の意思の加わっていない自由使用の沖繩基地から第三国に攻撃を加えた場合、その国は直ちに報復攻撃権を生じますが、それは日本の意思が加わったもの、敵対国と相手はみなす、あるいは場合によればアメリカと一緒に宣戦を布告するというような場合もなきにしもあらずでしょう。そういうことに対して、沖繩の基地は特例であるから、日本政府の意思は加わっていないというので、そのことを免除できる、のがれる抗弁権がありやなしや、どう考えておられますか。その点について、時間の関係上一括して申し上げましたので、結論だけお答えをいただきたいのです。
  61. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 いまのお尋ねの問題は、一言にして申しますと、沖繩返還の場合の基地の態様をどうしたらいいかということにそれぞれ関連している問題だと私は思います。したがいまして、たいへんおしかりをいただくことなので、これはあらかじめお断わりしておきますが、基地の態様ということについては白紙でございますから、その白紙の内容と関連いたしますから、私は現在のこの段階でお答えすることは不適当であろうと考えます。  ただ、私が申し上げたいのは、沖繩問題に取り組む基本的な姿勢でございますが、これはいろいろの機会に明らかにされているつもりですが、日本の国益としての日本及び日本を含む極東の安全を確保するためにどうしたらいいのか、この点を踏まえて、世論にこたえながら解決をはかりたいと思っておるのでありますから、あらかじめアメリカがこうであろうということだけを念頭に置いて、アメリカがこう言うだろうからそれに従うのだろう、こういう問題の設定をしていただくことは、お互いに日本人としてどうであろうか、こういう感じがいたしますことだけお答えいたしておきます。
  62. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 この問の予算委員会で、政府は核兵器をつくったり持ったりしないつもりだと言いながら、法制局長官に憲法解釈の答弁をさせておるわけですね。私は、あなたがそういう政治的な配慮で、仮定についてはお答えができないと言うならば、条約解釈上伺っておきます。  条約局長お尋ねいたします。これは政治問題ではない、純粋な条約上の法理論として伺うわけですから、率直に満足する御答弁をいただきたい。結論はどちらでもけっこうです。さっき申しましたことですね。  第一は、いかなる文書の形式をとろうと、この国会に承認を求むべき性質の重大な問題であるという点ですね。それに対するお考え、これは国会と政府との関係の問題です。  それから、特別に基地の自由使用を認めた特例だからというので、沖繩における作戦行動によって米軍が領域内で攻撃を受ける段階になったときに、安保条約第五条の日本側の共同作戦の義務規定を免除されるものであろうか、されないものであろうか、私はされないと思います。それがどうであるか。  それから、相手国に対して、日本の意思が加わらないということで、この戦争から日本が局外者に立つ、中立に立ち得るということもあり得べからざることである。すなわち、そういう特例は他の国に対しては抗弁権はない、こう私は解釈すべきであると考えますが、私の結論を申し上げて、それに対するお答えをいただきたいと思います。
  63. 佐藤(正二)政府委員(佐藤正二)

    ○佐藤(正二)政府委員 純粋な法律的な問題としてお答えいたします。  事前協議の関係のいわゆる交換公文、第六条に関する交換公文に法律的な意味で変更を加える、そういう文書ができた場合には、当然これは国会にかけるべきものだ。事前協議の交換公文自体が当時国会の御承認を受けて成立したものでございますから、これに法律的な変更を加えるものでございましたら、当然国会にかけるべきものだと思います。  それから、次の問題でございます。五条の発動が行なわれたような場合……。
  64. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 五条における日本の義務をアメリカに対して免除することができるかどうか。免除できないと私は思うのですが、どうですかと聞いておるのです。
  65. 佐藤(正二)政府委員(佐藤正二)

    ○佐藤(正二)政府委員 それは共同作戦ということばをお使いになりましたが、むしろ五条の事態と申しますのは、日本の領域が攻撃をされているという事態でございます。そこで、日本がそれに対応して戦闘行動に入ると申しますのは、むしろ自衛の関係で、個別的な自衛権の発動として当然これはできる問題だと思います。したがって、共同作戦というような形では——まあ事実問題として共同作戦ということになるかどうか。これは事実問題として、法律的な問題でございませんから、私お答えいたしません。法律的な形といたしましては、個別的自衛権の発動として当然これは出てくるものでございます。  それから、先生の最後の御質問がよくわからなかったのでございます。こちらから米軍が攻撃をして、それに対して報復爆撃が行なわれたというような御設定だったと思いますが、それを許容しなくてはならないかというような御質問だと私了解したのでございますけれども米軍の作戦と申しますか、米軍動きは、当然安保条約以前にすでに国連憲章の制約をかぶっておることは御案内のとおりでございます。したがって、アメリカがもし動くといたしますれば、当然集団的自衛権ないしは個別的自衛権、それの発動として動くわけでございますから、それに対する報復という形は、いわゆる昔の国際法における考え方の権利としての報復という形はないわけでございます。むしろ、それに対して反対に沖繩の基地を爆撃してくるとすれば、これは侵略のエスカレーションと申しますか、再び侵略を行なったというふうに法律的には解釈すべきものだと思います。したがって、それを許容するとかそういうふうな問題ではなくて、決して、向こうのやっている行為が正当なる戦争と申しますか、合法的な戦争を行なっておるというふうには考えるべきじゃないと思います。
  66. 穗積委員(穗積七郎)

    穗積委員 それは相手の行為は侵略じゃございませんよ。報復攻撃権ですよ。だから、自衛権の問題として見れば、日本の意思が加わったものに対して行なうならば、それが問題でありますけれども日本側から見れば、突如として緊急不正な侵害を受けたいということはいえない。日本の意思は包括して白紙委任してあるわけだ。作戦行動に対する自由使用を認めた場合には、もう包括して白紙委任をしておるから、日本政府の意思が加わったものと認める。したがって、日本は加害者の一国になるわけだ。それに対する攻撃があったものを、不正、緊急かつ重大な侵害だといって、これは相手の不正行為であるということで自衛権発動のあれには本来ならぬわけです。突如とした攻撃ではないわけですよ、日本の意思が加わっておるわけですから。白紙だからといって、日本だけではない、当然日本は白紙委任をしておるわけですから、日本の意思は包括的にアメリカに委譲してあるわけですね。ゼロではありませんよ。だから、それが相手の行動が突如として緊急、不正に行なわれた重大な侵害である、それに対して正当防衛権、すなわち、自衛権による戦争発動の権利がこちら側から一方的に生ずるのだ、こういうことであるべからざることだ、そういう解釈は。そうなると、侵略と自衛との区別というものはなくなる。これはこの次、大臣——きょうは時間がなくなりましたからやめますけれども、憲法の問題と関連して、今度は核化の問題について、それから自衛か侵略かで武器の制限はないのだというようなことになると、自衛と侵略とは一体何を基準にして区別するのか、だれがきめるのか、これは常に国連憲章作定当時から一番論争になった点ですよ。そうなると、新憲法は旧憲法と何ら違うところはなくなってくるわけですね。いままでは兵器の種類によって違憲であり、合憲である、こう言っておったものが、突如として、どんな武器でも、安全のため、自衛のためならば、戦略的核兵器、どんな武器でも持っていいんだという論理に発展したわけでしょう。いまの御答弁とまるで逆ですよ。相手の行為が侵略だ、そういう規定にはならぬと思うのです。侵略の意思はこっちが先ですよ。それを私は言っている。相手に対して抗弁権はありません。加害者としての取り扱い、国際法上の取り扱いなり提訴なり、あるいは宣戦の布告なり、それに対してこちらは異議を申し立てる権限はないと思います。それを聞いておるのです。時間がなくて恐縮ですが、もう一ぺんお答えいただきたい。その他の政治問題は、きょうはもう時間がなくなりましたから割愛して、次の機会に核の問題自衛の問題についてお尋ねいたします。
  67. 佐藤(正二)政府委員(佐藤正二)

    ○佐藤(正二)政府委員 先生のお尋ねが全く法律的な問題というお話しだったので、どういうものが侵略であるか、どういうものが自衛であるか、いわゆる具体的にこれこれが、たとえばある国の行動が侵略であるか、ある国の行動が自衛であるかということを私は判断してお答えしたものでないということは、初めから前提に置いていただきたいと思います。そういう意味お話しすれば、アメリカの行動というものは国連憲章のワク内でかぶっておりますから、したがって、自衛権の発動としてしか私は考えてない。したがって、それ自体、それの相手になっております、自衛権の発動の対象になっておりますものは侵略があった、これはもう非常に観念的なものでございますけれども、そういうふうに考えております。したがって、それに対する報復という観念はない、むしろそれは侵略のエスカレーションである、こういう観念で私御答弁したわけであります。
  68. 北澤委員長(北澤直吉)

    北澤委員長 この際、午後一時三十分に再開することとし、暫時休憩いたします。     午後雰時四十三分休憩      ————◇—————     午後一時四十七分開議
  69. 北澤委員長(北澤直吉)

    北澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。戸叶里子君。
  70. 戸叶委員(戸叶里子)

    戸叶委員 私は、沖繩及びそれをめぐっての事前協議の問題についてお伺いしたいと思いますが、その前に一点伺いたいことは、外務大臣が先ごろ、日本国連の安保理事国になるという構想をお持ちになっているようなことを新聞で拝見をいたしたわけでございます。しかし、これには国連憲章上のいろいろむずかしい手続がありますし、また、複雑な国際関係の中で、わが国がどういう位置にあるかという問題があると思います。第一に、憲章の第百八条による憲章の改正手続を踏まなければならないわけでございますが、わが国が常任理事国になるための現在の五つの常任理事国、米英ソ中仏の全会一致の賛成を得られるというお見通しをお持ちになっていらっしゃるかどうか。特にわが国の今日のような安保体制の中で、はたして全会一致の賛成を得られるというお見通しでこういう発表をされておられるのかどうかをまずお伺いしたいと思います。
  71. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 この問題につきまして、私は公式に意見を発表したわけではございません。ただ、いろいろの関係、たとえば日本がユニークな憲法を持っている、平和愛好の国であるという立場、あるいは国連の内部におけるたとえば分担金というような問題についても、非常に誠意を尽くして協力をしてきている立場、それから経済関係等から見ましても、日本の力というものは相当についてきている。そのほか、いろいろの立場から考えまして、もっと強力な発言権を国連の中でも持ちたい、こういう気持ちを私は持っておることは事実でございます。いま御指摘のように、憲章の改正の手続というような非常に大きな問題もございますし、それから現行の憲章のもとにおいては、ただいま御指摘のようなこともございますし、用意なり根回しなり準備なり、考えればずいぶんたくさんの問題があります。これは必ずしも日本だけの努力でどうこうというものでもございませんが、そしてまた、相当の年月もかかることかとも想像されますけれども、ただそういう気持ちでこれからやっていくべきではないかという、素朴な私の気持ちというものを持っていることは事実でございます。
  72. 戸叶委員(戸叶里子)

    戸叶委員 そうしますと、大体常任理事国として何カ国くらいが適当であるとか、あるいは常任理事国の中には拒否権制があるわけで、これに対していろいろ問題がございますが、そういう点などをお考えになっての御発言ではないわけでございますか。
  73. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 安保常任理事国をもっとふやしたらどうかというようなところまで考えているわけではございませんで、とにかく日本としては、そういう主張を掲げてもふさわしいような条件がだんだんできつつあるのではないかということを、私は素朴に考えているわけでございます。
  74. 戸叶委員(戸叶里子)

    戸叶委員 いま私が申し上げましたように、拒否権制というものがあるわけでございまして、その安保理事会の拒否権制という性質から考えてみますと、今日の日本のとっております国際的な考え方、地位、こういうものからしますと、一方アメリカとの安保体制を結んでいる中で、全会一致でその承認を得られるというようなお見通しがおありになるかどうか。まず全会一致の承認を得られるようにするためには、今日の政治姿勢なり何なりを改めないではそれは得られないのではないか、こういうふうに考えますけれども、この点についてお伺いしたいと思います。
  75. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 いま申しましたように、これは日本だけの要請ですぐ直ちにその目的が達成されるかどうかということについては、いろいろ予測していかなければならない問題はあろうかと思いますけれども、私は、再々申しておりますように、素朴な気持ちからいえば、日本が徹した平和愛好の国である、こういう立場から申しまして、現に日本のやっております政治の動かし方等について、特にこの件について考え直さなければならぬというようなことは考えておりません。
  76. 戸叶委員(戸叶里子)

    戸叶委員 私どもは、今日の政府のような、ただいまおっしゃったような政治姿勢では、なかなか全会一致というものは得られないだろうということを思うわけでございますが、私も別にこの常任理事国になりたいという気持ちに批判をするわけではございません。ただ、現実の問題として、非常にむずかしいのではないかと思いましたのでお伺いをしたわけでございます。  それからもう一つ。もしそういうことになりますと、憲章二十七条に規定しているところの常任理事国の全会一致制、すなわち拒否権について、これまで批判的でありました。政府が批判的であった。むしろ否定的であったのではないかと私は思います。ところが、今回常任理事国になりたいと意思表示をされたわけでございますが、従来否定的であった拒否権に対しては、どういうお考えを持っていらっしゃるか、この点をまず伺っておきたいと思います。
  77. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 私の考えに特につけ加えて申し上げるようなことはございません。しかし、国連というものの発生の過程から考えてまいりましても、日本としては、いろいろと国連の活動に対して今後積極的に期待していくことも多々あろうかと思いますが、そういう点をこれからじっくりと全般的に考えていきたいものである。たとえば、すでに非常任理事国としての立場におきましても、私の理解しているところでは、相当日本に対する期待というものがあったようです。また相当の働きもしてきたのではないかと私は思います。そういうような状況からいって考えるのでありますから、まだ、こういう考え方で、こういうような段取りでというようなことまでの十分な準備をしておりませんから、ただいま具体的なお尋ねがございましたけれども、そういうことをも含めて研究はいたしたいと思っておりますが、まだ確たる意見を申し上げるまでに至っておりません。
  78. 戸叶委員(戸叶里子)

    戸叶委員 一つのそういうお考えをお持ちになるからには、やはりいろいろな角度から、憲章のどこを改正しなければならない、あるいはここを改正すべきであるというようなお考えに立って、次の総会あたりにその憲章の改正の問題を提案されるようなお気持ちまでお持ちになっていられるかどうかということを私は伺いたかったのでございますが、いまの御答弁では、そういうところまでいってない、何とか国連の中でもっと重要な発言権を持って、もっと重要な働きをしていきたいのだという願望程度であって、国連憲章の改正をそれではこういうふうにしていきたいんだというところまでの、そういう意欲はお持ちになっていらっしゃらない、こういうふうに考えていいわけですか。私から言わせるならば、もしもそういうふうな、この際常任理事国になりたいものだというお考えを持ったついでに、憲章の中のいろいろな問題点を指摘して、総会でそれを出すくらいのお気持ちにならねばならないのではないかというふうに考えるわけでございますが、どういうふうにお考えになりますか。
  79. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 ものの筋からいえば、まさにお話のとおりでございます。したがって、現に私も研究しつつございますけれども、その結論といいますか、確たる案ということで御説明するほどにまだ固まっていない、こういうふうな状況でございます。
  80. 戸叶委員(戸叶里子)

    戸叶委員 私も国連憲章のいろいろな問題点をかつて勉強して、こういうところを直したらいいのではないかというような考えを持っておりましたので、その点もきょうは外務大臣お話をしてみたいと思いましたが、ちょうどそれほどのところまでまだいってないという御答弁でございましたので、きょうは国連問題はこの程度にしたいと思います。  そこで、沖繩及び事前協議の問題に入りたいと思いますが、予算委員会で沖繩の返還の問題をめぐりまして、基地の態様、それからまためど、こういうようなことがいろいろと議論をされました。その質疑応答の中で、国民はテレビを見、あるいは新聞を見ていて、私どもが会いますと、何だかたいへんなことになりそうですねと、異口同音に言われるわけでございます。このことは、結局核基地ができるんじゃないか、あるいは沖繩が本土並みといっても何かそこにやりくりがあるのではないか、こういうようなことに対する不安感を持っているのではないかと思います。ただ、今回は政府態度が世論を非常に気にしていらっしゃる。これは何かといいますならば、日米共同声明の中で、日米両国政府及び両国民相互理解と信頼に基づいてこの問題の解決に当たる、こういうことを出されておりますので、世論というものに非常にセンシチブになって、気にしながらやっていらっしゃるんだ、こういうふうに考えるわけで、たいへんいいことですから、その線は進めていっていただきたいと思いますが、今日まで外務大臣も御承知のように、沖繩の例を見ましても、屋良主席が勝ったということは何を意味するか。あるいは今日国民に、核兵器を持ってもいいのか、あるいは自由使用を許してもいいのかというような、そういう話が出てきますと、九九%までは世論として反対をしているんだ、私はこういうふうに考えますが、そういう態度をお認めになっての交渉を進めていただけるかどうかをまず伺いたいと思います。
  81. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 一番大事なことは、国民理解と支持ということであるということは御説のとおりでございます。したがいまして、政府側からもしばしばその点に触れておるわけですが、できるだけすみやかに返還を求めたい。それからもう一つ、もちろん返還のときになれば、日本という中には沖繩も当然含むわけですが、日本日本を含む極東の安全ということについて、日本立場からいってこうあってほしいということを中心に考えていくというのが、取り上げ方の姿勢の問題であろうかと私は思います。そういう点につきまして、国会を通じあるいはそのほかの場におきましても、いろいろと意見が出ているということは非常に力強いことではないかと、かように考えております。
  82. 戸叶委員(戸叶里子)

