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濱田参考人 私は、
日本科学技術情報センターの
理事長濱田でございます。
本日は、
衆議院科学技術振興対策特別委員会のお招きによりまして、
情報科学技術あるいは
科学技術青報というものにつきまして
お話を申し上げる機会をお与えくださいましたことを、まことに光栄に存ずるものであります。
最近の
日本におきまして、
情報科学あるいは
情報産業とか
情報革新とかというふうに、
情報、
情報という
ことばが街頭にあふれておりますけれ
ども、これは何によってかように相なったかと申しますのに、ただいま前のお二人が
お話しになりました
電子計算機産業の
発展に
関係のある
ことばでありまして、いわば
日本でいうところの
情報革新とか
情報産業というのは、言いかえれば
電子計算機産業という
ことばの別名といってもいいくらいのものであります。事ほどさように、
電子計算機というものは重要なものであろうと私は考えております。二十世紀の
発明の中でも、
電子計算機ほど重要な、
社会的に意義の深い
発明はおそらくなかったろうと思うくらいに、
電子計算機というものは非常に重要であります。先ほどお二人の話にありましたように、
電子計算機というものは、
人間のなす腕力以外のことはたいがいのことはやることができるという、
人工頭脳というふうな
ことばであらわされるものでありまして、この発達のいかんは国運の消長に直接
関係があるということは自明であります。
しかるに、今日まで
日本の
やり方を見ていますと、
生産においてもあるいは
研究の
開発においても、あるいはただいま
お話がありました
ソフトウエアの
開発においても、いろいろやっておられますけれ
ども、まだまだ
やり方が徹底しておらぬ。これをこのままの推移にまかせますと、ゆゆしいことに相なるおそれがあるということを私は心配している一人でございます。本日、
委員長からの御依頼によりますと、私の
お話の題目は、
情報科学技術に関する問題というのでありますが、私は
日本科学技術情報センターという
科学技術情報の現業を担当しておる者であります。この
科学技術情報、
情報科学技術と若干まぎらわしい
ことばでありますけれ
ども、いずれも大事なものでありますから、両方にまたがって簡単に
お話し申し上げたいと思います。
この
情報科学技術というのは、簡単に申しますと、
電子計算機あるいは
ソフトウエア等に関する基礎的な
研究、学問の
開発をやることを
意味するのだと思います。この面において私は、
日本はもっともっと徹底的な施策を実施するようにしなければ相ならぬと思います。と申しますのは、
情報というものは、御
承知のように、すべての
社会の機構、あるいは
機械であっても道具であっても、あるいは動物の場合には、
人間でも他のその他の動物であっても、すべての存在物にとって、エネルギーと質量と
情報といわれるくらいになくてはならないものでありますがゆえに、その
情報というものは一体何かということについての徹底的な解明をする必要があるのでございまして、それにつきまして、基礎的な科学あるいは
技術の
開発について、
政府はもっともっと力を入れるように指導をする必要があろうということを、私は絶えず申しております。たとえば簡単なことですけれ
ども、物が見えるというのはどういうわけかとか、音が聞こえるのはどういう機構によって聞こえるのかとか、それから
情報というものは一体何か。電気の信号も
情報になりますし、その他音でも何でもそうですけれ
ども、
情報とは一体どういうものか。その伝わり方は一体どういう方法によって伝わるのか、その他いろいろございます。そういう
情報そのものについての
科学技術の
研究を徹底的にやる必要がある。そうでありませんと、今日私
どもが使っております
電子計算機の将来、将来の
電子計算機は、そういう新しい根本的な
研究から出立するものでなければならないのでありまして、そういう
意味で十年、十五年後に対処するために、
電子計算機の
開発の基礎
研究として、この
情報科学技術の
研究は非常に大事だと思います。これは一方において電子工学の重要な課題でもありまして、電子工学の中でも、特に
情報についての基礎的
技術の
開発という方面でございまして、その方面に
科学技術庁は最近特段の力をお入れになるように、庁の方針をおきめになりました。非常に意を強うしておりますけれ
ども、かような方面が将来の
日本の一番大事な方面であると思います。それが、
情報科学技術に関する
問題点の
一つでございまして、この点を特に私は強調したいと思う次第であります。
さて、次に
科学技術情報の問題でありますけれ
ども、この
科学技術情報というのは、ただいま申し上げました
情報産業とは全然別個に、すでに戦前から、あるいはもっとよほど前から存在していた面でありまして、御
承知のように、戦後
各国が
科学技術の
振興を国策として強力に推進してまいりましたために、その
研究の成果は論文や報告となって非常にばく大な量に達し、どの国もそれぞれの
自分の国における
科学技術の
情報の処理に手をやいているような
状態であります。
日本はむろん、最も顕著な国は
アメリカでありまして、
アメリカは、御
承知のように戦後非常な勢いで
科学技術の
振興に力を尽くしました。具体的に申しますと、私の
計算では、戦後今日まで
アメリカは三百兆円に達するようなばく大な
研究費を投入しました。そのために、原子力、宇宙
開発といういわゆる巨大科学ばかりではなく、ありとあらゆる方面の
科学技術の
開発が進みまして、それによって
生産される論文の数はばく大なもので、とうてい個人の力あるいは
産業界の
会社あるいはその他の団体では処理できない。これはこの
情報処理をやるところの専門の機構をつくってやらなければならないということを考えるのは当然であります。すでに
アメリカには
アメリカ化学会というのがありまして、それがケミカルアブストラクトというのをやっております。あるいは国立医学図書館というのがありまして、これがMEDLARS
システムというものを戦前からやっております。その他たくさんそういうふうな
科学技術を専門に取り扱う
産業が勃興しておりまして、この