    戸叶委員 いま私が申し上げましたように、日米共同声明の中に国民の支持を得なければいけないということが書いてあるわけでございますが、こういうふうなときに、アメリカの大使をしておられる下田大使が、国民世論の動向は客観的事実としても、政府方針としてそれを採用するかどうかは別問題だと言っているわけです。「政府がいまから「本土なみ」を掲げるのは結局、国民をだますことになる。」こういうふうな暴言——私どもから言わせれば、暴言をはいているわけでございますけれども、この大使の態度を、外交の責任者として外務大臣はどういうふうにお考えになりますか。さらにまた、これと違って保利官房長官は、十分に各方面の意見を聞いて、国民の支持がないようなことはいたしませんと言っているわけです。こういうふうな答弁を聞きますと、たいへんに国民が混乱をするわけですが、この下田大使の態度に対しては、どういうふうな態度をもって下田大使にお話しになりましたか、伺いたいと思います。
  83. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 私といたしましては、下田大使が任国におりまして、いろいろの機会にいろいろの人に接するわけでございますから、ちょうどことしのお正月のお休みの時期に暫時呼びまして、そして下田大使の接しておるようなところから出てくる意見というか、動向というものを聞いてみたいということで呼んだわけでございますが、下田大使がいろいろの報道機関等に言っておりますことは、いわば個人的な感想や所見でございまして、これはいまの御質問と焦点が合わないかもしれませんけれども、あわせて申し上げておきますが、私も外務大臣に就任いたしました以上は、大使は出先の、私の指揮監督に服するものでございます。それから沖繩返還交渉につきましては、まだこちら側の訓令とかそれに準ずるようなものは出しておりません。したがいまして、今後政府が責任をもってこの処理に当たります場合には、私どもの指揮監督のもとにおいて働いていくということは当然のことでございますので、そういうふうに御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  84. 戸叶委員(戸叶里子)

    戸叶委員 幾ら個人的な考えを報道機関に述べたといたしましても、下田大使が大使であることは間違いないわけです。しかも、アメリカのいろいろな人に接して、そういう接した中からああいう発言になったというならば、私はなお聞き捨てならないことだと思います。もしもこれが日本の大使であるならば、アメリカ人たちはこうおっしゃりますけれども、私はこういうふうに思います、日本はこう考えているのだ、日本国民はこうですよということを言うのが、私は外交ではないかと思うのですが、この外交基本的な考え方が間違っているかどうかをまず伺いたいと思います。
  85. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 日本としてこうやっていかなければならない、こういうふうに進めていきたいということになりますのは、これからのことでございまして、そういう点から申しまして、私は、いろいろの情報をはっきり掌握していることが必要かと思っております。
  86. 戸叶委員(戸叶里子)

    戸叶委員 そうしますと、下田大使がああいう発言をしたことは、日本から行っておる大使であるけれども、これは当然なことであるというふうにお考えになりますか。こういう外交姿勢でいいのだというふうにお考えになるわけでございますか。
  87. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 外交姿勢ということは、外務大臣が指揮監督をいたしましてつくり上げることでございますことは先ほど申し上げましたとおりでございます。同時に、この任国のいろいろの状況というものに触れて、そこから私的な感想が出てくるということも、これは自然のことではないかと思いますが、私は、下田大使が帰任する場合に、わずかの滞在期間ではございましたけれども日本のいろいろな世論というものも、これがどうということは別として、相当いろいろのこういうふうな意見があり、またどういうふうな感じを持ったかということも十分わかったはずなんで、今度は、いままでもそうであると私は思っておりますけれども、あらためて日本国内におけるところのこういったような考え方を十分に頭に入れて、アメリカ側とも、これは公私いろいろの場面があると思いますけれども、その辺は十分頭に入れて、心得えて応待をするようにということを、その取り上げ方というようなことについては、十分私としても旨を含めたつもりでございます。
  88. 戸叶委員(戸叶里子)

    戸叶委員 そうしますと、今度帰任されますときには、外務大臣は、今日国内で起きているいろいろな考え方というものをよく考えに入れてアメリカへ行って、そういう考え交渉の任に当たりなさい、こういうことであって、いままでの交渉の任といいますか、そういうふうな態度アメリカに接しなさい、いままで述べられたことは個人的なことであるから、これはしかたがないということで済まされる問題でございますか。私は、こういう言い方というものは済まされない問題ではないかと思うのです。やはり日本を代表して行っている大使が日本に帰ってきて、アメリカではこう考えているらしいですよというならわかるのですけれども、そうじゃなくて、いまもしも本土並みなどということを言うと、将来国民をだますことになりますよなどという言い方は、非常に行き過ぎた言い方ではないかと思いますが、こういうふうな形で海外で日本外交というものが展開されていけば、重大問題になるのではないかと思います。この点をはっきり外務大臣にもう一度伺いたいと思います。
  89. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 私は、はっきりゆるがざる態度でもって今後指揮監督をしてまいるということを申し上げたつもりでございまして、これはいま始まったことではございませんが、特に先般もいろいろと客観的に問題になりましたその事実の上に立って、私としてはそういう点をはっきり申し聞けたわけでございます。
  90. 戸叶委員(戸叶里子)

    戸叶委員 私は繰り返して申しますけれども、個人的な発言として許されていいものと悪いものとあると思います。こういうふうな重要な問題を、個人的な発言であるにしろ何にしろ、公の席で話したということは、やはり総理なり外務大臣がたしなめてしかるべきではないか、こういうふうに考えるわけでございまして、この点をよくお考えに入れておいていただきたい。日本国民はあちこちで、下田大使は日本の大使ですかということばを私は聞くわけでございます。したがって、そういうことも耳に入れておいていただきたい。これをまず要望したいと思います。  そこで、こういうふうないろいろな背景の中で、今度は愛知外務大臣が渡米するわけでございますが、アメリカへいらっしゃるまでに、先ほど穂積委員に対しまして、自分は白紙である、沖繩返還の基地の態様については白紙である、こういうふうにおっしゃっていたわけでございます。そして、穂積委員はさらにこういうふうに言われたわけです。私は不満と要望を込めてきょうはこの程度にいたします、こうおっしゃいましたが、私はどうもそれだけでは納得ができないわけです。そこで、外務大臣は、今度渡米をされますのには、どの程度の使命を帯びていくかということをまずお伺いしたいと思うわけです。
  91. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 アメリカではニクソン政権が誕生したわけでございます。そして、新政権の考え方、政策というようなこととは、とっくり話し合っていかなければならない、これはどうしても必要なことであると思います。そこで、先ほど申しましたように、先方はまずこの夏じゅうには東京の会議に、こちらに訪日をすることが考えられ、計画されていることは御承知のとおりでございますが、ひとつその前にもこちらも出かけて、密接な話し合いをすることが必要であると考えましたので、双方外交チャンネルを通しまして日程の打ち合わせをいたしたわけでございます。こちらは何しろ五月中は国会があるので、国会のお休みのときは別といたしまして、国会が終了してからが、行くとすれば都合がいいということに対しまして、向こうは、一般的な問題の意見の交換は歓迎するので、ぜひお待ちするという、そういう原則的な合意ができたわけでございます。それからそれに次いで、まあ夏は先方の休暇季節ということもございましょうが、なるべくそういうことと時間繰りを合わせて、盛夏の候でも日本に来るように努力をいたしましょう、そして晩秋総理が訪米されるということも歓迎をするということに、いま日程的にはなっているわけでございます。  で、私としましては、沖繩返還という現内閣の一番の願望の問題でございますから、この扱い方について、フリートーキングをするということが第一の使命と心得ておりますが、同時に、日米間には経済問題その他もございます。あるいはそのほか数え上げれば相当いろいろの問題もあるわけでございます。そういう点について自由な意見の交換をして、そしてそういうふうなものの問からだんだんに相互理解というものを密接にして、考え方をだんだん寄せてくることが、日米外交の今日一番妥当なやり方ではなかろうか。沖繩問題につきましては、かりに五月末か六月初めに私が参るにいたしましても、日程的目標としては、十一月ころを予定されている佐藤・ニクソンのいわゆるトップ会談というものでこの結論を得るようにしたい。そこから逆算して考えてみますれば、五月末か六月初めにしても、ほぼ半年あるわけでございますね。これは短いようでもあり、長いようでもございますが、その期間というものを私としては精魂を込めて、日本の世論を踏んまえながら、アメリカのほんとうの盛り上がるアメリカとしての考え方というものをだんだん接近させて、いわばレールをりっぱに敷けるようにだんだん積み上げていって、最終のゴールを佐藤・ニクソン会談のところへ持っていこう、まあ、こういう心組みで現在はおりますけれども、いろいろまたそのほかにも接触の機会もございましょうし、これも先ほど申し上げましたが、私、アメリカ議員が、上下両院あるいは両党の人が日本へ来て、各政党の意見を聞かれたことも、非常によい接触の機会だったと思いますし、そのほかにもそういうことがあろうかもしれません。また民間ベースでは、京都会議というものも、私は非常に貴重な成果をあげたと思います。まあ、それらいろいろの点を十分踏んまえて、考えようによっては短い、考えようによっては長いこの期間を十分に活用してまいりたい、こういうように考えておるわけでございます。
  92. 戸叶委員(戸叶里子)

    戸叶委員 今度の訪米は、大体十一月の佐藤・ニクソン会談のレールを敷くようなものだということも一つおっしゃったわけでございますが、そのほかまた、いろいろな人がいろいろの角度から歩み寄りをしながら、一つの形をきめていくんだということでございますが、その形をきめていくならば、やはり日本日本側としての腹がまえを持っていかなければ、人を説得したり、あるいは人に納得をしてもらったり、あるいは人を動かしたりすることはできないと思います。ですから、いま愛知外務大臣は、私は別に基地の態様はこうであるというような確固たるものは持っていかない、しかし、腹には自分はこういうのが望ましいんじゃないかというようなものは持っていらっしゃるというふうに理解してもよろしゅうございますか。それとも全然白紙でいらっしゃいますか。
  93. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 いまお話がございましたように、これはまたいろいろのやり方もあると思いますけれども、要は、私はあくまでも日本立場から考え、こうあらねばならないということが私の一番念頭にあることであること、これはもう申し上げるまでもない点ではないかと思います。同時に、あまり考えを早く、早過ぎるぐらいに自繩自縛になってしまうのも、一方においては、交渉ごとでもございますから、いわゆるフリーハンドあるいは幅というようなものも念頭に置くやり方も必要な点もあるのではなかろうか。私といたしましては、現在は、政府側のみんなが言っておりますように、まだその中身について、基地の態様等についても白紙であるということは、それ以上に出ておりません。
  94. 戸叶委員(戸叶里子)

    戸叶委員 外務大臣として、こうあらねばならないというお考えはお持ちのようでございますので、国民は実はそれを知りたがっているわけです。しかし、まあそういうことは早く言わないほうがいいというふうにおっしゃいますので、私はこれ以上追及しません。しかし、いつかはそれはおっしゃらねばならないと思いますが、訪米前に、自分はこうあらねばならないというような考え方で折衝に行くんだぐらいのことは、この委員会で発表していただけますか。
  95. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 いま申し上げましたような考え方で現在はおりますが、その辺のところも、今後とくと私としても真剣に考えを進めてまいりたい、こういうふうに思っております。
  96. 戸叶委員(戸叶里子)

    戸叶委員 昨年の十二月十七日に、私は、佐藤首相の訪米のときまでに沖繩の基地の態様をきめる考えか、こう尋ねましたが、そのときに愛知外務大臣は、安全保障その他の問題も含めてワンパッケージとして持っていかなければならない、こう言われまして、訪米までに基地の態様をきめる考え方のあることを示されたのでございます。このことは私は変わっていないと思いますが、どうですかということが一つ。  それから、外務省用語になっているワンパッケージという意味は、どういうふうに理解したらいいのかということをお伺いしたい。私は、少なくとも基地のめどをつける、それまでにはもう態様はこうあるんだということをきめる、態様はこうあるということがきまって、基地のめどがつく、こういうふうな相互的なものであるというふうに解釈して、それがワンパッケージというふうに思うわけですが、この点は間違っていないでしょうか。
  97. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 結論からいえば、間違っておらないつもりです。ただ、用語がきわめてデリケートであるし、多少御説明を付加させていただきたいと思いますけれども、返還というものは、つまり基地の態様なり何なりと一緒に考えなければ処理ができない問題でございますけれども、もしワンパッケージという用語が、たとえばわが方の案はかくかくかくのごときものである、あるいは条約案にすればこうこうこういうものである、それを一体不可分のものにするというところまでに御理解になったとすれば、そうではございませんで、考え方、取り上げ方は一体でいかなければならない、こういうふうな意味でございます。そういう意味では間違いございません。
  98. 戸叶委員(戸叶里子)

    戸叶委員 ワンパッケージということは、取り上げ方が一体である、こういうふうに解釈するわけですね。
  99. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 はい。
  100. 戸叶委員(戸叶里子)

    戸叶委員 そこで、いままでのこととはちょっと切り離してお伺いいたしますが、総理が、基地の返還に対しまして、ときどきいろいろな答弁をしているわけです。アメリカの大使ならずとも、私どもでも迷うような答弁をされているわけでございますけれども、ともかく総理が、将来沖繩の基地は本土並みに返るだろうということを言われたわけです。ところが、それには付随したことばがございまして、科学技術の進歩とか国際情勢の変化があるわけでということばがついているわけです。国際情勢の変化とか科学技術の進歩、こういうものを勘案した上で、本土並みだというようなことを言われているわけでございますが、そうだといたしますと、本土並みというその中身はたいへんに流動的であり、純粋の本土並みというものではない、こういうふうに理解してもいいわけでございますか。
  101. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 そこのところは、何と申しますか、考え中の問題でございますので、結局、そこのところは、総理がよく言っておりますように、基地の態様等については白紙でございます、こういうことを申し上げているわけで、私といたしましても、現在の段階では、それ以上に御説明はできない。また、それだけの中身がまだ頭の中にも整理されていない。先ほど申し上げたとおりであります。
  102. 戸叶委員(戸叶里子)

    戸叶委員 基地の中身が白紙であるということはたびたびおっしゃっているのですから、私はそういうことを踏まえて伺っているのですよ。というのは、総理のことばを借りているわけですよ。科学技術の進歩とか国際情勢の変化があって、本土並みになる、こういうふうにおっしゃるからには、その本土並みというのはきわめて流動的であって、純粋な本土並みというようなものとは解されませんが、それでいいのですかということを伺っているわけでございまして、別にこういうふうな基地になるとか、基地の態様はどうかとかいうことばを言っているわけではないのです。総理の言われたことばそのものから読むと、その本土並みの中身というものはたいへんに流動的ですね。それから私たちの考えている純粋の本土並みではないのですね。こういうことを伺っているわけなんです。
  103. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 これは結論を申せば白紙なんでありまして、基地の態様ということもそうでございますが、問題の取り上げ方について、国際情勢の流動的な動き、それから日本国内の世論、そしてまた科学技術の進歩ということは、そのうちの、たとえば科学技術の問題とかあるいは国際情勢の問題とかいうものは、まさに日とともに変わったり進歩いたしておりますから、それを総合的に踏んまえて考えていかなければならない、こういうことを、全般的な問題の取り上げ方として、そこに重点を置いて言われていることだと私は理解しているわけでございます。
  104. 戸叶委員(戸叶里子)

    戸叶委員 それでは伺いますが、科学技術の進歩という中には、沖繩にとって、いまより軍事的な面での必要性が減ると解していらっしゃいますか、ふえるというふうに解釈していらっしゃいますか、これがまず一つ。  それから、国際情勢の変化ということでございますが、私は、国際情勢はだんだんに安定した方向に来るとは思います。なぜならば、ベトナム戦争解決し、そして沖繩が日本に返ってくる、こういうふうなことになりますと、今後沖繩から自由に飛んでいかなければならないような国際情勢になるとは思えないのでございますが、その辺の国際情勢見通し、科学技術の進歩というものによって、一体軍事的な面が増すのか増さないのか、この辺だけは伺わしていただきたいと思います。
  105. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 それがやはり帰するところ、基地の態様の問題になる、こういうふうに私は理解いたしますから、たいへんどうもかたくななようですが、白紙論を繰り返さざるを得ないわけです。ただ、おあげになりました問題の中で、たとえば国際情勢の変転ということについては、これは国際的な緊張が緩和するという方向へいくことが望ましいということは、私は明らかに申し上げることができると思います。  それから科学技術の問題にいたしましても、何と言ったらよろしいのでしょうか、そういうことに関連して考え得る要素が出てくることが望ましいということを客解的に申し上げることはできるかと思います。
  106. 戸叶委員(戸叶里子)

    戸叶委員 どうも科学技術の進歩とかあるいは国際情勢の変化、いろいろな面で質問をいたしましても、なかなかかみ合いません。  それでは私はその先に進みたいと思いますが、先ほど愛知外務大臣はこういうふうに言っていらっしゃいました。平和と安全と、日本を守るということが日本に必要である、そこで戦争が起こらないように未然に防ぎ、脅威が起こらないようにする、これが国家存立の基本である。これはそのとおりだと思いますけれども、そのために抑止力にたよっていきたい、これが今日においてもあすにおいても必要だ、抑止力にたよっていれば脅威は起こらない、こういう態度を変えるとやはり脅威が起こる、こういうふうなことをおっしゃったわけでございますが、私は、たいへんこのことが具体的例を帯びてひっかかるわけです。たとえば今日沖繩にB52が駐留しております。そのB52がいることによって、沖繩は非常な脅威を感じています。あそこからしょっちゅうベトナムに飛んでいくのですから、感じています。核の基地があるために、非常におそれを持っているわけです。これは抑止力があるために戦争が起こらないから、脅威は起こらないのだというように一がいにおっしゃる言い方には、どうもひっかかるわけでございますが、この点はどういうふうに解釈をしていらっしゃいますか。
  107. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 私は、自分の一般的の考え方を先ほども申し上げたわけでございまして、私は、国際的に日本が、たとえばどこから脅威があるんだというような問題の設定に対しましても、これは戦争というものが勃発するというふうなことが未然に防げるように、そういう脅威というものをどこの国も日本に対して考えてくれないような、そういう体制があればこそ、日本の自由や安全や、あるいは将来大きなわれわれのターゲットであるところの核軍縮にしてもそうでございましょうし、ほんとうは世界じゅから武力による国際紛争の解決の手段というようなことがなくなるようにするという大きなターゲットを考えるにいたしましても、自分自身のところが安全に対しての十分な自信がある体制でないということであれば、国内的にもあるいは国際的にも十分な発揮をすることができないのではないだろうか。私はそういう一般的な私の考え方を主として申し上げたわけです。  そこで、今度は具体的に沖繩の問題になりますと、これはその一般論はともかくとして、具体的に沖繩の県民の方々がB52に非常に島内においても不安感を持っておられるというようなことに対しましては、これはやはり当面の具体的な問題として、それこそ施政権はございませんから法理的にはいろいろの問題もありましょうが、同胞としての沖繩県民の方々気持ちや心配というものをわが心として、自分のことだと思って、できるだけのことをしてあげなければならない、こういうかまえでこの問題には対処しているわけでございます。なかなか十分な御満足を得るような段階にまだきておりませんけれども、しかし、これは全力をあげてそういう不安の解消につとめるべきであると考えております。
  108. 戸叶委員(戸叶里子)

    戸叶委員 核抑止力の問題等につきましては、わが党の江田さんがいろいろお聞きしましたけれども、やはりそのときも何かかみ合わなかったような感じでございましたし、また意見が非常に違っていると思います。私も、その問題については、もう少しほかの機会に伺いたいと思います。  そこで、総理の答弁、外務大臣の答弁の中でたいへん気にかかりますのは、やはり基地の問題で外務大臣がこういうことを言われたのです。返還後も当分の間は、基地は現状に近い自由使用の形になるかもしれない、こういうようなことを述べられておりますけれども、こうでもない、ああでもないというふうにいろいろ討議していく間の中で、こういうこともあり得るというふうにいまでもお考えになっていらっしゃるかどうか、こういうことをまず伺いたいと思います。
  109. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 私は、いまおあげになったようなことを外務大臣立場として公に申したことはないかと思いますけれども、もしあったどいたしますれば、それは言い過ぎで、先ほど来申しておりますように、この問題については白紙以上に出られない、繰り返して申し上げたいと思います。
  110. 戸叶委員(戸叶里子)

    戸叶委員 そうしますと、外務大臣立場として公に言わないけれども、そういうお考えがあったから、どこかに出てきたんではないかというふうに私たちは考えるわけでございますけれども、そういうお考えもどこかのすみにあるんだというふうに了解していいわけですか。
  111. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 仮定の問題になりますと、いろいろの考え方があろうかと思いますが、私といたしましては、この基地の態様については、白紙という以外に申し上げられないわけでございます。よく、法律論はどうなるかとか、あるいは実態論はどうなるか、政策はどうなるかということが、ともすると錯綜してまいりますので、その辺のところにつきましても、もう少しほんとうにかっちりとした一つ態度というものをつくり上げてまいりますまでには、もうしばらくの猶予を置いていただかなければならない、まじめに考えれば考えるほど、そういうふうな心境でございます。
  112. 戸叶委員(戸叶里子)

    戸叶委員 それでは角度を変えますが、総理大臣がたびたび言われていることは、特別の取りきめがない限り本土と沖繩の問には差別がないはずである。そうすると、一体、特別の取りきめをしようとしているのかな、特別な約束をすることを前提として、特別な約束をしない限りということばを使っておられるのかなというふうに私たちは考えるわけでございますが、特別な取りきめもあり得るというふうにお考えになっていらっしゃるかどうか、この点を伺いたいと思います。
  113. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 これは、総理がその点を言っておりますことは、別に他意もなければ、さりとて、何か腹案を持って言っているものでは絶対にないと私は理解いたしております。きわめて自然に、むしろ条約論的に、特別の定めがなければ憲法も安保もそのまま沖繩に適用されることは当然じゃないだろうか、そういうきわめて自然な気持ちを、特に条約論的なことを頭に置いてお話をしておるわけであって、そうでなかったら、あれだけ御追及を受けても、白紙でございますということを繰り返して言っているはずはない、こういうふうになろうかと思います。
  114. 戸叶委員(戸叶里子)

    戸叶委員 そうしますと、いろいろな総理の答弁等を勘案したり、またアメリカ人たちの発言などをも総合してみまして、もしも——仮定ではございますけれども、やはりあり得る仮定かもしれませんので、伺っておきたいのですけれども、いま考えられていることが、事前協議の除外措置というようなことも考えられているんじゃないか。たとえば日本本土から戦闘作戦行動に飛び出すときには事前協議の対象になるけれども、沖繩からは何らそれが束縛されない、沖繩からは自由に飛べるんだ、そういうふうになってくる場合もあり得ると思います。もしそういうふうな形になってきた場合には、沖繩が日本の本土でありながら事前協議の対象にならない、そして日本から飛び立つのは事前協議の対象になる、こういうふうなことになりますと、たいへん混乱を招くのみか、国際的にそういうふうな解釈というのが認められるものか認められないものか、これをどうやって国際的に説得できるかどうか、こういうことが私は問題になると思いますが、この点は、もしそうなったとしたら、私が考えているようなことになるとお考えになりますか。
  115. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 まあ観念的な問題あるいは仮定の御論議として伺いますと、戸叶委員のおっしゃったようなことも考えられるかもしれませんけれども、しかし、私は、何べんもかたくなようなことを申しますが、そこのところに触れた問題は、何ともいままだ、紙に書いたりあるいは口から申し上げるような段階ではない。これはおわかりいただけるのではないかと思います。
  116. 戸叶委員(戸叶里子)

    戸叶委員 そこまで伺わなくてもけっこうなんですが、私が伺いたいのは、そういうふうな矛盾をはらんでいる形になると、国際的な通念としてこれは承認されないでしょうと思いますけれども承認されるですか。
  117. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 何ともそれはお答えがいたしかねます。
  118. 戸叶委員(戸叶里子)

    戸叶委員 条約局長、どういうふうに条約上お考えになりますか。
  119. 佐藤(正二)政府委員(佐藤正二)

    ○佐藤(正二)政府委員 私もはっきりした先生のお考えがよくわからないのでございますが、事前協議の交換公文を沖繩に適用しない、そういうふうな形のものが国際的に通用するか、こういうお尋ねかと存じますが、それは日米間で、安保条約を沖繩に適用するときに、全く仮定の問題でございますが、そういうふうな形をつくるということは、条約上はできると思います。また、それがほかの国から見て非常に妙な形になっているとかなんとかいう問題はあるかと思うのでございますけれども、しかし、条約上できないかといわれれば、できると思います。
  120. 戸叶委員(戸叶里子)

    戸叶委員 条約上できるとはっきりおっしゃったわけですけれども、ほかの国がそれに対して一体納得できますか。国際的な通念としてそういうことを認めますか。
  121. 佐藤(正二)政府委員(佐藤正二)

    ○佐藤(正二)政府委員 これはどうもほかの国のほうの問題で、何とも私からお答えするのも妙だと思いますが……。それは法律的な問題じゃないと思うのでございますが……。
  122. 戸叶委員(戸叶里子)

    戸叶委員 冗談じゃないですよ。ほかの国の問題だからどうもというような答弁は、私はちょっと失礼だと思います。日本の国は、ほかの国と、世界のいろいろな国との中に、交流をしながらいるわけじゃありませんか。それを、ほかの国がどう考えるか、そんなことはどうでもいいというのでは、とてもこれは日本外交なんかなってないと私は言わざるを得ない。やはりほかの国が国際的通念としてそういうことを許すかどうか、許すというより、承認するかどうかということが、私は問題になるのじゃないかと思うのです。
  123. 佐藤(正二)政府委員(佐藤正二)

    ○佐藤(正二)政府委員 その問題は法律的な問題としてじゃないと思うのでございますが……。私がお答えするのは、ちょっとこれはおかしいのじゃないかと思うのでございます。
  124. 戸叶委員(戸叶里子)

    戸叶委員 委員長、お聞きのように、外務大臣は、外務大臣で、これ以上は申し上げられませんと言い、外務省外務省で、それはどうもというようなことになると、ちょっと外務委員会の権威を失すると思いますので、こういう点は、いろいろな角度から私たちも質問していかなければならない、国民にかわって質問していかなければならない。外務大臣もおっしゃるように、世論がどこにあるかということをいろいろなところから聞いていくのだとおっしゃるのだから、私たちもいろいろなところから聞いていくのですから、もう少しそういうところははっきりさせていただきたいということを委員長に要望したいと思います。  大臣に、いまの問題、伺いたいと思います。
  125. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 いや、それは、いま答弁を申し上げるのにふさわしくないという意味で申し上げたわけです。そして、ただいまの御論議でも、私率直に申し上げるのですけれども、法律論ならば、仮定ならばどうか、これがその仮定ということを前提にして条約論ならばこうだということになりますと、それが何か政府の政策としての意図であるように伝えられるおそれもございますので、その点は、ひとつ私が申し上げましたようなところで御了解をいただきたいと思います。
  126. 戸叶委員(戸叶里子)

    戸叶委員 そんなに、外務大臣、政策としての意図であるかのように考えられると困るなんというふうに深刻に考えなくてもいいと思うのですよ。やはり私たちはいろいろなことから心配していかなければならないと思うのです。たとえば、私、いま事前協議の問題が出ましたから申し上げますけれども、安保条約を審議しているときに、あの事前協議の問題で何と言って政府は答弁したのですか。まず、アメリカの在日米軍のかってな行動を許して日本戦争に巻き込まれることがないようにするために、この事前協議を設けます、それで、それにははっきりとノーと言えるのです、これを何度も何度も繰り返して、私は耳にたこができるほど伺いました。ところが今日、事前協議が、場合によってはイエスと言える場合もあるということを聞くと、もう私はどうしてこんなにだまされなければならないのだろうかと思って、ほんとうに悲しみを私は感じているわけです。そしてずっと過去の例をたどってみますと、MSA協定のときもそうです。軍事条約じゃありませんよとさんざん言い聞かされてきた。ほんとうは軍事条約だった。心配したことがそのとおりになっていくのです。だから、私たちは心配して、それを聞いて、そうならないようにというつもりで伺っているわけなんですから、それが政策として考えられるんじゃないかなんというような懸念ばかりをされて、からの中に閉じこもってしまわれると、よけい私たちはいろいろな危惧の念を持たざるを得ない。こういうことをよくお考えになっておいていただきたいと思います。  そこで、事前協議の問題でいま申し上げたわけでございますが、もしも事前協議が今日政府考えているような、イエスもときによっては言えるのだ、こういうふうなことになると、もう事前協議なんというものは私は要らないと思いますが、何か役に立ちますか、事前協議が。アメリカ軍の行動を阻止するために、そしてこれは歯どめの役をするのだ、こういうことはノーと言えるからだ。今度はイエスと言うことになったら、一体、何をしてもはいということになって、かえって——あるいはまたノーと言う場合もあるでしょう。しかし、イエスと言う場合もあるとするならば、イエスと言った場合には、アメリカの行動に対して日本が責任を持たなければならなくなる。だから、かえってこれは重荷になるのじゃないか。したがって、事前協議のいい意味なんというものはなくなってくるのじゃないかと思いますが、それでもなおかつ事前協議の必要性があるわけですか。
  127. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 これは立場が変わりますけれども、私もこの安保条約の審議には一生懸命に努力さしていただいた一員でございます。したがって、事前協議というものにつきましては、いま戸叶委員お話しになったようなことを私も頭に入れて御答弁申し上げたいと思いますけれども、歯どめであるということが、私は事前協議の大きな一つのメリットであると思います。それだから、これには、まあ戸叶委員申し上げる必要も全然ございませんけれども、交換公文を基礎にいたしまして、そしてその後運用してまいっております。その間の日米間のいろいろの接触もございますけれども、実情において事前協議になったものはない。それは、事前協議では、日本の欲せざるようなことは先方も十分わかっている関係もございましょうけれども、今日までのところ、この事前協議は十分のメリットを発揮しておると思います。ただ、この問題につきましては、過去の経緯を申し上げているわけでございますが、今後におきましても、その運用というものについては、私はそのとおりに考えてしかるべきではないかと思います。で、念のために申しますが、それは将来ある地域について。どういうふうなこと——先ほど仮定の問題というお話でございましたが、ある問題、ある地域等に限って、仮定の問題としてどうなるのかというふうなことのお尋ねでありますと、私はお答えができませんけれども、少なくとも昭和三十五年に安保条約が全面改定をされたとき、そしてその前提となっている条件、そのもとにおいては、あの当時御論議になりました事前協議の協定、そのやり方というものは、十分のメリットを発揮しておる、かように私は理解いたしております。
  128. 戸叶委員(戸叶里子)

    戸叶委員 いまの御答弁でございますけれども、実はこの間、予算委員会の答弁を聞いておりますと、非核三原則の問題で、つくらず、持たず、持ち込まずですか、その場合に、つくらず、持たずは憲法の精神である、それから持ち込まずは、これは政策の問題であるというふうにおっしゃったわけです。最近では、この三つとも政策の問題であるというようなことに変わってきているようでございますが、そこで、具体的な例を一つあげますと、持ち込まずという内容が私はわからないのです。たとえば在日米軍が核を持っても、日本のほうからは何にも言えないんだ、これはいいんだ、こういうふうな解釈をしているわけです。この間、核兵器の持ち込みに日本がもちろん事前協議でイエスを与えた場合に、イエスを与えた結果、アメリカの軍隊が日本領土内へ核兵器を持ち込んでもそれはいいんだというようなことを言っておられましたが、それでは非核三原則の持ち込まないということをくずすことにはならないかどうか、あらためてここで伺ってみます。日本が事前協議を受けて、イエスと言って、在日米軍が核を持った場合に、日本政府のいう非核三原則の持ち込まないということをくずすかくずさないか、この点をまず伺いたいと思います。
  129. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 これはなかなか簡単にお答えできないわけです。というのは、いろいろの角度から見なければいけないと思いますが、現在まで日本の本土につきまして核を在日米軍が持ったり、あるいは持とうとしたり、そういう意味の事前協議はかかったことがございませんし、したがってイエスと言ったこともございませんし、私はイエスと言うつもりは毛頭ございません。ですから、これ以来申し上げますことは、法律論というか憲法論になるかと思うのです。ところが、その法律論、憲法論になりましても、よく聞かれますように、砂川判決の趣旨などから申しますと、外国の軍隊が核を持つということは、憲法上はそのものずばりが違憲にならないという趣旨の政府の解釈でございますことは、御承知のとおりでございますね。ところが、それは憲法にずばり違憲でないかもしれないけれども、非核三原則という政策や気持ちから申しまして、そういうことはあり得ないし、欲せざることであるということがあまりにも明確でございますから、これは仮定のいろいろなことを申しましても、観念論に終始するんじゃないだろうか、そういうふうな感じがいたします。  なお、こまかくいろいろのことを観念上の問題として議論をすれば、幾らも議論の余地はあろうかと思いますけれども、私は、いま申しましたような点から申しまして、これ以上私がいろいろ意見を申し上げるのは差し控えるべきじゃないかと考えております。
  130. 北澤委員長(北澤直吉)

    北澤委員長 戸叶君に申し上げますが、予定の時間が来ておりますから、ひとつ結論に入っていただきます。
  131. 戸叶委員(戸叶里子)

    戸叶委員 それでは、もう一点だけ伺っておきます。もう時間がないようですから、これで私は打ち切りますけれども、いまの問題にからみまして、たとえば核の持ち込みに対しては、私はイエスと言うことは申しませんと、いまはっきりおっしゃったわけです。ところが、私どもがいま懸念しているようなことが、今後いろいろな面で出てくるということを私たちは心配するわけです。そしてまた、私は出てくるんじゃないかと思うのです。これからの国会論議においても出てくると思います。ですから、そういうことを考えて、よく考えをまとめておいていただかないと困ると思います。  そこで、イエスと言うことはあり得ませんとおっしゃいましたけれども、この間、予算委員会で、楢崎さんに対して、ポラリス潜水艦の緊急避難の場合には事前協議の対象になる、その場合にイエスと言うこともあり得る、こういうふうにお答えになっているのですけれども、そういうふうなことを考えましても、やはりイエスと言うことがあるんじゃないか。そして緊急避難の場合に、そういうことが許されるというふうにおっしゃった。そのお考えはいまでも変わりないわけですね。時間がないですから、もう少し詰めて聞きますと、たとえばポラリス潜水艦の寄港に対して、三つのことが考えられると思います。通常の場合と、緊急避難の場合と、それから緊急事態の場合と、この三つの場合が考えられると思いますが、通常の場合はおそらくイエスとおっしゃらないと思います。緊急避難の場合にはイエスとおっしゃることがあるかもしれない。しかし、緊急事態の場合はまだ伺っていないのですが、この点をはっきりさしていただきたい。
  132. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 いま三つに分析してお尋ねがございましたが、私が楢崎議員の御質問にお答えしましたのは、緊急避難ということに限定し、かつ、仮定の仮定の問題として卒然として考えてみれば、もし人道上の問題というようなことがからむのならば、いや緊急避難の場合であっても、ポラリスというようなものについては当然事前協議の対象にするということを申し上げたのでございまして、これは昨年当委員会で、私の前の三木大臣戸叶委員との間の応答もございますが、それも承知の上で申したわけですが、実は御承知と思いますが、その後、この点について他の議員からお尋ねがございましたから、私それを繰り返すと同時に、私は考えてみれば、ポラリスがそういう意味の限定された緊急避難というようなことは、実際問題として起こり得ない。ですから、これはもう仮定の仮定の問題であるということをさらに補足して申し上げておきます。これによりまして、ただいまの御設問に対しては私は十分お答えになると思います。
  133. 戸叶委員(戸叶里子)