傾向は
アメリカばかりでなく、さらに
世界じゅうの
傾向であります。また一方において、ソ連のような政体を異にする国においても、
自分の国に適した
情報活動の方法を
開発しております。
そういうわけで、
電子計算機とは別途に発達した、
科学技術振興の成果の整理に関連した重要な
仕事でありまして、
各国とも非常に力を入れておりまして、たまたま
電子計算機の応用が
開発されてまいりまして、
電子計算機を使うことが
科学技術情報処理の最大また最適の武器であることが明らかになりました。
各国の
科学技術情報産業ですね、その事業は、国内のための事業であるばかりでなく、これを拡張しまして、国際的な
仕事にまでこれを
発展さすという
傾向になってまいりました。
自分の国の
仕事に
電子計算機を使って
情報処理をやるばかりでなく、それを
外国にも及ぼして
世界じゅうの
情報を集め、またその処理した結果を
世界じゆうに配ろうという、そういう
意味の国際的な事実として
発展する必然性を持ってまいりました。これは
電子計算機のおかげであります。そういう
意味で、今日では
科学技術情報というものは、
科学技術振興に関連してきわめて大事なその国の
仕事であるばかりでなく、これは国際的にも関連を持った複雑な事業として
発展しつつあるのが現状であると申していいと思うのであります。
日本科学技術情報センターと申しますのは、御
承知のように、
科学技術庁がいまから十三年ほど前にできました。その翌年、第一着手としてつくられた特殊法人であります。
日本の
科学技術振興のために、
日本の
産業界と学界の
発展のために貢献するようにつくられた特殊法人であります。今日では国内、国外の
科学技術の雑誌等七千種類を集めまして、それらから一年間に約四十万種の抄録をつくって、
関係者に配付することをやっております。今日まで創立以来十二年たちますが、その間において、
日本の
科学技術の
振興に若干、と言うといささか語弊があるかもしれませんが、貢献をしてまいったというふうに私は確信を持っております。しかしただいま申しますように、
科学技術の
情報というものは年々歳々洪水のごとく増加する
傾向にあります。今日のこの
科学技術情報センターの
やり方では、とうていこれは足りない。なおこの
情報センターの活動の
一つの面といたしまして、
電子計算機を
情報処理に使うことの
研究開発を始めまして、このことが一応成功に近づきつつございます。それは先ほど申しました年間四十万種の抄録を普通の方法で編さんし、印刷し、そして配るという本屋のような
仕事をやっているのでありますけれ
ども、これを
電子計算機によって編集し、印刷し、さらに
情報検索が行なえるようにこれを配慮し、それから索引が直ちにつくれるようにこれをするというふうな、そういういろいろな
仕事を最も合理的に、科学的に行なえるようにいま準備を進めつつありまするので、遠からざるうちに、
科学技術情報の
機械検索が、
日本においても漢字を使った
日本語において可能になるというふうに私は考えております。このことは
世界各国でも、いわば
日本の勉強の
やり方に感心し、注目しているという事実がございます。
そういう次第でございまして、この
科学技術情報センターは、今日
科学技術情報活動を、
日本のために、先ほど申し述べました規模においてやっておりますけれ
ども、とうてい今日の
状態では不足である。もっともっとやる
仕事がどっさりあるのであります。たとえば、先ほど来申しますところの
情報に関する
科学技術の
研究をやらなければならない。その
科学技術と申しましても、先ほど申しましたところの基礎的な
研究もやりたいのですけれ
ども、もう少し、実際的な日常の
技術の
開発で、やるべきものがたくさん残っております。そういう実際的な
情報技術の
開発を、この
情報センターはやる必要がある。
それから、いま最も不足いたしておりますのは青報に関する科学者、
技術者の数でありまして、これらを養成することも、このセンターの任務であります。そのほか、かような
日本の
科学技術情報についてのやるべき
仕事というのは枚挙にいとまがないという
状態でありまして、私は最近、OECDの
会議に招かれまして、この科学
情報政策の議論をいたす
会議に列席することがあるのであります。OECD諸国は、科学政策からさらに進みまして、科学
情報政策が非常に大事だということに着目し、今日、科学政策よりもむしろ科学
情報政策に当分重点を置いて事を処する情勢に追られているというふうな認識を持っておると思います。
なぜそういうふうになったかと申しますと、
世界各国は、
科学技術政策の遂行に戦後二十年間非常に力を尽くし、その結果たくさんの成果があがった。しかしその
やり方についてはいろいろな問題があろう。これについての分析やあるいは評価をする材料は、科学
情報の処理によってのみ可能である、これによって、今後の科学政策の遂行、推進に大きな手がかりを与えるものがこの科学
情報の処理である、そういう考えであります。同時に、ソ連のような国の
やり方と自由主義諸国との科学政策の相違についての再検討というような問題も関連しておりまして、この科学青報政策の検討というものは、きわめて重大であるということであります。
さて、いろいろ申し上げたいことがどっさりありますけれ
ども、時間がありませんので、最後に一言申し上げたいことは、
日本は
科学技術の
振興を国策としてやっておられることは明瞭でありますけれ
ども、実効においてなかなかこれが及ばない。科学
研究に対する
政府の投資ははなはだ満足でないということは、皆さまもうよく御
承知のとおりであります。これをどうしても、少なくともドイツ、フランス並みぐらいにしなければいけない。しかも
産業界の投資もさることながら、
政府がもっともっと先に立って
研究投資をやって、そうして
産業界をリードするという態勢をお示しになることがきわめて必要であるということを考えます。そして
科学技術情報というものは、いま世間でいわれておりますところのもろもろの
情報産業の中でも、とりわけ
科学技術振興のための見地から非常に重要であるということについて、私は大方の注意を喚起したいということを強く考えるものでありますことをつけ加えまして、私の
意見を終わります。