    戸叶委員 外務大臣が起こり得ないというふうにおっしゃることは、ちょっと言い過ぎじゃないかと思います。たとえばB52が今日沖繩にいますね。あれはやはり緊急避難といいますか、台風をよけて、前にも行く行かないという問題があったわけですから、そういうふうなことはあり得ると私は思うわけです。ですから、やはり大臣もそういうことを考えておいていただきたい。そして楢崎さんにおっしゃったように、それでは緊急避難の場合にはイエスと言い得るというふうに了解しておいていいわけですか。
  134. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 私は、よく考えてみますと、B52の、いわゆる緊急避難ということをかりにいうとして、それとポラリスということは、また別の問題じゃないかと思うのです。これにはそういう限定された緊急避難というようなことはあり得ないんじゃなかろうか、いわゆる人道的な問題として。私は、そういうふうな、何といいますか、すなおに思っていることをそのまま申し上げているわけでございます。
  135. 戸叶委員(戸叶里子)

    戸叶委員 やはりそういうことがあり得ないという断定のもとにおっしゃると、いろいろな問題をあとに残すんじゃないかと思いますし、この問題は、たとえば緊急避難の問題には、そういうときに、指定された米軍の基地だけに限定されるかどうかということも、地位協定で問題になってくるわけです。ですから、やはりそういう点も私は追及したかったのですが、きょうは時間がないようでございますから、次に譲りまして、私の疑質をこれで終わりたいと思います。
  136. 北澤委員長(北澤直吉)

    北澤委員長 曽祢益君。
  137. 曽祢委員(曾禰益)

    ○曽祢委員 私は、外務大臣に根本政策の問題で御質問いたします前に、時事問題といいますか、一つは、横須賀港におきまするアメリカの原潜の入港にあたっての異常放射能の問題、もう一つは、ソ連の漁船隊が日本の沿海、領海付近の公海でやっておる漁業のことについて、簡単に御質問申し上げたいと思います。  御承知のように、昨年の十二月、日米間の原子力潜水艦の佐世保港汚染以来のいろいろな交渉がございましたが、横須賀港に再び入港が開始されたのであります。その際からも、私どもは、原潜あるいは原子力推進のアメリカの軍艦の寄港については、あくまで放射能の汚染問題について十分なる対策がとれているかいないか、これに対する日本側の科学的な体制並びにこれに伴うアメリカ側の心からな協力体制ができなければいかぬ、それがどうも十分でない、したがって、この寄港には反対である、かような態度をとってまいったわけでありまするが、はしなくもことしの二月十二日以来、横須賀港におきまする原潜の寄港中に、十二日には、あとでわかってみると、結局は、同じく係留中の米国の無線中継船アーリントン号の航海レーダーの障害だということを発表されておりまするが、とにかく空中だけではあるけれども、放射能の異常値を記録した事件があります。さらに二月十四日の午後に、三号モニタリングポストにおきまして、三回にわたって空中で異常値が観測されたのであります。これは方向、風向き並びに海水の分析からも、原潜ハドックのものではないということで、いろいろ米側協力も得て調査した結果、結局付近に停泊中の駆逐母艦のプレイリー号で、イリジウム192を使用したいわゆる探傷のための放射能の発生だったということがわかったということであります。それからさらに翌十五日においても、同じくハドック号付近の三号モニタリングポストで、二回にわたっての異常値の記録がなされたのであります。くしくも二月十日、アメリカの原子力委員会は、昨年五月の佐世保港における放射能汚染問題の最終的報告みたいなものを発表いたしました。  これらのことを通じてつくづく感ずることは、もともと政府の佐世保港汚染問題のときの観測体制が全然科学的になっていなかった。そうしてついには、アメリカ日本との間にあと味の悪い——日本アメリカの原潜が犯人であろうという相当根拠のある推定をなし、アメリカは絶対にそうでないということを今回も確認しておるのであります。それに関連して、ちょうど横須賀において起こっている事態は、まさに日本の観測体制の科学的に貧弱なことをよく証明していると思うのです。皮肉にもアメリカの原子力委員会がいっているように、佐世保事件の可能性として、たとえばレーダーによる電磁気の障害、こういうことが犯人ではなかろうか、あるいは溶接作業における電磁気の妨害、これは強力だとああいうことが起こるんだ、まさにそれと同じような事件が今度起こっているんですね。こういう問題に対して、現地側ではアメリカ態度に非常に不信感を持つとともに、日本政府の観測体制はまことに非科学的だ、これでは横須賀の市民は安心できない。本日は、神奈川県の知事が、全く超党派的な立場で、日本側政府、中央政府並びにアメリカに強い抗議的申し入れをしておるわけであります。  こういう問題について、私は一々こまかいことを科学技術庁から聞こうと思いませんが、少なくとも、一つは、アメリカに対しては、こういった原潜の入港中にレーダー等の障害をなるべく起こさないように、あるいは溶接作業あるいはイリジウム192のような放射能物質を使う作業については、少なくとも事前に日本側に通報して誤解を起こさないようにすることを要求するのは当然だと思う。ある報道によると、アメリカは注意してなるべくやりませんといいなから、今度の事件を起こしている。これはまことに日米間の関係を非常に悪化させるはなはだ不当な態度だと思います。この点について、科学技術庁は、あるいは外務大臣からでもけっこうですよ、アメリカとどういう接触をされたのか、アメリカの回答はどうなっておるか、これからアメリカに対して具体的にどういうことを要求されるのかを伺いたい。  ついでに、もう簡単ですから……。第二には、これを見ても、日本の観測体制というものはいかに非科学的であるか。もうちょっとレーダーの障害があると、直ちにいわゆる放射能に対する反応と同様な数値が記録されるような、そういうような機械をいまだに使っているのか。これは海水の汚染等の放射能だけにきくような機械をなぜ使えないのか。そこら辺の科学的な体制を至急に整えることは、人心を安定させる上からいっても、それからアメリカ日本との問により大きな誤解の種をまかないためにも、絶対必要だと思うのですけれども、科学体制についていかなる態度をとられるか、外務大臣からだけでもけっこうですが、お答えを願いたい。
  138. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 ただいま抑せになりました点は、私もまことに御同感で、かつ、いままでのやり方についていろいろ考えなければならないことがあると存じます。  第一に、原潜の入港を認めておりますのは、海水の汚染がない、冷却水の放出とか放射能の異常なものが出ないということを前提にして、こちらは承認しているわけでございますから、その基本に対して疑惑が起こるようなことは、もちろんわれわれとして困ることでございます。また、日米のいろいろな行き違いや不信の原因にもなることであると思います。  そこで、科学技術庁の関係としては、御案内のように、昨年以来財政的な支出もいたしまして、一応これでやっていける、十分だという体制ができましたので、御承知のように再入港を認めるようになったわけですが、今回、原潜からではないようでありますけれども、レーダーの関係かアイソトープの関係か、そのほかの原因でまた疑惑を起こすようになってきたということは、私どもとしても本意にたがうところでございまして、アメリカ側との接触ももちろん、それから日本側のもっと信頼のできる観測体制を早急に整備するということにつきまして、必ずしも私の所管でございませんけれども、十分ひとつ御心配をいただかないような措置につきまして善処いたしたいと思います。
  139. 曽祢委員(曾禰益)

    ○曽祢委員 善処のことばには尽きるのですけれども、やっぱりはっきりしておきたいのは、こういうことは科学技術庁の仕事だというような安易な考えはやめてほしいのです。日米間の非常に重大な政治問題なんですね。それを、むろん科学技術庁が責任であることに変わりありませんが、外務大臣はもっと大きな立場から、自分の主管事項であると思って、二つのことをやっていただきたい。直ちに閣議において、確かにいままでの体制では不備だ、そういったような、たとえばレーダーの障害あるいはその他の電波障害と、その他の放射能による障害と、区別ができるような完ぺきな科学体制をとる。それから第二は、アメリカに対して、具体的に原潜の停泊中にこの種のまぎらわしい事件を起こさないように、日本側と密接に協力して、ほんとうに協力体制の実をあげるように、ぎりぎりのひとつ約束をさせること、この二つをぜひやっていただきたい。もう一ぺんお答えを願いたいと思います。
  140. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 御意見のところを十分尊重して措置いたしたいと思います。
  141. 曽祢委員(曾禰益)

    ○曽祢委員 もう一つは、ソ連の漁船隊の日本沿海付近における漁業のことでありますが、御承知のように、最近数年間、ソ連の漁船隊がだんだんに日本領海付近の公海に——しかし、実際上は日本の漁船隊の漁場にどんどん南下してまいりまして、ことしになりましてからは、もう銚子沖から伊豆大島、神津島、あの近辺にまで下がってきていることは御承知のとおりであります。しかし、この問題については、なるほど日本側としても、しゃくにさわるけれども、事公海の漁業であるからやむを得ないというような、あるいはあきらめを持っていられるのかと思いますが、やはり公海におきましても、御承知のように、公海において国際的に必要があるならば、関係諸国間の話し合いによって、漁業の最大限の持続的な生産性を確保する、言い方はむずかしいけれども、乱獲によって魚族を、特定の魚族でありましょうが、これが減らないように、あるいはなくならないように、これは共通の利益なんですから、そこで、いろいろな国際公海における漁業の自制の約束があるわけです。別して日ソ間には、西北太平洋における鮭鱒類について、ソ連の要請にしたがって日ソ漁業協定ができて、毎年日本側は苦しいところで譲歩させられておるわけです。同様な趣旨をもっと南のほうの日本の沿海に近い近海においても、公海におきましても、私は、この問題を日ソ間で取り上げて——日本の農林省、水産庁が日本漁船に対して一本釣りを強制している。これはまき網とかその他の漁業でやらせれば、とてもサバなんかはなくなってしまうという心配があればこそ、自制している。そこへソ連の漁船隊がやってきて、まき網で全部かっぱらっていく。そういうことをいつまでも黙過すべきではないと思うのです。条約上の根拠は、そういう意味で少なくとも協定する。乱獲に対してただ放任することはないと思うのですが、この点に対しは、外務大臣はいかにお考えであるか、お答えを願いたい。
  142. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 ソ連の漁船のわが国の近海における操業の状況というものは、御承知のように、非常に一般的に移動が激しいようでございます。したがって、その操業の水域はもちろん、操業の対象になっている魚の種類、それからその規模というようなものが、実態が必ずしも十分明らかでございません。まず、わがほうとしては、こういう実態をできるだけ正確に掌握することが必要だと思います。いろいろの問題がございますけれども、必ずしもソ連のほうも、たとえば十二海里以内で漁労を盛んに近海でやっているとも言えないのではなかろうか。その辺の実態を掌握することがまず第一番に必要だと思いまして、いま専門の水産庁と、そのほか関係方面にも十分協力を願って、まずその実態を的確に掌握するということにするのが第一だと思います。  それから、いまお示しがございましたように、相当長期にわたって魚族の資源を維持していくということは、双方の利益でもございますしいたしますので、そういう面について、できるだけ前向きの姿勢でこの点を取り上げていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  143. 曽祢委員(曾禰益)

    ○曽祢委員 それは慎重もけっこうです。理屈のないところで交渉しても負けますけれども、大体見るところ、むろん、これは日本側から見れば、三海里以上の公海だと思うのです。それはしようがないと思いますね。それはしようがないけれども、公海においても、魚族の資源保護のためには乱獲は困る。乱獲に近い状態だと思うのですね。伝統的に日本の漁業の、言うなればほとんど専属的な漁場なんですからね。日本側は規制している。日本の官庁が規制していないで自由なところならいいですよ。一本釣りを規制しているところに、向こうが堂々と船隊をもって来て、まき網なりをやる、これは適当でないと思う。したがって、漁業協定を結んで、お互いにひとつ科学的に自制しようじゃないか、こういうことを実態調査とともに、基本方針として実は取り上げて、ソ連と話を始めてもらいたい。そんなことをやっている間に干上がってしまう漁民のことも考えてごらんなさい。私は、急に取り上げて、ソ連とそういうラインで交渉することくらいの言明を得たいのです。もう一ぺんひとつはっきり答弁を願いたい。
  144. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 仰せのとおり、できるだけ前向きに取り上げてまいりたいと思います。  それからもう一つ、具体的な問題といたしましては、ただいまお触れにもなりましたが、最近、たとえば千葉県の沖合いの水域で、ソ連漁船がまき網を使用してサバの漁業に従事している。これはもう具体的な事例です。これに対しまして、沿岸の漁民の気持ちも十分体しまして、この件につきましては、公海の漁業資源の保護という観点から、ソ連側にさっそく注意を喚起し、適宜の措置をとることをとりあえず要請をいたしました。その点もあわせて御報告いたします。
  145. 曽祢委員(曾禰益)

    ○曽祢委員 次に、最近のイタリアカナダあたりの中共中国承認問題に関連してお伺いしますが、一体、これら両国の今度の中国承認問題について、日本政府はどの程度事前に相談されておったのか。これらについて、新聞にはいろいろ外務省筋から出たらしい強気論、弱気論が出ておりますが、お差しつかえはなかろうと思うので、大体事前に相当接触があったと思うのですが、その事前の交渉、あるいはその意向が最近はっきり発表されて以後、今日なおいろいろの形で接触は保たれていると思うのですが、どういう接触関係、あるいは交渉関係であったかを明らかにされたいのであります。
  146. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 中共をめぐる各国動向というものが最近流動的でございますことは御承知のとおりですが、これらの動きにつきましては、在外公館あるいは在日公館等を通じまして、関係当事国の動向考え方その他につきましては、私はかなり十分に情報は今回の場合取っておると思います、わがほうとして。それからそれらの当事国から、いろいろの場所におきまして先方から接触のありましたことも事実でございます。それらのルートを通しまして、今後も十分これからの動向はどうなるかということに注目をし、かつ、成り行きを見守っておるわけでございます。で、イタリアは——正確な日時の表は持ってまいりませんでしたけれども、ネンニ外務大臣が、中共承認という問題については、数年前からイタリアとして、その時期と方法、ハウとホエンということについて検討しておったが、そのホエンについて、時期については、その時期が来たように思うということを公式に声明されましたが、その後の動きというものはあまり的確につかめておりません。それからカナダの側におきましては、シャープ外相が、やはり国会等の公式の場におきまして、中共について、これを抽象的に言えば、国際社会に何か戻らせるようなことを前提にしてでありましょうか、承認ということも考えるような措置を発表したわけでございますが、いろいろとやはり各国関係のところと接触を持っているようでございますが、午前中にも当委員会でも御質疑がございましたが、国府の存在ということ、これとの関係をどういうふうにするかということについて、いろいろの角度から検討されたり、あるいは内外の情報収集というようなことにもつとめておられるやに私どもとしては観測しております。  で、わがほうといたしましては、重大な関心を今後の成り行きについて持って見ておりますが、いま申しましたような状況でございますので、正式の国交関係のある国民政府の側におきまして、早急に激しい態度をとることは、国際社会全体のためにとるべきではないのではなかろうかというような気持ちでもって、国府側とも接触をいたしているような状況でございます。現在までのところ、率直に申しまして、そういう状況であります。
  147. 曽祢委員(曾禰益)

    ○曽祢委員 イタリアの場合には、最近のルモール内閣あるいはイタリア社会党の内部の情勢等の結果、やや卒然としてネンニ外相の発言があったような気がします。したがって、外務省ではどのくらいキャッチしておられるかわかりませんが、イタリアの数年来というのは、これはネンニさん自身は別として、イタリア政府国連における態度は、御承知のように少なくとも両にらみといいますか、必ずしも国府を追放して中共にという方向でなかったことは明らかだと思う。したがって、いささか唐突な感じがいたします。しかし、カナダにつきましては、少なくとも現在のトリュドー首相になって以来、これは大体その方向に走ってきたことは卒然ではないわけであります。したがって、その間、カナダが持つアメリカあるいは北大西洋同盟あるいは日本との関係等から見て、やはりカナダの一石というものは非常に大きいので、おそらく、事前に日本側からもカナダ動向に対して探りを入れるとか、あるいはカナダからもかなり日本動向については敏感であって、相互接触があったではないか、ただ単に接触があっただけでなくて、ある程度の相談があってしかるべきやに考えるのですけれども日本としては、やはり私どもは、現在の政府の、中国すなわち国民政府であるという政策は完全に行き詰まっている、したがって、中国の代表者には、国連を通じてまずその代表者を中共、中華人民共和国にかえる、しかし、台湾の問題国民政府の問題は、政治的考慮を加えて、直ちに国府を追放するというような措置は適当でないという、こういう考えにわれわれは立つものでありますが、少なくともそれはどうであるにせよ、日本政府としては、特に国民政府にしがみついているといっては言い過ぎかもしれませんが、国府即中国なりという一つ中国論立場からいえば、かりに一つ中国プラス国民政府論ですら、非常にこれは重大な日本政府外交に対するかげを投げかけるわけですね。そういう点からいって、これは非常な関心を——NATO諸国情勢、また太平洋諸国として一番大きなアメリカに次ぐ友邦ともいうべきカナダ動向には、重大な関心を持っておられたと思うのですね。そういう意味からいいまして、カナダと従来相当接触してきたのではなかろうか、この点をもう少しお差しつかえない限り明らかに——単に接触ばかりではなく、相談してきたのではないかと思うのですが、いかがですか。
  148. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 先ほど申しましたように、カナダ動向につきましては、御同様非常な深い関心を持っておりまして、接触ということばが一番適当かと思いますけれども、十分接触を続けております。そして申し上げ得ることは、これも先ほど申し上げたところでございますが、他の自由主義国家群のいろいろの考え方もございますようでありますので、それらともにらみ合わせまして、日本としてとるべき最善の措置をとりたい。しかし、何ぶんにもまだ現状におきましては、カナダ政府がどういうふうな態度でこの問題の処理をするかということが的確には掌握されておりません。まだこれからいろいろの動きもあろうかと思いますが、それらの点につきましても、できるだけの接触を保ってまいりたい、こういうふうに考えておりますが、ただ一つ、いまの曽祢委員の御意見にもございましたが、政府といたしましては、国民政府との問に国交関係を持ち、長年の間友好親善関係に立っている、この事実を忘れることはできない、これを正視しなければならないということも、同時にわが政府態度であるということをつけ加えて申し上げておきたいと思います。
  149. 曽祢委員(曾禰益)

    ○曽祢委員 率直に言って、カナダ政府に対して、あまり行き過ぎないでほしい、やるのなら一緒にやろうというためには、日本政府態度があまりにも国民政府だけを見過ぎているので、そこが言いにくいところでしょうけれども、こういう問題についてカナダがどこまで腹をきめて、つまり、国府との関係を犠牲にしても、最後には中共一辺倒に腹をきめているのか。フランスの場合も、御承知のように、きわめてドゴールらしい巧妙なというか、いささかマキャベリ的なにおいさえないといえないような、国府をしてやけのやんぱちでみずからフランスとの関係を断たしめるという、そういう巧妙な態度をとりましたが、カナダは一体そこまでのほんとうの腹があるのか。これはわが国なんかと違って、特別に国府と条約関係その他もございませんでしょうし、貿易の利益その他から見れば、これは結局は国府がしびれを切らして切ってくるのならやむを得ない、まあフランス方式とでも申しましょうか、それを考えているのか、直接接触する場合ですね。それから直接接触ではなくて、回り道をしていくような——日本考えられるような場合は、私はこれ以外にないと思うのですが、まず国連で祝福される形で、大多数の圧倒的多数で国連総会で中華人民共和国に中国代表権を認める、ただし、国府には議席を残しておいて、台湾の最終的処理は相当あとで住民の自由意思投票によってきめるというような、そういうような回り道をやるつもりでいるのか。これは決定的な重要性で、カナダ自身がまだきめていないのならしょうがないけれども、しかし、フランス方式で国府にげたを預けて、向こうが短気を起こして飛び出していくのを待っているのか。いやそこまでいかない、アメリカに対して教えてやるのだから、一つ中国プラス台湾方式か何かでいくというのか、そこら辺のことを外交で突きとめていないようだったら、もう大使は召還したらいいと私は思うのです。その点はどうなんですか。
  150. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 先ほど申し上げましたように、イタリアは別として、カナダの場合は、やはり中共側と、それから国府の現在持っているステータス、これに対してどういうふうにやったならばいいであろうかということについて、現在いろいろと検討したり、世界の様子を見ている状況のように思われます。したがいまして、在外機関等におきましても活発に動いて、情勢の掌握、あるいはそれから出てきてわがほうの考え方をどうしていくかというようなことにつきましても、現在十分検討をしておる。しかし、これは、最終的にカナダがどういう態度に出てくるかということにつきましては、いま確たる決定的な見通しは持っておりません。
  151. 曽祢委員(曾禰益)

    ○曽祢委員 これ以上申し上げませんが、しかし、的確な見通しをつけられないと、日本の政策も的確にきめられない。ただ、当面新聞に伝えられていることは、これは御確認願えるかどうか。少なくとも国府に対して、あんまり短気を起こしてすぐにみずからカナダとの関係を断つような、まあ賢明ならざる処置をとるなという友誼的なアドバイスをしているやに報道されておりますが、その点はどうなんですか。
  152. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 先ほども触れましたように、われわれとしては、国民政府との問に正常な外交関係を持っている以上は、この種の国があまり軽々に動かざることがよろしいという気持ち接触していることは事実でございます。
  153. 曽祢委員(曾禰益)

    ○曽祢委員 動かないというのは、どっちがですか。カナダのほうがですか、国府のほうも慎重にやったほうがりこうじゃないかということですか、どっちですか。
  154. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 後者のほうでございます。
  155. 曽祢委員(曾禰益)

    ○曽祢委員 そこで、もう一つだけ、これはもうイエスかノーかできまることですけれども、この間、サンタバーバラ会議ですか、自民党の方々が行かれた。非常にいい会議であった、超党派的にいい試みであったと私は思っているのですが、その際に出てきたこととして伝えられておるのは、ゴールドバーグ前アメリカ国連大使から、日本イタリア案に反対した。要するに、先ほど秋田委員の場合であったかと思いますが、国連におけるいわゆる重要事項指定方式を、日本は賛成のみならず発議者になった。私は、少なくともこの発議者になるのは賢明ならざる態度だと思うのですが、それに関連して、ほんとうにイタリア案に最後には賛成投票したように思うのですが、どうなんですか。ゴールドバーグが言っておるのは、日本の代表は反対したのだ、こういうことを言っておるのですが、その事実はどうなんですか。
  156. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 これは過去のことでもありますし、事実の問題ですから、私からお答えするのもいかがかと思いますけれども、私がゴールドバーグ氏の発言を見まして、そしてあの当時の状況はどうであったのかということを念のために省内でただしましたところを申し上げますと、こういうことであったようです。  最初、イタリアのたしか委員会方式の提案がありまして、それに対して当時の日本側国連代表は、その場において、イタリアの意図している目的というものが、その方法論を越えてどういうところにあるかということが不明確であったために、最初イタリア提案に反対した、この事実はそのとおりのようでございます。ところが、それからいろいろと接触がございまして、イタリアの真意というものがわかったので、数回の相談のあとで、イタリア側の提案、今度はたしか別な提案でございますね、それに対して日本は全面的に同意をいたして、共同の行動をした、これが事実のようでございます。
  157. 曽祢委員(曾禰益)

    ○曽祢委員 そうすると、第二の提案というのも、やはりイタリアの最初の提案と実質的には同様で、国連にとにかく特別委員会をつくって、そしてこの一年間次の総会までに、中国問題をどうするかということを検討しようではないかという案だったと思うのです。最初のあれに反対したことは事実のようですけれども、最終的には総会あるいは政治委員会の段階で賛成したのか、そこら辺のところをもう少し明確に、重要な問題ですから、していただきたい。
  158. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 それでは、過去の事実ですから、事務当局から御説明いたします。
  159. 小木曾説明員(小木曾本雄)

    ○小木曾説明員 ただいまの点に関しまして、最初日本が反対いたしましたときは、いま大臣から御説明がありましたように、イタリア側の意図がはっきりしなかったという点があります。それで、最後日本が賛成いたしましたときは、イタリアの説明で、これは全く手続的なものである、つまり、その結果いかなるものができるかということを特に意図しているものではない、そういうことがはっきりいたしましたので、全く手続的な委員会設立案として賛成したわけでございます。
  160. 曽祢委員(曾禰益)

    ○曽祢委員 結局は一つ提案なんでしょう。どういう意図かということで、初め反対に回って、あとで賛成したということでしょう。
  161. 小木曾説明員(小木曾本雄)

    ○小木曾説明員 そういうわけでございます。
  162. 曽祢委員(曾禰益)

    ○曽祢委員 この点については、これはおそらく自民党にも非常に多くの賛成者がおありではないかと思うのですけれども情勢が動いているのであるし、私は、日本と大陸中国との間にも、なるべくすみやかに正常な国交を持ちたい。ただし、サンフランシスコ以来の国府との関係もあり、われわれは革命外交は適当でないと思う。したがって、国連の場を通じての前向きの姿勢で——やはりこんなものはいきなりワンステップで解決なんかできやしません。しかし、少なくとも前向きの姿勢中共及び国府に対して、できる限りの共存的な前向きの措置国連の中から生み出していく、こういう方向には、私は、国民的な相当大きな賛成があるのではないか。そういう面から考えれば、イタリアがどうの、カナダがどうのもありましょうが、しかし、少なくとも日本の主体的な立場で——いつまでも直接の中共との関係もただ政経分離でも曲のない話であるし、先ほど来の民間航空協定——私は、業務協定として、政府間協定でもいいのではないか、航空、郵便、気象の上では、業務協定でやったって差しつかえないとすら思うのですが、そういう問題もそうですけれども、もう一つは、やはり国連の場を通じて、少なくとも自由陣営の側からも、もしその考えがあるならば、中共が一定の条件はがまんして入ってくるならば席を設ける、つまり、中国の代表者は中共を迎える、ただし、国府については、特別の考慮が一時は必要なんだ、こういうような案を考えていかなければ、いつになったら少数派へ転落するかは別として、全く中国に隣する日本として、無策ではないか。長く見れば、やはり中国国連に引っぱり出すべし、中国には大国としての待遇を与えるべしというのが、国府に対する気持ちは別として、これはもう逐次大勢を占めることは否定できない。いつまでも重要事項指定方式だとか、やれ中国問題を議運的な議事手続的な問題として、何とかして国連の中で実質的な討議をすることすら妨げるとか、あるいは一方においては、一片の動議で国府を追放しろ、そういうような両極の議論はいかぬのではないかと思うのですね。そういう意味で、やはりカナダイタリア動向はそういう意味の他山の石として考え日本日本としての立場から、国連における中国問題を実質討議の場とする、日本はそのときに一つのコンプロマイズ、一つの暫定的な処理の前向きな方針を出していく、こういうことをぜひ私は考える必要があると思うのです。この点についての大臣の心境を伺いたいのであります。
  163. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 先ほど来申しておりますように、カナダ等動向も十二分に注視して他山の石にしたい。これが一つですが、もちろん、日本としてどうあるべきかということを主体的に考えることがもっと大切なことではないか、こういう御提案に対しましては、私もそのとおりだと考えます。  それから、国連の場で実質討議をすることも、方法論として考えられましょうし、そのほかにいろいろのやり方もあろうと思いますが、いろいろの御提言に対しましては、私もとくと胸に入れまして、今後国益上誤りない方策を遂行するように努力したいと思います。
  164. 曽祢委員(曾禰益)

    ○曽祢委員 沖繩問題についての本国会におけるいろいろな論議を非常に緊張しながらずっと拝聴しておったわけですが、どうも私は、政府、特に首相あるいはこれはアドバイスされる外相の白紙論というがよくわからないのです。これは私は、むしろ外交の常識から見ておかしいのではないかという気がする。白紙をあまり強く言っていると、国民から全部白紙委任状をとるというような白紙にとられては、これは民主主義ではない。むろん外交ですから、相手方があるのですから、けんか腰で沖繩問題を解決しようなんということ、私ども考えてはいない。多くの国民もそれを望んでいるのではない。しかし、日本日本立場からの主張がある。アメリカにこれはわかってもらいたいという主張がある。それらの基本線は腹にしまっておくだけでなくて、その点をぐいとアメリカに徹底的にわかるように根強く交渉する。この点では、白紙委任はされていないと思うのですね。総理なり外務大臣アメリカ交渉される以上は、日本政府が閣議決定される方針、しかし、それは日本国民の意向というものを大きくとらえたコンセンサスによっていることは当然だと思います。これは最後の妥結の段階でそのとおり貫かれるかどうかは別ですよ。しかし、国民に対して白紙委任状をよこせという意味の白紙をいっているのではないと思う。ところが、その内交渉なり瀬踏みなりしているに違いないのに、ある時点においては一番瀬踏みをやるべき立場の下田大使が、帰ってきて、あまりに国土的というか、あまりに政治的に過ぎる発言をしてしまって——私は、向こうに行っている日本の大使が、アメリカの世論はなかなかかたいぞ、日本考えているほどそう甘くないぞ、日本の要求がそうすぐ通ると思ったらたいへんだぞということまで言うのは、これは大使として国民に対するいいアドバイスだと思うのです。しかし、だからといって、もう一つ踏み込み過ぎて、だから日本が沖繩は本土並みということで交渉するなんというのはとんでもないということを言っているその大使は、それこそとんでもない。そういうことを言う大使は越権であるし、そういうことを大使をして言わしめているとするならば——そんなことはないと思うけれども、外務大臣や総理大臣は、ステーツマンとしては落第だということになるのですね。そういう世論操作というものを一大使を通じてやるべきものではないのですから、もしそれが越権だったら、はっきりとたしなめるべきである。そうしてアメリカの空気を日本に伝えるのが大使の一つの大きな役割りであるとともに、それにも増して一番大切なことは、日本政府の訓令に従い、しかし、その背後にある日本国民の一致した願望はどうであるかということを、あらゆる手段とあらゆる礼儀を尽くして、アメリカにそれを徹底的にわからせるようにするのが大使の任務ですよ。まさに戸叶委員なんかが指摘されたとおりだと思いますね。そういうふうにいつまでも白紙だ白紙だと言っていると、何でもかんでも国民は白紙委任状をとられるのかと思って心配するし、そこへ持ってきて雑音が入ってくると、ますます国民は、総理や外務大臣の言っていることは、どうもアメリカ寄りのほうへ、いいかげんなところできめるのではないか——アメリカに一番近い線からいけば、現状のままが一番いいにきまっている。現状のままで沖繩が返ってくることは、沖繩の返還にはなりませんね、だれが考えても。だから、あまり白紙白紙と言っておられると、この人は非常にディクテーターか独裁者かというわけですから、国民に対して白紙白紙ということを言っていると、誤解されてもしようがないと思うのですよ。そういう意味の白紙論ではないと思いますが、その点はどうなんでしょうか。
  165. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 白紙委任状をもらって、そしてアメリカのいいなりになるという、そんなことはとんでもない考え方でございます。先ほど来申し上げておりますように、いましばらく考え方が煮詰まるのに時間をかしていただきたい。それから同時に、これは外交のベテランの曽祢委員お話でございますから、十分また御指導をいただいてやってまいりたいと思いますが、心がまえとしては、話し合いのうちに解決の方途を見出していくということでございますので、何といいますか、白紙に字をいっぱい書いて、これでひとつやるんだというようなやり方というのは、必ずしも好ましくないのじゃなかろうか。もう少し時をかしていただければ、おのずからよい道ができ、そしてまた御期待に沿うような結果ができるような状況にだんだんなってくる、これを期待して大いに努力いたしたいと思います。
  166. 曽祢委員(曾禰益)

    ○曽祢委員 外交が決して片方だけの言いなりほうだいになるものでない、そのくらいのことは常識です。それはわかっておりますし、政府気持ちが、国民から白紙委任状を取ってきて、なるべく向こうに寄ろうなんて考えておられるのでないということとは思いますが、しかし、いつまでもということになると、一体その間何をしているのだということになる。この間、一月にわざわざ——わざわざといってはおかしいですけれども政府が新内閣ができたので下田大使をお呼びになったのだろう、そしていろいろお打ち合わせがあったのだろうと思います。その点も、下田君がちょっとしゃべり過ぎるくらいしゃべって、自分は一つの献策をしてきたと言っているのですね。しかも、意地悪く言えば、そのときのどういう下田君の献策であったかも聞かなければならぬのですが、いずれにしても、外務大臣が五月末なり六月にアメリカに行かれる前にも、当然重大なこの数カ月を何にも瀬踏みしないで帰す政府もなければ、その間何もわからないで大使がただ盲目的にその日を暮らしているということもないと思うのです。やはりその間に瀬踏みをしろ、その場合にはどうしても政府基本方針——ほんとうならば閣議でもう基本方針がきまってなければおかしいと思うのです。しかし、まだ瀬踏みという段階である。それはわかりますよ。そういうこともあるでしょう。ただ、引っぱっているだけじゃいけないので、第一に、この国会がだんだん忙しくなるけれども、五月末くらいにあなたが行かれるまでには、閣議決定で交渉基本方針をきめて、それでおいでになるのですか。その間、また大使は、何にも政府方針もわからずに、向こうはどうですか、どうですかということを聞いて回っているのですから、その場合、日本方針はどうなんだ、いや、それは白紙です、大使もまだそれはきまらないといって、それで外交交渉なり瀬踏みになるとお考えですか。
  167. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 お話になることは一々ごもっともに伺いますけれども、御案内のように、アメリカのほうも新政権ということになります。そこで、まずしまいのほうからの日程をきめて、そして段取りをつけて、それに合わせて——もちろん向こうも実は白紙である。これは当然だと思いますが、向こうも白紙でございます。その状態から、いよいよこれから漸次瀬踏みをしていこう、こういうふうなところで、ひとつもうしばらく時間をおかしいただきたい。また、その間においていろいろと御注意や御指導をいただきたいと思っております。
  168. 曽祢委員(曾禰益)

    ○曽祢委員 意地悪い意味ではないですけれども日本から見れば、一番ベストな案はおそらく即時全面復帰でしょう。しかし、私はそれは現実的でないと思う。少なくとも本土並みの基地は残るだろう。そこで、日本側のセカンド・ベストというか、コンセンサスを得ているものは、これは各政党大体やむを得ないというところ、あるいは絶対守ってくれ、本土並み、つまり、核抜き、自由使用じゃない、とにかく事前協議制のもとに置け、いろいろあるでしょうけれども、先ほど秋田委員のおっしゃったことばにも、なかなか含みがあると思うのです。正当に運用される事前協議制、なかなかこれは私はいろいろ解釈があると思いますけれども、とにかく法律的、条約的なステータスとして、日本に返ってきた沖繩が全然違ったステートに置かれるなんということは、これはとうていあり得ないと思うのですね。そういう意味で、日本側の大体の交渉の原案というか、これは本土並みの基地、しかもなるべくすみやかに——ただ、若干の準備期間はごく短期間要るかもしれませんけれども、とにかくそういうこと、これはそう逃げ回る必要はないと私は思うのですよ。それでできなかった場合に、国民に信を問うたらいいと思う。問題は、それと、アメリカも白紙だというけれどもアメリカのベストの案は現状維持にきまっているのですよ。したがって、アメリカもそこまでくるのにいろいろ問題があるでしょうけれども日本の原案は言うまでもなく本土並み、ところで、アメリカのベストの案は現状維持、それでは問題にならぬじゃないかというのを、原案を示しながら話していって、そしてアメリカがぎりぎり一体どこまでくるかということをサウンドする、それが外務大臣の任務にきまっていると思うのですね。これは押しつけて悪いけれども、私はそうだと思うのです。民衆から見た外務大臣のあるべき姿はそうだと思うのです。下田大使もいろいろ言ったけれども国民にはしわいぞと言っておいて、向こうに対しては、日本国民の意向は強いぞと言っておるのだろうと思う。これは好意で期待しておるのですよ。ぜひそうしてもらいたいと思うのですよ。だからそういう意味で、いま、最終的のどこまでの線であれしたらいいかということ、これはデリケートだから、それこそ白紙じゃないけれども、まだきめてない、それでいいのですよ。交渉基本的な態度——アメリカのいってくることを一々説明によって、値切るといっては悪いけれども、なるべく向こうの要求を最小限度に切り詰める、その努力をいまされておるのだと思うのです。これも好意的に言ってあげておるのだけれども、ほんとうだと思うのです。それくらいのことを言わないで、ただ白紙だ白紙だと言うから、さっき白紙じゃなくて白痴じゃないかというやじが出るのだ。少なくとも国民に対して白紙委任状を要求するので——これは独裁じゃないけれども、ただ待ってくれ、待ってくれといって、いつまでも逃げの姿勢では、国会を通じての論議の末、アメリカの代理大使が、佐藤さんの言うことは何だかわからないと言うのはあたりまえですよ。その日でぐらぐらしていることは事実なんだ。それはよけいに不信感を持たせる。それは国である以上、どんなに仲のいい国であっても、立場が違うのだから、交渉はシビアーなものですよ。けんか腰でやるのじゃないけれどもアメリカのほうは現状に近い線を考えているのにきまっておる。きまっておるけれども、友人としてそれじゃいけないということを言うのが日本立場じゃないですか。私はそういうものだと思うのです。だから、そういう意味で、これ以上申し上げても立場が違うからあれですけれども、よくお考え願いたいと思う。ただ、いつまでも、このままで、この長い長丁場の国会を乗り切ろうなんということは、私はとんでもはっぷんだと思う。国民との問に対話じゃなくて、どんどん誤解と対立にいきますよ。私は、やはり政府としてはこういうつもりでやっておるのだ、アメリカにうんとこさ——アメリカの純粋軍事的な考え方といいますか、これをひとつ徹底的に直してもらうように話をする。私どももこの間アメリカのマスキー上院議員以下の十三名の議員さんと話しました。それは、下田大使じゃないけれども、向こうさんの考え方もいろいろ人によって違うけれども、まあだれが考えても、人間はつらいことはいやだから、基地は現状のままが一番いい。逆にあまりうるさければグァムまで引き返してしまうぞ——これはおどしじゃありませんよ。そういう意見が出てくることは当然で、当局に対してはたいへんだなということはわかりますけれども、これは国民的なあれですから、みんなが一緒にやって努力する必要はある。その場合、国民から浮き上がってその日暮らししておるとか、ただ白紙だと言っておると、何か交渉しているのじゃないかという誤解ほどおそろしいものはないと思うのです。また、そういう態度では、悪いことばだけれどもアメリカに侮りを買うというか、日本態度が初めから——交渉へ行く前から、一万円と言っておきながらほんとうは五千円でいいのだなんていう、そういう労働組合の団体交渉をやったら、少なくともそんな委員長は大会で否決されて首になりますよ。私はそういうことはいけないと思うのです。そういう意味で、もうぜひ大体交渉の原案はこれでいくのだという態度を出していただきたい、かように考えるのですが、大臣のお考えを伺いたいと思います。
  169. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 曽祢委員お話は、私は非常によく理解できるわけでございまして、私は、また非常に御激励をいただいておるように伺うわけでございます。いろいろお話しをいただきましたことを十分旨といたしまして、努力を新たにいたしたいと思います。
  170. 曽祢委員(曾禰益)

    ○曽祢委員 最後に、そこで、基地の態様になるのですが、なかなかむずかしいのですけれども、最終的にどうなるかということを想定することは困難ですし、本土並みの基地であれかしと思うのですけれどもアメリカとのいろいろな、ほんとうにシビアーなネゴシエーションというか、バーゲイニングというか、話があると思うので、たとえば核基地の問題ですけれども、一方においては、核基地はあそこにぜひ置いておくのが必要だと、かりにアメリカの軍部がそういう立場をとったといたしますね。同時に、政府としては、日本がやはり核防条約にぜひ調印してほしい、こういう立場であることは間違いないと思います。これは言うまでもなく、純粋に条文のへ理屈からいえば、核防条約に調印しても、その調印した国の領域内にその同盟国なんかが核基地を設け核兵器を持っていることを絶対に禁止する条項はないですね。これはむろんソ連の原案を否定しているんですから、たとえば西ドイツ等に、あるいはオランダでもいいですけれども、核防条約に賛成して自分は核兵器を持たないというところに、NATO軍という形かアメリカという形かは別として、その条約調印国がほんとうに核爆発の支配権、コントロール権を持っていない限りは、これは核基地は置いていけないということは書いてない。書いてないけれども、これは実は、ドイツなり日本みたいな、ほんとうにやろうと思えば核爆発を実現ができる、核兵器が持てる、それだけの相当高い技術水準を持っている国が核に近づくことは、やはりいやなんですね。アメリカソ連もいやなんですよ。平和利用だって、おそろしい競争相手だとすら思っているのですよ。そういう状態のところで一方においては日本に返ってくる沖繩に核基地を置くが、一方においては核防条約で一切の核から完全に手を切れ、実際上そこに矛盾を彼らは感じるのが当然だと思うのです。それからもう一つは、かりに核を返ってくる沖繩に置いたとして、その核を発射するいわゆる引き金はアメリカだけが持っているわけでしょう。しかし、そういう場合に、置かれる国が引き金を自分で引くということになったらたいへんですよ。それは日本が核兵器を持つことになるので、それは絶対に考えていない。しかし、アメリカだけが引き金を引いていいのか。私は理屈にならぬと思うのです。それだけの危険なことを、いかに同盟国でも、アメリカだけの判断でいかに防御できるとはいえ、核兵器を発射する権限を与えるのは大間違いです。そういう意味で、日本の、いわゆる引き金権じゃないけれども、使う場合の拒否権ぐらいはあるのが普通だ。しかし、もしそれだけ拒否権をはっきり書くのなら、核兵器基地にすることはどだいナンセンスになるというような関係になるのではないか。そこら辺のこともひとつ、むろん専門家でおられる外務大臣だから、十分に考えた上に、この核基地を置かないことが日米のためなんだということを徹底的にPRしていただきたいと思うのです。この日本に返ってくる沖繩、むろん日本本土でもそうですけれども日本本土には持ち込ませないということを言っているのだから問題がないけれども、かりにアメリカ側が絶対に日本を守るためにということは、ほとんどそれは理屈にならない。まあ朝鮮、台湾等の防衛のために、いまのところはしばらく、戦術的に少し古くさい核か何かしらないけれども、沖繩に核が必要なんだという議論をした場合に、それといま申し上げたような核防条約との関係日本が核に接近してはいけないこと。しかし、もし日本に核がある場合には、日本がやはり発射するときの拒否権を持つべきは当然です。この理由から論駁すべきであるし、またできると思うのですが、この一点を伺いたいと思います。
  171. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 核防条約関係との関連におきまする御意見につきましては、私も敬意を表するものでございます。たいへん見識の高い、また論理を追うての御意見でございまして、私ここに賛意を表するというようなことまでは申し上げませんけれども、たいへん見識の高い御意見である、心から敬意をもって拝聴いたした次第でございます。
  172. 北澤委員長(北澤直吉)

    北澤委員長 曽祢君に申し上げますが、時間がきておりますから、結論に入ってください。
  173. 曽祢委員(曾禰益)

    ○曽祢委員 わかりました。  それで、核はかりにそういうふうに私の議論から除けるということにいたしますならば、最後に残りますのは、いわゆる自由使用でありたいが、事前協議制に置かれたんじゃ、どうも韓国あるいは台湾あるいはフィリピンの要請にこたえるのにどうも不安だ。軍人というものは、どこの国でもそういうもので、欲が深いので、何でも保守的ですから、そういうことを言うだろうと思うのです。しかし、これも突き詰めて考えれば、いまのB52の問題も、理屈を離れて、これはもうとにかく撤去せいという日本国民、本土並びに沖繩の県民の気持ちは、極端に言えば、事実上アメリカがああいうことができなくなることだと思う。条約上のたてまえは別として、日本に帰ってくる前の沖繩でも、私は政治というものはそういうものだと思う。将来返ってきた沖繩に、沖繩だけは東南アジア向けの基地だから、かりに自由使用の権利を紙の上でもぎ取ったとして、それが一体ほんとうにいざというときに使えるのかというと、その使う場合に、東南アジアかどこか知らないれけども、東北アジアか知りませんけれども、それが台湾海峡付近かあるいは三十八度線以南の韓国かどこか知りませんが、使う場合に、アメリカがそういうことをやるのが、日本全体として、日本の本土を含めて日本の防衛のために絶対に必要だと思うとき以外はほとんど使えないと思うのです。これは本土の場合だって同じです。条約上の事前協議権という拒否権があります。そういう条項がないほうがいいというのは、本土についても、極東のための駐兵なんかというものは、いざというときにその方面からくる脅威というものが、日米両国の問で焦点が合っている、合意している場合でなければ使えるものじゃないでしょう。そういう意味で、法律論として事前協議のときに拒諾することはできるとかできないとかという法律論もありましょうけれども、それよりも、政治論から見れば、アメリカ日本国民の意思に反して、台湾を守るために、あるいはことに韓国に応援に行く場合に、国連軍という形をとれないような場合を想定してごらんなさい。とても日本国民はそれに対して賛成しない。そういう基地を使うことは、日本との関係が破局的な状態になるのではなかろうか。私はそういうふうに現実の政治のことを考えれば、これはアメリカが何も一方的に全部譲れというのではないけれども、私は、そういう点をハイレベルにおいて——ぼくら野党が幾ら言ったって限界もありましょうけれども、われわれはあくまで日米関係をよかれと思えば、アメリカに。きみたちの自由使用なり核基地を残すことに固執するのは大間違いだということを友人としてどこまでも言い続けますが、これはやはり政府当局が国民立場に立って、アメリカの教育に乗りかかることが絶対必要だと思うのです。こういう意味で、結論ですけれども、沖繩の基地の自由使用ということを絶対のスタンプリングブロック、つまづく石で、どうしても乗り越えられない石だとすれば、もしそうだとすれば、だから本土並みなんということはむずかしいときめ込んでしまうことは、非常な間違いのような気がするのですが、その点についての御意見を伺って、私の質問を終わらせていただきます。
  174. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 いろいろの考え方や示唆があることはもう当然でございますけれども、いま私の立場からいって、ある一つ考え方や発想にきめ込んで、あるいはアメリカがこうであろうというようなことを予測して、それに近づくようなやり方をやるというようなことは、私は本筋ではないと思うのでございます。  それからもう一つは、非常になまなましい戦闘行動というようなことが、ともするとこの問題につきまとう論議の中に出てまいりますけれども、私は先ほど申しましたように、脅威が起こらないような、そういう現実的になまなましい激しいことが起こらないような体制をつくるという角度から考えるのが、国益に合致するゆえんじゃなかろうか。そんならどういうことを考えているんだということになると、そこから先のことは、私の基本的な気持ちはそうでございますが、そしておそらくは日本国民もそういうことを望んでおられると思いますが、これをどういう方向で取りまとめていったらいいかということで、大いに検討、勉強をしておるつもりでございます。非常に抽象的ではございますけれども、私の基本的の気持ちは、そういうところでこの問題に取り組んでまいりたい、こういうわけでございます。
  175. 曽祢委員(曾禰益)

    ○曽祢委員 私の質問はこれで終わらせていただきます。
  176. 北澤委員長(北澤直吉)

    北澤委員長 渡部一郎君。
  177. 渡部委員(渡部一郎)

    ○渡部委員 質問に先立ちまして、委員長にまず御要望申し上げておきたいのですが、先ほどの理事会の打ち合わせ事項によりますと、十六時三十分が終了であります。しかしながら、一人の持ち時間は一時間という打ち合わせも両様あったわけでございます。したがいまして、私の演説はあと二十七分間という形に第一の打ち合わせでいくとなるわけでありますが、そういうことで切られますと、第二の約束がむだになるわけであります。したがいまして、十六時三十分に正確に切るのではなく、しかるべきお含みある御運営を委員長お願いしたいと思います。
  178. 北澤委員長(北澤直吉)

    北澤委員長 渡部君の発言、了承しました。
  179. 渡部委員(渡部一郎)

    ○渡部委員 それでは質問させていただきます。  まず第一に、外務大臣に対してお伺いしたいと存じます。  現在、私は、予算委員会の各質疑あるいは代表質問等を通しまして、浮かび上がってまいりました政府外交方針というのが、ここ一カ月ぐらいの間に大幅に変化したのではないかという不安を国民が強く感じていることを申し上げたいと存ずるのであります。  その第一は、沖繩問題におけるところの政府の異常な態度であります。それはどういう態度であったかというと、私は回顧してみますと、下田さんの発言以来、日本国民の世論を操作しようという強い意思が働いていたのではないかという考え方については、私たちはこれは否定するわけにいかない。つまり、いままで沖繩は即時無条件全面返還を強く思っていた国民の世論に対して、これは何とかして操作して、アメリカにとって受け入れられやすいような、現状維持に近いような線で持ち込もうという線を強くあらわしておったのじゃないかと思います。また、私たちが非常に心配しておりますのは、かの非核三原則というものは、少なくとも国民の圧倒的な支持を受け、かつ公理のように思われておった。この原則に対して、三原則は憲法であるが、その一つは政策であるというふうに述べられて、みずからこれは破壊しようとなさったということであります。核に対してはこのような形で破壊が行なわれて、私たちは、前回において非核三原則に対する国会決議を自由民主党側あるいは政府が拒絶されたという理由が、初めてわかったという感じを受けておるわけであります。結局はっきり申しますと、ここのところにおいて、政府は沖繩の問題については大幅な後退現象を示しつつあり、かつ、対米追随路線というものをきわめて明確にしたのではないか。私たち国民の不安は、尽きるところのないほど大きな問題であると私は思います。したがいまして、いろんな問題、外交政策の問題等について、一つ一つの大幅の方針の変更が少しずつ出てまいりまして、政府において煮詰めなければならぬ問題いままで当然煮詰まったと思われる問題が、一つも煮詰まっていないで、かえって今度紛糾を生み始めたということが、私たちの大きな心配なのであります。したがいまして、私は、きょうの質問だけですべてが全部明確にされるわけではないと思います。いろんなことを煮詰めていかなければならない。しかも、その煮詰めなければならない問題について、少なくともそれに対して明瞭に返事をすべき総理及び外務大臣が、はなはだ遺憾でありますけれども、その問題は仮定の質問であるとか、それは白紙であるとかおっしゃっておる。また、しょっちゅう白紙なのかと思うと、あにはからんや、適当なときには白紙どころか、それこそべったり文字の書いてある紙を示しまして、国民の世論を操作しようとする。この辺に重大なる外交上のテクニック、外交ではなく、いわゆる内交のテクニックが一〇〇%に使われておる、こう思うのであります。これが私の現在の外交に対するきわめて率直な不満であります。  私は、きょうは、いろいろな問題について、そういう立場から二、三申し上げてみたいと思うのであります。  その第一は、私は、現在の最大の課題の一つ中国問題であると思うのであります。現在、私たちの隣国にあって、七億の人口を持ち、そしてその七億の人口を持った人々が、核兵器を開発するに至り、その人々が国際連合の中に入ってこない、日本との間というものは、シビアーな関係が続いておる、こういう状況であります。そして世界においては、とうとうたる中国承認への潮流がある。カナダイタリアの例を引くまでもなく、ルクセンブルグ、アイスランド、チリ、また続いて言うならば、南アフリカの諸国においても、中国承認しようという、かすかな動きが幾つか台頭しようとしておる。国際連合の加盟国においても、一国一国と中国承認の国がふえつつある。こういう状況になっておるときにあたりまして、私は、総理及び外務大臣の今回の施政方針に関する演説を拝見しまして、なるほどさすがに総理及び外務大臣は、中国問題に対する項目をこの際織り込んで、きわめて明快な一歩前進した答弁をされるのかと私は期待しておりました。ところが、内容を拝見して、私は非常に遺憾にたえない。それは前のとほとんど変わっていないじゃないかというふうに私は思うのであります。  そこで、私は、まず施政方針に関してお伺いしたいのでありますが、政経分離ということばがわざわざ落としてございますが、政経分離という方針は継続されるのかどうか、大幅に変えられるのかどうか、端的にお伺いしたいと思います。
  180. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 政経分離ということばが使われなかったということは、これによって、たとえば中共承認態度というものをはっきりさせたかどうかというような点に触れての政策の大転換では決してございません。ですから、そういう点からいえば、従来からの政経分離という、そういう考え方が引き続き私たちの方針というふうに御理解をいただきたいと思います。
  181. 渡部委員(渡部一郎)

    ○渡部委員 わかりました。  それでは次に、私は一つずつ伺うのでありますが、一つ中国といわれておる議論と、二つの中国といわれておる議論と二つございますが、今度は外務大臣一つ中国をおとりになるおつもりなのか、二つの中国論に沿って外交方針を転換せられようとしつつあるのか、そこを伺います。
  182. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 ただいまも申し上げましたように、その点に触れて政策を転換するということはないわけでございます。したがって、一つ中国ということは、国民政府中共政府も、それぞれ一つ中国ということを言うておる。それ以外のことについては、全然異なる意見がないわけでございます。  ですから、これは、ことばの使い方は非常にむずかしいと思いますが、これはやはり中国のほうの内政の問題として考えるべきであって、われわれが外部からとかくの意見を申すべきものではない、これが第二の私ども考えであります。  それから第三には、先ほど申し上げましたように、サンフランシスコ条約以来、日本国民政府との間に国交を持っておる。こういう立場にあるということを銘記しなければいけない、大体そういうことに現在の政府方針はきまっておるわけであります。
  183. 渡部委員(渡部一郎)

    ○渡部委員 もしも政府一つ中国という方針でいかれるならば、私は、先ほどのカナダ中国承認に関する政府方針というものは、先ほど曽祢議員から御質問がありまして、外務大臣はお認めになりましたけれども、その中におきましてこういうお話がございました。それは、もしもカナダ中共政権を承認した際において、そのときに、台湾政府が直ちにそれに対して国交断絶というような形をとらないような、何らかの働きかけをしたかというような意味合いのお話がございましたが、その働きかけをしたというお話がございました。ということは、すなわち、カナダ政府が非常に苦心して今回やっております政策は、当初、中共政府のたび重なる抗議にもかかわらず、二つの中国という形を事実上認めまして、新しい局面を開こうというところがカナダ政府の大きな主張であったように私は思います。現在、またちょっと変わっておるようでございますが……。そうすると、その試みを日本外務省は明確に支援しておる。ということは、二つの中国をあわよくば承認させよう、一つ台湾一つの北京という形において承認させようという、そういう意図がその際においてあったのではないか、私たちはそう考えるのでありますけれども、その点は、外務大臣はどういうおつもりでおやりになっておったか、また、それは外務大臣はよく御存じなくて、そういうことが事実上行なわれておったのか、その辺の含みをお話し願いたいと存じます。
  184. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 まあ、念のためでございますけれども一つ中国という問題について、日本政府としては、これはとかく言うべきではないということを先ほど申し上げたわけでございます。  それから、私は、カナダの現在考えておることに、これも論評を加えるという意味では決してございませんけれども、想像するのに、現に、カナダはやはり国民政府との問に関係を持ち、経済関係も持ち、こういうステータスをカナダとしても尊重していかなければならないんじゃないだろうか、その辺をどういうふうに中共話し合いをするのかというところに苦心があるいはあるのではないか、これはもうほんとうの想像でございます。また、その辺のところが、まだまだカナダ政府として最終的にどういう態度をとるのかが明白でない点ではないか。これはもう想像をまじえての観察でございます。  そこで、いまの具体的なお尋ねの点でございますが、カナダとしても、そういうような点についていろいろと考えているところはあろうかと思いますが、日本立場といたしましては、いまも申しましたように、国民政府と国交がある状況にもかんがみまして、国民政府があまり早計に、あまり神経質な動きをされるということは望ましくないことであろうというようなことは、日本側国民政府側との接触の間におきまして、われわれの考え方としてそういうことを示しておることは事実でございます。
  185. 渡部委員(渡部一郎)

    ○渡部委員 私は、政府の言われていることが非常に矛盾しておるように思います。ということは、二つの中国一つ中国というような問題について、先ほどの御説明の中にありましたように、これは中国の内政問題である。その内政問題という意味は、私は、どういう意味で言われているか、まだ詰めてないのでよくわかりませんけれども、その中国という国を代表する二つの政府という考え方でなくて、中国を代表するのは一つ政府である、こういう考え方でございますね。これはちょっと質問の前に伺っておきたいのでございます。
  186. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 おそらく、中共政府国民政府も、問題としてはそういうふうにとらえているのであろう、こういうふうに思います。
  187. 渡部委員(渡部一郎)

    ○渡部委員 そうして、外務大臣もそれと同意見でございますか。
  188. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 私は、このいわゆる一つ中国という問題については、これは、私としてこれに対して意見を申し上げるべき性質のものではない、こういうふうに考えるわけであります。  それから、先ほどのお尋ねに答弁漏れがございましたかもしれませんが、私は、お尋ねのあったような一つ中国一つ台湾というようなことについてどう思うのか、おまえはそう思っておるらしいぞと言われることにつきましては、私はそういう意味で申し上げたわけではございません。
  189. 渡部委員(渡部一郎)

    ○渡部委員 私は、もう一回それをお話し申し上げたいと思うのですけれども、外務大臣の言われているのは、まず一つは、一つ中国という国土があって、それに対して二つの政府を認めようとなさっておるのか、これが第一の考え方であります。  もう一つは、内乱によって二つに国家が分裂してしまって、二つの国家と二つの政府がそこにあるのか、こういう意味理解されておるのか。つまり、したがって、一つ中国という議論が、国家としては一つなんだけれども、現実に政府が二つあるんだという考え方でいかれるのか、それとも、一つの国家に対し一つ政府があるのであって、それは国府であると、こういうお考えであるのか、それを私は伺っておるのです。
  190. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 まあ、この一つ中国ということについては、いろいろの解釈や見方があると思いますけれども、常識的に考えれば、たとえば中共は、台湾というところは自分の支配下に属すべきものである、こういう主張が中共側から言っての一つ中国の主張であると思います。逆に、国民政府側から言えば、中国本土は自分の支配下に属すべきものである、こういう主張が一つ中国の主張であると思いますが、そういう意味における一つ中国ということについては、私は何とも申し上げかねる、こう言っておるわけでございます。
  191. 渡部委員(渡部一郎)

    ○渡部委員 そうすると、どういうお考えか、まだ何もおっしゃっていないのです。否定されただけじゃないですか。外務大臣は、それは人のお話を申されただけであって、私は、中国外務省を相手にしているわけではない。日本政府の、日本外務省のお考えを伺っておるわけです。
  192. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 どうも私も、おっしゃることがよくわからないのですけれども、そういう意味も含めた一つ中国という問題については、日本の外務大臣は何ら意見を申し上げるべきものではない、こういうふうに終始一貫申し上げているつもりです。
  193. 渡部委員(渡部一郎)

    ○渡部委員 そうすると、大臣は、これまた白紙であって、何も意見がない。めんどうなことは、今回は、ここしばらくの間は、外務省は全部白紙である、ノーコメントである、意見がない、考えておらない、目下考えて、そのうち考えると、こんな意味でございますか。
  194. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 これは、こういう大きな問題に対しまして、そうしてしかも、それぞれの中国がもうほんとうにこれに対しては主張を強く持っておられる、この状態を客観的に申し上げたので、これはもう皆さんがよく御承知のとおりでございますが、これに対して、第三国である日本がとかく申すべきものではない。そうして現状においては、国民政府日本は正常な外交関係を持ち、かつ親善友好な関係にあるということもまた客観的な事実である、こういうふうにお答えするよりほかに私はお答えするすべを知りません。
  195. 渡部委員(渡部一郎)

    ○渡部委員 私はいささか失望を免れない。非常に慎重な方であるということは存じておりますけれども、少なくとも公職につかれて外務大臣におなりになった以上、一つ中国に関しては何も言うことがないというようなお話しで外交ができるものだとは思わない。ただ私は、これをいつまで申し上げておっても話にならない。まるでニュース解説者のように現状を述べられるにとどまりました。したがって、私は、一つ中国論に関して日本外務省は白紙である、考えがない、いま言いたくない、こういうふうに理解いたしましてよろしゅうございますか。
  196. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 慎重に考えて、そう申し上げるよりほかにしかたがございません。これをいかにおとりになろうと、おとりになる方の御解釈にまかせます。
  197. 渡部委員(渡部一郎)

    ○渡部委員 しからば、私は、ほかのことを伺ったほうがよろしいと思います。  じゃ、今度は覚書貿易の件について、私は申し上げたいと存じます。  覚書貿易の継続について、日本の業者の方々は非常に心配をしていらっしゃいますし、この貿易が現在において政府間貿易にかわるものとして、その行くえが注目されております。田川代議士等が現在行かれている件について私は伺いたいのです。と申しますのは、政経分離という方向、その方向に対する反省というものがない限りはこの覚書貿易というのは前進しないということは、前に両者の間で協定せられているとおりであります。先ほど、政経分離方針に変更はない、こう明確に断言された以上は、このMT貿易がこれ以上拡大したりあるいは継続したりすることに対して、明るい見通しを全然持っていない、政府としてはそれがもう破談になってもやむを得ない、こういう方針で田川さんをお出しになったのかどうか、その辺の気持ちをお伺いしたい。
  198. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 私は、これも政経分離ということを基礎に置くということは先ほど申しましたけれども、それだからこそ、覚書貿易というような民間ベースという形における貿易は大いに促進をいたしたい、そしてできるなら長期的な約定が欲するところである、これは私は日本立場であると思います。  よけいなことを申しておしかりを受けるかもしれませんけれども、私は中共には中共の主張があると思います。しかし、相手が中共であった場合には、なぜ中共の言うことにだけこちらは従わなければならないのでしょうか。先ほど沖繩の問題でも御論議がございましたが、双方双方立場がある。初めから政経不分離でなければ日中貿易はできないのだときめかかることはいかがでございましょうか。私は、その双方のいろいろの主張を忍耐強くまとめていくということが、現在の中共に対しては政経分離の原則のもとにおける日本の国益を伸長していくことである。それから、おそらくは向こうさんでもそういう状況はわかってくれるに違いないという期待を持って話を進めるというのが、わがほうの立場であってしかるべきではないか、私はかように考えます。
  199. 渡部委員(渡部一郎)

    ○渡部委員 私は、そのおことば、その態度というものを、沖繩問題に対する日本政府態度としておとりくださることを望みます。というのは、沖繩の返還の方式については、アメリカ側だけの要望を言われて、常に日本政府の、日本国民の要望をアメリカ側に強く申されないのが、外務省当局の、外務大臣の、あるいは政府方針ではなかったかと私は思うのです。はなはだ私はおかしな御答弁だと思います。と申しますのは、MT貿易については、日中双方が以前に確認した原則があります。それは単なる主張ではなくて、もう両者の間に確立した原則じゃないかと思う。その原則によれば、政治関係の改善がなければ貿易の改善はないと、両者でこの原則を確認した。ところが、吉田書簡はそのままだ。米にかわる輸入品目もない。これでは拡大する見通しはないと、おたくの党の古井さんが、これは新聞記者会見で述べているじゃないですか。だから私は申し上げているのです。そういう立場ではもうどうしようもない。協定が拡大することもない。長期化することもない。憂いに満ちながら、古井さんは顔をしかめながら中国へ行かれておる。そんなことで、じゃ日中覚書協定というものを破棄あるいは縮小する方向で、あなたはむしろ任務をかぶせて古井さんをお出しになったのかと聞くのが当然じゃないですか。協定はすでにある。両者の打ち合わせはできておる。前にこちらが確認した原則がそうだったのじゃないですか。それをこちらでそういうことをおっしゃったとしても、それはあまりにも過酷な、中国に行かれたお二人に対するそれこそ残虐きわまる御指示ではなかろうかと私は思うのですが、いかがでしょうか。
  200. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 私は別に開き直って言うわけではないのですけれども、ですから、これがわがほうからいっての政経分離の原則下における貿易のむずかしさであると思います。しかし、これも事を分けて申しますれば、これがだからいわゆる民間貿易のかっこうをとっているわけであります。ですから、その民間の代表となった方々の御苦心というものはたいへんなものであると思います。私ども立場と御同様にたいへんな立場であると思います。そこをうまく切り開いていっていただくことが私ども期待であります。
  201. 渡部委員(渡部一郎)

    ○渡部委員 だから外務大臣、それは詭弁でございます。それはちょっとおかしな発言だと私は思うのです。覚書協定というものができましたのは、そういう立場承認した上で、中国と妥協した上ででき上がったものです。それを続けようというならば、それ以上の妥協が必要です。私は妥協しろと言っておるわけでは別にない。だけれども、現在においてはそれを続けようとすれば、それを長期化し、拡大しようとすれば、もっと別の手が要ると。ころが、何らそういうものを与えないで、二人の人を出させてしまったということは、だから外務大臣として、これらの協定の存続はおもしろくない、MT貿易は破棄して別の形にするというのなら私はわかります。MT貿易というものは継続したくない、そのような変なものはつぶしてしまいたい、心ならずも私はやったのだ、だから今度行くメンバーに対しては、あのMT貿易の全般に対して改良を指示しているというのならまだわかります。何もしないで、そして条件だけはうんとつけて、こっちの立場というものをさらに強調すれば、このMT貿易はつぶれるだけです。先ほどこちらの立場を主張するのだとおっしゃった。それならば、MT貿易というものを破壊する方向外務省は何かの方策をおとりになっているのか、そして破壊して平然とされているのかと私は伺っているわけです。先ほどから言われているところは全く矛盾している。だからMT貿易をつぶす方角ではなかろうかと私は伺っておる。
  202. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 MT貿易は拡大し、かつ長期に及ぶ話し合いができるということは、私は心から期待しておるわけです。  それから、覚え書きの問題等につきまして、これが政経分離の妙味だと私は思います。外務省としてどういう訓令をするとか、あるいは妨害するとか、そういう立場に私はございません。交渉に当たる方の御苦労はたいへんでございましょうけれども、民間の代表者として、そしてわれわれが期待するような方向が少しでもでき上がるようになってくれれば、まことに両国にとってけっこうなことである、こういうふうに考えておるのであって、MT貿易をぶちこわすなどと言われたら、まことに私としては心外でございます。
  203. 渡部委員(渡部一郎)

    ○渡部委員 それではそこまでにして、それ以上はもう論議が発展しないようでございますので、十分な検討お願いいたしまして、私は次に参りたいと思います。  そうしますと、私はこの質問はもうほんのわずかで終わるつもりであったのですけれども、もう一つ伺っておきたい。  中国日本政府承認しなければならない時期、それは私は意外に早く来るのではないかと思います。それは中国承認の国家が自然に一つずつふえていくという現在の国際情勢考えるときに、私はそう思います。たとえ代表権問題等につき国際連合の一部でそれについていやがらせのようなやり方が幾つか続けられたとしても、圧倒的多数の国家群が中国承認するという条件がそろうならば、これはもう国際連合への加盟という動き活発化するでありましょうし、条件は全然変わるわけでございます。そうすると、私は思うのでありますけれども、前に自由民主党の中で大臣をされてなくなられた河野さんという方がございましたけれども、われわれは中国承認する、アメリカ承認する前の晩に教えてもらいたいものだ、そうしたら、日本政府として承認したいものだと言われたことがございます。こういうような考え方、もうアメリカのほうだけを見ていて、その時期を見ようという考え方があるのではないかという不安を私は感じております。そのような考え方がもしまだ根強く残っておったならば、日本政府外交というものは、東洋に対する外交において大幅なメリットを失い、時代の先取りということが不可能になると私は思うわけであります。  そこで、私は率直に伺っておきたいのですけれども、外務大臣は、中国承認はどういう時点において行なわれるべきものであるか、中国承認の外的条件並びに内的条件と分けてもけっこうですが、どういう条件が整ったら中国承認すると考えておられるのか、それをひとつこの際明らかにしていただきたいと存じます。
  204. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 大局的に見まして、中共が、よく政府からも申しておりますとおり、国際社会に喜んで迎えられるような情勢がつくられるということが、一言にして言えば、そういう状況がすみやかに来ることが望ましいということを申し上げることができるかと思います。現に、たとえば中共外交関係を持っておる国もある程度できたわけですけれども、文化大革命中におきましては、ほとんどこれはという公館長は北京に召還されて、まだ赴任もほとんどしていないというような状況は、これはこちらから客観的に見れば、まだ外交というようなものに対する積極的な姿勢が出てきていない。かりに幾つかの国が承認というような手を差し伸べましても、まだいろいろのこだわりがあるような状況ではなかろうかと私は思うわけでございますが、そういうふうな状況もしさいに観察しながら、私どもとしての態度がきめられるような状況が来ることが望ましいのではないだろうか、こういうふうに考えます。  それから、これもよく申しますことですから、くどいようになりますけれども、たとえば米中の大使級会談が近く行なわれるという報道もございます。また行なわれることも期待いたしますが、わがほうの状態を冷静にごらんいただきますと、先ほど来御指摘がございますように、政経分離という名のもとにではあるけれども政府与党の有力者が再々渡航をいたしております。そして、覚書貿易も、いま御指摘のように、困難な状況にはございませんけれども、少なくとも一時から見れば、商いの高も相当ふえております。そのほかに、いわゆる友好商社との間の取引もできております。つまり、貿易の量が一年間に六億ドル前後というようなところは、ほかの国と比べものにならないかと私思います。それから不幸な事件が起こっておりますけれども新聞記者相互交換も行なわれております。それから、新聞記者の問題に関連しては、こちらは、こういう問題があるならば政府間の話し合いでもけっこうであります、何とかしてくださいという申し入れもしておるわけでございます。量、質両面から申しまして、中国日本との間の関係というものは、このむずかしい状況下において、私は量、質両面で相当に広がっておると思うのです。こういう状況でありますことが、私どもとしては、いままでの状況において最も賢明なやり方であったと思います。  今後さらに中共外交姿勢というものが変わり、文化大革命が終息しということになれば、おのずから向こうさんの——こちらからいえば何も敵視政策をしているつもりはない。向こうさんには向こうさんの言い分がありましょうが、日本中共敵視政策だと言われますけれども、そういうところをもう少しやわらかな気持ちで見てもらうことはできないであろうか。だんだんに世の中の移り変わりによってそのようなことが必ず醸成してくるだろう、そういうときに、中共に対するわれわれの考え方というものも変わり得ることになるのではないか、かように私は考えておるわけでございます。向こうさんの態度あるいは従来からの国府の態度などにかんがみて、いきなり承認だと言ってみたところで、私は、まだ状況は熟していない、環境も熟していない、かように考えざるを得ないかと思っております。
  205. 渡部委員(渡部一郎)

    ○渡部委員 私は、環境が熟していないといういまのお話で、依然として承認の外的条件を煮詰めるに至っていない政府姿勢というものが、実はこの施政方針の中にみごとにあらわれておると思うのであります。私は、残念なことは、さっきから伺っておりますと、さっぱりいままでのと大差はない。一口に言うと、今度の総理大臣の演説と外務大臣中国問題に対する演説は単なるお話であった。そうして中国寄りのポーズを示すだけがねらいであった。私は重大な、そういう印象を受けるわけであります。そうして期待するところは、向こうが変われということだけであった。私は、こういうのは、少なくとも中国との問題を解決することが日本外交、防衛に関する大きな問題であるという問題提起と、それに対する同意がなかったからこういうことになったのだと思うわけであります。したがって私が感ずるのは、時期が熟さないといって見ているのが正しいのか、それとも時期を熟させようという努力をしなければならないと見るべきか、その認識の差だと思うのであります。私の質問は、時期を熟させようという立場です。外務大臣は、時期の熟さないのをずっとそのまま見て、いままであれをやった、これもやったと、じっといままでどおり見ておる。口だけはりっぱな中国寄りを示される。私は、やりようは幾らでもあると思うのです。たとえば今度のサンタバーバラの会議のときに、フルブライトさんという方が、アメリカに対する提案の中で、中国と外相級の会談をやれ、積極的にアメリカ政府に対しでありますが、提案をしておられます。そんなことは、日本政府のほうが何十倍もやりよかったと私は思うのであります。また、中国政府がその気になったらいつでも中国承認の用意があるということを声明しろという提案をしておられます。これまた直ちにやって一向に差しつかえないことじゃないかと思うのです。こういう幾つかのおもしろい考えと、考えてもよさそうな提案というものに一切手を染めない。私はそこに何か理由があるのじゃないかという感じがするのです。ですから、私は、中国問題を煮詰める、中国問題を熟させる、そのための前向きの姿勢を示す。施政方針演説において単なるはったり的な演説をしたとは思いたくない。そこのところにおいて重要な日本方針を述べたと思いたい。私はむしろそうお願いしたい。だから、その際において、私は、あれに引き続いて具体的にこういう提案をするのだということの御説明があってしかるべきだと思うのです。御説明は何もない。あれ以来何もない。そうして中国問題に対する従来の態度は変わりがないとだけ声明された。それだけははっきり私たちの耳に焼きついておる。これだけで中国問題との関係が変わるとしたら、おかしな話だと思う。国民はあきれておるのです。もう日本の現在のやり方では中国問題は解決しないのじゃないかというような感じを持っておるのです。一応の御決意のほどを承りたい。いま述べるべき具体的な提案がないなら、また慎重に誠実に検討いただいてけっこうであります。そうしてゆっくり検討していただいて、出していただいてけっこうでありますけれども、ともかくもやるかやらぬか、何とか言っていただきたいと思うのですが、どうでしょうか。
  206. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 私は、対中共の問題を、日本中共に対する態度だけと限定して考えることはいかがかと思うわけでございまして、やはり日本政府は自由主義陣営の雄といたしまして、基本的な——これは御意見が違うかもしれませんけれども基本的な姿勢というものが私はあると思います。その基本的な姿勢まで曲げて、そしてこれは中共だけではございませんが、他の国と話し合いをするというか、妥協をするんだということは、国益を守る立場からいっていかがかと思うのでありますが、そういう基本的な問題のワクの中で、おそらくそうすれば、カナダもどこもどうではないかという御反論がすぐ出ると思います。そういうところの態度や、考え方等を十分参酌をいたしまして、とにかくこれもしかられることを前提で申しますが、お隣に七億以上の国民があって、あれだけの広大な土地がある、ここと前向きに何らかやっていかなければならぬというのはだれしも考えることだと思うのであります。そういう意味で、私ども基本的な考え方というものは御理解願えるかと思うのであります。
  207. 渡部委員(渡部一郎)

    ○渡部委員 それでは、その問題はそれだけにいたしまして、次へ参りたいと存じます。  次は、私たちは公明党として、今度国連アジア本部の東京設置という方針を党大会で提出をいたしまして、国民の前に訴えました。私は宣伝をするわけじゃないのですけれども、国際連合の充実あるいは国際連合を強化するという方針は、わが国外交方針の大きな柱の一つであったと思います。現在、国際連合は、御存じでございましょうが、ヨーロッパに本部もしくは事務局のごときものを持っておりまして、教育機関あるいは紛争平和処理機関のごときものを設けておりまして、ヨーロッパにおいて活躍をしております。ところが、実際的に世界の中で問題と紛争が最も起こるのはアジア地域であります。このアジア地域にしかるべき紛争解決の平和的機関であるとか、あるいはそれら教育機関であるとか、あるいは平和監察機関であるとか、そういったものを備えた国連アジア本部あるいはアジア機構のごときものを置くということは、まことにいい考えじゃないかと私たちは考えるわけでありまして、私たちはこれを単なる私たちの考えとしてでなくて、先日の日米議員懇談会の際に、私たちはマスキー上院議員をはじめとするアメリカ議員たちにも問うてみました。私はここで御報告さしていただくのですけれども、同席されたアメリカ上下院議員全員の熱烈な賛同を得たということを申し上げておきたいのです。それは十数人の方であるから、全部ではないとしても、これほどまでにアメリカ側が賛同したのは、私たちの会議の中でこれだけであります。私は、これは大きな見通しがあるのではないかとますます考えに至ったわけであります。また、この考え方は、ウ・タント氏前回のいろいろな呼びかけの中からも当然合致する考え方だと思います。そこで、私たちは、国連アジア平和監察機関あるいは国連アジア国際紛争平和処理機関国連アジア経済技術教育開発機構等、そういったものをつくりまして、国連に議席を持たない国、中共どもそれこそ呼びまして、そうして世界の国際連合の強化に対して、何らかの手を打ちたい。これをひとつ政府のほうから国連へ要請するなり、ウ・タント事務総長に要請するなり、こういった動きを支援するなり、何らかのプラスの動きをしていただきたい。私は公式にここで申し上げるのでありますが、これに関する外務大臣の御見解を承っておきたいと存じます。
  208. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 公明党におかれて非常に意欲的な国連アジア本部の御提案がございますことは、私もかねて承知いたしております。そしてその意図されていること、あるいは若干の方法論等につきましても、とくと検討さしていただいておるつもりでございます。ただ、この案に私も敬意を表しているわけでありますが、従来からの考え方あるいは進め方等からいえば、なかなか前途にいろいろの意見や、また反対もあろうかとも思いますが、それらの点についても、十分ひとつ御連携をとらしていただきまして、検討をいたしたいと思います。  それからもう一つ、これにも関連すると思いますけれども、先ほど戸叶委員の御質問で、安保理事会の問題が出ましたが、安保理事会の問題も、最終的には私の願望なんですけれども、それに至らざる前にも、やはり国連でもっとこういうふうなことをやってもらいたい、もっとこういうところに活動の使命があるんじゃないかというようなことは、どんどん日本側としても提案をしたい。それにつけても、次元が多少低くなるかもしれませんけれども、現在国連の中で、いろいろの機構の中に日本人もかなり入っておりますけれども、特に政治関係あるいは国連のいろいろ機構を運営する中枢に、残念ながらいままで日本人が入っておりませんでした。私どもとしては、りっぱな日本人が多数おられるわけでございますから、そういう方々がある意味では犠牲になっていただくわけですけれども、個人的には犠牲を払っていただいてでも、中でひとつ活躍していただきたい。そういう点について、国連の本部においても積極的にわれわれの希望を受け入れてくれるようにということは、すでに私も提案いたしております。そういったような中に入り込んで、そしていま御提案になっているようなことも含めまして、わが国がもっともっと積極的に、そして終局的には、国連の本来の目標であるところの世界戦争のない平和を創造するというようなところへもっと威力を発揮してもらうようにしたいものだということを考えておりますことも、あわせて御報告申し上げたいと思います。
  209. 渡部委員(渡部一郎)

    ○渡部委員 この問題については、一歩前進した前向きの立場で今後御検討いただきまして、おりに触れて御報告をお願いしたいと存ずる次第でございます。  私はもう時間がなくなってしまいましたので、大事な問題が幾つも幾つもあとへ回ってしまいました。しようがないのですけれども、ただ、どうしてもちょっと伺っておきたいのは、核兵器と憲法との関係につきまして、今回画期的な政府の御説明がございまして、核兵器をつくらず、持たず、持ち込ませず、いわゆる非核三原則に関しましての憲法論議が予算委員会等で行なわれました。私の前に述べられました数人の議員方々によりましても、お話が出ておるとおりでございます。私はこのことについて思うのでございますが、外務大臣として、まず、日本は核武装国であったほうがいいと思われるのか、悪いと思われるのか。核保有国であるほうがいいのか悪いのか。そしてどういう時点なら核を持つ、あるいは核を持込ませる、あるいは核を借用する、あるいは核を借りておく、供給される、そういったような事態に踏み切ったほうがいいとお考えなのか、その点について伺いたいと存じます。
  210. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 私は、核武装を日本国が持つというようなことになることは、率直にいって、私の目の黒いうちはそういう世の中がありたくないと思います。私は、現在、たとえば原子力の問題などにいたしましても、これは核武装しようと思えばできないこともないくらい発展しているのではないかと思いますが、これを平和利用に徹底的に限定しておる。そして、やろうと思えばやれるんだけれども、これだけはやるまいね、われとわが身に言い聞かしているというのが、私は多くの日本国民の感情であろうと思います。私はこれを徹底的に尊重していきたい、これは私の信念でございます。
  211. 渡部委員(渡部一郎)

    ○渡部委員 非常に厚い信念を披瀝していただきまして、外務大臣の御長寿をお祈りする次第でございますが、その、われとわが身に言い聞かしておるというのは、法律的にそうなっているのか、憲法の上でそうなっているのか。もう一回繰り返すようでございますけれども、外務大臣はどういうふうにこの辺をお考えでございましょうか、ひとつ御説明を願いたいと存じます。
  212. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 先ほど来申しておりますように、私の考えを申しますと、憲法論議あるいは条約論議あるいは仮定のものということを前提にして、こういう問題を論議いたしておりましても、これは尽くるところがないような感じもいたします。一番大事なところは、私はいま申しましたように、日本が核武装するなどということはとんでもないことだ、これだけはやるまいね、この姿勢と信念が私は大事じゃないかと思います。同時に、日本国の安全、自由ということを現実の条件のもとにおいて守って、国民の自由や人権やあるいは経済の繁栄を守るということが、また現実の問題であるということもあわせて考えていかなければならない、こういうふうに考えます。
  213. 渡部委員(渡部一郎)

    ○渡部委員 それは御意見としてはまことにけっこうなんですけれども、核武装をやるまいねという姿勢と信念とおっしゃったように思いますが、それは宗教と哲学の問題だと私は思います。ここで論じなければならないのは、私は法律であると存じます。少なくとも立法府である以上は、その国民の信念あるいは姿勢というものを法律の上で確保し、二度とそういうことが起こらないようにするという承認がなければならない。その意味で憲法、法律論議がやかましくなるのだと存じます。したがって、日本の憲法の上で、あるいは法律の上で、核をつくらず、持たず、持ち込ませずというものについて、どれとどれがどう確認されておるかという問題について議論がされました。そして、総理のお話では、核をつくらず、持たずというのは、憲法による原則であり、持ち込ませずというのは、政策上の問題であるという御説明がございましたけれども、外務大臣は同意見でございますか。
  214. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 憲法論としては、私は総理の言いましたこと、あるいは法制局長官がふえんしておりますことが正しいのではないかと思います。
  215. 渡部委員(渡部一郎)

    ○渡部委員 ところが、憲法論としてはそうなっておりますけれども、法制局長官が憲法第九条の解釈として、去る十日の予算委員会におきまして、自衛のため、わが国民の安全と生存権を保つためであるならば、通常兵器はもとより、核兵器を持つことも、何ら憲法上問題はない、こう申されました。ですから、国民の安全と生存権を保つため、自衛のためならだいじょうぶだということに直りますと、たとえば日本を守るためにこういうことがだいじょうぶだということになると、持たずという原則は破壊されてしまうわけであると了解したいと思うのです。したがって、持たずということも、また政策におけるところの原則だと思うのですが、いかがでございましょうか。
  216. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 そこのところが、先ほど来申しておりますように、憲法上の解釈、それはやはり政策の問題と区別して論議すべきものではないだろうか、私はそういうふうに考えるわけでございます。憲法論としますと、通常兵器であっても、侵略的、攻撃的なものは、憲法に触れると私は思います。ところが、法制局長官が申しておりますように、これは核兵器であっても、自衛ということだけに限定される。つまり、侵略的、攻撃的でない防御一点ばりというものならば、憲法上も持てるはずだ、こう言っておるのでございますが、従来からも御存じのように、本土につきましてはこういう問題は起こしておらないつもりです。また、将来とも自分が持つというようなことは考えるべきものではない。こう申しますと、今度は話は非常に常識的になるわけですけれども、先ほど来申しておるような気持ちで私としては事に当たってまいりたい、かように思っております。
  217. 渡部委員(渡部一郎)

    ○渡部委員 そういたしますと、やはり外務大臣日本の自衛のために核を持つということに関しては、憲法上差しつかえないようなおことばのように聞こえます。そうすると、ABM、アンチバリスティックミサイルなどを持つということは当然承認する、そういう意味の核武装をすることはよろしい、こういう立場でございますね。
  218. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 そこが、ですから何べんも申しますけれども、憲法上できるからといって、それを持つのはよろしい、そこは分けて考えなければならない。あくまで憲法上は法制局長官が言うたとおりであろう、そう思っておるだけであります。
  219. 渡部委員(渡部一郎)

    ○渡部委員 したがいまして、核を持たずという御判断は、憲法上くずれて、政策上、つまり外務大臣の信念においてのみ確保される原則であるということが明らかになったわけであります。したがいまして、核を持たずというのは、憲法上は差しつかえはない、外務大臣の目の黒い間だけこれは実行される政策である、こういうことになるわけです。だから、非核三原則というのは、ついに紙切れになってしまった。つくることは完全にできるけれども、やるまいねとさっきおっしゃった。つくることは完全にできるということは、それこそもうつくる寸前ぎりぎりまでいくという意味だと私は思います。そうすると、寸前ぎりぎりのぎりぎりのぎりぎりまでいって、核弾頭に、ミサイルに核をつけないというだけでも、核兵器はつくらずということになります。最後に装着をしないということだけになってしまう。もっとひどくなりますと、核を発射台に載っけないということになってしまう。そうすると、この核をつくらずなんという原則もまたこわれてしまう。結局非核三原則は、皆さま方今回の佐藤内閣のタッグマッチでみごとにぶちこわしになった、国民の悲しい願いをよそにしてみごとにおこわしになったと考えてよろしいのでございますね。
  220. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 とんでもないことでございます。だから、私は先ほどから念を入れて言っておるわけです。ですから、そういうふうに一方的に御解釈になるのは、御解釈は自由ですけれども、私が先ほど申しましたとおりです。
  221. 渡部委員(渡部一郎)

    ○渡部委員 それは否定されるのは御自由ですけれども、私の理論はちゃんと立てていけばそうなるじゃないですか。
  222. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 それは理論ではございません。
  223. 渡部委員(渡部一郎)

    ○渡部委員 私はそんなに興奮されないほうがいいと思うのです。
  224. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 こんな大事な問題はお互いにはっきりしましょう。
  225. 渡部委員(渡部一郎)

    ○渡部委員 こういう問題を扱うには、感情や理性にたよってやるのじゃなくて、峻厳な法律の上でその可能性をがっちり論ずるのでなかったら、日本の国をつぶしてしまうと私は思うのです。また、さっき砂川判決では、米軍基地は平和憲法のらち外にあるようなことを申されました。それを政策的判断の中に持ち込まされた気配が濃厚です。この真意は一体何なんでしょう。ということは、米軍基地の中に核兵器を持ち込んでもそれは知らぬということのために、あのような引用をなさったのですか、私はそれを伺っておきたい。私は心配しておるから言っておるのです。何も外務大臣の宗教的信念を私はとやかく言っておるのじゃない。外務大臣の目の黒いうちはだいじょうぶだとおっしゃったのを私は信じたい。けれども、法律は別です。ここは立法府です。自分の信念を披瀝するところじゃない。法律をつくるところである。法律の解釈に一ぺん穴をあけたら、日本は取り返しのつかないことになるから、私は申し上げておる。おおこりになるとはもってのほかです。
  226. 北澤委員長(北澤直吉)

    北澤委員長 御答弁ありますか。
  227. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 何べん繰り返しても同じことです。
  228. 渡部委員(渡部一郎)

    ○渡部委員 それじゃ時間になりましたようですから、私この問題をもう少し丁寧に煮詰めたかったのですけれども、どうも意見が平行線になったみたいな形です。最後の御返答は、私はいただかなかったような感じがいたします。そしてこのような大事な非核三原則を破壊されたやり方と私は最後まで感じます。そういう考え方については、政府は重大な反省をなされない限り、みずから対米交渉の際に墓穴を掘ると私は思います。そして、それは日本の平和憲法に対する重大な脅威となるし、日本外交にとってのマイナスになるということを、冷酷、冷厳に申し上げたいと私は思う次第でございます。  以上述べまして、私の質問を終了さしていただきます。ありがとうございました。
  229. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 先ほど来くどくどと申し上げましたが、私は、非核三原則というのは非常に大事なポリシーだと思います。それから憲法の解釈につきましては、先般予算委員会で、総理大臣並びに法制局長官が補足答弁いたしましたことが正しいと思います。そして法律論と政策論とは別である、常識的に私はさように考えます。
  230. 渡部委員(渡部一郎)

    ○渡部委員 一つだけ念を押しておきたいのですが、いま非核三原則はポリシーであるとおっしゃいました。それは政策であるとおっしゃいました。それは重要な意味がございますよ。それでよろしゅうございますね。
  231. 愛知国務大臣(愛知揆一)

    愛知国務大臣 いま申しましたとおりに、非核三原則というものは非常に大事な政策の考え方である、こう申したわけであります。つまり、憲法の解釈というものは、総理大臣と法制局長官が補足して申し上げましたことが正しいと思います。
  232. 北澤委員長(北澤直吉)

    北澤委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後五時一分散会